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石川さんネッツ。(短編集)

1リースィー:2003/05/10(土) 14:17
またスレ立てて・・・(自分に突っ込み)
石吉用とは他に、ここでは私一押しの石川さんと他のメンバーとの「やり取り」をたくさん書こうかな、と。
(もしかしたらここにも石吉書いたりして・・・)
とにかくこちらは「石川さんと〜」で頑張って見ます。

2リースィー:2003/05/10(土) 14:19
では・・・。
マイナーかもですが、「石高」から書いてみます。

3リースィー:2003/05/10(土) 14:21

 苦しそうな赤い顔が私を見てる。目は潤んでて。
「ほんっと、すいません・・・」
「いいの。謝ることじゃないんだから」
 タオルを取り替えて顔に手を寄せる。高橋の目はずーっと私を見つめてる。

4リースィー:2003/05/10(土) 14:30

 今日、高橋が風邪で仕事を休んだ。一人の仕事とかも色々忙しくて、それが一気に押し寄せて来てたみたいで。・・・てな事を飯田さんやあいぼん、紺野とかにまで話を聞きまくっちゃって。
 もう、「私、恋人なんです」オーラを出しまくった一日。
 だから言うまでもなく、仕事が終わった瞬間に足は高橋の家に向かって発進。・・・で、今に至ってるわけなんだけど。
「まだ熱下がってなかったんだね」
「はい・・・みたいです・・・」
 そう言って高梁は毛布を肩まで引き上げる。少しだけ体を横にした高橋の顔は本っ当にシンドそうで・・・。
「・・・大丈夫?」
「あい」
 返事もちゃんとできてなくて。
「ご飯は食べた?」
 時間はもう九時を回ってる。夕食の時間にしては少し遅いんだろうけど、首を振ってる高橋のためにも何か作ってあげないと。
「何かお腹に入れなきゃ。何かある?」
「何か、ですか・・・?」
 高橋はいつもの大きな目を少しだけ閉じた状態で考えてる。・・・でも少し経って高橋から出てきたのは・・・。
「あ、の・・・今ちゃんと食べられるのって、ヨーグルトアイスしかないです」
「・・・ヨーグルト?」
 思わず聞き返してしまった。でも高橋は「はい」と応えるだけ。どうやら昨日買っておいたものらしくて、食べる間もなく倒れてしまったと。
 ・・・良いのかな、病人にヨーグルトって。でも高橋、食欲ない見たいだし。

5リースィー:2003/05/10(土) 14:36
「じゃあ取ってくるね」
 少し体を起こそうとした高橋を横に戻して、ちょっと大きさのある冷蔵庫の方に行ってみた。
「・・・あちゃあ」
 声を上げてしまう程、高橋の家の冷蔵庫には何も入っていなかった。とりあえず水とかウーロン茶のペットボトルとかはある。でも肝心なご飯の材料がない。
 仕方なく冷凍庫に手を伸ばしてヨーグルトを取った。
「高橋」
 部屋に戻ると、目を閉じたまま荒い息を繰り返してる高橋が目に入った。名前を呼んだから少し反応したけど、やっぱり動きは鈍い。
「取ってきたよ。食べよ?」
「はい・・・」
 体を起こすのを手伝ってあげて、ベッドで向かい合って座る。溶けてきて周りの雫が垂れてこないようにってティッシュでカップを包み込んだ。

6リースィー:2003/05/10(土) 14:40
 一口目をスプーンですくって高橋の口に運ぶ。小さく「あ」と声を出した高橋の口の中に、スプーンの半分くらいのヨーグルトアイスが吸い込まれた。
 軽く閉じられた唇。そこからスプーンをゆっくり引き抜いたら、目を閉じたまま口をモゴモゴさせる顔に目がいった。
「おいしい?」
「はい。おいしいです」
 目を開いた高橋は、少し崩れた笑み、で・・・。
「・・・・・」
「・・・石川さん?」
「?・・・あ、ごめんっ」
 慌ててもう一回アイスにスプーンをさした。高橋が不思議そうな顔で私を見てる。
 だって、ねぇ〜・・・。
 ちょっとした軽い拷問だよ、これ。髪は下ろしてて、顔は赤くて、目は潤んでて。その上・・・私のほうずっと見てるし。
 っあ〜・・・何かドキドキしてきた。

7リースィー:2003/05/10(土) 14:45
「もう、いいですよ。石川さん」
 半分くらい食べたところで高橋はストップをかけた。私は急いでそれを冷凍庫に戻して、急いで高橋のところに戻った。丁度毛布を被って横になろうとしてたみたいで、経ってるついでに手を伸ばして横になるのを手伝った。
「何か・・・本当にすいません・・・」
「いいってば。何度も言ってるでしょ?」
 イスに座って氷水に浸してたまんまのタオルを絞り、高橋の額に乗せた。
「ワガママならたくさん聞いてあげるから。何でも言ってよ」
「はい・・・」
 とは応えてくれたけど、やっぱり少し戸惑ってるみたい。
 でも何かそこが・・・。

8リースィー:2003/05/10(土) 14:49
「あの、石川さん・・・」
「ん?・・・はいはい?」
 急に高橋が声を上げる。それにつられて私も高橋を見た。
「お願い、なんですけど・・・」
「うん」
「今、ちょっと寒いなって・・・温めてくれますか?」
 あ〜、悪寒か。だったらヨーグルトアイスって食べないほうが良かったんじゃないかな・・・。
「温めるって言っても・・・湯たんぽとか無いでしょ?」
「・・・はい」
「ドライヤー・・・は熱すぎるねぇ・・・」
「熱いです」
「じゃあ何も・・・」



 そこで私の声は止まった。
 高橋が“温めてくれるもの”を視線で教えてくれてたから。

9リースィー:2003/05/10(土) 14:52
「・・・私?」
「・・・はい」
 応える目。呂律が回ってなかったはずの高橋の言葉が、この返事だけちゃんと聞こえた。

 ・・・小悪魔っ。

「温めてくれますか?」
「・・・分かりましたよっ」
 完全に飲み込まれたかも、私。

 腕の中で高橋に上げた唇に帰ってきたのは当然、ヨーグルト風味の感触だった。

10リースィー:2003/05/10(土) 14:57

 その翌日。
「おー、高橋やっと治ったか〜」
 飯田さんの言葉。
「もう、愛ちゃん心配したよ〜」
 紺野や小川、ののやあいぼんの声。私はというと・・・。
「ゲホガハゴホグホッ・・・」
「おいおい、大丈夫かい?」
 安倍さんが背中をたたいて私の咳を促してくれている。少し離れたところで矢口さんっぽい「ニヤニヤ」した視線が。
「・・・ま、お疲れ」
 偶然いたごっちんが肩を叩いてくるし。
「やっちゃったね〜」
 よっすぃーは反対の肩。

 ・・・最悪っ。

 あ〜・・・。
 小悪魔さんの武器がヨーグルトアイスなんて知らなかったあ・・・。



 終。

11リースィー:2003/05/10(土) 15:01
・・・良いんですか?
こんなんでも良いんでしょうか?(自問自答)
高橋さんが「高梁さん」という別人になったりしてるんですが・・・。(ゴメンナサイ)
え〜、でもとりあえず・・・。
タイトルは「ヨーグルトアイスの小悪魔さん」です。そのままですね(笑)
とりあえずはこんな感じで石川さんの「ネッツ(石川さんから始まるCP)」を書いていきたいと思います。
(ほんとに長く続くんでしょうか、ここは)←また自問自答。


では。

12ぶらぅ:2003/05/10(土) 17:04
おっ、レスしていたらこちらにあったのですね(w
このCP自分も好きですマイナーですけど^^;
石川さん絡み〜。楽しみです。

13リースィー:2003/05/17(土) 10:33
ぶらぅさん、ありがとうございます。
石高は良いですね〜。ハロプロニュースでなんだかんだケンカしてもこの二人の並びって結構多いんですよね。見てみたら。
(その並びにやられたうちの一人、私。)
ここはもしかしたらとっても更新が遅れてしまうかもしれませんが、小説は必ず載せますので、ここもどこか片隅でも良いんで、覚えてたら見守っててください。

14名無し( `.∀´):2003/05/31(土) 21:10
次は、誰かな?ワクワクしてまっています。

15リースィー:2003/06/05(木) 14:01
え〜、ようやくですが更新です。
今回は、紺野さんです。
実を言いますと(先に言っておきますと)これはまた短編シリーズものです。紺野さんとあと一人、他に出てきます。
が、それはまたということで。
シリーズの名前は「Grain of lotus」といいます。
では早速。

16リースィー:2003/06/05(木) 14:08
 一緒にいる時間が長いのは私の方だ。
 ラジオでも何でも。一緒にカラオケに行った事もある。
 だけど・・・。



 お昼ご飯は好き。お弁当はいつも二つ確保するんだけど、今日、というか最近は一つがいっぱいいっぱいで。
「あれ?紺野それ二つ目?」
「あ、はい」
 だけど嘘ついて、二つ食べたって事にしてる。
 そうしないとみんなが私を「心配」の目で見るから。
「やっぱり育ち盛りなんだねぇ」
 安倍さんはそれだけ言って矢口さんにちょっかいを出しに行った。
「・・・はぁ」
 とりあえず最後の一口を食べ終わってお弁当箱を片付ける。・・・今日もお腹がいっぱいだ。
「後少しでスタジオ入るから、準備始めててねー」
 飯田さんが大きな声を出してるけど、飯田さん自身は鏡に向かって動いてなかった。
 もう少しで本番か・・・。
 もしかしたら今日も他のチームになるのかな。最近は一緒に番組に出てもゲームで同じチームになる確率が少なすぎる。・・・なのに、彼女とは一緒になる事が多いんだ。
 ・・・何でだろう。

17リースィー:2003/06/05(木) 14:15
「おーい、紺野。ボーっとしてないで早くメイクしないと」
「?」
 立ち止まっていた私の後ろで声が上がる。その声の持ち主の特殊能力か、私は思わず振り向いてしまった。
「もう、何振り向いてんの。もうすぐ本番でしょ?」
 分かってるはずなのに。目の前にはもちろん石川さんがいた。
「早くっ」
「あ・・・すいません・・・」
 我に返ってみると、メイクさんがもうイスの側で立って待っていた。そうだ、もう時間が無いんだ。
「あ〜、今日は差し入れのデザート食べる時間無かったなぁ。ケーキとかあったのに」
「そうですか〜」
 隣の石川さんが独り言を呟くごとに小さく返してみる。いつもなら私も「あ〜、食べたかったです」って言ってるはずなんだけど、今日は別にそんな気がしない。
「あら〜、珍しいね紺野ちゃん。今日は食べ物の話してても瞳キラキラしてないよ」
「え?あ、ホントだ。紺野珍しいー」
 急にメイクさんがそんな事言ったもんだから、石川さんも身を乗り出して私の顔を覗き出した。

18リースィー:2003/06/05(木) 14:24
「なっ・・・べ、別に・・・そんな事無いですけど・・・」
 って、本当は「食べないといけなかった」みたいな話の流れだ。
「そんな事無いですよ。・・・た、食べたいなあって思いますよ、はい・・・」
 丁度メイクも終わった。服はもう着替えてたからすぐに楽屋のドアに向かう。
「お先に出ます」
「はいよー」
 矢口さんの声を聞きつつノブを回す。・・・そしたら。
「ちょーっと待った、紺野」
「っはい?」
 また急に聞こえた声。今度はそれにすっごい驚いて声が裏返ってしまった。
 振り返る。・・・そこにはやっぱり。でも笑ってない石川さんがいた。
「一緒行こ」
「・・・あ、はい」
 何かに急かされてる気がして慌てて楽屋を出る。後ろから石川さんがついてきてるのが気配だけで分かる。
 ・・・気配というものだけで、分かってしまう。
「ねえ、紺野」
「はい・・・何ですか?」
 応えた時には既に横に来ていた石川さんに顔を向けた。石川さんは私を呼んだけど、その時も笑ってるようには見えなくて。
 ・・・話に乗ってこなかった事に怒ってるんだろうか。でもそうだとしたら「一緒行こ」って言わないと思うし・・・。
「あのさ、最近の紺野見てて思うんだけど」
「はい・・・」
 違うのかな。
 最近って事は、さっきの事に関して怒ってるわけじゃ・・・。
「・・・笑ってないよね」
「・・・・・」

 え?

19リースィー:2003/06/05(木) 14:29

「え・・・あ、あの・・・」
「・・・・・」
 その言葉だけを呟くように私に「刺し」て、スタジオの入り口に着くまで石川さんは何も話さなくなった。
 ・・・何でだろう。
 私やっぱり怒られてるのかな。石川さんに注意されてるのかな。・・・でも今までも色々な事石川さんに注意されたりしたけど、今までの注意の仕方じゃないみたい。
 ・・・やっぱり、私は石川さんを怒らせてしまったんだろうか。
「紺野」
「・・・はい?」
 また突然。
 今度はスタジオのドアに手をかけた石川さんが目に入った。その顔はやっぱり、笑ってるように見えない。
「今日空いてる?」
「はい・・・一応は」
「じゃあ、一緒に帰ろ」
「・・・え?」
 何でですか?
 怒ってるんなら、「一緒に帰ろ」なんて言いませんよね。
「今日終わったら待ってて。私ちょっと遅くなるかもしれないから」

20リースィー:2003/06/05(木) 14:36

 石川さんが何を考えているのか未だに分からない。
 仕事は普通に終わったんだけど、その時も石川さんは何も言わないで仕事に専念してた。私の隣に石川さんが来たりもしたけど、やっぱり仕事のことでしか話をしなかった。
 ・・・だから、未だに分からない。仕事が終わってこんな風に楽屋で待ってる間も。
「あれ?あさ美ちゃん、今日は誰かと一緒に帰るの?」
 まこっちゃんが帰り際に私に声をかけた。・・・まこっちゃんの隣には、彼女がいて。
「あ、うん。・・・今日はちょっと呼び止められたから」
「へぇ〜、紺野も好かれてるよね〜。色んな人に」
 まこっちゃんに応えたはずなのに、一度はドアに手をかけたはずの安倍さんが言葉をはさんだ。
 彼女は・・・うつむいたまま何も話さない。
「まあ、一緒にのんびりお出かけしておいで。梨華ちゃんも最近柴ちゃんと遊んでないみたいだからね」
 じゃ、お先にお疲れ〜って、安倍さんは今度こそドアの向こうへと消えていった。・・・私が背中に汗かいてるの知らないままで。

21リースィー:2003/06/05(木) 14:45
「あさ美ちゃん、石川さん待ってたんだ」
「ああ・・・うん、まあ・・・」
「そっかあ、石川さん、矢口さんとレギュラー持ってて大変だもんね。じゃあ私達行くから」
「うん・・・」
 ばいばーいって言って、まこっちゃんもドアの向こうへと消えていく。その後に続いて彼女も楽屋を出ようとしていたけど。
「・・・あさ美ちゃん、じゃね」
「・・・うん」
 私に一言かけて、それだけ言って今度こそドアの向こうへと・・・出て行った。
 彼女と交わした会話は、それが今日初めてだった。
「・・・・・」
 誰もいなくなった。・・・いや、強いて言えばここに石川さんと矢口さんがいないだけ。それで収録が終わったらここをすぐに出て行かなきゃならなくて・・・。
 ・・・何も無いのに、私は一人で何をしてるんだろう。
 石川さんを待ってるんだ。・・・でも、一体何の為に?私が石川さんに呼び止められるよう事・・・。
「はあ〜、終わった終わった〜」
 ガチャッと音が鳴って、新鮮な空気の流れと共に石川さんと矢口さんが入り込んできた。二人共てをうちわ代わりに扇いでため息をついて。
「あれ〜?紺野、何してんの一人で」
「あ、私が“待ってて”って言ったんです。今日はちょっと一緒に帰ろうかなって思って」
「あ・・・はい。そういう事です」
 石川さんが、私が応えようとした全ての言葉を矢口さんに伝えてしまった。どことなく急いでる口調のようにも思えたんだけど。

22リースィー:2003/06/05(木) 14:53
「二人きりで〜?なあんか怪しいなあ。ま、あんたに“一緒に帰ってくださいよぅ”って寄られるよりマシだけどね」
「あの、いつも思うんですけど、酷いですよ?」
「あははは〜。・・・ま、おいらは先に帰るからさ、電気とか全部消しといて」
 じゃあお疲れって、すごい短く早く言って矢口さんは楽屋を出てった。衣装のまま私服を持って。
「紺野、帰る準備できてる?」
「あ、はい。そのまま帰れます」
「じゃあ、私着替えるからもうちょっと待ってて」
 着替えの為のカーテンの後ろへと石川さんが隠れる。そしたらすぐに服を着替えてる布の擦れる音が聞こえた。
「・・・・・」
 何を話せば良いんだろう。そう思ってしまうくらいにこの沈黙を重く感じている。でも石川さんは別にそんなこと思ってないんだろうな。私がこんな事を考えてる事もきっと、知らないんだ。
「おまたせ〜」
 着替え終わった石川さんは、さっきまでの露出がちょっと多かった衣装から、シャツとジーンズというラフな格好に変身してカーテンの裏から出てきた。
「さ、帰ろっか」
「あ、はい」
 バッグを持って応える。石川さんは鏡の上の電気が消えてるかチェックしつつドアの方へと向かってく。私はもうドアの前で待ってた。

23リースィー:2003/06/05(木) 14:57
 戸締まりと電気の確認をして楽屋を出る。その時もやっぱり石川さんが少し後ろから横へと追いついて・・・。
「?」
 一瞬目に映った光景。
 私の手が、誰かに握られてる。
「・・・石川さん?」
 手は、石川さんに飲み込まれていた。
「ん、どうしたの?」
「あ・・・いえ・・・」
 そう応えてうつむく。そしたらちょっとだけだけど、石川さんの手の力が強くなった気がした。
「あの、どこに行くんですか?」
「ちょっと話がしたいなって思って。ここの食堂だけど良い?」
「はい・・・」
 話。
 ・・・さっきまで何も話してなかったのに、私に何の話があるんだろう。

24リースィー:2003/06/05(木) 15:02
 テレビ局一階の食堂には、時間帯のせいか人があまりいない。その中で石川さんは一番奥の方の空いてる席に向かっていった。
「何か食べる?食べながら話しても良いけど」
「あ、私は別に・・・」
「うそ。今日そんなに食べてないでしょ。お腹すいてるんじゃない?」
「へ・・・?」
 石川さんの言葉に、私はまんまと引っかかった。
 ・・・はい。今日はそんなに食べてないです。だけど嘘つきました。
 一部始終見ててたんですか?・・・石川さん。
「私は食べたいんだけど」
「あ・・・私も食べます」
 見抜かれた私は、動揺したまま素直に言葉を出してしまって。
 でもその時。
「よし、じゃあ早く席を取ろうっ」
 ・・・やっと石川さんの笑うところが見れた。

25リースィー:2003/06/05(木) 15:08

 実を言うと、私はちゃんとお腹が空いていたらしい。最初はバイキングに出ている分一品ずつ一周で終わるはずが、気が付いたらもう一周していて。
 そしてもう一つ実を言うと。
 ・・・私は食べるのに夢中で、まだ石川さんの「話」というものを聞いてなかった。
「ごちそうさまでした」
「良いよー。私も一人で食べなくて済んだし」
 結局そのままテレビ局を出てしまって。
「明日もこっちで集合かあ・・・遠いなあ」
「そうですね〜」
 なんて短く相槌を打ってみるけど。今はそれよりも早く石川さんの話が聞きたかった。
「あのさ、紺野」
「・・・はい?」
 うつむいていた顔を石川さんに向ける。石川さんは前を向いて歩きながらまた私の手を取った。
「また一緒に食べようよ。私やっぱり紺野がご飯食べてとこ見るの好きみたいだから」
「・・・あ、はい」
 違った。今度こそ聞いてくると思ったのに。

26リースィー:2003/06/05(木) 15:15
「何かねぇ、最近心配だったんだよね。みんなと話しててもさ、時々本番中でも笑えるところで笑えてなかったから」
 手を引かれたまま道を歩く。夜の道ではあったけど、比較的明るくて人も少なかったから心配ではなかった。
「ご飯もさ、お弁当一つで済ませてたし。ダイエットしてるのかな〜って思ったりもしたけど。でも全然紺野らしく見えなかったんだよね」
「・・・だから今日、私を誘ったんですか?」
「ちょっとはそう。でも大半は違う」
「・・・?」
 予期してなかった応えに、私はまた顔を上げた。
「何でかな。“今日は紺野と一緒にいなきゃ”って思う自分がいたの」
「・・・・・」

 その言葉を投げかけた石川さんは、本当に笑顔で。
 その言葉を投げかけられた私は。

「・・・紺野?」
「・・・・・」
 不覚にも。泣きっ面をさらしてしまっていた。
 何時の間にか。自分でも知らないうちに。

27リースィー:2003/06/05(木) 15:21

 石川さんといる事がこんなに嬉しく感じられるなんて、思っても見なかった。
 だけどそれは同時に・・・苦しさもつれて。



「紺野、どしたの?」
「いえっ・・・何でも無いですっ」
 涙はすぐに止まるほど微々たるものだった。だからすぐに石川さんの顔を見ることができたけど。
「紺野、本当に大丈夫?」
「・・・大丈夫、です」
 本当は弱い私は、石川さんに素直に甘える事ができなくて。
 私は石川さんと一緒にいたい。このままずっと、一緒にいる時間をできるだけたくさん、たくさん作りたい。一緒にいるだけで、こんな風に話をするだけでも良い。
 だけど。
 ・・・そう思う自分に浸る度に、頭の片隅から突然大きく、彼女がよみがえる。
 どっちも失いたくない。・・・だけどどちらかを失わないと、いけない。
 ・・・それを石川さんにも伝えられない。
 “ないないづくし”じゃないか。

28リースィー:2003/06/05(木) 15:25
「ね、本当に何でもないの?」
「・・・はい。大丈夫です。・・・何か嬉しかったんです。石川さんにすごい心配してもらっちゃって。・・・でもこんな風に元気付けてもらった事無かったから」
 そんな私は、今日また嘘をついた。
「・・・そっか」
 今度の嘘は、石川さんさえも見破れなかった。
 本心の混ざった“嘘”だったから。



 本当の嘘だったから。



 終。

29リースィー:2003/06/05(木) 15:27
終わり、です。
あ〜、なんか暗いなぁ。
タイトルは「本当の嘘」です。ん〜、そのまんま(笑)。
これからここにこのシリーズを載せてくかもしれません。
今のところ石川さんは、これから始まることに自覚なし、ということで。

では。

30名無し(0´〜`0):2003/06/20(金) 19:42
暗くても(・∀・) イイ!
すごーく②楽しみにしています♪

31リースィー:2003/07/12(土) 15:36
名無し(0´〜`0) さん、ありがとうございます。

かなり遅れてしまいましたが、続きを載せたいと思います。

32リースィー:2003/07/12(土) 15:47

 雨が降ってる。
 何か、あの歌が頭を流れてくんだけど。
 ・・・すまないけど、今の私はまだそういう気分には浸れない。



 シャッフルの組み分けが決まって曲のレコーディングが終わったらすぐに振り付けは始まった。といっても、やっぱりグループが違う人達の集まりなわけだから、スケジュール合わせという物が難しい。・・・うちらのメンバーだけでも簡単ではないんだから。
「今日はまた一段と集まった数が少ないなあ」
 今回私が振り分けられたグループは七人。だけど今日は特に集まりが悪かったみたいで、変わりのダンサーさんが四人。・・・という事は、今日来てるのは私の他にあと二人。
「みんな大変なんだなあ、いつも思うけど」
 メロンの大谷さんが頭の後ろの方を掻きながらため息をついていた。私も私で「そうですねえ〜」って相づちを打って。
 そしてもう一人は。
「今日は他に来れる人いないんですか?」
 遠くの方で、石川さんが夏先生に話を聞いていた。
「そう言われてもね〜。どのグループも忙しいだろうし」
「そうですか〜・・・やっぱり今回も大変なんですね」
「ま、石川達だけ振り教えててもなんだから。今はとりあえず休憩するなり自分で練習するなりしてて。・・・あ、雨まだ降ってるんだなあ」
 夏先生はそう呟いてレッスン室から出て行った。・・・石川さんは少し肩を落としてるっぽい。

33リースィー:2003/07/12(土) 15:56
「今日は無理みたいです。とりあえず休憩しててって・・・」
「うん、分かった」
 そう言って大谷さんは壁際に置いてあったバッグから携帯を取り出していじり始めた。
「私もちょっと休もうかなあ。高橋、どうする?夏先生当分戻ってこないと思うんだ」
「あ・・・はい、私も休みます」
 当分と言っても、もしかしたらすぐ戻ってくる可能性だってあるし。私も壁際で休むことにした。石川さんは外の自販機に行くらしくて、レッスン室から出て行った。
 あ〜、でも。
 石川さん、また一人でため息つきに行ったんじゃないかな。
「・・・何で、弱いところ見せようとしないかなあ・・・」
「え?どうしたって?」
「?・・・あ、何でも無いです・・・」
 私はまた独り言を呟いていたらしい。大谷さんが携帯を閉じながら私の方に顔を向けていた。
「あ、梨華ちゃん出てっちゃったんだ。今あゆみとメールしてたのに」
「柴田さんと?」
「うん。“近くにいるんならメールさせて“って」

34リースィー:2003/07/12(土) 16:04
「もうすぐ戻ってくると思いますよ。多分ジュース買いに行ってると思うんで」
「そっか〜。じゃあ梨華ちゃん戻ってきたら言っといてね」
「え?大谷さんが言わないんですか?」
「もうここにいられないんだよねー。今から仕事入ってんだ」
 っちゅーわけで、って大谷さんはバッグを持って立ち上がった。
「じゃあ、あと二人だけだけどよろしくっ」
 え、大谷さんもいなくなっちゃうんですか?私まだここにいますけど、石川さんと二人だけで何すれば良いんですか?
 ・・・って言えるはずも無く。
「あ・・・お、お疲れ様です・・・」
 ドアに手をかけてた大谷さんにそう応えるのでいっぱいいっぱいだった。
「・・・はあ、何でこんなに人がいないんだろうなあ・・・」
 窓の外はまだ雨が降っている。・・・少しユウウツになってしまった。



 石川さんと一緒にいたいと思う気持ちは誰にも負けない。
 誰よりも・・・彼女よりも。
 私が石川さんに一番近いところにいる。
 そう思ってたい。今だけでも。

35リースィー:2003/07/12(土) 16:14

「高橋・・・?」
「っ!?・・・おあーっ」
 ドアの開く音も聞こえずに急に石川さんの声が聞こえた。石川さんは窓の外を覗いてボ〜ッとしていた私の横に来ていて。
 ・・・あの、瞬間移動みたいなマネやめてくださいよ・・・。
「何変な事言ってるの。大谷さんは?」
「ああ・・・仕事が入ってるからって行っちゃいましたけど・・・」
「っえー!?」
 大きい声。・・・石川さんは本当に驚いてるみたいだった。そしてその後に。
「な〜んでよ〜。二人だけ〜?」
 本当に力の無い声が。手にはペットボトルを二つ抱えて。
「一本は大谷さんにあげるつもりだったんですか?」
「何言ってんの。これは大谷さんの分もだけど、もう一つは高橋の分」
「・・・・・」
 え?
 私の分も買ったんですか?

36リースィー:2003/07/12(土) 16:23
「そうよ〜?っていうか、こんな汗かいてたら休憩の時にはちゃんと水分補給しなきゃいけないでしょ?」
 はい、って石川さんの手から直にペットボトルを差し出される。・・・実を言うと私のバッグのすぐ近くにミネラルウォーターがあったけど、これはもらっておかなきゃ石川さんが機嫌悪くなりそうだから。
「あ・・・ありがとうございます」
 両手で、受け取った。
「あ〜、これじゃあ休憩どころじゃないよねえ。一時中断も良いところよ?」
 おまけに雨も降ってて外に出られないしさあ、と呟く石川さんはもう私から手を離して窓のある壁にもたれて座った。
「そう、ですね・・・」
 私は石川さんと逆に立ったまま窓の外を覗く。
 丁度夕方あたりで景色が青い。その中で降ってる雨は何と言うか。
「・・・不思議な景色ですねえ」
「ん?・・・外の事?」
 また独り言を言っただけなのに、石川さんが言葉を返してきた。
「あ、はい・・・何か、青くて雨降ってて・・・」
「あ〜・・・そういえば最近外見てないなあ・・・」
 石川さんも立ち上がって窓の外を覗いた。・・・気のせいかちょっと肩が触れてる気がして。

37リースィー:2003/07/12(土) 16:30
「明日は私もここに来れないんだよね。夜までずーっと。・・・空見れないなあ」
「・・・・・」
 すっごいユウウツそうな石川さんの顔。大谷さんにあげるはずだったペットボトルは、組まれた腕の中で横たわっていた。
「・・・寂しいんですか?」
「んー、寂しいと言われれば寂しいかもねえ。こう、二人だけだと」
「・・・・・」
 そんな顔されたら、私までそんな気持ちになってしまう。でもそれは悪い意味ではなくて、きっと・・・。
「・・・石川さん」
「ん?」
 私の呼びかけに石川さんは何のためらいも無く振り向く。
 私は・・・。
「私は・・・寂しくないですよ。石川さんがいますから」
「え・・・?」
 振り向いた角度のまんま石川さんの顔が驚きに変わった。
「石川さんがいるから、寂しくないです」
 もう一度言ってみる。・・・今度はちゃんと石川さんの方を向いて。

38リースィー:2003/07/12(土) 16:37
「え?・・・それは、その・・・ふざけてじゃなくて?」
「何でこんな大事な言葉をふざけて言うんですか」
 ふざけて言うには、私には荷が重過ぎる。
「今日の私は、石川さんがいたから頑張れたんです」
 今日は朝から雨だったけど、一緒に振りを覚える日なんだって、石川さんと一緒だって思えたら何か嬉しく思えた。
 何故か分からないでもない。・・・でも。
「私は今も石川さんといたいです」
「・・・・・」
 いつの間に、私は石川さんの服の裾をきゅっと握っていた。
 ・・・今の勢いで本当に心から思ってる事を口に出せばいくらか楽になるはずだったのに。
 あ〜・・・私はまだ怖いんだな。
「高橋、どうしたの?何か変だよ?」
「変じゃないですよ。・・・普通の高橋です」
 石川さんの服を握ってて、それのどこが変じゃないんだろうかとも思うんだけど。
 ・・・一緒にいたいって思うこと自体、おかしい事なんだろうか。

39リースィー:2003/07/12(土) 16:44
「いや、おかしい・・・とは思ってないんだけど・・・。今日はちょっと様子が変だなって思っただけ」
 そう応えて、石川さんは肩にかけていたタオルで私の額の汗をピッと拭いてくれた。そしてそのまま・・・。
「?」
 私と同じ目線で、しゃがみこんだ。
「・・・でもね」
 私がいて“頑張れた”って聞けて、嬉しかったよ?
「・・・・・」

 この顔だ。
 ・・・やっぱり石川さんのこの顔には、勝てない。

「ありがとね」
「あ・・・いえ・・・」
 何故か急に石川さんの顔が見れなくなって、思わずうつむいてしまった。そしたら石川さんもしゃがむのを止めて、代わりに肩に手を回してポンポン叩くみたいに撫でてくれた。・・・ギュッて抱きつきたくなったけど、汗もかいてるからってことでガマンする。
 何か伝えないといけないことがあったはずだけど・・・それも今はそのまま忘れたフリをする。

40リースィー:2003/07/12(土) 16:49
 ・・・ここで、この時のままで良いから。
 このまま時が止まってくれたらなって思った。



 石川さん。
 私はやっぱり、石川さんが好きです。



 窓の外はまだ雨が降っている。
 ・・・もしかしたらそれは私の今の気持ちの表れなのだろうか。
 またあの歌が頭の中で流れるけど、やっぱり今の私はそういう気分に浸れない。
 浸りたく、ない。



 終。

41リースィー:2003/07/12(土) 16:58
終了です。
短編で続くシリーズ物「Grain of lotus」略して「一粒シリーズ」の続きです。
こちらのタイトルは「今だけ、この時だけ。」です。石高ですね。
というわけで、紺野さん編から詠んでくださった方はご存知かと思われますが、そこで登場していた「彼女」=「高橋さん」です。
これからも続くでしょう。いえ、続く予定です。・・・いえ、続かせますっ!!(笑)
更新状態はどうなるか分かりませんが・・・。

では。

42名無し(0´〜`0):2003/07/14(月) 22:36
彼女=高橋さん
違う人を想像していました…。(笑

これからも続けてください!!(切望
次作も楽しみにしています!!

43リースィー:2003/07/24(木) 13:52
名無し(0´〜`0) さん、ありがとうございます。
では「一粒シリーズ」の続きを。
今度はまた紺野さんです。

44リースィー:2003/07/24(木) 13:54

 夢を見る事があまり好きじゃなくなってしまった。
 理由は二つ。
 一つは石川さんが毎日出てきて、朝から胸が痛くなるから。
 もう一つは・・・。
 「彼女」の泣いてるような顔が、石川さんの顔に時々ダブるから。

45リースィー:2003/07/24(木) 14:02

「・・・手助けはしなくて良いです。ほんとに」
 喫茶店の中。テーブルの上では紅茶の入ったグラスが汗かいて、中では氷とストローが踊ってる。私の向こう側には腕を組んでため息をつく柴田さんがいた。
「でもねぇ、紺野ちゃんの悩み聞いちゃったらどうにかして助けなきゃっって思うじゃん」
「良いんです。ただ話を聞いてほしいだけですし。それに・・・」
 最初に石川さんを好きになったのは愛ちゃんで、元は相談役の私が・・・でしゃばれない。
「それはまあ、・・・話を聞いたらね」
 コーラを一口飲んで柴田さんはまたため息をつく。でもその後すぐに「だけどさ」って。
「・・・ほんとは好きになった順番なんて関係無いと思うよ。要はどれくらい相手の事が好きかだと思うけど」
「・・・そう、ですか?」
「そうだよ。結局は振り向いてもらったもん勝ちじゃない?」
「・・・・・」
「自信持ちなよ。タンポポで一緒な分会える時間もたくさんあるんだから」
 タンポポで一緒な分。
 ・・・それは嬉しい事だけど。・・・嬉しい事、だけど。
「そう、ですね・・・」
 でも柴田さんには言えない。
 “自分が自分でなくなりそうな時がある”なんて。
 それぐらい、おかしくなるんじゃないかって思うくらいに石川さんの事が好きになってるなんて、言えるわけが無い。

46リースィー:2003/07/24(木) 14:14

 シャッフルで一番多いところに割り当てられたから、楽屋の中は少し騒々しい。といってもモー娘。のメンバーは十五人になるわけだし、まぁ少ない方で。
 ・・・それでも、気分が悪くなったりもするんだけど。
「大丈夫かあ?紺野。医務室行った方が良くない?」
 矢口さんが私の背中を撫でてくれて。
「前々から顔色悪く見えたからなあ。寝てないの?」
 その反対には飯田さんがいて。飯田さんは肩を撫でてくれてた。
「おいら一緒についてこうか。収録まで時間あるし。少しはマシになるでしょ」
「だ、大丈夫ですよ・・・」
 慌てて断る。・・・けど。
「紺野ちゃんの“大丈夫”は聞けないね〜」
「え?」
 急に柴田さんの声が。・・・あ〜、そうだ。柴田さんも一緒だったんだ。
「私が連れてくよ」
「あ、はい・・・」
 何がどうしてかは分からないけど、柴田さんがこう来たって事は何かあるんだろう。
 ・・・というわけで結局は柴田さんと医務室に行くことになって。
「この前から寝不足でしょう。その・・・前相談してもらった時くらいから」
「はい、まあ・・・」
「そういう時はちょっとでも休まないと。ライブも控えてるんだし、乗り切れないよ」
 廊下を歩くのは私と柴田さんだけだったから、柴田さんは普通に“そういう事”を話してきた。二人だし、私も俯きながら「はい」って応えて。
「じゃ、後で呼ぶから。横になったりしてて」
「はい。ありがとうこざいました」
 医務室の前で柴田さんと別れる。柴田さんが別に急ぐでもなく、手を後ろに組みながら来た道を戻っていった。
「・・・・・」
 実を言うと柴田さんと話し始めた時から気分が悪いのはなくなっていた。もっと言えば、今このドアの前に立った時から。
 ・・・一人になれって事だったのかな。多分そうだ。きっと今の私には一人になるための時間が必要なんだ。

47リースィー:2003/07/24(木) 14:24
「・・・失礼します・・・」
 とりあえず他の部屋に入るわけなんだから人がいたら失礼だし。そう思いながらドアを開けると。

「・・・あ、紺野」

「へ・・・?」
 俯いたままだったから確かかは分からなかったけど。
 ・・・私の耳に確かに、聞きなれた声が入ってきた。
「どうしたの、体調悪いの?」
「え、あ、あの・・・」
 人は、誰かいるだろうとは思ってた。
 ・・・だけど、だけど・・・。
 まさか、石川さんだったなんて。
「さっきの声、やっぱり柴ちゃんだったんだ」
「あ、はい・・・い、一緒についてくからって言われて・・・」
 私は何をこんなに緊張してるんだ。いつもの石川さんじゃないか。いつもの・・・。
「そっかあ。・・・あ、早くこっち来て座ったら?」
「あ・・・」
 ドアのところでずっと立ち尽くしていた事を今気付かされた。それに気付いて今度は・・・。
 石川さんの手が、私の肩に。
「ほら、早く座って」
「・・・・・」
 ストンッっとソファに座った途端に力が抜けた感覚が。
「びっくりしたよ。ここあんまりメンバーも来ないからって、私一人の暇つぶしの部屋にしてたのに」
 そうして石川さんは私の隣に座って。
「水あるけど飲む?」
「・・・・・」
「紺野?」
「っ?・・・あ、はい。の、飲みます・・・」
 かなり途切れ途切れの応え方だったけど伝わったらしく、石川さんはクーラーボックスからミネラルウォーターを取って私に渡してくれた。
「あ、ありがとうございます・・・」
「良いよー。いちいち気使わなくても」
 滴を払ってたタオルと一緒に渡されたミネラルウォーターのフタを開けて早速一口。・・・それはもうすっごい冷えてて、体の上から下へと冷たさが突き抜けてくようだった。

48リースィー:2003/07/24(木) 14:30
「私もちょっと飲もうかな」
 そう言って石川さんもクーラーボックスに手を伸ばした。
 ・・・うん。ちょっとは落ち着いてきたかもしれない。水のおかげって言うのだろうか。さっきみたいな急な“びっくり”の発作はおさまったみたいだし、私もようやく他の事を考えられるようになれた。
「石川さん、いつもここに来てるんですか?」
「ううん、たま〜に。“ちょっと一人になりたいな”って時にね」
「・・・やっぱり、そういう風に思う時もあるんですね」
「大所帯だからね。大家族」
 ちょっと笑って石川さんは応えて、クーラーボックスからやっとペットボトルを取り出した。
「でも来た人はちゃんと介抱するよ。特にメンバーとかはね。だからほら、紺野のお世話もしてるでしょ、今」
「あ・・・」
 不意にヒヤリとしたものが私の額に触れた。
 それはもちろん・・・石川さんの手で。

49リースィー:2003/07/24(木) 14:38
「熱は無いみたいだけど・・・。あ、そういえば柴ちゃんが“最近寝不足みたい”って紺野の事送ってきてたなあ」
「っ・・・え、え!?」
 いつの話か分からないけど、確かに石川さんは私が寝不足だって事を前から知ってた・・・って事?
 そう思ったら、こんな風に声が出た。
「何でっ・・・え?・・・いつ、ですかそれっ」
「んー、昨日かな」
 昨日・・・昨日は柴田さんと会ってないはずなのに。
「最近眠れなくなるくらい悩んでる事でもあるの?」
「悩みは・・・」
 無いです、としか言えないじゃないか。本人を目の前にして相談なんかできるわけが無い。
 ・・・柴田さん、まさか。
「柴田さんがそう言ってたんですか?」
「ううん。柴ちゃんが送ってきたのはそれだけだよ。それに・・・」
 眠れない日が続いてるんなら、それなりに何かあるのかなって思うのが普通じゃないの。
「・・・・・」
 額にあった手が、いつの間にか私の頭のところに来ていた。その手は撫でているようにも止まっているようにも見えて。
「悩みが無いに超したことは無いけど、体調悪くしたらだめだよ」
「・・・はい」
 両手で掴むように包んでいたペットボトルを見ながら頷く。
 ・・・心臓がまた、痛い程に自己主張を始めた。

50リースィー:2003/07/24(木) 14:43

 何で私が行く場所行く場所に石川さんがいるんだろう。これは少し言い過ぎかもしれないけど、いつでもどこでも石川さんが私のすぐ近くにいるような気がして。
 ・・・そう思う度に、胸がジンジンして。



 ちょっとだけ目が重い感じがする。・・・今頃になって睡魔が襲ってくるなんて。
「眠い?」
「ん・・・」
 それはすぐに石川さんにもバレて。
「ゆっくり休んでよ。柴ちゃん来たら私が起こすから」
「はい・・・ありがとうございます・・・」
 ゆっくり閉じていく瞳と共に声も絞られて。
 私はすぐに眠りの中へと入っていった。
 ・・・胸がジンジン痛んだままで。

51リースィー:2003/07/24(木) 14:48

 目覚めは早かった。
 けどそれでも一、二時間は眠ってたみたいで、起きた時の目はすぐに柴田さんを見つけられなくて。
「梨華ちゃんいるならいるって言ってよー。私もここにいたのに」
「私てっきり柴ちゃんが入ってくるんだと思ってたけど、紺野が入ってきたからびっくりしちゃったよ」
 ラジオの時みたく、柴田さんと石川さんは二人で話をして。
 私はというと・・・まだ完全に起きてるわけでもなくただ無口で。
「んじゃ、紺野ちゃんを連れて行きましょうかね」
「うん。よろしくね、柴ちゃん」
「おー、まかせとけ」
 柴田さんが応えた後、フッと傾いてた方向に“モノ”が無くなった。
 ・・・もの?
「じゃあ私、先に出るね」
「うん」
 それからすぐにガチャッて鳴って、バタンッて鳴って。
 気が付いたら目の前には柴田さんしかいなかった。

52リースィー:2003/07/24(木) 14:55
「あれ・・・石川さんは・・・?」
「あー、今出てったじゃん。紺野ちゃんが寝てる間ずっと肩枕してたみたいよ」
「・・・え?」
 寝てる間って・・・二時間ずっと?
「そ、それ・・・」
 その柴田さんの言葉で、私は完全に目が覚めた。
「私知らない間に石川さんに迷惑掛けてたって事ですかっ?」
 寝てる間の記憶なんてもちろんあるはずも無い。石川さんは寝てる間・・・ずっと起きてた?
「いや〜?私がドア開けたら二人とも寝てたよ〜。もう、梨華ちゃんも紺野ちゃんの手ずっと握っててさ」
「・・・・・」
 思わず手を見つめる。
 握られた記憶も無い。・・・だけどほんの少し熱くて、うっすら赤くなっていた。
「梨華ちゃんと一緒に昼寝するなんて早々できないよ〜?ま、とにかく早く行こ。みんな待ってるから」
「あ、はい・・・」
 柴田さんに肩を軽くポンッと叩かれつつ医務室を出る。
 医務室といっても楽屋に色々置いてあるみたいな感じで。
 ・・・そんな中で、私と石川さんは誰にも会わずに二人だけでお昼寝を・・・してて。
 そう思ったらまた少し胸がジンジンしたけど・・・。今度はそれにちょっとした心地良さが加わった。

53リースィー:2003/07/24(木) 14:57

 夢を見る事は相変わらず好きじゃない。
 ・・・だけど確かに私は。
 あの時間だけ現実から夢に身を置いていた。
 “石川さんと二人でお昼寝する”なんて、思っても見なかった夢に。



 終。

54リースィー:2003/07/24(木) 15:00
ご終了です。
シリーズの紺野さん第二弾です。タイトルは「白日夢。」
“白昼夢”だと限られてる感じがするので・・・。

では。

55名無し(0´〜`0):2003/07/26(土) 03:38
石紺キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!
あんまりない組み合わせなので、かえって新鮮で面白かったです。

56リースィー:2003/08/08(金) 14:32
名無し(0´〜`0) さん、ありがとうございます。

では「一粒シリーズ」、高橋さん視点を。

57リースィー:2003/08/08(金) 14:38

 目の前には見慣れない柄と色の天井がある。そして私はそれを見ながら赤いタオルを持ってベッドにいた。
 今日はホテル泊まり。私はまだ二人ずつで部屋に入ってて、今日はまこっちゃんだった。
「愛ちゃん良かったね。シャッフルで石川さんと並ぶの多くなったでしょ」
「うん・・・まぁね」
「ん?何か嬉しくなさそうだよ」
「え、あ・・・嬉しいよ。うん、嬉しい」
 タオルを巻いた枕を手に持って起き上がる。まこっちゃんは“そうかあ”って言って体を横にして。
 ・・・まこっちゃんの言った事は確かに合ってると思う。本当は嬉しいはずで。・・・だけど。
 何か、おかしいんだ。
 私の中で、何か“疑い”が生まれ始めてる。

58リースィー:2003/08/08(金) 14:42

 ラジオであさ美ちゃんが石川さんに言った事。私は偶然、まこっちゃんから聞いた。

「石川さんが“私のどこが好き?”って聞いたら“全てです”って」

 ・・・裏切られたとは思わない。大嫌いにもならないと思う。
 最初からそんな予感はしてたから。
 だから・・・あさ美ちゃんを相談役に選んだんだ。それが“間違いだった”って思ったとしても。

59リースィー:2003/08/08(金) 14:53

 石川さんは私達の割り当てられた楽屋で台本を読むかメールをして過ごしてた。シャッフルのメンバーで話もするけど、そこまで深い話をするわけでもなくて。
「最近メール多いね、石川さん」
 同じメンバーの里沙ちゃんに話をしてみるけど、里沙ちゃんはそんなに興味は無いみたいで。
「でも良く柴田さんから来るみたいだけどね」
「ふ〜ん・・・柴田さんかあ・・・」
 呟いて石川さんを見たら・・・そこに里田さんが来てた。したら石川さんは里田さんとちょっと話をしてソファから立ち上がった。・・・その向かう先は私で。
「私ちょっと行って来るね」
「え、どこにですか?」
 本当に突然だったから口は思わず石川さんにそう聞いてしまって。
「ん?んー、ちょっとね。でもすぐ戻って来るから」
 別に急ぐわけでもなく、でも携帯を持ってる手は上下に軽く振ってて。
「あ・・・じゃあ行ってらっしゃい・・・」
「うん、行ってきます」
 私の肩を軽く叩いて石川さんはドアの向こうに消えて行った。
 ・・・私に何か嫌な予感を残して。

60リースィー:2003/08/08(金) 14:58
「?・・・愛ちゃん、どうしたのそんなところで立ちっぱなしで」
「あ、ミカさん・・・」
 気が付いた私は、自分がその場に立ち尽くしていた事を知った。
「どこか具合悪いの?」
「いや〜、どこも悪くないですよ」
 どこも悪くないわけではないけど・・・心が。
「私もちょっと外に出てきます」
「うん。早めに戻ってきてね」
「いってらっしゃあい」
 石川さんのイソイソとは違ってみんなに送り出された私は、ドアのすりガラスの向こうからうっすらと動いて行った影の方向に急ぎ足で歩いた。
 石川さんの歩いて行った方・・・外の見える廊下の方に。
 


 何なんだろう、この不安は。
 私を付きまとう、この不安は。

61リースィー:2003/08/08(金) 15:06

 廊下を抜けたすぐそこに石川さんはいた。・・・一人で。
 でも私がいるのはまだ見えてないらしくて、ずっと携帯で話をしてる。
「んー、そう、なんだ・・・」
「・・・・・」
 盗み聞きなんていけない事だ。だけど今の私はそうしなきゃいけない気がして。・・・石川さんに気付かれないように後ろから近付いて行った。
「私はどっちでも・・・うん。あ、柴ちゃんはそっちが良いんだ」
 ・・・柴田さん?さっきまでメールしてたはず。柴田さんとどうしてこんなところで話をしてるんだろう。一緒のところにいるのに。直接話せば良いのに。
「オッケー。じゃあ帰りにねー」
「・・・?」
 石川さんが携帯を切る。私はそれに慌てて後ずさりしてしまった。
 ・・・ら。
「こら、高橋っ」
「っ・・・?は、はいっ」
 後ろを向いたままの石川さん。だけど確かに声は私を呼んだ。
 私が応えた後、すぐに顔はこっちを向いた。
 石川さんの顔は・・・少し怒ってるように見えて。

62リースィー:2003/08/08(金) 15:14
「いるんなら普通にこっちに来なさいっ」
「は、はい。・・・すいません・・・」
 怒ってるというか拗ねてるというか。でもそんなに怒鳴るわけでもなく石川さんは私の手を取った。
「最初から気付いてたよ、高橋がいたの。足音だけ聞こえた時からモロ分かり」
「・・・すいません・・・」
 私は石川さんの隣に座りつつ誤る事しか出来なくて。
「で?どうして私の後ろ付いて来たの?」
「あの・・・付いて来たわけじゃないんですけど・・・」
 何で石川さんの所に行こうとしたんだっけ・・・。
 あ、そうだ。
「ずっと笑わないでメールしたりしてて・・・何かあったのかなって思って。いつもみたいな楽屋の出方じゃ無かったから」
「ほんとに?」
「・・・本当です」
 半分ホント。
 半分・・・ウソ。
 石川さんが出て行くドアの向こうに一瞬、あさ美ちゃんの顔が“見えて”しまって。
 そんな嫌な予感が私を包んでしまったから。

63リースィー:2003/08/08(金) 15:22
「なら良いんだけどさ」
 だけど、ウソの方はもちろん石川さんに言えるはずも無くて。
「あのね、柴ちゃんと“今度どこに行こうか”ってメールしあってたの。で、帰りに“一緒に帰ろう”って電話してたんだよ」
「・・・そうだったんですか・・・」
 それを聞いて少しため息をつく。嫌な予感は少しだけど減った。
「ごめんね。私も高橋に心配させてたんだ」
「・・・・・」
 私の肩をポンポン叩く石川さん。楽屋で叩かれた時よりは優しくて。
「柴ちゃんがね〜、何か知らないけど“内緒にしてて”っていうからさ。別に秘密にしなくても良いのにね。いつも普通に“どっか行こう”って言うのに」
「ご飯食べに行くんですか、柴田さんと」
「うん。また食べ歩きかな」
「・・・仲良いんですね、やっぱり」
「そうだね。・・・柴ちゃんぐらいしかいないし・・・」
 ちょっと苦笑いして石川さんは立ち上がり、“もう行こうか”って私の手を取った。

64リースィー:2003/08/08(金) 15:28
「時間だよ」
「はい」
 歩き出した石川さん。そして私は半歩後ろを付いて行った。
「高橋も一緒にご飯食べようよ。今回は柴ちゃんとだけどさ、いつかね」
「・・・あ、はい」
 応えて・・・ほんの少しだけ強く手を握ってみる。したら石川さんは私に歩調を合わせて、手を弄び始めた。
 廊下はそんなに長くなかったけど、私の歩調だから楽屋に着くには少々時間がかかって。
「よし、今日も頑張ろうかあ」
「・・・はいっ」
 一息ついて石川さんにぎゅって抱きついた。・・・何でか分からないけどそうしたくて。廊下でドアの前だったけど・・・そんなのお構いなしで。
「ちょっ・・・高橋・・・」
 少しためらってるような石川さんの声。・・・でも動じないで思いっきり腕を回した。
 嫌な予感はまだ消えてない。・・・消えてないけど。
 今だけは私のものだって、思いたい。



 この今の時間だけ。
 ・・・ウソ。
 出来ればこれからもずっと。



 終。

65リースィー:2003/08/08(金) 15:30
終了でっす。
「一粒シリーズ」高橋さん視点です(二回目)
タイトルは「消えない予感。」
ちょーっと、何かを察してる高橋さんです。
というわけで次回は紺野さんです。

では。

66名無し(0´〜`0):2003/08/11(月) 15:09
高橋視点が(・∀・)イイ!
作者さんの作品本当に好きです
次回作も楽しみにしています。

67名無し(0´〜`0):2003/08/17(日) 16:31
作品を改めて最初から読み直し、紺野さんの登場を楽しみにしています。
がんばってください!

68リースィー:2003/08/23(土) 13:05
66さん>ありがとうございます。これからも頑張りますっ。

67さん>ありがとうございます。紺野さん登場までもうしばらくかかりますが、頑張りますっ。

では。

69リースィー:2003/08/28(木) 12:08
え〜、少しかかりましたが「紺野さん視点」、いきます。

70リースィー:2003/08/28(木) 12:14

 私服に着替えて楽屋を出たらもう七時を回っていた。
 今日でシャッフルの仕事もひとまず“終わり”で、みんな口々に「寂しいねぇ」とか「今度はライブでだね」とか言ってメンバー同士で語っていた。吉澤さんなんかはもうはしゃぎまくって。
「紺野ちゃん、行こっか」
「あ、はい」
 肩をポンッと叩かれたから応えて振り向いたら、同じように着替えを済ませた柴田さんが立っていた。

 “今度ご飯食べに行こうよ”

 ラジオの収録の時に柴田さんに誘われて思わず「はい」って応えたら「今日行こうか」って話しになって、実現は早かった。まぁテレビでのシャッフルの仕事はこれで終わりだし、そういう意味ではきっかけになったかもしれない。・・・この前相談に乗ってくれたのはテレビ局近くの喫茶店だし、外食には程遠かったから。

71リースィー:2003/08/28(木) 12:22
「あれ?・・・柴田さん、出口ってこっちの方向じゃないですよね」
 楽屋を出て柴田さんについていくように歩いたら、エレベーターのある方向じゃなくてまだ楽屋の続く方向に進んで。だから思わず服を引っ張って止めた。
「反対方向ですよ」
「ん?あ、良いの良いの。もう一人連れてく人がいるからね」
 この前からずっと連絡とってたんだよー。って、やけに張り切ってるようにも見えるのは気のせいだろうか。
 ・・・それよりも、「もう一人連れてく人」ってもしかして。
「あ、あの・・・もう一人ってまさか・・・」
「もう一人って言ったら、一人しかいないでしょ」
「・・・・・」
 一瞬見えた柴田さんの顔。
 柴田さんが止まって触れたドアの張り紙には、私が思っていた通りの名前が書いてあった。
「梨華ちゃーん、来たよ」
「・・・・・」
 そして、思った通りの展開。
 ドアが大きく開かれてまず石川さんが目に入った。そして、すぐに。
「愛ちゃん・・・」
 私自身にしか聞こえてないだろう声。
 ・・・このまま、逃げてしまおうかと思ってしまった。

72リースィー:2003/08/28(木) 12:28

 喫茶店を出る間際、柴田さんが言っていたことをふと思い出した。
 「そうだよ、私ができる事っていっぱいあるじゃない」


「柴ちゃん、紺野も連れてくるんならちゃんと言ってよー。ずっと前から話は出てるんだからさあ」
「えー、話したと思うけど・・・」
「聞いてないよ何もー。・・・まぁ、二人だけよりは良いか」
「何それっ。私と一緒なのが嫌なの?紺野ちゃん聞いた?今の言葉ーっ」
「あ・・・ああ、聞いてましたけど・・・」
 いきなり振られてそう応えたら「まったくーっ」って柴田さんが石川さんを軽く突っ込んだ。
 実を言うと「聞いてた」というか耳に流してたというか。
 ・・・にしても。この座り方は一体どんな配置なんだろう。
 ファミレスに着いてすぐに席に座って注文を取ったんだけど、柴田さんと石川さんは向かい合って私は・・・石川さんの隣。それも石川さんが言ったんだ。「紺野はこっちっ」って。

73リースィー:2003/08/28(木) 12:34
「いや〜、ラジオ以来だね。こんな風に並んで座るのって何日振り?」
「そうだね〜。梨華ちゃん何時の間にか来なくなってたもんね、ラジオ」
「行かなかったわけじゃないよー?スタッフさんとかマネージャーさんとかにも“まだですか?”って聞いたけど“んー”って困った顔されてさ。私編集長なのに・・・」
「まぁでもね、この機会に紺野ちゃんとも仲良くなれたし。後はお豆ちゃんだけだよ」
「そうだねー。あ、今日連れて来れば良かったね、お豆も。ね、紺野」
「?・・・あー、そう、ですね・・・」
 ラジオの時と一緒。
 石川さんは柴田さんと話をしだすと止まらない。私も話を振られたりするけれど、相槌のような返事しかできなくて。
 ・・・ただでさえ、石川さんが隣にいる事にすごく緊張しているというのに。

74リースィー:2003/08/28(木) 12:40
「もうすぐハローのライブだし、またこうやって食べに行けるかもね」
「あ、行こうよ行こうよ。今度はちゃんとさ、タンポポで行こうよ」
 ね、紺野。
「はい。・・・今度は四人だと良いですね・・・」
 ・・・さっきから「ね、紺野」ばっかり。でも石川さんと柴田さんに悪気があるわけじゃなくて・・・振られてからじゃないと話せない自分に少しムカつく。
「あ、そうだ。・・・私ちょっと行ってくるね」
「?」
 注文したものが一斉に来たって時にいきなり、柴田さんが席を立った。
「え?何、柴ちゃん・・・」
 石川さんもすぐに柴田さんに聞く。・・・けど柴田さんは笑うばかりで。
「ちょーっとね。うん、行ってくる」
 そういうだけで、柴田さんは私と石川さんが座っている席を越えて店の奥の方へと行ってしまった。

75リースィー:2003/08/28(木) 12:46
「どうしたんだろうね、柴ちゃん。席立つことあんまり無いのに」
「そう、なんですか・・・」
 水の入ったコップを手にして一口飲む。・・・急に喉が渇いたから。
 柴田さん、どこ行っちゃったんだろう。携帯も置いてってるし、石川さんと二人だけで・・・。
 二人だけ?
「あ・・・」
「ん?どしたの紺野」
「・・・・・」
 お皿を目の前にしてフォークを手に持ったまま私は固まってしまった。
 ・・・柴田さん、まさか。
「何?紺野も席立つの?」
「あ、いえ・・・違うんです・・・。ちょっと考え事を・・・」
 でも、その考えを石川さんにだけは伝えられない。
「柴ちゃん変だよね。・・・すぐ戻ってくるのかな」
「ど、どうでしょうか、ねぇ・・・」
 料理を食べようか、なんてフォークを持ってはみたけど何故か食が進まない。石川さんは普通に食べながら柴田さんのグチをこぼしてる。
 だけ・・・なんだけど。

76リースィー:2003/08/28(木) 12:53
「・・・あのさぁ、紺野」
「?・・・はい」
 四分の一をやっと食べたかなと思った時、ずっとグチってたはずの石川さんが私を呼んだ。
 何だろう。私にもグチがあるのかな。
「ラジオでさ、ずっと柴ちゃんと一緒だったじゃない」
「あ、はい。石川さんが来ない間は・・・」
「それでさあ、ちょっと不安になったんだよね」
「・・・不安?」
 もう一度水を飲みつつフォークを置く。したら石川さんもジュースを飲みながら「ん〜・・・」って。
「話聞いたら、二人とも仲良くなってラジオの収録もスムーズだって言うからさ」
「・・・・・」
「私いなくても・・・良いのかなー、なんて、さ」
「・・・・・」
 コップを置いてフォークを持とうとした手。だけど結局は力無く拳を作る事しかできなくて。
 ラジオでの話。・・・確かに柴田さんには“相談役”をやってもらってるよな状態で・・・仲良くなっているような感じに見えるかもしれない。
 でも、だからって・・・。

77リースィー:2003/08/28(木) 12:58
「あの・・・そんなところまで考えなくても・・・」
 隣にいるから余計に分かる石川さんの気持ちみたいなもの。そして顔を見ようと振った視線は、石川さんに焦点は当たったけど。
 ・・・一瞬、悲しく見えて。
「ま、でもさ」
「?」
 またフッと表情が変わった。今度は・・・笑ってる?
「私もやっとラジオに来れるし。流れに乗ってかなきゃね」
「・・・・・」
 ずっと石川さんの横顔を見ていた私の目に、石川さんの両目が映る。表情は笑って。
 ・・・いや。こんな近くにいる私には石川さんが笑っているようには見えてない。
「石川さん・・・」
「ん?」
「・・・・・」
 自分がのけ者にされたような感覚ってきっと、この世で一番残酷な感覚なんだろうなって思う。特にこんな状況で、こんな心境の石川さんはすごく押し潰されそうなんだ。
 だから・・・。

78リースィー:2003/08/28(木) 13:03
「・・・私は・・・石川さんがいてのラジオだと思ってますよ」
 そりゃあ、半年以上頑張ったらやっと慣れてきたかなって感じで、一人で進行役も任されたりもしますけど、でも・・・。
「やっぱり、石川さんがいるから安心するっていうか・・・」
「・・・・・」
「落ち着けるんですよ、私は。・・・少なくとも私は」
「・・・そっか」
 その言葉で戻る石川さんの視線。だけど表情はまだどこか悲しげで。

 “・・・ウソだね”
 ラジオでは軽い、柴田さんと話してる時の石川さんの口癖。

「私は、本当の気持ちで言ってますよ。私・・・石川さん好きですから」
 こんな悲しい石川さんを見るためにご飯を食べに来たんじゃない。楽しみに来たんだ。
 石川さんには・・・そんな顔してほしくない。

79リースィー:2003/08/28(木) 13:05
「ハハ・・・ちょっとびっくりしたよ紺野・・・」
「・・・・・」
 不意に柔らかく叩かれた肩。それは石川さんの手で、空気みたいな感触の後はゆっくり撫でるようにされて。
 ・・・だけど、顔は。
「・・・ありがとね」
 さっきよりは、笑ってくれていた。



 お願いです。誰でも良いから。
 私と石川さんだけ、このままでいさせてください。
 今は無理でも・・・未来できっと。

80リースィー:2003/08/28(木) 13:11

「たーだいまぁ」
「あ、柴ちゃんっ。・・・もーどこ行ってたのよーっ」
 ようやく石川さんと話が弾み始めたと思った頃に、ぱーっとした足取りで柴田さんが戻ってきた。
「だから“ちょっと”って言ったじゃない」
「ホントにもー・・・」
「ま、気にしない気にしない」
 いつものような石川さんとの会話の後に柴田さんは席に着いた。
「もう、柴ちゃん早く食べてよ。話す暇無いっ」
「え〜?私も話がしたいよ〜」
「だーめ。今は紺野と話弾んでるんだもん。ね、紺野」
 また振られた。
 ・・・でも。
「はいっ」
 今度はぜーんぜん、自分にムカつかなかった。



 ちゃんと言おう、愛ちゃんに。
 「私も石川さんが好きなんだ」って。
 もし、これで愛ちゃんとの仲が壊れても。
 ・・・それでも私は、石川さんを譲らない。



 終。

81リースィー:2003/08/28(木) 13:13
終了でござい。
「一粒シリーズ」の紺野さん視点ですね。
タイトルは「本当の気持ちで。」です。
誓っちゃいました、紺野さん。これからどうなりましょうか。
今度は高橋さんですね。

では。

82名無し(0´〜`0):2003/09/04(木) 11:34
こっちもキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!!!
川o・-・)ノさんツボです!!
続き楽しみ〜〜〜〜
がんばってください!!

83リースィー:2003/09/04(木) 12:20
82さん>ありがとうございます。

では続きを。今度は高橋さんです。

84リースィー:2003/09/04(木) 12:25

「梨華ちゃ〜ん、来たよ」
「?」
 テレビの収録の帰り際、私と里田さんとミカさんと石川さんだけが残る楽屋のドアが開いた。
「あ、柴ちゃーん、ちょっと待っててね」
 そしたら急に張り切りだした石川さん。
 今日だったのかな、柴田さんとご飯食べに行く・・・。
「・・・え・・・」
 一瞬見えたもう一つの影。
「あさ美、ちゃん・・・?」
 私自身にしか聞こえないだろう声。

 “あれ?柴ちゃん、紺野も一緒に?”
 “そうだよー”

「・・・・・」
 このまま・・・自分自身が固まってしまうんじゃないかと思ってしまった。

85リースィー:2003/09/04(木) 12:32

 “そうだね。・・・柴ちゃんくらいしかいないし・・・”
 ・・・そう言ってたじゃないですか、石川さん。
 この前・・・ウソついたんですか・・・?



 朝の目覚めはすごく悪かった。
 起きて早々吐気が来て、朝ごはんも全然食べられなくて。
 熱は・・・何となく測るのが怖かった。
 って言ったら。
「“怖い”じゃなくて、ちゃんと測りなさいよ」
 車の中でマネージャーさんに怒られてしまった。
「ずっとその調子なら病院に行かないと。今日は娘。で収録だから」
「はい・・・分かってます・・・」
 私だけしかいない車の中。黒いフィルムが貼られた後部座席のガラスに頭をくっつけて次に乗る人を待つ。窓の外に目を向けると最近ようやく見慣れてきた景色が流れて、次に誰が乗るのかって事が少しずつ分かってきた。
 多分この道だと・・・。
 あ。
「石川、さん・・・?」
 ある建物、マンションの中に入ってく車。そこは何度か見た事がある建物で、地下の駐車場だって分かった時すぐに見えた人。・・・それが石川さんだった。

86リースィー:2003/09/04(木) 12:37
「おはよーございます」
「おはよー」
 ドアが開いて、私のいる後部座席に滑り込むように石川さんが乗ってきた。
「あ、高橋。おはよー」
「はい。・・・おはようございます・・・」
 まさか石川さんが乗ってくるなんてって思わずに出た感情と、昨日の事ですごい痛んでる心臓の影響と、・・・私自身の今日の体調のせいで、声はものすごく沈んで返事をした。
「?・・・高橋、どうしたの?」
「いえ。何でもないです・・・」
「何でもないじゃないでしょ。石川、テレビ局着くまで高橋診ててくれる?」
「高橋がどうかしたんですか?」
「・・・風邪引いてるみたいなんだよ。熱は測ってないんだって」
 ・・・あー、言われてしまった。
 このままシラ切ろうと思ったのに。

87リースィー:2003/09/04(木) 12:42
「そうなの高橋、大丈夫?」
「はい。大丈夫ですから・・・」
 急に心配そうな顔に変わった石川さん。・・・だけど昨日を多めに引きずってる今の私にはその一つ一つが・・・“いじめ”みたく思える。
 ・・・心配されるような存在と違うって、私の中がすごく反抗して。
「大丈夫って・・・顔赤いよ」
 建物から出た後、黒いフィルムの側から洩れただけの光の下にいた私の額に伸びた何か。
 もちろん、それは石川さんの手で。
「あー・・・熱あるよ高橋・・・」
「・・・・・」
 分かってますよ、そんな事。
 朝起きてものすごく気分悪くて、そんな時から熱があるんだろうなって自分でも分かってた。
 だから・・・怖かったんだ。
「本当に大丈夫ですから・・・少し寝かせてください」
「うん。その方が良いかも」
 やけにすんなりとした石川さんの返事。
 その後少しは寝たけど、自分の胸の内はまだ・・・くすぶっていた。

88リースィー:2003/09/04(木) 12:48

 テレビ局に着いたら、石川さんとはぐれて自分だけ別の楽屋に連れてかれた。熱もあるし、うつしたらそれこそ大変だからってマネージャーさんが・・・決める前に私が言った。
 はぐれて・・・欲しかったから。
「え、愛ちゃん熱出てるんですか?」
 荷物を置きに一度だけみんなの所に行ったら、マネージャーさんから話を聞いてみんながザワついた。
「ねぇ、大丈夫?今日無理したら・・・」
「んー、大丈夫。・・・そんな大した事無いから」
 まこっちゃんがものすごく心配そうな顔で私に聞いてきたけど、・・・それに応えるのにもちょっとだけ疲れて。
 だからもう、できるだけ早く他の楽屋に移動した。

89リースィー:2003/09/04(木) 12:51
「時間になったら呼ぶから。それまで横になってて」
「はい・・・」
 マネージャーさんのいつになく小さい声の後、部屋の電気が消された。でも楽屋のドアにガラスが張られてるから、そこから光が洩れて中の様子はちょっとは分かる。
「・・・・・」
 私以外、だーれもいないこの空間。台本が目の前のテーブルに置いてあるのが見えるけど、完全にソファに埋もれてる私は手を伸ばすのも面倒くさく思えて。
「・・・・・」
 体が眠ろうとしてるのに、頭は何故か冴えてる。というか・・・。
「石川さん・・・」

 こんな時に限って。
 何で石川さんの事ばかり考えてるんだ、私は。

90リースィー:2003/09/04(木) 12:55

「石川さん・・・」
 訳も無く、無意識に石川さんを呼ぶ口を掛けてもらったブランケットで塞ぐ。それでも押し出すように抵抗する私の声。
 ・・・何で。どうしてこんなにまでおかしくなってるんだ。熱?今日の熱のせい?
 そうだ。・・・そうだよ。今日だけおかしいんだ。今日の朝のせい。今日の朝から・・・。
「っ・・・」
 そう、思いたいのに。
 何で私は今、こんなに・・・泣くのをこらえているんだろう。
「い、しっ・・・」
 ほら、また。
 また口から名前が出ようとする。また・・・石川さんを呼んでる。
 自分から離れようとしたのに。自分から別々になろうとした・・・のに・・・。



 ・・・高橋?

91リースィー:2003/09/04(木) 13:00

「っ!?」
 耳に飛び込んできた、声。ドアが開いて閉まるまでの音の間の出来事。
「・・・・・」
 不意に来た悪寒みたいな震え。でも本当に寒いんじゃなかった。
 ・・・耳に届いた声に、震えて。
「高橋、起きてるの?」
「・・・・・」
 その声は石川さん以外の誰のものでもない。それにもう一度気付かされた途端に手はブランケットを強く握っていた。
「・・・・・」
 薄目を開けると、視界を横切るように石川さんが映る。暗闇の中でも石川さんの着ている服が何色か分かる。
「高橋・・・」
 何度も呼びかけられる名前。
 そうして伸ばされた手は。
「・・・高橋」
「・・・・・」
 熱くなってどうしようもならない私の顔へ。
 それに合わせて目をもっと開いたら。
「石川、さん・・・」
 薄闇に浮かぶ服の色しか見えなかった視界に、とうとう石川さんの顔が映った。

92リースィー:2003/09/04(木) 13:02
「大丈夫?熱上がってない?」
「・・・・・」
 車の中で見た時よりも、もっと心配そうな顔。
「大丈夫です。・・・ほんとに」
「そうは見えないよ・・・」
 顔を撫でていた手は少しずつ額にいく。それに私の目は閉じて。



 胸の奥を紐みたいなもので縛られてる感じがする。誰かに縛られて、締め付けられてる、みたいで。
 ・・・私はどうして今、こんな気持ちになってるんだろう。

93リースィー:2003/09/04(木) 13:07

 目を閉じてみたけど石川さんが私の頭を撫でてくれてるのが分かった。・・・ずっと。何でこんな風にしてくれるのか分からなくないくらいに。
 私だって目を閉じたくて閉じたわけじゃない。
 すぐ側まで来た石川さんの顔がすごく綺麗過ぎて。・・・余計におかしくなりそうで。
「・・・ねぇ、高橋」
「・・・・・」
 小さい小さい声がまた、耳に届く。
「寝てるんなら聞いてなくても良いけど・・・」
「・・・・・」
「・・・高橋、ごめんね」
 今日ちょっと機嫌が悪かったんでしょ、正直。
「・・・・・」
「何でかは分からないけどさ。何か、私が悪いのかなって思っちゃって・・・」
「・・・・・」
 撫でる手は止まらない。
「だから・・・」
 けど、石川さんがその言葉を言ったら動きはゆっくりになって・・・とうとう、止まって。
 ・・・そして額に感じた手じゃない、感触。

94リースィー:2003/09/04(木) 13:09
「私のせいなら・・・ごめんね」
「・・・・・」
 額に感じる吐息と声の響き。
 ・・・それと一緒に感じる抱きしめられてるような感覚。
 感覚・・・幻覚?
 でも・・・。
「・・・私もここにいて良いって言われたからここにいるね。だから・・・」
「・・・・・」
 その言葉の後にまた動いた手。
 それはまた頬に戻って・・・。
「・・・もう泣かないで」
 自分でも止めるのを忘れていた涙を、掬った。

95リースィー:2003/09/04(木) 13:12

 簡単に解けていく程の絡まりじゃない。
 だから紐の端を引っ張れば引っ張るだけ締め付けられて余計に痛くなる。

 ・・・もうやめよう、こんな事。

 もう正直になろう。
 あさ美ちゃんに会ったら言うんだ。
 「石川さんは私のものだ」って。
 その後の未来がどんな風になっても・・・私は。
 ・・・私は、石川さんを渡さない。

96リースィー:2003/09/04(木) 13:18

 みんなの楽屋の戻る頃には熱はもう引いていた。気分の悪さも無くなって・・・どちらかというと昨日より今の方が断然体調が良い。
「良かったぁ、元気になって。このまま熱が下がらなかったりとかしたらどうしようって思っちゃったよ」
 二人で歩く廊下。この前みたいに手をつながれていて、また半歩前を石川さんが歩いてる。
「でも今日は無理しないでね」
「はい、分かってます。・・・でももう大丈夫ですよ?」
 応えつつ、やっぱりこの前みたく握ってみる。・・・したら今度の石川さんは。
「そうは言っても、さ」
「・・・?」
 弄ぶんじゃなくて、私よりも強く握って。
 それに合わせて石川さんの足が、止まった。
「・・・どうしたんですか?」
「んー・・・」
 少し上を向いて考え込むような顔してる石川さん。・・・手は、ずっと握られて。
「・・・よしっ、決めた」
「っ?は、はい?」
 急に振り向いた顔。その時の石川さんの顔はすごい笑顔で。
「今日は、ね〜・・・」

 今日は、できるだけ高橋の側にずっといる。

97リースィー:2003/09/04(木) 13:21

「・・・・・」
「それで私が、ずっと高橋を見張ってるの」
 倒れないようにとか、また熱が出ないようにとかね。
「あ・・・」
 思わず出た声。
 ・・・何故か知らないけど今の私はすごいすごい幸せ者なんじゃないだろうかと思ってしまって。
「高橋が嫌なら良いけど・・・」
「あ、いいえ、あの・・・お、お願いします・・・」
 そのせいで、何か変な返事してるし・・・。
 でも。
「・・・よし、決まりね」
 石川さんの張り切った顔。まだ握られる手。・・・私の肩を叩く、もう片方の手。
 その手に余計な力と熱が解されて、私も普通に笑い返せた。

98リースィー:2003/09/04(木) 13:24

 肩を撫でてくれた石川さんの手が楽屋のドアを開ける。
 そしてドアの向こうに広がったみんなの顔。
「高橋、復活したよーっ」
 石川さんはみんなに向けて私の事を報告してくれた。
 そして私は。
「・・・ただいまです」
 みんなに向けて、石川さんよりも小さい声で言った。
 石川さんの手を握ったまま。
 右斜めから来る強い視線を、感じながら。



 紐はもう、解けはじめてる。



 終。

99リースィー:2003/09/04(木) 13:26
終了なのです。
タイトルは「熱を解す手。」です。
風邪引き高橋さん。このスレの一番最初も確かかぜっぴきだったような・・・。
ま、シリーズではいないけど。
今度はまた紺野さんです。

では。

100名無し(0´〜`0):2003/09/08(月) 20:17
ずっと読んでます。
リースィさんのお話好きです!
あんまりレスしませんが応援しています。
頑張ってください

101名無し(0´〜`0):2003/09/22(月) 16:22
石高も石紺も好きな自分にはどうなるのかハラハラです(w
どっちも幸せになって欲しいし(><)
更に高紺が好きなのでそれでもハラハラ(w
とても文が好きです!
続きマータリ待っています、頑張ってください。
もちろん向こうも(w

102リースィー:2003/10/14(火) 09:38
お久しぶりです。
やっと時間が持てたので、続きを載せます。

103リースィー:2003/10/14(火) 09:45

 テレビ局に着く前に立ち寄った本屋。時間もあったからって事でその本屋さんをくまなく回っていたら。
「・・・?」
 ふと目に入って、手に取った本の表紙を飾っていた花。
「・・・これ・・・」
 それに、体が動かなくなった。



 ラジオが九月いっぱいで終わるというのは、マネージャーさんと里沙ちゃんから直接聞いた。・・・結局今の時点で石川さんと一緒に収録に出ることがないままで。
「急な話・・・じゃないよね」
「うん。・・・あ〜あ、私ももっとラジオ出たかったのになあ」
 応えてくれた里沙ちゃんはそのまんま独り言の世界に入ってしまった。・・・もっと聞きたいことあったのに。
 石川さんは里沙ちゃんにどんな話してた?とか。
 私の事何か言ってた?とか。
 ・・・でも。
「秋は大変だよね〜。グループ分かれて行動になっちゃうし」
「・・・・・」
 その言葉に一瞬凍らされて、質問するどころじゃなくなってしまった。

 そうだ。
 ・・・もう、こんな風に自分だけモヤモヤしてちゃだめだ。

104リースィー:2003/10/14(火) 09:49

「でもさ、テレビの収録とかではみんな一緒だし、そんなに寂しくないよね」
「・・・・・」
「あさ美ちゃん?」
「・・・?あ、うん・・・」
 ようやく解けた声で応えて、ちょっと笑う。里沙ちゃんは首を傾げたけど、安倍さんに呼ばれてすぐに向こうに行った。
「・・・・・」
 小さくため息をついて、テーブルで腕を組む。
 私以外のメンバーはみんな誰かと話をしてる。・・・一人、私と同じように石川さんとはぐれる事になった彼女を除いて。
「・・・・・」

 ・・・今の話、盗み聞きしてたんでしょう。
 だから今、一人で大人しくしてたんでしょう?

 終わるって聞いて、ちょっと嬉しがってるんでしょう。

105リースィー:2003/10/14(火) 09:55

「っ・・・」
 唇を噛み締めて、組んだ手をギリギリと力強く握り締める。この場の空気が、ものすごく黒く思えてきた。
「・・・あの、ちょっと外に出て良いですか?」
「ん?あ、良いけど。・・・一人で?」
 丁度一人でいた矢口さんに聞いて「はい、そうです」ってドアに向かいながら応えていた。
「じゃあ、行ってきます」
 その言葉はもう、ドアの外で。



 何をこんなにイライラしているんだろう。
 ・・・なんて、そんなこと考え込まなくても分かる。
 私に足りないから。
 本屋で見つけたその花の実が。
 私を苦しみから救ってくれる、たった一粒の実が。

106リースィー:2003/10/14(火) 10:02

 どこにでもいるような人はないのは分かってるんだけど、それでも探してしまうのはある意味「癖」というんだろうか。
「・・・・・」
 外の様子が見える窓を覗き込む。そして下を向いたら急に吸い込まれていきそうな錯覚を覚えた。
 ・・・こんな中で粒みたいな石川さんを探すなんて、絵の中の動かないウォーリーよりも数千倍難しい。
 いない場合もあるんだから。
「・・・・・」
 こんなところでこんな事考えてるなんて、一体誰が分かるんだろう。私の事を探してくれるメンバーもいないのに。
 いない、のに・・・。
「石川さん・・・」
 言葉は呟かれて、ため息と一緒に。
 ・・・ここにいても一緒だ。私同じ事してる。そう思った体はポーンと反動をつけて窓から離れた。
 そうしたら。
「あ、紺野」
「・・・?」
 窓から離れた反動で崩れたバランスを直してる隙に聞こえた声。
 確実に私を刺した声。
 ・・・その声の主は。
「石川さん・・・?」

107リースィー:2003/10/14(火) 10:09
 一瞬見えた光景に、失礼だけど「ウォーリーだ」って言いそうになった。
 ・・・自分からは会いに来ないはずなのに。
「どうしたの、こんなところで」
「あ・・・ちょっと、散歩です」
 隣には別のマネージャーさんがいた。・・・そっか、石川さんだけ別の仕事があったんだ。
「まだ時間あるんだ。じゃあ私もここにいようかな」
「・・・・・」
 何だろう、この展開。
 いきなり現れて、「私もここにいようかな」って。
 ウォーリーにも程がありませんか?
 ・・まあ。
「紺野もまだここにいる?」
「・・・あ、はい。・・・います」
 嬉しい事に変わりはないんだけど。
「やっぱり楽屋はゴチャゴチャしてるの?」
「ちょっと、してますね・・・はい」
 手を引かれて近くにあったベンチに座る。石川さんのもう片方の手はハタハタと顔に風を送って。
「雨ばっか降って蒸し暑いってヤだね〜。このまま秋になっちゃうんだよ?」
 何となく嫌だね、ってもう一度言う唇。・・・私は、そう言った唇を見つめる事しかできなかった。
 あー、石川さんからもこんな話題が出ちゃったか・・・って。

108リースィー:2003/10/14(火) 10:15
「そういえばさ」
「・・・はい?」
「・・・新垣から話聞いた?」
「・・・・・」
 急に静かになった声。マネージャーさんの声も聞こえないなあって思いながら石川さんの方ちょっと見てみたら、視線は窓の方をまっすぐ向いていた。
「ラジオの話、ですか?」
 その顔に吸い寄せられるみたいに声が出る。・・・したら石川さんは。
「・・・うん」
 小さい小さい声で、応えた。
「終わっちゃうって話・・・ですよね」
「うん」
 変わらない視線。だから私も石川さんと同じ場所を見てみた。
 さっきまでへばりつくように窓に立ってたのに下しか見てなかったから、空に向ける視線は少し新鮮な感じがする。夕方、というには暗めの空。
 ・・・浮き世。
 一瞬、その言葉が頭の中に浮かんだ。

109リースィー:2003/10/14(火) 10:23
「・・・ね、紺野」
「・・・はい?」
 視線を元に戻して声を返す。戻した先の石川さんは、今度はこっちを向いていた。
「紺野は、やっぱりラジオが終わっちゃうって聞いて寂しい?」
「?」
 何で、そんな質問をするんだろう。
「・・・寂しいに決まってるじゃないですか」
 そうに決まってる。
 初めてのラジオで、色んな物に挑戦できて。・・・それに。
 石川さんっていう人を、こんなにも近くで感じられるようになったから・・・“感じたい”って思うようになったから。
 ・・・それは絶対、口にはできないけど。
「・・・そっか」
 ため息をつくのに似たような呟き。・・・そこに、私よりも長く「そこ」にいた石川さんの寂しさが見える。
 聞かざるを、得なくて。
「石川さんは・・・」
「ん?」
「・・・やっぱり、辛いんですよね。寂しいだけじゃなくて」
「・・・ん、まあ、ね。ずーっとやってきただけあるし。でも・・・」
 それが時の流れなのかな。
「でもこの秋は・・・色々ありすぎて何が何だか分かんないや」
「・・・?」
 石川さんの話を全部聞こうとしていた私の手は、知らない間に強く握られていた。
 ・・・思わずそこに目を移したら。
「もう・・・」

 何で“別れ”なんてあるんだろうね。

110リースィー:2003/10/14(火) 10:30

「・・・・・」
 心臓が止まっちゃうんじゃないかと思うような光景が、そこにあった。
 私の手を強く握る石川さんの手。そこにぽつぽつと落ちてく・・・滴。
 石川さんは、泣いてた。
「・・・石川、さん?」
「ん・・・ごめん。ちょっと浸りすぎちゃった・・・」
 あはは、ごめんねー、ほんとに。私最近涙もろくてさあ。ちょっとの事ですぐ・・・。
「・・・石川さん」
「・・・・・」
 私の声に石川さんは言葉を止めた。
 握ってたのは石川さん。だけど私はそれに引っ張るっていう力を加えてこっちに石川さんを向けた。
 目頭押さえて、唇噛んで。
 ・・・そんなの、石川さんじゃないよ。
「石川さん・・・」
 そう思ったら。
「・・・紺野?」
「・・・・・」

 何してんだろ、私。
 私の腕、私の手。
 ・・・私は、一生懸命に石川さんを抱きしめようとしてた。

111リースィー:2003/10/14(火) 10:37

「・・・泣かないで下さい」
「・・・・・」
「もう、泣かないで下さい」
「・・・・・」
 何にも応えなくなった石川さんの顔はここからは見えない。丁度私の肩の方に突っ込んでいて、涙は止まっているのか止まっていないのか分からない。
 ・・・でも、良いや。
 今は、このままでいたいって思ってる私がいる。
「私、秋から石川さんと違うグループで行動するんですよね」
「・・・・・」
「だけど、私全然寂しいなんて思ってませんよ」
 上の空だったけど、里沙ちゃんに応えた言葉は嘘じゃない。タンポポで一緒なのはもちろん。
 ・・・でも、その前に。
「ずっと会えないわけじゃないです。会える機会もたくさんあります。だから・・・」
 だから、本当は寂しいなんて思っても口に出しません。寂しくないです。
「・・・寂しく、ないです」



 私はホントに、石川さんが好きなんだなって思った。
 どんなに好きな人でも今までの私ならこんな事できなかったのに。
 ・・・これが、ホントに“好きになる”って事なのかな。

112リースィー:2003/10/14(火) 10:45

「・・・?」
 肩からフッと起き上がる感触と一緒に、手を覆ってた感触も消えた。
 石川さんは、何も言わずにこっちを見て。
「うん・・・そうだね・・・」
 俯き加減の顔は、少し笑っていた。
「ごめんね?・・・色々な事続いて起こったからパニックしてたみたい」
「良いですよ。今は本当にゴチャゴチャしてますから」
 さっきまでの石川さんからいつもの石川さんに戻ったような感じがしたから、私もちょっと笑って返す。
 ・・・泣いてる石川さん見たの、何日振りだろう。そう思ったら「何か良いかも」って失礼な事を考えてしまった。
「・・・ありがとね。ちょっと立ち直ってきた」
「そうですか・・・良かったです」
 石川さんの言葉に私は素直にホッとしていた。私でも役に立ったんだー、って思ってたら、また急に圧迫感が。
 今度は手じゃなくて、体に。
「ホントに、ありがと」
「・・・・・」
 私の今の心拍数、どれくらいだろう。
 すっごいドクドクしてるみたいなんだけど、頭は冷静にそんな事考えてて。
 あー、このまま止まっててくれたら良いのにって、無謀なお願いをしそうになったけど。
「おーいっ、石川、紺野ーっ。時間っ」
「・・・あ」
 あっけなく、マネージャーさんに締め切られた。

113リースィー:2003/10/14(火) 10:50
「そうだ。もう行かなきゃね。一緒に行こ?」
「・・・はい」
 腕を解かれた体は少し火照ってる。やっぱり心拍数は嘘がつけないみたいだ。
 先を歩く石川さんに引かれる手。
 そこから視線で伝って石川さんの背中を見てみる。
 私が無意識に抱きしめた人は今、また“先輩”に戻ってしまったけど。
 ・・・それでも、少しは近付けたのかなって思ってみたりして。



 窓の外を見てみる。
 暗さが増した空にさっきまで感じていた空気は無い。
 ・・・もう少しなんだ。
 もう少しで、浮き世は終わる。



 私がその実を手に入れるんだ。
 浮き世を忘れさせてくれるたった一粒の実を。



 終。

114リースィー:2003/10/14(火) 10:53
終了なのです。
タイトルは「一粒の、滴。」
この文字の間の「点」はお気になさらず・・・。
次回は高橋さんです。
また早めに載せられると良いんですが・・・。

では。

115名無し(0´〜`0):2003/10/16(木) 16:40
新作ですね。紺野さんいい味出しててよかったです。
次回の高橋さん楽しみにしています。

116リースィー:2003/11/30(日) 09:28
ああ・・・。相当ご無沙汰・・・。

では、高橋さん視点でいきます。
時代設定は「さくらとおとめ」に分かれるところらへんで。

117リースィー:2003/11/30(日) 09:36

 ヘッドホンを取って一連の仕事を終えた事にため息をつく。
 ブースを出て、ソファに座って。
「どやった、疲れたか」
「あ、いいえ。大丈夫です」
 分厚いガラスの向こうでずっと私を見てたつんくさんの背中が目に映る。私の返事を聞いてもずっと背を向けたままで何か書いたり、キーボードに指を乗せてて。
「よし、高橋は終わりや」
「はい。お疲れ様でした」
「おー、お疲れ。・・・あ、そや」
「?」
 バッグを持ってスタジオから出ようと手をかけた瞬間、今までずっと背を向けてたつんくさんが私を呼び止めた。
 ちゃんと、私を見て。
「高橋、レコーディングする前に聞いたよな」
 “娘。は二つに分かれたままになるのか”って。
「あれ、“ずっとそうやない”って応えたの二回目や。高橋と同じ事聞いてきた奴おったから」
「・・・・・」
 ドアにかけていた手が、離れる。
 目はまだつんくさんを見ていた。
「確か、高橋と入れ違いに出てった奴」
「・・・・・」
 普通に、軽く言ったんだろうその言葉。
 でも私の心の中はすごく重くなった。

118リースィー:2003/11/30(日) 09:44
「そう、なんですか・・・」
 私と入れ違いにスタジオを出た人。
 ・・・あさ美ちゃんだった。
「ギリシャ神話でさ、睡蓮とか蓮の花の実は“ロートス”って言って、その実を食べると色んな苦しみから救われるんだって」
「・・・・・」
 レコーディングの前、歌詞の書かれた紙を呼んでいるフリをしていた私の隣で、久し振りに私の方へとあさ美ちゃんの声が届いた。
「・・・ロートス?」
 でも、それでも私に向けて話してるのか分からない目線だったから小さく返すだけにしたら。
「そうだよ」
「・・・・・」
 その返事に、私もやっとあさ美ちゃんの方を向いて。
「それ以外に詳しい事って言うのは分かんないけど、私からしてみれば・・・」
 きっとね、今の状態だと思うの。
「・・・・・」
 何となく分かる、あさ美ちゃんの言いたい事。
 それはつまり・・・。
「私達、それを取るために二人で遠回りしてる。でももしかしたら、これからもっと遠くなってくのかもしれない」
「・・・・・」
「・・・その前に私達」
 どうにかして結果出さないといけないかも。
 それにその実は。
「・・・一つしかないんだし」
「・・・・・」
 紙を置いて、ちゃんとあさ美ちゃんを見る。したらあさ美ちゃんも私を見た。
「あさ美ちゃん・・・」
 けど。
「紺野ー。今度レコーディングーっ」
「?・・・は、はいっ」
「・・・・・」
 私が言おうとした言葉は、矢口さんの声に潰された。

119リースィー:2003/11/30(日) 09:54

 休憩時間くらいはちゃんと休もうと思ってレッスン室から出る。レッスン室は私以外のみんながいて、もう一つのレッスン室でもまこっちゃん達がレッスンをしているはずだった。
「・・・・・」
 自販機でジュースを買う間にふと思う。
 ・・・まこっちゃんがいるって事は、石川さんもいるって事なんだよなあ。
「・・・って、いかんいかん・・・」
 急に降ってきた考えを頭を振りながら消して、買ったジュースを飲み干す。
 だめだなあ。レッスンも仕事なのに。他の事で頭がいっぱいになってどうする。
「・・・・・」
 けど、ジュースを飲んでも頭は冷えない。・・・それは分かってるんだけど。
「・・・まだレッスン中なのかな」
 自販機側のごみ箱に缶を捨てて少し歩いてみる。レッスン室は隣同士で、今の位置で言えば石川さん達がいるところを過ぎたところが私達のところだ。もしかしたら石川さんがいるのが見えるかもしれないって・・・。
 違う違う。まこっちゃんがいるかなって。
 ・・・そう思ってレッスン室をチラッて覗こうかと思ったら。
「っ!?」
 突然、後ろでドンッて音が鳴って、体が前のめりになった。
「わっ・・・ってて・・・」
 慌てて足先で自分の体重を支えてその反動で振り返る。
 そしたら。
「っい・・・石川さんっ?」

 ・・・イタズラっぽい顔が、私の目いっぱいに広がった。

120リースィー:2003/11/30(日) 10:00

「なっ、どっ・・・どうしたんですかっ」
 心臓にすごい圧力がかかったみたいに“どっくんどっくん”いってるのが分かる。
 あの、レッスン室でまだ音楽鳴ってるんですけど。
 あの、まだみんなの声、するんですけど・・・。
「びっくりした?」
 いつもの笑い方で私に聞いてくる石川さん。小さく「そんなびっくりするかなあ」って言葉も聞こえた。
「・・・もー・・・びっくりしたあ・・・」
 “どっくん”が“どくん”まで落ち着いてく。その証拠に大きなため息が出て。
「ごめんね?ホントは声かけるだけにしようかなって思ったんだけど、高橋の背中が誘っててさ」
「・・・だからってぇ・・・」
 というか、私の考えてる事が読めてるみたいな驚かし方して。
 ホントに読めてるんじゃないかって、一瞬だけど思ってしまった。

121リースィー:2003/11/30(日) 10:08
「さっき自販機のところで高橋見つけたんだけど、何か考え込んでるみたいだったからさ。ちょーっと後つけてたの」
「・・・え?あの・・・石川さん、いたんですか?」
「いたっていうか、隠れてたって言うか、ね」
「・・・・・」
 隠れてた・・・って。
 もしかしたら私の独り言・・・。
「何かブツブツ喋ってたよね。“レッスンが〜”ってその後ゴニョゴニョして」
「あ、あの・・・石川さん達何やってんのかなって思って気になって。ちょっとドアから見てみようかなって思っちゃって」
 うん・・・って独りでに頷いて俯く。手は組んだり、ちょっと宙に浮いたままバタバタさせたりして。
 ・・・さっきの言葉、ホントはちょっと押さえてた。「石川さん“達”」じゃなくて・・・。
 って、そういう事まで読まれてたらどうしよう。深く考えすぎかな。
「まあ。そういう事だったら良いけどね。何か悩み事でもあるのかなって。もしそうなら話聞こうと思ったんだけど・・・」
「?」
 さっきまで笑ってた顔とちょっと違う“フッ”っとした息。
 その後すぐに私の肩を過ぎていった空気。
「・・・・・」
 石川さんが、私に寄り添って肩に手を回してくれていた。

122リースィー:2003/11/30(日) 10:14
「悩み事があったら、いつでも言ってよ」
「あ・・・は、はい」
 少し上に視線が行く。そこに広がった石川さんの顔は、ホッとしたような感じの笑顔だった。
「そうだ、高橋。まだ時間ある?」
「え?えー・・・っと・・・」
 時計を見ると、まだ二十分ぐらい時間があった。
「時間はありますけど・・・」
 そう応えたら石川さんも時計を見て「よし」って。
「・・・ね」
 一緒に散歩しよ?
「・・・・・」
 タオルを肩にかけて、すっごい汗かいた後だと思うんですけど、あの・・・。
「石川さん・・・」
「ん?」
「あの・・・疲れてませんか?」
 休憩時間が同じくらいだったら、私達と同じくらいレッスンして、同じくらい疲れてるんだと思うんですけど・・・。
「なーに言ってんのよ。休憩なんだし、それに私・・・」
 今は高橋と二人で話がしたいし。
「高橋が疲れてるんなら、私一人で散歩するけど」
「あ・・・」
 言葉と同時に、石川さんの手が私から離れてく。

 ・・・嫌だ。

123リースィー:2003/11/30(日) 10:19
「あ、私も散歩しますっ」
 離れていきそうになった手を今度は私が捕まえる。
 一瞬びっくりした顔の石川さんが目に入ったけど、そんなのおかまいなしに「行きましょーよー」て。
「・・・うんっ、時間無いし。よっしゃ、行こうかあ」
「はいっ」
 二人並んで、手をつないで。
 ・・・結局ちょっとサボリっぽくなったけど、隣にいるのが石川さんだからすごく楽しくて。
 ・・・このまま、散歩じゃなくてずっと歩いていたいなあって、思った。
 休憩時間の間、それこそギリギリまで。
 ・・・なんて、ホントはずっと。

124リースィー:2003/11/30(日) 10:25

 レコーディングが終わってスタジオを出たら、あさ美ちゃんはまた一人でいた。そのまま帰りそうな姿で、でも壁に寄ってて。
 私が言いそびれた事を、待っているようで。
「・・・あさ美ちゃん」
「?」
 俯いていたあさ美ちゃんの顔が上がる。その目は、同じように帰る準備を終えて今にも通り過ぎようかとしている私が映ってる。
 でも足は、ちゃんとあさ美ちゃんも前で止まった。
「明日、みんなで収録があるよね」
「・・・うん」
「・・・その後、私言うつもりだから。・・・石川さんに」
 自分の、気持ちを。
「離れて仕事をする日が始まる前に、今のこのウヤムヤみたいのを取っておきたいから。・・・どんな結果になっても」
「・・・・・」
「・・・私だって欲しいもん。その実が」
 バッグを肩にかけ直してふっとため息をつく。言いたい事は言ったつもりで、そのまま歩き出した。
 ・・・そしたら。
「・・・だめだよ」
「?」
 背中に届いた、声。

125リースィー:2003/11/30(日) 10:31
「愛ちゃんだけずるい」
「・・・・・」
 振り向いた先にどんな表情が待っているのかは分かってたけど、今はそうしなきゃいけなかった。
 そうしてまた目に映ったあさ美ちゃんは・・・私のすぐ目の前にいた。
「・・・競争じゃないけど」
 “誰が先に”なんて、絶対嫌だ。
「明日」
「・・・・・」
「明日、私も石川さんに言うよ」
 私だって、欲しいから。
「・・・・・」
 目は、お互いを見てた。でも「分かった」とか「うん」とか、そんな返事はできない。
 その返事さえも「何か」を認める事になりそうな気がして。
 ・・・だから。
「じゃあ、明日」
「・・・明日、ね」



 そんな二人から出た言葉は・・・もうそれだけだった。



 終。

126リースィー:2003/11/30(日) 10:36
終了です。
タイトルは「一粒の、実」。
石高というよりも「高紺、水面下の戦い」という感じですなあ・・・(w

とりあえず、紺野さんと高橋さん視点での話はここで一旦休みです。
今度は・・・もうそろそろ石川さん視点で書かないと(汗

では。

127名無し(0´〜`0):2003/12/10(水) 03:27
気づかないうちに新作が…
見逃していました…ΣΣ(゚д゚lll)ズガーン!!
作者さんの作品好きです!がんばってください
次作もたのしみにしております。


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