したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

小説を書くのれすっ。

1リースィー:2002/12/15(日) 13:40
 初めてで初めましてな小説書きです。
 ではひとつ。↓


「Confession」


「あ、夕陽」
 思わず呟く。梨華ちゃんも気付いたみたいで同じように夕陽を見て呟いた。
「そういえば昨日は雨だったもんね。なんか久しぶりみたいな気分」
「うん」
 梨華ちゃんの言葉に頷きながら足を止める。
 仕事の帰り道。今日は梨華ちゃん家に泊まる日。早めに仕事が終わったからって事で、
いつも降りる駅のひとつ前で降りて道を散策したり雑貨屋に入ったり・・・
とにかく遊んだ後、今は夕食の材料を買ってようやく家に帰ろうとしてるところ。
 梨華ちゃん家に行くときは必ず通るこの道。少し高い位置にあるからか、
町を見下ろす形で遠くまで景色が見える。もう何回通ったのかも分からない道だけど、
いつもは夜だったり朝早くだったりでこの時間に通る事ってそうはない。
私の目に映るすべてにやわらかい色が続いている。
「・・・初めてかなぁ。梨華ちゃんと夕陽見るの」
「え?もう、ひとみちゃん何言ってるの?初めてじゃないよ」
 ほら、と梨華ちゃんが人差し指をピンッと上に伸ばして「思い出して」という
ジェスチャーをする。今更だけどやっぱり梨華ちゃんらしい「不自然さ」があるというか・・・。
「一緒に見たじゃない。ほら・・・あの・・・」
「?」
 ピンッと張っていた指が少しずつ力を無くしてく。その代わりにブンブンと前後に振り始めて。
「思い出して」という割には自分が思い出してないように見えるけど・・・。
「だから〜・・・ほら・・・」
「ん?何?」
「ほら、あの・・・」
 まだ指を振ってる。気のせいか顔が赤く見える。
「あの日よ、あの日」
「・・・何の日?」
 私は全然分からない。それに気付いたのか梨華ちゃんは溜息をつきながら
指を下ろした。
「あのね、前・・・」
 耳に手と口を寄せて、小声でボソッと言葉を投げかけられる。
「・・・あ」
 思い出す。それと同時に声が出た。
「分かったでしょ?」
「・・・うん」
 少し熱く感じる頬に手を当てて頷いた。

35リースィー:2003/05/01(木) 14:05
・・・と、今回はこんなお話で。
タイトルは「TUNING」でございます。
共鳴とか、そういう意味ですね。
何か二人を見てるとそんな感じです(どんな?)

では。

36名無しひょうたん島:2003/05/02(金) 02:04
わ〜・・なんかすごく良いですね・・。
読んでて胸がドキッってしてました。
次回作ぜひ書いて下さ〜い!!
よっすぃと梨華ちゃんの甘〜いのを・・。
待っってます。

37リースィー:2003/05/04(日) 09:27
今回は早めにもう一つ書けそうです。
というわけでひとつ。

38リースィー:2003/05/04(日) 09:32

 楽屋の外。メンバーがうろついてる中で私は人を待っていた。でも楽屋からはまだ出てないらしく、顔は見えない。
 ・・・最近、いつもそう。
「ごめ〜ん、よっすぃー」
 後ろから声が聞こえた。振り返らなくても分かるハイトーンボイス。

 最近強くなったよなあ、なんて。
 飯田さんも言ってた。
 うちもそう思う。
 だけど・・・。



「おフロ空いたよー」
 今日は梨華ちゃんの家に泊まる予定になってた。で、現に私は今梨華ちゃん家にいて、おフロから上がったばかり。
「うん」
 髪を拭きながらでた私に笑いながら応えて、梨華ちゃんはすれ違いで脱衣所に入っていった。
 ・・・気が付けば私も笑って。
 振り返るともうシャワーの音が鳴ってて、私はタオル片手に立ち尽くして。
「・・・何やってんだろ」
 っとに。

39リースィー:2003/05/04(日) 09:35

「最近柴ちゃんと仲が良くってさぁ。よっすぃーだとあまり話せない悩み事とか話したりしてるんだって」
「へぇ〜。ってか、それちょっとやばいんじゃないの?」
「まぁね〜。それでよっすぃーがシットしなきゃいいんだけどねぇ。でも分かんないでもないよ?一応石川が年上だし。そういうこと結構気にしてるみたいだから」

40リースィー:2003/05/04(日) 09:39

 年上、年下。
 たった三ヶ月ちょっとしか変わらないはずなのに、何でそんなことにこだわる必要があるんだろ。関係ない・・・はずなのになあ。
「えっきしょんっ!!」
 急にクシャミが出た。
 ソファでボーっとして髪乾かすの忘れてたんだ・・・。自分の事なのに思い出しながら鼻をすすった。
「ん〜・・・」
 睡魔が降りてくる。こうなるともう、何もかもがどうでもよくなってくる。
 シャワーの音はまだ響いてる。梨華ちゃんの声は・・・聞こえない。

 梨華ちゃん・・・。

41リースィー:2003/05/04(日) 09:50

「・・・みちゃん?ひとみちゃんっ」
「・・・・・」
 ぼぅっとしている頭を通して瞼が重い。でもとりあえず頑張ってみる。
「ひとみちゃん、大丈夫?」
 何が大丈夫なの?目の前の梨華ちゃんに聞こうとしたら・・・。
 分かった。
「っ・・・・!?」
 喉にこみ上げて来る“何か”。それに耐え切れなくなって空気が口から飛び出していった。体はソファから跳ね上がるように起き上がってその衝動を何とか抑えようとして。
「っうっ・・・ごほっ」
「ちょっ・・・ほんとに大丈夫?」
「・・・・・」
 丁度落ち着いた頃に今度は寒気が訪れた。ふぁっとした感触が背中に落ちる。ブランケットが私を包んでた。
「髪乾かさないで寝てたでしょう?何でそのまま寝ちゃったの?」
「・・・・・」
 体育座りしたまんま何も話さないでいる。そうでなきゃまた口から何かが出てきそうだった。
 気のせいかどこもかしこも熱く感じて。頭もますます重くなった。
「とりあえずも一回横になって」
 梨華ちゃんはそう言って私の肩を押した。私も素直にそれに従う。
 久し振りの気分悪い感触。ため息が熱い。
 ・・・最悪だなぁ、何もかもが。
 全部。

42リースィー:2003/05/04(日) 09:53

「石川がよっすぃーとごっちんの三人でいるとさ、石川の方が年上なのに他の二人が年上に見えるんだって。ほら、石川っていじられ役でしょ?やっぱそこらへんのイメージがあるんじゃないのかなあ」
 ・・・矢口さんのバカ。目の前に浮かんだ矢口さんにそう呟く。
 年上だから、年下だから何だよ。イメージなんか・・・。

43リースィー:2003/05/04(日) 09:59

「・・・三十八度」
「へい」
 体温計を見る梨華ちゃんを見て返事する。梨華ちゃんは小さくため息をついた。
「熱冷ましあったかなぁ・・・」
「だいじょぶだよ。・・・寝てれば治るから」
 目を閉じてブランケットを肩まで被る。表情を見られたらそんな風に見てもらえない。
「大丈夫じゃないじゃない。万が一って言葉もあるし。とりあえず飲もうよ」
 梨華ちゃんが腰を上げる。・・・それに私は条件反射って程の速さで、
「いいってっ!」
 手を伸ばしてた。
「ったぁ・・・」
「もっ・・・ひとみちゃんっ!?」
 勢い余ってお腹の方に梨華ちゃんが飛び込んできた。そこがちょっと悪くてまた少しだけ口から空気が出てきたけど、私は梨華ちゃんを離さなかった。
「・・・お願いだから、困らせないで」
 甘えたいの?
 ・・・違う。

44リースィー:2003/05/04(日) 10:01

 じゃあ普通に当り障りなく過ごせば良いのに。
 いつもみたいにこのまま手を離して背中を向けて眠るだけで良いのに。
 どうして今日はこんなに・・・。
 こんなに“離れたくない”なんて思ってんだろう。

45リースィー:2003/05/04(日) 10:14

「・・・分からない」
「?」
「分からない、よぉ・・・っ」
 手はぐっと梨華ちゃんを抱き寄せて。服越しのおフロの残り香を思いっきり吸い込んだら。・・・急に目の奥がとっても熱くなってきた。
 突然の不安。何かが私の側から離れていきそうで、それが自分の思うものでなくても大きい不安は消えてかなくて。

 頼りにすること、頼られること。
 甘えること、甘えられること。
 悩みを打ち明けること、打ち明けられること。
 ・・・私じゃ役不足なのかな。

「・・・明日も仕事だよ?」
「・・・分かってる」
 掠れた声で応えると、梨華ちゃんはゆっくり私の髪を撫で始めた。何時の間にか体勢は逆転してて、梨華ちゃんが私を抱え込む形になっていた。
 降ってくる唇。いつもとは違って私からするより限りなく優しい。

46リースィー:2003/05/04(日) 10:24

「・・・ひとみちゃん」
 それからそれくらい経ったんだろう。梨華ちゃんが急に私を呼んだ。
「ん?」
「あのね、私・・・ひとみちゃんの考えてることがよく分かんない時がある。それでどうしたら良いんだろうとか、どうすれば分かるんだろうとか、一人ですっごい悩んでた。だからね?柴ちゃんに相談してたんだ。グチ聞いてもらったりとか、色々」
 柴ちゃん、って聞いて、一瞬体がビクッて反応した。
「矢口さんに言われたんだあ。“最近どうなの”って。甘えたい気持ちも分かるけど、それだけじゃだめだよって言われちゃった」
 それで考えたんだ。ひとみちゃんも甘えたいときってあるのかなあ、って。
 そうだとしたら、私ももうちょっと大人になんなきゃいけないかなあ、なんて。
「ひとみちゃん自身、どうか分かんないけど」
「・・・・・」
 甘えたい、とき。
 あるよたくさん。でなきゃおかしくなる。

47リースィー:2003/05/04(日) 10:38

「私ずっとひとみちゃんに甘えてたんだと思う。この世界に入ってからずっと。・・・でも、私自身も強くならなきゃって思ったんだ」
 最近強くなったよなあ、石川の奴。
 保田さんや中澤さんも言ってた。
 そう思うとなんだか・・・。
「・・・ずっとそうだった梨華ちゃんが、梨華ちゃんじゃなく見えたんだ」
 だから私は不安になった。いつか、私なんかいなくても一人で歩いていけるようになっちゃうんじゃないかとか、私なんかに頼らないで、飯田さんとか保田さんとか、自分よりも上の人と付き合っていくんじゃないかとか。
 とにかく、たくさんたくさん、不安になった。
「ひとみちゃん」
 今度は目の前にきた梨華ちゃんの瞳。それは寸分の狂いもなく私の同じそれとぶつかっていた。
「私がどんなに変わっても、私は私だよ」
 ひとみちゃんを好きな、石川梨華だよ?
「・・・うん」
 頬にそっと手を当てて、ゆっくり目を閉じる。今度は私から唇を降らせた。
 不安がひとつ、溶けていく。それに連鎖して解けるように、涙が溢れた。

48リースィー:2003/05/04(日) 10:42

「明日、さ」
「ん?」
「仕事、できるだけ一緒に並んでようよ」
「テレビとか?」
「そう」
「ん、いいよ」
「それで、手つなごう」
「・・・うん」

 でも待ちきれなくて。
 翌日の朝、目が覚めるまでずっと、
 梨華ちゃんの手を握っていた。




 終。

49リースィー:2003/05/04(日) 10:46
終わりどす。
で、ですね、タイトルは「甘えて、甘えられて」です。
これはずいぶん前にノートに書いてたものなんですが、
この頃はなんとなく「“よわひ”な吉澤さん」を書いてみたいなと思ったのです。
(こんなん出来ましたけど、という感じですね)

では。

50名無しひょうたん島:2003/05/04(日) 21:28
(・∀・) イイ!
なんか、この小説好きです!!次作も期待!!
がんばってください!

51名無しひょうたん島:2003/05/05(月) 02:17
わ〜・・こんなに早く新作が読めてうれすぃ〜
文章の感じがすご〜く好きです。
確かに、最近ちょっとよっすぃの方が 甘えんぼう・
って感じですよね。次も楽しみに待ってます。
頑張って下さいね!

52リースィー:2003/05/07(水) 13:09
いつもありがとうございますっ。
今回も早めに書けそうなので書けるだけ書いてみます。
今回のはちとパラレルです。

53リースィー:2003/05/07(水) 13:12
・・・あ、後言い忘れてましたが、設定は九月〜十月あたりです(随分前に書いたものなので・・・)

54リースィー:2003/05/07(水) 13:14

 体はもう「走れない」って訴えていた。でも気持ちはすごく焦ってて、思わず手に力が入る。
 雨で肌はとても濡れていた。冷たくもなってた。だけど、今は止まることなんてできない。
 多分この先・・・私たちは止まれない。

55リースィー:2003/05/07(水) 13:20

 季節外れの海の家で私たちは雨宿りすることになった。雨も強くなって、風も吹いてきて、一滴の雨粒が酷く痛かった。
「明日まで降ってそうだね・・・」
「うん」
 ひとみちゃんはずっと外を眺めながら、まるで見張っているみたいで。私はそれを見ながらもひとみちゃんが渡してくれたタオルで髪や肌を拭いていた。だけど拭えるのは水分だけ。冷たさだけは、どうしても拭い去れない。
「梨華ちゃん、寒い?」
「ん、ちょっとだけ・・・」
 そうは言ってももう十月。こうやって動かないでいると、少しずつ寒さが体を包み込んでいくのが分かる。ひとみちゃんは何も言わずに肩にタオルをかけて、腕を回してくれた。
「大丈夫?」
「うん・・・ひとみちゃんこそ、肌冷たいよ」
「うちは大丈夫」
 でも私達二人の息はまだ荒かった。ひとみちゃんから感じる鼓動も早くて、自分で感じる自分の鼓動も、痛いほど早く感じた。
 もしかしたら。
 このまま何も知らないままだったら、私はきっと・・・。
 こんな冷たい、痛い思いなんて知らないままだったはず・・・なのに。

56リースィー:2003/05/07(水) 13:26

「・・・だから、もう会うのはやめてちょうだい」
 母から聞いた突然の秘密。私は大きな痺れを胸にとどめたまま、立ち尽くしていた。
 そんな事なんてありえるはず、ない。ごくわずかな人たちの話だと思っていた。
 その人が・・・私?
「・・・知ってたよ」
 急に降った声。振り返ったそこに、
 私と三ヶ月違いの「妹」がいた。

 嘘でしょう?・・・嘘だって言ってよ。
 そうじゃなきゃ・・・。

 だけど、ひとみちゃんは言った。
「本当のことだよ。だけどうちらはこうやって出会ったんだ」
 その事実さえ嘘にすることなんて、できない。
「だから、うちは梨華ちゃん連れて逃げます」
「・・・・・」
 私の何とも言えない顔。母の青ざめた表情。
 ・・・ひとみちゃんの、何もかもを見据えた笑み。
 気がつけば私は、差し伸べられた手に手を重ねていた。

57リースィー:2003/05/07(水) 13:31

 呼吸は落ち着きを取り戻した。でも体の冷たさは変わらない・・・雨も止みそうにない。
「・・・温かくなりたい」
「・・・・・」
 唇がそう言ったら、ひとみちゃんの腕の締め付けが強くなった。
「私、ずっとこのまま寒いままなのかな・・・」
「うちもこのままだよ」
 腕にあった手が私の手に重なる。この重なってる肌の成分が半分だけ同じなんだって、未だに思えない。
「梨華ちゃん」
「何?」
「・・・うちと同じなのは嫌?」
「・・・・・」
 嫌・・・というわけではない。多分、ひとみちゃんの考え方をそっくりそのまま受け入れることにしたから。
「半分一緒の恋人なんて、早々見つかんないよ?」
「・・・うん」
 少しずつ「何か」が溶けていくような感覚が出てきた。

 本当のことでも良い。「知らなかった」と嘘を突き通せば良い。

58リースィー:2003/05/07(水) 13:34

「夢を見よう、梨華ちゃん」
 手が頬に触れる。顔同士が寄って、吐息を唇の端に感じる。
 それはとても温かくて。
「・・・見ようよ、夢」
「・・・うん」
 せめて、夢の中だけでも温かい夢を、見よう。
「見れるかな」
「大丈夫。見れるよ」
 きっと見れる。ひとみちゃんは微笑んで私に口づけて・・・。
 私の体を、横にした。

 半分一緒だから。
 いつかどこかにバラバラにされても、私たちは一緒になれる。

59リースィー:2003/05/07(水) 13:38

「っ・・・お願、い」
 ひとみちゃんの背中に腕を回して言う。ひとみちゃんがとても近くで、私だけを見つめている。
「お願い・・・このまま、離さな、いで・・・」
「・・・うん」
 このまま朝までずっと。またこの雨の中を逃げ惑うまで。
「お願い・・・」
「うん。絶対離さない」
 肌と肌がもっと重なっていく。唇もずっとつながって、体も、心も。
 体の中まで、ひとみちゃんと一緒になって。

 先がどんな風になっても。
 明日さえ、どんな風になっているのか分からなくても。

60リースィー:2003/05/07(水) 13:41

 どこまで行けるかなんて分からない。不安はずっと心を覆ったまま。この長い長い雨の中、靴が脱げても裸足で走り続ける。
 いつかもう、逃げているなんてことも忘れて、無感覚になって。
 ・・・でも、突然太陽が私たちを照らし始めたら。
 その時が来てもこの手を離したりしないで。
 ずっと・・・ずっと。



終。

61リースィー:2003/05/07(水) 13:47
え〜、とりあえず終了です。
あと、吉澤さん視点の続きがあるのですが、それはまた後日で・・・。
ああ・・・すいません(泣)
あ、あとタイトルは、いちおうシリーズとして書いているもので、
「Feacross」の中の「温かい夢」というお話です。
本当は長〜く書きたかったのですが、設定にちょっと支障がありまして、短編でシリーズを作ろうということになりました。
今度はいつこのシリーズが出てくるか分かりませんが、もし出てきたら「出てきたねぇ〜」と
一言呟いてやってください。

では。

62名無しひょうたん島:2003/05/08(木) 01:11
新作 お疲れ様です。私、作者様の作品本当に
大好きです。そんなに長編ではないのに、どんどん
引き込まれていきます。切なくて、大人っぽくて・・
更新が楽しみなんですぅ。・・あっ、でもゆっくり待って
ますね。

63リースィー:2003/05/10(土) 11:08
名無しひょうたん島さん、いつもありがとうございます。
読んでくれるだけでもうれしいのに感想までいただいて・・・。
では、「吉澤さん視点」のお話の続きを。

64リースィー:2003/05/10(土) 11:11

 夕方はもう風が冷たい。すれ違う人達はみんな無言で背を曲げて歩いていた。私はその中で耳に携帯を当てて、ゆっくりとした足取りで横断歩道を渡っている。
「仕事?うん、終わった終わった。今帰るとこだよ。何か食べたい?じゃ、コンビニ寄ってから帰るね」
 携帯を切ってポケットに入れる。それからコートのボタンを上まで留めて、周りの人達に溶け込むように歩きを早めた。
 早く、梨華ちゃんの顔が見たいなと思いながら。

65リースィー:2003/05/10(土) 11:16

 私達の幼い頃なんて知らない。だけど私は一つだけある秘密を知ってしまっていた。端から見れば仲良しで、そして・・・うん、恋人なんだろう。でも本当はもう一つ、二人の間には関係がある。
 ・・・たった三ヶ月違いの、半分一緒の姉妹。
「驚いたか」
 お父さんの言葉。
「驚いてないよ」
 それを聞いてすぐの私の返事。
 だって、好きな人と体の中から一緒なんだって思えば良いんじゃない?・・・そう言ったら、お父さんは呆れたように笑った。
「お前はやっぱり父さんに似てるな」
 だから、梨華ちゃんと逃げるときも何も言わずに家を出たんだ。
 去年の秋の事。それからまた冬に向かってる。私はまた一つ、梨華ちゃんとの季節を増やすことができた。

66リースィー:2003/05/10(土) 11:23

「やっぱり都心は紫外線が多いし、晴れる日が少ないね」
 夕食のおでんに手を付けた時、隣にいた梨華ちゃんが言った。私はとりあえず「そう?」とだけ応えて煮卵を割った。
「洋服干してたら風が冷たいのに、時々出てくる太陽が痛くて」
「・・・季節の変わり目だしね」
 そんな時期に風邪を引きやすい梨華ちゃんは、半袖シャツの私と正反対に長袖と弱い喉のためのマスクという完全防備。でも服は私のを着てるからまるでパジャマ。
「梨華ちゃん、寒いの?」
「う、ん・・・ちょっとだけ」
 ためらうように応える梨華ちゃんの手は箸を持ってなくて、温かい紅茶の入ったカップに両手を取られてる。
「・・・なんかね」
「うん」
「・・・“寒い”とか“冷たい”とか言ったりする度に、ずっと前の事思い出すの」
「・・・・・」
 その言葉に私も箸を止めて、梨華ちゃんの覗き込んでる紅茶の水面に目をやった。
 湯気は出てるのに一瞬だけ、その紅茶は冷たいのかもしれないと思った。

67リースィー:2003/05/10(土) 11:26

 “お願い、離さないで”
 あの日梨華ちゃんが言ったことは全部覚えてる。何がどんな風だったのか細かい事まで、全部。

 ・・・絶対、離さない。

 腕の中で泣きながら同じ言葉を呟く梨華ちゃんを見て、私は誓うようにそう言った。この先、今のこの状態を全て投げ捨てるつもりはないし、絶対・・・体の中まで一緒のこの恋人を捨てたりできない。もちろん、何を持ってこられても渡したりしない。だから誓えた。
 包み込んで見守って愛して・・・そうやって日々を共に過ごした梨華ちゃんに。

68リースィー:2003/05/10(土) 11:31

「・・・梨華ちゃん」
 指で頬を撫でて、梨華ちゃんがこっちを向いた瞬間にタイミング良く唇を重ねた。
「っ・・・ひとみちゃん?」
 梨華ちゃんの驚いた顔がすぐ側にある。その目に映ってる私はきっと、笑ってる。いつもみたいに意地悪いカンジで。
 そのまま腕の中に引き込んで、開いた足の間に梨華ちゃんを座らせる。握っていたカップは自然に手から離れていった。
「こうやって食べよう」
 また箸を持って大根を一口くらいに切り崩す。そのうちのちっちゃいのを取って梨華ちゃんの口に入れてあげた。
 頭を横に倒して前にある梨華ちゃんの表情を覗き込む。
「あふいよ・・・
 ちょっと苦笑いしてる。それを見て私は少しだけホッとした。

69リースィー:2003/05/10(土) 11:36

「ねぇ、梨華ちゃん」
 少し落ち着いたところで、ゆっくりと話し始める。
「寒かったら、いつでもうちの中に入ってきてよ」
「・・・・・」
 静かな梨華ちゃんをきつくないように抱きしめる。
「・・・ここは、いつでも温かいよ」
「・・・うん」
 回していた腕に梨華ちゃんの手が乗せられる。その手に指を絡ませて、ゆっくり向き合う。
「温かい夢も、見れる?」
「・・・もう見てんじゃん」
 少し笑って髪を撫で、またキスをする。それから頬擦りして耳元に辿り着いた。

 この温かさを、この優しさを。
 ずっとずっと思い出に刻み付けていきたい。
 梨華ちゃんと一緒に。

70リースィー:2003/05/10(土) 11:41

 毛布に包まって窓の外を眺める。梨華ちゃんは寝息を立てながら私にもたれていた。ちゃんとしっかり顔にマスクをして。
 ・・・冬はずっとこの寝顔なんだよなぁ。そう思うと少し残念な気もするけど、この顔を見ることができるからまた一緒にいれるようになったんだって、反対に嬉しい気持ちにもなった。
 起こさないように少しだけマスクをずらす。口までは下げられないから鼻の頭までにして指で力なく触れた。
 ずっとずっと、こんな風に梨華ちゃんの顔を見ていたい。笑った顔も泣いた顔も、今私の指が触れてくすぐったそうにしてる顔も。これからも、見ていきたい。
 だから・・・。
 この先もずっと、二人で過ごしていこう。



 終。

71リースィー:2003/05/10(土) 11:48
吉澤さん視点、終わりです。
タイトルは「Feacross」の中の「この先の季節も」というお話です。
いや〜、最初は「この二人の“姉妹”って設定の話ってなかなか無いなぁ」と思い、
「何なら思い切って書いてみよう」という簡単な成り行きで書いてしまったわけですが・・・。
この二人のこのシリーズ、自分で書いといてなんですが、大好きなんです(笑)
皆様に受け入れてもらえる内容になっているかどうか心配なんですが、その“大好き”加減を皆様にお教えしたくてですね、今回は載せてみようと思ったのです。
ほかにも石吉以外にたくさんのシリーズがあるんですよ。だけどHPを持ってないもので・・・(泣)


では。

72ぶらぅ:2003/05/10(土) 17:01
初めてレスします。
リースィーさんの作品好きです(w
んでもって、某HPにカキコしてませんでした?w
多分推しCP一緒かと…(w
その作品もどこかでお待ちしています。そして石吉も!
頑張ってください。

73名無し( `.∀´):2003/05/11(日) 01:13
更新お疲れ様です!新作、嬉しいですぅ・・
あっ。レスありがとうございます。勝手に感想
書いちゃってるのに・・でも、本当に好きなん
です〜。作者様の作品。一冊の本にしてほしい
くらいです。ではでは、ゆ〜っくり待ってます。

74リースィー:2003/05/17(土) 09:25
ぶらぅさんっ!?もしかして・・・。
と思ったらやっぱりー!!
はい、そうです。私ですっ。うあ〜、なんかすっごい嬉しいです。
まさか私の小説を読んで下さってたなんて・・・。
ありがとうございます。これからも頑張りますので見守っていてください。

名無し( `.∀´)さん。
いつもありがとうございます。相変わらず更新は遅いのですが・・・。
でも本当に読んでくれるだけでも嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。

ではひとつ。

75リースィー:2003/05/17(土) 09:28

 ソファに座って窓の外を眺めてた。
 だーれもいない部屋で、なーんも聞こえない部屋で、外では通り雨の音が響いてるけど、私の中には入っていかないから聞こえない。
 どこかに出掛けてしまおうかと思った私の気持ちは、すぐ消えるくせに大きな敗北感をつれてきた雨に押し潰されてしまった。
「・・・・・」
 テーブルの上に置いたままの携帯の、何とも言えない冷えた顔。
 まるで今の私を表してるみたいで。
「・・・寂しい、よぉ・・・」
 また誰にも聞こえないんだろう、か細い声で私は鳴いていた。
 そうして過ぎていくんだと思った静かな午後。

76リースィー:2003/05/17(土) 09:32

「梨華ちゃん」



「・・・・・」
 ドアの向こうには、ひとみちゃんがいた。
「・・・え?あ、何で?」
 確かに流れてるのが分かった雫をほっぺたから取り去りつつも、私はまだ驚いた顔でドアの部を握り締めて、ひとみちゃんの顔を見上げてた。
「何でここにいるの?」
 気が付けばありきたりな、お客に失礼な質問。だけどひとみちゃんは応えてくれた。
「ん?何だろーなあ・・・」
 傷ついたお姫様を助けにきたって感じ?
「・・・ばか」
 プッと笑ってそう言った数秒後。
「・・・ばか・・・」
 私の声は掠れて、取り去った雫がまた溢れ出していた。

77リースィー:2003/05/17(土) 09:38

 こんなずるい言い方して、私の奥深くに入り込んで。
 ・・・だけどホントは私の方が、
 ずーっとずーっと、ずるくて。


「・・・矢口さんから話聞いたんだ」
 ドアを閉めて個室状態になった玄関で、いつもみたいに少し小さい笑みでひとみちゃんは言う。
「最近一緒に話しててもそうだとは思ってた。けど・・・うん・・・」
 “別れちゃった”なんて、知らなかったからさ。
「気が付いたらここに来てて、梨華ちゃんを元気にしてあげなきゃって思った」
「・・・うん」
 少し湿っぽく感じるひとみちゃんの服の裾を握ってみる。それはヒンヤリしていたけど、さっきまで感じていた冷たさよりはずっと温かい。
 温かいから・・・余計に泣きたくなる。

78リースィー:2003/05/17(土) 09:42
「梨華ちゃん」
「・・・う、ん・・・」
 涙で声が詰まっちゃって。そんな私の手の甲を、私よりも大きい手が包んでる。
「もう泣かないで?せっかく助けに来たのにさ」
「・・・・・」
「うちに頼ってよ」
 肩から頭の後ろを撫でられて、いつのまにかうつむいていた顔は少し上を向く。
「・・・ありがと」
 でもその眩しさに耐えられなくて、私は崩れるようにひとみちゃんに飛び込んだ。



 別に私たちは最初からズレてたわけじゃない。
 最初の一歩が、とかでもない。
 ・・・今の私は何をそんなに痛い程、
 ひとみちゃんの優しさに打ち震えているんだろう。

79リースィー:2003/05/17(土) 09:49

 ベランダにイスを二つ置いて、ようやく陽射しの飛び始めた空を眺める。隣にいるひとみちゃんは、
「あちっ」
 なんて言いながら、私が差し出した紅茶を飲んでる。

 何でも良いよ。二人で“だべる”のっ。

 結局何を喋って良いのか分からずに、私はずっと紅茶の水面を見てる。ベランダに落ちてる水たまりにも似て、引き込まれそうに沈黙を呼び寄せてる。
「何か久しぶりに梨華ちゃんがネガティブなとこ見た」
「・・・そう?」
 私の反応にひとみちゃんは「うん、そういうところ」。
「何かねぇ、今日みたいなオフの日にはぜーったい外に出ないで、部屋にこもって“何で?”ってずっと落ち込んでるイメージ」
「・・・そんなに落ち込んでないよ」
 半分当たってるけど。

80リースィー:2003/05/17(土) 09:54
 ひとみちゃんはいつもみたいに「エヘヘ」って笑った後、「でも」と付け加えた。
「でもね・・・そんな梨華ちゃんが残っててくれてて良かったかも」
「・・・何でよ」
 紅茶を一口飲んだついでに口を尖らせて聞いてみる。
「うん。・・・何か、うちの役目がなくなっちゃうのかなぁって。だって、ネガティブモードの梨華ちゃんを立ち直らせてたのって、うちだよ?」
「・・・まぁ、確かに」
「うちはさー・・・」
 ずーっと、梨華ちゃんを待ってたんだよ。
 応援するつもりでさ、「影でも良いや、支えてあげよう」って。
「・・・うん。ホントは気付いてたつもり」
 だから私はずるい。
 ひとみちゃんの気持ちも知ってた。私がこんなになっちゃった事に直接関係は無いけど。
 だから逆に、ひとみちゃんと一緒にいる時間が長いだけ、辛かった。

81リースィー:2003/05/17(土) 09:57
「・・・うちもそんな事ぐらい知ってたよ」
 ぬるくなった紅茶をぐいっといっき飲みしてひとみちゃんは応えた。そして一枚上の上着を脱いで私の肩にかけてくれた。そのあまりの温かさにどれだけ今の私が冷えていたのか知らされた気がした。
「知ってたけど、それでも一緒にいたかった」
 ゆっくりと優しく肩を撫でる手に引き寄せられて。
 また飛び込んだひとみちゃんの腕の中は、雨の匂いと紅茶の香りがした。
 そしてそこに降りそそがれる、温かい光。
 ひとみちゃんの服を通り抜けられない、光。

82リースィー:2003/05/17(土) 10:06

 たったそれだけだけど、
 今のそれだけでも唯一の意味を知るには充分だった。
 ・・・応えとして口に出すにはまだ柔らかすぎるけど。


「自転車で来たの?」
 外に出ようよってひとみちゃんに誘われて道に出たら、そこには荷台付きの自転車が。ひとみちゃんは私の反応を見て笑いながら「だってさぁ」と応える。
「うちの家のところは雨降ってなかったし、一番乗りで梨華ちゃんとこに着きたかったから」
 それよりほら、と後ろの荷台をポンポンと叩く手。
「出発しますよぉ〜」
「はいはい」
 少し笑いながらも、ペダルに足を乗せて準備万端のひとみちゃんの腰に腕を回して横乗りした。
 走り出した自転車。バランスを保って器用に運転してるひとみちゃんの肩を風が滑って私の髪を揺らしてる。

83リースィー:2003/05/17(土) 10:11
「ねぇ、どこに行くの?」
「んー、そうだねぇ」
 スピードをそのままに考え込むような声。その間に自転車は土手に出た。
「あ、そうだ」
「ん?」
「虹」
「虹?」
 私の声に「そう」と嬉しそうな声。思わず空を見上げると・・・。
「・・・おーっ」
 そこにはくっきりとした虹がかかっていた。
「このまんま突っ走ってあっちまで行こうよ」
「お、良いねぇ」
「よっし、スピード上げるぞーっ」
 宣言通りひとみちゃんは早こぎを始めた。急に強くなった風を心地よく感じながら流れていく景色を眺める。
 遠くまで続いてる道をまたぐようにかかる虹。決して届く距離じゃないって事ぐらい、私もひとみちゃんも分かり切ってる。

84リースィー:2003/05/17(土) 10:13

 ・・・でも行きたい。
 今は何もかもほったらかして、
 ひとみちゃんと二人で。



「梨華ちゃん、好きだよ」
 自転車のチェーンの音と同じくらいの声でひとみちゃんが言った。
 何の疑いも無い、素直な声。
「・・・うん。私も好き」
 背中にくっついてた顔を肩の方に寄せて、私も小さく呟くように言った。
 すぐに分かったひとみちゃんの鼓動。

85リースィー:2003/05/17(土) 10:16

 消えちゃう前に行こう。
 ・・・分かってる。でもすぐ着くよ。



 水たまりが自転車のタイヤで小さく水しぶきを上げる。
 でもそれにかまわずスピードは増して、涼しい風は通り過ぎる。
 ひとみちゃんの匂いを感じる。
 ・・・もう、大丈夫。



 目の前には、さっきよりも大きく大きく映る虹があった。



 終。

86リースィー:2003/05/17(土) 10:26
今回は終了です。
えー、前に書いた「“よわひ”な吉澤さん」に続き、「“ひさネガ”(久しぶりにネガティブ)な石川さん」を書いてみました。
タイトルは「bicycle drive」です。直訳すれば「自転車でれっつごー(違」
一応ここは「石吉だらけ」にしようかと思ったのですが、やっぱり他のcpも書いてみたいので、(あ、“ネッツ”は別で)
次はそうしてみようかな、と思います。
(紺高あたりですとかね・・・)←好きなんですよぉ〜。
でも、石吉ベースで頑張るので「石吉じゃ無いじゃ〜ん」とけなされても良いので書かせてください(切実)

では。

87リースィー:2003/05/17(土) 14:18
え〜・・・同じ日なんですけど。
なんかあと一作書けそうなので書けるだけ書いておこうと思います。
で、やっぱり紺高を書きたいと思います。

88リースィー:2003/05/17(土) 14:20
また設定書き忘れた・・・。
えっと、去年の冬あたりです。

89リースィー:2003/05/17(土) 14:26

 今日は寒いなぁ・・・。そう思って歩いてたら、空から白い雪が。
「・・・あー・・・」
 一人。
 そこで立ち止まって、しばらく空を見つめていた。



「お帰り〜。遅かったね」
 玄関のドアを開けた瞬間、私の耳に心地良い声が響いた。年中変わらずにずっとほんわかしてる笑顔。彼女の笑顔が見たくて、最近はずっと「彼女より遅く帰ろう」ってわざと遠回りしたりしてる。
「うん。ちょっと雪が見たかったから」
「雪?・・・あ、ホントだ。肩白くなってる」
 私の肩に彼女の手が伸びる。それにはらわれる、私の連れてきた雪。
「・・・・・」
 それを無言で見つめる、私。
 ・・・去年の今頃の事が、不意に私の中によみがえった。

90リースィー:2003/05/17(土) 14:34

 その日もこんな風に雪が降っていた。けど一人で道を歩いてたわけじゃなくて、その日はあさ美ちゃんも隣で歩いてた。
「雪、だいぶ降ってきたねー・・・」
 私は空を見つめながら歩いて。あさ美ちゃんは「危ないよ」って言いながら私の手を握ってポケットに入れてくれてた。
「東京も雪って降るんだね。あんま見ないからちょっと意外だな」
「うん・・・私もそう思う」
 夕方だったからもう空も暗くて。そこから白い雪が降ってくるから余計に目立って見えた。
「でもあさ美ちゃんのとこってずっと雪降ってるんだよねぇ。たっくさん」
「うん。でも、朝起きた時とかに見るとね、良い気分になるかな」
「・・・そっか」
 そう応えるだけで、ポケットの中のあさ美ちゃんの手を握る。
 ・・・小さい頃から一緒にいたわけじゃないから、その分だけあさ美ちゃんが一人だけで感じてきた瞬間の一つ一つがうらやましい。・・・というより、私もあさ美ちゃんと一緒にその瞬間を感じていたかった。
 そんな気持ちが常に自分を付きまとうようになったのは、つい最近のことじゃない。

91リースィー:2003/05/17(土) 14:40
「っあ〜・・・寒かったね」
 家の前まで来て、私は自分から手を離してポケットから脱出した。
「風がちょっと強かったね。・・・あ」
 急にあさ美ちゃんが声を上げた。何だろうと思いつつ体を向けると、あさ美ちゃんの手が私に伸びた。
 その次すぐに鳴った“パサリ”っていう音。
「あ・・・」
 あさ美ちゃんは、私の肩の雪をはらってくれていた。
「これでよし。雪って知らない間にくっ付いてくからね」
「・・・・・」
「・・・愛ちゃん?」
「・・・・・」
 何か分かんないけど、体が固まってしまった。
 体の中を何かが駆け抜けていくような、そんな感じにもなった。
「ねえ、愛ちゃんてば・・・」
 あさ美ちゃんの手がもう一度私の方に伸びる。
「・・・・・」
 その瞬間。
 私の口は言った。

「あさ美ちゃん、結婚してっ」

92リースィー:2003/05/17(土) 14:48

「え・・・ええっ!?」
 目の前で驚いた顔を見せるあさ美ちゃん。彼女が伸ばした手は私の両手に包まれていた。
「どっなっ・・・どう、したの、愛ちゃん。びっくりしたあ・・・」
 ものすごくキョロキョロしてるあさ美ちゃん。その視線は外に向かってた。
 とりあえず中に入ろう、って言われて、あさ美ちゃんに引っ張られて家の中に入れてもらった。上着を脱いでハンガーにかけて、リビングのテーブルで面と向かって座る。その間あさ美ちゃんはずっと顔をそらせて、片手で頬をパチパチ叩いてた。
「あの、愛ちゃん・・・?」
「ん?」
 まだ“びっくり”を引きずってるのかなあって思いつつあさ美ちゃんの呼びかけに応えてみる。
「あの、さっきのさ・・・」
「うん」
「その・・・冗談、とか、じゃないよね」
 上目遣いで私の事見てる。
「何でそんな大事な事。冗談でも言わんよ〜」
 少し力んで言ってみたら、自分でも分かるほどに訛りが。
「私、あさ美ちゃんが好きだよ?」
「え・・・あ、うん・・・」
 私が言った言葉に、あさ美ちゃんはいちいち顔を赤くさせて。何か、「まいったなぁ」とも聞こえた。

93リースィー:2003/05/17(土) 14:55
「・・・あの、さ、愛ちゃん」
「何?」
「その・・・さっきの愛ちゃんの言葉、ね?あれって、ホントにそのまんまで受け取っちゃって良いの?」
「うん。そのまんまの気持ちだよ?」
 何かもう、モジモジしてるあさ美ちゃんがもどかしい。そう思ったらテーブルにあったあさ美ちゃんの手を握っていた。
「愛ちゃん・・・」
 少しだけビクッとしたあさ美ちゃんの肩。
「あの・・・女の子同士だよ?私達」
「関係ないよ。そんな事」
 言われると思った事。・・・私は手に力を込めた。
「だってね・・・」

 好きになったもんは、しょーがないでしょ。

94リースィー:2003/05/17(土) 15:01

「・・・・・」
 口がポカンとして。あさ美ちゃんは黙ったまま私を見つめて。
 ・・・だけど、その次は。
「・・・愛ちゃんっ」
「?」
 “ぽふっ”って、何かが私を包み込んだ。・・・でも、見なくても分かる。
「・・・ぅお〜・・・」
 いきなり来たもんだから、思わず変な声を上げてしまった。座ってたバランスもちょっと崩れて、今は飛んできたあさ美ちゃんを支えるためにだるまさんみたいにユラユラしてる。
「・・・・・」
 だけど、予想以上の出来事に私の頭の中はすっごいフワフワして。心もフワフワして。
「もー・・・私も愛ちゃん好き」
「あははっ・・・私もあさ美ちゃん好きだよ〜」
 それからちょっとの間、私達はユラユラしたまんまくっついてた。

95リースィー:2003/05/17(土) 15:09

 ホットティーを飲みながら、ソファであさ美ちゃんにもたれる。あさ美ちゃんは私の買ってきたお菓子を食べてた。
「そうだねぇ。・・・ホントにあの時はびっくりしたな〜」
 お菓子を食べる合間にあさ美ちゃんが呟く。私もホットティーを飲む合間に「そう?」って返してみた。
「愛ちゃん、いきなり言うんだもん。びっくりしない方がおかしいって」
「あー・・・でもねぇ、今も一緒にいられるんだから良いじゃない」
 ちょっと笑って応えて、自分の薬指を明かりにかざしてみた。
 ・・・そこには、ちょこっとだけ光った指輪が。
「“結婚“したんだからさあ」
 そのおかげかそうではないのか。
 私達はこれからも一緒に仕事をすることが許されて。・・・まあこの指輪は家の中でしかはめられないけど。だけど一緒にいられるだけで嬉しい、というか。
 とにかく、今の私は幸せで。
「・・・ね」
「ん?」
 あさ美ちゃんがこっちを向く。お菓子は食べてない。
 だから普通に私があさ美ちゃんの唇をもらった。
「っ!?・・・もう〜っ。愛ちゃんなんでいつもそんな風にするの〜っ!」
「あははは・・・」
 “もうっ”ってあさ美ちゃんの手が私のほっぺたを軽くつねる。それは左手で、薬指にはちゃあんと私のあげた指輪が光ってた。

96リースィー:2003/05/17(土) 15:16

「ね、明日までに雪積もるかな」
「ん〜、どうだろ。どうして?」
「朝になったらね、一緒にカーテン開けて外の白い景色見て“うぉ〜っ”って言いたい」
「な〜んか、愛ちゃんらしいなあ・・・」
「一緒に見ようよ」
「朝の景色?・・・うん」
 あさ美ちゃんは笑って応えた。
「じゃあ、今日は一緒に寝ようね」
「うん」
 私も、笑って応えた。
 お互いに左手を握り合って。



終。

97リースィー:2003/05/17(土) 15:22
あ〜・・・書き終えた〜・・・。
とりあえず急いでますので、タイトルとちょこちょこ。
タイトルはですね。一応これも「同棲シリーズ」として、「HB of DB」というお話の中の「ハジマリハユキノヒ」というものです。
「結婚」した二人の話ですね。これからメンバーもちょくちょく出てきます。(これからの話では、という意味で)
これを読んで「紺高はこんなん違う〜〜!!」と思った方。スイマセン。でも私にとってはこんな感じなんです。

では。

98ぶらぅ:2003/05/17(土) 20:16
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
某所で言っていた作品ですね?(w
自分は好きなので楽しみです。
もちろん石吉も好きなんでそちらも楽しみにしてます^^
結婚ラブラブ(・∀・)イイ!!っすね〜♪
ネガ石川もいいですよね〜、結構好きだったり…(w

それでは次回もマータリ待ってます♪

99リースィー:2003/05/22(木) 13:30
ぶらぅさん、ありがとうございます。
というわけで、今回は石吉の姉妹モノの続きを書きたいと思います。

100リースィー:2003/05/22(木) 13:34

 久し振りの晴れ間。大きく開けた窓からはまだ雨の匂いが入り込んでくるけど、風は少し冷たくて心地良かった。
「・・・・・」
 ずーっと空を眺めてみる。
 そういえばここでまだ絵を描いてないな。



 ここに来る前、私は絵の学校に通っていた。
 小さい頃から絵を描くのが好きで、絵を描く手法も一通りは学んでた。
 ・・・学校自体はあまり好きじゃなかったけど、あの頃の私は絵を描くことしか知らなかったから。

101リースィー:2003/05/22(木) 13:40

 この前の誕生日の時、ひとみちゃんが私のために買ってきてくれた画材セット。それは物置の横に置かれたまま開かれるのを待っていた。“描きたいときじゃないと描けない”っていうことをひとみちゃんも知っててくれてるみたいだけど、昨日か一昨日くらいに“そろそろ開けたら?”って苦笑いされた。

 そうだね。・・・そろそろこの場所での“思い出”も作んないと。

 窓の外には空しか見えない。・・・まぁ景色は後回しですぐ住める所を探してたわけだから仕方ないんだけど。・・・でもせめて川とかはあってほしかったなあ。
 空と、後ちょっとした景色と・・・うん。これでいこう。大体二、三時間くらいかな。その頃にはひとみちゃんも帰ってくるだろう。



 ・・・そういえば。
 ひとみちゃんと出逢ったのも絵を描いてる時だったっけ。

102リースィー:2003/05/22(木) 13:46

 私は雨女なのだろうか。とにかく私の周りには雨が降りすぎてる。
 その日もやっぱり雨は降っていた。私はとりあえず公園の遊具の中に隠れて画材が濡れないように守っていた。
 大変だなぁ・・・。学校が終わったばかりだし、どうやって帰ろうか・・・。
「・・・?」
 その時、ふと目に映った花。
 草と草の間に立っている不釣合いな程綺麗な花が雨の雫にぶつかりながらも揺れていた。
 それがあまりにも珍しく見えて、余計綺麗に見えて。
「・・・描かなきゃ」
 そう思って口にしたら、手はもうスケッチブックとペンを持っていた。
 雨はすぐ止むのだろうか。雲が切れて、雨音が少し弱くなったような気がして。雨が降っている間にどうにか描いておきたい。
 どういう風に色付けしようか。普通に色をつけても面白くないかもしれない。綺麗に色をつけてあげたいけど・・・。



「綺麗な花だね。やっぱりそれ描いてたんだ」

103リースィー:2003/05/22(木) 13:53

「・・・!?」
 その声と言葉にピタッと手が止まった。
 後ろから聞こえた低くもなく高くもない声。それがすぐに女の人のものだと分かった。けど。
「・・・・・」
 なぜこんな時にこんな場所で他の人の声が聞こえてきたのだろう。
 私は振り返らずにはいられなかった。
「綺麗だよね。あっちに一輪だけある花」
「・・・・・」
 私の目に映る彼女は私より背が高くて髪が肩くらい。そしてジーンズにシャツというラフな格好で。
 ちょっと見たら、男の子に間違えてしまいそうな女の人だった。
「・・・・・」
「ごめん、邪魔だった?」
「あ、いいえ・・・」
 ようやく我に返ってスケッチブックの方を向く。雨はまだ降っているけど、太陽の光が雲とこの公園の景色を脅かし始めていた。
「描いてて良いよ。雨もうすぐ止んじゃうから」
 そう言われなくても手はまた動いていた。彼女もきっと雨宿りするためにここへ来たのだろう。ここに来る人もたまにいるし。
 ・・・でも、それにしても。
 彼女の声は、なんて心地良いんだろう。
 雨に似合う声、というか。とりあえず私にとっては心地良く感じる少し低い声。それはもしかしたら私自身の声が高いから、そういう声が逆に新鮮に感じるのかな。

104リースィー:2003/05/22(木) 14:00
「あの・・・」
「ん?何?」
「・・・すいませんけど、隣で喋っててくれませんか?」
「・・・へ?」
 私の言葉にもちろん彼女は驚いた。
 だって、おかしいと思う。普通は静かにしてなきゃとか、静かじゃないと集中できないって思うのに。私だってそういうほうが描ける筈なのに。
 その時の私は、彼女の声をもっと聞きたいと思っていた。
「良いの?“話しちゃだめ”の間違いじゃなくて?」
「はい、あの・・・隣で話しててください」
「・・・うん。分かった」
 彼女の返事に安心して、また手は動いた。
「雨降ってんのに大変だね。絵を描く道具って結構重いでしょ」
「はい、まあ・・・」
「ってか、雨降ってなくても大変だよね。・・・どっか学校行ってるの?うちの近くで見ないけど」
「絵の学校にちょっと・・・ここまで来てるんです」
「へぇ〜、じゃあ家遠いんだ」
 そっかそっかって独りでに頷く彼女。今のこれだけの会話のうちに手はものすごく動いて、スケッチブックの中に取り込まれた花はもう完成に近づいていた。

105リースィー:2003/05/22(木) 14:06

 初対面、なのに。自分的にものすごく人見知りのはずなのに。
 私は酷く落ち着いて、今までにないほど調子良く絵が・・・。

「・・・描けた」
「お?早いね〜」
 どれどれ、と彼女がスケッチブックを覗く。スケッチをしただけのものはあまり人には見せないんだけど、今回は今の状態で人に見せても良かった。
「すっげ〜。やっぱ絵心のある人ってすごいね」
「そんな・・・別にそんなことないですよ」
「いや、すごいすごい。だって描き始めてそんなに経ってないでしょ?」
「え・・・?」
 彼女の言葉に思わず時計を見る。
 まだ十分経ったくらいだった。
「いや〜、画家さんはすごいね」
「・・・・・」
 彼女はいつから私のそばにいたのだろう。
 雨が降り始めたのは一時間くらい前だった。そして強くなり始めたのはそれから十分くらい。そのときに雨宿りして・・・。
 花を見つけたのは、それからちょっと経ってから。
「・・・・・」
 時計から彼女に視線を戻す。
 彼女の服はどう見ても濡れているようには見えなかった。

106リースィー:2003/05/22(木) 14:13
「あ、もう雨止んでるよ」
「え・・・?」
 彼女の声に合わせて今度は外を見ると、そこはもう光に溢れていた。雨も水たまりや外の遊具などに張り付いている雫に変わっていた。
「そろそろ行かなきゃ。今からその・・・絵の学校?」
「あ・・・もう終わりました。これから帰るところです」
「そっか。うちは今からバイトなんだよねぇ。もう遅刻は決定だけど」
 よいしょって言って彼女が立ち上がる。
「じゃあうちはもう行くから」
「・・・あ、はい」
 スケッチブックを閉じて自分も帰る準備をする。
 何故かこの時の私も・・・絵を描いているとき以上に焦っていた。
 彼女が行ってしまう。そう思った時すごく・・・怖い気がした。そんな気がしたら。
「あの・・・っ!」
 雨宿りしていた場所からもう外に出ていた彼女を呼び止めていた。・・・彼女はバイトだって言ってたのに。
「ん・・・?」
 でも、私の声に彼女はゆっくり振り向いてくれた。

107リースィー:2003/05/22(木) 14:19
「あの・・・ありがとうございました」
「え〜?うち何もしてないよ」
「いえ、私のわがままに付き合ってくれて・・・」
「わがままって・・・いーよいーよ。うちもヒマだったからさ」
「でも、何かお礼したいんです。・・・はじめて私が描いた絵のこと褒めてくれたから」
「へ・・・?」
「・・・・・」
 また彼女は変な声をあげた。
 私は、誰にもちゃんとした感想を言ってもらったことがなかった。学校の先生にだって“もう少しがんばれ”とか、“それで良いのか”なんてことしか言われなくて。
 ・・・私はどんなにがんばっても報われないと思っていたから。誰にも“良い”なんて言われたことなかったから。
「・・・・・」
 彼女は少し上向き加減の視線で頬を軽く掻いているみたいだった。・・・やっぱりこういうことぐらいでお礼をしたいだなんてお節介なんだろうか。
 でも少しして・・・やっぱり彼女は彼女らしく応えてくれた。
「じゃあ、名前教えてよ」

108リースィー:2003/05/22(木) 14:26

「・・・できちゃった」
 思ったよりも早く仕上がってしまった。まあ描くものもそんなになかったし、軽めに描いたと言えばそれまでだけど。
 久し振りに描いたにしては、上出来じゃないかな。
 青い空に、白い雲に、ちょっとした建物。そして・・・。
「ん〜、どれどれ?」
「っ!?」
 一瞬、体が浮いた気がした。
 急に後ろから聞こえた声に反応して振り向くと、そこにはひとみちゃんが。
「なっ・・・どうしたのひとみちゃん、こんな早く帰って・・・」
「え〜?早くないよ。いつもの時間のはずだけどなぁ」
 時計を見たら・・・ひとみちゃんの言う通りだった。
 それだけ集中してたってことだろうか。
 とりあえずは遅くなった“ただいま”と“おかえり”をしてもう一度二人で絵を見ることにした。
「やっと描いたんだね〜。うちの買ってきたやつで?」
「うん。色とか筆もたくさんあって使いやすかったよ」
「ほっほ〜。でもやっぱ梨華ちゃんは絵がうまいね」
「・・・そう言ってくれるのもひとみちゃんだけだね」
 そう。あの頃と何も変わってない。
 私にとって心地良い声で、私にとって嬉しい言葉をかけてくれるひとみちゃん。
 ・・・一緒になれて良かったって、すっごい思う瞬間。

109リースィー:2003/05/22(木) 14:34
「日の当たらないところに飾んなくちゃね」
「うん。そうだね」
「やっぱり梨華ちゃんの描く花は綺麗だなぁ。うちが買ってきた花じゃないみたい」
「あはは。すっごい力入れて描いたからかも」
 そう応えてひとみちゃんの方を向いてた顔を絵に戻す。
 キャンバスの中には、青い空と白い雲。そしてちょっとした建物と・・・。
 窓に置かれた小さい花瓶に挿してあるピンク色の綺麗な花があった。



「うちの名前は吉澤ひとみ。君は?」
「石川梨華。・・・梨に中華の“華”で梨華です」
「へぇ〜、梨華ちゃんか」
 綺麗な名前だね。うちはこっちの“華”の方が綺麗だなって思っちゃった。
「え・・・?」



 今思えばあの時かもしれない。
 初めて絵のこと以外に心を向けたのは。
 初めて“人を好きになった”と確信したのは。



 終。

110リースィー:2003/05/22(木) 14:38
終了で〜す。
何か自分的に久し振りの石吉という感じがするのは気のせいでしょうか?
えっと、タイトルです。
これも「Feacross」の中の「絵の中には」というお話です。
「二人の出会い」が話の筋でしょうかね。
あ〜、石川さんが外に出ない・・・。どんどん主婦になっていく・・・。
いいのかな、これで(笑)

では。

111名無し( `.∀´):2003/05/24(土) 01:27
更新お疲れ様です☆作者様の小説、もちろん全て上手だなあ・・
と思うのですが、中でも 「石吉・書きます」って予告される
と、自然にワクワクしてきます♪読み終えてまたまた次を
期待しちゃってます。ではでは・・ゆくっり待ってますね!

112名無し( `.∀´):2003/05/31(土) 21:09
いいと思います。次作期待

113リースィー:2003/06/05(木) 13:16
名無し( `.∀´) さん、ありがとうございます。
え〜、今回も石吉です。
では早速。

114リースィー:2003/06/05(木) 13:24

「?・・・何でそんな事聞くの?」
 カップを置いて目の前にいるひとみちゃんの方を見る。私の顔は驚いた顔。ひとみちゃんの顔は・・・。すっごい沈んでる。
 ひとみちゃんがついさっき私に言った事。

 うちの事、ホントに好き?

「だって、さぁ・・・。最近矢口さんと仲良いし、楽屋でもあんまり話してないし。携帯の着メロもメロンの歌でしょ?」
「着メロは・・・まぁ、ねぇ・・・」
 そういえばさっき、携帯が鳴ってたなぁ・・・。
「ぜーんぜん、うちと合ってない」
「でもそれだけでそんな風に思うなんて・・・」
 顔をひとみちゃんに向けた途端、私の口は止まってしまった。
 目を向けたそこに、今にも泣きそうな瞳が。唇は少し震えていた。
「・・・はぁ〜・・・」
 ひとみちゃんがため息をついたのを見て私もつられて小さく。
「だからぁ・・・聞きたくなったんだよぉ・・・」
 語尾を変な伸ばし方して。でもツッコめない程に顔が泣きそうになってて。
「・・・もう」
 目の前でモジモジしてる指を見つめる。
 頭の片隅で、ずーっと前の事を思い出してた。

115リースィー:2003/06/05(木) 13:30

「最近、ひとみちゃんとごっちんが仲良くて・・・」
 柴ちゃん家。柴ちゃんは「ああ、またか」みたいに私の前にお茶を置いてくれた。私は私でテーブルの模様だけを目に入れて。
「ひとみちゃん・・・本当に私の事好きなのかなぁ・・・」
「ま〜たネガティブモード入ってるね〜」
「・・・笑わないでよっ」
 真ん前にいる柴ちゃんを睨む。でも柴ちゃんは笑うばかり。
「でも、思い過ごしじゃないかなぁ。梨華ちゃんって大体そうでしょう?」
「・・・だけどぉ・・・」
「何か心配?」
「・・・うん」
 柴ちゃんは大谷さんとずっと仲良し。実際そういう仲だからだと思うけど・・・でも・・・。
「ケンカ?たくさんするよ、私も。シットもするねぇ」
「じゃあ、何で落ち込まないの?」
「・・・ん〜」
 少し考えるみたいにして柴ちゃんが応える。
「何だろうね・・・そう!ケンカとか、もしかしたらって思った時に必ずする事があるからそれで試すの」

116リースィー:2003/06/05(木) 13:36
「・・・試す?」
 私がそう言ったら、柴ちゃんは「フフン」って笑って手を伸ばした。その先は、私の手。
「こうやってね、手を握るの」
「え?・・・何で?」
 思わず口にしたら「そう、それ」。そう言われていきなり顔に指を差された。
「もし好きな人じゃなかったらさ、友達とかでも。いきなり手を握られたら“何で?”って聞いたりして、顔に出したりするでしょ」
 でも好きな人同士だったらね、絶対言わないの。
「・・・まさか」
「これが本当に丸分かりなんだから」
 手を離して柴ちゃんはお茶を飲んだ。
「一緒に帰ったりした時に試してみてよ。いきなりこう・・・“ガッ”ってさ」
「そんなつかみ方したら聞いてきちゃうよ」
「まぁまぁ。とりあえず試してみて」

 そう言われてひとみちゃんと一緒に帰った翌日。
 ゆっくり手を握ったら・・・。
 ひとみちゃんは少しずつ握り返してくれた。
 そして・・・。
 本当に、うまくいってしまった。

117リースィー:2003/06/05(木) 13:40

「・・・手、握ろ?ひとみちゃん」
「?」
 まだほっぺたが濡れてるひとみちゃんに声をかけた。
 そっと指を包み込むように、ひとみちゃんの手を握りしめる。
 表情を見る。変わってない。・・・ちょっと驚いてるけど。
「私はねぇ・・・」
「・・・・・」
 手を握るだけでもドキドキする。それもひとみちゃんとだけ。
 それってどういう意味か、分かる?
「・・・・・」
 ひとみちゃんは「うん」っと頷いて私を見つめてた。

 ・・・そりゃあ、私だってひとみちゃんと一日中ゴロゴロする生活を送りたい。
 何もしないで、ひとみちゃんだけ見ていたい。
 でも・・・。
 そういう事だけしてたらだめな所にいるじゃない。

118リースィー:2003/06/05(木) 13:47

「他の人ともお仕事しなくちゃいけないから、色んな人と話もしなくちゃいけないでしょ?」
「・・・うん」
 空いてる方の手でほっぺたの涙を拭く。
 ・・・泣いてるひとみちゃんも良いなぁ、なんて、ちょっと脱線。
「ひとみちゃん」
「・・・うん」
 不安になったらね?・・・手を握って。何も言わずに。
 そしたら私も、何も言わずに握り返すから。
「・・・何で?」
「それが“好きだよ”っていう証拠だから」
 握っていた手もほっぺたに持っていく。そのまま顔ごと寄せて。
 ・・・久し振りに唇が重なって。少しひんやりしてるから気持ち良い。
 ひとみちゃんが背中に腕を回してく。心の内が少し涼しい。
 ずっと前のひとみちゃんが私だったら、同じ気持ちになったかな?
「落ち着いた?」
「・・・ん」
 頬ずりしてひとみちゃんが応えた。イスがソファみたいにくっついて、気が付いたら体もぴったりとくっついてた。
「梨華ちゃん」
「何?」
「もっと」
「・・・うん」
 目を閉じてひとみちゃんを感じる。ひとみちゃんも「いつもの」ひとみちゃんに戻ったみたい。

119リースィー:2003/06/05(木) 13:49

 ベッドで体を横にしたら、ひとみちゃんが右手を握ってくれた。
 そこから感じる、ひとみちゃんの声。
 “・・・私も”
 心の中で呟く。
 次に目を覚ましても、ひとみちゃんと私の手はつながっていた。



 終。

120リースィー:2003/06/05(木) 13:53
 終了です。
 え〜、今回載せた物はだいぶ前に書いたものなので少々文章が・・・。
 とりあえずタイトルは「Gimme your handshake」です。
 直訳すると「手を握ろう」。そのまんまです。
 これを書いた後、テレビなどで二人が手を握るのをちょっとでも見かける度に「おっ!」と思うようになってしまいました・・・(自分でまいた種)。

 では。

121YUNA:2003/06/08(日) 14:05
更新おつかれさまです♪
ちょっとだけ出て来た柴雅に、おぉ!?なんて思いながら読んでおりました。
最近、柴吉にかなりハマっております...(何っ
でも、いしよしには叶いませんよぉ〜!?
うちも新しいののせないと...
お互い、頑張りましょうねぇ〜♪♪♪

122リースィー:2003/06/15(日) 09:30
YUNAさん、ありがとうございます。
私も柴雅が好きなもので・・・(で、私的には柴石が好きなのです。でもやっぱり石吉にはかないませんね)。
はい、一緒に頑張りましょう!

今回は少々時間が無いので顔を出すだけですが、石吉と共にもう一作紺高を載せようかな、と。(好きなんです。この方々も・・・)

では。

123名無し( `.∀´):2003/06/17(火) 03:04
作者さんの書く紺高を、密かに楽しみにしています。

124リースィー:2003/06/26(木) 13:13
久しぶりにやってきました。
名無し( `.∀´) さんありがとうございます。

では、紺高のシリーズを一つ。

125リースィー:2003/06/26(木) 13:22

 “もう、よっすぃーったら”って、石川さんのものすごく甘い声が聞こえた。その後すぐ“良いじゃん、ただくすぐっただけだよぉ〜”って吉澤さんの声。
「あいつらまたやってるよ・・・」
 隣にいた保田さんが頭を抱えてため息をついた。気が付いたら“こら〜っ!”って飯田さんが二人のところにチョップをお見舞いしに向かってた。
「な〜んか、すごいね。みんなの前でああだよ」
 まこっちゃんなんかはもう慣れたみたいで、その様子を見て笑ってる。ののちゃんとあいぼんはいつもみたいに二人のマネして矢口さんにツッコまれて。
「ま〜た、何か、にぎやかだなあ・・・」
 私も私でいつも通り独り言を呟いてた。・・・でも一つ違うのは、いつもなら私の独り言さえも拾って聞いてくれてるはずのあさ美ちゃんがいない事。
 ・・・風邪で寝込んじゃってるから。

126リースィー:2003/06/26(木) 13:31
「大丈夫だよぉ・・・寝てれば治るから・・・」
 目がものすごく潤んでて、でも心配させたくないのかずっと笑って。
「大丈夫じゃないよぉ・・・。私も休むよぉ」
「だめだってば。愛ちゃんまで休んじゃったらみんなにバレちゃう・・・」
 何がバレるのか分かんないけど、とにかく仕事に行くようにって言い続けるから結局は、あさ美ちゃんを置いて仕事に行くことになった。
「あさ美ちゃん、大丈夫かなあ。珍しいよね〜、あさ美ちゃんが風邪引くって」
 まこっちゃんが急に言う。それがまた私を落ち込ませたけどその次は違った。
「・・・お見舞いに行ってみようかなぁ」
「っ!?」
 ぶっ!!
「?・・・もお、高橋、何ジュース吹き出してんの〜っ」
「っうお〜っ、すいません・・・」
 知らんうちに紙パック力入れてもた・・・。おまけに安倍さんに拭いてもらっちゃったし。
「どうしたの愛ちゃん、急に」
「ん〜ん、何でも無いよ」
 あはは、って自分でも分かる不自然な笑い声。
 あー、そっか。あさ美ちゃんの言ってた事って、そういう事か・・・。
「ちょっと手、洗ってくる」
 安倍さんに拭いてもらったのは良いけど手がベトベトして。私は不自然な笑みを引きずったままトイレに向かった。

127リースィー:2003/06/26(木) 13:41
「・・・あー、いかんよ。誰も二人で暮らしてるの知らんし・・・」
 トイレに誰もいないのを確認して独り言モードに入る。
 ・・・そりゃあな〜。未だにあさ美ちゃんと一緒に住んでるっつったらみんな疑うか。家に電話は無いし、電話っつったら携帯しか無いしなあ。それだったら一緒に住んでるなんて思わないよなあ。
「・・・水流しっぱなしだよ?」
 でもお見舞いに来られて一緒に住んでるって分かっただけでそう思われるかなあ。
「おーい、愛ちゃん」
 あ、でもあさ美ちゃんまだ左手に・・・。
「愛ちゃん!!」
「っうおー!!」
 急に降った声。と思って横を向いたらそこに里沙ちゃんが。
「な、何で里沙ちゃんここにいるの!」
 後ずさりして手を乾かすところにぶつかりながら里沙ちゃんを凝視する。けど里沙ちゃんはまたきょとんとしておまけに首を傾げて。
「何でって、愛ちゃん何度呼んでも一人でブツブツ何か喋って、全然返事してくんないんだもん。私さっきからここにいるのに」
「っあー・・・ごめん」
 とりあえずは落ち着いて謝る。
「愛ちゃん、何か今日は変だね。すっごい独り言早かったよ」
「いやあ、ちょっとね・・・」
 手を乾かしながら笑って応える。里沙ちゃんも手を洗いながら“ふ〜ん”って。

128リースィー:2003/06/26(木) 13:48
「あ、そうだ。愛ちゃん、今日どうする?まこっちゃんと話してたんだけど、あさ美ちゃんのお見舞い行く?」
「え・・・?」
 まこっちゃんに続いて里沙ちゃんまで・・・?うあ〜、また手に力が入る・・・。
「あー、んー、でも、ねー・・・。ほら、風邪移っちゃうかもしれないし。あんまりお見舞いに行かないほうが良いんじゃないかなあ」
「え〜?・・・まこっちゃんも同じ事言ってたけど・・・。あ、でもお菓子とかだけでも持ってけたら良いんじゃない?」
「あ〜・・・」
 どうしよう・・・。これじゃあ・・・。
「あ、新垣〜、小川が探してたよ。早く行ってあげたら?」
 その時、私の後ろで声が。振り返ったら。
「ほらほら。早く行ってあげて」
 石川さんが、里沙ちゃんをトイレから追い出すように肩を押していく。里沙ちゃんは“あ、はい・・・”ってとりあえずは外に出て行った。
 ・・・何だろ。急に救われた気分になった。
「あ、あの〜、石川さん・・・」
「ん?」
 何も無かったように石川さんは鏡に向かって何かし始めた。
「吉澤さんと一緒じゃなかったんですか?」
「ん〜、まぁね」
 でも“何かあるな”って思ったら助けなきゃ先輩じゃないでしょ?
「あ・・・」
 石川さんがこっちを向いた。その顔は笑ってて。

129リースィー:2003/06/26(木) 13:54
「まあ、何かあったわけじゃなかったし。心配することも無かったけどね」
「ああ・・・はい」
 楽屋に戻る廊下を石川さんと二人で歩くことになった。・・・けど、未だにちょっと緊張して。
「あ、そうだ。高橋」
「?・・・何ですか?」
「小川と新垣には“お見舞いは止めといたほうが良いよ”って言ってあるからね」
「・・・あ、はい・・・」
「だから、思う存分紺野のお世話してよ」
「はい・・・」
 ・・・ん?
「っえっ!?あ、あ、の・・・っ」
 手がバタバタとして“違うんです違うんです”ってやったけど・・・もう遅かった。
「はいはい。分かったから」
 ポンポンと肩を叩かれて私の手は止められてしまった。
「高橋と紺野の仲もよーく分かってるからさ、私は」
「え・・・な、何で分かっちゃったんですか?」
「ん〜・・・何でって言われてもなあ・・・」
 楽屋のドアノブに手をかけて石川さんが言う。
「フンイキかな。分かっちゃうの」
「・・・・・」
 先輩は怖い・・・そう思った。

130リースィー:2003/06/26(木) 14:02

「ただいまっ。あさ美ちゃん、大丈夫!?」
 家のドアを開けてすぐ閉める。リビングの電気をつけて、あさ美ちゃんのベッドに向かったら。
「愛ちゃ〜ん・・・こっちー・・・」
「え?」
 “寝室”として一応仕切られてる布の向こう。つまり私のベッドがあるところからあさ美ちゃんの声が。
「・・・あさ美ちゃん?」
 布をよけて隣を見ると、私のベッドにあさ美ちゃんが寝てた。
「どしたの?朝はこっちで寝てたのに」
「うん・・・ごめんね。ちょっと寂しくなっちゃって・・・。こっちで寝たら寂しくないかなって思って」
 ホントはすぐ起きようと思ったんだけど、って体を起こそうとしてる。
「わ〜っ、ちょっと待って。手伝うから」
 慌てて手を貸してあげる。あさ美ちゃんは笑って“ありがと”って言った。
「熱はまだある?大丈夫?」
「うん。朝よりはフラフラしてないよ」
 とは言うけど、触れてる肌は少し熱く感じる。
 ご飯は少しだけ食べたって言うから、家に帰る前に買ったお菓子を二人で食べることにした。それはもちろん、最近あさ美ちゃんがハマってるイモのお菓子。
「ごめんね?何かすっごい心配させちゃって」
「何言ってるの一緒に住んでるんだから」
 一口食べて応える。そしたら急にあさ美ちゃんが笑った。

131リースィー:2003/06/26(木) 14:10
「ん?どしたの急に」
「うん・・・何かね、ホントに“夫婦”みたいだなって思って」
 “はい”ってあさ美ちゃんの手のイモが私の口の方に。私も“あ”って普通に食べる。
「でも思うんだよね。どっちがどっちなのかなって」
「え?どっちって?」
 指がまだ口の方にあったから捕まえて、イモの傍にくっ付いてる粉みたいなものを掬い取った。
「・・・“夫婦“でしょ?だから・・・うん」
 俯くあさ美ちゃん。・・・いつも思うけど、こういう話をする時のあさ美ちゃんって顔が赤くなったり、私的に見てすっごい“可愛いなあ”って。
 そう思ったら口が言った。
「じゃあ・・・私が“結婚して”って言ったから、あさ美ちゃんがお嫁さん」
 手にはイモを持って、あさ美ちゃんが私にしてくれた事と同じ事して。
「へ・・・?私が?」
「うん。あさ美ちゃんがお嫁さんっ」
 笑って応えて、あさ美ちゃんの髪を撫でて。そして思いっきり腕を回して抱きしめる。今日のあさ美ちゃんの肌はちょっと熱く感じたけど、“やっぱりあさ美ちゃんだ”って思えた。
「・・・やっぱり、あさ美ちゃんも一緒に仕事に行ってなきゃ私も寂しい」
「うん・・・」
 そのままベッドで横になってゴロゴロする。風邪引いちゃってるから今日はあさ美ちゃんにキスできないけど、その分ぎゅ〜って抱きしめて暖めた。

132リースィー:2003/06/26(木) 14:25

 翌日。あさ美ちゃんと私は二人で仕事場に行った。朝になって熱も下がったし、病み上がりではあるんだけど。・・・やっぱ寂しいから。
「熱、大丈夫だった?」
「紺野、あんまり無理しないようにね」
 飯田さんとかまこっちゃんとか、みんながあさ美ちゃんのとこに集まる。私は邪魔にならないように近くで座っていた。
 あさ美ちゃん、元気になったのは良いけど・・・こういう時ってあんまり近づけないんだよねぇ・・・。
「おっはよ〜っ」
「?・・・あ、おはようございます」
 私の隣にあったもう一つのイスに石川さんが腰掛けた。・・・今日は石川さん、一人なのかな。
「大変だね〜、好きな人に近づけないって」
「はあ・・・まあ、そんなに落ち込まないですけど」
「私は落ち込んじゃうよ〜。特にすれ違ったりするだけで一回も話をしない時とかさ」
「そうですか〜。大変なんですね、石川さんは」
「ちょっと〜、“石川さんは”って何よ〜っ」
 指で頬をプッと押される。石川さんの顔もちょっと膨れてた。
「はあ〜・・・。昔は“よっすぃーと一緒の家に住む”とか言ってたのになぁ・・・」
「っ・・・ええっ?」
 さっきの膨れた顔と違ってため息をつく石川さんの言葉に思わず反応してしまった。
「どうしたの?」
「い、いいえ、何でも無いです・・・」
 そう応えて、側にあったミネラルウォーターを飲んでごまかす。それにタイミングを合わせたかのようにののちゃんが“何の話してんの〜”とこっちに突っ込んできた。ののちゃんの来た方向に顔を向けると、丁度一人になったあさ美ちゃんが。
「あ、ほら、高橋。紺野の所に行っておいでよ。早くしないとまた誰かに取られるよ〜?」
 私だけに聞こえる声で言う石川さん。・・・言われなくてもそうしますよぉ・・・。

133リースィー:2003/06/26(木) 14:31
「あ、愛ちゃん」
 やっと来たって顔であさ美ちゃんが私を見た。私は笑ってあさ美ちゃんの側に。
「みんなすごかったね〜。ゾロゾロして」
「うん。・・・あ、そういえば」
「?」
 突然の話の切り替え。そしてあさ美ちゃんはコソコソ話をする時の声で私に聞いてきた。
「石川さん、愛ちゃんと私の事知ってるみたいなんだけど、何で?」
「・・・・・」
 不覚。としか言いようが無い。
「愛ちゃん・・・もしかしてみんなに言っちゃったの?」
「・・・ううん」
 そこで、あさ美ちゃんに昨日の事を教えてあげる。
 ・・・もちろん、あさ美ちゃんは目を丸くした。
「大変だよぉ・・・ラジオの時どうしよ・・・」
「あさ美ちゃん、多分いっぱいいっぱいになっちゃうよ。・・・先輩はなーんでも知ってるから」
 私達の事、フンイキで分かっちゃうんだから。
「・・・あ〜・・・大変だあ・・・」
 あさ美ちゃんは自分のほっぺたを両手ではさんでムンクみたいな事をした。



 教訓。
 ・・・先輩はやっぱり怖いっ。



 終。

134リースィー:2003/06/26(木) 14:36
終了でございます。
タイトルは「HB of DB」の中の「カゼガハコブカゼ」というお話です。シリーズの中ではこの前乗せた物の続きで、二弾目ですね。
(読みにくかったらごめんなさい)
風邪ネタ・・・。なんか好きなんですよねぇ。介抱してるところとか、書くの好きなんですよ。
(今回はあんまりないですけど・・・)
今度は・・・そうだなあ、ちょっと大人向けでも。(あ、話の内容がって事で・・・)

では。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板