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エンジェルホーリーライト
1
:
小鉄
:2002/09/24(火) 20:48
恐れ多くもスレ立てさせて頂きます。
2
:
エンジェルホーリーライト
:2002/09/24(火) 21:05
幼い女の子が泣いている。
声は喉の奥でくぐもって漏れてはこない。
ただ肩だけが震えていた。
その後姿は、まるで笑っているかのように他人には見えたかもしれない。
いつも一人を好むその女の子に、誰も話かけようと思うものはなかった。
実際その幼い女の子も誰かに話しかけてほしいなどとは微塵も思っていない。
ただ一人で泣こうにもそんな場所はここには存在しない。
だから仕方なく皆に背を向け声を殺して部屋の隅で泣く。
いつものこと、これからも続く長い日常。
まだ幼い女の子は諦めにも絶望を胸の中に抱えている。
「ねぇ、もしかして泣いてる?」
思いがけない言葉に一瞬戸惑う。
顔を上げ後ろをゆっくり振りかえる。
すべては始まりのために。
すべては終わりのために。
すべてはこの時のために。
3
:
エンジェルホーリーライト
:2002/09/24(火) 21:07
<エンジェルホーリーライト>
4
:
エンジェルホーリーライト
:2002/09/24(火) 21:25
「くだらない。」
そんな意味のない言葉を呟いて、吉澤は拳に巻いた血に染まったベルトを
ゆっくりと巻きはずす。服にも飛び散った少量の血を見つけて舌打ちする。
(この服気に入ってたのに。)
眠らない街の夜の路地裏は、自分のような存在の許されない人間には
ピッタリの場所であるように思われた。
暗くて相手の顔すら識別することができない。
勿論吉澤の足元にゴロゴロと転がっている輩にもいえることだ。
モラルや正義なんて振りかざす気は更々ないが、それでも
違和感を感じずにはいられない。
若い女一人をどうしようとしたのかは鈍いと言われている吉澤でも容易に検討がつく。
それもこんな大勢で。
吉澤は転がっている意識のない男の一人に蹴りを入れる。
(狙った相手が悪かったね。)
吉澤は血が付着した上着を脱ぎ捨て、その場所を後にした。
5
:
エンジェルホーリーライト
:2002/09/24(火) 21:47
「ただいまぁ〜。」
おみやげのケーキを手に、精一杯の明るさと笑顔を作りリビングに向かう。
同居人はソファに座り新聞を広げていた。
「お帰り。」
顔は新聞に向けたまま同居人石川梨華は声だけで返事をした。
さっきまで台所で料理でもしていたのか、ピンクのエプロン姿で
読みふけっている。吉澤はケーキをテーブルの上にそっと置く。
「何か面白い記事でもあったの?」
隣に腰を降ろし覗き込む。見出しは{路上で錯乱お年寄り刺される。}
最近こういった事件が多い。理由のない犯罪というか。無差別に無関係の
人達が知らない他人によって命を奪われるという救いようのない事件が多発している。
「よっすぃー、私思うの。こういうことする人達を罰する一番良い方法。」
「うん。」
「あのね。殺したり傷つけたりした相手の人生を一から知ってもらうの。」
「どういうこと?」
「だからつまり、生まれてきた瞬間からの被害者の記憶を犯人にも体験してもらって
自分がどんなに尊い命を奪ったかしらしめてやるの。」
6
:
エンジェルホーリーライト
:2002/09/24(火) 22:08
「そして被害者の意識に入り込んだ加害者は最後に自分に殺されるってわけか。」
「ご名答。」
「でもなんだか非現実的だね。」
吉澤はそう言って立ち上がった。石川は新聞を閉じて吉澤を見上げる。
「じゃあ現実的な質問をするけど。」
吉澤は嫌な予感がした。台所からはカレーの匂いがする。
「誰かを傷つけたでしょ?それも一人や二人じゃない。」
「何のこと?」
無駄だと分かっていても多少の抵抗はしてみる。
「とぼけても駄目。よっすぃーベルトは?そのジーンズにはいつもベルト
してただしょ?拳が傷つかないように巻いて使ったんでしょ?それから
上着はどうしたの?今日みたいな肌寒い日にそんな半そでのTシャツで
寒がりのよっすぃーがでかけるはずないじゃない。」
甘いかった。吉澤は心の中でため息をつく。
「好んで喧嘩したわけじゃないよ、無理矢理路地裏に連れ込まれたんだ。」
「だから夜に出かける時は男装しなきゃ駄目って言ってるのに。どこで又再会
するか分からないんだから。よっすぃー自覚が足りないよ。」
自覚がありすぎる石川は吉澤を下から睨みつけている。
「仕事上顔を憶えられるのはすごく危ないってわかってるでしょ?」
今更ながらさっきの連中をもっとボコボコにしておけばよかったと後悔する。
7
:
エンジェルホーリーライト
:2002/09/24(火) 22:24
だが今は目の前の同居人の怒りを静める方が先決だ。
過去は振り返らない。それが吉澤の信念。
「ごめん。」
いかにも反省しているように、いかにも悲しみにくれた表情で。
そうすれば大概のことは許してくれる。長年の経験から学んだ
石川の怒りを静める方法。なるほど、石川の険しい表情がやわらいでいく。
「もう、いいよ。これからは気をつけてね。」
博愛主義。平和主義。な石川。よく人に騙されそうになる。いつもそれを
阻止してきたのは勿論吉澤だ。それも一度や二度ではない。
(梨華ちゃんにはそのお人良しさかげんを自覚してほしいかも。)
口には出さない。言っても無駄だから。
「中澤さん元気だった?」
その言葉に吉澤は我に返る。
「梨華ちゃん仕事だよ。」
8
:
小鉄
:2002/09/24(火) 22:25
とりあえず今日はここまでです。
9
:
たった一人の傍観者
:2002/09/27(金) 20:03
その場所は闇で支配されていた。
ひんやりとした空気が肌をすり抜けるように流れていく。
空には青白い月がただ一人の傍観者として下界を見下ろしている。
そんな中一人の少女がゆっくりとした足取りで、高く張り巡らされる
フェンスに向かって歩いていく。
その虚ろな瞳の中には何も映されてはいない。
彼女は今世界の果てを感じていた。
その細い腕でフェンスを登りはじめる。
遠くの方で鳥の鳴き声が聞こえた気がした。
少女がてっぺんまで登った時、突然月の明かりが雲によって遮られる。
再び月が顔を現したとき、すでに少女の姿は消えていた。
そして静寂だけが残る。
10
:
第一章 死戦場のアリア
:2002/09/27(金) 20:22
「えー、では転校生を紹介する。吉澤ひとみクンだ。」
初老の教師らしき人物がそう言うと吉澤に向かってうなずく。
あとは自分で自己紹介しろというのだろう。吉澤もうなずき返すと
正面を向きなおす。
「埼玉から来ました、吉澤ひとみです。よろしくお願いします。」
生徒の何人かが拍手をし、その他の生徒達は無言で吉澤を凝視している。
吉澤は少しさがりぎみのレンズの厚いメガネをずりあげる。
勿論度は入っていない。両目とも2.0だ。因みに茶髪だった髪も
黒に染めなおした。どこからどうみてもダサい。本人は不満タラタラだったが
目立ちすぎるという同居人の判断でこうならざるえなかった。
(この次はハゲヅラかぶれって言うんじゃないだろうな。)
一緒なかぎり不安がつきない。
11
:
第一章 死戦場のアリア
:2002/09/27(金) 20:35
「それではキミの席は一番後ろの空いている所だ。座りたまえ。」
(座りたまえ。って何だその言いぐさは。)
少しムッとしつつ、言われた通り歩きだす。
しかし誰もが吉澤に興味をしめしていないように見えたのには少々戸惑いを感じた。
皆が前一点だけを見つめている。
机と机の間を抜けその席にたどり着いた時、隣の席の少女と目があう。
「よろしくね、吉澤さん。」
微笑みをたたえたその見慣れた顔に向かって、吉澤もわざとらしく微笑みを返す。
「よろしく。えーと、名前は?」
「石川梨華。」
12
:
第一章 死戦場のアリア
:2002/09/27(金) 20:45
どこにでもある都会の中の薄汚れたビルの一室。
事務所らしき部屋のドアには表札らしきものは見当たらない。
中澤はその部屋の中で、窓から路地裏にたむろする柄の悪い連中を見下ろしていた。
(あいつらまっ昼間からビルの壁に落書きなんてしおってからに。)
色とりどりのスプレーで書かれているそれは、どれも見るに耐えられない
卑猥な言葉ばかりだ。
薬でもやっているのだろうか、その中の一人はゲラゲラと意味もなく
笑い続けている。
(どうなってんねん一体。)
これが時代の進歩に伴う結果なんだろうか。
落ちていくものはどこまでも落ちていく。
地獄よりもずっとずっと下層までだ。
そこには夢も希望も存在しない。
(こんなこと考えるなんて、年取った証拠やで。)
13
:
第一章 死戦場のアリア
:2002/09/27(金) 20:50
「祐ちゃん、今日から吉澤が石川と合流したから。」
今まで何かの書類に書きこみをしていた保田が急に思い出したように言った。
「ほーか。」
気もそぞろに返事をする中澤。保田はそんな中澤を気にとめる様子もなく
又、手許の書類に視線を移す。
(あ、こらボケ。そんな所にションベンすんなや。)
14
:
第一章 死戦場のアリア
:2002/09/27(金) 21:07
吉澤は昼ご飯として持参したベーグルを学園の屋上で食べながら
資料に目を通していた。
<私立白蘭女子学園。全校生徒数、中等部、高等部合わせ約3000人
全寮制。360度を深い森に覆われている。敷地の周りは高い塀で囲
まれ、警備は異様な程厳重。生徒達にも厳しい規律が設けられている。
学園の教育方針は、淑女を育て上げる。学園のOGには各界の有名人物
多数・・・・>
ここまで読むと吉澤はその紙を畳んでスカートのポケットにしまった。
(つまり金持ちの親を持ったお嬢様達が集まる学校ってわけだ。)
しかし吉澤にはどうしてもこの学園が監獄にしか見えなかった。
生徒達が囚人。脱獄犯が出ないよう四六時中監視されている。
だからかどうかは分からないが生徒達は皆死んだような目をしていた。
そんな目を吉澤はどこかで見た憶えがある。少し考え思い出す。
(スーパーで売ってる死んだ魚と同じ目だ。)
15
:
第一章 死戦場のアリア
:2002/09/27(金) 21:13
じゃあ自分は死んだ魚をこれから相手にしなくちゃいけないわけだ。
考えると気が滅入った。
「ウチやっていけないかも」
「これからって時に何言ってんの!」
聞きなれた高い声が後ろから聞こえた。
ふり返ると石川が腕を組んで仁王立ちしている。
吉澤はゆっくりとベーグルを一口かじった。
16
:
小鉄
:2002/09/27(金) 21:14
今日はここまでです。
17
:
名無し( ´ Д`)
:2002/09/29(日) 13:00
今日一気に読みました。なんか不思議な世界で面白いです。
プロローグと、一話何ですよね?
18
:
ごーまるいち
:2002/09/29(日) 22:54
拝見させて頂きましたが、めちゃくちゃ大好きな雰囲気です!
作者さん、これからも頑張ってくださいね♪
19
:
第一章 死戦場のアリア
:2002/09/30(月) 20:08
石川は吉澤より一週間早く転校してきていた。
ほかの生徒に詮索や疑心感を持たれないためだ。
その上石川は病気で一年療養して空気の良いこの学校に移ったということになっている。
それもことのほか吉澤にとっては不満の種であった。
(何が病気療養のためだ。ここ三年位風邪一つひいてないじゃん。)
しかしこの細い体を見て疑う者は皆無に等しい。
見た目というのもこの仕事にとっては重要な役割を持つ。
そしてこの見た目病弱ぶりが案外役に立つということも
経験上知っているだけに文句をつけることもできない。
「ウチ達二人が一緒の所見られたらやばいんじゃない?」
「大丈夫。転校生二人が一緒にいたとしても変には思われないよ。
転校してきたばかりで寂しい思いをしている。というのが世間一版
の考え。傷を舐めあっている位にしか思われないって。それに・・・。」
石川はちらりと屋上の片隅に置かれた枯れかかった花の挿してある花瓶に
視線を移す。
「自殺現場でお昼ゴハンを食べようなんて思う奇特な人はそうそういないし。」
「悪かったね。」
そう言って吉澤はベーグルにかぶりつく。
20
:
第一章 死戦場のアリア
:2002/09/30(月) 20:13
「あ、別に嫌味で言ってるわけじゃないよ。」
「梨華ちゃんお昼は?」
「一応、食も細いってことに設定してあるから。」
「成る程。」
吉澤は持っているベーグルを一つ石川に渡す。
「サンキュー。」
石川はおいしそうにそれを頬張った。
(病弱のふりもそれなりに大変・・か。)
21
:
第一章 死戦場のアリア
:2002/09/30(月) 20:41
吉澤に貰ったベーグルを食べ終えたあと、石川は高く張り巡らされたフェンスを見上げる。
(これを彼女は登った。)
石川の意識が{彼女}とリンクする。
ゆっくりとフェンスを登っていく{私}。
月灯りはまるでスポットライトのように{私}に降り注ぐ。
そうだここは{私}のために用意された舞台。
恐怖はない。あるのは演じきるという義務感だけ。
優越感が{私}を支配する。それはとても甘美なもの。
一番上にたどり着いた時、{私}の細胞すべてが絶頂を向かえる。
今この時世界は{私}だけのために存在している。
少し微笑を浮かべてみる。完璧な演出だ。
そして幕は下ろされる。永遠という幕が。
「梨華ちゃん、タイムアップだ。もう少しで昼休みが終わる。」
石川は{彼女}から意識を自分へと戻す。
目の前には残りのベーグルを急いで口に放り込む吉澤の姿。
いつもの光景。見慣れた人。
石川は息を吐きながら、少しだけ早く打つ心臓を鎮める。
「バックグランドミュージックにはG戦場のアリアあたりかな。」
吉澤に聞こえない程度に口の中でつぶやいた。
22
:
小鉄
:2002/09/30(月) 20:47
少しの更新ですみません。次回はもう少し長くできればと思っております。
>17 名無しさま。はいそうです分かりにくくてすみません。
>18 ごーまるいちさま。ありがとうございます。精進します。
23
:
名無し( ´ Д`)
:2002/10/01(火) 01:57
G線上のマリアって、本と名曲ですよね。
情景にあっててすきです。
作者様がんばってくださいね。
24
:
名無し( ´ Д`)
:2002/10/01(火) 21:35
(0^〜^0)だと病気療養の為って嘘ついても信じて貰えないかな?
とか考えてしまいました。。。しょぼ〜ん。。。
続き期待しています。がんがってくださ〜い!
25
:
第二章 点と線
:2002/10/02(水) 19:37
名も無き部屋の中で、中澤は保田からの報告を受けていた。
「後藤、矢口組は学生を取り仕切っていた暴力団の解体中。
あと2、3日で終わる予定だと言っていました。」
保田はパラリとレポート用紙をめくる。
「安倍、飯田組は・・えーとですね、そのーカオリの言っていることが
いつものように要領を得ないものでして。カオリの言葉通り言いますと
『カオリはね、今暗闇のまん中にいるの。なっちはその周りをグルグル
走ってて大変そう。』とのことですが・・・。」
「あーほんならあいつらちょっと時間かかるなぁ。カオリは学校に四六時中
残らなあかんちゅーこっちゃ。今回はどうやら強力なんに当たったようやな。」
「じゃあなっちの周りをグルグルっていうのは?」
「外に元凶がいるから捜し回ってるって意味やろ。」
「応援出しましょうか?」
中澤はうーんとうなり腕を組んだ。
「そやな、今確か紺野がフリーなはずやから、紺野送ったれ。」
「分かりました。」
保田は又レポート用紙をめくる。
26
:
第二章 点と線
:2002/10/02(水) 19:54
「やっかいなのは石川、吉澤組ですね。学園の雰囲気からいって
聞き込みもままならないようです。
「大雑把な依頼やったからなぁ〜。ところで圭坊、なにさっきから敬語
でしゃべってんねん。なんかこう背中が痒なるやん。」
そう言うと中澤は、実際に背中を痒いてみせる。
「一応上司ですから。」
「どーせ又刑事ドラマでも見たんやろ?」
保田は中澤の言葉を無視して話を進める。
「取り合えずなるべく情報を集めるようには言ってありますが。
こういった依頼には迅速かつ慎重な調査が必要でして・・・。」
力説を続ける保田をそこに残して、中澤は立ち上がり
窓際に歩いて行く。いつものように下を覗いてみるが
今日は誰もいない。
その代わりにま新しい落書きに目を奪われる。
『すべては無への為に。』
(中々気のきいた言葉やな。)
「ちょっと、裕ちゃん聞いてんの!あの二人になんて指示したらいいのよ!」
「やっと元に戻ったようやね。あの二人への指示は圭坊にまかせたる。
石川はあんたの弟子やし。」
中澤はそう言ってブラインドを下ろした。
(すべてが無への為に。・・か、じゃあウチ等は何の為に生きてるんやろか?)
27
:
第二章 点と線
:2002/10/02(水) 20:11
石川は与えられた学園の寮の一室で考えごとをしていた。
その部屋の広さは吉澤と同居しているアパートの部屋の倍はあった。
家具から電化製品にいたるまですべて完備されている。
勿論一人部屋だ。
石川は机に座り、目を閉じ、握った両手を額に当て、物思いにふけっている。
その時机の引き出しの中で何かがガタガタと音をたてた。引き出しを開けると
携帯電話が小刻みに震えている。それを手に取り通話ボタンを押す。
『ヘロ〜、ロングタイーム、ノースィー。』
「中途半端な英語使うのは止めて下さい保田さん。」
『中途半端ってどういうことよ。』
「読んで字の如くです。」
『んまー、生意気。昔はそんなんじゃなかったのに。ところでどう?
何か進展したことはあった?多分何もないとは思うけど。』
なら聞くなよ。と、石川は心の中で悪態をつく。
『あんたの見解を聞きたいわね。』
「まだ本格的には調べてはいないんですけど・・っていうか学園からの
報告書、保田さんも読みましたよね?」
『つべこべ言わず報告する!』
さては刑事ドラマでも見たなと石川の直感が働いた。
28
:
第二章 点と線
:2002/10/02(水) 20:43
「三人の自殺現場に他者の関与した形跡は見当たりません。」
『根拠は?』
「第一の自殺は昼間授業中生徒達の見ている前で行われました。
科学の実験中、常備されているアルコール液を自らの体に浴びせ
そのままグラウンドに走って行き火を放っています。」
『焼身は苦しいのに・・。』
「二人目は部屋の中で首を吊って死んでいるのを次の日の朝隣の部屋の
生徒によって発見されました。部屋の中の一部始終を監視カメラが
映していました。彼女以外誰も映っていません。」
『あんたの部屋のは取り除いてもらってるからね。』
「知っています。」
ほんとかわいくないわね。と保田が呟く。
『でも監視カメラがあるのにどうして誰も気がつかないのよ。』
「ATMの上についているカメラと同じです。何かあった時のための
カメラです。四六時中生徒全員監視するなんて出来るわけないいじゃ
ないいですか。」
しばしの沈黙。
「続けますよ?」
『もういいわよ。三人目の子も監視カメラがからんでくるんでしょ?』
「はい。」
『その子が部屋から出て行くのが監視カメラに映っていて。その他の生徒
は映っていなかったっていうんでしょ?』
「そうです。」
『甘いわね。もしかしたらその子は誰かから呼び出されたのかもしれない
じゃない。』
「彼女が部屋から居なくなった時間、部屋に居なかったのは彼女だけです。
それも監視カメラで確認されています。』
29
:
第二章 点と線
:2002/10/02(水) 20:56
『監視カメラ監視カメラってまったく。プライバシーなんてあったもんじゃ
ないわね。どうなってんのよその学校。』
石川は生徒達の目のことを死んだ魚の目のようだと吉澤が言っていたことを思い出した。
『連続して起こった自殺の真相を確かめるなんてやっかいな依頼ね。』
保田はため息をつく。
『取り合えず三人に何か繋がりがあったかどうか、あと共通に関わりのある
生徒、教師がいたかどうか。三人の生い立ちなんかはこっちで調べとく。』
「第四の自殺が考えられると思いますか?」
『それはまだ分からない。』
吉澤によろしくと言い残して電話は切れた。
後には無機質な機械音だけが響く。
30
:
小鉄
:2002/10/02(水) 20:58
今日はここまでです。
>23>24さま ありがとうございます。頑張ります。
31
:
名無し○い○ん
:2002/10/04(金) 19:44
小鉄さんって、他にどこかで書かれてるんですか?
はじめてだったら、すごいです!!
おもしろいです。がんばってください。
32
:
第二章 点と線
:2002/10/04(金) 19:44
石川がこの仕事の為に幼い頃から教育されてきたもの
それは『心理学』とりわけ『犯罪心理学』においては高いレベルの
知識を持っている。
流石にプロファイリング(行動科学)とまではいかないが
犯行状況や過去に起こったデータをベースにことの真相を別の角度
即ち、物的証拠や見えてこない犯行動機。そんな時、人間の心理に基づき
調査するのである。
しかしこれは目に見える真実ではないので
そのあり方には疑問の声も多い。
だから石川は実験的なものとして現場に送られた第一号なのである。
『人は少なからず心に闇を抱えて生きてるの。だけどその闇に他人が
気づくことが出来るのはまず不可能に近い。そんな掴み所のない場所
に、これからあなたは踏み込んでいかなくちゃならないのよ。』
この仕事の前に保田から言われた言葉が石川の脳裏をよぎった。
(心の闇。)
石川は握った携帯電話に力を込めた。
33
:
第二章 点と線
:2002/10/04(金) 19:51
その頃吉澤は、日課の逆立ち腕立てを行っていた。
だがその心の中はいつになく落ち着きがない。
広い部屋。ま新しい家具達。
そしてなにより個室に一人きりというのが吉澤にとっては何よりの不安材料だった。
なぜならそれは、ずっと昔世界が灰色だった頃を思い出させるから。
「125、126。」
汗が床に滴り落ちる。
34
:
第二章 点と線
:2002/10/04(金) 19:59
かといって石川の部屋に遊びにいくわけにもいかない。
なるべく一緒に居ないようにしようと石川に言われているからだ。
『一人一人で行動している方が他の人が寄って来やすいし、
それに・・二人でいると気が緩んじゃうでしょ?』
(なんでウチはいつも梨華ちゃんに言いくるめられるんだろう。)
自己嫌悪と寂しさが入り混じり複雑な気持ちで逆立ち腕立てに加速を付けた。
そして突然インターホンが鳴る。
その音に驚いてバタンと仰向けに倒れ込んでしまった。
35
:
第二章 点と線
:2002/10/04(金) 20:07
「はい。」
打ち付けた腰をさすりながらドアを開けると、一人の見知らぬ少女が立っていた。
少女は怪訝そうな顔で吉澤を見上げている。
吉澤も見覚えのないその少女をじっと見つめ返した。
すると少女の頬が赤く染まる。
「あ、吉澤さん・・メガネしてないんですね。」
少女の言葉に内心激しく動揺する。
(やばっ、忘れてた。)
吉澤は少女の腕を掴み無理矢理部屋の中に引き入れる。
少し前のめりになってしまった少女を置いて
机の上に置きっぱなしのメガネを急いでかける。
「い、今お風呂に入ろうとして・・あはは。」
取ってつけた言い訳をする吉澤。
36
:
第二章 点と線
:2002/10/04(金) 20:17
少女はポカンと玄関につっ立ったままだ。
(今ウチは究極に不自然だ。)
だらだらと冷や汗が流れる。
どうしようと思案している時、沈黙にたまりかねた少女が口を開く。
「あのぉ〜、何か吉澤さんが困っていること無いのかと思いまして。」
少女はおどおどと話始めた。
「私、同じクラスの松浦亜弥をいいます。一応クラス委員をしておりまして
先生から世話をしろと言われましたので。」
「せ、世話ぁ!?」
「あ、いえ、世話っ言っても、何か困ったことがあったらお手伝いするっ
ていう意味でして・・・」
吉澤の剣幕に驚いたのか松浦という少女は今にも泣き出しそうになってしまった。
更に慌てる吉澤。
「あ、ごめん、うん、そうか。ウチの為にわざわざ来てくれたんだよね。
でも今の所これといって困ってることはないです、はい。」
37
:
第二章 点と線
:2002/10/04(金) 20:29
吉澤がそう言うと、やっと安心したように松浦は微笑みを浮かべた。
「じゃあ、又何かあったら声をかけて下さい。私この階のつきあたりの部屋に
いますから。」
「えっ・・と松浦さん。丁度今暇してたんだけど、良かったら一緒
にお茶でもしない?」
まるで街中で女の子をナンパするような口調で松浦を誘う。
勿論本人に自覚はない。
しかし予想に反して松浦は首を横に振った。
「ごめんなさい。他の人のお部屋に用事もなく長居しちゃいけないいんです。」
「え?どうして?」
「規則ですから。」
そう言ってニコリを笑うと松浦がドアノブに手をかける。
しかし思い出したかのように振り返ると
「吉澤さん。メガネかけてない方が素敵ですよ?」
吉澤は卒倒しそうになるのを必死で堪えて、笑顔で松浦を見送った。
38
:
小鉄
:2002/10/04(金) 20:33
>31 名無し○い○ん様。気ままに短編集に一つ書いてます。
よかったら読んでみて下さい。
39
:
31
:2002/10/05(土) 19:33
短編も読みました!!すごくよかったです!
あやゃが出てきてますます楽しみです。がんばってください。
40
:
名無しヌード
:2002/10/05(土) 20:21
すごい面白いです。
姐さんの組織がなんなのかも気になりますね。
すごく引き込まれてしまいます。続き楽しみにしています。
がんばってください。
41
:
第二章 点と線
:2002/10/06(日) 19:18
吉澤はその類いまれなる体力と武力の才で
ありとあらゆる武道に精通している。
ビール瓶を両手で握りつぶした。とか、暴走族の集団をたった一人で
壊滅に導いたなど。語り継がれている伝説は数多い。
生身の人間で吉澤に勝る人物は、吉澤の知る限り二人しかいない。
それもどちらとも女性である。
ただ、たった一つだけ苦手とする武道が存在する。
それは『弓道』
吉澤の教育係りだった矢口にいつも指摘された。
『あのさぁ、よっすぃーは確かに的に当たる確立は一番高いんだけど
あまりにもそれにムラがありすぎる。石川と喧嘩した時とか、
ごっつぁんと試合して負けた時なんかまるで当たんないじゃん。』
どうしてウチのことそんなに詳しいんだろうと、検討違いのことを考えていた
のを吉澤は覚えている。
42
:
第二章 点と線
:2002/10/06(日) 19:25
矢口はその小さな体で弓をゆっくりと引く。
体にバランスの乱れは無い。
パンという小気味の良い音と共にまっ白い的のほぼ真ん中に矢が突き刺さる。
『腕の力だけで弓を引いちゃ駄目。体全体と心で引くの。心を静めて。
一つのことに集中する。それが大事。』
(心を静めて、一つのことに集中する・・か。無理かも。ウチ雑念多いし。)
眠りに入る前のほんの少しの間、吉澤はそんなことを考えていた。
43
:
第二章 点と線
:2002/10/06(日) 19:32
三人。
まだ三人。
足りない。
早く救わなければ。
私が救わなければ。
ここは病んでいる。
すべてが病んでいる。
終わらせなくては。
それが私の使命。
この世界に生をうけた理由。
誰にも邪魔はさせない。
そんな人間は『排除』しなければならない。
例えこの手を血で染めることになったとしても・・・
44
:
小鉄
:2002/10/06(日) 19:36
短いですが更新。
>39 31様 ありがとうございます。頑張ります。
>40 名無しヌード様 そう言ってもらえると嬉しいです。これからも
よろしくお願いします。
45
:
名無しヌード
:2002/10/07(月) 16:58
さすがやぐっつあんは、吉の教育係ですね。(w
最後の意味深な言葉が気になります。
ガンガッテください。
46
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/08(火) 19:57
特に何をなく、単調な一週間が過ぎていった。
石川は自殺現場に何度となく足を運んだり、クラスの人間
から話を聞き出そうとしたが、どれも無駄に終わった。
生徒達はクラスメートの一人が自殺したという現実さえも
真剣には受け取っていない。
と、いうよりは、驚くべきことに関心すら持っていないのだ。
『石川さん、明日の三時間目、現代国語から世界史に変更に
なりましたのでお間違いのないように。』
『石川さんはいつも食が細いんですね。』
『ごきげんよう。』
この一週間で石川に向けられたクラスメートからの言葉はたったこれだけ。
何か話しかけても首を傾げて一様にこう言う。
『さあ、私は存じません。』
電動仕掛けの人形を相手にしているような気分になり
石川はうんざりしていた。
47
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/08(火) 20:06
一人残された教室で、石川は豪快にため息をつく。
(このままじゃ駄目。このままじゃ・・・)
なんといっても自分は組織の実験第一号。ここで成功しなければ
後に控えている同じ心理学チームのエージェント達に迷惑をかけることになる。
そのプレッシャーは尋常ではない。保田の顔を潰すことにもなりかねない。
そして吉澤にも、多大な影響を与えるだろう。
あの日、吉澤が仕事を貰って尚且つ誰かと喧嘩をして帰ってきた日。
石川が作ったカレーライスを食べながら吉澤が言った言葉が浮かぶ。
48
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/08(火) 20:17
『梨華ちゃん、この仕事、他の人と組んだ方が良いんじゃない?』
その言葉は少なからず石川を驚かせた。
始めての石川主体の仕事に気をきかせてそう言ったことは分かる。
でもまさか一時的にせよコンビを解消するなどとは、考えてもいなかったからだ。
『随分弱気なんだね、よっすぃー。』
『だって、梨華ちゃんにとって、この仕事ってすごく大事なんでしょ?
それなのにウチが足を引っぱっちゃ後悔しても後悔しきれないよ。』
吉澤はそう言うと物凄い勢いでカレーライスを食す。
そんな、不器用で真っ直ぐな吉澤をみて、胸が締め付けられような
思いがした。
49
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/08(火) 20:35
『ねぇよっすぃー。私が学んでいることってある意味危険なんだって。
一歩間違れば闇に、相手の闇に引きずり込まれかねないから。
他人の心の中を覗こうとする時、まずは相手の心にリンクさせるの。
その人本人の感情に近づくために。』
吉澤は米粒を口許につけながら、真剣に石川を見つめる。
石川はその米粒をつまみ自分の口に入れた。
『私は相手の闇にいつか飲み込まれてしまうかもしれない。だから・・』
吉澤に向けて石川は手を伸ばす。
『だから私の手を握っててほしい。私が自分を見失わないように。
暗闇に引きずり込まれないように。ずっと。それはよっすぃーにしか
頼めないから。』
吉澤は伸ばされた手を力強く握った。
『約束する。この手は絶対離さない。』
吉澤から伝わってくる体温はとても温かかった。
50
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/08(火) 20:47
(ここで私が弱音を吐くわけにはいかない。)
気が付くと教室の中はもうすでに薄暗くなっている。
深呼吸をして立ち上りかけた時、誰かの視線を感じた。
後ろを振り返る前にその誰かが
「何か悩んでらっしゃる?」
と、言葉を発した。
51
:
小鉄
:2002/10/08(火) 20:52
更新。
>45 名無しヌード様 やぐっつぁんにしようかどうか迷ったんですが。
やっぱりやぐっつぁんにしました。(なんて意味不明なコメント。)
52
:
名無しナース
:2002/10/10(木) 21:31
吉カッケ〜!!謎がたくさんありますが、これからですね。
最近小鉄さんの更新をすごい楽しみにしています。
がんばってください。
53
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/12(土) 20:12
完全に振り返ると、教室のドアの前の少女と目が合う。
「そんな大きなため息、廊下まで聞こえましてよ?」
「ああ、松浦さんか。」
見知ったクラスメートの顔に安堵する。
松浦は二コリと少し笑い、自分の席へと向かう。
「忘れものをしたので取りに戻りましたの。」
「そう。」
石川はその時、何か少し自分が戸惑っていることに気づく。
松浦は机の中からノートを取り出しパラパラとめくる。
54
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/12(土) 20:21
「電気、付けようか?」
石川の言葉に松浦の動きが止まる。
石川もその背中から視線を外すことが出来ないでいた。
「やっぱり他の場所から来た方は違いますね。」
ポツリと松浦が言う。
「お話の仕方とか、立ち振る舞いとか。何ていうかちゃんと心が存在
しているように思います。」
その時になって始めて、さっき感じた戸惑いの理由が分かった。
(ここに来て、ここの生徒とこんなに会話したの始めてだからだ。だけど・・・。)
「心が存在しているってどういう意味?」
今松浦がどんな表情をしているのか、石川は無償に気になった。
55
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/12(土) 20:30
「すみません。私、喋りすぎちゃいましたね。」
「喋りすぎちゃいけないってそれも規則?」
松浦は振り返ったが、暗い教室の中ではその表情をハッキリと読み取ることが出来ない。
「吉澤さんにも同じこと言われました。」
(え?よっすぃー?)
軽く動揺する石川。
「そんなんじゃ友達になれない・・・じゃん。って。」
『じゃん』などという言葉は松浦の中には存在しないらしい。
しかし松浦の声は心無し弾んでいる。
「私あまり吉澤さんと話したことないから。」
いけしゃあしゃあと石川は嘘をついた。
56
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/12(土) 20:36
「折角お隣の席なのですから、お友達になってはいかがですか?
とても楽しい方ですよ?」
「はぁ・・機会があったら・・・。」
石川はそう言うにとどめた。
(確かに楽しいけど。ちょっと抜けてるんだよね、よっすぃーって。)
それではご機嫌よう。と、石川に声をかけて、松浦は暗い廊下に消えて行った。
「あっ、結局心が存在してるっていう意味聞きそびれちゃった。」
今度は廊下に聞こえないように小さくため息をついた。
57
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/12(土) 20:40
そんなことなど露知らず、吉澤は自分の部屋の中で
深い眠りについていた。
文字通り爆睡である。海底に沈む沈没船のように。
そして夢を見ていた。
58
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/12(土) 20:46
何故か吉澤はクローゼットの中に閉じ込められている。
クローゼットの外から漏れてくる光を頼りに目を細めて向こう側を覗いてみると。
そこには『天使』がいた。
顔は見えないが、背中にはまっ白な大きな羽。
そして『天使』は、嗚咽を漏らして泣いている。
顔を見ようと、泣いている訳を聞こうと
体を動かそうとするが動かない。
59
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/12(土) 20:54
吉澤はそれでも、声にならない言葉を発しようと口を開ける。
『どうして泣いてるの?その羽は折れてなんかいないじゃないか。
それで天国に帰ることが出来るんでしょ?!それとも・・・』
ナクシタノハ、ハネジャナインダネ?
だとしたら知ってる。ウチは知ってる。
それを。
どこに隠してあるのかを。
だからここから出して。
話を聞いて。
誰かここから・・・・誰か・・
60
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/12(土) 21:01
ブーン、ブーンと頭の上で音がする。
無意識にそれに手を伸ばし、無意識にボタンの一つを押す。
「あいっ。こちら吉澤。」
『寝てたでしょ?』
そう言ったのは勿論天使なんかじゃない。
「・・・・。」
『今寝たら夜眠れなくなるでしょ!』
相棒のキンキン声に幾分目が醒める。
『アー、ユー、ハッピー?』
「そういう時は、アー、ユー、オーケー?でしょ?梨華ちゃん。』
そう。天使なんかいない。
61
:
小鉄
:2002/10/12(土) 21:04
コーシン。
>52 名無しナース様。ありがとうございます。そう言っていただけると
励みになります!
62
:
名無しナース
:2002/10/12(土) 23:18
松浦の動きが気になりますね。フムフム。。
しかし、不思議な学校ですな。
あ!不思議だから、吉達が送り込まれてるんですよね。(w
続き楽しみです。
63
:
名無しナース
:2002/10/12(土) 23:18
今日始めて読みました!
面白いです!!
がんばってください!!
64
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/14(月) 18:20
ここの所毎日通っている屋上までの階段が
吉澤にとってはひどく長いように感じる。
いつものように三段抜かしのハイスピードで上ったりもせず
一段一段黙々と踏みしめながら上る。
めずらしく神妙な面持ちで------
屋上入り口の扉の前で、大きく息を吸って
ゆっくりと扉を開けると
そこには松浦亜弥がいた。
65
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/14(月) 18:28
松浦はフェンスに手をかけ、空を見上げている。
「ごめん、遅くなった。」
吉澤は普段と変わらぬ態度を保とうと努めている。
「良い天気だね。あ、あの雲あれに似てる、えーと、なんだっけ
ほら、タラコ唇で毛が三本のやつ。」
吉澤は横から松浦の顔を覗き込んだ。
松浦は吉澤と視線を合わせないままクスリと笑う。
勿論『お化けのQ太郎』なんて、そもそも松浦は知らない。
66
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/14(月) 18:42
松浦と親しくなったのはつい最近。転校してきた次の日
お昼を食べようと屋上に上がると先客で松浦がいた。
前の日に面識があるので軽い気持ちで吉澤は声をかけた。
『こんにちは。松浦さん昨日はどーも。』
少し驚いた表情を見せ、松浦は頭を下げた。
『松浦さんもここでお昼?』
『違います。』
『ふーん。ま、いいや。』
どかっと地べたに座り込むと持参のべーグルを食べ始める。
松浦はそんな吉澤を目を丸くして見ていた。
『ん?松浦さんも食べる?』
『い、いいえ。』
『お昼は食べたの?』
『はい。』
『ねぇ、もっとこう、長く会話出来ない?さっきから単語しか喋ってないじゃん
あ、もしかして人と長く喋るなって規則あるの?』
『まさか。』
その時初めて松浦は表情を緩めた。
『吉澤さん、私昨日言いましたよね。メガネ掛けてない方が素敵だって。』
それから毎日、二人は屋上でお昼を食べるようになった。
67
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/14(月) 18:54
松浦はまだ空を眺めている。吉澤も一緒になって眺めた。
「空の向こうには何があるんですか?」
「そりゃ、宇宙でしょ。」
「じゃあ、宇宙の向こうには?」
予想外の質問に、吉澤は頭を捻る。
(宇宙の向こう?宇宙って果てがあるのか?飯田さんなら分かるかも
しれないけど・・・。)
吉澤の頭の中では惑星が飛び交っている。
「ごめん。分からないです。」
吉澤はすまなそうに頭を下げた。
「吉澤さんてやっぱり良い方ですね。」
頭を上げると、松浦が優しい瞳で吉澤を見ていた。
68
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/14(月) 19:04
「さっ、お昼いただきましょう。」
そう言うと地面に敷物を広げる。
「あ、うん。」
松浦に従い、吉澤も敷物の上に腰を下ろし
お昼ごはんを食べ始める。
しばらく二人は黙々と食べていたが、突然松浦が話しはじめた。
「さっきの質問、実は昔母に聞いてみたことがあるんです。
ただの子供の好奇心だったんですけど・・・」
松浦の箸が止まる。
「だけど母は、そんなこと考える必要ないって言いました。
そんな無駄なこと考え始めたら、堕落した人生を送ること
になるって。」
「ンガッ」
吉澤はべーグルを喉に詰まらせ咳き込む。
すかさず松浦が牛乳パックを手渡した。
「サンキュー、助かった。」
松浦は目を細める。
69
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/10/14(月) 19:11
「それにしても松浦さんのお母さん、ひっでーこと言うね。」
一息ついて吉澤は言葉を吐き出す。
「それが私達にとっては『普通』で『常識』ですから。」
松浦は又、空を仰ぐ。
「だけど吉澤さんはいつも私の質問に真剣に考えて答えてくれる。
私なんかのために。それが私、すごく嬉しいんです。」
空を見上げたまま、空に向かって松浦は話した。
『よっすぃー、今は友達ごっこしてる暇なんかないの。』
吉澤はべーグルの入った袋を、ぐしゃりと握りつぶした。
70
:
小鉄
:2002/10/14(月) 19:15
コーシン。
>62 名無しナース様 これから色々と・・・。
>63 名無しナース様 はじめまして!これからもよろしくお願いします。
71
:
名無しお尻
:2002/10/15(火) 04:45
吉は、いつもベーグル食べてるんで、明日ベーグル買ってこようっと。
(*´▽`)人(´〜`O*)
ここの、あやゃがきになってしょうがありましぇん。
続き楽しみにしています。
72
:
名無しお尻
:2002/10/24(木) 21:27
謎の松浦さんが気になります。
続き楽しみにしています。
がんがってください。
73
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/11/03(日) 22:17
吉澤は、頭の隅に追いやっていた昨日の石川からの電話を思い出す。
「で、何?随分久しぶりに声を聞いたような気がするよ。」
『私の声なら毎日聞いてるでしょ?同じクラスなんだから。』
「出席を取る時の『はい。』と、教科書を読ませられてる時ぐらいじゃん。」
『ちゃんと朝の挨拶もするでしょ?『おはよう、吉澤さん。』って。』
「まぁいいや。何かあった?」
吉澤は軽く伸びをする。
『単刀直入に聞くけど。よっすぃー松浦さんと仲良いの?』
「はっ?松浦さんって松浦亜弥さんのこと?」
『そう。クラス委員の松浦さん。』
「どうして・・」
『いいから質問に答えてよ。松浦さんと個人的に付き合いがあるの?』
たまに石川は、吉澤に対して詰問口調になる時がある
吉澤はあまりそれが好きではなかった
74
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/11/03(日) 22:36
「仲が良いっていうか、お昼を屋上で一緒に食べるだけだよ。」
『屋上で?松浦さんが屋上に来たの?それともよっすぃーが誘ったの?』
「居たの。一人で。で、ウチはその時は声をかけただけ。そしたら次の日も
居たからお昼一緒にどうですかって聞いたの。ただそれだけ。」
それから暫く石川は何も言わなかった。
吉澤も何を言ってよいのか分からなかったので黙っていた。
『それで、松浦さんにそこに居た理由は聞いたの?』
石川の声音が若干高い。これは興奮した時の石川の癖だ。
「ちょっと待ってよ。松浦さんがたまたま屋上に居ただけで
今回のことに何か関係があるとでも言うつもりなの?」
『たまたま?私言ったよね。人が自殺した場所でわざわざお昼を
食べようなんて奇特な人は居ないって。』
「その時は松浦さんご飯食べてなかったよ。」
『そういうことじゃなくて。あそこに足を向けるって事自体に
問題があるの。』
「梨華ちゃんちょっとそれは飛躍しすぎなんじゃない?クラスの中に
一人位クラスメートの死を悲しむ人間がいたっておかしくないじゃん。
松浦さんはきっと」
『よっすぃー、今は友達ごっこしてる暇なんかないの。』
その言葉の意味を吉澤は理解する事が出来なかった。
75
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/11/03(日) 22:50
「友達ごっこって、それどういう意味?」
『私達はここに派遣されてるの。これは仕事なんだよ?情なんかに
流されたりしてる場合じゃないの。』
吉澤は背中に冷たいものを感じた
『少しでも違和感を感じることがあったら、それを追求しなくちゃ駄目。
『真実』はそういう所に隠れているの。よっすぃー、くわしいことを
うまく松浦さんから聞き出して。』
「それも保田さんから教わったことなの?」
『え?』
「随分ひどい言い方するんだね。松浦さんからうまく聞き出して?
情に流されている場合じゃない?何だよそれ。」
吉澤は完全に頭に血が上っていた
「これは仕事なんだって、そんな事十分分かってるよ。ウチだって
一応エージェントだからね。だけど何もそんな事言う必要ないじゃん
松浦さんが自殺した三人の後ろで糸を引いていたとでも?」
『違うよ。そおいうこと言ってるんじゃなくて。ただ・・』
「情報を集めろ。全てを疑ってかかれ。」
吉澤は今にも携帯を握りつぶしそうだった
「すべての感情を捨てろ。だったね。大丈夫。忘れてなんかいないよ。
ウチ等は本当は存在しないはずの人間だもんね。」
『よっすぃー・・・。』
76
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/11/03(日) 22:59
「心だって持っちゃいけないんだよね。友達がほしいなんて思っちゃ
いけないんだもんね。」
『よっすぃー、ちゃんと私の話を聞いて。』
「もう聞いたよ。ウチは松浦さんに聞けばいいんでしょ?
『あなたはどうしてここへ来たんですか?』って。」
もう何を自分が言っているのかさえ吉澤は分からなかった
「『よくこんな場所でお昼なんてとれますね。』って。」
『怒るよ。よっすぃー。』
今度は、いつもより一オクターブ低くなった石川の声が耳に響く。
「どうぞ、お好きなように。」
そう言うと吉澤は力を込めてボタンを押した。
バキッと音がして携帯にヒビが入る。
何故自分がこんなに憤慨しているのか、吉澤自身にも分からなかった。
77
:
第三章 静かな日々の残骸を。
:2002/11/03(日) 23:02
「吉澤さん?」
松浦は急に黙り込んでしまった吉澤を心配して声をかけた。
「あ、ごめん。何でもない。それよりさ・・」
(梨華ちゃんは正しい。いつでも正しい。)
呪文のように心の中で繰り返す。
「松浦さんに聞きたいことがあるんだ。」
吉澤は握りつぶした紙袋を、遠くへと投げた。
78
:
小鉄
:2002/11/03(日) 23:06
間があいてしまってすみません。
更新です。
>71 名無しお尻様 ベーグルはおいしかったですか?自分の回りには
売っていないのでうらやましいです。
>72 名無しお尻様 遅くなってすみません。頑張ります。
79
:
名無しよっちぃ
:2002/11/05(火) 19:00
待っていました!!
続きが読めてうれすぃー(0^〜^0)
松浦さんがいよいよですね。
80
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/07(木) 20:01
吉澤は生まれて間もなく、山間にある小さな孤児院の前に
捨てられているのを院のシスターによって拾われた。
汚いダンバボールの中に入れられていたその赤ん坊は
泣きもせずただ天を静かに眺めていた。
他にダンボールの中に入れられていたのは、一通の手紙と
ボロボロの天使の人形。
手紙にはたった一行
『この子の名前はひとみです。』
苗字は院長がつけてくれた。
81
:
第四章 Curtains
:2002/11/07(木) 20:11
吉澤は赤ん坊の頃から育てられたにもかかわらず
孤児院の誰にもなつこうとはしなかった。
いつも一人で天使の人形を抱え、部屋の中から外を、空を
一日中飽きもせずに眺めていた。
吉澤は礼拝や聖書の朗読を事の他嫌がった。
無理矢理それらをやらせようとすると、激しく暴れた。
その時まだほんの幼児だったのだが、その力は
シスター達の手をわずらわせる程強いものだった。
そんな吉澤を次第に周囲は嫌悪するようになる。
自分達とはどこか違う吉澤のことを、院の人間たちは異物として扱った。
実際吉澤が近づくだけで泣き出してしまう子供もいた。
吉澤にとって、世界は灰色だった。
白でも黒でもなく、灰色だった。
たった三、四歳の子供の瞳には何も映されることはなかった。
82
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/07(木) 20:17
そんな日々の中で唯一心安らかになるのは
天使の人形と心の中で会話をしている時。
その人形は吉澤が語りかけるといつでも優しく、温かく
語り返してくれる。
見たことのない母親のように。
本物の天使のように。
吉澤にとってはそれがすべて
その人形だけが鮮やかに色彩を放っていた。
83
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/07(木) 20:24
そんなある日。吉澤に苗字を与えた院長は、誰も居ない礼拝堂の
片隅で、人形を抱えて眠り込んでいる吉澤を見つける。
『こんな所で眠っていては風邪を引きますよ。』
その小さな肩を優しく揺り動かす。
『皆はお部屋で楽しく遊んでいます。あなたも戻って皆と』
『嫌だ。』
その、子供とは思えないするどい眼光に、院長は一瞬息を呑んだ。
『皆嫌いだ。すべて消えてしまえばいい。』
ステンドグラスで飾り付けられているその礼拝堂の中で
神聖な場所であるその場所で吉澤は、背徳にも近い言葉を
ハッキリと言い放った。
84
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/07(木) 20:36
『私はあなたが、この世界を恐れているように思えます。
何があなたをそうさせるのでしょう?まだこの世に生を受けてから
ほんの一瞬しか存在していないのに。』
院長は自分がほんの年端もいかない子供と話をしているということを
忘れて話し続けた。
『あなたは確かにご両親から捨てられていました。でももしかしたら
その罪を改め、ご両親はあなたを迎えに来るかもしれません。それが例え叶わない
としても、それは神の導き。その一つ一つは意味のあることなのです。』
驚いたことに、その時吉澤はここに来て始めて笑った。
『神様なんて目には見えないのに。皆はどうして信じることが出来るんですか?』
院長は暫くその笑みに見惚れた。
あまりにも無邪気で清らかなその笑みは
まるで聖母マリアのように見えたから
85
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/07(木) 20:40
だが、勿論。そんな吉澤に平穏が訪れるはずもなく
周りとの確執は次第に大きなものになっていく。
そして、運命の輪はカチリと音をたてて廻りはじめる。
それが神への冒涜の為への罰なのか
慈悲深い神からの救いの手だったのかは
神のみぞ知る。
86
:
小鉄
:2002/11/07(木) 20:44
更新しました。
>79 名無しよっちぃ様。 松浦さんいよいよでなくてごめんなさい。
ちょっとお休みです。
87
:
(0`〜´0)よすボーン
:(0`〜´0)よすボーン
(0`〜´0)よすボーン
88
:
名無しよっちぃ
:2002/11/10(日) 18:43
お!続きがタノシミ〜タノシミ〜
89
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/12(火) 19:26
吉澤が7才になった年のクリスマスの朝
目を覚まし起き上がると、窓の外はまっ白い雪で埋め尽くされていた。
吉澤は雪が好きだった。
まっ白で冷たくて、静かで。
雪の中に寝転んでいると、自分もまっ白に清められていく気がする。
このまま雪に埋もれて、何もかも消えてしまえばいいのにと
いつも考えていた。
よくもまぁ7年間も生きているもんだと雪を見ながらそう思った。
院生達は日に日に増していく吉澤の腕力を恐れた。大の大人が束に
なっても吉澤には敵わない。
その力のせいで院の中では吉澤が悪魔の子だという噂が広まっていた。
ある日そんな吉澤を恐れてか、両手と両足に院長は重りをつけさせた。
鉄で出来たそれは、つけられたその日から外すのを許されたことはない。
吉澤は特にそれを苦痛とは思わずに普通に生活していた。
どちらかというとこの方が生活しやすかった。
自分でもありあまる力を持ち余していたからだ。
90
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/12(火) 19:41
暫く外を眺めてから。なんだかやけに周りからの視線を感じる。
『何だよ?』
だが院生達はただニヤニヤするばかりで何も言わない。
面倒くさくなり布団を畳もうと視線を下に移した時
吉澤は一瞬身を固めた。
いつもあるはずの場所に、あの人形がない。
動悸が激しくなる。
冷や汗が噴出してきた。
視界がぐるぐると回り始める。
『何は探してるの?』
院生の一人がその時になって初めて声をかけてきた。
その声には笑いが含まれている。
『お前が、隠したのか。』
鋭く放たれたその言葉に相手がひるむ。
だがまたすぐ別の院生が前に出てきた。
『きっとサンタクロースがゴミと間違えて持っていったんだ。』
それに他の者達の声が重なる。
91
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/12(火) 19:48
『大体悪魔の子が何で天使の人形なんて持ってるんだよ。』
『きっとあの人形の中には悪魔が入っているんだ。』
『そうだ、だから神様が処分したんだ。』
『お前も居なくなれよ!この神聖な場所から居なくなれ!!』
『出て行け!!お前なんか生まれてきちゃいけないんだ。
この世に存在しちゃ駄目なんだ!!』
いつの間にかその部屋の中の人間全員が吉澤に向けて罵詈雑言を吐いた。
シスター達でさえ入り口に集まり黙ってそれを見ている。
92
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/12(火) 19:55
『何ごとですか!!』
院長がその中に割って入ってきた。
騒ぎの中心に吉澤がいることを確認すると、あからさまに
げんなりとした表情を見せた。
『またあなたですか。』
その言葉に吉澤の中の何かが切れた。
『まったくあなたは一体どれだけ騒ぎや問題を起こせば気が済むのです。
幸い事情を知ってあなたを引き取りたいという人が現れました。
もう少ししたらここにおいでになるので、今のうち荷物をまとめなさい。』
その時部屋中に歓声が沸き起こった。
まるで自分達が戦いの勝利者のように。
自分達の手で悪魔を地獄においやったと、神への賛美に酔いしれた。
93
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/12(火) 20:02
カチリと音がして、次にゴトリと何か重いものが床に落ちる音が
吉澤の周りにいた数人の耳に届いた。
それを見ていたものは即座に口を閉ざした。
異変に気づいたものから静寂の波が部屋中に広がる。
『どこ・・にやっ・・た。』
静かに、だがはっきりと悪魔が口を開く。
その食いしばった口許からは一筋の血が流れている。
『それを外しても良いとだれが許可しました!!はやく嵌めなさい!!』
院長が絶叫に近い声で叫ぶ。
院生達は吉澤のあまりの眼光に今までに感じたことのない
恐怖に体を縛られていた。
94
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/12(火) 20:06
『もう一度・・言う・・』
吉澤はゆっくりと一歩前に出る。
『あれを・・・』
一番近くにいた人間を力を込めて殴り倒した。
『どこへやったぁぁぁあああああ!!!』
その声はまっ白な雪に吸収され
天へも地へも届くことは無かった。
95
:
小鉄
:2002/11/12(火) 20:09
更新です。
この話おもしろいんだろうかと悩み始めた今日この頃。
>88 名無しよっちぃ様 どうでしょうか?(何が?)
96
:
名無しよっちぃ
:2002/11/13(水) 14:21
面白いです!!悩まないで下さい!!
ちっちゃい吉を、抱きしめたいです。
わすが、引き取る!!(なんで?w)
97
:
名無しよっちぃ
:2002/11/14(木) 13:12
続きが楽しみです。
実は密かにいつも楽しみにしています。
98
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/15(金) 11:40
さあ、立ち上がれ。神の御子よ。
その絶対の信仰を剣に。
その燃え盛るばかりの正義を盾に。
その一振りは地を割り、天をも切り裂く
何も恐れることは無い。
悪魔はその薄汚れた血塗られた瞳と、岩をも噛み砕く
鋭い牙を剥き出しにし、お前達に襲い掛かるだろう
だが恐れることは無い。
その剣を、盾を『ソレ』に向けるのだ。
みなの心を一つにし、強く念じよ。
『悪しき者よ去れ!』と。
さすれば道は開かれ
地獄へ再び落ちた悪魔は
二度と蘇ることは無い。
そして永遠の楽園がお前達に約束される。
99
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/15(金) 11:47
まるでそれは地獄絵図のような光景だった。
鼻から血を噴出しのた打ち回る者。
泣き叫びながら罵る者。
ピクリとも動かず壁にもたれている者。
その中央には一人の少女が立ち尽くしている。
切り裂かれた天使の人形を片手にブラ下げながら。
『何てことを・・・』
院長は十字架を胸の前で握り締めながら
震える声で言った。
『輪だけが・・天使の輪だけが見つかりません。』
顔に無数の血痕を残しながら吉澤は焦点の合わない目で呟いた。
100
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/15(金) 11:56
『私には分かっていました。あなたが頑なに信仰を持とうとしなかった
理由を。それはあなたが悪魔の使いだからなのです。』
『輪・・がないと何処にも行けない。翼だけじゃ天国へも入ることが
赦されない。』
『だけど私達は屈しません。信仰がある限り、正義がある限り。
悪魔に魂を奪われたりはしません。絶対にです!!』
吉澤はゆっくりとした足取りで院長に近づいた。
『翼を失っても。『印』があれば仲間が迎えに来てくれる。でも
『印』を失ってしまったら・・・ずっと一人ぼっちで・・。』
院長は握っている十字架を吉澤に向けた。
救いを求めて。神が目の前悪魔を葬ってくれますようにと。
願いを込めて。
101
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/15(金) 11:59
『地獄へ還りなさい!!!』
吉澤は院長の持つ十字架をもぎ取った。
そしてその首に手を伸ばす。
『消えてなくなれ。』
102
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/15(金) 12:11
だが吉澤の意に反して、その腕が宙で止まる。
『もうそのへんにしとき。』
思わず吉澤は声のした方を振り返ると
そこには見慣れない二つの顔が並んでいた。
一人は大人の男。髪の色は金髪で濃いサングラスをかけている。
もう一人は黒く長い髪を携えた少女。
少女は目を閉じ口の中でブツブツと何か呟いている。
『大体あんたもあんたやで。こんなガキ掴まえて、お前は悪魔の使いだ。
なんてどういうこっちゃ。』
男は院長に顔を真っ直ぐに向け吐き捨てるように言った。
吉澤は腕に力を入れたがどうしたわけかピクリとも動かない。
『飯田。もうええで。』
途端に腕が軽くなり、下へと降ろされる。
そう、自ら降ろしたのではなく。『降ろされた』のだ。
103
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/15(金) 12:23
『こいつが悪魔の使いなら、あんた方は神の使いか?アホらし。
たった一人にこんだけ大勢でよってたかって。お前が先、手出したんや
ないんやろ?』
初めてその男が動いた。そして吉澤の頭にポン、と手をのせる。
『キレイごと並べたって世の中誰も救われへん。涙を流した人間の
心が綺麗だって限らへん。』
男は二コリと吉澤に微笑みかけた。
『飯田、こいつの捜してるもん何処にあるんか分かるか?』
飯田を呼ばれた少女は又目を閉じた。
そしてゆっくりとその腕が上がり一点を指さした。
その指は閉ざされたクローゼットを指している。
吉澤の体が条件反射的にそこへ向かおうとした。
だが男は吉澤の両肩を強く掴んだ。今までに経験した事のない程の
強い力だった。
『取りに行ったらあかん。』
男はハッキリとそう言った。
104
:
第四章 Curtains Up
:2002/11/15(金) 12:37
『よく聞くんや。この世には神さんなんてもんはおらん。天使も悪魔や
そんなもんは全部人間が創った御伽噺や。愚かな人間の偶像にしかすぎん。』
いくら振り払おうとしても掴まれた両肩が解放される気配は無い。
『偶像に頼ってしまったら。それ一個しか信じられんようになる。他の
もんが視野に入らなくなる。今のお前みたいに。』
吉澤は自分の両目から何か温かいものが流れていることに気付く。
『離せ!!』
吉澤は生まれて初めて恐怖というものを感じていた。
何故視界が霞むのか。
何故この男の腕を振り払うことが出来ないのか。
『俺達はお前を向かえに来たんや。』
吉澤の動きが止まる。
『弱い心はみなここに置いてけ。ええか、吉澤。』
男は初めて吉澤の名前を口にした。
『天使なんて、おらん。』
吉澤の手からボロボロの人形がすべり落ちた。
105
:
小鉄
:2002/11/15(金) 12:44
更新です。
>96 名無しよっちぃ〜様 よかった(涙)一人でも読んでくる人がいるなら
頑張れます!
>97 名無しよっちぃ〜様 ありがとうございます。ちょっと自信喪失していたの
で嬉しいです。これからも読んでやって下さい。
106
:
名無しよっちぃ
:2002/11/15(金) 15:48
私も、読んでいます。
でも、なかなか書き込めなくって…。ガンガッテください!!
107
:
管理人
:2002/11/15(金) 21:02
管理人は、基本的にレスしないことにしているので
書き込まなかったですが。。。。。
私は、小鉄さんの更新を非常に楽しみにしています。
自信持ってがんばってください!!ヽ(^▽^)人(0^〜^0)ノ
108
:
オガマー
:2002/11/16(土) 08:02
初めてレスします(w
続き楽しみにしていますよ。
よちぃがどんな経緯で…
マターリ待ってますw
109
:
名無しよっちぃ
:2002/11/16(土) 21:36
すごく面白いです。
私は、続きが気になって気になってしょうがありません。
小鉄さんがんばってください。
110
:
第四章 Curtains UP
:2002/11/18(月) 20:03
『ああ、それは石川が悪いは。』
あっさりと保田は言った。
「そう言われると思ってました。だけどあの時はテンパってて・・。
もしかしたら何か掴めるんじゃないかと思うと止まらなくて。」
『何をそんなに焦っているの。もう少し冷静になりなさいよ。』
石川は唇を噛んだ。
『いくら吉澤が相手だったからって、そういう対処はまずかったわね。
人は一人一人人格が違うんだから。その相手に見合った会話術を
心がけないと。』
「すみません。」
『まあねぇー、あんたの気持ちも分からなくはないけど。プレッシャー
に押しつぶされそうなんでしょ。』
「いえ、そんなことは・・」
『あんたの考えてることなんてすべてお見通しよ!!』
「保田さん・・うるさい。」
『あら、失礼。』
111
:
第四章 Curtains UP
:2002/11/18(月) 20:18
『でも図星でしょ?確かにあんたは私達のチームの初めての現場派遣
エージェントだけど、だからといって私達の将来をあんたが握ってる
なんていうんじゃないでしょうね。』
「え?」
『自惚れんのも大概にしなさい。』
思いがけない厳しい保田からの言葉に、石川は身を硬くする。
『例え今回の任務がおもうようにうまくいかなくても。私達にはさほど
ダメージは無いは。それを参考に次のステップに進むだけよ!』
「保田さんってポジティブですね・・。』
『当たり前田のクラッカーよ!!だからね、あんたはあんたのペースで
仕事を進めて行きなさい。』
保田の優しさが石川に伝わって涙が出そうになる。
『あっ、そうそう追加の資料あんた宛に送っといたから。
それから・・』
「あ、あの、保田さん。」
話続けようとする保田をあわてて制する石川。
112
:
第四章 Curtains UP
:2002/11/18(月) 20:28
『何よ色黒。』
「色黒ってなんですか。これは生まれつきなんだからほっといて下さい。」
石川はそう文句を言うと一つ息を呑む。
「励ましてくれてありがとうございます。」
『っかぁー。誰も励ましてなんかないわよ。バ、馬鹿ね。』
きっと携帯の向こうでは照れ笑いをしているだろう保田を想い
石川はクスリと笑った。
保田は咳払いを一つする。
『続けるわよ?前の資料には載っていないんだけど。その学園に
どうやらステューデントカウンセラーってのがいるらしんだわ。』
「初耳ですね。」
『あんたそれくらい分かっときなさいよ。それで、私からの指示。
そのカウンセラーと接触すること。慎重にね。相談をしにきた
生徒の中で自殺した人物が来ているかもしれないから。』
「はい。」
石川は真剣な顔で頷く。
113
:
第四章 Curtains UP
:2002/11/18(月) 20:52
『あとは、ちゃんと吉澤と仲直りすること。あんたの言い方が悪かったんだから。』
石川は返事をしない。
『あの子は人一倍感受性が強いんだからね。自分が悪い人だと
思った人間には力でねじ伏せる事が出来るけど。その他の人間の
心の領域に入り込むことを、あの子は誰より嫌うから。』
「よっすぃーは優しすぎるんです。」
優しすぎるから、私はよっすぃーを選んだ。
『そう、吉澤は優しすぎる。』
本当はこの仕事に、引き込むべきではなかった。
でも私はよっすぃーじゃないと駄目な理由がある。
駄目 ナ 理由 ガ 在ル。
114
:
第四章 Curtains UP
:2002/11/18(月) 21:17
ズキンと胸の辺りが痛む。
「もう一度よっすぃーにちゃんと話してみます。今度はきちんと
説得してみせます。」
『その必要は無いと思う。』
「どういう・・こと・ですか?」
『きっともうその松浦って子に、あんたに言われた通りに質問してるはず。』
「何で、そんなこと・・。」
『あの子はあんたのことだけは完璧に信用してる。微塵の疑いもなくね。
例え誰を犠牲にしようとも、あんたの事だけは守る。』
石川の胸の痛みが増していく。
『言ったでしょ?すべてお見通しだって。』
少し、違います。保田さん。
『いい、仲直りするのよ?この事は祐ちゃんには言わないから。』
信用じゃ、無くて。呪縛なんです。
『ちょっと、石川?聞いてるの?!』
石川の胸の痛みは、今や全身に広がっていた。
私が呪縛をかけているんです。
離れないように。
何処へも行かないように。
「聞いて・・ますよ。」
『何か変よ、石川。』
「大丈夫ですっ・・てば、それじゃ。」
石川は携帯を急いで切った。
115
:
第四章 Curtains UP
:2002/11/18(月) 21:31
フラフラと立ち上がり、ベットへと倒れ込む。
その息は荒い。
頭の中では傷ついた吉澤の顔が回っている。
「ごめ・・ごめん・・ね。よっ・・すぃ・・。」
石川の感じている罪悪感は、今や波となり本人を襲う。
もう完全に閉じたはずの傷口から、ドクドクと血液が流れ出る。
否、実際には血などは出ていない。
石川の、封印したはずの記憶が流れ出ているのだ。
「よっ・・すぃ・・。」
薄れ行く意識の中、石川は点滅する携帯電話の液晶を
眺めていた。
『吉澤ひとみ。』
だが石川の意識は、混濁した闇の中へといざなわれる。
石川はゆっくりと、二つの瞳を閉じた。
116
:
小鉄
:2002/11/18(月) 21:38
更新しました。
>106 名無しよっちぃー様 初レスありがとうございます。嬉かったです。
>107 管理人様 すいません・・。心配おかけしました。これからもよろ
しくお願い致します(感涙)
>108 オガマー様 おー。オガマーさんだぁー。(嬉
>109 名無しよっちー様 本当に皆様温かいです。より一層頑張らせて
頂きます!
117
:
オガマー
:2002/11/19(火) 00:33
おお!ますます惹かれます・・
よっすぃーと石川さんに何があったんだろう。
118
:
名無しよっちぃ
:2002/11/20(水) 09:29
吉の、過去と梨華ちゃん。どう繋がってるんだろう?
いろいろ考えてしまいます。
でも、おみとうしのヤッスーって…。
119
:
名無チュウ
:2002/11/26(火) 07:17
謎が多いですね。続きが楽しみです。
120
:
第五章 咲かない華
:2002/12/03(火) 20:35
狭く暗い部屋の一室。
母と子は虚ろに対峙していた。
『どうして生きているのがあなたなの?』
これ程までの狂おしい想いを。完璧なまでの想いを、
この広い(狭い?)世の中で
一体どれだけの人間が持つことを許されているのだろうか。
『お前はあの人じゃない。』
心が、体が、引きちぎられそうになる程の愛(愛?)を。
『あの人が存在しない世界に。私が存在する理由が見つからない。』
そこには疑心も欺瞞も存在しない。
感情さえも存在しない。
121
:
第五章 咲かない華
:2002/12/03(火) 20:40
『お・・母さん。私の事・・嫌い・・なの?』
うち震える幼い声。
母はうっすらと笑いを浮かべ、持っていた包丁を
自分の首へといざなう。
『お母さん!!』
無意識に体が動き、子供は母からそれを奪おうと必死で抵抗する。
『!!』
体の一部が焼けるように熱くなり、
子供は思わず手を離した。
自分の胸から滴る血液を
子供はただ眺めていた。
その滴る血液が
別の場所から流れてきた血液と混ざり合う。
122
:
第五章 咲かない華
:2002/12/03(火) 20:43
狭く暗い部屋の一室。
その混ざり合ったまっ赤な血だまりだけが
鮮明に鮮やかに色彩を放つ。
これは石川の遠い遠い記憶の中の
解ケ 無イ 呪縛
123
:
第五章 咲かない華
:2002/12/03(火) 20:46
止まない雨は無い。
時は過ぎていく。
過去には戻れない。
未来の事は分からない。
痛ましい記憶は輝かしい思い出の中へと消えていく。
それが正論。
生きていく為のなぐさめ。
けれども。
ケレドモ。
咲カナイ 華ハ 在ル。
124
:
第五章 咲かない華
:2002/12/03(火) 20:53
路地裏にうずくまり、ポツポツと降り注ぐ雨に身をゆだねる。
胸からはまだ、生暖かい血液が流れ出ていた。
『お前ここで何してんねん。』
ゆっくりと顔を上げると、見知らぬ男が
傘をさして立っていた。
『ちょっ、おま、血だらけやないかい!?どないしたん!?』
男は子供を急いで抱き上げた。
『こりゃあかん。すぐ病院行かな。』
『イ・・ヤ・・。』
男の温かい体温を感じ、急激な眠気が襲う。
125
:
第五章 咲かない華
:2002/12/03(火) 20:58
『ドコ・・にも・・行きたく・・・な』
男は走り出した。
『大丈夫心配せんでもええ。俺が助けたるから。心配せんでもええから。』
消えかかりそうな意識の中で、そっと呟いてみる。
『お母・・さ・・・』
そして、深い深い眠りの中へ・・・。
もう目覚める事が無いようにと祈りながら。
126
:
小鉄
:2002/12/03(火) 21:03
間が空いてしまいましたが更新しました。
>117 オガマー様。 遅くなってすみません。
>118 名無しよっちぃ〜様。 色々考えて頂いてありがとうございます(w
>119 名無しチュウ様。 短い更新で申し訳ありません。
127
:
オガマー
:2002/12/05(木) 07:51
おお、梨華たんの過去ですね。
マターリ待ってますので(w
がんがってくださいw
128
:
名無チャ〜ミ〜
:2002/12/07(土) 20:14
次は、梨華たんの過去ですか〜
本当に楽しみにしています。がんばってください。
129
:
名無ハロモニ
:2002/12/13(金) 19:57
まだかな〜楽しみにしてるんだけどな。
130
:
名無しハロモニ
:2002/12/22(日) 19:32
小鉄さ〜〜〜ん帰ってきて〜
131
:
第五章 咲かない華
:2002/12/23(月) 16:58
だだっ広い部屋の中。中央に置かれたベット。
石川がそこで目を覚ました時、その部屋のあまりの『白』さに困惑した。
思考から溢れ出てくる『色』は
赤と黒。
瞳が映像として映し出しているのは
白。
胸の傷の痛みに顔を歪める。
ココ ハ 何処?
132
:
第五章 咲かない華
:2002/12/23(月) 17:07
『やっと目を覚ましたね。』
いつの間に入って来たのだろう。
気が付くと傍らに一人の見知らぬ少女が立っていた。
石川は起こした体をビクリと震わせる。
『動かない方が良いよ。胸の傷、結構深いから。』
そっと肩を押し返し、石川をベットに寝かせる。
『ここ・・は、何処?』
傍らに立つ少女はうっすらと笑う。その表情が
天使の微笑のように思えた。
『今は兎に角傷を癒さないと。大丈夫。何も心配する事は無いよ。』
少女はそう言うと石川の頭を優しく撫でる。
133
:
第五章 咲かない華
:2002/12/23(月) 17:10
その仕草はまるで。そう、まるで・・・
『お・・母・・さん。』
体中を覆う熱を帯びた痛み。
混ざり合う二つの『赤』。
体に降りかかる冷たい滴。
まっ『黒』な、混濁とした意識へ。
134
:
第五章 咲かない華
:2002/12/23(月) 17:16
石川は両の目を見開く。
『お母さん!!』
石川は少女の手をはらいのけて再び飛び起き
『お母さんは?!お母さんは何処?!お母さん、血がいっぱい出てて・・
きっとまだお家に居る。お願い、お母さんを助けて!!』
必死で訴える石川を、少女は悲しそうに見つめた。
『早く!!誰か早く!!』
その体がずるりとベットから落ちそうになる前に、
その少女は動く。
135
:
第五章 咲かない華
:2002/12/23(月) 17:20
その手の平で、石川の両目を覆った。
途端。石川の体を泥の様に重苦しい深い眠気が襲う。
『お・・・願・・』
その幼い頬に、一筋の涙が伝い、石川は再び眠りについた。
『ごめんね。』
少女はポツリと呟く。
136
:
第五章 咲かない華
:2002/12/23(月) 17:27
『あなたの記憶。消してあげたいけど。それはやっちゃいけない事だって
『つんくさん』に言われてるの・・・。』
眠り込む石川に、少女は語りかけた。
『なっちはさぁ。『お母さん』って知らないんだけど、
きっと優しくて温かいものなんだろうねぇ。』
石川の頭をもう一度ゆっくりと撫でる。
『せめて。夢の中だけでも、あなたが幸せでありますように。』
そして。その少女はいつの間にか、部屋の中から消えていた。
137
:
第五章 咲かない華
:2002/12/23(月) 17:33
石川が次に目を覚ました時。
その傍らに居たのは見知らぬ少女ではなく。
あの日の男。
雨の日に出会った。傘を挿した金髪の男。
『ようこそ。ハロープロジェクトへ。』
その男が発した言葉の意味を理解する事が出来たのは
胸の傷がだいぶ癒えた頃。
初めて吉澤と顔を合わせた
運命のあの日。
138
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2002/12/23(月) 17:42
いくら綺麗ごとを並べたとしても。
救いようの無い魂は存在する。
塞がら無い傷は存在する。
此処は
枯れる事も許されない
咲く事も許されない
『華』達の集まり。
『華』達は待ち続ける。
今だ見た事の無い眩い
太陽 ノ 光 ヲ。
絶望にも似た
愚 カナ 願 イ。
139
:
小鉄
:2002/12/23(月) 17:51
更新しました。
>127 オガマー様 遅くなってすみません。これからもまったりと・・。
>128 名無しチャーミ〜様 ありがとうございます!(w
>129 更新遅くなってごめんなさい(涙
>130 帰ってきました。(w
140
:
名無しハロモニ
:2002/12/23(月) 22:26
更新待ってましたー!!マターリ楽しみに待っています。
ガンガッテください!!!
141
:
名無し新年
:2003/01/04(土) 18:25
まだかな〜更新・・・。
たのしみなのによう。
142
:
名無し誕生日
:2003/01/17(金) 22:08
まだですかね〜
マターリマターリまっています。
帰ってきてください。
143
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/01/21(火) 22:41
近年悪化の一途が進む青少年の犯罪。
他人の。否、自らの命の尊さすら知らず、
心などという目には見えない漠然とした透明なガラスケースは、
もはや痛みへの歯止めにすらならない。
売春。買春。麻薬。イジメ。暴力。殺人。
その全てはもはや大人達の目の届く場所では行われない。
例えそのほんの一握りを罰したとしても、
それは後から後から死体にわくウジ虫のように増えつづける。
救いようの無い。本当に救いようの無い時代が、
この小さな国を腐食しようとしていた。
144
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/01/21(火) 22:45
この現状にあせった大人達は、その浅はかな知恵を絞り出し。
いくつかの案といくつかの犠牲をはらい、ある壮大なプロジェクトを
発足させる。
それが
『ハロープロジェクト』
145
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/01/21(火) 22:47
それは。『華』達の。長い長い物語の始まり。
146
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/01/21(火) 22:55
「改めて。ようこそハロープロジェクトへ。」
あのうさんくさい男は、会議室と思われる殺伐とした部屋の
ホワイトボードの前に立ってそう言った。
部屋の中にはあと二人。幼い少女二人が身じろぎもせず座っている。
「まぁそう堅くなりなさるな。」
男はそう言うと二カリと笑った。
二人はただそんな男をじっと凝視している。
「単刀直入に言わせてもらうわ。お前ら二人は今日からここで暮らしながら
訓練を受けてもらう。」
147
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/01/21(火) 23:07
男は一つ、息を吐く。
「お前らは国から選ばれた人間や。これからはこの国の為に生きてもらう。
この国を良くしていく為に生きていくんや。言わば正義の味方やで。」
男はおどけたようにそう言うと又、二カリと笑った。
「まぁ。いろんな事情はおいおい分かっていくと思うねんから。取り合えず
それぞれの役目についてだけ教えたるわ。」
男は、片方の少女を指差した。
「吉澤。お前は、ありとあらゆる武術を取得せえ。どんな相手でも
ねじ伏せられるように強くなるんや。」
吉澤はただじっとその指先を見据えた。
「んで。石川。」
今度はもう片方の少女の方に指先を向ける。
「お前は心理学を。これはまだ実験段階やからこれからどうなって
いくのかは分からん。兎に角人間の心を骨のずいまで学んでもらう。」
石川も又、その指先を見据えた。
148
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/01/21(火) 23:15
「話は以上や。こうして同じ日にここで顔合わせたのも何かの縁や、
仲良おしーや。」
それだけ言うと男はその部屋から出て行った。
残された二人はただ正面だけを見ていた。
まるでお互いがそこに存在していないかのように押し黙りながら。
沈黙だけがその部屋を支配していた。
時計の秒針だけが二人の耳の中へ『音』をして流れ込んでいる。
カチカチカチカチ・・・・。
結局その日、二人が目を合わせる事は無かった。
149
:
小鉄
:2003/01/21(火) 23:19
・・・更新です。
>140 名無しハロモニ様。 更新が遅くて申し訳ありません。
>141 名無し新年様。 楽しみにして頂いてありがとうございます(涙)
>142 名無し誕生日様。 帰ってきました。これからもマッタリと・・・。
150
:
名無しジェンヌ
:2003/01/25(土) 20:21
かえってキタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!
待ってました!!
がんばってください!!
151
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/02(日) 19:36
広い敷地内に立てられたその建物は、
表向きは政府管理の食品実験工場。
だが。その高いフェンスと多くの警備員の数。
そのあまりにも厳戒な警備体制に不信感を抱く者も
少なくは無かった。
が、その計画は着々と進められた。
その長い年月の間。どの位の人間の犠牲が
基盤にあるのかは分からない。
すべては、
そうすべては、
明ルイ未来ノ為二。
152
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/02(日) 19:37
吉澤がここへ連れて来られた翌日。
聞き覚えの無い声に叩き起こされた。
「おい、こら。いつまで寝てんだよまったく。」
その声に驚いて飛び起きる。
「だ、誰だ。」
心臓が早鐘を打つ。
見知らぬ人を見ると吉澤はいつもこうだ。
警戒心の強い野良犬の様に牙をむき出し相手に向ける。
「おうおう警戒しちゃって。オイラは矢口ってんだ。」
そう言うとニヤッと笑った。
「今日からオイラがあんたの世話する事になったから。」
「え?」
吉澤はまじまじと矢口を観察する。
自分と比べると、明らかに背が低く幼い。
153
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/02(日) 19:37
「お前。何言って」
その時、矢口が動いた。
否、正確に言うと気が付いたら目の前に
拳が突きつけられていた。
「口の利き方に気をつけなよ。オイラこれでもあんたより
年上なんだ。」
突然の事に吉澤の体はこわばったまま動かなくなっていた。
「あぁあ。まったく後藤といいあんたといい、
どうしてこう最近は生意気な新人ばっかりなんだろうねぇ。」
矢口は深く溜息をつく。
「で、あんた名前は?」
吉澤は矢口を真っ直ぐに睨みつけている。
「ったく。やだやだ。どーせならオイラもう一人の
おとなしそうな子の方が良かったよ。」
そう言うともう一つ大きな溜息をついた。
(もう一人・・・おとなしい方。)
154
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/02(日) 19:38
昨日自分と一緒に男の話を聞いていた、
もう一人の少女の事を思い出す。
年は自分と同じ位だった。
顔は見ていない。
確か。確か石川と呼ばれていた。
(あの子も自分と同じような境遇なのだろうか?)
そこまで考えて吉澤は頭を振った。
(他人の事を考えてる場合じゃない。)
「ほらほらさっさと着替えなよ。服はそのタンスの中に
入ってるから。早くしないと朝食に間に合わないよ。」
そういい残して矢口は吉澤の部屋から出て行った。
155
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/02(日) 19:39
一体自分の身に何が起きているのかが分からない。
孤児院で読んでもらった事のある『オズの魔法使い』の
『ドロシー』の様に、自分も別の世界へと飛ばされて
しまったのではないだろうか。
今回りを取り囲んでいる現実自体が夢なのではないだろうか、
もう少ししたらシスターが、『起きなさい。ミサが始まってしまいますよ。』
と、起こしに来るのではないだろうか。
そんな混乱した思考が吉澤の頭の中を駆け巡る。
そして無意識に枕もとの天使の人形を探す。
『天使なんておらん。』
吉澤は手を止めた。
(そうだ。ここが現実だろうと夢であろうと。)
天使ナンカ居ナイ。
156
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/02(日) 19:43
だからもう自分が救われる事は無い。
だからもう誰も信用することは無い。
だからもう生きていく意味なんて、
無イ。
157
:
小鉄
:2003/02/02(日) 19:44
更新しました。
>150 名無しジェンヌ様。 待っていて頂けて嬉しいです(涙)
158
:
名無しひょうたん島
:2003/02/02(日) 23:00
キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!
もう、待ってますよ!いつまでも!
謎がたくさんあります。がんばってください!
159
:
名無しひょうたん島
:2003/02/09(日) 14:18
お!久しぶりに来たら更新されてる!
ここの、黒っぽい?吉が好きです。
待ってます続き。
160
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/10(月) 19:17
一方石川は。眠れない一夜を過ごしていた。
目まぐるしく変わってしまった自分の日常。
『梨華。ほら。こっちへおいで。』
『梨華ちゃん。あんまり遠くに行くと迷子になってしまうわよ?』
力強く広かった父の両腕の中。
温かく優しかった母の両腕の中。
幸せだったついこの間までの記憶。
なのに何故。
161
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/10(月) 19:18
コンコン。
そんな石川の思考を遮るように部屋に響いてきたノック音。
その音に石川は身を縮める。
「入るよ!」
そう言って入ってきたのは見ず知らずの知らない人間。
それでなくとも人見知りの石川はますますその身を縮めた。
「あ?何よ。人が折角起こしに来てやったのに。」
「だ、誰ですか?」
ズカズカとその人物は部屋へと入り込み、石川の被っていたシーツを
一気に剥がした。
「人に名を尋ねる時はまず自分から名乗る!これ一般常識。覚えときなさい!」
「は、はい!」
「で?!名前は?!」
「石川梨華です!!」
言った後で石川は今迄出した事の無い大声を自分が出している事に
気付く。
162
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/10(月) 19:21
「よろしい。人にコントロールされない為にはまず相手を自分のペースに
引き入れること。」
そう言うと目の前の人物は手を差し伸べた。
「私は保田圭よ。あなたの世話係りだからよろしく。」
石川は無意識にその差し出された右手を握った。
「取り合えず朝ご飯を食べに行きましょう。その後は早速訓練開始。」
「訓・・練?」
保田は握った石川の手を引っ張り無理矢理立たせた。
「キャッ。」
思わず悲鳴を上げる石川。
「まあ百聞は一見にしかず。まず着替えなさい。そして腹ごしらえ。」
ウィンクを一つ投げつけて保田は部屋を去って行った。
163
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/10(月) 19:22
始まりはこんな風だった。
石川と吉澤。
二人はそれぞれ別な場所で育ち。
それぞれ別な場所で拾われた。
それぞれの痛みを抱えながら。
消える事の無い。
酷い傷を抱えながら、二人は同じ道を歩き始めた。
164
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/10(月) 19:22
そして運命を共に背負った仲間達。
それは決して咲く事を許されない
『華』達の集落。
165
:
第六章 ハロープロジェクト!
:2003/02/10(月) 19:27
長い長い物語の始まり。
166
:
小鉄
:2003/02/10(月) 19:31
更新です。
ここまでが本当のプロローグという所でしょうか(汗)
>名無しひょうたん島様。 こんな駄文を待っていてくれて嬉しいです(w
>名無しひょうたん島様。 マッターリとお願いします(汗)
167
:
名無しひょうたん島
:2003/02/11(火) 12:26
(・∀・) イイ!(・∀・) イイ!
二人の過去がわかって、これからですね。
すごく楽しみにしています!
ガンガッテください!!
168
:
名無しひょうたん島
:2003/02/14(金) 19:19
ヒサブリにきたら更新されてるー!(嬉)
痛い系って、最近ないから楽しみにしています。
169
:
第七章 痛み
:2003/02/19(水) 22:05
「だぁ〜まったくあの二人は一体何をやってるのかしら!ろくに連絡も
よこさないで。」
拳を握り締めた保田の声が部屋の中に響き渡った。
そんな保田を横目に中澤はパラパラと資料をめくる。
「圭坊うるさいで。カルシウム足らんのとちゃう?」
飄々と言い放つ中澤を保田はキッ。と睨んだ。
「だっておかしいと思わない?一ヶ月もたって、何で一人の情報も
得られていないわけ?一人もよ?」
そう言うと保田は自分の机の上の書類の山から一枚の紙を拾う。
「ただの連鎖反応で起きた連続自殺だとしても。その一人一人には
抱えてる問題がある筈。将来の事や。家族の事。友人関係。たとえ
第三者には分からない個人の問題だったとしても。三人よ?三人が
三人とも周りの人間には分からない問題を抱えてた?」
保田は軽く眉間を人差し指でグリグリと押した。
考えに没頭している時の保田の癖だ。
170
:
第七章 痛み
:2003/02/19(水) 22:05
「それともその反対で何も無い今の環境に嫌気がさして。先の見えない
自分の未来に絶望して。決められたレール。何一つ自分で変える事の
出来ない現在の環境・・・。」
中澤は相変わらず手元の資料に目を向けている。
「だけど。そんな事を今迄誰にも言わずに自分一人だけで抱えて
いられる?ううん。無理よ。あれだけ周りに自分と同じ環境で
育った人間。それも学校という閉鎖された場所にいるのに。」
「あ〜。圭坊。」
「じゃあ一体何が彼女達をあそこまで追い込んだのか・・。」
「そろそろ来るでぇ。」
「ああ〜もお〜今すぐ私が飛んで行きたい!!・・・え?何?
祐ちゃん。何が来るって?」
その時、部屋のドアが勢い良く開いた。
171
:
第七章 痛み
:2003/02/19(水) 22:06
「んあ〜。任務終了に伴い後藤真希とやぐっつぁん。只今戻りました。」
「ただいまぁ〜。」
中澤は後藤の後ろに隠れるように立っている矢口に向かい、矢の
ような速さで飛んでいき抱きすくめた。
「んがっ。」
「矢口ぃ〜心配したでぇ〜。どこも怪我はしてないようやね。祐ちゃん
安心したわぁ〜。」
後藤の額に青筋が立つ。
「祐ちゃん。それが苦労して任務を終えて来たエージェントに対する
態度なの?」
「ん?ああ。後藤おつかれさん。」
「うがっ。」
後藤は中澤を矢口から力づくで引き離した。
172
:
第七章 痛み
:2003/02/19(水) 22:07
「ぜぇ。ぜぇ。」
「何すんねん。後藤!人が折角感動の再会をはたしていた所やのに。」
「何が感動の再会だ!」
「それがリーダーに対する態度かぁ?いい度胸やね。後藤。」
二人はバチバチと火花を散らし睨み合っている。
「やめんかい!!」
今迄放置されていた保田が叫んだ。
「何だ。圭ちゃん居たの。」
「後藤。後で締める。」
保田は低く言った。
173
:
第七章 痛み
:2003/02/19(水) 22:09
「つーか何だよ!オイラはほったらかしかよ!?」
「なんや矢口。寂しかったらいつでもこの腕に。」
「だぁ〜〜め!やぐっちぁんはゴトーのパートーナーだってば!」
(はぁ。)
心の中で大きく溜息をつくと、保田は自分の机に戻った。
(まったくどいつもこいつも。)
泣きたい気持ちを押さえてもう一度資料に目を通そうとした時。
ポケットの中の携帯が震えた。
『吉澤ひとみ』
石川からではない事に一抹の不安を覚えながら通話ボタンを押す。
174
:
第七章 痛み
:2003/02/19(水) 22:10
「はい。」
『保田さん。梨華ちゃんが。梨華ちゃんが部屋の中で倒れてて!』
耳元で大声をあげる吉澤に保田は眉をひそめる。
「吉澤落ち着きなさい!!」
その声に部屋の中にいた他の三人が耳をすますように黙り込む。
「うん。うん。いつもの発作でしょ?分かった。分かったから。まず
脈図りなさい。・・・・・。じゃあ大丈夫。そのまま寝かせといて。うん。」
保田はなおも吉澤をなだめるように話かけている。
「久しぶりだね。石川の発作・・。」
「ああ。心の傷も大分癒えたもんだと思っとたのに。」
「あんたはすぐその部屋を出なさい。いいから出なさい!!誰かに
見つかったらそれこそ今迄の苦労が水の泡よ!!」
保田の怒鳴り声がなおも続く。
175
:
第七章 痛み
:2003/02/19(水) 22:10
「無くならない。無くなったりするわけないじゃん。ほんの少しの間
その傷が閉じたとしても、又すぐ化膿して口を開ける。そしてそこ
から血が流れるんだよ。ゴトーだって同じだよ。」
後藤は独り言のようにそう言った。
176
:
小鉄
:2003/02/19(水) 22:13
コーシン。
>167 名無しひょうたん島様。 いつも少しでごめんなさい。
>168 名無しひょうたん島様。 気長に・・・。長い目で・・・。
177
:
ななしのどくしゃ
:2003/02/19(水) 23:15
梨華ちゃんに何が!?という訳ではじめましてです。
ひたすら続きが気になる…としか言えません。
こーゆー雰囲気大好きです、頑張ってください。
178
:
名無しひょうたん島
:2003/03/01(土) 20:01
発作ですか…。
う〜ん。続きが気になってしょうがないこのごろ…。
すごく楽しみにしています。
ガンガッテください!
179
:
名無しひょうたん島
:2003/03/02(日) 12:02
無くなったかと思った〜!
あって良かった!
この作品楽しみにしてるんでがんばってください!!
180
:
179
:2003/03/02(日) 12:02
上げちゃった。スマソ
181
:
第七章 痛み
:2003/03/02(日) 19:54
石川の混濁した意識がゆっくりと定まりつつあり。
遠くの方から誰かの話声が聞こえてくる。
「・・・だ・・。離れ・・・い。」
(この声は誰の声だろう・・・。)
「どうし・・・・保・・ん。」
(私はまだ、夢を見ているのかな?。)
「梨・・・ん・・・華・・・・んが・・。」
(何て悲しそうな声・・。大丈夫。大丈夫。・・。)
その声に被り、記憶に埋もれた悲痛な声が聞こえる。
182
:
第七章 痛み
:2003/03/02(日) 19:55
『近寄るな!!ここへ来るな!!』
誰?誰?
『来たら刺す。お前を殺す。』
(ああ。この声は−−−−−−)
183
:
第七章 痛み
:2003/03/02(日) 19:56
「梨華ちゃん!!」
うっすらと目を開ける。
「よっ・・・す・・ぃ?」
(私のよっすぃ。)
(あなたはいつも、その綺麗な瞳の中に私を映す。)
「梨華ちゃん・・。」
(私の為にそんな悲しそうな顔する事無いのに。)
「傷が、又傷が、痛ん・・だの?」
よっすぃ。いつも私の所為で傷つくのはあなた。
生まれてからずっと傷つき続けて、
いつも罪の意識に苛(さいな)まれて。
184
:
第七章 痛み
:2003/03/02(日) 19:57
かわいそうに。
かわいそうに。
こんな私に囚われて。
「大丈夫。大丈夫だか・・らよっすぃ。心配・・・しな・・」
石川は、ベットから無理矢理体を起こす。
その体を、吉澤はギュッと抱きしめた。
「守るって言ったのに。約束したのに。ごめん。ごめん。ごめんなさい・・。」
段々小さくなる吉澤の語尾。
震えている吉澤の体。
石川は抱きしめられたまま、視線を吉澤の背中に向ける。
いつも口癖のように吉澤が呟いている言葉を思い出す。
185
:
第七章 痛み
:2003/03/02(日) 19:58
『天使なんかいない。』
いるよ?天使はいるよ?
此処にいるよ?
石川は、その震える背中を優しく撫でる。
186
:
第七章 痛み
:2003/03/02(日) 20:02
そして、自分の胸に残る十字の傷。
その縦に走る線を残したのは吉澤。
傷は今も尚痛み。石川の意識を度々奪う。
完全に完治している筈なのに、その傷口は石川の精神と共鳴し、
錯覚の中で赤い血を流す。
187
:
第七章 痛み
:2003/03/02(日) 20:02
「よっすぃ大丈夫だってば。ちょっと疲れちゃっただけだから。」
「嘘だ。ウチがあんな事言ったから。梨華ちゃんを裏切るような事
言ったから・・。」
耳の後ろから聞こえる悲痛な叫び。
だけど体に感じているのは温かく優しい体温。
「よっすぃ・・。」
「松浦さんなんだ。」
「え?」
188
:
第七章 痛み
:2003/03/02(日) 20:03
「あの場所に、いつも花を手向けてた人。松浦さんにはちゃんと心が
あったよ梨華ちゃん。」
屋上にひっそりと揺れていた花。
「松浦さんは関係無かったよ。」
石川は何も言う事が出来なかった。
色々な感情が胸に渦巻いていた。
189
:
小鉄
:2003/03/02(日) 20:07
コーシン。
>177 ななしどくしゃ様。 こちらこそ初めまして(w 頑張ります(w
>178 名無しひょうたん島様。 ありがとうございます。更新遅いですが
楽しみにしてくれて幸いです(w
>179 名無しひょうたん島様。 無くなったらど〜しよぉ〜(涙
190
:
名無しひょうたん島
:2003/03/04(火) 01:14
あややは、いい人だったんだ?
う〜ん面白くなってきますた。楽しみにしています!
191
:
名無しひょうたん島
:2003/03/05(水) 10:57
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!
待ってました!!
このいい意味で、重〜い雰囲気がだいすきです!!
がんばってください!
192
:
名無しひょうたん島
:2003/03/07(金) 18:12
初めて読みました。
すごく世界に引きずり込まれる感じがします。
すごく好きです。楽しみに待っています。
193
:
名無しひょうたん島
:2003/03/18(火) 16:26
まだかな〜
楽しみにしています。作者さんがんばって!
194
:
第八章 My World
:2003/03/18(火) 19:04
次の日石川は屋上に向かった。
吉澤の言葉を信用していないわけでは無かったが、
どうしても自分で松浦に探りを入れてみたいと思ったからだ。
重々しい扉を開けると、晴天の空が石川を迎えた。
「良い天気・・。」
ふぅと息を一つ吐く。
少し湿った空気が顔のすぐ横をすり抜けていった。
(居ないか・・。)
取り合えず手当たり次第心当たりを探ってみるしか
今の所手段が無い。
藁にもすがる思いで此処へ来たのだ。
教室ではその張り詰めた空気の所為で話しかける事も
出来ない。それに、吉澤もいる。
195
:
第八章 My World
:2003/03/18(火) 19:05
手すりに体を預け眼下に広がる新緑を眺める。
この世界には水があり、空気があり、空がある。
それ以上に何が必要だというのだろう。
帰る場所の無い自分達。その存在は闇から闇へ。
生きているのでは無く、生かされている。
自由なのでは無く、飼われている。
これからもずっと。
「私達。なんの為にこの世に存在しているんだろう。」
そんな石川の一人言は、誰に聞かれる事も無く
空に溶けていった。
196
:
第八章 My World
:2003/03/18(火) 19:06
同じ頃、石川の探し人松浦はとあるドアを開けた。
「すみません。誰かいますか?」
その薄暗い部屋の中にはすべてのカーテンがひかれている。
その間から差し込む外界の光だけがその部屋の所々を
ぼんやりと映しだしている。
殺風景な部屋だった。机が一つ。椅子がニ脚。
その他には何も置いていない。
松浦は部屋の中をうろうろと歩き回った。
時々立ち止まり机の上に置いてある分厚い本をパラパラとめくった。
英文で書いてあるその本をただなんとは無しに眺めていた。
「勝手に人の部屋に入るなんて随分無粋なのね。」
突然聞こえたその声に松浦は驚き本を床に落とした。
重々しい音が響く。
197
:
第八章 My World
:2003/03/18(火) 19:07
「す、すみません。」
松浦はあわてて落ちた本を拾おうとする。
が、一瞬早く手が伸びてその本は持ち上げられた。
「まぁいいわ。今日の所は大目に見ましょう。」
その人物はそう言って二コリと笑った。
とても感じの良い笑い方だった。
噂どおりの人物だった。
その白衣の胸の所のプレートにはこう書かれていた。
『ステューデントカウンセラー。平家みちよ。』
もし松浦がもう少し早くこの部屋に入り、
もう少し本のページを捲っていたら。
あるいは『それ』を見る事が出来たのかもしれない。
だがもう、それは過ぎた事だった。
198
:
第八章 My World
:2003/03/18(火) 19:07
「で、此処に来たという事は何か相談事があるのね?」
平家はかけているメガネを人差し指で持ち上げ、
その奥から松浦を見つめた。
「は、はい。」
その部屋ぬ雰囲気にすでにのまれていた松浦は
身を縮めながら返事をした。
「では、その椅子に座って下さい。」
松浦は言われるまま席ついた。
それは。奇妙な光景だった。
199
:
第八章 My World
:2003/03/18(火) 19:08
イライラする自分の感情を持て余し、吉澤は瞑想している。
浮かんでくるのは今迄自分が倒してきた人間達。
暴れている時は何も考えずにすむ。
向かってくる鉄建や凶器を紙一重で交わし、
変わりに自分の拳を相手の体の深い部分に食い込ませる。
振り返り残りに人間達にも同じく鉄拳を繰り出す。
連中の顔が苦痛と恐れに変わる。
何人が相手だろうと自分の持って生まれた闘争心は
削がれる事は無い。
ただ相手を殴りつける。
その命を奪ってしまわない程度に。
200
:
第八章 My World
:2003/03/18(火) 19:08
そんな時思う。
自分がここに存在していると。
相手の瞳の中に自分は凶器として映っていると。
自分は修羅だ。
拳をまっ赤に染めて。
相手に返り血に染まり。
それを楽しんでいる自分が居る。
201
:
第八章 My World
:2003/03/18(火) 19:09
ゆっくりと目を開ける。体が蒸気している。
誰かを殴りつけたい。
微塵の慈悲を持たずに。
そんな思いを持っている自分を酷く愚かに思える。
だけどこれが真実。隠し様の無い真実。
それ以上でもそれ以下でも無い。
自分に生きていくのに必要なのは暴力。
そう育てられた。
(だけど梨華ちゃんは優しい。ウチにはとても優しい。)
だから大丈夫。自分は生きていける。
この、偽りばかりの世界でも。
大丈夫。大丈夫。
この仕事を続けられる。
202
:
第八章 My World
:2003/03/18(火) 19:10
何かが今。動き出そうとしていた。
203
:
小鉄
:2003/03/18(火) 19:15
コ〜シン。
190>名無しひょうたん島様。 ありがとうございます(w
191>名無しひょうたん島様。頑張ります。ぜぇぜぇ・・。
192>名無しひょうたん島様。マッタリ待っていて下さい(w
193>名無しひょうたん島様。これからも宜しくお願い致します(w
204
:
名無しひょうたん島
:2003/03/19(水) 12:49
更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
待ってました。最後の言葉が気になりますね。
205
:
名無しひょうたん島
:2003/03/20(木) 02:41
ここの、よっちぃはこれからどうなっていくんだろう?
松と、どうかかわっていくのかな?
たのしみです。
206
:
名無しひょうたん島
:2003/04/07(月) 17:51
まだかなまだかな〜(0^〜^0)
207
:
第八章 My World
:2003/04/18(金) 19:53
この世に楽園があるとしたら、
それは此処にある。
何も心配する必要は無い。
何も感じ取る必要は無い。
あたたかい母体のようなこの場所で、
ただ呼吸をすれば良い。
ただ時を待ってれば良い。
外界は混沌と矛盾に溢れ、
救い様の無い下劣な生き物達で形成されている。
救いを求めて。
救いを求めて。
さあ手を伸ばして。
私はあなた達に紛れ込む、醜悪な空気を浄化する事が出来る。
208
:
第八章 My World
:2003/04/18(金) 19:55
「私この頃思うんです。このままでいいのかなって。」
今日も又、汚染された子羊が一人。
「確かにこの学園にいれば何も迷う事も無く日常を送る事が出来ます。」
羊飼いは考えます。
「でも。本当にそれでいいのでしょうか?」
『このままでは他の羊達にも病気が移ってしまう。』
「このままここでスポイルされたまま社会に出て、私達は本当に
きちんと生活して行く事で出来るのでしょうか?」
『薬を与えようか。』
「最近私のクラスに転校生が編入してきました。今まで出会った
どの人とも違います。」
『隔離してしまおうか。』
「あの人たちが見ている景色は、私達とは違うのでしょうか?」
209
:
第八章 My World
:2003/04/18(金) 19:56
その時になって初めて平家はうっすらと笑った。
「いけない子ね。そんなことを考えて。あなたのお父さまはそんな
考えを起こさないようにこの学園にあなたを入れたのではなくて?」
それまで無心で話続けていた松浦は、ハッとした様子で顔を上げる。
「あなたのお父さまは何のお仕事をしているの?」
「それは・・・」
松浦の脳裏に威厳高く厳格な父の姿が浮かぶ。
外資系の大会社の社長を務めるその姿は、記憶の限り
数回に留まる。思い出そうとしてもうまくその顔が思い浮かばない。
「あなたはここで安心して暮らしていけばいいのよ?」
もう一度羊飼いは考えました。
210
:
第八章 My World
:2003/04/18(金) 19:57
「ここに居れば余計な事も無駄な事も考える必要はないのよ?」
深く深く考えました。
「ね、ほら。恐くない。」
平家は柔らかく松浦の髪を撫でた。
その心地よさに松浦はうっとりと目を細める。
「外の世界は恐い事ばかり。悪い菌がうようよと空気中を徘徊しているの。
きっと『その人達』はもう侵されているのよ。」
「おかされている?」
そう。『汚染』されている。
もう誰の手にも手遅れな程に。
211
:
第八章 My World
:2003/04/18(金) 19:57
だから。
『排除してしまおう。』
見つからないように。
誰にも気付かれないように。
212
:
第八章 My World
:2003/04/18(金) 20:00
「先生・・。」
「平家よ。私は先生じゃないわ。」
「平家さん。私実は・・。」
その時、誰かがノックもせずに扉を開けた。
「うわっ。くっらぁー。何この教室。カーテンくらい開けろっての。」
一瞬にしてその場に張り詰めていた空気が緩む。
その人物はズカズカと部屋の中に入りカーテンを一気に開けた。
その眩しい光の中に現れたのは、
「吉澤・・さん?」
「はっ?」
はたしてそこには、吉澤ひとみが立っていた。
213
:
小鉄
:2003/04/18(金) 20:01
こっそりコーシン。
214
:
名無しひょうたん島
:2003/04/18(金) 22:39
更新、お待ちしておりました。
吉澤さんは松浦さんを救えるのでしょうか・・
次回を楽しみにしてます。
215
:
名無し( `.∀´)
:2003/05/11(日) 11:35
こっそり更新されてたんですね。(w
速く続きが読みたい!!気持ちを押さえつつ
まっています。楽しみです。大好きです。
あやや…。(涙
216
:
名無し(0´〜`0)
:2003/06/20(金) 19:43
まだかな〜
217
:
名無し(0´〜`0)
:2003/07/20(日) 20:08
まだかなぁ
218
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:04
吉澤の両眼が開かれる。
「松浦・・さん?」
それから三者はただただお互いに見入った。
それはほんの数分間だったけれども。
「松浦さん。そろそろお帰りなさい。寮の帰宅時間に
遅れるわよ。」
始めの声を発したのは平家だった。
穏やかなな表情を見せ、ゆっくりと立ち上げる。
219
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:04
開けたカーテンの隙間から覗く吉澤の横顔が
少し険しくなる。
そして、
「あんた、血の匂いがする。」
吉澤はそうゆっくりと言い放った。
「え?」
「隠そうとしても分かる。ウチには分かる。」
松浦はそんな二人の間に挟まれ、二人の顔を交互に見やっている。
「吉澤さん?」
吉澤は平家に向けた厳しい眼差しを松浦に移した。
「松浦さん。こんなとこに居ちゃ駄目だ。」
そういうと松浦の腕を掴み教室から引きずり出すように
引っ張った。
220
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:05
その長い廊下を歩きながら松浦はおどおどと、
吉澤の様子を伺う。
「吉澤さん。痛い。」
その言葉に一瞬だけ吉澤の表情が緩む。
「あ、ごめん。」
その力を緩ませて謝った。
少しだけ歩く速度も落とす。
「ねぇ、吉澤さんさっき平家先生に言った言葉・・・。」
「分かるんだ。」
理解出来ない言葉に松浦は困惑した。
221
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:05
「ウチには分かるんだ。」
吉澤の横顔はそれ以上の質問を拒否している。
「松浦さん。あの人にもう会っちゃ駄目だ。」
それだけ言うと、吉澤は黙りこんだ。
少し後、松浦はポツポツと話始めた。
「私。花火って見た事無いんだけど。」
「ハナビ?花火ってあの空に打ち上げるやつ?」
「そう。」
今度は吉澤がその唐突な話しに困惑する。
「話しにしか聞いた事無いんだけど。吉澤さんは
花火見た事ある?」
「あるよ。」
222
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:06
去年の夏石川と見た記憶がある。
吉澤は花火があまり好きでは無かった。
あまりにも綺麗過ぎる。
あまりにも儚過ぎる。
だからあまり好きでは無い。
石川は無邪気に喜んでいたが。
「とても綺麗なものだって。花火を見ればこの世の
すべてを許す事が出来るって前にお父様が。」
「松浦さんのお父さんは花火が好きなんだね。」
松浦はゆっくりと頷く。
223
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:06
「だから私も花火、見てみたい。」
「じゃあ今年の夏。一緒に花火しよう。約束するよ。」
吉澤は笑顔を作りそう言った。
松浦も笑った。
勿論出来ると。二人で出来ると、
吉澤は信じていた。
約束。
約束。
きっと来る未来の為に交わした。
224
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:07
『梨華ちゃん。あの先生やばい。』
携帯電話口で閉口一番に吉澤は言う。
「はぁ?」
風呂上りの石川は濡れた頭を乾かしながら、
保田から送られて来た報告書に目を通していた。
『今日ね、昼寝しようとして三階の端にある空き教室
に行ったのね。』
「昼寝・・って。」
『説教は後でいいからまず聞いて。』
225
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:07
少し不機嫌になりつつ石川は一応口を閉じる。
しかし事の成り行きを聞いているうちに石川の顔色
が変わる。
「ちょ、ちょっとよっすぃー。その先生にそんな事言ったの?」
一瞬にして石川の頭の中の思考回路が回転する。
『うん。言っちゃった。』
石川は頭を抱えた。
226
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:08
「まずいよ。よっすぃー相手に一個人として認識させ
ちゃったら、もうよっすぃーは使えないじゃない。」
『・・・』
言っておくべきであった。
しかしまさか吉澤がステューデントカウンセラーと接触を
持つだなんて、きっと保田にも予測は不可能であっただろう。
それにもうそれは過ぎてしまった事だ。
「もういいよ。終わった事だし。取りあえず私も明日その
教室に行ってみるから。」
『・・・』
227
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:09
事の重大さがやっと飲み込めて来たのだろう。
吉澤はずっと口をつぐんだままだった。
携帯を切った後、石川は深く溜息を付く。
まるで、今の状況は泥沼である。
まったく先が見えない。
このままどういった状況でこの仕事は終わりを告げるのだろうか。
上の空のままパラパラと保田に送られた資料を見る。
その中には平家に関するプロフィールも載っていた。
228
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:09
『平家みちよ』
学園OG。卒業後は都内大学へ入学。
心理学を学び、保健医の資格を取り、三年前学園の
スチューデントカウンセラーとして回帰。
現在追って調査中。
229
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:09
たったこれだけである。
「取りあえず明日私も会いに行くか。」
ここへ来てから何度目の溜息だろうと、
そんな事を考えながら石川は又資料をめくった。
しかし、石川が平家に会う事は二度と無かった。
230
:
第八章 My World
:2003/07/23(水) 19:10
何故なら、次の日学園の中庭で首を吊る平家が発見されたから。
231
:
小鉄
:2003/07/23(水) 19:10
つづく。
232
:
名無し(0´〜`0)
:2003/07/23(水) 19:57
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
待ってました!!
233
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 18:57
薄暗い事務所の中、中澤は頭を抱えていた。
おかしい。おかしすぎる。
あの学園に石川と吉澤を送り込んだのは、
最初はほんの少しの実験のつもりだった。
心理学が、どこまで現場で役に立つか、
それを結果として出す為に敢えて送り出した。
学園からの報告書を始めに読んだ時は、
ただの集団自殺だと思った。
特にあの密閉された空間ではすべて周りに影響される。
234
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 18:57
保田の意見も同じだった。
それを石川が学園に的確に指摘し、
その構成のあり方を報告するという筋書きまで
念頭において送り込んだ筈だった。
だが。予想だにしない事態が次々に起こる。
何一つとして証言が取れないばかりか、
今度は学園の教師までもが自殺を図った。
もう悠長に高見の見物をしている暇は無くなった。
235
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 18:58
そこでは何は別の力が感じられる。
別の大きな力が。
中澤はおもむろに携帯に手を伸ばす。
「あ〜。ウチや。中澤や。悪いけど圭坊。
石川達と合流や。手はずは整えとくから。」
それだけ言うと携帯の電源を切り又頭を抱えた。
236
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 18:58
ほんとはね。
何も知りたくない。
237
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 18:59
閉めきられたカーテン。
その間からこぼれ落ちる光。
一枚の写真を取り上げる人が居た。
「あ〜あ。こんなとこに落として。誰かに見られたら
どうすんだよまったく。やっぱり使えねぇ。」
その人はポケットからライターを出し、手の中で燃やした。
238
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 18:59
「花火みたいだ。」
炎がその表情を照らし出す。
239
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:00
「よっすぃー。」
いつの間に入って来たのだろう。
そこには今までに見た事の無い表情を浮かべた石川が立っていた。
「あ〜。梨華ちゃん。ほら、花火みたいっしょ?
昨日松浦さんと約束したんだ〜。今度一緒に花火を」
「よっすぃーどうして?」
吉澤は何も言わない。
何も言わず手の中の炎を握り潰す。
240
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:00
「どうしてよっすぃーが・・・」
それ以上石川の言葉は続かなかった。
「流石梨華ちゃん。気づいたか。つーか平家さんが悪いよね。
まぁさか首くくるとはね。あの人は『いい人』だったんだねぇ〜。」
「ひとみちゃん!!」
吉澤は目を細める。
「懐かしいな。その呼び名。久しぶりに聞いたよ。
あの時以来だ。」
241
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:01
それも同じく遠い遠い昔の話。
242
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:01
『ねぇ、もしかして泣いてる?』
顔を上げゆっくりと振り返ると、
そこには昨日会議室で隣に座った女の子がいた。
『ひとみ・・ちゃんだよね?』
反射的に体が動いた。
頭の中で言葉が唸る。
243
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:01
オマエ ハ 悪魔
天使 ナンテ イナイ
イナイ
イナイ
子供達の悲鳴。
真っ赤な世界。
244
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:02
伸びて薄汚れた爪をその子に向けた。
その子は悲鳴すら上げなかった。
破れたシャツから見えたのは血みどろの十字の傷。
縦の傷は醜く引きつる治りかけの傷。
横の傷からは鮮血がほとばしる。
245
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:03
もう何も見えなかった。
246
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:06
その記憶は、石川のものなのだろか?
吉澤のものなのだろうか。
ただ今は、暗い教室の中。
石川は悲痛な叫びを上げる。
「ひとみちゃん!ひとみちゃ・・」
最後まで言葉にすることは出来なかった。
その首を微妙な力で吉澤が掴んだから。
「梨華ちゃん。ウチいっぱい嘘付いたね。
梨華ちゃんを守るって言うのも嘘だから。」
だからこのキレイな体に傷をつけた。
吉澤の空いている方の指先がそっと石川の頬を撫でる。
「キレイなキレイな梨華ちゃん。」
今までに見たことの無いような笑顔を、
吉澤は浮かべていた。
247
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:06
石川は何かを訴えるように唇だけが動いている。
「何?梨華ちゃん?ウチに呪いに言葉でも吐いてるの?でも・・」
そしてその絞めている首にほんの少し力を入れる。
「さよならだ。」
ガクンとうな垂れる石川を吉澤はそっと床に寝かす。
248
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:07
「終わりましたよ。」
吉澤のその言葉が合図だったかのように、
教室の暗がりの中から一人の少女が現れた。
「後悔してる?」
吉澤は鼻で笑った。
「何を今更。」
「だってあなた泣いてるじゃない。」
249
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:10
吉澤はその涙を自分の拳で拭った。
「ウチの中にも少しだけ『ココロ』がまだ残ってるみたいですね。」
「そんなもの捨ててしまいなさい。」
教室を出て行く時。吉澤は一度だけ後ろを振り返った。
石川梨華をもう一度見た。
250
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:10
『だから私の手を握っててほしい。私が自分を見失わないように。
暗闇に引きずり込まれないように。ずっと。それはよっすぃーにしか
頼めないから。』
251
:
第九章 The End of World
:2003/09/19(金) 19:12
だが吉澤は再び前を向き。
二度と振り返ることは無かった。
そして長い長い終焉と共に、新たな世界が始まる。
だがそれは。
又、別の世界。
252
:
エンジェルホーリーライト
:2003/09/19(金) 19:13
END
253
:
小鉄
:2003/09/19(金) 19:20
ここまで書くのにどんだけ時間かかってるんだ自分(泣
管理人さま。皆さま。今まで散々ご迷惑おかけ致しました。
取りあえず『エンジェル〜』はここでおしまいです。
第一部『完』です。
そして次は第二部が・・・
兎にも角にも今までありがとうございました(w
254
:
名無し(0´〜`0)
:2003/09/20(土) 15:16
更新待ってましたーーーーーーーーーーーーーー!!
第二部はじまるんですよね?ね?ね?
すっごい楽しみにしていた作品だったんで、終わりはいやです。・゚・(ノД`)・゚・。
第二部楽しみにしています。
完結お疲れ様でした。
255
:
名無し(0´〜`0)
:2003/09/21(日) 21:32
キタ━川 ‘〜‘ )||●´ー`) `.∀´)〜^◇^) ´ Д `)O^〜^) ^▽^) ‘д‘) ´酈`)━!!!
楽しみにしてました。
私も↑のかたと同じく、第二部を、心待ちにしています
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