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気ままに短編集!!(何でもあり)

1管理人@よすこ。:2002/08/16(金) 15:53
新スレ立ててみました。
スレを立てるのは、何だがちょっこっと、書いてみたいな〜と思う
方がいらっしゃったら、どんどん書いてください!!
一話目は偉大な作家べー。様。が、管理人の要望にこたえて書いて頂いた
短編を、のっけます。続け〜〜〜(w

345『雨と傘と出会い』:2003/09/02(火) 15:18
とある駅のとある時間帯。会社帰りのサラリーマンやOLなどで
ごった返す中に彼女がいた。

「あ〜あ、参ったな〜。今日は傘持ってきてないのに。天気予報は
晴れって言ってたのに全然当たってないじゃない。」

そう言って辺りを見回してみる。

サラリーマン風の人が自分のかばんを傘代わりにして雨のなかを
走っていく姿がちらほら。

それを見て決意する

「よしっ、また走るか。わざわざタクシーに乗るのも面倒だし。
うん、節約節約っと。」

「もしよかったらこの傘使ってください。」

彼女。石川が飛び出そうとしたところに後ろからかけられた声。

振り返るとそこには右手に傘を持った女の人が立っていた。
大きな瞳にかわいい笑顔。生涯忘れることはないでしょう。

346『雨と傘と出会い』:2003/09/02(火) 15:19
彼女は私に自分の傘をゆっくりと差し出す。

「いいえ、そんな悪いじゃないですか。あなたが濡れちゃうだろうし
受け取れませんよ。」

すると彼女はまだ、笑顔のままで

「いいえ、私は家近いんでいいんですよ。」

「でもやっぱり・・・。」

それでも躊躇する私に彼女は言う。

「それにね、そんなにかわいい子がそんなにかわいい服を着ているのに
雨に濡れちゃもったいないですし。」

そういってまた笑顔で私に傘を差し出す。私がその傘を受け取ると
彼女は雨の中に飛び出す。

「えっ、この傘どうやってお返しすればいいんですか?」

私は回りの目を気にしないで大きな声で彼女に問い掛ける。

そうすると彼女は私の方に振り返って

347『雨と傘と出会い』:2003/09/02(火) 15:19
「もしも、この出会いが偶然なんかじゃなくて運命と呼べるものだと
したら。もう一度出会ったとき。そのときにでも。」

そういって大きな瞳の彼女はまた雨の中に消えていく。

追いかけて傘を返す?それが一番いいのかもしれない。知らない人
から傘を渡されても普通は受け取らないかも。でも、私は不思議と
彼女を追いかけようという気持ちにはなりませんでした。

彼女が私に言った言葉。運命。多くの人がそうであるように私もまた
その言葉に弱い人だったから。私は大きな瞳の子に運命を期待したので
しょうか?

彼女が雨の中を行く姿を見えなくなるまでずっと見続けていました
何かを期待して。そう、何かを。

348『雨と傘と出会い』:2003/09/02(火) 15:20
本当に運命なんてあるのでしょうか?彼女との出会いは運命だった
のでしょうか?

広いこの場所。たくさんの人でごった返すこの場所。その中からたった
一人を探し出すなんてそう簡単なことではなく気が付けば半年の月日
が流れていました。

朝からずっとどんよりとした雲模様。降りそうで降らない。私の帰り道
列車に乗って家の近くの駅で降りる。私が駅から出ようとしたときに
急に降りだした雨。

「あ〜あ、ついてないな〜。」

あの時とまったく同じ。私は何気なく後ろを振り返ってみました。

そこには大きな瞳にやさしい笑顔の人が。

349『雨と傘と出会い』:2003/09/02(火) 15:20
「よかった。やっぱりまた会えましたね。」

彼女はあのときのまま。やさしい笑顔で私に微笑みかけてきてくれ
ました。

「聞いてもいいですか?」

「どうぞ。」

「分かっていたんですか?もう一度会えるって。」

彼女は首と横に振りながら答える。

「いいえ、私には超能力なんてありませんからね。」

そして私はこう尋ねてみた。

「それじゃあ、なんであの時もう一度出会ったときなんて?」

彼女は答えた。

「理由なんてありませんよ。願ったんですよ。」

350『雨と傘と出会い』:2003/09/02(火) 15:21
頬を少し赤らめながら彼女はそうつぶやいた。

「願ったって何をですか?」

「この出会いが偶然なんかで終わりませんようにって。」

この日から、いえ、半年前のあの日から私の人生にまたひとつ
うれしいことが増えました。

351Silence:2003/09/02(火) 15:22
ちょっと前に書いた作品です。消してしまってもいいかな〜とも
思ったんですけど、まあ、一人でも読んでくれる人がいたらな〜
って感じで載せさせてもらいました。

352キョウ:2003/09/04(木) 02:17
Silenceさん(・∀・)イイ!!
偶然を運命に変えるひーちゃんかっけー!!!
両者とも逢う事を望んでるから運命になったんですねw
って、軽い深読みしちゃいましたw

またこんなカワイイ作品、お願いしますね♪

353Silence:2003/09/04(木) 16:57
ご感想ありです。はい、思いついたらまた書こうかなっと。

( T▽T)<くれぐれも自分に期待はしないでくださいね。
       キマグレナヒトナンデイツニナルカ

354匿名匿名希望:2003/09/07(日) 23:42
今さらですが・・・
更新お疲れ様です。
ニヤニヤして読んでました(w
 最 高 で す
私も次回を期待しています♪

355token:2003/09/09(火) 21:41
更新お疲れ様です。
遂にこちらにもカキコします。
Silence様の短編はやっぱり素敵です。
こんなお話書いておいて期待するな、は酷ですYO。
まったりお待ちしてますので、また何か思いついてくださいね。(笑)

356sai:2003/09/13(土) 13:10
気づかなかった・・・。こんな変な短編読んでもらって
ありがとうです。

>とくちゃん(あえて)w
ニヤニヤしてですか?w尊敬するとくちゃんから最高なんて
お言葉いただいてうれしい限りです。

>token様
わざわざ貴重な時間割いてまで読んでもらって感謝です。
素敵といわれるとめちゃめちゃ照れるんですが(w

いつになるかわからないけどまた、短編載せさせてもらおうと
思っています。ほんといつかわからないけどw

357『ひまわり』 −石川梨華の想い出−:2003/09/14(日) 13:36
『ひまわり』 −石川梨華の想い出−


ひまわりのような人でした。夏のひまわりのような人。
強くてやさしくて、温かい人。

夢を見ていました。あなたと暮らしたたった半年という間。
人間の人生からしてみれば本当にひとかけらに過ぎないかも
しれない間。

でも、それは私にとって、それまでの人生のすべてといっても
過言でなかった。そしてこれからの長い私の人生にしてもすべ
てかもしれない。

あなたいた一握りの短い期間。かけがえの無い、何にも置き換
えることのできない永遠の時。

まっすぐに、どこにもよれることの無い、ひまわりのような人
でした。

思い出せばいつも微笑みかけてくれる人。目を閉じればいつも
私を抱きしめてくれる温かい心地よいぬくもりの人。

358『ひまわり』 −石川梨華の想い出−:2003/09/14(日) 13:37
あなたが大好きでした。言葉なんて必要ないくらいに。不思議
なものです、なんででしょうか、私が泣いているときはいつも
あなたが側に居てくれて、私はあなたの側で泣いていました。

私が泣きじゃくっているときは何も言わないでただ私の髪を
なでていてくれて、私が泣き疲れて顔をあげるとあなたは私の
耳元に口を落として言うんです。

「梨華ちゃんには私がいるからね。」

って。うれしくてうれしくてしかたがありませんでした。なんで
こんなに優しいのかって。なんでこんなに好きなのかって。

私がそれを考えてまた泣いちゃうとあなたはまた私を抱き寄せて
照れながら言うんです。

「本当に好きなんだからね」

って。私はうなずきました。あなたにしっかりと伝わるくらい。
あなたがしっかり私の気持ちを感じてくれるくらい。

359『ひまわり』 −石川梨華の想い出−:2003/09/14(日) 13:38
あなたは覚えていますか?二人で初めて泊まりにいったあの日の
こと。

待つことが嫌いなあなたは一時間に一本というバスを待たずに歩く
と言い出して私の手を引いてどこまでも続く道を一緒に歩きました

あのとき見た透き通るくらいに綺麗な海。今でも私の耳に残るは
夏の波の音。

大好きな場所だけどもう二度と訪れることもないんですね。

だって、あなたと約束したから。次も一緒に、二人で来ようねって。
だから私は待っています。でも、あなたともう一度・・・

360『ひまわり』 −石川梨華の想い出−:2003/09/14(日) 13:38
戯れるように遊んだあの初秋の夜。二人で一緒にした花火。あなたは
私に言いました。

「自分は夏の花火みたいだ。」

って。私が何で?って尋ねると一瞬。本当に一瞬の間だけ輝くために
生まれてきたんだって。

あなたは知っていたんでしょうか、自分のことを。

普段の強いあなたからは想像もつかないような言葉に儚いようなその
表情。

私は目に涙を浮かべて、あなたを見返すとあなたはまたいつものような
顔に戻って

「そんな深く考えないでよ。花火みたいに綺麗ってことだよ。」

って。あなたはいつもそう。自分のことをもっと気遣うべきだったのに
私のことをいつも心配してくれた。

361『ひまわり』 −石川梨華の想い出−:2003/09/14(日) 13:39
私があなたと最期にあったのは雪が降り出したころ。ベットで横に
なっていたあなたが私に言った言葉。

「私はいつも一緒にいるから。どんなときも味方だから。例え回り
の誰もが梨華ちゃんを否定しても私だけはあなたを肯定してづける
から。また、生まれ変わっても私はあなたを見つけ出して言うよ。」

『世界中の誰よりもあなたを愛しています。』

362Silence:2003/09/14(日) 13:41
最近、本気で小説を書くということを忘れていた自分に小説の良さ。
すばらしさを思いださせてくれた友人の小説に返答するという意味
で書いた短編です。

淋しい、暗い話の中でどこかに温かさを感じてもらったら書いた側
としてこれほどうれしいことはありません。

駄文失礼しました。

363ROM:2003/09/17(水) 19:19
気づいてない人多いんじゃないかな?
泣いたよ。ヒサブリに…。

364名無し(0´〜`0):2003/09/18(木) 00:05
とてもいいお話でした。
温かさを感じさせていただきました。

365匿名匿名希望:2003/09/18(木) 00:19
泣きはありでしょうか?
読んだ後に、ほんわかほんわかしています。
この感想を書いたらまた読み返します。
上手い言葉が見つかりませんが、あったかい作品。
『残る』という言葉が私の中にいるみたいです(w

366NEMO:2003/09/18(木) 00:31
初めまして、NEMOと申します。

気分転換に書きなぐった小品ですが、
しばしお付き合いくだされば幸いです。

367- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:32
 小さな咳が、口許をおさえた華奢な手からコホンとこぼれた。
 足組みをした膝の上、情報誌をのせて休日の計画を練っていた吉澤が、素早く石川に照準を合わせる。
 大丈夫、そう笑って、石川は膝を抱え直した。

 食後、風呂上がり、ふたりとも寝仕度を整えて、それぞれリビングでくつろいでいる。
 石川はカーペットに直に座り込み、テレビ欄を広げた新聞を踵で押さえて、連続ドラマ鑑賞の真っ最中。
 滲む涙を拭き取ろうと、ティッシュを2枚かさねて引き抜いた。
「さっきからほんと、よく泣くよね」
「だって」
「目、腫れたらどうすんの」
「……困る」
「だね」
 毎週毎週、丸められたティッシュの山を見ては、石川の涙腺のゆるさに呆れる吉澤。
 すっかり感情移入して、口を閉じるのもおろそかに、石川は鼻をぐしゅぐしゅ鳴らしている。
 正直、演技過剰なドラマよりも、石川梨華が面白い。
「ティッシュ、足元に積まないでゴミ箱に捨ててよ」
「んー」
 聞いているのか、いないのか。
 生返事に諦めの溜息をつき、吉澤はソファから立ち上がって、散らばったティッシュを拾い集める。
 ほつれたTシャツ、擦り切れたジャージを平気で着るわりに、こういうところはマメなのだ。
 なんとも甲斐甲斐しい。

368- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:32

「後でやるのに」
「後で、っていつですかねぇ」
「もぉ」
 石川は頬を膨らませて、吉澤の肩のあたりをぺしっとはたく。
 コマーシャルに入るまできっちり見届けて、反撃開始しようと口を開く。

 コホン。

 準備しておいた言葉が、咳にとってかわられた。
 押しとどめる間もなく、後から後から気管を昇ってくる。

 コホ。ケホン。ケフン。

 吉澤の眉尻がキュッと持ち上がって、眉間に神経質な皺が寄った。
 ティッシュのかたまりを隅のゴミ箱に放り込むと、ターンを決めて戻ってくる。
 実に素早い。
「大丈夫、じゃないね」
 顔をしかめ、身体を丸めて咳き込んでいる石川の背中を撫でてやる。
 そういえば、帰ってきてからしばらく、彼女はだるそうだった。
 気付いてはいたのだ。
 吉澤、決して鈍くはない。
 ただ、鍋の見張りだとか、洗濯ものを取り込んだりとか、……つまり、ちょっと、忘れていた。

369- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:33

「毎年、この時期になると喉にくるの。いつものことだから、ほんと平気」
「いつものことなら、もっと用心してないと駄目でしょ」
 どこからか登場したブランケットで、さっと石川の身体をくるんで、抱えてソファに座らせる。
 涼しい風を吹き下ろしていたエアコンをピピィッと消して、
「髪もね、濡れたままで放っておかないでさ、ドラマ見てびぃびぃ泣く前にちゃんと拭きなよ」
「それ、ひとのこと言えないじゃない」
 吉澤は肩にタオルを引っ掛けて、黒いTシャツの襟元を短い髪から落ちる雫で濡らしていた。
 目敏い指摘に苦笑い。
 追撃を避けて、ダイニングキッチンに逃げていく。

 がたがた、かちり。
 柄付きの小さな手鍋をコンロにかけ、吉澤はなにやら忙しく立ち働いている。
 下ろし金、ペティナイフ、色々と持ち出して、キッチンはなんだか騒々しい。
「なに作ってるの?」
「んんー」
 今度は吉澤が生返事。
 石川はソファから半分身を乗り出して、ダイニングテーブルの向こう、吉澤の後ろ姿に問いかける。
「おなか、減ったの?」
「そうでもない」
 夕飯はすこし手を抜いた。
 作り置きの煮物と、冷蔵庫に残っていた野菜をまとめて入れた味噌汁。
 多少さびしい食卓だったけれども、おなかがすくにはまだ早い。

370- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:34

 鍋を掻き回す手を休め、吉澤はミルクを冷蔵庫から取り出した。
 腰に片手をあて、パックに直接口をつけて。
 左の爪先で、かりかりと右のふくらはぎを引っ掻いている。
 虫に、刺されたのかもしれない。
「おやじぃー」
「あぁん?」
 肩越しに振り向いた吉澤に、軽く睨まれる。
 笑いながら、石川はソファの背にぴたっと張り付いて身を隠した。

 視線をブラウン管に固定したまま、カマをかけてみる。
「もしかして、卵酒?」
「ハズレ」
 素っ気ない声に、期待がしぼんだ。
 心配してくれてるのかな、だなんて甘かった。
 やっぱり甘かった。
 吉澤のことだから、ただ夜食を作っているだけなのかもしれない。
 ----唐突。
 一語で表すなら、そんなひと。
 いまだに、吉澤が次に繰り出してくる一手が読めない。
 石川はクッションを抱えて、ひとりで唸る。

371- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:35


「はい、どうぞ」
 ごく自然に、無造作に、目の前に差し出されたマグカップ。
 大きめのマグカップに、たっぷりと満たされた……多分、きっと、やさしさ?
 石川、嬉しい誤算に内心にやける。
 あくまでも、内心である。
 最近、ようやく最近、吉澤の不意打ちをくらっても、うまくやり過ごせるようになった。
 長きに渡る修行の成果が、今、ここにある。

「お茶、いれてくれるの珍しいね」
 家事を滅多にしてくれない旦那様に皮肉を言う奥様、ではない。
 吉澤は根っからのコーヒー党で、紅茶はあまり飲まない。
 気分で豆の種類、煤煎を変えたり、ネルドリップにしてみたり、コーヒーには凝る吉澤。
 こだわりだすと、止められないし、止まらない。
 徹底的にやる。
 これが紅茶になると、よくてお湯にティーバッグを泳がせる程度。
 ペットボトルや紙パック、ただ不自然に甘いだけの市販品でも、一向にかまわないらしい。
 つまり、石川が言うのは、嗜好の話。
「うん。喉には、これが一番だって」
 お気に入りのマグカップに、たっぷりと満たされたミルクティー。

372- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:36

 石川はカップを両手で支えて、漂う湯気に顔を近付ける。
 ガツンと、詰まり気味の鼻腔に先制の一発がきた。
「これって……生姜?」
「あたり。ジンジャー・ミルクティー」
 手鍋で紅茶を煮出して、すり下ろした生姜の絞り汁、生姜のスライス、そして蜂蜜。
 牛乳を加えて、生臭さが出ないように温める。
 生姜も、蜂蜜も、そのパワーは折り紙付きだ。
「ほんとに、効くよ。生姜に含まれてるジンゲロール? ジンギロール? 
 まあ、とにかく、そういうのが風邪に効く」
 真顔で言われて、素直にうんうん頷く。
 テレビから仕入れた知識だろうか。
 みのもんたか、それとも堺正章か。

 吉澤は二人掛けのソファ、石川の右隣に滑り込んで、あいた左腕をソファの背に引っ掛ける。
 並んで、それぞれのマグカップに口をつけた。
 クセのある、甘さと辛さが熱になる。
 喉をやわらかく撫でて、ストンと胸に落ちてくる。
「おいし」
 ほうっ、と吐息とともに呟いて、隣の吉澤に微笑んだ。
 薄い唇をたわませて、吉澤もほんのりと笑む。
「よかった。好みがわかれる味だから」
 そう言う吉澤のカップには、いつも通りのブラックコーヒー。

373- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:36

「苦手なんだ」
 言い当てられて、吉澤が首筋を掻く。
「風邪ひいたときさ、ずっとそれ飲まされて。効いた。確かに効いたけど、ちょっとね」
 出されるたびに我慢して、眉間に縦皺を寄せ、額に汗を浮かばせてミルクティーを啜ったのだろう。
 石川は横顔を見て想像する。
 今より、ほんのちょっと幼い吉澤。
 空白を埋めるように、そっと順序を追って、吉澤のところどころを置き換える。
 鼻筋、眉、耳の下から顎にかけてのライン、……。
 ふと、思った。

 このひとに、甘辛いミルクティーを差し出したのは、誰なんだろう。

 気付いてしまった。
 気にしだしたら、止まらなくなった。
 石川の加速も、なかなかのもの。
 ぐっとアクセルを踏み込んで、ギアを順調にトップへ持っていく。
 ぐいぐい、ぐいぐい。
 エンジンは無駄に元気だ。

374- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:37

 憶えたのは、教わったのは、生姜入りの紅茶だけだろうか?
 吉澤本人も知らないうちに染み付いている癖は、いったいどこの誰が発信源なのだろう?
 吉澤が過去に通り抜けた道を、人を見せ付けられているようで。
 なんだか腹がたってきた。
 昔のこと、昔のこと。
 自分に言い聞かせながら、まだ温かいミルクティーを啜る。

 長い髪も綺麗な、ミステリアスなひと。
 ちっちゃくって、いつでも元気一杯なひと。
 不遜な表情が似合う、ちょっぴりヒネくれたひと。
 一途に慕ってくれる姿も可愛い、年下のあの子。

 それから、それから……。
 浮かぶ顔、浮かぶ声、とても数え切れない。

 選択肢の幅がありすぎることに石川はまた憤る。
 ちょっと、ちょっとなんなの、これ。
 なんなのなによ、なんなのよ。

375- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:38

 ぴくり、不穏な気配を感じ取って、吉澤の背筋に危険信号が走った。
 石川が無気味な沈黙を保ったまま、ブラウン管にガンたれている。
 嫌なかんじだ。
 経験が吉澤にしらせる。
 これは、実に嫌なかんじだ。
 理由は知らない。
 だが、まずい。

 素知らぬ顔でコーヒーを啜りながら、吉澤は計算する。
 逃げる……勿論、逆効果。
 慌てる心臓を押さえつけ、ため込んだデータを引っ張り出す。
 膨らみ続ける風船は、できる限り素早く割ったほうがいい。
 まだ小さいうちが、勝負だ。

「なにを拗ねてるの」
 視線を合わせずに、吉澤が訊いた。
「……拗ねてる?」
「拗ねてるよ」
 断定口調に、石川が素直に引っ掛かる。
 上半身をねじって、吉澤に向き直った。

376- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:39

「どこらへんなの」
「うん?」
「どこが拗ねてる、っていうの?」
 石川は、頭を吉澤の左肩に預ける。
 黒いTシャツの裾を掴んで、引っ張る。
 吉澤がそっと、隙間をつめた。
「そういう台詞を言うところが拗ねてるかな。違いますか、お嬢さん?」
「違いますか? ……確信してるくせに」
 ああ、確かに拗ねている。
 言って、石川は自覚した。
 怒っているのではなかった。
 ただ、拗ねていたのだ。

 声をたてずに、吉澤が笑う。
 石川の頭をのせた肩がわずかに震えた。 
「自信満々なんだ」
「それは愛があるからだよ、ベイベェ」
「インフレを起こしている愛?」
「へっ?」
 軽口を叩いていた吉澤は、ニヤニヤ笑いを引っ込める。
 きょとん、と毒気を抜かれた間抜けな顔に、緩む口許を必死で引き締めて、石川は言う。

377- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:40

「まき散らしすぎなの」
「そんなことはないでしょ」
「嘘」
「嘘じゃない」
「うーそっ」
「違うってば」
 悪戯っぽい笑みを含ませた瞳で、睨み合う。
 その距離、30センチ。
 まだ、遠い。
 30センチを、遠いと感じるようになってしまった。
 もう、遅い。
 完全に、手後れ。

 掠めるように、口づけた。
「……うーん、スパイシー」
 心持ち低い囁きが、耳たぶをくすぐる。
 耳の後ろを滑り落ちて、指先が頬を行きつ戻りつ。
「苦手?」
「いえいえ、そんなことは」
 うやうやしく、石川の頬に手を添えて。
 ----ありがたく、いただきます。

378- Tea for You -:2003/09/18(木) 00:41


 願わくは、これから先、このひとの作る紅茶がいつもわたしのものでありますように。

 こうしてひとつのソファに並んで紅茶を飲むのが、いつもわたしでありますように。


 願わくは、これからも、ずっと。



         〜 あなたにお茶を 〜 from "Expert & Beginner"
                              ...... E N D

379NEMO:2003/09/18(木) 00:42

どうも、お粗末様でした。

誤字脱字など、見つけても知らないフリをしてやって下さい。

380sai:2003/09/18(木) 17:10
NEMOさんだ〜。お疲れ様でした〜。
温かい2人しっかりと堪能させてもらいました。
ごちでした(w

381匿名匿名希望:2003/09/19(金) 13:00
Σ(^〜^0)
NEMOさんだ〜。
更新お疲れ様でした。
PC前でニヤニヤしてましたよ(・∀・)ニヤニヤ
素敵な世界ありがとうございました。
次回の期待なんていうものをちょっとしちゃいたいです(w

382名無し(0´〜`0):2003/09/21(日) 14:41
良かったです。
NEMOさんは、他にも何か書いてらっしゃるのでしょうか?
また書いて欲しいです。

383『たんぽぽ』 −吉澤ひとみの記憶−:2003/09/21(日) 16:59
『たんぽぽ』 −吉澤ひとみの記憶−


たんぽぽのような君と出会った。雨にうたれても風に吹かれても
負けないような本当に心の強い人。清い人。

夢を見ていました。君と暮らしたたった半年という間。
人間の人生からしてみれば本当にひとかけらに過ぎないかも
しれない間。

でも、それは私にとって、普通の人の人生を一生分生きた半年。
君と出会わなかったら私は・・・。きっと後悔していた。自分と
いうことすべてに。

君といたことが。君が私のそばに居てくれたことがなによりもかけがえ
のない時間。終わることもない永遠の時。

雨が降ってくじけても、晴れの日がくればいっぱいに花びらを
咲かせるたんぽぽのような君。

思い出せばいつも私をやさしく包んでくれた君。目を閉じれば
今でも思い出される君のぬくもり。

384『たんぽぽ』 −吉澤ひとみの記憶−:2003/09/21(日) 17:00
君と一緒に居て、別れた後で私はいつも考えることがあった。
不思議なことで君とどんなに愛し合った後でも別れた後で一番
最初に考えること、思うこと。

それは、もう2度と君に会えなかったらどうしようということ。
なんでだろうね?そんなことあるわけ無いのに。君がどんなに
離れていても私は君を見つけ出してみせるのに。

「また、明日会おうね。絶対だよ。」

うれしい言葉。なによりも嬉しい言葉のはずなのにどこか不安に
なる私がいました。

本当に好きだから。誰よりも何よりも君が大好きだから。そして
昨日よりも今日の方が君のことを好きになっているから。

「明日だけじゃないよ。明後日もその次もその次も・・・。」

そう言っているときの君の笑顔。好き。本当に大好き。その笑顔
を思い出して私は不安を吹き飛ばす。

385『たんぽぽ』 −吉澤ひとみの記憶−:2003/09/21(日) 17:00
君は覚えているのかな?二人で泊まりに行った田舎町の小さな
旅館。

旅館の窓から見たのはそれまでで見たこともないような綺麗な
夜空。満面の星。風が運んでくるのは夏の風鈴の音。

あの時君は言ったよね。「私と星空どっちが綺麗?」って。私が
言ったこと覚えてる?星空を見ている君が一番だって。

大好きな君ともう一度。本当にもう一度だけでも。

神様がたった一つだけ願いをかなえてくれるとしたら私は迷わず
お願いします。彼女ともう一度だけ星を見せてください。

386『たんぽぽ』 −吉澤ひとみの記憶−:2003/09/21(日) 17:01
君と一緒にいった紅葉が広がっている場所。二人で一緒に拾った
落ち葉。君は言いました。

「落ち葉なんて嫌い。木と離れ離れになっちゃう落ち葉なんて。」

って。私には君が何を言っているのかすぐにわかった。でも
ずるい私は気づかないふりをしていた。

君だけじゃないんだよ。私だって別れたくなんてないよ。

哀しみに暮れる君のその表情。嫌い。みたくなかった。笑顔の君が
私は一番好きだから

でも、私が何も気づかないふりをして「どうしたの?」って聞くと
一生懸命に表情を隠した笑顔で

「うううん、なんでもないよ。紅葉は綺麗だから嫉妬してたんだ。」

って。君の精一杯の言い訳。でも、それが君の優しさであり温かさ。
そんな君を愛した私。そんな私を愛してくれた君

387『たんぽぽ』 −吉澤ひとみの記憶−:2003/09/21(日) 17:01
君との別れのときがきてしまった。未練がなかったなんていったら
嘘になる。でも、後悔ではなかった。君と出会えたんだから。

「生涯であなた以上に人を好きになるなんてことはないかもしれない。
けれどそれでも、あなたのことを知っているから。あなたは私の悲しむ
顔なんて見たくないはずだから。私は生きます。あなたがこれから生きる
はずだった分まで。あなたが生きたことを思い出にしないためにも。
さよならなんていいません。代わりに言います。」

『あなたを愛せたこと絶対に忘れません』

388Silence:2003/09/21(日) 17:03
『ひまわり』 −石川梨華の思い出−の吉澤Ver.です。
本当は石川編だけで止めておくつもりだったのですが大親友(?)
の作家さんに書けって言われて書きました(w 

前回同様の暗い話ですが(前回以上かも)温かさも残したつもり
です。哀しみよりも温かさを感じてもらうことができたらうれしい
です。

では、また。いつになるかわかりませんが(w

_| ̄|○ 最初下げ忘れた

389とくちゃん:2003/09/21(日) 17:31
大親友だと思いこんでますが何か?(w
ありがとうございます。
そしてまた石川Ver.を読み返します。
最高でつ。
更新お疲れ様でした。

390名無し(0´〜`0):2003/09/21(日) 17:31
泣かせてもらいました・・・
素晴らしいです・・・
短編で泣いたのは初めてかも・・・
ありがとうございました。

391名無しベーグル。:2003/09/21(日) 18:09
切ない_| ̄|○
素敵な短編ありがとうございました。

392禁断のシルエット:2003/09/23(火) 06:10
放課後の教室。
殆んどの生徒達は帰宅したり部活などに向かったりで、教室では数人の生徒が
他愛もない会話に花を咲かせていた。そんな教室の窓際の席で、あたしは
会話に混ざることもなく、ただぼんやりと部活に励む生徒達で忙しい校庭を眺めていた。
こうして放課後の教室に残っているワケ。
それは、SHRが終わると同時に教室をあとにした彼女が戻ってくるの待つため。

393禁断のシルエット:2003/09/23(火) 06:11

「あのね、放課後、先輩に告白しようと思うんだけど……」

「告白?」

「うん……」

「梨華ちゃんが?」

「ダメかな……」

「いやいや。それは梨華ちゃんの意思だし。そっか、ホントに告白するんだ」

「うん……でね、私が戻ってくるまで先に帰らずに教室で待ってて欲しいんだけど…
 よっすぃ〜はいい?」

「あ、うん……」

「ホントに?よかったぁ…ありがとね。」

394禁断のシルエット:2003/09/23(火) 06:12
それは昼休みのこと。彼女は突然、そう言った。
前から先輩のことが好きと言うことは聞いてた。
先輩の話になると嬉しそうな笑顔を見せていた彼女。
でも、彼女は気付いていた。

その想いは決して叶うことはない…

どうして叶わないと分かっていながら、それでも尚好きなのか。
ホントは苦しくてたまらない筈なのに……
ホントはたくさん傷ついてる筈なのに……
そんな彼女の想い。あたしには理解することが出来なかった。
あたしは彼女の想いを止めるべきだった。
これ以上親友が苦しみ、傷つく姿を見たくなかったから。
でも、結局何も出来ずにいた……

395禁断のシルエット:2003/09/23(火) 06:13
昼休みの彼女との会話を思い出していたあたし。
ふと、教室の時計を見ると、彼女が教室を去ってからすでに30分が過ぎていた。
いくらなんでもさすがに遅いでしょ……
待ってるようにとは言われてたけど……
心配になったあたしは告白の舞台へと向かうために教室を去った。

396禁断のシルエット:2003/09/23(火) 06:13
辿り着いた場所は音楽室。
放課後は特に使われることもないこの教室は、校内でも有名な告白スポット。
あたしは走ってきた所為で息を切らしていた。
何とも言えない不安さがそうさせたのだ。
乱れた呼吸を落ち着かせながら、ゆっくりと教室の扉へ近づいた。
もしかして、告白の真っ只中とか……
そんなことも思ったけど、教室の中からは声も音もしない。
あたしは少しだけ開いていた扉から中を覗いてみた。

「うっ……」

あたしの目に飛び込んできたものは、夕陽から射し込む眩しい光。
あまりの眩しさに思わず瞼を閉じてしまった。
少しの間そうしていると、眩しい光に慣れてきて。
そして、ゆっくりと瞼を開いた。

397禁断のシルエット:2003/09/23(火) 06:15

そこには悲しげに俯く少女のシルエット……

夕陽を背にして立ち尽くす彼女の姿……

光と影が織り成す絶対的な美しさ……



あたしは恋に落ちた。
苦しいぐらいに胸はドキドキし始めて。
ついさっきまで親友に過ぎなかった彼女に魅かれた。
これは禁じられた想い。
でも、あたしにはそんなことを考える余裕はなかった。
その美しさにしばし見惚れるあまりに。

398禁断のシルエット:2003/09/23(火) 06:16

「誰?」

どうやらあたしの気配に気付いた彼女。
覗いてたのバレたかな……
少し気まずさを感じながらも、彼女の声を無視するわけにもいかない。
ゆっくりと扉を開け、中に入った。

「よっすぃ〜……」

「遅いからさ、心配で来ちゃった……」

「…ありがとう……」

399禁断のシルエット:2003/09/23(火) 06:17
精一杯の作り笑顔を浮かべる彼女。
だけど、あたしは気付いた。彼女の頬を伝う涙に。
さっきは見惚れるあまりに気付けなかったけど。
その涙を見て、何も言えなくなった。
初めて感じる締め付けられるような胸の痛み。
どうなったのかは、聞かなくてもその涙を見れば嫌でも分かる。
どこか重い沈黙が教室を支配する。
窓の外からは部活をする生徒達の声。
そして、そっと吹き抜ける風が流れ込んできた。
それは優しい風で…きっと、彼女を包み込んだに違いない。
再び俯いてしまった彼女を見てると、あたしも風のように抱きしめたくなった。
今のあたしにはそんなこと出来ないけど……

ゆっくりと彼女に近づく。
下手な慰めの言葉は彼女の傷を深くするだけ。
何も出来ない自分の無力さを痛感する。
だけど、こうして沈黙し続けるわけにもいかない。
何か声を掛けないと……

400禁断のシルエット:2003/09/23(火) 06:18

「梨華ちゃん……」

ゴメンね…梨華ちゃんに魅かれたみたい……

「……うん……」

ホントはこんな想いを抱いてはいけないんだけど……

「…あのさ……」

でも、この教室に入った時からドキドキが止まらないんだ……

「えっと…これ……」

今はハンカチぐらいしか差し出せないけど……

「…ありがと……」

いつかこの想いをキミに伝えるから……

「そろそろ…帰ろっか……」

叶わぬ恋と気付いていても……

401禁断のシルエット:2003/09/23(火) 06:19
相変わらず夕陽が射し込み続ける音楽室。
ここは彼女が初めて失恋をした場所。
ここはあたしが初めて恋に落ちた場所。
そして、二人だけの思い出の場所。

402ぷよ〜る:2003/09/23(火) 06:20
以上です。
駄文で申し訳ないです。
このように自分で載せるのは最初で最後の挑戦なので
どうかお許しください。

403Silence:2003/09/23(火) 11:44
短編発見w 駄文なんかじゃないよ。すご〜く良かったでつ。
話はここで終わっちゃってるけどこの先を勝手に想像して
にやけてましたよw

404名無し(0´〜`0):2003/09/23(火) 12:32
駄文なんてとんでもない。いい短編ですよw

405名無し(0´〜`0):2003/09/23(火) 20:06
続編を予感させるような終わり方ですね。
続きも出来たら希望したいのですが…。

406名無し(0´〜`0):2003/09/23(火) 20:32
うわーーーーーー!
すんげー(・∀・)イイ
その後の二人が気になります。

407token:2003/09/24(水) 12:53
私も続きを勝手に妄想しています。
ええ、勿論ハッピーエンドですとも(w
いいお話でした。

408朝に進め!:2003/10/13(月) 21:41
淡いピンクのカーペット。
昨日の夜は気付かなかったけど、結構シミとかついてる。
まぁ、ホテルだもんね。
みんなお茶こぼしたり、タバコの灰だって落としちゃったりするよね。

でも。
やっぱり、ちょっと汚いって思う。

ハァ。

なんでカーペットの上に、落として寝ちゃったんだろう…。
…そりゃあ、相当眠くなってたから、
ベッドから微妙に離れた、机に置くのが面倒だったけど?
…そりゃあ、誰かさんが来たせいで、シングルベッドが狭くなったけど?
…そりゃあ、さすがにポータブルDVDはベッドに置いたままだけど?

あーぁ。
せっかく買ったDVDソフトが汚れたみたいでヤダなぁ。

409朝に進め!:2003/10/13(月) 21:43
『北北西に進路を取れ』

スタッフに薦められてDVD買ったんだけど、
でもこういう映画をセレクトしたのって、
自分的に、ちょっと背伸びをしてみたつもり。

人の意見にちゃんと耳を傾けたり、いろんな映画を観てみたり。
そうやって、私は大人に近づいていくんだ。

この映画を買ったとき、
また少し大人に近づいた気がして、気分良かったんだ。

でも。
汚れたカーペットのせいで、朝から凹む。

それに…。
人が凹んでるってのに、なに?
この人の赤ちゃんみたいな寝顔。


ちょっと癒されるじゃん!

410朝に進め!:2003/10/13(月) 21:44
そういえば、なんかのTV収録ンとき
「ホテル、同室になった人が
 浴衣はだけて寝てるのを見ると、ドキドキする」
って、誰かが言ってた。

うん。
わかる、それ。
はだけた浴衣は何度見ても、ドキドキする。
だから私は、いつもその姿を目に焼き付けるんだ。
…ちょっとエロいかな?って思って、誰にも言えないんだけど。

って、まぁ、この人は浴衣じゃなくて甚平なんだけどね。
どうやったら甚平、乱れるんだろう?

そろそろ、この人起こさなきゃ。
 すこしだけ、ほっぺたをつついてみても
 すこしだけ、ほっぺたをつねってみても
 すこしだけ、ほっぺたにチュウをしてみても
全然起きる気配のない、私の王子様を。

411朝に進め!:2003/10/13(月) 21:46
「飛ぶよー!
 一緒に飛ぼう!!」


え?
いきなりなに?
それって寝言?
ちょっと笑っちゃう。

でも。

うん、そうだね。
二人で飛ぼう!
きっと二人の未来は、今より高い高い場所にあるから。


コレカラダヨ!


上々上に進路を取ろう!!

412婆金:2003/10/13(月) 21:54
あー、スイマセンスイマセン。はじめまして。
駄文を書かせていただきました。
短いですが、一応いしよしです。
もう載せません。スイマセンスイマセン。

413ど素人。:2003/10/14(火) 01:29
はじめまして。
すごーく良かったです。
こういうの好きです!
是非また載せて下さい。

414婆金:2003/10/15(水) 09:14
>ど素人。様
読んでいただいて…。
アリガトウゴザイマス、アリガトウゴザイマス

お目汚し、失礼いたしました。

415名無し(0´〜`0):2003/10/15(水) 15:05
何で汚れたんだろう?とかいったりしてw
シリーズ化されてみたらどうでしょうか?
とか勝手に言っていますが、すごくよかったです!
ありがとうございました

416愛してる:2003/10/15(水) 21:42

 あたしは、走る。
 息が切れる。心臓が破裂しそうな位にバクバク言う。
 それでも走る。
 張り裂けそうに痛い胸を押さえて、どこまでも。

(・・・・・・梨華ちゃん!!!!)

 大切で愛しくてたまらないひとの名前を、声にならない声で叫びながら。

417愛してる:2003/10/15(水) 21:43


 喧嘩したんだ。
 だけど、それはいつもの事なんだ。
 あたしはそうやっていつも、彼女との密接な距離を確認する。

 梨華ちゃんはあたしを許してくれる。

 そう、例え何をしたとしても。
 他の人に目を向けても、傷つけるような事を言っても。
 あたしだから、許してくれるんだ。
 …それが心地よくて。抗い難い程に魅惑的で。

 誰よりも愛してる梨華ちゃんが、『あたしだから』許してくれる。

 これ以上の幸せってあるだろうか?これ以上の安らぎって、あるんだろうか?
 ・・・・・・あたしは、もしかしたらすごく歪んでるのかも知れない。
 そして自信がないのかもしれない。
『もう、しないでね。お願いよ?約束よ?』
 毎回毎回、涙ぐみながらそう言う梨華ちゃん。
 何度やっても必死で。何度やっても真剣で。
 その後に与えられる安堵の笑顔が、本当に愛しくて。

418愛してる:2003/10/15(水) 21:43
 …その度ごとに梨華ちゃんがどれだけ傷ついてるのかなんて、気付かなかった。
「・・・・・・くそっ!!!」
 流れて来た涙を、乱暴に袖でぬぐう。
 …邪魔だ。前が見えなくなったら、梨華ちゃんの姿を見逃すかも知れないじゃないか。
 だけど、涙は次から次へと勝手に流れて来る。
 …馬鹿野郎。梨華ちゃん見逃したら、お前のせいだ。
 もう一度涙をぬぐってから足を止め、周囲を見回す。
「・・・・・・。」
 夕暮れの公園。
 嫌でも思い出す、過去の幸福。

『…わたしね、ヨッスィーが…ううん、ひとみちゃんが・・・・・・好き。』

 夕日に染められていたせいだけじゃなく、真っ赤な顔でそう言ってくれたんだよね。
 あの頃はまだ、お互い髪も染めてなくて。
 あの頃は、梨華ちゃんは今とは違う香水をつけてて。
 …あの頃は梨華ちゃん、ネガティブ全開で。
 泣いてる梨華ちゃんを慰めるのが、あたしの使命だって思ってた。

419愛してる:2003/10/15(水) 21:44
「・・・・・・くっそぉ…!!!」
 悔しい。悔し過ぎる。
 自分の馬鹿さ加減が、情けなくてしょうがない。

 いつからか…あたしが梨華ちゃんを泣かすようになってるんだ。

 …だって、梨華ちゃんは強くなっちゃったから。
 昔みたいに、ちょっとの事ですぐ泣かなくなっちゃって。
 あたしなんかよりもずーっとずーっと、要領良くなっちゃって。
「…言い訳にもならないだろ…ッ!!」
 あたしは寂しいんだ。…そして、自信がないんだ。
 昔みたいに、『梨華ちゃんを誰よりも幸せにできるのはウチだけだ』って言い切れない。
 今の梨華ちゃんだったら、あたしがいなくても…放っておいても幸せになる。
「…〜〜〜〜〜〜っ!!」
 ぼろぼろ、涙がこぼれる。
 梨華ちゃんの人生に、あたしは必要ないんだ。
 むしろ『同性の恋人』なんて、梨華ちゃんのこれからの人生においては邪魔になるだけなんだ。
「…嫌だよぉ…。」
 側にいたい。ずっと、あたしだけの梨華ちゃんでいて欲しい。
 だって、あたしはこんなに好き。
「…梨華ちゃん…。」
 ほらね。
 名前を呼ぶだけで、こんなに胸が高鳴ってる。

420愛してる:2003/10/15(水) 21:44
 側にいないだけで、張り裂けそうなくらいに胸が痛い。
 他のひとを見るのは、そうしていれば梨華ちゃんの目が他に向かないから。
 冷たくするのは、もっとかまって欲しいから。
 …傷付けるのは…どんなカタチでも良いから、あたしの存在を梨華ちゃんの心に刻み付けたいから。
 馬鹿だ。あたしは。
 傷付いた時の心の痛みの度合いを、ナメてた。
「・・・・・・梨華ちゃぁん…!!」
 もうしない。もうしないよ。
 だから、側にいてよ。離れて行かないでよ。
 あたしがいなくても大丈夫なんて素振り、見せないでよ。

「…何て顔してるのよ…。」

 信じられない思いで、振り返る。
 …信じられないけど、間違えるはずない。
「…梨華ちゃ…!!!」
 …まるで、親に見つけてもらった迷子のように。
 あたしの目から、更に涙が流れ出した。

421愛してる:2003/10/15(水) 21:44
「・・・・・・まったく。泣きたいのはこっちの方なのよ?」
「…だって!!だって梨華ちゃんが!!」
 今のあたし、かなりみっともない。
 デカい図体して、細くて華奢な梨華ちゃんにしがみついて、わんわん泣いて。
 ・・・・・・だけど、梨華ちゃんの柔らかさと暖かさと甘い香りに…安心してる。
「…わたしが、何?」
「・・・・・・側に、いてくれない…っ、から…!!」
「先に離れようとしたのは、ひとみちゃんでしょ?」
「違う!あたしは一度だって、梨華ちゃんから離れようとした事ない!!」
 ぽんぽん、と背中を優しく叩かれた。
「…まるで、子供みたいね。」
「・・・・・・まだ、子供だもん。」
「もう十八歳でしょ?…付き合い始めてからもう、三年も経つのよ?」
 あたしは、梨華ちゃんからがばっと離れた。
 そして、強引に唇を奪う。

 ああ、あたし・・・・・・昔よりも確実に梨華ちゃん愛してる。

 一目惚れした瞬間よりも。
 恋心を隠して、友達として一緒に頑張ってた時よりも。
 告白された瞬間よりも。
 付き合い始めて、いろんな面が見え始めた時よりも。
「…断言するよ。あたしはこれから先、ずっと…『石川梨華』しか愛せない。」

422愛してる:2003/10/15(水) 21:45
「・・・・・・は…?」
 驚いた顔をする梨華ちゃんに、あたしは言った。
「…反則なんだよ。卑怯なんだよ、梨華ちゃんは。」
「な…ッ!?わ、わたしのどごが!?ひとみちゃんの方がよっぽど…!!」

「どんどん綺麗になって行くなんて。どんどんどんどん可愛くなって行くなんて。…反則だ。」

 しばらくぽかーんとしていた梨華ちゃんだけど、すぐにもっと顔を赤くした。
「…あのね、梨華ちゃん。」
「・・・・・・何なのよぉ…。」
「愛してるんだよ。」
「…ほ、他の人も見ちゃうくせに!!浮気みたいなのをしちゃうクセに!!」
「梨華ちゃんを愛してるから、しちゃうんだ。」
「ワケわかんない!!…わたしじゃない人とデートしちゃうくせに!!キスしちゃうくせに!!」
「だから、梨華ちゃんが愛し過ぎるせいなんだって。」
 今度はあたしが、泣き出しちゃった梨華ちゃんを抱きしめる。
「わけわかんない…!!」
 最初は抵抗してたけど…すぐに、抱き返して来てくれた。

「・・・・・・だけど、それなのにひとみちゃんが大好きな自分が、一番わけわかんない…!!」

 抱きしめた。
 力いっぱい、あふれ出す想いを込めて。

423愛してる:2003/10/15(水) 21:46
「く、苦しいよ、ひとみちゃん。」
「・・・・・・もう、しない。」
「え?」
「梨華ちゃんの気を引くために、梨華ちゃんを傷つけるなんて…もうしない。」
「・・・・・・っ!!」
 抱き返す力が強くなった。
 ああ。そうだ。
 梨華ちゃんは、強くなったんじゃなかった。
 『吉澤ひとみ』って言う安らぎを、手に入れただけなんだ。
「本当ね?」
「うん。」
「もう、しないのね?」
「もちろん。」
 誓いのキスを交わす。
 そう、あたしはもう絶対にしない。
 だって、わかってしまったから。

 梨華ちゃんには、あたしが必要だって。

 手をつないで帰る、帰り道。
「…ねえ、梨華ちゃん?」
「何?ひとみちゃん。」

424愛してる:2003/10/15(水) 21:47
「・・・・・・あたしの事、必要?」
「何言ってるのよ。」
 ぎゅっと、手を握る力が強くなる。
 まるで、あたしたちの絆みたいに。

「…ひとみちゃんがいない人生なんて、考えられないから。」

 もう、迷ったり不安になったりする必要はない。
 だって、誰よりも何よりも愛してる梨華ちゃんが、必要としてくれてるんだ。
 空を見上げると・・・・・・明日も良い天気になりそうなくらい、綺麗なお月様が見えた。
                                       おわり。

425クロイツ:2003/10/15(水) 21:48
どうも、失礼致しました…(汗)
突発的に書きあがった短編でございます。
雑な所も多いのですが・・・・・・もしよろしかったら読んでやってくださいませ♪

426名無し(0´〜`0):2003/10/16(木) 19:08
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
すっごく甘くて最高ですた!!
現実の二人もきっと…。
また短編お願いします。もちろん↓も楽しみにしています。

427名無し(0´〜`0):2003/10/17(金) 00:13
良かったです〜・・クロイツ様の文面、好きです!
いしよし不足気味の今日この頃・・
是非、また読みたいです。クロイツさま〜 また
お待ちしてます・・・

428クロイツ:2003/10/21(火) 15:12
>>426名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございます!!
 いや〜、こーゆー話書くの、ちょっぴり久しぶりだったので…喜んで頂けてよかった♪
 >また短編お願いします。
 はいっ!また書かせて頂きます!その時はまたよろしくです!!

>>427名無し(0´〜`0)様
 ありがとうございます!!
 そう言って頂けると、本当に嬉しいです〜!!!
 また書かせて頂きますので、その時はよろしくです(笑)

42910年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:25
【10年の約束 石川Ver.】


風が通り抜けていく。夏という季節を過ぎてこれから冬に向かう。そんな
季節を移す風が。そしてその真ん中の季節。

秋。

私はこの秋が大好き。山には紅葉が、夕暮れ時には太陽が。それぞれ綺麗な
アカのヒカリを私に届けてくれる。

それを見るたびに思い出す人がいる。

不思議なこと。別に春でも夏でも冬でも。あなたのことを忘れたことなんて
一度も。片時もないはずなのにそれなのに。

秋は私にあなたのことを思い出させる季節。それが私にとってうれしいこと
なのか。哀しいことなのか…。

それはきっと今の私にわかることではないと思う。

43010年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:25
何年かして私が誰かと結ばれてそして今のことを過去のことを思い出した
とき。そのときにはじめて分かることなんじゃないかな〜。

その誰かが、誰なんてことはわからない。誰かがいるのかさえもわからない。
でも、もし、もしもその誰かがあなただとしたら。

そうしたらきっと私は今を幸せと感じることができるんじゃないかな〜。
だって、大好きだから。本当に好きで好きでたまらないあなたのことを
想っている時間なんだから。

43110年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:26
私は駅のホームから汽車に乗り込む。ガタンガタン。時間が経つにつれて
しだいに人が減っていく。私の降りる駅に着くころには汽車のなかはほとんど
がらがらの状態。

気が付くと私は眠ってしまっていたようで、目を開けて窓の外を見るとそこ
には都会という言葉とはまったく正反対にあるその光景に目を奪われる。

「そんなことはないよ、君の方が数倍も綺麗だよ。」

「いやだな〜、よっすぃ〜は。いまどきそんな言葉誰も使わないよ〜。
ほんと、さっむ〜い。」

「えええっ〜!!なんでだよ〜。せっかく勇気を出して言ったのに〜。」

そういって少しすねていたあなた。本当に単純に私だけを好きでいてくれた
あなた。バカだな〜こっちだって恥ずかしかったんだよ。本当はうれし
かったよ。

だって、好きな人に褒められてうれしくない子なんていると思いますか?
まだまだなんだよ。よっすぃ〜はさぁ。

43210年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:26
汽車のアナウンスが私の降りる駅の名前を告げる。大きな荷物なんて持って
ない私は片手にバックだけを持って席を立つ。

駅のホームに下りるとそこに広がるのは秋のにおい。少し肌寒い風が優しく
私の頬を撫でるようにして流れていく。

小さいこの駅だけど。それでも改札口までは階段を上らなければいけません。
最近階段なんて上ってないな〜。少々弱気になる私。よしっ、頑張るか。

階段を上ろうと足をかけたときに目に入ったのは大きな荷物をもって老人
の姿。お年よりは大切にしないといけません。

「あの〜、よろしかったら、お荷物お持ちしましょうか?」

43310年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:26
「姫、お荷物お持ちしましょうか?」

「ちょっと、こんなところで姫なんて恥ずかしいじゃん。止めてよ〜。」

「あらら、姫はご立腹ですかぁ?それともただ単に照れちゃったりなんか
しちゃってるんですかぁ?」

「もうっ、うるさいな〜。ほらっ、荷物持ってくれるのならさっさと
持ってよぉ。まだまだ忙しいんだから。よしっ、次のお店行くよ〜♪」

「ええっ!!まだ行く気なの〜。もういいよ、疲れたしこんなに重いん
だから。さっさと帰って二人でのんび〜りすごしましょうよ、姫〜。」

43410年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:27
「だぁ〜めです。二人とも休みなんてことそうはあることじゃないん
だから。よしっ、今日は一日中買い物するぞ〜。行くぞ召使のよっすぃ〜
君。」

「はいはい、わかりましたよ。荷物持ちにしていただけただけでも光栄で
ございますよ。」

「こらっ、もっとしゃきっとなさい。しゃきっと!!」

「へいへい、ほんと人使いの荒い姫様だなぁ。」

43510年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:27
駅を出たところで老人と別れる。お礼にと貰ったことハッカ飴。ちょっと
すっぱいこの飴を舐めながら私はどこまでも続くこの道を一歩一歩歩く。

トンボが横切り、遠くからは鳥のさえずりが聴こえてくる。どこにでも
あるようで実はここにしかない風景。

道はアスファルトなんてまったくなく土で出来ている。

まったく時代の移り変わりなんか感じさせないこの田舎道。きっと社会の
教科書に出てくるような時代から全くかわってないんだろうな〜っと思う。

そして、それはこれから先もず〜とかわらないんだろうね。

43610年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:28
「ねぇ、よっすぃってさあ、私のこと本当に好きなの?」

「んっ?どうしたのさ突然そんなこと言い出して?」

「べっ、べつにいいじゃない。私が突然何言い出しても。それよりも私の
質問に答えてよ。好きなの?好きなんかじゃないの?」

「好きだよ、本当に大好き。私の中で一番大切な人。」

「いつから私のこと好きなのよぉ?」

「いつから?う〜ん、いつからだろうね。一目見たときから好きになって
初めて話したときから大好きになった。かな。」

「ふう〜ん、それじゃあ、よっすぃは私のこといつまで好きでいてくるの
さぁ?」

「えっ!!いつまで好きでいてくれるぅ?何それ。そんな質問聞いたことも
ないんですけど。」

43710年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:28
「だって、いつから好きなの?って質問があるんだからいつまで好きなのって
質問があってもおかしくないじゃない。ねぇ、答えてよ。」

「う〜ん、ずっと好きかなぁ。」

「ずっと好き?」

「うん、ずっと変わりなく大好きだと思う。出逢った瞬間からずっと。
いつまでも変わりなく。梨華ちゃんは?」

「んっ?私も嫌いじゃないよ……。ほらっ!!そんなことよりお風呂の
お湯を止めて着なさい。お湯が溢れちゃうでしょ。」

「やばい、そうだった〜。」

43810年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:29
あの時は恥ずかしいからはぐらかしたけどさぁ。私だってもちろん大好き
だよ。出逢ったときからずっと。

そしてこれからもきっと変わることなくず〜っと大好きだよ。

43910年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:29
さっきからずっと歩いているこの道。車どころか人一人として見かけない
そんな田舎道。

私は別に人とかと接するのが苦手ってわけではないけど・・・苦手かもしれ
ないけど、それでも一人というのは落ち着くものです。

寂しいって気持ちよりも。

そうだ、歌を歌ってみましょう。大好きな歌を。別に特別上手ってわけでは
ないけれど、それでも私は歌が大好き。

歌が大好きで、しかも歌がうまい。それに越したことはないけれどそれでも
歌がうまいけれど歌を愛せない人。そんな人よりはぜんぜんいいよ。
そう思えたのはあなたのおかげ。

『華になろう〜風になろう〜君の目に映る景色〜♪るるるるるるる〜♪

空になろう〜雲になろう〜そして君を照らす太陽〜♪』

44010年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:29
「なんかさぁ、梨華ちゃんの歌って不思議な力があるよねぇ。絶対に。
うん、なんかあるよ絶対に。」

「不思議な力ってなによ〜?それって褒めてくれてるの?それともただ
バカにされてるの私。返答しだいでは今日のご飯抜きだからね。」

「ええっ、ええと、もちろん褒めてるに決まってるじゃんよ。うん、間違い
ないよ。」

「あら、そうなんだ。褒められたんだ私。それじゃあ記念にパスタでも作って
もらおうかしら。あっ、サラダもお忘れなくね、よろしく!!」

44110年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:30
「へいへい、わかりましたよ、作ればいいんでしょ、つくれば。」

「素直で大変よろしい。」

「でも、本当に好きなんだよね梨華ちゃんの歌。正直特別上手とは思わないけど
聞いてて本当に伝わるよ。歌が好きなんだよって。」

「へえ、それで続きは?」

「だってさぁ、私は歌の上手下手って音程だの声量だのよりも相手に
気持ちを伝えられるかっていう方が何倍も大事だと思うんだよ。」

「それに、もし、私が歌を聞かせてもらうって時はそっちの方が何倍もうれしい
と思うからだから・・・。」

44210年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:30
「一言だけ言わせてもうおうかしら。」

「何?何でも言っちゃってよ梨華ちゃん。」

「よっすぃ、なんか日本語へんだよ。なんかしっくりこない表現があった
んですけど。」

「なんだよなんだよ、せっかく私がキャラにもないいいこと言ってみたのに
さぁ。そうやってすぐつっこむんだもん。」

「残念でしたぁ〜。そんな下手なお世辞にひっかかる石川梨華ではないの
です。また次回挑戦してください。」

「えっ、挑戦って何さ?しかもまた今度って。お世辞なんかじゃないのに
さぁ。本当にもうっ!!」

44310年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:31
わかってるよそんなこと。目を見ればすぐにわかる。あなたのその綺麗な
目を。大好きなそのひとみはルビーみたいに輝いていた。

あなたのその言葉もうれしかったよ。でも、あなたの表情とか私のことを
真剣に想ってくれる気持ち。それにあのひとみが言葉以上にうれしかった。

『ありがとう』

44410年の約束 石川Ver.:2003/10/26(日) 10:31
『華になろう〜風になろう〜♪』

着いたよ、着きましたよ。今回のぶらり一人旅の目的地。校舎があって
グラウンドがあって裏庭があってそこには小さな丘がある。

ここに最後に来たのはもう10年も前のこと。う〜ん、あの頃は若かった
な〜なんて考える私はもう若者じゃないのかな〜。

夕暮れの空。気づいたらもう夕暮れ時。建物から出てきた子供が校門の前に
立っていた私の横を通る。

私のことを先生をでも思ったんでしょうか?姿勢を正して私の方に向きを
直して言う。

「さようなら。」


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