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暫定保管スレ【第105話61レス以降 作品・保全ネタ】

1名無しリゾナント:2015/12/22(火) 20:45:52
現状「暫定保管庫(まとめ3)が停止している為一時的に第105話61スレ以降のに投稿された作品・保全ネタ掲載していきます
投稿された順に書き込んでいきますのでかなり読み辛いかとは思いますがご了承ください
いつか暫定保管庫が復活する日が来ることを信じて・・・

25名無しリゾナント:2015/12/22(火) 21:14:40
「まだ方法はあると思うなぁ」

掲げた腕が冷えきった空間を裂くように振り下ろされようとした時、耳慣れない声が静かに響いた。

「あなたの最高傑作の秘密を明かすことが一番のトリガーだと思うけど」

あさ美の瞳の奥が一瞬、色を変えた。

「秘密?この実験体に秘密などありはしない」
「じゃ、言い方を変えるわ。その子を生み出した経緯と名前の由来、という風に」

声の在処を追って天空を見上げると、そこには漆黒の羽が散らばっていた。

「その子にはアイデンティティが欠けている。何故自分は生を受けたのか、受けなければならなかったのか、という生物の純粋な子孫繁栄のプロセスから外れたクローンだからこそ在るべき絶対的理由が」

白と黒の雑踏の景色の中から、まるでそこにベンチがあるかのように黒翼の天使が空中に腰掛けていた。
何故彼女を天使だと思ったのか、理由はわからない。少なくともここで過ごしていた時代に彼女を見かけたことはない。檻の中という狭い、閉ざされた世界。
しかし、愛の存在は組織内でもトップシークレットであったと里沙から聞いた。事実、愛が見知っている人物は研究員を除き全て組織の重役達で、他に愛が出会ったモノ達は全て愛自身の手で葬り去ってきた。
しかしその中に彼女は居ない。だが彼女はあさ美と同等の情報を持っている。つまり、ダークネスの中でもかなりの精鋭だということ。

だけど。

「今更隠すことも無いんじゃない。あなただって全てを承知した上でしょう」

ふわりと天使が居住まいを正す。
落ちてきた羽を握りしめるあさ美が、ふと表情を緩ませ、また引き締める。

「相変わらずどこから仕入れてきたのか分からない情報通ね、後藤」
「うわさには敏感みたい…昔から」

彼女��後藤にはダークネスの幹部にあるべき殺気が全く無く������むしろ憐れみに満ちていたのだ。

26名無しリゾナント:2015/12/22(火) 21:15:11
やるなら今だ。
そう、全身が告げていた。後藤の登場であさ美の意識は分散している。脳の時間軸も今はいじられていない。
後藤はダークネスだが攻撃は確実に行わない、何故かそう本能で感じていた。絶好機はまさに今だった。

しかし愛の身体は動かなかった。あさ美を倒す、それ以上に、愛の思考は二人の会話に引きつけられていた。
アイデンティティ、追い求め追い求め、追い続けていたもの。
里沙はダークネスに育てられた。ダークネスの組織の中での触れ合いで成長した。
私は。
私はダークネスから生まれ落ちた。怪物と闘わされ、そして捨てられた。
私に母はいない。父もいない。あるのは持って生まれた能力だけ。意味を持つ名前すら無い。
何故つくられたのか、その理由も知らず、そして無言で捨てられた。
高橋愛のアイデンティティは喫茶リゾナント、そしてそこに集う仲間達と一緒にいること。
そして避けられない、i914であること。
ではi914のアイデンティティとは。忌み嫌い心の奥底でずっと押し殺して、だけどずっと欲しかった『i914の存在理由』。

「平方根は知ってる?」
「え?」
「ルート4は2、で有名な数学の基礎よ」

あさ美は舞い落ちる黒羽を見つめながら突如、口を開いた。

「ルート9は3、ルート25は5、ルート169は13」
「二乗したら元の数字に戻るってやつか」
「そう」

後藤は空中に腰掛けながら、変わらずに笑みを浮かべている。

27名無しリゾナント:2015/12/22(火) 21:15:43
「でもさっきの答えじゃマルは貰えない。��3を二乗しても9になるもの。じゃあ��9の平方根はなにかしら」
「…±3i」
「そう、正も負も二乗すると正の数になってしまう。でもそれじゃ困るって考えだされたのが虚数単位のi。虚数、なんて言うけど現代科学は虚数無しじゃ成り立たないわ」
「あたし数学教えてなんて」
「じゃあこの虚数i、なんの頭文字でしょう」

あさ美が漂わせていた視線をようやくこちらに向ける。

「imaginary numberって聞いたこと無い?」
「imaginary…想像上の…数字」

あさ美の目尻にしわが一つ刻まれる。

「次。TOEはさすがに知らないわよね、Theory of Everythingの頭文字でTOE」
「………」
「日本語に訳すとそのまま万物の理論。まだこの理論には誰も行き着いていないけれど、もしこの理論が完成すれば、その名の通りこの世の事象全てを統一的に証明出来るわ」
「……へぇ」
「で、今最もこのTOEに近いと言われている理論がある。それがM理論。もちろんまだまだ未完成」
「M理論……」
「でもこのM理論が完成してTOEが成立したとしても問題がある」
「問題?」

頭上で後藤が一つ息を吐いた。

「ゾンビワールド」
「ゾンビワールド?」
「TOEが完成したとして、それは物理的理論にしか過ぎない。つまりEverythingなのにEverythingを説明していない…感情・意識については抜けちゃっているの。
TOEが説明する世界は物理的法則のみに従う感情の無い人間の世界で、それを哲学者達はゾンビワールドと呼ぶ」

28名無しリゾナント:2015/12/22(火) 21:16:17
そこまで言うとあさ美は一呼吸し、愛から視線を外す。

「……そうね、これが成れの果てとでも言うのかしら」

同意を示すような頭上の柔らかな笑いが純白の世界に降り注ぐ。

「ダークネス創始者は言った。
『私たちは異質で数が少ないというだけで深海に追いやられた悲劇の民。優劣に従い、表層と深海をひっくり返す』と。
しかし数の利というのはいつの時代も圧倒的な力を誇るもの。数の力をもってミツバチが巣に入り込んだスズメバチを蒸し殺すように。
そして彼女も数を求めた。彼女の論理のみに従う感情の無い兵を」

この空間に至るまでに刻んだ亡き者たちの叫びを思い出す。

「感情の無い、やと……みんなどれだけ苦しんどったと……」
「その通り、どれだけ兵器として特化しようとも生物である以上最低限度の心を持ってしまう。つまり万物の理論なんて絵に描いた餅なの。
M理論も、ゾンビワールドも全て仮定のお話、想像上のエトセトラ。まぁ研究課題としては非常に興味深かったし、何より造ったバケモノ達もある程度の役割を果たし、実際組織の体力も増した」

ここからがあなたのお話、そう口にしたあさ美が愛に視線を戻す。

「その日私は自説の論証の最中だった。気配を感じて振り返ったらあの女がいたわ、手に1本の試験管を持って」
「あの女…?」
「女は言った。『この命を使って最高のショーを創りましょう』
私は悦びに全身が震えたわ、生まれて初めて神に感謝すらした。最高の、最高の研究ができる」

29名無しリゾナント:2015/12/22(火) 21:16:49
あさ美は瞳孔を全開にしながら話し続ける。

「能力者のクローンプロジェクトが始まって以来、夢にまでみた理想。
他の追随を許さない、絶対的な能力者の血液を目にして興奮しない科学者がいれば教えてほしい。
ただただ彼女のクローンで終わらせてたまるものですか。より圧倒的な能力者を生み出すことが女との約束でもあったけれど、そんなの当然だわ。
最高傑作以外生まれる訳がないもの、あの遺伝子を用いるのだから。全身の血が滾った状態、不眠不休で研究と実証を重ね、ついにその日はやってきた」

あぁ、身体中が熱い。なのに震えが止まらない。

「9月14日、ヒトのかたちをしたものがようやく現れた。0から有を生み出す言霊の代わりに、全てを無に還す光の能力を携えて」

「……それが……あたし…」

「比肩するものとてない能力、溢れ出る心、現代科学の最高峰の全ての集合体、現実となった想像上の存在。敬意を込めてその名をつけたのよ……i914、と」

追い求めていたはずのアイデンティティ、欠けていた心の中心。
意味のない数字の羅列だったはずのその番号に込められたもの。

想像上の存在、という意味。
この身体に流れる、この血液。

「あなたの血縁上の母は我らの創始者。あなたの存在を生み出したきっかけの母は漆黒の女。私はそれを具現化した」

心が破れる、音がした。

30名無しリゾナント:2015/12/22(火) 21:17:53
>>25-29
『XOXO -Hug and Kiss- (4-e)』

31名無しリゾナント:2015/12/22(火) 21:22:19
【第106話】

期間
2015/06/23(火) 03:00 〜 2015/08/25(火) 00:51 1000レス

32名無しリゾナント:2015/12/23(水) 02:20:26
>>23 の続きです



核シェルター級に厳重な警戒態勢を敷いている、「天使の檻」。
その肝である防護壁が、自動ドアのようにやすやすと、開いてしまう。
つんくが帯同させている二人の能力者のうちの一人・石井の能力によるものだった。

「ここまで来たらもう少しや。調子は…ま、聞かんでもええか」
「……」

石井は。
全身から絶え間なく漏れ出している血によって、体を朱に染めていた。
自らの使役する電流を利用して、防護壁のセキュリティシステムと同期する。つまり自らをカ
ードキー化することで、防衛装置を作動させることなく建物内を通過することができるという
仕組みだ。

ただし、肉体への損傷は計り知れない。
事実、石井の体は限界に達していた。体組織は破壊され、全身からの血が止まらない。免疫系
統が機能停止した何よりの証拠だ。
そんな姿を見ても、つんくは進むことをやめない。まるで最初からこの程度の犠牲は織り込み
済みだと言わんばかりに。

33名無しリゾナント:2015/12/23(水) 02:21:00
不意に、建物全体に轟く地響き。
外での戦闘が激化した合図だろうか。もう一人の能力者である前田が困惑気味に周囲を見渡す。

「紺野のやつ、ジョーカー切りよった」
「ジョーカー?」
「せやけど。切り札は切ったら…しまいや」

つんくの歩みが、止まる。
目の前に、巨大で重厚な防御壁が立ち塞がっていた。

「この先に、『天使』が待ってる。時間的にもぎりぎりやな。頼んだで」
「……」

答える気力もないのだろうか。
石井は床に自らの血を滴らせ、カードリーダーの端末に手を伸ばす。
電気を自在に操る石井の体が一瞬光ったかと思うと、大きく痙攣しはじめた。
口から、目から、いや、体じゅうの穴という穴から。激しい出血が止まらない。石井の体がカ
ードリーダーのセキュリティシステムと融合しようとしている。だが、その代償はあまりにも
大きい。

認証完了の、電子音が静かに鳴り響く。石井は。
そのまま自らが作り出した血の海に崩れ落ちる。
そして、二度と動く事はなかった。

34名無しリゾナント:2015/12/23(水) 02:21:33
石井の亡骸を、見下ろす形のつんく。
文字通り命を賭した部下にかけた言葉は。

「ご苦労さん。さ、前に進もか」
「は、はい」

前田は、改めて自らの上司の非情さを肌で感じる。
石井は自分が使い捨てになることを知っていた。知った上で、忠誠を示すかのように命を散らせ
ていった。それを、ご苦労さんの一言で済ませてしまう。

だが。
そこに芽生える感情など、大いなる目的の前ではまるで意味を成さない。
つんくは、ダークネスという巨大な組織に立ち向かうため、能力者を集めそして育て上げた。そ
のことがどれだけの労苦を齎したかは想像に難くない。

全ては、巨悪を倒すため。
前田もまた、任務のためなら命を投げ出す覚悟でいた。

劇場の幕が上がるように。
ゆっくりと、防御壁が上部に収納されてゆく。

徐々に姿を現す、透明なガラスによって中央を仕切られた部屋。
これが、「天使の檻」の中枢にして真の姿。
椅子に座っていた部屋の主は、訪問者の存在に気づき、驚きの声をあげた。

35名無しリゾナント:2015/12/23(水) 02:22:05
「つんくさん…?」
「おう。久しぶりやな」

派手な金髪に、白スーツ。
人を食ったようなにやけ顔は相変わらず。
その変わらなさが。

「天使」の表情を、強張らせる。

「何やねん安倍、感動の再会やのにそないな顔して」
「どうして、ここに来たんですか」

「銀翼の天使」の瞳に湛えられた、静かな、それでいて悲しげな怒り。
つんくはそれを、そよ風を受けるが如く流していた。

「藪から棒やな。俺が手塩にかけてプロデュースした逸材を訪ねに来た、ええ話やん」
「つんくさん。あなたは。『HELLO』を離れてから今まで…何をされてきたんですか?」
「そらもう、八面六臂の大活躍やがな。警察にヘッドハンティングされて、能力者による治安維
持部隊を編制。その傍ら、有望な能力者の卵たちをスカウトして、一人前の能力者に育て上げる。
能力者業界から表彰状貰ってもええくらいやで?」

椅子から立ち上がり、つんくを睨み付ける「天使」。

「何をそないに怒ってんねんな」
「私はあの日…組織の本拠地を抜け出して、新垣の。ううん、リゾナンターたちのもとを訪れた。
それは、彼女たちに会って伝えなきゃならないことがあったから」
「ほう…?」
「つんくさん。あなたの、本当の姿を」

36名無しリゾナント:2015/12/23(水) 02:22:36
つんくは。
ただにやにやとした笑顔を、浮かべ続けている。

「あなたは『能力者のプロデュース』と称して、能力者の子供達を各地から集めていた。能力の
開花。制御不能な未熟な能力を、正しい方向へと導く。そう言ったお題目の元に」
「おっかしいなあ。顔変えて、素性も変えて。『俺』やってバレへんようにしてたつもりやった
んやけどなあ」
「でも、裕ちゃんや圭ちゃんたちはその事実を、まるで見て見ぬふり。おかしいと思った。でも
ね、よっすぃが教えてくれた。本当のことを」
「はぁ。情報部の連中はそないなことまで調べてるんか」

「天使」は、その表情を少しずつ険しくしてゆく。
理性と感情の狭間、辛うじてそのバランスを取っている。

「集められた子供達。彼女たちは最初から、組織とあなたの共有財産だった」
「…ええシステムやろ?」
「ふざけないで!そのせいで、どれだけ多くの子たちが苦しんできたか…!!」
「そなの?ごめんね」

「銀翼の天使」が、純白の羽を広げる。
その羽の一つ一つが、高密度のエネルギーの塊。こぼれ落ちた羽が床面に落ちると、そこからあ
ふれ出した純粋な「力」が爆ぜる。それでも特殊合金製の床には傷ひとつ、ついていない。

37名無しリゾナント:2015/12/23(水) 02:23:06
「どうして!どうしてそんなことが言えるの!?なっちは、なっちは!!!!」
「つんくさん、『天使』の力が異常に高まってます!!このままでは危険です!!」

ダークネスの誇る超強化ガラスに阻まれてはいるものの、この状態は決して安穏としてられるも
のではない。
しかし前に出ようとした前田を、つんくの手が制する。

「俺としたことが、済まんな。まずは、邪魔なもんを取り払う」

前田の目の前に翳された手。
そのまま上に掲げ、そして、指を鳴らした。

ぱちん。

まるで、光り輝く雪のようだった。
前田は、はじめは「銀翼の天使」が能力を行使したのかと思った。
だが、そうではない。降り注ぐのは、それまで天使の檻が檻の体を成していた所以とも言える、
強化ガラスの欠片。
信じられないこと。それは、檻の向こう側にいた「天使」もまた同様であった。

あまりに突飛な出来事が、「天使」の組まれかけた武装を完全に解いていた。
それだけ異常な出来事が起こったということだ。

つんくは、能力者ではない。
それがここにいる人間の、共通認識だったはず。
しかし現実に、鉄壁の強化ガラスは、粉みじんに、跡形もなく崩れ去った。

38名無しリゾナント:2015/12/23(水) 02:23:39
「あなたは…」
「言っとくが、これは俺の『能力』ちゃうぞ」

いつの間に、背後に回り込まれていた。
迎え撃とうにも、ありえない行動速度の速さに「天使」の反射神経が追いつかない。
後ろから首を回し、顎を上げ、唇の隙間から「何か」を滑り込ませる。
吐きだそうとする「天使」、しかしそれはつんくが許さない。

「ま、専門分野やしな。薬の飲ませ方は心得ておま」

「天使」の喉に手を当て、口蓋の筋肉を弛緩させる。
小さな錠剤は、吸い込まれるようにして落ちていった。

つんくを突き飛ばし、床に突っ伏して咳き込む「天使」。
入れられたものを吐こうと、手指を突っ込んで嘔吐を試みる。が。

「無駄やで。飲んだ瞬間に胃に溶けて早く効く。それが俺の『プロデュース』した薬の特徴や」
「何を…飲ませた…の」
「安心せえ。効能は、『モルモット』で証明済みや」

その時だった。
天井に収納されていたアーム付きのモニターが、ゆっくりと降りてきた。
それとともに、液晶画面に映し出されるのは。

39名無しリゾナント:2015/12/23(水) 02:24:10
「『天使』さんに何を飲ませたのか。ぜひ、私にもご教授いただきたいものです」

白衣に身を包んだ、ダークネスの叡智。
組織の頭脳の統括者とも言うべき、紺野あさ美がそこに映っていた。
それを見上げるような格好になったつんくは。

「…世界ががらりと変わる、薬や」

厭らしく、唇を歪ませる。
そしてつんくは語り始める。弟子に、自分の研究成果を披露する。
ありのままに、全てを。

40名無しリゾナント:2015/12/23(水) 02:25:14
>>32-39
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

41名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:45:34
なんやねん!
ウチが何したんや!?

「待てや女ァ!」
「言われて待つ奴なんかおらんわ!」
「んだとガキがァ!」

夕方
森の中
か弱い女の子がおっさん2人に追いかけられとる

か弱い女の子はウチの事な

なんて
ゆっくり説明しとる暇なんかあらへん!

「見ず知らずのおっさんに、追いかけられて喜ぶ趣味なんかないで!」
「こっちもやりたくてやってるんやないわ!」
「とにかく待てや!」
「嫌やーっ!」

怪しい!
怪しすぎる!
誰やねん!
このおっさん2人!?
捕まったら何されるかわかったもんやない!

学校が終わって家に帰って、写真でも撮ろうかと一番近い山に来たら
森のくまさんやなくて、2人のおっさんが追いかけて来るとか

ホンマありえんわ!

42名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:46:08
「こんガキ……いい加減にしーや!」

ベキベキベキッ!

突然、樹が折れてウチの前に倒れて来た

「うわっ!」

慌てて立ち止まる

あかん……道が塞がれてもうた
いや、それよりも

「さあ、大人しくせんかい!」

なんで後ろにおるおっさんがウチの前にある樹を倒せるん?

もしかして……
このおっさんら、超能力者なん?

「自分、さっきの写真どうする気や?」
「写真? 空とか森とかしか撮ってへんわ!」
「嘘言うな!」

ポケットに入ってるデジカメを掴む

変なモン撮ったつもりはないのに……

ようわからんけど
あのおっさんらに都合の悪いモンでも写っとるんやろか
やったら、このデジカメ渡したら終わり?

43名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:46:40
「どっちでも構へん。疑わしきは罰せよ、やろ」
「せやな」

あかん!
この会話はあかん!
ウチ絶対に殺されるわ!
もう逃げるしかないやんか!

倒れた樹に向かって走り、思いっきりジャンプする
飛び越せなくても、上に乗れば──

「逃がさんで」

──念動力──サイコキネシス

「うわっ!」

倒れてた樹が転がり足元がふらつく

「駄目押しや!」

ベキベキベキッ!

別の樹が倒れて来る

あかん
もう死んだわ
ここで何もかも終わりや

もっと生きたかった
もっと色んな事したかった
もっと……

44名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:47:13
まだ
死にたくない

助けて
誰か──!

45名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:48:10
>>41-44

といった保全作は要りますか?

46名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:54:44
>>32-39 の続きです



治癒の力を注げど注げど、体を蝕む滅びの力は止まらない。
業を煮やした「金鴉」が取った行動は。

「しゃおらああぁあっ!!!!!!!!」

勢いよく噴出す、鮮血。
炭化した足の部位を鷲掴み抉り取るという、無茶苦茶な荒療治だった。

「…あんた、馬鹿なの?」
「ざまあみろっ!このボケナスが!!」

あきれ返るさゆみに向かって強がる「金鴉」だが、大ダメージは隠せない。
何せ腿の決して少なくない肉を抉ったのだ。動く事すら難しいはず。

「てめえの滅びの力なんざ、のんには効かねえんだよ!!」
「ふぅん。じゃあ自分の体が穴ぼこだらけのチーズになるまで頑張りなさいよ」

さゆみの視線は既に、背後の「煙鏡」のほうへ注がれていた。
今回の全ての計画を描いた人物。能力の強弱は不祥だが、警戒すべきは悪魔の頭脳。

47名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:55:23
「何や自分。あいぼんさんがそんなに可愛いからって、戦いの最中に見つめてたらあかんで」
「笑えない冗談ね。あんたはさゆみのタイプじゃないし」

余裕の軽口は、策を講じている証拠なのか。
幸い、目の前の相手は「もう問題ではない」。もう一人の相手の見せる余裕、その謎を解かなけ
ればならない。
さゆみは「金鴉」の怪力によって破壊された石畳の礫を拾い上げ、「煙鏡」に向って投げつけた。
すると、礫は奇妙なカーブを描いてあさっての方向に飛んでゆく。

「無駄やで。うちの『鉄壁』にはそんなん通用せえへん。そういう『ルール』やからな」
「ルール?」
「っと。サービスが過ぎたな」

自らの能力の性能を誇りたいが故の饒舌か、それとも。
考えあぐねていると、横からけたたましい声が聞こえてくる。

「てめえ!のんのこと無視してんじゃねーよ!!」
「別に。相手して欲しかったら立てばいいじゃない」
「こんなの…がっ!ぐううっ!!」

力んだ際に、撒き散らされる鮮血。
「金鴉」は生まれたての小鹿のように、よたよたとしか立ち上がれない。
しかしそんな姿を揶揄したのは。

48名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:55:55
「情っさけないな自分。全然相手にならへんやん。あんなんうちなら10秒で終わりやで」
「はぁ!?そこまで言うならあいぼん替われよ!」
「あほか。大将が出張るんは、先鋒が死んでからやろ」
「おいこら勘違い薄らハゲ。大将はのんの方だろうが」
「そんなボロクソに負ける大将なんておらへんわ。そらうちにも負け越すわな。つまり、負け越
しゴリラや」
「負けてねーだろ!1064戦1065勝、どう見てものんの勝ちじゃん!!」
「戦った回数より勝利回数が上回ってどうすんねん。相変わらず可哀想なおつむやな」
「は!可哀想なのはお前の死にかけの頭皮だろ!!」
「言うたな…この筋肉ゴリラ!」
「うるさいハゲ!」
「ゴリラ!」「ハゲ!」「ゴリラ!」「ハゲ!」

突如として始まった低次元な言い争い。
しかしさゆみはその状況に合点がいく。この二人、コンビを組んではいるが仲があまりよろしく
ないようだ。だから、二人一緒に攻撃を仕掛けてこないのだ。

「さゆみには、出来損ないのコントを鑑賞する暇はないんだけど」
「…ああそうかよ!!」

またも、ストックの血入り小瓶を取り出して飲み干した。
すると、どこからともなく集まってくる、黒い雲。いや、雲ではない。
やがて、空を劈くような無数の羽音が響き渡る。

「やっ!む、虫!!」

虫嫌いの聖が、近づいてきた「黒い雲」を見て顔を青ざめさせる。
そう、黒い雲のように見えたのはありとあらゆる羽虫の群れだったのだ。

49名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:56:27
「確かお前ら、『蟲惑』とやり合ったことあったんやろ。それはそいつの血の為せる能力や」

その名前には、さゆみたちも聞き覚えがある。
地獄から甦ったと自称していた、黒いプロテクトスーツを身に纏った女。ダークネスではない別
の組織に与したその女が、「蟲惑」の二つ名を名乗っていた。
となると。

黒い雲はやがて、「金鴉」の元に集まり姿を覆い隠す。
千切れた筋組織に食い込み、繋ぎ、補う。虫の寄生力が実現する、究極の超回復。
負傷していた足を、二、三振り。機能は問題なさそうだ。

「これで、動けるようにはなった。お前、ぜってーに殺してやるから」
「…その割には、あなたの虫さん、繋いだ先から死んでるけど」

さゆみの言う通り、滅びの力に侵された部位に食い込んだ虫は程なくして、その抗えない力の前
に命を散らしてゆく。だが、数が力を押さえつける。次から次へと死地へ赴く小さな軍隊は、指
揮官の命令を忠実にこなしていた。

「その虫の力がさゆみの『治癒の力』の代わりってわけね。でも、逆に言えば『滅びの力』への
有効な手段も失った」
「お前をぶっ殺す方法なんざ、いくらでもあるんだよ!!」

「金鴉」が、両手を広げてさゆみの前に突き出した。
鋭い羽音を立てて、黒い塊が襲い掛かる。ただ、避けられない速さではない。素早く身を屈めて
猛攻をやり過ごすと、まるでブーメランのように虫たちは帰ってくる。

50名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:56:59
再び交戦が、動に入った。
さゆみは駆け出しつつ、執拗に襲い掛かる虫たちを回避する。

「避ける事しかできねえのかよ、虫はどんどん増えてくぞ!!」
「…馬鹿ね」

挑発しながら、使役する虫を増やしてゆく「金鴉」。
一度人間の肌に止まれば、皮膚を食い破り中の組織へと潜り込む獰猛な虫だ。
しかしさゆみは、そんな虫たちを嘲笑うが如く、動きを止めた。
喜び勇んでさゆみの白い肌に着地した虫は、触れた足から即座に灰になってゆく。

「忘れたの?さゆみの体全体にも、『滅びの力』が行き渡っていることを」
「…ちくしょう!!!!」

どのような力を用いようと、「滅びの導き手」を打ち崩すことはできない。
それが例え複数の能力を「ストック」できる能力擬態の能力者でも。
自棄になった「金鴉」が、さゆみ目がけて突っ込んでくる。まるで先に命を散らした虫と同じよ
うに。

「金鴉」が纏っていた羽虫たちの一部は、主人からはぐれ、リゾナンターたちの周囲を煩く飛び
まわっていた。しかし、積極的に害をなすことはない。
香音は、気づいていなかった。
いつの間に、はぐれた虫の一匹が、密かに。
自らの首筋に、小さな噛み跡が、ついていることに。

懐に飛び込んだ挑戦者が、拳を振るう。
速い。しかし、避けられない類のものではない。
回避行動に入るさゆみの身に、「それ」は起こった。

51名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:57:31
「!!」

突然の、立ちくらみ。
いや、そんな生易しいものではない。
まるで体中の全ての力が、底なしの穴へと引き摺り込まれる様な感覚。
今までも、薬の副作用らしきものはあった。
けれど、これほどまでに強烈なものはなかった。
つんくからは、何も。何も、聞いていない。

躊躇、そして困惑。
目の前には唸るような「金鴉」の剛拳が迫っている。

問題ない。
さゆみはすぐに思考を切り替える。
回避したところを滅びの手で迎え撃つつもりではあったが。
直接攻撃を受け止めるのはややリスキー、しかし問題ない。
いかに相手の膂力が凄まじかろうが、さゆみの全身を覆う滅びの力によって拳の先から灰と化し
てゆく。問題は、インパクトの時に発生する衝撃をどう逃がすか。

それだけの、はずだった。
しかしさゆみが今、目にしているものは。

「道重さんっ!!!!」

春菜の悲痛な叫びが、こだまする。
「金鴉」の拳は、さゆみの胸の辺りを貫通していた。
当のさゆみの表情に苦悶の色は見えない。不可解、といった感じの表情。

52名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:58:04
してやったりの「金鴉」の顔が、徐々に変化してゆく。
この顔は。さゆみが見間違える、はずもない。

「あんた…鈴木の能力を」
「へへ。虫を飛ばしてあいつの血を頂いたんだよ。お前、のんが一度に一つの能力しか擬態でき
ないって勘違いしてたろ。あいぼんの言う通りだ、『弱いふりして油断させれば』相手は必ず隙
を見せるってな」

香音の能力「物質透過」。
「金鴉」はそれを盗み取ることで、自らの腕をさゆみの体に貫き通した。
何の殺傷力もない行動。それを、「金鴉」の厭らしい笑みが否定していた。

さゆみは重心を思い切り後ろに倒し、貫いた腕を引き抜こうとする。
だが、体はびくともしない。香音の能力で摺り抜けているはずの腕が、さゆみの体を離さない。

「みんな、道重さんを助けるよ!!」
「はいっ!!」

聖の言葉で、一斉にさゆみの元へと駆けつけようとするリゾナンターたち。
それも、見えない何かに阻まれ、近づくことすらできない。

「これからがええとこやのに。邪魔したらあかんで?」

「鉄壁」の能力。
香音が物質透過しようとも、衣梨奈がピアノ線で薙ぎ払おうとも、里保が一閃のもとに切り伏せ
ようとも。
びくともしない。亜佑美が戦ったスマイレージが一人・中西香菜の使役する「結界」には、まだ
物質的な感触があった。しかし。
「煙鏡」の操る「鉄壁」には、まるで手応えがない。あたかも、最初から切り抜けるのが不可能
かのような、絶望。
つまり。彼女たちの救いの手は、さゆみには届かない。

53名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:58:36
「ここで問題です。のんが今、物質透過能力を解いたら…どうなると思う?」
「…元あった物質が、入り込んだ物質を弾き飛ばす。つまりあんたの腕は」
「そう。のんの腕は強制的に抜き取られる」

さゆみは、気づいてしまった。
「金鴉」が、何をしようとしているかを。

「愉快な置き土産を置いてなぁ!!!!」

見えない力に吹き飛ばされるが如く、「金鴉」の小さな体が後方へと飛ぶ。
その腕には、穴あきチーズのような穴が、いくつも開いていた。
開いた穴から、幾筋もの滅びの煙を燻らせながら。

「道重さん!!!!!!!」

明らかにさゆみの様子がおかしいことは、すぐに後輩たちに伝わった。
顔は青ざめ、体が痙攣していた。もっと言うなら。
さゆみもまた、「金鴉」が拳を撃ち込んだ場所から、煙を立ち上らせていた。

「いっちょあがりや」

「煙鏡」の表情は、晴れ晴れとしていた。仕事を、終えたような顔。
そう、終わったのだ。その証拠に、彼女は既に「鉄壁」を解いてしまっている。

54名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:59:20
もうリゾナンターたちを縛り付けるものは何もない。
聖が、真っ先にさゆみのもとに駆けつける。今このメンバーの中で、治癒の力を使えるのは聖し
かいなかった。
風を切る迅さで、崩れ落ちかけていたさゆみを抱きかかえ、煙の出ている場所に手を翳す。
聖の血の気が、引いた。

「だめ…ふくちゃん…さゆみの中にはもう、滅びの…力が」
「そんな」

物質崩壊の使い手である以上、自らの力で自滅してしまう危険性は常に存在している。
それを防ぐために、全身に滅びの力の被膜のようなものを纏わせ、それを防ぐ。が。
あくまでも、体の表面だけの話。被膜を何らかの方法で突破されれば、体の内面は無防備そのもの。

こちらの弱点を的確に突くやり方、頭の悪そうな「金鴉」が思いつくわけがない。
どちらかと言えば、後ろに控える「煙鏡」のやりそうなことだ。
なのに、どうして。同時に戦うことすら嫌がる関係のはずなのに。
いや。違う。大きな、思い違いをしていた。もし本当にそのようなことが可能なら。
迂闊だった。自分の至らなさを悔やみつつ、さゆみの意識はぷつりと途絶えてしまった。

信じられない。いや、信じたくない。
だが、紛れもない事実だった。

物質透過によってさゆみの体を貫通した、「金鴉」の腕。
「金鴉」は。自分の足を支えている蟲のいくつかを、自らの腕に寄生させていた。
滅びの力によって、死にかけた蟲を。

そして、置き去りにされた蟲たちは。
内部から、さゆみの体を蝕み始める。そのスピードは、聖の持つ複写の治癒の力ではもう抗うこと
はできない。
そんな状況とも知らずに、後続のリゾナンターたちもようやくさゆみのもとに到着する。

55名無しリゾナント:2015/12/23(水) 07:59:51
「フクちゃん!!」
「道重さんが大変なの!すぐに、体の中の蟲を取り出さないと!!」

駆けつけた里保の顔を見て、緩みそうな気持ちを引き締める聖。
本当は、泣き出してしまいたい。けれど、そんな暇があったら一つでも多くの行動をすべきだ。
不安で崩れそうになる心を、強い意志が懸命に支える。

「どぅーは千里眼で蟲を探して!えりぽんは糸を使って何とか蟲を取り出す。香音ちゃんはサポート、
優樹ちゃんは道重さんの中にいる蟲を瞬間移動。小田ちゃんは時間停止を。はるなんはみんなの集中
力が続くように力をわけてあげて!!」

できそうなことから、一見無謀なことまで。
聖は今思いつく、さゆみを救うことができるかもしれない方法を全員に告げた。
とにかく、やるしかない。躊躇している場合ではない。でないと。

「えりちゃん、糸、物質透過かけたから!」
「生田さんそこですっ!」
「やった、獲った!」

連携作戦は、徐々にだが功を奏してゆく。
その場にいた全員が、さゆみの命を救おうとしていた。
今ここで、彼女を失うわけにはいかない。

56名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:00:22
里保たちが最初に喫茶リゾナントを訪れた時。
リゾナンターのリーダーは高橋愛だった。
ダークネスの襲撃によって崖っぷちまで追い詰められた当時の状況は、逆に言えば再起のチャンス
でもあった。弛まぬ努力は新垣里沙に受け継がれ、さゆみの代で結実した。

右も左もわからない新人たちが、曲がりなりにも能力者社会にその名を知られるレベルにまで成長
したのは。間違いなく。

だから、失ってはいけない。

春菜の表情が、強張る。
そして何かを探すように、さゆみの手を取り、言った。

「道重さん…息、してません…」

晴れていたはずの青空は、いつの間にか灰色にくすんでいた。
低く垂れ込める雲、一陣の風が吹き込むと、ぽつり、ぽつりと大粒の雨を落とし石畳に染みを作っ
てゆく。

「え…?」

言葉が、頭の中に入って来ない。
言葉の意味が、たった一つの事実に結びつかなかった。

57名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:00:53
「うそ…だよ、ね。だって道重さん、こんなに」

聖が掌を翳し、それまでよりも一層強く、自らの治癒の力を注ぎ込む。
ただ眠っているようにしか見えないさゆみの顔。けれど聖自身、よくわかっていることだった。
対象の肉体を癒すはずの治癒の力は、さゆみの体に留まることなく、消えていた。

「やだ!みにしげさん!みにしげさんおきて!!じゃないとまーちゃんみにしげさん嫌いになっち
ゃうんだから!!!!」
「よ、よせよまーちゃん!道重さんが死ぬわけないだろ!馬鹿なこと言ってんじゃねえぞ!!」

優樹はありったけの力を込めてさゆみの体を揺さぶる。
あまりの激しさに、そして優樹の発した言葉を否定するために大声をあげる遥。
それでも、既に泣き顔でぐしゃぐしゃになっている自分自身を隠す事ができない。

「は、はは。こんなの冗談っちゃろ。道重さんが、こんなことになるわけなかろうもん」
「ねえ。みんなを驚かせようとして寝たふりしてるだけですよね?そうなんすよね!?」

笑い声を上げようとするもうまく行かず、乾いた呼気を漏らすことしかできない衣梨奈。
亜佑美は大げさに手をばたばたさせ、顔を引き攣らせて必死に目の前の光景を否定ていた。

「道重さんの時が…止まっちゃった…」

時を操り、時を統べる。
さくららしい発言と言えばその通りなのだが、あまりにストレートな表現。
何をふざけたことを、そう言いかけた亜佑美の言葉が文字通り止まった。

さくらは、顔を歪め、必死に歯を食いしばって。泣いていた。
声すら、あげずに。
そのことが、全員に一つの揺るがしがたい結論を齎す。

58名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:01:29
― 傍に、居て下さいね ―

月明かりの綺麗な晩のこと。
少女は、さゆみと一つの約束を交わした。
素直に自分の気持ちを表に出せない少女は、リゾナンターとして闇に立ち向かう自分の姿をただ見
ていて欲しいと伝えた。その背中から、何かが伝わればそれで自分は十分なんだと。
それが、その時の精一杯だった。

あの日話したことが、嘘になってしまう。
さゆみのせいではない。さゆみを救うことができなかった、自分自身のせいだ。
かつてその手を差し伸べながら、救えなかった友人のように。
すべては、自分の力が足りないから。

― お前の実力は、そんなものじゃないだろう。何を躊躇ってる? ―

その言葉が、先ほど一戦交えた塩対応の女のものなのか。自らの心に呼びかけた問いなのか。
里保は、区別がつかなくなっていた。
ただ、熱い。胸の奥が、滾っているかのように熱かった。
やがてその熱気が、心の全てを覆いつくしてゆく。

「里保…ちゃん?」

その場にいる全員がさゆみの状況に激しく取り乱している中。
香音だけが、親友の異変に気がついていた。
宙を彷徨う里保の瞳は。

燃えるように、緋く。緋く。

59名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:02:54
>>46-58
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

60名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:11:01
>>41-44

ドンッ!

なんや?

大っきな音がした
思わず閉じた眼を開ける

「樹が、もう1本?」

倒れて来た樹を止める様に、別の樹が支えている

コレ、どっから来たん?
根っこ丸見えやから、どっかから抜けたって事?

「何やっとんねん! 遊んでる場合か!? 早よケリつけんかい!」
「アホ! あの樹を動かしたんは俺とちゃうわ! 」
「ハアッ!? じゃあ誰がやったっちゅうねん!?」

なんかわからんけど、取りあえず助かってる?
おっさんらはケンカしてるし、逃げるなら今のうちや!

「っておい! 逃がさへんぞ!」

──念動力──サイコキネシス

ベキベキベキッ!

走って逃げるウチに向かって、次々と周りの樹が倒れて来る

61名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:11:34
こんなん反則やー!
おっさんAの仕業やな!
って言うか、どんな手品やねん!
大道芸か!?
イリュージョンか!?
もう訳わからんわーっ!

──シ+念=カナ ──〓〓〓キネシス

ドドドドドドッ!

「「なんやて!?」」
「へ?」

さっき支えになっとった樹が、ウチの頭上を越えて周りの樹を一気に吹っ飛ばした

「いい加減にせえっ! さっきから何しとんねん!?」
「ちゃうわ! あの樹を動かしとんのは俺やない!」
「まさか、あのガキが?」

ガキって、ウチの事?
しかないわな

恐る恐る振り返ると、おっさんBがウチを睨んどった

こわっ!
って言うか

「ウチ超能力なんて持ってへんで!」
「とぼける気かいな。ま、ええわ。予定変更や。連れて帰ってじっくり教えてもらうで」

62名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:12:23
>>60-61

きっと次回で終わります。

63名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:16:29
>>60-61

今度は誘拐!?
ありえへん!
なんでウチがこんな目に遭わなあかんねん!
めんこくて可憐で、か弱いフツーの美少女やで!?
超能力なんて漫画みたいなモン、持ってる訳ないやろー!

──シ+念=カナ ──〓〓〓キネシス

ヒューン

「なんだ?」

──透視──クレヤボンス

おっさんBが、ウチより後ろの方を見とるみたい
なんかあると見せかけて、ウチが振り返った隙に捕まえる気かいな

「あかん避けろ!」
「なんだよ? 何を避けんね

ゴーンッ!
ドターン!

おっさんAの顔にドラム缶が命中し、気絶して倒れた

「おい! しっかりせえっ!」

あのドラム缶、近所の工場のやろか?
どうやって飛んできたんやろ

「このドラム缶、中身ちょっと入っとるやないか……こら効くわ」

64名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:17:10
相手は1人
物を動かせないおっさんBだけ
これなら逃げられるかもしれへん!

振り返って全速力で走る

「待たんかいっ! 俺の仲間にここまでの事をして、タダで帰れると思ってんのか!? あぁ!?」

おっかない!
メッチャおっかない!
あのおっさんBこそ、ホンマにアカンやつや!

「ハァ、ハァ……もう、走れん……どっか隠れて様子を見るか」

大きな樹に身を隠す

さっきからありえん事ばっかりや
ヤバいおっさん達に追われて、勝手に樹が倒れたり飛んで来たり
挙句にはウチが超能力が使えるとか言って誘拐しようとしたり
頭がパンクしそうや

「ハァ……ハァ……やっと、追いついたわ……手間かけさせやがって!」

ザ、ザ、ザ、ザ

後ろから草を踏む音が聴こえる
段々と近づいて来る

気のせいやろか?
真っ直ぐこっちに来てへんか?

「隠れても無駄や。俺は〝透視〟能力者や。そん位の樹なら透けて見えるで」

65名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:17:41
嘘やろ!?
ウチやなくて、おっさんBの方こそ超能力が使えるんやんか!
て言うか、おっさんAも超能力を使ってたん?

「大人しくしいや」

腕を掴まれた

バチッ

「痛っ!」
「静電気か? 驚かすなや」

確かに、今日の服は組み合わせを間違えてるわ
逃げ回って動いとる間に溜まっとったんやろ
って、今はどうでもええわ!

掴まれた腕を振りほどこうとするけど、全然ビクともせえへん

「さあ、一緒に来てもらうで」
「嫌や嫌や嫌や! 絶対に嫌やーっ!」

──シ+念=カナ ──〓〓〓キネシス

ボッ!

「熱っ!?」

ウチの脚から、火が出た

「お前、パイロキネシスの能力者か!」

66名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:18:12
火から逃げる様におっさんが離れた
その間も、ウチの脚からは火が出ている

「パイロ……キネシス?」
「いや待てよ……さっき杉の樹が動いたんはどういうこっちゃ? まさか、サイコキネシスも使えるんか!?」

おっさんがなんか言うてるけど
ウチはそれどころやあらへん

自分の脚から火が出てる
ウチの脚、おかしくなってしもたん?

「珍しい能力者、ますます連れてかなあかんな」

嫌や
嫌や
嫌や

なんやねん!
ウチが何したって言うんや!

ボワッ!

「なっ!? アホ! 待てや! それ以上はやめんかい! 森が燃えてまう! 自殺行為や!」
「全部、あんたらのせいや……あんたらのせいで、ウチの脚はおかしくなってもうたんや!」

ウチの脚から出た火が、辺りの草木を踏み荒らす様に広がっていく
緑だった景色は、あっという間に暗闇の様な黒に染まっていった

67名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:18:42
そして
ウチの心も
深く
黒い
闇の様に
染まり始めていた

春水の人生は、今ここから変わっていった

68名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:23:05
>>41-44
>>60-61
>>63-67
『秋氷』終了です。

レス頂きまして、ありがとうございます。

69名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:28:30
「え?修行?」

そう! まさ 修行するの

「なんでそんなことを思ったと?」

え〜なんでって言われてもわかんない

「わかんないのに修行ってまさきちゃんらしいんだろうね」

さっすが〜すーずきさんはまさのこと分かってる

「それでどんなことするのかな?私でよかったら手伝うけど」

鞘師さん ありがとうございます。でも、いいです

「え?どうして鞘師さんと修行したらきっと強くなれるのに」

はるなん それはまさもわかってるよ

「そうだよ 鞘師さんが自分から相手をかってでてくれたのに勿体ないとおもうな」

あゆみんはだまってて!

「まあちゃん あゆみんに失礼でしょ、謝って」

イーだ!!どぅも嫌い

「それでどんなことするんです?佐藤さん」

・・・これから考える (続く

70名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:29:06
「…新潟も陥落ですって!?」

聖はその一報を聞き、愕然とする。
敵は五大都市の半数を手中に収め、さらに勢力を伸ばそうとしていた。

「こんな時にあの人が、あの人がいれば」

聖は願う。破滅と再生を司るあの伝説の女性が復活すればあるいは、と。
しかし彼女は、敵方のあまりの狼藉に世を儚み、天岩戸に引きこもってしまっていた。

「みっしげさんは私が連れ出す!!」

そこで立ち上がったのは、しじみ目の踊り子。
聖から授かった黄金の裸エプロンを身に着け、狂うように踊る。
果たして、天岩戸は開かれるのか?

劇場版リゾナント神話シリーズ「天照」 近日公開予定(しません)

「もうちょっとがまんしたら、りほりほの布面積がもっと小さくなるからまだ出ないの」スー

71名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:31:36
>>41-44
>>60-61
>>63-67
『秋氷』の続きです。

http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/1180.html を経て
http://www35.atwiki.jp/marcher/pages/1170.html の流れからの今作です。

72名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:32:08
「……お姉さん達、何者や?」

春水の前には、綺麗な女の人と背の低い女の人

「あたしら、まだオバサンには入らないらしいよ」
「ギリギリじゃない? そっちはもう三十路でしょ」
「歳を言うなって。まだ20代だ……ギリギリな」

2人で会話しつつも、視線は春水に向けられたまま

どう見ても、お友達になってや〜って感じやないな
一体、何の用があるんや?

「さて、本題に入る。君の秘密を教えて欲しい」

春水の秘密?
って言ったら、1つしかないで
でも

「言いたくないわ。言う必要もあらへんし」
「強気だね。ま、こっちにも都合があるんだ。強引にでも……教えてもらうさ!」

綺麗な女の人が、勢い良く走って来る

手を出されたら反撃もしゃーないとは思うけど
やっぱり知られたくない
もしかしたら、向こうが思ってる秘密って別の事かもしれんし

「迷ってると、怪我するぜ!」

73名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:32:41
凄い速さで蹴りが飛んで来る
春水は上体を反らしながら蹴りを繰り出す

ガッ

「へえ」

脚同士が当たったけど、春水は受け流しつつ後ろに下がる

「悪くない動きだ」
「おおきに……」

まさかこんな時が来るなんてな
中2までアレ習っとって良かったわ

「ひとまず名乗っておこうか。あたしは〝傀儡師〟と呼ばれている」
「それあだ名かいな? こっちは教える気はないで。名前も……秘密も」

とりあえず距離は置けたけど、意外と衝撃が強くてジンジン痺れてる
動きにめっちゃキレあるし
このお姉さん、只者やないわ

「言っただろ、こっちにも都合があるって。そうだな……やり方を変えよう」

傀儡師がもう1人に合図を送った

「はいはい、交代しますよ」

──変身能力──メタモルフォーゼ

もう1人の女の人の姿が変わっていく
顔も体格も別人に変化した

74名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:33:12
その姿に、春水は見覚えがあった

75名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:34:38
>>72-74

『秋氷』にレスが多くて焦っております。
ありがとうございます。

お気付きの方もいるかと思いますが、
>>71を含み『Help me!!』の作者がお送りしました。

76名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:35:24
>>69

「なにしとうと?」

あ、生田さん おはようございます

「あ、うんおはよう。それ なに?」

いひひひ ひみつです

「もしかして それって昨日言ってた」

え〜なんでわかったんですか?

「いや いくらなんでもわかるっちゃろ。 そんなにたくさん木の枝もってきたら」

近所の大掃除してると思わないですか

「いやいや ここらへんにそんな大木ないから いったいどこから取ってきたと」

あっちのほうです

「いやいやいや あっちってそんな適当に言われてもわからんし あっちってあの山?」

おーう、生田さん 大正解

「いやいやいやいや 山ってまさきちゃん! あの山からリゾナントどれだけ離れているかわかっとうと」

まさなら一瞬だよ

「いやいやいやいやいや まさきちゃんならできるかもしれんけど、そんな大きな木どこに置くと?」

あ、そっか、じゃあ返してきます (続く

77名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:36:59
「あれ? 佐藤さん 早いですね」

小田ちゃん おはよう

「おはようございます ?? その木どうしたんですか?」

ん〜まさがね、修行用にあの山から拾ってきたら 生田さんに返してきなさいって怒られた

「まあ 確かに保管する倉庫なんてリゾナントにはありませんからね 譜久村さんに相談してみたらいかがです?」

ふくぬらさんは朝 遅いからまだあってないし、いいって言わなさそうだもん

「仕方ないですね これ返しに行きましょう」

小田ちゃん 手伝ってくれるの? いい子!

「やめてくださいよ 私も佐藤さんに協力したいって思っただけですから」

でも まさ まだ何も決めてないよ

「え? じゃあほんとうに拾ってきただけなんですか?」

そうだよ

「・・・ こんな枝じゃ何もできないかと思いますけどね よいしょ 重い」

小田ちゃん 大丈夫?

「大丈夫ですよ 暑くてちょっとふらっとしただけですから フフフ、スタミナ不足ですかね?」

!! それだ 小田ちゃん!! (続く

78名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:37:34
「譜久村さん その袋 なんですか?」

「あゆみん 丁度よかった こっちの買い物袋もってくれる?」

「ああ、はい いいですけど。 中身って 食材??」

「うん 人参でしょ たまねぎでしょ かぼちゃに ピーマン」

「あ おいしそうな牛肉もあるじゃないですか!! 今夜はカレーですか?」

「あ これは今日の分じゃないの ウフフ」

あ〜ふくぬらさん おかえりなさい あゆみんも手伝ってくれたの?

「そうよ まーちゃん」

キュパッ あゆみん 大好きだよ〜

「??? ちょっと待って 何が何だか?」

「ねえ あゆみちゃん 明日 何か予定ある?」

「え? 特に・・・ありませんが」

やっほーたい! じゃあ あゆみんも参加決定だね

「な、何が? 説明してくださいよ、譜久村さん」

イヒヒ 明日からまー達で合宿だよ! キャンプしよ!!  (続

79名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:39:31
>>46-58



「半分は偶然。半分は必然。そういうこっちゃ」

それが、紺野が師と仰いだ男と最初に交わした言葉だった。

「何で俺が自分を研究室長に抜擢したか。リストの中に入ったんは偶然、せやけどそこから俺が選
んだんは俺の意思や」

組織の科学力を統べる部門の中枢に入ってなお、遠くで見ているだけであった組織の科学部門統
括という存在。
直に会いそしてその目で見た感想は。科学者としてはあまりに俗の色が強いというものだった。
もちろん、派手な金髪や目に染みるような柄物のスーツだとか、見た目の事を言っているのではな
い。

紺野の知る多くの科学者は。
一様に表情が硬く、そして自らの知性を誇示するような物言いをしていた。
しかしどうだろう。目の前の男は、人を食ったような、惑わすような態度を取る。そしてその曖昧さ
は、不思議と不快ではなかった。

後にダークネス不世出の天才、「叡智の集積」とまで称される紺野だが、室長就任まではただの
一研究員に過ぎなかった。
そんな紺野が組織の研究室長、つま科学部門のナンバー2に抜擢されたその理由。
それが先の答えに繋がる。

80名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:40:17
「例えば。道歩いてたら、自動販売機がありました。喉渇いてたら、ジュース飲みたいわぁ、そう
思うやろ?」
「つまり、『喉が渇いていた』から『ジュースを買った』と。私にそういう役割を、求めているん
ですね」
「お、ええな。そういう返し。確かにお前の言う通りや。俺がこれから研究を進めてく中で、もの
すごく何かヒントをくれそうな、そんな予感がしたんやわ」

まるで論理的ではない、つんくの言葉。
しかし、裏を返せば「科学者」という枠に嵌らない人物とも言える。曲がりなりにも現在の組織の
科学面における基礎を構築した男、掴みどころの無い言葉にもそれなりの意味があるのだろうと紺
野は推測した。

「ところで。お前が研究室長っちゅうことは周りには秘密やで。『ダンデライオン』っちゅう隠
れ蓑もあることやし、しばらくはバレへんと思うけど」
「なるほど。あれは、貴方の差し金でしたか」

「ダンデライオン」。組織の上層部が結成を決定した特殊部隊。紺野の研究室長就任と、ダンデ
ライオンの入隊はセットであった。つまり、まさか組織の科学班研究室長がそんな部隊に編成さ
れるわけがない。と思わせる目論みだったのだろう。確かに降りかかる火の粉を振り払うのも億
劫な話で、持ち前の好奇心もあり了承はしていたのだが。

紺野とつんくの邂逅から、しばらくして。
つんくは、突如組織から姿を消す。そのことについて上層部からの言及すらないという、実に不
可解な話ではあったが。
紺野は、そうなるのが当然であるかのように、二代目科学部門統括に就任した。

81名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:40:49


「世界を変える薬ですか。それはまた大きく出ましたね」

モニターに大写しにされた紺野が、問う。
つんくの言葉の、真意。飾られた形容の奥に潜む、真実を。

「私が把握しているところによると…あなたが道重さゆみに投与した薬の効果は。『表』の人格
であるさゆみに対する『裏』の人格。確か、さえみとかいう…それを、自在に呼び出せるように
なる。という触れ込みでしたっけ」
「触れ込みて、失礼な話やなあ」

かかか、と笑いながら、つんくは先ほどまで「天使」が座っていた座椅子に腰かける。ちょうど
モニターの紺野を見上げるような形だ。

「天使」はと言うと、つんくに飲まされた「薬」の影響か、床に蹲ったまま動かない。

「私は、あなたの投与した薬剤は人格統合に関わる何らかの影響を及ぼす性質のものと踏んでい
ます。道重さゆみが本来姉人格が表出した時でないと使うのことの出来なかった『物質崩壊』の
力を使えるようになったのも、そう考えればかなり自然な形で納得がいきますしね」
「ほー、そこまで辿り着いたか」

人を食ったような、読めない態度は相変わらず。
懐かしさとも、呆れともつかぬ感情に思わず紺野は肩を竦めた。

82名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:41:20
「懐かしさのあまり瞳を潤ます、っちゅうんなら少しは可愛げもあるんやけどな」
「確かに、お変わりないようで何よりです。お顔のほうは大分変えてらっしゃるようですが」
「どや。なかなかイケメンやろ」
「顔の美醜は私には判りかねますが。ただ、あまりいい趣味ではありませんね」
「…結構気に入ってるんやけどな、これ」

やや芝居がかったつんくの言葉を無視し。
紺野は話を本題に戻す。

「結論から述べます。つんくさん。あなたは、『天使』…安倍なつみを、破壊の化身にしようと
している。違いますか?」
「…半分正解で、半分間違いやな」

つんくは言いながら、体を椅子の背に預けた。

「あなたはいつもそうだ。ダークネス科学部門の初代統括という地位を誰にも話すことなくあっ
さり捨てたように、真実を決して他人に見せようとしない」
「そういう自分も『俺の資質』、しっかり受け継いどるやないか。ほんまいつまでも本題に入れ
んで困るわ」
「…ではこちらからいきましょうか。私の言葉が半分不正解なのは…『天使』の力が制御可能か
不可能か。そういったところですか」
「優秀な弟子やと、話す手間が省けて助かるなあ」

つんくと紺野の、互いの肚を探るような、そうでないような会話。
前田はそのほとんどを理解することはできない。
ただ、一つだけ言えるのは。自分が目の前の「銀翼の天使」をつんくが手中に収めるためにここ
にいるということ。
そしてその目的は、果たされようとしていた。

83名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:41:53
「安倍の。本来の人格と、全てを破壊し尽くすだけの闇の人格。周期的に入れ替わる二つの人格、
この性質のせいで、お前らは安倍をこないなもったいつけた施設に閉じ込めざるを得なかった。
せやな?」
「そうです。現時点の彼女の力は、我々が自由に使うには手に余る」
「でもな。俺の作った薬があれば、本来の安倍の人格を保ちつつ、破壊的な能力を操る能力者が
誕生する」

まるで新しい遊びでも考案したかのように。
つんくの瞳はきらきらと輝いていた。

「…本当にそんな夢物語が実現するんでしょうか」
「俺がしょうがない夢追い人やったら、こないなとこまでけえへん。ブラザーズ5のおっさん煽
ったり、辻加護の暴走のタイミング図ったり、いろいろ下準備してまでな」
「やはりそうでしたか。あまりに一度に出来事が重なるものですから、恣意的なものは感じては
いましたが」
「はは、めっちゃロックやろ?」
「転がる岩のように、ですか。積極的に動く者は、決して錆びつかない。しかし、こうも言えます」

紺野が、やや垂れ下がっていた眼鏡のずれを、手で戻す。

「無駄に動き回る者には、何の利も身につかない」
「…言うとけ」

紺野の皮肉を鼻で嗤いつつ、前田に指示を送る。
床に倒れ込んでいる「天使」の額のあたりに、手が添えられる。

84名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:42:25
「この前田はな、精神操作のスペシャリストや。こいつの能力で融合過程にある安倍の人格の統
一を、サポートする。どや、完璧やろ」
「完璧…ですか」
「随分不服らしいな。『完璧です』、お前の口癖やん」

沈黙する紺野を、挑発するかのような言葉。
だがそれに対して返されたのは。

「つんくさん、あなたは」
「何や」
「外で遊んでいるうちに随分と耄碌されたようだ。私が常日頃『完璧です』と言っていたのは、
科学者が完璧などという言葉を口にしたら終わりだという皮肉のようなものです。いついかな
る時も真理を追求する科学者にとって、完璧などという可能性を全否定するような言葉は。愚
かしいまやかしに過ぎませんよ」

侮蔑。お前はこの程度の存在に過ぎないという、見くびった表現だった。
つんくはなおも薄笑いを浮かべている。だが、その目はもう笑ってはいなかった。

「なら、俺がお前に正真正銘の『完璧』を見せたるわ」

立ち上がり、一際高く合図の手を挙げる。
それを見た前田は自らの掌に意識を集中させた。
高度な精神干渉が「銀翼の天使」に襲い掛かる。前田はつんくが所有する手勢の中でも飛びぬ
けてマインドコントロールに長けた能力者。「御宮(ごく)」の異名を取る能力者社会の重鎮
・五木老の秘蔵っ子でもある彼女に比肩するものは、新垣里沙しかいないであろう。

85名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:42:56
前田の精神干渉の力は瞬く間に「天使」の精神世界を駆け巡り、特有の世界を構築してゆく。
すなわち、現在彼女の体内で活性化している「多重人格の統一」の薬効の、サポート機構。

傍目からは、どのようなやり取りが繰り広げられているのかはわからない。
ただ、つんくの表情を見ればわかる。
「銀翼の天使」。ダークネスの重鎮だった安倍なつみは、完全につんくの手中に落ちた。

「…しまいや。残念やったな、紺野。お前、俺が失敗すると思てたやろ」
「いえ。別に。逆に、いいものを見せて貰いましたよ。今後の参考にさせていただきます」

静かに、かつ確実に行われた「天使の奪還」。
興味深そうな表情をする紺野の言葉は、本心からか。ただの負け惜しみなのか。

「精々頑張りや。お前に『今後』があるかどうかは知らんがな」
「お気遣い、どうも」

「首領」は紺野に「天使」の死守を厳命した。
しかし、この体たらくでは彼女に厳罰が科せられてもまったく不思議な話ではない。

「上じゃドンパチやってるんやろ? お前の『切り札』のことや。せやけど、ジョーカーは『切
ったらおしまい』。俺の教えの通り、何枚も切り札仕込んどったみたいやけど、俺の方が一枚上
手。そういうこっちゃ」

満足げな表情を浮かべ踵を返すつんくに、「銀翼の天使」を肩で担いだ前田が追随する。
最早見るべきものは何も無いと判断したのか、紺野を映したモニターはゆっくりと天井へ収納さ
れていった。

86名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:44:05
>>79-85
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

87名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:47:00
>>76-78

「あのさ、香音ちゃん、荷物多すぎじゃない?」
「そうかな?せっかくのキャンプなんだよ。トランプに花火にお菓子・・・足りないくらいだよ」

あ〜すずきさん、まさにもおかしください!!

「んふふ まさきちゃん 今食べたら 夜の楽しみなくなっちゃうんだろうね」
「・・・」

あれ? さやしさんは 楽しみじゃないんですか?

「え いやいや そんなことないんだけど キャンプ場までどうやって行くのかなと思って」

それなら まさがぴょーんと皆さんを送りますよ はーい こっち来てください
1、2、3・・・8 ! よし みなさん いますね〜 とうっ

「イテッ 転んじゃったよ」
「もう 里保ちゃんは相変わらず転びやすいんだから。それにしても暗いね」
「あ、ありがとう香音ちゃん。まーちゃん、ずいぶん森の中に跳んだんだね」

え? さやしさん 何言ってるんです? ここ 草原ですよ

「そ、草原って こんなに暗いのに?なんだか 夜みたいな暗さなんだけど」

おーう そのとおりですよ 今は夜の0時です

「な、何言ってるの? ほら集合は 朝の9時だって聖ちゃんが教えてくれたんだよ」
(・・・ま、まさか、ここって)

すーずきさん 時差って知ってます? アフリカは日本が朝だと夜なんですよ

(キャ、キャンプゥゥゥゥ???)  (続く

88名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:48:00
「ア、アフリカァァ? なに まーちゃん ふざけてるの! 危険だから 辞めようよ」

あれ どぅー びびってるの?

「そ、そんなことないって だけど 色々と大変なことあるでしょ!」
「そうですよ、パスポートとかビザの関係とか」
「いや はるなん そんなことは 今 どうでもいい」
「どうでもよくないですよ 一国民として 国際情勢に影響を与えることは」

え〜 なにいってるの〜 まさ わかんない

「まーちゃん とにかく 今すぐ リゾナントに戻る・・なんか 今音 しなかった」
「うん あのあたり 懐中電灯が確かあの辺だよね」

ガオッ!!

「うわああああ〜 逃げろ〜」
「ねえ あれ トラ?」
「ライオン」「ライオン!!」

イシシ 4人とも元気だね〜

「何 落ち着いているの まさきちゃん! 早くリゾナントに戻りましょう」

え〜 まさたち5人だけ帰るの?

「そう 帰る・・・へ??? 5人」

そーだよ 譜久村さん 生田さん 鞘師さん 鈴木さんは別のところに跳ばしたの
地図を渡しておいたから 印のところで合流するの
どうする 先にまさたちだけ 帰る(ニコニコ    (続

89名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:49:43
>>72-74

「あんたは!」

忘れもしない
春水の脚がおかしくなった日
あの日に追いかけて来たおっさん2人の内の1人

服こそ違うけど、背格好はあの時のおっさんそのままや

「あんたの……あんたのせいで、春水の脚は!」

春水はおっさん目指して走り出す
それと同時に、傀儡師の蹴りが春水の自慢の福耳を掠めた

「うわっ!」

慌てて後ろに下がる

「落ち着け。あいつは本物じゃない」
「……なんやって?」
「変身して見た目が変わっただけさ。本物は別にいる」

そんな超能力もあるんや
って言うか

「おっさんが黒タイツとか、キモイで」
「うるさいよ! のんだって嫌なんだよ!」

声も変わってへん
本当に見た目だけなんや

90名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:50:13
「それより、普通は違う驚き方をするはずだ。目の前で人間が別の人間の姿に変わったらさ。つまり」

……なるほど

「ウチが超能力の存在を知ってる、って言いたいんか」
「当たり」

春水にカマをかけたんかいな
この傀儡師って人、蹴りだけやなくて頭もキレるみたいやん

「君の超能力、あたしらに教えてくれないかな。尾形春水ちゃん?」
「なんやねん……春水の名前、知っとるやんか」
「ああ。それに、ここがどこかも知っている」

傀儡師が足元を指して言った

ここは、春水の家の近くの森の中
けど、森の一部がゴッソリ消えた様になってる

「去年の秋頃、火災により森林の一部が焼失。不法投棄されたドラム缶に残っていた燃料に引火した事が原因とみて、現在も捜査中。と言うのが世間の認識だ」
「……それが春水と関係あるんか?」
「君が森林火災の原因」

そこまで知っとるんか
この人ら、何者なんや

「君は、火を操る能力者なんだろう?」
「……ノーコメントや」

91名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:50:44
〝火を操る能力者〟
間違ってないけど、正解とも言えん……気がする

「君は、あたしらの間じゃ〝火脚〟って呼ばれてる」

傀儡師がゆっくり近付いて来る
春水は距離を保つ様に後ろに下がる

「なかなかカッコ良え名前、付けてくれてるやん」
「本当の事が知りたい。君の能力の全てを」
「お断りや」

春水かて、実際は知らん事の方が多い

脚から火が出たんは間違いない
けど、樹やドラム缶が飛んで来たのも春水のせいやったんかは今でもわからん

自分でも使いこなせてへん超能力の事が知られて、周りの友達とかは怖がって春水に近寄って来んくなった

だから、秘密がバレる事に怯えて過ごした
口外させん様に脅したりもした
でも、結局なんも解決してへん

春水の人生は、あの日のこの場所で狂ってしもた
もう嫌や──

「本当は……こんな力を使うの嫌なんや!」

──シ+念=カナ ──〓〓〓キネシス

92名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:52:47
>>89-91

今回はここまでです。
関西弁も難しいです。

修行シリーズ(?)も1レス32行いっぱい使ってるみたいですね。
先が読めない展開に毎回ワクワクしています。

93名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:55:33
>>87-88

「みずき! まさきちゃんの計画知ってたと?」
「そうだよ! アフリカにキャンプなんて 危険なんだろうね」
「え? え? そんなこといわれても聖も知らなかったんだよ」

「はあ、まーちゃんが計画したことだから なんか嫌な予感はしてたんだよね」
「里保ちゃん 本当にそう思ってた?」
「な なにを言ってるんだ! 当たり前じゃろうが!」
「りほ 広島弁出てると」

「それよりも まず明かりをつけて朝までどうにかしないといけないと思うんだ
 ここにまさきちゃんからもらった地図があるんだけど」
「地図? じゃあ、ここのおおよその場所の目安がつくね
 貸して、香音が懐中電灯もってるから」

「「「・・・」」」」

「世界地図ぅぅぅぅ!?」
「こんなものでどうすればいいとよ! まずこの国どこよ」
「どっちが北とかわからないんだろうね。本当に安全なの?」
「・・・危険だ、まーちゃん 恐ろしい」

「と、とりあえず 洞窟とか身を守れそうなところを」
「いや、ここはサバンナっちゃろ?そんなものなかとよ
 とりあえず、今日はえりが糸で猛獣が近づいたらわかるように結界張るけん 3人は休んでいて」
「えりちゃん居てよかった。フクちゃんいるから怪我も治せるし」
「ウフフ、里保ちゃんもいるから猛獣もなんとかなるかもしれないんだろうね」
「香音ちゃんのお菓子もあるから食事もなんとかなるかな?」

「・・・あっちの5人は大丈夫かな?」
「さあ、なんとかなるんじゃない?」

94名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:57:56
>>89-91

樹の間から一斗缶が飛んで来て、真っ直ぐに傀儡師に向かって行った

「来た!」

傀儡師がタブレット端末を取り出した
レンズは一斗缶に向いている

ビデオカメラで撮影でもする気かいな

「こんのっ!」

バンッ!

変身女子(おっさんBモード)が傀儡師の前に立ち、一斗缶を両腕で受け止めた

「ナイスキャッチ。で、なんて書いてある缶だ?」
「えーっとね……〝キャノーラ油・A〟だって」
「だってさ」

傀儡師がタブレットに向かって話す

ビデオカメラやのうて、テレビ電話なんか?
相手は誰やねん

「とりあえず、コレ返す!」

変身女子(おっさんBモード)が、一斗缶を春水に投げて来た

「……止まれ!」

春水の合図と同時に、一斗缶が空中で静止し地面に落ちた

95名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:58:28
ホンマに止まった
春水の超能力って、脚から火が出るだけやないんか?

「念動力系統は間違いない無さそうだが」

タブレットを春水に向けつつ、考える仕草をする傀儡師

「もっと攻めてみる?」
「そうだな、頼んだ」
「オッケー!」

変身女子(おっさんBモード)が、春水に向かって来た

「コレ使ってやる!」

さっき地面に落ちた一斗缶を掴み、春水目掛けて振り下ろす変身女子(おっさんBモード)

アカン!
あんな重そうなモンが当たったら、春水の顔が崩れてしまう
崩れるのは変顔だけで充分や!

「燃えろ!」

脚に力を入れて、火が出る様に念じる
何も起こらない

今まで、望んで火が出た事はなかった
思わぬ時に火が出て、たまたまその場におった友達とかにバレて……

「……やっぱアカンか!」
「なんだよ、フェイントか?」
「ちゃうわ!」

96名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:58:59
一斗缶が迫る
慌てて後ろに下がる

ドォン!

勢い良く地面に叩きつけられた一斗缶は、容器が壊れて中身が辺りに溢れた

「うわっ! 掛かったぁ!」

変身女子(おっさんBモード)は、全身に油を浴びてテッカテカになった
頭は元から光っとったんやけど
ってか

「あんた、アホやろ」
「うっさい!」

変身女子(おっさんBモード・テッカテカVer.)が右パンチを繰り出す

一瞬で春水の懐に来た変身女子(略)

突っ込んでる場合やなかった
速すぎて避けられん!

──シ+念=カナ ──〓〓〓キネシス

「なんだ!?」

変身女子(略)は脚を滑らせながら地面に倒れた

「イテテテ……今のは?」
「大丈夫か、何があった?」

97名無しリゾナント:2015/12/23(水) 08:59:33
傀儡師が近づいて来た
手にはやっぱりタブレットを持ってる

「今、足元の油が動いたみたい……」
「油が……? どう思う?」

タブレットに話し掛けた傀儡師
すると、タブレットから女の人の声がした

『候補に出したでしょ。その子の能力はパイロキネシスじゃない。保有能力は〝オイルキネシス〟よ』
「オイルキネシス……油限定の念動力か」

春水の能力は、油を動かすって事なんか?
自分でも分からん超能力の事が、なんでこの人らが分かるん?
だって

「脚から火が出たんはどう説明すんねん!」

脚から火が出るなんて、怖すぎるやろ
そのせいで周りのみんなは離れてった
春水が一番に嫌なのは、火が出る事や
油を動かすだけだとか、納得出来んわ!

「確かに、そうだな」

傀儡師が、タブレットから春水に視線を移した

「ここまで付き合ってくれたお礼だ。あたしらの結論を教えてあげるよ」
「親切やな」
「礼はいらないよ。ま、言う気もないだろうけど」
「良いから、はよ言わんかい!」

98名無しリゾナント:2015/12/23(水) 09:00:04
──油念動力──オイルキネシス

地面に流れていた油が、傀儡師に向かって行く

「自分の能力を理解すると、能力の精度も上がる。若い子は成長が早くて良いね」
「そんな余裕でええんか!?」
「……ああ」

──精神干渉──マインド・コントロール

「なんや……?」

急に力が、抜け

「あたしの能力さ。もう少し、協力してもらうよ」

戦う気がなくなっていく
身体から力が抜けて、動きが止まる
春水に倣う様に、傀儡師へ向かっていた油も動きを止めた

「良い子だ。早速だが、手首にある物を外してくれ」

99名無しリゾナント:2015/12/23(水) 09:01:00
>>94-98

今回はここまでです。

尾形さんの能力設定はいかがでしょうか?

100名無しリゾナント:2015/12/23(水) 09:02:34
>>93

「小田ちゃん、私の手つかんで!!」
「あゆみん、リオン全力で走らせて!大丈夫、はるが周り見渡しているから!」

うわ〜 あゆみんのリオン 速いね〜 まさ 久々にのったわず

「ふふふ、これは日々の鍛練の賜物よ。サバンナを走るリオンとか格好いい!!」
「石田さん、ターザンみたいです」
「な、なぬっ?」

小田ちゃん ターザンってなあに?

「まさきちゃん ジャングルの動物達と友達になった人のことよ。リオンを操っているからそう例えたのかな」
「ライオンとトラも区別つかないのにね」
「う、うるさいな!ちょっと間違えただけじゃない、ほんの少し」

ふ〜ん それでリオンでどこにいくの?

「とりあえず朝になるまで安全なところにいるほうがいいと思うから。あの洞窟とかどうかな?」
「え〜洞窟?」

Doどぅ 怖いの?

「こ、怖くなんかないって。ただ蛇とかいたらイヤだなって」
「私、蛇大好きですよ。かわいいじゃないですか」
「それより、譜久村さん達は大丈夫ですかね?こんな世界地図じゃなにもできませんからね。なんでこれ渡したの?」

こんなところ来たら地図なんて意味ないなう だから修行になるの!!
まさ達がふくぬらさん達を探す修行、ふくぬらさん達はまさ達が来るまで耐えるの!
・・・ところで、ここどこ?

「「「「アフリカ!!!」」」」  (続く

101名無しリゾナント:2015/12/23(水) 09:03:54
「・・・えりぽん、変わろうか?」
「あ、りほ。まだ大丈夫やけん、ここはエリに任せてほしいと」
「・・・嘘つき。眠くて仕方ないに決まっているのに」
「それは里保もやろ?あんなに寝てばかりの里保がこんな時間におきとうのが不思議やね」
「・・・別に、ただ目が覚めてえりちゃんと代わってもいいかな、なんて思っただけだし」
「はいはい、ありがとう
 でもエリは本当に大丈夫やから、無理してないから、里保は寝てて」
「・・・わかった」

「よいしょっと、生田、変わるよ、お隣失礼」
「なんね香音ちゃん。別にまだ寝てていいとよ」
「え?せっかくの私の好意を無駄にする気?」
「いやいやそういうわけやないけど、エリがしっかり3人守るから香音ちゃんは休んでていいとよ」
「ふ〜ん、生田ってやっぱKY」
「な、なに言おうと!!」
「アハハ、怒った、怒った!あ〜あ、元気そうだから、お言葉に甘えて香音は休むね」

「えりぽん、見張り変わるよ。私の寝袋使っていいから」
「ありがとう、みずき。でも、もう少しエリ頑張るけん」
「え〜えりぽん、ずっと起きているじゃない」
「大丈夫、エリはいつも戦闘態勢がモットーやし、オールには慣れとうもん」
「そっか。じゃあ、聖はまた寝るから、えりぽん、頑張ってね」
「任しとき!!」

「・・・なんて言って寝てるのはどこの誰なんだろうね」
「まあ、えりぽんらしいですし、こんなに頑張ってくれたんだから、ね」
「少しはうちらにも甘えればいいのに、えりぽんは本当に強情者や」
「里保ちゃん、顔緩んでる」
「朝だから光がまぶしいだけだよ」
「ほら、二人ともえりぽんがおきちゃうよ。静かにして、ねぎらってあげましょう
 それに・・・どうするか考えないとね。こんな湖の浮島の上からどうやって帰るかを」  (続く

102名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:09:55
>>79-85 の続きです



はじめてその人に逢ったのは、じいさまの名代として東京に出てきた時のこと。

「方言がちょっと似ちょうね」

能力者同士の共同作戦。
自分以外は全員年上という状況で、舐められまいと標準語を使っていたはずなのに、地元が
近いと言うその人にはすぐに見抜かれた。
人見知りの自分には、それが嬉しかった。

それからしばらくして。
ふとしたきっかけで知り合った仲間と向かった喫茶店で、その人に再会した。
もちろん、嬉しかった。けれど、その感情を表に出すことができなかった。

そして一緒に時を過ごし、その人の凄さ、素晴らしさを肌で感じて。
尊敬に値するその人に、思ったことをうまく伝えられない自分は。

リゾナンターとして仲間たちの先頭に立ち戦う姿を見せることで、それを伝えようとした。
自分の背中を見て、それでその人が何かを感じ取ってくれればいいと思った。

それが、どれだけ伝わったのか。
今となっては知る事はできない。

機会は、永遠に失われてしまった。

赤い闇が静かに訪れ、私を呑み込んでいった。
残滓のような静寂。そこに私の感情など、存在しなかった。

103名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:10:31


雨脚が、強くなりはじめていた。
風が荒れ、空を覆う濁った雲が生き物のように蠢いて、絶え間なく地上に雨粒を叩きつけ続
ける。石畳を黒く濡らすそれは、瞬く間に水溜りとなって終らない波紋を描いていた。

降り注ぐ雨が少女たちの髪を、顔を濡らしていた。もっとも。
雨のことなど、少女たちにはどうでもよかった。

「道重さん…どうしてこんなことに…」

春菜の振り絞るような声。
まだ受け入れられない、そんな思いがそこにはあった。

誰かがうう、と泣き出したかと思うと、一斉に全員が嗚咽の声を漏らしはじめていた。
リゾナンターとなってから、さゆみと共に作ってきた思い出。それが、解けない魔法のよう
に彼女たちからいつまでも離れない。一緒に笑ったことも、そして後輩を思い泣きながら叱
り付けたことも。
それでもさゆみはもう、笑わない。ただ、安らかに瞳を閉じているだけだった。

悲しみに暮れる中、一人の少女が立ち上がる。
誰も気に留めないその行動を、その危険性を、側に居た香音だけが肌で感じていた。

「里保ちゃん!!」

香音の叫びと里保が飛び出すのは、ほぼ同時。
否。誰も、里保が動き出すのを捉える事ができない。

104名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:11:02
その凄まじい殺気に「金鴉」が気づいたのは、すでに至近まで接近を許した後のこと。
雨粒を弾き切り裂く軌跡に、身の毛がよだつ。

「てめえ!!」

反射的に右手を「硬化」させ防御に出る「金鴉」だが。
里保の姿は目の前にはなかった。

「何処を見ている?」
「はぁ?!」

咄嗟に天を仰いだ。視界に飛び込む、黒い影。
里保の両手持ちで構えた刀が今にも、「金鴉」を一刀両断しようと振り下ろされる。
手首を交差させ迎え撃つも、刃先はがちりと硬化した皮膚にめり込んだ。

「ぎっ!!」

里保を跳ね返すも、硬化したはずの肉体に刃が打ち込まれた。
激しい痛み、そして出血。だが「金鴉」を青ざめさせているのは紛れもなく、目の前にいる
得体の知れない存在。

激しい雨に濡れ、里保は刀をだらりと下げて立っている。
その瞳は、赤く染まる不吉な月のような。濡れそぼった長い髪もまた、毛先からじわりと赤
が滲んでいた。

「なんだ、なんなんだよ」
「……」

斬られた箇所を蟲の力で修復しつつも、「金鴉」は里保に苛立ちを隠さない。
先ほどの急襲が、まったく知覚できない。そんなことは、彼女が能力者として生を受けてか
らただの一度もなかった。先ほどまでの里保とは、まるで違う。
手首への一撃も、もう少し反応が遅れていたら恐らく切り落とされていただろう。

105名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:11:38
対して、里保は。
表情を崩すことなく、ただ視線を向けている。そこには感情というものが見て取れない。
眼球をただ標的に向けて照準を合わせているだけのようにも、思える。

「なんなんだよてめえは!!!!」

初めてと言ってもいい、生命の危機。
恐怖はそのまま憤怒へと繋がる。「滅びの力」「蟲の力」そして「肉体硬化」をフル動員
させて、目の前の相手を叩き潰すべく攻勢に移った。

が。当たらない。
さゆみの時もそうであったが。いや、それとは比較にならない。
本気を出せば当たるかもしれない。そんな気すら起こり得ない。拳を振りぬこうが、蹴り
を浴びせようが、まるで手応えがないのだ。

ぬるり、ぬるりと猛攻をかわしている里保には。
色というものが、まるでなかった。
無表情のまま双眸だけをこちらに向けている様は、まるで機械仕掛けの人形だ。

「ふっざけんなぁ!!」

「金鴉」の使役する、黒い羽虫たちが一斉に里保に襲い掛かる。
たかられたら最後、骨すらしゃぶり尽くされる。しかし、彼らは里保に辿り着く前に。
悉く、斬り伏せられていた。雨に紛れ、細切れにされた虫たちがぱらぱらと空を舞う。そ
の隙間を、「金鴉」が突いた。

目晦まし。
最初からそのつもりだった。いかに動きが速かろうと、一度捕まえてしまえばこちらのもの。
膂力でそのか細い首をへし折るのもいいが、道重さゆみの「滅びの力」で朽ちさせるほう
が皮肉が利いているだろう。
描いたイメージを実行に移すべく、死滅の力を漲らせた豪腕が唸った。

106名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:12:12
「遅い」

「金鴉」が鷲掴みにしたのは、ただの空気。
里保は、虚ろな顔をして背後に立っていた。降り注ぐ雨から作った水の刀が四本。それぞ
れが、「金鴉」の四肢を貫く。そして、四肢の交差点を結ぶ中央に、銀の刃は突き立てら
れていた。
何をされたかすら理解できない。そんな不可解な顔をしている「金鴉」とは対照的に。表
情を変えることもなく里保は、刺さった刀をゆっくりと、抜く。
同時に噴出する鮮血が、水溜りに混じり不吉な模様を描きはじめていた。

崩れ落ちる体が跳ね上げる、水しぶき。
後ろを振り返ることもなく、里保は後方にいた「煙鏡」に目を移す。

こんなにあっけなく、「金鴉」がやられるなんて。
信じられない。いや、それ以前に。
こんな話は、紺野からは聞いていない。
仕入れたリゾナンターたちのデータには、鞘師里保がこのような力を持っているなどとい
う記述はなかった。今回の戦闘で偶発的に発生した、イレギュラーな事態なのか。それとも。

「…次は、お前だ」
「はっ!く、来るなや!!」

赤眼の剣士の矛先が自分に向いたことを知り、慌てる「煙鏡」。
直感で、理解していた。今の里保に、「鉄壁」は通用しないということを。

「のんはまだ…まだやられてねえぞ!!」

背後から「金鴉」が里保に掴みかかる。
そんな奇襲はお見通しとばかりに体を半身ほどずらした里保は、最短のステップで逆に
「金鴉」の後ろに回りこみ、手にした刀で「金鴉」の首を貫き通す。

107名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:12:45
「がっ…がはっ!!」
「蟲の生命力で擬似的に不死になってるのか」

そして、そのあどけない顔からは想像もつかない力技で、強引に「金鴉」の体を引き倒し
て石畳に刀の切っ先を突き立てた。四肢に刺さっていた水の刀も同様に、地に抉りこまれ
る。さながら、磔のように。

そして地に縫い付けられ身動きの取れなくなった「金鴉」に跨った里保は。
腹の中央に刺していた刀を抜き、そして。深々と、突き刺す。
一度ではない。二度、三度。体を貫くたびに噴き出す血が、里保の横顔を朱く染めてゆく。
肌も、瞳も、髪も。すべて。

「さ…鞘師さん…?」
「あれは一体、鞘師さんが、鞘師さんが鞘師さんじゃないみたい…」

獣の咆哮にも似た絶叫が何度も木霊する。
今までに見せた事のない無慈悲な立ち振る舞い。
亜佑美が、遥が、恐れおののいていた。血のように赤い目、そして同様の赤に染められて
ゆく黒髪。その姿を見ているだけで、自分の魂に無限の剣先が突きつけられているような
感覚に囚われてしまう。

汗が止まらない。喉が、酷く渇く。
降りしきる雨に晒されているはずなのに、狂気に満ちた熱と、相反するような背筋の寒さ
が各々の心にこびり付いていた。

それは、彼女たちよりも長く里保に接している聖、衣梨奈、香音も同じこと。
里保が、まるで里保ではない。口下手で、不器用で、でもいざ戦いに赴く際には最も頼り
になる少女。よく知っているはずの「鞘師里保」は、そこにはいなかった。

108名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:13:17
「てめ…え…ぜったいに…ゆる、さねえ…」
「まだ、死なないか」

顔を染める血を拭う事すらせずに、冷たく「金鴉」を見下ろす里保。
刀から手を離したかと思うと、荒ぶる天に向かってその手を掲げ、降り注ぐ水を巻き取り。
息も絶え絶えな「金鴉」の顔面に叩き込んだ。

「がぼっ!!」

顔面に思い切り鉄球を打ち込まれたような、衝撃。
いや、それは次に訪れる悲劇からすれば些細なこと。
張り付いた水が「金鴉」の顔を覆い尽くし、決して離れない。掻いても掻いても、指は水
を通り抜けてしまう。
待っている結末は、窒息。死。

「宿主が死ねば、お前の体で蠢く汚らしい蟲も死ぬだろう」

呟くようにそんなことを口にする里保を、「金鴉」は死のヴェール越しに睨み付ける。
瞳に焼き付けられる、果てしない憎悪と、そして恐怖。

「こんなの、こんなの里保ちゃんじゃない!!」

聖は、否定する。受け入れられない。
確かに相手は、敵だ。自分達を陥れ、そのためにリヒトラウムに遊びに来ていた多くの人
々を犠牲にした憎むべき相手だ。でも。

彼女を止めるべきか。
幸い、後方の「煙鏡」は自分が戦禍に巻き込まれたくないのか、強張った顔をして遠巻き
に様子を窺っている。割って入るなら今しかない。

109名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:13:50
それでも、誰一人、動かない。
いや、動けない。頭ではわかっている。わかっているはずなのに。
理屈ではない。生物としての、本能。今あの場に行けば、命を失う。
里保がそんなことを、自分達に刃を向けるはずが無い。信じている、はずなのに。

「衣梨が行く」
「えりちゃん!!」

前に踏み出す衣梨奈を、間髪いれずに香音が制止する。
衣梨奈の表情に、悲愴な決意にいち早く気づいていたからだ。

「『精神破壊』は使っちゃダメだ!!」
「邪魔せんで!里保を、里保を止められるんは、衣梨しかおらん!!」

かつて里保が精神操作能力者の手に落ちた時に彼女の窮地を救ったのは、他ならぬ衣梨奈。
最大の出力で「精神破壊」を使った結果、里保を傷つけることなく相手を撃退することに成
功していたのだが。

「今の鞘師さんに、生田さんの『精神破壊』は危険すぎます」
「どうして!!」
「狂気で、狂気を鎮める事はできないからです」

あの時里保が現実の世界に戻ってきたのは、衣梨奈の奔流のような能力と里保の強靭な意思
がうまく噛み合ったから。でも、今は違う。最悪、二人とも失ってしまう。
春菜が私情を捨て、冷静に判断した結果の結論だった。

「じゃあ、どうしたらいいと!このままやったら、里保が…!!」

里保は。
いや、返り血に染まった剣鬼は。
ずたずたに切り刻まれた「金鴉」の上に跨り、刺突の構えで切っ先を心臓に向けていた。

110名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:14:37
静かに、それでいて力強く。
落とされる刃に、眼下の相手が最後の悪あがきを仕掛ける。

まっすぐに突き出さようとしている掌。
問題ない。掌ごと、貫き刺すだけだ。
そんな時。聞こえるはずのない声が、里保の脳裏に甦る。

― やめて りほりほ!! ―

「………みっ、しげ、さん?」

里保の呟きと、振り降ろした刀が砕け散るのは、ほぼ同時。
全身に刻まれた赤の憎悪。それが、波が引くように消えてゆく。
ただそれは、彼女自身の限界をも意味していた。
意識が、消えてゆく。まるで血に染まった負の力が退くのに巻き込まれるように。

膝から崩れ、そして地に伏す里保。
雨はいつの間にか、止んでいた。

111名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:16:05
>>102-110
『リゾナンター爻(シャオ)』更新終了

112名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:22:32
>>3-10

パイプ椅子が二脚とスチール製の机、その上に置かれた机上灯
鼻をつく黴の酸いた匂いとタバコのくぐもった臭いで思わず鼻がまがりそうになる
おあえつらえ程度に作られた小さな窓にはセンスの悪い艶やかな色のカーテン

「・・・どういうことですか?」
「なにがだ?」
目の前に座っている人物に小田は問いた
「・・・こんな話はお聞きしておりませんが」
「確かにこの部屋はきれいとは言えない。いや、汚いな、その点は認めるし、謝ろう
 しかし十分にこちらとしては丁寧にもてなしているつもりだ。贅沢なものだ。
 時間はいっぱいあるんだ。のどが渇いたろう?お茶だ」
そういって腰をあげ、部屋の片隅に置かれた冷蔵庫から琥珀色の液体の入ったガラス瓶を取り出す
「・・・へんなものではないですよね」
「失礼だな。ただの日本茶だ。自白剤とか混ぜてなどいないから安心してくれ」
自分で言ったことが面白い、とでもいうように口元を綻ばせてみせた

「あらためて問うが、小田さくら、ダークネスが一から開発に成功した能力者だな」
「・・・その言い方は好きではありませんが、真実です」
瞳に暗い光が一瞬灯ったが、相手は気づかなかったのか小田は判断できなかった
「能力は『時間跳躍』、5秒程度の時間を自分だけが動けるようになる。その間、君以外は時間が止まったことを認識できない」
人気のアニメキャラクターが表紙を飾るメモに書かれたのであろう『報告』を読みあげながる
「・・・ええ、ただ、その間の出来事は消えるわけではないので、銃弾は認識されない5秒の間でも5秒分の距離を動きます」
「なるほど」

テープレコーダーのアナログな音が会話の空間を埋める
「素朴な疑問だが、その5秒の間、君にとって時間はゆっくりと進むのか?
 それともわれわれが感じる5秒、そのものの長さなのか?」
「・・・5秒は5秒です」
そういって小田はパン、パン、パン、パン、パンと5回手をたたいた
「・・・このくらいの時間と感じてください。その間に超速度で移動できる、とかそんなことはありません」
「認識できない時間になんでもできる、というわけでもなさそうだな」

113名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:23:19
「・・・その通りです。自分だけの時間を作る以外はたいしたことはできません
 ・・・超高速で動くにはまた別の力が必要ですね。それこそ別の能力、ですかね」
「随分と自分を過小評価しているものだな」
「・・・過大評価するどこかの誰か、よりは優れている、とだけお答えしましょう」
「それは、私も知っている人のことか?」
「・・・ご想像の内に」
無表情という表情を浮かべた

突然隣部屋から悲鳴があがった
「ぎゃああああああああ」
その声に小田は聞き覚えがあり、壁際に駆け寄り、耳を当てた。何か漏れてくる音がないのか
「・・・石田さんですか」
「そのとおりだ」
「・・・何をしているんですか?」
「さあ??私にも詳しくはわからない。ただ、はっきりしているのは、相棒があの子をとても気に入ったことだけだ
 ちなみに彼女は君と違い、私達のもてなしを十分に喜んでくれたぞ」

「いやあああああああ、もふもふしてるううううう」
なおも続く石田の叫びで小田は壁から離れ、椅子に座りなおした

「・・・しかし、心配ではないのか?」
女は覗き込むように机に肘をたて、小田に声をかけた
「・・・何がですか?」
「隣にいるのは仲間だろ?私の目には君の表情が変わっていないように見えるが」
「・・・あの人なら大丈夫ですよ。自分でなんとかするでしょうし。
 ・・・大声をあげる、ということは元気に生きている証に他なりません
 ・・・それに、あなたがたがそんな乱暴をするはずもないですし
 ・・・あと、たまには痛い目に合えばいい。調子にのってばかりでしたから。」
「ハハハ・・・君はやはり面白いな」
女につられて、小田も笑う

114名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:23:58
小田のその表情を見て、女は真顔に戻った。一挙一動を逃さまいとする緊張感が再び部屋に満ちた
「ほう、ずいぶんいい笑顔だ」
「・・・どういう意味ですか?」
「いや、われわれの得た情報では、君は初め『笑う』という感情を持っていなかったと聴いていたからだ
 眉ひとつ動かさずに地下の組織を潰した、という報告もある
リゾナントでどういう経験をしたのかは知らないが、いい笑顔だ」
「・・・ほめ言葉として受け止めておきます」
「何も純粋な褒め言葉だ、それ以外の深い意味なんてない。笑うことはいいことだ。健康にも精神にも」

小田が女の常にあがった口角に目を注ぐ一方で、笑顔の女は手元に広げた別の資料にも手を伸ばした
「小田 さくら。誕生日、不明。血液型 不明。出生地 不明。まったく作る価値の乏しい資料だと思わないか」
「・・・そうですね。ただ何も無い、私は『無』から生まれた、と答えれば満足でしょうか?」
「満足はしないな。名前しかないなんて悲しすぎる」
小田は首を振った
「・・・ダークネスで教育された時には名前すらなかったですよ」
無言で女は資料を小田に手渡した。その資料に目を配り、沸々と怒りが込み上げてきたのか指先に力がはいる。

「ダークネスはコードネームを好むのか、わからないが、名前をつけたがる。万国共通だ
 私が把握しているのはGやAなんていうcodeもあるが、君のものはまた特殊だな」
「・・・いや、これはコードネームなんかじゃない」
憎しみで歯軋りを始め、爪が指に食い込むほどに拳を握りこむ
「・・・これはただの識別番号、ただの番号、私を人間ではなく、ただの兵器として存在させるだけのものだ」
資料を両手で細切れになるまで破き、破き、破き、地面に叩きつけた
いつの間にか立ち上がり興奮のためか肩を大きく上下させる小田を女は椅子に座ったまま見上げる

「水でものんで落ち着くがいい」
コップを差し出し、一気に飲み干した
「ただの水だが心を落ち着かせるには十分だろう。さあ、話の続きをしようか」
「・・・」

115名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:25:40
しかし小田は何も話そうとしない。沈黙に耐えきれず女が問いかける。
「どうして答えないんだ?何か不満でもあるのか」
「・・・はい。大いに不満があります」
小田は自身の前におかれつづけている、それを指差した
「・・・これはなんですか?」
「?? 何って、それは

 オリジン弁当ダ」

リンリンは満面の笑みで言った
「おいしいぞ。日本の誇る味だ」
「・・・いや、結構です」
「なんでダ?確かに刃千吏の経済事情でこんな古い日本支部の一軒家に連れてきてしまったことは申し訳ナイ
 だが、それ以外は一流のお茶葉に日本の名水、そして、美味しい日本の味だゾ」
カーテンはリンリンの私物だがそのファッションセンスが独特のため、小田には理解できなかったのだ

「・・・そこですよ。リンリンさんは中国出身ですよね」
「モチロンダ」
「・・・じゃあ、なんで中国料理でもてなしてくれないんですか!
 ・・・本場中国の料理を、炒飯を、麻婆豆腐を、そして小籠包を、小籠包を、小籠包・・・」
正直小田はリンリンにつれられてここに来るまでの間、非常に楽しみにしていた
刃千吏の総帥の娘でグルメがもてなしてくれる。期待せずにはいられようか
小田には無理であった。この家に到着するまでに口の中は唾液で満ち溢れていた
それなのに、それなのに
「・・・小籠包がないなんて」
「いや、そんなこといってもリンリンの地元は小籠包有名ではないからナ
 仕方ない、リンリンのオリジンのシュウマイを一個あげるから、機嫌を直して」
そこにぎゃあああとまた石田の声が響く

116名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:26:17
ついに我慢できなくなってリンリンは小田を連れ添い立ち上がり、隣部屋のドアを開けた
「うるさいぞ!ジュン!何しているダ!まだ小田ちゃんへのもてなしが済んでないんだ・・・?」
「・・・石田さん、なにしてるんです」
言葉を失いかけたリンリンともともと大きな眼をさらに広げた小田の目の前には
「あ、小田ちゃん、た、助けて」
「グルルル」
石田はジュンジュンもといパンダに抱きかかえられていた

「・・・ジュンはいったいどうしたんだ?」
興奮気味のジュンジュンに口をあんぐりさせたリンリンがようやく我に返り石田に問いかけた
「え、え〜と、リンリンさんと小田ちゃんがあちらで話されている間に私も弁当を用意されまして。
 それでジュンジュンさんがお茶を用意するといって席をたたれたんです」
じたばたとどうにか逃れようともがきながら答える石田の姿は捕えられた宇宙人の如く滑稽に映る

「それで、もてなしだと聞いていたので先にお弁当を選んだんですね
 ジュンジュンさんが帰られてお茶を出していただいたんですが、『石田ちゃん、そっちはジュンジュンのだ』って」
「・・・まさか石田さん、豪華なお弁当を選んだんではないですよね?」
「そ、そんなことない!ただ私はから揚げが乗っている弁当を選んだだけだ!!」
私は何も悪くないとでも言うように堂々と精一杯胸をはる石田だが、小田はため息をつく
「石田ちゃん、ジュンは肉食ダ。楽しみにしていたんだろう、その唐揚げを」
そうだとでもいうように「ガウッ」と吠えた

「え?パンダって草食ではないんです?」
「パンダだけどジュンジュンダ。肉が大好物だ。あと小柄でダンスが巧い子モ」
「!!」
慌ててまたじたばたと暴れだす石田をみて、小田はにやりとほくそ笑んだ
「・・・よかったですね。石田さん。最近、道重さんからの愛情が足りないってぼやいでいたところでしたからね」
「こらあ、小田ぁ!嘘いうなあぁぁ」
「ジュンジュンさん、石田さん、思う存分愛してほしいって言ってますよ」
それを聞いて俄然気合が入ったのか、道重には負けたくないと思ったのかジュンジュンは大きな体で石田を包み込む
「ぎゃああああああ」

117名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:27:49
それを一人冷静に見ていたリンリンはつぶやいた
「リゾナンターも変わったナ」

「ん〜もういい!自分でなんとかする!」
リンリンも助けてくれないと悟った石田はリオンを出現させた
「おう、青いライオンちゃんダネ」
動物好きなリンリンは目を凛凛と輝かせる
「ジュンジュンさん、怪我させたらごめんなさい」
十分にジュンジュンが自身を解放してくれるように力を抑えてジュンジュンの背中にとびかからせた
そのまま二人は床に倒れこみ、背中越しのジュンジュンを通し、石田にも相当な衝撃が走った
しかしジュンジュンのロックが緩んだ瞬間を逃さず石田は抜けだした

「イテテ。石田ちゃん、少しイタイネ」
パンダから人間に戻ったジュンジュンはリンリンの手を支えにして立ち上がった
「ジュンジュンさんが離してくださらないからです!」
「石田ちゃんがかわいいカラナ」
かわいいといわれて満更でもないが、あれほど長く抱き(かかえ)られたのは初めてであり当然身構える

「ん?ドウシタ?石田ちゃん、遊ぼうヨ」
「や、やめてください。も、もう・・・」
石田の構えをみて、小田が悪いことを考えたときの笑みを浮かべた
「・・・ジュンジュンさん、石田さんはジュンジュンさんと相撲をとりたいようですよ」
「 !! 」
慌てて首をふる石田だが、ジュンジュンはそうなのか、といって構えに入っていた
「うわわわわ、リ、リオーン」

ジュンジュンとリオンの立ち合いは大きな衝撃波を生み出した
空気が弾けたようにびりびりと窓ガラスが震え、リンリンの結いたポニーテールが揺れた
「すごいネ、石田ちゃん。ジュンに正面からぶつかるだけのパワーがある
 そして昼間の戦闘で魅せた機動力。実に頼もしいネ。そうは見えないが、度胸もアル」

118名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:29:36
それに同意するように小田は頷く。しかし、とリンリンは言葉を選びながら続けた
「小田ちゃんも気づいているんではナイカ?石田ちゃんの最大の弱点を」
「・・・弱点?」
小田は挙げることができなかった。石田はリゾナンターにしては珍しくバランスの取れたタイプと評価していたからだ
「そう、石田ちゃんは小田ちゃんが気づいているように突出した『何か』がない、そして何かが残念ダ」
当然気づいていると思いこんだリンリンは石田には聞こえないよう配慮しながらも断言した
「正確に言うならば、あと一歩、その一歩分の何かがタリナイ。すべてが平均以上ダガ、100点がナイ
 石田ちゃんらしさ、といってしまえばいいのかもしれないガ、実に残念ダ」
そう言っている間にジュンジュンに石田は再び抱え込められてしまっていた

「・・・残念ですか。それこそが石田さんの良さと私は思いますがね」
「それもまた真ナリ。長所は短所、短所こそが長所であるからナ」
じゃれるジュンジュンと必死になって逃げ惑う石田をみて小田は思う
(・・・それなら私の弱点はなんだろうか?時間を止め、自分だけが動ける空間を作る能力)

そうやって悩む小田を見てリンリンは細かく破り捨てられた小田の『番号』のことを思い出していた
(こうやって悩むなんて、リゾナンターに出会えてよかったナ
 誕生日もリゾナンターに出会ったあの日にしたそうだしナ
 君にはすでにいい名前が付いているから前を向けるだろう?)

「コラ、ジュンジュン、いい加減石田ちゃんと遊ぶのやめなさい!
今度はリンリンが石田ちゃんと遊ぶ番ダカラ!!」
そういいながらジュンジュンに駆け寄るリンリンのブーツから紙切れがふわりと舞い上がった
それは小田がびりびりに破った資料の一片

風になびかれて右に左に流れる紙切れ
何が記載されていたのか今は判断できないが、紙の中央にはたった一つの文字
それは終わりでもあり、始まりでもある、唯一の数字
破かれる前の資料にはこう記載されていた
『被験体名 小田 さくら(仮) : password is 0 』

119名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:32:32
>>112-118
『Vanish!Ⅲ 〜password is 0〜』(11)です
久々。おひさ〜。なんてねw
はっきりいって保管庫がなくなっても俺はモチベ変わらんよ。書くときに書き、落とせたら落とすだけ。
作者は作者の役割果たすだけでいいんじゃない?
この回は「からあげ弁当たべて怒られるだーいし」と「小籠包な小田ちゃん」をかきたかったから満足♪
タイトルの意味も半分示せたので、次回からは展開しますよ。

120名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:48:01
>>101

「なんとか朝を迎えましたね、おはようございます」
「・・・おはよう」「・・・」「・・・はよう」

おはよー! あれ はるなんにあゆみにどぅは声が小さいですよ!
あいさつしないと元気になれませんよ!はい、せーの

「「「「おはようございます」」」」

よくできましたっ さあっ 今日も元気に過ごしましょう

「ちょっとまって、まーちゃん さすがに一晩中 アフリカの洞窟で危険がないか視てたから疲れたよ」
「そうです まさきちゃん わたしも疲れたから すこし休みましょう」
「ごめん 休まないとリオンも動かせないから やすませて」

んもー みんな体力ないんだから! そのための修行でしょう

「・・・まあちゃんだけでよかったんだよ、はるは一言もするって言ってないのに」

ん? Doどぅ なんか言った?オダベチカを見習って、元気だよ

「いや、私も疲れてますよ。でもやるだけのことはしないといけませんし」
「小田ちゃん、何してるの?」
「携帯の設定いじってるんですよ。GPSついているから対応しているはず、と思いまして」

え〜 つまんない

「つ、つまんないって、まーちゃん 遊びじゃないんだよ!」

じゃあ、ふくぬらさん達はどうするの? あ、さっき、まさ、iPadしたけど圏外だよ

「あ・・・本当ですね。ダメみたいです。大陸の98%対応なのに」   (続く

121名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:50:03
「・・・えっと、えりにもわかるように説明して」
「はい。荷物はここにあります」
「それは知っています。続けてください」
「はい、寝袋は4つあります」
「はい、寝ることはできると」

「ごはんをたくための飯盒があります」
「はい」
「しかし、お米がありません」

「野菜を斬るための包丁があります」
「はい」
「しかし、野菜はありません。もちろん、お肉もありません」

「コップが4個あります」
「はい」
「しかし、飲み水は各自のペットボトルしかありません」

「お菓子はあります」
「はい」
「しかし、まーちゃんがいつのまにかジョロキア・ハバネロ入りの激辛に変えてしまいました」

「ライターはあります」
「はい」
「燃やす木がありません。この島には木がありません。」

「周りは水に囲まれています」
「はい」
「深さがどれくらいあるかわかりません。釣竿もありません。もちろん飲むのは危険です」
「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」
「「「「NOおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」  (続く

122名無しリゾナント:2016/01/11(月) 11:59:27
『ある変態な一日』

758 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 10:59:55.56 0
リゾナンター工藤遥の部屋に潜入調査するダークネスの羽賀諜報員という話で一本

759 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 11:51:25.58 0
ハンガートラップにかかる諜報員朱音…その時目にした光景とは!?





シパパ

760 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 14:03:03.75 O
やっやめろよみずきちゃん!羽賀ちゃんがみて…ああっふっふぅ


シパパパパパ

761 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 15:18:09.76 0
ノリ*‘. 。‘)<これが譜久村聖の「複写」の儀式!なんて羨ま・・・恐ろしいの

762 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 17:48:31.15 0
ふくちゃんがくどぅーの「千里眼」の能力複写したら・・・やばすぎるなw

763 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 18:47:31.54 O
ふくちゃんに持たせてはならない能力一覧

千里眼 言わずもがな
物質透過 鍵をかけた部屋に楽々侵入
感覚占拠 その気がなくとも即発情
振動 またのきか(ry

764 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 19:21:19.90 0
精神官能とかムチとかツブシがきく能力がいっぱい

765 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 19:58:47.34 0
そう考えるとどんな能力でもダメなんじゃないか?って気がするw

そもそも「複写」能力って時点でアウトのような?ww

766 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 20:05:07.06 0
使う人間次第で正義の味方にもエロの化身にもなれるという諸刃の剣
それが”能力”

767 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 20:53:41.16 O
ホントにこの住人はフクちゃん好きだな君が

768 名無し募集中。。。2015/08/09(日) 21:32:10.24 0
さゆとはるなんが再会したようだ。

769 名無し募集中。。。2015/08/10(月) 00:09:05.79 0
はるなんは変1に接触し変2の暴走を止める算段か…毒には毒を!変態に変態を!w

770 名無し募集中。。。2015/08/10(月) 00:58:36.49 0
変態×変態で変態倍増

771 名無し募集中。。。2015/08/10(月) 06:33:06.93 0
昨日は変態な日だったなw

123名無しリゾナント:2016/01/11(月) 12:00:46
>>121

3時間 経ちました〜 はい おきましょう!!

「すこしは体力戻ったけど、どぅは千里眼使える?」
「うん、なんとかあゆみんは?」
「・・・まだちょっときついかな?はるなんは?」
「うん、がんばれそう」

よ〜し、みんなふくぬらさん達を探しに行きますよ

「佐藤さん 譜久村さんたちがどこにいるのかわかるんですか?」

え〜 それを探すのが修行だから どぅとはるなん頑張って

「なんではる達が?」

どぅとはるなんでふくぬらさんの居場所を探さないと場所わからないから
まさは適当にこの辺、って飛ばしただけだから

「この世界地図のどのあたりですか?はい、なるほど、ありがとうございます。この辺り、だそうです、工藤さん」
「無理いってばっかりだよ。ふぅ、やるけど、はるなん手伝って」
「はい。いきますよ」
「・・・・」
「視えた」「私も」
「どこ?譜久村さん達はどこにいた?」
「・・・湖の上の孤島」
「は?」
「おっきな湖の上の浮島にいる」

へ〜 あそこ湖の上だったんだ 暗くてみえなかったわず
これで目的地わかったし、急いでいきましょう!!
さ、まさたちもレッツゴーー!!      (続

124名無しリゾナント:2016/01/11(月) 12:02:45
「りほちゃん、なんとかならない?」
「さすがにこれだけの水を操るのは無理だよ」
「香音ちゃん、なんかいい考え浮かばない?」
「う〜ん・・・難しいんだろうね、香音の透過なんて役立ちそうにないし。えりちゃんのワイヤー操作は?」
「捕まえるとかはできるかもしれんけど、ここから出るとかは無理やけん」

「じゃあ、魚を捕まえることはできるんじゃない?」
「でも、魚がみえんとえりには無理やし」
「あ、それくらいなら私に任せて。渦巻きくらいは作れるから」
「うわあ、りほちゃん、すごい、湖に大きな渦ができた。ほら、えりぽん、あそこに魚がいるよ」
「よし!今、このときにワイヤー伸びりい!!」
「ナイスキャッチだ、生田」

「・・・でこの魚どうやって食べると?」
「任せて香音がさばいてあげるから」
「さすが、香音ちゃん」

「なにしてると、里保?」
「ラ、ライターがつかなくて」
「貸して、なんやつくやん。もしかして使ったことないと?」
「そ、そんなことないって!調子が悪いだけだよ、ほら、着くから」
「里保ちゃん、どや顔する必要ないと思うんだろうね」

「では、試しにいただきます・・・」
「どうやった?」
「・・・不味い。泥みたいな味がする」
「そんな、せっかくの食料なのに、ハーブ塩さえあれば」
「いやいや、普通の食卓にない調味料出されても」
「あ〜聖、まさきちゃんの能力コピーがあと1つあればなんとかなるのに」
「・・・フクちゃん、あと一つって言った?じゃあ、一回は使えるの」
「え?うん、そうだよ、でも3回しか跳べないから、4人脱出はできない」
「「「3回もできるならはやく言え!!!」」」   (続く


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