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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part4

953名無しリゾナント:2014/06/24(火) 18:57:49
>>952
保全作

代理投稿お願いします。

954名無しリゾナント:2014/06/24(火) 19:46:27
>>953
代理いってきました

955名無しリゾナント:2014/06/24(火) 22:57:46
>>954
ありがとうございます。

読み返したら相当ヒドイ文だと反省しました。
想いだけで書き進めてはいけませんね。

956名無しリゾナント:2014/06/27(金) 02:04:41


里保がトレーニングルームからリゾナントの店舗へ上がると、そこには既に何人かのメンバーたちが集まっていた。

「あ、鞘師さん。譜久村さんがハーブティーを入れてくれるって」

里保の姿を見つけた石田亜佑美が、我先にと言った感じで報告する。
確かにカウンターに目をやると、品のよさそうなティーカップに紅茶を注いでいる聖の姿が見えた。

「さすがフクちゃん。輸入か」
「おー、お嬢様ぁ」
「そんなことないよ!100円ショップで売ってるさ!!」

里保のお嬢様いじりと、それに追随する春菜。
すかさず反論する聖だが、彼女の父が当主を務める譜久村財閥は間違いなく日本のトップクラスの企業集団だ。それをお嬢様ではない
と言うには少しばかり無理がある。

「ハル、味の違いとかわかんないから何でもいいや。譜久村さん早くー!!」
「はいはい、今持ってくから」

お茶を嗜む、には縁遠いポジションの遥に急かされ、聖がトレイに乗ったティーカップをこちらに持って来る。亜佑美、里保、春菜、
遥が窓際のテーブル席に移動すれば即席のお茶会の開始だ。

それぞれの目の前にカップを置いた聖が、隣から持ってきた椅子に座る。
そんな時だった。里保の脳裏に何かが過ぎる。違和感。もしくはおぼろげな既視感。

957名無しリゾナント:2014/06/27(金) 02:05:16
「みんな、ちょっと待って」

その声に思わず全員が視線を向ける。
真っ先にカップに口をつけた亜佑美が目を白黒させた。どうやら寸前で間に合ったようだが。

「どうしたの、里保ちゃん」
「…その紅茶を、飲んじゃ駄目だ」

地下での、舞美と茉麻との戦いで研ぎ澄まされた感覚がその危険を捉える。
いわゆる第六感が、警鐘を鳴らしていた。

「鞘師さんの言う通りです。この紅茶には、毒が入ってます」
「ええっ!!」

里保の言葉を聞いて嗅覚強化した春菜が同意する。
彼女の嗅覚は、おいしそうな紅茶から匂いたつ死の気配を識別していた。

「ちくしょう、誰がこんなこと!!」
「聖全然気づかなかった、いつの間に」

誰も気づかない間に侵入者を許してしまったのか。
辺りを見回す遥と困惑する聖。そんな中、春菜は迷いながらも。

「何かの間違い、ですよね。譜久村さん」
「え、どういう…」
「紅茶に仕込まれた毒と同じ匂いが、譜久村さんの左手の薬指からするんです」

里保は、ようやく自分が抱いた違和感の正体に気づく。
聖の、心の声が聞こえない。それが意味するものは。
かつて里保は同じようなことを同じ場所で経験していた。
つまり、今この場所にいる聖は。

958名無しリゾナント:2014/06/27(金) 02:06:16
「また、偽者か」

かつてダークネスが、喫茶リゾナントに擬態能力者を送り込んだことがあった。
そしてそれよりも前、高橋愛がリゾナンターのリーダーだった時にも。

「偽者って…どういうこと?」
「お前は…フクちゃんじゃない。擬態能力者が擬態した、偽者だ」
「違う!聖は偽者なんかじゃない!!だって、聖は聖だもん!!」

必死に潔白を訴える聖。
その表情も、仕草も聖そのもの。
それでも、紅茶に毒を仕込んだという事実。里保の言葉。相手の外堀を埋める材料は揃いつつあった。

「なんで、何でみんな黙ってるの?聖は悪くない!里保ちゃん、ちょっとおかしいよ!!毒の匂いだって、本当の犯人が触った部分を
知らないで触っちゃっただけなのかもしれないのに…」

だが、ドアベルを鳴らす人影がそれを否定する。

「ただいま…って、え、なにこれ」

目の前の光景に思わず買い物袋を落としてしまったのは。
喫茶店の中にいる聖と、瓜二つの同じ顔。

「やっぱり!!」
「ちっ!!」

聖本人が現れたことで開き直った偽者の聖が、懐から何かを取り出して地面に叩き付ける。
その瞬間、店内に猛烈な勢いで白い煙が立ち篭め始めた。

959名無しリゾナント:2014/06/27(金) 02:07:27
「しまった!」
「逃げられます!早く追わないと!!」

一瞬にして全員の視界を遮った白煙。
ただその目くらましの効果は意外と短く、あっという間に煙は晴れてゆく。

「よっしゃ、煙がなくなってきた…って、ええっ!!」

煙が晴れたことに安堵する亜佑美は、信じられないものを見たかのように大きく叫んだ。
彼女が見たものは。

「ねえ、これ、どういうことなの?」
「ねえ、これ、どういうことなの?」

綺麗に揃ったユニゾン。
里保たちの前に、二人の聖が並んでいた。

「あなた何者?聖の偽者でしょ!」
「そっちこそ偽者でしょ!!」

お互いに顔を見合わせ、言い争う聖たち。
冗談のような光景だが、この二人のうちの一人が偽者で里保たちに毒を飲ませようとしていたのは間違いない。

「一体どうすれば…」

以前喫茶リゾナントで勃発した偽者騒ぎの時も、擬態能力者は聖に擬態し潜入していた。
その時は本物は不在で偽者だけだったので話は簡単だった。しかし、今回は偽者と本物がまったく区別のつかない状態で互いを偽者だ
と主張している。

960名無しリゾナント:2014/06/27(金) 02:08:19
「見た目も、背格好も、ほくろの数も一緒」
「ほくろの数って。鞘師さんどこ見てんすか」
「肌のさわり心地も、一緒…」
「ちょっと里保ちゃんやめてよ!」
「ちょっと里保ちゃんやめてよ!」

遥の突っ込みやダブル聖の非難などどこ吹く風。
二の腕や頬のあたりを触りまくったが、やはり区別がつかない。

「わかった!ハルが今から譜久村さんを一発ずつ殴る!」
「ちょ、ちょっと待ってどぅー!!」

痺れを切らし拳をぐるぐる回す遥を、亜佑美が必死に止める。
そんな様子を見た春菜が咳払いをしながら席を立ち、聖たちの前に出た。

「みなさん。たった今、『能力者』に共通する見分け方を発見しました」

春菜の、思いがけない一言。
これには言い争っていた二人の聖も一斉に春菜を見る。
春菜は手をパンツのポケットに突っ込み、普段の猫背を最大限に伸ばしながら。
はっきりと言った。

「『能力者』に共通する見分け方。それは『能力者』がハーブティーの香りを少しでも吸うとだな…胸のサイズが1カップ上がる」

「ええっ!!」
「そんなのないわ!!」
「嘘だろはるなん!!」

慌てて自らの慎ましいそれに手をやるリゾナンターたち。
しかしこの時、既に真実は露見していた。

961名無しリゾナント:2014/06/27(金) 02:11:08
春菜が、ゆっくりと指をさす。
そこには、里保たちと同じように自らの胸を摩っている聖の姿が。

「アッ!」
「偽者は、あなたです」
「な、何でそんなので聖が偽者ってなるの?だって胸がおっきくたってそんなこと言われたら摩っちゃうじゃん!!」

自らを偽者と決め付ける春菜に、聖は強く反論する。
それでも、春菜の強い視線は揺らがない。

「本物の譜久村さんは。今でも十分立派なものをお持ちなので、そんな反応はしません。そんな反応をするのは、本来はみすぼらしい
ものを持ってる人だけです!!」

決定的だった。
確かにもう一人の聖は、自らの胸に手をやっていなかった。

「は…あはは、こんなくっだらねーことであたしの『擬態』がばれるとはねえ」

開き直った、聖の姿をした何か。
その体はゆっくりと縮んでゆき、やがてまったく別の人間へと姿を変えた。

「せっかくあたしの能力でてめえら全員騙くらかして毒殺しようとしてたのに!『オリジナル』が帰って来るまでに手柄立てようと思
ったのによ!!」

ポニーテールを揺らしながら毒づく少女。
だが、程なくして自らの退路が完全に塞がれていることに気づいた。

962名無しリゾナント:2014/06/27(金) 02:20:38
「残念ですが、あなたに逃げ場はもうありません」
「聖に化けるなんて、許さない!」
「絶対に捕まえてやる」
「ちくしょう、ハルたちをバカにしやがって」

出口に里保と亜佑美が。
そして勝手口側に春菜・聖・遥が立つ。
追い詰められた侵入者だが、その表情には余裕が。

「逃げ場がない?そいつはどうかな!!」

少女は自らの懐に再び手を入れ、それを炸裂させた。
こういう時のために煙幕をもう一つ仕込んでいたのだ。
あっという間に濛々とした煙が広がってゆく。

煙に紛れ、素早い動きで勝手口へと突っ切ろうとする刺客の少女。
亜佑美と里保、二人の実力者のラインを突破する自信はさすがにない。ならば三人とは言え、視覚のアドバンテージが活用できる相手
のほうがいい。遥の千里眼は確実にこちらの姿を捉えるだろうが。

「はるなん!譜久村さん!!そっち行った!!」
「え、どこどこ?!」
「煙で見えない!!」

少女の目論見通り、姿は把握はできても捕まえることはできない。
だが、三人の包囲網を突破したところで誤算が生じる。

963名無しリゾナント:2014/06/27(金) 02:21:18
「疾ッ!!」

白煙に覆われ視界の取れない店内。
だが里保は鋭い踏み込みで、逃走しようとする相手の背中を刀の腹で正確に打ち据えたのだ。
女はぐっ、と呻くような声をあげたものの、立ち止まることなくそのまま逃げてしまった。

「浅かったか」
「追えば間に合うかも!」
「待ってどぅー!!」

遠ざかってゆく足音を追おうとする遥だが、聖に止められる。

「何だよ、止めんなよ!」
「『擬態能力者』が単独で行動してるとは思えない。下手に追ったら相手の罠にかかるかも知れないし」

その言葉に、大きく頷く里保。
かつて同じような手口で喫茶リゾナントへ乗り込んだ擬態能力者がまさにそうだったからだ。
深追いするよりも、まずは攻撃の第二波に備えるべきだ。

「やはり、ダークネスなんでしょうか」
「手口が似てるからね。間違いないと思うけど」

束の間の平和の終わり。
それは、新たな激戦の幕開けでもあった。

964名無しリゾナント:2014/06/27(金) 02:22:54
>>956-963
「リゾナンター爻(シャオ)」更新終了

965名無しリゾナント:2014/07/01(火) 01:55:33


喫茶リゾナントのある街区を抜け、住宅街を突っ切り、全速力で走る刺客。
彼女はダークネスに属する能力者。ただし、オリジナルの能力者を元に作り出された「クローン」だった。

あいつ、煙幕で見えないはずなのに的確に打ち込んできやがった…

忌々しげに背中を摩る少女。
不自由な視界の中で繰り出された一撃、それは里保の腕前がかなりの高水準に達していることの証拠でもあった。
正直、少女は自分の戦闘力に自信などなかった。となれば、引きつけてからの不意を叩くしか方法はない。
あの場所でやり合わないで正解、計算どおりに自分を追ってくればこの先にいるパートナーと組んで反撃に打って出る手はずになって
いる。

やつらの顔は全員憶えた。
例え偽者だと頭では理解していても、自分の知っている相手の姿をした人間をそう簡単に攻撃できる人間は少ない。
意を決めたとしても、迷いが大きく力を鈍らせる。その隙を、突く。
それが、少女と彼女の相方の必勝法であった。

966名無しリゾナント:2014/07/01(火) 01:56:37
人気のない資材置き場に出た。そこで少女はようやく走るのを止める。
相棒がすぐ近くにいるはずだが、追っ手が迫って来るような気配は無い。
それを刺客の少女は相手が怖気づいたと判断した。

「へっ。何がリゾナンターだ。とんだチキンどもじゃねーか。なぁ?」

少女は物陰に潜んでいると思しきもう一人の少女に語りかける。
返事は無い。少女の声が静寂に響き渡るのみだ。

「大体、うちらダークネスが躍起になって潰しにかかるような連中かね。幹部連中さえ手を拱いてたってのもずいぶん昔の話だろ?」

やはり返事は無い。
少女は急に不安に襲われた。

「おい、無視すんなよ!そこにいるんだろ?くだらねー真似してんじゃねえよ!!」

少女は自分のパートナーが自分のことをからかっているのだと思った。
状況が状況だけに、笑えない。そんなことしてる場合かよ、と毒づくのも当然の話。
だが、そんな表向きの感情とは裏腹に。何となく嫌な雰囲気が少女を覆っていたのもまた確かだった。

その予感を払拭するかのように、さらに声を張り上げて相手の名を呼ぶ。
叫び、姿を探そうと髪を揺らし、そしてまた叫ぶ。
小さな体に似合わぬ大声に反応したのだろうか。
そこで、ようやく電柱の影からゆっくりと人影が動いた。

「…いい年してかくれんぼとか、つまんねえことしてんな…よ…」

だが。その影を目の当たりにした少女の顔が引き攣る。

967名無しリゾナント:2014/07/01(火) 01:57:47
少女のパートナーは。相方は。
ガラス玉のような瞳で、こちらを見ていた。
いや、その機能は既に停止していたのは明らかだった。
相方の土気色の顔、その下は。

喉の部分だけを、綺麗に切り抜かれ、絶命していた。

「なっ、なんだ、なんだこれ!!!!!!」

恐怖に引き攣ったまま固まった顔で、目玉をぐるんと真上に回したままどさりと崩れ落ちる死体。
誰が何のためにこんなことを。少女の思考は一瞬にしてパニックに陥ってしまう。
腰が抜け、尻餅をついた状態で思わず後ずさる少女の視界を何かが遮った。

「う、うわああああっ!!!!!!」
「ピーピーうっせえよ。雑魚」

少女の顔が。
何ものかによって鷲掴みされていた。
誰かの手によって視界が塞がれていたのだ。

「だっ、だだ誰だお前―」

言い終わる前に、柔らかなものが潰れる嫌な音が響く。
まるでグレープフルーツの果実でも握り潰すかのように。
少女の首から下が真っ赤な液体で汚される。少女を一瞬にして葬り去ったその人物は、血に塗れた掌をじっと見つめ、それから「汚ね
っ」と呟きながら死体の服に擦り付けた。

968名無しリゾナント:2014/07/01(火) 01:59:08
「はぁ。『のん』のクローンにしちゃ弱すぎだろ、お前」

心底軽蔑した視線で一瞥し、それから小石でも蹴飛ばすかのように物言わぬ少女を。
蹴り飛ばした。
頭を失いバランスをひどく欠いた肉塊が弧を描いて飛び、水を含んだずた袋みたいな音を立てて地面に落ちた。

「あーあ、また殺しちゃった」
「…いるんだったら最初から言えよ」

背後から、可愛らしい高声が聞こえてくる。
太陽に照らされて黒く刻まれた、お団子頭のシルエット。

「いくら組織の使いっ走りでも、勝手に殺したらダメだよぉ」
「うっせえ。て言うかそのきもい喋り方やめろよ、吐き気がする」

おえええ、と吐くようなジェスチャーをするポニーテールの少女。
それまで天使のような微笑を浮かべていたもう一人の少女は、途端に不機嫌な顔になった。
つかつかと歩み寄り、ポニーテールの肩を引き寄せて自分の正面に向かせる。

「うちはお前とは違うんや。組織裏切って死んだチビの地盤引き継いで、可愛らしい子供みたいな理想のボス像を演じなあかんのやから」
「そうそう、その下品な関西弁があんたにはぴったり」
「ハァ?下品な顔の自分に言われたないわ。顔変えすぎてオリジナルの顔忘れたんと違うか?」
「黙れハゲ。カゴック。体重が三倍界王拳」

お団子頭がそれまでの高音から信じられないくらいのドスの効いた声を出すと、対するポニーテールも相手の黒のワンピースの襟を思い
切り掴んだ。まさに、一触即発の状況だ。
顔をつき合わせ、互いににらみ合う二人の少女。
先に引いたのは団子頭のほうだった。わざとらしいくらいの笑みを作り、拍子抜けした相手の手を軽く振りほどく。

969名無しリゾナント:2014/07/01(火) 02:00:29
「まあええ。とにかく、自分が拵えた死体を何とかせな。早いとこ、よっちゃんとこの死体処理班に連絡しい。釈放早々騒動起こした
なんて聞いたらまた『首領』に怒られるわ」
「へいへい」

不承不承、携帯を手に取りちまちまといじるポニーテール。
とぅるるる。あーもしもし、早速だけどゴミ回収頼むわ。は?つべこべ言ってるとてめーもゴミにしてやるぞ。ったく。場所は、○
○区の…なに?じーぴーえす?わけわかんねえこと言ってんじゃねえよ。あ?場所がわかるって?だったら最初から言えよ。アホか
ボケナス。がちゃ。

「ごくろーさん」
「…しっかしこの『すまほ』?ってやつ、めっちゃ使いづらいんだけど。押したい場所押そうとしても変なとこ開いちゃうし」
「せやから何個もぶっ壊してるんやな。うちなんてもうスマホマスターやで?やっぱ頭が原始人なお前とは格が違うわな」
「は?誰が原始人だって?」
「済まん済まん。原始人っちゅうか、ゴリラやった」

今にも掴みかかろうとしてる相方を他所に、お団子頭の携帯が鳴る。
簡素な了承の返事だけをして、通話を切った。

「…誰からだよ」
「ふぐっ面サイエンティストや。今日の夜に幹部集会やと。ついこないだ幹部に復帰したばかりやのに、忙しいこっちゃ」
「ふうん。いいんじゃない?久しぶりにみんなの顔、見たいしね」

肩を竦める団子頭 ― 煙鏡 ― と、期待にポニーテールを揺らす ― 金鴉 ― それぞれの反応。
しかし、どちらもそれが自分達にとって「大事な」集会であることは理解していた。

「ほな帰ろか。”噂の喫茶店”も覗いてみたかったけど」
「まあいいじゃん。いつでも殴り込めるような場所だし」

そんなことを言いつつ、その場を去ろうとする二人。
が、「金鴉」が何かを思い出したかのように立ち止まった。

970名無しリゾナント:2014/07/01(火) 02:01:47
「何やねん、急に」
「忘れてた」

それだけ言うと、自らが喉をくり抜いたもう一つの死体に歩み寄り、やおらその首根っこを掴む。
そして。

「飛んでけ!!」

片手だけの力で。
「金鴉」は死体を思い切り空に向かってぶん投げる。手足があらぬ方向に曲がったままそれは宙を泳ぎ、やがて生前の相方の上に雑
に落ちてゆく。ぐしゃ、ともぼきり、ともつかぬ嫌な音が聞こえて「煙鏡」は大げさに顔を顰めてみせた。

「めいちゅう!っと。のん、めっちゃコントロール良くない?」
「アホ。仏さんは大事にせんと、呪われるで」
「うわぁ、ババくさっ」
「誰が線香の臭いや、めっちゃフローラルやっちゅうねん」

そんな愚にもつかないことを言い合いながら、資材置き場から離れる二人。
入れ替わるようにして現れたのは、全身黒ずくめの怪しい集団だった。
無残にも惨殺された擬態能力者たちを取り囲み、そして何事もなかったように散開する。
後には、血痕すら残っていなかった。

971名無しリゾナント:2014/07/01(火) 02:02:22
>>965-970
「リゾナンター爻(シャオ)」更新終了

972名無しリゾナント:2014/07/07(月) 22:53:37
今日は七夕。
あちこちに、笹の七夕飾りがあるっちゃ。

色とりどりの短冊に、それぞれ願いが書かれとう。
あんまりいけん事かもしれんけど、どんな願いが書いてあるかちょっと見せてもらったと。

『おこづかいがふえますように』
うん、えりも書いた覚えある。

『かんけん1きゅうにうかりますように』
そこはせめて漢字を使ってほしいw

『お母さんが悪いお兄さんと別れますように』
何があったんやろ…。

『円満退職できますように(次はブラックじゃありませんように)』
が、頑張って下さい…。

色んな願い事があるなぁって思ったっちゃけど、やっぱり子供と大人の願い事って違うなって感じたと。

17才って、子供でいられる最後の年なんかも。
18才になったら車の免許も取れるし、色んな事ができるようになるけど、その分責任も重くなる。

でも、今分かることってそれくらいかも。
大人になるってことは、大人になってからじゃないと分からないと思うと。

973名無しリゾナント:2014/07/07(月) 22:55:36
そういえば、テレビで林先生が言っとった。
七夕の神様って、習い事や技術とか、あと豊作のお願いに関することしか本当は受け付けてくれんらしいと。

んーw
そうやったんや…。
おこづかいのお願いされても神様は困っとったやろねw

みんな、勉強やお仕事とかの、身になる事なら叶えてくれる。

技術…。
お仕事…。

自分の精神破壊(マインドデストロイ;mind destroy)という能力。
今は、その能力をもっと磨こうとしてる。

戦ってる時はそれで良いのかもしれんけど、将来平和になった時に、その能力ってどうなると?
道重さんの治癒とか、そのまま平和に生かせる能力を持つみんながちょっと羨ましいっちゃ。

974名無しリゾナント:2014/07/07(月) 22:57:11
…新垣さんから前に聞いた話を思い出した。
飛行機の中かどっかで、トラブルがあって、その場に居合わせた芸人さんに精神干渉して、その場を落ち着かせた話。
精神干渉って、一見平和に生かすのが分からんけど、そういうこともできる。

えりの能力はもっと生かし方が分からんかもしれん。
やけど、何か道はあるはずよね。

…あっ!
もしかしたら、こういうことに気付けるのが、ひとつ大人になったってことかも。

きっと七夕って、願い事を考えることで自分のなりたい未来に向かって踏み出す日なんだ。

こちらの世界から、川の向こう岸のあちらの世界へ。
織姫の彦星は、川の向こうで待っている。
彦星の織姫は、川の向こうで待っている。

その川が、運命を分ける 天の川。

えっ?
えりの願い事は何かって?
そんなん、内緒に決まっとーやろ!w

975名無しリゾナント:2014/07/07(月) 23:00:58
>>972-974
「STARLESS NIGHT」
えりぽんおめでとう

976名無しリゾナント:2014/07/08(火) 00:29:24
遅くなりましたが行って参ります

977名無しリゾナント:2014/07/08(火) 00:32:19
行って参りました
気付くのが遅くなってしまい申し訳ありませんm(__)m

978975:2014/07/08(火) 00:52:26
いえいえ
代理ありがとうございました

979名無しリゾナント:2014/07/12(土) 10:11:06


学校帰りにカレー屋に寄っていく、として先に帰った里保たちとは別行動を取っていた鈴木香音・生田衣梨奈・佐藤優樹・小田
さくらの四人。主に香音が十分に腹を満たした後にリゾナントに帰還すると、実に珍しい光景が。

「なに書いてんのあゆみー」

真っ先に目をつけた優樹が、テーブルに座り書き物をしている亜佑美の後ろからしがみ付く。
ぶつかった勢いであらぬ方向にペンが走ってしまい、優樹を睨みつけながら書きかけのそれを丸めて投げ捨てた。

「あれっちゃろ?石田あゆ先生力作の、メルヘンポエム♪」
「違いますよー。『Dorothy』の先生たちに手紙を書いてるんです」

かつて亜佑美が自信満々に発表したとんでもポエムのことをからかう衣梨奈に対し、手を大きく振って否定する亜佑美。

「確かそれって亜佑美ちゃんが所属してた」
「ええ。東北にある、能力者の研究施設です」

亜佑美は中学を迎えた頃に発症した「謎の奇病」の治療のために、両親の伝手で紹介された「Dorothy」という施設に入ることに
なった。施設での調査の結果、亜佑美を襲う症状は奇病ではなく、所謂異能力の暴走だったことが判明する。そこで能力の安定
と適正な使用方法を学ぶ中で、喫茶リゾナントを訪ねるきっかけとなったある事件が発生するのだが。
結果亜佑美は、リゾナントでの生活を選択した。

980名無しリゾナント:2014/07/12(土) 10:12:48
「自分の選択で施設を離れはしましたけど、経過の報告だけは必ずするって約束でしたから」

報告の方法が手紙なのは施設が隠れ里の様相を呈しているため、電気設備が一切ないからであった。そんな環境でどんな研究を
するのか、というメンバーかつてのの問いにアナログで色々やるんですよとシンプルな亜佑美の回答。要するに、詳しいことは
研究対象だった彼女自身にも理解できていないようだった。

「それはそうと。実はみんながカレー屋さんに行ってる間にね―」
「ただいまー」

聖が先の襲撃者についての話をしようとした時。
タイミングよくさゆみが帰ってくる。まずはさゆみにそのことを報告し、改めてミーティングという形で事件をまとめることに
なった。

「そうなの、そんなことが…」

先ほどまで喫茶店で起こっていた出来事の報告を受けたさゆみは、真っ先にかつての事件を思い出す。あの時は確か、擬態能力
者はれいなに擬態していたはず。通常の擬態能力者なら、背格好の似た人間をターゲットに選ぶはずだが、聞いた話だと擬態
した少女は聖に比べるとかなり小柄だったようだった。

ダークネスが、とある一人の擬態能力者をオリジナルとして大量のクローンを製造していることはさゆみも知っていた。何故な
ら彼らの非合法活動に擬態能力は欠かせないツールだからだ。しかし共通しているのは、あまり自分とかけ離れている人間に擬
態することはできないということ。それがクローンたちの抱える欠点だったはず。

「もしかしたら、擬態能力者たちの能力が上がっているのかもしれない。原因はわからないけど」
「じゃあ、またこういった手を使ってくるってことですか?」

春菜の問いに、さゆみがゆっくりと首を横に振る。

981名無しリゾナント:2014/07/12(土) 10:13:53
「相手も馬鹿じゃない。短期間のうちに同じ手を二度も使うとは思えない。でも、もしもう一度仕掛けてくるなら…もっと巧妙
で複雑なやり方で来ると思う」
「今回ははるなんの機転で何とかなりました。でも、次は」
「大丈夫。さゆみがとっておきの秘策を伝授してあげる」

不安がる聖、さゆみは肩に手を置きながらそんなことを言う。
とっておきの秘策とは、一体。
不意に、さゆみが里保に耳打ちしてきた。

「あのね…」
「ああっ、ちょ、みっしげさん耳に息吹きかけないでくださいっ」
「…というわけなの。わかった?」
「はぁ。吐息で若干聞きづらいところはありましたが、だいたい判りました。じゃあ次はフクちゃん、こっちきて」

変態から変態へ。もとい、先輩から後輩へ。
何故か耳打ちリレーが始まる。
優樹を途中に挟んだのは明らかに失敗だったと誰もが思いつつ、何とか全員にさゆみの意図を伝える事ができたようだ。

「この方法なら相手は絶対に尻尾を出す。みんな、さゆみを信じて」
「言われるまでもなく信じます。だって、道重さんはここまでみんなを引っ張ってくれたじゃないですか」
「石田…」

いつものようにだーいし感を漂わせつつも胸を張る後輩が、前にも増して頼もしく見える。
亜佑美だけではなく。後輩ひとりひとりが、激戦を乗り越えて成長してきた。そんな今なら自信を持って言える。自分達が今の、
リゾナンターだと。

982名無しリゾナント:2014/07/12(土) 10:15:18
絶望的とすら思えた、ダークネスとの戦力差。
それが今は、僅かながらでも希望の光が射している。敵勢力が体制を崩しているというのもあるが、新しいリゾナンターの著し
い成長がその希望を支えているのも一因。そのことは彼女たちを見守るさゆみが一番良く知っていた。

そんな時だった。
さゆみの携帯が鳴ったのは。

「もしもし、さゆみです。あっ、ガキさん?久しぶり…って。え、それどころじゃない?うん、ううん、え…そう。わかった。
場所は? うん、すぐそっちに行く」

只ならぬ様子に、後輩たちがさゆみの顔を覗き込む。
特にさゆみを慕う優樹は気が気でない。

「みにしげさん何かあったんですか?」
「うん。ガキさんから。何者かにガキさんの同僚が襲われて、ひどい怪我してるんだって。ちょうど部署内の治癒能力者が全
員出払ってるみたいで、急がないと」
「新垣さん!?あの、衣梨奈も行きます!がんばって生田!!」
「あ、生田別に来る必要ないから」

明らかに里沙目当ての衣梨奈を牽制し、店を出ようとするさゆみ。
それを見て慌てて香音が声をかけた。

「道重さん、移動だったら優樹ちゃんが」
「ダメ。この子、この前さゆみのこと間違えて池の上に瞬間移動させたから」

983名無しリゾナント:2014/07/12(土) 10:16:06
以前、急用で現場にできるだけ早く駆けつけなければならなかった時に。
優樹にテレポートを頼んだのが間違いのもとだった。みにしげさん任せてください、の言葉と裏腹に。
転送されたのはとある池の水面の上だった。
水深が浅かったからよかったものの、タクシーで運転手に嫌な顔はされるわ恥ずかしいやら。

優樹らしいエピソードと言えばそれまでだが。
そんなことは初耳とばかりに怖いお姉さま方が優樹を取り囲んでいる間に、さゆみは走ってリゾナントを出て行ってしまった。

遠ざかる背中を見て、里保は思う。
以前のさゆみなら同じシチュエーションでも、どちらかと言えば後ろ髪を引かれる思いで喫茶店を出ていたはずだ。けれど、
今は何の気兼ねもなく、店のことを任せてくれているように見える。

少しは道重さんも、うちらのことを認めてくれてるのかな。

れいなが抜けてから、ずっと考えていた。
自分たちは。いや、自分は。さゆみが安心して背中を預けられるような存在になれるのだろうかと。
さゆみ以外は決してベテランとは言い難い未熟者の集まり。それでもいくつもの修羅場を潜り抜けることでそれなりに成長して
きたつもりだ。そして最近は、自分たちの成長がさゆみの信頼にそのまま繋がっているような気がする。

里保だけではない。
この場にいる全員が願い、そして感じていた。
一人一人がさゆみを守ることができる、そんな存在になりたいと。

984名無しリゾナント:2014/07/12(土) 10:17:11
>>979-983
「リゾナンター爻(シャオ)」更新終了

985名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:36:20
■ ジュッキジェネレイション −飯窪春奈・石田亜佑美・佐藤優樹・工藤遙− ■

だいっきらい

「どぅーなんてもうしらないっ!いっしょーおしゃべりしないっ!」
「あっそーですかーいいですよーっだ、むしろ、せいせいするわ」
「だいっきらい!だいっきらい!だいっきらい!だいっきらーいっ!」
「あ、あのまーちゃん、す、すこしだけ静かに…」
「めしはだまってろ!」
「まーちゃん!年上に向かってそういうのダメでしょ!謝んなさい!」
「なんでっ!どうしてあゆみはまーにばっかりいじわるするの?まーにばっかりおこるの?くどぅーがわるいのにっ!」
「もういい加減にしてっ!」
「ばかばかばか!あゆみのばか!あゆみもきらい!みんなきらい!きらい!きらい!だいっきらいー!」


だいっきらい


最後の言葉が耳の中でリフレインする。

いつのまにかテーブルを拭く手が止まっていた。

石田亜由美は、小さく、だが、とても深い、ため息をついた。

喫茶リゾナント、目の前には飯窪春奈、そして工藤遥。

皆、浮かない顔だ。

986名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:37:15
きっと、みんなも同じことを考えている。

高く、透き通った、赤子のような、幼い声。

あゆみんあゆみん、こっちにだよー

時々うるさい時もあるけれど、不思議とあの声を聴くと心が安らいだ。

もう、何日も、あの声を聴いていない。

あの日からずっと、佐藤優樹は―――

放課後、駅で待ち合わせ。
4人で買い物に行くはずだった。

「えっとね、まーちゃんね、急いだんだけど、わかってたんだけど、五色の天使さんがひゅーんって、それでねっ」

言い訳。

また始まった、いつもの通りの見え透いた嘘。
そして始まる、お定まりの喧嘩。
いつもと同じだ、そう、よくある事だ。

だが、違った。
その日は、違ったのだ。

佐藤が倒れたのは、その直後だった。

頭の悪い石田には、医者の説明はよくわからなかった。
さけいぶりん?とにかく風邪とかではなく、物凄い熱が出てとても動けるような状態ではなくなるらしい。

987名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:37:49
もう、ほんとに…
ほんとに、もうっ…

嘘をついたのは、自分のせいで、みんなが買い物に行けなくなるとおもったから?

病気だったなんて、あんなに熱が出てたなんて。

くちびるをきゅっと噛む。

大人げない。なんてバカなんだ。
なんで気づいてあげなかった?ウチは、なんで。

「『3人には、会いたくない』って…」
面会謝絶。
だが、新垣や道重は面会している。
それは佐藤の意志。

どんなに喧嘩をしても5分もすればけろっと忘れるような佐藤から、
これほどの強い拒絶を受けたのは、3人とも初めてのことだった。

もう一度、ため息。
工藤は、なにともなく、ごにょごにょとつぶやきながら、箒と塵取りを奥の部屋へ。
飯窪は空いたテーブル、携帯を。

『いま休憩中。今日は晴れてるね。』
飯窪は、入院の翌日から毎日、何度となく佐藤に向けてメールを送っているらしい。

返信はない。

だが、それでも送り続けている。

988名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:39:11
工藤が飯窪の隣へ。
はす向かい、石田も腰を下ろす。
ぼーっと追う、小刻みに動く、小麦色の指。

ウチも何かしたい。
メールを送ってみる?
ううん、だめだ。
なんて書いたらいいかわからない。
でもこのままじゃ、いやだ。
何か、何か。

ブーン。
3人の携帯に着信の振動音。

「ああ?なんだこりゃ」
「えっ何、どうしたの?」
「いいからあゆみも見てみろよ」

件名は無し、本文は、たった一行。


『めしくぼに会いたいくどぅーに会いたいあ10気組』


え?ウチは?

そこに石田の名前は無かった。

飯窪と工藤二人の名前だけ。

989名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:39:49
あとは『あ10気組』という、意味不明な文字の羅列。

「えと、こっ、この『あ10気組』ってのがあゆみんのこと?かな?」
顔色の変わった石田の様子を即座に察し、飯窪がフォローを入れてくる。
それがわかるだけに、余計にみじめになる。
「ふんっどうだか」

どうしてよ。
まだウチにだけ怒ってる?
そ、そりゃちょっと強く言い過ぎたかもしれない、でもケンカしてたのはくどぅーとだったのに、どうしてウチだけ?
どうして?なんで?

続けて着信。

『10気に会いたい10気に会いたい10気に会いたい10気に会いたい10気に会いたい』

そして改行。

『10期に会いたい』

「なんじゃこりゃ?全っ然意味わからん」
不機嫌そうに工藤が携帯を放り出す。

「『あ』が取れちゃったね。最後『10期』になってるし」

大人げない。
また同じこと繰り返すの?
いまは、まーちゃんがメールを返してくれたことを素直に喜ぶべき。
ウチの名前がなかったのだって、大した理由はないかもしれない。
ただ単に打ちもらしてただけ、そう、きっとそう。

990名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:40:19
「『10期』ってなんだろうね?」
「一学期二学期みたいな?」
「10期…ジュッキねぇ」

再び着信。

『10期に会いたい10期に会いたい10期に会いたい10期に会いたい10期に会いたい』

「ちっ!なんだよこれぇ」
「んー会いたいって言ってる以上、私たちのこと?だよねきっと」
「もうめんどくせー『何言ってるかわからん』って返信しちゃおうぜ」
「まっ待って折角…」

ここでまたへそを曲げられてしまっては―――

ああでもないこうでもない。
『10期』
その意味不明な「暗号」の解読に四人の友情がかかっている…
…わけでもないだろうに、いつの間にやら、そんな風な流れになりつつある。

「10期…ジュッキ…10が付くもの?」
「最初『気』だったのが『期』になってるってことは漢字そのものに意味はないのかも」
「もしくはそれ以外の「き」と読む漢字の打ち間違いとか?」
「数字のほうだって意味があるのかどうか」
「んージュッキ…」
「もしかして英語かなぁ?まーちゃんそういうのよくやってるし」
「でも『ジュッキ』なんて発音の英語ある?」
「んー…わかん、ない…」
三人、頭を抱える、まるでわからない。

991名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:41:36
「ねぇ、はるなんが送ってたメールにさ、なんかそれっぽい事無いの?」
「うーん、そういってもぉ、ほんとごく普通の事しかないと思うけど」
「とにかく見てみようぜ」

三人、つぶれた団子のようにほほを寄せ、小さなディスプレイの文字を追う。

『いま休み時間。次は数学なんだ。』
『駅前に新しい雑貨屋さんOPEN。退院したらみんなで行こう?』
『今日は雨かぁ、でも張り切って行ってくるよ!』

どうということのない、たわいもない日常の報告。
どれも同じ、なんということもない、メールが並ぶ。

「んー…てゆうか、普通、だね」
「だな、はずれかぁ」
「ん?これって…」

たわいもない日常、それは何の変哲もない一文。
そう、なんでもない、何の関係もない、ただの―――
だが、その一文を見たとき、
石田は、すべてを思い出した。

『お早う。これから学校行ってくるね。今日はいい天気だね。』

ガタン!
矢庭に立ち上がる。
携帯をひっつかみ、短く一文、そのまま送信。

「気」でよかったんだよ、まーちゃん!

992名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:44:51
>>991まちがいがあるため訂正、破棄
>>993より再開

993名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:45:31
「ねぇ、はるなんが送ってたメールにさ、なんかそれっぽい事無いの?」
「うーん、そういってもぉ、ほんとごく普通の事しかないと思うけど」
「とにかく見てみようぜ」

三人、つぶれた団子のようにほほを寄せ、小さなディスプレイの文字を追う。

『いま休み時間。次は数学なんだ。』
『駅前に新しい雑貨屋さんOPEN。退院したらみんなで行こう?』
『今日は雨かぁ、でも張り切って行ってくるよ!』

どうということのない、たわいもない日常の報告。
どれも同じ、なんということもない、メールが並ぶ。

「んー…てゆうか、普通、だね」
「だな、はずれかぁ」

たわいもない日常、何の変哲もない一文。
そう、なんでもない、何の関係もない、ただの―――

「ん?これって…」

だが、その一文を見たとき、
石田は、すべてを思い出した。

『お早う。これから学校行ってくるね。今日はいい天気だね。』

ガタン!
矢庭に立ち上がる。
携帯をひっつかみ、短く一文、そのまま送信。

「気」でよかったんだよ、まーちゃん!

994名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:46:23
そうだ!そうだった!そうゆう子だ、そうゆう子なんだよ
思い出した、思い出した!もうっまーちゃんっ
あんなの、おぼえてるわけないじゃない

携帯を放り出し、おもむろに掴む、二人の、腕を。
「え?え?なに?」
「行こう!」
「行くってどこに行くんっ」
「病院!まーちゃんのところ!」
「ちょっ!ちょ」

「あ」がウチだ、あゆみの「あ」だ
そこまで打って、「屋上の事」思い出して…それでこんな

今なら、【跳べ】る!
そうだ、あの日、青天のもと、あの時は出来なかった!ウチは!
でも今は!今なら!

感覚を!空へ!

パァン

995名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:47:13
病室、壁、花瓶、
呼吸補助器、イルリスタンド、点滴、チューブ、
つながったその手の先、
振動する携帯、
その、振動の、まだ止まぬ、その前に!


「まぁああああああああちゃぁあああああああああん!」


喫茶リゾナント、無人のテーブル、
床に落ちた携帯、メモリーのどこかには、こんな一文があるはずだ。


『今すぐ行くよ!天気組で!』




――――――




屋上、青天、青い空、
太陽、陽射し、白くはためく、洗濯物。

996名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:48:56
「はー…まったく、いい天気だなぁ」
「まったくー?まったくってなにー?」
「え?まったくってなにって、えとまったくっていうのはえと」
「なにーねーまったくってなにー?まったくって」
「やっだからそのぉ、たくさんってゆうか、なんだっ…けかなぁ」
「ぎゃはは!あゆみんまったくのいみしらないでまったくっていってたのー?」
「んぐっそっそうだ!知ってる?まーちゃんとウチ…四人が初めて会った日も、今日みたいにいい天気だったんだよっ!」
「ねーまったくはぁ?」
「ぬっ、まだそこひっぱります?えーっとぉ…」
「ひゃーーーーー!」
「ぬぉ!急に何?」
「じゃあさ!まーたち四人で天気組だ!いい天気に会ったから!」
「はぁ?なに?ちょっとよくわからないんですけど」
「んーもうっ!あゆみんはほんとに頭が悪いんだからっ!よく考えてっ!」
「なっ、まーちゃんにそんなこといわれたくないよ、だいたいさ」
「ひゃーーーーー!」
「今度は何?」
「どうしよう!じゃぁ鞘師さんたちはきゅーき組だ!大変!」
「えー?キューキ?…数字の9ってこと?
ああ、ウチらが英語でテンだから?てか「気」が余っちゃてるけど、ん?だったらさぁキューキじゃなくてナインキとかになるんじゃないの?」
「そうゆうことじゃないよ」
「どうゆうことよ」
「どうしよう早く鞘師さんたちに教えてあげないと!」
「ちょちょっ!どこ行くの?だーめっ」
「えなんで?まー、いそいでるのにっ」
「いけません、洗濯物干すの全部終わってからです」
「えー!」
「えーじゃない、はいこれ持つ!はいはい手を動かす!」
「いじわるー!あゆみんのいじわるー!もーっあゆみんなんか、あゆみんなんか、」

だいっきらい

997名無しリゾナント:2014/07/26(土) 01:53:28

>>985-990
>>993-996
■ ジュッキジェネレイション −飯窪春奈・石田亜佑美・佐藤優樹・工藤遙− ■
でした。


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