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相互リンクしていただけないでしょうか?

1AYAOTO:2003/03/16(日) 15:36
ドーモ☆初めまして☆
オイラも娘。小説を書いているものです。
姫子さんの小説はスゴク良いッスね〜。
オイラは、自分の小説を載せた同人サイトを作ってるンスよ。
そこでお願いがあるんですが、ゼヒ、相互リンクをしていただけないでしょうか?
お返事待ってます。

2姫子:2003/03/17(月) 22:18
相互リンクはしねぇって書いてあんだろーよく見ろよー( ゚Д゚)ゴルァ!

と思ってたら。
相互リンクはしませんって書いてあったページを消しちゃってたことに気づいた。
ごめんよAYAOTOさんごめんよ。
でも相互リンクはしないんだよぅ。
なぜなら閉鎖や移転するときにいちいち連絡すんのがメンドイからなんだよぉ。
リンクについては貼るも剥がすもお互いの自由ってことで、ひとつ。
ちうか、せめてそっちのサイトのアドを晒してくれよぉ。

3べる:2003/03/18(火) 16:51
(T▽T )\(^〜^0)ヨチヨチ

4PUNK:2003/03/18(火) 17:23
ここは何のスレになるのですか?

5姫子:2003/03/18(火) 19:34
信号タンが頂くってサ。

6姫子:2003/03/19(水) 08:03
http://www.bb.wakwak.com/~m-tatumi/kaorifuku.html

7姫子:2003/03/19(水) 08:03
↑ごめん誤爆。

8PUNK:2003/03/20(木) 22:42
http://www.gobaku.org/

9AYAOTO:2003/03/24(月) 17:29
姫子さん>
そうなんですか。
すいません><
あっ!しかも、オイラのサイトのアド載せてなかったですね。
すいません><
アドは→ http://www.hamq.jp/i.cfm?i=ryugya です。
相互リンクの件は諦めます。
レスありがとうございました★

10信号:2003/05/07(水) 22:39
このスレは、紺野小説を書くため信号がのっとりますた!!
川o・-・)ノ<のっとります!!
基本はsage投稿ですが、うっかり上げてもOKです。
なお、この小説はフィクションは当然のこと、妄想ですのでこんなの紺野じゃない!!
と言われると困ります。
完結目指してがんばります。


今日は紺野聖誕祭。こんおめ!

11信号:2003/05/07(水) 22:41

『がんばれ紺野さん。』

12信号:2003/05/07(水) 22:42

春。
それは、出会いと別れの季節。
そんな季節の東京に、紺野あさみはいた。
地元の大学を無事卒業し、あこがれの街東京で就職の決まっていたあさみは、
これから始まる、輝かしいであろう未来に、胸をはずませていた。

これから始まる不幸?を知らずに…。

13信号:2003/05/07(水) 22:43

白いワンピースに、桃色のカーディガンを羽織っただけの地味な服装のあさみは、
大きな旅行カバンを片手に持ち、東京で住むこととなったアパートの前に立っていた。

「東京美人壮はここですね。完璧です」
あさみはそう言って、あいたほうの手でこぶしを握って、顔の横に持ってきた。
完璧です、と言ってこぶしをにぎるのは、あさみの小さい頃からのクセである。
あさみは、生まれたときから、笑ったり冗談を言ったりするのが、苦手だった。
そのせいもあって彼氏はおろか、友達すら出来なかった。
その上あさみは何をやってもなぜだかうまくできない。
宿題をすれば家に忘れ、夏休みの図工の宿題は登校途中に壊れてしまう。
高校受験と大学受験では、電車を乗り間違え、第一志望の学校に大遅刻をしてしまい、テストを受けられなかった。
そんなあさみは、いつしか確認のために「完璧です」というのが口癖になってしまったのだ。
しかし、そんなあさみにも神様が微笑んだ時間はあった。
大学最後の年は順風満帆だった。
初詣では初めて大吉を引き、ほとんど1度で通過したことのなかった駅の改札は、
1度も止められることはなく進み、周りの女の子が就職難であえいでいる時に、あさみは第一志望の会社の内定をすでにもらっていた。
そう、すべてが順調に進んでいたのだ。

このアパートに引っ越してきた今日までは……。

14信号:2003/05/07(水) 23:01

都心から少し離れたベッドタウンの小高い丘の上に、これからあさみが住む予定のアパートはあった。
木造の古い小さな小学校、そんな言葉がぴったりのアパートだ。
なぜか周りにはアパートはおろか家が一軒すらない。
緑の芝生がアパートの周りに青々と茂っている。

あさみは、東京美人壮と書かれた、大きな看板のかかった両開きのドアを遠慮がちに開け、中に顔を覗かせた。

「こんにちは〜」
あさみは扉から顔だけを入れ、小さな声をはって叫んでみた。
しかし、中からはなんの返事もない。
中は、すぐに小さな玄関になっていて、いろんな種類の靴がらんざつに並んでいた。
奥を見ると、部屋の番号と思われる数字のついたドアがいくつかと、
何とか並んで歩けるくらいの通路を挟んで、管理人室と書かれたドアがあった。
あさみは、旅行バックを持ったまま玄関へと足を進めた。

15信号:2003/05/07(水) 23:02

「あの〜すみませ〜ん!」
かすかにテレビの音が聞こえてくる、管理人室に向かって、あさみは、声を張り上げた。
すると、いきおいよくドアが開き、中から金色の髪をした女性が、あくびをしながら出てきた。

「ん?あんただれ?」
ドアからあくびをしながら出て来た女性は、あさみを見つけると、そう言って紺野の目の前に歩いてきた。
派手な豹柄のタイトなワンピースとそれに不釣合いな黒いジャージ。
ワンピースの襟ぐりは広くはないものの、サイズがあってないのか、大きな胸がとても強調されている。

「あ、あの、紺野あさみといいますが、管理人さんは御在宅でしょうか?」
あさみはその女性に丁寧な言葉使いで聞いた。
あさみが上京するにあたって決めた、このアパートを管理していたのは白髪の老婆だった。
けれども、今日管理人室から出てきたのは、金色の髪の30歳前後の女性、前に来た時とは明らかな別人だったのだ。

16信号:2003/05/07(水) 23:02

「おー、あんたが紺野かー、ばあちゃんから聞いてんで〜。
ばあちゃん、こないだ倒れてなぁ、今はうちが管理人やってんねん」
「あ、そうだったんですか。
今日からお世話になる紺野あさみです。よろしくお願いします」
そう言ってあさみは深くおじぎをした。

「うちは管理人してる中澤裕子や。よろしく」
あさみは、その声に顔を上げると、目の前に中澤の白い手と、体とは不釣合いな大きな胸があった。

「は、はいよろしくおねがいします」
そう言いながらも、あさみは目の前にある中澤の大きな胸と、自分の小ぶりな胸を見比べながら差し出された手をにぎった。


「完敗です」

17信号:2003/05/07(水) 23:03
今日はここまで。
続きはまた今度になると思います。

18姫子:2003/05/08(木) 02:47
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

何か、もうこの後紺野がどんな災難に巻き込まれるのかと思うと。ワクワク。
豹柄にジャージの姐さんも萌え。

19信号:2003/05/27(火) 00:47

「あんたの部屋な、2階の8号室やから」
木造の階段を上りながら、中澤はあさみにこのアパートの説明をしていた。

「トイレは2階と1階に一箇所ずつ。
お風呂は夕方の6時から10時まで、シャワーは24時間いつでも使えるから」
なれたようすで階段を上りきったところで説明を終わらせると、中澤はあさみのほうを振り返った。

「しっかし今どき共同浴場、共同トイレ、共同玄関のアパートなんか、よう借りる気になったなぁ」
あさみの方に振り返った中澤は、そう言って口の端を少しつり上げ笑う。

そう、このアパートはトイレバスルームが共同のアパートなのだ。
もちろん住んでいる人は女性ばかりだが、共同トイレ共同バスルームでは、なかなか入居する人も少ないのであった。
けれども、あさみはこの古いアパートをとても気にいっていた。
この古い木造の建物は、昔読んだマンガに出てきたアパートにそっくりで、あさみはそこがとても気にいっていた。

20信号:2003/05/27(火) 00:49

あさみが階段を上り終えると、そこには長い廊下があり、廊下の片側に部屋のドアがいくつか並んでいた。
廊下を挟んだ反対側には、窓がいくつも並び、暖かなポカポカ陽気を廊下に落としていた。

「昨日届いた荷物は一応部屋に運ばせといたから」
「は、はいありがとうございます」
ポカポカ陽気の廊下を歩いていた中澤は、9号室と書かれたドアの前で足を止めた。

「ここがあんたの部屋や」
中澤は鍵を開けドアを開けた。
中はすぐに小さなキッチン、そして4畳ほどのダイニング…とは言えない板の間と、6畳ほどの和室になっていた。
けれどもその部屋は、すでに誰かが生活しているかのように、きれいに家具が並べられている。
よくよく見ると、それはあさみが新しい生活のために買った、ファンシーケースや長年使い込んだ小ダンスだった。

「あ、あの、これは」
あさみが驚いて中澤のほうを振り返ると、中澤は大きく背伸びをしていた。

21信号:2003/05/27(火) 00:54

「これか?これは、荷物届いた日に、ここの住人みんなですぐに生活できるようにしといたんよ。
女の子1人に力仕事はきついやろ?
ま、気にいれへんかったら、自分でなおせばええし」
「私のために……気にいらないわけありません、完璧です」
そう言ったあさみの目には涙がたまっていた。
都会の人間は、みんな冷たいから信用してはいけないと、強く母親に言われていたあさみは、
アパートの住人みんなが引越しの手伝いをしてくれたと聞いて、感動しているのだった。

「ん?どうしたん?感動して泣いてんの?
「みなさんが、私のためにこんなことしてくれたと思うと」
「気にせんでもええで、困った時はお互い様やろ?」
「はい、ありがとうございます。
私このアパート大好きです」
あさみは、ドアの柱にもたれかかり大きな胸の前で腕を組んでいる中澤に深くおじぎをした。

「あ、そうそう、これな、うちからの引っ越し祝い」
中澤は、部屋に入ってすぐの壁に張ってある、あさ美の覚えのない、大きなポスターを指差した。
それは、芸能情報やアイドルにうといあさ美でも知っているほど人気のファッションモデル、飯田圭織のポスターだった。
長く黒い髪の毛と、冷たさと暖かさが同居する表情がとてもうつくしい。
けれども、そのポスターはなぜだか床すれすれの低い位置に飾ってあり、誰がどうみてもあやしいのであった。

22信号:2003/05/27(火) 00:55

「引越しの手伝いもしていただいたのに、引っ越し祝いまでいただけるなんて…。
ホントにありがとうございます」
引っ越し祝いのポスターに素直に喜ぶあさ美。
あまりのうれしさに、あさ美はそのポスターのあやしすぎる位置のことなど、気にもしていなかった。

23信号:2003/05/27(火) 00:57

その時、へんてこりんな歌が、アパート中に響いた。

「ほーちょーいーっぽん〜♪」
「いっぽーん!」
「さらしにまーいーて〜♪」
「まいてー!」
突然廊下から「月の法善寺横町」を歌う2人の女の子の声が聞こえてきた。
歌う声に、その歌にあいづちをうつ声。
中澤は、部屋のドアから廊下をのぞきこんだ。

「おー辻加護、こんな時間から出勤か?」
「そやでー、今日は休みやのに、さっき矢口さんから会社に来いって電話はいってん」
中澤の質問に、威勢のいい関西弁が帰ってきた。
あさ美の部屋の前に現れたのは、あさみよりも低い身長ながら、細く白い縦じまの線が入った黒いスーツに、少し大きめの牛革の黒いハンドバックを持った女の子。
髪型こそ女の子らしく、かわいらしいお団子にあしらっているが、どこをどう見ても、服装は怖い人だ。

「休日出勤なのれす!!矢口さんは人使いが荒いのれす!!」
その後ろから、これまた背の小さな女の子があさ美の目に入ってきた。
黄緑色のハーフパンツに、ウサギの絵がプリントされたピンクのTシャツを着て、髪の毛をポニーテールにした女の子。

2人の名前は、加護亜衣と辻希美。
ヤ○ザのようなほうが加護亜衣で、その後ろにくっついているのが辻希美である。
2人はこのアパートの住人で、2人とも近くにある、小さな金融会社に勤めている。
早い話が借金の取り立て屋である。

24信号:2003/05/27(火) 00:59

2人と気さくに話している中澤とは対照的に、あさ美はこの不思議な訪問者に目をぱちくりさせている。
中澤は、少しの間2人と話していたが、思い出したように部屋の前にいる2人に、あさ美を紹介する。

「そやそや、2人ともええとこに来たんや。
この子が新しく入った紺野さんやから。なかようしたってや」
「へぇー、この子が紺野さん?田舎もん丸出しやな〜。
うちは加護亜衣、よろしくな。んでこっちが…」
「辻希美れす。9号室にあいぼんといっしょに住んでます。
お隣さんれすね、これからよろしくおねがいします」
いいたいことを言う加護と、丁寧にあいさつをする辻。
辻は深々とおじぎをしている。

「あ、はい、北海道からきました紺野あさ美です。
これからよろしくおねがいします」
あさ美もそう言って、辻に負けないほど深く頭を下げた。

25信号:2003/05/27(火) 01:01

「そうや、なんやったら、今おる住人にあいさつしとくか?」
あいさつと自己紹介を交わしている3人の横で、中澤が言った。

「え、そんな悪いですよ。私が後であいさつに行きますから」
「ええよええよ。どうせ今おるんは、吉澤くらいのもんやろ?なぁ加護」
「そやなぁ。矢口さん達は会社やし、後藤さんや安倍さんは仕事やから、よっすぃ〜と梨華ちゃんくらいしかいてへんなぁ」
遠慮して断ろうとするあさ美だが、中澤と加護は気にせず話を進める。
そして加護は、どういうわけかあさ美の部屋の中に向かって大声を上げた。

「よっすぃ〜!!中澤さんが呼んでんでー!!」
すると、隣の部屋から物音とともに聞こえる声。


「どっかーーーーん!!」


威勢のいい女性の声とともに、中澤が引っ越し祝いにとあさ美に送った、おかしな位置にあるポスターから、
金色の髪と白い肌の女性の顔が飛び出してきた。

26信号:2003/05/27(火) 01:06

「なにやってんねん吉澤!!うちがせっかく穴隠してんのに、わざわざそっから出て来ることないやろ!!」
壁にあいた穴の上に貼られたポスターから出てきた女性に、中澤は声を上げて言った。
このポスター、じつは部屋の壁に開いた穴を隠すために、中澤が張っておいたものだった。
ポスターは、穴がばれない為の偽装工作だ。
えへへ、と笑いながら、吉澤ひとみはあさ美の部屋に開いた穴を隠していたポスターから上半身半分だけ出して笑っている。
下から中澤を見ている吉澤は、幼い子犬のような目をしていた。

「ホンマに…この娘は…」
その目を見ると中澤もため息しか出ない。

「よっすぃ〜、この子が引っ越してきたんやて。
あれ、梨華ちゃんは?」
壁の穴から出てこようとしている吉澤に加護が言った。

「梨華ちゃんは美容室に行ってお店に行くんだって、だからもうでかけちゃったよ」
「そうなんかー、No.1も大変やなー」
腕を組んでうなずく加護。
吉澤は壁に開いた穴からのそのそと出てくると、あさ美を見をみる。

「よろしくね、7号室に住んでる吉澤ひとみ。もう1人梨華ちゃんがいるんだけど、今日は仕事に出かけちゃった」
「始めまして紺野あさ美です。よろしくおねがいします。
みなさんルームメイトがいるんですね、辻さん加護さんもそうですよね?」
「そうれすよ、ののとあいぼんは部屋代節約のためにいっしょに住んでいるのれす」
そう言った辻だったが、吉澤は?マークを頭に浮かべた。

「ちがうよ、吉澤は梨華ちゃんとは結婚を前提として同棲してるんだよ」
「え……?」
おどろいて固まるあさ美。
それもそのはず、今まで男と付き合ったことのないあさ美にとって、女性同士の付き合いは少し刺激が強すぎた。
あさ美の頭のなかでは、脳がフル回転し、あさ美のショックをやわらげようと動き出した。

27信号:2003/05/27(火) 01:08

「り、梨華さんは男の方なんですか、すみませんてっきり女性の方かと…」
「梨華ちゃんは女の子だよ。それで、吉澤の彼女」
「え……?」
またしても固まるあさ美。
あさ美のありえない現実逃避も吉澤の一言で、現実に戻される。
後では中澤が口を押さえて笑っていた。
その横では、辻と加護が胸の前で腕をくみうなづいている。

「世の中にはいろんな人がいるのれす」
「せや、世の中いろんな人がおんねん」

あさ美は、ただ口をひきつらせて笑うしかなかった。

28信号:2003/05/27(火) 01:10

「そうだ中澤さん、吉澤また新しいギャグ考えたんですよ」
うなずく辻加護と笑う中澤、そして力なく笑うあさ美の横で、吉澤が中澤に言う。
それを聞いた辻加護と中澤の3人は、「ふぅ」と大きくため息をつく。

「そうなん?ギャグできたん?良かったなー吉澤。また石川に見てもらい」
「だめです、今日は中澤さんに見てもらいたいんです」
自信満々の顔で言う吉澤。
そんなやりとりをあさ美は黙ってみているしかなかった。

「ほんならはよしいや、こう見えても、うちも忙しいねん」
「へへ、じゃあ、いきますよ〜」
吉澤はそう言うと、あさ美たち4人を前にボクシングのファイティングポーズをとった。
そして、大声とともに握っていたこぶしの人差し指で、あさ美達のほうを指差した。

「ガッツ!!」

静かになる部屋と、重くなる空気。
辻加護中澤は、またかと言う顔で見ているが、あさ美はなにが起き
たかも分かってないようすだ。

29信号:2003/05/27(火) 01:14

「どうですか、吉澤が考えたこのボクシングギャグ」
「あー、ん、ええんちゃうか。なぁ加護」
「いや、中澤さんあれパクリやから」
「ダンディーのパクリれす」
てきとーに受け流す中澤と、まじめにつっこむ辻と加護。
あさ美は、いまだになにが起こったかわかっていない。
吉澤は、加護に向かって言う。

「パクリじゃねーよ!吉澤はリスペクトしてるんだ!」
「まだ流行ってるもんリスペクトしてどないすんねん!」
パクリと言った加護に、吉澤は文句を言うが、正しいのはどう考えても加護のほうである。
あさ美はそれを見ておろおろすることしか出来ない。
そんなあさ美に中澤がこっそり耳打ちする。

「あんな、吉澤はお笑い芸人めざしてんねんて。
せやけどおもんないやろ?
バイトもせずオーディションばっかり受けて…、今はいっしょに住んでる石川のひもみたいなもんなんや」
「ひも、ですか…?」
突如出てきた「ひも」なお隣さんに、あさ美はただただ戸惑うばかりだ。


あさ美は、今までの不幸だったが穏やかな生活が、なぜだか急に恋しく感じた。

30信号:2003/05/27(火) 01:16
とりあえずここまで。
まだストックあるのでそのうちに。
これで、庭が心置きなくかける。

姫たんの期待にそえるような作品になればいいなぁ、と思う今日この頃、元気?

31信号:2003/06/09(月) 05:37

「あ!そうだ、紺野ちゃんの就職する会社ってアップルフレンドエージェンシーれすよね?」
吉澤と加護のギャグ話のケンカを見てうんざりといった顔で、あさ美に話しをふる辻。

「あ、はい、そうです」
「せやせや、さっきテレビで、会社の社長が記者会見してたで。
なんか大変なことなってたみたいやで、倒産とか負債とか…。」
「え!………ホ…ホントですか?!」
辻と加護に言われ、あさ美は少しの間、意識を失ったようにぼうぜんとしていたが、
急いで和室にある、14インチの小さなテレビデオをつけた。

32信号:2003/06/09(月) 05:39

『今日正午、アップルフレンドエージェンシー会長の川崎さんが記者会見を行ないました。
負債額は、50億円にのぼるというです。』
テレビでは、アナウンサーのコメントに続いて、白髪混じりの男が、記者達に向かって、その頭を深々と頭を下げている。
その横には、あさ美が面接を受けた時に見た顔があった。

「あさ美ちゃんも大変れすねー、東京に出て来たその日に会社が潰れるなんて。
恐いれすねー、あいぼん」
「そやなー、こわいなー。
けどなー、いくらなんでもアップルフレンドやからって、りんご農園買収してどうするつもりやったんやろなぁ〜。
あ、このおっさん泣いてる、うわ〜、ぜったい嘘泣きやで〜」
テレビの前にぺたりと座り込み、ぼうぜんとテレビを見ているあさ美をよそに、辻加護はテレビの中に向かって毒づいていた。
吉澤にいたっては、「負債50億かっけー、怠慢経営かっけー」などと不謹慎なことを連発している。

「アップルフレンドエージェンシが潰れたんかー、不況やなぁー、うちとこもつぶれん様に気をつけよ」
そんな4人の後ろで、中澤が唯一まともなことを、ぼそりとつぶやいた。

33信号:2003/06/09(月) 05:40

しばらくぼうぜんとテレビを見ていたあさ美だったが、
ふと、中澤や辻加護たちが、自分の就職先を当然のように知っていることに、疑問を持った。

「あの、みなさんはどうして私の就職先を知っているんですか?」
すでにニュースの終わっていたテレビを消し、後にいる3人にあさ美は言った。

「へ?なんで、うちらがあさ美ちゃんの就職先知ってるかって?」
「はい、私まだ就職先の事何も言ってなかったですよね?」
「それは、昨日来た荷物の中に、就職内定書と、会社の案内が入っていたからなのれす」
加護に確認をとるように、辻は加護を見ながら言った。

「わ、私の荷物見たんですか!!」
「見たって言うか、なぁ」
「へい。荷物を整理する時に見ただけれすよ?」
それを聞いて、あさみはこの部屋に、自分の荷物を詰めていたダンボールがないことに気づいた。
引越しのさい洋服や食器は、ダンボールに詰めていたのに、食器はちゃんと戸棚に並べられ、布団は押入れにきれいにしまわれていた。
すると、あさみはテレビの脇にある、小ダンスにすばやく近づき、タンスを守るかのように、タンスに背中をつけ、両手を広げた。
そのタンスの一段一段にシールが張ってあった。
靴下、Tシャツ、タオル、下着。

「こ、こ、ここも、み、み、み、見たんですか!?」
あわてふためくあさ美。
慌てすぎてろれつもうまく回っていない。

34信号:2003/06/09(月) 05:42

「ちがうのれす、かたづけをしたのれす。ね、あいぼん」
「そやでー、ちゃんと、タンスのシールどおりに入れたんやから。
ドラえもんのパンツかて、下着のとこちゃんと入れたんやで〜」
そう言って、うひひと笑う加護と、口を横いっぱいに広げ笑う辻。

「あーあったあった、ドラえもんのパンツ。梨華ちゃんがかわいいって言ってたなぁ。
その時の梨華ちゃん可愛かったなぁ〜」
そう言って心ここにあらずといった感じで、うへへへと笑う吉澤。
あさ美はそれを聞いて、タンスを上から順番に開けていき、タンスの中を一心不乱にあさり始めた。

「あれ、ありません、どうしてないんでしょう、おかしいですね」
少しあせったように小声でつぶやきながら、あさ美は下着の入った段をあさっていた。
そんなあさ美を、中澤吉澤加護辻は首をかしげながら見ていた。

「なんか物なくなったんか?」
「いえ、大丈夫です、確認のために見ているだけですから。
下着の入っていたダンボールに入っていたものは、この中に入っているんですよね?」
「へい、そうれすよ?どうしたのれすかあさ美ちゃん?なにを探しているのれすか?」
「ドラえもんのパンツやったらそこに入ってるやろ?」
「いえ、なんでもありません、どこかにあるはずですから」
中澤辻加護の3人の質問にも、あさ美は見向きもせずに、同じ動作を繰り替えしながら答えた。

35信号:2003/06/09(月) 05:43

「あー!」
突然、加護が大きな声を上げる。

「あれちゃう、ほら、いま中澤さんがつけてる、それ」
タンスの中をかき回しているあさ美をよそに、加護は中澤の大きな胸を指差した。
中澤も、その意味が分かったのか、手をポンっと叩く。

「あ〜これな、そうかそうか、これ探してたんか〜」
そう言って中澤はタンスをかき回しているあさ美のそばに行き、あさ美の肩にそっと手を置き、ニヤリと笑い言う。

「Aカップでもええやないの」
タンスに向かっていたあさ美だったが、それを聞いて一瞬動きが止まった。
そして、あわてて自分の胸を隠すようにして、背中をタンスに張り付けた。

「な、な、なにがですか!私は小さめのBカップです」
必死になってあさ美は言うが、まわりにいる4人は、ニヤニヤと笑いながらあさ美を取り囲んでいた。
そんな中、中澤は自分の着ている豹柄のワンピースの襟から手をいれ、ボリュームのある自分の胸をゴソゴソと探ると、両手に6枚のパッドを取り出した。

「ちゃららら〜ん、豊胸パッド〜〜」
中澤はドラえもん?の真似をして、6枚のパッドを天高く掲げた。
中澤の胸のボリュームはしぼんだ風船のようにスリムになっていた。

36信号:2003/06/09(月) 05:47

「私のBカップ返してください!!」
ぼうぜんと、中澤のスリムになった胸を見ていたあさ美だったが、とつぜん大きな声で叫ぶと、
中澤の手にある6枚の豊胸パッドを強引に奪い取った。
そして、両手と体を使って、パッドを外敵から守るように抱きしめて丸まった。

「せやけどあさみちゃん、3枚いっぺんは多いやろ〜。なぁのの」
「そうれすねー、3枚同時なんてありえないのれす。
もしかしたら、今のおっぱいも偽者なのかもしれないのれす!」」
辻と加護は、タンスの前で小さく丸まってしまった、あさ美をからかうように言った。

「な、なに言ってるんですか3枚同時なんてしたことありません!!
それに今の胸は本物です!
だいたいなんなんですか、あいさつはもう終わったんです。
早く出て行ってください!!」
かすれているような大きな声であさ美が叫ぶと、辻と加護は楽しそうに笑いながら言う。

「キャーあさ美ちゃんが怒ったのれすー」
「切れたでー逃げろー」
そう言って、中澤の背中に隠れる辻と加護。
そんな2人を見て、中澤は大きくため息をつき言う。

「はいはい、あんまりからかわんと、はよ仕事行き。
矢口に怒られんで」
「うわ、そうやった、矢口さんに怒られる!のの、はよ行くで!」
中澤に言われ、加護はあわてて部屋の出口に向かっていった。

37信号:2003/06/09(月) 05:49

「へい。あ、そうれすあさみちゃん、ののとあいぼんは夜なら部屋にいるのれす、
引越しそばならいつでも歓迎なのれす。あと、あいぼんは、そばよりうどんが好きなのれす」
辻はあさ美を見ながらそれだけ言うと、とっとと加護の後を追う。
まるで、今日の夜もって来いといわんばかりだ。
しかし、あさ美も黙っているだけではない。

「いやです!どうしてこんなこと言われてまで引越しそばご馳走しなくちゃいけないんですか!
引越しそばは、私1人で食べます!」
顔を赤くしてあさ美はそう言った。
すると、部屋から出て行こうとしていた2人の動きがぴたりと止まり、ゆっくりとあさ美のいる方へ振り返る。

「ふ〜ん、うちら敵にまわすんやぁ……」
「食べ物の恨みは恐いのれすよ」
無表情にそう言った辻と加護。
ただ、その後の悪魔のような笑みには暗い闇が漂っていた。
そして2人はそのままあさ美の部屋から出て行く。

「あ〜あ、あの2人怒らせると大変だよ〜」
うひひひ、と子供のような笑みを浮かべ吉澤が言った。
それだけ言うと、吉澤はあさ美の部屋の隅に置かれた大きめの鏡の前で、
シャドーボクシングをしながら、つぶやきはじめる。

「アッパ〜ガッツ!ストレート〜ガッツ!」
ガッツといった後、人差し指で鏡をさして、ニヤリと笑う吉澤。
しかし、どこまで行ってもパクリはパクリなのだ。

38信号:2003/06/09(月) 05:51

「そうやな〜、あの2人しつこいからなぁ〜」
中澤はうんざりといった様子だ。
そして、ドアがばたんと閉まると、部屋の前で辻と加護の話し声が聞こえる。

「あんなーのの、うちなー、替え歌思いついてん」
「ほんとーれすか?じゃあ歌いながら行くのれす」
まるで2人の会話は、あさ美に聞いてくれといわんばかりの大きな声で話されている。
そして、2人が廊下で歌っていたあの歌の替え歌が聞こえてきた。

「ほ〜きょう〜パーッド〜♪」
「紺ちゃ〜ん!」
「さらしでま〜い〜て〜♪」
「さんまーい!」
2人が歌う「月の法善寺横町」の替え歌に、あさ美の顔がさっきにも増して赤くなる。

「な、なんなんですかあの歌は!」
赤い顔であさ美は横で笑っている中澤に言った。
中澤は、手で口を隠して、くくく、と笑いをこらえている。
そして、あさ美の肩に手を置き言う。

「あんたの負けや。今日の夜にでも、そばとうどん、2人前づつ持ってったり。
あの2人敵にまわしたらあかん、あの子ら、しつこいでー」
中澤のしみじみと言うその言葉には、どこか説得力がある。
部屋の隅にあった鏡の前で、シャドーボクシングギャグをしていた吉澤も、うんうんとうなづく。

39信号:2003/06/09(月) 05:52

「しつこいからなー、あの2人。
中澤さんの歌もありましたよね、たしか…そうだ!三十路の歌」
独り言のように言っていた吉澤だったが、とちゅうから中澤に向かって大きな声で言った。

「だーれーがー三十路やー!!」
中澤は大きな声で怒鳴り、部屋の隅にいた吉澤を捕まえようと近づいていく。
三十路という言葉は中澤にとっては禁句なのだ。

「うわぁー、でたーおにばばー!!」
「誰が鬼婆やー!まてゴラァ!!」
吉澤を捕まえようとした中澤だったが、吉澤はせまってくる中澤の手を、四つん這いになり、するりとすり抜けると、
子犬のようにチョコマカと動き、吉澤があさ美の部屋へ入ってきた壁の穴の前へと這って行った。

「じゃあね紺野。吉澤のところは、そば2人分よろしくね」
それだけ言って吉澤はポスターをめくると、穴の中へと消えていく。

「チッ、逃がしたか〜」
中澤が舌打ちをしながら言った。
あさ美は部屋で暴れる2人を、目を点にして見ているしかなかった。

40信号:2003/06/09(月) 05:53

「さてと、うちも部屋戻って『真珠婦人(再)』でも見よかな〜」
いつの間にか、自分以外にあさ美しかいなくなったっことに気づいた中澤は、
ばつが悪そうにそう言って、部屋の入り口へと向う。

「あ、そうや、あんた会社潰れたんやろ?今月の家賃はもろてるけど、来月払えそうなん?何なら待ったるで」
中澤はそう言いながら、あさ美の部屋のドアを開けた。
開けたドアから西日が中澤の体を黄金色に染める。
あさみには、中澤のその姿が神様のように思えた。

「都会は冷たい人ばかりだと思ってましたが、中澤さんの様に優しい方もいるんですね…。
それではお言葉に甘えて、来月の部屋代の支払い待ってい」
あさ美がそこまで言いかけた時、中澤がなにかを思い出したかのように、とつぜん声を上げた。

41信号:2003/06/09(月) 05:55

「あ!そうや、来月からローンの支払いが増えるんやった。
いや〜そうやったそうやったわ〜。そゆことで、来月の部屋代よろしく」
中澤はそれだけ言うと、逃げるようにあさ美の部屋から出て行く。

「あ、あの、来月の部屋代の支払い、待っていただけると、うれしいんです…けど……」
しかし、あさ美の声は自分しかいない部屋に、むなしく響くだけ。
中澤はすでに部屋にはいなかった。
けれども、すぐにドアが少し開き、中澤が顔を出した。

「うちな、そばは天ぷらないと、食えへんねん。よろしこ」
それだけ言うと、中澤はドアを閉め、自分の部屋へと帰っていった。
あさ美の部屋には、ドアの閉まる音だけがむなしく響いた。

次の日、あさ美が求人雑誌を両手に抱え、持って帰ってきたことは、言うまでもない。

42信号:2003/06/09(月) 05:58
とりあえずおしまい。
次回から吉総研の馴れ合い小説になりまーす、馴れ合い嫌いな人は見ないでくださーい。
見てる人いるかどうかは知らないけれど。(w


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