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■信じた言葉 (ハム日記番外編)■
1
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:06:24
眠れない日々が続いている。
一週間前、社長に呼ばれた。
来年、日本で行われるヨンファのファーストコンサート終了後、
新人タレントのチーフマネージャーになってほしいという話だった。
俺の仕事ぶりを見ていてやっていけると判断されたらしい。
決定したら改めて通知するので心積もりをしていて欲しいとのことだった。
俺は今、ヒョンの3人いるマネージャーの1人にすぎない。
この話は昇格には違いない。
本来なら喜んで良いはずだ。
.
2
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:07:09
そう思っていても、頭で理解していても感情が拒む。
ヒョンと離れたくない。
ヒョンをもっと見つめていたい。
こんなにヒョンの存在が大きくなっていたなんて…。
今頃気づくなんて。
でも…この感情が成就することはない。
それならいっそ新しい環境に飛び込んでみるのもいいかもしれない。
時間をおいて、距離をおいて
そうすればヒョンのことを忘れられるのだろうか
.
3
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:08:33
「ハムって年齢よりも落ち着いているよね」 ウォンジュさんが言う。
「うん、老成しているというか…大人だよね」 バンドマスターが言う。
「…そうですか?そんなことないんですけど」
休憩室は賑やかだ。
コンサートに向けてソウルからバンドメンバーも来日して
集中してリハーサルを繰り返している。
ヒョンは慣れないダンスの練習に疲れ気味だし、
俺は雑多な仕事をこなすだけで精一杯だった。
.
4
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:10:12
韓国と日本での仕事の違いは大きく
分刻みのスケジュールと綿密な管理体制に
韓国スタッフは少しパニックになっていた。
ただ、そうしたまわりの混乱をヒョンに感じさせては
プレッシャーを与えてしまうことになりかねない。
我々スタッフは水鳥のように
水面下で足をバタつかせても、水面上は穏やかに保たなければならない。
でも、それはマネージャーとしての力の見せ所でもあるし
やりがいでもある。
この仕事をやってきて良かったと思うし満足感もある。
ただ、やはり頑張れば頑張るほど精神的にも肉体的にも疲れる訳で
部屋に戻ると体中の力が抜けてしまう。
.
5
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:12:03
俺の宿泊先は
ヒョンが使うホテルのスイートルームの中の一室をあてがわれている。
他のマネージャーに送られ先に部屋に戻っていたヒョンは
シャワーを浴びてくつろいでいた。
「おつかれさまでした」と、声をかけ
向かいのソファーに座りネクタイを緩めた。
「ハム、なにか悩み事でもあるの?」
「…え?」
「最近、ときどき深刻な顔して考え事してるから…」
「…それは…」
.
6
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:13:49
担当を外れることをヒョンはまだ知らない。
決定してから知らされるんだろう。
「いえ、日本の仕事の進め方に慣れていないだけですよ」
「…そうか?」
「そうですよ」
「今日は疲れたので先に休みます」
そう言って部屋に向かった。部屋に入りベッドに身を投げ出す。
ヒョンは…俺の異動を知ったらどう思うんだろう…。
隣の部屋からヒョンが口ずさむ歌を聴きながら俺は眠りに落ちていった。
.
7
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:15:39
「1st JAPAN TOUR 2005」も半ばになって
皆の中にある程度、コンサート進行に対する自信がつき始めた頃、
俺の学生時代の同級生が訪ねてきた。
彼女は語学留学から引き続き日本の企業に就職している。
スタッフに女性が少ないため男性陣は
俺が知る学生時代よりずっと垢抜けて女らしくなった彼女を取り囲んで盛りあがった。
事実、俺の女友だちが訪ねて来たのは初めてだったから。
.
8
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:17:10
「あ〜珍しい。ハムがニコニコ笑っているよ」
「俺だって嬉しい時くらい笑いますよ…」
「本当に友だちなの?恋人なんじゃないの〜?」
そんな騒ぎを伝え聞いたのか
リハーサルから戻ってきたヒョンが嬉しそうに肩を抱いてきた。
「彼女が来たんだって?」
「ち、違いますよ」
「最近ハムが深刻な顔してたのって彼女のことで悩んでたの?」
と、からかうように言った。
「…彼女作る暇なんてないの一緒にいるヒョンが一番よく知ってるじゃないですか」
ヒョンは可笑しそうに笑いながら
「彼女のことで何かあったら僕に相談しておいでよ。何でも力になるよ」
そういって俺の肩を軽く叩いてにっこり笑った。
.
9
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:20:20
雑誌の取材を終え、ホテルに戻ったのは23時を回っていた。
ヒョンは社長と買い物に出かけていて遅くなりそうだった。
明日は久しぶりのオフ日。
バンドメンバーはブロマックスとポニーキャニオンの担当者に連れられて
ディズニーランドに行く予定だったから皆ご機嫌で帰っていった。
俺も誘われたけど日頃の疲れが取れず体調も良くなかったので断った。
ゆっくり身体を休めたかった。
テーブルの上にヒョンが練習のために録音したMDが置いてあった。
再生すると「信じた言葉」が流れてきた。
.
10
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:22:04
床に座りひざを抱えながら聴いてみる。
聴きながらヒョンの言葉を思い出していた。
「彼女のことで何かあったら僕に相談しておいでよ」
「何でも力になるよ」
屈託のない微笑が心の奥に突き刺さる。
…そうだよね、ヒョン。男が好きになるのは女だ。
でもその言葉、今は聞きたくなかった。ヒョンの口から聞きたくなかった。
「信じた言葉」の歌詞が心にしみる。涙が込み上げてくるのが分かる。
ひざに顔を埋めてヒョンの顔を遮ろうとしたけど…
…なんで人を好きになるんだろう…
好きにならずにいられたら どんなに楽かしれないのに。
.
11
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:24:18
「ハムは声を出さずに泣くの?」
いつのまにか俺のそばにヒョンが立っていた。
見上げた泣き顔を見られたくなくて慌てて顔を背けた。
ヒョンはゆっくり跪き俺の両肩に手を置き、言った。
「社長に聞いたよ、異動のこと」
俺は黙ってうつむいたまま声を出せずにいた。
両肩に置かれた手に力が入った。
.
12
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:25:36
「…どうして!…どうして相談してくれなかったんだよ。
最近、様子がおかしかったから社長に聞いたんだ。
悩んでいたのはこの事だろ?」
「僕はお前と一緒にここまでやってきたんだ。
今までもこれからもお前と一緒に仕事がしたいんだよ」
俺は目を閉じた。
ヒョンは俺の隣に並んで座わり続けて言った。
「社長に人事異動のこと、僕から断ってもいいだろ?」
俺は黙って頷いた。
.
13
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:28:48
ヒョン、俺のこと…好き?」
前を向いたままそう呟いた。
「大好きだよ」
ヒョンも前を向いたまま答えた。
その声はいままで聞いたどの声よりも優しかった。
…違う…違うんだよ ヒョン…
ヒョンは俺に何かあったらきっと何を差し置いても助けてくれる。
こうやってそばにいて肩を抱いてくれる。
俺を弟のように思って大切にしてくれる。
…でも、でもそれ以上のことはないだろう。
俺の気持ちはどこにも持っていけないんだ。
こんな近くにいるのに…。
辛さが涙となって溢れた。
.
14
:
rurikan
:2005/05/08(日) 11:30:48
ヒョンは俺の涙を指で拭い、抱きしめてくれた。
俺はヒョンの肩に頭を乗せ眼を閉じた。
後から後から溢れる涙がヒョンの肩を濡らした。
…違う…こんな俺は俺じゃないよ…もっと…強かったはずなのに
そばにいられる幸せと、そばにいるからこその不幸。
でも俺はヒョンのそばにいることを選んだんだ。
翌朝まで俺を抱きしめたまま眠っているヒョンの寝顔を見つめながら
俺は眠れるはずもなく
でも不思議と気持ちは落ち着いていた。
泣いたことですっきりしたのかな…。
久々に子供の頃に戻れたような、年相応の自分に戻れた気がした。
.
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