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長編SS投下用スレッド

1一応管理人 ◆TD8lO4QhRk:2007/08/28(火) 22:40:04
本スレに投下すると連投規制に引っかかったりレスを消費しすぎるなどの
理由で投下しにくいSS用のスレです。
使い方としてはSSの冒頭部分を本スレに落として「続きは(このスレの
URL)」みたいな感じがいいかと。

なお、1レスあたり50行までに設定されています。

39月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/06/19(土) 18:53:43
6月号はここまで。
そいではよろしくお願いします。

また来月ーノシ

40名無しさん:2010/06/21(月) 12:34:18
ノシ

41名無しさん:2010/06/22(火) 23:41:16

佐々木さんかわいいよ佐々木さん

42月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/06/27(日) 10:53:18
だ、誰も本スレにコピペしてくれない・・・orz

でも本スレ流れ悪いしなぁ・・・だめなのかなー・・・

43名無しさん:2010/06/27(日) 12:10:46
>>42
もうすぐ来月になっちゃいますよね
書き込み出来る人で避難所見てる人居ないんかなあ

44名無しさん:2010/06/27(日) 13:22:14
テキストに落としたまますっかり忘れてて申し訳ない。
本スレに転載しました。

また来月も期待してますぜ

45名無しさん:2010/06/27(日) 13:33:52
>>44
横から転載乙

46名無しさん:2010/06/27(日) 14:57:00
6月号、中の人の代わりにWikiに転載しておきました。

47月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/06/27(日) 16:23:11
ありがとうございました><;

48月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/07/19(月) 22:37:14
「暑い……」

今年の梅雨明けが例年より早めだったせいなのかは定かではないが
お天道様の尽力もあってうだるように暑い日がこのところ続いており
俺の勉強する気力は反比例するように下降気味の7月。

「暑いなんて言うな、キョンよ。暑いと言うと余計暑くなるぞ」
「中河、お前今、自分で何度『暑い』と言ったか分かるか?3度だ」

そもそも、暑いと言ったら暑くなるなんてのは曖昧模糊、都市伝説、迷信の極みで
暑いと言わなければ暑くなくなるなんて非科学的な現象が起こる訳でもない。

「まぁ気分の問題だよね」
「だな」

しがない市立中学の教室にエアコンなるものは完備されておらず
扇風機も何もないのだから、窓を全開にして風が吹くのを待つだけの身にとっては
ウチワすらありがたいものに感じる。

「団扇は扇ぐのを止めた途端汗が吹き出るのが難だな」
「自転車と同じだな。漕いでる内は気持ち良いんだが……」

さすがに暑苦しい男の代名詞、体育会系の中河にもこの暑さは堪えるらしい。
机に突っ伏していて、今にも溶けそう、あるいは焦げそうな感じだ。

49月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/07/19(月) 22:37:45
「そういえば今日の最高気温、昨日より1℃高いって予報だったね」
「言うな国木田。今朝出てくる前に天気予報見て俺のやる気は3割減だ」
「へー。でもまだ7割残ってるんだね」

いや、残念ながら半分残っていないのが現状だ。

「なんで?」

お前の発言でさらに3割削られた。

「それは悪い事をしちゃったかな」
「でもまぁ、良いさ」

そう言って、俺は視線を机の脇に移した。
紺色のビニールバッグの中には今か今かと出番を待つ相棒が息を潜めている。

「4時間目だよな」

視線の意図に気づいた国木田は首肯した。

「楽しみだね、プール」

50月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/07/19(月) 22:39:05
キツめの塩素の匂いが鼻を刺す。
数日前に下級生が掃除していたのを思い出して一応感謝しておく。

不思議なものであれだけ辛かった夏の焼け付くような陽射しも、
蒸しあがりそうな気温も、ここではプールを引き立てるスパイスに成り下がる。

教師の号令の下、全員で準備体操をした後は各自自由。
いきなり日陰に避難する女子、飛び込んで怒られる男子など様々だ。

俺はどちらでもなく、プールサイドに腰掛け、プールに足を突っ込んでブラブラ。
パシャパシャと音を立てて立つ波が目にも耳にも心地よい。

「おやキョン、こんなところで何をしているんだい?」
「佐々木か」

見上げるとそこに立っていたのは戦友、佐々木だった。

「泳がないのかい?」
「今は待ちきれなかった第一陣で混雑してるからな。もうちょい落ち着いたら入るさ」
「なら僕もそうしようかな。隣良いかい?」

そう言って佐々木は腰を下ろした。

51月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/07/19(月) 22:40:53
「今日は朝から気温が高かったね。昨夜風があったから冷房を切って寝たんだが
 明け方5時くらいには暑くて目が覚めてしまったよ」
「それは佐々木らしからぬ失策だったな。俺は冷房をつけたまま寝たが
 朝起きたら何故か布団の中に妹がいたよ」

もちろん頭にゲンコツくれてやったがな。

「可愛らしい事じゃないか」
「いや、寒くなったんなら冷房切れよと」
「一理あるかもしれないがね、その妹さんは確かまだ小学生だろう?
 理屈ではなく本能のままに行動している事は想像に難くない。
 妹さんは1人で寝ているのかい?それともご両親と?」

両親と一緒の部屋だな。

「なるほど。では妹さんはご両親と一緒の布団にいるよりキョンと同じ布団で
 寝ていたかっただとすると、どうだろう。妹の兄に対する愛情の深さが垣間見えるじゃないか」
「いや、そんな深遠なものはないと思うが……」
「もしくはこうも考えられる。ご両親は僕のように油断して冷房を切って就寝された。
 しかし子どもとは体温が得てして高いものだ。暑さに対する我慢や抵抗も弱い。
 暑さに目を覚まし、兄の部屋を覗いてみると冷房が効いて涼しい事この上なかった、と」

それで俺の部屋で寝たって訳か。なるほど。あり得る話しだ。

52月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/07/19(月) 22:41:52
「もちろん推測の域を出ないがね。しかしキョン、君はもう少し妹さんの気持ちに気を配るべきだ」
「あん?どういうことだ?」
「言葉通りの意味だよ。どちらにせよ君の事を慕っているのだから
 兄として器の大きいところを見せてやってはどうかな?」

それこそ俺は文字通り小市民の凡俗でね。
妹の愛情がどれほどのものか分からないが
未だ成熟していない俺の矮小な器には残念ながら収まりきらんだろう。あぁ申し訳ない。

「やれやれ……君はまったく良く口が回るな、キョン」
「それこそこっちの台詞だ、佐々木」

くつくつと喉を鳴らして笑うと奇妙な隣人は視線をプールに向けた。

「そろそろ入るかい?先ほどに比べたらだいぶ落ち着いたようだしね」
「あぁ、そうだな。よっと」

勢いをつけ、腕力でプールサイドから自分の身体を押し上げた。
ぱちゃんと音を立て、胸のあたりまで水に浸かるとひんやりして気持ち良い。

53月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/07/19(月) 22:42:25
続いて佐々木もプールへ入ったが、佐々木は肩まで水がかかっている。

「ふう、気持ち良いね。やはり夏のプールは良いものだ」
「そういえばだな、佐々木」
「ん?」

それまで全く気にしていなかった事を、俺は尋ねた。

「お前、俺の事なんかより他の女子と一緒じゃなくて良かったのか?」
「……キョン、君はもう少し人の気持ちに気を配るべきだな」
「ん?その台詞はさっき聞いたばかりだが……?」

そう言うと佐々木は眉を顰めた。

「……君は器の大小より、まず人の心の機微に対する敏感さを磨いた方が良いのかもね……」
「…………?」

54月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/07/19(月) 22:51:15
「……ョン、キョン」
「っ……あぁ、すまん」

プールの後というのはなんでこうも眠くなるのか。
今現在、俺と佐々木は塾に来ているのだが、
先ほどからどうにも舟を漕いでは隣の佐々木に起こしてもらっている。

夏は受験生の大事な時期だと口を酸っぱくして言われているが
こっちだって耳にタコが出来るほど聞いている。
このままじゃ酢だこができちまうぞ、ちくしょう。

「ほら」

そう言って佐々木がこっそり机の下で渡してきたのはブラックガム。
なるほど、これは助かる。

「サンキュ」

お礼を言ってありがたく1枚頂く。

「ここは確かキョンの弱いところだったよね。明日の放課後にでも復習しよう」
「重ね重ねありがとよ」

かつては前とか後ろとか斜めには座っても、真横に座る事はあまりなかったが
最近では毎回横に座るし、特別な事情でもない限り塾にも学校から一緒に来るようになった。
そこには果たして俺が気を配るべき心の機微が、変化があったのだろうか。

そんな授業の内容とは別の事を、ぼんやりと考えていた。
塩素の匂いを隣から微かに鼻に感じながら。

55月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/07/19(月) 22:52:16
7月号でした。なんか本スレ雰囲気悪いねぇ。夏休みだからですかねぇ(´・ω・`)

56名無しさん:2010/07/20(火) 08:21:27
>>55 乙でした
暑さでみんなイライラしてるんじゃないでしょうか? 携帯も規制されてるし
アンチは仕方ないとして住人同士のいがみ合いは避けたいものですね

57名無しさん:2010/07/21(水) 18:46:05
おつおつ(・ω・)ノ
雰囲気良い二人は、実際の気温とは無関係にいつ見てもぽかぽかしますなあ

スレの雰囲気とありますが、品性の無い書き込みは知性と理性を以って成る佐々木さんスレ住民として、さくっとあぼんしております
規制のため自らネタ振り出来ないのが残念至極ではありますが

58月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/08/15(日) 16:48:23
なんとなく思い立ったのでちょい早めの8月号いきます

59月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/08/15(日) 16:50:05
照りつける太陽。焦げたようなアスファルトの匂い。
立ち込める陽炎。アブラゼミの大合唱。

夏真っ盛りの8月。

俺は朝も早よからチャリを飛ばしていた。

とっくに学校は夏休みに入っており、例年なら友達と連れ立ってプールに行ったり
ゲームに興じるなど傍目にも自堕落な長期休暇を味わう季節だったはずなのだが、
どういう訳か俺が漕ぐチャリの前かごに入っているのは水着でも携帯ゲーム機でもなく勉強道具。

まぁどういう訳か、などと言いはしたが実際のところ、その理由は至って明瞭で
中学3年である俺は受験生であるからして、つまりこれから塾で夏期講習があるのだった。

自分で言うのはなんだが、まさかこの俺がそんなもんに出る事になろうとは思いもしなかった。
が、右肩下がりする成績にとうとうオフクロの堪忍袋の緒が切れたのをきっかけに
塾に押し込まれ、さらに意外にも、それはまだ継続されているのである。

「あぢぃ」

横に誰がいる訳でもないが愚痴をこぼさねばやってられんほどに暑い。
今日の予想最高気温は36度らしい。バカかアホかと。なんだその数字は。
もちろんこれは華氏ではなく摂氏だ。地球温暖化許すまじ。

そう大した距離でもないが、塾に着いて自転車を専用の駐輪場に止めると
噴出す汗の量も勢いも加速したのではないかと感じたが矢も盾も取らず
俺は空調の効いた空間を求め、塾の中へと走りこんだ。

60月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/08/15(日) 16:52:35
「やぁキョン」
「お? おぉ、佐々木か。おはようさん」
「あぁ、おはよう。今日も暑いね」

佐々木は自動ドアを入ってすぐのロビーに座っていた。

「まだ教室開いてないのか?」
「いや、そういう訳ではないがね」
「ふうん?ま、いいや。いこうぜ」
「待ちたまえキョン」

階段へ向かおうとした俺を佐々木は引き止めた。
その声に振り返ると佐々木は肩にかけたバッグの中から
シンプルな薄緑のハンドタオルを俺に差し出した。

「その汗のままでは身体に障る。仮にも受験生が、風邪や腹痛で貴重な夏休みを失うのは良くない」
「あ、あぁ・・・そういやそうだな。これじゃ冷えるか」

家を出るまではなんの問題もなかった肌は、暑さに号泣するように汗を流している。

「だが、それはその、お前のタオルだろう。俺が使ったら困らないか?」
「君が気遣いとは珍しいな」

くつくつと喉を鳴らして笑う佐々木の皮肉にジト目を送ると、
佐々木はなおも笑いながら再びバッグに手を戻した。
その手が再び俺の前に現れる時には、タオルは2枚に増えていた。

61月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/08/15(日) 16:53:44
「この気温だからね。予備のハンドタオルとハンカチは常備しているさ。
 だからこちらの1枚はキョンが使うと良い」
「用意周到だな・・・」

そう言いつつ俺は佐々木から有難くタオルを拝借した。

「当然の身だしなみだよ」

日の丸に必勝と殴り書きされた定番のハチマキを頭に巻く講師が
普段より熱っぽく教鞭を取りながら授業は進む。

夏を制する者は受験を制する、とは誰が言った言葉なのか。
今ではさも常識のように言われているし、まぁ、事実そうなのだろう。
周囲の生徒達も心なしか集中している、もしくは集中を強いられているように見える。

しかし佐々木は変わらない。俺の横で涼しい顔をして黙々とノートを取っている。
そのクセ、問題を解けと指名されれば、サラリと淀みなく答えるのだ。
うーむ。コイツは本当に秀才というヤツなのかもしれん。

そんなこんなで休憩を挟みつつ計3科目。
終わる頃には軽くグロッキーになりかけていた。

「キョン、大丈夫かい?」
「あぁ・・・だいぶ慣れた」
「それはよかった。人間の環境に対する順応力の高さはよく言われる事だが
 目の前でそれを見せ付けられると、また感慨深くすら感じてしまうよ」

62月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/08/15(日) 16:54:43
「・・・大げさだ」

だが実際、夏期講習初日は我ながらひどいものだったし、
佐々木はそれを目の当たりにしている。
その辺は少々歯がゆいところもあるのだが、既に佐々木にはかなり恥を晒してしまっている。
ある意味手遅れだ。

「まぁ、それだけ軽口が叩けるなら問題ないだろう。もう一頑張りだね」

そう、佐々木の言うもう一頑張りとは、
他の受講生たちが皆帰っていく中で俺と佐々木は塾に残って午後も自習していくのだ。

『俺が言うのもなんだがこういうのは図書館が定番なのかと思っていたぞ』
『夏休みの図書館は存外混んでいるし、こうは言いたくないが子どもが多い。
 キョンには少々集中しづらいと思うがどうかな』

そんなやりとりもあって結局いつも通り、塾の自習室の一角に陣取ることになった。

「帰る頃にはもう少し涼しくなると良いね」
「そうだな。全くそう願いたいもんだ」

63月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/08/15(日) 16:55:13
いつしか王様のごとく真上に君臨していた太陽も傾き、
窓から差し込む光はオレンジへと変わっていた。

「ふあぁ・・・疲れた・・・」
「お疲れ、キョン」

・・・ホントにコイツはタフだな・・・。
涼しげな顔で片づけをする佐々木を見ながら俺は伸びた身体をぶらぶらさせる。

「・・・帰るか」

一抹の寂しさを胸のどこかに感じなら俺はそう呟いて席を立ち、
カバンに教科書やら参考書やらを無造作に突っ込み、肩に引っ掛けた。

『お疲れ様、気をつけて帰ってね』

顔なじみの講師にロビーで挨拶され、それに会釈とお疲れ様の言葉で応える。
外に出るとアブラゼミはヒグラシにステージの主役を譲ったらしい。
その泣き声はどこか寂寥を感じさせるような気がして、俺は空を見上げた。

64月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/08/15(日) 16:55:47
「キョン?」
「・・・なんか、聞こえるな」

遠くの方から祭囃子が聞こえる。正確にはスピーカーから録音が流れているのだろうが。

「あぁ、確か今日は夏祭りをやっているのではなかったかな。向こうの方だよ」
「ふーん・・・」

佐々木も、俺も、何も言わずにそちらを見ている。
ヒグラシの鳴く声。緩やかに濃さを増す夕闇。流れる雲。

「・・・少し遠回りになるが」
「・・・」
「そっち通って帰るか」
「・・・うん」

自転車を押す俺と、水色のワンピースに身を包んだ佐々木。
俺達は静かに、祭囃子が聞こえる方へと歩みを進めていくのだった。

65月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/08/15(日) 16:57:18
8月号はここまでです。今日は暑いですねえ。
皆さん体調には留意されますよう・・・。

あーコミケで佐々木さん本出てないかなー。
行ってないですけど。ではまた来月。

66名無しさん:2010/08/16(月) 17:48:30
乙ー
ワタシも今夜19時からちっちゃな祭り&花火大会に行く予定なんでタイムリーですよ
規模が小さい分花火までの距離も近いんで、全身で爆音を感じてきます

コミケの佐々キョン本、同人情報スレを見るにいくつかあったみたいですね

67月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/09/19(日) 10:59:50
狂ったように暑い夏休みが終わり、とうとう2学期が始まってしまった9月。

中学3年も早や半分を過ぎたという事になるのだが、それはつまり
母親の強権発動に端を発した塾通いの日々もあと半分という事になる。

俺は決して勉強熱心でもないし、できる事ならできるだけ勉強はせずに暮らしていたい。
というのも変な日本語のように聞こえるがこれが俺の率直な考えだ。
受験勉強もきっと俺自身は全くやる気を起こさず、ただ周囲の空気に流されて
冬休みくらいからなんとなく教科書や問題集を広げるのだろう。

というのが、俺の4月の時点でのぼんやりとした展望だったのだが――。

「何か思い悩んでいる事でもあるのかな」
「ん?」
「心ここにあらず、という感じだったよ、君の目は」

そう言って、フォークとスプーンが一体になった食器でポテトサラダを口に運ぶのは佐々木だ。

「いやあ、意外と勉強も続くもんだなと」

くつくつと笑うと、咀嚼していたものをこくんと飲み込んで佐々木は言葉を紡ぐ。

「あまり勉強が好きじゃない事は知っている、いや、よく分かったけれどね」
「……お前には迷惑かけたなぁ……」
「ほう? もう過去形にしてしまって良いのかな?」
「スミマセン、今後とも何卒……」

そんな事を話しながらお互いに弁当をつついているとドアを開けた男が
こっちを見ながら近づいてきた。

68月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/09/19(日) 11:00:30
「おお、キョン。今日は佐々木と弁当食ってんのか?」
「ん? まあな。どうかしたか?」
「いや、どうって言うんじゃないがな……」

中河の視線は俺と佐々木を2、3回ほど往復した後、国木田へと向いた。
俺も一緒に国木田の方を向いてみたが、国木田は微笑ましそうな顔をしている。

すると中河は肩をすくめてそちらへ歩いていってしまう。

「……なんだあ?」

くつくつ。佐々木が喉を鳴らして笑う。

「さて」

そう言って佐々木が弁当の包みの中から取り出したのは梨だった。
さらに果物ナイフまで――キレイに刃の部分を包んであったが――持ち出した。
すると鼻歌交じりにスルスルとシュルシュルと皮を剥き始める。

「ほう、上手いもんだな」
「ん? ああ、まあこれくらいは。慣れれば簡単なものさ」

視線をこちらに向けても、その手の動きは淀みなく、止まることはない。

「親戚の家から大量に送られてきてね。家で食べるだけではなかなか処分しきれそうにない。
 そこで君にも手伝ってもらおうと思って持参した次第さ。キョンは梨は嫌いかい?」
「いや、どちらかというと好きだぞ。シャリシャリした歯ざわりとか良いよな」
「うむ。早いものは晩夏から市場に出回り始める。今年は豊作だったようでね。
 昨夜家族で食べてみたから、味については保証しよう」

69月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/09/19(日) 11:01:12
結局梨の皮は最初から最後まで途切れることはなかった。
8等分に割って、綺麗に芯を切り取ると、これまた準備していた爪楊枝を刺して差し出した。

「ほら、食べてみたまえ」
「おぉ、すまんな」

かぷりと梨に食らいつく。

「果汁も十分で、程よく甘い。うまいな……ってどうした?」
「えっ? あ、あぁ、いや、な、なんでもない。そうか、美味しいのなら何よりだ」

珍しい。どうやらあの佐々木がうろたえている。
だが一体何があったというのか。
ふと視線が気になったのでそちらを向くと国木田たちがこちらを唖然として見ていた。

「なんだ? どうかしたのか、お前らまで」
「えっ? いや、今、あれ? ね、ねぇ、中河」
「あ、おう。いや、その、なんだ。別に羨ましいとは思ってないぞ」
「あん? なんだ、もしかしてお前も梨が食べたいのか?」

余程俺の食べ方が美味しそうに見えたのか、単に梨が好きなのか。
ならば言ってくれれば良いのに、全くもっておかしなヤツだ。
普段は親しき仲にも礼儀ありという言葉を説き聞かせたいと
思わせるほどなのに、変なところで遠慮深いんだな。

「佐々木、中河たちに1切れずつやっても構わんよな?」
「それは構わない、が……」

佐々木の許可をもらっていくつかに爪楊枝を刺し、国木田のところへ持って行き、
弁当箱のフタの上に置いてやった。

70月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/09/19(日) 11:01:43
「やれやれ。欲しけりゃそう言ってくれりゃ良いんだよ。なあ?」
「そ、そう、だな。全く。水臭い。ははは」
「おし、もう1切れもらうかな」

新しい爪楊枝を刺して口へと放り込む。
かみ締めると甘い汁が溢れ出して口内を喉を潤していく。

「あ……」

と、佐々木が何やら惜しんでいるような声を出す。
もしかして狙っていた1切れだったのか?
焼肉焼いてて自分専用のベストな肉を焼く、みたいな。
そういう事をするヤツ(要は俺の妹だが)には見えなかったのだが。

佐々木は何やら手に持ったままの楊枝を所在なげに動かしていたが
やがて梨に突き刺すと、俯きがちな自分の口へと運んだ。
それを見て俺もまた1切れを取って食べる。

「美味いよな」
「あ、あぁ、そう、だな。旬の物を食べると言うのは身体にも良いからね」
「そう言うよな。夏は夏野菜を食べると……なんだっけ」
「夏野菜は体を冷やす効果があると言われている。しかも栄養価が高いから夏バテ防止にうってつけだ」

だから、と言いながら佐々木は自分の持っていた爪楊枝を最後の1切れに刺して俺へ向けた。

「ほら、もう1つどうだい?」

微笑んで梨を差し出す佐々木の頬は、なぜか梨ではなくりんごのように赤かった。

71月刊 ◆ISvfeyctdw:2010/09/19(日) 11:03:57
9月号でした。中秋の名月ネタと梨、どっちにしようか迷いましたが
結局は梨に落ち着きました。
一応フォローしておくと、>>69で佐々木さんや周囲が狼狽しているのは
伝説の「あーん」になっていたからです。(でもキョンは無意識)
そんな感じでまた来月に。

72sage:2011/08/26(金) 22:50:14
漏れもコソーリ等価。これまでの職人さんに感謝。
「夕日」

1 お,おい,何もそんなに急ぐことはないだろう。
このあたりはそんなに見るところもないんだからさ,のんびり行こうぜ。

全く君は・・・。何事にも時機というものがあるんだよ。
陽が完全に落ちてしまうまでにどうしてもあのベンチのところまでに行かなければならないよ。

前から早足で歩く方だったかもしれないが,佐々木がこうも跳ね回るように行動するのは意外だった。
せっかくの新婚旅行ではあったが,俺は無理やり終わりにした仕事の疲れややり残しがないかという心配やらが心をよぎることは否定できなった。
こんなものなのかね,新婚旅行ってやつは。

「・・・。いいかい,そういうわけで,この辺りに来たらここからの夕陽を見逃す手はないんだよ。」
彼女は,見晴らしの良いベンチに腰をかけて夕陽が沈むのを見たいのだそうだ。
場所やら由来やら,それなりにいろいろあるらしい。彼女によると。
だが,俺は上の空で聴いていた。
見知らぬ土地で見る佐々木の印象が強く,つい彼女の表情に見入ってしまう。それで馬耳東風よろしく聴覚はお留守になってしまうのだ。

73sage:2011/08/26(金) 22:50:54
「キョン。君は一体僕の話を聴いているのかい」
「ああ。聴いているさ。しかし,まあ,なんだ。その,なんだ。あれだ。今日はなぜかな。うーん。お前がな・・・」
「僕が一体どうしたっていうんだい。気になるじゃないか。その言い方は」
「いや,なんつーかな。まあ,気にするな」
「気になるさ。早く言いたまえよ。何なら無理やりにでも・・・」
佐々木がなにやら手を俺の顔に伸ばしてきてほっぺたをつまんで引っ張ったりしている。
俺も反撃に転じようという気持ちが起きたが,さすがにいい年をして周りが気になる。
佐々木は全体的にセーフだろう。俺は全体的にアウトだ。
「分かった,分かった。言うから。何だかな,とてもきれいだと思ったんだよ。」
嘘ではない。佐々木よ,お前は元気だなと思ったが,それよりもこういった方がいいような気がしたのだ。
とたんに,佐々木の頬が夕陽のように真っ赤になり,俯いた。
「・・・いつもだよ・・・」
「うん?」
沈み行く夕陽を背にしながら佐々木は顔を上げた。ああ,この表情だ。
「僕はこれまでだってずっと,いつも君の事を思って,君のために・・・」

74sage:2011/08/26(金) 22:52:10
2 ・・・あのときも,俺は疲れていたんだな。
俺はひとりごちた。
忙しい作業がひと段落すると,思考は勝手に記憶の彼方をさまよう。
それにしても,忙しい。最近俺は良くやっていると言っていい。至らぬ点も多いのだが。
「キョン。・・・大丈夫なのかい。疲れてはいないかい」
佐々木がふと気付いたように俺を見上げて言った。
「うん?だいじょうぶだ。佐々木。何も心配するな」
俺は佐々木にできる限りのやさしさを込めるようにして言った。
「そうかい。なら良かった。それにしても君は何かを思い出していたのではないかい?君の表情からすると君は幸せな記憶を想起してように思えるが」
佐々木は俺に微笑み返した。
佐々木が俺の思考を当てることなど日常的なことだ。
「ああ。ちょっとね。お前のことを考えていたんだ。」
「僕のことかい。それはうれしいね。良かったら概要を聴かせてくれないかい」
「ああ。二人で旅行に行ったときのことだ。お前は本当に元気ではしゃいでいたよなあ」
佐々木が即座に記憶の中から俺の意図したものを引き出した。
そしてその記憶は佐々木の心をふと軽くしたようだ。
「くっくっ。そりゃそうさ。君にはいろいろ本当に待たされたからねえ。僕が多少我を忘れていたとしても何も不思議ではないよ」

75sage:2011/08/26(金) 22:52:59
「ん。そうか。」
たしかに,俺がもっと早く彼女との生活を決断することもありえたはずだ。
しかし,俺にはその前にしなければならないことがあると思っていた。佐々木をしっかりと支えることができるようにならなければ。それだけは譲りたくなかったのだ。
「そうだなあ。待たせて悪かったなあ」
俺はそう言いながら佐々木の頭をなでた。
白髪が目立つようになった。それでも変わらず可愛らしく品がある,というのは俺の欲目がそう見せるのか。
「いいさ。少なくとも無駄に待つことはなかったからね。君はその分僕に優しくしてくれていただろう。これからも。」
「ああ,これからも。」
俺は佐々木の頭をなでつづけた。
佐々木は,急に歌を口ずさみ始めた。
”I don't wanna wait in vain for your love.I don't wanna wait in vain for your love."
佐々木,お前。
すると,佐々木は一瞬冗談さ,といういたずらっぽい表情を浮かべた後,そのまま俺を見つめたままあのときの表情を浮かべた。それからゆっくりと目を閉じた。
「・・・おやすみ。佐々木」

76sage:2011/08/26(金) 22:54:33
3 佐々木は,ほとんど自力では歩けなくなってしまった。
食事も,独力でとることができない。
それにしても,俺が会社員ではなく,自営業のような仕事に就いたのは良かったな。
最低限,佐々木に必要なときには側にいてやれているのではないかと思っている。
側にいてやれる・・・か。
何を偉そうに言ってやがる。佐々木だって俺がもっとしっかりしていれば不満やら不安やらを思うままにぶちまけたいだろう。
佐々木が極力痛みやら不安やらをぶつけないようにしているのは,俺に対する気遣いからじゃないか。
佐々木の体力は季節が移り変わるように確実に落ちていき,俺が介助を必要とする作業が増え,介助時間も増えていった。

77sage:2011/08/26(金) 22:55:18
おい。佐々木。できたぞ。
いつもの食事の時間だから,佐々木は気づいているだろう。俺は食事を運ぶ。そして,佐々木の上体を起こして,少しずつ食べるものを佐々木の口へと運ぶ。以前は,佐々木はほとんど全量を食べていた。最近は食べ残しも多い。
佐々木が食べられないことに気づかずに,食べ物をこぼしてしまうこともしばしばある。
食事が終わると,佐々木の口の周りを拭き,俺は後片づけを手早く済ませる。
そして,佐々木のところに戻るのだが,佐々木は食事の後は俺と話しをしたいようで,俺が戻るのを待っているようなのだ。
だから,片付けは急いで済ませないといけない。
「気分はどうだ。佐々木。」
「・・・・。うん。・・・悪くない」
話す量からすればまるで長門だな。
佐々木はやっとのことでそんな言葉を絞り出したが,表情はわずかにほほえんでいるようにも見える。
「そうか。それはそうと。どうでもいいことだが。世界の景気は一層後退しているようだぞ。ドルが円に対してまた大きく下げている。
 日本の産業とてどうなるものやら。というか俺たちはこの資本主義という茶番をいつまで続けなければならないものなのかね。無論,これまで試された他の主義だってとても採用することが相当とはいえんだろうがなあ。なあ。」
佐々木とそんな話しもしたことがあったな。

78sage:2011/08/26(金) 22:55:54
佐々木は,こんなことにもいつも目を配っていたな。しかし,佐々木はある立場に反対したり又はそれを擁護したりということについては興味や関心がないのだ。執着がないというか。どうでもいいというか。俺もそんな佐々木の考え方には影響を受けていた。それにしても,こいつが本当に興味があることって言うのは・・・ないのかもしれないな。あるのかもしれないが。しかし,ないということはそれはそれで幸せなことじゃないか。
佐々木の反応が今ひとつのようなので,話題を変える。
「なあ。まだ8月だが,最近は天気が悪いせいか,少しは涼しい日もあるようになった。それでだ。お前の体調が悪くなければ,たまには外に出てみないか。」
「・・・うん。」
「そうか。」
とはいえ,佐々木を屋外に出すことは大変なのだ。良く様子を見ていないと,状態が急に悪くなっていることもある。
しかし,俺は,できる限り,佐々木に外の自然に触れて欲しかったのだ。緑色が芽生え,夏に青々とした力強い葉をつけ,色づいた後に何の不満も漏らさず静かに次々と落ちていく様子をできる限り直接に触れて欲しかったのだ。
佐々木や俺に起きている出来事は,何も特別なことではない。当り前のことだ。本当に当り前のことなのだ。
なあ,佐々木。お前は俺よりずっと賢いんだから,そんなこと俺に言われなくったって分かっているよな。
でもなあ,お気に入りの曲を繰り返し聴くように,繰り返しこういったことに触れるのは悪くないだろう?

79sage:2011/08/26(金) 22:57:22
4 そういえば,ずっと音楽なんて聴いていなかったな。
俺はようやく部屋をわずかずつでも片付けようとしながら,ふと佐々木と良く聴いたCDを取り上げた。
片付けようとしても片付けられないものが多すぎる。場所を動かすことすらためらわれる。ましてや捨てたり洗ったりすることなんかとてもできそうにない。
長い間,後悔と罪悪感が心を占めて続け,俺の心は身動きすらできなかった。
「俺は,できる限りのことをやったと思う。」
そんな自己憐憫に何の意味もない。
こと俺に関して言えば,後悔や罪悪感の原因は明白だ。
俺は佐々木の看病やら介護やら仕事やら自分の生活やらで完全にオーバーロードとなった。そして,佐々木を煩わしがり,自分を呪ったのだ。
俺は,俺にそんな気持ちが起こることが許せなかった。俺は佐々木を幸せにすると誓ったのだから。いや,その合意内容はもっと虚ろなものだった。それじゃない。俺は,佐々木に対して俺にできる最もよいことをしてやろうと約束をしたのだった。
約束を違えたら,どうなるのか。何らかの制裁があるべきだという考え方もあるだろう。それは絶対的な考え方ではないはずだ。それでも,俺が殊更に意識することなく,そのような考え方に服従していることは明らかだった。
「・・・佐々木。佐々木。」

80sage:2011/08/26(金) 22:58:20
俺はうずく胸の痛みに対して救いを求めるかのように佐々木の名を口にした。
そのように俺はあたかも外出する際に鍵や財布を持ち歩くように,佐々木について自分を責め,そして既にいない佐々木の名を呼ぶことを習慣としていた。
俺に残された時間もさほどないだろう。
社会的に見れば佐々木の夫であること以外の意義など俺にはなかったかもしれない。このことは自嘲ではなく,本当に少し愉快に感じられた。
だがそんな俺が残された時間で何をすればいいのか。佐々木・・・。

全く君は・・・。何事にも時機というものがあるんだよ。
陽が完全に落ちてしまうまでにどうしてもあのベンチのところまでに行かなければならないよ。

佐々木があの表情を浮かべて俺に呼びかけていた。
何だ。佐々木よ。全くお前らしいぜ。
俺はこのままのんびりと沈んでいきたかったのに許してくれないのか。

それにしても佐々木,新婚旅行のときのお前,反則的なまでに鮮やかでもう消えないかもしれんぞ。そういう予定だったのか,それともそうじゃないのか。なあ,佐々木。

81sage:2011/08/26(金) 22:59:49
おわりですorz 改行等のマナーを知らず,失礼しました。

82名無しさん:2011/08/27(土) 09:48:33
乙です
sageは名前欄じゃなくてE-mail欄ですよ
まぁ、別にsage進行じゃなくても…

83名無しさん:2011/08/28(日) 01:21:28
sageのご指摘ありがとうございます。
恥ずかしいのでね。
文中の曲です(オリジナルじゃないけど。)
ttp://www.youtube.com/watch?v=xWmSiYqn9s0

84名無しさん:2011/08/28(日) 02:47:32
読点(、)がカンマ(,)になってるのは何故? こだわりでもあるのかしら?
どっちにしても句読点の使い方が微妙ですね
どこで読点を使えばいいか、っていうのは実際に声に出して読んでみると分かりやすいですよ
なんか気になったんで書いてみました

85名無しさん:2011/08/28(日) 13:35:34
貴重なご意見ありがとう。
,は仕事で使っている設定です。句点の打ち方も少し職業病みたいなものもあるかもしれません。
こういったものを真面目に書いたのは初めてでね。
見づらかったら申し訳ないです。

86名無しさん:2011/09/05(月) 08:29:26
知らぬ間に投下されていただと?

乙です。
昔あったアルツハイマーになったキョンを介護する話を思い出した。それの逆版かな。
設定の都合だと思うけど、キョンが佐々木を名字呼びするのは想像力を働かせました。

87名無しさん:2011/09/09(金) 16:27:25
>>86
読んでいただいてありがとうございます。
若年性のアルツハイマーの話しは,非常に興味深く読みました。
特に参考にしたのは,長編SSの夢というタイトルのSSです。
何度となく繰り返して読み,構成や書き出し等はほぼぱくりみたいになってしまいました。

佐々木と呼ぶのは,佐々木が職務上佐々木という氏を使用しておりキョンと佐々木が同業者で同じ職場で働いているという前提です。
にしても,プライベートで佐々木と呼ぶのは止めたまえ等という話しは出るでしょうが・・・
キョンは佐々木と一緒になるために,一人で努力を重ねてきたので,つい佐々木という名前が口をついて出てしまうと妄想しています。

88『みんなぼっち』:2013/08/03(土) 11:50:52
アクセス規制なので、こちらに投下。以前書いたいじめSSの続編となります。

何の為に学校に通うのか。最近は勉強に楽しさを見出してきて、より高いレベルを求め、佐々木と同じ塾に通う日々だ。
北高自体、そんなにレベルの高い高校ではない。上には上がいるし、その上の連中の見ている景色を少し見たくなってきた。
「最近は勉強が楽しくなってきた。」
「それは重畳だね。」
分からない場所を調べ、解いて行く。これだけの事に楽しみを見出すのだから、いかにこれまでが無知であったかよく分かる。
分からないから知りたい。それがきっとあの馬鹿の考える事なんだろうな。
佐々木は少し困ったように笑うと、空を見上げる。
「太陽に片想いした、イカロスの気持ちが分かるよ。」
「お前が何を言いたいか、さっぱりだ。」
「キミはそれでいい。」
今更、キミに鋭さなんて求めてはいない。佐々木はそう言うと、少し明るい、しかし無理の隠せない笑顔を見せた。
「折角の休日だ。たまには家に閉じこもらず、外で遊ぶかい?」
ま、気晴らしは必要ではあるな。だが。
「その前にシャワーだ。」
「僕はこのままでも構わないがね。」
「ほざけ、アホ。」

駅前で食事して、公園をぶらついて、とても買えない値段の商品を見て…。これじゃ、昔の不思議探索と変わりはしない。
…情けねえ。まだ未練があるんだろうな。我ながらしつこい男だ。

駅前には騒がしい集団がいた。
…声だけで分かる連中というのも珍しい。涼宮達、SOS団だ。
俺の代わりに谷口や国木田がいる。どうせこんなもんなのにな。
「…行こうぜ、佐々木。」
「…そうだね。」

全く、やれやれだ。

89『みんなぼっち』:2013/08/03(土) 12:15:00
駅前にいた涼宮さん達。あなたは気付いていたかしら。
後悔と悔恨、逡巡に彩られ、哀しみ嘆く様を。
私なら、彼等を仲直りさせる事は雑作もない。キョンもきっかけを探している節もある。だが。

それをやって、一体何になる?

嫌疑はいい。素直でない男だけにそれは仕方ない話だ。しかし。反論の機会すら与えずに貶めたあの集団に、キョンを返すわけにはいかない。
そして。
こうなってしまってから漸く気付いた自分の気持ちにも。

『得難い親友』という嘘。
結局は自分の意気地の無さへの肯定に過ぎなかった。

執着を受け、気持ち悪いまでに付きまとわれた時、真っ先に浮かんだのはキョンの顔だった。
彼なら、どんな自分でも受け入れてくれる。だから無茶も出来たし、排除を厭わずに出来た。

叶わぬ愛を囁き、こうした関係に仕向け、自分を見ないキョンを見て、自分が苦しむ。

「(胸の痛みで自分の思いを確認しようだなんて、とんだナルシスト、そしてとんだマゾヒストだ。)」

自分を傷つけ、その痛みに酔いしれる私はきっとマゾヒストなんだろう。

「さっき、涼宮さん達がいたね。まだ戻りたいかい?」
「!!」

目を白黒させながら焦る彼を見て、傷付くと同時にえもいえない快感に襲われる私は、サディストでもあるのだろうが。

90『みんなぼっち』:2013/08/03(土) 12:49:22
ちょいと長丁場になるので、一旦区切ります。

91『みんなぼっち』:2013/08/03(土) 16:38:18
キョンがいた。
佐々木さんと一緒だったということは、あの二人はそういう関係になったのかも知れない。
きっかけなんて、単純な話だ。些細過ぎて忘れてしまうような事。それを錦の旗印にして、何故か皆が追随し、あっけなく戻れない場所まで行った。
私も楽しくなり、キョンへの迫害を繰り返し…キョンは次第に慌てた顔から失望の表情に変わっていった。それに最初に気付いたのは、私だったと自負している。
一人称が涼宮に変わり、迫害を受けたきっかけについて、全て否定の材料を持ってきた。
これで終わり、また何か楽しみをと思っていると、キョンはキッパリ言った。
「もう沢山だ。付き合いきれん。」
古泉くんがとりなす為にキョンを外に連れ出したが…
ハッキリ聞こえたのは
「今更、お前らを仲間だなどと思えるか!」

92『みんなぼっち』:2013/08/03(土) 16:58:10
何もかも壊れた。そう自覚した時、古泉くんとみくるちゃんが叫んだ。
願え、と。
二人の言葉に従い、私は心から願った。また元に戻りますように、と。

覆水盆に返らずとはよく言ったもので、私の祈りなんて歯牙にもかけられない。見ると、有希も青い顔をしていた。
私が理解した事。それは、些細な事でキョンを深く傷付け、キョンを失った事だ。

皆を問い詰めると、キョンは一度皆に弁解したようだ。だが、皆は歯牙にもかけなかった。理由は分からないし、聞きたくもない。
ただ、私の行動が理由である事は疑いない事実だろう。
自ら作ったSOS団を、自ら壊し…一人の人間を救いようなく傷付けた。その人間は、謝らせてもくれない。

存在を無いものと見做される位なら、いっそ殴られたり罵られたほうがマシだ。

自業自得。その言葉がこの状況にピッタリと合う。
何もしてあげる事が出来ないから、せめてずっと待っている。SOS団を解散しない理由は、それだ。
谷口や国木田くんを入れたのも、キョンが帰って来やすいようにする為。

許してとは言わないし、許さなくてもいい。だからこそ、償い位はさせて。
私は心から願った。

93『みんなぼっち』:2013/08/03(土) 17:21:00
何が間違っていたか、分からない。
僕は彼を見誤っていた。それが現実なのだろう。
涼宮さんにとっての鍵。彼はどんな状況にあっても彼女を見捨てないと思っていた。
それに、僕達の立場は明確だったはずだ。
それを明確にしただけの事。
長門さん、朝比奈さんも同じ考えであり、今更ながらに考えると涼宮さんの能力は、彼を起点に始まり、彼を終点に終わった。
つまりは。鍵の重要性を無視した結果だ。

「僕にしてみると、投げ出せる立場が羨ましいですがね…」

それは本音だが、だからといって道を誤る理由にはならない。そして彼を迫害する理由にも。
「頭を下げろというなら、幾らでも下げますし…僕の首が欲しいならくれてやるんですがね。」
もう、僕達には何もない。
後ろ盾も組織も何も。
涼宮さんの影響があったのは、言い訳だろう。長門さんなら影響を知らせる事も出来た。そして長門さんは何も言わなかった。それは僕達の本音でもあった。そう思わざるを得ない。

…僕達には、もう規格外の力なんて何もない。ただの高校生だ。

本当に、誰しもがひとりぼっちになり、こうして寄り添っていてもひとりぼっちだ。

「みんなぼっち、と言ったほうがしっくりきますかね…」

乾いた笑いを洩らし、佐々木さんと歩く彼の後ろ姿を見送った。せめて、その手が離れないように祈りを込めて。

そうしている自分が、吐き気がする程に情けなく、一人になった時の非力さを痛感するばかりの行為だとしても。

続く。

94名無しさん:2013/08/13(火) 07:07:29
>>93
これは……以前の続きとありますが前の作品の名前教えてもらえますか?

95名無しさん:2013/08/13(火) 08:41:54
>>94
69-204「ふたりぼっち」

96『ひとり』:2013/08/13(火) 13:06:34
高校生なんて割と不便だらけだ。
大人のように何かを好きに出来る訳でもなく、子どものように無責任に居られる訳でもない。
社会に出たら理不尽が待ち構えているから、それの予行を今やってると考えれば、俺の現状にもまぁ納得はしてやれる。
…佐々木から言われた事の受け売りだがな!
「(今日も屋上で時間潰しか。)」
誤解は解いたが、後の居場所なんてあるわけねぇ。やれやれ。かといって何かを取り戻そうと躍起になるだけのモチベーションもない。
非行に走る理由付けにはなるが、それをやるだけの行動も面倒臭い。そこまで堕ちる理由もないし、別に今を変えたいなんて思えないしな。
非行に走るというのは、ある意味では自分が構ってほしいからだ。
俺は誰にも構って欲しくない。
願わくは、一刻も早く時間が過ぎて悲しい出来事を忘れたいというだけだ。

「(かといって、俺はまた佐々木を求めるんだろうな。)」

佐々木を受け入れているつもりで、佐々木に依存する自分がいる。
現状の生活に不満がないのは、多分佐々木によって喪失感を埋めているからかも知れない。
佐々木はどうなのだろうか。
佐々木にしても「状況は似たようなものだよ」と言っていた。
今日は佐々木と何か美味しいものでも食べに行くかね。そう贅沢は出来んが、佐々木の好きなケーキに炭焼きコーヒーなんていいな。
説明をしておけば、佐々木が受けた嫌がらせは流言飛語だ。
佐々木は俺と爛れた関係にある、など無茶苦茶な話であり…まぁその後にそうなったのだから、こいつは予言者ではあったわけだが。
その他はストーカー行為、筆舌に尽くし難い侮蔑や、学内での噂など。
その噂や侮蔑について佐々木は一切否定せず、逆手に取りストーカーを撃退したわけだから凄まじい。
「別に否定はしないよ。僕は彼とそのような行為をしたわけだからね。」
と、俺の腕を引きながら言った時の相手の表情は、正直見ものだった。
逆上した相手に俺が殴られたんだが、そこはまあどうでもいい。
しかし分からんのが、何故相手に自分の幻想を押し付けるのかね?
佐々木が初めてだろうがなかろうが、それこそどうでもいい話ではないか?別に誰かに抱かれていたら売女など言うのは、それこそ最大の侮辱だ。
さすがに性的に乱れ、複数などの変態嗜好の持ち主なら一言言っておくべきだろうがな。

97『ひとり』:2013/08/13(火) 13:37:34
佐々木に言わせると、集団からリンチを受けたも同然だった俺の状況が、更に酷いらしいがね。俺はその意見については否定する。
俺の場合は、俺が招いた状況というのも少なからずある。だが、佐々木は一方通行の好意を寄せられただけだ。
それにより、何故に佐々木が傷付かないといかんのだ?
晴れない気持ちのまま屋上で寝転がる。さっさと昼休みが終わって放課後にならんかね。ついでに言えば、さっさと卒業させてくれんかね。
未だに続く嫌がらせ。その跡が残るぐしゃぐしゃになったパンを噛みながら、俺は時間が過ぎるのを待った。

「(さて、今日もまたクラスに一人か。)」
人の口に戸板は立てられないと言うが、それこそこうした進学校の人間達に相応しい。
興味はあれど実行に移せない連中に、耳だけ肥え太り実践のない頭でっかち。
「(綺麗なものだけ見ていたら、こんな連中になれるのかね。)」
白馬の王子様なんていやしないし、いると信じるのは幼児だけでいい。結局がいつか誰しも通るような道を、こうして大仰にやるのは私達が子どもである証なのだろう。
行為だけ真似ても大人になどなれない。それは重々分かった事だ。
私の状況は、まあ自業自得だ。私に隙があり過ぎた。相手に対する優しさと甘さの違い。これを考えていなかった。
執着してきた男も、ある意味では被害者。八方美人的になるのは良くない。最初から望みなど見せなければ、こうした事態にはならなかったわけで。
さて、キョンは今頃何をしているんだろう。
ずっと屋上で一人飯だと言っていたが、その光景は容易に目に浮かぶ。つまらなそうな顔をしながら、早く時間が過ぎないかと考えているのだろう。
私にしても彼にしても、非行に走るにはあまりに意気地がない。
生活に不満はあれ、それを変えて他人に絡まれたくない、というのが一番大きいのだが。
私は彼と一緒にいるつもりだが、傍から見ると共依存の状態なのだろうと思う。
自分と向かい合っているつもりで、私達は何も出来ていない。ただ、一緒にいると気持ち良く時間が過ぎているだけだ。
キョンの傷が癒えた時、彼は私を邪魔にするのではないか?それが私が今、一番気になる事項だ。
それならば、お互いの成長を期する為に今は…とも思うが、彼の手の温もりから離れたいとも思わない。
「(末期的…いや、退廃的だ。)」
このままデカダンス気取りで行くのも悪くはないが、それは自分一人で堕ちればいい。
良くも悪くも、キョンは自分に近過ぎる。
お弁当を広げながら、私は盛大に溜め息をついた。

98『ひとり』:2013/08/13(火) 23:36:19
私にしてみると、些細な誤解や行き違い…説明しておくと、あのmikuruフォルダとやらか。あれをきっかけにキョンが孤立するなど思ってもいなかった。
確かに消すといって消していないのはキョンの落ち度であるが、それを理由に排斥にかかるかね?馬鹿馬鹿しい。
元を正せば涼宮さんのやらかした奇行の一部だ。いくらでも弁解出来ただろうに。
彼の仲間達も、だが。
彼の仲間達の意見については、あくまでも涼宮さんを刺激させない方向にしたのだろう。迂闊に刺激して藪を突ついて蛇を出す結果になっては敵わない。
ここがまずひとつの行き違い。
そして次の行き違いは、それを上手くキョンに伝えられなかった事だろう。
推測に過ぎない話だが、彼等はキョンにこう言った確率が高い。

「あくまでも涼宮さんの監視」

立場を考えたらそれは当然だろう。彼等が何を思いそうしたか。理由は前文であろう。
キョンは詳しくは語らなかったが、この推測は恐らくは正しい。
「(でなければ、キョンはSOS団から抜けようなどと思わないはずだ。)」
今頃、相当の対価を払っているだろうが…そこは自業自得だ。私が彼等の軛を解く理由にもならない。…まぁ、感謝はするけど。
今日は何処に行こうかしら。
流石にお互いの部屋での爛れた時間は避けたい。
行為自体はどうでもいいが、自分を気遣い、優しく流れる時間は何にも替え難い。
「(それはキョンにとって、私でなくてもいい時間かも知れないけど。)」
…本日何度目かの溜め息。我ながら度し難いね。
「(いつか離れて行く運命だとしても、今はキミの側に居られる。こんな僕を嗤うかい?)」
私は私に問い掛けた。…答えなんて返ってくるわけもなく、私はカラになった弁当箱をバッグに直し、塾の予習を始めた。

99『ひとり』:2013/08/14(水) 03:31:23
珍しい来客があり、私は対応に出たのです。あまり好ましい来客だとは言えませんでしたが。
客人にお茶を差し出し、私は衝撃的な事実を幾つか知る事になったのです。曰く。
佐々木さんがストーカー行為の被害者となり、窮地へ追い込まれてしまった話。
そして。涼宮さんの能力の喪失による機関の解散。キョンさんが涼宮さんを完全に見放した話。
幾つかの事実を知るにつれて、私は疑問を抱いたのです。
涼宮さんの能力喪失はともかくとして、形がどうあれ佐々木さんとキョンさんが結ばれたとあれば、能力は佐々木さんに移っていてもおかしくはない。
だけど、そのような事実はない。
まだ私に超常的な能力があるとするならば、私にそれを感じる事ができるはず。
それすら感じないという事は。二人がそれを望まないとなる仮説も考えられるのです。
私の場合、キョンさんや涼宮さんはどうでもいいのですが、佐々木さんが心配になるのです。
彼女は理性的だ、と言われていますが、理性的であるというよりは…全てに対する諦念。
期待するより諦めたほうがマシ。そう考える奥ゆかしい女性であり、そこが私にとっても一番好ましい所なのですが…
……何故にそんな冷たい目をするのです?森さん。
「…性癖は自由だけど、度が過ぎるなら引くわ。」
「失礼な方なのです。」
鏡で自分の姿を見てみろ、と言い残して去りゆく森さん。その背中に私は問い掛けました。
「何故この情報を私に?」
森さんは、ゆっくり振り返ると私に言ったのです。
「あの子への情けといえるのかしらね。」
話を聞いてどうやるかは、あんた次第だけど。そう皮肉も込めて。

そんなもん、決まっているのですよ。

佐々木さんとキョンさんが本当に結ばれたなら、佐々木さんは能力を得るはずなのです。
となれば、私もまた佐々木さんと一緒に居られるのですよ!地下から這い出て、佐々木さんを救うは今なのです!
天命、我にあり!選ばれし者の恍惚と不安、二つながら我にあり!
喜び勇んで転入手続きをし、早速転入…………確か、あの高校って無茶苦茶レベル高かったような…………
……すみません、後方支援に勤めざるを得ないのですよ、佐々木さん……

続く。

100『一方通行』:2013/08/15(木) 20:48:44
辟易するような日常と、鬱屈した生活。そして刹那的な快楽を求め、お互いを貪る日々。実にデカダンスだ。
こんなんじゃ、お互いダメになっちまうのは分かりきった話なんだがな…。
「刹那的な行動というのも悪くはないが、些か短絡的過ぎたね。」
「全くだ。」
気怠く横になり、お互いに抱き合う。お互い性急に事を進めただけに、お互いにお互いを汚した感覚が強い。
求めあったのは事実にしても、ロマンスなどには程遠く、ただ誰かに側にいて欲しかったというのが事実だろう。…報われんな。お互い。

抱き締め、キョンの体温を感じる。
どこか辛そうな表情で私を抱く彼は、恐らく私と似た事を考えているのだろう。
このまま何もかも忘れて、ふたりきりでふたりぼっちになれたら。どれだけ幸せなんだろうか。
子どもの頃に夢想した幸せ。そして少女ならば誰しも憧れるような恋物語。そこには幸せそうな男女が幸せな恋愛を模っていた。想い合う二人が求めあい、お互いの想いを通じ合わせる。
だが、私の現実はこれだ。
好きな人の窮地に託け、自分の境遇を重ね、親友を汚した。この親友という言葉すら欺瞞だったわけだから、最早笑えないジョークだ。
親友といってラインを引き、親友といって異性として惹かれた自分を誤魔化した。
何故かなんて分かりきった話だ。
仮にキョンに想いを伝え、断られたら。私は文字通りに『キョン』という存在を失う。それだけは私には堪らなく怖く、それだけは耐え難いものだった。
私はキョンという存在に、ずっと甘えていたかったのだろう。私の『理想』の存在として。
今、こんな関係になっても私は『好きだ』と言えない。何処まで不器用、そして愚かなのだろう。
真っ白な闇に包まれ、何処か遠くへ行く感覚。刹那的な快楽に包まれ、私は意識を手放した。

橘京子は、北高の前に立った。
「手始めに、まずはSOS団から血祭りなのですよ!」
涼宮さんの能力復活は、やはり最大の懸念事項なのです。そうなれば、やはり先程の佐々木さん達の様子を伝え、涼宮さんが入る余地は無い事を改めて思い知らせるのです!
そうなれば、キョンさんも涼宮さんから見放され、改めて佐々木さんのもとに行くのですよ。
恋愛なんて第三者が一番見えているものなのです。キョンさんの未練を徹底的に排除すれば、佐々木さんも幸せになるのです。
佐々木さんの現状には心を痛めていますが、今は佐々木さんには会えないのですよ。今は、佐々木さんの敵の排除なのです!

意気揚々と北高に不法侵入する橘を見ながら、森は人選ミスを心から悔やんだのであった…。

101『一方通行』:2013/08/15(木) 21:24:08
北高の文芸部室。そこには何をするわけでもない四人が、帰らぬ雑用係を待っていた。
…皆、自分達の取った行動に反省はしている。だが、被害者と加害者という立場は変わらない。
加害者からすると、悪ふざけの領域を出なかった。ハルヒはキョンならば笑って許すと頭から信じていたのだ。
周囲もいじめをやるなんていうのは予想外だったし、まさかクラスでもそうなるなんていうのも予想外だったが。
傍から見ていて、楽しかった。キョンが言い掛かりをつけられ、泡を食っている姿は、滑稽であり見ていて楽しかった。自分にしてもあくまで悪ふざけの積もりだった。
だが。現在も脈々と続く嫌がらせと、キョンへのいじめ。そのきっかけを作ったのは、自分。ハルヒは猛省したが、キョンは自分達を居ないものとして扱っている。
それだけに謝る事も出来ない。陰鬱な日々。そうしてしまったのは、自分達。発端は自分。ハルヒは重く溜息をついた。
ドアがノックされる。
ハルヒ、みくるの目が輝き、古泉の口元が上がる。長門も期待を込めた目をしている。
喜び勇んで開けたドアの向こうに立っていた人物を見て、皆が落胆したのは致し方ないであろう。
「こんにちはなのです!」
…パタリとドアが閉まる。
「開けて下さい!イジメですか?私までイジメるのですか?!」
「人聞きの悪い事を言うな!」
ハルヒが橘を部室に引きずりこむ。
「何の用よ!400字以内に答えて、そしてとっとと出て行って!」
ハルヒの言葉に橘が笑う。
「いえいえ、最近キョンさんがSOS団を辞められたと聞きまして。」
橘の表情は、猫が鼠を嬲るような表情だ。多分、キョンを迫害していた時の自分も似た表情だったのだろう。そう考えたら、本当に反吐が出そうだ。
多分、こいつは全て知っている。知った上で嬲りに来たのだ。古泉、みくる…長門まで顔を顰めた。橘は全員の表情を見渡す。
「歓迎されてませんね。では単刀直入に。」
わざとらしく咳払いをし、橘は口を開く。
「キョンさんは今、佐々木さんと一緒にいるのです。位置はキョンさんの家…ベッドの中と言えばいいですかね?」
想定していた事だが、事実として突き付けられては、やはり重みは違う。
「で?あんた何が言いたいのよ?別にキョンが何しようが、あたし達に関係は無いわ。佐々木さんに言っといてよ。良かったわね、って。」
「それはもう。」

102『一方通行』:2013/08/15(木) 22:11:52
橘にしてみると、ハルヒ達に徹底的にキョンを幻滅させ、キョンの更なる迫害を誘発して佐々木に気持ちを向かせる事が目的だ。
古泉が口唇を噛みしめる。橘の目的もそうだが、それに対し是非を言う立場にない自分への怒りも強い。何処の馬鹿が洩らした情報だ。古泉は下を向く。
「さて、とあれば佐々木さんとキョンさんが結ばれても何も言う事はない、というわけですね?
ふふ、イジメなんてやるような方達より、佐々木さんと一緒にいたほうが幸せなんて分かりきった話なのですが。イジメなんてクズの所業なのですよ。」
得意になって語る橘に、古泉はポツリと言った。
「…その行いで、自分がクズに成り下がったと分かっていますか?」
長門が口を開く。
「あなたがやろうとしている事は、更なる迫害の誘発。そして佐々木○○への侮辱。古泉一樹の発言は極めて妥当であると思われる。」
みくるはおっかなびっくり口を開く。
「…私が佐々木さんなら、他の人にそんな関係をバラされたくないと思います。特に…私達には。」
橘が言葉に詰まる。…まさか反論が来るとは思わなかったのだ。
「大体がおかしい話だわ。いくら私達にいじめを受けたとして、何で佐々木さんとキョンが急に関係を持つのかしら?
さっきの発言は聞かなかった事にしてあげるから、あんたの知る話を聞かせなさい。」
自業自得とはいえど、無残。尋問に来たはずが返り討ち。何をするにしても脇が甘い。それが橘京子である。
じっくり尋問され、橘は知る情報を全て吐いた。
佐々木がストーカー被害に遭い、キョンを山車に使い解決した事。その事を執着を受けた男からバラされ、学校に居場所がない事。
キョンの境遇もあり、二人が既成事実を作りお互いにお互いを居場所にしている事も。
話を聞き、ハルヒは手を顔にやった。
性格上、二人がそんな関係に頼らざるを得ない程にまで愚かだとは思えない。そうなったとしても、キョンか佐々木が拒否するだろう。
そうした判断すら狂わせるような事を自分達はしてしまった。
せめて幸せならばいい。ならば自分達も笑って祝福出来るし、その話をきっかけに話す事も出来る。だが。こうした関係であるならば、自分達に出来るのは一つだ。
「…やる事は決まったわね、皆。」
ハルヒの言葉に、皆がうなづいた。
「待つよりは、攻めるわ!キョンも佐々木さんも、私達が幸せにする!」
ハルヒはそう叫ぶと、椅子から立ち上がる。皆が続き、文芸部室には橘が残された。
「ちょっと付き合ってもらおうかしら?」
般若のような表情の森が、橘を引きずって行ったのは、また別の話だ。

続く。

103『諦念と執念』:2013/08/16(金) 11:39:51
学校での嫌がらせは確実に減りつつあるが、俺は別の問題に直面していた。それは。
「あんた、今度の土曜付き合いなさいよ。」
諸悪の根元たる団長様からの御達し。最も今は俺は無関係だけに言う事を聞く筋合いもないんだがな。
「お前が何を言いたいか、さっぱりだ。予定を話すなら、その日は佐々木と約束がある。よって参加は不可能だ。」
こう言っておけば、追求も来ないだろう。涼宮にしても、わざわざこうした面倒は避けたいだろうしな。
だが、この日の涼宮は違った。
「佐々木さんも一緒に来れば、何の問題もないわ。」
…一瞬、耳を疑った。少し参加しないうちに、随分とオープンになったんだな、SOS団は。
「断わる。お前と違って凡人たる俺は、これまでの学習の遅れを取り戻すのに必死なんだ。佐々木の教えのお蔭で、何とか成績が上昇しつつあるが、この流れを今更変えたいとは思わん。」
「お勉強、ねぇ。」
涼宮は溜息をついた。
「嘘つき。」
そう言うと涼宮は去って行った。一言、最近仲良くなっている阪中さんに今日は早退する、と伝えて。
勝手な奴だ。まだ巻き込み足りんか。あいつの辞書に満足という文字はないのだろう。
昼休み、屋上に行く途中。俺はまたぞろ久々の男に声をかけられた。
「お久しぶりです。」
大仰に溜息をつき、俺はそいつを無視しながら屋上へ向かった。そいつは後をつけてきたが、知った事でない。
涼宮絡みや、これまでの恨みつらみなら殴られてもいいが、過去の出来事ならともかく、今現在お前らと関わりたくねぇんだよ。
屋上はタバコを喫っている奴や、俺みたいに居場所のない奴が数人いた。こうした場所にいた事がある奴ならば分かるだろうが、こうした場所にいる連中には一種の連帯感がある。
ホームレスや不良が何故群れるか、という話だろう。所詮、人は一人でいるわけではないのだ。
声を掛けるわけでもなく、お互いに目配せをして終わるはずだった屋上は、異分子の登場に一気に非好意的な雰囲気となった。
イレギュラーの場所には、必ずイレギュラーがいる。類は友を呼ぶといっていい。別に孤高を気取る積りもなく、単に弾かれた者が集まり、身を寄せ合っているだけだが。
タバコを喫っていた奴が、こっちに向かって来る。どうやら古泉を排除にかかろうとしているようだ。
俺は古泉を無理矢理踊り場に連れて行き、後で話を聞くと伝えた。古泉は不承不承ながら納得し、階下へ行き…
屋上は何時もの静けさを取り戻した。タバコを喫っていた奴は、再度タバコに火をつけ、他の奴らは空を見上げたりグラウンドを見たり。
俺も潰れたパンを取り出し、口に含む。…どうやら、本当にここの住民として周りには認識されているらしいな。今更変えたいとは思わんが。
吹き溜まりにろくでなしが集まっているだけだ。その程度の話だ。
タバコを喫ってみたくて一度タバコを喫ってみたが、佐々木に怒られたのでタバコは止めた。大概には俺も主体性のない奴だな、全く。

104『諦念と執念』:2013/08/17(土) 03:50:54
最近、タバコを喫ってみた。
行動だけを真似て大人になれるわけでないが、ただのポーズとしては良いかと思い、喫ってみたが…あんなもの、よく喫えるものだ。
記憶にあった父のタバコ…エコーとやらを喫ってみたら、頭は痛くなるわ噎せるわ息は臭くなるわで、それこそ百害あって一理もなかった。その帰りにキョンがタバコを喫っていたのを見て取り上げて暫く説教をした。
ポーズを真似てもどうしようもない、と最もらしい理由を言い、タバコを取り上げて捨ててやった。我ながら身勝手だとは思うが、やはりあんな臭いを身に纏うのは堪忍願いたい。
…喫煙の効能は分かるが、臭いがダメだ。私には堪えられない。学内にある吸殻を見て溜息をつく。
進学校故に、皆ストレスがあるんだろうな。そう思い私は地面にあった吸殻を足で踏み躙り、地面に埋めた。
「…佐々木さんってタバコなんて喫ってたんだ?」
唐突に声をかけられ、私は後ろを向いた。そこにいたのは…
「涼宮さんか。驚かせないで。」
涼宮さんだった。
「持ってるなら、あたしにも頂戴。タバコってストレス発散にもなるんでしょ?」
「生憎と喫煙者ではなくてね。一度好奇心で喫煙したけど、気分わるくなっただけだったわ。」
涼宮さんは思い切り鼻白むとガムを噛む。私は近くにある自販機でジュースを買った。
「キョンと付き合ってるの?」
「…あれを付き合っていると呼べるなら、付き合っているんじゃない?ファジーなのよ。キョンに聞いても同じじゃないかしら。」
少なくとも、男女の仲ではあるが付き合っているわけではない。言葉悪く言えばセフレのようなもの。執着してきた彼の言うよう、爛れた関係だと言える。
「…セフレ?」
涼宮さんの言葉に、飲んでいたジュースを思い切り吹き出してしまった。
「…何でまたそんな直球に…」
涼宮さんは、とある情報筋だと言ったが…国木田くんあたりかしら?となれば中学の皆に知れ渡っていても不思議でない。一々否定するのも馬鹿馬鹿しい話ではあるが、肯定するのもどうかという話だ。
「セフレ…ねえ。」
強ち間違ってもいない関係だけに答えづらい。何より彼女に言質を取られてキョンの更なる迫害になっては目も当てられない。
「…あなたがそう思うなら、きっとそうなんじゃないかしら?」
お茶を濁して逃げようとした私だったけど、涼宮さんは私を真剣な表情で見詰めている。
「…どちらを答えても、キョンへの迫害の可能性がある以上、答えられない。そう思っているなら、正解は言ったも同然になるわよ佐々木さん。」
…鋭い。どうしてまたこんな聡明な人が下らないイジメなどやるのだろうか。対外的には傍迷惑な奇行癖の持ち主でしかないのだろうが、洞察力や観察力は人並み以上。それは能力喪失後も変わらないらしい。
「(でないと、自らがイジメの的になるだろうしね。)」
世の不条理を感じるが、それも彼女の資質のひとつだろう。だが。
「答えられない。それが答え。否定も肯定もしないわ。」
私は涼宮さんの目を見て言った。

105『諦念と執念』:2013/08/17(土) 05:23:26
放課後になり、俺は止む無く古泉の教室へと向かう。古泉は如才ない笑顔で迎えた。
「歓迎は出来んな。事と次第によっては扱いが手荒になるぜ。」
古泉は肩を竦めると、また如才ない笑顔を浮かべた。
「立ち話も何ですし、宜しければ文芸部室に行きますか?涼宮さんはお帰りになられましたし、そちらのほうが話もしやすいですから。」
古泉の言葉に、俺は露骨に顔を顰めた。
「断わる。俺は文芸部室に近寄るつもりはない。」
確かにそっちが都合はよかろう。長門や朝比奈さんにしても、あの二人の話も聞けるだろうしな。だが。
今更話す事は何もない。接近した理由も全てハルヒ絡みであった以上、ハルヒとの付き合いを絶った今、彼女らとの繋がりもないわけだ。それはお前にしても同様なんだがな、古泉。
明確な拒絶の意思に、古泉は溜息をついた。
「言い訳を宜しいでしょうか?」
「既に聞いている。」
団を抜ける時に、お前らの意思は聞いたよ。お前らは俺よりハルヒが大切であり、俺は仲間ですらなかったんだよな?
「それは語弊があります。我々の目的は確かに涼宮さんの観測。そちらを優先せざるを得なかった。」
確かにそうだ。お前にしろ長門にしろ朝比奈さんにしろ、ハルヒとの絡みがある時以外は俺を積極的にいじめなかったわけだからな。
けどな、だからこそ辛かったんだよ。あの時はお前らに助けてもらいたかった。我儘だと理解しているが、当時の俺にはどうしようも出来なかったからな。それすら甘えだった事は今ならよく分かるが。
全校生徒が敵に回ったも同然だった時、異常事態に対して動いた人間はいなかった。俺は単純にハルヒの力かと当時は思っていたが…
ハルヒはそれは願わないだろう。楽しんだだけで、後先を考えなく自分の前だけでやっただけだ。まぁ十二分にアホだが、そこらへんをあいつに期待するだけ無駄だ。
これは仮説だが、機関の人間も鱈腹いるこの高校でこれだけ事が露見しなかったという事は…機関の根回し、長門の力、未来の指示の何かしらかのものがあった。そう考えるのが妥当。
それならば、お前の話も納得がいくぜ。言葉は悪いがハルヒの観測の為に俺を売ったとな。
「…沈黙は肯定と見做す。」
「…否定しませんよ。」
…否定して欲しい仮説だったんだがな。まぁいい。終わった話だ。それに立場上仕方なかった話だろうしな。最初から仲間などと思った俺が愚かだっただけだ。
「話を脱線させたな。…で、用件は何だ?」
古泉は、一息つくと言った。
「佐々木さんとお付き合いされているんですか?」
「答えはノーだ。付き合っているわけではない。」
俺にはあいつを好きだという資格はない。だからこそ好きだとは言わない。どれだけあいつの存在が、俺の救いになっていたとしてもな。
いつか佐々木の傷が癒えたら俺は佐々木の為に身を引くつもりをしている。佐々木とふたりぼっちで過ごすのも悪くないが、このまま佐々木と居たら、佐々木まで堕ちる。
既に俺は手遅れだが、だからと言って佐々木まで付き合わせたくはない。

106『諦念と執念』:2013/08/23(金) 10:16:34
「疑問は尽きませんよ。」
「特別に疑問はないだろ。自惚れかも知れんが、恐らく佐々木に恋人として付き合おうと言えば付き合えると思うぜ?」

「何故?あいつはそんな無責任だと思えないけど?」
「責任の所在は、50%50%だよ。多分、私が望むならば世間一般の恋人になる事も出来るとは思う。」

「「だからこそ付き合えない。」」

「これから先、あいつなら幾らでもいい男と会えるだろう。」
「私でなくとも、彼を包む存在なんて、これから掃いて捨てる位出るわよ。」

「そんな奴が、佐々木の前に現れるまで…」
「キョンを任せられるような人が、キョンと出会えるまで…」

「「関係は続くと思う。俺(私)はもう駄目だけど、せめて佐々木(キョン)はこれ以上傷付けたくない。」」

自分が間違っているのは、本当に理解している。このまま関係を続け、お互いに依存していけば、どれだけ楽になれるのだろうか。
しかし。お互いに倒れるわけにはいかない。倒れるのは自分一人でいい。

「話は終わりだ。じゃあな、古泉。」
「話は終わりね。じゃあ。」
残されたハルヒと古泉は、深い溜息を吐いた。
彼等は理解しているだろうか?相手を思い過ぎ、自分の思いを蔑ろにしている事を。そして、最初から相手の思いを否定している事にも。
…病巣は深い、と古泉は溜息を吐き…ハルヒは口角を上げた。

続く。

107『AM4:00』:2013/08/24(土) 03:26:32
「そろそろ寝るか…」
これまでサボっていただけに、正直遅れを取り戻すのは大変だ。日々の積み重ねというものの大切さが痛切に身に沁みる。
佐々木の場合だと、小さな事の積み重ねがあいつを形成していっているのだろうな。
佐々木は実はとんでもなく不器用な奴なんだな、と思う。不器用であるのに、器用に振る舞う。だからこそあいつを勘違いする奴も多いんだろうな。
「(器用であれば、もう少し小狡く振る舞うだろうし、俺にしても佐々木と一緒にはいないんだろうが。)」
俺だって不器用だ。
もっと小狡くいけば、恐らくは佐々木を幸せに出来るのかも知れない。…まぁあいつを騙すのは不可能だろうが。多分俺はあいつを騙せない。
それが出来る程に器用であれば、ハルヒなんぞ赤子の手を捻るようなものだ。自分の気持ちすらコントロール出来るなら、それこそ人は救えない位に器用になるのだろう。
全て混ざりあっているからこそ、人は冷たく、そして暖かい。
外は闇が薄っすらと明け、深い群青色となっている。夜は明ける前が一番暗いというが…

明けない夜は無く、日はまた昇り、そして朝が来る。

未来への希望に溢れた言葉だ。意地悪く見れば、それはラットレースのような一日の始まりを示すような言葉だとも言えるんだがな。
辿り着けない日々。いつも漂うままで。佐々木と抱き合う時も、俺達は睦言はあまり口にしない。今は何を言っても嘘になるからだ。
「…………」
夜は白々と明けて行く。明けない夜はない。そして。

時間は誰にも平等に流れていく。

誰が停滞していようが、構いなくな。

108名無しさん:2013/10/01(火) 09:56:11
>>107
続きものなら題名は統一して副題だけ変える方式にしたら?
ここにSS投下するのは君だけじゃないんだよ
ほかの人のSSが投下された時ややこしくなると思わない?

109名無しさん:2013/10/03(木) 22:07:26
確かにそうですね。失念していました。
タイトルを『ふたり』として副題を組み入れたいと思います。
御指摘ありがとうございました。

110『新緑の頃』:2014/05/14(水) 00:21:12
*以前あったキョンと佐々木さんの幼馴染もの、『おさななじみ』の続き。

野球大会に出る羽目になり、長門に何とかしてもらいながら頑張っていたわけだが…
神の慈悲か、悪魔の一撃か。俺は見事に腰をやってしまった。
「災難だね、全く…」
ハルヒに一頻り笑われ、朝比奈さんの治療を受け、長門に謝り…後は控えの佐々木と喋っていた。
現在こちらの攻撃中。バッターはハルヒだ。
「野球は観戦しているだけでも楽しいね。」
「やれると更に楽しいんじゃないか?」
「どうだろう?僕の切れた運動神経は御存知かと思うが。」
「だなぁ。」
佐々木はかなりの運痴だ。まあ人は向き不向きもある。
「それにだね。運痴は運痴なりの楽しみ方というものがあるものさ。」
佐々木は桜の木を指差す。そこには小さなさくらんぼが成っていた。
「自生するさくらんぼなど、初めて見たよ。」
「ふむ。折角野外にいるから、その風景自体を楽しむ、か。」
そういう楽しみ方も悪くはない。
「今度は雑草についても見てみるかい?」
「親友、雑草という草はないぞ。」
俺の言葉に佐々木は肩を竦めて言った。
「植物学者でもあった先帝陛下が述べられてこそ、価値のある言葉だね。」
「うるせぇ。」
佐々木は足元に咲くタンポポを千切った。
「この時期でも咲くタンポポは、セイヨウタンポポだよ。非常に強い植物で、花一輪あれば再生可能だ。外来種はこうしたものもある。」
図々しい所は何処かのどなたと同じだね…といった佐々木に、ハルヒのファウルボールが直撃した。

111『新緑の頃』:2014/05/14(水) 00:37:47
「あー、折角のホームランボールが…」
ハルヒが鼻をこする。
「酷いよ!何するの涼宮さん!」
佐々木が当然の如く抗議するが…
「仕方ないでしょ!何かくしゃみ出て打ち損じたんだから!」
…あぁ、確かにあいつは図々しいな…
結局良い所まで行ったが、結果は敗退。皆でファミレスで残念会となる。
「貴方も大変でしたね。」
古泉が労ってくれたが…腰の痛みには変えられん。
「負けたというのにも関わらず、閉鎖空間が起きないのは奇跡ですよ。それだけ貴方と佐々木さんとの付き合いが楽しいという事でしょいかね。」
さぁな。仮説はいくら立てても仮説であり、実証が不可能なものは仮説しかないものだ。
「最近は閉鎖空間の処理もないし、今日は疲れたのでのんびりさせて頂きますよ。」
ニコニコとしながら、古泉が佐々木とポテトを取り合うハルヒを見る…。
佐々木も楽しそうで何よりだ。ああ見えて友達と呼べる女子が少ない奴だからな。
キャーキャーと年頃の女の子らしく騒ぐ二人を見て、俺も少し楽しくなった。
新緑の季節。新しい衣がサマになる頃。

112『新緑の頃』:2014/05/14(水) 00:54:59
…帰りに腰が痛いので佐々木の肩を借りて帰ったのだが、それが原因で閉鎖空間が発生したそうだ。理由を尋ねたが、古泉は頑として口を割らず…
まぁ俺の知る由もない話だ。

END

仲良し佐々ハルにしてみましたw
古泉を同性の親友ポジにすると、完全に悪友になりますね…
良ければ誰か本スレに転載して頂ければ助かります。

113『ユバス』:2014/09/29(月) 11:35:36
『ユバス』

佐々木「…うう…はっ、ここは?なんで私は縛られて…?」
ハルヒ「気が付いたのね。佐々木さん。」
佐「涼宮さん?あなたが私を縛ったの?」
ハ「そうよ。」
佐「理由を教えてくれないかな。場合によっては抵抗はしないから。」
ハ「理由?そうね。全てはキョンのせいね。」
佐「キョン?彼がどうしたの?」
ハ「佐々木さん。貴女とキョンは仲が好すぎるわ。アタシがとても入り込めない位に。だから思ったの。」
佐「…」
ハ「貴女をアタシの物にすれば、キョンも付属してくるってね。」
佐「それは私を性的に所有するってこと?」
ハ「そう。貴女がアタシ無しでは生きられなくなれば、キョンも私の物だわ。」
佐「…でも、それだとキョンを独占できないよ?」
ハ「いいのよ。一夫一婦制なんて普通過ぎる。アタシがルールブックよ!」
佐「じゃあ、私を所有したらちゃんと愛せるのかしら?さもないと飼い主に反抗するかもしれないわよ?


ハ「モチロン、たっぷりと愛情を注いであげるわ。貴女はとても可愛いし、アタシは男だろうが女だろうが

構わないもの。」
佐「それを聞いて安心したわ。私も貴女が好き。小学校の頃からずっとね。」
ハ「え?」
佐「貴女に憧れていたわ。今、こうなって嬉しいとすら思う。」
ハ「え?え?」
佐「ねえ、涼宮さん。この縄をほどいてくれないかしら?私は逃げないし、むしろ貴女にご奉仕したいん

だもの。」
ハ「えっ?あっ?そ、そうね。うん。ほら。」

114『ユバス』:2014/09/29(月) 11:36:41
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・


佐「どうかしら、私の愛撫?」
ハ「ああぅ…ぅあ…こ、こんなぁ…これじゃ逆じゃないのぉ…ひぐぅ…」
佐「もっと気持ち良くなって欲しい…こことか」
ハ「ああぁああ!!」
佐「こっちも」
ハ「はぅぅうん!!」
佐「素敵な声ね…」
ハ「はあはあはあ。ど、どうしてこんなテク…勉強漬けの貴女が…ああああ、またぁ!!」
佐「キョンは一年も何の連絡もくれなかった。貴女に魅了されていたの。でも仕方ない。」
ハ「?」
佐「私も彼に連絡をしなくても平気だった。どうしてだと思う?」
ハ「ま、まさか…」
佐「知り合った女の子を片っ端から毒牙にかけるのに没頭していたからよ。」
ハ「!」

115『ユバス』:2014/09/29(月) 11:37:24
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・

ハ「あぁんん…うふぅ…ひん…もう、ゆるしてぇ…私が悪かったですぅ…」
佐「貴女は何も悪くないわ。キョンを交際相手ごと自分の物にする、正しいことよ。」
ハ「ひあああぁああぁ!!」
佐「ねえ、涼宮さん。私が彼の事をあだ名で呼ぶように、私にもあだ名があるのよ。知りたい?」
ハ「はいい。知りたいですぅ…」
佐「中学のクラスメートの女の子がつけてくれたの。『親しい』女の子にしか呼んで欲しくない秘密のあ

だ名。『ユバス』」
ハ「ゆばす…?」
佐「佐々木ユバス。ササキュバス…面白いでしょ?」
ハ「ササキュバス…ザ・サキュバス!?そんなの…勝てっこない…ふあああん!」
佐「貴女にも呼んで欲しいな。」
ハ「はいい。ユバスお姉さまぁ。」
佐「いい子ね。」

116『ユバス』:2014/09/29(月) 11:38:22

・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・

ハ「ユバスお姉さま…ハルヒはお姉さまの物ですぅ…」
佐「嬉しいわ。これでキョンが私を選んでくれ易くなったわ。貴女を選べは貴女一人だけど、私を選べ

ば両方手に入るんだもの。可愛い貴女との抱き合わせ販売ね。くつくつ。」
ハ「お姉さまだけでなく、キョンにも可愛がってもらえるの?ハルヒは幸せ者ですぅ。」
佐「でも単体の貴女の魅力を+100として、私が付属すれば-50されてしまう。これでは…」
ハ「そんな!ユバスお姉さまはとっても魅力的です!」
佐「でもキョンは見向きもしてくれなかったわ。それが事実よ。」
ハ「ううん…そうだわ!みくるちゃんと有希もつけてコンプリートセットにしたら!」
佐「それはお仲間の事?いいの?」
ハ「モチロン!私たちSOS団は一心同体だもの!」
佐「じゃあ、セッティングはお願いね。」
ハ「はい! ユバスお姉さま!」
佐「くつくつ。でも人前ではそのあだ名は使わないでね。口調もね。」
ハ「はい…ええ。わかったわ。佐々木さん。」
佐「よくできました。ご褒美をあげる。」
ハ「あんっ…お姉さまったらぁ…ぅ…あ…あああ!」



117『ユバス』:2014/09/29(月) 11:40:25
↑すみませんが、海外からなので本スレに書き込めません。

どなた様か、本スレに転載いただければ嬉しいです。

118名無しさん:2014/10/13(月) 09:28:03
転載してきましたミスってませんように

面食らったけど佐々木+ユバスでサキュバスはなるほどなーとw

119ユバス:2014/10/15(水) 17:25:54
↑ご親切にどうもありがとうございました。

120ハロハロ愉快:2014/10/18(土) 10:45:02
『ハロハロ愉快』

ハルヒ「ハロウィンよ!皆、仮装して来た?ちゃんとモンスター限定になっているか、チェックします!

まずはキョン!」
キョン「おい、ちょっと…」
ハルヒ「うん。狼男ね。よし、次!」
キョン「狼じゃねえだろ!どう見たってトナカイだろ!?なんだ、この使い回しは!」
ハルヒ「次!有希は雪女ね!似合っているわ!」
長門「…」
ハルヒ「お次はみくるちゃんね!…あれ?緑の髪に未来的なドレス、ねえ、こんなモンスターいたっけ?」
朝比奈「みくるみくるにしてやんよ……ですぅ。」
ハルヒ「ああ、電子の妖精ってことね。可愛いから、よし!

次は古泉くん。流石は副団長、完璧な透明人間ね!全く見えないわ!」
古泉「」
キョン「いや、あいついるのか?欠席してないか?」
ハルヒ「よし、全員合格よ!」

121ハロハロ愉快:2014/10/18(土) 10:46:28
キョン「お前の仮装は何なんだ?鳥みたいだがダチョウか?」
ハルヒ「こんなダチョウがいるか!当ててみなさいよ、少しは頭を使いなさい!」
キョン「鳥だからな…ガルーダ?フェニックス?ロック鳥?」
ハルヒ「ブーッ!全てハズレ。降参?」
キョン「ああ。」
ハルヒ「ハルピュイアよ!ハーピーともいうわ!」
キョン「涼宮ハーピー、ってか。やかましわ!」

佐々木「…………」
キョン「おい、そこでさっきから何を観察している!」
佐々木「僕の出番はいつ来るのかなあ、とね。」
キョン「参加したいのかよ。ってか、その18禁の仮装は…」
佐々木「サキュバ…」
キョン「言わせねえよ!服着ろ!」



京子「セリフさえ無かった。私の立場無いです。橘だけに。」

122ハロハロ愉快:2014/10/18(土) 10:48:17

海外なので本スレに書き込みできません。

もしよろしければ、転載して下さると嬉しいです。

123名無しさん:2014/10/19(日) 08:58:24
転載してきましたー
18禁の佐々木さんはキョン以外の男に見させてはいけません!なので古泉GJ

最初に思い浮かべたのはメガテン系のサキュバスでセーフっぽいけどウィザードリィ5のサキュバスは絶対アウトだわw

124ハロハロ愉快:2014/10/19(日) 20:25:36

ありがとうございました。助かりました。

125神前結婚式:2015/02/12(木) 23:02:29
『神前結婚式』

キョン「突然だが、佐々木、結婚しよう!」
佐々木「そうしよう!」
キョン「結婚式は神前でいいか?」
佐々木「僕は形式主義者ではないからね。君が僕らのために選んだものならそれが一番素晴らしいと思うんだ。それはそうとしてキョン、君が神を信じていたとはね。」
キョン「いや、全然だな。」
佐々木「くっくっく。僕もさ。ただ、強いて言うならば、信ずるに足る神様について一つ心当たりがない訳ではない。」


んで、結婚式当日。

ハルヒ「ちょっと、アンタたち!何をアタシん家の前で結婚式を挙げてんのよ!!嫌味か?嫌味なのか!?」


終わり

126名無しさん:2015/02/14(土) 13:58:00
オチに笑った乙乙
ハルヒがツッコミさせられるSSは面白いの法則がこんな所にまでww

127関西弁萌え:2015/02/19(木) 11:08:57
『関西弁萌え』

キョン「実は、俺…関西弁萌えなんだ。」

ハルヒ「!」
みくる「?」
長門「…」
佐々木「…」

ハルヒ(クッ、盲点だった!この可能性を見逃すとは迂闊!いいえ、落ち着くのよ、ハルヒ。そうよ、鶴屋さんにレッスンを受ければ…。中の人的に。」

みくる(かんさい…?かんさいなんて未来では禁則事項が禁則事項して禁則事項なのに…)

長門(データ検索中…関西弁。関西独自の抑揚を持つ。多彩な感情表現に富むが、その分、論理性が犠牲となる。…鬼門!この言語は私にとっては鬼門!習得は困難…)

佐々木「なんやねん、そんならもっと早よ、わしに言わんかいや。いっくらでも関西弁、使こたるさかい、なんぼでも萌ええや。」

ハルヒ(柄悪!関西弁の男言葉、めっちゃ柄悪い!)

長門(『わしっ娘』キタ!)

みくる(うわあ、キャラ崩壊してますう。)

キョン「も、萌え萌えーーーー!!」

ハ・長・み「萌えるんかい!!!」



128関西弁萌え:2015/02/19(木) 20:40:24
おまけ

佐々木「キョン〜。めちゃめちゃ好っきやで〜。」

キョン「うおおおおおおっ!!!」

129名無しさん:2015/02/28(土) 19:24:12
ごめん今回はピンポイントで
>みくる「?」

>長門(『わしっ娘』キタ!)
あたりは好きだけど全体的には今一つといった感じごめん

130名無しさん:2015/02/28(土) 19:25:42
うわぁ最後のごめん消し忘れてた

131下の名前:2015/03/31(火) 19:06:25
佐々木「ウウッ、グスッ…」
橘「さ、佐々木さん! どうなさったのですか!?」
佐々木「橘さん…貴女は『キョコタン』って仇名があるんだよね?」
橘「え、ええ、まあ…」
佐々木「周防九曜さんは『クータン』と呼ばれてる。どちらも下の名前を基にした仇名よね?」
橘「そ、そうかもしれませんね…」
佐々木「涼宮さんは『ハルヒ』と下の名前を呼び捨てにされている…」
橘「そ、そうでしたっけ…?」
佐々木「私も、キョンに下の名前で呼ばれたいよお!」
橘「佐々木さん…おいたわしや…」
佐々木「ウッ…ウッ…」

132名無しさん:2015/04/01(水) 17:24:45
⌒(`Д´)⌒<佐々木さんとキョンさんは名前を出すことが禁則事項同士でお似合いなのです!

133下の名前:2015/04/02(木) 11:43:15

素晴らしいオチを着けて下さってありがとうございます。

調子に乗って書いてみました。


134僕の最高の友達:2015/04/02(木) 11:45:32
キョン「佐々木、そんな事で悩んでたなんて気付いてやれなくてスマン。泣き止んでくれ、下の名前くらい、いくらでも呼んでやるからな!」
佐々木「キョン…」ナミダメ
キョン「行くぞ、………!あれ?………!!」パクパク
佐々木「キョン?」
キョン「くそっ、声が出ねえ!………!………!!………!!!」パクパクパク
藤原「ハハッ、こいつは傑作だ!現地人、お前、禁則が懸かっているじゃないか!」
キョン「何だと、………!くっ、負けてたまるか、………!!………!!………!!」パクパク
藤原「無駄だ!誰が懸けたか知らんが、時間管理局と同様なら、脳の言語中枢と呼吸中枢を麻痺させる筈。このまま抗い続ければ、お前は何も言葉を話せなくなり、終には窒息死する。」
キョン「それでもいい!佐々木を、………を笑顔にさせずに止められるか、………!」パクパク
佐々木「キョン、もう止めてくれ、君が死んでしまう!」
キョン「………!………」バタッ
佐々木「キョン!!」
藤原「言わんこっちゃない、愚かな奴だ。」
佐々木「呼吸をしてない…人工呼吸するよ!(死なないで、死なないで!)」マウストウマウス
藤原「ハッ、こいつには荷が重すぎだったな。」
佐々木「諦めたらそれまでだ。(生きて、生きて!)」マウストウマウス
藤原「だが、お前なら運命を変えられる。避けようの無い滅びも嘆きも全てお前が覆せばいい。その為の力がお前に備わっている。」
キョン「………!(そいつの言葉に耳を貸したら駄目だ!)」
佐々木「本当かい?」
キョン「………!(騙されるな!そいつの思う壺だ!)」

ピカーーーーッ!

・・・・
・・・
・・


ハイパーアルティメット佐々木「これからの僕は何時でも何処にでもキョンと居るんだよ。」
キョン「ちょっ!」

135名無しさん:2015/04/05(日) 18:27:18
ごめんなさい何とか気の利いたレスしたいけどググらなきゃまどマギネタだと分からなかったくらいに無知故に無理っス…

136眠気覚まし:2015/04/09(木) 11:32:45
『眠気覚まし』

キョン「……」ウツラウツラ
佐々木「キョン、眠いのかい?」
キョン「ハッ!?スマン、せっかく無理言って勉強を見て貰っているのに…」
佐々木「例の部活かい?」
キョン「まあ、それもあるが、要は俺の自覚が足らんのさ。情けないもんだ。」
佐々木「じゃあ、眠気覚ましに体を動かしてみようよ。」
キョン「そうだな。何がいい?」
佐々木「柔道をしないかい?」
キョン「柔道?こんな狭い俺の部屋の中じゃ、体をぶん投げたら壁が壊れちまうぜ?」
佐々木「くっくっく。柔道と言っても投げ技ばかりじゃないさ。締め技、関節技、固め技と色々あるんだ。特に固め技は30秒間押さえ込めば一本になる程だ。つまり、それ程脱け出すのが大変なのさ。短時間に全身の筋肉を使う上に、広い場所でなくてもできる非常に効果的な全身運動なんだよ。」
キョン「なるほどな。」
佐々木「じゃあ、早速始めよう。僕が固めるから、君は仰向けに寝てくれ。僕が合図したら脱出開始するんだよ?」
キョン「よし、分かった。」ゴロン
佐々木「『上四方固め』!脱出開始!!」カバッ
キョン「!」ジタバタ

・・・・
・・・
・・


佐々木「キョン、眠気は醒めたかい?」
キョン「あ、ああ…」ポー
佐々木「じゃあ、勉強再開だ。」
キョン「あ、ああ…(桃源郷だった…)」ポー
佐々木「(くつくつ。次は『縦四方固め』にしようかな…?)」



137名無しさん:2015/04/11(土) 15:42:40
上四方固めではキョンの匂い満喫で佐々木さんの方が嬉しい度合い高そう
きっと佐々木さんポーカーフェイス頑張ったんだねw

138『ソード・ミストレス佐々木』:2015/04/22(水) 11:17:01
『ソード・ミストレス佐々木』


鶴屋「みくるがやられたようニョロ。」
古泉「彼女は我々SOS団の中でも最弱の存在。何とも歯痒い事です。」
長門「………」

ズバババッ!!

佐々木「よし。これで文芸部室への扉が開く筈。」
佐々木「!」
佐々木「ここが文芸部室だったんだ!」
ハルヒ「よく来たわね。貴女に言っておくわ。キョンはガミガミうるさいので家に帰しておいたわ。それから私は『異世界人の石』が無いと倒せないと言われているけと、別に無くても倒せるわ。」
佐々木「くっくっく。ならば僕からも言わせてもらうよ。これはキョンと僕とがイチャコラする話のような気がしたけど、別にそんな事は無かったよ!」

佐々木さんの勇気が世界を救うと信じて!


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