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企画リレー小説スレッド

82 メメントリレー小説(全文をつなげて正しい順序にしたもの) :2008/03/14(金) 21:16:37
猫柳は外へ出たかった。
<教会>の治める世界は息苦しい。<教会>は猫柳のような不適格者にフェンダーとして生きる道を示すが、あれは処刑と同じだ。
外世界から世界を守る戦士といえば、聞こえがいいが、つまりは存在置換によって軍の規格部品に加工されるということだ。
しかし<教会>こそがもっとも外世界と近い。猫柳は決意を胸に志願した。
もうすぐだ。フェンダー<可能捜索者>たちが集う忌まわしい<教会>、外へ繋がる境目の世界に、自分たちは立っている。
 存在置換を最終フェイズに移行される前に、猫柳たちは逃げ出すことにした。
 夜が来たら、自分たちは心まであの冷たい歯車に押し潰されてしまうから。
 そうしたら、きっとあの乾いた土みたいに冷たい、昆虫の目をしたフェンダーたちと同じになってしまう。
 このぬくもりが消えてしまう。
 嫌だな、と思った。多分、二人同時だった。
 外に出たら、セルマの顔を見てみたい。
 抱かれながら、唐突にそう猫柳は思う。
 それとも何か他に見たいものがあったのかもしれない。無かったのかもしれない。
 そうして、最後のキーはそろった。ここから出るための。
 猫柳たちが<教会>に仕掛けた一つ目の爆弾が破裂する轟音。鳴り響くは物悲しい鐘の音。
 きいきいとまじり合うことのない不協和音を奏でる二人の身体。
 持たざる者の叛乱を予期せぬ管理者は慌てふためき当惑することだろう。
 「ざまあみろ」
 セルマは駆けながら小さく呟いた。
「案外、僕らって壊されてデータをリセットされる前は、恋人同士だったりして。」
「…下らん考えだ。死ぬ前も死んだ後も興味ない。今の俺達こそが全てだ。」
「…うん、絶対二人で生きて戻ろうね。」
 猫柳が地下通路に潜り込むと当時、ついに食料庫の扉が蹴り破られた。
 猫柳は走っていた。セルマが後ろに続いていた。砂煙が舞っていた。
 フェンダーの放つ弾幕が、セルマの腹部を掠め取った。体が地面を転がり落ちる。猫柳は振り返る。
 セルマの損傷は激しかった。頭部と上腕部しか残されてはいなかった。エネルギーが漏洩し、体内から逃げていく。もうじき機能停止する。
 セルマは満天の星空に向けて、右手に小さな何かを掲げた。
 突き出されたそれを見て、猫柳は何かを託された経験を走査した。
 該当記録はない。そんな経験はない。猫柳は何一つ託されたことがなかった。受け継いだことがなかった。己の命でさえ。
「――――」
 躊躇う猫柳の手に、セルマはロケットを握らせた。
「こいつを持って先に行け」
 爆音が足元を揺らした。フェンダーたちの足音はすぐそこまで迫っている。
「余計なことは考えるんじゃあない。誰かが、これは伝えなくてはならないんだ。
 その目的に一番適しているのがお前だというだけだ……早く、行け」
 扉が開いた。猫柳は走り出した。
破片が身体を掠め、胸のロケットが千切れた。
一瞬反応が遅れ、最後の一弾が猫柳の腹を刺し貫き、爆散した。
青空に散らばってきらきらと光る自分の部品を見て、猫柳は綺麗だなと思った。
落ちながらずっと目を開けてそれを眺めていたが、視界にノイズが混じり出し、ほどなく何も見えなくなったので、開けているのをやめた。


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