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第1回8番(XI)
:2008/03/10(月) 01:06:18
デフォンさんに、車椅子を押してもらう。これはなかなか、心地のよいものだった。
「今度は、デフォンさんの方から尋ねてきてください。散歩道で偶然会うのを待つなんて、私絶対嫌ですからね」
「君、実は相当わがままなのかな」
「ヘリステラさんに曲者認定されました。なんだか苦手がられてるみたいです」
「き、君! あの捩じっくれたヘリステラ教授と対等に渡り合うようになったら人として終わりだぞ!」
腐っても師弟か、と思う。
「私も、ここの人たちみたいに勉強してみようかと思います」
「それは、研究者になるってことかい」
「自分がどんなものにお金を出しているか知っておくのは、悪いことじゃないと思います。それに、皆さんは私の夢をじろじろ覗いてきたんでしょう? 覗かれっぱなしじゃなんだか癪です」
「プライバシー、侵害し放題だったからねえ」
「そうですよ。それに私の夢って、将来の研究のためとか言って保存されたままなんですから」
「まあ、頑張るといいよ。勉強すればするほど、僕たちがどれほど凄いか理解ができて、敬意も湧こうというものさ」
「あ、そんなこと言っていいんですか。人類史上最長記録、精神年齢二千歳の私は有り体に言って天才ですよ。すぐに追いついちゃうんですから」
「精神年齢ってそういう意味だったかなあ。新しい測定法が必要だね」
からかおうとしても、のらりくらりとかわされる。日ごろヘリステラさんに鍛えられているのか、ぼうっとしているように見えて彼もなかなか手強かった。
「身体を鍛え直して丈夫になったら、一度国に帰りたいです。思い出として覚えていることは何もないですけれど、一度はこの目で見ておかなきゃとも思います」
「今は平和になっているし、君さえよければそれもいいと思う。自分の前世を知りたいとか、そういう感覚なのかな」
「そういうものだと思います。あと、それと、」
車椅子の車輪が、まだ残っている落ち葉を踏む。たしかこの地域も、冬には雪が降るはずだ。
「お墓参りが、したいです」
END
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