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企画リレー小説スレッド

70 第1回8番(X) :2008/03/10(月) 01:03:34
 デフォンさんが動揺する様子はなかったし、かといって頑なになることもなかった。そのくらい何でもないぞという感じで、自然に微笑み続けている。
「いちばんなさそうな結論だったから、意外性はあったかな」
「どうして、分かりました?」
「気になるかい」
「気になります。それが分かるということは、私が眠りにつくとき何を考えていたか、デフォンさんには分かっているということなんです」
 そうなのだ。この時の私は、私自身がどういうつもりであんな夢を作り出したのか、もう覚えてはいなかったのだ。自分がかつて何をしたか、知識としての記憶はある。たとえ私があの頃の自分と全く違う人間になってしまったのだとしても、無視していくことはできない問題だとも思っている。けれど、では、あの夢は何だったのだ?
「ヘリステラ教授の用意していた資料が、分かりにくい書き方をしていたからいけなかったんだ。六年前の礼拝への参加者は六十一人だった。それに施設関係者が九人と、後から飛び込んだ施設長の弟が一人。つまりあの事件の被害者の人数は」
「えっと……あ、七十一人?」
「そう。それに、近隣にいた海外義援隊が合わせて四十四人だった。片方だけならともかく二桁の数字が二つも符合している。これはもう偶然ではないと思った。人物関係も、概ねで一致するしね。夢の中で四十四士の二名だけが名前を持って登場したのは、君に話しかけた義援隊が二人だったからだろう。科学者としてこういう推論の仕方はよくないのかもしれないけれど、これは言わば君が仕掛けた"なぞなぞ"だからね。そのあたりの予想をとっかかりにして、現地調査を依頼したよ。いくつかの固有名詞が一致して、用いられた兵器がファーゾナーという試作名だったことも分かった。ここまで来れば、仮説の信頼度は非常に高くなる」
 ああ、と思った。七十一という数字を、私は意識していなかった。しかし、夢の中にはしっかり投影されていたのだ。私が手に掛けた彼女らをキュトスの姉妹と見るならば、たしかに私は兄であるキュトスを救おうとしたアルセスだった。だから、私の夢の中でもキュトスはアルセスの恋人でなく兄だったのだ。
「結果として、君のお兄さんは助かった」
 そこでやっと思い出す。前世の記憶のように、思い出す。兄は、私を責めるようなことは言わなかった。けれど、自分が助かったのに、その顔はとても悲しそうだったのだ。
「私、後悔しました。兄が殺されないですんだことは、嬉しかった。でも、兄はとても悲しそうで、そのときになってやっと私は後悔したんです」
「事件で、一人だけ息のある人がいたそうだね」
「はい。容態は危険だとも聞いていて、でもすぐに大きな戦闘が起きてしまって、彼がどうなったかは……」
「彼は、助かったそうだ。名前はクリス」
 きっと私は、やり直しをしたかった。自分の間違った行いを、ちゃんと止めて欲しかった。本当は自分で助けを求めるべきだったけど、それすらできないくらいに私の心は弱かったから。だから私はアルセスになり、夢の中に逃げて隠れた。誰かが叱りに来てくれるのを、拗ねた子供みたいにずっとずっと待っていたのだ。
「ごめんなさい」
 喉の奥から絞り出そうとした声は、どうしてもかすれしまった。
「わがままを言って、ごめんなさい。みんなに迷惑をかけて、本当にごめんなさい」
「研究所の誰もが、君のことを思っていたよ。だから今、君が元気になってみんな本当に喜んでいるんだ」
 私はもう六年前とは違う人間になってしまって、遠くなってしまった故郷や過去に感慨を抱くことすらできない。けれど、私が眠っている間、沢山の人が走り回ってくれていた。デフォンさんも、他の人も。そして彼らは、夢の奥深くに隠れている私をちゃんと見つけて、そして叱ってくれたのだ。そのことを考えた時だけ、私の胸はひどく熱くなる。目覚めて以来、デフォンさんの前で、私は初めて感情に任せて声をあげることができた。


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