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59 第1回8番(16)エアル=フラベウファ・ヘルモンド :2008/03/10(月) 00:10:44
「また、君か」
 アルセスがメクセオールに槍の穂先を向ける。しかし、その意識は彼本人に向いていない。
「満足だろう。これで君の娘たちは皆僕の手から解放された。もう僕に用はないよね。だったら、ここでやめてくれ。その男に協力する理由が、君には何もないはずだ」
 エアルは、従わない。その魔力を横溢に滾らせながら、メクセオールを包んだままでいる。ここを退くつもりが、彼女にはなかった。
「そうか。僕の息の根を止めなければ、気が済まないか。憎まれたもんだなあ!」
 アルセスの言葉は、いつも哀しい。しかし、言葉を持たない彼女には、自分の意思を伝える術がない。ここで彼を討つことだけが、彼女にできる最大の表現なのだ。
「さあメクセオール、前座が長々とやり合っている内に、僕の槍はこの空間を最適化したぞ。勝負は一瞬だ。お前もせいぜい狙って来るが言い。憎悪にまみれたその槍も、僕の命がご所望らしい」
 上段に槍を構え、アルセスが一歩を詰める。しかし、メクセオールは動じない。ただ、微かに眉を寄せる。
「お前は、何を言っているのだ。アルセス」
 メクセオールの言葉には、今はじめて怒りが含まれていた。それは彼がこれまで培ってきた思想などとは全く無関係の、ただ「怒った」という感じの怒り方だった。そのあまりに素朴な感情に、エアルは驚く。
「憎悪だと? 遺していった者の思念が、この武具にはまだ残っているぞ。これは誰だ。お前の妻だったエアルか、それともキュトス本人なのか?」
「何を言っているのか、分からないな」
「分かるまい。もういい、来い」
 それだけの会話だった。それだけのことで、エアルは胸の透く思いがした。自分の伝えられなかった思いが、この男によって言葉にされた。それだけで、エアルの心は軽くなったのだ。この男は、自分をただの武器として扱ったメクセトとは違っていた。
 先に、アルセスが動いた。紀元槍が放たれる。それをメクセオールが受ける。さらにアルセスが追撃し、これもまた無化される。そのパターンが幾度か続く。この調子が続けば相手は呪いで自滅する、そう読んだアルセスがほくそ笑み、直後に何かがおかしいとその顔が歪むものの、やはり同様に槍を繰り出す。その最後の一撃をメクセオールは防ごうともとせず、しかし何かに阻まれて彼の肉体には届かない。それが《羊膜》であるとアルセスが気づく前に、キュトスの恩寵を受けた白き槍がメクセオールによって振るわれる。
「なぜだ」
 白き槍が、今たしかにアルセスの身体をとらえた。
「なぜだ、キュトス」
「キュトスの呪いを解いたのは、お前だろう。あちらでじっくり叱られてこい」
 勝負が決した。


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