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企画リレー小説スレッド

50 第1回8番(α)書紀神レーヴァヤナ :2008/03/07(金) 04:12:57
 黒のパンツスーツという格好で、レーヴァヤナは書棚を整理していた。普段は司書のソルキレウスたちに任せているのだが、彼女らが読める文字には限りがある。神の図書館の司書たるもの、語学に堪能でなくては務まらないのだが、則天武后が趣味で拵えた《則天文字》やら、岐阜本光健が十歳のときに友達の金城ひろしと考えた《ミッタケ文字》やら、グレンデルヒが自分自身を讃えるためだけに作成した《誉れ高きグレンデルヒの栄光文字》やら、そんなマイナーどころまで彼女らがカバーできるわけもない。よってそんな特殊文字で書かれた書物については、レーヴァヤナ自身が整理することになる。
 そうしている内に、隣の椅子でうたた寝をしていたピュクティエトが身じろぎした。久しぶりに訪ねてきたピュクティエトは、ぽかぽかと暖かい春の陽気に誘われて、静謐であるべきこの図書室で不遜にも寝息を立てていたのだ。ようやく目を覚ましたピュクティエトは眠気覚ましに大きく頭をがくがくと振り、困惑しきった顔で口を開く。
「すまない、しくじった」
 ピュクティエトがこの図書室で居眠りを始めた頃から、レーヴァヤナはウィアドを通じてことの顛末を見届けていた。眠りに落ちた下位の世界で、アルセスの写像を見つけたピュクティエト。性懲りもなくお節介を焼く彼の姿に、レーヴァヤナは一人嘆息を漏らしていた。そして、結果は案の定だ。
「本当に懲りないな、君は」
「すまん。この通りだ」
「アルセスに神話構造の講釈をする前に、まず自分の神話的挙動がどんなものかよく自覚したらいいと思うぞ? ほら、神話事典の自分の項目がどうなっているか言ってみたまえ」
 レーヴァヤナはピュクティエトを容赦なく睨めつける。うな垂れる彼は、しぶしぶとそれに答える。
「……ピュクティエトは無関係な事象に強引に干渉したがり、その結果としてしばしば無用な闘争を引き起こす……」
「そう、その通り。……分かっているなら、もう少し慎みを持てないものかな?」
「言い訳もない。余計なことをした」
 ピュクティエトは机に両手をついて平謝りしている。実際、余計なことだった。アルスタの身柄を拘束したことで、ピュクティエトはアルセスを追い詰めたつもりだった。しかし、アルセスの因子を持つ者はアルスタだけではない。同じヘルモンド家の男子である以上、クリスもまたその心の内にアルセスを宿しているのだ。
「アルスタを見限ったアルセスは、クリスを自分の新たな器としてあっさり自由の身を手に入れた。そのあたりのことは君も考慮に入れてくれているものだとばかり思っていたのだが、どうも見込み違いだったようだな」
「うっかりしていた」
「まさにうっかりだ。神話的うっかりさんだな、君は。滝にでも打たれてくるといい」
 クリスの身体を手に入れると、アルセスはすぐ『石板』に向かった。彼は、そこに自分の肉体を隠していたのだ。本来は、自分が復活したときのために保存しておいたのだろう。しかし最後の生贄となるはずだったクリスは、いまやアルセス自身を宿す依り代となっている。メクセオールたちの監視があっては、アルスタを生贄とすることも不可能だろう。 「ヘルモンド家の人間をあと一人屠るだけで自分は復活できるのに、最後の最後というところでクリスもアルスタも生贄には使えない。それどころか、もたもたしていれば君が全てを台無しにしてしまう。アルセスが置かれていたのは、まさにそういう窮地だった。慎重なあいつも、ここに来て遂に強攻策に出たのだな。ヘルモンド家の最初の人間である、アルセス自身の肉体を最後の生贄として奉げると」
 クリスにアルセス自身の肉体を殺害させ、七十一人目の贄を屠ったアルセスは物理世界に復活した。神の力によって、アルセスは『石板』エクリオベルクを瞬く間に修復させる。ここでさらに運が悪かったのは、言理竜エル・ア・フィリスから離脱してきたアウター《双曲線》が『石板』の中に潜伏していたことだ。アルセスは、自分と同様に竜と敵対に敵対する意志を持つ《双曲線》との同化を選択した。
「アルセスの見境のなさにも呆れるが、奴とアウターをわざわざ引き合わせたのは君だ。おかげで、ことは彼らの世界だけの問題ではなくなった」
「奴を止めることができなければ、我々の世界束全体に累が及ぶか」
「そういうことだな」


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