したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | まとめる |

企画リレー小説スレッド

49 第1回8番(11)クリス・ヘルモンド :2008/03/07(金) 04:09:39
 急に猛烈な恐怖にとらわれて、わたくしは刑事をなぐりつけたのです。そのとき刑事はねむっていましたが、めざめて間もなかったわたくしはそういった判断がつかないほど狼狽していました。
 なにかに追われるように、わたくしはのがれてきました。とても嫌な感じがしていました。それはわたくしが小さい時分から感じていたものでした。おじいさまやおとうさまが、突然そんなふうになるのでした。彼らが相ついで亡くなると、今度はにいさままでがそうなりました。普段はとてもやさしいにいさまが、ときにある瞬間だけ恐ろしい面をのぞかせるのです。それはとても酷薄で、寒々としていて、わたくしに憎しみをむけてきました。
 その恐ろしいものが、いままさにわたくしを追いたてています。いくら夢中で走っても、それは消えてくれません。自分が刑事のことを恐れていたわけではないことに、わたくしはもうとっくに気づいていました。それはわたくしの中にいたのです。おじいさまの中にあり、おとうさまの中にあり、にいさまの中にあったものが、ついにわたくしの中でも目ざめたのです。いくら息をせいて走っても、わたくしはわたくし自身からのがれることはできません。
 走れ、とそれは言いました。わたくしは恐ろしくて、あいかわらず雪の森の中を走りつづけました。からだの限界はとうにきていましたのに、それは歩くことすらゆるしてはくれません。見なれぬものがありました。おどろくほど滑らかで薄い板状の青いなにかが、雷を落とされたように焼けこげてくだけていました。
 触れ。言われて、わたくしは触れました。突然、そばにあった岩がくだけました。その中で人が眠っていました。殺せ。わたくしはためらいました。なぜなら、その人の顔はにいさまとよく似ていたからです。殺せ。言うことを聞け。いつの間にかわたくしの手には細身の短剣がにぎられていました。けれどわたくしの身体は動きません。まるで寝つけぬ夜の金しばりのよう。安心しろ、そいつはお前の兄じゃない。教えてやる、それは僕だ。僕の身体だ。わたくしの手は震えていました。自分の手が自分のものではないようです。
 本当はお前を最後の生贄にしてやるつもりだったんだ。なのに、くそ、あいつらめ。はじめは不確かな圧迫感であいまいに追い立てようとしていたそれも、気がせいてかだんだんと大胆になってきたようです。わたくしの中に、今やはっきりとわたくしでないものの存在を感じとることができました。さあ、僕の心臓に刃を立てろ。僕自身がお前の代わりの生贄になってやろうというんだ。それが不満なら、お前の兄を生贄に奉げるぞ。にいさまの名が出たことで、わたくしはまたひどい恐怖におそわれました。自分の意志を自分のものとも思えないあいまいな感覚のまま、わたくしは腕をふりかぶりました。そして、始祖アルセスの心臓をえぐったのです。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

■ したらば のおすすめアイテム ■

ガールズ&パンツァー これが本当のアンツィオ戦です! [Blu-ray] - 水島努

ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ! ドゥーチェ!

この欄のアイテムは掲示板管理メニューから自由に変更可能です。


掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板 powered by Seesaa