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企画リレー小説スレッド

17 第一回4番(2) :2007/09/24(月) 22:31:58
「美にしてグロテスク……」
「は?」
「彼女の姿さ。あれを見て、そう思うだろう?」
 そう言って彼女は顎をしゃくる。
 確かに、彼女は美しかったが、彼女に繋がる巨大な機械も彼女の一部と考えれば、それはグロテスクな姿だと言えた。
「あの仰々しい機械さえなければ『眠れる森の美女』ですよね」
 そういう彼に、ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべて「君の好みのタイプかい?」と彼女は聞いた。
 「いえ、そんな……」と、研究助手は慌てたように否定したが、ヘリステラの全てを見透かしたような目を見て諦めたのか、「素直に言えばそうです」と答えた。
「でも、私に限らず『星見の塔』の男性職員の大半がそうですよ。知ってますか?、実はファンクラブまでできているんです」
「まったく、君といい、あの爺といい、どうして男って奴は……」呆れたようにヘリステラは肩を竦めた。「ま、おかげであの国には他にも沢山の同様な立場の孤児達がいたのに、彼女は今日まで生き延びれてきたわけだ。まさに夢の中でね」
「『ヘルズゲート動乱』ですか」
 ヘルズゲート動乱というのは数年前にアジアの小国で起きた内戦のことだ。本来、小規模なクーデター未遂事件で終わるはずだったその事件は大国の介入、そして武器商人達の格好の商品のデモンストレーション場となったことから、さながら地獄の門をひっくり返したような大動乱へと発展した。そのさながら地獄絵図を具現化したような様を見て、人は『ヘルズゲート動乱』という捻りの無い名前をその内乱事件につけた。そして、彼女はその事件のせいで難民になった被害者だった。
「難民キャンプの難民にまで武器を売りつけたというのだから、武器商人の商魂逞しさには呆れを通り越して敬意すら払うよ」
「そして、その武器で難民達までが殺し合い、彼女の両親や家族もその武器に殺されたというわけですか」
「彼女の目の前でな」そう言ってヘリステラは煙草の煙を吐き出した。「挙句、その後で暴行までされたというじゃないか。当時11歳の小娘をだぞ」
 本当はもっとおぞましいことが彼女の目の前で繰り広げられ、もっとおぞましいことを彼女がされたことをヘリステラは知っていたが、あえてそれを口にはしなかった。別に研究助手や馬鹿なファンクラブを作って盛り上がっている男達の夢を壊さないためではない。同じ女性として同情したからだった。
「彼女はそのショックで全てをこの世界から閉じた。そして自分の内面に世界を作ってその世界へと閉じこもった。我々がハザーリャ症候群と呼ぶ精神の病気にかかったわけですね」
「そして、それをあの爺……まぁ、我々のスポンサーなわけだが、マグドール卿が見つけてきたわけだ」
 世界有数の富豪にして『星見の塔』の出資者、それがマグドール卿だった。
 復興事業の受注のために同国を訪れた彼は、難民医療センターで彼女を見つけ『保護』したのだった。
 彼女を『保護』したマグドール卿は『星見の塔』に彼女の治療と彼女を正気に戻すことを依頼した。しかし、『星見の塔』の意思決定機関『キュトス』があらゆる方面から治療方法を検討した結果出した結論は「肉体の治療は出来ても、精神の治療はこの世界では無理」というものだった。
 そう、確かに「この世界」ではそれは不可能なことだったのだ。
「だが、彼女に別の世界を与えてその世界の住人として正気を保たせることは可能、というのが我々の結論だった。爺は怒るだろうな、と思ったんだが、まさか『それなら幾らかかっても構わんので彼女にその世界を与えてやれ』なんて言ってくるとは予想外だったよ」
「金持ちのやることなんて我々庶民には分からないってことですよ」
 ブルジョワジーへの僻み半分で、研究助手は言う。
「まぁ、それで我々は『PANGEON』を構築して彼女に接続した。彼女の見ている夢をよりリアルに補完して、彼女が望めばどこまでも行ける世界を一つ作り上げて与えたわけだ」
「しかし、それは同時に我々が監視・制御できる縛られた世界でもあるわけです」
「それはそうだ、彼女が間違えて『世界の破滅』を望んでみろ。『PANGEON』の世界だけでなく、彼女もまた消滅する。『PANGEON』は彼女の思考と意思そのものなのだからな。だが、実のことを言えば、彼女がそう強く願えば我々は彼女を止めることはできない」
「彼女のロール・プレイ、つまり『PANGEON』の世界において、彼女が誰の役割を果たしているか分からないから、ですね」
 そう、過剰なまでに精密に作り上げたこの世界が構築されるより以前、世界の構築のために彼女の深層心理への解析侵入を試みた段階から彼女の作り上げた世界には何人もの登場人物がいた。そして、世界の核となる人物、つまり彼女自身が演ずる主人公が誰だかは結局解明できなかったのだ。


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