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企画リレー小説スレッド

15 第1回3番(4/4) :2007/09/09(日) 23:01:17
「どうやら、話も長くなりそうです。館へご案内しましょう」
 そう言ってアルセスは、アルスタの踵を返した。
 双子の兄であるキュトスを殺した罪で光の父アレから呪いを受け追放されたアルセスは、2300年前にこの地に流れ着き、一族の祖となった。
 子々孫々71代に渡って己の血を引く娘を殺してその血をすすり、キュトスを失った母の悲しみを汝も負うべし。それが、アレによってかけられた呪いだった。
 アレの誤算は、アルセスがそんなことに頓着していなかったということである。はじめから屠るつもりで、アルセスは娘を育てた。
 一人目の生け贄の時点でアルセスの陰謀に気づいた最初の妻、エアルによってアルセスは殺されたが、人の子の種族であるエアルらにはアルセスたち闇の種族の力は計り知れなかった。彼はすでに、息子の中に魂の胞子を植えつけていたのである。これを根絶しない限りアルセスが滅ぶことはないし、どこからでも再生ができる。
 以降、一族の男子の背後に宿ってアルセスはこの地を支配してきた。そう難しいことをしてきたわけではない。ただ、ときおり宿主の目を塞いでやるだけのことだ。娘を生贄にする以外の可能性に、思考がアクセスしないようにする。あるいは、それが途方もなく不可能めいたことであるように思わせる。そうして、それ以外に道がないと誘導していく。
 竜を災厄と見做したのも同じことだ。娘殺しを演出できるならなんでもよいのだ。10人の博士を呼ぶときにも、能力の高すぎるものは選択肢から外している。
 竜とメクセオールの争いがはじまれば、アルスタにクリスを匿わせるつもりだった。それで竜が勝つならそれでよし。目撃者が残らないなら、アルスタの意識の隙を突いて、自分でクリスを殺せばよい。あとで言い訳は何とでもなる。メクセオールが勝つとしても、死に際に竜が放った呪いだかなんだか騒げば、クリスが死んでいても誰も不思議がりはしないだろう。
 生前葬もまた同様だった。アルセスはその日、シャーロームの森に石板を確認しに行きたかったのだ。森へ行く理由さえつけられればよかった。アルスタは、用を足すために道を外れ、偶然石板を見つけたのだと思っている。だが道中で尿意を催すべく朝から水分を多量に採ったのも、石板付近までは何となく我慢していて、ちょうど石板付近で我慢できないと判断したのも、アルセスが後ろで操っていたことなのである。アルスタは自分の知らない文字の不可思議な図形に見入っていたと思っているが、その後ろでアルセスははっきりと文意を読み取っていた。おそらく、刑事はこの姿を目撃しているのだろう。本来であれば太祖アレの直系であるアルセスにとって、定命の人の子らなど相手にもならないだけの力を持っている。だが、最後の生贄であるクリスの血をすすり、真の力を蘇らせるまではアルセスは無力なアルスタに過ぎない。
 太古からの存在であるアルセスにも、ここで現れた竜は未知の存在だった。この竜の言うことが事実であるとすれば、光の届く範囲での情報はすべて握られていることになる。「私たち」という言いぶりからすれば、この竜一体を始末したところで、後から仲間が駆けつける可能性もある。「第二、第三の光に類するもの」というのが何を指しているのかはわからないし、それが光だけでは不十分な情報を補うためのものであるとしたら、結局のところ、館に入ったところでどうにかなるものではないのかもしれない。それでも光の遮断が何かにつながるかもしれないし、中へ連れ込んでからうまく情報を引き出せば、その後の足跡を完全に消すこともできるかもしれない。
 もうひとつ、アルセスには気になっていることがあった。結局はアルセスの計画に取り込まれたとはいえ、ヘルモンドの当主が生贄の習俗に抵抗したことなどはじめてだった。アルスタと手をつないで館へと引き返していくクリスへと視線だけを落とし、アルセスは思い出す。
 最果ての二人、か。


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