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企画リレー小説スレッド

12 第1回3番(2/4) :2007/08/29(水) 19:01:47
「芝居か。貴様から見れば、そうなのだろうな」
 アルスタが口の端を歪めながら答える。
「そうとも、確かにお芝居さ。だが、それで何が悪い。クリスのために、ほかに何ができた」
 そう言ってアルスタは刑事をにらみつけた。これで言い返したつもりである。今度は刑事が答える番だと、そう思っていた。
 刑事の方としては、これは答えになっていなかった。だからこれは前ふりで、まだ続きがあるのだろうと思っていた。
 それでふたりとも黙っていた。お互い相手が話す番だと思っているからだ。そうこうしているうちに、刑事のタバコが燃え尽きた。
「それで」
 刑事が尋ねる。
「それでとは」
 アルスタが聞き返す。
「あの」
 そう言って一歩進み出た男がいた。名をソルダスと言う。メクセオール率いる44勇士の中でも、空気を読まないことでは右に出るもののいない男である。
「刑事さんは、芝居っていうのをアリバイ工作とかカムフラージュとか、そういう意味で言ったんじゃないんですかね。それでアルスタさんの方は、生前葬っていうのが、本物の葬儀を真似たというか、本物の葬儀に対して演じられた葬儀と、そういう茶番劇みたいな意味で受け取ったんじゃないんですか。そこ、もうちょっと話し合ってみたらと思うんスけど」
「すまん、もう一回言ってくれ。アリバイとかカムフラージュあたりからよく聞こえなかった」
 刑事が要求した。ソルダスは滑舌が悪いのである。
「いや、だからっスね。あなたが言いたかったのは、なんでそんなアリバイ工作かカムフラージュかわからないけど、そういうことをしたのかって、そういうことですよね。自白をするようにと、そう要求してるんだと思ったんスけど。でもアルスタさんは、本物の葬儀でなくて生前葬なんていう、まあ言ってみれば、これは葬儀を演じてるわけですよね。つまり、『どうして生前葬なんてやったんだ』っていう言葉の意味でとったっていうか。だから、その本物の葬儀に対して演じられた葬儀という意味で芝居、っていう言葉を使ったんじゃないかって、そうアルスタさんは捉えたんだと思うんですよ」
 場が静まりかえった。一生懸命歯切れよくしゃべろうとしていたものの、後ろの方になればなるほどしゃべり方は素に戻っていき、ただでさえ聞き取りづらいのに、文法が錯綜しているのだからなおのことわかりづらい。神官や勇士たちの注意がだんだん散漫になっていった。一挙動ごとにこの世の不可思議をその鱗に映し出す竜の方に視線が集まっても仕方がないことであろう。
「えーとだから、もしかして、アルスタさんはぜんぜん、身に覚えがないんじゃないんですか。その、芝居、っていうのはアリバイ工作とかそういうことを言いたかったんだと思うんですけど、ぜんぜんそういうつもりで言われてるのがわかってない。刑事さんとアルスタさんとで、話の前提がもうかみ合ってないんだと思うんですけど。そこのとこどうッスか、メクセオールさんとか」
「どうっつわれても」
 メクセオールはたじろいだ。なんでこの男は刑事に任せておけばいいような範疇のことをうにうにしゃべっているのだろう。
「それより、竜はいいのか。もう繭も割れてるが」
 だいたいソルダスの言っていることの半分もよくわかってなかったメクセオールは、話を逸らした。竜は両前脚を交差させ、背中を曲げてかがみこんでいる。ストレッチをしているのだろう、とメクセオールは見当をつける。ストレッチは筋肉をごく短時間的には筋肉を消耗させる行為だ。ましてやこの寒い屋外では筋肉を傷めかねない。無防備に首をさらしてもいる。今は好機と言えば好機だ。
 とはいえ、ストレッチによって血行がよくなり、身体の機能性が高まるのもまた事実ではある。竜族における超回復のサイクルや、その度合いはどの程度のものであろうか。結局は誤差の範囲にとどまるのかもしれない。どちらにせよ言えるのは、今目の前で筋を伸ばしているきらきらした生き物はまるで無害に見えるということだ。
「俺は遠路はるばる、このきらきらしたかわいい生き物を殺しに来たのか、見物に来たのか、どっちなんだ」
 何を言ってるんだろう俺は、とメクセオールは思う。皮肉たっぷりに言ってやるつもりだったのが、言い出してみるとそんなにうまいことを言っている気がしない。言い終えた後の沈黙が気まずいので、誰か早く何かしゃべってくれないかと思う。
 アルスタはアルスタで考えあぐねていた。そういえば、この竜を当代の災厄だと決め付けたのは誰だったろう。もしかして自分の思い込みだったんじゃないだろうか。
 ふたりは数瞬の間、互いに険しい顔つきで睨み合っていた。と、アルスタは視線を刑事へと向けた
「この竜は、人語が通じているのだろうか?」
 やっぱり話を逸らしていた。


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