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キュトス71姉妹2

392言理の妖精語りて曰く、:2016/10/03(月) 18:00:06
暴君で知られる呪祖レストロオセは、実のところ、ただのヒモ男であった。
しかし、同時に、このヒモ男は、史上最強のヒモ男でもあった。
魔女コルセスカが、彼に全てを捧げていたからだ。

彼の覇道は、留まることを知らず、その暴政はあらゆるものを食い尽くすかに思えた。

しかし、虐げられた人々は、彼を倒さんと立ち上がり、圧倒的な戦力差にも関わらず、彼らに立ち向かい続けた。
レストロオセは、当初はそんな人々を嘲笑っていたが、ある時気づいた。
自分には、到底そんなことは出来ないことに。

彼は、臆病者であった。
自分より強い者に立ち向かったり、失敗するかもしれないことに挑戦することなど出来なかった。
そんなことは、考えることすら嫌だった。
最初は、少し嫌なだけだった。
しかし、嫌なことを避け続けるうちに、嫌気はどんどん増していき、苦手意識は、絶対の制約となって彼を拘束するようになっていたのだ。

恐怖に負けることが無い人々を恐れ、レストロオセは逃げ出した。
恐れをなして、自分の城の中へと閉じ籠ったのだ。

閉ざされた城の中、レストロオセは、氷の魔女コルセスカに抱き締められながら、小さな子どものように震えていた。
パキパキ、パキパキと、コルセスカの放つ冷気によって、自分の身体が凍りつく音を聞きながら。
コルセスカは、決して、レストロオセが嫌がることを強制しない。
だから、レストロオセが一言、離れろと言いさえすれば、彼の凍結は止まるだろう。
あるいは、何も言わず、ただ彼女から身を離すだけでも。
しかし、彼には、そうすることが出来なかった。
外には、自分を嫌い、傷つけようとするモノたちが沢山居て、あまりに恐ろしかったから。
自分が凍りついて死んでいく恐怖より、悪意と傷に満ちた外界への恐怖が勝っていたのだ。

レストロオセは、もう何も見ていなかった。
自分を抱き抱え、無償の愛を注ぐコルセスカさえ、もう見てはいなかった。
彼はただ、己の抱える恐怖だけを見続けていたのだ。

こうして、最強の男は死んだ。
彼の城は、そのまま彼の墓となったという。
そして今でも、寒い日には、廃墟となったその城から、風に混じって恐怖に泣き叫ぶ彼の声が、聞こえて来るのだそうだ。
そう、こんな日には。


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