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物語スレッド
309
:
ロズロォの懺悔(25)
:2008/02/02(土) 03:23:59
暗い医務室の中、私は俯いて娘が、私の持ってきた食料を貪るように食べている様を見つめていた。
「どうしたの先生、今日はやけに無口だね」
そんな私を見て、彼女は言う。
「私が無口なのはいつものことだ」
私は、自分の本心を悟られまいと、無理に笑顔を浮かべて言う。
本当のことなんて言える訳がない。ここまで面倒を見て、「君は一週間以内に私の『被験者』になるか、殺されるんだ」なんて、どの面を下げて言えるというのか?。
……やっぱり、あの時牢役人を呼んで『実験』を行うべきだったのか?
私は、中途半端な正義感を抱いてしまった自分を呪いながら思う。あの時冷酷に徹していれば、今こうして悩むことも無かった筈なのに……
……今更正義感を持ったところで、私は救われない人間なのに……何で?
私は下唇を噛む。
どうして心が痛むのだろう?。あれだけの鬼畜な行為を行って、今更自分が善人だとでも言うのか?。だとしたら私は見下げた馬鹿もいい所だ。
……おまけに「最後まで希望は捨てるな」だって?……希望を奪ったのは……絶望を与えようとしているのは誰だと思っているんだ!
そして私は思う、この娘にさえ会わなければ、と……もしこの娘に会わなければ、今頃私の罪悪感は磨り減り、『実験』は快楽の手段と化すか、さもなければ実験に何も感じなくなっているかのどちらかで、今のように自分の罪深さを思い知ることも無かっただろう。なのに……
……神よ、貴方はどこまで残酷なのですか?
私は蹲り頭を抱えた。すると、
「先生。私、とうとう先生の『被験者』になるんだね」
寝台から身を乗り出した娘が静かな口調で私に言った。
「何を……馬鹿な……そんなことが……」
この期に及んで嘘を吐こうとする私に、娘は優しく微笑んで言う。
「先生、嘘をつくのが下手だからすぐに分かるよ」
「……!」
私は娘から目を背けた。
もう、彼女の顔は直視できなかった。
そして、彼女の口からこれ以上私に優しい言葉がかけられる事が耐えられなかった。
だから私は呟くようにして言っていた。
「嘘を言っているのは君も同じじゃないか……」
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