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【安価】禁書SS

1■■■■:2011/09/01(木) 21:56:17 ID:F3iHVkD2
安価でSS書いていきます。

登場人物を>>2->>10までで選んで下さい。

557■■■■:2014/04/15(火) 22:24:10 ID:w6k6QHOg
郭「いまならもれなくお姉さんも付いてきちゃいますよ!どうでしょう?上条氏」ポヨン

上条「ぶふぅっ!?いきなり何を言うんですかこの子は!?」

郭「一緒に隠密行動、しましょう?」ナデナデ

上条「なにその危ない響き!?」

郭「忍びの技、見せてあげる」

上条「忍び!?手裏剣とか投げちゃうの?」

郭「あー、うん。忍びって時代の最先端の技術を使うからね……」

上条「えー」

郭「浜面氏と同じ反応!どうして男の子ってそうなの!?」

上条「はっ!そうだ、俺、浜面に呼び出されて……」

郭「よ、よーーし、お姉さん、忍びの技、見せちゃうぞー」シュルッ

上条「あの、郭さん?なんで帯を解いているんですか!?」

安価下(人物名「台詞」)

558■■■■:2014/04/15(火) 23:11:19 ID:X075ZY0g
郭「服が…胸元がきついのでござる」

559■■■■:2014/04/16(水) 22:12:41 ID:vNIqxy.Q
郭「胸が、苦しくて、ね☆」パサッ

上条「だからって、それはヤバイ!大切なところが見えちゃう!!」

郭「えい、隙あり☆」トスッ

すばやく手刀を上条の首筋に落とす。

上条「うっ!!」

郭「えっ!?ちょ、ちょっと」ポヨン

一瞬で意識を刈り取られた上条は、郭の胸の谷間に顔を埋める形で倒れこんだ。

郭「意外と逞しい腹筋してるわねー」サワサワ

目の前のシャツをめくり上げ、上条の腹筋を撫でてから、郭は静かに上条の頭を持ち上げて上条の膝枕から抜け出し、地面に落ちていた浴衣を拾い上げた。

郭「はあ、男の子って単純」

浴衣を羽織り、透明な帯を拾うと、郭はベンチの上条を見た。

安価下(郭の取った行動or人物名「台詞」)

560■■■■:2014/04/16(水) 22:16:29 ID:v3dreHe.
???「ちょっと待った!」(女性)

561■■■■:2014/04/16(水) 22:46:54 ID:vNIqxy.Q
???「ちょっと待った!」

郭「誰ですか?」

帯を手に持ったまま声のした方へ振り向くと、そこには長い黒髪でセーラー服で巨乳な少女が立っていた。

吹寄「そこの馬鹿の知り合い?」

郭「まあ、一応」

吹寄「学生らしからぬ格好をしているけれど、貴女、どこの生徒?」

郭「学校は行ってないから、それには答えられないかな。ってか、貴女は上条氏の知り合い?」

吹寄「クラスメイトよ」

郭「それだけ?」

吹寄「どういう意味?」

郭「いやー、上条氏の恋人とかなら、まずいかなと思って」

安価下(人物名「台詞」)

562■■■■:2014/04/16(水) 23:05:56 ID:vGXwl/DA
吹寄「どっ、どうしてそうなるのよ!?不審なことばかりしてるとアンチスキル呼ぶわよ!!」

563■■■■:2014/04/16(水) 23:38:26 ID:vNIqxy.Q
吹寄「ど、どうしてそうなるのよっ!?不審なことばかりしてると警備員呼ぶわよ!!」

郭「警備員はちょっと勘弁して欲しいかな」

吹寄「学校に行っていないって……。もしかして無能力者集団!?」

郭「無法者(アウトロー)ってところは似てるけどねー。残念ながら私は無能力者集団じゃないよ」

吹寄「……まさか、いかがわしい商売の人じゃないでしょうね!?凄い格好してるし」

郭「あれあれ?もしかして、お姉さんに興味、ある?」ポヨン

吹寄「……残念ながら、あたしはノーマルよ」

郭「じゃあ上条氏が好き、とか?」

吹寄「そんな不幸体質馬鹿、好きになるわけないでしょ!あたしはただ、上条当麻が何か厄介ごとに巻き込まれていないか心配になっただけよ!」

郭「それではお帰りくださいませ。私は上条氏の知り合いで、上条氏に用事がありますので」

吹寄「その馬鹿、寝てるように見えるけど……。貴女、本当に知り合いなのかしら?」

安価下(人物名「台詞」or人物名と行動)

564■■■■:2014/04/16(水) 23:44:41 ID:v3dreHe.
郭「そういえば貴女………大きいね」

565■■■■:2014/04/21(月) 15:33:10 ID:/gxRRSOk
乳にばかり気を取られがちだけど、実は吹寄は背も高めという設定もあるんだよな。
ついでに声もデカいかもしれないw

566■■■■:2014/05/08(木) 21:34:20 ID:/f38b1F.
郭「ふぅーん。よく見ると貴女、大きいわね。色々と」

吹寄「だから、あたしはノーマルだって」

郭「で、上条氏が好きだと」

吹寄「な、なんでそうなるのよ!?」

郭「見覚えの無い女が上条氏に!守らなきゃ!的な?」

吹寄「どこの恋愛小説なのよそれ?」

郭「へえ、一応ロマンスは認めるんだ」ニヤニヤ

吹寄「なっ!?と、とにかく、貴女、本当に上条の知り合いなの?」

郭「一応知り合いだってば。第一、知り合いじゃなかったら、名前を知らないと思いますけど?」

吹寄「…確かに、そうね」ウーム

郭「じゃあ、そういうことで」

安価下(郭の行動or人物名「台詞」)

567■■■■:2014/05/08(木) 23:10:51 ID:Bx1lMWuA
郭「イマイチ信じられてないなー。それじゃ忍の技を見せてあげる!忍法コピーの術!」
上条「何そのネーミング」

568■■■■:2014/05/10(土) 00:57:23 ID:6vtONVWY
要するに郭はドロンする気かww

569■■■■:2014/08/07(木) 23:29:38 ID:HVEo3D6w
>>220のオティヌスが妖精&マスコット化するなど誰が予想できただろうか

570■■■■:2014/12/30(火) 23:54:27 ID:/yLv52oc
<●><●>

571■■■■:2016/07/17(日) 12:34:47 ID:G.2XRMB2
続きは?

572■■■■:2016/07/20(水) 22:43:52 ID:3pIoSP6w
郭「イマイチ信じられてないなー。それじゃ忍の技を見せてあげる!忍法コピーの術!」

上条「何そのネーミング」

ドロン!!

吹寄「何これ!煙!?」

上条「ゲホッ、ゲホッ…一体何が…さっきコピーとか言ってたから、俺か吹寄にでも変身するのか?」

シーン………

吹寄「………」

上条「………」

上条「いないーーー!本当にドロンしやがったーー」

吹寄「………上条、知り合いは選んだ方がいいわよ」

上条「またよくわからない変なのに絡まれた………不幸だ………」


不審な忍者?との絡みは煙に巻かれました☆END

573■■■■:2016/09/06(火) 23:55:23 ID:StZTA5wc
ツンツン頭こと当麻くんと美琴さんのやり取りいいなあ
イマブレや電撃のやり取り含めてな

574■■■■:2016/11/28(月) 19:10:30 ID:fmNDbwMs
ツンツン頭こと当麻くんと美琴さんのやり取りいいなあ
イマブレや電撃のやり取り含めてな

575■■■■:2017/02/01(水) 20:38:39 ID:7v9wO/Zc
とと

576■■■■:2017/03/02(木) 07:18:06 ID:zy.geLUk
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 序幕
◆──────────────────────────────────―◆

 黄塵吹き抜ける中華の地、やがては伝説となる時代。 
 国内に跋扈する疫病の蔓延に困り果てた栄王朝の朝廷は、霊峰竜虎山に住むという高名な仙人、平衡天帥に厄払いの祈祷を依頼する使者を送る事とした
 この者、幼少より神童と謳われし召喚仙術使い──姓を城、名を山、字を恭介という
 登竜門とも称される科挙を史上最年少で合格し”入雲龍”の異名で呼ばれる俊英であった
 黄河を船で遡ること数日、船旅の果てにようやく竜虎山に辿り着いた城山は峻険な山道を歩む
 途中、不自然な天候変化や破城槌ほどの大蛇に出遭うが、優れた観察力と洞察力で試練を踏破、ようよう眠りまなこの少女、平衡天師への拝謁が叶う
 その日は来意を告げでは明日にでもと快諾を得、斎を済ませ酒を馳走になり疲れた心身を床に就け深い眠りに落ちる城山
 翌朝早くから天師と城山とで祈祷の下準備をしていたその時、雑木林の奥に”万魔殿”と額のかかった大扉のついた巨岩が目に止まる
 遇哥而開。お札まみれの扉に彫られたこの四字を見た時、城山の五体は我知らず勝手に動きだしていた。これは多分に禁忌の扉。そう感じてはいても声も出ぬ
 懸命に抗うもどうにもならず、扉を少し開けた刻、目映いばかりの光の群れ達が踊るように溢れ出た!!
 不気味な音が鳴り響き地は鳴動し瞬時に扉は勝手に開き、目も眩むばかりの白光が天へ登り青暗い黎明を引き裂いた!
 そして扉の奥から飛び出してくるは火の玉の軍勢か蛍の群れか!?
 夥しい光の群れはあたかも蛍か何かの如くそこらを自在に飛び回り、瞬く間に四方八方に流星となって散っていく。そして────

577■■■■:2017/03/02(木) 07:20:23 ID:zy.geLUk
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝一 西遊豚
◆──────────────────────────────────―◆

〜西域、シルクロード途上のどこかの荒野〜
 果ても無い荒れ野を進む四人の旅人の姿があった。その者ら、はるばる天竺へと古の経典を学びに向かう仏門の僧と三人の従者一行
 赤の戦胞をまとい先頭を歩くは姓は孫、字はベアトリーチェという女傑。”聖天大聖”と異名を取る彼女は可可と笑う
「だーから最初から燃えてたでしょあれ。火に油を注いだだけで点火してはいないですう!」
 続く緑の衣が涼しげな”出洞蛟”沙アルメリナは呆れ顔
「油というか爆薬だろアレ。お城爆破されて牛魔王と羅刹女泣いてたじゃないか。もうちょい法的正義をだな……」
 乗れる馬が無いので巨大な金棒を杖に歩いてる”花和尚”ぶーぶー法師曰く。「ぶー、けどなんか泣いてご飯とお金と芭蕉扇くれた。人に感謝されたからぶーぶーはいいと思う」
「えちょっと待って? このメンツで何で私が豚担当ですか!? 逆! ぶーぶーと私逆ゥ!!」”菜園子”猪フィリニオンは何やら喚くが、孫と沙はひたすら迷惑顔である
「急にメタられてもねえ、そのホルスタインっぽさ活かして牛魔王でもやる? つい昨日カツアゲしたけどこの豚」
「実は豚より人間の女子のが体脂肪率高いからな、豚役似合ってるぞこの豚」
「ぷぎー? ぶーぶーとフィリニオンは豚仲間?」「ぶーぶーさんが一番非道いっ!?」
 立ち眩みを起こしかけた猪フィリニオン。だが気迫だけで持ち直す。
豚「オイ聞けそこの発情猿とストレスハゲ」
猿「ああん!? 誰が発情猿か弱火でじっくりコトコト煮込まれて拉麺の出汁と具になりたいの!?」
河童「そもそも誰が僧侶かっつったらそれは私だろうがそこから配役を察しろこの豚!」
 などといつも通りの姦しい口論を始めるをよそに歩を進めるぶーぶー法師。この豚の感度の良い耳に、聞き馴れぬ音が飛び込んできたのであった
 音源、上空を見上げれば何か輝く物が四つ、こちらめがけて飛んでくる。火矢かと思ったが何か違う
 少し考え、力いっぱい跳躍する。従者らに当たると怪我するかも知れないと考えるあたり豚であっても徳が高い
 手持ちの棍棒で叩き落とそうとしたが、不意に手元で流星の軌道が曲がった
 一つはぶーぶー法師の胸元に、残りは従者たちの胸元に。当たる直前で皓く輝き胸元にめり込み、そのまま貼りつき動かなくなってしまった
 着地し、全員同じであると確かめる法師。顎先すぐ下の胸元にめり込んだこの小さな宝珠、傷も痛みも無いが取れもしない
 さてこれは何だと四人で額突き合せ話し合い、いずれ何かの宝貝であろうと結論づけた。法師一行の武器四つと服三着、これいずれも宝貝である
 宝貝。仙界でしか採取出来ぬと云う未元物質を主原料にして造る摩訶不思議な道具の数々の総称である
 かつて古代の秘匿大戦のおり伝説の英傑達が黄帝から授かったとされているが、その秘匿大戦というのがどういったものであるかは伝わっておらぬ
 ともかく四人は相談の上、当初の予定通り天竺を目指すことにした
 天竺、字をカレーランドと称する彼の地におわす、十万三千冊の経典を管理する高僧に聞けば何か解るやも知れぬとて    続

578■■■■:2017/03/02(木) 07:23:15 ID:zy.geLUk
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝二 桃源天女
◆──────────────────────────────────―◆

〜仙界・桃源郷〜
「わたくしとお姉様、生まれた刻は違えど死ぬ時は……」「あーハイハイそういうのいいから」
 神仙が住まう仙人界、その異界の中で最も色鮮やかな桃源之郷。 一年中何かしらの花の咲き誇る様は読んで字の如く百花繚乱千変万化
 伽陵頻迦の鳥達は妙なる美声を響かせ甘い匂いと舞い踊る蝶に噎せ返る、男子禁制の一帯。その果樹園にて
 時期は桃。十人の天女たちは毎年この時期になると華やかな装いに身を包み、仙桃の木の下に卓や椅子、茶に菓子などを持ち込んで桃園のお茶会を催す習わしであった
 主催するは雷気の仙術を扱えば並ぶ者無しの”轟天雷”、姓は御、名は坂、字は美琴。自身より仙術の力は劣るが二万ほどの影を召喚する符術の達人としても知られる
 列席するは人心惑乱の仙術では天下無双、”神水将”食蜂操祈。そして御坂に心酔する”浪裏白跳”白井黒子。情報処理系宝貝を使えば一騎当千”一枝花”初春飾利
 透視術の使い手の姉貴分、”火眼俊猊"固法美偉。そこらの石を拾って一たび放ればたちまち加速し悪を打ち据える”没羽箭”婚后光子
 水を操る”混江龍”湾内絹保、浮力を操る”船火児”泡浮万彬、水銀を人形のように使いこなす”青面獣”警策看取
 そしていま一人、術の才無く宝貝使いとしても弱卒ではあるが料理上手の愛され者、”小温候”佐天涙子。卓に並ぶ桃の焼き菓子や饅頭はこの少女が腕によりをかけた
 舞い散る桃の花の下、御坂と食蜂は何かと小競り合いを続け黒子が騒ぎ初春は桃の甘味に陶酔、
他の天女らは茶を手に和やかに談笑するそんな極楽浄土の日々は、突如降り注いだ流星によって破られた
 天より降り注いだ光が十天女の胸に直撃、幾人かは乳房で弾いたがすぐにその少し上に貼り付いて離れなくなった。十人とも襟をはだけ胸元の宝珠を見て騒ぐ
 すぐに初春の宝貝を介して御坂の母、西王母に意見を求めればあちらもあちらで九天玄女の詩菜様とのお茶会の最中であった :
 西王母美鈴はその小さな宝珠を見た瞬間、驚愕に目を見開く。母の語るところに拠ればこの宝珠は宿星珠。万魔殿の封印がとかれた証しだという
「遥かな古の時代、天の三十六星と地の七十二星、合わせて一〇八星の英傑が心と力を一つにして四凶・混沌の系譜の魔王を霊峰竜虎山の檻に封印したの。
それが何者かによって開放され、宿星一〇八星が転生したかつての主を探して貴女達が選ばれたみたい。
貴女達には他の宿星達と合流し強大なる悪神、混沌の化身、”白面朗君”を倒す天命にあったのでしょう。貴女達は明日にでも人界に旅立たねばならないわ」
「混沌といえば天地の成り立ちから存在する創造神の一柱。仮に一〇八星みなが力を合わせたとしても倒せるものなのでしょうか?」
 恐れ慄き問い返す婚后に、美鈴様は「倒さねば人界も仙界も程なくして滅ぶでしょう」と答えるしかない。と、ここで詩菜様が口を挟んできた
「那託廟の那託達にもその宝珠が一つずつ宿ったと報告が入りました。旅に連れて行くべきでしょう」
 話しを聞いた御坂らが那託達が祀られた廟に行ってみればなるほど、確かに居並ぶ九体の那託の胸元に自分らのと同じ宝珠が輝いていた
 那託。普段は人形ほどの大きさながら一たび氣をこめ大地に投ずれば、たちまちのうちに大樹ほどの大きさになって自律した思考で邪を斬り悪を撃つ宝貝機人である
 その名をそれぞれテムジン、フェイ・イェン、バル・バドス、エンジェラン、雷電、スペシネフ、グリス・ボック、アファームド、ドルドレイ。これらを総じて九臂那託と称する
 この兵らも選ばれたのね。御坂らは九体を布で磨き、決心を固めた
 翌日、旅支度を整えた十天女らは人界への門の前に立つ。食蜂だけは旅など億劫だと駄々をこねたので電撃で気絶させ雷電にでもくくりつけたが
 母美鈴から旅に便利な宝貝を多数授かり、詩菜様からはかつて人界へ嫁いだ友人、天女ヴァルトラウテへの書状と贈物を預かった
 人界暮らしが長いヴァルトラウテならば白面朗君について何か知っているやもしれません。御坂美琴は頷き、母らにしばしの暇を告げ、振り返り、歩く
 天女と那託ら十九星の、邪を討ち魔を滅す旅が今始まった!    続

579■■■■:2017/03/02(木) 07:24:44 ID:zy.geLUk
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝三 山東の義人
◆──────────────────────────────────―◆

〜中国東部・山東〜
 大海に程近い山東と云う地に、百悪を誅し千民を救い続け赫々たる声望を得る一人の好漢がいた。姓を上、名を条、字は当麻
 この漢、困った人間を見ると放っておけず人助けの手を差しのべること千手観音に似たり
 東西奔走南北縦横、東に強力無比な道術を使う荒くれ者”黒旋風”一方通行を殴り倒して悔悛させ舎弟とし、
西にてゴロツキどもの首魁、複数の乗り物宝貝を使いこなす”神行太保”浜面仕上を調伏す
 北で天草教領の教主”百勝将”神裂火織、副将”操刀鬼”建宮斎字、”金槍手”五和らと友誼を結び、
 南では朋友、”急先鋒”削板軍覇と共に悪漢に妹を拐わかされた”青眼虎”土御門元春に加勢、五重の塔の各階を守護する面妖な技を使う武術家集団を撃破せり
 朝に街角の唄い女”鉄笛仙”名護アリサの抱えた問題を解決するため天草の神裂らと共に天空高くへ飛び発ち、
昼に”笑面虎”エツァリと戦い、夜は”鉄面孔目”闇咲逢魔の襲撃を受け、その闇咲と組んで夜明けにまた別の道士と戦い帰宅して五秒で土御門
 その武勇伝は津々浦々にまで響き渡り、一度敵対したものでも不当に害されていれば救いの手を差し伸べる事から欲しい時の恵みの慈雨、”及時雨”の上条と侠名を馳せり
 さてこの上条、ふとした親切が仇になって街中で東方の蓬莱島より参った巫女の下穿きを脱がす失態を演じ捕吏の黄泉川愛穂に投獄されてしまう
 その巫女本人や町中の者の嘆願で一旦は釈放されるも、その後すぐ泥酔して一国の宰相、”混世魔王”アレイスターの別荘の外壁に過激な詩を落書きし再び御用と相成った
 牢内で猛省しうなだれていたある日、黄泉川と鉄装に案内され上条の牢前に立ったのは中央政庁の高官、執金吾の地位にある”賽仁貴”美島純。官憲の頂点近くに座す雲上人である
「この件の裁決を宰相閣下より一任されて来た」と言い、一刻ほどの取調べを経て、下された裁決は「家財没収のうえ都外追放、この者を援くる者あらば同罪と見做す」というものであった
 不幸だと嘆く上条だが普通ならどう考えても死罪、それも惨たらしい刑死である。市井の声を聞き届けた温情判決と言えよう
 形執行の日、城門前。粗末な着物だけで旅立たされる上条を囲む市民らに紛れて、アリサが金を、青髪が饅頭を、土御門が手紙を懐に忍ばせてくれた。役人の黄泉川も気付かぬフリである
 別れを告げ、しばし行った荒野で手紙を開けばある地点に浜面が馬と武器と衣類や旅の荷を用意していてそれを使って天草領へ行けとある
 道中に跋扈する山賊旅賊の類は一方通行が根こそぎ壊滅させたとの事。互いに面識などあまり無いはずの彼らがいつの間にやら知己となり手を取り合ったようだった
 これまでの仁徳義勇がこの好漢の道を拓いたといえよう
 上記に登場した者達のうち、異名持ち達の胸に宿星珠が落ちるのはこの翌日のことである      続

580■■■■:2017/03/02(木) 07:26:33 ID:zy.geLUk
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝四 三顧の蹴
◆──────────────────────────────────―◆

〜荊州〜
 栄王家の中に白眉と称される女傑”紫髪伯”フローレイティアなる傑物がいた
 官の腐敗に軍の驕慢、財政の逼迫や疫病の蔓延により地方は反乱の兆しさえ見せ始めていた時勢の中、衰退する一方の国運を憂えた彼女は、
乗り物型巨大宝貝、重層武器を意のままに操る二人の少女……、”霹靂火”ミリンダと”錦豹子”おほほとひょんなことから知り合い義姉妹の契りを結び、国家中興の戦の下準備を進める
 重層武器。平時は路傍の小石ほどの大きさなれど一たび氣を籠め遠くへと投げやれば、たちまちのうちに山かと見紛う大きさになる、強力な大砲と豹の素早さを兼ね備えた球状決戦兵器である
 このような巨大兵器がそれも二機。一見無敵かに思われたが周囲にも重層武器や強力な道士、妖の類が多いのでやがてそこまでの決定打ではないと伯は知る
 王直属の丞として中華各地を巡察し小乱を鎮め匪賊を掃討し悪吏を罰し、不正な蓄財や糧食を貧民に分け与える日々であるが、
ある時など宰相のアレイスターから褒美の銘酒として毒酒を贈られる始末
 内憂外患、鎮火を百ほど続けてもまた別の所から火の手は挙がる。そんな折、家臣の”活閃婆”アヤミよりこの近隣に隠棲する殺龍と呼ばれる軍師を登用してはどうかと助言を得る
 伯は忠言を容れ居所を調べ、かの軍師の住まう草庵を訪ねるが、殺龍の妹という少女が出てきて哥は何処ぞへ出ていって不在だと言う。後日再訪するがまた不在
 三度目の来訪で今度こそ在宅していたものの、昨夜遅く飲み仲間と共に酔い潰れて帰ってきて男二人、そこらに雑魚寝している無様さ
 軍師の妹キャスリンが申し訳なさそうに頭を下げる中、ミリンダはこっちの飲み仲間は鉄砲の名人として有名な”小李広”ヘイヴィアだと呟く
 この金髪の少年が重層武器単独撃破の殺龍軍師? そからに散乱してる書物は兵書かと思いきや艶聞小説の金瓶梅。こんな小僧が本当に?
 末妹おほほなどはこの殺龍ののん気な寝顔を寝台ごと燃やしてみましょうかと過激な意見を唱え、長女伯まあまあと宥めていたその時、草庵の屋根を突き破った光がこの場の六人に突き刺さった!
 何ごとかと女四人は胸元をはだけて見てみれば、そこには光り輝く宝珠が一つ。胸元にめりこんでいるものの傷らしき出血も無い
 この衝撃で目を覚ました軍師がぼんやりとフローレイティアら客人を見上げる。ともかく伯も話を進めるしかない
「お前が殺龍とか”神機軍師”とか呼ばれるクウェンサーか? 軍師として私に仕えてはくれないだろうか?」
 この金髪のクウェンサーなる少年、ぼんやりとした目で妹から補足説明を受けて事態を飲み込んだ後、元気良く立ち上がって、言う
「ずっと寝室まで一緒で寝起きしてもいい?」とりあえず蹴り倒し、首根っこをひっ掴んで草庵から引きずりだす紫髪伯フローレイティア。臣下の忠言を信じての行動であった
「そっちに寝てる鉄砲名人も連れて来い。徴兵する。外にいるクックマンとケビンに運ばせろ」
 と義妹たちに命じることも忘れない。仕方なく妹キャスリンもついて来ることになった。兎にも角にも、軍師、出櫨である
 首都・開封東京府で政変が起こり栄王家の者皆殺しにされたと知るのはそのしばらく後、伯軍が偶々地方巡察に出ていた折のことである      続

581■■■■:2017/03/02(木) 07:29:35 ID:zy.geLUk
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝五 聖女紅涙
◆──────────────────────────────────―◆

〜西域・敦煌〜
 神童、城山恭介が万魔殿の封を解いてから歳月は一巡り。ぶーぶー法師らの一行は天竺にて無事目的を果たし、中華の地に帰還していた
 復路は四名でなく五名である。鉄棒を手にのし歩く法師の肩の上に端正に座す影は、天竺の尼僧、法名を禁書目録とする一人の少女であった
 この尼僧、ありとあらゆる宝貝や仙術道術妖術、怪人の類知らぬものはなく、”智多星”と異名を取る博覧強記の学究である
 宿星珠が降りた者が成さねばならぬ天命の事を法師らに語り自分もその一人なのとカレーに飽きたとの理由でついてきた
 ぶーぶー法師ら五名は旅立つ前とあまりの都の変わり様に絶句する。田畑は荒れ人々の顔は絶望に澱み市は閑散としている
 禁書目録は我が目を疑う。これが音に聞こえた大国、大中華であろうはずがない。孫ベアトリーチェらもたった一年で何があったらここまで荒廃するのだと言葉も出ない
 街の者数人に話を聞く。曰く、先王は疫病で崩御、王位を獲ったのは何処からか現れた少年とその妻。曰くその妻は鬼神のように強く王族や反対勢力を根こそぎ斬殺してのけた
 曰く栄軍の双璧、魔将フィアンマと猛将アックア、稀代の道術師でもある宰相アレイスターも戦ったが惨敗、膝を屈したことで栄は滅んだ
 曰く国号は栄から殷に改まった。曰く、紂王と妲己は王は自分らの悦楽のために重税を課し我ら民草は塗炭の苦しみに喘ぐしかない
 元宮廷の高官であった親船なる婦人に会って話を聞くことが出来た。曰く酒池肉林の享楽に耽っている紂王と妲己に代わり政務を執るのは栄王朝から引き続きの阿世宰相”混世魔王”アレイスター
 曰く紂王より妲己の暴虐凄まじく紂王は妲己の言うがまま暴令悪策の勅書に国璽をつくのみ。王は酩酊の覚める間も無いという。曰く贅の限りを尽くした白亜の宮殿の建設に呆れ官職を辞してきた
 禁書目録は涙する。かような悪道苛政許されていいはずがない。見よこの敦煌の都を。市に店はほとんど無く人通りも薄く高級菜館は焼かれ朽ちている
 民の目は虚ろ。田畑に地味無く家畜は痩せ幼子は空腹に泣いている。追いはぎや泥棒の類を追う官吏らですら幽鬼の如く
 音に聞こえし中華とはこのような国ではなかったはずである。春は点心を楽しみ夏は麻婆や酢豚で乗り越え実りの秋は八宝菜に舌鼓みを打ち冬は水餃子や火鍋を家族で囲む
 かくして一家団欒、国家安寧天下泰平。中華とはかような国だったはずである
 禁書目録の憂国赤心の涙が胸元の宿星珠に落つる時、中華各地に散らばる一〇八人の胸の宝珠が光を放ち、一つの方向を指し示す!
 総数一万からなる黄布賊の軍勢をそれに倍する兵力で包囲殲滅していた天女達が。酒場で一杯ひっかけていた変装の達人、”鼓上蚤”ニャラルトホテプが
 清廉な捕吏、”催命判官”内幕隼とその助手、”両頭蛇”菱神艶美が。”神医”と名高いカエル顔の医者が。その患者、”雲裏金剛”マリーディが
 新たに重層武器を一つ手に入れそれをキャスリンに使わせて戦力を拡充していたフローレイティア軍の面々が。妻子を探して旅をする”金毛犬”すねこすりが
 強者を求めて旅をする”行者の”トールとその相棒”石将軍”ミョルニルが。あまりの不況に頭を抱える相場師、”金銭豹子”小手蜜惑歌が
 神裂に頼まれた仕事を終えて戻る途中の上条が。深山幽谷に生きる”病大虫”大ムカデが。召還仙術士”浪士の”クロードと”鉄叫子”エリ・スライドが
 兄を探して重曹武器で旅する”一丈青”アズラフィアが。悪の道士集団を焚殺して回る”赤髪鬼”ステイルが.。人里離れた僻地で暮らす”神算子”アナスタシアが
 娘子軍を率い黄布賊を討伐する”小覇王”上里翔流が。その義妹にして副将”花項虎”サロメが。召喚仙術士”母大虫”ビヨンデッタと相棒”白花蛇”の白蛇が
 英傑好漢達がそれぞれの事情や成り行きで胸の光が指す方向を向いて足を進める。黄塵舞う地平の果てに待つ物とは!?       続

582■■■■:2017/03/02(木) 07:32:13 ID:zy.geLUk
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝六 宝珠千里行
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〜旅路〜
 宝珠の光が集う場所へ進軍する各地の英傑好漢達。それぞれが他の星達とめぐり逢う
”行者の”トールと”石将軍”ミョルニルに勝負を挑まれた”吸時雨”上条当麻
次々と場所を移動する道術の術中に落ちてしまったが通りすがりのアズラフィアの重層武器、青竜にトールを轢かせるという奇策をもって勝利、
それでも生きてるトールを助け起こし、重層武器で轢いてなぜ生きてるのか驚嘆している“一丈青”アズラフィアも混ぜて語らいあい、四人で共に光の先を目指すことにした
”九尾亀”プタナの乗る重層武器を策を用いて無傷で鹵獲した”神機軍師”クウェンサーら。一騒動を経てプタナはそのまま”紫髪伯”フォローレイティア幕下に入る
これで伯や軍師の手足となる重層武器は四機。ミリンダの白虎、おほほの朱雀、キャスリンの麒麟、プタナの玄武。
あとは青竜さえ来れば五神獣揃い踏みじゃなと呟く”活閃婆”アヤミの横で、”小李広”ヘイヴィアは居心地悪げであった
 さて軍師の妹キャスリンであるが、玉のように可愛らしい麒麟乗りということでこのごろ陣中では”玉麒麟”と呼ばれ始めているのをここに記しておく

 他方、旅の道中、立ち寄った街にて黒社会の暗闘に巻き込まれた”神行太保”浜面仕上。色々あって”独火星”麦野沈理を撃破し、
”天目将”滝壺理后、”鉄臂膊”絹旗最愛、”喪門神”フレンダと道中を共にすることに
”轟天雷”御坂美琴、尾けられてる気配を感じその者を取り押さえてみれば記者を生業にしてる”醜群馬”シーワックスと”笑面虎”エツァリの二人連れ
見ればこの者らも宿星持ちなので仕方なく食蜂に無害化してもらい旅の小間使いとした
”鉄笛仙”名護アリサ、街角で歌って路銀を稼ぎ旅をしていたら黄布賊に拐わかされ歌えや舞えやと強要されてるところに娘子軍を率いる”小覇王”上里翔流ら襲来、
助けられるも同じ話を聞きつけやってきた神裂ら天草教の面々は上里軍を見てその統一感の無さに賊軍と勘違い。互いに互いを怪しい集団と断じて始まる戦闘。アリサ、大いに困る
 フローレイティア軍のウェスティなる兵卒、立ち寄った街の乙女な書店で”一枝花”初春飾利と出会うの縁
 共に旅する”黒旋風”一方通行と”急先鋒”削板軍覇、”青眼虎”土御門元春ら、森にて野宿し舞夏が食事の支度を整えていたら”花和尚”ぶーぶー法師と”智多星”禁書目録が顔を出してきた
 金で”双尾蠍”菱神舞を護衛に雇って旅をする”金銭豹子”小手蜜惑歌、立ち寄った街の道具屋で”打虎将”緑娘藍と出会い互いに宝珠持ちだと察する
緑のツテで兄の帰りを待つ”白日鼠”愛歌・トイドリームとその相棒、”錦毛虎”ホワイトライガーも旅に同道することに
 雪原を旅する浜面一行。そこに麦野が襲撃をかけてきた。街中でゴロツキどもに囲まれてる娘を助けに入った上条、その少女に雷撃の槍を放たれ追い回される
 そんなこんなで光の先が示す地を目指す者どもの旅の道連れは行けば行くほどに倍々に膨れあがり、或る者達は再会を喜びあい或る者達は再び相まみえた事実に辟易し、身の上話でもしながら野を踏み河を渡り山を越え、
襲い来る賊軍あれば息をするように殲滅し、誰かが引き起こした騒動をまた別の誰かが解決したりしなかったり延焼させたりしながら進む騒々しい旅の果て、
見えてきたる其は大河に包まれた中州山、緑林豊かな天険要害、水の滸りの梁山泊!
 宿星たちはあの島に何があるのだと大河の向こうの水塞を眺めるのであった    続

583■■■■:2017/03/02(木) 07:35:18 ID:zy.geLUk
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◆             中華宿星 水滸伝七 魔山探訪
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〜梁山泊〜
 この河に囲まれた中州島に何があるのだと訝しんだ宿星達六十七名+フローレイティア軍の兵士達+上里娘子軍の面々+土御門の妹+天草教の面々ら総勢二五〇名ほど
 禁書目録も天女らもこの地に何があるのかは知らぬと言う
 そこらを通りすがった農夫に聞けば、あの山は古来より魑魅魍魎や巨竜が棲まい山賊も官軍も行けば泣いて逃げ帰ってくる禁制の山だとだけ告げ足早に立ち去ってしまった
 魑魅魍魎? この戦力ならどうにでもなるだろ。そう判断した上条、フローレイティアら一同はさしあたりアズラフィアに水上走行可能な青竜を出してもらってその脚の乗れる所に乗って渡河、梁山泊に接岸す
 山道は峻厳、竹林は鬱蒼。体力の無い艶美や食蜂、アヤミ婆や惑歌に愛歌に婚后や上里娘子軍の幾人かにおほほなどはグリスボックや雷電の肩などに乗せて貰う。
土御門舞夏はミョルニルの頭上が気に入った様子である
 この狭い道では重層武器などもっての他。浜面の宝貝竜単機とかも腐葉土と竹で速度を出せない山道を二合ほど登れば、やがて段々畑や葡萄や林檎などの果樹園が見え、
僅かな平地には水田が美観をなしていた
 人が住んでいる? どよめく一同とは別にニャラルトホテプはこれらの田畑が島の外からは竹林や雑木林に遮られ巧妙に隠されている配置だと指摘する
 訝しみながらも田畑を荒らさないよう気をつけて登るうち、キャベツ畑の中に固まっている狐に狸に狢を見かける。三匹の獣はこちらに気付くとヤバい逃げろと一目散に林に飛び込んで行った
 今のって人語を喋らなかったかと呻くヘイヴィアと、害獣が畑を荒らした様子なく、むしろ雑草の除去をしてた様子さえあることに気付くフィリニオン。あれは妖怪ですねと美琴に抱かれたpすねこすり
 一方通行が軽く空を飛んで俯瞰して見渡せば、八合目辺りに幾つかの人家が見えたと言う。さらに登ると突如強風が吹き荒れ暗雲が立ち込めた
 見上げれば上空に飛来したのは重層武器を五機並べてもまだ足りぬ、山麓ほどの巨大さの一匹の竜である
「ぷぎー? サウザンドドラゴン?」天の竜と地の豚、互いは旧知の間柄であったらしく、
フレンダやミョンリなどが腰を抜かして抱きあってる間中ずっと見つめ合い、やがて巨竜は山頂の方角へ引き返していった。武器を構えていた者たちはホッと胸を撫で下ろす
 そこから先は表立っては何者にも出くわさなかった。ただし茂みに隠れて提灯お化けや唐傘お化け、
シーサーとか一反木綿とか土蜘蛛とか獏とか鉄鼠とか送り雀とかかキジムナーとか豆狸とか天邪鬼とか白いカブト虫とか臼挽き童とか猫又とか塗り壁などがこちらを窺ってるようではあったが
 七合目、一方通行が見た人家のやや下あたり。渓流を流れる澄みきった清水は田園を潤し、稲穂は風にそよぐ開けた山道のど真ん中
 上条ら一行を待ち受けていたのは先ほどの巨竜に数人の白い着物の女、おどろおどろしかったり可愛かったりする数多の妖怪達に奇妙な衣装の女たち、帽子をかぶった人骨、そして数人の男達であった
 何だこの異形の集団は? 身構える上条らであったが、実は上条らの側にもぶーぶーや雷電ら那託たち、大ムカデやミョルニルなどがいるから俯瞰視点としては両者大差なかったりする
 剣呑に対峙するこの大河に囲まれた中州山の原住民らしき野良着の集団と来訪者ら旅装束の集団
ゆえあらば一戦も辞さずといった風情の原住民らの中央、座っていた岩から立ち上がり、険しい目でこちらに寄ってくるのは染めてるとおぼしき金髪の青年
「アンタら何なワケ? 俺はこの村の村長の」「忍? 忍じゃないか!」「あ、叔父さん?」
 上条らの方から人ごみを掻き分けて出てきたるは捕吏の内幕隼。ここから遠い納骨村で酒造の家を継いでるはずの甥と、独身で元捕吏の叔父の久方ぶりの再会であった    続

584■■■■:2017/03/03(金) 19:03:36 ID:aOp5mokI
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◆             中華宿星 水滸伝八 妖怪鎮守府の守
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〜陣内邸〜
 梁山泊村長陣内忍の叔父、内幕隼がいたお陰で話は円滑に進んだ。隼らのこの胸の宝珠の光が指し示す先に来てみたらここだっただけで通じたのである
 見ればこの村の住人過半数にもその宝珠は宿っていたのだ
 村長陣内忍は語る。そもそもは百鬼夜行なる妖怪管理組織の総本山であったここ梁山泊にかつてぶーぶー法師に敗れたサウザンドドラゴンが棲みつき、
この水塞は魑魅魍魎や巨竜の棲まう山として有名になったこと
 革命が起こり殷王朝になってから無体に重くなった租税から逃れるため、陣内酒造の跡取りであった忍らは一族郎党(ほぼ妖怪)を引き連れこの地に移住したこと。
それらの身の上を話した忍は「じゃあアンタらの人数多すぎるから代表者だけ」と数人を自宅に招じ入れる
 陣内邸の卓についたのは上条、フローレイティア、禁書目録、上里、アルメリナ、隼と艶美、神裂、食蜂の総勢九人
 御坂ら天女衆はこの村の住人の内に尋ね人、天女ヴァルトラウテを発見したのでそちらの邸宅にお邪魔している。なので天女衆からは食蜂が代表で上条の傍らに親密に寄り添うのみである
 忍の母親からお茶と茶菓子を出され、先ずは神裂が自分らの置かれている状況を語る。それを聞き終えると忍の妻、白装束に身を包む陣内縁が胸元の合わせを軽くはだけ、宿星珠を見せてきた
 そこから漏れ出た光は縁本人の体を迂回し山頂の方へ伸びていた。忍曰く、「俺らの中の三割ほどにもその宝珠は降ってきた。俺には来なかったけどな」との事
 この先に何が? お茶菓子をいただきつつ尋ねる禁書目録の声に、忍と縁夫婦はじゃあそこへ案内すると立ち上がる
 外で待ってた家畜の鶏や牛などを食おうとするぶーぶーを宥めるベアトリーチェなど数名を連れ、さらに登山
 すると林の中に巨大な断崖絶壁があった。だがよく見ればこの横長の断崖絶壁は土や木の枝を被せられた偽装、宝珠の光もこの絶壁に集まっている
 忍によればこれはかつて自分が若い頃、金鉱島で仕掛けたギリギリの大博打に勝って取ってきた空飛ぶ超巨大船型宝貝だと言う
 縄梯子を昇り湖一つ分ほどもある甲板に出て、この巨大宝貝の正体を察した禁書目録は告げる。これは宝貝船【神造艦スキーズブラジニル】であると
 対する忍はやっぱりそういうような大仰な名前が付いてたかと呟き、次に肩を落とした
「だがこれは基本風任せで操縦出来ねーんだ。ここまで運んで来て木々に縄つけて繋ぐにもサウザンドドラゴン頼みで力ずくだった」
 禁書目録を先頭とした一同は艦橋に入り、豪奢なソファーの肘置きの小さな溝に着目する。「ここにマクスウェルという宝貝を差し込めば制御可能になるはずなんだよ」
 語り、ふと見れば自分や上条らの胸元の宝玉の光はこの船に入ったとたん消えていた。つまりみんなこの船に乗れと? そう解釈するしかない
 この艦と集った人材で何を為す? 美琴や禁書目録は魔王白面朗君を倒して仙界に帰りたいと言い、フローレイティア伯は殷の紂王と妲己を倒し栄王朝を再興したいと言う
 だがその白面朗君とやらは何処にいる? 両方やってしまおう。まずは居所の解っている紂王と妲己、栄の再興でどうだ?
白面朗君の居場所はおいおい判明しよう。その時が来たら我らも参戦するとフローレイティア伯。美琴は了承する。彼女らにしろ塗炭の苦しみに喘ぐ民らを見捨てられるわけでもない

585■■■■:2017/03/03(金) 19:03:57 ID:aOp5mokI
 
 誰かマクスウェルという宝貝の在処について何か知らないか? 
 村に戻りそう尋ねたフローレイティアの前に挙手して進み出てきたのは、情報通信系宝貝を使わせれば初春と並ぶ”神算子”アナスタシアであった
 彼女によればそのマクスウェルなる宝貝は西方の地で光十字と事を構える友人、天津サトリが所持していると言う
 ではそいつに会いに行こうとなり、梁山泊住民とも意気投合する。上条らが山頂の神造艦を見に行ってる間、他の者は村の者と親睦を深めていた
妻の縁にそういう天命あるならばと非宿星の忍も乗り気だ。オラが村の作物が高く売れる世の中に戻したいとの金勘定もある
 最初からこの地に住んでいた宿星持ちは以下の通りである
”小旋風”陣内縁、”独角龍”サウザンドドラゴン、”神火将”ヴァルトラウテ、その夫”聖酒書生”ジャック
”摸着天”垣根帝督、”摩雲金翅”ストリオーナ、 雪女の斑、雹、霙。この者ら三人合わせて”鎮三山”と称す
”険道神”油取り、“病関索”病魔の使役者、“病尉遅”巫蠱の透視者、
“没遮欄”スカルウェーブと”毛頭星”ツェリカの夫婦、”挿翅虎”菱神しきみ。合わせて十六星
 これだけの異形の面々を束ねるは宿星こそ宿ってないが”托塔天王”陣内忍
 多くの妖怪や結婚前の縁の妖力の暴走を鎮めるため万華鏡の塔を建てた事からこう呼ばれる好漢であった    続

586■■■■:2017/03/05(日) 20:08:41 ID:LbMv1e1Q
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◆             中華宿星 水滸伝九 木原荘襲撃
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〜木原荘〜
 アナスタシアの友人、天津三兄弟に会うべくサウザンドドラゴンの背に乗って蜀の地へ向かうアナスタシアに上条やクウェンサー、禁書目録に美琴ら二十人程
 大多数はあのまま梁山泊に置いてきた。村に逗留させてもらってる返礼に開墾や建設などの手伝いをするためと、スキーズブラジニルの手入れのためだ
 空の旅の途中、鋭角的な鉄の鳥が梁山泊の方向めがけて飛んで行くのを遠目に見る。あれは乗り物宝貝戦闘機かもと禁書目録は言う
 戦闘機。普段は木の葉ほどの大きさなれど一たび氣をこめ(ry
 まあもしその戦闘機なるものが梁山泊の敵であろうともあちらに残してきたプタナの玄武やステイル、忍の統率する妖怪たちがどうにでもするであろう
休憩をはさみはさみの幾日かの旅の果て、山岳と深き谷の向こうの平野部、蜀の地へ。暗雲曇る切り立った山の上に不気味に聳え建つ纐纈城を見る
 先ずは一方通行に伴われたアナスタシアが先触れ。許可を得て上条、クウェンサー、御坂、禁書目録が入場する
 うらぶれた廃城の談話室に待っていたのは天津の三兄弟、”立地太歳”エリカ、”奔命二郎”サトリ、”短命三朗”アユミである
 上条らは事情を説明し助力を乞うが、今は朝廷直属の宝貝の研究者団体、光十字とこれを牛耳る木原一家との抗争中であるし友人の魔女、”玉旛竿”井東ヘレンも奴らに囚われてると言う
 それではと加勢を申し出た上条ら、天津兄弟が元々持っていた情報とニャラルトホテプ、クウェンサー、食蜂、滝壺、すねこすり、
闇咲、土御門、エツァリ、隼と艶美らが集めてきた情報を元にサトリが中心となり作戦を構築、
木原荘を神裂、ミリンダ、おほほ、アズラフィアら三機の重層武器、ぶーぶー、九臂那託のうち四機で包囲の上でベアトリーチェに上条や一方通行、アルメリナに大ムカデ
、美琴に黒子、軍覇にヘイヴィアにアユミらが吶喊
 ヘレンは潜入部隊の菱神舞に麦野、絹旗フレンダ垣根、宝貝トネリ装備の浜面らが確保、すぐさまフィリニオンの元へ運び込む。その際に数名の囚われの怪人も救助した
 途中あの一方通行がしこたま殴られたりぶーぶーが幻覚に混乱したり麦野が敵将と間違われたりと多少の波乱はあったものの、
速やかに戦局は確定し木原荘崩壊、当主の木原幻生はいつの間にかどこかへ姿をくらましていた
ここまでたった二日。このあまりの頼り甲斐と胸に宿った宝珠の因縁に、天津三兄弟とヘレンは梁山泊軍へ身を投じる事を決めた
 一夜明け、たった一夜で廃墟にしてしまった木原研究所から使えそうな宝貝を押収する者達。クウェンサー、サトリ、アナスタシア、禁書目録、土御門ら
”浪士の”クロードと”鉄叫子”エリはそんな有様を遠巻きに眺める現地住民らしき犬を散歩させる女を見かけるが気にしなかった
 他方、それまで光十字を牛耳っていた首脳部が壊滅したことで身の自由を得た者達がいた。”活閻羅”木原加群、”双槍将”黒夜海鳥、”鬼斂児”木原那由他の三名である
 またサウザンドドラゴンに乗って梁山泊に帰る道中、雪山で行き倒れになっていた“翻江蜃”氷爆姫ヴィルデフラウを救助、宿星持ちであったためそのまま口説き落として一味に加える
 天津三兄弟、ヘレン、木原加群と那由他、海鳥、ヴィルデフラウら八星を得た梁山泊軍は水塞に凱旋する

587■■■■:2017/03/07(火) 20:03:14 ID:Zn6.SONw
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◆             中華宿星 水滸伝十 泊軍血盟 
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〜梁山泊山頂、スキーズブラジニル〜
『シュア、艦内全権のスレーヴ化に成功、完全掌握完了』
 サトリの宝貝マクスウェルを神造艦スキーズブラジニルの艦長席の肘置きの溝に差し込むと本当にあっさり制御可能になった
 アヤミ婆やクウェンサー、美琴初春アナスタシア浜面サトリらが艦橋や艦内各所に通信・作業・探索・情報処理に使える宝貝を取り付けてる間、
フローレイティア、上条、忍と縁夫妻、エリカ、上里、神裂らが艦橋にて組織人事を決定していく
 まず行動指針は悪政を敷く殷王朝からの中華領土の解放。それに伴う栄王朝最後の生き残り、フローレイティア伯の即位。栄の再興と位置付ける
 これに並行して魔王白面朗君の情報の収集
 資金・兵糧は各自が持ち寄った物に加え、水塞梁山泊で生産される穀物や酒、野菜などが高値で売れるためこれも充当する事とする
 中央司令部となるスキーズブラジニルの艦橋要員に初春、アナスタシア、滝壺を配し艦長をフローレイティア、軍師に禁書目録、副官をサトリとする
 忍とジャックで食糧管理、及び酒造。縁と惑歌は財政、湾内と雪女・雹と霙で水を管理。食堂は佐天と土御門舞夏、雪女・班を主人としその時々で暇で料理上手な者が調理を手伝う事とした
 上条らが蜀の地に遠征してる間に戦闘機に乗ってはるばる梁山泊を訪れ仲間になった“雲裏金剛”マリーディと“神医”カエル先生らも交えて相談
一方通行、マリーディ、サウザンドドラゴン、垣根、ストリオーナ、天津エリカで空軍発足、軍団長をヴァルトラウテとする
 医務関連はカエル先生とフィリニオンを置いて他に無し。フィリニオンと井東ヘレン、病魔の使役者は薬剤精製も兼任する
艦内風紀は男は内幕隼、女はアルメリナの管轄とする
 シーワックスがアリサを部下に広報部を作らせてくれと言ってきたのでこれを承認。那託たちや重層武器の整備はアヤミ婆以下整備兵が行う
 クウェンサーとヘイヴィアの馬鹿二人が俺達も艦橋要員に入れてくれと言ってきたがフローレイティア艦長はこれを却下
代替案としてこれまでの武勲を鑑み、ケビン他フローレイティア軍歩兵の将にヘイヴィア、全部で五機ある重層武器の将にクウェンサーを抜擢すれば二人は慌てて拝跪、泣いて嫌がった
 夜間は天津エリカ、上里軍で神造艦を守るものとする
 さて、総大将は誰がやる? 会議がここに及び紛糾した。何となく上条かフローレイティアのどちらかであろうという空気は有る。そこに食蜂が一人の兵卒を伴い割り込んできた
 食蜂によるとこのナッツレイなるフローレイティア軍の一兵卒、阿世宰相アレイスターの間者であるので捕縛し連れてきたという
 目が☆になったナッツレイが自白するままによると木原荘を潰した梁山泊軍に四日後、宰相が派遣した神の右席なる強力な道術集団が奇襲をかけるらしい
 他にも官軍が来るらしい、自分は内応してかく乱の役目を任されていた。これ以上は何も知らないとの事
 四日。迎撃の準備を整えるには充分だと判断、とにかく今夜は固めの盃をと忍が提案し、一同も了承
 陣内酒造の倉を開け放ち酒や食材を放出、調理しながらの宴会となった
 その席で決まった総大将は”托塔天王”、陣内忍。元々神造艦は彼の持ち物であるし莫大な出資もしてもらっている。この梁山泊の村長も彼だし既婚者だ、下手な事はすまい
 副将は上条とフローレイティアの二名とし、乾杯!
 天道に添い世直しを行おうぞ! 宿命の好漢たちの宴の夜は更けてゆく       続

588■■■■:2017/03/09(木) 19:04:09 ID:dwocimuA
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◆             中華宿星 水滸伝 十一 官軍襲来
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〜梁山泊山頂〜
 宝貝マクスウェルでこの宝貝巨大戦艦を自由化、各種便利・快適化宝貝取り付け作業はアヤミ婆の主導の下一日で完了
 生活物資や家具の運び込み、私室の割り振りなども完了、神造艦スキーズブラジニルはものの二日で完璧に梁山泊の移動大本営としての体裁を整えた
 そして次の日には迎え撃つ官軍、神の右席。艦長フローレイティア伯はまず一方通行、妖怪一反木綿、垣根、マリーディ、エリカら空軍戦力を偵察として西北西から南南西に分けて派遣した
 一時間後に異変を報せてきたのは戦闘機乗りのマリーディ。空飛ぶ巨大な城がこちらに向かっていると言う。そこまでで通信は途絶した
 艦長は浜面に戦闘機乗りの少女の探索を命じ、舵取りの副官サトリに神造艦の浮上を命じる
数年の山肌に溶け込む擬態の時を終え、マクスウェル制御の下いま大空に羽ばたくスキーズブラジニル
 甲板にはテムジンら九臂那托のうち五機が仁王立ちし、そのやや後方で天女衆の長御坂美琴が貨幣を握りしめた拳で風を払う
 神造艦のすぐ横を飛ぶサウザンドドラゴンとその頭上に立つヴァルトラウテ。やがて空で会敵する超巨大浮遊要塞ベツレヘルムの星。これを制御するは魔将フィアンマである
 神造艦の甲板上で重層武器白虎を起動、光の粒子となって白虎に乗り込み空飛ぶ島に砲撃を加えたミリンダであったが島の先端に立つ緑衣の男は白い粉を振りまいただけでこれを完全防御、
驚愕した次の瞬間、その横に立つ赤い道術服のフィアンマが何かしたかと思うと白虎が粉々にされていた。ミリンダは傷を負ってカエル先生らの所へ運びこまれる
 ベツレヘルムの星の先頭に立つは右方のフィアンマ、左方のテッラ、アニェーゼ隊であった
 スキーズブラジニルとベツレヘルムが正面衝突、おほほの朱雀、キャスリンの麒麟、九臂那託らが砲火をブチ込むも左方のテッラが完全防御、
乗り込んできたアニェーゼ隊を御坂の符で顕現した一万人の影が迎え撃つ。フィアンマはヴァルトラウテとサウザンドドラゴンを同時に相手どっていた

589■■■■:2017/03/09(木) 19:05:03 ID:dwocimuA
 そして地上、山塞防衛隊。大河から氷の船団を率いて襲来したるは前方のヴェント、腹心ビアージオ、道術集団黄金黎明ら総勢五十名ほど
 迎え撃つは銃器が主武装のクックマンケビン他を率いるヘイヴィア隊、及びプタナの玄武とアズラフィアの青竜である
 一網打尽かに思われたがヘイヴィアらが狙撃スコープの中に舌から鎖を伸ばしたヴェントの姿を認めると即座に昏倒、ヘイヴィア隊は一瞬にして壊滅した
 状況が把握出来ない重層武器乗り二人。そこに氷船から飛び降り、水上を高速疾走する大刀を持った豪傑が迫り来る
 咄嗟に飛び出たのはぶーぶー法師。敵と同じように大河の上を高速疾走し猛将アックアと剣戟を交わす。ぶーぶーの鉄根とアックアの宝貝刀アスカロン
 何合も火花を散らす激しい応酬、ヴェントらも梁山泊軍らもあの豪傑は何者だとどよめきの声しきり
 それとは別にヘイヴィアども何やってンだとヴェント船団を迎え打った一方通行、やはりまたヴェントの姿を見るなり昏倒、ヘイヴィア隊もろとも黄金黎明に捕虜とされてしまう
 梁山泊に上陸する黄金黎明四〇名。山を登ってすぐステイルの張りめぐらした炎陣結界に気付きやや後退、将レイヴィニアはここに陣を張り慎重に進軍するとヴェントに連絡を取る
 空中、サウザンドドラゴンに深手を負わせたフィアンマ、ヴァルトラウテとは互角の勝負。テッラは戻ってきた垣根帝督がどうにか食い止めている。
アニェーゼ隊は御坂の影武者一万人とテムジン他那託たちの大兵力の前に壊滅、捕虜となった
 戦局を見定める御坂美琴、フィアンマはよく解らないのでテッラのほうに戦力を集中させる
 地上。ビアージオはベアトリーチェの前に敗れさった。アックアとぶーぶーはひたすら互角の一騎討ちを演じている。闇咲は黄金黎明の副将マークを撃破、捕虜とする
 フィアンマとフローレイティア、全く同時に撤収の銅鑼を鳴らし両軍撤退、どちらも被害は甚大であった。浜面が傷ついたマリーディを一反木綿にくるんでこっそりと水塞に帰投、カエル医者の元へ
 スキーズブラジニル艦橋では禁書目録とクウェンサーの両軍師、上条と忍らが敵の術式や戦法の分析を行っていた
 他方、梁山泊山中で黄金黎明のマークが闇咲に申し出る
自分が捕まったのは敢えてだ。我々黄金黎明には貴君ら梁山泊と戦う理由は別に無い。ただ太姐レイヴィニアの妹が人質に取られているから仕方なくなのだと
 妹パトリシアの奪還に協力してくれたなら我々はそちらに寝返ってもいいと
 その頃、神の右席の援軍に駆けつけた軍神とも称される放浪の将がいる。帽子に槍に眼帯に外套に下着の少女、“精忠報国”オティヌスである   続

590■■■■:2017/03/11(土) 20:51:13 ID:svWOB7WA
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◆             中華宿星 水滸伝  十二 武神朋盟
◆──────────────────────────────────―◆

〜スキーズブラジニル〜 
 ヘイヴィア隊と一方通行が捕虜とされサウザンドドラゴン、マリーディ、ミリンダは絶対安静。暗惨たる結果に木原荘とはモノが違うと認識せざるを得ない梁山泊軍
 禁書目録とクウェンサーの両軍師は敵の術式解明や攻略法の確立に討議を重ねる。黄金黎明副将マークの投降に嘘は無いと食蜂は保証した。つけこむべきは敵軍の少なさである
ここから導き出される勝利の策略や如何に?
〜ベツレヘルム〜
 アニェーゼ隊とビアージオ、マークが捕虜とされ援軍に万夫不当の軍神オティヌスが腹心のマリアンを伴い馳せ参じてくれた
右席ら四人とレイヴィニアら黄金黎明四〇人はこれまでの賊軍と違うぞと認識を新たにヘイヴィアらから魔術で情報を取り出し軍略を練る

 翌朝。再び天と地とで戦が始まる。朱雀と麒麟、那託達五機を甲板上に乗せたスキーズブラジニルと激突するフィアンマとテッラのベツレヘルム
地上では玄武と青竜、那託達四機を主力に守りを固める梁山泊へ、砲撃を加えつつ侵攻する氷の船団とアックア、レイヴィニアら地上部隊
ここでスキーズブラジニル艦橋の滝壺、既知の敵軍とは別に別働隊が梁山泊東方より攻勢をかけてくることを探知
マークの知らない兵力が!? 慌てて地上部隊指揮官のクウェンサーに連絡。副軍師は慌てて対前方のヴェント用に準備してた兵員、上条他数名をそちらに投入した
クウェンサーは歯噛みする。禁書目録にヴェントの術式、天罰術式を看破してもらい、ならばと食蜂にヴェントへと敵意を向けないように調整してもらい、お陰でヴェントからの被害は氷の船団だけの砲撃で済んではいる
猛将アックアはぶーぶー、神裂を軸に天草教、ベアトーリチェ、アルメリナの総がかりだ。レイヴィニア隊は大ムカデ、菱神しきみ、ステイルらが応戦中
天ではヴァルトラウテとクロードとエリ、トールがフィアンマを抑え、テッラは上里軍が囲んで多種多様な攻撃を加えている
天罰術式に効果が無いと見て取ったヴェント、氷船を自動砲撃に切り替え那託らに応戦、自身は単身上陸してきた。クウェンサーはやむなく爆弾を手に自身で迎え撃つことにする
同行するは闇咲、麦野、絹旗、フレンダ、スカルウェーブ。全員食蜂により精神調整済み。この一団は本来ならパトリシアの救出の囮部隊となるはずであった
艦長フローレイティア、滝壺に敵残存戦力が無いことを確認、最後の予備兵力の垣根と軍覇、菱神舞と愛歌とライガー、マークを黄金黎明の長の妹、パトリシアの救助のために地上へ降ろしアックア、ヴェントを迂回させつつ氷の船団へ派遣する
さて敵別働隊の迎撃に当たった上条、美琴ら天女達(初春佐天食蜂は除く)とエツァリ、ビヨンデッタと蛇、病魔と巫蟲、雪女三人。
会敵するは露出の多い女二人、オティヌスとマリアンである。噂に名高い万夫不当の武神オティヌス! 戦慄しつつもそれぞれの武器を構える上条隊
「勅命により終わらせてやる」そう短く告げたオティヌスは神槍グングニルの鞘を解き放ち、やや遠くから上条へ振るい──────────はしなかった
 オティヌスは一息ついて黙って槍を収め、無造作に歩み寄ってきた上条と向かい合い同時に拝礼、目を白黒させる美琴らやマリアンを捨て置き無言のまま天地に三拝、義兄弟の契りを交わしてしまった
「オティヌスだが、俺の義姉になってくれたから」
上条の口から至極簡単に発せられた言葉に美琴一同や”玉臂匠“マリアンは我が耳を疑う。ともかく誰も何も苦労せず強力な敵がこちらについたなら文句のあろうはずがない
梁山泊軍に天機が訪れた     続

591■■■■:2017/03/11(土) 23:03:29 ID:/xdMsxws
オティヌスのパッと見のチョロインっぷりがやばくて草
でも原作でも周りからはこんな感じだったんだろうなあ

592■■■■:2017/03/12(日) 07:51:50 ID:WluV2i6I
って一人でも読んでてくれてる人がいたのか。
解らんことがあったら聞いてくれ。精忠報国とかオティ一人だけ岳飛伝からきてるし

593■■■■:2017/03/12(日) 22:00:10 ID:EW6uFErA
ここで昔安価やってた人とは別の人?

594■■■■:2017/03/12(日) 22:10:39 ID:6nXiR9lE
安価って何?
とりあえずここのスレ使ったのは禁書ごちゃ混ぜ時代劇とこの水滸伝のみかなあ

595■■■■:2017/03/13(月) 19:21:01 ID:DjmJKU7U
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 十三
◆──────────────────────────────────―◆

〜ベツレヘルム〜
 テッラに上里の理想送りは通用しなかった
 この緑衣の司祭にとってこの世界は、程よく自らの宗派の信徒で満たされ、程よい数の邪教徒を神の名の下に処断できるこの世界が理想そのものだからである
 布教と処罰の艱難辛苦、満たされぬ求道こそが彼の理想の世界なのであった
 だがしかし理想送りは通じなくても娘子軍の多種多用な攻撃はそうでもない。 或る少女は宝貝兵器で、或る少女は道術で、或る少女は増幅された打撃力で
 最前線参加を諦めた上里翔流の指示の下、次々と切り替えられる攻撃の前に光の処刑の切り替えは追いつかず、次第に満身創痍になってゆく
 宮殿で戦うフィアンマもヴァルトラウテ、五機の那託、クロードとエリとトール、ミョルニルらに手一杯のようである。ベツレヘルム宮殿は二機の重層武器の砲撃によりもはや瓦解していた
〜梁山泊〜
 ヴェントを相手どったクウェンサーらは先ずクウェンサーと麦野が天罰術式にやられ昏倒した
 食蜂によりヴェントに敵意を抱かないよう調整してもらったはずだがやはり敵意を持たないで戦えというのはよほどの精神異常者でもない限り無理なのであろう
 絹旗が一人、どうにか風の砲弾を防ぐのに手一杯の状況を、駆けつけた上条がひっくり返す
 あの厄介な天罰術式を天然無効化、一対一の勝負とし昏倒したクウェンサーらの回収をフレンダらに命じる
 美琴やエツァリらはパトリシア奪還部隊のマークらに合流、氷の船団で鎧騎士と戦闘に入っている
 ぶーぶーと神裂と天草教、ベアトリーチェ、アルメリナヴィルデフラウらの波状攻撃に猛将アックアもさすがに敗退、捕虜となる。ヴェントも上条の拳に敗退、氷船の一隻を呼び逃げ去っていった
 氷の船団に突入していた美琴や舞ら、パトリシアの救出に最後方の船の船室へ斬りこんでみれば捕縛されていたはずの一方通行が既にこれをほぼ為していた
哀しみの童女の涙を前に、無数の鎧騎士の残骸や牢屋の破片が散らばる現場で、パトリシアにじかにかけられた逃亡阻止の魔術が厄介なので解除を手伝えと彼は言う
マーク、エツァリらによりパトリシア捕縛の魔術を瓦解させ脱出、ついでにヘイヴィア隊も救助、マークよりの連絡を受けたレイヴィニアは大ムカデやステイルとの形ばかりの交戦を終え降伏した
〜ベツレヘルム〜
 ヴァルトラウテらの攻撃をどうにか凌いでいたフィアンマの前にオティヌス参戦、その強大な力の前に官軍総大将右方のフィアンマ、遂に敗北し倒れ伏す
 見ればテッラも最期はおほほの朱雀の砲撃により粉微塵になっていた。彼に悔いはないであろうことは短い付き合いだが判る
 右席軍の最期の一将フィアンマを下し、遂に梁山泊軍の勝利が確定した。ベツレヘルム城の残骸は一部をスキーズブラジニル甲板上に乗り上げ、残りは崩壊、落下してゆく
 艦長フローレイティア伯は終戦を宣言、事後処理の雑多な指示を余力がある者達を見繕って命じていく
 その指示の最期に忍が放送を代わり、全て終ったら捕らえた敵兵も交えて宴会だと告知、捕虜の中に宿星持ちを数人見つけたと彼は言う
 さて捕らえた敵将たちのうち“大刀の”アックア、“没面目”フィアンマ、“小遮欄”アニェーゼ、“撲天鵬”レイヴィニアは宿星持ちであったのでならば兄弟だと仲間に入るよう説得
 レイヴイニア、“精忠報国”オティヌス、“玉臂匠”マリアンは魔王白面朗君の話を聞くと即座に加盟を誓い、アニェーゼ及びその部下達も世話役のオルソラの説得により恭順
 魔将フィアンマは上条が、猛将アックアは浜面が説得の末に梁山泊入りを決意させる
 新たなる仲間を得て梁山泊軍はいよいよ国土解放の戦に入る

596ミスった:2017/03/13(月) 19:23:31 ID:DjmJKU7U
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 十三 五虎将軍
◆──────────────────────────────────―◆

〜ベツレヘルム〜
 テッラに上里の理想送りは通用しなかった
 この緑衣の司祭にとってこの世界は、程よく自らの宗派の信徒で満たされ、程よい数の邪教徒を神の名の下に処断できるこの世界が理想そのものだからである
 布教と処罰の艱難辛苦、満たされぬ求道こそが彼の理想の世界なのであった
 だがしかし理想送りは通じなくても娘子軍の多種多用な攻撃はそうでもない。 或る少女は宝貝兵器で、或る少女は道術で、或る少女は増幅された打撃力で
 最前線参加を諦めた上里翔流の指示の下、次々と切り替えられる攻撃の前に光の処刑の切り替えは追いつかず、次第に満身創痍になってゆく
 宮殿で戦うフィアンマもヴァルトラウテ、五機の那託、クロードとエリとトール、ミョルニルらに手一杯のようである。ベツレヘルム宮殿は二機の重層武器の砲撃によりもはや瓦解していた
〜梁山泊〜
 ヴェントを相手どったクウェンサーらは先ずクウェンサーと麦野が天罰術式にやられ昏倒した
 食蜂によりヴェントに敵意を抱かないよう調整してもらったはずだがやはり敵意を持たないで戦えというのはよほどの精神異常者でもない限り無理なのであろう
 絹旗が一人、どうにか風の砲弾を防ぐのに手一杯の状況を、駆けつけた上条がひっくり返す
 あの厄介な天罰術式を天然無効化、一対一の勝負とし昏倒したクウェンサーらの回収をフレンダらに命じる
 美琴やエツァリらはパトリシア奪還部隊のマークらに合流、氷の船団で鎧騎士と戦闘に入っている
 ぶーぶーと神裂と天草教、ベアトリーチェ、アルメリナヴィルデフラウらの波状攻撃に猛将アックアもさすがに敗退、捕虜となる。ヴェントも上条の拳に敗退、氷船の一隻を呼び逃げ去っていった
 氷の船団に突入していた美琴や舞ら、パトリシアの救出に最後方の船の船室へ斬りこんでみれば捕縛されていたはずの一方通行が既にこれをほぼ為していた
哀しみの童女の涙を前に、無数の鎧騎士の残骸や牢屋の破片が散らばる現場で、パトリシアにじかにかけられた逃亡阻止の魔術が厄介なので解除を手伝えと彼は言う
マーク、エツァリらによりパトリシア捕縛の魔術を瓦解させ脱出、ついでにヘイヴィア隊も救助、マークよりの連絡を受けたレイヴィニアは大ムカデやステイルとの形ばかりの交戦を終え降伏した
〜ベツレヘルム〜
 ヴァルトラウテらの攻撃をどうにか凌いでいたフィアンマの前にオティヌス参戦、その強大な力の前に官軍総大将右方のフィアンマ、遂に敗北し倒れ伏す
 見ればテッラも最期はおほほの朱雀の砲撃により粉微塵になっていた。彼に悔いはないであろうことは短い付き合いだが判る
 右席軍の最期の一将フィアンマを下し、遂に梁山泊軍の勝利が確定した。ベツレヘルム城の残骸は一部をスキーズブラジニル甲板上に乗り上げ、残りは崩壊、落下してゆく
 艦長フローレイティア伯は終戦を宣言、事後処理の雑多な指示を余力がある者達を見繕って命じていく
 その指示の最期に忍が放送を代わり、全て終ったら捕らえた敵兵も交えて宴会だと告知、捕虜の中に宿星持ちを数人見つけたと彼は言う
 さて捕らえた敵将たちのうち“大刀の”アックア、“没面目”フィアンマ、“小遮欄”アニェーゼ、“撲天鵬”レイヴィニアは宿星持ちであったのでならば兄弟だと仲間に入るよう説得
 レイヴイニア、“精忠報国”オティヌス、“玉臂匠”マリアンは魔王白面朗君の話を聞くと即座に加盟を誓い、アニェーゼ及びその部下達も世話役のオルソラの説得により恭順
 魔将フィアンマは上条が、猛将アックアは浜面が説得の末に梁山泊入りを決意させる
 新たなる仲間を得て梁山泊軍はいよいよ国土解放の戦に入る
 後世、急に上条の義姉になったオティヌスを筆頭としアックア、ヴァルトラウテ、ぶーぶー、神裂は梁山泊の五虎将軍と呼ばれるようになる     続

597■■■■:2017/03/15(水) 19:21:54 ID:vueHoOjc
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 十四 出師の表
◆──────────────────────────────────―◆

〜スキーズブラジニル会議室〜
 フィアンマら六星と道術団を加え、栄王朝の最後の生き残りフローレイティア伯を旗印に本格的に領土奪還の戦へ進発することになった梁山泊軍
 先ずはこの梁山泊のある山東の都や村を開放しようということにみな異存は無いが、会議の席上、シーワックスが提言した
「民衆の支持は大事です。まず表向き総大将の伯はどういった人物なのか、何をしたいのか、広く民衆に知らしめる必要があります
ただでさえ我々はサウザンドドラゴンやぶーぶー他の妖怪たち、巨大宝貝重層武器など外見が恐ろしく見られがち。広報戦、印象戦略の必要性を進言致します
伯に天道正義有りと人々が判断すれば民たちは諸手を挙げて我らを迎え入れ、官の中からもアックア殿たちのように我々についてくれる者も出ましょう。無益な戦いも避けられます」
 シーワックスの言や良し。だが具体的に何をすれば? 伯の問いに記者は自分の宝貝、カメラを卓に置いた
「伯のお姿と決意表明文、出師の表を広く世に流布しましょう。文は人なりです。まずそのお姿、軍服から上質の王族っぽい上品な服に着替えてください。煙管は持たないで。
呼称も伯をやめ天子の子、公主と称しましょう。あと誰か、広範囲に伯、いや公主の写真と声明文を配布出来るような宝貝か道術かパッケージかを準備してくれないか?」
 かくして始まったフローレイティア深窓の令嬢化作戦。ベアトリーチェ、佐天、フィリニオンらがキャッキャと軍務一筋に生きてきた女に無理をさせる
 煙管を取り上げ上品かつ質素な服を着せ髪を結い飾りつけ、剥きだしにした細い白磁の左肩には初春の花飾りをのせ、花が咲き誇る木の枝でも持たせ嫣然と微笑みさせれば、
シーワックスがカメラのフラッシュを炊きまくる後方で馬鹿二人が腹を押さえて笑い転げている。どころか常識人なクックマンやミョンリらまで笑いを噛み殺しきれてない
 撮影終了と同時に頬を紅潮させ銃を抜くが、馬鹿二人はとうに何処かへ逃げ去っていた

598■■■■:2017/03/15(水) 19:22:45 ID:vueHoOjc
さて次は決意表明文、出師の表である。事務室に座り筆を取るフローレイティア公主であるが、硬く武断的でつまらない文しか書けない。事務方の縁と惑歌に見せても同様の意見だ
確か幼い頃は詩文なども学んだはずだが、軍学と軍務と散文的な報告書作成の日々でいつの間にか文才詩才は磨り潰されていたと今更ながらに気が付いた
諦めて、副官サトリを呼んで命じる。代筆してくれる者を連れて来てくれ。この一文は各地の諸侯に協力、或いは黙認を要請する檄文の役割も持つから、優美で上品、
かつ私の即位を認めさせる強く熱い決意、歴史の教養にあふれ強く優しい女を印象付ける天下の名文を書ける文士をだ。民草目線で万民救世の決意文を書ける者ならなお良い
聞けば聞くほど顔をしかめていく副官サトリ。ウチにはそんな高貴なのいないと思いますが、まあと部屋を出ていく
副官が誰か連れてくるのを待つ間、手持ち無沙汰な公主は惑歌に依頼してみる。縁は学が無いからと断った
惑歌/経済的観点からの政府批判が大部分で経済立て直し策を幾つか。私が即位したらあなたに経世の丞をやってもらおうかと言いつつ原稿は没
以下、サトリが広い艦内をほうぼう走り回って連れてきた順に
ベアトリーチェ/悪くないがやや過激。没
天津エリカ/文体は綺麗だが救国の熱さが足りない。没
上条/熱さはあるが長すぎて没
美琴/上条と似た熱さでかつ短くよくまとまってるが仙界人なので古の故事とか引用出来ず。保留
ヴァルトラウテ/上から目線過ぎて没
禁書目録/《家族みんなで笑顔で鍋を囲める国を取り戻そう》……スローガンとしては採用
アズラフィア/武断的内容が目立つが悪くないので保留
シーワックス/判りやすく順序正しい文章だが扇動の意図が見え透いてて没
黒子/《ジャッジメントですの!》没
固法/《ジャッジメントですの?》どういう事だ!?
馬鹿二人/試すまでもない帰れ 
内幕隼/判りやすいが罪状を語り過ぎてて裁判じみてる。アルメリナも大同小異なので共に没
神裂火織/堅苦し過ぎて没
アックア/悪く無いが男らし過ぎて没
鎌池和馬/書き過ぎィ! 没!
忍/チャラい
ぶーぶー/なぜ連れて来た?
全くどいつもコイツも! 美文の一つも書けぬのか!
自分のことは棚上げして憤慨する公主である。結局は美琴かアズラフィルの草案であろうか?
縁と惑歌にこの二人の原稿を見せて諮ると、彼女らは言いにくそうに答える。この勇ましい文面だと普段の軍服の写真と合わせたほうが良くない?
机上に崩れ落ちる公主の前に、いい加減青息吐息のサトリが連れてきたのはアニェーゼ隊の世話役、オルソラ
事情説明が二度ほどループしたがとにかく理解し机に座り、一分ほど考えてから筆を執り、スラスラと書き、公主へ草案を差し出すオルソラ
公主ら女三人とサトリは瞠目する。女性らしい繊細だが力強い筆致で公主の出自の説明から入り殷の非道を鳴らし、民草の塗炭の苦しみを嘆き救国挙兵の道理を情理を尽くして熱く語り、見識豊かに古の賢人の知恵に触れ、品格に満ちた言い回しで国土奪還の決意を述べる
この文面の格調の高さは稀代の徳王の芳香、噎せかえらんばかり
これは千年二千年の後世に残る名文であろうと公主らが確信するに足る、憂国の貴人の気概が漂う美文であった
貴女これから先ずっと私の勅書や演説原稿代筆してくれないだろうかとその場で頭を下げて頼み込むと、それが万民救世の一助になるならと無欲の笑み
惑歌などは我知らず拝んでいた。以降、オルソラは事務室の一員となる。公主及び梁山泊軍は尚書令に人を得た
オルソラ・アクィナス。宿星は宿らぬ異名も持たぬ。だが歴史の裏側で大業の華を咲かす、静かな英傑がここに在る      続

599■■■■:2017/03/17(金) 11:43:46 ID:MNIAS6GA
会話が想像しやすくてほんと草

600■■■■:2017/03/17(金) 19:19:03 ID:gb70bksA
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝  十五 実在性瑞祥女王
◆──────────────────────────────────―◆

〜梁山泊・スキーズブラジニル〜
やっとの思いで出師の表を仕上げたフローレイティア公主。この名文を広範囲に配布する手立てを講じたのは総大将、陣内忍である。忍はその目に悪戯っぽい光を躍らせて語る
「夢関連妖怪の獏と枕返しとサキュバス、あとアンタの栄王家の血筋そのものの知名度と見目麗しい女性って断片を媒介に夢のパッケージを組んだ
昔は良かったなとか宋の御世に戻らないかなとか思いながら寝たやつの夢にアンタが現れてお告げを語る仕組みだ
範囲は旧栄王朝の国民全部。二、三日もすればこの国でアンタの夢を見てない人間はいなくなるんじゃねーかな? 演説が終るまで起きられないようにしてある
なので公主、もう一回上品な服に着替えてその出師の表ってのを演説してくれ」
 指示に従い、オルソラの原稿を演説用に微調整し純白の羽団扇でも手に高貴な淑女を装い、オルソラ口調で栄王朝復興の決意を語るフローレイティア公主
サトリがマクスウェルでその動画を撮影、忍と共に獏と枕返しとサキュバスの元に持っていく
 公主、その日はいくつかの会議を終えてスキーズブラジニルの私室に戻り寝酒を呷り就寝
…………自分で自分の演説の夢を見るというのはなんとも言えぬものだった
〜翌朝・スキーズブラジニル食堂〜
 フローレイティア公主が食堂に入ると騒々しかった場が一瞬で静かになった。みな笑いを堪えている膨れ面である
 ああ、コイツらも私の演説を夢に見たなと察し、やや紅潮しながら朝食の粥を受け取りに行く
 中華粥の椀とお茶の入った湯飲みを渡してくる舞夏まで目を逸らし頬を膨らませて必死に笑いを耐えている。さすがにこの子をはたくわけにもいかないので後で誰かに八つ当たりをぶつけることを決意する公主
 笑うな、笑うんじゃないと緊迫した空気の中で宿星たちやその他の者達の朝食が終った頃、妻の縁を従えて満面の笑みで食堂に入室してくる陣内忍
その瞬間に者どもの笑いを含んだ怒声が食堂を席巻した
「おい俺らも対象範囲かよ!?」「俺らは対象範囲から外せ! 寝ながら笑い死にするだろ!?」「ちょっとーww 公主に失礼だってばw」「どころかこれ公主本人まで笑い死にするオチですたい!」「真面目! みんな真面目にやるべきです! わんわん!」
 これらの苦情の嵐に総大将は可可と笑う
「いや、アセンブラを組んでる途中で俺ら自身もこの夢見るかなとは気づいたけどよ、俺ら自身を除外するのも出来なくはなかったが、それやると手間が増大するし面倒だしでそのまま行くことにした
三日後には解除するからそれまで待ってくれよ」
 巫戯けんなと笑声とも怒声ともつかぬ批難が総大将に殺到する。公主自身は顔を手で覆いひたすら伏せていた

601■■■■:2017/03/17(金) 19:20:37 ID:gb70bksA
 そして三日後。マリーディやサウザンドドラゴンら傷ついた者達の傷も癒え、戦闘機や白虎も垣根に出させた未元物質をもって修理完了
梁山泊軍を乗せたスキーズブラジニルは山東の州都、青島に進発する
 賑やかな正午前を狙って到着し都を守る城壁に神造艦を横づけ、護衛官のベアトリーチェアルメリナを左右に従え演説の時の衣服に着替えてオルソラモードのフローレイティア公主が太守らへ降伏を呼びかけると、老齢の州太守はいとも簡単に降伏、殷王朝への忠はとうに尽きてるしあの有名な武神オティヌスが一戦もせず梁山泊に付いたとの話も敗走してきたヴェントより伝わっている。神の右席を破るような軍団に抗する戦力も無い
何より夢で見た瑞祥を信ずると太守らは言う
 それではと城門を開かせ栄の巨大旗を担ぐアックアを先頭に正式に都へ入城、アックアのすぐ後ろには紅の戦胞も鮮やかなベアトリーチェが手綱を曳く黄金のたてがみが雄々しい、輝かんばかりの白馬(垣根帝督)と、その背に横乗りに座すフローレイティア公主、以下梁山泊の英傑たちが列をなしてつき従い、政変を民衆の目にはっきりと焼き付ける
 ほとんど全ての者が夢に見た憂国の美女、フローレイティア公主が目の前に現れたのだ。人々はあれぞ瑞祥だったかとどよめきだった
 注目を浴びる馬上のフローレイティア公主、羽団扇で口元を隠し微妙な泣き顔を見せ、しかしそれでも民衆に《一族みんな殺されて怖かったけど、これから色々有りそうで辛いけどでも私、頑張る!》的な健気にして気丈な笑顔を見せてやると、民衆(特に男ども)の忠心はいやがおうにも高まった
 その後ろにて行列に加わる馬鹿二人、ことにヘイヴィアなどはよっぽど何か言ってやろうかとは思ったが、すぐ横にアルメリナが千変万化の鉄仗を手にらみを効かせているのでいらん口は開けない
「おいあれカミやんやで?」「あ本当だ。まーた美女を侍らして元気そうにしてやがる」
「一方通行や土御門の姿も見えるけど」「元気そうでよかったですー!」
 元々この都出身の上条は五和、禁書目録、美琴、食蜂、オティヌスらを横に侍らし申し訳なさそうにほうぼうへ頭を下げている
太守らの勤める中央政庁に入り太守の椅子に就いた公主、まずは旧太守から人事権と財政監査権を一時召し上げ、財政は惑歌とアズラフィア、人事はアルメリナと食蜂を補佐に公主本人が査閲を開始
その他の者達も打ち合わせ通りに動き始め、旧太守の家臣団も素直に従ってくれる
アックアはそのまま屋上へ殷の旗を降ろし栄旗を掲げに行った     
皆が見た瑞祥、オルソラの決起文と猫をかぶったフローレイティア公主の夢の効果は絶大であった        続

602■■■■:2017/03/18(土) 12:21:46 ID:VFZDaZJ.
ポールダンスはしないんですか(真顔)

603■■■■:2017/03/18(土) 15:36:18 ID:0lGWxrVc
フローレイティア・オルソラモードはわりと真面目にアニメで見たいw

604■■■■:2017/03/19(日) 20:45:09 ID:lTVI7jf2
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 十六 英才人傑綺羅星の如く
◆──────────────────────────────────―◆

〜山東州〜
 州太守の降伏をもって打ち合わせ通りに梁山泊軍の面々が動く
神裂、上里、ヘイヴィア、御坂、レイヴィニア、アニェーゼら諸将は手分けしそれぞれの手勢と旧太守の家臣らを伴い八方に散り、州内の他都市や村を来訪、革命が起こりこれからは重税に喘がなくても良くなったこと、賊軍の類がいれば討伐することを民衆に告知し、実際に手近な山賊や江賊、手のつけられない暴れ者の類を征伐に向かう
 加群、アヤミ隊、浜面、海鳥らにより各都市や村の広場に高札を立て、公主の写真とこの公主が執筆したらしい出師の表を掲示する
並行して垣根の未元物質を原料に作った通信宝貝が設置され、通信機を各市町村長に渡し相談があればスキーズブラジニルの者が応対すると伝えていく
サウザンドドラゴンに乗り州内を巡回するカエル医師、フィリニオン、ヘレン、病魔らは並の医者では無理な難病重傷の民を治療してゆく
 強勢な賊軍や道師等の本拠地にはフィアンマやトール、ヴァルトラウテに麦野組に一方通行、ヴィルデフラウにオティヌスやアックア軍覇など一騎当千の者らが自らを囮に討伐に当たり、武器を捨て農民になると誓った者だけを引っ立て近隣住民の手で裁判にかけさせる
賊徒の裁判はスカルウェーブや油取りの眼前で行われた。この者らの恐ろしげな見かけを利用し「嘘を吐けば見切られて食われる」などと吹聴したのだ
実際には食蜂美琴初春らが作った嘘発見宝貝をヘイヴィアなり上里なりの諸将が持ってるが、裁判の円滑さが段違いである
特に悪質な犯罪者は被害者遺族の手により処刑、改心の見込み有りと裁決された者達はプタナらが用意した農地に送りこまれた
 農業再生の中核を担ったのはプタナである。彼女の重層武器の玄武、耕運機機能が付いているのだ。この機能で荒れ果てた田畑や広大な手付かずの荒地を一気に開墾、忍が妖怪達や那託ら数体を指揮して建てた長屋に送り込まれてきた元賊徒どもを住まわせ、剣を捨て農具を取らせ村を形成させてゆく。種子は梁山泊村の物の他、そこらの農村から調達、三年後には生産力は八倍ほどになっていよう

605■■■■:2017/03/19(日) 20:45:38 ID:lTVI7jf2
重層武器乗り五人娘を指揮する将クウェンサー、開墾に勤しむプタナの護衛にキャスリンの麒麟を張り付かせて任せ、自らはミリンダの白虎、おほほの朱雀の背後に巨大台車を取り付け大規模輸送車に改造、白虎か朱雀のどちらかに同乗させてもらい建築に必要な材木や工具、食料などを一気に運ぶついでに街道を整地する
 その食糧であるが元々は紂王と妲己が無茶な収奪令を乱発するせいで地方が困窮したのであって、物資そのものが無くなったわけではないのだ。なので首都への輸送を遮断すればじきに回復する
各城塞にたなびく殷旗を棄て栄旗を掲げさせ独立を示し、白禁城へ運び込まれるはずの食糧や衣類他を民衆に分配する
だが金子や銀子などの財貨は奪い尽くされていた。そこで惑歌は栄王朝の新通貨発行を公主に提言する。公主はこれを容れたがさてどういう通貨にしようか?
夜、スキーズブラジニル艦橋に戻り外回りの諸将らをまとめて通信宝貝で呼び出し議論、初春らの技により公主の周囲に無数の通信枠を浮かび上がらせ、遠方の者らも交えて合議が可能になっている
縁やシーワックスは通貨単位を栄とし紙幣の肖像画には公主をと述べるが、照れて他に意見を求める公主に対して提言したのは総大将・忍だ
「座敷童のウチの嫁、縁を通貨単位にしねえか? もちろん肖像画も。福がありそうだ」
 顔を真っ赤にする嫁と惚気る夫。食蜂だけはその惚気る若旦那の内心を読み取っていた
(ウチの嫁を通貨にすることでウチに自然と金が集まってくるアセンブラを組めるんじゃねえかな? 下手すると前みたいな大恐慌になりそうだが)
 結構悪辣な本音だが告げ口はせずにおいた。総大将ならそこまで悪辣な術式も組むまいと信じたのもあるし、仙界人の彼女には前の大恐慌とか言われてもいまいちピンと来なかったのもある
ヘイヴィアら緒将らもこれに賛同、オルソラモードの公主だと紙幣を見るたびに笑っちまいそうだとの意見が続出したので公主としてはコイツら射殺できないかなと少し思う
この流れで座敷童子の祝やその母も肖像画モデルに採用された。アナスタシアは断固拒否
加群と初春、アヤミとサトリで新通貨の大量生産にかかる。二日後には新通貨、縁(エン)は一家の長や商家らに人数分一定額が配布された
 治水工事、及び生活基盤施設の工事においてはぶーぶーやサウザンドドラゴン、婚后ら天女達に那託たちが非常に有用であった
 この間に公主は州政庁の人事を改革していく。無実の罪で投獄された者、罷免された者を見つければ再登用し元の地位を回復させ、罰すべき汚吏は罰し空いた空白に神裂や隼ら外回り街回りの諸将に認められた推薦状を持って公主の元を訪れた者を任命してゆく
 梁山泊のいずれかからの推薦状を貰った者達は一人残らず埋もれた賢人・義人・才人であった
 また都市部の大不況にて潰れた商家や工房は惑歌と緑娘藍、アヤミ婆らが視察、再興隆盛の見込みあれば縁や旧太守にかけあって資金を貸し付けて建て直しを促していく
隼や上条、舞とすねこすりにニャラルトホテプなどが街に潜って隠されてた事件を見つけて解決していく
 これで上手く行かないはずがなかった。公主の世直しは素晴らしい成果を挙げていた
 肝心なのは梁山泊が全部やってしまわないこと。一番面倒なことや危険なことだけやって残りは民の仕事とする。雇用創出のためである
 二週間ほどで治安、産業、農業、交易は回復し公主は統治権を旧太守に返還、次の州へ向けてスキーズブラジニルを発進させる
新たなる仲間、何か手伝わせてくれと申し出てきた女二人
上条が気になる雲川芹亜と、かつての加群の教え子、妹の鞠亜を加えて世直しの旅に飛び発つスキーズブラジニルであった       続

606■■■■:2017/03/19(日) 22:33:12 ID:SeLXSD4.
スキーズブラズニル
アセンブル

607■■■■:2017/03/19(日) 23:00:22 ID:lTVI7jf2
あれ、アズラフィアみたくまた一文字間違えてた?
ありがとう。次からは直すぜ

608■■■■:2017/03/20(月) 00:14:33 ID:Cl1/ogJ2
ごめんついでにヴァル婚の喋る烏の名前だけ教えて

609■■■■:2017/03/20(月) 00:38:10 ID:HnLnLTyk
ムニンとフギンだったかな?オーディンの肩に止まって世界の事を伝える役割の鳥共

610■■■■:2017/03/20(月) 07:29:32 ID:srquX3UY
>>609
ありがとう。二話後にこいつら使うから

611■■■■:2017/03/21(火) 19:28:29 ID:QMtR.OOU
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 十七 新参者、幻想殺し
◆──────────────────────────────────―◆

新参者、幻想殺し
 神造艦が梁山泊を出発してから半年が経過した。一つの州を平均二週間ほどで平定し次の州へ進発。
 殷の首都開封東京を渦の中心と見立て、外縁から中心へ渦を巻く航路で各州を傘下に収めてゆく梁山泊宿星軍。
国政再建に過ぎ行く日々。逗留した州内から陳情に来る各地の有力者に公主は毎日羽団扇を手にオルソラモードで接見、陳情内容に重大な嘘があれば傍らに控える食蜂がそっと念話で教えてくれる。あまりに悪質な場合は近侍のベアトリーチェアルメリナにその場で逮捕させる、些細な嘘陳情は見逃す。陳情内容によってはそれを解決するのに適した人材を呼び陳情者と共に現場へ同行させる
 神裂ら外周りの諸将ら、上条や隼ら街探索の者たちはこれはと思う人傑を見つけては紹介状を書き公主の元へ送りこんでくる
公主が陳情者や推薦状を持った者を接見するすぐ後ろ、衝立の向こうではオルソラが流麗に筆を走らせ勅書や保証書や任命書、説諭文を起草している
これら梁山泊軍の綺羅星の如くの人材を裏で管理しているのは副官、天津サトリであった
 誰が何処に何をしに行くのか、初春とアナスタシア、新入りのパトリシアを助手にし必ず報告させ、州太守や文官達から得た各種書類も参照しマクスウェルに州の地形や街の情報を入力していく。
ほっといても騒動に巻き込まれたり陰謀の匂いを嗅ぎつけてその中心へ向かって行く者ばかりなので、それすらを予測に含んだ人災演算予測シュミュレーター、“乱雑性人的資源”を組んでのけ、人材の効率的割り振りを実施する
 その精度たるやそうたいした誤差無く居場所や帰還時期を予測してのけ、必要なら増援を手配し大きく誤る事は無い
「誰がどこで何をしていていつごろ神造艦に帰ってくるのか、本人に聞くよりサトリに聞いたほうが早い」
 そんな評判すら立つ始末。お陰でサトリは中枢司令部である神造艦の艦橋で寝泊りを繰り返すハメになる
 艦橋で寝泊りしてる多忙な者がもう一人いる。軍師禁書目録だ
 外回りや街調べの者たちから「こういう時の術式に何か心当たりは無いか?」とか、
「こんな宝貝見つけたけどこれって何に使えるんだ?」などの問い合わせが艦橋に殺到するからである
 しかも切羽詰った状況での問い合わせである時が多々ある。なので厠と風呂以外は艦橋から出られない。サトリは艦橋の右端に、禁書目録は左端に、それぞれ簡易住居を作ってもらってそこで生活している
 サトリと禁書目録が自室でゆっくり眠れるのは州をまたぐ移動日ぐらいであった

612■■■■:2017/03/21(火) 19:32:06 ID:QMtR.OOU
国取り戦争そのものはさしたる苦労は必要無かった。稀に殷の忠臣による戦があるのみ
九割の各州太守に文官武官は素直にフローレイティア公主に拝跪し頭を下げ忠を誓い、もはや中華の地の七割に栄旗がなびいている現状
 栄の領土が増えるにつれ公主が政務にかかりきりになり、艦長職は雲川芹亜に委譲された。アヤミ婆、クウェンサー、加群らに依頼しスキーズブラズニル事務室を各州太守/有力者との通信会議室へと改装、サトリは梁山泊人材の管制官となる
雲川新艦長の副官には能力が物騒すぎて前線に出せない天津エリカが就く。妹のアユミも同じ理由で街回りに出せず、専ら禁書目録とサトリ双方の世話役だ
 梁山泊の声明を慕って参加する者も出てくる。広東にて運び屋オリアナ・トムソン
荊州南郡にて道術結社、新生光のレッサー、フロリス、ランシス、ベイローヴの少女道師四人組。金毛犬すねこすりは妻子と再会する
益州で浜面の旧友、駒場に半蔵に郭、郭の師の手裏。フレンダの妹は駒場が面倒看ていた
敦煌にて元捕吏であったアルメリナの部下、錬金チアリーダーのフルドラ、その仲間のノーブルダンサー・ルサールカ、召還狩人グルアガッハなども志願してきた
 この者らや雲川姉妹などは別に宿星持ちではないがいずれもひとかど、即戦力となった
 そんなある日、漢中での再建活動の時期
上条が無辜の民に呪いをかけ金品を強請る三流道師を成敗して神造艦に帰ってくると、馬鹿二人と一人の女子が食堂にて上機嫌に会話を弾ませている
アレはこの前入ってきたアルメリナの元部下のフルドラだっけ? 欠伸しながら周囲に確認する上条に、アルメリナは少し迷った末耳打ちしてくる
(あのフルドラだが、君は間違っても触らないで欲しい。術で少女に化けてる二十代後半の男だから。フィアンマ将軍にも伝えておいてくれ)
(男!? え? はあ?)
声を潜める上条にアルメリナは引き続き耳打ち
(性犯罪の囮捜査や未成年の取調べ、私ら普通に大人っぽい捕吏には得られない情報を得るのにとにかく有用でな、あの芸風が定着してしまった。井上本人の性癖はいたってノーマルだから今はヘイヴィアをおちょくって遊んでるが、飽きたらじきに上手くあしらうだろう)
 言われてよく見てみればなるほど、フルドラの仕草やリアクションの一つ一つが他人の気を引くように計算され尽くしている。以前に戦ったヴェントと妙に通じる物を感じさえする
 クウェンサーはむくれたミリンダに腕を引っ張られ何処かに消えたが、ヘイヴィアは上機嫌にフルドラと会話を弾ませている。何も知らなければこれから上手く行きそうな男女以外の何者にも見えない
 女に化ける道師って面倒だなと上条は辟易する。少し前、トールが御坂に化けて自分をからかってきたから今度もそうだろうと胸をつついたらうっかり本物、鬼の形相をした黒子に神造艦中を追い回されるわ雲川に匿ってもらって妙な雰囲気になるわ、後でウェスティに「トールの胸だったらつついたの?」とか聞かれるわ
再びアルメリナが耳打ちしてくる分によれば
(私ら捕吏の間では“幻想殺しの井上”と呼ばれていた。もちろん君の存在などまるで知らない所でだ)
 偶然異名がかぶったワケか。上条としてはこの事実をヘイヴィアに知らせてやろうかなと思ったが、やめた。この井上とかいうやつが適当な所で上手く切り上げるだろう
 ヘイヴィアだしまあいっかと、上条は戦友の幸せそうな笑顔を捨ておき艦橋に向かう。そもそもあいつ故郷に許婚を待たせてるそうなのに何遊んでんだ
サトリに帰還の報告をして風呂入ってメシ食って寝る。明日もどうせ誰かが厄介事持ち込んでくるだろう
 立ち去る上条の背中に届くヘイヴィアの笑声とフルドラの嬌声。この幻想は、殺さない     続

613■■■■:2017/03/23(木) 18:34:26 ID:tmcIdHeU
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 十八 白いの大好き白面朗君でございます
◆──────────────────────────────────―◆

〜燕州付近・スキーズブラズニル、食堂〜
 着々と領土を回復し艦を進める梁山泊軍。既に国土の九割近くが栄旗に染まっていた
この間、殷は驚くほど何もせず静かだった。一応首都近郊の街に監視員として妖怪の狸に狐に狢らを派遣してあるが、彼らが不気味に思うほどに殷王朝は栄の公主軍に興味を示さないのである
 ある一夜、朝鮮の国高句麗にほど近い幽州へ向かう移動日の夕食刻の食堂にて、上記の疑問が内幕隼の口からついて出た
宰相の間者ナッツレイを食蜂の能力で洗脳、偽情報を流し続けて牽制してはいる。だがそのナッツレイの監督をする土御門が隼のみならず食堂の全員に聞こえる声量で言う
「いくらなんでもとっくに宰相への偽情報流しはバレてるぜい。その上での無視ってことだぜ」
 ここがそのまま会議室になるな。それを察したフィアンマの証言
「俺様たち右席軍を失った以上、こっちに差し向ける軍勢はもうほぼ無いはずだ。守りを固めているのではないか?
妲己が贅沢したいがために軍事費を大幅削減、ほとんどの部隊を解体しわずかな部隊しか残さなかった。お前たちと戦った俺らは数で負けてただろう? まあオティヌス卿がいきなりそちらに付いたのが王手ではあったが
あと開封に残ってる部隊はレンディ中郎将率いる重層武器大隊、野戦部隊エルキアド、王都守備隊の騎士団、木原荘の生き残り、妲己の親衛隊兼小間使いの儀仗兵、そして一流の道師でもある宰相、何より我ら右席と騎士団と宰相をまとめて相手どって余裕で負かした妲己だ。あの女の強さたるや人智を超越していた」
おぞ気を振るいながら語る魔将フィアンマの言葉を、梁山泊の面々は舞夏+佐天+御坂の影五十人が作った青椒肉絲定食を食いながら聞いていた
その中の一人、上条は義姉オティヌスに問う。「姉上も妲己に負けたのか?」と
「いや? 私は部下を率いて北方の夷荻金の軍勢と戦ってたからな、妲己とやらとは会った事も無い。革命すら前線で聞いたぐらいだ。
金との戦いの大勢が決して最後の詰めの時に勅使が来てお前らを倒せと言うので後のことはロキやフレイアら部下に任しマリアンのみを連れてこっちに来た。万里の長城の北方戦線は部下らでまあ大丈夫だろう」
では外敵は捨て置いていいのかなと判断しつつ、フィアンマの言葉に傾注する一同

614■■■■:2017/03/23(木) 18:35:07 ID:tmcIdHeU
「とにかく無茶苦茶なのだ、妲己は。アックアより剛力、俺様より魔術に秀で、ヴェントの天罰術式を平然と無視し、テッラの光の処刑をいとも容易く打ち破る
レンディ配下の重層武器を片手で掴んで振り回し石ころのようにそこらに投げ、一流の道師である宰相をいとも簡単に蹴飛ばし、騎士団長の回帰術式を容易く破る
 ずっと酩酊状態の紂王を小脇に抱えたままでだ。正直に言おう。この梁山泊軍の全力を注いでも勝てる気がしない」
 肉料理を乗せたご飯を頬張りながら聞く面々は眉をしかめ、あの魔将フィアンマと猛将アックアの両将が恐怖に顔を蒼ざめさせる光景を目の当たりにする
 ここで案を出したのは絹旗。「じゃ白禁城以外の国土を全部奪還して殷をガン無視で世の中を超回しちゃえばどうですかね?」と
 アックアは重々しく首を横に振る。妲己の気紛れと癇癪がどういうタイミングで炸裂するか読み切れない。あの女に悪辣な奇襲受けるぐらいならこっちから仕掛けたほうがまだマシである、と
「そんなに強いなら……」
 静まりかえったこの場で言葉を発しえたのは食卓を雑巾で拭く佐天だ
「そんなに強いならそれってもしかして魔王白面朗君だったりしませんか?」
 ただの思いつきそのものな呟きに、魔将と猛将は考える
 ずっと白い着物を着込み紂王と享楽に耽る後宮に贅を尽くした白亜の宮殿を建設し、中央政庁紫禁城を白く塗り直させ白禁城と改名してしまった
 ずっと阿片に酔ってるような紂王に白い玉衣を着せあにじゃあにじゃと遊び戯れ何か吹き込んでは悪令暴策な勅書を書かせ玉璽をつかせる
 あの女の行動には大抵いつも“白”の一字がつきまとう。妲己こそ魔王白面朗君。そう考えると納得できる物も有る
 一つ、その線で調べてみるのである。アックアの重々しい言葉に周囲の面々はさしあたり納得し、いつもの雑談に戻っていく 
後日、平源という都市の調査に出ていた隼と艶美としきみが三人の亡命者を連れ帰ってきた
彼らは白禁城の騎士団の武術師範兼指揮官の“豹子頭”騎士団長、司法官憲の高位に座す執金梧という役職者“賽仁貴”美島純、宰相アレイスターに使える女官“跳澗虎”結締淡希と名乗った
見ればこの者らも宿星持ち。一同を代表して騎士団長が言う
「友人アックアより相談を受け、お前たちがかねてより探していた白面朗君なる魔王の居場所を知って逃げてきた。保護されるのではなく一味に加えてはもらえないだろうか? 我らもそれと戦う宿命であることは貴公らの宣伝で知っている」
 黒子ら天女衆は歓声を挙げる。この半年の間、シーワックスとアリサの広報部が残りの六星の情報提供と白面朗君の危険性を訴え続けていたが、それがやっと実ったようだった
 結締が言う「宰相閣下がポツりと漏らされました。白面朗君とは妲己の別名であると」
 なんと妲己こそ探し求めていた魔王白面朗君の別名? ならば話は早い
それを倒しに行きましょうと息巻く黒子に、待ったをかけたのは美琴やフィアンマだ
 今回やってきた騎士団長、美島、結締の三星を加えてもようやく百五星。残りの三星は何処にいる?
 フィアンマとアックアは言い募る。仮に百八星を揃えてもそれはどうやら魔王を倒しうる最低条件、仮に倒せてもそれまでに何人死ぬか解らぬがお前らそれでも良いのかと
「一〇八星揃えるのは当然としてそれ以上に策を積み上げる必要がある。まだ時期尚早だ」 
良策が浮かばぬまま梁山泊軍はとりあえず次の州の平定作業に入る
 待ち受けていた陳情の数々にいつも通り手分けして八方へ散ってゆく梁山泊の面々。
うち上条とステイルはサトリからある錬金術師の征伐の仕事を回される    続

615■■■■:2017/03/25(土) 20:58:04 ID:1xIFVjbE
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝  十九 夢桃源
◆──────────────────────────────────―◆

〜河北、冀州の林道〜
 アウレオウスという錬金術師を征伐した“赤髪鬼”ステイルと“及時雨”上条当麻
 その帰り道にて三人の道術師見習いの少女がステイルの前に拝跪し弟子にしてくれと言ってくる
難渋するステイルと、交渉は長引きそうだなと読み取った上条。じゃ俺は先に帰ってるからとあっさりステイルを見捨てた。コイツどうせ自分を面倒に巻き込もうとしてくるし
 上条一人で雑木林を進む途中、急に立ち込める暗雲と寒風と雷鳴、ザッと振り出す夕立。おりしも寒風肌に刺さる年の瀬、これはたまらぬと周囲を見回し、古ぼけた祠を見つけたのでそこに駆け込む
無人の古堂に転がり込んだ上条、寒さに震えつつ一息つき灯りを灯し状況を確認。雨漏りの心配は無さそうだし以前の旅人が組んだのか竃も有る
 旅荷を解き鍋と米を出し、雨水を溜め固形燃料に火を点け米を炊く。おかずは持ち合わせの漬物でいいだろう
 衣を干し飯が炊けるのを待つ上条、連日の騒動の疲れと火の温かさの前につい竃の前であぐらをかき眠りこむ
意識が遠のき、ふと気付いたら白日天晴、温風吹き抜ける香り豊かな花園の中に座っていた。えっと、何だここは? 見渡す限りの花畑。幻術の類かはたまたまた武神によって異世界へ放りこまれたか?
遠くには人面鳥身の妖怪(?)が美しい声でさえずっている。仙界には伽陵頻迦なる妙なる声で唄う鳥がいると婚后らに聞いたがあれがそれだろうか
 呆然とする上条の頭上に飛来したのは二羽の烏だ。その烏は人語を話し、自らをムニンとフギンと名乗った
「及時雨の上条当麻様ですよね? どうぞこちらへ。西王母様と九天玄女様がお待ちです」
 ここは流れに身を任せる事にし、二羽の烏に導かれるまま芳香噎せ返る花畑の向こう、二人の貴婦人の影が談笑する四阿に上条はとりあえず進んでみる
優雅に茶を喫する一人は御坂の符、番外固体をそのまま大人にしたような女性、いま一人は見知らぬ貴婦人であった
あら、来たわねと番外固体(大)、黙って頷くもう一人の貴婦人。訝しみながら美琴の親族らしき婦人らに挨拶、大きな美琴はやはり西王母の美鈴と名乗った
 意外なのは姉ではなく母であったこと。いま一人は九天玄女の詩菜。一応上条も挨拶し、勧められるままに席へ着く
「貴方達のことは時々遠見の宝貝で見てました。娘の癇癪に散々お付き合いいただきなんとお詫びを申し上げるべきかしら」
 詫びとは言うが笑いを押さえきれてない西王母と、懐かしげな笑みを浮かべる九天玄女。ではと席を外し何処かへ立ち去っていく西王母。話を切り出したのは九天玄女だった
「魔王白面朗君の封印はこちら仙界にとっても重要案件です。今日はそのことについてお話するために貴方をお呼びしました。あ、これ食べますか?」
 足元に置いていた岡持ちを卓の上に置き、蓋を開けて芙蓉蟹や焼売、鯉の姿揚げや海老炒飯やピータンなどを次々出してくれる九天玄女様。
あれ食べますか? これどうですかと次々岡持ちの中から出してきてあっという間に卓上は満漢全席めいた料理の洪水、どうやらこの岡持ち、料理を温かいままいくらでも入れておける宝貝らしかった
 腹も減っていたし穏やかに食事できる機会などそうそう無い。勧められるままに箸を取りでは有り難くと焼売から頬張る
 不思議とどこか懐かしい味付けだった。初対面の貴人のはずだがどうしたことか緊張感はない。この婦人は実は罠とか敵とかではない。そんな妙な確信が上条にはあった
「食べながら聞いてください。こちらで調べた所、まず宿星の最後の三人、うち二人は白禁城に居ます。名は“混世魔王”アレイスター、“入雲龍”城山恭介」
 まさか宰相アレイスター? 妲己の悪政に手を貸してる男じゃないですか。そんなヤツが本当に? 
 信じられずに問い返すと、どうにか説得して仲間に引き込んでくださいと頷く玄女。思えば自分が青島の都を追放されたのはその宰相の別荘の壁に落書きしたのが原因だが、あれは完全無欠に自分が悪いのでその事で恨みなど抱いていない
 だが悪政に加担し続ける宰相を仲間にか…….。上条は悩みながら春巻きをかじる。千切りにした竹の子の弾力が歯に心地良い

616■■■■:2017/03/25(土) 21:00:34 ID:1xIFVjbE
もう一人はここ仙界に居るので今西王母様が呼びに行ってます。仙界といっても広いので把握が遅れました。
貴方の胸のその宿星珠、大昔の秘匿大戦の折に使われた白面朗君メリー・アンを封じるのに使われた大極星珠という宝貝の欠片なのです
白面朗君との決戦の際には貴方たちの、心の強さや輝きとでも言うべき感情に反応して元の効果を取り戻すでしょう」
──これが俺たちの胸に宿った理由は? そこを問うと玄女様は着物の袖の端で涙を拭った
「貴方達は秘匿大戦で全滅した前の総勢一〇八人の勇士の生まれ代わり。その中には私の息子も含まれていました。大極星珠がその魂魄に反応して貼り付いたのでしょう」
 全滅ですかと絶句する上条。口に含んだ幾つかの棗の種を手の中に取り出す。そこらの皿に捨てるのもこの貴人の前では下品かなと思いポケットにでも入れておく
 そこに西王母がもう一人の女を伴い、大きな風呂敷包みを持って戻ってきた
 オティヌスやヴィルデフラウぐらい際どい服装をした銀髪縦ロール、彼女は“母夜叉”ヘルと名乗った。なるほど、氷のように透き通った長衣の胸元に宿星珠一つ。
一緒に行くからよろしくねと気楽な口調で言う
 さて……。と、空になった皿を岡持ちの中に戻して卓を整理した西王母、風呂敷包みを卓の上に置いて言う
「娘達を旅立たせて一年半の間、私たち神仙だって色々としていたの。また全滅の未来を避けるためにね。宝貝開発大好きな仙人達と色々作って、特に有効らしいのがこれらよ」
 風呂敷包みを広げると、幾つかの道具が。一つ、何やら大仰な銃。
「これは爆弾発射宝貝ウォーハンマー。神機軍師なら使いこなすでしょう」
 ひとつ。LEVEL[PHASE]と書かれた符
「これは娘の美琴に渡して。二万人の影達の力を美琴一人に集約させるの。一回きりよ」
 ひとつ。水槽に浸かった脳味噌
「エクステリア。操祈ちゃんに渡しなさい。これと今の美琴用の符は最近登仙してきた木原幻生ってのが作ったんだけど大丈夫かしら」
 木原幻生!? あの爺さん木原荘戦の途中からいなくなったと思ったら仙人になってこっちへ来てた!? 邪仙じゃないですかねソレ……
 ひとつ。一つ目人間用の眼鏡?
「ポータブルデバイス。君が使いなさい。九臂那託達のいずれかを選んで融合できる物よ。その右手の能力も反映されるそうだし。これも一回きり」
 ひとつ。サトリのマクスウェルに酷似してるが
「シンガーソングライアーっていう文章自動作成機能が入った情報通信宝貝ね。これは誰がどう使えばいいのか解らないけどとりあえず必要って朴の卦が出たのよ」
 文章自動作成機能? 何だそれオルソラさんでは駄目なのか??
 あと、智多星と黒旋風には隠された能力があるそうだからそれをどうにか覚醒させなさい。それと白面朗君の弱点を調べてみたけど何も解らなかった。
とりあえず彼女に対して作用する青行灯パッケージ迷宮の類は効かないという結論が出たぐらい
 取り扱い説明書も同封してるからねと一通りの説明を終えて再び風呂敷を閉じる
 その後はヘルと西王母も卓に着き食事を取りながらの酒席、主に美琴の話しとなり、酔った西王母から娘が嫁に欲しければあげるわよーなどと適当言われてから酔い潰れてお開きとなった
 では地上に送り返しますねと九天玄女、手を叩く姿勢を取り、名残惜しそうに少し悲しく微笑んでから、パンと叩く。
上条の視界が闇に包まれ、どこまでも落ちていくような感覚と共に目が覚めた。元の薄暗い寒々しい古堂である
 見ると火をかけてた竃の中の飯が炊き上がっている。先ほどまでの暖かな四阿は一炊の間に見た夢だったのであろうか?
「お腹いっぱいだけどまだ食うの? ソレ」 見ればすぐ後ろにヘルが際どい姿勢で座っていた。その脇には風呂敷包みも置いてある
 帰ってきたんだなと理解し、今夜はもう遅いからここに泊まってこれは朝飯にすっかと結論、見れば風呂敷包みの横に何かをくるんだ竹の皮、良い匂いがするので開けてみればちまきだ。お土産ってことだろうか?
 翌朝、ヘルと騒がしく朝食を済ませ古堂を出る。振り返って古堂の玄関の上にかけられた額縁を見上げればそこには九天玄女廟と書いてあった
 何気なくポケットに手を突っ込むと異物を感じ、ああ、そういや棗の種かと思って出してみれば、そこにあったのは棗の種……ではなく、金子?
 ヘルこれ何? 仙界では棗の種が金に変わるのかと問うが、彼女もちょっと解らない。何かの厚意だと思うから貰っとけば? と気楽な返事
 厚意か、よく解らないがそう思おう。玄女廟に向かって拝礼、神造艦の方向へ足を向ける。まーた上条がそこらで女引っかけてきたぞー。帰還するなりひと悶着あった

617■■■■:2017/03/25(土) 21:01:53 ID:1xIFVjbE

〜桃源郷・四阿〜
 客人が去り、残飯を烏たちが平らげてる食卓。炒飯の米粒をつっついてるムニンとフギン。烏らは問う。どうして客人の棗の種を金塊に変えておいたのですかと
 九天玄女は一言答える。「ちょっとした夢だったのです」
 夢? 顔を見合わせる二羽の烏。九天玄女は空の彼方へ笑みを投げかける。その目は空の果てよりももっと遠いところを視ていた
「子供にお小遣いやお弁当でも持たせてあげるのが」          続

618■■■■:2017/03/27(月) 19:39:31 ID:6/haOWyc
◆──────────────────────────────────―◆
◆ 中華宿星 水滸伝 二十 大栄国紫皇帝フローレイティア即位記念祭典
◆──────────────────────────────────―◆

〜冀州、スキーズブラズニル会議室〜
 ある夜、神造艦スキーズブラズニルに全員が帰還するようサトリに調整させ上条が会議を招集、まず新入りのヘルとステイル三弟子が紹介され、彼が仙界で得た情報が皆に語られた
 その城山恭介、ずっと行方不明のうちの兄です。愛歌が驚くが騎士団長や美島、フィアンマら最近まで王城にいた者達は誰も心当たりが無い。そんなやついたか?と六名揃って首をひねるのみ
 そこで愛歌に脳裏に鮮明に兄の姿を思い描いてもらい、食蜂の能力を使ってその映像をアックアや結締らに送信、すると全員が口を揃えた
「「「おい紂王だぞコレ」」」
 その答えに愛歌や緑娘蘭は絶句する。あの人を救うために生きているような優しい兄が、不殺王とすら呼ばれる兄が、フローレイティア公主の一族を惨殺し史上類を見ないほどの悪政を展開しているのかと
 いや殺ったのは全部妲己こと白面朗君であるぞとアックアが気を遣う。しかし、と緑娘蘭が呟いた。ずっと酩酊状態ってことは召喚仙術師特有の負け時間が永続してるってこと?
 つまり私たちは宰相を味方にして白面朗君の所に乗り込み、なんとか隙を突いて白面朗君から恭介を取り上げ、自失状態を回復させてから改めて白面朗君に挑まなければならない
 そこまでに何人死人が出るのだろうか。しかもその時に一〇八星の誰かが殺されていたら詰む。宿星持ちの中にはカエル医師や歌手アリサのように非戦闘要員もいるのだ
 難易度高すぎると呻くフィアンマや、私ら非宿星組は特攻隊ですかと泣きそうなミョンリら
 もしかして勝利条件を達成するのが不可能だから我らは放っとかれてるのであろうか? 悩むアックアの眼前に白面朗君メリー・アンの嗜虐的な哄笑が見えた気がした
 戦力拡充についいてだが、と今回議長席の上条、卓上に置いた風呂敷包みを解いた。西王母様から新式宝貝を賜ってきたと
 新装備がそれぞれに説明書と共に渡される。エクステリアなる物を渡された食蜂は嫌そうだ。問題となったのはシンガーソングライアーである
 これ誰がどう使えばいいんだ? 禁書目録といえど新型宝貝までは網羅してない。文章作成が何の役に立つんだ? しかしこれを使えと占いの結果らしい
 物議を醸す一同の間から、少しの沈黙の末、進み出てきてそれを手に取ったのは忍だった。俺はわりとヒマだし最前線に出れる戦力じゃないから、ちょっとこれを調べてみるわ
 ではと総大将に任せ、次に公主からも話があるそうでと議長席を譲る上条。新たに首座に座ったフローレイティア公主、煙管の灰を灰皿に落としてから、皆を見渡し尋ねる。正式に王座に就いてもいいだろうかと
 公主にしてみればミリンダやクックマンら元からの部下達以外はみな協力者、妙な所で不評を買い愛想尽かされ離れられるのは避けたい
 公主は言う。「各州太守らからの上奏でな、もうじき年も代わる、ここ冀州の平定作業が完了すればあとはもう開封東京府のある首都圏のみ、年明け早々には殷との決戦だ。そこでもう元日には即位を宣言して年号を変えて民達に希望を見せてくれと。殷の紂王と妲己政権の正当性を完全否定する意味も有る」
 梁山泊の面々はしばし考えた末に言う
「いいんじゃないかな別に」「元々新政権樹立も目的だしね」「年明けと同時に即位宣言広報どうします?」「また夢のパッケージ組もうか?」「アレ、今度こそ俺らは対象範囲から外してくれよ」
「だーからそれやると面倒なんだって」「けどどうせオルソラモードのフローレイティアさんだろ?」「前の夢告知、私ら天女組の半数は見れなかったのですが。むしろそこまで笑えるなら見れた人達が羨ましいと言うか」
「待ってくれ、またあの夢告知なら妲己との決戦当日には首都圏住民に避難勧告を出してくれ」「夢告知の動画そのものはまだマクスウェルの中にありますよ。後で僕の所に」
「オルソラさんそれも組み込んでください」「あ、ハイハイ、即位声明文には王位への即位と妲己の打倒声明、首都圏住民避難勧告だけでよろしいのでございましょうか?」「年号がどうとか言ってたけど」「玉衣は私が仕立てるから公主、デザイン案描いてくださーい」
 自分抜きで勝手に話が進んで行くのを目の当たりにしたフローレイティア公主、自分ってひょっとして傀儡君主なのかなと悩みつつ、同時に頼もしくも思う。
発案力や実行力が並ではないこの者達と知り合えて本当に良かった。若干名、失礼なことを言ってる天女とかいるがまあ許容範囲だ
 再び夢枕に立つ事を皆に宣言する。各州太守や有力者に通信宝貝は配っているが、各家庭に一台や一人一台に出来るほど垣根は便利にはなれない

619■■■■:2017/03/27(月) 19:40:02 ID:6/haOWyc
大勢が決して行く中、一人、別種の異論を述べたのは“金銭豹子”小手蜜惑歌だ
「尊号ですが、“王”ではなくもっと別の、こう、目新しくて響きの良い物にしませんか?」
うん? と、意表を突かれた公主や一同の沈黙の中、惑歌は立ち上がって自説を述べる
「こんな巨大な空飛ぶ船に乗った私たちが歴史上類を見ない暴君と怪女を倒して新時代を到来させるのです。民達からすれば物凄い後光のような物を感じましょう。
 手垢の付いた王なんて尊号より上の目新しい位を創設して夢告知で名乗れば、国民は高揚し配られた新通貨を景気良く使い、国内経済は上向き相当な経済効果が見込めます」
 そういう物か、と感嘆する一同。ではそうしよう。何がいい? 大王? それもうあるだろ南蛮に。けど言葉なんて勝手に作っていいのか? ここで造語を全肯定したのはシーワックスだ
「言葉なんて作って広めて定着させてしまえばこっちのものだ。そのうち辞書にも載ってさも前からあったような雰囲気になる。要は判り易さと響きの良さだ」
 そういうもんかと納得、では新年号と新尊号の案を出してくれと公主が指示、みなであれこれ挙げていく
 実はこの小手蜜惑歌、かつて荊州南郡の港町へ経済査察の任に赴いた際、潰れかけてた貿易公司を四社、私財を投じて再建させ大株主になっている
 新通貨・縁が安定し期待値が上昇すれば縁の為替相場が高騰、高騰した縁で安く(金や銀などの稀少金属でもある)外貨を買えば西方の天竺やペルシャ、南方のカンボジアやタイとの貿易で大儲けできる仕組みだが周囲には内緒だ
 ともかく年号は上条の「俺らがあの水の滸りの梁山泊に辿り着いたことが始まりだから水滸で良くね?」という発言が容れられ水滸に決定
 尊号はオティヌスの「古の時代、“皇”とか“帝”とか名乗ってる徳王がいたっけなあ」との発言が注目されではその二つをくっつけて皇帝が採用された
 シーワックスなどは栄の始皇帝と名乗ってはどうかと提案したが、当の皇帝(予定)が大仰に過ぎると却下した
 二日ほどで演説草案と衣装が完成、冀州の平定作業も完了、政権も旧太守に返還した。首都開封東京へと決戦の空へ飛び発つスキーズブラズニル
 舞夏の仕立ててくれた高貴なる色、紫の玉衣に袖を通しながらフローレイティアは思う
 自分が“紫髪伯”と呼ばれるようになった時からこの天命は始まっていたのやも知れぬと。紫の冠を髪に乗せ、晴天の下、スキーズブラズニル甲板上に設営された演説会場に入来してゆく
 さらに二日後、大晦日の夜。政務を終え私室に戻ったフローレイティア。今夜また自分で自分の演説を夢に見るのかとやや照れつつ寝酒を呷り、就寝。寝入ると予想通りの光景が眼前に広がった
 紫の玉衣を着込んだ自分が青空と栄旗を背景に厳かかつ上品に大宋国皇帝への即位を宣言、今年からは水滸元年とし妲己との戦闘予定日を告げ、その日はどうか首都郊外に退避してくださいますよう祈るように促す
 皇帝の左右に並ぶは新政権の中枢を担うとなる文武官達である
フィアンマ、アックア、アルメリナ、騎士団長、惑歌、隼、オティヌス、オルソラ、シーワックス、上里、神裂、祝、クウェンサー、ヴィルデフラウ、ヘイヴィア、加群、アヤミ、禁書目録、エリカ、サトリ、雲川芹亜、浜面、美島、結締、フルドラ、アナスタシア、伊東ヘレン
 事が成ったあかつきにはと仕官を願い出てきた者達だ。他の者も後で口説き落として傘下に加えようと皇帝は思っている。特に食蜂と上条
 演説が終わり、夢の中の画面が変わる。場所は引き続き神造艦甲板上のようだが、何やら奥に行くほど広い台形の白いお立ち台が設置されていて、華々しい色合いの舞台
……? 皇帝フローレイティア、寝たまま眉間に皺を寄せる。夢を見終わるまで起きれない術式だ
 続いて出てきたのは妙に派手派手しい衣装のクウェンサーとヘイヴィアの馬鹿二人。満面の笑顔だ
「いやー、皇帝フローレイティア様のご即位、目出度いですねー!」「首都圏にお住まいの皆さんは当日には避難しといてくださいねー!」
 オイ何だ? 何が始まっているんだ。声をあげたいが出せるわけない。ここは強制的な夢の中なのだ。しばらく馬鹿二人のヘラヘラとしたやり取りが続き、

620■■■■:2017/03/27(月) 19:40:35 ID:6/haOWyc
「えー栄えある大栄国民の皆さん、毒婦妲己討滅が完了したらこんな感じの国を挙げてのお祭りをやろうじゃあないですか!」「それではここで一曲、おほほ、名護アリサ、天津アユミによる、恋のイー・アル!」
 二人が舞台を指し示す先、カメラがズームしてライトアップされた白の舞台にせり上がってきたのは義妹のおほほ、左右を固めてポーズを取るアリサとアユミだ
 派手で軽快な音楽がどこからともなく鳴り響き、次いで三人の後ろに無数のお揃いの衣装を着た娘達がせり上がってくる
 そして始まったのは派手な舞台演出を伴った元気いっぱいな歌舞だった。可愛く微笑む義妹おほほのソプラノな歌声から入りバッと動く統制された踊り子達
 美琴黒子佐天初春ルサールカフレメアフルドラ打ち止めオルソラアンジェレネフレンダ艶美フェイ・イェンキャスリンメルディアーナ禁書目録ウェステイレッサー
 何だこれは聞いてないぞーーーーー!?  荘厳な即位宣言をブチ壊すな! その原稿を書いたオルソラまで混じってた! 寝台の上でビクンビクン飛び跳ねる皇帝、だが起きれない
 歌手三人の口から紡がれる歌詞に合わせて背景には光や炎、舞い散る花びらや水や雷や氷が美しく表現されては急に消えていき、曲が二番に入ると三人と踊り子達は飛来した大量の筋斗雲にそれぞれ飛び乗り空中を舞いながら歌ってゆく
 えーと、物陰から特殊効果出してるのはベアトリーチェやトールやヴィルデフラウ、湾内に警策あたりか
 それが丁度いいタイミングで急に消えてるのはまず上条の仕業、カメラマンはシーワックスの他に数人いるな、多分建宮やクロード辺りも参加している
 筋斗雲なんて孫ベアトリーチェでも持ってなかったはずだから垣根の未現物質を元手にクウェンサーや加群らが作ったか。そもそも動画編集はサトリとマクスウェルに忍だったはずだ
 こいつら全員私に隠してた。歌手三人娘の可愛らしいアップ画面を夢に見ながら皇帝は嘆息する。この動画を私の即位宣言に続いて栄国民に夢配信。その発案力と実行力の無駄遣いときたら!
 歌が終わり歌手三人と踊り子達がポーズをキメて闇に消え、ようやく目を覚まし寝台から起き上がれる皇帝フローレイティア。傍らの湯飲みに水瓶から水を注ぎ一気飲み
 大体ほとんどがこの悪ふざけに加担しているな。舞台設営とか衣装とか
 そもそもは新年会に隠し芸大会とかやらねえかという誰かの発言が神造艦内で転がって膨らんでこうなったのだが、ずっと事務室に詰めていた皇帝には知る由もない
 一息ついて、笑う。白面朗君に対する絶望的な戦いを前にしてこの気楽さと胆力。頼もしいことこの上無い、と     続

621■■■■:2017/03/27(月) 20:04:07 ID:6/haOWyc
つくづく思うに、ヘビオ勢めっちゃ使いやすいw

622■■■■:2017/03/29(水) 19:43:42 ID:JtcjnsU2
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 二十一 官渡の戦い
◆──────────────────────────────────―◆

〜河北、官渡の沢。黄河渡航中〜
 水滸元年元旦、昼過ぎ。妲己の居城白禁城へと進軍する神造艦スキーズブラズニル、黄河上空を南下途中、艦橋にて首を傾げた滝壺が艦長へ報告する。「河のなかになんかいる」
 さて誰なら大河の中を調べに行けるんだろう? 人選を考える雲川艦長、次の瞬間神造艦が下から突き上げるような衝撃に揺れた。大河の中から極大の魚雷の砲撃である
 初春とアナスタシアが急ぎ告げる。「黄河及び周囲の畑や山中から重層武器出現! 全十機!」「囲まれてます! あ砲撃がいっぱい来る……っ! 艦内耐ショック備えて!」
 立て続けの衝撃、揺れる神造艦。砲撃の幾つかはすぐ横を飛ぶサウザンドドラゴンが防いだり食らったりしてくれている
 艦内に緊急警報発令、敵は重層武器十機、現在敵の包囲下にあり! 迎撃に出れる者は出てください!
 これはあの女だな。ああ、レンディ・ファロリート中郎将だ。頷きあいながら出撃するアックアと騎士団長、そしてゆっくり休んだり巫戯けたり趣味に没頭していたりした梁山泊の面々。
元々普段は小石ほどの大きさにしておける重層武器だ。隠れておくのは造作もなかったろう
 ある者はそのまま飛び降り、ある者は空を飛び、ある者は先日作った筋斗雲に乗り迎撃に出る梁山泊軍の面々。別段臆する様子も無かった
 その様子を遠くの山林の中から望遠鏡にて観察する女達がいた。この軍を率いるレンディ中郎将と腹心のワイデーネ、その部下の侍女姿の女兵四名。さすがに勝てますよね? 部下達の顔には緊張の汗が浮かんでいた
「重層武器十機をもって成す十面埋伏。この必殺の陣をもってすればいくら右席軍を破り傘下に加えた梁山泊軍とて……」
 呟くレンディの表情は心配げ。相手は元旦に夢で即位宣言のついでにあんな派手な歌舞を披露する非常識かつ無軌道な連中だ。何をやらかすかは予測がつかない
 途切れる事無く続く集中砲火にさらされた神造艦と巨竜が黄河に着水し沈んでゆく。殺ったか。そう意気込んだ矢先、梁山泊軍を囲むうちの一機、ブロードスカイサーベルが木端微塵に爆砕した
 なっ!? 息を飲むレンディ達の眼前で次々爆発四散してゆく重層武器達
 常識的な思考のレンディには思いも及ばない。神造艦艦橋に駆け込んできた禁書目録が十機の特性を次々とつまびらかにしたことなど。それを聞いたクウェンサーが瞬時に攻略法を考案、手早く人員を差配したことなど

623■■■■:2017/03/29(水) 19:49:51 ID:JtcjnsU2
 ブロードスカイサーベルは一方通行の能力で天空の果てへ飛んだ神裂が静止衛星軌道上の支援衛星を直接破壊、
地上から飛ばされてきた巨大剣を蹴り返し共に地上へ帰還、射ち出したブロードスカイサーベルの頭上へ還ったことなど
 大河に潜って砲撃していたメガロダイバーは神造艦とサウザンドドラゴンが黄河へ落下し一時的に河を堰き止め、
水の鎧が無くなったところにプタナが玄武で砲撃連射、空いた穴からアックアが乗り込んでいってトドメをさしたことなど
 シンプルイズベストの高速走行を阻害する粉塵を爆弾で巻き上げ自爆に導いたのはクウェンサーとフレンダだった。
転がったシンプルイズベストから逃げてこの二人は危うく真っ二つになりかけたのはただの笑い話
 ホーネットストームのレーザー光一点集中はキャスリンの麒麟が幻影をばら撒き用を為さず麒麟によって撃破された
 ロイヤルレジデンスは余りにもゴチャゴチャと取り付けていた追加武装がエツァリの魔術にて一瞬で解体されるに至り、ミリンダの白虎の砲撃の前に沈んだ
 バンドステーションは初春とアナスタシアとパトリシア、マクスウェルによる大量データ送付の嫌がらせを受けてる間にいつの間にか機能全権を乗っ取られていた
 メビウスインフィニティは雪女の斑、雹、霙ら三人娘によって照準補正に使う雪の結晶の形をいじられ自爆させられた
 エクストラアークは搭乗者が重層武器の中ではなく外にいると禁書目録が言うので浜面の竜単機の後ろに相乗りしたヘイヴィアが巫蟲の透視者による位置測定を頼りに操縦席を予想、
弾薬庫に見せかけた操縦席へ火砲を直撃させ沈黙させた
 古豪オールドファッションはアズラフィアの青竜とおほほの朱雀の連携の前に爆発四散、搭乗者は悔いなく散った
 軽快にそこらを飛び回るウイングバランサーは着地の瞬間を狙って妖怪塗り壁がどこまでも大きくなり膝関節を痛めさせ、
足が止まったところをテムジンら九臂那託九機全員による集中砲火と打撃にさらされ崩壊した
 攻撃開始から重層武器十機完全沈黙まで僅か二十分ほど。大河の堰の役目を終えたスキーズブラズニルとサウザンドドラゴンは何も無い草原に着陸し直し、艦はアヤミ婆さん以下整備大隊が、竜はフィリニオンとヘレンが手当てを開始する
 双眼鏡を降ろし、深々と嘆息する。部下達を無駄死にさせてしまった。バンドステーションの操縦士だけは生き残ったようだが
 仕方ない、逃げるぞ。周囲の部下らにそう告げるレンディであったが、返事は無い。
訝しんだレンディの耳に届いたのは「駄目ですの」とよく聞き馴染んだ声だった。ワイデーネかとそちらを見ればそこには気絶した部下五人と見知らぬ二人の少女が───

 レンディ中郎将とワイデーネ、女兵四人らを、美琴と黒子が似たような声で口論しながらスキーズブラズニル艦橋へと引っ立ててきた。
接見するのは特にやることが無かった総大将忍や副将上条、雲川艦長にオティヌスやフィアンマ、美島などである
 オティヌス卿やフィアンマ卿は出陣すらしていなかったのか。あまりの戦力差に愕然とするレンディ。連行されてきた途中に観察してみれば神造艦や巨竜に思っていたより被害は出ていない。
ベアトリーチェやアルメリナ、麦野、ヴィルデフラウらが飛来する弾を迎撃、騎士団長や空飛ぶ妖怪達、垣根や一方通行が盾となってくれていたのだとは想像の埒外
 食蜂の能力で洗脳され、必要な情報を引き出される六人の女兵。能力解除され正気に戻り、では釈放ねと忍が通達する。どこへでも消えていいぜ?
 が、レンディはここに置いてくれと頭を下げてきた。十機の重層武器を失い捕虜とされ情報も取られた。帰ったところで処刑されるだけだ。失った部下達の遺族にも顔向けできない
 その貴女の部下ですが、とアナスタシアが口をはさんでくる
「バンドステーションは無傷鹵獲、メガロダイバー、シンプルイズベスト、ホーネットストーム、ウイングバランサー、ロイヤルデジレンスの操縦士は重傷ですが生きて確保しました。
ただいまうちの“神医”と名高いお医者さんが手術中。まあ大丈夫でしょう」
 十人中六人が生存。不幸中の幸いだと安堵するレンディ。ブロードスカイサーベルとメビウスインフィニティー、エクストラアークの操縦士には悪いことをした。オールドファッションは元々死にたがっていた
 失われた四人の冥福を祈り、この身の処遇を梁山泊側に委ねる。元々投げやり気味の妲己から適当に出された命令だ。忠誠心は無い
 食蜂が内乱や内通なんかは考えていないと保証し、この女六人の処遇を話し合う忍、上条、雲川。そこに軍師禁書目録がしたり顔で策を献じてきた
「とうまとうま、まいかやるいこが食堂やお掃除にもうちょっと人手が欲しいねーって言ってたんだよ」
「それわりとお前のせいだよね? 反省してますかねえ禁書目録さん」
 ともかく決まった。レンディら六人は銃を捨て鍋や包丁や箒を手に取ることになる

624■■■■:2017/03/29(水) 19:58:53 ID:JtcjnsU2
 さて神造艦のすぐ外の草原、派手に散らばった重層武器の破片の回収作業を指示している副軍師クウェンサーへと場面は移る。
敵機の装甲板や砲身をそのまま神造艦に取り付け指示をして残りの部品をテムジンらなどの力持ちに艦内整備エリアの片隅に運んでもらい、アヤミ婆さんと軽い打ち合わせを終え艦内に戻る
 軽く湯をかぶって汚れを落とし食堂に寄って筍ご飯の握り飯を貰い、それを頬張りながら向かうは事務室。
途中ですれ違う面々みんなからその手際良い采配を賞賛され、小生意気な返答を返しながら歩く
 事務室の扉を開けて入室するとそこにいたのは皇帝と縁、惑歌、オルソラ、パトリシアの女五人だ。皇帝の周囲には無数の各州太守らからの通信ウィンドウが浮かび上がっている
「あらクウェンサー、今パトリシアから一連の報告を聞いたところです。それはそれは見事な采配だったそうで、後日になりますが褒美は何がよろしいのでございましょうか?」
 純白の羽団扇を手に優美に微笑む皇帝フローレイティア(オルソラモード)。各州太守のみなさんから新年と即位の祝辞でも受け取っている途中だったのであろう、こちらを見る皇帝の瞳の奥が「下手なことを言ったら殺す」と告げていた
 この事務室勤めの四人、あの戦闘をさして気にせず州太守らと会合したり書類作成したり投資指示を出したりと平常運転だったようだ
「おおその方が軍師クウェンサー殿ですか。夢の中のお祭りでも中心的役割を果たされていたご様子、大変優秀な部下をお持ちになられてますな皇帝陛下」
 と、老齢の州太守の賛辞に皇帝は笑顔で語る
「ホホ、もう二年近く前になりますか、部下から良い軍師となり得る者がいると聞き三度この者の草庵を訊ね頭を下げて部下になってもらったのでございます。もう一人の鉄砲名人と共に」
 あれ? そうだっけ? 踏まれたり蹴られたりして無理に引きずり出されたんだが。ヘイヴィアに至っては寝てたら勝手に徴兵されていた
 色々な疑問を顔には出さず、クウェンサーも満面の笑顔で太守らに言い放つ
「後の皇帝陛下よりの三度のお召しを受けたこの臣クウェンサー・パーボタージュ。重層武器十機、我が策にかかれば新年祝いの爆竹祭り代わりにてございます」と
 おおこれは豪気なと太守らが大笑、ではこれにてと通信枠が次々消えていく。全て消えた後、素に戻ったフローレイティアが軍師を見つめた
「で、何の用だ? いやホント、お前らがいるから私はこうやって政務に専念していられて感謝しているのだが」
 ハッ! と、副軍師クウェンサー、拳と手の平を打ち合わせ拝礼、話を切り出す
「皇帝陛下におかれましては新年早々、舌に塗った油の調子もご機嫌麗しゅう」
「政治家をやらねばならんからなー、下手なことは言わないでくれよ? 感謝しているのは本当だし褒美も充分報いる」
「ヘイヴィアに至っては本人の意思ガン無視で徴兵してましたよね?」
「本人の意思を尊重した徴兵なんてものが世にあれば案を出して欲しいものだが」
「えーじゃあまあ、褒美の話に来ました。今回とか今までの莫大な軍功をもって、栄王朝正式発足のあかつきには俺をもっとこう、
部下の押す車椅子にでも乗ってそういう羽団扇でも持った司令部にて将の横に立ち助言する室内型軍師に配置替えしていただきたく。車椅子押す部下はもちろん巨乳美女で」
 要望を聞いたフローレイティア、煙管に火を点け一服紫煙をくゆらせて、一つ頷き笑顔で告げる
「前向きに善処する」      続

625■■■■:2017/03/30(木) 01:21:21 ID:V.KdHK7E

ロイヤルレジデンスの悲しみは誰にも分かるまい・・・強いて言うならオールドファッションはその程度でやられる事は万に一つもない

626■■■■:2017/03/30(木) 06:44:13 ID:/cx0MOnk
うん、まあ、ギガントハスラーの時に頑張ってベビマグ守ってたロイヤルさんには気の毒なことをしたがおほほが最初ッからこっちにいる時点で無視していいかなと
ドーナツさんはバーチャロン勢総がかりをこっちに回しても良かったかも

627■■■■:2017/03/31(金) 19:16:39 ID:AWxJVPtA
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 二十二 日々混沌
◆──────────────────────────────────―◆

〜開封東京府まであと一日、航行中のスキーズブラズニル艦内〜
 魔王白面朗君の居城白禁城まであと一日の指呼の距離に迫れど、梁山泊副将、上条当麻の平常業務は変わらない
 艦内各所の見回りである。広い神造艦内を歩き回り騒動があれば鎮め、人手が足りない作業なら手伝い艦内を平定して回る
(ぶっちゃけあの人が来て悪化することもよくあるよね)とは警策や青行灯の内緒話
 朝起きて(禁書目録やレイヴィニア、レッサーなどが寝ぼけて潜りこんできてる時もある)、洗顔し髪型を整え食堂へ。
ここはいつも大混雑だ。天女佐天に土御門の妹、御坂の影五十人ほどに加えて昨日入ってきた新入りレンディ隊六名が忙しく働いている
 スカルウェーブの後ろに並んでゆっくり前進。……コイツ食事必要か?
 ともあれ舞夏から粥と茶を渡される上条。今日の中華粥は珍しいことに水餃子入りだ。「もう決戦近いから精をつけるんだぞー」とのこと
 騒々しい朝食が終わり各自がそれぞれの持ち場へ散って行く中、わりとのんびりめの上条の眼前を一人分の膳を盆に乗せて何処かへ運んで行くナッツレイが横切った。
何だアイツと不審に思い目を☆にした元宰相の間者を尾けてみれば、入っていく部屋の名札は食蜂操祈
「ん、ご苦労様、そこに置いといて」その指示に家宰のように一礼し部屋を出ていくナッツレイ。なるほどつまりは用済みのナッツレイを従僕にしてるわけか
「食蜂、アイツを小間使いにしてるのか」と入ってみれば、彼女はまともに風呂上りなタオルを巻いただけの姿だった。
真っ赤になる食蜂の顔に、急ぎ扉を閉める上条。立ち去ろうとするが、食蜂の指示で戻ってきたらしいナッツレイに羽交い絞めにされ部屋へと投げ込まれる。彼が顔を上げれば薄絹の向こうで食蜂が急ぎ服を着こんでいた
「いやスマン、私室に風呂付いてるとは想定外で」
「結構器用なナッツレイに命じてちょっと改装したんだゾ、ていうか女の部屋にひょっこり入ってこないでえ」
 しっかり着物を着こんで出てきて、ムーっとむくれた顔で座卓の空いてる椅子を指さす。座れということらしい。おそるおそる座って、対面に座った食蜂が顔色真っ赤に粥をすするのを気まずげに見つめる梁山泊副将
「食堂で食べるのしんどいし煩いし」
 そこから始まる食蜂の愚痴の数々。やれあなたが持ってきたエクステリアは便利だけど気持ち悪いだの白面朗君戦は本当に大丈夫なのかだの、愚痴を聞かせるためにナッツレイに彼を捕まえさせたようだった。そして、食蜂は上条を見つめて聞く
「白面朗君を倒したら仙界に帰らないでこっちに残って仕えてくれないかって皇帝さんに誘われてるんだけどお、どうしよっかな?」
 この小声での問いかけに上条はしばし考え、考えを口にした
「気の向くままでいいんじゃねえ?」
 急に涙目になった彼女に追い出された

628■■■■:2017/03/31(金) 19:23:07 ID:AWxJVPtA
〜神造艦巡り。第一層から順番に〜
 さて、艦は基本的に船底から数えて第一層、第二層と数えられ最上階は艦橋司令部などのある第十二層だ
 一番底の第一層は資材や薪などの燃料倉庫。ここに重要な物を保管しておくと例えば昨日の重層武器による攻撃などによる損失が予想されていたので案の定だった
 第一層は異状無し。昨日運び込まれた重層武器の部品や山と積まれた薪や固形燃料のみ。ここに住んでる大ムカデが昨日の砲撃はビックリしたとボヤく。
この大ムカデ、たまに神造艦に潜入しようとしたやつを捕まえてくれるありがたい存在だ。最初は私室を与えるという話も出るには出たが、本人がここがいいと言うのでついでに搭乗口のある一層の番人もやってもらっている
 その搭乗口を見れば何か使いを頼まれたのであろうか、浜面が竜単機に乗って風防を開け地上へ降下していった。あの竜単機、低空飛行なら可能なように改造してもらったらしい
 第二層、浄水所の管轄者は警策と浮泡。御坂らが仙界より持ってきた浄水宝貝を元に大型のやつを作って汚水を飲料水に替えて艦内を循環させている。船尾側は鶏舎。鶏が多数飼われていて主に忍とジャックが世話している
 第三層、食糧庫、及び酒倉と造幣局。ここも管轄は忍とジャック。造幣局は木原加郡と那由多。よく盗みに入ろうとする不届き者がいるので普段はアファームドなどが番兵に立っている
 第四層、商店街、及び工房。新通貨・縁が公布され梁山泊の面々に給料が支払われるようになると店を開く者が出てきた。移動日のみ営業。
緑娘蘭は道具屋、シーワックスはバーを開き、オリアナはお手軽な符の店を開き売店を五和は居酒屋を開いた
やけに早く居酒屋の入り口が開け放たれてるのを見て、上条が心配して中を覗くと清掃中。女将五和によると先日の砲撃で幾つかの酒瓶が割れたらしい。
掃除を手伝ってやると五和がサービス券を作って渡してくる。《焼酎五杯を超えたらいくら飲んでも無料》。是非来てくださいねと熱っぽい声で誘う五和
 工房ではクウェンサーが垣根を連れ込み未現物質を出させて何やら作っている。仙界でしか採れぬという未現物質をいくらでも出す垣根の重宝さときたらない
 四層の船尾側、薄暗い区画は薬品保管庫。《ここから先に無断で侵入した者はどれだけ不幸になろうと責任取れません。取らないのではなく取れないのです フィリニオン、ヘレン、病魔》
などと張り紙されてあるので恐ろしくて視察できたもんじゃない
 第五層、飲料水保管庫、及び医療区画。飲料用水は雪女二人と湾内、医療区画はカエル先生やフィリニオンにヘレンに病魔、アニェーゼ隊が詰めている。
集中治療室には先日運び込まれた敵重層武器乗りの五人が寝かされており、付き添いは唯一無事なバンドステーションの操縦士に任されている
 第六層、男性用居住区。基本ムサ苦しいが既婚者はその限りではない。スカルウェーブ夫妻にジャック夫妻、あとすねこすり一家。陣内夫妻はもっと上層だ
 第七層、女性用居住区。あまり巡回できない。さっき食蜂の部屋へ行きもしたが。フルドラがどっちに住んでるのかは不明
 第八層、食堂、及び男女別大浴場や談話室、及び卓球台、麻雀台などの広間
大抵はここが騒動の発生現場となる危険地帯だ。女性陣が恐ろし過ぎて女風呂に突撃する馬鹿はいないが、風呂上りの女達がよくたむろしているため全体的に艶っぽい一角。
内緒で自室に風呂を作らせてた食蜂は本当に例外だった
 卓球や麻雀ではしょっちゅう謎理論の術式か何かが発動、伝説の技とかが誕生している。卓球で死人が出て誰かが生き返らせたり麻雀で一発で億単位の借金をしたりしなかったり。
禁止事項を作っても抜け道はいくらでも思いつく連中しかいない。風紀担当のアルメリナ、隼らがここは難治の地と頭を痛めている
 今雀卓についているのはスカルウェーブ、クロード、ニャラルトホテプ、ツェリカの四人。近寄らないでおこう
食堂に入ろうとすると猛烈な風が吹き禁書目録がふっ飛ばされて出てきた。受け止めてやりどうしたと尋ねる。
この食欲尼僧が何か言うより早く巨大な扇のような分厚い葉を手に仁王立ちして叱ってきたのは佐天だ
「十時のおやつは一回です! あなたさっき食べたでしょ!」「るいこは厳しいんだよ……」
 ヨヨと泣く禁書目録。涙を溜めた目でこちらを見上げてくるが、見捨てた。どう考えても佐天が正しい。それ何? と、佐天が持ってる宝貝らしきものに目を止め尋ねる
「これですか? 芭蕉扇っていう風の宝貝です。この前アルメリナさんに護身用にって貰いまして。なんか私が使うと風圧がちょっぴり上がるみたいで」
 私って風術の才あるんですかねと嬉しそうな佐天。とりあえず自分用のおやつ、月餅をひとつ取り半分に割って禁書目録へあげておく

629■■■■:2017/03/31(金) 19:31:42 ID:AWxJVPtA
第九、十層。吹き抜けになっており天井が高いため重層武器や九臂那託らの整備場となっている。主にアヤミ婆が管轄しクウェンサーや美琴に海鳥なんかもよ くいる。
各種コンテナが積まれた区画を歩いてると天津の三女、アユミがふぐうとこちらに助けを求めてきた。
ちょっと涙目の彼女が話すところによれば、色々あってうっかり総大将陣内忍を噛んでしまいキョンシー化させてしまったと言う。
なるほど、少し奥のひと気の無い区画を覗いてみれば、忍が両腕を真っ直ぐ水平に突き出しピョンピョン飛び跳ねていた
あれどうしよう? ステイルあたりに燃やしてもらって成仏させてあげようかなどと問うてくるアユミ。とりあえず忍を殴ってキョンシー化を解除、そこらを歩いてた打ち止めを呼び止めて電気ショックいれてみたら息をふき返したのでこれで良しとする
十一層、事務区画。シーワックス、アリサの広報部や会議室。他に美島、アルメリナ、隼と艶美、固法の犯罪資料室がある
あと艦橋要員の雲川、滝壺、禁書目録、サトリ、エリカ、アナスタシア、初春、パトリシアの私室はここだ
何も異状無しなので上へ行こうとしたらヘイヴィアに絡まれた。よーお前からも俺を艦橋要員に入れるようあの爆乳皇帝に言ってくれよーと
お前どー見ても前線向きだろ? いやいや素材分析の学位取ってますよ? 初耳だ!
ヘイヴィアは語る「サトリあの野郎一人だけ艦橋で安穏と女に囲まれやがって! 後宮かよ」
「お前許婚の女待たせてるってアズラフィアに聞いたけどそこはどうなんだよ」
そこはまあと曖昧に言葉を濁すヘイヴィア。そんな俺らの足元を十個前後のニンニクに似た何かがテコテコと行進して行ったのだが、はてあれは誰かの道術かそれとも宝貝か、見当もつかない
十二層、艦橋及び事務室。及び皇帝、オルソラ、惑歌、陣内夫妻の私室
雲川芹亜が緊張感を持って統率してる艦橋を視察、副官エリカと滝壺、初春、アナスタシアの姿も見える。パトリシアは交代要員だ。禁書目録は食堂近辺だろうがサトリはどこ行った?
 まあいいかと事務室へ。ヘイヴィアが愚痴ってた件を皇帝にボヤくと、当の皇帝は煙管の灰を灰皿に落とし困ったように答えた
「アイツら自身は口ではそう言うがな、私が行くなと命じているのに危険極まりない最前線へ突入する事も時々あったのだ。あいつらは結局のところ大好きなのだろう、最前線」
 甲板上、とにかくだだっ広い。
 寒風吹き抜ける甲板上へ出てみると神裂とアルメリナ、アックアとぶーぶが実戦演習をしていた。危なくて近寄れない。他にも格闘戦か魔術戦の練習試合を行ってる組がちらほら
 甲板の前半分は錬兵場兼マリーディの戦闘機滑走路、後ろ半分は神の右席戦で乗っかってきたベツレヘルムの土をそのまま使った畑や放牧地、ぶーぶーの小屋になっている
 主にフィリニオンが管理するこの畑、豊満な肢体をもった褐色の女が腰半分まで埋まってるんだがあれは何だろう?
 ぶーぶー用のおやつを作ってるベアトリーチェに聞くと「近づくと危ないから」とのことだったので気にしないでおく。この艦は大概人外魔境だし。
甲板のへりでは滝壺が指差す方向へ麦野が全力で光線を放っていた。これも気にしないでおく
 少し向こうの畑の端っこの四阿ではヴァルトラウテが温暖な結界を張って食蜂と美琴相手に何やら熱心に話し込んでいる。ここにも近寄らないでおこう
 甲板も別に平常通りだなと下に降りようとした上条の服の裾を、チョイチョイと引っ張ったのは黒子だった
「お姉様が……」先ほどのキョンシーよりまだ土気色な顔色をした黒子が座った目で上条を見上げて言う
「お姉様と食蜂様が、ヴァルトラウテ様に旦那様との馴れ初めや仙界から人界に嫁いだ時の苦労話を熱心に聞いておられますの…….。 食蜂様なんて最初は人界への旅を嫌がっておられましたのよ?」
「うん。…………? で?」
 上条のこの返答に黒子は「は?」と顔を歪め、半目で上条を睨みフッと消えたかと思うと上条の頭を蹴りつけ大股にどこかへ去ってゆく。
上条としてはワケが解らない。後で雲川先輩にでも相談するかな

630■■■■:2017/03/31(金) 19:32:18 ID:AWxJVPtA
ここで昼飯の時間となり食堂で騒々しく食事、桃源郷での九天玄女様との穏やかな会食のような時間は本当に稀少だった。昼食終了後、呼び出しもかからないのでしばらく食堂でダラダラと過ごし、再び一層から巡回開始
 一層に降りてみると浜面が帰ってきたところだった。よっこらせと背嚢の中に、ずっと首都の動向を探らせていた狐と狸と狢が。この三匹の帰還をもって梁山泊は全員集結だ
「うっかり女体化タヌキの胸揉んだら麦野光線が来て危うく死にかけた」と浜面は恐怖に怯えた瞳で語った
 第二層、浄水所付近
 ここらを歩いてるとむーむー言いながら話しかけてきたのは天女ヴァルトラウテの夫、ジャックだった。普段は忍と一緒に酒を造ったり家畜の世話をしている物静かな男である
 彼は無題の書物と筆を取り出して上条に言う。この梁山泊の面々を記録に残しておきたいと
 まず空白の頁を開きそう上手くもない上条の絵を描き、能力とか性格とか今までの行動とか教えてほしい。そこで上条が包み隠さず自分の事を教えると、それを絵の横に羅列していく
 語り終えるとジャックは今まで記録した梁山泊メンバーのページを見せて、この面々の記述に何か誤りか記述漏れがあれば教えて欲しいと言う。
自分の語る自分と他人の語るソイツと、結構な差異や漏れがあることが往々にしてあるそうだ
 そこで上条が幾人かの間違いや記述漏れを指摘してやるとそれを書き加え、ありがとうと礼を言って次はそこらを歩いてた一方通行の方へ寄っていく
 まさかこのジャックの書いた梁山泊メンバーの詳細記が後世、中国の四大奇書、妖怪大辞典として有名な山海経と称されるようになるとはこの時の誰も思わなかった
 巡回を続け鶏舎の入り口前に来ると、中から包丁を持った忍が出てきた。刃に血が付いてるから鶏でもシメたのであろうか? だがしかしそのワリにシメた鶏は持っていない。
 忍は自信ありげな笑顔を浮かべて言う
「さっきのキョンシーの件で閃いちまってな、シンガーソングライアーの使い方が解った。みんなを集めろ上条」

その夜、会議を終え上条は自室に戻り小さな卓につき、航海日誌を開く。忍になんとなく押し付けられた仕事だった
 明日の午前中には開封東京到着だ。もうじきこの半年以上に及ぶ旅も終わる。光明は見えた
 及時雨の胸に去来する、今日一日あったこと。たった一言、航海日誌に書き記す
本日も真に平凡、順風満帆也   続

631■■■■:2017/04/02(日) 21:23:55 ID:N.G5Mpak
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 二十三 赤壁の戦い
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〜翌日未明、首都郊外上空〜
 スキーズブラズニルは奇襲を受けた。宰相アレイスター率いる軍勢が突如空飛ぶ小型船に乗って甲板上に飛び込んできて床に大穴を開けたのである
 これより一瞬早く艦橋要員、早番だった滝壺が艦内に緊急非常警報を発令してはいる。だが本当に一瞬前だったのでほぼ全員が寝入っているこの状況では後手に回るしかなかった
 アレイスター率いるは野戦部隊エルキアド四十名程と木原荘生き残りの犬学究脳幹だ。その犬学究が浪漫で作り上げた兵器がとんでもなかった
 ぶーぶーの同族の死体を材料に作ったディザスター、それに加えて二体の女形戦闘兵器、恋査とアビス。脳幹自らも物々しい装備を付けての参戦である
 艦橋の天井がブチ抜かれ降りてきたエルキアドを相手取るは、滝壺の話し相手になっていた浜面と絹旗だ。三人に銃弾の雨が降り注ぐ
 甲板上、まず宰相らを迎え撃ったのは月夜を楽しんでいた“摩雲金翅”ストリオーナ。そして夜戦メインの艦長副官、天津エリカであった。月光を背に翼を広げ妖雲の霧を蔓延させるストリオーナ
 エリカはこの場を妖精女王に任せ艦橋の方へ降りていった
 この邪毒の霧に対しアレイスターは杖を手に符を撒き散らす。顕現したるは炎の巨人、魔女狩りの王イノケンティウス。ステイルが得意とする魔術である
しかも同時に三体。一体はその炎熱をもって霧を焼く。残り二体は左右のへりから飛び降り壁に張り付き、木造のこの艦を燃やすべく壁面を這いずりまわり艦に火を点けていく
「巨大木造船など火計に限る」 ストリオーナへ呪弾を紡ぎつつ嘯く宰相
皇帝の居室、襲撃を受けるフローレイティア。構えられる銃口を前にとっさに寝台から手を伸ばし羽団扇を掴み、氣を込めると純白の羽団扇が巨大化、銃弾を防ぐ盾となる
実はこの羽団扇はアヤミらに作ってもらった盾宝貝であった。盾の陰から銃で応戦、援軍が来るまで持ちこたえるしかない
他の者は大丈夫であろうか? ここ艦橋付近の居住区画に白兵戦が強い者は皆無に等しい
 フローレイティアの憂慮は当たった。オルソラの私室がエルキアドに襲撃され「天女衆の誰よりも天女らしい」と評された彼女は銃弾の雨を浴び血溜まりに沈んで息絶える
隣室の惑歌はオリアナから買った即席符でどうにかもちこたえていた
 雀卓のある第八層にて最終決戦前夜であるにも関わらず徹夜麻雀していたハイテンション馬鹿四人の出動は早かった
クウェンサー、ヘイヴィア、スカルウェーブ、削板。結果としてこの四人が初動対処を担う事になる
 長椅子に置いていた武器を装備し上層へ駆け上がり、パトリシアの盾となって死んだ初春を殺した敵兵を撃つヘイヴィア。この四人の前に立ち塞がったのは人型兵器、アビスであった。馬鹿どもは軍覇を先頭に吶喊する
 艦橋。窒素装甲で銃弾を防御、魔法攻撃に切り替える前にエルキアドに突撃する絹旗最愛
 その後方で浜面は宝貝トネリを装着したが、窓の外に未現物質の白翼を生やした恋査を視認、垣根と同じ能力かと恐怖しながら恋査が何かする前にこちらから窓を叩き破り空中に躍り出て恋査へと掴みかかる
全てはこの敵を恋人滝壺理后からひき離すためだった。共に地上へ落下するが浜面は恋査の白翼に真っ二つに切り裂かれ絶命する

632■■■■:2017/04/02(日) 21:25:10 ID:N.G5Mpak
甲板上、ディザスターと剣戟を響かせるのは甲板後部の小屋に住んでいたため早く出てこれたぶーぶーだった。久しく会ってなかった同族だがその眼に意志の光は無い。複雑な感情を口にする暇もなくぶーぶーはディザスター相手に一騎打ちを演じる
「しんぞうかんうげんとさげんにイノケンティウスっぽいの、あと空とぶ犬がふねのよこばらをほうげき、かんばんでは宰相とストリオーナ、ぶーぶーとおなじのがこうせん中、ってしょうめんからほうげき来た! このかんじたぶんじゅうそうぶきがとおくからうってきてる」
 涙声の滝壺の放送を聴き急いでいたマリーディは方針変更、砲撃に揺れる艦内を、上へは向かわずひと気の無い第二層まで降り、懐から宝貝、戦闘機を出して通路に投げ実用サイズにする。操縦席へ飛び乗り発進、長い直線の通路をそのまま滑走路としつきあたりの壁をミサイルで破壊、爆炎をくぐり抜け大空へと羽ばたく戦闘機
 旋回し、物々しい装備を付けた大型犬を捕捉、軽く機銃を浴びせまずは神造艦への攻撃をやめさせ注意を引きつける。犬もこちらを脅威と見なしたようだった。鮮やかな回避と小回りを見せつけこちらへ小型誘導弾発射、それを全て撃ち落とし黎明の光を背に犬と交差、共に相手の頭上を取るべく垂直上昇に入る犬と戦闘機。
 まさか犬と空戦する日が来るとはな! どこまで出鱈目な部隊に自分は所属したのだろうか。この現状をマリーディは心のどこかで愉しみながら機内に激しい音楽を響かせ戦闘に没入していく
 艦橋出入り口にて防戦一方の絹旗はエリカの奇襲に助けられた。エリカがエルキアドの一人をひと噛みし従属させあとはネズミ算。とりあえず艦橋周辺の安全は確保する。だが甲板で戦うストリオーナがアレイスターに敗れた。エリカは手下の吸血鬼を全部宰相へ向け時間を稼ぐ
 この頃になるとさすがに主力の何人かは現場へ到着していた。アビスの意味不明な強さにクウェンサー、ヘイヴィア、スカルウェーブは全員重傷、軍覇だけがなんとか根性で持ちこたえているところにヴァルトラウテが来てくれた。重傷者三人はマークら黄金黎明の道士達に担がれ退避していく
 浜面を斬殺して神造艦めがけて飛ぶ恋査は一方通行と垣根が襲った。マリーディ対木原脳幹、一方通行・垣根対恋査の激しい空戦が神造艦周辺で展開される
最上層付近の居住区画、自分を庇って死んだ初春の死に泣き喚くパトリシアへエルキアド兵が銃を突きつける。硬直するパトリシア。兵は引き金を引く──はずの指が止まった
のみならず全エルキアド兵が棒立ちになり木偶人形のようになる。訳が解らないパトリシアの脳内に食蜂の声が響いた
(今エクステリアを使って敵の雑魚兵については全部無力化したから。ボス力が強いのは私じゃ無理だからそれは他の人がなんとかして)
 エルキアド、無力化。ここから事態は好転する
 階下の異変を察した甲板の宰相は動けなかった。アレイスターの前へ槍と帽子と外套の女、武神、“精忠報国”オティヌスが陽炎のように現われたからである
「さて、奸臣懲罰の時間といこうか」 オティヌスの侮蔑をこめた勧告にアレイスターはアブラ・クアタブラと練りあげた呪を唱える
 クウェンサーがアビスにやられて気絶する少し前、彼は部下の重層武器乗り五人娘に司令を下していた。遠くから砲撃してくる重層武器がいるみたいだから五人で倒してきてくれ
 その指示に従い遠距離砲撃の来る方向へ爆走するミリンダ、おほほ、アズラフィア、プタナ、キャスリン。食堂にて佐天や舞夏を庇い、妹達を指揮統率するレンディが情報を寄越してくる。それはおそらく三形態への仕様変更が可能な重層武器・ノルン。制作者は木原唯一であるので詳しくは知らない。ミリンダの白虎ら五機は未知の敵へと互いを庇い合いながら接近してゆく
 神造艦右舷と左舷を這いずり回るイノケンティウスは片方はヴィルデフラウが、片方は雪女三人が消滅させた。だが火が燃え広がるのにはおあつらえ向きの強風が吹いており消火はままならない。湾内が浄化槽の水を操り的確に鎮火してゆくがアビスが戦いながらそこらへ放火していくのもあって火の勢いはそれを上回る
 燃えていく。梁山泊軍が苦楽と寝食を共にし、騒動とか恋愛とか馬鹿騒ぎの舞台となったスキーズブラズニルが。艦は航行能力を失い高度を下げてゆく。マクスウェルは穏便にh時着するのが精一杯ですと艦内放送で告げる
 曙光の中、夢の避難勧告に従い首都圏から遠ざかろうとしていた避難民達は見た。真っ赤に燃える巨大な壁のような空飛ぶ木造艦が黒煙を吹きつつ天から降下してくるその異様を。赤壁の戦い。後世こう史書に記される火計奇襲作戦を当事者達はまだ知らない。だが神造艦はもう間もなく地上に不時着しようとしていた

633■■■■:2017/04/02(日) 21:25:24 ID:N.G5Mpak
 ディザスター対ぶーぶー戦線。劣勢であったがベアトリーチェ、アルメリナ、神裂、レイヴィニア、マリアン、ヘルらが加勢、最後は病魔の使役者により肉体を分解され塵となった。ぶーぶーは黙して何も語らない
 アビス対ヴァルトラウテ戦線。ほぼ互角であったが上条が参戦、あらゆる方向へ切り替え可能な属性防御も幻想殺しの前には意味を持たない
(コイツ、バリア能力はクソ強いが戦闘経験そのものは素人だ)
まるで出会った当初の一方通行そっくりだと感じつつ上条はアビスを殴り続ける。アビスも高速の反撃を見舞うが相手は泥酔状態でも美琴からの電撃を回避できる上条である。前兆の感知その他でどうにでも対処する。アビスが上条のみに集中したのが命取りであった
ヴァルトラウテ、軍覇、美琴、黒子、麦野の一斉攻撃により重症を負って倒れ伏す
 アレイスター対オティヌス戦線。アレイスター、オティヌスの前に完敗、贖罪のために白面朗君と戦う戦力となれと強要されこれを渋々了承
 ノルン対白虎他戦線。多機能なノルンの前に手こずったがなんとかこれを撃破。全体の指揮を執ったのは視線に敏感なプタナであった
 恋査対一方通行・垣根戦線。一方通行、相手の出す黒翼を上回るために考え続け白翼を開眼、未知の力をもって恋査を叩き潰す。上条が聞いたという、黒旋風の秘められた力とはこれだったかのと垣根は瞠目した
 脳幹対マリーディ戦線。あまりの弾数の違いに追いこまれるマリーディ。機体性能に差が有り過ぎるなかここまで粘れているのは彼女の神技のような操縦技術と読みの確かさに依るところが大きい。誘導ミサイルとその排煙がどこまでも追ってくるのを天に真っ直ぐ登って逃れるのが精一杯である緊迫した状況に、アナスタシアが通信を寄越してくる
 その指示に従いフェイントをかけつつなんとか下降、神造艦の甲板表面を滑るように飛ぶ。それを追ってくるAAA装備脳幹。戦闘機の機体を縦に傾けるマリーディ。宝貝刀アスカロンを持ったアックアと音速の中ですれ違う。目を見開くゴールデンレトリバーに対してアックアの剛刀一閃、果たして自分が真っ二つになったかどうか自覚しえたか否か。木原脳幹は爆光の中に散った
 これで敵軍は全滅した。だが制御能力を失った神造艦は止まらない。派手に煙を曳きながら地に落ち、田畑や街道を磨り潰しながら進むスキーズブラズニル。サトリの舵取りでなんとか人家は避けるがブレーキは効かない
 一般人は避難してるはずだよね? そう信じながら開封東京府の外縁城壁に衝突するしかない。城壁の一部を突き崩し、ようやく止まるスキーズブラズニル。道中のどっかの山で眠り込んでいたサウザンドドラゴンも追いついてきた
「予定より一時間早く首都開封東京府に到着しましたが」
 そう告げつつ振り向くサトリの視線の先、雲川艦長のみならず仏頂面の皇帝や忍、姉のエリカなどの顔が並んでいた
 消火は完了。クウェンサーら重傷者にフィリニオンが薬を配っている現状を確認し、皇帝フローレイティアは断を下す
「全員無事だしもうこのまま突撃だ。前線戦闘要員は三十分で支度を整えろ。白禁城へ攻め込む! 全ては手筈通りにだ!」
 梁山泊軍最後の進撃が、始まる

634■■■■:2017/04/03(月) 17:57:00 ID:RYK/VKWc
今さら気付いたんだが、凄いミスやらかしてるな俺。
賢者とアビスがごっちゃになってやがる

635■■■■:2017/04/04(火) 20:26:56 ID:srDeCWC6
◆──────────────────────────────────―◆
◆             中華宿星 水滸伝 最終回 梁山泊宿星軍
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〜開封東京府〜
城壁を突き崩して到着した神造艦を出迎えたのはまず騎士団長の部下の騎士団の面々だった。彼らは騎士団長の命に従い王都の治安維持と民衆の非難措置のために残っていたのだ〜開封東京府〜
 騎士団長が皇帝を連れ崩れた瓦礫の上に降り立ち自分が不在の間の苦労を労うと百二十名の団員達は整列、拝跪。改めてナイトリーダーと新皇帝への忠誠を誓った
 騎士団の一人が報告する。住民避難は完了、残る敵戦力は妲己とその親衛隊の儀仗兵のみですと
 その報告に忍、上条、フローレイティアの梁山泊三頭は頷き、粥をかきこみ装備を整えた仲間たちへ号令す。進軍!
 白禁城へと進発する前線組とひとまずこの場に居残る後衛組。忍は妻に、ヴァルトラウテは夫に、浜面は恋人滝壺に口付けを交わし白面朗君の居城へと歩いて征く
 その背を見送るフローレイティアや禁書目録、惑歌や初春といった非戦闘要員の宿星組。ミリンダら重層武器乗りも重層武器を一旦小さくしてから首都に入京、再び大きくして乗り込み大通りを列をなして進んで行く。首都は人っ子一人として無く静まりかえっていた
 白禁城の城門を開く。入り口正面の閲兵場、そこに整列するように待ち構えていたのはアザリア率いるメリー・アンの親衛隊、儀仗兵団総勢六十名つまりは三十組。その数だけの励起手榴弾が投げ込まれ広がる人工霊場。これは騎士団長率いる騎士団が引き受けたと前に出る。後詰めをフィアンマが引き受け、その間に他の物は王城の包囲にかかる
 重層武器五機が白禁城の周囲を包囲、天空にはサウザンドドラゴン、マリーディ、天津エリカ、一方通行、垣根、ストリオーナら空軍が陣取り制空権を確保
 この状況で最後まで諦めることなく戦った儀仗兵らはいっそ立派と言うべきであろう。だが兵団は騎士団が、アザリアはフィアンマが撃破、クロードも今は旧知のアザリアに構う暇は無い
 進軍。白色が八割の中央政庁を抜け、白亜の後宮へ。
テムジン、雷電、ドルドレイ、アファームド、グリス・ボック、バル・バドス、エンジェラン、スペシネフ、フェイ・イェン。那託達も庭園なり錬兵場なり開けた場所に陣取った
かつて無残に敗れた恐怖を乗り越えるためその重々しい扉を蹴り壊すアックア。目も眩まんばかりの白光満ちる大広間に広がっていた光景とは────
「むぎゅー☆ まあ、あにじゃったらそんな一心不乱にがっついて、まるで赤ちゃんみたいでございますわ。
 うふふ、ほーら指先ちゅぱちゅぱー。あはは! 鶏肉と白菜のクリーム煮を指の腹に乗せるだけであにじゃったらこんなに!!
 ほーらほら好きなだけありまちゅから慌てないでくだちゃいねー、うふふ。
 ああ、こんな極楽浄土が永遠に続くなんてどうしましょう☆
 次はどこへ満漢全席の一皿を載せてみようかしら。足の指? それともおへそ? うふふふふふ」

636■■■■:2017/04/04(火) 20:27:23 ID:srDeCWC6
ひたすらイチャつく(?)白面朗君メリー・アンと、彼女に言われるがまま差し出される料理を食う、豪奢な白の玉衣を着せられ眼は虚ろな最後の一星“入雲龍”城山恭介 
何やってんだアレ。あ、お兄ちゃんやっぱ忘我状態だ。つーか朝から満漢全席?
 多少反応に困る梁山泊軍の面々へ、どうでもよさそうな小馬鹿にしくさった笑みを投げかける白面朗君。ご苦労様。もう気は済んだでしょう? 帰ってくださいな。さもないと殺すだけ
 あまりの禍々しい殺気に息を呑む梁山泊の面々。実はこの殺気を遠方から感じて焼け焦げた神造艦の艦橋にいた滝壺が泡を吹いて気絶しているのだが、前線メンバーとしては知る由もない
 梁山泊の面々を哄笑して睥睨する白面朗君の前に、先頭の五虎将軍を割って進み出て来たのは総大将、陣内忍だった
「白面朗君メリー・アン、テメェに言いたい事がある」
「知ったことではないですので」
 手近にあった皿を一つ手に取り、軽く投じるメリー・アン。次の瞬間には忍の首は胴から離れていた。亜光速で投じられた皿が忍の首を長ネギでも切るかのように切断せしめていたのだ
 !? 驚愕する一同と、宙を舞う忍の生首。「嘘だ、俺…が死ぬなんて」
 生首の途切れ途切れの絶声はそう呟いていた。どうでもいい石ころの如くそこらに転がる総大将の生首と、白い料理を乗せた皿が鎮座する胴体。皿の上に一つ在ったのは、肉まんだった。まるでそれが失われた首の代わりだとでも云うように
 忍の胴体から血が噴出し、肉まんの皿に遮られ、そこらを濡らしやがて倒れる。今の皿の軌道誰か見えたか? オティヌス、アックア、ぶーぶー、ヴァルトラウテ、神裂の五虎将が目線で訊ね合うが誰も見えた者はいない
 静まりかえる座に、衆を割って出てきたのは副将“及時雨”上条当麻だ.。梁山泊軍総大将の座は彼に移行された
 裏口の扉が開け放たれ、上里と娘子軍が入城してくる。そこらの壁が次々に破壊され、レイヴィニア隊、アニェーゼ隊、建宮隊、ヘイヴィア隊、騎士団、ステイル隊、御坂隊らがメリー・アンを遠巻きに包囲する構え。前線組の最後方ではリポーター名護アリサとカメラマンシーワックスが緊迫の実況生中継を居残り組や各州太守らにお届けしている
 上条はメリー・アンへと言い放つ。その城山恭介ってやつはそういう生活が本人のお望みなのかと
 メンド臭そうにまた皿を光速で投じるメリー・アン。だが超電磁砲ですら当たり前のように捌いてみせる上条はその白湯拉麺の器を砕いてみせた。手首は千切れ飛ぶがすぐにまた生えてくる 
 やっぱり話し合いは無理らしい。総員戦闘準備。その言葉にメリー・アンは心から可笑しそうに嘲笑する。また全滅の前世を繰り返す気ですかと
「テメェ、何を見てやがる? ここにはとうに一〇八人以上いる。この国にテエェの味方は誰もいねぇ。そこの城山を含めてだ」
 眉をしかめる魔王へ上条は語る。先代の勇士はたまたま一〇八人、そのせいかお前を封印する太極星珠だったか、そういう宝貝は一〇八個に分裂した。たまたま曰くありげな数字だっただけだ。数を調整したなんて話しは西王母様からも九天玄女様からも聞いてねえ。今代は俺たちみんながお前を倒すために集まった宿星だ
 呆気に取られる白面朗君と、勇気を奮い起こされそれぞれの武器を構えるマークやケビン、流華やルサールカ、レッサーに神業の鞭達者といった非宿星組ら
 上条は叫ぶ。だから全滅の過去生は繰り返さねえ。俺たちは全員お前を倒して生きて帰り王道楽土を築く。それでも俺たちを皆殺ししてそんな享楽に耽る日々を過ごすって言い切るならまずはその巫戯けた幻想をブチ殺す

637■■■■:2017/04/04(火) 20:28:11 ID:srDeCWC6
 目を細め、数を恃みにしているだけでしょうと哄笑するメリー・アン
ああ、数が恃みだと不敵に笑う上条
“精忠報国”オティヌスは神槍を手に全軍に告げる。死を怖れる必要は無い。我に続け
 クスクスと嘲笑したメリー・アン。庭園の人造湖や池、果てはスキーズブラズニルの水瓶や貯水タンクから夥しい数の規定級や神格級の異形の者達を現出させてゆく
 その傍らには未踏級の一人でもある平衡天師が控える陣容
 後方司令部にて銃を取るレンディ隊や舞夏を庇って芭蕉扇を構える佐天、窮状を聞きいったん皇帝の元へ戻る騎士団ら
 皇帝フローライティアら非戦闘要員の宿星組が前線突入するべき刻はまだ今ではない
一、 混戦のさなかどうにかして白面朗君の手元から最後の一星城山恭介を奪う。この役目は白井黒子か結締淡稀が中核を担う
二、 忘我状態の城山を早期回復させるのはクロードの相棒、エリ・スライドが担当する
三、 ビヨンデッタと白蛇、愛歌とホワイトライガー、クロードとエリといった召喚仙術師の中で一人だけ相棒のいない依代がいる。緑娘藍だ。元々城山と旧知の間柄らしい彼女と城山を契約させ宝珠持ちを全て揃える
四、 その間他の者は全力で白面朗君をくいとめ戦い死に続け、城山恭介の戦線投入をもってフローレイティアやアヤミ婆、初春カエル美島アナスタシア隼や縁に禁書目録ら非戦闘要員が前線突入、胸元の宝珠の力を発動させ白面朗君を封神する
 ミリンダ達重層武器乗り五人はそこらの水辺から現出した魔物たち、雷電ら那託たちやマリーディら空軍は水底から出現した那託のサイファー十機ほどに照準を合わせる
 魔王白面朗君の白の着物が枝分かれし、青竜円月刀や蛇矛、方天画戟や戦斧、鉄鞭や鈎槍、果ては猪ほどの大きさの重層武器へと変じていく
 徹夜麻雀で目の据わったクウェンサーがウォーハンマーを構える
食蜂はナッツレイとビアージオを護衛に立たせた自室でエクステリアに脳波接続、連絡の中枢を担う
 御坂がLEVEL[PHASE]の符を使うべき時期はまだだ。とりあえず二万と三人の影をフル稼働させる
 自分に隠された力って何だろう? 禁書目録は回りを囲む化け物達を見ながら困り顔
 上条がテムジンと合身する
艦橋ではオルソラがフローレイティアの煙草を媒介に滝壺へ気つけの魔術の準備を進めている
宮殿の隅に転がる忍の生首は薄く目を閉じたまま黙して何も語らない
五虎将軍の筆頭、オティヌスを先頭に梁山泊宿星軍二万と八百二十五星の最後の戦いの火蓋が今、切って落とされた!


〜劇終〜

638■■■■:2017/04/04(火) 20:35:08 ID:srDeCWC6
はい、これにてかまちーキャラで水滸伝その他は終了です。
最後まで読んでくれた方は一人か二人ぐらいはいるんじゃないかな? お付き合いいただきありがとうございました。
作った自分的にはフローレイティア、陛下、みさきち、一方さん関連の描写が書いてて一番楽しかったw

639■■■■:2017/04/04(火) 22:43:33 ID:UdqkoTlM
オルソラ何故死んだ・・・
というかクウェンサー決戦前夜に徹夜麻雀とかざっけんなよwww

640■■■■:2017/04/05(水) 18:38:57 ID:Q6vTU.Lw
これ作ってて思ったこと。俺もバカ二人やすごパと徹夜マージャンやりたいw

641■■■■:2017/09/20(水) 03:35:38 ID:nqjFb8b6
ツンツン頭こと当麻くんとビリ娘こと美琴さんはいいな
イマブレや電撃のやり取り含めてな

642■■■■:2017/10/12(木) 23:59:35 ID:gwOPinL2
ツンツン頭こと当麻くんと美琴さんのやり取りいいな
イマブレや電撃のやり取り含めてな

643■■■■:2018/06/27(水) 05:32:21 ID:sY3/4cu2
ツンツン頭こと当麻くんとインデックスさんのやり取りいいな
イマブレや噛み付きのやり取り含めてな

644■■■■:2018/07/13(金) 05:48:18 ID:UGePVo2.


645■■■■:2018/07/18(水) 04:08:14 ID:gg.qdjO2
梅っしゅ

646■■■■:2018/07/21(土) 06:12:05 ID:3ZXZzGKk


647■■■■:2018/07/31(火) 00:47:06 ID:oPZ.N/O2
ツンツン頭こと当麻くんとアレイスターさんのやり取りいいな
イマブレやプランのやり取り含めてな

648■■■■:2018/08/17(金) 04:53:20 ID:hMnfK70Y
ころんぞん

649■■■■:2018/09/17(月) 04:46:46 ID:RDzZyULY
U.M.E

650■■■■:2018/09/21(金) 07:27:20 ID:ilccdO.Q
うめ

651■■■■:2018/09/26(水) 03:43:12 ID:lb1TOt3U
u.m.e

652■■■■:2018/10/02(火) 01:55:20 ID:sLEoa682
3期もうすぐかな

653■■■■:2018/10/06(土) 06:16:37 ID:AaCF3xqw
三期第1話放送したね

654■■■■:2018/10/10(水) 03:21:38 ID:IrtPnYFA


655■■■■:2018/10/17(水) 03:43:40 ID:UG7O8XiU
さげ

656■■■■:2018/10/26(金) 03:20:37 ID:F38uGXpg
もう3話か




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