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皇軍(明治〜WW2)がファンタジー世界に召喚されますたvol.26

255 303 ◆CFYEo93rhU :2019/11/30(土) 11:02:47 ID:k83QLRus0
距離は5シンクも無い。
私が左腕を伸ばして“魔女”に狙いをつけた時、“魔女”は鞍のポケットから拳銃を取り出し、一瞬のうちに撃鉄を上げると発砲した。
その硝煙が煙幕のように私の視界を奪い、同時に私の後ろで射撃機会を狙っていた団員が血を吐きながら馬の背にもたれかかる。

白煙の向こうに影を探しても“魔女”は居ない。
私の後ろで発砲音がしたので振り返ると、“魔女”が団員の革鎧ごと上半身を斬り落としていた。
馬には腰から下だけが残り、上半身だけ落馬させられている。

一思いに首を刎ねるなり、胸を突くなりすれば良いものを、見せしめのように行われる“魔女”の虐殺。
“魔女”の硝煙で煤けた顔も、白銀の鎧も、真っ白だった馬も、返り血で赤く染まっている。

これで、乗馬していた団員は私だけになった。
「これが、栄光あるイルフェス王国軍のやる事か!」
私の撃った拳銃は“魔女”を捉えた。命中した。
「この距離で外すのはいただけないな。失望した」

命中はした。しかし剣を持つ右腕を僅かに掠る程度の浅い傷しか与えられなかった。
「ところで戦況が見えているか? 剣と天秤の旗がどこにあるか」
“魔女”の言葉に、私は本陣の方向を振り返った。
旗竿にレジットの服が結ばれて、義勇団の旗は見えない。
緋色の軍服を着た歩兵隊が、倒れている団員達を銃剣で突き刺し回っている。

「ダルテュール伯爵には、我が王家も世話になった誼がある。
 最後まで、誰一人として逃げなかった組織を鍛え上げた貴様に、
 私は感銘を覚えている。これは本心だシモーヌ。私の――」
「気安くその名を呼ぶな!」
「何でもいいが、貴様の家はもうそろそろダルテュール伯爵ではなくなるだろう?
 ネアロ男爵家になるのは何年ぶりだ? 私に仕えれば今回の件は不問とし、
 伯爵の土地は安堵され禄も出す。これは父王陛下も承諾済みだ。書面もある」
「ハッ? いつからアルテュールがイルフェス王の土地になった?」
「貴様が署名した瞬間から、そうなる」
「なぜ私が。アルテュールには母上も居るし兄上も――」

自分の言葉を、自分で反芻した。
「兄上は……」
「最期まで抵抗したが、聞き分けの無い貴族はみっともないと思わないか?」
「貴様が……何も、そこまで……」
「私がアルテュールを包囲している間も、貴様はあちこち駆け回っていたな。
 そのせいで危機を伝える伝令が貴様を捕まえるのに四苦八苦していたようだが」
「…………」
「貴様の告発のせいで、我が王国がどれだけの損害を受けたと思う?
 信用というのは金貨で簡単に買えるものではない事くらい、解るだろう」
「そんなもの、自業自得だ!」
「ほう、言ったな?」

“魔女”がニヤリと顔を歪めた。


その後の事は覚えていない。
思い出そうとしても、魂が拒絶する。
ただ、ビリビリに引き裂かれた服とも言えない布を纏って、アルテュールの館に辿り着いた事は薄っすらと覚えている。

今はイルフェス王国の軍服に身を包み、王女義勇連隊の一員として“魔女”の“寵愛”を受けながら、故郷アルテュールの平安を願うばかりだ。


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