したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【SS】コスモス文庫&秋桜友達【宮廷社】

1開設者</b><font color=#FF0000>(GCE9hnmM)</font><b>:2003/05/14(水) 11:26 ID:TxRQj2tQ
ごきげんよう、みなさま。
ここは今野作品周辺のSSをまったりと愛でるスレです。SSの投下および感想は
こちらでどうぞ。

・書き手さんに対する感謝とねぎらいの言葉を忘れずに。
・他サイトや他板からの転載、部分改変(盗作)は厳禁です。
・リクエストするだけでなく、みなさまもSSを書いてみましょう。
・エロ作品は自粛を。原作のイメージを壊さないようご配慮願います。

174魚スープ屋:2004/12/03(金) 00:40 ID:idCN1xFE
>>173
お疲れ様です!
オンタイムの季節SS乙です。
コバルトの新作も確か、蟹名女史の聖夜ネタでしたっけ。
『割込み』とか本当に全く気にしていないのでマターリやってください。

175魚スープ屋:2004/12/03(金) 21:22 ID:idCN1xFE
(7話はじまり)
平成16年9月10日PM16:47 薔薇の館
令「何処で、そんな情報を!!」
かなみ「隊員がその噂話している二年生の話を偶然聞いたの。しかも、議事録を狙っているって」
志摩子「議事録を…」
由乃「でっ。取調べは?」
かなみ「もう済ませてある。けれど、その子も噂を聞いただけだって」
祐巳「出まかせじゃないのですか?」
可南子「出処が掴めない以上、油断出来ませんわ!!」
令「風紀委員会に反対する生徒がいたとはね。視察に合わせてデモをするなんて考えたね」
由乃「感心している場合じゃないでしょ!!視察の時にデモなんかされたら、お終いよ!!」
祐巳「文科省にも、生徒達にも私達の力量不足をアピールする絶好のチャンスですから?」
令「成功したらね。そうやって山百合会をおとしめて、否決させようと考えてるんでしょうね」
志摩子「議事録を狙うのは私達を批判する為の道具に使うんでしょうね。」
由乃「議事録は絶対門外不出!!昔からこれだけは守られてきたわ!!」
令「もし、記事録が暴露されたら代理就任や親衛隊参入、大久保一派、乃梨子ちゃんの事後処置
が全部明るみに出る。今までの事、全部攻撃されたら天地がひっくり返るわ!!」
可南子「けれど、こんな事をすれば山百合会が崩壊するのは目に見えていますわ!!山百合会が
無くなったら誰が否決するんですか!!」
祐巳「そこが疑問だよね。山百合会が無くなれば自然と否決になると思ってるのか?あるいは
本当は山百合会を潰すのが目的なのか?」
由乃「馬鹿なのか天才なのか分からない陰謀ね」
令「議事録の担当は志摩子よね?体と記事録の両方に気をつけてね」
志摩子「はい。令様」
ロサ・ギガンティアは伝統的に、議事録の担当だった。
令「どっちにしろ、視察まで、そんなに時間がある訳じゃないから、何らかの手
を早めに打っとかないと」
       大河ドラマ〜リリアン太平記〜第7話『志摩子の願い』中編
 取調べ対象者は全部で120名に及んだ。中には先生方やミルクホールのおばさんまで居た。
噂話を聞いた者から、その話をした者を取り調べた。取調べの度に「私は噂話を聞いただけだ」
が何度も繰り返され、堂々巡りが続いた。中には、複数の人間が一人の人間から噂話を聞いたと
いう証言が出て、色めき立つ事もあったが、その人は花寺の生徒で『私は噂話を聞いただけだ』
というつまらない結果に終わった事があった。苛立った私達は手当たり次第に、委員会の部屋
やら部室やら、めぼしい所を捜査したが、体育祭と文化祭で、色々小道具の準備をしている時期
に、これはかなり難しい事に気付いた。姿の見えない敵に翻弄されていた私達は、徐々に正常な
判断が、出来なくなってきていた。だが、一つだけはっきりしている事は、これだけ大勢の人間
が、色々な角度で、この噂を聞いているという事は、確実にデモは計画されているという事であった。
      平成16年9月11日PM12:30 リリアン女学園敷地内 某所
生徒A「ちっ。親衛隊が鵜の目鷹の目で探し回ってるわ」
ウザワミフユ(仮)「山百合会がどう動こうと、私達の計画は潰せないわ」
{本人のプライバシー保護の為、実名は伏せさせて頂きます。}
生徒B「けれど、計画を知っている以上、記事録はそうそう手に入らないわ!!それに
当日は警備が厳しくなるわよ」
ミフユ「全校生徒が注目しているのだから、あなた達にとって、むしろ好都合じゃない?それに
議事録が間に合わなかったとしても、計画自体に支障は無いわ。風紀委員会を廃案に追い込み
山百合会を丸裸にした後、記事録を手に入れ、彼女達に止めを刺せば良いわ。」
生徒C「そうね。あなたが立てた、この計画、きっと成功させて見せるわ!!」
ミフユ「同じ、リリアンを愛する者として、何時でも協力させて貰うわ」
生徒D「では、正統山百合会の本日の会議はこれまで。」
生徒A「リリアンを我が手に!!」
全員「リリアンを我が手に!!」
ミフユ(俗な人達。まぁ、私の望みを達成する為の捨て駒だから
適当に付き合っておきましょう。)

176魚スープ屋:2004/12/03(金) 21:28 ID:idCN1xFE
(↑7話つづき②)    
           同日PM12:35 第1体育館裏
 どす黒い欲望が渦巻いていた、ほぼ同じ時間、土曜の午後活動の合間に真美さんは志摩子
さんから、第1体育館裏で一緒にお昼食べようと誘われていた。ちょっと遅れたと思ったて
いた、真美さんはスカートのプリーツを翻しながら、人の間を走り抜けていった。
真美「ごめん!!志摩子さん。待った?」
志摩子「いいえ」
真美「志摩子さんに、いちごみるく買って来たの。飲んで」
志摩子「ありがとう。真美さん。」
真美「なんか、大変な事になってるらしいね。そっちは」
志摩子「デモが起きるとか何とかで。薔薇の館は、てんやわんやの大忙しなの」
真美「志摩子さんは、いいの?薔薇の館にいなくて」
志摩子「私は、こういう事は苦手だし、どうしたらいいか解らないから。」
真美「そうね。志摩子さんはひなたぼっこしてるお婆ちゃん猫みたいなキャラだから
そういうの似合わないかも」
志摩子「ほめられているのか、けなされているのか、よく解らないわ。」
真美「さぁ?どっちでしょう?」
志摩子&真美「うふふふふ」
真美「ねぇ志摩子さん。日曜、どっか遊びに行かない?」
志摩子「ええ。いいわね」
 真美さんは立ち上がり、うーんという声を出しながら背伸びした。残暑はまだまだ厳しかったけど
体育館裏の木立の影は、二人にはとても心地良かった。
真美「ずっと、新聞、新聞って一筋だったから、リリアンの景色をこんなにゆっくり見たのって
久しぶりかもしれないわ。」
志摩子「そうね…私も同じかもしれない」
 秋を告げる風が二人の間を通り抜けた。私は二人にとって、この時が終わらずに、ずっと続けば
いいと思った。
            同日PM12:50 薔薇の館
 その頃、薔薇の館では志摩子さんと真美さんという意外なコンビの話で持ちきりだった。
由乃「志摩子さんと真美さんが頻繁に二人で会っているらしいわね。まだ事件について、しつこく
付きまとっているのかしら?」
可南子「親衛隊の報告によると真美様は、事件の追究を中止したらしいですわ」
由乃「あの、思い込んだら一直線の真美さんがねぇー。猪突猛進は怪我をするって、やっと気付いた
のかしらね。良い事だわ。うんうん」
 由乃さん以外の全員が顔を見合わせたのは言うまでも無かった。
令「そう。じゃあ、二人の件は心配な無さそうだら、デモ対策を考えなくちゃ」
 みんなが頷いた丁度その時、噂の本人が、テクテクと帰ってきた。
令「遅かったね志摩子。お茶淹れる?」
志摩子「お願いします」
可南子「はい。どうぞ」
志摩子「ありがとう可南子ちゃん。みなさんに許可を頂きたい事があるのですが?」
令「何?」
志摩子「日曜の活動を欠席させて欲しいのですが、宜しいでしょうか?」
祐巳「うん。日曜は顔を出して解散する程度だから、気にしないで志摩子さん」
 由乃さんが『何、言ってるのよ!!』って顔で私を見てきたが、令様のフォローで状況を理解し
「私も欠席しよう」とわざとらしく言ってくれた。だって、そうでも言わないと真面目な志摩子
さんは、『やっぱり出席します』なんて言い出すに違いなかった。志摩子さんには少し休んで
貰いたい。それは、友達としてのお節介というよりか、罪滅ぼしに近かった。
             同日PM13:10 銀杏並木
 並木の下、真美さんを待ち構えていた三奈子様は「あ〜ら奇遇ね」と言うとニヤニヤしながら
寄っていった。嘘も方便というが、ばれている嘘を堂々とつけるのは一種の特技だと思う。
三奈子「一昨日から部室に顔を出さないじゃない。心配したわよ。」
真美「ご心配掛けてすいません。」
三奈子「デモがどうとかで山百合会が大騒ぎなの知っているでしょ?今から部室に行くわよ」

177魚スープ屋:2004/12/03(金) 22:01 ID:idCN1xFE
(↑7話つづき③)
真美「行きません。私は…もう記事は書きません。」
三奈子「もうって事は、二度と記事は書かないって事かしら?」
真美「そうです。山口真美はペンを折りました。」
三奈子「あっそう。部員はあなただけじゃないから、自由になさい。」
真美「お姉さま…」
三奈子「なに?」
真美「私はもう、お姉様のお役には立てません。スールの契りを解消してください。」
三奈子「それは、お断りね。別にあなたが部員だからスールになった訳じゃないわ。それに、三年の
この時期で、スールの契りを解消されても、どうしようもないわよ。」
        平成16年9月11日AM10:30 K駅
 日曜の混雑の中、オロオロしていた志摩子さんを呼ぶ声があった。その特徴的な元気の良い声
を頼りに人の波をかき分けて進むと、真美さんが待っていた。
真美「おはよう志摩子さん!!」
志摩子「おはよう、真美さん」
真美「ねぇ。お買い物の前に動物園行かない?私、好きなんだ動物」
志摩子「私も、動物さん大好きよ。行きましょう」
           同日 動物園AM11:00
真美「みて!!タヌキよ!! タヌキさん!!化かされそう。」
志摩子「タヌキは祐巳さんね。そっくりでしょ。」
真美「う〜ん。言われてみれば。タヌキネンシスって奴ね」
志摩子「うふふふ。」
真美「キリンだ!!おっきー」
志摩子「キリンは可南子ちゃんね。」
真美「うん。ぴったり」
志摩子「ゴリラは令様。」
真美「えっ?!ロサ・フェティダがゴリラ?!」
志摩子「見た目と違って、とても女性らしく、母性本能があるところが似ているわ。」
真美「ロサ・フェティダはゴリラか。あっ!!イノシシ。これは由乃さんね!!初めて一緒のクラスになって
由乃さんの正体を知ったからね。知らなかったら、リスとかペルシャ猫(*動物園にはおりません)って
言っていたかもしれないわ」
志摩子「うふふ。間違いないわね」
ヤマノベ「熊耳モード♥」
真美「ねぇ…志摩子さん。なんか、知ってる人が熊の檻の中にいない?」
ヤマノベ「熊耳モード♥」
志摩子「人が檻の中にいる訳無いわ。次、行きましょう。」
ヤマノベ「熊耳モード♥先生辞めたくなっちゃった♥」
      同日PM13:45 I公園
真美「ねぇ志摩子さん…わたしね、新聞部辞めようと思ってるんだ。」
 昼食を採った二人は、I公園の池のボートに乗った。ボートの上でとりとめも無いおしゃべり
をしていた時、真美さんは話を切り出してきた。
志摩子「どうして辞めるの?」
真美「私、今まで良い記事を書く為に全力疾走でやってきた。どんなに他人に迷惑が掛かろうとも
何が起ろうとも真実を知りたい人達がいる限り、立ち止まってはいけないと信じてた。けれど
ある人の悲しむ姿を見て、もう書く気が起き無くなちゃった。」
志摩子「真美さん…」
真美「だからね昨日、お姉さまにロザリオ返そうとしたの。」
志摩子「本当に?」
真美「うん。お姉様のお役に立てないから返しますって、言ったの。そうしたら、『部員じゃなくても
貴女は妹よ』だって。気持ちはありがたいんだけどね。私、部活辞めたら部室に行く事は、もう無い
じゃない。そうしたら受験で忙しいお姉さまのお役に立つ事が出来ない。だったら、あの人にとって
私って何なのかなって思って。」
志摩子「私と、同じね。」
真美「志摩子さんと?」
志摩子「そうよ。ロサ・ギガンティアだった、お姉さまにとって私は存在価値があるのか?私は何時
もそんな事ばかりを考えていた。けれど、私に妹が出来て、そんな悩みこそ、必要ない事だと解った。
何故なら姉にとって妹とは、いてくれるだけで有難いのよ。」
真美「志摩子さん…」
志摩子「それに、真美さんがあんなに生甲斐にしていた新聞部を辞めてしまうのは、私は不幸な事
だと思う。その人が真美さんの記事を見て、どんな気持ちになったかは、私は知らない。けれど私
だったら、私のせいで大好きな友達が生甲斐を無くしてしまった事の方が悲しいわ。」
真美「…」
志摩子(真美さんの姿が私と重なるのは、本当は過去の姿だけじゃない。リリアンの存亡を掛けた
この時期に、私は何も出来ないでいる。そんな私が、祐巳さんや令様の力になる事ができるの
だろうか?お姉さまと乃梨子がいない薔薇の館に私がいる意味は何なのだろう?)

178魚スープ屋:2004/12/03(金) 22:14 ID:idCN1xFE
(↑7話つづき④)  平成16年9月12日AM7:30 薔薇の館
 結局、昨日は帰れなかった。サザエさんが見られなかった。ご飯もまともに採れなかった。眠ることも
出来なかった。迫り来るデモの影と視察。何としても手掛かりを見つけたかった私達は、あの手この手を
尽くした。日が暮れ、夜の戸張が下りても、それは続いた。そして、いつの間にか日は昇った。けれど
こんなに根を詰めても何も進展が無かった。
令「いい。志摩子は何時も一番早く来るから、私達がこんな時間にいると、日曜から徹夜したって気付く
かもしれない。だから志摩子に気付かれない様に、一旦薔薇の館を出るの。」
祐巳「でっ、7時50分位になったら、また集合するんですよね。」
由乃「友達気遣うのも一苦労よね。ふぁぁ〜。…………眠い。辛い。帰りたい。」
 一旦、薔薇の館を出るというのは名案かもしれないけど、申し合わせた様に全員の目の下にあるクマは
どうするのだろうと、ボケボケする頭で考えた。
可南子「視察は、明後日です。体力が付きようとも私達は休む事は出来ません。山百合会が崩壊すれば
私達全員の命運は尽きるのですから。」
由乃「今度は私達が処刑されるかもね。あひゃひゃひゃひゃ」
 睡魔と疲労で弱気になった私達に、その言葉はどんな栄養ドリンクより効いた。ただし、励ましと
いうより、お尻に火を付けられる感じだが。その時、ギィという音と共にビスケット扉が開け放たれた。
出るのが、ちょっと遅かった。これで令様の目論みは露と消えた。
志摩子「ごきげんようみなさん」
令「えっ?あっ…ごきげんよう志摩子」
志摩子「みなさんお早いですね」
由乃「そっ…そうなのよ!!学校行こうとトイレに行ったら、うほっ!!良い令ちゃんが」
 24時間耐久レースを完走した由乃さんの脳味噌には、残念ながら、この緊急事態に当たるだけの力
は無かった。かといって、私も令様も可南子ちゃんにも上手に切り抜けるだけの余裕が無かったから
志摩子さんを除く全員が「えへへへ」と不気味な笑いを続けるしか、すべが無かった。
志摩子「うふふ。みんな揃って楽しそうですね。では、会議を始めましょうか」
 一同、志摩子さんが天然で助かったと胸を撫で下ろした。けれど、志摩子さんは全てを察していた事
にその時の私達は気付いてあげられなかった。
         同日PM12:30分 薔薇の館 外
 薔薇の館の周りをウロウロしていた真美さんは、今、一番会いたくない人の顔を見た。気付かれない様
にその場を立ち去ろうとしたものの、敵はさる者だった。
三奈子「あら?あららら?あら〜。こんな所で奇遇ねぇ。真美」
真美「……それはどうも」
三奈子「ところで、あなた。どうしてこんな所にいるの?」
真美「べつに良いじゃないですか。私が何所にいようと…」
三奈子「そう。じゃ、これは何かしら?」
 三奈子様は真美さんの左腕を掴むと、その手に握られた、メモ帳を取り上げた。
真美「ちょっとなにするんですか!!返してください!!」
三奈子「『9月12日、薔薇の館に動きなし』。あら?記事を書かない筈じゃ無かったの?」
真美「何、勝手に見てるんですか!!」
三奈子「質問の答えになってないわよ。じゃあ、答え易いように質問を変えようかしら?あなたは
何故、記事を書かないと誓ったの?そういえば理由聞いてなかったわよね?」
真美「…志摩子さんを悲しませるような事はしたくない。」
三奈子「そう。じゃあ、それならば何故、記事を書かない筈のあなたがこんな事をしているの?」
真美「私は…」
三奈子「うん?」
真美「私は本当は記事を書きたくない訳じゃ無い!!私の心が『使命を果たせ。真実を暴け。ペン
を捨てるな』と命令している!!だからといって書けるわけ無いじゃないですか!!私見たんですよ。
志摩子さんが、二条さんの事を思って泣いているところを!!大好きな妹を亡くして悲しんでいる
人を!!私が彼女の傷を広げたんです!!痛い思いをしながら、必死に耐えていた彼女の傷を、自分
勝手な野次馬根性で、ばい菌だらけの手でほじくったんです!!痛く無い訳ないじゃないですか!!
苦しくない訳ないじゃないですか!!」
三奈子「そうね。苦しいわね」
真美「でも、彼女は自分のせいで私が新聞部を辞める事の方が悲しいと言ったんですよ。
笑っちゃいません。あんなことされても、私みたいな最低人間の事を気遣ってくれるんですよ」
三奈子「あっそう。事情は解ったわ。自由になさい。」
真美「どうもすみません。」
 その場を離れようとする真美さんの背中から、三奈子様は話しかけた。
三奈子「ねぇ?志摩子さんは二条さんの事を、どう思っているかしらね?」
真美「はぁ?大好きに決まってるじゃないですかっ!!」

179魚スープ屋:2004/12/03(金) 22:19 ID:idCN1xFE
(↑7話つづき⑤) 
 振り返った真美さんは、無神経な姉を睨みつけながら、吐き捨てる様に答えた。けれど
姉の顔は、何時もの小馬鹿にした様な薄ら笑いでは無く、見据えた様な表情だった。
三奈子「そう。あなたが志摩子さんだったらどうする?彼女は全てを知っている訳じゃないのよね?」
真美「私だったら、真相を絶対に究明します!!」
三奈子「どうして?」
真美「大好きな人が、どうして死んだのか!!私だったら絶対知りたいです!!」
三奈子「志摩子さんも同じ気持ちじゃない?」
真美「え?」
三奈子「大好きだからこそ、真実を知りたい。大好きな人と、どうして別れなければいけないのかと?」
真美「…」
三奈子「けれど、その真実を知るまでの過程は、とても辛いかもしれない。志摩子さんにとって、それこそ
傷を広げられる思いかもしれない。だからとって、知らない方が良いのか?そうじゃないと思う。傷は庇う
だけじゃ治らないわ。手術なり、薬を付けるなりしないと、永遠に治らない。でも、手術は怖いわよね?
薬はしみるわよね?けれど、それを恐れていたら傷は永遠に塞がらない。醜くただれていく傷口が自分の目
に曝され続け、心を蝕む。その事の方が不幸だと思わない?」
真美「…」
三奈子「それに、もし真美がいなくなったら、私はどんな思いをしても真実が知りたい!!だって真美は私
の大切な妹だもの。世界に一人しかいない大好きな妹だもの…」
真美「ひっく…おっ…ぐすっ。おねえさまぁ…お姉さま…お姉さまっ!!」
三奈子「真美っ!!」
 二人は時の流れるのも気にせず、そのまま抱き合った。スールの形はいろいろある。けれど、愛の形は
皆一緒なのだろう。この二人を見て私は、とても羨ましくなった。何十年立たなければ会えない
お姉さまを想って。
              同日PM15:30 2年藤組
 ホームルームを終えた志摩子さんを待ち伏せていた真美さんは、手を引っ張ると走りながら
第一体育館裏まで連れて来た。プリーツやタイが翻っても、真美さんは気にしなかった。
志摩子「はぁ…はぁ…どうしたの?真美さん」
真美「私、新聞部に復帰するの!!」
志摩子「おめでとう真美さん!!良かったじゃない。」
真美「うん!!志摩子さんと、お姉さまが迷って、全てを見失った私を救ってくれた。
二人の言葉が、灯りになって私の進むべき道を照らして教えてくれた。だから
志摩子さんには感謝してるよ。ありがとう志摩子さん!!」
志摩子「うふふふ。どういたしまして」
真美「お礼に、今まで以上に迷惑掛けてあげる!!その変わり、志摩子さんの知りたい
事の全部、私が絶対暴いてみせる!!約束する!!」
志摩子「お手やわらかにね」
志摩子&真美「うふふふふふ」
 部活があるからと言って、手を振りながら真美さんは走り去っていた。
志摩子(真美さんは自分の道を見つられた。私も自分の道を行くしかない。迷っていては駄目。
今の私に出来る事。私だからこそ出来る事を。)
         同日PM16:12  薔薇の館
由乃「志摩子さん遅いわね。何してるのかしら!!」
令「教室を何時も通りに出たらしいけどね…」
 何時まで待っても志摩子さんは来なかった。そこに当直交代の親衛隊員が入って来た。
隊員A「ロサ・ギガンティアでしたら、1530時に薔薇の館に入っていくのを見ました」
祐巳「本当?!」
隊員A「はい。二分程経ったら、黒い表紙のファイルを手に何処かに行かれました」
由乃「それって…」
祐巳「議事録!!」
 私達は急いで、一階資料室の棚を探した。案の定、議事録は見つからなかった。
令「なんでよっ?!こんな時期に持ち歩いたりしたら危険じゃない!!」
祐巳「それよりも、議事録を反対派が狙っているのに、わざと持ち出すなんて…」
由乃「反逆行為…よね?」」       (7話おしまい)
        次回。大河ドラマ〜リリアン太平記〜第8話『志摩子の願い』後編

180魚スープ屋:2004/12/23(木) 23:18 ID:LLq6PUZM
一人称進行は難しいので、後日仕切り直しさせてもらいます。
アニメ第3期まで、SSを通じてマリ見てを盛り立てていきたいと思います。
ではでは。

181魚屋:2005/03/16(水) 22:40:17 ID:JuhKE.oE
1ページ目         『オレンジペコとスプーン』
 いまでも、はっきりと思い出す、あの日々の想い。楽しい。嬉しい。悲しい。寂しい。
関連の無い、それぞれ想いが複雑に混ざり合い、甘くて懐かしく、けだるい香りを私に
感じさせる。ティーカップに注いだ、一杯のオレンジペコのように。
  
 東京都M市の某所。通りから外れた場所に昭和初期から変わらぬ佇まいを見せる喫茶店。
そこに一人の女がいる。コチコチとやたら大きな音を立てる柱時計に目をやると、既に
時間は30分を超えていた。
蓉子「ふぅー」
 いつもの事だ、と軽いため息を吐いてみせる。しかし困った事に、あの二人の事を
考えると、この30分という時間を蓉子にとって愛おしく感じさせた。
 六年間の付き合い…。その幸せな時間は蓉子に、あの二人の長所や欠点さえも
愛せる様にしてくれた。
蓉子「すいません。オレンジペコもう一杯いただけますか?」
 オレンジペコにお砂糖を入れた蓉子は、少し考えてみた。10分先か20分先かは
分からない。しかし、確実にあの二人が、その時に取るであろう行動を予測すると
ちょっとニヤけてみせた。
蓉子「いけない」
 一人でニヤけているところを誰かに見られてはいないか。周りを見渡したが
老店主は何か嬉しそうにコップを磨いるし、蓉子以外の唯一の客は文庫本を
読みふけっていた。
蓉子「それにしても暇」
 あまりにも暇なので、この店が昭和何年に建てられたか?建築様式は
インターナショナルなのか?ドイツ表現主義なのか?と蓉子は、あれこれ
推測してみせた。やがて、天井の装飾を見つめていた蓉子は、したたかな
眠気に捕らわれた。瞼の重力に抗いつつ、しばたかせていると誰かの顔が
チラチラと浮かんできた。江利子だ。

182魚屋:2005/03/16(水) 22:41:10 ID:JuhKE.oE
2ページ目
 あれは、中等部の頃だった。何時も、けだるそうにしていた江利子が小躍りするように
私の元にやってきた。
江利子「聞いてよ!!蓉子!!上級生に天体観測が趣味の方が居るのだけれど、その方の話が
とても面白くて。」
蓉子「へー、そうなんだ。なんだか楽しそうじゃない?」
 変わり者が多いリリアンの中でも一際変わっていた天体マニアの上級生。彼女に感化
された江利子は瞬く間に彼女と天体観測の虜になった。それからというもの、江利子は
毎日の様に図書室に通い、宇宙の本を読み漁った。自称お節介焼きの私は、彼女に
くっ付き、彼女の幸せを全面に応援した。そんな日々が1、2週間程続いていたある日
のことだった。
江利子「やーめた」
蓉子「え?何を」
江利子「天体観測の調べ物よ」
 目移りが激しそうに見えて、意外に執着する江利子の割には、今回はかなり早いと
思った。なんで?と彼女に聞くと、本を置き、まざまざと私の顔を見つめてきた。
江利子「遠い星よりもっと素敵な物をすぐ近くに見つけた」
蓉子「え?何それ」
江利子「教えてあげないよ」
 江利子は図書室の本を返すと、また小躍りするように図書室から出て行ってしまった。
江利子って、よく分からない。
 
 しまったな、と蓉子は思った。どれ位寝てしまったのか確認する為に、例の柱時計に
目をやると、あれから一、二分も経っていなかった。
蓉子「それにしても、ここは本当に落ち着く場所ね。危険なくらいに」
寝まいと、湯気をたてるオレンジペコをスプーンで掻き混ぜていると、甘い香りと湯気
が蓉子の眠気を再び連れ戻してきた。

183魚屋:2005/03/16(水) 22:42:21 ID:JuhKE.oE
3ページ目
聖「強い貴女が嫌い」
 二年の終わりのある日、私は聖に言われた。それは、聖が心から求めていた女性
久保栞が居なくなってから、もう二ヶ月にもなろうとしていた日のことだった。
薔薇の館での放課後の活動が終わり、解散した筈の私は忘れ物を取りに、薔薇の館
に戻った。施錠されている筈の鍵が開いていたので、誰かが居る事を確信していた私
は、それに留意しつつ、二階の会議室に上がっていった。の筈だった。
会議室のドアノブに手をかけ、少し開いたところで私は手を止めた。いや。動けなか
ったと言った方が正直だろう。すすり泣いている聖の姿に、私は心臓を握られる様な
思いがした。
聖「だれ!!」
 本人の意思に関係なく、人間も生物であるという宿命にある限り、物音立てずに
静止するなぞ、無理がある。ましてやドアノブに手をかけたままの姿勢で。
蓉子「ごめんなさい。けど、覗き見する気なかったから」
聖「じゃあ、早く帰って」
聖はつっつけどんに言い放つと、目を制服の袖でごしごし擦り、窓の方を眺めた。
蓉子「うん…忘れ物取りに来ただけだから。」
聖「…」
 テーブルの上の忘れ物。ピンク色の小さな筆箱を鞄に仕舞うと、本来の目的を
果たした私は、確かに帰らざるをいけなかった。しかし、私の口はそうは思って
くれなかったらしい。
蓉子「…なにか私に言って分かる事だったら、話して。聖」
 明らかに癪に触られた聖は、肩をいからせながら私を振り返った。

184魚屋:2005/03/16(水) 22:59:43 ID:JuhKE.oE
4ページ目
聖「あなたに言っても分からないでしょ!!」 
 たしかにそうだ。私なんかに聖の気持ちはわからないだろう。けれども話
ぐらい聞いてあげたい。気持ちを共有して、彼女と一緒に悩みたい。友達
だから…大切な人だから…
蓉子「そうね。ごめんなさい、お節介だったかしら。…じゃあ帰るね」
 悲しい。辛い。泣きたい。本当の私が喚いている。けれど、私は聖の前で
本当の気持ちを言えず、強がる事しか出来ない。それがくやしかった。
 聖の顔を見ない様に会議室から出て行こうとしていた時だ。私の肩を聖が掴む。
聖「…ごめん。ちょっと感情的になり過ぎた。」
 私は振り返らずに聖の言葉を聞いた。少し間をおいて振り返らないと心の準備
が出来ない。
一呼吸か二呼吸をおいて、振り返る。
蓉子「いいのよ。私も無神経だったかな、と思ってるんだから」
 まただ、くやしい。
聖「聞いて貰っていい?」
蓉子「うん」
 聖は、悪戯を告白する子供のように、俯きながらたどたどしく告白する。
聖「もう、お姉さまが卒業しちゃうんだなって。そう思ったら無性に寂しく
なっちゃった…」
蓉子「ロサ・ギカンティアは、本当に優しくしてくれたものね」
聖「うん。だから、頭ではお姉さまが卒業するのは分っていても、どこかでそれ
を否定し続けてきた。そしてついに、後二日。」
 ロサ・ギカンティア。その人は聖の心の中に、確かな足跡を残し、この学園
を去ろうとしている。
蓉子「そうね…今は精一杯姉孝行でもしたらどう?」
聖「うん。でも春になったらお姉さまの居ない日々が始まる…どうなっちゃう
のかな、私」
蓉子「人は出会った限り、別れは必ず来る。それは皆、平等なことだから仕方
の無いことね… でも、春になって新しい出会いがあって、自分の全てを受け
止めてくれる人が出てくるかもしれない。だから私達は前に進めるのよ」
 新しい出会い。聖の全てを受け止めてくれる人。その人は果たして誰なの
だろう。祥子達の中からか。それとも、新しく私達の元にやってくる人達の中
からか。それは、私にも皆目検討がつかなかった。けれどその時、私は私の喉元
まで出かけた何かを言おうとしたのを、明らかにためらった。
 …だって言えるわけ無いじゃない。その人は、私では駄目なのか、と。
聖「…凄いな蓉子は。あなただって、お姉さまが卒業なさるはずなのに、私じゃ
敵わないよ。本当に羨ましい。…だからそんな強い貴女が嫌い。」
蓉子「そうね…私も嫌い」
 本当に嫌い。もっと別なことを聖に言いたいのに。

聖「でも、そんなあなたが大好き。」
   
          え?
          
聖「ありがとう。蓉子」
 私を見つめる聖の顔は確かに微笑みかけていた。私は、はたはたと涙が
足元にこぼれていくのを感じた。

185魚屋:2005/03/16(水) 23:01:22 ID:JuhKE.oE
5ページ目
 目が覚めた時には、柱時計の針はあれからさらに10分も進んでいた。よくもまぁ
こんなに居眠りができるものだと、蓉子は自分にあきれると同時に、感心したりする。
蓉子「この失態の責任はあの二人に取らせなくては」
 やがて、カランコロンと店のドアが開く音が聞こえ、やかましくあの二人がやって来た。
聖「ごめーん蓉子。遅れちゃったよ」
江利子「あら、怒ってない?」
蓉子「うふふふ」
 二人は一応、40分も約束の時間に遅刻した事を謝っている。しかし、それほど真剣さが
見えないのは、やはりこの二人ならでは。
聖「え?なに?なんで笑うのよー」
江利子「ちょっと、怖いわよ。蓉子」
蓉子「やっぱり、全部私の予測通りだったから。うふふふ」
聖・江利子「?」
 だらしなくて、マイペースで、楽しくて、大好きな二人。私はこれからも、ずっと
二人と一緒にいたいな。
 蓉子は飲みかけのオレンジペコを飲み干そうとしたが、もうやめた。

蓉子「じゃあ、行きましょうか!!」  (おわり)

186ごきげんよう、名無しさん:2005/09/05(月) 23:24:15 ID:SH8ndO1I
なぜ、感想レスがつかない?
たまたま、幸運にも迷い込んだのだが、魚屋さんの作品はクオリティー高いぞ。

P.S,
マリ見て歴2ヶ月です。
で、いま、かなり重症。
「遅くなってかかった麻疹(はしか)は重くなる」という諺思い出した><


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板