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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

465盤上の月2(28) ◆RA.QypifAg:2012/06/10(日) 19:52:37

晴美はカウンターへ戻り、緒方へ挨拶しながらアキラのほうへ顔を向ける。
「こんにちは緒方さん」
アキラは席を立ち、緒方に頭を下げて挨拶する。
「キミは家にいない時に大抵ここにいるのは、昔から変わらないなあ」
緒方はアキラの対面の席へ座る。
「………訊いたかい?  北斗杯のメンバーを」
「はい。緒方さん、もう耳に入ったのですか。いつも情報収集早いですね」
コーヒーを飲みながらアキラは、緒方の情報収集力の素早さに舌を巻く。
アキラと緒方の周りにいる客達は2人の会話を聞いてざわめくが、どことなく緊迫した感じがあるため
口を出せず静かに聞き耳を立てている。
「まあ、いろいろとネットワークを張り巡らせているからな。
……やはり進藤が出てきたな。予想通りではあるが楽しみなことだ。
昨年、北斗杯はすごく話題に上がっていたから皆注目しているのさ。
進藤が韓国の高永夏と、ほぼ同等の力があることを証明したのがこの大会だったからな」
「ええ、そしてこの大会に出た者は今後、日本・世界とも注目されていくでしょう。
あの社のように。とても意味のある日中韓Jr・団体棋戦です」
「確か今年は社じゃなくて……」
「和谷君です、和谷義高。進藤と仲が良いと聞いてます」
「あら、もう北斗杯のメンバーが決まったんですか。緒方先生はコーヒー、ブラックでしたよね」
晴美が緒方の分のコーヒーを盆に乗せて机へと運ぶ。
「どうも市河さん。北斗杯メンバーは今日決まったんですよ」
晴美が2人の間に入ったことから、北島が割り込む。
「北斗杯、今年も期待してますよ、若先生っ!」
北島が話し出した途端、碁会場の客達が一斉にアキラと緒方の席を取り囲み、アキラへ激励を飛ばし始
めた。
「ぜひ今年こそ韓国戦の大将をやってくださいよ」
「でも進藤もこの1年で成長したようだから、今年どうなるか見てみたいよな」
「何言ってるんだ! 若先生が大将やるところが見たいんじゃないか!」

466盤上の月2(29) ◆RA.QypifAg:2012/06/10(日) 19:53:54

碁会場内は一気に活気付き、その騒ぎを眺めてアキラは徐々に気分が高揚していくのを感じた。
皆が一心に応援して期待する北斗杯を、今年こそ白星を勝ち取りたい。
強い決意がアキラの中に固まっていく。
「あとアキラくん。もう一つキミに伝えたいことがあるんだ」
緒方はコーヒーを手にしながら、ちらりとアキラを見る。
「実は、今年の北斗杯の団長はオレなんだよ」
その場にいる者達は、一瞬言葉を失った。
十代の少年達のまとめ役を行う緒方というのが、想像出来ないからだ。
「………緒方さんが……ですか……?」
聞き間違えたかと思い、アキラは目を丸くしてもう1度そのことを緒方へ問う。
「ああそうだ、オレだよ。オレが申し出たんだ。
これから世界で活躍する輩を、この眼で見たいじゃないか。絶好の機会だ」
―――遠くない先にオレの前に現れる敵を、この眼で確かめたいのさ。
豊かな才能の開花していく様を、その場で見合わせる。自分で自覚は無いが、アキラに負けず劣らずに碁に
全てを手向ける緒方にとって、北斗杯は精神向上を鼓舞すべき格好の場であった。
緒方の心意はアキラには汲み取れないが、以前からヒカルに対して強いこだわりがあることを知っている。
―――進藤のライバルは他の誰でもない、このボクだっ!
アキラは眼力を強めて緒方へ見返すが、緒方の眼鏡は陽に反射して表情が読めない。
緒方はアキラの視線に気付き、コーヒーを飲みながら口元に不敵な笑みを浮かべた。


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