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個人スレ

305名無しさん@避難中:2011/07/31(日) 15:57:26 ID:aEChLuHE0
乳袋という単語を初めて知った。言い得て妙だと思った。

306名無しさん@避難中:2011/08/08(月) 19:01:32 ID:61SYP02Q0
ロリ女王率いる大帝国が世界を支配しようとする世界。
小さな国や街は団結して立ち向かったがボロボロ状態。
ほとんどの国が没して田舎村くらいしか残っていなかった状況で、その田舎村から反乱軍が立ち上がった。
しかし反乱軍はほとんどが前線で戦う騎士だったためリーダーがいなかった。
そこで革命の旗印に若い市民からお飾りの王を選んで立てた。
戦いの中でお飾りの王も成長していく。
反乱軍は帝国から次々と領地を取り返し、ついに帝国と激突。
だがロリ女王は戦争を望んでいなかった。
二人組の悪い女摂政が世界から争いをなくすためとそそのかしていたのだ!
魔物を操る悪の帝国との戦闘中、王は帝国のロリ女王のもとへと走る!
そして和解し二人組の女摂政と最後の勝負!

という夢を見た。
本当にどこまで俺は無敵なんだ。

307名無しさん@避難中:2011/08/08(月) 21:08:07 ID:2TWgxEJY0
>>306
面白そう

308名無しさん@避難中:2011/10/15(土) 00:11:16 ID:nZN9Pt5.O
はー…
やっぱり振られたんかな
はっきりわからないと、気持ちの整理がつかないよ

何が悪かったんだろ
会ってたときは楽しそうだったのに

orz

309名無しさん@避難中:2011/10/15(土) 19:01:40 ID:nZN9Pt5.O
じっとしていると、そのことばかり考えて気持ちが沈んでいく

別のことをしていれば、その時は気が紛れるけど、
ふと思い出して一気に現実に引き戻されて、気持ちが寒くなる

どうしたらいいんだろう
何がいけなかったんだろう

諦めきれないなんて、未練がましいって分かってるけど…
こんなの生殺しだよ


一緒に行こうね、って言ってたのに
予定合わせるね、って言ってくれてたのに

どうして?
なにがなんだか分からないよ

連絡してみていいのかなあ…
うざがられそうで、イヤだな…

310名無しさん@避難中:2011/10/15(土) 20:34:05 ID:7rcQRmCE0
相手とのやりとりがどんなもんだったか分からないから当てずっぽうで書くけど
メールは不着事故あるよ
期限があることなら再確認しとけ

期限がないことなら返事がないのが返事と思って諦めろ
相手にトドメをさして貰うことを期待すんな
そこまでの手間をかけたいほどお前のことが好きじゃなかったんだろ
例え恋愛感情でなくても真剣に向き合ってるなら少なくとも不義理はしない
相手からみてその程度の存在だって侮られてるんじゃないか

311名無しさん@避難中:2011/10/15(土) 22:02:39 ID:c8zMJy/20
ありがとう、ごめんね
こんな「誰も見てないであろうスレ」にも見てくれてる人がいたことに感動した

>返事がないのが返事と思って諦めろ
これはホントにそうだよね
がんばって忘れるようにする 出来るのか…?

辛いね。辛いよ。
これもお話しの肥やしだったのかな? 
これでもっと人の心に訴えるお話が書けるかな? 

…そうでも思わないとやってけないよ…



片想いに悩む人の応援団に成りたい。

ガンバレ! 言い出せない人たち!!

312名無しさん@避難中:2011/10/16(日) 10:41:49 ID:KyDk648w0
万が一の可能性として、ウザいメールとかしてないだろうな?w 返事に困ったりするのとか、絨毯爆撃とか。

313名無しさん@避難中:2011/10/16(日) 16:06:00 ID:BF4cxz0k0
ああ、確かにありえそう>返事に困る
ぼかして書いてるだけマシだけど、こんなところでぐちぐち書いてるんだもんなぁ
出したメールが「楽しかったね、また行こうね」みたいな
内容のない文章だったら「楽しかったね、またねー」で終わるか
また直接合ったときにでも軽く触れることにして返信しないかもしれんなぁ

そういやメールの推敲しまくってたら挨拶だけ書いて
肝心の内容がさっぱりのままで送ってたことが自分は一回あったな
まぁ本気で相手が楽しみにしてるなら向こうから言い出してくるだろ

314名無しさん@避難中:2011/10/16(日) 17:26:49 ID:hGodrGgkO
>>312
それは大丈夫かと…
今月に入って一回しか送ってないし、
それも他の話に混ぜて軽く確認する感じでしたんだけど…

>>313
厳しいねw
でもそれが現実かな。相手してくれてありがとう

315名無しさん@避難中:2011/11/07(月) 17:25:46 ID:xTlFFE92O
創作発表板の中の数ある物語のキャラクター達は実はハルトシュラー派とクリーシェ派に分かれている。
しかし殆どのキャラクターがその事を自覚していないという……。

316名無しさん@避難中:2011/11/07(月) 18:22:56 ID:VsNvjdPs0
弟子連中やGGGなんかはハルト派で
桃花なんかの後発組ははっちゃんのイメージ

317名無しさん@避難中:2011/11/07(月) 19:43:02 ID:jNU8vK120
正直発子クリーシェは良く知らない
というか創発キャラのことをあまり知らない

318名無しさん@避難中:2011/11/07(月) 20:21:05 ID:VsNvjdPs0
(´・ω・`)ショボーン

319名無しさん@避難中:2011/11/07(月) 20:26:37 ID:yZI.Gql60
GGGの連中は作品外で語りまくってるだろw

320名無しさん@避難中:2011/11/07(月) 20:50:56 ID:VsNvjdPs0
いや交流があるという意味で。マッ缶スレの初期とか初代トナメとか

321名無しさん@避難中:2011/11/08(火) 02:19:09 ID:NU59c0OU0
GGG世代と桃花世代は最近よく絡んでるよ。桃花とハルトに至っては実は切っても切り離せない設定のつながりがあったりするし。

322名無しさん@避難中:2011/11/08(火) 04:05:01 ID:Sfgqb77w0
なんかあったっけ?

323名無しさん@避難中:2011/11/08(火) 15:50:43 ID:k1hxrv2I0
創発の館関連かな?
まあ、設定は生やす物だって忍者ハッタリ君も言ってたし、
ぶっちゃけそこら辺はあまりこだわらず、好きにしていい所だと思う。

324名無しさん@避難中:2011/11/08(火) 15:54:41 ID:HqFTt9d60
館はまずハルトが出てるしね。

325名無しさん@避難中:2011/11/08(火) 16:12:47 ID:GnY7oJPg0
ハルトシュラーが桃花を創作したっていう設定の作品も幾つか

326名無しさん@避難中:2011/11/08(火) 16:17:34 ID:wYmTv7NY0
性質は同じとまで言い切ってるのも。

327名無しさん@避難中:2011/11/13(日) 00:31:34 ID:ZcfS9dm.O
そういや週末は忙しいって言ってたな1は。
しかし、ゆっっっくりやるものだと分かっていても、人がいないとイライラするな。
俺も本スレの後半を仕上げるまで動かないけど。
つか書き手が絶対的に不足!

328名無しさん@避難中:2011/11/13(日) 15:46:25 ID:RAi74XuUO
書き手不足=飽きたら終了のお知らせ

329名無しさん@避難中:2011/11/13(日) 15:53:02 ID:ZcfS9dm.O
すでにヤバそうな気配がw

330名無しさん@避難中:2011/11/13(日) 16:04:46 ID:TAqvfs/QO
あの手の企画は話し合いより、思い付いたら即行動の方が吉とでるよね。

331 ◆wHsYL8cZCc:2011/11/28(月) 22:02:56 ID:OG3gOrGU0
 彼女がその影を三つ、その目で認め、それは手遅れであった、状況を悟った。
 もはや退路は無く、彼女は戦わざるをえない状況下に陥り、そしてその為に、魔剣を取った。もはや手遅れだったのだ。
 仮に、今この場で勝利しても、いずれ敵は数多の勢力を持って彼女に襲い来るだろう。本質的な脅威は彼女の見えぬ所にあり、それは長い闘いとなる事を意味している。しかし、まずは目の前の脅威を取り払わねばならなかった。

 彼女――無限彼方は息を殺し、そして待つ。
 敵も同様に、息を殺し、彼方に見つからぬよう細心の注意を払っているだろう。
 だが、一度見つけた敵を逃す訳にはいかなかった。
 これほどの脅威は滅多にない。まさに不倶戴天ともいえる敵。彼方が、最も恐れる相手。

 かさり、と、枯葉がこすれるような音が背後から一瞬だけ聞こえる。
 彼方は瞬時に振り返り、手にした魔剣を思い切り振りかざす。だが、

「外した!?」

 計算ミスだった。
 なまじ剣術に手練れているために、彼方の斬撃に魔剣の方がついて来れなかったのだ。
 魔剣は彼方の斬撃によって大きくしなり、その切っ先は彼方のイメージとは大分離れたところにあった。結果、予測した地点とは大きくズレた所にヒットし、空しく壁を叩いただけだった。

「あああああ!!!」

 そして、必殺の一撃から運よく逃れた影の一つは、常軌を逸した速度で、かつ一切の無駄の無い動きでもって、その場から離れていく。
 反撃は無かった。
 奴らの性質は、逃げることにある。攻撃手段を持たないのだ。

 逃げて、逃げて、逃げ延びて。
 そしていつの日か、多数の仲間と共に数の力を見せつけてくる。そんな相手だ。
 彼らは、何億年もそうしてきた。そしてこれからも。人類が彼らとの戦いを止める日はきっと来ないはずだ。
 それほどの強かさを、彼らはその小さな黒い体に内包しているのだ。

 彼方は携帯電話を手に取り、アドレス帳からある人物を選び、電話をかけた。
 一人では心が折れそうだったようで、増援を呼ぶというほどではないが、遠隔でアドバイスしてくれる人物を求めた。

「もしもし?」
『……もしもし?』
「ああ、よかった。出なかったらどうしようと思ってた!」
『どうしたの彼方さん?』

 彼方が電話をかけた相手は、ひょんな事から知りあい、気が付いたら友人になっていた、直りんという女の子だった。
 こういう場面では、彼女の精神的なタフさはこの上なく心強いと考えたらしい。

「奴が出た!」
『奴?』
「だから奴よ! 黒くてデカくて……。ああ、なんてスピードなの!?」

 彼方が電話で話している最中にも、黒い影は彼方の目の前をとてつもないスピードで駆け抜けて行った。

332 ◆wHsYL8cZCc:2011/11/28(月) 22:10:08 ID:iJn6AVJk0
 神が隠されていた。
 御霊舎(みたまや)の戸は閉じられていた。
 ケガレを見せないようにとの処置。または、自分がケガレとなるかもしれない時の処置。
 通常の神棚とは作りが違う大きな物だった。
 神職の家系で用いられる物。
 それが隠されている。それも形式に則った神封じではなかった。
 ただ乱暴に閉じただけだ。
 敵が現れた時の緊急処置。
 隠す必要はなかった。だが、つい衝動的に戸を閉めてしまったのだ、と言った感じだ。

 日が落ちかけて、赤い夕陽が差し込んで来る。一見すると普通の民家に思えた。敷地は広い。そこに民家と、道場と、社があった。
 中央の家の両脇に、小さい体育館のような道場と、いわゆる神道において神をまつる神社。
 それらが一つの敷地に集まっていた。
 赤い夕陽に照らされて、哀愁ある画を見せてくれていた。
 真ん中の民家に通されて、最初に目についたのは閉ざされた御霊舎だった。それさえなければ普通の家なのに。そう思った。
 しばらく待たされ、じっとその御霊舎を見ていた。少々広い程度の座敷で、座布団も使わずに私は正座して待っている。
 閉ざされた御霊舎。その意味はよく解っている。
 客人であるはずなのに、それどころか深い関係にある間柄だというのに、お茶も座布団も用意して貰えず、座らされすでに一時間。
 しっかりとアポイントメントを取って、予定された時刻にやってきた筈だが、結果はこれだ。
 時間になってもアポを取ったはずの人物は現れず。通された部屋にある御霊舎は隠され、そこでひたすら待たされた。意味はよく解っている。こちらから無理に面会を申し出たとは言え、あまりの仕打ち。
 歓迎されていない。それどころか、忌み嫌われている。ひしひしとそれが伝わってくる。
 事実、ここに来てから私は部屋へ通してくれたアルバイトの巫女以外には会っていない。

 私は、御霊舎が鎮座する部屋で一人、正座して待っていた。
 今日ここに来た理由は、ある種のけじめをつけるためだった。
 足がしびれている。一時間も正座して、微動だにせずに居たんだから。
 座敷には御霊舎以外にはほとんど何もなかった。
 おそらくは天袋に様々なものが押し込められているだろう。入りきらない物は丁寧に箱に納められ、御霊舎の脇に置かれている。
 彼方には解る。そこは客を招く部屋ではない。そこは、神を祀る部屋でもない。

 呪術を執り行う部屋。

 外法を使う部屋。

 現代では失われたはずの秘法を再現するための部屋。

 その一族は、ずっとそれを行ってきたのだ。
 ずっとずっと。千年以上だ。
 私が今いるのは、無限一族分家の一つ。無限史明の自宅。
 姉さんが、無限桃花が育った家。
 私は史明さんを訪ね、京都までやって来たのだ。
 その史明さんが私をどう思っているか、それは今のところの扱いで概ね解ってしまう。いや、最初から解ってはいたのだけれど。

333 ◆wHsYL8cZCc:2011/11/28(月) 22:20:21 ID:OG3gOrGU0
 帰宅して玄関を開けて、無造作に靴を放り投げて、歩き出す前に靴下まで脱いで、裸足で冷たい廊下の上に立った。
 外は雨が降っていたので、履いてた靴は陰干しするべく乾燥剤を入れた下駄箱に押し込んで、濡れた傘は下駄箱の影に立てかけておく。
 時計を見ると、夜の八時になろうとしている頃だった。早く帰ったわけでもないし、遅くもない。彼女にとってはそんな時間帯だ。
 部屋着に着替えるより先に冷蔵庫を開けて、ペットボトルに入った冷たいジュースをラッパ飲みして、また冷蔵庫にしまう。
 ここまでやって、彼女――は無限彼方はようやく帰宅した、と自分で思う。玄関を開けてからここまで、ルーティンワークとして一つにまとまっている。

 そして、冷蔵庫の影に隠れている小汚いソフトボールを見つけて、彼方は呆れ顔でため息をついた。

「……また部屋ん中うろうろして。落ち着いてられないのかしら」

 彼方はそれを持って、居間に移動して、テーブルの上にそれをそっと置いた。
 それに一瞥くれてから、さっさと上下スウェットの部屋着に着替え始める。着替えながらも、ちらちらとそれに視線を送るが、それはぴくりとも動かずに、ただのソフトボールのままだった。
 着替えて、服を丁寧にクローゼットにしまって、テーブルの前に座る。改めてコップに注いだジュースを飲みながら、彼方はそのソフトボールを指でちょいちょい突いてみる。

「おい、いい加減馴れろよ。一人の時は動き回るクセに。それとも腹減ってスネてんの?」

 ソフトボールは突かれるまま、テーブルの上をころころと転がるだけだった。

「にしても汚いボールね……」

 と、そのソフトボールを見て言う。それは定期的に彼方が洗ってはいたが、なぜかすぐに汚れてしまうのだ。それも、泥が染みついたならまだしも、新陳代謝で垢が出てくるような、脂ぎった汚れ。後でまた洗おう、と彼方は思った。こんな物が自分の居ない間に自分の部屋をうろついているのは、どうにも気持ちのいい事ではなかった。

 このボールは、少し前に彼方が海に出かけた時に拾って来た物だ。
 寄生という化け物を二匹ほど始末して、その時にお世話になった海の家の爆乳お姉さんに別れを告げ、彼方が一人で海岸沿いを歩いていた時、コレが浜辺にぷかぷか浮いているのを発見した。
 彼方は脚を止めて、じっと見つめた。なぜならば、ほんの微かに、ホントにちょっとだけ、寄生の力を感じたからだ。

 彼方が近づくと、ぷかぷか浮かんだソフトボールからは、先端が赤く輝く触覚らしきものが数本伸びて、もぞぞと像みたいな、芋虫みたいな脚みたいなのが伸びて、げっ歯類の前歯のような歯が上下左右斜めから生えた、身体の半分ほどを占める大きな口を開いた。
 そして、横に浮かんでた木片を触覚で掴んで、ビート版代わりにして、ばちゃばちゃと泳いで逃亡を図った。

 しかし、波に押されて前に進むどころか押し流されていた。
 それでもめげずに一生懸命逃げようと、このソフトボールの寄生は水面を短い脚で叩いている。
 数分ほど彼方はそれを観察し、浜辺の波に負けて引いては戻るそれをじっと見ていた。 
 引いては戻り、引いては戻り。ぱちゃぱちゃと水飛沫をあげながら必死こいて逃げようとする謎の生物と、突っ立ったままじっとそれを見ている彼方。
 差し込む夕陽と、ざーざーと静かに奏でる波打ち際。彼方自身、なんとシュールな光景だろうか、と思った。

334 ◆wHsYL8cZCc:2011/11/28(月) 22:20:54 ID:OG3gOrGU0
ふむ。やっぱり人称変えてもあんまり変わらないな。

335名無しさん@避難中:2011/12/29(木) 01:53:09 ID:DxYMRTwgC
age

336名無しさん@避難中:2012/02/21(火) 16:34:45 ID:8A4MgTyc0
個人的に眠い

337名無しさん@避難中:2012/02/25(土) 20:37:33 ID:jPMuCflw0
ぬるぽ

338名無しさん@避難中:2012/02/25(土) 20:46:53 ID:O/uRtOgo0
ガッ

339名無しさん@避難中:2012/03/23(金) 04:08:00 ID:p.kcw2jI0
アレちょいネタ成分大杉じゃね? あんまアレで魅力を伝えられるのかと個人的に

340名無しさん@避難中:2012/03/27(火) 13:08:44 ID:HVrspZjQ0
ニャー

341名無しさん@避難中:2012/06/19(火) 11:10:35 ID:7KL06dns0
個人的に腹減った

342名無しさん@避難中:2012/06/19(火) 11:23:35 ID:Yh9Fi/AE0
では味噌ラーメンだ
白米憑きだぞ?

343名無しさん@避難中:2012/07/02(月) 18:40:47 ID:vTAoheS60
個人的にポテチ食いてえ

344名無しさん@避難中:2012/07/05(木) 23:33:33 ID:kiJiwKjU0
駄目人間は広告を見て、クーラーを数十回払いで買う
客を信じているという売人から無担保で買ったクーラーを使いながら、彼は代金を払わない
督促を突っぱねる駄目人間に、売人はしょうがない、と男に薬品をかがせた
事故を装って彼を殺し、保険金を得るため

345名無しさん@避難中:2012/07/06(金) 21:17:08 ID:joc63YZ20
本板のモブ少女スレの者だけど、またちょっとこの場所をお借りしてもいいかな?
結構なレス数(最低でも20ぐらい)を書き込んでしまうと思うので、また事前に聞いておこうと思って

346名無しさん@避難中:2012/07/06(金) 21:35:58 ID:CqDp6VYQ0
どぞー、その為の個人スレですよ

347名無しさん@避難中:2012/07/06(金) 22:01:31 ID:joc63YZ20
ありがてぇ!そしたら明日の夜にお借りしますねー

348名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:03:46 ID:8KpNPSX60
てなわけで「モブ少女-3-」でお借りします
早速投下・・・と行きたい所ですが、一つだけ前回の修正点だけ
本板>>231ですが、あれはNGとして無かった事にさせて下さい
話しの流れで似たような部分は出てきますが、あくまで本板>>230の続きからと言う点だけ了解いただければ・・・
んでは、投下します

349名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:04:23 ID:8KpNPSX60
ー京都駅ー PM 1:05

友人「・・・」ソワソワ
女A「あんたねぇ、少しは落ち着きなさいよ」
友人「う、だって・・・」
女A「心配なのは分かるけど、気にしたって仕方ないでしょ」
友人「そうは言うけどさぁ・・・やっぱ心配だもん」ソワソワ
女A「大丈夫よ」
友人「そうかなぁ・・・」
男B「お?何の話しだ?」
女A「少女の事よ」
男B「あー、派手にぶっ倒れたもんなぁ」
女A「まぁ、元々頑丈そうには見えなかったけど」
男B「にしたって、あそこまで病弱だとは・・・」
友人「いやぁ、昔はそうでもなかった、はずなんだけど・・・」
少年「・・・」ムッ
女A「まぁ軽い貧血だっていってたから、大した事は無いでしょ」
友人「で、でも、この間もそんな事言って、ずっと眠ってたじゃんかぁ・・・」
女A「たまたまでしょ」
友人「そ、そんな都合良くは考えられないんだけど」
女A「あーもう!さっきからうじうじと男らしくないわね!」
友人「いや私女だし」
女A「ともかく、今の私達ができることなんて何も無いでしょ」
男B「まぁせいぜい土産話を作っておく位だな」
友人「う、うん・・・」
女A「ったく、あんたがそんなんじゃ調子狂うじゃない」
友人「ご、ごめん」
女A「いやだから」
男A「おーい、わかったぞー」タッタッタッ
女A「っと、おかえり」
男A「どうも今来てる3番のバスに乗ればいいっぽいな」
女A「そ、じゃあいきましょ」

女D「あっれ〜、男Aじゃ〜ん?」

女A(うわ、なんか嫌な声が・・・)

350名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:10:47 ID:8KpNPSX60
男A「ん?おー、女Dか」
男B「よっすー」
女D「よっすー、何してんの?」
男A「これからバス乗って移動する所だ」
女D「そうなの?どれどれ?」
男A「あそこの3番のやつだよ、終点まで行く予定だ」
女D「へー、そうなんだ〜、ねぇ、それ私も一緒に」
女A「駄目よ」
女D「っと、いたんだ」
女A「・・・」
女D「やだー、何そんな怖い顔してるの?」
女A「よく言うわ、昨日あんだけ気味悪い事しといて」
女D「何の事?」
女A「あんたねぇ・・・」
少年「他の奴はどうした」
女D「あ、少年く〜ん!今一人なんだよね〜」
男B「ん?班で行動しなきゃいけないんじゃなかったっけか?」
女D「なんかぁ、はぐれちゃってさぁ」
女A(絶対嘘だこいつ)
女D(まぁ嘘だけど)
男B「おいおい迷子か?」
女D「あー、そうかもねー」
男A「大丈夫なのか?」
女D「大丈夫だよ、そんな子供じゃあるまいしwww」
男A「ん、まぁそっか、連絡すりゃいい話しだもんな」
女D「そそ、ねぇ、それより私もあんた達についていってm」
女A「駄目って言ったでしょ、班と合流して観光しなさい」
女D「え〜、いいじゃん別に」
女A「駄目よ」
女D「ぶ〜、けち、まぁいいや」
男A「バス探してるんなら、あそこの窓口行けば案内してくれるぜ」
女D「はいは〜い」

351名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:17:39 ID:8KpNPSX60
女A「それじゃそういうことで、行きましょ」グイッ
男A「あ、お、おい、引っ張んなよ!」ズルズル
女A「うるさい馬鹿っ!」グイグイ
男A「なんだそりゃあ!?」ズルズル
女A「ほら、友人達も早く!」
友人「え、あぁ、うん」タタタッ
男B「ちょ、待てよ!」タタタッ
女D「はいはーい、いってらっしゃーい」
少年「・・・」
女D「あれ?ってか少女ちゃんは?」
少年「具合が悪くて、今は旅館にいる」
女D「へぇ、そうなんだ・・・」
少年「・・・」
女D「じゃあさ、今少年君って、『空いてる』って事だよね?」
少年「・・・」ムッ
女D「ねぇ、普通に回っても面白くないし、よかったらこれから二人で」
女A「少年君っ!」
少年「・・・すまんな」スタスタ
女D「あ〜あ・・・」
女D「・・・ま、いっか」
女D(正直、もうそんなに興味ないし)

352名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:25:44 ID:8KpNPSX60
女A(あいつ、絶対なんか企んでる)
女A(少女に対してか、少年君に対してか)
女A(それとも、別の何かに対してか・・・)
女A(とにかく、あいつにはあまり関わらないでおこう)
友人「・・・」
女A「・・・ちょっと、あんたがそんなんで、どうすんのよ」
友人「え?」
女A「あいつが怪しいって言ってきたのはあんたなのよ」
女A「その本人が参っちゃっててどうするの、ってこと」
友人「・・・はは、そだね」
女A「しっかりしなさい」
友人「・・・うん、ごめん、今は考えるのはやめにする」
女A「それでよし!」
男A「・・・あ」
男B「ん?どした?」
男A「3番じゃなくて、2番だった」
女A「はぁ?もー!あんたもしっかりしろー!」バシーン
男A「いったぁ!?」
友人「・・・」
友人(そうだ、今あたしがあれこれ考えてたって、仕方ない)
友人(少女の分まで、ちゃんと楽しんであげなくちゃ・・・)

353名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:28:43 ID:8KpNPSX60
ー京都駅ー PM 1:12

ワイワイ

ガヤガヤ

少女(駅に着いたはいいけど、公衆電話が中々見当たらないなぁ・・・)
少女(うぅ、やっぱり取りに戻った方が良かったかな・・・)
少女(う、ううん、あそこには戻りたくない、あそこに戻るなら帰った方がましだよ!)
少女(・・・それにしても)
少女「人、多いなぁ・・・」キョロキョロ

女D「・・・」スタスタ
女D(はぁ〜、タイクツ)
女D(男A達もすぐ行っちゃったし、行くとこも特にないし)
女D(班の奴らからトイレのふりして抜けてきたのは、後悔してないけどさ)
女D(せっかくの自由時間なんだから、もっと遊ばなきゃね〜)
女D「・・・ん?」

少女「・・・」キョロキョロ

女D(・・・あれって、少女だよね?)
女D(あんな所で何してるわけ?何か探してるみたいだけど・・・)
女D(つか今旅館にいるんじゃないの?具合が何たらはどうしたのよ)
女D(・・・暇だし、からっかってみようかな)

354名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:30:13 ID:8KpNPSX60
少女「・・・」キョロキョロ
女D「なにしてるの?少女ちゃん」
少女「へ・・・?」クルッ
女D「こんにちわ」
少女「あっ・・・」ビクッ
女D「具合が悪いって聞いたけど、もう大丈夫なの?」
少女「あ、えっと・・・」オドオド
女D「もしかして・・・あいつら探してるとか?」
少女「ぇっ!?ど、どうして?」
女D「いや、ちょうど旅館から開放されてきた所かなって」
少女「あ、う、うん・・・」
女D「あと、明らかに挙動不審だし」
少女「あ、あぅ・・・」
女D「まぁ、なんでもいいけどさ、こんな所に一人でいるのは危ないと思うな」
少女「う・・・」シュン
女D「・・・」
女D(あれ、こんなにびくびくしてる子だっけ)
女D(昨日話してた時は、まぁ多少キョドってたけど、普通だったよね)
少女「あ、あの」
女D「ん?」
少女「男Aくん達が今どこにいるか、知ってたりしない、かな・・・?」
女D「・・・」
女D(さて、どうしようかな)
女D(わざと違うバスに案内してあげるのも、面白いよね)
女D(うん、それ面白そう)
女D「・・・知ってるよ」ニヤリ
少女「え?」

355名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:34:30 ID:8KpNPSX60
女D「つっても、正確にじゃないけど」
少女「ほ、ほんとに!?」
女D「はぁ、つかマジで迷子なわけ」
少女「は、恥ずかしながら///」
女D「ふ〜ん」
少女「・・・」モジモジ
女D(ちょっと、大丈夫なのこの子)
女D(具合が悪いって、頭の具合とかじゃないの)
女D「あれ」
少女「へ?」
女D「あのバスに乗ってったみたいだよ」
少女「あのバスって・・・2番のところ?」
女D「うん、実はあいつらに会ってさ」
少女「え!?」
女D「ついさっきだから、今からなら追いつけるんじゃない?」
少女「わ、わかった、行ってみるね!」テッテッテッ
女D「はいはい、気をつけて」ヒラヒラ
少女「あ・・・」ピタッ
女D「ん?」
少女「・・・」テッテッテッ
女D「・・・?」
少女「あ、あの、その・・・」
女D「なに?」
少女「ご、ごめんなさいっ!」ペコリッ
女D「・・・はぁ?」

356名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:43:51 ID:8KpNPSX60
少女「あの、私、勝手に勘違いしてて・・・」
女D「いや、なにを?」
少女「女Dちゃんって、凄く自信満々だし、堂々としてて・・・」
少女「ちょ、ちょっと、怖いな、って思っちゃってて・・・」
女D「・・・」
少女「で、でも、そうじゃなかった」
少女「ほんとは、こんなに優しいんだね」
女D「いや、これぐらいでそんな評価爆アゲされても」
少女「ありがとう」ニコッ
女D「・・・」
少女「あ、え、えっとそれじゃあっ!///」テッテッテッ
女D「・・・」
女D「なにあいつ、意味分かんない」
女D「・・・」
女D「ちょっと!」タッタッタッ
少女「へ?」クルッ
女D「そっちじゃなくて、あっち」
少女「あっちって・・・3番のとこ?」
女D「そ、さっき言ったじゃん」
少女「あ、ご、ごめん、そうだっけ・・・」
女D「それにあんた、降りる駅とか分かるわけ?」
少女「・・・あ、そういえば、そうだね」
女D「終点まで行くって言ってたから、今から行けば追いつくんじゃないの」
少女「そ、そっか」
女D「早く行けば」
少女「う、うん、何から何までありがとう!」テッテッテッ
女D「・・・」
女D「・・・」ポリポリ

357名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:50:34 ID:8KpNPSX60
少女「えっと、3番・・・あった!」
少女「○○行き・・・これで最後まで乗っていけばいいんだよね」
少女(・・・それにしても)
少女(女Dちゃんって、あんなに優しい人だったんだ)

『・・・わるいね、ありがとっ!』

『じゃあ私が好きになってもいいってことだよね?』

『行動あるのみ!どうなるか分からないっ!』

『できたら席交換して欲しいんだ・・・』

少女(あー、私の馬鹿・・・!)
少女(一人で勝手に怖がって、恥ずかしい・・・)
少女(こんなんだから、少年君だって・・・)
少女(・・・あれ?)
少女(そもそも、どうして女Dちゃんの事を考える時は)
少女(少年君も一緒に、考えちゃうんだろ)
少女(全然、関係ないはずなんだけどな・・・)
少女「うーん・・・」

《えー、次はー、○○ー、○○ー、っです》

358名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 21:58:20 ID:8KpNPSX60
少女(それにしても、追っかけるのに必死で降りる駅とか考えてなかったなんて・・・)
少女(もー、なんか、本当に馬鹿だなぁ、私・・・)
少女(女Dちゃんがいて本当に良かったなぁ)

ブロロロロロ…

《えー、次はー、□□ー、□□ー、っです》

少女「・・・」

プシュー…

《えー、次はー、△△ー、△△ー、っです》

少女「あ、あの、どうぞ」スクッ

ガタガタ…

《えー、次はー、××ー、××ー、っです》

少女「・・・」ボーッ

少女(・・・もしも)
少女(もしも、神様の話しが本当なら)
少女(今、私が見ているこの景色も)
少女(このバスに乗っている色んな人たちも)
少女(他のものも、男A君に関係ないもの、全部・・・)

『この世界を形作る、パズルのピースでしかありません』

少女(・・・)
少女(やっぱりそんなの・・・)
少女「信じ、られない・・・」ウトウト
少女「・・・」
少女「・・・」スーッ

プシュー…

ブロロロロロ…

エー、ツギハー…

359名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 22:03:30 ID:8KpNPSX60
??『じゅけん?』
??『うん』
??『  受験するの?』
??『うん』
??『どうして?』
??『えっと、お母さんがそうしなさい、って』
??『ふーん』
??『  ちゃんは?』
??『あたしは、ふつうに・・・』
??『うん』
??『・・・でもさ』
??「うん?」
??『  が受験するってことは』
??『うん』
??『一緒の中学には、行けないって事だよね?』
??『え?』
??『だって、そうでしょ?』
??『・・・そ、そっか』
??『もー、ちゃんと考えてるの?』
??『う、ごめん』
??『またすぐ謝るー』
??『ご、ごめん』
??『ほらー』
??『あ、う・・・///』
??『・・・』
??『・・・』
??『決めたっ!』
??『へ?』
??『私も受験する!』
??『え、えぇ?そんな簡単に・・・』
??『できるよ!あたしだもん!』
??『う、うーん・・・』
??『確かに、勉強はあまり好きじゃないけどさ』
??『な、なら・・・』
??『でも、あんたと同じ学校に行けない事の方が嫌!』
??『・・・  ちゃん・・・』
??『ね、あたしも頑張るからさ、一緒の所受けようよ!』
??『・・・大丈夫?』
??『まかせないさいっ!』
??『・・・』
??『・・・』
??『・・・くすっ』
??『へへっ』
??『うん、うんっ!』
??『よーし!そうと決まれば早速勉強だー!』
??『へ?』
??『あたしんち来てよ、んで勉強教えて!』
??『え、えぇ?私が?』
??『ほらほら早く!』
??『あ、ちょ、ちょっと、引っ張らないで〜!』

360名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 22:11:15 ID:8KpNPSX60
少女「・・・!」ハッ

プシュー…

ブロロロロロ…

少女「・・・」
少女「また、昔の夢・・・」

少女(ぼやけた視界の奥に見える、いつかの記憶)
少女(ここ最近、こういう夢を見る事が多くなった)
少女(考えすぎてるだけ、かもしれないけれど・・・)
少女(これも、神様の仕業、とかなのかな・・・)

少女「・・・あ」
少女(というか、今どこなんだろう?)
少女(そんなに眠ってはいないはず・・・)

《えー、次はー、◇◇ー、◇◇ー、終点っです》

少女「・・・へ?」

少女(しゅ、終点!?)
少女(そんな眠ってたんだ・・・い、今何時だろう?)
少女(って、携帯がないから分からない・・・)
少女(でも、そんなには時間経ってないはず・・・だよね)
少女(とりあえず降りたら、皆を捜そう)

361名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 22:19:16 ID:8KpNPSX60
終点 -見知らぬ寺-

少女「・・・」キョロキョロ

少女「・・・」ポツーン

少女「はぁ・・・」

少女(うーん、まいったなぁ)
少女(どこなんだろうここ、随分山奥みたいだけど)
少女(皆どころか、人っ子一人いないし、公衆電話もないし・・・)
少女(うぅ、こんなことなら、大人しく旅館に・・・)
少女(あ、い、いや、それは駄目だって)
少女(でも、本当にどうしよう)
少女(とりあえず、奥に見える神社に行ってみようかな)
少女(お寺なんだから、最悪住職さんぐらいは居るよね)
少女(・・・でも、なんだか遠目に見る限り、凄く不気味なんだけど)
少女(なんというか、ホラー映画に出てくる寂れた寺というか、そんな感じの・・・)

バサバサッ!!!

少女「っひ!」ビクッ

カァーカァー

少女「か、からす・・・」ヘナヘナ

少女(うぅ、駄目だ、薄暗い所に一人でいると、余計不安になってくる・・・)
少女(今日は晴れているのがせめてもの救いだね・・・)
少女(でも、もうすぐ日が暮れるだろうし、急がないと)

少女「よ、よし!」テトテト

362名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 22:28:09 ID:8KpNPSX60
少女(い、いや、あったんだよ、そう、きっと最初から、うん、うん)
少女(へ、へんに怖がるから、いけないんだよ)
少女(どうせ、このお寺の説明とかそんな感じのが書かれて)

【慰霊碑】

少女「・・・」ゾワゾワ

少女「・・・」

少女「・・・」グスッ

少女(も、もうやだ・・・)
少女(ど、どうしてこんな物がこんな所に・・・)

阿久津長介
加藤貞治
井上洋子
 :
 :

少女(戦争か何かで、無くなった人達の名前、かな・・・)
少女(・・・)
少女(・・・随分と、多くの人が、亡くなったんだ)

斉藤信介
吉岡凛
立花恵
 :
 :

少女(・・・)
少女(あれ?)
少女(なにか、おかしいような・・・)
少女(・・・?)
少女(なんだろう、凄く・・・)
少女(凄く、懐かしい感じが・・・)

_;」/:。、@「ー^

少女「っ・・・!?」フラッ

363名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 22:41:44 ID:8KpNPSX60
少女(ま、またこれ!?)

少女「くぅ・・・」ジンジン

少女(だ、大丈夫、今回はそんなに強くない・・・)
少女(なんだろう、今、石碑に触れようとしたら、おこったような・・・)

少女「・・・」
少女「・・・」ソーッ
/:。、@
少女「っ!」バッ
少女(や、やっぱり・・・!)
少女(なにか、関係あるのかな・・・)
少女(もしかして、何に反応しているかが分かれば)
少女(この正体不明の症状も、少しは改善される、のかな・・・?)
少女(・・・)
少女(だ、だめだ、その為にわざわざ手を伸ばす気に派なれないや)
少女(それに、どちらにしろこの石碑には、あまり近づかない方が良さそう)
少女(そうなると、門に近づかない方が良いって事だから・・・)

少女「・・・あれ、もしかして、出られない?」

少女「・・・」

少女「い、いや、ここで待つのも、一つの手だよね、うん」

少女「・・・」

少女「・・・はぁ」ガックシ

少女(なんだか、本格的にめげてきたなー・・・)
少女(賽銭箱前の階段で、少し休んでいよう・・・)

364名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 22:52:26 ID:8KpNPSX60
-喫茶店 音の集-

男A「はぁー、疲れた・・・」
男B「もう、歩けん・・・」
女A「だっらしないわね」
男A「いや、さすがに五キロはしんどいぜ」
友人「でも、綺麗な町並みだったね」
女A「そうね、正直期待してなかったけど、ゆっくりと散歩するには丁度良かったわね」
少年「・・・」ムッ
男B「はぁ〜、しかし少年は流石だな」
少年「ん?」
男B「この残暑の中、長距離歩いたってのに、汗一つ掻いてないぜ」
少年「あぁ・・・まぁ、慣れてるからな」
男B「んー、俺も朝走ろうかなぁ」
男A「どうせ続かないんだ、やめとけ」
男B「し、失礼な!これでも決めた事はやり通す主義なんだぜ」
男A「お前そう言ってこの間もダンベル始めたとか言ってたじゃねぇか」
男B「あ、あぁ〜、そうだっけか?」
友人「して、そのダンベルは今どこに?」
男B「あ、はは、えっと」
女A「あたしの所よ」
男A「ほら見ろ」
男B「やや、違うんだって!それはこいつが『使わないんなら頂戴』とか言うから貸してるだけであって」
男A「つまり使ってねぇんじゃねぇか」
男B「ま、まぁ、そうともいうな」
男A「しん○すけかお前は」
友人「・・・ん?なんでまた女Aがダンベルなんか欲しがるんだい?」
女A「う」ギクッ
友人「・・・ははぁん」
女A「な、なによ・・・いいでしょ別に」
友人「大丈夫、大丈夫、まだまだ引き締まってる方だって」ポンポン
女A「う、うるさいわね!そんなんじゃないわよ!///」
友人「あんたに比べたら、あたしなんかぽっちゃりん子ちゃんだからさ、気にするな」
女A「べ、別にスタイル気にしてダイエットとかじゃないわよ!」
男A「ふ〜ん、お前も一応そう言う事気にするんだな」
女A「い、一応って何よ!ってだからそういうのじゃ」
男A「別にそんな太ってるようには見えn」
女A「ふんっ」ゴッ
男A「ごはっ!?」バタリ
女A「あんた、これ以上言ったら殴るわよ」ゴゴゴゴ…
男B「な、殴ってから言うなよ・・・」
友人「はははwww」ゲラゲラ

365名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 22:54:29 ID:8KpNPSX60
友人「んでそれがさー!また面白くってwww」
男B「へぇ〜?今度見てみっかな」
友人「まじおすすめだって!その日一日の活動に支障をきたす位笑うよwww」
男B「え、じゃあやめよ」
友人「なんでさー!?」
男A「ははっwww」
女A「・・・」
女A(どうやら、元の調子に戻ったみたいね)
女A(だからって弄られるのは簡便だけど・・・)
女A(まぁ、ずっと俯いていられるよりはマシか)

テュルルル、テュルルル

友人「ん?ちょい失礼」カチャ
友人「ってあれ、社会からだ」
男B「あ?まだ集合時間じゃねぇよな?」
友人「んー、とりあえず出てみる」ピッ
友人「はいはーい、友人ちゃんですよー」
電話『――――!』
友人「なにさ、そんな慌てて」
電話『――――?』
友人「ん?いや、いないけど?」
友人「つうか、まだ旅館じゃないの?」
電話『――――』
友人「どしたのさ、何かあった?」
電話『……――』
友人「え?う、うん・・・」

電話『――――』

友人「・・・え?」

366名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 22:56:11 ID:8KpNPSX60
電話『――――』
友人「ちょ、どういうこと・・・?」ワナワナ
男A「なんだなんだ?」
女A「さ、さぁ?」
少年「・・・」ムッ
電話『――――』
友人「だ、だってあの子、携帯持ってるはずじゃ・・・」
電話『――――』
友人「い、いやいや、保健先生に預けたあとは、何も知らなくて・・・」
電話『――――』
友人「わ、分かった、とりあえずこっちでも探してみる」
電話『――――』
友人「そっちも何か分かったらすぐ連絡してよ、この電話で良いからさ」
電話『――――』
友人「ん、それじゃあ・・・」ピッ
男A「なんだったんだ?」
男B「やけに切迫してるような感じだったな?」
友人「・・・」
女A「どうしたのよ、何かトラブル?」
友人「・・・」
女A「ちょっと、何か言」
友人「まって、落ち着かせて・・・」ガタガタ
女A「ちょ、あ、あんた・・・」
少年「あいつに何かあったのか」
友人「!」
少年「・・・あったんだな」ムッ
男A「お、おいおい、何なんだよ?」
女A「あいつ?」
女A(少年くんがあいつって呼ぶのって・・・)
女A「・・・まさか」
友人「・・・」

友人「少女が、行方不明、だって・・・」

男B「!」
男A「おいおい・・・」

367名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 23:01:42 ID:8KpNPSX60
男A「じゃあ、俺は京都駅から順番に回ってみる」
女A「あたしも行くわ、あんただけじゃ不安だし」
男A「お前、いくら俺でもこんな時にふざけたりは」
女A「分かってるわよ、でも極力まとまって行動した方が良い」
男A「・・・」
女A「それに、少年くんはともかく、あたしらを一人にする気?」
男B「だな、こんな夕暮れ時に女子が一人でいるのは危険すぎる」
男A「分かった、それじゃあ女Aは俺と一緒に、男Bと友人は旅館に戻って現状把握、少年はここら一帯だな」
友人「あ、あたしは大丈夫、一人で別の所探す」
男B「駄目だ」
友人「な、なんでさ!」
男B「聞いてなかったのかお前、俺たちまで迷子になったらどうする」
友人「それなら、私は少年君t」
男B「いいからこい」ガシッ
友人「あ、ちょ、ちょっと!」ズリズリ
女A「頼んだわよー!」
男B「おーう!」

女A「・・・強がっちゃって」
男A「友人があんなに取り乱してる所、初めて見たぜ」
女A「その前からずっと心配してたからね、気が気じゃないでしょ」
少年「・・・急ごう、日が暮れる」
男A「そうだな、見つけたらまずは社会に電話、そのあと俺らな」
少年「分かった」タスタス
女A「私達も行きましょう」
男A「おう」

女A(・・・)

『ど、どうしよう、どうしよう、あの子に、な、何かあったら・・・』

女A(何が、元の調子に、よ)
女A(・・・ばか)

368名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 23:13:41 ID:8KpNPSX60
ってうぉぉぉぉ!抜かしてるぅ!!
>>361の後にはこれです、さーせん・・・



-見知らぬ寺 境内-

シーン…

少女(やっぱり、人気がない)
少女(観光客の一人でもいるかと、思ったんだけどなぁ・・・)
少女(よ、よし、ここは勇気を出して・・・)

少女「あ、あのー?」ビクビク

シーン…

少女「す、すみませーん」

シーン…

少女「ど、どなたか、いらっしゃいません・・・かぁ・・・」

シーン…

少女「・・・うぅ」

少女(も、もういやだ、怖い・・・)
少女(どうして携帯置いてきちゃったんだろう・・・)
少女(し、仕方ない、諦めて山を下りよう)

テトテト…

少女(・・・あれ?)
少女(なんだろう、これ、石碑?)
少女(こ、こんなの、入口にあったっけ・・・?)
少女(・・・)

369名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 23:14:53 ID:8KpNPSX60
再び>>367の続きから



少女「・・・」ポツーン

カァーカァー

ザワザワ

少女「・・・」

少女(どれぐらい、時間経ったのかな)
少女(持ってない時は特に感じてなかったけど)
少女(携帯電話がないと、不便なんだなぁ・・・)

少女(すっかり、薄暗くなってきちゃった)
少女(降りようかな、どうしようかな・・・)
少女(でも、迷子になった時はその場所を動いちゃ駄目だって、言うよね)
少女(それに、あの石碑にはなるべく近づかないって決めたし・・・)
少女(うぅ、入ってくる時は平気だったのに、なんで門の前なんかにあるんだろう・・・)
少女(けど、ここにいたって、誰も来ないだろうし・・・)

少女(・・・)
少女(私、なんて馬鹿なんだろう)
少女(きっと皆、心配してるよね)
少女(迷惑、かけてるよね)
少女(・・・それとも)

少女(誰も、気に留めてないかな・・・)
少女(だって、私は『その他大勢』だし)
少女(単なる、パズルのピースだし)
少女(このまま、きっと・・・)

少女(・・・忘れ、られる?)
少女(あの、遊園地の人みたいに)
少女(保健先生みたいに)
少女(そこに建つ、慰霊碑の人達みたいに・・・)

少女「いやだ、なぁ・・・」

370名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 23:24:21 ID:8KpNPSX60
カァーカァー

バサバサ

少女「・・・」

少女(ここを出よう)
少女(じっとしていたって、仕方ない)
少女(石碑も至近距離まで近づかなければ、フラフラしないだろうし)
少女(外に出たらもっと迷子になるかもしれないけれど、人に会えれば大丈夫)
少女(携帯でも借りて、学校に連絡するしかない)

少女「・・・よしっ」スクッ

トテトテ

トテトテ

ゴツンッ

少女「あぅっ!?」ドサッ
少女「いったた・・・な、なに?」
少女(なんか、壁みたいなものに、あたったような・・・)

少女「・・・ははっ」

少女(ま、まさか、そんな、ね・・・)
少女(見えない壁があるわけでもないし)スクッ

スタスタ

ゴツンッ

少女「っ!」
少女「・・・え?」

ペタペタ

少女「そ、そのまさか・・・?」
少女(門の所に見えない壁が・・・?)
少女(そ、そんな、そんな、さっきまでは無かったのに・・・!)

コンコン

少女「・・・」
少女(こ、こんなのって、あり・・・?)

371名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 23:31:44 ID:8KpNPSX60
少女(な、なんで?どうして?)
少女(漫画でもあるまいし、そんな不思議な事があるわけ・・・)

『彼女にはちょっとだけ『勘違い』してもらいます』

少女「・・・」
少女(いや、ありえる)
少女(私は知っているじゃない、その最たるモノを・・・)
少女(神様が居て、人が簡単に忘れ去られて、記憶も改ざんされる)
少女(そんな世界に、何が起こっても・・・)

サラサラ…

少女「・・・?」
少女(あれ?音が・・・)
少女(何の音だろう、後ろから聞こえているような・・・)クルッ

サラサラ……

少女「!!」
少女(じ、神社が、砂になっていく・・・?)
少女(い、いや、神社だけじゃない、周りの木々や、地面、空気まで)
少女(『そこにあるもの』が、消されていっている・・・!)
少女(まるで、消しゴムで絵を消していくような、そんな感じで・・・)

サラサラサラ……

少女「・・・」
少女(それに、なんだか・・・)

サラサラサラサラ……

少女(なんだか・・・)

サラサラサラサラサラ……

少女(どんどん、こっちに近づいてきている、ような)

ザラザラサラザラサラ……

少女「っ・・・!」ゾッ
少女「だ、誰かっ!誰かいませんか!?」ゴンゴンッ
少女「お願いっ!誰かっ・・・!誰かぁっ!!」ゴンゴンッ

372名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 23:37:16 ID:8KpNPSX60
少年「・・・」ムッ

少年(ひとまず俺たちの回った所には居なかった)
少年(行き違いかもしれないが、あいつは考えも無しに、ふらふらとする様な奴とは思えない)
少年(ましてや携帯電話も持たず、誰にも行き先を言わず、勝手に居なくなるなんて)
少年(そもそもがおかしい・・・いや、今はそんなことどうでもいい)
少年(ともかく、あいつの興味がうつりそうな所を回ってみるしか・・・)

??「そこの少年、少し宜しいでしょうか?」

少年「・・・」ムッ

??「あぁ、そんな睨まないで下さい、怪しい者ではありません」
少年「・・・いや、十分怪しいんですが」
??「えぇ!?どこらへんがでしょうか?」
少年(ジャージにサングラス姿の男を、怪しむなと言う方が無理な話だ)
少年「なにか、俺に用ですか」
??「えぇ、ちょっとお困りのあなたに人生のアドバイスを」
少年「間に合ってます、それでは」スタスタ
??「あぁ!うそうそうそ!ちょっと待って下さい!」ダバダバ
少年「すみません、急いでいるので」スタスタ
??「そんな事言わずに、お時間取らせませんからっ!」ダバダバ
少年「いえ、すみません」スタスタ

??「しょ、少女さんの居場所を知ってると言ってもですか!」

少年「・・・!」ピタツ
??「おっと、やっと止まってくれましたか・・・」

373名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 23:43:30 ID:8KpNPSX60
少年「・・・お前、何者だ」
??「うぉぉ、その台詞を吐かれたのは流石に初めてです、いいですねぇ、実にいい!」
少年「・・・」ムッ
??「あぁもう冗談ですよ冗談、まったく、ユーモアに欠ける所はあっちもこっちも変わりませんね・・・」
少年「・・・」ムッ
??「いえいえ、私が少女さんを誘拐した犯人だとか、そう言うわけではないです」
少年「・・・」ムッ
??「はは、やだなぁ、そんな褒めないで下さいよ」
少年「・・・」ムッ
??「まぁ今は私が何者かなんでどうでも良いでしょう、ね?」
少年「・・・」ムッ
??「少女さんは今、○○寺という所に居ますよ」
少年「・・・」
??「ここからですと、少し先を右に曲がった所にある停留所から行けます」
??「って、あぁもう日も暮れてしまいますね、彼女もだいぶ怯えていることでしょう」
少年「・・・」ムッ
??「大丈夫、彼女は無事ですよ、ってだから誘拐犯じゃありませんってば」
少年「・・・」
??「ともかく、なるべく早く向かってあげて下さい、頼みましたよ?」
少年「・・・」
??「ではでは、お急ぎの処を失礼致しm」
少年「まて」
??「は、はい?」
少年「・・・助かった、恩に着る」
??「え?あ、あぁ、いえ、気にしないで下さい」
少年「じゃあな」スタスタ
??「・・・」
??「うむむ、流石ですね」
??「さて、これでどうなることやら」

374名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 23:49:10 ID:8KpNPSX60
ザラザラザラザラ…

少女「うぅっ・・・」グスッ
少女(もう、目と鼻の先まで、消えちゃってる・・・)
少女(でも前には見えない壁があっていけないし、どうしよう・・・)

ザラザラザラザラ…

少女(ど、どうにかするしかない!)
少女(頑張って殴れば、この壁を壊せないかな・・・!)
少女「っ・・・えいっ!」ガンッ
少女「くっ・・・このっ・・・!」ガンガンッ

ザラザラザザラザラ…

少女「お、おとがっ、すぐそこまでっ」ガンガンッ
少女(怖くて振り向けない・・・)
少女「お願いっ、出してっ、ここからっ!」ガンガンガンッ

ザラザラザラザラザラ…

少女「っ・・・!っ・・・!」ガンガンッ
少女(い、いやだっ、いやだっ、消えたくないっ!)

少女「・・・!・・・!」ガンガンッ

ザラザラザラザラザラ…

少女(いやっ!いや・・・!)
少女「うあっ!」ガンッ

ピシッ

少女「うあぁぁっ!」ガンッ


    ピシッ


   パリーン!


少女「・・・!」

375名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 23:53:54 ID:8KpNPSX60
少女(や、やった!今、今、確かに割れたよね!)
少女(何がとかどうしてとか色々疑問だけど、とりあえずどうでもいい!)
少女(は、早く逃げないとっ!)

グイッ

少女「うわっ!?」

ドサッ

少女「っつ・・・」ジンジン
少女(こ、転んでる場合じゃない、は、早く立ち上がって・・・)

グイッ

少女「あれ?」

グイッ

少女「な、なんで?」
少女(脚が・・・何かに引っかかって・・・)チラッ

ザラザラザラザラザラザラザラザラ

少女「ひっ・・・!」

少女(ち、ちがう、引っかかってるんじゃない)
少女(私の、わたしの脚が・・・)

少女「消えてる・・・!」

376名無しさん@避難中:2012/07/07(土) 23:59:37 ID:8KpNPSX60
少女(そんなっ・・・足首から先が、消えている、何も無い!?)

ザラザラザラザラザラザラザラザラ

少女(ど、どんどん、向かってきてる・・・!)
少女(こ、このままじゃ、このままじゃ)
少女(私自身が、消されてしまう・・・!)

少女「い、やっ・・・」ズルッ

少女(な、なんでっ!?脚に、力が入らない・・・!)
少女(あ、諦めちゃ駄目だ、這ってでも、『これ』から逃げないと!)

少女「くっ・・・!」ズルッ

ザラザラザラザラザラザラザラザラ

少女「・・・」クタッ

少女(あ・・・)

少女(・・・あれっ)

少女(あれっ・・・)

少女(ちから、はいらな)

ザラザラザラザラザラザラザラザラ

少女「あ・・・」

少女(いしき、ぼーっと、あれ・・・)

少女「ぅ・・・ぁ・・・」

少女(わたし、きえ、このまま、だれも、しらない)

少女(そんな、いや、でも、きもち、いい)

少女(このまま、このまま、いやだ、わたし)

少女(このまま、だれも、しらない、きもち、このまま)

少女「・・・」

少女「・・・しょ、うねん、くん・・・」








ガシッ!

377名無しさん@避難中:2012/07/08(日) 00:07:09 ID:ksjpguxk0
少女「・・・へ?」

グイッ

少女(誰かが、手を・・・)

ドサッ


シーン…


少女「・・・ぅ」

少女(・・・誰?)

少女「・・・」


少年「大丈夫か」


少女「・・・あ」
少女(少年君・・・)

少年「おい、しっかりしろ」
少女「・・・」
少年「聞いているのか、おいっ!」
少女「・・・ぅ」
少年「!」
少女「しょ、うねん、くん・・・?」ジワッ
少年「あぁ、どうした?」
少女「少年君・・・少年君っ!!」ガバッ
少年「っ、お、おいっ」
少女「こ、こわっ、こわかっ・・・」ポロポロ
少年「・・・」ムッ
少女「うぅ、ひっく、あり、ありがとう・・・」ポロポロ
少年「・・・」
少女「うっ、くっ、うぅっ・・・」ポロポロ

378名無しさん@避難中:2012/07/08(日) 00:11:24 ID:ksjpguxk0
少女「・・・」グスッ
少年「落ち着いたか?」
少女「う、うん・・・」
少年「そうか」
少女「・・・」
少女(暖かい・・・)
少女(凄く、安心する・・・)
少女「・・・」
少年「・・・あの、だな」
少女「う、うん?」
少年「そしたら、そろそろ・・・」
少女「・・・?」
少年「いや、すまんが、離れてもらえると・・・」
少女「・・・??」チラッ
少女「・・・」ダキツキー
少女「・・・」
少女「・・・!」バッ
少年「・・・」ムッ
少女「あっ、あぅっそそそその、ご、ごご、ごめんっ!///」
少年「いや・・・」
少女「うぅ・・・///」

少女(うぁぁぁぁあぁぁぁああぁぁ!!な、何やってるんだろう!何やってるんだろう!)

少年「・・・」

少女「・・・///」

少女(き、気まずくなっちゃった・・・)

少女「あ、え、えっと、ありがとう、助けてくれて・・・///」
少年「いや、気にするな」
少女「そ、そんな、気にするよ」
少年「大丈夫だ」
少女「そ、そう?でも、ありがとうね」
少年「あぁ・・・」
少女「・・・///」
少年「ひとつ、聞いても良いか?」
少女「へ?あ、う、うん」
少年「どうして、あんな所で倒れていたんだ?」
少女「え?そ、それは、その・・・」
少女「・・・って、あれ?み、見てなかったの?」
少年「何をだ?」
少女「いや、その、ざざざー!って言うやつ・・・」
少年「・・・?」
少女「え、あれ?それから、引っ張って助けてくれたんだよね?」
少年「いや、俺は・・・ここに来たらお前が倒れていて」
少年「発作が起こったのかと思って、慌てて起こしただけなんだが」
少女「そ、そうなの?」
少年「あぁ」
少女「そ、そっか、そうなんだ・・・」
少年「・・・なにか、あったのか」ムッ
少女「あ、い、いや、見てないならいいんだ!」アワアワ
少年「・・・」ムッ

少女(少年君には、『アレ』が見えてなかった・・・?)
少女(・・・ますます、訳が分からない)

379名無しさん@避難中:2012/07/08(日) 00:17:08 ID:ksjpguxk0
少年「なんでもいいが、そろそろ帰ろう」
少女「へ?あ、そうだね・・・今何時なのかな?」
少年「7時過ぎだ」
少女「し、しちじすぎっ!?」
少年「とりあえず、旅館に連絡するぞ」
少女「う、うん・・・」
少女(そ、そんなに時間経ってたんだ・・・)

プルルルル

ガチャ

電話『――――』
少年「あぁ、俺だ、見つけた」
電話『――――!?』
少年「大丈夫そうだ、多少疲れているっぽいが」
電話『――――!!』
少年「○○寺だ、今からだと・・・1時間ぐらいか」
電話『――――』
少年「分かった、切るぞ」
電話『――――!』

ガチャ

少年「行こう」
少女「う、うん」
少女「・・・」
少女「あの、もしかしてなんだけど・・・」
少年「ん?」
少女「結構、大事になってる?」
少年「それは、もう」
少女「うぅぅ・・・」ガックシ

380名無しさん@避難中:2012/07/08(日) 00:22:28 ID:ksjpguxk0
-旅館ロビー- PM 8:52

友人「・・・」ソワソワ
女A「・・・」
友人「・・・」ウロウロ
男B「お、おいおい、ちょっとは落ち着けって」
友人「わ、わかってるさ・・・」ソワソワ
男A「とても分かっているようには見えないんだが」
友人「し、仕方ないじゃないか、心配なんだから・・・」
女A「少年君も一緒なんだし、大丈夫よ」
友人「う、うん・・・」

社会「あー、おせぇな・・・」イライラ
担任「少年の連絡通りなら、そろそろだと思いますよ」
社会「わーってるよぉ」
保健「・・・」シュン
社会「しっかし、お前も阿呆な事するなぁ」
保健「・・・」
社会「『あの時は確かに大丈夫だと思った』なんて、仮にも免許持ってる奴が言う台詞かよ」
保健「う、そ、それについてはさっきも・・・」
社会「あぁ?」
保健「・・・すみません」シュン
社会「確かに俺もあるけどよ、後になって冷静に考えてみたら、どうしてそうしたか分からない、なんて事はな」
保健「・・・」シュン
社会「まぁ、帰ってきたらちゃんと礼だけは言っとけよ」
保健「はい・・・」シュン

友人「うー・・・遅い・・・まさか途中で事故とか・・・」ウロウロ
女A「あーもう落ち着けっつうの!」バシッ
友人「ぐえっ!?」ヨロッ
女A「どうせそんな事言っている間に帰って――」

ガラガラ

女A「――きたわね」
友人「!」バッ
少年「・・・」ムッ
男A「おう!お帰り!」
男B「・・・ってあら?少女ちゃんは?」

少年「・・・」クルッ
少年「・・・おい」ムッ
少女「・・・た、ただいま・・・」ソーッ…

友人「しょ、しょうじょぉ〜!!」ダダダダッ!
少女「う、うわぁぁ!!」ビクッ

381名無しさん@避難中:2012/07/08(日) 00:28:46 ID:ksjpguxk0
友人「ひ〜ん、少女ぉ、よかったよぉ・・・」スリスリ
少女「あ、あうぅぅ!」ジタバタ
男B「案の定だな」
女A「ま、しばらくそっとしときましょ」
社会「って、わけにもいかねぇんだな」スタスタ
男A「あ、お、おい!」

社会「ほら、どいたどいた、担任そいつ抑えてろ」ペイッ
担任「はいはい・・・」
友人「あー!ちょ、ちょっとぉ!」ジタバタ
社会「よぅ」
少女「あ、しゃ、社会先生・・・」
社会「どっか怪我とかしてないか?」
少女「は、はい、大丈夫です」
社会「そうか、じゃあ遠慮はいらんな」
少女「へ?」

パシーン!

少女「っ!」ジンジン
男A「!」
女A「ちょ!」
男B「おいおい!」
保健「しゃ、社会先生っ!?」
少年(頭か・・・)ムッ
友人「な、な・・・」ワナワナ
友人「なにさらしとんねんわれぇ〜!!」ジタバタ
担任「うぉおい暴れるなぁ、どうどう・・・」

382名無しさん@避難中:2012/07/08(日) 00:31:07 ID:ksjpguxk0
社会「事情は聞いた、保健から許可を貰って合流しにいったそうだな」
少女「・・・」
社会「その時に班の奴らへ連絡しなかった俺らにも責任はある・・・が、問題はそこじゃない」
社会「お前の勝手な行動のせいで集団に迷惑をかけた、それは分かるな」
少女「・・・はい」
社会「その歳になれば自己管理位できて当然だ、唯一の連絡手段を忘れてうろうろしたのは頂けない」
社会「俺らがどれだけ心配してたか、分からないお前じゃないだろう」
少女「・・・」
社会「あー、まぁ・・・」ポリポリ
少女「・・・?」
社会「無事で何よりだ、一人で心細かったろうに」ポンポン
少女「!」
社会「おかえり」ナデナデ
少女「・・・」
社会「・・・」ナデナデ
少女「・・・っ、うぅ、す、すみ・・・」グスッ
社会「・・・」ナデナデ
少女「す、すみま、せんっ・・・」グスッ
社会「・・・ん」ナデナデ
少女「うっ、うぅ・・・」ダキッ
社会「うぉっと・・・」ヨロッ
少女「あ、ありがとう、ございます・・・」ヒック
社会「お、おう・・・」
少女「・・・」ヒック
社会「・・・」

-5分後-

少女「・・・」ヒック
社会「・・・」ナデナデ

社会「な、なぁ、そろそろ、これ、どうにかならんか・・・?」オロオロ
男A「さぁな」
男B「役得じゃねぇか」
女A「よかったわね」
友人「そうだそうだ!羨ましいぞこの野郎!」
社会「お、おーい、保健さーん、担任さーん」
保健「ふふっ、良いじゃないですか」
担任「下手したら体罰ものなんですから、それぐらい我慢して下さいよ」
社会「うぉおい、ちょっと教師っぽい事したらこれかよ・・・」

383名無しさん@避難中:2012/07/08(日) 00:34:30 ID:ksjpguxk0
-さらに5分後-

少女「す、すみません、つい・・・///」
社会「い、いやぁ、俺もついな、すまん」
少女「そんなっ、私がいけないんですから、当然です」
社会「き、嫌わない?」オドオド
少女「はい」
社会「ほ、ホントに?痛くなかった?」オドオド
少女「大丈夫ですよ、それに実はちょっと、良かったって思ってるんです」
社会「え?」
少女「ここに来る間、どうやって謝ろうって、ずっと考えてたんですけど」
少女「沢山迷惑かけたし、どうしよう、上手く言えるかなって、自信無くって・・・」
少女「だけど、社会先生が殴ってくれたので、すっきりと言えました」
少女「あの、改めて、大変ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」ペコリ
社会「あ、あぁ、いや、分かってくれたなら、それで、うん」
少女「はい、有り難う御座います」
保健「少女ちゃん」
少女「あっ!」
少女(そ、そうだ、保健先生!)
少女(あんな事になってたけど、だ、大丈夫だったのかな・・・?)
保健「私もね、謝らなきゃと思って」
少女「え?」
保健「本当なら、一人で行かせるようなつもりは、なかったんだけど・・・」
保健「どうかしてたみたい、なんだかボーッとしてて、結局こんなことに・・・」
少女「そ、そんな、保健先生は何も」
保健「ううん、それでも謝らせて、本当、ごめんなさい」ペコリ
少女「そ、そんな、えっと・・・もう大丈夫なんですか?」
保健「え?なにが?」
少女「あ、いえ・・・なんでもありません」
保健「?」
少女(やっぱり、覚えてないのかな)
少女(いや、きっと自覚が無いだけで覚えてはいるんだ)
少女(・・・ともかく、いつも通りの保健先生で良かった)

社会「さて、と、詳しく話を聞きたい所だが・・・」
社会「もう夜も遅い、それはまた時間がある時にでも聞かせてもらおう」
社会「風呂でも入って、ゆっくり疲れでも取ってくれ」
少女「は、はい、分かりました」
社会「んじゃ、俺らは戻るか、あとよろしくな女A」
女A「はい」
友人「あたしらも、お風呂行こ」
男A「俺らは部屋に戻るか」
男B「だな」
少年「・・・」タスタス
少女「あ、あのっ、少年君っ!」
少年「・・・」ムッ
少女「今日は、本当にありがとう」
少年「・・・あぁ」タスタス
友人「あいっかわらず無愛想だねー」
女A「そういうあんたは、すっかり調子乗ってるわね」
友人「な、なにがさ」ギクッ
女A「さっきまであーんなに、『ど、どうしよう!どうしよう!』って」
友人「わ、わぁー!さぁ暖かいお風呂が待ってるぞー!!」ワタワタ
少女「?・・・ふふっ」クスリ

384名無しさん@避難中:2012/07/08(日) 00:37:21 ID:ksjpguxk0
-202号室- PM9:49

友人「ふわぁ〜・・・さすがに疲れたなぁ」
女A「そりゃ、一日中歩き回ったんだからそうでしょうよ」
少女「ご、ごめんね・・・」
友人「いやいや、さっきもお風呂で言ったじゃん、気にする必要ないって」
少女「う、うん」
女A「まぁでも、今日はもう寝ましょ、明日も早いんだし」
友人「そうだねー、電気消すよ?」
少女「うん、おやすみ」
女A「おやすみ」
友人「はいはーい、明日も頑張ろー!」カチッ


少女(はぁ・・・今日は本当に色々あったな)
少女(神様が来て、保健先生がおかしくなって)
少女(迷子になって、変な石碑があって)
少女(分けも分からず消えそうになって、少年君が来てくれて・・・)
少女(・・・)
少女(あの時の少年君、かっこよかった、な)
少女(・・・)
少女(・・・?)
少女(あれ、なんだろう、この・・・)
少女(凄く、安心すると言うか、ドキドキすると言うか・・・)
少女(・・・)
少女(まぁいいや、今日はもう寝ちゃおう)
少女(明日こそは、何も起こりませんように・・・)

385名無しさん@避難中:2012/07/08(日) 00:39:36 ID:ksjpguxk0
えー、以上です
なんかもういろいろとあれ、ですがあえて何も言わず落ちます
場所をお貸しして頂き有り難う御座いました!

386名無しさん@避難中:2012/07/09(月) 21:50:41 ID:x5ki5Sgw0


387「電子の瞳」 0/39:2012/08/10(金) 23:33:13 ID:RqRH2I3w0

気分転換のつもりが39レスになってしまった単発モノ投下。
連続投下で二時間前後スレを独占する。その間生暖かく放置いただければこれ幸い。

388「電子の瞳」 1/39:2012/08/10(金) 23:35:24 ID:RqRH2I3w0

「電子の瞳」




「この忙しい時に誰よ?」

 50キロ離れた実家と同じ市外局番。
延々と鳴り続ける着信音に軽い殺意を覚えたが当然相手に伝わるはずもなく、朝食の洗い物の
手を止め、渋々と携帯電話を開いた。

 振り向きざまにアッパーカットを喰らったような、きつい冗談が炸裂する。

 約六十歳の義父義母は田んぼへ苗や水の見回りに。三十三歳のダンナと二人の子供はいつもの
ように仕事学校幼稚園。そして三十歳の私は、なりふり構わず軽自動車に飛び乗った。

 虚ろな光の中、白いシーツの上で静かに母が眠っている。

 くも膜下出血と思われる強い頭痛。本人から救急車の出動要請。だが、救急車が到着した時には
すでに意識不明。短時間のうちに再出血があったと思われ病院へ搬送中に心肺停止。

 なにやら沈痛な面持ちで、見慣れない服を着る者が淡々と話している。

「……忙しくなるな」
 
 しかし私はまるで聞く耳をもたず、ただぼんやりと五年前に他界した父のことを
思い出すだけだった――――――――



 口やかましい父、物静かな母。そして一人っ子の私。
死ね、バカ親父。うるせー、クソババァ。そして飛び交う往復ビンタ。
一部二階建ての小さな家に仲睦ましく親子三人暮らし。ちょいと騒がしいが、いたって平凡な家庭。
 中学の同級生だった父と母。生きていればともに五十歳。七歳女と四歳男の孫がいる。
私も早い結婚だったが、両親は更にその上を行く。ヤンキーは結婚が早いという俗説そのもの
の夫婦だった。

 父は高校中退後大工見習いをしたらしいが、私が物心ついた頃は家庭ごみから産業廃棄物まで
何でも請け負いますと言う会社でゴミ収集車やクレーンのついたトラックの運転手をやっていた。
 母は高校進学などはなから眼中になかったようで、中学卒業後から父と結婚するまでの間、
電子部品製造工場で働いていたと聞く。

 薄化粧、地味な服装であっても保護者参観日でやたらと目立った母。
だがその容姿とは裏腹に、女工さん時代のなごりなのかテスターやら半田ごての入ったマイ工具箱を
持ち、調子の悪い電気製品をばらしては一人にたにたと悦に入るちょっとした変態でもあった。

389「電子の瞳」 2/39:2012/08/10(金) 23:37:06 ID:RqRH2I3w0

 酒、煙草。父のバイク母の車の無断借用無免許運転。
その度に平手打ちが飛んできたが、ありきたりな思春期の通過儀礼も終え、ダメもとで挑んだ
地元のしがない銀行に就職が決まり、高校卒業後なんとか一社会人となれた。

 そして何故か稲作農家の息子にみそめられ、二十一にして仕事を辞め嫁ぐことになる。

「……藍子。嫁になるってことはな、その家の女になるってこった。
働け。楽しようなんて考えるな。ただひたむきに働け。幸せなんて後からちゃんとついてくる」
少し照れくさそうに、父はにやりと笑った。
「うるせー、わかってる。……お父さん」

「……もう藍子とお父さんの親子漫才聞けなくなるわね」
少しうつむき、母は涙を拭いた。
「やかましいわ。なにが漫才だ。……お母さん」

 少し照れくさくて、素直にありがとうと言えなかった。

 柄にもない。
しかし心でそう念じても、あふれる想いを止めることは出来なかった――――――――


 大袈裟すぎる披露宴。
瓦屋根の大きな家。天井の高い、実家より立派な農機具小屋。

 家事だけで農作業は一切やらなくていいと嫁入り前から言われていた。
だが父の言葉や持て余す時間、近隣の眼。ついでに言えばなによりも私自身が雛壇でかしこまる
性格ではなかった。軽トラックに乗り、物珍しさで小型の草刈り機をかついだ。そして義父義母の
冗談交じりの褒め言葉を真に受け、作業のしやすい長方形の田畑に限り自ら進んでトラクター
に乗り込むようになった。
 無免で乗った車はマニュアルの軽自動車、バイクは古いカワサキの四気筒。
両親の影響か車や機械に苦手意識はない。そして周囲からちらほらと聞こえてくるあそこの嫁は
機械に乗って凄いと言う声が活力となり、ますます私をその気にさせた。
 元々は万が一の時の予備機として残された出番の少ない古いトラクターと田植え機だが、
いつのまにか私専用の玩具となり、乗るだけならゆくゆくは農業を継ぐ会社員のダンナと同等になった。
そして、どこまでも真っ直ぐに苗が植えられた見栄えのいい田にするために、義父からレクチャーを
受け気合と根性で鉄の塊と格闘した。
 
 成すままに子供を授かり、両家にとって初孫となる娘が生まれる。
目に入れても痛くないとはよく言ったもので、自慢の嫁と呼ばれた私も主役の座をあっさりと
娘に引き渡すこととなる。
 それは私の実家でも同様だった。
娘が生まれる前から、おばあちゃんらしくしなくちゃと長い髪をばっさりと切った母。
そして、まだ首も据わらないうちから、くしゃくしゃの笑顔でべらべらと赤子に話しかける父。
 私もこうやって育てられたのかと胸に手をあてる。
娘の将来に一抹の不安を覚えたが、父と母、緩みっぱなしの笑顔は何度見ても悪い気はしなかった。

 娘が一人で立ち上がり言葉を紡ぎ始めた頃。

 田植えが予想外に順調に進み、ぽっかりと時間が空いた土曜日の午後。
気晴らしに、娘を義母に任せたまま何の連絡もせずに一人実家に帰ってみた。
 引き戸の玄関が大きく開けられ、なにやらごそごそと父と母が仲良く手を動かしている。
車に気づき立ち上がったが、孫がいないと分ると露骨にがっかりした顔をし、父は何事も
なかったように私に背を向けまたしゃがみこんだ。

390「電子の瞳」 3/39:2012/08/10(金) 23:38:45 ID:RqRH2I3w0

「何してんの?」
危うく背中を蹴とばしそうになったが無理矢理笑顔を浮かべ尋ねる。
「ああ、下駄箱貰ってきてな。いま場所決め中だ」
振り向くことなく父は答える。なにが始まってるのかと私は一歩玄関に踏み込んだ。
「うおっ、でかっ!!!」
「すげーだろ? 一間より先の桐の一品物だ。職人に頼んだらたぶん二十万じゃきかんだろ」
自慢げにそう言いながら父は立ち上がり、膝を軽くはたいた。
 ぱっと見横幅2メーター弱の木製下駄箱。
当然狭い玄関の土間に収まるわけもなく、半分近くが合板の廊下の上に乗っている状態だった。
 どうやら下駄箱がぐらつかないように土台をこしらえているようである。
材質の色合いが廊下と近いせいか、サイズを無視すれば下駄箱にそれほど違和感はない。父の作る
土台が貧乏臭くなければそれなりに目に映えるものになるだろう。

「そんなん何で貰えたのさ?」
「ああ。バリアフリーの玄関にリフォームする家あってよ。それで邪魔になるっつーことで
処分依頼きたんだ」
「玄関リフォームするんだったら、ついでにこの下駄箱もリフォームすればいいのに」
「普通そう思うけどな。ま、うちと違って金余っててしょうがない家なんだろうよ。
それにこの下駄箱ちょっと戸が硬くて音すんだよ」
そう言いながら父は引き戸に手を掛け動かした。襖のようにすーっと動くと思いきや、ごすごす
ごろごろと思いのほか大きな音がする。
「直せんの?」
「いや、そう頻繁に開け閉めするもんでもねーしこのままでいいだろ。それに迂闊に手だして
木目汚したり傷つけんのも嫌だしよ」

 仕事柄、父は時々粗大ゴミに出された程度の良い不用品を家に持ち帰っていた。
どう見ても新品にしか見えない収納家具から、できれば勘弁してもらいたい電子レンジまで。
新築時に揃えられた物以外、家具、電化製品の半数以上はどうやら父が貰ってきた不用品で
まかなわれていたようである。
 いまでもはっきりと憶えていることがある。
幼稚園から小学校に上がる直前の春。ランドセルは胸躍る真っ赤な新品が届いた。
一方で、友達の家にはそびえ立つ要塞のような学習机が誇らしげに鎮座するのに、私の部屋
に机が届く気配は一向になかった。そして入学式直前の四月。それは突然やってきた。
夢見るピカピカの新一年生には少々酷な仕打ちである。目の前に現れたのは刑事ドラマの取調室に
ありそうな、味も素っ気も無いネズミ色のオフィス机だった。
 泣いた。それこそ火がついたように泣いた。
はじめから新品の学習机など買うつもりはなく、されど、なるべく程度のいいものを探すために
父は人事異動などで人や物の動きの激しい年度末まで粘ったのだろう。しかしそんな涙ぐましい
努力など物心に毛が生えた程度のわがまま娘に通用するはずもなかった。
だが呪文を唱え、母が愛嬌の欠片も無いオフィス机に魔法をかける。

 ハローキティのデスクマット。

 ピンクの縁取り。有名な片耳リボンの白い猫。
あまりの可愛らしさに涙など一発で吹き飛んだ。何のこともない。学習机が欲しかったんじゃない。
はじめから何かしらキャラクターのついたマットがあればそれで満足だった。母からすれば幼稚で
単純な子供そのものだっただろう。
 人を驚かすのが好きなのか、母はいつも唐突だった。
デスクマットに続き、電気スタンド、本棚も私が登校しているうちにこっそりと母の手により
据え付けられた。あれが欲しいこれが欲しいといってもスーパーやデパートに一緒に買いにいく
ことはほとんどなく、いつもある日突然目の前に現れていた。

 小さい頃はそれで満足だった。
しかし日々を重ね父の仕事を覚えた頃には、思春期にありがちな反発の理由にしかならなかった。

391「電子の瞳」 4/39:2012/08/10(金) 23:40:14 ID:RqRH2I3w0

「でもさー、こんなでかいのうちだって邪魔なるだけで意味無くね?」
多少の傷や汚れは風格で押し通せる佇まいを持っている。しかしまだ目に馴染まないのか
その下駄箱はいまいち邪魔にしか見えず、そして、なにより収まる靴が圧倒的に足りないはずだった。

「おめーも夢がねー奴だな」
私の問いに父はつまらなそうに答える。
「は……?」
「大家族なってテレビ出ろとは言わんけど、家族で野球チーム作れるぐらい頑張ってみろや。
まだ若いんだし余裕だろ? そんとき向こうさん全員揃って遊びにきてもこの下駄箱なら大丈夫
って寸法よ」
「おいおい無茶言うなよ。産むの私だぜ?そんな猫みたいにぽんぽんぽんぽん産めるかっちゅーの」
「でも男の子は欲しいわよね?」
「まぁ、そりゃそうだけど……」

 いつしか母の願いは叶えられる。しかし、隣に父の姿は無かった――――――――


 すい臓がん。余命三ヶ月。気づいたときにはすでに手遅れ。しかし、もし早期発見出来た
としても五年後の生存率はきわめて低い。
 本人にはもう告知済み。入院はせずに自宅療養。元気なうちに片付けるべきことを片付ける。
もう駄目だなと思ったら病院に行って死ぬ。延命治療などいらない。無理して看取らなくてもいい。

 大事な話があると、珍しく母の携帯から連絡が入った。

 嫁ぎ先から一番近い高速インターの出口駐車場。
カーラジオの時計表示だけが侘しく灯る母の車の中で、その話は語られた。
冗談を言うような人じゃない。静かにこぼれていた涙がすべてだった。

「……ふざけんな」

 母を押しのけ、ハンドルを奪った。
殺しても死ぬような奴じゃない。がんなんて高級な病気にかかるタマじゃない。
タイヤの上げる悲鳴など聞きもせず心の中で唱え続けた。
どこをどう走ったかよく憶えていない。酷い音をたてて車を降り、薙ぎ払うように玄関を開けた。

「よう。……どうした?こんな夜遅くに」

 父と会うのは一ヶ月ぶりだった。
居間でテレビを見ていた。背中だけならたいして変わりはなかった。だが静かに振り返った父は、
秋を迎えてしまったひまわりのように、確実にやつれ始めていた。

「……な、……なに余裕かましてんだよ?」

 誰も気づかなかった。誰も気づけなかった。

 やり場の無い怒りと悲しみに声が震える。
それでも父はやはり父だった。私を見て、いつものようににやりと笑った。

「藍子。武士は食わねど高楊枝つってな。男にはどんなに怖くてもつらくても、それこそ消えて
しまいたいほど惨めなときでも、意地張って見栄張ってカッコつけなきゃならん時があるんだよ。
……おめーも俺の息子ならそれぐらい憶えとけ」

 すでに父は何もかも受け入れていたのだろう。
ありふれた安いセリフに魂が宿る。消えゆく命を引き換えにして。

 父の姿がぼやけた。
もう父の身を張った冗談に乗るしか、私に残された道はなかった。

392「電子の瞳」 5/39:2012/08/10(金) 23:41:53 ID:RqRH2I3w0

「……うるせー、知るかそんなの。……死にぞこないが何カッコつけてんだよ。そんな暇あったら
とっとと病院いけよ! 頑丈しか取り柄がねーくせして訳わかんねー病気なってんじゃねーよっ!
……だいたいな、わたしゃー女だ。なに血迷ってんだよ、早くも頭にがん廻ったか?
寝言は寝て言えや!このクソボケ親父がっ!!!」
「きゃんきゃんきゃんきゃんうるせーな。いちいちヒステリー起こすなよ。もしかしてあれか?
おめー、その若さで更年期か?」
「やっ、やかましいわ、このタコ助っ!!! ……心配して損した。死ね。頼むから今すぐ死んでくれ」
「おいおい、親に向かって死ねとはひでえ奴だな。一体誰に似たんだよ?」
「アンタだろうがっ!!!」

 笑った。

 泣いたまま、母が笑った――――――――


 缶ビールとポケット瓶の安ウィスキー。肴はモルヒネで作られた鎮痛剤。
使い捨てのビニール傘を杖代わりに持ち、自ら望んで成人用の紙おむつを履いた。

 蜜月は瞬く間に過ぎゆき、父は居るべき場所に戻った。
そして入院した二週間後、少しほっとしたように穏やかに息を終えた。
 
 お経も戒名も無い自宅で行なわれる簡単な家族葬。準備はもう充分出来ていた。
ふざけた家だと思われて構わない。通夜葬式関係なく弔いにきてくれた客には好きなだけ酒飲ませろ。
父の希望で式前から酒が振舞われ、コップ片手にほろ酔い加減で和やかに式は終わろうとしていた。
しかし最後の最後の喪主挨拶。母は涙を流し続け、一言も発せなかった。

 肩を震わす母を見て思う。
私にはわからない、そして相容れない二人の世界があるのだろう。
 小さい頃、悪いことをして何度か母から平手打ちを喰らったことがある。その度に母は
無言で涙を流し続けた。どんなに謝ろうが母の涙は止まらない。母娘、二人で泣き暮れたこともある。
 だけどそれはそれ、これはこれ。
きっと棺桶の中の父もやきもきしているに違いない。意を決めて、抱いていた娘をダンナに託す。
お坊さんの代わりに簡単な説法を説いてくれた葬儀業者の担当に合図を送る。
小さく会釈が返ってくる。
 小さな家によくこれだけの人を詰め込んだなと妙に感心する。そしてありがたく思う。
ひとつ息を吐いた後、半歩前に出て深く頭を下げる。

 バカな父で皆様には最後の最後まで本当にご迷惑おかけしました。
短い人生でしたが皆様のおかげで楽しく幸せに過ごせたと思います。

 至極簡単なことだと思った。そのままありのまま話せばいいと思った。
しかし探した言葉よりも先に、まぶたの奥に何度も何度も父の姿が映し出された。

 それでも父の言葉を胸に、あふれた涙を拭いもせず私は顔を上げた――――――――


 四十九日が過ぎ、市が管理する墓地公園の一角に父の遺骨を納骨。

 実家の財政面には触れたことがなくいろいろ心配したが、それなりの生命保険に加入して
いたらしく母の生活に当面の心配は無さそうだった。
 父と母、若いうちから随分頑張って家を建てたと聞く。その借金もなんとか払い終え、わずか
ながらの蓄えもある。嫁ぎ先で収穫された季節の野菜、そして秋には必要以上の新米を届けている。
 退職金、弔い金、生命保険。お父さんには悪いけど贅沢しなければ死ぬまで遊んで暮らせる。
そう言って少し寂しそうに笑う母。やがて父のいない生活が普通になり始めた。

393「電子の瞳」 6/39:2012/08/10(金) 23:43:32 ID:RqRH2I3w0

 待望の男の子誕生。

 父の死から一年後。入れ替わるように新しい命が生まれた。
毎週とは行かないがなるべくすくすく育つ孫の顔を見せようと、ダンナと四人、もしくは私と
子供二人、まれに義父義母総出で実家を訪ねた。

「最近あちこち出かけること多いから、来る前に必ず電話頂戴ね」 

 片道50キロ。約一時間のドライブ。
もし無駄足になった場合、ダメージはそれなりにある。母に言われるまでもなく連絡を入れるのは
当然だった。母も携帯電話は持っているが、緊急を要する連絡はほとんどなく、家の固定電話に
連絡するだけでたいていは事足りていた。

 父のいない寂しさを微塵も出さずに、明るく振舞う一人暮らしの母。
生活には余裕があるようで経済的な不安をこぼすこともなく、働きに出ることもなかった。
暇を持て余しそうだが、話を聞く限り父に代わって古くなってきた家の手入れしたり、仲のいい人と
買い物にいったりと、質素ながらも悠々自適のご隠居さんのような暮らしを満喫していた。
 子供を連れて実家に遊びに行くと必ず母は駄菓子屋レベルの小さなおもちゃを用意していた。
孫の成長に合わせるように、単純なものから少しずつ複雑なものに移り、時には人気キャラクター
のプリントされた帽子やバッグなどを取り出してまだまだ幼い子供達を喜ばせていた。
 
「また来てね」

 私達が帰るとき、母は必ず玄関から出て見送ってくれた。
チャイルドシートに縛りつけた四歳の息子は厳しいが、小学生になり生意気になってきた娘はパワー
ウィンドウのスイッチを自ら操り、身を乗り出しておばあちゃんばいばいと手を振るようになった。
バックミラーから姿が消えるまで、母もずっと手を振り続けた。

 時とともにどこそこの嫁から、誰々ちゃんのお母さんと呼び名が変わる。
家の仕事中心だった生活が何事も子供優先となり、そして同じ学区内の知り合いが増えていく。

 最後に会ったのは三月の終わり。最後に電話で話したのは五月の初旬。
田植えが終わったら遊びに行く。この前お花見に行ってきた。なんのとりとめもない定期連絡。
まさかそれが今生最後の会話になろうとは、私はおろか母でさえ夢にも思っていなかっただろう。

 風薫る五月。
突然、母が死んだ――――――――



「……皮肉だな。……バカ親父」

 父が死んだ病院と同じ病院に母は運ばれた。幸か不幸か五年前の経験がよき教科書となる。
縁者に連絡後、到着を待つことなく病院関係者と旅立つ儀式が執り行われる。そして父を送って
くれた葬儀業者との最初の簡単な打ち合わせが終わる。

 携帯電話、財布、保険証や診察券の入ったポーチ。そして家の鍵。

 母の所持品を受け取り実家に向かう。
印鑑、遺影用の写真の準備。近所への連絡。父と同じく家で葬式をあげるので家の中が片付いて
いるかざっと確認。そしてきちんと戸締りをした後、再び病院の今度は慰霊室へ。
 一人暮らしの母。一人っ子の私。
いろいろと協力はあると思うが、喪主としてやるべきことは腐るほどある。
悲しみにひたる暇は無い。そして逆に今はそのほうがありがたい。
軽自動車で片道約二十分の道を走る。気がつけばあっという間に家の前だった。

394「電子の瞳」 7/39:2012/08/10(金) 23:46:03 ID:RqRH2I3w0

 玄関に鍵を差し込む。
 
 印鑑。
以前と変わりがなければ、わりと平凡な場所に置かれている。
 遺影。
気は重いが母の寝室を物色すればなんとかなるだろう。
 近所への連絡。
一番つらいところだが、母と仲のよかった元町内会長婦人に連絡すれば、友達つながりで
すぐに伝わって行くはずだ。

 とりあえず玄関を開け靴を脱ぎ廊下に上がる。

「…………?」

 母の寝室から電子音のような音がした。
気のせいか何かモーターの動くような音もする。少し抵抗はあるが、しかし電気物が好きだった母。
私の知らないうちに鳥の鳴き声がするような時計でも買ったかと、寝室のドアを開いた。

「ひっ!」

 誰もいないはずの寝室。

「 …………。」

 なのに、犬がいた。
白い身体に黒い顔。真ん中をくりぬいたフライ返しのような耳としっぽの小型犬が、何故か母の
寝室でくつろいでいた。

 室内犬、座敷犬。
部屋の中で犬を飼うのは別に珍しいことじゃない。個人的に犬が嫌いというわけでもない。
世間一般に可愛いと思われる犬は普通に可愛いと思うし、愛嬌のある奴は憎めない。
 しかし、その犬はありえなかった。
母から犬を買った貰ったなど金輪際聞いた憶えは無い。そしてなによりも、その犬は小型犬で
あると同時に、どっからどう見ても正真正銘のロボットなのである。

「…………訳わからん」

 薄い灰色の絨毯を敷いた八畳の和室にダブルのベッドまでは記憶がある。
しかしそこに加わったシュールな珍客によって、私の思考能力は停止する。

 声に反応したのかそれこそ不思議な物を見る子犬のように、ロボット犬が耳やしっぽを
振りながら呆然と立ち尽くす私を見上げた。

「……いやいやいや。……小首かしげても可愛くねーから」

 全否定。

 平凡に平穏に暮らしているときならさぞかし驚き喜んでいたことだろう。
しかしあまりにも間が悪すぎた。巨大なお化けナスを顔にしたような、SF映画のロボット警官が
可愛がっていそうなその外見は、今の私には趣味の悪い冗談にしか思えなかった。

「ひぃ!」
 
 存在を拒絶する私に抗議でもするかのごとく、突然ロボット犬が顔から訳の解らない音と光を
放ちながら激しくかたかた動き始めた。
 全てはプログラムで制御された挙動。当然意思の疎通など出来るわけもなく、尻込む私など
お構いなしにロボット犬はむやみやたらと意味不明な動作を繰り返した。

395「電子の瞳」 8/39:2012/08/10(金) 23:47:27 ID:RqRH2I3w0

「あーっ、もうっ! この忙しい時にっ!!!」

 通夜葬式の最中に突然動き出したら……
そう思うとぞっとした。反射的にロボット犬を抱き上げ、二階の自分の部屋に駆け込んだ。
押入れを開け、躊躇せずロボット犬を空いている衣装ケースの中に閉じ込める。そして問答無用で
戸を閉めた。
 邪険に扱われて暴れだすかとひやひやしたが、いまのところ暴力的な音は聞こえてこない。
本物の犬ではないが罪悪感は感じている。しかしロボット犬には申し訳ないが、はっきり言って
今はそれどころでない。ふーふーと大きく深呼吸を繰り返し、そして改めてやるべきことを思い返し、
駆け足で階段を降り母の寝室に戻った。

「……何これ?」

 再び母の寝室に入る。
さっきは気が動転して気がつかなかったが、ベッドの脇に巨大な二次元バーコードのような柄がついた
膝たけほどの円柱が立っている。土台となる部分は何かデジタル表示のついたコードレス電話充電器
の親玉みたいな装置だった。
 表示部分にメーカー名が記されている。すぐに記憶が蘇る。
十年ほど前に発売され、テレビなどで盛んに取り上げられた高額なペットロボット。
これはそのペットロボット用の充電器か何かに違いないだろう。
 そして不協和音は続く。
小さなテーブルの上にノートパソコンが乗っている。パソコンを買ったということも、母からは
まったく一言も聞いてない。最後に家に来たのは三月末。親子といえどずけずけと寝室に入るのは
気が引けるので定かではないが、その時、パソコンもロボット犬もまったく気配すら感じなかった。

 とりあえずパソコンはそのままでも構わないが、二次元バーコードの円柱はどう見ても
不自然かつ違和感ありありなので、この際コンセント抜いて片付けてしまえと電源コードを辿った。

「 …………。」

 まるでここに仕舞ってくださいと言わんばかりのスペースがある。
プラスチックのパイプで組まれた足の長いこたつのようなもの。天板があり、その上には
簡単な本棚に数冊の雑誌と単行本、ほかに文房具やら化粧道具が整然と並べられている。
 そして仕舞ったらこれを下ろしてくださいと言わんばかりに、こたつ布団のような布が天板の
上で綺麗にたたまれていた。

「……もしかして、……隠してた?」

 誰に聞くわけでもなく、自然と声が漏れた。
一目瞭然とはまさしくこのことだ。コンセントを抜かずそのまま押し込み、慎重におあつらえの布を
下ろしたら二次元バーコードの妙に浮ついた存在感は綺麗さっぱり消え去った。

「おわっ!?」

 ぴんぽんと、唐突にチャイムの音がけたたましく鳴り響いた。

 電気物が好きだった母。
メンテナンスは完璧だ。チャイム用の電池はさぞかし高級品が使われていることだろう。

 二ヶ月ほど帰ってないとはいえ間違いなくここは私の実家。
だから諸事情により母の寝室に忍び込んではいるが、泥棒を働いてるようなやましさや後ろめたさを
感じる必要はこれっぽっちの欠片も無い。

 ひとつ呼吸を置く。

「ちっ! 誰よ、この忙しいときにっ!」

 しかし間違いなく殺気だった顔で、私は玄関に向かって飛び出していた。

396「電子の瞳」 9/39:2012/08/10(金) 23:49:25 ID:RqRH2I3w0

「……藍子ちゃん。……泉ちゃん救急車で運ばれたって内田さんから聞いたんだけど」
「 …………。」

 勢いよく玄関を開けた。
二人の女性が青い顔で立っていた。
 まずい。
思わず心の中でつぶやいた。

 江藤さん。
歩いて五分ほどのところに住んでいる、今年で八十になるはずの元町内会長婦人。
父と母がこの地に家を建てたときからずっと世話になっている、私たち家族にとって
親代わりのような人だ。
 私の結婚式でよかったよかったと泣いた。私が育てましたと嫁ぎ先産の新米を持っていったら、
ありがとうありがとうと泣いた。娘が生まれたとき恐縮するような出産祝いをいただき、顔を
見せに行ったら曾孫が出来たと泣いた。そして父の病気を知り、ほろほろと涙を落とした。

「……藍子ちゃん?」
「 …………。」

 頭が追いつかない。

 年のせいか江藤さんはだいぶ涙もろくなっている。
しかし今はそれよりも突然の訃報のショックで、そのまま天に召されそうな気がして怖い。

「……藍子ちゃんどうしたの?」
「 …………。」

 不安げに名前を呼ばれる。
たぶん内田さんの家で母を待っていたか、内田さんから私が帰ってきたと連絡があったのだろう。
母が救急車に乗ったことは知っている。もはや隠すことは不可能だ。覚悟を決め腹をくくる。

「……江藤さん、内田さん。……その節は母が、……いろいろと母がお世話になりました」

 察しろ。察してくれ。
そう強く念じながら頭を下げた。

「……どうしたの? ……どういうこと?」
江藤さんの声が胸に突き刺さる。しかしどうすることも出来ずに、目頭が熱くなるのを
感じながら顔を上げた。
「……救急車で病院に運ばれたんですけど、……間に合わなくて、……くも膜下出血で、
母は病院で、…………息を引き取りました」

 事実を認めてしまった刹那、悲しみが電光石火で駆け抜ける。
歯を食いしばり、しっかりしろしっかりしろとぐらつく頭の中で何度も唱え続けた。

 母は死んだ。
しかし、悲しいから信じられないからと言って一人娘であり喪主となろう私が、嘆き、泣き崩れて
その死から逃げ出す訳にはいかないのである。

「……嘘でしょ?」
「…………」
 ぽつりと内田さんがつぶやいた。
青い顔のまま、江藤さんは言葉を失った。

 内田さん。
母より若干年上の、10メートルほど離れた隣家の主婦。
 当然、挨拶や世間話は普通に交わす。が、なにぶん過去の恥ずかしい歴史を知られているので
ある程度の距離感は保っている。私に対しては内田さんもそうだろう。

397「電子の瞳」 10/39:2012/08/10(金) 23:50:44 ID:RqRH2I3w0

「救急車来てうるさいなって思ってたらまさか泉さんのとこ来るなんて思わなくて、
何も出来なくて、泉さん運ばれてって、それで怖くなって慌てて江藤さんに連絡して、それで……」
 途切れる声。
そして内田さんはわっと声を上げて泣き始めた。
 しばし呆然とし、取り残されていた江藤さん。
事実を飲み込めたのか、嗚咽を漏らしながら静かに内田さんの肩を抱いた。

 不思議な感覚に見舞われる。
何度も繰り返したしっかりしろという自己暗示が効いたのか、はたまた内田さんにいきなり派手に
泣かれてしらけてしまったのか、まるでいまいち入り込めない映画でも見ているかのように、
冷静になりつつある自分がいた。

「……内田さん。……あまり気にしないでください」

 わんわんと泣き続ける内田さんに声を掛ける。
救急車で運ばれる瞬間を目撃したとしても、内田さんが母の死に負い目や責任を感じる必要は
どこにも無い。
 沈痛な面立ちで江藤さんは内田さんに手を沿え慰めている。
気丈な振る舞いが見ていて気の毒になるが、正直ほっとする。母の死のショックで江藤さんが
倒れるようなことになったら、それこそ天国から父が降りてきて死ぬほどブン殴られたことだろう。
 そして内田さんが少し落ち着いたところで、人でなしと思われようがお願い事にはいる。
つらい役どころであろう母の友人知人への連絡。家を出て十年近い私より確実に母の友人関係を把握
しているはずだ。母の実家関係者への連絡はすでに母よりひと回り年上の伯母にお願いしてある。
我ながら酷い奴だと思う。しかし父のときもずっと手伝ってくれた江藤さん。素直に甘える。

「あの。江藤さん、お願いがあるんですけど、……いぬ。……あ、いや、犬じゃなくて、い、いっ、
遺影用の写真のことなんですけど、もし江藤さんでも内田さんでも母の写った写真あったら
貸してもらえませんか? むこうに帰れば写真あるんですけど私も気が動転しててそこまで
気が廻らなくて、今からまたすぐ病院戻らないと駄目なんで母の部屋探す時間無くて、それで
戸締りして行くんですけど、父のときと同じ葬儀屋さんなんで融通は利くと思いますけど出来れば
早いほうがいいんですけど…… 
あ……。……すいません。……病院は太田総合病院です」

 冷静だったはずが、不意にロボット犬が脳裏をかすめ激しくうろたえてしまう。
しかし二人から突っ込みが入ることもなく、涙と鼻水でぼろぼろになっている内田さんが
花見のときの写真があると答えてくれた。

「……すいません。……じゃあ夜でもいいんで後で貸してもらえませんか?」
「……ええ。……準備しておきます」
「藍子ちゃん、すぐ病院行くの?」
「……はい。……死亡届とかの書類の関係で葬儀屋さんに早め印鑑に渡したほうがいいので。
それにそろそろ身内の者が病院に着くと思いますので」

 涙目ではあるが内田さんも江藤さんも、そして取り乱してしまった自分も、だいぶ平常心を
取り戻しつつある。

「そう。わかった。……藍子ちゃん、運転気をつけてね。……あと無理しないでね」
「……はい」

「……藍子さん。……写真、USBメモリーとCDロムどっちがいい?」 
「は……?」
「……写真、プリントしたのと画像入ったメディア両方準備したほうがいいでしょ?」
「あ……。えーと、お任せします、内田さんの用意しやすいほうで。……わざわざすいません」

 いまいち波長が合わないなと、心の中で苦笑する。
しかし一瞬理解に苦しんだが内田さんなりに気を遣っているのだろう。好意はありがたく頂戴する。

398「電子の瞳」 11/39:2012/08/10(金) 23:52:43 ID:RqRH2I3w0

「……うん。じゃあこれから準備して落ち着いたら病院持っていく」
「はい、お願いします。……あと江藤さんすいません、申し訳ないんですけどご近所さんに
母のこと連絡してもらっていいですか? ……ちょっと私誰に連絡すればいいかわからなくて」
「藍子ちゃん。そんなこと心配しなくていいから早く病院に行ってあげて。近所に連絡したら私も
内田さんと一緒に行くから。でも、藍子ちゃん、こんなときだからこそ本当に車には気をつけてね。
それと無理なことはしなくていいからね」
「……はい。……気をつけます。……すいません、じゃあ、あとお願いします」

 江藤さんの心遣いが目に沁みる。
背を向け家に入る。台所の食器棚。変わっていないはんこ置き場から三文判を取り出す。
玄関の鍵を閉め車に乗り込む。
 しかし、アクセルを踏むには視界がぼやけ過ぎていた。
目をこすりながら、しっかりしろともはや口癖になった呪文を唱え続けた――――――――


 太田総合病院、慰霊室。
嫁ぎ先の義父。そして母の実家の長女である六十二歳になる伯母と、婿旦那の伯父が
すでに母との対面を済ませていた。
 私を入れて四人、縁者への連絡状況や葬儀に関することがぽつぽつと話されていく。
そして数十分後、葬儀業者の担当が来て、葬儀の日時が正式に決まった。
明日朝一番で自宅に搬送、通夜。明後日、お昼葬式、そのまま火葬場へ。
 父のときとまったく同じで。
運良く父の時と同じ担当者がまた面倒を見てくれる。それだけ伝えれば話はついたようなものだった。

 続いて江藤さんの団体が到着する。
江藤さん内田さん。後の二人は顔は憶えているが名前と一致しない。丁重な挨拶を受け、ああそうかと
思い出す。そしてそれぞれ母との対面を果たす。
「……藍子さん。これ写真」
約束通り、早速内田さんから大きな封筒を受け取る。大袈裟なと思いつつ、軽く礼を言って
さっそく葬儀屋さんも含めたみんなの前で中身を確かめる。

 まさかのA4プリント用紙。
その中で、江藤さんと一緒に、母が静かに微笑んでいた。

「…………いい写真……ですね」

 私の知らない母。
五枚の写真。三枚は昼の桜をバックにしたもので、残りはカッパを着込み、草刈り機を担いで
妙なポーズですましている写真だった。
「三脚使ってロウ形式で撮ってるから。でも、安いデジカメでもカメラの水平と手ぶれに気を
つけてればだいぶ違ってくるわよ。あ、CDはジェイペグに変換して落としてるから大丈夫」
「 …………。」
 いや技術的なことじゃなくて雰囲気が。つーか、専門用語解りません。
心の中で突っ込むも当然言えるわけはなく、目をこすりながらただこくりとうなずいた。

「これ、今年の桜?」
写真をしげしげと見つめながら、ハンカチ片手に伯母が内田さんに尋ねる。
「そうです。泉さんに誘われて三人でお昼食べに、桜の前でお弁当広げたんです。
あと草刈りのは去年の夏の始めですね」
気持ちの整理ができたのか、内田さんはだいぶ落ち着きをとり戻していた。カメラ用の三脚を
持っているくらいだから写真を撮るのが好きなのだろう。答える声には程々の明るさがある。

「そう。じゃあ、あたしが最後に会ったより後ね。ほんといい写真。なんか女優さんみたい。
……悔しいわね。ちょっとバランスが違うだけでどうしてこんなに差がついたのかしら?」
 面長の母、丸顔の伯母。
間違いなく姉妹で似ているのだが、微妙に違う。
 ハンカチ片手におどける伯母。
みんな笑うところなのは判っている。だが、切り取られた母の笑顔はあまりにもせつなすぎた。
笑い声に代わり漏れたのは、鼻をすする僅かな涙声だけだった――――――――

399「電子の瞳」 12/39:2012/08/10(金) 23:54:56 ID:RqRH2I3w0

 お通夜当日。
私の実家に泊まり込んだ伯母。早朝から駆けつけてくれた江藤さん内田さん。
そして昨夜病院に来たが一旦家に帰り、いろいろな荷物とともにダンナの運転するミニバンに乗り、
孫を引き連れて義母がやって来た。
 父の葬儀を見ているので義母の準備にぬかりはない。
嫁ぎ先周辺の立派な葬式と比べればママゴトみたいなものだろう。私が伝えた以上に必要とする
ものを持ち込み、まだ事をよくわかっていないと思われる孫を見ながら台所居間座敷と動いた。

 神経質とは言わないが、だいぶ綺麗好きだった母。
どこの部屋も目立つ汚れやほこりは無く、掃除の必要もないくらい家の中は綺麗にされていた。
ただ、子供が貼ったと思われるピンクのハローキティのシールが下駄箱にそのまま残されていた。
 カード大のビニールでできた厚いタイプのもので、廊下側の側面と引き戸の二ヶ所に同じものが
貼られている。しかし剥がそう軽く引っ掻いたら糊の部分が残るという最悪の結果を招いたので
そのままにすることにした。上の娘が貼ったのかデタラメに貼られたわけでもなく、同じ高さで
水平も取れているのでそんなに見苦しくもない。とりあえず各部屋の要所の掃き拭きで体裁を整え
母の帰りを待った。

 黒い車に乗って母が帰ってくる。

 棺桶、簡易的な祭壇と遺影。親戚一同と札が入った花が二組。
質素そのものの供養物。葬式なんかに無駄金使わなくていいと言い残した父のときと同じ。
 と、思っていたが、葬儀業者の担当がなにやら台を置き小型の液晶テレビを据え付け、
電源を入れた。

「おーっ」
内田さんの撮った写真と思われる数々の静止画が、穏やかに移りゆくスライドショーとなって
画面に映りだされた。
 私の声に手を止め、ぞろぞろとみんな集まってくる。
「なんか恥ずかしい」
内田さんがつぶやく。しかし満更でもなさそうだった。
「おばあちゃんテレビ出てる」
四歳息子の素朴な感想。
「凄いわねー。今のテレビなんでも出来るのね。やっぱりチューナーじゃなくて液晶テレビ
買ったほうがいいわね、安くなったし」
どこか残念な伯母。
「……これからお年寄りいっぱいくるからありがたいわ」
早くも涙目の江藤さん。
「……えーと、これ頼んでないですよね。お金かかるんですか?」
ちょっと感動したが、オプション料金をふんだくられるのも嫌なので担当に確認する私。

「いや、遺影の写真わざわざCDでもらいましたんでね、料金は結構ですよ。写真絞り込んで
DVDに作り直してますけど、それだけでたいして仕事してませんから」
「おー、すいません、ありがとうございます。内田さんもありがとうございます」
さもすれば不謹慎と思われるかもしれない。と不安がよぎるが、葬儀業者が持参するくらいならば
ごく普通の葬儀にも普及しているのだろうと素直に甘えることにする。

400「電子の瞳」 13/39:2012/08/10(金) 23:56:40 ID:RqRH2I3w0

 葬式の打ち合わせが始まる。
三人の弔辞。孫二人による簡単な別れの言葉。そして喪主挨拶。
三十分どころか十分で終わるかもしれないと伯母が笑う。長いだけの葬式よりよっぽどいいと
義母も笑う。
 火葬場への移動の際、運転手さんはくれぐれも飲酒はなさらないように。
担当から念を押される。ダンナ。マイクロバスを借りて明日来る義父。ともに晩酌はやらず、
付き合い以外ではほとんど飲まないタイプなので問題はない。
 最後に明日の予定時刻を再確認し、三人の人足を連れて葬儀業者の担当が帰っていく。
簡単な仕事で滞在時間は一時間にも満たないだろう。しかし要点は明確に説明され充分事足りた。

 そして葬儀業者と入れ替わり、早速、二台のタクシーが家の前で止まる。

 江藤さんと同年代か年上と思われる女性四人と男性二人の団体さん。
ごめんくださいと言う挨拶より早く、私と江藤さんが玄関に出迎える。どこか見覚えのある人が四人。
あとの二人はどう考えても初対面のお年寄りだった。
 焼香を上げたあと、内田さんからどこそこの誰々さんと紹介される。
タイミングを計ったように伯母と義母によってお茶やジュース。やっと朝九時半を過ぎたというのに
お茶菓子に混じって、はやばやお酒と簡単なつまみも用意される。

「……泉さんには、庭の草刈りとか家の電気のこととかいろいろ面倒見てもらってね」
勧められるままに日本酒を手にした男性が話を切り出した。それぞれ好みの飲み物を手にした
五人がうんうんとうなずく。うち、二人の女性は静かに泣いている。
 江藤さん宅であれをしたこれをしたなどの話は聞いていたが、どうやらそれだけでは飽き足らず
高齢者の一人暮らしや老夫婦だけで住む家を江藤さんとともに母は訪問していたらしい。
 庭の草刈り草むしり。蛍光灯や電球、および解りづらい位置、機能を果たす電池の交換。
そんな、あまり不便は感じないが出来るなら直したいぐらいの小さなことを、母は進んで手助け
していたようだ。

「草刈りでも電気の球の交換でも何でもやってくれて、何をやっても絵になる人だった……」
冷や酒が注がれたコップを置き、ぐすりと鼻を鳴らし男性は顔に手のひらをあてた。
「……まだまだ若いのにもったいない。……旦那さんも早かったのに意地悪は続くもんだ」
コップに手が伸びる。そしてありき日の母が映し出されるテレビを赤い眼で眺めた。
 
 金曜日。日中。
弔いに来てくれるのは時間に余裕のある人たち。

 父を知るもの、母を知るものがぽつりぽつりと訪れてくる。父のときと同じように通夜葬式初七日
全部ふっくるめたことにして、飲んでも差し支えの無い人にはお酒を振舞う。
 藍子ちゃん久しぶり。お孫さんも大きくなって。
ある程度覚悟はしていたが、何度も繰り返される死因の説明や、涙も交えた近況報告が
次第につらくなってくる。江藤さんや内田さんがそばにいるとはいえ、やはり主役は母、
そして喪主の私。始めだけでとうの昔に子供と一緒に二階の遊び部屋に逃げ込んだダンナを
少し恨めしく思いながら、なんとか務めを果たす。

 江藤さんに、来そうな人はほとんど来た。と教えられたのは午後四時を廻った頃だった。
母の実家関連の人は今日は来ないで葬式に来ると伯母から聞いている。
 喪主失格と言われそうだが、父の遺言にのっとり、私も弔い客に混じって軽くお酒を飲んでいた。
ひと段落ついたと思ったら急に酔いや疲れが顔に出たようだ。伯母や江藤さんに少し休んだら
と言われた瞬間、張り詰めた糸が切れるように居間で眠りに落ちた。

「アイ子、アイ子?」
どこかで私を呼ぶ声がする。
「…………うおっ、かずみん」
顔を上げた先に中学の同級生だった和実がいた。その後ろで和実の父がぺこりと頭を下げた。
気を利かせたのか、江藤さんや伯母達は缶ビールと乾き物の菓子皿を置いたあと、揃って
座敷に移動している。ちらりと壁掛け時計を見る。どうやら一時間ほど眠ってたようだ。

401「電子の瞳」 14/39:2012/08/10(金) 23:58:13 ID:RqRH2I3w0

「喪主がもう平常運転?」
たぶん叔母達から話を聞いたのだろう。そう言いながら和実は少しにやけながら缶ビールを
指差した。もう焼香を済ませたようで和実の父は少し赤い眼をして折りたたんだ風呂敷を携えている。
「……いやいや。涙も枯れ果てたんで水分補給ですよ。……なんで来た?クルマ?」
「ううん、親子水入らずでサイクリング」
和実の家とは5キロほど離れているが大きな坂道もなく自転車ならそれほど苦にならない
時間でこれる。

 地元で一番仲が良かった奴。
部活のランニング最中、空き地の隙間で煙草を吸ってるのを先生に見つけられ、親が呼び出しを
喰らった以来の腐れ縁である。
 高校卒業後も結構一緒に遊んでいたが、ともに結婚し家を出て、次第に連絡を取らなくなって
しまうパターンで現在に至っている。
 ご無沙汰してます。わざわざすいませんと和実の父に挨拶し、二人に缶ビールを渡す。
すみに寄せられた灰皿を取り寄せ、そして二人が飲みやすいように私も缶ビールを開け口をつける。 

「つーか、かずみんさ。ありがたいとは思うけど、まさかこのためにわざわざ帰ってきたの?」
二十四で結婚。旦那と子供二人、ちょっと離れた街でアパートを借りて暮らしている。
「……いや。……実はいま実家いるんだわ」
そう言って和実は少し苦そうに缶ビールを飲んだ。

「ん、休みずれて今頃帰省中?」
「いや、実は別れちゃってさ……」
「へ……?」
「すいません、離婚しちゃいました」
「はあー!?」
私の声に今度は和実の父が苦笑いを浮かべながら缶ビールを傾けた。

「……おいコラ。人に平常運転とか言っときながらアンタもそのざまか?」
「かたじけない。やっぱ駄目やね、出来ちゃった婚は……」

 ビール片手に、きまりが悪そうに頭を掻く和実。
不意に、押入れに閉じ込めたロボット犬の黒い顔が頭をよぎる。別に離婚を責めるつもりはないが、
気が許せるせいか小さな苛立ちや怒りの矛先が和実に向けられる。

「あー、どいつもこいつも何でこんなときに限ってめんどくさいこと持ち込むんだよ」
「申し訳ない。……まぁ、それは置いといて。……随分急だったよね、お母さん」
心苦しさがあるのか和実から軽く謝りがはいる。そしてすぐさま本来の話に戻る。
「まあね。まだ実感が沸かないというか、信じられないというか……。でも、んなことも
言ってられないしね。……お父さんも気をつけたほうがいいですよ。お酒とか煙草の量多い人は
体のこと気にしたほうがいいです」
「ははは、孫と言うか子供増えたからね。定年までしっかり健康管理するよ。定年なっても
楽させてくれそうにないけど」

 和実の父はそう言って和実を一瞥したあと、少し申し訳なさそうに笑った。
私の両親より十歳年上だったはずで、そろそろそんな話題が出てもおかしくないころだろう。
ただ、いい意味で気を遣わないで話してくれるので、暗い気分を一時忘れさせてくれる。

「……そう言えばかずみんち犬飼ってたよね。元気にしてる?」
急にロボット犬が頭に浮かんだのは覚えがある。種類はよく解らないがダックスフントのような
犬を和実が飼っていたからだ。茶色と黒の毛色で足の短い、なにかと忙しい犬だった。

「だいぶ前に死んじゃった。もう七、八年なるかな。……突然どうした?」
「あ、いや。……子供がね。……犬飼いたいとかなんとかぬかしてはじめてさ」
 母が知らないうちに犬飼い始めてて。ロボットの。
そう口に出そうになったが、咄嗟に子供のせいにしてごまかす。

402「電子の瞳」 15/39:2012/08/10(金) 23:59:37 ID:RqRH2I3w0

「そう。……可愛かったけどね。ちゃんとわたしのクルマの音わかってて、クルマで帰ると
犬小屋から出てしっぽ振ってお出迎えしてくれるの。でも死んじゃうとやっぱ喪失感
みたいなのでかくてね。また飼いたいとは思うけどつらくなるからしばらくはいいかなって。
それに今は子供で忙しくてそれどころじゃないし」
「……そっか。犬って結構頭いいもんね。……で、話し戻して悪いけど、お母さんよく離婚
許してくれたね。大丈夫だった?」
「いろいろあったけど……。もうね、娘は憎くても孫は可愛いくてしかたないって感じ。
なんて言うか、もう孫がいればわたしなんかどうでもいいみたいな」
「あはは、わかるわかる。うちの親もそうだった」

 和実とずっと喋っていたかったがそういうわけにもいかず、束の間の気楽なおしゃべりは
和実の父が腰を上げたところで終わりとなる。葬式が終わって落ち着いたら速攻で家飲みしようと
約束し、玄関先で手を振り二人を見送る。
 夕暮れ。
淡い光の中を普通の自転車に乗って和実親子が帰っていく。平凡なはずの風景も、もう私には手が
届かないと思うと途端に悲しみがこみ上げてくる。だが、まだ始まったばかりで仕事は残っている。
滲んだ涙をごしごしと拭い、あとひと踏ん張りと気合を入れなおし、役目に戻る。

 四人兄弟の末っ子だった母。
だいぶ暗くなった頃、遠方から母の二人目の姉と兄が、空港から伯父の車に送られてやってきた。
ともに飛行機を使っても移動で数時間潰さなければならない場所で暮らしている。余程のことが
なければ顔を見ることはない。どちらの顔も父の葬式の時以来である。
 突然の死。早すぎる死。
ありきたりな会話が繰り返され皆また肩を落とす。そして二人が泣き明かした後、葬式や火葬後の
予定をいるもの皆で確認する。
 もう夜も九時をまわり、近隣から弔いに来る人もいない。
母の兄弟が揃い、改めて母を送るささやかな酒宴が始まる。そんな矢先、車の止まる音がした。

 喜久雄おじさん。
二つ年下の、死んだ父の弟が奥さんに送られてやってきた。

「……藍子。俺、今日泊まってっていいか?」
「あ、うん、いいよ。寝る場所子供の遊び部屋で散らかってるかもしんないけど」
焼香を上げたあとおじさんに尋ねられる。昨日の時点では行けるなら通夜にも顔を出すという
事だったがどうやら仕事の目処がついたのだろう。予定はしていなかったが、父と似て口数が
多く、場を明るくにぎやかにしてくれる人で断る理由はどこにもなかった――――――――
 

「美人薄命とはよく言ったもんだよなあ……」

 壁掛け時計の短針はほぼ真上を指している。
一旦帰る者は帰路につき、泊まっていく母の三人の兄弟と喜久雄おじさん、そして私が残る。
 父と母、中学の同級生で家もそれなりに近いことから、長女の伯母と喜久雄おじさんが中心と
なり昔話や最近の地元の話、家族そして病気のことなど、コップを片手に会話が続いていく。
 飲み明かすつもりもないが皆程々にお酒が強く、ちびちび飲みながらのんべんだらりと 
時を重ねていく。

「喜久雄クン。ちょっと聞き捨てならないわね」
「まあ私たちも美人姉妹ってもてはやされたけど、年も離れてたし泉は別格だったから」
二人の姉は六十二、六十。兄は五十六、末っ子の母は五十で喜久雄おじさんは四十八。
父のことも邦雄クンと呼んでいた人たちからすればまだまだ子供みたいなものだろう。
二人の伯母がくすくすと笑う。ほんの少し母の面影を残す伯父もまた苦笑いを浮かべている。
 この場の五人、酔いと思い出したようにこみ上げる涙で眼は赤い。ただ、それも嘆きの涙から
母を慕い想う涙に移ろいつつある。

403「電子の瞳」 16/39:2012/08/11(土) 00:01:21 ID:4w.gkcV.0

「いや、もちろん恵子姉さんも公子姉さんもべっぴんですよ、あたりきですよ。……でもね、
なんていうか、なんかいい人ほど早く死ぬっていうかね……」
「キクおじ。それもちょっと御幣あるんじゃね?」
「いちいち突っ込むなよ言葉のあやだからよ。藍子もなあ、もう少し黙ってりゃいい女なんだけど」
「よく言われます」
「その一言が余計なんだよ。なしてわからん?」

 伯父伯母がやれやれと言わんばかりに失笑する。
そしてじゃれる私を追い払うように手を振ったあとセカンドバッグを手に取り、喜久雄おじさん
は話を切り出した。

「もう三十年前になりますか……。
入籍する前から俺の家で暮らしてたんですけど、藍子できてお腹大きくなって泉さん仕事
辞めた時ですよ。仕事に出た最後の日だけど、お土産といいますか記念品貰いまして。
泉さんいわく、退職記念で貰ったけど使わないから代わりに使って、って俺にこれくれましてね」

 そう言って喜久雄おじさんは持ってきたセカンドバックから、もうあまり見る事の
なくなった小型のカセットプレーヤーを取り出した。
 大切な思い出なのだろう、そのプレーヤーはシルクのような真珠色のスカーフに丁寧に
包まれていた。

「多分初代だと思うんだけど、一世風靡したウォークマンですよ。ソニーの」
「――!?」

 思わぬところから、思わぬ名が飛び出してきた。
咄嗟に聞き返しそうになる。しかし私よりも先に伯父が驚いたように声を上げた。
「おー懐かしいな、それ俺も貰ったよ。……勝手に送られてきたんだけど」
「……泉仕事辞めたときでしょ? あのとき確かうちにはテレビ買ってくれたような?」
「そうそう。私の嫁ぎ先にも突然泉からテレビ送られてきた」
叔父に続き二人の伯母も驚き、どこか懐かしむような笑みを浮かべ会話に加わる。
「お母さんってソニーで働いてたの?」
私一人微妙に蚊帳の外になっている。が、ロボット犬が脳裏をかすめ聞かずにはいられなかった。

「いや、ソニー向けの電子部品作ってる工場ってだけで正式にはソニーじゃないな。
結構大きい工場だけど、名前も普通になんとか電子工業って感じだったからたぶん下請け孫受けか、
関連企業ぐらいだろうな」
「今の中国とか台湾みたいなもので弱電関係が勢いあった頃よね。泉も十八になったら
夜間の交代制で働くって言ってたわ。その分お金もいいからって」
伯父が答え伯母があいづちを入れる。無言の私をちらりと見たあと、喜久雄おじさんは話を続ける。

「それで、そのとき俺まだ高校生でしてね。本当は貰ったんじゃなくてわざわざ買ったんじゃと
疑いましたけど、貰ってしまえばこっちのもんで、周りに持ってる奴なんて誰もいなくて凄い
嬉しくてそれこそテープ擦り切れるまで聞いてましたよ。家にはモノラルのラジカセしかなかった
けど気分はステレオでね。そのあと兄貴も車買い換えるからって乗ってた軽自動車俺におろして
くれましてね。ラジオしかない車だったんでウォークマン聞きながら随分ドライブしたもんです。
二人で家建てる前で余裕なんてあるわけないのに、ちょっと早いけど高校卒業祝いだとか言って
無理しちゃってね。……うちの母親死んだ時も、兄貴のときも泉さんつきっきりで看病してくれて。
…………ほんとに泉さんにはどんだけ世話になったか」

「……俺には社内販売で安かったからって言ってたな」
「……あたしもそう聞いたわ」
「……うん」

404「電子の瞳」 17/39:2012/08/11(土) 00:03:00 ID:4w.gkcV.0

 昔話があだとなり、場に再び重い涙が蘇る。
しかしすぐにでも確かめたくて、はびこる涙を蹴散らしトイレに立つふりをしてさりげなく
居間を覗いた。

「そういうことか……」

 32型の液晶テレビ。
いままで特に気にしたことはなかったが、テレビのメーカーは案の定ソニーだった。
とくれば母の部屋にあるパソコンも、もはや見るまでもないだろう。

 ささやかな安堵感を覚え、ため息が漏れる。
何の前触れも無しに突然目の前に現れた犬型のペットロボット。
 意味が解らなかった。
そして気が動転していたとはいえ、その無機質な不気味さに私は躊躇うことなく蓋をした。
 しかし伯母達の話を聞いて母の想いはなんとなく理解できた。
ほんの三年しか努めていない私でさえ、勤め先だった銀行の口座は大切に使っているし
貯金やローンなどの金融商品はいの一番に勤め先だった銀行の商品を検討する。
 電機物が好きだった母。
それが十代後半の青春まっしぐらな頃に働いた職場でつちかわれたものならば、下請けや
関連企業だったとはいえそのメーカーに愛着を持つのは至極当然のことだろう。
 生活に余裕ができた今、昔少し関係のあった会社が作った最先端ペットロボット購入。
ついでにパソコンも。だけど年甲斐もなく何買ってんだと私にぶつくさ言われそうなので、
誰にも見せずに隠し持っていた。となれば話はすべて収まる。

 いやー、お母さんお茶目でさ。実は……。
更なる追い討ちでそれこそお通夜状態になるのは目に見えているが、そう切り出せば話の流れ的に
自然だろう。もうロボット犬を隠す必要も無い。喜久雄おじさんのウォークマンが隠れ蓑になって
くれるはずだ。そうトイレで一考し、わざとらしく何度も水を流して座敷に向かった。

「藍子。この家どうすんだ?まさか売ったりしないよな?」
「へ……?」

 しかし私の思惑は速攻で打ち砕かれる。
喜久雄おじさんの一言によって、座敷の話題は別のところにシフトされた。

「すぐにどうこうって話じゃないけど、なんとか残せないか?藍子も恵子姉さんも
そんな遠くなくて来やすい場所にあるんだから、売ったり取り壊したりしないで残そうや。
それで月一回、いや彼岸ごとでもいいからみんなで集まって兄貴と泉さん悼む会やらないか?」
「……ごめん。まだそこまで頭まわってなかったや。……残せるなら残したいけど」
思っていたこととあまりにもかけ離れた話題で思考がおぼつかない。

「藍子ちゃん、別に焦らなくてもいいわよ。でも家のことも含めて相続関係は手続きが
いろいろ面倒だから落ち着いたら早めに取り掛かったほうがいいわね。保険でも銀行でもこっち
から請求しない限り向こうは絶対お金出してくれないから。つらくて大変だとは思うけど、
家の中全部ひっくり返して通帳とか保険証書探しなさい。せっかく頑張って貯めたもの
どぶに捨てるようなまねしちゃ駄目よ」

 涙目ながらも、場がいきなり現実的で生臭い話になる。
父が死んだときはそういうことは一手に母が請け負ったし、ある程度準備も出来ていた。
しかし今回はあまりにも突然すぎて、とにかく葬儀のことにしか頭が廻らなかった。
 まだ葬式も終わってないうちから不謹慎かもしれない。
だが伯母の言うとおり落ち着いたら早めに着手したほうがいいだろう。


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