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ここだけ魔法少女の街ロールスレ かけら1個目
202
:
珠輝
◆ITqPX258yc
:2015/04/18(土) 23:20:16 ID:GviXzYr2
>>201
服を着なさい、と言われた樹心院の頭の上に、大きな疑問符がひとつ浮かぶ。
人心地ついて感じるようになった肌寒さと自分の醜態に気付くのは、それから一拍挟んでからのこと。
「ひゃんっ、見ないでくださいっ!」
灯された光を、自分の裸を明るみにするためのものだと勘違いしたのだろう。手をまえに突き出し、クッションの上でざっと仰け反った。
茹で蟹のように頬を赤らめ、下から見える大事なところを膝で隠しながらも、小さな魔法陣で自らを覆い
それが樹心院の身体を包み込んで消滅すれば、そこには黒百合女学院のブレザーをきっちりと着こなした少女がいた。
牢獄のような制服の存在に、今回ばかりは感謝せざるを得なかった。
「そう、ですね。他の魔法少女に勘付かれるかも分かりませんし、お願いします」
相手は市役所の職員。樹心院がド貧乏で、大した地位もない家の娘なのがバレている相手だ。
だからいつもより飾り気のない丁寧語を使って、提案に応じた。
黒百合と魔法少女と家庭の三重生活で猜疑心に苛まれている樹心院は、内心少しだけ佐藤のことを疑っている。
だが彼女は「久々に」と言っていた。これまでも、似たような事があったのだろう。
思えば――魔法少女がなぜこの街にしか存在しないのかは、誰も話題にしない。
何かが失われるのを恐れているかのように。そして、街の外で魔法を使えるか試したという話も聞かない。
いったい、何故。監視の網から逃れつつ魔法少女を続ける中で、忘れかけた好奇心が決め手となって。
樹心院はふわりと足場から飛び降り、車の助手席に座るのだった。
「……外では、魔法はおろか星のかけらも使えないんですね。
佐藤さんがいなければ、今頃変死体になっているところでした」
シートベルトを締めながら、窓の外を見る。物理的には何の違いも無いように思える市の境。
だがそこには、霊的で厳然たるボーダーが横たわっているらしかった。
203
:
市役所の佐藤さん
:2015/04/18(土) 23:33:08 ID:Z9uqPpTM
>>202
【乗ったのを確認したら、エンジン回します】
【普通の車とはちょっち違う振動ですが、具体的な違いは割愛】
【ちゃっちゃと結界を解除して、一般道へ】
「厳密には使えないってわけじゃなくて、すごく使いにくいの方が近いんだけど
慣らしゼロで出たらあんなものかなぁ。
まー、最近はやりのパワースポットの真上だからすごく楽って覚えておけばオッケー」
【微妙な訂正が入ります】
【瀬平戸への帰途は意外と安全運転。結構速そうな車なのに】
【なお、予告通り車内では喫煙はしません】
【そのかわり、ちょいちょいっと収納スペースを指さします】
【中に入ってるポッキー出してほしいそうで】
「まぁねぇ。いろいろ歪んでるの、いろいろ。
知ってる範囲でならいろいろ答えてあげられる。
知らないことは予想くらいしかあげれないけど、運転ついでの雑談なら付き合わえるかな。
というか、今結構眠くて危ないから、話振って」
【最後に聞き捨てならんことを言いましたが平常運行です】
【こうして近くで見れば、化粧でごまかしてるけどベースはまだ新卒に視えるレベルですね】
204
:
珠輝
◆ITqPX258yc
:2015/04/18(土) 23:56:23 ID:GviXzYr2
>>203
佐藤さんの説明には腑に落ちないところがあった。樹心院が知る限りにおいて、この街は昭和の大合併の産物だ。
「瀬平戸」としての歴史は短く、大きめの神社こそあるが、それ以上に霊験あらたかな話を耳にする場所ではない。
そんな場所でワン・ガール・アーミーと言うべき魔法少女を生み出すほどの力のうねりが発生するなんて。
事実起きているのだから仕方ないが、首を傾げざるを得ない。
「はい。喉につまらせないでくださいね」
ダッシュボードからポッキーを取り出し、袋を裂いて中の一本を佐藤さんの口に近づける。
――こういうご奉仕には慣れたものだ。火の車の家計を支えるために、この街では珍しいタイプの「カフェ」で働いていたことがある。
むろん黒に限りなく近いグレーなので、間違っても公務員の彼女の前では――いや、他の誰にも話さないが。
「……霊場、というものですか?
でもそれが魔法少女の条件なら、もっと大それた舞台がありそうなものですよね。
しかも私たちが今より大まじめに神様や不思議な力を信じていた頃じゃなくて、20世紀も半ばを過ぎてから……」
それから身の安全の確保も兼ねて、樹心院は魔法少女の謎に話題を戻した。
「そもそも、魔法少女ってみんなが言っているこれ……本当に、〝魔法少女〟なんでしょうか。
卵が先か鶏が先か、私にはわかりません」
205
:
市役所の佐藤さん
:2015/04/19(日) 00:08:29 ID:GVkIcBF6
>>204
「昔やりあった相手に言わせればね。
名前ってのはいろんなものを縛るらしいよ。
名前を握って言うこと聞かせるのは、言霊の一種っていってたっけか。
ほれ、ちょっと前の神かくし映画でもそんなシーンあったっしょ」
【もらったポッキー咥えながら夜道を運転】
【ときどき対向車のライトで横顔がふっと浮かぶ感じ】
【視えるのは、その相手にあんまりいい思い出はなさそうってこと】
「あたしらだって、さんざん奇跡に縋ってるんだし、
そういう昔からの何かの中に、いくつか本物があったって今更驚かないよ。
それがこの街ではあたしたちが使えるくらい濃い目なんだろう、ってくらいで
ソレ以上は深く知らなくても困らないもの」
【徐々に魔法の力が戻ってくる。もうこの辺からなら十分に飛べるはず】
「それなぁ。あたしのコスみたら多分腹かかえて笑うことになるからなぁ。
どっちが先かはわからないけど、経験で語らせてもらうなら
結構そのころの流行にのってる子、多いかな。めっちゃでっかいロボットみたいな魔法の鎧とかね。
あ、家どっち? 一応送るつもりだけど」
206
:
珠輝
◆ITqPX258yc
:2015/04/19(日) 00:30:52 ID:XyJA2LTc
>>205
「瀬平戸、せひらと、セヒラト……ああ」
佐藤の言わんとするところを察して、樹心院は深い溜息をついた。
神の作りし園に根を張る木。その果実を喰らったものは、永遠の生命を享受するという。
ふと、運転席に腰掛ける女性の瑞々しい頬が恐ろしく見えた。
彼女もまた、禁断の果実を味わった一人なのだろうか。
「でも、本当にそれだけだったら、作ろうと思えばいくらでも〝魔法少女の街〟が生まれてしまいそうですよ。
と言うか、私がわるい魔法少女だったら、手を尽くしてそうすると思います」
「……深く知らなくても困らない、確かにそうかもしれない。でも私はそう思いません。
あっ、もちろん好奇心もありますよ。だけれど私には、何とかしないといけないことがある気がするんです。
自分自身と、みんなの平穏のために」
さっと、制服の校章のあたりを指でなぞって見せる。
脳裏に過るのは、黒百合生徒会。魔法少女の力を管理し、絶対の支配力を得ることを目的とする集団。
やむを得ず街の内側に収まっているその勢力が、もしも拡大の機会を得たとしたら?
「へえ、なるほど。最近はなんか……猛々しい武器を持っている子が多いですよね。
全力全開、血だまりスケッチ、って感じの――まあ、私もそうなんですけど」
家はこの辺りです、とカーナビの地図を指さす時、樹心院は一抹の寂しさを感じた。
学校という世界から遠く離れた佐藤さんと話している間、彼女は不思議な安心感と、頼りがいを覚えていたのだ。
シワひとつない――だけれど少しばかり陰のある横顔に注ぐ視線は、ちょっとばかし熱い。
207
:
市役所の佐藤さん
:2015/04/19(日) 00:40:22 ID:GVkIcBF6
>>206
「つまりたぶん、“それだけ”じゃないんだろうね。
でも残念、その何かはあたしは知らないんだ。
知ってたらとりあえず殴るか蹴るかしにいってるね。
願いを叶えるのはいいけど、もうちょい加減しろって」
【間違いなく、禁断の果実を喰った側】
【しかも結構不本意な形で答えが返ってきた側】
「あたしら、どうやっても表側に出れないから、記録とかはほとんど残せないし
残しても個人のものが限界だろうしねぇ。
あー、このまま行くとあたしは物知り長老枠になるのか、こわっ」
【信号待ちからアクセル踏み直し。気がつけば、周りの風景はすっかり街中。
外周部に多い大型店舗と太い道】
【長老自身も全部知っているわけではないそうです】
【最近の魔具のはやりに対して「あたしのなんかこんなんだもん」と具現化して手渡されたのは
ピンクと星と羽のめちゃファンシーなステッキでした】
【これが、時代か……】
「ほい、位置了解。さっさと帰ろう」
208
:
珠輝
◆ITqPX258yc
:2015/04/19(日) 01:05:31 ID:XyJA2LTc
>>207
不思議な力で夢と笑いをふりまく女の子は、時間をかけて鉄の羽根纏った戦乙女へと変わった。
ゆずれない願いは、いつの間にか欲深い憧れにすげかわった。
「……卑下しないでください。私は、こういうの好きですよ。
杖をぎゅっと握りしめて、大切な友達と一緒に星空へ身体を預けられたら――きっと、楽しいんでしょうね」
幼き日の佐藤が抱いた魔法少女の原風景に眼を輝かせながら、樹心院は想いを巡らせる。
魔法少女の姿形、その在り方は、力を振るう者の心のあり方が決める。
血腥い欠片の奪い合いに身を投じるつもりがなかった自分でさえ、無意識に『武器』を手にすることを望んだ。
鮮やかなときめきだけを胸に空を舞うなんてことは、この街ではもう叶わないのだろうか。
「私のなんて、この車のトランクに入らないような剣です。切っ先が開けば弾丸まで撃っちゃって。
魔法少女って聞いただけで、反射的に、身を守らないとって思ってたみたい」
樹心院は、意外とテレビを見る方だ。何せ一度買ってしまえば一番金のかからない娯楽である。
でもって夜更かししながら勉強するタチだったから、そういうたぐいのアニメはよく楽しんでいた。
――もちろん21世紀だから、人は死ぬし、どでかいビームは撃つし、ステゴロだってやるような手合いだが。
「最初っから考えが間違ってたのかしら、私……」
結局は自分も、黒百合の殺気立った空気と近年の魔法少女の風潮に当てられた一人だったわけか。
自嘲気味な独り言を零しながら、窓の外を見る。
そこはもういつもの路地で、住み慣れたボロ屋はもう数百米先にあった。
209
:
市役所の佐藤さん
:2015/04/19(日) 01:18:14 ID:GVkIcBF6
>>208
「もうすぐ30なのにそれ振るの辛いんだよね、絵的に。
タバコもお酒も嗜むのにコレよ」
【どうやら気に入ってないわけではなかったようです】
【年齢的なイタさは確かにあるのかもしれない】
【変身すると髪の色まで変わるとかはさすがに言えねっす】
「ほい、そろそろつくよー。
迷えるお嬢ちゃんの悩みくらいなら、疲れてなけりゃ聞いてやるから
今夜はもうゆっくり休みなさいな。ほら名刺」
【住宅街に入って手頃な距離になったところで車止めます】
「割とまじめな話、今の生活がアレなら廃業するか他のとこいったほうがいいさ。
無理してお嬢様やる必要はないし、無理して魔法少女やる必要もない。
一般人の記憶操作くらいならしてやっから、間違ってたと思うならやりなおしな。
あんたの若さはまだ本物なんだろうしね」
【年上のお姉さんからのアドバイス】
【志半ばで倒れた後輩をたくさん見てきたゆえの発言である】
【さ、早くかえりたまへ】
//
そろそろおわりませう
210
:
珠輝
◆ITqPX258yc
:2015/04/19(日) 01:38:26 ID:XyJA2LTc
>>209
受け取った名刺を素早く胸ポケットに忍ばせて、樹心院は深々と頭を下げた。
ある意味では当然のことなのだが、魔法『少女』の事情を相談できる成人女性なんていうのはそうそう居ない。
だからこそ、この出会いは得難いものだと言えた。
そんな佐藤さんが真剣なトーンで街からの退去を提案すると、樹心院はきゅ、と目を閉じて考えたが。
やがてひとつひとつ言葉を選ぶようにして、ゆっくり瞼と唇を開く。
「……自分のことだけなら、無理なんてしないですよ。
だけれど私には、お母さんと、妹と――どうしても、本当の気持ちを知りたい子がいるんです」
「それに佐藤さんだって、魔法少女であることからも、この街からも逃げてないじゃないですか。
そんな人に楽な道を勧められたところで、おいそれと首を縦に振れませんよね」
貴人の端くれとして整えた微笑ではなく、歳相応の悪戯っぽい笑みで、口の端が釣り上がる。
街の秘密を知った以上は、運命共同体。もしかしたら樹心院はそういう風に思っているのかもしれなかった。
「今日はありがとうございました。市役所の、佐藤さん」
やがて車が自宅のほど近くで止まると、樹心院はそう言い残して、車の外に出ようとするだろう。
街の裏側でまで市民の安全に気をやる大人。佐藤の有り様に対する心からの敬意を、その言葉に込めて。
211
:
市役所の佐藤さん
:2015/04/19(日) 01:54:50 ID:GVkIcBF6
>>210
【やっべぇ、やらかした。この子、思った以上に“若い”ぞ!?】
「いんやぁ、街だけじゃなくて市内の同じ学校って手も一応あるよ?
……あと褒めるな。そんなに立派なもんじゃない。
このまま「だれでもないいないはずの誰か」になるよりマシってだけね」
【願いが不老不死系の魔法少女がいたら止めてあげてください】
【いずれ全部に置いて行かれることになりますから!】
「んじゃまぁ、がんばり」
【走り去るメシエ天体M45のマーク】
【数分後、車の中からこそばゆいいいという絶叫があがったのはヒミツよ】
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