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僕の名前はいようです
78
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:00:39 ID:ic4y2bSA0
本当に?
本当にそうなのでしょうか?
友人達が不思議に思うのも無理がない気がするのです。
急に鳥肌がぶわりと立ちました。全身の産毛が逆立つような、気持ちの悪い感覚です。
僕、僕だけ顔つきも似ていない気がします。
もしかして、もしかしなくても、僕は家族と血が繋がっていないのではないでしょうか。
友人達が言うように拾われてきたのか、養子を貰ったのか、わかりません。
考えないようにしようとするけれど、しばらくすると薬が切れ痒みがぶり返したようになるのです。
だって、どうして、僕だけ!みーんな揃っているのに、輪を乱すように急に方向転換し過ぎなんです。舵取るの下手すぎやしませんか?
名前なんて、なんて事ない筈です。理由があってこの名前にしたのでしょう。さすがに何の理由もない訳はない、ですよね?
聞いてみれば良い。聞いてみればわかることです。そう、ただ聞くだけ。
……でも、聞くのが怖いんです。
79
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:01:01 ID:ic4y2bSA0
( ><)(だって)
( ><)(もし理由がなかったらただの仲間はずれだし、理由があったとして…みんなが言うみたいに全然違う家の子だからとかだったらどうすれば良いのでしょう)
(;><)(だって、だって僕は……)
80
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:01:33 ID:ic4y2bSA0
( ><)「……」
( ´_ゝ`)「どうしたビロード、おやつ食べないのか」
(´<_` )「ぼうっとしていると兄者に食われるぞ」
( ><)「僕、僕……」
(´<_` )「ん?」
( ><)「……兄者と弟者はそっくりなんです」
(´<_` )「いくらビロードでも怒るぞそんなディス」
( ´_ゝ`)「今の別に悪口ではなくない?」
( ><)「姉者も、みんな……似てるのに」
( ><)「……」
( ´_ゝ`)「おいビロード、なんかあったのか?」
81
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:02:02 ID:ic4y2bSA0
家に帰ってからずっと考えに考えました。
仲間はずれにならない方法を。
兄者と弟者が何事かと近寄ってきて、僕は思い切り顔を上げます。
( ><)「…僕…は…」
( ><)「僕は今から語尾に「じゃ」を付けるのじゃ!」
( ´_ゝ`)「「何で?」」(´<_` )
( ´_ゝ`)「早めの厨二病か?」
(´<_` )「兄者の時に比べたら可愛いものだが」
( ´_ゝ`)「弟者も酷いもんだった、包帯を全身に巻き出して」
∬´_ゝ`)「みんな揃っておやつも食べないでどうしたのよ」
( ><)「姉者!おかえりなのじゃ!」
∬´_ゝ`)「あらビロード、のじゃ語尾にキャラ変したの?」
82
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:02:38 ID:ic4y2bSA0
兄も姉も静かに慌てているのがわかります。
心配しないでください、と僕は心の中で伝えました。おかしくなったわけじゃ無いんです。ただ、『間違い』を『直したい』だけなんです。
( ><)「みんなのことも名前で呼ぶのはやめるのじゃ!」
( ><)「お兄ちゃん、弟お兄ちゃん、お姉ちゃん」
(´<_` )「俺だけ矛盾してないか?」
( ><)「お父ちゃんお母ちゃんなんですじゃ!」
( ´_ゝ`)「語尾が混乱してるな」
( ><)「だから、だから僕のことも名前で呼ばないでくださいじゃ!」
( ><)「末っ子って呼んでくださいじゃ!」
( ´_ゝ`)「「本当にどうしたんだビロード」」(´<_` )
( ><)「呼ばないで!」
( ><)「ビロードって呼ばないでください!」
83
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:03:08 ID:ic4y2bSA0
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ビロードが大きな声を出しているのは珍しいね」
( ><)「お父ちゃん!僕は末っ子です!」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「うん、そうだね」
( ><)「だから僕のことは末っ子と呼んでくださいじゃ!」
84
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:03:52 ID:ic4y2bSA0
@@@
@#_、_@
( ,_ノ` )「何騒いでるんだい」
( ><)「お母ちゃん、僕を末っ子と呼ぶようにしてください!じゃ!」
@@@
@#_、_@
( ,_ノ` )「馬鹿なこと言うんじゃないよ」
( ><)「聞いてください。僕は」
@@@
@#_、_@
( ,_ノ` )「家族をどう呼ぶかは好きにすりゃいいが、アンタのことをそんなふうに呼ぶわけないだろう。ビロードはビロードだよ」
(;><)「嫌です!」
(;><)「やなんです!いやだ!なんで僕だけ、僕だけ違う…!」
(。><)「うわぁぁあああん!!母者のばか!!」
@@@
@#_、_@
( ,_ノ` )「……」
85
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:04:39 ID:ic4y2bSA0
母者の顔を見れなくなって、周りにいたみんなの顔も見たくなくて、僕は走って自分の部屋へ逃げました。
酷いことを言いました。だけど、でも、母者だって僕の話を聞いてくれたって良いはずです。
鼻を啜って塞ぎ込んでいると、部屋のドアをノックされました。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ビロード、部屋に入ってもいい?」
(。><)「うっ、うっ……良いです」
86
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:05:08 ID:ic4y2bSA0
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ありがとう。ビロードが生まれた時の写真、一緒に見よう」
( ><)「……生まれた時の写真、あるんですか?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「あるよー。ビロードは他の兄弟と歳が離れているから家族みんなが写真撮ってて、一番あるよ」
( ><)「……このちいちゃいのが、僕なんです?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「そう」
父者が手にしている分厚いアルバムの一番最初のページにいた、ほんとうに小さな赤ちゃんを見て僕は目を擦りました。赤ちゃんが小さいことは知っています。それにしても、小さすぎました。
父者は柔らかい笑みを写真に向け、それからこちらを見ました。
87
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:05:48 ID:ic4y2bSA0
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ビロードが母者のお腹にいる時ね、エコー写真を見て何故かみんな当たり前に君が女の子だろうと思ってた。だから最初はね、『妹者』って名前を付けようって話をしていたんだ」
( ><)「者が付く名前だ」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「うん、僕も母者も同じ字が付いていたから子どもにもつけようかって『者』わ付けていてね。特に強いこだわりがあったわけじゃないんだけど、そういうふうにしてきていたんだよね」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「名前も決まったし産まれて来るのが楽しみだった。母者は見ての通り強い人で……兄者達の時も超安産だったから何も心配はいらないと思っていた」
88
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:06:22 ID:ic4y2bSA0
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「だけど、君は早く生まれて来てくれてね。早く会えたのは嬉しかったけれど、すごく危ない状況になった。初めて見た君はすっごく小さくてチューブに繋がれていて、家族みんなで祈った。どうかこの子の命を助けてくださいって」
( ><)「……」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「君は生きてくれた。みんなの願いというより君が頑張ったんだよ。チューブが外れて看護師さんが君を出してくれたんだけど、その時に包まれていたビロードの布がとてもとても美しく見えてね」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「その布からビロードって名前にしたんだ。強くて優しくて美しいこの布のような人でいられますようにって」
(。><)「……」
89
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:06:51 ID:ic4y2bSA0
そんな意味が込められていたこと、初めて知りました。
僕が生まれた時のことも聞いたことがありませんでした。また涙が出て落ちていきます。父者の大きな手が僕の頭を撫でました。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「『者』が付いていないことで、君に悲しい思いをさせてしまったんだね」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「ごめんね、ビロード」
( ><)「僕……僕はみんなにビロードって呼ばれるの、嫌いじゃないんです…でも、ただ、ただね、仲間はずれが怖かったんです」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「怖い?」
( ><)「僕、僕は本当にこの家の子なんですか?」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「……兄者達の小さい頃の写真も見てみようか」
心なしか微笑みながら、父者は違うアルバムを開きます。
90
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:07:18 ID:ic4y2bSA0
『( >_ゝ<)
(>く_< ) 』
『∬>_ゝ<)』
( ><)「これ、兄者たちですか?僕に似てるんです!」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「うん、みんなそっくりなんだ。我が家は」
古い写真に映る子どもたちはみんな僕と同じような顔をしています。
兄者も弟者も姉者も、みんな。
91
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:07:38 ID:ic4y2bSA0
( ><)「良かった」
( ><)「良かったです」
(。><)「だって僕、……みんながすきだから…」
ただの仲間はずれだったら、全然違う家の子だからとかだったらどうすれば良いのかと思いました。
だって、だって僕は家族のことが好きだから。
92
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:08:19 ID:ic4y2bSA0
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「うん。みんなもビロードが大好きなんだよ」
( ><)「僕、僕…母者に謝ります」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「うん、そうだね」
( ><)「僕、ビロードって名前で良かったです」
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「母者にも教えてあげよう、一緒にリビング戻ろうか」
( ><)「はい!」
93
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:09:31 ID:ic4y2bSA0
アルバムを抱えて部屋をあとにします。
例え『者』が付いていなくても、僕はこの家族の、流石家の一員だって思うのです。
ごめんねを言った後、母者に骨が折れそうなくらい抱きしめられたけど身体が頑丈で無事だったからとかではなく、家族みんなで笑った顔がやっぱりそっくりだったから。
.
94
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:09:57 ID:ic4y2bSA0
4.流石家の者 終
.
95
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 15:12:02 ID:ic4y2bSA0
前回が1月だった事に驚いております。
コメントありがとうございます。この作品に関しましてはお好きに考察なさってもらって大丈夫です。
こちらも楽しいので。
ありがとうございました。
.
96
:
名無しさん
:2025/05/23(金) 23:53:22 ID:tD7s00lo0
乙
97
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 15:52:06 ID:Ov2awEqc0
乙です!
さすが流石家はあったかい笑
自分も苗字が珍名なので小学生の時は良くいじられて、仲間外れ感に共感しました!
98
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:20:17 ID:W581cpzM0
5. 靡世璃
.
99
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:20:41 ID:W581cpzM0
||‘、'||「あ」
(*・Ω・*)「何」
||‘、'||「いや」
姉と同じ名前の人が、いた。
カラオケの待合の表に書かれた名前を見て漏れてしまった言葉に、耳聡い隣人がどうしたのか聞いてきたので、ポツリとそう答えた。
100
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:21:10 ID:W581cpzM0
(*・Ω・*)「まぁ、いるんじゃないの?唯一無二の名前でなければ」
なんて事ないように返されて、ついムッとした気持ちになる。それはそうなんだけど、と前置きをして早口にならないように言葉を続ける。
||‘、'||「読み方はまぁまぁある名前なんだけど、漢字が三文字全部まったく一緒の人って見たこと無かったんだよ」
(*・Ω・*)「本人じゃないんだ?」
||‘、'||「うん、たぶん」
きっとこんな場所にはいないだろう。勝手な予想だけど恐らくは合ってるはずだ。
姉はこんな、家から近い場所に来るはずがない。
(*・Ω・*)「ていうかねーちゃん居たん?にーちゃんの話はよく聞くけど」
||‘、'||「だいぶ昔に家出て行ったから、今どこで何やってどう生きてるのかも知らないんだよね」
101
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:21:44 ID:W581cpzM0
姉とは一回り年が離れており、実をいうともうその離れた年数よりも長い間会っていなかった。なんならきっと、今後一生会うことはないとさえ思っている。
家出というより失踪レベルで居なくなって、探しても探しても見つからず、ついにうちの近所の人の中で姉は亡くなった事になっているのだから。
(*・Ω・*)「どんな人?」
||‘、'||「わかんない。だって最後に会ったの、向こうは高校生でこっちは幼稚園児だよ。反抗期が長くてひどく不安定で、バッド持って追っかけ回されたことは覚えてるけど、そんな、今もそうとは限らないしねえ」
(*・Ω・*)「やば、怖い人だったんだ」
||‘、'||「どうだろ」
102
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:22:22 ID:W581cpzM0
どうなんだろう。改めて姉について考えることがあるとは思わず、少しだけ空を見上げるような気持ちで思い返す。怖い人、そりゃ兄の部活で使うバッドを勝手に振り回す様は怖かったけど、でも、だけど。
||‘、'||「……うちのお母さんってさ、悪い人ではないけど、いい親ではなかったみたいなのね」
||‘、'||「だから結構、姉が学生の頃は色々厳しくやってたみたいで、まあだからってバッドを野球以外に使うのはどうかと思うけどさ、しょうがないって思うようなこともあったと思うんだよね」
(*・Ω・*)「ふうん」
||‘、'||「会話らしい会話もしたこと、なかったんだけど」
103
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:23:00 ID:W581cpzM0
あの鬼の形相を思い起こしても「怖かったなぁ」とのんびり構えている自分がいて不思議だった。怖かった、確かにそうだけれど、別に嫌いだとかの感情が含まれていないようなのだ。
多分だが、母に倣って姉もきっと悪い人ではなかったのではなかろうか。いい姉ではなかっただけで。
.
104
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:23:30 ID:W581cpzM0
||‘、'||「……親子丼をさ」
(*・Ω・*)「うん?」
||‘、'||「一回、親子丼作ってくれたことがあったんだ。母親が体調悪い時があって、代わりにご飯作るっつって。あの時はまだ安定してたのかな。自分の分だけ作ったのかと思ったけど、おこぼれもらったの」
(*・Ω・*)「へえ」
||‘、'||「あれさ、思い出補正かもしれないけど、なんかうまかったんだよな」
||‘、'||「大人になって自分で親子丼作ってもあの味にはなんないの」
(*・Ω・*)「じゃあ、もし今度会うことがあったらさ、隠し味に何入れたか聞けばいいじゃん」
||‘、'||「うーん。さすがにもし会えたら一発殴るくらいはしたいなあ」
(*・Ω・*)「じゃあ聞けねえなあ」
||‘、'||「しゃーない。思い出は思い出のまま、消化したいね」
105
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:23:57 ID:W581cpzM0
きっと姉本人にはもう一生会えないが、そんなことはどうでもよかった。
同じ名前の人を見かけて、たまに脳内に思い出として出てくるぐらいがちょうどいい距離。会わなくていい。思い出の親子丼と同じく、姉は思い出のまま私の人生に再登場することはなくていいのだ。
.
106
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:24:27 ID:W581cpzM0
(*・Ω・*)「親子丼食べたくなってきた」
||‘、'||「歌い終わったら駅前にある和食屋さん行くかあ」
(*・Ω・*)「賛成ー」
話し込んでいる間に客が捌けたようで、部屋を案内される。姉の話はそこで終わった。
107
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:24:59 ID:W581cpzM0
||‘、'||(……うん)
||‘ー'||(懐かしい味)
程よい空腹感に舌がざらつく、想像上の親子丼は、やはりどうしてだかうまかった。
.
108
:
名無しさん
:2025/05/24(土) 20:25:30 ID:W581cpzM0
5.姉の名前 終
.
109
:
名無しさん
:2025/05/26(月) 08:07:43 ID:bWSrpjEM0
乙
110
:
名無しさん
:2025/05/27(火) 00:39:45 ID:.5HZqHh60
乙乙!
4話目、父者優しくて素敵なお父さんだ
ヘリカルちゃんとジョルジュ君はリアルおままごと得意そう
5話目、心配や虚しさすら湧かないどうしようもない縁の薄さで、店内を見回す事すらしなかったんだろうな…
親子丼がどんな味だったか書かれていない分、色んな味付けの親子丼が読んだ人の頭に浮かんでるんだろうな。
自分は薄味寄りだけどなぜかご飯が進む感じの味で想像しました。
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