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('A`)恋不知のようです
1
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 22:37:02 ID:oULNpCeA0
オレンジデー祭り参加作品です
39
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:03:17 ID:oULNpCeA0
(;'A`)「手首を掴んだのは、反射的にいうか……咄嗟に、ってやつで……」
(;'A`)「本当にごめん。俺、どうかしてた」
:川; - ):
川; - )「モララー……『充電してきて』……」
( ・∀・)「承知しました。充電モードへ移行します」
40
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:03:45 ID:oULNpCeA0
川; - )「もう二度と、許可なく触らないで」
(;'A`)「ああ、もちろんだ」
川; - )「モララー以外に触られるなんて反吐が出る……」
川; - )「どうして触ったりなんかしたの?」
川; - )「……約束したのに」
('A`)「……」
どうしてだろう。
わからない。
41
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:04:13 ID:oULNpCeA0
なぜ俺はリビングで眠るクーを見て苛立ったのだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「トソンって最近彼氏とどうなのー?」
(゚、゚トソン「彼氏? ああ、ジョルジュですか……実は買い換えまして」
モララーが作った弁当を胃に流し込む。
完璧な栄養バランス。俺好みの味付け。腹を満たし、かつ午後眠くならない程度の量。非の打ちどころがない。
42
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:04:49 ID:oULNpCeA0
ミセ;*゚ー゚)リ「えー!? あんなに溺愛してたのに!?」
(゚、゚トソン「なんというか、飽きてしまって……次は顔も性格もガラッと変えようかなと」
ミセ*゚ー゚)リ「ああ、それわかるかも。うちも最近マンネリだもん。新しい彼氏欲しいなぁ」
配偶者は変えられない。
だけど恋人ならいくらでも作れる。作り変えられる。
なんて自由な世界だろう。
43
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:05:12 ID:oULNpCeA0
('A`)(素晴らしいな)
誰もが恋愛できる世界。恋人を作れる世界。
理想の相手に身を委ね、心穏やかに過ごせる世界。
('A`)(素晴らしいじゃないか)
44
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:06:09 ID:oULNpCeA0
世界がそうであるように、俺もそうあるべきなんだ。
人間同士の恋愛などデメリットばかりで不合理以外の何物でもない。
かつて人間同士の恋愛が当たり前だった時代は、痴情のもつれだとかいう馬鹿馬鹿しいこの上ないものをきっかけに事件が起きていたというじゃないか。
映画でさえ、相手とうまく意思疎通を図れずみっともなく喚き散らす姿が描かれている。
あんな理性のない獣のような様子を『恋愛』と呼ぶだなんて、昔の人間は頭がどうかしている。
気持ちが悪い。まともじゃない。常識的に考えてありえない。
('A`)(俺もそうあるべきなんだ)
45
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:06:41 ID:oULNpCeA0
そうだ、俺もアンドロイドを買おう。
周囲から煩わしいお節介を焼かれることもなくなる。恋人がいれば生活に張りも出る。いいこと尽くめじゃないか。
アンドロイドの選び方をクーに聞いてみようか。それをきっかけに会話も増えるはずだ。
('∀`)(そうだよ、もっと早くそうしていればよかったんだ。馬鹿だな、俺は)
咀嚼していた卵焼きが胃袋に落ちる。
エネルギーが充電されていくような感覚。視界が開けていく。
これが天啓に撃たれたというやつだろうか、気分も軽い。
46
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:07:20 ID:oULNpCeA0
('∀`)(金はあるんだし、思う存分カスタムしよう。せっかくなら好みの外見にしないと)
思えば、自分の好みを考えたことがなかった。
今までアンドロイドを持ったことがないのだから当然か。
家事のことも考えるなら、背は高いほうが便利かもしれない。
柔らかそうなスカートよりも動きやすいパンツスタイルが望ましい。
髪は長すぎても邪魔になりそうだから、肩より少し下くらいのまっすぐな黒髪がいい。
切れ長の瞳に薄い唇。俺に対して媚びを売らない、ともすれば冷たさを感じるくらいの性格がいい。
47
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:08:16 ID:oULNpCeA0
('A`)(でもそれって、どこかで)
川 ゚ -゚)
('A`)(あれ?)
川 ゚ -゚)
('A`)(……え?)
川 ー )
48
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:09:11 ID:oULNpCeA0
クーと初めて会った日のことは、今でも鮮明に思い出せる。
春の花畑を背景に映えるパンツスーツも、窓の外に視線を向ける横顔も、パスタを巻いたフォークを口に運ぶ仕草も。
日差しの中で笑っていたかもしれない表情も。
( A )(どうして、俺は)
どうして忘れられないんだ。
些細な仕草が、何気ない言葉が、いつまでも脳裏に焼き付いて離れないんだ。
そういえば前に見た映画でも主人公が同じことを言っていた。
49
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:09:31 ID:oULNpCeA0
( A )(ああ、そうか)
( A )(これは……そうだったのか)
俺は知っている。
この感情は、
.
50
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:10:00 ID:oULNpCeA0
俺もアンドロイドを私利私欲のままに愛せたのなら。
そうできる人間ならどれほどよかっただろう。
('A`)「モララー」
( ・∀・)「はい、ドクオさん。どうし――」
完璧なアンドロイドであるはずのモララーは、貧弱な人間である俺の一撃に呆気なく地を這った。
51
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:10:20 ID:oULNpCeA0
( ∀ )「エラーが発生しました。再起動してください」
('A`)「今までありがとう。お前が作る料理、本当に美味しかったよ」
( ∀ )「エラーが発生しました。再起動してください」
('A`)「けど、ごめんな」
( ∀ )「エラーが発生しました。再起動してください」
('A`)「俺、お前のこと許せないや」
俺は渾身の力を振り絞って、モララーの頭目掛けて花瓶を振り抜いた。
52
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:11:10 ID:oULNpCeA0
少し前に、クーに手料理を振る舞ったことがある。
恥ずかしながら映画の影響で、主人公が手料理を恋人に振る舞う場面が印象的だった。
映画ではそれをなんてことのない日常として描いていた。
だけどその時の登場人物達がやけに幸せそうで。
ストーリーも結末もおぼろげにしか覚えていないのに、その場面だけは鮮明に覚えていた。
53
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:11:33 ID:oULNpCeA0
川 ゚ -゚)「料理を作ったから食べてほしい?」
川 ゚ -゚)「別に構わないが、なぜわざわざ? いや、責めているわけではないが」
川 ゚ -゚)「モララーに作ってもらえばいいじゃないか。君が作る必要はないだろう?」
.
54
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:12:20 ID:oULNpCeA0
('A`)「あ、そうだ」
('A`)「肉をうまく焼くコツ、聞いておけばよかったな」
( ∀ )
55
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:13:28 ID:oULNpCeA0
モララーの力があればいくらでも抵抗できたし、俺を返り討ちにするのも容易だっただろう。
それができなかったのは所有者に反抗することを許されていないから。
こいつはどこまでもアンドロイドなのだ。
アンドロイドはその用途上、頑丈に作られている。
しかし意図的に何度も衝撃を加えれば話は別だ。
辺りにあったものを使って何度も何度も何度も何度も何度も殴打した。
モララーはひっきりなしにエラーコードを吐いていたものの、やがて動かなくなった。
56
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:13:57 ID:oULNpCeA0
俺は動かなくなったモララーを見下ろす。
特に念入りに殴打した頭部はひしゃげ、潰れていた。
倒れた際に打ち付けた部分は人工皮膚が破れ、その下の装甲を覗かせている。
('A`)
( ∀ )
耳障りな機械音が聞こえなくなった部屋は静かだった。
だから背後から聞こえた物音にはすぐ気が付いた。
57
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:14:19 ID:oULNpCeA0
川 ゚ -゚)
('A`)
物音を不審に思ったのだろう。強盗か何かと思ったのか、足音を立てないように二階から降りてきたらしい。
クーの表情は、結婚して数年間一度も見たことのないものだった。
唇を引き結び、瞼を極限まで開いている。驚愕とも恐れとも怒りともつかない、あるいはそのすべてのような、そんな顔をしている。
58
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:15:07 ID:oULNpCeA0
川 ゚ -゚)「モララー」
('A`)
しかしその視線は、もはや修復不可能なアンドロイドのみに注がれていた。
('A`)(お前は、動いている間も、壊れた後ですらも、クーの心に居座るのか)
俺とクーは視線を絡ませたことすらないのに。
59
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:15:47 ID:oULNpCeA0
初めて会った日から、クーは俺を見ていなかった。
視界に入ることはあっただろう。ただ、それだけだ。
クーの視線は一度たりとも俺を射てない。
彼女の関心はすべてモララーのものだった。
('A`)「え」
背中に軽い衝撃。
振り返る。
60
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:16:12 ID:oULNpCeA0
川 - )
クーが俺の背に凭れ掛かっている。
先日手首を掴んでしまった時以来だ。服を通して、クーの体の柔らかさが伝わってくる。
それにしても腰のあたりがやけに冷たい。
('A`)「……クー」
俺の腰には包丁が突き刺さっていた。
自分の腰から飛び出す柄を見た瞬間、その部分が急速に熱を帯び、心臓がそこに移動したかのように脈を打ちだす。
61
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:16:53 ID:oULNpCeA0
クーは柄をぐるりと半回転させると俺を突き飛ばした。
俺は力なくよろめき、モララーの横に倒れ込む。体がうまく動かない。
目だけでなんとか見上げると、目を血走らせたクーがいた。
川д川「……よくも」
川゚д川「よくも、私のモララーを」
( ∀ )
その日俺は、初めてクーと目が合った。
62
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:17:22 ID:oULNpCeA0
クーの瞳は人生で見た何よりも美しかった。
映画で腐るほど聞いた「世界で一番綺麗だ」という褒め言葉。
とんでもない。世界で一番美しいのは、紛れもなく今俺の目の前にあるものだ。
端正な顔をこれ以上ないほどに歪めている。
殺意の込められた眼差しが俺に向けられている。
俺だけに向けられている!
63
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:18:18 ID:oULNpCeA0
今この瞬間、クーの心を満たしているのは俺なんだ。
モララーとかいう作り物の機械じゃない。
憎悪も、殺意も、全部全部全部俺のものなんだ!
( ∀ )(嬉しい。嬉しいよ、クー)
クーが俺の背に刺さった包丁を抜き取る。
痛みは感じなかった。やけに寒く、全身が小刻みに震えていた。
ぼやけていく視界の中で、包丁を振り上げるクーが見えた。
64
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:18:38 ID:oULNpCeA0
( ∀ )(ああ、幸せだ)
ずっと理解できなかった。
誰かを愛するということが。
他人のために泣き、喚き、心を砕くということが。
65
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:18:58 ID:oULNpCeA0
( ∀ )(やっとわかった。理解できた)
( ∀ )(クー、俺は、君のことを、)
俺は今、猛烈に恋をしている。
.
66
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/24(水) 23:19:23 ID:oULNpCeA0
以上です。読んでいただきありがとうございました!
67
:
名無しさん
:2024/04/26(金) 02:07:52 ID:65Sji9MU0
乙!やるせないな……
アンドロイドとの恋愛が当たり前のこの世界、ちょっといいかもって思っちゃった
68
:
名無しさん
:2024/04/26(金) 22:30:00 ID:BXQHn7wk0
乙乙乙
読み応えあった!
結婚は友情の先にあるものだと信じたいタイプなので、友達以下の仲の二人が夫婦として同居してるのが、凄く怖い世界に感じた。
他の夫婦はどんな感じかオムニバスで読んでみたい作品でした
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