まっしろなようです - 1634884753

1： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:39:13 ID:CHCTqVrI0: .
24： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:51:38 ID:CHCTqVrI0: （-@∀@)「えっとね、内藤さん。次はご家族の方と来てもらえるかな？」

（；＾ω＾）「な、なんでですかお？診察も何もしてないのにそんな……重病みたいな」

（-@∀@)「診察はこの前来た時にしたよ」

（；＾ω＾）「……僕はこの病院に来るの初めてですお……」

（-@∀@)「内藤さんね、あなたこの病院に来たの」

（-@∀@)「3回目ですよ」

（　＾ω＾）

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25： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:52:13 ID:CHCTqVrI0: ──嫌だお

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26： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:52:48 ID:CHCTqVrI0: （　＾ω＾）「…ぉ、」

（　＾ω＾）「あー……またボーっとしてたお……」

（　＾ω＾）「何で玄関にいるんだっけ」

（　＾ω＾）「あっ、そうだお。病院探さなきゃ……」

（　＾ω＾）「……病院？どこか悪いんだっけ？」

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27： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:53:38 ID:CHCTqVrI0: 玄関だというのにじんわり暑い。そりゃそうだ、もう8月で夏真っ盛り。
僕は暑いのが嫌いだ。片足は靴を履いていたけど、もう片方は履いていなかった。今から出かけるところだったんだっけ、帰ってきたんだっけ？

（　＾ω＾）「……どこか出掛ける……のは今度でいいかお、暑いし…招待客リスト作らなきゃだし」

靴を脱いで部屋に入った。
暑さでボーッとしてしまってるのかもしれない。
水を飲もう。
そうすれば、大丈夫……。

そのまま眠ってしまった。

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28： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:54:18 ID:CHCTqVrI0: .
29： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:54:41 ID:CHCTqVrI0: ──嫌だお、嫌だ

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30： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:57:08 ID:CHCTqVrI0: ξﾟ⊿ﾟ)ξ「ブーン？」

（　＾ω＾）「あれ…おはようだおツン……今日約束してたっけ？」

ξﾟ⊿ﾟ)ξ「何言ってんの、もう夕方よ？やることいっぱいあるんだから早く用意してね」

（　＾ω＾）「用意？ああ、招待客リストならまだ…」

ξﾟ⊿ﾟ)ξ「招待客リスト？まだ寝ぼけてる？」

（　＾ω＾）「え？」

ξﾟ⊿ﾟ)ξ「……式は明日よ、寝坊助さん」

（；＾ω＾）「え……」

（；＾ω＾）「式は10月だお、ツン。まだまだ先…」

ξﾟ⊿ﾟ)ξ「……ブーン？スマホ見て」

ツンに言われた通りスマホを見てみる。日付は10月22日15時57分。
なんで？さっきまで8月……いや、4月……だった？あれ？
春で…暑い夏が来てて…今は…寒い？あれ？？
31： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:58:03 ID:CHCTqVrI0: （　＾ω＾）「なんで…」

ξﾟ⊿ﾟ)ξ「ブーン？病院行った？」

（　＾ω＾）「病院？……なんだっけそれ？」

ξﾟ⊿ﾟ)ξ「頭痛いから病院行くって言ってたわ。数ヶ月前と…先週」

（；＾ω＾）「行った…のかもしれない、覚えてないお…」

（；＾ω＾）「なんかよくわからないけど、多分疲れてるだけだお」

（；＾ω＾）「ねえ、えっと……」

ξﾟ⊿ﾟ)ξ「……本当に、大丈夫？」

（；＾ω＾）「大丈夫……だお…そんな目で見ないでくれお」
32： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:58:53 ID:CHCTqVrI0: ツンの目が怖かった。それより日付が進んでいることも怖かった。
招待客リスト、いつのまに作ったんだろう。
それより病院って？
あれ、招待客……って、何の招待？

（　＾ω＾）「……お…」

頭の中のものが消えていくような気がした。

何がなんだっけ、今はなんだっけ？

何を探していたんだっけ。

財布の中に行ったことない病院の診察券が2枚入ってた。
4月だったのが8月になって10月になった。
ボーッとする。記憶がチグハグになる。

今は、なんの話をしていたっけ？

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33： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 15:59:23 ID:CHCTqVrI0: .
34： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:00:08 ID:CHCTqVrI0: ──嫌だ、嫌だお
消えないで消えないで消えないで
僕の記憶、消えてなくならないで
持っていかないで頼むよ忘れたく無いことばかりなんだ

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35： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:00:53 ID:CHCTqVrI0: （　＾ω＾）「……どこだろうここ」

目を開けると見慣れない天井があった。
病院特有の消毒液の匂いがする。

（　＾ω＾）「病院……かな、何でいるんだっけ……うーん思い出せない、とりあえずお母さん探そう」

自分が病院に来る理由が全くわからなかった。思い当たる事が何も無い。きっとお母さんの付き添いか何かだと思う。
探さなきゃ、迷子になってしまう。

（　＾ω＾）「お母さん……」

広い病院だ。
なんだか身体が重たい気がする。
なんで病院にいるんだったか思い出せない。

角を曲がったところで大人たちがヒソヒソ何かを話していた。
よく聞こえない。大人ってなんであんな、聞こえそうで聞こえない声で話すのかな？
36： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:01:25 ID:CHCTqVrI0: 「ねぇ、式中に……でしょ？」

「若年健……」

「可哀想にね、新婦さんは……」

「何もわからないのかしら……」

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37： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:02:04 ID:CHCTqVrI0: 可哀想、可哀想と言ってるくせに口元が笑っているような変な話し方だった。小難しい単語をしきりに発言していて、それだけで気が滅入りそうな話題だ。

（　＾ω＾）（よくわかんないけど大変な人もいるんだなぁ……）

何かの式中に倒れた人がこの病院にいるようだ。
病院とはそういう場所なので仕方ないけど、早く良くなると良いね。

（　＾ω＾）（……って人のことより自分のことだよね、お母さんどこだろう…）
38： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:02:33 ID:CHCTqVrI0: 他人のコショコショ話に耳を傾けている場合ではなかった。
早くお母さんを見つけて合流して家に帰りたい。
なんだかとても疲れてるんだ。すぐ疲れるなんて言うのは歳を取った証拠なんだってお父さんが言ってて、大人は大変だねって笑ったばかりなのに人のことが言えなくなってしまう。

「ぅ……」

（　＾ω＾）「？」

人の…泣き声？
小さく泣いてる声が聞こえた。
あの階段の上からかな。そうっと覗き込んで見た。
39： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:03:01 ID:CHCTqVrI0: （；＾ω＾）「わ……！」

ξ；-；)ξ「う……ううっ……」

白い、真っ白いドレスを身に纏った女神。
……じゃなくて綺麗な女の人が泣いていた。

（;*＾ω＾）（すごい……すごく……綺麗……）

（;*＾ω＾）（なんでドレスの人がいるんだろ……っていうかあんなに泣いて……）

（；＾ω＾）「あ、あの！」

ξ；-；)ξ「！」

（；＾ω＾）「どうして泣いてるんですか？お、お腹すいてるんですか……？」

ξ；-；)ξ「……！！」
40： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:03:29 ID:CHCTqVrI0: 女の人はさらに大粒の涙を流し始めた。止め方がわからなくてアワアワしてしまう。
お腹が空いたのか、お腹が痛いのか。他の大人を呼んできた方がいいのだろうか。

ξ；-；)ξ「……………っ」

ξ；ー；)ξ「お腹……すいて泣いたりしないわ……」

女の人が笑ってみせた。
涙がキラキラ光って、本当に綺麗だった。
こんなに綺麗な人は見た事がなかった。唾をごくんと飲み込んで深呼吸をする。

（；＾ω＾）「そうなんですか？僕はお腹空くと悲しくて泣いちゃうので……」

ξ；-；)ξ「……うっ、ブーン……」

（　＾ω＾）「ブーン？」

ブーン？ブーンってなんだろう。
難しい言葉かな？
女の人がまた眉間に皺を寄せてぽろほと涙を流している。
41： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:05:34 ID:CHCTqVrI0: ξ；-；)ξ「ブーン……じゃ、ない…わからないのね…」

（；＾ω＾）「？」

ξ；-；)ξ「……あなた、名前…」

（；＾ω＾）「え？僕は…えっと…ナイトウ…そう、内藤ホライゾンです！」

ξ；-；)ξ「……そう、な　の……」

（；＾ω＾）「お、お姉さんのお名前は？」

ξ；-；)ξ「……」

ξ；-；)ξ「私は…」

ξ；-；)ξ「内藤ツン……」

（＊＾ω＾）「えー！同じ名字だ！何か、嬉しいですね」

（　＾ω＾）「僕、この名字好きなんです。おじいちゃんと一緒だから！」

ξ；-；)ξ「……」

ξ；-；)ξ「私もこの名字、好きなの。好きな人と同じなの」

（　＾ω＾）「僕、お母さん探してるんだけど、お姉さんも向こうに行きませんか？美味しいものとかあるかも」

ξ；-；)ξ「……うん、一緒にお母さん探してあげる」

（＊＾ω＾）「いいの！？」

ξ；-；)ξ「…健やかなる時も、病める時も…って誓ったから」

（　＾ω＾）「？」

ξ；-；)ξ「行こう」

（　＾ω＾）「うん！」
42： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:06:07 ID:CHCTqVrI0: .
43： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:06:50 ID:CHCTqVrI0: 頭の中が真っ白になっていく。
消える。
消えていく。
やめて、嫌だ。
嫌だ、嫌だお。
僕の記憶だ、僕の思い出だ。
消さないで。消えないでくれ。
44： ◆W6ETNWahuw：2021/10/22(金) 16:07:32 ID:CHCTqVrI0: 白い。
真っ白になっていく。

あの人の着ているドレスみたいに真っ白だ。

あの人、あの人って？
えっと、なんだっけ？
誰だっけなんだっけ？
何か忘れてる気がする、思い出せない。

白いドレスの女の人が泣いてる。
いつかの誰かが何か言ってる。

『　来世も君を忘れないお！　』

消えていく、あの人のドレスみたいに、頭の中は真っ白になっていった。

終
45：名無しさん：2021/10/22(金) 19:00:54 ID:c3sNGtd60: 絵にかいたような幸せから緩やかに下降してく……乙
46：名無しさん：2021/10/22(金) 21:32:23 ID:p9hcttHU0: 好き
47：名無しさん：2021/10/23(土) 10:21:24 ID:lEAGnl8.0: 乙！
哀しいけど素敵な雰囲気の小説だ
48：名無しさん：2021/10/23(土) 12:51:13 ID:yutOI73U0: つらすぎる…
内藤ツンのとこでだめだった
乙
49：名無しさん：2021/10/23(土) 22:54:04 ID:mJ4DUk8A0: はかない
50：名無しさん：2021/10/24(日) 22:00:04 ID:Z.KW6XdE0: 乙
切ない……
51：名無しさん：2021/10/28(木) 15:52:53 ID:so.ctP.A0: 読み終わってから冒頭に戻るとよりつらい…乙です
52：名無しさん：2021/10/30(土) 17:17:38 ID:jdJDdnv60: 重い内容なのに軽やかな文章なのがこれまた切なすぎて…乙です
53：名無しさん：2021/10/31(日) 15:35:50 ID:wEQ4Wwl.0: ボブらじスレで見たので確認のため再読

>>日付は10月22日15時57分。

って本当にこれ投下した時間と同じやんけ鳥肌