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( ゚¥゚)自分がいないようです
1
:
名無しさん
:2020/07/29(水) 11:42:35 ID:wpEYTj/Q0
私にはあなたを全く理解できませんし
思考と逡巡に多くの時間を割いたところで、
具体的又は抽象的な経緯の把握が出来るとは到底思っておりません。
ですが話を聞く限りには恐悦至極なのです。
私に無い物語を見聞して、それを追体験してゆく過程が
私の昨日を、今日を、明日を糊塗に飾ってくれるのです。
聞かせてください、あなたの話を。
( ゚¥゚)自分がいないようです
1.始
172
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:04:39 ID:dWhsdNPw0
('A`)「自分達じゃ何も生み出せない癖に偉そうな感想許り連ねて、其れで達観したつもりに為ってやがる。
凡人の一時的に思い浮かべた所感が金言に為る訳無いだろ、常識的に考えて。
確かに読者各々にも培って来た人生観やら知識やらがごまんと在るだろう。年齢なんて大した問題じゃ無く、誰しもが一人の人間として今日日生きているんだからな。
だが裏を返せば、誰しもが同じ程度の存在て訳だ。
読者作者と云う境界に於いては、物を書くか否かって具合の相違が其処に在るがな。ほんの一部の違いが何よりも重大な点なんだ。
進んで不快な、面白いと露ほども感じ無い小説を読む輩なんて多くは居ないだろ。
誰しもが少なからず自身の幸福実現を目指して日々を送っているんだ。
だから詰まら無い文章に悪評が付与されるのも、ある意味自然なことなんだな。
然う云う言葉は決まって自分勝手だ。感想と称して罵詈雑言を捲し立てて、読むのに費やした時間で溜まったストレスを発散しようとする。
本来の目的が幸せの追求だったのに、予期せぬ理由で果たされなかったんだからな。
その気持ちは分からなくないし、実際俺自身にも思う所がある。
頭が可笑しいのは、其れを直截相手に巻き散らす奴原だ。
読者諸賢が孤独に消化している不平不満を恥ずかしげも無く晒して、剰え同意を得ようとする蛮行」
173
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:06:33 ID:dWhsdNPw0
('A`)「苛々するんだよ。皆んなが我慢している行為を曝け出している奴に。
今の御時世インターネットが世間一般的に普及しているから、誰しもが批評家として名乗りを上げれるんだ。
畑違いのジャンルに片足突っ込んで中途半端な視点しか持って居ないのに、
そんな初見的見解にこそ警句と成り得る真理が詰まってると勘違いしてる連中のことだ。
浅く広くの思考が社会全般に流布し過ぎてるお陰で、そう言う奴に同意の意を示す人間も少なくない。というか実際多い。
ならば若輩者共と比較した古参兵は如何だろうと思う? 此奴は新参よりも選りすぐりに厄介な老害共だ。
凝り固まった偏見を英知と履き違えてやがる。慣習的な様式美にばかり囚われて、狭い視界でしか物事を観察出来無い。
そんな老頭児風情の頑陋至愚が罷り通る程世間は優しく無い。
だが現実問題其れが通用している訳だから、暗黙の了解として是認されて居る節も在るんだ。
言い換えれば、凡ゆる衆人がその意見の不条理さを無視して居る。
偏った意見の持ち主と真剣に議論を交わした所で相手は俺の意見を受け入れ無いし、俺も自分の芯を曲げる気が無い。
押し合い圧し合いの取っ組み合い勝負は飽きた方の負けって雰囲気が作られるんだ。
愚か者との会話を一早く無益だと理解して切り上げた奴の方がよっぽど賢いのにな」
174
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:09:30 ID:dWhsdNPw0
小心を車輪にして繰り出される言動は説得力こそ毫も無いが、
鼻声且つ早口に吐き出される字句の列が何を示唆しているか、把握出来無いとは思わない。
独り善がりな浮世話は時々疑問符を交えつつ進行して居るけれど、其れに返答を求めている縁は見えない。
日向に座する私と対立的に陰差した表情は俯きがちに薬湯を見詰めている。額に脂汗とも湯気とも判別つかぬ汁を浮かばせながら万方へ、
殊物書きの批評家に向けて放たれる雑感の数々は、堪え難い悪臭を醸し出そうとして居る様子で、
実を云うと耳が痛く成る憤怒じみた響きが其の声に篭っていた。
往々の素懐を撒き散らし無愛想のまま擲つ姿勢には憐情を感じ得ない心積もりなのだが、
徒に放たれるその鼻声は自らを律し、己の口から己の耳へ、改めての方々の性行を刻み付けて居るようで、
或いは韜晦へ溺れ入り自らの言が自戒に成らぬように、と卑陋なる私観を独白の内の鬱積へ中てるのに四苦八苦しているだろうと感じてしまう。
と云うのは、大兵肥満を横たえ扞挌する態度やら声色に、桎梏を嵌めている習気の如きが存じ無かったからだろう。
己を卑下し現世を祟る思想家は驚く程溢れて居る中、徹底した他者批判を意識する余り、
本来的には外へ感慨を込める為の声を総身を隠す為に案入る様子は、見聞きする者へ薄寒い非難の気持を抱かせて来る。
何かに付けて理解力の在る自己を議題に出し、その都度己の威厳を示す言葉癖の数々が、即ち自己肯定意外の何者をも含み得なかったからだ。
175
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:11:33 ID:dWhsdNPw0
('A`)「どいつもこいつも一緒だ。誰も求めてないのに感想と称して、その作品の解説者を気取っているんだ。
予め作られている話を色々な方向から眺めて、どの文がどの心理を描いているか考察して、自分好みの批判と解釈を長々と書き募る奴。
そう云う素人は目が肥えてやがるから、自分自身じゃ面白い物なんてまるっきり生み出せない癖に偉そうな発言許りしたがる。
馬鹿げてるよな、大して実力も能力も無い癖に大仰な態度で構えてるなんて。
正直言うと有能な奴、面白い作品を書く作家の述べる所感も、其れは其れで不快極まり無いけどな。
そんな長ったらしい解説文書き添えるくらいなら、自分の新しい物語の一部として代用すりゃいいのにって思うよ。
加えて現代の評論家共は覆面が矢鱈と多い。顔も素性も、凡そ個人的な情報を殆ど一切包み隠して、匿名的に愚図を述べる。
発言者がどんな輩か分からないし、遡及して身元を洗い出すことも限られた人間にしか出来無い。
相手から返答されないのを良い事に、好き勝手言いたい放題書き殴ってるんだ。
寧ろ対象が反応したら、それを面白可笑しく茶化して馬鹿にして、飯の御菜にするような卑近な奴らだ。
大学もそんな連中許りだったよ。こっちの方が余計に質が悪い。
顔も見えてるし情報も直ぐに攫えるってのに、群れで行動してるから横槍を入れ辛い。
此奴等に批判が届いたが最期、その蛆虫の大群に襲われて骨すら拾われないって算段だ」
176
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:13:31 ID:dWhsdNPw0
('A`)「独りじゃ何一つ、自分の襁褓さえ交換出来無い赤子顔負けの屑共なのに、
団体行動してれば何でも出来ると思い込んでいる。可哀想な奴らだよ。
俺は独りで生きている。其れが正しいと考えているからだ。
誰とも群れず誰とも交わらず、徹底的に自分自身への内省を極めて生きてきた。今後共決して其の意思が揺らぐことは無いだろうと思う。
気持ち悪いんだよ、虫螻が大量に蔓延ってて邪魔なんだ。鬱陶しいんだ、其奴等の存在自体が。
人は独りで生きる可きだと俺は常々考えてる。
成る可く他人へ迷惑を掛けず、必要最低限の交流だけ保ちながら、互いに過干渉して煩わしい関係に成ら無いよう努める可きだ。
其れに、低俗は感染る。
病の歴史と一緒で、紀元前から今に至るまで遍く奔流して居る悪意の源は、阿呆と賢人が同じ括りとして扱われている事実だ。
剰え、馬鹿が賢者を啓蒙しているかのような逆転関係が長い遍歴の中で育まれて来ているんだ。
根本から間違っているってのに誰もその真理を再考しようとしない。
下らない俗物には潔く身命を捧げて熟考してるってのに、根源的な問題を抱えている己を掘り下げて考えない。
独りだ、独りが良いんだ。自我の境地に至るまで自己を考え尽くす可きなんだ」
177
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:15:47 ID:dWhsdNPw0
屡々繰り返される茫々たる持論は、本人に於いては確然と決着しているのだろうと想像に難く無いが、
節々より派生を生じる本音を紐解いて鑑みるに、復する禅問答は咨咀逡巡の範疇を出ない。
大凡百歳に及び独創したであろう世相への批判が紡ぐ内容と云うのは、
殊文士が低俗である(と思い込んで居る)こと、
其れへの所懐を白日に晒す行為が低俗である(と思い込んで居る)こと、
団結せし世人が低俗である(と思い込んで居る)こと、
遍歴に身を浸した自我こそが常住涅槃の宝土である(と思い込んで居る)こと、
だろうか。
彼のような生き方こそが幸福者だと皮肉を込めて捉える気持も在る一方、
或種若しかしたらの理想郷とやらを己の中にのみ見出してしまったのだろうかとも思うのは、
由論拠無くとも自らを見詰める機会にばかり恵まれて居ると語ったからだ。
一体が孤独乃至は孤高を希っての思想こそ至高と抱負するに、又何かに付けて冷淡な態度を構えるに、
虚妄を述べて居るとは思えない程生き生きとして居る。
その本音でさえ酷く聞き取り辛い鼻声で在るのは愚にも付かぬ様相だったが、
何処か筋書き通りに準え換言して居ると思えない所もなく、そう思うと忽ちに老獪めいた案出を感じざるを得ない。
真に其れが抱負に基づいた権謀術数かと断定出来得る依拠は見当たらない為、編み出された思索の声が偶発的な産物とも断定出来無い。
しかし其れが人為による物で在ろうと泡沫の虚栄心が与した虚夢で在ろうと、私に於いては然る程究明を求める誤差では無い。
偶さかに相対した独語へ肖り思惟を耽ることこそが目的で在る為、
彼が無意識的に慣れない大声で喉を痛めて居ようと、人目も憚らず淪落して居ようと、全く取るに足らない瑣末事だった。
178
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:17:45 ID:dWhsdNPw0
('A`)「嫌いな事物は幾らでも語り尽くせるから楽しいんだ。
最初こそ変人だと白眼されるのが億劫で、柄にも無く怯えて居た時期も在った。
独り言は自分一人の時は決して言わない。言えない、の方が正しい。
俺は俺の意思を外部の誰かに伝えようとは考えて居ないが、其れが偶然他人の耳に入って記憶に残ることを願って居るんだ。
何処の誰とも分からない人間の呟きが聴者の心に居座って、俺と同じように独語癖が発現すれば良いのにって思って居る。
喜ばしいだろ、真理に最も近い孤独者が点々と増えて行くと思えば。
そんな大義名分が元来だったかと自らへ問い質すと、意外と然うじゃ無かったりする。
一度鬱憤を垂れ流し始めると止められなくなるんだ。
意味が無かろうと思惑が介在しなかろうと、自分の内にストレスを貯めることが我慢出来無くなるんだよ。
貰った煙草のお陰で最近こそ少しだけ楽に成って来たが、やっぱり黙ってると落ち着かない。
──嗚呼、畜生、畜生!
何だって俺はこんなにも情緒が落ち着か無いんだ!
漸く寵愛出来る物が批判以外にも見つかったって言うのに!
一時的に虚脱に近い安らかな心持ちへ成れる妙な葉巻も手に入れられたって言うのに!
結局俺の本質は独語を言い出す前後で変容しなかった。
けれど高岡と出会って、徹底的に孤独だった自分が本来的に望んでいた物に、何となく気付けたような気がしたってのに!」
179
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:19:48 ID:dWhsdNPw0
('A`)「──独りは至高だ。俺の到達点だ。
但し其れを確知する為には、独語を実践するには、俺の特性上常日頃付き従って呉れる第三者の存在が不可欠だったんだ。
誰も居ない、自分以外何も無い空虚へ言葉を吐いていると、俺は俺の情操を得られずに瓦解して行く心情に陥るんだ。
否が応でも他人と云う実存が其処に必要だったんだ。
糞、嫌いな事物を語るのは何よりも生き生き出来るし至上に快いにも拘らず、何だって俺は嫌いな事物許りしか饒舌に話せてしまうんだ!
如何して高岡みたいに好物を語る視点を持って、素直な好意を露わに出来無いんだ!
思えば彼奴と出会って以降、俺は変に雑観が増した気がする。
初見の時点、生き様容姿思考回路全て正反対に在る存在が間近に迫った時点では、
本人の性格良し悪し問わず讒謗めいた悪口が募りに募った記憶が在る。
聴こえないだろうと高を括って彼奴本人への非難を延々呟いて居たし、其れについての後悔は全く無い。
相変わらず俺には彼奴の深層心理が全然読めないが、恋われる理由が在るとすれば俺の吐く言葉くらいしか思い付かない。
だからこそ、自分の発言にあんな別嬪を従事させる気概が在ると有頂天に成ったもんだ。
嬉しさよりも手折ってやったと云う優越感が勝ったからな。
だが会って間もない内は、俺は彼奴が嫌いだった。
凡ゆる点で異なる処か、拠り所と成る考え方すら悉く合致しなかったからな。会話したって楽しくないし好みも全部合わない。
彼奴も俺と一緒に居た所で、そんなに愉快じゃないだろうとしか思えなかった。
別れたく無い気持が俺の中に蟠っていた理由なんざ、付き従わせて居る悦楽だけだったよ、愛だの何だのは分からないからな」
180
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:22:37 ID:dWhsdNPw0
而して厳しい格式高さを一心に担って居ると豪胆する姿勢には汗顔の至りを感じ得ない他方、
誰に聴かせるでも無く、敢えて言うのなら自我への問いと論拠の介されない莫連たる内観を隠らず放る平生のままの調子には、
倫を絶する気勢強さが顕現されて居るようにも見えた。
二様の解釈やら扞挌する異論やらを全くの雲霧無く辱められる厚皮面な人格は、快刀乱麻を断つが如くの痛快さを醸していた為だ。
とも有れ壺中の天にて懈怠を矗々貪る所以、則ち斯様な繰り言を喝破する声の出所と云うのは、真に件の彼が授けた触だと判明した。
扨はと予想した悪寒が当然顔で発露する経験は少なくない数骨身に沁みて居るものの、
又何処かで予測の在り方を待ち望んで居た気もするが、其れは勢いと云う物で、
怪我の功名とも開き直れる一方に、矢張り好事も無きに如かずであった。
唐突に又仮初に単身思索の跳躍が発症するのは喫んだ成分に因果する副作用(或いは作用)が見せる物で、
漸次的に往時の砌を思い返すらしく、宛ら其れは瘋癲やら癲狂の類を身に窶すが如く忽焉たる様なのらしい。
が、然し其れも弾指の間である、と話して居た。
暫時瘧が落ちる迄待てば良いらしい。
その間所志の節々は重畳流されるから却って幸いだろう。
聴くに症候の動態は常時思う本意が竜頭蛇尾に投げられて行き、終局は欺瞞している懸想やら繊弱やら瞋恚やらの、所謂三毒に尽きるとのこと。
何故と拝聴するに言語道断だから、死活同様漫ろに溘然たる様子が行住坐臥人と相成って居るから、と曖昧な論旨を述べて居たような気がする。
要約するに、斯く口幅ったい死生観を発する件の彼が曖昧に示した薬効は、
現在ドクオ君の陥って居る大惑不解乃至自ら自覚出来無いで居た煩悶の自覚を躁的に葛藤する状態
──潜在化の矛盾が明るみに出た状態──が発露すると、直に元へ戻ると云う内容だった。
181
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:24:54 ID:dWhsdNPw0
山焼けの湯治場で裸に表白するドクオ君の様は、声の大きさも助けて若干演者に見えなくもない分、失笑を買う諧謔性が滲んでいた。
結局疚しい精神性等は秘すれば花で在る為、真の精神性を衒った途端に陋なる性が露呈するので、
其の浅く未熟な思考の真相たる一点が詳らかになる須臾許りが要だった。
と云っても折衝に向け賺すのに用意した文句を脳裏の内にのみ留め、予てからの抱負だけに用立てられるのは幸いであるし、
本来交渉時に相手を騙し自身を威厳立てる必要抔無いのだから、私は随波逐流の輩としての本分に則り糊塗しようと思う。
糅てて加えて、長広舌の悪言に辟易して居た。
ドクオ君にも、自身にも。
段階的には終局に近付いて居て欲しいのだが、然し如何な物だろうか、
矛盾する己に気付き惑い始めている兆候が見て取れるから屹度、此れ以上彼の不満が投げ打たれ無いとは思うのだが、
いや、そろそろ頃合いでないと茹で上がってしまうのだが……。
……。
……、分からないが、聴こう、聴いて向来若しくは先刻抱いた二人の関係性が含む狂燥的な一面の真相を推理しよう。
其れが良い。余計なことは考えない方が良い。こう云う場面では故に。心頭を滅却すれば火もまた涼し。
尤も、其の思念に基づき私は気を失ったのだが。
182
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:27:45 ID:dWhsdNPw0
('A`)「高岡は孤独を徹底的に恐れていた。一人で生きることを至上に避け続けて、必要無い人間関係ばかりを育んでいた。
俺から言わせれば、何が楽しくてそんな遊び呆けた生き方してるのかって具合に。
ところが彼奴は元来根差した今日迄の生き方に起因して、そんな癖が付いていたらしい。俄かには信じ難いことだったよ。
俺は彼奴と違って小中高一貫、友達が出来無かった。幼い頃こそ周囲の人気者を妬んだりもしたが、其の内に飽きた。
俺は間違ったことなんて何一つして無かったからな。
高岡は正真正銘俺と正反対だ。自然に笑って自然に会話して、其れで凡ゆる他人と仲良く出来るタイプの奴だった。
外見的な優位性も有ったんだろうけど、話して嫌な性格してないからな。良い奴だよ。
其処に存在するだけで俺の生き方全てを否定されたみたいな気分になって、
なのに人間性やら性格やらは究極に優しい奴だから、俺の中では彼奴に対して矛盾した気持ちが常に渦巻いてる。
恋仲に成った今でさえ其の感情は在るんだ。嫌いと好きが同居してるなんて常々変だと思うよ。
相対した最初の頃は嫌厭が優っていた。
だからこそ彼奴に好かれて好き勝手出来る優越感に浸って居たし、非人道的な行為で俺好みの性格に調教してやろうとも考えて居た。
顔も体も一級品だから尚更な。
不思議なんだ、今でも。この胸の底から沸き立つ温い気持ちが何処で生まれたのかが。
高岡は何もかもが俺と違う。其れを俺が分かって居るのと同じ様に、彼奴も又俺と全て正反対であることに気付いていた。
カッコいいって言われたんだよ、馬鹿みたいだよな。いや、馬鹿だよ彼奴は。
顔か? 性格か? 言葉か? どれだ? 何がだ?
──生き方だとさ。俺は思わず吹き出してしまったよ」
183
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:29:58 ID:dWhsdNPw0
('A`)「こう見えて俺は劣等感に生きている。
この言葉も考え方も全て心根の弱い部分を隠す為に被せて居る。
今でこそ其れが俺の強みにも成って居る自覚を持てては居るが、其れは偏に高岡のお陰なんだ。
自分一人だけしか認めて居ない性を他人の裏付け無くして、如何して確信出来ようか?
いいや、出来る訳がない。そんな反語じみた具合にな。
思考の跳躍は俺の中じゃ度々起こるから、彼奴に向けた恋慕も其の程度なんだろうと思う。
何時か夢が覚めてしまうのと同じ様に、俺も彼奴も別々の生き方を選んで行くのだろうとも思う。
確信したくないんだよ、"思う"って推量で止めてるのは、本音じゃ高岡とまだまだ別れたく無いからだ。
彼奴は俺に内在する彼奴とは異なる部分を愛してくれた。
異物を除去する白血球みたいに除けるんじゃなく、其れを生暖かく包んで消化してくれた。同期してくれたんだ。
俺は其れを今のところ無視し続けて居る。異物を認めようとも飲み下そうともして居ない。
清濁併せ呑む性格が元来では在るにせよ、良し悪し全てを受け入れられる度量を俺は未だ手に入れて無い。
或種孤独の弊害だと、漸く思えて来た所なんだ」ブツブツ
声は徐々に窄まり行く。
('A`)「…自信持って言えるのは、高岡のことが単純に好きに成ってしまったって気持ちだけだ。
磁石は正反対だから惹かれ合うんだ……」ブツブツ
声は聴こえなく成った。
素っ裸で在る。
184
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:32:02 ID:dWhsdNPw0
***
从 ゚∀从「お」
(,,゚-゚)「あっ」
从 ゚∀从「何処の美人さんかと思ったら小木さんの奥さんじゃないか」
(,,゚-゚)「私だって、小木ですよ」
从 ゚∀从「そらそうだわな」
(,,゚-゚)「…高岡さんは、こんな所で何をしてらっしゃるの?」
从 ゚∀从「暇つぶし、かな。中庭のある旅館とか初めてだからさ、どんなモンだろうと思ってよ」
(,,゚-゚)「確かに現代じゃ、余り馴染みがない物ですしね」
从 ゚∀从「こう云うのを風流だとか雅だとか言うんだろ? 日本人の原風景とかさ」
(,,゚-゚)「如何なのかしらね。
確かに馴染みの無い景色にも拘らず懐かしい気持ちに成ると言えば、そうなのかも知れないけれど」
从 ゚∀从「私ん家は実家が洋風造りだからさ、日本家屋って物にはてんで慣れて無いんだ。見た事も粗無い」
(,,゚-゚)「都心に住んでる人達は大抵がそうなんじゃ無いかしら」
从 ゚∀从「奥さんはどの辺りの出身なんだ?」
(,,゚-゚)「私は……田舎の出身よ。
徒歩五分の道程にすら車を用いる様な、或いは夏場に平気で川遊びして居る様な、そんな所」
从*゚∀从「ほー! なら奥さんはこう云う辺鄙な場所にも、何となく郷愁感じたりするのか。
茅葺屋根とか瓦とか、山並みとか水田とかにも」
(,,゚-゚)「案外そうでも無いわ」
从;゚∀从「あれ?」
(,,゚-゚)「中途半端な片田舎だったのよ。
私鉄とは言え鉄道は走ってるし、神社仏閣も有ると言えば在るってだけで、コンビニもスーパーも同時に在ったから。
屋根なんてどの家も洋風よ」
从;゚∀从「ふーむ、何でも一括りには出来無いモンなんだなぁ」
185
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:33:24 ID:dWhsdNPw0
(,,゚-゚)「そう云えばドクオ君は何処に行ったの?」
从 ゚∀从「ああ、彼奴なら多分未だ風呂に浸かって居ると思うよ」
(,,゚-゚)「長湯好きなの?」
从 ゚∀从「いーや、単純に汗っかきなんだ。
夏場の休日なんかは、日に何度も何度も風呂に入るらしいぜ」
(,,゚-゚)「確かに昼間は表情に余り機微は見えなかったけれど、服の生地上は汗染みが沢山出来て居たね」
从 ゚∀从「よく見てんな〜」
(,,゚-゚)「あの人が卒倒した時に助けて貰ったからね。
其の時印象に残っただけよ…其の節は有難うね、お陰で助かったわ」
从 ゚∀从「なーに、一市民として当然の事をした迄さ」
(,,゚-゚)「御礼に何かしなくちゃね」
从 ゚∀从「いーよいーよ! 彼奴も私も、御返し欲しさに手を貸した訳じゃ無いんだから! 純然たる善意の賜物さ」
(,,゚-゚)「なら、ドクオ君にも有難うって伝えて貰って良いかしら?
彼が一早く気付いて支えてくれたお陰で、あの人も転倒せずに済んだのだから」
从 ゚∀从「おうよ、其れくらいなら喜んで貰っとくわ」
(,,゚-゚)「…実を云うと、ちょっぴり意外だったの」
从 ゚∀从「? …あー、ドクオの事な。うんうん、彼奴は表面的には分かり難い性格してるからなぁ」
(,,゚-゚)「正直、ドクオ君こそ気絶してるんじゃ…とも思ってた」
从^∀从「ははは、十分に有り得るな。
私は寧ろ彼奴が倒れてなかったのが意外なくらいだったよ」
(,,゚-゚)「彼も余り気丈じゃ無いの?」
186
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:34:56 ID:dWhsdNPw0
从 ゚∀从「見て呉れの通りさ。其れでも案外、性格は外見通りじゃ無いから面白い奴なんだ」
(,,゚-゚)「そうなんだ?」
从 ゚∀从「ああ。基本的に暗いし人目も憚らず独り言を呟きまくる癖が在って、
やっぱりそう云う部分は変わってるんだけれども、心根は優しい奴だよ」
(,,゚-゚)「人の変化に一早く気付いていた辺りとかかしら」
从 ゚∀从「と云うより、彼奴は独りが好きな癖して、他人の事を観察するのも好きなんだ。
なのに集団行動は嫌いらしい。変な奴さ」
(,,゚-゚)「其れでも、高岡さんはドクオ君の事が好き」
从 ゚∀从「当たり前だろ。私は彼奴の中に在る、私と正反対な部分に惚れたんだから」
(,,゚-゚)「複雑なのね」
从 ゚∀从「いーやいーや、至極単純な経緯さ。
喫煙所で顔見知りだったから合コンの時に連絡先を交換して、其れから済し崩し的に付き合ったってだけだよ」
(,,゚-゚)「学生特有の楽しさよね、昔が懐かしいわ」
从 ゚∀从「小木さん達は貫禄有るけれど、そんな云う程歳食って無いだろ? 何より話し易いし」
(,,゚-゚)「童顔なだけよ、多分四捨五入で一回りくらいは離れてるんじゃ無いかしら」
从 ゚∀从「あー、確かに其れくらいの、丁度いい温度感かも知れないな。
気兼ね無くタメ口で会話出来るし」
(,,゚-゚)「でも合コンなんて卒業して以来一度も行って無いから、やっぱり昔の思い出って感じはするのよ」
从 ゚∀从「と云うと、旦那さんとは大学で知り合ったとか?」
187
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:36:41 ID:dWhsdNPw0
(,,゚-゚)「一応そう成るのかしら。私、専門学生だったのよ」
从 ゚∀从「ほー!」
(,,゚-゚)「専ら女子許りの学科だったから出会いなんて殆ど無くてね、誘われた合コンで知り合ったあの人と仲良く成ったの」
从*゚∀从「えー! マジかよマジかよ? 私等と同じ馴れ初めじゃんか〜!
其れが切掛で目出度くゴールインってかー? 良いな〜羨まし〜!」
(,,゚-゚)「所が、そう上手く事は運ば無いの。一度…いえ、二度ね、私たちは破局し掛けて居るのよ」
从 ゚∀从「ええっ?」
(,,゚-゚)「学校入って間も無く、一寸嫌な事件に巻き込まれてね。
其れであの人所か、私は異性全般に対して、少し怖く成ってしまったの」
从;゚∀从「えぇ…」
(,,゚-゚)「其れで一度は彼から距離を取ってしまったのだけれど、
あの人は献身的に私を助けて呉れて、改めてお付き合いし直したって感じ」
从;゚∀从「…何が遭ったのかに就ては、詳しく考えないよう善処するよ」
(,,゚-゚)「ありがと。でももう疾うの昔に過ぎ去った事だから、こうして何食わぬ顔で語れるのよ」
从 ゚∀从「いやぁ……大人の恋愛って、一筋縄じゃ行かないこと許り何だなぁ…」
(,,゚-゚)「別に人生は長いのだから、沢山悩む可きだとも思うよ」
从 ゚∀从「うーむ…」
(,,゚-゚)「そんな一方で忽焉と終わる事態も儘在るから、難しいのだけれどね」
从 ゚∀从「だよな……唐突に、何の前触れも無く今の関係が潰える場合も在るんだよな……」
188
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:38:43 ID:dWhsdNPw0
(,,゚-゚)「…」
从 ゚∀从「……なあ、小木さん達は結婚して何年くらい経ってるんだ?」
(,,゚-゚)「そうねえ…卒業して以降だから、もう七年位の付き合いに成るわ」
从 ゚∀从「結構経ってるんだな」
(,,゚-゚)「何気にね。色々在りましたとも」
从 ゚∀从「…私さ、結婚とか云う難しいことはよく分からないんだけれど、
未だ彼奴と別れたく無いんだ。終わりなんて考えたく無い」
(,,゚-゚)「其れが自然でしょう。
誰しも喜悦の渦中に在る時、禍事抔思い浮かべたくありませんとも」
从 ゚∀从「彼奴…ドクオさ、やっぱり変な奴なんだ。
最初見た時点で気付いて居たんだけれど、一緒に居る時が長くなればなる程、奇妙な奴だって分かるように成ったんだ」
(,,゚-゚)「…失礼だけど、何処にでも居るような人種には見えないね」
从 ゚∀从「でもさ、彼奴の独語癖とか思考回路が嫌いに成った訳じゃ、決して無いんだ。
一方的な語りは多いけれど、そして其れが私の考えと真逆な事が屡々起こるけれど、不思議と嫌悪感は無いんだ」
(,,゚-゚)「私はてっきり、其の癖に辟易しているのかと思ってたよ」
从 ゚∀从「同じ内容を同じ言葉で、何度も何度も繰り返し言われれば飽きるだろうけれど、彼奴は独り言を呟く度に語句やら趣旨やらを変えて話すんだ。
成績は私と五分五分だけれど、明晰さは抜群だよ、彼奴」
(,,゚-゚)「…」(実際の真偽は定かでは無いにしても、其の疑問を態々口に出す利点は無い。傾聴しよう)
从 ゚∀从「…最近、妙な煙草を吸い出したんだ。悪臭には慣れてるから、其の香りが嫌って訳じゃない。ただ、妙なんだよ」
189
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:40:02 ID:dWhsdNPw0
(,,゚-゚)「煙草……昼のバス停で吸って居た物かしら?」
从 ゚∀从「将に其れさ。煙草って言うより、形状的には葉巻の方が妥当かもな。
聴くに梅雨時期、軒先で雨宿りして居た際に貰ったらしくてな。
偶然煙草を切らして居て、自分と相手二人だけで、其処で知り合った男から譲り受けたと」
(,,゚-゚)「あの、生の葉が其の儘焼け焦げたような臭いのする代物?」
从 ゚∀从「ああ、色物系なんて今迄手を出さなかった癖に、不思議と嵌ったらしくてな。
アレを吸い始めてから、何だか上手く行かないんだよ」
(,,゚-゚)「何か、変わった点でも…?」
从 ゚∀从「うーん…」
(,,゚-゚)「…」(言い辛い内容なのかしら)
从 ゚∀从「…取り敢えず、声がデカく成った。独語でも会話でも、全部聴こえ易く成ったんだな」
(,,゚-゚)「…?」
从 ゚∀从「彼奴が言わんとして居る内容が、頭の悪い私でもすんなりと理解出来る風に成った。
独り言の頻度は…大差無いな、相変わらず四六時中囁いてる」
(,,゚-゚)「……ん?」
从 ゚∀从「なあ、奥さん」
(,,゚-゚)「!」
从 ゚∀从「? どうかしたか?」
(,,゚-゚)「い、いえ。…ちょっと暑くて、茫としてただけ」
从 ゚∀从「おいおい、大丈夫か? 何なら部屋で休んでた方が良いんじゃないか?」
190
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:41:50 ID:dWhsdNPw0
(,,゚-゚)「ごめんなさい、大丈夫よ。其れより何かしら?」
从 ゚∀从「ああ、うん。上手く言えないんだけどさ…恋人との関係で苦労した事って、例えばどんな物が在った?」
(,,゚-゚)「…苦労、苦労ね。苦労…苦労……」
从;゚∀从「ああ、いや、別に無理して捻り出さなくて良いからさ。
…私が聴きたいのは、要はそう云う些細な躓きを、如何したら解消出来るかって話だから」
(,,゚-゚)「そうね……一度、私があの人とは別の男性とキスしたことが在ったのだけれど、
其れ迄の経緯や抱いた気持ちを正直に伝えたら、時間と共に何事も無かったかの如く、普段と同様の関係に戻って行ったわ」
从;゚∀从「は? え? …ハア? 何だそりゃ?」
(,,゚-゚)「一般的には可成りの一大事でしょうけれど、互いに素がずぼらだから、寛恕を請わずに雲散霧消してしまったの。
…此れ、参考に成るかしら」
从;゚∀从「えぇーっと…うん、うん、まー、うん。
私にはよく分からなかったわ」
(,,゚-゚)「悩みの内略に因るでしょうけれど、時間と休養と娯楽を併せれば、気付いた時には瘧が落ちて居る物よ。
細やかさが大切なの」
从 ゚∀从「…其れは、愛情とか、親切気とか、そう云う物か?」
(,,゚-゚)「其の意味で合ってるわ」
从 -∀从「……そう、か」
(,,゚-゚)「…」(どんな悩みなのかしら)
从 -∀从「…時間と休養と娯楽、か」
(,,゚-゚)「…」(葉巻の齎した影響、高岡さんは然程悪く捉えて居ない様子だけれど)
191
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:44:00 ID:dWhsdNPw0
从 ゚∀从「…ドクオもさ、会った許りの頃と比べると、相当変化したんだ。
誰で在ろうと跳ね除けて、徹底した独りの環境を作って居たけれど、最近は徐々に社交性を帯びてきたんだ。
私は其れが少しだけ悲しかったのだけれど、結果嬉しさの方が優ってるんだ」
(,,゚-゚)「…」(大学生、恋人、煙草…共通項の懊悩って何?)
从 ゚∀从「私と正反対でさ、私が恐れて来た孤独を進んで生きて居る強い奴でさ…
いや、しゃかりきに偏屈で頭の硬い奴なんだけども、其れでも彼奴は私に取って特別な存在なんだわ」
(,,゚-゚)「…」(煙草に起因する弊害…肺腑の疾患、副流煙、中毒性、躁状態、吸殻、眼付…)
从 ゚∀从「私もよくスパスパやってた方だから、咎める気概なんて無いんだ。
好きな銘柄を好きな時に吸ってくれて構わないし、其方の方が私も気兼ね無く吸える。あの青葉を焼く臭いだって気にしない」
(,,゚-゚)「…」(咽頭痛、咳嗽、喀痰、高血圧、社会からの目線、後は…口臭……口内環境の変化?)
从 ゚∀从「ただ、アレだけは辛抱堪らないんだ。何でだろうなぁ…自分でも不思議なんだよ、許容出来無い理由が分からない。
──此処の温泉、薬効が凄いらしいから選んだんだ。万病に効くなんて謳い文句迄在る」
(,,゚-゚)「…若しかして、だけれど……口周りの事情?」
从 ゚∀从「アレ? 奥さんも煙草吸う人だったのか?」
(,,゚-゚)「職場の同僚が偶に吸うのよ。
其の人、昔両親も煙草を嗜んで居たらしくて、口臭が如何とか話していた気がしたから」
从 ゚∀从「うん、将に口の事情なんだ。
勿体振る必要なんて無いんだけれど、こう云うのって縁が無い人からすれば、何を話して居るのか分からないだろ?
だから筋道立てて言おうと思ってさ」
192
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:45:16 ID:dWhsdNPw0
(,,゚-゚)「…確かに私もあの人も、吸いませんけれども」
从 ゚∀从「本当、不思議なんだよ、此れ。若いと代謝が良いから出来難い筈なんだけどもさ」
(,,゚-゚)「…漸く落ちが見えましたよ、ええ、見えましたとも」
从^∀从「ははは、汚い話で申し訳無い。
けれど私に取っては、けっこーな一大事だったんだぜ?」
(,,゚-゚)「全く…正直にドクオ君へ意向を伝えて、お医者さんに相談すれば良かったじゃ無い」
从 ゚∀从「決め倦ねて居たんだ。
何しろ私も初めて見たわけだから、若しかしたら重病なのかも知らないって、怖かったんだわ。
…長湯して代謝も活発に成ってるだろうから、此れで駄目ならクリニックに通うつもりさ」
(,,゚-゚)「…心配して損したよ」
从 ゚∀从「調べてみたら"人体が抱える爆弾"なんて比喩が出てきたからさ、ビビっちまったんだな」
(,,゚-゚)「…狂言ね」
从^∀从
(,,゚ -゚)
从 ゚∀从「…そう、膿栓さ」
193
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:46:54 ID:dWhsdNPw0
***
何等の痴愚を自ずから得ること無くして大覚抔有りはせぬ旨を如何にも体現して居た者と、
漫談を孜々営々と有情に宿し憖に亘って鼓吹され続けた空然の者とが其処に居た。
当然と暈された鬼胎は無きに如かず、然し乍ら毀誉褒貶相半ばする通り、
見ず知らずに昏愚と例え貶める者も居れば又股肱の臣が如く廓然と受容する者も在る。
其れ即ち傍から眺めれば猖獗を極めしとも、万世不易、盲千人目明き千人の見解が是で在った。
(,, ゚¥゚)「かくかくしかじか」
(,,゚-゚)「斯々然々」
(,, ゚¥゚)「なるほど」
(,,゚-゚)「成程…ね」
あらましを伝え合い、大体を知った。
然程急を要する事態は起こらず大方あんじょうに流れた邪推、岸さんには頓狂と遮二無二御足労頂いた為、唯只管に申し訳無い所存。
(,, ゚¥゚)「其の……」
(,,゚-゚)「何」
(,, ゚¥゚)「…」
(,,゚ -゚)「…」
(,; ゚¥゚)「…ええ、と……」
(,,゚ -゚)「何」
(,; ゚¥゚)「……」(…ぐう)
(,,゚ -゚)「…折角の客遊、真昼は行き倒れ名所では惑い、湯屋で又頽れドクオ君の世話に為り、其れで一体何を言いたいのかしら」
194
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:48:35 ID:dWhsdNPw0
藍の単衣をゆうるり夜風に靡かせて、月光の挿し込む窓際に片膝を立てる其の人。
頬が薄桃色に明らんで見えるは月見酒と洒落込み濁酒一引が為で在ろうか。
唇頭窄め薄目に覗く無色透明な虹彩、婉然相纏うた佇まい。
所謂怒髪、冠を衝く形相。
(,; ゚¥゚)「こ、此れは、そ、其の……」
(,,゚ -゚)「何」
(,; -¥-)「……ぐぅ…」
(,,゚ -゚)「何」
(,; -¥-)「も…申し訳……」
(,,゚ -゚)「其れ、捨てて、端的に、分かりやすく、簡単に、簡潔に」
(,; -¥-)「ご…」
(,,゚ -゚)「ご?」
(,; -¥-)「…ごめんなさい……」
(,,゚ -゚)「……」
(,; -¥-)「……」
(,,゚ -゚)「…」
(,,- -)=3
(,,- -)「…」
(,; -¥-)「………」
(,,- -)「…顔、挙げて」
(,; -¥-)「で、ですが」
195
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:50:05 ID:dWhsdNPw0
(,,゚-゚)「早く、こっちに来て」
(,; ゚¥゚)「…」ズモモ
(,,゚-゚)「ズモモじゃないよ、全くもう」
(,; ゚¥゚)「…」
(,,゚-゚)「…怒ってないよ、ちょっと疲れただけ。私こそ、熱く為ってしまってごめんね」
(,, ゚¥゚)「そ、そんな事」
(,,゚-゚)「…要するに、彼等との対話は済んだのでしょう。
なら今夜と明日は、ゆっくりゆっくり、休もうよ」
(,, ゚¥゚)「岸さん…」
(,,゚-゚)「もう、くたくたなの。
あなたを"小木さん"とか、"あの人"とか呼んだり、言葉癖を併せて硬く話すのも…こう云う真夜中許りは、大目に見て欲しいの」
(,, ゚¥゚)「……分かりました。善処…いえ、然うします」
(,,゚ -゚)「凪沙で良いよ、今は。だから季さんと呼ばせて」
(,, ゚¥゚)「……分かりました、凪沙さん」
(,,- -)「…何だか、未だ半夜と云うのに酷く疲れてしまって、眠たくて、仕方が無いの」
(,, ゚¥゚)「然う、ですね。私も何だか久し振りに、とても疲れたような気がします」
(,,- -)「…季さん」
(,, ゚¥゚)「はい」
(,,- -)「…季さんは、外から沢山影響を受けてるの。
毎日沢山、たっくさんの気に充てられてるの。その度に又沢山悩んで、考えて、感じて、迷って居るの」
196
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:52:30 ID:dWhsdNPw0
(,, ゚¥゚)「…はい」
(,,- -)「今日だって、一杯狂いに充てられて…変な影が、山程くっ付いて来てる」
(,, ゚¥゚)「…はい」
(,,- -)「ドクオ君の怒気と、私から預かった高岡さんの煩悶と、自分の過去と照らし合わせた、
自ずから思い返した辛酸とに充てられて、きっと…自覚出来無い位に悩んでるの」
(,, ゚¥゚)「…はい」
(,,- -)「だから、だから、私に季さんって、今だけでも良いから、そう呼ばせて。
季さんが確り此処に居ることを、私に確かめさせて」
(,, ゚¥゚)「…はい」
(,,- -)「季さんは、他人を見て自分を知らない振りをして、
他人に対して自分を投影して見る振りをして、周り諄く考えて迷子になることを望んで居て、
本当は誰よりも他人を中心に添えて考えてるって、私は思うの」
(,, ゚¥゚)「…はい」
(,,- -)「…ねえ、見て見て季さん。蛍が体を焦がして居るよ。
蜩の声は、もうすっかり聴こえないよ」
(,, ゚¥゚)「…凪沙さん?」
(,,- -)「蛍火は儚いよ。栖々現に瞬いたと思ったら、気付いた時には見えなく為って居るんですもの」
(,, ゚¥゚)「…寝惚けて居るのですか?」
(,,- -)「つくつくぼーし、つくつくぼ〜…し、って……。
昼間、寒蝉が鳴いて居たのが、全部嘘だったみたいだよ」
(,, ゚¥゚)「……相当酔ってらっしゃいますね。浴衣が肌蹴て居りますよ」
197
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:56:02 ID:dWhsdNPw0
(,,- -)「季さんに見られて恥ずかしい所なんて、私は持って居ませんよう、
持って居ません、よ〜う…」
(,, ゚¥゚)「幾ら残暑と雖も、夜半は気温が下がりますから…左様に御粗末な格好で狸寝入りして居ると、風邪を引いてしまいます」
(,,- -)「なら今度は、私が季さんのお世話に成ろうかしら」
(,, ゚¥゚)「…」
(,,- -)「分かってますよ、普段は私こそ、季さんのお世話に許り成っていることくらい」
(,, ゚¥゚)「私は何もして居ません」
(,,- -)「不調に肖って、偉ぶりたいだけなの…今日くらいは、今だけは、甘えさせて、お願い」
(,, ゚¥゚)「…残りのお酒、少し頂いても?」
(,,- -)「全部呑んじゃって良いよ」
(,, ゚¥゚)「いえ…お医者さんに、控えるようにと言われておりますから」
(,,- -)「私が許すよ」
(,, ゚¥゚)「ですが」
(,,- -)「季さんは本当は、蟒蛇じゃ、無いですか…呑みましょう、呑みましょうよ」
(,, ゚¥゚)「…違いますよ」
(,,- -)「秋口の風流だと思って、月見で一杯…風靡ですよ」
(,, -¥-)「……」
(゚-゚,,)「…あっ」
(゚¥゚ ,,)「…ほう」
(゚-゚,,)「スターマインだ!」
襖側へと顔を逸らし黒ずんだ尾籠度色の空中を見遣ると、月の光の中一杯に唐黍色した大輪の黄水仙が広がっている。
膨よかな黄色揚羽の翅脈は末端から水沫を滴らせ、手元の濁り酒を遽に灑掃したようにはためくと、空を鎧う黄雲と共に消えて行く。
私は此の情景を素直に言い伝えられない自ずからの能が、唯只管に悔しくて、悔しくて、歯噛みすると同時に、心が軽く成った。
198
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:58:14 ID:dWhsdNPw0
「たーまやー!!」
「…か〜ぎや〜……!!」
何処か近くより、闊達で活き活きとした女声と粘つく鼻水混じりの胴間声が聴こえた。
(゚-゚,,)「……私たちが逐一観測し無ければ存在し無いなんて、そんなこと在るわけないんですよ」
(゚¥゚ ,,)「当たり前でしょう」
其処には歪な二人が居た。
(゚-゚,,)「何がどう成って、とか、どんな経緯が在って、とか…知らなくても、理解出来無くても、結局生きるしか無いんですもの」
(゚¥゚ ,,)「……」
落着所が如何で在ったか、畢竟私は分からず吾を失せて居た。
(゚-゚,,)「其々が其々の落とし所を見つけて、或いは偽証して、最後の最後に属絋を迎えるの。
だから今は焦らないで、唯、この一日を紡いで行くの」
(゚¥゚ ,,)「……」
たたなづく、畳なづく。
分からない、分からない。
199
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 00:59:43 ID:dWhsdNPw0
(,,- -)「…季さんは、此処に居るよ。
私の近くで、誰よりも近くで、しっかり私を掴んで離さずに、此処に居るよ…」
(゚¥゚ ,,)「……」
私は何処に行ったのだろう。
雁貝季は私だが、何を見て何を感じて居るのだろう。
私は何処に居るのだろう。
(,,- -)「分からなくても良いから、兎に角其処に居ることだけが、故に真秀ろばなの」
(゚¥゚ ,,)「……」
私は何処に居る。
あなたは此処に居る。
(,,- -)「おやすみなさい、季さん…好きよ、好きよー……」
大覚は無い。
然し私は此処に居るらしい。
許されたらしい。
花火が落ちた。
3.終
200
:
名無しさん
:2020/09/10(木) 02:06:40 ID:RT5hsMHY0
惹き込まれるわ…乙
やっと(,, ゚¥゚)視点が来たけど言い回しがあさきみたいに難解だなっと
201
:
名無しさん
:2021/08/21(土) 01:50:47 ID:s2ba4wDM0
今読んだけど面白いじゃん
期待あげ
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