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( ^ω^)向日葵畑に埋めたようです
1
:
名無しさん
:2020/07/04(土) 20:28:46 ID:sr4wC/ws0
疑問の先に答えがあるとは限らない。
.
103
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 22:51:19 ID:RkhRMpe.0
瞬きすると、黒い塊に馬乗りになっていた。
下から、か細く断裂的な空気の抜ける音がした。
それが死前喘鳴と呼ばれる類鼾音だと、俺は知っていた。
過去に痛めつけた連中と同じ喘ぎ。
ショボンだった。
身体のあちこちが陥没しており、原型を留めた状態で最大限苦痛が長引くように、しかし確実に死に至るように蹂躙した。
舌と歯は残した。
理由を聞くために。
( ^ω^)「…なあ、ショボン先輩」
(´・ω・`)「…」
( ^ω^)「なんで殺したんだ」
(´・ω・`)「…」
( ^ω^)「あんたらは幼稚園の頃からの幼馴染みなんだろ?」
( ^ω^)「小さい頃から大人になるまで、共に育った親友同士だったんだろ?」
( ^ω^)「自分以上に相手を大切にする、美しい絆で結ばれていたんだろ?」
( ^ω^)「…なんでだよ」
俺の力じゃ手に入れられなかったものを捨てたショボン。
そんな憧れの関係を自ら断った理由が知りたかった。
( ^ω^)「なんで、みんなを殺した」
104
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 22:52:35 ID:RkhRMpe.0
(´・ω・`)「…み」
(´・ω・`)「みんな、いきてる、よ」
(´・ω・`)「みんな、ぼくに、ころされることで」
(´・ω・`)「ぼくのなかで、みんなが、いきてるんだ」
(´・ω・`)「いきて、いるんだ」
( ^ω^)「…もういい」
俺にはショボンが何を言いたいのか分からなかった。
不明瞭な言葉使いや、あやふやな表現が理由ではない。
発言した言葉の意味が、まるで理解できなかった。
人は死んだら終わりだ。
死が生に繋がるとは限らない。
もし仮に、死と生が直結していたとしても、俺達がそれを証明するのは不可能だ。
(´・ω・`)「僕は君の中で生き続ける。
僕の中で、僕に殺されたみんなが生きているように、君を守る。
君を救う」
ショボンが事切れる直前、今まで痰が絡んでごぼごぼと音を立てていた喉から声がした。
極めて清澄、好天のように明瞭とした声だった。
晴れて、俺は恨みと憎しみを取り戻したのだ。
105
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 22:53:52 ID:RkhRMpe.0
立ち向かえなかった。
腕力も脚力も膂力も筋力も敵わなかった。
喧嘩の強さも、恫喝も。
全部意味が無かった。
俺は弱い。
友達の作り方すらわからない。
何を持って友と呼ぶのかすらわからない。
高校、殴っても折れない奴に頭を下げた。
大学、ひとりぼっちで声の小さい奴と馬が合った。
信頼できる人にそばにいて欲しくて。
分かっている、間違っていることくらい。
回りくどいやり方だってことくらい。
生きる目標を失うよりも辛かった。
夢が敗れるより苦しかった。
忘れられなかった挫折よりも。
俺が抱えていた恨みとは、憎しみとは。
清水にぶちまけた醜い心情の正体は。
俺が、本当に恨んでいたのは。
心の弱い俺自身が。
器の小さな俺が許せなかったんだ。
106
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 22:55:11 ID:RkhRMpe.0
みんな、ごめんな
俺、守ったことなんて無かったんだ
奪い方しか知らなかったんだ
…言い訳に過ぎないな
お前達と同じ時を過ごせて、俺は幸せだった
下らない会話も意味のないやり取りも、初めての体験だったんだ
全部が新鮮で、鮮やかで、燦爛と輝いて見えたんだ
硬いクーの話し方と素直な優しさが好きだった
卑屈なドクオの骨のある言葉が好きだった
冷めたツンのたまに見せる微笑みが好きだった
朗らかなブーンの柔和な笑顔が好きだった
…きっと、きっとショボンも…
.
107
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 22:56:28 ID:RkhRMpe.0
( ω )「…不味い」
( ; ω ; )「恨みは、不味いなあ…」
.
108
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 22:57:57 ID:RkhRMpe.0
※
何分間か、舌に残る砂のようなザリザリとした感触と吐き出したくなるえぐみを堪能しながら、俺は向日葵畑を眺めていた。
浮世離れした、荘厳な光景。
ここが日本であることに疑問を感じてしまうほど、異国情緒が溢れている。
呪詛はもう聴こえない。
既に感情を消化してしまったからだろう。
俺の心が重くなった実感があった。
清水はこの畑で取れる食用油は、近所で評判の味だと言っていた。
あいつは自分の愛情と太陽が育てた賜物だって言ってたが、味覚を無くして再度取り戻した俺は、清水の言葉が間違いだと気付いてしまった。
恨みを亡くして、俺は味覚を失ったから。
憎しみを亡くして、俺は矜持を失ったから。
ここの油が美味しい理由は。
味が凝縮されている理由は。
恨みや憎しみこそが、生きているという「味」
を深くさせているからだ。
熱風に晒され、凪いだ向日葵の海が水飛沫を上げる。
寄せては返って、寄せては返って。
怨恨から芽を出した、恨みと憎しみの花が咲いている。
悲しみを、苦しみを、魂を燃やして叫んでいた。
太陽の焔に向かい続け、琥珀色に焼けた眼を炎天下に曝け出しながら。
見果てぬ黄金の夢。
地平線の彼方に、白いワンピースを着た珠のようなお姫様が見えた気がした。
109
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 22:59:11 ID:RkhRMpe.0
※
(゚、゚トソン「では、今日のホームルームはここまでです。
明日から授業が始まるので、皆さんしっかり準備して登校してくるように」
大学生活一日目にして、私は失敗した。
なんとか自己紹介は卒なく済ませたものの、余りにも中身の無い紹介になってしまった。
人から良い意味で注目されるような発言が出来なかった。
加えて、持ち前の気の弱さが発露したせいで声が非常に小さくか細いものしか出せなかった。
また、友達、作れないのかなぁ。
寂しい、寂しいよ。
(゚、゚トソン「では当番の方々、掃除お願いします」
ミセ*゚ー゚)リ「ハーイ」
( ´_ゝ`)「う〜っす」
リハ;*゚ー゚リ「…ハイ」
( ゚∋゚)「……」
( ^ω^)「…」
えっと、あの人達、なんて名前だっけ。
マズい、ついさっき自己紹介したばかりなのに名前が思い出せないなんて…。
110
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:00:31 ID:RkhRMpe.0
( ´_ゝ`)「うへー初日から掃除当番とかマジだりい」
ミセ*゚ー゚)リ「ホントですよねー。
用務員の人達が全部やってくれればいいのに」
( ゚∋゚)「……」
リハ*゚ー゚リ「そ、そうで…」
( ´_ゝ`)「面倒なんで分割しましょーよ。
俺右前からやるんで」
( ^ω^)「わかりました」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃ私、真ん中の列から後ろやります」
リハ*゚ー゚リ「あ、なら私、左前から…」
( ´_ゝ`)「とっとと片付けちまいましょ。
だりい、早く帰りてーなー」
ミセ*゚ー゚)リ「ええと、鳥塚さんですよね?
左前からお願いしてもいいですか?」
( ゚∋゚)「りょうかーい」
リハ*゚ー゚リ「……」
あれ、なんでみんな私のこと無視するんだろ。
普段通りに声出してるのに、どうして誰も返事してくれないんだろ。
きっと、声が小さいからだよね。
故意に無視してるんじゃなくて、聴こえてないだけだよね。
だって私、別に変なこと言った覚えないし、クラス内で悪目立ちするようなブスでもないし。
なのになんで、こんな些細なことで私、泣きそうになってるの?
111
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:02:50 ID:RkhRMpe.0
( ´_ゝ`)「うーっす、今日もおつかれーっす」
ミセ*゚ー゚)リ「おつかれさま〜!」
リハ;*゚ー゚リ「あ…お、おつか…」
( ´_ゝ`)「授業むずくないっすか?
あそこせんせーパパパ〜って描くのに、早すぎて全然追いつけないっすよ」
ミセ*゚ー゚)リ「わっかるー、上手すぎて引くレベルー」
( ´_ゝ`)「あれ、そういやミセリさんって、どこから来てるんすか?」
ミセ*゚ー゚)リ「学校の寮だよー」
( ´_ゝ`)「えー、めっちゃ近いっすねー。
うらやまー」
リハ*゚ー゚リ「あ、わ、私も…寮から…」
( ゚∋゚)「おつかれー」
( ´_ゝ`)「おークックル。花金だし、この後どっか行かね?」
( ゚∋゚)「お、イイねー行く行くー」
112
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:03:30 ID:RkhRMpe.0
ミセ*゚ー゚)リ「今日二丁目のクラブが朝までやってるらしいよ! みんなで行こうよ!」
( ´_ゝ`)「イイっすねー。
西川さんも行きますー?」
( ^ω^)「電車逆方向なんで」
( ´_ゝ`)「あー、そっすかー。
じゃ3人で行きますかー」
リハ*゚ー゚リ「……」
なんでなんだろ。
どうしてここまで徹底して、居ない存在として扱われるんだろ。
私が気色悪いから?
お洒落じゃないから?
声が小さいから?
影が薄いから?
……。
クラブには別に行きたくなかった。
うるさいだけだしお金も掛かるし、変な男性に詰め寄られたら断る自信も無かったから。
誘われないのが寂しかった。
無視されて蔑ろにされて、そんな態度が卑下してるみたいに見えて。
むしゃくしゃ腹を立てるよりも、寂寥感が心を締めた。
( ^ω^)「……」
113
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:05:22 ID:RkhRMpe.0
一ヶ月経っても、二ヶ月経っても、私には友達らしい友達が出来なかった。
クラス内でのヒエラルキーもある程度固定されてきて、怠そうな口調で色白な流石さんと、明るくて誰にでも優しい芹沢さんが頂点に君臨していた。
最下層は私。
クラスメイトの名前は目立つ人以外ほとんど覚えてなかった。
隣の席は西川ホライズンって名前の男性で、私たちより一つ歳上。
悪い噂の絶えない人で、高校生の頃は名の通った不良として有名だったとか、死体の山を築いたとか、少年院戻りとか、弱い者イジメが得意な下衆だとか。
そんな感じの悪評が影でコソコソ囁かれている人。
西川さんはいつもニコニコ笑ってて、その表情には特段おかしな様子や違和感も無かった。
私からだと、とても優しそうな男の人に見える。
よく上級生の麻日先輩と漫画の話とかで盛り上がってて、私は陰ながらそんな関係性を羨ましく思っていた。
私にも、あんな風に気兼ね無く話せる友達が欲しかった。
リハ*゚ー゚リ「……」
( ^ω^)「……」
リハ*゚ー゚リ「……」
( ;^ω^)「……」
リハ*゚ー゚リ「……」
( ;^ω^)「……あの」
リハ*゚ー゚リ「…」
( ;^ω^)「あの、清水アイシスさん…ですよね?」
リハ*゚ー゚リ「…え? 私?」
114
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:06:37 ID:RkhRMpe.0
話しかけてくれたのはズンからだった。
余りにも唐突で、タイミングやら辻褄やらが合わなかったから、少々面食らった記憶がある。
( ;^ω^)「あ、や…その服、オシャレだなった思って」
リハ;*゚ー゚リ「え? あっ…これですか?」
私の服のレパートリーなんて、殆ど母からのお下がりだ。
50年代から80年代に掛けての古い服ばかりで、新鮮さの欠片も無いボロ布のような物ばかり。
それでも私はヴィンテージな雰囲気が好きだったから、殆どいつも同じような衣類ばかり着ていたような気がする。
時代を経た古着を着ると、それだけの年代を生き抜いてきた強さを纏っているような気持ちになれたから。
( ^ω^)「それって、まさかA.A.の服ですか?」
リハ;*゚ー゚リ「?!」
A.A.
とあるブランドの頭文字。
私がいつも着ているブランドのイニシャルで間違い無かった。
リハ;*゚ー゚リ「…ど、どうして、分かったんですか…」
( ^ω^)「俺、その人の作った服、好きなんです。
レディースだから着れないんですけど、彼の生み出した潮流、伝説だと思ってるんです」
リハ;*゚ー゚リ「……」
( ;^ω^)「あ、すいません俺、自分ばっか盛り上がってしまって…」
リハ*゚ー゚リ「…ボディコンシャス、ですよね」
( *^ω^)「!」
リハ*゚ー゚リ「私、彼の作る服、すっごく好きなんです!
このブランド当てられたの、本当に初めてで…!」
115
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:08:13 ID:RkhRMpe.0
私は多分、その時熱に浮かされてたんだと思う。
後々思い返すと、あんなに大きな声を出してしまったのが恥ずかしくなるくらいだった。
でもどうやら、私が大きいと思っていた声量はクラスの皆にとっては適正だったらしくて、誰一人として私を咎める人はいなかった。
彼は、ズンは私に声の出し方を教えてくれた。
好きな事を話す喜びを教えてくれた。
友達の意味を教えてくれた。
ズンはただ話しかけただけなんだと思う。
偶然趣味が合って、それを偶々話題にしただけだったのだろう。
でも。
本当に、そんな些細な切れっ端からだったけど。
少なくとも私は、ズンに救われたんだよ。
あの時、本当に、これ以上無いってくらいに嬉しくて。
あなたと徐々にたくさん話すようになって、麻日とも仲良くなって。
でもズンと話してる時間だけは、何物にも替え難い喜びで。
あなたのことが好きで。
だからあなたの心に根差した負担を、負荷を、少しでも和らげたくて。
あなたの力になりたくて。
だから、私は──。
恨みと憎しみを埋たの、向日葵畑に。
116
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:09:57 ID:RkhRMpe.0
※
(-@∀@)「ただいま〜…って、ずいぶん綺麗に平らげたね」
リハ*゚ー゚リ「その様子だと、色々取り戻せたっぽいわね」
( ^ω^)「…おう、アサピーにアイシスか」
声に振り向くと二人が立っていた。
綺麗な緑に染めたカーリーヘアーの男。
第六感の冴えた女。
麻日と清水、俺の悪友。
(;-@∀@)「…いきなり下の名前で呼ぶなよ。
言われ慣れてない分、違和感がすごい」
リハ;*゚ー゚リ「…何かあったの?」
指摘されて気付いた。
こいつらを下の名前で呼んだのなんて、出会った時以来じゃないか?
俺は二人の名前をそんなに長い間呼んでいなかったのか。
( ^ω^)「ん」
(-@∀@)「まあ、言われて悪い気はしないけどね」
リハ;*゚ー゚リ「…」
麻日はやれやれといった具合に腕を広げ、清水は頬を紅潮させていた。
反応が分かりやすい女は好きだ。
( ^ω^)「とりあえず腹が減った。
飯にしようぜ」
(*-@∀@)「賛成ー!」
リハ*゚ー゚リ「…そうね。美味しい酒も用意してあるから、軽く摘みでも作ってくるわ。
昼食にしましょっ」
俺たちは向日葵畑を後にする。
俺は恨みと憎しみを、もう二度と大地に埋めないだろう。
取り返した矜持を再び捨てる事の無いように、怨恨の光輝を背にして前を向く。
頭上高く、太陽がその威厳を目一杯に示していた。
117
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:11:45 ID:RkhRMpe.0
※
( ^ω^)「…ペヨーテ?」
(-@∀@)「最近、清水からディフューザー貰ったでしょ。
その主成分になってるサボテンのことだよ」
( ^ω^)「それがどうかしたか?」
(-@∀@)「あれね、幻覚作用あるから気を付けなよ」
( ;^ω^)「…」
(-@∀@)「インディアンとかシャーマンが好き好んで常用する薬さ。
匂いが良いからって日常的に吸ってると、涅槃から戻れなくなるよ」
( ;^ω^)「…気を付ける」
清水の家の居間で、彼女が例の酒を取りに行っている間に麻日から忠告された。
唐突な馬鹿げた内容で、俺の頭は上の空だったが言いたいことだけは伝わった。
( ;^ω^)「…通りで変なことばかり起きると思ったよ」
(-@∀@)「まー、全てが幻覚だとは思わないけどね。
…やっぱり、ホライゾン君関連だったんだね」
( ^ω^)「……」
俺が恨みを咀嚼している間、麻日は清水から事の顛末を聞いたらしい。
俺が清水に吐いた愚痴は、自分への後悔だった事。
俺から俺への情けない泣き言の数々。
酔った俺は、それら全てを捨て去りたいと本気で言っていたらしい。
忘れたくても忘れられないのだから、いっそ奪い取って欲しいと。
大の大人が、本当に情けない。
身の上話を交えた愚痴を清水や麻日に聴かせるなんて、本当に初めてじゃないだろうか。
だから清水も、大っぴらにしてこなかった自身の力を示したのかもしれない。
俺は自分の過去を麻日に話した。
包み隠さず、事の顛末を詳らかに伝えた。
118
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:13:59 ID:RkhRMpe.0
(-@∀@)「…」
( ^ω^)「…まあ、こんな感じだ」
麻日は静かに聴いていた。
俺はあの事件で数多く理解出来ない場面や思考に遭遇した。
それまで二週間のスパンを開けていたのに、なぜ唐突に襲われたのか。
なんでショボンは俺にだけ素を見せたのか。
どうしてあいつは無抵抗に殴殺されたのか。
分からなかった。
(-@∀@)「僕は少しだけ、分かる気がするよ。殺人という手段は、断じて肯定しないけども」
( ^ω^)「?」
119
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:14:43 ID:RkhRMpe.0
(-@∀@)「僕は白紙な自分が嫌いだったから、こうやって個性を追加して生きてる」
綺麗な緑に染めたカーリーヘアー。
赤いサングラスに三白眼のカラーコンタクト。
耳から垂れる手錠を模した円で巨大なリングピアス。
穴の空いた男が、一人で喋っている。
( ^ω^)「…」
(-@∀@)「きっとズンに殺されることで完成したんだよ、彼の絵は」
( ^ω^)「…よく分からないな」
(-@∀@)「それが正解だと思うよ。
『殺される事で相手の中で生き続ける』なんて、常人には理解し得ない考え方だし」
( ^ω^)「…俺の思い出の中でブーン達が生きているように、ショボンも俺の心に巣食っているってことか」
(-@∀@)「…彼は、悲しい人だね。
他人の中でしか生きられなかったんだ」
ショボンが最期に残した言葉を思い出す。
その部分だけ、ハッキリと刮目して口に出した言葉を。
(´・ω・`)「僕は君の中で生き続ける。
僕の中で、僕に殺されたみんなが生きているように、君を守る。
君を救う」
(-@∀@)「あまり深く考え込まないことだよ。
疑問の先に答えがあるとは限らないからね」
( ^ω^)「……」
120
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:16:06 ID:RkhRMpe.0
リハ*゚ー゚リ「なーに湿っぽい話してるのー?」
会話が途切れたタイミングで、清水が戸口から顔を出す。
手にはなかなか大きな瓶が一本。
ボトルの中身は黄を帯びた半透明の液体。
紙のラベルにはデフォルメされた赤いイモムシが描かれていた。
目だけが歪に大きくて、可愛らしさを狙っているのだろうが転じて気持ち悪さが目立つ。
(-@∀@)「あっ」
(´・ω・( ^ω^)「清水」
(^ω^ )
リハ*゚ー゚リ「?」
(-@∀@)「?」
(^ω^ )「いや」
( ^ω^)「なんでもない」
今、後ろに誰かいたような。
リハ*゚ー゚リ「それよりほら、酒よ」
清水が腕に持っていたボトルを突き出してくる。
やめろ、その不快な瓶を俺の顔に近づけるな。
(-@∀@)「あれ? ツマミは?」
リハ*゚ー゚リ「煮込み中。時間がもうちょっと掛かるから、先に開けちゃおうと思って。
複雑な味のお酒らしいわ」
ラベルの文字は「Mezcal」
こじんまりとした度数表記は38。
( ;^ω^)「…底の方に、虫みたいな黒い影が見えるんだが」
リハ*゚ー゚リ「そ、芋虫よ。 幸運を呼ぶグサーノ」
(;-@∀@)「?!」
リハ*゚ー゚リ「最期にグラスへ注いだ時、この虫が瓶から出てくれば、その人に幸運を齎してくれるって言われてるの」
121
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:17:42 ID:RkhRMpe.0
リハ*゚ー゚リ「…残った分は、ズンにあげるわ」
( ^ω^)「は? なんでだよ」
(-@∀@)ヒュー
( ^ω^)「?」
リハ*゚ー゚リ「あなたのこれからに、幸がありますように、ね」
先刻まで赤みを帯びていた清水の顔はやはり青白く血色が悪い。
隣の麻日は変わらない笑顔で俺たち二人を眺めていた。
高校時代、悪として存在していた俺を受け入れてくれた麻日。
こいつには本当に悪い事をした。
弁解の余地もないほどに暴虐の限りを打ち尽くしてしまった。
口で謝ろうとするたびに、こいつは話を遮ってきた。
まるでそんな謝罪文なんかいらないとでも言いたいかのように。
こいつが待ってくれていて本当に良かった。
大学時代、隣席の女は不遇だった。
可哀想だと思ったのは間違い無いが、それを理由に話しかけたつもりはない。
哀れみで被る人間関係なんて阿呆らしい。
俺は単純に、こいつの人間性が気になっただけだ。
たった独り、大学生になるまで孤独に生きてきたとしか思えないような振る舞いの清水。
苦心を顔に出さない女。
そんな強かさが気に入ったんだ。
偉そうに言える立場じゃないのは百も承知だ。
ただ俺は、清水アイシスと仲良くなりたかった。
それだけの事。
今度ここに訪れる時は、しっかり準備して赴こう。
使い古したスケッチブックと色褪せたペンを手にして。
向日葵畑の玉姫様を描きに行こう。
122
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:19:39 ID:RkhRMpe.0
※
ピッ,ピッ,ピッ,ピッ
( ^ω^)「グー、グー」
ピッピッピッピッ
( ^ω^)「ぐ〜、ぐ〜…」
ピピピピッ,ピピピピッ,ピピピピッ
( ^ω^)「………」
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
( ^ω^)「…」
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
( ^ω^)「…」
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ
( ^ω^)「うるせー……」
( ^ω^)「ねみー…」
(^ω^ )
(^ω^ )「あー」
( ^ω^)「もうこんな時間かよ」
123
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:20:23 ID:RkhRMpe.0
( ^ω^)「…」
( ^ω^)「って今日は休みか」
( *^ω^)「……」
( *^ω^)「…スケッチ、描きに行くか」
( *^ω^)「アイシスの家に」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「……」
.
124
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:21:07 ID:RkhRMpe.0
( ^ω^)「ひまわりを眺めに行こう」
.
125
:
mu
:2020/07/06(月) 23:22:12 ID:RkhRMpe.0
( ^ω^)向日葵畑に埋めたようです 終
.
126
:
mu
:2020/07/06(月) 23:23:21 ID:RkhRMpe.0
以上、たまねぎでした。
長々と失礼致しました。
127
:
名無しさん
:2020/07/06(月) 23:32:34 ID:NbSPISl.0
乙んんんんんアアア
128
:
名無しさん
:2020/07/07(火) 06:34:38 ID:DyyjUpOo0
乙
なんだろうなこの不思議な読了感は
129
:
名無しさん
:2020/07/07(火) 11:50:18 ID:yUxZ6E8g0
おつ
西川のブーン達に対する感情がどうにもちぐはぐだな、と思っていたが
そういうことか
130
:
名無しさん
:2020/07/07(火) 11:57:52 ID:yUxZ6E8g0
違った 「感情」じゃなくて「思い出の中の描写」だ
131
:
名無しさん
:2020/07/07(火) 23:24:31 ID:vbBKFLh60
乙。不思議な感動で満たされる。
132
:
名無しさん
:2020/09/12(土) 12:12:57 ID:9KygWE0U0
今更感あるが面白かったので感想を
西川の表面上とは違って奥底では真剣に生きようとしているのが感じとれるのが好き
絵、というか創作は自分も好きだから読んでて共感できたし、夢中になって読んでた
前半ちらっとだけ出てたショボンが後半めっちゃ効いてきて展開上手い
個人的にまとめられてほしい
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