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('A`)ドブロク!のようです
1
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:09:30 ID:XGoSnstM0
いいか?ここらへんに住むならドブロクの奴らには気を付けろ。
ドブロクってーのは、したらば高校の別名なんだけどな。
DQNどもの巣窟の底辺高校だよ。
年に数回は街で乱闘騒ぎ起こすし、校内じゃ喧嘩がねぇ日はないって馬鹿の集まりだ。
で、特に手ぇ出したらいけない連中がいる。
『四天王』って呼ばれてんだけどよ。
笑うなって。マジなんだから。漫画の話じゃねぇよ。
まずは『魔王』杉浦ロマネスク。こいつがドブロクの最大派閥のドンだ。
でっけぇ傷が両目にある巨漢だから、見ればすぐ分かるよ。
ドブロクの連中を大半仕切ってる奴だから、ある意味「番長」って感じだ。
こいつが動けばドブロクが動くと思っても間違いじゃない。絶対関わるな。
2
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:10:25 ID:XGoSnstM0
次は『女帝』高岡ハインリッヒ。四天王唯一の女だ。
派手な銀髪のアシメの女見たら逃げろ。そいつだ。
杉浦が男の不良仕切ってるとすれば、高岡は女子生徒を束ねてる。
レディースの頭張ってて、女瞳鎖(メドゥーサ)って特攻服着た女見た事あんだろ?そいつらのボスだ。
だから、女ナンパする時は気を付けろ。ドブロクの生徒だったら酷い目に遭うぞ。
んで『総統』東条フォックス。白狐っていうチームの頭だ。
『族喰い』とも呼ばれててよ。ここら一体の族を新顔だった白狐の連中が潰して回って、そいつら傘下にしちまった。
しかも理由が、「俺らの走るのに邪魔だったから」だってよ。イカれてるよな。
白狐のロゴ入ったライダース来た奴らが来たら黙って道を譲れ。
最後は『暴君』猫村ギコ。こいつが間違いなくドブロク最強だ。
暴君って言っても、力でドブロクの連中を従えて圧制してる訳じゃない。
強いんだよ。とにかく。規格外に。現実で人殴って数メートル吹き飛ばす奴見た事あるか?
それでついたあだ名が『暴力』の『君』だ。常に女腕に引っ付かせてる男見たら眼を合わせるな。
3
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:11:26 ID:XGoSnstM0
こいつら以外にもヤベェ連中がゴロゴロいるのがドブロクだ。
まぁ簡単に言えば、ドブロクに関わるな。だ。
あン?なんで「したらば高校」なのにドブロクなのかって?
そりゃあな……。
4
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:12:16 ID:XGoSnstM0
('A`)ドブロク!のようです
.
5
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:13:03 ID:XGoSnstM0
既に俺の心は折れそうだった。
塀には夥しい落書きとペイントが施され、何も書かれていない部分を探す方が難しい。
その上には有刺鉄線が乱雑に巻かれた防犯フェンスは、さながら刑務所をイメージさせた。
『入学式』の看板は早々に蹴り折られたようで、道に装飾されていたであろう造花をまき散らしていた。
横を通り過ぎていく生徒たちは、一様に鋭い眼光を放っており、数分前は「目が合った」という理由で二人が胸座を掴み合った後、校舎の奥に消えて行った。
何故、俺はこんな場所に立っているのだろう。と、校門前に立ってから17回目の自問に入る。
「逃げずに戦う」そう決めた。だけど、それは物理的な意味ではない。
喧嘩なんて生まれてこの方、口喧嘩しかしたことはない。それも数えるほどだ。
平和主義というより日和見主義と言ってもいいほど、争いからは無縁だった。
('A`)「生きてけるかなぁ……。ここで」
まず、今日という日を。
もしかしたら入学式の初日で病院送りになり、そのまま出席日数が足りずに自主退学。
ありえない。とは言えない。
この高校では。
俺はもう一度校門の横に据付けられた校名を見た。
『したらば総合高等学校』
スプレーで白く汚れたプレートを見て、生唾を飲み込んだ。
今日から、ここで、俺の高校生活が始まる。
6
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:14:16 ID:XGoSnstM0
Ep.1「KNOCK BACK!!」
.
7
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:17:01 ID:XGoSnstM0
1.
乱闘でも起こるのではないか。と予想していたが、良い意味で裏切られた。
入学式は恙無く終了し、割り振られたクラスの一角で、俺は安堵の息を漏らした。
ホームルームが終われば、今日は帰宅できる。
クラスメートたちは出身の中学などを言い合ってはいるが、俺に話しかけてくる奴は誰もいない。
彼らの興味は自分と似た様な雰囲気を持つ者に限定されていた。
そうだ。こうやって目立たず、貝のように生きて行こう。こんな高校でも、自分で勉強し、大学に入るのだ。
そう、心に決めた瞬間だった。
悪魔の声が、聞こえた。
( ・3・)「うっつだくーん」
声が掛かって来た方を振り向いた俺は、自分の目が信じられなかった。
嘘だ。
なんで、こいつが、ここにいる。
8
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:17:34 ID:XGoSnstM0
( ・3・)「あるぇ?無視ぃ?ひどくね?せっかくおな中の友達に会えたのにー」
声が、うまく出ない。
急激に喉が渇いていく。
( ・3・)「もしかして忘れちゃったぁ?2年振りだしなぁ」
喉を通る空気が痛い。粘度の高い唾液が分泌され、額に脂汗が浮かぶ。
( ・3・)「んじゃ、こうやったら思い出せるぅ?」
(#・3・)「ウラァ!」
怒声と共に俺の腹部に鈍い痛みが走った。
(;'A`)「カヒュッ!」
腹に拳がめり込んでいた。
何度も味わった感覚。息を吐けるが、吸い込むことができないこの感覚。
9
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:18:15 ID:XGoSnstM0
( ・3・)「思い出してくれたかなぁ?田中だよ。田中ぼるじょあ」
(;'A`)「な…なんで……」
( ・3・)「なんでって。俺もした高に入ったからに決まってんじゃん。相変わらず察し悪いねぇ」
ニタニタと俺を見下ろす、あの厭な笑い方。
またか。またこうなるのか。
絶望感と悔しさと、自分への苛立たしさがグチャグチャに頭の中でミキサーにかけられ、目尻に涙が溜まる。
( ・3・)「あるぇ?泣いちゃった?ごめんね?あんま強くやったつもりなかったんだけど。久しぶりだから?」
俺の顔を覗きながら、さも愉快そうに言う。
忘れた日は、一日だってない。忘れようとしなかった時は、一秒だってない。
どうしたらいいのか、何を考えたらいいのかすら分からなかった。
そんな時、別の声が田中の後ろから聞こえた。
10
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:18:58 ID:XGoSnstM0
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「おい」
( ・3・)「ん?」
途端、田中が横に倒れ込んだ。
殴り倒された。と分かったのは、数秒経ってからだった。
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「ダッセェ真似してんじゃねェよ」
(#・3・)「は?なにするわけ?」
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「ぐだぐだムカつくんだよ。ヤんならヤってやるぞ」
(;・3・)「……ッチ」
田中を殴った男は、凶悪な形相で睨みつける。
完全に、圧倒していた。空気で格の違いを見せつけらたのか。不良特有のセンサーだったのか。田中は舌打ちをし、自分の席に戻って行った。
11
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:20:38 ID:XGoSnstM0
(;'A`)「あ……あの、ありがと、ございました」
なんとか、絞り出すように感謝を告げる。
俺の心には一抹の希望の火が灯っていた。
イジメを許さず、弱きを助け強きを挫く。それを実践できるヒーローが現れたように感じた。
この人がいれば、なんとかやっていけるかもしれない。と。
しかし
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「うるせぇ。お前もムカつくんだよ。ウジウジしやがって」
返って来た答えは、拒絶だった。
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「ここはな、お前みてェなモヤシが来るようなとこじゃねェんだよ」
(;'A`)「エ…アノ…ソノ…」
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「拳一本で男張れンのかてめェ。それができねェなら面見せンじゃねェ」
12
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 06:21:06 ID:XGoSnstM0
昔から、人の顔色を見てきた俺には分かった。
心底、本気の侮蔑。
気付けば、クラスの全員が俺たちに注目していた。
どこからか「いいぞー!増井ー!」と野次が飛ぶ。それに「うるせぇ!」と返す目の前の男。
もう一度、俺を睨みつけた後、増井と呼ばれた男は自分の席に戻って行った。
タイミングを見計らったように、担任の教師が入ってくる。
俺は、ほとんど先生の話を聞けなかった。
最低の再開。そして、俺の居場所なんてないという現実。
また地獄が始まるのかという絶望で、視界は歪んでいった。
13
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 08:02:39 ID:uZ63LYLQ0
支援
14
:
名無しさん
:2019/06/06(木) 15:59:41 ID:isNUAMrQ0
好き
15
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 05:15:43 ID:Civ3R7zo0
2.
どんなに望んでいなくても、日は登り、『明日』を強制始動させる。
目が覚めてからも、暫くは布団から起き上がる気になれなかった。
憂鬱な気分と裏腹に、微睡むことはなく、脳は完全に覚醒していた。
また、地獄の日々が始まる。それを思うとどうしても起き上がる気になれなかった。
眠くもないのに寝返りをうつ。まるで嫌な考えから逃げ惑って右往左往するかのように。
それでも、俺は戦わなければいけなかった。
忘れてはいない。忘れるはずもない。逃げっ放しの人生で、初めて自分で決めたこと。
それだけからは、逃げる訳にはいかなかった。
重い足取りで布団を抜け出して、制服の襟詰に袖を通す。
鞄を持つと、階下に降りて行った。朝餉のいい匂いが、鼻孔をくすぐる。
一階の店舗スペースに入ると、調理場から声をかけられた。
16
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 05:16:37 ID:Civ3R7zo0
('、`*川「お、ドックンおはよー」
('A`)「おはようございます。朝の手伝い出来なくてすみません。おばさん」
('、`*川「いいのよー。まだ来たばっかで身体が疲れてんのよ。あとおばさんはやめろっつってンだろ」
(;'A`)「ぺ…ペニサスさん」
('、`*川「よろしい」
調理場に立つ女性。伊藤ペニサスさんに朝の挨拶をしながら、朝食が置かれたカウンターに腰を落ち着ける。
ペニサスさんが、味噌汁と山盛りのご飯を渡してくれた。
('A`)「いただきま…いや、朝こんなに食べられないですよペニサスさん」
('、`*川「あ?朝はしっかり食べなきゃダメっつってンだろ」
(;'A`)「ハ…ハイ。イタダキマス」
('、`*川「はい。召し上がれ」
もそもそと食事を始めた俺を、カウンターに肘を乗せたペニサスさんが覗いてくる。
17
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 05:17:07 ID:Civ3R7zo0
('、`*川「どう?美味しい?」
('A`)「はい。相変わらず美味しいです」
('、`*川「でしょでしょ。で、どうだった?した高は」
鮭の身をほぐしていた俺の箸が止まる。
('A`)「…すごかったです。色々と」
('、`*川「まぁねぇ…。ガラの悪い奴らが多いから。ドックンみたいな子はほとんどいないでしょ」
('A`)「そう…ですね。圧倒されましたよ」
('、`*川「でもま、見た目ほど悪い子はいないよ」
ペニサスさんは優しい目をしながら言う。
18
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 05:17:34 ID:Civ3R7zo0
('、`*川「喧嘩と面子立たせることしか頭にない連中だけどねー。いじめとか恰好悪いと思うことはしないよ」
('A`)「格好悪い…ですか?」
('、`*川「そ。あいつらにとって格好悪いと思うこと。男下げることって言ったらいいのかな」
('A`)「男を…下げる?」
俺には、理解出来ない思考だった。
増井くんが言っていた事が、脳裏に過ぎった。
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「拳一本で男張れンのかてめェ。それができねェなら面見せンじゃねェ」
男を上げるとか、下げるとか。
喧嘩が強いからって、何が偉いのか。
19
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 05:18:12 ID:Civ3R7zo0
('、`*川「喧嘩が強いのが何が偉いのか?って?」
(;'A`)「えっ」
('、`*川「そうよねー。普通。意味ないもんね。社会に出たら」
ペニサスさんはケラケラと笑いながら、調理場から出てくると、俺の横に座った。
('、`*川「でも、それがあいつらにとっては大事なことなんだよ。きっと」
('A`)「大事な、こと」
('、`*川「そ。刹那的でも、精一杯恰好つけて生きることがさ」
('A`)「…ごちそうさまでした」
('、`*川「はい。お粗末さま」
鞄を持って、立ち上がる。
20
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 05:20:18 ID:Civ3R7zo0
('A`)「いってきます」
('、`*川「いってらっしゃい。気を付けてね」
('A`)「はい」
引き戸を開けて、店の外に出る。
大事なこと。俺にとっての大事なことは、もう、逃げないこと。
そう誓った。何があっても、逃げずに戦うこと。
彼らのことは理解できない。でも、俺にも大事なものがある。
『伊藤食堂』
看板を一度振り返り、俺は最悪の高校へ歩みを進めた。
21
:
名無しさん
:2019/06/07(金) 12:04:27 ID:oFF4bxNU0
おもろそうですやん
22
:
名無しさん
:2019/06/08(土) 07:03:50 ID:WZK4dWe.0
良いね
すき
23
:
名無しさん
:2019/06/08(土) 07:25:54 ID:423dfJJc0
おつおつ
24
:
名無しさん
:2019/06/08(土) 12:28:20 ID:H5Ix7VRcO
期待
25
:
名無しさん
:2019/06/08(土) 15:38:54 ID:qN6BJC7g0
おtu
26
:
名無しさん
:2019/06/08(土) 22:52:15 ID:10vLtBwQ0
ブーン系でヤンキーものって珍しいよな
期待
27
:
名無しさん
:2019/06/09(日) 15:13:06 ID:8uO5iJ6U0
おつ!
言われてみればヤンキーものって見ないな
期待!
28
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 20:51:25 ID:JvcG/9do0
3.
改めて見れば、酷い有様だ。
塀どころか、校舎の壁にまでスプレーアートが施されており、窓ガラスはほとんど割れている。
('A`)「どうやって描いたんだろうなぁあれ」
三階の壁に大きく描かれたどこぞのバンドのロゴマークらしきものを見ながら、ふとした疑問を呟いた。
校舎裏の片隅で、一人でペニサスさんが作ってくれたお弁当を食べながら教科書を捲る。
案の定、授業を碌に聞いている者はほとんどおらず、先生も淡々と教科書の説明をするだけの簡易なものだ。
大抵のものは机に突っ伏して寝るか、教室の隅で談笑しており、ノートを取っているのは俺だけだった。
騒がれるよりは、マシと言う程度の内容。およそ、それで大学に進学できるとは思えない。
だが、足りない分は自分で補えばいい。元から、この高校の授業に期待はしていなかった。
お弁当を食べ終えて、今日は帰りに書店に寄って参考書でも見て行こう。
そう決めた時だった。
29
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 20:52:02 ID:JvcG/9do0
( ・3・)「おっ、居た居た。うっつだくーん」
( ^Д^)「マジで鬱田じゃん。ウケるwwwww」
(・∀ ・)「相変わらずキッモwwwwww」
田中を先頭に、三人組がこちらに歩を進めて来た。
この二人も、した高に来ていたのか。
また、喉がひりひりと焼けつくように痛み出す。
脂汗が額から滲む。
( ・3・)「あー、お前らやめろよー。また鬱田くんビビちゃってんじゃーん」
(・∀ ・)「だってお前wwwww鬱田ってお前wwwww」
( ^Д^)「なんでツボってんだよwwwww」
30
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 20:52:32 ID:JvcG/9do0
('A`)「な、何か……よ、用……ですか?」
目を合わせる事が出来ず、俺は下を向きながら、なんとか声をひり出しながら答える。
( ^Д^)「あ?なに?用がなけりゃ話かけんなってか?」
(・∀ ・)「お前いつからそんな偉くなったわけ?舐めてんの?」
('A`)「い、いや……そんなこと……」
( ・3・)「やめとけってー。いやほら、昨日はなんか茶々入ってあんま話せなかったじゃん?おな中の親交を深めよーと思ってさー。
んで、こいつらも連れて来たわけ」
('A`)「は……はぁ」
(・∀ ・)「は……はぁ。だってよwwwww鬱田だわこれwwwwww」
( ^Д^)「だからなんでツボってんだお前wwwww」
31
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 20:53:20 ID:JvcG/9do0
ゲラゲラと笑う田中の後ろの二人。斎藤またんきと新指ぷぎゃー。
中学時代から、この三人はよくつるんでいた。
田中が居た時点で、この結果は予想していた。
予想はしていたが、当たって欲しくなかった。最悪の再来。
( ・3・)「つーわけでさ、とりあえずパン買ってきてくんね?」
('A`)「は……え?」
( ^Д^)「え?じゃねぇよハゲ」
俺の顔の横すれすれを、新指の蹴りが通り過ぎ、校舎の壁に鈍い音を響かせる。
( ・3・)「いやー、昼飯買うのうっかり忘れててさー。頼むよ鬱田くん」
32
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 20:53:51 ID:JvcG/9do0
(・∀ ・)「俺カレーパンとカツサンドな。飲み物はリプトンのミルクティーでヨロー」
( ^Д^)「俺やきそばパンとジャムパン。それとコーヒー牛乳な」
(・∀ ・)「やきそばパンwwwwww定番wwwwww」
( ^Д^)「ばっかお前wwwwこういう時はやきそばパンだろwwwwww」
( ・3・)「んじゃー俺はコロッケパンとチョココロネね。あとレモンティーよろしくー!」
('A`)「え……あの…お金…あんま持ってきてなくて……」
( ・3・)「大丈夫大丈夫。買ってきてくれたらちゃんと払うからさー」
(・∀ ・)「いーからとっとと買ってこいよ。売り切れちまうだろーが!」
33
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 20:54:19 ID:JvcG/9do0
斎藤が拳を振り上げる。
('A`)「ひっ!」
(・∀ ・)「ビビったwwwwビビったwwwwwウケるwwwww」
( ^Д^)「お前さっきから笑いすぎwwwwww」
俺は、その場から逃げるように購買に向かった。
どうせ、買ってきたところで、料金は払われないだろう。
わかってる。そんなことは。わかってるが。
打たれるのは…怖い。蹴られるのは嫌だ。
冗談と言われながら首を絞められるのは、苦しい。
心も、身体も。
逃げないと決めた。戦うと決めた。
だから、耐えよう。耐えなきゃいけない。また逃げ出すことはもう出来ない。
34
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 20:54:56 ID:JvcG/9do0
購買でパンを買い終え、元来た道を戻る。
ギリギリ、売れ切れる前に買えてよかった。
参考書代は、なくなってしまったけれど。
勉強の方法は、参考書だけではない。別の方法を考えよう。
食堂の手伝いをすれば、お小遣いも貰える。
少し、耐えるだけだ。少しだけ。
パンの入った袋を胸に抱いて、小走りで校舎の中を駆ける。
校舎練を繋げる渡り廊下に差し掛かったところで、横目に人だかりが見えた。
と思った瞬間だった。
(,, Д )「ゴラァ!!!!」
35
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 20:55:16 ID:JvcG/9do0
一瞬だった。
怒号が聞こえたと思ったら、渡り廊下の腰ほどの高さのフェンスを悠々と越え、『人が降って来た』。
俺は、避けることも、身を守ることも出来ず、その落ちて来た人に押しつぶされた。
そもそも、上から人が落ちてくる。なんて想定して日々の生活を送っていない。
ましてや、しっかり屋根のある外廊下では尚更だ。
(,;゚Д゚)「あ……やっべ」
(*゚ー゚)「ギコ、とばしすぎ」
その人間を投げ飛ばしたであろう男は、押しつぶされた俺を見ると些か焦った顔をする。
横には、小柄な少女が腕にしがみついている。
俺の腹部の皮膚は、布越しだというのに先ほど購入したパンが残念な事になっていることを脳に伝えてくる。
36
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 20:55:40 ID:JvcG/9do0
('A`)(よくあんな状態で投げ技なんて出来るなー)
どうやら、受け止めきれない現実を回避するため、俺の脳は目下の疑問を考えることを選んだらしい。
(,,゚Д゚)「オラッ、どけコラ!」
(*゚ー゚)「ちれー!ちれー!」
人だかりは、男女に促され霧散していく。
男女はこちらに歩いてくると、男の方が俺の上に乗っている人物を蹴り退かした。
(,,゚Д゚)「わりぃ。大丈夫か?」
(*゚ー゚)「かー?」
これが、このしたらば高校の四天王の一角。
『暴君』との出会いだった。
37
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 21:10:23 ID:jvTQrm160
みてるぞ
38
:
名無しさん
:2019/06/11(火) 21:45:49 ID:NxFZJFu.O
期待。
それでメカ沢の出番はいつなんだい?
39
:
名無しさん
:2019/06/12(水) 02:01:14 ID:skbUtEvU0
読みやすくてすき
40
:
名無しさん
:2019/06/13(木) 15:33:49 ID:M82.gjmw0
>>38
ゴリラと四天王と宇宙人もだ
41
:
名無しさん
:2019/06/13(木) 19:59:43 ID:aXErK8OE0
>>38
>>40
特に似てるわけでもオマージュしてるわけでもないのに他の作品を引き合い出すのはよろしくないぞ
とにかく期待
42
:
名無しさん
:2019/06/14(金) 20:18:07 ID:plRdy7woO
>>41
ごめん。質の悪い冗談だった
43
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:07:57 ID:M37yEgAg0
4.
(,,゚Д-)人「ほんっとーに、申し訳ない」
俺の腋を持って起き上げてくれた男は、潰れたパンを見ると、心底申し訳なさそうに謝ってきた。
先ほどから平謝りする男は、俺よりも頭二つ分ほど背の高い偉丈夫で、襟詰の下のTシャツの膨らみ具合が、体躯の良さを主張していた。
短髪の髪を後ろに逆立たせ、刈り上げられた両サイドには、曲線が交差するようなラインが入っていた。
こんな男が、自分に謝っている。その状況が呑み込めず、俺はどうしたらいいのか分からなかった。
('A`)「エット……アノ、ソノ……ダ、ダイジョブ……デスカラ」
自分でも嘆かわしいほど、ぼそぼそとか細い声で伝えようとする。
弁償しろ。なんて言える訳がない。
どれだけ申し訳なさそうにしていても、言えばどうせ逆ギレしてくるに決まっている。
しどろもどろになりながら、この場を収める方法と、パンを買えなかった理由を考えようと頭の中がグチャグチャになる。
44
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:08:55 ID:M37yEgAg0
(,,゚Д゚)「大丈夫ってこたーねぇだろ。こっちの喧嘩に巻き込んじまった上に昼食まで台無しにしちまって」
(*゚ー゚)「このかいしょうなしー」
(,;゚Д゚)「お前そういうのどこから覚えてくるんだ。いや、ちゃんと弁償するよ」
('A`)「えっ」
(,,゚Д゚)「えっ」
あり得ない言葉が聞こえた。
憚らず言えば、こんな不良然とした男が、自ら弁償するなんてことは、あり得ないと思っていた。
45
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:09:18 ID:M37yEgAg0
('A`)「い、良いんですか?」
(,,゚Д゚)「いや、良いも何も当然だろうが。こっちが全面的に悪いんだから」
(*゚ー゚)「しょあくのこんげん」
(,,゚Д゚)「難しい言葉知ってんのなー。使いどころ多分違うけど」
先ほどから男の腕に縋り付いたした高の制服を着た少女は、少し舌足らずな口調で茶々を入れる。
ショートカットの少女は、俺の方をあまり見ようとしない。
見た目が悪い自覚はあるが、少しだけショックだった。
46
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:09:44 ID:M37yEgAg0
(,,゚Д゚)「ああ、そうだそうだ。俺は猫村ギコ。こっちの引っ付いてるのは捨野しぃだ。両方とも二年だ」
(*゚ー゚)「うっすうっす」
猫村先輩に半分隠れるように、捨野先輩は片手を上げる。
(,,゚Д゚)「わりぃな。こいつ男苦手でよ。で、お前さんは?多分一年だろ?」
('A`)「あ……、えっと、はい。鬱田ドクオ……です」
(,,゚Д゚)「ドクオな。おし。購買行くぞ。さっさと行かねーとなんもなくなっちまうぞ」
(*゚ー゚)「いくぞ、モヤシ」
('A`)「あ、は、はい」
47
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:10:23 ID:M37yEgAg0
ずかずか、という表現がここまで似合う人を見た事がないほど堂々と、猫村先輩は購買に向かって歩を進めた。
俺は、それにおずおずと付いていく。
『鬱田』ではなく、『ドクオ』と呼ばれた事が、ほんの少しだけ、嬉しかった。
(,,゚Д゚)「おばちゃーん、パンまだあるー?」
購買に着くなり、大声でレジに向かい声をかける。
|゚ノ ^∀^)「あらー、ギコちゃん。相変わらずラブラブねぇ」
(*゚ー゚)「らぶらぶかっぽー」
(,,゚Д゚)「そういうんじゃねぇっての。で、なんか残ってる?」
|゚ノ ^∀^)「うーん、もう大概売れちゃったわねぇ」
(,;゚Д゚)「げ」
48
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:10:50 ID:M37yEgAg0
購買のおばさんが、売れ残っているパンを何個か見繕ってくる。
コッペパン、マヨコーン、それに菓子パンが数種類。売れ残り面子のレギュラーメンバーだ。
(,;゚Д゚)「あー、ドクオ、これで大丈夫か?」
('A`)「えっと……頼まれたのが……」
(,;゚Д゚)「頼まれた?パシられてたのかよ。まぁポイっちゃポイがよ。なんかの罰ゲームか?」
(*゚ー゚)「ギコ、あのパンぜんぶモヤシがたべるとおもってたのか?」
(,,゚Д゚)「いや、痩せの大食いって言うじゃん」
(*゚ー゚)「ははは、このたわけめ」
(,,゚Д゚)「まぁ、そういうことなら、俺も一緒に謝ってやっからよ。適当に買ってこうぜ」
49
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:11:12 ID:M37yEgAg0
猫村先輩は数種類のパンを適当に選ぶと、レジにそれを持って行き手早く会計を済ませた。
数種類のパンが入った紙袋を俺に押し付けると、顎で俺を促す。
(,,゚Д゚)「で、場所どこよ」
('A`)「あ…、普通科練の校舎裏です」
それを聞くと、猫村先輩は「さっさと行くか」とぶっきら棒に言い放ち、購買を出ていった。
捨野先輩は猫村先輩の腕にしがみついて離れる様子はない。
少々歩きにくそうだが、慣れた様子で歩いていく。
俺はと言うと、二人にとぼとぼと付いていく。複雑な心境だ。
相手の過失とはいえ、先輩達が俺の事を気にかけてくれたことと、これから田中達にされるであろう仕打ちと。
今日この場は先輩の顔を立てて場が収まったとしても、明日以降、どうなるかは分かったものではない。
そんな考えが頭の中をぐるぐると巡る。
気が付けば、既に目的地は目と鼻の先まで迫っていた。
曲がり角から、下卑た笑い声が聞こえてくる。
俺は小走りにパンを抱えて校舎裏に顔を出した。
三人は、火の点いた煙草を手に持ちながら談笑していた。
50
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:11:41 ID:M37yEgAg0
(・∀ ・)「おっ、きたきた。おせーよ!」
( ^Д^)「パン買うのにどんだけ掛かってんだよ使えねーな」
( ・3・)「おっそいよー鬱田くん……ん?後ろの人誰?」
俺のことを視認した三人は口々に文句を告げる。
しかし、俺の後ろに佇む猫村先輩を見ると、訝し気な目をこちらに向けた。
(,,゚Д゚)「わりぃわりぃ。ちょっと事故があってよ。俺は二年の猫村だ」
(*゚ー゚)「すてのしぃだー。ひれふせこうはいどもー」
(,,゚Д゚)「よせっての」
51
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:12:12 ID:M37yEgAg0
(;・3・)「ね、猫村先輩ッスか。チッス。田中ぼるじょあッス」
(;・∀ ・)「あ、斎藤またんきッス!うっす!」
(;^Д^)「新指プギャーっていいます!オナシャス!」
三人は煙草を揉み消して、急いで立ち上がると頭を下げた。
(;・∀ ・)「お、おい、猫村って」
(;^Д^)「『暴君』か?やべぇ初めて見た」
挨拶を終えた後、田中の後ろでひそひそと斎藤と新指が何事か囁き合っている。
心なしか、三人とも少し焦ったような顔をしていた。
52
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:12:36 ID:M37yEgAg0
(;'A`)「あ…あの…パン、買ってきました。指定されたの、買えなかったんですけど……」
(#・∀ ・)「はぁ!?」
(#^Д^)「パシりもまともにできねーのかよお前!」
おずおずと差し出した紙袋を乱暴に奪い取ると、怒声が飛ぶ。
(,,゚Д゚)「事故があったつったろーが。取り合えず代替えは買ってきたからよ。勘弁してくれや」
(*゚ー゚)「かったパンがギコのばかぢからでつぶれてしまったのだー!ゆるせー!」
(;^Д^)「あ、うっす!すんません!」
(;・∀ ・)「わざわざあざっした!」
(;・3・)「鬱田くん。ご苦労様。先輩らもあざっす」
53
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:13:04 ID:M37yEgAg0
先輩が口を開くと、三人はペコペコと頭を下げだした。
いくら先輩と言えども、余りにも過剰な反応に、俺は不思議に眉を顰めた。
先ほど聞こえた暴君という言葉といい、この猫村という人は、そんなに有名な人なのだろうか。
(,,゚Д゚)「おう。迷惑かけちまったな」
(*゚ー゚)「かけちまったな!」
(;・3・)「あ、全然大丈夫ッス!」
(;・∀ ・)「事故ならしゃーないッスよ!」
(,,゚Д゚)「そうか。悪いな。俺もちょっと一服させてもらうからよ」
そう言うと元は恐らく花壇だったであろう煉瓦の残骸に腰を下ろすと、煙草を取り出した。
54
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:13:43 ID:M37yEgAg0
(*゚ー゚)「ギコー、たばこくさいー」
(,,゚Д゚)「嫌なら離れてろっつってるだろうよ」
(*゚ー゚)「そっちのほうがいやじゃぼけー」
(;^Д^)「あ、あの猫村先輩……」
(;・∀ ・)「お、俺ら教室で食うんで、これで失礼します」
空に向かって煙を吐き出す先輩に対して、二人がおずおずと話し掛ける。
(,,゚Д゚)「ん?あ、そう。パン、悪かったな」
(;・3・)「いや、全然ッス!失礼します!」
55
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:14:06 ID:M37yEgAg0
田中がそう言うと、三人は足早に校舎の方へ消えて行った。
角を曲がるとき、俺の事を斎藤が睨みつけてきた。嫌な予想は、どうやら的中したようだ。
明日の事を考えると憂鬱になる。ため息を吐きながら、散らばった教科書を片付け始めた。
(,,゚Д゚)「お前いじめられてんの?」
('A`)「え?」
煙草の煙を吐き出しながら、唐突に先輩は俺に問いかけて来た。
(,,゚Д゚)「どう見たって連中のダチって感じじゃねぇだろ。あいつらのお前に対する扱いもそうだし」
('A`)「そう……ですね。友達では、ないです」
(*゚ー゚)「いじめられっこかモヤシ」
('A`)「あはは、そうですね」
(,,゚Д゚)「何笑ってんだ。悔しくねぇのか」
56
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:14:29 ID:M37yEgAg0
猫村先輩は厳しい目をしながら俺の目を見据えた。
今日初めて会った人に関わらず、俺は何故だか、思いの丈を話したくなった。
これほど、俺をまっすぐ見据える人は、今まで居なかったから。
威圧するでもない、同情でもない。ただただ、まっすぐな目。
('A`)「悔しくない……わけないじゃないですか。でも、俺は猫村先輩みたいに強くないですし」
(*゚ー゚)「このへたれめ」
('A`)「でも、逃げないです。決めたんです」
(,,゚Д゚)「逃げない?」
('A`)「耐えきってみせます。どんなにいじめられても。そう約束したんです」
(,,゚Д゚)「ふーん。そうかい。まぁ耐え忍ぶってのも一つの戦い方かもなぁ。でもよ」
猫村先輩は一口煙草を吸い、煙を吐き出す。
57
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:15:01 ID:M37yEgAg0
(,,゚Д゚)「あいつらの言う通りにしてたら、逃げてるのと変わんなくねぇ?」
('A`)「!!」
言葉が、俺の心臓を貫いた。
聞きたくなかった言葉。自分を騙し騙し欺いていた核心。
(,,゚Д゚)「過去にお前に何があったのかは知らねぇし、誰と約束したのかもわからねぇがよ。
そいつに言えるのか?今自分は前見て逃げずに戦ってますって」
('A`)「……」
頭を何度も殴られたように、眩暈がした。
だって、仕方ないじゃないか。俺は弱くて、哀れで、救いようがなくて。
(,,゚Д゚)「自分に言い訳して、逃げ道探してるうちは、戦ってるって言わねぇよ」
(*゚ー゚)「それはなー、ちがうぞー。わかんないけどちがうぞー」
58
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:15:30 ID:M37yEgAg0
俺の内面を見透かすように、先輩は目を細める。
俺は、自分が、情けなくて、悔しくて、不憫で、恥ずかしくて。
('A`)「じゃあ…」
(;A;)「じゃあ、どうしろって言うんですか!?お、俺は強くない!戦えない!誰も助けてくれない!
助けてくれた人も居なくなった!耐えるしかないじゃないですか!」
感情が、噴出した。
ボロボロと涙が零れる。鼻水が鼻孔を塞いで息が荒くなる。
嗚咽を交じらせながら、当たり散らす。
(,,゚Д゚)「……」
59
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:15:58 ID:M37yEgAg0
猫村先輩は、煙草を地面で揉み消すと、立ち上がり踵を返した。
(,,゚Д゚)「強ぇーってのはな、腕っ節がある奴でも肝が据わった奴でもねぇぞ。ドクオ」
校舎に向かって歩を進めながら、俺を一度振り返った。
(,,゚Д゚)「強くなろうとする意志を持った奴が一等強ぇーんだ」
(*゚ー゚)「おー。かっこういいぞギコ」
(,,゚Д゚)「茶化すんじゃねぇよ。まぁ、一回考えてみな」
(*゚ー゚)「じゃあなー!モヤシー!」
俺は、二人の背中をただ泣きながら見送った。
先輩達の影が見えなくなると、膝から崩れ落ち、泣いた。
60
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 19:43:40 ID:lqagR2wg0
面白い!
支援
61
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 21:19:49 ID:/sp.Gzkk0
しぃたんかわいい
支援
62
:
名無しさん
:2019/06/15(土) 22:41:57 ID:DsZxsgD60
四天王紹介見た感じでもギコはカッコイイやつだと思ってた!かっけぇッス
63
:
名無しさん
:2019/06/16(日) 22:54:24 ID:xDSLjcrU0
男苦手って昔何かされたのかな
いかがしいこととか
64
:
名無しさん
:2019/06/16(日) 23:53:54 ID:0v8KQikA0
4.5
(= д ) 「ねぇ!兄ちゃん!」
…………
(= д )「俺は兄ちゃんみたいに強くないんだよ!」
('A`)「俺は猫村先輩みたいに強くないですから」
…………
(= д )「兄ちゃん……助けてよ……」
(;A;)「誰も助けてくれない!」
…………
(= д ) 「……兄ちゃん」
65
:
名無しさん
:2019/06/16(日) 23:54:25 ID:0v8KQikA0
咥えた煙草が、不満気に煙を立ち上らせる。
殆ど吸うことなく先端に溜まった灰が、ぽとりと落ちた。
物思いに耽っている間に、意外なほど時間は経過していたらしい。
(*゚ー゚)「なーギコー」
縋り付いたしぃが、腕を揺する。
何かを言いたげに、しぃはギコを見上げた。
(,,゚Д゚)「ん……どうした?またクイズか?」
(*゚ー゚)「くいずはしないぞ」
(,,゚Д゚)「ンじゃ、どうした?」
66
:
名無しさん
:2019/06/16(日) 23:54:46 ID:0v8KQikA0
灰皿に煙草を押し付けて、胸に落ちた灰を払いながら、ギコはしぃに向き直った。
(*゚ー゚)「あいつ、なんかトラににてるな」
ギコは自分でも、動揺したことに気が付いた。
しぃは、いつも通りの屈託のない眼差しをギコに向ける。
彼女には、他意や上辺というものは存在しない。常に本音だ。
なんとか瞳がぶれないよう、ギコは必至で努めた。
(,,゚Д゚)「……似てねぇよ」
ただ、それだけ呟いた。
67
:
名無しさん
:2019/06/16(日) 23:55:51 ID:0v8KQikA0
今日中に1話を終わらそうと思っていましたが、もろもろの事情で書き溜め分が消えた為、本日はここまで。
申し訳ない
68
:
名無しさん
:2019/06/17(月) 04:07:20 ID:VuogrdmQ0
乙
69
:
名無しさん
:2019/06/17(月) 08:58:50 ID:.OvRe.ho0
乙
ギコかっけえ
70
:
名無しさん
:2019/06/17(月) 09:24:51 ID:XSsgzma60
お疲れ様です。続きが気になるので、
また余裕があるときに続きを
書いて欲しいです!
71
:
名無しさん
:2019/06/17(月) 20:28:16 ID:b4BUKqX60
どんな方向に進んでいくんだろう
とても楽しみなので待ってます
72
:
名無しさん
:2019/06/17(月) 21:48:42 ID:QdpnVE1I0
otudesu
73
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:20:19 ID:bIIOR07U0
5.
布団に寝そべり、天井を眺めていた。
木目を漠然と眺めながら、今日の事を振り返る。
本当は、気付いていた。見て見ぬふりをしていただけだ。
あの頃から俺は、何も変わっていないのか。
そう思うと、また目頭が熱くなった。
自分の不甲斐なさに嫌気が差して、全てを投げ出したくなる。
これでは、堂々巡りだ。
やっぱり俺は、何も変わっていないのか。
('A`)(強くなろうとする意志……。それってなんなんだろう)
猫村先輩に言われた言葉が、頭にこびりついて離れない。
俺は、強くなろうとしていたんじゃなかったのか?
戦おうと。逃げないで向き合おうと。
それは、強くなろうとする意志じゃないのか?
だって、俺は喧嘩なんかしたことない。
あいつらと対峙しただけで、腿が痺れてくる。足が震えて立つことすらやっとだ。
そんな奴が、いくらかかって行ったところで、返り討ちになるだけだ。
74
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:20:49 ID:bIIOR07U0
('A`)(多分、そういう事じゃないんだろうな)
あの人の言ったことは、理解できていない。
が、不思議と腑に落ちた感覚があった。
蟠りなく、胸に落ちてくるような。
その正体が、未だに分からずにいる。
戦うって、何なんだろう。
あの人は、俺の意見を否定することはなかった。
耐えることも、また戦いだと。
だが、言いなりになるのは違う。と言う。
逃げ道を探すのは戦いではない。と。
75
:
切るとこミスった!!!
:2019/06/19(水) 07:21:42 ID:bIIOR07U0
('A`)(多分、そういう事じゃないんだろうな)
あの人の言ったことは、理解できていない。
が、不思議と腑に落ちた感覚があった。
蟠りなく、胸に落ちてくるような。
その正体が、未だに分からずにいる。
戦うって、何なんだろう。
あの人は、俺の意見を否定することはなかった。
耐えることも、また戦いだと。
だが、言いなりになるのは違う。と言う。
逃げ道を探すのは戦いではない。と。
('A`)(わっかんないよ……。俺なんかには。強い人の気持ちは)
逆に、弱い奴の考えも、強い人には理解できないのだろう。
寝返りを打って、なんとか胸中に渦巻く劣等感と自己嫌悪を振り払おうとした。
76
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:22:09 ID:bIIOR07U0
気付けば、窓から太陽の光が差し込んでいる。
知らないうちに、眠ってしまったようだ。
制服に袖を通しながら、昨日の斎藤の目を思い出した。
('A`)「嫌……だなぁ」
ポツリと漏れた本音。
俺は三日目で既に、弱音を吐いたことで更に自己嫌悪を積もらせた。
一階に下りれば、昨日と同じく朝餉の匂いが漂ってくる。
食欲は、一向に湧かなかった。
睨みを利かせるペニサスさんに根負けし、出された料理をなんとか胃に納めることには成功した。
笑って俺にお弁当を差し出すペニサスさんを見て、あの人を思い出しチクリと胸が痛んだ。
足取りは昨日よりもなお重い。
靴底に鉛でも入れられたように、一歩進むごとに俺の精神はすり減っていった。
それでも、歩を止めれば、嫌でも目的地には辿り着いてしまう。
入学式と同じように、俺は校門前で立ち止まり、『したらば総合高等学校』と書かれたプレートを見ていた。
77
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:22:30 ID:bIIOR07U0
('A`)「生きていかなきゃな。ここで」
恐い。嫌だ。今すぐに後ろを向いて走ってここから去りたい。
無理矢理押し込んだ朝食がせり上がってきそうになる。
なんとか深呼吸をしながら、吐き気を押し戻し、重々しい一歩を踏み出した。
約束、したから。
昨日と同じように、授業は生徒を気にせず機械的に進んでいく。
俺は嫌な考えを振り払おうと、一心不乱にノートにペンを走らせた。
願わくば、この時間がずっと続けばいい。
そんな願いは、到底叶うはずもなく、午前の授業の終わり告げるチャイムが鳴り響いた。
急いで鞄に教科書を詰め込んで、購買へ向かう人たちに紛れて教室を後にする。
昨日と同じ場所では食べれない。教室という手もあるが、田中たちに連れ出されるのが落ちだ。
体躯倉庫や、トイレなども覗いてみるが、既に固定の連中の溜まり場になっていて、自分のいるスペースはなかった。
いっそ、こうして逃げ回って、休み時間ギリギリで教室に戻ればなんとかなるのではないか?
この学校は様々な学科が存在する総合高校だ。敷地はかなり広い。
そこから一人を見つけ出すのは難しいだろう。そう思った矢先。肩を叩かれた。
びくり。と自分でも驚くほどに肩を震わせた。
78
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:23:07 ID:bIIOR07U0
(,,゚Д゚)「うわっ、びっくりした」
(*゚ー゚)「びっくりー」
('A`)「ね……猫村先輩?」
(*゚ー゚)「わたしもいるぞモヤシー」
(;'A`)「す、すいません捨野先輩」
二人だったことに胸を撫で下ろした。
心臓は二人にまで聞こえそうな程激しく鼓動を早めている。
(,,゚Д゚)「よー、今日はパシられてねぇのか?」
('A`)「え、ええ。今日は捕まらないように、その、逃げ回ってるんで」
79
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:23:32 ID:bIIOR07U0
(*゚ー゚)「にげないんじゃないのかー」
('A`)「ッ!!」
捨野先輩は、悪びれもせず、そう言った。
ズキリ、と胸が痛む。
(,,゚Д゚)「悪い。こいつ、言っていいこと悪いことの区別つかねぇんだ。悪気はねぇ」
(*゚ー゚)「なんかだめだったのかー?」
('A`)「……いえ、仰る通りですから」
(*゚ー゚)「ほらー」
猫村先輩は一つため息を漏らすと、俺の背中を叩いた。
本人は軽くやってるつもりなのだろうが、衝撃が俺の薄い胸板までも震わせる。
80
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:23:55 ID:bIIOR07U0
(,,゚Д゚)「オラ、飯食うぞ飯。食ってねぇんだろ?」
('A`)「え?あ、はい。まだ、ですけど。いいんですか?」
(*゚ー゚)「いいぞー。きょうはなー。サンドイッチをつくった!」
(,,゚Д゚)「そうだな。美味そうだった」
(*゚ー゚)「わたしたちはなー、いつもおくじょうでたべるんだ!とくべつにモヤシもきょかしてやる!」
('A`)「えっと、その、ありがとう、ございます」
(,,゚Д゚)「構わねーよ。さっさと行こうぜ。昼休み終わっちまうぞ」
初めて足を踏み入れた屋上は、如何にもこの学校らしい状況だった。
脚の折れ曲がった机や椅子が乱雑に積み上げられ、バリケードのように屋上の一角を塞いでいる。
入口を振り返れば校舎や塀と同じように色とりどりのスプレーで落書きが施されており、威圧感をいや増していた。
81
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:24:20 ID:bIIOR07U0
(,,゚Д゚)「えらどっこいせーっと」
(*゚ー゚)「おやじくさい」
(,,゚Д゚)「ほっとけ」
二人は屋上の一角に座ると、持っていた弁同箱替わりの保存パックを開く。
俺も、それに習うように少し離れて腰を下ろした。
(,,゚Д゚)「いや、なんでちょっと遠いんだよ」
(*゚ー゚)「ぎこがたばこくさいから」
(,,゚Д゚)「え?まじ?ちょっと傷ついた」
('A`)「ち、違いますよ。お邪魔しちゃ、その、悪いですし」
(,,゚Д゚)「そーいうんじゃねーっての。どいつもこいつも」
(*゚ー゚)「こっちこいモヤシー」
82
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:24:55 ID:bIIOR07U0
手招きされ、おずおずと二人の近くに座り直す。
(,,゚Д゚)「なに?手作り弁当?母ちゃんの?」
('A`)「いや、母ちゃんのじゃないですけど、今お世話になってるおばさんの」
('、`*川『おばさんはやめろっつってんだろシバくぞコラ』
一瞬何かの幻聴が聞こえた気がしたが、俺はペニサスさんに作って貰ったお弁当を広げる。
(*゚ー゚)「おー!すごい!いろがいっぱい!」
(,,゚Д゚)「こりゃすげぇな。大したもんだ」
俺のお弁当を見た二人は感嘆の声を上げる。
俺が褒められたわけではないのだが、嬉しかった。
83
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:25:32 ID:bIIOR07U0
('A`)「あの、お世話になってる人、料理人なので……」
(,,゚Д゚)「ほー。通りで。プロの味かー。その卵焼き貰っていいか?」
(*゚ー゚)「ギコはサンドイッチたべろ」
(,,゚Д゚)「食うよ。でもそっちのも美味そうじゃん」
('A`)「あ、どうぞ。……あんま食欲ないので」
(,,゚Д゚)「しっかり食わねぇとでっかくなれねぇぞ。まぁ、いただきます」
(*゚ー゚)「そんなんだからモヤシなんだー。ギコー。はんぶんちょーだい」
(,,゚Д゚)「うまッ!えっ、うまっ!ほれ、食ってみろしぃ」
(*゚ー゚)「んー!うまいぞー!」
卵焼きを一口食べると、二人は膝を打って称賛してくれた。
84
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:26:03 ID:bIIOR07U0
('A`)「ははは、作った人も喜びますよ」
(,,゚Д゚)「こんなうめぇもん毎日食えるなんて贅沢な奴だな」
(*゚ー゚)「だなー!ほれモヤシ!おまえもサンドイッチくえ!」
そういうと捨野先輩は俺の口にタマゴサンドを押し付けてきた。
('A`)「え、あ、いや、あの」
(*゚ー゚)「くえ!」
(,,゚Д゚)「こいつが自分からやるなんて珍しい。気に入られたな」
('A`)「えぇ!?」
ここまで強行されると、受け取らざるを得ない。
押し付けられたサンドイッチを手に取って、「いただきます」と呟いて口に運ぶ。
些か胡椒が効き過ぎているが、美味しい。
人からこうして食べ物を貰うのは、何年振りだろうか。
そもそも、こうして人と昼食を共に食べるのすら、遠い昔に感じられた。
85
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:26:47 ID:bIIOR07U0
(*゚ー゚)「どうだ!」
('A`)「美味しい……です」
また、泣きそうになった。
(,,゚Д゚)「……」
(*゚ー゚)「ギコもくえ!」
(,,゚Д゚)「おう。いただきます」
猫村先輩はほとんど一口で手に持ったタマゴサンドを頬張る。
(*゚ー゚)「どうだ!」
(,,゚Д゚)「おう。うめぇぞ……いやお前胡椒入れ過ぎだ」
(*゚ー゚)「おおいほうがうまい!」
86
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:27:32 ID:bIIOR07U0
(,;゚Д゚)「いや美味いけどよ、節度を知ろうよ。今粒ごと噛んじゃったぞ」
(*゚ー゚)「あたりだな!」
(,,゚Д゚)「そっかー当たりだったかー。やったぜ」
(*゚ー゚)「おめでとう!けいひんはサンドイッチです!」
('A`)「……クッ……フフ……」
(,,゚Д゚)「お、面白かったか」
気付けば、笑みが零れていた。
87
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:28:02 ID:bIIOR07U0
('A`)「あっ、す、すいません」
(,,゚Д゚)「別に謝ることじゃねぇだろ。え?それとも馬鹿にしてたのか?」
(*゚ー゚)「やんのかこらー!」
('A`)「ち、違いますよ!」
(,,゚Д゚)「だろ?じゃあ別にいい。笑えるときに笑った方が得だぜ」
猫村先輩はサンドイッチを頬張りながらあっけらかんとして言う。
この人なりに、俺に気を遣って緊張を解そうとしてくれていたのだろう。
俺は、昨日から気になっていた疑問が頭に浮かんだ。
88
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:28:35 ID:bIIOR07U0
('A`)「あの、猫村先輩」
(,,゚Д゚)「あー。ギコさんでいいギコさんで。なんか苗字で呼ばれるの擽ってぇ」
(*゚ー゚)「わたしのことはしぃさまとよべー」
(,,゚Д゚)「しぃさんでいい」
(*゚ー゚)「おのれー」
('A`)「あ、は、はい。ギコさん」
(,,゚Д゚)「なんだよ」
('A`)「なんで、俺なんかのこと助けてくれるんですか?」
89
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:28:56 ID:bIIOR07U0
(,,゚Д゚)「助けた覚えねぇよ?」
('A`)「だって、こうやって、一緒に食事してくれて、昨日だって」
(,,゚Д゚)「昨日は連中が勝手に逃げただけだろ。今日は、なんとなくだ」
('A`)「なんとなく……ですか」
ギコさんは手に着いたパンクズを払うと、煙草を取り出し火を点けた。
(,,゚Д゚)「なんとなく。じゃ駄目か?生憎と、なんだ?自己分析?っつーの?そんなん一々考えてねぇよ」
('A`)「そう、ですか。もう一つ、いいですか?」
(,,゚Д゚)「あン?」
('A`)「強くなる意志って、なんなんですか?」
90
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:29:32 ID:bIIOR07U0
昨夜、布団の中で延々と考え続けた疑問。
答えは出ないのに、ずっと頭の中にあり続けるその言葉。
思い切って、俺は訊いた。
(,,゚Д゚)「そりゃ人それぞれだ」
('A`)「人、それぞれ?」
(,,゚Д゚)「なんつーんだろうな。強くなろうって一口で言ってもよ、色々あるじゃん?
格闘技の世界でとか、勉強でとか。まぁ勉強の方は俺はからっきしだけどよ。
そういう意地の張りどころっつーか、譲れないとこ。それにどこまで意地になれるか」
('A`)「は、はぁ」
(,,゚Д゚)「俺もあんま口で説明すんの得意じゃねぇんだけどよ。
これだけは誰にも負けたくねぇってヤツ。
それを持ってる奴は強ぇ。諦めねぇ」
('A`)「意地になれるもの……ですか」
91
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:30:15 ID:bIIOR07U0
(,,゚Д゚)「まぁ、要は負けず嫌いだな。負けっつーのは自分が認めちまったら負けなのよ。
負けを認めなけりゃ、負けてねぇ」
('A`)「……」
(,,゚Д゚)「だからいくらでも、強くなれる。自分に負けねぇ限りな」
煙草の煙を空に向かって吐き出して、ギコさんは笑った。
(,,゚Д゚)「お前にもあんだろ?譲れねぇもん」
('A`)「……あり、ます」
(,,゚Д゚)「だったらそれに意地になれ。それができりゃ、お前はドブロクの中でも生きていける」
('A`)「ドブロク?ってなんです?」
92
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:30:37 ID:bIIOR07U0
(,,゚Д゚)「あんだ知らねぇのか?ここの生徒の別名だよ。
『ドブ底のロクデナシ共』。略してドブロクだ」
(*゚ー゚)「ろくでなしぶるーす」
(,,゚Д゚)「お前店の漫画また勝手に持ち出したな」
(*゚ー゚)「しまったーげろっちまったー」
('∀`)「フッ……ハハハハ」
久しぶりに、腹の底から笑えた気がした。
考えてみれば、意地になったことなんて、今まであっただろうか。
絶対に負けたくないものが、あっただろうか。
いつも、何かから逃げて来た。
常に、自分から諦めて負けを認めていた。
少し、少しだけ勇気を出してみよう。
この人みたいに、俺はなりたい。
そう、心から思えたのだから。
(*゚ー゚)「なにわらってんだこらー」
93
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:31:45 ID:bIIOR07U0
今朝の更新はここまでです。
次回で1話終了です。
仕事終わって余力あったら1話終わらせます。
94
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 07:46:48 ID:N29yvaOE0
超期待支援
話自体は面白いのにしぃの存在感が圧倒的すぎる
萌えるわこれは
95
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 10:18:03 ID:Bgkt7ldQO
ギコとしぃの距離感が絶妙
96
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 11:24:03 ID:hNaxUCw.0
くっそええなぁ
97
:
名無しさん
:2019/06/19(水) 23:17:42 ID:ErFCR1Mc0
キリングジョーク?
98
:
名無しさん
:2019/06/20(木) 11:43:43 ID:hnPrMcZE0
小料理屋『武運』だろこの作風は
99
:
名無しさん
:2019/06/20(木) 12:20:27 ID:kbHNjiR20
作者当てやめろって
100
:
名無しさん
:2019/06/20(木) 15:23:35 ID:JTuiS85c0
めっちゃ面白くて一気に読んじまった
楽しみにしてる
101
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:11:45 ID:RXnJAsYI0
6.
口の中に血の味が広がる。
鉄臭さと塩辛さが否が応にも意識を覚醒させる。
身体中に走る痛みに身悶えて、地べたを這いずる。
それでも、俺は立ち上がろうと、腕を支えに両の足に力を込めた。
(#)A`)「グ……ウウ……」
骨が軋む。腿から何かがプチプチと切れる音が聞こえる。
呼吸は荒く、息を吸う毎に肺は焼けるようだ。
そんなことお構いなしに、踏ん張った。
しっかりと足の裏で地面を感じ、身体を起こす。
視界に写る世界は既に歪みながら回転を始めている。
薄ぼんやりと、昔夏休みに観たウルトラマンのオープニングを思い出した。
場違いな思考に、笑いが込み上げてくる。
なんだ、まだやれそうじゃないか。口の端が自然と持ち上がる。
俺は、意外としぶといようだ。
102
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:12:49 ID:RXnJAsYI0
時間は少し遡る。
ギコさん達と昼食を取っていた俺は、予鈴の音に現実に引き戻された。
ギコさんは吸っていた煙草を缶コーヒーの空き缶の中に押し込んで、立ち上がると大きく伸びをした。
(,,゚Д゚)「んぁー、次の授業なんだっけか」
(*゚ー゚)「すうがくだぞ」
(,,゚Д゚)「じゃ、ひと眠りすっか」
('A`)「いや、ち、ちゃんと受けた方がいいですよ」
(,,゚Д゚)「無茶言うな!!!」
(;'A`)「ひっ、お、怒らないでくださいよ……」
(,,゚Д゚)「なんだあれ!魔術か!訳分からん記号並べやがって!ラリホーか!」
103
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:13:48 ID:RXnJAsYI0
(*゚ー゚)「おばかちゃんだからなーギコは」
(,,゚Д゚)「おう!」
(;'A`)「そんな自信満々に言わなくても……」
(*゚ー゚)「いふどーどー」
(,,゚Д゚)「まぁ、お前もそろそろ降りねぇとまずいぞ」
(;'A`)「あっ!そ、そうだ!失礼します!」
お弁当の包みを急いで巻き直し、鞄に突っ込むと俺は急いで立ち上がった。
二人に一礼し踵を返すと、階段へ向かおうとした。
だが、「おい」と後ろからポケットに手を突っ込んで歩いてくるギコさんに呼び止められる。
(,,゚Д゚)「俺らも下行くんだから一緒に行きゃいいじゃん」
(*゚ー゚)「あわてんぼうさんめー」
104
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:14:19 ID:RXnJAsYI0
(;'A`)「あ、そ、そうですね。ハハ」
どうにも、こういう時にどうしたらいいのか分からない。
慣れない状況で、おどおどとギコさんを待って、階下へと降りていった。
(,,゚Д゚)「んじゃ、またな」
(*゚ー゚)「さらばじゃー」
('A`)「あ、はい。ありがとうございました」
階段を下りていく二人に頭を下げる。
ギコさんは振り返らずに、頭の高さほどに手を上げてひらひらと返した。
( 3 )「ッチ」
どこかから舌打ちが聞こえた気がした。
105
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:14:49 ID:RXnJAsYI0
教室に戻り、次の授業の準備をする。
昨日は、帰ってから自習する気にはどうしてもなれなかった。
教科書を開くと、俺は目を見開いた。
写真や枠外の部分が数か所丸く焼け焦げていた。
昨日、俺がパンを買いに行っている間に田中達が煙草を押し付けていたのに漸く気が付いた。
ふつふつと、怒りが湧いてくる。
かと言って、どうする事もできない自分が腹立たしい。
(,,゚Д゚)「自分に言い訳して、逃げ道探してるうちは、戦ってるって言わねぇよ」
('A`)(ッ!!)
ギコさんの言葉がフラッシュバックする。
握ったシャープペンシルが震えだす。
恐い。と、同時になんとか奮い立とうとする自分が、確かにいた。
弱い自分を握り潰すつもりで、強く、強く握り拳を作った。
106
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:15:21 ID:RXnJAsYI0
田中達に、呼び止められたのは放課後。帰りのホームルーム直後のことだった。
露骨に増井くんが田中達に向かって舌打ちをするのが聞こえたのか、教室では事は起こらない。
君の悪いくらいフレンドリーに、俺に一緒に帰宅するよう持ち掛けてきた。
誘うような体裁を取り繕ってはいるが、これは半ば強制だ。
俺は、この場だったら「嫌だ」と言うこともできただろう。
でも何かが、俺の中で小さな火を燻ぶらせ続けていた。
逃げたくない。
その一心で、俺は田中達に付いていった。
校舎を出て、素直に校門に向かうはずもなく、三人は俺を取り囲みながら、普通科練の校舎裏で足を止めた。
昨日の場所だ。
(・∀ ・)「お前なにちょずいてるわけ?」
斎藤が俺に向き直り、睨みつけてくる。
何が気に入らないのかは分かる。理解はできそうにもないが。
107
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:15:56 ID:RXnJAsYI0
( ^Д^)「暴君味方につけてイイ気になってんじゃねーぞ!」
予想した通りの答えを新指が怒鳴る。
暴君とは、恐らくギコさんのことであろう。
俺はギコさんの権威を振りかざした覚えはないが、一緒にいること自体がこの連中は気に食わないのだ。
(・∀ ・)「どうやって取り入ったか知らねーけどよ!あの人はお前が付いて回っていい相手じゃねぇんだよ!」
( ^Д^)「そこらへん分かってんのか?あ?」
二人が俺を見下ろしながら、威圧してくる。
田中がゆっくりと口を開く。
( ・3・)「あのさぁ、鬱田くん。マジ考えなおした方がいいよ?相手四天王の一人なんだよ?理解してる?」
四天王。また、聞き覚えのない言葉を発する。
文脈から察するにギコさんのことなのは明白だが、やはり有名人のようだ。
小馬鹿にするような、子供に言い聞かせるような口調で、田中は続ける。
108
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:16:29 ID:RXnJAsYI0
( ・3・)「君とは住んでる世界が違う人なわけ。さっさとさ、手ぇ切りなよ?ね?」
忠告を装った命令。
こいつは、いつだってそうだった。
強い言葉を遣うことはない。やんわりと、ただ否定を拒否する言い方。
いつの間にか壁際に追い込まれた俺は、睨みを利かせる三人に取り囲まれ、震えていた。
勇気を出そうと思った。事実、逃げるのを拒否し、ここまで付いてきた。
しかし、恐いものは恐い。
足が自分の意思に反してガクガクと震え始める。腿の筋肉が痙攣し、痺れてくる。
( ・3・)「つーかさ、なんで君、した高来たわけ?」
( ^Д^)「たしかにwwwwwwずっと引き籠ってりゃ良かったのにwwwwwww」
(・∀ ・)「マッジ馬鹿wwwwwつーかアレじゃね?親無しなんだから働けよカスwwwww」
109
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:17:05 ID:RXnJAsYI0
親無し。その言葉が俺の肩をビクリ。と震わせた。
恐怖で震えているのとは、別の震え。
俺の中で、何かが"切れた"。
( A )「……カショ」
俺の口は、勝手に動き始めていた。
様々な感情が、俺の奥から湧き上がってくる。
( ^Д^)「あ?ボソボソ喋ってンじゃねぇぞハゲ」
(#'A`)「教科書!煙草、お、押し付けたろ!か、返せ!」
(#・∀ ・)「あぁッ!?」
(#^Д^)「やっぱ舐めてやがんなお前……。マジでシめんぞ」
(#'A`)「お、お前ら!どうせ持ってても開かないだろ!自分がやったんだから!責任とれよ!」
(#・3・)「オラァ!!」
110
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:18:15 ID:RXnJAsYI0
俺が言い終わるか終わらないか。田中の拳が俺の頬を捕えた。
それでも、俺は倒れなかった。何とか足を踏ん張り、耐えた。
田中に向き直り、三人を睨みつける。
じわじわと、思い出したかのように頬が熱を帯び、痛みを脳に伝えてくる。
だけど、痛くなかった。痛いけど、痛くない。
中学のころ何も抵抗せず、無様に殴られ、蹴られ、甚振られていた時感じた、あの心の痛みはない。
俺が睨み返したことに驚き、斎藤が一瞬怯む。
(#・∀ ・)「こいつ……ふざけやがって」
(#・3・)「もしかして、ここでやられても猫村先輩が仇討ってくれるとでも思ってる?」
(#^Д^)「その前にお前病院送りにして二度と学校来られなくしてやるよ!!」
(#)A`)「ぎ、ギコさんは……関係ない!仇討ちも期待してない!お、俺が!俺が決めたんだ!戦うって!」
(#^Д^)「わけ分かんねぇこと言ってンじゃねぇぞコラァ!!!」
111
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:18:47 ID:RXnJAsYI0
新指の蹴りが俺の腹に突き刺さる。
身体が巧く動かせない。それも当然だ。喧嘩なんて、生まれて初めてなのだから。
膝をつく。それでも、倒れ込むことを俺は俺に許さなかった。
(#)A`)「うわぁああああああああッ!!!」
必死の思いで、田中に向かって体当たりで突撃する。
(#・3・)「あぁ!?」
俺の反撃なんて予想していなかったのだろう。田中はたたらを踏む。
が、それも数歩ほど後退させただけで、易々と受け止められてしまった。
(#・3・)「調子乗ってンじゃねぇぞ!!オラァ!!」
112
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:19:29 ID:RXnJAsYI0
胸に膝蹴りを受け、肋骨がミシミシと悲鳴を上げた。
後ろから斎藤や新指が俺を引き離しにかかる。
なんとか離さないように、腕に力を込める。
(#・∀ ・)「このッ!離れろオラ!!」
斎藤は俺の横腹を何度も殴りつける。
寄ってたかって、蹴られ、殴られ続けた。
殴られたところはズキズキと痛み続ける。
蹴られた部分はギシギシと悲鳴を上げ始める。
それでも離さなかった。離すもんか。
113
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:20:07 ID:RXnJAsYI0
(#^Д^)「しっつけぇんだよてめぇ!!!」
(#)A`)「ガッ!?」
新指が俺の顔を横合いに蹴り抜いた。
衝撃に巻きつかせた腕が田中の身体からずれる。
(#・3・)「ウラァ!!!」
そのまま田中は身体を回転させ俺を引き倒した。
(#・∀ ・)「あんま舐めた真似してんじゃねぇぞ!!オラ!死ね!」
(#^Д^)「このキモモヤシが!うぜぇんだよ!くたばれコラ!!」
倒れた俺を斎藤と新指が踏みつける。
何度も、何度も。
俺は頭を両腕で守りながら、必死に耐えた。
114
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:20:31 ID:RXnJAsYI0
(#・∀ ・)「はぁ……はぁ……」
(#^Д^)「いい加減……懲りたろ…」
息を荒げに二人は俺を見下ろす。
俺はもう、ボロボロだった。
身体に痛くない部分はない。
そう、身体だけだ。心は、これっぽっちも痛くない。
俺は知っている。自分から逃げて、負けを認めることがどんなに哀れか。
どんなに情けないか。どんなに悔しいか。
真綿で首を絞めるように、ゆっくりと死んでいく心。
いつの間にか、その感情からも逃げていた。
もう、逃げない。そう決めた。そう約束した。
まだまだ、俺の"意地"は死んじゃいない。
115
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:20:58 ID:RXnJAsYI0
口の中に血の味が広がる。
鉄臭さと塩辛さが否が応にも意識を覚醒させる。
身体中に走る痛みに身悶えて、地べたを這いずる。
それでも、俺は立ち上がろうと、腕を支えに両の足に力を込めた。
(#)A`)「グ……ウウ……」
骨が軋む。腿から何かがプチプチと切れる音が聞こえる。
呼吸は荒く、息を吸う毎に肺は焼けるようだ。
そんなことお構いなしに、踏ん張った。
しっかりと足の裏で地面を感じ、身体を起こす。
視界に写る世界は既に歪みながら回転を始めている。
薄ぼんやりと、昔夏休みに観たウルトラマンのオープニングを思い出した。
場違いな思考に、笑いが込み上げてくる。
なんだ、まだやれそうじゃないか。口の端が自然と持ち上がる。
俺は、意外としぶといようだ。
116
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:21:28 ID:RXnJAsYI0
(;・∀ ・)「こ、こいつ……」
(;^Д^)「マッジ……しつけぇ……」
俺を蹴っていた二人はたじろぐ。
それもそうだ。今まで、数発小付けばペコペコと頭を下げていた奴が、思わぬ執念を見せているのだから。
( 3 )「はぁ……うっざ」
田中は俺に背中を向け、歩き始める。
(#)A`)(や……、やった!あ、諦めた……?)
廃材が溜まった場所まで行き、田中は屈むと、何か物色し始める。
( ・3・)「こんなんでいっか」
手には、角材。
( ・3・)「お前さー、マジうぜぇンだよ。いっぺん死ねや」
117
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:22:15 ID:RXnJAsYI0
田中は二度三度、手に持った角材を振るう。
ヒュンヒュンと風切り音を立てて、俺を威圧する。
(;^Д^)「お、おい。田中。それはやべーんじゃねぇか?」
(;・∀ ・)「ま、マジで死んじまったらよ」
( ・3・)「頭やんなきゃ死にやしねーって。何ビビってんだよ」
(;・∀ ・)「び、ビビってねぇよ!」
( ・3・)「んじゃーお前らもそっから何か取って来いよ。このガキ殺すから」
(;^Д^)「お、おう」
斎藤と新指も廃材の山から鉄パイプや壊れたパイプ椅子を拾い上げる。
そして、俺に向き直った。
( ・3・)「もう今更謝っても遅ぇーから」
(・∀ ・)「へ、へへ……陰キャがちょずくとどうなっか教えてやんよ」
( ^Д^)「骨の二三本は覚悟しろよwwwwww」
118
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:22:39 ID:RXnJAsYI0
(#)A`)(……)
(#)A-)「……スゥ」
(#)A゚)「やれるもんならやってみろやぁあああああああああ!!!!」
叫んだ。
身体を曲げて、腹の底から。
未だに、こいつらが恐いことは変わらない。
でもそれ以上に、俺は気分が良かった。
どんなにボロボロにされようとも、虚勢でも、ハリボテだったとしても。
この一瞬が俺の全てのように感じられた。
何より、この熱を、この思いを、この意地を失うことの方が恐ろしかった。
やっと、自分のことが好きになれたような気がしたのだ。
例え、病院送りにされようが、俺は負けない。負けを認めない。
これが戦うということだと、やっと理解できた。
119
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:23:38 ID:RXnJAsYI0
(,, Д )「いーい啖呵じゃねぇか。ドクオ」
その声に驚いて、顔を上げる。
何か、鈍い音が響いた。
そう思った瞬間、斎藤が宙を舞っていた。
(; ∀ )「あぁぁあああぁぁあッ!!??」
たった数舜の間、それがスローモーションのように見える。
その後ろで、あの人が立っていた。
ずしゃり、と音を立て斎藤が地上に帰ってくる。
(#)A`)「ぎ……」
目頭が熱くなる。
いくら殴られても泣くもんかと思っていた。それが俺の戦いだった。
涙腺が決壊したかのように、目に涙が溜まる。
(#)A;)「ギコさん!!!!!」
(,,゚Д゚)「おう」
俺に戦うということを教えてくれた男が、そこに居た。
120
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:24:26 ID:RXnJAsYI0
前半はここまで。
後半とエピローグは夜に更新します。
121
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 06:34:48 ID:8.NSSauQ0
乙!
122
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 07:39:40 ID:cV1pFb7Q0
乙!
ドクオカッコいいじゃないか
123
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 10:35:28 ID:JX7GPET20
乙
こういう這い上がっていく話好きだわ
124
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 11:33:23 ID:PO9yGl2s0
乙
男見せるじゃんドクオ
125
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 11:54:40 ID:E/jT56L20
おつ
すき
126
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 12:38:31 ID:RL9xez5QO
いいなぁ熱いなぁ
127
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 13:14:45 ID:1U0jFbJs0
乙
128
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 13:40:51 ID:oGzastMo0
かっこよす
129
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 19:28:13 ID:XOCxzIx60
こんなんもうかっこいいわ続き楽しみ
130
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:27:48 ID:RXnJAsYI0
(,,゚Д゚)「意地、見せたな。ドクオ」
(*゚ー゚)「すげー!かおがリアスしきかいがんみたいだ!」
(,;゚Д゚)「え!?どういうこと?いや説明しなくていいや余計な傷増やしそう」
どうやって斎藤を投げ飛ばしたのか、相変わらずギコさんの腕にはしぃさんが抱き着いている。
自由な方の手で拳を握れば、指の間接をパキパキと鳴らした。
(,,゚Д゚)「しっかし、三対一はともかく、さらに道具使うかね?情けねぇな、どうも」
(;・3・)「……」
(;^Д^)「や、やべぇよ。暴君だ」
田中と新指はたじろぐ。
斎藤は、白目を剥いて気絶しているようだった。
131
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:28:16 ID:RXnJAsYI0
(,,゚Д゚)「しぃ、30年前からの今日の日付だ」
そう言うと、ギコさんはしぃさんを腕からそっと離した。
(* ー )「19889ねんの4がつ9かはにちようび……1990ねんの4がつ9かはげつようび……」
ぶつぶつと、しぃ先輩は何事か呟いている。
(,,゚Д゚)「さって、時間もねぇからとっととやるか」
132
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:28:46 ID:RXnJAsYI0
ギコさんは肩を回しながらこちらに向き直る。
振り返った表情は、まるで肉食獣のそれだった。
片眉を吊り上げ、犬歯を剥き出しに獰猛に笑う。
強いのは、知っていた。
三人の媚び諂う態度、男一人を軽々と投げる膂力。『四天王』や『暴君』といった渾名。
きっと強くて有名なのだろうと思っていた。
俺は、まるっきり分かっていなかった。
この猫村ギコという男のことを。
田中達から与えられる恐怖とは別種の恐怖。
生物としての生存本能がアラートを上げる感覚。
それほどまでの別格の"強さ"。それを肌で感じ取った。
感じ取ってしまった。
首輪の外れた虎の檻に、身一つで放り込まれたような気がした。
要するに、俺は心底『ビビった』のだ。
133
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:29:16 ID:RXnJAsYI0
(;・3・)「っ!!」
(;^Д^)「やべぇって!!勝てるわけねー!」
俺と同じ感覚を味わったのか、新指は手に持ったパイプ椅子を投げ捨てて、踵を返すと一目散に逃げ出した。
(,,゚Д゚)「いやいや、ダチ置いて逃げちゃあダメでしょ?」
(;^Д^)「ひぃっ!?」
(#)A`)「っ!?」
影が走る。
逃げ出したと思った新指の目の前に、ギコさんが一瞬で回り込んだ。
爆発的なスタートダッシュに、俺の目はほとんど追いついていなかった。
134
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:29:37 ID:RXnJAsYI0
(,#゚Д゚)「ゴラァ!!!」
新指の横っ面にギコさんの拳がめり込んだ。
(#) Д )「ギベッ!!」
(#)A゚)「!!??」
ギコさんが拳を振り抜くと、新指はそのまま錐揉み回転しながら"吹き飛んだ"。
俺は、やっと今まで勘違いしていたことを知った。
この人は"投げ飛ばし"ていたのではない。文字通り、"殴り飛ばし"ていたのだ。
ぶっ飛ばす。と比喩として使うこともあるだろうが、それを実践できる人がいるなんて誰が想像できる?
新指は着地した後も二三回転し、うつ伏せに倒れ沈黙した。
135
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:32:48 ID:RXnJAsYI0
(;・3・)「ば、化け物」
田中の発言に、俺も心の中で同意してしまう。
この人は、化け物だ。
田中はじりじりと後退る。恐らく、どうやってこの場から逃げ遂せるか、許して貰えるかを必死で考えているのだろう。
俺にも、その経験があるので、想像するのは容易だった。
(* ー )「2010ねんの4がつ9かはきんようび……2011ねんの4がつ9かはどようび……」
(;・3・)「!!」
田中の視線がしぃさんに向く。
(,,゚Д゚)「ッ!」
(#)A`)「!!」
136
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:33:29 ID:RXnJAsYI0
あいつのこれからやろうとする事に、俺はすぐに気が付いた。
恐らく、ギコさんもだろう。
ギコさんは急いで走り出した。
だが、新指の前に回り込んだギコさんの距離は、田中としぃさんとの距離に比べ絶望的に遠いように見えた。
(;・3・)「う、動くな!」
田中はしぃさんの首に手を回し、持った角材を振り上げる。
途端、
(* ー )「2013ねんの4がt、あ」
(;・3・)「?」
(* ー )「あああああああああああああああああああああああああ!!」
137
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:33:51 ID:RXnJAsYI0
耳を劈くような悲鳴を、しぃさんが上げた。
(;・3・)「う、うるせぇ!黙れ!殺すぞ!」
(* ー )「ああああああああああああああ!!ギコ!!!ギコおおお!!!!」
(,;゚Д゚)「ッチ」
ギコさんの足が止まる。
(,;゚Д゚)「しぃ!大丈夫だ!俺はここだ!落ち着け!!」
(* ー )「うー!うー!!ギコ!!ギコ!!!やだ!!やだああああああ!!!」
しぃさんは尋常じゃない様子で田中の腕の中で暴れ回る。
田中を恐れているのではない。それはすぐに分かった。田中が恐ろしいのであれば、あんなに藻掻くことはない。
あれは、人質にされたことでも、この状況を恐れているのでもない。
しぃさんはパニックを起こし頭を掻き毟る。
138
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:34:18 ID:RXnJAsYI0
(;・3・)「くっそ、なんだってんだ!」
田中も異常を察したのか、強くしぃさんを押さえつけようとする。
(#)A`)「うおおおおおおッ!!」
どうにかしなきゃ。その思いで一杯だった。
身体中の痛みを忘れ、走り出す。田中はしぃさんとギコさんに夢中で気付いていない。
俺は、田中の角材を持つ腕に飛びついた。
(;・3・)「あっ!?て、てめぇ!!」
(#)A`)「しぃさんを離せッ!!この野郎!!」
田中は俺を振り払おうとする。
だが、絶対に離すもんかと、俺は田中の腕にしがみつく。
そして
139
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:34:54 ID:RXnJAsYI0
(#)皿`)「んがぁ!!!」
(;・3・)「いってぇ!?」
思いっきり、手首に噛み付いた。
痛みに驚いて、田中は持っていた角材を地面に落とす。
(;・3・)「てめぇ、ふざけやが……って……」
俺を睨みつけた田中は、ゆっくりと正面に顔を戻す。
(,, Д )「おいコラァ……。よくもやってくれたなオイ」
絶望が、目の前に立っていた。
140
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:35:25 ID:RXnJAsYI0
ギコさんは目にも止まらぬ速度でしぃさんの首に回した腕を掴むと、力尽くで引っぺがした。
田中も抵抗しているようだが、まるで相手になっていない。
(,, Д )「ありがとうよドクオ。しぃのこと頼むわ」
(;・3・)「ああああああ!!痛い!!折れる!!マジ折れるって!!」
ギリギリと、こちらまで聞こえる力で腕を握る。
俺はしぃさんの肩に手を添えて、なるべく触れないようにその場から離れる。
しぃさんはまだ、自分の頭を掻き毟っている。
(,# Д゚)「半殺しで済ませようかと思ってたのによォ……」
(,# Д゚)「てめぇは全殺しだ馬鹿野郎」
(;・3・)「ひっ、ひぃいいいい!?」
(,#゚Д゚)「飛べゴラァ!!!」
141
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:35:49 ID:RXnJAsYI0
田中の腕を打ち払うと、ギコさんは身を屈める。
そこから、田中の顎へ向けて拳を叩き込んだ。
( 3 )「ぶべらっ!!」
田中は、文字通り"飛んだ"。
そのまま空中で縦に半回転すると、顔から地面に叩きつけられた。
(,# Д )「フーッ……フーッ」
ギコさんはそれを見下ろし、怒りを鎮めるように肩で息をする。
数秒の後、こちらに歩いてくると、へたり込むしぃさんの頭を掻き抱いた。
142
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:36:25 ID:RXnJAsYI0
(,,゚Д゚)「……しぃ、大丈夫だ。俺はここだぞ」
(*゚ー゚)「うー……うー……ギコ?ギコ?」
(,,゚Д゚)「おう。ちゃんといるぞ」
(*゚ー゚)「ギコ……ギコ……」
しぃさんはいつものようにギコさんの腕に縋り付く。
だが、それはいつもよりキツく強く抱きしめているようだった。
(,,゚Д゚)「ありがとな。ドクオ。助かった」
(#)A`)「い、いや!助けてもらったのは、俺のほうで……」
(,,^Д^)「じゃあ、貸し借りなしだな?」
143
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:37:00 ID:RXnJAsYI0
ギコさんは笑った。
先ほどの獰猛な笑みではない。屈託のない優しい笑み。
まるで別人だ。
(#)A`)「は、はい!いや、でも、昨日から何度も助けて貰ってるし、やっぱ俺の方が」
(,,゚Д゚)「グダグダ細けぇ奴だなぁ。じゃあ、アレだ。今度飯奢れ飯。お前ん家で」
(#)A`)「はい!え?俺の家?」
(,,゚Д゚)「お前の世話になってるおばさん料理人なんだろ?その飯食わせろ」
(#)A`)「そ、それはいいですけど、そんなことで」
(,,゚Д゚)「いーんだよ。ほれ、病院行くぞ。ひでぇ面してんぞお前」
144
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:37:30 ID:RXnJAsYI0
ギコさんはしぃさんを支えながら立ち上がる。
(,,゚Д゚)「っと、その前に……」
ギコさんは倒れている田中達に向かい、近くまでくると屈んで何かしようとしている。
財布でも、抜くのだろうか。
(,,゚Д゚)「オラ、ドクオ!お前も手伝え!」
(#)A`)「え、で、でも流石に泥棒は……」
(,,゚Д゚)「あ?ちげーよ。こいつらケツ丸出しで校舎に吊るすぞ。二度と舐めた真似させねぇ」
(#)A`)「えっ」
(*゚ー゚)「こうかいしょけいだー」
しぃさんはいつのまにか復活していた。
それどころか嬉々として片手で田中のベルトを外そうとしている。
145
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:37:58 ID:RXnJAsYI0
(#)A゚)「ええええええええええ!?」
とんでもない高校に来てしまった。
それでも、俺はここで生きていくと決めた。
意地を通せば、生きていける。
身体中ボロボロで、歩く度に間接が悲鳴を上げる。
だけど、俺は今までに感じたこともないほど、晴れやかな気分だった。
いじめていた奴らが報いを受けたから?違う。いや、それも無いと言えば嘘になるが。
それ以上に、俺は初めて意地を通し切った。それが誇らしかった。
俺の高校生活は、今日、今から始まる。
146
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:38:46 ID:RXnJAsYI0
死ぬときがこの毎日ときっとおさらばって言うことなんだから、
それまで出来うる限り、そう出来うる限り己自身の道を歩むべく、
反抗を続けてみようじゃないか、出来うる限り...。胸を張ってさ そう
エレファントカシマシ『ガストロンジャー』
.
147
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:40:08 ID:RXnJAsYI0
Epilogue
工業科練の教室の一室。
大柄の男の周りに、数人の生徒が集まっている。
大柄な男、いや巨漢と呼んだ方がしっくりくるような立派な体躯の男には、両目に派手な傷痕があった。
( ФωФ)「そもさん」
( ´ー`)「せっぱ」
巨漢、杉浦ロマネスクが口を開くと、対面の男、志良ネーヨがそれに答える。
( ФωФ)「今年の1年の塩梅は?」
( ´ー`)「まだ頭決めの段階みたいだな。あと数週間もすりゃ決まるだろうよ」
148
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:40:43 ID:RXnJAsYI0
( ФωФ)「そうか。他の四天王の様子は?」
( ´ー`)「弟の話じゃ、白狐と女瞳鎖に新しくメンバーが入ったらしい。
『暴君』は、相変わらずの風来坊振りだってよ」
( ФωФ)「ふむ。まぁ、概ね予想通りか」
( ´ー`)「1年がどれだけウチに付くかだな」
( +ω+)「なるようになるであろうよ」
(;´ー`)「あのなぁ、頭のお前がもう少し緊張感持ってくれねぇとよ」
( ФωФ)「どうした?ビコーズ」
( ∵)「……」
149
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:41:18 ID:RXnJAsYI0
ロマネスクがネーヨの後ろを見据える。
気が付けば、細見の男がネーヨの後ろに立っていた。
ネーヨは振り返ればビクリと肩を震わせる。
(;´ー`)「うわびっくりしたぁ!お前気配殺して後ろに立つのやめろよ!!」
その横を細見の男、灰野ビコーズは通り過ぎ、何やらロマネスクに耳打ちする。
( ´ー`)「いや普通に話せ普通に。三年間クラス一緒でほとんどお前の声聞いたことねーよ?」
( ФωФ)「……そうか」
( ´ー`)「どうした?」
150
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:41:45 ID:RXnJAsYI0
( ФωФ)「ギコ……『暴君』が1年を一人拾ったらしい」
(;´ー`)「はぁ!?あいつも派閥作る気かよ!?どうすんだ!ウチと構えるつもりじゃねぇだろうな!?」
( ФωФ)「いや、それはなかろーよ。あの男は基本的には一匹狼だ。
それに、構えるつもりならまず俺の首を取りにくるだろう」
(;´ー`)「それもそれでおっそろしい話だけどな」
( ФωФ)「しかし、まさかあいつがな。拾った1年。どんな男か些か興味が湧いた」
『魔王』は、低く、くつくつと笑い出した。
151
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:42:42 ID:RXnJAsYI0
次回予告!!
こうして始まった土地の権利書を掛けた俺と代打ちロマネスクとの麻雀サシ勝負!
この勝負に勝たないと、『伊藤食堂』の未来はない!
しかし、開始早々に奴は仕掛けてきやがった!
( ФωФ)「ロン、親ッパネ。6000オールである」
(;'A`)(俺のツモ切りで、しかも地獄単騎!?)
間違いない。こいつ、イカサマしてやがる!
(;'A`)(ガン牌……ッ!)
だが、こいつは、この男は。
(;'A`)(盲目で……どうやって!?)
次回!('A`)雀鬼闘牌伝説ドクオ
第二話『盲目の死神』
ご期待ください!
152
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:43:02 ID:RXnJAsYI0
.
* *
* + うそです
n ∧_∧ n
+ (ヨ(* ´∀`)E)
Y Y *
.
153
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:43:33 ID:RXnJAsYI0
次回「CHANGE!!」
.
154
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:44:26 ID:RXnJAsYI0
やっとこさ1話終了です。遅筆でごめんね。
155
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 20:59:04 ID:08IedWJM0
乙
普通に麻雀バトルするのかと思ってワロタ
156
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 21:08:35 ID:RXnJAsYI0
>>151
( ФωФ)「ロン、親ッパネ。6000オールである」
↓
( ФωФ)「ロン、親ッパネ。18000である」
なんでロンしてんのにオールなの?バカなの?
いや、与太話だからいいんだけどさ
157
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 22:28:38 ID:tjCvzq5I0
乙!!
公開処刑が容赦なくて笑う
158
:
名無しさん
:2019/06/22(土) 23:24:36 ID:dYYcJVW.0
乙、ビコーズは何なんだよホント
159
:
名無しさん
:2019/06/23(日) 05:54:46 ID:I13RUTj.0
おつです
160
:
名無しさん
:2019/06/23(日) 14:27:20 ID:0aCLUy3E0
ズボン下ろすのにケツの方見せて吊るの優しさ滲み出ててすき
面白くなってきたやん続き楽しみにしてる
161
:
名無しさん
:2019/06/24(月) 04:46:00 ID:Yl4o0bsQ0
>>131
しいは未来人か
162
:
名無しさん
:2019/06/24(月) 07:20:21 ID:CW7slkE60
いよいよ他四天王の登場か
しぃ過去に何があったんだろうな…
163
:
名無しさん
:2019/06/24(月) 21:42:04 ID:sdI1I.BI0
好き!!!!!!!
164
:
名無しさん
:2019/07/31(水) 17:51:02 ID:5S/YMXpM0
いいねなりそうです今読んだけど古き良きヤンキー漫画みたいで面白い
続き期待して待ってます
165
:
名無しさん
:2019/08/03(土) 02:26:23 ID:fLXKwjhg0
こんばんは。
作者様、お元気ですか?
無理はなさらないで下さいね。
166
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:15:08 ID:qpzaD/Nw0
俺がしたらば総合高等学校に入学し、三週間の月日が流れた。
ギコさんとしぃさんと出会ってから、俺の高校生活は一変した。
あの日、病院から顔を腫らし返って来た俺をペニサスさんは酷く驚いていた。
『誰にやられた』とか、『後輩に連絡する』やら喚き散らしていたが、なんとか落ち着かせ経緯を説明した。
慌てふためくペニサスさんを見て、心配を掛けたことに心苦しくなったが、自分のしたことについて、後悔はなかった。
それでころか、今までに感じたこともない程、晴れやかな気分だった。
俺の目をまじまじと見つめていたペニサスさんは、優しく一言だけ「そっか」と言った。
167
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:15:54 ID:qpzaD/Nw0
次の日、俺は高熱を出した。
人は殴られ過ぎると熱が出るらしい。
病院では、骨への異常は見当たらなかった。
帰り際、ギコさんに聞いた話では、俺を診察してくれたしたらば病院は、した高の校長と懇意らしく、
喧嘩して怪我をした生徒を何も言わず診察してくれるらしい。
打ち身や腫れ用に貰った湿布を張り付け、俺は早くも4日目にして学校を休むこととなった。
口の中は切り傷だらけで、ペニサスさんが作ってくれた卵とじのおかゆが酷く染みたが、
いつもよりも口に運ぶご飯が美味しく感じられた。
168
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:16:29 ID:qpzaD/Nw0
熱の引いた翌日、いつもより軽い足取りで学校に向かった俺は、クラスメート達に取り囲まれた。
何が何だかわからず、しどろもどろになる俺に、初日に俺の事を助けてくれた増井くんが話しかけて来た。
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「お前、意外と根性あンのな」
(;'A`)「えっ」
ィ'ト―-イ、
以`゚益゚以「この前、悪かったな」
それだけ言うと、増井くんは自分の席に帰って行った。
他のクラスメートは口々に、『暴君』がどうだとか言っていたが、未体験の連続に俺の脳はパニックに陥っていたので記憶は定かではない。
169
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:17:10 ID:qpzaD/Nw0
それ以降、何かと俺に話しかけてくれるクラスメートは多くなった。
そこで俺は初めて、このした高には『四天王』と呼ばれる人達がいることを知った。
『魔王』、『女帝』、『総統』、そして『暴君』。
この四派閥が、絶妙なバランスでした高のトップに君臨しているらしい。
まるで、漫画の世界だ。非日常に足を踏み入れたような感覚に、俺は興奮を隠せなかった。
その『四天王』の一角である『暴君』は今、
(,,-Д-)「うーーーーーーーん」
俺の目の前で唸っていた。
170
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:17:36 ID:qpzaD/Nw0
Ep.2「CHANGE!!」
.
171
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:18:15 ID:qpzaD/Nw0
1.
昼休み、いつものように屋上で昼食を取っていた。
あの事件以来、田中たちを学校で見ることはない。
それも、当然だろう。
寄りにも寄って、校門からすぐ見上げれる普通科練と工業科練の間に罹る二階の渡り廊下から、下半身を丸出しにして吊るされたのだから。
最後の情けか、トドメか、股間に『お粗末』の張り紙(ギコさんはお粗末の漢字が分からないらしく俺が書かされた)をされて、だ。
吊るされた紐で首を括り直すような仕打ちだ。およそ、学校に来る気にはならないだろう。
それに、田中に至っては、怪我も酷いようだった。聞いた噂では、顎が砕けていたらしい。
梅干し入りのおにぎりを食べて顔を渋くするしぃさんを横目に、先程からギコさんは俺の顔を見ては、唸っている。
172
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:18:45 ID:qpzaD/Nw0
(*>ー<)「うー!ギコーおちゃー!」
(,,゚Д゚)「うーーーーーーん」
(*>ー<)「おちゃをよこせー!」
('A`)「しぃさん、はい」
(*>ー<)「でかしたぞ、モヤシー!」
お茶の入った魔法瓶の蓋を俺から受け取り一口飲むと、しぃさんは人心地が付いたようだった。
173
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:19:05 ID:qpzaD/Nw0
(;'A`)「で、何ですか、さっきから。うんうん唸って」
(,,゚Д゚)「髪」
(;'A`)「え?」
(,,゚Д゚)「お前、髪うっとーしくねぇのか?」
そう言われて、俺は前髪を摘まんだ。
確かに、散髪なんて久しくしていない。
と、言うのも、理髪店で髪型をどうするか聞かれた時、俺は毎回どう答えていいのか分からないのだ。
美容院なんて以ての外で、お洒落な美容師さんに話し掛けられるのを想像するだけで、変な汗が出てくる程だ。
174
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:19:31 ID:qpzaD/Nw0
その様な苦手意識の所為で、ついだらだらと髪も散髪の機会も伸びて行った結果、今では殆ど前髪が顔を覆っている。
癖がある為、そのままにしていれば鼻先程度だが、摘まんで引っ張ってみれば、顎先まで達する長さにまでいつの間にか成長していた。
(,,゚Д゚)「伸ばしてんの?」
(*゚ー゚)「あれか!ベンジーみたいにするのか!」
('A`)「いえ、別に伸ばしてる訳じゃ……ベンジー?」
(,,゚Д゚)「確かにこいつ細いけど、ベンジーみたいにするとなんか腹立つな」
(*゚ー゚)「わかる」
(;'A`)「いや誰ですかベンジーって。ただ単純に床屋さんって苦手なんですよ。なんて言っていいのか分からなくて……」
(*゚ー゚)「っぽいわー」
(,,゚Д゚)「あーわかる」
('A`)「ほっといてください」
175
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:19:55 ID:qpzaD/Nw0
もそもそとペニサスさんが拵えてくれたお弁当を口に運びながら答える。
どうせ俺は有名人と知り合いになったところで陰キャなのだ。
(,,゚Д゚)「んじゃ、ウチ来るか」
('A`)「はい?」
何故、俺の髪の毛の話からギコさんの家へ行くという結果になるのだろうか。
そもそも、俺が誰かの家に呼ばれる状況自体が理解出来ない。
もしやギコさんは将来美容師になりたくて俺の髪で練習するつもりなのか。
数週間ギコさんと付き合ってきたが、凡そその手の細かい作業が得意だとは思わない。
凄惨な結果になる事は自明の理だ。
しかし、入学したばかりの右も左もわからない俺を救ってくれ、こうして面倒も見てくれている。
髪はまたすぐに伸びる。ギコさんの夢の為になるのだったら、一時の恥など無いにも等しいだろう。
意を決して、俺は口を開いた。
176
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:20:32 ID:qpzaD/Nw0
('A`)「わ、わかりました。ギコさんのお役に立てるなら……俺の髪くらい……」
(,,゚Д゚)「なんか良くわかんねぇけど、お前今すっげぇ失礼な事考えてるだろ」
('A`)「え、ギコさんが俺の髪で散髪の練習するんじゃ……」
ギコさんは呆れたのか解せないのか、眉間に皺を寄せ眉尻を下げ溜息を吐くと、煙草を取り出し火を点けた。
(,,゚Д゚)「なぁんで俺がお前の髪切らなきゃいけねぇんだよ」
(*゚ー゚)「ギコにそういうセンスをもとめてはいけない」
('A`)「それは、あの、なんとなく分かりますけど」
(,,゚Д゚)「お前ら、俺もいい加減傷つくからな?」
177
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 00:20:57 ID:qpzaD/Nw0
ギコさんは上向きに煙草の煙を吐き出すと、うんざりした様な口調で一言、
(,,゚Д゚)「ウチ、床屋」
と言った。
178
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 01:11:36 ID:vLFmwguY0
まさか続きが来るとは嬉しい支援
179
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 02:54:49 ID:JJrHfAyg0
待ってました!支援!
180
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 03:10:44 ID:0mjiG5j.0
まーじか復活めちゃ嬉しいぞ
181
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 07:19:42 ID:bonSMz32O
うぉー待ってた!
ドクオイケメン化するのかwktk
182
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 11:48:17 ID:LTON6qnY0
お??!!!
183
:
名無しさん
:2019/12/31(火) 12:26:00 ID:FrpHTQUY0
待ってた
支援!
184
:
名無しさん
:2020/01/07(火) 22:51:19 ID:xVm1Lfcs0
ベンジーというチョイス
中の人いくつなんだ……
185
:
名無しさん
:2020/01/20(月) 01:14:50 ID:R1Q5PFUU0
これバチボコに面白い
186
:
名無しさん
:2020/03/31(火) 07:58:34 ID:TtPu12z.0
まだー?(ㄘんㄘん
187
:
名無しさん
:2020/06/11(木) 03:16:48 ID:5PQlzoPs0
アゲアゲ
188
:
名無しさん
:2020/08/18(火) 22:13:55 ID:naEoxmOM0
わたしまーつーわ
189
:
名無しさん
:2022/05/22(日) 23:56:50 ID:jYDtUhTQ0
2.
放課後、俺はギコさんとしぃさんに連れられ、慣れない道を歩いていた。
考えてみれば、引っ越してきてからというもの、近所を散策したことなどない。
殆ど下宿先の『伊藤食堂』からした高までの道のり程度しか、俺はこの近辺を把握していない。
帰る方向は似ているが、いつもの帰り道から少し外れただけで、見慣れない景色が広がっていた。
新しい情報に俺の交感神経が戸惑っているのか、軽い眩暈を起こす。
何を作っているのかは分からない町工場が数件続いて建ち並ぶ。
半分閉まったシャッターからはスプレーでペイントされた文字が見え隠れしている。
しぃさんを腕にしがみ付かせたまま、ギコさんは慣れた足取りでどんどんと進んでいく。
細い道を抜ければ、寂れた商店街に抜けた。
商店街の中程、ギコさんは足を止めた。
そこは、如何にも町の床屋然とした店構えだった。
赤、青、白の縞模様が回転するサインポールと観葉植物が店先で漫然と佇んでいる。
くすんだガラス製の扉には白字で『ネコムラ理容室』と描かれていた。
190
:
名無しさん
:2022/05/22(日) 23:58:10 ID:jYDtUhTQ0
(,,゚Д゚)「ただいま」
(*゚ー゚)「ただまー!」
扉を開くとドアベルが渇いた音を上げる。
ミ,,゚Д゚彡「あ!おかえりなんだから!」
待合用のソファーに腰を下ろし、新聞に目を落としていた体躯の良い男性が顔を上げた。
ギコさんが年を取ったらこの人のようになるのではないのか。と思うほど良く似ている。
輪郭をなぞる髭と髪の毛が一体化したような風貌は、熊かライオンを連想させる。
この人が、ギコさんのお父さんなのだろう。
ギコさんのお父さんはソファーから立ち上がると新聞をラックに戻し歩み寄って来た。
191
:
名無しさん
:2022/05/22(日) 23:58:34 ID:jYDtUhTQ0
ミ,,゚Д゚彡「お、そっちの子は友達?」
俺に気が付くと、男性はギコさんに紹介を求めた。
('A`)「あ、鬱田ドクオと言います。ギコさ…猫村先輩にお世話になってます」
ギコさんが口を開く前に、頭を下げて挨拶する。
ミ,,゚Д゚彡「後輩くんかー。何、一丁前に先輩風吹かせてるの?こんなのに先輩なんて大層な言い方勿体ないんだから」
(,,゚Д゚)「うるせぇな。別にそういうんじゃねぇよ」
('A`)「あ……いえ、本当に猫村先輩には良くして貰っていて……」
192
:
名無しさん
:2022/05/22(日) 23:58:56 ID:jYDtUhTQ0
親子同士の軽口の間に入るというのは、どうにも気が引ける気分になり、少し戸惑いながらも答える。
ギコさんはバツが悪そうに頭を掻きながら俺を横目で見やった。
(,,゚Д゚)「これ、俺の親父」
ぶっきらぼうにギコさんが紹介する。
俺はもう一度ペコリと頭を下げた。
ミ,,゚Д゚彡「フサだから。ギコとしぃちゃんがお世話になってるね」
(;'A`)「い、いえ、お世話になってるのは俺の方で……」
ミ,,^Д^彡「そんなに畏まらなくていいんだから」
(;'A`)「あ、はい……ハハ」
193
:
名無しさん
:2022/05/22(日) 23:59:20 ID:jYDtUhTQ0
こんな時にどのような事を話せばいいものか。頭を何度も下げながら逡巡する。
生憎と俺の話題の引き出しの中にはそれは見当たらないらしく、乾いた笑いしか出てこなかった。
そんな俺を見ながら、フサさんはニコニコと人の好さそうな笑みを崩さなかった。
(,,゚Д゚)「なぁに親父にそんな緊張してんだよ」
('A`)「ア……す、すみません」
(*゚ー゚)「むすめをよめにもらいにきたかれしか?」
(;'A`)「えぇ……」
ミ,,゚Д゚彡「あ、いいよ。持ってちゃって持ってちゃって」
(;'A`)「えぇー……」
194
:
名無しさん
:2022/05/23(月) 00:00:05 ID:PTdamma60
(,,゚Д゚)「気持ち悪いこと言うな」
ミ,,゚Д゚彡「しぃちゃんはあげないから」
(,,゚Д゚)「気持ち悪いこと言うな」
(*゚ー゚)「きもちわるいこというな」
ミ,,TДT彡「酷いんだからー……」
(;'A`)「……ハ、ハハ」
195
:
名無しさん
:2022/05/23(月) 00:00:30 ID:PTdamma60
ミ,,゚Д゚彡「それで、何、これからどっか行くの?晩御飯は?」
(,,゚Д゚)「いや、こいつの髪切って欲しくてよ」
ミ,,゚Д゚彡「あ、そうなの?」
ギコさんは二、三度俺の肩を叩くと、そのままフサさんの前まで俺を押し出した。
(;'A`)ゝ「ア……よ、宜しくお願いします」
俺はまた、おずおずと会釈を繰り返した。
フサさんは俺を見ながらバーバー椅子へと促す。
腰かけると、俺の髪を摘まんで伸ばしながら、「それじゃ、今日はどうする?」と鏡越しに俺に問いかけた。
196
:
名無しさん
:2022/05/23(月) 00:01:04 ID:PTdamma60
ミ,,゚Д゚彡「結構伸びてるねー。伸ばしてるの?毛先だけ行く感じ?」
(;'A`)「え、あ、いや、その、伸ばしてる訳じゃ……えっと」
やはり、理髪店というのは苦手だ。
特に髪型に拘りもないので「て、適当に」と蚊の鳴くような声で呟こうとした時、
(,,゚Д゚)「ああ、折角こんだけ伸びてんだからよ……」
後ろからギコさんがフサさんの横に立ち、何かしら呟き始めた。
197
:
名無しさん
:2022/05/23(月) 00:01:25 ID:PTdamma60
ミ,,゚Д゚彡「あーいいねー。だったら軽くパーマもかけちゃうか」
(,,゚Д゚)「いいんじゃねぇ?根本から後ろに流す感じで」
ミ,,゚Д゚彡「うんうん。ドクオくん細いしシャープな感じが似合うと思うんだから」
(;'A`)「エッ…アノ…チョット」
俺の後ろでは俺の髪型についての議論が俺抜きで行われている。
後ろを振り返り何事かと問いかけようとすると、にっこりとフサさんは笑いながら、
ミ,,^Д^彡「おじさん腕はいいから、安心するから」
とバリカンを持ちながら言った。
198
:
名無しさん
:2022/05/23(月) 00:02:49 ID:PTdamma60
お久しぶりです。
未だに投下行数ってどのくらいがいいのかわかりません。
199
:
名無しさん
:2022/05/23(月) 02:02:48 ID:N0oUZ8yA0
今初めて読んだけどめっちゃ面白い
投下再開ありがと
200
:
名無しさん
:2022/05/23(月) 07:02:12 ID:qGDm7spY0
待ってました!
201
:
名無しさん
:2022/05/23(月) 08:12:42 ID:n/QY/wrs0
!!!!!!!
202
:
名無しさん
:2022/05/23(月) 15:14:18 ID:3SEjNIvc0
待っとたで〜今度は逃がさへんよ…
203
:
名無しさん
:2022/05/24(火) 09:00:51 ID:itURa40c0
待ってた!!!!
再開超嬉しい!
204
:
名無しさん
:2022/05/24(火) 11:51:21 ID:2K3DDlQ60
乙!!!
めちゃめちゃ好きかも……面白い
205
:
名無しさん
:2022/11/25(金) 14:38:07 ID:nRnjG7h20
半年たったからそろそろくるかな?
206
:
名無しさん
:2025/06/18(水) 20:03:32 ID:bGBynJOU0
不良ばかりの中で奮闘するドックンが愛らしくて好きです
できればペニサスの出番をもっと・・・!
復活待ってます
207
:
名無しさん
:2025/06/18(水) 20:34:15 ID:qHoZBD6s0
いい加減にしてくれ…
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