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沼男はいないようです

1 ◆qRAFc2g8TE:2016/03/30(水) 14:46:57 ID:jK9Wh.Rc0





「もう一度問おう」





「君たちは、ニセモノを許すことが出来るか?」





* * *

2名無しさん:2016/03/30(水) 14:48:46 ID:jK9Wh.Rc0

 ポン、と。
到着音が、3人の乗客の耳に響く。
上部パネルに映し出された階数表示は、この建物の最上階を示している。

 音もなく左右に扉が開くと、出口には白衣姿の老人が1人佇んでいた。

 3人組は驚いた様子だったが、呆然としているわけにもいかない。
扉が閉じてしまう前に、慌てて鉄箱から降りる。

 全員が降りたことを確認してから、老人は口上を述べた。


/ ,' 3「ようこそ、私の研究所へ。本日はわざわざ来てくれてありがとう、学生諸君」


 それだけ言うと、老人は返事も待たずに背を向け、スタスタと歩き始めた。
廊下は一本道になっていて、最奥には両開きの扉が見える。

 「学生諸君」と呼ばれた3人の男女は、置いて行かれぬよう、老人の後ろについていく。

3名無しさん:2016/03/30(水) 14:50:31 ID:jK9Wh.Rc0

 しばらくして、扉の前に到着した。
プレートには「所長室」と書かれている。
老人がその扉を押し開き、3人に入るよう促す。

 彼らは「失礼します」と言い、部屋の中へ入る。
そして最後に老人が入り、バタンと扉を閉じた。

部屋の中央まで進み、くるりと3人の方へ向き直り、語りかける。


/ ,' 3「……まずはそうだね、自己紹介でもしてもらおうか。君から順に頼むよ」

(;^ω^)「は、はい!」


 老人に視線を向けられた小太りの男は、額に汗を浮かべながら応える。
見るからに緊張しているようだ。


(;^ω^)「えーと……VIP大学2年、内藤ホライゾンですお。本日はよろしくお願いしますお」

4名無しさん:2016/03/30(水) 14:51:39 ID:jK9Wh.Rc0

/ ,' 3「内藤君だね、よろしく。じゃあ次、君」


 老人は軽く頷くと、内藤の隣の女性へと視線を移す。


(*゚ー゚)「同じくVIP大学2年の猫田しぃです。本日はよろしくお願いします」


 ショートヘアの女性は、そう言いながらぺこりとお辞儀をする。
内藤ほどではないが、彼女も若干緊張しているようだ。


/ ,' 3「猫田君、よろしくね。最後は……」

( ・∀・)「同じくVIP大2年の茂羅モララーです。本日はお招きいただき、ありがとうございます」

5名無しさん:2016/03/30(水) 14:52:50 ID:jK9Wh.Rc0

 整った顔立ちの男が最後に答える。
襟元をきっちりと揃え姿勢を正して挨拶をするその姿は、学生にしては随分としっかりしているように見える。


/ ,' 3「はは、そんなに畏まらなくていいさ。それより、立ちっぱなしで話すのも億劫だ。みんな座っていいよ」


 そう言うと、老人はおもむろに一人掛けの椅子に座る。
透き通ったガラスのテーブルを挟んで、向かいの長椅子が空いている。
詰めれば4人ほど座れることだろう。

 促されるままに、3人は席に着く。
それを見届け、老人は口を開いた。


/ ,' 3「ふむ……それじゃあ最後に、私も自己紹介をしようかね」


.

6名無しさん:2016/03/30(水) 14:54:04 ID:jK9Wh.Rc0





/ ,' 3「初めまして。私の名は荒巻スカルチノフ。しがない研究者だ」



/ ,' 3「そして、早速で悪いが……君たちにはこれから」



/ ,' 3「私の『実験』に、付き合ってもらう」





* * *

7名無しさん:2016/03/30(水) 14:56:03 ID:jK9Wh.Rc0

 事のはじまりは、およそ1週間前。


( ФωФ)「内藤と猫田、この後ちょっと来てくれ」


 テスト期間も終わり、学生たちはこれからの夏休みに思いを馳せていたところだった。


( ^ω^)「? わかりましたお」

(*゚ー゚)「はい」


 そんな中、教授に呼ばれた2名。
彼らは同じゼミ生という以外、特に接点が無い。

 他にも同じゼミ生は周りに何人かいるのに、何故自分たちだけが呼ばれたのだろう。
そんな疑問を抱きながら、彼らは教授の元へ向かう為に軽く身支度を済ませる。


('A`)「杉浦教授から指名で呼び出し、おー怖い怖い。いってら」

( ^ω^)「おーん、行ってくるお。遅くなるかもしれないし、先に帰ってていいお」

('A`)「へいよ、そんじゃまたな」

8名無しさん:2016/03/30(水) 14:57:41 ID:jK9Wh.Rc0

(*゚ー゚)「ごめんねミセリ、その話はまた今度で」

ミセ*゚ー゚)リ「ううん、良いよ。頑張ってきてね」


 各々の友人と別れを告げ、教授が行った方角を目指して歩く。
彼の姿はもう無い。
おそらく、研究室に来いという事なのだろう。


(*゚ー゚)「内藤くん、心当たりは?」

( ^ω^)「身に覚えが無いお……そっちは?」

(*゚ー゚)「私も……なんだろうね、ゼミのことかな?」


 教授の杉浦は、学生の間で厳しい事で有名だ。
彫りの深い強面な外見に加え、妥協を許さない性格が、そういった印象を与えるのだろう。

 そんな教授からの指名での呼び出し。
身に覚えが無いとはいえ、些か緊張するのも無理はないだろう。
いや、身に覚えがないからこそ緊張するのだろうか。

9名無しさん:2016/03/30(水) 14:59:03 ID:jK9Wh.Rc0

 そんなことを考えつつ、軽く雑談を交わしながら、杉浦の研究室へと向かう。まだもう少しかかりそうだ。


ξ゚⊿゚)ξ「あら、ブーン」

( ^ω^)「お、ツン」


 向かいから歩いてきた女性は、津出ツン。内藤の恋人だ。

 ブーンというのは、内藤の愛称である。もっとも、そう読んでいるのは彼女と親しい友人くらいしか居ないが。

 津出は内藤が他の女性と2人で歩いてるのを見て、やや眉をひそめる。


ξ゚⊿゚)ξ「どこに行くの?」

( ^ω^)「杉浦教授に呼ばれたんだお」

(*゚ー゚) ペコリ

ξ゚⊿゚)ξ「そう……じゃあ私、先に帰ってるから」

10名無しさん:2016/03/30(水) 15:00:06 ID:jK9Wh.Rc0

( ^ω^)「……わかったお」


 内藤が言い終わらないうちに、スタスタと横を通り過ぎて行く。


(*゚ー゚)「内藤くんの彼女さん?」

( ^ω^)「そうだお。高校時代からの付き合いだおね」

(*゚ー゚)「へー。なんだかごめんね、空気悪くしちゃったみたいで」

( ^ω^)「おっおっ、猫田が謝ることないお。最近ちょっと喧嘩しちゃって、少し険悪ムードなんだお」

(*゚ー゚)「ふぅん……なんで喧嘩しちゃったの?」

( ^ω^)「大した理由じゃないお。次のデート先について口論になって……」


 そこまで言うと、内藤はほんの少し顔を顰める。
どうやら、嫌なことを思い出してしまったようだ。


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