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('A`)便利屋ドクオの野暮用です
79
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:48:57 ID:CCACwx0U0
('A`)「…………さてと」
これまでの騒ぎを聞いてか、敷地内にいた多くの人々はすでに消えていた。
この敷地内で一番目立つ建物、礼拝堂。
俺は真っ先にそこへと歩みを進めていた。
('A`)「案内なんか聞かずに、初めからここに来りゃ良かったぜ」
大きな扉をゆっくりと引くと、中から漏れ出す異様な空気を感じる取ることができた。
そして俺が見たものは――。
(;'A`)「デレ!!」
――十字架に磔にされている、デレの姿だった。
.
80
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:49:29 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚;ζ「ど、ドクオ! 助けて……!!」
幸い、意識はある。見たところ怪我も無いようだ。
('A`)「今降ろしてやるからな!」
『――無駄だよ』
('A`)「……!?」
――カツ、カツ、カツ。
一歩一歩、音を堂内に響かせながら、暗闇から姿を現した、一人の男。
爪'ー`)「私の能力で磔にしているからね。簡単には外せないさ」
(;'A`)「――ッ……お前は……フォックス……!!」
半年前、ある大手企業の社長を殺す依頼を成し遂げ、100万レスもの金を手にした。
俺が店を持つ為の元手になった金だ。
この男フォックスは、その依頼主であった。
爪'ー`)「ッ……。おやおや、まさか侵入者が君だったとは……」
爪'ー`)「驚いたよ、“Killer-D”」
.
81
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:50:38 ID:CCACwx0U0
“Killer-D”とは、俺が店を持つ前に呼ばれていた名前だ。
ブーンと合わせて、“Killer-B.D.”なんて呼ばれていた事もあった。
('A`)「……今は便利屋“All Trades”のドクオだ」
爪'ー`)「便利屋、ねぇ……。あの君が、今じゃ水道管工事をしてるのか……笑えるね」
('A`)「ハッ……生憎これが初仕事さ」
爪'ー`)「……半年ほど前か……君に仕事を依頼したのは」
('A`)「お前、あの社長を殺して自分の会社をでかくするんじゃなかったのか?」
爪'ー`)「ああ、その通りさ。カデレス社は邪魔だったからな。君のお陰でうちの売上は大きく上がったよ」
ζ(゚ー゚;ζ「……か……カデレス……?」
デレが青白い顔を引きつらせて、そう言った。
大事なものを何か、失ったかのように。
爪'ー`)「そう、カデレス。彼らは事業を広げすぎたんだ。当然、あの社長を殺したがってたのは私だけじゃなかったはずだ」
82
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:51:26 ID:CCACwx0U0
('A`)「俺が聞きてぇのはそんな話じゃねぇんだよ。そんなお前がなんでこんな宗教団体なんて――――」
ζ(゚ー゚;ζ「――待ってよ!!」
('A`)「ッ……?」
ζ(゚ー゚;ζ「カデレスの……カデレスの社長を……殺したの……?」
('A`)「ああ。こいつの依頼でな」
ζ( ー ;ζ「……そんな……嘘…………」
('A`)「お、おい」
ζ( ー ζ「…………私の……」
「……私のお父さんは……カデレスの社長だったんだよ……」
(;'A`)「――ッ!」
.
83
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:52:03 ID:CCACwx0U0
デレの顔は、まるで日の射さない路地裏のように暗く翳り、表情の判別はできない。
――冗談じゃない。
どうしてそんな偶然が。
どうして、よりによってこんな時に。
爪'ー`)「……おやおや……よもやこんな偶然があるなんてね……! Killer-Dの死を彩る最高のスパイスじゃあないか!」
(;'A`)「……チッ……」
.
84
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:52:37 ID:CCACwx0U0
――何を感情的になっているんだ、俺は。
頭に“元”が付くとはいえ、俺はKiller-Dと呼ばれ怖れられた人間だ。
フォックスの言う通りさ。最高のスパイスじゃないか。
( ∀ )「…………ククッ……ハハハハハハッ!!!」
.
85
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:53:17 ID:CCACwx0U0
ただ、死ぬのは俺じゃない。
('∀`)「殺してやるよフォックス!!」
爪'ー`)「……そう来なくてはね……!!」
ホルスターから取り出した二丁の愛銃。
俺はこの結び目だらけの感情を乗せて、いくつもの銃弾を放った。
.
86
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:53:55 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「ハァッ!!」
真っ直ぐにフォックスへと向かう銃弾を防ぐようにして、どこからとも無く血の盾が現れた。
アサピーが出していた物と同じだ。
それならば、一点に銃弾を打ち込み続けていればいずれは砕ける。
――だが、そう甘くは無かった。
.
87
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:54:46 ID:CCACwx0U0
('A`)「……堅ぇな」
爪'ー`)「……そう簡単に壊せるようなものじゃないさ」
('A`)「あのイカレ眼鏡よりゃマシってことか」
爪'ー`)「……アサピーの事か……」
フォックスは口角を軽く吊り上げながら、フッと鼻で笑った。
爪'ー`)「彼はダメだな。通常の帰天すら中途半端にしか出来なかった男だ」
('A`)「まーた帰天かよ。そろそろそいつの正体を教えてほしいね」
爪'ー`)「君が知る必要はない。ただ見ていればいいさ」
爪'ー`)「私がこれから行う“帰天”をね……!」
そう言いながらフォックスが両手を広げると、まるで天井から引っ張り上げているかのように、その身体が宙に浮かんだ。
(;'∀`)「……空まで飛ぶわけ……?」
爪'ー`)「これは儀式のうちさ……」
爪 ー )「この大地に住みし我らの神よ……生娘の生き血を吸い……我に降臨されたし……!!」
爪'ー`)「“帰天”!!!」
.
88
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:55:52 ID:CCACwx0U0
地鳴りのような轟音が堂内に響き渡り、フォックスの身体は直視できないほどの光を発した。
それも数秒ほどで収まり、俺は再びフォックスに目を向けた。
爪'ー`)
そこにあるのは、先程と何も変わらない一人の男の姿だった。
ただひとつ、この堂内で変化したのは――。
(;'A`)「デレ!!!」
先程まではその虚ろな瞳で遠くを見つめていたはずのデレが、今では目を閉じぐったりと項垂れている。
“生娘の生き血”。それがデレの血の事を指しているのであれば、命が危ない。
爪'ー`)「安心するといい。まだ死んではいないさ」
フォックスの言う通り、確かにまだ死んではいない。
微かながら、呼吸によって肩が揺れているのがわかる。
爪'ー`)「だが、戦いが長引けば長引くほど、彼女の命は危なくなる。私は彼女の血を使って戦わせてもらうからな」
爪'ー`)「彼女の身を案ずるなら、とっとと死ぬべきだ」
('A`)「……てめぇ……」
89
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:56:27 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「しかし全く呆れるよ。あの非常な殺し屋だった君が、小娘一人の命を心配するとはな」
('A`)「…………」
('A`)「……違うな」
爪'ー`)「……?」
一歩、前に踏み出す。
堂内に均等に並べられた長椅子の中の、一番手前にあるものに足を載せて、銃口をフォックスに向ける。
('A`)「あいつは俺の“依頼主”だ。報酬を受け取るためには、あいつには生きててもらわねーとならねぇんだよ」
爪'ー`)「……なるほど。まあそれでもいいでしょう」
爪'ー`)「どっちにしても、君は死ぬのだからね!!」
フォックスが叫ぶのと同時に、彼の背後からいくつもの血の塊が飛来してくる。
速度は拳銃の銃弾と同等か、それ以上だろうか。
すぐに俺は足を載せていた長椅子を蹴って跳躍する。
フォックスが放った血の塊は、俺に直撃すること無く後ろの扉へと突き刺さっていく。
('∀`)「ほらよ!!」
地上数メートルの高さから、銃弾の雨を降らす。
当然ながら、フォックスはそれを盾で受け止めていた。
90
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:57:16 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「飛び道具相手に跳躍するのは頷けないな!! 着地点が丸わかりだ!!」
やがてフォックスは銃弾を受け止めながら、俺が着地するであろう場所に向かって血の塊をいくつも放った。
('∀`)「無駄だぜ狐野郎ッ!!!」
飛来するいくつもの血の塊に向かって、二丁の愛銃から銃弾を放つ。
銃弾は一発の無駄もなく血の塊一つ一つにぶつかって、それを弾いた。
('∀`)「……悪いな、俺にはそんな盾なんて必要ねぇんだ」
爪'ー`)「それは面白い……」
爪'ー`)「ならばこれはどうかな……!!」
フォックスの背後に浮き上がる、複数の血の塊。
それだけじゃない。扉に突き刺さった血や、俺が弾いて散らばった血でさえ、空中に浮き上がっていた。
爪'ー`)「アサピーには、この数は不可能だったはずだ」
彼が振り上げた右手を勢い良く振り下ろすと同時に、浮いていた血の塊は一斉に俺へと向かってきた。
('∀`)「ハッハァ!!!」
91
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:58:37 ID:CCACwx0U0
背後からの攻撃を身を捻るようにして躱しながら、辺りに連射する。
とてもこの程度の連射で防ぎきれる数ではない。ただし、お陰で数は減った。
俺は両手の愛銃からマガジンを放り出して、身を屈めた。
爪'ー`)「…………フッ」
ガシャン、と放り投げたマガジンが落ちる音がする。
いくつもの血の塊や薬莢が、地面に転がる音が耳に届く。
爪'ー`)「流石に躱し切れなかったようだねぇ……」
( ∀ )「……ククク……」
爪;'ー`)「ッ……?」
俺は屈んで身を包んでいたジャケットを外して、ゆっくりと立ち上がった。
爪;'ー`)「なっ…………」
92
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 06:59:17 ID:CCACwx0U0
('∀`)「このジャケットで防がせてもらったのは二回目だな……。全く……意外とやるな、オカルト集団よォ……」
重たいジャケットを地面に放り投げると、石で出来たこの床ですら微かに揺れた。
たまには鎖から放たれるのも、悪くはない。
爪'ー`)「……まさか無傷とはね……。面白い、面白いよ」
('∀`)「お遊びはここまでだぜ」
石の床を蹴って、フォックスへ急接近する。
重たいジャケットを着ていないだけで、身体が羽根のように軽く感じた。
('∀`)「ほらよッ!!」
愛銃を振りかぶり、グリップエンドをフォックスの頭へと振り下ろす。
爪;'ー`)「く……ッ!!」
どこからか現れた血の盾が、それを防ぐ。
だがその一撃だけで、血の盾には亀裂が走っていた。
('∀`)「ハァッ!!」
爪;'ー`)「――ガハッ……!!」
フォックスを蹴り飛ばすようにして、後ろへ跳躍する。
俺が離れると、フォックスの身体全体を守るように盾が広がった。
93
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:00:40 ID:CCACwx0U0
('∀`)「んなもん無駄だろ!!」
射撃の精密さよりも連射速度を重視して、盾に無数の銃弾を放つ。
それだけでその盾は、容易く砕け散った。
再び床を蹴って、フォックスへと急接近する。
爪;'ー`)「まだだッ!!」
駆けながら放った銃弾がフォックスの額に直撃するよりも速く、赤い何かがそれを防いだ。
爪;'ー`)「……よもやこれを出すことになるとは……君は接近戦にも長けているようだな……」
フォックスが手に持っているのは、赤い長剣。
血を固めて作り出した物のようだ。
('A`)「…………」
奴は血を使いすぎている。
このままでは本当に、デレの命が危ない。
依頼主がなんだ。
そんなものは関係ない。
――俺はただ、俺が殺す以外で目の前で人が死ぬのを見たくないだけなんだ。
94
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:01:54 ID:CCACwx0U0
('∀`)「……終わらせようぜ」
爪'ー`)「……いいだろう」
じりじりと、詰め寄る間合い。
元より俺は近接戦闘向きの武器を持っていない。
だが、この愛銃で戦えないわけではない。
爪'ー`)「……ハァッ!!」
強く床を蹴って、その長剣を振りかざしながら接近してくるフォックス。
俺は後方のジャケットに銃弾を放つ。
ジャケットの中に収まっているマガジンに銃弾が直撃し、弧を描きながらこちらへと向かってくる。
それを空中でリロードし、狙いをフォックスへと戻した。
('∀`)「ハッハァ!!!」
真っ直ぐに振り下ろされた刃をグリップエンドで弾きながら、フォックスの顔に向かって片手で連射する。
フォックスはそれを血の盾で防ぎ、振り下ろした長剣を素早く斜めに振り上げた。
('∀`)「掠りもしねぇぜ!!」
ジャケットを着ていない俺に、避けられないものはない。
どんなに速かろうと、どんなに不意をつかれようと、俺は最小限の動きで躱した。
95
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:02:41 ID:CCACwx0U0
爪;'ー`)「クソッ!!」
フォックスは再び長剣を構え、横へ大きく振るう。
同時に、いくつもの血の塊が俺へ向かって飛来してくるのがわかった。
その血の塊を全て拳銃の側面で弾き、躱した長剣の刃をもう一つの拳銃のグリップエンドで上から叩いた。
キィン、と鋭い音が鳴り響き、弾かれた長剣の切っ先が石の床に突き刺さる。
爪;'ー`)「く……ッ!!」
('∀`)「ゲームオーバーだ」
長剣を抜くことも出きず、隙だらけになったフォックスの額に、銃口を突き付けた。
('A`)「ちょいと話をしようや」
爪;'ー`)「…………」
フォックスは長剣からゆっくりと手を離し、そのまま抵抗の意思は見せなかった。
.
96
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:03:18 ID:CCACwx0U0
('A`)「なんでこんな事をしてるんだ? わけのわからねぇ能力やら帰天やら……ビジネスには見えねぇが」
爪;'ー`)「……初めはビジネスのつもりだったさ。宗教は金になるからね」
('A`)「この街には宗教を信仰してるような連中はいねぇ。だからこそって思ったのかもしれねぇが、俺にはそうは思えねぇな」
爪;'ー`)「……私も、この街でやっていけるか不安だったさ。しかし、調べてみると面白い話が出てきてね……」
爪;'ー`)「この街には神が住んでいるのさ……」
真剣な表情で、フォックスはそう語った。
嘘や狂言を吐いているようには思えない、そんな表情で。
('A`)「……そいつは知らなかったな。こんなネオンとアルコールとタバコの煙しかねぇような街を好む神様じゃあ、祈りを捧げる価値も無さそうだが」
爪;'ー`)「馬鹿にしてはならないよ。事実、私たちは力を手に入れた」
97
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:04:12 ID:CCACwx0U0
('A`)「ハッ。女の血を使ってか? まぁある意味ではこの街の神様らしい、って感じだな。趣味が悪すぎる」
爪;'ー`)「“帰天”のためには仕方ないんだよ……!」
('A`)「ビジネスやってたあんたの方が好みだったぜ」
爪;'ー`)「…………」
('A`)「ミイラ取りがミイラになるってのは、まさにこの事だな。まぁせいぜい神に祈りを捧げて死ぬといいさ」
拳銃のハンマーを起こして、引き金に力を込める。
('A`)「天に帰れよ」
大きな音を立てて、拳銃は火を吹く。
フォックスの後頭部から鮮血が飛び散り、薬莢が地面に転がって小気味よい音を立てた頃、フォックスの身体も地面に崩れ落ちていた。
('A`)「……アーメンハレルヤピーナッツバターだ……」
.
98
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:05:00 ID:CCACwx0U0
二丁の愛銃をホルスターに仕舞っていると、何やら赤い霧状の物が浮かんでいるのが目に入った。
その霧はやがて磔になったデレの元へと集まり、姿を消した。
フォックスに使われた血が、デレの身体へと戻ったのだろうか。
同時に、十字架からデレの身体が真っ直ぐに地面に落下した。
(;'A`)「おっと!」
瞬時に駆け寄って、床にぶつかる前にデレの身体を両手で抱える。
ジャケットを脱いでいて良かった。
着ていたら、間に合わなかったかもしれない。
('A`)「……おい、デレ。起きろ」
ζ(-、-*ζ「……ん…………?」
('A`)「自分で立ってくれ」
ζ(-、-;ζ「……ん……」
ゆっくりとデレを立たせると、ふらふらと揺れながら、閉じていた目を擦って無理やりに開いた。
ζ(゚ー゚;ζ「……あれ……ドクオ……?」
('A`)「終わったんだよ」
99
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:06:30 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚;ζ「…………」
('A`)「……なんだよ……」
デレは一歩下がり、俺を見つめている。
怯えている様子はない。
ただ、見つめている。
ζ(゚ー゚;ζ「……どうして……私のお父さんを……」
('A`)「…………仕事だったからだ」
ζ(゚ー゚;ζ「…………なんで……」
('A`)「……言ってるだろ、仕事だったからだ」
ζ( 、 ;ζ「……違うよ……」
「――――なんで、あなたなの…………」
.
100
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:09:21 ID:CCACwx0U0
('A`)「…………」
ζ(゚、゚;ζ「……こんなの酷いよ……」
('A`)「俺だって知らなかったんだよ。それに、悪かったって思ってるさ……」
ζ(゚ー゚;ζ「……私じゃなかったら思わなかったんでしょ!?」
('A`)「――ッ……」
確かにその通りだ。
今までは、悪いなんて思ったことも無かった。
むしろ店を持つための金になってくれてありがたいとまで思っていた。
ζ( ー ;ζ「……どうしたらいいのか……わかんないよ……」
('A`)「……父親の事、好きだったのか?」
ζ( ー ;ζ「……当たり前でしょ……」
('A`)「会社の金に手を付け、社員の給料をピンハネし、お陰で自殺した社員までいる。そんな父親でも、か? 報道されただろ」
ζ( ー ;ζ「…………」
デレは何も言わず、黙っていた。
呼吸の音だけを鳴らして。
しかし暫くすると口を開いて、ゆっくりと返事をした。
.
101
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:10:36 ID:CCACwx0U0
ζ( ー ;ζ「……それでも……だよ……」
('A`)「…………」
案の定、だ。
彼女は案の定、そう返事した。
父親どころか、生まれつき家族が一人もいなかった俺には理解できない話だ。
('A`)「……報酬はいらねぇよ。とっとと帰れ」
ζ(゚ー゚;ζ「……え?」
('A`)「お前の父親が死んだのも、お前がこんな街の寂れたレストランでウェイトレスやるはめになったのも、俺のせいだ」
('A`)「報酬なんていらねぇよ。消えてくれ」
ジャケットを拾い上げて、長椅子に腰を降ろす。
ポケットに仕舞ってあったタバコを取り出して、オイルライターで火をつけた。
吸い込んだ煙を吐き出す。
たったそれだけの動作を繰り返すだけで、俺の心は深く満たされた気がした。
野暮用を、終えた。
タバコがフィルターの先まで短くなった頃には、堂内にデレの姿はもう無かった。
.
102
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:11:47 ID:CCACwx0U0
('A`)「…………帰るか」
吸い殻を靴底で踏みつけて、立ち上がる。
礼拝堂から出た頃には、夕日が地面を赤く染め上げていた。
('A`)「……腹減ったな……」
ジャケットから財布を取り出して、中身を確認する。
――しまった。ツンの店で1万レスも払ってしまって、残金が少ない。
('A`)「……チッ。一度店に帰っ――」
「ちょっと待って」
('A`)「……?」
.
103
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:12:39 ID:CCACwx0U0
不意に後ろからジャケットを掴まれる。
仕事を終えて気が抜けていて、誰かに接近されていた事に気が付かなかった。
振り返るとそこには――。
ζ(゚ー゚*ζ「……報酬、まだ払ってないから」
先程とはまるで違う表情の、デレがいた。
('A`)「……いらねぇって言ったろ」
ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ私の気が済まないもん。お金なら持ってきたから」
('A`)「チッ…………。じゃあ……」
「……晩飯奢ってくれ」
.
104
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:13:28 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚*ζ「……えっ? 晩飯?」
('A`)「晩飯だ」
ζ(゚ー゚*ζ「そんなのでいいの?」
('A`)「ああ。契約するときに言ったろ? “朝飯前だ”ってな」
ζ(゚ー゚*ζ「……プッ……」
('A`)「……おい、笑う所じゃねぇよ。ここは“かっこいい、惚れちゃう”って所だろうが」
ζ(゚ー゚*ζ「……童貞、拗らせちゃったのね」
(;'A`)「どっ……童貞とかやめろよ……チッ……ほんとやめろよ……やめろ……」
ζ(゚ー゚*ζ「……いいよ、行こ? 私が働いてるお店、ピザも美味しいから」
('A`)「…………ああ。腹一杯奢ってもらうぜ」
夕日はやがて沈み、月明かりが夜道を照らす。
開店したバーのネオンが点滅し、眩しく目に染みる。
彼女と歩くこの吸い殻まみれの小汚い道も、案外悪くないものだと思えた。
.
105
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:14:55 ID:CCACwx0U0
.
106
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:15:28 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「悪くねぇダンスナンバーだったぜ。ただちょっと、テンポが悪かったな」
('A`)
r/|/Rっy=
' j_H,j
し; J
“便利屋ドクオ” a.k.a. “Killer-D”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
107
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:17:35 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……仕方ないお。ブーン達は、そういう人間だから……」
__
_/:::::::|_
( ^ω^)
/ b|≡| |
|_|_:^_| j
(__)_)
“ブーン” a.k.a. “Killer-B”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
108
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:18:51 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……私は……一人でいるのも怖いよ……」
ζ(゚ー゚*ζ
jV,l.j
/mw\
"し^J''
“依頼人 デレ”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
109
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:19:48 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「久々よ、こんな酷い銃を持ち込まれたのは」
ξ゚⊿゚)ξ
jh =l|oi
|z ;z|
し^J
“ガンスミス ツン”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
110
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:22:06 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……女なんて……しらねーよ……」
∧ ∧
( ´ー`)
/,,v__v|っA
|_-,,-,,|
し^ヽJ
“役立たず シラネーヨ”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
111
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:24:08 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「一度使ったものを再利用するのは当然ですよね……!!」
∧_∧
(-@∀@)
y/,, ,,|r
|_-,,-,,|
し;^ヽJ
“祓魔師 アサピー”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
112
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:25:23 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……すぐに終わらせてやろう」
_
/:::::::ヽ /|
(´・_ゝ・`) //
jh: :ljh//
jh :njoJ
し^ヽJ
“司祭 デミタス”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
113
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:26:31 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「この街には神が住んでいるのさ……」
爪'ー`) ;j
n/::::::|d t||r
^/:_:_:| ||
と^tゝ |;
“教皇 フォックス”
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
114
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:27:10 ID:CCACwx0U0
.
115
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:28:00 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
Thanks for reading!
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
116
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:28:35 ID:CCACwx0U0
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です
fin.
――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――
117
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/04/03(日) 07:31:08 ID:CCACwx0U0
以上です。ありがとうございました。
エンドロールを作ってたら思ったよりも時間がかかってしまいました。
本当は三部作くらいにしたかった…間に合わなかった…。
118
:
名無しさん
:2016/04/03(日) 08:04:54 ID:vgapgkRw0
乙
ドックンかっこよかった
119
:
名無しさん
:2016/04/03(日) 08:31:51 ID:i/I.1kQ20
おつ!
バトル描写引き込まれたよ
ファンになっちまうぜ!
120
:
名無しさん
:2016/04/03(日) 13:59:17 ID:xqwNtxzE0
乙
これは好き
121
:
◆mQ0JrMCe2Y
:2016/04/04(月) 01:17:50 ID:J1bwFtJc0
【連絡事項】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1456585367/404-405
122
:
名無しさん
:2016/04/06(水) 23:17:10 ID:KC9pHpOU0
乙
ド直球やな
123
:
名無しさん
:2016/04/07(木) 04:35:44 ID:nQ.RLKZk0
異能に対して物理攻撃だけで渡り合ってくのすき
面白かったゆ
124
:
名無しさん
:2016/04/07(木) 18:05:50 ID:fFNm7rFE0
乙
続きが読みたくなるわ
125
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 10:26:37 ID:Z3am7JDY0
続きてか連載してくれたりしない?
126
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/18(月) 17:49:14 ID:Bz3wk9sc0
「こいつをやるよ」
男が俺に差し出したのは、拳銃。
黒いスライドから剥き出しになった銀色のバレルが、月明かりを反射させていた。
「銃は持っておくと便利だ。見せびらかすだけでお前の身を守る盾になり……」
「……相手を殺す武器になる」
「…………」
「構うことはねぇよ。俺はもう一丁持ってるからな」
「…………なんで……」
「?」
「なんで俺みたいな知らない奴に、こんなものを渡すんだ……?」
「……ハッ。何を言い出すかと思ったら、そんなことか」
彼は笑って、空を見上げながら言った。
「昔の俺に、よく似てるからだよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
127
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/18(月) 17:49:48 ID:Bz3wk9sc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です ――少年編――
近日?公開予定
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
という感じでよろしくお願いします!
128
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 18:21:12 ID:ixLjVelA0
* + 巛 ヽ
〒 ! + 。 + 。 * 。
+ 。 | |
* + / / イヤッッホォォォオオォオウ!
∧_∧ / /
(´∀` / / + 。 + 。 * 。
,- f
/ ュヘ | * + 。 + 。 +
〈_} ) |
/ ! + 。 + + *
./ ,ヘ |
ガタン ||| j / | | |||
――――――――――――
129
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 19:52:45 ID:SGjpafTU0
やったー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
130
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 20:06:10 ID:shat8Gxs0
マジかよ!
ダメ元で言ったら続きキタ━!
待ってるからな!
131
:
名無しさん
:2016/04/23(土) 00:57:22 ID:MtbYCK6A0
作者賞6位おめでとう
132
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/23(土) 02:21:02 ID:e2ehi1/w0
投票本当にありがとうございます…!
7割程度書き終わったので、近いうちに…。
途中まで投下するか悩みます。
133
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/05/02(月) 15:42:48 ID:/bf6AHok0
完成しました、ので投下できるとこまでやります。
あと最近おしゃれな酉を入手したので変えます。
134
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:43:23 ID:/bf6AHok0
.
135
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:43:57 ID:/bf6AHok0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です
――少年編――
◆PizzaMan.c presents
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
136
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:44:33 ID:/bf6AHok0
.
137
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:45:06 ID:/bf6AHok0
「ハァ……ハァ……ッ!!」
(;'A)
ノ/-/o
j._/| ダッダッ
;.、ノイ、)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺はなんて、馬鹿なことを。
「ハァ…………うぐ……ッ!!」
、 ,
;.、vr⌒ち(;'A)っ ドサッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
138
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:45:49 ID:/bf6AHok0
でもまだ、死ぬわけにはいかないんだ。
『待てやクソガキィ!!』
「……クソッ!!」
(;'A)
/,-|、 スクッ
j._/U
.,」^、〉 .,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
139
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:46:36 ID:/bf6AHok0
話は、前日に遡る。
J( 'ー`)し「ドクオ……こんな遅くまでどこへ行っていたの??」
皺だらけの顔で鋭く俺を睨みつける女は不機嫌そうにため息をついて、シミの目立つ椅子に深く腰を降ろし、そう言った。
彼女は、俺が暮らしているこの児童保護施設の先生だ。
('A`)「……ちょっと……買い物に行ってました」
J( 'ー`)し「買い物? こんな時間に何が欲しかったの?」
('A`)「……喉が渇いたんで……コーラを」
大嘘だ。
実際に行っていたのは、繁華街。
この施設から逃げ出す金を集めるために、ギャングから預かったドラッグを売り捌いていたのだ。
J( 'ー`)し「あのねぇ…………。それが本当かどうかは置いといて、もしもあなたが警察に補導でもされたら、注意されるのは私なのよ!?」
('A`)「…………」
140
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:47:09 ID:/bf6AHok0
いつもそうだ。
この人は、いつも自分の事しか考えていない。
J( 'ー`)し「お金が必要なんだから、問題は起こさないで欲しいわ。警察に目をつけられでもしたらどうしてくれるのよ」
この児童保護施設は、児童保護施設とは名ばかりに、保護した少女を金で売りさばいていた。
養子縁組という、これまた名ばかりの方法を使って。
手に入れた大金は、この女の意味もない化粧やエステに消費されているのだろう。
つい吐き出しそうになった嫌味を、石を飲み込むように喉奥へと押し込んで、俯いた。
J( 'ー`)し「男は売れもしないから困ったもんだよ。さらに余計な面倒ごとまで引っ張り込んで……全く」
('A`)「…………」
J( 'ー`)し「もういいわ。部屋に戻りなさい」
('A`)「……はい」
ゆっくりと、薄暗い部屋を後にする。
後ろからブツブツと彼女が何かを言っているのが聞こえたが、俺は耳を傾ける事もせずに歩き続けた。
電気のついていない廊下を通って、俺は自分の寝床へと戻った。
141
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:48:06 ID:/bf6AHok0
('A`)「チッ……クソババァが……」ドサッ
空き部屋から持ち出してきた敷布団を重ねているおかげで、このベッドだけは居心地が良かった。
枕元のランプをつけ、ショルダーバッグから取り出したメモ用紙を眺める。
('A`)「…………6万レスか……」
ここ一ヶ月の間で、俺が売り捌いたドラッグの金額が30万レス。その内の2割の6万レスが、俺の手元に入ってくる。
ギャングに今月の売上金を渡すのは、明日。
つまり、今俺の手元には30万レスもの大金があるという事だ。
('A`)「…………」
俺はもう14歳だ。年齢を偽れば、ボロアパートを借りる事も不可能ではない。
30万レスもあれば、ここから逃げ出しても一ヶ月はやっていける。
142
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:48:39 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………、何考えてんだか。見つかって殺されるのがオチだ」
どうせ逃げ出すなら、もうちょっと早く逃げ出した方が良かったんだ。
俺が明日金を持ってこなかったら、ギャング達はすぐに俺を捜し出して、この脳天に大きな穴を空けるだろう。
('A`)「……ま、コツコツ貯めるっきゃねぇな……」
ドラッグの密売は、まだ始めたばかりだ。
数ヶ月も続けていれば、逃げ出すに十分な金額は貯まるだろう。
俺は頭の中で何度も金額の計算をしながら、その日は眠りについた。
.
143
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:49:34 ID:/bf6AHok0
(うA`)「……ふぁぁ……ねむ……」
カーテンの隙間から漏れ出す日差しの眩しさに、俺は目覚し時計を使わずとも目を覚ました。
ホールへやってくると、すでに何人かがテーブルで食事を取っていた。
俺もトレーを抱え、カウンターに置かれている器を次々と並べていく。
器に入っているのは、どれも質素な食品ばかり。
わがままを言えば、俺は朝昼晩全てピザでもいいというのに。
だが、何も食えないよりはマシだ。
自分にそう言い聞かせるしかない。
ミセ*゚ー゚)リ「おはようドクオー!」ドンッ
(;'A`)そ「おっと!」カチャッ
トレーを抱えてぼーっと立っていると、不意に後ろから押された。
トレーの上でゆらゆらと揺れる食器を上手いことなだめて、俺は振り返った。
144
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:50:17 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「……ミセリ……あのな……」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、ごめんごめん! ぼーっとしてたからそんなにいっぱい持ってるとは思わなくて!」
彼女の名前は、ミセリ。
年齢は俺の一歳下で、13歳だ。
彼女もまた、俺と同じくこの施設に保護された一人だ。
どうやら、両親から虐待を受けていたらしく、そのまま厄介払いのようにここに捨てられたとか。
ミセ*゚ー゚)リ「今日はやけに早起きだね。どしたの?」
('A`)「早起きってレベルか?」
ミセ*゚ー゚)リ「いつもより1時間も早いよ。ドクオがそんなに早起きするのは珍しいって」
('A`)「……腹が減ったんだよ」
ミセ*゚ー゚)リ「……なにそれ。笑えるー」カチャカチャ
彼女は笑顔のままトレーの上にいくつもの食器を並べていた。
俺はその間に空いてる席へと腰を下ろした。
ミセ*゚ー゚)リ「せっかくだから一緒に食べよ?」スッ
('A`)「……そうだな」
ミセ*゚ー゚)リ「もー。朝から浮かない顔してどうしたの? こっちにまでうつっちゃうよ」
('A`)「この顔は元からだっての」
145
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:51:18 ID:/bf6AHok0
パサパサのパンを口に放り込み、咀嚼する。それを色の薄いスープで胃の奥に流し込んだ。
お世辞にも美味しいとは言えない。
もしも俺が本当に浮かない顔をしているのだとしたら、それはきっとこの朝食が原因だろう。
ミセ*゚ー゚)リ「ごはん美味しいなぁ」モグモグ
俺の感想とは真逆に、ミセリはそう言う。
彼女と食事を共にする機会はあまり無いが、どんな食事でも美味しそうに食べていたのは印象深い。
ミセ*゚ー゚)リ「今日は土曜日だねぇ」
('A`)「……ああ、そうだな」
ミセ*゚ー゚)リ「何か予定はあるの?」
('A`)「いや、特にねーけど」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあさ、ちょっと街に出かけない? 私見たいお店があるんだ」
('A`)「……店って……。買う金あんのか?」
ミセ*゚ー゚)リ「無いよ?」
('A`)「…………」
146
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:52:00 ID:/bf6AHok0
それもそのはずだ。
当然ながら、ここの子供たちにお小遣いが与えられるような事はない。
むしろ子供たちに裏庭で育てた野菜やら果物やらをを持たせて、それを売りに行かせるくらいだ。
もちろん報酬などない。
('A`)「金ねーのに行ったってしょうがないだろ?」
ミセ*゚ー゚)リ「いいの、見たいだけだから。散々お店を冷やかして冷やかして…………それでね、いつかそれを堂々と買ってやるの!」
(;'A`)「なんだそりゃ」
ミセ*゚ー゚)リ「って事で、行こ? 決定ね!」
(;'A`)「……はぁ。わかったよ」
.
147
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:52:50 ID:/bf6AHok0
_________| |. |.:ll.:.::.:ミ;;;;;;ミ |___________
\.! !i!|l.:.::./:::/─────┐. |// i! .| | | |__
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄从 !.i.ll:.:/.:;/jesty's Shoes | . |/ | |i ! | ||=||=
. ミ.:.:::.ミ |..i!lll:::::/──────┘ .| | l |!. | ||=||=
-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,!ヽ.:.彡|i.:iiii|.:::|___ / ̄ ̄ヽ. ! | l i!. | ||=||=
二二二二二二二二二| | \ヽ.:i!|:::::! \\| |口i口i口| | | | li, | ||=||=
二二二二二二二二二| | l !i.::ii;;l;::! \| ||C|osed|| |ヽ、_,--、_,--、_,--、,! !l_,||=
二二二二二二二二二| | |_,|i.::|||!|::!___| |口i口i口| | ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄l ||=
二二二二二二二二二| | |i.::iii!i;::| |口i口i口| | ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄l ̄ ̄l ||=
二二二二二二二二二|_l_. !i::iii.i.:.:| ___|_i_i_|_| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _.. |i.:iii!i;:::| _ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
.....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i |i.::iii!i;::|_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i||===========||_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
.....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .|| |i.::iii!i;::| ||.....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i|li ___________ ,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ // ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄\\  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
// \\|| \ \\ 。
____//. \|| \\ [^ヽヽ__ | _
/ / l ̄二 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l| ̄二 ̄ ̄ ̄ ̄ヽイ  ̄ ̄`ヘ ─  ̄
. ⌒::.:ヽ |] ̄ ̄ ̄ /⌒\ || | γ ⌒ヽ {i!
.:.:.(.:.::(.:.:::=! イ i!O i! il ゝ_____,l!______/ i li O il!l二二ソ \
(.:.:::..(.:.::  ̄ ̄ ´ ゝ___ソ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ´ゝ___,ソ ̄ ̄ \
.
148
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:53:24 ID:/bf6AHok0
数時間後、俺たちは街まで来ていた。
街と言っても、それほど栄えているわけではない。
ただ俺たちが住んでいる辺りよりは、小洒落た店が多く並んでいた。
「おい走るなよ」 「次はあのお店ね!」
( 'A) ミセ*゚ー゚)リ
|":-っ ノ|h-.|o
j_-| /wv| タタタッ
,、しJ ;、, て^ヽJ.;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
街の散策を始めてから、すでに1時間が経過しただろうか。
俺は十分すぎるほど見物したと思ったが、この様子だと彼女はまだ足りないらしい。
まあ、たまにはこういう日も悪くないのだが。
ミセ*゚ー゚)リ「ふわぁ〜〜! 見てこれ!」
('A`)「どれだ?」
ミセ*゚ー゚)リ「これこれ! このペンダント!」
(;'A`)「たっかそうだな……って、1万!?」
(;'A`)「ペンダント一つにそんな大金を払う奴がいるのかよ……」
ミセ*゚ー゚)リ「かわいいなぁ〜。私だったら買うね! 絶対!」
('A`)「……まあ、デザインは悪くねーな」
ミセ*゚ー゚)リ「すみませーん! これ付けてみてもいいですかー!?」
(;'A`)「おいおい」
149
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:54:25 ID:/bf6AHok0
俺たちがどんなにみすぼらしい服装をしていても、どんなに貧乏そうに見えても、店員は頷くしかない。
それを見てミセリは大喜びだ。すぐに自分の首へそのペンダントをかけた。
ミセ*゚ー゚)リ「どう? どう?」
('A`)「……おお、似合ってるな」
ミセリの首につるされた、天使を象った銀色のペンダント。
服装だけがいまいちだが、彼女の髪型や髪色にはとても似合って見えた。
素直に、感心してしまった。
ミセ*゚ー゚)リ「えへへ、ほんと?」
('A`)「ああ。こりゃ買うべきだ」
ミセ*゚ー゚)リ「でもお金がないからお預けー」スッ
(;'A`)「ほんっと冷やかしだな」
150
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:55:08 ID:/bf6AHok0
ミセリはペンダントをゆっくりと外すと、また元の場所へと戻した。
1万レス。
俺が肌身離さず持っている現金の、わずか30分の1の金額だ。
当然ながらそんな事を知るはずもない彼女は、少しだけ残念そうな顔でペンダントを見つめていた。
ミセ*゚ー゚)リ「……ささっ、次行こ!」タタッ
(;'A`)「だから走るなっての……」
カランカラン、とドアのチャイムを鳴らして、彼女はすぐに店内から去っていく。
窓ガラスから見えていた彼女の横顔も、すぐに見えなくなった。
('A`)「…………」
俺は馬鹿だ。
ああ、間違いなく大馬鹿だ。
.
151
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:56:01 ID:/bf6AHok0
|i l::| |VNヾ` ´/ |::; l:}l:::::::::::/ } :::::::::::::;
. ゝ ',! |:::::::| ', r ,:/ j' |::::::::/) } !::::::::::: ,'
. ヽVト、| ヽ / !::: / _/ j:::::::::: ,'
{ l ;::::/Y´ /:::::::::: ,′
. ヽ ', ___,. -ニ=- _ ,'/ __,/:::::::::::::::/ー- _
. ', {ゝ-’:::::::;: ---ゝ ,:7::::::::::::;:>≦ }
‘, )-=¬ /:{ < ,'
’, ,.::=¬ ,. -=ニ二 _,. {
’, / ,. -= l
. ’, / |
’, / _,. --|
’, / ,. =≦≧=- _ j
「…………すいません」
ただ、馬鹿になるのも悪くない気分だ。
.、
| '.
'. '. _ ,.、
:,.;^' ^ ".
r'| ',
'h' j
“';, ,;
| ';
「これ、ください」
.
152
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:56:36 ID:/bf6AHok0
ミセ*゚ー゚)リ「ふぅー、楽しかったね!」
('A`)「ああ」
街から施設への帰り道。
もう少し歩けば、施設に到着するだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「また行きたいな〜」
バッグの中に隠した、銀色のペンダント。
俺はそれをミセリにいつ渡そうか、ひたすら悩んでいた。
(;'A`)「…………」
駄目だ。
いざ渡すと思うと、なぜだか緊張してしまう。
別に俺は、ミセリに特別な感情を抱いているわけでもないのに。
(;'A`)「…………」
153
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:57:23 ID:/bf6AHok0
何故だろうか。
とても恥ずかしい。
やっぱりやめておくべきだったのではないか。
(;'A`)「…………」
ミセ*゚ー゚)リ「どうかした?」
(;'A`)そ「へっ!? い、いやいや!!」
ミセ*゚ー゚)リ「ついたよ?」
(;'A`)「えっ? あ、ああ…………」
気づけば、自分たちは施設の玄関前まで来ていた。
ミセ*゚ー゚)リ「ただいまー」ガチャッ
('A`)「…………」スタスタ
仕方がない。
何も今日でなくとも、渡す機会ならいくらでもある。
勇気が湧いてきた頃に、ちゃんとした形で渡そう。
そう心に誓った。
154
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:58:14 ID:/bf6AHok0
J( 'ー`)し「あら、やっと帰ってきたの?」
玄関の扉を開けてすぐの場所に、先生が立っていた。
彼女は、いつもはあまり見せない笑顔を浮かべて、こちらに歩み寄ってくる。
ミセ*゚ー゚)リ「ただいま、先生」
J( 'ー`)し「ミセリ、今日は大事な話があるの。ちょっと来てくれる?」
ミセ*゚ー゚)リ「へ? うん、わかりました」
('A`)「……?」
大事な話?
出かけていた事と何か関係があるのだろうか。
ミセ*゚ー゚)リ「付き合ってくれてありがとね、ドクオ! またお昼ご飯の時に!」
('A`)「あ、ああ……」
まあ、後で聞けばいい話だ。
俺はペンダントを渡す練習でもしていよう。
そんな事を考えながら、俺は軋む床を歩きながらゆっくりと部屋へ戻った。
.
155
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:58:54 ID:/bf6AHok0
――それから長い時間が過ぎても、その日のうちに、再び彼女と会うことはなかった。
昼食時、俺は食事が終わってもホールで待っていたが、一向に現れず。
夕食時、彼女の分の食事まで用意して待っていても、現れず。
('A`)「…………」
やがて他の子供たち全員が食事を終えてから数時間が経った頃、俺はようやく諦めて、トレーを元の場所へと戻したのだった。
('A`)「あいつが飯も食わないなんてな……」
余程、深刻な話だったのだろうか。
先生の表情からは、そうは思えなかったのだが。
('A`)「……まあいいや」
仕方なしに、扉を開けて廊下へ出る。
相変わらず暗い廊下だ。
金に困っていないのなら、もう少し設備を整えてほしいものだ。そう思った。
156
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:59:34 ID:/bf6AHok0
不意に、横の扉が開く音がする。
この部屋は、先生の寝室だ。
中から出てきたのは、案の定気味の悪い笑顔を浮かべた女だった。
J( 'ー`)し「……あら」
目が合う。
俺は視線を逸らさずに彼女の瞳をまっすぐ見つめて、こう聞いた。
('A`)「……ミセリはどうしたんですか」
ミセリ、という名前を聞いて、彼女は顔をそらして口角を引きつらせていた。
J( 'ー`)し「……ああ、あの子なら引き取られたわよ」
(;'A`)「――ッ!?」
彼女の言葉を聞いて、思わず足がすくみそうになった。
引き取られた。
それはつまり、大金で売り飛ばされたという事だ。
157
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:00:19 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「なっ……」
J( 'ー`)し「今日ね、いい方が来てくれたのよ。ミセリくらいの歳の娘なら、男手一人でも世話ができるって……」
(;'A`)「…………」
世話ができる?
冗談じゃない。
世話をさせられるのはミセリの方だ。
だからあえてその年齢の子供を選んだんだ。
この女もそれをわかっている。
わかっていて、それでも大金に換える。
もう何回――、あと何回この女はそれを繰り返すのだろうか。
(;'A`)「……じゃあ、もう連れてかれたんですか……」
J( 'ー`)し「ええ。今頃あの方のお家で、温かいお風呂にでも浸かってゆっくりしているでしょうね」
(;'A`)「ッ…………」
この女は、救いようがない屑だ。
ただ、俺は腹を立てるよりも、悲しみに心をまるごと押し潰されてしまった。
158
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:01:03 ID:/bf6AHok0
( A )「…………」
J( 'ー`)し「……おやすみなさい、ドクオ」
俺が口を閉ざしていると、彼女はそう言ってホールの方へと歩みを進めた。
やがて扉が閉まる音が、この薄暗い廊下に響き渡った。
('A`)「…………」
どうする事もできない。
何を言ったって、あの女はミセリの居所を教えるはずもない。
手紙だって出させてくれるはずがない。
――もっとも、ミセリが手紙を受け取れるような状況に置かれるかどうかもわからない。
('A`)「…………」
今までも、この施設から引き取られていった子供たちとは、二度と会うことがなかった。
もう、忘れるしかないのか。
悔しさを圧し殺して、ゆっくりと歩きだした。
.
159
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:01:38 ID:/bf6AHok0
暗い廊下を抜けて、自分の部屋へと到着する。
同時に、ある事を思い出した。
今日は、ギャング達に金を渡さなければならないのだった。
('A`)「……行かねーと殺されちまうな」
部屋へ入り、ベルトで挟んでおいた封筒が確かにある事を確認した。
そしてベッドの下に隠しておいたドラッグを取り出して、ショルダーバッグへ詰め込んだ。
部屋の窓をゆっくりと開けて、周囲を確認する。
外には誰もいない。俺はゆっくりと足を地面に下ろした。
('A`)「……行くか……」
枯れ葉を踏み越えながら、ゆっくりと庭を抜け出した。
.
160
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:02:24 ID:/bf6AHok0
しばらく歩くと、人通りの多い場所へ出た。
時計を確認すると、時刻はまだ22時を10分過ぎたばかりだ。この時間帯なら、バーやパブへ出入りする人達が多い。
俺はその人混みに紛れるようにして、決して走らず、ゆっくりと歩みを進めた。
客寄せの声。クラブから漏れ出す音楽。酔っぱらいの叫び声。道端の吸い殻。割れたビール瓶。
全てがこの街を小汚く彩っていた。
シュボッ /ィヘ/
,' / .)/
. _______ (:' /イ)/
./∨========.∧ ', )) ィヾヽ/
マ:::::∨.\/\/\∧ } /( 弋,イ
.マ:::::∨/\/\/ ∧ ,' ノし': :ヽ
..マ::::::∨__/\/\ ∧ ((,イ: : :: :V) /¨⌒`ヽ
マ::::::∨ \/\/\∧ 、ゝ: : : :(ノ} Y′ |
. マ:::::::∨/\/\/ ∧ ヽ: :: : : :: :/ / /
. マ:::::::∨__/.\/\ .∧ ゝ;:; :;从;ノ ./ /
. マ:::::::∨ .\/\/ヽ∧ ┌───────i/ヽ_ ./
.マ:::::::∨./\/====∧.二二ニニニニニニニニニニニ| ー-─ /
. マ:::::::∨==ヽ:::::::::::| |\/\/\/\/|三| /
` ̄ ̄ )::::::::::| |/\/\/\/\|三|. /
ソ´⌒ ̄ ̄ ̄へ──'ニt‐‐ ./\/\/|三| .|
/ 〃 l ̄ヽ ヽ/\/\ ̄リ .|
| ゝ .| | ) /\/\| |
バッグから取り出したタバコに火をつけ、煙を一気に吸い込む。
肺に溜まった酸素とともに吐き出した煙は、まるで俺の気持ちのようにゆらゆらと揺れながら、やがてネオンの光の中に薄く溶けていった。
161
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:03:38 ID:/bf6AHok0
明るい看板が並ぶ通りを逸れて、月明かりのみが照らす薄暗い路地へと入る。
ゴミ袋や空き瓶を避けながら歩みを進めると、やがてポカンと小さく開けた空き地へと出た。
そこに佇む、5人の男たち。
彼らが、この辺りでドラッグを捌くギャングたちだ。
('A`)「……どうも」
軽く頭を下げて、そう挨拶する。
すると一人の男が手に持っていたタバコの火を消して、こちらへゆっくりと歩み寄ってきた。
(,,゚Д゚)「時間通りだな」
('A`)「…………」
このギャングのリーダであるギコという名の男は、左手にした時計を見てそう言った。
確認せずとも、恐らく22時半頃だろう。
俺はいつもこの位の時間に、この場所にやってきていた。
162
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:04:43 ID:/bf6AHok0
(,,゚Д゚)「飯は食ったか?」
('A`)「……ああ、はい。食べました」
(,,゚Д゚)「そうか。そりゃいいな。飯を食うことは大切だ。俺たちはまだ何も食ってないんだ」
('A`)「……なにか買ってきましょうか?」
(,,゚Д゚)「いや、その必要はない。お前は施設で出された飯を食っただけのこと。俺たちは自分で飯を食うための金を稼がなきゃなんねぇ。それだけの違いだ」
('A`)「…………」
嫌味な言い方だ。
ただ別に、それで腹を立てるようなことは無い。この言い方は、彼の性格によるものなのだ。
いちいち彼の発言に腹を立ててストレスを貯めるような事をしても、無意味だとわかっていた。
(,,゚Д゚)「お前から金を受け取らないと、俺たちは今日の晩飯にありつけないんだ」
彼はそう言うが、決してそんなはずはない。あくまでそういう言い回しをしているだけだ。
俺はバッグの中から残りのドラッグと封筒を取り出して、彼に渡した。
(,,゚Д゚)「どれ……」
っロ゛
163
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:05:32 ID:/bf6AHok0
ギコはドラッグの数を数え、次に封筒の中の金を取り出して、舐めるようにその枚数を数えた。
(,,゚Д゚)「……29万しかないぞ」
('A`)「――あっ……」
ミセリがいなくなった事ばかり考えていたせいで、忘れていた。
彼女へのプレゼントを買ったために、1万レス少ないのだ。
('A`)「……すいません、どうしても使わなくてはならなくて……1万だけ借りました」
(,,゚Д゚)「……ほぉ」
('A`)「その分は……俺の分の2割から引いてもらえればいいので……」
(,,゚Д゚)「……あのな」
ギコは一歩踏み出して、俺の肩に手を置いた。
(,,゚Д゚)「お前は、俺たちが貸したドラッグの売上から金を使った。つまり、俺たちの金に手を付けたってことだ。わかるか?」
('A`)「……はい」
(,,゚Д゚)「人の金を盗むのは良くないよな」
('A`)「…………はい」
164
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:06:38 ID:/bf6AHok0
わかっていた。
してはいけない事だと。
ただ、俺の取り分から引けばいいものだと勝手に考えていた。
(,,゚Д゚)「……わかっているならいいんだ。今回は許してやろう」
('A`)「……えっ」
ギコはそう言って、まだ金を数え始めた。
(,,゚Д゚)「……これがお前の取り分だ」
っロ スッ
('A`)「…………」
っロ
ギコから受け取った金をじっと見つめる。
俺の取り分は6万。そこから1万だけ引いた5万が渡されるのだと思っていた。
――だが俺の手元にあるのは、たったの2枚きりだった。
165
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:07:16 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「…………」
(,,゚Д゚)「罰として、今回の取り分は1割だ」
彼はそう言った。
俺は、何も言うことができない。
彼の言う事はもっともだ。罰を与えられて当然で、2万くれるだけでもありがたい事なのだ。
ただ、俺は気になった。
ギコを取り囲む周りの4人が、ニヤけた顔で俺を見つめているのが。
(;'A`)「…………」
もともと彼らは、1割しか渡さないつもりだったのではないか。
(,,゚Д゚)「まあ来月からは2割にしてやる。……さて、続けるか? 売上次第では3割にしてやってもいい」
('A`)「…………」
166
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:08:16 ID:/bf6AHok0
冗談じゃない。
どう頑張ったって、30万レス程度しか売ることができないんだ。
もしそのうちの1割しか貰えなかったら、俺はあと何ヶ月こんな事を続けたらいいのだ。
いつまで経っても、あの施設を出ることができない。
金をためて逃げ出す前に、法的に働ける年齢になってしまう。
俺は一刻も早く、あそこから逃げ出したいのだ。
('A`)「…………」
ギコの持つ、27万。
それがあれば、一ヶ月は一人でもやっていける。
('A`)「続けます」
俺がそう言うと、ギコは喜んでバッグの中を漁り始めた。
周りの男たちもそう聞いて安心したのか、俺から興味をなくしたように下がっていって、タバコを吸い始めた。
167
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:08:54 ID:/bf6AHok0
俺はその隙を見逃さなかった。
(;'A) バシッ
/":-っ゛
j_-/
,し^、ゞ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
すかさずギコの上着のポケットから封筒を掴み取り、そのまま全力で逃げ出したのだ。
(;,゚Д゚)「あっ、おいテメェ!!」
後ろを振り返る暇はない。
ただ、複数の男たちが俺を追いかけて来ていることは、大きな足音と叫び声でわかった。
(;'A`)「ハァッ……ハァッ……!」ダダッ
人混みの中を縫うようにして、走り続ける。
時折ぶつかった人が驚いて声を上げる。
それでも構わず走り続ける。
168
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:09:39 ID:/bf6AHok0
「ハァ……ハァ……ッ!!」
(;'A)
ノ/-/o
j._/| ダッダッ
;.、ノイ、)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺はなんて、馬鹿なことを。
「ハァ…………うぐ……ッ!!」
、 ,
;.、vr⌒ち(;'A)っ ドサッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
169
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:10:18 ID:/bf6AHok0
でもまだ、死ぬわけにはいかないんだ。
『待てやクソガキィ!!』
「……クソッ!!」
(;'A)
/,-|、 スクッ
j._/U
.,」^、〉 .,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
170
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:11:01 ID:/bf6AHok0
男たちの叫び声が聞こえなくなるまで俺は走り続けた。
もう何十分走っただろうか。
脚は棒のようになり、走る速度も先程よりも随分と遅くなってしまった。
それでも、ふらふらとよろけながら走り続けた。
そして暗い路地の角を曲がったその時。
ドンッ
(;'A`)「うわっ!」ドサッ
不意に何かにぶつかって、地面に転んでしまった。
「おっと…………」
.
171
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:11:52 ID:/bf6AHok0
そんな声が聞こえてはじめて、ぶつかったのが人だと理解した。
見上げるとそこにいたのは。
「……大丈夫か坊主」
_
( ゚∀゚)
ri:::|_|::|
/ロ/n|j:| (A`;)
し/^J 、, ∧イ-.人
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
黒いロングコートに見を包み、右手をポケットに突っ込んで佇んでいた、一人の男だった。
太くしっかりとした眉毛が特徴的なその男は、地面に尻をついて倒れ込んだ俺に手を差し伸べていた。
「……手を貸せよ」
_
( ゚∀゚)
ri:::|_|::|っ
/ロ/n|j:| (A`;)
し/^J 、, ∧イ-.人
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
172
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:12:38 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「…………」
ぶつかってしまったのは俺の方だ。
急いでいるとはいえ彼の好意を邪険にする必要もなく、俺はその手を掴んだ。
\
\
\, -. . ,_ ガシッ
\ ノ ';,
'ヽ, . し^ ' .ヾヽ、
'-:'_'、 .'ヽ、) ヽ、
'-ヽ、 ',._',-' \
^' \
'ヽ
_
( ゚∀゚)「よっと」
グイッ、と強い力で引っ張られ、俺の身体は簡単に持ち上がる。
_
( ゚∀゚)「……ガキか?」
俺の顔や背丈、体重からそう思ったのか、彼はそう言った。
俺はまだ、子供に見えてしまうのか。
173
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:13:17 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「前見て歩けよ。……いや、走ってたか」
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「……ひょっとして、逃げてんのか?」
(;'A`)「ッ…………」
_
( ゚∀゚)「やっぱりか」
なんだ、この男は。
俺が子供だと見抜いたり、逃げていると見抜いたり。
まさか――。
_
( ゚∀゚)「警察じゃねぇよ、安心しろ」
(;'A`)「ッ…………」
俺が思った事すら、見抜かれる。
_
( ゚∀゚)「……警察だと都合が悪そうだな。ってことは……何かやらかしたな?」
(;'A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「だんまりかよ」
174
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:13:50 ID:/bf6AHok0
怯えているのでも、不審に思っているのでもない。
驚いているのだ。
驚いて、何も言えない。
_
( ゚∀゚)「安心しろよ、追手は来てねぇみたいだからよ」
(;'A`)「……それならよかった……」
_
( ゚∀゚)「んで、その封筒は?」
(;'A`)そ「ッ!」
そう言われて気がつく。
大事に抱えていたはずの封筒が、手元にない。
男が指差す方向を見ると、封筒は俺が先ほど転んだ辺りに転がっていた。
(;'A`)ササッ
っロ゛
_
( ゚∀゚)「……金か。盗んだな?」
(;'A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「誰から盗んだ」
(;'A`)「…………ギャング……」
_
( ゚∀゚)「ギャング? ってーと……ギコあたりか?」
(;'A`)「……そう……」
_
( ゚∀゚)「…………プッ……」
_
(*゚∀゚)「……ハハハハハッ!!」
_
( ゚∀゚)「おいおい、マジかよ。やるじゃん」
175
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:14:41 ID:/bf6AHok0
男は、笑った。
_
( ゚∀゚)「で、その追手から逃げてるってわけ?」
((;'A`)コクコク
_
( ゚∀゚)「……いやー、面白い奴もいるもんだな。笑えるぜ」
男はそう言いながら、ロングコートを捲くって腰のあたりから何かを取り出した。
_
( ゚∀゚)「こいつをやるよ」
っ=y
男が俺に差し出したのは、拳銃。
黒いスライドから剥き出しになった銀色のバレルが、月明かりを反射させていた。
(;'A`)「えっ?」
_
( ゚∀゚)「銃は持っておくと便利だ。見せびらかすだけでお前の身を守る盾になり……」
「……相手を殺す武器になる」
.
176
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:15:24 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「構うことはねぇよ。俺はもう一丁持ってるからな」
(;'A`)「…………なんで……」
_
( ゚∀゚)「?」
(;'A`)「なんで俺みたいな知らない奴に、こんなものを渡すんだ……?」
_
( ゚∀゚)「……ハッ。何を言い出すかと思ったら、そんなことか」
彼は笑って、空を見上げながら言った。
_
( ゚∀゚)「昔の俺に、よく似てるからだよ」
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「いいから受け取っとけ」
っ=y
('A`)「……じゃあ……」ガシッ
っy=゛
177
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:15:57 ID:/bf6AHok0
彼から拳銃を受け取る。
拳銃を手に持つのは、初めての事だ。
('A`)「ッ……」
っy=
想像していたよりも、重い。
グリップは大きく、自分の手には少し余る。
だが、トリガーやマガジンリリースボタンに届かないほどではない。
_
( ゚∀゚)「使い方はわかるか?」
('A`)「……まあ、本とかで……」
_
( ゚∀゚)「ならいいな。とりあえず撃てればいいんだ。メンテナンスなんかはまた覚えればいい」
セーフティの位置も、見ればわかる。
弾も既に入っているようだ。
('A`)「……こんなもの、本当にもらっていいのか? 高いんじゃ……」
_
( ゚∀゚)「気にすんなよ。俺は結構稼いでるし、仕事柄いくつも持ってるからな」
('A`)「仕事柄……?」
_
( ゚∀゚)「ここらじゃ結構名の知れてる殺し屋さ。もっとも、お前みたいなガキが知ってるわけもねーが」
('A`)「殺し屋……か……」
178
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:17:09 ID:/bf6AHok0
殺し屋がどういったものなのか、想像はできる。
ただ実際に、俺の目の前にいるこの親切な男が殺し屋だなんて――、正直なところ合点がいかない。
こんなものだろうか。
檻に閉じ込められた子犬を解き放つような、そんな優しさが。
殺し屋の心にはあるのだろうか。
――いや、これは優しさと似ているようで、きっとまるで別ものなのだ。
そうでないと、子犬に牙を与える理由にならない。
('A`)「……ひとつ聞いていいか」
_
( ゚∀゚)「……なんだ?」
('A`)「そういう生き方って……大変じゃないのか」
_
( ゚∀゚)「……ハッ。そりゃ大変さ。人を殺し回ってりゃ、警察や法律と戦わなきゃなんねー時もある」
_
( ゚∀゚)「ただよ……」
_
( ゚∀゚)「俺たちみてーな人間が手っ取り早く“自由”を手に入れるためには、“銃”を手にするしかないんだよ」
179
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:17:46 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「とても人にオススメできるようなもんじゃねぇ。けど…………、お前は望んでるんだろ?」
('A`)「…………ああ」
:.| ∨: : :|ハ:! //‐ ´ i: : : : : : : : /::::::::/
:.ゝ-V: :.| ヘ、 |: : : . . : : : : :厶イ/ _
: : :.|..∨ム |: : : : . : : : : : : : /:/ > .
ハ: :.! iヾ:.i {: : : : : : : : : : : イ:/ \ > .
.∧..i.....i \ __ j: : : : : : : : : , i:::/ \ `
.... Ⅵ.....i \ ` 〃: : : : : : : , '....|::′、 \
........ヘ.....i \ ___,........__: : : : : :., '........j/......∧ \
.................i \ ` ー─一 ´: : : /∨...................∧ \
..................i \  ̄:::::: : : :./ i..................... ∧ \
「……こいつがあれば、俺は自由だ」
.
180
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:18:39 ID:/bf6AHok0
_
( ゚∀゚)「……ハッ。そいつはよかったな――――」
『この辺にいるはずだ!!』
(;'A`)「ッ……!」
不意に、後方から声がする。
大勢の足音とともに、その声は段々と近づいてくる。
_
( ゚∀゚)「…………さて、俺はこの辺りでお暇するか」
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「ビビってるのか?」
('A`)「……いや……」
('A`)「…………ウズウズしてるだけさ」
181
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:19:29 ID:/bf6AHok0
「……ハッ。……それじゃあな」
_
. (A` ) n( ゚∀゚)
|-h.| . 'ヽ|:::|_|::|
i_U_j /ロ/n|j:|
し^J ; .、し/^J ザッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
やがて彼は、この路地裏から姿を消した。
まるで初めからいなかったかのように。
夢でも見ていたのではないかと思わせる。
しかし俺の右手には、確かに銃が握られている。
Ω「いたぞ!!」ダッ
やがて路地の影から姿を表した3人の男たち。
ギコはいない。そもそも追いかけて来なかったのだろう。
182
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:20:09 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
| |
| |
| | グッ
-' '- ノ;_
| | . , | | 7
t.'-'-'-'t;_;| J| |
. '==| ,:| _|
. | | |'|
| | |.|
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. '-'-┘
スチャッ
____
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,.-,__.- =≦三三| γ⌒ヽ|
|三三二二三三| |:::::::: | |
|三三三三三三|人 ___ ノ |
_〈≧て⊇____人t .○ yノ
= ≦__/ ̄  ̄, ̄ ヽ | |__又_彡'
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ヽ '. .' '.
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ノ,
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.
183
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:21:25 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
| |
| |
| | グッ
-' '- ノ;_
| | . , | | 7
t.'-'-'-'t;_;| J| |
. '==| ,:| _|
. | | |'|
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スチャッ
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ノ,
'
.
184
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:21:59 ID:/bf6AHok0
セーフティを外して、銃口を男たちに向ける。
('A`)「…………」
っy=
Ω「――ッ!!」
それを見て男たちは、眉をひそめてたじろいでいた。
Ω「てめぇ……銃なんてどこで手に入れた……」
('A`)「…………さあな」
Ω「……俺たちに銃を向けたら、取り返しがつかねぇぞ」
('A`)「……取り返したいものなんて、ありゃしねぇんだ」
Ω「…………そうかよ」
Ω「だったらここで死にな!!」スッ
一人の男が、懐から拳銃を取り出した。
今更出したって遅い。俺は引き金を引くだけでこいつの命を取ることができるんだ。
185
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:22:41 ID:/bf6AHok0
('A`)「ッ……」
一瞬だけ、身震いする。
ここで引き金を引いたら、俺は一線を越えることになる。
なんて、簡単なのだろうか。
なんて、か弱いものなのだろうか。
命というものは、こんなにも軽い。
バァン
拳銃は、耳を劈くような大きな音を鳴らして、その銃口から火を吹く。
放たれた銃弾は一人の男の額を貫き、やがて男は地面に崩れ落ちた。
こんなにもあっさりと、人は命を落とすのだ。
.
186
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:23:32 ID:/bf6AHok0
Ω
Ω「ッ……て……てめぇ!!!」スッ
('A`)「おせぇよ」
っy=
バァン
一つ、二つ、三つ。
Ω「――ひッ……ヒィッ……!」ドサッ
次々と、地面に屍が転がる。
('A`)「…………」
Ω「ッ……やっ……やめろ俺は撃つな……!!」
最後に残った男が言う。
殺さないでくれ、殺さないでくれ。
か細い声で、彼は言う。
187
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:24:23 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………終わりなんだよ」
っy=
Ω「ッ…………」
('A`)「……いや。もう、終わってたのかもしれねぇな」
Ω「…………?」
('A`)「バーン」
Ωそ「ひッ……!!」
('∀`)「……ハハハハッ!!」
バァン
地面に転がった四つの死体を踏み越えて、俺は路地を抜け出した。
銃声を聞いて誰かが通報したのか、ネオンの街にはサイレンが鳴り響いていた。
俺はまた、人混みに紛れるように、闇に溶けるように、ゆっくりと歩みを進めた。
.
188
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:25:01 ID:/bf6AHok0
しばらく歩いて、俺は施設の前まで来ていた。
庭を抜け、開けっ放しにしておいた自分の部屋の窓から中へと入る。
施設内は、静かだ。部屋の様子も変わりない。
どうやら外出したことに気づかれてはいないようだ。
必要なものは、何もない。
この部屋に――、この俺に大事な持ち物なんて、大してありはしなかった。
ふと、ベッド脇の机に目を移す。
そこには、ミセリに渡すつもりだったペンダントの入った箱が置いてあった。
('A`)「…………持ってくか……」
ドラッグが無くなったことで再び軽くなっていたショルダーバッグに、ペンダントの箱を入れる。
もっと早く、渡しておけば。
後悔の念に苛まれ、しばらくの間俺はベッドに座り込んでいた。
189
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:25:38 ID:/bf6AHok0
('A`)「……行くか」
冷蔵庫に入れ忘れたままぬるくなった安物銘柄の缶コーラの栓を開けて、その中身を一気に飲み干す。
しばらくして落ち着きを取り戻し、俺はタバコに火をつけた。
('A`)y‐~~「……ふぅ」
この部屋でタバコを吸うのは初めてだ。
もしも先生にバレてしまったら、面倒な事になるからだ。
しかし、そんな生活ももう終わりだ。
ベッドから立ち上がって、部屋の扉を開ける。
軋む廊下を歩いて、ホールの近くの扉の前に立つ。
その扉をゆっくりと開け、足音を立てぬように少しずつ部屋の中へと入り、扉の鍵をかけた。
やがて見えてくる、大きなベッド。
そこに横になる、一人の女。
豪快にいびきを立てている。
.
190
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:26:14 ID:/bf6AHok0
('A`)「起きろよ」
声をかける。
だが、いびきは収まらない。
('A`)「おい、クソババァ」
再び声をかける。
いびきが止まり、寝息が微かに聞こえてくる。
.
191
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:26:56 ID:/bf6AHok0
「目を覚ませよクソババァ!!」
,.ィ´::::::::::
,...,..ィ´:::::::::::::::::::::::
, イ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
, イ´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
_/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;:. .'''"´
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_:_;: '''"´
_,ィ、'´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,ィ´
,イ'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;: '´
、|,' ,r'´ニ`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,:ィ''´
人、/ ,r'´ ̄ヽヽ, :::::::::::::::::':::::::::::::,:ィ''´
人," /´ ̄`ヽ、ヽ\ :::::::::::::,ゝ__‐'´
,/, / : : : : : :::::ヽ \ ヽイ::::::::/
v/ / ,...___ : : : : : :::::ハ ヽ/
,v ,イ,ィ:: : : : :`:‐-::、:_:,r‐l/ 三 ニ 一 -
. /:::::: : : : : : : : ::::::::::/
/::::_: : : : : : : : : : : :/
{::::::::::`ヽ:、: : : : : :./ 三 ニ 一 -
ヽ::::::::::::::::::::::::. : /
` 、:::::::::::::::::/ 三 ニ 一 -
` 、::/
ドンッ
.
192
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:27:40 ID:/bf6AHok0
「きゃあ!!」
靴底で、女の腰に蹴りをいれる。
流石にまだ寝ているということはない。
彼女は張り付いた瞼をむりやりこじ開けるようにして、事態を理解しようとしていた。
やがて、目が合う。
J(;'ー`)し「……えっ……?」
起き上がって再び俺を見つめるが、どうやら彼女はまだ、現状を理解できていないみたいだ。
蹴り飛ばしたのが俺であることすら――――いや、蹴り飛ばされた事すら、わかっていないようだ。
J(;'ー`)し「……何……なんなの……?」
('A`)「なぁ、先生」
J(;'ー`)し「…………」
('A`)「ミセリはどこに連れてかれたんだ」
J(;'ー`)し「……は? 言えるわけないじゃない……あんたみたいな金食い虫に……」
('A`)「…………」
193
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:28:13 ID:/bf6AHok0
「きゃあ!!」
靴底で、女の腰に蹴りをいれる。
流石にまだ寝ているということはない。
彼女は張り付いた瞼をむりやりこじ開けるようにして、事態を理解しようとしていた。
やがて、目が合う。
J(;'ー`)し「……えっ……?」
起き上がって再び俺を見つめるが、どうやら彼女はまだ、現状を理解できていないみたいだ。
蹴り飛ばしたのが俺であることすら――――いや、蹴り飛ばされた事すら、わかっていないようだ。
J(;'ー`)し「……何……なんなの……?」
('A`)「なぁ、先生」
J(;'ー`)し「…………」
('A`)「ミセリはどこに連れてかれたんだ」
J(;'ー`)し「……は? 言えるわけないじゃない……あんたみたいな金食い虫に……」
('A`)「…………」
194
:
これは失敬
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:28:58 ID:/bf6AHok0
('A`)「言えよ」チャッ
っy=
J(;'ー`)し「――ッ!?」
拳銃を向けると、彼女は竦み上がってその皺だらけの頬に汗を流した。
('A`)「……言わねーなら、殺して書類を漁るだけだ」
J(;'ー`)し「……なっ……まさか殺せるわけ……」
('A`) カチャッ
っy=゛
撃鉄を起こす。
その動作だけで、俺の言葉が嘘ではないと理解するのには十分だったようだ。
J(;'ー`)し「――ッ……わかった……わかったから……」ゴソゴソッ
彼女は恐る恐るその身を起こして、机の引き出しから一枚の紙を取り出した。
J(;'ー`)し「……ここよ……」ペラッ
っロ゛
('A`) パシッ
っロ゛
J(;'ー`)し「…………」
195
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:30:09 ID:/bf6AHok0
彼女から奪い取った紙は、養子縁組の手続きに使われたと思われる書類の控えだった。
大きな枠に囲われた部分に、ミセリを引き取った男の名前と、住所が書いてある。
その下には、ミセリの名前もあった。
どうやら、これで間違いはないようだ。
J(;'ー`)し「……あんた……」
紙を畳んでポケットに入れていると、彼女が俺の顔色を伺いながら口を開いた。
J(;'ー`)し「あんた……なんであの子のためにこんな事を……」
('A`)「…………」
これは決して、ミセリのためではない。
自分ではそう、理解していた。
あくまでこれは、自分のためなのだ。
自分を満足させるために、やっているだけの事なのだ。
196
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:30:43 ID:/bf6AHok0
そしてもう一つ、わかりやすい理由がある。
この女には、それすらもわからないのだろう。
J(;'ー`)し「……こんなことして……どうなるかわかってるの……?」
('A`)「……さあな」
J(;'ー`)し「…………」
('A`)「一つ、ためになる耳寄りな情報を教えてやるよ」
J(;'ー`)し「……何……?」
('A`)「これから俺がやる事は――――」
――――単なる憂さ晴らしに過ぎない。
.
197
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:31:47 ID:/bf6AHok0
そう言って、俺は彼女に向けた拳銃の引き金を引いた。
白いシーツが赤く染まり、その中央に倒れ込んだ死体。
俺はそれにタバコの吸い殻を押し付けて、この部屋を漁り始めた。
('A`)「……金庫の鍵はどれだ……」
机の引き出しや、バッグの中。
様々な場所を探し、最終的にたどり着いたのが、ベッドの下だった。
奥の方にある小さな木箱を引きずり出す。
その中に、金庫のものと思われる鍵と、ダイヤルのメモが入っていた。
全く、不用心な女だ。
そんな事を思いながら、部屋の隅にぽつんと置かれた大きな金庫にその鍵を差し込んだ。
その頃、廊下を走り回るような音がどこかから聞こえてくる。
銃声を聞きつけた子供たちが、何があったのかと不安な気持ちでこの先生の部屋へと向かってきているのだろう。
俺はそんな事は大して気にも止めず、メモの通りにダイヤルを数回だけ回した。
そして、金庫が開かれる。
198
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:32:28 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「ッ…………」
想像以上だった。
金庫の中に入っていたものは、ぱっと見ただけでも数千万レスは越える大金だった。
一体どれだけの人が、どれだけの大金で、この施設の子供たちを買っていったのか。
吐き気にも近い怒りを、ぐっと胸の奥に押さえつけて、俺はその大金を手に取った。
これだけあれば、やり直せる。
新しい人生を、手に入れる事ができる。
('A`)「…………」
彼らに、選ばせよう。
.
199
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:33:02 ID:/bf6AHok0
気づけば、鍵のかかったこの部屋の扉を強くノックする音が響いていた。
扉の向こうからは、不安そうな声で先生を呼ぶ声がいくつも聞こえる。
俺は大金を机の上に置き、ポケットから取り出したタバコに火をつけながら扉へ近づいた。
そしてゆっくり、その鍵を開けた。
(;’e’)そ「うわ〜!! ドクオ兄ちゃん!?」
鍵を開けたと同時に、扉は勢い良く開かれた。
この施設の子供たちの中で、俺を除いて最年長であるセントジョーンズが、その扉のノブをしっかりと握っていた。
(;’e’)「……兄ちゃん…………その……血は……」
('A`)「……ああ……。気にすんなよ」
200
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:34:27 ID:/bf6AHok0
(;’e’)「怪我してるの?」
('A`)「俺は平気さ」
(’e’)「ッ……じゃあ……先生……?」
('A`)「……そうだな……」
子供たちからは、俺の身体が影になって中の様子を見ることができないだろう。
俺は身体を退かすこともせず、言葉を続けた。
('A`)「お前らには、まだわかんねーかもしれねぇけど……。先生はな、ミセリを……ミセリ姉ちゃんを、悪い人にお金で売ったんだ」
(’e’)「…………」
セントジョーンズだけではない。
10歳かそこらの子供たちが、真剣な眼差しで俺の言葉に耳を傾けていた。
他の年端もいかない子供たちは、いまいちよくわかっていない様子であった。
201
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:35:21 ID:/bf6AHok0
('A`)「そこに、その金がある。それを分け合って自分たちで生きるか……、警察に任せて新しい施設へ移るか。お前ら次第だ」
('A`)「好きに選べ。自由に生きてくれ」
セントジョーンズの肩をぽんと叩き、呼び止める子供たちの声を無視して俺は施設の玄関を抜けた。
この施設とは、もうこれでおさらばだ。
:'.;′
:.
: '
. '
,: .'
,. '.:´ ´
.' ´
,. '.゙ ポトッ
' :
;. ; />
゙、( _,..、 //
`~⌒ヽ;...;;.. _/>'
ヽ:,;;:゙ー`'
フィルターのぎりぎりまで吸い尽くしたタバコを地面に放り投げて、薄暗い道をただひたすら歩き続けた。
.
202
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:36:28 ID:/bf6AHok0
疲れたので、続きは近いうちに……
よろしくお願いします。
203
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 17:34:38 ID:tXFgH4KE0
おっ!乙!!
続編待ってたぜ〜
今から読む!
204
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 17:42:57 ID:dGqu3YG60
その酉いっつもピザマンコって読んでます
冗談はさておきかっけえ乙
205
:
名無しさん
:2016/05/03(火) 19:51:39 ID:bvac.9YM0
乙!ハードな感じだな……
( ^ω^)との出会いとかも書くの?
206
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:24:02 ID:GCRBwiXg0
>>205
少年編終わらせてもないのに言うのもなんですが、ブーンとの出会いの話と、無印の続きの話の構想はあるんです
ただそれを実際に書けるかどうかは…モチベーション次第に…
207
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:39:26 ID:GCRBwiXg0
間違えてあげちゃったので、このまま残りを投下します。
208
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:40:12 ID:GCRBwiXg0
2kmほど歩いただろうか。
気づけば俺は見慣れない街にやってきていた。
それもそのはず。施設から近くの繁華街までの道しか行き来しなかった俺にとっては、この国はあまりに広すぎる。
ポケットから取り出した紙に載っている住所を頼りに、俺は歩き続けた。
辺りを歩いている人――この時間になると酔っ払いしかいなかったのだが――に聞いてみると、どうやらここから見える豪邸がその場所で間違いないらしい。
近くで見てみるとすでに、部屋の電気は消されている。
ただ唯一、小さな小窓から、薄らぼんやりと明かりが漏れていた。
塀を登り、あたりを見回す。
流石にこの時間になると、使用人らしき人影もない。
いくらこれほどだだっ広い豪邸を持つ金持ちとはいえ、そんな警備に金を回すのは無駄だと思える。
('A`)「……よっと」
209
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:40:51 ID:GCRBwiXg0
|::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
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l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::: l
|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i
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ゝ:::::::::::::::::::::::::::::::::::シ 匕::::::::::::::::::::::::::::::::::::シ ( )
丿`  ̄ ゙ ~  ̄ ` ̄ ´i i ` ̄ ゙ ~  ̄ ` ̄ ´\ ) )
r´ } { `ヽ ノ ノノ
ト-‐ '´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄7 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`' ‐イ ∠ノ ゞ゙´、
`────────';.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.'────────´ ザッ
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
.
210
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:41:32 ID:GCRBwiXg0
手入れだけでも金がかかるであろう立派な芝を踏みしめて、例の小窓へゆっくりと歩き出す。
やはり近くで見ても、人が通れるほどの窓ではない。
高い位置にあるため、中を確認することも難しそうだった。
仕方ない。
明かりの漏れる小窓から侵入する事を諦め、その隣の大きな窓を覗く。
カーテンのおかげか、はっきりと中は見えない。たが恐らく、目的の部屋とは繋がっていないのだろう。
__r 、
///`Yヽ
/// :/ 〉
/// :/ /'. '、
///_,/ ./ . .
/ーr' / / ' 、
_,/ / / /
//=彳/ ./ '.
//// /o :/⌒i
//// / /`ー/_
〈/// / / /{ Yー、
\ / / '´ ,人_,丿 スッ
ガシャーン
.
211
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:42:19 ID:GCRBwiXg0
取り出した拳銃を振りかぶって、グリップエンドで窓を強く叩いた。
思わず自分でも耳を塞ぎたくなるほどの音が響く。
粉々に砕け散ったガラスは、チリチリと音を立てながら地面に転がっていく。
あまり時間はかけるべきではない。
俺はすぐに屋敷に侵入し、辺りを見回した。
月明かりでうっすらとしか見えなかったが、ちょうど正面にあった扉へと駆けだす。
あまり時間はない。
扉のノブを回して、廊下へと出る。
廊下は、先程の部屋よりもずっと暗い。
壁伝いに手探りで、先ほどの小窓がある部屋を探す。
指先に触れた冷たい物。それがドアノブであることを理解した俺は、すぐにそれを回した。
212
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:43:15 ID:GCRBwiXg0
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/. . : : 、へ : : : : : : : : : ::l' :: : : :.::|:.:
||::,r‐r⌒ヽー─‐-イ . : : /::::::::|\ : : : : : : .: : | : : : :::|:.:.:.:i
ガチャ ||::lヽ^づ 〈: : : :.:: :.:: :.:/ : ::::::::::! \ :. : : : : : |_ :: : : ::|:.:.:.:
||::::ヾ_つっ'ー──一´:::::::::::::::::::| .ヽ,:..: : ::/⌒:: : ::/:.::
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ヾ.::/ .. :.:.::/
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| iて ̄` ヽ::.::/ _
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| し'て_, ノ'ij`´´ ..:.
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
しかし、いくら回しても扉は開かない。
('A`)「チッ…………」
鍵が、中からかけられている。
('A`)「……仕方ねぇ……なぁッ!!」
__________
|
|_
|| ドンッ
||('A`)
. c||f|:-:fヽ= -
||' V_ |、 , 、
|| し^ヽ) , .' ;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
213
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:43:57 ID:GCRBwiXg0
勢い良く、扉に体当たりをする。
だがそうそう簡単に破れるはずもない。
('A`)「クソッ……」
拳銃を構え、銃口を蝶番に向ける。
ダァン .ィ≦,
i .イl ∧
\ .|! .i } l ∧
\ 、 \ .|l .| -= l l ̄l ∧
\`''<_)'" ̄ ̄ ̄\ |.! | ,, '" 7 .l l_l ∧
ヽ \j l、Ⅵ ,,'  ̄}. .l ∧
} | ,, ' -=≦ .l 「 ̄∧
、_ __ | / -≧,l l ∧
__}  ̄ ̄ / , ≧《∧ l l ∧
\ / ≧=- / V∧ l l ∧
-== [〕 ⊆二二 ̄ ,l V∧ l l ∧
} , 〈〉 ( ̄ ̄ ̄ j V∧ l l ∧
-��  ̄\ i rュ \ r'" V∧ l l ∧
) l 「y7 --く ̄ ̄ . イ V∧ l l ∧
_≠---ァ ` 、 \ \ .ノ V∧ l l___∧
/ /`勺\. ,| V∧ l |l |l ∧
 ̄ ̄ ̄〕 イ / 、 }`ヾ l |l 斗'”
 ̄`'つ_,,'" Λ ,ノ斗'"
 ̄ / ‘、 {
/ /ヽ l
/ \ ;
ヽ ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
.
214
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:44:48 ID:GCRBwiXg0
勢い良く、扉に体当たりをする。
だがそうそう簡単に破れるはずもない。
('A`)「クソッ……」
拳銃を構え、銃口を蝶番に向ける。
ダァン .ィ≦,
i .イl ∧
\ .|! .i } l ∧
\ 、 \ .|l .| -= l l ̄l ∧
\`''<_)'" ̄ ̄ ̄\ |.! | ,, '" 7 .l l_l ∧
ヽ \j l、Ⅵ ,,'  ̄}. .l ∧
} | ,, ' -=≦ .l 「 ̄∧
、_ __ | / -≧,l l ∧
__}  ̄ ̄ / , ≧《∧ l l ∧
\ / ≧=- / V∧ l l ∧
-== [〕 ⊆二二 ̄ ,l V∧ l l ∧
} , 〈〉 ( ̄ ̄ ̄ j V∧ l l ∧
---  ̄\ i rュ \ r'" V∧ l l ∧
) l 「y7 --く ̄ ̄ . イ V∧ l l ∧
_≠---ァ ` 、 \ \ .ノ V∧ l l___∧
/ /`勺\. ,| V∧ l |l |l ∧
 ̄ ̄ ̄〕 イ / 、 }`ヾ l |l 斗'”
 ̄`'つ_,,'" Λ ,ノ斗'"
 ̄ / ‘、 {
/ /ヽ l
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ヽ ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
.
215
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:45:29 ID:GCRBwiXg0
拳銃から放った一発きりの銃弾で、蝶番は根本からひん曲がり、少し力を入れれば簡単に外れてしまいそうになる。
もう一度、扉に体当たりをした。
__________
|
|
ドカッ
/ ('A`)
f|:-:fヽ= -
、// ' V_ |、 , 、
'ヽ、し^ヽ) , .' ;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
蝶番を弾き飛ばして、木製の扉は勢い良く倒れ込む。
体勢を整えながら、俺はすぐに室内を見た。
そこで見たものは、ナイフを構える一人の男と、後ろで泣きじゃくるミセリの姿だった。
.
216
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:46:02 ID:GCRBwiXg0
ミセ*;ー;)リ「……ど……ドクオ……?」
('A`)「……、ミセリ……」
「ッ……なんだお前……」
(;^Д^) (A` )
/ vロ|っA |-h.|
|U_ : _ | i_U_j
(/^ヽJ . し^J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
('A`)「…………」
lニゝ!∨ミl、
i".,,∠二-、゙'、
│.|.l.;;;;;;;;;゙l.} ! スチャッ
! `'`-ニ'" .l
| |
.! .○ |
_..-'''゙.! l.'''‐、
/´ .|"ーi��‐i''''} .l
l ゙'!、 l .! ,! '!、.ヽ
!  ̄` ! .l ミヽ..,__丿
,/ ヽ .| .,! .'''''/'i
l゙ .ゝ....-- ..,,,| .し,,,,,,ゾ
ヽ 、 .`'" / .
/ .\ ! ./ ,〃
.
217
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:46:45 ID:GCRBwiXg0
ミセ*;ー;)リ「……ど……ドクオ……?」
('A`)「……、ミセリ……」
「ッ……なんだお前……」
(;^Д^) (A` )
/ vロ|っA |-h.|
|U_ : _ | i_U_j
(/^ヽJ . し^J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
('A`)「…………」
lニゝ!∨ミl、
i".,,∠二-、゙'、
│.|.l.;;;;;;;;;゙l.} ! スチャッ
! `'`-ニ'" .l
| |
.! .○ |
_..-'''゙.! l.'''‐、
/´ .|"ーi--‐i''''} .l
l ゙'!、 l .! ,! '!、.ヽ
!  ̄` ! .l ミヽ..,__丿
,/ ヽ .| .,! .'''''/'i
l゙ .ゝ....-- ..,,,| .し,,,,,,ゾ
ヽ 、 .`'" / .
/ .\ ! ./ ,〃
.
218
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:53:24 ID:GCRBwiXg0
(;^Д^)「くっ…………」
('A`)「……プギャー、だったか」
(;^Д^)「……だから……どうした……」
('A`)「いや、特に意味もないさ。名前くらい聞いても悪くないと思ってな」
(;^Д^)「……クソガキィ……何しに来やがった……」
(;^Д^)「――――ッ!!」
/^ヽ
(⌒)'
_ , . ; :'''"´"'' 、 ; ;,,
_ , . 、, ___-l二ヽ_______ ; ; _-、──、__/三'>
--=" ;,_ ; : . ()======| ───────┐.| .|,,;;,,, ,,,;;;,,()~-/ ̄l/、 ◎)\
l_,' ̄ ̄ |__┌--┬──┴┴─┴────── ' l l l l l ',__.`-' l. l
´"''''- ''" l,_ヽ__ __|三三三三|_________l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_.l
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`- 、_ O __○二二三l/ ̄ ̄ ̄ ヽ ̄
ダァンッ `v'~ | | |`) |::::::(_,ノ-,/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
l'、_ヽ_)' ノO l:::::::::::::::::::`、
` ̄ ̄ ̄ ̄(  ̄ ̄)::○::::::::ヽ
(`─ー<::::::::::::::::ヽ;;::..
. (ヽ___ ,ノ:::::::::::::::/ ノ___
ヽ__/二二二l_,.-~ ̄
.
219
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:54:11 ID:GCRBwiXg0
銃口が火を吹き、目の前の男が額に大きな穴を開けて、ゆっくりと崩れ落ちる。
硝煙が、まるでタバコの煙のようにゆらゆらと立ち昇り、やがて消えてゆく。
ドサッ
ミセ;゚ー゚)リ「……ッ……」
('A`)「……ミセリ……」
怯えた表情で俺を見つめるミセリに、投げかけられる言葉などなかった。
ミセ;゚ー゚)リ「……そいつは……死んだの……?」
('A`)「ああ。死んださ」
ミセ;゚ー゚)リ「……助けに来てくれたんだね……」
('A`)「…………」
ミセ;゚ー゚)リ「……怖かった……」
.
220
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:59:33 ID:GCRBwiXg0
V: : :ム 、 u /: : : : : : ,:|: : : ,: l
. /;ィ: : : ::. ` _ /イ: :/: : : : /:l: : :/ヽ!
/ l: : : ::ゝ、 '─` / l: : : : /: リ' |: :/
}: : /ノリ:>, 、 , ィ '.i: : ;ィ"}イ' |/'
l: / ' レ'V / = l , ェ= |/ |ヘ、
V,-、 _ ィリ_/^∧ / `ー 、__ _
/ / >'´___, !!-rュ_」__ __/ /´ `ヽ
. / ' / / zム」ー ` ー, ./ ∧
「……怖かったよ………」
彼女はそう言って、涙を落とした。
いくつも、いくつも零れ落ちる涙が、彼女の足元を濡らした。
.
221
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:00:08 ID:GCRBwiXg0
('A`)「お前に、これを渡したかったんだ」
バッグの中から小さな箱を取り出して、それをうずくまる彼女にそっと手渡す。
ミセ*゚ー゚)リ「……これって……」
彼女が包みを解いて蓋を外すと、その中から、小さなペンダントが姿を現した。
ミセ*゚ー゚)リ「ッ…………」
('A`)「…………ごめんな」
ミセ*゚ー゚)リ「……どうして……?」
ミセ*゚ー゚)リ「どうして謝るの……?」
('A`)「…………」
握りしめたままの拳銃をベルトの隙間に挟み、再びバッグの中からひとつの封筒を取り出した。
222
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:01:30 ID:GCRBwiXg0
('A`)「……もう、会えないからだ」
29枚の紙が包まれた封筒を、床に置いた。
ミセ;゚ー゚)リ「……どうして?」
('A`)「……わかってるだろ……?」
ミセ;゚ー゚)リ「…………」
! i
,L. __ /'
Y´ ̄二 /〉
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「 ̄ ` / ′/ ∧.
|..__ , /〕、 _」.
/ ̄ `  ̄|  ̄ ,〉
∠.. _ /!-‐=ニ />..
∠ ̄  ̄二ニ、 厶-、 , '/ 〉
r‐=≦ ̄ ` ∨ //`ー'´
iL.. ____r‐=iニニ」二ニ´/' キュッ
`  ̄ ̄ ̄ ̄ ´ ` ̄  ̄ ̄´
「お前は、まっとうに生きてくれよ……」
.
223
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:02:04 ID:GCRBwiXg0
踵を返して、扉へと戻る。
これでいいんだ。
汚れてしまったこの手で、彼女に触れることは許されない。
どんなにねじ曲がった運命でも、どんなにひねくれた生き方でも、俺はそうすることを望まない。
ミセ; ー )リ「……ドクオ……」
('A`)「……じゃあな」
ミセ; ー )リ「……待ってよ…………」
_/,. <: : : :. l u /: : : : : : : : :l: : : : :|
 ̄ ,.>: : : ', ` ,/:.ィ: : : : : : : : ト=、; ;|
/: : : : ::ム. rー--‐‐、 "´ |: : : : : x: : |} `ー==ヽ__ _
/:/´|: : : : 人. ∨、_ノ) ,.|: : : ::/ ヽ|| }::::::}´ ヽ
" |: : :∧: : }7> 、`ー - ' . < 〉: / リ /::::/ 丶、
ヽ::/ /〉ノ:l |>ー < / Y / l::::l ヽ
/ |::::::| { rヽf´ミ / /::::| \
{ {::::::{ ヽ j ′∧ / /::::::| \
「……待ってよドクオ!!!」
.
224
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:02:39 ID:GCRBwiXg0
_________________
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Σ |.:.:(○).:.:.: .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. :.:.:.:.:.:.:.:.:.::..:.:.:.|
Σ |.:.:.:.::.:.:.:.__________.:.:.:.::.:.:.:|
|.:.:.:.:.:.:.:.|l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l|.:.:.:.:: .:.:|
バタン |.:.:.:.:.:.:.:.|l: : : : : : : : : : : : : : : : ||.: :.:.: .:.:|
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 ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
扉越しに聞こえた、“ありがとう”という言葉を。
俺は一生忘れることはないのだろう。
.
225
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:03:45 ID:GCRBwiXg0
しばらく歩いて、俺は繁華街へとやってきた。
再び小汚い路地を歩いて、ギャングたちの溜まり場へと向かう。
空き缶、吸い殻、ゴミ袋、ギャング。まさにゴミ溜めと呼ぶに相応しい。
俺はきっと、こんな街でしか生きられないのだろう。
( 'A)
|":-っ" 、
j._-|
,、し^J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
咥えていたタバコを放り投げて、歩みを進める。
そんな時だった。
.
226
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:04:22 ID:GCRBwiXg0
Ω ( 'A)
- = j.-) . |":-っ
ダッ j__/ j._-|
、,し^j 、.し^J 、.' ポトッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「オラッ!!」
Ω (;'A)
グイッ j'-|=|":-っ ,
- = j__/ j._-|⊇.
、,し^ j |_) 、'. ,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Ω
j'-| ドサッ
jU| (;'A)彡 . ,
'. (/^j 人_-ヽ∧'、. ,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
不意に後ろから掴みかかられ、俺は地面に尻餅をついた。
突然の事に、状況を理解するのに時間がかかる。
Ω「動くなよ、クソガキ」
っy=゙ チャッ
(;'A`)「――ッ!」
.
227
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:06:54 ID:GCRBwiXg0
一人の男が、俺の脳天に銃を突き付ける。
いや、一人ではない。
前後からぞろぞろと姿を現す、男たち。
俺が来ることを、予見していたのか。
彼らは揃って俺に銃を向け、鋭い目つきで俺を睨み付ける。
ザッザッ
Ω「ほんとに来るとはなァ。ギコの言ったとおりだぜ」
(;'A`)「…………」
俺の正面に立つ6人の男たちを押し退けるようにして、ギコがゆっくりと姿を現した。
(,,゚Д゚)「どこから手に入れたんだから知らねえが、拳銃なんて持ってるんじゃあな。下手に力を手に入れた奴は、調子に乗るもんさ」
彼はその頬に残る傷跡を指でなぞりながら、ため息をこぼす。
(,,゚Д゚)「眠らせろ」
彼のそんな言葉と同時に、俺の後頭部に走る重たい衝撃。
俺はそれに抗うこともできず、意識は暗い闇の底へと落ちていった。
.
228
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:07:37 ID:GCRBwiXg0
俺が目を覚ました時には、あれから数時間が経過していた。
トタンの壁に囲まれた、薄暗い部屋。
元はどこかの工場か、あるいは作業場のようなもの。恐らく、彼らのアジトなのだろう。
その中心に、俺は転がされていた。
(,,゚Д゚)「ようやく目を覚ましたか」
両腕は背中に回され縄で縛られており、簡単には外せそうにない。
かろうじて、立ち上がる事だけは出来そうだった。
だが今はまだ、その時ではない。
ギコは落ちていた角材を拾い上げて、俺の顔を睨みつける。
彼の周りには、男が数人。皆、拳銃や角材を手に持っていた。
(,,゚Д゚)「お前に聞きたいことがあってな」
コツ、コツと音を立てて、ギコは俺に歩み寄る。
(;'A`)「……なんだよ……」
(,,゚Д゚)「わかってるだろう? 金の在り処だ」
(;'A`)「……30万ごときに、そんな必死になってるのか?」
(,,゚Д゚)「……、ゴルァ!!」ブンッ
(;'A`)「――ッ!!」ドゴッ
229
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:08:18 ID:GCRBwiXg0
ギコが振り上げた角材が、俺の肩へ直撃する。
それほど重い角材ではない。だが痛みは確実に、俺の神経を蝕む。
これは、俺を殺す事が目的なのではない。あくまで、痛めつけて情報を吐かせるつもりなのだ。
(,,゚Д゚)「30万なんて金はどうだっていい」
吐き捨てるように、彼は言う。
(,,゚Д゚)「お前の暮らしていた、施設の金だ」
(;'A`)「…………」
(,,゚Д゚)「あの施設が子供を大金で売り捌いてるのは、この界隈じゃ有名な話だ。その金だよ」
(;'A`)「……知るわけ無いだろ……」
(,,゚Д゚)「ゴルァ!!」ブンッ
(;'A`)「――ッ!!」ドゴッ
(,,゚Д゚)「言え!!」
角材を振り回しながら、彼は凄みをきかせる。
それを恐ろしいとは思わない。だが、角材が食い込む痛みは、味わっていて楽しいものではない。
230
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:09:13 ID:GCRBwiXg0
(,,゚Д゚)「……あの施設に、警察が集まっていた。聞いた話じゃ、先生が殺されたそうだな」
(;'A`)「…………」
(,,゚Д゚)「先生を殺す理由なんて、一つしかないだろう。それは、金だ」
確かに、彼の言う事も間違ってはいない。いや、そう考えるのが妥当だろう。
実際に俺がどういう目的をもって彼女を殺したかなど、彼らには関係がない。
そして事実、あの時俺は大金の在り処を探していた。
(,,゚Д゚)「教えてもらおうか」
(;'A`)「……知らないって言ってんだろ……」
今更、彼に教えたところでどうなると言うのだ。
あの金は、子供たちの誰かが持ち去ったかもしれない。もしくは、警察が管理しているかもしれない。
そして、それを教えてしまったら、俺は用済みになってしまう。
彼に教えるか、教えないか。どちらを選んでも意味はない。選択肢など、無いも同然だった。
(,,゚Д゚)「……ならば、見当がつくまで考えてもらうしかないなッ!!」ブンッ
ドゴッ
ブンッ
ドゴッ
231
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:09:47 ID:GCRBwiXg0
肩に、足に、痛みが走る。
何度も何度も振り下ろされる角材は、俺を絶え間なく痛めつける。
時折休憩を挟むようにして、彼は俺に同じ問いかけをする。
俺の返事も、また同じものだった。
止むことのない痛みに、終わりは来るだろうか。
いや、俺がそう望んでいるだけであって、ギコには一切そのつもりはないのだろう。
しかし俺は、その僅かな希望に縋り付く。縋り付こうとする。
.
232
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:12:02 ID:GCRBwiXg0
それから、一時間ほど経過しただろうか。
血が流れ出るほどの怪我を負わされることはなくとも、俺の全身にはいくつものアザが出来上がっていた。
もはや痛みなど通り越して、俺はただ、全身の苦しさだけを味わっていた。
(,,゚Д゚)「吐く気になったか?」
(; A )「…………」
もうこのまま、リタイアしてもいいのではないだろうか。
なぜ俺は、ギコが諦めるなんていうあり得もしない希望に縋り付いているのだ。
真実を話せば、きっと彼は俺を楽にしてくれる。
(,,゚Д゚)「……足りないようだな」スッ
(; A )「ッ……まっ……まて……」
(,,゚Д゚)「…………」
俺にはもう、耐えきれない。
どうせこんな生き方では、命も長くは保たないのだ。
数年もすれば、路上に転がる空き缶のように、俺は無様な死を遂げる。あるいは灰皿に放置された煙草のように、じわじわと息絶えるのだ。
(; A )「…………金は…………」
ゆっくりと、口を開く。
脳内から無抵抗に流れ出す言葉を、遮ることはしない。
全てを諦めた。その時だった。
233
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:12:44 ID:GCRBwiXg0
/: .: .: .: .: . : ./ _,,.-‐''" / / / ̄|| |: .: .: .: .
/: .: .: .: .: .: . _,,.-‐'': : : : : 三 二 ニ -- / || | ̄|| | || | || |: .: .: .: .
/: .: .: .: .: .: .//:: : : : : : : : / / 三 二/ || -- | || |_|| |_|| |: .: .: .: .
/: .: .: .: .: .: .//: : : : : : : : / / / || | || .| |: .: .: .: .: .
/: .: .: .: .: .: .//: : : : ヽヾ`;;:} 三 二 ニ -- /__|| .| || .| |: .: .: .: .: .
/: .: .: .: .: .: .//: : : : Z::::Z,,, / / = ̄ .|_|| 三 二 ニ --: .: .: .
/: .: .: .: .: .: .// : : : : <:::::::ヽ:::>' _ l || ̄|| .: .: .:
/: .: .: 三 二 ニ -- : : <:::::/ ̄, |_|| / // .: .: .
_/: .: .: .: .: .: .//: : : : : Z:::::{ l / // .: .: .
/ : .: .: . : .: .:,'/: : _,,.-‐>::::::ヽ __/ //.: .: .: .: .
: .: .: .: . : .: //_,,.-‐''": Z:::::}ヽ、::::{、 |___// .: .: .: .: .
: .: .: .: . : .://: : : : ノ/ /ー/ヽ | |: .: .: .: .: .
: .: .: .: . : // : : : : : : / / | |: .: .: .: .: .
: .: .: .: .: ,'/ : : : : : : : ./ / | |: .: .: .: .: .
: .: .: . : .:l | : : --二: : ./ / | |: .: .: .: .: .: .
: .: .: . : .{ l: : : : : : : { { | |: .: .: .: .: .: .: .
: .: .: . : .| |: : : : : : : | | | |: .: .: .: .: .: .
: .: .: . :..| |: 三 三 二 ニ -- | | |: .: .: .: .: .: .
: .: . : . :| |: : : : : : : | | | |: .: .: .: .: .: .
: .: .: .: .| |: : : : : : : :| | | |: .: .: .: .: .:
建物の扉が、勢い良く開かれる。
扉はその力によってひしゃげ、あらぬ方向へと飛んで大きな音を立てた。
(;゚Д゚)「な、なんだゴルァ!?」
.
234
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:13:16 ID:GCRBwiXg0
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厂: : : : :ト ミ|  ̄ ̄ [] []┌┐ V// ト、: : : : : :>fハ
ノ: : : : : : :||: : ∨ ┌┘| }/// }: : :/=/ /
,r=-. _>、: : : : : ||: : : ∨.  ̄ ̄ ,// ゙テ´三/}`
斥三三三三.\__:||__/ / /三三〃
`<三三三三三三} {三三/
`¨¨´ ゝく二フ′ `¨¨´
「余計な事は言うんじゃねぇ。その間抜けな口を閉じろよ、ガキ」
.
235
:
訂正ほんとごめんなさい
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:14:59 ID:GCRBwiXg0
i!: : : : : : : : :i! ヽ Vill ::::..ヽ/////////////////////\
i!: : :`┌┐: i! .} V! ::::..∨/////////////////////
i! : : : ||:i! ./ |il ::::.∨///////////////////
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i!.: : : : :|| /,|| _ ---  ̄∨///////\
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厂: : : : :ト ミ|  ̄ ̄ [] []┌┐ V// ト、: : : : : :>fハ
ノ: : : : : : :||: : ∨ ┌┘| }/// }: : :/=/ /
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斥三三三三.\__:||__/ / /三三〃
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`¨¨´ ゝく二フ′ `¨¨´
「余計な事は言うんじゃねぇ。その間抜けな口を閉じろよ、ガキ」
.
236
:
訂正ほんとごめんなさい
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:16:03 ID:GCRBwiXg0
「男だったら、痛みにくらい耐えやがれ」
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::: _ ;;;:::'''| ̄ ̄ ̄|::::::::
:::::: (゚∀゚ ) '' | |:::::::
::::::: |::|_|:::h. | |::::::::
:::::::: |:j|n'iロ't | |::::::::
::::::';、し^ヽJ、,'. | |::::::::
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ザッ
現れたのは、ロングコートに見を包んだ男。
この俺に銃を――、自由を渡した男だった。
(;゚Д゚)「ッ……なんだてめぇ……!」
_
( ゚∀゚)「おいおい、俺を知らねーのかよ」
(;゚Д゚)「…………はッ!! てめぇ、殺し屋ジョルジュ!!」
_
( ゚∀゚)「ご名答。以前はご贔屓にどうもな」
ジョルジュ、というのが彼の名前なのだろうか。
どうやら彼とギコは、面識があるようだ。
237
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:17:31 ID:GCRBwiXg0
(;゚Д゚)「チッ……、今更何しに来やがった……」
_
( ゚∀゚)「借りを返しに来たのさ。お前にやられた傷が、疼いて仕方ねぇからな」
(;゚Д゚)「……そうかよ……。だったら……」
(,,゚Д゚)「今度こそ殺してやるよ!!」スッ
っy=゙
_
( ゚∀゚)「…………やってみろ」
(,,゚Д゚)「やれ!!」
っy=
Ω スチャッ
っy=゙
ギコがそう叫ぶと、周りの男たちは一斉に拳銃を構え、その銃口をジョルジュに向けた。
ジョルジュは落ち着いた様子で深呼吸を一つし、大きく動いた。
238
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:18:10 ID:GCRBwiXg0
::::::::::::::::\
:::::::::::::::::::::'ヽ、
::::::::::::::::::::::::::::又.___ノ\ __ .へ
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.:.:.:.:.:.:.:.\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| /.i:i:i:i:i:i:i:i:i:、:i:i:i:i:i\ V:ヘ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\:::::::::::::::::::::::::::::::::::{/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i\:i:ヽ:∧`∨∧
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\::::::::::::::::::::::::::/{/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i: /^ヾ\ハ^ヾ V:ハ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.≫..,_ _,.≠.:.:.:. .:. : i i:i:i:i:i:i:i/ \:{
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .:. : . i: :i:i:i:i:i:ii/
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239
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:18:55 ID:GCRBwiXg0
_
パァン パァン (゚∀゚ )
Ω ィ Ω ィ |::|_|::oヽ -= ∋
j'-|っy=;、 j'-|っy=;、 /:j|n'iロ'\ -= ∋
jU| ' jU| ' ヽ)'^\)ミ
(/^j (/^j ,'、; '.、 タンッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
男たちの放つ銃弾を、ジョルジュは縫うように、時に跳躍して、掻い潜る。
その鮮麗された無駄のない動作。美しい動きだと、思わず見惚れてしまう程だった。
一体どのように鍛えれば、あんな動きができるのだろうか。
_
y= (゚∀゚ )
ΣΩ ΣΩ'、' ⊆/::/_/o|
j'-|っy= j'-|っ⊂/:j/n/ロ/ -= ∋
jU| jU| ''' '^し'ミ
(/^j (/^j パシッ ,'、;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「おらよっ!!」
「うぐッ!!」 _
(゚∀゚ )
ΣΩ Ω, |::/_/::|っ
j'-|っy= Σ|-(⊂|:j/n/ロ/
jU| ヽ'ヽっ 'ヽJ、、
(/^j .、乂)'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
240
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:19:37 ID:GCRBwiXg0
一人、また一人。
ジョルジュの怒涛の蹴りによって、次々となぎ倒されていく男たち。
彼のその姿が、俺にはダンスを踊っているように見えた。
軽快な音楽も、立派な舞台もない。けれど、彼は頬を歪ませて、軽快に踊りを続けている。
_
( ゚∀゚)「銃を使うまでもねぇな!!」ドゴッ
もはや、ここに俺の居場所はない。
彼の攻撃に必死で抗う男たちですら、舞台を彩るちっぽけな小道具にしか見えなかった。
やがて地面に乱雑に散らばる小道具を踏みにじり、彼は一つため息をついた。
(;゚Д゚)「くッ……」ジリッ
_
( ゚∀゚)「どうした、ビビってんのか?」
(;゚Д゚)「…………やるじゃねぇか……」
_
( ゚∀゚)「お褒めの言葉なら結構だ。早いとこ決着をつけようぜ」
(;゚Д゚)「……チッ!!」
っy=゙ スチャッ
_
( ゚∀゚)「バカの一つ覚えかッ!?」ダッ
.
241
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:20:47 ID:GCRBwiXg0
「ガハッ!!」
ドゴッ _
. ∧,,ハ (゚∀゚ )
Σ(;゚Д゚)て/::/_/o|
o|:::V:(⊆|:j/n/'/
|--.-|っ '^ヽJ
,、'\j^、 .'、
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ドサッ _
∧,,ハ チャッ (゚∀゚ )
(;゚Д゚) ゙=y⊂|::|_|:::h.
人;;;\ '' |:j|n'iロ't
;'、,し\/"⌒っ.' ';、し^ヽJ ,'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_
( ゚∀゚)「至近距離なら拳でかかってこいよ。コイツの使い方がまるでわかってねぇみたいだな」
(;゚Д゚)「くッ……」
_
( ゚∀゚)「コイツはな……」
っy= グッ
パァン
242
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:21:26 ID:GCRBwiXg0
ジョルジュの握る拳銃が、音を立てて火を吹く。
同時に、ギコの右足から鮮血が撒き散らされた。
(;゚Д゚)そ「あっ……がぁぁあああッ!!」バタバタ
_
( ゚∀゚)「動かねぇ獲物を狙うのにちょうどいいんだよ。……ま、俺くらいになれば別の話だが」
「ひっ、ヒィッ!!」
ハ,∧ _
(Д゚;) (゚∀゚ )
f|V:::|o =y⊂|::|_|:::h.
U.--|ミ |:j|n'iロ't
〈jヽ、).'ザッ ';、し^ヽJ ,'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
_
( ゚∀゚)「おいおい、どこに逃げるつもりだよ」
(;゚Д゚)「う、うるせぇ!!」
_
( ゚∀゚)「どこへ行っても、逃げ場はねぇよ。てめぇの行き着く先は――――」
.
243
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:22:03 ID:GCRBwiXg0
,--、
,.;==、、ヾヽ��‐、く‐`i7
!{::::::::} !::ヽヽ---_j_:::ヽ
ド=シ:::::::Y`Y´::::::l:::::}
l:::::::::::::::::::::!_::j,.イ/:,r‐-、 ,
`i::○:::::i´:|::!::iノ::/-、 , } i/
ヽ:__::ノ-r‐'‐l二{__/ノ i |
. { |:::::::{ r‐}::| / /
/``!_::ニア´}::!´ /
ヽ、 __.. -rヾ:::!/
(__ ,.メノ::l
ト、``´_/:丿
デッドエンド
「“行き止まり”だ」
'. ハ,∧ _
'、,'(Д,,) パァン (゚∀゚ )
f|V:::|o ゙=y⊂|::|_|:::h.
U.--| |:j|n'iロ't
〈jヽ、).' し^ヽJ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ドサッ
244
:
もうめんどくさい
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:23:10 ID:GCRBwiXg0
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デッドエンド
「“行き止まり”だ」
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'、,'(Д,,) パァン (゚∀゚ )
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U.--| |:j|n'iロ't
〈jヽ、).' し^ヽJ
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ドサッ
245
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:24:57 ID:GCRBwiXg0
糸の切れた操り人形のように、ギコの身体は、地面にぱたりと倒れ込む。その姿を見て、滑稽だと、俺は思った。
先ほどまで俺の事を散々痛めつけていた男が、ジョルジュという男の強さに怯え、間抜け面を下げて逃げ出し、後ろから撃ち殺されたのだ。
俺が引き起こした出来事では無いとはいえ、これを滑稽と思わずにはいられない。
「……終わったな」
, 、,.
\ i. ,. ヽ / ./ }
, -,.∧ 、-<_ / ' / ./ ,. 'ヽ
.、 /::::/ ,ヽ ,.ノ `' ��.、ヽ. ./ / /`, ' ' ./
ニ\ /::::::/./. ヽ. / \\ , ´ , ' ,. ′,.' / !
ニニ\ /:::::::::/::.. 、 /ヽ \.>ヽ ゙/ _... ´ / .'´ヽ./
二二ニヽ/::::::::::::::;.:::::::::. ` // / .; ;. ゝ '"__ 丶./ ,./ .'/
ニニニニニヽ:::::::::i:::::::::::: ,.. '"::::/ ; ; .:. ;. / //  ̄\ ./ .' ;
二ニニニニニヽ::::/:::::::::::: /::::::::::::::/ _ , i .:::. i ; // ! ,.' /
ニニニニニニニヽヽ:::::::::/、:::::::::::::;:'ニヽ 「.! ヽ,.= "l ̄ ̄l.! // ,' ′ /
ニニニニニニニi >゙}ヽニニ\::::::/ニニニl ,.-' .}、ヽ.l l l liヽ/ / . '
ニニニニニ! ̄ ̄ ハ: \ニニ\{二ニニl / l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l‐-=.._/ '
二二二ニニl l l:::. \二ニニニl、./ /.l _ l---、 ,. '´
二二二ニニニl l !:: \二二ニニV l.l l ,. --- ´ : \
二二ニニニニl l .l: ./二ニニニ/ .. - '", ,. }
二二ニニニニl } ,! ./ニニニニ,.' ´ ´ _,. _,.. --、 ノ
.
246
:
もう訂正なんてしない
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:25:43 ID:GCRBwiXg0
ジョルジュはため息をついて、コートのポケットから取り出したタバコに火を付けた。
彼が殺したのは、ギコ一人。
他のギャングたちは皆、ジョルジュの蹴りによって気を失っているようだった。
_
( ゚∀゚)「ほどいてやるよ」
ジョルジュが俺の背中に回って、取り出したナイフか何かで、俺の腕を縛り付けていた縄を解いた。
自由になった腕を見てみると、きつく締め付けられていたせいか少し血が滲んでいた。
_
( ゚∀゚)「……一本吸うか?」
っ‐
('A`)「……えっ? あ、ああ……いや、俺は持ってる……」
タバコを取り出そうと上着のポケットを漁るが、そのどこにもタバコは入っていない。
それどころか、背負っていたショルダーバッグや、ジョルジュから貰った拳銃すら、手元から消えていた。
ギコたちが、予め俺の手荷物を別の場所に置いたのだろう。
247
:
絶対にしてやるものか
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:26:33 ID:GCRBwiXg0
_
( ゚∀゚) ガサガサッ
っ゙
_
( ゚∀゚)「……こいつか?」
っロ゙
ヒョイッ
('A`) パシッ
っロ゙
ジョルジュから投げ渡されたのは、ショルダーバッグと一丁の拳銃だった。
案の定、タバコはない。どこかに落としてきてしまったのだろうか。
('A`)「……ねぇや」
_
( ゚∀゚)「そんじゃあやるよ。ラークだけどな」
っ‐゙
('A`)「……ッ、マルボロじゃないのかよ」
っ‐゙
_
( ゚∀゚)「贅沢言うなよ。ほれ」
っd゙ シュボッ
( 'A)y‐ スゥー
('A`)「はぁ……」
っ‐~~
248
:
絶対にしてやるものか
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:27:21 ID:GCRBwiXg0
_
( ゚∀゚)「悪くないだろ?」
('A`)「…………ああ、思ってたよりは美味いよ」
煙を吐き出した後に残る、口の中のタバコ葉の香りと煙の苦味。
マルボロよりも癖がなく、俺にはすっきりとした吸い心地に感じた。
('A`)「……どうして」
_
( ゚∀゚)「あん?」
('A`)「どうして、こんなところに来たんだ?」
俺がそう問いかけると、彼は意外にもばつの悪そうな表情を浮かべて、顔を伏せながらこう言った。
,ィ ヽ __ `ー′/ ヽ }、_
_ _ ,< { \ ',\ '´-- -` ./\_ -‐ '''' }7Tヽ
.....-::::::::::::::::::/:::::::::::::::| \} \ ./ ヽ ヽ .// .|:::::ヽ
:::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::| >._ \ / \ ./ / !:::::::\
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::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::| \/ }////} Ⅵ. \ }:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
「……ちょっとした、野暮用だよ」
.
249
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:28:00 ID:GCRBwiXg0
格好つけているのに、どこか頼りなく見える。
そんな彼の姿が、俺には何故だか羨ましく思えた。
_
( ゚∀゚)「さあ、とっとと行けよ。俺はこいつらの後始末をしなきゃなんねぇんだ」
('A`)「…………」
その後始末というのが一体どういう内容なのか、俺のちっぽけな脳味噌でいくつかのパターンを想像はできても、どれも確信には至らない。
しかし、俺はそれを尋ねることもしなかった。いずれにしても、彼がそれを俺に教えることは無いのだという確信だけはあったからだ。
結局のところ、俺たちのような人間は、自ら生き方を模索しなければならない。
彼は俺に手を差し伸べた。その時点で、彼は役目を終えたのだろう。
彼のやり方、生き方を、俺が倣う必要はないのだ。
('A`)「……ありがとな、助けてくれて」
_
( ゚∀゚)「礼はいらねーよ」
('A`)「……そうか」スクッ
痛む足を抑えながら、ゆっくりと立ち上がる。
背負ったバッグがやけに重たく感じたのは、肩や腰にもダメージを受けたからだろう。
250
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:28:35 ID:GCRBwiXg0
('A`)「……またあんたと、どこかで会えるかな」
_
( ゚∀゚)「さぁな」
('A`)「……ま、そうだよな」
踵を返して、歩き出す。
俺は、彼に感謝していた。
無駄になるはずだった命を、救ってくれたのだ。
ギコを殺して追手を失くすという、俺の目的を代わりに成し遂げてくれたのだ。
だが、彼にこれ以上お礼の言葉を投げかけるのは、この状況に相応しくはないのだと、俺は気がついていた。
('A`)「…………」
ジョルジュによって突き破られ、地面に虚しく転がった扉を踏み越えて、この建物を抜けようとした。その時だった。
「おい、ガキ。名前はなんて言うんだ?」
彼は俺にそう問いかけた。
その言葉を聞いて俺は何故だか頬を緩ませそうになったことに気がついて、振り返ろうとした顔を中途半端な位置で止めて、その問いに答えた。
('A`)「……ドクオ」
.
251
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:29:32 ID:GCRBwiXg0
その一言を言い終えて、俺はまた歩きだした。
「……また会おう、ドクオ」
建物を抜けた時に彼が言ったそんな言葉が、俺は嬉しかったのだ。
.
252
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:30:25 ID:GCRBwiXg0
.................... ........:::::::::::............ .........................................:::::::::::::::::::::::::::::
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_,,|,,__,,|,,__,,| ゙'';;;;|; γ ̄| ̄ヽ γ ̄| ̄ヽ ;;'
,,__,,|,,__,,|,,_|; '| l!┼┼┼l! l!┼┼┼l! [「二二二二二
_,,|,,__,,|,,__,,|;; | l!┼┼┼l! '7;, l!┼┼┼l! ';; || | ̄ ̄ ̄|| ̄
,,__,,|,,__,,|,,_|゙;;;, | ;; l!┼┼┼l! l!┼┼┼l! || |┌─┐||┌
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_,,|,,__,,|,,__,,| ;;;;;;;;;;;| `´ ̄ ̄`´ へ `´ ̄ ̄`´ ::|| |└┘ ||
,,__,,|,,__,,|,,_|;; / | メ ;; ;;''; _|| |___||_
_,,|,,__,,|,,__,,|/../| ';, ;; ,,;;''| |ニニニニニニニニニニ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|/ .| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |ニニニニニニニニニニ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Llニニニニニニニニニニ
________________________________
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..... .,,,........
...,,....... ..... ......,,,,... ...,,.
.
253
:
これはひどい
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:31:26 ID:GCRBwiXg0
翌日の朝、俺は見知らぬ街を歩いていた。
昨夜から歩き続けてたどり着いた場所だが、俺が昨日まで暮らしていた街に比べると、幾分かマシに思える場所だった。
通勤のためか、忙しそうに行き交う人々を縫うようにして歩きながら、俺は朝食が取れる店を探していた。
この朝早くからでも、カフェあたりなら開店しているところもあるだろうと思っていたのだが、これがなかなか見つからない。
('A`)「……こりゃ昼まで待つしかないか……?」
そう諦めかけた時、すぐ近くからカランという鈴の音が聞こえた。
音の方へ振り向いてみると、ちょうど開店したばかりのカフェの扉を開けている人の姿があった。
これは都合がいい。
俺は前の人を倣うように、迷わずそのカフェの扉を開けて、中に足を踏み入れた。
254
:
これはひどい
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:32:26 ID:GCRBwiXg0
カランカラン
いらっしゃい、という声を聞き流しながら、俺はテレビの近くの椅子に腰をおろした。
店員がすぐに注文を聞きに来るので、俺はメニュー表の中から適当なものを選んで、それを伝えた。
伝えた後で思い出した。俺に朝食を取れるだけの持ち金など、あっただろうか。
焦る気持ちを抑えながら、恐る恐るショルダーバッグを開けた。
そこに入っていたのは。
一丁の拳銃と、数十枚の1万札だった。
(;'A`)「えッ……!?」
俺がジョルジュに貰った拳銃は、ジャケットの内ポケットにしまってある。
バッグに入っていたこの拳銃は、彼がギコを殺したときに使っていたものだ。
そしてこの金は、一体。
255
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:32:59 ID:GCRBwiXg0
いや、考えるまでもない。
ジョルジュがこのバッグにひっそりと入れたに違いないのだ。
思い返してみれば、彼がこのバッグに物を入れるタイミングはあった。
俺にバッグを投げ渡す、その直前だ。
( A )「……なんだよこれ……」
冗談じゃない。
どうして、俺のような見も知らぬ子供に、ここまでする必要があるんだ。
( A )「…………」
その理由は、いくら考えたところで、俺にはわかるはずもなかった。
生き方を模索しなければならない、だって?
彼のやり方を、生き方を見て、俺が倣わないわけがないじゃないか。
( A )「…………ありがとよ……」
あの男に、ジョルジュという男に、救われた命だ。
死んでも生きなくてはならない。
俺は心の何処かで、そんな使命感を覚えていた。
256
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:33:32 ID:GCRBwiXg0
朝食がカウンターに置かれ、それを口に運ぶ。
施設の食事に比べれば悪くない味だ、なんて考えながらテレビを眺めていると、朝のニュース番組が始まった。時刻は9時に回っていた。
いち早く取り上げられたニュースは、俺が暮らしていた施設の事だった。
(;'A`)「…………」
しかし、おかしい。
画面下に大きく表示される見出しには、“施設の児童、大量殺人”と書かれていた。
大量殺人? いや俺は、たった二人しか殺していないはずだ。
あの下卑た笑みを浮かべた施設の先生と、ミセリを買い取った外道。
一体どうして、それが大量殺人だと表記されるのか。
その真相は、すぐに明らかになった。
児童2名が行方不明、ほか22人が死亡。
.
257
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:34:05 ID:GCRBwiXg0
あの施設には、俺やミセリ、先生を含めて、全部で25人いたのだ。
養子縁組が済されたミセリを除いて24人。
行方不明である俺ともう1人を除いた22人が、殺された。
(;'A`)「嘘……だろ…………」
子供たちを殺した犯人は、もう一人の行方不明者に違いないのだ。
キャスターが暗い表情で言葉を続け、やがて子供とはいえ大量殺人の容疑者である俺ともう一人の顔写真が、テレビに大きく映し出された。
_________________
| ______________ |
| | News Gero 9:04 | |
| | ___ ___ | |
| | | | | | | |
| | |. ('A`) | | (’e’) | | |
| | |____| |____| . | |
| | ドクオ セントジョーンズ | |
| | (14) (11) | |
| | 施設の児童、大量殺人 | |
| |_____________| |
| :::::::: O oo oo tony --..--. :::::::: |
|________________|
それは、俺とセントジョーンズの写真であった。
(;'A`)「――――ッ!!」
258
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:35:15 ID:GCRBwiXg0
何故だ。
何故、セントジョーンズが。
子供たちを、皆殺しにしたのだ。
“自由に生きてくれ”なんて言ったのが、間違っていたのか。
(;'A`)「クソッ……クソッ……!!」
食事が喉を通らなくなり、俺はフォークをトレイに置いた。
ふと見上げると、店員の一人が俺の顔をじっと見つめている。
まさか、俺が容疑者だと気づいたのか?
.
259
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:35:49 ID:GCRBwiXg0
脳内に、様々な思考が駆け巡る。
あの時、施設に金を置いていかなければ。
しかし、ミセリだけは助かった。
いや、他の子供たちはどうでもいいというのか。
なぜ俺まで、大量殺人の容疑者扱いなのだ。
周りの目を気にしながらどうやって生きていけばいいのだ。
いずれこうなる事はわかっていたはずなのに、心の奥底から込み上げる悲しみに溺れて、判断が定まらない。
(;'A`)「…………ッ」
っロ゙ ヒョイッ
カウンターの上に万札を置いて、俺は逃げるように店を出た。
俺を呼び止める声も聞こえたが、構わず俺は走り出した。
260
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:36:22 ID:GCRBwiXg0
「ハァ……ハァ……ッ!!」
(;'A)
ノ/-/o
j._/| ダッダッ
;.、ノイ、)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺が、間違っていたんだ。
「ハァ…………うぐ……ッ!!」
、 ,
;.、vr⌒ち(;'A)っ ドサッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
261
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:37:14 ID:GCRBwiXg0
俺が、子供たちを殺させてしまったのだ。
「……クソッ!!」
(;'A)
/,-|、 スクッ
j._/U
.,」^、〉 .,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
:.|:. |/:.:.:.:/|:.:.:リ xー- 、 {7:.:.リ
八/:.;|:.:/ .|/ } /::⌒ヽ._ \ 》:./
イ从:|:/ / し /_:::::::::::::::::アヽ7 .//
:/:./ハ 弋 L\::::::::`¨ア /イ
:::/::::::::ヽ ミヽ___:/ /
::: ::::::.:.:\ `ー ' /
: ;.:.:.:.:.:> . ー- /
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:> . ./
:.:.:.:.:.:::::;:∠ア ー ´
....::::::::::::/ ヾ\
::::::::: :::/ /\\ー- 、
「くそったれ……!!!」
.
262
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:37:48 ID:GCRBwiXg0
走り続けて痛み始めた脇腹を押さえながら、それでも走り続けた。
どこへ向かえばいいのか――――いや、この足は一体どこへ向かっているのか。
俺には、わからなかった。
.
263
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:39:14 ID:GCRBwiXg0
.
264
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:39:48 ID:GCRBwiXg0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です
――少年編――
The End
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
265
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:43:46 ID:GCRBwiXg0
くぅ〜疲れましたw これにて完結です!
実は、紅白作品投下したら続編の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りの大型AAで挑んでみた所存ですw
以下、ドクオのみんなへのメッセジをどぞ
('A`)「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」
('∀`)「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」
(;'A`)「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」
(*'∀`)「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」
川 'A`)「・・・ありがと」ファサ
では、
('A`)、('∀`)、(;'A`)、(*'∀`)、川 'A`)、俺「皆さんありがとうございました!」
終
('A`)、('∀`)、(;'A`)、(*'∀`)、川 'A`)「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」
本当の本当に終わり
AAすみませんでしたもう二度とやるもんか
266
:
名無しさん
:2016/05/04(水) 09:57:56 ID:0UTfhG6g0
おつー
267
:
名無しさん
:2016/05/04(水) 10:18:42 ID:IQTsYDUc0
かっこいいのに所々のAAで笑っちまう
乙
268
:
名無しさん
:2016/05/04(水) 12:05:46 ID:Ck8.95Ag0
歯車を彷彿とさせるドクオだな
おつ
269
:
名無しさん
:2016/05/04(水) 20:24:22 ID:5dagSCsw0
乙!
ダークで救いないかと思ったけどミセリ生きててホッとした
モチベをあげなさい
現在でも( ^ω^)出会い編でもいいからまた続編を書くのです
期待していますよピザの人
270
:
名無しさん
:2016/05/08(日) 21:32:38 ID:E2e.so.c0
乙
施設の子供たちの件は救ったと思っただけに辛いな
271
:
名無しさん
:2016/07/24(日) 15:10:37 ID:sJGqovJ60
モチベは上がらなかったのか...
ブーンとの出会いの話読みたい
272
:
名無しさん
:2019/04/01(月) 17:06:54 ID:HPwFtaB20
面白いスレ見つけたら終わっていた悲しみ
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