したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

('A`)便利屋ドクオの野暮用です

1 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:08:48 ID:BKUgdd360
('A`)「ったくよ……」

 楽器や銃、スピーカーに囲まれた狭苦しい部屋。
奥に行けば寝室もあるが、俺は主にこの部屋で過ごしていた。

 何故なら、ここは俺の店だからだ。


('A`)「開店日だってのに、客は一人も来やしねぇ……」

 仕方なのない事だ。
 この街“ソウサク”は、決して平和なわけじゃあない。
だが何か厄介事があっても、俺のような便利屋に仕事を頼むくらいなら、近くのバーで酒を飲んで面倒ごとを忘れようと考える頭の悪い連中ばかりだ。

 俺には都合の悪い街だと言える。
友人にも、“よくこんな所で便利屋なんか開くね”、と呆れられるくらいだ。

 まあ、暇なのは嫌いじゃないんだがな。


('A`)「しっかし……金がねぇのは辛いとこだ」スッ

 机に置かれたピザを一切れ、口に運ぶ。
先程近くの店から買ってきたばかりで、熱を持ったチーズがドロリと溶けて黒い机に強いコントラストを残した。


('A`)「……うめぇな」

 ずっとこの調子で客が来なければ、いずれはピザを食う金すら尽きる。
それだけは避けたい。

6 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:13:10 ID:BKUgdd360
('A`)「……そんなに説教がしてぇんなら、コイツでてめぇの額にもう一つ口を作ってやろうか?」

(;-@∀@)「ヒッ……あ……」

('A`)「とっと帰れ」

(;-@∀@)「しし、失礼しました……!」


 扉が強く開かれる音だけを残して、男はよろけながら去っていった。
ご丁寧に、パンフレットを一冊落として。


('A`)「…………」

('A`)「客は来ねぇのかよ……」



 気づけば、夕日が長い影を作っている。
そろそろ日が暮れる頃だ。


('A`)「もうちょっとだけ待つか……」

 再び机に戻り、残りのピザを食べ終えた。
また腹が減ったら、晩飯を買いに行こう。そんな事を思った。



.

7 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:14:28 ID:BKUgdd360
――夜――

( ^ω^)「案外ギターって楽しいもんだお!」

 ブーンがアンプに繋いだギターを煩く鳴らしながら、そう言った。
下手なものを聞いてるのは、こんなにも苦痛だったとは。

('A`)「やめろやめろ、近所迷惑だろうが」

( ^ω^)「近所なんて気にする柄かお」

('A`)「俺がうるせーと思ってんだよ」

( ^ω^)「ちぇっ」

 そう言われてブーンは、アンプの電源を落とし、ギターを置いてソファーに寝転がる。

 言われてすぐに辞めたところを見ると、本当はそれほど楽しさを見出だせなかったのだろう。

('A`)「いい加減帰れよ」

( ^ω^)「ドクオが店仕舞いするまで居座るお」

('A`)「今日はもう閉店だ」

( ^ω^)「あーここは一体何屋さんだったんだおー」

('A`)「客がこねーからって馬鹿にすんじゃねーよ」

 近くのバーでテイクアウトしてきたフィッシュアンドチップスを食べながら、俺は漫画を読んでいた。
ブーンもやる事がなくて暇になったのか、俺が読んでいる漫画を一巻から読み始めていた。



.

8 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:15:25 ID:BKUgdd360
 それから三十分も経った頃、入り口の扉がノックされる音が、この静かな部屋に響いた。


('A`)「……開いてるぜ」


 そう言うと、扉を叩いた人物はゆっくりと姿を表した。


ζ(゚ー゚;ζ


 現れたのは意外にも、女性だった。
年齢は二十歳前後、自分と変わらないくらいだろうか。


('A`)「何の用だ? レストランなら50m先にあるが」

ζ(゚ー゚;ζ「……困ってるの……」

('A`)「……ほう」


 彼女の表情を見る限り、どうやら仕事の話のようだ。
俺は手に持っていた漫画を放り投げて、彼女の顔をじっと見つめた。


ζ(゚ー゚;ζ「変な男につけられてるの。数日前からなんだけど、今日もついてきてて……」

('A`)「……なるほど。んで偶然本日開店の便利屋の看板を見つけて、扉をノックしたってわけか」

ζ(゚ー゚;ζ「う、うん……」

('A`)「……で?」

ζ(゚ー゚;ζ「……え?」

9 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:16:33 ID:BKUgdd360
('A`)「え? じゃねーよ。看板見たんだろ?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん……」

('A`)「ここは店だ。依頼人は報酬を払わなきゃあならない。まあもちろん、後払いで結構だが」

(;^ω^)「そんな態度じゃ客も来ないお」

 口を挟む男を無視し、俺は話を続けた。


('A`)「もっとも、金を払わずにトンズラしちまったら……わかるな?」

ζ(゚ー゚;ζ「……いくらくらい……?」

('A`)「……ほら見ろよブーン。ちゃんと話がわかってるじゃねーか」

( ^ω^)「…………」

('A`)「……払えるだけで構わんさ」

ζ(゚ー゚;ζ「……えっ?」

( ^ω^)「やっぱりだお」

('A`)「なんなんだよ、いちいち口を挟みやがって」

( ^ω^)「おっおっ、そのちょっとした優しさがドクオらしいと思ったんだお。それなら最初から優しくすればいいのに」

('A`)「うっせーな」

10 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:17:36 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚;ζ「……いくら払えるかわかんないけど……報酬は出すから……」

('A`)「じゃ、交渉成立だな。ブーン、銃は持ってるな?」

(;^ω^)「おっ!? なんでブーンに聞くんだお!?」

 ブーンはそう言いながらも、腰のホルスターを触り銃があるかどうかを確認していた。

('A`)「暇なんだろ、付き合えよ」

( ^ω^)「……しょうがないお。今日だけだお」

('A`)「ああ。……えっと、名前はなんていうんだったか?」

ζ(゚ー゚*ζ「あっ、まだ教えてなかったね。私はデレだよ」

('A`)「OK、デレ。俺はドクオ、こいつはブーンだ。あんた運がいいぜ。その辺のチンピラよりゃぁよっぽど腕の立つ二人組だ」

ζ(゚ー゚*ζ「ほんと? じゃあお願いしたいところだけど……大丈夫なの?」

('A`)「……ハッ、そんなもん“朝飯前”だよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……ちょっと頼もしいね……」

11 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:18:10 ID:BKUgdd360
('A`)「だろ? ……さて……どうやるかだが……」

 俺はゆっくりと椅子から立ち上がり、机の上に置かれたままのピザの箱を袋に詰め直して、それをデレに手渡した。

('A`)「今日はうちの開店日でな。まだここが何をやっているかはあんま知られてないだろう。って事で、こいつを持って家に帰れ」

ζ(゚ー゚*ζ「……それでいいの?」

('A`)「ああ。あんたをつけてる奴を見つけたら、とっちめてやるからよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……うん、わかった。信用するからね?」

('A`)「安心しろ」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、よろしくね」

 ピザの空箱が入った袋を整えながら、デレは扉を開けて静かに店から出ていった。

.

12 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:19:14 ID:BKUgdd360

 俺とブーンは裏口から出て、デレを尾行している人物を探していた。

 難しい事じゃない。この時間に街を彷徨く奴はそういない。
街灯の少ない暗闇だが、足音や月明かりを頼りに、すぐに犯人を見つけることができた。


( ´ー`)「…………」

('A`)(なんだ、相手は一人か……)


 デレの数十メートル後ろを、ゆっくりと歩く男。
体格こそ普通だが、何故だが妙に気になる服装をしていた。


('A`)(あの服、どっかで見た気がするんだよな……)


 しかし、暗闇かつ遠距離からではしっかりと視認する事ができない。

 ――まあどうせ、すぐにわかる事だ。
俺とブーンは足音を立てないよう、ゆっくりと男に近寄った。


('A`)「ブーン、お前は遠回りしてデレを保護してこい。
タイミングを見計らえよ」

( ^ω^)「わかったお」

 そう言うとブーンは、路地に入って駆け足でデレの元へと向かっていった。



('A`)(……今日は涼しいな)


 このくらいの気温なら、寝苦しいこともないだろう。
早く仕事を済ませて、ベッドに横になりたいものだ。

.

13 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:20:31 ID:BKUgdd360
('A`)(……そろそろか)

(;´ー`)「…………?」


 数メートル手前まで近寄ると、男が不審な気配を感じ取ったのか、表情をこわばらせながらこちらに振り向いた。


('A`)「よう、今日はいい夜だな」

(;´ー`)「はっ……えっ……!?」

('A`)「酒で熱った身体にゃ、涼しい夜風が丁度いいねぇ。あんたどうせ、そこのバーで飲んでたんだろ?」

(;´ー`)「あ、ああ、よくわかったな。あそこのバーテンダーは最高のカクテルを作るからな」

('A`)「ああ。あそこは最高だ」


 気づかれないように何気なく遠くを見ると、ブーンがデレに声をかけているのが確認できた。

 頃合いだ。


('A`)「しっかし……おかしいな」

(;´ー`)「……何がだ?」

('A`)「今日は、あのバーテンダーは休みだったはずだが……」

(;´ー`)「……ッ!!」

14 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:21:20 ID:BKUgdd360
('A`)「あんたは一体なんの話をしてたんだ?」

(;´ー`)「……てめぇこそ何なんだ……?」

('A`)「俺はあそこで便利屋を営んでいる者だ」

(  ー )「…………そうか。そういう事か……」


 チャキン、と鋭い音が僅かに聞こえた。
男の右手は、背中へ回されていた。



( ´ー`)「ならとっとと死ねや!!」



 男はそう叫ぶのと同時に、短いナイフを俺の腹目掛けて一直線に付き出してきた。


('A`)「甘いな」


 火花が散ったように見えた。恐らく気のせいだろうが、そう思ってしまうほどの甲高い音が響いていた。

 男のナイフは、俺の拳銃のグリップエンドに当たって動きを止めていた。



 正確には、俺がそうしたのだ。


.

15 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:22:26 ID:BKUgdd360
('A`)「叫んだらタイミング取りやすくなっちまうだろ? 最初の一発で仕留めたいんなら、次からはやめておく事だ」

(;´ー`)「――ッ!!」

('∀`)「もっとも……次はねぇけどな……」


 男が手元に引いたナイフを、もう一丁の愛銃で撃ち抜く。
小さな刃に亀裂が入り、粉々になっていくのが見えた。


(;´ー`)「なっ……!?」

('A`)「悪いけど、俺の射撃は正確なんだ」


 距離、射角、跳弾。あらゆる要素を一瞬で計算し、目標を確実に撃ち抜く。それが俺の特技だった。

 もっとも、この距離ではあまり意味を成さないが。


('A`)「さて、お前はなんであの女をつけてたんだ?」

(;´ー`)「……女なんて……しらねーよ……」

('A`)「そうか」

(;´ー`)「――ッ!」


 男の顎に、銃口を突き当てる。
そしてゆっくりと、撃鉄を起こした。


.

16 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:23:41 ID:BKUgdd360
('A`)「もう一度聞く。なんであの女をつけてた」

(;´ー`)「…………」

(; ー )「……しらねーよ」

('A`)「……そうか」


 引き金に、グッと力を込めた。


('A`)「何も言えねーんなら、この口はいらねーな」


 大きな音を立てて、愛銃が火を放つ。
上空に飛び散った血液が月明かりを反射させて、キラキラと煌めいていた。


(  ー )

('A`)「……役に立たねぇ男だ……」


 銃に付着した血液を振り払って、ホルスターに戻す。
返り血はできるだけ浴びないように心がけているが、銃を突き付けている場合だけはどうしようもなかった。


( ^ω^)「ドクオー」


 遠くの方から俺の名前を呼びながら、ブーンとデレが走ってきていた。
銃声を聞いて、終わったとわかったのだろう。


( ^ω^)「終わったかお」

('A`)「ああ。この通りな」

 ポケットからタバコを取り出しながら、血溜まりを作る男の死体に銃口を向けてそう言った。

17 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:25:44 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚;ζ「なっ……えっ……!?」

('A`)y‐「どうした?」

ζ(゚ー゚;ζ「こ、殺してなんて言ってないのに……!! そんな……!!」

('A`)「喚くなよ。この街に住んでりゃ、死体ぐらい見たことあるだろうが」

ζ(゚ー゚;ζ「そ、そうだけど……でも……」

('A`)y‐「でも?」

ζ(゚ー゚;ζ「なんで殺しちゃったの!? 捕まえるとか脅すとか、方法はあったでしょ!?」

('A`)「……はぁ……」


 タバコの先に溜まった灰を捨て、もう一度咥える。
フィルターに付着していた唾液が冷えていて、少しだけ不快な気分になった。


('A`)「あのな……。捕まえるとか脅すとか……ガキの遊びじゃねーんだよ。それにナイフを出されてんだ。殺す以外ねーだろ」

('A`)「オマケにこいつは何も喋らないときた。だから生かしておく必要がなかった。Do you understand?」

ζ(゚ー゚;ζ「…………そんな……」

18 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:26:56 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「……仕方ないお。ブーン達は、そういう人間だから……」

ζ(-、- ζ「…………そう……」


 デレは拳を握りしめて、俯いた。

 確かに、彼女には悪いことをしたと思う。しかし俺には、そういうやり方しかできないのだ。


('A`)「……それよりもよ、こいつに見覚えはねーのか?」

ζ(゚ー゚;ζ「……まったく知らない人だよ……」

( ^ω^)「……お? この服どこかで……」

ζ(゚ー゚;ζ「……あっ!」

('A`)「……?」

ζ(゚ー゚;ζ「この服……創作教団の人たちが着てたのと同じだ……」

('A`)「……! ……ほぉ……」


 言われてみれば確かに、夕方店にやってきた男の着ていたものと同じだ。
既視感の謎は解けた。

19 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:27:54 ID:BKUgdd360
( ^ω^)「なんで創作教団なんだお……?」

('A`)「こいつはなーんか臭うぜ……」

( ^ω^)「……だお……」

ζ(゚ー゚;ζ「ね、ねぇ。この人殺しちゃったら、また私創作教団の人に狙われちゃうんじゃ……」

('A`)「かもな」

ζ(゚ー゚;ζ「……ッ」

ζ(゚ー゚;ζ「そんな……今度は殺されちゃうよ……!」

('A`)y‐「……かもなぁ」


 二本目のタバコに火をつけて、煙を吸い込む。
タバコの先から揺れ動きながら昇る紫煙を、ただ見つめていた。


( ^ω^)「……ドクオの店に泊まればいいお」

('A`)y,.、ポロッ 「……は?」

ζ(゚ー゚*ζ「……! いいの……!?」

('A`)「いやいや何言ってんだ。俺一人で定員オーバーだ」

( ^ω^)「あの広さなら一人くらい余裕だお」

('A`)「うさぎ小屋かなんかと勘違いしてんのか?」

20 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:28:38 ID:BKUgdd360
ζ(゚、゚;ζ「お願い……! 一人はこわいの……!」

('A`)「…………」

ζ(゚、゚;ζ「報酬なら払うから……!」

(*^ω^)「ヒュ〜♪」

(*'A`)「…………」

ζ(゚、゚ ζ「そういうのは無いけど」

('A`)「…………」

( ^ω^)「こう見えてもドクオ、童貞なんだお」

(A` )「っせーな……うっせーな……」

ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ、なんか意外……」

(;'A`)「やめろやこんな話!!」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、泊めてくれる?」

21 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:29:15 ID:BKUgdd360
('A`)「……チッ……わーったよ。ただし、寝るのはソファーだ」

ζ(゚ー゚*ζ「……うん!! ありがとう!!」

( ^ω^)「よかったお」

('A`)「……はぁ……」


 ため息をつきながら、落としたタバコを拾い直した。
ただでさえ金がなくて、タバコ一本ですら勿体無いのだ。
金になるのなら、引き受けるしかない。


( ^ω^)「じゃあブーンは、ちょっと創作教団について調べてみるお」

('A`)「そいつは助かるぜ。よろしく頼んだ」


 俺よりもブーンの方が、いろいろとコネクションを持っている。そういう意味ではとても頼りになるやつだ。
明日には何かしらの情報を持ってきてくれるだろう。

 軽くブーンに手を振って、俺とデレは店へと戻った。




.

22 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:30:16 ID:BKUgdd360

('A`)「……さて、シャワーも浴びたし、寝るとするか」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだね」

('A`)「……ベッド使うか?」

ζ(゚ー゚*ζ「いやいいよ、悪いし……」

('A`)「これでも俺は紳士なんだよ」

ζ(゚ー゚*ζ「……ブーンの前では適当に扱ってたくせにー」

('A`)「それはそれ、これはこれだ」

 部屋の電気を消しても、月明かりでソファーの位置はわかった。
俺は靴を脱いでソファーに寝転がり、近くのテーブルに銃を置いた。

ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとね」

('A`)「ああ」

23 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:30:50 ID:BKUgdd360

 眠気は無い。ただ目を閉じている。
しばらくしてベッドの軋む音が聞こえた。

 時計の秒針が進む音だけが、この暗闇を支配している。



('A`)「……お前さ」

ζ(゚ー゚*ζ「ん?」

('A`)「この街には似合わねーように見えるんだが」

ζ(゚ー゚*ζ「……そうかな」

('A`)「ああ。いかにも、いいとこのお嬢さんって感じだ」

ζ(゚ー゚*ζ「…………」

 しばらくの間、彼女は何も言わない。
寝返りをうつ布擦れの音が聞こえた時、ようやっと口を開いた。

ζ(゚ー゚*ζ「お父さんは、殺されちゃったから」

('A`)「……殺された?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん。まあ有名人だったから、いろいろと恨みも買ってたんだと思う」

('A`)「……ふーん」

24 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:31:53 ID:BKUgdd360
ζ(゚ー゚*ζ「そこから紆余曲折あって……この街に越して来たの。半ば逃げるようにして」

('A`)「なるほどね。じゃあやっぱりこの街の人間じゃあないわけか」

ζ(゚ー゚*ζ「……そうなるね」

 彼女の父親がどういう人物だったのか。また、そこから何があったのかは聞かない。
ただ、彼女がどういう人生を送ってきたのかが少しでもわかればそれで良かった。
信頼に値するかどうかの判断がつく。

 そして彼女は嘘を付いているようには思えなかった。
この街でつく嘘にしては、ちょいと臭すぎる。
信頼してもよさそうだ。

('A`)「ところで、お前のバッグからはみ出してた服、あそこのレストランの制服だろ? ウェイトレスでもやってんのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……よくわかったね。そうよ、あそこで働いてるの」

('A`)「ふーん……。食いに行ったことはねぇが、近いうちにお邪魔するか」

ζ(゚ー゚*ζ「外観はちょっとあれだけど、結構良いお店なんだ。ナポリタンが絶品だからぜひ来るといいよ」

('A`)「そいつはいいな。んじゃ、明日の昼飯はそこにすっか」

ζ(゚ー゚*ζ「……うん、そうだね!」




.

25 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/27(日) 23:32:46 ID:BKUgdd360
とりあえず今日はここまで。
それほど長くないのでお付き合いお願いします。

26名無しさん:2016/03/28(月) 00:18:13 ID:z2QwqOVs0

すきな雰囲気だ

27名無しさん:2016/03/28(月) 01:06:26 ID:r6FKQVj.0

ロックだな

28名無しさん:2016/03/28(月) 01:10:52 ID:BKZZ.E4s0
ベッタベタこそ至高の俺にはたまんない、乙

29名無しさん:2016/03/28(月) 21:25:23 ID:f82yguPA0
この雰囲気いいね
しかも続き物と来た
続きに期待!

30 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 05:56:50 ID:xJ4vuolo0
レスありがとうございます!
一作だけじゃ物足りないな…と思ってこっちも書いたんですが、書いて正解でした。

分割で申し訳ないですが、投下します。

31 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 05:57:33 ID:xJ4vuolo0
――翌日・午後――

( ^ω^)「お待たせたお」

 入り口の扉が開く音と同時に、ブーンが姿を表した。
ビニール袋を手に提げて。

('A`)「よう」

( ^ω^)「あ、これ差し入れだお」

 ブーンが放り投げてきたのは、コーラの缶。
俺が好きな安物銘柄のものだ。

('A`)「おっ、気が利くな」

( ^ω^)「デレもコーラでよかったかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、うん。私は何でも。ありがとね」

( ^ω^)「いいんだお」


 栓を開けると小気味のいい音が鳴り、穴から少しだけ泡が立つ。
そして俺は一気に飲み干した。
強烈な炭酸が口、喉、胃を刺激する感覚が、たまらなく好きだった。

32 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 05:58:14 ID:xJ4vuolo0
( ^ω^)「それ一気飲みできるのほんと頭おかしいお」

('A`)「喉が渇いてたんだよ」

(;^ω^)「そういう問題じゃ……」

('A`)「それより、どうだった? なんかいい情報は入ったか?」

( ^ω^)「おっ、そうだったお」


 ブーンが机に置いた一枚の紙。それには、創作教団の教会への地図や、活動内容などが大まかに記されていた。


( ^ω^)「創作教団は、三ヶ月前急にこの街に教会を立てた変な奴らだお。やってる事は普通の教会と何ら変わりは無いみたいだお」

( ^ω^)「ただこの街だとあんまり教徒は得られないみたいだお」

('A`)y‐「ま、当然だわな」

( ^ω^)「そこまではいたって普通の話。ここからが面白いんだお」


 ブーンはその大きな身体をソファーに預けてから、話を続けた。



( ^ω^)「――女性を、誘拐しているらしいお」


.

33 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 05:59:26 ID:xJ4vuolo0
('A`)「……ッ……」

ζ(゚ー゚;ζ「誘拐……?」

( ^ω^)「ある人が見たらしいんだお。夜中に街を歩いていたら、教団の服を着た男が、女を押さえつけてる所を……」

( ^ω^)「それを見た人はびっくりしちゃって、何もできずに逃げちゃったらしいお。でもこんな話を誰に言ったらいいのか困ってたみたいだったお」

('A`)y‐「……ほー……」

ζ(゚ー゚;ζ「じゃ、じゃあ私も……そのうち誘拐されてたかもしれないのね……」

('A`)「その話が本当なら、そういう事だな。もっとも、誘拐されたあとに何をされるのかはわからんが」

ζ(゚ー゚;ζ「…………」

('A`)「ところでお前、この話をどこで?」

( ^ω^)「おっおっ、昼間のバーは暇な連中が多いんだお」

('A`)y‐「ふーん……」

34 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:00:23 ID:xJ4vuolo0
 仮にも聖職者である教団の人間が女性を誘拐していたなんて話を、誰が信じるだろうか。
教団の事が気に入らない酔っぱらいの世迷い言としか思われないだろう。

 だが、昨日の出来事と合わせてみれば、信憑性は高い。


('A`)「……ま、よくわかったぜ」


 タバコを灰皿に押し付けて、机の中から二丁の愛銃を取り出した。


('A`)「それだけわかりゃあ、教会に乗り込むだけだ」


 片方の銃のマガジンリリースボタンを押して、マガジンを取り出す。


('A`)「……あれ?」


 ――いや、マガジンが出てこない。


('A`)「出てこねぇぞ?」

(;^ω^)「おっ、昨日からマガジン入れっぱなしかお」

('A`)「いやすぐシャワー浴びたかったし……ってかマジで出てこねぇんだけど……」

( ^ω^)「ちょっと見せてくれお」


 ブーンに銃を渡すと、マガジンを取り出すためにいろいろと試行錯誤しながらも、最終的にグリップエンドを見てこう言った。


(;^ω^)「……いいガンスミスを紹介するお」




.

35 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:01:40 ID:xJ4vuolo0
――一時間後――

( ^ω^)「ブーンだおー。ちょっといいかおー」

「あ、ブーン? ちょっと待ってねー」


 俺達は、店から車で数分の所にある、小さな店に来ていた。
ブーンがよく話していた、“いいガンスミス”の店だ。
隅っこにある大きな机には、工具や部品が散乱していた。


ξ゚⊿゚)ξ「お待たせー。って、今日は一人じゃないのね」


 店の奥から現れたのは、エプロンを纏った金髪の女性だった。

 ――彼女が、“いいガンスミス”?


( ^ω^)「おっおっ、久しぶりだおツン。今日見てもらいたいのはブーンじゃないんだお」

('A`)「ああ、俺の銃なんだが」


 銃を手渡すと、ツンと呼ばれた彼女は直ぐにその状態を確認し始めた。
正直、俺は銃に関する知識を殆ど持っていないため、彼女が何を見ているのかあまりわからなかった。

36 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:02:14 ID:xJ4vuolo0
ξ゚⊿゚)ξ「……ちょっとこれ、あまりにも酷すぎるんじゃない?」

('A`)「……ああ、昨日グリップエンドでナイフを受けちまったから、それのせいかもしれねぇ」

ξ゚⊿゚)ξ「それだけじゃないわよ。バレルは歪んでるし、イジェクターは殆どダメになってるじゃない。よくこれで使えてたわね」

('A`)「イジェクター……?」

ξ゚⊿゚)ξ「排莢するための装置よ」

('A`)「なるほど」

ξ゚⊿゚)ξ「……一体どうやったらこんな状態になるのかしら……。久々よ、こんな酷い銃を持ち込まれたのは」

('A`)「そんなに言わなくてもいいだろ」

ξ゚⊿゚)ξ「だって事実だもの。しっかしよく見ると古い銃ね……。この銃に思い入れとかないわけ?」

('A`)「……ねーわけじゃねぇけど……」


 昔を思い出す。
この銃は俺が子供の頃に、恩人から貰ったものだ。
思い入れがないわけではない。

37 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:02:58 ID:xJ4vuolo0
ξ゚⊿゚)ξ「ならもうちょっと大切に扱いなさいよね。他に銃は?」

('A`)「ああ、もう一丁あるが……」

ξ゚⊿゚)ξ「そっちも治すわよ」

('A`)「よくわからんが頼んだ」

ξ゚⊿゚)ξ「すぐ終わらせるから、待ってて」


 カチャカチャと音を立てて、ツンは俺の銃をバラしていく。
今までにも、知り合いにメンテナンスをしてもらった事はある。
見慣れた光景だが、やはり俺の頭で理解するには知識が足りないようだった。


ξ゚⊿゚)ξ「どっちが右用?」

('A`)「え? ああ、アウターバレルが銀色の方。バレルが黒色の方は左」

ξ゚⊿゚)ξ「了解。ちょっと時間かかるかも」

('A`)「ああ……見てていいか?」

ξ゚⊿゚)ξ「いいわよ別に」

( ^ω^)「ブーンたちは漫画でも読んでるお」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだね」




.

38 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:04:37 ID:xJ4vuolo0
 それから数十分。
俺は彼女の作業をじっくりと眺めていた。
どこをどうすれば何が外れるのか。こうやって見てみると、俺はやはり殆ど知らなかった。

 彼女の動きには無駄がないように思える。そのためか、工程を覚えるのは簡単だった。


ξ゚⊿゚)ξ「終わりよ」

('A`)「サンキュー。グリップパネルは交換したのか」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ、欠けてたしね。片手で別々に持つことを考えて削ってあるから、前よりは持ちやすいはずよ」

('A`)「どれ」


 二つの愛銃を握りしめる。
確かに、前よりもずっと握りやすく、手に馴染むように感じた。


ξ゚⊿゚)ξ「あと、左の銃は薬莢も左に出るように変えといたから。薬莢が手に当たって火傷したこととかない?」

(;'A`)「…………恥ずかしいが、ある」

ξ゚⊿゚)ξ「そうよね。前よりはマシなはずよ。見た目もね」


 排莢は実際に撃ってみないとわからないが、右手の銃からは右側へ、左手の銃からは左側へ薬莢が飛び出るのは、想像すると確かに格好がいい。

 これなら、もっと早く改造してもらうんだった。

39 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:05:22 ID:xJ4vuolo0
('A`)「助かるぜ。確かにブーンの言うとおり、腕はいいみたいだな。んで、いくらだ?」

ξ゚⊿゚)ξ「パーツ代だけでいいわよ。初回だし、何よりブーンの知り合いだもの」 

('A`)「助かるぜ……金が無いもんでな」

ξ゚⊿゚)ξ「いいのよ。その代わり、定期的にメンテナンスに出してあげること。できればうちをご贔屓にね」

('A`)「ああ、そうさせてもらうぜ」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。……せっかくだから、ブーンのも見せて」

( ^ω^)「おっ、いいのかお」


 ブーンが腰のホルスターから取り出した大きな拳銃をツンに手渡すと、ツンはそれを簡単にチェックし始めたら。


ξ゚⊿゚)ξ「……やっぱりさすがブーンね。メンテナンスもしっかりしてるし、無駄な傷もないし」

40 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:06:28 ID:xJ4vuolo0
('A`)「……使ってねーだけじゃねぇの」

( ^ω^)「失礼な。ちゃんと使ってるお」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンの言う通りよ。ライフリングも前よりは摩耗しているし…………あ、マガジンキャッチはそろそろ変えたほうがいいかしら……だいぶ弱ってるわね」

(;^ω^)「ごめんだお、それは多分忙しい時にブーンが乱暴にリロードするからだお」

ξ゚⊿゚)ξ「いいのよそれくらい。どうする? リロードが面倒ならいっそダブルカラムに変えてみる?」

( ^ω^)「うーん、とりあえず今日はいいお。今度にすれば、またツンにも会えるし」

ξ*゚⊿゚)ξ「なっ……何言ってんの……! メンテナンスが目的じゃないなら来なくていいし……!」

(*^ω^)「おっおっ」

(#'A`)「…………用が住んだなら早くしろよ」

( ^ω^)「おっ、ごめんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「代金は1万レスでいいわよ」

41 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:07:22 ID:xJ4vuolo0
 尻のポケットに入っていた薄っぺらい財布からなけなしの札を取り出し、それを工具だらけの机の上に置いた。


('A`)「はいよ」

ξ゚⊿゚)ξ「ありがとー」

( ^ω^)「じゃ、ブーンたちは帰るお」

ξ゚⊿゚)ξ「もしかして、今から仕事?」

 ツンはチラッとデレに視線を移して、そう言った。

('A`)「ああ。ちょいと野暮用でな」

ξ゚⊿゚)ξ「そ。まあ頑張ってね」

ξ゚⊿゚)ξ「……あっ!」

('A`)「あん?」

ξ゚⊿゚)ξ「これ……」スッ


 ツンに渡されたのは、俺の銃から外したグリップパネル。
ところどころひび割れていて、色褪せている。


('A`)「いや別にこれはもらってもな……」

ξ゚⊿゚)ξ「裏見てみなさいよ」

42 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:09:14 ID:xJ4vuolo0

('A`)「裏?」


 言われたとおり、グリップパネルを裏返してみる。

 するとそこには、やや違和感のある四角い出っ張りがあり、ペンで文字が書かれていた。


( ^ω^)「……“親愛なるペニサスへ”……?」

('A`)「…………」

 この字は恐らく、この銃をくれた人が書いたものだ。

 しかし分からない。
ペニサスとは、誰のことだろうか。


( ^ω^)「……誰だお?」

('A`)「……わかんねぇ」

( ^ω^)「でも、知り合いからもらったんじゃないかお? 誰にもらったんだお?」

('A`)「……関係ないだろ」

( ^ω^)「…………」

('A`)「ツン、ありがとな。また来るわ」

ξ゚⊿゚)ξ「ええ。気をつけてね」




.

43 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:10:17 ID:xJ4vuolo0
 店を出ると、既に日は傾き始めていた。
赤くなった地面を歩いて、俺達は教会へと向かっていた。


('A`)「どうする、お前らは帰るか?」


 店の近くまで来た頃に、俺は足を止めてそう言った。
 デレを連れて行くのは危険だし、ブーンは俺の仕事には関係がない。そう思ったからだ。


ζ(゚ー゚*ζ「……私は……一人でいるのも怖いよ……」

('A`)「まあそう言うと思ったわ」

( ^ω^)「ブーンは面倒だから帰るお」

('A`)「まあそう言うと思ったわ」


 予想通りだ。
仕方ないが、デレは連れて行こう。どうせ大した相手ではないのだ。
仕事柄、誰かを護衛する事には慣れている。


( ^ω^)「それじゃ、二人は頑張ってくれお」

ζ(゚ー゚*ζ「ブーン、気をつけて帰ってね」

('A`)「人のこと心配できる余裕はあるのな」

ζ(゚ー゚*ζ「ブーンはもともと関係ないし……」

('A`)「まぁな。そんじゃ行くか」

44 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:11:42 ID:xJ4vuolo0



 ブーンと別れてから数百メートル歩いた先。
バーや民家だらけのこの辺りには似つかわしくない建物がそびえ立っていた。


('A`)「こんな物が出来てたなんてな……」

ζ(゚ー゚*ζ「ほんとにね……近くで見るのは初めてかも」


 いざ踏み出して門に入ろうという時に、その足を制止させるように門の影から二人の男に声をかけられた。


Ω「はじめまして、新しい教徒様のための案内をご希望ですか?」

('A`)「ん? ああ、そんなとこだ。昨日パンフレットをもらったんでな」

Ω「でしたら……その……、お腰につけてらっしゃる物を外していただかないと……」

('A`)「は? これか?」

 腰というよりは尻に近い部分にある特注のホルスター。
その中に収まっている二つの鉄の塊のことを指しているのだろう。

Ω「……ええ、お手数ですが……」

45 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:12:42 ID:xJ4vuolo0
('A`)「やだね。この教会は人を選ぶのか? それじゃあ“気軽”に懺悔もできねぇな」

Ω「ですが……危険物ですので……」

('A`)「危険だってわかってんなら、それ以上何も言うんじゃねぇよ」スッ

 グッと男に歩み寄り、腰から取り出した拳銃の銃口を男の腹へつきつける。

Ω「ヒッ……!」

('A`)「ここでケツの穴増やされて死ぬか、何も気が付かなかったか、だ。お前はどっちがお好みだ?」

Ω「……どっ……どうぞお通りください……」

('A`)「懸命だな」

ζ(゚ー゚;ζ「ご、強引だね……」

('A`)「構ってられるかっての」スタスタ



.

46 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:13:28 ID:xJ4vuolo0
Ω「……死ぬかと思った……」

Ω「おい、アサピーさんを呼んで来い。俺は彼らを特別集会堂に案内する」ボソッ

Ω「あ、ああ。わかった」ダダッ





Ω「お二人様」タッタッ

('A`)「あ?」

Ω「集会堂にご案内します」

('A`)「…………まあいいや、頼んだ」




.

47 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:14:49 ID:xJ4vuolo0
 一人の男に連れられて到着した、一つの建物。
門の正面にあった大きな建物とは少し離れていて、大きさも随分と小さかった。


Ω「こちらになります、中でお待ちください」

('A`)「オーケイ」


 男はそう言うとすぐに立ち去ってしまった。
それでも構わない。あんな男に興味はないのだ。

 俺は大きな取っ手を掴んで扉を開け、建物の中へと足を踏み入れた。


('A`)「……おいおい、誰もいねーじゃねぇか」

ζ(゚ー゚;ζ「なんか薄暗くて気味が悪いよ……」


 あの男の言っていたとおり、確かに集会堂のようだ。
均等に並べられた蝋燭が唯一の灯りで、何故だが窓は一つもなかった。

 ――ここは、妙な感じがする。
よくわからないが、俺の勘がそう言っている。



.

48 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:15:22 ID:xJ4vuolo0
『すみません、お待たせしました』


 しばらくして、奥の方から男の声が響いてきた。
その男はコツコツと足音を鳴らして、俺達の前に姿を表した。


(-@∀@)「本日はどうされました……?」


 現れたのは、昨日の夕方俺の店へやってきた男だった。
名前はアサピーといっただろうか。

 なぜかワイングラスを左手に持ちながら、こちらをじっと見ていた。


('A`)「……お前、あの時の……」

(-@∀@)「……おおこれはこれは! 当教団に興味を持っていただけましたか……!」

('A`)「ああ。落としてったパンフレットなら全部読んだぜ」

(-@∀@)「落としてしまってましたか……大変失礼いたしました……」

(-@∀@)「そしてそこのお嬢様は…………はぁなるほどなるほど」

('A`)「…………」

49 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:15:56 ID:xJ4vuolo0
 何を納得したのかは、検討がつく。

 デレを尾行させていた人間が殺されたのだ。
そしてその女が、便利屋である俺を連れて来ている。
どんな馬鹿であっても、この俺がただ礼拝をしに来ただけとは思わないだろう。


(-@∀@)「……ところで、あなたの腰に何やら悪魔が取り付いておられますね」

('A`)「……はぁ?」

(-@∀@)「私は、祓魔師でしてね。今その悪魔を取り祓いましょう」

('A`)「……ハッ。遠慮しておくぜ」



('∀`)「こいつは、俺にとっちゃあ天使みてぇなもんなんだよ」


.

50 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:16:32 ID:xJ4vuolo0
 俺はホルスターから二丁の拳銃を取り出して、その銃口をアサピーに向けて構える。


(-@∀@)「……そうですか。でしたら、力づくでも取り祓わせてもらいましょう……ッ!」

('A`)「デレ、下がってろ」

ζ(゚ー゚;ζ「う、うん」


 俺がそう言うとデレは後ろの長椅子の影に隠れ、じっと身を潜めた。

 アサピーという男は、ワイングラスを持ったまま両手を広げて、壇上の中央に立った。

.

51 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/29(火) 06:17:48 ID:xJ4vuolo0
本日はここまで。
また近いうちに、投下します。

52名無しさん:2016/03/29(火) 07:48:56 ID:4EYv62n.0
気になるところで……!
乙!!楽しみだ!!

53 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:35:44 ID:Cj5bthWI0
(-@∀@)「ハァッ!!」


 アサピーがそう叫びながら、グラスを持っていない方の手を前方へ振りかざした。

 同時に、どこからか飛来してくるいくつかの赤い小さな物体。
それが何なのか、どうやって飛来してくるのかは分からなかったが、速度は銃弾と大差ない。


('∀`)「んなもんあたんねぇよ!!」


 身体を捻らせて弾を避ける。
飛んできたのは6発。そのうち5発は後ろのドアへ当たった。
残りの1発は、左手の銃のスライドで弾いたのだった。


('∀`)「……全く一体どんな手品を――――」



 ――そう言いかけた時、気がついた。
かすかに漂う、その臭いに。



.

54 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:36:54 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……血の臭い……?」

('A`)「おいデレ!! 怪我はねぇか!?」

ζ(゚ー゚;ζ「えっ? 私は大丈夫だよ?」


 振り返って確認せずとも、そう返事をしている以上、彼女は無事だ。


('A`)「……だとしたら……」


 足元に転がったはずの赤い物体を探す。
だが、それを見つけることはできない。

 ――ただ一つ存在したのは、小さな血痕だった。



('A`)「…………血、ねぇ……。面白いもんを武器にしてるな、あんた」


 赤い物体の正体は、血。
飛来して来た時は固形化していたようだが、今は元の液体になっていた。


(-@∀@)「ふふふ……この力に驚きましたか……」

('∀`)「わりぃが、俺はオカルトは信じねーんだよ。信じてるのはこいつだけさ!」


 両手の拳銃の引き金を、交互に引く。
それだけで、あっという間にマガジンは空になってしまう。

55 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:37:37 ID:Cj5bthWI0
(-@∀@)「ハッ!」

 アサピーは、俺の動作と同時に右手を振り上げる。
するとワイングラスから飛び出た血が、一枚の盾となって俺の放った銃弾を防いだ。


('∀`)「面白え……面白えぜお前!!


 ジャケットを勢い良く捲ると、内ポケットからマガジンが飛び出して空中に浮かんだ。

 同時に両手の拳銃から空のマガジンを取り出して、空中で弧を描くようにして新しいマガジンを挿入する。


('∀`)「ハッハァ!!」


 飛来してくる血を躱しながら、左手の銃を連射する。
盾の中心部、ただ一点をめがけて。


('∀`)「いつまでそいつに隠れてるつもりだよ!!」

(-@∀@)「ふふ……」


 なかなか思ったようにはいかない。
想像していたよりも、あの血の盾は頑丈なようだ。

 しかし、俺は構わず撃ち続けた。



 ――そして、血の盾に小さな亀裂が入ったのが見えた。


.

56 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:38:34 ID:Cj5bthWI0
(;-@∀@)「――ッ!!」


 更に銃弾を撃ち込む。両手で、何度もリロードをして。

 やがて亀裂は端まで広がり、その盾は大きな音を立てて砕け散った。


('∀`)「神からのお届け物だぜ!!」


 盾が砕けてから、アサピーが次の盾を展開するまでの一瞬。
俺はその一瞬を逃さなかった。

 両手からそれぞれ別の方向に射出された銃弾は、血の入ったワイングラスと、それを持った男の腹に直撃した。


(;-@∀@)「ウ……グ…………ッ!!」ドッ

('A`)「あーあ。もうちょっと楽しませてくれると思ったんだけどな」


 アサピーは膝をついて、腹を押さえている。
ワイングラスから零れ出た血と、彼の腹から流れ出る血が混ざり合い、地面に大きな血溜まりを作っていく。


(;-@∀@)「……これでは……血が……」

('A`)「血ならそこに幾らでもあるだろ? かかってこいよ」

57 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:39:40 ID:Cj5bthWI0
(;-@∀@)「……私の血が混ざっては……純粋な血液じゃあない……。それではダメなのです……ッ!!」

('A`)「…………じゃあ本当に終わりってことかよ」


 両手の拳銃をクルクルと回しながら、腰のホルスターへしまう。
 地面に散らばったマガジンや薬莢を蹴り飛ばしながら、俺はアサピーの元へと歩み寄った。


('A`)「……ったく。準備運動にもならなかったぜ」

(;-@∀@)「…………」

('A`)「何見てんだよ」

(;-@∀@)「……ハァッ!!」

('A`)「――ッ!!」


 うずくまっていたアサピーは、俺の隙を見て両手を振りかざした。




 ――――まずい。油断していた。



 そう思った時には、もうすでに遅かった。



 純粋な血液なら、俺の後方に大量に転がっているではないか――。



.

58 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:40:27 ID:Cj5bthWI0

(-@∀@)「死ねェッ!!」


 いくつもの血の塊が、俺の背中をめがけて飛来してくるのがわかった。
風を切る音が、少しずつ近づいてくる。

 俺はただ、何もせずにその場に立ち尽くしていた。



(;'A`)「――ッ……!!」



 やがて、俺の背中に突き刺さるいくつもの血の塊。



 その無慈悲な攻撃に、俺は抗う事もできなかった。




(-@∀@)「……ハハハハハッ……!! 一度使ったものを再利用するのは当然ですよね……!!」




('A`)「…………ん?」



(-@∀@)「…………えっ?」



.

59 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:41:23 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……わりぃな」



 ジャケットを強く捲くる。
その勢いで、突き刺さっていた血の塊はコロコロと音を立てて地面に散らばった。



('∀`)「……このジャケットはな――――」





「背中までマガジンで埋め尽くされてるんだよ」





(;-@∀@)「――ッ!!!」



.

60 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:42:51 ID:Cj5bthWI0

('∀`)「後方には注意しねぇとなぁ。玉突き事故だけは勘弁だぜ、イカレ眼鏡」

(;-@∀@)「ガッ……!!」


 ホルスターから取り出した銃で、アサピーの両手の甲を撃ち抜く。
普通ならば、この手で反撃しようとは思わないだろう。


(;-@∀@)「……ぐッ…………」

('A`)「悪くねぇダンスナンバーだったぜ。ただちょっと、テンポが悪かったな」


 再度拳銃をホルスターにしまって、アサピーの目の前に立つ。


('A`)「さて、ここのお偉いさんはどこで退屈してるんだ?」

(;-@∀@)「…………」

('A`)「言えよ」


 へたり込んだアサピーの膝を撃ち抜く。

 速撃ちと言うよりは、さながら居合のような動作で。


(;-@∀@)「アガッ……!!」

('A`)「これ以上五体不満足になりたくなきゃ、そのニヤけた口を取っとと割るべきだな」

61 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:43:27 ID:Cj5bthWI0
 靴底で薬莢を転がしながら、アサピーの顔をじっと睨みつける。
ただそれだけで、彼は竦み上がっていた。とても演技には見えない。


(;-@∀@)「くッ…………。……そこの扉を出た先にある建物に……」

('A`)「そうか」


 場所がわかれば、この男に用はない。
ちらりと後ろを振り返って、デレにこっちへ来るよう合図した。


(;-@∀@)「ま、待ってください!! あなたは一体……何をしにここへ……!」

('A`)「…………ハッ、余計なことは聞くもんじゃねーよ……」

(;-@∀@)「なっ!!」


 素早くホルスターから拳銃を取り出して、アサピーの額を撃ち抜く。
血溜まりの向こうに綺麗な放射状を描いた血痕を残して、その頭はゆっくりと垂れていった。




('A`)「……ちょっとした、野暮用さ」





.

62 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:44:40 ID:Cj5bthWI0
 集会堂の奥にあった扉を出て、正面にある建物。
ちょうど集会堂と同じくらいの大きさだ。
俺達はその建物の中に入って、長い廊下を歩いていた。

ζ(゚ー゚*ζ「……そのジャケット、重くないの?」

('A`)「ああ、もう慣れちまったよ」

ζ(゚ー゚;ζ「慣れるんだ……」


 愛用のホルスターを作ったデザイナーに、これまた特注で作らせた黒い革製のジャケット。

 裏地がびっしり埋まるほどにまで、マガジンを入れておくことが出来る。
二丁の拳銃で大量の弾を消費してしまう俺にとっては、便利な代物だ。

 この季節になると随分暑苦しく感じるが、仕事なので仕方がない。



('A`)「……さて……」


 ようやくたどり着いた、長い廊下の突き当たりにある一つの扉。
ここに来るまでに幾つかの扉があったが、全てもぬけの殻だったのだ。

 耳を澄ますと、中から僅かに物音が聞こえる。


('A`)「デレ、俺の後ろに隠れてろよ」

ζ(゚ー゚;ζ「う、うん」ササッ

63 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:45:37 ID:Cj5bthWI0
 ホルスターから取り出した拳銃を両手に構えて、深呼吸をする。
 そして勢い良く、扉を蹴破った。


('A`)「…………」


 しかし、中に人はいなかった。

 どうやらこの部屋は物置のようだ。
しかしただの物置にしては広いこの部屋に、俺は違和感を感じた。


('A`)「音がしたってことは、この部屋のどこかにまだ扉があるってことか?」

 中に足を踏み入れて、置かれた棚の後ろや机の下を覗いてみる。
 しかし、それらしいものは見当たらない。
おまけに窓の外には塀しかなかった。


('A`)「……デレ、騙されたみてーだ」


 大きな棚を元の位置に戻しながら、そう言った。


 しかし、返事はない。


('A`)「……デレ?」


 振り返るが、そこに彼女の姿はない。


.

64 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:46:25 ID:Cj5bthWI0

(;'A`)「チッ!!」


 ――まずい。

 つい、意識を別の所へ置いてしまっていた。

 何かあってからじゃ遅い。
そう思うよりも早く急いで廊下に出たが――――




――――そこにあったのは、体格のいい男の姿だった。




(´・_ゝ・`)「…………何を焦っている」


('A`)「…………」



 司祭服を身に纏い、間抜けな帽子を被った男。

 その左手には、大きな剣が握られていた。



.

65 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:50:02 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……デレはどこだ」

(´・_ゝ・`)「デレ? ……ああ、君と一緒にいた女のことか」

(´・_ゝ・`)「……彼女は…………さぁどこだろうな」

('A`)「…………」

(´・_ゝ・`)「どうやら、君がうちの人間を殺した犯人で間違いないようだな」


 そう言いながら男は、左手に握っていた剣を両手に構えて、姿勢を低くした。


('A`)「ああ。あの間抜け面とイカレ眼鏡なら、俺がこの手で天国に導いてやったよ」


 両手の拳銃を握り直して、男の顔に向ける。
 男はじりじりと間合いを詰めながら、こちらの様子を窺っているようだ。


(´・_ゝ・`)「俺は神父のデミタスだ。覚えておけ」

('∀`)「“覚えておけ”って事は、つまり俺を殺す自信がねぇって事か?」

(´・_ゝ・`)「ぬかせッ!!」


 石の床だというのに、デミタスと名乗った男の足は踏み出しただけで大きな音を鳴らした。

 その音の大きさに比例して、迫りくる速さも並大抵のものではなかった。


.

66 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:51:29 ID:Cj5bthWI0
 デミタスの最初の一撃は、突き。
接近戦に慣れていない俺にとっては躱すのが最も楽な攻撃だが、銃弾と違って剣は大きい。
横っ腹すれすれのところで回避した。


(´・_ゝ・`)「ふんッ!!」


 デミタスは突かれた剣を引きながら、横に薙ぎ払うように剣を振るう。
 俺はトリガーガードの付け根で剣を受け、もう一方の銃でデミタスへ連射した。

 デミタスは剣を軸に身体を捻らせて、俺の腹の方へと潜り込んでくる。


(´・_ゝ・`)「ハァッ!!」


 剣を右手で持ち、離した左手の拳を俺の腹へ突き出してきた。

 俺は空いている方の拳銃のグリップエンドでその拳を弾いて、再び連射した。


(´・_ゝ・`)「くッ……!!」


 流石にこの距離で躱すのは困難だと察したのか、デミタスは剣を引いて間合いを空けた。


('∀`)「……なかなかやるじゃん。あのイカレ眼鏡よりは楽しませてくれそうだ」

(´・_ゝ・`)「……ふっ……アサピーと一緒にされては困る……」



(´・_ゝ・`)「“帰天”もまともにできない、あの男とはな」



.

67 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:52:32 ID:Cj5bthWI0
 帰天。
 それが何を意味しているのかはわからないが、デミタスはアサピーとは違う能力を持っているという事だろうか。


(´・_ゝ・`)「……すぐに終わらせてやろう」


 デミタスはそう言うと、剣の切っ先を床に向け、じっと構えた。

 そして自らの手をその刃の付け根に当てて、血を垂らした。


(´・_ゝ・`)「……“帰天・血滅剣”!」



 刃に垂れた血が樋に染み渡った時。

 その刃がぼんやりと赤く光りだした時。

 デミタスはそう言った。



(´・_ゝ・`)「ハァァッ!!」



 再び床を踏み込んで間合いを詰めてくる。
今度は突きではなく、払いのようだ。


('∀`)「ハハハッ、ここはオカルト展示場か!?」


 あの剣が、あの儀式のような動作がどういう効果をもたらすのかわからないうちは、簡単に攻撃を受け止める訳にはいかない。

 デミタスの腕の動きを見て、一撃目は身を引いて躱した。

.

68 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:53:46 ID:Cj5bthWI0
('∀`)「どうしたどうした!!」

(´・_ゝ・`)「フンッ!!」


 二撃目も、左からの払い。
俺は両手の銃からマガジンを取り出して、後ろの物置に飛び込んだ。

 空中に浮いたマガジンが、デミタスの剣に触れる。


 剣で簡単に切れるようなものじゃあない。
 だというのに、そのマガジンはいとも容易く真っ二つになってしまった。



('∀`)「……なるほど、銃で受け止めるわけにゃいかねーってことか」


(´・_ゝ・`)「俺としては、受け止めてくれた方がありがたいがな」


('∀`)「ご期待には添えねぇよ!!」


 新しいマガジンを装填して、デミタスに向かって両手の引き金を何度も引く。
 放たれた幾つもの銃弾は、デミタスの振るった剣によって弾かれていく。


('∀`)「休んでる余裕はねーぞ!!」


 歩きながら何度も続けて銃弾を放つ。

 一歩、一歩とデミタスは下がりながら、その銃弾を見事に弾いていく。

69 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:54:54 ID:Cj5bthWI0


 やがて再び廊下に出た頃、俺は両手のマガジンリリースボタンを押して、デミタスに向かって弾の入ったマガジンを放り投げた。


(;´・_ゝ・`)「ッ!?」


 不意の動作に、デミタスの反応が一瞬だけ遅れる。


 俺はその隙を逃さなかった。


('∀`)「ハハハハハッ!!!」


 強く床を蹴って、デミタスに急接近する。
同時に先ほど放り投げたマガジンを空中で装填して、残っていた弾をデミタスの腹部へ撃ち込んだ。


(;´・_ゝ・`)「ぐッ……!!」


 即座にデミタスを蹴って、間合いを取る。

 確実に撃ち抜いた。大量の血が、溢れ出していた。


 しかし、左手で腹部を抑えながら、それでもデミタスは剣を握ることをやめなかった。


(;´・_ゝ・`)「……こ……この程度……」

(;´・_ゝ・`)「……帰天を成し遂げた俺には無意味……ッ!!」


 そう叫ぶと同時に、デミタスの腹部から溢れ出ていた血の流れが止まった。

.

70 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:56:28 ID:Cj5bthWI0
('A`)「……なんだ、つまんねぇの」

(;´・_ゝ・`)「……はは……ナメてもらっては困るな……!」


 再び、両手で剣を構えるデミタス。

 先ほどの出血や痛みのせいか、その切っ先は微かに揺れていた。



('∀`)「そんじゃまぁ、楽にしてやるよ!!」

(´・_ゝ・`)「ハァァァァッ!!」


 剣を向け、急接近してくるデミタス。

 俺は両手の銃から二発の銃弾を放つだけで、その場から動くことはしなかった。


 一発の銃弾はデミタスの剣によって、簡単に弾かれた。


(´・_ゝ・`)「そんなもの当たらんさ!!」


 振るった剣を戻し、今度は突きの体制へ。
 そのまま勢いを落とすこと無く、突進を続けてきた。




('∀`)「――よく見ろよ」




(;´・_ゝ・`)「――――ッ!!」


.

71 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:57:49 ID:Cj5bthWI0


 石の床に向かって放たれていた、もう一発の銃弾。

 それは見事に跳弾し、接近してきたデミタスのちょうど膝の部分へ命中したのだった。



(;´・_ゝ・`)「ガハ……ッ!!」



 斜めになって、無様に床に倒れこむデミタス。

 その右手から剣が離れ、ちょうど俺の足元へと滑ってくる。
それを靴底で受け止めながら、右手の拳銃の銃口をデミタスの額に向けた。



('A`)「なかなかの剣術だったぜ。まあもっとも、剣同士でも俺には勝てなかっただろうけどな」


(;´・_ゝ・`)「……クソ……ッ」


('A`)「デレはどこだ」

(;´・_ゝ・`)「…………」

('A`)「お前がここで一番偉いってわけじゃあないんだろ? そのお偉いさんにはどこに行けば会えるんだ」

(;´・_ゝ・`)「……言わんさ。もっとも、言ったところで、お前は俺を殺すだろう」

('A`)「よくわかってるじゃねぇか」


 ハンマーを起こして、デミタスの額に照準を合わせる。

72 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 05:59:42 ID:Cj5bthWI0

('A`)「わからなきゃ、探せばいいだけだ」
 

 引き金を引くと、デミタスの額に大きな穴が空いて、後方に脳と血を撒き散らした。
同時に、その頭から外れた帽子。



 ――そして顕になった、髪の毛の無い頭頂部。



 彡⌒ミ
(´ _ゝ `)



('∀`)「……なるほど。その似合わねぇ帽子は、ハゲ隠しだったって事か」



 薬莢だらけの床を、ゆっくりと歩く。

 帽子を拾い上げ、それを男の頭に被せ直して、俺はこの建物を後にした。






.

73 ◆H/3wgXUnC2:2016/03/31(木) 06:01:25 ID:Cj5bthWI0
本日はこの辺りで。
次の投下で終わりますので、またよろしくお願いします。

74名無しさん:2016/03/31(木) 06:16:49 ID:liifTOj20
ひとまず乙
まってるよ

75名無しさん:2016/03/31(木) 10:48:41 ID:EjhS61/s0
優しいな

76名無しさん:2016/03/31(木) 12:13:12 ID:JoTIRpJY0
おう
待ってるぜ
デレの無事を祈る

77名無しさん:2016/03/31(木) 12:16:43 ID:ArlBxvAE0
デミ隠しのことハゲ隠しって言うのやめろよ!

乙です

78名無しさん:2016/03/31(木) 12:54:16 ID:DWfG6Njg0
おいハゲを暴く必要はなかったろ!!!
おつ!

79 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:48:57 ID:CCACwx0U0

('A`)「…………さてと」


 これまでの騒ぎを聞いてか、敷地内にいた多くの人々はすでに消えていた。

 この敷地内で一番目立つ建物、礼拝堂。
俺は真っ先にそこへと歩みを進めていた。


('A`)「案内なんか聞かずに、初めからここに来りゃ良かったぜ」


 大きな扉をゆっくりと引くと、中から漏れ出す異様な空気を感じる取ることができた。


 そして俺が見たものは――。



(;'A`)「デレ!!」



 ――十字架に磔にされている、デレの姿だった。



.

80 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:49:29 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚;ζ「ど、ドクオ! 助けて……!!」

 幸い、意識はある。見たところ怪我も無いようだ。

('A`)「今降ろしてやるからな!」




『――無駄だよ』


('A`)「……!?」



 ――カツ、カツ、カツ。

 一歩一歩、音を堂内に響かせながら、暗闇から姿を現した、一人の男。



爪'ー`)「私の能力で磔にしているからね。簡単には外せないさ」


(;'A`)「――ッ……お前は……フォックス……!!」



 半年前、ある大手企業の社長を殺す依頼を成し遂げ、100万レスもの金を手にした。
俺が店を持つ為の元手になった金だ。

 この男フォックスは、その依頼主であった。

爪'ー`)「ッ……。おやおや、まさか侵入者が君だったとは……」


爪'ー`)「驚いたよ、“Killer-D”」



.

81 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:50:38 ID:CCACwx0U0

 “Killer-D”とは、俺が店を持つ前に呼ばれていた名前だ。
ブーンと合わせて、“Killer-B.D.”なんて呼ばれていた事もあった。


('A`)「……今は便利屋“All Trades”のドクオだ」

爪'ー`)「便利屋、ねぇ……。あの君が、今じゃ水道管工事をしてるのか……笑えるね」

('A`)「ハッ……生憎これが初仕事さ」

爪'ー`)「……半年ほど前か……君に仕事を依頼したのは」

('A`)「お前、あの社長を殺して自分の会社をでかくするんじゃなかったのか?」

爪'ー`)「ああ、その通りさ。カデレス社は邪魔だったからな。君のお陰でうちの売上は大きく上がったよ」

ζ(゚ー゚;ζ「……か……カデレス……?」


 デレが青白い顔を引きつらせて、そう言った。

 大事なものを何か、失ったかのように。


爪'ー`)「そう、カデレス。彼らは事業を広げすぎたんだ。当然、あの社長を殺したがってたのは私だけじゃなかったはずだ」

82 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:51:26 ID:CCACwx0U0
('A`)「俺が聞きてぇのはそんな話じゃねぇんだよ。そんなお前がなんでこんな宗教団体なんて――――」

ζ(゚ー゚;ζ「――待ってよ!!」

('A`)「ッ……?」

ζ(゚ー゚;ζ「カデレスの……カデレスの社長を……殺したの……?」

('A`)「ああ。こいつの依頼でな」

ζ( ー ;ζ「……そんな……嘘…………」

('A`)「お、おい」

ζ( ー ζ「…………私の……」




「……私のお父さんは……カデレスの社長だったんだよ……」




(;'A`)「――ッ!」



.

83 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:52:03 ID:CCACwx0U0

 デレの顔は、まるで日の射さない路地裏のように暗く翳り、表情の判別はできない。



 ――冗談じゃない。

 どうしてそんな偶然が。
 どうして、よりによってこんな時に。


爪'ー`)「……おやおや……よもやこんな偶然があるなんてね……! Killer-Dの死を彩る最高のスパイスじゃあないか!」

(;'A`)「……チッ……」


.

84 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:52:37 ID:CCACwx0U0

 ――何を感情的になっているんだ、俺は。

 頭に“元”が付くとはいえ、俺はKiller-Dと呼ばれ怖れられた人間だ。

 フォックスの言う通りさ。最高のスパイスじゃないか。



( ∀ )「…………ククッ……ハハハハハハッ!!!」




.

85 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:53:17 ID:CCACwx0U0

 ただ、死ぬのは俺じゃない。



('∀`)「殺してやるよフォックス!!」



爪'ー`)「……そう来なくてはね……!!」



 ホルスターから取り出した二丁の愛銃。
俺はこの結び目だらけの感情を乗せて、いくつもの銃弾を放った。




.

86 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:53:55 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「ハァッ!!」


 真っ直ぐにフォックスへと向かう銃弾を防ぐようにして、どこからとも無く血の盾が現れた。

 アサピーが出していた物と同じだ。
それならば、一点に銃弾を打ち込み続けていればいずれは砕ける。



 ――だが、そう甘くは無かった。



.

87 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:54:46 ID:CCACwx0U0
('A`)「……堅ぇな」

爪'ー`)「……そう簡単に壊せるようなものじゃないさ」

('A`)「あのイカレ眼鏡よりゃマシってことか」

爪'ー`)「……アサピーの事か……」


 フォックスは口角を軽く吊り上げながら、フッと鼻で笑った。


爪'ー`)「彼はダメだな。通常の帰天すら中途半端にしか出来なかった男だ」

('A`)「まーた帰天かよ。そろそろそいつの正体を教えてほしいね」

爪'ー`)「君が知る必要はない。ただ見ていればいいさ」

爪'ー`)「私がこれから行う“帰天”をね……!」


 そう言いながらフォックスが両手を広げると、まるで天井から引っ張り上げているかのように、その身体が宙に浮かんだ。


(;'∀`)「……空まで飛ぶわけ……?」

爪'ー`)「これは儀式のうちさ……」


爪 ー )「この大地に住みし我らの神よ……生娘の生き血を吸い……我に降臨されたし……!!」



爪'ー`)「“帰天”!!!」




.

88 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:55:52 ID:CCACwx0U0


 地鳴りのような轟音が堂内に響き渡り、フォックスの身体は直視できないほどの光を発した。

 それも数秒ほどで収まり、俺は再びフォックスに目を向けた。


爪'ー`)


 そこにあるのは、先程と何も変わらない一人の男の姿だった。

 ただひとつ、この堂内で変化したのは――。



(;'A`)「デレ!!!」



 先程まではその虚ろな瞳で遠くを見つめていたはずのデレが、今では目を閉じぐったりと項垂れている。

 “生娘の生き血”。それがデレの血の事を指しているのであれば、命が危ない。


爪'ー`)「安心するといい。まだ死んではいないさ」


 フォックスの言う通り、確かにまだ死んではいない。
微かながら、呼吸によって肩が揺れているのがわかる。


爪'ー`)「だが、戦いが長引けば長引くほど、彼女の命は危なくなる。私は彼女の血を使って戦わせてもらうからな」

爪'ー`)「彼女の身を案ずるなら、とっとと死ぬべきだ」

('A`)「……てめぇ……」

89 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:56:27 ID:CCACwx0U0
爪'ー`)「しかし全く呆れるよ。あの非常な殺し屋だった君が、小娘一人の命を心配するとはな」

('A`)「…………」

('A`)「……違うな」

爪'ー`)「……?」


 一歩、前に踏み出す。
堂内に均等に並べられた長椅子の中の、一番手前にあるものに足を載せて、銃口をフォックスに向ける。


('A`)「あいつは俺の“依頼主”だ。報酬を受け取るためには、あいつには生きててもらわねーとならねぇんだよ」

爪'ー`)「……なるほど。まあそれでもいいでしょう」

爪'ー`)「どっちにしても、君は死ぬのだからね!!」


 フォックスが叫ぶのと同時に、彼の背後からいくつもの血の塊が飛来してくる。
速度は拳銃の銃弾と同等か、それ以上だろうか。

 すぐに俺は足を載せていた長椅子を蹴って跳躍する。
フォックスが放った血の塊は、俺に直撃すること無く後ろの扉へと突き刺さっていく。


('∀`)「ほらよ!!」


 地上数メートルの高さから、銃弾の雨を降らす。
当然ながら、フォックスはそれを盾で受け止めていた。

90 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:57:16 ID:CCACwx0U0

爪'ー`)「飛び道具相手に跳躍するのは頷けないな!! 着地点が丸わかりだ!!」


 やがてフォックスは銃弾を受け止めながら、俺が着地するであろう場所に向かって血の塊をいくつも放った。


('∀`)「無駄だぜ狐野郎ッ!!!」


 飛来するいくつもの血の塊に向かって、二丁の愛銃から銃弾を放つ。
銃弾は一発の無駄もなく血の塊一つ一つにぶつかって、それを弾いた。


('∀`)「……悪いな、俺にはそんな盾なんて必要ねぇんだ」

爪'ー`)「それは面白い……」

爪'ー`)「ならばこれはどうかな……!!」


 フォックスの背後に浮き上がる、複数の血の塊。
それだけじゃない。扉に突き刺さった血や、俺が弾いて散らばった血でさえ、空中に浮き上がっていた。


爪'ー`)「アサピーには、この数は不可能だったはずだ」


 彼が振り上げた右手を勢い良く振り下ろすと同時に、浮いていた血の塊は一斉に俺へと向かってきた。


('∀`)「ハッハァ!!!」

91 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:58:37 ID:CCACwx0U0

 背後からの攻撃を身を捻るようにして躱しながら、辺りに連射する。
 とてもこの程度の連射で防ぎきれる数ではない。ただし、お陰で数は減った。

 俺は両手の愛銃からマガジンを放り出して、身を屈めた。



爪'ー`)「…………フッ」


 ガシャン、と放り投げたマガジンが落ちる音がする。
いくつもの血の塊や薬莢が、地面に転がる音が耳に届く。


爪'ー`)「流石に躱し切れなかったようだねぇ……」





( ∀ )「……ククク……」




爪;'ー`)「ッ……?」

 俺は屈んで身を包んでいたジャケットを外して、ゆっくりと立ち上がった。

爪;'ー`)「なっ…………」

92 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 06:59:17 ID:CCACwx0U0

('∀`)「このジャケットで防がせてもらったのは二回目だな……。全く……意外とやるな、オカルト集団よォ……」


 重たいジャケットを地面に放り投げると、石で出来たこの床ですら微かに揺れた。


 たまには鎖から放たれるのも、悪くはない。


爪'ー`)「……まさか無傷とはね……。面白い、面白いよ」

('∀`)「お遊びはここまでだぜ」


 石の床を蹴って、フォックスへ急接近する。
重たいジャケットを着ていないだけで、身体が羽根のように軽く感じた。


('∀`)「ほらよッ!!」


 愛銃を振りかぶり、グリップエンドをフォックスの頭へと振り下ろす。


爪;'ー`)「く……ッ!!」


 どこからか現れた血の盾が、それを防ぐ。
だがその一撃だけで、血の盾には亀裂が走っていた。


('∀`)「ハァッ!!」

爪;'ー`)「――ガハッ……!!」


 フォックスを蹴り飛ばすようにして、後ろへ跳躍する。
俺が離れると、フォックスの身体全体を守るように盾が広がった。

93 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:00:40 ID:CCACwx0U0

('∀`)「んなもん無駄だろ!!」


 射撃の精密さよりも連射速度を重視して、盾に無数の銃弾を放つ。
それだけでその盾は、容易く砕け散った。

 再び床を蹴って、フォックスへと急接近する。


爪;'ー`)「まだだッ!!」


 駆けながら放った銃弾がフォックスの額に直撃するよりも速く、赤い何かがそれを防いだ。


爪;'ー`)「……よもやこれを出すことになるとは……君は接近戦にも長けているようだな……」


 フォックスが手に持っているのは、赤い長剣。
血を固めて作り出した物のようだ。


('A`)「…………」



 奴は血を使いすぎている。
 このままでは本当に、デレの命が危ない。


 依頼主がなんだ。
 そんなものは関係ない。

 ――俺はただ、俺が殺す以外で目の前で人が死ぬのを見たくないだけなんだ。

94 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:01:54 ID:CCACwx0U0

('∀`)「……終わらせようぜ」

爪'ー`)「……いいだろう」


 じりじりと、詰め寄る間合い。

 元より俺は近接戦闘向きの武器を持っていない。
だが、この愛銃で戦えないわけではない。


爪'ー`)「……ハァッ!!」


 強く床を蹴って、その長剣を振りかざしながら接近してくるフォックス。

 俺は後方のジャケットに銃弾を放つ。
ジャケットの中に収まっているマガジンに銃弾が直撃し、弧を描きながらこちらへと向かってくる。
それを空中でリロードし、狙いをフォックスへと戻した。


('∀`)「ハッハァ!!!」


 真っ直ぐに振り下ろされた刃をグリップエンドで弾きながら、フォックスの顔に向かって片手で連射する。

 フォックスはそれを血の盾で防ぎ、振り下ろした長剣を素早く斜めに振り上げた。


('∀`)「掠りもしねぇぜ!!」


 ジャケットを着ていない俺に、避けられないものはない。
 どんなに速かろうと、どんなに不意をつかれようと、俺は最小限の動きで躱した。

95 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:02:41 ID:CCACwx0U0

爪;'ー`)「クソッ!!」


 フォックスは再び長剣を構え、横へ大きく振るう。
同時に、いくつもの血の塊が俺へ向かって飛来してくるのがわかった。

 その血の塊を全て拳銃の側面で弾き、躱した長剣の刃をもう一つの拳銃のグリップエンドで上から叩いた。

 キィン、と鋭い音が鳴り響き、弾かれた長剣の切っ先が石の床に突き刺さる。


爪;'ー`)「く……ッ!!」

('∀`)「ゲームオーバーだ」


 長剣を抜くことも出きず、隙だらけになったフォックスの額に、銃口を突き付けた。



('A`)「ちょいと話をしようや」



爪;'ー`)「…………」



 フォックスは長剣からゆっくりと手を離し、そのまま抵抗の意思は見せなかった。

.

96 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:03:18 ID:CCACwx0U0
('A`)「なんでこんな事をしてるんだ? わけのわからねぇ能力やら帰天やら……ビジネスには見えねぇが」

爪;'ー`)「……初めはビジネスのつもりだったさ。宗教は金になるからね」

('A`)「この街には宗教を信仰してるような連中はいねぇ。だからこそって思ったのかもしれねぇが、俺にはそうは思えねぇな」

爪;'ー`)「……私も、この街でやっていけるか不安だったさ。しかし、調べてみると面白い話が出てきてね……」



爪;'ー`)「この街には神が住んでいるのさ……」


 真剣な表情で、フォックスはそう語った。
 嘘や狂言を吐いているようには思えない、そんな表情で。


('A`)「……そいつは知らなかったな。こんなネオンとアルコールとタバコの煙しかねぇような街を好む神様じゃあ、祈りを捧げる価値も無さそうだが」

爪;'ー`)「馬鹿にしてはならないよ。事実、私たちは力を手に入れた」

97 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:04:12 ID:CCACwx0U0
('A`)「ハッ。女の血を使ってか? まぁある意味ではこの街の神様らしい、って感じだな。趣味が悪すぎる」

爪;'ー`)「“帰天”のためには仕方ないんだよ……!」

('A`)「ビジネスやってたあんたの方が好みだったぜ」

爪;'ー`)「…………」

('A`)「ミイラ取りがミイラになるってのは、まさにこの事だな。まぁせいぜい神に祈りを捧げて死ぬといいさ」

 拳銃のハンマーを起こして、引き金に力を込める。

('A`)「天に帰れよ」


 大きな音を立てて、拳銃は火を吹く。

 フォックスの後頭部から鮮血が飛び散り、薬莢が地面に転がって小気味よい音を立てた頃、フォックスの身体も地面に崩れ落ちていた。


('A`)「……アーメンハレルヤピーナッツバターだ……」

.

98 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:05:00 ID:CCACwx0U0
 二丁の愛銃をホルスターに仕舞っていると、何やら赤い霧状の物が浮かんでいるのが目に入った。

 その霧はやがて磔になったデレの元へと集まり、姿を消した。
フォックスに使われた血が、デレの身体へと戻ったのだろうか。

 同時に、十字架からデレの身体が真っ直ぐに地面に落下した。


(;'A`)「おっと!」


 瞬時に駆け寄って、床にぶつかる前にデレの身体を両手で抱える。

 ジャケットを脱いでいて良かった。
着ていたら、間に合わなかったかもしれない。


('A`)「……おい、デレ。起きろ」

ζ(-、-*ζ「……ん…………?」

('A`)「自分で立ってくれ」

ζ(-、-;ζ「……ん……」


 ゆっくりとデレを立たせると、ふらふらと揺れながら、閉じていた目を擦って無理やりに開いた。


ζ(゚ー゚;ζ「……あれ……ドクオ……?」

('A`)「終わったんだよ」

99 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:06:30 ID:CCACwx0U0
ζ(゚ー゚;ζ「…………」

('A`)「……なんだよ……」


 デレは一歩下がり、俺を見つめている。

 怯えている様子はない。
 ただ、見つめている。


ζ(゚ー゚;ζ「……どうして……私のお父さんを……」

('A`)「…………仕事だったからだ」

ζ(゚ー゚;ζ「…………なんで……」

('A`)「……言ってるだろ、仕事だったからだ」

ζ( 、 ;ζ「……違うよ……」



「――――なんで、あなたなの…………」



.

100 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:09:21 ID:CCACwx0U0

('A`)「…………」

ζ(゚、゚;ζ「……こんなの酷いよ……」

('A`)「俺だって知らなかったんだよ。それに、悪かったって思ってるさ……」

ζ(゚ー゚;ζ「……私じゃなかったら思わなかったんでしょ!?」

('A`)「――ッ……」


 確かにその通りだ。
今までは、悪いなんて思ったことも無かった。
むしろ店を持つための金になってくれてありがたいとまで思っていた。


ζ( ー ;ζ「……どうしたらいいのか……わかんないよ……」

('A`)「……父親の事、好きだったのか?」

ζ( ー ;ζ「……当たり前でしょ……」

('A`)「会社の金に手を付け、社員の給料をピンハネし、お陰で自殺した社員までいる。そんな父親でも、か? 報道されただろ」

ζ( ー ;ζ「…………」


 デレは何も言わず、黙っていた。
 呼吸の音だけを鳴らして。

 しかし暫くすると口を開いて、ゆっくりと返事をした。



.

101 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:10:36 ID:CCACwx0U0

ζ( ー ;ζ「……それでも……だよ……」



('A`)「…………」


 案の定、だ。
 彼女は案の定、そう返事した。

 父親どころか、生まれつき家族が一人もいなかった俺には理解できない話だ。



('A`)「……報酬はいらねぇよ。とっとと帰れ」

ζ(゚ー゚;ζ「……え?」

('A`)「お前の父親が死んだのも、お前がこんな街の寂れたレストランでウェイトレスやるはめになったのも、俺のせいだ」

('A`)「報酬なんていらねぇよ。消えてくれ」




 ジャケットを拾い上げて、長椅子に腰を降ろす。
ポケットに仕舞ってあったタバコを取り出して、オイルライターで火をつけた。



 吸い込んだ煙を吐き出す。
たったそれだけの動作を繰り返すだけで、俺の心は深く満たされた気がした。


 野暮用を、終えた。




 タバコがフィルターの先まで短くなった頃には、堂内にデレの姿はもう無かった。




.

102 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:11:47 ID:CCACwx0U0


('A`)「…………帰るか」



 吸い殻を靴底で踏みつけて、立ち上がる。


 礼拝堂から出た頃には、夕日が地面を赤く染め上げていた。




('A`)「……腹減ったな……」



 ジャケットから財布を取り出して、中身を確認する。

 ――しまった。ツンの店で1万レスも払ってしまって、残金が少ない。



('A`)「……チッ。一度店に帰っ――」




「ちょっと待って」




('A`)「……?」



.

103 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:12:39 ID:CCACwx0U0
 不意に後ろからジャケットを掴まれる。
仕事を終えて気が抜けていて、誰かに接近されていた事に気が付かなかった。

 振り返るとそこには――。



ζ(゚ー゚*ζ「……報酬、まだ払ってないから」



 先程とはまるで違う表情の、デレがいた。



('A`)「……いらねぇって言ったろ」

ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ私の気が済まないもん。お金なら持ってきたから」

('A`)「チッ…………。じゃあ……」



「……晩飯奢ってくれ」


.

104 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:13:28 ID:CCACwx0U0

ζ(゚ー゚*ζ「……えっ? 晩飯?」

('A`)「晩飯だ」

ζ(゚ー゚*ζ「そんなのでいいの?」

('A`)「ああ。契約するときに言ったろ? “朝飯前だ”ってな」

ζ(゚ー゚*ζ「……プッ……」

('A`)「……おい、笑う所じゃねぇよ。ここは“かっこいい、惚れちゃう”って所だろうが」

ζ(゚ー゚*ζ「……童貞、拗らせちゃったのね」

(;'A`)「どっ……童貞とかやめろよ……チッ……ほんとやめろよ……やめろ……」

ζ(゚ー゚*ζ「……いいよ、行こ? 私が働いてるお店、ピザも美味しいから」

('A`)「…………ああ。腹一杯奢ってもらうぜ」



 夕日はやがて沈み、月明かりが夜道を照らす。
 開店したバーのネオンが点滅し、眩しく目に染みる。


 彼女と歩くこの吸い殻まみれの小汚い道も、案外悪くないものだと思えた。








.

105 ◆H/3wgXUnC2:2016/04/03(日) 07:14:55 ID:CCACwx0U0






















.


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板