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('A`)便利屋ドクオの野暮用です
1
:
◆H/3wgXUnC2
:2016/03/27(日) 23:08:48 ID:BKUgdd360
('A`)「ったくよ……」
楽器や銃、スピーカーに囲まれた狭苦しい部屋。
奥に行けば寝室もあるが、俺は主にこの部屋で過ごしていた。
何故なら、ここは俺の店だからだ。
('A`)「開店日だってのに、客は一人も来やしねぇ……」
仕方なのない事だ。
この街“ソウサク”は、決して平和なわけじゃあない。
だが何か厄介事があっても、俺のような便利屋に仕事を頼むくらいなら、近くのバーで酒を飲んで面倒ごとを忘れようと考える頭の悪い連中ばかりだ。
俺には都合の悪い街だと言える。
友人にも、“よくこんな所で便利屋なんか開くね”、と呆れられるくらいだ。
まあ、暇なのは嫌いじゃないんだがな。
('A`)「しっかし……金がねぇのは辛いとこだ」スッ
机に置かれたピザを一切れ、口に運ぶ。
先程近くの店から買ってきたばかりで、熱を持ったチーズがドロリと溶けて黒い机に強いコントラストを残した。
('A`)「……うめぇな」
ずっとこの調子で客が来なければ、いずれはピザを食う金すら尽きる。
それだけは避けたい。
126
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/18(月) 17:49:14 ID:Bz3wk9sc0
「こいつをやるよ」
男が俺に差し出したのは、拳銃。
黒いスライドから剥き出しになった銀色のバレルが、月明かりを反射させていた。
「銃は持っておくと便利だ。見せびらかすだけでお前の身を守る盾になり……」
「……相手を殺す武器になる」
「…………」
「構うことはねぇよ。俺はもう一丁持ってるからな」
「…………なんで……」
「?」
「なんで俺みたいな知らない奴に、こんなものを渡すんだ……?」
「……ハッ。何を言い出すかと思ったら、そんなことか」
彼は笑って、空を見上げながら言った。
「昔の俺に、よく似てるからだよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
127
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/18(月) 17:49:48 ID:Bz3wk9sc0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です ――少年編――
近日?公開予定
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
という感じでよろしくお願いします!
128
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 18:21:12 ID:ixLjVelA0
* + 巛 ヽ
〒 ! + 。 + 。 * 。
+ 。 | |
* + / / イヤッッホォォォオオォオウ!
∧_∧ / /
(´∀` / / + 。 + 。 * 。
,- f
/ ュヘ | * + 。 + 。 +
〈_} ) |
/ ! + 。 + + *
./ ,ヘ |
ガタン ||| j / | | |||
――――――――――――
129
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 19:52:45 ID:SGjpafTU0
やったー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
130
:
名無しさん
:2016/04/18(月) 20:06:10 ID:shat8Gxs0
マジかよ!
ダメ元で言ったら続きキタ━!
待ってるからな!
131
:
名無しさん
:2016/04/23(土) 00:57:22 ID:MtbYCK6A0
作者賞6位おめでとう
132
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/04/23(土) 02:21:02 ID:e2ehi1/w0
投票本当にありがとうございます…!
7割程度書き終わったので、近いうちに…。
途中まで投下するか悩みます。
133
:
◆3hXbKaGZvg
:2016/05/02(月) 15:42:48 ID:/bf6AHok0
完成しました、ので投下できるとこまでやります。
あと最近おしゃれな酉を入手したので変えます。
134
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:43:23 ID:/bf6AHok0
.
135
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:43:57 ID:/bf6AHok0
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
('A`)便利屋ドクオの野暮用です
――少年編――
◆PizzaMan.c presents
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
136
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:44:33 ID:/bf6AHok0
.
137
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:45:06 ID:/bf6AHok0
「ハァ……ハァ……ッ!!」
(;'A)
ノ/-/o
j._/| ダッダッ
;.、ノイ、)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺はなんて、馬鹿なことを。
「ハァ…………うぐ……ッ!!」
、 ,
;.、vr⌒ち(;'A)っ ドサッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
138
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:45:49 ID:/bf6AHok0
でもまだ、死ぬわけにはいかないんだ。
『待てやクソガキィ!!』
「……クソッ!!」
(;'A)
/,-|、 スクッ
j._/U
.,」^、〉 .,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
139
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:46:36 ID:/bf6AHok0
話は、前日に遡る。
J( 'ー`)し「ドクオ……こんな遅くまでどこへ行っていたの??」
皺だらけの顔で鋭く俺を睨みつける女は不機嫌そうにため息をついて、シミの目立つ椅子に深く腰を降ろし、そう言った。
彼女は、俺が暮らしているこの児童保護施設の先生だ。
('A`)「……ちょっと……買い物に行ってました」
J( 'ー`)し「買い物? こんな時間に何が欲しかったの?」
('A`)「……喉が渇いたんで……コーラを」
大嘘だ。
実際に行っていたのは、繁華街。
この施設から逃げ出す金を集めるために、ギャングから預かったドラッグを売り捌いていたのだ。
J( 'ー`)し「あのねぇ…………。それが本当かどうかは置いといて、もしもあなたが警察に補導でもされたら、注意されるのは私なのよ!?」
('A`)「…………」
140
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:47:09 ID:/bf6AHok0
いつもそうだ。
この人は、いつも自分の事しか考えていない。
J( 'ー`)し「お金が必要なんだから、問題は起こさないで欲しいわ。警察に目をつけられでもしたらどうしてくれるのよ」
この児童保護施設は、児童保護施設とは名ばかりに、保護した少女を金で売りさばいていた。
養子縁組という、これまた名ばかりの方法を使って。
手に入れた大金は、この女の意味もない化粧やエステに消費されているのだろう。
つい吐き出しそうになった嫌味を、石を飲み込むように喉奥へと押し込んで、俯いた。
J( 'ー`)し「男は売れもしないから困ったもんだよ。さらに余計な面倒ごとまで引っ張り込んで……全く」
('A`)「…………」
J( 'ー`)し「もういいわ。部屋に戻りなさい」
('A`)「……はい」
ゆっくりと、薄暗い部屋を後にする。
後ろからブツブツと彼女が何かを言っているのが聞こえたが、俺は耳を傾ける事もせずに歩き続けた。
電気のついていない廊下を通って、俺は自分の寝床へと戻った。
141
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:48:06 ID:/bf6AHok0
('A`)「チッ……クソババァが……」ドサッ
空き部屋から持ち出してきた敷布団を重ねているおかげで、このベッドだけは居心地が良かった。
枕元のランプをつけ、ショルダーバッグから取り出したメモ用紙を眺める。
('A`)「…………6万レスか……」
ここ一ヶ月の間で、俺が売り捌いたドラッグの金額が30万レス。その内の2割の6万レスが、俺の手元に入ってくる。
ギャングに今月の売上金を渡すのは、明日。
つまり、今俺の手元には30万レスもの大金があるという事だ。
('A`)「…………」
俺はもう14歳だ。年齢を偽れば、ボロアパートを借りる事も不可能ではない。
30万レスもあれば、ここから逃げ出しても一ヶ月はやっていける。
142
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:48:39 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………、何考えてんだか。見つかって殺されるのがオチだ」
どうせ逃げ出すなら、もうちょっと早く逃げ出した方が良かったんだ。
俺が明日金を持ってこなかったら、ギャング達はすぐに俺を捜し出して、この脳天に大きな穴を空けるだろう。
('A`)「……ま、コツコツ貯めるっきゃねぇな……」
ドラッグの密売は、まだ始めたばかりだ。
数ヶ月も続けていれば、逃げ出すに十分な金額は貯まるだろう。
俺は頭の中で何度も金額の計算をしながら、その日は眠りについた。
.
143
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:49:34 ID:/bf6AHok0
(うA`)「……ふぁぁ……ねむ……」
カーテンの隙間から漏れ出す日差しの眩しさに、俺は目覚し時計を使わずとも目を覚ました。
ホールへやってくると、すでに何人かがテーブルで食事を取っていた。
俺もトレーを抱え、カウンターに置かれている器を次々と並べていく。
器に入っているのは、どれも質素な食品ばかり。
わがままを言えば、俺は朝昼晩全てピザでもいいというのに。
だが、何も食えないよりはマシだ。
自分にそう言い聞かせるしかない。
ミセ*゚ー゚)リ「おはようドクオー!」ドンッ
(;'A`)そ「おっと!」カチャッ
トレーを抱えてぼーっと立っていると、不意に後ろから押された。
トレーの上でゆらゆらと揺れる食器を上手いことなだめて、俺は振り返った。
144
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:50:17 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「……ミセリ……あのな……」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、ごめんごめん! ぼーっとしてたからそんなにいっぱい持ってるとは思わなくて!」
彼女の名前は、ミセリ。
年齢は俺の一歳下で、13歳だ。
彼女もまた、俺と同じくこの施設に保護された一人だ。
どうやら、両親から虐待を受けていたらしく、そのまま厄介払いのようにここに捨てられたとか。
ミセ*゚ー゚)リ「今日はやけに早起きだね。どしたの?」
('A`)「早起きってレベルか?」
ミセ*゚ー゚)リ「いつもより1時間も早いよ。ドクオがそんなに早起きするのは珍しいって」
('A`)「……腹が減ったんだよ」
ミセ*゚ー゚)リ「……なにそれ。笑えるー」カチャカチャ
彼女は笑顔のままトレーの上にいくつもの食器を並べていた。
俺はその間に空いてる席へと腰を下ろした。
ミセ*゚ー゚)リ「せっかくだから一緒に食べよ?」スッ
('A`)「……そうだな」
ミセ*゚ー゚)リ「もー。朝から浮かない顔してどうしたの? こっちにまでうつっちゃうよ」
('A`)「この顔は元からだっての」
145
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:51:18 ID:/bf6AHok0
パサパサのパンを口に放り込み、咀嚼する。それを色の薄いスープで胃の奥に流し込んだ。
お世辞にも美味しいとは言えない。
もしも俺が本当に浮かない顔をしているのだとしたら、それはきっとこの朝食が原因だろう。
ミセ*゚ー゚)リ「ごはん美味しいなぁ」モグモグ
俺の感想とは真逆に、ミセリはそう言う。
彼女と食事を共にする機会はあまり無いが、どんな食事でも美味しそうに食べていたのは印象深い。
ミセ*゚ー゚)リ「今日は土曜日だねぇ」
('A`)「……ああ、そうだな」
ミセ*゚ー゚)リ「何か予定はあるの?」
('A`)「いや、特にねーけど」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあさ、ちょっと街に出かけない? 私見たいお店があるんだ」
('A`)「……店って……。買う金あんのか?」
ミセ*゚ー゚)リ「無いよ?」
('A`)「…………」
146
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:52:00 ID:/bf6AHok0
それもそのはずだ。
当然ながら、ここの子供たちにお小遣いが与えられるような事はない。
むしろ子供たちに裏庭で育てた野菜やら果物やらをを持たせて、それを売りに行かせるくらいだ。
もちろん報酬などない。
('A`)「金ねーのに行ったってしょうがないだろ?」
ミセ*゚ー゚)リ「いいの、見たいだけだから。散々お店を冷やかして冷やかして…………それでね、いつかそれを堂々と買ってやるの!」
(;'A`)「なんだそりゃ」
ミセ*゚ー゚)リ「って事で、行こ? 決定ね!」
(;'A`)「……はぁ。わかったよ」
.
147
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:52:50 ID:/bf6AHok0
_________| |. |.:ll.:.::.:ミ;;;;;;ミ |___________
\.! !i!|l.:.::./:::/─────┐. |// i! .| | | |__
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄从 !.i.ll:.:/.:;/jesty's Shoes | . |/ | |i ! | ||=||=
. ミ.:.:::.ミ |..i!lll:::::/──────┘ .| | l |!. | ||=||=
-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,-、_,!ヽ.:.彡|i.:iiii|.:::|___ / ̄ ̄ヽ. ! | l i!. | ||=||=
二二二二二二二二二| | \ヽ.:i!|:::::! \\| |口i口i口| | | | li, | ||=||=
二二二二二二二二二| | l !i.::ii;;l;::! \| ||C|osed|| |ヽ、_,--、_,--、_,--、,! !l_,||=
二二二二二二二二二| | |_,|i.::|||!|::!___| |口i口i口| | ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄ ̄l ̄l ||=
二二二二二二二二二| | |i.::iii!i;::| |口i口i口| | ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄l ̄ ̄l ||=
二二二二二二二二二|_l_. !i::iii.i.:.:| ___|_i_i_|_| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i||===========||_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
.....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .|| |i.::iii!i;::| ||.....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i|li ___________ ,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i_ _ .....,i
´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ // ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄ ̄ ̄ ̄\\  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
// \\|| \ \\ 。
____//. \|| \\ [^ヽヽ__ | _
/ / l ̄二 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l| ̄二 ̄ ̄ ̄ ̄ヽイ  ̄ ̄`ヘ ─  ̄
. ⌒::.:ヽ |] ̄ ̄ ̄ /⌒\ || | γ ⌒ヽ {i!
.:.:.(.:.::(.:.:::=! イ i!O i! il ゝ_____,l!______/ i li O il!l二二ソ \
(.:.:::..(.:.::  ̄ ̄ ´ ゝ___ソ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ´ゝ___,ソ ̄ ̄ \
.
148
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:53:24 ID:/bf6AHok0
数時間後、俺たちは街まで来ていた。
街と言っても、それほど栄えているわけではない。
ただ俺たちが住んでいる辺りよりは、小洒落た店が多く並んでいた。
「おい走るなよ」 「次はあのお店ね!」
( 'A) ミセ*゚ー゚)リ
|":-っ ノ|h-.|o
j_-| /wv| タタタッ
,、しJ ;、, て^ヽJ.;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
街の散策を始めてから、すでに1時間が経過しただろうか。
俺は十分すぎるほど見物したと思ったが、この様子だと彼女はまだ足りないらしい。
まあ、たまにはこういう日も悪くないのだが。
ミセ*゚ー゚)リ「ふわぁ〜〜! 見てこれ!」
('A`)「どれだ?」
ミセ*゚ー゚)リ「これこれ! このペンダント!」
(;'A`)「たっかそうだな……って、1万!?」
(;'A`)「ペンダント一つにそんな大金を払う奴がいるのかよ……」
ミセ*゚ー゚)リ「かわいいなぁ〜。私だったら買うね! 絶対!」
('A`)「……まあ、デザインは悪くねーな」
ミセ*゚ー゚)リ「すみませーん! これ付けてみてもいいですかー!?」
(;'A`)「おいおい」
149
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:54:25 ID:/bf6AHok0
俺たちがどんなにみすぼらしい服装をしていても、どんなに貧乏そうに見えても、店員は頷くしかない。
それを見てミセリは大喜びだ。すぐに自分の首へそのペンダントをかけた。
ミセ*゚ー゚)リ「どう? どう?」
('A`)「……おお、似合ってるな」
ミセリの首につるされた、天使を象った銀色のペンダント。
服装だけがいまいちだが、彼女の髪型や髪色にはとても似合って見えた。
素直に、感心してしまった。
ミセ*゚ー゚)リ「えへへ、ほんと?」
('A`)「ああ。こりゃ買うべきだ」
ミセ*゚ー゚)リ「でもお金がないからお預けー」スッ
(;'A`)「ほんっと冷やかしだな」
150
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:55:08 ID:/bf6AHok0
ミセリはペンダントをゆっくりと外すと、また元の場所へと戻した。
1万レス。
俺が肌身離さず持っている現金の、わずか30分の1の金額だ。
当然ながらそんな事を知るはずもない彼女は、少しだけ残念そうな顔でペンダントを見つめていた。
ミセ*゚ー゚)リ「……ささっ、次行こ!」タタッ
(;'A`)「だから走るなっての……」
カランカラン、とドアのチャイムを鳴らして、彼女はすぐに店内から去っていく。
窓ガラスから見えていた彼女の横顔も、すぐに見えなくなった。
('A`)「…………」
俺は馬鹿だ。
ああ、間違いなく大馬鹿だ。
.
151
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:56:01 ID:/bf6AHok0
|i l::| |VNヾ` ´/ |::; l:}l:::::::::::/ } :::::::::::::;
. ゝ ',! |:::::::| ', r ,:/ j' |::::::::/) } !::::::::::: ,'
. ヽVト、| ヽ / !::: / _/ j:::::::::: ,'
{ l ;::::/Y´ /:::::::::: ,′
. ヽ ', ___,. -ニ=- _ ,'/ __,/:::::::::::::::/ー- _
. ', {ゝ-’:::::::;: ---ゝ ,:7::::::::::::;:>≦ }
‘, )-=¬ /:{ < ,'
’, ,.::=¬ ,. -=ニ二 _,. {
’, / ,. -= l
. ’, / |
’, / _,. --|
’, / ,. =≦≧=- _ j
「…………すいません」
ただ、馬鹿になるのも悪くない気分だ。
.、
| '.
'. '. _ ,.、
:,.;^' ^ ".
r'| ',
'h' j
“';, ,;
| ';
「これ、ください」
.
152
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:56:36 ID:/bf6AHok0
ミセ*゚ー゚)リ「ふぅー、楽しかったね!」
('A`)「ああ」
街から施設への帰り道。
もう少し歩けば、施設に到着するだろう。
ミセ*゚ー゚)リ「また行きたいな〜」
バッグの中に隠した、銀色のペンダント。
俺はそれをミセリにいつ渡そうか、ひたすら悩んでいた。
(;'A`)「…………」
駄目だ。
いざ渡すと思うと、なぜだか緊張してしまう。
別に俺は、ミセリに特別な感情を抱いているわけでもないのに。
(;'A`)「…………」
153
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:57:23 ID:/bf6AHok0
何故だろうか。
とても恥ずかしい。
やっぱりやめておくべきだったのではないか。
(;'A`)「…………」
ミセ*゚ー゚)リ「どうかした?」
(;'A`)そ「へっ!? い、いやいや!!」
ミセ*゚ー゚)リ「ついたよ?」
(;'A`)「えっ? あ、ああ…………」
気づけば、自分たちは施設の玄関前まで来ていた。
ミセ*゚ー゚)リ「ただいまー」ガチャッ
('A`)「…………」スタスタ
仕方がない。
何も今日でなくとも、渡す機会ならいくらでもある。
勇気が湧いてきた頃に、ちゃんとした形で渡そう。
そう心に誓った。
154
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:58:14 ID:/bf6AHok0
J( 'ー`)し「あら、やっと帰ってきたの?」
玄関の扉を開けてすぐの場所に、先生が立っていた。
彼女は、いつもはあまり見せない笑顔を浮かべて、こちらに歩み寄ってくる。
ミセ*゚ー゚)リ「ただいま、先生」
J( 'ー`)し「ミセリ、今日は大事な話があるの。ちょっと来てくれる?」
ミセ*゚ー゚)リ「へ? うん、わかりました」
('A`)「……?」
大事な話?
出かけていた事と何か関係があるのだろうか。
ミセ*゚ー゚)リ「付き合ってくれてありがとね、ドクオ! またお昼ご飯の時に!」
('A`)「あ、ああ……」
まあ、後で聞けばいい話だ。
俺はペンダントを渡す練習でもしていよう。
そんな事を考えながら、俺は軋む床を歩きながらゆっくりと部屋へ戻った。
.
155
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:58:54 ID:/bf6AHok0
――それから長い時間が過ぎても、その日のうちに、再び彼女と会うことはなかった。
昼食時、俺は食事が終わってもホールで待っていたが、一向に現れず。
夕食時、彼女の分の食事まで用意して待っていても、現れず。
('A`)「…………」
やがて他の子供たち全員が食事を終えてから数時間が経った頃、俺はようやく諦めて、トレーを元の場所へと戻したのだった。
('A`)「あいつが飯も食わないなんてな……」
余程、深刻な話だったのだろうか。
先生の表情からは、そうは思えなかったのだが。
('A`)「……まあいいや」
仕方なしに、扉を開けて廊下へ出る。
相変わらず暗い廊下だ。
金に困っていないのなら、もう少し設備を整えてほしいものだ。そう思った。
156
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 15:59:34 ID:/bf6AHok0
不意に、横の扉が開く音がする。
この部屋は、先生の寝室だ。
中から出てきたのは、案の定気味の悪い笑顔を浮かべた女だった。
J( 'ー`)し「……あら」
目が合う。
俺は視線を逸らさずに彼女の瞳をまっすぐ見つめて、こう聞いた。
('A`)「……ミセリはどうしたんですか」
ミセリ、という名前を聞いて、彼女は顔をそらして口角を引きつらせていた。
J( 'ー`)し「……ああ、あの子なら引き取られたわよ」
(;'A`)「――ッ!?」
彼女の言葉を聞いて、思わず足がすくみそうになった。
引き取られた。
それはつまり、大金で売り飛ばされたという事だ。
157
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:00:19 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「なっ……」
J( 'ー`)し「今日ね、いい方が来てくれたのよ。ミセリくらいの歳の娘なら、男手一人でも世話ができるって……」
(;'A`)「…………」
世話ができる?
冗談じゃない。
世話をさせられるのはミセリの方だ。
だからあえてその年齢の子供を選んだんだ。
この女もそれをわかっている。
わかっていて、それでも大金に換える。
もう何回――、あと何回この女はそれを繰り返すのだろうか。
(;'A`)「……じゃあ、もう連れてかれたんですか……」
J( 'ー`)し「ええ。今頃あの方のお家で、温かいお風呂にでも浸かってゆっくりしているでしょうね」
(;'A`)「ッ…………」
この女は、救いようがない屑だ。
ただ、俺は腹を立てるよりも、悲しみに心をまるごと押し潰されてしまった。
158
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:01:03 ID:/bf6AHok0
( A )「…………」
J( 'ー`)し「……おやすみなさい、ドクオ」
俺が口を閉ざしていると、彼女はそう言ってホールの方へと歩みを進めた。
やがて扉が閉まる音が、この薄暗い廊下に響き渡った。
('A`)「…………」
どうする事もできない。
何を言ったって、あの女はミセリの居所を教えるはずもない。
手紙だって出させてくれるはずがない。
――もっとも、ミセリが手紙を受け取れるような状況に置かれるかどうかもわからない。
('A`)「…………」
今までも、この施設から引き取られていった子供たちとは、二度と会うことがなかった。
もう、忘れるしかないのか。
悔しさを圧し殺して、ゆっくりと歩きだした。
.
159
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:01:38 ID:/bf6AHok0
暗い廊下を抜けて、自分の部屋へと到着する。
同時に、ある事を思い出した。
今日は、ギャング達に金を渡さなければならないのだった。
('A`)「……行かねーと殺されちまうな」
部屋へ入り、ベルトで挟んでおいた封筒が確かにある事を確認した。
そしてベッドの下に隠しておいたドラッグを取り出して、ショルダーバッグへ詰め込んだ。
部屋の窓をゆっくりと開けて、周囲を確認する。
外には誰もいない。俺はゆっくりと足を地面に下ろした。
('A`)「……行くか……」
枯れ葉を踏み越えながら、ゆっくりと庭を抜け出した。
.
160
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:02:24 ID:/bf6AHok0
しばらく歩くと、人通りの多い場所へ出た。
時計を確認すると、時刻はまだ22時を10分過ぎたばかりだ。この時間帯なら、バーやパブへ出入りする人達が多い。
俺はその人混みに紛れるようにして、決して走らず、ゆっくりと歩みを進めた。
客寄せの声。クラブから漏れ出す音楽。酔っぱらいの叫び声。道端の吸い殻。割れたビール瓶。
全てがこの街を小汚く彩っていた。
シュボッ /ィヘ/
,' / .)/
. _______ (:' /イ)/
./∨========.∧ ', )) ィヾヽ/
マ:::::∨.\/\/\∧ } /( 弋,イ
.マ:::::∨/\/\/ ∧ ,' ノし': :ヽ
..マ::::::∨__/\/\ ∧ ((,イ: : :: :V) /¨⌒`ヽ
マ::::::∨ \/\/\∧ 、ゝ: : : :(ノ} Y′ |
. マ:::::::∨/\/\/ ∧ ヽ: :: : : :: :/ / /
. マ:::::::∨__/.\/\ .∧ ゝ;:; :;从;ノ ./ /
. マ:::::::∨ .\/\/ヽ∧ ┌───────i/ヽ_ ./
.マ:::::::∨./\/====∧.二二ニニニニニニニニニニニ| ー-─ /
. マ:::::::∨==ヽ:::::::::::| |\/\/\/\/|三| /
` ̄ ̄ )::::::::::| |/\/\/\/\|三|. /
ソ´⌒ ̄ ̄ ̄へ──'ニt‐‐ ./\/\/|三| .|
/ 〃 l ̄ヽ ヽ/\/\ ̄リ .|
| ゝ .| | ) /\/\| |
バッグから取り出したタバコに火をつけ、煙を一気に吸い込む。
肺に溜まった酸素とともに吐き出した煙は、まるで俺の気持ちのようにゆらゆらと揺れながら、やがてネオンの光の中に薄く溶けていった。
161
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:03:38 ID:/bf6AHok0
明るい看板が並ぶ通りを逸れて、月明かりのみが照らす薄暗い路地へと入る。
ゴミ袋や空き瓶を避けながら歩みを進めると、やがてポカンと小さく開けた空き地へと出た。
そこに佇む、5人の男たち。
彼らが、この辺りでドラッグを捌くギャングたちだ。
('A`)「……どうも」
軽く頭を下げて、そう挨拶する。
すると一人の男が手に持っていたタバコの火を消して、こちらへゆっくりと歩み寄ってきた。
(,,゚Д゚)「時間通りだな」
('A`)「…………」
このギャングのリーダであるギコという名の男は、左手にした時計を見てそう言った。
確認せずとも、恐らく22時半頃だろう。
俺はいつもこの位の時間に、この場所にやってきていた。
162
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:04:43 ID:/bf6AHok0
(,,゚Д゚)「飯は食ったか?」
('A`)「……ああ、はい。食べました」
(,,゚Д゚)「そうか。そりゃいいな。飯を食うことは大切だ。俺たちはまだ何も食ってないんだ」
('A`)「……なにか買ってきましょうか?」
(,,゚Д゚)「いや、その必要はない。お前は施設で出された飯を食っただけのこと。俺たちは自分で飯を食うための金を稼がなきゃなんねぇ。それだけの違いだ」
('A`)「…………」
嫌味な言い方だ。
ただ別に、それで腹を立てるようなことは無い。この言い方は、彼の性格によるものなのだ。
いちいち彼の発言に腹を立ててストレスを貯めるような事をしても、無意味だとわかっていた。
(,,゚Д゚)「お前から金を受け取らないと、俺たちは今日の晩飯にありつけないんだ」
彼はそう言うが、決してそんなはずはない。あくまでそういう言い回しをしているだけだ。
俺はバッグの中から残りのドラッグと封筒を取り出して、彼に渡した。
(,,゚Д゚)「どれ……」
っロ゛
163
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:05:32 ID:/bf6AHok0
ギコはドラッグの数を数え、次に封筒の中の金を取り出して、舐めるようにその枚数を数えた。
(,,゚Д゚)「……29万しかないぞ」
('A`)「――あっ……」
ミセリがいなくなった事ばかり考えていたせいで、忘れていた。
彼女へのプレゼントを買ったために、1万レス少ないのだ。
('A`)「……すいません、どうしても使わなくてはならなくて……1万だけ借りました」
(,,゚Д゚)「……ほぉ」
('A`)「その分は……俺の分の2割から引いてもらえればいいので……」
(,,゚Д゚)「……あのな」
ギコは一歩踏み出して、俺の肩に手を置いた。
(,,゚Д゚)「お前は、俺たちが貸したドラッグの売上から金を使った。つまり、俺たちの金に手を付けたってことだ。わかるか?」
('A`)「……はい」
(,,゚Д゚)「人の金を盗むのは良くないよな」
('A`)「…………はい」
164
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:06:38 ID:/bf6AHok0
わかっていた。
してはいけない事だと。
ただ、俺の取り分から引けばいいものだと勝手に考えていた。
(,,゚Д゚)「……わかっているならいいんだ。今回は許してやろう」
('A`)「……えっ」
ギコはそう言って、まだ金を数え始めた。
(,,゚Д゚)「……これがお前の取り分だ」
っロ スッ
('A`)「…………」
っロ
ギコから受け取った金をじっと見つめる。
俺の取り分は6万。そこから1万だけ引いた5万が渡されるのだと思っていた。
――だが俺の手元にあるのは、たったの2枚きりだった。
165
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:07:16 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「…………」
(,,゚Д゚)「罰として、今回の取り分は1割だ」
彼はそう言った。
俺は、何も言うことができない。
彼の言う事はもっともだ。罰を与えられて当然で、2万くれるだけでもありがたい事なのだ。
ただ、俺は気になった。
ギコを取り囲む周りの4人が、ニヤけた顔で俺を見つめているのが。
(;'A`)「…………」
もともと彼らは、1割しか渡さないつもりだったのではないか。
(,,゚Д゚)「まあ来月からは2割にしてやる。……さて、続けるか? 売上次第では3割にしてやってもいい」
('A`)「…………」
166
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:08:16 ID:/bf6AHok0
冗談じゃない。
どう頑張ったって、30万レス程度しか売ることができないんだ。
もしそのうちの1割しか貰えなかったら、俺はあと何ヶ月こんな事を続けたらいいのだ。
いつまで経っても、あの施設を出ることができない。
金をためて逃げ出す前に、法的に働ける年齢になってしまう。
俺は一刻も早く、あそこから逃げ出したいのだ。
('A`)「…………」
ギコの持つ、27万。
それがあれば、一ヶ月は一人でもやっていける。
('A`)「続けます」
俺がそう言うと、ギコは喜んでバッグの中を漁り始めた。
周りの男たちもそう聞いて安心したのか、俺から興味をなくしたように下がっていって、タバコを吸い始めた。
167
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:08:54 ID:/bf6AHok0
俺はその隙を見逃さなかった。
(;'A) バシッ
/":-っ゛
j_-/
,し^、ゞ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
すかさずギコの上着のポケットから封筒を掴み取り、そのまま全力で逃げ出したのだ。
(;,゚Д゚)「あっ、おいテメェ!!」
後ろを振り返る暇はない。
ただ、複数の男たちが俺を追いかけて来ていることは、大きな足音と叫び声でわかった。
(;'A`)「ハァッ……ハァッ……!」ダダッ
人混みの中を縫うようにして、走り続ける。
時折ぶつかった人が驚いて声を上げる。
それでも構わず走り続ける。
168
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:09:39 ID:/bf6AHok0
「ハァ……ハァ……ッ!!」
(;'A)
ノ/-/o
j._/| ダッダッ
;.、ノイ、)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
俺はなんて、馬鹿なことを。
「ハァ…………うぐ……ッ!!」
、 ,
;.、vr⌒ち(;'A)っ ドサッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
169
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:10:18 ID:/bf6AHok0
でもまだ、死ぬわけにはいかないんだ。
『待てやクソガキィ!!』
「……クソッ!!」
(;'A)
/,-|、 スクッ
j._/U
.,」^、〉 .,
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
170
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:11:01 ID:/bf6AHok0
男たちの叫び声が聞こえなくなるまで俺は走り続けた。
もう何十分走っただろうか。
脚は棒のようになり、走る速度も先程よりも随分と遅くなってしまった。
それでも、ふらふらとよろけながら走り続けた。
そして暗い路地の角を曲がったその時。
ドンッ
(;'A`)「うわっ!」ドサッ
不意に何かにぶつかって、地面に転んでしまった。
「おっと…………」
.
171
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:11:52 ID:/bf6AHok0
そんな声が聞こえてはじめて、ぶつかったのが人だと理解した。
見上げるとそこにいたのは。
「……大丈夫か坊主」
_
( ゚∀゚)
ri:::|_|::|
/ロ/n|j:| (A`;)
し/^J 、, ∧イ-.人
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
黒いロングコートに見を包み、右手をポケットに突っ込んで佇んでいた、一人の男だった。
太くしっかりとした眉毛が特徴的なその男は、地面に尻をついて倒れ込んだ俺に手を差し伸べていた。
「……手を貸せよ」
_
( ゚∀゚)
ri:::|_|::|っ
/ロ/n|j:| (A`;)
し/^J 、, ∧イ-.人
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
172
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:12:38 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「…………」
ぶつかってしまったのは俺の方だ。
急いでいるとはいえ彼の好意を邪険にする必要もなく、俺はその手を掴んだ。
\
\
\, -. . ,_ ガシッ
\ ノ ';,
'ヽ, . し^ ' .ヾヽ、
'-:'_'、 .'ヽ、) ヽ、
'-ヽ、 ',._',-' \
^' \
'ヽ
_
( ゚∀゚)「よっと」
グイッ、と強い力で引っ張られ、俺の身体は簡単に持ち上がる。
_
( ゚∀゚)「……ガキか?」
俺の顔や背丈、体重からそう思ったのか、彼はそう言った。
俺はまだ、子供に見えてしまうのか。
173
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:13:17 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「前見て歩けよ。……いや、走ってたか」
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「……ひょっとして、逃げてんのか?」
(;'A`)「ッ…………」
_
( ゚∀゚)「やっぱりか」
なんだ、この男は。
俺が子供だと見抜いたり、逃げていると見抜いたり。
まさか――。
_
( ゚∀゚)「警察じゃねぇよ、安心しろ」
(;'A`)「ッ…………」
俺が思った事すら、見抜かれる。
_
( ゚∀゚)「……警察だと都合が悪そうだな。ってことは……何かやらかしたな?」
(;'A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「だんまりかよ」
174
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:13:50 ID:/bf6AHok0
怯えているのでも、不審に思っているのでもない。
驚いているのだ。
驚いて、何も言えない。
_
( ゚∀゚)「安心しろよ、追手は来てねぇみたいだからよ」
(;'A`)「……それならよかった……」
_
( ゚∀゚)「んで、その封筒は?」
(;'A`)そ「ッ!」
そう言われて気がつく。
大事に抱えていたはずの封筒が、手元にない。
男が指差す方向を見ると、封筒は俺が先ほど転んだ辺りに転がっていた。
(;'A`)ササッ
っロ゛
_
( ゚∀゚)「……金か。盗んだな?」
(;'A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「誰から盗んだ」
(;'A`)「…………ギャング……」
_
( ゚∀゚)「ギャング? ってーと……ギコあたりか?」
(;'A`)「……そう……」
_
( ゚∀゚)「…………プッ……」
_
(*゚∀゚)「……ハハハハハッ!!」
_
( ゚∀゚)「おいおい、マジかよ。やるじゃん」
175
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:14:41 ID:/bf6AHok0
男は、笑った。
_
( ゚∀゚)「で、その追手から逃げてるってわけ?」
((;'A`)コクコク
_
( ゚∀゚)「……いやー、面白い奴もいるもんだな。笑えるぜ」
男はそう言いながら、ロングコートを捲くって腰のあたりから何かを取り出した。
_
( ゚∀゚)「こいつをやるよ」
っ=y
男が俺に差し出したのは、拳銃。
黒いスライドから剥き出しになった銀色のバレルが、月明かりを反射させていた。
(;'A`)「えっ?」
_
( ゚∀゚)「銃は持っておくと便利だ。見せびらかすだけでお前の身を守る盾になり……」
「……相手を殺す武器になる」
.
176
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:15:24 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「構うことはねぇよ。俺はもう一丁持ってるからな」
(;'A`)「…………なんで……」
_
( ゚∀゚)「?」
(;'A`)「なんで俺みたいな知らない奴に、こんなものを渡すんだ……?」
_
( ゚∀゚)「……ハッ。何を言い出すかと思ったら、そんなことか」
彼は笑って、空を見上げながら言った。
_
( ゚∀゚)「昔の俺に、よく似てるからだよ」
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「いいから受け取っとけ」
っ=y
('A`)「……じゃあ……」ガシッ
っy=゛
177
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:15:57 ID:/bf6AHok0
彼から拳銃を受け取る。
拳銃を手に持つのは、初めての事だ。
('A`)「ッ……」
っy=
想像していたよりも、重い。
グリップは大きく、自分の手には少し余る。
だが、トリガーやマガジンリリースボタンに届かないほどではない。
_
( ゚∀゚)「使い方はわかるか?」
('A`)「……まあ、本とかで……」
_
( ゚∀゚)「ならいいな。とりあえず撃てればいいんだ。メンテナンスなんかはまた覚えればいい」
セーフティの位置も、見ればわかる。
弾も既に入っているようだ。
('A`)「……こんなもの、本当にもらっていいのか? 高いんじゃ……」
_
( ゚∀゚)「気にすんなよ。俺は結構稼いでるし、仕事柄いくつも持ってるからな」
('A`)「仕事柄……?」
_
( ゚∀゚)「ここらじゃ結構名の知れてる殺し屋さ。もっとも、お前みたいなガキが知ってるわけもねーが」
('A`)「殺し屋……か……」
178
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:17:09 ID:/bf6AHok0
殺し屋がどういったものなのか、想像はできる。
ただ実際に、俺の目の前にいるこの親切な男が殺し屋だなんて――、正直なところ合点がいかない。
こんなものだろうか。
檻に閉じ込められた子犬を解き放つような、そんな優しさが。
殺し屋の心にはあるのだろうか。
――いや、これは優しさと似ているようで、きっとまるで別ものなのだ。
そうでないと、子犬に牙を与える理由にならない。
('A`)「……ひとつ聞いていいか」
_
( ゚∀゚)「……なんだ?」
('A`)「そういう生き方って……大変じゃないのか」
_
( ゚∀゚)「……ハッ。そりゃ大変さ。人を殺し回ってりゃ、警察や法律と戦わなきゃなんねー時もある」
_
( ゚∀゚)「ただよ……」
_
( ゚∀゚)「俺たちみてーな人間が手っ取り早く“自由”を手に入れるためには、“銃”を手にするしかないんだよ」
179
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:17:46 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「とても人にオススメできるようなもんじゃねぇ。けど…………、お前は望んでるんだろ?」
('A`)「…………ああ」
:.| ∨: : :|ハ:! //‐ ´ i: : : : : : : : /::::::::/
:.ゝ-V: :.| ヘ、 |: : : . . : : : : :厶イ/ _
: : :.|..∨ム |: : : : . : : : : : : : /:/ > .
ハ: :.! iヾ:.i {: : : : : : : : : : : イ:/ \ > .
.∧..i.....i \ __ j: : : : : : : : : , i:::/ \ `
.... Ⅵ.....i \ ` 〃: : : : : : : , '....|::′、 \
........ヘ.....i \ ___,........__: : : : : :., '........j/......∧ \
.................i \ ` ー─一 ´: : : /∨...................∧ \
..................i \  ̄:::::: : : :./ i..................... ∧ \
「……こいつがあれば、俺は自由だ」
.
180
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:18:39 ID:/bf6AHok0
_
( ゚∀゚)「……ハッ。そいつはよかったな――――」
『この辺にいるはずだ!!』
(;'A`)「ッ……!」
不意に、後方から声がする。
大勢の足音とともに、その声は段々と近づいてくる。
_
( ゚∀゚)「…………さて、俺はこの辺りでお暇するか」
('A`)「…………」
_
( ゚∀゚)「ビビってるのか?」
('A`)「……いや……」
('A`)「…………ウズウズしてるだけさ」
181
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:19:29 ID:/bf6AHok0
「……ハッ。……それじゃあな」
_
. (A` ) n( ゚∀゚)
|-h.| . 'ヽ|:::|_|::|
i_U_j /ロ/n|j:|
し^J ; .、し/^J ザッ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
やがて彼は、この路地裏から姿を消した。
まるで初めからいなかったかのように。
夢でも見ていたのではないかと思わせる。
しかし俺の右手には、確かに銃が握られている。
Ω「いたぞ!!」ダッ
やがて路地の影から姿を表した3人の男たち。
ギコはいない。そもそも追いかけて来なかったのだろう。
182
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:20:09 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
| |
| |
| | グッ
-' '- ノ;_
| | . , | | 7
t.'-'-'-'t;_;| J| |
. '==| ,:| _|
. | | |'|
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| | |,
. '-'-┘
スチャッ
____
_ . -r--'-┴-��
,.-,__.- =≦三三| γ⌒ヽ|
|三三二二三三| |:::::::: | |
|三三三三三三|人 ___ ノ |
_〈≧て⊇____人t .○ yノ
= ≦__/ ̄  ̄, ̄ ヽ | |__又_彡'
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:::::: 〈 : ̄  ̄'. '.' ','
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ヽ 〉 -= = _/ ,' 'ノ
ヽ '. .' '.
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ノ,
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.
183
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:21:25 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………」
| |
| |
| | グッ
-' '- ノ;_
| | . , | | 7
t.'-'-'-'t;_;| J| |
. '==| ,:| _|
. | | |'|
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スチャッ
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ヽ '. .' '.
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ノ,
'
.
184
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:21:59 ID:/bf6AHok0
セーフティを外して、銃口を男たちに向ける。
('A`)「…………」
っy=
Ω「――ッ!!」
それを見て男たちは、眉をひそめてたじろいでいた。
Ω「てめぇ……銃なんてどこで手に入れた……」
('A`)「…………さあな」
Ω「……俺たちに銃を向けたら、取り返しがつかねぇぞ」
('A`)「……取り返したいものなんて、ありゃしねぇんだ」
Ω「…………そうかよ」
Ω「だったらここで死にな!!」スッ
一人の男が、懐から拳銃を取り出した。
今更出したって遅い。俺は引き金を引くだけでこいつの命を取ることができるんだ。
185
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:22:41 ID:/bf6AHok0
('A`)「ッ……」
一瞬だけ、身震いする。
ここで引き金を引いたら、俺は一線を越えることになる。
なんて、簡単なのだろうか。
なんて、か弱いものなのだろうか。
命というものは、こんなにも軽い。
バァン
拳銃は、耳を劈くような大きな音を鳴らして、その銃口から火を吹く。
放たれた銃弾は一人の男の額を貫き、やがて男は地面に崩れ落ちた。
こんなにもあっさりと、人は命を落とすのだ。
.
186
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:23:32 ID:/bf6AHok0
Ω
Ω「ッ……て……てめぇ!!!」スッ
('A`)「おせぇよ」
っy=
バァン
一つ、二つ、三つ。
Ω「――ひッ……ヒィッ……!」ドサッ
次々と、地面に屍が転がる。
('A`)「…………」
Ω「ッ……やっ……やめろ俺は撃つな……!!」
最後に残った男が言う。
殺さないでくれ、殺さないでくれ。
か細い声で、彼は言う。
187
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:24:23 ID:/bf6AHok0
('A`)「…………終わりなんだよ」
っy=
Ω「ッ…………」
('A`)「……いや。もう、終わってたのかもしれねぇな」
Ω「…………?」
('A`)「バーン」
Ωそ「ひッ……!!」
('∀`)「……ハハハハッ!!」
バァン
地面に転がった四つの死体を踏み越えて、俺は路地を抜け出した。
銃声を聞いて誰かが通報したのか、ネオンの街にはサイレンが鳴り響いていた。
俺はまた、人混みに紛れるように、闇に溶けるように、ゆっくりと歩みを進めた。
.
188
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:25:01 ID:/bf6AHok0
しばらく歩いて、俺は施設の前まで来ていた。
庭を抜け、開けっ放しにしておいた自分の部屋の窓から中へと入る。
施設内は、静かだ。部屋の様子も変わりない。
どうやら外出したことに気づかれてはいないようだ。
必要なものは、何もない。
この部屋に――、この俺に大事な持ち物なんて、大してありはしなかった。
ふと、ベッド脇の机に目を移す。
そこには、ミセリに渡すつもりだったペンダントの入った箱が置いてあった。
('A`)「…………持ってくか……」
ドラッグが無くなったことで再び軽くなっていたショルダーバッグに、ペンダントの箱を入れる。
もっと早く、渡しておけば。
後悔の念に苛まれ、しばらくの間俺はベッドに座り込んでいた。
189
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:25:38 ID:/bf6AHok0
('A`)「……行くか」
冷蔵庫に入れ忘れたままぬるくなった安物銘柄の缶コーラの栓を開けて、その中身を一気に飲み干す。
しばらくして落ち着きを取り戻し、俺はタバコに火をつけた。
('A`)y‐~~「……ふぅ」
この部屋でタバコを吸うのは初めてだ。
もしも先生にバレてしまったら、面倒な事になるからだ。
しかし、そんな生活ももう終わりだ。
ベッドから立ち上がって、部屋の扉を開ける。
軋む廊下を歩いて、ホールの近くの扉の前に立つ。
その扉をゆっくりと開け、足音を立てぬように少しずつ部屋の中へと入り、扉の鍵をかけた。
やがて見えてくる、大きなベッド。
そこに横になる、一人の女。
豪快にいびきを立てている。
.
190
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:26:14 ID:/bf6AHok0
('A`)「起きろよ」
声をかける。
だが、いびきは収まらない。
('A`)「おい、クソババァ」
再び声をかける。
いびきが止まり、寝息が微かに聞こえてくる。
.
191
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:26:56 ID:/bf6AHok0
「目を覚ませよクソババァ!!」
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,イ'´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;: '´
、|,' ,r'´ニ`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,:ィ''´
人、/ ,r'´ ̄ヽヽ, :::::::::::::::::':::::::::::::,:ィ''´
人," /´ ̄`ヽ、ヽ\ :::::::::::::,ゝ__‐'´
,/, / : : : : : :::::ヽ \ ヽイ::::::::/
v/ / ,...___ : : : : : :::::ハ ヽ/
,v ,イ,ィ:: : : : :`:‐-::、:_:,r‐l/ 三 ニ 一 -
. /:::::: : : : : : : : ::::::::::/
/::::_: : : : : : : : : : : :/
{::::::::::`ヽ:、: : : : : :./ 三 ニ 一 -
ヽ::::::::::::::::::::::::. : /
` 、:::::::::::::::::/ 三 ニ 一 -
` 、::/
ドンッ
.
192
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:27:40 ID:/bf6AHok0
「きゃあ!!」
靴底で、女の腰に蹴りをいれる。
流石にまだ寝ているということはない。
彼女は張り付いた瞼をむりやりこじ開けるようにして、事態を理解しようとしていた。
やがて、目が合う。
J(;'ー`)し「……えっ……?」
起き上がって再び俺を見つめるが、どうやら彼女はまだ、現状を理解できていないみたいだ。
蹴り飛ばしたのが俺であることすら――――いや、蹴り飛ばされた事すら、わかっていないようだ。
J(;'ー`)し「……何……なんなの……?」
('A`)「なぁ、先生」
J(;'ー`)し「…………」
('A`)「ミセリはどこに連れてかれたんだ」
J(;'ー`)し「……は? 言えるわけないじゃない……あんたみたいな金食い虫に……」
('A`)「…………」
193
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:28:13 ID:/bf6AHok0
「きゃあ!!」
靴底で、女の腰に蹴りをいれる。
流石にまだ寝ているということはない。
彼女は張り付いた瞼をむりやりこじ開けるようにして、事態を理解しようとしていた。
やがて、目が合う。
J(;'ー`)し「……えっ……?」
起き上がって再び俺を見つめるが、どうやら彼女はまだ、現状を理解できていないみたいだ。
蹴り飛ばしたのが俺であることすら――――いや、蹴り飛ばされた事すら、わかっていないようだ。
J(;'ー`)し「……何……なんなの……?」
('A`)「なぁ、先生」
J(;'ー`)し「…………」
('A`)「ミセリはどこに連れてかれたんだ」
J(;'ー`)し「……は? 言えるわけないじゃない……あんたみたいな金食い虫に……」
('A`)「…………」
194
:
これは失敬
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:28:58 ID:/bf6AHok0
('A`)「言えよ」チャッ
っy=
J(;'ー`)し「――ッ!?」
拳銃を向けると、彼女は竦み上がってその皺だらけの頬に汗を流した。
('A`)「……言わねーなら、殺して書類を漁るだけだ」
J(;'ー`)し「……なっ……まさか殺せるわけ……」
('A`) カチャッ
っy=゛
撃鉄を起こす。
その動作だけで、俺の言葉が嘘ではないと理解するのには十分だったようだ。
J(;'ー`)し「――ッ……わかった……わかったから……」ゴソゴソッ
彼女は恐る恐るその身を起こして、机の引き出しから一枚の紙を取り出した。
J(;'ー`)し「……ここよ……」ペラッ
っロ゛
('A`) パシッ
っロ゛
J(;'ー`)し「…………」
195
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:30:09 ID:/bf6AHok0
彼女から奪い取った紙は、養子縁組の手続きに使われたと思われる書類の控えだった。
大きな枠に囲われた部分に、ミセリを引き取った男の名前と、住所が書いてある。
その下には、ミセリの名前もあった。
どうやら、これで間違いはないようだ。
J(;'ー`)し「……あんた……」
紙を畳んでポケットに入れていると、彼女が俺の顔色を伺いながら口を開いた。
J(;'ー`)し「あんた……なんであの子のためにこんな事を……」
('A`)「…………」
これは決して、ミセリのためではない。
自分ではそう、理解していた。
あくまでこれは、自分のためなのだ。
自分を満足させるために、やっているだけの事なのだ。
196
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:30:43 ID:/bf6AHok0
そしてもう一つ、わかりやすい理由がある。
この女には、それすらもわからないのだろう。
J(;'ー`)し「……こんなことして……どうなるかわかってるの……?」
('A`)「……さあな」
J(;'ー`)し「…………」
('A`)「一つ、ためになる耳寄りな情報を教えてやるよ」
J(;'ー`)し「……何……?」
('A`)「これから俺がやる事は――――」
――――単なる憂さ晴らしに過ぎない。
.
197
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:31:47 ID:/bf6AHok0
そう言って、俺は彼女に向けた拳銃の引き金を引いた。
白いシーツが赤く染まり、その中央に倒れ込んだ死体。
俺はそれにタバコの吸い殻を押し付けて、この部屋を漁り始めた。
('A`)「……金庫の鍵はどれだ……」
机の引き出しや、バッグの中。
様々な場所を探し、最終的にたどり着いたのが、ベッドの下だった。
奥の方にある小さな木箱を引きずり出す。
その中に、金庫のものと思われる鍵と、ダイヤルのメモが入っていた。
全く、不用心な女だ。
そんな事を思いながら、部屋の隅にぽつんと置かれた大きな金庫にその鍵を差し込んだ。
その頃、廊下を走り回るような音がどこかから聞こえてくる。
銃声を聞きつけた子供たちが、何があったのかと不安な気持ちでこの先生の部屋へと向かってきているのだろう。
俺はそんな事は大して気にも止めず、メモの通りにダイヤルを数回だけ回した。
そして、金庫が開かれる。
198
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:32:28 ID:/bf6AHok0
(;'A`)「ッ…………」
想像以上だった。
金庫の中に入っていたものは、ぱっと見ただけでも数千万レスは越える大金だった。
一体どれだけの人が、どれだけの大金で、この施設の子供たちを買っていったのか。
吐き気にも近い怒りを、ぐっと胸の奥に押さえつけて、俺はその大金を手に取った。
これだけあれば、やり直せる。
新しい人生を、手に入れる事ができる。
('A`)「…………」
彼らに、選ばせよう。
.
199
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:33:02 ID:/bf6AHok0
気づけば、鍵のかかったこの部屋の扉を強くノックする音が響いていた。
扉の向こうからは、不安そうな声で先生を呼ぶ声がいくつも聞こえる。
俺は大金を机の上に置き、ポケットから取り出したタバコに火をつけながら扉へ近づいた。
そしてゆっくり、その鍵を開けた。
(;’e’)そ「うわ〜!! ドクオ兄ちゃん!?」
鍵を開けたと同時に、扉は勢い良く開かれた。
この施設の子供たちの中で、俺を除いて最年長であるセントジョーンズが、その扉のノブをしっかりと握っていた。
(;’e’)「……兄ちゃん…………その……血は……」
('A`)「……ああ……。気にすんなよ」
200
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:34:27 ID:/bf6AHok0
(;’e’)「怪我してるの?」
('A`)「俺は平気さ」
(’e’)「ッ……じゃあ……先生……?」
('A`)「……そうだな……」
子供たちからは、俺の身体が影になって中の様子を見ることができないだろう。
俺は身体を退かすこともせず、言葉を続けた。
('A`)「お前らには、まだわかんねーかもしれねぇけど……。先生はな、ミセリを……ミセリ姉ちゃんを、悪い人にお金で売ったんだ」
(’e’)「…………」
セントジョーンズだけではない。
10歳かそこらの子供たちが、真剣な眼差しで俺の言葉に耳を傾けていた。
他の年端もいかない子供たちは、いまいちよくわかっていない様子であった。
201
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:35:21 ID:/bf6AHok0
('A`)「そこに、その金がある。それを分け合って自分たちで生きるか……、警察に任せて新しい施設へ移るか。お前ら次第だ」
('A`)「好きに選べ。自由に生きてくれ」
セントジョーンズの肩をぽんと叩き、呼び止める子供たちの声を無視して俺は施設の玄関を抜けた。
この施設とは、もうこれでおさらばだ。
:'.;′
:.
: '
. '
,: .'
,. '.:´ ´
.' ´
,. '.゙ ポトッ
' :
;. ; />
゙、( _,..、 //
`~⌒ヽ;...;;.. _/>'
ヽ:,;;:゙ー`'
フィルターのぎりぎりまで吸い尽くしたタバコを地面に放り投げて、薄暗い道をただひたすら歩き続けた。
.
202
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/02(月) 16:36:28 ID:/bf6AHok0
疲れたので、続きは近いうちに……
よろしくお願いします。
203
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 17:34:38 ID:tXFgH4KE0
おっ!乙!!
続編待ってたぜ〜
今から読む!
204
:
名無しさん
:2016/05/02(月) 17:42:57 ID:dGqu3YG60
その酉いっつもピザマンコって読んでます
冗談はさておきかっけえ乙
205
:
名無しさん
:2016/05/03(火) 19:51:39 ID:bvac.9YM0
乙!ハードな感じだな……
( ^ω^)との出会いとかも書くの?
206
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:24:02 ID:GCRBwiXg0
>>205
少年編終わらせてもないのに言うのもなんですが、ブーンとの出会いの話と、無印の続きの話の構想はあるんです
ただそれを実際に書けるかどうかは…モチベーション次第に…
207
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:39:26 ID:GCRBwiXg0
間違えてあげちゃったので、このまま残りを投下します。
208
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:40:12 ID:GCRBwiXg0
2kmほど歩いただろうか。
気づけば俺は見慣れない街にやってきていた。
それもそのはず。施設から近くの繁華街までの道しか行き来しなかった俺にとっては、この国はあまりに広すぎる。
ポケットから取り出した紙に載っている住所を頼りに、俺は歩き続けた。
辺りを歩いている人――この時間になると酔っ払いしかいなかったのだが――に聞いてみると、どうやらここから見える豪邸がその場所で間違いないらしい。
近くで見てみるとすでに、部屋の電気は消されている。
ただ唯一、小さな小窓から、薄らぼんやりと明かりが漏れていた。
塀を登り、あたりを見回す。
流石にこの時間になると、使用人らしき人影もない。
いくらこれほどだだっ広い豪邸を持つ金持ちとはいえ、そんな警備に金を回すのは無駄だと思える。
('A`)「……よっと」
209
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:40:51 ID:GCRBwiXg0
|::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
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ゝ:::::::::::::::::::::::::::::::::::シ 匕::::::::::::::::::::::::::::::::::::シ ( )
丿`  ̄ ゙ ~  ̄ ` ̄ ´i i ` ̄ ゙ ~  ̄ ` ̄ ´\ ) )
r´ } { `ヽ ノ ノノ
ト-‐ '´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄7 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`' ‐イ ∠ノ ゞ゙´、
`────────';.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.'────────´ ザッ
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
.
210
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:41:32 ID:GCRBwiXg0
手入れだけでも金がかかるであろう立派な芝を踏みしめて、例の小窓へゆっくりと歩き出す。
やはり近くで見ても、人が通れるほどの窓ではない。
高い位置にあるため、中を確認することも難しそうだった。
仕方ない。
明かりの漏れる小窓から侵入する事を諦め、その隣の大きな窓を覗く。
カーテンのおかげか、はっきりと中は見えない。たが恐らく、目的の部屋とは繋がっていないのだろう。
__r 、
///`Yヽ
/// :/ 〉
/// :/ /'. '、
///_,/ ./ . .
/ーr' / / ' 、
_,/ / / /
//=彳/ ./ '.
//// /o :/⌒i
//// / /`ー/_
〈/// / / /{ Yー、
\ / / '´ ,人_,丿 スッ
ガシャーン
.
211
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:42:19 ID:GCRBwiXg0
取り出した拳銃を振りかぶって、グリップエンドで窓を強く叩いた。
思わず自分でも耳を塞ぎたくなるほどの音が響く。
粉々に砕け散ったガラスは、チリチリと音を立てながら地面に転がっていく。
あまり時間はかけるべきではない。
俺はすぐに屋敷に侵入し、辺りを見回した。
月明かりでうっすらとしか見えなかったが、ちょうど正面にあった扉へと駆けだす。
あまり時間はない。
扉のノブを回して、廊下へと出る。
廊下は、先程の部屋よりもずっと暗い。
壁伝いに手探りで、先ほどの小窓がある部屋を探す。
指先に触れた冷たい物。それがドアノブであることを理解した俺は、すぐにそれを回した。
212
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:43:15 ID:GCRBwiXg0
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/. . : : 、へ : : : : : : : : : ::l' :: : : :.::|:.:
||::,r‐r⌒ヽー─‐-イ . : : /::::::::|\ : : : : : : .: : | : : : :::|:.:.:.:i
ガチャ ||::lヽ^づ 〈: : : :.:: :.:: :.:/ : ::::::::::! \ :. : : : : : |_ :: : : ::|:.:.:.:
||::::ヾ_つっ'ー──一´:::::::::::::::::::| .ヽ,:..: : ::/⌒:: : ::/:.::
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ヾ.::/ .. :.:.::/
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| iて ̄` ヽ::.::/ _
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| し'て_, ノ'ij`´´ ..:.
||:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
しかし、いくら回しても扉は開かない。
('A`)「チッ…………」
鍵が、中からかけられている。
('A`)「……仕方ねぇ……なぁッ!!」
__________
|
|_
|| ドンッ
||('A`)
. c||f|:-:fヽ= -
||' V_ |、 , 、
|| し^ヽ) , .' ;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.
213
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:43:57 ID:GCRBwiXg0
勢い良く、扉に体当たりをする。
だがそうそう簡単に破れるはずもない。
('A`)「クソッ……」
拳銃を構え、銃口を蝶番に向ける。
ダァン .ィ≦,
i .イl ∧
\ .|! .i } l ∧
\ 、 \ .|l .| -= l l ̄l ∧
\`''<_)'" ̄ ̄ ̄\ |.! | ,, '" 7 .l l_l ∧
ヽ \j l、Ⅵ ,,'  ̄}. .l ∧
} | ,, ' -=≦ .l 「 ̄∧
、_ __ | / -≧,l l ∧
__}  ̄ ̄ / , ≧《∧ l l ∧
\ / ≧=- / V∧ l l ∧
-== [〕 ⊆二二 ̄ ,l V∧ l l ∧
} , 〈〉 ( ̄ ̄ ̄ j V∧ l l ∧
-��  ̄\ i rュ \ r'" V∧ l l ∧
) l 「y7 --く ̄ ̄ . イ V∧ l l ∧
_≠---ァ ` 、 \ \ .ノ V∧ l l___∧
/ /`勺\. ,| V∧ l |l |l ∧
 ̄ ̄ ̄〕 イ / 、 }`ヾ l |l 斗'”
 ̄`'つ_,,'" Λ ,ノ斗'"
 ̄ / ‘、 {
/ /ヽ l
/ \ ;
ヽ ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
‘. ‘、
.
214
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:44:48 ID:GCRBwiXg0
勢い良く、扉に体当たりをする。
だがそうそう簡単に破れるはずもない。
('A`)「クソッ……」
拳銃を構え、銃口を蝶番に向ける。
ダァン .ィ≦,
i .イl ∧
\ .|! .i } l ∧
\ 、 \ .|l .| -= l l ̄l ∧
\`''<_)'" ̄ ̄ ̄\ |.! | ,, '" 7 .l l_l ∧
ヽ \j l、Ⅵ ,,'  ̄}. .l ∧
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) l 「y7 --く ̄ ̄ . イ V∧ l l ∧
_≠---ァ ` 、 \ \ .ノ V∧ l l___∧
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 ̄ ̄ ̄〕 イ / 、 }`ヾ l |l 斗'”
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ヽ ‘、
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215
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:45:29 ID:GCRBwiXg0
拳銃から放った一発きりの銃弾で、蝶番は根本からひん曲がり、少し力を入れれば簡単に外れてしまいそうになる。
もう一度、扉に体当たりをした。
__________
|
|
ドカッ
/ ('A`)
f|:-:fヽ= -
、// ' V_ |、 , 、
'ヽ、し^ヽ) , .' ;
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
蝶番を弾き飛ばして、木製の扉は勢い良く倒れ込む。
体勢を整えながら、俺はすぐに室内を見た。
そこで見たものは、ナイフを構える一人の男と、後ろで泣きじゃくるミセリの姿だった。
.
216
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:46:02 ID:GCRBwiXg0
ミセ*;ー;)リ「……ど……ドクオ……?」
('A`)「……、ミセリ……」
「ッ……なんだお前……」
(;^Д^) (A` )
/ vロ|っA |-h.|
|U_ : _ | i_U_j
(/^ヽJ . し^J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
('A`)「…………」
lニゝ!∨ミl、
i".,,∠二-、゙'、
│.|.l.;;;;;;;;;゙l.} ! スチャッ
! `'`-ニ'" .l
| |
.! .○ |
_..-'''゙.! l.'''‐、
/´ .|"ーi��‐i''''} .l
l ゙'!、 l .! ,! '!、.ヽ
!  ̄` ! .l ミヽ..,__丿
,/ ヽ .| .,! .'''''/'i
l゙ .ゝ....-- ..,,,| .し,,,,,,ゾ
ヽ 、 .`'" / .
/ .\ ! ./ ,〃
.
217
:
訂正
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:46:45 ID:GCRBwiXg0
ミセ*;ー;)リ「……ど……ドクオ……?」
('A`)「……、ミセリ……」
「ッ……なんだお前……」
(;^Д^) (A` )
/ vロ|っA |-h.|
|U_ : _ | i_U_j
(/^ヽJ . し^J
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
('A`)「…………」
lニゝ!∨ミl、
i".,,∠二-、゙'、
│.|.l.;;;;;;;;;゙l.} ! スチャッ
! `'`-ニ'" .l
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.! .○ |
_..-'''゙.! l.'''‐、
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l ゙'!、 l .! ,! '!、.ヽ
!  ̄` ! .l ミヽ..,__丿
,/ ヽ .| .,! .'''''/'i
l゙ .ゝ....-- ..,,,| .し,,,,,,ゾ
ヽ 、 .`'" / .
/ .\ ! ./ ,〃
.
218
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:53:24 ID:GCRBwiXg0
(;^Д^)「くっ…………」
('A`)「……プギャー、だったか」
(;^Д^)「……だから……どうした……」
('A`)「いや、特に意味もないさ。名前くらい聞いても悪くないと思ってな」
(;^Д^)「……クソガキィ……何しに来やがった……」
(;^Д^)「――――ッ!!」
/^ヽ
(⌒)'
_ , . ; :'''"´"'' 、 ; ;,,
_ , . 、, ___-l二ヽ_______ ; ; _-、──、__/三'>
--=" ;,_ ; : . ()======| ───────┐.| .|,,;;,,, ,,,;;;,,()~-/ ̄l/、 ◎)\
l_,' ̄ ̄ |__┌--┬──┴┴─┴────── ' l l l l l ',__.`-' l. l
´"''''- ''" l,_ヽ__ __|三三三三|_________l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_l_.l
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`- 、_ O __○二二三l/ ̄ ̄ ̄ ヽ ̄
ダァンッ `v'~ | | |`) |::::::(_,ノ-,/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
l'、_ヽ_)' ノO l:::::::::::::::::::`、
` ̄ ̄ ̄ ̄(  ̄ ̄)::○::::::::ヽ
(`─ー<::::::::::::::::ヽ;;::..
. (ヽ___ ,ノ:::::::::::::::/ ノ___
ヽ__/二二二l_,.-~ ̄
.
219
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:54:11 ID:GCRBwiXg0
銃口が火を吹き、目の前の男が額に大きな穴を開けて、ゆっくりと崩れ落ちる。
硝煙が、まるでタバコの煙のようにゆらゆらと立ち昇り、やがて消えてゆく。
ドサッ
ミセ;゚ー゚)リ「……ッ……」
('A`)「……ミセリ……」
怯えた表情で俺を見つめるミセリに、投げかけられる言葉などなかった。
ミセ;゚ー゚)リ「……そいつは……死んだの……?」
('A`)「ああ。死んださ」
ミセ;゚ー゚)リ「……助けに来てくれたんだね……」
('A`)「…………」
ミセ;゚ー゚)リ「……怖かった……」
.
220
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 03:59:33 ID:GCRBwiXg0
V: : :ム 、 u /: : : : : : ,:|: : : ,: l
. /;ィ: : : ::. ` _ /イ: :/: : : : /:l: : :/ヽ!
/ l: : : ::ゝ、 '─` / l: : : : /: リ' |: :/
}: : /ノリ:>, 、 , ィ '.i: : ;ィ"}イ' |/'
l: / ' レ'V / = l , ェ= |/ |ヘ、
V,-、 _ ィリ_/^∧ / `ー 、__ _
/ / >'´___, !!-rュ_」__ __/ /´ `ヽ
. / ' / / zム」ー ` ー, ./ ∧
「……怖かったよ………」
彼女はそう言って、涙を落とした。
いくつも、いくつも零れ落ちる涙が、彼女の足元を濡らした。
.
221
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:00:08 ID:GCRBwiXg0
('A`)「お前に、これを渡したかったんだ」
バッグの中から小さな箱を取り出して、それをうずくまる彼女にそっと手渡す。
ミセ*゚ー゚)リ「……これって……」
彼女が包みを解いて蓋を外すと、その中から、小さなペンダントが姿を現した。
ミセ*゚ー゚)リ「ッ…………」
('A`)「…………ごめんな」
ミセ*゚ー゚)リ「……どうして……?」
ミセ*゚ー゚)リ「どうして謝るの……?」
('A`)「…………」
握りしめたままの拳銃をベルトの隙間に挟み、再びバッグの中からひとつの封筒を取り出した。
222
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:01:30 ID:GCRBwiXg0
('A`)「……もう、会えないからだ」
29枚の紙が包まれた封筒を、床に置いた。
ミセ;゚ー゚)リ「……どうして?」
('A`)「……わかってるだろ……?」
ミセ;゚ー゚)リ「…………」
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∠.. _ /!-‐=ニ />..
∠ ̄  ̄二ニ、 厶-、 , '/ 〉
r‐=≦ ̄ ` ∨ //`ー'´
iL.. ____r‐=iニニ」二ニ´/' キュッ
`  ̄ ̄ ̄ ̄ ´ ` ̄  ̄ ̄´
「お前は、まっとうに生きてくれよ……」
.
223
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:02:04 ID:GCRBwiXg0
踵を返して、扉へと戻る。
これでいいんだ。
汚れてしまったこの手で、彼女に触れることは許されない。
どんなにねじ曲がった運命でも、どんなにひねくれた生き方でも、俺はそうすることを望まない。
ミセ; ー )リ「……ドクオ……」
('A`)「……じゃあな」
ミセ; ー )リ「……待ってよ…………」
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 ̄ ,.>: : : ', ` ,/:.ィ: : : : : : : : ト=、; ;|
/: : : : ::ム. rー--‐‐、 "´ |: : : : : x: : |} `ー==ヽ__ _
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" |: : :∧: : }7> 、`ー - ' . < 〉: / リ /::::/ 丶、
ヽ::/ /〉ノ:l |>ー < / Y / l::::l ヽ
/ |::::::| { rヽf´ミ / /::::| \
{ {::::::{ ヽ j ′∧ / /::::::| \
「……待ってよドクオ!!!」
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224
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◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:02:39 ID:GCRBwiXg0
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バタン |.:.:.:.:.:.:.:.|l: : : : : : : : : : : : : : : : ||.: :.:.: .:.:|
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扉越しに聞こえた、“ありがとう”という言葉を。
俺は一生忘れることはないのだろう。
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225
:
◆PizzaMan.c
:2016/05/04(水) 04:03:45 ID:GCRBwiXg0
しばらく歩いて、俺は繁華街へとやってきた。
再び小汚い路地を歩いて、ギャングたちの溜まり場へと向かう。
空き缶、吸い殻、ゴミ袋、ギャング。まさにゴミ溜めと呼ぶに相応しい。
俺はきっと、こんな街でしか生きられないのだろう。
( 'A)
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
咥えていたタバコを放り投げて、歩みを進める。
そんな時だった。
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