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いつか、帰る……

1同志名無しさん:2016/07/24(日) 21:03:02 ID:9UPTmWMYO
俺がなぜここで倒れているのか。それは、わからない

ここが武器屋の店先であることと
妙齢の女店員が、俺を心配そうな顔で見つめ
介抱しようとしてくれているのは、わかる

ひどく腹が減っている……

眠い

2同志名無しさん:2016/07/24(日) 21:07:15 ID:9UPTmWMYO
いつかの1

「こちらケンベック商店!御用があればなんなりと!」

3同志名無しさん:2016/07/24(日) 21:13:40 ID:fqyLKCNQ0
お?

4同志名無しさん:2016/07/24(日) 21:13:44 ID:9UPTmWMYO
事情あり。更新はかなり遅くなるので短気な者は読まない方がよい
更新したとしても、僅かずつになると思われる

5同志名無しさん:2016/07/24(日) 21:15:24 ID:fqyLKCNQ0
なんてこった

6同志名無しさん:2016/07/24(日) 21:31:53 ID:9UPTmWMYO
意識が戻れば、目の前にいたのは
店員とおぼしき妙齢の女

云うには

俺はこの武器屋「ケンベック商店」で
丸二日も気を失う様に寝ていた。と


俺は詫びと感謝を言葉にし、だがそれ以外になにもこの恩人に報いる術をもたぬから

速やかにベッドからはい出、これ以上の迷惑をかけまじと
部屋を、そして「ケンベック商店」を出て行かんとした

といって
俺はどちらへ向かえば良いのか。何をしにこの地を訪れたのか。それも、わからない。が

7同志名無しさん:2016/07/24(日) 22:00:36 ID:9UPTmWMYO
J( 'ー`)し「ちょいとお待ちよ。私のダイエットに付き合っておいき」

J( 'ー`)し「アンタの分までサンドイッチを作っちまったからねぇ。食べてって貰わなきゃさ」

そう言って俺の後ろ手を掴む女

冷たい手だ。つめたい

俺は肩をすくめ
あえて固めていた腹から力を抜く
とたんに
正直な胃がグウと鳴き出す。女は吹き出す。俺は恥っかきの汗をかく

J( 'ー`)し「そうだろうそうだろう。アンタのような大の男が行き倒れになってたんだ。お腹が減ってるに決まってるよ」

観念し、また有り難くもある
いわれるがまま、俺はテーブルにつかされた

8同志名無しさん:2016/07/24(日) 22:16:03 ID:9UPTmWMYO
サンドイッチと、後はよくわからないこの地方の豆?のスープで朝食を取りながら
女ととりとめのない話をし
その話の中で、彼女の名がジアであり、ケンベック商店の主人であるということや
俺が背に担いでいた剣を、ジアが勝手に磨いでおり、それがまだ仕上がっていないこと
肝心なようでどうでもいい、俺の名前が俺にもわからないということ
そして、俺が何をしにこの地に来たか、これから何をすべきか、何もするべきでないのか

そんなことがわかったりわからなかったりした

9同志名無しさん:2016/07/24(日) 22:32:40 ID:9UPTmWMYO
J( 'ー`)し「アンタはかなり適当に生きてるんだねえ。いや、そう決めつけるよ?」

頭ごなしに言われたが、それを否定できる何をも俺はもたぬ

J( 'ー`)し「金もない。行く宛もない。することもない……ときたんなら、次はわかるよね?」

俺は、まあ、うなずく

J( 'ー`)し「アンタさ。ウチの商売に力を貸しなよ。勿論、賃金は払ってやるからさ」

しかし俺にしてみれば意外なことに、手を貸せでもなく、働けでもなく
ジアは「力を貸せ」と言った

J( 'ー`)し「店のね?仕入れを任せたいのよアンタに」

首をかしげる俺。イタズラっぽく笑うジア

J( 'ー`)し「この地方の仕入れにはね?力がいるのさ。実力がね」

10同志名無しさん:2016/07/24(日) 23:00:04 ID:9UPTmWMYO
J( 'ー`)し「この地方にいる危険な人食い妖怪共がね、妙な知恵をつけてさ」

J( 'ー`)し「人間の武器を奪って、抵抗できなくしてから襲う……ってセコいやり方を覚えたんだよ」

J( 'ー`)し「妖怪もいろんなのがいるから、奪った武器を使うのもいるけど」

J( 'ー`)し「武器を使えないタイプの妖怪までが人から武器を奪うんだ。不自然な知恵だろ?そんなことしてないで、とっとと取って食えばいいじゃないか?」
そんなことは他所から来た俺に聞かれても困るのだ
黙るしかない

J( 'ー`)し「私は、妖怪に入れ知恵している黒幕がいると踏んでるんだけどね?それはまあいいよ」

J( 'ー`)し「アンタの仕入れの仕事ってのはつまり、そういうことさ」

俺が妖怪から武器を奪い返し、というかぶんどって、それをジアが研ぎ直したものを商品として店に出す

素晴らしいアイデアである。なにせ仕入れにほとんどコストがかからない
それが可能かどうかに目を瞑ればだが

11同志名無しさん:2016/07/24(日) 23:15:48 ID:9UPTmWMYO
J( 'ー`)し「商売ぬきの話をすれば……」

J( 'ー`)し「私は、妖怪に親兄弟を食われちまった人をたくさん見てきたんだ」

J( 'ー`)し「カタキを討ってやるってのでもいい。この先同じ目にあう人を少なくする為ってのもいい。なんなら、堂々正義をふりかざすのもおかしくはないよ?」

頭を掻く。どうもジアの本心は妖怪退治にあるようだ
語り口の熱から見ても

しかし俺には、誰でなく俺にとっては
前者の理由がふさわしい気がする

なぜだろう?人の為に妖怪と戦う。というのは俺には気恥ずかしく思える。頭が痒くなってくる
なぜかはやはり、わからないけれど

12同志名無しさん:2016/07/24(日) 23:26:59 ID:9UPTmWMYO
第一に、俺が戦えるか?という疑問がある
剣を担いでいたのは確かだが、俺は強いのか?誰と比べて?
強ければ行き倒れなどにならずに済んでいたのではないか?

J( 'ー`)し「アンタの剣を手入れして分かったけどさ?」

J( 'ー`)し「アンタ少なくとも10人は殺ってるね?敵の剣を受けて出来た小さなキズ一つ一つが、アンタを呪ってるようにすら感じたよ」

……わからない



そんなことを、俺が?

13同志名無しさん:2016/07/24(日) 23:55:32 ID:9UPTmWMYO
J( 'ー`)し「だからさ。理由はいいよ。アンタが好きに決めたらいい。ただ、アンタがそれを出来そうだから話したんだよ」

俺は肩をすくめ、ジアに尋ねてみた
ケンベック商店が特に仕入れたい商品……武器はどれなのか?と

J( ;ー;)し「ありがとう。やってくれるんだね?」

なぜかぼろぼろと涙を溢しているジア
なぜの涙。なぜ?

ジアは商品台帳をレジカウンターの引き出しから取り出し
台帳のリストに大量に列記された武器名の内三つに、ペンでチェックマークをつけて俺に見せる

J( 'ー`)し「まずこれ……バスタードソード」

J( 'ー`)し「一般的なブロードソードより、柄が少し長く作られている剣さ。片手でも両手でも使えるようにね」

J( 'ー`)し「その取り回しの良さが利点。素人でも比較的使いやすいんで、商品としては売れ線だから……」

なるほど。普段は片手で使い、いざというときには両手持ちで破壊力を増すことができるわけか

14同志名無しさん:2016/07/25(月) 00:07:39 ID:HNSsONO6O
J( 'ー`)し「次にこれ。鉄のブーメラン」

J( 'ー`)し「鉄製だから戻ってくると危険なんだけど、普通のブーメランとは違って戻りを考慮に入れてない仕様なのさ」

J( 'ー`)し「要は、チャクラムとか円月輪みたいな手投げ武器ってことだわね」

ふむ。
俺にはこれの存在意義がわからない
第一こんなもの売れるのか?

J( 'ー`)し「そして、最後は……」

15同志名無しさん:2016/07/25(月) 00:23:36 ID:HNSsONO6O
J( ;ー;)し「……」

言葉に詰まったかのように黙り、またしてもはらはらと涙を溢すジア

J( ;ー;)し「……みっともなくってごめんね。この品はなんとしても回収してもらいたいモノなんだけどさ」

ジアの涙にまつわる品。ということなのか
俺は深入りしてはならぬ気がし、だから訳を聞かぬ

J( ;ー;)し「妖刀村正……ただの刀だよ。最上物だけどね」

J( ;ー;)し「この村正はね?持ち主を不幸にする……なんていわくがあるんだ」

持ち主を不幸にする
この言葉が俺の心にひっかかる

俺は何故か
いつか

そう呼ばれたことがある

16同志名無しさん:2016/07/25(月) 00:44:59 ID:HNSsONO6O
J( ;ー;)し「確かにいい刀だよ……だからこそ」

J( ;ー;)し「持ち主は思い上がるんだ。この村正があれば、絶対に負けない!っていう風にね……」

J( ;ー;)し「絶対に負けないのは村正であって、使い手じゃないのに……刀を過信して死にに行き、村正は敵の手に渡る」

J( ;ー;)し「そうやって、未熟な使い手の血を啜りながら人の手を渡り続けた結果、村正は妖刀って呼ばれるようになったのさ」

妖刀村正……その逸話が真実ならば……

それが今妖怪の手にある。ということは


何者かが
世のため人のため、妖怪を討伐せんと手にし戦ったという

こと、か

刀を使えるのは一人だ
たった一人で、その愚か者は死地に向かったという

こと、か

17同志名無しさん:2016/07/25(月) 00:54:41 ID:HNSsONO6O
それを妖刀の呪い、と呼んでいいのか


人の為に身を捨てて戦う……


それは
誠(まごころ)
と言ってやるべきでは

ないのか?

俺には、わからない

18同志名無しさん:2016/07/25(月) 08:06:44 ID:HNSsONO6O
俺の剣が仕上がるまでの二日間は、町で妖怪共の巣食っている場所や妖怪そのものについて聞き込みをしてまわったり
武器を入り用としていそうな警備隊や旅人やごろつきなどに、御用聞きをして過ごした

その時、遠い国から良質な刀を求めて旅をしてきたという武者修行の男に出会った
この地方に村正を探してはるばるやってきたのだと

まさに俺はそれを仕入れる為に妖怪退治に行くつもりなのだ。と話すと

( ・∀・)「フンム……面白し。拙者のこの旅、武者修行を兼ねておるゆえ貴公の助太刀つかまつりたい。要らぬ世話であろうか?」

などと協力を申し出られもし
その報酬は、ケンベック商店に村正が商品として並んだ際には優先買い付けの予約のみでよいというのだから
俺にとっては、妖怪退治の得難い仲間かつケンベック商店の顧客確保ともなり一石二鳥といえるが

19同志名無しさん:2016/07/25(月) 08:32:03 ID:HNSsONO6O
( ・∀・)「拙者、ジエン・モーランと申す。貴公の名を伺いたい」

わからない。と答える。しかないのが事実であるとも

( ・∀・)「それは難儀な。では貴公と呼ばせていただく」

ジエンはそうして、ケンベック商店へもついて来
助太刀としてジアへの挨拶を済ませ、客としても店にある在庫を見て回り
短刀などいくつかを買い求めていった

( ・∀・)「ジア殿は、拙者の母上の若い頃に似ておる。佇まいと言うか優しげな物腰が」

母上……かあちゃん。か。なるほどジアはいかにもそれらしい
それ以後俺はジアをカアチャンと呼ぶことにしたが

J( 'ー`)し「なら私はアンタをギコと呼ぶよ。ジエンさんと同じにね。いつまでも名前で呼べないのは不便だからねえ」

ここでカアチャンはモランの云う「貴公」と「ギコ」を聞き違いしていたことが判明したが

まあ、どうでも良かった

20同志名無しさん:2016/07/26(火) 05:21:18 ID:ZTHow7mUO
王道ファンタジーの予感。期待してる


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