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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ 第三部

1 ◆MgfCBKfMmo:2016/06/10(金) 21:01:44 ID:U0jBOVFc0
第二部までのお話はBoon Roman様に収録されています。
http://boonmtmt.sakura.ne.jp/matome/sakuhin/tender/
(リンク先:boon Roman)

927 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:45:21 ID:DwD.EnMM0
ζ(゚ー゚*ζ「ご先祖様は魔人に人を超える力を与え、同時に人に絶対に逆らえない制約を与えた。
       人の繁栄を邪魔しないように。争う意志を極限まで減らされた。
       すべては世界の平和のために」

 ことさら軽々しく、デレは言葉を打ち切った。

ζ(゚ー゚*ζ「馬鹿みたいでしょ、回りくどくて。
       一番手っ取り早いやり方なんて、わかりきったことじゃない」

刃物のうちのひとつを、デレは手繰り寄せ、そっと撫でた。

ζ(゚ー゚*ζ「力を自分が持てばいい」

928 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:45:45 ID:DwD.EnMM0
('A`)「それが目的か」

 ドクオは、携えていた、テーベ支給の黒剣に手を掛けた。

('A`)「力がお前の目的なのか」

 腰を低くして、力を込める。
 殺気立ったスタイルを前に、デレは無表情になった。

ζ(゚ー゚*ζ「私が初めから強ければ、誰も死なずに済んだのよ」

 微笑みの消えたデレの視線が、冴えた空気を突き抜けてくる。
 冷たいそれは、吐息を忘れそうになるほどの圧迫感だった。

929 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:46:21 ID:DwD.EnMM0
ζ(゚ー゚*ζ「私がずっと守られていたのも、大切な人を守れなかったのも、全部私が弱かったせい。
       だから、刃向かいも、抵抗も、しがらみも全部断ち切ってしまえばいい。
       全員殺せば、全て終わる。そこで私は初めて自由になれるのよ」

 再び唇が弧を描いて、デレは指先をそこに添えた。

ζ(゚ー゚*ζ「これ、誰にも言わないでよね。あの魔王にだって、この話はしていないのだから」

('A`)「ふん、敵でも味方でもない、ってか」

 たまりかねて、ドクオは口を開いた。

('A`)「魔王も、俺たちも、どちらも敵。殺せば良いと本気で思っているんだな」

930 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:46:52 ID:DwD.EnMM0
ζ(゚ー゚*ζ「何度も確認する意味ってあるの? 何度でも、頷くだけなのに」

 デレの声に、ドクオは耳をすませた。
 余裕のある声、嘘は感じられない。
 ドクオはひとつ、溜息をついた。

('A`)「わからんでもない」

 ドクオには身に覚えがあった。

 初めて魔人に出会い、襲われたとき。
 クーという少女を奪われたドクオは強い憎しみを身に宿した。

931 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:47:18 ID:DwD.EnMM0
 以来、魔人を倒すべくひたすら力を求めた。
 とにかく倒して、殺して、そして自らの存在を確立していた。

 戦い続け、ひたすら強くなる。それがドクオの目的だった。
 その凶刃で何を、何度斬ったことか。
 どれだけの悲鳴と血飛沫を浴びてきたことか。

 戦い続け、その先にあったものは――

('A`)「虚無だ」

 ドクオは声に出した。

932 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:47:44 ID:DwD.EnMM0
ζ(゚ー゚*ζ「……なにが」

('A`)「何かを奪い続けて、答えがあると思うのは、
    視野が狭まって、他のことが思いつかないっていうだけだ」

('A`)「目を背けてるだけなんだよ、お前は」

 ドクオはテーベに渡り、そこでクーと対峙した。
 魔人の味方だった彼女と対決し、その身を自らの剣で切り裂いた。
 浴びた血の饐えた匂いを、ドクオは未だに覚えている。

933 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:48:19 ID:DwD.EnMM0
 くぐもった叫びをきいて、それがクーのものなのだと認識したとき、
 ドクオは初めて自分が何をしているのかを思い知った。

 ドクオは人を殺そうとしていた。
 魔人だろうと人間だろうと関係なく、その命を奪い続けていた。

 誅殺し、埋め、褒賞を得る。その繰り返しで、胸の満足に行ったことは一度としてなかった。
 戦うことは彼の目的だった。それだけが自分の存在意義だった。

 だが、ドクオは剣を捨てた。
 存在意義は、自らの手が否定した。

934 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:48:49 ID:DwD.EnMM0
 失血に震えるクーの肩を抱いて、消えかけた命を前に、目が潤んだ。
 手が震えて、できることを探したが何も見つからなかった。

 こんなことをしたかったんじゃない。

 頭の中で声がした。

 獣ばかりで満ちていた、戦闘に明け暮れた声が、
 いつしか幼い頃の自分の声になっていた。

 自分は何をしてきたのか。
 今までどこをどうして生きて、自分を忘れてきたのか。

935 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:49:53 ID:DwD.EnMM0
 自分を忘れていたというなら、ここにいる自分は何だ。

 いったい何をしている。

 自分は――




('A`)「誰かを殺したところで、喪失は満たされない。
    お前がいくら暴れても、その胸の内には虚無が広がるだけだ」

('A`)「それはお前の考えなんてものじゃない。信条でさえない。思考停止だ。
    自分の前に救いがある、ということにしたい。それこそ弱者の考え方だよ」

ζ(゚-゚*ζ「……あなたが私の何を知っているっていうのよ」

 デレの声から余裕は消えた。
 低く棚引くような声が、震えをおびていた。

936 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:50:18 ID:DwD.EnMM0
ζ(゚-゚*ζ「ずっとお城にいて、気がついたら崩壊が始まっていた。
       私は何もしていない。それなのに全てが決定していく。この気持ち悪さがあなたにわかる?」

('A`)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「何とか言いなさいよ。私を止めたいんでしょ? 理由のひとつもないまま勝手なこといわないで」

('A`)「いや、違うぞ」

 ドクオは屈めていた腰を心持ち上げた。

('A`)「勘違いしている。別に俺はお前を止めたいわけじゃない」

ζ(゚-゚*ζ「……は?」

937 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:50:58 ID:DwD.EnMM0
('A`)「わからんでもないって言っただろ。暴れたいなら好きにすればいい。
    殺すのも勝手にすれば良い。自分に気にくわないまますべて 殺せばいい」

('A`)「ただ、そうやって、わかってくれない奴を全員殺すというなら、お前は一生ひとりぼっちのままだ」

ζ(゚-゚*ζ「……」

('A`)「嫌なんだろ? 普通じゃない人生が。他の人と距離のある感覚が。
    俺の敬語も正されたし、普通に扱えって散々言われたし、罪を償って涙を流して。
    その間ずっと、お前笑っていたじゃないか。嘘ばっか言ってたにしても、あれだけは本当だったと思うぜ」

ζ(゚-゚*ζ「……私は、違う」

938 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:51:26 ID:DwD.EnMM0
ζ( - *ζ「勝手なこと言わないで」
 デレは俯いた。
 煌めく髪の下で、歯噛みした口が見えた。

ζ( - ;ζ「ひとりなんて怖くない。誰かがそばにいなくても構わない。
       そう決めたんだよ。どうして、そんなこと言うの。私を否定しないでよ」

('A`)「……デレ」

 ドクオは剣から手を離し、そのままデレの方へと伸ばした。
 今なら手を引いて帰れるのではないか。

939 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:51:50 ID:DwD.EnMM0
 一瞬去来した思いを、しかし、飛来した刃が断ち切った。

('A`;)「うっ」

ζ( - *ζ「……私の邪魔をしないで」

 腕とともに、翼が再び広がった。
 風を巻き起こし、その身が浮かぶ。
 合わせて刃の束も伸びていき、彼女を取り巻いて膨らんでいく。

ζ(゚д゚*ζ「私の前からいなくなってよ!」

 デレの金切り声が響き、刃が飛びかかってくる。
 雪を蹴って、ドクオは退いた。
 眼前で雪が弾け飛び、辺りが白く染まっていった。

940 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:52:14 ID:DwD.EnMM0
('A`)「結局、わがままなだけじゃねえか」

 ドクオは身を翻し、剣を抜いた。

('A`)「憐れな奴……っと」

 襲い来る刃を、ドクオは飛び退いて避けた。

ζ(゚ー゚*ζ「憐れんで、死んだら世話ないわね」

('A`)「お前、やっぱり根本的に性格変わってるだろ。
    その実験のせいで頭おかしくなってるんじゃないか?」

941 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:52:41 ID:DwD.EnMM0
ζ(゚∀゚*ζ「そんなの知らない。もうやっちゃったんだもの。気にするだけ無駄よ」

(;'A`)「無駄とかそういう、うお!」

ζ(゚ー゚*ζ「口ばっか動かしてないで、足掻いてみなさいよ。全部叩き潰してあげるから」

 濁流のごとく、刃が鈍い光が反射して、ドクオの後を追ってくる。
 先陣のいくつかをドクオは剣で払いのけ、続きは逃げて身を躱した。

(#'A`)「……っ、…………ぐっ」

 剣を退ければ次の剣が飛んでくる。
 見た目も派手だが、人相手とはまるで違う感覚に混乱させられる。
 言葉を放つ余裕はなかった。

942 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:53:20 ID:DwD.EnMM0
 光が見えたらとにかく払う。その途中、岩場を抜け、民家を潜る。
 砕けた壁にいくらかの刃が突き刺さった。

ζ(゚ー゚*ζ「逃げてばかりじゃジリ貧よ?」

(#'A`)「わかってるっての」

 デレは宙に浮いている。おいそれとは攻撃できない。
 隙をついて物を投げるにも、銃弾さえ防がれるのだから、望みは薄い。

 ただ、突破口が見えないわけではない。
 例えば、ドクオの剣は未だ彼の元から離れない。靴も服も、操られはしない。
 物体を従えるという能力だが、いくらかの制限があるらしい。
 それを見抜き、衝くことができれば。

943 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:53:44 ID:DwD.EnMM0
(;'A`)「うっ」

 頭で考えているうちに、刃の波は一層厚みを増した。
 銀の鱗の蛇のように、頭をもたげて飛びかかってくる。

('A`)「!」

 刃が一直線に並ぶのを見た。
 デレを目がけて、道ができている。

 ドクオは反射的に脚を掛け、一気に駆け上がった。

 短い叫びとともに、跳び上がる。

ζ(゚ー゚*ζ「!」

944 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:54:20 ID:DwD.EnMM0
 デレの瞳が見開かれている。
 ドクオの身体がデレよりも高い位置に上がり、腕を振り上げる。

 瞬間、視界が白く染まった。

( A )「がっ――」

 巨大な拳に殴られたような感覚がした。

( A )「――雪」

ζ(゚ー゚*ζ「動かせないとでも思った?」

945 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:54:45 ID:DwD.EnMM0
 操れると言いながら、襲ってくるのは凶器ばかり。
 だからこそ、雪は動かせない側のものなのだと勝手に結論づけていた。

 落下したドクオを雪が受け止め、跳ね上がる。
 雪片に赤の混じるのを見て、痺れた頭の感覚の原因は悟られた。

 あたりが血で染まっていく。
 ふと気づくと、手が何も掴んでいなかった。

 幾重にも並んだ、デレの刃の先頭に、そのドクオの剣はあった。

ζ(゚ー゚*ζ「この剣は、モララーさんのじゃないのね」

 羽ばたきを弱め、デレが呟いた。

946 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:55:09 ID:DwD.EnMM0
 二年前、ラスティア城に忍び込んだ際、ドクオはモララーの剣を奪取していた。
 あとでモララーの墓に供えるつもりだったのだが、叶わなくなって、時間が経ってしまっていた。

( A )「あれはな、俺にはもったいないものだったんだよ。だからここにはない」

ζ(゚ー゚*ζ「ふうん」

 デレは冷めた顔で言い、指を動かした。
 剣の一団がドクオを取り巻いていく。
 隙間はない。

( A )

947 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:55:38 ID:DwD.EnMM0
 デレは説得できそうにないな。

 身を固めつつ、ドクオはそう思った。

 昔のの自分と同じだと。

 怒りで我を忘れ、ひたすら魔人を殺したとき、ドクオは誰の声も聞いていなかった。
 一番そばにいて、心通わせたと思っていたモララーのことでさえわかっていなかった。
 彼がどんなことを考えながら戦っていたのか、昨日になってようやくわかった体たらくだ。

 自分は虚ろだった。
 戦い続けている内に、過去から目を逸らし、現在を壊し続けた。

948 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:56:19 ID:DwD.EnMM0
 デレを止めたいわけじゃない。
 だが、否定はしなくてはならない。
 モララーの死が、彼女の暴走を招いたというなら、
 ドクオはその事実に堪えられなかった。

 だが、そんな憤慨も結局、デレにしてみたらどうでもいいことなのかもしれない。
 あるいは自分は、傲慢でさえあるだろう。

 デレのいうとおりだ。
 その決意を止める明確な理由があるわけじゃない。
 勝手にモララーを持ち出して、説得材料として使おうとしているだけだ。

 そうして、自分の過去を償ったことにしたいだけだ。

949 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:57:01 ID:DwD.EnMM0
 刃の群れが動き始めた。
 初めはじわりと、それから一斉に、速度を速めた。
 反射光が鋭く光る。目に痛い。

( A )「……報いなのかもな」

 誰も救えなかった、救おうとしなかった自分への報い。
 呟いた言葉を拾う者はいなかった。

 刃の波の擦れる音が、耳をくぐり、
 思考を覆い隠さんばかりに響き渡る。

950 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:57:50 ID:DwD.EnMM0



   










.

951 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:58:24 ID:DwD.EnMM0








「許さないよ」







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952 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:59:02 ID:DwD.EnMM0
挿入歌 All I need is love(酒井ミキオ/『スクライド』より)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3164282

953 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 21:59:28 ID:DwD.EnMM0
                    ____
                 /´ ̄ ̄ ̄`` 、
                    /            、
                 /i/          〈
                    /i/./-‐…‐- . . _   )`、                  \
             /i/: :           ``〜、 \                     `、
            /: :〈:: :       :.       ``〜、>'" ̄ ̄`\       __)\
            \:: :: :       {`丶、. . ..        ``〜、   }      ,/ .〉:.:}
             〉 : : .      V^ ``〜、、:. . ..       \/{__,ノ(___/:.:/
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                {〉         \:. :. . .         ``〜、        /`:、
               〈:             `丶、: : : .           \     /   \ ___,
             \.                \: : : :.            ` 、ィ゛        `、(
                    \.            ,,>、:: ::              |_  _      } 〉
                   ` ‐-    ‐…: :''"_____: . . . ..          `て      /i/
                           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `⌒⌒ヽ、: :. .       \    〈i/
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                                    /i〈,ノ: :              . :/
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954 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:00:07 ID:DwD.EnMM0






「勝手に助けておいて、勝手に死ぬなど、誰が許してやるものか」






.

955 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:00:29 ID:DwD.EnMM0






 金属片の奏でる音を掻き分けて、その声は清冽だった。






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956 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:00:53 ID:DwD.EnMM0


( A )



('A`)



 許さない。
 こればっかりだ。



(゚A゚)

957 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:01:21 ID:DwD.EnMM0

 どれだけ勝手にしようとも、

 自分を見限ろうとしてさえも、

 それを許さない誰かがいる。

 煩わしいことこの上ない。





「聞こえているか、ドクオ」


.

958 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:01:41 ID:DwD.EnMM0


('A`)「……」


 でも、その煩わしさこそが、地に足着ける理由でもある。


('A`)「ああ」


「……よし。それじゃあ、前を向け」

.

959 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:03:56 ID:DwD.EnMM0
ー=ミh、`㌻´=‐-   _ -ー==㌻`         ,.ィi{ー===ー㌻`             ,ィ( ー==ミア‐ニ/           / ‐-
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-  ‐ ニ/====ー -,ィi{=‐゛ _‐=ア                        ,心= ー===/   Гニ==={{             }}=-‐
‐  ‐ ニ/===ー -ニ㌻´  _‐=ァ゜                     ,心= ー==ニ/    [ニ=―=={{             }}=ニΞ
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_  ニニ7=ー -=ニア゜  ,ィ(⌒ヽ`                        /== ー==ア      |ニニー==ⅱ         jj三こニ
  ー ∥==‐-=ミア  _,.ィ(X⌒ヽ′                     /== ー==/        |ニニー==ⅱ           jjニΞ三
 _ ∥== ‐ミアxf〔==ー ニア                       ,'== -==/       |ニニー==ⅱ          ∥こニ=‐
_ ‐ ∥==ー ミ/===‐ =‐゛                      ,―‐ == ニ,'          |三ー-=={{          ∥ニ-ー=
ミ-∥==ー ミ/===‐                           ,-ー=== ニ,:         |Ξー-=={{         ∥ニ- ー=
ニ∥==‐ ん==‐                        ,―‐=== ニ,'          川‐-===}j       ,心‐ ニΞ三
ミ∥==‐ ∥=‐                         ,―‐=== ニ,'            /ソノ ‐==弖       心ニΞ三ニー
`∥==‐ ∥ー‐                             /―====こ∥        ,心 - ‐ニΞ弖      ,心三Ξニー -=
'∥=-  ,″                               ∥=ー===ニ∥        ,ィi{Ξ‐_ ーニΞ三リ   ,ィ(三Ξニ=- ニ三
,″                                 ∥=-===ニ∥     ,.ィ(=‐ ̄_ ‐ニΞ三ア   ィ(三三Ξニ-Ξニ/
                                     ∥= ー==こ∥   ,xf{ニ‐ _   ‐ニΞ三㌻゜  ,ィ(三三ΞΞニΞ三ア
 舞い散る粉雪の上で、                    ∥= ー==こ∥ xf〔三Ξ三ニ=‐ -=ニ㌻゛  ,ィ(三三ΞΞΞ三三ア
                                 ∥= -==ミ{{ィi{Ξニ ニ ニ三ニ=‐ ニア    ,ィi{三Ξ ̄ ‐==ニ三ア
 無数の枝が交錯し、凶刃を制止させていた。   ∥=  ー==ミ{{Ξニ ニ ニ 三ニニΞア   ,ィi{三Ξ ̄ ー==ニ二ア

960 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:04:47 ID:DwD.EnMM0
 根元にあたる場所は、ドクオの目の前だ。

 棚引く深緑のコートから、樹木と融け合う右腕が見える。



川  - )「ずっと、言い忘れていたことがあった」



川  - )「あのときは助けてくれてありがとう」





「だから、今は」

961 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:06:17 ID:DwD.EnMM0







川 ゚ -゚)「私がお前を死なせない」






.

962 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:06:39 ID:DwD.EnMM0



('A`)「……クー」



 彼女の腕は、ドクオがその手で引き裂いた。
 その腕が、今は絡みついた枝で奇妙に構成されていた。

 屹立する彼女へ向けて、ドクオは言葉が追いつかなかった。
 思考はとっくに止まり、呆然と、吐息の出るに任せていた。

 静寂を切り裂くように、はばたきの音がする。

963 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:07:26 ID:DwD.EnMM0
\                }: : : : : : : //.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:: : : : : : : :\
.. \              |: : : : : //: :.::..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:: : : : : : : : : \
.    \               {: : : // : : : :.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:: : : : : : : : : : \
.      \         ム// : : : : : : :.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:: : : : : : ____,\
.        }\        /,ベ: : : : : : : : : : : :.:.:.:.:.:_ -   ̄ ̄       \
.        |: : \    // } : : : : : : : : : _,.  ´   `ヽ、          / :.\
\.      |: : : : \ //   |  : : : : / /  /  \  \        /: : : : : : : \
: : \.    |: : : : /`x´     |   :/ ,'  /       ' ,  }  _,..  ´: : : : : : : : :
: : : : ∨.  |: : : : {/: :\     |   '  {  {   0   }_ - ¨´: : : : : : : : : : :
: : : : : ∨ |: : : : : : : : : : \   } ´   _ 廴 .{__, - ´: : : : : : : : : : : : : : : : :
: : : : : : }. /: : : : : : : : : : : : ,\ {.:.:.:.:.:.:.:´: : : : : : : : : : :.:: : : : : : : : : : : : : :
: : : : : : j/: : : : : : : : : : : /¨´ \ゝ..::.::.::.:: : : : : : : : : : : : : : : :
: : : : : ./: : : : : : : : : : : : : : :.::.::.:: : . : : : : : : : : : : 「……誰よ、その女」

964 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:08:05 ID:DwD.EnMM0
 冷めた声の他、何もなく、空気が張り詰めていく。

 その静寂を、

「ドクオさーん!」

 と、聞き慣れた声が破った。

('A`)「タカラ!?」

 遠くから、その姿は確認できた。

 狼煙が見えていたとはいえ、距離からして、歩けば一時間以上はかかる道だ。
 いくらデレと戦っていた間、その時間はどう見積もっても三〇分はこえない。
 それなのに、タカラは諸手を上げて振っていた。

( ,,^Д^)「途中で仲間に会えたんです。
     シナーさんが送ってくれた、非正規の別働隊ですよ」

965 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:08:42 ID:DwD.EnMM0
 タカラの背後には、兵士らしき者たちが立っていた。
 金螺旋の刻まれた赤い旗。たなびくそれらはテーベの旗だ。
 しかし、彼らはドクオの見慣れない深緑の軍服を纏っていた。

( ,,^Д^)「ドクオさん、シナーさんが俺たちを送ってくれたときのこと、覚えていますか。
     『信頼できる部下を寄越す』って、あの人言ってましたよね。
     それがこの人たちです。テーベの中には、いてはいけない人たち。
     ドクオさんなら、わかるでしょう?」

 タカラの言わんとするところは、確かにドクオにも伝わってきた。
 戦闘中は必死でいたために気づかなかったが、今そこには獣の匂いが満ちていた。

 それらはデレのものではない。明らかに、立ち並ぶ兵士達から漂ってきていた。

(;'A`)「……魔人、なのか?」

966 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:10:27 ID:DwD.EnMM0
川 ゚ -゚)「信頼していい。私の仲間だ」

 クーがこともなげに言う。

(;'A`)「な、仲間!? それってどういう意味だ」

川 ゚ -゚)「話はあと」

川 ゚ -゚)σ「でないとキレるぞ、あの姫様」

 クーが指差した上空で、デレはぎりりと歯を鳴らしている。

ζ(゚-゚*ζ「……この期に及んで、まだ、邪魔物が」

ζ( - *ζ「でも、関係ない」

 デレの腕がまた広がると、新たな剣が民家から飛びだしてきた。

ζ(゚Д゚*ζ「私の道を邪魔する奴は! 全て私で切り裂くまでよ!」

967 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:11:18 ID:DwD.EnMM0
 咆哮とともに、白刃が群れを成す。

(;'A`)「逃げろ! クー」

 咄嗟に言うが、クーは首を横に振る。

川 ゚ -゚)「……気づいているか、ドクオ。あの念動力、万能じゃない。
     あいつが飛ばしてくるものは、全て、人の身体から離れている」

 クーは落ちついて、その腕を伸ばした。
 絡まりついた枝からなる腕の先で、指が開かれ、伸びていく。

川 ゚ -゚)「この私の腕も、人と見做してくれるのは嬉しい話だよ」

 延びていく枝に触れられた途端、刃たちは勢いをなくしていった。

968 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:11:48 ID:DwD.EnMM0
('A`)「……なんだ、その腕」

川 ゚ -゚)「「魔人からの授かり物だ。古代の知恵なんだってさ」

 動かなくなった刃をクーは振り下ろす。
 刃は次々と地面に突き刺さっていった。

川 ゚ -゚)「お前のその能力、私とは相性が悪いようだな」

ζ( д *ζ「……ああ、ああああ」

('A`)「……」

 デレの変貌がただの誤魔化しとは、ドクオには思えなかった。
 実験がどんなものかはわからないが、精神的に作用しているように見える。

 出たり入ったりしていた魔人の気配が、今は魔人で一色だ。

969 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:12:30 ID:DwD.EnMM0
ζ(゚  ゚*ζ「……消えて」

 顔を擡げて、デレが呻いた。

 半月を描いて持ち上がった腕と合わせて、続々と刃が現れる。
 細やかなガラス片や、瓦礫の類いもその波に加わった。

ζ(゚  ゚*ζ「邪魔なのよ、貴方たち、全員……全部!」

 吊られた刃が、一陣となって、真っ直ぐに向く。

川 ゚ -゚)「ドクオ、身体は」

('A`)「ああ」

 膝の震えもとうに消えた。

('A`)「大丈夫だ。戦える」

970 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:13:02 ID:DwD.EnMM0
川 ゚ -゚)「よし、作戦を――」

('A`)「いい」

 手を振って、ドクオは制した。

('A`)「あの動きは、わかる」

 クーは虚を突かれた様子で、それからすぐに、鼻を鳴らした。

川 ゚ ー゚)「助かる」

 途端、デレの叫び。
 それは人というにはあまりにも荒々しかった。

971 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:13:39 ID:DwD.EnMM0
ζ(゚  ゚*ζ「全部、全部、全部っ!!」

 繰り返される言葉に乗じて刃は重なり合っていく。

ζ(゚Д゚*ζ「消えてなくなれえええええええええ!!!」

 白刃の波。
 それが先刻の攻撃とまるで同じことに
 デレは気づいていない様子だった。

('A`)「ふんっ」

 地面を蹴って、その切っ先に載る。

972 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:14:09 ID:DwD.EnMM0
(#'A`)「デレエエエエエエエエエエエエエ!!」

 金属を打ち鳴らし、ドクオは一気に駆け上がっていった。

 背後で樹木が広がる。
 刃の全てが枝に絡められていく。

 警戒していた雪の塊も、飛来してくる様子はない。

 届かないと思っていた視線が、交わった。

ζ(゚Д゚#ζ「邪魔ああああああ!!!!」

 波から外れた刃が方向を変える。
 勢いはある。だが、数は少ない。

 ドクオはそれらを打ち払い、さらに強く、刃を踏みつける。

973 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:14:34 ID:DwD.EnMM0
(#'A`)「かぁ!!」

 ドクオもまた一身に叫んだ。

 黒剣ではない。

 代わりに構えたのは、今し方クーよりもらいうけた剣。

ζ(゚Д゚;ζ「そ、それは――」



 赤い宝石が日を撥ね返す。



('A`)「そうだよ」


 ドクオは低く答えた。


('A`)「モララーの、剣だ」

974 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:15:02 ID:DwD.EnMM0




('A`)



(-A-)




 お前に掛ける言葉をずっと探していた。


.

975 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:16:21 ID:DwD.EnMM0
 見殺しにしてしまったことや、わかってやれなかったことを謝りたかった。
 何を考えていたのか、どこかで訊いてやればよかった。
 後悔はいつまで経っても終わらない。

 今、ようやくわかった。
 俺は後悔し続ければいい。

 このしがらみは、苦しみじゃない。
 むしろ俺をここに繋ぎ止めてくれている。

 お前に掛ける言葉はようやく見つかった。

 謝罪なんかもうしない。
 そんなものをいくら言っても、お前には絶対に届かない。

976 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:17:46 ID:DwD.EnMM0
 言葉は常に、送るものだ。
 だから俺はお前に言う。

 俺はお前を許さない。

 勝手に死んだことや、何も言わなかったこと。
 大勢の人を悲しませたこと。

 どんな目的があろうとも、
 周りを見失ったお前のことを俺は許さない。

 お前は死んだ。もういない。
 俺は、しぶとく生きている。

 もうこの世に何もすべきことなどないようにも思えたていたが
 どうしても、許してくれない奴らがいる。
 そしてきっと、お前もそうだろ。
 ……俺もだけど。

977 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:18:18 ID:DwD.EnMM0
 だから、俺はまだ、戦おう。
 お前が巻き込まれていたしがらみを全て解きほぐし、
 お前の生が決して無駄ではなかったと言い切るために。

 そしてその先でも、お前のことを決して忘れない。


('A`)


 ようやく、決めた。


聞け、モララー。


 俺はこれから、


 お前を背負って生きていく。

978 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:19:06 ID:DwD.EnMM0




 動きは止まった。

 目を見開いたデレは身をひいた。
 それすらも、ドクオには見えていた。

 振り下ろされた、赤い宝石の剣。
 デレが歯噛みして、刃を手繰り寄せる。
 バランスが崩れ、はばたきは途絶え、身体は墜ちていく。


ζ(   *ζ「――――っ!!!


 甲高い悲鳴の最中、白銀の刃は振り抜かれた。


.

979 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:20:20 ID:DwD.EnMM0
.




第二十七話 君死に給ふことなかれ(雪邂永訣編⑤) 終わり





第二十八話 永訣の朝(雪邂永訣編⑥)へ続く




.

980 ◆MgfCBKfMmo:2018/07/11(水) 22:21:39 ID:DwD.EnMM0
本日の投下はここまでです。
雪邂永訣編は次回で終わりです。
次の投下は新たにスレを立てて行います。
それでは、また。

981同志名無しさん:2018/07/11(水) 23:31:29 ID:B0Ofs63o0


982同志名無しさん:2018/07/12(木) 05:34:50 ID:aQjSWKQ.0
乙乙

983同志名無しさん:2018/07/12(木) 17:33:16 ID:Pi/xlsq.0


984同志名無しさん:2018/07/13(金) 21:56:13 ID:5VkjohwQ0
おつおつ
シナーは柔軟なんだな

985同志名無しさん:2018/07/29(日) 19:45:13 ID:983yhYHc0
おわぁぁぁぁ何年かぶりに見たけどまだ続いてる!!!好き!!!

986同志名無しさん:2018/08/10(金) 12:50:28 ID:/1r7.5ig0
相変わらず面白すぎるマン

987 ◆MgfCBKfMmo:2018/12/30(日) 23:31:32 ID:SK6Si69Y0
誘導です。
衛兵王女につきまして、次回からは自サイトでの更新に絞ります。

(再掲 自サイトの衛兵王女のページ↓)
http://cloudcrying.blog.fc2.com/blog-entry-45.html


(経緯 自ブログの記事↓)
http://byebyecloud.hatenablog.com/entry/2018/12/30/230009

うっかり長年の連載になってしまった本作、ご愛顧いただきありがとうございます。
まだしばらく物語は続きますし、終わらせるまでは死ねません。
突然の発表となってしまったこと、ご容赦ください。それでは。

988同志名無しさん:2018/12/31(月) 03:43:33 ID:Vv34rGsM0
FC2はスマホで見ると大型AAがズレるんだよなぁ

989同志名無しさん:2018/12/31(月) 04:32:35 ID:BXXEjdn60
ありがとう。衛兵王女1話目当時の頃を思い出したよ
お元気で

990同志名無しさん:2019/01/07(月) 00:42:49 ID:Qi6X85vc0
経緯読んだやで!
どこに移動しても応援してるで
俺もこれが読んでる唯一の現行だし、これからも楽しみにしてる!


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