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( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ 第三部
1
:
◆MgfCBKfMmo
:2016/06/10(金) 21:01:44 ID:U0jBOVFc0
第二部までのお話はBoon Roman様に収録されています。
http://boonmtmt.sakura.ne.jp/matome/sakuhin/tender/
(リンク先:boon Roman)
709
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:27:04 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚-゚*ζ「……私に指図しないでください」
('A`)「……は?」
ζ(゚-゚*ζ「私はモララーさんに感謝しています。それはもちろんそうです。
でも、魔王を敵視しないといけないなんて、決めつけられるいわれはありません」
語気が上がり、デレの双眸がドクオに鋭く向き合った。
ζ(゚-゚*ζ「私はマルティアで魔王に、助けられた。そう感じているんです。
その感情は両立できないものではないと思います」
言葉がまた途切れる。
沈黙の中、瞠目しながら、ドクオは歯を噛みしめた。
710
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:28:05 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚-゚*ζ「わかりかねますか」
('A`)「率直に言えば、そうだ」
ζ(- -*ζ「そうですか……」
デレは瞳を閉じ、岩壁に寄りかかって溜息を深くついた。
ζ(- -*ζ「「ごめんなさい、怒らせてしまって」
('A`)「……怒る?」
711
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:29:12 ID:8dfHuhNs0
ζ(- -*ζ「怒ったのでしょう? 見ればわかりますよ。
モララーさんの名前を出す度に、あなた、すっごく怖い顔するんですもの。
私の言葉も、私さえも気にくわない。そう思ってらっしゃる」
寄りかかった体勢のまま、デレは上を仰いだ。
赤く揺れる炎によって、無骨な岩の天井が明滅する。
ζ(゚-゚*ζ「考えを改めるように、なんて、私に言う権利はありません。
人と人とはわかりあえない。誰だって知っていることです。
こんな話してごめんなさい。私、もう黙りますから、今日は休んで」
('A`)「あのさ」
ドクオの声に、デレの口が半開きのまま固まる。
712
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:30:20 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚-゚*ζ「あの、なにか」
('A`)「それ、やめられるか」
ドクオが言うと、今度はデレが目を見張って彼を見た。
ζ(゚-゚*ζ「だから、もう話さないと」
('A`)「そっちじゃない。話し方」
ζ(゚-゚*ζ「?」
('A`)「『です』とか『ます』とか『おっしゃる』とか」
ζ(゚-゚*ζ「ああ、口調ですか。
えっと、昔から仕込まれたものなのですが」
713
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:31:12 ID:8dfHuhNs0
('A`)「普通の話し方もできるだろ?」
ζ(゚-゚*ζ「それは……まあ」
怪訝そうな顔で頷くデレに対し、ドクオは真剣な顔で頷き返した。
('A`)「じゃあ、そっちで喋ってくれ。上品すぎて疲れるから」
ζ(゚-゚*ζ「はあ……、じゃあ。ドクオ、さん。この『さん』はいいですよね?」
('A`)「ああ」
ζ(゚ー゚*ζ「では、ドクオさん。今日は休むとしよう……よ?」
714
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:32:03 ID:8dfHuhNs0
('A`)「……よし」
口を結んで頷くドクオの声に、デレはほっと表情を和らげた。
ζ(゚ー゚*ζ「気にされ……しちゃってたんだね。えっと、ごめん」
('A`)「そのまま少し前に遡れ」
ζ(゚ー゚*;ζ「……???」
('A`)「モララーへの感謝と魔王への感謝、両立できないものじゃないってところから」
ζ(゚ー゚*;ζ「え、そこ? そこなの?」
('A`)「うん」
715
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:33:02 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*;ζ「はあ……私、確か……」
ζ(゚ー゚*ζ「この感情は、両立できないものではない……よ」
ζ(゚-゚*ζ「わかってくれない……わかりたくない?」
('A`)「率直に言えば」
二回目だというのに、ドクオは相変わらず真剣な顔を向けた。
だからデレも、居住まいを正してドクオと向き合った。
ζ(゚-゚*ζ「……ごめんね。怒らせちゃったみたいだね」
716
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:34:04 ID:8dfHuhNs0
ドクオは先ほど、この言葉に息をのんだ。
今度も同じ動作がくるものだと思い、デレは待った。
しかし、ドクオはすぐには動かなかった。
低く息を吐いた、と思いきや、すぐに背筋を伸ばした。
座高だけならデレとほぼ変わらない高さ。
視線が同じ位置で交わる。
細く冷ややかなドクオの瞳の微かに揺らぐのを、デレはじっと見つめていた。
ドクオが軽く息を吸い、そして。
(#'A`)「怒ってねえよ、馬鹿」
717
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:35:01 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*ζ
ζ(゚ー゚*;ζ「え!?」
('A`)「よし、じゃ、寝るか」
呆然としたデレを前に、ドクオは雪解け水で炎を消した。
あたりがすぐに暗くなり、月光を照らす雪の白さが洞穴の外から入り込んでくるだけとなる。
718
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:36:04 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*;ζ「ちょっと! 今の何!? わぶっ!」
柔らかい何かが顔面に当たり、デレは小さく悲鳴をこぼした。
('A`)「寝袋だ。早くしないと寒さにやられるぞ」
ζ(゚ー゚*;ζ「なんで火があるうちに渡さないの!?」
('A`)「いちいち騒ぐな。今、渡したんだからどうだっていいだろ」
辛辣なドクオの言動に、デレはしばらく黙り込む。
膝の上に載っている柔らかな寝袋を月明かりを見下ろし、ふと、顔を上げた。
ζ(゚ー゚*ζ「というか、手、縛られているんだけど」
719
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:37:08 ID:8dfHuhNs0
('A`)
ζ(゚ー゚*ζ
('A`)「……火、つけるか」
ζ(゚ー゚*ζ「馬鹿じゃないの?」
('A`)「うるせえ」
愚痴りながらも手際よく、ドクオは再び火をつけた。
ζ(゚ー゚*;ζ「このままじゃ」
('A`)「見りゃわかるよ」
無言のままドクオは寝袋を広げ、空気を通し、留め具を空けた。
720
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:38:05 ID:8dfHuhNs0
('A`)「入ることくらい自分でやってくれよな」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
('A`)「なんだよ、嫌なのかよ」
ζ(゚ー゚*ζ「ううん……不思議な人だなって思って」
('A`)「そうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「というか不器用? 言葉足らずなだけ? 言い回しで格好つけてる?」
(;'A`)「分析はほどほどにしてくれよ、恥ずかしいから」
721
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:39:05 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*ζ「モララーさんとは結構違って……」
小さな炎を前にして、ドクオの口がふっと真一文字に結ばれた。
デレは慌てて頭を振った。
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、ごめん! 嫌な言い方しちゃったよね? そういう意味じゃなくて」
('A`)「……いや、いいよ」
ドクオは視線を落としつつ呟いた。
('A`)「俺もときどき思ってたさ。モララーはどうして俺とつるんでいるんだろうって。
性格も考え方も、人望も度量も、技術も、俺とは違う。あいつは生きていれば、もっと上に行けた男だ」
722
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:40:03 ID:8dfHuhNs0
('A`)「俺なんかと接点を持つようなタイプじゃない。もっと、明るいところにいるべき奴だった」
デレに向けてというよりは、自分に言い聞かせるように、ドクオは一言ずつ噛みしめるように呟いた。
小さな炎は、先ほどのよりも頼りなく、吹けば簡単に消えそうだった。
雪解け水の残りを構え、斜めに傾げたとき、デレが口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「あの人は、他人を放っておけない人だったよ」
ドクオは動きを止め、デレの顔を見た。
ほのかに赤みの差したデレの頬には笑みが浮かんでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「私のときも同じ。だからきっと、あなたのときも」
723
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:41:06 ID:8dfHuhNs0
('A`)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、怒っちゃった?」
デレの問い掛けは、どちらかといえば戯けていた。
ドクオは肩を竦めてみせ、雪解け水を一気に炎へ傾ける。
('A`)「怒ってねえよ、馬鹿」
炎が縮み、そして消えた。
ζ(゚ー゚*;ζ「って、寝袋入ったら留めないとなんだけど!
なんで消す前に言ってくれないの!?」
724
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:42:02 ID:8dfHuhNs0
('A`)「むしろなんで消す前に気づかねえんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……気づいてたってこと?」
('A`)「寝る」
ζ(゚ー゚*;ζ「ちょっと! 気づいてて黙ってたんで、あ、こらすっぽり入るな!」
愚痴を言いつつ寝袋に入り込むデレの物音を聞きながら
ドクオはじっと暗闇の岩壁を見つめていた。
☆ ☆ ☆
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725
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:43:01 ID:8dfHuhNs0
微睡みの中、昔のことを、ドクオは思い出していた。
(;'A`)「つっ!」
掴んでいた模擬刀の柄が吹き飛ばされる。
修練場の板張りの床にそれは落ち、カラカラ虚しく音を立てた。
( ・∀・)「よっしゃ! 俺の通算19勝目! あと一回で晩飯奢りな! 忘れるなよ!」
(;'A`)「同じこと19回聞かされてるのに忘れるかよ」
通算といいつつ、その実は連勝。モララーはずっと勝ち続けている。
726
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:44:03 ID:8dfHuhNs0
衛兵見習いとして、ラスティア城に来てから早数ヶ月。
同期のモララーとドクオはともに実力者として、仲間内で名を馳せていた。
型破りなモララーと、堅実に勝ちを収めるドクオ。
周りの人からすれば、どちらも近寄りがたい存在になりつつあった。
だが、練習の場での模擬試合では、ドクオはいつもモララーの後塵を拝していた。
( -∀-)「ふふふ〜、ドクオ。お前だんだん腰が浮いてきているぞ」
指を一本立てながら、モララーが胸を張る。
( ・∀・)「腰が浮いたら脚に力が入らない。踏ん張りが足らないから全身のバランスも悪くなる。
おまけにお前の攻撃は利き手が優先されがちだ。先を読まれたら、弾かれるぜ」
727
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:45:05 ID:8dfHuhNs0
立てた指を回し、モララーがしたり顔をする。
ドクオは苛立つよりもまず先に感心して言葉を失った。
(;'A`)「お前、そんなところまで読んで戦うのか」
戦いのスキルひとつとっても、ドクオはモララーに敵わない。
その理由の一端を見た気がして、ドクオはモララーに質問をした。
対して、モララーは首を横に振った。
( ・∀・)「普段からさ」
例えば、とモララーは言葉を続ける。
728
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:46:03 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「ドクオは疲れると動きがパターン化してくるけれど、戦いだけじゃなく、普段からだ。
嫌な座学のときはいつでも窓際右列三番目に座り、直前の座学の参考書を広げて机に突っ伏す。
接地するのはいつも左側で、左腕を支えにする。これはもしかしたら利き手の右が空くからかと思うんだけど」
(;'A`)「いやそんなの無意識だから。ていうかお前怖いなおい!」
( ・∀・)「なはは。普通の講師なら大丈夫だけど、ロマネスクさんのときは危険だからな」
(;'A`)「砂漠育ちの衛兵隊長が?」
( ・∀・)「寝てるお前の傍を通る度に、毎回10秒見下ろしてる」
('A`)
( ・∀・)「それから放課後、毎日倉庫の傍でチョークを投げる練習をしている」
(;'A`)「……」
729
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:47:01 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「投げて壁にあたるとな、チョークが一瞬で粉々になるんだ。
あれが頭に当った日にはお前、命に関わるぞ」
('A`)「ありがとう、明日から寝たふりを極める」
( ・∀・)「授業聞けよ」
そのとき、夕刻を告げる鐘の音が入り込んできた。
会話の切れ目に折良く差し込まれ、二人して窓の外を見遣る。
夕暮れ迫る空、風に揺れる梢。穏やかな景色がなんとも言えず輝かしく見えた。
('A`)「つまり、お前はいつも人を観察しているんだな」
( ・∀・)「そういうこと」
('A`)「なんでだ。勝つためか? いつかロマネスク隊長も倒せるように?」
730
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:48:09 ID:8dfHuhNs0
不可能なことじゃない。
ドクオは心のどこかでそう思っていた。
だから、即答しないモララーを意外に思った。
( ・∀・)「それは、副次的なものだよ。俺はいろんな人のことを知りたいだけだ」
('A`)「知る?」
眉を顰め、ドクオはモララーを見つめた。
モララーも言葉を選んでいるようで、時間を置いて、慎重そうに口にしていった。
731
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:49:10 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「一人きりだと、限界があるんだ。
いくら強がってもどうにもならない相手もいる。
いつまで経っても解けない問題や、蝕む病みたいなものもある」
( ・∀・)「でも、誰かと手を組めば、先へ進める可能性が増えるんだ」
モララーは一旦、言葉を切った。
何を言うべきかをじっくり選んでいる様子だった。
( ・∀・)「この人と手を組んで良かったと思えるときがあればいい。
そう思って、俺は人と接している」
( -∀-)「……ような気がする」
732
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:50:02 ID:8dfHuhNs0
('A`)「そこは曖昧なのかよ」
( ・∀・)「んなもん、考えながらやってるもんじゃねえって。
意識の指向、こうしたいなーって気持ちだよ」
( ・∀・)「例えば、理由のある行動ばっかりじゃ息が詰まるなーって思って、
全く意味のないことしたくなるとき、あるだろ?」
('A`)「……ねえよそんなの」
( ・∀・)「じゃあやれ」
(;'A`)「はあ?」
733
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:51:11 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「やってみろよ! 楽しいぜ!」
(;'A`)「まあ、じゃあ、気が向いたらな」
( ・∀・)「よし! 約束だぜ!」
(;'A`)「もうなんでもいいって。なんでそんなに元気なんだよ」
修練場から、ひとりまたひとりと人がいなくなっていく。
モララーとドクオは模擬刀を片付けて、倉庫の籠の中に入れた。
修練場から外に出れば、外はもう暗くなりつつあった。
734
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:52:04 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「俺、ちょっとロマネスクさんところにいくから、食堂で待っててくれ」
('A`)「別にいいけど、慌ただしいな」
( ・∀・)「将来への投資だよ。平たく言えばコネ作り」
そう言うと、モララーはドクオに手を振った。
( ・∀・)「じゃあな、ドクオ。相変わらずお前との模擬戦が一番楽しい」
('A`)「圧勝しておいてそれを言うか」
( ・∀・)「ん、でも、型は毎回変わっていたし、
裏をかく動きもあった。最後はへばっていたけど」
735
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:53:06 ID:8dfHuhNs0
('A`)「……」
( ・∀・)「強くなろうとしてるんだ。ドクオもいずれ、俺と並んで、追い越すさ」
('A`)「……よくもまあ、ストレートに言う」
( ・∀・)「だから、なおさら悔しいんだろ?」
('A`)
( ・∀・)
('A`)「俺は」
( ・∀・)「ん?」
('A`)「お前の心はお見通しだ、みたいなこと言われるの、すげえ嫌なんだよ」
736
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:54:01 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「うん。俺も俺も」
('A`)「……」
( ・∀・)「俺も」
('A`)「はよ行けこら」
( ・∀・)ノシ
モララーが去って行くのを見つめながら、ドクオは深く息を吐いた。
モララーは自分とは違う。
違うところが多すぎる。
737
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:55:09 ID:8dfHuhNs0
人望の厚いモララーにはいつでも光が差している。
ドクオはいつもモララーと対比されている。
だが、モララーと一緒にいれば、勝手に光に差し込まれることになる。
それがとても苦手で、疲れて、なのに離れることができずにいる。
モララーが自分と組むことを、ドクオは不思議に思っていたが、
気がついたらドクオ自身、当たり前のようにモララーと組むようになっていた。
理由は思い返しても、いつの間にか、としか言えない。
モララーといると調子が狂う。
それがいいことなのか、悪いことなのか、ドクオにはわからなかった。
738
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:56:07 ID:8dfHuhNs0
('A`)「一人きりだと限界がある、そのために知る……か」
例えば自分がモララーのことをもっとよく知ることは可能なのだろうか。
ふざけているようでいて、時折モララーは真剣な表情を見せることがある。
その真剣な眼差しのとき、モララーはいつも周りに距離を作っていた。
モララーは一体何を考えているのか。
('A`)「……わかんねえ」
当時のドクオは首を傾げるばかりだった。
739
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:57:05 ID:8dfHuhNs0
今のドクオも同じだった。
モララーのことはわからない。
彼が何を感じていたのかは推測するしかない。
結局のところ、モララーは死んだ。
自分の預かり知らぬ気持ちを抱えて、死んでもデレを救おうとした。
それは、モララーの敗北なのだろうか。
それとも目標の超克のためだったのだろうか。
その死は、お前の本心からの行動だったのか。
740
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:58:03 ID:8dfHuhNs0
問い掛けに意味はない。
モララーはもう答えない。
知りたいことはあまりにも多すぎた。
だから。
('A`)「お前ならどうするよ、モララー」
モララーのいるうちでは、決して口にできなかったこと。
いつしかそれが、ドクオの口癖になっていた。
☆ ☆ ☆
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
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.;:;:;:;:;:;:;:;:;:.;:;:;:;:;:;:;:;:;:
741
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:59:01 ID:8dfHuhNs0
ドクオは、テーベで傭兵として働いているうちに、小刻みに起きる癖がついていた。
目覚めたとき、まだ洞穴の外は暗く、
月明かりもなくなり、星々の光だけがわずかに残るばかりだった。
頭を抑え、髪を掻きながら、寝袋から上体を起こす。
深呼吸をすれば、暗がりな洞穴の中でも目が利くようになってきた。
焚き火の跡を挟んで向い側にデレの寝袋があった。
無事に入ることもできて、今は顔を袋の外に出して寝息を立てていた。
暗闇の中に顔だけが浮かんでいるようで、一瞬ドクオは身を強張らせた。
ζ(---*ζ
デレの顔からは表情が、今は消えていた。
最も、普通の人だって寝ているときは似たようなものだろう。
742
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 22:00:01 ID:8dfHuhNs0
今日のうちに、デレの表情は様々に変わった。
笑い、怒り、目を伏せて、弛緩して。
まるで普通の同年代の女性のようにドクオには感じられた。
ラスティア城にいた頃のデレは、果たしてどうだっただろうか。
デレを見る機会はほとんどなかった。
いつも自室にいて、公務のときにのみ外に出ていた。
最も、幼い頃は公務での外出でさえほとんどなかったと噂に聞いたことがあった。
自分の家族や従者以外の誰とも接触しない生活。考えると、ドクオ自身厭になる。
その生活から解放したのは、魔王だった。
('A`)「ふん」
「……」
「悪かったよ」
743
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 22:01:04 ID:8dfHuhNs0
薄明が夜の底に浮かぶ。
もうじき朝が来るのだろう。
焚き火の跡を確かめながら、火種を探す。
('A`)「……ん?」
皮膚のやや黒ずんだ、ドクオの鼻がひくついた。
冴えた空気に混じって、違和感が少しある。
彼の鼻は通常の人には感じとれない、
魔人の特有の部位から出る体臭を感じとることができる。
744
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 22:02:15 ID:8dfHuhNs0
(;'A`)
視線の先にはデレが深く眠っていた。
鼻のひくつきがとまる。
今は何も感じ取れない。
(;'A`)「勘違い、なのか」
当惑する、小さな問い掛けに、答えるものはいなかった。
☆ ☆ ☆
.
745
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 22:03:11 ID:8dfHuhNs0
.
第二十四話 邂逅するは雪渓にて(雪邂永訣編②) 終わり
第二十五話 届かざる哀哭(雪邂永訣編③)へ続く
.
746
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 22:07:01 ID:8dfHuhNs0
本日の投下は以上です。
まとめサイト様が消滅してしまいましたので、
これまでのお話は新しいブログを作り、まとめました。
http://cloudcrying.blog.fc2.com/blog-entry-45.html
今後ともよろしくお願いします。
それでは。
747
:
同志名無しさん
:2018/01/23(火) 22:58:04 ID:JFuDqWO20
乙
忘れてた所もあったからまとめありがたい
まとめサイトも章ごとで見やすくて良いね
通勤の共にさせていただきます
748
:
同志名無しさん
:2018/01/25(木) 21:56:26 ID:xiA9p0es0
ラスト気になるな…
乙
749
:
同志名無しさん
:2018/01/26(金) 23:55:47 ID:n3fwBMOE0
おつおつ
また一つ謎が
750
:
同志名無しさん
:2018/02/09(金) 05:52:15 ID:6GVSImSE0
一日で全部読んできた
何これ面白い
751
:
同志名無しさん
:2018/02/09(金) 23:46:31 ID:iq7CPUPc0
投下来てた!おつ!
今のブーン系で唯一読んでるのがこの作品。
今後も頑張ってね!
752
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:07:02 ID:kt9Y/rdc0
いつもお読みいただきありがとうございます。
それでは投下を始めます。
753
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:08:25 ID:kt9Y/rdc0
ドクオはモララーのことが苦手だった。
常に余裕のある顔つきも、自信に満ちた振る舞いも、
同期の衛兵見習いとして目にしたときから鼻についていた。
なるべくなら距離を置きたい。
そんなドクオの思いを知ってか知らずか、モララーの方から度々声をかけてきた。
第一印象が最悪でも、触れ合っているうちに、忌避感は薄れていった。
それでも苦手なものは苦手だと思っていたドクオが、ある日、モララーに初めて自分から興味を抱いた。
二人が衛兵になって、二年目。307年の冬のことだ。
当時16歳だったドクオは、ラスティア国の南方にある小さな街で防衛の任についていた。
防衛といっても、国境侵犯の危険性の高い地域ではない。
ラスティアという国は南北に細長い半島の形状をしており、三方は生みに囲われている。
その街の港でも、自国の漁船以外は影すらも見ることはなかった。
754
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:09:43 ID:kt9Y/rdc0
唯一目を引くものといえば、南西に浮かぶ小島だ。
遠目からでも視認できる、大きく黒い箱形の建物が並ぶその島は、第23番監獄と呼ばれていた。
悪事を重ね、反省の色も見せず、陸地に存することを許されなくなった人々が、その島に追いやられるという。
もっとも、当時でさえ、ほとんど誰も収監されていなかった。
危険性はないが、他にすることがなかったので、目をやっていたにすぎない。
当時のドクオの日課は簡素なものだった。
朝になると鍛錬し、昼下がりから監視を始める。
海を只管眺め、夜勤の者と後退して、自分は短い就寝に入る。
実践的とは思えない内容であるにもかかわらず、大勢の、新人の衛兵が従事していた。
755
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:11:01 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「後退だ」
ドクオもまた、この年の始めにラスティアの衛兵へと昇進した者だ。
見習いとして入場してから、二年。短い期間であり、優秀だという称賛に値する成績だった。
( ・∀・)「ああ、悪い。うとうとしてた」
('A`)「……ヘマやらかすなよな。帰るのが遅くなるぜ」
帰るとは、故郷のことだ。
帰りたいと口にするものは後を絶たなかった。
国の中心部を離れた海辺の辺鄙な街での防衛任務。
これも、どちらかといえば精神的な鍛錬の一環だったのだろうとドクオは考えていた。
帰りたいと思う者から仕事が雑になり、見とがめられ、帰途が延びるというわけだ。
756
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:11:46 ID:kt9Y/rdc0
( ・∀・)「故郷が淋しいか?」
('A`)「いや、別に」
ドクオは鼻先で笑った。
故郷、それは、ドクオにとってはすでに遠い過去の場所だった。
ほとんど誰ともつるまず過ごし、
唯一仲良くできたと思った友人を失った、ムネーメという小さな村だ。
('A`)「もう何年も帰っていないし、待っている人もいない」
( ・∀・)「親くらいいるんだろ?」
('A`)「毎月仕送りを送っているよ。顔も合わせてないけど、連中もそれで満足している」
757
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:12:33 ID:kt9Y/rdc0
( ・∀・)「さばさばしてるなあ」
('A`)「悪いか?」
( ・∀・)「いやいや、文句をいうつもりはないよ。家族のことは人それぞれだ」
モララーは早口気味に言うと、自分の荷物を片付け始めた。
押し黙ったモララーを見下ろしながら、ドクオも自分の支度を始める。
('A`)「そういえばお前は故郷のために強くなるって言ってたな」
晴れて衛兵となれたときの宴会で、モララーが豪語していたことをドクオは思い出した。
( ・∀・)「……ああ、まあな」
声のトーンを少し落として、モララーは呟くように答えた。
758
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:13:19 ID:kt9Y/rdc0
二人して、遠く、北を見る。
弧を描く湾の向こう側。
霞に包まれたマルティアの大地。
モララーの故郷は、北方、スィオネ付近だと、ドクオは聞いていた。
それ以上の詳しいことはわからなかった。
モララーの口から思い出を話すことはほとんどなかった。
('A`)「お前は淋しいのか?」
嘲笑のつもりはなかった。
純粋に、モララーの答えが気になったのだ。
モララーは頷いた。躊躇いがちなように、ドクオには見えた。
( ・∀・)「そりゃあな、淋しいさ。ここからじゃ遠いもの。
まあ、仕方ないってわかっちゃいるけどさ」
759
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:13:58 ID:kt9Y/rdc0
モララーの言葉は余韻を残した。
まるで何かが続きそうで、ドクオも何も言わずに置いた。
夜の海が波打っている。
月明かりにのみ照らされて、白い波の一部だけがきらりと輝いて見えていた。
吸い込まれそうな漆黒。
岩場に跳ねる水しぶき。
静寂と一言で片付けるには、小さな音が響いている。
( ・∀・)「いつか戻るんだ」
モララーは、ドクオを見ないまま言った。
声に力が籠っていることだけが、ドクオにはわかった。
( ・∀・)「そう、決めたんだよ」
760
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:15:23 ID:kt9Y/rdc0
問いでも答えでもない、ドクオではなく、自分に言い聞かせるような言葉。
時は流れ、その、およそ10ヶ月後。
モララーは、ラスティアに巣くう魔人に殺された。
('A`)
モララーの葬儀は、ラスティア城にて行われた。
火葬の煙が細く棚引く。夕暮れ。
故あって城下から離れていたドクオにも、その煙は見えた。
首をやや持ち上げて、圧迫した頸椎が痛くなるのも構わずに睨み付けていた。
761
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:16:03 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「決めたんじゃねえのかよ」
唯一彼は、その言葉を呟いた。
故郷に帰る。
そう決めたモララーのことを
自分にはついに愛せなかった故郷を想い続けた男の裏切りを
静かに腹立たしく思った。
.
762
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:17:33 ID:kt9Y/rdc0
☆ ☆ ☆
第二十五話
届かざる哀哭(雪邂永訣編③)
☆ ☆ ☆
763
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:18:07 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「"サイレン"と呼ばれているそうね」
洞穴での朝。
朝の身支度を調えたデレは、改まった調子で話し始めた。
('A`)「あの奇妙な音のことか」
最近とみに聞えてくる、怪しい音。
鳴り響いた直後に魔人が凶暴化するという噂が、テーベの国内にも広まっていた。
テーベの研究者により名付けられた、その名もサイレン。
魔人にのみ神経的な作用を及ぼす現象と言われているが
何のためなのか、何故始まったのか、少なくとも表向きには、誰にもわかっていなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「あれはイオの峰で行われている、マルティアの実験が引き起こしているのよ」
764
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:19:03 ID:kt9Y/rdc0
デレの言葉は唐突だったが、ドクオは飲み込んだ。
自然現象と言われるよりは、納得のいく説明だった。
('A`)「どんな実験なんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「それはわからない。魔人に関わることだとは思うけど」
('A`)「一般人には知らされていない、か」
あり得ない話ではない。むしろそれが当然だ。
テーベにも、軍にしか知らない秘密の二、三はあるだろう。
ただの傭兵である自分にも、知らされていないことはある。
765
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:19:38 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「でも、参加することはできた」
('A`)「参加?」
ζ(゚ー゚*ζ「実験のお手伝いとして、一般人のボランティアも募っていたの。
言ってみれば治験ね。報酬もはずんでいたわ。国がバックにいたからだと思うけど」
デレの言葉は何故か快活で、いたずら好きそうに光る瞳が向けられるのを見て、ドクオは厭な予感がした。
(;'A`)「まさか、そんな怪しいものに参加を?」
ζ(゚ー゚*ζ「悪い?」
(;'A`)「やめろよお前、せっかく自由になれたのに」
ζ(゚ー゚*ζ「だって気になるじゃない。それに、できちゃったんだから、今更よ」
766
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:20:26 ID:kt9Y/rdc0
(;'A`)「……モララーが聞いたらなんて言うだろうな」
ζ(゚ー゚*ζ「それは言わない約束」
('A`)「へいへい、泥沼だからな」
釈然としないが、事実は事実。
デレが運ばれた理由は、デレ自身にもわからない。
ζ(゚ー゚*ζ「知りたい情報じゃなかったでしょ」
('A`)「というか何もわかってないのと同じだな」
767
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:21:02 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「うん……私をどうする?」
('A`)「それは」
温めていた鍋をひとつかき回す。
温かいトマトスープの薫りが広がり、湯気が柔らかく頬を撫でた。
腹が鳴る。
俺のだったか、それとも。
ζ(゚ー゚;ζ「見ないでよ」
('A`)「まだ見てねえよ」
768
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:21:49 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「まだ?」
('A`)「食事にしよう。話はそれからでも」
そのとき、
咄嗟にドクオはデレを庇った。
ζ(゚ー゚;ζ「なに?」
('A`)「しっ!」
769
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:22:37 ID:kt9Y/rdc0
入り口で物音がした。
目をやれば、人影がある。逆光で、黒い身体しか見えない。
朝の日差しに照らされた人の形がゆっくりとこちらに近づいてくる。
ドクオは懐の短刀に手をさしかけた。
('A`)「それ以上動いたら斬る」
人影の動きが止まる。
言葉が通じる。少なくとも人ではあるらしい。
('A`)「何者だ」
770
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:23:15 ID:kt9Y/rdc0
ドクオの問い掛けに、すぐに応えは無かった。
代わりに何か、鼻を鳴らす音。
ついで、腹の音。
「ド」
人影が、身を屈める。
( ,,;Д;)「ドクオさあああん!!」
('A`;)「た、タカラ!?」
膝をついて、腹を抱えて倒れる姿に、ドクオは駆けつけた。
771
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:23:49 ID:kt9Y/rdc0
( ,,;Д;)「はら! 腹が、減った! めっちゃ!」
('A`;)「わかった! わかったからそのままゆっくりこっちへこい。こっち」
ζ(゚ー゚*ζ「お知り合い?」
('A`)「ああ、まあ」
( ,,;Д;)「!? 誰ですその女」
腹を慣らしつつ、怒気を孕みつつ、タカラは悶絶しながらドクオの傍へと近寄った。
772
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:24:24 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「説明してもらいましょうかあ?」
('A`;)「言われなくてもするよ」
スープを小皿に取り分けながら、説明を始める。
タカラは聞くよりも食べるのに集中していて、何度も同じことを繰り返すこともあった。
喋るのにも疲れ、言葉少なくなりながら、どうにか言い終えたとき
鍋の中にはもうほとんどスープが残っていなかった。
773
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:25:11 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「それにしてもよく生き延びていたな。野営できたのか」
( ,,^Д^)「ちょうどいいところに民家があったんですよ。国境沿いのところです。
一泊させてもらって、それからドクオさんたちを探しに来ました」
('A`)「民家……? ヘゲモネの街中以外にも人が住んでいるのか」
テーベ国について、この二年間でドクオなりに勉強をした。
地勢、環境、人々の生活や人口分布。必要になりそうな知識は一通り眺めていた。
活気ある港、城下付近と異なり、北方では険しい環境のため、人口は減る。
ただでさえ住みづらいこのあたりに、人が暮しているとは思っていなかった。
774
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:25:39 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「それは本当にテーベの人だったのか?」
( ,,^Д^)「テーベ人……じゃないんですかねえ? 聞いてねえっすけど。
俺、普通にご飯もらったし、別に変なことされてないですし」
('A`)「無警戒かよ。軍人としてどうなんだ」
( ,,^Д^)「平気ですよ。相手は一般人。こっちにはこれもある」
携えた得物をタカラは軽く持ち上げる。
背丈にせまる長さのフリントロック式銃だ。
775
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:26:16 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「……確かにな」
銃は、三〇〇年よりも前より、主として戦場で使われていた。
しかし魔人の降臨が戦争を無くし、結果として銃の活躍する機会を奪った。
長いこと、人々の歴史から離れていた銃を掘り起こしたのは、テーベの軍事研究機関だ。
もしも魔人が存在しなかったら、人々は銃火器を発展させただろう。
この星そのものを支配するほどの力を手にしていたに違いない。
テーベ国軍の上層部は、その一念で、封印されていた銃火器研究に力を入れている。
民間で独自開発されていた飛行機についても、軍の膝元に集約し
銃火器との併合も検討されていると聞く。
776
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:26:51 ID:kt9Y/rdc0
戦争のやり方は、今までから大きく変わる。
一介の傭兵にすぎないドクオにもその気運ははっきりと伝わってきていた。
無意識のうちに、軍刀の柄に添えた掌が汗ばむ。
('A`)「まさかその銃で脅して入ったわけじゃないよな」
( ,,^Д^)「んなことしてないっすよ。まあ、隠してもいないですけどね。
こうして生きているのがなによりの証拠っすよ。殺されなかった。だから、俺はその人を疑いません」
タカラはからりと笑ってみせると、次いで冷めた目をデレに向けた。
777
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:27:23 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「信頼できる人なんですかね、あんた」
片付け途中だった皿を置いて、デレはタカラを見つめる。
ζ(゚ー゚;ζ「率直ね」
( ,,^Д^)「いや、だってドクオさんがあんたのこと信じてるのは知り合いだからですけれども
俺にとっては今会ったばかりの人ですからね。しかもマルティアの」
( ,,^Д^)「実験というのも本当かどうか……目に見える証拠がないと信頼できないですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「証拠……」
778
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:27:55 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「例えば、敵が目指している場所がどこか、教えてくれたり」
タカラがドクオに目配せをする。
細くなった瞳が黒く輝いていた。
('A`)「なるほど」
自然な形で情報を集めようとするタカラに、思わず言葉が漏れた。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
( ,,^Д^)「まさか知らないとは言わないですよね?
いくらなんでも、行き先くらい聞いているでしょう?」
779
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:28:42 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「……ちょっとだけなら」
( ,,^Д^)「どこですか」
ζ(゚ー゚*ζ「イオの峰よ」
( ,,^Д^)「ふむ……それならむしろ、あんたはどこから来ました?」
ζ(゚ー゚*ζ「マルティアの北辺。エウロパの森の傍よ
( ,,^Д^)「マルティア国内? どうしてテーベのヘゲモネなんて通るんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「詳しくは知らないけど、マルティア国の北は険しい山脈なのよ。
それとくらべたら、たとえ境界近くでも、山間の道の方が歩きやすいんだと思う」
780
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:29:13 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「中継地はわかりますか」
ζ(゚ー゚*ζ「出発からはまだ日は経ってない。テーベとの境界沿いにあるスィオネまでは野宿の予定だったわ。
あとは、そこから東に通ってカルデア。あとは川沿いに行けばイオの峰に辿り着くはず」
( ,,^Д^)「結構憶えているじゃないですか」
ζ(゚ー゚*ζ「思い出しているのよ。協力したいもの」
('A`)「……」
タカラの畳みかけるような問いに、デレはそつなく答えている。
初めから、問い掛けられることがわかっていたかのようだ。
781
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:29:45 ID:kt9Y/rdc0
ラスティアにいた頃のデレは、どうだっただろう。
たった一人で魔王に立ち向かおうとした胆力は確かなものだ。
そう考えると、今の強気な態度もあり得ない話じゃない。
( ,,^Д^)「ふーん、結構しっかりしてるんですね」
ζ(^ー^ζ「ありがと」
( ,,^Д^)「どうします? ドクオさん」
タカラが肩を竦めて言う。若干顔を青くしていた。
('A`)「このまま待っていれば、いずれシナーの援護部隊が来る。
そうすればいずれにしろ探索は終わり。デレも、テーベに来ることになるだろう」
782
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:30:17 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「捕虜になるのかな」
('A`)「一般市民と同じ扱い、にはならないだろう。元王女だ。
ラスティア国陥落の経緯についての証人でもある。
やりようによっては、あんたを発端に合法的な戦闘行為も行えるだろう」
( ,,^Д^)「戦争になるんですか」
('A`)「可能性の話だよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……不思議」
('A`)「何が」
ζ(゚ー゚*ζ「まるでテーベに行って欲しくない、みたいな言い方だから」
783
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:31:09 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「……」
( ,,^Д^)「ドクオさん?」
('A`)「もうひとつ、案がある」
ドクオは居住まいを正すと、タカラとデレを交互に見た。
('A`)「シナーがくるまでの間に、ここからいなくなる。
そして、デレを置いていったマルティアの連中を追いかける」
ドクオの言葉はしばらく洞穴の間を漂った。
784
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:31:53 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「引き渡すんですか、この人を」
('A`)「……ただとは言わない」
( ,,^Д^)「それって」
ζ(゚ー゚*ζ「私を人質にするってことね」
言葉を切って入ってきたデレが、ドクオをじっと見据えた。
柔和な笑みを崩さないまま、瞳が突き刺してくるようだった。
785
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:32:21 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「率直に言えば、そのとおりだ。
あんたが本当にただの一般市民で、大して重要でも無いならば
無視されてしまうかもしれないがな」
ζ(゚ー゚*ζ「……私が言うのもなんだけど」
ζ(-ー-*ζ「効果はあると思う。
実験は秘密。多少なり触れている私を、容易くテーベには渡したくないはず」
( ,,^Д^)「決まりっすね」
('A`)「ああ、早いところ中継地とやらに」
786
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:33:08 ID:kt9Y/rdc0
言い終わる前に、
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ……」
デレが笑い声をたてた。
押し殺すようだったそれが、次第に熱を帯び、大きくなっていく。
('A`)「なんだ、いきなり」
苛立ちを隠しもせず、ドクオは顔を顰めた。
ζ(゚ー゚*ζ「因果かなって」
('A`)「ん?」
ζ(゚ー゚*ζ「私を引き渡す、代わりに情報を得る。それは、いい考えよ。
でも、それが素直にできるかどうかはわからないと思う」
787
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:33:32 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「特に、あなたならば」
含みのある言葉に、ドクオはますます首を傾げた。
('A`)「はっきり言えよ」
声が若干荒くなる。
ζ(゚ー゚*ζ「……私、まだまだ信頼されていないのよ」
デレがタカラを一瞥する。
身を竦ませるタカラをよそに、デレは話を続けた。
788
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:34:34 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「一般市民といっても、元敵国の王女だもの。
自由に暮らせるのも街の中だけ。他の場所に勝手に行くことはできない。
仕事も、見つけるのは一苦労だった。少しでも他国に干渉することは許されなかったから」
ζ(゚ー゚*ζ「この実験に参加できるかどうかも、賭だった。途中で国外に出るからね。
結果としては参加できた。でも、それには条件がついた。明言されたわけじゃないけど。
私が本当に、マルティアに逆らう意志がないかどうか、示すことが、求められていたわ」
わけもなく、胸の締め付けられるような痛みがあった。
デレの微笑みをみているうちに、自然と追い詰められているような気がした。
生唾を飲み込んだ音が、耳の奥で深いに響く。
789
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:34:59 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「どうやって示すんだ」
問い掛けると、一段と、デレの口が大きく歪んだ。
ζ(゚ー゚*ζ「薄々気づいているんじゃなくて?」
思い出せることは少ない。
昨日の記憶。冴えた夜の、冷たい霧のこと。
('A`)「霧……」
790
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:35:24 ID:kt9Y/rdc0
呟いて、途端に、気づいた。
あのとき抱いた気持ち。感触。
(;'A`)「まさか」
ドクオの声に、デレは大きく頷いた。
ζ(゚ー゚*ζ「私を運んでいたのはマルティアの将校。バルケンという鼠の魔人。
霧を操る、ふしぎなちからの遣い手よ」
791
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:35:44 ID:kt9Y/rdc0
そして。
デレの言葉が続く。
ζ(゚ー゚*ζ「モララーさんを殺した人よ」
息をのむドクオの音が、不自然なほど大きく響いた。
☆ ☆ ☆
792
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:36:12 ID:kt9Y/rdc0
ドクオたちは、マルティア人が目指した中継地へ向けて歩き出した。
日は既に高く昇っていたが、その光量は弱い。
空はむしろ厚い雲に覆われつつあった。
吹雪を警戒したドクオたちは、元の洞穴への道を把握しつつ
新たに野営できそうな場所を見つけると、簡易な地図を作り、マークを欠かさなかった。
ヘゲモネのさらに北東。山道はさらに険しくなる。
草木も少ない岩山には何度も足を取られそうになった。
( ,,^Д^)「途中で休んだ方が良さそうですね」
全体の様子を眺め、タカラがアドバイスした。
793
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:36:51 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「次に手頃な場所を見つけたら、そこにテントを張るか」
( ,,^Д^)「その前に良い場所を知ってますよ。俺が昨晩泊まったところです」
('A`)「そういや国境沿いだったな」
( ,,^Д^)「もうちょっと東の山沿いですね。どうでしょ」
タカラが流し目をデレに向けた。
青い顔をして、胸元を押さえている。
794
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:37:21 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚;ζ「……あの、私は別に」
( ,,^Д^)「無理して倒れられたらその方が迷惑っすよ」
棘のある声で言うと、タカラはにやりと歯を見せた。
中継地を目指すことに同意したタカラだったが
内心ではデレへの疑いを無くしているわけでもないらしい。
最もそれが普通か、とドクオは内心首を横に振る。
795
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:37:46 ID:kt9Y/rdc0
気がついたらデレに寄り添う考え方になる。
自分と彼女が元々知り合いだから、仕方なしにしても
気の緩みを感じずにはいられなかった。
('A`)「その宿は近いか」
( ,,^Д^)「おそらく十分も歩けばつきます」
('A`)「なら、行こう」
796
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:38:15 ID:kt9Y/rdc0
結果として、その判断は正しかったといえる。
進行方向を変えた途端、空の雲はさらに厚くなり、濃さを増した。
景色の中に、雪片が景色にまぎれ始めた。
こうなってくると積もるのは時間の問題だ。
一行は転ばないよう注意しつつ、速度を上げた。
山際に光の明滅するのが見えた。
テーベの辺境防衛施設が発する信号だとドクオは推測する。
微かな赤い光は雪により途切れがちだ。
逆に言えば、今のような状態であれば、マルティア軍も国境を抜けやすくなるのだろう。
797
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:38:46 ID:kt9Y/rdc0
敵は霧を使う魔人だと、デレは言っていた。
だとすれば、この雪は自然現象だろう。
足を取られるのは敵も同じはずだ。
不測の雪に足止めを食らっているのだと、ドクオは信じたかった。
タカラを先頭に一行は進む。
地勢的に、山沿いにはいくつもの洞穴が見えた。
どの穴も、雪を凌ぐには申し分ない広さがある。
そのうちの、ひとつの前で、タカラは足を止めた。
798
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:39:25 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「ここです」
一見しただけでは、違いがわからない。
ごつごつした岩肌や、氷柱の張った天井も、他の洞穴と同じだ。
さらにいえば、目の前には壁が、すでに見えている。
他と比べたら遥かに狭く、入り口から雪がいくらか吹き込んでくるほどだった。
( ,,^Д^)「安心してください」
俺の顔を見て察したらしく、タカラは自ら前に出て壁に手を触れた。
( ,,^Д^)「俺もたまたま見つけたんです。この壁、押せるんですよ」
799
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:39:49 ID:kt9Y/rdc0
力を込める声とともに、壁だと思っていたものが音を立てる。
縦に切れ目が入った途端、両側の奥へと開かれる。
ちょうど二つの開き戸を押した形となった。
端には蝶番もついている。
人の手が加えられていることは明らかだ。
前方は暗い。だが、薄明かりとなる蝋燭が点々と壁に灯されている。
( ,,^Д^)「さ、行きましょう」
800
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:40:23 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「まだ歩くのか」
( ,,^Д^)「もう少しですよ」
ドクオは自然、柄に手をかけた。
(;,,^Д^)「ドクオさん?」
('A`)「すまんな、職業柄、警戒は怠れない」
タカラのことは信頼している。
しかし、今ここにいるタカラが信頼に足るかは、確証がない。
801
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:40:53 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「まず、名前をフルネームで言え」
( ,,^Д^)「タカラ・エルブシャフトです」
('A`)「俺の名前は」
( ,,^Д^)「ドクオ。姓は廃されてます」
('A`)「俺との関係は」
( ,,^Д^)「テーベの傭兵同士。初めて会ったのはメティス暴徒制圧のときです。
ドクオさんの率いた傭兵部隊に俺が所属してました」
802
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:41:37 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「傭兵になった理由は」
( ,,^Д^)「生活資金を得るためです」
('A`)「傭兵になる前は何をしていた」
( ,,^Д^)「アイトネの麓で、鉱山夫相手に日雇いの手伝いをしていました」
('A`)「この作戦の目的は」
( ,,^Д^)「マルティアの越境行為の真偽を突き止めるため。
また、その行為が何を企図したものなのかを探るため」
803
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:42:05 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「作戦の立案者」
( ,,^Д^)「シナー大尉」
('A`)「……ふむ」
ドクオは洞穴の奥に目を移した。
暗がりは不安を煽る。
だが、タカラは質問には即座に答えた。
疑いの余地はない。
( ,,^Д^)「もっと楽な方法がありますよ」
と、タカラが切り出して、腰元から銃をドクオ側へ放った。
甲高い音が洞穴の中で響き渡る。
804
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:42:32 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「俺の武器はそれだけです」
タカラは自らの手荷物を広げ、外套の内側も見せた。
ポケットの一つ一つ裏返し、何も入っていないことを示す。
( ,,^Д^)「というわけで、おれは丸腰です。
これから先、俺が怪しいことをしていたら、
すぐにその銃で俺を殺してください」
タカラの声もまた響き渡る。
力強いわけじゃない、むしろ淡々と、事実を述べる口調だった。
805
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:42:58 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚;ζ「いいの?」
疲れを露わにしていたデレが口を開いたのに、ドクオもタカラも目を見張った。
デレも口元を抑える。つい、言ってしまったかのような様子だった。
( ,,^Д^)「俺は失うものがありませんから」
タカラは一瞬うつむいて、デレに笑いかけた。
デレに向けていた冷たい目線が、このとき初めて解れた。
( ,,^Д^)「失うもののない俺みたいな人間は、なかなか信頼されません。
俺からしてみれば、いくらでも裏切ることができるんですよ。
いざというときの担保がないわけですからね」
806
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:43:24 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「だから、俺にとって信頼は命よりも大事なんです。
俺が信頼できない人とは付き合わないし
俺を信用しない人間にも近寄らない。
そうやって、今まで生きてきたんです」
タカラは目を落とし、自嘲気味な微笑みを浮かべた。
( ,,^Д^)「あんたのことも、本当はよく知らないけれど
俺が信頼しているドクオさんが、あんたを信じているらしいので
ひとまず一緒にいます。武器も手放しました。
他に、何か気になることはありますか」
807
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:43:57 ID:kt9Y/rdc0
怒りでも疑いでもなく、真意を知るために、
タカラはデレを睨んでいたのだと、ドクオにもようやくわかった。
ζ(゚ー゚;ζ「……今のところは」
デレは狼狽しながら、タカラから視線を逸らさなかった。
言葉の少ない威圧を感じてはいるはずだ。
それでも逃げず、堪えているようだった。
( ,,^Д^)「すみませんね、俺も軍人なんで」
タカラが頭を掻いて、デレに頭を下げた。
元の陽気な調子に、見た目では戻ったように思われる。
808
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:44:29 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「怖がらないでくださいよ〜、大丈夫です。
もう睨んだりしないですから」
ζ(゚ー゚*ζ「そ、そう……」
引きつるデレを後ろにし、タカラは俺の方へと近寄ってきた。
( ,,^Д^)「その銃の使い方はわかりますね」
声を潜める。デレにも聞き取れないくらいの音量だ。
ドクオが頷くと、タカラは真顔になって頷いた。
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