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レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。
( ^ω^)優しい衛兵と冷たい王女のようですζ(゚ー゚*ζ 第三部
1
:
◆MgfCBKfMmo
:2016/06/10(金) 21:01:44 ID:U0jBOVFc0
第二部までのお話はBoon Roman様に収録されています。
http://boonmtmt.sakura.ne.jp/matome/sakuhin/tender/
(リンク先:boon Roman)
681
:
同志名無しさん
:2017/12/17(日) 06:13:00 ID:ysmOoMkA0
また謎が増えるな
682
:
同志名無しさん
:2018/01/23(火) 20:52:30 ID:tvGuRNEQ0
wktk
683
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:00:01 ID:8dfHuhNs0
それでは投下を始めます。
684
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:01:00 ID:8dfHuhNs0
『 無駄話をするな!
全部聞かれているぞ! 』
.
685
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:02:01 ID:8dfHuhNs0
308年10月25日。
ラスティアの城下町にて新嘗祭が敢行されていたこの日、ドクオたちは城へと侵入した。
数ヶ月前に任務途中で命を失った友モララーの長剣を取り戻すのが目的だった。
城内は手薄となっていたが、魔人も数名残っており、倒しながら上階、王室を目指した。
ようやく辿り点いた国王の間にて、最後の障害が立ちはだかった。
( ФωФ)
衛兵隊長ロマネスク。
当時のラスティアで、最も長けた実力の持ち主だと称されていた男だった。
686
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:03:00 ID:8dfHuhNs0
その彼が、
( ФωФ)
つ| |
手元に紙を提げていた。
無駄話をしてはいけない。
すべて聞かれている。
(;'A`) ?
687
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:04:01 ID:8dfHuhNs0
その場にはドクオとロマネスクの他、ヒートもいた。
三人は国王の間からは離れ、
廊下の隅、雑多に物が置かれた区画へと入り込んだ。
ここは無警戒だから安心しろ、とロマネスクが太鼓判を押した。
無論、ドクオたちには何が起きているのかさっぱりだった。
ただ、ロマネスクが自分達の敵ではないことだけが悟れた。
( ФωФ)「この城は今、魔人に占領されつつあります」
ひっそりと、衝撃の内容がロマネスクの口から明かされた。
ラスティア城は秘密裏に魔人で溢れかえっていること。
元凶となった、魔王と名乗る者を倒すための作戦が敢行されていたこと。
その作戦の首謀者は、モララーだということ。
688
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:05:03 ID:8dfHuhNs0
('A`)「あいつは命がけで魔王を倒そうとした……?」
ドクオは疑いの目をロマネスクに向けた。
( ФωФ)「デレ様のためですよ」
ロマネスクの真顔の返答を聞いても、ドクオの怪訝な顔は崩れなかった。
( ФωФ)「人質となっているデレ様のことをモララーは案じたのです。
彼女を束縛する者を除こうとするあまり、
闇の深みにはまり、抜け出せなくなってしまった」
689
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:06:09 ID:8dfHuhNs0
('A`)「……情感溢れる説明だな」
いたずらに丸い月を眺めつつ、ドクオが口を尖らせる。
( ФωФ)「ドクオ殿は、モララー殿からは何も聞いておりませんでしたか?」
('A`)「知らねえよ」
吐き捨てるように言い、話を続けた。
('A`)「俺はただあいつに言われるがまま任務に付き添っただけだ。
それで南の山で、あいつをみすみす殺しちまったと思い込んだ。
デレ王女と、それからあんたが、モララーを殺したんだと思っていた」
一呼吸おくと、重い沈黙が流れた。
仁王立ちの姿勢のまま、ドクオはロマネスクの言葉を待っていた。
690
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:07:03 ID:8dfHuhNs0
ロマネスクは伏し目がちになり、言葉を添えた。
( ФωФ)「似たようなものです」
一瞬自嘲が浮かび、すぐに無表情となった。
半眼の瞳は鋭く光り、カーペットの下を突き刺そうとでもしているかのようだった。
('A`)「どういう意味だよ」
( ФωФ)「見殺しにすることは、殺すのと同じなんですよ。
魔王の手先が迫ってきているとわかっていたのに、
手口がわからなかったものだから、攻め入る隙を与えてしまった。
( ФωФ)「それが作戦の趣旨、抵抗したり邪魔立てすれば魔王に感じとられてしまう。
だから私には余計な手出しができず、モララー殿もそのことを承知して、覚悟していた」
( ФωФ)「頭では理解しているつもりです。
それでも、罪の気持ちは消えないものなのです」
ロマネスクもまた、窓から覗く月を見上げた。
月光は彼の、傷の浮き沈みする頬をなぞった。
691
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:08:27 ID:8dfHuhNs0
ロマネスクは貴族の出だという。
それでいて、育ったのはラスティア城ではない。
国の東側、カルメ砂漠を放浪していたところを確保され、
衛兵に入るやいなや頭角を現した変わり者だ。
王族とも近い位置にいた。
デレ王女の教育係として登用された時期もあったと聞いている。
そのロマネスクが、今は重く深く息を吐いた。
( ФωФ)「デレ様も止めることはできませんでした。
どうあっても自分でとどめを刺す、そういってナイフの使い方を学んでいました」
('A`)「デレに武器を? まさか、自力で魔王を倒すために?」
( ФωФ)「それが彼女の望みでした」
692
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:10:07 ID:8dfHuhNs0
('A`)「……あの人、他人を斬ったことあるのかよ」
( ФωФ)「武術は教えました。物にするにはまだ数年掛かりそうでしたが」
('A`)「体力もないし、無茶だろ」
( ФωФ)「いずれにしろ、今夜の結果次第です」
ロマネスクは視線をドクオにずらし、今度こそ静かに笑みを浮かべた。
( ФωФ)「もしも作戦が成功したなら、魔人たちはいなくなる。失敗したなら、この地から逃げる。
最後の最後に私さえ残ったら、私が魔王を倒す。それが彼女の立てた作戦です」
693
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:11:01 ID:8dfHuhNs0
('A`)「……なに考えているんだよ、王女様は」
苛立ち混じりの声がこぼれる。
ドクオはロマネスクと顔を合わせないまま、唇の端を噛んだ。
突き刺さる犬歯の痛みが一瞬何も見えなくなる。
('A`)「モララーに助けて貰った命、なんで賭するんだよ」
ロマネスクからの答えは無かった。
その後、お城が慌ただしくなるのに乗じて、三人は城の外に出た
694
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:12:07 ID:8dfHuhNs0
魔人はいなくならなかった。
作戦の失敗を察したドクオたちは、ロマネスクとその部下の助けを受けつつ、
その日の夜遅くにテーベへの国境を渡った。
ラスティアという国がなくなってからも、ドクオは傭兵となって戦いを続けていた。
自分にできることを突き詰めていった結果残ったのは、剣を振るうことだけだった。
☆ ☆ ☆
.
695
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:13:02 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚-゚*ζ「やっぱり簡単には信じてくださらないのですね」
縄で手首を縛られた両の手を喉元まで上げながらデレは呟いた。
痛みがないように手加減しながら、内側からは解けないようにドクオが結んだものだ。
('A`)「ラスティアが落ちたとき、デレ王女はマルティアに連行されたと聞いている。
その後の消息はわからないが、要人だ。こんなところにいるなんて、本物かどうかさえ疑わしい」
地震ののち、落下した地面の切れ間。
幸い洞穴を見つけた二人は中に入り、風を凌いでいた。
外は段々と薄暗さを増していく。
霧はすでに晴れていた。
冴え渡る夜気が身を震わせる。
696
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:14:02 ID:8dfHuhNs0
ドクオは携帯していた道具類から火種を取りだし、地面の窪みに火を灯す。
ほのかな温かさが次第に確かなものとなっていった。
ζ(゚-゚*ζ「あの新嘗祭とき、私は魔王を倒そうとしてしくじりました」
揺らめく炎に照らされたデレの口が動く。
魔王。その名前は、ドクオもロマネスクから聞いていた。
デレ王女に取憑き、人質として脅し、
ラスティア城に魔人を引き入れ、陥落のきっかけをつくった魔人。
('A`)「王女の誕生日祝いだった、あの白馬か」
697
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:15:06 ID:8dfHuhNs0
魔王の正体は、マルティア国から贈られてきた白馬かもしれない。
ロマネスクのその推理を聞いたときの驚きは小さくなかった。
もしもそれが正しいならば、ラスティアの陥落はマルティアに謀られたことになる。
ζ(゚-゚*ζ「魔王の正体は、白馬でもありましたが、でも本当はもう一人。
私の従者だったミセリが、その人間体での姿でした。
従者のリーダー、トソンさんが彼女を手招きしていたみたいです」
ドクオはミセリの姿を見たことがなかった。
ただ、デレに専属の付き人がついていたことはうっすら記憶に残っている。
('A`)「懐まで入り込まれていたんだな」
悔やんでも仕方ないと思いつつ、周到さに舌打ちをする。
698
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:16:03 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚-゚*ζ「二人は私を捕らえると、潜んでいたマルティア軍の兵士に私を引き渡しました。
簡易な牢屋の中で、情報もないまま、私はしばらく過ごして、
外に出たときにはすでに、ラスティアは無くなっていました」
ζ(゚-゚*ζ「マルティアの陰謀であることは、まず間違いないでしょう。
私が魔王をこの手で殺めようとすることまで織り込み済みだったのかはわかりませんが。
私の行いによって、謀がスムーズに運んでしまったことは否めません」
ζ(゚-゚*ζ「本当に軽率なことをしてしまった、今となってはそう思います」
言葉を途切れさせると、デレは深く頭を下げた。
黄金の髪が橙に染まり、ドクオに向けられたまま動かなくなる。
目元は見えなかったが、唇は噛みしめられていた。
699
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:17:03 ID:8dfHuhNs0
('A`)「……たとえあんたが殺さず、ロマネスクが殺したとしても。あるいは未遂でも。
政治的にはおおごとであるに変わりない。ラスティアの衛兵隊長だったんだからな。
かといって魔王を野放しにしていたらそのままラスティア城は内側から乗っ取られていただろう」
ドクオは起伏のない調子で話を続けた。
('A`)「根本的に、マルティアの悪事を暴けない限りは突破できなかった。
気に病んでも詮無きことだ。その口を咬みちぎっても、何の得も無い」
そこで、話は途切れた。
デレが少し息をのんで、ドクオを見上げる。
ζ(゚-゚*ζ「気を遣ってくださるの?」
700
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:18:01 ID:8dfHuhNs0
('A`)「あんたはモララーの想い人だ」
ドクオは一旦目を閉じ、それからデレと視線を交わらせた。
('A`)「詳しいことは知らないが、無闇に傷つかせるのも忍びない」
ζ(゚ー゚*ζ「……ありがとうございます」
堅かったデレの表情が、ほんの少し和らいで見えた。
パチパチと、炎の爆ぜる音がしばらく続いたのち
デレは自ずから話を続けた。
701
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:19:05 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*ζ「マルティアに渡った私は、捕虜になるのだと思っていました」
デレが遠い目をして言った。
ζ(゚ー゚*ζ「いえ、実際にもそう見えていたでしょうね。
でなければラスティアは瓦解しなかった。でも……」
('A`)「違うのか?」
ζ(゚ー゚*ζ「私の想像とは違いました。魔王は私を牢には入れず、
それどころか、城下町外れの空き家をひとつ私に宛がってくださったのです。
まるでマルティアの新しい民のように」
('A`)「……どういうことだ?」
702
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:20:11 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*ζ「驚かれたでしょう? せっかく捕まえておいて、自由を与えるなんて。
もちろん、城下町の監視は行き届いておりましたし、手紙の類いも全て検閲を受けていました。
ラスティアと連絡が取れなかったことには変わりありません」
ζ(゚ー゚*ζ「それでも、家具や一般的な衣服、ある程度のお金についてはマルティア王の名目で支給されていました。
私は買い物もできましたし、喫茶店で一般の方々と談笑することもできました。
運動場で汗を流すこともあれば、簡単な仕事や福祉事業に就くことも可能でした」
ζ(-ー-*ζ「個人的な監視をされている様子は、少なくとも私が見た限りではありませんでした。
ごく普通の、穏やかな、マルティア国での生活でした」
デレの頬は微かに緩んでいた。
自然に浮かんだその表情が、言葉が真実であることの証左であるようにドクオには感じられた。
703
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:21:02 ID:8dfHuhNs0
('A`)「魔王は、何か言っていたか」
ζ(゚ー゚*ζ「……私を解放してくださったときに」
ζ(-ー-*ζ「こう、言ってくださいました。『やっと夢が叶ったね』と」
('A`)「夢?」
ζ(゚ー゚*ζ「恥ずかしながら申し上げると、お城から出ること、
王女の身分でなくなることが、私の夢でした」
ζ(゚-゚*ζ「その夢を魔王に聞かれていたこともわかっています。
付け狙われたからこそ、魔王は私に取り入ったのだと思っていました」
ζ(゚ー゚*ζ「でも……魔王は私の夢のことを忘れていなかったのです」
704
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:22:03 ID:8dfHuhNs0
話が途切れると、ドクオは腕を組んだ。
('A`)「魔人は人間と契約をする。
人の願いをトリガーとしてふしぎなちからを発現できるようになる」
('A`)「魔王の能力をマルティア王が発見し、結託してデレに取憑いた。
その過程で、デレに親身になった……そんなことも、考えられないわけじゃないが」
ζ(゚ー゚*ζ「魔王は、マルティアに利用されていただけ、とは考えられませんか」
デレの言葉に、ドクオは顔を顰めた。
('A`)「俺としては、協力関係である方が考えやすいんだが。
……どうしてそう思った。同情してるのか?」
705
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:23:02 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*ζ「……悪い人にはみえませんでした」
躊躇いを若干見せつつも、デレは頷いた。
ζ(-ー-*ζ「言動は激しく気性は荒く、でも決して私を傷つけようとはしなかった」
ζ(゚ー゚*ζ「ラスティアにしたって、結局は無血開城でしょう?
詐称があったとはいえ、武力によって支配する人ではなかった。だから」
('A`)「だから悪人とみなすのは忍びないと、そう言いたいのか」
ドクオの声が割って入る。
声に怒気が孕むのを感じつつ、
ドクオはそれを抑えることができなかった。
706
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:24:10 ID:8dfHuhNs0
デレの肩がびくりと跳ねる。
ζ(゚-゚*ζ「……いけませんか」
('A`)「いい、悪いじゃない。甘すぎる。悪意があったことは明確だろうに。
あんた、自分がどれだけ怖い目に合わされていたのか忘れたのか」
ζ(゚-゚*ζ「憶えています、けど」
('A`)「その嘘を曝こうとしたモララーは、死んだ。
殺されたんだ。あんたの目の前で」
707
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:25:08 ID:8dfHuhNs0
白い吐息が途切れ途切れに浮かび上がる。
自分の内側に湧いた熱気を鎮めようと、ドクオは深く息を吐いた。
ζ(゚-゚*ζ「モララーさんなら」
口火を切ったのはデレだった。
ζ(゚ー゚*ζ「話を聞いてくださったと思います」
炎のためか、デレの瞳は爛々と照り輝いているように見えた。
その輝きを見つめるうちに、ドクオは内側に抑えた熱が再び燃え上がるのを感じた。
(#'A`)「……あんたにモララーの何がわかるんだよ」
708
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:26:02 ID:8dfHuhNs0
声の揺らぎは隠しようもなかった。
ドクオは噛みしめるように言葉を切り、デレを睨み付けた。
(#'A`)「あいつはまだやりたいことがあったんだ。実力をつけて故郷に帰るっていう目標があった。
そのために修行を重ね、研鑽を積み、鍛錬に励み、一歩ずつ階段をのぼっていた。
その途上であんたと出会い、助けることに決めた。あんた、何も感じないのか」
ζ(゚-゚*ζ「感じていないなんて言っていませんよ」
(#'A`)「だったら撤回しろよ。魔王を敵と見做さないなんて、
そんなの、モララーが浮かばれないだろうが」
709
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:27:04 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚-゚*ζ「……私に指図しないでください」
('A`)「……は?」
ζ(゚-゚*ζ「私はモララーさんに感謝しています。それはもちろんそうです。
でも、魔王を敵視しないといけないなんて、決めつけられるいわれはありません」
語気が上がり、デレの双眸がドクオに鋭く向き合った。
ζ(゚-゚*ζ「私はマルティアで魔王に、助けられた。そう感じているんです。
その感情は両立できないものではないと思います」
言葉がまた途切れる。
沈黙の中、瞠目しながら、ドクオは歯を噛みしめた。
710
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:28:05 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚-゚*ζ「わかりかねますか」
('A`)「率直に言えば、そうだ」
ζ(- -*ζ「そうですか……」
デレは瞳を閉じ、岩壁に寄りかかって溜息を深くついた。
ζ(- -*ζ「「ごめんなさい、怒らせてしまって」
('A`)「……怒る?」
711
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:29:12 ID:8dfHuhNs0
ζ(- -*ζ「怒ったのでしょう? 見ればわかりますよ。
モララーさんの名前を出す度に、あなた、すっごく怖い顔するんですもの。
私の言葉も、私さえも気にくわない。そう思ってらっしゃる」
寄りかかった体勢のまま、デレは上を仰いだ。
赤く揺れる炎によって、無骨な岩の天井が明滅する。
ζ(゚-゚*ζ「考えを改めるように、なんて、私に言う権利はありません。
人と人とはわかりあえない。誰だって知っていることです。
こんな話してごめんなさい。私、もう黙りますから、今日は休んで」
('A`)「あのさ」
ドクオの声に、デレの口が半開きのまま固まる。
712
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:30:20 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚-゚*ζ「あの、なにか」
('A`)「それ、やめられるか」
ドクオが言うと、今度はデレが目を見張って彼を見た。
ζ(゚-゚*ζ「だから、もう話さないと」
('A`)「そっちじゃない。話し方」
ζ(゚-゚*ζ「?」
('A`)「『です』とか『ます』とか『おっしゃる』とか」
ζ(゚-゚*ζ「ああ、口調ですか。
えっと、昔から仕込まれたものなのですが」
713
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:31:12 ID:8dfHuhNs0
('A`)「普通の話し方もできるだろ?」
ζ(゚-゚*ζ「それは……まあ」
怪訝そうな顔で頷くデレに対し、ドクオは真剣な顔で頷き返した。
('A`)「じゃあ、そっちで喋ってくれ。上品すぎて疲れるから」
ζ(゚-゚*ζ「はあ……、じゃあ。ドクオ、さん。この『さん』はいいですよね?」
('A`)「ああ」
ζ(゚ー゚*ζ「では、ドクオさん。今日は休むとしよう……よ?」
714
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:32:03 ID:8dfHuhNs0
('A`)「……よし」
口を結んで頷くドクオの声に、デレはほっと表情を和らげた。
ζ(゚ー゚*ζ「気にされ……しちゃってたんだね。えっと、ごめん」
('A`)「そのまま少し前に遡れ」
ζ(゚ー゚*;ζ「……???」
('A`)「モララーへの感謝と魔王への感謝、両立できないものじゃないってところから」
ζ(゚ー゚*;ζ「え、そこ? そこなの?」
('A`)「うん」
715
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:33:02 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*;ζ「はあ……私、確か……」
ζ(゚ー゚*ζ「この感情は、両立できないものではない……よ」
ζ(゚-゚*ζ「わかってくれない……わかりたくない?」
('A`)「率直に言えば」
二回目だというのに、ドクオは相変わらず真剣な顔を向けた。
だからデレも、居住まいを正してドクオと向き合った。
ζ(゚-゚*ζ「……ごめんね。怒らせちゃったみたいだね」
716
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:34:04 ID:8dfHuhNs0
ドクオは先ほど、この言葉に息をのんだ。
今度も同じ動作がくるものだと思い、デレは待った。
しかし、ドクオはすぐには動かなかった。
低く息を吐いた、と思いきや、すぐに背筋を伸ばした。
座高だけならデレとほぼ変わらない高さ。
視線が同じ位置で交わる。
細く冷ややかなドクオの瞳の微かに揺らぐのを、デレはじっと見つめていた。
ドクオが軽く息を吸い、そして。
(#'A`)「怒ってねえよ、馬鹿」
717
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:35:01 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*ζ
ζ(゚ー゚*;ζ「え!?」
('A`)「よし、じゃ、寝るか」
呆然としたデレを前に、ドクオは雪解け水で炎を消した。
あたりがすぐに暗くなり、月光を照らす雪の白さが洞穴の外から入り込んでくるだけとなる。
718
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:36:04 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*;ζ「ちょっと! 今の何!? わぶっ!」
柔らかい何かが顔面に当たり、デレは小さく悲鳴をこぼした。
('A`)「寝袋だ。早くしないと寒さにやられるぞ」
ζ(゚ー゚*;ζ「なんで火があるうちに渡さないの!?」
('A`)「いちいち騒ぐな。今、渡したんだからどうだっていいだろ」
辛辣なドクオの言動に、デレはしばらく黙り込む。
膝の上に載っている柔らかな寝袋を月明かりを見下ろし、ふと、顔を上げた。
ζ(゚ー゚*ζ「というか、手、縛られているんだけど」
719
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:37:08 ID:8dfHuhNs0
('A`)
ζ(゚ー゚*ζ
('A`)「……火、つけるか」
ζ(゚ー゚*ζ「馬鹿じゃないの?」
('A`)「うるせえ」
愚痴りながらも手際よく、ドクオは再び火をつけた。
ζ(゚ー゚*;ζ「このままじゃ」
('A`)「見りゃわかるよ」
無言のままドクオは寝袋を広げ、空気を通し、留め具を空けた。
720
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:38:05 ID:8dfHuhNs0
('A`)「入ることくらい自分でやってくれよな」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
('A`)「なんだよ、嫌なのかよ」
ζ(゚ー゚*ζ「ううん……不思議な人だなって思って」
('A`)「そうか?」
ζ(゚ー゚*ζ「というか不器用? 言葉足らずなだけ? 言い回しで格好つけてる?」
(;'A`)「分析はほどほどにしてくれよ、恥ずかしいから」
721
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:39:05 ID:8dfHuhNs0
ζ(゚ー゚*ζ「モララーさんとは結構違って……」
小さな炎を前にして、ドクオの口がふっと真一文字に結ばれた。
デレは慌てて頭を振った。
ζ(゚ー゚*;ζ「あ、ごめん! 嫌な言い方しちゃったよね? そういう意味じゃなくて」
('A`)「……いや、いいよ」
ドクオは視線を落としつつ呟いた。
('A`)「俺もときどき思ってたさ。モララーはどうして俺とつるんでいるんだろうって。
性格も考え方も、人望も度量も、技術も、俺とは違う。あいつは生きていれば、もっと上に行けた男だ」
722
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:40:03 ID:8dfHuhNs0
('A`)「俺なんかと接点を持つようなタイプじゃない。もっと、明るいところにいるべき奴だった」
デレに向けてというよりは、自分に言い聞かせるように、ドクオは一言ずつ噛みしめるように呟いた。
小さな炎は、先ほどのよりも頼りなく、吹けば簡単に消えそうだった。
雪解け水の残りを構え、斜めに傾げたとき、デレが口を開いた。
ζ(゚ー゚*ζ「あの人は、他人を放っておけない人だったよ」
ドクオは動きを止め、デレの顔を見た。
ほのかに赤みの差したデレの頬には笑みが浮かんでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「私のときも同じ。だからきっと、あなたのときも」
723
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:41:06 ID:8dfHuhNs0
('A`)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、怒っちゃった?」
デレの問い掛けは、どちらかといえば戯けていた。
ドクオは肩を竦めてみせ、雪解け水を一気に炎へ傾ける。
('A`)「怒ってねえよ、馬鹿」
炎が縮み、そして消えた。
ζ(゚ー゚*;ζ「って、寝袋入ったら留めないとなんだけど!
なんで消す前に言ってくれないの!?」
724
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:42:02 ID:8dfHuhNs0
('A`)「むしろなんで消す前に気づかねえんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「……気づいてたってこと?」
('A`)「寝る」
ζ(゚ー゚*;ζ「ちょっと! 気づいてて黙ってたんで、あ、こらすっぽり入るな!」
愚痴を言いつつ寝袋に入り込むデレの物音を聞きながら
ドクオはじっと暗闇の岩壁を見つめていた。
☆ ☆ ☆
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725
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:43:01 ID:8dfHuhNs0
微睡みの中、昔のことを、ドクオは思い出していた。
(;'A`)「つっ!」
掴んでいた模擬刀の柄が吹き飛ばされる。
修練場の板張りの床にそれは落ち、カラカラ虚しく音を立てた。
( ・∀・)「よっしゃ! 俺の通算19勝目! あと一回で晩飯奢りな! 忘れるなよ!」
(;'A`)「同じこと19回聞かされてるのに忘れるかよ」
通算といいつつ、その実は連勝。モララーはずっと勝ち続けている。
726
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:44:03 ID:8dfHuhNs0
衛兵見習いとして、ラスティア城に来てから早数ヶ月。
同期のモララーとドクオはともに実力者として、仲間内で名を馳せていた。
型破りなモララーと、堅実に勝ちを収めるドクオ。
周りの人からすれば、どちらも近寄りがたい存在になりつつあった。
だが、練習の場での模擬試合では、ドクオはいつもモララーの後塵を拝していた。
( -∀-)「ふふふ〜、ドクオ。お前だんだん腰が浮いてきているぞ」
指を一本立てながら、モララーが胸を張る。
( ・∀・)「腰が浮いたら脚に力が入らない。踏ん張りが足らないから全身のバランスも悪くなる。
おまけにお前の攻撃は利き手が優先されがちだ。先を読まれたら、弾かれるぜ」
727
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:45:05 ID:8dfHuhNs0
立てた指を回し、モララーがしたり顔をする。
ドクオは苛立つよりもまず先に感心して言葉を失った。
(;'A`)「お前、そんなところまで読んで戦うのか」
戦いのスキルひとつとっても、ドクオはモララーに敵わない。
その理由の一端を見た気がして、ドクオはモララーに質問をした。
対して、モララーは首を横に振った。
( ・∀・)「普段からさ」
例えば、とモララーは言葉を続ける。
728
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:46:03 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「ドクオは疲れると動きがパターン化してくるけれど、戦いだけじゃなく、普段からだ。
嫌な座学のときはいつでも窓際右列三番目に座り、直前の座学の参考書を広げて机に突っ伏す。
接地するのはいつも左側で、左腕を支えにする。これはもしかしたら利き手の右が空くからかと思うんだけど」
(;'A`)「いやそんなの無意識だから。ていうかお前怖いなおい!」
( ・∀・)「なはは。普通の講師なら大丈夫だけど、ロマネスクさんのときは危険だからな」
(;'A`)「砂漠育ちの衛兵隊長が?」
( ・∀・)「寝てるお前の傍を通る度に、毎回10秒見下ろしてる」
('A`)
( ・∀・)「それから放課後、毎日倉庫の傍でチョークを投げる練習をしている」
(;'A`)「……」
729
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:47:01 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「投げて壁にあたるとな、チョークが一瞬で粉々になるんだ。
あれが頭に当った日にはお前、命に関わるぞ」
('A`)「ありがとう、明日から寝たふりを極める」
( ・∀・)「授業聞けよ」
そのとき、夕刻を告げる鐘の音が入り込んできた。
会話の切れ目に折良く差し込まれ、二人して窓の外を見遣る。
夕暮れ迫る空、風に揺れる梢。穏やかな景色がなんとも言えず輝かしく見えた。
('A`)「つまり、お前はいつも人を観察しているんだな」
( ・∀・)「そういうこと」
('A`)「なんでだ。勝つためか? いつかロマネスク隊長も倒せるように?」
730
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:48:09 ID:8dfHuhNs0
不可能なことじゃない。
ドクオは心のどこかでそう思っていた。
だから、即答しないモララーを意外に思った。
( ・∀・)「それは、副次的なものだよ。俺はいろんな人のことを知りたいだけだ」
('A`)「知る?」
眉を顰め、ドクオはモララーを見つめた。
モララーも言葉を選んでいるようで、時間を置いて、慎重そうに口にしていった。
731
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:49:10 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「一人きりだと、限界があるんだ。
いくら強がってもどうにもならない相手もいる。
いつまで経っても解けない問題や、蝕む病みたいなものもある」
( ・∀・)「でも、誰かと手を組めば、先へ進める可能性が増えるんだ」
モララーは一旦、言葉を切った。
何を言うべきかをじっくり選んでいる様子だった。
( ・∀・)「この人と手を組んで良かったと思えるときがあればいい。
そう思って、俺は人と接している」
( -∀-)「……ような気がする」
732
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:50:02 ID:8dfHuhNs0
('A`)「そこは曖昧なのかよ」
( ・∀・)「んなもん、考えながらやってるもんじゃねえって。
意識の指向、こうしたいなーって気持ちだよ」
( ・∀・)「例えば、理由のある行動ばっかりじゃ息が詰まるなーって思って、
全く意味のないことしたくなるとき、あるだろ?」
('A`)「……ねえよそんなの」
( ・∀・)「じゃあやれ」
(;'A`)「はあ?」
733
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:51:11 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「やってみろよ! 楽しいぜ!」
(;'A`)「まあ、じゃあ、気が向いたらな」
( ・∀・)「よし! 約束だぜ!」
(;'A`)「もうなんでもいいって。なんでそんなに元気なんだよ」
修練場から、ひとりまたひとりと人がいなくなっていく。
モララーとドクオは模擬刀を片付けて、倉庫の籠の中に入れた。
修練場から外に出れば、外はもう暗くなりつつあった。
734
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:52:04 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「俺、ちょっとロマネスクさんところにいくから、食堂で待っててくれ」
('A`)「別にいいけど、慌ただしいな」
( ・∀・)「将来への投資だよ。平たく言えばコネ作り」
そう言うと、モララーはドクオに手を振った。
( ・∀・)「じゃあな、ドクオ。相変わらずお前との模擬戦が一番楽しい」
('A`)「圧勝しておいてそれを言うか」
( ・∀・)「ん、でも、型は毎回変わっていたし、
裏をかく動きもあった。最後はへばっていたけど」
735
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:53:06 ID:8dfHuhNs0
('A`)「……」
( ・∀・)「強くなろうとしてるんだ。ドクオもいずれ、俺と並んで、追い越すさ」
('A`)「……よくもまあ、ストレートに言う」
( ・∀・)「だから、なおさら悔しいんだろ?」
('A`)
( ・∀・)
('A`)「俺は」
( ・∀・)「ん?」
('A`)「お前の心はお見通しだ、みたいなこと言われるの、すげえ嫌なんだよ」
736
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:54:01 ID:8dfHuhNs0
( ・∀・)「うん。俺も俺も」
('A`)「……」
( ・∀・)「俺も」
('A`)「はよ行けこら」
( ・∀・)ノシ
モララーが去って行くのを見つめながら、ドクオは深く息を吐いた。
モララーは自分とは違う。
違うところが多すぎる。
737
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:55:09 ID:8dfHuhNs0
人望の厚いモララーにはいつでも光が差している。
ドクオはいつもモララーと対比されている。
だが、モララーと一緒にいれば、勝手に光に差し込まれることになる。
それがとても苦手で、疲れて、なのに離れることができずにいる。
モララーが自分と組むことを、ドクオは不思議に思っていたが、
気がついたらドクオ自身、当たり前のようにモララーと組むようになっていた。
理由は思い返しても、いつの間にか、としか言えない。
モララーといると調子が狂う。
それがいいことなのか、悪いことなのか、ドクオにはわからなかった。
738
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:56:07 ID:8dfHuhNs0
('A`)「一人きりだと限界がある、そのために知る……か」
例えば自分がモララーのことをもっとよく知ることは可能なのだろうか。
ふざけているようでいて、時折モララーは真剣な表情を見せることがある。
その真剣な眼差しのとき、モララーはいつも周りに距離を作っていた。
モララーは一体何を考えているのか。
('A`)「……わかんねえ」
当時のドクオは首を傾げるばかりだった。
739
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:57:05 ID:8dfHuhNs0
今のドクオも同じだった。
モララーのことはわからない。
彼が何を感じていたのかは推測するしかない。
結局のところ、モララーは死んだ。
自分の預かり知らぬ気持ちを抱えて、死んでもデレを救おうとした。
それは、モララーの敗北なのだろうか。
それとも目標の超克のためだったのだろうか。
その死は、お前の本心からの行動だったのか。
740
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:58:03 ID:8dfHuhNs0
問い掛けに意味はない。
モララーはもう答えない。
知りたいことはあまりにも多すぎた。
だから。
('A`)「お前ならどうするよ、モララー」
モララーのいるうちでは、決して口にできなかったこと。
いつしかそれが、ドクオの口癖になっていた。
☆ ☆ ☆
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741
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 21:59:01 ID:8dfHuhNs0
ドクオは、テーベで傭兵として働いているうちに、小刻みに起きる癖がついていた。
目覚めたとき、まだ洞穴の外は暗く、
月明かりもなくなり、星々の光だけがわずかに残るばかりだった。
頭を抑え、髪を掻きながら、寝袋から上体を起こす。
深呼吸をすれば、暗がりな洞穴の中でも目が利くようになってきた。
焚き火の跡を挟んで向い側にデレの寝袋があった。
無事に入ることもできて、今は顔を袋の外に出して寝息を立てていた。
暗闇の中に顔だけが浮かんでいるようで、一瞬ドクオは身を強張らせた。
ζ(---*ζ
デレの顔からは表情が、今は消えていた。
最も、普通の人だって寝ているときは似たようなものだろう。
742
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 22:00:01 ID:8dfHuhNs0
今日のうちに、デレの表情は様々に変わった。
笑い、怒り、目を伏せて、弛緩して。
まるで普通の同年代の女性のようにドクオには感じられた。
ラスティア城にいた頃のデレは、果たしてどうだっただろうか。
デレを見る機会はほとんどなかった。
いつも自室にいて、公務のときにのみ外に出ていた。
最も、幼い頃は公務での外出でさえほとんどなかったと噂に聞いたことがあった。
自分の家族や従者以外の誰とも接触しない生活。考えると、ドクオ自身厭になる。
その生活から解放したのは、魔王だった。
('A`)「ふん」
「……」
「悪かったよ」
743
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 22:01:04 ID:8dfHuhNs0
薄明が夜の底に浮かぶ。
もうじき朝が来るのだろう。
焚き火の跡を確かめながら、火種を探す。
('A`)「……ん?」
皮膚のやや黒ずんだ、ドクオの鼻がひくついた。
冴えた空気に混じって、違和感が少しある。
彼の鼻は通常の人には感じとれない、
魔人の特有の部位から出る体臭を感じとることができる。
744
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 22:02:15 ID:8dfHuhNs0
(;'A`)
視線の先にはデレが深く眠っていた。
鼻のひくつきがとまる。
今は何も感じ取れない。
(;'A`)「勘違い、なのか」
当惑する、小さな問い掛けに、答えるものはいなかった。
☆ ☆ ☆
.
745
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 22:03:11 ID:8dfHuhNs0
.
第二十四話 邂逅するは雪渓にて(雪邂永訣編②) 終わり
第二十五話 届かざる哀哭(雪邂永訣編③)へ続く
.
746
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/01/23(火) 22:07:01 ID:8dfHuhNs0
本日の投下は以上です。
まとめサイト様が消滅してしまいましたので、
これまでのお話は新しいブログを作り、まとめました。
http://cloudcrying.blog.fc2.com/blog-entry-45.html
今後ともよろしくお願いします。
それでは。
747
:
同志名無しさん
:2018/01/23(火) 22:58:04 ID:JFuDqWO20
乙
忘れてた所もあったからまとめありがたい
まとめサイトも章ごとで見やすくて良いね
通勤の共にさせていただきます
748
:
同志名無しさん
:2018/01/25(木) 21:56:26 ID:xiA9p0es0
ラスト気になるな…
乙
749
:
同志名無しさん
:2018/01/26(金) 23:55:47 ID:n3fwBMOE0
おつおつ
また一つ謎が
750
:
同志名無しさん
:2018/02/09(金) 05:52:15 ID:6GVSImSE0
一日で全部読んできた
何これ面白い
751
:
同志名無しさん
:2018/02/09(金) 23:46:31 ID:iq7CPUPc0
投下来てた!おつ!
今のブーン系で唯一読んでるのがこの作品。
今後も頑張ってね!
752
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:07:02 ID:kt9Y/rdc0
いつもお読みいただきありがとうございます。
それでは投下を始めます。
753
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:08:25 ID:kt9Y/rdc0
ドクオはモララーのことが苦手だった。
常に余裕のある顔つきも、自信に満ちた振る舞いも、
同期の衛兵見習いとして目にしたときから鼻についていた。
なるべくなら距離を置きたい。
そんなドクオの思いを知ってか知らずか、モララーの方から度々声をかけてきた。
第一印象が最悪でも、触れ合っているうちに、忌避感は薄れていった。
それでも苦手なものは苦手だと思っていたドクオが、ある日、モララーに初めて自分から興味を抱いた。
二人が衛兵になって、二年目。307年の冬のことだ。
当時16歳だったドクオは、ラスティア国の南方にある小さな街で防衛の任についていた。
防衛といっても、国境侵犯の危険性の高い地域ではない。
ラスティアという国は南北に細長い半島の形状をしており、三方は生みに囲われている。
その街の港でも、自国の漁船以外は影すらも見ることはなかった。
754
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:09:43 ID:kt9Y/rdc0
唯一目を引くものといえば、南西に浮かぶ小島だ。
遠目からでも視認できる、大きく黒い箱形の建物が並ぶその島は、第23番監獄と呼ばれていた。
悪事を重ね、反省の色も見せず、陸地に存することを許されなくなった人々が、その島に追いやられるという。
もっとも、当時でさえ、ほとんど誰も収監されていなかった。
危険性はないが、他にすることがなかったので、目をやっていたにすぎない。
当時のドクオの日課は簡素なものだった。
朝になると鍛錬し、昼下がりから監視を始める。
海を只管眺め、夜勤の者と後退して、自分は短い就寝に入る。
実践的とは思えない内容であるにもかかわらず、大勢の、新人の衛兵が従事していた。
755
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:11:01 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「後退だ」
ドクオもまた、この年の始めにラスティアの衛兵へと昇進した者だ。
見習いとして入場してから、二年。短い期間であり、優秀だという称賛に値する成績だった。
( ・∀・)「ああ、悪い。うとうとしてた」
('A`)「……ヘマやらかすなよな。帰るのが遅くなるぜ」
帰るとは、故郷のことだ。
帰りたいと口にするものは後を絶たなかった。
国の中心部を離れた海辺の辺鄙な街での防衛任務。
これも、どちらかといえば精神的な鍛錬の一環だったのだろうとドクオは考えていた。
帰りたいと思う者から仕事が雑になり、見とがめられ、帰途が延びるというわけだ。
756
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:11:46 ID:kt9Y/rdc0
( ・∀・)「故郷が淋しいか?」
('A`)「いや、別に」
ドクオは鼻先で笑った。
故郷、それは、ドクオにとってはすでに遠い過去の場所だった。
ほとんど誰ともつるまず過ごし、
唯一仲良くできたと思った友人を失った、ムネーメという小さな村だ。
('A`)「もう何年も帰っていないし、待っている人もいない」
( ・∀・)「親くらいいるんだろ?」
('A`)「毎月仕送りを送っているよ。顔も合わせてないけど、連中もそれで満足している」
757
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:12:33 ID:kt9Y/rdc0
( ・∀・)「さばさばしてるなあ」
('A`)「悪いか?」
( ・∀・)「いやいや、文句をいうつもりはないよ。家族のことは人それぞれだ」
モララーは早口気味に言うと、自分の荷物を片付け始めた。
押し黙ったモララーを見下ろしながら、ドクオも自分の支度を始める。
('A`)「そういえばお前は故郷のために強くなるって言ってたな」
晴れて衛兵となれたときの宴会で、モララーが豪語していたことをドクオは思い出した。
( ・∀・)「……ああ、まあな」
声のトーンを少し落として、モララーは呟くように答えた。
758
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:13:19 ID:kt9Y/rdc0
二人して、遠く、北を見る。
弧を描く湾の向こう側。
霞に包まれたマルティアの大地。
モララーの故郷は、北方、スィオネ付近だと、ドクオは聞いていた。
それ以上の詳しいことはわからなかった。
モララーの口から思い出を話すことはほとんどなかった。
('A`)「お前は淋しいのか?」
嘲笑のつもりはなかった。
純粋に、モララーの答えが気になったのだ。
モララーは頷いた。躊躇いがちなように、ドクオには見えた。
( ・∀・)「そりゃあな、淋しいさ。ここからじゃ遠いもの。
まあ、仕方ないってわかっちゃいるけどさ」
759
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:13:58 ID:kt9Y/rdc0
モララーの言葉は余韻を残した。
まるで何かが続きそうで、ドクオも何も言わずに置いた。
夜の海が波打っている。
月明かりにのみ照らされて、白い波の一部だけがきらりと輝いて見えていた。
吸い込まれそうな漆黒。
岩場に跳ねる水しぶき。
静寂と一言で片付けるには、小さな音が響いている。
( ・∀・)「いつか戻るんだ」
モララーは、ドクオを見ないまま言った。
声に力が籠っていることだけが、ドクオにはわかった。
( ・∀・)「そう、決めたんだよ」
760
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:15:23 ID:kt9Y/rdc0
問いでも答えでもない、ドクオではなく、自分に言い聞かせるような言葉。
時は流れ、その、およそ10ヶ月後。
モララーは、ラスティアに巣くう魔人に殺された。
('A`)
モララーの葬儀は、ラスティア城にて行われた。
火葬の煙が細く棚引く。夕暮れ。
故あって城下から離れていたドクオにも、その煙は見えた。
首をやや持ち上げて、圧迫した頸椎が痛くなるのも構わずに睨み付けていた。
761
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:16:03 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「決めたんじゃねえのかよ」
唯一彼は、その言葉を呟いた。
故郷に帰る。
そう決めたモララーのことを
自分にはついに愛せなかった故郷を想い続けた男の裏切りを
静かに腹立たしく思った。
.
762
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:17:33 ID:kt9Y/rdc0
☆ ☆ ☆
第二十五話
届かざる哀哭(雪邂永訣編③)
☆ ☆ ☆
763
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:18:07 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「"サイレン"と呼ばれているそうね」
洞穴での朝。
朝の身支度を調えたデレは、改まった調子で話し始めた。
('A`)「あの奇妙な音のことか」
最近とみに聞えてくる、怪しい音。
鳴り響いた直後に魔人が凶暴化するという噂が、テーベの国内にも広まっていた。
テーベの研究者により名付けられた、その名もサイレン。
魔人にのみ神経的な作用を及ぼす現象と言われているが
何のためなのか、何故始まったのか、少なくとも表向きには、誰にもわかっていなかった。
ζ(゚ー゚*ζ「あれはイオの峰で行われている、マルティアの実験が引き起こしているのよ」
764
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:19:03 ID:kt9Y/rdc0
デレの言葉は唐突だったが、ドクオは飲み込んだ。
自然現象と言われるよりは、納得のいく説明だった。
('A`)「どんな実験なんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「それはわからない。魔人に関わることだとは思うけど」
('A`)「一般人には知らされていない、か」
あり得ない話ではない。むしろそれが当然だ。
テーベにも、軍にしか知らない秘密の二、三はあるだろう。
ただの傭兵である自分にも、知らされていないことはある。
765
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:19:38 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「でも、参加することはできた」
('A`)「参加?」
ζ(゚ー゚*ζ「実験のお手伝いとして、一般人のボランティアも募っていたの。
言ってみれば治験ね。報酬もはずんでいたわ。国がバックにいたからだと思うけど」
デレの言葉は何故か快活で、いたずら好きそうに光る瞳が向けられるのを見て、ドクオは厭な予感がした。
(;'A`)「まさか、そんな怪しいものに参加を?」
ζ(゚ー゚*ζ「悪い?」
(;'A`)「やめろよお前、せっかく自由になれたのに」
ζ(゚ー゚*ζ「だって気になるじゃない。それに、できちゃったんだから、今更よ」
766
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:20:26 ID:kt9Y/rdc0
(;'A`)「……モララーが聞いたらなんて言うだろうな」
ζ(゚ー゚*ζ「それは言わない約束」
('A`)「へいへい、泥沼だからな」
釈然としないが、事実は事実。
デレが運ばれた理由は、デレ自身にもわからない。
ζ(゚ー゚*ζ「知りたい情報じゃなかったでしょ」
('A`)「というか何もわかってないのと同じだな」
767
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:21:02 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「うん……私をどうする?」
('A`)「それは」
温めていた鍋をひとつかき回す。
温かいトマトスープの薫りが広がり、湯気が柔らかく頬を撫でた。
腹が鳴る。
俺のだったか、それとも。
ζ(゚ー゚;ζ「見ないでよ」
('A`)「まだ見てねえよ」
768
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:21:49 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「まだ?」
('A`)「食事にしよう。話はそれからでも」
そのとき、
咄嗟にドクオはデレを庇った。
ζ(゚ー゚;ζ「なに?」
('A`)「しっ!」
769
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:22:37 ID:kt9Y/rdc0
入り口で物音がした。
目をやれば、人影がある。逆光で、黒い身体しか見えない。
朝の日差しに照らされた人の形がゆっくりとこちらに近づいてくる。
ドクオは懐の短刀に手をさしかけた。
('A`)「それ以上動いたら斬る」
人影の動きが止まる。
言葉が通じる。少なくとも人ではあるらしい。
('A`)「何者だ」
770
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:23:15 ID:kt9Y/rdc0
ドクオの問い掛けに、すぐに応えは無かった。
代わりに何か、鼻を鳴らす音。
ついで、腹の音。
「ド」
人影が、身を屈める。
( ,,;Д;)「ドクオさあああん!!」
('A`;)「た、タカラ!?」
膝をついて、腹を抱えて倒れる姿に、ドクオは駆けつけた。
771
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:23:49 ID:kt9Y/rdc0
( ,,;Д;)「はら! 腹が、減った! めっちゃ!」
('A`;)「わかった! わかったからそのままゆっくりこっちへこい。こっち」
ζ(゚ー゚*ζ「お知り合い?」
('A`)「ああ、まあ」
( ,,;Д;)「!? 誰ですその女」
腹を慣らしつつ、怒気を孕みつつ、タカラは悶絶しながらドクオの傍へと近寄った。
772
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:24:24 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「説明してもらいましょうかあ?」
('A`;)「言われなくてもするよ」
スープを小皿に取り分けながら、説明を始める。
タカラは聞くよりも食べるのに集中していて、何度も同じことを繰り返すこともあった。
喋るのにも疲れ、言葉少なくなりながら、どうにか言い終えたとき
鍋の中にはもうほとんどスープが残っていなかった。
773
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:25:11 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「それにしてもよく生き延びていたな。野営できたのか」
( ,,^Д^)「ちょうどいいところに民家があったんですよ。国境沿いのところです。
一泊させてもらって、それからドクオさんたちを探しに来ました」
('A`)「民家……? ヘゲモネの街中以外にも人が住んでいるのか」
テーベ国について、この二年間でドクオなりに勉強をした。
地勢、環境、人々の生活や人口分布。必要になりそうな知識は一通り眺めていた。
活気ある港、城下付近と異なり、北方では険しい環境のため、人口は減る。
ただでさえ住みづらいこのあたりに、人が暮しているとは思っていなかった。
774
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:25:39 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「それは本当にテーベの人だったのか?」
( ,,^Д^)「テーベ人……じゃないんですかねえ? 聞いてねえっすけど。
俺、普通にご飯もらったし、別に変なことされてないですし」
('A`)「無警戒かよ。軍人としてどうなんだ」
( ,,^Д^)「平気ですよ。相手は一般人。こっちにはこれもある」
携えた得物をタカラは軽く持ち上げる。
背丈にせまる長さのフリントロック式銃だ。
775
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:26:16 ID:kt9Y/rdc0
('A`)「……確かにな」
銃は、三〇〇年よりも前より、主として戦場で使われていた。
しかし魔人の降臨が戦争を無くし、結果として銃の活躍する機会を奪った。
長いこと、人々の歴史から離れていた銃を掘り起こしたのは、テーベの軍事研究機関だ。
もしも魔人が存在しなかったら、人々は銃火器を発展させただろう。
この星そのものを支配するほどの力を手にしていたに違いない。
テーベ国軍の上層部は、その一念で、封印されていた銃火器研究に力を入れている。
民間で独自開発されていた飛行機についても、軍の膝元に集約し
銃火器との併合も検討されていると聞く。
776
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:26:51 ID:kt9Y/rdc0
戦争のやり方は、今までから大きく変わる。
一介の傭兵にすぎないドクオにもその気運ははっきりと伝わってきていた。
無意識のうちに、軍刀の柄に添えた掌が汗ばむ。
('A`)「まさかその銃で脅して入ったわけじゃないよな」
( ,,^Д^)「んなことしてないっすよ。まあ、隠してもいないですけどね。
こうして生きているのがなによりの証拠っすよ。殺されなかった。だから、俺はその人を疑いません」
タカラはからりと笑ってみせると、次いで冷めた目をデレに向けた。
777
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:27:23 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「信頼できる人なんですかね、あんた」
片付け途中だった皿を置いて、デレはタカラを見つめる。
ζ(゚ー゚;ζ「率直ね」
( ,,^Д^)「いや、だってドクオさんがあんたのこと信じてるのは知り合いだからですけれども
俺にとっては今会ったばかりの人ですからね。しかもマルティアの」
( ,,^Д^)「実験というのも本当かどうか……目に見える証拠がないと信頼できないですよ」
ζ(゚ー゚*ζ「証拠……」
778
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:27:55 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「例えば、敵が目指している場所がどこか、教えてくれたり」
タカラがドクオに目配せをする。
細くなった瞳が黒く輝いていた。
('A`)「なるほど」
自然な形で情報を集めようとするタカラに、思わず言葉が漏れた。
ζ(゚ー゚*ζ「……」
( ,,^Д^)「まさか知らないとは言わないですよね?
いくらなんでも、行き先くらい聞いているでしょう?」
779
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:28:42 ID:kt9Y/rdc0
ζ(゚ー゚*ζ「……ちょっとだけなら」
( ,,^Д^)「どこですか」
ζ(゚ー゚*ζ「イオの峰よ」
( ,,^Д^)「ふむ……それならむしろ、あんたはどこから来ました?」
ζ(゚ー゚*ζ「マルティアの北辺。エウロパの森の傍よ
( ,,^Д^)「マルティア国内? どうしてテーベのヘゲモネなんて通るんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「詳しくは知らないけど、マルティア国の北は険しい山脈なのよ。
それとくらべたら、たとえ境界近くでも、山間の道の方が歩きやすいんだと思う」
780
:
◆MgfCBKfMmo
:2018/02/25(日) 22:29:13 ID:kt9Y/rdc0
( ,,^Д^)「中継地はわかりますか」
ζ(゚ー゚*ζ「出発からはまだ日は経ってない。テーベとの境界沿いにあるスィオネまでは野宿の予定だったわ。
あとは、そこから東に通ってカルデア。あとは川沿いに行けばイオの峰に辿り着くはず」
( ,,^Д^)「結構憶えているじゃないですか」
ζ(゚ー゚*ζ「思い出しているのよ。協力したいもの」
('A`)「……」
タカラの畳みかけるような問いに、デレはそつなく答えている。
初めから、問い掛けられることがわかっていたかのようだ。
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