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( )水没のようです
1
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:13:17 ID:lJZBvVDc0
昔から違和感はあった。
普段の心を丸と表すなら誰かと一緒に過ごすときに僕の心はほんの少しずつ、表面にトゲができていく。
少しずつ少しずつ僕の心にトゲが増えていき気づいたときには痛いくらいに鋭く針のようになっていた。
ー(,,゚Д゚)「皆で遊びにいこうぜ!!」
俺はその日、家で一人でいたかった。
ー(*゚ー゚)「君はこういう服のほうがにあうよ、こういう黒いの」
俺は明るい色の方な好きだった。
ー( ^ω^)「ほら、頼むお。僕たち、友達だお?」
俺は一度もこいつのことなんか友達だと思ったことはなかった。
2
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:13:55 ID:lJZBvVDc0
そんな人生の繰返し。
でも、逆らうことなんてできるわけがない。
俺は弱虫なんだ。
誰かと一緒に、言われたことしかできない人形。
そう、俺は気づかない間に、心を壊されていたんだ。
誰かと一緒にいるのに孤独。
そんな矛盾のなかにまるで水と油のように俺は誰とも混じることはできない。
そばにいるのにも関わらず。
俺のことなんか誰も気にせずに。
俺は今日も、一人で浮かんでいた。
浮かんで浮かんで浮かびまくって。
俺はその日、水の底へと沈んでいった。
( )水没のようです
.
3
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:14:27 ID:lJZBvVDc0
......
............
頭がいたい。
体の周りはヒヤリとしたなにかに包まれているのか、暖かさが足りない。
もしかして僕は死んでしまったのだろうか?
......
......ダメだなにも思い出せない。
......本当になにも思い出せない。
( )「......あれ?」
僕は......誰だ?
意識がだんだんと戻ってくると共に僕はとても大切なことを忘れていることに気がついた。
ここがどことか、今がいつとかよりも大切なこと。
僕がいったい誰であるのかを忘れていた。
4
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:15:00 ID:lJZBvVDc0
( )「......ここは」
辺りを見渡すとそこは、静かな都市の中だった。
空は水のように青く青く輝いていた。
綺麗だ。
僕は無意識のうちにポツリとそうつぶやいていた。
( )「とりあえず...誰か探さないと」
辺りを見渡し、歩き出す。
青い光に照らされた建物は白い壁に光の絵を作り出しキラキラと輝いていた。
その光が僕を照らす。僕だけを照らす。
( )「ここは、どこなんだろう......」
透き通るようなその世界。
現実離れしたその光景は美しいがどこかずれているような錯覚を受ける。
まるで、ここにいてはいけないかのような不思議な感覚。
ずっと見ていたいような光景なのにいてはいけないと言う不思議な感覚。
5
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:15:31 ID:lJZBvVDc0
( )「......あれ?」
ふと建物の窓に目を向けると不思議なことに気がついた。
顔がない。
そこには僕がいなかった。
どんな顔かも覚えてはないけど、何かあったはずのそこにはただのっぺりとした肌色があるだけだった。
( )「......」
いくら考えてもこの異常な状況の説明が思い付かない。
まさかとは思うが今の自分が異常だと思うだけで本当は僕はこういう顔で何も異常はないのではないのだろうか?
( )「そんなわけないよな......」
アホらしいと自分の考えをバッサリと切り捨てる。
となれば、残された可能性はひとつだけ。
単純明快、これならすべての説明がつく。
6
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:16:07 ID:lJZBvVDc0
( )「これは夢なんだ!」
そう、夢だ。
夢なら僕が自分を思い出せないのも顔がないのも頷ける。
そもそも夢の世界なんて、めちゃくちゃなのが普通なのだから。
( )「......えいっ!」
おもいっきり頬をつねってみる。
( )「~~ッッ!!?」
頬が熱を持ち、痛みが伝わってくる。
その痛みは決して夢の中の、偽物の痛さではない。
本当に痛みが、そこにある。
つまり、これは。
( )「夢じゃ......ないの?」
川 ゚ -゚)「ああ、夢なんかじゃないよ」
( )「......えっ?」
7
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:18:38 ID:lJZBvVDc0
独り言のはずがもうひとつ、後ろから自分以外の声が聞こえた。
振り替えるとそこには黒髪の少女がたっていた。
顔は青白く綺麗というよりどちらかと言うと病的に感じられ、伸びに伸びたその黒髪は意図して伸ばしてるのではなく伸びたものをそのままにしているかのような印象を受けた。
川 ゚ -゚)「夢じゃないかって思っていたみたいだがそれはなぜだ?なにかおかしなことでも?」
( )「......いや、その......うん」
川 ゚ -゚)「ふぅん」
( )「......」
川 ゚ -゚)「......」
( )「えっ?それだけ?」
川 ゚ -゚)「ん?何がだ?」
( )「えっと、まぁいいや......君は」
川 ゚ -゚)「私か?私はクー。この街の唯一の住人だよ」
( )「え......唯一?」
8
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:19:12 ID:lJZBvVDc0
唯一?
つまり、あれか?
こんなに広く、綺麗な街にいる人間はこの子しかいないということなのか?
あり得ない。
( )「は......はは、面白い冗談だね」
川 ゚ -゚)「ん?いや、ガチだけど」
( )「......」
声が冗談のそれではない。
顔色一つ変えないことから見ても、本当のことなのだろうか。
いや、でもそうなると。
そうなるとまだ、聞かなきゃいけないことがある。
( )「う、嘘つかないでよ。君のお父さんとかお母さんは?それにこの建物は?ほら、こんなにたくさん家があるんだ。君一人な訳......」
川 ゚ -゚)「ああ、両親ならいないよ。ここにはね」
9
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:19:44 ID:lJZBvVDc0
僕がどれだけ叫んでも無駄だった。
彼女は眉をピクリとも動かさずに、さも当たり前のことのように話をする。
まさか、まさか本当に誰もいないのか。
いや、そもそもこんな世界があり得るのか?
顔のない人間がいて、一人しかいない街がある。
異常としか、いいようのない。
( )「こ、この街から出る方法は?」
川 ゚ -゚)「なんだ、ここを出たいのか?」
( )「そ、そりゃこんなおかしなところ......」
川 ゚ -゚)「ここは君の望んだ世界でもあるんだぞ?」
( )「は?」
話がいきなりどこかに飛んでった。
彼女はいったいなんの話をしているんだ?
僕が望んだ?
一体いつ?
そんなの僕は知らない。
いや、だとすれば言ったのは記憶を失う前の僕。
となるとだ、つまり彼女は。
10
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:20:15 ID:lJZBvVDc0
( )「君は僕を知ってるの?」
川 ゚ -゚)「ん?ああ、知ってるとも。打田ドクオ君」
( )「ドクオ......僕は、ドクオ、なの?」
川 ゚ -゚)「ああ、そうだが......まあ無理に思い出そうとしない方がいい。ここにいる限りは、だが」
( )「へ?」
思い出さない方がいい?
何をいってるんだ?
忘れてたことを早く思い出さないと僕がなんなのか、分からないじゃないか。
いや、そもそも。
そもそもだ。
11
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:20:47 ID:lJZBvVDc0
( )「......記憶がないこと、言ったっけ?」
川 ゚ -゚)「聞いてないよ。一言もね」
( )「......」
川 ゚ -゚)「そんなににらむなよ......っと、今は目はないんだったな、失敬」
( )「......お前」
川 ゚ -゚)「ん?」
( )「お前が僕を、こんなにしたのか?」
信じがたいことだった。
でも、それしかない。
この街に住み、僕を知り、僕の秘密を知り、異常のど真ん中にいる少女。
疑わない理由はない。
12
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:21:20 ID:lJZBvVDc0
川 ゚ -゚)「あー、そうか。そこも忘れているのか」
( )「は?」
川 ゚ -゚)「そうだよ、ドクオ君。私がやった。顔も消したし記憶も消した」
( )「っ!?」
思わず、殴りかかろうとしてしまった。
殴ってどうにかなる問題ではないと薄々は分かっていたが黙ってはいられない。
こいつが、僕を消した、いや違う。
記憶を失う前の僕を、殺したのだ。
( )「......返せ」
川 ゚ -゚)「は?」
( )「僕の顔と記憶を、返せよぉ!!」
13
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:21:52 ID:lJZBvVDc0
川 ゚ -゚)「......」
( )「僕は......僕はなぁ!!」
川 ゚ -゚)「いいぞ、別に」
( )「お前のおもちゃじゃ......は?」
川 ゚ -゚)「お前がそう望むなら返してやるよ、別に要らないし」
( )「......えー」
呆然となってしまった。
こいつが何者なのか一気にわからなくなる。
まさかこいつ、悪者じゃないのか?
14
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:22:35 ID:lJZBvVDc0
川 ゚ -゚)「お前が後悔しないなら返してやるよ」
( )「後悔って......俺は別にしないけど......」
川 ゚ -゚)「そうかそうか......なら、返すよ。ほらっ」
目の前に、光の玉が集まりだす。
その輝く光から、音が聞こえる。
電車の音や、足音。
人の声に動物の鳴き声。
これは、なんだったろうか。
これを僕は知っていた。
光のなかに写し出されるその世界。
それを僕は知っていた。
( )「僕の......記憶......?」
川 ゚ -゚)「そうだ。これが、お前の記憶だ。さ、手を出せ。そして、光をつかめ」
言われるがままにまるで天に祈りを捧げるように手を伸ばす。
掌にはまるで太陽のように輝く僕の記憶の光が溢れだしてくる。
その光は僕の目を焼き、脳を刺激し。
15
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:24:27 ID:lJZBvVDc0
僕を、暗いどん底へと突き落とした。
(' )「っ!?」
......ザザッ
(,,゚Д゚)『ドクオーいいじゃんかよ。少しくらい』
で、でも......
(,,゚Д゚)『はぁ?つまんねぇ......遊んでやるっていってんのに断るの?』
......
(,,゚Д゚)『お前、マジつまんねーな。ムカつく顔しやがって。ぶん殴るぞ』
16
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:25:06 ID:lJZBvVDc0
('A )「......これ、は......」
......ザザッ
(*゚ー゚)『えー?似合うとは言ったけどー、格好いいとは言ってなくない?』
......そんな
(*゚ー゚)『別にいーじゃん。君はそういう風に笑われる対象のキャラなんだしー』
......
(*゚ー゚)『ちょっとやめてよー。私がいじめてるみたいじゃん?勝手に勘違いした方が悪いでしょ?分かる?』
17
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:25:49 ID:lJZBvVDc0
('A`)「......ああ、そうか」
......ザザッ
( ^ω^)『ほら、だから代わりにさ、ね?』
こ、この間貸したばっかりじゃん
( ^ω^)『は?この間のは友達としておごってくれたやつじゃん。なんか文句あんの?』
......いや、その。
( ^ω^)『はー......これだからさぁお前はダメなんだよ。回りにあわせられないくせに金も払えない。だからそんなに屑なんだよ』
18
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:26:54 ID:lJZBvVDc0
......ザザッ
......ここが自殺で有名な湖、か
ここから飛び降りたら精霊に飲み込まれるとか言われてるが
......本当に死ねるのか
でも、怖い
死ぬのは、怖い
『助けて欲しい?』
......え?
『助けてあげる。全部、忘れさせてあげる』
ほ、本当か!?
『ああ、それに私の住む、水の都に住まわしてあげる』
あ、ありがとう!
『ふふ......でも、一度きりだよ?あなたがもし、拒絶をしたらそこでおしまい。もとの生活に戻しちゃう。それでもいい?』
も、もちろんだ!
だから、だから俺を!
19
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:27:49 ID:lJZBvVDc0
.......ザザッ
('A`)「......」
川 ゚ -゚)「思い出せたか?」
('A`)「......んで」
川 ゚ -゚)「ん?」
(#'A`)「なんで止めてくれないんだよぉ!?」
川 ゚ -゚)「......」
(#'A`)「忘れていたかったのに......折角忘れたのに......全部を終わらせたのに!!」
川 ゚ -゚)「思い出すのを選んだのは君だろう?ドクオ君。君のいってることは身勝手過ぎるとは思わないかい?」
(;'A`)「っ!そ、それは......」
20
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:28:34 ID:lJZBvVDc0
川 ゚ -゚)「私は、死ぬ勇気のないお前に一つの生きる道を差し出しただけだ。そしてお前はそれを無にした。それだけの話だろう?」
(;'A`)「......」
川 ゚ -゚)「諦めろ。お前はもう、生きる道を選ばねばならない。それも、耐えて耐えて耐え抜く、最悪の生き方を、な」
(;'A`)「......だ」
川 ゚ -゚)「......ん?」
(;'A`)「......いやだ!そんなの、絶対にイヤだ!」
川 ゚ -゚)「......醜いな」
(;'A`)「た、頼む!もう一度!もう一度だけチャンスを!なんでも、なんでもするから!」
21
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:29:07 ID:lJZBvVDc0
川 ゚ -゚)「......なんでも、か」
(;'A`)「あ、ああ!なんでもする!頼む、頼むから......」
川 ゚ -゚)「じゃあ、死んでくれる?」
(;'A`)「え?」
川 ゚ -゚)「今から湖の畔に帰すからそこから飛び降りて死んでくれる?そしたら、もう一回、チャンスをあげる」
('A`)「ほ、本当に助けてくれるのか!?」
川 ゚ -゚)「ああ、やってくれるならな」
('∀`)「も、もちろんだ!やってやる、やってやるよ!」
川 ゚ -゚)「ふふ......じゃあ、いくといい」
('∀`)「ああ!ありがとう......ありがとう!」
川 ゚ -゚)「ふふ、では、さらばだ」
22
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:29:56 ID:lJZBvVDc0
川 ゚ -゚)「さらばだ、愚かな人の子よ」
その日、街の外れの湖にドボンと一つ、人間が落ちた音がした。
まるで、湖の精霊に引き込まれるように。
真っ直ぐ、それも笑顔で落ちていった。
救いを求めるように。
落ちながら天にいる神を求めるように。
何よりも恐れたはず死を、求めて。
......ドボン
愚かな人間の体は沈んで行く。
救いの神だと信じた相手が悪魔だったとは知らないまま。
笑顔のまま、救われることを信じて。
ただただ沈み、もう、浮き上がることはなかった。
( )水没のようです
.
23
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 01:33:21 ID:lJZBvVDc0
スレ建てするような量じゃなかった
一応終わりです
それから
>>14
の一部の一人称が俺になってるけど僕です
24
:
同志名無しさん
:2013/06/23(日) 17:48:45 ID:gaA0lYWU0
乙
25
:
同志名無しさん
:2014/02/09(日) 23:45:47 ID:dpYfzrvA0
好きな雰囲気だった
26
:
同志名無しさん
:2014/02/10(月) 12:55:44 ID:jtKFKStE0
いい感じ、乙
27
:
同志名無しさん
:2024/07/10(水) 23:08:01 ID:s.QPTBqU0
乙 好き
取り巻く不穏さと興味を惹かれる世界観を楽しみました
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