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ありす「いちご味の夢」

1以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 20:52:03 ID:i49OqRRY
目を覚ますと、そこは一面真っ白な空間でした。


ありす「……起きました」


意味なく呟き、辺りを見回すも人の姿は確認できません。
見渡す限り、白一色の世界。
果てもなく、仕切りもない無機質な空間。


ありす「昨日はちゃんと自分の部屋で休んだはずなんですけど……これは一体どういうことでしょうか」


のっそりと立ち上がり、歩き出す。
上か下かも曖昧なこの場所は、どこか現実味がありません。

2以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 20:52:57 ID:i49OqRRY
ありす「すいませーん、誰かいませんか!」

ちひろ「呼びました?」


突然、背後から聞き慣れた声がした。


ありす「うわっ!? びっくりした! ちひろさん……いるならいるって言ってください」

ちひろ「ごめんなさい。不安そうな顔をしたありすちゃんを見たら、ちょっとイタズラしたくなっちゃって」

ありす「……大の大人がそんなことして恥ずかしくないんですか」

ちひろ「大人だからこそよ。遊び心をなくしたら、老いていくばかりだもの」


そういうものなんでしょうか。
子どもの私にはいまいち理解できない感覚です。

3以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 20:55:33 ID:i49OqRRY
ありす「ところでちひろさん、二つほどお尋ねしたいことがあります」

ちひろ「はい、なんなりと」

ありす「ここは一体どこなんでしょうか。あと、ちひろさんのお尻についている、その小悪魔っぽい尻尾はコスプレかなにかです?」


くすくすと笑みを浮かべ、ちひろさんは自分のお尻から生えた尻尾を掴んで言った。


ちひろ「ああ、これですか。これはありすちゃんが望んだから生えてるんです。ここはありすちゃんの夢ですから、さしずめ私は夢の案内人……少女を導く健気な妖精──といったところでしょう」

ありす「いえ、それはどう見ても悪魔の尻尾ですよ」

ちひろ「妖精です」

ありす「黒っぽいですし、妖精というのは少し無理が──」

ちひろ「妖精です」


ありす「………………」

ちひろ「………………」


少しの間、見つめ合ったまま硬直状態が続きました。
どうやらちひろさんは絶対に認めるつもりはないようです。
頑なに妖精だと言い張るあたり、なにか特別な思い入れやこだわりがあるのかもしれません。

4以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 20:56:33 ID:i49OqRRY
ありす「わかりました。ひとまず、ちひろさんは妖精だということにしておきます」

ちひろ「ものわかりの良い子は好きですよ」

ありす「ありがとうございます。それで、この一面真っ白な場所はどこなんです?」

ちひろ「精神と時の部屋です」

ありす「さっき私の夢だとか意味深なこと言ってましたよね? 唐突にドラゴンボールネタ振られても困ります」

ちひろ「すいません。一度言ってみたかったんです」

ありす「……まあ、別にいいですけど」

ちひろ「そう拗ねないでください、時間はいくらでもあります。なにせ、本来のありすちゃんはまだ眠ったままなんですから」

ありす「私が……眠ったまま?」

5以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 20:59:45 ID:i49OqRRY
ちひろ「はい。ありすちゃん本体はまだ自分の部屋ですやすやと熟睡しています。今、この場で私と会話をしているありすちゃんは、いわばありすちゃんの精神の核とも呼べる存在なんです」

ありす「なんだか漫画とかでよくある設定っぽいですね」

ちひろ「ブリーチでもよくある展開ですよ。ほら、修行のときとか斬月と精神世界でどんぱちしてたじゃない」

ありす「読んだことがありませんから、わかりません」

ちひろ「ふふ、嘘ばっかり……ブリーチ全巻揃えてること、ちゃんと知ってるんですよ」

ありす「なっ……!! 何故それを!?」

ちひろ「だから言ってるじゃないですか。私はありすちゃんが望んだから、ここに居る──千川ちひろの殻を被った想像の産物を、あなたは確かに願った」

ありす「では、つまりここは本当の本当に──」


ちひろ「ええ、夢の世界にようこそ」

6以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 21:02:34 ID:i49OqRRY
私はその場で座り込み、頭を抱えた。
だって、どうしようもない。目の前に現れたちひろさんが言うことが本当なら、私はえらく鮮明でリアルな夢を見ているからだ。
しかし、なにより一番問題なのは────



ありす「これ、どうやったら現実に帰れるんですか」



帰り方がわからないということでした。

7以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 21:03:40 ID:i49OqRRY
ちひろ「帰る必要なんてあります?」

ありす「あっ、当たり前です! まだやりたいこともしたいことも沢山あるのに、突然こんなわけのわからない場所に放り込まれて、帰り方もわからないままずっと過ごすなんて、そんなの嫌です!」

ちひろ「でも、現実には不満がいっぱい……そうでしょう?」

ありす「…………っ!!??」

ちひろ「学校での生活、人間関係を保つだけでも気を遣う……その上、アイドルとしての仕事は山のよう。プロデューサーはいつも大事にしてくれるけど、本音の部分では子ども扱い。ホントは一人前の仕事をする大人として認めてほしいのに、彼は自分を女ではなく子どもとしてしか見ようとしない」

ありす「……そんなの、根拠もないただの憶測です」

ちひろ「いいえ、それは違うわ……ありすちゃん。私はあなた、あなたは私──自分を認められない人は大人になんかなれないのよ」

ありす「大人になんか、なりたくありません」


嘘でした。
真っ赤で見え透いた嘘でした。
けれど言わずにはいられない。認めてしまうことは、このデタラメな世界に負けてしまうことと同じでした。

8以下、名無しが深夜にお送りします:2018/09/11(火) 21:04:41 ID:i49OqRRY
ちひろ「強情なのね」

ありす「色々と納得できないことが多過ぎますので」

ちひろ「……そう言うなら、止めはしません。これからどうするかは全てあなた次第よ」

ありす「ここから、出たいです」

ちひろ「それがあなたの望みなら自然と叶うわ」

ありす「………………」


瞳を閉じて、両手を合わせて祈る。
ここから出たい、目を覚まして普通の日常に戻りたい。
その願いも虚しく、祈りを捧げて三十秒ほどで目を開けるも、景色が変わることはありませんでした。


ありす「……帰れませんけど」

ちひろ「それはきっとここでやり残したことがあるからですよ」

ありす「やり残したこと?」

ちひろ「あなたがこの場所に来たのには、必ず理由があります。その理由がわかれば出る方法も見つかるはずですよ」

ありす「理由なんて……そんなのあるわけ──」


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