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【いつかこの世界が】能力者スレ 置きレス用【君に救われる日まで】

1 : ◆Rinne/R.E. :2018/11/19(月) 15:39:53 dJ0W4qMs0
ようこそ、能力者たちの世界へ。
この世界は、数多の能力者たちが住まう世界。

こちらは置きレス用のロールスレです。
リアルタイムの進行が難しい時などにゆっくり使用できます。
混乱を防ぐため、なるべく最初から置きレス進行になる場合のみご活用ください。
時間軸は開始時・終了時など、当人同士で相談し合うとスムーズになります。
次スレは>>950の方が立ててください。


2 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/22(木) 04:04:12 h7nAXcQg0
>>1乙です!

前スレ926
【頷いて見せながら、水鶏の言葉を拾い上げていく。その先の闇は深すぎてまだ入れないとわかっていても】

妖怪という得体の知れない存在が相手です。情報の取り扱いに注意が必要なのは当然でしょうな
〝歯応え〟のあるのは、私も好きですよ

ふ、ふ。妖怪を食べるのだとしたら、阿片婦人は私に負けず劣らずの悪食趣味だったのかもしれませんね
ほう……凍らせたうえで、肉ではなく魂の方を……生態についても希少な存在のようですな

【顎に手を当てて想像する。恐ろしい化け猫の姿。この世はまだまだ、未知と驚異に溢れている】


芋づるというわけですか。半妖とはいえ、それほど恐ろしい妖怪の血を引いた存在、縋るしかない小娘だったのは幸いと言うべきでしょうか
親の庇護下にあったうちは泣けば済んだのでしょうが、そうもいかないとなれば変質する者もいるものですからな

――――なるほど。肝がない、とはそう言った理由で……
妖怪流の儀式か弔いか……櫻には腹を割って話す、という言い回しもありますが
その通りに、腹の中に宿った母の魂を取り戻したとでもいうつもりだったのかもしれませんね

あるいは、奴隷商のところから逃げられたのも、それによって何らかの力の覚醒を果たしたか……
案外、バカに出来ないものですよ。そういった儀式的な行為によってもたらされる変化は

【妖怪を商品として扱う恐るべき人間たちが、怪談を語るとは珍妙だがツッコミを入れるものはこの場にはいない】
【それまで泣いて縋るしかできなかった小娘が、母の死体の腹を裂いて肝を食らった。何とも出来過ぎた話にも思える】
【だが、この世界は複雑怪奇。「あり得ない」なんてことはあり得ない。肉屋自身、それを見て来た】

【頭の中で推測を転がす。その半妖の少女が今も生きていれば。あるいは、相応の力を秘めた存在となっているかもしれない】


(……彼らも、公安には何かしら関わりがあるのか? 何がどう繋がっているのか、知れたものではないからな……)

これは失礼、興味深いお話ばかりで、こちらもつい夢中になってしまいました
今回は、いい取引をありがとうございます。こちらこそ、今後ともよろしくお願い致しますよ

「御達者で、ヨシビ商会さん」

【カニバディールとスカーベッジは、一礼して彼らを見送る。公安と聞いて含みのある笑いを見せた水鶏には言及せずに】
【こうして、また悪意が取り交わされ、悪漢たちは闇に消えていく。二人の盗賊もまた、大型車両にカマイタチと共に乗り込んで去っていくだろう】


【――――それから、しばらく後。日課の朝のニュースチェックを行ったカニバディールは、コーヒーを先に口に含まなかった自分の判断をほめたくなった】
【 "櫻國法"改定。希少生物輸出の制限を大幅引き下げ。〝殿様〟による突然の断行】
【保護下にあった一般妖怪たちを、法の護りからはじき出すというふざけたお触れ。民が直訴のために城に殺到する光景が、画面に映し出されている】
【少し前に、『仕置きの猫又』より警告のメールを受け取ったばかりであった肉屋は、容易にそれらを結び付けた】

――――櫻の国の魔導海軍の不穏な動き……厳島の拘束……
ここに来て、この突然の法改正……無関係、と見るのは楽観が過ぎるだろうな

ヨシビ商会もここに一枚噛んでいるとすれば……利害が食い違うこともあり得る
その前に、これに乗じてもう少し妖怪を買い込んでおくべきか……

まったく、この世界は退屈しないな。悪い意味で

【自らもまた、その悪しき流れを生み出す一端だという自覚はしつつ。異形はしかめ面でコーヒーを胃袋に流し込んだ】

/この辺りで締めでしょうか? 何度もお待たせしてすみません……長期間のお付き合い、ありがとうございました!


3 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/22(木) 05:25:57 h7nAXcQg0
前スレ937-938
「そっかな、そっかな。店主さん、ダメっていうかな。それじゃ仕方ないかなあ。でも出来るんだよ」
「そうだよ、寂しいよね。誰もいないって寂しいよ。独りぼっちは誰だっていやだって、それくらいは生まれたての我々にもわかるよ」

【彼女の秘めたる思いも、辿ってきた歴史も、幼げな表情の向こうにどれほどの感情が詰まっているのかも】
【ヒトガタは知らないし、知ろうともしない。誰かを大事に思う気持ちすらわからない。生まれたてだからじゃなくて、そういう一族だったから】

「そうそう、お使いだよ。我々を、貴女に与えてこいって。我々を掘り出した人だよ。すごくおっきな人だよ」
「そっかそっか、お酒はダメかあ。ジュース、ジュース飲んでみたい! 誰のかわからなくても気にしないよ。でも、怒られなかったらいいな」

【その姿のように不明瞭な言葉に、鈴音の対応はこの上なく優しいものだっただろう】
【わざわざ期限を確認して、氷も入れてくれて。やっぱり彼女は給仕のままだ】
【だけどヒトガタは気にしない。こいつはただの箱だから。微苦笑にだって気がつかない】

「そっかそっかそっか、我々でもしちゃったよ、我々が我々んじょっんじょっ、じょぷじょぷじょぷ」

【ヒトガタが奇怪に暴走し始めたこの状況でも、なおそうしてお客様として扱えるのは】
【彼女自身も人ではないゆえか、潜ってきた修羅場ゆえか】
【ともあれ、ヒトガタの出番はこれでおしまい。やっぱり、渡したいなら直接でなければ】


……ああ、ごきげんよう。そうだな。あの場に私もいた
少なくとも私に関しては、謝るとまではいかないだろう。むしろ、私の方が責められる場面かと思っていたよ
お前を生かす選択をしたにも関わらず、たんぽぽは消え、お前は世界を滅ぼす決断までした。それまで私は手をこまねいていたのだから

……確かに、聞きたいことはいくらでもあるがな。どれから聞いていいのか、途方に暮れるくらいに
だから、先に答えておこうか。こいつは、以前から計画していた私の切り札の一つだよ
『ブラック・ボックス』。廃の国の暗殺者一族、ボックス家の者たちの成れの果てだ

廃の国の権力者たちの暗殺道具兼緊急避難先として、使用者の意志で何でも中に入れられるただの箱にまでなったらしいが
結局、使われることなく廃の国は滅んだ。それを私が掘り出した。すると、こうしてボックスどもの意識が混ざった妙な人格がおまけでついてきたんだ
箱は数えきれないほどあったというのに、そのすべてに同じ人格がくっついている

――――何も出来ず仕舞いだったことの、せめてもの埋め合わせにしようと思ったのだが
顔も出さずに渡そうとしたのは不誠実だったな。すまなかった

【どうしようもなくなったら、この箱の中に逃げろ。箱の中はブラックボックス。観測されなければ、どんな願いも叶えられる自分だけの世界になる】
【そんなどうしようもなく後ろ向きで、あまりに手遅れな提案を】
【面と向かってするのは、どうしても躊躇われた。だが、そうも言っていられない】

/続きます


4 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/22(木) 05:26:34 h7nAXcQg0
前スレ937-938
……お前が私の言葉でたんぽぽを思いついたとまで言ってくれたと言うのに、私がお前に手料理を振る舞ったことはなかったな
それはありがたい。好き嫌いがない相手には、本当に作りやすいんだ

わかった。では、いらっしゃいませ。お任せとなると、少し悩むが……なるほど、郷土料理か
私の生まれは昼の国だ。――――幸い、この材料なら三つほど作れる

【やはり、どこまでも奇妙な縁だ。彼女の大切な姉を害して、それでどうしようもなく敵対したはずなのに】
【何の因果か、彼女は世界の敵で。こうして今、自分の料理を振る舞っている】

【彼女が座れば、入れ違いに店の奥へと歩いていく。冷蔵庫の中身を見て、すぐにメニューを思い浮かべる】
【世界の明日がかかっていたとしても、きっと同じように肉屋は作るだろう。この悪漢にとっては、眼前の神様は】
【あの日であった恐ろしい少女で、ずっと前からの宿敵で、そして。いったい、この関係は何なのだろう】

【冗談めかして笑う彼女の声に、似合わぬ笑みを自分も密かに浮かべて。よく手を洗ったらそこからは、手際よく料理を始める】
【少量あった野菜とキノコと肉類。それからパスタ。野菜とキノコは昼の国産の物だった。常昼の陽光を浴びて育つ大地の恵み】

【野菜は食べやすい大きさに切る。レバーは牛乳につけて臭みを抜く。キノコのいしづきは手でちぎる。パスタはもう茹で始めている】
【四角く切ったひき肉と臭みが抜けたレバーとバラ肉に、塩を加えて粘りが出るまでよく混ぜる】
【調味料を加え、赤ワインにブランデーに卵黄を混ぜ合わせる。型に入れて叩いて空気を抜き、網脂で蓋をして香りをつけて】
【金串に刺して焼き上げる。それから、氷で冷やして旨味を馴染ませる。皿に盛りつけたミートパテ】

【そうしている間にも並行で野菜とキノコも仕上げられていく。鍋にバターを入れて熱し、いしづきを千切って適当な大きさに揃えたキノコと野菜を薄力粉で炒める】
【残っていた出汁を加えて、煮込む。煮立ったら弱火に切り替え、とろみがついたころには調味料が加えられている】
【最後に、粉チーズを少々。昼の国風キノコスープが出来上がった頃、同時に炒めていた白菜とニンジンとパテに使わなかった肉も仕上がる】

【米粉と牛乳、コンソメを入れてよく溶かす。滑らかになっていくクリームソース】
【ゆであがったパスタを加えて、昼の国産のトロリ濃厚なクリームスパゲッティ】

【彼女はきっと大人だから、ワインだって大丈夫。グラスは何の皮肉か、ギア・ボックスがUTに入団した日】
【セリーナに贈った、ギア自らガラス工芸で作った代物だった】

【パテとキノコスープとクリームスパゲッティ。並べて、ワインを注いだグラスを横に置く。料理をしたら、後は語らない。彼女が食するのを待つだろう】


5 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/22(木) 05:39:36 h7nAXcQg0
前スレ961
【今日も世界は雨模様。真っ暗な雲が太陽の光を遮っている】
【やってくる嵐が過ぎ去った後に、人々は残っていられるだろうか。それを知るはずの神も、人を滅ぼす側なのがこの世界だ】

【そんな世界の暗い空の下、誰も来ない場所で暗く笑う女が、まともな人種のはずもなく】
【そして、そんな彼女が見下ろす下界で飛び交う、怒号と悲鳴と混乱を巻き起こしている】
【ガスマスクを付けた大男もまた、まともな人種のはずはない】


【通行の乱れは、大通りの真ん中に身を躍らせ、子供が適当にこね回した不細工な粘土細工さながらに、両腕を膨らませて肉塊に変えた】
【身長は軽く2メートルを超えているだろう怪人が、暴れていることで発生していた】

【通る車を片っ端から叩き壊して動きを止めている。逃げ出すドライバー、逃げ出す通行人】
【そこに、何やら白い霧のような気体が吹きかけられる。同じくガスマスクをした悪漢たちが、路地裏から湧き出て】
【背中に背負ったタンクから伸びる、ノズルより噴出したガスを撒いているのだ】

【それを浴びた人たちは、徐々に動きが鈍くなり。やがて、足先からゆっくりと固まっていく。石になっていく。石化毒ガス】
【地獄絵図を生み出した張本人たる大男が、ふと上を見上げて。不穏な会話を繰り広げていた女性を、確かに見た】


【たちまち、大男の両腕が伸び。ビル壁を掴んで収縮し、また伸びてを繰り返して、女性のいる屋上まで這い上がろうとするだろう】
【首尾よくいけば、大男は柵の向こうから女性を睨むことになるだろうか。ガスマスクを取ると、黒い瞳の両目と額の大きな目玉が露わになる】
【薄汚れた灰色の作業着の上に身に着けた黒いラバー地のエプロンがビル風にたなびく。黒いゴム長靴が、屋上の端を踏みつける】

……やあ、こんにちは。今にも嵐が起こりそうな、良い天気だな?

【重苦しい声で、異形の男はそう言って女を無遠慮に眺めまわした】


6 : ジョージ :2018/11/22(木) 08:51:46 7Rmbx1l20
前スレ>>961
//前スレ>>996取り消します!


7 : 名無しさん :2018/11/22(木) 11:49:31 h7nAXcQg0
>>6
/すみません、完全に見逃してました。私の方が>>5の方取り消しますので……本当申し訳ありません……


8 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/22(木) 14:39:27 6.kk0qdE0
//>>1乙です!

前スレ>>988

【アリアの美麗なモデル然とした長身に、そのスーツはよく似合って】
【僅かながらの憂いを瞳に宿し、吐息に乗せて】

「まあ、把握出来ない部分はかなりあるが、此れが現状我々残りの土御門派と、そして国防陸軍の把握する全てだ」

【後は、と先程のタブレットを示して見せる】
【い号文書、捕縛直前の厳島が秘密裏に本国に送った文書、これまで関わった、知り得た情報や状況、関わった全ての人々が記された、言わば関係性と言う名の鍵】

「ヨシビ商会?ヨシビと言えば櫻国では妖怪売買の暗躍結社だ」
「最もその全容は多くが謎に包まれている、どうしてまた奴等の名前が?何か知っているのか?」

【ここで、いや待て、と険しい顔を見せて】
【アリアはと言えば、ヨシビの話が出たは良いが、何か因縁があるかの様に、苦々しげな表情を浮かべ】
【やがてその凛とした双眸がこちらを見据えれば】

「その新鋭魔導イージス艦の、鍵になる人口生命の製造法だが、確か……妖怪や魔性の強力な魔力回路を核ごと摘出し移植する方法だったが、いや、まさか……」

【暫し無言で、されど苦味しばった様な、考える様な表情を浮かべて、そう口にして】

「奪還すると言うのか?諜報部を?」

【その提案に、信じられない、とまさに注げる様な、そんな視線と表情を返し】

「確かに、それが最も手早く近道だ、手を貸してくれると言うならば、是非に借りたい……だが……」
「……彼らはあくまで櫻国の諜報員、経緯や行動はどうあれ全く無罪の無垢な拘留者では無い」
「対して君達は、少なくとも水国公機関の人間、その行動は下手をすると……国を裏切る事になるぞ?」

【苦しい話をする様に、そして慎重に言葉を選びながら、アリアにこう答え、そして聞いた】

「それを選ぶとは良い趣味です」
「え?そうなんですか?正直、僕ウィスキーとかバーボンとかさっぱりで……」

【対して此方では、ミレーユの様子に幾分かご機嫌に杉原なる男が答えた】

「……あのー、この事ってゴトーさんは?」

【ライガは少々不安げに、ミレーユに耳打ちし】

「……条件を、対価を教えてくれ、協力の見返りに外務8課は我々に何を所望する?」

【再び百合子は顔を上げ、アリアを見て、こう聞いた】
【無論、この作戦への協力はタダでとは行かない筈、此処からは駆け引きであり、取引きの場に近い物だろう】


9 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/22(木) 18:03:08 8HgzVhsg0
前スレ≫987


【通信の断絶まで、後藤は軽薄な笑顔を液晶に向けて、手を振っていた。「またね、麻季音さン。」 ─── 信号の切れるなら】
【ひとつ大きく嘆息して、吸い尽くした主流煙の残滓ごと何かを落ち着かせるのだろう。銀髪の女が目を瞑る】


「この役職を選んだ時から、アンノウン・ソルジャーにも数えられん事は承知していますよ。とっくの昔に、ね。」
「それに、 ─── やると言った仕事を、できませんでしたじゃ済ませません。その為に我々は組織されているのですから」


【改めて霧崎に向けるのは矢張り幾らか気の抜けた表情である。昼行灯と呼ぶにも憚られるものがあるような言葉の選び方】
【然るにその内実が剣呑を極めるというのは彼の本質を示しているのだろう。ともすれば、彼の率いる集団の本質を】


「信用ならないのに我々をお選び頂いたというのは全く誇らしい事ですな。」「 ──── まあ、挙げていけば幾らでもありますよ。」
「法執行機関としては、混迷を極める新楼市の主権と治安の状況を抜本より改善に向かわせられる又とない機会ですし ─── 、」
「無論ながら初瀬さんの理論が実現されるならば素晴らしい鬼札だ。民兵への訓練と指揮を主軸とした、総合的なパルチザン戦術を実戦で研鑽する好機でもある ……… それに」

「余り大きな声では言えない話ですが、我々が公権力として国家に立ち向かう以上、梯子を外される可能性は必ず介在する」
「マークの薄い今のうちに独立性を高めておきたいんですよ。もちろん徒に争いを煽るような真似をするつもりはありませんが」
「それでも主権を握った物流というのは、色々なところに伸ばしていけるものだ。予算だけを頼りにする訳にも行きませんから」


【腹を割ると言うに実以って彼は剣呑であった。「あなた方の稼業を邪魔するつもりは毛頭ございませんがね。」付け加える言葉は真実味に欠けつつも】
【この分では未だ語らぬ真意さえも含んでいるのかもしれなかった。 ─── それこそ割合に饒舌な彼の語るところではないのだろう。秘してこそ意味のある内心であれば】


   「 ……… ま、根っこのところまで遡るならば」「結局は貴女と同じだ。」
   「通さなきゃいけない筋を通す為。我々に必要な動機は、それだけです。」


【それでも、 ─── 最後に付け加えた一節だけは、確かに本心の片鱗であるに相違なかった。物欲も出世欲も無いこの男の抱く野望など、そうでしか有り得ない】


10 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/22(木) 18:03:30 8HgzVhsg0
前スレ≫991


【方々に散った無作法な黒髪が痛ましかった。 ─── 腫れ上がった己れの片頬の感覚なんて無価値だった】
【ひどく凄絶な視線で少女を睥睨する意味合いを彼自身も理解していないのだろう。ならばきっと優しい答えを求めていて】
【 ─── それさえも解らないと語られるならば、泣き出しそうに眦を撓めていた。嗚咽の理由さえ誰も答えてくれない】
【始末のつかない感情を打つけあうより他に何があるというのだろう。互いの鼓動と体温と柔らかさだけが変わらないのが、もはや憎らしくて仕方ない】



  「分かんないよ。ボクだって。だって」「 ─── 過去はどうあれ、今はあるだろ」



【そうして吐き捨てるならばやはり彼は少女の囚われる悉くを否定しようとしていた。彼の道理で解せる範疇になかったから】
【フローリングに転がるハンドガンを取り寄せて押し付ける。 ─── 彼自身のこめかみに。セフティを外して、銃爪に指をかける】
【止められるのは少女しか居ないのだと分かっていてそうしていた。撃針を打ち抜きうる指先の凡そ震えていないのが、卑怯だった】



    「キミも、 ……… レオンや、センセイや、皆んなみたいに」「ボクを、独りにするのか?」
     「だってボクはもうキミで」「 ─── キミがいないのは、ボクがいないのと同じで」
       「キミが幸せじゃないのは、ボクが不幸せなのと同じで」「 ……… それでいいの。シグレは」


        「ねえ。」「答えてよ。」



【 ─── 迂遠な論理。論理で決着の付かない命題だからこそ彼は詭弁を弄していた。彼女が幸せになるならば本当は自分が幾ら不幸せになったって構わなかった】
【それでも彼は答えさせようとするのだろう。 自分を不幸せにさせたいのか、全く押し付けがましく未練がましい問いを、それでも決して抱く背中を離す事はなく(だって)】


11 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/22(木) 18:03:54 8HgzVhsg0
>>8


【少女の言葉を聞くに、 ─── 今一度、アリアは目角を細めた。幽かに奥歯を噛み締めてさえいた。】
【厳島なる尉官の残した文書に軽く目を通していきながら、彼女は再び嘆息した。その隻眼に改めて宿るのは、いよいよ代え難い意志であろう】



「 ─── どうやら、話が見えてきたようね。」「全く、よくやるものだわ。 ……… 看過しがたい遣り方ね。」

「我々が"存在しない"部隊であるということを念頭に置いて貰いたいかしら。」「向こうに我々の関与を悟らせるつもりはないわ」
「停泊中の駆逐艦に吸着爆雷を仕掛けた上で秘密裏に潜入、人質の救出後に船底を爆破し証拠を隠滅する。その程度でしょう」
「七面鳥撃ちより容易い事よ。 ──── 我々は手段を選ばない。もしも彼らが我々に敵するならば、その時は殺すだけ」



【皆目歯牙にもかけぬように口ぶりで淡々と彼女は答えた。 ─── ならば、代えられぬ信条があるのだろう。】
【提示したのは極秘裏の潜水工作戦。疑いなく特殊部隊の仕事だった。そして彼女らはそれを決行するだけの能力を持っていた】
【下手を踏むつもりもないのだと、冷然とした声音が暗に語っていた。汚れ仕事は本領てあるのだろう】


「 ……… まァ、あの人はレッセフェールだし。大丈夫だと思うよ。事後報告だけど」

「貸し付けた恩は忘れないでいてほしいものね。向こうの軍部と非合法組織に関わる、可能な限り仔細な情報提供 ─── 、」
「或いはこちら側からの、本件に関わる工作員導入に際する口利き。 ……… こちらから生じうるであろう要求は、そんな所かしらね」


【「46」と白文字に堂々と示されたバーボンのボトルを開けながら、ミレーユはやや諦観の篭った言葉を零した。示される報酬は決して金銭的なものでなく】
【だからこそ意味合いを持ち得ると言外に伝えていた。 ─── だとしても、彼女らが暴利を強いることはないのだろう。なんとなれば、これは信念の戦いであるから】


12 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/11/22(木) 20:50:20 ZCHlt7mo0
>>前996>>5

(……なんか、2ヵ所で流れが……?)

【暗い空を背景に、グッと眼下を覗き込む女性。今は、ここから地上は相応に遠い。高層ビルと言う訳でも無い以上、そこまで高みの見物でもないのだが】
【それでも、その時女性は、気軽な傍観者気分で――――ある種の野次馬根性で、下を覗き込んでいたのは事実だろう】

――――ッ、ちょっと……何アレ……ッ!

【そうして、まずスーツの青年と視線を交わす。流石に遠目で良くは分からなかったが、その瞳が、何か異様な輝きを宿している事は見て取れた】
【そして、明らかに此方を意識して合図を送り、そしてこちらへとやってくるという事も――――無論、女性の方には覚えはなかった人物だ】
【――――ゾワリと、言いようのない「嫌な予感」が、背筋を駆け抜けた】

まさか、こっちに――――って、向こうは向こうで何なんですか、もう! なんか明らかな狼藉が――――ッ!?
……ちょいちょいちょい……おいおいおい……嘘でしょ、これは流石に……ッ!!

【すぐにこの場から離れなくては――――そんな衝動に突き動かされながらも、眼下の『もう一方の異変』が、突然騒動へと変わるのを、女性は確認する】
【思わず、もう1度下を見下ろして。中心人物らしき大男と、再び目が合ってしまう。そして、尋常ならざる身体捌きで、ビルの壁面を登ってくる】
【中からは不気味な青年が、外からは危険な大男が、明らかに自分を目指してくる――――思わぬ形で、進退が極まってしまったのを、悟らざるを得なかった】

【これは、自分の手に余る事態かもしれない――――思わず女性は、先ほど仕舞い込んだ通信端末を、再び取り出していた】

――――ッ、私よ!
急で悪いんだけど、私のいるところに兵隊、何人か寄こして頂戴な! 非常事態なの、全く不意打ちで!
――――そんな、1人でも3人でもちょっぴりでもたっぷりでも良いですから! 直ぐどうこうじゃないけど、急いで欲しいのは本当なんですって!
……あぁ、もうダメだ…………とにかく、待ってますからね!

【此方にたどり着くまで、恐らく猶予はほとんどない――――その間を使って、女性は先ほどまでの通信相手に、何らかの救援を要請する】
【これを、2人の相手に悟られてはならない。可及的速やかに連絡を済ませ、そして通信を切断する】

【――――咄嗟にポケットに仕舞い込んだのと、2人の人物が、恐らくはほぼ同時に、屋上へとたどり着いたのも、きわどいタイミングの出来事だった】

――――えーと、です……ね? 私は、あなた方に面識がある訳でも無ければ、用事がある訳でもないんですが、ね……?
……一体、何だってんです? 私を見つけて、一直線にやってきた訳ですけど、随分熱烈ってもんじゃないですか、そっちのスーツのお兄さん?
そして、そっちのマッシブなお人は……なんかのファンサービスですかね? このボッチ女は別に、あなたのファンじゃあありませんよ……?

【咄嗟に身を退いて半身になりながら、左右に2人の男を迎える女性。3人の位置関係を線で結ぶと、歪なVの字が出来上がる格好だ】
【明らかに顔を引きつらせながら、女性はジョークじみた言葉で、まずは2人をそれぞれに牽制する】
【急転直下のこの事態に、一般人である女性は――――少なくとも、この場で、一見の印象では、一般人だろう――――余裕と言うものがなかったのだ】

(――――何分、持ちこたえれば良いってもんなのかしらね……バレてたりしたら、正に私は『窮鼠』って奴ですが……猫を噛めるんですか、そう都合よく……?)

【――――何とか連絡をつけられたという事だけが、今の女性の切り札のようなものだった。後は、それを悟られていなければ――――】


13 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/22(木) 22:13:04 WMHqDivw0
>>998

【ヘアアレンジするなら髪は多少くせがあるほうがいい。さらさらすぎると崩れやすいから】
【それでもなんとかきれいに編んでいく、最近の流行りではわざと崩すのがいいらしいが】
【あえてきっちりと、形を整えて。……こんなことするなら蝋燭なんかより、造花のひとつふたつ買って】
【ラプンツェルみたいに飾ってやればよかったって思う。――ぱちん、とゴムで留めて】

そーお。じゃ、ケンカしよーよ。鈴音ちゃんはわたしはこれに納得いかない! つって、
他の人はそれでも世界滅ぼされたら困る! つって。そーやってやりあって――
でもそれで仲直りするのが、オトモダチでしょ?

【果てのない意地のぶつかり合いの先に和解が待っているなんて信じているようだった、ならば】
【こいつもこいつでひどく我儘。そんなに上手く行くはずないって、誰でもわかるのに】
【それでもまだ可能性があることを知ってしまったら、もうそれしか、見えなくなる】
【叶わない夢だと知っていて憧れてしまうのは――結局のところ、こいつだって、同じだ】

わたし我慢したくないの、みんなにやさしくされないと嫌なの、守ってほしいの。
言っちゃっていーよ、それでそんなのダメって言うヤツだけぽこぽこ叩けばいい。
そんでそのあとちゃんと仲直りできたら――そいつのこと、オトモダチって呼んでいい。

鈴音ちゃんとトモダチになったら美味しいごはん食べさせてもらえるようになるんだもん。
だからおれは、なりたいって思うな……神様にお料理してってねだるのも、ヘンなハナシだけど!

【そしてこれからも、いつまでだって夢見てるに違いない。程よく焼けたカリカリのトースト】
【底だけちょっと固くなった目玉焼きと、噛んだらぱりっと音のなるウインナー、それとうんと甘いコーヒー】
【こいつが少女の形をした神様にお願いするのは、奇跡を起こしてほしいなんて大それたことではなく】
【たったのそれだけでしかないんだから。今までも、これからも、不変の普遍を望むから】


14 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/22(木) 22:26:02 WMHqDivw0
>>10

【もうなんにも見たくないと願って、意図的にぼやかしていた視界が一気にクリアになる】
【つめたい銃器がふたたび彼の手に握られるのを見て、血相を変えて、怯えるなら】
【またしても金切り声めいた泣き声を上げて――めちゃくちゃに暴れて、縋りつく】

だめっ! や、ダメ、………………や、イヤ、いやっ!
そんなのダメだよ、だめ、でも、……あたしと居ても、エーノさんは、…………、

【彼が手にする銃をなんとか引き剥がそうともがく。叶うなら手からひったくって、投げ捨てる勢い】
【どこまでも我儘な女だった。まだ否定の言葉を吐くくせに、そればっかりはしてほしくなくて】
【やがて暴れるのもやめにして――観念したように首を垂れる、晒した項、そこから斬り落としてほしかった】
【相変わらず背中は痛い。布越しにでもこれだけの強さで抉り取るみたいになじられるなら、本当に】
【きっとその向こうで薄っぺらい、生きてるフリした屍のつめたい肉に、血が滲んでいる。ばかみたいな話だった】

………………………………あたし本当は、誰のことも好きになっちゃいけないの。
なのにダメだった、みんなのことが、エーノさんのことが好きになっちゃった、……だからバチが当たってるんだ。

……、……エーノさんは、あたしのこと、どこからどこまで知ってる?
イズル……ミアから、どこまで聞いた? あたしがきちんとした人間じゃないことは、知ってる?
バケモノなんだよ。生きてたらほんとは25歳なの、エーノさんより、年上で。
なのに一生このままの姿なの、エーノさんがこれからどんどん年を取って――おじいちゃんになっても、
あたしはずっとこのままだよ。……きっと変な目で見られちゃうよ。子供だって、作れないし……

それにね。………………あたし本当にどうしようもないバケモノなの。あのね、あたしは、

【「ヒトを食べて生きる、本当におぞましいバケモノなの」。消え入るような声で語り始めるのは、何事か】


15 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/22(木) 22:32:26 6IlD6zzI0
前スレ>>999

自己満足のご高説はやめてほしいのよね、解っているわ。
そこの所はアナタの振る舞いで十分に把握してるから心配しないで。


『たんぽぽ』……ええ。知ってる。―――……それ一つとっても苦労してるみたい。
(……確か集団食中毒事件で騒ぎになってたわね。被害にあった子供はかわいそうにとしか思わないけれど)


【―――】
【少女がつむぐ事情を一頻り聞いて尚キャロラインは口を挟まない】
【話には続きがあるから。軋んだ心によって生じた病巣、その全貌を晒していないから】
【網越しの懺悔室で吐き出す苦悩を聞き入れる神父みたいに静かに言葉を受け止めていた】


不幸な出来事が重なりすぎて、耐えられない現実が重くのしかかったなら。
―――――要らないだとか棄てられるとか思うのは無理もないのかもしれない。

―――――――……、まだ話の続きがあるみたいだから、遠慮なく続けて。
全てを吐き出すまでは話の腰も折らないし、アナタの出会った傲慢な大人たちみたいな有り難い言葉は出さないから。


【少女の吐き出す心情は初対面であるにも関わらず、抱く苦悩の濃い色を容易に感じさせて】
【それでも尚続きがあるのなら―――すべて吐き出させるのだ。どうせ辛い思い出を聞いていやな思いをしたところで】
【キャロラインは少女と違い記憶に苛まれる事は無いから。一週間も経てば少女ごと忘れるのだから】


16 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/22(木) 23:13:07 BRNVt/Aw0
>>2

ええ、その上俺達は裏稼業ときたものですから何処から何が漏れるか…………あー……
【青年は更に相槌を打とうとして不意に顔を覆う。どうやらこれを話している自分自身ペラペラと喋っていたという事実に気付いたらしく】
【けれども、まあ取引先だし敵じゃないし、と思い直したのかすぐに手を外して、ま、いっかー、と呟く】

実際問題妖怪食べたらどうなるんでしょうねー?何か不思議な力とかついたりすんのかなー……

「ええ、希少で地元の者もあまり詳しくは知らないようですが櫻の地方の伝承などを纏めた文献にはそれなりに詳しく記載されているそうですよ?」

もしかしたらそういう事かもしれませんねー……まあ妖怪の流儀とか全然知らないんですけど
何らかの覚醒、ですか……その子が俺達に対して復讐心でも抱いた日にはぶっ殺されちゃいますよねー……怖いなあ!
【怖い、という言葉を発しつつ水鶏は何処か愉しそうに笑っていて。恐らくはその小娘が復讐の為に現れようが自分は返り討ちに出来る、という自信があるのだろうか?】
【或いは、先程の『噛み応えのある妖怪』という発言から考えるに半妖であるとはいえ強い妖怪と戦えるかもしれないという期待でもしているのかもしれない】
【あの白い女の子といい半妖の女の子といい、"遊ぶ"のが楽しみな子が増えていくなあ……なんて事でも考えているのだろうか?愉しそうな表情からは真意は読み取れなくて】


【そうして互いに挨拶を交わしヨシビ商会の面々は廃墟を後にしていく】

〜〜♪ 〜〜♪

「なんでぇ水鶏、鼻唄なんざ歌いやがって。御機嫌だなぁオイ!」

……あははっ、そーかなー?
【彼の口から紡がれるのは何処か暗いようなメロディ。恐らくは何処かの子守唄、なのだろうか】

【この先自分達がどのような道に立たされるのかを末端の彼らはまだ知らない──】



/絡みお疲れさまでした!


17 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/22(木) 23:13:46 BRNVt/Aw0
>>15

【少女の話はまだ続く】

私なんか要らないんだって気付いて……確か翌日でした
でももっと早かったかもしれないしあるいは二日後だったかもしれない……
父親のように慕っていた人が悪事を企てて捕らえられたと知りました……
けれどもそんな事する人じゃないんだって分かってたから……無実の罪なんだって気付きました
でも私じゃどうにもならない、その人の無実を証明する事も出来やしないって分かって……

……そんな時に二人の大人に遭って……それぞれ別の日に別の場所でだったんですが……
一人目に見つからない所で死にたければそうすれば良い、幾ら逃げたって優しい人が見逃さないからって……
ひょっとしたらそうやって煽られて「だったらやってやる」って思ってるのも"そう"かもしれないんですが……まあ……
……でもとにかく理不尽だったけど今すぐ死にたいっていうのはなくなった……筈だったんです……

──たんぽぽの食中毒のニュースを見るまでは

……すぐに私の所為なんだって分かりました……私がいなかったらもう一人の友達が回す事になるんですけど……その子もまだ事件がちゃんと解決してなかったから……だから……きっと誰もいなくて……だから……私が悪くて……役に立たない所か"あの子"の居場所壊しちゃって……自分の"セカイ"……自分で壊しちゃって……もう私の"セカイ"は壊れて……
【不意に少女の言葉が止まる】

【その濁った金色からぽろぽろと涙が零れ落ちて】

しょく、ちゅー……どくっ……なんて……っ……どう、すれば……いい、の……っ?もう、りん……ね、ちゃんも……ゆ、づきちゃ……も……オ、ム……レツ、さんも……っ……ゆるして……っ、くんない……よぉ……っ
【へたん、と座り込んで少女は泣きじゃくる。紡がれる名前はきっと友人達の名前、なのだろうか】


18 : 名無しさん :2018/11/22(木) 23:27:58 F9q6XRV20
>>3-4

【――――さて、自分がお客さんということになれば、彼女は、机に座るのだろうか。その前に、別の机にあげてある椅子、一つ、持ってきて】
【自分の座るテーブルの、適当なところによいしょって置くのだろう。やがて彼が、ヒトガタの話を補足する形で言葉を付け足すのなら、それを聞きながら】
【彼、彼女、分からないけど――あのお客さんのためのジュースを、元の席のまま。自分は、新しい席に――そうすることに、あんまり意味はないのかも、しれないけど】

――――――――そんなこと、ないよ。わたし、内緒にしていたことがあったの。ううん。そうやって思ってない、ふり、しようとしてた。
わたしね、そうしてもらったら逃げられるんじゃないかって。約束したこと全部を嘘にして、――もうわたしは死んじゃったんだから、って、言い訳して。
黒幕とか。円卓とか。いろんなこと。全部のヤなこと。――そういうこと全部、"終わったこと"に出来るんじゃないかって。そんなはずないのに。できちゃうんじゃないかって。

【あの時の言葉には、隠し通したかった狡い心が紛れていたんだって。――もちろん彼に告げたのは本心だった。自分が死ねば、それで全部が解決する案だと思った】
【そうしてどこかに隠した心もあった。――自分の死がみんなの知るところになれば。からっぽになって誰でもなくなった"わたし"は全部をやり直せるんじゃないかって】
【ひとりっぽち逃げ出す選択肢を、彼女は思い浮かべてしまっていたこと。だけれど同時に、それとは別に、自分を殺すことで"解決"しておくべきだったんじゃないかと、】
【いろんな気持ちがないまぜになってしまう。殺されたかった。だけど殺さないって決めてくれたことが嬉しかった。――嗚呼、もう、どうしたら。気持ちばっかりが渦巻く】

…………――ううん、ありがとう。

【――だからか、彼女が浮かべるのはどこか泣きそうな微笑なのだろう。箱へ手を伸ばすのなら、その角に指を這わせて。それから、そっと、引き寄せる】
【手触りは滑らかなのだろうか。すべすべするのだろうか。少しざらざらするのだろうか。するするしているのだろうか。どちらにせよ、伏せた視線、長い睫毛がかすかに震え】

そだね。――カニバディールは、わたしの作ったもの、食べたことあったっけ。何かの時には作ってあげる、――、その時、世界がまだ、あったらね。

【そうしてしばらく指を這わせたなら、少女は箱をりんごジュースの前に置くのだろうか。いきなり開けて流し込まないだけ偉いのかもしれなかった。――余談】
【くすと笑う声音はいくらか悪戯っぽい。――世界がまだあって。その時少女が誰かに料理を振る舞える状況だったなら。嗚呼ならそれはとんでもない理想論、願うなら】
【彼女は世界を滅ぼすと決めてしまった。少なくとも、多数の観測に観測されてしまった。だから彼女は世界を滅ぼす神様だった】
【――そんな神様が、世界も滅ぼさず、また自分が滅ぼされることもなく、誰かに料理を振る舞うだなんて。そんなの。それこそ神様の奇跡みたいな、――】

/分割します!


19 : 名無しさん :2018/11/22(木) 23:28:13 F9q6XRV20
>>3-4>>18

【――――――彼が料理を仕上げて運ぶ時、彼女は、机に突っ伏しているのだろう。けれど寝ているわけでないのは、呼吸の仕草が伝えて】
【事実彼がカウンターの奥に在るキッチンより出て来るのなら、彼女はゆると顔を上げる。――にこと笑んでいた、「いつもお料理するんだね」って、揶揄うよな声、添えて】

お料理上手なひとの音だったもの、――ふふ。いい匂い。いただきます。 ――自分の分は? ないの? 

【それは何か仄めかすような。――自分にきっかけをくれたひとに対しての、何か、気恥ずかしさを孕んだ賞賛の色合い。はにかみに宿すなら、小さな声、掌を合わせて】
【照れ隠しに乗じて伸びてしまう前にパスタから手を付けるのだろう。とろりとしたソースの温かさと濃厚さは冬に似合いの味、一口頬張って呑み込めば、あどけない顔に笑みを浮かべ】
【おいしいって言う前にきっと伝わるんだった。それからスープにも手を付ける。たっぷりの茸をしゃきしゃき噛んで、そのものの旨味にチーズの味わい、重なるのなら】
【やはりごく上機嫌な顔をしていた。ならば食べるのがよっぽど好きなんだと思わせた。ましてや、おいしいものを食べて不機嫌になるはずない。――ミートパテも、ぱくりと】
【うんと細いものだからあんまり食べないなんて思うひとが居たら、まず、それは間違いだと訂正してまわる必要があるだろう。それくらいにおっきな一口、おいしそうな一口】

――いいなあ、カニバディールのところのみんなは、おいしいご飯、食べさせてもらえるんだね。
セリーナもたまにサンドイッチとか作ってくれるけど。――ふふ、おいしいよ? だけどね、いっつもこんなご飯食べられたら、きっと嬉しいね。

【――よほど早食いというわけではないけれど、ぱくぱくって食べるのなら、あんまり長い時間はかからないんだろう。ならばやがて紡ぐ言葉は、】
【とうてい正義組織の端っこに名前を連ねるはずの彼女が言ってしまっていい言葉ではなかった。彼のところのひとたちはいいね、なんて、あんまりに、当たり前に】
【セリーナだってたまに何か作ってくれることはあるけど。なんだかもっとこうワイルドなメニューばかりだから。肉とパンと酒!みたいな。――酒、と言えば、】

――――――このグラス、綺麗だなって、いつも思ってたの。

【普段はワインは飲まない彼女なのだけど――なんてことなく味があまり得意ではない――今宵は、この雰囲気も手伝ったのだろうか。或いは、彼の選んでくれたものが良かったのか】
【ぺろりと飲み干して、今ではそのグラスを眺めていた。掌の中にくると弄んで、――ごく平和な一時は、けれど、残滓でしかない。しなくちゃならない話は、山ほど、あるから】
【だけれど、あるいは、もう少しくらい柔らかい時間を楽しんでもいいのかもしれなかった。それとも、なにか、二人で酒でも飲んで語らってもいいかもしれないかった】
【――だってここは酒場なのだから。お酒のつまみを作る程度の食材はまだ冷蔵庫に残っているはずなのだから。こんな奇妙な関係性の二人だからこそ、きっとなんだって、赦されて】


20 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/23(金) 00:18:53 qQJGGnkM0
>>14

【取り乱す少女の狂える指先を彼はあっさりと受け入れた。 ─── か細い手からもぎ取られた拳銃は矢鱈に軽くて、弾倉さえ入っていなくて、全ては虚仮威しだった】
【とても悲しそうな顔をしていた。答えられない問いに答えてほしかったに違いなかった。色褪せた紅色に掠れる青白い頸の膚地に、口付けたなら笑ってくれるだろうか】
【代わりに布地を隔てて指先に滲む冷たい血が、爪と肉の間を浸していった。その感覚さえ愛おしいなら、愛せないものなんて何があるというのだろう】
【 ──── だから、少女の吐露を彼は拒まなかった。苦痛を教えて傷痕を刻んだことを訳もなく詫びるように、宥めるように、慰めるように、血濡れの指で背筋を撫ぜて】
【そうして紡がれる決然的な告白に、 ─── きっと彼は励ますために笑っていた。血の気すら失せた疵だらけの頬を、懸命にやさしく撓ませながら】


「 ─── アリアだって、そうだったよ。」「シグレも知ってるだろ?」「あの背の高くって、不愛想な、長い銀髪の女」
「ボクとアイツは、昔、付き合ってて。」「 ……… けれどアイツも、シグレと同じだった。生身じゃなくって」
「歳も取れないし、子供も作れないし、メンテナンスを受けなかったら半年で死ぬ身体で、自分の為なら誰だって殺すんだ。」
「それでも、ボクはアイツが好きだった。ぜんぶ受け入れて、好きだった。今でも、アイツの力でありたいって、願ってる。」


【思い出を語る声音は、 ─── 肯定としては幾らか不適なものだった。今の想い人の前で、昔の想い人の話をするなんて】
【あるいは気を逸らす為だったのかもしれない。無神経な話題だって、むくれさせた頬に不愉快を示させたかったのだろうか】
【それとも、 ─── 彼自身を、なにか、婉曲して奮い立たせる為であったのか。幽かに震える言葉尻と、どこか無理に笑う顔貌は、事実として何らかの証明であった】



     「だから、 ─── 教えてよ。」「どんなキミでも、愛してるから。」



【ただ淀みなく見据えられた碧眸の、執念を帯びて奕々たるこそが真理であろう。(それさえもどこか言い聞かすように聞こえるのは、きっと少女の怯懦を初めて見るから)】


21 : 名無しさん :2018/11/23(金) 00:45:23 F9q6XRV20
>>13

【一度だって染めたことのない処女髪はきっと指先に吸い付くように滑らかなのだろう、どこか冷たくて、それで、ようく手入れされた、全く痛んでいない髪】
【やがて綺麗に編み上げられるまで、彼女はすっかりと大人しくしていた。――ぱちん、と、ゴムの音を合図に、ゆるりと目を持ち上げる、泣きはらした真っ赤な目が見上げて、】

……………………――――わかんない、

【――ごく困ったような顔して、また、わずかに伏せてしまうのだろう。彼の言っていること、少し難しいって、表明する眉の角度】
【だって"ケンカ"なんてしたことなかった。喧嘩になってしまいそうな時、彼女はいっつも道を譲ってきた。自分をへし折ることで、回避してきたなら】
【ケンカして仲直りしてお友達。――――そんなの難しいよって、態度が伝えていた。ともすれば、わたしには出来ないと言ってしまう寸前にも見えて、】
【なにより少なくとも"ひとりじゃできない"って言う寸前の目をしていた。――教会の神父さんに懺悔するみたいに、ひれ伏した姿勢、わずかに持ち上げる、三つ編みが揺らぐ】

【後生大事に抱きしめている蝋燭の決して派手でないはずの色合いが鮮やかに見えてしまうくらいに、きっと彼女は冥い目をしていた。けど、】

でも……みんな……わたしのこと、殺すって…………。

【相手の話をなるべく聞き入れようとしているのは確かなのだろう。一生懸命に聞いて、だけど難しくて、やり方も分からなくって、困ってしまった声をしていた】
【少なくとも、――"みんな"にとって、わたしと世界は、比べるまでないものなのだと、すでに理解していた。そんなの当然だった。だけど彼女にとっては認めたくないこと】
【世界を滅ぼす神様なのだから、みんなわたしを大事にしてくれる――そんな期待、甘え、最後にこびりついたちっぽけな自尊心、即ち、生存本能であるのなら】

――――……、あんなの、わたし、いつだって、作るのに、……ぜんぜん、ちっとも、すごい朝ごはんじゃ、なかったのに、……。
お友達じゃなくっても、……つくるよ、だれにでも、――わたしのご飯、たべたいって、いってくれたら、……いってくれるなら、――。でも。
……もう。だめ、なのかなあ、だって、わたし、悪い神様で――、……たんぽぽ、だって、もう、……。だれも。信じて、くれない、かもしれない、……。

【――何か綺麗なものへ魅入られるように、じっと彼へ向けた眼差しは、きっときらきらした感情に彩られていた。それが単なる涙粒の残滓とは、信じられないくらいに】
【やがて気の抜けた仕草で笑うのなら、その眦から涙すら落ちるのだろう。――あれでいいならいくらだって作るのに。あれ以上だって、いくらだって作れるのに】
【だってわたしは給仕さんだから。だってわたしは、――。――かすかに開いたまなざしがごくごく冥い色を宿していた。悪い神様のご飯なんて誰も食べてくれないかもしれない】
【たんぽぽだって枯れてしまったのかもしれない。ほんの刹那に涙の色合いはごろりと変わって、映し出すのは様々な感情のカクテル、もう、だれも辿れぬほど、絡まって】

【後悔/してない】
【だけど】

【(だけど)】


22 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/23(金) 01:00:46 WMHqDivw0
>>20

………………。…………、……そう。
でもきっとその人とあたしは違うよ、あたしの身体はエーノさんが思ってるよりずっとずっと、
メチャクチャで、デタラメで、悪ふざけみたいな、……子供のイタズラ書きをそのまま実現したみたいな。
ほんとに変な身体してるんだ。生きてるだけで冒涜なんだよ、イズルが、創ったから――
…………イズルにしかできないやり方で、あたしは創られた。たぶんきっとイズル自身も、
どういう原理で「これ」が成り立ってるのか、わかってないくらいには――――もう、めちゃくちゃなの。

【彼の言葉を聞く。昏く澱んだ瞳にはじめて感情らしき感情が見えた瞬間だった。悲しい、あるいは遣る瀬無い】
【きっと緑色か紫色の眼をしていたらもっとはっきり見えたことだろう。けれど少女は赤色だから】
【少し怒ってるようにも見えたかもしれない。けれどそんなことは今、どうでもいい。白々しい視線は斜め下に】

…………エネルギー。生き物も、そうじゃないものも、動くためにはエネルギーが必要でしょ?
ガソリン、太陽光、電気、……それか人が手で押すか。そういうのまったくナシに走れる車なんて、ないでしょ。
それと一緒。あたしも、動いて、生きてるフリするためには燃料が必要なの。だったら、それって何だと思う?

体を動かすには体力がいるでしょ。魔法を使うには魔力がいるでしょ。
だったら、命を燃やすためには――命が必要だよね、でもあたしには、もう、それがない。死んじゃったから。

だからね。…………他の人から奪って、自分のモノに変えなきゃ、あたしは生きていけないの。

【――きっと想像の範疇に入っているだろう話をしている、と思う。ここらへんまではきっと何かしら察してくれた気もして】
【だけど次の言葉を紡ぐのに、やたら時間をかけるなら――――本当に、考えたくもないことであるらしい】

ヒトをね。生きたまま、取りこまなきゃいけないの。その方法もやっぱりデタラメで、イズルにしかできなくて、
――――生きたままのヒトをまるまる一人分、どろどろに融かすの。わけのわかんない装置に入れて、魔法をかけて、
髪の毛も指も思い出も骨もばらばらにして、摺り潰して、ぎゅっと絞って、コップ一杯分くらいまで濃縮還元したら、
……あたしはそれを飲み干す。すっごい味がするの、本当に、イヤで、でも……それであたしの命は燃え続けることができる。
他人の命をくべられて、燃えるの、……それも永久には続かないけど。一杯飲んで、せいぜい長くて10年もつか、もたないかくらい。

【だからそれを何度も繰り返さなきゃいけない、のが、イヤなのかって言われたら――そうでもない、みたいな顔をする】
【こんなバカげた、ファンタジーにすら喧嘩を売ってるような話には、まだ続きがあるようだった】
【そしてそれを語るのが心底イヤって顔をする、拗ねたみたいな、あるいは全部諦めたみたいな表情。じっと床を見つめて】


でもね、ヒトの、命ってさ。……………………平等では、ないでしょ?


【――――続く言葉はあまりに突飛に。何かしら順番をすっぽかしたみたいな、わけのわからないものが出てくるから】


23 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/23(金) 01:19:55 WMHqDivw0
>>21

うっそー。夕月とケンカしたんでしょ? あいつベエベエに泣いてたヨ、めっちゃおもろかった。
つまりあんな感じでいーんだよ、あいつが怒鳴った、鈴音ちゃんはそれがイヤであいつを拒絶した。
あーいう感じのヤツをネ! みんなとネ! やりゃーいんだよ、……一人じゃ不安?
そんなときのためにイルがついてるんじゃねーの、きっと鈴音ちゃんのためならアイツ何だってするっしょ。

【長い長い三つ編み、それも床についてしまわないようにさきっぽを掌の上に乗せて、浮かばせておくなら】
【決して無理矢理引っ掴んで引っ張って引きずり込むようなマネはしそうになかった。手つきすらへらへらしていて】
【少女が立ち上がるなら未練がましく摘まむようなこともしそうになかった。すなわち、いくらでも逃げてしまえそう】
【そして逃げた先に病魔が居たとて、そいつに守ってもらえばよいと言う。それで、本当に、安心できるなら】

…………おれはまた食べたいよ。最近さあ、コンビニ飯ばっかだし、あーいう朝ゴハンが恋しいんだ。
おれの周りだーーーれも料理できるヤツいねーの! 夕月もまー多少マシにはなったけど時々焦がすし、
ミア――あいつは論外。まーじでなんもできねーのよアイツ、たぶん一人暮らししたらゴミ屋敷作るタイプだし。

だめじゃないよ。鈴音ちゃん、ゴハンに毒入れるとか絶対しないっしょ? カンで言ってるだけだけど。
たんぽぽは、…………、……ごめんネ。守っとくって言ったのはおれなのに、守れなくって。
だから絶対鈴音ちゃんのせいじゃない。悪いのはきちんと守れなかったおれたちか、
……それか、卑怯なことばっかしてくる黒幕。……ネ、そーいう考え方、するようにしよって、決めたんでしょ?

【そこまで聞いてやっぱり確信してしまうのだ、この子はきっと、悪い神様になんてなりきれないって】
【だからといってやっぱりやめますなんて言い出せるほど無責任な娘じゃないことも知っていた。だから、】
【悪いのはぜーんぶ、自分じゃなくて、人のせいにしてしまおうって。提案するのはやっぱり悪い男だから】

【三つ編みを空間に留めておくべき掌は未だ開かれたままだった。まるで握手を求めるみたいに、上に向けて】


24 : 名無しさん :2018/11/23(金) 02:25:00 F9q6XRV20
>>23

…………………………。でも、わたし、夕月ちゃんのこと、追い出し、ちゃって……。この間、だって、……、夕月ちゃんは、わたしのこと、呼んでくれたのに。
わたし、夕月ちゃんに、ひどいこと、たくさん、して……。――――――、それが、喧嘩? …………。 。     。

――    ―― ……、夕月ちゃん、とも、仲直り、……でき、る?

【ぱちりぱちり瞬き。あれが喧嘩?とでも聞くようなまなざしを沈黙を横たえるのなら、――あれが喧嘩だったとして、結局、自分は拒絶してしまったんだ、と、言うのなら】
【何よりこの前だって。――。自分は、名前を呼んでくれて、泣いてくれて、――苦手なものを向けないでと言ってくれた夕月のこと、けっきょく、無視したようなもの/それそのもの】
【そうして世界なんて滅んじゃえって言ってしまった。嘘じゃない。こんな世界に納得できない。だけど。でも。――。ぐちゃらぐちゃらの思い、三つ編みみたいになったらいいのに】

【――――――ひどく恐る恐るの声だった。喧嘩したなら。あれが喧嘩だったなら。仲直りできるのかなって。そうしたら、おともだちから、やりなおせるのかなって、】
【(――、なら、仲直り、したいのかもしれなかった。ひどいことを言ってしまったから。無理やり追い返す形で会話を引きちぎってしまったから。ごめんなさい、言えるのかなって)】

【――そうして聞かされる彼の周りのひとのこと。コンビニご飯ばっかりとか。時々焦がすとか。お料理出来ないとか。そうしたら、彼女は、きっと、笑ってしまう】
【一度目をまあるく瞠ってから、――あはは、って、小さな声だけど。確かに楽しそうに笑っていた。どうしてだろうか、――なら、たぶん、羨ましいんだって】
【彼女にはそんな風にお話できる家族は居ないから。(本当に?)――へびさまは家族かもしれない。でも、そんなに仲良しじゃない(どうしようもない引け目を二人抱えてるから)】

――――――入れない! ……絶対、入れない、……。絶対! ――そんなことしない。そんな風にしたら、……いけないの、ぜったい。
……ぜったいに、そんなことしたら、いけなくって、……――"ここ"のごはんは、世界で一番、安全じゃないと、いけなくって、……。だって、そうじゃ、ないと……。
しんじて、きてくれたのに、……――、大人が、さきに、ひどいこと、したのに……。あの子たちは、信じて、くれたのに、……、なのに、っ、――ぃ、

【だからそれはきっと反射だった。脊髄反射なんてものは本当はないらしいけど、きっとそうだった。――そんなこと絶対しない、って、彼女は、声を荒らげて】
【絶対にしない。するはずない。そうやって繰り返している内に、――またぼろぼろって大粒の涙を落としてしまう。そんなのしない。しない。するはずない、って、】
【何度もぶんぶんって首を降るなら、捕まえていてくれたはずの三つ編みの先っぽだって逃げ出してしまって、――――その毛先に綿埃が絡まって、だから、だから、悲しくて、】
【――――わああって子供みたいに泣いてしまうのだろう、掌の付け根で頻りに涙を拭うのに、結局は塗り広げることにしかならなくて、「ごめんなさい」漏れ出る声は、誰に?】


25 : オブライエン ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/23(金) 02:30:07 smh2z7gk0
>>1000

フフ、まぁそうですわね。〝フリークス・サーカス〟。
ええ私は〝氷の国外務省三等書記官〟コニー・オブライエンで間違いありませんが。
―――それはどうも、貴方のような世紀の大悪党に褒めて頂けるなんて光栄ですわ。


【カニバディールの言葉にやはり挑発的な口調で返す。】
【そして〝身柄〟に固執する相手により一層の警戒を持ち眉を顰め、アイスブルーの瞳が敵集団に突き刺さる。】


それはそれは、貴方様は預言者でもあられるのかしら。是非私の今日のラッキーアイテムも教えてくださいな。

(〝虚神〟―――クズノハたんが言っていた異界の神か、そして〝黒幕〟。)
(言動からして〝黒幕〟とは敵対する立場にあるみたいだが………)

私もその二つは噂には聞いていますが―――貴方は〝円卓〟ですか?


【単刀直入に問いかける。とはいえその単語の意味を知らなければ何を言っているのか通じないだろうが】
【背後に集まる人々は異形の集団に怯え、さらにそれに一人で向かい会うオブライエンに困惑のまなざしを向ける。】


―――最近各地で起きる〝神隠し〟はあなた方の仕業というわけですか。
しかし〝箱舟〟とは………〝食肉倉庫〟の間違いでは?


ええそうですね、貴方に言われて従う人間はまずいないでしょう。だから


             ――――――〝そこから一歩でも動いたら蜂の巣にしますよ〟


(いいタイミングで間に合ったみたいだね、ラッキーラッキー)



【オブライエンの言葉と同時、一歩踏み出したカニバディールの体に〝9つのレーザーサイト〟が照射されるだろう】
【それは大広間の両サイドにある天窓から放たれている。しかし気配は極わずかしか感じないだろう。】
【まさにオブライエンの宣言通り、少しでも動いたら〝雨が降るだろう〟】


26 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/23(金) 02:50:49 smh2z7gk0
>>5

【バタンッ!と屋上のドアを開けて入ってくれば、目の前にはもう一人増えている。】
【その異形の姿を〝異形の金の眼〟で眺めれば、「うわーすごい、怪物だぁ」と適当な言葉を呟く】

【そしてさらに自分がさっきまでいた場所を眺めれば、なんと石化ガスで人々が石に代えられているではないか】


うわ、うわ、うわ〜すっごい映画みたいだ!流石〝水の国〟。初めて来たけど進んでるな〜



【顎に手を当てて〝金色の三角形が敷き詰められた異形の瞳〟で現れた大男を品定めするように見るだろう。】
【発言も含めてどこか浮世離れした―――不気味な雰囲気の青年である。】

>>12

【そして青年は女性へと向き直る。グルリと首だけを回すような格好で。顔面には三日月のような笑みを浮かべながら】
【女性の困惑した言葉と反応にはどこか照れ臭そうに右手を後頭部に回しながら笑う。】


いや〜だってお姉さん凄く楽しそうだったからさ、なんだかお話してみたくなってさ〜
ねぇねぇ一体なんのお話をしてたんだい?良かったら教えてよ、なんかお金儲けできる話?


【異形の瞳で見つめながら、女性へぐいぐいと問いかける。あの距離で会話の内容が聞こえているとは思えないが―――】


>>ALL

【―――「ところでさ」】
【青年はそこで言葉を切って、元の立ち位置に戻る。このVの字そして〝三角形〟が義務付けられた場所のように】
【にこにこと不気味な笑みを携えたままで、青年は口を開く―――】



――――――ふたりとも、〝武器〟買わない?


27 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/23(金) 03:33:57 h7nAXcQg0
>>18-19
【要はあのヒトガタは血塗られた廃の国の残骸の一つ、得体のしれないモンスターだ】
【それにすら、出したジュースと席をそのままにしておく辺り、やはり鈴音という少女は】
【根っこの部分が優しい、ということだろう。それをこんなにしてしまった世界は、確かに消されてしかるべきかもしれない】

……そうか
本当にお前は我慢してばかりだったんだな、鈴音。少なくとも、私はそれを否定はしない

私自身、危うくなったらすぐ逃げを打つような男だからな。嫌なことから身を引いて、終わったことに出来るかもしれない
そんなことは、たいていの人間が人生で一度は考えることだ。それを知って、お前を責め立てる奴がいたとしたら、私が食い殺してやるさ

【カニバディールは悪党だ。卑劣で残虐で臆病者の、救いがたい男である】
【だから、今世界を滅ぼす決断をして。余りに多くの者たちから殺意を向けられる今の鈴音だって否定はしない】
【彼女の伴侶たる病魔もそうするだろう。彼女の親友たるタコのような女性もそうしただろう。だから、自分もそうしよう】


……その箱は、望めば中に入り込める。いつだったか、似たようなことを話したか? 人は皆、自分の世界を管理する神だと
そいつは、それを実現に近づけるためのものだ。神にのみ赦された『創世』という行為に、汎用性を持たせるためのものだ
過去、あらゆる傑物・怪物・超常の能力者たちが、今ある世界を変えようとして散っていった
ならば、最初から自分の思う通りになる世界を作ればいい。その箱は、そのためのものだ

――――だから、もし。もうどうしようもなくなって、それでも未練が残っていたら
その中に入るといい。……お前と、〝へびさま〟を、否定することなくその箱は受け入れるだろう
神に勧める品としては、どうかとは思うがな

【言外に。鈴音と、彼女と一心同体のご先祖だけが使えるものだと、そう伝える】
【彼女が感じた通りに、すべすべにも、ざらざらにも、触感を変えるその箱は。彼女は受け入れても、彼女の伴侶たる病魔は受け入れない】
【そんな最後の最後の、駆け込み寺である、と。重苦しく話ながら、カニバディールは目を伏せる彼女に、いつもの無遠慮な視線は送らなかった】


……いや、残念ながらなかっただろうな
――――ああ。是非、ご馳走になりたいものだ

【箱は、置かれたリンゴジュースに三日月型の模様となった口のついた面を向けた。流し込んでやるなら、ゴクゴクと飲み干すだろう】
【そう、とんでもない理想論だ。もう手遅れになってしまって、あり得ないだろう未来】
【それを望むのだから、カニバディールとてやはり世界を滅ぼされては本心では困るのだろう。ならば、やはりあの病魔以外に彼女の横には立てないのだろうか】

【だけど、それを口にするのは。きっとまだ、未練がある証拠。だとすれば、その箱は誘惑する】
【〝――――我々なら、出来るよ。我儘だって、叶えてあげるよ。この中でなら。望むなら出ることだってできるよ。我々なら、どんなに都合よくもなれるよ〟】
【あの病魔には、到底及ばない程度の、稚拙な誘惑なのだろうけれど】

/続きます


28 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/23(金) 03:34:52 h7nAXcQg0
>>18-19
【「これでも、元はまともな食料を扱う商売をしていたんだ」と、苦笑しながらそう返す】

ああ、材料はそれなりにはあったが量が少なめだったからな。一人分しか出来なかった
何より、UTにあるものを私が食うというのは、なんだかな……酒とつまみくらいなら、いいだろうか

【全く似合わない、少し照れるような表情を隠して、それから彼女の食事を眺めていた】
【口元に笑みがこぼれる。どうしようもない悪党だが、やはり己の作った料理を、誰かが美味しそうに食べている光景は】
【この狂った異形に、抗いがたい喜びをもたらすのだ。自分に、そんなことが赦されようはずがなくても】

【あっという間に平らげられていく料理たち。思ったよりもよく食べるのだな、とそんな思いは心中に沈めて】


胃袋から掴むのは、人心掌握の常とう手段の一つだ。手下たちには、毎日振る舞っているとも
サンドイッチか……奴らしいといえばらしいな。料理は案外出来そうに思ったが、セリーナの出すメニューはワイルドなものが並んでいそうだ

【そう、本来なら異常なことだ。あんなに激しく敵対したのに。彼女の最愛の姉を撃ち抜いたのに】
【でも、おかしいといえばとっくの昔に何もかもおかしいのだから。それなら、気にする必要なんてない】

……そうだな。良い細工の品だ

【肉屋も、それが元旧友の手によるものだとは知らずに。グラスを手にする彼女の姿は、なんだか絵になっていた】
【そこからは、もう少しだけ。何でもない時間が過ぎるのだろう。イルと過ごす情熱的な時とも、セリーナと過ごす暖かな時とも違う】
【なんだかふわふわとした、奇妙ながら柔らかい時間が。抜け目なく用意してきた自分の分のワインと、二人分のつまみをテーブルに置いて】

【――――そんな時間も、やがて過ぎゆく。取り留めもない話も、ネタが尽きる。なら】
【聞きたいことは、そう。山ほどあった。でも、それよりも前に。今までずっと我慢してきた彼女に、こう言おう】

……我慢するのは、辞めた。そういうことだな? 鈴音
イル=ナイトウィッシュは、お前のためにお前が嫌う世界を叩き潰してくれるだろう。そっちは、彼奴に任せよう

だから、もし。それすら待ちきれないほどに、どうしようもなく嫌いな奴らがいるなら。今ここで、私に言え
イルにはきっと人間など、人にとっての蟻のように区別がつかないだろうからな。全部一度に潰すのは出来ても、一匹ずつ摘まみ上げて殺すのは不得意だろうからな
自分で言うのもなんだが、私は執念深く探せる。お前が嫌いな奴らの上位リストを、どこまでも追いかけて先にこの世から蹴落としてやる

――――後は、そうだな。誰からも嫌われて、殺意を向けられて、それが嫌だったら
世界の誰からもそう思われたままなのが嫌だったら。私を指差せ。全てあの三つ目の化け物が仕組んだのだと、私に全ておっ被せろ
全力で肯定してやるさ。私は欲しがりだからな。他人からの殺意だって、もらえるものには飛びつく

【他の誰もが、彼女を殺すというならば。彼女が神になる前から敵だった自分は、こうしよう】
【神の前に、自分にしか出来ないだろう捧げ物を並べよう。いつかカフェテリアで、彼女がアリアに語ったように、嫌いな者を殺して捧げよう】
【しばらく後にヤサカが彼女にそう勧めたように、人にせいにするなら自分がうってつけだと立候補しよう】

【滅ぼされたくないから、神に祈りを捧げてみよう。正義の味方が神を殺すなら、悪党の自分は神に捧げ物をしよう】


29 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/23(金) 11:43:31 6.kk0qdE0
>>11

『黒野カンナ(水国公安ゼロ課、対機関協力関係
ディミーア・エルドワル(水国自警団、対機関協力関係)
邪禍(所属不明、対黒幕協力関係、チームM)
レオーテヴュート(所属不明、対黒幕協力関係、チームM)
ミラ(所属不明、UT?、対黒幕協力関係、チームM)
アーディン・プラゴール(所属不明、対黒幕協力関係、対虚神協力関係、チームM)
カニバディール(機関ナンバーズ、対黒幕協力関係、対虚神協力関係、チームM、指名手配)…………』

【文書冒頭にはこの様に、これまでの協力関係者とその情報がずらりと記載されている】
【次項以降は、これまでの経験、得てきた情報、見てきた事象が細かく記載されている】
【途中、鵺とチンザノ・ロッソ、白神鈴音の3名の名前の部分には斜線が引かれているが】

「なるほど、正式な機関として存在する訳ではない、故に独自に動ける、と」
「潜水潜入、それから船底に……うん、外務8課ならば、君達ならばその装備も扱えそうだな」
「この5人で行くか?或いは、外務8課総出で?」

【3本目のペットボトル、こちらはスポーツドリンクの様だが、此れを開けながら】
【少女はこう、アリアに聞いて】
【淡々としたやり取りに聞こえるが、その実は非常に高度で、そして慣れた手腕を要する作戦行動だが】
【失敗はしない、そう語るアリアもミレーユも確かな実績と実力の下そう答えているのだろう】

「情報提供は、約束しよう、と言うより渡さなければいけない物だろうからな」
「口利きも必要不可欠だ、約束しよう」

【要求に関しては意外にも、と拍子抜けを感じるも、双方必要な事の為に、此れは確約された】

「なるほど〜って、随分とあの人も……まあそれがウチらしい、のかも知れないですが」

【報告は事後で、結果主義で成功主義、そして現場主義】
【確かに本来の外務8課の姿なのかも知れないと】
【ミレーユの開けるメーカーズマークの、その濃密で甘やかなキャラメル香が、ふうわりと辺りに香る】

「ああ、そうだそうだ」
「逃げ出した魔導イージス艦『みらい』の鍵だけど、そこのリストにもある名前だが、アーディン・プラゴールが保護してるようだ、海軍陸戦隊とも交戦してな、これから彼のとこにも行くが」

【ぱっと百合子は椅子から立ち上がり、こう付け足す様に言った】
【実際少女は、アリアと比べると尚更だが、かなり小さい】


30 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/11/23(金) 12:24:20 arusqhls0
>>377

【鬼灯が憂いを見せたなら、それは憩う病葉に似て、しずりと伏せる瞬きよりも儚い風情になるのだろう、──── 視線を注ぐ】
【鮮やかに見える表層とは裏腹に、その内面には激情が燃えているのだろうか、仲間を思う気持ち、ふとした瞬間に溢れ出た感情】
【彼女はそれを好ましく思った、目の前の青年は軽薄そうに見えて、誰よりも熱い思いを内心に抱えているのだろうから】

【──── して、良い芸術家が良い目を持っている様に、彼女もまた、その心の運びを感じ取れない程に鈍感ではなかった】


ええ、この国を護って下さった方々ですもの、深く深く知る事もまた、彼女達への敬意になりますわ
だからこそ私は、その当時を知っておられる方々にコンタクトを取っているのです、──── もう一度、今一度、同じ正義の徒にならん事を
そうでしょう、ドラ様 ──── 貴方様もまた、類い希なる才覚と、武芸とを併せ持つ傑物に御座います

ですが、一線を退いた方々の多くは消息も定かではなく ──── 恐らくはきっと、別の戦いに従事しているのでしょう
そうであるのなら、私達が無理に呼び止める事はできないのです、表舞台でも裏舞台でも、立つ場所は変わらず
その思いを尊重する事にこそ、私達の意義があるのでしょうから


【彼女は興味深そうに大きく目を開く、突然のプレゼントに心躍らせる少女に似て、理知的な眼鏡が少し歪つ】
【望外の喜びに似ていた、故郷で出会う久方ぶりの友人みたいに、──── UNITED TRIGGER に関する情報】
【耳を傾ける、親しげな恋人の様相で、ぐっと身を乗り出して】


……成程、最近お話を聞かないと思ったら、そういう事情になっていたのですね ──── 虜囚の辱めを受けている、と
でしたら私達もまた、黙っている訳にはいきませんわ、作戦実行の暁には是非一報を

──── この身果てても尚、全力を尽くす所存ですの


【片手で頬杖を着く、細やかな輪郭を指先に託して、傾げた小首に艶やかな髪が落ちた、見せる横顔は女神の如く】
【深窓の令嬢が描く淑女の風情、好奇心を宿した瞳は世間知らずのお嬢様、それでいて含んだ余裕は年上の姉に似て】
【もう片方の手が自身の胸元をなぞる、ボタンを留めたハビットシャツ、今にもはち切れそうな膨らみが二つ、──── 】


ふふ、ドラ様は大きい方が良いのですね、でしたら私でも期待に添えるかと、──── コスチュームは恥ずかしいですけど
それでも、貴方様が正義の名を標榜するのなら、私からささやかな恩寵を与える事も吝かでは御座いませんわ


【絹糸が肌からこぼれ落ちる様に、彼女の指先がドラの耳元へと伸びる、手袋に包まれたシルクの感触、氷細工の様に肌に溶けて】
【身を乗り出す、顔を耳元へと寄せたなら、ドラの視界を包むのは彼女の女性的な豊満さ、服越しでも分かる、そのボリューム】
【芳香が脳一杯に広がるのだろうか、甘い甘い香り、目をつむったなら、そのまま天国へ逝ける心地をして】




──── 私の身体で良ければ、貴方様の望む様にしてくださっても、構いませんわ


貴方様の願う服装を着て、貴方様の願う役割をして、貴方様の願う交わりを果たす、──── というのは些かはしたないかしら
貴方様の "好きなの" は、──── 何でも


31 : イル ◆zO7JlnSovk :2018/11/23(金) 12:30:16 arusqhls0
>>378

【意図も容易く行われてしまう、──── 少女はその行いをどの様に認識しているのだろうか、尤も、認識出来ているかも定かではなく】
【彼女は抱きかかえられて、小動物の様に小さく震えた、伸びた尾っぽに触れられて、愛撫される様に小さく身じろぎした】
【──── 官能的な声を押し殺す、肉感と肉声と、肉欲と、──── 詰まるところそれらは、果てのない愛憎の連鎖に過ぎないから】



……んぅ────……言ったでしょ、鈴ちゃんは何でも、それこそ何でもできるんだ、って
だからね、ボクの言葉なんて気にせず、やりたい事、すきな事ができるんだ、──── それってね
それって、とっても凄い事なんだもん、ボクはとっても誇らしくて、とっても頼りにしていて、それで



【──── とっても寂しいんだ、なんて言葉は泡沫に溶けた、最後の言葉を伝えられない泡になった姫君に似て】



ボクはどっちも好きだよ、ボクの手であんあと啼かされる鈴ちゃんも、ボクを手であんあと啼かす鈴ちゃんも、どっちも、どっちも
それとも鈴ちゃんは、何か他の事を願っているのかな、こんな小さな奇跡なんかじゃなくて、もっと大きな、それこそ



──── 人類を滅ぼすみたいな、そんなおっきな願いも


32 : ◆RqRnviRidE :2018/11/23(金) 18:01:56 KNLY.uIU0
/>>1乙です!


>>960

【────『Crystal Labyrinth』の門扉を潜った瞬間、琥珀色の双眸が何かを見つけたようにそちらへ向けられる】
【やがて瞳の持ち主は、賑わいを見せる客席の合間を縫うように、小走りで獣人の元へやって来るだろう】
【行き交うホールスタッフと客との隙間を潜り抜ける身のこなしは、一目見るだけでも軽やかで】

「──── あのっ! ごめんなさい急に、……ちょっと今いい、すか?」

【獣人の目の前へ現れるや、間髪入れず声を掛ける。 何やら何処と無く急いたような様子を窺えただろうか】
【問い掛ける声音は、変声期前のボーイ・ソプラノ。 それは彼が“少年”であることを如実に表していた】

【緩く波打ったココアブラウンの短髪、琥珀色の瞳の十代半ばほどの少年】
【黒のパーカーに迷彩のカーゴパンツ、黒の厚底ブーツでモノトーンに纏め】
【首には千鳥格子柄のバンダナ、腰には長方形のウエストポーチを提げている】

「今さ、俺、外で亜人のおっちゃんが居る! って聞いて飛んで来たんすけど……たぶん、おっちゃんのことだよね?」

【少年いわく亜人の噂を聞きつけてやって来たという、話の出所が酒場の客か彼の仲間か定かでないが、ともかく】
【屈託の無い笑みと共に向けるのは奇異の目などではなく、ただ純粋な好奇心をその表情に滲ませて】
【少年はやや不慣れな丁寧語を交えながらそのように尋ねつつ、獣人の隣の席に腰掛けるだろう】

「ね、おっちゃん、…………めっちゃつえーってホントっすか!?」

【問いは単刀直入、単純明快。 物怖じせずきらきら目を輝かせる様は子供らしく、どこまでも純真でまっすぐだ】
【一見何処にでも居そうな至って普通の少年だった。 ──彼がその身に“狼”の移り香を色濃く纏うこと以外は】

/よろしければお願いします!


33 : 名無しさん :2018/11/23(金) 18:43:47 Ty26k7V20
>>9

【霧崎は黙って、後藤の言葉をきいていた。まるでその目でスキャンし、成分を分析し】
【脳内でその真意のパーセンテージを計算し尽くしているかの如く】


――――なるほど。

【解析終了を知らせるかのようなダイアログのポップアップ表示のような一言】
【霧崎は不意に立ち上がる。凶器にもってこいのガラス製の灰皿で煙草をもみ消すと、髪の毛をかきあげる】


私は――金で動かない連中しか信用しません。ですが。

金で動くような連中を仲間だとは到底思うことはできません。

…頼みます。


【霧崎はそれだけ言うと、挨拶もせずに背中を向け、その場を立ち去ろうとするだろう】
【余計な言葉は言わない。それが彼女なりの美学なんだろうか。】


「どぉーすんのさ。正義のためつったって、テロの片棒担ぐんだよ。相手には黒幕も付いている」
「適当に誤魔化せる相手で無い。それに新楼市だって、一般市民だってワンサカいる」
「下手に暴動状態にしたら、"人形遣い”の捜査だって、それどころじゃなくる」

「全部、一気にしかも確実に――アラビアのロレンスだね。全く」
「これで、秘密諜報機関もやらの都市伝説も笑えなくなちゃったよ。自分がそうなんだから」

【はぁーあというわざとらしいため息をつくタマキ。お手上げだというジェスチャをしながら彼女もまた出ていこうとする】


「さぁ、仕事仕事。研究所だっけ?ちょいと、プレスの顔して潜ってみますかな。んじゃね〜。」


34 : ◆jw.vgDRcAc :2018/11/23(金) 22:35:46 NrBiL9/60

>>777

【お安い御用、と言えば嘘になる。安い訳がない。だって、人一人の生きる道だ。だって、文字通り一生のお願いだ。】
【それでも、引き受けようと思う。きっとそれは、自分だけが出来ることなのだろうし、自分がすべきことなのだろう。】
【決して簡単な頼みではない、けれど】

なに……貴方のその言葉が聞けただけで、私は満足ですよ。
よく、伝えて下さいました。……ええ、本当に。その一言だけで、私は報われます……

【―――たった一言、その言葉だけで引き受ける理由になる。】
【本当なら、もっともっと色々と交わしたい言葉もあったけれど。たった一言、その言葉が聞けたなら、それで満足だ。】
【色々頼んだ事への報酬など、その言葉だけで十分。だって、そうだろう。それは、自分の存在そのものに感謝してくれた、最高の感謝の言葉なのだから。】
【そっと、微笑む。少しだけ目尻に涙を浮かべていたのは、きっと……―――もう、最後の瞬間が近いことを悟ったから。】

―――人は、命尽きても……忘れられない限り、関わった誰かの心の中で生き続けると思うのです。
ねえ、アルクさん。貴方はきっと、私の中で生き続ける。ええ……私が、忘れない。だから、さよならは、言いません。
ふふっ……思い出の中で、また会いましょうっ!

【一筋、零れて頬に伝って。溢れて。でも、微笑みは崩さない。永遠の別れじゃないと決めた以上、悲しい表情はしないって決めたから。】
【最後の最後、伝える。貴方は自分の中で生き続ける、と。きっとそれが、彼にとって一番の報いだと思うから。】
【それだけ伝えて、「また会いましょう」と、軽やかに告げる。それはまるで、いつもの別れ際の挨拶と同じように】

――――ああ、そうだ。また会いに行く為に、どこに眠っているか教えていただけませんか?
また、挨拶に伺いますから。ね?

【そして、待ち合わせの場所を聞くかのように訊いて。―――きっと、それが最後の会話になるのだろう。だが、それでいい。】
【それくらいの気軽さの方が……死を悲しむなと言ってくれた貴方にとって、きっと、一番良いはずだから。】


35 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/24(土) 00:01:19 E1nVzEpQ0
>>22

【漸く少女の示した何某かの情感に、 ─── 彼の笑顔は安堵さえ示していた。色褪せて尚も鮮やかな紅色の中に碧眼が映り込むなら】
【それは紛れもない深紫であろう。それでも直ぐに少女は目線を逸らしてしまうから、互いの心を曝け出せる静謐さも、瞬きに消え】
【 ─── 急かす事も強いる事もなく、彼は言葉に耳を傾けていた。安っぽい頷きを返したりしない。独白の波濤を堪えるような】
【そうして少女が言い淀むならば、白皙の口許は冷たく結ばれて、病葉の一句にさえ真摯だった。飛躍した論理も、今は意味をなさない。これは情愛の行為であるが故に】

【逸らされた紅い視線が、床張りの規則的な隙間を彷徨っていた。青い視線は予兆を知って、生気のない首元に落ちていた。吐き出したい嘆息も永劫に押し殺す】
【 ─── ひとつ呼吸を大きく吸って、彼もまた語り出すのだろう。変わらず抱き縋る腕の力を、勢い付いて坂道を下るように、強めていくから】



「 ─── ああ。」「生きてちゃいけないクズ野郎を殺して、その代わりにキミが生きていてくれるなら、ボクは喜んでそうするし」
「そうじゃなくたって、ボクはそうしてきた。 ……… これからだって、そうするつもりだ。そうはいかないんだってことも、ボクは、分かってるよ。」



【あるいは少女も、知っているのかもしれない。数ヶ月ほど前、少女が絶望と諦観の中にあった頃、世間を少しだけ騒がせたナインデイズ・ワンダー】
【 ─── インターネットの生配信サービスをハッキングして放映された、ひどく復讐的なスナッフムービー。拡げられたデータの多くは、今も深層ウェブに残されている】
【キャプチャの一枚でも直接に見たことがあるならば、そこで下手人を務めたのは間違いなく"彼"であって、彼が手にかけた人々もまた、少女の知って然るべき顔ぶれであって】
【されど今ばかりは些事であるのだろう。 ─── 愛しい人の為ならば、彼はどんな非道だって働けた。それだけが肝要であり、それは少女の知るところでもあるだろう。なら】


                「 ……………──── 続けて。」



【ミッシングリンクを解き明かそうと促す声に、やはり截然たる震えが淀むのも、きっと道理だった。それでも決して目は背けないなら、やはり、ボクが死んでもいい】


36 : 名無しさん :2018/11/24(土) 01:18:59 ZYkf3lgY0
>>18-19

――――――――――綺麗じゃないわたしは要らないって、分かってたから。
ほんとうはね、わたしなんて、優しくないの。優しくないし、強くだってなくて。狡いことばっかり考えてる、……優しい子。は、きっと、考えないようなこと。

【やっぱりそうだったね、なんて、言いはしない。或いは、だからこそ、相手に向ける表情も柔らかくなるのだろう。やはりどうしようもない奇縁であるからこそ、】
【そしてまたどうしようもなく立場を違える貴方だからこそ、二人、出来る話もあるんだろう。或いは彼にしか伝えられぬような言葉があるのだろう】
【「ありがとう」――乾燥機から出したばっかりのふわふわのタオルにくるまれて眠るお昼寝みたいな、伝える声の柔らかさ】

――そう、だね。お話したの。――――――――――――っ、ふふっ、ふふ。ふふふ、……、ふ。――ありがとう、カニバディール。
だけど、"いま"で良かった。そうじゃなかったら、わたし、……、きっと、だめだもの、ずうっと、引きこもってしまうの。
"いま"のわたしは、神様だから。……。ふふ。うそ。――神様なのは、嘘じゃないよ。だけど。いまはね、わたし、――怒っているから。

なにもかも駄目になっちゃうのなら。それでもなんにも変わらないのなら。そうしたら、――人間なんて嫌いになって、諦めて、しまえるのかな。
――――そうしたら、へびさまと二人で暮らすのも、いいかもね。

カニバディール。貴方も、イルちゃんのことは、嫌い?

【指先が、箱を撫ぜる。よく磨かれた檜のように滑らかだった。伝えられる言葉を聞く限り、――きっと、ごく弱っていた時期の彼女であれば、"そう"してしまうから】
【限りない逃避先として、きっとおそらくは永遠に隠れてしまうから。――ならば今そうしないのは。言葉通りなのだろう。怒っているから。逃げるより言葉を折るより、】
【自分は怒っているって。赦さないって。表明するって、決めたから。報われないことに対する不満を口に出すって決めたから。――あるいは、決めて、"しまった"から】
【それを彼女は"綺麗じゃないわたし"と呼ぶのかもしれなかった。――――――――ごく悲しげな笑みと声にて、尋ねる一瞬。けれど、指先はグラスを取って、】
【箱となったヒトガタへ「飲む?」なんて、――中に注いでもカビたりしないと判断したのかもしれなかった。欲しがるのなら、ゆるり、注いでやる】

――――――――――――――――そしたら、何が食べたい? ふふ。わたしがセリーナに初めて作ったものにしようか。……なんて。
だって、そんなの、きっと今じゃないと出来ないよ。――、ああ。でも。貴方のご飯をこうやって食べたり。わたしのご飯を貴方が食べたり。それだけで、変なのかな。
黒幕を倒したらお終いなのにね。……。

【(今となっては、それよりも先に、世界が滅んでしまうのかも、しれないけれど)】
【――曖昧な表情。いつか自分が嫌と言って、否定した未来。それですら、世界はきっとそこにあった。だのに、彼女は、それさえ壊してしまうのかもしれない神様になって】
【――――だから、甘やかな誘惑には「ありがとね」って、声を返す。柔らかに笑んでいた。わがままはするけど、まずは自分でしたい。綺麗じゃないわたしは、そんな子だから】

いーよ。わたしは今日、給仕さんじゃないから。だあれも見てないの。セリーナだって、ずっと留守にしてるのが悪いんだから。

【くすって悪戯っぽくも笑うのだろう。リーダーが留守にしている間に、酒場で悪いお肉屋さんと、悪い神様とが、おいしいものを食べて、お酒を飲んで、何が悪いのかしら】
【そうでしょうって言外に尋ねて答えを伺う。けれどやはり言葉は不要だった。お酒とつまみを並べて二人同じテーブルを囲むのなら、逃れようない共犯なんだから】

……そうなんだ。みんなでご飯、食べるの? ――いいなあ。わたし、あんまり、"みんなでごはん"って、したこと、なくって……。
…………――、――――。……うん、そう、とっても、綺麗――――。

【――だから、ごく拙い憧れだって口に出せてしまう。大勢で囲む嘱託というものに彼女は何か憧れがあるらしかった。だから、どこか遠くを見る眼差しが、】
【セリーナの話には、より一層遠くを見つめるように、細められる。――だからか、彼女はそれ以上に返事をしなかった。誤魔化すようにグラスの淵に指を滑らせて――】

/分割しますっ


37 : 名無しさん :2018/11/24(土) 01:19:16 ZYkf3lgY0
>>18-19>>36

うん、やめたよ。今だって、……わたしが我慢したら、きっと、終わるの。そうでしょう、――、わたしが、嫌だったことも、何もかも、ぐって呑み込んで。
そうしたら、"終わり"。分かってるよ。だけど、もう、わたしは、我慢しないの。誰に「そんなくだらないこと」って言われても、――……。
――くだらないかはわたしが決める。だってわたしは神様なんだから。

【それから、語らったのはどれほどの間だったろうか。とにかく確かなのは、彼女はあどけない顔にしては、存外に酒が強かった】
【というよりも、飲んでいるのに、それがまるでノンアルコールの飲料であるかのように、酔いの気配すらうかがわせること、ないのだろう】
【ならばひどい笊だった。そういえばうわばみというのは蛇のことだった。――嫌なことは嫌だって言う。今日び幼稚園児でも習うようなこと、彼女は齢二十五にして覚えたのなら】

…………ねえ、カニバディール。わたしね、大人に、なりたかった。ううん、"なれるって信じてた"。
大人になる方法はよく分からないけど、――とにかく、大人になったら、大人になって。好きなひとが出来て。結婚するの。子供だってきっと生まれて――。
――だけど、今のわたしは、そうじゃなくって。大人になるどころか、――ずっとこのまま、世界が滅ぶまで、世界が滅んでも、きっと、変わらなくって。ね。
お嫁さんにもなったけど。思い描いていたようなのとは、全然違ってて。――わたしの思ってた"ぜんぶ"と、なにもかも、――なにもかも、

――――――――だから、わたし。いっぱい、探したの。今のわたしがやりたいこと。できること。納得できるもの、――納得出来る、生き方。

だけどね、間違いだったんだって。わたしが"こう"なったこと。――――――――――、"そのこと"がなかったら、わたし、今頃、"大人"だったかもしれない。
……わたし、ね、納得してるって思ってた。これでいいって思ってた。これがいいって信じてた。だけど、――、それ/大人になれた未来がありえた"かもしれない"って思っちゃった、

【ふらりと足先を揺らす。机に寄り掛かるような恰好は、けれど、酔いからではなく。それよりもどこか投げやりな様相、だって、みんな分かってくれないのだから】

――――…………、もし、ね。わたしが、殺されてしまったら。死なないわたしを、――誰かが、殺して、しまったなら。そうして世界が続くのなら。
そしたらね、カニバディール、わたしのかわりに、伝えてほしいの。赤木怜司に。

貴方の間違いで世界が滅びるところだったんだって。
わたしが殺されたからみんな生きているんだって。

怜司の間違いをわたしが清算してあげたよって。

【神様の置き土産にしてはずいぶんと個人的な話に終始していた。そしてまた給仕/メイド/冥土の土産というには、極々怨み言以外の、何でもなかった】
【だから声音としては、ただどこまでも個人的な復讐であり、自らが果たせなかったとして、そのまま知らずに生きることを許さぬと呪いを掛けたがるのに等しくて】
【けれどやはり自分が喪った"大人"としての未来を歩むことは赦さないし赦せないと言っていた。故に、彼女は彼の言葉に、確りとまっすぐ、返すのならば】

……………………ねえ、カニバディールは、たんぽぽ、手伝う気は、ない? 

――だって、わたしは、貴方のせいでどうにかなっただなんて、思ってないの。思えないの。それどころか、わたし、貴方のおかげで、――、

【――なら、怨んでもない誰かに自分の罪をかぶせるのは、嫌であるらしかった。頬杖をついて彼から視線を逸らして尋ねる言葉の意味合いは、】
【きっと限りない信頼だった。こんな風に彼の作ってしまった食事を食べた後なら、なおさらだった。世界を滅ぼす神様を、果たせるかは別として、毒殺を試みてもいいはずだった】
【食事に対してはどこまでも真摯であると信じていた。――――――だってきっとそうじゃなかったら、そんな彼の言葉でなかったら、自分が勇気をもらうこと、きっと、なかったって】


38 : ◆UYdM4POjBM :2018/11/24(土) 01:54:26 XqQAhkbc0
>>30

【しばらくして先ほどタッチパネルで注文したカフェラテが届くのを見たドラはにっこりと笑みを浮かべると】
【少しずつちびりちびりとストローで飲み始め、何の気もなく扇子でぺちぺちとテーブルを叩きつつ言葉を続けるだろう】


……ま、どいつもこいつも世界のどこかでよろしくやってるでしょ
生死不明のメンツが多いけどそもそも現時点で明確に死亡したって人が一人もいないのは間違いなくいい便りだし
戦うべきは、現場にいるぼくたちの仕事ってわけね

セリーナさんを助けるって仕事もその中の一つ。助けになってくれるって言うなら
ぜひやってあげてよイスラフィールさん。きっとジンジャー博士とジャンクちゃんも喜ぶんじゃない?


【UNITED TRIGGERの長を助ける。あるいはそれがjustice再起初の仕事になる可能性も存在する】
【少なくともその時はまず間違いなく自分たちとこの理知的な婦人と肩を並べて戦うことになるかもしれない。その瞬間にドラは想いをはせつつあった】

【そして、ドラの趣味の吐露に対して帰って来たイスラフィールの反応にドラは言葉を止め、唇を少し尖らせて彼女を見る】
【耳元を撫でる指先の感触。至近距離で囁かれたのは予想以上に積極性あふれる―――魔性の誘惑】
【ドラの表情は変わらない。先の話題に比べればはるかに落ち着いた態度で彼はしっかりと言い放つだろう】


―――……おっ、言ったな?この後で後悔しても遅いよ?
ぼく言葉通りに受け取っちゃうからね。吐いた唾は呑めぬって格言をしっかりと噛みしめておきなよ
……ふ、まあこんなおいしすぎる話ハニトラとかを疑っちゃうのが自然だと思うんだけど、ぼくが気になる事は他にある


【身を乗り出すイスラフィールの豊満な胸部がドラの視界を覆っているのを目の当たりにする】
【この状況で興奮しださず、妙に冷静さを保ち続ける彼は逆に不気味かもしれない―――が、突如彼は動いた】

【―――す、と卓上の調味料でも取るかのような自然な動きで、彼は右手を下から掬い上げるように伸ばし】
【その甘ったるい香りに包まれた豊満な膨らみをドラは何のためらいもなく下からぐい、と手のひらで持ち上げるように押し込み】
【下からなでり、なでりと優しく撫ぜ続けると―――突如手首を返して掴むように五指を開き―――押し込みにかかるだろう】

【こいつ―――本当に過去から何も変わってなどいない!!】


手元の情報網の他、「諸々の疑い」なども含め"いろんな"意味でさあ、イスラフィールさん……
きみが知らないって事は絶対ありえないよねぇ、ぼくの場合『そういうの』は本当に冗談で済まないって事

にもかかわらずぼくに対してここまで差し出す辺り―――……うん、きみがこの案件に関してガチの大真面目に取り組んでるって事は確信した


ぼくが戦場に行くのはほぼ間違いないからきみの提案には二つ返事で頷いてもいいとして、きみの抱えてる事情をもっと知りたくなった
もっときみの話をしてくれる?きみの具体的な目的とか行動のヴィジョンとか、最終的な望みとか……


―――ずっと聞きたかったんだ。『きみ』は……一体全体今何やってるんだよ?


【ぐにぐにとやっている行動とは裏腹に最後の言葉だけは何よりも真剣みにあふれる声色でイスラフィールに問いかけるだろう】
【とはいえすぐにフフフ!と不敵な笑みを浮かべながら久方ぶりの悪戯行為に怒られるまで一通り続けるだろうが】


39 : 名無しさん :2018/11/24(土) 01:59:59 ZYkf3lgY0
>>31

【堪えられるかすかな声と吐息に、少女はいくらも機嫌をよくしたらしかった。アイスクリームみたいに抉れた心象風景に出来たかさぶたの下の、真っ白い肌みたいに】
【肌と肌の触れ合う感覚に目を細めるなら、壁と天井と扉の向こうに本当に世界があるのかも彼女は知らなかった。今目にしていない場所が本当にあるのかを誰が証明できるのか】
【だから証明できない世界をせめて彩るみたいに、――するりと掌全体で包むみたいに優しく扱く尻尾の先端を指先で撫ぜる。一番細いところまで、五指を這わせていくなら】
【最後に残滓だけを伝えて/残して、また一番ねっこから繰り返す。ちいちゃな子供が自分より年上の猫にやるみたいな揶揄いだった、なら彼女はごく子供っぽい顔をするから】

――――――――ねえ、わたしが、今、そうやって思ったら、この世界の全部、消えてしまうの?

【それは例えばスマートフォンの電源ボタンを押して画面を消すみたいに】
【それは例えばデスクトップのパソコンの電源を落とすみたいに】
【それは例えばノートパソコンをぱたんって閉じるみたいに】

【――お布団の中で目を閉じたらふって世界が消えるみたいに、わたしたちが認識するこの世界、終わってしまうのかしら、なんて、】

……イルちゃん。――――イルちゃんは、わたしのこと、いっぱい、いっぱい、褒めてくれるの。わたしが、――上手に、信じられないような、ことまで。
だからね、わたしだって、イルちゃんのだいすきなところ、たくさんあるの。――たとえば、

わたしのこと撫でてくれるときの、イルちゃんの表情。わたしがおしゃべりしたいときに、イルちゃん、いつも、わたしのこと、呼んでくれるの。
わたしが一番触ってほしいところ、イルちゃんはいっぱい知ってて。イルちゃんのことぎゅうって抱きしめたら、もっと、近くへ、行きたくて……。
わたしのこと抱きしめてくれるときの、指。――それに、甘えたら、イルちゃん、たくさん、甘やかしてくれて。
――――イルちゃんだって、わたしのこと、だいすきで。わたしのこと、大事にしてくれて。わたしの、お嫁さんで、……。

――――――――――――わたしのこと、蛇だって、教えてくれた。

【だから少女は微睡むように眼を細める。だのに眠たいわけではないようだった。気づけば尻尾を虐める指先も大人しくなっていた。ただ、その腰元を抱きしめて】
【幾層にも言葉を並べていくなら、どこかで縋るようでもあるのかもしれない、――、どこか冥い目と同じ色合いをした感情を言の葉に載せるなら、とっくに病葉の色して】
【――――――、一瞬の間があった。それを言ってしまうことをためらっているようだった。やりたいこと、すきなこと、出来るなら。――好きなことだって、言ってしまえるのかしら、】

……イルちゃんは、やっぱり、ニンゲンは、――、嫌い?

【伏した目線/冥く沈んだ声/ならば彼女の眼差しを濁らせていた感情は/後悔/そんなはずない/赦せない/赦さない/だけど/何か/呼ばわるのなら、きっと、未練?】
【――いつかどこかで二人話したことだった。あの時に結局ふたり有耶無耶にしてしまったところのある話題だった。きゅうと指先に力がこもる、イルの肌にそっと食い込ませて】
【だけれど決して爪先を立てる行為でないなら、ただ、ただ、どうしようもないなにかを示すばかり。だから、その顔だって、隠してしまいたがって】

【(人間は嫌い?)(わたしは、もしかしたら、思ったより、嫌いじゃないかもしれないの)(だけど、赦せないものは、ぜったいに、赦したくないの)】
【(いろんなものが気に喰わなくって)(だけどこの世界には好きなものだってたくさんあって)(なのに何かどうしようもなくて納得できないくらいなら、)】
【(ぜんぶぜんぶなにもかも、消えてしまえって、思ってしまうの)(なにもかも叶わぬ世界であるのなら、最後にそれくらいは叶えてよ/叶えるの、って、思ってしまう)】

【(――だってわたしは神様なんだから)(そうやって教えてくれたじゃない)】

【どうしたらいいの、なんて、言えるはずないって分かってた。だけれど、確かに彼女はどこか揺らいでいるらしかった。それでも/だけどって言葉、無限に重ね行くみたいに】


40 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/24(土) 02:37:50 6IlD6zzI0
>>17

【話を聞く限り、この少女は強迫観念のようなものに苛まれていると思えた】
【風が吹けば桶屋が儲かる―――理屈にならない理屈が形になるのは少女の自虐的な思考とそこに至る今と過去】
【元より劣等感だとか自己評価の低い少女なのだろうから、身に降りかかる悪い事、全て自分の所為だと誤認して】


――――ともすれば、もうアナタの心は叫びたがっている。否、壊れて崩れ去ろうとしている。
辛いでしょうね。そんな背景を語るのも、その身に降りかかってしまった事も。

元より要らない子として棄てられて然るべきだと思って、それでも生きる事を選んで。
その末路が今のアナタ。居場所は寓意によって壊されて、そのお友達も傷つけて尚それらを捨てきれず。

―――――死にたいと思うのも無理はない、同情を禁じ得ないわ。
一緒にやってきたお友達と築いた世界を壊れたままにするのは無責任とさえ思えるけれど。
もうどうしようも無い。――――改めて聞くわ。アナタは"どう"死にたい?

命を散らして無残に打ち捨てられるのか、それとも今を形作る過去と記憶。
アナタを苦しめる積み重ねを喪って実質的に死ぬことを選ぶのか――ワタシはどちらも選べる。
最初に述べた殺し方なんて野蛮に過ぎるから、苦悩を取り除く殺し方が良いと思うわ。


【"アナタは記憶屋という都市伝説をご存じ?―――もし、それがアナタの目の前にいると言ったなら"】
【"さぁどうする?辛くて苦しいものを奪い去ってほしい?その果てに今のアナタが死ぬことになったとしても"】

【記憶屋は、キャロラインは少女の傷口に寄り添う様に言葉を優しく紡ぐ】
【否定も肯定もしない曖昧な言葉。それに添えるのは少女の頭を優しく撫でる行為】

【きっと傲慢とは違う情の薄い言葉と振る舞い――過敏な少女にはこれでも乱暴に感ぜられるだろうか】
【そんな少女に"死に方"を問おうものならそれは荒い鑢で傷口に触れる行為に等しかった】


41 : ◆3inMmyYQUs :2018/11/24(土) 11:51:15 nHxGsN220
前779

【その名を呼ばれると、女――『ミチカ』はそっと顔の笑みを深めた】


――はいっ、
過去から未来まで曽根上ミチカです!

警察官看護師保育士水兵さん、
その他副業兼業盛りだくさんでえす。

【公職なのに】

ヨーソロー♪

【言って――敬礼をした】


【灯台が再び、元の時計回りに戻る】
【縮まった両者の距離、水兵の女はその場から動かず】
【闇夜に幽かな微笑みをする蘆屋を迎えるように、じっと顔を向けていた】


わたしも“久しぶりに初めて”会えて嬉しいですよ、司令官さん。


【そうして緩い喜色を浮かべた声とは、しかし裏腹に】
【ほんの一時、その面差しに、夜闇よりもなお仄暗い陰が差した】

【そのとき、】


【――――ざ ざ……――――】
【――ヴん……――じ じ――――】 【(ぷつっ)】



――ともだちが一人、
転校しちゃったんです。
遠いところに。とても遠いところに。


【前にいたはずのミチカは、今は蘆屋の隣に立つ】
【すれ違う瞬間であるかのように、彼の背後に広がる彼方を臨んで】



わたしたちは 一緒に卒業できるといいですね。



【――じ じ……――――ヴヴ……――】
【ざ ざ――ざ……――じ……ジ――】  【(ぷつっ)】


【ミチカは再び蘆屋の前に向かい合っている】
【まるで違うムービーのフィルムが誤って紛れてしまったかのように】
【しかしそのことさえ気にせず、むしろ初めから誤りでなかったかのように】

【女は平然と、会話の続きを重ねた】


良いお船ですね。


【決戦級戦艦『大和』――その甲板を吹く冷えた風が、】
【何かを繕うかのように女の服の裾をはたはたと揺らした】

【その言葉は早速、事の本題を意味していた】
【即ち、櫻の連合艦隊司令長官が、その本人自らをもってして、】
【この鋼の戦略級兵器によって遙々闇夜の波濤を越えさせた用向きとは何か、と】


42 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/24(土) 14:57:08 WMHqDivw0
>>24

できるできる。アイツ単純だもん、それに鈴音ちゃんのコト大好きだし、
むしろあっちのほーから謝ってくるんじゃねーかナー。
きっとベエベエに泣きながらごめーんごめーんって言うよ、ぜってーブスで面白いし、
笑ってやりゃーいいよ、そんで、それ動画とか撮って送ってほしーナ。

【「おれも見てーわ」。不安がる彼女を宥めすかすみたいに、あるいは笑わせたがって】
【必要以上におどけたがるのも何ら変わっていなかった。それもちょっと下品だけど】
【泣かれるよりは怒られた方がよくって、そんなのより一番いいのが笑ってくれることだから】
【そのためならいくらだって卑怯になれると思っていた。だから、――目を細めて】

そ。やっぱそーだよねえ? ……じゃーやっぱり鈴音ちゃんのせいじゃない。
「コイツ」らがわりーんだ、鈴音ちゃんは悪くないし――夕月もつがるんも最近は来てなかったから、
だったらおれのせいってことになる。わりーのは黒幕と、それを止められなかったおれ。

だからネ、……泣かないでほしーナ。鈴音ちゃんはなんにも悪くないよ。悪くないから、

【――ここに来てようやく彼は、少女のことを全肯定する言葉を出し始めた】
【こればっかりは本当に、我慢なんかしてほしくない。だって春の花の名の場所は、たしかに彼女のものだった】
【自分たちはそれを預かっていたにすぎなくて。彼女が帰ってきたなら、胸を張って返してあげたくて】
【そのためにあの日、旧市街にて、自分たちがやっておくって宣言した。のに、こんな結果になってしまったなら】
【約束を破ったのはふたつめ、ということになる。彼は、それだけが悔しくて悔しくて仕方ないようだった】

【(だって憧れた。居場所のない子供たち。その寄る辺となって笑う少女。自分だってこうなりたくて、)】
【(でもなれなかった。だから彼女にはずっとそうして笑っていてほしかった、自分には、できなかったから)】

【――――――さっき転がした注射器を手に取る。これを使えば「許してもらえる」らしいけど、――】


43 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/24(土) 15:23:52 WMHqDivw0
>>35

【ずっとだらんと地に墜ちて、下を向いていた指先が、自身を抱く彼の腕に添えられる】
【ただしそれだけ。抱きしめ返すことはできない、だって、怖いから――胡乱な視線】
【しばらく床を彷徨い続けていた、蛇がのたくる軌跡に似て。けれどそれも、いつしか完全に伏せられる】

…………、……エーノさんはさ、あたしと、あと一人他の誰か――ぜんぜん知らないような人。
その二人が――溺れてるでもいい、崖から落ちそうになってるでもいい。
そうして死にそうになっていて、助けられるのはどちらか一人だけ。ってなってたら、
――――――――――きっとあたしを選んでくれるでしょう? それと同じ。

人はね、生きてたら、どうしても「スキ」と「キライ」が出来ちゃうからさ。
すべての命を平等に見ることなんか出来やしないんだ。だから、……命にも「質」がある。
手間をかけて作ったお野菜がおいしくて栄養価が高いのと同じ。
ちょっとお高い燃料のほうが長持ちするのと同じ、――あたしにとっての「他人の命」もそう。

【瞼を完全に閉じて、唇だけ微かに動かすのなら、オートマトンのようだった。彼の腕の中で】
【かたかた動いて、時に笑ったり、泣いたりするような、人間の真似事をする。彼女は正しくお人形だから】

さっき言った「10年もつかもたないか」ってのは――ぜんぜん知らない、なんの感情も抱かない、
どーでもいいと思う人の命をくべた場合の話。でもね、質のいい人……、あたしが好い感情を抱いてる人の
命をくべたときは、……もっと長持ちする。そうだね、例えば――――――

家族とか、恋人とか、親友とか。そう呼べる人の命を取りこめたときには、
そうじゃない人を取り込んだときよりずっとずっと長く――100年くらい、長生きできちゃうんだよ。

【「どう。怖い、バケモノでしょう」 ――――――そうだと言ってほしかった。だって、だって、】
【興味も、親愛も、恋心も、感謝も、憧憬も、希望も、好意も、信頼も、好感も、願望も、友情も、応援も、期待も】
【心酔するほどの愛情だって、彼女にとっては「質のいい燃料」にかならないのであれば。悍ましいものでしかなく】

【――――そうであるなら、彼女が長生きなんか望まないということは、すぐわかってしまうんだろう】
【あれだけの仕打ちを受けて、無残に死んで、それを嘲笑われた少女。それが世界に対して絶望せず、怨みを抱かず】
【それどころか他人を愛することをやめずにいられると言うのは、きっと美徳であるのだろう。――ただしそれは、】
【普通の人間であるのなら、の話であり。他人の命を喰らって生きる冒涜的なバケモノとしては、致命的な欠陥だった】
【心なんて要らないはずなのに持ってしまった。そうして他人に要らない感情を抱きすぎた。それは彼女の糧となり、枷となり】


【しまいには――「好きになって、ごめんなさい」なんて台詞を零して、瞼を開くなら、一粒涙が零れるのだろう】
【きっと彼だけにじゃなくて、世界全体に対する謝罪の言葉であるに違いなかった。人間にも、神様にもなれなくて】
【バケモノにすらなりきれないならこいつは一体何なんだろう。何もかもわからないから、――やっぱり、ひとりで、死にたい】


44 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/11/24(土) 15:41:25 ZCHlt7mo0
>>32

……まぁ、良い……偶には頭を休めよう――――――――っ、ん……?

【一仕切り燻らせていたパイプを仕舞い込み、獣人は客たちの喧騒に、じっと視線を注ぐ】
【滅多には起きない厄介事。それに対処する事こそが、彼の『本来の』仕事。暇であっても気は抜けない、そんな事はもう慣れた――――のだが】
【普段慣れている、どんな厄介事とも趣の違う急用が、文字通りに『飛び込んで』きた】

「え……」「なんだあのガキ……?」
ッ……? ……なんだ

【その光景を、常連の一部が認めたらしく、喧騒の中に、微かなザワつきが混じり始める】
【――――ここ周辺で、この獣人はある種の『有名人』である。そしてまた、そこには「おいそれと近寄れない」と言う評価が、くっついていて】
【だからこそ、少年は獣人の事を知らないのだろうと、それだけで分かった――――周りから見れば、怖いもの知らずの行動と言うしかないものだ】
【――――当の獣人は、ただ平静に、少年の言葉の続きを待ち受けて】

…………まぁ、恐らく俺の事だろうな。亜人と言うならもう1人、いない事も無いが、今は遠く出かけている……
見ての通り、俺は『魔海』のワーキャットだ……俺に、何か……?

【少年の、勢いのある言葉に、やや困惑気味に獣人は答える】
【どうやら、つい今しがた自分の存在を知って、興味そのままに駆け寄ってきたようだが、その態度に、不審なものは感じられない】
【その威勢のよさにわずかに感心しつつ、獣人は少年の言葉の、更に先を求めた】

「……お、おいおいボウズ!?」
――――――――ッ
「ぅ……」

【その言葉を聞きとがめたのだろう。ホールスタッフの1人――――やたらガタイの良い強面――――が、思わず駆け寄ろうとしていたようだが】
【咄嗟に、獣人は鋭い視線と手やりで『待て』と合図。周辺は緊張感を保ったまま、沈黙する】
【そうして周辺を牽制すると、獣人は真っ直ぐに少年と向き合った】

……まぁ、強いかどうかは知らないがな。これでも一応、この店の用心棒の、リーダーのような事をやってるんだ……
この店の中にいる中で……というなら、一番強いんじゃあないか……?

【獣人は苦笑しつつ答えた。半ば、この周辺では今更説明不要と化していた事柄ではあるが、それを改めて説明するというのも、妙な気分にさせられる】
【自画自賛の形になってしまう事を気にしつつも、獣人は説明する。自分が、ある意味での、この店の『ボス』なのだと】

――――で、どうしたんだ。強い奴に会いたかったのか……?
(――――同族? それともハーフの類か? ……只者じゃないな……)

【問題なのは、何故少年はそんな興味を自分に向けてきたか、なのだが――――同時に、獣人の方も少年自身に興味が湧いていた】
【感じるのは、ただの人間ではないらしいという気配。どこか自分たち『魔海』の住人に通じるようなそれを、獣人は鋭敏に感じ取っていたのだ】


45 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/24(土) 15:55:58 6.kk0qdE0
>>41

「お会いできて光栄です」

【顔に笑みを、より深い笑みを浮かべるミチカに、こちらも口元に笑みを薄く浮かべて】

「宜候、この迎合の航路に良き未来があります事を」

【ひしとした、着帽敬礼で答えた】
【ここで再び、灯台は回転を元へと戻し】

「おや、異な事を、何処かでお会いしましたかね?」

【不思議そうな、しかし抑揚無い声で聞くも、はたと何かに気がついた様な、曖昧な表情を浮かべ】

「いや、意味のない、意味のない質問でしたか、失礼を……」

【だが、ここで……曽根上ミチカの表情に曇りが生じたらば】

「!?」
「(なるほど、これが黒幕の……)」

【いつのまにか、いや正に今目の前で話していた筈のミチカが、隣に居る】
【互いに逆方向の甲板と海を眼下に、話を続けるミチカ】
【ーー異音、ノイズ、あるいはラジオの周波数調整の様にーー】
【道賢は幾つかのロジックを組み立てながら、幾つかの仮説に行き当たりながら】

「それは……とても悲しい話です、とてもね」
「はい、是非に……我々は、私は元よりそのつもりです故に」

【互いに視線を交わす事無く、てんで方向違いの方向を眺めながら、会話は続く】
【まるで継ぎ接ぎのフィルムかカセットテープの様に、再びのノイズ、そして平然と目の前に立つミチカ】

「お褒めに預かり光栄です」

【カランカランと遠くワイヤーが夜風に煽られ音を立てて】
【冷たい海風は、依然ミチカと道賢2人を撫でて】
【ーー決戦級魔導戦艦『大和』之一隻を持って戦況を回天せしむるをコンセプトとして建造された、魔導海軍が誇る弩級戦艦、正に御国の四方を守る鋼の城】

「私、いや、我々魔導海軍も末席に加えて頂きたく馳せ参じました」
「貴殿方、そう、報告では『黒幕』等と呼ばれていましたね」

「つきましては……ーー」

【ここで、甲板の床を指差す様に】

「手土産としては、少々長物に過ぎますが、この『大和』と運用人員」
「そして、新鋭魔導イージス艦の技術を、差し上げようかと、思いまして」

【びょう、びょう、と吹き付ける夜の海風は先程よりも強みを増し、月は冷たい光を強め】
【より深い笑みを口元に浮かべる道賢の顔を、怪しく照らしつける】


46 : アルク=ワードナール ◆auPC5auEAk :2018/11/24(土) 16:04:29 ZCHlt7mo0
>>34

――――こんな、温かい気持ちがあって、いいんでしょうかね……
胸襟を開く、というのを、必要以上に怖がっていただけなのかもしれません……
こんな、焼き付くようなものじゃなく、温かく迎えてくれるような『光』が――――手前は、ずっと久しく、忘れてました……!

【マリアの言葉は、そしてどこまでも自分の不義理を受容してくれる、その態度は。アルクの乾いた心を、最期に潤わせてやれたのだろう】
【思わず、目じりを拭う仕草をしてしまう。涙を流したくはなかった。そこにはやはり、照れがあったのだろう】
【尤も、そんな様子を見せてしまっている時点で、もう言い訳は聞かない。こんな場面でも無ければ、冷やかされていた事なのだろうが――――】

【――――誰かの魂の熱に触れる事は出来ても、そこに包まれるなんて事は、終ぞなかった】
【もし、アルベルト師匠やレグルス、八攫 柊、そしてマリア――――彼らと、言うところの「何の変哲もない日常」とやらを生きる事が出来たなら】
【もっと早くにでも、アルクは素直な感情を吐露し、斜に構えない生き方が、出来ていたのかもしれない】
【そんな事を思わせるほどに――――マリアの言葉は温かく、優しく、アルクの胸を満たしてやれたのだった】

――――泣いてしまった事とかは、思い出さなくて良いですからね……?

【別れを悲壮で塗りつぶしたくない――――涙流しながらも笑顔を見せてくれたマリアのその思いを斟酌してか、アルクなりに軽妙な言葉で答える】
【まるで、レグルスに対してそうしていたように――――ジョークじみた言い回しで、わずかな自虐と共に、笑いとばす】
【やはり、気恥ずかしさとおかしさがあったのだろう。先ほどの感謝の言葉の様に、アルクはそっと帽子と共に、視線を逸らしていた】

――――何か、あれば……海に散骨する様に、『仲間』には伝えておきました――――
――――墓、という事なら、その散骨の場所に、立ててもらう予定ではあります――――

――――――――何か、事情でもなければ……そこに、仲間が用意してくれるでしょう――――――――
――――――――深く、昏く、静かな海で……そこで、手前は……安らかに、あり続けます――――――――

【今際の際――――薄れていく存在の中で、アルクはそれを伝える。水の国、海を見下ろす、とある断崖】
【丁度、幹線道路から少しだけ離れた、盲点のような崖――――如何にも、最期には静かであり続ける事を望んだ、アルクの好みそうな場所だ】
【海の底の闇。そこにアルクは、死後の己の安住を、求めていたのだろう】

――――――――では――――――――ありがとう――――――――マリアさん――――――――

【ハットを脱ぎ、深々と頭を下げて――――――――そして、アルク=ワードナールの魂は、この世界から去っていった】
【その間際、浮かべていた彼の表情は――――涙交じりの笑顔だったのは】
【きっと、彼にとって、最期の時は『救い』となったのだという事を、信じさせてくれるものだったのだろう】







【――――――――3か月後、レグルスもまた、この世を去る事になるという事は、この時、誰も知らない事だったが】
【それでも、彼もまた、その命なりに、何かをやり遂げ、大往生していったことは、アルクにとっても、悪くない結末だったのだと信じたい――――】

/それではこれにて……ありがとうございましたー!


47 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/24(土) 18:03:30 E1nVzEpQ0
>>29


【少なからず感嘆するように、アリアは僅かながら隻眼を瞠く。 ─── 一諜報員の築いた所産として、申し分のない情報源であろう。八課の把握していなかった関係性まで】
【これを得られただけでも負ったリスクに余りある報酬だった。一字一句を碧眼の視覚素子経由で電脳に写像し保存する。そうして、そのままに視線を擡げ】
【 ─── 怜悧でありながら、深く女性的な眦であった。長く曲がった睫毛が、感傷のような瞬きに揺れる。潤った唇から紡がれる、囁きに似て静かな言葉。】


「フロッグマン(水中工作)の経験はあって?  ─── 十全な能力がないのなら、謹んで同行はお断りさせて頂くわ。」
「一ツ間違えれば内政干渉とクーデターの同時勃発でしょう。下手に貴方たちの関与が露見するようなことがあれば収集が付かなくなる。私とアレだけで必要十分よ」


【その答えは、 ─── 対手を軽んじている訳でも、まして侮っている訳でもなかった。ただ不足であるに過ぎぬのだと、淡々と告げていた。】
【流し目を向けられたミレーユが幾らか狼狽えて、深く嘆息する。それでも、ショットグラスに空けたストレートのバーボンを呷りながら、幾らか忌々しげに述べるならば】



「 ───……… なんかボクも連れてかれる流れになってるね。最悪。」
「まあ、そうだね。ディーゼルでも原子力でも何でもいいんだけどさ、"乗れそうな"潜水艦、そっちにある?」
「別にキミたちの所属じゃなくていい ─── 何かしらの理由を付けて、魚雷発射管に"荷物"を積み込めそうな奴。」

「警備の薄い近隣の沿岸部から遥々泳いでいくって手もあるけど、そうするとソナーやコーストガードなんかに捕まりやすくなる。」
「だったらSDVで手早く侵入した方がいい。載せてるのが味方の船なら、怪しまれるリスクも低減できるし ─── 、」
「 ……… 本当ならターゲットを公海まで動かしてから発破したいけど、営倉の代わりって感じで完全に停泊・機関停止してるんでしょ。手早い出港は望めなさそうだ」
「間違ってなければ陸路での脱出経路も用意してくれると助かる。足のつかない車、静ヶ崎だっけ ─── 都内の各所に何台か。本命と陽動に分けて、全部運転手付きで」



【プロフェッショナルの所見であった。 ─── 潜水艦の魚雷発射管に搭載した水中船にて、目標に接近・潜入、人質を救出。後は陸上車両に紛れて逃走する】
【「ライガ君は車の運転やって貰えると助かる。 ……… まァ別にアレの我儘だから、引いたっていいんだよ?」そう付け加えるならば、幾らか彼の身を案じてもいた】
【そうしてまた、立ち上がる少女の言葉をアリアは受け止めて、見送ろうともするのだろう。「 ─── 彼らとも連絡を取っておくべきかしらね。」】


48 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/24(土) 18:47:43 6.kk0qdE0
>>47

「おぉ……」

【思わず同じ女性であっても、魅了を受けてしまうほどの目線だった】
【長い睫毛にも、憂いを湛えた瞳にも、瑞々しさを保つ唇にも】
【男性であればさぞや堪らないのであろう、やがてその瞳が、タブレットの画面からこちらに移されると】

「うぅーん、成る程な、じゃあ私と杉原は外部サポートに徹させて貰うとしようか」
「仰せのままに軍曹、アリア様」

【フロッグマン、水中工作はどうにも2人は経験不足の様だ】
【ここはアリアの言に乗り、大人しく身を引いて】
【やがて話は、1人バーボンを煽るミレーユへと向けられて】

「潜水艦、ああ、御誂え向きのがあるぞ」
「其処にも記載があるが、厳島達諜報部が水国陸軍ロロケルム•ランガスター少佐、彼の依頼で水国議会穏健派の重鎮、ヨハネス・ロトゥノカイト氏の亡命を請け負った事があった様だが、その際に使用された潜水艦」
「強襲揚陸潜水艦、伊707号、まだ蘆屋海軍大将の手に落ちていない数少ない船の一つだ」
「車も、まあある意味陸軍の本懐だ、幾らか用意しよう」
「ディーゼルって言うか、魔導海軍だからな、魔力エンジン機構だが、人員も、まあアレだ、伊707は機密輸送船も兼ねてる、複数の意味で適任だろう」

【スラスラと、少女はこう答えた、成る程、成りはこうだが意外と手は回るのかも知れない】
【また一方では】

「ミレーユさんも、アリアさんも、たった2人で大丈夫なんですか?」
「そりゃ運転なら幾らでもやりますが……危なくなったら直ぐに連絡下さいね!」

【こう、ライガはかなり不安げに答えたと言う】

「さて、話はこんな所かな?あ、連絡先おしえとくぞ、整ったら連絡入れる」
「では、私どもはこれで、アリア様、ミレーユ様、ライガ様……『宴席』当日はくれぐれも……」

【2人とも衣服を払い整えて、特に呼び止める事が無ければ、そのまま店を出るだろう】
【最後に杉原と呼ばれた兵長の男は、幾分か隙の無い一言を別れの挨拶として】

「ああー、そうだ聞き忘れてた」

【少女は、階段の壁からひょこっと顔だけ出して】

「和泉文月って人知らないか?海軍の対能力者近接戦闘教官として、この国に入ってるんだが」
「後カニバディールって、何処行ったら会えるか知ってるか?」


49 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/24(土) 19:58:10 E1nVzEpQ0
>>33



    「そう仰って頂けるならば、 ─── 我々も冥利に尽きるというものです。」



【端的な霧崎の言葉を、 ─── 後藤は賞賛であると受け取ったらしい。それもまた、恐らくは、彼の本心であろう】
【立ち去るその背中に護衛として、背の高い女ふたりが付き従っていく。残されるのは、タマキと彼のふたり】
【まったくもって呆れるような声音に、 ─── 彼はいつもと変わらぬ苦笑にて応じた。のらり、くらり。この世界に真剣であるに値するものなど何一ツないような】
【それでいて焦茶色の瞳には、彼にしか見えぬものを見ているであろう、立ち枯れない毅然さ。すっかり冷めてしまった玉露を、最後まで飲み干してしまうならば】


「De oppresso liberの精神だよ、タマキ君。」「 ……… 完璧な成果を挙げられるからこそ、おれは君たちを引き入れたんだ」
「"何時も通り"の仕事ぶりを期待しているよ。おれも、それに見合うだけの指揮を執ろう。 ─── それじゃあ、またね。」


【ひらひらと気怠く手を振るのは彼なりの激励であった。 ─── やがて、だだっ広い来賓室に、彼一人が残されるのならば】
【茫洋とソファに身を委ね、ただ天井を眺めるのだろう。その思索の行く先は、杳として知れない。一ツ、呟くのは】



  「 ……… さァて、面白くなってきた。」



【「 ───……… あちッ。」ずっと指先に留め続けていた、喫いかけの煙草が持ち手まで燃え落ちるのに、間の抜けた狼狽。】


/このあたりで〆!でしょうか!


50 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/24(土) 20:59:16 E1nVzEpQ0
>>43

【閉じられた瞼の先に何が届く事もないのだと分かっていながら、少女の一語一句に彼は頷くのだろう。変わらない表情】
【錦織よりも細やかに柔らかな黒髪が、震えるように少女の首筋を、宥めるように何度も優しく撫ぜた。傷痕に触れる指も、同じ事】
【 ─── そうして、告白の最後まで、彼の行為は変わらない。語られた真実がどれほど哀しい桎梏であるのか、解っていながら】


             【だから。】




      「そっか」




【開かれた視界の先に、エーノの顔貌は変わらず在った。円く大きく愛らしい両の目を、腫らした目許に細く細く撓ませて】
【 ─── 安らかに緩められた頬と、何度となく重ね合った瑞々しい唇の温度。二人の間に垂れ下がった濡羽色はベールのようで、キミだけにボクの表情を許す】
【笑っていた。優しかった。それでいて、悲しげな覚悟さえ宿していた。だというのに何処までも清々しくて、負い目を教えないのだから、やはり彼は卑怯なのだろう】



    「じゃあ、 ─── さ。」「ボクの事、食べて、いいよ。」



【一ツ一ツ苦悩の海から掬い上げたような言葉の音節はどこまでも真実であるのだから救いようがなかった。】
【誰よりも人と関わる事を恐れていた男は、誰よりも人を愛する事を知ってしまった。陽だまりに身を浸す幸せを味わえば、孤独に溺れる痛ましい末路は、もう選べない】



 「 ……… それがイヤなら、謝らないでよ。」「 ─── だって、そうでしょ?」
 「ボクを愛してくれたのは、 ……… ボクを食べて、長生きする為じゃ、ないんだから」
  「だったらさ、 ……… 何んにも、気に病む必要なんて、ないよ。好きだから、好きで、いてくれるんだから」

   「どんなシグレだって、 ─── ボクの、愛しいひと」「 ……… それで」「それだけで良いって、言って。」



【見出した紅い光明が、たとえ身を焼く業火であったとしても、彼は真っ直ぐに見つめることしかできなかった。振り絞るような最後の一音節は断末魔に似ていた】
【言外にきっと非道い選択を強いていた。 ─── 嫌悪も、憎悪も、恐怖も、軽蔑も、慙愧も、罪悪感も、████だって】
【辛い情念の全てをボクが請け負うのだから、それに対する当然の兌換として、ボクだけを見ていてほしい。ならば、きっと】
【彼にとっては少女が何者であるかなんて一言で足りた。後はそれを少女が受け入れるか否かであって、だから今でも恐れていて】
【 ─── それでも悉くを拾い集めて吐露した気丈さの、遍く一切は真実だった。泣いてしまいそうなくらいに微笑んで、けれど縋る指先ばかり慄いて、仕方ない】


51 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/24(土) 21:31:16 E1nVzEpQ0
>>48

【乗れる船があるというならばミレーユからも続ける要求はなかった。「 ─── なかなか乗り心地がよさそうだ。」ふと、笑って】
【軽妙で軽薄なその笑顔を、そのまま不安げなライガに向ける。真白い頬を幾らか赤らめたまま、 ─── 背中を叩いて励ますのは】
【やはり先輩風を吹かす所作であった。あるいは酔っ払ってもいた。抱えた酒瓶の数々を恐らくはそのまま持ち帰る積りであろう】


 「だいじょーぶだいじょーぶ。ヘマはやんないよ。」「 ─── こういうのは少ない方が都合いいのさ。」
 「出てくる時ボクたち多分びしょ濡れだし、タオルとか欲しいかも。風邪ひいちゃうよ、ふふっ。」


【「うまくやったらボクがご褒美にキスしてあげよう。」 ─── 軽い声音が冗談であるのか否か、全く判然としなかった。】
【ともあれ一先ず場が纏まるのならば、二人は去り行く対手を見送るのだろう。「貴方たちも、心中の虫には気をつけなさい。」】
【然して付け加えられた言葉に、 ─── どこか思うところのあるように、アリアは眼を細めた。低められた声は、訥々と】



    「 ─── 悪いけれど、」「心当たりはないわ。」



【それで対手が納得するのであれば、それ以上のことはないのだろう。彼女らもまた帰投の準備に入る】
【装備-仔細な作戦-決行の日時-その他諸々の手配/こなすべき項目は幾らでもあった。ならば持ち帰る酒瓶も慰めとなろう】
【そうしてまた時間は多く残されていなかった。事態がこの程度の規模で決着する内に動かなければならない】
【 ─── ゆえに夜明けの近付く街へ、セダンが滑り出して行くならば、そのトランクには凶器が詰まっているのだろう。弾薬と、銃身と、銃爪と、あと一ツ。】



/このあたりで〆でしょうか!おつかれさまでした!


52 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/24(土) 22:46:28 WMHqDivw0
>>50

――――――――――――――――――――いや、

【開いた眼がぎゅうと縮められるのにコンマ一秒もかからなかった。そしてまた、暴れ出す】
【優しく抱いてくれる腕から必死になって逃れようとする。そうするたび服の布地が背中に擦れて、痛い】
【だけどもうそんなことどうでもよかった。……きっと数時間前の彼と寸分違わず同じことを考えていた】
【大好きな人にこんなこと言わせてしまう自分が嫌で嫌でたまらない。一刻も早く死にたい。だから】

いや、いや、いや、いやッ! どうして、なんで、…………そんなの絶対にイヤ!
なんでなの、いいよもう、あたし十分幸せだもん! だってあたし、普通だったら、
今だって誰かに死に様をバカにされつづけて、それをイヤって言うこともできなくて、
ずっと何も言えずに土の下で眠ってることしかできないはず、で、………………ッ、
そうなる前にイズルに見つけてもらえた! 助けてもらえた!
もう一回生きてもいいって、許してもらえて、それで、8年も生きたよ!
これからだって今すぐ死ぬわけじゃないし、何年も生きられるよ、それで十分でしょ、
十分すぎるはずだもん、友達もできたし、楽しいことだっていっぱいしたし、それに、

【あるいはあのくだらない動画の中で見せていた断末魔の瞬間より。あるいは恐怖の神に囚われたときより】
【よっぽど恐ろしいものを目の前にしている、ような、表情をするのだろう。狂ったように頭を横に振って】
【震える指先はそれでも彼の身体に添えられる。そうして引き剥がすよう、突き放そうとして――だけど】
【力で負けてしまうなら、そのときはっと気づいてしまったように顔を上げるんだろう。……ああ、そういえば、】
【この人はあたしなんかよりずっとずっと綺麗な顔してるけど、男の人なんだって、気付くなら】


――――――――――――エーノにだって会えた、恋もできた、だからもう、いいよ……。


【放してもらえないことに気付くなら、諦めたように項垂れて、そのまま涙を零して。水滴がぼたぼた落ちる】
【左手薬指の銀に落ちては弾けて散る。……こんな、誰だってできるような誓いの枷を嵌めることができても】
【彼がいつかこいつに望んだ、同じ姓を名乗ってくれってお願いを聞かなかったフリしてやり過ごしたのは】
【つまるところこういう理由だった。それが最後の一線、越えたくても越えられない、越させてやれない】
【本当の本当にどうしようもない境界線だった。そこを越えてしまえばきっと、あなたのことを世界一不幸にしてしまうから】


…………誰にも死んでほしくない、誰かを死なせてまで生きたいなんて思えない、ただ、ただ、
おしまいの日まで一緒にいてくれればそれでいいのに、………………それ以上はいらないの、本当に、


                                                                  【本当に?】


53 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/24(土) 23:11:29 BRNVt/Aw0
>>40

【元より彼女は少しだけ臆病な女の子、だった。記憶にはないとはいえ生まれてすぐ父親からは存在を否定されて、愛を与えてくれる筈の母親だってきっと"そう"だった】
【少し大きくなってから気付いた事。自分の名前を構成する文字に含まれた「栂」のもう一つの読み方。その音に隠された意味は「咎」で】
【更には夜中にふと目を覚ました時に見てしまった母の姿。■■の■■を■■■──】
【だからその時からずっといつか保護者に棄てられるのではないかと"怖く"て、名前なんか本当は嫌いで】
【自分に暗示をかけていた。お母さんが"大好き"なんだって。彼女はちょっと思い込みの強い子でもあったからその『自己暗示』はいつしか『錯覚』に変わって】
【けれどもそんなものは少し前にべりべりに剥がれてしまった。剥離した自己暗示と錯覚が今までの強がりな自分を全て持っていって否定して傷を残して】

【だから、全てが怖くて──何も出来ない事もそれを責められる事も、弱々しい本当の自分を大事な友達に否定される事も、母親想いの優しい女の子を無意識に演じていた事を嘘だったと見なされて姉のように思っていた人にも父のように思っていた人にも糾弾されてしまう事も、ぜんぶ】
【だから代わりに自己否定で自分を包んで、そうして結局自分から傷付いて】
【きっとそれを自分から外す方法が分からないから強迫観念に取りつかれて死にたがって】

【自分の"セカイ"がもうどうしようもないのだと言われれば少女はいっそうボロボロと涙を零して】
【命を散らすのか、それとも自分を構成する記憶を喪って『銀ヶ峰つがる/栂流』を"殺す"のか、どちらかを選べと尋ねられて】
【自分はそれを選べるのだ、『記憶屋』なのだから、と語られれば少女は少しだけ驚いたように目を見開く】
【情報収集の手伝いを行っていた彼女は幾つかの都市伝説を知っていて、その中には当然『記憶屋』の名前もあったから。本当にいたんだ、と驚愕して】
【けれども自分のおかれている選択の事を思い出してすぐ昏い表情に戻って】
【優しく撫でられる頭。お母さんはこうしてくれた事あったっけ、なんて思い出してまた涙が零れて】

……記憶を、消せば……私は"幸せ"になれるかもしれないの?
全部全部消しちゃって、そうして私は私じゃなくなって……そうしたらその子は新しい居場所を見付けて……



────でも、たんぽぽの子供達も鈴音ちゃんも夕月ちゃんもオムレツさんも厳島さんも……苦しいまま?

……だったら嫌……私じゃないけど私一人が笑ってて他の皆が苦しんでるまんまなんか嫌……
それに……もし記憶を消して私が"死んだ"後でまた皆に会ったら?
そしたら私の形をした誰かは私を知らないからきっと皆を傷付けちゃうかもしれない……

だったら私は幸せになりたくない!

だから……肉体ごと無惨に死んだ方が良い……

手足を切り落として……それから両目も抉って……そうやって殺されるのが良い……
【告げられたのは見た目に似つかわしくない残酷な方法】
【"あの子"に対して本当に罪悪感を覚えているから、きっとそうすれば贖罪になるんだって、信じて疑っていなくて】


54 : 名無しさん :2018/11/24(土) 23:18:19 ZknT1uAI0
>>42

【その瞬間に、彼女は、"は"と目を瞠るのだろう。出来るってまっすぐに言い切ってくれたなら、とたんに、そんな気がしてくるのが、不思議だった】
【自分のことを夕月が好いてくれているというのには、いくらか自信なさげに睫毛を伏せもしたのだが。大筋には、仲直り、できる、――って、思えた、らしかった】
【――だけれども、自分のことを安堵させようとして、お道化てみせる彼の言葉には、ほんの少しだけ、むっと口角を下げるの、なら】

――――、女の子に、そんなこと言ったら、駄目だよ。

【わたし笑わないもん。そんな風に言うみたいに視線を逸らしてしまうのだろう、――――でも数秒後に戻って来る眼差し、ふ、と、わずかな吐息が漏れるのなら、柔らかい】

……。ううん、わたしが、ちゃんと、"やって"ればよかった。言われた通りには出来ない、……するはずは、ない、けど。――――。あのね。
麻季音ちゃんを連れて来るか、カニバディールを殺せって、――。言われたの。わたし。でないと、あの子たちを――――――…………。

………………。"そう"したら、だめって、分かってたの。だって、そうでしょ、そしたら、……。人質を取ったら、言うこと聞く、って、思われたら、
だけど、なんにもしなかったら、……。――。だから、わたし、カニバディールに、殺してって。……――そうしたら。誰にだって、理由が分かるの。だって。
カニバディールは機関のひとで。わたしは、UTのひとで。"そんなの"当たり前で。

――――――"黒幕"が見たら、カニバディールを殺しに行ったわたしが、殺されたように、見える、でしょ。だから、そしたら、全部、――終わる、はずだった、

【彼の言葉に、けれど、彼女は首を振る。自分が悪い。――だって何もかも投げ出して逃げていたのは自分だった。居たらどうにかなっただろうか。ならなかったかも、しれない】
【だけど自分でやるって決めたことだった。それに付随する責任を誰かに負わすことはあってはいけなかった。もう遅くても、きっと、なにか、出来ること、あったかもしれないって】
【――――――それでもひどく悲し気な目をしていた。ぎゅうって唇をかんだなら、】

だけど、――カニバディールは、そうしないって。違う方法でやろうって。黒幕に、なにも、――わたしも、渡さないって、言って、くれて……。

【嬉しかった/だけれどやっぱりどうしたって、"そう"してもらっていたら、って、思ってしまう自分が、まだ、居るのなら】
【あるいは繋がるのかもしれなかった。彼女が受けていた"脅迫"の全貌。味方を売るか、子供を見捨てるかの選択肢。三つ目を選ぼうとした彼女は、悪徳の肉屋に助けられていた】
【――――涙に濡れた顔のまま、彼の手元を見上げた。彼が持っていたのなら、――彼女はきっとまだそのほとんどの意味を知らなかった。から、眼差しは、ごく、ニュートラルな色】


55 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/24(土) 23:47:07 E1nVzEpQ0
>>52

【黙って慟哭を聞き入れるのが彼に残された他ならぬ最後の義務だった。拉ぐように腕へ籠る力が、もがく身体を言葉なく抑え込む】
【 ─── そうして面を上げる時、やはり彼は笑っているのだろう。ひどく悲しく笑っていた。少女に初めて見せる表情だった】
【悲しく笑うなんて悲しい事を選ばないように彼は生きてきた。人の中で一人だって感じるより、一人ッきりで孤独を感じている方が幸せだった。故に女の振りをして、だのに】
【何時からか何かを間違えてしまっていた。馬鹿みたいに背の高い女に恋をしたからかもしれないし、化粧品の一ツを争って見知らぬ少女と口喧嘩したからかもしれないし、】
【悪縁になったその子から藪から棒に殺しの遣り方を教えてほしいと願われたからかもしれないし、誰かの悲惨な死に様を知ってしまったからかもしれないし、】
【それが為に柄でもない処刑と復讐を果たしたからかもしれないし、冷たく白い心臓に宿った情念が相違ない恋心だと自覚したからかもしれないし、】


   「だったら、許さない。」


【歪んでいようと化け物だろうと、 ─── それが正しい生き方であると、今となっては決意したから、かもしれなかった。】
【一ツ、二ツ、三ツ。捨ててきた馬鹿馬鹿しさを数えていく。両掌じゃ足りないから、キミも一緒に指折ってほしい。】


     「ボクは優しくないよ。」「 ……… もう、シグレがどんなコト言ったって、許さない。」
     「幸せになるまで、許さない。」「それでシグレが苦しい思いをしたって、許さない。」
     「シグレの為なら誰だって殺すし、何時だって死ぬよ。」「キミが、世界で誰よりも、幸せになるまで。」



【滂沱する左眼に、そっと口付ける。止めどない涙をそっと啜って、白い喉に飲み干していく。濡れた銀色を、左の掌が拭って】
【すれば無理矢理に指々を絡めて、深く手と手を繋ぐのだろう。 ─── 留めを刺すように、色褪せた血に濡れる右腕は、嗚咽のすぐ横に突き立てて二度と逃がしたりしない】



        「勘違いさせちゃった?」「御免ね。 ─── でも、ボク」「こういう奴、だから。」



【だから/許さないフリをしたままずっと許してるから/震えた心臓に追い討ちかけるようにキスをしてよ/この手で幸せを定義し直そう】


56 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/24(土) 23:56:40 6IlD6zzI0
>>53


手足を切り落とされた達磨になって両目を抉ってガランドウになった所で意味はないの。
それこそ"他の皆"にとっての癒えない傷になるのよ、それも一生涯消えない傷痕になってね。

だったら他の皆を蔑ろにしてでも幸せになった方が良い。人の幸せというのは誰かの不幸の上に成り立っている。
未来のアナタが幸せなら今のアナタも他の誰かさんたちも蔑ろにしたって何の不思議もない。
むしろ惨たらしく死ぬより前向きで建設的な選択肢であるとも思うの、だって生きていればまた関係を築けるじゃない。


【どこまで他者を思う少女なのだろうか。そのくせ自分を一番に蔑む対象に捉えているなら】
【尚のこと全ての記憶を奪ってやった方が幸せになるのではないかと本気で思ってしまう】
【どうせ希死念慮に駆られるのなら、自分の糧として記憶を捧げてくれる方が互いに幸せになれるから】



だから―――記憶を消せばアナタは幸せになれるかもしれない。
罪の意識もつらい過去も思い出も、今しがた叫ぶ思いごと全て綺麗に消し去れば何の問題もない。

それにね―――――ワタシとアナタとの間にはヤクソクがあったじゃない。
"話を聞く代わりに死に方を選びなさい"って二人で交わしたでしょう。
――――――という訳で遠い過去から結びつく今のアナタを"殺す"わ。


【撫ぜる手は優しいままに、語りかける口調は穏やかなままに】
【少女の拒絶を押しのける手は暖かくて冷たかった――まるで抜け出せぬ温いお湯みたいに抜け出せない】


お望み通り惨たらしく死にたいと言うのなら――――ワタシに全力で抗う事ね。
そんな事ワタシがさせるワケが無いけれど、出来るものならやってみなさい。


【頭に触れられる手から伝うものは、少女の記憶を奪い去ろうとする意思】
【キャロラインの手を覆うのは人ならざる気配を孕んだオーラの様な気配】
【それは記憶を奪い去る悪なる手。少女の拒絶する死の形そのものである】


57 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/25(日) 00:06:53 WMHqDivw0
>>54

【ぱち、と目をしばたかせて。それから「ごめんごめん」なんてヘラヘラ笑うなら】
【彼と夕月の距離感だってごく近い、くだらないものなのだとわかってしまうんだろう。そして】
【目の前の少女はきっと誰ともそんな近さでお話をしたことないんだとわかってしまうんなら】
【猶更戻ってきてほしかった、そうして、そんなくだらない輪の中で笑っていてほしかった】

…………そお、でも、おれと夕月とつがるんで、鈴音ちゃんの帰りを待とうって決めたんだから。
それができなかったのはおれたちのせいでもあるから――そーだネ、どうしても納得できないなら、
四等分しちゃおう、罪も罰も、わけっこ。そしたらきっと、全部ひとりで背負うよりはなんぼかマシっしょ。

おれだってその、カニバディールと同じことしたと思うよ。だって悔しいじゃん、アイツらの言いなりになるなんてさ。

【くるくる。ペン回しみたいな気軽さで注射器を手で弄び――カバーのついた針が天を向く】
【中に入った液体はきっとアイツらの都合のよい効能しか持っていない。であるなら、】
【存在そのものが異能の賜物であるこいつとか、――目の前の少女だって、死んでしまうのだろう】
【ヤツらの言うことを聞いて、この薬剤を打ち込むなら。ただそれだけで何もかも解決するのなら】
【ふたりともに大人しく従って死ぬ気はあった。だけど、だけど】

これネ、……打ったら返してくれるんだって。こどもだち。でもさ、
本当におれたちがそれに従ったとしても、アイツらのことだ、「そんなのウソに決まってんじゃん」とか言って。
返してくれない可能性だってあるじゃん――だからきっとカニバディールだって、鈴音ちゃんを殺さなかった。

だからさ。アイツらともケンカしよーぜ、我慢して、言いなりになって、自分が犠牲になったらなんもかんもオッケー。
……なんてのはもう、死んでもゴメンでしょ? だからさ、

【「世界滅ぼす前に、アイツらとケンカしよーぜ。そして仲直りなんてしなくていいから」 ――そう言って】
【ケンカしたらそのあと絶対仲直りしないといけない、なんて決まりごとはないと教える。だから】
【我儘な悪い神様の第一歩として、一緒に、アイツらを一生赦さないでいようって。……そんな卑怯な神頼み、ここに来て】


58 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/25(日) 00:19:41 WMHqDivw0
>>55

【閉じ込められた腕の中でもがくのはもうやめた。しんと静まり返って、くちづけを受け入れるなら】
【いつもみたいにくすぐったがって、甘い吐息を零して、触れられるのが気持ちいいのは変わりなくて】
【だから結局のところ、きっとこいつも一生逃げられない。甘ったるい蜜が張り巡らせる糸の罠に】
【磔にされてもう羽搏けない。そのまま、食べられてしまったとして、きっと何も怖くないから】

………………、……じゃ、どうやったら、幸せになれるの?
もちろんエーノにも死んでほしくない、他の人にも死んでほしくない、
誰も、何も、なくさないでほしいよ…………どうやったらこのお願い事は、叶うの?

【絡みつかれる指先は悴んでいるみたいに覚束ない。誰一人とて損ねないように、生きてきた、つもりだった】
【それをひっくり返してなかったことなんかにしたくないから。これからもずっとそういう風に生きていたい】
【永い後日談なんて望まない。一瞬だけでいい。閃光みたいに弾けて消えて、それが誰かの網膜に焼き付いてくれたら】
【本当にそれだけでよかったのに、……やっぱり、怖い。しあわせになるのは、怖くて怖くて仕方ない】

エーノ、エーノ、…………ねえあたし、あなたより、年上なんだよ、本当は。
お姉さんなの、だからあなたより、本当はもっとしっかりしてなくちゃいけないの、
自分のことは自分でやらなきゃいけないの、だから、エーノがしてくれなくっても、

【「あたしは十分幸せだから、いいって、言ってるのに」。言葉でなんとか大人ぶろうとしたって、結局は】
【我儘しか言えない少女でしかなかった。だって彼女は17で死んで、そこから永遠に成長できないから】
【だから弱音だって、不安に思う気持ちだって、上手に処理できやしないのだ。……二つ年下の男の子に、寄りかかって】

……………………あたし、これから、どうしたらいい?

【――――結局はまた、両目を瞑って縋りついてしまうんだから。もうどうしようもなかった】
【噛み締めてすこしの朱色を取り戻した唇が震えて、なだめてほしいって強請るように。気休めにしかならないとわかっていて】


59 : 名無しさん :2018/11/25(日) 00:30:21 ZknT1uAI0
>>57

【ならやっぱり彼の思った通りなんだろう。彼女にも親しいひとはもちろん居た。けれど、彼と夕月のような距離感で話すひとなんて、きっと、居ないのだ】
【それは彼女の性質のせいもあるのかもしれないけど。――だって真面目にとらえてほっぺたをむくれさせるのを毎回やってたら、きっとやっていかれないんだから。それでも】
【もしもそんな友達が出来たとしたら、――彼女はきっとごくありふれた少女みたいに笑うのかもしれなかった。笑えるのかもしれなかった】
【くだらない話とクレープとタピオカとプリクラ。スマホのアプリで別人みたいな写真を撮って、なんか耳とか鼻とか付けちゃって。――(あるいはそれこそ憧れた、)】

…………だって、わたしが、やるって、決めたことなのに。……ほんとは、ぜんぶ、全部、わたしのもの、なのに……。
……――――、……。ねえ、だったら、――、わたしとヤサカさんで、はんぶんずっこ――が、いいな、わたし、……、だって、
夕月ちゃんも、つがるちゃんも、――大変、なんでしょう。……わたしの、せい、かな、……だけど、そうじゃなかったと、しても、

それじゃ、重たくって、嫌?

【――自分が蒔いた種なのに。そうやって口の中でもごもごと言葉を連ねた彼女は、だけれど、ふっと、何かを思い直したらしい。彼の言葉を受けてか、】
【それとも、自分全部では負えないって分かって、――とっくに分かっていたのかもしれない。だってそれをとどめに折れてしまったんだから。誰かに押し付けてやるってこと、知ったなら】
【来られないような状況にある夕月やつがるは除いたわたしたちで。――ねえそれでは嫌かな、って、少しだけ躊躇う眼差しが揺れる。だけど、そう言ってくれるのなら、】
【きっとうんと笑うって予感させて、――だけど、やっぱり、無理強いはしていなかった。わがままするって決めたとしても、そればっかりは、――本当は自分で取るべき責任、なら】

っ、え、

【――――――――――だから、やっぱり少女は、ひどく、感情を剥き出しにする。してしまう】
【ともすれば自分に打てばいいって言ってしまいそうな顔をしていた。というより、あとほんの数秒タイミングが違ったら、間違いなく、そう言っていた】
【だけれどそれより相手の言葉が早い。――、でも、でも、そんな風な言葉、無意味に、ぼろぼろって唇からこぼしながら聞く。ぎゅうって指先が服の布を掴んで、】
【どうしようもない思考を繰り返しているらしかった。どうしたらいいか分からない顔をしていた。だけどわたしもう我儘だから。我慢しないから。好き勝手するから。だから】

――――、喧嘩、する、今までの分のぜんぶ、ぜんぶ、――仕返しする、

【――喧嘩というにはいくらも私怨めいている気がしたけど。こくんって頷いた仕草は見間違えてもなんでもなくって、】
【だから彼女は世界を赦さないけど、黒幕だって赦さない。――少なくとも、非道いことされた分の八倍くらいは仕返しする。――出来る、気がした。だって彼が言うのなら】


60 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/25(日) 00:31:35 BRNVt/Aw0
>>56

【少女の言葉を否定する『記憶屋』。他人を蔑ろにしてでも幸せになった方が良いのだという言葉に少女はゆるゆると首を振って】

駄目……駄目なの……!
そんなの絶対赦して貰えないの!
何にも出来ない子は要らなくて、だから死ななきゃいけないの!生きてちゃいけないの!
私じゃない私が幸せになったってそんなの──

【言い掛けた言葉が不意に止まる】
【最初に交わされた約束。話を聞く代わりに死に方を選ぶ、と】
【遠い過去から結びつく今までの自分を殺すと言われればその喉がひぐっと鳴って】

【払い除けようとした頭を撫でる手。けれども除ける事が出来なくて】

いや……いや、だ……!
わすれたくない……わすれたくないよ……!
【ポロポロと流れていく涙。抗うかのように発現させるは数本の直径3cm程の氷柱】
【相手に差し向けて、飛ばそうとして】

いや……わすれたくない……っ……ほんとのなまえ……ともだち、も……っ
もって、か、ないでぇ……!
【叫ぶ。ただ叫ぶ。上手く出来るかなんて分からないけれど】


61 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/25(日) 00:52:53 WMHqDivw0
>>59

…………そーねえ。つがるんも夕月もまーいろいろあったっぽいし、
じゃあ半分ずっこにしよっか。重くないよ、おれ、力持ちだし――さっきも荷物ぜんぶ持ててたじゃん?

【笑っていた。少しだけでも此方に持たせてくれるのが、全部自分で背負おうなんて思わないでくれたのが嬉しくて】
【それだけで何かが救われたような気がした。ちょっとだけ変われたんだと思えた】
【それ以上の我儘は望むべきではないとわかったから、ここにいない少女たちのことはもう言わないことにして】

【そうして、】

あは、………………あははっ! その意気その意気! まずはアイツらぶっ潰して、
そっから――鈴音ちゃんの赦せないやつひとりひとり探してケンカしよ。
そーしてるうちに、自然に滅んじゃってるかもしんないし。あっはは、仕返し仕返し!
どーしてやろうか、おれたちの大事な子たちをイジめたんだから……それはもうボッコボコにしてやんねーとネ!

【「世界相手にケンカするのの、前哨戦ってカンジ!?」 あまりにも愉快そうに笑ってそう言うから】
【当たり前のようにこいつも手伝う気マンマンであるらしかった。八倍どころか十倍だって百倍だって】
【いくらでもやってやりたい気分。こいつだって怒っていた、ヤツらのやり方は悉く気に食わないから、なら】

じゃあさ――そのための腹ごしらえってカンジで、バーガーとパフェ食べちゃう?
半年だっけ? 鈴音ちゃんが寝てたの――そのあいだ何も喰ってなかったんでしょ、
思いっきりケンカすんなら、ハラ減ってたら力でねーし。負けちゃうぜ?

【気持ち良く、華々しく、清々しく勝つために強くなろう。そのために――というわけではないんだけど】
【幸いにもバカみたいな量の食材を買ったわけだから。決戦に備えた意気込みも兼ねて、盛大に食べちゃおうって】
【ここにきてようやく、運び込んだ食材たちに目を向けて。……そしたら、注射器、手から放って床に転がすから】

【少女が何もしないなら。こいつはそれを踏み潰して壊すつもりだけど――怨みがあるなら、先にそうしたって、きっとよかった】


62 : 名無しさん :2018/11/25(日) 00:54:19 ZknT1uAI0
【二人一緒に迎える朝の数を数えなくなって何回目の朝だろうか。目覚めたら隣に愛しい人が眠っているのが当たり前になった、朝日の中】
【近頃は自分が目を開けるような時間には、とっくに貴女は起きているって彼女は知っていた。それでも微かに唇を突き出せばキスが叶う距離感にて、】
【少女はそれそのものが相手への甘えであるようにあどけない寝顔を見せつけ続けていた。だけれど、その眠りも、少し前より陰りが覗くから】

【――――「お散歩に行ってきます」と彼女は言った。なんせ引きこもりには向いていない子だった、ならば】
【いつか少女が夜中に唐突にアリアを呼びつけたのだって、引きこもりから来るストレスの反動なのかもしれなかった。なんて、もう、どうでもいいけど】
【"前回"の反省点として(本当にそうであるのかは定かでないけれども)、少女は数日に一度ではあったが、散歩に出るようにしているらしかった】
【やはり一人きりの時間は欲しいようだった。天気のいい日に気が向いたら一人ふらりと外へ出て、日向ぼっこでもして戻って来る】

【一時間くらいで戻ると言い残すのもいつものことだった。――ベッドの淵に腰かけて、黒いストッキングを、丁寧に、丁寧に、足へ纏わせながらの呟き】
【言い終えるのなら、わずかに前傾の姿勢で白い下着にふっくら豊かで、布地よりも白いような胸を収めていく。三つホックの下着が彼女は好きだった】
【ねじくれた肩紐を整えるために首を傾げるのなら、短い毛先がさらさら揺れて。それから後ろのベルトと身体の隙間にも指を通して、整える】
【チャックを降ろしたワンピースをすとんと被るのなら、そう長くもない毛先を横に避けて、閉めてくれるのを待つのだろう。あるいは、】
【腰元のリボンもきゅうって締めてやったら嬉しいのかもしれなかった。その指先にて形作られる蝶々結びが、少女の腰を飾るには一番似合いだから】

帰りに何かお菓子でも買ってきますよお、アリアさん、何がいい?

【――――――――――そうやって家を出てから、四時間と三十七分が経っている以外は、"いつも通り"だった】

【だけれどあるいは見様によっては、それさえもいつも通りであったのだろう。なんせ彼女はいくらも気まぐれであるのだから】
【悪気なくどこかで遊んでいるのかもしれなかった。だけど、やはりというべきか、電話にもメールにも応答がなかった】
【普段からあまり携帯を気にしない子であった。ならば気づかないだけかもしれなかった。――"そんな"だから着信のたぐいには音が出るように設定していた】

【――ならば何か嫌な予感でもするのだろうか。だけれど時刻はまだ昼間をいくらか過ぎた程度の時間だった。おやつには、まだ、早い時間】
【だけれど、言いようによってはおやつの買い出しに行った――お散歩に出た日は買って来たお菓子で二人お茶をするのがいつもだったから――にしては、】

【エーリカより送られたいくらか不穏なメールもあった。だけれど杞憂なのかもしれなかった】

【だって空はうんと青くて澄み渡る、どこまでも小春日和の一日だったから】

/予約のやつですっ


63 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/25(日) 01:00:05 3p1GRly.0
>>58

【愛されるのが好きだった。受け身の恋をするのが好きだった。愛するよりも、求めるよりも、傷付かないで済んでいられるから】
【女のふりをするようになったのは、男のくせに優柔な態度を取る自分が情けなかったから、だったのかもしれない。それも畢竟、今となっては分かった事ではない】
【差し当たって確かなのは重ね合う肌と唇と囁きと愛しさと粘膜の温度なんだと知ったのだから、けれど誰かを誰よりも幸せにする方策にそれだけでは余りに頼りないから】



「 ─── ボクは」「シグレがずっと、ボクだけを見ていればいいって、思ってる」
「キミの世界がボクだけになればいいって思ってる。」「 ……… そんなの嫌だってシグレが言っても、無理矢理、キミの心を歪めて」



【「独り占めしたいんだ。キミのこと」 ─── そこに嫉妬や自己愛が介在しないかと問われれば、彼は否定も肯定もしない。】
【ただそうすればキミが幸せになれるのは間違いない事実であるかに思えた。だってボクだけが奉仕し続ければキミは幸せになれる】
【然るに世界はそこまで単純な作りをしていない事も彼は知悉していた。だから続ける言葉に弱みが混じるのは、ここまで必死に奮い立ってきた反動のひとかけら】


「 ……… けれど、シグレは」「とても強くて、優しくて、きらきらしてるから」「どんなに非道い事されても、生きてきたから」
「ボクだけじゃキミを、変えられないかもしれない。」「 ─── ごめん。こんなに、格好つけた科白ばかり、吐いてるのに」


【ついには涙ぐむ声ごと嘘を吐くのだろう。 ─── 変えられる筈がなかった。だって彼女は余りにも悪意に晒され続けてきて】
【それでも生きる事だけは決して諦めなかったのだから、今更に彼が幾らかの生易しい暴力を振るったとして何になろう】
【求めてくれる弾指の執情に彼もまた囚われているのだから尚の事だった。 ─── こんなに愛おしい温もりと柔らかさを、自分から手離せる訳がないから】



   「 ……… でも、それでも」「ふたりなら、 ─── 分かんない事、分かるようになるかも、しれないから。」「だから」
   「お願い、 ─── 死なないで。」「好きでいて。」「キミの事を、嫌いにならないで、」「幸せに、なって ……… 。」



【 ─── ならば結論じみて綴る言葉は何の解決にもなっていないのだろう。愛し合う二人ならなんて、残酷な三文芝居よりも安っぽいハッピーエンドに誰が涙するのか】
【だから彼もまた今この瞬間に涙を流していた。どうにもならない現実が目の前に横たわっていると解っていて、突き立てた片腕も確固たる力を喪い、しなだれかかるなら】
【結局は抱き締め合って、重ね合って、囁き合って、分かち合えない物を分かち合った積もりになって、それだけなのだろう。(それでも、もう、隠し事も躊躇いもないんだから)】


64 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/25(日) 01:07:17 .eWAuZwQ0
【水の国、ミール・シュタイン大聖堂】

【先日新たに完成した石造りの大聖堂では今、礼拝を終えて帰り行く人が多数見受けられた】
【昨今の風潮を鑑みるに人の入りは多く、話題性というものの影響を強く感じさせる光景であった】
【――――そうして、人も減ってきた頃。】

人が来てくれるのは有り難いですが……やはり荷が重い…………。

【白いアルバの上に緑のストラを首から掛け、同色のカズラを羽織った祭服の男が、祭壇側に立っていた】
【頭にはミトラ、手には先がゼンマイ状になった杖――――いわゆる礼拝時における司教服、という出で立ちである】
【紫の髪は腰ほどまでに長く、花緑青の瞳には心労の色を混ぜて。】

【扉を開いて新たに立ち入る者がいれば。随分と人気の減った空間で、ステンドグラス越しの陽光を浴びている司教――】
【――そんな光景を目にすることとなるのだろうか。】


65 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/25(日) 01:25:54 UUzlAvIw0
【水の国、街中】

【通りに面したカフェテラス、四人がけのテーブルに座るのは1人の男】
【1時間ほど前からこの席に座り、表を歩く人を眺めつつ、時折どこかと電話をしながら過ごしていた】

そこら辺の街中にいそうって言っても、そうそうすぐには見つかんねーよなぁ……。

【頬杖を突きながら呟くのは、金髪の男。長めの髪は一纏めに、淡い色合いのジーンズに黒のライダースといった格好で】
【届いたばかりのホットコーヒーのおかわりにスプーンを突っ込んで、グルグルとかき混ぜていた】

ウォレンシスの方がまた活発になってるって話も気になるが、直接乗り込む訳にもいかねーしな。
一先ず目の前の課題からやっていかねーと……。

【ため息を一つ。エメラルドグリーンの瞳を人波に泳がせて】
【ところで――――ここは昼下がりのカフェ。1人で4人席を占領している男はハッキリ言って邪魔である】


66 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/25(日) 01:27:25 WMHqDivw0
>>63

……………………。あのね、本当は、教会に入ってみたいんだ。
生きてるときからずっと思ってたの、窓の外から中を覗いてみたことがあったの。
すっごく綺麗な硝子があった、みんな綺麗な歌を歌ってた、……それでね、
あとから知ったの。そこで、きれいなドレス着て、結婚式を挙げることもできるんだって。
花嫁さんになりたいって思ったわけじゃないんだけど、……一回くらい入ってみて、その雰囲気を味わいたかった。

【――――ぽつ、ぽつ、と語り始める。幼い頃からの憧憬の話。彼は知っていただろうか】
【今となっては彼女は教会に入れない。掟を破った咎のバケモノは、神様に拒絶されるから】
【十字架だって直視できないし、聖句を聞かされれば頭が痛くなるし、聖なる空気を吸えば胸が痛くなる】
【だから――ちょっと前、結婚を控えているという人から式を見に来てくれって頼まれて。でも断った】
【でも本当は行きたかったに違いない。そうして、自覚はしてなかったけど、同じようになりたいって】
【真ん中の道、深い赤色の絨毯を踏み締めて、十字架へ至る道を愛する人と歩きたい。願っていた】

それから、…………こども、子供、本当は、……ちょっと欲しいの。でもできないから、
だからいっつも、エーノに、お願いしてたの――できなくってもあなたの遺伝子がほしいって、
毎回ねだってたでしょ? あれ、してもらうたびに嬉しかったけど――同時にいっつも虚しかった。
こんなにたくさん、注いでもらえるのに――ぜんぶ実を結ばずに台無しになっちゃうんだって思ったら、悲しくて。

【それから先のことだって願っていた。自分がうまく形成できなかった家族という縁、あなたとなら】
【きっと上手く作れて、その温かさを知れたらどんなによかったか。そして、自分みたいな目に遭わせないように】
【うんとうんと愛して育ててやりたかった。それももう叶わない。だからこれも諦めてしまって、捨ててしまったはずだった】

そしたら、ふたりで一緒に、歳を取りたかったの。
……エーノ、おじさんになったらもう流石に、そういう服着れなくなっちゃうでしょ?
だから男物の服、着ちゃうようになるのかな――そしたらあたしだってそれに似合うような落ち着いた服着るようになって。
大人っぽくて素敵な夫婦ねって、周りから憧れられるみたいな――感じに、なりたかったな。

【さらに先のことを喋るなら、失笑すら零れるんだろう。男物の服を着たあなたの姿が上手く思い描けないから】
【自分だって年相応の落ち着いた服――たぶん、柔らかい色合いのニットとか、ロングスカートとか】
【そんなの着るようになる、なら、バカみたいな色合いの厚底靴も、もう履けなくなるんだって思うけど、悲しくはなくて】

そしたら二人、どっちが早く死んじゃうかわかんなくて、……でもそれでも悲しくないって顔して。
だって今までの人生、いいことたくさんあったから――未練も何も抱かずに、それぞれ、穏やかなお別れ。
できたのかなあ。……エーノは年とっても、あたしがいなくなったら泣いちゃいそう。ふふ、…………、

――――――――――――こんな感じになりたかったって言ったら、笑う? それとも怒る?
そんな無茶苦茶なこと言われても困るって、……そうだよね。困るよね。おかしいな、………………、

【どれもこれももう叶わないことだから。もういいって思ってた。のに、そんなこと言われたら、望んでしまって】
【困らせるだけだとわかっていて。けれどもう止まらなかった、あなたと二人幸せになりたい欲求が、溢れ出すから】
【「強くなんてないよ」。それだけ言って――世界一いいにおいのする胸元に、顔を、埋めるのなら】

【(やっぱり叶わないなら死んでしまいたいよ。――――ひとりじゃなくて、一緒に)】


67 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/25(日) 11:29:59 6.kk0qdE0
>>51

「そちらは海軍の管轄だからな、本国の土御門派に打電して要請する」
「最も乗り心地は、潜水艦だし、まあその何だ……ああ、コンセプト的にはいいと思うぞ、画期的だし」

【また一方では、程よくバーボンが回り始めたミレーユに、背中を叩かれたライガが】

「わかりました、でも危なくなったら必ず、必ず連絡下さい」
「わかりました、タオルですねありったけ用意しますよ、それとシャワーも……ってき、き、きキス!!??」

【素っ頓狂な声を最後に上げながら、それってつまりは、そう言う事で、でもミレーユさんには彼氏が居て……と1人の世界に入り始めているのだった】

「心中の虫、ね……まあ、海軍みたいにならない事を願うね」
「全くです、貴女方も、ですがね」
「やっぱり、知らないか……まあ仕方ないな、此ればかりは地道に探すかー」

【そう言い残し2人は、階段を上がり地下から地上の、宵闇の喧騒の中へと身を消して行った】
【櫻の国の動乱の火は、こうして彼方此方に飛び火して】
【果たして、その飛び火が運命であるか必然であったか】
【それはまだ、誰にも解らない】
【そう……誰にも……】





//では、こちらで〆で、お付き合いありがとうございました!


68 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/25(日) 22:26:21 6IlD6zzI0
>>60

【死を明確な形にして突きつければ誰しもが恐れ戦く――必然だった】
【そして生き長らえようと抗うのもまた必然の作用であるのは言うに難くない】


――――づぅっ…!


     ――――――――  ……駄目よ。
           
       今更 駄々を 捏ねないで もらえるかしら?

       アナタは 死にたいと そう願ったでしょうに。

   だのに、何故 ソレを拒むの?忘却の無い幸せ など 無いのに。


【拒絶の意思表示たる氷柱はキャロラインの肩、右手に刺さり痛みで顔をゆがめる】
【けれど少女の頭を撫でる右手は離さない。滴る血も少女の髪に触れながら記憶を奪い始めた】
【くしゃくしゃに歪む少女の表情とは対照的に薄ら寒い気配の穏かさを保つ彼女の表情は捕食者を連想させる】

【最初に奪われるのは直近の記憶。少女と記憶屋が出会ったこの時の記憶、そこから遡及して】
【やがて少女の奪われたくない記憶の数々に触れていく――少女が抗う事を止めた場合の話だが】
【彼女は記憶を奪う行為に専念している故に、気持ちを強く持って抵抗の意志を示せば、それは罷り通る】


69 : in "2Q36" ◆3inMmyYQUs :2018/11/25(日) 23:03:54 nHxGsN220
前944-946


――――ふーん……


【――いつも何をしてるんだか何をしてないんだか分からないロッソが、】
【せっかく誠実に語ってくれたその答えに、けれどわたしが返したのは、たったその一言だけだった】

【周りの彼ら――リッキー、ウィンキー、タミオ、あとはまだ覚えてなかった――は、】
【互いに目を合わせて、苦笑いをしながら、頷き合っていて】
【「どんまい、ロッソ」――そんな風に誰かが声を掛けた】


【傍目にはそう見えたと思うけれど、】
【別にロッソの言葉が全然何にも響かなかった訳じゃない】


(――――“仮初めもいつか本物になる為に”……)


【――少しだけ、彼らが男のロックばかり聴いて歌う理由を理解できた気がした】
【自分の代わりに、でも自分自身のように、強く声を上げてくれる誰かがいたら】
【きっとわたしもその声に耳を傾けたかもしれない。口ずさんだかもしれない】

【でも――】

【――“女は強い”――】
【――それは本当にそうなんだろうか】
【自分も女として生まれたはずだけれど、】
【“強さ”なんて呼べるものは、このやせっぽちの中にはどこにも見当たらなかった】


  : He went away and he died――
(「――あの人は帰らない 永遠に――」)

      : Blue Moon, you saw me standing alone――
    (「――月は欠けていないのに 私の隣には誰もいなかった――」)


【言いたいことは何かあったような気がしたけれど、】
【口は相変わらず重たかったから、結局何も言わず、代わりに耳を澄ませて】
【その、顔もいつ生きて死んだのかも知らない、遠い女の人の歌を聴いていた】


【――丁度そのときに、“どたぁんっ”、と】
【いちいち大胆にドアを開いて、ミランダが入ってきた】

【彼女は来るなり、部屋を見回して、目を丸くした】


「――なんだあ?
 今日はやけに“しなっ”としたのやってんな。誰か死んだか?」


/↓(2/4)


70 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/25(日) 23:04:15 BRNVt/Aw0
>>68

【相手の右手に刺さった氷柱。赤い血が月白色を染め始めて】

だって……だって……!
わたし、こんなの、のぞん、で……っ、ない!
からだは、いきてて、なのに……わた、し、じゃ、ない……わたし、なんて!
そんな、しにかたは────



────ひぐっ……!?

【少女が不意に発した音。金色の瞳が大きく見開かれて】
【誰なんだ、この女は?何故頭に手を置いているのだ、と言いたげな面持ち。どうやらこの出会いの記憶が消えてしまったようで】
【戸惑いと共に止まる抵抗】
【ならば、新しい記憶から次々と消えていって】

【スーュニの毒中食のぽぽんた、逅邂のと三二一億万千百、論口のとンイレエ添切、会再のとカサリア・タウyr──】

【そこまできて気付いた。自分の記憶が新しいものから奪われているのだって】
【ならばそのうちに記憶は、とすぐに思い付く】

ゃ……いや……わたしの、きおく……いや……やめて……
【再び抵抗が始まる。頭の上に乗せられた手を再び除けようとするが出来なくて】
【ならばそのうちに全部奪われてしまうんだって分かってしまえば】


【────方法は、ひとつしか、思いつかなくて。】



【再び少女の周囲に発現された氷柱。今度は直径が10cmを超える太い物で】
【それが全部で六本程】

【ただし、その切っ先は】

【──全て少女の方を向いていて】

……どーせ、なら……っ

奪われる、前に…………!

【私が全部持っていって、死んでやる】
【声には出さなかった最期の宣言】

【氷柱は一様に少女目掛けて飛び掛かって】

【その全てが少女の身体へと突き刺さって】

……流石、に……っ、死体から、記憶なんか……奪えない、でしょ……?
【血を口から吐き出しながらもニヤリと笑う少女】
【その目はゆっくりと閉じられて】
【身体も冷たくなり始めて】


71 : in "2Q36" ◆3inMmyYQUs :2018/11/25(日) 23:04:59 nHxGsN220
(続69)

【それから、「相変わらず煙たい部屋だ」と】
【ブヨの群れに突っ込んでしまったような顔に変わって、大袈裟に頭の周りを払うと】
【彼女の前にあった、酔いどれたちという名の海が割れて、その中を当然のように歩いてきた】

【ミランダはわたしの姿を見つけると、】
【ぱっと花が咲いたように目を大きくして、わたしの前までずかずかとやってきた】


「――おお、いたいた。よおシヲリ、ちょっと手伝ってくんねえか。
 がさつな奴らにはちっと向いてねえ仕事でよ。働くと飯が美味くなるぜ」


【別にご飯を不味いと思ったことはなかったけれど、】
【わたしを見下ろしてくるぴかぴかした笑顔には何も言えなかった】
【あんまり見られ続けていても眩しくて日焼けしそうだったから、】
【わたしはただ黙って頷いて、ミランダの差し出してきた手に掴まって立ち上がった】


【ふと、リッキーと目が合った】
【借金の“かた”に連れ去られていく仔牛を見送るような目だった】
【泣きそうな彼の代わりに、わたしの運命について尋ねてみようとミランダを見上げると、】
【彼女は全然違う方向、レコードプレーヤーの方を向いていた】


「――うん、こいつはなかなか良い歌じゃないか。
 あたしらみたいなか弱い乙女にゃこういうのがぴったりだ」

「……なんか言ってんぜ、『プレデター』がよ」

「ああん?」

「♪What you gonna do〜……ドゥブホッ$%#▽\×◎――」


【ミランダの蹴りが鳩尾に入って、リッキーは本当に嗚咽を上げた】
【可哀想なリッキー。でもわたしは何にもしてあげられなくて、】
【出棺を見送るような目の彼らに、ただ黙って手を振っていた】

【後のことはきっとロッソが何とかしてくれる】
【そう信じて、わたしはそっとドアを閉じた】


/↓(3/4)


72 : in "2Q36" ◆3inMmyYQUs :2018/11/25(日) 23:06:02 nHxGsN220
(続71)
/ここからしばらく一人芝居なのでざっと読み流し下さい。

【ミランダに付いて入った先の部屋は、何かの倉庫だった】


「ここいらに散らばってる書類のページをさ、元の順番に並び替えて欲しいんだ。
 あいつら運んでくるのはいいけど、後のことをまったく考えやがらねえからな――」


【ここだけ、怠け者の嵐と、よぼよぼに老いた地震が、】
【なんとなく来て、なんとなく去って行ったみたいだった】
【あちこちに積まれた書類や丸められた何かの地図が、】
【眠った酔っ払いみたいにだらしなく崩れて、互いにもつれあっていた】

【そのうちの一枚を拾い上げて、紙面を眺めてみた】


「――今度のヤマはデカいんだ。
 『薬』の工場に乗り込めるかもしれねえからな」

 ……薬?
            カニバディール
「ああ。あのクソッタレ《人喰い菌》のな」


【ミランダの話によれば、ここにある書類は全て、】
【人を『生きた食人屍』に変えてしまうあの御伽噺みたいなウィルスの】
【治療薬を生産しているプラントに関するものらしかった】

【市民には手の届かない法外な値段で取引されているそれの、】
【本当なら秘匿されている生産工場の場所を突き止めたので、】
【今度、その地下倉庫に忍び込んで、『薬』を奪ってくるという話だった】

【――そんなことをして大丈夫なのか、とわたしは訊いた】


「――そりゃあたしらの心配かい?
 それともまさか、『薬』を取られて泣き寝入りしちまう誰かの?」

 …………両方。


【はっ、とミランダは鼻息荒く笑った】


「第一に、勝てねえ戦はやらねえ。
 第二に、“何故か『薬』の使い道が分からねえ”無能どものことなんて知らねえ」


【わたしは、自分から尋ねておいたくせに、それ以上は何も返事できず、黙りこくった】
【別に何か言いたいことがあった訳じゃないけれど、】
【その沈黙は何かミランダをむず痒くさせたようで、】
【彼女はわたしを見たまま、少し気まずそうに頭を掻いて、付け足した】


「――食べる以上のパンを盛ってるテーブルから、
 あたしらが食うのに足りない分をぶんどってくる。
 そんだけのことさ」


【さあ、さっさと片付けちまおう――】
【ミランダはそれ以上言うことなく、崩れかかった棚の整理に手を付けた】
【わたしも今度は素直に「……うん」と返事をして、机に着いた】
【それから指示された通り、黙々とページの並び替えを始めた】


/↓(4/4)


73 : in "2Q36" ◆3inMmyYQUs :2018/11/25(日) 23:07:05 nHxGsN220
(続72)

【特に秩序も無く散らばったページの山々を、崩したり入れ替えたり】
【大して頭も使わない単純な作業にはすぐに慣れてきて、】
【気付くと、持て余した思考の庭でぼんやりと遊んでいた】


【10、1、6、7、0……はぐれた何かの数字たち】
【消えてしまった誰かを元の家に帰してあげる】
【全員揃えば、きっと良いことが起きる】

【足りないページを余所から探し出して、つなぎ合わせる】
【どこもかしこも、常に何かが足りないから】
【どこかの空白を埋めるために、またどこかに隙間を作る】

【最初に入れ替わってしまったのはどのページだったんだろう】
【本当は ずれているのに、でもそれで正しいことにして次のページを捲ってしまったのか】

【いつかどこかで気付くのか、】
【最後まで読み進めてからやっと振り返るのか、】
【それとも違ったままで綴じてしまうのか】


【――ぱたん】
【漂う思考はどこにも着地しないまま、わたしは最後のページを並び替え終えた】
【ふう、と一息ついていると、ミランダもちょうど大方を終えたみたいだった】


「――ん、終わったか、ご苦労さん。
 急だったのにありがとうな。助かったぜ」


【別に大したことをしたとは思わなかったから、かぶりを振った】
【するとミランダは大きく伸びをしながら、言った】


「よし、じゃあちょっと一杯行くか」

 え? いや、わたしは……

「いいからいいから」


【仔牛の人生はまだ終わっていなかったみたいで、】
【わたしはまたミランダに手を引かれて、どこか知らない通路の奥へ吸い込まれていった】


/そしてまさかのSSを挟みます。。↓


74 : in "2Q36" ◆3inMmyYQUs :2018/11/25(日) 23:08:50 nHxGsN220
(続73)

幕間『Tuning for the Day』

あらすじ:
気弱で無口な少女・シヲリと、
がさつで豪毅な大人の女・ミランダ。
性格も年齢も離れた二人のガールズトーク。

なぜ『ジェットシティ』の人々は優しいのか。
戦争が始まったときのこと。
男の転がし方。
そして、ミランダがシヲリにしたあるひとつの頼み事。



/そうしたフラg幕間を挟んでから、次のシーンが始まる……のですが。

/上記の本文と次以降のシーンを仕上げてからまた来ますので、
/だらだらと一人語りばかりで何とも申し訳ないですが、ちょっとここで一旦小休止させてください。



冒頭&一部プレビュー:

――――――



『ワンダーランド』の扉を、ミランダは勢いよく開けた。
『アリス』が、青髯の濃い口元を上弦の月みたいにして微笑んだ。



――――――



「――初めは白かった空が、
 よく見なきゃ分からない程度にちょっとずつ、
 くすんでいって……気付きゃあ真っ黒になってた」



――――――



「「――ウヲヲヲヲヲヲヲ――!!」」


「そして特賞はぁ――!?」


「「――うををををおおおぉぉ……」」



――――――

[つづきはうぇぶで]


75 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/25(日) 23:40:21 6IlD6zzI0
>>70

【信じがたいものを目の当たりにした――そんな風に目を見開く自分がいた】
【まさか自分から死ぬ事を選ぶとは思っていなかったから、そんな蛮勇はしないと高を括っていたから】
【命の灯を自ら消しにかかる姿が度し難く思えて、それに異質さを感じ取って手を放してしまった】


――――……ばかな子。本当に、馬鹿な子。
なら、……最初から自分で自分を殺せば良かったのに。
まるでワタシが背中を押したみたいじゃない。


………記憶屋は決して自殺を後押しする存在じゃないのに。
何故解ってくれないのかしら―――忘れることは残酷だけど優しいという事を。


【不敵に笑う少女を悍ましいと思った。心の底から理解できなかったから】
【記憶を全て失い実質的に死ぬことを選ばず、自分で命の灯を消すという選択を取った事を】
【だからだろう―――少女に向ける視線はひどく虚無に満ちて、憐憫の情さえ抱かせた】


――――、そうね、アナタの記憶はもう奪えない。そしてアナタを助ける事も出来ない。

もとより助ける心算も無かったけれど、せめてアナタが死にゆく様を眺める事にするわ。
ワタシの記憶が保てる限界まで。その死にざまも呪詛の声も、すべて、すべて――憐れんであげる。


【助ける――その言葉は欺瞞に満ちている。助けようとするならば彼女は少女に寄り添うべきなのだ】
【たとえ手遅れの傷だとしても。でもそうしないのは、つまりそういう事。最初から助ける心算じゃないのだ】
【彼女自身の記憶は保てて一週間だから。そのあとは何もなかったように綺麗さっぱり忘れ去るだけだから】
【だけど奪った記憶はそうではない。少女の抗いは形を変えて彼女を苛む事になるのだろうから】


76 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/26(月) 00:02:42 BRNVt/Aw0
>>75

【放された手。それと同時に支えをなくした少女の身体は壁の方へと倒れて、壁に寄り掛かって座り込むような形になって】

【はじめから、少女は自死を選ぼうとしていた。ただ何処で死ぬかを考えあぐねていただけで】
【だから場所さえ決めなければ、簡単なもの。すぐに絶つ事が出来て】
【(だって、要らない子が死ぬのは当然だって、自然な事なんだって思っているから)】

【その月白の耳にはもう女の言葉は入ってはいないのだろう】

【その表情すら閉じた瞳にはもう見えていないのだろう】

【冷たく吐かれる息が次第に小さくなる】
【手足は凍え、心肺が機能を停止、させて──】


77 : 名無しさん :2018/11/26(月) 00:10:25 v8jbx/bQ0
>>61

【――――――――――うん、と、彼女は一つ頷くのだろう。ともすれば首が千切れて落ちたのではないかと疑ってしまいそうなくらいに、こくん、と、した頷き】
【はんぶんずっこにするってことにも、彼が力持ちだってことにも、頷くのなら。――くすんと涙の一粒をすすり上げてしまう、なにかちょっと、元気が出たみたいに】
【なら、こんな会話、半年前よりもっと前に出来ていたなら、何もかもが違ったのだろうか。だけれどそれは結局IFの話でしかないなら、考察することに意味はないけれど】

【――ぱちりと瞠って瞬いた眼が、数度瞬きを繰り返す。繰り返して、それはまるで彼の言葉と笑顔にびっくりしてしまったみたいに。ああでも、だけど、】

――――――――あはははっ、

【たっぷり三十秒ほどの沈黙の後に、彼女も破顔するのだろう。泣いちゃったせいで真っ赤になった目元に、それでもなにか面白そうな笑みを湛えて】
【ならば彼の浮かべる笑みが伝播したものだとすぐに分かった、――だからきっと彼女は存外に単純なところもあった。そうだった、嫌いなもの全部赦さないって言ったのに】
【それで黒幕のやつらを放っておいたら神様の面目丸つぶれ。……という気になれたらしい。きゃらきゃらって笑うなら、やがて、はあって吐息は、やはり笑顔の余韻を残している】

うん、食べる、――、食べる! ふふふっ、ぜーんぶ食べちゃう、こんな時間に! あはははっ、――、
――――うん、たぶん、それくらいなの。わたし、ずうっと、世界でふわふわって、していて……。みんなのこと、見ていて――。

【ぱあと笑う顔がひどくあどけなかった。おなかぺこぺこでご飯が待ちきれない子供みたいだった。だから今日の晩御飯のメニューはとっておきの大好物だって伝えて】
【そうしてそれは特大のハンバーガーでもパフェでもなくって。だから多分、誰かと食べるご飯、彼女はうんと大好きだから。――、だから、注射器の末路も、ただ、視ている】
【そうすることで何かが起こるのだとしても、――だって二人で半分ずっこだから。それなら頑張れる気がした。それに喧嘩するって決めた、から】
【最初っから負けるつもりで喧嘩するひとなんてきっといないから。――――だから、おっきな袋、よいしょって持ち上げようとして、出来なくて、彼に任せて】

――――――――――――――ね、ご飯作ろ。

【――しゅうって霧散する薬液を見届けるなら、少女は悪い子の顔で誘うんだろうか。だって、こんな時間に、こんな時間なのに、二人でお料理しちゃうんだから】
【出来上がるものが罪の味をしてないはずがなかった。そんな罪の重さまで二人半分こするんだって約束したから、決めたから】


78 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/26(月) 00:22:20 6IlD6zzI0
>>76

【掴んでおいて離した手に残るのは死に行くものの冷たさ】
【直接手を下していないのに下手人が自分であるかのような錯覚】
【―――……きっと下手人は自分なのだろう。記憶屋が犯した罪】
【恐らく、きっと、否。――――ワタシは罪を背負ったのだ】


――――……


【言葉は出てこない。ただただ死に行く少女を眺める事しかできなかった】
【犯した罪を、背負った罪をこの目に焼き付ける――忘れるその時まで】
【虚ろな瞳が映し出す罪を前に祈りを捧げない。そして恨み節の一つも紡がない】

【――――――ただ、思う。何故自殺を選んだのか、と】


79 : ◆KP.vGoiAyM :2018/11/26(月) 00:27:10 Ty26k7V20
>>49

/お疲れ様でした!このまま締めにさせていただきます!


80 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/26(月) 00:51:25 BRNVt/Aw0
>>78

【やがて、完全に心肺機能が停止し、訪れる静寂】
【昏くて、深い、静かでありながら何かが這い降りるような、そんな『死の音』】

【きっと放っておいても彼女は何れは見つけられ、何事もなかったかのように世界は動いていくのだろう】
【此処は、路地裏なんだから】

【咎の子、なんて、だぁれも、■■■も、■■■ないんだから──】

【──銀ヶ峰つがる/栂流:自死】














【そうして、恐らく貴女がこのまま立ち去った後だろうか?】
【六本の氷柱は一斉にからりと音を発てて地面に転がって】
【それと同時に少女の身体には薄い氷の膜が張る】
【その周囲もじわり、と凍てついて──】

【──銀ヶ峰つがる/栂流:■■】



/かなり強引ですがこの辺りで〆させていただきます!
/絡みありがとうございました!


81 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/26(月) 09:04:10 ew.9FK2k0
>>80
【少女から息遣いは感じられない――もう死に絶えたのだろう】
【奪われるのならいっそのこと棄ててしまえば少なくとも奪われずに済む】


―――すこし 疲れたわね………。

"銀ヶ峰つがる"―――アナタの記憶がワタシの能力の糧になるその日まで。
その名前とアナタの抱えた苦悩は記憶の片隅に留めておくわ。


【独り善がりの禊なのか、罪滅ぼしなのか】
【もう償う相手はいないのに、言い訳めいた言葉を残して】
【記憶屋・キャロライン=ファルシアは路地裏を去る】

【この時点で彼女は銀ヶ峰つがるが死んだものだと思っている】
【だからその後に起きた異変を知ることはない。けれど、もし。二度彼女の前に姿を現すのなら】
【その時は決して平穏では終わらないのだろう】

//長時間の絡み、ありがとうございました!


82 : ◆3inMmyYQUs :2018/11/26(月) 16:08:32 nHxGsN220
>>45


【――――“くれる”? この弩級魔導戦艦を?】


【女は無機質な微笑みをしたまま、その眼のみを器用に丸くした】


 ……………………………………


【そのまま一度、二度】
【蘆屋をじっと見たまま、睫毛を緩慢に伏せたり、再び上げたり】

【何か長大な計算をする最中の機械のように、】
【女はすっかり言葉を閉ざして、その視線だけを各所へ順番に巡らせた】


【蘆屋の指差した甲板の床――艦首――振り向いて司令塔――砲門――】
【それから再びゆっくりと顔が戻ってきて、蘆屋を見て、かと思えばまた振り向いて】
【大きく首を反らし、遙か上部の旗竿を見上げ――そうしてやっと、もう一度前を向いた】


――――わあ。
 

【えも言われぬ】

【表情も声色も一切凪いだままの非有機的平坦さでそう言ったが、】
【何かいきなり内部の回転数だけが跳ね上がったかのごとく、急にあちこち挙動が忙しなくなった】


――くれるんですか? 本当の本当に? 嘘じゃない?
そしたらわたしが船長さんになってもいいってことですか?
あとで返してって言ってもダメですよ。ダメですからね。約束してくれますか?


【口は早回しのごとく高速駆動して、視線は蘆屋と船体と何度も往復した】
【更にはその肉体の位置が一瞬ごとに艦首や砲塔の上や中や艦橋の窓内等々へ目まぐるしく移って】
【一度だけ座標を誤ってか手摺の上から船外へ落ちかけるような所作もあったがそれは見間違いに違いなく】

【女は数瞬のうちに散々放蕩の限りを尽くしてから、ようやくまた蘆屋の前へ転移してきて言った】


――――そうですか、
あなたも“理解”した人なんですね。


【ひゅう、と吹き抜ける冬風と同質の、実に幽玄たる声と面であった】




【後ろ手に組んだ指先だけが未だ激しく揺れていたが蘆屋からは見えない】
/↓


83 : ◆3inMmyYQUs :2018/11/26(月) 16:09:43 nHxGsN220
(続82)

【――〈黒幕〉】
【その如何にも抽象の限りを尽くした、明確な固有の名前すら持たぬ陰謀勢力に】
【今宵、一国の国防の要を司るべき海軍の長が、深い暗中にて同胞として参画せる――】

【わざ述べるまでもなく、】
【国際安保の礎を揺るがす全き一大の惨事である】
【しかして聡明な諸読者におかれては一つ疑念を持たれるに相違ない】

【――何ゆえか、と】

【一体何をして、全命を賭して櫻國の防衛これ一個に殉ずると誓ったはずの、】
【気高き大和の魂たる防人、それも、嗚呼、連合艦隊司令長官ともあるべき男が!】

【一体如何なる道理が、あるいは狂気が、この惨たらしい悲劇を生むに至らせたのか】
【正しき義を信ずる熱き血潮の諸兄には是が非でもその口で語らせねば気が済むまい】

【故に女は貴君らの意思を代弁してこう問うた】


――――理由に意味なんて無いですよ。“理解”するんです。


【問う……問う、はずであっt】 【(ぷつっ)】




――わたしたちは、同じ環の中にいるんです。
上も下も、過去も未来も、理屈も論理も、関係ないんです。
それが『ルール』です。

だからわたしたちは、簡単なお話だけをするんです。


【みちかは あかるく くらく わらった】
【あしやを みた ともだちを みた】
【きいた】


わたしたちは、あなたのために、何ができますか?


【ばんざい ばんざい】
【ともだち ばんざい】




【灯台の光は消えた】


84 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/26(月) 22:01:55 E1nVzEpQ0
>>66



       「 ───……… 。」



【少女よりも幾らか密度のある体重を力なく委ねながら、やはり彼は愛しい背中に縋っていた。 ─── 滔々と紡がれる吐露には】
【頷く事もなく、言葉を返す事もなく、ただ少しずつ落着きを取り戻す鼓動と、緩やかな呼吸に合わせて膨らむ胸郭だけが、応じて】
【 ─── それでもきっと、答えとしては、その指先以上のものは必要でなかった。布地の中で粘度を増し始める血の向こう、自分でつけた傷痕を慰めるように撫でるから】
【ひどい自作自演だった。それでも少女はビッグシルエットの真ん中に嗚咽を預けてくれるから、下らない筈の英字にだって、薬指に分かち合う箴言と同じくらい大切だから】




 「 ……… 怒らないし、」「困んないよ。」「笑ったりも、しない。」
  「 ──── うれしい。」「シグレが、 ……… そうしたいって、」「言ってくれたこと、ぜんぶ。」



【 ─── 震えて幽かに上ずる声が、掌編ほどの沈黙の後に、確かな言葉を返すのだろう。きっと彼は平静を保とうとしていて、ねれど溢れる情念は止まらないから】
【どうしようもなく両腕は真っ赤な癖っ毛の髪を抱き締めて、そこに温かい涙も落ちゆく。この期に及んで自分の滂沱を見せたくないらしかった ─── だって、彼は卑怯だ】



  「叶えるよ。」「叶えるさ。」「 ……… 叶える。」「絶対。」
  「だってボクが、ボクらが、出来なかった事なんて無いんだから」
  「 ─── そのくらい、簡単だよ。」「シグレが、望んでくれるなら。」



【ブランドを気取るシャンプーと、粧ひ新たなトリートメントと、オーガニックなヘアオイルと、調子に乗ったジルスチュアートと、背伸びしたブラックデビル、あとに残るのは乙女の秘密。】
【同じものを食べて同じお風呂に入って同じ布団で寝たとして、それは矢張り彼の香りだった。 ─── ならば彼もまた、深く抱きながら言葉を漏らす途中】
【その鼻先を愛おしい紅色にうずめて、せめて止まらない涙の震えを、大好きな人の纏う甘さに追い出そうとするのだろう。かえってそれが震え上がるのだと知りながら】
【執念じみた感情に口先が勝手に紡ぐ言葉だって構わなかった。それが叶えられないのなら、絶対にふたり手を繋いで死んでやるんだって、彼もまた願うから】


85 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/26(月) 22:02:08 E1nVzEpQ0
>>62

【朝を教える温もりのクオリアが柔らかに変わったことに、目覚めの時に愛しく幼気な寝顔を見つめることに、 ─── いつから彼女は慣れたものだろうか。】

【手脚を絡めて抱き寄せて、そのままに眠る事を女は好んだ。まして年の瀬にも至る頃合いとなれば、一糸纏わぬ姿に堪え得る時間は、膚と情愛を重ねる時だけだった。故に】
【前の夜に脱ぎ捨てたまま、好き放題に皺がついた何方かのシャツを、くしゃくしゃのまま羽織って眠る事が、ここの所の専らである。或いは少女の目を楽しませる為か、】
【殆どレースだけで織り成された黒い下着も纏うことがあった。 ─── 少女の幼気な微笑みを抱き締めて、なお余りある胸許を支えるには幾らか不安な、か細い糸繰り】
【そうしてまた事実として肩紐の悉くは張り詰め、隠しようもない肉感を締め付けるように強調していた。況や股座を秘するのならば、ひどく大人びた扇情を示すのだろう】

【思い詰めたような顔で言外に嘆く幾らかの夜を、女は何処までも甘く爛れさせた。 ─── 夜に限る話でもないならば、締め切ったブラインドの暗闇に、嬌声は絶えず】
【すれば少女の表情に生気が戻ったのは、求め合う時間に満たされたからであろうか。何れにせよ、幽かな陰りを残すだけになれば、女もまた安堵を浮かべるようになる】
【外に出ることを許す ─── 少女が許諾を求める訳でも、女がそれに頷く訳でもないのだけれど ─── のも道理だった。御機嫌に出かけ支度をする少女を背中から抱擁して、否応ない豊満さを余さず押し付けながら】


     「マドレーヌがいいわ。」


【それこそ焼菓子を食べたばかりのような掠れた囁きで甘ったるく強請るのも、嫋やかな白い指遣いでファスナーを閉じて緩くリボンを閉めてやるのも、】
【出かけ際の唇をそっと奪って優しく笑うのも、きっと直ぐに帰ってきてほしいからなのだろう。存外に女は寂しがる気質だった】
【最初から孤独に耐える事は容易でも、ひとたび愛情の共依存を知るのなら、決して離れたくないと願ってしまう。 ─── なれば、こそ】


         「 ───……… 。」


【1時間半を少し過ぎた辺りで、 ─── 既に女は車を走らせていた。よく通う板金屋に直させたばかりの黒いクーペを、昼下がりの街に疾駆させる】
【持たせた携帯のGPSから居場所を割り出してもいた。散歩と呼ぶには少なからず遠い場所であるように思えてならなかった。脳裡に過ぎるばかりの後悔に、ハンドルを切って】



【そうして、少し前。】




      「ねえ、─── 」「そこの、お嬢さん。」



【 ─── 陽だまりのような優しげな声が、不意に少女の足取りを絡め取るのであろう。どこであるかは、構わずとも】
【振り向くならば、一人の女。焦がした蜂蜜のように、ふんわりとカールして甘く艶めくロングヘア。真白い肩口を晒すニットソーは、まろび出ん程の胸許を押し込めて】
【長い両脚は張り付くようなデニムパンツに辛うじて収められ、晩秋に履くには幾らか寒々しいストラップハイヒール。潤う唇にそっと添えられた、紅い付け爪の人差し指】
【高い背丈が一歩少女へ近付くならば、纏うのは耽美な薔薇の香り。嗅ぎ慣れた匂いであろう。 ─── アリアの付けている香水と、同じ銘であるのかもしれない】
【何れにせよ蕩けた眦が穏やかに微笑みかけるのは親愛の証に似ていた。緩められた唇の端は母性を湛えてさえいた。 ─── 静かに煌めく翡翠色の双眸だけが、澱を宿す】


86 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/26(月) 22:03:18 WMHqDivw0
>>77

【一回だけ。踏み締めたらばりんと音が鳴って、それだけにしておいた】
【本当のところはもっとずっと踏み締めては躙りたかったに違いない。だって、こいつのせいで】
【こいつのせいで、――なんだって言うんだろう。全部終わって、変えられないことになったのに】
【そう思ってしまうなら、それ以上暴力的なキモチを抱く必要なんてまったく要らないと思えた】
【だって、そんなものより、目の前で笑ってくれる女の子のほうが余程大事。男なんてそんなもんだから】

【だから後は、ささーっと箒と塵取りで雑に破片を掃除したら――雑巾も一応用意したけど】
【流れ出た薬剤がしゅわ、と消えていくなら、全部ポイしちゃう。そうして】
【「おっけーおっけー、お待たせ!」 片付けて、手を洗って、厨房に入っていくんだろう】

なんだっけー? こーいうトキに言うの――ハラが減ってはイクサが出来ぬ?
って言うよネ、じゃー食えるだけ食っちゃお、食った分だけおれらの勝ち!
そんでー、なんだったっけー、カミサマ用語でこーいうの……マツダイまで?
んん? スエダイだっけ、わっすれた……どっちでもいーや、そんくらいまでボコボコにしよーぜ。

【勝つために整えていく晩餐は滞りなく仕上がっていく。大きな手でも、見た目に寄らず器用に動き】
【少なくともいつか言った――妹みたいに、ピーラーなしで野菜の皮が剥けないとか、そういうことはなく】
【ただ、大雑把ではあった。調味料とかいちいち計って入れない、ちょっと少なめに入れて様子見して】
【足りないならもうちょっと入れるか、それか別のモノを足すか。そんな感じでざくざく作っていくから】
【出来上がる味もきっと大分大味。だけど別に咎められることなんてないと、知っているから】

【全部作り終えたら、皿をどかどかテーブルに置いて。「飲み物どーする? ジュース?」】
【言いながらも――自分はコーヒーを淹れていた。もし少女が同じものでいいと言うなら】
【ちょっと意地悪な顔して、冷蔵庫から練乳取ってくる。牛乳も砂糖も買ってるのに、敢えて】


87 : 名無しさん :2018/11/26(月) 22:25:25 VutNU23o0
>>85

【ならば相手にはとっくにバレているのかもしれなかった。彼女が散歩に出た日に買ってくるお菓子はいっつもおんなじケーキ屋の紙袋に入っていたから】
【いつからか当たり前に帰る場所になった家より片道でニ十分ほどの場所に在るケーキ屋さん。そこの甘味を彼女はいくらも気に入ったらしかった。――とにかく】
【チャックとリボンとを相手の指先に委ねて振り返るなら、ふと気になったみたいに少女は手を伸ばして、くちゃくちゃの白いシャツ、その一番上のボタンを閉めてやる】
【――それから出がけには真っ白な毛先と真っ青な瞳になってるから、薄藤も、紅紫も、当たり前に観測するのを赦されるのはもはやアリアだけであり、】

――――――――、ぁ? ……ああ、はい、私ですか? なんでしょう、

【――――――声を掛けられて立ち止まった少女は、次の瞬間には「しまった」とでも言うような顔、していただろうか。そこまで露骨ではないが、わずかに眉根を寄せるから】
【立ち止まるつもりなど本当はなかったのだとたっぷり伝えていた。そのくせに立ち止まってしまったのは、――きっとおそらく、相手が、よく嗅ぎ慣れた香りを纏うせい】
【だけれども、第一声にて相手を認識したと言う答えを返したせいで、彼女の負けだった。道端でかけられる声というのは質の悪い幽霊と同じで、初手から無視しないといけないって】
【分かっていたはずなんだけれど。――せめて道を聞く程度であればいいなと思いながら/だけれどきっとそうじゃないなって予感しながら/彼女らが佇むのは川べりの風景】

【きらきら光る水面ばっかりが変わりなく流れて行く、――青い色彩が訝る色に細められるなら、それでも、薄く纏うのは人当たりのいい振りした微笑であり】
【かといって道を聞くだけであるなら親身に聞いてくれるような懐っこさもどこかに宿していた。分からずとも交番までは案内してくれそうな少女だった】
【――性質の根っこは存外に"お姉ちゃん"であった。何か頼まれて嫌な顔をしてもポーズであることが多かった。誰かの役に立てたら嬉しいと思ってしまう――から、】

【――――だからやっぱり立ち止まってしまったのは負けなんだろう。相手へ振り返るのなら、少女の警戒はそう色濃くない。宗教の勧誘とか、――あまり怖くないのだし】
【開けた場所だった。人通りもそれなりにある場所だった。だけれど朝にほど近いわりに中途半端な時間だからか、ちょうどこの瞬間には、だれも、居なくって】


88 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/26(月) 22:28:36 WMHqDivw0
>>84

【抱き締める少女のかおりは、同じく使っているシャンプーとか、ヘアオイルのものを除くなら】
【ごくごく薄い、けれど無臭でもない。決して甘ったるくはない、けれど辛くもない、自然なフレグランス】
【例えるなら石鹸、気取ったアロマの混ぜられない純正の。あるいはハーブティー、ミルクも砂糖も入れない】
【そういう感じの、実にさらっとしたものだった。もともと体臭が薄い子であったし、香水のたぐいも好まなかった】
【だから、いつでも馨しい彼の隣に居るなら――誰にも気付かれない香、それを目いっぱい吸えるのは、あなただけ】

……………………ほんと? ほんとうに?
そんなことしても、怒られない? あたし本当に、……そういうこと、できる?

【震える声で紡ぐのは、まだ完全に信じられていないから、不安の音階の混ざる言ノ葉、だけど】
【信じられるなら信じたいって強く願う、鍋底にこびりつくような焦燥も混ざっていた。燻って、黒い煙を上げて】
【発せられる気体はきっと、人を殺せる毒だった。全部叶わないなら今度こそ本当に、死にたいって、思うから】
【けれどそれすら怖くないように思えるんだろう、だって、その時は一緒に死んでくれる。……悍ましいことを願って】

ね、エーノ、エーノ…………じゃあ、ね、じゃあね、じゃあ、
叶えたいこと、もひとつあるよ、……ねえ、友達を救いたい。
鈴音って言う子なの、ねえ、あたしと同じように、叶えられない夢をたくさん抱えて、
そのまま沈んでいっちゃった子――やっぱりあたしは、その子を放っておけないよ。

でも、……………………みんなが鈴音の敵になるってことも知ってる。
こんなこと言ってたらきっとあたしも、その人たちに、敵視されるようになっちゃうね、
…………裏切り者って。言われるかもしれない、それでも、でも、

【「あなただけは味方で居てくれる?」 ――続く言葉もあんまりに悍ましかった。こいつはまだ、諦めていなかった】
【しかしそれも案の定と言うべきか。二人用のシェルターにどうにかして世界中の生き物をぎゅうぎゅう詰めにしようとする】
【そういうバカなんだから、こいつは。きっとこのまま二人だけ、幸せになれても――こいつはこいつを赦さない】

【であるなら。あまりにも酷な選択を強要する、彼の嘗ての恋人すら裏切って――自分の味方をしろ、って】
【言い換えるならひどい女がよく言うタイプの台詞でもあった、「私と世界、どっちが大事なの」。……逆にそんな質問をしたら】
【こいつは迷いに迷って、どっちも、なんて言い出すくせに。どこまでも非道い女だった、けれどもう、離さないと決めたから】

【(地獄の底まで引き摺り込んでやるとは言わないが。ほとんど同じことを言っているに等しい、だってこいつは、バケモノだ)】


89 : 名無しさん :2018/11/26(月) 23:10:31 VutNU23o0
>>86

【――――なら、きっと、ひどくあっけないんだろうか。選択肢として確かに"あった"はずの、"ひとつ"が潰える瞬間は】
【だからってそれでどうするかって案もあんまり出ているわけではなかったから。だけど二人は喧嘩するって決めたから。だからそれで充分だった、――きっと】
【お掃除だって手伝う。小学校のお掃除の時間みたい。一人が箒で掃いて、もう一人が塵取りで受け取って。割れた硝子の片づけは慣れていた、よく酔っ払いが割るから】
【まして二人でやれば片付けは本当にあっという間に済んで、――二人そんな出来事があったっていうのも忘れてしまいそうなくらい、お料理に取り掛かる】

――――――――神様用語ってなあに? そんな風に言うの、初めて聞いた。

【長い髪の毛をきゅうっと一つに結わえる途中で、ゴムを通しきらずに緩いお団子に仕上げる、そうしたなら、彼女も石鹸でじゃぶじゃぶ手を洗う、紙タオルで水を拭って】
【その時点で楽しそうだった。よいしょって腕まくり、お客さんに出すお料理の時はもっときちんとお着替えとかするんだけれど。――お友達と食べるご飯なら、少しくらい】
【――なあにそれって言って笑う、神様用語ってそんな、ギャルとかじゃあないんだからって顔。ころころって鈴を転がすみたいな笑い声、キッチンに響かすなら】

【彼女もまたわりに大雑把な調理の仕方をする神様らしかった。みじん切りの玉ねぎに対して「目が痛い」と言って、最後の方はごく乱雑でも気にならない、らしいから】
【調味料も当然のように目分量。それでも一応お店のお料理を作るときはいくらか気にしているらしいんだけど。根っこがそういう風なのは、書いたレシピでバレている】
【「お店でおいしそうだったお魚」とかいう記載ならだいぶまし。「味見しておいしいくらい」って書かれた塩の量。"優しいお味=薄味"。欄外の落書き】

――ヤサカさんも、いつもお料理するんだね。

【にこって笑って見上げるなら、やっぱり共犯者の顔をしていた。誰とひっくるめて"も"って言っているのかはよく分からなかったけど。楽しげであるなら、どうでもいいのかもしれない】
【それにまさか悪辣のお肉屋さんのことを思い浮かべていること、きっと考えたって、よく分からないから】

飲み物はね、ジュー……、……。……わたしも、珈琲がいいな。珈琲! この前ね、初めてたくさんワインを飲んだの。だから、珈琲――。

【出来上がったお料理を一緒に運ぶ。給仕なんだし、なんなら彼女に全部任せたっていいのかもしれなかった。どんな量でも、きっと、そつなく運んでくれる】
【なら買ってきた炭酸飲料がいいって彼女は言いかけて――食事の時にジュースは駄目って言われて育ったから、"悪い子"だからジュースを飲もうって決めてた――けれど、】
【彼が淹れている珈琲を見てそちらが飲みたくなったらしかった。わたしのも淹れてっておねだりする、彼の取ってきた練乳に、ぱちり瞬いてから、ひどく柔らかに、笑むから】

【――ハンバーガー屋さんが発狂したんじゃないかってくらいめいっぱいにハンバーグを挟んだハンバーガー。ピクルスもチーズもたっくさん挟んで、レタスもいっぱい、めいっぱい】
【押さえてないとぐらぐらするくらいの高さは彼女の希望通りで。一緒のお皿に山盛りにしたポテトはちょっぴりしょっぱいくらいが一番おいしいから、お塩を利かせて】
【なんなら楽しくなっちゃって他にもいくらかの付け合わせがあってもおかしくなかった。どうかしちゃってラザニアだってポテトサラダだって、なんだって作ってもよくて】
【いただきますって食べるなら、やっぱり背徳の味なんだろうか。――それでも二人ともに人間じゃないから、赦されちゃう。だってばちを当てるはずの神様すら、楽しそうだから】


90 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/26(月) 23:40:30 WMHqDivw0
>>89

えーないの? カミサマ用語――なんかこう、呪文みたいな……

【たぶん祝詞って言いたかったんだと思う。けれどそんな上等な脳味噌は持ち合わせちゃいないから】
【冗談めかして笑いながら具材を切っていた、パンに挟むだけだから、薄切りばっかでよくって】
【楽と言えば楽だったけど――「あ、そういえば」って言って抽斗から取り出す。スライサー】
【例の料理のできない妹が勝手に備品として購入したやつ。無論料理をそれなりにする人なら使わなくてもよかろうが】
【折角だし使っちゃえみたいな気持ち。玉葱を薄く薄くスライスしてゆく、辛い玉葱は嫌いらしくて、すぐ水に晒し】

周りの人がやんないから仕方なくおれがやる。みたいなー、やる必要なかったらおれもやんないよ。
最近は夕月もやり始めたけど――あぶなっかしくて見てらんねーし、おれがやったほーが結局早いみたいな。

【いつもってほどじゃない。そう言いながら具材を挟んで挟んで挟んで――高くなり過ぎたと思った時点で】
【上からぎゅっと潰してなんとか背を低くしようとして、けれどそれにも無理があった。出来上がってしまうなら】
【上から下から、両方向から串――というか箸でも刺していないと即座に崩壊しそうな、タワーが出来上がる】

あははは、なんっだこれ、どーやって食べんの!? どー考えても一口で齧り付けないじゃん、
ウケるな……でもこれを一枚一枚剥がして食べんのは絶対つまんないよネ。どーすっかなあ。
ナイフとフォークとか使っちゃう? バーガー食べんのに? マジウケるな、……どれどれ試しに、

【ぱちんと手を合わせてから――やっぱり試しに齧り付いてみちゃう。すれば当たり前というか何というか】
【お尻の方からソースがぼどぼど落ちてくるから、慌てて皿でそれを受け止めて、咀嚼する】
【もごもご動かす口の周りにもたくさんソースが付いていた、お行儀悪いけど、誰にも怒られないならぺろっと舐めて】
【残滓をコーヒーで洗い流すみたいに。並べたカップ、同じ嵩に注いだ黒い水面が波打って、斜め向き】

………………ふ、あはは。おれが喰ってもきっちーよこれ、一口で食べんの。
鈴音ちゃん絶対一口で行けなくない? お口ちっちぇーもん。やっぱナイフとフォーク、持ってこよっか――

【飲み干し終えたらふうと息を吐いて、言う通りに持ってこようとする。お上品に食べるための食器、】
【だけど今夜は二人してワルになるんだったら、そんなの使わなくってもいいはずで。もしかしたら煽ってるのかもしれなかった】


91 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/27(火) 00:00:11 E1nVzEpQ0
>>87


【 ──── 足を止めた少女の眼前に、さらなる一歩を踏み込みながら、突き出されるのは黒い銃口。】

【笑っていた。ごく穏やかに女は笑っていた。慈母のように笑いながら、その清らな指先には幾らか大きな拳銃を握っていた】
【はらり、 ─── 栗色の髪が揺らめいた。ちいさなバームクーヘンにも似る消音器を取り付けていた。銃爪が引かれた】
【至近であった。照星は少女の細い右脚を捉えていた。お人形を殴り付けたような、空気を抜く感覚の銃声は、近づく昼下がりに流るる小川のせせらぎに紛れて】
【決して誰にも聞こえる事はないのだろう。 ─── 当たろうが当たるまいが、銃爪は繰り返される。右脚、左脚、左脚、右腕、右腕、左腕、左腕、総てその付け根を狙って】
【少なくとも直ぐに殺すつもりはないようだった。それならば声などかけずに背後から忍び寄って殺していた。然らばそこに介在するのは、殺意よりも残忍な感情。】



     「 ──── 憎らしいくらいに、」「よおく似ているじゃない。」



【しなをつくるような声で女は呟くのだろう。 ─── 理解するのかもしれない。目尻を丸めて、艶なる呼吸を一言ずつに漏らし、要らぬ蠱惑を振りまくこの女が】
【エーリカの伝えていた、"フライヤ"なる女であると。何の因縁があるのか、アリアに並々ならぬ執念と憎悪を示して、その知人の悉くを手にかけようとする女であると】
【然して復讐に身を焦がす狂女であるにしては、幾分も悠然として落ち着いた振る舞いであろう。小春日和の陽光が傍流の水面に落ちるなら、乱反射が照らし上げる微笑み】
【アリアのそれに良く似ていて、それでいて冷たさはなかった。 ─── どこまでも彼女には余裕があった。それが少女の恐るところであるかは、解らずとも】
【 ─── そうして確かに往来は居なかった。代わりに数ブロックほど遠くで、統率の取れた足音がした。全くもって周到であるらしい。少女が狙われた理由も、宜なるかな】


92 : 名無しさん :2018/11/27(火) 00:09:27 use.ZJ.w0
>>90

呪い?

【ノロイ。――彼の言葉にきょとんとした顔で彼女はそんな風に返すんだろう、ならやっぱり祟り神っぽい。なんて、ただたんに、彼女の知る神様があんまりちゃんとしてないだけ】
【ご先祖様が神様っぽいところ。実は彼女はあんまり見たことがないんだった。それでもまっすぐに信じ続けていた――それこそあるいは無垢なる祈りであるみたいに】
【ハンバーグ用の玉ねぎのみじん切りをしこたま用意した後に、――ヤサカさんち、玉ねぎ入れる?とか今更過ぎる質問をしたり。完全に、もう、自分のレシピで作ってた】
【「わたしね、ケチャップとか入れるんだけど……」――なら、もう、混ぜる前のひき肉を半分に分けて、二人で好き勝手なレシピで作ったって、いいのかもしれなくって、】

そうなんだ。……わたしね、お料理、好きなの。楽しいでしょ、――、おいしくできたら、おいしいし。ご飯食べるの、好きだから――――……。
――お昼寝も好き。いっぱい寝て、いっぱい食べるの。……――子供みたいでしょう、だって、わたし、もう、大人なのに……。

もっと、ちゃんと、大人になりたかったなあ――。

【仕方ないからって彼が言うのなら、少女はちょっとだけ何か言いたげな顔をしていた。楽しいでしょって、なぜだか彼女が得意げに】
【おいしいものを作って食べるのが好き。それでお腹いっぱいになったら、めいっぱい眠っちゃうのが好き。――――自嘲めく表情は、けれど、眼差しだけがひどく悲し気に】
【ともすれば泣き叫んでいる瞬間のような目をしていた。――やっぱり、大人の身体で大人になりたかったんだろう。もう敵わないのに。諦めきれないから】
【――だから神様になったんだった。なってしまったんだった。諦めないし赦さない。誰に言われても。――遠い目、】

――――――ばらばらにしたら駄目だよ、せっかく、乗っけたのに。フォークもナイフも駄目なの。だから、えっと……、――。

【――――――少女もひどく困惑していた。乗っけているときはどんどん乗っけられたのに、はてさて、座った状態で相対するに、どうにもこれは食べ物の標高ではない】
【立ったままえいえいって乗っけていくだけじゃ駄目なんだって今更にして思い出す。――それでも、ばらしたり、ナイフとフォークだなんて、駄目だって言うのだ。せっかくだから】
【それでも彼が食べるのを少女は目をまんまるにして見ている。ぼだぼだって落ちるソースの色合い。零れ落ちるレタスの欠片。ずり落ちるピクルス一枚。頬っぺたのソース】

【――あはははって笑うんだろう。だから失礼だった。机の下では足までぱたぱたやっているらしい。(だってそんな音がしたから、)】

――んーん、要らない。

【煽られるなら、――あるいはきっとそうでなくても。彼女もフォークとかナイフとかお上品ぶる気はないらしかった、にまと悪戯ぽく笑ってみせて】
【そしたらやっぱり袖まくりしてから、両手でぎゅっと持つんだろう。それだけでぼたぼた落ちるソースに一瞬たじろぐのだけれど――あーんって精一杯のおっきなお口】
【女の子が演じてやる"めいっぱい"を簡単に超えるなら、やっぱり彼女が悪い子だった。悪い子になってしまったらしかった。がぶ。って一口、】

【――やっぱりぼとぼと落ちるソースにレタスにお肉の欠片。真っ白な頬っぺたの"こんな"とこまでソースがくっついて、】
【真っ白な指先にもソースがべたべたになっている。そして何よりもうお皿に戻せそうにもなかった。――指先に食い込んだ状態で、なんとか、持てているから】

んん……、あはははっ、置けないね、これ、置いたら、ばらばらになっちゃう。あははは、紙の奴、――買ってくれば良かった。
ふふっ、買ってくればよかったね。そしたら、もうちょっと、食べやすかったかな――――。

【(そして気付くのなら。彼女の指先。いつかの"誰か"の指先と同じだった。だけど彼女は何にも知らないみたいに触れなかった、――また、おっきな一口、がぶり】

【ほっぺたのべたべたを拭うことも出来ないままで笑っていた。ハンバーガーを入れる紙のやつを買って来たらよかった。今更の後悔は、もう、どうしようもないんだから】


93 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/27(火) 00:36:19 E1nVzEpQ0
>>88

【であれば、 ─── やはり涙を止められないのだろう。祈る聖女を静かに抱き留めるならば、こんな香りもするのだろうか】
【きっと彼女の全てが愛おしくて仕方なかった。自分だけを見てくれないのが狂おしいほど憎い筈なのに、その強さと優しさすら愛おしくて止めどない】
【メイクと薄笑いの下に隠した自己嫌悪の骨格だけで生きているような人間が、何故にここまで斯様な少女に溺れてゆけるのか判然としなかった。だからこそ】
【正しく脚を滑らせた深みに嵌ってしまえば二度と戻れやしないのだろう。 ─── こらえられない涙に濡れながら、引き攣るように笑ってみせる声音は、いつまでも震えて】



  「本当さ。」「 ─── 誰も怒ったりしない。」「ボクもシグレも、やるって言ったらやるんだ。」
  「ボクが約束を破った事、ないだろ?」「嘘なんてつかないよ。信じてほしいんだ。だから。」「 ………─── だから。」


【そういう嘘を吐くことに際して彼はどこまでも下手くそだった。御涙頂戴の嘘泣きは、きっと誰よりも得意だったはずなのに】
【それでも今は、その言葉が嘘だったとして何もかも十分だったし、本当ならば彼は正義なんてどうだっていい人間だった。】
【ただ彼もまた決して恵まれた生い立ちではなかった。自分が正しく在る事で、誰かが少しでも幸せになれるならば、それでいいのだ。故に、決意のような沈黙は長引かず】



   「 ──── 助けるよ。」「 ……… 必ず、助ける。」「約束だ。」
   「シグレの友達はボクが助ける。」「シグレの許せない奴はボクが泣かせてやる。」「 ……… だから、」

    「だから、約束して。」「 ─── ぜんぶ、キミが一人で背負い込むのは、ボクが絶対に許さない。」



【大団円のハッピーエンドなんてこの世界にはないとしても、愛しい人がそうあれかしと願うならば、手を伸ばさずにいられない。】
【畢竟やはり彼は強く在れない。 ─── 大好きな人を滅茶苦茶に傷付けて従えるような遣り方は、どうやっても上手く出来ない】
【手を繋ぎながら向き合っていくしかないと今更に彼は理解するのだろう。傷付くのが怖いからなんて在り来たりな理由じゃない】
【 ─── それでも、一ツ楔は撃ち込んでいくのだから、やはり彼は卑怯だった。ただボクの隣を歩く大切な人なのだから、貴方には関係ないなんて言い草は、許さない。】
【髪房の奥、 ─── 鮮やかな紅色の何処か付け根に、深くキスを落とす。言質を取るのと等しかった。なにか致命的な既成事実を、誓う/誓わせる口付けだった。】


94 : 名無しさん :2018/11/27(火) 00:40:09 use.ZJ.w0
>>91

【少女は存外にあどけない顔をしていた。特に眼はころんとまあるい形、甘やかに垂れる眦をもっと甘く笑ませて囁くなら、どこまでも甘い蜜の温度感、蝶々も泥酔して堕ちるから】
【ならば見開かれる目は一瞬に状況を理解していた。バームクーヘンにホイップクリームとはちみつを添えたことがあるかしら。私はない】

――――っ、あ!? 

【――真っ青な瞳は銃口ばかり見ていた。一度目の射撃は、向けられる銃口の至近、遮るようにマゼンタ色が張り巡らされて】
【二度目。同じ障壁が拒むが罅が走る。一歩の後退に作った距離に伸ばした指先を虚空へ翳すなら、三度目を受け止めた障壁は硝子の割れるような音で、打ち砕かれ】
【けれどその瞬間に新たな障壁が貼られる。小さく息を呑む音がした。もう一つ後退。四五。割れ砕けて。六。割れる。七。割れる。八、真っ赤に飛び散るのは】

あ、ぅ――っ、っ。っっ、

【直撃は免れて、けれど、肉を大きく抉り取られる。ぱっと散った赤が洒落た煉瓦敷きの上、ぱたたッ、と、落ちるなら、拗れてしまった芸術みたいに】
【ぎりと嚙み殺す悲鳴と痛みの中に荒い吐息を吐き出す、――右手でぎゅうっと傷口を抑えるのなら、押し込まれた怨みか。或いはもっと単純に、襲われた怨みに眼がぎらつく】
【――携帯電話はポケットに入れていた。引っ張り出してロックを解除して電話アプリから目当てを鳴らすのに何秒かかるのだろう、明らかに果たせぬこと、刹那に理解するなら】

もおっ――、迷子どころじゃ、ないじゃないですか、っ……。刑務所はあっちですよお、――――――くそっ、何の話、でしょう、私、善良な市民ですしぃ、――。
――人違いじゃあ、ないですか? ていうか、ぜったい、そうだと、思うんですよ――、ねえッ!

【刑務所の方向なんて知らないしどうでもよかった、――痛みと熱さをけだるさと冷たさに置き換えるなら、それでもすぐに冷や汗が引くでなく、垂れる血は未だ赤く】
【引き攣るスズランにはいくらも焦燥が含まれていた。時折ふうっと混じる荒い吐息が何よりその証拠で。自分は善良な市民だから人違いでは、なんて、きっと意味がない】
【溢れた血が腕伝いに指先までをゆっくりと染めていくなら、真っ白いドレスグローブは至って無力だった。じとりと赤黒い色へ染められるから、赤い服なんてやっぱり要らない】

【――――音もなく彼女より程近い虚空より這いずり出るのはマゼンタ色。練り上げるよりも衝動的に、ぞるり相手へ迫る速度は、けれど、銃弾より早いはずなく】
【もしも総てを受け入れるのであれば、ためらいなくその甘たるそうな全身に無遠慮な冷たさを吐き出してやるつもりだった。だのに、すれ違う銃弾があるなら、彼女に打つ手もない】
【何よりごく反射的な乱暴な魔力の発露は遠く足音を聞きつけていたのかもしれなかった。――相手の全身を狙いながらも、それでも狙いは、"相手"である以外は、甘いから】


95 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/27(火) 01:14:08 L8ySAyuE0
>>94

【赤い血の石畳に飛び散るならば、 ─── くすり、確かに女は息を漏らして笑った。なるほど嗜虐趣味者であるらしい】
【来襲する紅紫の悉くを気怠げな銃撃が相殺する。リリースボタンを押し、軽く手首を振るならば、空になったマガジンは造作もなく地面に転がって】
【直ぐに新しい弾倉を込めてスライドを戻す。 ─── 数秒もしないリロードだった。相違なく殺しに慣れている人間の手付き。アリアと同等か、或いはそれ以上】
【決して遅くはない少女の攻撃をこれだけの至近で迎撃し切ったのも凡そ真っ当な人間の所作ではなかった。そうして互いの距離は、一ツ間違えれば抱き締めてしまえる程に詰められているのだから】


「わたしは貴女をよおく知っているつもりだけれど。」「蜜姫かえで、さん?」
「 ──── あの女の、」「アリアの、愛妾。」「よく似合う淫売の顔よね。」


【 ─── 続けられる銃撃は無慈悲だった。防壁の展開が連射に追い付かぬと見るや、照準は少女の脚めがけて、振るわれる撃針】
【14発の弾丸全てを躊躇なく撃ち込んでいく。 ─── 45口径のホローポイントが、少女の太腿を抉るまで。そうして】
【一瞬でも怯むのならば最早この女は致命的な一撃を喰らわせてくるのだろうとも悟らせた。なんとなれば、悍ましい熱量を孕んで蠢く、微笑みの背後】



   「それだけで万死に値して余りあるわ。」「 ─── ねェ、だから、死んで?」



【その背中を喰い破るように現れる、 ───二本の"触腕"。少女の身体よりも太く、赤黒い筋繊維のような外観に、不気味な粘り気を帯びたそれは】
【のたうつように狂おしい動きで、挟撃のように少女の身体へ叩き付けられようとするのだろう。人間のそれでは抗いようもない、怪物じみた膂力】
【 ─── もしも少女がそれを拒む手段を持たないのならば、幾つかの骨をへし折りながら、その儚い躯体を絞め上げようともするのだろうか。そこまでの攻勢を許せば、残される抵抗の手段は決して多くないのだろう】
【そうしてまた路地の前方と背後から、 ─── 目出し帽を被った都市迷彩の兵士たちが迫るのも、見えるだろうか。彼らのうちの幾人かは、放たれた阻害の一閃に斃れるも、それだけで止まる人数ではなかった】


96 : 名無しさん :2018/11/27(火) 01:54:12 use.ZJ.w0
>>95

【ふっと腕を伸ばせば抱き寄せられる距離感に少女はぎりと歯を噛むのだろう。傷口はもはや痛まぬけれど、ごく冷たい無感覚はそれだけで邪魔ッけであるなら】

――やっぱり人違いじゃないですか! だれですかあ、それ――、っ、アリアって人だって、ッ、私、知らないですよっ――、
初対面の人に、――いきなり襲われて、人違いって、洒落になんないですけどっ――っ! 

【微かに振れる視線は負傷によるものだったのか、――ごく当たり前に嘘吐けるのは年頃の少女の技能か、それとももはや慣れすぎているだけなのか、は分からずとも】
【それでも一瞬より一瞬の沈黙があるのに間違いなかった。咄嗟に知らないと言い捨てる"他人"の名前に、どうしたって呼び慣れた音階が含まれるなら、どうしようもない】
【――何より、そこまで調べられているなら、きっと、彼女を"彼女"だと決めるのに疑いなんて必要なはずもなかった。紅紫の魔力。たったそれだけで、証明になるから】

【ならば、真に冷や汗にべたつくのは薄藤の髪なのだろう、真に見開かれているのは紅紫の瞳なのだろう、だから血染めの手袋を剥いだなら、きっとそこには蛇が居るって、】

う、ぁッ、――――っ、、あ、もぉっ――、! ――――――――っ、きゃ、う、っ、……っ、

【数秒ごとに張り巡らされる障壁の煌めきはけれどいつだってたった一つッきりで彼女を護っていた、それだけ押し込まれている証左に、そのたびに割れ砕ける紅紫色】
【それ以上の何かを振るう余裕もなく。吐息すら詰まらせるなら、後ろへ逃げ出す余裕があるはずなく、て。情事の最中より荒く絶望的な吐息、なんとか吐き出すのと、同時】
【ぱきんってあんまりに軽い音。紅紫が割れ砕けるよりも鮮やかに張り裂けるのは真っ白な肌、熟れ切った石榴を割ったみたいにぼろぼろ落ちるのは肉と血の欠片であるなら】
【経血をそのまま垂れ流したみたいにねばっこくべたべたっと地面に張り付く音がした。視界が一瞬ぐらっと遠くなって、たたら踏む足をもう一つ撃ち抜かれてしまうのであれば、】
【お尻から倒れこんでしまう一瞬に辛うじて張った障壁に残りの銃弾を受け止めきる、ぎゅうっと閉じた目、粗い吐息を歯列の隙間から吐きだして、まなこ、開けば】

――――――――――――――――――――――ッ、あ、

【ごちゅ、と、なんだか嫌に水っぽいような音は、肉が衝撃に叩きつぶされる音なのだと。骨伝導より原始的に伝わるなら、痛みと音速にもまた違いがあるらしかった】
【一瞬あんまりに当たり前に暗転のち逃げ出そうとした意識が、骨のへし折れる痛みにまた引きずり出される。痛みを冷たさに隠しこむより先、思考回路を浸されてしまうなら】
【それでも触腕にありったけの魔力を流し込もうとするのだろうか、やはり冷たさと無感覚を思い切りに押し付けようと。きっと最後の抵抗だった。最期、――では、きっと、ないけど】


97 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/27(火) 02:30:55 L8ySAyuE0
>>96

【絡み付いた触腕は大蛇のように少女の身体を締め上げるのだろう。手から脚から隈なく巻き付いて、不快な粘液と焼け付くような熱量をずるりずるりと少女に刷り込み】
【或いは首筋にまで至るのであれば、 ─── 戯れにその呼吸さえも殺してしまおうとする。一思いに締め潰せるだけの力は十全に在る筈なのに、決してそうせず】
【それでも頚椎が軋み神経の千切れんばかりの、最大公約数的に苦痛を感じさせながら、窒息に命と意識を手放す一刹那前、微かに気道を開いてやる。】
【最低限の酸素を与えたのならば再び触腕が締まっていく。己れの命は眼前の女の気紛れが握っているに過ぎぬのだと自覚させてゆく。 ─── 気付けば触腕の数は、9本にまで殖えていて】
【拘束はより絶望的なものに変わりゆくのだろう。流し込まれた阻害の異能に、微かに女は忌々しげな顔をするも、それでも悠然と微笑んでいるのだから】



「 ─── 幾らか、これでは不足ね。」「あァもう全く、 ……… 手間を掛けさせないで欲しいわ。」



【然して少女が己れの痛覚に何らかの細工を暗示しているのだと気付けば、 ─── 始めてそこで悩ましげに女は息を吐いた。】
【もはや少女の身体は、絡み付く赤黒い触手によって宙に浮くのみであろう。取り囲むように陣取り、小火器を携えた男たちの中から、一人が歩み出て】
【 ─── 辛うじて開かれた少女の左手、紅く汚れたグローブを引き裂くように剥ぎ取って、血染めの刺青さえ露わになるのだろう。乱暴に塡められるのは腕輪だった。凡ゆる異能を封じる類のもの】



「小狡い事は、だあめ。」「 ─── ちゃあんと貴女の悶える姿を、送り付けてやるのだから。解るでしょう?」



【愈々もって始まるのは徹底して暴力的な陵辱であるのだろう。 ─── ごく太い触腕は、その先端にて幾つもの末梢に分岐し、服の下まで隈なく少女の体を弄り】
【おぞましくも否応ない不快感を教え込みながら、圧迫と酸欠の苦痛と絶望を重ねて幾度となく繰り返す。獲物を囚えた大蛇の群れが、戯れに無力さを嬲るのに似て】
【 ─── 女はもはや凶器を仕舞って、ひどく恍惚に似た表情をしながら、その唇に舌なめずりさえ這わせていた。細められた翡翠色の双眸が、愉悦に満ちた嗜虐を見せ付ける】
【取り囲む男どももまた、腹満の下に下卑た笑いを浮かべているのが見て取れた。 ─── 手慰みのように向けられたスマートフォンは、きっと少女の悶える姿を映す為のもの】

【ならば幾重もの肉牢の奥、 ─── 幽かに感覚の残るのみとなった刺青の手に、いっとう濃密に這いずり回るものがあるのも解るだろうか。】
【少女からは見えないとしても、宣告のように繰り返される、鋭利な爪先を緩やかに撫ぜるような感触。肌を裂かぬのは偏に力を込めていないからに過ぎぬと、然らば】
【 ─── ほんとうに楽しそうに、女は嗤っていた。「ねェ、かえでちゃん。これから貴女が何をされるか、解るかしら?」答えるだけの呼吸だけを許し、答えぬのならば更に残酷に締め上げるのだから】


98 : 名無しさん :2018/11/27(火) 03:21:44 use.ZJ.w0
>>97

【――――みし、と、鳴いた/泣いたのがどこの骨であるのかさえも分からなかった。ぎしり締め上げられるのなら、肺の中の息は全部全部絞り出されて、】
【そうしてまた首までもを締め上げられるのなら、少女は声のひとかけらすら漏らさない。漏らせない――だけれど、それにしたって、あんまりに静かすぎる気がした】
【気を遣ったにしても同じであり。ぼおっと開けられた眼は確かに潤んでいて生きているし、みしみしと音立てて締め上げられる首の奥に鼓動は動いていて、それなのに】
【あんまりに完全に脱力しきっていた。気づけば抵抗であったはずの魔力の発露さえなくなっていた。力ない唇から落ちる唾液のしずくがつうっと陽光に煌めくのなら、そうだった】

【ふと目をやれば透き通る水面がきらきらと輝いて。こ洒落た煉瓦敷きの散歩道は向こうの向こうまで続いて。小鳥の鳴き声。どこか遠くでクラクションの響く】
【ごくありふれた一日がそこにあった。ならば彼女たちだけ異質なものみたいに混じりこむ。――ぼたりぼたり爪先から滴る血が、煉瓦の隙間に生える苔に水分を与えていた】

【だからそれはやはり異能の作用だったんだろう。事実、もう濁って見えない眼差しの先で誰かが手袋を抜き取るのなら。蛇の首に輪を嵌めるのなら、】
【――今までまるでお人形みたいにだらり脱力していた身体がびぐりと跳ね上がって強張る、茫としていた眼もまた絶望的な光を取り戻す、刹那に】

――ッ、ぁ、あ、――――っあ、あああ、あぁ、ぁ、っ。あ、あぁ、あ、あ、!

【間違いなく痛覚を取り戻したと伝えるには十分だった。乾ききって張り付いた喉粘膜を掻き分けるみたいに吐き出される声、鮮やかな日差しの中に混ぜ込んで】
【身を捩るならば握りしめられる圧迫感と折れた骨同士がこすれ合う痛みに泣いて叫ぶんだろうか。そしてまた耐えがたい痛みに暴れて、より一層の痛みに悶えるから】

ぃあ、あ――ッ、とっ、て、とって、――ッ、ッ、ああああ゛あっ――っ、いゃ、あッ、――ッて゛よおっ、痛゛ぃ、痛――っ、あ。ァ、っ、

【あどけない顔を染めるにはあまりに不似合いな/けれど見様によってはどこまでも似合いの表情、普段なら甘く涼しいスズランの声も、痛みに濁れば雑音より耳障りに変わって】
【ぎくと強張った指先は八つ裂きにされた蛇の頭そのものであるから、必死に伸ばした指先ががりがり手首に嵌められた輪を掻くのだろう。――やがて爪を損じても】
【だって"これ"さえなければ痛くないのだから。これさえなければ。これさえ。これさえ。真っ先に変に引っ掛けた小指の爪が剥がれて、だけど、それでも、これさえ、――】
【――――――、とかく確かであるのは、薬指の爪が取れたとしても異能封じの輪はびくともしないのだろう。泣きじゃくるような声は確かに街中に届くのに、誰も、】

【――それでも誰かに通報される危険性はあった。きっと。だけれどそんなに勇気のある人が居るだろうか。ましてや、このご時世に、能力者同士の、】

――――――――――ぃや。いやっ、いやあっ――、やら゛、っ、ぁあ、っ、や゛、――ッ、

【それが左腕でなくても、右腕でも、足でも、どこでも、もはや彼女はおんなじ反応をしたのかもしれなかった。赦してもらえた吐息の隙間に漏れるのは、ごく拙い言葉のみで】
【痛くしないで。――そう懇願しているに違いなかった。いつか神様を信じている証拠の刻んだ蛇を傷つけられるのはひどく苦痛だった。けれど、】
【今となってはそれ以上に新たな痛みの一ツにだって耐えられないし耐えたくないしもう嫌だと、――、濁った眼から溢れる涙は面白いくらいに透明で、透明だから】

「     」

【――譫言みたいに動く唇を読むまでもなかった。ひとのなまえを紡いでいた。そしてその名が相手の忌む人物の名前であると言うまでもないのなら】
【よもや真名で呼ぶような考えを巡らす余裕があるはずもなく。たすけてほしかった。ただそれだけだったのだけれど。――それでも】


99 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/27(火) 04:06:30 L8ySAyuE0
>>98

【滑稽なほどに痛苦から逃れようとする少女の様を見てまた女は笑った。下らないコメディを見ているような、耽美な微笑みを塗り潰すには幾らか品の無い笑い】
【少女の絶叫も悶絶も懇願も、全ては映像に記録されていた。 ─── やはり彼女らは周到であったのだろう。それを勘案しても、余りにこの空間は日常から隔絶していた】
【覆面の男どもの中に何かしらの異能者でも居るのかもしれなかった。とはいえ日差しは麗らかで、川の流れは涼やかで、今の少女にそこまで思考が回る筈もなく】


    「あら駄目よ、」「 ─── 此の位で、根を上げていたら。くふふ」


【充てがわれたケラチン質の鈍い刃が、 ─── 残った爪の全てを、その隙間から擦り切りながら、そのままに生皮を剥いでいく。蛇の刺青"だけ"を、綺麗に残したまま】
【 ─── 事実として女の遣り口はまだまだ生温かった。ただ徒らに一方的に肉体を嬲っているに過ぎないのだから。身体を壊すにしても、精神を壊すにしても】
【もっと苛烈な手口は幾らでもあるし、これから女はそれを施してみせようと言うのだろう。 ─── 尤も、今に絶えんとする呼吸で縋る名前を口にする少女には、考えるべきことではなかった。】


    「矢っ張り知っているんじゃないの、 ─── ねえ。」「わたし、嘘を吐かれるのは好きじゃないの。だって、お互いに良いこと、無いでしょう?」


【くすりくすりと息を漏らしながら、わざとらしい調子で女は怒ってみせた。笑いながら怒っていた。 ─── 皮を剥がれた手へ、絞り潰すように絡み付く触手。ならば、】
【左手の薬指 - 第一関節の先から、第二関節、その根本。曲がるべき方向とは真逆へと、弄ぶように力を込めて、─────── 】



        【なにか嫌な音がした】【それが皮切りだった。】【叫ぶ喉さえ血痰を吐くとしても、】【 ──── 却ってそれは、女を楽しませるのだろう】



【 ─── 右腕の五指が丸きり別の方向にへし折られる。左腕の肘が手羽先でも食べるみたいに逆さに曲げられて折れたまま滅茶苦茶に回される】
【両脚の付け根が後ろに引っ張られながら限界まで開かれて肉の裂ける寸前で砕かれる。お人形遊びの遣り方を間違えたように両脚の膝が出鱈目な向きへ曲げられる】
【 ─── 手脚の関節の悉くを、まるで捥ぎ取ってしまうかのように折り曲げるならば、触腕の膂力は凄まじいものであった。ただ少女を締め上げるだけでも、その本懐の数割も用いていないのならば】
【意識を失いそうになるならば、強引に唇へ突き込まれた触腕が、どろついた熱く生臭い粘液を滔々と流し込んで、あらゆる逃避を許さない。マドレーヌより余程に酷い味を吐き戻しても、肺腑を締める触腕が呼気を殺す】
【それでも死んでしまうには未だ遠く、舌を噛んで死のうものならそれさえも阻まれるのだと想像に難くなかった。 ──── ならばこれは本当に本当に"はじまり"に過ぎぬのだと悟るならば、絶望は全て甘露であって】


100 : 名無しさん :2018/11/27(火) 05:14:49 use.ZJ.w0
>>99

【見開かれた眼が極端な怯えを示していた。喉の奥に何かが引きずり込まれていくような呼吸を繰り返して、なら、顔を濡らす液体が何であるのかもう分からなくって】
【怯えていた。ただひたすら。或いは昔の自分だったなら耐えられたかもしれない。これが神様のために正しいことだって言われたら、信じられたのかもしれない】
【だから全く別のことを考えていた。昔のことを考えている。だれかを見下している記憶。見下ろされるだれかは殺虫剤に落とされた芋虫みたいに悶えていて】
【神様の名前を呼び縋れるやつはほとんどいなかった。くだらない命乞いも母親や父親に救いを求めるのもそれ以外の何かに助けを求めるのも、ぜんぶ、神様への不義理であるから】
【――だから"ただしく"在れるようにより一層の試練を与える。だって正しく在るべきなんだ。私たちは何一つ間違ってないんだから。神様に祈るのだけが正しいんだから、】

っ、あ、ッあ、あ、っ――――――――ッ! 

【現実逃避の思考から無理やりに現実へ引き戻されるのなら、吐き出される悲鳴は地獄の閻魔様だって耳塞ぐような超高音、少女の喉の全部が張り裂けたかと思うほどの、】
【ぎゅうって身を捩っても痛みが遠ざからないどころか全身が痛むのになにかそこに救いがあると信じているみたいに暴れるんだからひどく馬鹿げていた/馬鹿げている】
【脳の中で繋がっている全部の回路が片っ端から逃げ出すみたいにばらばらになる気がした。もはや痛みは痛みというよりただ脳内を手酷く嬲られる感覚に似て】

――――――ごぇんなさっ、ひ゛ぅっ、――、――あ゛っ、ごめ゛んなさい、っ、嫌゛っ、嫌ああ゛ああ! ごめんなさぃ! ごめんなさ、――っ、ぃっ、ッ、きぃ、あ、

【剥き出しの肉を握りしめられるのなら、もはや少女の心などとっくに折れてしまっているのだと、――なら今すぐに死んでしまいたいのだと伝えた、そうでなければ】
【今すぐだって助けてほしいってめいっぱいに泣きじゃくっていた。ごめんなさい。何に。降って湧いたような絶望をまさに表す笑みの彼女に縋るのはきっと赦しであるなら、】
【やっぱりそれは不義理だって蹴り捨てられるべき懇願なのだろう。肉を握られる痛みに何かを予感したなら張り裂けるような声が必死に繰り返して、けど、叶わないから】

【もはや悲鳴すら絶える沈黙、】

――――――っ、あ、あああぁああぁ、

【びちゃり滴る水音は間違っても川のせせらぎではないから。毎秒意識は何度も飛ぶのに、そのたびに現実味のない痛みに目覚めてしまう】
【ちゅうぶらりんの爪先、ショートブーツを伝ってひたりひたり垂れる雫を数えることにきっと意味もない。それでもなお逃げ出そうとする意識を、やはり無理やり引き摺り戻される】
【得体のしれぬ粘液に窒息しかけてえずくなら全部を吐き戻すのだろうか、それさえ口元を拭う仕草を果たせる身体の部位などどこにもなくって、だから、】
【通販で買った外国製のアヒルの水鉄砲みたいだった。握りつぶされると何か吐くから。ならばそのうち出るのは血に変わるのが道理であり、】

ありあさん……。

【――だから今すぐ死んでしまいたいに違いなかった。死んだら楽になれるって信じていた。かみさまは祈っても助けてくれないって学習していた】
【もうどうしようもない震える歯は舌を捉えることも出来なくて。泥酔したみたいに覚束ない舌は言葉だって上手に紡げなくて。滴る温度は三十六度五分より温かいから】
【まだ生きてる/だから今すぐ死にたい。――心の中が空っぽになるみたいだった。全身の中に心だけ隔絶されるみたいな空白。全部が自分じゃない気がした。だってあんまりに痛すぎて】
【これが自分の感覚だなんて信じたくなかった。脳に痛覚がないなんて嘘だと思った。だってこんなに、】


101 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/27(火) 10:45:18 396LKZAA0
>>82>>83

「ええ、差し上げます」

【あちこちに転移し、感情こそ知れぬど喜ばしげにはしゃぐミチカを、それこそ目を細め】
【艦橋、砲塔、空中線……と忙しなく転移を繰り返すミチカを見続け】
【まるで子供にも似た様子を、微笑ましげに見守る様に】

「ええ、勿論約束しましょう、貴女が船長となっても無論良いです、また船内に新たな『施設』を設けるのも」
「解体し売却し資金とするのも……」

【やがて、2人の間には風が吹いて】

「この感覚を、思考を、理解したと言うならば……恐らくそうなのやも知れませんね」

【何故に、何故にと思うやも知れない】

「世界とは、一体何十年昔に締結された安保を未だにあてにしているのでしょうかね……」

【ミチカの、いや、誰もの根底の疑問に答えるかのように、察する様に、くるりとミチカと反対の方向より、海と空の夜を眺めながら、ぽつりぽつりと詩文を誦んずる様に】

「『私は、我が国の平和と独立を守る魔導海軍の使命を自覚し、櫻国法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います』」

「こんな、専制も署名も不要、古い不要な産物です」
「古い物は不要、ただそれだけです」


【ここで恐らく、この日最も快活な、恐らく本心からの笑いを浮かべ、かかと声を出して】

「さすがは曽根上ミチカ殿、良く弁えておいでだ」
「そう、これに理由など無価値、ただ理解するのみ、素晴らしき見識で御座います」
「ルール、ルールですとも、極めて簡単な、極めて単純な……」

【かかとした笑いは、尚も甲板に響きながら】

「そうですね、しいてお願いする事があるとすれば……」
「先ずは、黙して頂きたい、我々がこの国に起こす全てに、そしてその後は……」

【灯台の灯りが消え、ミチカも道賢も】
【その笑みが、完全なる闇の中に消える】
【後には潮騒と、海風の音だけが聞こえ】

「その後は、命じて下さい、何なりと……」
「その先に、古き偽りを超え、人々が目覚めし先にこそ未来はあるのでしょうから……」

【闇の潮風に溶け込むかの様な声】
【混じり気のない無い声色、口調】
【道賢の、ミチカに示した回答は簡潔に過ぎる程に】
【即ち、自分達はこの国に対し何かをするが、それを黒幕、その傘下たる皆々様も黙して見て欲しいと】
【そして、それが成った暁には、其方の要求があるならばその通りに動く、と】


102 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/27(火) 21:00:10 WMHqDivw0
>>92

……………………。……そっかあ、呪いかあ。でも呪いとか祟りばっかじゃ悲しいよネ、
なんかこう、えっと……祝福的な。福音的な? そーいうのはないのかナー。

【ぴた、と手元の動きが止まったのも一瞬のこと。ハンバーグをぺちこねぺちこね再開させて】
【勝手に作ってるのはこいつも同じことだった、ちゃっかり中にチーズ入れたりして。「入ってるよー」】
【本当に何気ない会話として流してしまいたい、つもりだった。真ん中にくぼみを入れて、そしたら、】

……、……そっかナー。おれも好きなときに好きなだけ喰って寝るの、好きだけど。
こー見えてじつはおれ、アラフォーなんだよ。でも見ての通りこんなだし、
夕月にはいっつもイキった大学生みたいって言われるし……大人って意外とそんなもんじゃないかなあ。

でも、そーだねえ、……ちゃんと、なれるに越したこたねーわな。

【横顔のみで薄く笑っているのを、真正面から見ようとするなら、彼もきっと何かしら悲しそうな顔をしていた】
【でも、それでいいとも思っていた。諦めてニコニコ、平気なフリして陰で泣かれるよりはずっとずっと】
【愚痴っぽく――愚痴どころの話ではないのだが――言ってくれたほうがよかった。そうして思うなら、】
【(おれもきちんと生きてられたら今頃)、なんて考えかけては、やめる。話の主語は「おれ」ではないから】

【そうこうして恙なく(?)調理し終えて、ふたつ並ぶコーヒーカップと、崩したら負けのゲームじみて積み上げられたもの】
【それだけが卓に並ぶのならきっと、それ以上は求めなかった。まだパフェが残ってるんだけど。一旦置いといて】
【少なくとも注射器とか――機械とか、銃とか、そういうのが似合わない光景。それだけあれば十分すぎて】

マジだこれ――置けねえ! やべーこれ早く喰わなきゃ大惨事になるヤツだ、
うわーっちょっと待って、ネ、あー、……………………ん゛、

【笑われるなら、さらにそれを後押しするように間抜けな慌て方をするんだろう。大きな手、両方使ってつかまえて】
【雑な大口で何度かに分けて、早々に食べきってしまう。頬をハムスターめいて膨らませながら咀嚼は止まず】
【しかしそのまま立ち上がっておしぼりを取りに行くんだから――とにかく行儀が悪かった。だけどこいつは悪い男だから、】

【「ん」。 ――――戻ってきても咀嚼はそのまま、もごもごさせながらも、少女の頬をぬるま湯に浸して絞った布にて】
【拭おうとする。慣れ切った兄の手つき。……どうしようもないならせめて、きれいに拭って清めるくらいは、したかった】


103 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/27(火) 21:30:31 WMHqDivw0
>>93

……………………………………ほんと?

【彼が少女の頭に顔を埋めてキスをするなら、きっと彼女の顔は見えなくて、――それだけがきっと救いだった】
【だってこいつはどうしようもない顔をしていた。約束してくれるって、破らないって言ってくれる彼に向かって】
【ひどく嬉しそうに笑うんだから。ともすれば初めて愛してるって言ってもらえたときより、初めてキスをしたときより】
【初めて身体を重ねて、熱を注いでもらえたときより、左手薬指に、指輪を、通してもらったときよりも、あるいはずっと】
【幸せそうな顔をして言うのだから救いようがなかった。見られていたなら、ただしくこいつはバケモノだと認識できただろう】

【結局のところこいつもどこかで全てを諦めきれていなかったに違いない。理解したつもりでいても、望みを捨てきれなくて】
【ならばそれが叶うかどうかはもはやどうでもいいことだった。こいつにとって重要なのは、それでもいいって言ってくれて】
【それが叶わないって改めて悟ったときに、一緒に死んでくれる――みちづれを探していただけに過ぎないのかもしれず】
【であるなら、かわいそうな少女の皮を被って、人の心なんて不要なもの持ってまで他人に近付いて、誘き寄せ】
【引き摺り込んでは喰らって取り込むバケモノに相違ない。なれば彼は、それに魅入られてしまった哀れな青年だった】
【少なくともこの光景を見守る第三者からはそう言われるに違いないけど、本当に、それで、いいのなら、】

うん、ありがとう、エーノ、…………うれしいな、うれしいよ。
あのね、…………好き。だいすき、あたしのこと、見つけてくれて、ありがとう。
ねえ、あのね……あたし、きっとこれからも、いろんなことしてみたいって言うと思うし、
いろんなところ、ひらひらって、行っちゃうかもしれないけど――でも、ついてきてね。

【「そしたら何にもこわくないから」――。背中に腕を回すのならば、やはりこの人は男の人なんだってわかってしまう】
【だったらそのまま捕まえていてほしくって。けれどこいつは籠の中に閉じ込めるなら、三日たたずして死んじゃうような】
【蝶々みたいなバケモノだから。だから本当に留めておきたいのなら、いっそ薬液にて殺してしまい、ピンで留めて】
【額縁に飾って置いておくしかないと悟らせる。それがイヤだと言うのなら、いつまでも、甘い甘い蜜をこいつに捧げるしかない】
【そうしておけば逃げはしないから。だから、――――、彼が枯れてしまうその時が、こいつの死ぬ時でもあるのだろう】

………………ふふ。うれしくなったら、急にお腹空いてきちゃった。ねえ、
あったかいスープが飲みたいな。……お腹の中たぶん空っぽだから、いきなり固形物食べたら、ヤバそう……

【そうして。腕の中にて、身体全体を相手の身体に擦り付けるように身動ぎする。猫のマーキングじみた行為、】
【ともすれば癖なのかもしれなかった。思えばいつもこいつは頬擦りとか、そういうのを好んでやっていた】
【普段は隠されている彼のすべらかな肌の感触、全身余すところなく知っている者の特権として、やっていると気分が良くて】
【なんだか自分が特別な存在になれたみたいで、うれしくなるのだ。……それが相手に伝わっているか、定かではないが】


104 : 名無しさん :2018/11/27(火) 22:16:16 l35Kvqio0
>>102

【「嬉しくって神様に成った子なら、そうかも」】

――――――ヤサカさんだって、大人になりたかったって言えばいいんだよ。わたしみたいに、言えばいいよ。

【そうっと傾げるみたいに覗き込むなら、ドーナツ屋さんのチュロスみたいにくるり丸めた形の髪の毛が揺らぐ、少しだけ長い前髪は、やっぱり料理には向いてない】
【お肉を捏ねて脂っぽくなった手を曖昧な位置に留めていた。あるいは手が綺麗でさえあれば何かしようとしたのかもしれなかった。だけど、手が綺麗じゃないなら、諦めて】
【そのうちにまたボウルに向き直ってお肉をぺたんぺたんと丸めている。「ハンバーガーにするハンバーグ作るのなんて初めて」――、そんな、小さな呟き声】

【――だから彼女もまた何かを日常会話のフリして誤魔化そうとしている、らしかった】

【から、】


あはは、ヤサカさん、すごい、手べたべた。ふふっ……、ちーちゃい子みたい! ――っ、

【たべさしのハンバーガーをぎゅうって握りこんでぱくぱく食べていくのを見て、少女はまた最初の一口とちょっとのまま笑っているのだろう、】
【自分だって手はべたべただしほっぺたもソースがついていることは見えないのを理由に忘れてしまっているらしかった。――なら、彼女だって、ちいっちゃい子みたい】
【ソースのついた真っ白の頬っぺたをごく幼く笑わせるなら、彼がハムスターみたいになっているのを横目に、ふふ、なんて笑いながら、自分もまた頬張って】
【もごもご頬張って咀嚼して、またもう一口。――彼が戻って来るのはちょうどその時だった。頬張ったままのをもぐもぐやりながら、刹那にきょとんと見上げた眼差しは、】
【――すぐに彼の手にあるものを理解して。ごくんって慌てて呑み込むのだろう。空っぽのほっぺたをそのまま拭われて――まだ手の中に半分くらい残ったやつ、あるから】

――――ふふ。ありがと。ちーちゃい子みたいだった?

【にこと向ける笑みはさっきのより、いくらかお姉さんじみている。そのくせその直後にはまたあーんとおっきな口でかぶりついているから、お淑やかには程遠くても】
【せっかく拭いてもらった頬っぺたをまた汚してしまわないように、開けた口はさっきよりも少しだけ控えめに。何度か齧ったなら、握ったバーガーもこなれてきているのも、あったけど】


105 : ◆KP.vGoiAyM :2018/11/27(火) 22:51:16 Ty26k7V20

【街中―――新楼市にて】


【摩天楼――そんな言葉でこの街を形容する気の利いた人物は居ない】
【皆「先進的建築」だの「生産性の高い構造物」だの「クソッタレ用の収容所」だのと言ったつまらない言い回しばかりする】
【急速に発展した街、その人々から何かを吸い上げるように伸びた高層ビル群と近隣の工場によって汚染された空気は】
【本物の空を覆い、バーのネオンサインや、街頭ビジョンや、ホログラム広告や誰かのスマートフォンの画面の明かりが代わりに】
【昼間よりも明るく、この街の生命のように煌めいていた。不規則な無機物の集合はもはや生命だ】


――――凄いなあ、コレはまさに運命だ。自然と言えるんじゃないかな。


【そんな感想を、ボクはつぶやいた。有名な写真家に憧れて買ったカメラはいつも、どれだけ絞っても、“ちょっとピンボケ”に写す】
【しかも銀塩でそれを焼くもんだからさらに色合いは焼けている。でも、ボクはそれで良い。そのほうが美しくある】

【通り過ぎる人の目が少し痛い。街の大通りに突っ立って、カメラを回しているからかもしれないし、ボクが、白髪で、まつ毛も白く】
【着ているスーツもシャツもネクタイも靴も、持っている傘も白だからかもしれない。】
【この街は多いから傘を常に持って歩く人は珍しくないと聞いた。この街で、一々、雨に怯える人は居ない。】

ああ、そうだ。たくさん撮っておかなくちゃ。

【ボクはあまりにも趣深い、その風景に見とれすぎて、人々を写す事を忘れていた。適当にシャッターを切る】

【その時、ボクは全くの―――そう、全くの偶然で、『あなた』を写してしまった。そう、偶然に。―――きっと】



/フリーの投下でございます。


106 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/27(火) 23:05:22 WMHqDivw0
>>104

【きょと、と目が丸められた。そんなこと言われたのは初めてで、というか、考えたこともなくて】
【だって自分は小さい頃からずっと「お兄ちゃん」だったから。妹や弟の前で泣き言言うのは】
【ダメなことだと思っていたから。だから、…………………………だけど、】

……おれさあ、27歳で死んだんだよね。そっから8年生きたから今35歳。
でもまー27歳でもイイ大人じゃん。だからネ、大人になりたかったってのは、ないかなあ……。

……、……ただ一つ、いっこだけ、どうしようもないこと言っちゃっていいなら、

【「結婚して、奥さんがいて、今頃7歳になる娘か息子がいたはずなんだ」。――流すようにして鼻歌が始まる】
【それもすぐ、肉汁をぎっしり詰め込んだハンバーグがフライパンに乗せられて、じゅうと焼ける音に消えて】
【それが、最初で最後(にするつもりらしい)の我儘であるらしかった。今宵はずっと悪い男で通すつもりだったけど】
【刹那のあいだだけ、どうしようもない子供みたいなこと言って、……その子供も消えてった。肉を焼く湯気と一緒に】

【だから戻って来たときには完全に、お兄ちゃんの表情を取り戻していた。汚れたおしぼりをぽいっと放って】

うん。まーおれもメチャクチャ頬張ってたから人のコト言えないけどお、
たまにはいーよネこんなのも! テーブルマナークソ喰らえみたいな食い方すんの、……あはは、

だから鈴音ちゃん、……またやっててね、こーいうバカみたいなコト。世界が滅んだあとでも。

【願い事ひとつ。一緒にやろうねとは言えなくって、けれど、あるいはもしかしたら。くらいの感情を滲ませて】
【「それ食べたらパフェ行っちゃう? おナカいっぱいになったんなら一休みしてもいいケド」。次の話に移っちゃう】
【そうして過ぎる夜だけはきっと平穏、だったと、思いたくて。その次には朝が来る。したらまた夜が来て、朝が来て、――】


107 : 名無しさん :2018/11/28(水) 10:05:19 l35Kvqio0
>>106

【――なら、お料理している少女のまなこもうんと丸くなるんだろうか。横顔のままで振り返ってはこないけれど、まあるく見開かれた目と、凍り付いたような指先】
【じゅうって焼け行くお肉が焦げる寸前、――よりもちょっとだけ行き過ぎた、底のところがちょっとだけ黒くなってしまったハンバーグを見下ろすのなら】
【これはわたしのにするね、――、小さな呟き声。交換、って言って、焼くたびぽいぽい積み上げるみたいにハンバーグを乗っけていたお皿から、一番おっきなやつ、彼のにする】

わたしは、そういうの、我慢しないって決めたよ。

【――――――だからみんなやめちゃえばいいんだ。それで世界が滅んだって、きっとまた全部始まるから。その時にわたしたちは居ないかもしれないけれど】
 
――――ヤサカさんも、お口のとこ、べたべただったよ? だからお相子。テーブルマナーは、……そだね、わたし、そういうの、苦手だから……。
なんとかのなんとか風……なんとかを添えて……って言われても、覚えられないの。食べたことないようなお料理。食べるのは、好きだったけど――。
どこにでもあるようなファミレスの方が好き。――――それより、お家で、誰かと一緒にご飯食べるのが、一番好きなの。お片付けはしなきゃならないけど。――。

【にまと笑って言い返す。だけど、ほっぺた拭われた時点で彼女の方が負けなのはきっと彼女だって分かっていた。いるから、にんまり笑うにとどめ】
【テーブルマナーは。――苦手らしかった。なんとかのなんとか風のなんとか添えをナイフとフォークで食べるより。安いペペロンチーノに粉チーズかけるほうが好きで、】
【それよりも、よく慣れた場所で、親しい人と、ごく最低限のマナー以外は無視してほっぺたも指もべたべたにするのが、楽しいって思ってしまうから】

んーん。これっくらいじゃお腹いっぱいにならないの。パフェ作ろ! 

【――残った分をえいって食べきって、彼が放ったおしぼりをもう一度欲しがる。といっても、こう、手を出す感じで、言葉でのおねだりは、ないのだけど】
【もらえるのならありがとうって言うんだろう。伝わらなくっても何にも言わない。とりあえずどんな方法でもある程度手を綺麗にするなら、よいしょーって立ち上がり】
【こんな程度でお腹いっぱいになっちゃうのは可愛いふりした女の子だけだからって言いたげだった。だからパフェだって食べちゃう。買って来たものぜーんぶ、】

【ぶどうもパイナップルも桃の缶詰も蜜柑の缶詰も、ウェハースだって刺しちゃう。生クリームだっていっぱい入れるし。ゼリーも入れちゃうのかも】
【一番おっきなビールのジョッキにあまーい味わいをたっぷり詰め込んだら酔っ払いのおじさんたちが卒倒しちゃいそうなものが出来上がるに違いないなら、】
【そんな風に夜だって過ぎていくに決まっていた。食べ終わったらお酒だって勝手に飲んでいいのかもしれなかった。だって悪い子なんだし――】
【――それによく分からないけどテンションで買った食べ物とかをもういくらか消費しておきたいっていう考えも。だってこのまま冷蔵庫に入れてしまったら、たぶん、】
【発見したひとは、過食嘔吐に取り憑かれたひとがついでに躁転して目についたもの片っ端から買って来たみたいなラインナップに絶句するに違いなく――っていうのを、】
【ちょっとだけ冷静になった今なら分かるらしいから、「さすがにちょっと買いすぎたね」――苦笑して呟いたんだろうか】

【――――――そして後日、】

【なんでもやりたいことがあるからと言って、その日彼女はUTに来ていた。なら彼にも理由は伝えているんだろう、曰く、お掃除とか、お掃除とか、お掃除とか、】
【――悪い神様の癖にずいぶんと出入りしているらしかった。こっそりと言うにはずいぶん堂々と。お掃除も済むのなら、今度は書きさしのレシピを書き終えたい、何て言って】
【――――やっぱり思い出せないみたいにうんうん唸っているんだから。そしてまたお店の入り口は開けられて、きっとずいぶん久しぶりな空気の入れ替えの真っ最中、だった】

【(だから誰が来てもおかしくなかったし、誰が来たって、少なくとも、店そのものは受け入れてしまうんだから)】


108 : ◆RqRnviRidE :2018/11/28(水) 18:59:24 KNLY.uIU0
>>44

【常連達のざわめきとひそめきが混じる。 平生では考え難い、珍奇なイレギュラーに対しての不穏さと動揺に因るものだろう】
【故に自然と注目は集まるのだった。 注視する者、瞥見する者、耳をそばだてる者──衆目こそ種々様々であったが、ともかく】
【事によっては一触即発にもなりかねないこの状況に、観客の誰しもが不安感を抱いていた。 ──けれども、当の本人は、と言うと】

「── へえっ、おっちゃん『魔海』出身なんだ! ね、もう一人の人も魔海から来てんの? おっちゃんの住んでたトコってどんなトコなの?
 ワーキャットって人猫のことだよね、魔海って俺も一回行ってみたくってさー…………
 …………あっ、ごめんなさい、特別なんかすごい用事がある訳じゃないんだ。 ちょっと話してみたくって。」

【周囲の目など何処吹く風と、人懐こい笑顔を浮かべるばかり。 獣人が魔海出身であることを知れば、ますます目を輝かせ】
【飛び込んできた勢いのまま矢継ぎ早に、獣人へ好奇心を真っ直ぐにぶつけるだろう】
【第一印象の通り、社交的で怖いもの知らずの子供だった。一旦エンジンが掛かるとブレーキが利きづらくなるタイプのようだ】

【込み入った用件を抱えてきた訳ではないという。 ならば言葉通り、純粋に興味があって獣人に話を聞きに来ただけらしい】
【「店員さん、ホットミルクひとつください!」──と元気よくカウンター越しに注文する様子は、少年がリラックスしているのが窺えた】

「……えっ!? あっ、すいませ────」

【──とは言え、恰幅の良いホールスタッフが駆け寄ろうとしたのを目に留めると、少年は多少身動ぎをして】
【申し訳なさそうな色を表情に滲ませながら、何かやらかしてしまっただろうかと謝罪を述べようとしたところで獣人の制止が入る】
【緊張の糸がその場に張り詰める。 遠退く喧騒に少年はややばつが悪そうにしながら、獣人と改めて向き直り】
【相手が用心棒の長を務めているのだと説明を受ければ、感慨深そうにへえ──と相槌をひとつ】

「── っふは、スゲー……! 用心棒のリーダーかあ。
 そっか、見つけた瞬間ただ者じゃねー!って思ってたけど、やっぱりおっちゃん強いんだ……!」

「…………てことはアレだよね、“門番”?の“長”だから──────『番長』だ!!」

【どうやら彼の話を聞くのが余程楽しいらしい。 言葉のひとつひとつを笑顔で聞く様は、さながら武勇伝に聞き入る幼子のよう】
【次いで言い放たれる呼び名については当たらずとも遠からず……と言ったところだろうが、その実少年自身はあまり意味を分かっていなさそうで】
【とりあえず素直に感心しているのは間違いなく、話の最中はやや前のめりになりながら、相槌を打ったり頷いたりしていた】

「── あぁ、うん、そうそう! 俺、実はちっちゃい頃から正義のヒーロー目指しててさ。
 一応特訓はしてるんだけど……他の強い人にも会ってみろって“団長”に言われたから探してたんだ。」

「……そんで、その団長っていうのが真っ赤ででっけえ人狼でさ、亜人ならつえーかな?って思って、
 それからちょうど近くでおっちゃんの噂を聞いて来てみたってわけ!」

【「マジでちょーラッキーだった!」と言ってまた笑うだろう。 屈託の無い笑みは過ぎ去ろうとした高い秋空に似ていた】
【少年がこの酒場へ来た目的としては、「強い奴に会いに来たこと」で違いないらしい】
【彼を率いる“団長”とやらが道を示した結果、少年の中で『強い亜人と出会うこと』に結び付いたようだ】

【── となれば、その身に纏う“狼の移り香”は、件の人狼たる団長のものであるのだろう】
【臭いの濃さから、彼らが長期間共にしていることも、少年が非常に懐いていることも、想像に難くないはずだ】

「──── ところでさ、おっちゃん…………」

【そうして少年は唐突に小声になる。 内緒話をするかのように口許に片手を添え、上体を前方へ傾けて】


「………………もしかして俺、お客さんに迷惑かけてるかな……!?」

【神妙な顔つきで、そう問い掛けるだろう】


109 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/28(水) 21:07:39 WMHqDivw0
>>107

【「焦げたのだってべつにヘーキなのに」。フライパンに蓋をして、弱火でじゅうじゅう焼けてくのを待つ間】
【結露で曇って中が見えなくなる様をじいっと見ていた。そんなに肉の焼け具合が気になるんだろうか】
【――たぶん違った。だってそんな繊細なこと考えるわけないのだ、何事においても大雑把なこの男が】

………………大丈夫だよ。おれちゃんと、死んでも赦さないって決めてるから。

【何が、大丈夫だって言うんだか、よくわかりはしないけど。……言い変えるならきっと、そういうことだった】
【こいつが世界の滅亡を望まないのは、死んでも赦さない/赦せないヤツがこの世に居るからであって、】
【世界が滅んだついでに一緒に死んじゃいました、なんてバカみたいな理由でそいつが終わるのを、赦したくない】
【だからといって、そいつのこと殺したいとか、そう言いたげにしてるわけでもなく……蓋を開ける、湯気で顔が隠れる】

おれもそーいうのはあんま食ったことないナー、てゆーかコース料理系ニガテなんだよネ。
自分のペースで、好きな順番で喰いたいのに、ぜんぶ決められてンだもん。なんかつまんなくて、嫌い。
そっかあ、……まー、ひとりで食べるよっか誰かと食べるほーが好きってのはわかる、だって今、楽しいし――

――――ん、おけおけ。じゃー作っちゃおっか、なんだっけ、ジョッキに詰めてくんだっけ?

【お兄ちゃんとして当たり前の仕草、おしぼりもっかい持ってきて、汚れた面は内側に折り畳んでから渡して】
【それで手を拭いて彼女が立ち上がるんなら、追従して――使った食器はとりあえず洗い桶にぶち込んでおく】
【後で全部まとめて洗えばいいと思ってるらしかった。お片付けより先に、まだまだ楽しいことしたくて】
【甘いのもほどよく酸っぱいのも、彩りだけほんのちょっと気にして詰め込んでいくなら、バーガーを積むのと同じ要領】
【ただ、ふと我に返るなら。「……ジョッキの底まで届くスプーンってある? カレーのヤツとかならイケる?」】
【本当に今更そういうことに気付いて、笑ってしまう。お酒の気分にはなれなかった。酩酊でこの楽しさをぼやかしたくなくって】

【――――、】

【少女がそう言うのならこいつも当たり前みたいに来ていた。掃除するなら、机とか椅子とか動かさなきゃだし】
【力仕事をするにもってこいの身体してるから、ひょいひょい、パズルみたいにモノの位置を並べ替えていく】
【そうするなら埃が立つのも当たり前だし。扉が開きっぱなしになっていることに特に文句もなく、――――】


110 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/28(水) 22:14:59 E1nVzEpQ0
>>100

【見るに堪えない怯懦を宿してやむことのない体躯を、ひどく愉悦に弧を描いて歪めた双眸に囚えて笑う女にとって、 ─── まさしく少女は人形に等しいのだろう】
【四肢の関節ことごとくを圧し折るのは、きっと爪先のささくれを手慰みに剥き取るのと似ていた。そうして悲鳴に浴するのであれば、股座に秘した嗜虐も湿るというもの】
【閨を共にするのと何が違うというのだろう。戯れに肉塊で隙間なく締め上げ、その儚い命を冒涜的な掌上で弄ぶに、少女の隠すべきものさえも全て解ってしまうのだから】
【 ──── 一頻り少女を穢して壊して足らぬのだとしても、悍ましい触腕の群れは一先ず少女から離れていくのだろう。ずるりずるりとその躯体を隈無く名残惜しく弄びつつ】
【中空より支えるものが無くなれば無惨に地へと堕ちるのだろうか。 ─── こつり、こつり、湿った石畳をハイヒールの底に悠然と踏みしめながら、近付くならば】



「 ─── あは、ッ」「仕様のない子ねえ、 ……… だあれも助けになんて来ないのに。」
 「も少し気を遣らないで貰わないと、困るんだけどなあ ─── ふふ。でも、いいわ。」



【倒れているであろう少女の両腕に二ツ触腕が絡み付いて、有無を言わせず引き揚げる。血を垂らす頤を真白い指先が捕まえて、愉しげな微笑みへ無理矢理に向けさせるなら】
【 ─── 雄に媚びるように悩ましい言の葉を紡ぐ、甘い潤いに満ちた薄桃色の唇が、少女の口先を深く奪おうとするのだろう。喜悦を孕む翡翠色は、魅了に似て少女を見つめ】
【そうして酷い口惚けだった。舌の先から喉の奥まで乱暴に嬲り尽くして、それでいて脳髄から背筋から胎の奥まで疼かせてしまい、征服の証に自らの唾さえ甘く飲ませる】
【呼吸の一息も赦さない残酷なベーゼ。出掛けの前に交わす愛らしいものなど鼻で笑うようで、少女の震える白磁が何にも噛み切れない屈服を、冷たく女は見抜いていたから】

【 ──── そんな非道を許すのであれば、少女の意識が途絶える寸前、ようやく女は唇を離してやるのだろう。互いの残滓を啜る仕草すら憎らしい程アリアに似て】
【その腕中に優しく少女を抱き留める。 稚拙な自作と自演でも、肉感の止めどない肢体と、胸許のニットから溢れてしまいそうな肉感は、ひずんで柔らかに絡み付く】
【耳朶を探る鼻先が白銀と薄藤を掻き分けるなら隠し立てる全てを暴こうとしていた。 ─── そばだてる震えすら食みながら、囁く誘(いざな)いは、きっと】


 「 ─── 痛いのはイヤ?」「苦しいのはイヤ?」「こわい?」「楽になりたい?」「 ……… ねえ、だったら、かえでちゃん。」



【        「わたしのおもちゃになりなさい。」        】
【掠れる声で、然し紛うこともなく確かに、 ─── その女は、そう告げた。手遊びのように少女のを背筋をなぞる、鋭く紅い人差し指は、やがて痛ましく折れた少女の左腕、】
【その付け根に辿り着いて、 ─── ゆるりと、ぐるりと、円く一周の傷痕を付ける。然らば滲む血の色は、これから女の切り取ろうとする領域を示していた】
【肉体も精神も尊厳も情愛も、わたしに総て差し出しなさい。 - 詰まる所は、そういう宣告。頷くならば忘れさせてやるのだと告げていた。然して少女が頷かぬのならば、】


111 : 名無しさん :2018/11/28(水) 22:58:50 M0DIodSE0
>>110

【やがてぐるぐるとつるし上げていた触腕が引き上げていくのなら、少女の身体はあまりに当たり前にずるりと地面に落ちるのだろう。それさえひどく苦痛であるなら】
【ごく痛みに呻く声を上げていた。そうしてまだ首も座ってない赤子をぽんっと地面に放り投げたらこうなるんだろうか、そんな様子で、わずかに身動ぐ仕草】
【脚まで折られて動けるはずがなかった。投げ出すしかできなかった腕だって絶望的な方向を向いて、だから、逃走も、反撃も、決して赦されず】
【――――なら見上げるのはやはり怯えた目だった。こんな目を少女はアリアに見せたことがなかった。引き攣る吐息。それでもあるいは逃げようとしてやはり幽かな仕草を見せ、】

――――あ、うッ、 ――――っぐ、う、ぅ、ううぅ――っ、アリアさん、――っ、アリアさん――。

【無理やりに引き摺り上げられるのなら、やはり痛苦の声を漏らす。――なら、やはり、痛いのは嫌らしかった。苦しいのは嫌いらしかった。流した涙に滑る頬】
【――愛しい人が助けに来てくれると信じていた。そうじゃなかったらこのまま殺してほしいのに違いなかった。だけどやっぱりどこかで怖いなら、またぼろぼろ涙を落として】
【それが痛みと苦しみとを和らげるおまじないであるかのように繰り返していた。そうじゃないとそれこそ気を遣ってしまいそうに、――――だから、】

【行為に気づいたときに、わずかに顔をそむけた。けれどそれで赦してもらえるはずはないんだろうから、なら、彼女に逃げ出せる理屈などなく】
【深くまで舌先に潜り込まれるのなら、嫌だと紡いだ声が、けれど綺麗に発せられることはきっとない。嫌々して揺らす首の仕草も、特別な意味を持たないなら】
【エナメル質はどうしようもなく無力だった。がたがた震えるばかりで、それでも数度は淡く歯を立てようとして、だけど、きっと、"遣り損ねる"恐怖を思い浮かべて、しまえば】

【(ひどく混乱していた。どうしてこんなことをするのか分からなかった。何をされているのか分からなかった。だから間違ってもきもちい、なんて、思いたくなくって、)】

【なにか激情に泣きじゃくりながらその胸元で息を継ぐのだろう、やがて白銀の深くまで探られるなら、秘されていたのはやはり薄藤色。――ずる、と、白銀を引き剥がすなら】
【あるいは瞳の青すら抜き取ってしまってもいいのかもしれなかった。――――、ごく至近に囁かれるというなら、彼女は引き攣った息一つで、以降息を詰まらせる】

――ッ、ひ。嫌。嫌っ、……いや、! ――――いやっ、嫌。やだ。――――っ、やだ、ひ、っ、……や、です、やだ、いやです、――っぁあ、っ!
いや、です、やだ、――っ、ごめんなさい、っ、ごめんなさ、ひ、――う。ごめんなさい! ――やだよおっ、やだ、やめて、っやめてえっ、ッあ、ひ、
――――いやっ、いや、イヤ、嫌。嫌。嫌。――――――――――――――、ゆるして、くださっ、――おねがい、

【痛いのも苦しいのも嫌。怖いのだってもちろん嫌だった。今すぐ痛くなくなりたかった。こわい。こわいのに。同じ匂いがする。踏み躙られるキスの味。体温。柔らかさ】
【だからもう何もかもぐちゃぐちゃになっていた。嫌だと言って泣きじゃくるのが何に対する言葉なのか分からなかった。強いて言うなら、"ぜんぶいや"】
【痛いのも苦しいのも怖いのも腕を切り落とされるのも愛しい人が助けに来てくれないのも嫌。だからもちろんきっと死ぬのだって嫌。――おもちゃになるのだって、きっと、】

【――だけれど、だからって、また痛めつけられるのも嫌。だからひどく我儘だった。しつけのなってない犬みたいに。ならしつける必要があるのかもしれなくって】


112 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/28(水) 23:06:35 E1nVzEpQ0
>>103


【「ほんとだよ。」 ─── 掻い抱く指先には、どうすることもできない執念が籠っていた。例え織地を介していても、薄い胸板に甘える表情が分からないはずもない】
【然らば2人は似合いの運命であった。 ─── 自らを綺麗に詐る事しか知らなかった青年は、自らの醜さを愛そうとしかしなかったが故に、Missgestaltを僭称したのだ】
【ほんとうの化け物に憑き殺されてしまうのも筋の通った物語であるだろう。それでもただ一ツ、決して訓話に記されない行間があるとするならば】
【 ─── およそ相違なく、永劫に彼は幸福であった。己れを風車と信じたドン・キホーテが、旅路の果てに同類を見たならば、きっと狂喜に溺れてしまうから】



「 ……… 離れないよ。」「叶えてみせる。」「どこにだって、シグレの行くところ。」「だから、ボクからも、約束だ。」
「 ──── 置いていかないで。どこにも。」「ボクのこと。」「 ……… 一人ぼっちは、イヤだよ。」



【「そしたら、ボク、なんにだってなれるから。」 ─── ごろん、と横に転がる。円く温かい身体を抱き合って確かめる。真冬のケセランパサランより脆弱性に溢れていた】
【どちらが絡め取られているのか分かったものではないし分かる必要もなければ分かることもないのだろう。ケ・セラ・セラなんて言えたもんじゃない】
【こんなにも純真なひとに自分の汚い命を焚べて赦されるのであれば幾らだって捧ぐつもりだった。 ─── 貴女の為ならば、ボクはアマラントスとなろう。】


「 ─── えへ、いーよ。」「 ……… コーンスープか、チキンブロスか、クラムチャウダー。どれが、いいかな。」
「食べらんなかったら残していいよ。」「ボクが食べたげる。 ……… あーんしてあげても、いいけどさ。ふふ、」


【柔らかい膚地を目一杯に擦り付けられるのは彼も好きに違いなかった。 ─── 男性的な求め方も、女性的な求め方も、どちらも好きだった】
【ことに抱き締めることは最も彼の好むところだった。幾らか関係のギクシャクとしていた此処のところ数日でさえ、寧ろそうであるからこそ、甘えるように抱き付く事は多く】
【それは昔の恋人がそういう愛し方を好んだからと言えば一ツ理由としてそうだったが、何よりきっと彼は寂しがりだった。自分の元から誰かが居なくなってしまうのを恐れて】
【母親や父親の腕(かいな)に甘んじられた試しもなくて、けれど自分の掌に守れないものなんて無いのだから。 ─── 特別な存在なんて生易しい言い方だった。かけがえのない人。自分の半身。それを知っているから】
【ともあれ机上のブランデーは随分と氷が溶けてしまっていた。「 ……… シグレが酔っ払うとこ、見たい。」くすくす笑って、冗談めかして、つつやく言葉】


113 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/28(水) 23:51:26 WMHqDivw0
>>112

【転がって、絡まり合って、気持ちが良くて、すり寄って。「お風呂も入んなきゃね」って】
【いくらかほつれる黒髪に指を通すなら、たぶんきっと、洗ってあげるって意味だった】
【だったらあたしのはあなたが洗って。もう言わなくてもきっと伝わるおねだり、ふふ、と声を零して】

………………じゃ、コーン。牛乳いれたヤツがいい、……んん、いきなりお酒飲ませる気?
ひどい人だなあ、エーノは、…………じゃあちょっとだけ、ね。

スープ飲んで、お風呂入って、そしたらお酒飲んで、……そのあとどうする? ふふ。

【「今までの分取り戻して、いっぱい、寝ちゃう?」 呟くさなかにも微睡みの色を混ぜて、けれど】
【それ以外のこと、なんだってしたいって言うなら――きっと彼女はいいよって言って、そうして】
【目いっぱい、今まで空白にしておいた分を埋め立てるようにして、求めたり求められたりするのだろう】
【期待してる目をしていた。きらきら、赤い瞳の奥底で弾けるラメみたいな輝き、きっと彼にしか許さない】
【そういう距離で覗き込まなければとうてい見えはしないだろう、ごく幽かなきらめきだった。そうして、】

えーの、え、の、エーノ…………にへへへへ。えへ、ふふふう、――――――――――、

【正しく順序を経て見事酔っぱらうことのできた少女は、唐突に彼にのしかかるような体勢になって――れろ】
【振り撒かれた木天蓼を舐め回す猫めいて、彼の全身をくまなく、ざらつく舌で撫ぜようとするのだろう】
【顔も躰も腕も脚も、本当に体中すべて。服とか、中途半端に捲り上げたりずり下げたりしてぺろぺろと粘膜を這わせ】
【――だけれど、どこか一点だけを集中して愛撫することはなく、ただ全身に、均一になるよう唾液を塗そうとするだけ】
【およそ割と最悪だった。まずひとつめの問題として、折角風呂に入った意味がなくなるわけだし】
【もうひとつ、本当に全身――脚の指の先まで舐め終えたら、そこで満足して、勝手にベッドに転がってしまう】
【なにかひどく満足気な顔をして、そのまますぴすぴと寝息すら立てはじめるのだから――俗っぽく言うなら生殺し】
【こんなんだったらキス魔になるとか、そういう分かりやすいヤツのほうがよっぽどマシだった。なんなんだろう。舐め癖って】

【(けれど、けれど一か所だけ。そこだけは舐めずに、軽く歯を立てて齧った部位があった――左手薬指、リングの上から)】

【――――兎角ほんとうであるのは、やりたい放題して満足気に眠る少女の顔が、あまりにも幸せに緩んでいることだけ】



【――――、】



「ところでさ、アリア、前に僕がなぞなぞ出したじゃん。『人間の一番こわいところはどこでしょう』みたいなヤツ。
 アレの答えね、――――――『感情を持っているところ』。だから、アリアは不正解なんでしたー。
 スーパー冒涜ちゃん人形は没収でーす。ちゃらっちゃらっ、ちゃ――――ん…………」

【送ってもらってってる車内。助手席にて、冒涜者はそんなことを宣っていた。誰も彼もに感情がなかったなら】
【今日、彼女は死にかけることなどなかったんだろうし。恋人たちは泣かずに済んだし、……愛し合うこともできなかった】
【「だからやっぱり人間は怖いよね」。呟く女の顔は然して、どこか愉快そうに微笑んでいた。――、ぜんぶ闇に融けて】


//このあたりで〆でどうでしょう、、、永い間本当にありがとうございました!


114 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/29(木) 00:12:40 E1nVzEpQ0
>>111

【ふ、 ─── と。なにか熱量を喪うように、女の表情は失われた。強いて述べるのであれば、ひどく、ひどく、つまらなさそうな顔をしていた】
【潮の引く所作にも似て、女は身体と触腕を離すのだろう。飽きた玩具をぞんざいに扱うのと等しかった。紅い爪先の一ツが、愛撫のような指先に包まれるならば】
【 ─── 弾指の後、女の手には、一振りの手斧が握られていた。人脂に磨き上げられた刃先と、幾らかの赤黒い血糊が乾いた、決して斬れ味には優れぬであろうもの】
【投げ出された少女の片脚をハイヒールの底で踏み付けて、容赦なく銃創を踏み躙る。少女を石畳に縫い止めてしまうのを兼ねていた。 ─── 暗がりを宿した翡翠色の、ごく陰惨に輝くのであれば】



   「 ──── そーぉ。」「聞き分けのない子ね、 ……… かえでちゃんは、 ──── ?」



【 ──── 悠然と振り上げられる斧の刃先が、栗髪の背後にある陽光に照らし上げられて、酷薄に煌めいた。】
【躾けるのならば五体を満足にしてやる必要はなかった。達磨に手脚をもぎ取っても一方的な欲望の捌け口としては十分だった。ならば後生大事に抱える左腕など誤差であって】
【振り下ろされる刃の先は嬲るような風切音を立てていた。それが全く宣告通りに少女の腕へと迫るのであれば、次の一刹那に果たして何が残るのか、判り切った事であって】





      【 ────── 遠く、銃声。】【銃声。】【銃声。】【銃声。】【銃声。銃声。銃声。銃声。銃声。】
【手斧の柄を握る左手を何か鈍い光が貫いた。】【カメラを向けていた覆面の首から上が弾け飛んで消えた。】
【狼狽える覆面が口蓋の下だけ残して噴水のように血を噴き出した。】【残っていた数人の顔面すべてに対人用の強装散弾がブチ込まれてミンチに変わった。】
【 ──── 静やかに現れたその狂風に、敢えて色を選ぶのであれば、白銀であったろう。さらば地に伏した少女にも、届いて然るべき声だった】




  「 ──── お前。」「かえでに、何をしたの。」




【 ─── 右の手に構えた長大な拳銃からは呆れるほどの硝煙が立ち上っていた。然してそれよりも凄惨な声で女は呼び掛けていた】
【この類の声は少女も一度だけ耳にした事があったろうか。 ─── いつか終わりゆく虚構の世界において、今は亡き死の神に投げ掛けた、肚中にて澱みきった絶対的な殺意。】
【大切なものを貶められた事実に対して決して女は容赦しなかった。長い白銀の髪が荒れ狂うようにたなびいて、憂いを弑して決された眦の、黒洞々たるは悽絶を極める。】
【「答えろッ!!!」 ─── 空震のごとき喝破を受けてなお、その右掌に手酷い銃創を負ってなお、止めどなく血を流して幾歩か後ろに蹌踉めいてなお、女は笑っていた。「 ──── やっと会えた。」】


115 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/29(木) 00:37:37 WMHqDivw0
前スレ >>979
【十年前。それはこのイスラフィールの存在にも纏わる"何か"が有った時間なのだろう】
【時間――虚神には時間の概念は無いと語るが、それこそ滑稽なことだと男は斜に構えた気持ちを抱く】
【虚神達にも時間の概念は有る。彼等の劇場が着実に終幕へと向かっているように】
【ただ、時に縛られていないと錯覚させることは出来よう。今までのインシデントでそうして来たように】


それは違う。種の明かされているモノに脅威はない。
"種が明かされている"と思い込むことに問題は付きまとうものだ。

イルの能力とスナークの能力。
そのどちらをも知っていながら、ジャ=ロを含めたあの場の誰もが、あのイルが偽者だと気付かなかったように。
ましてやかつての仲間のものだとは、ただ一人追い求めた想い人だとは思いもしなかったのだから。

"――姿を変えて見せられると知らなかった"
種さえ明かされれば、たったそれだけの事実だ。
スナークの能力が未知であれば、或いは誰かしらその可能性に勘付いたやも知れん。

一人と一体の能力を双方識っているはずだ、と言う慢心があの失策を招いたのだ。

【事、虚神において隠し種はいくつ警戒してもし過ぎることはあるまい】
【認識を助長するのも、或いは対抗するのも想像力の産物なのだから】


いや、何。
"狼少女"と言うのは戯言だとも。
奴は自ら証明してしまった訳だ。スナークの偽装を前に、友情も愛情も執念も何の意味も為さなかったのだと。
致命的のチョンボをやらかしたジャ=ロは勿論として、忸怩たる想いで有ったのは鵺と親しかった者達だろうな。

しかし、ならば――奴自身は何を以てして自らと、自らの感情を"本物"だと証明出来るのか。

"ひょっとしたらこいつも偽者かも知れない"。
その疑念の認識がスナークをブージャムたらしめる。

「或いは、イル=ナイトウィッシュすら、スナークではないのでは?」
「白神鈴音の隣にいるイルもまた、偽者なのでは?」
「イルが白神鈴音へ抱いている恋慕もスナークによって偽装された感情なのでは?」


【イル自身は、或いは、白神鈴音すらもその証明を必要としないのかも知れない】
【だが、認識は虚神の在り方を変える。もしかしたら、真実すらも――】

――無論、証明する方法は簡単だ。
スナークの消滅後に、イルが鈴音へと愛を語れば良い。
だが、それでは"お話にならない"、だろう?


フン――韜晦するものではない。
貴様が全てを知っているとは言わずとも、少なくとも、我らの知らぬ"何か"を知っている。
そのアドバンテージを以て、貴様はこの舞台に上がって来た。
勝機のない戦いなど政治家が仕掛けるものか。


さて、そもそもスナークとは、虚構現実においてどのような役割を担っていたのか。
INF-009――最弱の虚神と呼ばれる、奴は独力で世界を制する力ない。
だが、スナークの能力自体は、グランギニョルと言う舞台の中では、この上なく警戒しなければならないものだ。


116 : 名無しさん :2018/11/29(木) 00:41:17 M0DIodSE0
>>114

【興味を喪うのなら今すぐ忘れてほしかった。自分のことなんか忘れてほしかった。そうして忘れてしまってどっかに行ってほしかった。泣きじゃくる目が怯え見上げ、】
【必死にそうなることを願っていたし祈っていたし懇願していた。もはや神様に祈るなんて遠回しでなく、直截に目の前の脅威に向けて祈っていた、なら】
【そうしてまた同時に愛しい人が今すぐ助けに来てくれることを祈っていた。或いはそれこそ神様に祈っていた。祈れるもの全部に祈っているのかも、しれなくて】

ひゃ、う――――ッ、ぃや。あ……、……――。

【ぐちりハイヒールが銃創を抉り抜いても、少女はそれ以上に恐怖に囚われているらしかった。いくらも前より蒼褪めている顔を、より一層真っ白な色へ変えてしまえば】
【見開かれた眼はただまっすぐに手斧を見上げていた。射貫かれたみたいにただそれだけを。だからこれから先自分がどうされるのか理解してしまったに違いなくて、】
【透き通るような薄藤の毛先が冷や汗と涙に交じり合った何かべたべたした液体で顔に張り付く。こびり付く。きっと数十秒後にはなくなってしまう腕の代わりには拙すぎて】

【――だからぎゅうっと目を閉じてしまう。夢であれ。夢になれ。痛いのも怖いのも全部夢だから。なら目覚めるのはどこだろう。今朝であればよかった】
【そうしたら今度は二人で出かけよう。少し遠くのショッピングモールでも行って、お洋服を見繕ってあげるの。お昼はフードコートで何か食べて】
【それからまた少しお店を見て、疲れてきたらお茶の時間。またフードコートでレギュラーサイズのアイスクリームをワッフルコーンで。それともどこかカフェに行ったっていいかな】

【現実逃避は走馬燈にも似て。一瞬より短い間に全部が巡るのなら、聞こえた銃声すら、肉と骨とが断ち切られる音と勘違いする一瞬、彼女はひどく身体を強張らせるから】
【身体をごく小さくちぢ込めて、ひ、ひ、と、小刻みに詰まって震える吐息を繰り返す。だから気づくのは遅かった。愛しい人の声がする。幻聴だと思ってしまいそうになって、けど、】

――――――――っ、りあ、さ、

【恐る恐る開けた眼が捉えるのは白銀だったから。ごわごわに引き攣った喉から漏れる声はひどく拙い耳障りな色合い。でも、限りない安堵をまぶして】

ありあ、さ、――アリア、さ、ん、――――っ、アリアさぁんっ、! ――っ、アリアさん! 

【――――めいっぱいに呼ぶ声はそれしか知らない赤子みたい、駆け寄りたくってもどこもうまく動かないなら、にじり、微かに身動ぎするしかできなくて、できないから】
【腕も脚も明らかに関節の可動域と違う方向に折れていた。左腕なんて木材に曲尺で線引くみたいに切り取り線が刻まれていた。そもそもほとんどの皮膚を抉られていた】
【左腕にきっと無理やり嵌め込まれた腕輪がいろいろなことを証明していた。細い首筋には鬱血の痕が生々しかった。全身に締め上げられた内出血の色が浮いていた】
【それでもずっと来てくれるって信じていたよって言うみたいに、――もう助けてもらえるって、大丈夫だって、信じているから、(信じてしまっているから、?)】

【(あんまりに当たり前に少女はもう全部の意識をアリアへ向けてしまっていた。だからあなたの玩具にはならないって答えているのに等しかった。から)】


117 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/29(木) 01:32:25 xQ7b2ZgE0
>>116

【臥したまま指一つ動かせない少女のかたわらへ駆け寄るに、血に濡れた背中へそっと片腕を回して抱き寄せるならば、絶望に穢された表情を覗き込む。揺らいで止まぬ青い隻眼と、絶えない慙愧に結ばれた唇】
【今にも落涙して止まぬような、ひどく悲嘆と後悔と自責とを宿していた。─── 嵌められた腕輪に掌を添えれば、忿怒を以って握り潰すのだろう。少女の腕だけは確かに傷付けず、いつかの病室で砕いた軛と同じように】
【目一杯の抱擁に甘えさせてやるより他に、アリアは何も能わなかった。恐ろしいものを何も見なくて良いように。ただ優しく甘い香りと、優しく温かい柔らかさと、優しく微睡む鼓動だけ、感じていられるように】



   「 ─── かえで、っ」「かえで、」「 ……… かえで、 ……… 。」


【 ───── それでも矢張り、嗚咽は止められなかった。乱れたまま外れて肩口に留まったウィッグに、乾いた血に染められてしまったウィステリアに、熱量が落ちて】
【そうして抱き締めたまま、 ───── 傷付いた愛しい人には決して見せてはいけない凄然たる激情を、狂った薄笑いを浮かべてやまない対手へと向けていた。引かれる銃爪】
【防壁として繰り出された触腕に無数の銃弾が殺到すれば、あれほどに少女を苦しめた肉塊は容易く弾け散る。はあ、と悩ましげな嘆息を零したのは、栗色の女であった】



   「嗚呼 ─── 、」「 ……… 口惜しいわ。」「口惜しい。」「これなら最初ッから殺しておいた方が良かったかしら」
   「ふふ、 ─── でも、 ……… 。」「良い顔よ、貴女。」「本当に良い顔。あァもう、今すぐ殺したいのに、 ……… 。」


     「 ………今日の日は、さようなら。そして」「 ─── また、会いましょう。」


【 ───── 待てとアリアが叫ぶ前に、その女が地に落としたのは閃光手榴弾であって、眼を焼く輝きと痛烈な破裂音がふたりの五感を誤魔化すのであれば】
【次に瞼を開く時、既にあの女の影さえも欠片とて有りはしなかった。 ──── 少女が顔を上げるならば、ひどく忸怩たるアリアの表情も、見る事ができるだろうが】
【何れにせよ既に八課の救護班は呼ばれていた。血塗れの右手を握り締めたまま、どうしようもなく少女を深く抱いたまま、回収のヘリが2人を迎えるまで、ずっとアリアは悔いる言葉を零し続けていた/「ごめんなさい」】


118 : 名無しさん :2018/11/29(木) 02:01:03 M0DIodSE0
>>117

【甘い香りと、柔らかさ。温かさ。鼓動の音までも聞かせてくれるのなら、少女はその深く落ち込む狭間にいくつもの涙粒を落とすのだろうか、】
【抱き寄せられて上げる呻きは限りない痛みを表明していたのだけれど、だからって地面のまま転がされているのは絶対に嫌であるらしかった。なら、痛くても抱きしめてほしい】
【やがて異能を封じる作用を握りつぶしてくれるのなら、ひどく苦し気だった少女の様子はいくらも安定するはずだ、真っ先に絶望的な痛みから逃げ出すのなら】

【――だから、もう少女は全部のぜんぶをアリアに委ねていた。手折られた指先をぶどうを食べるみたいに引きちぎってしまっても良かった。(だって愛しいから、)】
【それでもずると引きずったままの四肢は痛々しいのだろうか。剥き出しにされた肉からじくじくと血となにか汁が滲んでいた。ただ涙と冷や汗とはその胸元に拭ってしまって】
【だから二人きりになる瞬間までも護ってもらう、茫とした目をしていた。だから感覚はほとんどすでに消してしまっているらしかった。それでも、その瞬間にはわずか身体を強張らせ】

――――――――――――――――――――――――――――アリアさん、キスして。

【沈黙はたっぷり長く横たわる。その間にアリアの言葉を何度か聞いていた。何度も聞いていた。だから、では、きっとない】
【長い睫毛でその胸元をそろと撫ぜたならば視線が持ち上がる。ちっちゃな声が、けれど明確に相手へ求めた。けれど見下ろすのならば、少女の顔は、到底甘えに程遠く】
【むしろ強迫観念の患者が真冬の凍てつく水で何時間も手を洗い続けてしまっているときのような目をしていた。ちいさくかすかに震える視線の意味を探すなら、】
【きっとなにより深く口付けるしかなかった。そしたらきっと別の女の匂い/味がした。痛みはもとより、自分の中からする他の女の香りも苦痛なのだと訴えたに違いない、から】

……、――――――痛い、よお……。

【終えるなら/或いは叶えられぬなら。どちらにせよ少女は泣きじゃくるときの声で小さく漏らして、また、その胸元に顔を埋める】
【限界まで能力で以って消してしまわないのは、きっとまだ怖いからだった。この暖かさと柔らかさと鼓動すら見失ってしまったなら、この世界に戻ってこられない気がするの】
【だからこの世界に残ったきっと最後の道標みたいに相手へ縋っていた。――――「アリアさんは、悪く、ないです、」――ちっちゃく紡ぐ声は、そんな顔、してほしくないから、】

【――それでもその気遣いを保てないみたいに、少女は何度も呻いてしまうのだろう。痛い。怖い。怖い。痛い。痛くて。怖くて。――そんな言葉、何度も、何度も、繰り返して】


119 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/29(木) 03:56:31 h7nAXcQg0
>>12
【カニバディールは這い上りながら、彼女を見ていた】
【この状況で焦ってはいる。当然だ。だが、それだけではない何かを感じる】

【根拠のない勘だった。しかし、それで十分だ。箱舟にはどのみち、手当たり次第に載せている】
【そんな皮算用をしつつ、屋上にまで到達すると。もう一人、奇妙な出会いがそこにあった】

(……見かけない顔だが、何者だ? この状況でやってくる辺り、この男も只者ではないだろうが……)
(あわよくば、もう一人確保できるかもしれないな……)

――――私にファンがついているとしたら、是非とも会ってみたいものだな
そいつは世界的に見ても珍しいレベルの悪趣味だろうから

いやいや、そう怯えたものじゃあない。見ればだいたいわかる。そこいらの一般人、の皮を被っているが中身は違うだろう?
何者かはわからないが……そういった人間こそ、早めに確保しておきたいんだ。私の箱舟にな

【冗談めかして話す女性に、お前も只者ではないだろう、と無根拠な鎌をかけつつ、視線はもう一人へ】


>>26
【金色の目。自分の歪さに比べれば、遥かに人間に近いだろうが、やはりその目は異形であった】
【金色の三角形がいくつも。図形がひしめくような奇怪な瞳。いくつも円を重ねていた、あの半魔リリアの目を思い出しかけて、打ち消す】

……水の国が進んでいるのと、下で私が起こした事態とは、あまり関係ないと思うが
まあ、多くの場合この国は混沌の渦中だ。あながち間違っていないかもな。昔から、水の国は悪党に大人気だ


【派手に表れておきながら、青年に警戒の色を含んだ視線で応じる。しかし、次の瞬間】
【投げかけられた質問は、この奇妙な三角の出会いの主導権を、まず彼が握るに足るだろうものだった】

――――そちらの女と一緒に、お前も浚っていくつもりだったのだが
そう言われると、気になってしまうな。詳しく聞かせてくれないか

【ひとまず、異形の大男の注意は一時的に女性から逸れる。彼女にとっては、援軍到着までの時間稼ぎとなるだろうか】


120 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/29(木) 04:29:20 h7nAXcQg0
>>25
フリークス・サーカス。昔は、そんな名前の組織が暴れていたこともあったそうだな。やはりサーカス団は良くない。被ってしまう

外務省三等書記官……見たところ、戦闘の腕も立つようだが。それで書記官などに割り振られているとは
氷の国では優秀な人材が余るほどいるのかね? それとも、その肩書きが表向きなのか?
そちらのお国柄は良くは知らないが、前者だとしたら是非とも欲しいな。水の国での拉致を終えたら、次は貴国に向かうとしようか

ふ、ふ。世紀の大悪党とは、過分な評価だ。私は臆病な小物だよ。だからこうして、世界滅亡に向けて保険をかけようとしている

【この状況でも挑戦的。やはり彼女も、一端の戦士と言えるだろう】
【アイスブルーの瞳が、漆黒の三つ目と衝突する。形のいい彼女の眉が顰められると、カニバディールは第三の眼球を細める】


その手の能力とは縁がない。ただ、事実として知っているだけだ
だが、ラッキーアイテムはそうだな……そこでへたり込んでいる好色どもにすえてやる灸として、スタンガンなどはどうだ?

【彼女に絡んでいた議員たちを顎でしゃくり、一度彼女から視線を外して議員たちを眺める】
【普段からいいものを食っているのだろう。悪くない肉付きだ。ミートボールにすればきっと美味だ。そんなことを考えながら】

ほう……その辺りの事情は掴んでいたか。流石、やはり貴国は抜け目ない
少々、複雑な立場ではあるが、その質問は肯定出来るだろう。私は〝円卓〟の関係者、ということになる
正確には、その頂点に立つ存在と、多少の繋がりがある

【円卓の王、ジルベールの指は長い。相当な広範囲にわたって、その影響を広げている】
【眼前の女性にまで、それが及んでいるとはカニバディールは知らなかった。だが、それを知ったとしても】
【異形は、この場での行動は変えないだろう。支配する世界が滅ぶことは、ジルベールとて望むまい。これは必要な保険なのだ、と】


そういうことだ。まあ、神隠しなどこの世界ではありふれている。全てが我々の仕業ではない
ふ、ふふ!! そう見られても仕方ないが、ひどいじゃあないか。今回に限っては、食うことが目的じゃあない
むしろ、保護だ。確保し、収容し、保護する。それをもって、来るべき〝終わり〟への保証とする

――――と言っても、信じてはもらえない。当然だな
我々は戦いについては物量戦が基本の素人ではあるが……それにしても、気配をまるで感じなかった
随分な精鋭を揃えているじゃあないか。全く恐ろしい

【己の身体を照らし出す、レーザーの眩しさに目を細める】
【出どころは天窓。正確な人数は不明。悟らせない腕前。彼らも、欲しい】
【強欲な肉屋は、そんな邪な思いを抱えて平然と一歩踏み出し、そして雨を浴びた】

【容赦ない銃声が響くだろう。巨体を貫かれて、あっけなく肉屋が倒れる】
【室内の空気は弛緩するだろうか。幾人かの配下が、倒れ伏した頭目に駆け寄る。もはや誰の目にも手遅れであるのに】

【だが。駆け寄った者たちがカニバディールの身体に触れると、溶け込むように消えて。撃ち抜かれた身体の穴を塞ぐ新たな肉となった】


――――降りてきてくれないか。お前たちも浚って帰りたい

【重苦しい声と共に、異形は立ち上がった。群体としての不死。この場の配下たちは残機と同じ】
【一度二度、殺した程度では止まらない。そのしぶとさがカニバディールの売りだ】
【無論、限度はある。もう一度殺されれば、簡単には復活出来ない。だが、今この時の隙を作るには十分のはず】

【カニバディールの身体から、急速に伸びる肉の触手。それらが天窓へと向かう】
【その向こうにいるだろう狙撃手たちを絡め取り、このホールへと死なない程度に引きずり降ろさんがため】
【とはいえ、彼らもプロ。伸び来る触手に対応できるだけの時間と能力は、あるはずだ】


121 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/11/29(木) 13:15:32 nHxGsN220
>>107>>109


【――穏やかな昼下がりであった】
【どこかから小鳥の囀りがそよ風に乗って届く】


【開けられたドアから店内へ差し込む光】
【床板の上へ一本の淡い道を描いている】
【儚げな細道の上を舞う埃が、きらきらと輝いている】



【――ふと、】

【その光の道が、拭い去られるように消える】
【入り口に現れた何かの人影が、光の流入を堰き止めた】



【それはしかし、一人の子ども、であった】
【鈴音ならば見覚えがあるかもしれない】
【『たんぽぽ』にはよく足を運んでいた幼い男の子】

【その少年に続いて、幾人かの子どもたちも入り口に現れた】
【彼らもまた『たんぽぽ』の子。彼らは中の様子を不思議そうに覗き込んだが、】
【そのまますぐに中へ入ってきた。それが昨日と同じ日常であるかのように】


【――ごはん! ごはん! おなかすいたあ!】


【彼らは何の屈託も無い声を口々にして、】
【掃除したばかりの店内をばたばたと駆け回った】

【そして彼らの最後尾に、また一人、続いた】


【栗色の長い髪をした、少女】
【齢は十の前後だろうか。それでも子どもたちの中では最も年長に見える】
【――名をカルラといった。これも鈴音ならば見覚えがあるかもしれない】

【彼女自身、『たんぽぽ』に身を寄せながらも、】
【自分より幼い子どもたちの面倒をよく見ていた】

【彼女だけは他の子どもたちと違って】
【ヤサカを見ると、微かに怪訝な顔して――】
【そして鈴音を見ると、一瞬だけ、とても驚いたように目を瞠った】


「…………………………」


【――が、カルラは何故だかすぐにその視線を逸らした】
【まるで、見てはならないものを見てしまったかのように】

【それからすぐ、はしゃぐ子どもたちに顔を向けて】


「――外から帰ったら、おてて洗うんだよ」


【彼女の声を聞いて、子どもたちはまた新しいゲームが始まったように】
【嬌声と共にばたばたと床を鳴らしながら、カウンターの奥、流しへと駆けていく】

【もっとも、子どもたちの背丈では蛇口まで届かないので】
【カルラはいつもやっていたように、椅子の一つを持ち上げて】
【そのまま何も言わず、視線も顔もじっと床を向いたまま――鈴音の横をすれ違っていく】



【 “ ――ばいきん、いないいない ” 】
【 “ ばいきん、いないいない―― ” 】



【手を洗うのさえ楽しそうな、無邪気な声が転がる】






【穏やかな昼下がりであった】
【目に見えない、何かの欠落を除いて】


122 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/29(木) 22:09:29 E1nVzEpQ0
>>113

【言葉にする事もしない事も、皆な全て2人で分かち合っていた。分かり合っていた。 ───── ならば過ごす時間も2人のもの】
【幾分か冷えてしまった身体を、バジルを散らした真っ黄色のコーンスープで温めて、身体の芯から温めてくれる熱さのお湯に浸って、口付けるブランデーに心を融かして】
【 ─── そうすれば後は、もっと分かち合いたくなるのも当然だった。愛らしくなる術に彼は敏かったから、なにか魅了のように煌めく愛しい紅の残光に、心を奪われ】
【青い虹彩と麗しい眦を緩ませて、お互いを瞳の中に閉じ込めてしまうのだろう。 ───── いずれ荒い呼吸も落ち着くのならば、然して、やはり】


    「 ……… んにゃう、」「なーーーんだよッッッ、どしたんだよォ、」
        「なにがしたいんだよソレ、 ……… あーーもーーッッ、 ……… 。」


【なんとも形容しがたい絡み酒の発露であった。 ──── うだうだと呻きながら、押し倒されたまま、彼は心底まったく気怠く擽ったそうに喘いで】
【それでも口先で嫌がる割には具体的に拒もうとはしないのだから詰まる所は受け入れていた。彼自身そこまで酒精に強くはなく、心地よく酔っていたのもあるだろうが】
【 ───── やられるだけやられて寝転がられてしまうのなら流石に幾らか参り果てたような顔をしているのだろう。それでも仕返しを許さない愛らしい寝顔が卑怯だった。】
【結局は彼も生々しい疼きを明くる日に追いやったまま、夜明けを待つ部屋の中で眠りゆくのだろう。 ─── いとしい人と薬指に分かつ銀色に、御返しの口付けを落とした後】


【◇────◇】



「 ……… あら。」「貴女、存外に小洒落た台詞が言えるのね。」「 ─── 確かに全く、恐ろしいかしら。」
「私も、アレも。」「情念には、すこぶる振り回されてばかり。」「難儀なものよね、全く、人間というのは ─── 。」


【 ──── 白み始めた東の地平へ向かうハイウエイ。その車中、人形の姿を取ったままのアリアは、独白のように答えるのだろう】
【どうしようもないものに囚われてしまったのは誰も彼も一緒だった。"You gonna carry that weight, carry that weight a long time."きっと誰かも唄っていた、から。】



/遅れちゃいましたが……改めておつかれさまでした&ありがとうございました!


123 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/11/29(木) 22:22:02 ZCHlt7mo0
>>108

……お、おいおい……そう、一遍に聞かれてもだな……

【勢い任せの少年の言葉に、流石に獣人も困惑したようだった。これではどう対応してよいか分からない】
【――――とりあえず、少年に裏や悪意の類はなさそうだという判断は出来たのだが】

……そうだな……ワーキャットというのは、見ての通り、人間と猫の中間体のような種族だ
俺の知り合いには、オーガがいてな……まぁ、奴はあちこち商売して回っているから、そんなにここに来る訳でもないが……
奴は巨人族だよ。まぁ、仲間内では小さい方だそうだが……それでも、俺たちよりはずっと図体の大きい男だ……

【少年の矢継ぎ早な質問が途切れ、ようやく獣人はポツポツと言葉を返していく】
【これでは、ただのお喋りにしかならないが――――まぁ、子供の好奇心を満たしてやる事も悪くないだろうと、この時の獣人は考えていた】
【子供は、未来を継ぐ宝。それが、彼の信条でもあったのだから】

ば、『番長』…………――――まぁ、俺は普段『旦那』なんて呼ばれている身だがな……

【ニュアンスとしては、まぁ遠からずと言ったところだが。思わず首をかしげてしまう】
【そういえば、前には『先生』などと呼ばれた事もあったんだった――――と、どうでも良い事を思い出しながら】

……なるほど、ヒーローか…………知り合いに、ヒーローごっこをしている奴なんてのもいるがな……
確かに、手本や目標を見つける事は、いい刺激にもなるだろう……

【無邪気で力強い笑みを湛える少年に、獣人はふと知り合いの男を思い出していた】
【――――この少年は、彼のようにはならない方が良いだろうと、親密故の失礼な連想をしつつ、少年の行動の理由をようやく理解する】

っ…………赤い、ワーウルフ?
初耳だな……そんな男、目立ちそうなものだが……俺も、初めて聞くぞ……
……しかも、その団長とやら……君がそういうからには、やはり強いのだろう……?

【しかし。続く少年の言葉には、彼の方でも引っかかるものを感じた。今まで全く知らなかった、未知の強者の存在】
【この近辺で、そうした人物がいるならば、どこかで耳にしていてもおかしくはない。この獣人の事なら、なおさらである】
【思わず、そうした人物の存在に、彼も強い興味を引かれた様だった】

「――――はい、ホットミルク、お待たせしました」
あぁ、悪いなマスター…………――――迷惑を、掛けていると思うかな?

【ふと、小声で伺いを立ててくる少年。そこにタイミングよく、バーテンドレスの格好をした女が、カウンターの中からホットミルクを差し出す】
【呆れた様な苦笑を浮かべながら、獣人は少年を宥めにかかっていた】

……ただ、初対面で俺とあけすけに話をしている君に、面食らっているだけだよ
大人たちは、そう簡単に俺と話は出来ないと、それを知っている――――――――ッ!?

【周りの、様子のおかしい理由を説明しようとして――――その刹那、外から微かに「人さらいだ!」という怒号が店内に届く】
【その瞬間、獣人は表情を一変させ、店の入り口へと飛び出していた――――突然のハプニング。だが、彼の『力量』を知るには丁度良いかもしれない】


124 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/11/29(木) 22:22:20 ZCHlt7mo0
>>26

(っ、この瞳――――なんてこと……本当に、面倒そうな連中に目を付けられちゃった訳ね……ッ!)

【青年の瞳に射すくめられ、女性は思わず戦慄する。只者ではないという予感は、その認識と共に確信に変わった】
【「類は友を呼ぶ」と言うが、どうやら尋常ではない人間ばかりが集まってしまったようだ】
【この中で、いつまでとぼけ倒していられるだろうか。冷や汗が噴き出るのを、彼女は自覚していた】

――――なんですなんです、随分と物騒な一目惚れじゃあないですか、それでここまで上がってきますかね……?
でも、初対面の女が、よそ様としてた会話は、そりゃ秘密ってもんですよ。そんな事聞かれても、そうそう答えられもしないじゃないですか
よっぽどの良い男なら、そりゃ別ですけどね……ま、ちょっとだけネタバレしちゃうと、別にお金儲けがどうのって話じゃ……ありませんね

【半ばやけくそ気味に、女性はいつもの調子の軽口で、青年に交ぜっ返す。自分の内心の焦りを、自らの言葉の中に押し隠して、自らを騙すように】
【――――窮地を脱する方法は、無い訳ではない。ただ、この青年がただの変わり者か、それとも危険人物の類かで、話は大きく変わってくるのだ】
【今は、仕掛けるタイミングではない。口八丁で、何とか凌げるだけ凌いで、チャンスを待つか、相手を探るかしなければならないのだ――――】

>>119

ぅ……そ、そうでもないんじゃあないですか?
なんか、アレです……随分な真似をしてたようですけど、世の中には『プリズン・グルーピー』なんて連中だっているじゃあないですか
ヤバい奴ほどたまらない、なんて悪趣味……もとい、変わった感性持ってる人間は、チラホラいる事はいるでしょうに……

【同じく、大男を相手取っても、女性は得意の軽口でやり過ごす事を最初に選んだ】
【とは言え――――彼に関しては、危険人物でもはや間違いない。いつ自分にも、その牙が向けられるか、分かったものではない】
【正に命がけのハッタリとなりそうだ。無いも同然の余裕で、必死に表層を取り繕う】

ちょいちょい、それは聞き捨てならないですねぇ……この世に「皮を被ってない」人間なんて、本当にいるものですか?
一皮むいたその下に、なんて……どんな人間にだってある事じゃあないですか、そうじゃないです?
あー……まぁ、アレですよ。あなたの場合は、なんの皮も被ってはなさそうですけどね……少なくとも、適当な人を指さして、皮を被ってなかったら、宝くじものですって
(――――見かけに反して……もしかして、聞かれた? いや、だったらこんなカマかけをする必要も無いでしょうし……こっちは鼻が利くタイプみたいね……)

【彼の指摘は、正に正鵠を得ていた。この女性、ただの無辜では、市井の一般人ではない】
【それを言い当てられた事は、流石に女性にとっても想定外だったようで、やや「はぐらかす事に意地になり過ぎた」きらいが出てくる】
【怯えと当惑、そうした演技を続けていられなくなっている。それに気づかないほどに、女性は口八丁を走らせすぎていた】

>>26>>119

(「武器」「浚う」? ……マジに、こいつらそれぞれ腹に一物あるようで……っあー、ツイてない。やですよこんな三者会合……!)

【牽制し合いの中から、状況が転がり始める。どうやら、自分と同じくらいに「何かを抱えている」、裏黒い面々が集結してしまったらしい】
【何者かに察知されないようにと、この場所を選んだことが、完全に裏目に出ている。軽く後悔しながら、女性は今の状況をどう凌ぐか、それを考えなければならなかった】

……お二人とも、随分と物騒な事で……『武器』って何です、『箱舟』ってなんなんです、全く……

【とりあえず、出来る事と言えば、情報を引き出す事で、状況打開の糸口を探る事だ。女性もまた、今は場の流れに合わせる事を選んだ】


125 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/29(木) 22:58:50 E1nVzEpQ0
>>118

【なよやかな胸中に懐(いだ)かれて、包み込む柔膚と鼓動と熱量に身を委ねるならば、恐ろしいものなど何もありはしなかった。 ─── そうであるように愛してきたから】
【焦燥的に寂しがるような仕種に吐息の湿り気を擦り付けられて、見上げる瞳の痛切さへ幽かに呼吸を呑む。涙する青い隻眼が、瞬きを一ツ数えるより短く、震えて】
【 ─── 気付けば深く、アリアは少女に口付ける。熱い雫を湛えた瞼を瞑って、熟れた果実を貪るより耽美に唇を食み、ぬらり絡め合う舌と舌は唾液と粘膜に溺れ】
【やわらかな己れの咥内に導いて、苦しげな呼吸の全てを呑み込んで、残っていた穢らわしいものは劇毒を癒すように啜り上げて、どこまでも少女を受け容れて甘えさせるキス】
【やがて唇を離して尚も少女が苦しみに呻くのならば、 ─── ふたたびアリアは接吻を重ねるのだろう。そんな苦しい声をもう一言だって零してほしくないから】
【あるいは誰よりも少女を愛してやまない人間が、ここに確かに居て離れぬことを教え込むように。それでも止められない歔欷の中、与える吐息に悔いる言葉も、零すから】


      「 ───── ごめんなさい、」「ごめんなさい」「 ……… かえで」「かえで、」「かえで、 ───……… 。」


【そうして何れが到着すれば、そこからは恙無いものなのだろう。 ─── これ以上の痛苦を味合わぬよう、深い麻酔を施された上で、アリア共々に八課のビルへと搬送され】
【四肢の関節と肋骨いくつかの骨折、左腕皮膚ほとんどの創傷、全身の悉くに刻まれた圧迫による内出血。魔術的治療を併用したとして、全癒に掛かる時間は如何ばかりか】
【 ─── 殆んど半日以上、手術は続くのだろう。目覚めるのはもっと先になるに疑いなかった。それでもアリアは、意識のない少女が治療室に運び込まれるまで、手を繋いで】
【そうしてずっと扉前のベンチに座り込んで、全てが終わるのを待っているのだろう。 ─── 乾いた血に塗れた菓子袋を、ひどく憂うような表情で抱えたまま】

【それでも致命傷には至らなかったのだから、まだ幸運であったのだろう。 ─── 次に少女が眼を覚ますのは、どこかの清潔な病室だろうか】
【夜だった。高い窓の直ぐ外には、消えないネオンとビル風の煌めきが見てとれた。遠く行き交うアクセルとクラクションさえも、空虚で】
【 ─── だが、その右手を握り続けている温もりも、あるのだろう。ベッドの直ぐ傍の椅子に座って、うたた寝る白いシーツに上体を預け、少女の眼前に惜しげもなく散って輝く白銀の長髪。穏やかな寝息が、呻いて】


126 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/29(木) 23:08:04 BRNVt/Aw0

【路地裏。光の入らぬ其処に火花が二つ三つ散って】
【駆ける足音が一つ。荒く息も切らせて】

【赤い襟巻。ひらり、と闇に舞った】


──っだァァッ!!
しつけェ!しつけェしつけェしつけェしつけェッ!

もういい加減諦めやがれテメェらッッ!!!


【ざり、と地面を蹴りあげる草履の音。何か硬い物に銃弾が当たる音が何発か続いて】


……クソッ……何処まで追えば気ィ済むんだ彼奴ら……!
【荒い息と共に言葉を吐き出すのは一人の男、だった】

【天鵞絨色の首元で一纏めに結われた髪に藍色の着流し。首には裾に『目の四方に縦長の菱形をあしらった印』が描かれた赤い襟巻】
【長い間走り続けて苦しいのか歪んだ顔は案外幼くて、ならば二十歳にも満たない少年なのだろうと思わせて】

【その背を預けるのは路地裏には似つかわしくない何本もの石柱の一つで】
【その陰から後方をうかがう紫色の瞳。とらえたのは何人もの猟銃を携えた"黒い人物"】

【一様に同じ姿をしていた。黒い笠に黒の着物。笠から垂れ下がり顔を覆うのは黒く染められた紙、だった。その紙には朱墨で『目の四方に縦長の菱形をあしらった印』が描かれており】

【ならばそれと同じ印を身につけた少年は本来は彼らの仲間、なのだろうが──】

【少年が更に奥へと駆ける。その端から石柱は消えていって】

【恐らく、少年の能力なのだろう】

【再び少年の足元が爆ぜる。少年はちらりと後ろを振り返りながら前方に足を踏み出そうとし】

【────ぱん。】

【音が、爆ぜた】

【少年の片足首。銃弾が撃ち込まれて】

【バランスを崩して倒れていく少年。その身体に再び何発かの銃弾が撃ち込まれようとして】

【機転をきかせて回避、しようとする】
【それでも倒れ臥した少年の脇腹と一方の肩には撃たれた痕があって】

クソッ……クソックソックソッッ!

ンな所で……死んで……ッ

まだ……あの子に……会って……っ!

【吐き出された血と言葉】

【臥しながらも黒ずくめ達を睨む少年】
【その身体に再び数本の銃口は向けられて】




/週末までのんびりと募集しておりますー


127 : 名無しさん :2018/11/29(木) 23:10:46 QzA.E5U60
>>109>>121

【午前中はずっと掃除をしていた。――と行っても、少し前にヒトガタした箱の異形に掃除をしてもらっていたから、後は、彼女が納得するかどうかだったのかもしれない】
【そんなに汚れているわけではない店内を、机をあっちに、これはあっちに、そっちに、あっちのあれをこっちに、と、動かし(てもらい)ながら、二人、掃除をして】
【お掃除をするって分かっていたから、今日の彼女の恰好はごくシンプルなパーカーだった。そのくせスカートが反動みたいにふわっふわしていた。それで床だって拭くものだから】
【お洋服が汚れることに特別頓着しないらしかった。けど――女子力という点では大減点だったことだろう。大事な試験中に道具で手を怪我するみたいな、致命的な失敗】
【――そうだとしても、ぎゅうっと雑巾の水を絞ったなら、店内のお掃除はお終いの頃合いだった。よいしょってバケツを持ち上げたなら、そのまま、どこぞに捨てに行き】

ヤサカさん、おひるごはんたべる?

【「わたし作るよ――」ひょんってカウンターに身を乗り出す形で店内に残っている彼に声を掛けた、手伝ってくれたお礼のつもりだろうか、そう付け加えるのなら】
【にこと笑ってみせた表情が、――けれど何かに気づいて移ろう。やがて店の入り口、開け放たれたままのドアへ向かうなら、なにか見つけるのなら、「あ、――、」小さな声】
【色違いのまなこを見開いて、少女は何か見出していた。だから彼も振り返るのなら、全く同じ光景を見るのだろうか。店の中を覗き込む子供。或いは彼も、見たことある子なのか】
【――少なくとも少女には覚えがあるようだった。はく、と、わずかに吐息を詰まらせた。言いたいことはいろいろあるのかもしれなかった。(大丈夫なの、とか、いろいろ、でも、)】

【――――(なにもかも放って逃げたわたしにそんな言葉をかける権利はない気がして惑う一瞬に、物事は止まることなく、進んでゆくなら)】

――――――――――、カルラ、ちゃん、……。

【一瞬かち合った眼差しに、少女もまた何かの感情を眼に宿す。けれどカルラが目を逸らすのなら、彼女もまた、気まずげに視線を落とすのだろうか】
【鈴の音が小さくその名前を呼んだ。果たしてどうしようもない感情に濁っていた。――だから少女は黙ってしまうのだろう、ヤサカにも、子供たちにも、声を掛けられなくなって】
【なにかの欠落には、――しかしまだ気づかないようだった。それよりも自らの中のなにかに視界を濁らせたまま、彼女はカウンターの内側に佇んでいる、から】
【――――それでもたっぷりの時間をかけて、流しで手を洗う子供たちに振り返るのだろうか。その前に誰か何かしようとするなら、そちらに気を向けることも、きっとあるけど】


128 : 名無しさん :2018/11/29(木) 23:39:39 QzA.E5U60
>>125

【だから彼女だってよく分かっていた。それでも強火にかけすぎたカレーの鍋みたいに胸中焦げ付く不安をこそげるのには、いくらかの時間と体温を要して】
【辛うじて/幸いにも怪我らしい怪我の目立たぬ顔だけが救いなのかもしれなかった。すりと胸元に頬寄せるなら、怖い女(ひと)の匂いなど忘れてしまおうと努めるように】
【強請った通りのキスを貰えたなら、――――ふると小さく肺胞までもが震えたような吐息を漏らす、細い眉をめいっぱいハの字に歪めたなら、】
【――――――安全だって信じてる場所でないと出せない泣き声にて少女は泣くんだろう。怖かったと痛かったといろんな感情を訴えたい気持ちを、涙で包んで】
【その柔らかな胸元の布地を濡らせば濡らすだけ何かが伝わるって信じていたから/信じているに違いないから】

――――――――――――――――アリアさん。

【――――――――――そうして、目を覚ますなら。ぼおっとした目が天井を何度かゆらり撫ぜる、移ろった先、ネオンの色が眩しく思えて、ぱちぱち瞬きして、目を逸らす】
【だから右手の温もりと、――傍らで眠っている愛しい人を見つけ出すから。ふわと漏れ出る吐息の柔らかいこと/温かいこと。それでも掠れた喉がくるしくて】
【小さく喉を鳴らしてから、話しかけるのだろう。そうして目覚めるのなら、少女はふわふわの子猫が寝ているのを見るみたいに、ごく柔らかに目を細めているから】

【(麻酔明けの一瞬にやたらめったら天井裏でねこちゃんが分裂している話を繰り返したことは覚えてなさそうだった。「ねこちゃんが殖えちゃったから植えて育てて……」とか、)】
【(いったいどんな夢を見たらそうなるのか分からなかったけど。ありがちな譫妄だった。伝えたとしてもだから麻酔は嫌いだって拗ねた顔でもしそうだった、なんて、)】
【(とにかくごく短い譫妄まみれの覚醒のあとに、少女はいくらか眠っていた。そうして覚えていないのなら一度目の覚醒と等しかった、から、)】

【散らばった髪先がなにか物悲しいか掬い上げてあげたかったのに。やはりろくに動かぬ身体を横たえたまま、それでもやっぱり動かせる顔を、せめて、そちらへ向けて】
【起きてくれるのかしら。それでもまだ眠っていたいと言うのなら、窓の外、誰かの残業の明かりを見ているのも悪くない気がした。全部夢だった気すら、する】


129 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/29(木) 23:40:19 WMHqDivw0
>>121>>127

【んー。ご飯を食べるかどうか聞かれて、返事はそんなもの。はいでもなければいいえでもなく】
【だけどこいつが断る意味を込めて音を出すはずもなかった。だって教えてもらったから】
【人とごはんを食べるのは、楽しいこと。今日だってそうなるはずだから、笑みを交えて振り向いて】

【――――――駆け抜けてゆく子供たちが起こす風に長めの前髪を散らされるなら、】

………………え? ……、……え。なんで? え、…………。
みんな、どしたん、……みんな無事? ………………、………………、

【卵焼色の瞳がひどくぎこちなく、店の中に入っていく子供たちを見ていた。怯えのような色を灯して】
【鈴音がいなくなってから、ずっと――赤い靴の子と、白い猫の子と一緒になんとかたんぽぽをやっていた】
【けれどこいつは何故か、ずっと裏方作業ばっかりやっていて。先述のふたりの少女が来なくなったときくらい】
【表に出て、子供たちと触れ合ったのはその程度。だから、カルラの名前も知らなかったわけだけど】

ちょ、待っ…………みんなダイジョブなの!? ねえちょっと、……ねえなんで、
みんな、……あんなに鈴音ちゃん帰ってくるの待ってたじゃん、ねえっ、……クソ、

【それでも確かに知っていることはあった。みんな口を揃えて、「鈴音おねえちゃんはいつ帰ってくるの?」】
【こいつも、赤い子も白い子も――いつも言われていたことだった。そのたび「そのうち、絶対ね」って返して】
【なんとか笑って誤魔化していたんだった。それくらい、子供たちは、みんな待っていたはずなのに】
【彼女の――鈴音の帰還を。だと言うのにみんな、何事もなく彼女の脇をすり抜けていくのが、どうしようもなく】
【異質な光景に見えて仕方なかった。少なくとも彼はそう思っていた、だってこんな、――みんなそんな子じゃなかったはずで】

【であるなら。すぐに頭をよぎるのは、「この子たちは何をされたんだ」という思考。……思ったところで】
【こんな小さな子供たちに詰め寄ることなんかできなかった。彼もまた、立ち尽くす。ぎりと奥歯を噛み締めるのみ】
【そして――他に誰か来るだろうか。であるなら、――、――――。開け放たれたままの扉へ、視線が釘付けになる】


130 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/30(金) 00:35:01 E1nVzEpQ0
>>128

【 ─── 鎮痛薬に寝ぼけた少女の言葉を聞くよりも前に、きっとアリアは意識を手放していた。聴覚素子は惚けたイドの呟きを捉えていたとしても、今はそれに手を付けず】
【微睡む呼吸は少なからず苦しげであった。 ─── 夢を覗く事が出来たのであれば、旧い追憶に苛まれているのだと分かっただろうが、詮無き事。それでも】
【その遍歴を、少女に対して自らアリアは語った事がなかった。尋ねられたのならば答えぬ事は無かったのだとしても、尋ねられないならば語る事も無い。そんな記憶】
【だが一ツ確かであるのは、少女を嬲り弄んだあの女は、間違いなくアリアの過去から現れた刺客であろう。 ─── 真っ当な道を歩んできた筈もなかった】

【それでも何れ、 ─── 甘やかな目覚めの呼吸を聞き、薫り、頬に受けるならば。むずかるように、アリアは悩ましい声を漏らし】
【軈てそれは意識へと繋がり、びくりと肩を震わせた後、徐に上体を擡げるのだろう。常ならば前髪に隠した顔貌の傷痕も、今ばかりは露わになって】
【 ─── 起き上がりながら、その顔立ちをアリアは向けた。見開かれた蒼い隻眼と、ケロイドの中に埋まった機械的な黒眼が、それぞれに少女を見つめるならば】


    「 ────………… 、かえで」


【癒える事のない火傷と銃創を残して尚も儚い雪膚を纏う、玲瓏たりて物想うかんばせを、泣き出しそうな衝動に咽ばせて】
【 ─── ただ少女へと縋り付くのだろう。両腕を背に回すなら、幾度目かも解らない柔らかな抱擁を、世界で一番に愛おしい人へ、目一杯に与えて】
【薄藤色の生え際に何度となくキスも落とすのだろうか。 ─── 涙に濡れた髪房を、そっと唇に食むのかもしれなかった。どうしようもないくらいに、愛しているから】



    「 …………、 ───……… もう、大丈夫だから、 ………… もう、 ……… ずっと、 ……… 。」



【胸裏を震わせて漏らす言葉が要領を得ぬのも当然だった。 ─── 言葉では伝えられない激情を孕んで、渦巻いて、仕様がない】
【世界で一番に甘やかしてあげたいに相違なかった。甘い事も嬉しい事も優しい事も気持ちいい事も、己れの捧げられるしあわせなこと、悉く奉じたい人間の体温をしていた】


131 : 名無しさん :2018/11/30(金) 01:08:35 QzA.E5U60
>>130

【ならば担当の麻酔医はきっと腕が良かった。悪い夢を見たと言う感覚はなかった。だから全部夢だった。――ということに、してしまえたらいいのに】
【現実として身体中が動かなかった。きっと厳重に固定されていたし、そうでなかったとしても、折れた骨では思った通りに動くはずない】
【そして何より、――愛しい人が眼前にてごく悲痛な表情をしているのなら、――やっぱりこんなのは夢であってほしかった、なんて】

――――……、――、アリアさん、たら、ねぼすけさん、ですね。……、私なら、元気ですよお、――、――、ぁう、
――痛い、ですよ? ――……、もお。………………、――っ、もおっ。そんな声、しなくって、いいのに、――。

【だから冗談めかしたような声で揶揄う、元気なはずはなかった。怪我も失血も適切に処置されていたとして、粉チーズみたいに削られた気力は、まだ、穴あきのまま】
【抱き留められて小さく呻く声は存外に本当の音階をしていた。――それでも泣いてしまいそうな顔に追及できなくなるなら、痛みも甘んじて受け入れることにしたらしい、刹那】
【何度も落とされる口付けにむずがる声を上げる。要領を得ぬ言葉に、ああ今すぐ背中を撫ぜてあげられたらいいのに。貴女が泣きそうだと私だって泣きたいの、(だって二人で一人だから、)】

だいじょーぶですよ。生きてるから。……。アリアさんが助けに来てくれたんじゃ、ないですか、……、――だから、いいの、私はそれで、いいですから。

【「――ね、」】

【動かない腕が動いたとしたら、この声と同じ温度で背中をさすってやったんだと思わせた、】
【あるいは頭を撫ぜてやったのかもしれなかった。それとも、顔を捕まえて、いっとう甘やかな口付けだってしたのかもしれない。だけど、今は、どれも出来ぬなら】
【今こうして息していることだって貴女のおかげなのだから。――そうしてまたこの傷が治った時に貴女を抱きしめられるのだって、貴女のおかげなのだから。そんな温度まで篭め】

………………。……――、……――――――、――、……。

【――それでもなにか、躊躇いがちに呑み込んだ言葉があった。きっとあの女とアリアの関係性を尋ねようとして、けれど、言い出せなくて】
【なにか吐き出すことでその辛さを希釈してやれるのならいくらでも聞きたかった。だけれどそれを尋ねることで、余計に辛さに苦しめてしまうのなら、したくなかった】
【だから弱虫だった。傷つけるのを恐れて、苦しみを一緒に背負ってやれるかもしれないのを躊躇うんだから。――怪我の痛みのせいにして甘えてしまうほど子供ではなくて、でも、】


132 : オブライエン ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/30(金) 01:26:33 smh2z7gk0
>>120

いえいえ、買い被り過ぎですよ。私はただの結構かわいい美少女外交官に過ぎませんて
見かけによらず随分と詮索がお好きなんですね?あまり女子にがっつきすぎると痛い目みますわ。

―――〝保険〟だかなんだか知らないですけど、口は慎んだ方が良いですよ?

【水の国が終われば次は氷の国。というカニバディールの宣言に対し、より一層アイスブルーの視線を向ける】
【パンッという空気の破裂する音がする、それはオブライエンの感情に呼応するかのようだった。】
【これだけ若くてもやはり官僚。自国に害を為すと分かれば一切の容赦はなくなるだろう。】

こちらの方々には〝これから〟お世話になりますので、そちらもご遠慮頂きましょう。
なるほど〝ジルベール閣下〟の………あの方には色々と御贔屓頂いていますのでそのお知り合いとなれば丁重に―――
いくなんて事はないですよね?お互いに。

【オブライエンは水の国の議員たちの前へ立ちはだかるように移動する。】
【やはりこれだけのギャラリーの手前、中々下手な対応はできない。いい加減この喋り方も限界ではあるが】

残念ながらそれを聞いても一切の信用はできません。
―――ええまあ、今の世の中特にこの国は色々と物騒ですからね。


【銃撃の雨を受けて倒れ伏したカニバディールを見下すようにそう言うが】
【次の瞬間、肉屋は部下を吸収して復活した。流石のオブライエンも驚愕に眼を見開く】
【それを待たずして肉の触手が天窓へと向かい、突き破る。そして銃撃者の一人を絡めとるだろう】

【―――だが、次の瞬間には別の銃撃者が絡めとられた仲間を救出しようとナイフで触手に切りかかっている】
【まるで予知でもしたかのような反応の素早さだった。そして他の銃撃者達は肉の触手からは逃れるが、ホールへの降下を余儀なくされる】
【絡めとられた一人の救出の成否に関わらずオブライエンの前に銃撃者たちは並ぶ。全部で9人。】

【皆一様にして濃藍のマルチカムの迷彩服を着て、ヘルメットにマスク、ゴーグルで顔全体を隠している。】


氷の国軍特殊任務部隊〝サイコ・フェンリル〟―――こうしてお披露目する事は滅多にありませんけど。
さて、まずは4人で〝壁〟を配置してください。


【サイコ・フェンリルと呼ばれる特殊部隊員達はまるでロボットのように銃を構え微動だにせず指示を待つ】
【そしてオブライエンの一声で4人がパーティ客の周囲を囲むようにして移動する。】
【カニバディールなら分かるかもしれない、一塊になったパーティ客たちを何かエネルギーのような壁が覆っていく】


133 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/30(金) 01:59:12 smh2z7gk0
>>119

【金色の三角形が犇めく瞳はどこか神々しさも感じる雰囲気で肉屋を見つめる。】
【それは純粋なようでもあったし、地獄の底のような邪悪さにも感じられた―――。】

まぁ、確かに!アッハッハハハハッ!!ていうか下のあれは何をしてるんだい?

やっぱりそうなんだ、いやあ流石〝皆さん〟が選んだだけはあるね確かに〝業〟が渦巻いている。

浚う?なんだ君は人さらいをしているのか、人さらいに便利なものは弊社に何かあったかな〜

【そう言うと歪な青年は顎に手を当ててどこか大袈裟に考えるような仕草をする。】
【感情表現は豊かだ、だがしかしその中身は全くと言っていいほど感じられなかった。】
【まるで見様見真似で人を演じているだけのような。】

おお、やはり乗ってくれるのかこれはわざわざ来たかいがあったよ。
僕は〝P〟―――〝武器商人〟というか軍事企業で営業をしているんだ。どうぞよろしく〜。

【〝P〟と名乗った青年はヒラヒラと手を振って応える。】
【営業と言うが、やたらと高級なスーツを着て鞄の一つも持たない営業マンなどいるのだろうか。】
【だが先程の言葉はセールストークなのだろう。あまりにも単刀直入だが。】


>>124

そうそう!貴女のためにここまで上がってきたんだよ。いやー階段疲れたね。
―――んふ、まぁ確かにそうだねむしろもうけ話をホイホイ教えて回る方が信用ならないし。

成程!お金儲けでない話となるとどんな話なんだい?


【武器商人の〝P〟と名乗る青年は今度は女性へとぐるりと首を回して向き直る。】
【ペラペラとまくしたてるように笑顔で言葉を発するが、やはり感情は籠っていないように感じる】
【だが一旦は女性の話に食いついた、遠慮なくぐいぐいと聞いてくる。】


さっきも言った通り僕は軍事企業に勤めててね〜〝Deus Ex Machina社〟・通称〝DEM社〟っていうんだけど
鉄の国はほぼ市場を掌握したし、氷の国も割と落ち着いたから次は水の国で営業活動しようと思って。

なんだか貴女も色々と物騒な背景がありそうだからさ、どうだい?
重火器、UAV(無人航空機)、自律起動兵器、必要ならば傭兵の斡旋なんかもやっているよ。


【〝金色の三角形〟がギラギラと輝きながら女性を見つめる。】
【〝DEM社〟―――鉄の国の新興軍事企業だ、近年での異常なまでの成長率はもしかしたら耳にした事があるかもしれない】
【つまりは戦争屋であり死の商人、厄介事を持ち込む存在だ。但し扱い方によっては利用価値はあるかもしれなかった。】
【とはいえこの青年の〝歪〟な印象はそう簡単には消えないだろうが。】

>>ALL

【そうして自己紹介すれば、〝P〟は二人に名刺を渡して回るだろう。】
【〝DEM社〟―――〝黒い三角形の中に巨大な眼〟という不気味なロゴマークの企業だ。】
【そして名前欄だが、この青年本当に『営業 〝P〟』としか書かれていない。一層不気味であった。】


134 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/30(金) 22:40:28 BRNVt/Aw0

【ほの暗い路地裏。入り込むのは表通りの微かな光だけで】
【足を踏み入れてからそう奥にも行かぬ辺り。初冬のものとは少し違うひやりとした空気が漂う空間が出来ていて】

【見たのならば其処にあるのはこの世のものである事を疑う光景】

【地面に散らばる、尖端に血がべっとりと付着した直径10cmを超える太さの六本の氷柱】
【壁へと目をやれば人間の女性程の大きさと形をした半ば白く濁った氷の像のようなものが壁にもたれ掛かっているような姿で鎮座しており】
【その周囲にはその彫像を護るかのように氷の柱が幾つか生えている】

【奇妙な事に氷の像の内部には青や幾つか点在する赤色が宿っていて、微かに蠢いており】
【まるで、中に人が入っていて氷の像がそれを護る殻であるかのようで】


【──ぴしり】


【不意に氷の像に大きな罅が走り】
【それが段々と拡がっていく】

【やがて罅が全体へと拡がり終えれば】

【──かしゃん】

【白く濁った氷の殻が剥がれ落ち始め】

【中から出てきたのは一人の少女】

【月白色の肩まで伸びた髪、頭から生えた同色の猫の耳】
【デニム地のワンピースは右肩の肩口から破けていて、その下には肩口から腕にかけて斬られた傷跡が残り】
【額からも血が流れた跡があり】
【そうして、身体中には直径10cm程の円錐形の何かが刺さって抜けたような傷口が六つ】

【満身創痍という言葉が似合う少女は気だるげに目を開いてぼんやりと辺りを見回す】



/鈴音ちゃんの方よろしくお願いします!


135 : 名無しさん :2018/11/30(金) 23:26:17 EP.D.5WE0
>>134

【ころり小さく鳴くのは女物の靴音、華奢な体躯を見ずとも理解させる硬く軽い足音、なら、やがて漏れ出る吐息の音、微かに立ち上るのは白い煌めき】
【わずかに躊躇いのような間が空いて、――それでもゆるり歩いてくる足音がするだろうか。であれば、何か、用事があるのかもしれない、よりいっそうの暗がりの中に】
【――であれば"まとも"ではないと思わせた。路地裏の奥に用事があるような人間はだいたいが表に生きられぬ人物であって、あるべきで、だから、】

――――――――――――さむ……。

【"どちら"の要素も持ちうる彼女はやはり何かずれているのかもしれなかった。それとも言い訳すること、許されるのだろうか。――――わたしは神様なの、だなんて】

【長く腰まで届く黒髪に透き通るように白い肌は。けれど寒さにその頬を赤らめていたから、なにか恥じらう幻視に、あどけない顔を彩って】
【わずかに身体をちぢこめて口元をコートの襟もとに埋める。伏した視線は黒と赤の色違い。フェイクファーと首の隙間を埋めたい指先はふわり手袋に包まれ】
【黒色のポンチョコートの裾から溢れるのはふわふわ幾重にも重ねたパニエで膨らませたスカート、裾までフリルに飾るなら、まあるくまあるく膨らんで】
【歩くたびぷわぷわと上下に揺れていた。そうしてうんと華奢な足元は黒色のタイツで包み込む、足元は踵のしゅんと細い/高い、ショートブーツ】
【後ろのところをリボンで編み上げて、その蝶々結びの尾っぽがヒールの翼みたいにひらひら羽搏いて揺れていた、――十六歳ほどの少女、であるなら、やはり、何かおかしい】

【――まずもって路地裏でこぎれいな恰好をした"少女"など、だいたいが餌食であり。そうしてまた撒き餌であった、食うのも食われるのも"やった"ことがあるのなら】

あれ、

【――――――少女が訪れるのは、ちょうど相手が氷の中よりまろびでて少し後のこと。しゃんと伸びた背中に裏付ける足音の等間隔、ふっと止まる瞬間に】
【ぼうと見渡す相手にかけられるのはきっと透き通る鈴の音の声であるのだろう。――ぱちりと瞬き一つ混ぜ込むような間が空いてから、】

つがるちゃん?

【それ以上でもそれ以下でもなく彼女は相手の名前を呼んだ、――強いて言うのなら、いくらか不思議そうだったろうか。どうしてこんな場所いるの、なんて、言いたげな】
【或いは相手にとってすれば、彼女こそどうしてこんな場所に居るのと聞かれておかしくないのだろうけど。――ここで誰かと、まして知り合いと会う覚悟はしていなかったらしい】

――どうしたの、その怪我。

【故にこその曖昧な声音。驚くでも何か謝るでもなくって、だから、やがて少女は冷たい地面に膝をついて、相手と視線、合わせようとするのだろうか】
【生半可な覚悟で逸らすなら思い切り追いかけられることになる。なにか激情殺すように逸らすのなら、いくらか気を遣うような曖昧な温度感にて、息でも吐くのだろうけれど――】


136 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/01(土) 00:12:57 BRNVt/Aw0
>>135

【うすぼんやりと見上げた夜空。もう暫く月なんて見上げていないからその満ち欠けすらも記憶に無くて】
【何故此処に居るのかなんて事だって不意には思い出せないから「今日は"いつ"なんだろう」なんて現実逃避して、ただただ月を見上げるだけで】

【そんな時に聞こえたのはただ一夜聞いただけの懐かしい鈴の音】
【それでも、その音色を忘れる訳なんかなくて】

【戻した視線の先、映るのは少し髪の伸びた懐かしい少女】

【金色の瞳はこぼれ落ちていきそうな程大きく見開かれて】

────りん、ね……ちゃん?

【喉から出たのは酷く掠れた声。まるでもう何日も声を発していなかったような(実際のところ、そうなのだけれども)】


りんねちゃん……りん、ね、ちゃ……っ……り……ね、ちゃぁ……ひぐっ……鈴、音ちゃん……鈴音ちゃん鈴音ちゃん鈴音ちゃぁ……ん……っ
【一度名前を呼べば、それは止まらなかった】
【何度も何度もその名を呼んで】
【金色の瞳。ボロボロと溢れ出していく涙。うっすらと出来た隈にも、少しだけ痩せた頬にも伝っていって】

【会いたかったよ、ずっと心配してたんだよ、探してたんだよ、もう大丈夫なの?"みんな"待ってたんだよ】
【言いたい事は沢山ある筈なのにそのどれも言えなくて】

【どうしたのって声をかけられて覗きこまれた顔。その赤と黒に自分の姿が映り込めば酷いくらいに満身創痍で】

【そこで思い出してしまった。どうして此処にいるのかって事を】

……っ、ごめん、なさいっ……ご……めん……なさい……!ごめんな……さ……っ、ごめんなさい……っ、ごめ……なさ……、ごめん……なさいぃ……っ
【だから、謝る。ひたすら謝り続ける。涙を流しながら】
【助けに行けなくて/その後の事も知ろうとしないで/たんぽぽを放っておいて/貴女の友達である夕月ちゃんだって傷付けて/何もしないのに友達面なんかして/役立たずで/要らない子の癖に生きてて/きっと、自殺すらも失敗して】
【ごめんなさいって】


137 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/01(土) 00:13:41 E1nVzEpQ0
>>131

【果てしなく少女の健気たるはアリアの心を慄かせていた。 ─── 暗い病室に射し込む夜の明かりが、悲愴な白皙の憂いを照らす】
【呼吸に震える柔らかな胸許に、愛しい人を抱きとめているのが幸運だった。こんな非道い表情を生傷へ晒せやしないから】
【それでも狂おしく背中にうずめられる指先と、正しい冷たさを錯誤した声音だけで、全てを教えるのには足りてしまう。】
【 ──── 慰められるのは少女であるべきだった。だが少女を慰める言葉を女はこれ以上知らなかった。ならば己れの半身を慈しむのは、せめて有りうる救いの手なのだろう】



    「 ────…………… だって、」
      「 ……… だって」「 ……… 、 かえで ……… 。」



【言葉ごとに溢れていく涙を女は止められなかった。 ─── 晒された薄藤色へ、一雫ずつ染み入っていく。嗚咽さえ苦しげで】
【緩やかにずり下げた抱擁は、互いの豊潤な胸元を歪ませあって、壮健な呼吸を妨げる。青い隻眼が見つめるならば、乱れた銀髪を繕おうともせず、顔貌の冷たさも融けきって】
【時折に肩をしゃくり上げるのを隠そうともしなかった。 ─── ただ泣涕に濡れて結ばれた唇ばかりが、いっとう艶やかに潤って、その耽美たるをアリアは知っていたから】
【何度目かも判らないキスをするのだろう。薄藤色の後頭を掌に捕まえ、怯える呼吸も恐ろしい記憶も痛んでやまない現実も、嬲り愛でる粘膜と唾液に全て溺れさせ忘れさせ】
【くぐもる湿り気と弾ける粘泡が口付けの中から聞こえて、飲ませきれなかった/啜りきれなかったものが、首筋に冷たく零れ落ちていくのも厭わない、貪欲な逢瀬】
【 ─── きっとこの女は、もっと少女に忘れさせてやりたかった。けれど折れた肢体に強いるには余りにも熱情が過ぎるから、自由な口先だけでも、目一杯の幸福を許して】

【そうして時折に息継ぎを挟みながら、 ─── どれくらいの時間を口付けに費やしたのだろうか。いつしか、長い肢体は同じベッドに乗り上げて、少女の側に添い寝て】
【やがて頤を俯かせ、どろどろになった少女の胸許に鼻先を甘えさせながら、徐に言葉を紡ぐのだろう。内出血の遺るうなじをなぞり下げ、手持ち無沙汰に背筋を指撫ぜて】


   「 ───……… 。」「ごめんなさい。」
   「 ……… 私の因縁に、貴女を巻き込みたくは、なかったのに。」


【ならば始まるのは独白であり懺悔であり追録だった。 ──── 吐き出して如何にかなる感情ではなかった。だとしても少女には、己れを知る権利と義務があったから】
【遠いロータリーの寒々しい喧騒に混じって、やたらに響く最終電車のインバータが聞こえた。然るに、それさえも幻想のように消えるならば、きっとアリアは望んでいて】


138 : 名無しさん :2018/12/01(土) 00:25:39 EP.D.5WE0
>>136

【ついた膝の冷たさに、けれど少女はあまり表情を変えなかった。掠れた声にわずかに目を細めて、――だけれど、その顔は、間違いなく彼女のものであり】
【何か変わったことがあるとすれば肩の長さであったセミロングヘアが腰まで滑り落ちている。少しというにはいくらか行き過ぎだけれど、そう、】
【彼女の旧い知り合いにだれか聞く機会があれば、――彼女はほんとはずうっと長い髪をしていたんだって、教えてくれるのかしら。なんて】

――――――――、うん、わたしだよ。ここに居るよ。

【――――だからひどく掠れる声に返すのは、涼しげに透き通る鈴の音。きちん、と証明してみせるみたいに、変わらぬ声音で、そう相手を肯定するのなら】
【ごく近しい距離にて彼女はついにお尻を付けて座ってしまうから、少なくとも立ち去る気はないようだった。相手のことを疎んじている人間の距離感では少なくともなく】
【ぺたんとあひる座り。ふわふわのスカートを整えて。よいしょって声はわざとらしいけど、だからこそ、何か気遣ったような温度がある。とかく過度に狼狽えぬ温度であり】

今日は寒いねえ、――わたしね、寒いの、あんまり得意じゃないんだ。だから早く春になってほしいの。だけどね、夏も苦手。だからすぐに秋になってほしくって。
毎年そうやって思うんだ。――ふふ。でもね、夏も冬もね、嫌いじゃないんだよ。夏の真っ青な空と真っ白な雲も、冬のぴゅうって乾いた風も、――。
――――だから、ね、ほら、泣かないで。大丈夫だよ――――。

【なんてことない雑談の声音で話し始めた、今日は寒い。寒いのは苦手。でも暑いのも苦手。適温が好きってそんな我儘、くすって笑いながら、伝えるのなら、】
【実際なによりくだらぬ雑談だった。まともに聞き入れ話す必要はとくになかった。野良猫相手に目を合わせないまま近づいていくような温度感だった、そのくせ距離はごく近く】
【やがて少女はふわっと両手を差し伸べるのだろうか。小さな子供にだっこするからおいでって誘うときの仕草。寒いでしょうって言うみたいに、誘う仕草】

【――そうやって相手が彼女を受け入れるのなら、きっと、裾の長いポンチョコートの中にまで招き入れてやるに違いなかった。嫌なら、――無理強いは、しないけど】
【それでも受け入れるのなら三十六度五分の体温と微かに甘い香水の香りは約束されていた。そしてまた、背中を撫ぜてやる手つきも、きっと】


139 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/01(土) 01:04:08 BRNVt/Aw0
>>138

【膝をついて、ここにいるよって言って】
【そうして座り込んで、話し始めて】
【相手がそうしても彼女は泣いていた。ごめんなさいって、何度も謝って】

【泣かないでって言われても、大丈夫だよって手を差し伸べられても、小さい子みたいにふるふるとかぶりを振って】

だって……だって……大丈夫じゃ、ないもの!
私……っ、助けにも、行かなくて……っ!何にも……っ、出来なくて……っ
それに……っ、私……

【──勘違いしてたんだもん、と少女は続けて】

私ね、本当はお母さん、好きじゃなかった……っ、怖かった……っ
名前、ね、本当は木編に母って字の栂と、流れるって字で……っ
本当は、名前……嫌いだったの……
【だって、『栂/咎』に『流れ』なんて】
【まるで私が生まれながらに咎人とか流人みたいじゃないって少女は呟いて】

だから、自己暗示、掛けてた……っ、お母さんも名前も好きって……っ、それで、錯覚、してて……っ

だから、本当は私……嘘つきのわるいこで……役立たずで……っ、要らない子で……っ、死ななきゃいけなくて……っ
なのに……なのに……!
【やっと死んだって思ったのに、まだ生きてて、と少女は泣いて】


140 : 名無しさん :2018/12/01(土) 01:13:02 EP.D.5WE0
>>137

【そしてきっと何か感情を隠しこんだ健気はいつかの日と同じ音階をしていた。怯えを必死に隠している声、――二人、海と朝日を眺めた日に、聞かせた声】
【恐怖と痛みとに心の中までを蹂躙されたとて、その一番奥底に咲き誇る一輪は護り抜いたって信じていたから。――だからその色合いを捧げたかった、泣いてほしくなんてない】
【貴女が一番喜んでくれる色に咲きたいから。だからそんな悲しげな感情は向けないてほしかった。あとほんの少しで私だって泣いてしまいそうになる、から、】

【――痛む身体をそれでも引きずるみたいに動かして。めいっぱいにその耳元へ言葉を寄せる、吐息をわずか痛みに濁らして、伝える言葉はごく我儘に】
【泣かないで、――伝えるのなら、吐きだす息はその端っこをかすかに震わせる。泣くとしたって自分の意地悪に泣いてほしかった。そんな風に、何か、悔いてほしくない】
【だとしても同量に孕む感情はその涙を慰めてやりたかった。だのに種の割れた言葉を囁く以外にこれ以上の方法は知らなかった、から】
【だからきっと二人なにか分からないものを探して口付けるのに違いなかった、――求める遣り方も大分うまくなりつつあった。その最中にする息継ぎの遣り方も】
【それでも軽度の酸欠に深い呼吸を求めるのなら身体の内側がずきずき痛んで仕方がない。それを誤魔化すがために一層深く求めるのならば、】
【ともすれば窓を閉ざす暗幕めいたカーテンすらあったなら、痛みすら潤みに変えて少女は朝まで耽りたいのに違いなかった。なんて】

――――っ、もぉ、だめですよ、今したら、私、きっと、死んじゃいますから、……。アリアさんとするの、元気じゃないと、むりです――。

【――――ならやっぱり自分だけ分別がついているみたいな顔して、吐息は確りと蕩けていた。内出血のうなじを撫ぜられれば、鈍い痛みに背筋を震わせ】
【直後に震えた背筋を撫ぜられるのなら、――ごく近い距離感に甘えて、その髪に鼻先を埋めるのだろう。誰よりもだれよりもそのシャンプーの香りを独り占めするなら】
【甘い疼きを意地悪にて発散する、耳輪を唇に捉えて緩く引いて弄ぶ。或いはわざと冗談めかしてふざけているのかもしれなかった、だって、】

――――――――――――――――、大丈夫ですよ、だって、私、アリアさんのことなら、全部知りたいし、なんだって、――大丈夫です、きっと、
それに、……こんな風になったって、アリアさんのこと、めいっぱい好きです。アリアさんのせいだとか。だから嫌いだとか。ちっとも、なくて、だから、

【二人同じ枕に横たわる距離感を願うなら、吐息はもとより睫毛すらも絡まる距離にて、次の刹那に少女はうんと大人びた顔をしているのだから、】

アリアさんの全部だって、きっと、大丈夫ですよ――、私まだ十七だから。二十八年生きたことがないから。上手に聞けないかもですけど。

【そうしてきっと最後にはごく柔らかな表情だった。なんでもかんでも絶対大丈夫だなんて断言できないのは真剣でない証拠なんかではなくって、ないから】
【だってアリアの生きて来た時間は彼女にとって思い浮かべることすら叶わぬものだった。だから聞くのだってへたくそかもしれなくて、ううんきっと、そう、だけど】
【ようくお日様に干した後の羽毛布団みたいな表情でなにかを促した、――そうして最終電車の発つ音がする、駆け込み乗車の会社員の疲れ果てた溜息までは、聞こえてこない】


141 : 名無しさん :2018/12/01(土) 01:43:07 EP.D.5WE0
>>139

【――――来ない】
【それを認識したなら、伸ばした少女の掌、指先の角度がわずかに下がるのだろう。受け入れるのにわずかに持ち上げたお尻が、すとん、地面に降ろされて】
【ふわと吐いた吐息は白く燻る。ならば少女はごく困ったように笑っていた、笑っているのに違いなかった。そうしてやがて両手を降ろす、膝にちょんと添えたなら】

――――つがるちゃんが嘘吐きの悪い子で、役立たずで、要らない子で、死ななきゃならないなら、わたしだって、死ななくっちゃ。

【きっとそのままのポーズで彼女は相手の言葉を聞いていた。表情はさっきと変わらぬ困ったような微苦笑。吐く息がかすかに白くって、だからきっと温かいはずの声なのに】
【相手の言葉をまるっと真似して呟く鈴の音はどこか冷たく聞こえた、――、見れば笑った表情はけれど限りなく無表情と等しく、だから、なのに、だけど、刹那に】
【もう一回少女は手を伸ばすのだろう、――そしたら、問答無用、ぎゅうっと抱きしめて、それから、抱き留めてしまおうとした。背中と後頭部に手を回して、えいって】
【ぎゅうっと引き寄せてしまおうとする、もし叶うなら勝手にコートの中まで引きずり込んでしまう。逃げ出そうとしても駄目。ただ唯一、本当に嫌な声を上げるなら、やめるけど】

――だって、わたしも、自己暗示してたの。わたしは人間が好きだって思ってた。
――――――わたしは、人間が嫌いで、嫌いで、憎くて、怨んで、産まれた、祟り神(もの)なのに。そのことすら気づかないふりしてた。

【――だから、そう、それは、きっと、ふざけてないよって表明するための表情なのだろう。目が笑っていなかった。だのに口元は変わらぬ色合いで笑んでいた】
【伝える鈴の音はやはりなにかを削ぎ落とした温度をして。――抱き留めるのを許していたなら、表情の代わりに体温を伝えるのだろうか、三十六度五分の平熱と、甘い香り】

名前が嫌いなら、新しい名前を考えちゃおうよ。お母さんのことだって忘れてしまっていいじゃない。別の子になってしまったら、いけない?
――だけどね、それが出来なくたっていいの。だって、わたしだって、――まだ、憧れているの、憧れたから、嫌いで、嫌いだから、憧れちゃうの。

【ごく当たり前の出来事であるかのように彼女が伝えた言葉は甘やかになにかを認める。あるいは唆す。だって彼女は蛇なのだから。禁断を唆すのが仕事であるのだから】
【けれどそうだとしても、――どちらにせよ、彼女は思い切れない性質だったのだと伝えていた。何かに気づいてしまって、だけど、結局、どっちつかず】
【――だから、出来なくたっていいとも言っていた。どこまでもきっと狡い言葉だって。相手を肯定するふりして自分を肯定しているのかもしれなかった、】

わたしね、ずうっと昔に、怖い場所から逃げ出したの。その時にね、わたしがもうちょっと頑張っていたら、わたしを助けてくれた子を助けられたかもしれなかった。
だけどわたしはその子たちを助けられなくって、――置いて逃げたの。それでね、名前だって変えちゃった。何年か前にたまたま会わなかったら、
きっと忘れはしないけど、だけどきっと、"いま"に隠して見ないまま、ずうっと生きていたと思うの。

――――わたしはそういう狡い子だから、イイコじゃないから、貴女のこと、駄目って言わないよ。いいよって言うよ。それが嫌なら、このままばいばいしよう?

【やがて紡ぐ言葉はいつかの追想であり後悔であり懺悔であるのだろう。たまたま運命の意地悪/好意で回収されることになった、ちぎれた他者との縁】
【どこまでも自分は狡いのだからと言って、――相手の求むるものが叱咤激励であるなら、少女はそれをしない/できない。だから、それが嫌なら、ここで終わり】
【"みんな"がわたしを見切ったように、貴女だってわたしを見切ったらいい。――色違いの眼差しはどこかで優しいままで、だのに、きっとどこまでも、絶望していたから】


142 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/01(土) 03:16:46 BRNVt/Aw0
>>141

【独白の後に訪れた沈黙。きっと、怖い顔をしているのだろうかっておずおずと相手を見やれば困った顔で笑っていて】

【紡がれたのは貴女がそうであるのならば私だって、という言葉】
【ひゅ、と少女の喉は鳴って】

駄目ッ!駄目だよ!鈴音ちゃんは生きてなきゃ駄目なの!
だって鈴音ちゃんは皆が待ってて……たんぽぽやってて……子供達だって……私なんかよりずっとずっと役に立ってて……!
【慌てたように紡ぐ言葉。また大事なひとを傷付けた、"世界"を傷付けたんだって焦って】
【やっぱり私は生けない仔なんだって自己嫌悪して、また涙が零れ落ちたら】
【手が伸ばされて、ぎゅうっと抱き締められて】
【相手から顔は見えないだろうけれども、きっと驚いた表情をしていた。泣くのも忘れて、目を丸くさせていて】


私、だって、人間はそんなに好きじゃないよ……私だって気付かないふりしてたよ!
お母さんと一緒に連れてかれる時に感じてたの……今まで仲良くしてた人達が皆冷たい目をしてて、助けてもくれなくて……!
だから……っ
【本当は気付いてないふりをしていた。此方に来た時に封じ込めて忘れたふりをしていた】
【嫌いになんてなりたくない──"あの日"の言葉なんて真実じゃなかった】
【だって、"あの日"よりもずっとずっと前に彼女も人間が好きじゃなくなってたんだから】
【だから、きっとあの日の邂逅の何割かは茶番だった。母の事も、人間を嫌いになんかなりたくないのも】
【それでもきっと──生き生きと話してくれた寺子屋の事とか村での思い出は本当だったんだろう。それだけは綺麗な思い出だったのだろうから】

【そうして、名前が嫌いならば新しい名前を考えれば良いって、母親の事も忘れてしまえば良いって言われれば少しだけ何かを考えて】

──陽織(ヒオリ)……

英群陽織(ハナムラヒオリ)……

私の、ほんとうの、名前……
お父さん達が生まれてくるのを待ってて、生まれてきたら愛される筈だった女の子の名前……名乗っても……良いの?
【ぽつ、と告げたのは一つの名前】
【本当はその名前で生まれてくる筈だったんだって、そうして両親に愛される筈だったんだって】
【17年前の10月16日に生まれてすぐに"死んで"しまった女の子の名前を告げて】

……嗚呼、でもきっとまだ『つがる』じゃなきゃ"駄目"なんだ
ちゃんとお母さんの事、決着つけてからじゃないときっと駄目なの
【だって、怒られちゃうんだもん、と彼女は呟いて】
【だからまだ英群陽織は大切に仕舞っとくよって続けて】

【そうして更に語られた話。鈴音の過去の後悔。自分を助けてくれた子を助けられなかったんだって】
【自分はそんな狡い子だから貴女を否定なんかしないって】

……ねぇ、その人達は、鈴音ちゃんを、赦してくれたの?

私は、何の役にも立てない……貴女を助けにも行けなかったし、大事な友達だって傷付けるし……

でも────

私はまだ"セカイ"にいても良いですか……?

【震える声。おずおずと尋ねる言葉】
【自ずと重ねてしまっていた。夕月を助けにも行けなくてその上彼女が隠していた『何をされたのか』という事を知ってしまって逃げてしまった自分と】
【そうして望んでいた。大切なひとがこんな役立たずな自分も"セカイ"にいても良いのだと赦してくれる事を】

……あのね、私はね、どんな鈴音ちゃんも鈴音ちゃんだって思ってるよ
守護神でも祟り神でも人間でも怪異でも狡くても良い子じゃなくても悪い子でも鈴音ちゃんは鈴音ちゃんなんだって思ってるよ
ありのままの鈴音ちゃんで良いって思ってるよ
だから、さよならなんかしないよ!
【そうして返すのはどんな貴女でも受け入れるのだという言葉】
【けれどもそれは寛容とか優しさだとか、それからくる言葉じゃなかった】
【きっと、自分がそうして欲しいからそうするだけで】
【本当は少しだけ臆病で少しだけ思い込みが強くて自己評価の低い自分をありのままに受け入れて欲しいから】
【だから彼女も大概『狡い』】


143 : ◆KP.vGoiAyM :2018/12/01(土) 18:13:06 Ty26k7V20
>>69 >>70-73

【こういう、シラけた空気ってのは俺みたいな濁った目をしたやつは感じ取りづらいが】
【リッキーが頭を抱えて、タミオがニヤついていたから、しくじったのはよくわかった】

【「うるせぇ」何回言ったかわからないそれを、吐き捨てて煙草に火をつける】


―――気に入らねぇなら、マイナー・スレットでもかけようぜ

【そういって、俺はタバコを咥えたまま山のようになったレコードを一枚一枚探していると】
【アイツがやってくる。あの女が通るのは数10メーター離れていても足音でわかる】
>>69 >>70-73

「テメーがドカドカ来たせいで老いぼれがビックリして4,5人死んじまったぜ」


【そういって、安酒をあおったのは陰気な皮肉屋のホワイト兄弟のどっちかだった】
【皆それに笑い、やじをのせる。】


「テメーで繊細を名乗るならこの世界は99%がそうだろうな。」


【それを言ったのもホワイト兄弟のどっちかだ。次は誰も笑わない。リッキーの顛末を見てしまったから】
【そういう時に上手いこと言葉だけ聞こえて、姿を隠すのがホワイト兄弟の得意技だ。よく逃げ遅れる】
【リッキーや、マーシーがそのツケを払わされることになる。】


―――――――

―――


………そういや、バンガデル。<<ファクトリー>>のクラックの準備はどうなった?

【俺は、二人が出ていってしばらくしてから聞いた】

「ああ、今…コードをかいているとこ。こないだ、スカベンジャーが拾ってきた警備書類のおかげだ」

【いつの時代のやつかわからないクソでかいレンズのメガネを掛けたバンガデルが答える。】
【サイケロックばかりきく、どう見てもヤバイやつだが、仕事はできる。この進んだテクノロジの時代で】
【置いてきぼりの俺らと違って、最新の泥棒術を見せてくれる】


「ロッソ。今回は――派手にやんのか?この間のトラックで、火薬が足りねえ。」

【マーが割って入って来た。俺はすぐに答える】

いいや、元々――――静かにやるつもりだ。最小限のチームで考えている。奴らも警備は他所とはレベルが違う
それに……最近はこのあたりも、<<学派>>の連中が彷徨き始めている。
ヴァイラスの治療薬を襲ったなんて耳に入ったら何しやがるかわからん。

「………クソッタレ。何が治療だ。あのカルト野郎共。次会ったらぶっ殺してやる。俺の腕を食いやがったんだ!!クソッ!!」

「…ここもそろそろ、危険かもしれないな。次は何処へ行く?レインズフィールドの方はまだ、キャンパーが―――」

「もう逃げ回ってもられねえよ。いつまでやるんだ。俺たちは自由に―――」

――俺たちは自由だ。行きたいところに行って、居たいところにとどまればいい。自由を追っかけて、逃げ続けんだよ
クソッタレにはちょうどいい人生だろ。…だけど、俺達だって未来を求めて何が悪いってんだよ。
この世界が気に入らねえのは此処の奴らみんなそうだろ。―――行き先は決まってる。

――――2Q18年だ。


144 : ◆KP.vGoiAyM :2018/12/01(土) 18:13:29 Ty26k7V20
>>69 >>70-73


「―――前、言ってたやつか。“噂は本当だったってことか?”」

【誰が言ったか――多分、その場に居た全員が思っていたことだろう。】


ああ……多分な。もし、次に向かうとしたら…いいや、そこに向かうんだ。
…あのとき、あの時がやはり世界の分岐点だったんだ。何もかもがそこから始まった。
変えなきゃいけない。俺ならそれが……できたはずだったんだ。

世界は運命と意志の相互作用で出来てる。もっと言えば、運命ってのは多くの人の意志の集合体だ。
だから、誰かの意志で、多くの人の意志を変えられたら運命すら変えられる。…そう思ってた。

「…だけど、タイムマシンは奴らしか持ってないんだろ?奴らから奪うなんて無茶どころの騒ぎじゃねえ」

そもそも、俺達がつくったタイムマシンは、オリジナルであり、コピーでもあったんだ。
2Q18年に――いやそれ以降も奴らが極秘にタイムマシン研究をススメていて、まだそれがあるなら――
……それが、最後の望みだ。あるとするなら――あの、迷路みたいなあの街に行くしかねえ。

「なんだっていい。退屈じゃないならな」

「違わねえ。」

あくびしてる暇はねえ。働け、クソッタレ。ジェットシティのやつはブッ飛んでるんだろ。

「よっしゃ、ラモーンズかけようぜ」

「それ、マジで最高。」


【 2Q36年――月――日】

【相変わらず、目の前がぼやけている。年のせいか。それとも能力をつかすぎたからか。】
【まだ、戦えるが、能力を使える頻度は落ちている。クソッタレ。照準が定まらない。赤と黒で世界が染まって見える】
【Sabrinaがざまあみろと笑っている気がする。やはり、彼女は天使ではなく悪魔だったようだ】
【だが、まだしぶとく生きている。誰も救えなかった代わりに。――せめて、生きた証を】
【生きていたやつの事を忘れないように。今日も祈ろう。愛を込めて。Dear―――】



>>74
/こちらがこの先の展開としてなんとなく考えていたものをふんわり醸してお返事と返させていただきます。
/文章短くて申し訳ないですし、いまさら設定付け足すのもほんと申し訳ないのですが
/ストーリーのじゃまにならない程度にさせていただきましたので、さっと流し読みする程度でよろしくおねがいします!!


145 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/01(土) 21:26:59 E1nVzEpQ0
>>140

【ならば望まれる通り、白い病衣にアリアは涙を拭った。滂沱を終える深く湿った嘆息を、少女の胸許へ心底まで吐き出して、見つめ合うキスを交わすならば】
【 ─── きっと少女の護り抜く決然さに、変わらぬ穏やかな微笑みにて応えるのだろう。濡れた眦を情愛に緩めたまま、世界で唯だ一人にだけ曝す、蕩けて潤んだ碧眼】
【愛しげな囁きに交えて甘く耳朶を食まれて、 ─── 堪えるような嬌声を奏でる。甲高くも押し殺すような一瞬のソプラノで、それでも震える身体が悉く淫らを伝えるから】
【全て少女を愛する理由だった。儚さも、幼気さも、健気さも、気丈さも、厭らしさも、あざとさも、 ───── 然らば、暗いカーテンが何れ閉まるのも道理であろう】


「 ───……… 、」「 ……… ありがとう。」「本当に、 ……… 優しいのね。かえで。」
「なら、私も」「 ─── かえでのこと、元気にして、あげないと。 ……… ね?」


【言葉尻の如何に湿るかをとうにアリアは解していたから、 ─── 悶える背筋をなぞり下げた指先は、気紛れに背骨を撫で下ろし、広い掌と指に腰の肉付きを愛でて】
【ゆるりと太腿に人差し指を沈めて、内股から擽ったく這い上がる指遣いの暗喩を、近付きゆくにつれ遅くなる愛撫に教え込んで、それでも今は法悦を探り当てる事は憚るなら】
【 ─── 眇めた隻眼にどうしようもないサディズムを宿して、互いの行為に潤ったそれぞれの唇に、宣告した指先をそっと押し当てる。垣間見せる舌舐めずりが、円い爪先へしっとりと絡み付くのも、きっと譬喩】
【甘美な痺れに火種を焼べていく所作であった。痛みさえ希みとなれば、最早アリアは少女の躯体を抱き寄せて ─── 誘うように身体を捩り、隈なく柔肌の擦れ合うごとに、豊満な胸間に幼い表情を包み込めば】
【 ───── ピロートークの距離感に、伝えるべきものを伝えていく。夢見心地の香りと愛おしさ、シーツに散る銀紗の長髪が、抱擁と共に独占する/されるのだろう。一ツ一ツ、思い出すような、言葉の温度】


「 ───……… 昔の、知り合いなの。」「あの女。」「私が前に、ここの国の軍人だった事は、知っているでしょう?」
「"センセイ"の開いてくれていた学校の、同級生で。」「 ─── ミレーユなんかと、それなりに仲良く、やっていたの。」


【環状線が軌道を走り去り、摩天楼の燈が少しずつ消えていく。眠らない街であろうとも、夢幻の微睡みは知っているのだろう】
【ならば語られる過去もまた、夢か現かの截線が曖昧であった。 ─── 呼吸さえ溺れさせる鼓動と温度が、独白を暈していく】


「センセイは、私に色んな事を教えてくれた。」「鉄砲の撃ち方、義体の使い方、諜報の遣り方、教養の学び方、人間の殺し方。」
「それに報いる為に、たくさんの命令を聞いたわ。」「汚い仕事だって、一杯こなした。」「それでも、嫌じゃなかったの」
「戦って、勉強して、訓練して、任務を熟して」「 ─── 今と同んなじくらい、生きている感じがしてた。私はこんなに難しい事だって出来るんだ、 ……… そう、思えて。」


【「けれど、 ─── それが、間違っていたのでしょうね。」「だから私は、フライヤを傷付けてしまった」 ─── 呟くならば】
【懐かしむような/哀しむような温度も宿っていた。今や望ましからぬのだとしても、求めて二度と戻らぬ追憶だと告げていた。或いはそれは、蛇に纏わる少女の記憶に似る】
【どこまでも2人は良く似ているのかもしれなかった。 ─── なにかを堪えるような深く湿った嘆息は、続く想い出をそっと促されることを、望んでいた】


146 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/12/01(土) 22:18:58 ZCHlt7mo0
【――――風の国 とある廃村を見下ろす崖の上】

――――お前なら、やはり、ここを希望するんだろうと、そう思っていた……
ソニアの事、残念だったな……だが、お前はよくやったよ、レグルス……

【短いバイオレットの毛皮で全身を覆い、その上からフード付きのマントと半ズボンを着用している】
【左目へとめり込む様な、人相を歪ませている大きな傷跡、更に頬にも大きな傷跡の目立つ】
【ずんぐりむっくりとした体格の、尾の先が不自然に二つ裂きになっている、右目の眼光の鋭い、身長150cm前後の猫の特徴を宿した獣人が】

【その手に、やたら長大な金属の棍を持ち上げ、やりきれない表情で、眼下の廃村を見下ろしている】
【朽ち果てた家屋の跡が連なる、山奥の廃村――――かつて領主の暴虐によって壊滅した、悲劇の村】
【そしてそこに今、その村出身の1人の男が、埋葬されていた――――獣人は、その棍を無理やりに眼下へと投げ落とす】
【――――ドスッと、距離から考えれば意外に響きの良い音を立てて、根は地面に突き立った。それは、この場にいる者以外の、誰も知る事のない慰霊碑】

「馬鹿野郎……何も、恋人の後を追うように死ぬ事も、無かったろうにさ……」

【そして、その場で死者に祈りを捧げる人間は、もう1人――――】

【銀色のウェーブがかったロングヘアーに、目元をサングラスで隠し、毒々しい赤い口紅が塗られた唇をしている】
【全身は、飾り気のない黒のライダースーツで固められており、スマートな印象を与える】
【両手足が、どこか不釣り合いな細さの、鋼鉄製のものに接ぎ変えられている、身長160cm前後の女性】

【その場に跪き、黒い鋼鉄の両手を組んで、物憂げに祈りを捧げていた】

<――――バル(火)・フェン(飛翔)・ルー(レベル1)――――『ファイヤーボール』……>

【更に、その背後には、同じようなデザインの、魔術師コートとハットを着込んだ、7、8人ほどの面々が連れ立っていた】
【性別も体格も年齢もそれぞれだが、みな一様に、色違いで同じデザインの衣装に身を包み、そして夜空へと向けて、火球を発射する】
【――――彼らなりの、死者を弔うための号砲だった。嘆きの色はそれぞれだが、彼らもまた、誰かの『死』を悼んで、この場に集結したのだろう】

……お前の、この国での汚名は、もう晴れる事がない――――けど、お前はそんな事、どうでもいいのだろう……?

【獣人は、木陰に用意された、無記名の墓石を撫ぜながら、遠い目をしていた――――ここに、彼らの大事な仲間が、永遠の眠りについているのだ】

【誰も知らない、密かな弔い――――誰も知らない『はず』の、密かな弔いだった】

/アリアの方、よろしくお願いしますー!


147 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/01(土) 23:06:59 E1nVzEpQ0
>>146

【 ──── 木立の夜陰をかき分けて、何者かの現れる機微があった。少なくともそれは、獣の足音ではなかった】
【彼らの葬儀が掉尾を飾った所で、それは現れるのだろう。人影であった。瞠された青い隻眼は、やはり何かを察していたのだろう】


  「 ───……… 。」


【女だった。ひどく背の高い女だった。長い銀髪の前髪に、憂いを宿して幽玄な白皙の右半を隠しつ、その絹絃は腰元にまで伸びていた。初冬の寒風に全て揺らいで煌めいて】
【喪服に相応しい黒いテーラード・スーツと、黒いネクタイと、黒いロングコート。儀礼用の旧い小銃を背負っていた。照星から槓桿の先にまで施された、白銀の装飾。】
【白い花束に白い供花を隠していた。カモミールの花束。 ─── 同じ腕に、一ツの酒瓶を抱えていた。しめやかな黒い輝きを宿した、麦芽酒のボトル。】


  「 ……… やはり、」「どこまでも惜しまれていたのね、貴方。」


【幾らか驚いたような顔をしながら、 ─── どこか諦めた表情で、苦笑を零す。「私からも、よろしくて?」素性の知れぬ女ではあった。然して、頷かれるならば】
【そっと無銘の墓前に跪いて、花束と酒瓶を供えるのだろう。Восток/東方の名を冠するその酒は、故人の新たなる生を願って選ばれたものか、或いは。】
【 ─── そうして立ち上がれば、背中の小銃を天高く掲げ、弔銃の銃爪を引くのだろう。「Ready」一発。「Aim」二発。「Fire」三発。「Order, Arms!」軍隊式の葬送。】
【彼方の山嶺にまで響く銃声を轟かせて、空薬莢の三発が、崖の下へと落ちて消えた。 ─── 銃を下げて、最後に、長い長い敬礼を終えたのならば】


148 : 名無しさん :2018/12/01(土) 23:07:28 PXNntnXs0
>>145

【ならばやはり胸元の濡れて張り付く感覚はどこまでも愛おしかった。赤子が吐き戻したミルクを汚くなんて思わないみたいに。ぴたり張り付いた病衣に胸の白を透かして】
【かすかに震える胸元は痛みと苦しみのふりして、しかし全部が嘘ではなく、ただし確実になにか甘さを宿していた。花蕊に誘い込まれた蝶々みたい、二人花にも蝶にもなれるから】
【花芯を湿らす蜜は甘くって当然だった。もうそんなの分かり切っているなら、――小さく呻いた声は、蕩けた碧眼と見つめ合ってしまったからに違いない】
【ごく近しい距離感に覗き込ませるマゼンタ色もまた甘やかに蕩けていることを伝えるまでもないんだろう。なら窓の外に煌めく夜景だけが、二人を夜に留め】

――ん、ぅ、――――っ、あ、もお、だめって言ったじゃないですかぁ、――、――だめ、なのに、ぃ、…………――、

【ぴくりと跳ねる背中、ひとつ、ひとつ、階段を下り行くみたいに背骨を指先が数えてゆくのなら、その行為そのものが、階段の半ばに落とした硝子の靴であるかのよう】
【十二時の鐘はとっくに鳴ってしまっていた。逃げ帰ろうとも王子様は探しに来るって分かっていた。――いつか憧れたおとぎ話のお姫様みたい、愛したのは狼であっても、】
【探されるのも探すのもごく愛おしくってたまらなかったから。ぞくぞく這い上がるなにかに身体を震わせるのなら、努めて遅く吐く息、――その終いは甘く甘く震えているから】
【なにかを堪えるみたいに潜めた眉。きゅうと噛んだ唇に指先を添えられるのなら、――せめて仕返しのように唇で甘く喰むのだろう。ちらと舌先で揶揄うのなら】
【向ける瞳はひどく潤んで被虐趣味を示すのだろうから。けれどその瞳ごと胸元に抱きしめられるのなら、埋火のように燻るだろうか。とかく、本題はそれでなく】

【――けれどなにか強いて記すのだとすれば、きっと彼女は手慰みという名目にて、頭を撫ぜていてほしかった。なんて、】

――――――――――――――――――――――――うん。

【だから至上たる胸元から見上げて紡ぐ声音は、ごくくぐもっていた。それでいてごく優しげであるのだろうか。夜更け、怖い夢を見たと主張する弟に叩き起こされて、】
【そのまま掛布団の傍らを持ち上げて、入っておいでと促すような声をしていた。"どれか"一つの言葉に対する返事であるというよりか、全ての言葉に対しての言葉であるなら】
【ならばやっぱり仕草に甘えて潜り込んだ他者の体温で暖められた毛布の温かさをしていた。上手に手が動くなら、赤子に噯気を促すように背中だって撫ぜてやりたいのに】
【叶わないなら、その胸元で暖かで柔らかで湿っぽく、限りなく生きている呼吸を繰り返す。だからその代わりに撫ぜてくれたらよかった、だって私たち二人で一人だから】


149 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/01(土) 23:28:04 5p38.LtA0
――水の国、ダイニングバー『Crystal Labyrinth』――

「おいちゃ、おにいちゃ……これ」

【繁忙時の店内】
【あちこちからオーダーを呼ぶ声が聞こえ】
【それに対応するスタッフと、そして一人の少女が居た】
【ぶかぶかのエプロンを身につけ、懸命に店内でオーダーを聞き】
【料理や飲み物を運んでいこうとするも、いかんせん不慣れであるためか、あるいは会話が不自由であるためか】
【どうにも、スタッフたちの足を引っ張っているようにしか見えない】

「おいちゃ、おいちゃ……びー、る?」
「かく、て、る?」

【そして一方では】

「杉原!!このステーキ旨いぞ!!」
「軍曹、その見っとも無いので黙って食べてください」

【かなり小柄なキャスケット帽の少女と、対照的にかなり大柄な若い男性】
【見ようによっては、何処となく犯罪の香りすら漂わせる組み合わせだが】
【店内のテーブル席の一角を陣取って、体格に似合わぬ食べっぷりで料理を楽しんでいる】
【対して男性は大人しくビールなどチビチビと】

「ああー、やっぱり肉はこうでなければな、駐屯地の食堂のステーキあれは酷いな、ゴムだゴム!」
「軍曹、声も煩いです、静かに」
「杉原、今日は私も飲もうかなーあーやっぱ飲んじゃおう!すいませーん!ジントニックを!私にジントニックを!!」
「い、ま、いく、ます?」

【この国の未成年者健全育成条例や、あるいは飲酒喫煙の法律がどうなっているのかは定かではないが】
【少女はカクテルを注文しようとスタッフを呼んで、そこにてとてとと向かうのは件の幼い少女なのだが】
【果たしてこの店内、他に誰か居るのだろうか?】



//予約です、よろしくお願いします


150 : 名無しさん :2018/12/01(土) 23:34:38 PXNntnXs0
>>142

――――じゃあ、例えばね。みんなに待っててもらえないわたし。たんぽぽをやってないわたし。子供たちにも嫌われてて。役に立たないわたし。
"そう"だったら、わたしは、要らない? そういう、――なにか"素敵な要素"を持っているわたしじゃなかったら、死んでも、いい?

わたしは、みんなが思ってるほど、そんなに綺麗ないい子じゃないのに。

【――だから、やはり、ごく意地悪な語調だった。相手の言葉をわざと逆さまにひっくり返して、わざとらしいことばかりを言うのなら】
【少なくとも傷ついてなどいない顔をしていた。いまさらこんなことで傷つかないと言いたげだった。もうとっくに傷だらけなのだと主張するかのように】
【だのにそんなのいいやしないままで、相手のせなを撫ぜる指先はごく優しいのだろう。もしかしたら彼女自身そうされたいのかもしれなかった。されたかったのかもしれなかった】

いいよ。 ――――――、そっか。それも、"いいよ"。全部、ぜんぶね、好きにしたらいい。好きにしていいよ。――我儘するの、やめちゃおう。
わたしは、知るの、遅すぎたから。――ねえつがるちゃんに教えてあげる。内緒だよ。わたしが"たんぽぽ"するのも、つがるちゃんにこうやって言うのも、全部、ぜんぶね。
ほかのだれかの人生で、わたしのやりたかったこと、知っていたかったこと、やり直してるだけなの。

【ならば即座に返される断定性の肯定もまたそうなのかもしれない。から】

――――あの二人は、きっと、許すとか許さないじゃないの。だから、やっぱり参考にはならないかな。……。それはわたしに聞かなくちゃ、いけないこと?
だって、わたし、みんなに死ねって言われてるのに。みんなに殺すって言われてるのに。――それでもここに居るの、だからね、いいんだよ。

【だけれど彼女は一番そうしてほしいときにそうしてもらえなかった。誰に許可を取らずともそこに居ていいって言葉には、だって、自分は、死を願われているんだって】
【そう返すのならいくらか遠い目をするのかもしれない、或いは仄暗い目。――涼やかな鈴の音の声、それでもやはりあなたに告げるのは全肯定であり、】

――――――ありがとね。みんながそう言ってくれたなら、良かったのに。

【情けは人の為ならずなんて言うけれど。最初からぜんぶ自分の本当の気持ちと向き合えていたなら、何か、変わったのかしら。やっぱりきっともう、遅いけれど】


151 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/01(土) 23:50:43 5p38.LtA0
――水の国排他的経済水域内、海中――

『深度を維持、そのまま前進』
『ようそろ、そのまま速力維持し前進』

【その夜の深海に、その船は居た】
【魔導海軍所属の強襲揚陸潜水艦『伊707号』】
【潜水艦にしては広く設計された船内は、計器の灯り意外に顔を照らすものは無く】
【照明は切られ、ディーゼル機構を元に設計された魔導機関故に換気も良くは無い】

「魚雷装填室聞こえるかー?」

【古めかしいが、伝声管を伝ってその魚雷発射管の手前、装填室に声を伝える】

「間も無く予定海域だ、装備と『仕掛け』はしっかり点検しておいてくれよー」

【艦長と思しき男の声は、その場に居るであろう二人に、こう伝えて】
【潜入工作のエキスパート外務八課と、魔導海軍の一派、櫻国国防陸軍の共同戦線】
【作戦に掛かる緊張は、一入の物で】

――水の国・とある路上――

「アリアさん、ミレーユさん……」
『もうライガ!あの二人なら大丈夫よ!』

【軍港付近の路上に駐車した車】
【一見何の変哲も無い、ただの乗用車】
【乗っているのは、グレーのスーツの若い男で】
【普段のバイクではない、車を運転し、その時を待つのが今の任務だ】

「スマホさん、陸軍の二人には」
『大丈夫よ、あの二人も別の場所で待機中よ、というか多分ライガ以上にやる事はあるんじゃない?』
「連絡は、常に取れるようにして置かないと」
『それも大丈夫、傍受妨害用の連絡アプリで、いつでも通話可能よ!』





――二つの宵闇は、作戦決行の刻をただ只管に待ち続け――



//予約です、よろしくお願いします


152 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/01(土) 23:56:22 E1nVzEpQ0
>>148

【薄藤色と紅紫色、切に望む声音の湿度、せめて揶揄うような口先、 ─── 少女の挙措全てに孕んだ情念を、悉くアリアは囚えて】
【抱擁に捕まえた呼吸の一息は、疼く熾火の熱量と密度を高めるばかりなのだろう。強請るペットに言い付ける御預けに似て、然るにそれよりもずっと淫靡な意味を宿し】
【それでいて言葉を続けるならば、 ─── 体位の何一ツ変わらぬまま、態度と役割の変わるのだから、爛れた信頼であった。】
【或いは役割など始めから有りはしないのかもしれない。二ツの呼吸と鼓動を一ツに分かち合うなら、雄蕊と雌蕊とが潤むのに、何の違いかあるのだろうか】
【 ───── 何れにせよ、やさしい長女の言葉遣いに、アリアは甘えていた。されど細やかな白指だけは、ずっと少女を宥めるように、淡い藤色の紗絃を梳き続けるのだろう】


「 ─── フライヤは、諜報に才能があって」「他の国に行って、誰かを籠絡して、情報を盗んでくるの。」
「尊敬してたわ。銃で戦うよりも、自分の素性を隠して振る舞う方が、よほど私は怖いから。頭も、良くって」
「でも私も、戦うことは得意だったから。 ─── お互いにきっと、敬意を払っていたわ。好い仲になったことも、あった。」


【然らば、やはり回顧の温度であった。 ─── 相違なく、今のアリアはあの女を憎んでいた。だが、それを事実としても】
【代え難い過去の想い出を、襤褸屑として切り捨てる理由にはならなかった。そういう感情を分かち合えると信じている声音だった】
【どこか自責の念さえも宿すなら尚の事だろう。 ─── 少女に対してのみならず、きっとあの女にもまた、負目を残していた】


「 ─── ある時に、私たちは任務を与えられたの。」「悪どい外交官だったかしらね。原子力資源のルートを握って荒稼ぎしてた」
「それが行き過ぎて国益を損ねる事態になったから、軍に命を狙われた。 ……… けれど、それよりも前に、フライヤは」
「随分と長い間、彼に張り込んでいたの。 ─── そうして私たちは、その任務で誰を殺すのかは、前もって知らされなかった」


【語り口はどこまでも淡々としていた。 ─── 悔いる地点を過ぎてしまった過去に対する態度であろう】
【ならば回想の結末も、少女には察しうることかもしれない。それを先に語ってやっても、寧ろアリアは喜ぶのだろう。】
【幽かに湿った白いワイシャツのボタンに、一ツずつ指をかけて、外していく。 ─── ごく面積の少ない黒いブラジャーは、露わとなる白くすべやかな柔肌を、甘く湛えて】


153 : 名無しさん :2018/12/02(日) 00:29:41 PXNntnXs0
>>152

【だからいつしか彼女にとっての至上の幸福は、蛇に祈ることではなくなっていた。そんなのとっくに伝えていたのだとしても、もうきっと彼女は蛇に祈らないから】
【柔らかな胸元に顔を埋めて、少し息苦しいくらいの呼吸を繰り返すのがきっと何より幸せだったし、そうだと疑わなかった。身体中の一対を一つずつにバラして分け合いたいほど】
【こんなにも愛しい人を孕んでしまいたい/こんなにも愛しい人の胎の中で眠りたい。叶うはずないってわかっているけど。そうだとしても】

【――語られる言葉に、彼女はごく静かに耳を傾けていた。ともすれば眼すら閉じていたかもしれない。胎の中の赤子が、それでも母親の声をきちんと聴いているみたいに】
【眼を閉じて、鼓動を聞いて。吐息をひとつひとつ数える。限りなく信頼を示す仕草に、時々、相槌を挟みながら。そして時として、それは身動ぎであり、声であり、吐息であり】
【そうしてまたきっとどこかで嬉しそうだった。アリアが昔のことを話してくれること。結局彼女はアリアの過去を探らなかった。人事のファイルも過去を知る人も、見向きもせず】
【どれだけなにかどうしようもない感情を紡がねばならぬのだとしても、こんなに近くに自分が居るなら、きっと頑張れるでしょう、って、意地悪な色】

――――――――――――――――――――――――――、   、うん、

【――――なのに、彼女は、その瞬間に、ひどく狡かった。ふわと胸元を撫ぜた睫毛の長さは開かれた眼を伝えて、だけど、数秒後にゆるりと細め】
【自分は怪我人なのだからと今更アピールするみたいに。だから何にも言えないんだって言い張るみたいに。――露わにされる胸元に赤子みたいに甘えるのに夢中であるみたいに】
【結果として彼女は柔らかな相槌以外のなにも言葉を発さなかった。だからひどく甘えていた。愛しい人の全部に。ならば相手の口より聞きたいという表明に等しくて、】


154 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/02(日) 00:43:34 BRNVt/Aw0
>>150

【貴女は生きるべきだという言葉に返ってきたのは少し意地悪な言葉】
【言った事を逆さまに返して】
【待っていてもらえなくて、たんぽぽなんかしてなくて、子供達にも嫌われていて、そうして何の役にもたたなかったらって】
【何にも出来ない子、何にもしてなくて何の役にもたてない子】
【そんな子は要らないから棄ててしまえ。それが故郷の"常識"だった】
【今までそういう子がいても「可哀想だし寂しいけど仕方ないんだ」って思っていた】
【だからそれに倣うのならば──】

……そんな訳、ないじゃない!
役に立たなくたって素敵なところがなくたって鈴音ちゃんはいていいに決まってるじゃない!
綺麗じゃなくたって良いじゃない!
そりゃ……少しは優しい方が良いけど……でも……!
【けれども少女はそれを否定した。どんな鈴音ちゃんだっていていいに決まってるって】
【逝かないでっていうように背中に腕を回して、ぎゅうっと相手を抱き締め返して】

……うん、そうする
思ってる事は言うし、何かされたかったらちゃんと言う……!
【我慢なんかしなくても良いんだって言われればおずおずとだがそうするって頷いて】
【そうして、自分がそうするのは他の誰かの人生で自分がやりたかった事や知っていたかった事のやり直しなんだって聞けば、それってどういう……と遠慮がちに顔を上げて尋ねて】

……そっか
夕月ちゃんはどうなんだろ……私を赦してくれるかな……酷い事しちゃったから……ううん、あの子が赦してくれてもきっと私は納得いかないんだろうな……
鈴音ちゃんだけに……って訳じゃないけど……鈴音ちゃんは私の世界を拡げてくれた人の一人だから
それにね、世界の流れに乗って何か行動を起こさなきゃ駄目なんだ、きっと世界そのものに棄てられるんだって不安がってた私に「そのままでも良い」って言ってくれたの、凄く嬉しかったから
だからね、此処にいても良いんだって言われるんだったら──
【言い掛けて言葉が止まる】
【「私は皆に死ねって言われてる」「皆に殺すって言われてる」──鈴音の口から飛び出した言葉】
【なんで、って口だけが動いて】

何で……何で?
皆……鈴音ちゃんに帰ってきて欲しかったんじゃなかったの……?
必ずしもそれだけじゃないとは思うけど……サーペント・カルト潰したのだって鈴音ちゃんを解放したかったからっていうのもあったんじゃないの……?
なのに……なのに……!

【上げられたまんまの顔。浮かんだ驚愕と困惑の表情】
【やがて彼女が「皆がそう言ってくれたら」なんて口にすれば】

皆は……そうじゃなかったの……?
【呟いたきり黙って】

【祟り神、人間なんか嫌い、私は綺麗じゃない、皆に敵意を向けられた】
【彼女が口にした言葉がつがるの中で組み上がっていって】
【思い出された夕月の言葉──鈴音を人間に戻したい】
【それも出来上がりかけた積み木の塔の一番上に指人形を乗せるみたいに加えて】

何かが……あったの?
【ひどく、ひどく静かな声で質問する】
【「何が」じゃなくて「何かが」。恐らくは自分の中で組み上がってしまった仮説の答え合わせ】
【戻ってきた鈴音が完全に綺麗なじゃなかったから──或いは人間に戻らなかったから、皆敵意を向けているんだ、って】


155 : ◆orIWYhRSY6 :2018/12/02(日) 01:06:37 ezvMgh4Y0
>>126

――――――出番だぜ、〝タギツヒメ〟


【刹那の沈黙に響いたのは、男の声だった】

【気障ったらしさを満遍なく塗りたくったその音色に合わせるように、黒衣の一団の背後に青い魔力光が溢れて】
【次いで現れるのはうねる大蛇が如き激流。水の一滴すら無かった空間に突如として現出したそれは】
【一団を纏めて薙ぎ払わんと、狭小な路地裏を駆けていく。質量・速度ともに十分なれば、与える衝撃は相応のもので】

ったく…………何だお前ら、新手のカルト集団か、ああ?
路地裏なら何してもいいとか思ってんじゃねえぞ。

【―――結果如何に関わらず、駆ける激流は少年のすぐ近くで魔力光へと分解され、霧散していく】
【暗闇より姿を見せた声の主は、黒い軍服姿の男だった。一纏めにした長い金髪に、エメラルドグリーンの瞳が鋭く】
【右手には一挺の拳銃、左手の指輪に仄青く光を灯して。】

で。そっちのガキ、生きてるか?
こいつらに関して聞かなきゃならねえ、死んでもらうと困るんだが―――――――

【黒衣への警戒は解かず、視線と銃口を向けたまま。言葉だけを少年の方へと投げかける】
【随分と一方的な物言いではある。どう出るかは少年次第である】


156 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/02(日) 01:19:12 Awkg8Wqk0
>>151

≫Operation Code - "Philadelphia Experiment"
≫December 02th 2018 - 00:38:56/OAT:2℃/Rainy
≫Maj.Aria "Konigin" Dernacht ───
≫Lt.Mireille "Missgestalt" Strain ───
≫"F.E.N.R.I.L." - Foreign Affair Section-8
≫Shizugasaki Naval District, Assult Submarine "I-707", State of Sakura


【月さえも陰る雨夜。水面を打ち付ける驟雨さえも海底には届かない。本来であれば人の入るべくもない発射管の中に、射し込むのは濃密な紺碧の暗闇ばかりであった。】
【冷たさに全てを押し潰すような海中には、周期的なアクティブソナーの鼓動が響いていた。 ─── 徐に静謐さを掻き分ける、リチウムイオン駆動のスクリュー音が、二ツ】


「 ─── こちらガルム1、注水完了。圧力規定値。感度も酸素濃度も良好よ。SDV(潜行輸送艇)推力装置回転開始 ……… 問題なし。」
「ガルム2、ドライスーツのヒーターもちゃんと機能してる。海流もそこまで激しくはないし、雨模様なだけあって沿岸の警備も手薄そうだ。」


【呼吸とエコーとバブルノイズに、その殆どを掻き消されながらも ─── ガルム1/アリアと、ガルム2/ミレーユは、確かに応答した】
【TLS特殊戦闘用シェルスーツに身を包み、バラクラバ越しのフルフェイス、その背に負うのは大容量開放式潜水器。潜水艇に搭載する複数の吸着爆雷】
【 ─── スリングに携えるメインアームは、特殊作戦用の回転式消音狙撃銃。サブアームには30口径の消音突撃銃。バックアップにP11水中拳銃。完全な隠密装備】
【「この天候だと光学迷彩は使えなさそうだけど。」 ─── ぼやく一言に重ねて、ボルトを引く音。輸送艇エンジンの回転数が少しずつ上がり始めていた】


「作戦行動中、公海上からSR-71E高高度電子戦機が指向性バーストジャミングをかけるわ。離脱の心配はしなくていい」
「センサーのピケットラインに接触する瞬間、2秒間だけ欺瞞信号を流す。気休めだけどね。 ─── 現在位置の逆探知を避ける為、以後は一切の双方向通信を遮断するよ。」


        「ガルムチーム、射出開始。ターゲットまで約45km。 ─── 状況を開始する。アウト」


【固定ラッチを外す音。昏い海を下向きのサーチライトに切り裂きながら、中深度へと緩やかに泳ぎ出していく2艇のSDV。】
【 ─── 片道でさえ凡そ3時間の、極めて過酷な行程であった。だとしても彼女らを待ち受けるものが無ければ、恙無く破壊/救出目標に辿り着くのだろう、が。】


157 : 名無しさん :2018/12/02(日) 01:22:31 PXNntnXs0
>>154

役に立たなくて、素敵じゃなくて、綺麗じゃなくて、少しも優しくなくたって、いい? ――――ほんとうに?

【――くす、と、微かな笑い声がした。吐息に混ぜて何かを誤魔化すときの、笑い方だった。あどけない顔を努めて大人びた色合いに整えるのなら、彼女はやはり子供ではないから】
【だけど同時に大人になりきれなかった子供でもあった。あるいは生まれる前に死んでしまった赤子とも似ているのかもしれなかった。さなぎの中で死んでしまう芋虫みたいに】

――――――――知っているって、とっても、強いの。知らないって、――知らないとね、出来ないんだよ。いろんなこと。だって、知らないから。
だけど、知ってたら、――知っていたら、出来るかもしれない。知ってさえいたら、――いちばん大事な時に、思い出せるかもしれない。そうしたら、
もしかしたら、そのことだけで生きていけるかもしれない。――――――――なら、良かった。

【知らないと忘れているでさえ天地の差だった。なれば、知らないと知っているはもはや比べることもおこがましいほどの何かであるのだと、きっと彼女は信じていた】
【何か一つ知らないだけで人間とは容易く総てを踏み違えて死ぬものだといつしか気づいたのかもしれなかった。なら。――自分の言葉に何か意味があったなら、うれしい】

わたしが、わたしを傷つけた全部を嫌いだから。――だから、世界だって、嫌いなの。――――だから、綺麗じゃないわたしは、みんな、要らないから。

【だからか表情はきっと笑っていた。見上げられる距離感の近さにほんの少しの気まずさがあるみたいだった。――、だって、結局、それで言うのは、ごく個人的な理由に終始する】
【たくさんのひどいことをされた世界だから全部滅ぼすのだと言う。――――いくらかの沈黙。やはり肯定していた。なにかを。相手の言葉を。だから、】

"何か"って、いつから?

【冬の夜に綻んでしまった桜はこんな顔をするのだろうか。周りを見渡そうにも闇は深く見通せず、誰も照らしてくれないなら、ひとひら、ただ萎れるだけを運命付けられ】
【けれど開いてしまった花弁を頑なな蕾に戻すことは決してできず。そしてきっと春の温かさに憧れ乍ら凍り付いていくような。ならばその花に気づくのなんて、】
【木の下に眠る愛しいひとへ毎夜毎夜逢いに来る神様でしかありえなかった。神様の蛇でなければ眠ってしまう厳冬の中だって、その神様なら、わたしに気づいて/見ていてくれるから】


158 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/02(日) 02:31:56 BRNVt/Aw0
>>155

【突如響いたいやに気障な男の声】
【少年や黒衣の一団が反応するよりも速く青い魔力の光が溢れて】
【轟、と響いた水音。瀑布か、はたまた荒れ狂う川かという程に溢れた激流が黒い一団を薙いでいき】
【ばらりと舞った黒い笠が二つ三つ】

【やがて奔流が少年の前で途絶えて霧散すれば】
【不思議な事に黒衣の一団の姿はかき消えていて】
【舞い降りた黒塗りの笠すら地に落ちるか否かの一瞬で影に融けるかの如く消え失せる】

──え……はっ?
闇狗(クロイヌ)の奴等……え……?
【銃創が痛む事すら忘れかねない程衝撃であったのか少年はぽかんとした表情で一団が消え去った地面を見つめて】

ぇ、何だテメェ……手妻でも使いやがったのかァ……?
そうじゃねェと普通人消えねェ……よなァ……?
【酷く呆けたような表情で男を見上げて】
【えェ……何が何だか……と困惑したように呟くが】

あー……とりあえず生きてる、が……
脚とかは……痛ェ……が……
【とりあえずは……ありが、とう……?と少年は何故か疑問形で礼を述べ】
【そうしたっきり頭にクエスチョンマークを浮かべて何やらまた地面と男を交互に見始める】


159 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/02(日) 02:32:47 BRNVt/Aw0
>>157

【くすり、と笑われて、素敵じゃなくても本当に良いの?と尋ねられれば少女は小さく唸って目線をそらそうとする】

うぅ……ごめん、そこまで念を押されるとちょっと自信なくなってきちゃう……
でも大概はね、多分、許容……って言っていいのかな?出来ると思う


知っているって事は強くて……いろんな事が出来る……?
えっと……つまり「そういう困ってる子」がいるって知っているからたんぽぽが出来たって事……かな?
それで……うーんと……知っていたから……たんぽぽが生きる希望、で……?
【言っている事を何とか理解しようとする。けれども途中で自分でも言っている事が訳が分からなくなってしまって】
【ちょっとだけ困惑したように相手を見る】
【けれどもたんぽぽが彼女の生きていける支えだったとしたら──きっと自分は何か許されない事をしてしまっている。何かは分からないけどそんな気がして】
【彼女に対する一番の重い罪状なのに、記憶にすらなくて】
【(きっとそれを知り直したらまた罪の意識に苛まれるかもしれないけれど)】


……そっ、か……
先に遣ったのは、向こうで……鈴音ちゃんはだから世界が嫌いになったのに……皆は綺麗な鈴音ちゃんじゃなきゃ認めてくれないんだ……

……夕月ちゃんも、オムレツさんも、綺麗じゃなきゃ要らないって?
【ひどく、ひどく静かな声だった】
【恐ろしさを感じる程に静かで冷たい、雪降る夜のような声】


いつ、って……
鈴音ちゃんが今こうして現世(うつしよ)に戻ってきて……その時……でも……言わなくても大丈夫だよ
【さっきの言葉で、何があったのかは理解したからと少女は優しく返す】
【先程仲間達もそうなのかと尋ねた声色が雪降る夜だとすればそれが次第に明け始めたような、冷たくて不安な様を内包しながらも少し暖かい、声】


160 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/02(日) 14:03:21 6.kk0qdE0
>>156

「そろそろ水国海軍のソナー探知範囲です」
「探信儀(アクティブソナー)から聴音儀(パッシブソナー)に切り替えろ」
「宜候、了解です」

【警戒海域に近づいた事により、ポとコの中間の様な、くぐもったソナーの反響音がぴたりと止み、代わりに船体を耳としたかの様な、鋭敏なソナーマンの耳が頼りとなる】

「前方に障害なし、魚雷発射管1番〜2番注水」
「了解、1番〜2番注水」

【2人のいる魚雷装填室は、その指示と共に慌ただしく動き始める、2人が其々待機する魚雷発射管ハッチが開き、海水が流れ込む】

「魚雷発射管1番〜2番注水完了」
「目標座標到達、宜候」

【海軍兵士より、其々の工程が終了した事を告げられる】

「よし……行け外務八課、魚になって来い!」
「魚雷1番2番撃ちぃー方始め!」
「撃ちぃー方始め!!」

【ハッチ解放、魚雷として2人のSDVが射出される】
【海底の地形、沈没船の残骸、その他障害物は無く極めて小型潜水輸送艇の航行には問題のない位置】
【順当に行けば、目標駆逐艦までは障害無く到達は可能だろう】
【暗い、ただただ暗い孤高の海中、この過酷極まる任務の果てに、2人は何を見るのか……】


ーー水国軍港・駆逐艦『雷』ーー

「ふぁ〜、こんな雨に歩哨たぁーついてねぇぜ」
「全くですね〜兵長、あ、終わったら一杯どうです?寝酒ってなもんで」
「おっいいね、いいね〜伍長、機関科の奴らも誘ってちょっくら洒落込もうぜ」
「え?あ、あの〜警戒任務中にお酒はマズいんじゃ……」
「ったく固えな一等水兵、バレなきゃいいんだよ」
「そうそうそう、バレなきゃバレなきゃ〜」

【船上には幾名か、ちらほらと歩哨の兵士達が見受けられる】
【最も、誰も船底から来る等予想もせず】
【また、誰も喫水線下など、警戒もしていない】
【天候は雨天、時刻は夜明け前、視界はこの上なく悪い日だ】


161 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/02(日) 14:54:22 6.kk0qdE0
本スレ>>418

「いや、ラーメンはおかしい、ラーメンは」
「しっ、さっきのを見たでしょ軍曹、無理矢理作らされてるんですよ」

【正式なメニューどころか、恐らく賄いですら無い物なのだろう】
【指示なき強制により、厨房で名うてのシェフ達がラーメン作りに駆り出される光景が目に浮かぶ】
【霧崎本人は、其れを意識しているのか居ないのかは、不明であるが】

「必要悪だ、軍隊もヤクザも、必要が無いならば無いに越した事は無いさ」
「最も、どちらも必要とされなくなるのは、かなり後の世の中だろうがな」

【存在しているのは、誰かが何処かで必要としている証で、あくまで、必要があるから存在していられる、と】

「少し違うな、強いて言うなら陸軍が協力体制を取って、我々が派遣されたのは厳島中尉の捕縛後だ、我々は中尉には面識も無い」
「先に話しました魔導イージス艦の計画、そのイージス艦は既に一隻は完成しているのです」
「そのイージス艦を起動させる鍵があるんだが、此れは人工生命でな、それが逃亡したのさ、勿論、土御門派の差し金でな、其れが入り込んだのがこの国だ」
「どうにも厳島中尉が保護する手筈だった様だが、先手を打たれたな……中尉達はこの有様、その人工生命はチームMにも名前があるだろう、アーディン・プラゴールってのが保護したのを確認した」
「私と杉原の任務は、このい号文書に名前のある協力者達の身柄の保護と、本件への情報収集だ」
「海軍の奴らに狙われるのは、単純にこの国で邪魔で怪しい動きをしている謎の2人って認識されてるからだろうな」
「だが刺客とか率先して狙って来てる訳ではない、彼等の目的はあくまで魔導イージス艦の鍵『みらい』だからな」

【ここで、注文のコーヒーを手にして】
【一息ついた後】

「なるほど、やはりこの斜線はそう言う意味が……悲しい話だな」
「ん?活動が困難?チームMは瓦解状態なのか?UTに関しては聞いているが」

【気になる話だった、記載のあるチームMが頼みの綱となるかも知れないと思えば、現在主要メンバーが動けない状況にあると言う】
【一体何があったのか、と】

「最後の一手?何か秘策があるのか?」
「それは、この場我々では話せない内容か?」

【黒幕相手に最後の手がある、と言われれば、やはり気になる部分であり】
【また、黒幕に対する事は本件に置いても重要な事である、と、考えて】
【だが、話は全く違う方向へと飛び火し】

「す、杉原!!!!お、お前此の期に及んで!!」
「あ、いえ、それは……」

【意味を理解したのか、頭を引っ叩きながら激昂する百合子と、表情は崩さずに同様する】
【後ろの護衛の人を見よ、何か口パクで罵りに来ている、下手な事を言おう物なら蜂の巣は免れない】

「余りに、霧崎様がお美しくあらせられて、見ずには居られませんでした……つい……申し訳ありません」

【表情は全く崩さずに、スラスラと言ってのけ】
【そして誰もが感じただろう、この場の空気が一気に冷え込み固まるのを】


162 : ◆orIWYhRSY6 :2018/12/02(日) 23:17:15 VV284NR60
>>158

【視線の先、警戒対象としていた一団は霞のごとく掻き消えて。舌打ちを一つ、男は夜気に響かせた】
【気だるげな足取りは少年へ。地を擦る音をたてながら近づいていく】

……あぁ?俺のはそんなイリュージョンショーみてえな能力じゃねえぞ。
第一、あの連中の事なら、お前が知らねえ事を通りすがりの俺が知ってるわけないだろ?

【「だってなあ、」――――細めた瞳は少年を確かに捉えて】
【「お前の〝ソレ〟」――――指先は己の首元を指して】


――――――さっきのやつらと同じ、だよなあ?

【既に警戒の対象は移っている。襲われていた側とはいえ、彼もまた、同じ紋章を持つ人間であるのだから】
【手にした銃は納めず、その向きだけが変えられて。】

なーに、すぐに死ぬような傷じゃあねえ―――今のところは、な。
さ、仲間割れだか何だか知らねえが、詳しい話を聞かせてもらおうじゃねえか。

【少年の疑問形は、強ち間違いでもなかったのだろう。男は手放しに彼の味方というわけではないようだった】


163 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/02(日) 23:46:18 BRNVt/Aw0
>>162

【一団がかき消えたのは彼の能力ではないのだと言われれば少年は「うぇっ!?」と変な声を発して】

ち、違ェのかよっ!?じゃあ何で闇狗の奴等……
【だぁぁっ!分っかンねェ……と呟きながら身体を起こして座る形になった刹那、疑いの目が自分に向けられて】
【警戒の対象となった赤い襟巻に描かれた印。少年はその裾をじーっと見つめて】
【それから視線を男に戻せば双つの紫は銃口を捉えて】

…………あー……
【もしかしなくても疑われていると察したのだろう。気まずそうに苦笑して】

仲間割れ……じゃねェな……脱走?
あー、と……取りあえず話す前にちィとばかり聞いとくが……

テメェは何処の所属(モン)だ?『水』か?それともまた別の?
"知らねェ"って事はまた別のなんだろうが……


164 : ◆orIWYhRSY6 :2018/12/03(月) 00:27:54 cQ9LhjsE0
>>163

――――水の国陸軍曹長、ダイン・ハートランド。
生憎と、俺の担当方面ではそんな得体の知れないマークは見たことがなくてな。
関わりがなかったか、それとも全く興味なかったか、だ。

【銃口を向けているものの、身分を問われれば存外簡単に男は応えてみせた】
【軍人ということを鑑みれば、なるほど軍服という服装にも納得がいくか】

さあ、こっちは答えたんだ。そっちも答えてもらおうじゃねえか。
まずはお前が何者なのか。それからさっきの……クロイヌ?とやらと、お前の関係。

【視線と銃口とで以て彼を捉えて。さあ、と返答を促した】


165 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/03(月) 01:06:40 BRNVt/Aw0
>>164

水の国、で……軍人か……
こないだの奴たァ違ェけど本当に水の国には色々いンだな、『正義の味方』って奴が……
【こんだけ色々いやがンなら"奴ら"も栄えやしねェな、と少年は何故か得意気に笑って】

……ンな急かすんじゃねェよ、言われなくても此方とら答えてやるつもりだっての……
【かと思えば返答を促され不満げにじとりと相手を見て頭を掻く】

俺の名は善知鳥(ウトウ)クラマ、出身は見ての通り櫻だ
所属とか彼奴らが何者かとか……はだな……あー……とォ……
先ず、前提としてだな、元々櫻で活動していて最近此方に進出して来た『ヨシビ商会』って会社がある
此奴は櫻の妖怪とかを海外に秘密裏に売り捌く商売で成り立ってて……俺は其処の社員、"だった"
ッつーのも仕事に嫌気が差してだな、上に辞表叩き付けてやったんだよ
ンで此方の大陸である目的を果たすかってなったらさっきの奴等が来やがった
あの黒い奴等は『闇狗(クロイヌ)部隊』って呼ばれてる連中でウチの……え、えるー?あー…………せーえー部隊だな
多分俺が辞めるッてンで追ってきたんだろうぜ?
【まァこんなトコだが何か他に聞く事あるか?と少年は尋ねる】


166 : 名無しさん :2018/12/03(月) 01:31:19 Aq/kw62M0
>>159

違う。そうやって、自分のために生きていいってこと。それ以外のことでも。知らなかったら、出来ない。しようとも思えない。――知らないから。
わたしが知っていたかったこと、教えておくの。わたしはもうきっと遅いから。

【困惑したように見られるのなら、少女はきっと笑っていなかった。そういう風に困っている子がいることを知らない人生、なんて、だって、自分にはありえないから】
【そうしてまた生きる支えとも違った。出来ることとやりたいことの一致の結果。自分のために少しいいお菓子を買うみたいに。自分のためにお気に入りのブランドの服を買うみたいに】
【彼女のとって"たんぽぽ"はずいぶんとそういう意味合いを兼ねていた。自分がやりたいからする。自分のためにする。自分の中の何かを満たすためにする。けど、生きる支えではない】

【どうしてみんなわたしをそんなにきれいな子だと思うのかしら】

――――――そ。じゃ、あんまり、ないかな。"分かってた"し、――、みんなに殺されそうなくらい。知らないひとにも。
夕月ちゃんとはまだお話してないから、どうかな。――、オムレツさんは。一緒にご飯食べたよ。それでも、やっぱり、きっと、綺麗なわたしがいいよね。

【――なら、戻って来てからは、静かな失望と絶望と諦念。それがほとんどであるのだろう、ならば出来事など、知らぬひとにまで命を狙われる程度であり、】
【だからあの女の子は元気なのかな、なんて、薄らと考えていた。蛞蝓に存在のほとんどを食い荒らされていた女の子。だけどきっと今は幸せに暮らしていて、ならば、】
【もはや"白神鈴音/わたし"どころか、"わたし/ウヌクアルハイ"にすら祈る必要のない子。――とはいえ、特別な興味は薄かった、ふたり話したことも、ないのだし、……】

【(それでも一度くらいは、あれだけ祈ってくれたことに報いてあげたくもあったのだけど、なんて)】

【まったく別のことを考えているなら、いくらか声はぼうと薄皮一枚越しのようになるだろうか。そうしてまた眼差しも、どこか遠くを見るようになるのだろうか】
【簡単に言うのなら上の空。――それでいて、そこまでひどいものではない。尋ねられたとて、なんでもないよって言って終わってしまう、一瞬のこと】

――――――――――――――――つがるちゃんは、わたしのことを気にするより、まずは自分のことを気にするべき、かな。
わたしは、――たんぽぽするって決めた時に、決めたよ。泣いてるばっかりのわたしじゃ駄目だから、泣くのだって我慢するようにした。……髪だって切った。

【「伸びちゃったけど」】

優しいのはいいけど。――そんな怪我をしていて、優しいことを言われても、困っちゃうの。その優しさは、まず自分に向けてあげたほうがいいよ。
わたしは世界なんて人類なんて滅んじゃえばいいって言った。つがるちゃんが許容してくれるんだとしても、みんなはわたしを許容しない。
――わたしを止める神様なんていないの。それでもきっと何も変わらないから。これはわたしの復讐だから。

【艶とした黒髪の毛束を指先に摘まんで、少女はいくらか困った顔をしていた。再び切ってもいいはずだった。だのにそうしないのは、なにか、思うところのあるように】
【なによりいつかの断髪は我慢することの象徴だった。感情を抑え込む誓いとして切り落とした毛先だった。ならば長い髪は今となっては悪い子の寓意であるのかもしれず、】
【――暖かな声を、けれど彼女は拒んだのに違いない。それ以外の何でもない。わたしに暖かくするより先に、自分の心を暖めてやるべきだと】

そう、でも、ありがとう。

【――――思い出して付け加えるような言葉も、決して嘘の音階ではなかった。心にもないことを囁くような表情では、決してなかった。それでも、】


167 : アーディン=プラゴール&ブラックハート ◆auPC5auEAk :2018/12/03(月) 21:24:46 ZCHlt7mo0
>>147

――――ん……っ?
「ぁ……!?」

【墓石を撫でていた獣人の耳が、ピクリと震える。跪いていたサングラスの女性が、顔を上げる】
【近づいてくる気配を察知して。そして現れた人物を認めた2人は、驚きの表情を見せた】
【――――獣人の方は、既に何度か『虚神』との戦いで肩を並べていたのを、思い出されるだろう】
【ライダースーツにサングラスの女性の方は――――印象が残っていたかは分からない。だが、かつて『エカチェリーナ』との戦いで、1度だけ同じ戦場に立っていた】

【2人共に、ここに眠るレグルス=バーナルドに所縁のある人物。だからこそ、その邂逅には驚きがあったのだろう】
【何の因果か、身内だけの密かな弔いに、更なる仲間が来てくれたのだから――――】

お前は……そうか、レグルスと、縁があった仲間というのは、お前の事だった訳か……
――――あぁ、是非、弔ってやってくれ……奴は「辛気臭いのは御免だ」とでも言いそうだが、今くらいは……な

【獣人の方は、すぐに事情を察して、大きく頷きながら身を退く。墓石と眼下の廃村を臨む崖を、彼女――――アリアの為に譲って】
【胸に手を当て、瞑目――――黙祷を以って、彼もまたその死を悼み、そして故人を偲ぶ】

<っ、う…………れ、レグルス……アルク……ッ>
<……アイシャ、もう泣いたってどうしようもないだろ……>
<ジャミル……私たち、同窓生なんだよッ? レグルスの事、嫌いだったのは分かるけど、少し、ひどいよ……ッ!>
<……だが、尊敬はしてたし、特別な仲間だというのも本当だよ……ならず者上がりが、あそこまで力をつけられるなんて、な……
 レグルスも、アルクも……殺したって死にそうにない連中だったんだ。……正直、今でも信じられん……>
<……先輩……>

【弔いの空砲が、その場に集っていた魔術師たち――――レグルスの、魔術面での仲間達――――の胸を、再び強く揺さぶった】
【悲しみに暮れる赤毛の女性。それを沈鬱に受け止める長身の男性。そして、どこか幼さの残る少年。個人として、どういう縁があるのかは分からないが】
【――――彼らは戦いからは縁遠い者たちだった。それでもその死を悼み、そして惜しみ、嘆き悲しんでいるのは、間違いなかった】

「――――あんたの一本気、嫌いじゃなかったよ。レグルス……」

【廃村の光景を見下ろしながら、ライダースーツの女性がポツリと呟く。短い一言に、自分の思いを乗せて】
【というよりも――――むしろ、現れたアリアの方に気を取られていたのだろう。サングラス越しにその後姿を何気なく見つめて】

「(――――? なんか……この女……?)」

【何とは言えない違和感――――恐らくは、相通じるものがあったからこそ、彼女はそれに無意識でも、気づいたのかもしれない】



――――考えてみれば、何度か共に戦ったというのに、名前も名乗っていなかったな……
……俺はアーディン、アーディン=プラゴール……で、そっちが――――
「――――ブラックハートさ。『奴』とは……そんなに親しい訳じゃなかったけど、訳があってね……ちょっとだけ、力を貸してたのさ」

【――――頃合いを見計らって、獣人――――アーディンは、今更のように名を名乗りながら、薄く笑んで見せる】
【本来ここは沈痛な場で、これくらいの酷薄な笑みが、丁度良かったのかもしれない】
【そして共にいる女性――――ブラックハートも、やはりレグルスの仲間だった。アリアの言う通り、こうして惜しまれるだけの人物だった、という事の証左なのだろう】


169 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/12/03(月) 21:27:11 ZCHlt7mo0
>>149

――――頑張ってはいるようだが、な……
「……あれ、良いのかよアーディン……微笑ましいのは結構なんだけどよ、本当に大丈夫か……?」
……それを何とかするのも俺の仕事だ。本人が張り切ってるのに、水を差す事もあるまい……

【慣れない調子でホールスタッフとして奮戦する『彼女』を見守りながら、テーブルから苦笑している2人の男がいた】

【短いバイオレットの毛皮で全身を覆い、その上からフード付きのマントと半ズボンを着用している】
【左目へとめり込む様な、人相を歪ませている大きな傷跡、更に頬にも大きな傷跡の目立つ】
【ずんぐりむっくりとした体格の、尾の先が不自然に二つ裂きになっている、右目の眼光の鋭い、身長150cm前後の猫の特徴を宿した獣人と】

【荒んだ雰囲気を感じさせる、少しくたびれたこげ茶の革ジャンを着こなしている】
【長髪と言う訳ではないが、やたらボサボサとボリュームのある金髪を持った】
【不良中年、という言葉を脳裏に掠めさせるだろう雰囲気を持つ、身長170㎝前後のサングラスの男性】

【周りのスタッフたちの手助けを借りながら、何とか何とか仕事をしている少女を見守りながら、それぞれに軽くグラスを傾けていた】

<……旦那、あの子はどうなさったんで?>
少し、訳ありの預かり子だ……バーに子供がいると、気に入らないという客もいるが、そうしたオーセンティックな面々は、そう足しげく通う訳でも無い……
まぁ、少し不便をかけるかもしれないが、ご愛嬌だとでも思ってくれ。あの子にも、少し動いてしゃべる事は、必要だろうからな……
……この辺なら、滅多に公権力の査察の類も入らん――――何より、俺が踏み込ませんよ……
<なるほど、子供には優しい旦那らしいな……!>

【不思議そうに問いかけてくる常連の1人に、獣人は肩をすくめながら答える。相手も、それで納得してくれたようで、物珍しげにその光景を見つめて】

「……けどま、あんまり話が広がるのも不味いだろ? 一応、匿い子なんだからよ……」
――――そうだな。そこはちゃんと考えているさ。何も無防備にいるつもりはない……ッ
「……へぇ」
(――――『軍曹』、な。隠す気があるのやらないのなら……櫻の軍人がここにいる。偶然で済ますつもりはないさ――――ッ)

【そうした、どこか和気藹々とした雰囲気を見守りながらも、獣人と男性はわずかに声を潜める】
【――――櫻系の呼び名で互いを呼び合う、奇妙な男女の連れ合い。その会話に、獣人は耳をそばだて、その耳をピクリと震わせていた】
【普通に食事を楽しんでいるようだが――――今の状況で、彼らは『敵』との繋がりを以っている可能性の高い連中である事は、十分に把握していた】
【既に、そうした事態も想定済みなのだろう。何気なくショートグラスを傾けながらも、じっと獣人は、2人組のテーブルに向かう少女を見つめていて】

【――――誰にも分からないテーブルの下、足首で合図を送る様に、床をトントンとタップしていた】


170 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/12/03(月) 22:41:05 arusqhls0
>>38

【幽玄に触れる霞の様相、或いは枝垂れた柳の風体、──── 枯れ尾花と称するには些か潤いに過ぎて、されど艶】
【神様の悪戯に似て、貴方の指先は虚空を掴むはずだ、彼女はするりと座り込んで、その指先を回避して】
【後に残るのは風情の様に、──── ほんの先端だけに感じさせる、柔らかな幻想】


快い返事を頂くまではお預けですわ、最初に甘い甘い褒賞を見せびらかすのは交渉の基本ですもの
そして同時にお安い女と思われぬ様に、と ──── 下品と色気とを履き違えてはいけませんわ、淑女の嗜みでいらして
加えて言えば、こんな衆目の下で私の淫らな姿をお見せするのは、──── 恥ずかしいですし


【片方の瞼が閉じた、幼なじみが見せる親愛の情、からかい半分の瞬き崩れ、流し目に宿る憂いを残して】


──── 難しい問いですわ、 "私" がしているのは、この国を護るという行いそれそのものです
或いはかつて、justiceが目指した理想を、私は時を越えて場所を変えて、行っているだけに過ぎませんわ



……そして同時に、それは、──── 私という舞台での戦いに終始しなくなったのです




【両の目を閉じる、──── 浮かぶ景色の多寡を、敢えて語ろうとはせずに】




本来であれば、民主主義という法則の上で、私が戦う政治という場所こそが、最も平和に近い場所だったのです
けれどもそれは、今の水の国に於いては十分な役割を果たしているとは言えませんわ、──── ええ
今、私達が相対している敵は狡猾であり、加えて念入りなのです、──── そして恐ろしく、頭が切れる

だからこそ、私は再びこの舞台へと現れたのですわ、──── 一度は前線を退いても尚
貴方達と同じステージに立つことを、私は選んだのですから


171 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/03(月) 22:52:12 BRNVt/Aw0
>>166

……自分の為に生きる……?
えっと……私、そうやって生きてきた……と思うよ?棄てられたくないから頑張るのは結局自分が生存する為……だろう、し……
【困ったように見上げた顔。相手は笑ってなんかいなくて】
【それで少女は少しだけしょぼくれたような表情になってしまう】
【どうすれば自分の為に生きるという事になるのかが分からなかった。今まで自分の"世界"には母親しかいなくて、その母親(せかい)に棄てられたくなくて必死で】
【それが潰えれば今度は鈴音や厳島や夕月が拡げてくれた新しい"世界"。やはり棄てられないように役に立たなければと必死で】
【きっと、本当に好きなものもやりたい事も何も無かったし何が得意なのかも自分自身ですら理解していなかった】
【どうしよう、どう答えるのが正解なんだろうって焦ったように考えて】

で、でも……!物事を始めるのに早い遅いはないん、じゃ、ない……かな、て……
【だから続く言葉は何だか頓珍漢。途中で正答じゃないと解って段々尻すぼみになっていって。涙目で「ごめんなさい」と一言謝って】

……そっか……
夕月ちゃんはまだどうだか分からなくて……オムレツさんは……
じゃあ、どっちも鈴音ちゃんが綺麗じゃなくても良いって思ってるかもしれないって事、だよね……?
【だったら少しは安心した、とつがるは内心胸を撫で下ろす。鈴音を待っていたあの二人、特に鈴音の居場所を護らなきゃって意気込んでいた筈の夕月が今の鈴音を全否定するような事があったらと恐れていたから】
【そうしたら、今以上に嫌われる覚悟をしてでも夕月に物申してやらねばと思っていたから】

きっと、じゃ……まだ分からないよ……"きっと"で動けなくなってる私が言える事じゃないかも、だけど……
【そうして「それでもやっぱりきっと綺麗な私がいい筈だ」という言葉を耳にすればそう呟く。まだ望みはあるかもしれないんだって】
【でも流石にそれは楽観視し過ぎなのかな、なんて言葉は冷たい風に小さく散って】
【上の空の相手にはその弱々しい励ましは聞こえたのだろうか?】


……ごめんなさい
自分を気にする、とか自分に優しくする、とか……どうすれば良いのか解らないよ……
【そうして、自分の事を気にして、優しくしてやれと言われれば彼女は酷く泣きそうな顔で笑って】

それとね、この怪我の事なら大丈夫なの
全然痛くなんかないんだよ?
貴女の信者だったムリフェンって女のお陰なの
あの女に蛇の刺青を使われて凄く痛くされたら、もうなんにも痛くなくなっちゃった
だからね、大丈夫

後、ね、鈴音ちゃんは私を買い被りすぎだと思う
私はね、全然他の人に対して優しくなんかないよ
だからね、鈴音ちゃん……それは私から貴女への言葉でもあるよ
もっと、自分自身に優しくして
……貴女がいなくなってしまってからずっと、そう伝えたかった
【ごめんね、今更言ってももう遅いよね?ってつがるはぽろりと涙を流して】


あ……あのね!私!鈴音ちゃんが復讐するって決めたんなら止めない!
鈴音ちゃんがそうしたいんなら人類だって、世界だってそうなっても受け入れるよ!
流石に手伝え、は……しないけど……
【けれども『それ』が自分なりのの復讐なんだって聞けば慌てたように涙を拭って宣言する。滅びを受け入れるんだって】
【だって、晩冬の『あの日』に少し方向を間違っていたら自分だって人類を憎悪する復讐者に成り果てていたかもしれないんだから】
【自分は神様でもないし、復讐者とまではいかないけれどもひとは裏切るものなんだって諦観するようにはなっているけど】
【そうして、つがるはまた泣いてしまう。ごめんね、って】
【ごめんね、手伝うでもなく止めるでもなく静観するだけとか、ほんと私って弱虫だよね】
【ほんと友達思いなんかじゃないよね、本当にごめんね、と】


172 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/12/03(月) 23:00:06 arusqhls0
>>115

【イスラフィールは僅かばかり躊躇った、──── 黒陽の語る理論は、間違いなく自分達の落ち度を示した】
【知っているからこその失態、知っていても尚防げなかった結末、或いは着いた結論にその無力さを感じ取る様に】


例えばロールシャッハやジャ=ロといった、恐怖や死に纏わる能力に対し、スナークの能力は "不条理" ────
確かにそれ単体は世界をどうこうする能力ではありませんわ、 "固執" という一つの側面に照らしたとしても
その能力そのものは一つの危ない異能に過ぎず、世界を大きく変容はさせないのです

だからこそロールシャッハもスナークには協力の姿勢を見せたのでしょう、確認できる限りでは
インシデント "破水" に於いても、ロールシャッハはスナークへと協力している点がありますわ



──── 聞かせてくださいますか、そう問いかけるという事は、何かしらの推測を立てているのでしょう?


173 : 名無しさん :2018/12/03(月) 23:30:03 tDb/VzSE0
>>420

【そうしてするり弄ぶ指先ごと、誘われるように少女の唇まで導かれるのだろうか。ならば何をするかって分かり切っていた、――ごく児戯のような口付け】
【柔らかな唇をそっと触れさせてお終いのキス。数度指先に弄んだ結末はそんなもので、それだから、なにか物足りないのかもしれないけれど、】
【かといって少女はすでにしれっとした/それでいてどこか隠しきれない悪戯っ子の顔しているのだから、きっと、狡くて】

ふうん――そっか、…………ふふ。じゃあ、今。わたしは、世界に消えちゃえって、思ってないんだ。

【――なにか揶揄うような声をしていた。けれどあるいは同時に何かを確認したみたいでもあった。だって世界はここに在るから、それは即ち、その証明だと】
【世界はまだここに在り続いている。そのことのみですべてを証明できた。そしてまたきっと説明も出来た。――彼女が本当に何もかも嫌いで壊してしまいたい神様であれば、】
【だって何かが違っているはずだった。そうであるべきだった。――――だってそう出来る神様であるはずだった。だのに、そう、一番力を持っていた時さえ、世界は、続いて、】

――――――――――――わたし、ね、憧れてたの。非道いことをされたのは嫌で。嫌なことをされたのは嫌で。嫌なことたくさんあって。……嫌い、だけど。
…………今も、忘れられないの、ちっちゃいころに思い浮かべてたような、"ふつう"も、これからわたし、"ふつう"になれるんじゃないかって気持ちも、
……真っ青な空と、真っ黄色の銀杏並木と、……きらきらのお嫁さんのドレスも、……。……、あの時のわたしは、確かに、人間が、大好きで、………………――、

【覗き込まれる瞳の色。真紅と血の赤が見つめ合うなら、どこまでも黒色は邪魔だった。だって黒色の瞳は人間として生まれた彼女のまなざしの色なのだから】
【ならば赤色の瞳は神様として生まれた彼女のまなざしの色。ヒトとして振る舞うに彼女の瞳は赤すぎて、そうして神様になるには、その瞳は黒すぎて、困り果てた顔】
【――もう何もかも遅い躊躇いでもあった。喉の奥を小さく鳴らした感情は哀しみだったのかもしれなかった。だから、そう、これはやっぱり未練と呼ぶにふさわしい感情、】

ねえ、イルちゃんは、わたしのこと、嫌いにならない、よね? だって……、イルちゃんは、神様で、女の子で、だから、今までと、……ちがくて。
――どこにも、いかないよね? わたしのこと要らないって、言わな、――――、わたしの、こと、置いて、行かなぃ、……、っ、行かない。よね?

【次の瞬間に浮かべる表情は、きっと涙にごく等しいものだった。覗き込まれる瞳に見つめ返すなら、訴えているのは同じことなのかもしれなかった。――なんて】


174 : in"2Q36" ◆3inMmyYQUs :2018/12/03(月) 23:31:04 nHxGsN220
(続74)>>143-144


【――海賊のパーティーみたいに騒がしくもあって、】
【けれど遠くの風の音が聞こえるくらい凪いだ日もあって】


【陸の上なのに本当に航海しているような】
【そういう、日常と呼んでもいい日がしばらく続いて】

【三秒以上口を開き続けたことのなかったわたしが、】
【少しずつ、まともな口を利けるようになってきた頃だった】



【その日、全てが変わった】



【――――――――――――】



【口数が増えたからといって話す人数まで増える訳じゃなかった】

【あのアームレスリング大会[*1]以降、】
【ロックンロール部屋にいるとやたらと声を掛けられることが増えたから、】
【――半分くらいは血走った目でミランダの居場所を尋ねてくる人だったけれど――】

【流石に落ち着かなくなったわたしは、あてがわれた船室に籠もりがちになって】
【その日もいつも通り、吊ったフィラメント電球の下で、毛布をかぶって、本を読んでいた】


【――人の言葉を喋る白い兎を追いかけて、穴蔵に落っこちるドジな少女の話】
【有名な古い本らしく、色んな人に読み継がれてきたようでもうぼろぼろだったけど、】
【わたしはまだ読み始めたばかりで、開いてからまだ一度も栞を挟んでいなかった】

【『アリス』ってそういうことだったのか――と、】
【あの筋骨逞しい“女流男子”の姿を思い浮かべて、すぐに脇へ置いて】
【隣の隣ぐらいから漏れてくるロックを聴くとはなしに聴きながら、不思議の国の話に浸っていた】



【――ぶつん、と】


【何の前触れもなく、全ての灯りが落ちた】
【流れていたロックも突然に死んだ】
【その一瞬で、全てが暗闇と静寂に入れ替わった】

 え……?


/(2/2)↓


175 : in"2Q36" ◆3inMmyYQUs :2018/12/03(月) 23:31:28 nHxGsN220
(続174)

【わたしは何が起きたのか理解できなくてしばらく固まっていた】
【けれどそれで何かが変わるわけでもなく、ものの数秒で深い闇に耐えられなくなって、】
【確か懐中電灯が置いてあったはずの場所に、探り探り手を伸ばした。幸い、すぐに掴めた】

【スイッチを入れると、けれど期待していた光は一欠片も出なかった】
【かち、かち、と何回か同じ事を繰り返しても、返事は全然変わらなかった】

【なんで。いつの間に電池が切れていたんだろう――】
【焦りと、宛先のない苛立ちで、ますます心細くなったわたしは、】
【何でもいいから誰かの声が聴きたくなって、じっと、“とてもよく”耳を澄ませた】


【――――「おい電気が付かねえぞ」――――「ジェネレーターの故障?」――――】
【――――「なんてこった、非常用もイカれてる」――――「おい電池もダメだ」――――】
【――――「誰か火を」――――】


【――『ジェットシティ』全体がどよめきに包まれていた】
【まるで、電気という存在そのものが急に消えてしまったみたいに】


【――『火』】
【誰かが言ったその言葉で、確か抽斗の中にライターが入っていたことを思い出したわたしは】
【恐る恐る立ち上がって、何かにぶつかっても痛くない程度のゆっくりさで机まで行って、】
【微かな手探りだけでしばらくごそごそやってから、目当てのものをなんとか掘り出した】

【使い捨てとして作られて、使い捨てなくていいように改造された、古びたフリント式ライター】
【その擦り切れかけたヤスリを懸命に擦って、何回か儚い火花が散った後、ようやく小さな火が付いた】

【ぼんやりと、うたた寝の夢よりもぼんやりと、周囲がほんのり薄いオレンジ色に照らされた】



「見えなくなると、
 見えるものもある」



【――声がした】
【本当に突然だった】
【わたしは息を詰まらせて、ライターを落としかけた】


…………っ、だれ……――?


【火が消えて、辺りはまた暗闇に包まれてしまった】
【誰、と問いかけた声には何にも返事が無くて、】
【けれど“何か”がいるような気配はして、わたしは急いでまた火を付けた】


/この続きは明日。。
/↓に諸々注釈とお知らせです。


176 : 175 ◆3inMmyYQUs :2018/12/03(月) 23:32:01 nHxGsN220
/[*1]
/>>74のSS内でのことを言っているのですが、
/まだ仕上げられていないというポンコツぶりなので一旦飛ばしています。
/大筋に絡むような話じゃないので、なんかバカ騒ぎがあったんだなーぐらいに捉えておいていただけたら。



/そしてこの後半部分も書き切る前にタイムアップになってしまったので、
/本日はひとまず出来たところまでで一旦お送りしておきます。
/お返事は後半投下後で大丈夫なので、すみませんがしばらくお待ちください。。


177 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/03(月) 23:33:38 E1nVzEpQ0
>>152


【頽廃的な欲望を希求して止まぬのはアリアも同じ事であった。愛慕の念に許されぬ禁忌など無いと疑わぬ信奉者だったから】
【 ─── 少女に言い伝えぬに過ぎず、ただ豊潤な抱擁の裡側に宿した劣情など、両の指で数えて足らぬのだろう。曝した胸許、その深奥へと】
【髪撫ぜる細腕の力を強めるなら、少女の耳朶さえも柔肉は捕らえて離さない。その嫋やかな女体において、わけても最も肉感を身篭る甘美な母性の徴は、抱く全てを貪婪に包み込んで】
【それでも宵闇を映し込む青い隻眼が、由来の知れぬネオンの輝きと明度の低い夜景を、ごく感傷的な色合いを以って宿していた。 ─── 同じシーツの中、当て所なく長い脚先を伸ばす。】
【胸襟の開かれた純潔色のシャツに染み込んだ薫りは、煙草と洗剤と大人びた薔薇の香水であろう。弾けそうなほど張り詰めた、ごく面積の少ない黒いレースを外してやっても良かった】


「丁度こんな、冬の始まりそうな夜だったわ。」「スコープを覗いて、磨り硝子の向こう側。私は、人影の頭を撃ったの。」
「すぐに砕けた窓から、飛び散ったものが見えた。」「 ───……… そこで、フライヤは気付いたのでしょうね。泣き崩れて、しまって。」


【「きっと彼の事を、本当に愛していたから。」 ─── 咽頭のどこかで潤んだ声音の紡ぐ顛末は、畢竟そのようなものだった。】
【少女に過去を語ることを女は躊躇しなかった。語る過去に苦しみが付いて回るような時分は終わっていた。それでも、やはり】
【ゆるやかな抱擁を続ける掌の二ツ、 ─── 慈しむような手櫛と、鍵盤を弾くような所作に背筋を疼かせる指先は、己れを落ち着かせる作法で】



「後悔はしていないわ。」「過ちを犯したとも思ってない。」「かえでを傷付ける誰かを、私は絶対に許したりしない。」
「 ─── ただ、ね」「ただ。」「 ……… 私が彼女であったら、同じ事をしていたに違いないの。」「 ……… それだけ、よ。」



【はあ、 ─── 深く肺腑の最奥より吐息を漏らすならば、幽かに凋んだ胸許が、溢れそうな豊満さの形さえ変えるのだろう。】
【昔話はそれで終わるようだった。寝付くには幾らか短い物語であったろう。都会の微睡みが加速度的に深まるのだとしても、未だ消えぬ数多の燐光は、瞑る瞼には尚も眩しい。】
【そうしてまたベッドの直ぐ横には、揺らぐ風もないカーテンが、ただ悚然とぶら下がっていた。 ─── 人間ふたりの温度を宿し始めたベッドの中は、母の胎にも似ていたろうか】


178 : 名無しさん :2018/12/04(火) 00:09:28 tDb/VzSE0
>>171

――――――捨てられたくないから、誰かのご機嫌を取るのは、確かに、自分のためなのかもしれないけど。"そうじゃない"。
そうじゃないんだよ。……そのままだと、きっと、最後に、一番悲しくなってしまうから。

【ならやっぱり彼女が話しているのは自分の踏んできた失敗の内訳に過ぎなかった。ごく世界に閉じ籠って生きていくのは、けっきょく、最後に破綻してしまうなら】
【世界中にその人だけが、なんていうのは、どこまでも不健全で不健康。その一つ柱を喪ったら空すら降って来るような世界は、けっして、安心できる場所でなく、】
【そんな世界を構築するのが自分のためだなんて言うのなら、――、ふらふら横向きに揺らした首がきっと彼女の答えなのだろうから】

世界が滅ぶ日の前にお花の種を蒔くのもいいかもね。……だけど、今にも死んでしまいそうなひとが、油絵を描くためにデッサンを初めて、間に合う?

【きっとどちらだって遅くないんだろう。二つの行為に違いはなかった。明日世界が滅ぶのに花の種を蒔いたって間に合わないし、明日死ぬのにデッサンを始めても間に合わない】
【いつだって人生の中では最速であるのに、――。ならば彼女はもう明日に滅ぶ世界に播種された種であるかのように、明日死ぬのに買われた6B鉛筆のように、振る舞うから】
【それでも涙目に謝られるのなら、「謝らなくていいの」とは言うだろう。――、ただ、特別に慰めてやる色はあまりなかった。抱きしめ合う距離で、指先は変わらず撫ぜるのに】

【――だからやはり彼女は悪い子になってしまったのかもしれなかった。ほんとうはちっとも優しくなんてない、隠し通した本性をさらけ出しているのかもしれなかった、】

意味ないけど楽しいものを買ったりするの、――虹色鉛筆とか。そしたら、ペン立てにでも挿しておいたらいいよ。意味ないから。……でも、少し、楽しいから。

【ならば伝える方策がひどく抽象的であるのも仕方がないのかもしれなかった。――特に意味ないけど楽しいもの、嬉しいもの、そういうのを買うのだって、"そう"だと】
【続く言葉には、――――ふと目を丸くもするだろうか。けれど彼女は事象のすべてを認識していたわけではないらしいから、】

――――――蜜姫かえでちゃん? あの子は、……わたしのことは、嫌いだから。わたしの信者じゃないよ。……わたしが、あの子の神様を奪ってしまったの。
だからすごく怒っていたの、――、今は、好きなひとと一緒に暮らしているみたい。――――それで、痛くなかったら、放っておいていいの?
ばいきんが入ったりしたら肉が腐るかもしれないの。そうじゃなくっても、いろいろ"怖い"ことはあって。…………。

【――ただやはり、ムリフェンと呼ばれた少女については多少なりとも認知はしていたらしかった。ウヌクアルハイ/わたしのことは呼ぶのに白神鈴音/わたしのことは嫌いな子】
【射殺されたはずだった。そうであるはずだった。夕月もそういっていた。ニュースも言っていた。紙面のわりに大きな場所に載っていた。なのに、――なのに?】
【少女はごく平然と口にしてしまったなら、――そもそも"射殺された"というニュースを彼女は知らなかった。そして、銀髪の狼と暮らしているという現状だけを知っていた、なら】

【――――けれどごく些事である/また興味もないみたいに彼女は話題をころりとすり替えてしまう。痛くなかったら、それでいいのかと。良くないでしょう、って、きっと、言いたい】
【破傷風だってなんだって怖い出来事はたくさんあった。猫ひっかき病という規模ではないけど、なるべくすぐに手当てをされるべきだった。そんな声、】

――――――――――――――――――――――――――それは、やっぱり、もう、遅いかな。

【だからやっぱりごく平坦な声だった。明日死ぬのに花の種を蒔いて何の意味があるのかしら。今から処刑されるのに煙草を断る意味はどこにあるのかしら、なんて、】

それは、わたしに捨てられたくないから?

【――そうしてふっと気になってしまうのは、やっぱり彼女も、ごく失敗だらけで傷だらけの人生を送ってきてしまうから、だった。わがままを言うって決めたから、だから、】


179 : 名無しさん :2018/12/04(火) 00:53:04 tDb/VzSE0
>>177

【やがて柔らかな腕に導かれ真っ白な胸元のより一層深くにまで誘われるのなら、少女はかすかに吐息を詰まらせるのだろう。――あるいは、物理的にも】
【身体中のどこよりも柔らかで、半液体に垂れるのに、肌にくるまれて、どこまでも、二人の隙間を埋めるのなら。うつぶせ寝の赤子みたい、今すぐ窒息してしまいそうで】
【かすかな身動ぎに呼吸を確保するのなら、肺の一番奥にまでぜんぶが雪崩れ込んでくるから、とっくに飛んだはずの香水のアルコールにすら酔ってしまう】
【頬ずりのたび肌に触れるレースの下着が無ければどこまでも酔ってしまえそうだった。――もはや抱きしめられる痛みは甘露でしかなかった、から】

……――――アリアさんは、悪くないです、だって、私は、アリアさんが、大好きだから。私の……半分だから。
だから……だけど……。……。もしアリアさんが、あの人のところに居て。もし、あの人が、今の、アリアさんのところに居たら。……、そしたらね、きっと、

【きっと私は今あの人に抱きしめられて、もう母乳も要らない赤ちゃんみたいに今すぐ乳房に噛みついてしまいたくて、だけどふとした時に物足りなくなって触れたくなってしまう】
【だから二人の関係はやはりどこまでもおかしなものだった。様々な選択肢のすべてを間違えて/あるいは正解してはじめて辿りつける場所に違いないのなら】
【――曖昧に途切れる言葉は、けれど、全貌を伝えるには十分な吐息をしていた。だから母の胎の中みたいにあたたまるベッドの中、ちいさな身動ぎ、顔を緩く持ち上げ、】

【――首筋にそっと口付けを落とす。そうして顎の下にすっぽりと頭を収めてしまう。首筋を幽かな吐息と睫毛の瞬きに数度撫ぜるなら】

…………私。痛くて、怖くて、……、――死にたく、なかった、です、……、こわくて、――ううん、私、ずっと、こわく、て、……。……。
……だって。みんな死んで、しまったのに。私だけ、生きている、意味が、――分からなくて。だけど、……死ぬのなら、みんなと、一緒に、死にたくて……。
ひとりぼっちが怖くて。誰かを傷つけてしまうのが怖くて。………………。だから、私、……――なのに、もう、かみさま、だって、上手に、信じられなくて、――、

やだよお、――滅んじゃうの、なんて、やだ、よ、――っ。しにたくない。怖い……、――。

【やがてぽつと漏らしだすのは、――閉じこもっている間に繰り返していたのと同じようなことだった。結局彼女はまだ自分の命があることに何か納得していないのに違いなくて、】
【だからって自ら死んでしまう勇気はない。かといって、誰かを傷つけてしまう自分は嫌。――もうそこに居るだけで誰かを傷つけてしまう自分でなくなったとしても、】
【――ましてや、自分の世界で世界が滅ぶのかもしれない。何度も何度も繰り返した言葉。まだ全部終わってない葛藤だった、から、】

――私、私っ、かみさまに、お祈りするから、……っ、滅ぼさないで、って、お願いするから、――、――っ。アリアさんだって、死んだら嫌! ――嫌だよ、……。
アリアさんと一緒に居たいの、――、このまえ、一緒に見てたチラシのお家に住みたいし、――魚だって、飼いたい、です、
アリゲーターガーでも、アロワナでも、なんでもよくてっ、ウーパールーパーだって、だから、――、だから、私、もう一回、ムリフェン、やるから、

【彼女が神様に求めたことだなんてたった一つ、赦してほしいだけだった。その結果神様が世界を滅ぼすんだってなんだってよかった。興味なかった。――(本当に?)】
【結局のところ彼女は神様を都合よく自分が生き延びるための理由にしていたに過ぎなくて。だけれどそれをどこまでも心底深いところまで徹底できる性質だったに過ぎなくて】
【――だから生き延びるために祈るのだなんて慣れていたし上手なのに違いなかった。――ぐずぐずした涙声は、滅びより先に死を観測しかけた恐怖による錯乱だったとしても】

――――――――――――――――――――――――それじゃ、だめなの、かなあ……。

【愛しい人と生きていきたい。だから滅びてほしくない。何より死ぬのが怖いから。だけど二人一緒なら怖くないの。――でも、二人一緒なら、死ぬよりずっと、生きていたいの】
【いつか甘たるい蜜と洋酒と珈琲の香りの中に置き去りにしてきたものを拾い上げたってよかった。――呟きはずいぶんと嗚咽交じりに、頸動脈へ直接流すように、首筋に口付けて】


180 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/04(火) 01:31:51 BRNVt/Aw0
>>178

……そう、じゃ……ないんだ……
でも、ね……私ももう遅いのかもしれない
……何が好きなのか、分かんないの
何がやりたいとか、何が得意なんだとか……何にも思い付かないの
……今から探しても、多分……『終わっちゃう』んならきっと……
【手遅れ、なのかな、なんて少女は何処か寂しげに笑って】

意味はないけど楽しいもの……うぅん……虹色鉛筆が楽しいのかはどう、なんだろ……?
"そういうの"も見つかれば良いんだろうけどな……
何が自分にとって楽しいのかももう分からなくなってるのかもしれない……
【そうしてやっぱりまた泣きそうな顔で笑う】
【その表情は何処か途方に暮れているようでもあって】
【まるで赤子の頃からケージに入っていた生き物が訓練もさせられずに野生にかえされたようだった。野生を知らないから何にも出来なくて、恐らくはそのまま】

【そうして相手が続けた言葉にはふと顔を曇らせてしまうのだろうか】

──そう、生きてるんだ、彼奴
警察に射殺されたって知った時は警察だから少し怪しいって思ったけど……そう、なんだ
【好きなひととって事は幸せ、だったりするのかな、と小さく呟いて】

……そういうの、夕月ちゃんにも言われた
でも、本当に平気だよ……私は半分は妖怪だし、ほっといても早いうちに再生──
【そう言いかけて少女はふと言葉を止める】
【たっぷり考える事数十秒。不意にフッと笑って】

……うん、大丈夫だよ、全くもって心配は要らない
【何かを納得したのかゆっくりと頷いて】

……やっぱり、そっか
【それはもう遅い事なのだと返されればまた悲しげな顔で微笑む】

捨てられたくない……とかじゃない……と思う
そもそも助けにも行かなかった時点で友達失格なのは解ってるから、仮に棄てられても仕方ないって思ってる

あのね、凄く烏滸がましい事だっていうのは解ってる……でもね、私も鈴音ちゃんの気持ちの一片、少しは分かるから
辛いのに、苦しいのに、誰からも助けて貰えないのは本当に悲しい事って知ってるから
何でって叫んでも助けてって叫んでもだぁれも私達を助けてくんなかったの、辛かったから
私もね、その悔しさが見返す方に向かなかったらきっと復讐してたから
……だから、世界が滅びるとしても受け入れたいの
それで鈴音ちゃんの気が済むとしたら私はそうして欲しいから
【理由になってないかな?でも自分でも上手く説明出来なくて、とつがるは少しだけ苦笑する】


181 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/12/04(火) 02:49:26 h7nAXcQg0
>>36-37
……綺麗ではないお前をいらないというような世界なら、確かにいっそ消えてなくなった方がスッキリするかもな
本来なら、それが当然だと思うがね。優しくもなければ強くもなく、どうしようもなく狡い
この世に存在する命のほとんどは、そういったものだ。少なくとも、私の見て来た限りでは

【出会った時から、今に至るまで。ずっと奇妙なままだった。この二人の関係は、なんと形容すべきなのだろう】
【味方というには遠く、敵というには深く。彼女の柔らかい声音に、醜悪な悪党の顔もこの時ばかりは薄く緩んだ】


――――そうだろうな。もう少しタイミングが違ったら、きっと出てくる気はなくなっていただろう
発掘出来たのは、つい最近のことだ。もし、それまでに手に入れていたら……考えても栓無きことだな

ああ、神であることを今更疑いはしないとも。どうしようもなく、怒っていることもな
さて、未来のことは神でもわかるまい。だからこそ、備えておくことは必要だ
その箱は、あくまで選択肢の一つに過ぎない。中に籠るもよし、中で生み出した何かを利用するもよし
最後の最後、諦観の果ての二人暮らしに使うのも、当然ありだ

……悪いが、彼奴は好かん。世界を滅ぼすとまで言って、否定する気にならないのは相手がお前だからだ
私はあの病魔を良く知らないし、知る気も起きない。それにこれは個人的な事情だが……
あの女を見ていると、どうにも思い出す。お前と会うきっかけにもなった、あの半魔をな。ようやく夢に出なくなったというのに、彼奴を見ているとあの女の顔がちらつく

【今の彼女の心を占める最大の感情。怒り。それが今の彼女を突き動かしている】
【そう、決めてしまった。要因はいくつもあったのだろうが、それでも彼女が決めたのだ。だから、もう】
【それでも、綺麗ではない彼女を認めるのは、相手が彼女だからだ。奇縁を紡いできた鈴音だからだ】

【いくら彼女の伴侶であろうと、あの病魔にまでその範囲を広げられるほど、カニバディールは人間が出来ていない】
【鈴音なら、仕方ない。だが、イルにそうされるのは耐えがたい。何せ、あの煽情的な立ち居振る舞いが、思い出させる。額の目玉を生み出したきっかけの半魔】
【そんなそれぞれの想いなど関係なく、箱は嬉し気に白い三日月を広げる。注がれたグラスの中身が、その中へ消えていく】


それは興味深いな。水の国の料理を頼もうかとも思ったが、セリーナとの思い出の品となればそちらの方が味わってみたい
……そうだな。これが唯一の機会か。材料がまだ残っていれば、頼みたいところだが

ふ、ふ。そうだった。あまりにも目まぐるしくて、黒幕との期限付き共同戦線だと言うことすら、忘れかかっていたよ
〝この上〟で、お前とセリーナを相手にやり合ってから、何年も経ったわけでもないはずなんだがな

【天井を指差しながら、この場所で自分が起こした戦いを思い出す。巨大な重力の球。世界を滅ぼさんとする黒幕や彼女らに比べれば、なんと矮小だったことか】
【今度は、鈴音が滅ぼす番。自分は、果たしてどこに立つのか。少なくとも、鈴音のわがままならどれも否定しない立ち位置ではあるのだろう】
【彼女が自分でそれをやるのなら、望むがままに】

ふ、ふふ! そうだな、誰も見ていない。その箱の中と同じだ

【肉屋も同意の笑いを零す。そう、ここにいるこのひと時だけ、自分たちは悪い仲間なのだから】
【元来、酒場でテーブルをこっそり囲う者なんて、悪だくみと相場が決まっている】

みんなと言っても、しょっちゅう全員が集まれるわけではないがな。手の届く範囲にはいつも作っているが
何せ、手下の数は今や3000人だ。騒がしいことこの上ないぞ
望むなら、お前の席も用意しよう。世界が末路を決めるまでに、そのくらいの時間はまだあるだろう?

……ワインを注いだ後だと、なおのことそう見えるな

【彼女の沈黙に、それ以上は言葉を割り込ませられず。やはりただの臆病者。食卓に誘う言葉だけは、どうにか絞って】

/続きます


182 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/12/04(火) 02:50:00 h7nAXcQg0
>>36-37
――――酒に関しては、文字通りのうわばみなのだな鈴音
ああ、そうだろうとも。お前が我慢すれば、そこで打ち止めだ。少なくとも、世界に関しては
ふ、ふ。もっともだな。神の意志は、全てに優先するさ

【いつしか、異形も酒を煽って。こちらも、相応に耐性はあるらしく、顔色は変わっていない】
【神と囲った食卓は、手下たちとくだらないやり取りをする時と何ら変わりなく。ただ彼女の想いに頷く】

――――ありふれた夢だ。大きくなって、結婚して、家族を育む。誰しもが夢見て、そうしてきたことだ
私はそういった道からは外れたが、少なくとも自分で望んでそうしたし、今もそうしている

お前は、違ったのだな。そんなありふれていたはずの夢を、悉くひっくり返されて。それでも、探そうとした挙句に
〝間違い〟、か……間違ってさえいなければ。そう思うのも無理はない
私とお前は本来なら敵同士で、その間違いを起こした元凶に何も言う資格などないと思っていたが……
お前の口からそこまで聞くと、いい加減私も不愉快になってきたよ。その、〝間違った〟奴に

【彼女とは逆に、背もたれに身を預けるように身体を伸ばす。自分が抱く道理などないはずの、やりきれない思いを抱えて】

……ああ。わかった。以前、お前に受け取ったものも、まだ渡せていない有様だが。あれと一緒に、お前の伝言も届けるさ
私は執念深い。どれだけ時間がかかっても、きっとやって見せるとも

【その時には、彼女の分まで自分が清算しよう。彼女の個人的な復讐を、自分が果たそう。恨み事と一緒に、刃を叩きつけて】
【呪いと共に、彼女が支払う羽目になった未来を、取り立ててこよう】


――――この面で、札まで付いてさえいなければ、それもあり得たかもな
私にとっては、何より嬉しい言葉だ鈴音。恨まれることには慣れ切っているが、お前からのそれはどうにも心に重い
……だが、心には留めておくといい。それも、一つの選択肢だ。お前のわがままのための

【未来。あり得るかもしれない未来。鈴音に対しては口にしなかったが、異形は思い出していた】
【もうあれも、それなりには前になる。血の粛清を受けた彼ら彼女らを拾って。治療を施して】
【闇に生きる側のはずなのに、眩しいくらいに笑うあの鵺という少女が語った未来。そんな未来は、最初からなかった】

【インシデントで彼女がこの世から自分より早く去ったのを知って。もう肉屋は、信じなくなった。以前以上に、そんな未来は。もう二度と】
【それは、鈴音が怒りを捨てないことを選んだのと同じくらい、どうしようもないことだった】

【だからせめて、彼女の期待通り。カニバディールは常にそうあってきたように、料理に毒など仕込まなかった】
【邪魔な相手をこの世から蹴り落とす時とて、料理に毒を入れることだけはしなかった。鈴音と出会った配下のポイゾニックも、そんな首領の意を汲んでその手だけは使わない】

【この場で囲うのは、ただ純粋な食事であるべきだ。最後の晩餐かもしれないのなら、なおのこと】


183 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/12/04(火) 03:17:42 h7nAXcQg0
>>124
『プリズン・グルーピー』か。確かに一時期服役していた刑務所の隣の房には、そういったファンがついていたな
私も、それなりには顔が売れたと思っているが。ならば、一人くらいは期待できるだろうか?

【軽口に関しては、少なくともこの男には有効な手立てと言えるだろう。この異形の男も、言葉を戦術に組み込むタイプだ】
【口数は多く、ゆえに相手の口車にもある程度は乗ってくる】
【だが、その取り繕いの手腕ゆえに、盗賊は目ざとく嗅ぎつける】

……なるほど、これは一本取られたな
確かにどんな人間も、程度の差はあれ素顔を隠しているものだ。ふ、ふ! 確かに私の場合は、剥き出しだがな

だが、それでもやはりお前の皮は、特別製だと見た。先ほどまでの恐怖も困惑も、和らいでいるようじゃあないか
私がいきなり現れて、こんな話をされた人間のほとんどは、皮を被る間もなくへたり込むものがほとんどだった

【醜悪な笑いが彼女に向く。三つの視線が彼女を睨む。その奥底の闇を覗き込まんと】
【深淵に覗き返されるだろうことは、わかった上で】

箱舟と言えば、聖書の箱舟だよ。要するに、この世界は今、私などより遥かに恐ろしい連中に潰されかかっている
私にとってはそれは困るから、ああして可能な限りの命を箱の中に放り込んで〝保護〟しようとしているのさ


>>133
【三つの瞳が、金色の三角形と視線をぶつけ合う。何とも形容しがたい目だ】
【まだまだ、自分の知ることなど狭い。この滅ぼされる瀬戸際になってまで、知らない脅威がこうして顔を出す】

あれも人攫い活動の一環だよ。石にしてしまえば、逃げ惑う相手を追いかける手間がなくなるからな
それについては同意できる。幾度、そうした〝皆さん〟が倒されようと、この国の業が払われたことは未だにない

ふむ……そういった道具も扱っているのか。となると、ますます興味がわいた

【どことなく道化めいた、つかみどころのない何かを感じる。しかしそれが何かわからない】
【女性の方とは別の意味で、彼もまた深淵だ。人を演じているだけに見えるような空虚さがありながら、腹の底は何も見えないほどに暗い】


〝P〟……軍需企業の営業マンには初めてあったな。いつだって、需要は常に絶えない職種ではあるだろうが
近頃は、新興の櫻の〝商会〟などの噂の方が良く聞く

【言いながら、いつの間にか呑まれている。当たり前に踏み込まれ、名刺を受け取っている】
【彼の目と同じ形のロゴマーク。初めて聞く社名だが、果たしてこれは自分の利となるか否か】

……商品のラインナップくらいは、確認させてもらえるのかね?


184 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/12/04(火) 03:30:23 h7nAXcQg0
>>132
ああ、詮索は大好きだとも。知らないことを知るということは、誰だって好きだろう?
中身にもよるだろうがな。確かに、あまり女にがっつくのも良くない。この世界には、物騒な女性も多いからな

……なるほど、愛国心は相応以上にお持ちのようだ

【真っ直ぐに濁った三つの視線を向け返す。破裂音は、飛び散る火花をその場に見せるかのように】


ふ、ふふ!! 政治家の仕事は難儀なものだ。人脈のために、相手を選ぶにも限度があるというのだから
おっと、そちらも知っていたか。あの人の指は、どこまで伸びているのやら

ああ、残念ながらな。閣下には申し訳ないが、いくら彼が相手だとしても引けない一線というものは、お互いにあるだろう?

元より、信用を得たいならこんなやり方はしない。そんな悠長なことをしている暇はないからな
……物騒なのは、昔も今もだとは思うがね

【言葉は途切れない。復活は一瞬にして。カニバディールの生命力は、見た目通りの異常さだった】
【伸ばした触手に手ごたえは一つ。流石は精鋭、この不意を打てば全て捕らえられるほど甘くもない】

【それどころか、新たな痛みすら走る。斬撃の素早さは、全てを見通すがごとく、異形に避けられる道理もなし】
【絡め取った一人は、見事救出されるだろう。切り離された肉の触手が、ホールの床に落ちてのたうつ】
【その頃には、すでに展開しているだろう。雪と氷の大地からやってきた、屈強な兵士たちが】


――――それは光栄だ。たかが盗賊風情に、そこまでレアな相手に会わせてくれるとはな
〝サイコ・フェンリル〟。峻厳な氷の大地を生きる精鋭には、ぴったりのネーミングじゃあないか

だが、黙って見とれているほど、私も愚鈍じゃあない

【壁の形成。これを成されては、パーティー客の確保は一気に難易度が上がってしまうだろう】
【ならば、その前に。カニバディールは再び動いた。両腕が膨張し、太く長く伸びて】
【右腕は、指揮官と思しきオブライエンに殴り掛かる軌道。左腕は、壁を配置しようとする四人のうち一人の足元を薙ぐ軌道】
【膨張の速度はそう早くない。だが、腕の動きと共にカニバディール自身もオブライエンに接近していく。同時対処が必要となるだろうか】


185 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/04(火) 13:06:00 dY27Rcuk0
>>160

【2人の潜行を妨げるものは何もなかった。 ─── 警備艇との遭遇さえ無いのであれば、やがて浅くなる海底と、湊の遠く淡い灯りと、物言わぬ船底の威容が顕れる】
【携行してきた吸着機雷は、Mk.3リムペットマインが計16基。 ─── 潜水艇の速度を落とし、喫水下の鋼鉄に遠隔信管をセットしていけば、赤い警告灯が昏い海中に明滅する】
【船底と弾薬庫に集中させつつ、動力炉付近にも幾つか。精密な配置であった。特にミレーユはこの手の爆破力学と解体工学に長けていた。港湾の浅い海底で事後調査を困難とさせるには、船体すべてを爆砕するより他にない。】
【 ─── 1発の起爆で確実な爆沈を見込めるだけの炸薬を設置し、起爆装置に一先ずのセーフティを掛ければ、2人は水面へと上がっていくのだろう。漣を掻き分ける音さえも、凍雨の冷たさに隠蔽されていた。】

【船首、右側面。ミレーユは己れの異能を行使する。音もなく凍り付く大気が、氷の梯子を成形する。丁度2人分の幅を持つ、堅牢なもの。】
【潜行艇を水中に残し、潜水装備の一部を脱ぎ捨てながら、両者は甲板の縁にまで登るのだろう。 ─── 眼元から下を隠したまま、消音狙撃銃の照準越しに、睨むのは】



「 ……… 敵の哨戒。正面、3名。甲板上、艦橋付近。方位030、距離20m。」「四四式騎兵銃とキスカ・グレネードで武装。」
「風速4m/s、北北西。湿度87%。 ……… 船内へ侵入するのには邪魔だね。行かせるには時間もかかりそうだ。どうする。」

「排除しましょう。2人が見ていない隙に1人、続けて残りの2人を同時に」「私が2発撃つ。貴方は右の兵士を撃って。」「了解。」



【談笑する兵士の頭部へと、クロスヘアの中心を合わせる。 ─── この距離ならば、風雨の中でも弾道は素直なものであろう】
【一秒もあれば十分に過ぎた。何れかの兵士が"見られて"いない瞬間が生ずれば、無音のうちに引かれるのは相違なく銃爪である】
【アルミピストンに薬室を密閉した特殊弾薬は亜音速の銃口初速にて、降り頻る雨粒の一雫よりも静やかな銃声を殺しながら】
【 ─── まずは1人。続けて2人。敵襲を悟られるよりも速い半自動射撃で、彼らを無力化せんと迫るのだろう。薬莢さえも落ちる事はない】


186 : 名無しさん :2018/12/04(火) 15:10:45 TVdFTlnw0
>>180

――――ん。それは自分のためだけど、――少しだけ、違うの。誰かのご機嫌を取るのは、似てるけど、……。
……そしたら、何にも考えなくっても出来ることの中から、探したら? おしゃべり出来るでしょう、何かくだらない話、してみたり……。
ここまで歩いて来たでしょう? どこかお散歩してみたり。……息だって、出来るでしょう? なら、お部屋にアロマを焚いてみたり。

なんでもいいの、もっと自分のためのことをしてみるの。

【――細めた目は何か言わずに終えた言葉があるのだときっと伝えていた。誰かに媚びて自分の世界を護ったって、いつか、誰かは、必ず居なくなるのだから】
【だけれど結局今までの自分が出来なかったことを言っているに過ぎず、だからやっぱり自分が知らなかったことを誰かに言っているに過ぎず、ならどこまでも限りなく遺言であるなら】
【適当に思い浮かんだから伝えた文房具なんてどうでもよかった。別にマーブルインクのペンでもよかった。なんでもいいの。なんでもいいのに、】

………………射殺? なんで? ――かえでちゃんは、生きてるよ。……わたしたちなんかより、きっと、自分のために生きるのが上手な子。
どんなふうに祈るのかも知ってるよ。……、だから少しだけ羨ましかった。――わたしのこと、一回だって呼んでくれなかったのに。

【はたと瞬くのなら、やはり彼女は何も知らなかったのだと伝えていた。ごく不思議そうな呟きに一つ、納得というにはいくらも他人事めいた理解を添えて】
【――続く言葉はきっと本音であるのだろう。自分なんかよりもよっぽど生きるのが上手な子だと思った。神様を信じることすら自分のためにしていた子。――、】
【相手と彼女の中に何があったのかは知らないから。そうしてまたこの場に居ない人間、ましてや一度も"会った"ことない人間の話をし続けるのはいくらも狡いと思うなら】
【曖昧な温度に彼女は言葉を区切る。――ただ相手が何か話すなら、聞きはするのだろう。祈られていた神様として。ただし半ば眠るようだった半覚醒の神様として】

、そう。

【吐息一つの間。向ける眼差しは少なくともきっと暖かなものではなかった。から】

…………――――――わたしは、そんなことは、言ってないの。

【顰めた眉の温度が何か不愉快を伝えていた。そうして言うのは大層な狡だと言っているみたいな顔をしていた。わたしの気持ち分かってくれるのだとしても、解せぬ顔をしていた】
【確かに何か感謝は抱いているらしいのだけれども、――それ以外に何か素直に受け取り切れぬ/受け取ってはならないものがあるみたいに。なら、】


187 : 名無しさん :2018/12/04(火) 20:00:19 rH4Tp5Fk0
>>181

【そうなのかな、なんて、小さな呟き声。机の下に見えない膝の上で指と指とを絡めて弄ぶのは、きっと何か整理しきれぬ感情の山、】
【冬の寒さに中てられてそんな気になって買って来た毛糸の山を猫の一家に貸し与えて二十五年経つのなら、こんなふうに絡まりあってどうしようもないのだろうか】
【だからきっと困ったように笑っていた。それならばどこか何か救われる気がするような、けれどかえって何か複雑な気持ちになるような、――なら】

そだね、……。ふふ。こんなのわたしに渡していたって、バレたら、怒られちゃうよ。誰にか、――は、分からないけど。
……うふふ、ありがとう。そしたら、そうだなあ、――。――――あんまり、思いつかないや。それにね、思いついたとしても、恥ずかしいし……。

…………リリア? ――ああ、たしかに、そうかもしれない。ちょっぴりだけど、……、あの子も、どこで、何してるのかな。……。

わたし、リリアに助けてもらったから。

【きゅんと下げた眉の角度で色違いの眼差しが向いた、それから、りんごジュースをごくごく飲んでいる箱へ。「おいしい?」なんて聞くけど、答えは必須ではなく】
【そうしたらどうしようかな、なんて、呟くけど。――なんだかんだですぐに思いつく答えはあまりないらしかった。それとも、思いつかないことにしたのかもしれなくて】
【やがて彼の言葉には、――彼女もその人物のことを思い出したらしい、そうかもしれない、なんて、小さく笑う。――――どちらにせよ、あの半魔にも彼女は助けられていたから】
【――結局困った顔をしていた。「卵をね、取ってもらったの」「言ったっけ――」。呟く言葉は、どちらでもよかった。ただ、自分は、全部嫌いにはならないってだけの、意思表示】

/↓


188 : 名無しさん :2018/12/04(火) 20:00:43 rH4Tp5Fk0
>>181>>187

――――そんなに大したものじゃないよ。面接かな、ここでお仕事したいって、言いに行った時。その時にね、作ったの。
あると思うよ、……。そうだね、なかったら、取って来るよ。せっかくだもの、――――、こんなこと、きっと、もう、二度とないから。
神様だって許してくれるの、だって、わたしが、許すから。――あれから、どれくらいだったっけ。うんと昔みたいに、思えるの。そんなはずないのに……。

【指さされた天井を見上げて小さく笑う。あれから、――そんなに特別にたくさんの時間は流れていないはずなのに、どうしてだろう、もう、ずっとずっと昔に思える】
【やはりそんな相手とこんなふうにしているのが不思議に思えたらしいなら、ごく曖昧な眼差し。細めた目線をいくらか投げかけたのちに、かたん、小さな音で立ち上がるんだろう】

監視カメラは、動いてるかもね。――麻季音ちゃんが置いた奴。――――――あはははっ、三千人? すごいね、もう、……なんだろう、ちいちゃな、村みたいな……。
――、じゃあ、せっかくだから、お呼ばれしようかな。……。……嫌がられないかな。そしたら、庇ってくれる? ――、ふふ。このワイン、少し、もらうね。

【カウンターの裏から綺麗なグラスを持ってくる、そこにこぽこぽ幾らかのワインをもらったなら、少女はその裏側に姿を消して、――とはいえ、】
【話そうと思えば話せる程度の距離感ではあった。ただ調理の音に耳を傾けていることも許された。だって二人もう悪い奴、かたや世界中で名を知らぬ者はないほどの悪党で】
【かたやヒトに紛れ込む蛇の神様であり。あるいはだからこそ彼女こそ排除される異物なのかもしれなかった、ヒトらしく振る舞うヘビだなんて、気味が悪いって】

――――だからね、あんまり飲んでも意味ないの。酔っぱらっておしゃべりするの、楽しそうだなって、思うけど――、
樽とか壺くらいないと、だめかも。その前にお腹いっぱいになっちゃうよ。……へびさまもね、お酒、いつまでも飲めるから。だから、遺伝かな。

へびさまも、同じようなものなの。ずっと昔に死んでしまった、だいすきなひとに、もう一回、逢いたくて。また一緒に、暮らしたくて。……そしてわたしが生まれて。
だけど、わたしね、へびさまの思った通りにできなかった。へびさまはわたしに人間一回分の時間をくれたのに、こんな風になって。へびさまの逢いたかったひとにもなれなくて。
――そんなわたしを見て、へびさまは、自分のせいだって思っちゃって。……だから、わたし、やっぱり、間違いで終わらせない。わたしのために、――へびさまのために。

………………夢の中のことなのに、覚えているの? もしかしたら覚えてないかもって、思っちゃった。――あの時はごめんね、あれしか方法がなくって。
あのあと、変なことはない? ――ないと、いいんだけど。ごめんね、その前に、わたし、 、オムレツさんとも会ってて。その時に、すこし――、だったから。
――、だけど、もう、いいよ。やっぱり、あれがあっても何にも、意味ない気がするの。あれはわたしの持ち物だったはずなのに。わたしに返してもくれなくて。

【真っ白い蛇の神様は、禁忌と知らずに愛しい人を呼び戻してしまった。或いはその代償だったのかもしれない、何もかもが悪くなっていく様、間近で観測し続けて】
【あるいはどうしようもなく二人気遣いばかりで壊れていく関係性みたい、謝り合って、きっと死ぬまで、――あるいは世界が終わるまで、繰り返すのは、罪悪感から】
【――ぱちりと瞬き一つ。いつかの邂逅については、詫びを一つ。とある人名については、――、何か違った音を発しかけて、やめた。なら、真名を知っているのかもしれず】
【――――あのときに"もらってきて"と言っていた髪飾りについては、もう、いいらしかった。やっぱり意味はないと観測したらしい。――だから、】

じゃあ、もう一つ。

【カウンター越しであるのなら、表情は伺えなかった。きっと凍っていた何かを解凍する電子レンジの音、間を取り持って】

わたしを殺して、世界を救った英雄になってもいいんだよ。それはどう?

【がちゃん、と、電子レンジの扉を開ける。――――、微かに調理の音が聞こえだすから、それはごくなんてことない会話のようで、でも、確実に、そうではないから】
【あのときわたしを殺さないと決断してくれたこと、感謝していて。だけど、あのとき殺してもらっていたらという気持ち、消してしまえはしなくって】
【――だから、ではない、気がした。けれど確かに何か詫びのように。あなたは悪い神様を殺して世界を滅びから救った英雄になれるのだと。――】

【彼が自分のわがままを許してくれたみたいに。少女だって、きっと、彼に何か恩返しをしたいのなら。したいのだから】


189 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/04(火) 20:09:26 nHxGsN220
>>127>>129


【 “ ――――――♪ ” 】


【じゃぷじゃぷ、ばしゃばしゃ、と】
【汚れを落とす水音に交じって、幼く楽しげな声】
【子どもたちは誰も鈴音の方を一瞥だにせず、手洗いに興じていた】

【まるで、白神鈴音が生まれてこなかった世界を生きているかのように】




【――ヤサカが視線を向けた先】
【いやに茫漠とした空白が佇む、入り口の向こう】
【外から、何か明るく戯れ合うような声の群れが近付いていた】


【――♪ひとり ふたり さんにん いるよ】


【何かの数え歌を仲睦まじく口ずさむ声たちが、】
【次第にその輪郭をはっきりとさせながら大きくなり】


【――♪しちにん はちにん きゅうにん いるよ】


【その群れはすぐにドアの前まで至ると】
【ごく当然の趣で、酒場の中へと入ってきた】

【その全員に、鈴音は恐らく見覚えがあるだろう】
【底抜けの笑顔ではしゃぐ、幾人かの幼い『たんぽぽ』の子どもたち】
【そして、】


――――十人のインディアンボーイズ♪


【それらを引率してきた、一人の若い女】

【――黒髪の三つ編み、大きな丸眼鏡】
【モノトーンの格子柄をしたエプロンを身に馴染ませて】
【数え歌の終わりと共に、子どもたちと一緒になって喜色の面をしていた】

/↓(2/2)


190 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/04(火) 20:10:31 nHxGsN220
(続>>189)

【女は店内へと入ってくると、軽く手を叩いて】
【連れてきた子どもたちに向けて、また唄うような声を投げかけた】


――帰ったらー、さいしょに何するんでしたっけ。


【 “ ばいきんないない! ” 】


ピンポーン!
じゃあ、ひとりで“ばいきんないない”できる人ー!


【 “ はーい! ” 】


【子どもたちの手が勢い良く挙がり、】
【そのままカウンターの奥の流しへ向けてめいめい駆け出した】


【――途中、何人かが鈴音とヤサカに軽くぶつかるだろうが】
【彼らは謝るどころか、視線の一つすら向けないまま駆けていく】
【まるで自分が何かに当たったことすら認識していないかのように】



――――――――――……………………



【先に到着していた子どもたちと交じって、楽しげに手を洗い始める様子を】
【保育士の姿をした女は、そこに立ったまま茫洋と見送るように眺めていた】

【それから首だけを動かして、緩慢に酒場の中を見回す】
【と、鈴音とヤサカの二人へ順番に眼差しを据えて――精密に微笑した】


来てたんですか。
お疲れさまです。


【そこに浮いている文字を読み上げるような声で言った】

【そしてあたかも昨日も同じ事をしていたかのように】
【女はまったく慣れた足取りをして、ヤサカの隣をすれ違うと】
【いつからか端の方に積んであった、子ども用の高椅子をいくつか持ち上げて】


もう帰っていいですよ。
後はやっておきますから。


【彼らに背を向けたまま、そう言った】






【女が淡々と高椅子をテーブルの側に並べ始める】
【何人かの子どもが流しから戻ってきて、彼女の元に駆け寄る】


【 “ ――ミチカおねえちゃん、タオル無いよ! ” 】


【女――ミチカは、向こうの棚扉の中に新しいのが入っているよ、と指を差して答える】
【カウンターの中にいる子どもたちが、「あった!」と声を挙げて喜ぶ】



【 チクタク チクタク …… 】

【時計はいつも通り、回っている】


191 : 名無しさん :2018/12/04(火) 20:58:59 rH4Tp5Fk0
>>189-190

【身体の中がざわりと騒ぐような気がした、それこそ、この真っ白い膚の裏側、めいっぱいに蛇が詰まっているんだと信じてしまいそうなほど、】
【それは子供たちの異質に対してであるのか、それとも、"自分の場所"を穢された怒りであるのか、それとも、あるいは、何か、予感してしまったかのように】
【ぎりと歯を噛み締めた。やがて入り口へ視線を向けたヤサカに倣うように、彼女もまた目を向けるのだろうか。そして認識するのだろうか。するのだろう。してしまうから】

――――――――――――――――――――――――――――ッ、

【ごつん、と、鋭い足音が弾けた。編み上げのロングブーツの厚底ハイヒール。ふわふわのスカートが驚いたようにぶわり膨れ上がるのは、少女の動きに付随して】
【長い髪がざあと夜の暗闇の中で靡く柳葉のように靡いて、――、ほんの数秒だった。或いはその最中に子供の誰かとぶつかって転ばせてしまうかもしれなかった、それでも、】
【気にならないみたいだった。だって彼女のまなざしは女/ミチカ/保育士に向けられていて、向いているから、――なら、きっと、ヤサカには伝わるんだろう、冷静じゃない】
【カウンターの中から出るまでに少しの時間を要するのなら、彼女はどこでミチカに追いつくのだろうか。高椅子を取り上げる時、それとも、】

【もしヤサカがそれまでに動いていれば、何か、変わるかもしれないけど、――――とにかく】
【その時にミチカが変わらずそこに居ると言うのなら、少女は、きっと、その襟元、ぎゅうっと掴もうとするのだ。下手なチンピラがやるみたいに、――】

――――ッ、何しに来た!? 何をしているの!? ――――――ッ、――ッ! ……ッ、っ、今すぐッ、――――――――今すぐ!
――ここから出て行け、――ッ、今すぐここから失せろ! でないと殺す、――ッ、――、! 今すぐ出てって! 

【そう出来るなら、――ぎゅうって握る力は、服越しに短い爪先が掌に突き刺さるほどであり。あるいはそれでも力の込め方が足りないみたいに、まだ、わなわなと震えるから】
【叩きつける鈴の音は張り裂けてごく耳障りなただひたすらに金属質なものへ果てる、――誰にもあまり見せたことのない表情をしていた。怒りのみを満たした顔と】
【――やがてひらり剥落するのは桜色の魔力片。ひらひらと。少女にごく近い虚空より溢れ出して落ちていくなら。――――限りなく殺意と敵意とを向けて、】

【ならばその一瞬彼女はやはり世界中の全部を忘れているのかもしれなかった。もちろん、――"そう"できないなら、口付けすら叶う距離感ではなく、】
【ただやはりごく純粋な殺意と怒りとをくるり桜色のリボンでラッピングして差し出すような態度は変わらないのだろう。――ともすれば今すぐにだって、殺してしまいそうなほど】


192 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/04(火) 23:30:56 WMHqDivw0
>>189-190 >>191

………………………………………………何言ってンだ、てめえ。

【呆然とした顔のまま、ミチカにかけた言葉は、あまりにもストレートにそんなものだった】
【いや、何。なんでおまえおれらの同僚みてーな顔してんの。誰。いや知ってるけど】
【あとはやっとくって何。おまえにやらせることなんて何一つとてないが。だってここは】
【鈴音ちゃんの場所だぞ。それをおれらが守ってて、おまえは、何一つ関係なんかなくて、】

【……子供たちが腰元にぶつかってようやく我に返ったように。そのときにはもう】
【金属の軋むような、あるいは悲鳴めいた高い高い声が鼓膜を引っ掻いていた】
【聞いたこともないような鈴音の声だった。ちらり閃く桜色を視認するや否や、次の行動は早く】

――――――――――こっちッ! こっち集まれ、……頼むからっ、
おれの声聞こえる!? 聞こえなくても――――お願いだから、こっち来てッ!!

【無駄にでかい図体はこういう時に役立つのだと痛感する。鈴音とミチカ、ふたりのいる辺りと】
【カウンターの向こう、手洗い場の辺りに集まっているだろう子供たち。それを隔絶する壁】
【そういうものになろうとする。図体に見合った長い両腕を目いっぱいに広げて、全員捕まえようと】
【――たとえそれが叶うことはなくても。必死でそうしようとするだけだった、誰も巻き込まれないよう、必死に】

【鈴音の怒りを諌めるような真似はしない。だってそうするって決意は聞いた。ならば、】
【必要以上にそれに加担することもなく。ただ、彼女が本当に守りたかったものがこれ以上傷付かないよう】
【守るほうに専念する、ことに決めたようだった。然して子供たちの態度は、さっき、見たばかりだった】
【自分たちがないものとして扱われているような空虚感、……噛み締めたとて、これくらいは通じると信じたい】
【とにかく彼は子供たちを庇おうとする。怒れる少女神、異質なる女、双方に何が起きようと、この身を盾にしてでも――】

【(そう思っていたとして、当の――庇われる子供たちが何かしようとするなら、あまりにも無力になるのだが)】


193 : ◆orIWYhRSY6 :2018/12/05(水) 00:39:26 qszFipZI0
>>165

…………俺が見る限りでは、あいつらは確かに殺すつもりで動いてたように見えた。
んで、見た目だけで判断すんのも何だが―――あいつらの方がまとも、って風には見えなかった。

――――オーケイ。クラマ、ここはお前を信じることにしよう。

【一通りの事情を聞き終えて、ようやく男は銃をしまう。】
【腕を組み、少しの思考。そうして、口を開いて】

んー、そのヨシビとやらがあんまり真っ当な会社じゃねえのはわかった。
ま、あんな得体の知れねえエリート部隊とやらがいる時点で真っ黒だけど。

で?目的……って、仕事辞めて何するつもりだ、お前。
――――反社会的なことするようならぶっ飛ばすぞ。

【さて。質問は無いかと言われれば、問うのは彼の言う“ある目的”に関して】
【どのような内容であれ、収入源である仕事を辞めたうえで何を為そうというのか、と】


【――――それから、「救急車呼ぶか?」と付け加えた】


194 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/12/05(水) 02:31:01 h7nAXcQg0
>>187-188
【そうだとも、と頷いて見せる。声は相変わらず重たい。異形が重ねた罪と同じに】
【きっと、その絡み合った毛糸を解ける人間は限られていて、それは自分ではないのだろう】

だろうな。きっといろんなところからお叱りを受ける。多分、お前以外のほとんどからだな
それはそうだ。元々、持ち主ただ一人の都合の為にあるものだからな、そいつは。他人に曝け出すことはあるまい

……そう、そいつだ。私としてはトラウマでね、未だ迂闊に名前も言いたくない
さあて、魔界での刑期はまだまだ終わっていないだろうが、フラフラとこちらに出てくることもあるかもな

助けられた……? いや、初めて聞いたな。『卵』を……そうか。確かに彼奴なら出来るだろう

【ジュースをもらった箱は、楽し気にカタカタと微かに揺れて見せる。美味しかった! と声に出せずともそう雄弁に伝えるだろう】
【彼女が、その箱の中の闇に何かを求めるとしたら。それは恐らく、彼女だけが知るものなのだろう】

【彼女から意外な言葉を聞けば、異形はそれ以上、〝彼女〟のことは口に上らせなかった】
【リリアについて何か口に出せば、罵詈雑言しか出てこない。鈴音が嫌いではないのなら、それ以上悪し様に言うこともない】
【やはり、カニバディール自身は二度と会いたくはなかったけれど】


なるほど、UT入団の記念の日か。いや、そういう日常の一場面こそ得難いものじゃあないか?
世界がこの状況になって、私ですらそう思わずにはいられない

ふ、ふ。そうだな。〝神様〟のお墨付きだ、何の問題もないだろう。ならば、お言葉に甘えようか
ほんの1、2年前だったように思うが……そうだな。もう遥か昔にしか思えない

【それだけ、あまりに多くが行き過ぎていって、もう戻らないのだろう。この世界は、あまりに無情だ】
【異形もまた、何とも曖昧な感情を込めた視線で答える。そうするしかなかった】


初瀬麻季音か。結局、直接は会い損ねてしまったよ。後でセリーナの奴が見たら、反応を見てみたいくらいだな
どうにも膨れ上がってしまってね。そうだな、村程度の規模はあるだろう

無論だとも。が、心配は無用だ。私の客なら、誰であろうと嫌がりはしない。そういう集団だからな、うちは
スカーベッジの奴は、少々怖がるかもしれないが

【その後、しばし調理の音に耳を澄ませていた。なんだか神聖な時に思えて、声をかけられなかった】
【そういえば、作ってばかりで作ってもらうことはあまりない。それも、自分のためだけに、だなんてことは】

/続きます


195 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/12/05(水) 02:31:17 h7nAXcQg0
>>187-188
確かに、樽や壺ほど酒など飲んではそれ以外入らないな
それはそれで難儀なものだ。酒飲みの一番楽しむべきところを逃してしまうとは

……先祖代々から子々孫々まで、ささやかな願いすら、か。世界というやつは、私などよりよほど残酷らしい
〝へびさま〟自身も、そうやって自分を責めていると? そうか……そうだな。なら、間違いであることなど許されない

自分の夢は逐一覚えている方でね。構わないさ、なかなかに刺激的な体験だったよ
夢の直後は、しばらく視線を感じることはあったが。今は、もう収まった

……オムレツ。確か、冒涜者――――ブラスフェミアさんのところの。夕月の兄弟、だったか?
ブラスフェミアさんから名前を聞いただけで、会ったことはないのだが。少なくとも、そのオムレツのようなことはない

――――そう、か

【大口をたたいたものの、あの夢の後で随分探したがここまで目当ての人物は見つからないままだった】
【何故、こんなにも悪い方にばかり変わっていくのだろう。それとも、変えられていっているのだろうか。誰かの悪意で】

【鈴音も、へびさまも。ただありふれた、それでいて切実な願いのために。それすらも許されず。罪悪感を巴のように絡み合わせて】
【異形に出来るのは、それを心に留めておくことと、果たしきれなかった約束を悔いることくらいだった】


【そして、続く言葉は。しばしの沈黙が間に挟まった】

――――……。私が、英雄。これほど似合わぬこともないだろう
すまないが、鈴音。これが、私の我儘だ。お前と違って、我慢などほとんどしたことはないがな
それでも、私は自分の望むままに邪悪なんだ。だから、世界を救った英雄だなんて、なりたいとは思わない

【殺してくれていたら。そんな言葉の裏の想いには、気づいてはいた。それでも。今あの願いを、また聞き届ける気にはどうにもなれなくて】
【だから、もし恩返しをしてくれるとそう言ってくれるのなら。あの時、殺さずにいたことを。彼女の苦しみを長引かせたと思っていた自分に】
【それでも、感謝を向けてくれるというのなら】

……代わりに、私と対面で飯でも食ってくれないか。先にお前だけ食べさせてしまって申し訳ないのだが
何せ、この面と中身だろう? 女性と食事をしたことなど一度もないんだ

手下にも女はいるが、あいつらは私の一部のようなものだし、昔いた犯罪組織で関わった女はイカれた連中ばかりでな
一度でいいから、お前のような美人と食事してみたかった。構わないかね?

【先に彼女にご馳走したのは失敗だったか。やはり一緒に食べればよかったと少し後悔しつつ】
【そんなありふれた、彼女の願いに比べれば遥かに軽い望みを、リクエストしてみた】


196 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/05(水) 09:21:16 6.kk0qdE0
>>169

「おいちゃ、すぺ、あ、りぶ?」
「これ、は、あら、う?」

【2人の温かみのある視線の中、懸命に厨房とホールを行き来する】
【事情を知らない一般の客からは、かなり奇異な風景なのだろう】
【みらいから率先して言い出した事だけに、アーディンらの気苦労は中々の物なのだろうが】
【或いは、未だこの場に公安や海軍の手が伸びていないのはアーディン達の目が光っているからに、他ならないのだろう】
【てとてととホールをぎこちなく急ぐ足音は、絶えること無く、やがて一つのテーブルへと向かう】

「やっぱりな、こう、他国の任務の醍醐味は酒と食事だな杉原!今日は無礼講だ無礼講、もっと飲んでいいぞ!」
「あの、軍曹、目的忘れてませんか貴女」

【アーディンがいち早く勘付いた、そのテーブルにみらいは向かい】

「あー、いや忘れては居ないぞ勿論さ、杉原はあれだ、固過ぎる!あ、ジントニック一つライム濃いめで!」
「じ、ん?と、にく?」
「肉じゃない、肉はもう腹一杯だ、ジントニック!ジントニックだ!……あー……君がみらいか……ふむふむ」

【注文の直ぐ後、アーディンが警戒し、何かのタップサインを踏んで居るのにも気が付かず】

「やはり、よく出来ているな、ふむ、人間の子と見分けがつかない、いやまあ当然と言えば当然か……」

【2人組、キャスケット帽の少女の方がそのまま手を伸ばし、みらいの顔に頭に頬に顎に触れ、肩を腕を掴み始めた】

「ひっ、あ、あ……お、おい、ちゃ……」

【怯えてはいるが、それ故に、身体が強張り動かずにいるみらい】


197 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/05(水) 10:13:44 6.kk0qdE0
>>185

【ここまで駆潜艇や哨戒艇、或いは探信に掛からなかったのは、奇跡的とも言える】
【喫水線下に、磁気吸着の爆雷が手際よくセットされて行く】
【聞くだけならば簡単な作業に聞こえるが、船底、弾薬庫、動力部を正確に見抜きセットする作業、爆薬故に常に扱いはデリケートであり、少しでも位置を見誤れば作戦が文字通り水泡に帰し、また潜水での任務故に相応の訓練を積まなければ完遂出来ない危険な任務だ】
【難なく、息のあった爆雷設置は、作動させたらば駆逐艦の装甲を貫き、弾薬庫の砲弾魚雷に誘爆を引き起こし、魔力炉を完全停止させるに十分な量と配置であった】

「そっちどうよー?一応聞くけど」
「何もあるわけねぇっすよ、それよりこんな事もあろうかと、酒保でたんまり買い込んどいた酒とツマミが恋しいっすよ」
「全く仕様のない奴だ」

【異能行使ーー氷のラッタル(梯子)を形成、船体をよじ登る2人】
【さしもの歩哨の海兵達も、まさか水面下から来るとは思わず、油断だらけの警戒を続けている】
【そして2人の判断は、残酷な程に的確であった】

「ツマミは何がある?ーーッ!?」
「缶詰瓶詰め各種、後は、F作業で釣り上げた秋刀魚を幾匹かくすねてひもの……ーーッ」
「もうー、伍長も兵長も、先ずは目の前のッ!ーー……」

【完璧な弾道計算、そして狙いと連携】
【スニーキングの基礎だが、故に完璧に汚点無く熟す】
【自らの身に何が起こったのか、把握するまでも無く倒れ臥す3名、薬莢が落下するよりも3人が倒れる方が早い】
【船内への道は開かれたかに見えた、だが……】

「おいおーい、貴様ら随分と楽しそうな計画を話すでは無いか」
「ひひひ、我々も混ぜてくれな、何ならば今捕まえてるあの曹長と少佐に裸で酌でもさせようか、今尋問の兵共が楽しんでいるでなー」

【船内への入り口、内の一つがガチャリと音を立て、軍艦特有の重々しい鋼鉄の扉が開けられ、人の出て来る気配が】
【声からするに、男性海兵が2人】
【無論、3人の亡骸にも、2人の侵入者にも気が付いてはいない】


198 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/05(水) 19:27:07 nHxGsN220
>>191>>192


【――――がたんっッ】


【積まれていた高椅子が弾みでなぎ倒され、剣呑な大音声が爆ぜる】
【鈴音の金属を裂くような癇声と重なって、空間を劈き、震わせた】


【どんっ――、と】

【掴みかかってきた鈴音の勢いに押されるまま、】
【女の身は鈍い音を立てて背中から壁にぶつかった】



【――場は一挙に静まり返った】
【女はおろか、子どもたちの喚声さえ瞬時に消え去って】



――――――――――――――………………



【鈴音を瞳に映したまま、女は緩慢に一つ瞬きをした】

【まだ空気の方がましな抵抗をしただろうほどに、】
【その女は鈴音の殺意の衝動に対して、一切抗う兆しすら見せなかった】




【深い無音が、空間に張り詰める】






【――その“異変”に最初に気付くのは、恐らくヤサカだろう】



【 “ ……っ、……ぁ……くる、し…… ” 】



【ヤサカの前でたむろしていた子ども達が、突然、】
【揃って顔を歪め、喉や胸元を押さえ込みながら、か細い呼吸でひゅうひゅう言った】
【何かの遊びや演技でないことは、その顔の血の気が薄らと引いていくことから察せられる】


【――まるで、誰かに“胸ぐらを掴まれ壁に押し付けられ”でもしているかのようで】




【低くくぐもった悲鳴だけが、沈黙の宙を這い回る】


【さなか、】


【ぽつり――と】
【夢の記憶を諳んじるように、女の口が零した】






 やめてくださいよ。
  .........
 わたしの子どもたちに何するんですか。







【 ぎい……ばたん 】



【開け放されていたドアが、呻くように軋み】
【独りでに閉ざされた】


【光の道は消えた】

/↓(2/2)


199 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/05(水) 19:27:58 nHxGsN220
(続>>198)


【鈴音の手へじわりと染み行くだろう】


【温かくも冷たくもない無機の体温】
【意思すら欠如したような無抵抗の気】


【そして、その虚ろさの深奥にある】
【何か複数の――幼い生命の鼓動群】




 【「――――――――――――――――――――」】




【薄い影を纏う女の顔。そこに悉く表情も動作も無かった】
【今までも、そして今後も永遠に、“そういう絵画”であるかのように】



 【「――――――――――――――――――――」】



【――ただその瞳だけが】
【西洋人形からくり抜いてそのまま移植してきたような眼が、】
【一切の温度変動も無く、鈴音を見つめる】


【凝然と、ただ凝然と】


【まるでその焦点を、】
【鈴音の瞳孔――の裏の眼球――から伸びる視神経――】
【――が繋がる脳幹――の細胞核――へ合わせ続けているかのように】














     ..
【 ――理解してますか 】


【真空にも劣る虚ろな無言が、そう問うていた】


200 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/05(水) 20:24:48 BRNVt/Aw0
>>186

御機嫌取り……だったのかな?
私は、多分居場所が欲しかっただけ、だと思うんだけど……違うんなら違うのかな……
そういうのでも良いんだ……お喋りとかお散歩とかあろま……お香、かな?そんなのとか……
終わるまでに見つかれば良いね
【そうして最後に呟いたのは自分の事だというのにひどく他人事のような響きを含んでいて】

何で、って……悪い事をしたからじゃないのかな?
ウヌクアルハイに御祈りをする為に他の人間を生贄に捧げたの
羊や牛と違って人間には法律って概念が存在するから、だから……えーと、懲らしめられなければならなかったの
でも、そっか……生きているんだね……そっか……
──きっと彼女は幸せなんだろうね
【最初は言葉を選んで答えて】
【それから続けるように紡いだ言葉。その声からは次第に感情がなくなっていって、最後に紡いだ他人事のような言葉にはきっと感情なんて一欠片も入ってなくて】
【心の中で思う──何で彼奴は幸せになれるんだろう、って】
【何で鈴音ちゃんの事を否定して悪事を働いて私の事だって否定した彼奴が、悪い意味で自分の母親のようだった彼奴が、蜜姫かえで"だけ"が幸せなんだろうって】
【そうしてはたと気付いてしまう。こうなってしまった以上もう全ては終わりなんだ、と】
【あの女が幸せな限り自分は不幸にしかなれなくて、他人の幸せを呪った口ではもう他の誰かの幸せを願えないから】
【だからもう友達だと思っていた"あの子"の幸いすら願ってはいけなくなってしまって】
【ふと、一瞬だけ自虐めいた笑みを浮かべて】


……言ってない、か……ごめんね……私、馬鹿だから……
もし気に障ったんなら今此処で殺してくれたって構わないよ

……多分、共感だけじゃないのかもね
私は貴女に対して何も出来なかったから、友達思いなんかじゃなかったから、それがきっと贖罪だって思っているのもあると思う
【嗚呼、やっぱり自分でも上手く纏まらないや、と呟いて、泣きそうな顔で笑って】

……兎も角、私は止めないよ、鈴音ちゃんの事
それだけは分かってくれたら嬉しいかな
【潤んだ瞳のまま、それでも真っ直ぐに相手を見つめて】


201 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/05(水) 20:25:22 BRNVt/Aw0
>>193

……やっぱりそうだよなァ……あれで捕まえて本社戻しますってのには到底思えねェよなァ……はあ……

ん、まあ信じてくれるってンならそれにこしたこたァねェよ、ありがとな
【やっと銃を収めた相手を見れば少年は流石に少し位は緊張していたのかホッとしたように胸を撫で下ろし】

【勤務先がまともではないだろうという言葉に、だよなァ……と苦笑を浮かべる】

あンな裏稼業スレスレな上によォ……最近益々おかしくなりやがってんだよ彼処……
最近やけに強い力を持つ妖怪の捕縛増えてやンの……俺は下っ端みてェなもんだからよくは分かんねェけど……上の方何か企んでる気がすんだよなァ……
ッつーか闇狗自体ほんと訳分かんねェからな?普段から一言も喋ンねェし不気味なんだよ彼奴ら……
【はー、何であんな所入ったんだ俺…………否、普通に金だったわ……とクラマは頭を抱えて】
【仕事を辞めてどうする気だったんだ、と聞かれればふとその表情が曇る】

……探してる奴がいるんだよ
その子にはどうしても会いてェし……出来る事なら助けになってもやりてェんだ
俺は以前その子を助けてやれなかったから……
【ふ、と遠くを見た紫色。恐らくその先には此処ではない場所が映っているのかもしれなくて】

──そ、だ……
お前、知らねェか?
白い髪に金色の瞳で……猫の耳と尻尾が生えた……大体15、6の女の子なんだけどよ
【何かに気付いたようにぱっと相手を見て、尋ねるのは恐らく彼の探し人の特徴】
【猫の耳が生えてるという事は恐らく亜人の類なのだろうか】
【そしてその特徴は奇しくも以前夕月という少女があげた友人のそれと似ているかもしれない】

【そうして、救急車の事を聞かれれば】

え、救急車……?つまり医者……だよな?
俺そんな金持ってねェんだけど……
【そこまで思考が回っていなかったのだろう、スーッと青ざめて】
【率直に言おう、彼は恐らく馬鹿である】


202 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/12/05(水) 22:57:40 WMHqDivw0
>>172
時が無い――今より、スナークの報告書を探したのでは間に合うまい。
「スナーク狩り」の物語を知る者は少なくはあるまいが、あの中よりスナークの能力に纏わるヒントや対抗神話を見出すこともまた容易では有るまい。

だがいくつかの疑問符は残る。
私の知る限り、鵺と言う少女は、自分がイル=ナイトウィッシュであると誤認するような余地は微塵もなかったはずだ。

にも拘わらず、彼の娘は、自らをイルだと思い込み、かつその姿を誰も見極められぬ程に正確に変じて見せた。
その能力はロールシャッハのものでもエカチェリーナのものでもないはずだ。

かと言ってイルの固執の能力がそうまで万能であるとは聞いたことがない。


【正確に言えば、エカチェリーナの能力によって、スナークとしての力を"完成"に至らせた可能性はある】
【しかし、そうであるならば、既にそれは永遠の未完成へと落ち、全ては杞憂に終わるのだが】
【この期に及んで楽観を前提としても仕方ないだろう】


だが、スナークの力が虚神本来のまま振るえるのであれば、その程度の不条理は行使出来るやも知れん。
スナークとしての力が強まっている――或いは、元々使えていたはずの力を過小して見せていた可能性を考えねばならんと言うことだ。



――"固執"の際たる例とは、即ち"信仰"に他ならない。
もしもスナークが、自在に人間の意識を固執して向けられるのであれば、それを以て虚神の力を強化することも可能と言うことだ。


ウヌクアルハイへの信仰は弱まっている――弱まっているが、それでも消えた訳ではないのだから。


203 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/06(木) 00:11:52 E1nVzEpQ0
>>167

【弔悼を赦されるなら小さな会釈を返していた。弔悼を捧ぐ人々にかけられる言葉はなかった。葬送が全て終われば、下ろした銃を負い直し】
【 ─── やや訝しむようなブラックハートの視線に、青い隻眼が幽かに細められた。彼女もまた追想の中より、確かな記憶を拾い上げる】
【そうして改めて相手の義肢を見れば、凡そを理解しているようだった。 ─── 冷たくも瑞々しい唇の端を、雪融けに似て緩ませる微笑を向け】
【ささらぐ前髪に隠れた白皙の右半が、垣間見える事もあるだろうか。酷い火傷痕と銃創。 ─── 右眼のあるべき位置に埋め込まれた、液晶状の複眼と、一ツだけの単眼。糅てて加えて】
【馬鹿馬鹿しく高い背丈と、鋭利さすら宿した長い銀髪に、寡黙さを隠そうともしない表情。慈愛からは縁遠い風貌の女だった。されば俯きがちな諦観の言葉は、重い感情の発露だろう】


「 ……… そう。仲間と認めて貰えていたのね、私。」「嬉しむべきか、恥じるべきか ───……… 。」
「アリア。アリア・ケーニギン=デァナハト。 ……… 私も、似たようなものよ。幾ばくかの縁があって、同じ敵と戦ったの。」


【礼節として名乗りを返す。必要以上の事は語らなかった。それでも求められるのであれば、語るに吝かではないのだろう。】
【 ─── 独白に似せて綴られる言葉は、成層まで吹き抜ける夜風へ溶けていく。聞くに、彼とは穏やかならぬ出会いをした様子だった】
【事実として決して真っ当な共闘とは言えなかった。 ─── 互いに持ち合わせた代えられぬ信条が、辛うじて等価の方位を見たに過ぎず】
【それでも愛しむべきものを穢される慟哭と、その顛末を決着せねばならないという覚悟は、女の真義から同意する所でもあった。なればこそ】


「 ───……… 許されるならば、相応しい報復と未来を、掴む助けになりたかったのだけれど」
「満たされて死んでいったなら、惜しむより他に私の為せる事もない。 ……… 似合わぬ義足を履く事も、せめて復讐の権利でしょうから」


【遂げた報復の先に未来を紡げぬなら余りに悲壮であった。女は誰かの不幸よりも、その幸福を祈る気質であったが故に、 ─── 然して】
【少なくとも彼女のような身の上で、果たして生者ならばいざ知らず、死者に語れる説法など有る筈もない。ならば今は】
【当て所なく祈る指先に、己れの横暴さを詫びつつも、それより他に遣り方のなかった己れの不器用さを悔いながら、救いを求めるばかり。】
【「 ─── 彼の昔話を、私は何も知らないの。」徐に女は、口にするのだろう。長い睫毛が震えていた。それが遺された者の苦しみを深めるばかりなら、決して問い質さないとしても】


204 : 名無しさん :2018/12/06(木) 01:36:30 eDU8uS9o0
>>194-195

――――――――――世界を滅ぼす神様に加担するなんて。怒られちゃうどころじゃないの、――、本当に、凄い、悪党だね。
わたしの知っているひとの中で、――きっと、一番、悪いひと。…………こんなに悪いひと、他に見たことなくって。

…………だからね、信用できるって思ったんだよ。おんなじ目標のためなら、よっぽど下手なひとより、きっと信頼できるって、思ったの。

………………――…………――――――――――、うん、"あのこと"がなかったら、わたし、今、もっと、ひどかったと思うから。

【かたかた揺れる箱を撫ぜる指先は、きっと幼子の頭をくしゃと撫ぜてやる温度に似ていた。子供に大人気のキャラクターが描かれたブリックパックのジュースを与えるみたいに】
【――くすと笑う表情は、嫌に近しい距離感だった。少なくとも怨みあった敵同士の温度ではなく、――なれば今二人は限りなく味方であるのだ、そう約束したのだから】
【――――そうだとしてもごく奇妙な温度と手触りを撫ぜつけるみたいに、そのぜんぶを説明しようとしてみたみたいに、彼女は曖昧な音階に語尾を誤魔化して】

入団だなんて。……。わたしね、他のひとたちが持ってるもの、持ってなくて。――当たり前なの、当たり前なんだけど、ちょっとだけ、……寂しくて。

【ならばやはり呟くような声はごく複雑な旋律であるのだろう、――正式なメンバーではないから当然だと分かっていた。彼女もそれを理解していて、ただ、そう、】
【分かっていながらに、羨ましい/寂しい、――我儘だと分かっていて、今でもきっと思っている声。聞こえてくる音は、ひき肉か何かにいろいろなもの、入れ乍ら、捏ねるような】

よかった。

【ごく安堵の声。だからきっと笑っていた。嬉しいのかもしれなかった。――否。きっと。嬉しいのだった。だって、嬉しそうな声、していたのだから】

……わたしね、へびさまの気持ちを、後悔で終わらせてほしくないの。罪悪感、で、終わらせてほしくない、……、わたしはもう、"あの女の子"には、なれないけど。
だいすきなひとともう一回逢いたい、一緒に居たいって、――そのへびさまの気持ちを、わたしは、わたしだけは、絶対に、駄目って言わないし、――駄目に、しない。
――――そうなんだ。わたしね、夢ってあんまり覚えてない方なの。いっぱい寝てるんだけど――。――――、"それ"は、あんまり、覚えてないや。寝ぼけてた、かな……。

【自分の生まれた理由が、誰かがもう一度愛しい人に出逢いたかったからだと知って。けれど、その人は消えてしまったと。自分は二度とその人になれないと、知って】
【――そうして自分がそうしたせいで苦しめてしまったと嘆く先祖を見て。その瞬間に掛けるべき言葉の思い浮かばなかったことは罪なのだろうか。罪なのだと、思う】
【ならば罪人たる少女は神様に償わねばなかった。自分がしあわせになることで、――少なくとも納得できぬ人生を清算することで、神様が救われると信じたから、そう願って、祈るから】

――――――そっか、

【小さな声は、けれど、不思議によく通った。それはちょうど手でも洗っていたらしい水を止めた瞬間だったからかもしれない、――、気のせいかも、しれないけれど、】

ごはん? わたしと? ………………――、――。……。――いい、けど、……、そしたら、カニバディールの分、減っちゃうよ。
お肉がね、あんまりなかったの。今から取りにいこっか。UTの冷蔵庫にはあると思うんだ、……おっきいやつ、二つにしようと思って、――、でも、
……、――ちっちゃいやつ四つにして、三つ、あげるね。わたしは、さっき、作ってもらったの、食べたから。…………、美人、だなんて。

【一瞬ひどくあっけにとられたような声をした、カウンターの向こう側からひょこと顔を出して、聞き間違いじゃあないかと確認するような間、刹那に】
【そう求められるとは、――あまり思っていなかったのかもしれなかった。それでもまあるくした瞳をやがて柔らかく細めるのなら、続くのは、苦笑に似る表情】
【対面で食事するには同じメニューが必須だと考えているらしかった。その結果彼の分が減ってしまうのだと言って、――、けれど、二人とも酒とつまみを嗜んだ後であるのと、】
【――何より、そうやって分け合った方が、"らしい"ような気がした。だから結局言葉は引っ込めるのだろう、それでも、うんとおっきなあなたに、多めにするからって、】

【「酔っぱらってるの?」――ごく冗談めかして彼女は揶揄う。ごく旧い親しい友人にするみたいな軽口、】
【――――少しの間の後に、じゅう、と、なにか焼く音がする。ならばお肉の焼ける匂いがした。だから何となく何を作っているのか分かる、気がした】


205 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/06(木) 02:05:49 87c7rJP20
>>179

【吐き出すべきものを全て受け入れられるならば、やはり縋るように女は抱擁を緩めなかった。 ─── それは単に、少女に情愛の全てを頼るという理由のみならず】
【返される首筋への口付けに、堪えながらも甲高く曇(くぐも)る短い嬌声を余さず聴かせて、続けられる少女の独白を促す作用もあった。】
【己れを慰めるような白い指の爪先が、レースに隠れたホックを解くのだろう。 ─── それだけで、湛えられていた肉感の柔らかさは、惜しみなく弾けて少女へと絡み付く】
【絶えなく言葉を吐き出されて、幽けく湿った胸間の温度が、甘く少女を誘う。酩酊という答えは不徳であった。もっと耽溺するような淫蕩さが、体温の残滓にさえ蠢いていた。】


 「 ……… ありがとう。」「やっぱり貴女は、 ……… 強くて、優しい子。」


【狂おしい吐露にしゃくり上げる背中を、静やかに幾度も撫ぜ下ろすのは掌であろう。 ─── 腰元にまで片手を回して引き寄せるのだから、ひどく依存的な意志と情欲の表象に等しい。】
【愛しい人が震える懊悩と怯懦は己れもまた宿して然るべきものだった。そうあるように彼女たちは誓っていた。抱擁の奥で震える呼吸が切ないのは少女にしか分かり得ない】
【痛みと潤みは畢竟、二人が過去に置き去ってきた衝動的な諸問題の解とは成らなかった。 ─── 後はただ一ツ一ツ対峙して、呪う桎梏を外していくより他にないのだとしても】
【真理を演繹するために残された猶予は、今は余りに不足だった。ならば寄せ上げる胸許に、少女の頤を上げさせて、落とし込まれる慈母の微笑みは、変わり得ぬもの(これまでも/これからも)。】


「ねえ、 ─── かえで。約束、しましょう?」
「私、 ………… 絶対に貴女を、死なせたりなんてしないわ。」
「世界だって、護ってみせる。」「 ……… なにも怖がらなくたって、いいの。難しい事は、今考えなくても、構わないのだから。」

「ただ、祈っていて。」「 ─── 私が必ず、貴女の元に帰って来られるように。」「貴女と、貴女の神様が、ずっと幸せで在れるように。」


【少女の甘える白い首筋が直截に震え、絡ませて湿った唇の囁くソプラノは、決して抗いようのないものであろう。 ─── それでも今ばかりは隠したテーゼと、闘う覚悟は終えているのだ】
【深く口付けようとするのも幾度目か。垂れた唾液の行く先を、同じ唾液の潤沢に乗った舌先で舐り下ろして、揺れる長い銀髪の甘ったるさが少女を擽り、やがて首筋へと辿り着くならば】
【 ─── 契るように、刻み込むように、痣の残らぬ位置を選んで、深い口吸いの痕を残すのだろう。確かにそれは少女を独占して、然して同時に誓約の証だった。(私たちは2人で1人だから)】


【そうして、】


  「 ……… 全部終わったら、流星群を見に行きましょう。待雪草の丘で、ふたり空を仰いで、温かいココアを飲みながら。」
  「新しい家だって買ってしまうの。 ─── お庭の広い、一軒家がいいわ。なんだって飼えて、なんだって置いておけて、 ……… そうしたら、きっと、 ……… 。」


【愛しい人の望む己れの首筋へと、その薄藤色と愛らしい表情を収め直して、 ─── 潺々たる希望を語らうに違いなかった。消えゆく世界を前にしては、決して叶わぬ夢の総て】
【ならば女の意志はずっと変わっていなかった。例え神をも敵に回すとしても、何を恐れる事もない。この一握の/故に何よりも愛おしい、分かち合う同じ温度を奪わせはしない】
【そういう遣り方で彼女たちは打ち勝ってきたのだから次も変わらぬことだった。 ─── 神でも儘ならぬ人身の苦悩を、二人は解き明かす事が出来るのだから。】

【(そうしたら、きっと?  ─── どうなるのかまで女は語らなかった。なんとなれば、少女の左手は今、痛ましい爪痕に冒されている。その総てが癒えてからでよかった)】


206 : 名無しさん :2018/12/06(木) 02:13:11 eDU8uS9o0
>>200

【潜めた眉の鋭角が鋭かった。何か物を置いたらすうっと滑ってどこまでも落ちていってしまいそうな角度をしていた。ならば、ごく小さく揺らす首の温度、】
【長い髪がさらさらとこすれ合って揺れるのなら、ごく微かな月光すらも捕まえて、キューティクルが甘やかに艶めくのだろう、夜空の彩雲より幽かな、煌めき】

――――――じゃあ、つがるちゃん、わたしが世界滅ぼすのやーめたって言ったら、今すぐシャキっとして、元気に生きるの?
そうでないのなら、――そういうの、やめてくれる。自分のこと大事にしないの、――わたしのせいに、しないで。

【――抱きしめていた身体をふっと放すなら、ごく近しい距離感で、けれど見つめる目は睨むような鋭さを帯びていた。長い睫毛の陰に覆われた眼差しはごく無機質に似て】
【何より潜めて低く鳴らす声はごく金属質で鈴の音のものであるから、余計に。声域が広いのだとしても、最上と最低はどうにもヒトらしからぬ声になってしまうのなら】

法律くらいは知ってるけど。……、そっか、そうだね、……。――――わたしは、やっぱり、会ったことはないけど。
一緒に住んでるってひとと、会ったから――、まあ、会ったことはないから。細かいところまでは分からないの、……それに、興味も、あんまりなくって。

【――――なら、彼女は、まっとうな遵法意識というものに疎いのかもしれなかった。だっていつかには少なくとも*********************、】
【*******************。****************。***************。******。****。**。*******】
【蜜姫かえでという人間が蛇を信じたきっかけも理由も知っているものだから、なにかごく曖昧に庇う温度をしていた。――あの子は悪くなかったから、なんて、言葉は、引っ込めて】

――さっきのも、そうだけど。友達失格だよねって言われて、そうだね、って、言ったら、わたしが悪くなってしまうの。
気に喰わないなら殺せって言われて殺したなら、わたしが悪くなってしまうの。それはね、狡いでしょう?

"構わないよ"って、なあに? ――、殺されたいなら殺したげる。身体中を生きたままぜんぶ溶かして殺してあげるよ。どんなけ後悔してもやめないでいてあげる。
細胞の一個も遺伝子のひとッかけらも全部ぐちゃぐちゃに溶かすことがわたしには出来て、――――。――。

【だからやはり顰める眉はなにか感情を宿して止まない。――故にやがて彼女はため息を吐く、ずいぶんと遅すぎる行為だった。なら、】
【何か自分を諫めるように腕を組んだ距離感が近いのにいやに遠く思えるのかもしれなくて――、数秒程の間、】

……ごめんね、わたし、今日、機嫌悪いみたい。また今度、――"わたしが生きてたら"。こんな場所じゃなくって、……もっと明るい、温かい場所で。
その怪我は、――病院に行くこと。それから、その後はどこかお店にでも行って、――温かいお味噌汁でも飲んで、ご飯、食べること。――最後に、ちゃんと、屋根のあるとこで寝ること。

暗くて寒い場所で、考え事しても、――いい事ないの。……ましてや、どこか痛かったりしたら、余計に。

【ふらふらと首を揺らして立ち上がる。何かきっかけで一線を越えてしまう気がした/そしてきっとそれは気のせいではないから】
【ならごく見下ろす高低差にて少女が告げたのは下らぬ方策であった、この温度にしてしまったのはきっと彼女のせいだった。余裕というものは摩耗しつくしてしまったように】
【――世界を滅ぼすって決めてしまったのだから。もう後戻りできないのだから。くしゃと指先に乱した黒髪がそれでもやっぱり綺麗に天使の輪を描く、から】

【――――――ふいと少女は背中を向けてしまおうとする。これ以上二人きり話していてもただなにかどこまでも怒ってしまいそうで、だから、(逃げる、とも、言えるのかもしれなくても)】


207 : 名無しさん :2018/12/06(木) 02:27:59 eDU8uS9o0
>>192>>198-199

【そうしてすぐにでも女の身体を壁にまで叩きつけるのなら、少女は、やはりごく激昂していた。壁抜けの手品をごく物理的腕力にて果たして見せようと誓ったかのように】
【厚く高いブーツの底に床板がごりごりと鳴らされて五月蠅かった。だのに少女の耳には入っていないようだった。――異能封じの手段を持つ相手ということも、忘れたみたい】
【そんなはずはないのだけど。それについて考えを巡らす余裕さえ持ち合わせぬように。ただ反射的な暴力を果たしているにすぎないなら、強姦魔と何が違うのか?】

――――やめるッ? わたしが!? ――ふざけないでッ、――、――だれも、だれひとりも、お前の子なんかじゃない、――おまえの、!
"おまえの子供"だけはありえないって分からないの!? ――――――――だったら分からせてやる、分かるまで殺してやる、お前を殺したいみんなの分殺してやる!

【――なんにも違わなかった。張り裂ける鈴の音の声を叩きつけるに精一杯である彼女は、やはり(打消し線)婦警(打消し線)保育士たる彼女の言葉に過剰に反応して】
【それにすべての意識を取られてしまうから。ぎゅうと壁に押し付ける力は変わらないどころかより一層ひどくなる。ともすればキスすら叶う距離感、吐息すら混ざる距離、】
【だのに向けるのは限りなくどこまでもいつまでも未来のずっと果てまでも殺意であり、殺意以外はありえるはずもなくて、なら、】

【――――その内側に潜む、いくつもの鼓動】

【――――――――――きっと彼女は気づけなかった。気づいていなかった。ただ目の前の憎くて仕方がない形をした無機にかまけて、すべての有機を意識から追い出していたから】
【であれば、――やはり真っ先に異変に気付くのはヤサカであるのだろう。少女はすっかりと頭に血を昇らせていて、そうしてまた、生半可な声のかけかたでは、】
【余計に火に油を注いでついでに全部の窓を全開にしておまけにめいっぱい酸素を流し込んで、みたいな現状にしてしまうってこと、きっと、伝えてしまうのならば、】

――――――――――ここはセリーナの場所だから今すぐ出て行け。

【ぞりと這いずるような声を、今までの人生で彼女は一回だって出したことがあったのだろうか。きっと初めてだった。初めてだったからこそ】
【――二人を引き剥がすには、なにか、物理的な力が必要だと理解させる/させてしまうのだった、おそらくは。――うっかり直接くっつけてしまったネオジム磁石、みたいに】


208 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/06(木) 02:50:14 vzn9IspA0
>>197


【撃発。命中。確認。 ─── 悉く淡々としていた。広がりゆく遺血さえも、この雨では軈て溶け消えてしまうのだろう。】
【銃爪を指が緩めるならば、回転式の弾倉が廻り、次の射撃に備える。インテグラル・サプレッサーを介して尚も、幽かな硝煙の匂い。】


「 ─── Tango Down(目標沈黙)。」
「オヤスミ。それじゃあ ……… いや、待て。」


【 ──── 足並みを揃えて甲板に登ろうとする前、ミレーユが制止した。アリアもまたそれに従った。同じ方位より、新たに2名。】
【予想外ではあったが、想定外ではなかった。此方に視線が向く前に行動するのが最良だった。 ─── ならば2人は梯子を登り切り】
【遮蔽物の影に隠れながら、インカム内蔵の指向性マイクにて声を拾う。バラクラバの下で、静かにミレーユは不敵な呼吸を漏らした。】


「 ……… 渡りに船だね。インタビューと行こうじゃないか。」「ボクが先行しよう。左は生かして、白兵でテイクダウンする。」
「そうね。 ……… では、私は右を仕留めましょう。死体が見つかる前に済ませる。」「Wilco ─── タイミングは合わせてくれ。」


【少なからず語るに落ちていた。2人にとって必要な情報を彼らが握っているのなら、この状況は好機に他ならなかった】
【言うが早いがミレーユは行動する。 ─── デッキの構造物が生ずる死角を縫いながら、男たちへと接敵を試みつつ】
【彼らの右手側、やや背後にポジションを取ろうとする。距離およそ3m。そうして徐に彼は、彼らへと駆け出しながら】
【「 ─── Oi, Suzy!」櫻国系の訛りが入った呼び掛けは、平生の彼よりも尠からず低めた声であった。如何なる理由にせよ、振り向くならば】
【転瞬、"左"の男はミレーユの掌に口を塞がれ、"右"の男はアリアの狙撃に倒れる事になるだろうか。 ─── 恙無く隠密が進むとすれば】
【容赦なく彼は男を突き倒し、対手の首筋にコンバット・ナイフを添えつつも、そっと片脚で扉を閉めるのだろう。掴む唇から喉までを異能で軽く凍らせるなら、決して声は出させなかった。】


209 : 名無しさん :2018/12/06(木) 03:14:02 eDU8uS9o0
>>205

【ならやっぱり赤ちゃんになってしまいたかった。真っ白く柔らかな乳房が世界の大部分を占める人生に戻ることが叶うのなら、】
【そうして今がきっとその瞬間だった。だから抱きしめられて胸元に溺れてしまいそうな少女はいくら平均より大きな背をしていても、赤子と等しい生き物へ変貌って】
【言葉がないから泣くしかない赤子と違って、彼女は自分の考えを伝える言葉を持っていた。それでも泣いてしまうしかない悲しみだった。だからやっぱり胎に入れてほしい】
【ブラインドを降ろした密室だけでは物足りなかった。へその緒に等しい何かが欲しかった。そしたら今すぐ首に巻き付けて死んでしまいたいけど】

――――――。

【沈黙。小さく首を横に揺らす。強くも優しくもない。もっと強くいたかった。もっと優しくありたかった。そう信じてやまないなら】

――――――――――……、うん、……。

【肯定はごく微かに。頬を伝い落ちる涙の音すら聞こえてしまいそうに小さな掠れ声、嗚咽交じりの頷きが一つ、アリアの顎下を薄藤にて擽ってゆくのなら】
【痛むはずの指先が、厳重に処置された指先が、それでも、無理やりに、その腰元を捕まえる。抱き留める指先が痛みに強張るのだとしても、指先を柔肌に沈める、爪先までも】
【――ぱた、と、シーツに涙粒の一つが落ちる音がした。痛みに慄いた指先に込められていた力がふっと消失した。――ならば、ふらり、と、穏やかに垂らされて】

――私、私、ね、お祈りするのは、上手、なの、……、いろんなお祈りの言葉、全部、覚えてて、……――今だって、覚えてます、覚えて、て……。だから……。
私、が、死なないのも。アリアさんが世界を護るのも。アリアさんが必ず帰って来るのも。私と、神様と、――アリアさんが、ずっと、幸せで、いられるように……。
神様に聞こえるように、……いっぱい、何度も、お祈りします、するから……。するから。……するから……。――――――――――、

【何度祈っても神様は少女を救いやしなかった。少なくとも、少女が願っていたような救済を齎したのは蛇でなく、狼だった。そして本質的な救済を与えたものも】
【だから少女は神様に祈れなくなってしまったんだった。ならば神様からしたらとんだ裏切者に違いなかった。それでもやっぱり彼女は赦しを乞うためにしか祈れないから】
【ならばもっと痕すら残る場所に口付けてほしいに違いない。もっと言うのなら、一生消えぬ痕であればよりよかった。ぼおっと蕩けきった目、とろとろに潤んだ唇】
【やがて小さな吐息を漏らすのなら、――もぞりと首筋に潜り込んで、舌先が撫ぜるのは、今された行為を真似るように。であれば、きっと同じ場所、同じ、痕を付けるから】

――――うん、うん……、行きたい、です、見たい、……。いっぱい流れ星を見られたほうが勝ち。……。爽ちゃんはね、ズルするの。見てないのに、数えるの……。
だからいつも負けちゃうの……。……アリアさんは、きっと、ズル、しないから。――でも、アリアさんの方が、目、いいから、負けちゃうかな、……。
……そしたら、ね、……私のお部屋は、あんまり、広くなくって、いいです、――、何を置いたらいいか、困ってしまうの、――――それに、部屋では、あまり、過ごさなくて……。

【――ごく泣きじゃくるような声をしていた。まだ神様にお祈りする作法もしらない少女だったころの思い出は瞼の裏に、けれど、目を開くなら、愛しい人に抱き縋っているなら】
【やはり彼女はあの広すぎる部屋を持て余していたらしかった。いろんな場所に散らされていたインテリアは、きっと今頃、水の国警察に荒らされてしまったのだろうけど】
【部屋を貰ったってきっとリビングとかで過ごすんだって分かっていた。ありふれた少女だったころも、聖女ぶっていた頃も、そうだったから。――だから、】

アリアさん、すき…………。

【今までに彼女へ抱いた感情の全部を篭めたような声にてささめくなら、今すぐその首筋にエナメル質を突き立てて命を啜りたくって仕方がなかった、だって、――だって、】
【どれだけ待ったって母乳は赤子のためのものであるのなら。その材料である血液を啜ったって許されるはずだった。だってそうじゃないと、悲しくって張り裂けてしまいそうなの】
【――だから顎下より覗き込むまなざしはひどく甘えた色をしていた、しているに違いなかった、気づけば二人呼吸の間隔までおんなじで、そうしてまた触れ合う体温まで、共有するから】


210 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/06(木) 13:06:17 BRNVt/Aw0
>>206

【眉を潜めた相手。ぼんやりとその顔を見つめて、嗚呼、機嫌を損ねてしまったな、と酷く冷静に分析して】

やめたらすぐ元気に、なんてなれないんじゃないかな
それに、鈴音ちゃんの所為になんかしていないよ
何もかも私が悪いんだから

【そうしてふと放されてしまったのなら放されるがままに元の壁に背を預けて座り込んだ形に戻って】
【じ、と相手を観察しているかのように見つめる。その目は金色でありながらも何処までも透明で、空っぽで。そうして黙り込んだままで】

……そうなんだ、ムリフェンを幸せにしてくれる人とは会ったんだね
興味ない、か……会った事もなければ当たり前だよね
【そう言ったっきり彼女は黙り込んで、また何かを考えているようで】
【あまりにも他人事のような無感情な様子なので彼女もその話題への興味を失った、ように見えるかもしれなくて】

……狡くなんかないよ、私だけが悪いのは事実なんだし
それに、もう我慢しないんでしょう?
だったらそういうのも体裁考えないでズバズバ言ったりしても良いんじゃないかな?
役に立たないって思ったら罵って、嫌だったら殺しちゃって、我慢せず欲望のままに振る舞って……そういうのでも悪くはないんじゃないかな?

全部ぐちゃぐちゃに、か……それも悪くはないのかもね

──役立たずでも生きていて良いとは認めてもらえたけど、私はもう幸せにはなれないって解っちゃったもの
【虚ろな瞳。またぼろりと涙が零れ落ちて】

……何で、"彼奴"だけが幸せなの?
"彼奴"が存在して幸福を享受している限り私は幸せになんかなれないのに……
私だって、幸せになりたかったのに……
大事な人の幸せを願いたかったのに……

【ぼつ、ぼつと呟いた言葉はひどく弱々しくて、けれども深くて冥くて】

……私こそ、ごめんなさい……貴女の為に何か出来なくて
今度、はどうなんだろう……貴女が"そう"でも私がどうだか分からないから

……病院……?
……あはは、行ける訳ないじゃない
──私、"妖怪"なんだよ?人間の施設が化け物を受け入れる訳ないでしょう?
でもね、怪我は本当に大丈夫だから……わりとすぐ塞がっちゃうから、これくらい深くても
それにね、本当に痛くなんかないから

でもね……ありがとう、鈴音ちゃん

──気をつかわせてしまって、ごめんなさい
【ふと向けられてしまった背中。その背中に向けて少女は話しかける】
【せめて、最後だとしても伝えたくて】

ねえ、鈴音ちゃん
友達になってくれて、嬉しかったよ、ありがとう
【本当はそうじゃなかったとしても、少なくとも彼女はそう思っていたから】

【伝えた声は、届くのだろうか?】


211 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/12/06(木) 19:20:39 ZCHlt7mo0
>>133

(ッ、全く――――こりゃもう、演技してるだけ滑稽ってオチかしら……?)

【大男の方は、真っ向から自分の装いを突いて、崩そうとしてくる。だからこそ、青年に対してはなおも時間稼ぎの体を維持しようと思っていたが】
【――――どうやら、彼は彼で、自分が只者じゃない事を前提に、話を進めてくる。こんな中で、人畜無害を装っていても、最早無意味に思えてきた】

……言いませんでしたっけ? 初対面の女に聞く事じゃあないですよって……
まぁ、お仕事のために、足を棒にするってのは良い事だとは思いますが、誰にだって聞かれたくない事の1つぐらいは、あるに決まってますよねぇ
――――答えてしまったら、その瞬間に台無しなんですよ。これは『未来』に関するお話です……あなたと語らう事も、分かち合う事も、無いでしょうよ――――

【すっと静かな表情を取り戻し、女性は凛としてその追及をシャットにかかる】
【無論、意図は分かる。向こうもこちらの情報が欲しいのだろうし、その上で、自分たちの商売に対するアプローチとしたいのだろう】
【だが――――「それでは困る」のだ。恐らくはもうすぐたどり着くだろう『伝手』の事を思えば、ここで安易に明かしてしまって、良い事など1つもない】

生憎ですねぇ……随分と物騒な代物を扱ってるもんじゃないですか。でも、私には手に余りそうなものばっかりで、どうにも答えられませんねぇ……
身を守る備えくらいはありますし――――なにより、『間に合ってます』し――――――――?

【とりあえず名刺を受け取りながらも、女性は先ほどまでの当惑を一変、冷めた様子でその説明を聞き流していた】
【一個人に対して推薦するには、随分と大規模な商品ラインナップだ。恐らく、自分が只者ではない事を前提で、これも提示してきているのだろう】
【――――ならば、これ以上委縮していても時間の無駄だ。ここまで受け身の姿勢で過ごしていた女性は、一転、逆に仄めかしにかかった】
【単純に、客層として自分はそぐわない、のではなく――――既に『満たされている』のだと】

>>183

顔が売れたッ?
……はぁ、なんだかもう、想像しないじゃなかったけど、やっぱりあなた、随分と危ないお方の様で……そりゃ1人とは言わず、30人くらいは期待して良いんじゃないですか?

【迂闊にも、と表現していいのかどうか――――女性は彼には心当たりがないようだった】
【思わず声が裏返りながら、彼女なりに軽妙なジョークを向けてみる。今収監されても、退屈だけはしないのではないか、と】

――――やれやれ、『蛇の道は蛇』なんて言いますけど、やっぱり「そういう人間を前にした反応」ってのは、分かるんですか……?
そりゃあ驚きましたけどね? それで腰抜かしてたら、私のお仕事は商売あがったりなんですよ、えぇ……

【なるほど、少し迂闊だった――――大男の指摘は尤もで、女性は下手を打ったと顔を顰めながら、開き直ったように羊の皮を脱ぎ捨てる】
【透かしたように飄々とした態度で、偽りの恐怖の底にあった、対峙の姿勢を取り出し始めた】

――――おやおや、こりゃあ随分とロマンチストな回答が返ってきたもんじゃないですか、流石の私も少しばかりビックリですよ?
あなたの保護なんてゾッとしませんし、どんな『つがい』を宛がわれるのか、分かったもんじゃないってのもゾッとしますけどね?

【要するに、大きな目的のために、強引に人間狩りをしているのだ――――それを宣言され、流石に表情に戦慄が走る】
【自分がターゲットとして選ばれたというのは、まさに1つの非常事態である。どんな扱いを受けるのかも、分かったものではないのだ】

――――生憎と、私の乗り込む『船』は、もう決まってるんですよ――――?

【胸元に引き上げた右手で握りこぶしを作りながら、女性はジッと大男を睨み上げる。それは明らかな『拒否』のサイン】
【彼が、何を指して、今の状況から『保護』を口にしているか、そこを朧気に理解したのだろう。そこに被せる形で、挑戦的な語句を選択して見せた――――】


212 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/12/06(木) 19:20:59 ZCHlt7mo0
>>196

<そうそう……あぁ、お皿割らないように気を付けてよ!>
<なんかなぁ……でも、たまにゃあこういうのも良いか。近所のガキどもよりずっと可愛いってもんだよ!>

【作業効率を考えれば、手伝いになっていない、というのは本当なのだろう。だが、幸いにしてホールスタッフたち、そして今日の客たちは、それを受け入れてくれている】
【獣人――――アーディンの口利きが効いたのだろう。大人たちは苦笑しながらも、それぞれに少女――――みらいを可愛がってくれている様だった】

「……ま、ただ保護ってだけじゃ、あの子の息も詰まってしまうってもんか」
――――そうそう簡単に、買い物や公園に連れ出してやる訳にもいかんしな……狭い中なら狭い中なりに、世界の奥行きを用意してやらないといかん……

【アーディンも、今日は完全に用心棒稼業一本にスイッチしているのだろう。やはり苦笑しながらも、店内をじっと見守る事に専念する】
【拙いなりに頑張っているみらいの姿に、微笑ましいものを感じて、温かい心地にもなっているのは事実だが――――それはそれとて、仕事は必要だ】

(随分と豪快に飲み食いしている訳だが――――偽装工作か。本命は、あっちの男の方と考えられる……
 ……いや、そんな単純な話か? それにしては、大っぴらに軍人呼称を使うというのは――――挑発、されているか……?
 それとも、あの2人組そのものが撒き餌……そんな可能性も無くはない)

【みらいと、マークしている2人組との接触。それを見据えながら、アーディンは気持ちを張り詰めさせていた】
【彼らの、みらいを軸とした敵は、櫻の国の軍人。だからこそ、彼らは要注意人物なのだが。今のこの状況をどう考えるべきか】
【――――身体にわずかに力を籠め、『バネ』を使いながら、注意深くアーディンはその様を見つめて――――】

「ッ、おい――――」
――――――――――――――――ッッ!!

【名乗らせてはいないはずの、みらいの名を、2人組の女の方が口にした――――その瞬間、アーディンとサングラスの男性の空気が一変する】
【――――ダン、とアーディンは強く床を踏みつけた。だが――――普通なら、そのまま跳躍して飛び掛かるだろうアーディンは、その場に立ち上がっただけで】
【――――それは踏み込みではなく『合図』だった。何も、手の中でただ野放しにしていた訳ではないのだ】

【――――2人組、そしてみらいの足元から、10本の黒い『腕』がそれぞれに伸び掛かっていく】
【男女には、それぞれ4本づつ。その身体に巻き付き、拘束する事を狙いにして。そしてみらいには2本の腕が、こちらは確保して、2人から引き離すようにして】

{――――掛かったねぇ。僕らがそんな呑気でいるはず、無いじゃないかぁ……!}

【そして――――いつの間にかホールの床に広がっている、黒い瘴気だまりから、1人の人影がせり上がってくる――――】
【華奢ながらも筋肉の浮き出た色白な上半身を晒す様に、ワイシャツだけをボタンも留めずに羽織り】
【下半身はジーンズとスニーカーで固め、腰回りに大量のチェーン装飾を巻き付けた】
【くすんだ水色の髪を前髪ばかり長くした、身長170cm前後の青年】

【如何にもガラの悪い、挑発的な――――どこか、狂気的ですらある――――笑みを浮かべながら、腕を組み、じっと『腕』を向かわせている2人を睨みつける】
【もし可能であれば、引き離させたみらいを、自分のそばにそっと引き寄せるようにして】

――――――――俺たちの『忠告』も、効き目が無かったようだな……
貴様らも、あの絹張とかいう男の様に、のたうち回らせてやろう……ッ!

【ジャっと、両手の甲から爪を剥き出しにして、アーディンは対峙し、そして身構える】
【店内での、久々の狼藉騒ぎ――――客たちも、店のスタッフ一同も、凍り付いたようにその光景に魅せられていた――――】


213 : アーディン=プラゴール&ブラックハート ◆auPC5auEAk :2018/12/06(木) 19:24:01 ZCHlt7mo0
>>203

<……レグルスの奴、随分と剣呑な連中と関わり合っていた様だ……>
<でも……師匠に破門されたとはいえ、最後まで、道を踏み外す事は無かったはずです……>
<物騒だけど、悪い人には見えないもん……あの人たち……>

【魔術師一同の、密やかな声が響く。それでも、もとより人気の少ないこの場では、その声も通りは良かった】
【彼らにも、荒事の匂いの濃さはそれぞれだが、誰も3人に迫るほどの空気を纏う事はなかった】
【そういう意味では、彼らの同類としてのレグルスは、非常に異端な存在だったのは、間違いないだろう】

「(ッッ……い、今のは……今のは――――ッ)」

【星の明かりを頼りとする夜の中、なおもサングラスを掛けるブラックハートは、思わずその奥からの視線をじっと注ぎ込んでいた】
【長い銀髪の奥に隠れた、その眼窩――――明らかに、人のものではない目が、その奥に見えた】
【忌まわしき技術の産物である、鋼鉄の腕が、思わず口元に寄せられる――――人間である事を失ってしまったモノ。自分はそうであるし、或いは彼女も――――】

――――あいつにとって『仲間』というのは、特別な意味を持つ連帯だ……恥じる事では、無いと思うぞ……
「……アリア、ねぇ…………同じ敵ってのは、ソニア……いや、カチューシャ……それともエカチェリーナって呼べばいいのかい?
 ……呼び名にすら困るなんて、厄介な奴だよ、本当に……」

【一仕切りの追悼を終えて、改めて3人は顔を合わせる。彼女――――アリアとレグルスとの間に何があったのか、彼らもまた、そこを詳しくは知らない】
【だが、そこは敢えて聞くような事でも無い様な気がしていた。あの状態のレグルスの事だ、経緯など、いくつかのパターンを絞る事は出来る】
【アリアの、凛とした言葉、そしてその立ち振る舞いからも、それが想起されて。鉄のような意思の疎通が、そこにあったのは間違いないのだろう】

……大丈夫だ。これはこれで、奴の望んだ結末だ……救えないのなら、ソニアを静かに眠らせてやりたいと、そう言っていたからな……
それに、奴を狂わせた主犯らしい、ロールシャッハの奴と刺し違えたんだ……最善とは言わんが、次善の結末というには、相応しいものなのだろう……
「……ソニアの奴は、あたしにとっても、ある意味で命の恩人で……カチューシャの奴は、あたしの数少ない仲間の仇だったんだ……
 だからこそ、もう1度正気に引っ張り戻して、言葉を交わしてみたかったんだけどねぇ……今更詮無き事さ
 自分の転送ゲートに、力尽きながら沈んでいったんだ……それこそ、入水自殺するみたいにね……――――もう、あたしたちの前に現れる事も、無いだろうさ……」

【恐らくは、最悪の悲劇に終わる事すら有り得ただろう、一連の事件。それをレグルスは、その一念を貫き通した命と引き換えにして、悲劇で終わる事を許さなかったのだ】
【『死』によって終止符を打たれた結末だが、それは彼らにとり、救いと見做せるだけの意味を持つもので。だからこそ、この弔いにも意味があるのだろう】
【レグルスは勿論――――ソニアも、カチューシャも、ロールシャッハも、良くも悪くも終わったのだ。そこにはもう、喜びも苦しみも悲しみも、存在しない】

――――レグルスの、事か……――――この村を見ろ。ここが奴の故郷だ……ここがこうなった事が、奴が普通の人間としての生き方を、止めた理由だよ……
……当時の領主が、相当な強欲を、強権で押し通したらしい。過剰な徴税を拒んだこの村が……こうして粛清された
レグルスはその8人の生き残りの1人だ……だからこそ、奴は戦った。権威や体制など、糞喰らえと……奴は終生、そう言い続けていたよ

【眼下に見下ろす、壊滅した村の残骸を見つめながら、アーディンは知っている限りのレグルスの過去を、アリアへと語っていく】

その憎しみを……魔術師を志す事で、昇華して、過去とは決別できた……はずだったんだがな。結局奴の、最期の戦いも、復讐と言う形になったのは……
――――当時の領主は、既に領地と爵位を返上させられたそうだが、肥やした私腹で、相当上の機嫌を取っていたらしい。結局、今も悠々と暮らしているそうだ……
この国のこの地方では、上に弓を引いた人間だからな……今でもレグルスは賞金首だ。この墓に……名前を刻んでやることも出来ないのも、それが理由だよ……

【全てを過去へと吹き散らしてしまう様な、空気を読まない風が吹き抜ける中、アーディンはレグルスの前半生を簡単に総括する】
【常に、許せない何かを倒すために戦い続け、その人生を走り抜けた男――――それが、レグルス=バーナルドと言う男だったのだろう】
【――――だからこそ、『仲間』というものに特別な意味を持っている、というアーディンの言葉の真意も、そこに尽きるのだ】


214 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/06(木) 19:25:53 WMHqDivw0
>>198-199 >>207

【気付かない筈などない。苦しみを訴える子供たちを見て血相を変え、そのうち一人に寄ろうとして】
【しかし一人なんかじゃないということに気付く。全員。全員「そう」なっている――ぎちぎちに見開いた眼】
【鈴音とミチカに振り向かせるなら。バネにかけられ弾かれるみたいに駆け出していた、そうして】
【二人の間――というか、ミチカを詰める鈴音の腕に。引き剥がすような力は籠められなかった、手折るのが怖くて】
【しかし握り潰さない程度の力は入れて。必死に首を横に振る、「ちがう」――それだけを伝えようと】

鈴音ちゃ、りん、ね、………………ダメ、……っじゃあ、ないっ、けど…………
――――――今はダメ! コイツ、「繋いで」やがる! 子どもと、……子どもたち、がっ!
コイツが受ける傷も、苦しみも、つながってる先――――こどもに全部行くようにしてやがンだ!!

【眼も口もほとんど限界に開いて、しかし喉から迸るのは焦りにまみれて掠れる声。けど、それでも、】
【気付いてほしいって感情だけを籠めていた。決して、この女を赦すな、などとは言わない。言えない】
【自分だって「そう」じゃなければこんな女、頸でもへし折ってすぐ殺してる。だが、しかし、その先に子供がいるなら】

【そうして、どうしたって過ってしまう。後悔。おれがあの注射を、壊したから? だからこうなった? 全部が、】
【――――思ってしまったらきっと負けだった。だけどざらざらに散らした銀髪の向こう、揺らめく黄色が泣いている】
【やっぱりおれのせいじゃん。全部。生まれてから今まで全部そうだった。おれのせいで何もかも】
【今苦しんでいる子供たちだって。あの日苦しませた子供たちだった。あの子だって。あの子だって全部――】
【何をすれば正解だったか、なんてわかっていたはずなのに。能も何もないくせに抗ったら、全部、こうなったから】

………………………………ねえ、あんた、………………ミチカっつったっけ、

【ならば今こうして紡ごうとしている言葉。女の名を問うて、その先に紡ごうとしている内容。震える声を不細工に並べて】
【何を言おうとしているか、鈴音にはわかってしまうんだろうか。それを言えば今までの全部が無駄になるってのに】
【だけどもう――他に何も思いつかないって、がたがた震える表情が泣き叫んでいた。そんなことしたら死んでしまう、】
【悪いコになって遊び回ったあの日、ケンカしようって笑って、あいつら末代まで祟ってやろうって約束して】
【今までとは違うおれたちになろうって言った彼が死んでしまう。蝋燭にて弔われることもなく、無惨にでもなく、ただ消えてしまうみたいに】


215 : 名無しさん :2018/12/06(木) 22:24:50 eDU8uS9o0
>>210

【こつこつと硬くて冷たい足音がいくつか連なって、止まる。振り返るのなら長い髪の一本までもがきらきらと微かな光に艶めいて、美しいから】
【ごま豆腐みたいな色したコンクリートの建物の前に立つなら大層色鮮やかに見えても、クリスマスツリーのイルミネーションの前に佇むなら、彼女の色なんて零と等しく】
【星空はきらきら綺麗なのに少女の顔はごく冷たげであるのだろう。見下ろす眼差しが優しくないのは当然だった。体裁を繕わなくっていいと言うのなら、】

――――――――――つがるちゃん、うざい。"次"も"そう"だったら、ぶん殴るから。

【それでもやっぱり一番非道い言葉を呑み込むのは体裁を気にしていると言うんだろうか。ならば睨む流し目の残滓、気づけばまた背中を向けて】
【"それ"に対応してやれるほどの余裕なんてやっぱりなかった。或いは今でなければいくらでも付き合ってやった/やれたのかもしれないけれど、どうあれ、今は難しく】
【けれどそれも結局言い訳であるのだけど。――背中に投げかけられた言葉は聞いていたのか居ないのか。*************************?】

【――ことんと足音一つを置き去りにするなら、次の刹那に少女の姿は現実から剥落しているのだろうか。ひとひら散らしてた桜の花弁、魔術の残滓だけが、色鮮やかに】

/おつかれさまでした!


216 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/06(木) 22:58:48 BRNVt/Aw0
>>215

【硬く冷たい足音。それがふと止まって】
【振り返った赤と黒はひどく冷たい色をしていて】

【吐き出された「うざい」という言葉。一瞬だけ目を見開くが、それはすぐに細められて】

……そっか

【ぽつり、と返す言葉。やっぱり嫌われてしまったんだな、と冷静に分析して】

【背中を向けられて、そうしてその姿はふと掻き消えて】

……なーんだ

──やっぱり私なんか要らないんじゃないか

【虚ろに呟かれた声。びゅう、と風が吹いて】

【運ばれるのは話題を求めた報道番組か何かの声】
【たんぽぽの、事件の事】

……もう、全部、どうでも良いや

【どうせ私の世界は戻らないんだから】
【どうせ私は幸せになんかなれないんだから】

【少女はゆらりと立ち上がり、路地の奥へと歩き出す】
【その先には暗い闇が広がっていて】




/絡みありがとうございました!


217 : ドラ ◆UYdM4POjBM :2018/12/07(金) 02:34:52 XqQAhkbc0
>>170

【「おろっ?」とやや間抜けな声を出しながら空を切る手応えを感じ取るドラ】
【不意を突いて確実に捕らえられると確信していたのにみごとに回避された――まるで自分の動きのクセを知られているかのように】
【目を見開き口を尖らせ、一度空を切った自分の手に目をやると、すぐにイスラフィールに笑いかけた】


……ぼくが狙った胸を捕まえ損ねるなんて忘れちゃったくらい久しぶりの事だ……!
やるじゃないの、そうとう"できる"!―――成長したなあ……なんだか感慨深い気持ちにすらなるね……


【うんうん、とか師匠面かってレベルで頷いている。こいつ「これ」が原因で収監されていたのではなかったのか】


うん、非常に感心したぞ!ならばぼくも君に敬意を表し大真面目なぼくを見せようじゃないか
せっかくならばきみの認識を「なんとか引き入れられるといいなぁ」を超えて「何としてでも仲間にしてやる!!」って気持ちに
変えてみせたいじゃない?―――となると、ぼくの方もその甘い甘い褒賞って奴をを見せないといけないかなぁ、ぼくに何が用意できるだろう……

まずはなんといってもぼくを戦力として欲しがってるんだから今のぼくの『力量』を見せられればいいな
アルカトラズ刑務所で毎月開かれてた賭博K1大会の成績とかは優秀だったけど、イマイチ伝わらなさそうだし
もっといい見せ場があるといいんだけど。まあ機会を見つけたらきみを呼んでさ、見せてあげるよ


【ほかには〜、と、今まで横に置いておいた和傘の上で回していた洋酒のビンをテーブルの上に置くと、背負ってきたバッグの中身を探る】
【そこから続いて取り出したのは、白いシャツに大きな尻尾が飛び出した赤のスカートを着て耳にリボンをしたリスのようなキャラクターのぬいぐるみ】
【続いて青いワンピースに胸元に赤いリボンタイをした小さな雌鹿のようなキャラクターのぬいぐるみを取り出すだろう】


あと他にはせっかくお会いしたんだからお近づきのしるしに『お土産』持ってきたんだ、挨拶代わりに最初の『無料特典』として差し上げるよ
まずぼく普段は昔叩き込まれた芸で食い繋ぎながらいろんな仕事受注して依頼を解決する仕事も副業でしてて……
これはこの間追加報酬でもらったワイン。1994年製造の『シャトー・モンローズ』だって。おしゃれでしょ?後でお家で飲んでみなよ

続きましては最近巷で有名な15分アニメの『子リスちゃんと子ジカちゃん』のぬいぐるみもどうぞ
政治家さんにはちょっと趣味が可愛らしすぎるかもしれないけどぼくが持ってるよりはマシでしょ。基本ユルいノリの
日常モノなんだけどさぁ先週の話は珍しく大真面目でエモい感じの話だったな……もしよければ受け取って


【洒落た洋酒に女児向けのぬいぐるみセット……異質な組み合わせのプレゼントをお近づきに送ってくるドラ】
【いつものように無邪気で屈託ない笑みを浮かべながら「ほらほら!」とお近づきのしるしとしてプレゼントを渡してくるだろう】

【しかし、イスラフィールの理念を聞く段階になった所で彼は―――真顔で彼女の声に耳を傾ける。彼なりの礼節を込めた態度で】
/続きます


218 : ドラ ◆UYdM4POjBM :2018/12/07(金) 02:37:10 XqQAhkbc0
>>217続き


……来る前にある程度きみの評判は調べて来たんだよイスラフィールさん

若くしてその天才的手腕で『水の国』の最高議会の一因になった敏腕政治家。まあなにからなにまでお綺麗な噂ばかり
ではない所まで知ってる。法務部の前会長再起不能にしたのコイツじゃねえの?みたいな噂とかも

それはいいんだ。政治家なんて多かれ少なかれ清濁併せ呑むやり口を会得してなきゃできない事くらいぼくだって知ってる
むしろ荒事の際考え方が合いそうで頼もしい―――ぶっちゃけ今すぐぼくにそのポストにつけって言われたら疑惑じゃなくて
ガチでやってただろうし。クロロホルム嗅がせて意識トばした間に国外に飛行機で輸送とか?


【懐から―――硬貨の文様が背面に刻まれた、小アルカナ『コイン』の"W-phone"を取り出すと、指でタッチし画面をスライドさせる】
【その中に記録していたものなどを再確認するかのように】


だが今の地位に付いてから築き上げたモノは……どれもいいものじゃないか。今の時代それなりにいろんな国や世界と繋がって
次々増えていく他の種族と共存するための配慮、工夫などの『規範』を造ったり……時勢が反能力者に傾いた今、いらぬ血を
流させないために彼らを守るために建てた『政策』……傷ついたこの国の人たちのために新たに造った医療施設とかもさ

手段はともかくその根底にあるのは『苦しんでる人々を助けたい』って事。今なおその軸がブレてないって事がわかって……うれしかった


【向けてくるのはいつもの無邪気で悪戯っぽい幼さがこもった笑顔ではなく、柔らかで慈しみに満ちていた暖かい微笑み。えらく珍しい事だった】
【しかし、少し俯いて頬を人差し指でかきながら、ドラは問いを続ける事だろう】


……そこまでやってくれてるのにさ、きみはそのうえjusticeを再建して『再び戦場に戻る』と。そう言ったのかい?
ああもちろん心強いとも。ぼくに負けず劣らず前線で戦った経験も豊富で能力も強力だからな。一緒に戦うとなればそりゃ心強いさ
でも、前線を退く前に受けたダメージも覚えてるだろう。最前線の鉄火場で痛い思いしまくった記憶も。無論、命の保証なんてできない。いくらぼくが傍で守るとしてもだぞ?



――――……きみの進んでいるのは苦難の道だよ。キャパオーバーでぶっ壊れかねないくらいのね。それでも……やるのか?



【―――彼を知る者にとっては、意外な一面とすら思えるかもしれないほどに……ドラは大真面目に心配そうな様子を見せていた】
【そこまでして戦い、致命的な傷すら追わされるかもしれない所へ、また立ち向かおうとしている彼女の事を】
【ゆえに今一度、面と向かって問いたかったのだ。また戦うのか?苦しい思いをしてもまだ戦い続けるつもりか?と】


219 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/07(金) 12:07:42 Ty0s177.0
>>207>>214


――――――――――…………


【鈴音の怒声に、呪詛に】
【しかし女は緩い瞬きをいくつかして】
【目を丸くし、首を微かに傾げた】

【まるで何を言っているのか分からない、という風に】
【こんなに親切にしているのに、どうしてそんなに怒るのか――】

【しかし女はそれさえ慈しむかのように、口元と眼を緩めて言った】


世界は、誰のものでもないですよ。


【泣きじゃくる子どもへ優しく言って聞かせるかのごとく】
【さざ波のような声と共に、そっと――鈴音の手に自身の掌を添えていく】


【――そのとき、】


【 ――ざザ――ざ……―― 】

【 ジ……じ――ヴー――ン…… 】


【 (ぷつっ) 】



【――――――――――――――――】



あなたですね、“お返事”くれたの。



【ミチカはヤサカの隣に立って、彼を見上げている】

【鈴音の前には誰もいないし、高椅子も倒れていない】
【全てテーブルの側へ整然と据えられ、食卓の準備が整いつつある】
【今し方、誰かが夢から覚めたように。初めからそうであったように】



【女は柔らかくはにかんだ】
【名を覚えてもらえ、こうして対面することができ、】
【それらが純粋に嬉しいのだと、言外に語る者の顔をして】


【そのまま佇み、じっと次の句を待った】
【春の桜の木の下で、告白を待つ女生徒を演じるように】

/↓(2/2)


220 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/07(金) 12:09:07 Ty0s177.0
(続>>219)


【――ヤサカを真っ直ぐに見据える、あどけないほどに円らな瞳】
【深い緑色を湛えた虹彩が、ふと、何かの数値を動かしたかのように、】
【濃い紫の色へと徐々に変じていく。――かと思えば、それは再び色を変え、】
【今度は艶やかな金色にも移ろった。玉虫の蠕動。それに似ていた】


【“虹彩”の字面そのままのように】
【ひとところに定まらぬ色の眼差し】

【その不定の瞳は、凝然と虚空を焦点するような目は、】
【果たして“赤が赤として”視えているのか――まるで定かでない】


【 チクタク チクタク ………… 】


【返答を誤れば、女は更に何かをするのだろう】
【平然と、幸福そうに。野菜のへたをもぐように、果物の種を取り除くように】



【 チクタク チクタク ………… 】



【そう察せられるに余りある、】
【秒針の狂った静けさが、ヤサカの前に立ちこめる】





【苦しんでいたはずの子どもたちは、いつしか初めから何事もなかったかのように】
【手洗いに続いて、がらがらとうがいを始めて】
【終わった者からめいめいテーブルについていく】

【卓上にはいつの間にかパック弁当がいくつか積まれている】
【どこかの工場で作られて、今も同じものが作られ続けているのだろう、既製品】


【カルラが、カトラリーの入ったケースを運んでいる】
【子どもたちが、待ちきれないようにはしゃいでいる】

【日常は淡々と進む】
【彼らのすぐ側で。彼らを置き去りにして】


221 : 名無しさん :2018/12/07(金) 23:35:03 zmJDrgxA0
>>214>>219

――――――――――っう、誰がッ、――誰が世界の話なんかしてるの!? わたしはッ、! わたしは、あの子たちの話を、してるの!
お前たちに渡すくらいならわたしが滅ぼしてやる、――ッ、あの子たちをお前たちに傷つけられるくらいなら、その前にわたしが全部滅ぼしてやる――ッ、

【ざわっと毛すら逆立つような気がした。現実に腰まであるロングヘアが、そんな重力に逆らった風に蠢くはずもないけれど、あるはずはないんだけれど】
【完全に頭に血が昇っていると言うのに、それ以上の手を出さないのはどうしてだったろうか。そこに子供たちがいるから? 自分はここから真っ先に逃げ出したから?】
【――それともあるいは何かを感じ取っているのかもしれなかった。なにか悍ましさと不安さをまぜこぜにしたような。胃の奥底までどっぷりと埋め尽くされるような、なにか】

――――ッ、なに!? なんで!? なんで邪魔するのっ――、

【だけれど、彼が、少女と彼女の間に割って入るなら。少女の腕をぐうっと掴んで、しまうなら。瞬間に眼差しを見開いて彼女は見上げるのだろう、彼のこと】
【だからきっと絶望的な顔をしていた。理解できぬと言う顔をしていた。それは例えるのなら、――裏切者に向けるような。信じて預けた背中を刺された瞬間のような、】
【どうしてこの女を庇うのか。どうして。どうして――、時間にするのなら、ほんの瞬き数回分の程度しかないんだろう。それでも、一瞬、間違いなく彼女は何かに絶望しつくして】

――――――え、ッ、――――、触んないでッ! 

【――――――そうしてまた、次の瞬間に、彼の告げた言葉に惑うのだ。怒りに支配されていた顔からすうっと血の気が落ちてゆく、白を蒼ざめた白にすり替えて、】
【力の緩んだ襟元を掴み上げていた指先に触れられるなら、――少女は転瞬、なにかとても嫌なものに触れられたかのような金切り声を上げるのだろう。そうして果たして事実であり】
【そのくせに腕を払うでもないのは、――せめてそうして捕まえていないと何か不安であるかのように。けれどそれはすぐに意味がなくなってしまうもの、だって】

ヤサカ、さ、

【目の前から唐突に消える姿に、勢いあまってつんのめる。慌てて振り返るなら、ちょうど、彼と彼女が見つめ合うのだろうか。なれば、理解の遅れるかんばせ、秒速で追いつく】
【爪先の向きを変えて踏み込むのなら、足音がごン、と、嫌に鈍く響く。だから伸ばす指先、――今度は、婦警でなく、ヤサカの襟元、ひっつかもうとするんだから】
【喧嘩の作法なんて分かってないみたいだった。そもそも喧嘩する気があったのかどうか。世界じゅう全部に喧嘩を売ったくせに、夜更けのカロリー摂取が楽しくて仕方ないなんて】
【――――だからほんとうは、】【左手。襟首をぎゅっと掴むなら、びっくりするぐらいの力で、引き寄せようとして】【途中で右の手も添えるなら】

――ッ、ふざけないで! ふざけてるのっ――、!? "こんなの"ぜんッッ、ぜん、意味ないから! こんなの――、こんなので"いい"なら、ッ、
"こんな程度"でいいなら、わたしやんなかったよ! "これ"じゃ駄目だから、わたし、やってたのに! ――ッ、何にも分かってない!

ヤサカさんなら分かるでしょ!? こんなご飯はわたしがしたかったことじゃないって! こんな猿真似、――、絶対違うって!

【――――――――――ごつ、と、頭突き。いや。多分。本当は頭突きがしたかったんじゃなくって。視線を合わせたかっただけなのだと思わせた、けど、】
【結果としては限りなく頭突きだった。ただもちろん、彼の方がずうっと身体は大きくて、力は強くて。――だから、よほど不意を打たれるのでなければ、きっと叶わない行為】
【ごく至近距離で、彼女は無理やりに彼のまなこを覗き込もうとするだろうか、――黒色と赤色の色違い。興奮しきって真っ赤の頬っぺた、見せつけて】

【――だけど次の瞬間には距離はまた離れている。叶っていたのなら、おでこのところ、衝撃でまあるい真っ赤が出来ているだろうか。どちらであっても】

【ひどく怒った仕草で彼女が示すのは、既製品のお弁当であるのなら。――。こんなのじゃ意味がないんだって繰り返して怒る気持ち、彼なら、彼には、分かってほしくて】
【分かってくれたなら、――今にも彼の口からこぼれてしまいそうな言葉だって、引っ込んで欲しかった。どうしてそんな顔するの。こんな、猿真似しか出来ない奴に】
【(ただ、だからと言って、彼女は怒っているばっかりで、それは決して解決へ向かうための感情ではなくて。ただ、ただ、怒ってばかりの、ひどい、子供のやりかたでもあった)】


222 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/08(土) 00:22:12 WMHqDivw0
>>219-221

【世界が引き攣れてねじれてゆく。彼はその奔流に揉まれて、流されて、それだけだった】
【ぱちと瞬きをする度に風景が変わる。苦しむ子供たちがいなくなって。となりには殺してやりたい女がいる】
【そうして真正面から相見えるのは、だいすきだって思ったはずの女の子。ひどく怒っている】
【その理由がわからないわけがない。だって全部教えてもらった。彼女が何を願い、何を呪ったのか】
【全部、知っている、からこそ――何を言うべきか、何をするのが正解か、……わからなくなってしまう】

【女、ミチカが笑っている。鈴音が激昂しているのと対照的に。であるなら――こちらの正解は、わかってしまう】
【こいつの言うことを聞くのが正解であり。しかし襟首を掴まれる掌の力強さ。……この子に何を誓ったんだっけ?】
【なにか大切な約束をしていた。待たせていた。そうしているうちに時間切れになって、それでも会いに来てくれて】

【――――頭突かれる衝撃。その向こうでぱちぱち弾ける火花が、虹色に澱むミチカの瞳を鮮烈に、弾き返すように】


【( ………………………………、…………ああ、そっか。 )】



…………………………ミチカっつったっけ。そう、おれ、……オムレツくんって言うの、黄色い瞳のオムレツくん。

おれね、あのネ、………………子供たちが苦しんでるのを見るのが何よりキライ。だからネー、



【    、泣きそうな顔のままへらっと笑う。それから――「ぎちぎち」「みしっ」「びき」「ごきゃ」、何かの拉げる音】
【それは絶対に、彼のココロが潰れてしまう音――なんて比喩表現ではなかった。ありえない音。それは「現実」に鳴っている】
【何処から。……彼の身体の内部から。肉が骨が皮が臓器が、ぜんぶ、折れ曲がってぐちゃり掻き混ぜられて】
【ひん曲げられて――「カタチ」を「変えている」。鈴音はきっと知っていた、彼の異能――「変形」】
【それをここに来て何かに使おうとしているようだった。「ばき」「みぢっ」「ごりゅごりゅごりゅっ」「ぶちゃっ」】
【聞くに堪えない音を立てて、彼の身体、正中線をまっすぐ走るように――真っ黒い亀裂が、走っていた】



おめーのこと大ッ嫌いだわ! チョー嫌い! 彼女どころかトモダチにもしたくねえ!



【そうして。泣き笑いの顔が真っ二つに「割れる」、そのまま、首も胴も、亀裂に沿って二つに裂けていくのなら】
【左側の方は「下顎」。右側の方は「上顎」、――大きな大きな「口」の化物と成り果てて――食事をしている子供たち】
【その子たちをひとりひとり、あるいは何人かいっぺんに、……とにかく全員。その口の中に収めて――飲み込もうと、するのだ】

【――気が狂ったと思うんだろうか。あるいは、おまえらにくれてやるくらいなら、ここでこの子たち全員殺してやるって】
【そういう意思表示としてそうしたんだろうか。わかりやしないが、とにかくこの男は異形の化物と成り果てて――そうして】
【女の生命とリンクしている子供たち、全員食べてしまおうとする。……しかし、だけど、繋がっているのならわかってしまう】
【この化物は口に放り込もうとする子供たち、全員「丸呑み」にしている。決して牙は立てず、傷付けぬよう、ただ匿うように】

【しかしそれも、ミチカや、鈴音に止められないならの話だった。狂ったみたいなこの行動を止めようとするのも、まあ、おかしなことではないだろうし】


223 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/08(土) 00:31:38 E1nVzEpQ0
>>209

【溢れる涙も、釐かな頷きも、仕返す口付けも、呪うような慕情に満ちた約束の数々も、 ─── 執念に似て、アリアは抱き締めていた。守るように、縋るように、愛でるように】
【ずっと昔に体を重ねた、恋人のことを少しだけ羨む。決して純情な関係でなくとも、熱量の吐き出される刹那には、雌としての多幸感を覚えていた。あの青い瞳の惚けた具合も、そこに映り込んだ己れの悦ぶ顔も、忘れられない】
【この潤みが女のものだけでなければ、綺麗に始末も付くものかしら。熱り立つ欲望を最奥にまで捻じ込んで、栗の香りを存分に吐き出して、秘した繋がりに寵愛の征服を示したなら、貴女はもっと蕩けたように笑ってくれるの?】
【 ──── 稚気じみた夢想でしかなかった。それでも舌先は短すぎて、指先は儚すぎた。欠けた心を充してやりたいのだと願う心は本物だった。だって私たちは二人で一ツなんだから。消し得ぬ痕を残すなら、傷でなくとも構わない】
【まして動かぬ筈の両腕がひたぶるに抱き返してくれるのだから躊躇う余地もなかった。 ──── 触れてやりたかった。貴女の未だ触れられぬ桃源まで、嘗て振るわれた下衆な暴威の記憶も全て嘲笑って塗り潰すような、█


224 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/08(土) 00:32:27 E1nVzEpQ0
>>209

【溢れる涙も、釐かな頷きも、仕返す口付けも、呪うような慕情に満ちた約束の数々も、 ─── 執念に似て、アリアは抱き締めていた。守るように、縋るように、愛でるように】
【ずっと昔に体を重ねた、恋人のことを少しだけ羨む。決して純情な関係でなくとも、熱量の吐き出される刹那には、雌としての多幸感を覚えていた。あの青い瞳の惚けた具合も、そこに映り込んだ己れの悦ぶ顔も、忘れられない】
【この潤みが女のものだけでなければ、綺麗に始末も付くものかしら。熱り立つ欲望を最奥にまで捻じ込んで、栗の香りを存分に吐き出して、秘した繋がりに寵愛の征服を示したなら、貴女はもっと蕩けたように笑ってくれるの?】
【 ──── 稚気じみた夢想でしかなかった。それでも舌先は短すぎて、指先は儚すぎた。欠けた心を充してやりたいのだと願う心は本物だった。だって私たちは二人で一ツなんだから。消し得ぬ痕を残すなら、傷でなくとも構わない】
【まして動かぬ筈の両腕がひたぶるに抱き返してくれるのだから躊躇う余地もなかった。 ──── 触れてやりたかった。貴女の未だ触れられぬ桃源まで、嘗て振るわれた下衆な暴威の記憶も全て嘲笑って塗り潰すような、◼


225 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/08(土) 00:33:32 E1nVzEpQ0
>>209

【溢れる涙も、釐かな頷きも、仕返す口付けも、呪うような慕情に満ちた約束の数々も、 ─── 執念に似て、アリアは抱き締めていた。守るように、縋るように、愛でるように】
【ずっと昔に体を重ねた、恋人のことを少しだけ羨む。決して純情な関係でなくとも、熱量の吐き出される刹那には、雌としての多幸感を覚えていた。あの青い瞳の惚けた具合も、そこに映り込んだ己れの悦ぶ顔も、忘れられない】
【この潤みが女のものだけでなければ、綺麗に始末も付くものかしら。熱り立つ欲望を最奥にまで捻じ込んで、栗の香りを存分に吐き出して、秘した繋がりに寵愛の征服を示したなら、貴女はもっと蕩けたように笑ってくれるの?】
【 ──── 稚気じみた夢想でしかなかった。それでも舌先は短すぎて、指先は儚すぎた。欠けた心を充してやりたいのだと願う心は本物だった。だって私たちは二人で一ツなんだから。消し得ぬ痕を残すなら、傷でなくとも構わない】
【まして動かぬ筈の両腕がひたぶるに抱き返してくれるのだから躊躇う余地もなかった。 ──── 触れてやりたかった。貴女の未だ触れられぬ桃源まで、嘗て振るわれた下衆な暴威の記憶も全て嘲笑って塗り潰すような、██にて】
【然れども今ばかりは叶わぬ願いであったから、甘い抱擁の中、心を悦ばす言葉の全てを肯定して、慈母の微笑みに似合わぬ肉慾を隠す。それでも瞬く瞼と重ねる呼吸が、呼び起すから。】


    「 ……………───── いいのよ。」「それで、いいの。」「ずうっと、なんだって、このまま、2人で、 ……… 。」


【 ─── 透き通るようなアリアの細腕は、青白い燐光を涓涓と垂らす欠け月へと伸びて、薄いカーテンと煩いブラインドを閉じる。押し黙るような暗闇が、病室の悉くを充す。】
【窓先から幽けく溢れる夜の明かりだけが世界の輪郭を象っていた。2人だけの世界。心音と、呼吸と、体温と、衣擦れと、柔らかさ。 ─── 白銀の金紗と、嗜虐に潤んで透き通る碧眼が、薄墨に冒されたような世界で、誰より近く煌めいて】
【はじまりの夜に擬えるように、やはり掌が突き立てられるのだろう。しなだれかかる体重と、狂おしいほどの肉感を孕んだ肢体と、愛しいウィステリアに限りなく絡み付いて、ひどく湿っているのに掠れながら、囁かれる宣告。】




        「 ──── ねえ、」「愛してるわ。かえで。」




【終わりとして唇を奪った。】【それは始まりだった。】【少女の眠りさえ許さずに。】【蕩けた声と爛れた音が、薄明まで絶えることはない。】



【 ──── 幾らかの昼と夜を、そのようにしてアリアは過ごすのだろう。薄暗い病室の中で、甘えることを覚えた少女の望みを、溢れるほど充してしまうために】
【そうして深い傷も癒え始めた頃、 ─── 目覚めの朝、カーテンとブラインドは空いていた。書き残したものさえなかった。ただベッドから旅立った1人分の質量が全てを物語る。背に受けた銃後の祈りへ、最後の決着を付ける為だけに。】


/上二つは書き込み失敗です………お目汚し失礼しました、このあたりで〆でいかがでしょうか!!


226 : 名無しさん :2018/12/08(土) 01:51:26 zmJDrgxA0
>>225

【――――――或いは、見たことがあるのかもしれなかった。いつかアリアが少女の部屋より持ち出した、分厚いファイル】
【儀式の記録という名目でうんざりする文章量はもとより、奥歯に力の籠るたぐいの写真。――それから、手焼きのDVD。いくつものUSBメモリ。きっと少女は自ら見ていない気がした】
【とかくすべては"儀式"の"記録"という名目だった。けれど実際は下卑た理由と目的による****でしかなかった。それ以外に"それ"を説明する言葉はきっとないのだから】

【"儀式"なんていうのは本当に建前だったのだと思わすには十分すぎた。おっきなお菓子に取りつくありんこみたいに今よりもっとあどけない少女を取り囲む光景は滑稽でもあって、】
【だけど確かであるのは、組み伏せられ押さえつけられて指先一つ抵抗することすら許されぬ出来事に雌の法悦を教え込まれて潤んだ瞳の恍惚と蕩ける色合いは】
【きっとどうしようもなく相手に見せたことのない表情であるのだろうから。――――ならばごく近しい距離、何かねだるように見つめる瞳を潤ます感情すら、伝えるのかもしれなくて】

【もはや心ばかりでは物足りぬと訴えるような眼差し。ぼおっと瞳孔の緩んだ黒目がちな眼差し。――――もうなにも宿せぬ胎であるのをこんなに疎んだ日はなかった、気がする】
【だから神様にお願いした、――貴女のところに居る私の子を、一人だけだっていいから、返してくださいって。もう一度お腹に入れてくださいって。だって、】
【生きている限り癒えてしまってどうしようもない傷跡なんかより、よっぽどいいように思えたの。だから今にも泣いてしまいそうなくらい、愛しい人のために産んであげたい】
【――マゼンタ色を蕩かして囁く言葉。愛し合う二人の距離でないと聞き取れるはずない声の内容は、世界中でただ一人、アリアだけが知っていたら、きっと、いいから】

【(ならば何かをねだったのかもしれなかった。それとも吐き出してなお溢れてしまう感情を伝えたのかもしれなかった。何でもよかった。この距離でなら、なんでも、許されるから)】

――――――――――――――、私も。

【それでも限りなく、相手に向ける蕩けきった目は似ていた。それでもなにかどこかで違って見えるのなら、それは、やっぱり、女に生まれてしまったから、?】
【――――或いは。胎から引きずり出されて泣くこともなかった子を本当は抱きしめてやりたかったのかもしれなかった。もしもそれをやり直せるのだとしたら、――なんて、】

【――ならば、少女はいくらかの間、傷の痛みを異能の麻酔に浸して、忘れていたようなのだった、だけれども、】
【堪えきれないものに足先の伸びて跳ねるたびに/そのたんびに焦げ付く脳髄のこびり付くたびに/剥落してゆくマゼンタに、やがて、嬌声はどこか悲鳴の様相を帯び、】
【涙すら溢し痛みに上げた声の終いがけれどどこまでも甘ったるく蕩けてやまない、――――なら】

【(いたい/しんじゃう/ごめんなさい/いたい/すき/ごめんなさい/いたい/いたい/すき/いたい/すき/すき/すき/しんじゃう/すき/いたい/すき/すき/すき/すき/すき、)】

【連なる言葉は譫言と何かが違うのだろうか。きっと何も変わらなかった。その胎を開いてばらばらに探しても、見つかるのは愛しい人への感情以外、あり得ないなら】
【ましてや神様の処へ行った産声を上げることすら許されなかった赤子が戻ってきて宿る奇跡なんてものもあり得ない。――本当に?(少なくとも、今は、)】

【――――――――――――だから少女はいつかの朝、一人きりで目覚めるのだろう。ならばやはり祈るしか出来ない無力さに、泣きたくなる】
【ねえやっぱり待っているだけなんて辛いよ、――、心中で親友からもらった言葉への返答呟いて空を見るなら。きっと憎らしいくらいに、冬の快晴、拡がっているのだから】

/おつかれさまでした!


227 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/08(土) 01:59:06 xeKO/IEg0
>>213


【訝るような視線にアリアは慣れていた。 ─── 男と見ても高すぎる程の躯体も第一であったが、人殺しに慣れた酷薄な碧眼は、易い振る舞いに取り繕えはせず】
【まして己れを悪し様に評される訳ではないのだから却って有難くさえあった。そうしてまた、同じ銀色の長髪を宿した、恐らくはごく似た遍歴を持つであろう女に対しては】
【矢張りどこか悲しむような微笑みを向けるばかりであった。 ─── 憐れまれるべきは己れではないのだと告げるような、然して真意の全てを伝えるには、今この場は些か沈痛で、ともあれ】



「 ……… では、躊躇なく誇らせて貰いましょうか。」「彼の望みに袖を連ねて、その行末を見届けた須臾に。」
「私も、今となっては最早、何と戦っていたのかは判然としないけれど ──── そうね。きっと、これで、良かった。」
「後は矢張り、惜しむしかないのでしょうね。 ……… 始末の付いた事に、私の身上で能うことは、それくらいのものだから。」



【一ツ一ツ選ぶような朴訥さで、冷たくも優しげで気取らないソプラノが、追憶を語るのだろう。 ─── 彼と、嘗て彼の想っていた、一人の少女。あるいは、その無惨な結末】
【何れにもアリアは思い残す所があった。結ばれぬ慕情の遣る瀬無さを彼女は知悉していた。墓前に奉じた黒酒の一瓶は、彼と彼女の二人に向けて贈られた願いだった】
【 ─── 倣うように、青い隻眼は眼下の廃墟を見据えるのだろう。溟い星空の下に苔生した、旧い営みの遺構群。長い銀色の睫毛が、どこか感傷的に瞬くのは、荒涼なる寒風ゆえであるか。】


     「 ────…………… 。」


【なれば語られる彼の半生と、その信念を築いた全てに、黙したままアリアは頷くばかりであった。 ─── ひとごとであるとは言えぬような、神妙なる横貌を晒していた。】
【拠ん所無い指先が殆ど無意識に誤魔化す紫煙を求めていた。然るにここは墓前であり、葬儀の参列でもあるのだから、結局はコートのポケットへと収まって終わる。】
【「 ……… そう。道理で、 ……… 。」なにか深い思いを言いかけて、考え込むように唇は噤まれた。暫くの沈黙さえも、遠く鎮まる夜が繕ってくれるのであれば、やはり女は徐に】



        「 ─── 未完の報復に決着を付けて、濡れ衣の一ツでも禊いでやれば、」「 ……… 彼は、喜んでくれるかしらね。」



【 ─── 静かな意志を宿す呟きであった。夜に溶けてしまうには、余りにも濃密な思念を含ませていた。その挙措こそ冷厳であったとしても】
【なんとなれば女もまた、内心の淵源は直情者であった。機械仕掛けの精緻な論理と、務めて抑えた情緒の檻に、堅く本質を囚えるだけで】
【自身の為すべきと信じた正義に、誓って決して悖ることはない。ならば腑に落ちたことをにおわせるような呟きも道理であり】
【そうしてまた悟らせるのかもしれない。 ─── 彼女もまた、幼き日の非道を足掛かりとして、夜の女王として身を窶したのだと】


228 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/08(土) 16:45:54 6.kk0qdE0
>>208

【降り頻る明け方の雨は、甲板に散った血液も脳髄も骨片も、無情に、ただ一律に洗うように混ざり流して行く】
【一撃必殺、相手に僅かな認識すらさせないスニーキングの妙】
【だが、状況は常に変化する、正にこの時も……】

「おいおい、ここに来てだんまりかー、つれないねー」
「仲間に入れてくれよ、こちとらここずっと艦内に缶詰でな」

【まだ3人の死体は見られて居ない】
【扉が解放され、2人が甲板に姿を見せた、正にその時だった】

「ん?ーーッ!?」
「すーじー?何ぞ?」

【右の男にとって、ミレーユが発した言葉が、生涯最後に聞いた声となった】
【同時に反応し、動きを止め振り向いたのが運の尽き】
【次の瞬間に、右の海兵は頭を弾かれ、新たな血溜まりを作り出し】

「な、何!?ゔッ!?」

【何が発生したのか、認識する前に、ミレーユが接敵、その首筋にナイフを押し当てながら口も喉も凍らされ】

「ん゛ッ!?ん゛ーッ!!」

【なす術なく、拘束され、声を封じられ、それでも足掻き身を捩り、逃れようと虚しい抵抗を試みる】
【海兵はミレーユと共に艦内へ】


229 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/08(土) 17:21:03 6.kk0qdE0
>>212

「あり、がとう、おいちゃ、おにいちゃ……」

【ホールスタッフ、客、出入りの人々……アーディンの顔が効く範囲であり、口添えの為に、奮闘しつつ中々に楽しげに動いている】
【或いは、見るもの全て触れる物全てが新鮮と言わんばかりに】
【みらいを受け入れてくれた土壌は、幸運にも彼女にとって温かい環境だった】

「おいちゃ、あめ、もらっ、た!」

【少女は目を輝かせていた】
【そんな中で……】

「んむんむ、なるほどなるほど、杉原ー、ホムンクルスってのはアレか、アンドロイドとは全く違うんだな」
「や、め……や、や、やめ……」
「軍曹、その辺に……」

【物珍しげに、とでも言うべきか、無遠慮とも言うが】
【キャスケット帽の少女がペタペタと怯えるみらいに触れて、やがてため息混じりに男が窘め、そしてその名前を口にした、その瞬間に】

「ッ!!??」

【ダンッと床が踏み鳴らされ、アーディンが立ち上がる】
【音と一喝の声に、ビクッと少女が反応し】
【そして次の瞬間には】

「何だ!?何だこれ!?す、杉原!!!!」
「言わんこっちゃ無い……しかし、これは捕縛術式?くっ身動きが……」

【出現したのは、10の黒い腕】
【4本づつがまるで触手の様に、少女と男性に絡みつき、その身体を拘束する】

「お、おにいちゃ、おにいちゃ!」

【また、別で2本の腕はみらいを保護し、床に広がる瘴気から出現した青年の足下にみらいを連れて】
【ガラの悪そうな、くすんだ青髪の青年、みらいは彼のジーンズをぎゅっと掴み縋る様に】

「き、絹張?あ、アイツ、あの海兵の事か!?あの惨い拷問の……ち、違う!違うぞ!誤解だ誤解!」
「……チームM、アーディン=プラゴール氏と仲間の方ですね、突然の非礼をお詫びします、櫻国『国防陸軍』の者です、軍曹の言う通り誤解です、先ずは話し合いを致しませんか?」

【客もスタッフも事の成り行きを見守る中、異能の腕に拘束された少女はわーきゃーと半泣きで喚きながら、男性は努めて冷静に】
【其々、爪を剥き出しにするアーディンと、此方を腕組みし睨みつける青年に、声をかけて】


230 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/08(土) 17:39:46 xeKO/IEg0
>>228


【 ─── 甲板上に居たままに、ミレーユは扉を閉じていた。諸々のリスクを勘案して、侵入のタイミングは幾らか遅らせると判断していた。】
【であれば降り頻る冬雨の中に、彼は対手を転がすのだろう。 ─── 同時に消音銃を向けたまま、黒いドライスーツを纏った背の高い狙撃手が、甲板へと昇り男へと近付く】
【抵抗を歯牙にもかけず、押し倒したままミレーユは囁くのだろう。素性を理解させない、漆黒の目出し帽とフルフェイス。戦闘用ナイフの鈍い煌めきばかりが闇の中で際立っていた】


「騒ぐな。喋らなくていい。指で書いて教えろ。」「此方としても、お前の五体は満足なまま解放してやりたい。」
「"質問"をするから簡潔に答えろ。見ての通り狙撃手はもう一人いる。妙な真似をしたらお前も頭を吹っ飛ばす。分かったな?」


【柑橘の無邪気さすら薫るような甘い声音であった。 ─── それでいて酷薄に低められていた。一択の答えだけを彼は許していた。】
【「 ……… ダメね。血で汚れすぎている。」4人分の死体を ─── 主にその制服を ─── 検分しながら、背の高い狙撃手は呟いた。凛乎たる玲瓏な声音。どうやら2人とも女であるらしい】
【「そりゃそうだね。 ……… やっぱ、見つからないように潜るしかないかぁ。」世間話の温度で嘆息すれば、 ─── 男の傍に跪いたアリアが、もがく爪を一つ剥ぎ取る。そうして取り出す海図の裏側に、血の滲む指先を押し付けながら】


「この船に拘禁されている魔導海軍の士官および下士官4名。それぞれ現在地点からの居場所と経路を教えろ。警備の状況についてもだ。」
「知らないとは言わせないぜ。 ─── 随分と楽しそうな話をしてたじゃあないか。」「 ……… "相棒"もボクも、ああいう口ぶりは反吐が出るほど嫌いなんだ。分かるよな?」


【ごく淡々とミレーユは問うた。 ──── 背の高い女は、事の済んだ死体から用立ちそうな物を探し終えれば、それらの全てを甲板から放り落としていた】
【然して不随意のうちに頭部を一射され絶命した彼らは幸運であったのだろう。声帯までを凍らせて、もはや塞ぐ片手も不要となれば、代わりにその指先は男の目許に添えられ】
【 ──── 異能によって形成された、鋭利な氷の薄刃が、慄く目尻へと触れられる。「3秒だけ待ってやるよ。」どこか嗜虐を宿した言葉にて、つつやくのであるから。】


231 : アーディン=プラゴール&ブラックハート ◆auPC5auEAk :2018/12/08(土) 17:40:01 ZCHlt7mo0
>>227

<……師匠が来てくれなかったのは残念だけど、仕方がない事だよね……>
<それは……立場が、ありますから……でも、その分、僕たちだけでも、見送りましょう……>
<――――じゃあ、改めて祈ろう。『元』アルベルト流魔術 流派高弟、レグルス=バーナルドに……>

【長身の男の音頭によって、アルベルト魔術師の一行は、その場に跪き、それぞれに祈りを捧げる】
【悲しみの深さもそれぞれだが――――彼らは、かつて流派の禁を破って追放処分となったレグルスを、それでも気にかけていたのだ】
【――――人の繋がりは、生き死にで容易に破断できるものではない。それを、言外に物語っている様だった】

――――『虚構現実』の神々との戦いだ、泥沼になるのは、仕方がない事かもしれないな……
一足先にこの世を去った、奴の相棒が言い残したんだ。「世界の命運をかけた戦いに、喪失のない決着などあり得ない。そんなものを夢見た自分たちが馬鹿だった」とな……
「――――亡くしちまったものを、悔やんでも仕方がねぇ……あたしらに出来るのは、悼んでやる事だけ……未練を残しても、仕方がないんだろうさ……」

【故人であるレグルスの紡いだ、人との繋がり。それを振り返ると――――返す返すも惜しいものだった。その感慨は、アーディンとブラックハートも同断だった】
【そして、その悲恋を想うと――――彼ほどの意志と力を以てしても、この悲劇を、完全に塗り替える事はならなかった、その事実に胸が痛くなる】
【せめて、冥福を祈る――――この経緯と結末とを迎えた彼らに出来るのは、本当にそれだけだった。レグルスの因果は、全て終わってしまったのだから】

【ふと、ブラックハートは足元から何かを取り出す。それは酒の335ml瓶――――やはり彼の墓前に供えるにはこれしかないというのは、共通認識だったのだろう】
【右手の側面から、刃が飛び出し、それが左手で保持した瓶のボトルネックを切断する。歪な封切り瓶を、アリアの備えた瓶の隣に据えた】

「――――無駄に6本も持ってきちまったけど……アリア、あんたはやるかい? あたしゃ、本来はご法度だけど……流石に、こんな時ぐらいは、さ……」

【腕の機関を一部披露しながら――――それはパフォーマンスの意図があった訳ではないのだろうが――――ブラックハートは瓶を掲げて見せる】
【――――ビールの一種『ストロングゴールデンエール』だった。こうした、重く効く酒を、レグルスは好んでいたのだろう】

――――豪快に笑い、どうでも良い事に怒り、そして本当に大事な事の前に、全てを懸けて臨む……
あいつのそんな生き方は、この出来事と、無縁じゃないんだろう――――折角、再び築かれた大切なものを、『虚神』達は傲慢に奪っていった……
――――俺たちも、これで止まるつもりはない。レグルスと、ソニア……そして、レグルスの相棒だったアルク――――
……奴らの無念を、俺たちは背負っていかなければならないんだ……

【深いため息と共に、アーディンはその表情を切り替える。今はレグルスを弔う時間、その事に間違いはない】
【だが、既にアーディンは『次』を見据えて頭を動かし始めていた――――この悲劇の行き着く先に、結末をつけなければ、真にレグルスが報われる事はない】
【虚神を討つ事こそ、レグルス、ソニア、アルク、そして鵺――――詳しくは分からないが、虚神ながらに人間の味方をし、そして虚神に討たれた――――彼らに報いる道だ】

――――これはあくまで、俺の皮膚感覚に過ぎないが……奴にとっては「過去より未来」なのではないか、と……そう思う……
無論、この村の出来事には、内心穏やかならぬものがあったのだろうが……それでも、レグルスはその事を、今以って引きずり続けている様には、思わなかった……
「……そこに想い捉われてるようなら、もっとやけっぱちな事になってただろうさ……それがあいつは、ソニアが、ソニアが……だったからねぇ……
 『スナーク』と『ウヌクアルハイ』、そして『グランギニョル』をぶっ殺す……レグルスの奴に手向けるなら、そっちの馘じゃないかい……?」
――――俺たちの仲間に、『スナーク』と『ウヌクアルハイ』憎さに、精神の均衡を失いかけてる奴がいる……
奴が、不死身の『ウヌクアルハイ』を殺せるだろう手段の1つを、用意したと言っていた……次の戦いは、もう近い…………

【――――アリアが、この村を滅ぼしたかつての領主を向いて『決着』を意識した事を、彼らも悟ったのだろう。だが、必ずしもそれが正解とは、思えなかった】
【仲間としての付き合いの中で、今のレグルスが望んでいる事は、むしろ虚神達の殲滅であると、そう受け取っていたのだろう】
【だからこそ、彼らの意志は、グランギニョルの神々への神殺しに向いている。アリアはそれを、どう受け取るだろうか――――】


232 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/08(土) 18:17:36 6.kk0qdE0
>>230

「ん゛ん゛ッんん゛ーッ!!」

【血と雨に冷たく濡れた甲板】
【無造作に乱暴に転がされて、それでもぐねぐねと蟲の様に足掻いて見せるも】
【五体は満足なまま解放したい、との言葉と、ミレーユのフルフェイスから覗く冷たい目に、また、かなりのギャップを感じるその上品な甘い声に】
【或いは、後方から容赦なく狙いを定めるアリアの存在に】
【海兵の男は、震えながらも、幾度もうなづいて答えとした】

「ん゛ん゛ーーーーーッ!!!!」

【指の生爪を一つ剥がされれば、一際ビクンッと大きく身体を仰け反らせ、声にならない悲鳴を上げる】
【また、死体を検分するアリアだが、手榴弾、銃剣、銃、拳銃の他使えそうな物は無さそうだ】
【強いて言うならば、他に見つかるのは、血濡れの艦内図と、外装が汚れたキャラメル、突撃一番(官給コンドーム)位だろうか】
【無情にも、投げ出され、ドボンと海中へと沈む死体達】

「ん゛、ん゛……」

【痛みと恐怖でガタガタと震える指で、ミレーユの質問へと回答を書いて行く】
【2F5番兵員室、女2、兵士8人、裸】
【1F3番兵員室、男2、兵士3人】
【小銃、短機関銃銃剣、手榴弾、拳銃、能力】

【氷の刃を物理的な意味で、眼前へと迫られれば、海兵に選択の余地は無かった】
【概要を纏めるならば、上記の様な情報を震えながらも記載する】
【その3秒は、海兵にとって地獄の様な時間に他ならない】


233 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2018/12/08(土) 19:33:22 ZCHlt7mo0
>>229

「おぅ、良かったじゃねぇか! ……何かなぁ、見た目以上に幼い感じってのか……――――やっぱり、なんかヤバい扱いされてた命って事かね……」
そういう事なのだろうな……詳しくは、まだ分からんが……いずれにせよ、ただ事じゃあるまい
守るだけじゃなく、育むような事も考えなければならんか――――俺たちは、揃って『父親失格』だったと言うのにな……
「全くだよ……さって、娘に愛想をつかされたオヤジ同士、どこまでやれますかね……」

【自分たちの役割は、見守る事だと徹しているのだろう。テーブルから時折声をかけながらも、アーディン達はみらいを、流れに任せている様だった】
【拙い言葉、何事をも新鮮そうに目を見張りはしゃぐ姿、そしてあまりに物怖じしない態度、かと思えば時折覗く、怯えと警戒心――――】
【先に始末した海軍の5人組から、もう既に分かっていた事だが、再び自分たちは大事に巻き込まれてしまった事を、改めて思う】

【――――みらいの親代わり。そんな役割も、或いは考えなければならないかと、彼らは揃って苦笑した】
【エリス、そしてリーリア。アーディンは不本意な生き別れを経験し、サングラスの男も親子関係を冷え切らせてしまっている】
【そんな自分たちが、親代わりなどまともに務まるものなのだろうかと、やや自虐的な可笑しみが、不意に湧いてきていたのだ――――】

――――でかしたぞ、シャッテン!
{暇で暇でしょうがなかったけどねぇ……アーディン、あんたの読みはバッチリだったって事かねぇ!}

【足元の黒い空間から姿を現した青年――――シャッテンは、黒い瘴気を展開しながら、会心の笑みを浮かべていた】
【こうした備えの為に、ひたすらに息を殺して待ち続けていたのだ。能力者たちのたまり場は、既に能力の罠を、張り巡らせていて】
【その備えは正に的確に、みらいの窮地を救った格好になる】

{大丈夫さ、みらい……ここまで来れば、もう大丈夫……安心しなよ}
「よーしオーケイ、みらい、さあこっちこっち……後は頼んだぞ、旦那、シャッテン……!」
……まぁ、今はヴァルターに任せておけば良いか……ッ

【足元に縋りついてくるみらいを、そっと優しくタップして見せるシャッテン】
【そして、サングラスの男――――ヴァルターも、遅れて席を立ち、みらいのそばに歩み寄り、そっと抱き寄せた】
【一連の流れの中、唯一戦力らしい戦力を見せていないヴァルターだが、アーディンはそこに不安を覗かせない】
【――――この3人が、今この場で酒場側の用意した、大きな戦力という事になるのだろう】

――――惨いとは思わんな、貴様らの犯した罪に比べれば――――――――ッ!? …………お前たち、一体何者だ……?
「っ、おいアーディン、大丈夫なのか!?」
……わざわざ俺たちを『チームM』と呼ぶか……確かに、少し話を聞いてみる必要はありそうだ……。シャッテン、拘束を解け。今はみらいを守ってやれば、それで良い……
{……分かった。何か、込み入った事情があるみたいだねぇ……?}

【立ち込める剣呑な空気の中、アーディンは2人組の男の方の言葉に、思わず顔を上げる】
【自分たちをそう呼ぶという事は――――『黒幕』と『円卓』の戦い、そこの事情に絡んで、自分たちを認識しているという事の表れだ】
【となれば――――「生きたメッセージボードであればそれで良い」などとは、軽々に言えない可能性もある。警戒しつつも、一同は臨戦態勢を解いた】

――――確かに、俺が『仕置きの猫又』、アーディン=プラゴールだ……して、櫻の国の軍人がわざわざ、こんな小規模ギャングの親玉に何の用だ……?

【穏便とは言い難い所があるが、とりあえずの対話の用意が出来上がり、アーディンは口火を切る】
【彼らは、思った以上に自分たちの諸々を理解した上で訪れているらしい――――ならば、単刀直入に聞くべきだろう】
【少しばかりの皮肉を挟みながらも、アーディンは彼らの返事を待つ。シャッテンとヴァルターは、それぞれに身を固めながら――――】


234 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/08(土) 20:50:30 6.kk0qdE0
>>233

【彼等のこれまでが如何に複雑で惨憺であったか、或いは悲劇があったか】
【それは、まだ語られない話だが】
【少なくとも、この場この時には、彼等は紛れもなく、少女の頼れる立派な保護者であったに違いはないのだろう】
【コロンと口に飴玉を放り込んだ無邪気で無警戒なな笑顔が、それを証明して】
【やがて……】

「うぐぅ!離せー!離せー!不当拘束だぞ!そして話せばわかる!!」
「だから、軍曹、貴女が原因ですって……」

【青年、シャッテンの異能により拘束された、2人は彼等の目の前で身動き取れずに足掻く】
【少女は煩く騒ぎ喚き、男性は呆れと困惑が入り混じった複雑な表情で】
【アーディン達の警戒は、見事に功を奏し、その効果を示したと言えるだろう】

「おいちゃ!おいちゃ!」

【シャッテンの下から、歩み出して来たサングラスのヴァルターと呼ばれた男性の下へ抱き寄せられ、シャッテンの時と同じ様にその衣類をぎゅっと掴み、足の後ろへと身を隠す様にする】
【アーディンと2人の仲間がこの場に揃う、この酒場にあって頭と言える戦力に相違無いのだろう】
【やがて男性の言葉に、何か引っかかる部分があったのか、2人の拘束が解かれる】

「し、死ぬかと思ったー!何だあの黒い腕は!怖過ぎるだろう!い、如何にも私が櫻国陸軍情報部、風野百合子、階級は軍曹だ」
「改めまして、先程はとんだご無礼を、櫻国陸軍情報部兵長、杉原重義です」

【其々の反応をしながら、拘束を解除される】
【キャスケット帽の風野百合子と名乗った少女は、どうも呼吸が荒いが】

「先の浜辺での戦いから、悪いが後を付けさせて貰った、中々にエグイ事をやるな……簡単に言うならば、我々は魔導海軍の企みを追って、厳島中尉が残した情報を元に奴等の企みを挫こうとしている訳だ」
「順を追って話しますと、魔導海軍はこの世界の軍事バランスを崩壊させ、世界の制海権を得ようと目論んでいます、無論、あなた方の怨敵である黒幕と組んで、ですが」
「その要となるのが、その子供、いえ人の子供に見えますが正体は、人工生命、ホムンクルスの類いです、名称は魔導イージス艦『みらい』その鍵です」

【剣呑な張り詰めた空気が漂う中、その話は開始された】

「魔導海軍、現在の指令長官蘆屋道賢大将は、永久凍結された極秘の魔導イージス艦計画を何処からか手に入れ、再開し、この世界の海の侵略計画を立てた」
「それに気付いたのが、前指令長官土御門晴峰元帥とその一派、厳島中尉もその1人ですね、彼等は決死の覚悟でみらいをこの国へと逃しました、本来なら厳島中尉がそのみらいを保護する予定であった様ですが……」
「厳島中尉は、自身が拘束される事を予期してか、予めこの国で出会った全ての人物達の情報や、見てきた得て来た全ての情報を、秘密裏に土御門派に送り、土御門元帥に協力する我々陸軍もそれを知る事となりました」
「ああ、この中に全てが書いてある、チームMの事も黒幕や円卓、虚神の事も」

【百合子はタブレット端末をアーディンに見せながら】
【杉原は補足的な説明を入れつつ、事の成り行きをアーディン達に話して行く】

「我々の任務は、この報告文書内に記載されている厳島中尉達の協力者への接触と、その身の安全の確保や保護、そして情報収集です」

【杉原が顔を上げ、アーディン、シャッテン、ヴァルターの3人を順番に見て】


235 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/09(日) 00:24:07 E1nVzEpQ0
>>231

【論理と思考だけで割り切れてしまうほど人の身は真っ当に出来てはいなかった。 ─── であるからこそ、彼女らが闘ってきた神々もまた、人の心ひとつ満足に扱える事はなかった】
【禁則を反故として尚も己れを貫いた一人の魔術師も、彼を今なお慕い悼む同輩たちも、そして肩を並べる彼女ら自身も、同じ事であろう。】
【なればこそ、ブラックハートの言葉にも頷いた。 ─── "そういう"身の上であることを、改めて互いに識したのであれば、変わらず儚く笑っているのだから】


「 ……… では、呷らせてもらいましょうか。」「酒精は、穏やかなる時に口にするのが、信条ではあるけれど」
「Горе не море, выпьешь до дна. ……… そんな言葉も、あったかしらね。」「 ─── 持て余すようなら、私が請負いましょう。」


【アリアもまた、捧げた酒瓶を今一度ばかり握る。その蓋を軽く爪先で弾くのみで、容易に弾けて開くのだから、彼女もまた真っ当な身体と膂力をしていなかった。】
【黒々たるその麦芽酒は、成層圏の無重力にて醸造された代物であるという。 ─── 麦酒(ビール)に天使の取り分など無くとも、死者へと贈るには相応しいのだろう。】
【不安げな星々が数知れず寄り添う天蓋を見上げながら、訥々とアリアは言葉を紡いだ。神は天にいまし - なべて世は事もなし。そんな言い回しのなんと馬鹿げているものか。】


「 ………─── そうね。」「彼ならば、 ─── 少なくとも今、汚名を灑ぐことを望みはしないでしょう。」
「相応しい決着を奉じてやるのが、一番の手向けになるかしら。 ……… 墓碑に銘を刻んでやるのは、それからでも遅からぬに相違ないわ。」


【そうして彼女はそのように結論付けた。 ─── 眼前の決着を先んずるのが先決であると。それが終えれば決めればよい。そんな先のことは分からない】
【始末の付かぬ情念に対して、彼女にとっては基本的な姿勢だった。虚ろなる神々を戮することが相応しい結末であるのかすら、未だに彼女は截然たる答えを示せていなかった】
【ただ目の前に在るものと戦う内に、進むべき道も開けてくるのが常であった。その内心の根本において、やはり彼女は直情的であったから。なれば握るのは銃把で足りる。それでも】
【 ─── 今ばかりは、代わりに弔いの供物を掲げるのだろう。夜空の彼方に届かないならば、せめて此れからを生きる者たちの胸裏に、なにかを携えていればよい。】




      「Non Revertar Inultus. ─── すべての冥福を、祈って。」



【われ復讐の終わるまで帰らず。 ─── 東に向けた酒瓶に誓って誦んじた旧い箴言に、アリアは青白い目蓋を瞑っていた。】
【そのままに一口を含むのだろう。分け合うグラスも相応しからぬなら、残りは墓石へ注いでやっても構わなかった】


236 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/09(日) 01:09:33 xeKO/IEg0
>>232

【艦内の見取図は有用な戦利品であった。 ─── 事前の情報だけでは判断のつかない構造の領域も存在していた】
【吐かせた状況の情報も重なれば凡そ磐石に等しい。2人の想定する範疇ではあったが、一般的な後方支援の装備を上回るものではない。】
【仮に艦内の潜入すら首尾よく進むのであれば、それ以上さしたる困難も介在していなかった。 ─── 海図を折り畳んで、懐に仕舞うなら】
【バラクラバとマスクの上からでも分かる程、ごく満足げにミレーユは微笑んだ。科を作るように長い睫毛を揺らす流眄と、愛しげな耳打ちのように甘ったるい言葉は、惜しげなく捧げられて】


「 ──── ふふっ。ありがとう」「話のわかる人、ボクは好きだよ。」


【それでも片膝立ちの騎乗位に似る体勢にて突き立てたナイフが離れる気配はなかった。 ─── 代わりに、狙撃銃を携えた長身の女は、男の股座へとブーツの爪先を添えて】
【静かに鋼鉄の靴底へと圧力をかける。彼女はそのような脅し方を好むようだった。続いて紡がれる冷徹な声音は、初冬の大気に浮かべられて尚も冱つるようであり、だのに悩ましげに湿る。】


「 ……… では、序でに」「私からも問うておきましょうか。 ─── "ヨシビ"の情報について、話してもらうわ。」
「別に貴方が知らなくてもいい。心当たりのある消息筋について尋ねましょう。 ……… 特に、"雪女"に関する噂、ご存知でない?」


【「ここの艦長にでも聞けば分かるものかしら。」 ─── どうやらそれは、幾分か女の個人的な問いであるらしい。ミレーユの表情は、マスク越しにも呆れを示しつ】
【それでも答えられないのであれば行われる懲罰に変わりはなかった。「3秒だけ待つわ。」何しろ、階級章の豪奢な人間の居場所を教えれば良かったのだから】


237 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/09(日) 10:58:08 6.kk0qdE0
>>236

【見取り図は、幾分か血に汚れてはいるが見れない訳ではない様だ】
【上記の吐かせた情報と照らし合わせれば、艦内の位置から捕縛されている4人の位置も割れると言うものだろう】
【対して、尋問者が機嫌良さげに見えない笑みを浮かべ、甘い声で囁くならば、もう自分は安全に解放される、そう期待が高まる】
【だが、そうはならなかった……】

「ん゛ッッッッッッッッッッーーッ!!!!」


【消音器付きの狙撃銃を手にした女、幾分にも背の高いその女が、己の股間を踏みつけに掛かる】
【底に鉄を敷いた半長靴が、容赦無く圧を掛け鈍い激痛を走らせる】
【ミレーユが未だに上に跨り、ナイフを首筋に添えている為に、大した身動きも取れず、また声も封じられている為に、再び声にならない悲鳴が出る】

「ん゛ッンッん゛ッッ!」

【質問の内容には、即座に首を振りながら知らない、と答えて】
【情け無い、大の男が泣きそうになる手前の表情】
【もう勘弁してくれ、そう言わんばかりに、震える指で見取り図を指差す】
【見取り図が広げられたならば、艦長公室、士官室、司令塔、これらを交互に指差して行くだろう】
【海兵の顔には、涙がちょちょぎれ始めた】


238 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/09(日) 21:14:39 OQxJV9J20
前々スレ377前々前スレ364

【暗い通路に足音が響く。音の主は慌てる様子もなく、緩慢に二人の元へと近づいていた】
【通路の奥は暗闇が覆っていた。電灯の明かりがあるにも関わらず、濃霧のように先が見えない】
【その中から、男は現れた。闇夜を纏ったような黒衣に身を包んだ男だった】


これはこれは。愉快なお客人が現れたようだ
私の玩具に何か御用かな?


【男はヴァルターを見るなり、口元を歪めて笑った】
【セリーナに目を向けると、何かを思いついたように手を叩く】


あぁ、どこからか、私の楽しみを聞いて、やってきたわけだな
いいとも。そんなに女に飢えているというのなら、彼女をおすそ分けしてあげようじゃないか
いや、女に飢えていなくとも、彼女の味は実に良い。私が保証しよう。安心して、手を出すといい


【檻に手をかけて、男はヴァルターに向かって言い放つ】
【笑みは崩れない。言葉と表情には、目の前の男に対する嘲りがあった】


239 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/09(日) 21:23:16 E1nVzEpQ0
>>237

【拙い答えであっても女は満足したようだった。 ─── ごく酷薄な軽蔑の目線は、恐らく男の醜態に向けられたものではない】
【手持ち無沙汰に狙撃銃のシリンダをスイングアウトし、撃ち終えた3発分を再装填する。空薬莢をポーチに収めるのは要らぬ追及を避けるため】
【どこか官能的な嘆息を漏らして、訥々と言葉を紡ぐのだろう。 ─── 少なからぬ荷重を加えていた爪先が離れた】


「 ─── そう。」「 ……… では、続きは彼らに聞くとしましょうか。」


【「行きましょう。」 ─── 怜悧な声がそう告げた。降り頻る寒雨と薄れ切った血溜まりが、既に男の制服までも冒していた】
【彼が従順である限り、彼女らは脅迫より先の行いを慎んでいた。剥ぎ取られた爪先以外に彼が失ったのは兵士としての誇り程度であろう】
【何れにせよ約束の通り、その五体は満足であった。 ─── ナイフを突き立てたままに微笑む、青い双瞳がごく愛おしげに緩んだ。ならば、】



      「それじゃあ ──── 、」「御休み。」



【 ──── 蒼白した男の喉筋を、鈍い刃が搔


240 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/09(日) 21:23:56 E1nVzEpQ0
>>237

【拙い答えであっても女は満足したようだった。 ─── ごく酷薄な軽蔑の目線は、恐らく男の醜態に向けられたものではない】
【手持ち無沙汰に狙撃銃のシリンダをスイングアウトし、撃ち終えた3発分を再装填する。空薬莢をポーチに収めるのは要らぬ追及を避けるため】
【どこか官能的な嘆息を漏らして、訥々と言葉を紡ぐのだろう。 ─── 少なからぬ荷重を加えていた爪先が離れた】


「 ─── そう。」「 ……… では、続きは彼らに聞くとしましょうか。」


【「行きましょう。」 ─── 怜悧な声がそう告げた。降り頻る寒雨と薄れ切った血溜まりが、既に男の制服までも冒していた】
【彼が従順である限り、彼女らは脅迫より先の行いを慎んでいた。剥ぎ取られた爪先以外に彼が失ったのは兵士としての誇り程度であろう】
【何れにせよ約束の通り、その五体は満足であった。 ─── ナイフを突き立てたままに微笑む、青い双瞳がごく愛おしげに緩んだ。ならば、】



      「それじゃあ ──── 、」「御休み。」



【 ──── 蒼白した男の喉筋を、鈍い刃が搔き切ろうとするのだろう。頸動脈を一息に裂かれるとすれば、それは即死に他ならなかった】
【返り血を浴びる前にミレーユは立ち上がる。死体が出るのならば矢張り水面下に沈めた。 ─── 優しげな約束は拘束からの解放ではなく、恐怖からの解放を意味するに過ぎなかった】

【斯くして総てが十全に進めば、彼女らは改めて鋼鉄の扉に手を掛け、艦内へと潜入していく。 ─── 構え直すのは消音突撃銃。互いの背後をカバーし合うツーマンセルにて】
【「Clear.」「Corridor Clear.」足取りは音もなく迅速であった。セレクターをフルオートに入れ、常に銃爪へ指を掛けたまま、フォアグリップを握り込み】
【 ─── 二手に分かれて同時に突入するか、一室ずつのクリアリングを行うかには、幾らかの選択はあったものの。先ずは二階の兵員室へ向かおうとするのだろう。無論ながら、それまでに接敵があれば、その限りではなかった】


241 : オブライエン ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/09(日) 21:48:07 smh2z7gk0
>>184

ええそうですよ、今のご時世女を敵に回したら社会からはじき出され………嗚呼、もうされてますか。
勿論私たちは国民のためにすべてを投げ出す覚悟を持って生きていますから。
だからその障害になるのでしたら何人も容赦はしません―――それが神であろうとも。

【カニバディールを睨みつけながら挑発的な言葉を続ける、それは注意を逸らす意味もあるのだろう。】
【だがそう安々と事は運ばない、カニバディールの触手が伸び壁を生成するサイコ・フェンリルの一人へ激突する。】
【直撃した感触としては違和感が残るだろう。まるで全身を〝膜〟が覆っているような】
【数多の能力者と交戦経験のあるカニバディールであれば分かるかもしれない、これは〝念動力〟だ。】
【念動力/サイコキネシスで全身のダメージを軽減する膜を張っている。】

【だがそれでもサイコ・フェンリルの一人は触手を受け止めた衝撃で壁際までたたきつけられる。】
【残った三人は変わらず障壁を貼り続ける、恐らくはこれも念動力/サイコキネシスによる防壁だ。】
【三人になった事で生成速度は先程より遅い、だがこのままでは障壁は完成してしまうだろう。】

【壁に叩きつけられた一人も脱出しようとナイフで触手を切りつけようとしている。】

【そしてオブライエンにも触手は迫る。その脅威に対して彼女は―――】
【一度右足を後方に下げたから思い切り蹴り上げて触手と真っ向からぶつかった。】
【このオブライエンの蹴りの感触も普通ではない、だがサイコ・フェンリルの念動力とはまた別物だ。】


いよいよ怪物じみてきましたね―――あまり悠長にはいかないか………ッ!


【触手と激突した右足からは血が流れる、だが触手の物量からすれば明らかにダメージが少ない。】
【そしてオブライエンが右手を上げれば9人のうち壁を生成していない残った5人が一斉に】
【カニバディールへとアサルトライフルの弾丸を放つ、それは肉の触手ごと破壊せんとする弾丸の嵐だ】


242 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/10(月) 08:50:24 6.kk0qdE0
>>240

「……んっうぅ……」

【体重の掛けられた爪先が離れた事で、幾分か安堵の意味を含んだ声を出した】
【どうにも、自分の返答はお気に召した様だ、と、救済への希望に縋りながら】
【続きは彼等に、行くとしよう、この言葉から自分の身の安全は保証された、そう思い込み安堵のため息を漏らした正にその時】

「ーーッ!?」

【これ以上、彼は息をする事も、或いは苦悶の声を僅かに漏らす事も無かった、無くなった】
【ミレーユの冷酷にしてこの上なく正確なナイフが、彼の首筋、頚動脈を掻き切ったからだ】
【直後、勢いよく吹き出る血の噴水にも、事前に見越し素早く移動したミレーユには、僅かの汚れも付着し無いのだろう】
【死体は例外なく、アリアの手により海上へと投げ出された】
【ーー2人は決して、嘘は言っていない】


ーー艦内、2F、居室区画ーー

【扉を潜りラッタルを下り、下りた先が居室のエリアだった】
【見事な、プロの身のこなしに、サプレッサー装備のアサルトライフルを構えて、途中幾度か兵員の声のみが聞こえる場面もあったが、ついぞ遭遇は無く】
【ある意味運の要素か、比較的すんなりと目標階層まで辿り着けた】
【その階層に着けば……】

「さて、いい格好だな〜、んん?今日も楽しい尋問を始めようか?」
「いやぁ〜、どちらも最初は未通娘でしたが良い声で鳴く様になりましたな、流石上曹殿」
「い、いや……なのだ、よ、そ、曹長は許すのだよ、もう曹長は、限界なのだよ!」
「やだ、やだヤダヤダヤダ!!殺して……殺して下さい、殺して殺して殺して!!」
「ゴチャゴチャぼざくんじゃねぇよ!裏切り者共が!!黙って言う通りに好きにやられやがれやクソアマ共が!!」

【明かりのついた一室から、声が漏れている】


243 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/10(月) 12:19:00 E1nVzEpQ0
>>241

【発砲を行わずとも侵入できたのは幸運であった。両者ともに疑いなき練達の兵士であっても、僅か2名となれば敵陣中央の制圧射撃を掻い潜ることは困難である】
【まして捕虜の救出戦であるのだから余計なリスクは負うべきではないし、銃撃戦の勃発を許容し得るのは最終的な局面に限られた。 ─── ともあれ、2人の足蹠を辿る者はなく】
【なれば目標地点の扉前には容易に到達した。 ─── 彼女たちの背にする壁越しにも、彼女らに聞かせてはならないものが聞こえた。】



     「 ─── かける言葉がねえな。どうする。」「 ……… 決まっているでしょう。」



【目許しか晒されていない顔面の、更に戦術HUDゴーグルの上からでも、忌々しげに絞られた眦の何たるかは截然としていた。】
【サーマルビジョン越しに内部の様子を索敵し、情報に偽りのない事を確かめようとする。 ─── 殺された声量は、それが故に却って悍ましさすら宿す】
【マグニファイアをスイングアウトし、ホロサイトの直接照準によるCQBの準備。その手でバレル横のレーザーサイトとフラッシュライトを起動すれば、万事は決した】



   あの早漏な"産まれ損ない"共を殺/犯る。  3カウント。 閃光手榴弾。
   「Assault that fuckin' wastes of semen. Three counts. Flash bang. 」

                 結構だね、上官殿。─── ブッ放そうか。
                「Aye Aye Ma'am. ─── Lock'n Load.」


【スタングレネードの安全ピンを抜いたミレーユは、時限信管を1秒にセットし、扉の錠前を凍結する。ハンドサインが親指を握り込めば、】
【 ──── 強度の落ちたロッキングを、アリアが義体出力の最大を以って蹴破るだろう。放り込まれる閃光手榴弾。即座にそれは起爆しつつ】
【爆轟の未だ止まぬうちに、紅い光学照準が8人の兵士を捕捉する。引き絞られるトリガー。躊躇なく制御されたフルオートから放たれる.300口径の減音済亜音速弾】
【銃声として放たれたのは狂おしく前後するクローズドボルトの作動音だけである。 ─── そしてまた掃射のさなか、ミレーユは弾指に床面を凍らせ、取りうる回避を封じようともしていた】
【然るべき応射がなければその兵室は、コンマ数秒のクリアリングとして一掃されるに疑いはないのだろう。然して其れなりに喧しいブリーチングであるから、侵入を悟られる可能性もあった】


244 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2018/12/10(月) 23:14:44 ZCHlt7mo0
>>234

(……こいつ、本当に軍人か……軍属の主計係なんかじゃあるまいな……?)

【キャスケット帽の『軍曹』の取り乱しぶりに、アーディンは思わず眉を顰める】
【パートナーらしき男性の落ち着きぶりとは、あまりに対照的だ――――正直、その姿を見ていると、軍人という事が信じられなくなる】
【困惑を感じつつも、油断まではしてはならない。どこか調子の狂うのを感じながらも、じっとアーディンは一行に視線を注いで】

「よーし、これで大丈夫……怖かったなーみらい」
{僕たちがいれば、もう安心だよ……――――何より、アーディンがいるんだ……}

【縋りついてくるみらいをあやしながら、ヴァルターはその頭をグシグシと撫でてやる】
【少し乱暴だが、今は細やかさよりも、頼れる大人としての力強さだ。どこか固いながらも揶揄うような笑顔でみらいを見下ろして】
【傍に立つシャッテンも、周囲を方々へと向けながらも、アーディンに対して安心したような目を向ける】

……影を力とする、こいつの能力だよ……
{――――シャッテン=シュティンゲル……まぁ、ただのチンピラやゴロツキの類とでも思ってくれればいいさ……元は、通り魔殺人鬼やってたけどねぇ……}
「……ヴァルターだ。まぁ、アーディンの奴のダチだな……」

【事態が、敵対から交渉へと変わっていくのを察したのだろう。それぞれに、自らの名を名乗る】
【不思議なまとまりの3人だが、それぞれが腹の据わった態度を見せる。荒事には、それ相応に慣れている面々なのだろう】

……あの男の事か。あれはギャングの流儀だ。越えてはならない一線を越えたモノには、後悔をさせてやらなければならない……
子供に手を出し、俺の仲間に手を出したんだ。奴は十分に、あの仕打ちを受けるだけの罪を犯していただけの事……

【後をつけていた、という言葉にいささか顔を顰めるも、アーディンはそのまま言葉を返す】
【それは、不快感というのも勿論だったが、気づけなかった迂闊さへの自嘲という面も大きかったのだろう】
【涼しい顔で「当然の事」と語る、古傷だらけのその面容は、なるほど脛に傷持つ連中の世界で、頭角を現しているだけの事はある――――という事なのだろう】

/すみません、続きます


245 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2018/12/10(月) 23:15:13 ZCHlt7mo0
>>234

ッ……ホムンクルス……そんな技術が、櫻に……!?
「人工生命……んな御大層なもん、背負ってたってのか……」
{戦艦の……起動キー……っ?}

【語られるみらいの素性に、3人はそれぞれの驚きを見せた。ただの子供ではないという認識こそあったが、それだけの大きな事態が動いていたとは――――】

――――――――まぁ、概略は分かったが…………こんな事、こうも衆目の中で大仰にしゃべる事でもないだろう…………

【語られる内容を一通り耳にして、アーディンは呆れたように周囲を見回す。恐怖と、困惑――――あるいは疑問、そんな顔が、居合わせた客たちの顔に張り付いていた】
【――――どう考えても、これは本来、秘匿にするべき話である。まぁ、彼らが端で聞いていたところで、真に理解はできないだろうが】

……とりあえずは裏に回ろう……そこでもう少し、詳しい話を聞こうじゃないか――――――――マスター!
<はいはい、お客さんたちにあなたの給料天引きで、振る舞いね……>
「んじゃ、ちょっと裏に下がろうか、みらい?」

【一行を、『STAFF ONLY』の扉の奥へと案内するアーディン。表の客たちには、騒がせた詫びとして、店の奢りで酒を振舞いながら】



【――――控室の1つに、一行を集結させる。仮眠用のベッドやら本棚やら、そのままワンルームマンションの一室の様な場所だ】

――――さてと……そうした事情があって俺を訪ねたという事は、当然に色々と聞かなきゃならん事が出てくるな……
魔導海軍にとっての、この子の重要性。蘆屋とやらの計画と、その目的。厳島の現状と、土御門派とやらについて。みらいについての、パーソナル情報
――――そして、魔導海軍に対する、こちらからのアクションのロードマップ……聞かねばならない事は多いぞ……?

【ソファに腰を下ろすと、アーディンは隣にみらいを座らせ、整理する様に2人へと切り出す】
【ベッドには、場を持て余したような雰囲気でシャッテンが座り込み、本棚のそばには、凭れ掛かる様にヴァルターが立っている】
【向かいのソファに、少女――――風野と、パートナ――――杉原を座らせる形となるだろうか】

……逆に、そちらからも俺たちに聞きたい事があるんだろう……?
――――本来なら、情報というのは俺にとって、大事な商品になるんだが……厳島の仲間という事なら、そんな事は言っていられん……
特に出し惜しみするようなものでもない限り、そのまま話そう……

【協力者として、アーディンもそれを約束する。『黒幕』の一派が絡んでいるなら、自分にとっても無関係ではない、と――――】


246 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/10(月) 23:57:46 txH/p1gM0
>>221>>222



―――…………………………………………



【その刹那の惨劇を】
【突如と起きた暴挙を】

【女は一切表情の失せた無色の眼差しで見ていた】


(……………………………………) 【――十人 九人 八人】


【パック弁当の蓋を楽しげに開けたところで】
【やたらと発色の良い惣菜の数々に喜色の声をあげたところで】

【その幼い声が、姿が、世界から削り取られたように失せた】
【何か濡れ落ち葉を踏みにじるような、異形の嚥下音と共に】


(……………………………………) 【――七人 六人 五人】


【続けて消えた】
【プラスチックのスプーンを握った子どもたちが数人まとめて】
【プリンでも掬うように、濡れた肉の蠢きの中へ放り込まれた】


(……………………………………) 【――四人 三人 二人】


【周囲から誰が消えようと構わず「いただきます」を言おうとして】
【口を開いて息を吸い込んだところで、それを吐く前に数人呑まれた】


(……………………………………)


【見るにも聴くにも悍ましい、冒涜的な肉の怪物が】
【たったいくつか息をするまでの間に、その光景はすっかり塗り変わった】


【狂乱するヒュドラのうねりが、そして最後の幾人へ喰らい掛かったとき】



 …………やめてくださいよ。



【影の囁いたような声がぽつりとして】
【それが誰かの耳に届く前にはもう、女の身は音の発信地には無く】

【子どもたちに覆い被さっていた】

【化け物が幼子を呑み込む、本当に寸前の寸前に――】




【 “  ――――ぎュちャ  ” 】



【――その光景は、果たして反粒子の一生より儚かった】
【観測されたときにはもう、非常に運命的な穢れた音で、上書きされている】









【そして、誰もいなくなった】


/↓


247 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/10(月) 23:58:59 txH/p1gM0
(続>>246)


【ともだちも、せんせいも】
【突然起きたその数瞬の間に、全ていなくなってしまった】


【――“その少女”の視界からは】



「――――…………、………ぁ………、ぁ……」



【その光景は、カルラの認知する現実を夥しく超えていた】


【即ち“見えてはならないもの”として処理できる閾値を遙かに振り切った】
【“おかしいけれどおかしくない”とかろうじて保てていた均衡が消失した】


【――他のともだちには誰も見えていなかったのに、】
【見えてしまっている自分がおかしいのだと思っていた】
【だから誰にも黙っていた。ともだちにも、せんせいにも】

【けれど、じゃあ、今は何が起きたのか】

【見えないのに、見える】
【在るのに、無い。無いのに、在る】

【在ったはずのものが無くなり、】
【無いようなものが在るように映る】

【みんなどこへ行ってしまった】
【わたしはどこに立っている】



【――“せんせい”が“ともだち”を守ろうとして喰われてしまったのか】
【それともそう見せかけて自ら怪物の口腔へ飛び込んだのか】
【なぜわたしだけが――】


【カルラには分からない】

【最早あらゆる何かが理解できない】

【今が夢幻なのか、それとも現なのか】
【自分は生きるのか死ぬのかそれは存在か虚無か――】



「――――ひっ……ひっ……ぃ……、――――」



【少女は不可視の何かに気圧されるように背後の壁まで後退って、床にへたりこんで】
【ヤサカの背後の虚空を硬く凝視し、嫌、嫌、と正体不明の何かを拒絶して首を振る】
【喉を締め付けるようなか細い呻きで必死に助けを求めようとしながら、しかし、途端、】



「 ―――――――――――――――――――― 」



【腸内を這い回っていた昆虫の群れが一斉に逆流して口から溢れてきたかのように】
【あらゆる言葉と嘶きが同時に吐き出された。譫言と絶叫と時折理路整然の文節が並列していた】

【髪を掻き毟っていたし身を震わせていたし爪を噛んでいた】
【額を床に擦りつけてしきりに赦しを乞うていたし怒り狂ってもいた】

【誰かが近付こうと近付くまいと】
【言葉をかけようとかけまいと】
【「死ね/殺して」という意味の金属的癇叫を響かせる】




【――破けそうに震える窓硝子の向こうから】
【常軌を逸した異音を聞きつけたのか、近隣の市民らが訝しげに店内を覗き込む】


248 : 名無しさん :2018/12/11(火) 00:53:48 bHNm0M9M0
>>222>>246-247

【激情に染まる眼差しが、それがゆえにわずかに潤んでいた。勘違いの裏切りに打ち震えるのなら、漏れる吐息は、ひゃぐり、と、変な声】
【あんまりにたくさんの吐息をいっぺんに呑み込んでしまった細い喉が絶望的に震えて、けれど"そう"でないと気づくのは、瞬きを一つ二つ三つと重ねた頃合い】

――――――――――――――――あ、

【ざわりと背筋に走るのは何であったか。恐怖ではない気がした。けれど多分きっとよく似ていた。――何に。人体からあまり聞こえることのない音色に】
【それでも無理やりに止めようとしなかったのは、――彼が子供に対してひどい事はするはずないって信頼の紙一重。だけれど彼にもし彼女の表情を観測することが出来るなら】
【彼でも彼以外の信頼している人間でもない"だれか"が"そう"したなら、きっと間違いなくカレーのじゃがいもを切るみたいに、刃を抜いていたのだろうと思わせる、ような】

――――ヤサカ、さん、っ、――、――婦警は? ……婦警、も? ――ああ、もう、……。
……さっき、は。ごめんね。痛かった、……よね。……。――わたしも、ちょっと、痛かったけど。……。それで、……。ああ、ううん、ごめんね、……ちょっと、待って。

【――そうして数秒後に、彼女はようやく声を出す。そのころには、全部が終わっているのだろう。即ち、彼が、婦警――ミチカ――ごと、この場の子供たちをみな飲み干して】
【なれば残るのはヤサカと自分と、――それから、ちっちゃな女の子一人。パーカーから溢れてふわふわ揺れるスカートより可哀想に震える、たった一人だけ】
【可哀想に怯え震え全ての激情を吐き出すような声を震わす少女が聞くのなら、少女の足音はどんな巨大な化け物の足音に聞こえるのだろうか、そしてまた、】
【ひらり翻り揺れる真っ黒の毛先はどんな化け物の爪先のように映るのだろうか。――すとん、と、床に膝をつくのなら、同じ高さの視線、のぞき込む眼は、色違いの】

……死なない。殺さない。――――誰も死んでない。大丈夫。……大丈夫だから。カルラ。――――――カルラ。

【――――それでも床に頭を擦り付け正気を喪うのであれば、それも叶わぬのだろうか。そうだとしても少女はカルラのごく近しい位置に陣取って、声を掛けるから】
【正直彼女はヤサカが"どう"したのかまで、理解はしていなかった。ただ、彼が、彼であるから、無条件に信じることにしていた。顰めた眉は、なにか複雑な気持ちの発露であるなら】
【わたしたちのどちらも死なないし、わたしたちのどちらもあなたを殺さない。そしてきっと子供たちもみんな生きている。――――婦警についての気持ちは今は無視することに】
【声はごく低く潜めたものだったから、いつものごくごく高い声音ではない。野生動物にするように、互いに手の届かない位置。まだ触れない。その位置と声を、維持して、】

【ただ一度、疎ましげに窓へと視線を向けるのなら、長い前髪越しにぞろとまなざしが傾げて――、】

【――なら、少女は、窓なりドアなりを開けて彼らへ説明しようとするのだろうか。曰く、みんなでお掃除をしていて、カルラにも手伝ってもらっていたのだと、】
【そうしたら何か箱が出てきたので、少し遠くに居たわたしたちはカルラに中を見るようにお願いした。そしたら手酷いびっくり箱で、そのせいでひどく驚かせてしまった】
【――――、ごく淀みのないものの言い方だった。すらすらと何か台詞を読み上げるような声にて、彼女はそう伝えようとするから】
【「――誰かがハロウィーンの時に持ってきたやつだと思うの」。そういって見せるのは、黒い箱。黒地に白く三日月のような模様が刻まれて、なるほど、確かにそれっぽいもの】

【――――――――それで、彼らが納得するのであれば、良かった。そもそもそれ以前に、何か、そんな説明すらできぬ状況になるのなら、どうしようもないけど】
【少なくとも少女は外へ気を向けて、まして背中まで向けていたのだから。――或いは誰かが気まぐれを起こすのなら、その背中を狙うのはごく容易く思えた、だって、】
【壁一面には今すぐにだって使えるほどによく手入れされ(てい)た銃器や得物が並んでいたし。それに、何人もの子供――婦警――を呑み込んだ彼が、どんな気持ちであるのかもわからない】

【だから少女は当たり前に嘘吐きだった。悪い子だった。――或いは、カルラにとってすれば、ヤサカと少女が共謀し、なにか、とんでもないようなこと、しようとしているようにも?】


249 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/11(火) 08:47:42 5p38.LtA0
>>243

「最初は地味な娘と思っていたが、この地味さ加減が堪らんよ」
「全くです、淫売の娼婦なんぞ抱き飽きていた頃ですからねえ」

【扉の向こうから漏れ聞こえる海兵達の『尋問』は、少女の悲鳴と嗚咽が混じり】
【この二人にとっては、聞くに堪えない、醜悪の宴に相違無いであったろう】


「やだ、やめて……下さい、痛い……イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイヨ……もう、もう……」





――離して……殺して下さい……――

【サーマルビジョン越しの光景、それは即ち与えられた情報に間違いの無い事を映し出しており】
【それ以上に、まざまざと内部の醜悪な、胸の悪くなる様な光景をそのシルエットに見せ付けられることにもなった】
【突入と攻撃は瞬間を持って行われた】

「な、何だ!?」
「何事――ッ!?」

【アリアが扉を蹴破ると、8人の海兵と2人の捕虜は同時に反応したが】
【その先に地獄絵図が生み出されるとは、誰しも考えもつかない事だったのだろう】
【耳と目を潰す強烈な閃光と爆音、その後に正確に命を狙うレーザーポイントの光】

「な、なんだこれは!?」
「ま、前が前が!?うがあッ」
「敵襲!!てきsy……」

【文字通り、丸腰の海兵達には、ひとたまりも無い】
【応戦等、出来得る筈も無かった】
【ミレーユの能力による凍結も、この場では不要であった、何故ならば】
【そこには、既に肉塊と化した8人の血と脂、そして腹を撃たれた者は臓物を、頭を撃たれた者は脳髄を、その場にぶちまけ、等しく息絶えているからであった】

「な、何なのだよ?これは、何が目的なのだよ!?」
「あなた達は、い、一体……まだ、何かする気、なのですか?」

【突入した室内には、血の香りに混ざって】
【濃密で胸を悪くする様な、精液と男達の体臭が入り混じった匂いが充満していた】
【その中で、アリアとミレーユに声をかける者がいた】

「あなた達は、誰?」
「曹長……ようやく、目が慣れてきたのだよ……」

【黒髪の女性と、メガネをかけた恐らく『かえで』や『夕月』と同年齢位の少女】
【胸元を腕で押さえ、隠しながら、二人にそれぞれ問う、その身体や顔、髪には唾液や体液がこびりつき】
【噛み痕や痣が痛々しく付けられ、少女は空ろな目で2人を見て……】



「何事か!?」
「敵襲!!敵襲か!?」
「こちらの階層からだ!急げ!!」

【声とともに無数の駆け足の足音が近づく】
【これ程の音だ、乗船する海兵達を異常に気付かせるには十分な程の物で】
【彼らが此処に到達するまでに、あまり猶予は無いだろう】


250 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/11(火) 09:57:52 5p38.LtA0
>>244>>245

「シャッテンにヴァルター、か、いやさっきのは本当怖かったぞ、あれ影なのか?いや、もっと禍禍しいものに感じたが……」
「なるほど、流石はチームMです、腕利きの強者揃い、そういった所でしょうか?」

【考え通り、あまりにも対照的な2人とも言える】
【見た目もそうだが、その言動も】
【最も、上官に当たるのはそのキャスケット帽の少女、百合子の様だが……】

「――あッ」
「まあ、致し方なかったとは言え、少々話し過ぎましたね……」

【ヴァルターが荒くもみらいの頭を撫でる、そのヴァルターの顔を恐怖ではなく不安か、あるいは悲しげな顔で覗き込みながら】

「んっ、おいちゃ……」

【みらいは何かを言いたげであった】
【やがて、三様の反応を見せる中、アーディンの言葉にふっと2人は我に帰り】
【そして周囲を見渡せば、己のその話の迂闊さに気がつき】

「そ、そうか、場所を変えてくれるのは有難い!なあ!杉原!」
「軍曹、元はといえば……いえ、もういいです、ではアーディンさん付いていきますよ」




「なるほど、この近辺の荒くれを御し、そして黒幕にすら相対する顔役なだけはありますね……本当、なるほど……」

【ギャングの流儀であろう、先の絹張と呼ばれた海兵の末路、そこには矢張りアーディンのギャングとしての矜持を見たのか】
【杉原は値踏みする様な目線を、一瞬アーディンに送り、そして付いてゆく】




――STAFFルーム――

【ワンルームマンションの様な一室に、2人は通され、そしてみらい、アーディンと対峙する様に座り】

「先程はすまなかった、その振る舞い酒だが……領収書くれれば陸軍から出そう」
「改めまして、どうも……ご協力ありがとうございます、では順を追いまして、先ずはこちらから、それらの疑問にお答えしましょう、こちらからの質問はその後に……」

【ぎこちなく、幾分か申し訳なさそうにする百合子と、落ち着き払ってこう答える杉原】
【やはり対照的な2人で、そして一見すれば重要任務にある軍人には見えない、そんな2人だった】


//分割します


251 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/11(火) 09:58:28 5p38.LtA0
>>244>>245

「魔道海軍にとって、その子、みらいは命運を決定する程の存在です」
「魔導イージス艦計画は、これまで魔導海軍が打ち捨てて来た選択肢、現代のミサイル艦やイージスシステム搭載艦と、魔導、異能との完全な融合を果たす画期的計画なのですからね」
「そもそも魔導海軍が、この弾道ミサイルやイージスシステム全盛の時代において、何故旧時代の軍艦を用いているか、それは偏に、魔力、魔術との親和性を重視した結果だからです」
「古い物ほど魔力や異能との親和性は高く、そして神性が宿る、彼らの武装が前時代のそれなのはそう言った理論に基づくからです」
「そして、これを妖怪や妖魔の魔力回路を核ごと摘出し、人工生命に移植、その次世代艦の鍵としたのが、魔導イージス艦」
「魔能と次世代技術の完全なる融合、そしてそれをもって海軍力に秀で軍事バランスの崩壊と、制海権の掌握を狙ったのが、蘆屋道賢、現海軍司令長官です」
「この魔導イージス艦や次世代潜水艦を建造、一方で黒幕と組み、無敵の艦隊を組んで世界の制海権を得る、これが蘆屋道賢の最大の狙いです」

【ここまで一息に説明した杉原が、顔を上げてアーディン、シャッテン、ヴァルターを見て】
【そして、今度は百合子が説明を始めた】

「土御門派と言うのは、何の事は無い、現在の魔導海軍において前長官、土御門晴峰に付き従う派閥だ」
「蘆屋道賢は、その実力は確かだが、急進の人物でな、それなりに敵も多い」
「蘆屋に反して土御門に従う者たち、そう思っておけばいい」
「厳島中尉達に関しては、未だ水国軍港停泊中の駆逐艦『雷』に拘留中だな」
「ただ……面識やお互いの認識があるかは不明だが、中尉と虚神関係で協力のあった、外務八課が動いている、近々救出作戦が展開される予定だ」

【再び、アーディン達の疑問に答えて、百合子が伸びをするように身体の間接をソファの上で動かして】

「みらいのパーソナル情報か……それが答えられるほど情報が無いんだよな〜、杉原バトンタッチだ」
「我々が知っている情報ですが、先ほども言いました通り、その子は人工的に作られた命、肉体の上に妖魔の核と魔力回路を移植された存在です」
「魔力量や回路の数は、並の能力者の比ではありません」
「それ故に、魔導イージス艦の生きた鍵であり、また制御管制装置と言えるのですが」
「一度艦と接続、起動してしまうと、その意識人格は艦に取り込まれ、永劫元に戻ることは無いと……」
「即ち……自我の完全消滅です」

【杉原がそう語るに、声のトーンは幾分にも落ちて】
【そして、この場で次に口を開いたのは……】

「おいちゃ……おいちゃ……」
「みらい、は、にん、げん、じゃ、ない?」
「おい、ちゃ、おにいちゃ、とは、ちがう?」

【横のアーディンの顔を覗き込んで、こう聞いた】
【その顔は、とても悲しげで、不安げで】


252 : in "2Q36" ◆3inMmyYQUs :2018/12/11(火) 12:34:37 EGD/fsIA0
(続>>175)


【朧な燈色の闇の中を恐る恐る振り向くと、】
【そこに何か小さい獣みたいな、淡い輪郭がぼんやりと浮かび上がった】

【――それは白く、】
【しなやかな曲線を描いて、】
【ふわふわしていて――尻尾があった】


【――“猫”?】


【たぶんそれは一匹の猫だった】
【どこから入り込んだのか、ほんのついさっきまでは間違いなくいなかったはずなのに】
【まるで最初からずっとそこに住んでいたみたいに、】
【ベッドの上に我が物顔で香箱座りをして、大きなあくびまでした】


【それから、ひどく緩やかにこちらを向いた顔は】
【猫なんて思ったことがひどく恥ずかしい勘違いに思えるほど、】
【とても粘っこく、知的に、うわっ付いた、“薄ら笑い”をしていた】


――――…………、……え……?


【それと目が合った途端、】
【わたしは今が夢なのか現実なのか、急に分からなくなった】


【――その猫の形をした何かがまさかあの声の主なのかと、】
【無邪気にそう繋げて考えられるほど、】
【わたしの頭はまだメルヘンには浸りきっていなかった】

【だから喉を引っこ抜かれたみたいに呆然となって見つめていると】
【その猫か何かは、気まぐれにそっぽを向いて、八本の足で立ち上がり】
【一歩毎に黒くなったり、また白くなったり、縞模様になったり】
【一本だった尻尾が二本になったように見えたり、そもそも無くなったり】

【わたしの瞬きごとに姿を揺らがせながら――】
【そのまま、壁の向こう側へ歩いていってしまった】


――――…………、……は……


【――誓って言えるのは、わたしは何かの薬なんてやっていなかった】

【けれどもしかしたら、いっそこと本当にやっていた方が、】
【その良く分からない何かに幻覚という確かな理由を付けられた分だけまだましだったかもしれない】


【何を考えたらいいのかも分からなくなって、しばらくただただ唖然としていると】

【ふっ――とライターの火が消えて】
【また深い闇に逆戻りした、そのとき】


【――何処かから、誰かの怒声がわたしの耳に届いた】
【多くの人たちが何か慌ただしく動いているようだった】

【何を言っているのかはよく聞き取れなかったけれど、】


【 ――“ぱンっ” 】


【轟いた銃声が、わたしのぼやけた意識を一気に現実へと叩き戻した】



(――――ロッソ……――?)



【何故かそのとき、頭には真っ先にロッソのことが思い浮かんだ】



/と、ここで一旦お返しといたします。……が、

/そろそろ現在軸に戻らないとマキちゃんや舞衣さんを動かしにくいだろうなっていうのと、
/展開に関しても色々設定を考えてくださっているようですので、
/こちらが考えていた2Q36年のあらすじを、ここで先にお伝えだけしておきますです↓


253 : in "2Q36" ◆3inMmyYQUs :2018/12/11(火) 12:36:37 EGD/fsIA0

File : ZERO[2.0]
Episode of “Rock 'n' Rollers”

改題『Gun’s Ash N’ Rabbit Heart』



ダイジェスト BGM
Guns N' Roses - There Was A Time
ttps://youtu.be/7-sTCENYm8k



あらすじ:
現在から十数年後、“分岐した未来”の一つ、2Q36年――
国家は終わらない世界大戦に明け暮れ、民衆は暴動と略奪を重ねる。
挙げ句に『異能を持った食人屍』さえ跋扈する、悪夢のような世界。その片隅で。

唯一の肉親である母と、定住していた集落を失った臆病な少女・シヲリは、
世捨て人のような初老の銃使い・ロッソという男に出会い、命を救われる。

少女と男、それぞれ往くべき道を見失った者同士は、
『ロックンロール』を介して関わり合い、少しずつ何かが変わっていく。


そしてそれぞれの過去、互いの持つ古傷が重なったとき。
世界の裏に隠されていた事実が徐々に浮かび上がる。

望むと望まざるに関わらず『不都合な真実』へ至りつつあった二人に、
支配者たちによる刺客〈黒騎士〉の追っ手が迫りゆく。

あらゆる公権力を敵に回した彼らは、
それでも生き延びるため退廃した世界を旅していく。


暴徒、疫病、飢餓、裏切り――何もかもが奪われる中、
希望無き道の果てで彼らが見つけたのは、
本来存在しないはずの『もうひとつのタイムマシン』――〈方舟〉。


しかし時は既に遅く、
〈円卓〉の包囲網は彼らを完全に取り巻いた。
旅の終着点で逃げ場を無くし、絶体絶命に陥る二人。

――その窮地を救ったのは、遠い過去から繋がるとある因果だった。


そして動かないはずだった〈方舟〉を起動させることに成功した彼らは、
この世界を牛耳る〈円卓〉の打倒を果たすため――呪われた運命を変えるため、
全てが“分岐”するきっかけとなった過去のある一点、
2Φ18年へと時空跳躍し、全ての『真実』を追い求める。



――のだが、
タイムワープ中に起きた原因不明の時空震動により、
互いが散り散りになってしまい――――(そして2Φ18年へ)






/――みたいな。
/あくまでこっちの考えていた草案なので、ご参考程度に捉えていただけたらと思います。

/で、この後の進め方なのですけど、
/ロールを二つに分けようと思うですが、いかがでしょうか。

/今やっているこの回想ロールと、現在軸の本筋ロールという形です。

/まず、今の2Q36年のお話は、現在に繋がるような大まかなオチだけを先に付けてしまって、
/進行はここらで一旦お休みにしてしまい、あとは後ほど外伝なりSS補完なりに持ち越しつつ
/先に現在軸のマキちゃんや舞衣さんの方に場面を移していく、みたいなやり方でございます。

/非常に変則的でややこしいので上手く伝えられているか悩ましいのですが、
/要するに、回想はこの辺りで一回休止して、現在の話を先にやってしまわないかBabyという意図です。


/もしそんな感じでおっけーにしていただけるなら、
/ひとまずここまでのお返事をいただければと思います。
/その後、こちらから新しい場面へ転換していきますので。

/かなり分かりづらい感じになってしまって申し訳ないですが、
/ツッコミは遠慮無くどんどん投げてくださいです。よろしくどうぞです。


254 : アーディン=プラゴール&ブラックハート ◆auPC5auEAk :2018/12/11(火) 13:46:05 ZCHlt7mo0
>>235

<――――では、用心棒アーディン……我々は、これで……>
あぁ……君たちの『師匠』によろしくな。奴は道を誤りもせず、惜しまれて死んでいったんだと……
<……えぇ、必ず……>
<っく……ぅ……っ、レグルス…………>

【彼らなりの弔いが終わってしまえば、もうアルベルト流の魔術師たちは、この場に用はない】
【修めた道を、戦いの為に歩む事を善しとしなかった彼らは、虚神たちにも『黒幕』と『円卓』にも無関係だった】
【痛惜の表情や、嘆きを引きずりながら、一行は先に下山の道を歩き始めていた】

「へぇ……あんたはイケる口だったんだねぇ。ま、あたしみたいな『ガラクタ』とは違うか……
 それに、あたしだって無理はしないさ。その時は――――『奴』に片を付けてもらうよ……あんたも、そのつもりだろ?」

【アルコールの流儀を興味深げに聞きながら、ブラックハートは自嘲地味の笑顔を見せる】
【――――元来、飲食物は愚か、休息の環境にすら細心の注意を払う、そんな身体なのだ。アルコールを煽るのも、決して関心出来る話ではない】
【だが。彼女も悼まずにはいられなかったのだ。何らかの形で、その情を表す事、それを以って、レグルスを見送りたかったのだろう】
【飲み切れなければ、それはそれで構わない。元より、墓前に供えるための酒なのだから――――今の季節なら、虫の類もうるさく寄ってはこないだろう】

【頭を切り落とした瓶を取り出し、そしてもう1本の瓶をアーディンへと手渡す。手の甲から剥き出した爪を栓抜き代わりに、ポシュッと軽い音を立てて見せた】
【いささか情緒には欠けるが、そんなもの、レグルスには無用だろう――――粗削りであっても、立派な『献杯』だった】

……ロールシャッハの奴を『ソニアの仇』と表現していたが……それを言うなら『アルクの仇』でもある訳だからな……
まして、人類に牙を剥いているんだ……その残党一派を討滅する事。慰めになるとしたら、それが一番だろう……
――――俺のルールも、そう言っている。流された仲間の血は、血を以ってしか、贖えないものだ……
「……10年以上、名を憚る立場で居続けて、その中でも笑って、泣いて、叫んで生きてた男らしいからねぇ……もう、今更なんじゃないかね……
 ――――あたしゃ、とても真似のできない心の持ち様さ……そんな奴が無念を残すって言ったら、ねぇ……」

【アリアの結論を出す様を見て、彼らも己の認識を再確認する。死の間際、何よりもレグルスが強く思っただろう事があるなら――――やはり『それ』だろうと】
【彼女もまた、胸の痛みを、レグルスへの手向けとして表している。かつての暴虐への復讐が望ましいなら、それでも、この一連の戦いにケリをつけてからでも遅くない】
【彼の魂の安寧の『願い方』は、これくらいしか思い及ばなかった。アリアの口にする復讐は、そんな彼らにも驚きだったのかもしれない】
【――――全てが終わった時、自分たちも共に生き残るものでありたい。そんな感慨がアーディンとブラックハートの中に沸いていた】

――――レグルス=バーナルドの魂が、安らかであらんことを……
「……彼らの魂が、来世で慰めを得んことを――――」

【それぞれに、祈りの言葉を口にして、手に持った酒瓶を軽く掲げて見せる。そして、己の口へと傾けた】
【比較的小柄なアーディンや、健康体ではないブラックハートには、やはり少し重い酒だったようだ。3分の1ほどを口にすると、彼らも墓碑へと残りを注ぐ】
【そして、残った未開封の瓶を供えると――――すべき事は、とうとう終わってしまった】

――――2人は死んでしまったが、俺たちにはまだ戦力がある。諦めるには早い……
それに、『ウヌクアルハイ』を突き崩していけば、『スナーク』は乱れる、そんな可能性がある……まだ、前途が絶望に満ちている訳じゃないさ……

【腰からパイプを抜き、手の中で軽く弄りながら、アーディンは独り言のようにつぶやく】
【悲壮の色に塗られてしまった現状だが、まだ、見えた道が途切れた訳ではない、と――――】


255 : ヴァルター=アルメクス ◆auPC5auEAk :2018/12/11(火) 16:41:14 ZCHlt7mo0
>>前々377>>238

あー、だから俺に悪いって言ってんだろ!?
――――真面目に、俺だって変な気起こしかねないんだから、少し勘弁してくれ……良い女ってのも、信頼されるってのも、こうなると痛し痒しだ……!

【やはり動転しているのだろう、何を言っているのかという言葉を口走りながら、男はヘッドギア越しに頭を抱えて、首をかしげる】
【意識してしまうと、どうしても自制心が要求されてしまう。何とかクールダウンできた、と思っていても】
【――――男なんて単純なものだ。ほんのわずかな種火だけで、容易に欲望の炎は燃え上がる。深呼吸を、4回……再度のクールダウンには、それだけの手間が掛かった】
【流石にこんな状況で「楽しませる」を、軽いジョークとして口にしている訳ではないのだろう。そこまで精神的にタフなら『リラクゼーション』のクリスタルも、必要ないはずで】

――――――――ッ

【だが――――そんな余裕も、いよいよかましてはいられなくなるらしい。足音は、男の耳にも届いていた】
【セリーナの紡ぐ、萎れた言葉を最後まで聞き届けてやりたかったのだが、もうそんな余裕もないらしい】
【ふっと背後を振り返り、素早く立ち上がる。ヘッドギアの奥の瞳は、恐らく強張りながらも、気丈に室外を睨みつけているのだろう】

――――了解だ。手土産は、期待しててくれ……

【最後のつもりで放った言葉は、非常に端的なものだが、その間でさえも惜しい事、それは修羅場を潜り抜けてきたセリーナも分かるだろう】
【一つ頷くとともに、彼女をその場に残して、牢屋を出ようとして――――通路の奥から迫る異常を察知する】

(っ、やべ……想像以上に早い、しかもこれは……総大将のお出ましかよ、畜生!)
――――ッ、『月は友達』!! 『浦島太郎』!!

【暗黒が埋め尽くす空間を認めて、男は咄嗟に通信機を取り出すと、無線でどこかへとメッセージを飛ばした】
【奇妙な語句だが――――恐らくは、何らかの暗号を、特殊な通信で飛ばしたのだろう】

「――――所長!!」
早く行け!! 逆探まで多分10秒と掛からねぇぞ! 打ち合わせ通り、お前はクライアントの下に走れッ!!
……っ、もし俺が戻らなければ、リーリアに……娘に、伝えてくれ……「今までの事、全部、全部悪かった」ってよ……
「――――……ッッ!!」

【慌てた調子の、恐らくは特殊波長の返信が返ってくる。だがそれに対して、男は怒号を以って答えと成し】
【すぐさま、通信は遮断された――――少なくとも、これで情報は確実だ。実行力のある、謎の一勢力に、この事態は伝わった事になる】

――――っへへ……ハードボイルド小説なんかじゃ『一匹狼の探偵』なんてのは、お定まりのキャラクター属性だよな……?
けど、実際の探偵業ってのは、容赦なきチーム作業なんだ……最低でも、ツーマンセル(二人一組)は基本……
……一匹狼なんてのは、よっぽど運営資金か人格に問題のある奴しかやらねぇ、離れ業なんだよ……!

【現れた男――――間違いなく、彼がブランルだろう――――に、余裕をかますような態度で、メカニカルアーマーに全身を固めた侵入者は語り掛ける】
【密やかな脱出は、もう成り立たない。ならば精々、開き直ってやろう。そして情報の伝達を見せつけて悔しがらせてやろう――――そんな態度が透けて見える】

――――して、『探偵』もここで終わり。こっからは、『裏の顔』の時間だ…………ッ!

【軽く居住まいを正すと、男の声が低くなる――――眼前にブランル、背後にセリーナを臨んで、男は――――】

/結構続きます


256 : ヴァルター=アルメクス ◆auPC5auEAk :2018/12/11(火) 16:41:31 ZCHlt7mo0
>>前々377>>238

――――――――ある時は正義の代行者ッ!!

【突然――――男は何事かを叫び、唐突にその場に半身立ちになってブランルを――――いや、恐らくはもっと奥を――――睨みつける】

――――――――ある時は彷徨の便利屋ッ!!

【ブランルに向けて突き出した右手を――――決して、この距離で打撃を見舞おうとしているのではないのだろう――――ぐっと握りしめる】

――――――――叫べ、その名は――――『ナート・サンダー』!!

【目の前で、すっと立てた左手を、ゆっくりと肩を開き、眼前を横切らせていく。同時に、足を開いて重心を低く構え、握りしめた右手を腰溜めに引いて――――】

――――――――今日の俺は『Mr.ノーバディ』だぜ!!

【腹の底からぶち上げた様な叫びと共に『見栄』は完成した――――これは、ある種の『決めポーズ』というべきだろうか?】
【ひょっとしたら――――セリーナとブランルには、彼の姿を彩るべく、謎の爆発が華麗に舞うのを、幻視するかもしれない】

【――――否、それを幻視しようがしまいが――――その後数秒間、虚しい風が室内にも関わらず吹き抜けるのを、間違いなく感じ取るだろう】

【鎖に繋がれた手で、それでもセリーナは頭を抱えたくなる思いに駆られるだろうが、同時に気づくだろうか?】
【――――これは、『人々の希望』としてのヒーローではない。どちらかというと、『子供の憧れ』としてのヒーローの姿だ】

――――はぁ、ったって……今回はヒーローじゃなくて、警察の出番だろ、えぇ?
悪趣味婦女暴行[ピー]したがり[ピー]野郎、お前にはこの素晴らしいレディが『玩具』かよ?

【謎の奇行を終えて――――唐突に、ガラの悪い崩し口調でブランルに対して、安い挑発を仕掛ける変人――――もとい『ナート・サンダー』】
【この様子を見れば、身一つで、何も備えなどせずにいるのが見て取れる。ならば、まだわずか時間はあると、そう踏んだのだ】

……それとも軍人の出番か? アルターリで……300万? 400万? まぁ盛大に人殺して、異世界のバケモノどもの供物にしやがって……
お前らレヴォルツィオーン社の、即断の復興宣言、怪しくねぇ訳はないだろ……それとも、こうやって誘いをかけるのも、腹の内ってか?
……ま、実際痛い腹の内を探られた訳だわな……!

【わざわざ、やや冗長な前口上を口にしているのは、決してヒーロー趣味の続きではないだろう。ナート・サンダーは、伝えきれなかった情報を、セリーナへと流しているのだ】
【――――セリーナの事とは別、恐らくは世間から隔絶されて知らないのだろう、1つの惨劇。そこにブランル達は大きく関わっている事を、明示していたのだ】

――――第二の『カミスシティ』を、あそこに作ろうって腹か、それともあの訳の分からないバケモノの世界を、利用しようって腹か?
……セリーナ、これでもまだ、間違ってたって、そう思うかい? 世界は「死の恐怖に晒されるくらいなら『管理』されちまった方がマシだ」と、大真面目に言い始めちまったぜ?
雷の国で――――何とか言うジジイがやってたよな? 雷の国じゃポシャッたあれが、水の国と、風の国で……特に水の国じゃ、軌道に乗り始めちまった……!
……しょうがねぇよな、『人間』なんだ。クズでボケでトンマな『人間』だよ……『あいつら』も人間だ、『こいつら』も人間だ……『俺ら』も、人間だよ……

【――――そろそろ、ブランルも気づくだろう。それは、情報の仄めかしと牽制を、同時に兼ねている訳ではない。セリーナへの伝達こそ、主目的なのだという事に】
【ディストピア世界の、現実的な脅威。今、彼らはそれと戦っている。最も認識的に近いのは、グラトン=ブルーガー=ウルバヌスの支配下にあった『セードムシティ』だろう】
【それを画策する『悪』も、安易に扇動される『大衆』も、抗う『自分たち』も、ある意味で同じ穴の狢なのだと。だからこそ、人に愚かなどと言わせるな、と――――】


257 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2018/12/11(火) 17:42:39 ZCHlt7mo0
>>250-251

{フン……僕の命の半分と、仲間たちの無念が宿ってるのさ……多分、そういう事だよ。まぁ、良いじゃないか……どうせ、もう遠い過去の話だよ}

【先ほどの能力の行使者であるシャッテンは、肩をすくめながら答える】
【この能力を獲得するに至り、様々な曲折があり、悲劇があった。だがそれは、この場では余談にすらならないだろう】
【――――やはり、どう考えても立場が逆だろうと、皮肉っぽい視線には、同時に隠し切れない疑念が孕まれていた】

「ん……そんな顔すんな、みらい?」
……相手を恐れさせなければ、そしてプライドを折らなければ、ギャングとしては「敵を倒した」事にはならないのでな……
『恐怖』は武器で、『体裁』は防具であり命でもある……流石にアレでがたつくほど、奴らの体裁は安くは無かったようだがな……

【控室へと引っ込みながらも、アーディンはささやかな補足を口にして、ヴァルターはみらいの浮かない顔に、撫でるのを止めてそっと抱き寄せる】
【軍人とは、世界の在り方が大きく違うのだろうが、『力』に立脚したその形は、相通じるものがあるのではないだろうか】



……いや、こいつは1つ『貸し』という事にしておこう……まぁ、貸し借りはともかく、あまり大っぴらな金の流れを作ると、目立ちそうでな……
この事態は、情報の秘匿性が肝だ。清算は、別の形か、少なくとも事が全部済んでから……そうした方が良いだろう。君らにも、防諜の必要はあるだろう……?

【腰を落ち着けて、畏まる態度の風野に、アーディンはやんわりと止める】
【自分たちはともかく、大規模な組織であるところの彼らは、どこにスパイが聞き耳を立てているのか分かったものではないだろう――――と】

【そして、本格的に情報の交換は始まる――――】

――――単独拡張路線の急進派、更にそれを隠れ蓑にした『黒幕』派、か……レイドやフィリンの様なものを、国ぐるみで研究しているところがあったとは、な……
{海を掴みにした、世界への進出、ねぇ……特に水の国じゃあ脅威だろうね、これ……水路を抑えられると、この国じゃ、如何ともしがたい……}
「おまけに、一番『黒幕』どもの脂がノッてるのが水の国な訳だからな……そりゃあこの国を、世界を抑えるための橋頭保にしたい訳だ……――――クソが」

【海に目を付けた戦略構想――――彼らの目には、とにかく「水の国を落としたい」という意思が、透けて見える様だった】
【小さくとも、確実な足がかりを得れば、奴らのやり口なら、大きく突破口を開く事が出来るだろう――――人心を扇動し、確かな寄る辺を得れば】
【恐らく、事態は手の付けられない形となってしまう。水の国を標的にしているその様は、ある種あからさまとも言える】

……なるほど『蘆屋派』『土御門派』で、櫻の国の軍は括れると言う訳だな。しかし厳島の奴……こんなものを抱えて戦っていたとは……
「……その口ぶりから考えて、土御門なるその前長官は……蘆屋のやり口に反駁している、って事で良いんだよな?」
{けど……どうやら少数派に追い込まれた様だねぇ……軍人にとって、活躍できる場とプライドを与えてくれるってのは、まぁ大きな意味があるんだろうからねぇ……}
――――『外務八課』? ……虚神で協力関係、か……

【とは言え、風野や杉原の言う通り、櫻の国の軍部とて、全部が『黒幕』派に染まっている訳ではないらしい】
【さながら、カノッサ機関が内部で3つに分裂しかかっている様に、彼らもまだ、趨勢を決している訳ではないのだろう】
【尤も、話に聞く限り、パワーバランスは大きく蘆屋派に傾いているのが分かるが――――】
【『外務八課』は、アーディンには耳慣れない言葉だが――――思い当たる節があったのかもしれない。言葉を濁しながら、軽く受け流して】

/続きます


258 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2018/12/11(火) 17:43:00 ZCHlt7mo0
>>250-251

妖魔? ……櫻の国土着の人外たちか……――――そう言う事か、櫻の暗君め……まだ1つ、タガを外してしまったな……!
{っ、どういう事だ……?}
「あー、なるほど……生き物材料に生き物作ってるって、とんでもない話な訳か……?」
……迂闊だったな、絹張なるあの男だけだった、他の連中に『名誉ある戦死』を、与えてしまったようだ……愚かな専制君主というのは、これだから始末が悪い……ッ!!

【みらいの出自――――ホムンクルスとしてのその概要を聞いて、アーディンは静かに怒りを滾らせる】
【先にニュースとして流れた、輸出規制の緩和。間違いなく、ここに蘆屋派の作意が働いていたのだろう】
【自らも人外である――――ただし、出自は『魔海』だ――――アーディンは、胸糞の悪い思いを抱えてしまったのだろう】

「っ、何だと……それじゃあ……!」
{その本来の目的において、この子は……もし、同族がいるなら…………使い捨ての、イグニッションキーって事になるのか……!?}
――――――――『ケツァル・コアトル』のみならず、また人間は分を弁えず、禁忌を犯したのか……ッ!

【杉原の言葉のトーンが落ちるのに反比例し、3人の男たちに衝撃と困惑、そして怒りがわき上がる】
【みらいは、確かに尊厳のある存在として生きているのだ。その『尊厳』を、なんだと思っているのだろう――――恐らく、なんとも思っていないのだろう】
【アーディンは思わず、身近な『作り出された子供』の存在を思い出し、歯噛みする】

――――――――っ
「ぉ…………」
{…………}

【だが、そこに続くのは、みらいのか細い言葉。何より彼女にとって、その事実は苦しく、重くのしかかるものなのだろう】

――――みらい……俺が『人間』に見えるか? 俺だって人間じゃない……『違う』事を、恐れてはいけないぞ……
ラベンダァイスの奴に、もう少し早く会わせてやるべきだったか……――――いや、アレはもうダメだな。むしろ逆方向に振り切れてしまっている……
「……あぁ、人間じゃないんだろうな……けどよ、それでなんか問題か? 俺の知り合いにゃ、人間じゃない奴なんて何人だっている……
 けどな、人間じゃないからどうしたこうした、なんて話は……少なくとも俺たちには、なんて事ねぇんだよ? 大丈夫……そんなに大した事じゃない……」
{……人じゃなく生まれた奴だって、人として生きていく事はできるんだよ……君が何者であれ、そこを気にする必要はないさ……
 『守る』って、言ったろ……奴らが居なくなってしまえば、君が人間じゃない事にはもう、何の問題も無い――――その日が来るまで、僕たちが君を守るさ……!}

【――――3人は、三者三様の言葉でみらいを慰める。だが、その方向は――――「人間じゃない事なんて、大した事じゃないんだ」というものに一致していた】
【そもそも、アーディン自体が人間ではない。兵器である事を気にするなら、その起動条件を破壊してしまえばいい】
【生まれの故を気にするなら――――大事なのは行いだ。シャッテンなど、本来こうして堂々と人目につける人間ではない】
【そこを気に病む必要はないのだと。それぞれに色々なものを見てきた3人は、示し合わせた様な、それでも間違いなく自分の言葉で、みらいに語り掛ける】

【――――作られた命であり、兵器である少女の存在を、彼女に示してやるべきかもしれないと、アーディンは逡巡したが、結局それを否定した】
【彼女は、人間である事を打ち捨てた果てに、今に至り――――そして、その性質は非常に破滅的だ】
【みらいの望みとは正反対にいる人型兵器であり、決して、その意志は交わる事はないのだろう――――】


259 : ◆3inMmyYQUs :2018/12/11(火) 17:54:19 EGD/fsIA0
>>101


………………………………


【女は蘆屋の滔々たる語りをじっと佇んで聴いた】
【もしもそれが一人だったならば、海の声へ耳を澄ますように】


【――そして降りた深い暗夜の帳の中で】
【女は幽かに、その口元へ三日月を浮かべた】


おっけーです!
まるっと全部、おっけーです。


【ざぷ――と】
【小さな波頭が舷を叩き、静かに反響した】

【盟約とはすなわち沈黙すること】
【故に女はそれきり何も訊かなかった】





【――水平線は、未だ深い闇の最中に浮かんでいた】

【死人のように冷えた真夜中の海原】
【光未満の塵芥が散らかった濃紺の虚空】
【その空しい境界線を定め続けている】



 ――みんなが目を覚ますまで、もう少し時間がかかります。



【岸辺の街並みは、埋葬されたように静寂の底】

【無明の中にうっすらと浮かぶ建築の林の輪郭を、】
【女は赤子の寝顔を見守るような眼差しで見ていた】


 みんな、起きてくれるといいんですけど。
 誰も起きないまま新しい朝が来るのは、寂しいですから。


【無機な声に街灯りは応えず】

【夜鳴きする鳥も無い】
【雲さえ無音で流離い続けていた】

【女は言葉を次いだ】



【「あなたはどうか――」】




 ――――目を覚ましていてくださいね。



【ざあ――、と】

【世界が寝返りを打ったように、】
【柔らかくざわついた夜風が、蘆屋と女の間を過ぎった】


/大変お待たせをいたしましたです、
/他に詩吟したいお話がありましたら遠慮無く吟じていただければこの調子でほんのり乗りますし、
/密談に関してはとりあえず〆かなと思われましたら、やんわりそういう雰囲気にしていただければ。


260 : ◆orIWYhRSY6 :2018/12/11(火) 18:39:16 .wn74oSE0
>>201

――――お前、金無いのに仕事やめたのか……?

【呆れたような半眼。「どうやって生活するつもりだ……」と小さく呟いて】
【溜め息一つ、思考を切り替える。脳内検索に引っかかるのは、以前出会った相手の“トモダチ”】

あー……、白くて猫耳猫尻尾、ねぇ……。
いや、そいつと会った事はないが……、たぶん、そいつの友達、ってやつになら会ったな。

でまあ、そん時に頼まれて、俺もその猫耳のやつを探してるんだけど。
何だったか――――つがる、だったか?

【言葉の通り、直接本人に会った訳でなければ、特段有益な情報を持っているわけではない】
【この男もその少女を探しているというならば、男が会ったという人物もまた、居所を知らないというわけで】

で、力の強い妖怪捕まえてどうすんだ、それ。
考えられるとしたら余程のマニアのコレクションか、或いは―――――――――

【―――――「その〝力〟を利用するか」】
【「ま、お前に聞いても知らねえか」―――取り出した通信端末の画面を指先でなぞりつつ、男はそう言った】




/お待たせいたしました……!


261 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/11(火) 20:28:34 WMHqDivw0
>>246-248

【――――なんで、こんなこと、したんだっけ。実のところ言うと彼にもよくわかっていなくって】
【ただこの女の手に掛かって子供たちが死ぬくらいなら自分が殺してしまったほうがマシだって思ったのか、】
【それとももっと他に、原初的な感情によってどうにか子供たちを助けたいと思ったのか、わからない】

【ただ確実であるのは、彼は確かに子供たちを生きたまま呑もうとしたことと、確実に女を呑むつもりはなかったこと】
【それとあと――特性の話。無茶な変形を重ねたり続けたりしていると、彼は人のカタチを保てなくなる】
【今回のこれは一発アウトだったらしい。自らの身を二つに裂いてまで異形と化すことを無意識に選択したなら】
【焼け焦げた、というのを余裕で通り越す色まで燻り果てて、この世のどんなイキモノでもない形になる】
【そうして黒い塊になって――、ただ、黄色い目のふたつきりがそのまま。それも力なくぱち、と瞬いてから】


…………………………「ご」、「めン」。「テンパ」「っちゃ」「て、」「ヨク」「わか」「ン」「ないことしち」「ゃッた」。


【すれば彼は子供数人と大人ひとりを巻き込んだ黒い塊になる。そこから、うようようよ……と、一本だけ】
【ごく細い細い触手が、頼りなく宙を泳いでいくだろう。そうして彷徨いゆく果て、キッチンに潜り込んだら】
【がらりと抽斗を開けて中から「一本」取り出す。当たり前みたいに包丁。持って戻ってきたら(というか縮んだら)】
【自身の肉(なのかもはやよくわからないもの)に切っ先を突き立てて、切り開いてゆく。静かに音もなく】
【そうしているうちに鈴音が外の応対に回ってくれる。そのうちに――飲み込んだ子供たちを、切り口から、出していく】
【そんな光景カルラが見たらどう思うだろうとか、考えていなかったのかもしれない。そもそもカルラを呑み損ねたことすら】
【意識していなかったのかもしれなくて、ただ、ひとりふたりさんにんよにん――呑んでいった子たちを順番通りに出して】

【当然の如くミチカも出そうとした。だって喰いたくないしこんなの。彼はそう思って身体を動かすけれど、】


262 : 霧崎 ◆KP.vGoiAyM :2018/12/11(火) 20:32:09 Ty26k7V20
>>161

………なるほど。そちらの事情はなんとなくわかりました。

チームMに関してですが、端的に申し上げますと全貌を把握しきれていないのです。
私は先程言った、探偵の跡を引き継いだに過ぎません。そして、チームMは非常に秘密主義ですから
そのメンバーであってもすべてを把握するのは難しいのです。

【メンバーすらわからないというのは幾分信じがたいほどに秘密主義も過ぎる。だが、彼女は】
【まっすぐ淡々と話し、嘘をついている様子はない。ただその落ち着きと、見た目で中身を忘れるなかれ】
【世界有数のマフィア組織の筆頭なのだ。嘘を付くぐらいは容易いことだろう。だが、これはどちらなのだろう】

私が把握している動向は、精々…初瀬麻季音を除いた2名。
その2名には探偵の意志を継いでもらっています。

チームMが関わっているのは主に、虚神と黒幕に関わる2つの事象です。
虚神に関して言えば…少なくとも私や初瀬麻季音は深く関わっていません。
探偵亡き今では、策を講ずるのも難しいというのが現状です。

ただ、一方で黒幕に関しては大きく進展しています。
そうですね、ある意味…あなた達も無関係ではない。
…しかし、それを今申し上げることはできません。非常に、デリケートなので。

それに、どうせ信じがたいでしょうから。

【やはり彼女はだいぶぼかして伝えた。最初の話の通り、全貌を把握できていないから曖昧にならざる負えないのか】
【それとも意図があるのかは…表情から読み取れるだろうか】

【そして、霧崎が何気なく口にしたことに対して、杉原がある種空気の読めない言葉で答えると】


…あら。どうも、ありがとうございます。歳の近い方にそう、口説かれるのは珍しいから。

「ファック。」

【霧崎はルネサンスの絵画から切り取ってきたかのような笑みを浮かべ、後ろの女は生きたネズミでも口に詰められたような表情を浮かべた】


//かなり遅れてしまい申し訳ございません。


263 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/11(火) 21:43:53 E1nVzEpQ0
>>249

【立ち込める無煙火薬(シングルベース)の臭気が、饐えた惨たらしさを多少なり踏み躙ってくれたのが、せめてもの救いであったろう。】
【「Clear.」「Clear.」ごく玲瓏な声音が二ツ、口々に呟いて銃を下ろし、光学装置の電源を落とす。 ─── 撃ち尽くしたP-MAGを再装填し、今一度ボルトを引きながら】



     「 ────……………。 」「 ─── 手前ェの幸運に感謝しろよ。」



【ひどく侮蔑の念を込めた、暗くも青い瞳の三ツが、醜い骸たちへ向けられていた。ただ邪魔であるが故に、それらを無造作に脇へ蹴り飛ばす】
【 ─── ミレーユの呟きは、恐らくは残された二人に向けられたものではなかった。なんとなれば彼女たちは、時として熾烈を極める復讐の業にも躊躇いなく手を染めてきたが故に】
【仮にこれが任務でなければ、斯様な光景を前にして、言葉すら憚られる報復を採っていたに疑いはない。 ─── 単なる突入の標的であった事は、殺された彼らにとって幸福だった】
【ごく背の高い女が、その穏やかな歩調をもって、残された少女たちへ歩み寄るのだろう。その眼前たる傍で膝をついて、広げた両腕を示すならば、幽けく甘い薔薇の香さえ、その内奥に。】


「 ………─── もう、大丈夫よ。」「貴女たちを助けに来たの。だから、怖がらなくていい」
「一人で立てるかな。立てなくても構わない。後で肩を貸すから、ここから逃げるんだ。」


【ひし、と。 ─── 女/アリアは少女たちを抱き締めて、囁くのだろう。篭められた愛しげな憐憫と惜しげもない慈愛。濡れ切った戦闘服の滑らかな素材の上からでも解る、嫋やかな温もり】
【殺意を厚く遮るような布地を隔てて尚も、二人の涙と嗚咽を受け止めるには十全な、広く柔らかな豊潤と肉感に満ちた胸許だった。穢されてしまった直黒を、銃爪に触れるべき指先が、梳いて】
【そうしてもう一人/ミレーユは、物言わぬ死体から制服を剥ぎ取り、彼女らの肩に羽織らせてやるのだろう。ここは寒かった。船の外に出ればより寒くなる。 ─── 彼がシャワーを用意させたのは、己れの身体をぬくめる為ではなかった】
【 ─── 彼女らの傷を癒すには、余りに足りぬ慰めであったろう。走り来る足音は時間さえも十全でない事を示していた。それでも二人は定めた任務に対して忠実であった。】

【静かに抱擁を解いたアリアは、ポーチから赤いアンプルを取り出す。 ─── 開封したそれを地面に広げる。彼女の異能を行使する為の触媒】
【昏い輝きが血溜まりから生じて、幾つかの"武器"を呼び出していく。拳銃と、砲弾と、機関銃。その間にミレーユは携行爆薬を取り出し】
【凡そ迅速かつ精密に、然るべき形式で回線と信管を接続していく。 ─── 異変に気付いた兵士たちの到達よりも早かった。】
【「 ……… 持っておきなさい。」剥ぎ取った下衣を少女たちに巻いた後、アリアは二人に拳銃を握らせる。ミネベア製の9mm機関拳銃。国防軍にて採用されている自衛火器】
【「いつでも行けるよ、アリア。」 ─── 親しげに名前を呼ぶのは、この空間であるからこそ許された。8人分の死体には、手製の爆薬が括り付けられていた。背の高い女が頷く】


「先行して陽動する。私が艦長室へ着くまでに残りの2人を回収しなさい。プランBよ。」
「了解。 ─── 耳を塞いで。手を引くから、ボクと一緒に走れ。次はキミたちの仲間を助ける」


【 ──── 血まみれの死体が、次々と廊下へと投げ出されていく。決して彼女たちの身体を晒さぬまま。ならばそれは明白な異変であり】
【もう片方の、恐らくは女と思しき一人が、代わりに少女たち二人の手を握るのだろう。 ─── アリアと呼ばれた女は、その両掌に機関銃を握り込んでいた。】
【死体に括り付けられたのは、OAC高密度窒素爆薬ベースのC-6特殊可塑性爆破機材 ─── 及び、計4万発のフレシェット弾を内含するM546対人榴弾5発を連結したIED(即席爆発装置)。】
【後者の弾頭に関してはアリアの召喚したものであり、詰まる所は極めて非人道的なブービートラップであった。だが物言えぬ彼らには最早、そのような末路を責め立てられる道理もない】
【 ─── 鋼鉄の扉が閉じられ、氷壁の内張りによる補強が終わる。信管たる赤外線センサーを、ミレーユの右手が起動する。異変を察知した兵士たちが、不用意に8つの死体へ近付けば最後。】
【扉の開いている船室と廊下の全てを吹き飛ばす爆轟と、雲霞の如く無慈悲に飛びかかり貫徹する無数の矢状弾子が、彼らの肉体に凄惨なまでの致命的損傷を齎すだろう。艦の悉くを揺るがして】


264 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/11(火) 21:57:39 BRNVt/Aw0
>>260

【呆れたようにじとりと見られ、少年は、う、うるせェ!と目をそらす】

全くねェって訳でもねぇし……こっちでも探しゃ日雇いの仕事くれェ見つかるって思ってたし……
【ただ病院に掛かるくれーはねェってだけだし……そもそも俺本籍櫻だから病院行くにも色々掛かりそうだってあれだし……と目をそらしながらぶつぶつと答え】
【余談ではあるがこの少年、件の商会に入る以前にも同じような決断を一度やらかしているがその時の事は頭からすっぽ抜けてしまっている】

【そうして、青年が彼女の友人と会った事、少女の名前がつがるである事を聞くと少しホッとしたような表情になる】

……そうか、あの子、此方で友達出来たんだな
じゃあ、俺が会っちゃいけねぇ、のかもな
【きっとその子は幸せなんだろうから、と少年はしみじみと呟いて】
【だがふと何かに気付いたように顔を上げる】

……けどよォ、何でその友達って奴はその子を探してやがンだぁ?
つーかそれ本当にその子の友達なのかァ?
まさか友達ってなァ嘘であの子に何かするつもりなんじゃ……
【クッソ、怪しくなってきやがったァ!と少年は頭をガシガシと掻く。忙しい奴である】

……なー?何処からの発注なのかも教えてくんねェんだよ……いつもだったらチラッと流れてくンのによォ……
戦争でもおッ始めンのかねェ……
【ま、ンな訳ねェよなー!と少年は笑って】


265 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/12(水) 18:19:21 6.kk0qdE0
>>257>>258

「仲間の念と自分の命、か……習得には複雑な経緯がありそうだな……」

【最も、其れをこの場で深く聞いたところで、このシャッテンと言う男は答えてはくれないだろう】

「おいちゃ……わ、たし……」

【ヴァルターに抱き寄せられ、導かれながら、スタッフルームへと向かう】
【ぎゅっと、ズボンを掴み抱く手は不安感故の力が入って、傾ける身体は余りにも軽いだろうが体重が預けられ】

「ギャングの流儀と言うわけか、なるほど分かり易く効果的だ」

【本来ならば、組織間抗争においては効果をこの上なく発揮するやり方】
【政治と外交が隣り合わせにある軍隊組織でも、通じる部分はある】
【そうして、スタッフルームで対峙し、話が始まれば】

「お気遣い感謝します、全て終結後に櫻国陸軍より相応の御礼に伺います」

【アーディンの配慮により、この場での弁済保証は一先ず保留となった】
【言う通り、足のつきやすい金や物の流れはなるべく作りたく無いのが本音で、特にこういったデリケートな状況下では、その配慮は有り難い事だ】

「その様な認識で間違いは無いだろう、水国を墜とす、か、確かに十分に考えられる話だが、いかんせん此れに関しては証拠が十分でない、現状は憶測する他無いな」
「海軍内部の力関係も、その認識で間違いありません、現状は暗躍と力でのし上がった蘆屋派と窮地に追いやられている土御門派の二極が対峙している状況ですからね」

「ああ外務八課だ、この国の暗躍機関らしいが、確かアリアとミレーユとか言ったか?」
「もう1人ライガとか言った人も居ましたね、詳細は不明ですが」

【やがて、話が妖魔や妖怪の輸出規制緩和の事となれば】

「アーディンさん、櫻国の事情には、ある程度通じておられる様子ですね……このタイミングでの法改正です、無関係とは言えますまい」
「加えて、この直前、未確認情報だが『天乃原の将軍奥方公』が、海軍静ヶ崎鎮守府を訪れたとの情報がある、また、先に挙げた外務八課も『ヨシビ商会』の名前を挙げて居たな……ああ、ヨシビ商会ってのは妖怪や妖魔を捕獲して他国に売り捌く暗躍会社だ」

【全ては未だ未確認の個々の点であり、だが無関係とは決して思えない点】

「はい、その子は、みらいは魔導イージス艦の起動キーとして作られた命、管制制御装置其の物、言わば兵器の一部です」

【杉原としてはなるべく言葉を選びつつ、しかし事実をありのまま告げた】

「ラベンダァイス、兵器ケツァル・コアトルの少女……い号文書の記録にあるな、虚神関係、白神鈴音の探索にて共闘、と」

【タブレットを見ながら、アーディンとみらいを見ながら、風野は呟く様に言って】

「おいちゃ、も、ひと、じゃ、ない?」
「おにいちゃ……ひと、と、して?いき、る?」
「わ、たし、も、いきて、いい、の?」
「おにいちゃ、いきて、いて、いい、の?」

【只でさえ拙い言葉だったが、後は言葉になっていなかった】
【静かに、しかし大粒の涙が溢れ】
【アーディン達3人の言葉に答え、問い返す言葉は、酷く聞き取り難い物だった】
【但し、3人が教え示した通り、小さな命の尊厳は、確かにそこにあって】

「……」
「ーー」

【この場では陸軍の2人も、押し黙る他は無かった】


266 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/12(水) 18:40:35 6.kk0qdE0
>>259

「ご了承頂けて、何よりです……」

【静かに、凪の如く、海風の如く】
【ミチカの返答に、こう答えた】
【その声には幾分も、純粋に嬉しそうな声色が混ざり】

「朝は、近いと……左様ですか」
「ええ、朝は皆、目覚めるものです」

【海辺の街も人も、或いは海そのものも、海鳥すらも、何もかもが静寂の中にあって】

「その未来を、目覚めの朝を願わくば共に迎えたい物です」
「その朝には、皆が目覚めたその後には導きを……」
「そして、心のままに」

【まこと、静かな水平線があり】
【死の深淵を思わせる様な黒い水面があり】
【その中で、言葉に応じ呼するかの様に、一陣の潮風が吹き抜けて】

「大和は、一先ずご友人の所へ送りましょう」
「全ての事象、全ての道行きがあなたがたと我々に祝福の道を示さん事を……」

【灯台の明かりが回転し、顔を一度ずつ照らすならば、それを合図の様に、この密会の一先ずの終わりを告げるのだろう】
【決戦級魔導戦艦大和が、水国公安、水上保安部の下に異例の無期限貸与が行われたのは、この後日、あまり日を置かずにであったが、それもまた、別のお話であろうか】


//では、会談は一旦〆でよろしくお願いします
//面会編に関しましては、日にち等打ち合わせ致しましょう
//お付き合いくださり、ありがとうございました


267 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/12(水) 19:06:24 6.kk0qdE0
>>262

「なるほど、チームMの事、その情報はロッソ氏よりは聞き及んで居ない、と」
「まあ此方も、詳細に所在まで掴んで居るのは、1人だしな〜、後は名前位しか知らない」

【嘘は言っていない、いや、恐らくだが霧崎という女性は、問い詰めた所で決して口を割ることは無いのだろう】
【秘密主義の結社の、仲間内とは、恐らくそうなのだろう】
【その様に考えたのか、言及は避けた】

「初瀬麻希音……名前があるな、ゾーイってのとUTで出会ってる、確か最後に聞いた話ではオーウェルに言ってるって話が書いてあるな」
「その初瀬麻希音を除いてって事は、あと2人って誰だ?それと探偵の意志ってのは?」

【百合子はタブレットをゆっくりスワイプしながら、言って】
【ロッソの意志とは、記載が無い情報故に知る者に聞く他は無く、また、どうにも霧崎や探偵は、全く厳島が預かり知らない部分で動いている様子だった】

「虚神に関しては、まあ一先ず置いておくとして」
「なるほど、これは話が出来ない話、と」
「だが、決定打に出来るものはある、か、其れが聞けただけで十分だ」

【決定打になり得る何かがあるが、其れを明かす事は出来ないと明言され】
【探求したい気持ちはあるが、此ればかりはやむ終えないだろう、恐らくこの女性は、固く其れを明かさないだろうから】

「す、す、すす杉原!!とんだご無礼を!!許して!許して下さい!!」
「思った事を口にした迄ですが、何かマズかったですか?」

【霧崎の言葉は、ごく普通の立ち位置の女性が言えば、並みの男ならば痺れるほどの効果を発揮するのだが】
【霧崎の立場の者が言えば、即ち意味が違う、別の意味で痺れが走るだろう】
【明確に聞こえるfuckの言葉、背筋が凍る思いを百合子は感じて】

「あ、ああ、そ、そうだ!霧崎さん!此れ!私と杉原の連絡先だ!こ、今後の為に、ひ、必要だよな!うん!必要だ!」

【苦し紛れの会話逸らし】
【手近な紙にメモしたそれを手渡して】


268 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/12(水) 20:23:25 EtkRdZh60
>>254

【戦えるものが戦えばいい。 ─── それは今の女が付き随う長の信条であった。去り行く背中にせめて慰めのあらんことを祈りながら】
【 ─── 己れを卑称するブラックハートの言葉には、どこか酷く寂しげに睫毛を震わせて、なにかを言い淀むような挙措であった。然して、】
【それを追うのもこの場に似つかわしくないのだと心に選べば、結局のところ彼女が口を開くことはなかった。次の邂逅に言葉を残していた】
【酒瓶の半ばほどまでを一口に呷り、 ─── 残した分を、墓碑と盛土へと注ぐ。天蓋高く香り立つ遠い麦芽の薫風は、郷愁に似ていただろう】
【そうして生じた白泡の悉くも弾けて、眠るような沈黙だけが夜闇に残される。死にゆく者の葬送は常にかくあるものだと、アリアは知っていた】


「 …………… 約束したの。彼と。」「事ここに至ったならば、私たちに成し得るのは既に復讐だけであり、そうすべきだと。」
「彼の本懐は遂げられたとしても、私のそれは未だ終わらない。 ─── 始末を付けるのみよ。まして今までも、幾度と拓いてきた道なのだから」


【アーディンの独白に応ずるように、徐にアリアも独り決意を言ちた。とうの昔に枯れ果てた涙に今なお潤む唇が、冷たい悲しみを吐き切った】
【迷う所が無い訳ではなかった。 ─── 己れを正義の味方だと思った事はない。正しく在る事と秩序を糺す事を、等号で結ぶ方が難しい】
【人ならぬ身を受け入れた己れにとって、残された幾ばくかの神々は、決して己れに有り得なかった未来ではなかった。尤も、】
【それは今、こうして弔いを共にする2人とも、同じ事であろう。 ──── ならば、詰まる所は、抱く物の打つけ合いであろう】

【釐かにアリアは上体を、その隻眼を2人へと向けた。届かない銀河のように白紗の長髪が煌めいて舞った。穏やかに彼女は微笑していた。】
【夜闇のヴェールを受け容れて、尚も透き通る碧眼は、消えぬ天狼星の色合いに似ていた。 ─── 白い喉筋が、蠢くならば】


       「さようなら。 ……… そして、ありがとう。」「求める所があるならば、」
       「 ───── この身で力となる限りは、いつであろうと手を貸しましょう。」


【 ─── そう言い残して、彼女もまた、幽暗に広がる木立の影へと消えていくのだろう。残されたのは、一枚の名刺。】
【モノトーンの簡素なデザイン。PMCを名乗りながらも、記されているのは私的な連絡先に過ぎない。 ─── Aria Konigin Dernacht(夜の女王のアリア)/それが、彼女の名前。】
【やがて足音さえも、冷たく吹き抜ける風に溶けていく。いつか仄かに薫るだろう夜明けの暁光が、彼女の膚を刺す大気にも、温もりを齎すのだと信じたかった。】

/このあたりで〆でいかがでしょうか!


269 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/12(水) 20:33:53 E69Bgh920
>>263

【淫なる酷い臭気に混ざる、仄かな火薬の匂いは、この場では酷く清浄に感じて】
【其れを用いて、2人を救った、戦闘服の蔑みの瞳の2人はさながら冷たい天使の様で】

「助けに?貴女は、一体?」

【アリアが近づけば、ビクッと身体を引攣らせ、怯えの表情を見せた眼鏡の少女だが、ふうわりと抱き締められれば、次第に裸のままの身体を解し、安堵を見せて】

「あの、すみません、こんな事まで……ありがとう、ございます……」
「状況が、読めないのだよ、でも……助かった、のだよ、ありがとう……なのだよ」

【優しい温もりに抱かれながら、やがて剥ぎ取られた軍服でその裸体を隠し、体液で汚れた髪を梳いて撫でられれば、落ち着きを取り戻して行き】
【足腰にもかなりの負担を強いられ続けていたのだろう、手を取り肩を借り、ヨロヨロと立ち上がりながら】
【手渡されたのは拳銃、スタンダードで使いやすい大型自動拳銃】

「あの、中尉のお知り合いの方……ですか?」
「その、あ、ありがとう、ございます……中尉達を……助けに……」

【束の間の抱擁を解いたアリアが展開したのは、武装召喚の異能】
【恐らく国際的な、陸戦条約では禁じられているであろうブービートラップ、ゲリラかテロリストの手法だが、仕掛けるアリアとミレーユ】
【2人に眼鏡の少女が、こう話して】
【報道にあった、那須翔子曹長、石動万里子少佐、一先ずこの2人の救助は成功したと言える】
【取られたのは二方面による作戦、迎撃と陽動を同時に行い、目標地点への到達を目指す】
【ミレーユに手を取られ、翔子と万里子は拳銃を握り込み、耳を塞ぎ】
【やがて……】

「こっちだ!急げ!!」
「こ、これは……金子!!金子どうしたのだ!金子兵長!!」

【到達する足音、そして悲痛な声】
【おびき寄せられる様に、彼らは海兵達の亡骸へと近づいて行き……】

ーーっぐああああああああああッ!!
ーーな、なんだ、なんッ!?
ーーぎゃあああああああああッ!!
ーー衛生兵!衛生兵……ッ
ーー消火救援を!!
ーー神通にも連絡をッああああああああッ!!
ーーくそックソが!!何事ッ!?

【阿鼻叫喚の地獄が始まった】
【宛ら獄門、宛ら、血の海火の池】
【炸裂する爆薬は、爆風と熱を振りまき手当たり次第周囲に火災を、崩落を呼び】
【矢状弾子は、付近の海兵達を悉く穿ち、眼球を、胸を、頭を、脚を、或いはそれら全てを打ち貫き、死傷させる】
【伴い飛び散る血飛沫に、液に、眼球に、肉片に、骨片に】
【或いは熱風に煽られ、服を身体を燃やされ、のたうち回り焼かれ死ぬ者もあったか】
【地獄の混乱の中、翔子と万里子は握った手のミレーユの合図があれば、共に振り向かず全力を持って駆け出すだろう】


270 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/12(水) 21:17:29 BRNVt/Aw0

【とある繁華街の一角】

【バーなどが点在する裏通り。奥の方にはピンク色をしたネオンがなんともいかがわしい建物が幾つかちらほらと見えていて】

「ねぇ、良いじゃんよぉ、俺らと遊ぼうぜー?」
【そんな通りに数人程の集まりが一つ。下卑た声が聞こえて】
【見ればそこいらに普通にいる若い男が数人、誰かを取り囲んでいて】
【隙間からのぞくのは白く小柄な姿】
【十代半ばの奇妙な少女、だった。月白色の肩まで伸びた髪、所々が破けたり5cm前後の穴が空いたりしている季節にそぐわないデニムのワンピース。頭からは髪と同じ色の猫の耳が生えていて】
【服に空いてしまった幾つかの穴の間からは1cm程度の刺し傷が見え隠れしているのだが周囲がわりかし暗い事や興奮している事から男達は気付いていないようだ】

「そんなカッコじゃ寒いっしょー?俺らと暖めあおーよー」
「かわいい耳なんか生やしちゃってるしどうせそういうお仕事なんでしょ?だったら良いじゃん、ね?ね?」

【下卑た笑みを浮かべ、しつこく迫ってくる男達に向けるのは虚ろな金色の瞳】
【彼らを疎ましく思っているというよりかは至極どうでも良いといった感じで】
【下手をすればそのまま男達に連れていかれてしまうだろうという危うさすら感じられて】


271 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/12(水) 22:17:59 E1nVzEpQ0
>>269



              発砲開始! 使用兵装自由!
        「 ─── OPEN FIRE!! WEAPONS FREE!!」
        乗員の射殺を許可する、全員残らずブチ殺せ!
        「CREW EXPENDABLE, KILL'EM ALL!!」


【爆轟の直後に再びアリアが扉を蹴破れば、二度にも及ぶ強引な開閉は蝶番ごと鋼鉄を吹き飛ばした。 ─── 二つの影が煉獄へと駆け出す】
【歪んで焼け焦げた船体構造と、ごく無造作に転がる死体の数々を足掛かりとして、その機動を妨げうる物はない。生き残った兵士が居たとして】
【立ち込める黒煙と火災の彼方から放たれるのは消音された小銃弾の徹底した先制射である。手心の一欠片も有りはしなかった】

【アリアが向かうのは艦長公室である。 ─── その両手にそれぞれ握るのは、二挺の"着剣された"軽機関銃/KAC ChainSAW】
【異様な外観の銃器であった。鎖鋸のハンドルとグリップが取り付けられ、真っ当な銃把も銃床もないその分隊支援火器には】
【あろうことかそのアンダーバレルに文字通りの"チェーンソー"が取り付けられているのだから常軌を逸していた。 ─── それでも】
【爆煙の彼方から青い眼光と共に放たれる制圧射撃と、燻り狂えるような油圧エンジンの駆動音はどこまでも恐怖の体現であった。まして彼女はそれらを二挺撃ちにて扱っていた】
【 ─── 立ち塞がる兵士を5.56mm小銃弾の二重弾幕に薙ぎ払い、時に肉薄して喉筋を回転鋸に掻き切り悲鳴と鮮血に浴しながら、彼女は艦長室の前まで辿り着こうとするのだろう。】
【対してミレーユもまた所期の目標地点に辿り着いていた。1階の3番兵室 ─── その直上にある、2階の床面。或いはそこもまた兵室であったなら、手順通りに"片付け"て】
【その足元に発破機材を仕掛ければ続く行動も明白であった。僅かに離れた位置で起爆用のレバーを握り、ライフルに改めて弾を込めながら、少女たちに告げるのは】



「ここから発破して突入する ───………… Three! Two!! One!!!」



【「GO!!GO!!GO!!GO!!」 ─── アリアが恙無く目的地点に到達していたのなら、その突入は殆ど同じタイミングで決行されたのだろう】
【下にいる"目標"にはくれぐれも当たらぬよう、床面を破断し崩落させながら、繰り出される頭上からの奇襲/機銃。】
【或いは船室の錠前を回転鋸にて切断し、やはり扉を蹴りながら強襲する一刹那の突入劇。 ─── であれば、果たして】


272 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/12(水) 22:34:28 OQxJV9J20
>>270

【若い男の集団に、いつの間にか三十代前半ぐらいのおっさんが混じっていた】
【頭はぼさぼさの黒髪に無精髭と、容姿に全く気を配っていない。軍服を着用しているが、これもシワだらけだ】
【首から銀色の弾丸をネックレスとしてつけている。表面には文字が彫られている】

そーそー、俺と遊ぼうぜぇ、お嬢ちゃんよぉ
可愛いからたっぷりと相手してやるって、お金も弾むしよぉ

【間延びしたような声で周りの男たちと一緒に、少女に向かって下劣な視線を向けていた】
【が、それと同時に腰元に手を回す。ベルトには鎖が巻きついた魔道書らしき本が固定されていた】
【それを指で二度、叩く。それを合図に魔道書上で魔法陣が展開。数本の黒色の触手が出現する】

ただ、相手するのは俺だけでいいけどなぁ?

【触手は意志を持つかのように蠢き、周囲の男たちへと向かい首や胴体に巻きつこうとする】
【巻きついたならば、凄まじい力でへし折ろうとするだろう】


273 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/12(水) 23:19:44 BRNVt/Aw0
>>272

【若い男達の集団にいつの間にか混ざっていた一人の男】
【少女は、嗚呼、また一人増えたのかと言わんばかりに男を一瞥し、周囲の若者達も突如増えた男に怪訝な眼差しを向ける】

「え、何だこのおっさん……」
「このコは俺達と遊ぶんだから引っ込んでろよ!」
「俺だけ!?独り占めする気かこの野郎──」

【男に敵意を向け、睨み付ける若者達】
【しかし、次の瞬間若者達の身体には男の魔導書から生み出された黒い触手が巻き付き始め】


【──ぐしゃり】
【ごきっ】
【ばきっ】

【若者達の悲鳴の代わりにいやな音が響き渡る】

【──瞬間、裏通りの活気が嘘のように静まり返る】


「……のうりょく、しゃ?」

【しぃんと静まり返った裏通り。誰かがぽつん、と呟いて】

【それは静かな水面に小石を落としたかのように響き渡り】

「──!」
「能力者だ!能力者が出やがったぞ!」
「能力者が一般人を殺しやがった!」
「おい早く誰か警察呼べ!」
「能力者が人を殺したぞー!」

【裏通りの数人の混乱が表通りへと次第に広がっていく】
【辺りは上を下への大騒ぎとなり始め】
【やれ能力者はやっぱり野蛮だとか魔制法は間違ってないんだとか人々は騒ぎ出し】
【裏通りから逃げようとするもの、入り口の扉を固く閉ざそうとするものと様々で】

【そんな中、件の少女は未だ虚ろな瞳で至極どうでも良いのだとばかりに人々、更には男を眺めていて】


274 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/13(木) 17:40:13 OQxJV9J20
>>273

【男たちを殺した軍服の男はそのことを気にする様子もなく】
【また周囲の騒がしさに慌てることさえしなかった】

んだよ、ぴーちくぱーちくうるせえなぁ
大体、能力者だと? 人をあんな化け物どもと一緒にしないでもらいたいもんだ
魔術と能力は違うって、なんべん言やぁ分かるんだ、えぇ?

【苛ついた表情を浮かべた男の感情に合わせるように、黒い触手の群れが蠢き、蠕動する】
【ふと、悪戯を思いついた笑みが現れる。逃げ惑う人々に対して、黒い触手が近寄って突いたり撫でたりとちょっかいを出し始めた】
【騒動に対して、余計な煽りをするぐらいにこの男の性格は悪かった】

そもそも、魔制法なんざ間違いに決まってんだろぉが
要するに、許可したやつぁ生かすし、使わなけりゃ能力者も住んでいいってことだろ?
そんなのはダメだね、あんな奴らは皆殺しにしなきゃなぁ?

お前も、そう思わねえか?

【触手の群れの一本が、虚ろな瞳の少女へと近寄る。その頬や首を撫で、あるいは絡み付こうとする】


275 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/13(木) 23:02:25 BRNVt/Aw0
>>274

【苛ついた表情を浮かべた男。それに呼応するかの様に蠢く触手に人々はまた悲鳴を上げ】
【混乱はますます大きくなっていく】

【男がふと思い付いた悪戯を実行してしまえば騒乱はいよいよピークに達してしまい】

「うわぁぁぁぁぁ!殺されるぅぅぅぅぅ!」
「きゃぁぁぁ!押さないでー!」
「警察はまだか!早く来いよ!」
「おい誰だ今俺の事押したの!」

【ざわざわ、がやがや】

【繁華街はあっという間に混乱の坩堝と化して】
【我先にと逃げようとする者、押されて転倒する者、それを踏みつける者。様々な動きが彼方此方で見られて】
【遠くから聞こえるサイレン。繁華街の騒音に荷担し始めて】

【少女はただ眺めていた】
【まるで穢いものでも見るかのような不快そうな目で、嘲笑するかのような光を含んだ金色で】

……そういう話はよく分からないから、どうにも言えないけど

おじさんは能力者とか嫌いなんですね

──じゃあ、私も殺す

そういう事ですね

【ずぞぞ、と近寄った触手の一つ。頬や首を撫でる感覚に流石に擽ったいと思ったのか少女は一瞬顔をしかめ】
【能力者などと言われれば自分も殺すのか、と問い掛ける】
【私は氷柱を飛ばせるもの、とそう考えた理由を付け足して】


276 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/13(木) 23:26:09 OQxJV9J20
>>275

ああ、てめえも能力者かよ?
ま、こんなところにいるガキなんだから、そうじゃあねえかと思ったがよぉ

【予想はしていたらしく、少女の申告には驚かなかった】
【それでも表情と声には殺意がにじみ出る。それに比例して漆黒の触手が数を増していき、少女の全身に絡み付こうとしてくる】

てめえの言うとおり、てめえが能力者なら殺す。例外はなしだ
もちろん、殺し方にだって色々ある。てめえで遊ぶっていう理由でこいつら殺したんだ
遊ばなきゃ、こいつらが可哀想だろ? だから、殺すんならたっぷりと嬲った後で、だ

【下卑た意思を隠すこともなく、むしろ愉しげにさえして少女に言って聞かせる】
【周囲の喧騒に目をやると、再びにやついた表情を浮かべて、さらには手を叩いて笑い始めた】

いひゃはははははは!!
見ろよ、あいつらの慌てふためいた顔をよぉ!
ちょっと悪戯しただけでこの有様だぜ! 気分が良いったらありゃしねえ!

【笑いながら男は腰に手を回し、魔道書を開く。青い燐光を伴った魔法陣が展開】
【触手だけでなく、手のひら程度の小さな何かがそこから飛び出してきた】

【それは薄汚れた黄土色の飛行物だった。臓器の表面のような薄気味悪い皮膚に、口と思しき部位が存在していた】
【口には鋭い針の如き犬歯が並ぶ。その隙間から、暗い口腔の内側に眼球が一つ見えていた。肉食獣の口部分だけが飛んでいるような不気味な造形だった】
【ぎちぎちと歯音を鳴らし、眼球が痙攣したように震えて動く。それは通行人を見つけるなり、不規則に飛び回りながら向かっていった】

大盤振る舞いってやつだな。さすがにこれ以上はやらねえが
ほらほら、お嬢ちゃんにも食いつくかもしれねえぞぉ?

【黄土色の飛行物は、触手と一緒になって少女を取り囲む。時折、威嚇するように歯を打ち鳴らし、内部の眼球が彼女を凝視していた】


277 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/14(金) 00:05:35 BRNVt/Aw0
>>276

能力者……ううん、正式にはどうなんだろう……?
氷柱を飛ばしたりするのは一応種としての固有のそれ、なんだろうけど……
妖怪のそういう力も能力って呼ぶものなんですかね?
【殺意を滲み出させた男。少女はその声や表情を耳にし、目にしてもひどく落ち着いていた】
【全身に絡みつきそうな触手に目をやるもその顔に浮かぶのは恐怖ではなく、単なる感心であって】
【たっぷりと嬲ってから殺してやるという脅しを耳にしてもその表情に恐怖の色など浮かんではいなくて】
【まるで心が無いかのようだった】

【そうして周囲の喧騒に対して男が愉快そうに笑い始めれば、少女はふと眉をひそめて】

……人間なんて所詮はそういうもの、だと思いますよ?
表面上では優しくしていてもちょっとした事ですぐ掌を返して対象を苛む
苦痛に喘ぐ他人なんか誰も助けようとはしない

──だから人間なんか嫌いなんだ

【不快そうに吐き捨てる少女】

【魔方陣が展開され飛行物が追加されてしまえば人々はその薄気味の悪さにいっそう逃げ惑い】
【それらが噛みつこうとすれば騒動が更に大きくなっていく】
【サイレンの音はするものの、まだ遠い。恐らく混雑で繁華街に入れなくなってしまっているのだろうか?】

【触手と飛行物に辺りを囲まれ、その目にぎろりと睨まれ、男に煽られても少女は顔色を変えはしなかった】
【恐らくは自分の行く末に対して興味などを抱いていないようで】
【多分、どうなろうが構わない、なんて捨て鉢な事でも考えているのだろう】
【怪物のその歯ががちりとなれば少女は少し困惑したように男を見て】

……あの、どうすれば良いんですか私?
泣いたり喚いたり、そういった反応を求められている……んですよね?これ?
別に噛まれようが潰されようが私はどうでもいいんですけど……
どうせ私なんかどうなったって良いんだし……
【自嘲気味に少女は呟いて】


278 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/14(金) 00:19:44 OQxJV9J20
>>277

種の能力ぅ?

【種族固有の力だという説明を受けて、男は首をひねってしまった】
【うーんうーんと唸りながら何やら考えている様子だったが、すぐに思考を放棄】

まぁ、どっちでもいいか。多分、どっちかっていうと能力者じゃねえんだろうが
つーか、こっちの意図が分かってんなら泣いたり喚いたりしろよな!! 萎えるだろうが!!

【少女の予想は正しいようで、そうしない相手に腹が立ったのか地団駄を踏んでいた】
【触手と飛行物は指示がなくともある程度は勝手に動き、少女を取り囲むいくつかはお互いを威嚇しあっていた】
【意思が別にあるのか、いくつかは主人たる男に向かっていき、噛みつこうとしたり巻きつこうとしたりさえしている】
【その度に魔道書から青く輝く鎖が現れて縛りあげていた】

こんなみすぼらしいおっさんに襲われるなんて自分が可哀想じゃあねえかぁ? えぇ?
もっとこー、いい感じに演出をしてくれよなぁ。泣きすぎたり喚きすぎたりはうぜえが、反応がねえマグロを相手にするのも退屈だ
それに、なんだぁお前、実は娼婦か奴隷なのかぁ? こういうのは日常茶飯事なのかよぉ、ん?

【あまりの反応の薄さがどうしても気になり、男は思わず尋ねてしまった】


279 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/14(金) 00:46:32 E1nVzEpQ0

【息を呑むほど乾いた夜の冬風が、街路を行く人波を一層に余所余所しく仕立てていた。眩しげなイルミネーションは、今年も変わらず虚しい】
【水国。都市の喧騒からは少しだけ離れた、とある大通り。 ─── PMCsを名乗る、物言わぬ高層ビルの威容が一ツ。そして、その懐に】
【幾分もクラシックな気風の喫茶店があった。本質的ながらも気取らない時間を、上質な茶葉と甘味に愉しませてくれる、そういう店。】
【 ─── ニスに塗り上げられた木造りの内装。窓際のテーブル席に座って、憂うような視線を街並みに向ける、女がいた。】



      「 ─── 座りなさい。」



【一瞥もくれずにそう呟くのだろう。独白に似ていた。そして命令でもあった。 ─── ごく背の高い、長い白銀の髪をした女。】
【沫雪に似て透き通り、輪郭の判然としない表情。さらば、結ばれた唇に淡く引かれた紅色が潤うのは雪融けであろう。】
【憂うような青い隻眼。瞬く睫毛は仄かな涙さえ帯びているだろうか。それでも感情というものを凡そ顔立ちに出さぬ女であった】
【ただ悩ましげに深く吐き出された嘆息が、白いブラウスの織地を張り付かせて慊らぬ、机上に預けられた胸許の豊満さを揺らがせた。】
【 ─── その成熟を代弁するような、馬鹿げて重厚なパンケーキを、淡々と女は口にしていた。バニラと、クリームと、メープルシロップと、 ─── 僅かなタバコの匂いと、薔薇の香水。】


「久方ぶりね。かえでが世話になった、とか。 ─── 諸々、感謝してはいるわ。」
「けれど、どういう風の吹き回しかしら。」「後ろ暗い心当たりがあるならば、今のうちに告白しておくのが賢明というものよ。」


【食事の手を止める事はなく、その視線も白皿へ向けられたまま、 ─── 然して最後の言葉だけは、射抜くような眼光を持って、向けられる。】
【訝っていることは確かであろう。或いは既に怒髪天を衝いているのかもしれない。いよいよ季節に相応しい黒いロングコートとテーラード・スーツの下には銃口を構えているのかもしれない】
【それでも淡々と、湿った生地に突き立てられて、磁器と擦れる苛立ちを示すナイフとフォークだけが現実であった。 ─── 「好きなものを頼みなさい。」取り揃えるメニューの幅は広い】


/よやくのやつです!


280 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/14(金) 01:01:24 BRNVt/Aw0
>>278

そう、ですよ?
私、見た通り化け猫の半妖ですけど化け猫といっても普通のとは違って亜種なもので……て、大丈夫ですか?
【不意に首をひねり、うんうんと考え始めてしまった男を見て少女はきょとり、と目を丸くする】
【そうして男がどっちでもいいと結論を出せば、少女も、まあそこまで重要ではないですよね確かに、と頷いて】

……いや、萎えるって言われましても……
【本当に怖いとかそんなのないんで、と少女は苦笑して】
【ふと目にした触手と飛行物の威嚇し合いや主人に反抗して鎖に縛られてしまう様子に、あ、何かかわいく見えてきたかも、なんて現実逃避して】

自分が、可哀想……?
【ふと相手の口から出た言葉に少女は小さく首を傾げる】

えっと……そういうのってどういう感情なんですか?

私、そういうのいまいち分からなくて……

自分を大切にーとか自分に優しくしろーとか……

言われたってやり方が分かんないんですよね、此方は

それに、私は要らない子だし、どうせ居場所も幸せになる見込みもないから……だから、どうでも良くて

【っていうか自分でみすぼらしいとか言っちゃうんですか、なんてふと苦笑しながら突っ込んで】

まあ、そういうのではないですね
……はじめはそうなりそうだったんですけど、その時は逃げたんで

後、こうやって声掛けられるっていうのもないですね、結構初めてだったりするんですけど……


281 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/14(金) 01:33:53 6IlD6zzI0
>>279

【顔色という言葉がある。そして声色という言葉もある】
【人の行動には必然的に付いてくる色がある――眼に見えようが見えまいが同じ事】

【故に、一瞥もくれずに放たれる言葉から浮かぶ色があるならばそれは寒々しいものだろう】
【顔色以上に声色は夜の女王たる彼女の感情を物語っていた。であるならこの場は―――】


……なら遠慮なく。
(……コレが戦いなら一目散に逃げるトコだけど、絶対逃がしてくれなさそうだし
 何だよあの馬鹿みたいなパンケーキと机に乗るほどの巨乳…いや爆乳?どちらにせよ目に毒っ)


【前髪の一部を黒く染めた金髪に、左耳に開けたトランプのマークを模したピアス】
【スレンダーかつ小柄の、無駄な脂肪の少ない引き締まった身体つきが特徴的なパンツスーツとステンカラーコート姿の女性】
【名をエーリカ=ファーレンハイトと言った。彼女の表情は柔らかなパンケーキとは対照的に何処か硬い】

【それもその筈。先日言い放ったアリアへの失言が原因なのは明白だった】
【だがそれにしてもこの場の空気は剣呑極まり――この場は最早異端審問だとか魔女裁判に似ていた】


ああ、こうして面と向かって話すのは久しぶりの事だね。
かえでの事なら感謝しなくても良い。だって親友として当然の事をしただけだからさ。


【促されるままにメニュー表を眺めるエーリカ。アリアから目を切れたのは僥倖だった。
 今一度気を取り直しながら注文するものを決める。そうしたらミックスサンドとホットコーヒーがやってくるのだろう】


………前置きはここまでにしといて。単刀直入に切り出そうか。

あの時の言葉は文字通りの意味。決してかえでに手を出したとか不義理を行ったとかじゃない。
あの子がアンタのものだって知ってるから決して寝取ろうとか不貞をしようだとかそんな心算は毛頭無い。
路地裏で佇んでたかえでを慰めて一晩泊めただけ。それ以上の事は何もしてない。


【青色の隻眼に重ねるのは赤銅の双眸。その眦は真直ぐで、それでいて何処かばつが悪い】
【痛い所を突かれて尚「記憶にございません」という腹芸を平然とこなせるほど器用じゃなかったから】
【居心地の悪さにせっつかれて珈琲に口をつけたなら、熱さにたじろいでしまうのだった】


282 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/14(金) 22:12:43 OQxJV9J20
>>280

あーもうめんどくせえガキだな! とことんズレてやがる!

【苦笑する少女に対して男はついに頭を抱え込んだ。文句も虚しく響くばかり】

よーするにお先真っ暗で何もかもどうでもいいってこったろ?
いるいる、お前みたいなやつは路地裏にでも行きゃあ曲がり角ごとに見つけられるっての
かくいう俺だってお先なんざ真っ暗だしな。金もねえし人望もねえし、あるのはこいつらぐらいだ
クズのおっさんに比べりゃ、お前はマシかもしれねえなぁ、けけけ

【うんうんと頷いた後に、周囲を漂う触手や黄土色の飛行物を順に指先で突つく】
【触れた先から怒るように主人を害そうとするが、いずれも鎖に縛られて動けなくされていた】

まぁ、いいや。怖がったりできねえやつにやれって言ったってしょうがねえしな
どうでもいいっていうんなら、俺の要望どおりにしてもらおうじゃねーの?
ほっとくと警察とかきてうざそうだしな。興味も湧いたし、ちょっとついてこい。ホテルなり何なりに行こうじゃねえか

【そう言って男は手招きをする。少女が自主的に移動してくれるならそのままだが】
【面倒がったりすれば、黒い触手が絡みついて持ち上げようとしてくるだろう。抵抗は難しくない】


283 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/14(金) 22:58:14 BRNVt/Aw0
>>282

……え、そんなにズレてます、かね?
確かに櫻の北のド田舎の出だから感覚は此方の人に比べたらちょっとおかしいのかなーって思いますけど……
【頭を抱え込む男を前にしてきょとんとする少女。言うまでもなく結構感覚がおかしい。厄介な事に本人にも自覚は無いようで。というか今まで誰も指摘しなかったのだろうか?】

お先真っ暗……まあそうですね
人望無いっていったら私だってそうですよ?あったら知人の誰かしらに"救われ"てて今頃こんな所いないでしょうし……

──やっぱり役立たずなんか皆要らないんだなぁ……
【ぽつり、と呟かれた言葉は少し寂しげで】

【そうして、ついてこいと言われれば、まあ良いですけど……と答えて】

でも大丈夫ですかね?頭はともかく服破れちゃってるし……あ、まだ傷残ってる……
そういうのって見とがめられたりしないですかね?
【身だしなみを確認しつつも誘われるがままについていこうとして】
【……というか本当に彼女の危機感は何処へ行ってしまったのだろうか?】


284 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/14(金) 23:12:18 OQxJV9J20
>>283

ばっかだな、お前。いちいち見咎められるような場所に行くわけねえだろうが
俺みてえなおっさんが、お前みたいなガキを連れて回ったら警察とマスコミと人権団体の大盤振る舞いが来るに決まってんだろぉ?
もっと人がいねえとこだよ、いねえとこ!

【ちょっと自棄気味ではあったが、ともかく少女を連れていくことに決まった】
【彼が連れていったのはフロントでいちいち誰がきているのかなど確認しないような】
【つまりは“そういうホテル”だった】

【部屋はそれなりに広かった。一般的な住宅のリビングに匹敵するほどの広さを、天井の大きな照明が照らす】
【壁際には大きなテレビ。その前にはちょっとした机と、三人掛けのソファが配置】
【反対の壁際には二人どころか四人ぐらいは寝れそうな巨大なベッドが鎮座していた】

【余談だが、ここに来るまでには人と出くわすことはなかった。どうやらそういう道や場所を選んだらしく】
【何にせよ、部屋に着くなり男はベッドに腰掛ける】

これでやっと落ち着けるぜ。外は騒がしくってしょうがねえ
で、ここまで来たんならやることは分かってんだろ? 初めてか? ん?
あと、さっきから役立たず役立たずって言ってるが、役立たずなのか?
まぁ俺から言わせりゃ役に立つやつなんざほとんどいねえがな、この世の中にはよ。けけけ

【矢継ぎ早に質問を投げつけて、にやついた下品な笑みを浮かべていた】


285 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/14(金) 23:50:09 BRNVt/Aw0
>>284

うぐ……っ、さっきから何ですかガキって!こう見えて私17なんですけど!?
そりゃ……小柄だし?ないですし?櫻の人はこっちじゃ若く見られるらしいって聞くからもっと子供に見えるかもしれませんけど……?
っていうかそんなんで色々来るんなら世界はこういう人っぽくない人にもうちょっと優しくなってませんか?
【子供扱いされたのが少し気に障ったのか少女は少しだけムッとして】
【まあそれでも自暴自棄になっているのは変わらないらしく、気分を損ねたからついていくのを拒むという事はなかったのだが】

【そうしてそういう所に連れ込まれてしまえばとにかく部屋に圧倒されてしまったらしく、なんか色々大きい……殿様かな……と口をぽかーんと開けて】

ひぇ!?あ……うん!?何がですか!?
【急に声を掛けられて驚いたのかすっとんきょうな声をあげて】

やくたたず……う、え……

……まあ、そう、ですよね
大切な人達の力になれないし、助けられないし、傷付けるばかりだし……だから友達だと思ってた人にも嫌われちゃって……
【あはは、と少女は笑って】

役に立つ人間なんか殆どいない、ですか……
でも、皆生きてますよね?
役に立たないのは要らない子だから棄ててしまえっていうのが故郷でのならわしだったんですけど……
【もしかして私の故郷って間違ってるんですかね?と少女は首を傾げる】


286 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/15(土) 00:09:26 OQxJV9J20
>>285

【自分から話を振った癖に、少女の答えを聞いた男は途中からめんどくさいと言わんばかりの顔となっていた】

なんだそりゃあ? 若い奴特有の悩みって感じだぜぇ
何があったか知らねえけどよ、そういうのはたいてい“どーでもいいこと”だぜ
お前は糞真面目に悩んでるのかもしれねえが、後から考えりゃ大して重要でもねえちっぽけなことさ

【悩む様子の少女に向かって、隠すことさえせず“どうでもいい”とまで言い放つ】
【誰かの助けになるだとかならないだとか、そういった価値観はこの男にとって死ぬほど、いや、死んでも興味がなかった】
【しかし、それでも続いた言葉には彼なりに思うところがあったのか、真面目な表情を浮かべ始める】

確かに、お前の言うとおりだな。俺ほど役立たずもいねえが、生きちゃいるな
だけどよ、そんなのも当然だろ。俺たちが生きるのに、誰かの許可なんかいらねえっての

役立たずだから棄てちまえってのは、別にいいだろうし、間違っちゃいねえ。確かに役立たずはいらねえよ
でもそれはそいつらが要らねえって言ってるだけで、死ななきゃならねえってのとはちょっと違う
誰が言ってんだか知らねえが、そいつらが要らねえって言ったら、お前、死ぬのか?
そいつらがお前にとっての全部だっていうんなら、死んでもいいかもしれねえけどな

【一通り喋り終えた男は、一度ベッドから立ち上がって洗面所へ向かった】
【そこでバスタオルを一つ取り出すと、無造作に少女へと投げつけた】

まー細かい話はやることやってからにしようぜ。じゃないと、男ってのは頭が回らねえ
待っててやっから、風呂入れ。入る前にやっちまうってのも、趣味ではあるけどな。けけけ

【勝手な指示を与えて、再びベッドに座り込む。男が指差した先には浴室があった】


287 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/15(土) 01:25:27 BRNVt/Aw0
>>286

なんだそりゃって言われましても……流石に抽象的過ぎて分からないですかね?あははは……はは……は……

…………。


──け、ないじゃない

【はじめは自嘲めいた笑みを浮かべていた少女。しかし、ふとした瞬間にぐっと下を向いて】
【ぽつり、と呟いて】


──────!

どうでもいい訳!ないじゃないっ!

大して重要でもないって何!?
私が今までどれだけ必死だったかなんて知らない癖に!

役に立たなきゃ居場所なんかないの!役に立たなきゃ世界から棄てられるの!だから私今まで頑張ってたのに!
せっかく広げてもらった自分の世界に存在し続けたいから役に立たなきゃ、要らない子にならないようにしなきゃってしてきたのに!
なのに駄目だった!友達も助けられないで傷付けて!父親のように思ってた人だって助ける事も出来ないで!
挙げ句の果てに居場所だと思ってた場所だって無くなって!
大嫌いな奴も死んだと思ってたら生きてて!幸せになんかなってて!
何で彼奴が生きてるの!?何であんな酷い奴が幸せになんかなれるの!?

どうでもいいとか!大して重要じゃないとか!ちっぽけだとか!ふざけんな!
ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなふざけんなッ!

生きるのに誰の許可も必要ないなんて誰も教えてくれなかった!
他の奴が要らないって言ってるからって死ななくても良いなんて誰も教えてくれなかった!

誰もそんなの言ってない……っ!大切な人達は誰一人言ってない!
でも……皆は私の"世界"だったんだ!
"世界"の役に立てないんなら私なんか要らないって……!思ったから!
だから死のうとしたのに!それなのに!
死ぬ事だってままならないで……生き延びて……っ



……大人が勝手に決め付けんなよ……

大人が!勝手に!自分の物差しで!悩みの大きさとか決め付けて!適当な解決策とかくだしてんじゃねぇよ!

此方が子供だからって!ふざけんなッ!!

【咆哮と同時に投げ付けられたバスタオル】
【片手で受け止めて一部を握り締めればそれは忽ち凍りつきはじめて】


288 : 〝P〟 ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/15(土) 01:57:06 smh2z7gk0
>>183

【三角形の敷き詰められた瞳は、三つの眼に射抜かれながらもどこか愉し気に笑う。】
【まるでそれしか感情を知らぬとでも言うかのように、張り付いた笑みがずっと続いている。】
【そして相手の言葉に納得がいったように一度ポンと手を叩く。】

なるほどねーという事は石化は自由に解けたりすることができるって事かな?
一度〝業〟が生まれればあとは螺旋のように永劫に続くからね、それが〝戦い〟であれば尚更さ
大きな悪が生まれれば大きな正義が、あるいは多くの正義が集まる。それにまた挑むように悪がってね。

お〜興味を持ってくれてうれしいよ、どれがいいかな?

【相手が自分の扱うものに興味を示せば一層笑顔を作り、いつの間にか右手には携帯タブレットがある。】
【それを指でスクロールしながら相手へと歩み寄っていくだろう。】

いや〜そうでもないよ、この世界の人々はいちいち兵器を買わなくても
自分の中に〝爆薬〟を抱えてるからねぇ………。まぁ〝持たざる者〟にはよく売れるよ。

あ〜〝櫻〟ね。あそこもなんだかおもしろそうな匂いがするなぁ。
どうやら水の国とも関係があるみたいだしね、この前ニュースでやってたよ。

【そして相手にタブレットを渡す「ラインナップで〜す」と陽気な声をかけながら。】
【陽気さとは裏腹に、ラインナップにならぶ商品は拳銃から弾道兵器とどこまでも物騒なものだった。】
【探せば望むカテゴリーの兵器を見る事ができるだろう。そしてもう一つ。】

【一番下に『〝P〟CARD』という少し浮いた項目がある、「おススメ!」とチカチカアイコンが光っている。】


>>211

【そして今度は反転するように女性へと身体を向ければ、其方へと歩いていく。】
【カニバディールに渡したタブレットとはまた別のタブレットが、いつしか右手に現れている。】

【相手の反応に口を尖らせてわざとらしく不貞腐れながらも歩みは止める様子はない。】

え〜なんでさ、いいじゃないか教えてくれたって。
秘密とは甘い果実だけど、それは喋ってこそ本当のうまみになると思うケドなぁ。

へぇ、〝未来〟か!未来がどうしたの?もしかしてお姉さんは〝未来人〟なのかな?

【恐らく相手の意図した意味とは別だろうが、未来と言う単語に何やらやたら食いついてくる。】
【どこか親近感を覚えたような、わくわくとしたような表情を浮かべながらさらに一歩一歩相手へと近づく。】

いやいやそんな〜ご婦人用の痴漢撃退催涙スプレーとかも一応扱ってはいるよ。
なんだかさっきから思わせぶりな発言があるけど、わざと誘ってるのかな?やっぱり女性はこわいねぇ

そんな風に言われているとむしろドンドン追求したくなってしまうよ、それが営業の性なんだよね〜。

【ケラケラと笑いながら、カニバディールと同様に手に持ったタブレットを相手に渡す。】
【カニバディールに渡されたものと同じく、一番下に『〝P〟CARD』と書かれた項目が目に付くかもしれない。】

【だがこの女性はかなり用心深い、わざわざここまで〝いかにも〟なものに触れる事はないかもしれなかった。】


//お二方すみませんめちゃくちゃ遅くなりました…


289 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/15(土) 10:48:33 EGD/fsIA0
>>248>>261


「 ―――――――――――――――――― 」


【カルラの精神を救いしめるものはそこにはもう何も無かった】
【全ての目を遮るしか無かったし、全ての耳を塞ぐことしかできなかった】
【そうしてもなお内側から蝕む悪夢と現の全てを呪うように金切り声を上げ続け】


【そうした中を、淡々と】


【ひとり、ふたり、さんにん、よにん――】


【狂気の引き金となった肉塊の怪物から、次々と子どもたちが吐き出されていく】
【みな早生した胎児のように何か異様な体液に塗れてはいたが、外傷は無く、】
【気を失っているのか、深く眠ったようにそこへ転げていた】

【外のどよめきも、すぐ側の狂声もまるで無いもののごとく】


【飲み込まれた子どもたちはそうして全て払い戻されてきたが】
【一番大きな個体――女、ミチカだけは出てこなかった】

【故にヤサカが、自身の身を大きく切開しようとした――その途端】

【――ぎち、と】
【触手に強い抵抗が加えられる】



 (――また、嘘をつくんですか)



【ヤサカの内側に声が響く】

【と同時に、まるで歯車を無理やり逆に回されたかのように、】
【彼の肉体の挙動が、何かまったく別の意思によって曲げられていくのを感じるだろう】



 (――この子たちはずっと信じてたのに)
 (なのに、また嘘をつき続けるんですか――)



【捻転】
【身体と刃の切っ先を】
【鈴音の背へ向けようとしていく】



 (――――嘘つきが勝つ世界でいいんですか?)



【透明な囁き声】
【その末端が微かに震えていたのは何かの誤謬か】


【反響する――】


【ヤサカの脳髄にまで浸るように】


【その微細な声の揺らぎが】
【神経回路さえ撫でゆき、包み込み】


【快楽の記号たる脳内物質を】
【緩やかに搾りだそうとしていく】


/↓


290 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/15(土) 10:51:38 EGD/fsIA0
(続>>289)

【侵入】
【融け合わせる】
【思念を交接させる】


(――わたしたちは嘘をつきませんよ)

(この子たちを裏切ったりしません)
(ちゃんと、しあわせにしますから――)


【連綿の言葉】
【その裏腹に】


【 死 】


【死の概念が瞬く】
【それも複数、群れとしての死。死。――死】

【女は死ぬつもりだ】

【今、ここで】
【身近にいる生命全てを抱いて】


【――ヤサカの脳裏に像を結ぶであろう、その虚ろな光景】
【あり得べき未来の断片】


【そして、その像自体は問いかけてもいた】

【それを望むか、と】


【 [はい/いいえ] 】



 (――わたしは知ってますよ)
 (あなたがとても優しいってこと)

 (だから、間違えて欲しくないんですよ――)


【無機な囁き声が内側の粘膜を撫でる】
【彼の肉の髄から麻薬液を搾ろうと、不可視の圧が甘やかに締め付ける】


【そして――見よ、と】
【未来を選ぶ方法は既に示されている――】


【:視覚】
【――入り口で市民らの応対をする鈴音の、細い背中】
【そして自身が握っている、体液塗れの刃の切っ先――】



【無言が導く】




【――やれ、と】



/↓


291 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/15(土) 10:52:23 EGD/fsIA0
(続>>290)


【そうすれば、悪者はひとりだけで済む】


【入り口でどよめく市民たちは、】
【保育士と子ども達が仲睦まじく中に入ってきたのを目撃している】
【そしてこの惨状。鈴音の説明が果たして彼ら全てを納得させるに足るだろうか――】


【女は“理解”させようとしていた】


【――『たんぽぽ』そのものの存続、UTの社会的基盤、そして子どもたちの命が】
【たった一人の悪役と――優しい神霊が流す血と痛みだけで、全て贖われるのだと】



 (――牢はひとつだけなんです)
 (それでみんなしあわせになれるんです――)



【虚無が語る】

【どうせ鈴音は包丁の一刺し程度では死にきらないだろうし】
【全てはこの異形の怪物に脅されていたことにすればいいではないか――】


【きっと上手くいくだろう――】
【――彼女は『嘘つき』なのだから】


(――“理解”できますか?)


【―― 一人が世界のために牢へ入ってもいいし】
【それとも、身近なところから世界の終わりを始めてもいい】


【全ては彼に委ねられた】


【:これが最後通告】





【ぐ……、と】
【包丁を大きく振りかぶるように力が加えられ――】


/流れ的に次はヤサカくん先の方がいいかもですが、お任せします。


292 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/15(土) 14:02:06 OQxJV9J20
>>287

……いや、いきなりキレられても困るんだが。情緒不安定かよ

【少女の叫びに反比例するように、男の反応は静かだった】

色々と叫んでもらったところ申し訳ねえが、俺ぁお前のことなんざ何にも知らねえよ
今日会っただけの赤の他人だし、そんなこと言われてもなぁ。八つ当たりされたってうぜえだけよ

【視線は凍りついていくタオルに向けられていた。しかしすぐに興味を失ったように視線が戻される】

よーするに、なんか上手くいかねえようわーんって話だろ?
そういう話はその大切な人とやらにしろよ、こんなわけわかんねえおっさんにしてねえでよぉ

【ベルトに固定してある魔道書を引き抜き、無造作にベッドに放り投げる】
【独りでに魔道書が開く。白紙のページ上で青く光り輝く点が線となり魔法陣を描く】
【そこから生物の頭部の下半分だけを模した、牙のみが並ぶ顎を持つ黄土色の飛行生物がいくつか飛び出し、それに続いて漆黒色の触手が姿を現す】

お前が言ってんのは、お前が勝手に決めた生き方的にお前の人生が上手くいってねえって文句だ
そんなもん、そりゃあ他人からすりゃどうでもいいだろ? お前の言ってるその生き方とやらが、そもそも理解できねえんだからな
その、なんだ? 役に立たなきゃ居場所がない、だっけ? その考え方をやめりゃ、それで済む話だからな。要は自業自得ってわけだ

【魔法陣から植物の蔦のようなものが伸びてくる。退屈そうな物言いで話しながら、「てめえじゃねえよ」と言ってその蔦を叩き戻す】

お前はお前の価値観の話を何一つとして俺にしてねえ
だってのに、お前の悩みのでかさだとか何だとかを理解しろって? 無茶苦茶いいやがる。だからガキだってんだよ
話すんならちゃんと説明しろよなぁ。何があったとか生い立ちとかよぉ。そうじゃねーと、他人様はお前のことなんざ分かっちゃくれねえぞ
この世界の連中が、泣いてりゃ助けてくれるやさしーやつだと思ってんなら、しょうがねえけどな?

【男が欠伸を噛み殺す。黄土色の飛行生物と触手の群れが、少女の周囲で蠢いていた】
【能力発動への自衛の意味もあった。が、この男は少女の怒りを前にしても、彼女を取り逃がすつもりがないようだった】


293 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/15(土) 14:15:27 6.kk0qdE0
>>271

ーーこ、今度は何だ!?
ーー敵、敵だ!侵入者!!侵入者!!
ーーコイツの仕業か……止めろ!!何としても!!
ーーぎゃああああッ!!
ーーち、近づけ無い……ッ
ーーこ、の……
ーーひぃぃッ!?お助けを、おたす……

【飛び出した通路は、地獄の惨状であったが、さらに追い討ちをかけられた】
【死体や肉体の一部を踏みつけながら、奇抜な銃器を両手で持ち、一人で弾幕を形成、進撃するアリアはまさに海兵達には鬼神か羅刹に見えて】
【ある者は仲間の死体を盾に、迎撃の射撃を試みるも弾幕に倒れ、また運良く近づけた者はチェーンソーに膾切りにされ、またある者は命乞いしながら逃げるも、背中から切り裂かれ】
【進むたびに、夥しい返り血と阿鼻叫喚が巻き起こる】
【それでもまだ、アリアを止めんと僅かながら発砲し、応戦する者もいるが、狙いなぞ付けようもなく、また勇敢で無謀な彼らが弾幕かチェーンソーかに命を落とすのも時間の問題だろう】
【そしてもう一方では】

「此処ですか?」
「中尉達のいる所では、ないのだよ?」

【ミレーユ達が辿り着いたのは、他2名が幽閉されている船室の直上】
【不思議そうな表情で、付いてきた2人はミレーユを見るも】

「発破!?そんな無茶な!?」
「駆逐艦とはいえ軍艦なのだよ!まさか、え!?」

【手早く爆破機材を設置するミレーユ、右手のスイッチを押すのに、迷いは無く】
【直後、爆音と共に床が崩落するだろう】

ーー艦長公室前

【幾多の命を屠り、多量の血を浴びて、それでも尚、その前にたどり着いた】
【アリアはミレーユの爆破と時を同じくして中へと雪崩れ込むだろう】
【公室へと入るなら、其処には2人の男の姿を見る筈だ】

「な、何者だ!?て、テロリストか!?」

【でっぷりとした中年男性、海軍士官制服である、紺色の詰襟、少佐の階級章と豪奢な勲章、モールは、彼がこの艦の責任者、艦長である事を示して】
【だが、もう1人】
【艦長が自ら紅茶を給仕する相手、適度に装飾の施された艦長公室において、ゲスト用であろうか、より豪奢な椅子に座り、脚を組み指を組む落ち着き払った男性】

「富永少佐、面白いゲストだが、これは新しい余興か?」
「い、いえ、け、決してその様な……えぇい!見張りの海兵は!?曹兵達は何をしている!?」

【艦長の顔色は先程から青くなったり赤くなったりと忙しく、護身用の拳銃を片手にアリアに叫んで】
【そして、もう1人の男、会見の放送を見ていれば知っている顔だろう】
【艦長より幾分も豪奢な勲章と太いモールの白い詰襟、制帽を深めに被り、面白い物を見るようにアリアを見据え、口元で笑う姿】

「この国の、何処かの機関の所属と言った所か、つまらぬ猪か、或いは能力者か、面白い」

【魔導海軍連合艦隊指令長官、蘆屋道賢その人である】


ーー1F兵員室

「な、何事よ!?え!?騒がしくなったと思ったら今度は、天井が崩れたわよ!!意味解んない!!」
「少尉、落ち着け、どうやら……」

【那須曹長の部屋とは、当然だが打って変わり海兵の居ない兵員室】
【室内には2人だけ、裸の上半身に汚れた制服を肩掛けした姿でベッドに座る男性と】
【上半身にはタンクトップ様の肌着のみの、髪の長い、女性様の男性】
【どちらも、顔に、身体に、殴打の跡や傷が生々しく、髭も暫くは剃っていない】
【だが、顔から判別は付くだろうーー】

「助けの様だ、賀茂少尉」

【厳島命中尉、賀茂宗司少尉、捕縛者2名の姿だ】

「え?助け?あんたら、知り合いなの?」
「その姿、装備は、アーディンでは無いな……なるほど、外務八課が動いているのか?」

【ゆっくり、青痣と乾いた血の付いた顔を上げてミレーユを見て、そして、翔子と万里子も見て】

「曹長と少佐も救出してくれたのか……すまない、手を掛けさせた、礼を言おう、2人も久しいな……」
「ち、中尉……その……」
「中尉、今は、曹長を見ないであげて、欲しいのだよ……」

【ミレーユに着せられた制服をぎゅっと掴んで強張り、ミレーユの後ろに隠れようとする翔子】


294 : イル ◆zO7JlnSovk :2018/12/15(土) 14:53:01 arusqhls0
>>173

【児戯は手慰み、弄ぶ指先の変遷と変換と、変容と変質、──── されど闇、彼の病みに付き纏うは然】
【逆説的な安全を保証するのだろう、不可逆の理論が帰結して、少しだけ見せるのは愛らしい瞳の残照】
【貴女が紡ぐのは真実であった、──── 少なくとも今この世界が存続するのは、貴女がそう望んではいないから】

【透かす吐月、混じる呼気の白亜、煙る鼓動は微睡みに似て、──── 欠片ばかりの呟きを重ねたら】
【真っ直ぐに瞳を重ねた、二つ分かれた月がその在処を取り戻すように、その住処をまた戻す様に】
【振り絞るみたいに、降りしきるみたいに、振り返るみたいに、──── 彼女は一つまた一つ、言葉を落とす】


──── だからね、ボク達が "ふつう" になれば良いんだよ、鈴ちゃんなら、分かってくれるでしょ?
ふつうじゃない事が罪だった、ふつうになれない事が罰だった、そんな道理が消えてしまったら
そんな道理さえ無くなってしまったら、ボク達が普通になれるんだ、──── でね、それは、それは




              【  "どんなに幸せな事だろう"  】




【指先が伸びる、──── 向かう先は貴女の黒、網膜に触れて、瞳孔を貫き、水晶を穢すみたいに、──── 挙句】
【黒色の水面に浮かべる漣、あと少しでも突き刺したなら決壊する、それでもボクはきっと、後悔しない、けど】
【瞳をなぞる、柔らかな果実の表面を推すみたいに、指の腹でちょっとだけ触れてみた】



置いてかないよ、置いてけないよ、ボクも君も、この世界から外れた、お尋ね者なんだから
寄り添って生きていこう、──── ボクは何処へだって、君を連れていくんだ




──── 最後の最期のその一瞬まで、ボクと一緒に居て欲しい




【不揃いの瞳を潰したなら、貴女は普通になれるのかしら、死に損ないの黒を殺めたら、結末は幸せに】
【そうなれると信じたかった、そうなれると信じていたかった、──── けれども事実はそうでなく、真実は時として残酷に】
【絶えきれずに両の手が伸びる、貴女の華奢な身体を抱きしめて、そしてそのまま、一つ重なる様に】

【掌の作用に似ている、重ねたらぴったりと合う、演舞に似ていた、雅楽に合わせて二人舞う、白無垢包む二つ分の無碍】
【蝶が羽ばたくその一瞬を、線対称に折り重なる思いの果てが、──── そうあれかしと、望むが如く】


295 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/12/15(土) 15:06:43 arusqhls0
>>202

【そっと横髪を抑えた、物憂げに彩る睫毛の風情は朧、直ぐ側に居るにも関わらず、ホログラムよりも儚くその一瞬を描く】
【無風の室内に吹き抜けた一陣、そう錯覚するほどに、洗練された髪を抑える仕草は、切り取られた絵画の一枚に似て】
【艶やかな口元に僅かな色彩を落とす、胸一杯の赤と、もう一杯の紅とを加えて、──── しずりと瀟洒な微笑みを尽くす】


──── 成程、その本質が幾ら小さくとも、使い方次第で如何様にも花開くという訳ですね
或いは、イル本来が持っている能力とは、それ相応に強力であったとも考えられますわ、──── そう
それはまるで、赤子が己の力を自覚していないように、自覚できていない様に

イル=ナイトウィッシュは力の使い方を知らなかった、いえ、今も十分には使いこなせてはいないのかもしれませんわ
スナークが持つ神性も同様に、それは正しく誤って扱ったならば、容易に大災害を引き起こす程に
貴方様の仰る様に、 "固執" とは "信仰" であり、──── "盲目的" とさえ、言えるのですから


【彼女はそっと自分を抱いた、霧で描かれた白昼夢の様に、視線を向けただけでも消えてしまいそうな程に、繊細に】
【それでかつ筆致は大胆に、書道家の技に近い、時間が止まったかの様な静謐から、爆発するような勢いで描く】
【世界という半紙へと、描く帰結は何処までも鮮やかで、其れで居て何処までも淡く、──── 】


──── 私達が "虚神" を追うのはどうしてでしょうか、彼の者達は、放っておけば世界を滅ぼすかもしれない存在ですわ
けれども逆説的に言えば、放っておけば、そう、誰も認識しなければ、──── 自重で潰れる計画の如く、潰えてしまう
白痴は煩わしいでしょう、けれども、白痴にもまた、相応の世界があり、相応の深淵があるのですわ

私達が彼らを認識し、彼らを敵対視し、彼らを追うのもまた、固執させられているのかもしれませんわ
これらのインシデントの発覚が、 "スナーク狩り" に始まったかの、様に


296 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/12/15(土) 15:32:04 arusqhls0
>>217-218

【彼女は深窓に微笑む、神妙に佇む、信仰に微睡む、──── 聖女の様な慈しみを、頬の側に映したまま】
【ドラの推察は正しいのだろうか、少なくともその動きは、知らぬ存ぜぬでは合わない様な、──── そう、合わない】
【道理が合わないとは此方の言葉だろう、──── 互いの関係性は、初対面であるのに】


あら、それはまるで、私のかつての姿を存じ上げておられる様な物言いですわ、おあいにく様ですが
私は貴方様の様に、大胆な殿方に誘われるのは初めてですの、ええ、私の様な箱入り娘には
とてもとても刺激が強く、飲み込むのにとうとばかり、時間が必要になりますわ

ふふ、大丈夫ですわ、貴方様の力量ならば十分、把握しておりますもの、──── ええ
貴方様とお会いした時から、貴方様の身に起きた催しを、私は子細構わず把握してしまったのですから


【と落ち着いた雰囲気で滔々と述べていたのだが、こつん、とぬいぐるみがテーブルに置かれたなら】


──── まぁ! こ、これは『子リスちゃんと子ジカちゃん』のメインキャラクター!!
 ハングリー・モンスター
<されど悲しき我が欲望> バンビちゃんのぬいぐるみじゃないですか!! 凄いです!! 何処で手に入れたんですか!?

この愛らしい瞳に似合わない暴食っぷり! 15分の放映中14分は何かを食べているというフリーダムな姿!
それでいて咎められるととって付けたような可愛らしいスマイル! もうこんのこ可愛くて大好きなんですよね!


【何かが崩れる、──── ぐらいの勢いで矢継ぎ早に紡がれる、不可思議なアニメの全容】
【彼女は、と言えば人が変わったかのように狂喜乱舞し、取り出されたぬいぐるみをぎゅーっと抱きしめて】
【──── 少ししてはっ、と気付いた様にドラへと視線を向けた、こほんと咳をして、取り繕う】

【だがぬいぐるみは抱きかかえたままだ、じとーっと向ける、返しませんよ、の視線】




【続く言葉は大まじめであった、ドラの言葉は微かな意外さをもって、彼女に伝わる、──── けれども】
【彼女はまた知っている、剽軽な言葉や、とぼけた調子は彼の一面に過ぎず、その表層の下にあるのは】
【何処までも真っ直ぐな、──── 一つの熱い魂であることを】



──── 私の荷が重すぎるのでしたら、それを共に支えてくれる仲間を求めましょう
例えそれが苦難の道であろうと、苦渋の道であろうと、苦悶の道であろうと、──── 誰かがしなければなりませんわ
その為ならば私は進んで苦を選びましょう、永劫の時の中で、せめて私以外の時間を幸福に進める為にも




──── 大丈夫ですわ、先程も言ったように、私にはそれを共に支えてくれる仲間がいるのですから


297 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/15(土) 16:17:06 6.kk0qdE0

ーー某日、水国繁華街エリア、ワンルームマンション


【薄曇りの日であった】
【びょう、びょうとこの季節特有の風が周囲の建造物に冷たい音を鳴らし】
【其れは例外なく、この今や無人のマンションにも吹き荒び】
【かつて、いや、今より少し前は此処は櫻国海軍諜報員達の居住拠点となって居た】
【今や無人となって居るのは、数日前にこの国で放送された、会見映像を見たものならば理解出来るかもしれない】
【櫻国魔導海軍、連合艦隊指令長官、蘆屋道賢海軍大将からの発表、曰く、この国に潜入した諜報員達は脱走兵でありこの国の治安を脅かすテロリスト達と結び、悪事を画策していた、と】
【それをこの度海軍は発見し、4名の身柄を拘束した、と】
【最後に魔能制限法を賛美し、櫻と水両国の恒久の友好を謳う内容で締めくくられた発表は、国営放送より流され、多くの者が目にしただろう】


【こんな場所に用がある者は、果たしてどの筋の、どう言った要件の者だろうか?】
【この場所はただ、人の気配無く、そして居住者達の痕跡を随所に残したまま、佇むだけだ】


//ディミーア中さんご予約です、よろしくお願いします


298 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/15(土) 16:48:11 OQxJV9J20
>>297

【無人の一室に足を踏み入れる人影があった。その影はローブを羽織り、フードで顔を念入りに隠していた】
【フードの隙間から見えるのは暗赤色の髪と狩人のように鋭い薄灰色の双眸。背中には柄に簡素な装飾の施された大剣】
【口元を覆う布地を手が引きおろす。部屋に誰もいないことを理解して、小さな嘆息を漏らした】

──流石に、ここにはいないか
あんな発表をされた後じゃ、既存の隠れ家を使うのは難しいな

【男は情報を聞きつけて戦友たる彼らを探しにきていた】
【表立った活動を控えて長期間が過ぎてしまったせいで、男には細かな状況が把握しきれずにいた】
【それでも、自らが語り共に戦った彼らが世界に仇なす存在だとは、微塵も考えていなかった】

さて、どうするか
何かメッセージでも残っていればいいが、そんな余裕があったかどうか……

【部屋の中へと一歩ずつ、慎重に進んでいく】


299 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/15(土) 17:06:09 6.kk0qdE0
>>298

「何をしているのですか?」

【寒風は未だ吹き付け、無人の室内の窓を差別なくガタガタと揺らし】
【剣士が立ち入った室内、周囲を見渡すも、内部は既に『何者』か、にガサ入れされたかの様に荒れ果てて、そして見渡す限り、書類、端末、通信機器等目ぼしい物は何も見当たらないだろう】
【或いは、何者かに回収されたのか】
【そんな慎重に足を踏み入れる男性の背後より、唐突に声が掛けられる】
【女性の声だ、まだ若い】

「管理会社の者です、このマンションは老朽化により閉鎖、取り壊しが確定しております、速やかに退去して下さい」

【剣士が振り返れば、そこに居るのは、古めかしいデザインの、小さなグレーの男性用スーツ、ブラウンのコートを着た女性5名だ】
【全員一様に高山帽を目深に被り、目元が隠されている】
【剣士からすれば、気配無くワンルームマンションの玄関に出現したかの様に感じるだろう】
【そして妙に抑揚ない声で、尚も剣士に語りかける】

「このマンションは老朽化により取り壊しが決定しております、速やかにご退去下さい」

【まだ真新しい、荒れたワンルームマンションで、先頭の1人を除き、他の4人は後ろに控え黙したまま】
【剣士、ディミーア=エルドワルと対峙する状況となって居る】


300 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/15(土) 17:17:21 OQxJV9J20
>>299

【背後からの声にディミーアはゆっくりと振り返った】
【剣士の鋭い視線が現れた人間たちを順番に確認する】
【手が腰に回され、引き抜かれる。指が掴んでいたのは自警団であることを示す身分証明書だった】

……自警団のものだ
この部屋が荒らされたという匿名の情報があって、調査にきた
立ち会うのはいいが、部屋の中には入らないでもらおうか

【抑揚のない声で、ディミーアは平然と嘘をついた】
【視線は最前列にいる女に向けられていた。妙な動きを見せれば即座に抜剣するつもりだった】


301 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/15(土) 17:29:58 6.kk0qdE0
>>300

「……」

【女達は、ディミーアの動きに動じる事も、或いは不自然極まる話だが、微動だにせずに突き出される自警団身分証と、そして明かされる名前を聞いた】

「そうですか……」

【ディミーアの警戒と、若しくは殺意すら帯びているのかも知れない視線すら、感じ取っているか居ないのか】
【人間味を丸ごと消し去ったかの様な、そんな口調と声で呟いて答え】
【そして……】

「では……」










ーー死んでくださいーー







【一斉にコートを脱ぎ捨てる女性達】
【そして次の瞬間には、古めかしいスーツは姿を変え、カーキ色の水兵服、魔導海軍陸戦隊制服へと其の姿を変えていた】
【先頭の女性以外は、全員着剣した短機関銃を手にし】

「問答無用です」

【言葉を合図に、4人は短機関銃の安全装置を外す、あと僅かで、引き金に指が掛かるだろう】


302 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/15(土) 17:43:16 OQxJV9J20
>>301

──安全装置ぐらい事前に外しておけ、間抜けどもめ

【言葉と同時に自警団手帳を手放す。右手が跳ね上がり、大剣の柄を掴み抜剣】
【引き金に指がかかるより先に、神速の動きで剣士が前進する。狙いはまず先頭の一人、ではなく、初手から全員だった】
【速度を緩めることなく、そのまま女に肩から激突させる体当たりを繰り出す】
【ぶつかれば、人間とは思えないほどの重量による衝撃が入る。そしてそのまま前進を続け、大剣によるなぎ払いで後ろの四人ごと切断しようとするだろう】


303 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/15(土) 18:18:27 B18Us/Hc0
>>302

「……」

【先ず先撃、先に打って出たのはディミーアだった】
【その背負った大剣を引き抜き、先頭の1人に斬りかかる、と見せかけてのタックルだ】
【剣士は剣士であって剣客では無い、戦い方もそれが故に相手の意表を突くものが多いのだろうか】

「……ッ」

【文字通り、吹き飛ばされ、仲間2人を巻き込み背後の壁に叩きつられる】

「伍長、来ます」
「能力戦闘用意、確実に仕留める」

【次の手は斬撃、その一撃は先ず手前1人を真横に叩き斬った所で止まることとなるだろう】
【ズルリと、手前1人が真二つに切り分けられ身体が崩れ落ちる、そしてその大剣の刃は】

「……」

【もう1人、手を翳す別の女性海兵の能力】
【2つの浮遊する光の盾、これが其々に刃を受け止め鍔迫り合いをしている】
【腐っても魔導海軍、櫻国の能力者の巣窟と言った所以か】

「……!」

【その間に持ち直した先程の先頭の1人、そしてタックルに巻き込まれた他2人が、拳銃一丁と短機関銃二丁を、構え直し、ディミーアへと放つ】
【ごく小規模な弾幕が、ディミーアへと襲い来る】

「間抜けは、貴方です」


304 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/15(土) 18:37:45 y6r.Ncys0
>>303

【剣撃を防がれても剣士は眉一つ動かさなかった】

お抱えの能力者というわけか
これは殺しがいがあるな……!

【獰猛な笑みが浮かび跳躍。弾丸が剣士の真下の空間を薙いでいく】
【魔力の燐光が輝く。魔術が発動して大剣の質量が増大。空中で縦回転しつつ、盾の能力者へと急降下しつつ大剣を振り下ろし落雷の如き剣撃が迫る】
【それは質量が増幅されたことにより重力が加算されて見た目よりも遥かに強力な一撃と化していた】


305 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/15(土) 19:18:25 B18Us/Hc0
>>304

「お抱え?違います」

【己の剣戟が防がれたと言うに、全く同様の色すら見せない剣士】
【その筈だ、この程度の戦い、この男は幾らでも潜り抜けて来たのだから】

「我々は、櫻国魔導海軍、正義を正当に執行する能力者なのですから」

【魔力で増大された大剣が、頭上から迫る】

「ーーッ……先に逝きます」

【正に閃光、正に落雷】
【脳天から一閃、骨を身体をカチ割り、髄液を血潮を周囲にブチまけて、女性海兵は2つに倒れ伏して】

「貴様、厳島とか言うテロリストの仲間か?」
「構うな、殺せ、それだけだ」

【手は緩まない、緩むことはあり得ない】
【次発、ディミーアね立つ場所に向けて、光が飛来する】
【正確に言えば、光で構成された無数の刃が飛来して来るだろう、それはマシンガンの様に次々と数多く】
【そしてもう1人は、何かの武術の様な構えを見せ、そして構えた手、指先から纏まった魔力を放出する】
【それは龍の形を取り、顎を開きディミーアを追尾し食らわんと迫る】

「能力名を龍牙ーードラゴンファングーー、テロリストよ、早急に死ね」


306 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/15(土) 19:43:16 OQxJV9J20
>>305

テロリスト、か……くくっ

【不敵な笑みを浮かべるディミーアへと光刃の嵐】
【大剣が翻り、超重量の長大な刃が高速上昇。光刃を弾き飛ばす】
【さらに大剣が宙を踊り重量と慣性を無視したような動きで無数の刃を次々に叩き落としていく】

【しかしそれでもいくつかはディミーアの肩を、腕を、脚を、脇腹を掠め鮮血が舞う】
【その中にあって剣士は笑みを浮かべ続けていた】

そうだな、何かと大衆の正義とは違うことばかりをする羽目になっているな
カンナにしたってそうだ。それに加えて厳島ともそうすることになるとはな

──楽しくなってきたじゃねえか

【迫り来る巨龍の突進に対してディミーアが正眼の構えをとる】

おぉおおおおおおおおお!!

【裂帛の気合と共に繰り出された大剣による一閃が、龍状の魔力を一直線に切断】
【即座に剣士が床を踏み割り突進。大剣の間合いに入る直前に急停止。切っ先が床に叩きつけら、轟音】
【一瞬で足元の全てに亀裂が入り、崩壊。床が崩落する中を、瓦礫を踏みつけてディミーアが跳躍する】

まともな戦いなどするとでも思ったかっ!!

【龍牙を放つ女の胴体へと、鋼鉄の刃による一撃が向かう】


307 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/15(土) 19:58:43 E1nVzEpQ0
>>281

【真摯な色合いにくすむ赤色を、 ─── 然してそれ以上アリアは問い詰めなかった。その返答は淵源の奥に落とす一握の砂にも似ていた】
【決して好い機嫌だとは思わせぬように、白い指先が淡々と銀器を操っていた。乳白とメイプルに染った生地を言葉なく切り分けて、口に運ぶ】
【そうして結び直された唇の昏い奥で、いっそ耽美であるような咀嚼が繰り返されるのだろう。 ─── 空寒い街灯に照らされ、色彩の暈ける青白い喉筋に、尚も色味を残す内出血。】


「 ─── そう。」「まあ、良いのだけれど。」
「 …………… あの子は、とても寂しがりだから。」「親しくしてくれるのは、嬉しいわ。」


【やおらアリアは口を開いた。 ─── 伏し目がちに煌めく、深遠な青を宿した隻眼が、幽かに笑っていた。緩む口端に残ったシロップを、垣間見させる紅色の舌先が、一刹那に舐め取る】
【深く吐き出されるのは、詠嘆の呼吸。ごく甘美な香りをしていた。情愛に溺れるキスの味わいを誰よりも知っているのだと錯覚させるような、薔薇と華尼拉(ばにら)の芳醇さ。】
【或いはどこまでも悠然とさえしていた。己れの籠絡から愛しい人が逃れられる筈もないし、事実として幾度となくそうしてきた。そんな傲慢で、絶えない嗜虐さえ宿すような、然し確かな信頼】
【では返される言葉が皮肉の類である道理もなかった。 ─── 純粋に友人であることを、感謝してもいるのだろう。想い人はスキンシップと不潔さを判じ違える節もあった。ともあれ】
【張り詰めた大気の緩和を象徴するのに似て、テーブルの縁に預けられた胸房が、机上へと釐かに垂れて広がった。 ─── 悩むような右手が、ティーカップへと伸びて、一口を啜る。】


「けれど本題はそれではない。」「幾ら私でも、これだけの要件で貴女を呼び出しはしないの。」
「聞いているわ。 ─── 我々、 ……… いや、私たち、と言った方がいいかしら。手を貸したいのだと、聞いているけれど」


【「貴女が素面に嘘を吐けるとも思っていないし、ね。」 ─── 一寸ほどだけ頤を上げて、アリアはエーリカを見つめるのだろう。その眦は、ともすれば愉しげな緩みさえ宿していた】
【然してやはり底の知れぬ昏い青の隻眼には如何様な情念が籠っているのか判然としなかった。鎌をかけるブラフであることを疑ってもよかった。それでも】
【この女は存外に信義へ悖ることを嫌うという性分を知っていれば、言葉の迂闊さを避ける判断の一助となるのかもしれない。 ─── たっぷりとシロップに浸された一切れが、また呑まれる】


308 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/15(土) 20:47:38 6IlD6zzI0
>>307

「………、何だよ。愛しいかえでを誑かした事にお冠だから呼び出した訳じゃないのかよ。
 まぁ私自身誑かした心算も無いし不貞を働いた覚えも無いんで。そんな感謝の言葉を聴く事になると思わなかった」

【不貞に対する咎めでは無く。弁明に対する追及でも無く。耳朶を揺らす言葉は柔らかな感謝の言葉】
【銀色の狼が見せた幽かな笑みは雪解けに似て、エーリカの警戒心を和らげたから釣られて微笑を浮かべた】
【同時に胸中はざわめく。擽る様な甘い香りに絡む艶美はどんなリキュールよりも自身を酔わせる錯覚を抱いたから】
【それを気取られない様に再びコーヒーカップに手を伸ばして、無理に啜るものだから咽てしまった】


「……っ!けほっ、けほっ!!あっつッ!!」
(アリアめ、氷の様な女だと思ったらそんな艶めかしい顔するなんてさ、卑怯すぎんだろ。
 ………それにさ、その甘い香りは何だよっ。オトナの余裕って奴かよ、……やっばい、参りましたって奴だ)

【大人と子供の構図―――間違いなくアリアの手のひらで踊らされている】

【――――】


「――――……やっぱり"ソッチ"が本題か。勘違いから展開される痴話話が本題な訳が無いよな。
 かえでから聞いてるなら話は早い。その通りだよ。公安五課から離れてアンタ達の組織に加わりたい。
 ……"公安五課"、いいや"黒幕"はこの世界を終わらせようとしている。……私はそんなのに加担できない」

「―――……アンタとかえでの関係と同じでさ。私にも愛を謳って共に生きたいと願う人が居るから。
 "世界を終わらせる"なんてのは都合が悪いし許容できないんだ。……我ながら甘い事を言ってるって自覚はある」

(……かえでの幸せを壊す真似なんてしたくない。アリアに刃を向けるのも、二人の幸せを引き裂く真似もしたくないから)

【アリアが最期に添えた言葉は正しい。エーリカは腹芸の出来る性質では無い。感情や思惑が顔に出るタイプの人間で】
【だからこそ言葉と一緒に向けられる眼差しは一点の曇り無く、依然として真直ぐを向いていた】
【言葉にする本音に隠すのは言葉にしない本音。けれど両方共にエーリカの本心。真剣一途な表情がそれを裏付ける】


309 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/15(土) 20:55:43 E1nVzEpQ0
>>293



「 ─── ふうん。」「望外の捕物、ね。」


【なれば彼らの元へ現れる黒衣の姿は、確かに相違なく悪鬼羅刹に等しいのだろう。生暖かい屍肉と返り血に、その全身を染め上げられ】
【両の腕に携えた鎖鋸のような2ツの機銃には赤黒く臓物が絡み付き、尚も血に飢えたような機関の唸りを上げる。】
【 ─── ナイトビジョンとフルフェイスに顔を覆い、見上げるような魁偉をもって立ち尽くすその影は、隠しようもない殺意の顕現であった。】
【紡がれる酷薄な声音は際限なく透き通って、それでいて女のものであるのかも疑わしかった。何故ならば余りに不似合いであろう】


    「テロリストと呼ばわるに相応しいのは貴方たちでしょう。」「 ……… 悪いけれど、遊んでいる暇はないの」
       「綽々であるようだけど、洗いざらい吐いてもらうわ。」「 ─── 乗員は殺してきた。この船も何れ沈む。貴方たちを逃がすつもりも、毛頭ない。」


【擡げた二ツの機銃。銃爪を引く。 ─── 銃声の数発。向けられた拳銃だけを射抜いて、使い物にならぬように吹き飛ばそうとするのだろう。】
【そのままに綴られる一瞬の弾幕にて、両者の脚だけを射抜こうとする。逃走を防ごうとしていた。それが肝要であった】
【これこそ想定外の事案であった。ここが魔導海軍の本拠であるとしても、よもや策謀の糸を引く首魁の一人と出会えるとは】
【なればこそ女の警戒も並ではなかった。 ─── 彼らは幻術の類を操るのだとも、彼女は聞いていた。そうでなくとも】
【眼前の対手が影武者でない保証など何処にもありはしない。それでいて事態に残された時間は多くなかったのだから。】


「 ───………… Clear.」「話が早くて助かるよ。待たせたね、お二人とも。」


【一方、兵室。掃討射撃の必要もなければ、ミレーユは銃を下ろす。回収すべき2人の姿を認めて、安堵の呼吸。】
【徐に取り出したコンバット・ナイフで、拘束を解いてやるのだろう。"片方"の男と視線が合えば、 ─── 幾らか複雑そうな表情をするものの、それは今は些事であり】
【「動けるかな。」携行していた一体消音式ライフル ─── アリアの置いていったもの ─── を、それぞれ2人に手渡す。そうして、】


  「 ───…………… 。」「 ……… もう、大丈夫だ。」
   「早く離脱しよう。じきにここも吹っ飛ぶ。 ─── 積もる話は、それからだ。」


【翔子と真里子の手を、 ─── それぞれの掌に取って、柔らかく握り返す。振り向く事はなく、遣る瀬ない情念に悲しく声を低めて、それでも宥めるように、ミレーユは語るのだろう。】
【叶うならば甘い慰めを2人へ注いでやることへ、彼女たちにも異存はないに違わなかった。然して今、それを決めるかどうかに時間は足らなかったが為に】
【碧眼だけを晒した目出し帽に、然して決然たる意志を示しながら、4人へと目配せをするのだろう。 ─── ならば彼女たちは駆け出すに違いない。夜明けを迎え始めた甲板へと】


310 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/15(土) 21:21:36 E1nVzEpQ0
>>308


【噎せ返るエーリカの仕草に、 ─── どこか腑に落ちぬように、アリアは目を丸くしていた。然して、数秒の沈黙を経て】
【くすりと愉しげに噴き出すのであるから彼女もまた確信的であろう。無邪気な笑い方だった。ここが喫茶店でなければ黄色い哄笑すら奏でていたに違いなかった。】
【 ─── 然らば、アリアという女の一面も悟らせるのかもしれない。傲岸と冷酷だけを己れの規範として、どこまでも内省だけを宿して生きるような人間では、彼女は決して有り得なかった。】



【それでも、 ─── 改めて示された、少女の告解には。彼女は再び唇を噤んで、尠からぬ沈黙を数えていた。】
【パンケーキを切り分けるナイフの動きは止まっていた。シロップとクリームと混ざって、生地の縁から滴る蕩けたバター。白皿の端で胡乱げに渦巻いて、飴色の虹を宿し煌めく。吐気の、一拍】


        「 ─────………………… 。」


【アリアは目を瞑った。淡い赤味を帯びた瞼が落ちて、なにか言葉にならぬものを暗闇の中に探させていた。続く幾度目かの嘆息は、短い。】
【対手の決意に籠められた情念を、相違なく辿るような所作であった。 ─── 37秒と客観的に叙述するには、余りに長い静寂。】
【終えれば漸く睫毛が揺れて、決された眦が開かれるのだろう。呼気の、一刹那。選び終えた言葉に指を這わせるように、彼女は語り始める。】


     「その選択が、何を意味しているのか」「 ─── エーリカ。貴女は、理解しているのね?」


【なればその眼光は、エーリカの知るどのような彼女よりも真摯であった。 ─── 嘲笑ではない。説法ではない。懇願ではない。ただ、確かめていた。厳然たる声音に、相違なく。】
【馬鹿げた決意だと一笑に付すことはなかった。一時の衝動に流された結果だと一蹴する選択肢もあった。だが女はそうしなかった。そうするべきではないと知っていた。】
【それだけの感情に始末を付けられるのは畢竟、宿した本人だけであろう。 ─── ならば女は、躊躇いない首肯を返せるかどうか、改めて問いただすだけだった。】
【初めてアリアは彼女の名前を呼んだのかもしれない。我が子を諭す母のような音階だった。何より敬意を払っていた。己れの信義を貫く人間を、誰であろうと彼女は軽んじない。】


311 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/15(土) 22:33:12 Ps8W865U0
>>310

【永遠よりも永い沈黙。アリアが重い口を開くまでに要した37秒は何の為か】
【糾弾か、嘲笑か。何れにせよ快い返事では無い事は確か。頭が良いとは言えない自身でさえ】
【口にした言葉の重みを理解している。ましてや眼前の聡明な銀狼がそれを理解しない筈がない】


――――……………


【沈黙に身を委ねた時間は客観的に見ればとても短い。けれど、当事者はその限りではない】
【沈黙の時間の間、青色の隻眼は閉じられていたから―――瞼が開く時に、沈黙が破られる】


……………、あぁ理解しているさ。頭の悪い私でもその意味は重々理解してる。
首輪付きの犬が縛鎖を引きちぎって飼い主に噛み付く事に他ならない。

――― 簡単に言ってしまえば裏切りだよ。この世界を終わらせる選択を取った公安五課と黒幕に対する裏切り。
嘗ての私なら世界を終わらせるのも是としてたよ。公安五課の犬として世界を終わらせる先兵に成ってただろうね。
黒幕の望む結末を切り開くための刃として何の躊躇いもなく凶刃を振るってただろう。

この世はこともなし。所詮この世は死で満ちて、平和とやらは欺瞞と嘘で塗り固められた虚像でしか無いって斜に構えてた。
あんたたちが紡ぐ愛も、カチューシャが謳いたがってた愛も。そんな綺麗事は絵空事なんだって蔑んでただろうね。

けど、違った。カチューシャの事を本気で好きになって解ったんだ。かえでやアリアが紡ぐ愛を垣間見て気づいたんだ。
平和は兎も角、愛は絵空事なんかじゃないっ。自分自身があの子と一緒に愛を謳いたいって願ってしまったなら。
アリアとかえでの謳う愛も聞いていたいって思っちゃったなら―――もう、この世界を壊す手伝いなんて出来はしないんだ。


【カチューシャに想いを寄せる事が無かったなら。かえでの苦しみに触れて同情し支えになりたいと思わなかったなら】
【昔日のBARでアリアと感情むき出しの口論に興じることが無かったなら、機械的に人を殺すだけの捨て石でしかなかった】
【けれど、最早エーリカは国家のための捨て石と呼ぶには不適格だった。捨て石は愛を謳わない。他者を思い遣らない】
【故に世界を終わらせる選択をとる事は出来なかった。だからこそ、裏切りの言葉を口にしたのだった】


312 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/15(土) 23:27:43 E1nVzEpQ0
>>311

【滾滾と語られる返答であった。 ─── 生半な頷きを寄越すこともなく、アリアはただ、エーリカの決意を傾聴していた。】
【その内心の全てを語り明かすような吐露であった。それだけを口にする事が出来るのならば、女にとっては十分に過ぎた。】
【噤んでいた唇を繙くように解いて、胸前に指を組むのだろう。厳然たる意志と呼ぶには、どこか深過ぎる感傷を帯びて、憂う隻眼が瞬く。】


 「 ……… そう。」


【応じる言葉は短かった。なればこそ溺れるような密度を宿していた。遠い街並みから夜にぼやけたクラクションが響いていた。】
【一拍を置いて、またアリアは唇を緩める。なにかを己れに諒解させるような沈黙だった。飲み込む呼吸に、幽かに肩が震えて、長い長い銀髪が天河のように煌ついた。】



 「 ─── それなら、私から貴女を止められる理由は、何もないわ。」



【 ──── それがアリアの答えであった。畢竟、彼女にとってエーリカの語った選択の内実は、決して肝要ではなかった。】
【どういう決意であるにせよ、それを躊躇わず選び取り、今もなお憚らぬことが大切だった。ましてそれが裏切りを意味するならば、尚の事。】
【淀みなくエーリカが言葉を紡げた時点で必要なものは全て満たされていた。 ─── それでも、やはり、彼女もまた人間であるのだから】
【己れと愛しい人が織り成す、消せない熱と情念を、慈しんだのだと聞けば。その碧眼を、涙の一雫ほど潤ませながら、冷たく結ばれた唇の端を緩ませる。穏やかな笑顔だった。】


  「私たちに手を貸すがいい、エーリカ。」「 ─── 我々は、同胞の動機を問わない。」
   「Age quod agis. ……… 貴女が我々と共に在るならば、それだけで十分よ。」


【そうして女は結論付けるのだろう。 ─── 少しだけ首を傾げながら、エーリカに微笑みかけていた。長く肩口に垂らされた銀紗の髪が、冷たい大気へ揺蕩うように揺れた。】
【やはりそれは彼女が余り見せぬ類の笑顔なのだろう。同時にそれは彼女の本質なのかもしれない。あらゆる懊悩にもがく誰かを、誰よりも深い慈愛に抱き留める為に、生きているような】
【かえでという少女を愛した理由を、そこに求める事もできるのだろう。己れの正義を標榜する動機を、そこに探す事もできるのだろう。少なくとも女には、育んだ絆を慈しむ表情があるから】


313 : 名無しさん :2018/12/15(土) 23:54:12 R3nSWF.o0
>>294

【ちゃんと世界を滅ぼせるのかと言われた。――分からなかった。そして今世界はここに在るから、だから、きっと、つまりは、"そう"なのだと思われた】
【だからといって今更前のように暮らせるはずもなかった。だのに世界は未だ納得とは程遠い無言を貫き続けて。決意を手折るのなら、それこそ生きてる意味なんてなくて】
【しかし死ぬことのできぬ身体であるのなら、果たしてどう振る舞えばいいのかもはや分からないのかもしれなかった。世界を滅ぼすと誓うには、少し、きっと、人間らしすぎる】

【塩が四角い形を作るみたいに、明礬が正八面体になるみたいに、唇から零れた言葉の形は、剥落する桜の花弁より鋭利な切っ先、踏みつけるならきっと鈴の音で崩れてしまうから】
【見つめ合った四つの眼のなかでやっぱり黒い瞳だけが異質に浮いていた。色素の剥がれ落ちた透明の/故に真っ赤な瞳に比べて、あんまりに、あんまりに、ありふれていた】
【――だから何か悲しくなったみたいに、少女は瞳を伏せる。月の陰るみたいな一瞬にのみ紡ぎ合える言葉があるってことに、説明だなんて要らないはず】

【――――いつか、この身体が"ふつう"じゃなくなった時。命と等しい鈴の音のすべてを払い落として、削れた命の形を身体に描いて、存在を繋げた】
【そして育つこともなければぐちゃぐちゃたくさんの魔術が描かれた"ふつうじゃない"身体を、大っ嫌いな身体を、それでもめいっぱいに着飾った、お姫様みたいな服で】
【やせっぽちの骨ばった身体と人間じゃない劣等感と妬みと怨みと何もかもを包み隠すのに幾重にも重ねたフリルだけが適していた。曖昧なシルエットに全部隠しこんでみせたなら】

――――――――――わたしたちが"ふつう"になったなら、もう、悲しまなくって、いいのかな……。

【お風呂場で/お着替えの時に/きっとふと鏡を見て/年齢を間違われるたびに/一度でも会ったことのあるひとと会うたびに/生きているだけでふとした時に意識させられる現実が、】
【"それ"が"ふつう"になったなら、この気持ちも消えてゆくのだろうか、それとも、熱した鍋にぽつり落とした一滴が蒸発した後に残る白い痕みたいに、いつまでも消えやしないのか】
【だけどきっと貴女がそういうのなら幸せな気もした。だからなんでも教えてほしかった。神様のやりかたも神様の生き方も神様の過ごし方も神様と他のモノの関わり方も】

――っあ、やあっ――、! ――――っ、……。

【――指先が眼を混ぜるのなら、少女は咄嗟に目をつむるのだろう。瞼に指先を捕まえて、長い睫毛が爪先を擽って、反射的に強張る身体から漏れる声が、ごくありふれて】
【ほんの少しだけ反抗的な目をした。最近の彼女は時々そんな目をした。――なんでもかんでも泣きじゃくって受け入れるのは単に人生に疲弊した結果なのだと、伝えるのなら】
【もとよりの彼女はいくらも気が強い性質であるらしかった、から。かすかにむくれた頬っぺた、少しだけ涙ぐむ左目を指で擦って、】

――――、ねえ、イルちゃん、それって、――……プロポーズ、みたい。だからね、だったらね。お願いが、あるの、――、
――わたしのこんな気持ちに名前を付けて、じゃないと、わたしは……、"この気持ち"、言葉にするための、言葉も、持たないの……。
だから、……、だから、わたしを、病気にして。イルちゃんの病気に、して……。病めるときも――だから――、――――、わたしの、お嫁さん……。

【――――ぎゅうっと抱きしめられるなら、身体の中の空気がかすかに吐き出される音がした。触れ合う肌の間に閉じ込められた空間が零になる瞬間に、体温を分かち合うから】
【だってそのたんびに今度は大丈夫だって信じてしまうんだから。今までのようにはならない。だいじょうぶだいじょうぶ、――何度も心中に囁くのなら、やがて、紡ぐのは】
【我儘によく似ていたしきっとごく甘えた温度のおねだりだった。教会も神父も誓いの言葉もなかった契りだけど、それでも、そうであってほしいと願うなら】
【齧ってしまったのは罪に生った実、唆した蛇すら悔やむ現状が不条理な病でないなら、――それこそ不条理だって、誰かが嘆く声に耳を塞ぐみたいに、その瞼に口付け、落として】


314 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/16(日) 00:18:10 ms9zYKY20
>>312

【初めて邂逅した時のアリアの印象は凍てつく氷の女王様で容赦無い銀色だった】
【そんな印象を抱いてから約半年、今はそう思わない。慈しみと厳しさが同居した魅力的な女性だ】
【自分が知る限りで最も深い慈しみを持った女性で、それを伺わせる姿はある種の芸術に似て、心惹かれる想いを抱く】


―――……ありがとう。アリア"さん"。


【初めて見せるアリアへの敬意。今までは表向き敵対関係だったから敬意の無い口調で】
【目の前の女性を呼び捨てにしていた。けれどもう今は同胞だと言ってくれたから、それ相応の言葉遣いを選ぶ】
【短い言葉に乗せる万感の思い。言葉に添える心からの柔和な微笑み。少女めいた屈託の無いそれには自身の本当が現れていた】

【動物で例えるならばアリアが狼ならば、エーリカは犬である】
【慣れ親しんでいけば何れ彼女は人懐っこい犬の様な一面を見せてくれるだろう】


きっと一蹴されると思ってた。……先日のかえでの事も相まって。
だからこの場で改めて謝らせて欲しい。―――ごめんなさい。

そして誓います。私はあなたたちの一員として活路を拓く刃としてあり続ける事を。
生きてる人間の足を引っ張る死人としてではなくて、生きてる人間を足を引っ張る奴を切り払う刃として。


315 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/16(日) 00:25:19 ms9zYKY20
//途中送信になってしまったので再投稿…

>>312

【初めて邂逅した時のアリアの印象は凍てつく氷の女王様で容赦無い銀色だった】
【そんな印象を抱いてから約半年、今はそう思わない。慈しみと厳しさが同居した魅力的な女性だ】
【自分が知る限りで最も深い慈しみを持った女性で、それを伺わせる姿はある種の芸術に似て、心惹かれる想いを抱く】


―――……ありがとう。アリア"さん"。


【初めて見せるアリアへの敬意。今までは表向き敵対関係だったから敬意の無い口調で】
【目の前の女性を呼び捨てにしていた。けれどもう今は同胞だと言ってくれたから、それ相応の言葉遣いを選ぶ】
【短い言葉に乗せる万感の思い。言葉に添える心からの柔和な微笑み。少女めいた屈託の無いそれには自身の本当が現れていた】

【動物で例えるならばアリアが狼ならば、エーリカは犬である】
【慣れ親しんでいけば何れ彼女は人懐っこい犬の様な一面を見せてくれるだろう】


きっと一蹴されると思ってた。……先日のかえでの事も相まって。
だからこの場で改めて謝らせて欲しい。―――ごめんなさい。

そして誓います。私はあなたたちの一員として活路を拓く刃としてあり続ける事を。
生きてる人間の足を引っ張る死人としてではなくて、生きてる人間の足を引っ張る奴を切り払う刃として。


【柄にも無い口調。真摯な眼差し。言葉を紡ぎ終えたエーリカは気恥ずかしくなったのか】
【手元のコーヒーカップに手を伸ばし、一呼吸つける意図でコーヒーを飲み干す】

【もう人肌程に冷めたのだろう。熱がって顔をゆがめる仕草はしなかった。けど、その仕草は10代の少女みたいに】
【幼さを覗かせる。妖艶さを滲ませたアリアの振る舞いからすれば、子供じみた振る舞いだった】


316 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/16(日) 00:25:29 BRNVt/Aw0
>>292

【冷静沈着に振る舞う男。対して少女は更に声を荒らげて】

赤の他人とかそんなの分かってる!
でも仕方ないじゃん!あんたの物言いがムカついたんだから!

っていうか!大切な人の事で上手くいってないのに何で本人にそれ言わなきゃなんないの!?お前の所為で上手くいかないって!?馬鹿なの!?
それに……っ

……その大切な人が今いないから言ってんじゃん……
【弱々しく呟くと少女はぺたんとその場に座り込む】

理解出来ないのはそりゃ、そうかもしれないけど……どうでもいいかもしれないけど……
……でも私は必死だったんだ
それ以外の生き方なんか探す暇もなかったんだ……

私は、どうすれば良かったの?

どうすれば生きる場所を見つけられるの?
今更自由になんか生きられないよ……
好きな物も得意な事も見つからないのにどう自由になれっていうの?
ひとりぼっちなんか、嫌だよ……
【ぽとり、と少女の金色から涙が零れ落ち】

無茶苦茶だって思うんなら黙っててよ……余計な口挟まないでよ……
こんな手負いの女の子連れ込むような男信用出来る訳ないじゃん……話したくもないよ……話したら悪用して大切な人が傷付けられるかもしれないもん……
それに、世界が全然優しくないのなんかとっくの昔に知ってるもん……
優しかったら今私は此処にいないもん……
【少女は零れ落ちた涙を乱暴に拭いながらも拗ねたように返して】


317 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/16(日) 00:58:38 E1nVzEpQ0
>>315

【矢張り女は大仰な反応を示す事はなかった。 ─── 敬意も、謝意も、決意も、悉く無言のまま、頷きさえ無くして聴いていた。】
【それでもエーリカなら理解するに十分だろう。これがアリアなりの礼節であった。真に対手と解り合う為に必要な言葉など、要らぬ語彙を削いだ果てには如何許りであろうか】
【まして彼女は伝え合うことの困難さを痛切に知悉していた。ならば淡紅に潤った唇が、滑り出すように声音を紡いでいくのにも、言い知れぬ優しさが宿っていた。】


「 ───……… 過ぎた事は、過ぎた事よ。」「結末を迎えられなければ、探し続ける事もできるけれど」
「今の私にはもう、貴女を拒む理由はないから。 ───── 恃みとしているわ。今までも、これからも。」


【水底のように透き通る碧眼には、無垢で幼気な表情が映り込んでいた。 ─── アリア自身もまた、彼女の知らぬエーリカの気質を、知っていくのだろう。】
【時として彼女の口振りは、我が子を見出す母親のようでさえあった。過酷と悲愴に尽きるようなこの世界の道程において、悩める誰かの安らかな休息となる事を、望むような。】
【 ─── 確かであるのは、彼女もまた紅茶を飲み干すのだろう。スライスレモンを浮かべた、淑やかなセイロンティー。安堵に吐く一息の香り高さに、柑橘の擽ったさが同居して】
【然して続ける彼女の言葉は、申し訳の立たぬように憂いていた。哀しげに、詫びるように、唇端を釐かながら硬ばらせる。当て所ない視線が、カップの底に残った果肉へと落ちた】


「 ……… それに。」「私からも、貴女に詫びておかなければならない」
「私の過去に巻き込んでしまった。 ─── 私ひとりで、決着を付ける積もりだったけれど」
「親しい人を傷付けさせてしまうのだから、大概に思い上がっていたわ。 ……… 世話を掛けさせてしまうわね。」


【何の話をしているか、解するは容易なことだろう。 ─── いつかエーリカを愉しげに嬲った、フライヤと名乗る妖女。アリアとの只ならぬ因縁を、狂気のうちに示唆していた】
【彼女が何をされたのかを、アリアは知っているようだった。ならば知る権利はあるのかもしれない。知らなくてもよいのかもしれない。判断は委ねられる】


318 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/16(日) 01:43:09 ms9zYKY20
>>317

【エーリカの歩んできた人生において母親という存在は曖昧だった】
【物心ついた頃にはもうその人は亡くなっていたから、きっとこういうものなのだと思った】
【だから母親のような口ぶりに目を細めて無言で頷いて答えるんだった】


……フライヤなる女の事ですよね。あの女、アリアさんに深い愛憎を向けてました。

ていうか、私があの女に弄ばれた事、……知ってるんすね。
私が傷つくのは慣れっこですし幾らでも世話を掛けてもらっても構いません。
自分は社会的な死人ですから、痛いのも辛いのも苦しいのも日常茶飯事ですし。


【"全然平気です。傷つけられる事も痛めつけられる事も穢される事も慣れてますから"――なんて口振り】
【そんな事をにこやかに言うものだから、自分自身を大事にしていないと思われるかもしれない】
【無意識下の言葉。それは自分より相手を優先する歪さを垣間見せつけて、同時にアリアを慮る意図と一体になっていた】


         ただ、かえでにまで手が及んでいたら話は別です。
    あの子まで傷つけたと言うのなら――全霊を以てアイツ、殺しますから。


【にこやかな表情と声色は一変して。大切な人を傷つけたのなら絶対に許さない】
【命を以て購えと言わんばかりの底冷えする声色と凍てついた瞳を昏く点す鈍色の光】


………だから、アリアさんが語ってくれるのなら聞きたいです。二人の間にある因縁を。

アリアさん一人で決着をつけるなんて水くさいこと言わないで下さい。もう私だって当事者なんですし。
過去にケリを着けるってんなら私だって手伝いますから。アリアさんが駄目だって言っても聞きませんから。


319 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/16(日) 10:32:36 6.kk0qdE0
>>306

「……ッ」

【光の刃により身体に無数の傷を負う】
【致命傷になる様な物、深手となる様な物は浮遊した剣が弾くも、それでも細かな傷は避けようもなく】
【それでも、剣士は笑っていた、嗤っていたのだ】

「……問答は、無用だ」
「……ッ」

【そして尚、正眼に構え真正面より龍の姿の魔力を縦に切り裂いて】
【そのまま床を崩壊させれば、無論、ひとたまりもなく、残り3人も巻き込まれて階下へと落下する】

「……ッ!」

【まともでは無い、決してまともな考えの戦い方でも動きでも無い】
【最早何も行動など出来ない自由落下、その最中の剣撃……腹部より受け、これもまた真二つに斬り分けられる】
【その位置による為か、返り血も臓腑片も体液も、よりまともに身体に浴びる事となるだろう】

「伍長、アレを」
「止む無し、時間を稼げ」

【斬りつけた直後のディミーアを目掛け、仲間が斬り殺されるのにすら、感情が動く気配も見せず】
【件の光の刃群が、再びディミーアへと放たれる】
【中心となっているであろう女海兵は、何かを取り出そうと腰嚢を弄っている様子だ】


320 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/16(日) 11:15:03 OQxJV9J20
>>316

八方塞がりってやつだな
ま、考え方変えるしかねえな、やっぱ
お前が思うとおりに生きられるほど、この世界は簡単じゃねーようだしな

【「いやー、若い奴は大変だなー」と付け加え、他人事そのものといった応対】
【それでも一言二言返す程度には、少女の言うことや状況に思うところはあるようだったが】

ま、それはそれとして、だ

【男の片手が挙げられる。それを合図に周囲の触手が少女へと迫り来る】
【その両腕や両足に絡みつき、縛りあげようとしてくる。動きは緩慢なために遠ざかるのは難しくない】

信用できねーから話せねえってのは正論だ
だったら、俺としてはとっととやることやっちまうしかねえよなぁ?
泣いてる女をやるってのは中々そそるもんだ。今のお前ならやる気も出るってもんだぜ。けけけ

【下卑た笑みが再び少女に向けられる。会話など余分なことで、結局のところこれが目的なのだ】


321 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/16(日) 11:21:59 6.kk0qdE0
>>309

ーー艦長公室ーー

【悪鬼が如く、修羅が如く】
【見上げる様な体躯の黒衣の戦闘服に、顔を隠し、そして手にした武器は剛たるエンジン音を立てて、声だけが透き通るほどに綺麗な、だが、その姿全てに血肉を浴びて】

「せ、船員全員に船を!?馬鹿な!あ、有り得ない!!」
「ほほぅ……まるで狂戦士だ、洗いざらい?異な話だ、狂戦士風情が何を聞きたいと?」

【アリアの短い語りと共に、脚を狙い弾幕が迫る】
【途端に、2人の目の前に白いカーテンが】
【否、カーテンと思われたのは全てが大量の札であった】
【陰陽師が使う札術の札、櫻国に明るい者ならばそれに気がつくだろう】

「良い、座興代わりに少し遊んでやろう、この国の特殊機関の実力も見れる」

【札は放たれた弾を1発1発、その場に包む様にして静止】
【やがて、札が再び解けると】

「返そう、不用だ」

【其れ等全てが向きを変えており、アリアに向かい放たれる】
【道賢は椅子に座ったまま、片手の指を動かす、それだけだった】

ーー1F兵員室ーー

「何、心当たりが少ないだけさ、カンナも居らず、鵺も死んだ……この現状ではな」

【厳島から見れば天井にあたる其処から、降りてくるミレーユと2人に、こう答えて、痛々しげに笑って見せる】
【事実、頬や口元には、尋問の跡が強く残り、口元を動かせば痛みが走るのだろう】

「ありがとう、助かるわ、何者か解らないけど行きましょう!こんな臭くてむさいとこ」
「?」

【ナイフで拘束を解いて行く、自由になった腕を思う様に動かしながら、しかしミレーユの微妙な表情に気が付いたのか、不思議そうな顔をする賀茂】

「この感覚も久方振りだ、有り難い」
「消音器付き?凄いもの作るわねー」

【ライフルを手渡される、櫻の物とは勝手は違うだろうが基本は同じだ、問題は無いのだろう】

「……すみません、あ、ありがとう、ございます……」

【翔子はミレーユの後ろに隠れつつ、そう告げて、ぎゅっとその黒い戦闘服を掴み】

「……全く相変わらずあんた、デリカシーが無いわよデリカシーが」
「で、デリカ?何の事だ?」

【ミレーユの気遣いは、少女と女性にはとても有り難いものだった】
【然るにこの状況だ、ゆっくりした語らいは許されない】
【目出し帽から、視線の合図を送られて、無言で4人は頷き答える】

「先程の音は何事だ!?」
「開けるぞ!また何か起こったと言うのか……」

【直後、声と、ガチャと音がなり鍵が開けられる音がする、声は2人だ、僅かでドアノブが回り、扉が開くだろう】


322 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/16(日) 11:23:19 OQxJV9J20
>>319

【返り血がローブを赤黒く染め上げる。瓦礫の砂塵と鮮血の中で嗤う剣士は悪魔の威容】
【空中で身動きが取れないはずのディミーアに光刃が殺到する。しかし、死の刃は剣士の頭上を掠めていく】
【重力加算による急降下で、ディミーアは不可避の攻撃を躱していた。そのまま階下の床に着地。衝撃でコンクリートが大きくひび割れる】

【即座に魔術剣士が跳躍。残りの二人が空中にいる間に急接近。光刃の能力者の真下から、大剣の刃が振り上がる】
【急降下からの急上昇。通常の剣士では絶対に成し得ない物理法則を無視した動きだが、魔術という力がそれを可能としていた】


323 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/16(日) 12:47:50 6.kk0qdE0
>>322

【莫迦げている、有り得ない】
【だが、それを可能としているのだ、能力と言うもの、魔能と言う存在は】
【重力変化による落下速調整、光の刃は弾着直前で加速したディミーアの頭上をすり抜け、そのまま着地、コンクリートに小さなクレーターを作った後、そのまま、正に返す刀で飛び上がり】

「……ッ」
「すみません、伍長」

【飛行能力や、その他の有用な能力を保持しているわけでは無い海兵は、真下から迫る大剣の餌食となる】
【ディミーアに、夥しい血肉が降り注ぐ】

「テロリストが……」

【もう1人、リーダー格と思われる女海兵は、無事に着地、ディミーアを見据えながら、腰嚢から取り出したそれを見せる様に翳し】
【注射器だった、中身は紫の液体が込められてた注射器】

「魔力狂化試薬II型、使わせて頂きます」

【女海兵はそれを自身の首筋に突き立て、液体を注入】

「……ッッッッッツツツ!!」

【途端、苦しみだす女海兵、全身に魔力回路が浮き出て、目は爛々と光り出し】

「ヴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オッ!!!!!!!!」

【女海兵はその姿を変貌させていた】
【むくむくと、服を破り全身が3倍程に膨張し】
【皮膚の色が変わり、硬い鱗状に変質し始め】
【その手の図鑑を、見た事が有るならば解るかも知れない、頭から全身に掛けて、まるでT-Rexの様な姿、魔力回路のみが浮き出て、目は赤く光り、凶暴そのままの異形の姿でディミーアを睨み】

「ヴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オッ!!!!!!!!」

【口を大きく開き牙を剥き出しにして、突進してくる】


324 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/16(日) 13:30:58 OQxJV9J20
>>323

【血肉が降り注ぐ中を剣士が着地する。眼前では太古生物の威容が姿を現す】

おいおい……冗談だろ

【思わず苦笑が浮かぶ。しかし、恐怖や動揺からではなかった】

これは殺す順番を間違えたな。それは元に戻るんだろうな?
戻らなければ……色々と聞き出せないからな!!

【大剣を構え突進を迎え撃つ。巨大な激突音。牙と刃が打ち合う金属音が響く】
【コンクリート床が踏みしめられる。しかし、ディミーアの全身は微動だにしていなかった】
【擬似恐竜の圧倒的な質量による衝撃を、剣士の肉体が完全に受けきっていた】

【右手が閃き、恐竜の顎目掛けて強烈な打ち上げが繰り出される】
【打撃の一つさえ、質量増幅によって人外の破壊力と化していた】


325 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/16(日) 22:47:02 BRNVt/Aw0
>>320

……はぁ、やっぱりそうなるんだ……
考え方変えろって言われたって……具体的にはどうすれば良いんだか……
【とか聞いても分かんないよね……と少女は深いため息を吐いて】

【そうかと思えば男が閑話休題とばかりに片手を挙げて】
【しゅるり、と巻き付こうとする触手。少女はその動きを察したのかパッと顔をあげると座っていた体勢から飛び上がるように立ち上がってそのまま飛び退り】

【四つん這いに近い形で着地し、男を涙目で睨み付ける】

……変態……っ

変態変態変態変態変態変態変態変態変っっっ態ッッッ!!!!

へんっっっっったい!!!!!

もう少し間を考えろ馬鹿ッ!人望無し!変態親父!

【心情的にはもう少し待って欲しかったらしいのだが唐突にきたせいで若干頭が混乱してしまったらしく何故か男を罵倒してしまい】
【そのまんまの姿勢で、あーだのうーだの唸っていたが少しするとはあ、と長い息を吐き出して立ち上がるとバスタオルを手に取って】

……お風呂入ってくる

【拗ねたような声で告げる】


326 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/16(日) 22:58:22 OQxJV9J20
>>325

【意外な素早い動きに男の目が丸くなる。さらに罵倒の嵐が降り注ぐ】

……そーいや亜人種だっけか
つーか、なんだ、そうやってキレてる方がやっぱそそるわ
変態呼ばわりも人でなし呼ばわりも最高だぜ、けけけ

【また下卑たような、楽しそうな笑みが浮かぶ】

なんだよ、案外乗り気じゃねえか
俺を楽しませてくれたら、もうちっと愚痴ぐれーなら聞いてやるよ
だからとっとと入ってきやがれ。何なら、俺が身体洗ってやろうかぁ?

【けけけ、とまた笑い】
【両手の指がくねくねといやらしい感じで蠢く】
【まるで合わせるように触手も震えていた】


327 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/16(日) 23:45:29 BRNVt/Aw0
>>326

そういや亜人種って!耳!尻尾!一目瞭然!
……っていうか普通に結婚してたらいるだろう娘くらいの年齢の女の子に罵られて悦ぶとかどーゆーシュミしてんのよ!マジで変態なんじゃない!?
まー……そう!マゾヒスト!マゾヒストなんじゃない!?
否、でも逃げ惑う人見て笑ってたし……あーもーっ!分かんない!

【結構引いてしまったのか目にうっすらと涙を浮かべながらみゃーみゃーぎゃーすかと騒ぐ少女】


ぅー……乗り気……っていうか……さっき言った通りどうにでもなれって感じだし……
どのみち血とか落としたいし……

それに……婚姻前に男女……ましてや婚姻関係でもない二人が肉体関係結ぶのって地元じゃ悪い事……なんだけど……まあ……此方の風習とか分かんない、けど……
まあ……とにかくそーゆーコトするのってワルイコの印象、あって……

……どーせならワルイコになっちゃえばちょっとくらい幸せになれるのかなって思ってる自分もいて……

……あー、もう!やっぱり分かんない!行ってくる!
【少女は怒ったように言うと風呂場に向かおうとして】
【身体を洗ってやろうかといやらしい手付きをする男に】

一人で大丈夫ですーっ!
っていうか自分で言うのもなんだけどこんな胸ない子の何が楽しいのよ、馬ー鹿!
【べーっと舌を出すと割りと強めにバスルームのドアを閉めて】


328 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/16(日) 23:51:23 E1nVzEpQ0
>>318

【 ─── それでも、やはり、アリアの憂う仕草は消えない。屈託ない笑顔も友誼を守る覚悟も、向けられるに吝かでないのは事実だったろう】
【だが彼女は決して、心と背を任せられる友が無為に傷付くことを好まなかった。組んだ指先がガラスのテーブルを撫ぜて、結露の痕を残す】
【今となっては澄み渡った紺碧の瞳が却って躊躇いを示していた。 ─── 堪えるように結ばれた唇が、訥々と言葉を綴っていく。】


「 ……… そうね。」「 ─── 彼女は、かえでにも非道を行ったわ。だから、私もまた、彼女を許さない。」
「貴女が力を貸してくれるなら、 ───……… 嬉しいわ。エーリカ。」「 …………… では、どこから語ったものかしら、ね。」


【悲しく艶めいた声音が嘆きに似て独白を続けるのだろう。 ─── 決して虚偽は述べられていなかった。だが、それでいて】
【音節の一葉ごとに、両義性の満ち満ちた陰影が宿っていた。ならば彼女の真意を読み解く為には、暗い思索も必要であろう。】


「 ───………… 軍属時代の、同輩よ。」「親しかった。少なくとも私は彼女を敬っていたし、彼女も私を敬っていた。」
「関係を持った事も、一度や二度ではなかったわ。 ─── 長く続いた事はなかった。尤も、お互いにそれを厭う事もなかった。」


「殺したの。私の、この手で。」「彼女が、心から愛していた人を。」
「止むに止まれぬ理由だったわ。任務の上で、標的になったの。」「だからきっと、憎まれた。」



【過去の出来事を語る音調だった。それはアリアにとって、少なくとも過ぎ去った事だった。だがフライヤという女にとってはそうでなかった。】
【涙よりも忘れられないものに湿った言葉尻は、重ねた時間の何たるかを雄弁に語るのだろう。 ──── 息を吸う毎に、清らかなブロードに覆い隠された胸許が、震えるから】


329 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/17(月) 00:29:32 E1nVzEpQ0
>>321


【着弾よりも先んじて制圧射撃は阻まれた。 ─── 造作もなく両手の機銃を抛り捨て、アリアが懐から引き出すのは】
【紅い血の深く満たされた硝子の刃々。その柄尻を爆導鎖で連結された、両の手に余る数の脆弱な投刀。それを彼女は擲つならば】


    「 ──── その腐れた性根を、」「如何にして切り倒すのが相応しいか、かしら?」
     

【黒い手から離れた炸薬の発破が、爆轟にて悉く返礼の銃弾を撃ち落とす。砕ける刃より溢れる血潮。広がる血溜まり。そこより出ずる仄暗い光】
【呼び出されて放たれるのは、二ツの"誘導弾"/ミストラル携帯式地対空ミサイル。 ─── その弾頭は、指向性HE破砕効果VT信管。】
【呪符の白い防壁に近接した瞬間に弾体は起爆する。小銃用の中間弾薬とは比するべくもない激烈な運動エネルギーの奔流は、方向付けられたメタルジェットの形を取り】
【黒い羅刹を覆い隠して余りある爆煙を巻き上げながら、ごく物理的な効力をもって対手の防御を貫徹せしめんとするだろう。 ─── その魔術性に満ちた装甲が、斯様な攻撃を受け付けるなら】


【 ──── 一先ず、ミレーユは頷いていた。4人の言葉にも、応答にも、疑念にも。やはり彼らと言葉を交わすとして、ここは余りに囂しい。】
【消音狙撃銃を分解し、その基礎となる回転式拳銃を左手に握る。右手がタクティカルポーチに伸び、多銃身の水中拳銃を引き抜く。ならば開け放たれる扉には、既に銃口が向けられていた】


          ブチかまして殺れッ!!
   「 ──── Let's kill that sick FUCK!!」


【銃爪が絞られた。圧電発火とダブル・アクション。30口径の拳銃弾、デュアル・ウィールドは狂いなく両者の頭部に向けられていた。】
【両手に合わせて11発の全てをミレーユは撃ち尽くす。防弾装備のない真っ当な人間が喰らえば致死は避けられない密度の弾幕であった。】
【同時にミレーユは4人に対して射撃と突撃を命じてもいた。 ─── 費やされる弾薬が状況を打開するに足りれば、残された死体を踏み付けて、ただ甲板へと直た走るのであろうが】
【然して今までの一方的な暗殺とは訳が違うのも事実であった。彼らが何らかの防護策を講じていたのなら、弾幕を防ぐ事も不可能ではないのだろう】


330 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/17(月) 08:21:38 6.kk0qdE0
>>324

「ガアアアアアアアアアアアッ!!」

【大剣と牙、質量と質量のぶつかり合う音がコンクリートに反響する】
【並みの筋力でない、いや、人間のそれを遥かに超えた筋力】

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

【暫くの共に人間離れした鍔迫り合いの後、T-Rexと化した女海兵の絶叫に似た唸りが響く】
【ディミーアの人外地味だパワーで打ち出された打ち上げが、巨大な顎に炸裂、そのまま軽く宙に身体が浮いた後、その場に転がる】

「ギャイアアアアアアアアアアアッ!!」

【だが、この体躯、やはり一撃では倒れない、意外にも素早い動きで倒れながらも身体を回転させ、強力かつ早い、尾の一撃を見舞わんとする】
【横薙ぎに、質量の大きな鞭と化した尾が迫る】


331 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/17(月) 09:01:24 6.kk0qdE0
>>329

「ほう、驚いた……」

【ここに来て初めて、道賢は感嘆の声を上げる】

「まさか、魔能戦闘も熟すとは……何処の特務機関か知らぬが、なるほど、この国の絶妙な軍事バランスを保つ一因が能力者と言うのは、納得の出来る話だ」
「腐れた国の堕落した軍事バランスの上に転寝した飼い犬風情が、腐れた性根とは良くも言えた物だ、我が下ならば良く使ってやれる物を……何とも勿体ない話だ」

【アリアが取り出したのは、爆裂鎖に繋がれた禍々しさすらある血の刃】
【軈て破砕するそれら小さな刃と爆鎖は、撃ち返した弾幕を、悉く撃ち落とし】
【そして広がる血溜まりが、新たな武装を呼び出す】

「素晴らしい能力だ、此れが見れただけでも態々この国に足を運んだ甲斐があったと言うものだ……だが、甘い」
「詰めが余りに、甘い」

【指向性により桁外れな破壊と貫通に特化した地対空誘導弾は、呪符の壁に触れると凄まじい黒煙と爆音を上げて爆砕】
【黒い煙が辺りを覆う】
【やがて煙が晴れ、双方の姿が見えたその時には……】

「これは『ヨシビ』に妖物の追加調達を急がせるべきかも知れんな」
「ひっあっああ、た、大将……」

【巨大な、実に巨大な巌の如き2つの手が、床より出現し、その巨大な掌でミサイルの爆破より2人を守る様に君臨していた】
【無数の破片と熱、圧倒的な爆風でボロボロになった手は、そのまま引き込み消滅したが】
【道賢は既に立ち上がっていた、先程まで座っていた椅子は、爆風を直で受けて跡形もなく崩れており】

「前鬼、後鬼の手をここまで痛めるとは、全く、兵器の力とは侮れない物だ……少佐、この船はもう本格的にダメだが、艦と命運を共にするのが艦長の役目だ、違うか?」
「た、大将、な、何をおっしゃ……」
「魔力回路はあるのだろう、貴官はどうしようも使えぬ鈍物だが、最後は艦長らしく幕引きせよ」
「あ、そ、それは!?お、お許し、お許しを……あ、あ、あ、ああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

【そう語る道賢の手には、赤い液の詰まった注射器が握られていた】
【でっぷり肥えた傍の艦長の、その首筋にそれを突き立て、液を容赦なく注射していく】
【すると、途端に艦長は苦しみ出し、もがき始めた、全身の魔力回路が浮き出て、目は爛々と光り出し、呼吸は荒くなり】

「ゔ、ゔ、ゔヴオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

【次の瞬間には艦長は、その姿を変貌させていた】
【まるで、噴き出るマグマ、熔岩を体現したかの様な姿、身体中が一回りも二回りも大きくなり、分厚く巨大な岩石に覆われ、その至る所から灼熱のマグマを流し噴き出させ、魔力回路がその上を張り巡る姿はまさに異形】

「艦内でマグマの炎とは、最期まで艦長に向かぬ男だ……さて、お手並み拝見だ可愛い特務兵」

【マグマの異形が、アリアに対峙する】
【傍で道賢は、さぞ楽しいショーが始まるかの様に振舞いながら】

//分割します


332 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/17(月) 09:21:45 6.kk0qdE0
>>329>>331

ーー1F兵員室

「……今は、そうだ、脱出の事のみを考えねばな」

【賀茂と厳島、翔子、万里子は渡された銃器をそれぞれ構えて、軈て開放される扉に向け狙いを定める】

「一体何事だ!?」
「よもや、此処でもテロではあるまいな!?」

【扉が開放される、そして一斉に引き金が引かれる】

「ギャアッ!!」
「どうし……ぐあッ!」

【刹那の射撃、強襲だった】
【ミレーユの声を合図に、扉を開けた先の2人が吹き飛ぶ、頭に、身体に、幾発もの弾丸を受けて、背後の壁に叩きつけられる】
【死体は、其々脳が頭蓋ごと後ろ半分吹き飛んだ状態で】

ーー此方でも声だ!声がするぞ!
ーー急げ!テロリストが居るぞ!!
ーー佐藤!!今度は佐藤一等兵が!?貴様ら!!

【幸いにも先の2人に魔導的、或いは物理的な対弾装備は無かったが、先の2人が今際の際で発した断末魔の声は、付近の仲間を呼び寄せるには充分であったらしく】
【すぐさま、武装した海兵達が追ってくる】

「こうしちゃいれないわ!走るわよ!!」
「くっ曹長!走れるか!?」
「……だ、大丈夫、です!」
「此方もいけるのだよ!」

【ミレーユの号令通り、直ぐに走り出し、ひたすらに甲板を目指す】
【後ろからは短機関銃による弾幕射撃が】
【そして目の前からは】

ーーまだだ良く狙え、じっくり引きつけて、テロリスト共の頭を確実にだ
ーー了解であります
ーー此方も了解です

【ミレーユならば、視認出来るだろうか?】
【狙撃戦仕様に改造された小銃で、待ち受ける形で此方を狙う海兵2名と、狙撃指揮兵1人の姿が】


333 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/17(月) 13:23:13 Dv9ehfXI0
>>327

【バスルームのドアが閉められる大きな音に、間抜けヅラで数度瞬きをして】

……あいつ、ワルイコトしてみたいとか、典型的なカモじゃねえか
俺としちゃ、カモがネギとその他具材と土鍋とガスコンロを背負って来たみてえなもんだから、美味しくいただくけどよぉ

【少女がいない間、手持ち無沙汰になった男は上体を倒してベッドに身体を沈める】
【スプリングが軋む音が響く。脳裏に浮かんでいたのは先ほどの言葉だった】

“生きる場所”、ねぇ……そんなもん、あるのかねぇ

【指がネックレスとなった銀の弾丸を摘まみ上げる。複雑怪奇な幾何学模様の描かれたそれを、退屈げな瞳が見つめる】
【視線が逸れて魔道書へと向けられる。意味もなく蠢く触手や浮遊する飛行生物に口を開く】

お前らは自分が生きるべき場所とか、考えたことあるか?

【隷属の主人たる男の声が聞こえたように触手と飛行生物が先端と顎口を向ける】
【当然、答えなど返ってこない。そのうち興味を失くしたように触手も飛行生物も勝手な動きを始める】
【それをしばらく眺めていた男の口元にも、歪んだ笑みが浮かんだ】

答えるわけねえか
そんなこと悩むのは、俺たち人間ぐらいのもんだよなぁ

【本当に手持ち無沙汰になった男は、おとなしく少女が出てくるのを待つことにした】

【バスルームから彼女が出る頃には、部屋の様子が少し変わっていた】
【黄土色の飛行生物は姿を消し、代わりに魔道書の魔法陣から植物が姿を現していた】
【六つの巨大な赤紫の花弁を携え、その中央から小さな触手と見紛う雄蕊が伸びている】
【両開きの魔道書を余裕で覆うほどの大きさを持つ大輪は、毒婦のような不気味さがあった】
【花の香りか、少し甘ったるい匂いが部屋には漂っていた。吸い込むと、少し高揚感が増すかもしれない】


334 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/17(月) 13:34:23 Dv9ehfXI0
>>330

【体勢を立て直した恐竜による、大質量の鞭が剣士に襲いかかる】
【予想外に素早い動きに対処が僅かに遅れた。巨大な尾が身体を打ち付ける前に大剣が割って入る】
【再び激突音。しかし、今度は衝撃を殺し切れずディミーアの身体が宙に浮き吹っ飛ばされる】

【空中で姿勢を制御して、勢いそのままに壁に激突。コンクリート壁を大きく凹ませながら四脚獣のような体勢で壁に“着地”した】
【その壁に対して垂直に悠然と剣士が立ち上がる。壁の方向に重力があるかのように、ディミーアは真上にいる恐竜を見上げていた】

思ったよりも素早いじゃないか
どうせ恐竜を倒すんなら、本物が良かったな

【場違いな台詞と共に、右肩を回す】

聞きたいことは山ほどあるが、さて、殺さずに終えられるかな

【言葉とは裏腹に、闘争心をむき出しにした笑みが浮かび上がる】
【魔術剣士が跳躍。ディミーアにかかる重力が反転し、恐竜に対して水平方向に“急降下”をする】
【同時に大剣を構えて恐竜の胴体中央めがけて振り下ろす】


335 : 名無しさん :2018/12/17(月) 18:42:13 4PD2Yx1I0
【街中――路地裏】
【大通りに面した細道は建物と建物の隙間と呼ぶのが相応しい空間であるなら、人間ひとりが行くだけで精一杯の狭さに、室外機より吐き出される冷機が満ちて】
【ふっと佇んだだけで身体の底まで冷え切るような冷たさの中なら、どんだけ冷血な人間だとしても真っ白い息を吐きだすのに違いなかった、そう思わせるほどに】

――――――……、え。

【――ならば、ふわと立ち昇るのはやはり真っ白の吐息。手元の携帯端末に照らされるなら、刹那きらきらと煌めき立ち上り、けれど、やがて、路地裏の暗がりに飲み込まれていくから】
【それでも誰か覗き込むのなら、その人影を見つけられぬはずもなかった。だって大通りの明るさが十全に届く位置、というよりも数歩のみ入った位置の、室外機に腰かけて】
【よりによってこんなにも寒く冷たい場所で携帯電話を凝視しているのだから。――見開いたまなざしと微かに震える吐息と。立ち上る白は馬鹿げて空気の読めない色を、していた】

【腰まで届く黒髪は全部の光を吸い込むような色をして、ならばきっと肌の透き通る白さも当然と思わせた、――それでも黒はよく手入れされた艶を孕んで、白は寒さに赤らんで】
【長い事瞬きすら忘れてしまったように固まっていた瞳が震えて瞬くなら、黒と赤の色違いを、携帯端末の明るさが照らして見せていた。あどけない顔の造形も照らしだすなら】
【深い赤色のポンチョコートはたくさんのフェイクファーとレースとフリルをあしらったもの、分厚い布地の裾をそれでもまあるく膨らむスカートのシルエットが押し上げ】
【ならば厚手のタイツに包まれる足のうんと華奢なのがよく目立っていた。編み上げのロングブーツの鋭い高いかかとが薄汚い地面を擦るなら、小さな音がする】
【――齢十六ほどの少女だった、夜更かしというほど遅い時間でなくとも、暗く寒い場所に佇むならどこか仄暗さを纏う様相、惑う仕草も付随するなら】

――、うそ。…………え、なん、――、なんで? え、――、なんで、ロッソさ、――、――……――――――、

【――――もしも誰かが覗き込むのなら、ひどく狼狽する少女の姿、見るのだろうか。ぎゅうっと両手で握りしめた携帯電話に表示されるのは、おそらく何かメール画面で】
【指先が震えているように見えた、――のは、きっと、気のせいではなくて。だって鈴の音によく似た声もひどく震えていた。引き攣る吐息の音、微かに漏れる息は、やっぱり、白くて】


336 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/17(月) 22:05:50 E1nVzEpQ0
>>331


【 ───── 爆煙の晴れた先、そこに女は居なかった。煙幕の向こう側で、何かの弾けて砕ける音がした。】


【飛び散った血溜まりと、擲たれた鋸機銃二ツ、焦げ付いた硝煙の幾ばくか。それだけが巨腕の向こう側に残されたものだった。】
【跡形もない自爆の結果であろうか。 ─── 先の刹那にMANPADSを吐き出した紅い痕には、代わりに深い崩落が口を開けていた。】
【であれば何かを悟るかもしれない。対手の何たるかを識るかもしれない。だが理解が反射を従えられるかどうかは、また別儀であろう。】



       「 ──────………………。」



【転瞬、 ─── 彼らの"脚元"/その階下より伏撃として放たれる、大口径機関拳銃の一斉射撃。駆逐艦の乗員ブロックさえ易々と貫通して尚も殺傷力の衰えぬ、対人散弾と焼夷徹甲弾の暴風。】
【それが、女/アリアの携える本来の得物であった。タクティカル・ベストの裏に隠した、対能力者用の戦闘拳銃。その異能によって無限の弾倉を与えられた魔弾の射手。】
【一ツ述べられる事実があった。 ─── この女は一手を打つ間、既に数手を仕込んでいる。並ならぬ異能の威力を、練達の判断と屈強な肉体に裏打ちして戦っている。】
【そしてまた彼女の目的からして、この攻撃だけが対手の致命打に成り得るとも考えていないようだった。ならば無慈悲な追撃の続く前に、然るべき対処を行うのも有効ではあろう。】


>>332

 ガルム2よりスリーピーホロウ。潜入が露見した。繰り返す、潜入が露見した。
「Galm 2 to Sleepyhollow, Our cover is blown. I Repeat, Our cover is blown.」
 合流地点22-34に向かい、全ての"小包"と共に移動中。  到着予定時刻は20分後! 直ちに脱出に備えよ! 急げ!!
「Now heading to rendezvouz point 22-34 with all "packages", ETA 20minutes! Ready for extraction immediately! MOVE!! MOVE!!」


【撃ち尽くしたリボルバーを排莢し、フルムーン・クリップを捻じ込みながら、ミレーユはフルフェイスのインカムに叫ぶ。無線は完全に開かれていた。】
【宛てる先は待機中のライガであった。 ─── 首無騎士のコールサインが彼に割り当てられたのには何の意味があったろうか。ともあれ指定されたポイントは港湾の内部、艦の目前。】
【平生の"彼女"からは凡そ想像も付かぬような兵士の声音が叫ぶのだろう。通信機越しの銃声は決して絶えなる事なくも、被弾には決して至らず】
【なんとなればミレーユの異能であった。 ─── 瞬間的に大気を凍結させ、避けられない軌道から弾丸を逸らす技巧】
【それを彼は同じように行使しようとしていた。青い双眸が一刹那、 ─── 狙撃眼鏡の向こう側を見やる。然して彼は直ぐに視線を外し、どこまでも気付いていないように振る舞うのだから】


                「 ──── 静かに泣きな。」


【 ──── 覆面越しの唇が何かを呟いて、彼の目前に幾つかの透明な煌めきが生じた。それを彼らが単なるレンズの反射だと断じるのであれば】
【狙撃銃の銃爪が引かれた瞬間、 ─── スコープを撃ち抜いて吹き飛ばされるのは、狙う彼らの頭部となるのだろう。】
【幾重にも張り巡らされた不可視の氷壁は数百グレインの弾頭が引き起こす避弾経始を相違なく計算して精製されたものである。その運動エネルギーを十全に保った跳弾が、送り主へと相違なく返送されるように仕組まれた罠である。】
【無論ながら彼らも熟練の狙撃兵であれば、彼が即興に弄した策の何たるかも考えが及ぶかもしれない。それでも何れにせよ防護は十全であった。 ─── 近付く出口へと、彼は駆ける。】


337 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/17(月) 23:21:51 6IlD6zzI0
>>328

【赤銅の瞳に映される憂いの仕草。目の前の女性の紺碧の隻眼と紡がれる言葉に理由を探れば】
【言外に彼女の事を案じてくれているのを察して、照れくさくて思わず顔を背けるのだった】
【紅潮する頬は彼女が女性に対して気を許している証左。だが探る思案はやがて暗い/昏い陰へと足を踏み入れる】


――――、……あの女の憎悪は尋常じゃなかった。アリアさんの言葉を聞いて納得です。
愛する人を奪われれば誰だって"ああ"なるのは当然ですよね。たとえどんな理由であったとしても。

……ただ、アリアさんだってあの女の想い人を殺したくて殺した訳じゃないんでしょう?
それでもあの女に許されたいとも、殺したくないとも思っちゃいない筈。――かえでを傷つけたんだから。


【親友以上に想う少女に降り掛かった非道の中身は想像に難くない】
【詳細を聞く事はしなくても、アリアが殺すと口にする程のものだって察して】
【ぎりっと歯軋りさせた後、双眸に宿る光がより一層昏く昏く、鈍くなっていく】

【あの妖女に弄ばれたであろう少女を想像したなら、後悔を始めとした昏い感情が己が内に渦巻いていた】
【双眸は口以上に物語る――静かな激情と弄ばれて辛い目にあったであろう少女に対する同情を】


……だから、私はあの女に同情してやらない。たとえ愛する人をアリアさんに奪われたとしても。
………かえでを傷つけた事。アリアさんを苦しめた事。永く永く後悔させてやりますから。

―――――……アリアさんがあの女に思う所があって、大きな胸を震えさせる程に複雑な想いを抱いていても。
幾度と無く肌を重ねて愛し合って、互いを慕い合ってた事があったとしても私には知った事ではありませんし。


【自分が親友以上に想う少女が苦しむなら、畏敬の念さえ抱かせる目の前の女性を苛むのなら】
【フライヤに対して容赦なく一振りの凶刃で在れるし、何より二人の幸せを穢されたくなかったから】
【湿った言葉に対して、からりと乾いた言葉をアリアに向けるのだった】


338 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/17(月) 23:42:58 BRNVt/Aw0
>>333

【それから暫くしてバスルームから出てくれば少女は植物を見やり、そうして目を瞠って】
【まーた気分壊しそうな……などと呟きながらもその甘い香りを嗅げば次第に頬が紅潮していき】
【当然、といえば当然、なのだろう。少女は人に近い姿をしているとはいえ化け猫なのだから。人間よりも鼻が利いてしまう、というのも道理であって】

ね、私、痛覚がおかしいから痛いの感じないんだよね……
【期待通りの反応、出来るか分かんないよ?と少女は少しだけ苦笑してベッドに腰をおろして】




【少女の言った事はどうやら本当のようだった】
【どれだけ粗雑に扱おうが痛がる様子がなくて】
【それでも男が指示すれば多少嫌がりながらも従ってはくれるし時折不快そうに顔をしかめながらもそれなりに反応はしてくれるのだが】
【しかし、奇妙な事が一つだけあった。それは男が少女の中に熱を放つ時に起きる事で】
【瞬間的に四肢が先端から付け根まで一気に冷たく感じただろう】
【偶然、ではなく放つ度に、何度も】
【それはもしかすれば少女が怪異であるという事実を思い起こさせるかもしれなくて】


【一段落ついたのか、はたまた少女を弄ぶのにも飽いたのか、定かではないが"それら"が終わった後──】

……ねえ、異物感くらいしか覚えなかったんだけど……大人って本当にこんなんで悦ぶの……?
【ぐったりと臥しながら気だるそうに尋ねる少女】
【しかし、当初は見受けられた身体の刺し傷や目の下の隈は消え失せており、心なしか血色や耳などの毛艶も良くなっているようにも思えて】
【ならば少女が男から何かしらの精気でも奪っていったのだろうと考えられて】


/分けます!


339 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/17(月) 23:44:00 BRNVt/Aw0
>>333
/続きです!


【ころん、と仰向けになれば少女は男をちらっと見やり】

……ねーぇ、おじさん
私の愚痴聞いてくれるって言ってたけどさ……

もう、いいよ

私ね、思ったの
もう、全部いいかなーって

居場所の事も、抱えてる事も全部

別にね、悪い意味でそう言ってるんじゃないよ?

そーゆーの全部なるようになる……否、なれって方向に考えてって、私は私で生きてくの
今までの事はそれとして一旦置いといて、私は私の好きなようにやるの

居場所の事とか大切な人の事とか問題や悩みはまだあるけど、そんなん一旦押しやっちゃってやりたい事とか好きな事を見付けるの
それくらいやったって構わないよね?

だって、私、ワルイコになっちゃったんだもん♪
【ふふーん、と少女は何処かどや顔で笑って】


340 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/12/18(火) 04:03:11 h7nAXcQg0
>>204
く、ふふ……全くだ。そろそろ、小悪党の看板も下ろしていい頃かもな
それは光栄だ。お前がどれほどの悪党を見て来たのかは知らないが、何事においても一番というのは気分がいい

その判断は正しいぞ、鈴音。悪党という人種は、利害の一致の上では表社会よりも強く結束し得るものだ

――――……そうか。ならば、お前の前で彼奴をあまり悪く言うのはやめておこう

【嬉し気に震える黒い箱は、口調そのままに幼子の如く。敵同士であるはずの二人の間に流れる空気には、妙にマッチしていただろうか】
【それでも、曖昧な語尾に対して踏み込まないのは、やはり臆病な小悪党だ】


……「たんぽぽ」の方がメインで、正規メンバーではなかったわけか
セリーナならば、ねだればくれそうにも思うが……お前は、あまりそういうことはしなさそうだな
何なら、ギアの奴に頼んでみるかね? あいつも、思うところはあるだろうが、そのくらいの「我儘」なら聞くだろうさ

【こんな小さな我儘すらも、今まで彼女はしてこなかったのだろう】
【それが出来るようになった今、セリーナはおらず、鈴音も変わってしまったとはなんという皮肉だろうか】

【だから、せめて。悪党の自分ぐらいは、そんな彼女の一面を受け入れたっていいだろう】
【嬉しそうな声が聞けたのなら、それが十分な対価ともなって】


……こうして、お前のしたいことを直接に聞くのは初めてだったか?
お前のような子孫を持ったことは、へびさまにとっても幸いだと私は思うね。へびさまにとって、唯一否定しない存在なのだとしたら

いいじゃあないか。私はあまり寝つきが良くない方だからな。ゆえに、夢もよく覚えている
良く寝ることは大切だ。人も神も、おそらくそこは同じだろう。睡眠力は幸福力だ

【神も嘆くし、取り返しのつかないことだってある。罪を犯すことでさえも。それを贖おうとすることも】
【誰に、それを否定できようか。いや、世界がかかっているのならば、否定するだろうか】
【ならば、この清算のつかない不条理はなんなのか。世界は答えてはくれない】


【世界が答えてくれないのなら。たった今、自分が出した結論の是非なんて、誰も応えてはくれないだろう】
【ならば、己の欲望と意志にのみ忠実に。悪党に英雄なんて似合わない。ただそれだけだ】

構わんさ。多少減っても、味わっていただくとも
ふ、ふ。私にその手の提案をしたら、遠慮はしないぞ。三つとも平らげさせてもらう

言っていくが本心だ。お世辞は苦手でね

【カウンターの向こうの彼女に、そう言う。我ながら似合わないことだという苦笑は滲み出ていたが】
【それでも、彼女のレアな表情が見られたのなら、無理をしただけの甲斐はあったというものだ】
【神と悪党が、少ないご飯を分け合って食べる。そんな世にもまれな光景までセットでついてくるなら、量が減るくらいはどうってことない】

【「……かもな」、なんて返すその顔は、醜悪な異形のままなのに何とも気安く】
【ひと時、調理の音に耳を傾ける。その先の会話も、きっと他愛ないものになるのだろう】

【――――本当は、聞きたいことも言いたいこともたくさんあったのだけれど】
【どうにも、彼女の前では異形の調子は狂う】


341 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/18(火) 17:35:22 oFkCLf9I0
>>338

痛覚がない、だぁ?
はは、そりゃ楽でいい! 処女ってのは痛いらしいからめんどくせえんだよな!

【苦笑する少女に反して男はといえば嬉しそうな反応であった】

【しかし、いざ行為を始めて本当に痛覚がないと分かると「つまんねえなおい!」と文句を言いだす始末】
【それも少しすればどうでも良くなったのか、「やっぱ楽だな」と手のひら返し】
【四肢が冷たくなってしまうことも初回は「ぎゃー!」と大げさな反応をしていたが】
【二度目からは慣れてしまったのか、「なんかこれはこれでおもしれえ」と楽しみだしていた】

【そしてしばらくして】

……お前、実は淫魔か何かじゃねえのか?
なんでそんなに肌艶がよくなってんだよ……

【体力を根こそぎ奪われたように男は息を荒くしていた】
【調子に乗って回数を重ねたせいで、どうやら少女に体力的なものを吸い取られたようだった】

あー……異物感? そりゃ最初はそうだろ、誰だってそうだ
回数重ねるうちに、お前もそのへんの女と一緒でひぃひぃ喘ぐようになるんだよ、多分な

【気怠げに腕を伸ばし、魔道書を指先で叩く。赤紫の花弁を持つ花が、それを合図に青い燐光と化して消失】
【それと同時に部屋中に漂っていた甘ったるい匂いが薄くなっていく】
【腕を戻して仰向けになり、男は少女の言葉を静かに聞いていた】

んー……んー?
まぁ、なんか吹っ切れたんならそれでいいんじゃねえか?
こんなくたびれたおっさんと一発ヤって吹っ切れるってのも中々のもんだけどな、けけけ

【少女のどや顔に、男は下卑た笑みで答えた。しかし、少しだけ表情が真剣味を帯びる】

……ま、俺ぁそういう生き方の方が好きだね

【その表情の変化はほんの僅かな間だけで、次の瞬間には再び下品な笑みが戻っていた】

ところで、結局、何があったんだぁ?
ここまでヤっちまったら流石に気になってきたんだが?

【どうでもいいとまで言い切った少女の悩みだったが、好奇心が首をもたげてきたらしく】
【身体を横にして、手で頭を支える姿勢をとりながら、少女の方へと顔を向けた】


342 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/18(火) 22:44:34 BRNVt/Aw0
>>341

淫魔じゃないですー、化け猫ですー
……でも確かに傷治ってるし身体も心なしか軽くなってる気が……
……大丈夫?おじさん、魂ちゃんと残ってる?


ふーん、そーゆーものなの?まああんまり慣れたくはない気がするけどね
【あはは、と少女は苦笑して】


【そうして話を聞いた男が下卑た笑みを見せれば少女は苦笑して】

まあ、それもそうだけど……思い切りはいい方なんだよね、結構
それが良いのか悪いのかは別として、さ
でも悪くはないでしょ?


何があった、か……
んー……さっきおじさんが言った通り自業自得な所もあるんだけどね
結構かい摘まんで話すと発端は友達だと私が思ってる子が知られたくなかった事を知っちゃった……って所かな
で、何だか顔向け出来なくなっちゃって……そうしてる間に父親のように思っている人は恐らくだけど無実の罪で捕まるし
で、もうこんな私なんか要らないって思って自殺しようとして
……たんだけどそこから暫く時間飛んでるし、何か記憶無いのに肩斬れてるし、知らない人に記憶抹消されそうになってるし、それで記憶消されるくらいなら死んでやるーって自殺
……したと思ったら生きてるし、行方不明だった知人に発見されたと思ったらとにかく大変な事になってた上にその人に嫌われるし、ついでに死んだと思っていた大嫌いで地獄に堕ちてろって思ってた奴が生きている上に幸せですよーって事も知るし
その直後に友達だと思っている子と手伝っていたボランティアが存続の危機に立たされたっていうか実質活動停止になった事を知るし……
……で、今に至ります
【ごめん、全然かい摘まんでない、と少女は気まずそうに視線を反らして】
【なんといおうか、色々と見えてこない話である】


343 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/18(火) 23:02:38 oFkCLf9I0
>>342

……俺の感想をかいつまんで言うと、よくわからねえ、だな

【話を聞き終えた第一声は、首を傾げながら発せられた】

しっかしなんだぁ? お前、相当面倒な状況になってんな
赤の他人のおっさんとやるぐらいだから、そりゃ面倒だわな
しかも死なねえとかすげえな

【この男でも思わずちょっと同情したくなるぐらいには、少女の状況は大変そうに見えたらしい】
【うーん、と考えてるのか考えてないのか分からないような唸り声をあげていた】

やっぱ聞いてもよくわかんねえな
なんかちょっかいでも出してやろうかと思ったが、出しようがねーな

【考えることをあっさりとやめた男が、また少女に視線を戻す】

で、好きなようにするっつってたけど、どうすんだ?
オトナになったお嬢ちゃんはよ

【わざとらしく“オトナ”などと言って皮肉った笑みを浮かべる】


344 : 名無しさん :2018/12/18(火) 23:24:38 NLMfL4dw0
>>340

――――そうだね。希代の悪党――とか。どうかな、……。ふふ。良かった。だけどね。怖かったんだよ? ――言ったっけ。
すーっごくね、怖かった。わたしたちにとっての利害と、あなたにとっての利害が、おんなじかって、ほんとに、会うまで、会っても、分からなくて。
"そういう"お話するのは、――わたしには、向いてないね。次は他のひとにお願いしたいな。――――……なーんて、

ううん、いいよ、気にしてない。

【どうしてだろうか、そんなにも恐ろしいと思うのに、どうしてか、ふっとしたときに、それよりずっと近い関係性に思えてしまう。近所に住まう年上のお兄さん、みたいな、】
【そんな風に思ってしまう瞬間があるってこと、言いだすのは難しいけれど。――とにかく確かであるのは、彼女は交渉役にはあんまり向いていないってこと】
【だから次はだれか別のひとにお願いしようなんて言って笑う。笑ってから冗談めかす吐息を漏らして。件の半魔のことは、それで終わりにするのだろう。気にしてや、いないから】

んーん、いい。ほかのひとの分もらうんじゃ、――それじゃ、きっと、違うから。

【――――ならば、きっと、少女は、セリーナからもらいたいのに違いなかった。姉と慕うひとに認められて、それで、受け取りたかったのだと】
【けれど現実として少女がセリーナより受け取った最後の言葉は、(わたしには出来るはずないって、)】

でも、――――今のわたしじゃ、へびさまに、後悔させちゃうの。"こんな風になるなら"、……そんな風には、言わせない。
こんな風になるって分かっていたなら、しなかった。きっとね、へびさまはそんな風に言うから。言うけど。――、そんなの許さないの、だって、――悪い子だから。
だからわたしは、――――。――、――ご飯食べて、よく寝るのが、一番いいよ。

【曖昧に笑うならなぜだか自嘲めいた色合いになる。だってきっと彼女は自分の命にだって納得していないのだから。"だから"、】
【――"出来る"からって食事も睡眠も限界まで削った結果に"かみさま"になっちゃった子が言うのなら、いやあな説得力も溢れるのだろうか、よほど稀有な例だとしても】

【じゅうと焼ける音がいったん引っ込む気配がした。よく焼けたのをお皿に取り上げて、――――じううと再び聞こえる音は幾分も水っぽく、少しすればいい匂いがする】
【やがてそれも落ち着くのだろうか。ならば、――よいしょって軽い声、いくらか振りにカウンター奥より姿を見せる、お店のお盆にいろいろ乗っけて】

――はいどーぞ。

【――かたんっ、と、彼の前に置くお皿。見下ろすなら、ぽてぽてぽてと横たわるより寝そべる仕草なのは、ハンバーグで、】
【ただ店で供されるようなものというにはいくらも家で食べるようなハンバーグに見えた。たっぷりかかったソースはケチャップとソースとそれから二人飲んでいたワインと】
【お肉を焼いた後の肉汁と脂とをベースにしているからお肉とよく馴染んで。ハンバーグの中には細かい角切りの玉ねぎがたくさん、お肉は豚肉だけ】
【付け合わせなんて洒落たものは何にもなくって。ハンバーグとご飯と、それだけ。だからやっぱりフォークとナイフなんて似合わないもの、ほんとはお箸が一番おいしいんだけど】
【彼が使えないって言うのなら、フォークとナイフの準備もきちんとあったから。――そうして食べるのなら、やっぱり、それは、ごく家庭で作られる味をしていて】

郷土料理でもなんでも、ないんだけど――。

【――――どうやら、こんなハンバーグが、少女がセリーナに初めて振る舞った食事であるらしかった。くすくす笑って自分も席に着くなら、彼女の分は、小さなのが一個、】
【――それから、もう一つ、お皿があった。少女が自分の分としたのと同じくらいの大きさのが乗ったお皿。ならば少女はそれを、箱の前にと置いてやり】
【自分はもう彼の料理を食べさせてもらったからお腹は空いていなくて。それでも同じ味わい、共有したくて。それなら箱の子だってお客様、――気づくのが少し遅くて小さいけれど】

【(ならば少女だって聞いていないことはたくさんあった。自分が居なかった間のこと。何があったのか。何がなかったのか。何にも知らなくて、知らないままで、)】


345 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/18(火) 23:51:14 BRNVt/Aw0
>>343

……うん、だろうね
私でも所々よく分かんないもん

死なない、っていうか……多分仮死状態になったのかな?そういう仕組みとか親から聞いた事ないからそこの所よく理解してないんだけど……でもそうとしか考えられないっていうか……
【男の反応に少女はううん、と顔をしかめて】
【唸りながらも何か考えている男を見て少しだけ身体を起こすも、ちょっかいの出しようがない、と結論を出す男に、ダメかー、と声を上げて勢いよくベッドに身体を沈める】

【そうして、好きなようにするとはどのようにだ、と問いかけた男に少女は、んー、と唸る】

そー、だなー……取りあえず思い付いたやりたい事を片っ端からやってみる、とか、そういうのになるんだと思う
そうしたらその内に好きな事とか本当にやりたい事とか見つかるかもしれないし
【少し楽しそうに語る彼女。しかしふと少し考え込むような表情になって】

……ねぇ、近い内に世界が滅んじゃうって言ったら──
【信じる?と尋ねながらそちらを見やる表情は何処か悪戯っぽくて】


346 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/19(水) 07:14:57 6.kk0qdE0
>>334

「ガアアアアアアアアアアアッ!!」

【力と質量が再び激突する】
【尾の一撃に対し、大剣を滑り込ませて直撃を回避するも、衝撃を殺す迄には至れず】
【吹き飛ばされ、そして壁にクレーターを作る】
【無論、常人ならばこの時点で即死か、良くて全身複雑骨折だろう】
【だが、更に剣士が常人離れしていたのは、此処からであった】

「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!」

【ディミーアの異能、重力操作、これを以て壁に垂直に立ち、恐竜を見下ろしている】
【そして、其ればかりか】

「ガアアアアアアアアアアアッ!!」

【その状況から重力を操作、恐竜に対して水平の方向へと落下】
【構えられた大剣は、状況に対応出来ない恐竜の胴体を直に捉え、そのまま硬い皮膚を破り、切り裂いた】

「ギャガアアアアアアアアアアアッ!!??」

【だが、まだ絶命には至らない】
【ダメージが通り身体をその場に崩しながらも、闇雲に鋭く大きな爪を振るい、牙を突き立てんと噛みつきを繰り返している】

「何をしている?」
「誰だお前?こんな所で……と言うかそいつは……取り敢えず、トドメを刺した方がいいぞ、手負いで暴れられるのが一番マズイ」

【ディミーアに声を掛ける者があった】
【キャスケット帽を被った小柄な少女と、傍に対照的な身の丈の大きな男性】
【状況を把握しきれて居ないが、異形の恐竜と少なくとも人に見えるディミーアが戦っている様子は理解できて、この様に声をかけた】


347 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/19(水) 08:29:14 6.kk0qdE0
>>336

ーー艦長公室ーー

「ん?」

【爆煙の先、本来存在する筈のアリアの姿は無かった】
【少々小首を傾げる動作をするも】

「なるほど、これは、やり手だ……下からか!」

【瞬間、道賢は何かを感じたのか、数枚の呪符を取り出す、最早思考も何も存在しないであろう艦長だった異形はその場で咆哮しつつ辺りを見渡すばかり】
【取り出した呪符は、拘束の術符、それを目の前の艦長だった異形の存在へと数枚投げ付ける】
【拘束術符は、そのまま幾本もの光の鎖となり、その異形の身体をその場に貼り付け捉える】

「ガアアアアアアアアアアアッ!?」

【その溶岩と岩石の如き身体の上に乗り、そのまま下からの攻撃の盾として】
【アリアの対人散弾、焼夷徹甲弾が次々と異形の身体に食い込み蝕んで行く】

「ガァッ!!ガァッ!!ギギャアアアアアアアア!!!!」

【止め処なき弾丸の嵐、その度に身体が崩れ、表面の岩石が溶岩が剥がれて行く】

「少々、此方も手を使うか……全くこの国の戦力とは、侮り難いが」

「ガッガッガ……」

【弾丸の嵐が終われば、同時にその場に倒れ伏す艦長だった異形と、床に降り立つ道賢】
【異形は完全に沈黙し、最早息を吹き返す事は有り得ないだろう】
【あまりの攻撃の凄まじさに、元の形を留めない程なのだから】
【一方では、更に呪符をばら撒く道賢】
【2種類の式符をアリアが飛び込んだであろう、階下へと繋がる穴に多量の符を放り込む】

「八咫烏、地蜘蛛、これで十分か、さて遊びは終わりだ、沈む船に用はないのでね」

【八咫烏の札は、投げ込まれれば黒い3本足の鴉となり、艦内を数多く飛び回り、アリアの姿を見かければ一目散に向かい来てその身を啄ばみに、或いは爪で切り裂きにかかるだろう】
【地蜘蛛の符は、掌より一回り大きな黒い蜘蛛、床を多量な数で這い回り、アリアの姿を見かければ集ってその神経性の猛毒の牙で噛み破りにに掛かるだろう】
【そして道賢は、艦長公室の船窓を開け放し、そこから覗く水面と空を見上げて、式神符を2枚手にして】

「所属を訪ねよう、熟練兵、何、ちょっとした土産気分だ」


ーー港湾付近ーー

「大丈夫ですか!?くっ了解……スリーピーホロウ、所定位置へ向かいます!!」
「スマホさん!!」
「おっけー!ライ……じゃなかった!スリーピーホロウ!直ぐ発進よ!」

【通信直後、待ってましたとばかりにエンジンを掛けて車を発進させるライガ】
【首無し騎士を題材にしたホラー映画のタイトル、その真意は果たして……】
【兎にも角にも、ミレーユの指定した位置にそして所定時間の少し前に、ライガの運転する大型のバンは到達するだろう】

ーー艦内通路ーー

「成る程、これは便利な能力ね!」
「ああ、弾丸の軌道を氷で逸らして弾く、切れ者の技能だ」

【ミレーユの土壇場で繰り出される、完璧な計算に基づいた異能】
【厳島と賀茂は、その能力の使い方に感心して】
【そして、その技巧は他の場面でも発揮される事となった】

「ん?何だ?レンズが、ええい!全くこの場面で……」
「曇りか、光の差し込みか、此方もだ、見難いったら無い」

【ミレーユの張った氷の罠、それは狙撃者達の目には、スコープのレンズの反射に見えて、やがて……】

「よし!今だ!撃て!!」
「……ッ、ガッ!」
「死ね、テロリスト!ぐはッ!」

【引き金を引いた瞬間、頭を撃ち抜かれ、弾き飛ばされたのは、他ならぬ狙撃兵2人だった】

「どうした!?何だ!?何が起こった!?」

【狙撃指揮官だけは、何が起こったのか解らず、ただただ、混乱し慌てふためき、2人の脳を血をぶち撒けた死体の間を、右往左往するのみであった】
【そして、ミレーユと4人は出口へと至り甲板へと出るだろう、其処には】

「テロリスト共と脱走兵よ!お前達に逃げ場はない!速やかに武器を捨て投降せよ!」

【甲板に出た5人の眼前に、広がり囲む様に、着剣小銃を構えた海兵達が待ち構えていた】
【数は、艦の残りの兵力総てを結集させたかの様な数で、確実に5人を捉える腹積もりらしい】

「繰り返す!薄汚いテロリスト共よ!命が欲しくば武器を捨て投降せよッ!!」

【全体指揮官らしき人物が、メガフォンでがなり立てる】


348 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/19(水) 15:45:11 oFkCLf9I0
>>345

うーん? 獣人っつうか妖怪のことはよくわかんねえな
死なねえってのもいいんだか悪いんだか。まぁ、俺としちゃお前が生きててラッキーだったけどよ
何せ楽して処女が食えたんだからな、けけけ

【そう言って笑う男の評価の基準はいつでも自分だけだった】

それでいいんじゃねえの?
やりたいことやってむかつくやつなんか殺すなり殴るなりすりゃいいんだよ
どーせこの世界はロクデナシどもの世界だ。好き勝手にやる方がちったぁマシになる

【男は気楽に笑っていたが、考え込む少女を見て、何事かと少し黙り込んだ】

……は? 世界が滅ぶ?

【へらへらとしてばかりのこの男も、その言葉には一瞬戸惑いを見せた】
【僅かな沈黙を経て、気の抜けたような笑みを浮かべた】

へへ、そりゃあいい
そうなっちまうんなら、その日を祝って乾杯できるな
やるのが俺じゃねえってのがちょっと気に入らねえが、それでもこのくそったれな世界が滅ぶっていうんなら
俺のくそったれな人生もちょっとはマシになるかもな

【男の指先が首にかかった金属製の鎖の先、鎖を通した銀色の弾丸を摘み上げる】
【視線が弾丸に注がれる。行為の最中でさえも、肌身離さず持っていたものだった】


349 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/19(水) 15:54:35 oFkCLf9I0
>>346

【斬撃が強固な皮膚を切り裂き肉を断つ】
【その勢いのままに、反対側の壁に着地。剣士の灰色の双眸が怒り狂う恐竜の姿を捉えていた】

頑丈だな、悪くない
リハビリにはもってこいの相手だな
悪いが、このまま俺の練習台に……ん?

【闖入者に対してディミーアが素早く大剣を構える。声をかけられた上でも警戒を崩さなかったが】

(何だこいつらは、敵か?)
(第三の勢力……うっかり間違って二対一になるのは面倒だし、一対一対一も不確定要素が増えてうざいだけだ)
(相手はバカどものために喜んで死ぬような真正のバカだ。生かしておいても情報は取れない、か)

【その助言には従わざるを得なかった。一瞬で結論を出すと、再び跳躍】
【剣身から魔力の青い燐光が迸り、魔術が発動。ディミーアの身長ほどもある大剣がさらに巨大化】
【超長大な刃がその大質量のままに水平方向へと“落下”して、恐竜の胴体を両断すべく迫る】


350 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/19(水) 20:49:18 WMHqDivw0
>>289-291 >>鈴音ちゃんさん

【――――ぎちりと軋む音。女の声。理解できないはずなどなかった】
【だって彼はイイ歳した大人だ。きちんと生きてたらもう35歳にもなる】
【それなりに、それなりの時をそれなりの質を保って過ごす方法だって知っていたし、】
【今更新しく罪を犯すのがイヤだなんて純なこと考えるほどきれいな存在でもなかった】
【所詮は“冒涜者”がヒトを捻じ曲げて創った化物だ。人殺しをしたことないはずないし】
【その数だって最早覚えてもいないのだから。知らない数字のカウントがたった一つ増えるだけの話】
【そもそもそれが増えるかどうかもわからない、彼は鈴音の正体を知っている。死なずの化物】
【だから正解がわからないはずなかった。今更ヒトから迫害される化物になるのが怖いだなんて】
【思いやしない。思いもしない。実際言われたこといっぱいある。今回もそれと同じになればいい】

【それだけ。それだけ。それだけ。今更。それだけ。それだけ。   (なのに、)】


――――――――――――ッ、


【動作を捻じ曲げられて鈴音の背に向かう触手を、無理矢理止めるみたいに】
【他の触手が何本も何本も伸びていた。それでその、ただの一本だけを必死に抑えていた】
【包丁を握るそれだけを、必死に、必死に、抑えて、それでも止まらないなら】
【悲鳴――なんて大きな声は出さない。外にバレたら「まずい」から。だから彼は】


「鈴音ちゃ」「ン」「リン」「音ちゃん」「鈴音、」「……………………ちゃん」




「                ――て                」


【――――――死にかけの蚊の鳴き声みたいな音しか出さない。そうして紡ぐ声色は】
【どうしようもなく抑圧されきって、けれど今にも泣き出したいのを我慢している】
【幼い幼い子供みたいな、あまりにも情けないものだった。それで何とか、ことばを作るなら】

【その内容は何だったんだろう。何かを懇願しているのだけは確かだった】
【最後に「て」が付く言葉。「逃げて」。ふつうに考えるのならたぶんこれ】
【あるいは「殺して」。まあ言い出しそうではあった、彼もふつうにやったんでは、死なないし】
【きっとそのあたりの言葉なんだろう。ふつうに考えて。彼はいい大人なんだし。間違っても、】

【「助けて」だなんてそんな、何もできない子供みたいなこと言いっこない、だって彼は大人だし、】   【本当に?】


351 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/19(水) 21:59:02 BRNVt/Aw0
>>348

あはは、分かんなくても普通は大丈夫だよ多分
そーゆーの普通に生きてたらそんな関わる事ないんだし
……本当に死ななかったっていうの良いんだか悪いんだか分かんないよね、私は痛覚バカだから大丈夫だけど痛覚あったら地獄だっただろうし
【考えただけでゾーッとするよね、と苦笑したのも束の間、相手の発言に、うっわ……やっぱりサイテー……と引いたような表情になって】

……うん、そーする
理不尽な目に遭って泣くくらいなら私は笑って生きてやる
他の奴らは笑ってるのに私だけが笑えないなんて、すごくすごく悔しいから
【やりたい事をやって好き勝手に生きる方が良いと言われれば少女は頷いて、真剣な表情で天を睨んで】
【半年以上前──不本意にもこの大陸に連れてこられてしまった時、少女は『苦境から抜け出して笑って生きてやる』と誓っていた。その誓いは激動の中でいつしか薄れていって】
【だから『これ』は再定義、なのかもしれなくて】
【ただ、少し違う所があるとすれば彼女が"ワルイコ"になってしまったという所なのだろうが】


……ふぅん、そんなの嫌だーとか思ったりしないんだ……へーんなの
【くつり、と少女は笑って】

私はね、もしそうなるんだったら──それまでが制限時間
その時までに本当にやりたかった事とか好きな事とか見つかって、そうして「まだやりたい事あるのに!」って滅亡を呪いながらいなくなれたらいいなって
……まあ最善はやりたい事やって満足してその日を迎える事なんだろうけど、妥協点はそこかなって

【そういうと少女は男の目が向かう先──銀の弾丸を一瞥して】
【そういえばずっと着けてるけど御守り、なのかな?と思案して】
【この男も何かしらを抱えているのだろうか、なんて事を思ったのだろう】

……ま、実際に滅びるかどうかは分からないけどね、もしもの話
そんな不確定な事より確定的な事を話そっか

正直なところ、どれくらいくれるの?
【たっぷりはずんでやるって言ってたよね?と少女は何処と無く蠱惑的な笑みを浮かべて男を見て】
【少女なりに気を使ったのだろうが如何せん話題が下衆い。となれば彼女も案外ワルいコなのかもしれなくて】


352 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/19(水) 22:35:11 oFkCLf9I0
>>351

ふーん、なんだか立派なこと言うようになっちまって
生意気なガキだぜ。数時間前には“もうどうにでもなーれ”みてえな感じだったってのによぉ
女も処女じゃなくなると変わるのかね。それとも、“俺の”がよっぽど良かったかね、ケケケ

【少女の変化が面白いのか、相変わらずな表現をして喉奥で笑う】
【銀の弾丸を眺める表情が変わり、何か遠くの、あるいは過去を見つめる瞳となる】

そうだなぁ、俺なら……

【自分ならどう生きるか。そんなことを言いかけた口はすぐに閉じられてしまう】

……やっぱいいや。ベッドの上で言うようなことじゃねえし
まぁ上手くやれよ。考え方変えたからって上手くいくほど、この世界は楽じゃねえしよ
俺よりはすでに立派だから、どうとでもなるだろうがな

【そう言って弾丸を手放す。立派だという言葉には、意外にも皮肉めいた気配は微塵もなかった】

はずむ? ………………はずむ? 何の話だ……?
………………
…………

………………あ、金か!

【ぱん、と手を叩く。マジで忘れてやがったこいつ】

あーあーあー、忘れてたぜ
そうだなぁ、いくら小遣いやろうかなぁ

【しばし思案顔。次第にそれが悪事を見出した顔に変わっていく】

それは、あれだな、これからのお前の態度次第ってところだな
つーか、まだちょっとしかヤってねえだろうが。ぶっちゃけ金なら結構出してやってもいいけどよ
もうちょいやらせろよ。お前も、一回目だと何が何だかよく分かんなかっただろ?

【ベッドの下に放り出された服の中から財布を取り出して、少女の前に揺らす】
【一応、金を払う気はあるらしい。ただし条件付きで】


353 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/20(木) 00:15:22 BRNVt/Aw0
>>352

生意気……?そーぉ?ちょっとは悪い子らしくなってきてる?
【少女は男の言葉に得意気に笑って】

ま、もうどうにでもなれって心情は変わらないけどね
方向性が逆になっただけ……だと思う
【そうして後半のセクハラめいた発言は男の言動に慣れてきたのかはたまた反応しない方が良いと思ったのか、とにかく華麗にスルーする】

上手く、ね……ちょっと不安ではあるけどね
でもまあやるだけやってはみるよ
だから、まあ……おじさんも……何か分かんないけど……頑張っ、て?
【そうして上手くやれよという言葉にはそっちも頑張れ、と返そうとするが何をどう応援すれば良いのか分からないので最終的に疑問形になってしまって】


…………は?
【唐突にはずむって何の話だと聞かれ、彼女はぽかんと口を開ける】

はっ!?忘れてた!?冗談キッツいんだけど!?
っていうかホテル代位は払ってほしいんだけどお願いしますホント今一銭も持ってないんですけど
【じとーっと相手を睨む少女。だが声は次第に小さくなっていき目は涙目に、全身は面白いくらいにぷるぷると震え出して】
【元々死ぬ気でいたのだろうから金銭を持っていないのも道理なのだろうがそれにしてもひどい】

【そんな中目前に財布をぶら下げられ条件を出されれば】

……ああもう!これだから大人っていうのは!
【若干涙目になりつつ叫びながらも結局条件をのむのだろう】
【やはり男の方が一枚上手であって】

【そうして、夜は更けていくのだろう】
【ただ、一度目にあったような手足の冷えはもう起こらなかった、のだが】




/この辺りでしょうか!絡みありがとうございました!


354 : 名無しさん :2018/12/20(木) 00:34:57 NLMfL4dw0
>>289-291>>350

【入口から半身を乗り出して話す少女の声が店内に聞こえていた、曰く変なひとにもらった箱なのだと。全身とにかく紫色した変な少女にもらったのだと、】
【まさかのまさかで"カニバディールにもらいました"だなんて言えるはずないし、そもそもこの箱は"そのため"のものではないから。めいっぱいな嘘は、けれど、綻びつつあった】
【思いつく中で一番変人かつ面白そうなことなら何でもやりそうな存在を思い浮かべながら世界中が知るところの悪党にもらった箱を言い訳にする少女、なんて、稀有すぎる光景の最中】
【それでもさっきの光景を見ていたと言うのならば、少女の言葉はどんどんちっちゃく押し込められていくようだった、――近くの住人に顔が知れていたところで】
【――もう半年近くも姿を消していたのだ。ましてやいかにもなにか怪しい状況の中で、ほとんど扉に挟まるように中を見せたがらない、なんていうのは、やはりどうしても――、】


――――、っ、なあに、ヤサカさ、っ、――――――――――、っ、

【扉の陰の足元がわずかな苛立ちを示しだした、頃だった。近隣住民との会話はごく平行線、そのうえで人数に押された少女の情勢はどんどんと悪くなる、その、瞬間】
【呼ばれるのなら、少女は振り返るのだろう。扉の向こうの声がちょっぴりうるさいみたいに、ぐっと扉を押しやりながら。むーっと拗ねた顔の少女が振り向いた、刹那に】
【――――色違いの瞳が、うんと丸くなる。丸くなって、わずかに身体が強張るのが見えるのだろうか、だけれど、――――――ばたんっ、と、】

【うんと高いヒールの靴で後ろに蹴飛ばすみたいに扉を閉めるのなら、鍵までかけてしまうのだ。がちゃり、重たげな音。外からの声が少し大きくなる。けど、聞こえないから】

ヤサカ、さ、――、

【包丁を握りこむ触手を他の触手が抑え込んでいる光景。ぞろぞろざわめく音がするのはきっと気のせいだと思うけれど、それでも、――血液の流れる音すら煩く思えた】
【そんな血ほんとうはありやしないのに。そのすべてが魔術と魔力で代替されている紛い物なのに。だから、だろうか、――死ぬのが怖いわけでは、なかった】
【全く異なった姿に変貌った彼と、その中に孕まれているのだろう憎む彼女と。彼に殺されるのなら仕方ないと思える気がした。彼が世界を救う英雄を望むなら、それでもいい気がした】
【――――だけれど、彼女に殺されることは、ぜったいに、嫌と思ってしまうから。だから少女は彼に彼女に心臓を委ねない】

――――――――――――――、"いいよ"。

【ならば彼女は彼の言葉をどう捉えたのだろう、釈然と、しなくても――少女の行動そのものは変わらなかった。めいっぱいに抑え込まれる触手を視界にとらえながらも、】
【こつんと近づいた距離は七十二センチをいくつか数えて、ふと気づくのなら、彼の目の前に。――もしそれまでに彼がその意思が手放してしまうなら、容易く、殺せる位置にて】
【ふわっと伸ばした手が彼の首元を捕まえようとした。そうしたなら、そのまま、ぐうっと引き寄せて、抱きしめようとした。かすかな甘い匂いさえも伝える距離感】

【伝えるより早く感じるより直接に与える感覚は、――いつか二人神様のための空間で出会った時のような、魂同士が触れ合うような、そんな、ものであるなら】
【あの日に感じた全部を思い返す、自分の中に招き入れた彼の形を思い出す、それがどんなに複数が混ぜ合わさった奇々怪々なものだとしても、(だって自分も似たようなものだから)】
【ならば少女は思い返す彼の存在の形から、反対にミチカだけを手繰ろうとするのだ。見たことのない異物こそ彼の中に入り込んだ"彼女"だと判断して、】

だから、わたしのこと、信じてて?

【――――――その方策が通用するのなら、彼は"自分の中"をまさぐられるような感覚、覚えるのだろうか。そうして彼女は、蛇の目の索敵を受けるのだろうか】
【縛られた手首でも、動けと念じれば手枷など消えてしまうみたいに。"この時点"の彼女は未だ神様の力の振るい方を知らぬけれど、それでも、そうだとしても、願うから】

【触れられるのなら、――少女は、今となっては魂そのものに刻み込まれた転移の魔術式、発動させるのだろう。触れたものにまで範囲を広げるように調整された、それであるなら】
【そうして彼の中から彼女だけを弾き出そうとする、あるいは呑み込まれたままの身体ごと。それとも概念的な索敵であったなら、――? 分からずとも、】
【もしも触れられないのなら。その前に、背中でも突き刺されるのなら。思惑通りにいかないのなら。また何か変わって来るのだろう、ただ、今出来ることなんて、きっと、】


355 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/20(木) 00:42:06 E1nVzEpQ0
>>337

【燻る火種の欠片があれば、エーリカの言葉は焦げ付きすらしたのだろう。 ─── 正鵠を射た殺意と物言いであった。】
【本義であればアリアにとって、過去の出来事を清算するだけでしかなかった。故に彼女にとって、慙愧はあっても躊躇はなかった。だが、復讐の連鎖に手を貸す意志があるならば】
【逡巡を振り切る選択も、結局は選ぶ事になるのだろう。 ─── 細い頤が、曖昧に頷く。瞬く睫毛は堪えるようでもあった。純絹の煌めきを帯びる長髪もまた、音もなく肩口で揺れた。】


「 ─── そうあってくれるのは、私も、嬉しいの。」「 ……… 決着を付けなくては、ならないから。彼女の息根に、止めを刺して。」
「ほんとうに難儀なものね。」「こんな身体であっても、齢を重ねる度に、負う物ばかり増えていく。どこまで行っても、儘ならないわ。」


【ふッと唇端を緩めるのは自嘲の笑みに似ていた。 ─── 神でさえ手に余る人の心を、機械仕掛けが如何と出来る道理があろうか。】
【無論ながら背負う重さが決して不幸ばかりでないという事をアリアは深く知っていた。だがそれでも、振り向き様に悔いる事はある】
【だからだろうか。 ─── やおら、アリアは身を乗り出すのだろう。硝子の机上へしな垂れかかるように、預けた胸許を自重に歪ませて、ナイフから離れた右掌が、エーリカへ伸びる】
【決意に乾いたその頬を、真白く嫋やかな掌指が包もうとしていた。か細くも長い指先が、しとり、膚と膚の潤って張り付く音を囁く。凶器を握る人間のそれとは信じがたいような、柔らかさ】
【吐息の一ツほどエーリカよりも冷たい鼓動は、だというのに否み難い温もりに満ち満ちているのだろう。ならば彼女の内心は、どうあっても怜悧では有り得ないに違いなかった。】


「だから、 ─── ねえ、エーリカ。」「 ……… 貴女もどうか、つとめて、自愛なさい?」
「もう貴女は相違なく、私たちの同志なのだから。」「もしも貴女が傷付くのなら、私はきっと泣いてしまうわ。 ─── それに」

「貴女もまた、待たせる人を持っているのでしょう。」「その五体を軽んじさせてしまったら、私は、あの子に顔向けができないの。」



【節々で冗談めかして大袈裟なソプラノは幼気さすら籠って、 ─── しかして声音の根源に宿るのは、愛し子を諭す母親のような感情。】
【身体を乗り出すのならば顔貌もまた近付いていた。耳朶へ絡むような甘い言葉尻を紡ぐ唇は、なにかを違えれば重ねる事すら叶う距離、で】
【然るに決して斯様な不貞を働きはしないのだろう。 ─── エーリカの想いが寄せられる先を、深く彼女は知っていた。そうして彼女もまた、親しげな代名詞で呼ばう"あの子"を、案じていた】
【数えうる瑕疵のない顔立ちが愛しげに微笑んでいるならば、凡そ慈母じみた表情であるのだろう。言の葉を一ツ紡ぐ度、漏れる紅茶とメイプルと薔薇の香水と、悠として甘美に薫っていた。】


356 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/20(木) 13:47:29 6.kk0qdE0
>>349

【正に、今のディミーアは戦さ場ならば、戦神と謳われるが如き、苛烈な戦い方であった】
【恐竜にダメージを与え、猛攻を掻い潜り反対側の壁へと】
【2次元では無く3次元の動き】

「いいぞー!誰だか知らんがそのままやっちまえー!!」
「軍曹、スポーツ観戦ではないのですから……」

【間の抜けたやり取りだが、少なくともディミーアに仇成す存在では無い様だ】

「ギャイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!イッガッガッアッ……」

【断末魔を挙げる恐竜の異形】
【更に魔術効果により巨大化した大剣により、文字通り一刀両断に伏された】
【大量の血と臓物が零れ落ち、しぶとくピクピクと動いていた恐竜は、やがて身体中を覆う魔力回路も目も光も失い、物言わぬ骸となった】

「やあやあお疲れさん、何処の誰かは知らないが、この場に居て、しかもアレと戦っている……まさか、厳島中尉の知り合いか関係者か?」

【全てが終われば、キャスケット帽の少女と男性がディミーアに近づいて、こう軽薄に声を掛けた】
【ディミーアに近づけば更に顕著であるが、この少女、かなり丈は小さい】
【警戒は解かぬ様子だが、果たして】


357 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/20(木) 14:49:52 .NhlfEzU0
>>347

【 ─── 甲板へ飛び出す前から聴き取るには十分だった。拡声器の語る欺瞞は非正規戦では有りがちな言い回しであった。】
【忌々しげにミレーユは舌打ちを溢す。雨音は止んでいた。扉越しに射し込む青白い暁光が恋しかった。夜明けが直ぐそこまで迫っていた。】



  「 ……… はッ。抜かしやがる。」「Take No Prisonersが手前ェらの遣り口だろうが。」



【この有り様では降伏した所で射殺されるのが関の山であろう。嘲笑うように吐き捨てながら、腰に提げていた点火装置が右掌に握られる。】
【左手のハンドサインが、4人に其れの何たるかを示していた。立てられた指は3本。 ─── それを1本ずつ折り畳みながら、2秒の後】
【徐にミレーユは外扉を開くのだろう。彼らの銃口が向けられて、或いは撃鉄の引き絞られんとした、一刹那。呟く言葉の、コミカルな残酷さ】


         「 ───── Ka-BoooooooooM.」


【2回。ミレーユは、レバーを引く。 ─── 遠く弾ける雷汞。雲耀の沈黙を経て、大洋を揺るがすが如く一斉に爆ぜるくぐもった轟音と、明白かつ致命的に復原性を超過して震える船体。】
【夥しく湧き上がるバブルパルスの炸裂が瞬く間に機関部へ到達すれば後は徹底した連鎖だった。取り囲む兵士らの脚元を劈いて余りある爆砕が、この艦ごと彼らを吹き飛ばさんとしていた。】
【そうでなくとも照準を狂わすには十分に過ぎる混乱と震動であるに違いなかった。 ─── 「FOLLOW ME! KEEP MOVING!!」今一度ミレーユは叫んで、馳せる。夜明けの暗がりに乗じ、牽制の射撃を交え、デッキの縁を飛び越えて】
【 ─── 波止場へと辿り着ければ幸運であった。そうでなくては沸騰する海面に追われながら、波打際まで泳ぎ着く必要があった。いずれにせよ斯くの如くして、ミレーユは脱出を図ろうとするのだろう。】


>>347


【無数の薬莢。立ち込める硝煙。消せない熱を帯びた二ツの銃口。 ─── 貫徹した弾痕を無数に残す天井を、跳躍と共にアリアは容易く蹴破り】
【そうして階下に残されるのは幾つかの熱量圧力手榴弾であった。己れを追い立てる怪異への応酬として、彼女はそのような反撃を選んでいた。】


「 ……… これで口封じも兼ねる訳かしら。」「全く、 ─── どこまでも賢しらな事ね。」


【死体は口を利かない。 ─── 物言わぬ異形のまま床面に転がった艦長を一瞥して、アリアは一ツ吐き捨てるのだろう。】
【ならば都合として、彼女は二度も煮え湯を飲まされていた。本来であれば彼に語るべき事を語らせる手筈であったものを。戦略的な敗北だった】
【 ─── 同時に、艦が大きく揺らぐのだろう。アリアとしても、ここが刻限であった。口惜しげな眇眼を、対手へと向けながら吐く、台詞。】


「お前のような老醜に、名乗るべきものなど有りはしない。 ……… だが」
「報復者の名前さえ知らぬまま死すのも、些か滑稽であるでしょう。」



   「エッダ・モーザー。 ……… それが、お前を殺す名前よ。」
    「魔笛の叫びに怯えながら、望まれぬ夜を過ごすがいいわ。覚えておけ。」



【明白な偽りの名乗であった。名前を教えたという行為にのみ意義があり、その真偽などは問うに値しないものだった。】
【だが何よりの殺意に満ちていた。 ─── 獣と呼ぶには余りに狡猾で、人と呼ぶには余りに凶猛な、ならば人狼にも喩え得るのか。】
【何れにせよ彼女もまた、この艦より出ずるのだろう。去り際に室内を見回して、得るに値する情報の類を探しはするものの、これだけの闘争を経ては望むべくもない。夜明けの海へと、飛んで】


358 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/20(木) 15:08:47 y6r.Ncys0
>>353

げひゃひゃ、やっぱ女の弱味を握るのはたまんねえなおい!
まあそういうこった、精々張り切れよー?

【震える少女に男はこれ以上ないくらい破顔する】
【その後、当人の要求通りに事は運んだのだが】
【体力的な意味で、先にバテたのは結局、このおっさんの方だったとか】

//乙です!


359 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/20(木) 15:18:55 y6r.Ncys0
>>356

【巨大な刃が恐竜の胴体を二等分に切断。勢いのままにディミーアは壁へと落下】
【コンクリート壁に音もなく軽やかに着地して大剣を背中に収納。本来の床に足を乗せると重力が戻り、元の向きとなる】
【戦いを終えた剣士の灰の双瞳が死体となった刺客を一瞥。続いて二人の方へ向けられる】

自己紹介は自分からしろよ、礼儀がなってないな

【敵意を隠しもせずにディミーアは言い放つ】
【二人の元へと歩き出すが、歩行は剣の間合いの位置で止められた】


360 : ◆ImMLMROyPk :2018/12/20(木) 21:23:03 Nt7ZtIVU0
本スレ>>462
【黒い髪にイタリアンな帽子を被り、見てくれはまるでマフィアのようだ。砂漠を一人走るマフィア。何とも稀有な存在だ】
【煙草から上る白煙が濃藍の星空に一筋、揺らめいては消えていく。彼にとってその匂いは余り好ましいものではなかった】

たんてい……?とは、なんだ?

【徐々に言葉も流暢になってくる。だが、探偵と言う言葉を理解していない辺り、保有する情報量が多いとは言えない】

われ……いや、わたし……おれ……?

『アカウントヒストリーサーチ/ファーストパーソナリティ/ディサイドオン』

俺は……眠っていた。そして、さっき起きた
ここは……どこだ……?

【英語にも似た、殆ど英語と思われる言語を機械的に発したかと思うと、彼はしっかりと自己認識を始める】
【そして、段々と明確な意思を持った受け答えが出来るようになってくる。まるで機械の様に】


361 : ドラ ◆UYdM4POjBM :2018/12/20(木) 22:22:17 XqQAhkbc0
>>296

【イスラフィールが初対面だと言い張ると同時にドラは二ィ〜、と歪んだ笑みを見せながら首を大きく傾け】
【テーブルに少し傾きながら斜め方向からにじり寄るように言葉を放つだろう】


えぇ〜?本当にィ?ほぉんとうにィィ〜〜〜??
ぼくの方はなんか不思議とどこかで見覚えのある顔だと思ってたんだけどなあ〜?
なんだか初対面の気がしなくってさっきからずっと脳内名場面リフレインさせてる最中なんだけどなぁ〜〜一度も会ったことない?


【あからさますぎる。実は以前に会っている人物なんじゃないのって疑惑を隠そうともしていない】
【こちらも今この場に来た時からその事を疑っていた。あわよくば探りを入れようともしていたのだろう、先の発言もそういう意図だ】
【力量を子細構わず把握した、と聞くなりたん、と身に着けたナンバーを指で叩きながら】


会ったことあるならともかく、初対面ならよくぞぼくの力量を今会っただけで把握できたじゃん?

ぼくは1年前まで服役してたし、それ以前からも極力メディアに露出する事を控えてたから、情報は少なかったはずだし?
いくら"モダン焼きとやら"があろうと事前に調べた内容だけでは全貌は不明のはずだ。まさかこんなとってつけた嫌がらせ用のナンバーだけで
ぼくの実力を正確にまでは読み取れないでしょ

―――……それが"わかる"。それがきみの強みとお見受けする。もうぼくの情報を……読み取っているな?


【元より、正々堂々の戦いはあまり行わず宣言なしの電撃戦などを得意とする事からも横綱相撲めいた戦い方はかなり控えめだったドラ】
【自分の情報を味方にもかなり隠していたドラの事を知っているのは―――かなり限られた人物ではないのかと疑っているのだ】
【前々から知っている人間であるか、あるいは『本当に今知ることができる』のか。このどちらかと彼は踏んでいた】

【極めつけはこのぬいぐるみに対する反応だ。当然だがこの『お土産』も反応を探るべく用意したもの】
【表情を抑えめにしながらドラはイスラフィールの狂喜乱舞を眺めつつ答える】


(やっぱりお酒よりぬいぐるみの方に反応したよ……いやぁこれで別人と言われてもなぁ……)

OPも常に食べてるもんねバンビちゃん。基本食物以外に興味を示さない割に
たまに挟んでくる格言はなかなか的を射ていたりしてただ者じゃない、と評価されてて地味に人気が出てるんだよこの子。

でも一度だけ、バンビちゃんメイン回の14話の時だけ珍しく食事を口につけられなくなった時あったじゃん
探ってみたら幼馴染が難病にかかった事で心配で食事が喉を通らなくなって『バンビちゃんに食事が喉を通らなくなるなんて天変地異の前触れだよ!』
なんてキツイ畜生発言に定評のあるひつじのメィちゃんが言ったりしてさぁ……メィちゃん無駄に株下げてやんの

で、バンビちゃんのために願掛け始めたりして友達がようやく退院した所で子リスちゃんが差し出したあんまんを最後の一分で
ようやく口にして……って終わりの奴。あれめっちゃ好きなんだよ!バンビちゃんで人情話とかやれるんだね!この脚本家覚えとこマジで!


【喜ぶイスラフィールに合わせてバンビちゃん絡みの名エピソードなどを口にして盛り上がり同調していくドラ】
【取り繕いながらぬいぐるみを抱えたままなのに付いては「いいよ渡すために来たんだよ……持って行けって」となだめるだろう】
/続きます


362 : ドラ ◆UYdM4POjBM :2018/12/20(木) 22:23:02 XqQAhkbc0
>>361続き

【腕を組んで、イスラフィールの答えをしばらく真面目に聞き続けていたドラは―――聞き終わるや否やハァ〜、とため息をつき】
【少々オーバーなくらいに両掌を上にあげてやや呆れかえったような笑いを浮かべると】


ったく、ひとまずぼくらが初対面だって事を譲ろうか。でもってきみのその言葉を信じるならさ
呆れかえるじゃないの―――……"まだいた"のかい?このクソッタレなご時世になってもなお、悪びれもせずその台詞が吐ける
気骨のある正義ある人間がさ……そのためならばある程度手段も択ばず、苦難だと分かっていても飛び出してっちゃう類の、性根からのお人よしって奴が

ぼくは『そうじゃない』んだよね。ぼく以外の誰かでしかも全く接点がない間柄の人間のためなんかに命は賭けられない
いつも言ってる店の店員の兄ちゃんとか、よく通る道の通学路を引率されて帰る子供らのためとかならギリギリ行けるけどさ―――だから、きみのような奴は眩しく見えるくらいだ



―――だからこそ、『それが出来ちゃう奴がほっとけない』。それがぼくの昔からのタチなんだよね
今も昔も、ぼくはぼくの大好きな奴らを守るためにだけ戦うし、そのためなら命がけで立ちむかえる。だからぼくのような小悪党が
恥ずかしげもなく"justice"なんて名乗ってたのさ。そういう細かいスタンスの違いはあるけど―――それでも同じ道を一緒に歩けるように思える


【す、と立ち上がり恭しく胸に手を当て―――イスラフィールに悪戯っぽくウインクを投げかけながら告げる】


―――それでもよろしければ……うふふ、ちょうどやることなーんもなくって手持ち無沙汰だった所だしね
きみには、きみの言っていることが、進む道が正しいのかどうかを見定める者が、そして道に迷ったときに導く者が必要だと感じたわけだ
たとえばそれは、ぼくのように『太陽』の輝きのごとく先の道を照らす―――天の道を行く者こそふさわしい役目だ


教えてもらえる?きみの"justice"に参加するってのは……どうやればいいんだい?



【事実上の"justice"加入承諾。その言質を取ったものと扱ってもいいであろう発言】
【ドラは今ここで彼女と同じ道を行く決断を示した―――誰が見てもわかる程明確な形で】


363 : 名無しさん :2018/12/20(木) 22:24:43 .Zem7pC.0
>>360

【わしゃわしゃと頭を掻く。ただでさえくしゃくしゃの黒髪が余計ぼさぼさになる】
【シュワルツェネッガーなんて冗談のつもりで言ってみたが、どうにもあながち間違いじゃなさそうだ】
【だがカイル・リースにしては随分とカタコトすぎる。かといってこいつをアーノルドなんて呼ぶ気には】
【到底なれなかった。カイルでもアーノルドでもなければ、そう。呼ぶんであれば──】


『探偵ってのは、自由な商売さ。自分の信じる愛と自由を貫けばいい』
『……と言っても、今のあんたには分からないかもな。分からなくても、いつか分かる』

『ここは砂の国の砂漠地帯だ。分かるか?砂の国』
『今は夜だ。バイクでもう数時間走らせれば、小さなオアシスがある』
『綺麗な寝床とうまい飯なんてのは保証できないが、タバコくらいは売ってくれる商人がいる』

『あんた、自分の名前は言えるか。どこから来て、どこに行く?』


【こほ、と小さく咳をする。タバコのせいだろうが知ったことじゃない】


364 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/20(木) 22:49:13 cO2YK7NI0
>>355
【視線を釘付けにする程の美貌。氷の女王のような佇まいひとつ取っても、超一流の絵画に数えても否は無く】
【そんな美しいひとの笑みには自嘲が含まれていたけれど、それさえもエーリカの視線を釘付けにしてしまうなら】
【………自分の頬を包み、伝うものの正体を理解するのに幾ばくかの時間を要した。最初に理解したのはアリアの綺麗な指先が在ること】
【次いで、そこから伝う慈しみの色濃い暖かみ。………、真っ直ぐ、最短で、一直線に。見目麗しきアリアの想いに触れたなら】


わわっ……!ちょ、ちょっ、ちょっと、あ、アリア、さ……!
ちか、……ちか、ちかいって……!
そっ、そんな綺麗な指でさわったら、……よごれちゃう、…!

わっ、私は、……血まみれで、それだけじゃなくて今までにいろんな奴によごされて、きたないからぁ……!
アリアさんの、きれいなゆび、よごれちゃいますって!前だってフライヤに汚されて犯されたばかりでっ……!だめですって!

(けど、もっと触ってほしい、触れてほしい、………いやじゃないから。こんなに素敵で格好良くて、母親みたいな包容力のあるひとになら)
(しかもこんな薄汚れた小娘を同志って言ってくれるし。傷付いたら泣いてしまうって言われたら……)


【"もう直視出来ない………かえでが惚れる理由、すっごい解っちゃう"】


【照れ隠しをするにも、目を逸らすにもアリアの優しい指先がそれを許してくれない】
【加えて間違いが起こっても不思議ではないまでに近づいたふたりの顔の距離、薫るのは総じて甘いものだった】
【アリアの美貌が、所作が、……そして飾らない言葉の数々が。そして耳朶をやさしく激しく揺らす。甘い言葉がエーリカを恍惚の小娘に仕立てて】
【耳元が性感帯である彼女にとって甘噛みのような言葉を囁かれたなら、もうイチコロで】


………耳元でそんな真っ直ぐで心揺さぶる言葉、言わないでください。、……反則、で。私、耳元、……よわいんですから。

それに私とカチューシャの関係をよく知ってるくせに、その言動は無いです、無いですよ……。
…………小娘たらしも、いいとこです。


【これまでの人生で性的な虐待を受け、薄汚れた白濁で心も体も穢れて】
【赤黒い血液でこびりついた白色を塗り潰すだけの人生だったから、こんなのは初めてだった】
【紅潮する頬、血走りさ迷う視線、すっとんきょうな声色、でも嬉しくって仕方なかった】


…………だから、自愛、……します。
カチューシャの為にも、あの子と一緒に生きて愛を謳う為にも。
それに、かえでやアリアさんと一緒に肩を並べて歩みたい、……から。


【心を許し、ありのままの本当をさらけ出す】
【待ち人と一緒に謳いたい愛があり】
【同じ痛みを分かち合う少女がいて】
【何より真っ直ぐな言葉で自分を同志と呼ぶ人がそうさせた】


365 : ◆ImMLMROyPk :2018/12/20(木) 23:05:53 Nt7ZtIVU0
>>363
じゆう……束縛されず、自己意思に全ての決定権が付与された状態と理解する
探偵は、自由

【既存の情報と照らし合わせるようにしながら、未知の言語を嚥下し、既知の言語へと昇華する】
【だが、どこか間違っているようでもあった。その辺りは、後々訂正されていくだろう】

砂の国……?国家……?
そのような国家の情報は記録していない。よって、知らない

名前……
『アカウントヒストリーサーチ/アカウントネーム/ディサイドオン』
個体名は設定されていない。よって、名は無い

【衝撃の一言。先程の様に何かを確認する言葉を呟き、その結果は何も無いだった】
【正真正銘、彼には名前が無いのだ。人間社会で暮らしていくには巨大すぎる問題だった】


366 : 名無しさん :2018/12/20(木) 23:50:41 .Zem7pC.0
>>365

『そうだ、自由だ。ついでに愛ってやつも』
『愛と自由。生きるのに必要なことは、パンと葡萄酒以外にもある』

【小難しい言葉を少年が並べ立てる。だが最後に紡いだ言葉に、探偵は満足げに紫煙を燻らせた】
【そうだ。探偵は自由だ。まるで自分に言い聞かせるように、頭の中で自由のワードを点滅させる】
【少なくとも自分が知っている探偵は、映画の中でも現実でも、自由だった。そして何より、愛を信じていた】

【続けて少年が発した事実に、そいつはやれやれと言ったように首を振った】
【顔文字だらけのメールを使いこなすアンドロイドがいる世界だ。未来からの殺人マシンが来たって不思議じゃない】
【ただの殺人マシンならまだいい方だ。厄介ごとの気配しかしない。けれどそんなのは、今に始まったことじゃない。だろう?】


『…………じゃあ、今から知っていけばいい。世界のことも、あるいはあんたのことも』

『名前がないんなら…………そうだな、マーカスとでも』
『不便だからな、名前がないのは。気に入らないのなら、まぁ自分でつけるのもいいだろうが』


【デルタ、エコー、チャーリー。他にも名前らしい単語をいくつか列挙するも、どうにもしっくりこない】
【タイベリアスは大仰だしカーンは悪役がすぎる。どうにも自分は名付けのセンスが怪しいようだ】
【がしがしとまた頭を掻く。どれもオリジナリティにかける。でも名前なんてそんなもんだ。そう思いたい】


367 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/21(金) 00:04:36 E1nVzEpQ0
>>364

【おぼこなる少女の所作に、 ─── 幾らかアリアは一驚を喫しているようだった。晒した碧眼を釐かに見開き、唇の先を円く開いて】
【そうして数秒ほどもない沈黙の後、ごく邪気もなく吹き出すのだろう。自身の行為の何たるかを、決して理解していなかった訳でなくとも】
【ここまで掌からの熱が高まるとは終ぞ思っていなかったようであった。艶やかさに満ち満ちた娟容を、少女のように微笑ませながら。】


  「 ─── もう」「存外に、惚れっぽいのね?  ……… ふふ」「全く ─── あの子に、妬かれてしまうわ。」
  「でも、 ─── そうね。」「 ……… こうして約束は出来た訳だし、良しとしましょうか。破ったら、許さないんですから。」


【 ─── 指先は、エーリカの髪奥へと伸びる。艶めく乙女の色合いを、手櫛に通して梳き落としながら、後頭を撫ぜようとするのだろう。】
【宥めるような所作であった。たとえそれが彼女の望む意味を成さぬのだとしても。或いは徒ら/悪戯に少女を揶揄っているのかも知れず】
【然して彼女が愛を求め与えられた理由も何処となくその微笑は察しているようだった。本心では何より少女を慮るが故の慰めであるのだと、その指先を受け取る事も出来るとしても】
【やはり時折に人差し指を立て、その髪先を巻いて弄ぶ仕草の類は、平生の振る舞いからは余程あどけなかった。 ─── 然らば、少女の拠り所として在ろうとしているのは事実であろう。】


  「己れにはもう掛け替えがないのだと、常に自覚なさい。」「 ─── そうあることがきっと、私たちには相応しいわ。」


【漸く顔を離して、髪を弄る指も解けば、そう告げて説法も終いであった。 ─── 元の通りに背凭れへ身を預けて、手指の先を胸前で組む】
【それは八課に属する人間としての心構えでもあったろう。各界より選び抜かれた練達の兵たちに、安易な損耗など許される筈もない。】
【だがそれ以上に、きっと少女を護ろうとしていた。 ─── 戦士として今生を切り抜けてきたのだから、それ以上に彼女は多くの同志たちを見送ってきた。】
【記憶の墓碑に刻まれる一節はもう要らない。ましてそれを読み、残る者が悲しむならば。溢るることなく青白い涙を湛えた眦は、再び噤まれた唇より雄弁に、明けない夜を語っていた。】


368 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/21(金) 01:12:54 3azTXNmA0
>>367

むぅー、べっ、別に惚れっぽくなんて、無いですっ!
アリアさんみたいな素敵な大人の女性に、って……ひゃうぅっ、………然り気無く頭を撫でないでくださいっ……っ

くすぐったくて、こそばゆくて―――でも、嫌じゃないし心地いいから余計に、うぅ。
こんなトコ、カチューシャに見せらんない……。

【そう、嫌じゃない。寧ろ、そうしてほしい】
【フライヤの様に弄ぶだけの寒気のする指先じゃなくて、慈しみと慰めが多分に絡んだ優しい指先】
【ずっと甘えたいと思ったけど、かえでやカチューシャの妬く姿が脳裏をよぎって。アリアの指先が離れたなら徐々に冷静さを取り戻す】
【大切な人と最愛の人の妬く姿。それも愛しいと思えるのだけど、それでも程があるのだから自分で自分を戒める】
【それでも、自身をありのままで居させてくれる拠り所であろうとしてくれるアリアの慕情は確り伝わっていた】


【―――】


………、肝に命じておきます。
死んでしまったなら、かえでと甘いものの食べあいっこも、アリアさんに撫でてもらうことも出来ませんから。

それに、いつか帰ってくるであろうカチューシャの拠り所にもなれない。カチューシャひとり遺して死ぬなんて死んでも御免です。

だから、アリアさんも死なないで、ください。
アリアさんがかえでや私を護ろうとするように、私もアリアさんやかえで、他の奴らも護るから―――。


【生きることを望まれるということ。それはエーリカにとって不馴れな願い。何せ今日このときまで社会的死人で、しかも国家のための捨て石だったから】
【死ぬ事前提の透明人間。人に数えられぬ死人にとって、目尻に涙を浮かべるほどに真っ直ぐな気持ちだった】
【誰かを守るということ。それは互いに生き長らえなければ意味のない事で、難題であり、そして何より尊ばれるべき行為】
【赤銅の瞳は涙で潤んで。けれど自分よりも遥かに多くの悲しみを背負った碧眼と視線を重ねる】


369 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/21(金) 12:17:09 EGD/fsIA0
>>350>>354


【――ぴた、と】

【触手を内側から捻ろうとしていた力が消えた】

【鈴音が駆け寄るその最中】
【星が自転を止めたような虚ろ声が、一滴だけ】


【「――ああ、」】



(あなたも “嘘つき”なんですか)



【響かなかった。蟠らなかった】

【そこに存在した過去さえ消すように】
【それきり――彼の体内を蝕む蠕動は失せた】


【鈴音がヤサカの魂魄へ寄り添ったとき】
【既に女の存在はどこか彼方へ消失していた】
【物質としても、データとしても。澱も残さず】



【芯の抜けた触手から、ずるり、包丁が滑り抜ける】


【ごとん、から、から、から――】

【彗星の尾のような粘液を曳いて、宙を落ち】
【床を叩いて、突き刺さりはせず、緩やかに転げる】

【その少女の傍らまで】



【「――――――――――――――」】



【壁に融け入るかのように】
【虚脱した身をもたれさせ】
【昆虫の喘鳴のような息をしていた小さな口が】




   「…………嘘つき」




【ぽ、と】
【そのとき、ひとつの泡を吐き出すように言った】

【光を反射しない瞳で】
【虚空へ向けて呻いた】


/↓(2/3)


370 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/21(金) 12:18:01 EGD/fsIA0
(続>>369)


「――はじめからおわりまで


 守る気なんて ないのに


 守りたいなんて 言って


 守れるようなふり して」



【 「嘘つき」 】



【包丁を拾い上げた】
【傷を負った小さな獣を保護するように】


【 “ ――じわり ” 】


【体液に濡れた刃を握り込んだ、途端】
【少女の周囲が、涙の視界のように滲んだ】

【何者も近付かせぬような】
【強い念力場の歪みがカルラを覆った】



「――わかったよ りかいしたよ。

 
 おねえちゃんたちが

 ほんとうに守りたかった “子ども” は

 “わたしたち” なんかじゃなくて ―――― 」



【――映り込む】

【濡れた刃の表面に】
【体液溜まりの表面に】
【震える窓硝子の表面に】


【そこに寄り添い合う、】



【 “ 大人でない何か ” たち】





  「 嘘 つ き 」




【嗤っていた、そして】


【刃を自らの喉に当て】
【それを引いた】



【散った】
【鮮やかな赤飛沫】



【風に吹かれた綿毛のように】



/↓(3/3)


371 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/21(金) 12:18:44 EGD/fsIA0
(続>>371)


【拒絶の念力場が溶けて消える】


【少女は十年目の誕生日を前に】
【それ以上空気を吸うのを止めた】

【幼い抜け殻が、床を叩く】



【止めどなく溢れる、鮮やかな赤の液】
【そこへ根を張るように、ゆったり広がる】









【どん どん どん】


【ドアを叩く音】

【激しく】
【無遠慮に】
【何度も】



【どん どん どん】








【遠くからサイレン】



【近付く】


【徐々に】






【回る赤色灯が】
【窓から差し込む】









【閉ざされた室内】

【全てが、赤い陰影だけ】






【――――――――――――――――――】


【――――――――――――】


【――――――――】


【――――】



/Pre-ED
/♪JFDR - White Sun
/ttps://youtu.be/eikLsHzfpL4


372 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/21(金) 13:49:54 6.kk0qdE0
>>359

【軽やかな身のこなし、そして能力を使い熟している証拠であるごく自然な重力操作】
【節々から感じるのは、手練れの戦士の動き】

「ふむ、それもそうだな!」
「軍曹、当たり前の礼節です」

【ディミーアが近づけば、こうやりとりするだろう、ディミーアもまた、きっちりと剣の間合いを外さずに】
【どうにも、先程迄の緊張感も緊迫感とも真逆に見える2人だ】

「私は櫻国国防陸軍軍曹、風野百合子だ!」
「同じく、国防陸軍兵長、杉原重義です、先程はとんだご無礼を」

【軍曹と名乗った少女より、兵長と名乗った杉原と言う男性の方が幾分にも軍人らしく見えるだろうか】
【兎にも角にも、2人はこう名乗り】

「で、お前は何者だ?こんな所で何をしていた?」

【改めてディミーアに問うのだった】


373 : ◆ImMLMROyPk :2018/12/21(金) 14:29:08 Nt7ZtIVU0
>>366
【愛、と言う言葉の本質はこの世に腐る程存在するだろう。だが、そのどれもが正解ではなく、また正解とも言える】
【少年が、少年の姿をした龍がそれを理解するのには長い時間がかかるだろう】

【名が無い、と答えた少年に男は仮初の名を与えた。少年はそれを名だと理解するのに数秒をかけ】
【そして、深く頷いてから口を開く】

理解した。個体名を「マーカス」で登録。以後、この個体名を使用する
世界を知る……学習行動の暗喩と解釈する
問う。俺はこれからどこに向かえば良い?ここには……微細な岩石の粒子や渇いた植物の種しか存在しない

【名を与えられ、更に会話が饒舌になっていく。この会話の中でも急速に思考回路を形成していっているのだろう】


374 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/21(金) 14:36:34 6.kk0qdE0
>>357

「うわっ!?ちょっとこれどうするのよ!?」
「待て少尉、慌てるな、なるほど……策はある訳か」

【拡声器より響き渡る警告と、此方を一斉に照らす探照灯】
【幾人もの海兵が犇めく気配】
【ここで、ミレーユがハンドサインを送る】
【4.3.2ーー】

「行くぞ!止まるな!」
「ええい!もうままよ!!」

【ミレーユに続き、扉から一斉に飛び出す4人】

ーー何をほざいている、テロリスト共が!
ーー命乞いならば、先ず武器を捨て……ん?カ?ブーン?何の事だ!?

【それは、一瞬の内に引き起こされた】

ーー!?な、なんだ!?この揺れは!?
ーー波?違います!爆撃或いは雷撃です!?
ーーば、バカな!!魚雷でも撃たれたと言うのか!?
ーーひ、ひいいいぃぃぃ、ふ、艦が!か、傾いてます!?
ーー弾薬庫で火災!誘爆しています!止められません!!

【甲板の上、或いは船内までも巻き込んでの混乱であった】
【複数の爆撃を思わせる程の波と、轟音、そして間を置かずに傾き始める船内】
【甲板の兵士達は、もはやミレーユ達どころでは無かった】

ーーき、キール損傷!!し、沈みます!!
ーーじ、神通に!神通に救援を!轟沈するぞ!!
ーーう、うわあああああああああ死にたく無い!!死にたく無いいいいいいいいいい!!

【竜骨が損傷した事により、艦は大きくバランスを崩す】
【正に、真二つにへし折れようとしている】

「こうしちゃいられないわよ!続くわ!」
「全く、流石の破壊工作だ外務八課!」
「ま、待って、い、行きます!」
「のるか、反るかなのだよ!」

【ミレーユに続き、4人も牽制に手にした銃器を乱射しながら、傾き始めた艦の甲板の柵を飛び越え、港に降り立つ】
【全員が運良く、無事に飛び移る事が出来ただろう】

ーー艦長公室ーー

「ほう、更に駆け上がるか、その身体能力、身体に何か施しているな?」

【次の手で再び艦長公室へと跳躍して来たアリアを見て、感心するかのような口調で言った】
【足元には、かつて艦長であった異形の死骸、そして無数の炸裂音】
【下級の使役式神を蹴散らされている状況なれど、顔色一つ、目線一つ動かさずに】

「毛頭に死ぬつもりは無いが、エッダ・モーザー、覚えて置こう」

【あからさまに嘘の名乗り、されど少し愉しげに口元に笑みを浮かべる意外、言及はせずに】
【その佇まいは、優雅さも優美さともかけ離れた、何者よりもかけ離れた、狂った獣の如く】
【やがて、激しい揺れと、轟音が響けば、それを合図にアリアは脱出を開始するだろう】
【或いは、拾えるものがあるとすれば、先程艦長に突き立てた、注射器の空が足元に転がって居るだろう、極僅かな液体を残して】
【アリアの脱出を、道賢は妨げる事は無かった】
【脱出後、揺れ傾く艦長室の、その椅子に再び腰掛けて】

「『夜の女王』よ精々『復讐の炎』で抗ってみせよ、楽しませよ」

【呪符を取り出し、くつくつと笑って見せた】



ーー軍港、埠頭ーー

「アリアさん!ミレーユさん!!」
「皆!早く!出すわよ!ライガ!発進準備!!」

【大型バンの運転席、そこから身を乗り出し、艦を脱出するミレーユ達に声を掛ける】
【後部座席のウィンドウはスモークが貼られた黒い大型バン】

「運転手は、お前か!?……すまない、手間を掛けさせた」
「いいですって……ほら、早く乗って下さい!」

【全員を乗せる事が出来たならば、速やかにバンは発進するだろう】


375 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/21(金) 16:29:07 oFkCLf9I0
>>372

(陸軍、か)

【名乗った二人の所属を脳裏でディミーアは浮かべる。先ほどの敵は海軍だと名乗っていた】
【だとするならば、管轄が全く違う所属だということになる。しかしだからと言って、味方だと考えるのは早計だった】

俺はディミーア・エルドワル
自警団の特務部隊『ヴィセリツァ』の隊長だが、今は私用でここに来てる
私用っていうのは、テロリスト認定された厳島を探すってことだ

【質問に対してはあえて嘘偽りなく答える】
【どちらかといえば目の前の二人は敵でない可能性の方が高い】
【その上、敵であったとするならば倒して情報を聞き出してしまえばいい、とさえ考えていた】


376 : 名無しさん :2018/12/21(金) 17:15:10 BPoZSn6M0
>>373

【今までの短い問答で分かることがあった。少年が、マーカスが本当に今目覚めたばかりだということも】
【まっさらな赤子みたいなこと。驚異的な学習能力がありそうだということ】
【マーカス、と名付けたのは間違いじゃなかったとやり取りの中で確信する】
【きっと彼なら学んでくれるだろう。愛も、涙を流すことも】


『まずはオアシスに行く。そこで少し休んで、水と食料を買い足して……』
『あぁ、あんたの服も買ったほうがいいな。靴と、それから良いコートも』
『そこからまた数時間走ってやっと町だ。ちょっとした本ならそこで買える』

『岩と種の学者にでもなりたいんなら話は別だが、そうじゃないんならバイクの後ろに乗るんだな』


【吸い終わったタバコを携帯灰皿に押し込んでから、男はバイクの方へと歩いていく。マーカスがついてくるんなら】
【バイクに乗る手伝いくらいはしてやった。オアシスまで数時間。1人より2人の方が、喋り相手がいる分いい旅と言えた】

【だが生まれたばかりの意識に何を話したものだろうか。辞書の音読はあまりに退屈だ。少し悩んでから】
【手始めにそいつはマーカスにロックを教えることにした。さっきみたいな裂くようなシャウトも悪くないが】
【オーディオを弄る。曲が変わる。甘さが混じる嗄れた声。もの悲しげなギターが荒野に響く】
【カセットの中の誰かが歌っていた。自分は特別な奴でもなけりゃオンリーワンでもない】
【汚したいんなら汚せばいい。同じフレーズの繰り返し。それを退屈だというやつもいれば】
【段々と掻き鳴らされるバックサウンドに何かを感じるやつだっているんだろう】
【男は後者だった。だから探偵なんてやっているんだ。バイクは走り出す】
【止まらないロックンロールを星屑の砂漠にばら撒きながら】


『ここからもう少し大きな町に行くバスが、日に2本出ているらしい』
『その町からは砂の国の首都行きの列車が出ている。首都まで行ければ、後はどこにだって行ける』
『そうだな……まずは水の国を目指すといい。あそこは人が多いからな』
『それか、風の国。UNITED TRIGGER っていう組織の酒場がそこにある』
『今は人手が足りていない上にトップが行方不明らしいが、行って損するようなことにはならないはずだ』
『UNITED TRIGGERに行くんなら……チンザノ・ロッソの知り合いだとでも言っておけ』
『そうすれば、飯くらいは食わせてくれるだろう』


【いくつかの休憩とオアシスを経由して、2人は小さな町に着いた。マーカスに必要なものは適当に買い揃えた】
【残った問題はマーカスの行き先だ。目的のない旅もいいが、最初は指針があってもいいだろう】
【他に何か質問は、と男は付け加えた。この町に来るまでも、こいつはこんな感じだった】
【適当に喋って、質問に答えて。最後にまた質問の有無を尋ねる。愛想がいいとはあまり言えなかった】


377 : ◆ImMLMROyPk :2018/12/21(金) 21:19:03 Nt7ZtIVU0
>>376
【男の話を無言で聞き、内容を反芻する。理解と共に自己解釈を繰り返しているのだろう】

服、人間種が外皮の上に纏う布、と解釈した
今の世界で生活をする為には、「服」が必要不可欠と言うことか?間違いなければ、そう記録する

【そうして、男に促されるがままにバイクの後ろに腰をかける。少年はその駆動二輪をつぶさに観察していた】

これは馬に近いものか?お前の指示によって走行しているようだが
そして、これは音楽か?同様のフレーズを、何らかの楽器の音に乗せて繰り返しているのだと解釈する

【バイクにも、ロックにも、忌避感などは感じていないようだった。むしろ、新たな情報を獲得しようと思考を巡らせている】
【彼にとっては情報は与えられていても実際に体験したことのない物事も多い。この二つはその領域すら超えているが】
【彼にとっては興味深い物に変わりないのだった】

水の国……それも国家の名称と解釈する。まずは、そこを目指すべき
ユナイテッド、トリガー……?それは、人名か?それとも、何らかの存在か?
チンザノ・ロッソ。それがお前の個体名、理解した

【買い与えられた服を着る時には、消耗していた体力も幾らか快復しているようだった】
【長くボサボサとした銀の髪をポニーテールに纏め、白シャツとジーンズにファーのついたカーキのコート】
【右足は太腿まで、左は脛までのアシンメトリーなブーツ。どれも、頑丈で旅をするのに適したものだ】

特に無い。方針は決定した。まずは、水の国だ
俺はチンザノ・ロッソに幾らかの施しを受けた。この場合、感謝をするべきなのだろうか?

【感謝。その情動に関するデータが存在していても、使用するべき場面まではわからなかった】


378 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/21(金) 21:51:35 kQ81MPqQ0
>>368

【黙してアリアは耳を傾けていた。 ─── 緩やかに瞼を落とした時、最早そこに泪は帯びない。悲しい感傷に浸る時間は多くなくて良い】
【組み合わせた己れの両手指を机上に落ち着かせながら、ただ微笑んでいるのだろう。それが彼女の本来であるのだと、思わせた。】
【どこまでも堅固な冷徹の仮面でさえ、彼女にとっては己れを隠す一枚でしかない。その奥に秘められているのは、斯様なる静かな慈愛。】
【 ──── 穏やかながらも決然たる声音が、エーリカの言葉に頷く。自身の内心へ当たり前に積み重ねてきたものを、確かめるように。】


 「 ───……… ええ。」「決して私は、貴女たちを遺して逝かない。」
 「かえでの生きる縁は、私だけだから。 ─── 誰も不幸になんて、しないの。」


【涙を零さんとする少女の瞼に、静かな指先を差し伸べてもよかった。だがアリアはそうせずに、独白に乗せて見守った。】
【 ─── 指先だけでは、このような須臾には不足であった。抱擁へと落とし込むか、或いは成すがままに委ねるか、何方かであろう。】
【徐に頤が持ち上がり、遠い窓の外へ視線を遣った。幾分か明かりの減った摩天楼の群れを、言葉なく見上げていた。】


 「 ……… 今夜も、随分と遅いわ。」「帰る宛があるならば、良いのだけれど。」
 「もしも寄る辺がないのなら、休んでいくといいわ。諸々の使い方も覚えてもらわねばならないし、ね?」


【そう言って彼女は視線を示した。 ─── 喫茶店の向こう側にある、在り来たりなオフィスビル。そこが、彼女たちの一先ずの拠点だった】
【既に時分は日付の変わる手前に差し掛かっていた。ラストオーダーの刻限は過ぎていた。何も言わずにアリアは2人分の伝票を取っていた。歳下に払わせる積りはないらしい。】


379 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/22(土) 01:50:50 pFQ5J1nk0
>>374

【夜明けを過剰に飾り立てる爆轟と炎熱を背後に、開かれたキャビンへとミレーユは4人を押し込める。 ─── 艦長室より転がり出たアリアが、サンルーフへと飛び移り抉じ開けて】
【車体を揺らしつつ最後部の座席に乗り付けるなら、ミレーユと共にしんがりを務める運びとなるのだろう。覆面越しの青い視線が、運転席へと振り向きながら、愛嬌を帯びて投げかけられ】


         「 ──── いい仕事じゃないか、ライガ君。」


【惜しみない賞賛は一呼吸のこと。アリアは予め座席に備えておいた軽機関銃のボルトを引き、ミレーユは対戦車ミサイルの安全装置を外す。】
【 ─── もしも追撃する勢力があるならば、彼女らはルーフを開け放ち、容赦のない抗戦を行うのであろう。まだ任務は終わっていなかった。】


「"レインボー"を経由してポイント-エルドリッジに向かってくれ。障害は全て排除する。」
「非常線の類は全て突破していい。ボク達が援護しよう。アクセルを緩めるな。」


【何れにせよミレーユが指し示すのは、静ヶ崎からは幾らか離れた貿易都市の港であった。 ─── 人目に付く通りや大きな国道を避けるようにも付言していた。】
【水国との往復便を運ぶコンテナ船へ、その責任者たちと予め話をつけた上で、大型車両と幾らかの積荷として偽装した上で帰投する。そのような脱出の手筈となっていた。】
【 ─── 無論ながら彼らの任務が無事に達せられ、アリアの持ち帰る所となったごく僅かな薬液と薬筒のサンプルが然るべき解析を受けられるかは、かかる追っ手の如何程かにもよった。】


380 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/22(土) 10:31:08 m10xtvr.0
>>375

「ん?ちょっと待て」

【ディミーアの名を聞けば、突如百合子は何か考える様な顔をして】
【そしてタブレットを取り出して、暫くフリックしたり、画面を睨んだりしながら】

「ディミーア、ディミーア・エルドワル、確かに『い号文書』に記述があるな、厳島中尉達と共に対黒幕、対レヴォル社の戦いにて共闘……水国自警団所属、後にチームMに加入、間違いないか?」

【恐らくは、本人以外は厳島か或いは翔子しか知らない様な内容だが、スラスラとタブレットを見ながら話し聞く】

「中尉の捜索?此処には居ないぞ、放送にあっあた通りだ、4人の身柄は既に海軍に確保され、現在は水国軍港に停泊中の駆逐艦『雷』に幽閉中、本国への移送待ち及び尋問中だ」
「ちなみに、そちらは外務八課って、この国の特務執行機関が救出作戦を画策中だな今のところ」

【ディミーアが、自身の目的に関して話せば、この様に答えた】

「あれだけ強ければ大丈夫そうだが、私と杉原の任務は厳島中尉の協力者、有り体に言えば仲間達の身柄の保護と情報収集だからな」
「一応言っておくが、私達は君らの味方、厳島中尉達の味方だ、詳しい事情は知らない様子だな……聞くか?」


381 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/22(土) 12:22:09 oFkCLf9I0
>>380

水の国の自警団ってのはちょっと正確じゃないが、概ね正しい

【質問に対して首肯する】

そこまで知ってるってことはマジで俺の味方か、もしくは今すぐ斬り殺した方がいいような敵かのどっちかだな
……ま、冗談だが

【タチの悪い冗談を言って口元を歪めて笑う。性格は結構悪いかもしれない】

軍港、か。そりゃあまた面倒だな
ひとまず事情を聞かせてもらおうじゃないか
あいつらに何があり、お前たちの国に何があったのか、を

【話が重要な内容に移ると、ディミーアの表情もまた真剣なものへと移り変わる】
【手近にあった背もたれが半壊した椅子を引き寄せてそれに座り、百合子に先を促す】


382 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/22(土) 19:21:24 WMHqDivw0
>>354 >>369

【身体の中を探られる感触がふたつぶん在ったはずだった。ミチカと、鈴音と】
【そのうち一方――鈴音に、自身の輪郭のかたちをなぞられるなら。そこでようやく思い出す】
【自身がもともとどういう形状をしていたか。背ばかり高い成人男性。は、と息の音】
【口か鼻で吸って、出すのだと言うことまでやっと思い出せたなら――声を出す方法だって】

待、て……………………待てッ、クソ、逃げんなクソっ、…………!

【投げかけたのはミチカに対する言葉。尻尾の軌跡を残すように逃げてくれたのならば】
【まだそれを引っ掴んで止められただろう。が、最初から何もなかったみたいに逃げられるなら】
【どうすることもできない。なら代わりに何をしようと考えて――は、と息を呑む】

【包丁が床にぶつかる音。それを皮切りにしてバネで弾かれたように体が動く】
【ほとんど床に飛び込むみたいな勢いで、転がり込むようにして、拾い上げようとして】
【しかし手が届かないなら、必死に手を伸ばす。それでも届かない。なら、その向こうに、カルラがいて】


――――――――――――――――ちがう、違う、違う、違う、違う、

ちがうんだ、違うんだって、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、――――――――ッ、


【――言われたことに否定の言葉しか返さない、返せない。限界まで目を見開いて、喉を引き攣らせながら】
【カルラに駆け寄ってその手から刃を取り上げようとして――弾かれる。拒絶される。当然のことだった】
【だってこいつは、さっき子供と――ミチカを喰ったバケモノだ。何が違うって言うんだ。何もかも本当なのに、】

【      べちゃり。   ぶち撒けられる目いっぱいの赤色、被ってしまえば明度の高い銀色によく映えて】
【生暖かいそれを浴びた彼は――――引き攣った顔のまま、そこから動けなくなった】
【数十秒たっぷりはそのまま、静止して――けれどそれくらい経ったら、ゆっくり、ようやっと、動き始める】

…………………………………………鈴音ちゃん。……外の人、…………おれが行く。

【ひどく鈍い動き。震える指先、何度か取り落としながらも確り拾い上げる、カルラの血を吸った刃】
【それの柄を握って、ふらり歩き出す。……謝罪の言葉も出なかった、出せるはずなかった、だって】
【何から何までこいつのせいだ。わけのわかんない行動に出て子供たちを危険な目に遭わせたのだって】
【たんぽぽを引き継ぐって言ったのだって全部全部こいつだ。何から何まで、こいつは、「間違えた」】

【だから――彼はそのすべてを受け入れるしかないのだと悟った。カルラの血を浴びた躰で外に出るなら】
【間違いなくこいつがすべての犯人であると、皆に受け入れてもらえる。そうしたら鈴音は被害者になれるから】
【それが正解だってわかってたはずだったのに。イヤだなんて思ってしまって、■■て、なんて願ってしまい】
【今更■■てもらえるなどと、間違ったことを考えてしまったから。だから全部ダメなんだ、おれはずっとずっと悪い男だったのに】

【(本当に、ずっと、ずっと、――――――「二十五年間」ずうっと間違えていた自覚はあったんだから、今更)】

【――――――鈴音の目も見ず(あるいは見られずに)、ドアへ向かっていこうとするのだろう。そして鍵に手をかけて、】


383 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/22(土) 21:17:25 WMHqDivw0
【この時期に氷の国に呼び出すのは流石に酷だと思ったらしい。……それくらいの情は、まだあった】
【であるなら――「彼女」のほうから出向くのだろうか。アルターリか、はたまたレヴォルツィオーンの本社か】
【どちらでもよかった。ただ彼女は、ブランルに暇が出来たと知るや否や一方的にアポを取りつける】

【「渡したいものがある」とだけ。そう言って、――――】

【――いくらか色褪せたキャメル色のコート。足元は厚手の黒タイツで覆って、ショートブーツで防備】
【それなりの防寒具、しかし室内に入るのならさっと脱いでしまって――中に白衣を羽織っていた】
【それなりに仲良くなってからは着ていないことも多かったのに。今日はそうはいかなかったらしい】

…………………………はいこれ。

【そして、出会うや否や。一枚の紙きれを裏向きにして一方的に差し出す、声色はひどく寒々しく】
【表情でさえも。いつだって、どこか本気で笑っているような顔をすることの少なかった彼女であるが】
【今日ばかりはそういう作り笑いさえ浮かべていなかった。暗赤色はつめたい感情を灯して、じっとブランルを見上げ】


【「魔女は死んだよ」。それだけ言って、――何も追及されないなら無言になる。どうやら何かしら、怒っているらしかった】


//御予約で〜す


384 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/22(土) 21:27:14 5h8eXzYo0

【カレンダーを一ツ捲る度に、残されたものの少なさが隙間風のように胸を刺す、そういう時分の午下りであった。暈を帯びるに似る曖昧な冬陽が、ベッドの上に陽だまりを作っていた。】
【 ─── 「なにか欲しいもの、ある?」半刻ほど前、いつもと変わらぬ屈託無いはにかみを添えて、彼はそう尋ねていた。好きなものは良く解っていたから、今日きまぐれに食べたいものを。】
【安っぽいシンセにリミックスされた、街路に止めどなく漂うクリスマス・ソングの中へ、小洒落たトートバッグを提げて歩き出ていた。「すぐに戻るから。」付け加えるのは当たり前の約束。】
【それでも彼は浮気性で、コーヒーファームに立ち寄っては輸入品のガーリックトマトソースだのブルスケッタのペーストだのを買い込んでくるから、1時間は下らないのも当たり前。】
【そのくらいの時間をかけるなら、いっそ一緒に連れ出してくれたならよいのに。 ─── そんな事を、彼と同じ色の指輪を填める少女ならば、思い始めた頃合いであろうか。】


   「 ─── いないの?」


【こん、こん。 ─── 2回ほどの、間を置いた緩やかなノック。続いて、玄関越しの呼びかけ。幾らか居間からは遠いそれは、女の声だった。】
【そもこの扉に来客があること自体が稀だった。駅前に位置したネットカフェの、誰も好んで立ち入らない裏手にある、勝手口のような扉であった。そこが玄関だと知らねば見向かれはしない】
【まして彼はそれなりに広い交友を持ちつつも、己れの塒に誰かを招き入れるということは、およそ滅多にありはしないのだ。冷たい声だった。それでいて懐かしむような、女の声だった。】


    「 ────…………… 。」


【今一度、繰り返されるノック。2回。それに少女が間に合わなければ、扉越しにはあからさまな嘆息。変わっていないのね。そう言いたげな】
【幾らかの沈黙と、何かを探るような音。そうして、数拍の間。その後、 ──── やおら錠前が動く。不満げな声を代弁するように】
【詰まる所それは合鍵であるらしかった。長ったらしく垂れ流される嘆息は嫌味の粘度を帯びていて、然し決然的に女のものであった。仄かに甘い薔薇の芳香が、鍵穴を通じて滴っていた。】

/よやくのやつです!


385 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/22(土) 21:57:05 WMHqDivw0
>>384

【すぐ、がすぐじゃないのはいつものことだし。何か欲しいもの、と言われても】
【お菓子の類しかぱっと出てこないのもいつものことだった。そうして待っているのも慣れてしまって】
【ソファーでごろごろ転がっているのが常であった。テレビを付けるか、スマホで何か見ているかの二択】

【――だったんだけど、今日はなんとなく眠かった。だから毛布を引っ張り出して、包まる、ん、だけど】
【その前に服をぽいぽい脱ぎ捨ててしまっていた。曰く、「毛布が素肌に当たるともふもふしてきもちい」】
【毛布を出すことを許される冬になって突如発覚した悪癖だった。何度怒られてもいっつも裸で包まって】

………………………………ん、ぅ、あ!? え!? なにっ、え!?
誰っ、だれだれだれ……あっちょっと待っ、待ってマジでちょっとっ、……ッ、

【いたのが不幸だった。微睡みの中、一度目のノックを聞き逃した。二度目も空耳化と思ったけど】
【がちゃ、とドアの音がするならそれどころではなくなる。きゅうりを背後に置かれた猫めいて飛び起きて】
【毛布を撥ね退ける。暖房つけてたから寒くはないけど――とにかく慌てる。声は女の人だから】
【万が一見られたとしてもまあいいかなんて一瞬妥協しかけて、いややっぱダメだなと思い直す】
【ソファーの下に脱ぎ散らかしていた部屋着を慌てて探り当てる。お揃いで買ったジェラピケも】
【素肌に当たると気持ちいい素材ではあったけど。流石に下着――上はよくても下のほうナシで着るのは、憚られた】

【わたわたした手つきでショーツを手に取る。遊び慣れていそうなオーラに反して、地味な水色にドット柄】
【掴み取ったら裏表、前後を間違えそうになりながらも慌てて足を通して、ちょっとオーバーにずり上げたら】
【その次、迷って――キャミソールはスルーしてトップスだけ。もこもこの素材、ちょっとオーバーサイズの】
【素肌の上にそれを来たら手早くジッパーを上げる、したら次はホットパンツを履こうと、手に取ったところで】

――――――――ッア゛ー!? ちがっ、違うんです、ていうかちょっと待ってって言ったじゃん!!
やだもー、もおーっ!! ちょっと外出てて、……くださいっ、下履くから! ちょっと!!
あーもうっ何!? だれか来るなら先に言っててよおっ、最悪っ、ねーちょっとホントに……うああっもう……

【彼女がリビングまで到達してしまう、だろうか。床に転がっている衣服に絡まるみたいにしている少女は】
【顔を真っ赤にして半泣きになって、パンツを膝のあたりまで上げている最中だった。誰が来たのか、とか】
【そういうのを考える余裕はなくなっているらしい。泣き声でぶつぶつ言いながら、膝立ちで、きちんと履き直したら】
【ようやく相手を出迎える姿勢にはなれた。最低限ではあったけど――とりあえず、裸を見られるのは、回避して】


386 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2018/12/22(土) 22:27:31 ZCHlt7mo0
>>265

――――古くは、吸血鬼と恐れられたツェペシュ侯爵も、そうだろう?
捕虜をみな串刺しにしたのは、父親の復讐を兼ねていたというからな……その『父親』も、随分と惨い殺され方をしたようだし、な……

【見せしめという概念にも、それ相応の歴史がある。深くは語ろうとしないアーディンも、ふとその思いに馳せて】
【――――次は、かの老ツェペシュの様に殺すのも、アリかもしれないな、などと思いながら――――】

「……こりゃ、是非とも生き延びなきゃな、アーディン? 金の出し損じゃ、いられないだろ?」
茶化すな……まぁ、そんなものでも心の支えになるだけマシというものか……――――そんな、極限状態で遭難したような事を言っても仕方がないんだがな……

【ヴァルターの揶揄いに、アーディンは苦笑する。生き延びるという思いが、そんな安いもので良いものか、と】
【彼らは既に、そんな領域すら通り過ぎた、相応の修羅場慣れした人員たちで。つまりこれは、生と勝利への執着をネタにした、彼らなりのジョークなのだろう】

……確かに憶測だろうが……この国は戦略的価値が十分に高い。落とすのに注力する理由としては、十分だろう……
それが海軍である理由も、この国に合わせたからだと考えれば、筋は通る……
{……『水の国が狙いである理由』ではあるけど、『他の国じゃない理由』としては、弱いんじゃないかい……?}
「そうでもねぇだろ? 火の国や風の国なら海軍一択じゃないだろうし、雷の国なら空も海も出番は薄く、間違いなく陸軍の出番だ……
 海軍なら、水の国を抑えて、そこから公海に進出……で、各国の流通網を制海権、そしてそこから制空権を抑えて分断し、後は封じ込めて各個撃破……」
……辺境の氷の国や砂の国、観光地の昼の国や夜の国、そして現状首都が再建中の地の国は、戦略的価値に乏しいだろうからな……
一番無理のないシナリオである事に、変わりはないだろう……

【各国の地形や風土の特色を考えて、やはり海軍が狙うのは水の国以外にあり得ないと、彼らは指摘する】
【流石に、軍略に関しては門外漢であり、いわば素人の指摘に近いものだが、彼らなりに可能性を、検討しては潰していく】

ッ、アリアだと……!?
「っと……知り合いか、アーディン?」
あぁ……まぁ、な…………――――なるほど、水の国の裏仕事担当か……道理で、な……

【その名前は、別の形で既にアーディンの知るところであった。思わぬところでの情報の繋がりに、彼は苦笑する】
【――――色々とあったが、次に会う事があれば。そこのところを含めて、膝を詰めて話し合わなければならないだろう――――と】

{既に、仕込みは十分、後は結果を御覧じろ……って感じだねぇ。全く……皆殺しにしてやりたいよ、その連中……!}
「将軍奥方って事は……おいおい、マジにヤバいんじゃねぇのか? こりゃ、下手したら櫻の体制も揺らぎかねないぞ……?」
――――付和雷同の気が強いというのが、櫻の国の悪徳の1つとは聞いているが……硬骨漢の類が皆無と言う訳でもあるまい……
現に、君たち土御門派は動いている……他に、クーデターを目論んでいる連中など、現れるのではないか……?

【妖魔関連のニュースは、ただの一般ニュースとして聞き及んでいただけなのだが、その裏にも、これだけの情報が張り付いていた】
【この現状に、3人の間には危機感が募り始める。これは、下手をすれば現在の櫻の国元首に対する、クーデターの類も、起こるのではないか、と】
【それは、味方として考える分にはまだいい。だが、世情不安として受け取ると、それまた『黒幕』の良い材料にされかねない】
【――――幾つもの意味で、狂わせてはならないタガを、櫻の暗君は外してしまったのだ――――】

/続きます


387 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2018/12/22(土) 22:27:53 ZCHlt7mo0
>>265

――――分かった、もう良い。ありがとう……
「……抑えろよ、シャッテン?」
{…………ッッ}

【暗く、押し込めるような怒りが、3人の胸の内に沸々と湧き上がる。特に、シャッテンのそれは大きいものの様だった】
【今にも人を殺しそうな、ギョロリと見開いた目で、必死に顔を俯けて地面を睨みながら、その衝動を堪えている――――】
【時折顔を覗かせる、彼の中の狂気が、氾濫寸前である事の表れの様だった】

……鈴音の探索? じゃあ、アナンタシェーシャの腹の中で……ラベンダァイスめ、あれが厳島だと、あの時は気づいていなかったのか……
――――アレは『裏切り者』の鈴音憎さ、その一点で自分の心を壊してしまった
……あんな奴と一緒に居てはいけないと、何度も説明した『奴』に、付いていってしまったそうだからな……そして、人類を一緒に滅ぼすんだそうだ……
アレは、対『黒幕』戦線を裏切り、『UT』を裏切り、そして『人類』を裏切った――――俺たちは、白神 鈴音を決して許しはしない――――殺す、必ず――――――――
……そして、ラベンダァイスの奴も、人類の過ちだよ……もうあいつは、使い潰してやるしかない……
あいつに、せめてもの「まともな死に様」をくれてやるには……――――死ぬまで戦わせるしか、なくなってしまったよ……

【ラベンダァイス、そして白神 鈴音の事に、アーディンは言いにくそうに補足説明を絞り出す】
【みらいたちの悲劇は、彼女たちの悲劇を、更に引き延ばして拡大したようなものだ。その愚かさの連鎖は、既に昔から始まっていた事だ、と――――】

あぁ……大丈夫だ。君はこの世界を……人ならざる者など、当たり前の、この世界を知っている……だから、大丈夫だ……
「……ダメなんて言う奴なんざ、俺たちが許さんさ……安心しろよ、俺たちは……お前を侵しはしない……」
{……君は、輝くべきなんだ……1人の、個人として……! 道具扱いなんてさせるものか……むしろ、言うよ……『生きろ』って、ね……!}

【その拙い言葉に、彼女の精一杯の魂の叫びが、詰まっている様だった。3人は、やはりそれぞれに、強く頷いて見せる】
【確固たるものは何もない。国に対して、たかが10人程度の戦力が、何のあてになるか――――だが、彼らの生き様が、それを許さない】
【先達として、命の道を説いてやらなければならない。3人の男たちは、自ら、その言葉に己の意志を映し出す】

――――アリアたちが、厳島を救出する事に成功したら、1度合流だ……俺たちは、櫻の国のクズどもを、決して許しはしない……――――――――そうだなお前たちッ!!
「おうよ!」
{勿論さ!!」

【子供の涙は、大人たちの怒りを走らせる。獣の顔で吼えるアーディンに、怒号で答えるヴァルター、殺意を漲らせるシャッテン】
【イリーガルな正義は、それでも人の尊厳の為、再び刃を振るおうとしていた】


388 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/22(土) 22:31:04 oFkCLf9I0
>>383

【彼女を出向かせた先はアルターリだった。薄暗い曇り空の下に打ち棄てられたビル群が墓標のように屹立】
【殆どが崩壊したままの道路。焼け野原と化した居住地。高層ビルが横倒しとなった瓦礫の山脈】
【生者が今でも居着いていないこの街は、死にも似た寂寞が漂っていた】

【指定したビルの屋上にその男はいた。変わらぬ黒衣と代わり映えのしない酷薄な笑み】
【何一つとして変わっていなかった。「おや、元気なさそうじゃないか」という軽口さえも】
【ブラスフェミアが差し出した紙切れを受け取り、その言葉を聞く。一瞬の静寂】

…………くっ
ははっ……あはは……あははははっ!
あはははははははははっ!! そうか、死んだのか! はははははっ!

【静寂を破ったのは哄笑だった。白い喉を逸らして、愉快この上ないといった様子でブランルは笑っていた】
【片手が腹を押さえ、身体を折り曲げて笑い続ける。次第に笑い声は収まり、指先が目尻の涙を拭った。当然、悲しみの涙などではなかった】

いやぁ、そうかそうか……くくっ
死んだのか、それは“面白い”な。そうそうないぞ、こんなに愉しいことは
いずれは死に行く命ではあるが、しかし思いの外、早かったな?
予想外ではあるが、そうでなくては人生は面白くない。予期されぬ事態こそが退屈を紛らわせてくれる

【黒衣の男は口元を歪めて笑みを作っていた】

で、この紙は? 遺書か、それとも形見か?
この流れで無関係な何か、ということはないだろう? もちろん、それはそれで愉快だが

【指先に挟んだ紙片を掲げ、それが何であるかをブラスフェミアへと尋ねる】
【ただ、それだけだった。魔女の死を聞いても、そうであっても──この男は、何も変わらなかった】


389 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/22(土) 22:46:18 WMHqDivw0
>>388

…………………………あなたそれ本気で言ってる?

【であるなら、どうしてやるとは言わなかった。目に見えて激昂することもなく、かといって落胆もせず】
【冷え切った表情だけが何も変わらない、凍り付いて動かなくなってしまったように――それで】
【これは何か、と問われれば、「後者」とだけ返す――たった一枚の形見であるようだった】

彼女が死んだ後にね、harmony社に火事場泥棒しに行ったの。
研究成果とか、そういうの――盗んでこようかなって思ったんだけど、それが、あったから。
……それで追及があなたにまで及んだら、面倒でしょ。だから回収しといたの。

【裏返すのなら、それは単なる一枚の写真だった。魔女が後生大事にしていた一枚】
【いつ撮ったのか、なんて、この女は知りもしなかったが。――ツーショットの写真、魔女と、ブランルとの】
【その中で魔女は、本当に嬉しそうに笑っていた。年頃の少女めいて無邪気に、……それだけ】

それで……これからどうするの。三人で何か面白いもの創ろうって言ってたじゃない。
あの話、どうする? まだ続ける? ……続けるつもりなら、僕は、降りようかと思ってる。

あなたは知らないかもしれないけどね。僕、魔女に八つ当たりでボコボコにされたんだ、
「あの人がブロンドの女ばっかり構って寂しいから、憂さ晴らしさせてくれ」って。
そーいう、さあ……面倒臭いことに巻き込まれちゃって、痛い目にまであって、正直嫌気がさしてきちゃった。

【彼女は自身の爪先をじっと眺めながら、つらつらと文句を並べていた。しかしそれは】
【あらかじめ用意した台本の文字をなぞって音読しているだけの、大根芝居の感触。本気で言っているかは定かでなく】
【ただ、もう降りたいと言っているのは本気らしかった。ひどく詰まらなさそうな顔をしていた、ブランルと対照的に】

………………ねえブランル、最近ずっと何してた? やっぱりそのブロンド――セリーナと、遊んでた?


390 : 名無しさん :2018/12/22(土) 23:04:46 .KEk4ODc0
>>377

【次々とされる質問に、時折がしがしと頭を掻いて男は答えていった】
【『服はなきゃ困る。暑いところに行くときは涼しい服、寒いところに行くときは暖かい服って具合だ』】

【そんな感じに、少し多めにそいつはマーカスに答えを与えていった。服は個人の趣味が出て】
【今の自分の格好は自分の趣味だとか、結局は自分の好きな服を着ればいいだとかそういうことも話す】
【自分等が今乗っているモノがバイクだってことも説明した。他にも、クルマってやつがあるってことも】
【街中じゃ馬よりもクルマやバイクがメジャーな乗り物だってことも、勿論。ロックが話題になれば】
【他の時よりも多弁になった。アーティストの名前や楽曲名は当然のことだが】


『ロックは自由のための歌なんだ。反逆の歌でもあるって俺は思う』
『ルールって名前の重石に潰されそうになっている奴らが、歌に乗せて自由を叫ぶんだ』
『でもただ叫ぶだけじゃない。愛だってある。そりゃあそうさ』
『愛があるから叫べて、愛があるから立ち上がれるんだ』
『力がないやつだろうと、男だろうと女だろうと関係ない』
『分かるか?マーカス。ラブ・アンド・ピースだ。愛があれば、銃弾なんて怖くない』


【こんな具合だった。愛と自由。それとロックンロール。探偵はその3つの単語をよく口にした】
【マーカスと探偵の問答で、移動時間はあっという間に過ぎていった。残された時間は】
【別の町行きのバスが来る数分。きっとマーカスはバスに乗って、探偵はバイクに乗って】
【神様とやらの気が向いたら、またどこかで会うことになるんだろう】


『UNITED TRIGGERは組織の名前だ。同じ目的や志を持った連中が集まっている』
『どんなところかは行けば分かるさ。変に俺が教えちまうより、その方がいい』

『あー……それにしても感謝、感謝か。そうだな……』
『何かされて嬉しかった時は、“サンキュー”って言って笑うといい』
『口の端っこをつり上げて……あぁ、あんまり歯は見せなくていい』
『それから人によっちゃ何かこう、金とか物とか要求されるかもしれないが……そうだな』
『その練習でもしておくか。俺はあんたを助けた。その代わりに、頼まれたいことがある』

『…………これから先、もしかしたらあんたはこういう話を聞くことがあるかもしれない』
『“チンザノ・ロッソは死んだはずだ”……そんな話さ。だが違う』
『俺は生きている。生きて、ここにいる。マーカス、あんたが生きていることが』
『あんたがあの砂漠のど真ん中から生きて出れたってことが、俺が生きている証なんだ』
『だから……もし、俺が死んだって思っている奴と出会った時。その時は』

『そいつに伝えてほしい────チンザノ・ロッソは生きている……ってな』


【愛想がない男だったが、笑い方を教える際はぎこちない笑みを見せた】
【本当はもっと自然に笑えるんだが、表情を教えるとなると話は別だった】
【5秒くらい硬い笑顔を固定させた後は、またもとの表情へ。そして最後にひとつだけ頼み事を伝えて道の向こう側を指差す】
【マーカスが乗る予定のバスが、オンボロのエンジン音と一緒に走ってくる姿が見えた】


『バス…………来たみたいだな。また会えるかは神様次第か』
『じゃあな、マーカス。そのコート、似合ってるぜ』


391 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/22(土) 23:09:49 oFkCLf9I0
>>389

本気だと? 本気だとも、お前は何を言っているんだ?

【ブラスフェミアの一言に、ブランルは呆れたような表情さえ浮かべてみせた】

私を愛し、そして私が愛した女が死んだのだぞ?
これ以上に愉快なことがこの世界のどこにあるというんだ
この苦痛、哀惜、瞋恚、憎悪、興奮……どれを取っても他とは比べものにならないほどの感情の波濤だ

──これを楽しまずに、一体どうする?

【半弧を描く繊月の笑み。この男はいつだってこの表情を浮かべていた】
【悪巧みをするとき、友である両者と語らうとき、時には苦痛を語るときでさえも】
【この男にとっては、彼女の死でさえも同列だった】

なるほどな。写真だったか
それは助かった。あまり横の繋がりが露見するのは良くないからな

【写真を黒曜色の双瞳が見つめる。僅かな沈黙と、思慮の色合い】
【一瞬だけ、瞳が感情に揺れる。だがそれはすぐに静かな水面へと戻った】
【「であれば、証拠隠滅といこうか」──その一言と共に写真が掲げられ、挟み込む指先に火が灯り、端から焼き始める】

ははっ、あの女にも困ったものだな。八つ当たりは良くないな
もはや文句を言う先もいなくなってしまったが、しかしそれは災難だったな
降りたいのであれば、好きにするがいい。強要はしないとも

最近か? セリーナとばかり遊ぶほど、私も暇ではない
色々と仕事が立て込んでいたし、魔界にも用があった
もっとも、そっちの方はどうなるか分からんがな。ここしばらくの奮闘空しく、計画はご破算かもな

【写真に灯る火を見つめながら、ブランルは質問に答える】
【言い方の不自然さには気が付いていたが、あえて何も言いはしなかった】


392 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/22(土) 23:24:57 lEtpIMDM0
>>378
【人の見せる一面なんて本当に単なる一面でしかないのだ】

【嘗て敵対関係にあったときのアリアの印象は冷徹で容赦の無い凍てついた狼であったのに】
【今では慈愛に満ち溢れた、強く麗しい素敵な女性であることを知ったなら、彼女の口にする言葉は決して嘘じゃないって理解して】


ーーー……だったら私もアリアさんやかえで、エト姉ぇにシロ、それにカチューシャを遺して逝きませんから。


【赤銅の瞳は以前として碧眼へと重ねられて、それえいて毅然とした態度で言葉を紡ぐ】
【誰かに真っ直ぐ想われる事が嬉しくて、心の奥底からぽかぽかと暖まる感じがして、けれど少し悔しく思ったなら】


私だってかえでの生きる縁だって自負、ありますから。
アリアさんの想いには負けるかもしんないけど、あの子の事、あの子以上に大事に想ってるんで。


【愚かしい態度。幼さを見せる意味の無い意地っ張り。かえでにとっての一番で無くても良かったけれど】
【自分しか縁が無いと告げられたなら、納得いかなくて口を尖らせてかえでへの想いを口にしたのだった】


【―――】


帰る宛なんてもう私にはありませんから、アリアさんについていきます。
公安五課を裏切った私が今さら公安五課の用意した部屋に戻れませんし、戻ったなら裏切者として粛清されちゃいますし。

だから、………これから私がお世話になる場所までお願いします。そこで話したいことも幾つかあるので。


【左腕に巻いた腕時計を見やる。針は既に二度目の12時を示そうとしていたから、アリアの言葉に乗る】
【その際の然り気無い大人の配慮には、ぺこりと頭を下げて、一言「ありがとうございmす」と感謝】


393 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/22(土) 23:28:56 WMHqDivw0
>>391

……………………。そう。僕とはちょっと感性が違うみたいだね。
僕は好きな人が死んだら、そうは思えないから――ちょっとばかしカルチャーショックを受けてんだ。

【少しばかり目を細める。燃え行く写真の黒く焦げていく様をそうして眺めて】
【文字通り、灰に還っていく魔女の顔を見るのはそれが最後になるのだろう。……溜息のようなものを吐いて】
【風に乗って少しばかり此方に届く灰を払いのけながら――ぽつ、と言葉を続ける】

本当に困ったモンだったよ。マジで死ぬかと思ったから――
そお。じゃあセリーナは、放置中? それはそれでどうかと思うけど、……、

………………悲しいとか悔しいとか、本当にそういうのないわけ?
ねえ、あなたが魔女のことほっといた間、……魔女は自分の役割を果たしたよ。
悪い魔女の演目を演じきって、そして死んだ。僕もそれを見ていた。
あいつは――イイ女だったよ。やることきっちりやった上で、それでもあなたのこと愛してて、

【そのあたりまで語ったくらいのタイミング。喉の奥からせり上がってくるような熱が、声色に籠り】
【怒鳴りつけはしないけど、それを必死にこらえているような素振りはあった。そうして、】
【一瞬だけ唇を噛み締める。その内側で、舌で全体を湿らせてから解く。一拍の呼吸を、挟んで】

――――――クッソくだらない、つまんない脚本だったけどさあ。あいつはやりきったよ。
それに対して讃辞の言葉すらかけてやれないワケ? あなたはさあ。

【アルトの声色に震えが混じっていた。……つまらない激情だと思われるだろうか】
【だけどそんなの、もうどうでもいいって思ってた。この女は、ブラスフェミアは、「恋心」という感情には滅法目敏く】
【それが喩え他人のものであったとして、放ってはおけないと感じる性質であるらしい。炎の向こうで揺らめく男の影を、睨んで】


394 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/22(土) 23:48:27 oFkCLf9I0
>>393

ふむ、そうか? 意外と“普通”だな、お前は

【少しばかり驚いたような表情を黒衣の男は浮かべる】
【手元の写真は炎の中で焼かれ、灰と化して風に飛ばされていく】
【闇夜のような瞳がそれを少しだけ追った。飛ばされた先をほんの僅かな間だけ見つめ、そして目の前の女へと戻された】

そうか、役割を全うしたのか
それが何なのかさえ今の私には分からないが、しかしそれが出来たのであれば拍手喝采だ
観客の一人としては、賛辞の言葉をかけろと言われれば、かけるのもやぶさかではないが……

──お前、いい顔をするな

【目が細められる。獲物を見つけた肉食獣のように、検体を前にした科学者のように】
【ブラスフェミアから一歩遠のき、黒衣の男が両腕を広げる。舞台の上であるかのような仰々しい手振りで】

悲しいか、悔しいかだと? もちろん、悲しいし悔しいとも。愛しい女が死んで悲しまない男はいない
そしてそれを愉しめてこそ、だ。それがこのブランルだ。この激情の全てを愉悦に変えるからこそ私だ
だから私は言う。愉快でたまらない、と。あの女が死んだことが、愉しくて仕方がない、とな

【再び男は笑みを浮かべてみせた。挑発めいた笑みを】

愛情や友情を感じ、それらを失うことに悲哀と忿怒を覚え、その上で嗤ってこその狂人だとも

【ブランルの表情には欺瞞や演技など微塵も含まれていなかった。この男は心底からこの状況を、魔女が死んだことを愉快だと思っていた】
【両腕が下され、続いて指先が持ち上がってブラスフェミアを示す】

それに──死人は何も言わない。何を想おうと、どう評価しようと全て現実的には無意味な行動だ
お前のその激情と同情は、実に退屈極まるものだよ

彼女の恋心をどう弄ぼうと、それは私の自由だ

【嘲笑が浮かび上がる。笑みばかりを浮かべるこの男の中では、珍しい表情だった】


395 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/22(土) 23:55:29 E1nVzEpQ0
>>385

【 ─── その女の聴覚は、少なくとも真っ当な人間の域にはなかった。幾らか痛切な制止の声に、彼女は眉宇をやや寄せていた。然るに】
【結局のところ玄関へと無遠慮に踏み入るのであろう。真意は判然としなかった。苛立っていると言えばそれで事足りたのだろうが】
【このような遣り口で他人の家に上がれる人間として、一握ほどの意地悪い衝動がなかったかと問われれば、それもまた彼女は否まないのだろう】
【好意的な解釈であるならば盗人や不貞の類を誅してやろうとしたのかもしれない。だがやはり、その女は決して答えを示さない。なぜならば、】



   「 ……………──── あァ。」



【あらゆる乙女の悲痛さを小瓶に詰めきったような金切り声にも、 ─── どこか忌々しげでさえある温度を宿して、怜悧に女は呟いていた。】
【ひどく背の高い妙齢の女であった。沫雪と呼ぶにもまだ足らぬような、淡い肌膚の色合いをしていた。ごく長い金紗の銀髪を腰にまで伸ばして、その顔の右半を隠していた。】
【赤いネクタイを締めたテーラードスーツに、煙草の匂いが染み付いたロングコート。白と黒より他に装束の色というものを知らぬような表情をしていた。端整で無愛想な顔貌であった。】
【 ──── 納得とも、呆気とも、諦観とも取れぬ一息が、一筋の茜さす瑞々しい唇から漏れた。ブラウスの釦を外させて余りある豊潤な胸許が、萎むように震える。少女を射抜くように炯々たる碧眼は、どこかその薬指に宿す光と似ていた】


   「 ……… 貴女が。ふうん。」「 ─── 亡状であったわね。悪かったわ。」
    「こうして顔を付き合わせるのは初めてかしらね。」「悪いけれど彼に渡すものがあるの。 ……… 待たせて貰うわ。」


【単調なソプラノがそう綴った。 ─── 確かにその女は、白い紙袋を片手に提げていた。少なくともそれは茶菓子の類ではなかった】
【嫋やかな足取りはされど有無を言わさなかった。何の了承もなく、楚々としてソファに腰を下ろす。その半身を占めて余りある、華奢なほどに長い両脚を惜しげもなく組んで投げ出す】
【 ──── 「煙草、吸ってもよろしい?」宜しい訳がなかった。だが勝手に彼女は赤白のパッケージングが施されたシガレットを懐から取り出していた。答えを聞くまで火を付ける積りはないようだったが本義として大差は無かった】
【であれば少女は知っているのかもしれない。 ─── 彼の想い出に時として現れ、或いは幾つかの共闘を示した、嘗ての想い人。銀髪と煙草と薔薇と、硝煙のにおい。成るほど彼の好む所であろう、けれど。】


396 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/23(日) 00:08:34 WMHqDivw0
>>394

今更そんなこと言うの? 僕は徹頭徹尾、普通の女だよ。
あなたみたいに天才的な手腕もない、恐るべき異能も持ってない、
鉛弾の一発か、刃の一閃を喰らえば簡単に死ぬ女。

……だからこそ面白いって褒めてくれたんじゃなかったっけ。もう、覚えてないけど。

【男が舞台上の主役めいて手を広げるならば、それを見る女はただの観客だった】
【脇役にすらなれない脆弱な女。それがこいつであったから、故に】
【彼からしてみたらあんまりにもつまらない感情に拘るのだ。凍り付いた表情、】
【僅かに罅割れるように眉間に縦皺が走る。少なくとも、この女は愉しいなんて思ってないらしい】

……、……やっぱり、わからないな。悲しいし悔しいならそういう顔しててほしいよ。
少なくとも魔女は――そういう、人間みたいな顔して死んでったよ。
あいつは御伽噺の最後、火に炙られて殺される運命の魔女だったけど、
あなたと接してるときだけは――ふつうの女の子、だったよ。……ねえ、

僕にとっちゃあなたのほうがよっぽどつまんないんだけどな。
何したって笑ってるばっかりの人なんて――接してて、楽しいわけないじゃない。

【この男についていけば面白いことに触れられる。そう思ったからついてきた、だけど】
【口にするように「つまらない」と思ってしまうなら、そうする理由だって、なくなるから】
【最終的に女がブランルに対して抱いた感情は、どうやら「失望」であるらしかった】

そうだな、……あなたに教えて喜ばれそうな情報。それもついでに教えといてあげる。
あの魔女はね、「造られた」存在だったよ。はじめっから、こんな結末を迎えるようにって、
そう設定されたキャラクターだったの。……それを造ったヤツがどんなヤツかって、教えるだけ教えといてあげる。

異界の神だよ。虚神だかなんだか言う――ムカつくヤツら。
僕はそいつらのこと気に食わないから、全部殺すようにって――駒たちに命令してるけど、
あなたはどうする? そいつらを利用してみちゃったりする? それとも何かの「材料」にしてみる?

【「どうしようったって、僕は、止めないけどね」 ――言いながらコートを羽織り始める】
【これで本当に言いたかったことは言い終えてしまったらしい。――あるいは、まだまだ言いたいことはあったが】
【それを言うのもつまんなくなっちゃった。そんな顔をしていた、何もしないならすぐに帰ってしまいそうな雰囲気を漂わせ】


397 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/23(日) 00:25:43 WMHqDivw0
>>395

【まずはその背丈の大きさに、ビビっているようだった。写真で見たことはあったろうが】
【現物を見るなら、想像以上に規格外であることをまざまざ理解して――横切って移動され、ソファに座られるなら】
【彼女の身体が沈むのに合わせて揺れる双丘が目に入るから。ひゃあと間抜けな悲鳴を上げて】

…………べ、つに、いい、……んですけどお、

【なにか見てはいけないものを見てしまった気になって、視線を逸らす。煙草がどうって言われたら】
【受動喫煙を気にするようなタマではないから、いつも彼が使っていた灰皿を持ってきて】
【恐る恐るテーブルに置いて、それで――「のみもの、……何か、いりますか」 下手糞な敬語を使い始める】

【がちがち。緊張している、というよりは何かしら警戒しているような、訝しげな目付きにて、見上げながら】

渡すもの、…………って、なんですか。……あたし代わりに渡しとくから、
帰って――もらっても、大丈夫、……です、よ。………………、………………、

【彼女が猫であったなら。きっと全身の毛を逆立てて、けれど尻尾は脚の間に挟んで】
【常ならば頭上でぴんと立っているはずの耳は真後ろを向いて、ぺったりと頭にへばりついていたことだろう】
【それくらいの怯えっぷり、あるいは警戒っぷり。もこもこした部屋着の裾をぎゅうと掴んで離さないまま】
【未だ床の上に、崩した正座の体勢で座り続けているなら。背の高い女であれば、少女のつむじもよく見える】

【とりあえず何か飲み物をオーダーするなら、少女はそれを取りにキッチンまで向かうだろうけど】
【逆に言えばそうされるまで、がちがちに固まったまま動かない。ただただ不安そうな表情だけ、見上げるばかり】
【しながら時折テーブルの上に放っておいた自身のスマホをチラ見したり。まだ帰ってきてくれないの、って】

【少女は体臭が薄い性質であったから。この部屋の香りだってどんどん上書きされていくのだろう】
【煙と鉄と薔薇の香。塗り潰されるみたいに、書き換えられていくのが――なぜかひどく恐ろしい。そういう顔をしていた】


398 : 名無しさん :2018/12/23(日) 00:48:27 hoikd19w0
>>369-371>>382

【――――――、あれ、なんて、小さく声が漏れた。探るはずの場所はいつか見たままの形、おかしなところなんてなんにもなくて、あれ、あれ、小さな、声は】
【彼女もまた何かをしたいのかもしれなかった。何かを成せたっていう気持ちが欲しいのかもしれなかった。そしてきっとそうなのだった。――だから、惑ってしまった、声】
【せめて少しだって何かをよくしたかった。だからって、――――(そう思って何かすればするほど失敗してきた人生だったのにね)】

 【ごとん、から、から、から――】

【びくりと震えた背中は、まっすぐにヤサカに向き合っていたがための仕草だった。ぐるりと身体ごと振り返るときには、包丁はすでに滑り出していたなら】
【きっと真っ先に動くのはヤサカだった。彼が床に転がるようにして手を伸ばすのがいやにゆっくり見えて、喉が詰まったような息しか出ない。ごつん、足音一つ、】

まって、ちがうの、カルラ、――、――、ちが、

【ぞっと見開いた眼が震えていた。ちがうの、と、小さく紡ぐ声は、けれど何が違うのだろう。だってわたしが本当に助けてあげたかったのは、】
【ずうっとずっと昔に寒さに凍えてお腹を空かせて通りを往く人達が羨ましくてお家がない自分が悲しくて妬ましくて羨ましくて狡くて自分だってそれが欲しくて私だってわたしだって】

【私だって、そうやって、普通に生きたい、何て、願い続けたままで死んでいった、】

――――――――――ゃ、っ、あ、ァ、っっ、やっ、――っ、――かる、ら、――、カルラぁッ!!

【きゃんと部屋に反響して壁掛けの銃器すらきゃりきゃり鳴らすような悲鳴はきっと外にも聞こえるんだった。目の前で子供が線路に落ちる瞬間の母親にしか出せぬような声、】
【靴の重たさを振り抜いて駆けるのなら、カルラのこと抱き上げようとするのだろうか。冷静さなんてものは瞬間鼻風邪の日のちり紙よりも容易くどこか投げ捨てて、】
【何度もその名前を呼ぶのだろう。服が真っ赤に染まって鉄臭くなるのだとしても気にするはずもなく。泣きじゃくって何度も何度も何度も何度も何度も、】
【カルラの細い首筋から溢れる赤色を涙で薄めたならいつか透明になってこの事実さえなくなってくれと祈るみたいに、その前髪、撫ぜつけるみたいに頭を抱えて、】
【その横で彼がゆらり立ち上がっても気づきもしないのだろう。ただ泣きじゃくる、泣きじゃくって、喚いて、大事なぬいぐるみをどぶ川に落としちゃった子供みたいに、】


399 : 名無しさん :2018/12/23(日) 00:48:39 hoikd19w0
【どうしようって助けてってどうしたらいいのか教えてって縋るみたいに彼へ向けた視線があったからこそ気づけたのは、運が良かったのか、(それとも、悪かったのか?)、】
【気づかずにいたのなら。きっと彼は扉を開けて、全部を自分のせいにして、そしたらカルラも助かるかもしれない。自分は悪くなくなるかもしれない。――、】
【ひ、と、引き攣る吐息に、そんなことを考えている余裕があるはずもなかった。ぎゅうってカルラの小さな頭を抱きしめて泣くしかないまま、ごく、反射的な、】

――だめえぇぇえぇぇえぇえぇぇぇええぇっっ! 行かないで! やだっ――やだよぉっ、――ヤサカさん! いかなっ、

【――きぃ、と、部屋の中すら震わす鈴の音。ぺたんと床に座ってしまっていたなら、膝立ち、彼に追いすがろうとした足取りがぬめって、転びそうになる】
【だからぎゅうってカルラを抱きしめて何とか靴裏で床板を踏みつける。血だまりにぬめって。それでも頑張って立ち上がって。だってこのままだったら、彼のこと、】
【彼を悪者にしたらきっと全部が綺麗に纏まるんだった。たとえ当人同士がどういおうとも、周りから見たら、全部が説明できるんだった。だけど、だって、そんなの、】

【(そんなのが嫌だから、こんな世界滅ぼしちゃいたいって思ったのでしょう、って、)】
【(わたしが我慢したら終わりだって分かってるままで我慢しないって決めた。なら、だったら、)】

【目の前で我慢して終わらそうとしているひと、――――、その手をぎゅうっと掴もうとするのだ。今まさに鍵に掛けられた手を、そうしたら、】
【少女は転移の魔術式、発動させようとするのだ。カルラを抱きしめたまま。その血にぬめる手で彼の手を掴んで。泣きじゃくるなら行き先は――――、どこだろう】
【とにかく何かをどうにかしたかった。カルラを助けたかったし、彼を犯人にはしたくなかった。ならばどうしたらいいのかもわからなくて、頼れる大人だなんて思いつかなくて、】

【(あるいは、――彼の頭の中にある"どこか"のイメージを使ってしまうのかもしれなかった。或いは彼が"こんな"時に頼れる誰かを思い浮かべられるのなら、)】
【(それこそ少女も知る冒涜者たる彼女でも。或いは黒衣のごく不審者たる"そいつ"でも。或いは。或いは。――泣きじゃくる少女の思考回路は、刹那の逡巡でも、拾い上げてしまいそうで)】

【――――とにかく、この場から離れようとするのだ。そうしたら全部不都合な現実も真実も事実も消えてしまえばいいのに。瞼を閉じたら世界だって消える、みたいに】


400 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/23(日) 00:50:52 E1nVzEpQ0
>>392

【少女の言葉をアリアは決して否まなかった。 ─── その内心がどうであれ、穏やかに頷く首先と微笑の示す感情は真実であった。】
【「 ……… そう。」「それはきっと、かえでも喜んでくれるわ。」過ちを詫びるでもなく、矢鱈に反駁するでもなく、それでも確かにごく嬉しげに、潤んだ言葉を呟くのだろう。】



   「礼には及ばないわ。 ─── ついてきなさい」


【黒く長い躯体が立ち上がれば、付き従うような甘い香りが白銀と共に舞うのだろう。 ─── 深く昏く蜜に淀んだ、消し難い薔薇の香。】
【会計をそこそこに済ませて退店する。眩しげな夜街の明かりに肩口を晒しながら、上等な革靴がコンクリートを叩くのに従うなら】
【 ─── 喫茶店の向こう側にある、在り来たりなビルのエントランスへと踏み込む。無人の受付と、申し分程度の観葉植物。職員用の気密エレベーターに乗り込んで、ボタンを押した。徐なモーターの駆動音が、周期的な振動を齎す】


  「 ……… 色々な署名だの誓約書だのについては、今は後に回しておきましょう。」
  「知っての通り我々は厳然たる法執行機関よ。 ─── 捜査、諜報、工作、強襲、破壊、潜入、電子戦、要人護衛、人心掌握。」
  「遍く世界から善悪を問わず選り抜かれた人材として相応しい行動と成果を、例外なく我々は貴女に要求する。 」

  「薫陶は私が授けましょう。 ──── 貴女が優れた生徒であることを、何より私は信じているわ。エーリカ。」


【滔々と、彼女は言葉を綴った。 ─── 今あるエーリカとしてだけでなく、より戦士として策士として卓抜した存在たれと、その為の研鑽は我々が授けようと、そう語っていた。】
【やがてエレベーターが上がり切る。8階であった。決して広くはないオフィスの廊下が、磨り硝子の壁に仕切られて真っ直ぐに通っていた。やや逡巡しながらも、アリアは一つの扉を開けた】
【恐らくは簡易的な仮眠室であろう。 ─── 在り来たりなビジネスホテルの一室に近かった。「一先ず今夜は、ここに。」貴女に合う部屋を探しても構わないわ、と付言した上で】
【改めてベッドサイドの椅子にアリアは腰掛けるのだろう。差し込む月光が半面を照らしていた。顔を合わせる席もないならば、エーリカは何処に座って言葉を紡いでも構わなかった】


401 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/23(日) 12:10:35 oFkCLf9I0
>>396

接する、か
果たして、その接点は指定位相内で摂動的に定まるのか……

【視線が床へと落ちる。言葉は誰に投げかけられたものでもなく、自らの内にある何かにだけ語りかけていた】
【黒衣を翻して、女に背を向けて歩き出す。歩みは屋上の先端で止まった。コンクリートの断崖絶壁の向こうに広がる景色を男は眺めていた】

……そうか、私が愛した人間は、人間というより人形だったか
まぁ、それも皮肉が効いていて面白い。であるならば、私と彼女はやはり同じだということだな
すなわち全ての人間が……やはり波間に揺蕩うというよりは、むしろ……

【言葉は続かなかった。あるいは、小さすぎて風がかき消してしまった】
【背を向けたままの男はそれ以上、言葉を発することはなかった。ただ黙したままここではないどこかを見ていた】
【女が帰るとしても、何かをすることはないだろう。まるで、認識していないかのように】


402 : ◆ImMLMROyPk :2018/12/23(日) 14:42:05 Nt7ZtIVU0
>>390
【実に様々な情報をチンザノ・ロッソと名乗った男から提供された。自由、愛、探偵、服、音楽、バイク】
【それらは未だ情報に過ぎないが、彼のこれからの人生に於いて何らかの精神的パッションを齎すことだろう】
【そして、彼に情報を提供する時の男の語り口は、自らの情動をそのまま発露させたかのように雄弁で、若々しいものだった】

UNITED TRIGGERは組織。理解した。まずはそこを目指すとしよう
なるほど。記録が増えた場合は感謝する。そちらも理解した。ありがとう、チンザノ・ロッソ

【少年の表情は能面のように変わらぬもので、笑顔と言った表面的な感謝の発露は未だ理解していないようだった】
【そもそも、彼と言う存在に笑顔を作るだけの情報が備わっているかもわからない】

依頼、と解釈する。可能であれば遂行しよう
死んだはず?だが、チンザノ・ロッソと名乗る人間は今俺の目の前に存在している。少なくとも視覚的な異常は検知されない
伝える。それだけで良いのなら請け負った

【何とも不思議な話だった。現実に存在している人間が、さも死んだように扱われているとはどんな理屈か】
【だが、噂話と言う物は時に現実を超越し、仮想の肉体を得て生物の様に社会を歩き回る。その過程で、どんな変遷を遂げてもおかしくない】
【即ち都市伝説。即ち言霊。だが、人の作り出した物ならば、人の手によって作り変えることも出来る】

ありがとう。チンザノ・ロッソ
では、俺は行く。さようなら

【最後まで、機械的で淡々とした言葉を並べながら、マーカスと名を与えられた少年はボロのバスに揺られて行った】


403 : 名無しさん :2018/12/23(日) 16:26:32 xjPP9FpI0
>>402

『あぁ。いい旅になるといいな』


【彼の最後の言葉は、祈りだった。おかしなことじゃない。ロックは祈りでもあるんだから】
【そいつは砂で汚れたコートを風にはためかせながら、マーカスの乗ったバスを見送るんだろう】
【口ずさんだのは、昔ヒットした映画のテーマソングだった。12歳の少年達の、ひと夏の冒険を描いた映画】
【マーカスの旅路はどんなものになるんだろうか。きっとそんなもの、神様にだって分かりはしない】


『────そうさ。チンザノ・ロッソは生きている』


【バスがとうに見えなくなってから、そいつはぽつりと呟いた。自分に言い聞かせるような言い方だった】


『何度だって立ち上がる。俺たちはロック・スターじゃないが……それでも、拳を掲げることは出来る』

『鉄で殴り倒されても。錆びたナイフで身体を抉られても。銃弾に斃れても』

『それでも────何度だって、立ち上がってやるさ』

『俺は……俺たちは、自由のために戦っているんだから』


【誰に向けられたかも分からない言葉を砂漠に投げつけて、そいつはまたバイクに跨った】
【次はどこへ向かおうか。探し物はまだ見つからないし、見つかるかも分からない】
【最後に一度だけ、ぎゃはとそいつは笑った。大きなエンジン音が鳴り響く】
【旅はまだまだ終わりそうにない。世界が終わる、その日まで】

/おつかれ様でした、ありがとうございました!


404 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/23(日) 17:22:20 5p38.LtA0
>>379

「ありがとうございます……というか、かなり派手にやりましたね」
「大丈夫ですかミレーユさんアリアさん」
「出しますよ……タオルは後ろにありったけ積んでますからね!」

【ミレーユそして、アリアが飛び乗るのを確認すると即座にアクセルを踏み込み発進】
【轟沈する駆逐艦雷の船体が挙げる轟音と、辺り一面を照らす炎、悲鳴と怒号を背にして】
【二人の銃撃主の搭乗により、簡単な戦闘車両と化したバン】
【幸いというべきか、追っ手も非常線も、思っていた程は存在していない】
【或いは、駆逐艦の轟沈等と言う戦時でもなければ存在し得ない事態だ】
【迅速の撤退を決め込んだ此方への対応は、幾分にも遅れていると言えるのかもしれない】

「外務八課本部ですか?迂回路とカモフラージュを経由して向かいますね」

【いずれにしても、彼らの帰還は無事に叶うだろう】

「すまない、外務八課……改めて礼を言わせてほしい、そして、知っている全てを話そう」

【幾つもの街灯や、すれ違う車のヘッドライト、何より日の出の朝日が抜ける車内で】
【厳島は状況が落ち着けば、こう三人に告げた】
【後日、アリアが回収した薬液と薬筒のサンプルの、その解析結果が手元に来るだろう】
【それによると、極めて特殊な魔術的魔力的な処置の施された薬品であることが解る】
【使用者の魔術回路を、特に妖怪や妖魔の類の魔術回路を、強制的に何十倍にも膨れ上がらせて強化し】
【同時に元の姿形を変質させるほどに、暴走させる薬品である事が解る】
【主成分は、人間と妖魔の血と髄液の混合物】
【それはまた、後日の話であるのだが……】


//お疲れ様でした、この辺りで〆でしょうか?
//ありがとうございました!


405 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/23(日) 17:50:27 5p38.LtA0
>>381

「ひッ、よ、よしてくれ!お前は何か敵にしたら怖そうだ、な、杉原!」
「斬るなら軍曹からお願いします、私はその間に逃げますから」

【ディミーアの冗談めいた言葉に、こう二人は答えた】
【どうにも、軍人というには、こと諜報員と言うには聊かそぐわなさそうな二人だが】

「ふむ、では話そうか……」
「そうですね、先ず結論から言うなれば、魔道海軍は貴方方の言う所の黒幕と結び、この世界の軍事バランスを崩壊させようと目論んでいます」
「目下の狙いは、海軍勢力で抜きん出る事、制海権の掌握だな」

【話が始まれば、先ほどとは打って変わって、真面目に話を始める】

「厳島中尉がこの件に気付き独自に調査を開始したのは、そうですね、今から一月か二月ほど前」
「丁度、虚神の件の調査に追われている最中でした」
「先の連合艦隊司令長官、土御門晴峰元帥が病の床に伏せられ、急遽代理として蘆屋道賢海軍大将が提督として着任しました」
「蘆屋大将は、瞬く間に海軍内部で自らの地盤を固め、そしてその地位を磐石な物としました」
「そして計画を実行に移した……」
「先の司令長官、土御門晴峰元帥が研究、そして永久に凍結した筈の計画」
「ホムンクルスと妖魔、妖怪を利用した『魔導イージス艦』の開発研究」

【ここで一息つくように、そして】

「疑問に思ったことは無いか?何故魔導海軍は旧時代の軍艦や装備なんぞ模して使っているのか、と」
「イージスシステムや各種レーダーシステム、ミサイル運用が当たり前のこのご時勢にだ」

【キャスケットを被り直し、淡々と、ディミーアに聞いたのだった】

「魔導海軍の立脚点は魔能、異能との融合、利用にある」
「古い物ほど、それらこと魔術や魔力との親和性が高く神性が宿りやすいと言う研究結果があってな、海軍はその論に習っているわけだ」
「それ故に、他国の新鋭装備で固められた海軍勢力とは事情は違いつつも戦力的な拮抗を保っていたのです」
「魔導イージス艦は、それを大幅に覆す存在だ」
「その研究開発を再稼動し、そして制海権の掌握に乗り出した」
「海軍内部を自分の派閥一色に塗り替え、そして敵対将校達を粛清しながらな」
「厳島中尉はその中で、身柄を押さえられてしまった」
「我々陸軍は、身柄を保護した土御門晴峰前司令長官の命を受けて、こうして動いているわけだ」

【ここまでは解ったか?そう聞くようにディミーアの顔を見て】
【或いは質問があるならば聞けるだろう】


406 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/23(日) 18:00:20 oFkCLf9I0
>>405

……また政治か

【話を聞き終えた剣士の表情には苦々しいものが映り込んでいた】
【先の黒幕や円卓の件もあり、ディミーアはこの手の騒動にうんざりしていたのだ】
【だが全てが力と知恵だけで何とかなると思っているほど、この男も世間知らずではなかった。何かを呑み込むようにして、口を開く】

状況は分かった。お前たち、いや、厳島に協力してそのお山の大将を叩き落とすことも、黒幕のクソ野郎どもを弱体化させる一手になりそうだな
確か、厳島については救出作戦が練られているんだったか。それに協力するのもいいな

【考えを述べながら、瓦礫を乗り越えて部屋の出入り口へと移動していく】

ひとまずここを出よう。今度はトリケラトプスやブラキオサウルスが来るかもしれんしな

【まだ話は終わっていなかったが、ディミーアは妨害を考えて移動を提案した】


407 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/23(日) 18:41:26 WMHqDivw0
>>401

………………同じなわけないじゃない。あいつは機械仕掛けの舞台装置だったけどね、
それでも言ってたよ。そんな中でも、愛する男だけは、自分で選んだんだって。

【あなたはそうじゃないの、とはもう聞かなかった。既に彼女はコートを着込んでおり】
【なれば本当にもう、用事はなくなったんだと、すべての仕草はそう言っていた】
【ともすれば「これからも」――そう言いたげな目をして、けれど、踵を返す刹那】

ねえブランル。今のあなた、すっごくつまんない。
これから先もこのまんま、なんだったら――“絶交”しちゃうからね。

【最後まで尾を引くようにぎりぎりまで置いてから、ふと離された暗赤色の視線は】
【それでもまだどこか、ブランルに対する期待を捨てきれていないとでも言いたかったんだろうか】
【それとも。――ここから面白くなってくれなくては、あまりにも遣る瀬無い、なんて思ったのか】
【何が。誰にとって。それすら言いはしなかったが――どうでもいいこと、なのかもしれない】
【だってこの女はあまりにも“普通”で、つまらないんだから。ここで縁が切れたとて】
【きっとブランルがこれから何をするにしても、さしたる障害や、刺激にすらならなさそうなのだから】

【――それでも。去り行く背中は確かに「またね」と言ったから、まだ、なのかもしれないけれど】


//短くなっちゃいましたがここらへんでしょうか、、、まだ何かあれば続けられます!


408 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/23(日) 18:55:17 5p38.LtA0
>>386

「ヴラド公のお名前を聞くことになるとは、博識でいらっしゃいますね」
「殺一儆百とも言うしな、効果は覿面だろうな」

【祖国を領土を守るべく、残虐な手法で敵兵を虐殺した英雄】
【その名は栄誉ある竜に乗る者を意味するドラキュールから、敵国より吸血鬼ドラキュラとして変質され伝わる名】

「生き延びてもらわねば困る、陸軍の体面にも関わる話し出しな」
「軍曹、彼らは大丈夫でしょう、歴戦の猛者の様だ身柄の保護はある意味無用の長物かもしれなせんよ」

【彼らなりの冗談だが、どうにも上手く伝わったのは杉原と言う男のようだ】
【そういった意味で、彼らの実力を一目で看破出来たと言う事でもあるのだが】
【そして……】

「恐らくだが、海軍は水の国と言うのはもう一つある」
「黒幕、カノッサ機関の重要活動拠点であると言う事ですね、そしてもう一つはこの世界の軍事バランスを保つもう一つの要因が能力者の存在です」
「こと、この国がこの情勢の中、国を維持し続けられたのは、この能力者という存在が大きい」
「この能力者が中心的に集まるのも、この国の特徴だからな」
「しかし、いかな能力者と言えど海上にて行動できる者は限られる……海軍勢力としては狙い目である事は間違いがないでしょうね」

【この場での憶測上の話ではあるが、アーディン達の論と考えは的を得ている話だった】
【最も考えられるシナリオだが、問題はどう動いてくるのか】
【ここで……】

「ん?何だ外務八課と知り合いなのか?」
「あの方達は暗躍組織です、こと虚神関係でも動いている様子ですがその繋がりで?」

【アーディンがアリアを知っている、それは随分と意外な事だった様で】
【しかしそれならば、寧ろ話は早いと】

「天ノ原将軍家が関わっているかは、すまないが解らない、情報の精度が悪くてな確証と呼べるものが無いんだ」
「……硬骨の者達、ですか……未だ蘆屋の手が及んでいない区域、鎮守府、泊地はありますが」

【情報の不精密に沈んだ様な、申し訳ない顔を見せる百合子】
【一方で杉原は、他にも動く者があるのでは、との話に別の何かがあるのか影の落ちた表情を見せる】
【新たなる不安要素、新たなる動乱の兆し】
【アーディン達の疑念と不安は、果たして的中を見せるか否か――】

「うッ、胸糞の悪い話だな、解る、解るよ」
「ッ……すみません、言葉が過ぎました」

【もう少し言葉を選んで話すべきだった、そう悔いる杉原だが】
【内容が内容だ、シャッテンの怒りも、またタガが決壊しかけている狂気も理解の出来る話だ】

「アナンタシェーシャ、巨大な蛇の姿の虚神、確かに二人の接触はそこからですね」
「そこが契機になっているわけか、この国も、と言うかUTも散々だな……黒幕だけでなくレヴォル社に虚神」
「ラベンダァイス、悲し過ぎる話ですね、報告によれば見た目はそこの……みらいと同じ位の歳の少女だと言うのに」
「そんな状態ならば、話しても……いや、ダメなのだろうな……」

【ラベンダァイスの事となれば、激昂から一転して暗い表情に変わる】
【それは、この直接鈴音もラベンダァイスも知らない二人にも、十分に伝わり】
【そして、それは、決してこの件とは無関係ではない人の世界の人の業、人類の原罪なのだと】

「お、おいちゃ……」
「おに、いちゃ……」
「ほん、とう、に?」
「ほん、とうに、いき、て、いい?」
「お、さら、わっちゃ、う、こっぷ、も、お、はなし、も、うま、く、でき、ない」
「みらい、は、いきていて、いい?」

【口々にみらいを励ます三人に】
【大粒の涙を幾重にも流しながら、何度も確認するように】
【だが、その涙は、三人の言葉、意味が通じれば、次第に笑顔に変わって行き】

「おいちゃ、おにいちゃ」




                        

                               「――ありがとう」

【こう三人に、短くも確かに告げられた】

「杉原……」
「ええ、軍曹……守り抜きますよ、この身に変えても……」

【その様子を見守りながら】
【俯きながら、短く二人は話すのだった】
【やがて、その涙と、燃える様な決起の火の中で】

「そうだ、こちらも聞きたいことがあったんだ」
「ええ、次の関係者を探さねばなりませんからね」
「アーディン、このチームMのカニバディールってのは、何処に行ったら会えるんだ?」

【ここで、二人も疑問を、と言うよりも探している人物の名前を出す】
【あくまで任務は厳島中尉の関係者の保護と、そして情報収集であれば】

「あと、このまだ身柄の抑えられていない、リオシア二等兵と和泉文月教官って、知ってたら教えて欲しい」


409 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/23(日) 19:59:58 oFkCLf9I0
>>407

【最後の最後まで、ブランルから何かの言葉が発せられることはなかった】
【ただ漫然と、灰色の空と大地を眺め、そして────】

……自分で選ぶ、など不可能だ

【独白は、たった一人になってから発せられた】

物質世界に誕生した我らは、知覚と認識に縛られている
そんな中であって、一体何を持って“選ぶ”などと言えるのか
所詮は経験の蓄積と遺伝子による同様の事象によって得られた判断の間隙に意思などという名をつけているに過ぎない

電磁気力が支配するがために“接する”などということさえ不可能な物質と同様、我らの精神も交わることなどない
神の戯れのように、洞穴効果の如く起こる一瞬の精神の接触を、それを相互理解や愛だと誤認するしかないのだ
ならばこそ、神に造られし我らは人形と何が違っていよう。違うといえようか

だからこそ我らは……私は……

【静かに目が伏せられる。言葉は断絶し、その表情には悲哀があった】
【再び上がる視線の先には灰色の空。火に焼かれ灰と化した写真が流れ果てたその先を見据えていた】

…………こればかりは、いつまで経っても愉しめないな

【自嘲めいた声だった。そこには笑みなど一欠片もなかった】
【意識が内側へと向けられる。男の耳には彼にだけ聞こえる無数の声なき声があった】
【双眸には理解の色。小さな息が、内側の激情の一欠片を乗せて吐き出された】

そうか…………お前たちには分かるか


──ならば、詠おう


【息を吸い込み、そして吐く】
【──それは鎮魂歌だった。声が美しい音階を奏でる、哀悼と忿怒の感情を乗せた死者のための歌だった】
【そこには狂人はいなかった。怜悧な科学者さえも。歌を口ずさむのはそれ以外の何者かだった】

【涙さえも流さないままに、鎮魂歌は静まりかえった街に響き、そして消えていった】

//お疲れ様です!


410 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/23(日) 20:32:50 E1nVzEpQ0
>>397

【「では遠慮なく。」 ─── シガレットを一本だけ抜き出して、ガスライターにて火を付ける。燻る刻み葉が苛立ちにも似た音を溢す】
【ふッと吐き出した紫煙を、当て所ない情欲に擬えることもできたろう。女はそれを楽しむこともなく、ただ射し込む陽光を濁らせて、甘いような人烟を立ち上らせていく】
【終いには碌に吸わぬ内に、黒い煙草が転がることも無くなった円い硝子の灰皿へと、己れの一服を揉み消す。口慰みでしかなかったらしい。巻紙に残った口紅の痕ばかり、目に毒であって】
【既読は付いていたが、彼からのメッセージはなかった。20分ほどの帰路につくなら、常ならば彼は「帰るよ」と一言を寄越すのだから、この息苦しい時間はそれなりに保証されていた】


  「悪いけれど、久方ぶりに会おうと思って来たの。」「 ─── 気遣いは無用よ」
  「余り固くなられても却って居心地が悪いかしら。」「楽にしているといいわ。」


【全く無神経であるような口ぶりで、少女の視線も挙措も歯牙に掛けぬような返答を寄越すのだろう。単に乙女心を知らないか、意地が悪いのか、或いは冷血であるのか、判然とせず】
【「フランシスダローズが、あれば。」呟くのは蒸留酒の銘柄であるらしかった。 ─── キッチンを探せば、確かにそれは見つかるのだろう。半ば程まで空けられたアルマニャックのボトル。】
【それがどういう文脈の飲料であるのかは矢張り判じ難いものだった。だが推察を並べるならば、決して難しくもないのだろう。ショットグラスに注いで寄越して、二度と見てやらなければいい】

【そうして少女が来たる頃、彼女は茫洋たる眼光で室内を見回しているのだろう。緩やかに動く碧眼には、然して舐めるような執拗さがあった。胸許で組まれて織地の膨らみを強調する、両腕。】
【暗喩であるのかもしれなかった。憂うように儚げな横顔は如何様な感情にも見て取れるのだろう。ただ何かしらの執心を宿しているのだろうということだけ、悟らせて】
【 ─── 最後に視線が至ったのは、ベッドサイドのテーブルだった。ヘアゴムだの、スキンクリームだの、飲みさしの天然水だの、無造作な小物が置くだけ置かれていた。隻眼が眇められた】


  「 ……… ふしだらね。」


【如何にも不愉快であると表明して憚らぬ音階で、 ─── 一ツ彼女は溢すのだろう。視線は何処にも向いていなかった】
【されど何れ、眦を細めたままの蒼い瞳は、縮こまる少女を射貫く。疑わしさを検分するようであった。仄かに紅い唇は厳として結ばれていた。そうして彼女は押し黙る顔さえ耽美であって】


411 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/23(日) 20:59:16 E1nVzEpQ0
>>404

【発砲がなかった事は2人にとっても幸いであった。 ─── 自国内であるとしても、銃撃戦だけで全てを解決できる訳ではない】
【作戦領域を脱した所で、漸く彼女らはセーフティを掛けるのだろう。それでも、決して銃爪より指を離す事はなかった】


  「Who dares wins. ─── 為すべきことを為しただけ、よ。」



【厳島の言葉にも凡そアリアは淡然としたものだった。 ─── 然してそこには、確かな矜持と慈悲も込められているのだろう。】
【インカムの周波数を本部に合わせて、ミレーユが何かしらの通信を試みていた。八課の設立より初となる潜入救出作戦の成果は、凡そ劇的なものであったと言えるのだろう。】


     「 ─── Galm2 here.」「Misson Accomplished. RTB」


【 ─── 3人が帰投する運びとなれば、捕虜であった4人には十分な治療と休息が供されるのだろう。検査薬と緊急避妊薬の処方さえあった】
【彼らの保護とそれに係する種々の煩雑な手続きは極めて内密に行われた。外務省に提出されたアリア直筆の具申も同様であった】
【4人は亡命者として扱われる運びとなり、国際条約交渉及執行部 ─── 外務八課の庇護下に置かれる。国内での活動においても、外出に際しては難色を示されるのだろうが】
【強い希求と必然があるのであれば、許されぬ事はないのだろう。 ──── 僥倖の成果となった、薬液の正体に関する調査と推察も、また必要であったのだから】

/では私からもこれで!長期間お疲れ様でした・ありがとうございました!!


412 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/23(日) 21:18:50 WMHqDivw0
>>410

ふらん、…………何? えっと、………………あ。

【言われて、きょとんとした顔をする。酒に詳しくないから、というのが一つ目の理由で】
【もう一つの理由が、この状況で酒を要求されるとは思ってもいなかったからだった】
【もっとこう、珈琲とか紅茶とかそういうのを出すつもりでいた。だから初動はいくらか遅れ】
【慌ててキッチンに駆け込む。綴りがよくわからないから、それもいくらか難航して】

【戻って来たときには瓶とグラスと、あとよくわかんなかったから氷も一緒に】
【お盆の上に乗せて運んで、テーブルに乗せたら――ちょっと迷ってから、恐る恐る】
【瓶を傾けて中身をグラスに注ぐ。手酌ってヤツ、お客さんにさせたら、めっちゃ怒られる】
【少女の知識はそれくらいしかなかったから。やれるのはそこまでだ、全部無言でやって】

【ずうっと肩を縮こまらせていた。幻視が叶う頭上の猫耳はついぞぴんと立ち上がることはなく】
【グラスの用意が終わったら膝立ちにてそろそろ離れていき――やっぱり床の上】
【なんとか手繰り寄せたクッションの上にお尻を乗せて膝を抱える。顔の半分をそこに埋めて】
【見せる顔の上半分は、あからさまに怯えていた。眉はハの字、目尻には少しずつ赤色が滲んで】

………………………………えっ、は? ふ、ふしだら……?

【――いきなり言われたらやっぱりビビっていた。もう一段階縮こまって、びんと後ろにつんのめる】
【そして何か、マズいモノ見られたかなって。涙目にて視線を彷徨わせる――あ、と声を上げた】
【(ソファの近くに上の方の下着、キャミソールを置きっぱなしにしてた。もしやそれのことか?)】
【睨まれるように見つめられるなら、ヒェ、とまで声を上げて。けど――小さく震えながら】

べっ、…………べつに、部屋でどんなカッコしてたって、いいじゃ……ないですか、
他人の部屋じゃないし……いや他人だけど……、……人が来るとか知らなかったしっ、
カギ持ってるとかも知らなかった、し……あたし別に悪いコトしてなく、ない、……ですか。

【眦に潤いを帯びながらも、ぎゅっと眉根を寄せて――必死の反抗を声にする、けれど】
【そもそも何にふしだらって言われたのかもよくわかってないのに。わかってないけど、それでも】
【急にずかずか上がってこられて困ってるんですけど。膝を抱く左手に植わる指輪を、しきりにちらつかせつつ】


413 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/23(日) 21:40:23 6IlD6zzI0
>>400

【大きな背中に付随する薔薇色の香りに導かれるままに夜の街へと身を曝け出す】
【街明かりに紛れるのは麗しく強かな銀色とその後を追う黒交じりの未熟な金色】
【二人は似た者同士であるけれど、身形は対極で。いわば大人の女性と小娘という構図だった】


【―――】


【僅かな移動時間。喫茶店から外務八課のビルとの距離はとても近くて】
【同時に先日まで敵対関係にあった両者の信頼関係、その距離感の表れでもあった】
【アリアの案内で踏み込んだ敷地内は味気なくて――なんてどうでもいい事を考えているうちに】
【エレベーターに乗り込んで、その場で耳にする文字列の羅列に表情が硬くなる】


(捜査とか諜報、潜入は前の職場で主立ってやってたけど、電子線とか用心護衛に人心掌握って……)
(うへぇ、公安五課向けの養成機関にいた時を思い出すよ――、………)


【エーリカ自身捜査だとか諜報活動、潜入捜査は慣れ親しんだものであるものの】
【電子戦だとか護衛、果ては人心掌握の類には全く触れておらず、そういう分野は】
【かつて銀髪の女性が一蹴した公安五課のチンピラ・棕櫚の領分だったから、今までノータッチだったが】


――――……えへへっ、私が優れた生徒だなんて。(そう言われると何だろ、嬉しいのかな?)
アリアさん直々にしごかれるなら、期待されてるなら全力で応えなきゃいけませんねっ!


【単純明快な人物。きっと不安めいた表情も信頼の言葉一つで容易く変わって】
【人懐っこい犬の様に尻尾を振るような振る舞いを見せるのだった。そしてエレベーターは八階で止まり】
【やがてビジネスホテルの一室のような空間に辿り着く。簡素な部屋であったが不思議と寒々しくはない】


とりあえず一息付けますね、……椅子がないからベッドに腰掛けさせてもらいますよっと。

――――……、アリアさん。ここでなら公安五課の連中も来ませんでしょう。
なので話したい事が幾つか……。

まず一つ目、公安五課の目をどう欺くか。私が裏切った事を知るのは時間の問題でしょう。
なのでアリアさんの意見を聞きたいです。……裏切りの発覚を遅らせるのが関の山かもしれないですけど。


414 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/23(日) 21:58:50 E1nVzEpQ0
>>412


【 ──── 寸刻、女は顔貌を凍らせた。元より冱つるように感情の希薄な表情であったが、それでも凪いだ海のようなさざめきは宿していた。沈黙が僅かに時さえも止めていた】
【幽かに瞠していた。紡がれた唇に故知れぬ力が篭っていた。スラックスとストッキングに覆われた長い両脚が解かれて、彼女は立ち上がった。冷たく輝く銀の長髪が儘ならぬように揺れていた】
【そのまま女は、少女へと歩みを向けるのであろう。重く軋むフローリングは詰め寄るのだとさえ思わせた。歩調すら矢張り有無を言わせぬものであった。 ─── そうして紅い瞳の眼前にて、】


  「 ───……… 御免なさいね。」「貴女に向けた積もりは、無かったの。」


【緩やかに女は跪いて、 ─── 少女の髪へと細い手指を伸ばし、そっと解くように通そうとするのだろう。耳朶を撫ぜるなめらかさは絖地に似ていた。冷たくも一拍の温もりを宿していた】
【そのまま頬を緩く捕まえて包もうとするのだろう。紅い瞳を覗き込む碧眼の色合いは、ほんの幽かに悲しく緩んだ口許と同質だった。どういう意図であれ、彼女は心から詫びていた】
【だが結局は無遠慮に他人の伴侶へと触れるのであるから少なくとも歳下として見ているようだった。 ─── それでも、傍に寄るならば否応無く理解させるのだろう。】
【ひどく甘い香りがした。女の香り。妙齢の香り。薔薇の香に織り帯びて、香油と煙草の芳しさ。唇から漏れるのは蜂蜜に似ていた。開かれた胸間と揺らぐ練絹は、恋と愛を深く知っていた】

【拒まれるにせよ何にせよ、女は唐突にしおらしくなるのだろう。 ─── 訳もなく苛立っていたのかもしれない。帯下の類であるのかもしれない。何れにせよここを訪れたのは一因だろう】
【そうして今それは鳴りを潜めていた。眩しげな左薬指の色合いに反感を示す事はもう無いようだった。沈黙は再び続くのだろうか。ならば矢張り徐に、女は言葉を綴るのだろう】


  「 ……… 彼、困った人でしょう。」「身持ちを落ち着けたなら、少しは丸くなるのかと思ったけれど、 ─── そんな事も、なくって。」


【甘い溜息に乗せて紡がれるのは追憶の温度だった。所在なく横坐りに体重を預けて、ファンシーな白いクッションに座り込むのは、どこかミスマッチで滑稽ですらあった】
【ある種の愚痴なのかもしれない。聞き流してやればよいのかもしれなかった。だが尋ねたい事があるのならば、それもまた許されるのだろう。陽の光が輝かしいという事実だけ、変わらない。】


415 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/23(日) 22:17:33 WMHqDivw0
>>414

【ソファに座られていた時点でだいぶ見上げていたんだけど――立ち上がられるなら猶更】
【見上げる碧眼はひどく高い位置まで登るから、ぴゃ、と身体が跳ねあがる】
【そしてそのまま近寄られるなら、やっぱり怯えた仕草にて。ずり、とクッションが後ろに引き摺られる】

……………………ん? え? なに? えっ?
わ、近っ……えっ、え? いやあの、…………えっと、その……

【だけど逃げるまでには至らない。上半身が仰け反って、けれどそれだけであるなら】
【伸ばされる手からは逃げられない。頬を撫ぜられてびくりと肩が震えた】
【しかし次に浮かべる表情は、今までとは違って、困惑の色に塗り替えられるのだから】
【(むしろこっちが謝らなきゃいけないんじゃないかなあ)。とか、考えたり、しつつも】

…………ふしだらって、エーノが? なんで?
困っ……ては、ない、けど。特に。………………、
………………何かしてんの? あたしの知らないところで。

【言われたことには心当たりがない、と言うような顔をする。眉根は寄せたまま、首を傾げて】
【浮気されているような素振りなんて欠片もない。あるいは気付いてないだけかもしれないけど】
【それでも、そのほかに何か困ったようなことをされている気配もない。であるのなら、】
【……なにか、自分の知らないところでよくわかんないことするような人であるんだろうか】
【そしてそれを、目の前の彼女だけが知っているんだろうか。そう考えると急に、怖くなるから】

【また少し、表情に怯えの色が混ざった。ケースに入れられて、病院に連れて行かれることを悟った猫みたいに】


416 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/23(日) 22:23:51 E1nVzEpQ0
>>413

【或いはその純真さが、アリアの語るエーリカの素養であるとも呼べるのだろう。 ─── 信じる何者にも従いうる純粋さ】
【時としてそれが危うさにも転じうるのだとして、師事者としては代え難い資質であった。少女の望む全てを、アリアは伝えるのだろう】
【 ───── 窓際の月明かりに軫憂を纏いながら語る命題に耳を傾けていた。幾許かの黙考の後に、噤まれた唇が緩められる。漏れる声音の温度は、疑わぬ論理に支えられたもの。】


「逆に、貴女へ問いましょう。」「 ──── エーリカ。貴女にとって、己れの裏切りを隠す理由はあるかしら?」
「獅子身中の虫を貴女が演じる事も出来るでしょうけれど、その危殆を侵してまで彼らを潰滅する必要が、少なくとも今あるとは思えない。」
「そうして離叛が露見せぬのは、長くても今だけのことでしょう。 ─── ならば、あれこれと策に呻吟する必然も、またない。」

「当分は、己れの身上を守ることだけ考えていなさい。」「彼らもまた、我々の武力に対する事の何たるかを理解しているでしょうから。」


【少女の穏やかならぬ内心を和らげるように、アリアが示したのはそのような論理であった。 ─── 急いて何をする事もありはしない】
【何れにせよ裏切りは露見するのであれば、それを利用するのは今でしか有り得ない。だが今すぐに対手へと攻め込む理由はない】
【そして周到な計画と理由付けを欠いて打ち倒せる相手であるとも、差し迫った脅威となる組織であるとも、アリアは解釈していなかった。】
【ならばエーリカにとっては自衛に徹する事だけが肝要であった。 ─── 何れ敵する時にまで、今は蓄えるものを蓄えるべきなのだろう】


【「続けて良いわ。」一言でアリアは促した。 ─── 青い視線は改めて少女へと向けられ、続くものを待っていた。】


417 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/23(日) 22:43:51 E1nVzEpQ0
>>415

【またも女は言葉を詰まらせた。 ─── 豆鉄砲を喰ったような鳩だとしても、もう少し語彙が豊かであろう。そういう表情だった】
【それは軈て、信じ難いと言いたげな色合いに変容していった。だというのに顔貌の奥には、静やかな笑いの情感が、淀んでいて。】


 「 ──── 貴女、彼と一緒にいて、何ともないの?」「 …………… ふふ、あはっ。」


【 ──── やおら女は笑い出すのだろう。噴き出していた。白い喉筋を目一杯に震わせて、細め切った隻眼は愈々に瞑られて】
【唇に人差し指を添えながら、けらけらと笑って憚らなかった。凡そ純真な年頃の少女に相違ない笑い方であったろう。】
【一頻りの痴笑いを終える頃には目尻に涙さえ帯びているようだった。 ─── 斯様なる冷酷な表情を宿していた人間の所作とは思い難かった。】
【好き放題に揺れる白銀の髪は却って愛らしかった。彼でさえもこのような仕種を見た事はないのだと、今の少女が知る由もないだろう。】


 「安心なさい。 ──── 想い人の傍にいながら、何かを誤魔化して居られるほど、彼は器用でないでしょう?」
 「私の知っている彼とは、随分と違うんだなあって。」「 ………少し、遣る方無かっただけ。貴女が気に病む事を、もう何も言う積りはないわ」


【はァ、と一ツ大きく息を吐き出して、漸く女は真っ当に口を利くのだろう。目許に添えた指が涙の雫を拭い取り】
【なれば言葉尻に至る頃には既に落ち着いた微笑みを浮かべるのみであった。ごく穏やかに凪ぐような、慈母の色合いをしていた。釐かに小首を傾げながら、下げた眉根に陳謝を示す。】
【畢竟すべては八つ当たりであったらしい。なんとなれば彼女は、純真な愛情だけで彼を好いていた訳ではないようだった。きっと彼女の得られなかったものを、少女は得ていたのだろう】


418 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/23(日) 22:57:21 WMHqDivw0
>>417

【怯える表情がまたきょとんとした顔になって、それからまた――困惑に眉根を寄せる】
【何がそんなに面白いのか見当もつかなかった。怪訝そうな顔をして、俯きがちに】
【したら上目遣いになるから。それでじいっと見つめて、まだ小首を傾げたままで】

何ともないって、……昔は、何かあったの?
……、……アリアさんだっけ。……昔のエーノって、どんな人だった?

【訊くのなら、どこか恐る恐る手探りするような声色。見てはいけないものを覗き込むような】
【そんな視線の使い方をしていた。それでも目を逸らすようなことは、なんとなく、できなかった】
【ただ知りたいと思ったからそんな質問をして、ゆっくりと、立てていた膝を寝かせる】
【ちらと一瞬だけスマホを見やる。まだ何もメッセージが来ていないことに――何故か安心した】

……浮気性だったりした? それか、……なんか危なっかしいことでもしてた?
そーいうのは、少なくとも今は、なんにもないけど。……多分。

でも、知りたいな――そういやあたし、エーノの昔話なんて何も聞いたことないもん。
あたしばっかり話してる気がして、なんか、不公平だもん。ねえ、

【おしえて。次に寄せられる上目遣いには、いくらか強請るような色合いが混じっていて】
【寝る前にお話をせがむ、ベッドの中の子供じみていた。それにしては要求するお話が】
【少しばかり腥いものになりそうな気もしたけど。どうでもよかった、たぶん、何でも受け入れられそうな気がしたから】


419 : "Rhapsody of In 2Q36 years " ◆KP.vGoiAyM :2018/12/23(日) 23:22:57 Ty26k7V20
>>174 >>175 >>252 >>253


暗闇は俺の目には関係ない。いつだって真実…悪夢だけが目の前に広がる。】
【だいぶ錆びついとはいえ、能力者の端くれ。この目は真っ暗な中でも見させてくれた】
【流石に壁の向こうまでは見えないが、それは経験が教えてくれる。】
【時間がない。】


―――起きろビル。“奴らが来る”。


【俺は向かいの穴の空いたソファで寝ていたビルのアタマを叩いた。時間がない。】
【船室のドアを開ける前に、銃を抜いた。いつものリボルバー。特筆すべきはない。見た目だけ立派な】
【悪魔。地獄にも天国にも連れて行かない。クソほど急な狭い階段を降りる】

「………クソッタレ。噂通りだ。ついにきやがった」

「嫌だ嫌だ。暗闇は嫌だ。ブギーマンが来る……」

【他にも気づいているやつは何人も居た。銃を構える者、レンチを握りしめるもの、ベッドの下に隠れるもの…】
【縋るようにろうそくに火をともして、じっと見つめるものもいれば、ばかみたいな大声で歌うやつも居た】


「見張りは何してやがった!!クソっ!!コレは襲撃だ!トラブルじゃねえ!!」


【んなことはとうにわかっている。俺は歩き慣れたこの細い通路の壁に背をつけて、その先をうかがいながら足を進める】



――――ぱしュッッ。


【息を殺した音。殺意。この古びた方舟では跳弾し跳ね回る弾丸の音のほうがよく響いた。】
【とっさに身を隠す。暗闇に潜む影。奴らだ。】

――――ぱしュッッ。――――ぱしュッッ。――――ぱしュッッ。

【音がするたびに、血の匂いが濃くなっていく。仲間が―――死んでいく】
【あちこちで声が響く。奴らは――存在しないかのように何事もなかったかのように消していく】
【それは俺たちがまるで、もともと存在していなかったかのように。この世界のコードを真っ黒に塗りつぶして】
【俺達がいた事すらなかったことにするかのように。】

【冗談じゃねえ。ロウソクの火ぐらいしかない。誰もこんな暗闇。見えるわけねえだろ】
【じゃあ、膝でも抱えて死ぬか?】

【俺は所詮、何もできなかった男だ。今更、誰かを救うなんて。ヒーローになるなんて、笑いものだ】
【だったらあのとき、立ち上がってろよ。あのときも失敗したじゃねえか。愛した人にアイ・ラブ・ユーも言えないやつが】
【世界なんて救えるかよ。】

【だからって、…バカ野郎。もう握りしめてるじゃねえか。その銃。なんの真似だよ。此処で死ぬ?…それこそ冗談じゃねえ】


【サングラスを捨てろ。曇った目で見抜け。撃ち抜け。3ブロックを駆け抜けろ。やるしかねえ、救えるのは俺だ】
【余計な言葉は捨てろ。ジャストファッキンムーブ。駆け抜けろ。】

【アホくせえ。もうアタマの中で響いてやがる。バスドラムのビート。歪んだギター。ベースライン。】
【狂った頭の中のDJがわざわざ煽ってきやがる。煩え。ロックが鳴り止まねえんだよ。】
【やるしかねえ。】

When The Sun Goes Down /世界が変わっちまう前に

【俺は飛び出した。一発の銃声と一緒にな―――――】


420 : "Rhapsody of In 2Q36 years " ◆KP.vGoiAyM :2018/12/23(日) 23:28:55 Ty26k7V20
>>174 >>175 >>252 >>253


【後のことはダイジェストで話させてもらうよ】

【んまあ、覚えていることは大したたことじゃないさ。――――そうでも思ってないとね】

【走り続けたな。あるときは、750ccの4気筒のモータサイクル】
【たまには2本の足を使って。しゃーねえ。それも人生だ】

【シヲリ聞いてくれ。…いいや。聴かなくても良い。だけど聞いてくれ。矛盾してるが】
【オレは世界を変えるつもりだった。その理由は正義でもなんでもない。唯一人】
【唯一人のヒトに会いたかっただけだ。世界を変えればその願いも叶えるかもしれないって思ってた】

【愛しているじゃなくても良い。ありがとうと伝えればよかった。本当さ。こんなオレに】
【付き合ってくれたんだ。かっこつけてばかりだったけど。それを言うなら世界と命をかけたって良い】
【世界なんてどうでもいいんだ。それが本音だ。真実より。何より。オレはその一言を伝えたかった】

【この世界でどれだけ、あらがったって、伝わらないかもしれない。でも、オレの全ては其処にある】

【愛してる。その全てに。】

【愛してる。その全てに。オレの人生が詰まってるんだ】

【 somebody to loveってやつさ】
【知ってるか?数少ない、世界を変えることの出来たヒトの歌だ。】

【微笑みなんていらない。せめて何処かで見ていてくれてほしい。運命は。そう簡単に切れてたまるかって】
【だから、世界を変えて。オレを解き放ってほしい。世界からも、運命からも、全部。】
【愛し合うすべての者達に。アイ・ラブ・ユーを送って。】

【世界はクソッタレだ。愛も正義も、純粋なものはシネマで。現実には到底存在しない】
【誰かが擦ったマッチの火は、すぐに悪意に塗れた風が吹いて消えちまう】
【弱いものから奪い取ったゴールドで、子供は育つ。恵まれないヒトへ施される】
【摂理だ。矛盾で出来た。クソッタレなのが。当たり前だ。だからこそ。】

【クソッタレの世界で。オレは、アイ・ラブ・ユーを送る】

【だから、疾走れ。2Q18年でも何処へでも。疾走れ。】

【救われたいのは自分だ。けど自分で自分自身を救うことなんて出来ない。】
【だからこそ、誰かを救うんだ。手を差し伸べ、手を振り上げ、声を張り上げて、愛を叫べ】


【ちょっとわかりずらい文章になっちまったな。まあ…散文的でも狂想曲ってことで許してくれ】


【最後に。そんなオレにも、ピースマークを送ってくれたすべての友人たちに】
【……揃いも揃って、馬鹿な奴らだよ。ほんとにな】
【笑ってくれよ。そして、忘れないでくれ。KEEP On ROLLING BABY。】
【ちったぁわかったろ。ロックンロールってもんが】


421 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/23(日) 23:37:04 E1nVzEpQ0
>>418

【背徳を伺うような少女の目線を、決してアリアは拒まなかった。 ─── 「夕月さん、で良いかしらね。」親しげにそう呼びかけるならば】
【弓形りの視線にて微笑むまま、一先ず立ち上がるのだろう。ソファ前の高いテーブルに置き去られたグラスを、クッションの側に立つ低いテーブルに置き換えながら】
【当たり前の様にキッチンへと歩いていき、冷蔵庫から取り出したのは牛乳であった。 ─── インスタントの顆粒を溶かして、クラッシュアイスを沈め、彼の常備する生クリームをホイップし】
【歪みなく水面へ盛り付ければ、その上からチョコソースをたっぷりと掛けてやる。「お口に合えば良いけれど。」慣れた手口だった。ショットグラスの横に並べるには、ごく愛らしい飲料】
【なれば存外にこの女は乙女らしいロマンスを好むのかもしれなかった。 ─── 飴色のグラスに口を付ければ、その薫り高さを楽しんだ後、思い出す音階が言葉を紡ぐ。切なげなソプラノ。】


「 ─── とても一途だったわ。元々、彼は人肌が恋しくて」「けれど、それ以上に臆病だった。情けない真似だってされた」
「それでも、 ─── 素敵だったわ。愛らしくて。可愛くって。 ……… 泣きそうな顔をしていたら、護っていたくもなるの。」


【グラスを濡らす結露を、所在ない指先がテーブルに引き延ばす。 ─── やはり子守唄にしても剣呑な語り出しであったろう】
【先刻までとは別の色合いを宿した涙が、隻眼の淵に浮かんでいた。一節ごとに酒精を舐めながら、追憶が吐露されていく。】


「どこから話すべきかしらね。」「彼と初めて会ったのは、10年くらい前だった、かしら。」
「その頃は、私も彼も軍属だった。私たちの"センセイ"が、たまたまマフィアの鉄砲玉を拾ってきて。素質があったから、って」
「目付きの悪くって、無愛想な子供だったわ。けれど、確かに筋は良かった。素早かったし、賢かったし、銃の撃ち方も悪くなかった。」

「 ──── 何より、心の隙間に入り込む遣り方を、よく心得ていたの。」「 ……… 目付役が、私に回ってくる事もあったわ。同じ任務を熟す機会だって、何度もね。」


【「恋心が芽生えたのは、何方からだったかしらね。」 ─── やはり、何処までも懐かしんでいた。全ては過去の感情に過ぎなかった。】
【それでも彼れだけ冷たい面持ちをしていた芳紀の乙女を、斯様なまでに切なげな表情へ変え得るのだから、宿し合う情念は只ならなかった】
【少なくともアリアは拒んでいなかった。ならば少女には問う権利があるのだろう。割れた液晶を通知が照らすのは、まだ遠い事であるらしい】


422 : "Rhapsody of In 2Q36 years " ◆KP.vGoiAyM :2018/12/23(日) 23:37:42 Ty26k7V20
>>253

//まず、お返事が遅くなったことをお詫び申し上げます。
//そんで2レスにわけたお返事ですが、上だけ見てもらえば十分ですので。
//下のはなんか書けって脅されたんです。はい。それだけです。


//あらすじに関しては自分も似たようなストーリィを想像してました。
//細かいところは置いておいて、概ね考えは一致していると思います。(とても良いですね)
//ただログを読み返すとそうとう矛盾点が(主にわたくしのせいで)ボコボコうまれていますので
//気にしないなり修正するなりコロ助なりは今後考えていくとしたいです。

//ロールの今後については私もそれで良いと思います。いろいろと考えてくださって
//ありがとうございますという感じでいっぱいです。コロ助です。

//以上の程、今後共よろしくおねがいしますです。コロ助でごわす。


423 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/23(日) 23:39:35 6IlD6zzI0
>>416

【示された解釈は正しい。ほぼ満点の回答であった】
【裏切りを隠す必要性は薄い。いつか露見する離反、それは早いか遅いかだけの事】

【一人の離反者の粛正に躍起になる程公安五課は脆弱な組織ではない。それ以上に重要な事があって】
【現状アリアもエーリカも知る由もない話なのだが、"墓場の王"、"罪の王冠"の異名を持つ公安五課の長】
【ギンツブルクと言う男の能力は、"死体"を自分の言う事を聞く"魔道書"へと書き換える能力である】

【故に死体の偽装工作をすれば、その時点で生存と裏切りが発覚する。故に彼女たちは策を弄さないのが正解なのだ】


――――、……確かにアイツらに私の裏切りを隠す必要はないのかもしれないですね。
何時かはバレる。―――なら今は自分の身を守る事を優先に考えます。

――――……アリアさんがそう言ってくれると私も少し気が軽くなります。
ありがとです。……公安五課にはこうやって頼もしい言葉をかけてくれる人なんて居なかったから。
ふふっ、まるで小娘みたいですよね。……人殺しを生業にしてる社会的死人のくせに。


【前の職場は社会的に死んでいる人間で構成された墓場でしかなくて、上司のギンツブルクも沙羅も】
【総じて課員の事を数でしか見ていなかったから、精神的に頼れる人がいれば必然年相応の振る舞いを見せるのだった】
【プライベートでは"カイ"(フェイと白桜の総称)に甘えられるのだが、それでも仕事の悩みとか苦しみは打ち明けないから余計に】

【だからしんみりした雰囲気になってしまい、頭をぶんぶんと振り回して、気持ちを切り替える】
【何時までも感傷に浸っている場合でも無いから。となれば今後の活動方針だとかを聞く必要がある】


裏切りに関する話は終わりにします。けど記憶にとどめておいてほしい事があって。
公安五課の室長・ギンツブルクの事です。あの男は"墓場の王"とも"罪の王冠"とも呼ばれる人物です。
そして"彼"こそが"公安五課そのもの"と言っても過言じゃない。私の上司である沙羅=ブラッドベリはそう言ってました。


【最期に公安五課の室長と沙羅に関する話題に少し触れて、話は切り替わる】


二つ目の話です。………これはかえでにも関連する話、虚神関連です。
イル=ナイトウィッシュと白神鈴音。あいつらとかえでの関係を私は詳しく知らない。
何故かえでが能力を"阻害"したのか、とか。知ってる範囲で構わないです。教えてくれませんか。

親友以上に大事に想う子の苦しみを取り除いてあげたいんです。"終わらせないと、始まらない"から。


424 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/23(日) 23:45:14 BRNVt/Aw0

【街中のとあるカフェテリア】
【クリスマス間近という事もあって可愛らしい装飾がされた店内には疎らではあるが二人連れが何組か座っていて】

【そんな中で微かに鳴り響くのは旧いタイプの携帯電話の着信音】

【音の発信源はとあるテーブルだった】

【甘いものが所狭しと並べられたその一角。何世代前だと突っ込みたくなるような、折り畳むタイプの携帯電話がけたたましく音をたてており】

……ったく、るっさいなー……

【そんな電話を前にぼやきつつチョコレートケーキを口にするのは】

【……一人の青年であった】

【黒の短髪に黒緑色の着物と灰色の袴。隣の席には草色のインバネスコートと軍帽が掛けられていて】
【年齢は二十代前半くらい、なのだろうか?】

【鳴り響く携帯電話、大量のスイーツ、そしてそれを目の前にする若い男(しかも一人だけ)】
【何というか店内でも物凄く目立っていて】



/予約ですっ!


425 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/24(月) 00:02:03 smh2z7gk0
>>424

―――うおーいそこの兄さん煩いぞ〜周りの迷惑考えろ〜ろ〜


【ふと、男性に向けて挑発的な声が投げかけられる。】
【その声がした方向へ視線を向ければ、一人の人物が椅子から振り向く形で男性を睨みつけているのが見えるかもしれない。】
【身長160cm程で右側の髪だけ少し長いアイスブルーのアシンメトリーに同じくアイスブルーの瞳、丸いレンズのサングラス 】
【よく手入れのされた藍色のPコートにジーンズといった出で立ちの十代後半と思われる少女。】

【少女はそのまま立ち上がると、男性の方までつかつかと歩いていき】


店内では携帯電話のご使用はお控えくださ〜い、使用はしてないけどね〜


【男性の向かいの席に勢いよく座ると鳴り響く携帯電話を手に取ろうとし、さらに手に取ればそのまま電源を落とすだろう。】
【サングラスの奥の瞳はどこか喧嘩を売っているように見えなくはない―――】

//宜しくお願い致します!


426 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/24(月) 00:02:43 WMHqDivw0
>>421

【置かれる甘ったるそうな飲み物にまた、きょとんとした顔をして】
【……ちょっと迷ってから、キッチンにスプーンを取りに行く。小さくて細長いやつ】
【それを生クリームの水面に浸して。からからと中身を引っ掻き回す、まだ口はつけずに】

…………かっこいい、じゃなくて、かわいいんだ。ふうん。

【テーブルに肘をついて、それでもまだ口はつけなかった。ただ崩れたクリームに視線を落とし】
【どこか他人事の様相で話をずっと聞いていた。嫉妬するでもなく、悲しむでもなく】
【ただ語られることを頭に思い描いて、シミュレーションしてみる。十年前。そう聞くなら】
【そのころの自分は何をしていたか、ちょっと考えたりしてみて――すぐやめた】

心のスキマ……、……そうかなあ。そこらへんは正直……よくわかんないけど。
……なんで別れちゃったの? 今でも仲良さそうにしてるじゃん。

【容赦のない訊き方をした。そしてようやく、崩すクリームを一口掬い上げて、食んだ】
【なんとなく答えは予想出来ようものだったけど。……目の前の彼女と自分と、何が違うか考えるなら】
【きっと、付け入る隙の多さが違いすぎたんだろうって、そう思う。自分に穴はいくらでもあるけど】
【この人にはそういうの見当たらないし――、一見するだけなら、そうとれるから】

あたしも別に、……よくわかってないけど。なんでエーノと付き合うようになったのか、
未だに、よく、わかってない。……寂しかったのかな。
それでなんでエーノじゃなきゃいけなかったのかも、わかんないけどさ。

【口の中でホイップの泡が潰れて消えていく。しゅわ、と音が鳴って――また黙り込んで、聞く姿勢】


427 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/24(月) 00:05:11 smh2z7gk0
【水の国〝旧市街〟・工業区画】

【忘れ去られた土地、〝旧市街〟。今では世界の歯車から外れた者たちが身を寄せ合って生きる場所。】
【そのブラックマーケットのある通りから少し外れた位置にある工業区画。文字通り様々な工場などが立ち並んでいる。】
【噂では人食い工場なんてものもあると言われているらしいが、今ではあまり話題には上がらない。】

【ここにいるのは寝泊まりする浮浪者か、旧市街ですら表立ってできないような取引をする者ぐらいである。】
【その中にある一際大きな工場。中は伽藍堂のように何もない、だがそこに一人の人物がいた。】


いやぁ〜やっと旧市街での活動は終わりに出来そうやなぁ。いやはやここの連中は辛気臭くて叶わなかったわ
幸か不幸か噂に聞く〝神〟とやらにも出くわさなかったさかいなんとも味気ない感じやけど。

まぁええわ、さっさと終わらせて置賜するとしよか〜。


【ショッキングピンクの派手な髪を後ろで結んで垂らし、赤いチューブトップの上に黒のレザージャケット】
【下は肌にピッタリと張り付くような黒のレザーパンツを履いた、糸目の女性だ】

【女性は軽口を叩きながら事務所に繋がる階段に腰掛けて、工場全体を退屈そうに眺めて時折あくびをする。】
【こんな場所にいる時点で普通ではないが、さらにこの工場全体を〝異質〟な空気が覆っている―――】

【この女性が原因なのか、それとも別の何かなのかは不明だが魔力や異能に詳しい者であればこの異常を察知するかもしれない。】

//一週間ぐらい置いておきます


428 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/24(月) 00:26:51 BRNVt/Aw0
>>425

──ん、うん?
【不意に投げ掛けられた挑発的な声。青年はケーキを口にしたばかりなのだろう、フォークを口にくわえたままゆっくりと振り向いて】

ふぁー、ふぉめんふぉめん
【ケーキとフォークを口にしたまま返して、そこでようやく口の中のケーキからフォークを抜いて、軽く噛んでから飲み込んで】

別にほっといても……
【いいよ、と言い掛けた刹那つかつかと歩み寄ってきた少女。目の前の席にとすっと座られて携帯電話の電源を切られれば青年は数回瞬きをして】
【向こうからかけてきてるんだけどなー、と呟いて今度は洋梨のタルトを一口食べて】
【そうしてたっぷりとキャラメルソースのかかったカフェラテで流し込んで】

……うん、かけてきてんのは向こうだから俺は悪くない、多分だけど
まあさっきからずっと鳴りっぱなしだったから電源ごと切ってくれたのはありがたいけどねー
【喧嘩を売っているような目をした少女のアイスブルーを青年の紅茶色が見つめ返して、そうして何も気にしていないかの様に緩く笑って】
【食べる?なんて別の皿のスイーツの上に乗せられたマカロンを指したりして】


429 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/24(月) 00:38:32 smh2z7gk0
>>428

どういたまして〜。じゃなくて
ったくさ〜出るならちゃんと出なよね、それとも仕事の電話か何かかな?
それなら出ない気持ちはとても分かる。むしろティータイムは出るべきではない、うん。

【青年のマイペースな答えに呆れたように頬杖しながら、テーブルに並べられたスイーツ達を見る。】
【いくら甘党でもここまでのはそうはいないだろう。若干顔を顰めながら「糖尿病になりますぞ」と呟く】

【相手から勧められたマカロンは食べる食べると即答し、味わう気もなく一口で口へと放り込んだ。】


―――お兄さん櫻の国の人?服装とか見るに。


【そして立ち去る事無く相手の服装をじっと見つめてからそう問いかける。】
【あくまで服装のみで判断した結果なので違う可能性もあったがあくまでついでなのでどちらでもよかった。】


430 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/24(月) 01:03:18 BRNVt/Aw0
>>429

そーそー、仕事の電話ー
ってゆーかあれなんだよねー、俺今絶賛サボり中なんだよねー
【青年はけらけらと笑いながらまたケーキを頬張って】

俺の仕事、ちょうど今かきいれ時でさー、本日中にあと何件か回んなきゃいけなくてさー
で、ふと「そうだサボろう」ってなってさー
【大事だよねー糖分補給、と言いつつまた別のタルトを口にする】
【顔を顰めながら呟かれた言葉には「大丈夫だよ俺糖分めっちゃ使うし」と根拠のない事を返して】

うん、櫻出身
てゆーか仕事上櫻と此方を行き来してる
……因みに生まれも育ちも天ノ原
【どーよ、首都出身、と青年は若干どや顔をして】
【先程の「何件か回らなきゃ」という発言と合わせると恐らく貿易系の仕事についているのかもしれない、と匂わせて】


431 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/24(月) 01:16:08 smh2z7gk0
>>430

やっぱりか、いやサボり中なのは言わなくてもよーく分かるからいい。
ふうん………サラリーマンてやつは大変だね、まぁお役所も大変なんだけどさ。

忙しい時期なのにふとサボろうと思うなんて図太いというかなんというか


【テーブルに頬杖を突きながら呆れたように乾いた笑いをする。】
【少女の発言から察するにどうやら彼女は公務員のようだが、そもそもかなり若く見える。】
【ただアイスブルーの冷たい瞳がそうさせるのか、どこか風格のようなものも感じさせる雰囲気ではある。】

【相手が〝櫻の国〟出身だと答えれば「へぇ」と短く答えて相手を品定めするような視線で見つめる。】


首都生まれのシティボーイってわけね、そんで今は世界を股にかける貿易商ってとこかな?
櫻の国は色々と他の国では取れない資源も多くあるからねぇ、さぞ繁盛しているでしょ〜ね?


【相手の発言からその素性を推測して話す、疑問形が多いのは相手への興味の表れか】
【「どうなの?今櫻の国の調子は」と、簡単な世間話をするように問いかける。サングラスの奥の視線はじっと相手を見つめる。】

//すみません、本日はこちらのレスで失礼します〜


432 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/12/24(月) 01:20:20 h7nAXcQg0
>>241
ふ、ふ。その通りだ。そもそも、社会の中にいた期間の方が短いがね
素晴らしいな。今のご時世、そんな信念をもって職業に打ち込んでいるものが何人いることか
少なくとも、民の為に神にまで弓引こうとまで言ってのけるほどのレベルは、そうそういないだろうな

【カニバディールも言葉を撹乱に使うタイプの悪党であるがゆえ、いちいちその言葉には反応を返す】
【それ自体が彼女の術中に嵌りつつあるということだが、同じような手段を用いるだけあって、意図には気がついたのだろう】
【が、そう簡単にいかないのは、異形にとっても同じ。相手は氷の国が誇る精鋭】

(手応えが薄い――――サイコキネシスか!)
ぐっ……!!

【確かに念動力を用いる能力者との交戦も経験したが、その中でもこれは強力な部類だ】
【この一撃で殺すつもりで放った攻撃は、相手の命には届かず。そればかりか、反撃のナイフを食らって】
【壁に叩きつけた一人から、触手を離さざるを得なかった。噴き出す鮮血が床を汚す】

【障壁の生成は、遅くなったとはいえもはや止められない。左腕のダメージに加え、たった今右腕の触手も】
【オブライエンの蹴りの一撃を受けて、吹き飛んでいたからだ。無視できない衝撃。これにも能力が用いられているか】

ふ、ふ! ならば、その怪物と互角以上に渡り合っているお前は化け物か何かかね!
良かったな一般人諸君、お前たちの即席シェルターは無事に竣工だ!
いつまで立てこもっていられるかはまた別問題だろうがな!

【言いながら、引き戻された両腕の触手を、自分の前に掲げる。そこへ襲い来る弾丸の嵐】
【容赦なく叩き込まれるアサルトライフルの弾丸が、肉を削り破壊していく】
【だが、まだ異形の命には届かない。その肉体そのものが、堅牢なる砦。そして、砦には兵士が詰めている】

撃て、ロズウェル!!
「了解」

【奇妙にブレた声で返答し、カニバディールの背後から未来的なデザインの銃を構えたのは】
【映画に出てくるグレイタイプの宇宙人のような頭をした男だった。異形の配下もまた異形】
【止められることがなければ、銃からは赤い光球が次々と連射される。命中した箇所に電流を流し、動きを麻痺させる効力を持つものだ】

【撃ち続ければ、カニバディールにも限界は来る。だが、それまで異形の配下は首領の陰から攻撃を続けるだろう】
【光球の動きはそう早くない。技量があれば、攻撃によって打ち消すことも出来るだろう】


433 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/12/24(月) 01:58:22 h7nAXcQg0
>>211
おっと……言った傍から、自惚れが露呈してしまった
それなりに悪評は立てているつもりだったが、知られてはいなかったか
まあ正直なところ、悪党の世界では私は小物だ。より大きな悪意に埋もれてしまっても、何ら不思議ではない

ふ、ふ。私で30人なら、かつて世界を騒がせた大物たちは千人単位でいそうだな
しかし、次にブタ箱行きになれば外部はおろか他の囚人とも接触させてもらえないだろう
残念だが、グルーピーたちにちやほやされる経験は出来そうにないな

【こんな状況でジョークが飛ばせる辺りは、やはり彼女もそこいらの有象無象ではない】
【返事をしながら口元に浮かぶ異形の薄い笑みは、そう確信しているようだった】

危険な相手を見極める目というのは、小悪党の世渡りには不可欠でね
だから、私は生き延びてこられたんだ。常在戦場のようなこの世界で生き永らえるのは、強者と臆病者だよ
お前は、さてどうだろうな? 前者か後者か。あるいは、両者か

【羊の皮は、やはり狼には似合わない。脱ぎ捨てた後の彼女の方が、きっと魅力的だ】
【しかし、そのすべてをさらけ出したわけでは、当然ない。彼女の仕事とは何なのか。その腹の底に何が眠るのか】
【今の彼女は、氷山の一角に過ぎないのだと。異形の臆病な精神がそう警告していた】

私自身も、少し前まで自分がこんなことを言うようになるとは思っていなかったよ
だが、事実起きているのだから仕方がない。対処はしておかなければな
心配しなくとも、強引につがわせるつもりはない。ただ、大事にしまっておくだけだ

【彼女の懸念はあまりにもっともである。このような異形に捕えられれば、目的はどうあれろくなことにはなるまい】
【言葉を普段から弄ぶ盗賊ゆえに、内容がいくら事実に即していても、説得力など皆無である】

――――ほう。興味深いな……お前の予約している船は、世界を丸ごと飲み込むような大波相手でも
問題なく切り抜けられるだけの、力があるというのか?

【流石に、その挑むような一言には反応を示す。この世界の脅威は、一つには留まらないことを知っているがゆえに】


>>288
【まるで仮面だ。異形はそんな感想を抱いた。横の女とはまた別種の異質がそこにはあった】

当然だ。それが出来るから、ああして強引な手段を取っている

円環、ではなく螺旋、というあたりがまた一筋縄ではいかないところだがね
戦いという根底は同じでも、そこに纏わる個々は違う。それが与える影響も変わってくる
それが積み重なった先に何があるのかは、誰にも見通せない混沌だ

……まあ、まずは見てからだ
(平然と歩み寄ってくれる……それなりの圧は発しているのだが)

【タブレットを取り出した瞬間はわからず、その態度には全く動揺が見られない】
【時にこういった人物は、どんな戦士よりも恐ろしい】

なるほど、道理だな。私が知るだけでも、そうした〝爆薬〟持ちは掃いて捨てるほどいる
ここ最近は、〝持たざる者〟が随分元気だからな。そちらの方面では、繁盛していそうなものだが

世界の動きは、その多くが連動しているものだからな騒動の中心たる水の国と関わりがあるのは、むしろ当然とも言える

――――言うだけあって、相当な良品揃いじゃあないか
この拳銃は欲しいな……弾道兵器も、手が届かない値段じゃあない……

【十分に警戒しつつ、タブレットを受け取り表示される商品を吟味する】
【拉致に使えるネット射出機やトラップなどにも頭の中でチェックを付けていく。購入をかなり前向きに検討していたところで】
【その、あからさまなほどの項目が目に留まった】

……この、おススメの品はどういったものなんだ?

【疑問を口にしていながら、異形はすでにその項目をタップしていた】


434 : 霧崎 ◆KP.vGoiAyM :2018/12/24(月) 02:02:04 Ty26k7V20
>>267

ええ、助けてくれと言われたのは死ぬ1時間前でした。
会ったのは、死後でしたし。

【身も蓋もない言い方をするのは彼女の流儀か性格か】

ゾーイさんは現在でも初瀬麻季音の目と耳の役割を担っています。
現在は、計画の中枢―――新楼市にて情報収集と下準備をしてもらっています。

【此処に出てくる新楼市――水の国の一都市でありながら、光の国と水の国の分割統治区域だ】
【急速に発展した経済は様々な軋轢を生み、過去は先進的文化と国際特区ともてはやされたが】
【今は治安やら文化やら人種やらの良くないニュースでよく名前はあげあられる】
【尤も、その街と計画とやらがどうつながるかは……わかりかねるだろうが】

どちらもMのメンバーです。…探偵の意志はそれぞれの解釈に任せています。
ともかく共通していることは――死んでいないと偽装する。それが重要なのです。我々の未来にとって

未来を…変えなくちゃならないんです。

【どうにも話のスケールが大きすぎる。そう思うだろう。国家の陰謀だとか軍のクーデターだって十分だが】
【いろんなものを一足飛び、世界と未来ときた。カノッサ機関の六罪王だってもっと遠慮があるだろう】
【だが、彼女の目は、現実の色を帯びていて。そのスケールを見通すことができそうだった】


――でも、私なんて貴方が思うような人種じゃないわ。だって、極道ですもの。
単なるお嬢様じゃ、極道の頭なんて務まりませんもの。
煙草だって呑みますし、背中には彫り物だってありますもの。

それに物心ついたときから血に塗れて生きてきました。
この手で何人殺したことか……数え切れません。

何が酷いって、それを私は恥ずべきこととおもっても居ないんですよ。

【霧崎は微笑み、立ち上がる】


トロッコ問題というものがあります。有名ですからご存知かもしれません。
何もせず、一人を助け、五人を見殺しにするか、自らの手で一人を殺め、五人を救うか。

私達の仕様としていることは後者です。世界のために無実のヒトが命を落とすでしょう。
……それは、決して。正義とは言えないでしょうね。………それでは。

連絡先どうも、ありがとうございます。何か、お力になれることがあれば。

【霧崎はテーブルに、すらりとした指先で自らの名刺を相手に向ける形で置いた】
【富嶽会 二代目 霧崎舞衣。 ある界隈ならこれだけでずいぶんな効果を発揮する代物だ】

【霧崎はマナーとして完璧な一礼をして、その場を後にしようとした。彼女は徹頭徹尾、落ち着いた雰囲気だったが】
【どこか緊張感を張り巡らせていた。周りの構成員たちも、その後に続いて店を後にする】

【ぽつねんと残される二人。鬼が居なくなったのを良いことに、店主がひょっこり顔を出す】
【向けられる視線は出ていってほしいけど、言い出しづらい…そんなとこだろう】


/お返事遅くなりまして、大変申し訳ありません。
/こんなところで締めにさせていただきたく存じます。お相手どうもありがとうございました!!!!!!!


435 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/24(月) 02:17:47 BRNVt/Aw0
>>431

【サラリーマンってやつは大変だね、と言われれば青年は「んー、まーね」と笑って】

……でも今の仕事には満足してる。大概はやりたいよーにやらしてくれるからねー
……っていうかお役所?キミお役所仕事なの?
ふーん……
【青年はそう言ったっきり少女をじーっと眺めて】

……こー、あん……
【暫しの沈黙の後に不意に呟かれた言葉。恐らくは「公安」、辺りなのだろうか?あは、と青年は気味が悪くなるくらいの満面の笑みを浮かべて】
【成程ねー、そーだとしたら……うん、と何やら勝手に納得してしまって】

【首都生まれのシティボーイで今は貿易商か、と返されれば青年は、んー、と呟いて、そうして黙ってスイーツを一口、二口】
【それらをごくりと飲み込めば、少しばかり苦笑して】

……ごめん、大分見栄張った
シティボーイとか大層なものじゃないんだよねー
俺、確かに生まれも育ちも天ノ原だけどねー……

【──親に捨てられたんだよねー、子供の頃に、と青年は笑って】

だから育ったのは華やかな場所じゃなくて治安の悪い貧民窟だったり

まあ貿易商っていうのはそー……なのかなー?学もそうないからよくは分かんないんだけど
世界はまだそんな股にはかけてないと思うよー、うちは最近進出したばっかだし
【でもまあ、うちは今の所競合相手いないからねー、それなりには儲かってんじゃないかなー、と青年は笑って】

櫻の国、はね……結構面白い事になってると思うよー?
何だったかな、魔導海軍って連中の中で何かがあったり……確かそれで水の国に潜伏していたスパイだかが捕まったんだっけ?
【青年がまずあげたのは魔導海軍の事。俺ニュースそんな見ないからよく分かんないんだけどねー、と付け加えて】

後は……

──最近ある法律が改定されてさ……妖怪の輸出の規制が緩和されたんだってー
【そう言うと青年はニヤリと笑う】

……まあ、キミには"関係ない話"かもしれないかなー?

【サングラスの奥のアイスブルー。それがどういう反応を見せるのか。青年はそれを逐一見逃すまいとばかりに相手を見据えて】


436 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/24(月) 12:03:31 PMzGIUuA0
>>432

あらそうですの。―――こんな時代だからこそですよ、カニバディールさん。
誰かがやらねばこの世界はすぐさま滅びてしまうほどに脆くなってきている、故に戦うのですよ。


【そう答えている間に人々を守らんとする障壁は完成した。】
【内部で議員共が何か叫んでいるが、〝聞こえない〟。どうやら音や視覚も完全に遮断された空間になっているようだ。】
【何故そんな事を―――?それはオブライエンが〝本性〟出すためであった。】

【障壁の生成を確認したオブライエンはフゥーと息を吐きながらゴキゴキと肩を鳴らして回す。】


やぁ〜とこの面倒な喋り方から解放されたよ、あー肩がこったわ何故か。
別に私は単なる官僚だよカニバディールさんよ、ちょっとばかり特殊だけどな。

『〝大尉〟どうぞ』

あいよ、〝特殊兵装・クロセル〟―――まさかこんな場所で使う羽目になるとはねぇ〜


【先程までの丁寧な言葉遣いとは打って変わって適当で、軽薄な口調と表情に変わる。】
【成程確かにこれは市民たちには見せられない。そして〝大尉〟という呼び名。】
【そう呼ばれながらサイコ・フェンリルの一人からギターケースのようなものを受け取り、それを開ける。】

【その瞬間にロズウェルと呼ばれた敵の配下から放たれる赤い光球。】

【障壁の生成に関わっていないサイコフェンリルが迎撃に当たるが、銃弾で捌ききれないものが幾つかあり】
【それには自らの身体を使って盾となる。そして赤い光球の効果によってスタン状態に陥る。】
【そうすれば障壁を維持している部隊員達を守るものは無くなる―――だが】

【時を同じくしてオブライエンの姿が消えている。残されたのは先程手渡されたギターケースのようなものだけ】


437 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/24(月) 12:18:41 PMzGIUuA0
>>435

そりゃ結構なこった。今どき仕事に満足している奴なんてそうはいないからね
―――残念だけど違うぞ、私は氷の国の外務省の人間だよ。

三等書記官のコニー・オブライエンだ、どーぞ宜しくシティボーイ。


【相手が呟いた言葉を逃さず聞いていたのか、それを否定し自分の所属と名を名乗る。】
【外務省。青年と同じく海外を飛び回るのが仕事のようだが、それにしても若すぎる―――。】


【そして相手の生い立ちへと話が移れば少し沈黙した後、一度頷く。】


おっと、こいつは失礼してしまったかな。
けどまぁ気にすることはねーよん、今の世の中そんな奴ばっか溢れてるからね。

貧民街から今は貿易商というならかなりの成り上がりマンだねぇ。


【ただ無感情なアイスブルーの瞳で相手を見つめながら、どこかドライに言葉を紡ぐ。】
【逆にその反応が何かオブライエン自体にも感じるところがあるように思わせるかもしれないが】


魔導海軍ね………あの街頭モニターで演説みたいのしてた連中っしょ?
しかしスパイとは恐ろしいねぇ、確かに水の国の政府は色々ときな臭い状況ではあるけどさ。

〝妖怪〟―――?ふぅん………。
ああ、成程―――つまりは〝そういう事〟ってワケね、〝アンタ〟は。


【どこか納得したように呟きながら頷くと相手をじっと見つめる。】
【相手の発言からして点と線は繋がった、後はその裏にどんな事が隠されているのか、いないのか】
【「関係なくはないさ、外務省の人間としてはね」と椅子の背もたれに背中を預けながら腕を組んで笑う。】


438 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/24(月) 12:45:48 6.kk0qdE0
>>406

「政治でもあり、当然軍事でもあり、そして経済でもあるさ」

【幾つかの筋が密接に絡み合い、そして結果として生成されたのがこの状況だ】

「ご理解頂けた様子で何よりです」

【ディミーアにとっては、恐らく何度も見せられてきた様な暗躍と陰謀の渦だろう】
【嫌気がさすのも道理だ】

「ああ、現在外務八課が計画を練っている、近いうちに決行されるだろうな」
「なるほど、手をお貸し下さる、と……心強い事です、我々にとっても、そして中尉達にとっても」

【今は囚われの身の厳島達だが、手を貸してくれる者がまた1人】
【強大な相手ではあるが、反撃の芽は着実に広がっている】

「ああ、間違いない、そんな恐竜ばかり……博物館じゃあるまいし」
「存外、外れでも無いかも知れませんよ、何が来るかなんて、解りませんから……おや?」

【ディミーアの提案には両者共に同意して】
【そうして、崩落したマンションの一室を出ようとした所で、杉原は足元の其れに気が付いた】
【床の下に隠された其れが、床を崩した事で現れて】

ーー『ディミーアへ』

【厳島の字で書かれた、封筒だった】


439 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/24(月) 13:19:14 oFkCLf9I0
>>438

何が来たところで大した問題じゃないが、お前たちにとっては分からんからな
……ん?

【傲慢な軽口を言ったところで、杉原の足元に気がつく】

全く、厳島め。もっと分かりやすいところに置けって

【文句を言うディミーアだったが、口元には戦友への笑みが零れていた】
【それを拾い上げて、中身を開封する】


440 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/24(月) 13:28:53 6.kk0qdE0
>>434

「なるほど、その状況では引き継ぎは困難……」

【さっくりとした言い方だが、的確に伝わる話だ】
【確かにその状況では、ロッソの全てを得るのは極めて困難なのだろう】

「2人は現在も行動を共にしている、と」
「新楼市?水と光の分割統治区域か、何でまたそんなトコに?」

【急速な経済成長を遂げた分割統治区、ニュースでも度々報じられるが、反面良くない話も多い】
【どうにも、霧崎の話す計画の要は、その新楼市にある様だが】

「チームMのメンバーで探偵の意志を……死んでないと偽装?」
「未来?例え話としても随分とスケールの大きな、いえ……何を意味しているのですか?」


【側から聞いていれば、まるで頓珍漢な話に聞こえるのだろう】
【生存を偽装、そして次は未来と来た】
【だが、霧崎の目は冗談を飛ばしている其れでは無くて、本当に未来を変える計画でもあるかの様な目をしていて】
【だが、やはり計画の正体は話してはくれないのだろう】

「それは正義論になるな、正義の所在の在り方だ、少数の犠牲で多くを救う、その選択を躊躇なく出来るのならば……嘘ではないなその話」

【極道の頭として、幼少期から鉄火場に立ち続けた女性】
【その話ぶりからも、嘘を話している訳は無いと理解できる、また彼女の話す計画も】
【少数を犠牲にして多数を救う、霧崎は不正義と自負する其の計画は、またいつか明かされる事になるのだろうか】

「うん、ありがとう、また連絡しよう……その、手を借りる事になるかも知れない」

【何故か終始ボーっとする杉原を尻目に、霧崎にそう別れの挨拶を告げ、彼女と護衛達が去るのを見送る】

「やはり、素敵な方だ……」

【杉原は、ため息混じりにこう呟いた、少女の様に遠い目をしながら】
【やがて、ようやく顔を出したオーナーの目線に追われる様に2人もそそくさとその場から立ち去るだろう】


//ありがとうございました!
//お疲れ様です!


441 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/24(月) 14:06:53 6.kk0qdE0

ーー水国街中、大型モニター前ーー

【年の瀬の時期も時期なのだろうか、繁華街からビル街を行き交う人々も何処か普段より多く、そして忙しなく】
【大きな交差点近くのビルに取り付けられたモニターは、先の水国軍港で発生した、櫻国海軍駆逐艦の轟沈事件について報道している】
【やがて、速報のテロップと共に放送が切り替わる】


「水の国の皆様、突然の挨拶をお許しください」

【真白に詰襟、幾つもの豪奢な勲章と飾り、金のモール、肩口には大将を示す階級章と、櫻国海軍の意匠】
【櫻国魔導海軍、連合艦隊司令長官蘆屋道賢】
【国営放送の会見画面で、マイクの前に立ち語り始める】

「櫻国魔導海軍、司令長官蘆屋道賢です、水の国の優しき友人達、私はあなた方に今日はお詫びを申し上げねばなりません」
「先だって発生しました、駆逐艦『雷』、艦長以下多くの尊い命が犠牲となり、とても心を痛めて居ります」

【さも、悲しみにくれている様に話し出す】

「ですが私はそれ以上に、心を痛めている事が有ります」
「この度、水国内にて捕縛しました脱走将兵4名、彼らの身柄を捕らえていのが、この駆逐艦『雷』でした」
「この轟沈は事故などでは無く、彼らの仲間のテロリスト達により引き起こされた物であると反面しました」
「彼ら4名は、水国内に再び解き放たれてしまいました、凶悪で悪虐なテロリスト達と共に……」
「水の国の優しき友人達が、この様な危険に晒されていると思うと、私は心配で夜も眠れません」

【画面には爆発炎上し、沈んで行く艦の映像と厳島命、那須翔子、石動万里子、賀茂宗司の顔写真が表示されて】

「危険なテロリストの能力者達の魔の手が、水の国の平和を愛する優しき友人達に伸びるのを如何に防ぐべきか、私は考えました」
「そこで、我々は一つの決定を下しました」


「我々が誇る連合艦隊総旗艦、決戦級魔導戦艦『大和』を、魔能制限法を成立させた、この国の心ある公安の海上保安部へと、無期限無償貸与致します!」

【画面は再び切り替わり、大和艦上にて、握手を交わす水国側の代表者と道賢】
【地域の子ども達だろうか、艦に招かれ無邪気に楽しげに見学する様子】
【司令塔艦長の椅子に座った少年に、帽子を被せて傍で優しげに微笑む道賢】


【そんな子ども達の側で、艦内の案内をしながら、優しげな笑顔を向ける若手士官】
【その傍らで、女性水兵の服装をした、曽根上ミチカが映り込んでいる事も、或いは見るものが見れば判るかも知れないが】



「魔能制限法、並びにカミスシティを大成したる水の国の優しき友人達に、平和の贈り物を」
「そして、心より安堵と安寧が約束された未来を!幸福を!」
「我々魔導海軍は、隣人として常に願って居ります」


【会見放送は、そこで終了した】


442 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/24(月) 14:35:48 6.kk0qdE0
>>441

ーー水国、とある中華料理店ーー

【妙に油っ気のあるカウンターにテーブル】
【薄汚れた暖簾】
【棚には読み継がれボロボロの漫画雑誌が数冊】
【そんな典型的な、古びた街の中華料理屋、それでも昼時には何名かの客の姿があり】
【その内の一席には、西部劇様の姿の男性と少女が座っている】
【まさに彼らの注文したラーメンと半チャーハンのセットが来て】

「此れだよ、ラーメンってのはこう言うので良いんだよ、最近はやれこってり系だやれ背脂だ、違うんだよ求めてるのは」
「御託はいいっスから早く食べるっス、伸びるっスよ、あ、胡椒とるっス」

【ラーメンは、ナルトにチャーシュー1枚、ネギとメンマ、丼には雷紋の古典的な醤油ラーメン】
【傍には、見ただけでパラパラ具合が解る様な半チャーハンが添えられて】

「ーー!?」
「ドワッチャアアアアアあ゛っづうううううううう!!!!」

【胡椒を手に取り、丼の置き位置が悪かったのか、少女がラーメンを手に取って持ち上げた瞬間、店内のテレビが目に入る、そして少女はそのまま丼を取り落としてしまい】
【熱々のラーメンは、男性の股間から太ももを直撃する】

「テんメ!何すんだー!!」
「兄ィ、あれ、翔子ちゃんっス」

【店内のテレビには、会見放送が】
【そして捕縛、逃亡の4人の顔が】

「マリー!ディミーアに連絡だ!」
「兄ィ!了解っス!!」



ーー外務八課本部ーー

「そろそろ3分ですかねー」

【ランチタイムの本部オフィス、通常外に食べに出る事が多いライガだが、この日ばかりは報告書やら事務書類やらの仕事に追われ、オフィス内で済ませる事になった】
【手にしているのは、古典的な縦型カップのインスタントヌードル】

「カップ麺ってのはこう言うので良いんですよ、最近はやれ名店監修だ、やれ行列のできる店の味だ、求めてるのはそう言うんじゃ無いんですよね」

【そしてお湯を入れ、時間が経ち、いざ喫食となったその時に、何気なくテレビのニュースを見ると】

「ーーッ!?」
「アリアさん!!ミレーユさん!!テレビ!!テレビ!!」

【盛大に取り落とされるカップ麺、アリアかミレーユか佳月か、或いは他の誰かかがそこに居れば熱々のヌードルの被害に遭うかも知れない】
【しかし、当のライガはその様な事少しも気に留めず、テレビ放送を見入り、叫ぶ様に名を呼ぶ】
【少なくとも尋常ではない様子だ】
【テレビ画面には、会見放送が流れている】


443 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/24(月) 14:55:47 6.kk0qdE0
>>441

ーー大衆食堂『Freaks Fes』ーー

【昼時の正に佳境となる時間帯】
【料理や飲み物を運び、ランチの調理を少し手伝いながらのピーク時】

「もう、クリスマスってだけで昼まで忙しいなんて!」

【トレンチを手に店内をバタバタとしているのは、リュウタだった】
【そんな中、客の一人が持ち込んで料理を待つ間に見ていたのは、テレビ機能がついた携帯端末】
【何気なく、画面を覗くと、そこには会見放送が映されて】

「(テロリストって、そんな怖い話)」
「(……つがるちゃん)」

【少年は1人の少女の身を案じた】


ーーダイニングバー『Crystal Labyrinth』ーー

【昼の営業時間帯、やはり小洒落たレストランの側面を持つCrystal Labyrinthは、クリスマスである事もあってか、普段より来客数は多く】

「ち、きん?と、り?」
「みー、と、ぱい、お、また、せ?」

【店内をちょこまかと、動く姿があった】
【時にグラスや皿を下げて、時に料理を運び、たまに転んでは料理やグラスを落としたり】
【あるいは注文を間違えたりと、凡そ手伝いにはなって居ないのだが、それでもアーディンの許可と監視のもと、みらいは懸命にホール内で働いていた】

「ーー??」
「お、いちゃ、いつく、し、ま……」

【店内に据え付けられたテレビが、会見放送を流す】
【画面には、丁度、逃亡者とされた4人の顔が映されて】
【みらいはその名前を聞いて、その場に立ち尽くしていた】



//上記の3レスは返信ご不要な告知的な内容のそれです。
//お騒がせしました、すみません


444 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/24(月) 22:54:26 BRNVt/Aw0
>>437

【相手が氷の国の外務省の人間であると告げれば青年は二、三度瞬きをして。そうかと思えば眉を思いきり下げてひどく残念そうな面持ちになって】

……そっかー、外務省……しかも氷の国……
俺が予想してた役職と全然違ってたー……
……けど、まあ当然だよねー世界は広いんだし

で、三等書記官……の、コニーちゃん……や、コニーさ、ん……?まあ良いや、とりあえずよろしくねー
【そうして相手に改めて挨拶をしようとし、ふと首を傾げる。自分より多少は年下に見えるけれども果たして『ちゃん』で良いのか、と。この見た目で成人とかしていたら、ましてや俺より上だったら、などと一瞬頭を悩ませ『さん』と言い直すが】
【……最終的には気にしない事にしたようだった】

【無感情な瞳を向けられれば青年は少しだけ不思議に思ったのか暫し目を細めるがすぐに気にするのをやめたようで】

……んー、まあ、どうなんだろーね?
どーいった経緯かは分かんないにせよ俺みたいな破落戸風情は彼処にゃごまんとはいたけど……此方は向こうの境遇なんざ知らずに全員"遊び倒して"やってたからねー
まあ天ノ原っつっても境遇はそれこそピンキリだろーからね、俺が知らないだけでそーゆー奴は他にもいたのかも
【まー、大成した今となっちゃどーでも良いって話だよ、と青年は笑って】
【どうにもこんな緩い口調の割に意外と血の気は多いようで。恐らく育ってきた環境のせい、なのだろう】
【ともすればこんな破落戸崩れの若者がまともに貿易商として働けるのだろうか、という疑問も出てくるのだが】


そーそー、多分そいつら
ま、拘留されてるしその内何があるのかは明らかになるとは思うけど
……水の国、やっぱりそんなきな臭いんだ?正義の味方を名乗る奴らがいるって辺りなんかあるとは思ってるけど

(……ま、俺達からしたら多少きな臭い方が闇に紛れられるわ得意先が増えるわで御の字なんだけどねー)
【青年は心の中で付け加えながらチョコレートケーキを食べ……ようとしてもう食べ終えた事に気付き別の物を口に運ぶ】
【思ってみればこの青年はどれだけ食べるのだろうか?】

【そうして相手が何かを察したような面持ちで此方をじっと見れば青年は「なーに?俺の顔に何か付いてる?」なんて惚けてみせて】


──それとも、俺が何を売ってるのか分かったとか?

【ふ、と青年の口調から緩さが消える】

……俺はね、コニーさん。櫻の近況を教えて欲しいって言われたから話しただけのただの商人だよ?
貴女がどういった勘繰りをしているのかは知らないけど、さ?

【にこ、と微笑む青年】
【だが、『そう』であると考えれば辻褄はあっていた。何故破落戸風情と自称する学も無さそうな彼がそんな仕事につけるのか】
【だとすれば彼の"武器"は何なのか。その"武器"を生かせる職でなおかつ貿易系を思わせるものは?】

【それでも、しらは切るつもりのようだが】


445 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/25(火) 08:22:40 6.kk0qdE0
>>439

【口元に何処か親しげな笑みを浮かべるディミーア、簡素な封書を開ければ、同じく簡素な手紙が1枚】
【書かれている内容は以下の通りだ】

『ディミーア、君がこの文書を読んでいると言う事は、私の身に何か起こったか、或いは死んだかのどちらかだろう。
魔導海軍が、司令長官蘆屋道賢が、その悪意を露わにしたと言う事だろう。
近く君の元に櫻国から、海軍か陸軍かどちらかより味方が接触を試みる筈だ、詳細な情報はその者から聞くといい。
この場で私が君に言える事は、私が今までこの国で出会い見て知った全てを、本国の私の味方達に伝えてある、彼らはその情報を元に君に接触する筈だ。
そして、君はチームMにこの事を伝え頼って欲しい、可能ならば、彼らの下に身寄せ守りあって欲しい、カニバディールでもミラでも構わない。
カンナも居らず鵺も死んだ今、動けるのは君とチームM、外務八課だけになってしまった。
そして少しでも危険を感じたら、迷わず逃げて欲しい、魔導海軍がやろうとしている事は、黒幕を巻き込んだ、大規模な戦争だ。
最後に、私は君を信じている、何があろうとも君は生き延びる人間であると』

【チームM、かつてあの忌々しい処断の日、黒野カンナが連れ去られた日、指輪と共に盟約を交わした、対黒幕戦線】
【手紙に記されているのは、彼らとの迎合と情報共有だった】


446 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/25(火) 20:19:41 oFkCLf9I0
>>445

【手早く文書に目を通したディミーアの表情がある部分を読んだ瞬間に一変した】

……鵺が……死んだのか

【剣士の双眸が悲しみに伏せられる。彼女の明るい声と処断の日における壮絶な行いが脳裏を過ぎる】
【足がよろけ、思わず壁に手をついて身体を支える。項垂れ、口からは小さな苦鳴】
【壁についた手が拳となり、怒りのままにコンクリートを殴打する。瞳には狂気にも似た瞋恚の炎】

……誰だか知らんが、見つけ出して生きたまま五臓六腑を引きずり出してやる!

【尋常ではない憎悪の言葉が吐き出される。まともな感情を通り越した激情が渦巻いていた】
【それはこの男の過去に理由があったが、この場にいる二人は知らないものだろう】
【懐から小瓶を取り出すと、ディミーアはその中身を乱雑に口に放り込み嚥下した】
【一度大きく息を吸い、そして吐く。恐ろしいまでの忿怒は内側へと潜み、剣士の表情には取り繕った冷静さが現れる】

厳島め……逃げろとは一体、誰に向かって言ってやがるのか
戦争だろうが何だろうが、邪悪は全て正義の輝きでもって焼尽するのが道理だ
ならば、俺が逃げる理由なんてものは地上のどこにもありはしないというのに

【文書を封筒へと戻して懐にしまいこむ。口元には獰猛な笑みが浮かび上がる】
【戦友の気遣いと心配、そして信頼は喜ばしいものだった。しかし、この男は敵とみなしたものは必ず滅ぼす人間だった】

さて、伝言は聞いた
お前たちは具体的に、これからどうするつもりなんだ?

【そばにいるであろう二人に対して質問を投げかける】


447 : アーディン=プラゴール&ブラックハート ◆auPC5auEAk :2018/12/25(火) 21:49:38 ZCHlt7mo0
>>268

「…………?」

【何か言いたげに、しかし言葉を飲み込んだ様子のアリアに、ブラックハートは微かに首をかしげる】
【もう既に、当たり前の事と化していた、自分自身の身体に関する認識。同時に、軽い自嘲の色もまた、自然体のままに発せられたものだった】
【それが、アリアの心に何らかの棘を刺す事になるとは、終ぞ思わなかったのだろう。自分よりも、日常をありのままに生きていける身体だと、そう認識していたのだから】
【――――過去も、今も、ブラックハートの命に、鎖の様に巻き付き、重しと化している。かつて『所有者』に向けられていた蔑称を、そのまま自分にも用いているのは】
【平常無事に生きていける保証のない、そして過去からは逃げられない、その事の象徴と言えるのかもしれない】

――――なるほど、な……
互いに、奴らが敵である以上、終わる事はない、そういう事か――――ならば猶更、レグルスが奴と相討ちになったのは、皮肉ながらも、1つの運命だったのかもしれん……

【レグルスが、具体的にどんな約束をしていたのかは、アーディンには分からない。だが、何となく察せられる様であった】
【同じ敵を頂くなら、後は互いに裏切らない。それだけでいい――――『エカチェリーナ』の事は別として、恐らくはそんなところだろうと】
【先に、因縁に決着をつけて死んでいったレグルスの事を想うと、何か卑怯と言いたくなる気持ちもあるが】
【それよりも、何か皮肉な、運命めいたものが、そこにはあったのかもしれないと、そんな事を想わされるようでもあった】

――――だが、そうは言っても……奴の戦いは終わっても、『俺たち』の戦いは終わっていない……
もし、再び同じ戦場に立つ事があるなら、また、力を貸してもらおう……俺たちも、力を貸す――――

【だが――――ならば猶更、今を生きている自分たちの戦いは、未だに放棄するわけにはいかない】
【レグルスにとっての、「アルクとソニアの敵討ち」は、確かに終わった事かもしれない。だが、自分たちにとっての「レグルスの敵討ち」は、これからなのだ】
【1人のギャングに過ぎない身ながらも、アーディンは改めて、アリアに虚神との戦いにおける協力を口にする】
【弔いとして、今してやれる事は終わった。だからこそ、これからの事を考えなければならないのだ】

――――こちらこそ、ありがとうだ……奴の事、悼んでくれる人間が、他にいるとは思わなかったからな……
……もし、何かあれば……水の国『Crystal Labyrinth』に顔を出せ。そこならば……俺に、確実にコネクトできるだろう……
「……こんな危ない橋を渡ってる以上、命の保証はどこにもないんだ……
 アリア、あんたも気をつけなよ。あたしゃ、まともな戦力になるかは怪しいけど……それでも、この命、蒙昧に生きるつもりはないからさ……!」

【残された名刺を手に取りながら、アーディンとブラックハートは去っていくアリアを見送っていく】
【レグルスの遺したものは、こんな形でも繋がった――――人の縁の妙と、彼の遺徳とを、改めて噛み締めながら】

……ブラックハート。お前は一足先に『Factory』に戻っていて良い……俺はもう少し、ここにいる……
「――――確かに、今回は早めにメンテしないとね。……あたしも、あとどれくらい生きていられるのやら……
 じゃあ……その、ラベンダーの奴によろしく言っといてちょうだいな。最近、あたしもあんまり顔を見てないからさ……」
――――あぁ、確かに……

【手すさびしていたパイプに火をつけ、アーディンは一人、墓標の前に佇んでいた】
【パイプを口に咥えるその表情には――――これまで見送ってきた面々の面影を、悼むような色を浮かべて】

(……ラギデュース、銀鶏、アルク、レグルス…………俺は、後何人のお前たちを、見送る事になるんだろうな…………)

/遅くなりました。ありがとうございましたー!


448 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/26(水) 00:35:52 smh2z7gk0
>>444

な、なんか露骨に残念そうにされるととても傷つくぞ………。
私はピチピチの18歳だからコニーちゃんでもコニーたんでもどっちでもいいよ☆


【などと言いながらわざとらしく裏ピースを決めながらウィンクする。かなり痛々しい姿である。】
【だが青年の見立て通りコニーと名乗る外交官はまだ十代であった。しかし外交官にしては若すぎる。】
【そしてその後の相手の発言にはまたもや芝居がかった様子で肩を抱く。】


ひぇ〜シティボーイは恐ろしか恐ろしか〜。
まぁ水の国はきな臭いよ、本当に。外交官として注意はしているけどあまり首をつっこみたくはない。

特にこの国の警察機構上層部―――あそこはヤバい。


【丸いレンズのサングラスの位置を直しながら唐突に真顔でそんな事を語りだす。】
【外交官という職務上一般的には知り得ない情報も手に入るのだろうが、それ以上の裏を知っていそうではあった】

【相手の口調から緩さが消えたと同時に、コニーも同じくサングラスの奥で冷たい視線を相手に向ける。】


いやあ、分からんよシティボーイが何を売ってるかはね。ただまぁ想像することはできる。
十代の女子は想像力豊かだからね〜色々とあらぬ妄想をしてしまうわけですよ、おほほほほ。

ま、このプリティーフェイスに免じて勘弁してよ


【相手が釣り針に食いつかずしらを切るようなのでコニーもそれに乗った。】
【ふざけた様子で舌を出してお菓子メーカーのキャラみたいな変顔で笑う。ペ〇ちゃん。】


449 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/26(水) 12:25:52 BRNVt/Aw0
>>448

……んー?ごめんごめん
実は俺、もう一度"遊んで"みたいコがいてさー……水の国の『正義の味方』って言ってたからてっきりその手懸かりでも掴めたかなーって思ってさー
そーゆーのの最たる例が公安って聞いたから
【だからてっきり勘違いしちゃった、と青年は苦笑して】

へー、18歳?俺とそこまで変わりないじゃん!俺21だけど!
【てかウトーちゃんとか善弥ちゃんと同い年かー、なんて青年は呟いて】
【恐らく同僚か何かの名前なのだろう】

じゃー、コニーちゃんで大丈夫そーだね、そう呼ぼう
【うんうん、と青年は頷く】

……でも十代で外交官って事は結構頭良かったりするの?
そーゆーナンタラ省って所、大学って所出ないと入れないって聞いた事あるけど……此方だと頭の良い子はどんどん上に行けるんだった、よね?それだったり?
【だったら俺より少し下くらいでも違和感はないかな、というくらいのニュアンスで彼は尋ねる。一応大学の概念と飛び級の制度くらいは知っているらしい】

……もー、そのシティボーイって呼び方……あ、そーかそーいや俺名前言ってなかった……
俺は水鶏(くいな)。英群水鶏(はなむらくいな)
まー……好きに呼んでね?

ふーん、そこまで酷いんだ……
警察機構の上層部、ねー……
…………ふぅん……
【青年は目を細め、何かを思案するかのように息を吐く】

そんなきな臭い物がある国に潜伏して魔導海軍の件の軍人さんらはなーに企んでたんだかねー……
ま、俺ら"一般人"の知れた事じゃないかー
【くつり、と声をあげればその目は更に細められ笑みのそれとなって】

ふぅん、で、その想像では俺は至極真っ当ではない物を売っている、と……

……ふふっ、あはははっ

いーよ、その顔に免じて許してしんぜよう
【少しばかり考え込んで相手の出方を伺っていた彼は彼女の様子を見ると破顔し】
【再び元の緩い調子に戻る】

……でも、そーゆー勘繰りはあまりしない方がいーよ?

……解ってんだろ?世の中には俺よりももっと悪くて怖ーいオトナなんかいっぱいいるんだからさ
【再びにこ、と微笑んだその顔は真面目なのかからかっているのか。相手にはどう見えているのだろうか?】


450 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/26(水) 19:34:25 6.kk0qdE0
>>446

「お、おい……大丈夫か?」

【手紙の鵺の名前が出た箇所、その記述に目を通したディミーアは様子を一変させた】
【目眩のように、足を縺れさせ、壁に手をつき苦しそうな声を漏らして】
【やがて、怒りに囚われた、狂気をのぞかせた瞳で、コンクリートの壁を殴打し】

「やめろ!どうしたと言うんだ!」
「……鵺、公安三課所属、那須曹長と接触、その後黒野カンナ氏の連れ去られた事件で厳島中尉とも接触、その場には貴方も居ましたね?」
「白神鈴音氏を追った一連の対虚神の戦いにて共闘、その後、虚神の手にかかり死亡……此方にある情報を簡単に纏めるならばこの様になりますね」

【あの日、厳島達の目の前で、虚神イルに擬態させられた鵺は、言葉を交わす事も無く殺された】
【ディミーアと同様の慟哭を、あの日の厳島 もまた挙げていた】
【タブレットを確認して仕舞い込む杉原、そして、何かの錠剤を貪るが如く服用し幾分かの落ち着きを取り戻すディミーア】

「全く勇ましい事を……無論、知れた話だ、任務を継続する」
「先ずはまだ未接触の、報告に記載のあるチームMメンバー、ミラやカニバディール、ゾーイに初瀬麻希音、赤木怜司、邪禍にレオーテ、彼らと接触、必要とあれば身柄を保護する」
「それに、まだ捕縛の被害を免れた海軍関係者も居ます、リオシア二等海兵、和泉文月戦技教官、彼女達の行方も併せて捜索せねばなりません」

【ディミーアの疑問には、はっきりとこう答える2人だった】

「で、お前はどうするつもりだ?」
「少なくとも、単身では多勢に無勢でしょう……自警団特殊部隊と言うも、敵とは数も規模も違うでしょうに」


451 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/26(水) 19:35:58 EGD/fsIA0
>>382>>398

【――――――――――――】


【町通りの一角に人々が群れる】


【ざわめき、どよめきが】
【サイレンで撹拌される】


【騒擾する周辺住民】
【警察、消防、自警団まで】


【誰もが瞳の表面に赤を映していた】



【 だン だン だン―― 】

【自警団の男が一人、追われるように】
【拳を何度も酒場のドアに打ち付ける】


【幾度叩いても返事は虚しく】
【痺れを切らした男は、ついにドアノブへ手を掛け】
【有りっ丈の力を込めて、扉を押した】



【どたん――と】
【剣呑な音を立て、ドアが開かれる】













【出迎えたのは、無音】






【誰もいない】

【整然と清掃された店内が、ぽっかりと佇んでいた】












【「――なんだ、まだ誰も来ていないみたいだ」】



【拍子抜けした男は振り向き、仲間たちへそう告げる】
【慌ただしく現場を駆けていた男たちはそれを聞いて】


【「――これぐらい、UTさまの手を煩わすまでもないさ」】




【それもそうだ――】
【男たちはめいめい口元で微笑した】

【現場は不思議な一体感を増した】
【やがて喧噪を貫き、野太い声で号令が掛かった】








【そして消防車は放水を開始した】

/↓


452 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/26(水) 19:38:03 EGD/fsIA0
(続>>451)

【八又の大蛇の舌のように、】
【窓を突き破り外へのたくっていた炎は】

【重い水の奔流を浴びせられ、瞬く間に沈んだ】



【――酒場から三軒隣の、】
【小さな生花店であがったその火の不始末は】

【市民たちの声かけと消防隊の奮闘によって】
【異能者の手を借りず、延焼することもなく】
【誰ひとりの犠牲も出さずに、収拾した】



【「――今日だけは、誰もいなくてむしろ良かったかもな」】

【誰かが言って、幾人かがそれに頷いた】



【災火の鎮まりと共に、赤いサイレンは止み】
【群れていた野次馬たちも、そう長居する者はなかった】
【すぐにひとり、ふたり――段々と、ばらばらに散って】






【やがて傾いた陽が】
【雲を火の色に染める頃にはもう】

【全てが昨日と同じ、景色の群れ】



【白煙だけが、遠くへたなびく】

【虚空の奥へ溶けるように】
【自らを恥じて世を罷るように】







【誰が閉め忘れたか、】
【虚ろに開け放されていたドアは】

【吹き抜ける北風に吸い寄せられて】
【時を巻き戻すように、やがて独りでに軋んで】



【 ぎい…… 】



【 ――ばたん 】






【 “ Closed ” 】


















【密室には再び】
【棺の中のような静謐】






【虚無が、安らかに満ちた】


453 : [Fluff in the Hollow] ◆3inMmyYQUs :2018/12/26(水) 19:39:40 EGD/fsIA0
/『Fluff in the Hollow』
/――End.

/という感じで、こちらからは以上とさせていただきます。
/長期間お疲れさまでした、お付き合いありがとうございました!




/……? 何かおかしいですか?
/なら、エピローグを本スレに置いておきます。


454 : ◆r0cnuegjy. :2018/12/26(水) 19:58:05 oFkCLf9I0
>>450

虚神……また新しい勢力か。全く、この世界は退屈しないな
何であれ、俺と世界に仇なす存在は全てこの『導くフィデリウス』で断ち切ってやる

【薬の効力のおかげで先ほどのように取り乱すことはなく、その右手が背中の大剣を、柄を握りこんで示す】
【虚神などという恐ろしい名称で呼ばれる未知の敵でさえ、剣士は恐怖など微塵も見せなかった】
【二人の返答に対しては、考え込むような動作をする】

そうだな……俺としては、お前たちと組む方がやりやすい
チームMは味方ではあるが玉石混合にして呉越同舟だ
そこと合流するよりは、組織立った動きのできるお前たちの方が、俺にとっては馴染むやり方になる

【まずディミーアとしてはチームMとの合流を主目的とはできなかった。彼らは必要な戦力ではあったが、最優先とはいえなかった】
【特務部隊に身を置く者としては、組織としての総合力が最も信頼できるという価値観が染み付いていた】
【チームMはあくまで緩やかなまとまりを持った集団。対黒幕にはそれでいいかもしれないが、今回は別だという考えだ】

チームMとの接触は好きにやってくれ。俺も見つけたら手引きしよう
だが、基本的には海軍関係者を探す方に注力したい
それと、厳島の奪還だな。外務八課だったか。そちらに協力できるならしたいが、繋げられるか?

【話に出た二名の海軍関係者。彼女たちの捜索の方をディミーアは優先した】
【さらには当然のこととして、厳島の奪還。計画立案を行なっているという外務八課との合流だ】


455 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/26(水) 21:08:53 WMHqDivw0
>>398-399 >>451-453

【鍵を開くって言ったって、ヨコになってるツマミをタテにするだけだ。だというのに】
【男の手は震えに震えてそれすらできないみたいだった。がたがた、というよりは諤々】
【アルコール依存症患者のほうがよっぽどまともな手つきをしていた。だから、】
【開けようとしてもぜんぜん開けられない。そうこうしているうちに息が荒く、荒くなって】

――――――――――――――――――ひ、

【その手を引っ掴まれるならあまりにも間抜けな声が上がる。引き攣れた悲鳴、とは呼べぬほど】
【か細く弱弱しい声だった。そうして、そうする手の持ち主――泣きじゃくる少女を見やるなら】
【今にも泣き出しそうな、何もかもに怯え切ったみたいな顔をして、握った刃を取り落とす】

【(そして世界が塗り替わるのなら)(一番気軽に思い浮かべることのできる顔を脳裏に描いたらしい)】
【(寒さ。突き刺すような冬の空気が一斉に、少女を襲うのだろう)(極寒の国)(薄暗い)(地下?)】
【(――――あるいはあんまりにも、駄目だって思ったらしい。あんなことを言っといて。こんな為体)】
【(合わせる顔もないと思ったのか。きっとそれも間違いではなかった)(だから、)】




「………………………………………………えっ何? え、……うわっ」

【転移した先で鉢合わせるのは暗赤色の瞳を持った女だった。目をまん丸く見開いて、口もぽかんと開けて】
【完全に部屋着。あったかそうなパジャマの上に厚手のロングカーディガン、スリッパなんか履いて】
【マグカップを片手に持っていたのを取り落としそうになって――慌てて持ち直す。それからまた、】
【信じられないようなものを見る目で少女と、少女の腕に抱かれる子供と、男を見て、首をひねる】

「えっなに、ほんとに何……兄さん、と、……白神鈴音? と、……何それ。死体?
 えーっなんで、ほんとになんで……? 何が起きてんの? え、え、え……ちょっとお、
 あり得ないでしょちょっと、状況説明してよ兄さん、……えっ何? 何その顔、何の感情の顔?
 ちょっと、何とか言ってよ……えーじゃあおまえでもいいよ、白神鈴音、説明……、……、」

「………………は? マジで意味わからん。何? 何もう、えっなに、なんて……?
 なんか言った? もっかい言って、……助けて、って何を? えっ? ……ああ、
 それまだ生きてんだ。それを助ければいい? 普通にイヤなんだけど……ええ……?」

【糸が切れた人形(それにしてはイヤに重すぎる)みたいにその場に脱力して座り込む男を見て、】
【女は慌ててその近くに駆け寄って、何事か譫言のように呟く唇に耳を寄せる。あるいは】
【少女が何か言うなら先にそれを拾って、やっぱり首をひねるのだ。本当に意味がわかっていないらしく】

【けれど助けてって言われたなら、ひどく渋い顔をして――だけど押すならなんとか倒れそうな気配は見せていた】


//ありがとうございまし、ありが、あり…………???
//続けるでもここで切るでもどっちでも大丈夫です、ひとまずはおつかれさまでした!


456 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/26(水) 21:57:28 E1nVzEpQ0
>>423


「"良識の欠落が齎す結末は一種の英雄的悲劇である"。 ─── 呵責なく他者を殺めながらも、その不合理性に悩むのは、ごく一般の感覚よ。」
「我々はヒーローなど求めてはいないし求めるつもりもない。 ……… 人らしく在りなさい、エーリカ。私が決して、啻なる獣でないように。」


【淀みなく織られる箴言の一葉は、夜に照らされて尚も屈折率を忘れさせた。 ─── 迂遠ながらも、限りなく優しい督励であった。】
【薄絹にて鼓膜を撫ぜるような肯定はやはり慈母のそれに似ていた。硝子越しに射し込む月夜の明かりが、微笑むかんばせを陰翳に象る】
【でありながらそれ以上の容喙はしなかった。 ─── 伝えられた忠言に、今一度に唇端を噤んで、釐かに頤を下向けながら、揺れる白銀。】
【隻眼の眦が悲しく雪折れて、数瞬に沈黙は続く。それでも軈て、悩ましく唇を緩め、訥として始まる言葉は、エーリカであるからこそ許していたのだろう。】



「 ───………… かえでは、思い詰めがちな子なの。」「あの子が手ずから携えていた、白神鈴音の神格を、奪い取られて。」
「きっと、自責だったのでしょうね。 ……… あの子は、とても優しいから。」「 ─── だから、報いは受けさせねばならない。」

【「面識は、蛇教の頃からあったそうよ。 ─── 仲は良くなかったようだけれど。それ以上は、私も詳しくないわ」であればそれ以上の関わりは、彼女らの間には有り得なかった。】
【蜜姫かえでという少女の何たるかを、アリアは誰よりも深く知悉していた。であるから何処か躊躇うような物言いであった。希う気持ちは解すれど、それを融かす事の能わなさ】
【 ─── そうしてまたアリア自身、白神鈴音という存在へ止めを刺すのに際しては、内心に蟠る拒絶を消せていなかった。それは同情か、猜疑か、直観か、判然とせずとも】
【何れにせよエーリカがそれで終わるというのであれば、アリアから続ける言葉もまた無かった。ただそれでも、選びかけた言葉を飲み込むように悲しく揺らぐ喉筋は、幽かに。】


457 : 名無しさん :2018/12/26(水) 22:11:39 45TQvxjs0
>>451-453>>455

【――――寒い、と思った。その瞬間に全部の細胞が何もかもを拒絶して、そのまま消えてしまえたなら、どれだけか幸せだったことだろう?】
【けれど現実として身体は寒さを感じていて、だから細胞のひとつひとつだって繋がりあって、正しく活動していた。――してしまっていた、なんでだろう、分かんないのに】
【こんな化け物たる自分が息をしているくらいなら、このちっちゃな、それでも誰より優しくて強くあろうとしていた女の子が息をするべきだと思った。そうであるべきだと、なのに】
【ぎゅうっと抱きしめた身体から秒速で命が流れ出していくのが怖くて怖くて仕方がなかった。抱きしめている指先がぬめったらそのまま命すら取り落としてしまいそうに思えるから】
【泣きじゃくりながら爪すら立てているのかもしれなかった。――――――それが彼女/冒涜者が真っ先に見る少女の姿だ。色違いの瞳が、見知らぬ場所を捉えたのなら】

――――――――――――――――っ、あ、

【――びくり、と肩が震えた。無理もないのかもしれなかった。二人の邂逅と言えば、いつかの、"あの日"だけであった。ならば、恐怖の思い出ばかりが、そこにある】
【細い眉がめいっぱいにハの字に落ち込んで。色違いの瞳がまた何か違う感情を示して淀む、――、】

――ねえっ、ねえ! おねがっ、――おねがいっ、かるら、かるらを、たすけて、お願いっ――カルラを、たすけて、…………っ。
たすけて、ください、――、おねがいします、おねがい、だから――。お願いします、おねがい……カルラを――――。

【そうして漏れ出る声は。ひどく震えていた。恐怖は相手に向けてであるのか、それとも、この幼子が死んでしまうことに対してであるのか、あるいはそのどちらもであり】
【事情の何を説明することはなかった。――出来るはずもなかった。泣きじゃくって、この女の子を助けてほしいって、それしか、それを言うだけで精いっぱいなら】
【カルラの身体を抱きしめたまま、――床で蹲るように頭を下げるのだろう。ならば踏みつけてしまったっていいんだって思わせた。それくらいに泣いていた、――かみさまなのに】

【(こんなに小さくて優しい女の子を傷つけてしまって、助けることすらできないなら、"かみさま"って、それ以外に、何が出来るのだろう)】

わたしのっ――わたしの、せいなの、わたしの、せいで、だから、っ、おねがい、おねがいします、カルラも、ヤサカさんも、悪くないの、だから、
おねがいします、――――――――――――――――わたしにできること、なんでも、するから…………。

【そして確かなのは、少女は相手を脅すつもりはないようだった。たとえばその命を人質に少女を救ってみせろ、さもなくば――なんて言葉は、出てこなかった】
【誰も悪くない。何もかもが自分のせいだと言って。ならば、代金が必要だと相手が言うのなら、自分すら差し出す気であるのだろう】
【――――――彼と、彼女と、カルラと、それから少女しか、この場には居なかった。黒衣の"あいつ"は出てこなかった。なぜと考えることはできても、現実は、そうだったから】

/おつかれさまでしたっ、一応この後も大丈夫ですので、何かあれば申し付けてください……ありがとうございました!」


458 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/26(水) 22:31:33 E1nVzEpQ0
>>426

【傾げたブランデーが唇を濡らす。飴色に溺れる氷の一欠片が、緩やかにグラスへ打つかって嘶く。白く、冷たい、音階。】
【忌憚のない少女の疑問へも、特段に表情が変わる事はなかった。であれば蒼い隻眼の奥にて、想い出されるのは偏に過去の感情であろう】
【未練も惜別も介在する事はなかった。 ─── 思索へ耽るように、彼女もまたグラスの底へ、無沙汰な視線を落とし込む。そして、徐に】


「彼、二十歳の時に軍を辞めたの。」「 ─── 辞めると言って辞められるポストでもなかったから、相応に苦労はしたみたいだけれど」
「ともあれ私は軍に残った。だから疎遠になった。」「お互い、易しく連絡を取り合える立場でも、なくて。そのまま。」


【「今でも、しっかり別れた訳じゃないわ。」 ─── 膚をなぞるだけの愛撫に似ていた。必要な事実を、確かに彼女は漏れなく語っていた】
【然して本質を何一つとして示すことのない説明であった。ソプラノの奥、木漏れ日のようにちらつくのは、何某かの情念。】
【それに強いて輪郭を与えるならば、 ─── 失望。諦観。慙愧。罪悪感。自己嫌悪。そんな類の、決して肯定的ではない、それでも後に腐れた訳ではない、ような。】
【何れにせよ女の中で、その感情には決着が付いているようだった。ならば、より深くを尋ねても許されるのだろう。糅てて加えて、悩ましげな少女の告白には】



        「 ──── そういうところよ。」「彼がなにより上手なのは。」


【徐にふッと笑い出しもして、やはり意味深な言葉遣いをするのであるから、もう幾らか傲岸に問い掛けるのも許されようというものであった。】
【一ツ事実であるのはきっと彼と彼女は一面において同類であった。 ─── 即ち、自身の内心を率直に吐露しようとしない。どういう目的であるにせよ、そういう振る舞いを好んでいた。】
【ひどく高飛車であると捉えられるのかもしれない。女性として理想的に過ぎる肉感を悪怯れる事もないのだから残酷だった。臈長けた横顔の緩められた唇は、きっとキスが誰より上手だった】


459 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/26(水) 23:03:47 WMHqDivw0
>>457

【首を垂れて綺麗な黒髪を床に散らばす少女を見下ろして、女は不思議そうな顔をする】
【個人的に嫌いな相手ではあったけど。それ以前に、よくわからないから、だって】

「なんで世界を滅ぼす神様が、死にそうな人間を助けて、なんてお願いをするの?」

【「今僕がそれを助けたって、おまえはそれを殺し直すんでしょ?」】

【あまりにも自然に口をついて出た言葉だった。憎しみから来る嫌味ッたらしさは微塵もなく】
【ただただ純粋に疑問に思っているようだった。それで、幾許かの沈黙を挟んだあと】
【――ふうん、と一言。それから視線を少女――神様から、男――化物に、移して】

「――兄さん、前にもそういう顔してるの見たことある。なるほどなるほど、そんな感じ?
 『また』やっちゃった? 『また』『誰か』『食べちゃった』の? ――そっか、そっかあ。
 それはかわいそうだったねえ。『なんにも悪くないのに』ねえ、そお――――」

――――――――――それ以上言うな、……言わないで、…………、やめて、

【酷薄に唇の端を吊り上げる。少女と違って涙の一滴も流さない、流せないそいつを見やる】
【口にしようとするのは何かしらの昔話。しかしそれも、憔悴しきって掠れた声に懇願されて】
【ふふ、と笑みを漏らして止めにした。それ以上、何も、言わないで。そう冀ったのは、】
【ひどいことを口にしようとする女に対してか。あるいは――いや、きっと、そうであり】

【(「そんなこと」――「わたしのせい」だなんて言葉、絶対に言わせたくなかった子がいたせいか)】
【(その子の、泣きじゃくる声を、これ以上聞きたくないって思ったからか。――何もかもこいつのせいなのに)】


【――――、】


【どちらにせよ、女は――驚くことに、何故か、対価は何も要求せずに助けて「あげる」のだろう】
【曰く、「神様がこんなこと言ってるの見るの、それだけでメチャクチャ面白かったから」】
【機嫌よく笑ってカルラの治療をしてやる。ただし、肉体に負った傷のみしか治せないから】
【彼女が目を覚ましても、「これ、もうダメだねえ」 ――それだけ言って、あとは完璧に放置する】

【それから先、少女がどうしたいって言っても「お好きにどうぞ」と返して。あとのことは本当に我関せず】
【カルラを連れて帰るって言ってもよかったし、預かっていてくれって言われてもまあ、承諾はする】
【しかしこんな女に子供を預けるなんて絶対信用ならないんだから、よしたほうがよくて、――、】

【――――――元凶たる男はそのうちに何処かへ姿を消していた。なんにも言わずに、いつの間にか】
【ひどいことするにも程がある。けれどそいつは所詮そういうやつだった、悪い男の自称は間違っておらず】
【その程度のやつだった。だからこれからもきっと、悪いコト、いくらでもするんだろう。(そんなやつはどうするべき?)】


//私からはこの辺りで、、、本当に長い間ありがとうございました!


460 : ◆zlCN2ONzFo :2018/12/26(水) 23:13:03 5p38.LtA0
>>454

「異世界の邪神、簡単にはそう我々は認識していますが、いえ一口に語れない内容です、中尉も全てを把握していたわけではないのでしょう……」

【凄まじいほどの戦意】
【狂気に近い敵意】
【何がこの剣士を、ここまで駆り立てるのか】

「なるほど、では暫くは行動を共にするか?」
「そうですね、常に共にある戦力は多いに越したことは無い」
「まあ、報告を見る限りはな……六罪王ジルベールの旗下みたいだしな」
「では、彼らとの接触はこちらでやりましょう、先ずは敵の手を逃れている関係者二名、リオシア二等兵と和泉教官の捜索とします」

【かつて不戦協定を結んだ六罪王ジルベール、彼はこの状況下をどう見ているのか……】
【やがて、ディミーアの口から外務八課の名が出れば】

「ああ、連絡は取れるぞ!」
「メンバーの中のライガってのと連絡先は交換済みだ、あの喋るスマホに連絡を入れれば会うことは出来るだろうな」

【現在救出作戦を練っている外務八課、特殊諜報及び実働部隊の組織】
【なるほど、ディミーアとしては其処との合流が最も効率も都合も良いと考えたのだろう】


461 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/26(水) 23:22:44 WMHqDivw0
>>458

…………ん? やめた? なんで、……なんかあった?
ハタチってまだ、こう……軍人的には全然働ける? トシじゃん。

【首を傾げる。そういえば、そういう話は全然聞いたことがなかったから】
【何も知らないに等しかった。彼の昔話。……そう考えると、なんとなく】
【不公平な気もしてきた。自分だって昔話、自分からしたわけじゃないんだけど】
【それでも一方的に知られているのは、あんまり、楽しくない。眉根を寄せて】

【――しっかり別れたわけじゃない。言われれば正直に、不安そうな顔をするけど】
【だけどその次にそれを煽る言葉が来ないなら、不問にしてあげる。そんな感じ】
【率直に言ってあんまり愉快ではない。そういう顔をしていた――甘いのを、一口】

じょうず、……上手かなあ。上手でいいことある? そーいうの。
べつにそーいうことするのが悪いとは言わないけど、……でも、
なんか、……ずるいじゃん。あたしばっかり探られて、知られて、言わされて。
……やっぱずるい。……軍人さんって、そーいうのばっかり上手くなるとか、

【「そーいう生き物なワケ?」 ……探られるのは、こいつが隠すから、ってだけだけど】
【それにしたってずるいと思っているようだった。だって彼は自分のことほとんど知ってるし、】
【知らなかったことは教えてあげたのに。……こっちから訊いたって、よかったんだろうか】
【そう考えるなら、吐く溜息にもいくらかの嫌味が混じっていた。睫毛は斜め下を向いて】

……………………訊いてもいいかな。エーノに、直接。

【――こういう時に、口実がないと自分から動けないのがこいつの悪い癖だった】


462 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/26(水) 23:28:53 BRNVt/Aw0

【年の瀬も近付く街中】
【クリスマスが過ぎてもなお煌びやかに輝くイルミネーション】
【楽しそうにそれを眺めるカップルだとか、仕事帰りなのか足早に歩いていくスーツ姿だとか、そんな人々が所々にいて】

【そんなきらきらとした風景の端っこ。少し高めに設えられた植え込みの煉瓦の縁に座った浮かない顔がひとつ】

【とにかく白い、十代半ばの少女だった】
【月白色の肩まで伸ばした髪。これくらいの年齢の、しかも小柄な女の子が着るには不相応過ぎる(本来なら背も高く胸だって大きくて、そんな大人の女性が着こなすような)ブランド物の真っ白いコート。その裾から伸びた黒いタイツに包まれた脚に、更にそれを包むヒールの高い灰色のブーツ】
【ぶらぶらと揺れる足元にはこれまたこれくらいの年頃の女の子が持つには不相応過ぎる高そうなブランドの紙袋が幾つか置かれていて】
【大分余ってしまったコートの裾から指先だけ出して縁に手を置いているものだから】
【不思議な魔法で素敵な大人の女性になっていた女の子が十二時で魔法が解けてしまって元のちんちくりんに戻ってしまったような雰囲気すら覚えて】

……つっまんない、ほんと、なんもかも……っ
【不満そうな声色。何処か涙声にも聞こえて】
【……実際、今にも泣き出しそうな顔をしていた。潤みに潤んだ金色の瞳。寒さなのかべそをかいているのか、鼻先も赤く染まっていて】


【──これは、余談なのだが】
【もし彼女を知っている者が今の彼女を見たのならば。それも"本来の彼女"を知っている者ならば大きな違和感に気付くかもしれない】
【彼女がこんな不相応なブランド物を着たり買ったりするだろうか?というのもそうなのだが、それよりももっと大きな】

【つまり、本来ある筈の髪と同じ色をした猫の耳と尻尾が綺麗さっぱりなくなっていて】


463 : 名無しさん :2018/12/26(水) 23:53:04 45TQvxjs0
【――――数日前。貴女の机、或いはロッカー、どこか。どこでもよかった。貴女だけが見るだろうと思われる場所に、紛れ込んだのは、一枚のメッセージ】
【少なくとも自宅ではなかった。だれか他の人間がそうすることも可能だった。ならばと少女に尋ねたところで、返って来る反応はごくシンプルなものだった。ふーん、なんて】
【だけれど、無反応を装っているだけなのは明白だった。いくらか前から自宅に帰って良くなったなら、ダイニングのテーブルに広げているのはカフェオレと、】
【個包装のビスコッティ。――かりかりと頬張る口元は何か誤魔化すような色味を宿していたし、もごり咀嚼する甘さごと、何か秘密ごと、嚥下したなら】

【「アリアさん、デートですか? そしたら、お洋服を買わなくっちゃ。スーツじゃ駄目ですよお」――なんて。だから、そう、紛れ込んだ一片は、まごうことなくその誘いであり】
【そうして二人洋服でも買いに行くのだろうか。なら、絶対ロングスカートが似合うとか、トップスは胸が大きいから、こういうのがいいとか、当事者みたいにうきうきして】
【それでもやっぱり問い質すなら、――知らないです、なんて、そっけなく言うんだった。だからやっぱり犯人は彼女で間違いがなかった。だって、】
【"そんな"ことになって、本当に彼女が全く関係のない事柄であったなら、そんな風な顔をするはずがなかった。わあわあ喚いてうるさくなるのが当然だった、から――】

【――クリスマス・イブの夕暮れ。待ち合わせ時刻は暗くなりゆく最中の17:30。当日少女は何か理由を付けて姿をくらましていた】
【その背中がスキップでもしだしそうに嬉しそうだったことと、たまたまあった硝子に映りこんだ表情がひどく破顔したものだったから、やっぱり犯人は彼女で間違いなかった】

【駅前の時計塔。待ち合わせの人込みは、遊園地中の人をいっぺんに集めたような人口密度、ならばその九割がこの時間にこの場所に設定したことを後悔するような】
【ならば少女もまたそうなのかもしれなかった。――――時計台にぴたんと背中をくっつけて身体を小さくするのは、まるで人込みの中に紛れるかもしれない恐ろしいものに怯えるみたいに】
【あるいは"こんな"やり方で、――想い人は来てくれやしないんじゃないかと、今更ながら不安がるみたいに。ふわと吐いた息の白さだけ、いやに清純を気取るのならば】

【――――腰まで垂らした純白の毛先は化繊の破綻しない程度に上手に結い上げられていた、少し長い前髪で澄んだ青色の眼差し、隠しこむなら】
【視線はひたすら手持無沙汰に胸元で絡まる手袋に包んだ指先を見つめているらしかった。ちっちゃな声を上げてスマートフォンで時刻を確認する、――17:17分】
【ふと見たときのキリバンはなんだかうれしくなるものだけど、とりあえず、こんな気持ちの時にはあんまり嬉しくなかった。――――位置情報はいくらか前よりここを指していたなら】
【やっぱり彼女が犯人であるのだから。――ニット素材のフレアワンピ、青みがかった灰色に、黒色のリブタイツ。赤色のパンプスのかかとは悪戯っぽい六センチ】
【薄手のコートに、それから顔を半ばほどまで埋めているのはふわふわしたフェイクファーのスヌード、――ぶちぶち言いたげな目で携帯をポケットにしまい込む、そしたら】
【また来てくれるかも分からぬ待ち合わせの緊張感にもぞもぞとするしかなくなってしまうんだった。なら、】

――うー、もお、……。もおっ。遅いよお、――。――――、……。もおっ……。

【普通に誘ってたらよかったかな、なんて、思い始めているくせに、時刻はまだ待ち合わせ時間にもなっていなかった。――17:18】

【「アリアさん、今日はデートなんだから、かわいい恰好で行かないと、駄目ですよ?」】
【ごく悪戯っぽいフリしてなにか上機嫌を隠しきれない表情で言ったのが、二人今日最後の会話だった。――その通りに、彼女だって、朝と恰好が違って、お化粧だってしている、から】

/よやくのやつですっ


464 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/27(木) 00:01:44 E1nVzEpQ0
>>461

【斯様な語り方をする理由もまた、やはり判然としなかった。 ─── 一ツ少女への妬心というものが、初めから皆無ではなかったにせよ】
【もはや不安がらせるような物言いは無用であると、女は語った筈だった。畢竟は悪癖であるのかもしれない。ただ事実であるのは】
【 ─── 微笑むような、咽泣くような、えも言われぬ表情で、グラスを深く眺めていた。皮肉る語調にも、映り込んだ白い顔色は変わらず】
【ただ思い出したように呟くのだろう。 ─── 干上がった飴色の水面を、一思いに呷って、吞


465 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/27(木) 00:02:15 E1nVzEpQ0
>>461

【斯様な語り方をする理由もまた、やはり判然としなかった。 ─── 一ツ少女への妬心というものが、初めから皆無ではなかったにせよ】
【もはや不安がらせるような物言いは無用であると、女は語った筈だった。畢竟は悪癖であるのかもしれない。ただ事実であるのは】
【 ─── 微笑むような、咽泣くような、えも言われぬ表情で、グラスを深く眺めていた。皮肉る語調にも、映り込んだ白い顔色は変わらず】
【ただ思い出したように呟くのだろう。 ─── 干上がった飴色の水面を、一思いに呷って、吞み下す。蠢く白い喉筋が、そのまま、言葉を。】




        「良い事なんて無かったから、別れたのよ。」




【であれば果たして奇妙であった。己れから語る事は好まずも、問われるなら語るに吝かでない。 ─── 冷たい音吐は何処か突き放すようで】
【それでいて続けようとした言葉に、己れで待ったをかけたような半端さがあった。その機微さえも、結局は正体を顕さないまま。然るに】

【(貴女はそうではなかったようだけれど。)】
【瞬く隻眼が揺らす、儚げな瞳の蒼さは、そう語ろうとしていたのかもしれない。 ─── いつか、彼もまた語っていた。】
【どんなに相応しく振舞っても、彼女は素知らぬ顔をしているのだと。詮ずる所、迂遠さと意味深さの全ては、そこに帰着するのかもしれない。ともあれ、】


「それを私に訊くのかしら?」「 ──……… まあ、いいわ。そうね、 ─── 。」
「彼に訊ねた方が、きっと喜ぶと思うわ。」「昔話は、嫌うところではないから。」


【幾分かの困り顔で女は答えるのだろう。 ──── なれば言質でもあった。愛する人に詰め寄られて、語るに落ちるのが彼であろう】
【「かえるよ」やおら通知に、液晶が灯る。華やぐ柔らかな光に彩られた、幸せそうなセルフィー。紅い瞳と青い瞳、紅い髪と黒い髪。誰よりも見慣れたアイコンであるかどうかは、解らない】


466 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2018/12/27(木) 21:06:05 ZCHlt7mo0
>>408

「まぁ、助力はあってあり過ぎるって事は、無いんだけどな? 俺たちだって、それぞれに生活って奴がある……
 いつだって馳せ参じ、なんて訳にもいかないってもんだ。特に俺はな……」
……ヴァルターの奴と、頼みの手勢の何人かは、いわゆるところの『表の顔』があるからな……常に動けるのは、俺とシャッテン、ラベンダァイスくらいのモノだ……

【常にフルメンバーではないという事の裏返しではあるが、彼らは常に一体となって動いている訳ではない】
【互いに協力し、便宜を図り合いながらも、それに専念すると言う訳にもいかないのだろう】
【小規模なギャングとは言え、本来守勢を主としているのだ。戦力の層が厚くなる事は、基本的に歓迎なのだろう】

――――――――それが本当ならば、それは『驕り』だな

【一連の補足説明を受け取って、アーディンは確信を持った様子で、嘲笑を浮かべながらソファの背もたれに身体を預ける】

『能力者』という奴の底の深さを……魔導海軍め、全く理解していない様だ……
なるほど『奴ら』には、異能封じの新技術があり、そしてフィールドを選択する事で、二重のセーフティと成している様だが……
――――あくまで『人間』の枠に収まるから、水は苦手なフィールドだろうと、誰が決めた……?

【それは、アーディンによる、形を変えた『演出』だった。自説に説得力を持たせるため、眼前の2人に魅せに掛かったのだ。敵の選択の不備を指摘する、それだけの事を】

――――海上では、奴らの異能封じも、十全に力を発揮できるものか……
そして――――海でも、何ら問題なく戦える能力者なら、既に仲間に1人居る……『空』ではなく、『海』で、な……
本格的な水のフィールドを舞台にした時……『あいつ』と、『あいつの獲物』以外の何者かなど、存在するものか……!
そして備えが崩れれば、突入戦に持ち込み、意味を成さなくなる…………『あいつ』には悪いが、精々頑張ってもらうとしよう……!

【盤石の体制として、海の支配者として立つために、能力者を封じ込めるつもりで展開するのなら――――その前提は既に崩されている】
【なるほど、能力者は『陸』と、少数には『空』をフィールドとするものが主体で、わずかにシャッテンの様な『異空間』を選ぶものがいる程度、というのが大方の認識だろう】
【だが、彼らの仲間には既に、『水上/水中』をフィールドとして戦える人員が存在している。前提は、既にひっくり返されているのだ――――】

――――そう言う事だ。虚神達との戦いの中で、素性も知れずに知り合った仲なんだが……アリアめ、そんな正体を隠してたとは……
……レグルスの奴が知らないで済んだのは、幸いだったな……

【外務八課の、他の面々についてはさしものアーディンも知り様がない。だが、少なくともアリアに関しては、既に把握していた】
【これは、或いは『一時的な協力体制』というだけに留める予定ではあったのだが、そうとばかりも言っていられないかもしれない――――】

「……まぁ、そこら辺はしょうがねぇよな。いくらあんたらだって、少数派の中で頑張ってるって事だろ? 情報に不備があっても、なぁ……」
――――だが、探りは入れておくべきかもしれんな……我関せずを堅持するのか、それともどちらかに傾き得るのか、今の櫻の国は危険だ、情勢の把握ばかりは、な……

【櫻の国の中の、情勢不明な勢力。そこに対する情報収集は、今は急務だろうと、アーディンとヴァルターは進言する】
【これは、『黒幕』と『円卓』との綱引き合戦で留まらない可能性がある。櫻の国の体制そのものの危機にも繋がる話だと――――】

/続きます


467 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2018/12/27(木) 21:06:18 ZCHlt7mo0
>>408

{……いや、良いさ……現状は、しっかりと認識しておく必要があるからね……――――そいつらは殺すって、もう決めたけどさ……!}

【命の尊厳に心を焼かれた、かつてのシャッテンの体験が、再び狂おしい殺意を呼び起こしてくる】
【だが、それを解き放つのは今この場ではない。必死に押し込めるようにして、そう端的な返事を返すのみだった】

――――残念な話だが、『UT』は恐らく、このまま過去の遺物となっていくしかないのだろう……再建の契機が、全く見えないのだからな……
……あそこにいる知り合いたちも、或いは『ウチ』で引き取る事になるんだろうか……――――まぁ、それも世の習いか……

【リーダーは行方不明。メンバーは次々と悪の道に転び、世間的には『腐敗した正義』扱いと化している『UNITED TRIGGER』】
【正義の旗は、かつての『Justice』の様に、このまま倒壊してしまうのだろうと、アーディンは悲観的だ。それこそ、justiceの様に、多くのものをその倒壊に巻き込むのだろう】

――――彼女の心の在り様は、初めから人間のそれとは異なっていた……それに気づけなかった周りが、彼女を『人間』扱いし続けた結果が……――――な
心を支えを永遠に失った挙句、「『人間ごっこ』などもう嫌だ」と、そう言っていたあの顔が…………正直、今でも忘れられんよ……

【ラベンダァイスの事に関しては、もはや完全に「今更、詮無き事」と化していた。己の有様を『人間ごっこ』とまで言って、切り捨てた彼女は】
【みらいの願いとは、正反対に位置する存在なのだろう。なるほど、彼女の心の救いは、戦場に、殺し合いに、そして戦死にしか無いのかもしれない――――】

――――お前はまだ、子供なんだ……子供は、大人になっていけばいい……
そういう子供を守る事こそ、大人の役目というものだ……
「ま、そうでなくてもな……お前にはお前なりの「こうだ」って、自分で決める生き方ってのが、必ずあるはずだ
 ……それを探す、それを見つけるってのは、な……誰にも邪魔させない、お前だけの権利だよ、みらい?」
{……頑張ろう、みらい……君の道は、必ずある……!}

【言葉は届いた――――3人の男たちは、それぞれの笑顔を、みらいに対して返した】
【――――不安がないと言えば、嘘になる。ラベンダーの悲劇の繰り返しが、ここでも起きないとは限らない】
【しかし、少なくとも今の可能性はあらゆる方向に延びている。それを摘むような、魔導海軍たちと同じ真似だけは、彼らはするはずも無かった】

っ、カニバディールだと……?
――――まぁ確かに、厳島関係者として、会わない訳にもいかない、という事か……
……必要なら、俺からコンタクトしておこう。正確に、「ここに行けば会える」という場所というのは、俺も良くは知らないからな……
――――なるべく、人気のない、それでいて他者の入り込みやすい場所を指定するのが一番良い。事情は通しておこう……向こうで興に乗れば、顔を出すだろう……

【求められた情報に、アーディンは難しい顔をする。この2人が、カニバディール一行と、すんなり接触できるというのは、少し難しい気がしたのだ】
【それでも、仲介自体は引き受ける。これは、厳島 命を巡る、重要な出会いになるだろうと、その事はしっかりと了解していたのだろう】

……ただ、その様子だと報告書を通してしか、カニバディールを知らんのだろう? ……少し、事前に教えておこう……
――――カニバディールは、確かにチームMの一員だが、我々以上にどす黒いアウトローな身で、社会的には完全な悪人だ……
勿論、この状況に際して、仲間として動いてはいるんだが……気を付けるんだな
接触するのは難しい、そして、悪人だからと肩肘張っていけば、面会も拗れよう……まぁ、かといって無防備すぎるのもどうかと思うが……そこは、君たちのセンス次第だ

【カニバディールと会うに際しての、最低限の心構えを教示する。こればかりは必要だろう】

……リオシアだと? 彼女なら、一度だけ顔を合わせただけだが……そうか、彼女も逃亡の身か……すまんが、詳しくは知らん
そしてもう一方の……和泉教官とやらは、完全な初耳だ……すまんが、ここでは役に立てそうもない

【2つの名前に関して、アーディンは思うところはあったようだが、情報と呼べるような最新の動向については、何も掴んでいない様だった】


468 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/12/27(木) 21:07:21 ZCHlt7mo0
>>288

――――はいはい、何を言ってるんです。秘密とは「分かち合いたいけれども、そうした瞬間に消えてしまうもの」ですよ?
ネタが全バレした状態で書かれるミステリーに何の意味があるって言うんです。例え倒叙ものだって、驚きのタネは仕込んであるってもんですよ?

【開き直った様子で肩をすくめながら、女性は飄々とした態度で〝P〟の追及を躱しにかかっていた】
【態度こそ変わったが、距離感を図りながら、不用意に踏み込ませまいとするその姿勢は、なおも健在だ】

……はぁ……あなた、ボケ方が下手ですねぇ。営業というからには、トーク力も相応のものかと思いましたが……未来人って……
そこはそれです、あれ……女ってのは、男とは違いましてねぇ? プロセスって奴が大事なんですよ。結果だけ見てどうの、なんてのは、男性的な単純さですねぇ……

【警戒しつつも、提示されたタブレットを受け取る女性だが、そこに呆れたため息がこぼれていた】
【彼の方でも、すかし、機を見て踏み込もうという意図があるのだあろうが、流石にその語句は脱力ものだった――――らしい】
【とは言え、軽々に視線をタブレットに落とす訳にもいかない。警戒心を張りつつ、慎重に表示されているリストを順繰りに見渡していって――――】

>>433

……あー、あなたそっち界隈じゃ有名人さん、なんですねぇ?
しかもその口ぶり、随分とヤバそうなお方ですねぇ、もしかして今の私って『知らぬが仏』だったりします? あなた、結構タフそうだってのに、誰とも触れられないなんて……

【一応、相応に情報も仕入れているつもりの女性だったが、やはり『本格的な面々』ほどには、そちらに詳しい訳でも無い様だった】
【『名前だけは知ってる』程度の有名人相手なら、いざ直面したところで、意外と気づかないものだ――――】
【ましてや、彼の名と印象は、この『石化』という行動とは、結びつきづらいものがあった。少なくとも、彼女にとっては】

――――言いますねぇ、その図体でなんとも慎重な事を。でもまぁ、そこは間違っちゃいないんでしょうよ
では、そんなあなたに聞いてみたいもんです――――あなたの人物鑑定眼に、私はどう見えるんですかね?

【眼前の人間の危険性を見分ける――――それを言うなら、この場の女性には簡単な話だっただろう】
【〝P〟にせよ、彼にせよ、危険な匂いを隠そうともしていない。タイプとしては、〝P〟は腰の軽い猛進派、大男は腰の重い堅実派と言ったところか】
【だが、眼下で派手な狼藉を働いていたのは彼の方でもあり――――その別を一概に論じるのは難しい】
【ならば――――この女性はどうかと、敢えて問い返してみる。その目に、どう映っているのか】

(――――――――――――――――ッッ!)
さぁ、そこは流石に即答は……――――でも、そうですね。折角だから見てもらいましょうか、私の『乗り掛かった船』をね――――ッ

>>288>>433

【――――キィィィィン――――という、甲高い音が、遠く、細く聞こえてくる】
【それを耳にした瞬間、女性の様子が一変した。それまでの飄々としつつ、距離を取る様な態度から一変。不気味な笑みを帽子の下に隠して】
【風が変わった、とそう表現できるだろうか――――波間に翻弄されて、自分のペースを維持しつつ守勢に入っていた、その雰囲気が拭い去られる】

【やがて――――ボシュ、ボシュっという、何かが弾ける音と共に、黒い影が3つ、ビルの下から飛び出してきた】
【正に、そこをよじ登ってきた大男と同じように――――外壁から、そのまま屋上へと乗り込んできたのである】

/続きます


469 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/12/27(木) 21:07:34 ZCHlt7mo0
>>288>>433

「――――到着したぞ……」
んな事は分かってるんですって。全く、時間稼ぎに手古摺りましたよ。でもま、やっぱり送り込んでくれたんですねぇ……

【態度を一変させた女性の背後に、3人の影は回り込む――――サングラスを掛けた、銀の短髪の男】
【それぞれに、服装は様々で、道を歩いていたなら、なんて事のない人物像が3つ、集まっただけだが】
【――――その場に集結した事で、異質な雰囲気を振りまく要素を、彼らは2つ、持っていた】




【――――顔立ち、体格、声色――――パーソナルとしての外見に、ほとんど差異の見出す事が出来ない、コピーされたようなその外見と】

【――――胸にそれぞれ、逆三角形の金のプレートに『蜂』を象ったバッジを、一様に留めている。その事実だった】



――――さーてさて、まぁようやく、ですねぇ? 私が只者じゃないって事は、みなさんご案内の事の様ですから、もう今更隠しもしませんけどね?
……本当だったら、もっと密かに行きたかったって言うのに、この場じゃあもう呼ばない訳にもいかなくなっちゃったんですよ
そんな訳で、私を見くびると怖い事になるんですよってのは、もう言っちゃいましょうか?

【たかだか3人の応援の到着だが、それを受けて女性のペースは、一気に加速する】
【受け取ったタブレット端末を指先で弄びつつ、それまでとは一線を画した、余裕を見せる態度で2人に相対していた】

――――そんな訳でね、〝P〟さん? あなた、本質的に商売敵かもしれない相手に、そんなホイホイと情報を明け渡すような真似して良いんですか?
間に合ってるってのは、要するに『こういう事』って訳で、そこを読み取ってくれなきゃ、テクニックに不足ありと言われても、しょうがないですよねぇ?

【端末を覗き込み――――如何にも誘いと取れる、詳細を明かしていない項目『〝P〟CARD』に注目する】
【ようやくにして、全てをあけすけにした形で、そして、自分たちの体勢が整った今、女性は〝P〟に対して、能動的な言葉を向け始めていた】

――――そしてあなたには……まぁ、どれほどのものか、今ここで明示してあげる訳にもいかないんですけどね?
それでも……この頼れるお兄さん方、100人や200人くらいだと思ってもらっちゃあ困るって奴でしてね?

――――私の裁量と時の運次第で、『アルターリ』の惨劇の二の舞、その3つや4つ、出来ない事じゃないんですよ――――

【そして、牽制合戦の様相を呈していた大男に対して、女性は静かで冷たい視線を、じっと向ける】
【実数は分からない、実際には相当に背伸びをした発言なのかもしれない。そして、その3人の男たちの実力の程も、また然り――――である】

【――――だが、或いは彼なら気づくかもしれない。様々な動乱、悪意に対して、アンテナを張り、情報を収集し続け来た『彼』ならば】
【――――彼らが一様に胸に留めたそのバッジの出自。7年前から密やかに、水の国に息づき続ける、休火山の如く沈黙した『爆弾』の存在を――――】


470 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/27(木) 21:48:28 WMHqDivw0
>>465

【勢いよくグラスを傾けるのを見届けるなら、多少はびっくりしたらしい】
【目を丸くして――けれど首は傾げたまんま。隻眼が訴える感情に気付いているのか、いないのか】
【ただ、間違いなく正しく理解はできていないような顔をしていた。いくらか訝しげな視線】
【向けたあと、自分のぶんのグラスを握る手に目を落とす。もう半分くらいは飲み干していた】

【(それでも踏み込んでほしかったのか、最初っからそうしてほしくなかったのか、分かりかねる)】

…………。……そお、じゃあ、訊いてみる。
イヤって言っても言わせるもん、……、……もうすぐ帰ってくるって。
そういえば、それ――何渡そうとしてたの?

【やがてバイブレーションの音に我に返らされるから、そのまんまに眼前の相手にもそれを伝えて】
【ふと思い出すから訊いてみる。ここに来た理由。直接会って渡したいものって、特に思いつかないし】
【通知をついと横に撫でて、アプリを起動してから適当なスタンプを打ちつつ。したらすぐ消しちゃう】
【液晶の表示。びっくりするほど後腐れもなくスリープモードに落として、それから】

――――――クリスマスプレゼントとか?

【とりあえずぱっと思いついたことを口にする。そういえばこいつはお祭りごとが好きなくせに】
【このイベントにだけは、特に何も反応しなかった。ケーキとかチキンとか食べたいって相手が言うなら】
【じゃあそうしよっか、とだけ言っていた。それ以外は何も、プレゼントとか考えたりもしないんだから】

【――薄情者のこいつを差し置いて彼にそういうものを贈るなら、いくらかリードはできそうだけど(今更?)】


471 : ◆DqFTH.xnGs :2018/12/28(金) 00:07:19 csW8o8Qg0
【酒場】

【どこにでもありそうな場末の酒場。今日は平日ということもあって、客は少ない方だった】
【カウンター席には1人、男が座っていた。トレンチコートとボルサリーノハットを被った】
【黒髪の男だった。室内だってのにお構いなしにサングラスをつけたそいつは】
【安物のウイスキーを煽って酒場のテレビをぼんやりと眺めていた】


(集団食中毒……[----]の時の報復、か?)
(カールも過激なことしやがる、が──ぎゃは!にしてもひっでぇクリスマスプレゼントだなぁ、おい!)
(流石は天下の機関員ってぇやつだな。組織力に関しちゃやっぱ怖ぇわ)

(しっかし…………この状況でマーカスをUTに向かわせたのはちと微妙だったか?)
(…………、…………。…………いや。違ぇな。運命っつぅのは────)


【いくつかのニュースがテレビ画面を通り過ぎる。“スクラップズ”主導と思われる】
【集団食中毒事件の続報。風の国での小さな火事のニュースを挟んでCM】
【「1日たったわずかなお金で、子供たちのノートと鉛筆が買えます──」】
【貴宝院という財団が所有している孤児院のCMだった。最近特によく見るような気がするが】
【昔からたまに流れていたような気もする。まぁコマーシャルなんてそんなものだ】


『運命は自分で切り開く、………だったか』


【掠れた声は、男のものだった。タバコで喉をやったのか、酒で灼けたのか】
【それとも自前の声だったかなんて覚えていないしそんなことはどうでもよかった】
【CMが終われば今度は櫻の国魔導海軍関連のニュース。まずは厳島命他、手配中の4人の顔が】
【画面に映し出され、キャスターが彼らの危険性を必死に訴えていた】


472 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/28(金) 20:15:58 o/194Anc0
>>463

【 ─── 乙女を匂わす断章の贈り主が誰であるのかを、女はよく知っていた。であれば、殊更に答えを問う事もなかった。】
【クリスマスを控えた非番の休日に、二人は揃って出かけたのだろう。退院祝いという事もあった。互いに彼是と似合いの服飾を勧め合って、その全てを買えるだけ買い込んで】
【そうしてまた最近の彼女は、曰く義体のオーバーホールの為、八課の調整槽に浸かっている事も多かった。 ─── 年の瀬を背にした聖誕の祝日に、街行く雑踏までもが浮き足立つようだった】
【待ち合わせの場所に選ばれた時計塔には苦笑さえ浮かべていた。然して不慣れさの加減さえ愛おしむのであるから、殊更に女が忠言を零す事も、またなかった】
【であればせめて所期の刻限よりも少し早く来てやる事が気懸りの供養にもなろうというものだった。 ─── 恋人たちの誰もが羨むような黒いクーペも、今日ばかりはガレージに停めたまま】

【 ──── そうして、来るべき前夜。夕暮れに泥み行く街中を吹き抜ける乾いた寒風も、細雪を齎さぬのであれば単に焦燥を煽るだけであろう】
【見知らぬ誰かの慕情に関して、この世界は存外に無関心である。冷たい煉瓦組みを背にして立ち尽くす少女の所在無さを慰めうるのは、ただ一人しか有り得ない】
【それでも過ぎ行く時間は無情であった。液晶と分針の示す意味合いは、徒らに心苦しさを煽るだけだった。白い吐息に湿ったホーム画面が、冷たい水滴を残すのでさえ、鬱陶しい】


【だが、 ─── きっと彼女がひどく高い背丈をしていた事は。その少女にとって何よりの幸福であったに違いない。】
【人波の向こう側、一ツ飛び出たハンチング帽、誰よりも求めてやまない銀色。行き交う人々を、午前2時の雪に似て、摺り抜けて、彼女は】



           「 ───── 待たせてしまった、かしら?」



【申し訳を無くした、優しげに透き通るソプラノ。冷たく白い顔貌を彩るチークが、仄かな血の気を艶めかせた頬。慕わしげに瑞々しい口許が緩む理由を、きっと少女は誰より知っている。】
【眩しいほど煌びやかな白銀の長髪は、緩いシニヨンに纏め上げられて尚も燦爛としていた。深く被るプロムナードと、真新しいトレンチコートの、いずれも穏やかな薄墨色を宿す。】
【外套の下に着込むのはハイネックのニットである。 ─── 縦縞に織られた深紅のカシミヤは余さず胸許へと張り付き、重たげな肉感に引き伸ばされて、却って双丘を浮き彫りにしていた。】
【顔の右半を隠す前髪は変わらない。然して対に位する修飾は、ごく視線を惹く代物であった。銀縁に彩られ、華奢なチェーンを揺らす、円い片眼鏡。おおよそ骨董趣味だった。】
【やや膝丈よりも長いギンガムチェックのプリーツスカートは少女と共に選んだものだった。濃淡の入り混じる灰色の交叉柄から、編み上げの白いニーハイブーツを覗かせていた】
【このような寒い時分であるにせよ、真白い肌膚を好き好んで衆目に晒すことを、彼女は厭った。 ─── 然して代わりに、平生なら白銀に隠された悩ましげな頸もまた、惜しげなく顕わであり】
【そうして垢抜けた嫣然さは、ひどく蠱惑を纏って憚らなかった。何時もよりも軽やかな薔薇の香水と、慕情に儚く色付いたフェミニンなメークとの、愛しい芳しさ。】

【女が斯様なる出で立ちを見せるのは、少なくとも少女にとっては初めての事であったろう。 ─── その寒々しい躯体を、ただ護るために】
【己れより幾分も低い背丈を、外套の中に迎え入れようとするのだろう。下ろしたての服に有りがちな、工場よりの無機的な匂い。然してそれさえも統べるのが、アリア自身の香りであるから】
【 ─── 慈しみをもって見下ろす視線にて、無言のうちに行き先を問うのだろう。忍ばせた指先が、少女の冷たい手指へと絡められて、恋人のそれに結ばれるならば】


473 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/28(金) 20:35:17 o/194Anc0
>>470

【 ─── 通年であれば、その日を彼も祝っていたのだろう。然るに、己れの伴侶とした少女の身の上が、如何なる物であるかを知っていたから】
【精々がホールケーキとターキー、幾ばくかのリキュールを買ってくるかという所だった。薄情であるとは思っていなかったには違いなかった】
【ともあれ、 ─── 問われた言葉に、アリアはやはり、静かな笑いを浮かべていた。垂らした眦は追憶を求めていたのだから、やはりそれは、どこまでも諦観でしかあり得なかった】


   「そんな感傷的なものじゃあ、ないわ。」


【零すように呟いて、紙袋から取り出す。何かのブランド名が記された、シックな装いの紙箱だった。 ─── 華奢なほど白い指先が、開けば】
【引き出されるのは、一ツの懐中時計であった。落ち着いた金縁の装飾と、シンプルな文字盤によって成る、ごく古風な手巻き式の代物。一ツ大きく嘆息してから、止めどなく彼女は、語り出す】



   「軍を辞める時、彼が残してくれたの。」「 ─── 100回。これを100回巻いて、針が止まってしまうまでに」
   「ボクはキミと結ばれたい、って。 ……… それが叶わなければ、返しに来て欲しい、って。大真面目な顔をして。だから私も、騙されて。」

 「馬鹿でしょう。 ……… 結局、100回までは覚えていたけれど、返しそびれてしまって。」
 「ふと思い出したから、返しに来たのよ。それだけ。本当に、ね。 ───── だから、安心なさい。」


【 ─── 語るにそれは、ほろ苦い追憶に関わる忘れ物であるらしかった。瞬く瞼と長い睫毛だけが、彼の恋した彼女から、何も変わっていない】
【であれば少女にも悟らせるかもしれない。 ──── 当て擦るような傲慢さを、アリアが隠そうともしなかった理由。詰まる所は嫉妬であるに違いなかった】
【垣間見える長い前髪の奥には、儚げな白膚には、凡そ見合わぬ、焼け爛れた醜い傷跡が見て取れた。隻眼の対になる片目が収まるはずの場所には、ごく機械的な光学素子が備えられていた】
【彼女もまた真っ当な人間ではなかった。少女と同じように不遇を託っていた。されど少女は彼によって救われて、女はそうではなかった。 ─── 遣る瀬無く潤む目尻の理由は、そんな所であろう】


474 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/28(金) 22:09:28 6IlD6zzI0
>>456

【窓から差し込む月明かりは憂いを秘めたアリアを優しく飾り立てるよう】
【神秘的とも形容できる佇まいに目を奪われるのは彼女を慕うから?それともその姿を見初めたから?】
【如何様な感情があったにせよ、一つ言える事があって――改めて美しいと思えたのだ】


「人らしく。かぁ。……昨日まで国家のための捨て石だった私には難しいです、それ。
 けどアリアさんがそう言うのなら、……"そう"在る様に努めます。ただ今までが今までだから
 "人らしさ"から離れそうになったら、……乱暴でも良いから私の事、掴んで欲しいです」


【だから、言葉を介して現すのは己の偽りなき気持ち。「離さないで」と幼げに、それでいてプロポーズの様に】


【"人らしく在れ"という社会的死人とは正反対の言葉に眩しいものを見ているかのように目を細めたら】
【必然的に訪れる沈黙の時間。それは決して気まずさからでも裁きの日を待つ罪人の様な心持でも無いから】
【静寂が破られるのを只管に待つのだった。故に唇は緩めない。横一文字のまま真摯な眼差しを向け続けて】


「………思い詰めやすいってのも優しいってのも知ってます。だから自責とか自罰の類に駆られるのも納得です。
 でなければ正しく死にたいとか口にしないでしょうし。……白神鈴音(あんなもの)をイルに奪われて泣き叫ぶほどですから」

「だからこそ報いを受けさせなきゃってのは私も同感です――私たちの目の前で人を滅ぼすとのたまいやがった"アイツら"
 イル=ナイトウィッシュも、白神鈴音も。よりにもよって、あの子が渇望した"愛"を余す所無く穢したんだから」

 
 
           【"殺しますよ、絶対に。二柱纏めて地獄の淵に叩き落してやりますから"】
        【アイツらの愛を目の前で歌われるなんて真っ平御免、我慢できる筈が無いでしょう】
           

【あの日、吐き気を催す二つの神に殺意に身を窶すほどの激情を吐き出した】
【今も尚その激情は心を燃やし焦がし。先程まで向けた小娘同然の憧れめいた眼差しはいつの間にか昏い陰を宿し】
【触れる全てをズタズタに切り裂いて屍山血河を築く様な底冷えする声色と殺意――アリアとは対極の感情】

【白神鈴音を殺す事に躊躇いなんてなくて。寧ろ殺す事に躍起になって】

【"カチューシャたちの愛は実らなかったのに"】【"奴等のせいでかえでが苦しんでるのに"】
【あんな吐き気を催す悪神が声高らかに愛を謳うのが我慢ならないのだった】


475 : 名無しさん :2018/12/28(金) 22:39:59 b/tJxvnc0
>>459

【真っ黒い髪の毛がまるで蛇の群れのように床を這いずっていた、身動ぎするたびに毛先がずろと蠢くのだから、神様だなんて言えないくらい、惨めな有様で】
【ただ泣きじゃくって嗚咽する吐息ばっかりが痛々しかった。――それすらも気のせいなのかもしれないけど。だって彼女は世界を滅ぼす神様で、でも、そんな風に見えなくて、】
【だいすきなお母さんに怒られた幼子が泣きじゃくりながらおかあさんなんてだいっきらいって言い放ってみる両価性によく似て。なら彼女は存外に幼いのかもしれなかった】

【――だって、】

ちがうの、ちがうのっ、――っ、だって、だって、――――だってっ、

【漏らす言葉はひどく自分勝手なものだった。そして少女はそんなことばかり繰り返すのだろう。――即ち、世界を滅ぼすような神様になったら/なれたら、】
【もう誰にも虐められないはずだと。誰にも非道いことをされずに生きていけるはずだと。だって、だって、だって、――、そんな風な言葉ばかり、泣き言のように/まさにそうだから】
【力を手に入れたのだから誰かに非道く傷つけられることはもうなくなるはずだと祈った/信じた。しかし結果は"こう"だった。彼女は滅ぼされるべき神様に成り果て】
【ましてや護りたかったはずのものさえ護れないのなら。――。やはり無惨であるとしか言えぬのだろう、こんなの殺してやった方がよほど"まし"だと思えるような、】
【それでいて、"このまま"死ぬことはどうしても許せないのだとも伝えていた。結局拙い我儘を繰り返すだけであった、――このまま終わるくらいなら/このまま終われないから】

【(そうなるくらいなら本当に世界だって滅ぼしてやるって、)】


【――彼女がカルラを治してくれると言うのなら、少女はひどく感謝するのだろう。やはり床に這いつくばるようにして、何度も何度も、礼をするなら】
【彼が気づけば居なくなっていることにも、――気づくのはごく遅いのだろう。何度か不明瞭な言葉を発しては彼のこと、尋ねようとしたのだろう、けれど――、】
【なんとか命の繋がった少女を抱き留めるなら、それでもう彼女の両手はいっぱいいっぱいらしかった。――なら、彼女は自分で引き受けるのだろう。ただし】
【このような状態のいのちを預かったことがないから、――どうしたらいいのかとか、何かの時に頼っていいのかとか、確認するのだろう。もちろん、出来れば、だけど――】

【――――いろんなこと終えたなら、少女の姿は遠く遠く夜の国にあった。といっても彼女のもともとの住処、"こう"なる前に暮らしていた家であり、】
【だって"今"身を寄せているところに連れてゆけるはずなんてなかった。だから少女は自らの家へ連れ帰って、だから、それなら、きっと、"だれか"への裏切りに等しくて、】
【それでもやっぱり、"でも""だけど"なんて言い訳を塗り重ねるのなら、――――彼女の人生だなんて、きっと、最期の最期まで、"こう"なんだけど】

/おつかれさまでした!


476 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/28(金) 22:55:37 E1nVzEpQ0
>>474

【「直ぐでなくとも、構わないの。少しずつでも、良いのだから。」 ─── 返される言葉には、頤を揺らして鷹揚に頷きながら】
【そしてまた引き留めてほしいという願いにも、細めた隻眼にて相違なく諒解するのであろう。今や彼女には、エーリカを嚮導する当為があった】
【乙女の告白にも似た言葉尻の湿り気を、決してアリアは否定しなかった。そういう在り方を、きっと好んでいた。であればこそ】

【 ─── 続く酷薄な誓言にも、また静かな同意を示す。斯様な決意を抱く少女の動機を、アリアは十全に理解し得た。】
【或いは彼女自身の煮え切らぬ内心を何処かへ押し遣ったのかもしれない。一ツの呼気を吸い上げて、夜露に潤う唇を、開けば】


     「 ───………… ええ。」「では、そのように。」


【どうしようもなく何かを悲しむような声音で、アリアはエーリカの言葉を認めた。 ─── それで、今宵に交わすべきものは、全て終わった】
【華奢なほどに長い両脚が、椅子より立ち上がって躯体を擡げる。腰にまで伸びる銀髪が、情念の残滓を暗喩するように閃いて】
【 ─── 向き直るのであれば、やはり慈母に似て優しげな笑顔であった。残すものは、幽かな香水と、シャンプーと、甘い体温。】


 「今ばかりは、羽を伸ばすといい。 ……… 次なる休息が何時になるのかも、知れぬのだから」
  「おやすみなさい、エーリカ。」「 ───── 安らかな夜明けが、貴女へ訪れますように。」


【それ以上の物は何一ツ残さずに、彼女は寝室から立ち去るのであろう。去り際の悉くさえ耽美であって、であればこそ】
【己れの同志を傷付ける全てに彼女は残酷であった。 ───── 事ここに至っても未だ遠い摩天楼の煌めきが、昇るかも解らぬ明日の曙を、当たり前のように待ち望んでいた】


/このあたりで〆でしょうか……!おつかれさまでした&ありがとうございました!


477 : 名無しさん :2018/12/28(金) 23:20:26 b/tJxvnc0
>>472

【そうして特別に問われることがないのなら、少女はかえって上機嫌であるのだろう。いかにもうまくやれていると思っているように上機嫌であるなら、】
【お風呂で薄藤の毛先を泡だらけにしているときに鼻歌すら聞こえてくるのかもしれなかった。――自分の身体を丁寧に洗える程度にはすでに回復していた、なら】
【二人あたらしい服を買いに行くことに問題もないのだろう。あれがいい、これがいいっていろんな服を選んでやって、また選んでもらって、着せ替え人形になったりしたり】
【――――それでも時々夜にぐずるような声を上げることはあった。"あの日"からそうだった。ふとした時に怖くなるらしかった。きゅうと喉の奥を鳴らす声、きっと幾度も聞かせて】

【だから、――待ち合わせよりいくらか早い時刻、さっきから三十秒ほども経っていないのに、少女はもう一度スマートフォンを取り出していた。時刻は変わらぬ18分】
【訝るように背後の時計台としては相当に小さいいかにも待ち合わせ用の時計台を見上げるなら、――そちらもやはり(当然ながら)同じ時間を示していて、ぐむと頬が膨らむ】
【指先を見るのも飽きてしまっていた。だから視線をあたりに巡らせていた。――もしかしたら早く来てはくれないかと、期待したなら。だれよりおっきな背丈、見つけ出す刹那】
【不安そうに俯いていた表情がまあっと華やぐのだろう。冷夏に萎びたひまわりが来るべき夏の熱気に喜び勇んで綻ぶ瞬間みたいに。――ぱって笑ったなら、おっきなわんちゃんみたい】
【ならばやはり当然に駆け寄るのだから。犬だったならぶんぶん尻尾を振って止まないのだろう、ならば招き入れられた外套の中、ぎゅうって腰元に抱き着いて、はにかみ】

――――ううん、待ってないです、だいじょぶです、えっと、それで、――えっと、――、

【ふるふるって揺らした首は嘘つきの色をしていて、それでも全く気にしていないようだった。気持ちばかり急いて、しばらく待っていたなら、身体は少し冷えていたけど】
【にこにこ笑って仕方ないから、――――――「びっくりした?」って、彼女はまだサプライズの成功を信じていたから。自分だって伝えないまま、今日を迎えていたから】
【あどけない顔をめいっぱいに蕩かして。抱き着いた状態をめいっぱいに利用してうんと背伸びする、バレリーナよりめいっぱい背伸びしたなら、甘い囁き声、スズランの声音にて】
【肯定すればごく上機嫌に笑うのだろう。気づいていたのだと言われたとしても、――少しむくれるのだろうけど、それすらも嬉しいんだって、ふたり、知っているなら】

ぅふふ。今日はね、アリアさんがお姫様なの。だって、私、アリアさんのこと"好きに"して、よくって――だからね、私ね、アリアさんと、なんだってしたくって!
アリアさんのしたいこと、なんでもしたくて。だからね、アリアさんの行きたいとこ、行きましょう、したいこと、なんでも、――予約とかしなくっていいことじゃないとですけど、
――――それでね、最後にね、行きたいところがあるの。だけどね、最後でいいですから。だから――。

【喉を擽られた猫みたいに眦を蕩かす笑みにて伝えるのはつまるところ割とノープラン宣言のように聞こえて、ただ、何も思い浮かばぬと言うなら、なにか決めているはずではあった】
【とかく決めているのは今宵のお姫様は貴女なのだとそればっかりはめいっぱいに伝えて。ならば何度も何度もかわいいってささめくのだろう、たあっぷり甘やかす声音で、】

――――――――――だからね、おひめさま。どんなわがままだって、私が叶えますから。まあ、北極星を捕って来るとかは、無理ですけど。
それでも、買えるなかで一番おーっきいお星さま、一緒に探しにいきますよ。業務用クリスマスツリーのてっぺんのやつとか! ふふふっ。

こーんなに可愛いお姫様なんだから。ね?

【ならばずいぶんと背の小さな王子様だった。王子様を気取るにはずいぶんとあどけなくって。それでもめいっぱい好きだって気持ちは溢れてなお涸れやしないなら】
【指先同士を絡ませ合うならそれだけで幸せだった。だけれどもっと幸せになりたいの。――どんな我儘だって言いたいし、言ってほしかった。だって私たち二人で一人、なんだから】


478 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/29(土) 00:07:33 6IlD6zzI0
>>476

【吐き出した黒い感情は間違っても心地の良いものじゃない、それくらいの自覚は在る】
【ピンク色のこそばゆい遣り取りとか少女漫画のヒロインみたいな言葉で浸る甘さも、全て帳消し】
【聞いた事の無い声色、それはきっと底冷えする寒々しさと言うよりは哀れみとかの寒い色だった】

【短い言葉に乗せられた哀しみを全て察する事などできないし、察したところでどうしようもない】
【だから、去り際のアリアの聖母の様な素敵な微笑みと暖かな気遣いに甘える事しかできないのだ】


「――――……、ええ、おやすみなさい。アリアさん。そしてこれからよろしくお願いします。
 貴女の同志として、愛する人を持つ者同士として。拙いながらもアリアさんとかえでの愛が続く事を願うばかりです」

「――――………、かえでに伝えておいて貰えますか?"私も同じ首輪のわんちゃんになったから宜しくね"って
 ………、私も出来る範囲であの子の事を護りますから。……あの子もアリアさんも私にとって大切な人だから」


【このとき初めて柔和な笑みを浮かべた気がした。飾らない自分。大切な人を思い遣る年頃の女の子の様な無雑な姿】
【心を許した人に向ける蕩けた視線はきっとエーリカの素であろう。本質的には仲間思いの女なのだから、決して抜き身の刃でしか無い…訳が無いのだ】

【そうしてアリアは優しい言葉と心地良い香りを残してアリアは立ち去る。ドアが閉まる音が一日の終わりを告げる】
【一人しか居ない部屋。夜に紛れるように部屋の電気を消す。そうして麗しの銀色の残り香を縁に窓から差し込む月明かりに身を晒す】
【………やっぱりあの人の様に耽美な振る舞いにはならない。子犬めいた小娘がここにいるだけだった】

//長時間の絡み感謝ですっ、ありがとうございました!


479 : ◆1miRGmvwjU :2018/12/29(土) 00:24:22 E1nVzEpQ0
>>477

【その恢復をアリアは確かに喜んでいたのだろう。 ─── 然るに、悲痛な呻きが夜を濡らすのであれば、一糸纏わぬ裸体の指先は】
【声もなく少女を抱き寄せて、その呻吟を胸間に溺れさせ、或いは口付けに塞いでしまうに違いなかった。忘れさせるような行為を選んでいた】
【どのような苦しみも共に背負うのだと誓っていたし誓わせていた。 ─── 故に今、花咲くように咲う少女の笑顔を、誰よりも喜んでいた。】

【「とおっても。」僅かに腰を曲げて、揃えた視線の高さにて、淀みない声が答えていた。純真さを徒らに弄ぶ必然がどこにあろう。それは宵が深まってからでも十分に事足りたのだから】
【爪先立ちに伸びる腰を掌に抱いて、その体重と体温に微笑む。もう少し人の少ない場所であれば甘い接吻けに興じていてもよかった。邪気ない少女の笑い方を、一頻り碧眼に焼き付けて】
【そうすれば真冬の刺すような大気は透明度以上の意味を持てる筈もなかった。いとけなく紡がれる音吐と共に、立ち上る白い吐気さえも、恋心を焦がして仕方がない。】


「 ────…………… あら、あら。」「良いのかしら?」「私、 ─── 我が儘を言うのは、上手なのよ。」
「かえでを困らせてしまうかも。」「困った貴女だって、愛らしいもの。」「 ………… うふ。でも、そうね。」


【目尻と声帯を柔らかく細めて、息を漏らすような笑い声であった。 ─── いじらしい告解を、深紅の内に収める。腰よりなぞる指先で、まだ冷たい耳朶をそっと包んで】
【傍目から見れば親娘と呼ぶのが相応しかろうというものであった。然して二人が互いに纏うものは純真でありながらも無垢ではなかった。それの如何なるかを解するのは、二人だけでよい。】



「それでは、 ─── くす。」「王子様。私の行く先に、付いてきて下さるかしら?」



【まったく態とらしい音階であった。この類の台詞に似合う甘ったるさをソプラノに宿して尚も、気取らず彼女は笑っていられた。】
【細い手指は改めて、少女の片掌を深く絡め握る。二人きりで落ち着ける場所は、きっと第一の希望であったろう。 ─── 然して、このような砌(みぎり)である。】
【目ぼしい空間の多くは逸る恋人たちにごった返していたし、そういった場所を特段に好む性分はなかった。故に思索は幾らか虚空を彷徨い、然してそう長く時間は要さない。】
【 ─── 時計台のある広場より、当て所なく伸びる歩行者道。往来の密度は息苦しくなかった。立ち枯れた落葉樹に絡められ、煌々としたアーチを描く電飾さえ、今ばかりはどこか温かい。】
【光の小径にふたり脚先を踏み入れて、気まぐれな歩調は何処へともなく。 ─── 緩やかな下り坂の両脇は、それなりの繁華街である。手を繋ぐ学生たちのモラトリアムは眩しかった】


480 : 名無しさん :2018/12/29(土) 00:56:49 b/tJxvnc0
>>479

【とおっても、――淀みない声が答えてくれるのなら、少女はやはり上機嫌に頬を綻ばせていた。真っ白な頬っぺたは薔薇色にはにかむから】
【自分の企んだ何かで愛しい人が笑ってくれることがどれだけ幸福であるのかを態度と表情がありったけに伝えていた、――ここ数日の悪戯ぽい眼差しは、この日のためだけに】
【大人びた色合いをどこかに落としてきてしまったようなあどけない笑みをしていた。二人出会ったばかりの数度の邂逅からは予想もつかぬような色、見せつけて】

ふふっ。だいじょーぶですよ。私だって、上手ですから。並大抵の我儘じゃ、動じないです。――だからね、私が困っちゃうくらい、我儘してほしくって。

【やがて耳元をそおっと覆われるのなら。少しだけ擽ったいみたいに笑みの端っこが綻ぶ、あどけない笑みに純粋なこそばゆさが混ざりこんで、それでも破綻はしないから】
【ころころ笑いながら、そんな風に言うのだろう。自分だって我儘だから。そんな自分がお手上げするしかないくらい、我儘してほしい、だなんて――】
【それでも得意げに"えへん"と胸を張るのだから、いくらかの自信はあるらしかった。とはいえ、そういうことばっかりな気がした。結局いつも最後には折れてしまうのに、】
【包まれた耳の温かさにゆるく唇の端っこを蕩かしながらも、それでも、今宵は相手がお姫様だと決めていたから。甘えるのは控えめにしたいな、だなんて、誓っていた】

もちろんですっ、どこだって行きますよお。映画だって、プラネタリウムだって、猫カフェだって、兎カフェだって、ハリネズミカフェだって、爬虫類カフェだって――。
……あっ、水族館とかも、いいかもしれないですね。カップルばかりかな――。だったら他の場所がいいですね。魚よりカップルの後頭部ばっか見てるんじゃ、つまんないですし。
何見に行ったか分かんないですから、――。でも、アリアさんが行きたいなら、ほんとに、どこでもいいですよ――。カップルの後頭部数えたって!

【ならやっぱりどこか"違う"気もした。エスコートする王子様にしては、ぎゅうっと繋いだ手、どこに行くかを知らないんだから当然ではあるのだけど――】
【きっと連れていかれる温度感の方が強かった。それにしたって何か生き物と触れ合いたい欲求が強かった。とはいえ、たまたま通りすがった猫カフェの看板を見たが故な気もした】
【やっぱり爬虫類は好きらしい。にへと蕩けるような笑みでしゃべるなら、スズランの花を砂糖漬けにしたって足らないような甘たるさ、満ち満ちて】

【カップルだらけですね、なんて、甘える声がささやいた。それから少しだけの間をおいて、――私たちはどんな風に見えてるんでしょう、なんて、見上げて、尋ねて】


481 : ◆S6ROLCWdjI :2018/12/29(土) 19:38:41 AlSEJK/U0
>>473

【なにが感傷的でどれが感傷的じゃないのか、イマイチよく分からなかった】
【少なくともそんな顔をしてものを言うのならそれは感傷的であると】
【そういうものではないのかと思ったけど――彼女がそう言うのならそうなのかなって】
【思いつつ、無言で話を聞く。どこかしら不満げな顔。ただしそれは彼女に対してではなく】

………………そんなの受け取るほうも受け取るほうだと思うんだけど。
100回って盛りすぎじゃない? せいぜい10回がいいとこでしょ。
10回で、それで――止まるまでに絶対迎えに行くって言ってくれなきゃ、
あたしだったら、そんなの受け取んないけどな。投げ返しちゃうな、ンなこと言われたら――

【どちらかと言うと彼に対する不満が出てきたらしい。なれば続く言葉は同情的というか】
【それよりも正確な言葉を探すなら、女同士で顔を突き合わせた際に出てくる愚痴、的な】
【そういう感じのニュアンスに近い。とりあえず、こいつにとってその約束は不合格らしい】

だいたいさあ、叶わなければ、ってのがイヤじゃん。たら・ればの話をすんなってハナシ。
そこで言いきらないのは、悪いよ。……返すときさ、バーカって言えばいいんじゃない?

【「べつに、言ってもあたし怒んないよ」。クッションにお尻を預けたまま、膝を立てて】
【腕で抱えて片頬をくっつけて、寝そべるみたいに。やっぱりまつげは斜め下を向いて】
【鼻から大きく息を吐いた。ふんす、みたいな音が鳴る。どこかしら気が大きくなっているらしい】
【なればそれは、「そうである」者の余裕でしかないのかもしれないけど。けど。】


482 : 名無しさん :2018/12/30(日) 01:02:51 b/tJxvnc0
【きらきら光る夜景が眩しくって目を背けていた。だけれどやがてそれも落ち着かなくなって、最後にはブラインドを降ろしてしまっていた】
【時刻は夜もゆるり深くなりゆく頃。しんとした病室はそれでも暖かで、空調の音ばかりが響いていた。そんな部屋を寂しいと思う人もきっと居るのだけれど、】
【少なくともこの部屋で治療を受けている少女は苦とも思っていないらしかった。――自分ひとりの時間はもともと大事にしていたなら】
【けっして最近は少なかったと文句を言うわけではなくて。ただもう少しだけ一人だけの時間も欲しくて。ただ、――ほんの一秒だって長く一緒に居たく思っちゃうから】

――――――、ふぁ、ふ、……。

【――少女がここに世話になってから、いくらかの時間が経っていた。ならば、怪我もある程度治りつつあり、そうでなくとも、彼女自身起きている間は痛みを感じないなら】
【半身起こして座った姿勢でするのは怪我人とは到底思えないぐらいの伸び、刹那に漏れる吐息はごく気持ちよさそうで、――それでもやはり身体の違和感に目を細め】
【小さく唸りながら、猫が毛繕いするみたいに身体の点検をするのだろう。――すっかりとくつろいでしまっていた、自分が怪我人だなんて忘れているのかもしれなかった】
【――――だなんてそんなはずないんだけど。おまけにひとつ欠伸まで添えるのなら、そうっとベッドサイドのミニテーブルに手を伸ばし】

【水の入ったペットボトルと、本が数冊と、それからちょっとしたお菓子やのど飴が置かれていたから。初めにペットボトルをとって、次にのど飴をとって、最後に本を】
【口の中で飴玉をかりかり転がしながら本を開くのなら、室内にはやはり静寂とごく緩やかな温かさが満ちていた。少なくとも確かであるのはそこにあるのは穏やかさであり】
【ごく傷ついた人間が虐待された子猫みたいにぴゃあぴゃあ泣いて喚いて仕方ないということは決してないのだ、(――そういう時期はきっといくらか前にあったのだろうけど)】

【あるいは、前もって来ると知らせているなら、ベッドサイドのペットボトルは水以外にももっとお茶もジュースも用意してあるんだろうし、】
【いろんなお菓子だって用意してあるんだった。――――だってお友達をお招きするのにおもてなしのものもないだなんて、申し訳なくって仕方ないから】
【それこそアリアに我儘していろんなお菓子とか買ってきてもらうんだから。――――そうでなければ、やっぱり、室内はごくシンプルなままであるのだろうけれど】

【――透き通る白銀の毛先は長く寝転んでいたのか少しだけくしゃりとしていた。それでも指で梳けば戻る程度の様子であったなら】
【あどけない顔の下半分は不織布のマスクに覆われて、――それでも覗かす紺碧の目元だけで、十分にあどけない造形をしていたし、誰であるかを疑う必要もない】
【まして病衣すら着ていなかった。ごく気楽な部屋着にする以外どうしようもないワンピースを着ていた。――三角座りの仕草で立てた膝には毛布を被せ】
【その膝の上に乗っけた本を黙々を読み進めていた、――おっきな胸元は下着を付けていないらしいなら、寄せられた膝にゆるり歪められて、いくらか窮屈そうである、なんて】

【――――もしかしたら、意外と元気そう、なんて、思わせるのかもしれなかった。事実、彼女はもうあまり怪我人らしい装いではなかった。とりあえず確かであるのは、】
【いまこの時間、彼女はこの部屋で一人過ごしているということ。――――なにか音楽でもかけていたらもう少し年頃の女の子っぽいんだけれど、やはり、無音の室内にて】

/よやくのやつですっ


483 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/30(日) 01:30:15 6IlD6zzI0
>>482

【コンコン】【コンコン】

【規則的に扉をノックする音が鳴り響いたなら、それは見舞客か病院関係の人間が訪れる合図】
【けれど少女はその後に聞こえるであろう声で前者であると察することが出来る。それも少女が気を許すであろう人物であると】


かえでー、起きてるかい?私だよ、私。
エーリカ。エーリカ=ファーレンハイトだよー。


【断りを入れたのなら、彼女はおじゃましますと言わんばかりに引き戸の扉を開けて】
【比較的平穏な時間を過ごす少女が待つ部屋に足を踏み入れるんだった】
【彼女は灰色を基調としたパンツスーツ姿にステンカラーコートを羽織っていて】
【手には高級感漂う桐の箱に入れられたメロンを携えていた―――どうやらお見舞いの品のようだった】


【きっと少女は突然の来訪に意表を突かれるのだろう。けれど、それは不穏だとか厄災の訪れではなくて】
【心休まるひと時、暖かなひと時の訪れであるとすぐに理解できて。突然の来訪ゆえの準備のない病室に添えられるもう一輪の華の様に】
【鮮やかな色合いを添えるのだろう。そして彼女の第一声は、決まっていた。】


無事で、―――生きててくれて良かった……っ。かえで。

アンタがフライヤに襲われたって聞いた時は頭ん中がぐっちゃぐちゃになって呆然としちゃって。
………元気そうで何よりだよ。……あっ、そうだ。これ、お見舞いの品の高級メロン。


【元気そうなかえでの姿がエーリカを安心させて、心からの柔和な笑みをこぼさせる】
【自分の事以上に安堵の色を滲ませる姿はやや歪に映るかもしれないが、これが彼女たちの関係】
【お互いの事を自分以上に大切に思いあう関係。だから自分の事以上に少女を慮るのだった】


484 : 名無しさん :2018/12/30(日) 01:55:13 b/tJxvnc0
>>483

【――――ぴくり、と、肩が小さく跳ねた。けれど過度に気にしなかったのは、ここが安全な場所だと認識しているからなのだろう。(それでも窓は目隠しされていた)】
【ゆるく本を閉じるなら、それからゆっくりとした声が返事するんだろう。甘いスズランの声。――けれど一つ事実として、少女の居る部屋に彼女が居る証拠はなかったから】
【部屋前のネームプレート欄は空欄であった。まして普段は施錠されている部屋だった。というよりは、アリアが居る間は施錠されている、が正しいのだけれど、――】

――――――――あれ、ふふ、おひさしぶりです。どうしたんですか、こんなじか――、――、あれ、えっと、……アリアさんに、聞きました?
もおっ、――……生きてますよお。わたし、あんまり死なないですから、……、だから、ほら、生きてるじゃないですか。死んだこと、ないですし――。

【――ならば、今宵その引き戸が開いたのは、彼女が一人だったからに違いなかった。そうして出迎えるのは、ちょうど、マスクを外したところの少女、手元で折りたたみながら】
【もし尋ねるのなら、「乾燥してるんですよね」だなんて答えるのだから、怪我の予後も良さそうだったなら、過度に心配する必要はきっと、もう、ないらしくって】
【そもそも死んだことがあったらここに居ないというのは相手を安心させるための冗談として消費されるのだろう。――あるいは、相手が、蛇教時代の彼女のこと、知っているなら】
【名目上は"儀式"や"修行"ではあるものの、実際のところは"人体実験"、としか呼べないようなもの、彼女はいくつも生き延びているのだから。――なんて、わずかに眉を下げ】

わあ! 元気ですよお、めちゃ元気です、今もうちょっと元気になりました。メロン食べたいです、ご贈答用のやつですよね、高いやつって、おいしいですよね?
わぁー、私初めてです、ご贈答用のやつ。ほら、なんか、スーパーとかのすでに切れてる奴の30%オフみたいな奴は、食べたことありますけど、あれもおいしいんですよね。
なんていうか古い感がいい感じに普通に熟れてて、――――――、あ、えっと。別にそんな生活に困窮してたわけじゃあ、ないんですけど……。

【相手の表情に釣られたように柔らかに笑みかけた表情が、――相手の持っていた箱の中身がメロンなのだと聞けば、ぱあっと華やぐのだから薄情だった】
【半ば身を乗り出すみたいなテンションで今なお元気になりましたなんて言うのなら、もうめっちゃ分かりやすくテンションが上がるのだろう、メロン!なんて、上機嫌に】
【ご贈答用をやたらめったら強調してくる。スーパーのカットフルーツ30%オフが今までの人生で仲良しだったメロンだとか言いながら。でも別に貧乏なわけじゃなくって、】

【なんて】

――――――、あれ。そういえば、エーリカさんて、ここ、入っていいんですか、――アリアさんが、いいって、言ったんですか?
アリアさん、今お仕事なんですよぉ。だから、鍵してないんですけど……。

【ひとしきりはしゃいだ後に、ふっと気づくのだろうか。だって相手は違う場所に属するはずであるから、――はてなと不思議そうに首を傾げて】
【あの人がいいと言ったのだろうか。その割に一人で来るのはやはり不思議に思えた。そうであるなら、アリアが同席するのが自然な気がした。だけれど今日は居ないから】
【――とりあえず、ベッドサイドには椅子が置かれていた。いつまでも立ち話も何だろう。木箱に入ったメロンはきっと重いから。早いところ腕の中を軽くする方が、きっといい】


485 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/30(日) 02:31:21 6IlD6zzI0
>>484

【自分が知る通りのかえでの振る舞い。年頃の少女みたいにあどけなく揶揄う様な言動に】
【胸を撫で下ろす。それ処か心底嬉しそうに弾む言葉に釣られてエーリカも無雑な笑みを向けるのだった】
【にっこり、と向日葵の様に明るく景色を彩るような笑み。親友同士気を許した相手にのみ見せる表情】


そぉだよう。たっかいやーつ。スーパーで売られてるのとは比較になんないほどに高くて美味しいやつ。
だから楽しみにしてなよぉ。頬っぺた落っこちる位に美味しいはずだし、……結構高かったし。


【"私もこんな高級メロン買うの初めてなんだから、恐らく、きっと、いいや絶ッ対に美味しい筈っ!"】
【"もし美味しくなかったら別のフルート引っ提げて次の日もお見舞いしてやるんだからっ!"】

【あどけない少女の様に高級メロンの価値を誇示するエーリカの声色は明るく無邪気に】
【場所が場所ならかえでの手を掴んで一緒に飛び跳ねて喜びを分かち合いそうな程に】


【そうしたやり取りの後、椅子に座るように促されるのなら"じゃあお言葉に甘えて"と一言添えて】
【できる限り嫋やかに腰掛けるのだった。腰掛けた椅子の隣に木箱を置いて一呼吸。どうやら重かった様だ】


ああ、それに関してはアリア"さん"から許可は貰ってる。
ここに出入りする許可も、外務八課の一員として身を置く許可も。
だぁから、かえでは何にも心配しなくても良いの。私たちはもう"仲間"なんだからさ。


【心底嬉しそうに紡ぐ真実。このお見舞い以前にアリアに会って様々な許可を得たから】
【アリアを"さん"付けしている事からも以前と関係が大きく変化している事がうかがえる】
【それは奇しくもかえでに告げた言葉通りに。お互い味方であり、本当に互いを大事にし合える立場になったという事】
【そして言葉の最後に"無断外泊と添い寝の件に関する誤解も解いてあるから大丈夫だよ"って明るく添えて】


486 : 名無しさん :2018/12/30(日) 16:43:03 b/tJxvnc0
>>485

――――わあ、本当ですか。やったあ――、"ここ"の人、あんまりお見舞いに来てくれないですから。まあ、お友達とかもあんまり、居ないですけど――……。
――もお。聞いてください、ひどいんですよお、噂話でね、私のこと、アリアさんの愛人なんじゃないかーって。もーちょっとなんかないんですかね。なんか……。
その……。うーーーーーーん、うーん…………、よく分かんないですけど。だからって……。

【だからやはりめちゃくちゃ嬉しそうだった。やったーって感じ、漫画とかなら周りにキラキラを散らすだろうテンション、それで漏らすのは、ちょっとした愚痴】
【誰がお見舞いに来てくれるでもない。ただまあそんなに仲良しな人はまだ居なくて。というより普段はほとんど誰か見舞いに来られる状況でないのはほとんど忘れて】
【――そしたらぶーぶー言い出すのだから、ずいぶんと気楽なもの。――曰く、その呼ばれ方は好ましくないのだと。かといって彼女自身、この関係性を説明する言葉を持たないから】

【それでも。高かったと言うのなら、「じゃーきっとおいしいですね」だなんて笑うのだ。いつか彼女が今よりもっと偉い立場だった時には想像も出来ないような、歳に見合う色】
【あの頃の彼女の方が今より年上なんだと言われて、時系列の矛盾すら無視して信じてしまえそうだった。――或いはよく似た姉なのだと言われてすら、信じてしまえそうに】
【ならばどちらが彼女の元来持って生まれてきた性格なのかは手に取るように分かるのだろう。神様と朝露以外を信じない朝焼けの中のスズランの花の仕草は、全部が嘘ではなかったけれども】

【――――そうして相手がベッドサイドの椅子に座るのなら。ベッドサイドのテーブルのいろいろを彼女は退かしてやるのだろう、やがてそこに桐箱が鎮座するのなら】
【わーすごーいみたいな感じで手も伸ばすのだろうか。箱入りメロンだなんて見たことないし。そもそも桐箱自体始めて見るし。幹部と言っても年功序列には少し負けるから】

――――――――って、え? ほんとですか? アリアさん、いいって? ――わあ、そしたら、パーティしないとですね。新歓しましょう、私もされてないですけど……。
来るって言ってくれたなら、お菓子とか、用意したのに。アリアさんもそうですけどぉ、いきなり来る人は気にしてなくっても、こっちは気にするんですよ?

だって、私、今、とりあえず、少なくとも、ノーブラですし――――――。あ、パンツは穿いてるのでだいじょーぶです。

【ぺたぺた(勝手に)箱に触って楽し気であった少女の顔がきょとんと驚きに染まるのなら、またもぱあと華やぐのだろう。新歓しましょうなんて言うけれど、】
【そもそも時期としてすべきは忘年会ではなかろうか。そしてきっとおそらく多分計画しているうちに新年会になってしまうような気もした。けれどそんな頃合いになれば】
【こんなに元気そうな少女はきっと普段の生活に戻っていけるのだろう。――。むーっと頬を膨らませて見せる仕草はやっぱり年相応に違いないのに】
【さも重大そうに厳かさを演じてみせた声を添えて自分の胸元を撫ぜ下ろすなら、確かに下着のラインは見えない気がした。ただ胸のシルエットは崩れていないようだった。若いから?】
【――悪戯ぽく細めて笑う艶っぽい表情はまるで確かめてみますか、なんて、尋ねるように瞬いて。けれど一瞬後には、全く普段の色合い、下はバッチリらしい。どうでもいい】

…………あーっ、それ、私、めちゃくちゃ聞かれて……。私、泊めてもらっただけだって、言ったんですけど。エーリカさん、なんか言いました?
そりゃあ、……勝手にお泊りしたの、ちょっと、悪かったですけど。でも――、……、むう。まあ、それなら、いいですけど、――。ありがとうございます――。

【なんせその時スヤスヤと眠っていたものだから。いっそ電話があったことすら知らないようなものだった。あれ以来端末にロックを掛けているのは、なにか怒られたのかもしれなかった】
【――――とはいえ、終わったことではあるのだろう。和解済みだと言うのなら、少女はそれで納得するしかないのだし――なんて】


487 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/30(日) 21:41:59 smh2z7gk0
>>449

ふーん、遊んでね………まぁ申し訳ないけど力には多分なれないかな
但しこの国の〝正義の味方〟も結構過激みたいだからあんまり火遊びはおススメしないけどね〜ん


【「特に公安回りなんかはね」と最後に付け足して苦笑交じりで肩を竦める。】
【氷の国の外交官らしいが、どうやら水の国の公安などにも多少の理解はあるようであった。】
【「社会人なら18も21も大差ないね〜」と続く言葉に応える。】


うん、コニーちゃんでかまへんで〜よろしく〜
まぁそれなりに力は持ってるつもりだよ〝いろんな意味で〟。
ついでにウチの国は使えるものはなんでも使うからね、私のようなピチピチ美少女でも外務省に務められるのさ。

―――んじゃハナムラって呼ぶわ、初対面だしこれくらいの距離感だよな☆


【とかなんとか言いながらウィンクする、自分の事はコニーちゃんと呼ばせているのに勝手である。】


さあてね、魔導海軍も含めて〝水〟と〝櫻〟の間で何かは動いてるみたいだね。
私達〝氷〟はせめてとばっちりが来ないように祈るだけだね〜。

………勿論、最近はこわーい大人ばっかりだからねあんまりからかうつもりはないよ。


【相手の微笑みに返すように微笑む、互いの腹のうちはあまり見えない。】
【だからと言ってこのタイミングであまりつつくのも危険だと判断したのだろう。】
【ひとまずはお茶を濁した―――。】

//遅くなってすみません!


488 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/30(日) 22:23:17 6IlD6zzI0
>>486

そっかぁ。お見舞いに来てくれないのかぁ。かえでと親しい人ってアリアさんと私くらいだから仕方ないよ。
其処まで親しくもない人間のお見舞いなんてまずしないし。けど少なくとも二人はかえでの身を案じてるんだし?
ぶーぶー言わないの。あんまり口を尖らせるんならその口を塞いじゃうんだから。


【"塞ぐ手段は想像にお任せってね"、と意地の悪い揶揄いの笑みを口元に宿して】
【けれどそれを実行する訳がないってのは少女も理解してるはずだから、此方もまたお気楽で軽やかだった】


にしても愛人呼ばわりって……くくっ、はははっ!随分な物言いだよねえ。
愛人ってまるでアリアさんに本妻がいるみたいじゃんか。かえでが本妻みたいなもんなのにねぇ。

だったら自分で言いふらしてやんなよ。"私がアリアさんの本妻です!愛人じゃないですぅ!"ってさ。
――――……少しまじめに話すなら秘書官を名乗れば良いんだ。その方が恰好が付くだろ?


【桐の箱に手を伸ばす少女の姿。楽し気に触れる姿は微笑ましくて眺めているだけで心が癒される気がした】
【年相応に燥ぐ少女の仕草は間違いなく好奇と愉しみに満ちていて。だからこそ暫く少女の気の赴くままにさせる】
【そうしている内に少女の表情に驚きの色が浮かび上がる。それは歓喜の色を含んでいて、同時に幾何かの艶も薄らと】 


ほんとのほんと。アリアさん直々に同志って言ってもらったし、今は外務八課所有のビルの一室で寝泊まりしてるし。
パーティするなら私たちだけで慎ましくやろうよ。きっと私達は彼らから見ても異質だし、簡単には歓迎されないからさ。
その点アリアさん含めた私達だけなら気心も知れてるし、気兼ねなく楽しめるんじゃないかなって。


【やや悲観的な言葉を口にするけれど、かえでの言葉は否定しない。むしろ肯定して是非とも歓迎会をやろうって乗り気で】
【そしてその後に紡がれた言葉――アポなしの突然の来訪に対する苦言と少量の淫ら――にやや苦笑気味の態度を取るのだった】
【確かめてみますか、なんて表情には依然として浮かべる表情でやんわりNO、と。(恋人同士であるなら確かめたかったけど)】 


んー、言った。言っちゃった。「かえでなら私の隣で寝てるよ」って……。
間違った事を言ったつもりは無いんだけど誤解を招くっちゃ招くよね、うん。

まぁ一応はだけど。アリアさんの誤解も解いたから終わった話ではあるんだけどねー。


【原因はこの女性であることは想像に難くない。指を指で絡めて、ぎゅーっと抱きしめながら眠りに落ちたあの日】
【きっと意地悪の一つでも振舞いたかったのかもしれない。それが今に至るのだから軽はずみな思慮に欠ける行動であるのは間違いない】
【だからバツが悪そうな彼女は話題を逸らすかのように、"そのメロン切り分けよっか。んでもって私が食べさせてあげる"なんて言葉を口にして】


489 : 〝P〟 ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/30(日) 23:10:05 PMzGIUuA0
>>433

なるほどなるほど、意外とどうして良心的かつ繊細なんだね〜
ッハッハハ、いいじゃない〝混沌/ケイオス〟なんてまさに素晴らしい世界だよ。
君もそうした世界を望んでいるクチではないのかい?

とはいえ根底の秩序は必要だけどね、混沌は秩序というレールの上に敷かれてこそ、だ。


【うんうんと納得したように強く頷きながら相手へと笑みを向ける。】
【確かに世界が混沌とすればするほど武器商人としては商売繁盛となるだろう。】
【だが世界が混沌とし過ぎれば基底の価値観は崩壊し、資本主義としては旨味はない】
【故に、この青年が求めるのは〝レールの上の混沌〟であるのだろう。】


だろうね〜いやはやそんな爆薬が平然と歩きまわってるなんて恐ろしい世界だ
う〜ん、どうだろう。〝持たざる者〟達はもっと根本的な方法で解決を図ろうとしているようだ。
それは僕にとってはあまり望ましくない、もっと原始的な力による闘争が必要なのさ。

おお、中々乗ってきてくれるね!


【カニバディールが商品に興味を示せばパンパンと手を叩いて嬉しそうな仕草をする。】
【そして、おススメについて聞かれれば一層口元を歪めて眼を細める。】


―――おススメは僕自身からの〝贈り物〟をあげるのさ、金額によって内容の変わるお愉しみカード。
悪いようにはしないよ、きっとね………フフ。


【その項目をタップすれば、ただ真ん中に金額を入力する画面だけが現れる。】
【口座などを入力する項目もない。ただそれはどこか怪しい魅力を秘めてもいるが………】


>>468

まーそうだよね、言っている事は分かるよ。
だけど僕は気になる映画は先にネタバレ見ちゃったりするタイプのせっかちさんなんだよね。

おやおやここでフェミニズムな話かい?まー僕には人間が雄と雌に分かれている事に大した意味はないけれど


【一方つれない様子の女性には残念そうな苦笑を浮かべながら肩を竦める。】
【女性の言う通り、営業と言う割にはあまりにも常識が抜けている部分が見受けられた。】

【そして―――新たに現れる〝客〟に対して張り付いた笑みを崩さないまま視線を向ける。】
【パンパンと手を叩きながらまるでダイナミックなショーを見るかのように笑う。】


おーなんか凄いね!一体何者なのかな!?商売敵?まさか君たちも武器商なのかな?
これは一杯食わされたねぇ、中々やるじゃないお姉さん。


―――まぁ分かったよ。


【〝汲み取った〟といった表情で〝P〟は笑いながら頷く。あまりにも不気味な笑みだった。】
【そして今までのやりとりでこの男がズレているのは重々承知だろう。であれば。】



>>ALL


じゃあ―――始めようか〝戦争〟を。
僕自身は戦う力なんてないから、〝コレ〟に頼らせてもらうけどね。

まぁこんな世の中だからさ、文明の利器の偉大さってやつを実感しようではないか。


【ケラケラと笑いながら、〝P〟は新たに取り出したタブレットを操作しする。】
【同時に、二人の手元にあるタブレットの画面に割り込むように右上に小さなウィンドウが出現する。】

【そこには―――高速で移動している航空映像が表示されている。】

【そこは―――現在一同が立っているビルから数ブロック離れた場所の映像だと、分かる者はいるだろうか】


【RP-01〝Destroyer〟―――〝DEM社〟のUAV(無人航空機)】



【主な用途は偵察や―――〝対地ミサイルによる爆撃〟。】


490 : ◆XLNm0nfgzs :2018/12/30(日) 23:36:11 BRNVt/Aw0
>>487

んー、そっかー、ざーんねん
……けど結構過激、ねー……確かに軽ーく"遊んだ"だけだったのになかなか噛み応えありそーだったしなー……
【本気出されたらどーなんだろ、楽しみ、と青年は笑って】
【大分ぼかされている感じはするが、どうやら件の『水の国の正義の味方』とやらとは何かしらの交戦があったようで】
【ともすればやはりこいつは善い商売をしている人間ではなさそうで。それでいてやはり戦闘狂なのだろう、とも思わせて】

へー、"いろんな意味で力"を、ねー……
"使えるもの"は何でも……ふーん……
【水鶏はその言葉を聞くとふと黙り込み、口元に何処か不気味な笑みを浮かべながら何かを考えていたようだが】

……氷もなかなか大変だねー?
【その不気味さは不意に消えて、相変わらずの笑顔でまるで何でもない世間話であるかのように返す】

水と櫻の間で、ねー……
本当に、この二国だけのお話になったら良いけどねー……
氷だけじゃなく他の国も……
【水じゃなくても得意先がなくなるのはちょーっと困るし、と水鶏は普通の会社員じみた苦笑を浮かべて】

……うんうん、それが賢明だよコニーちゃん
おりこーさん、おりこーさん
【相手の言葉に返すと大人ぶったように笑ってコニーの頭へと手を伸ばして】
【その過程で拒まれなかったのならばそのアイスブルーの頭をわしゃわしゃと犬でも撫でるかのように撫でて】
【もし拒まれたのならば逆に此方が怒られた犬みたいに一瞬しょぼーんという顔つきになるのだろう】

【そうして自分のテーブルを見やればいつしかテーブルの皿もカップも空っぽになっていて】
【それを確認すれば水鶏は、あれ気が付かなかった、なんて呟いて軍帽とインバネスコートを手にするのだろう】

……洋菓子も全部食べちゃったみたいだし、俺はそろそろ帰ろーかな
【コニーちゃんは?と尋ねながらコートを纏えば、その襟元に輝く飾り】
【目の四方に縦長の菱形をあしらったデザイン──恐らく彼の所属先の物だろうと思われて】

【その回答がどうであれ彼は「そっかー」と返してテーブルに置かれた旧い携帯電話を手にするのだろう】

……じゃあね、氷の国の三等書記官さん
次も『ハナムラ』と『コニーちゃん』として会えたら良いんだけど
【青年は相も変わらず飄々とした笑顔と共に席を立って去って行って】


【──余談、だがこの邂逅の翌日、水の国の戦艦に拘束されていた軍人四人がテロリスト達により解き放たれ件の戦艦が轟沈するというニュースが入ってくるのだが】
【その事はまだ誰も知らない】



/こんな感じでしょうか!絡みありがとうございました!


491 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/31(月) 10:48:49 PMzGIUuA0
>>490

(やっぱコイツただの貿易商じゃねーな。)
まぁよく噛む事はいい事らしいからね、脳に刺激がいって。

そーそー、良ければハナムラもなんか使えそうなものがあれば紹介してくだせーな


【相手の垣間見える本性に眼を細めながらも、適当な事を言ってその場を濁す。】
【ハナムラが氷の国に興味を示せば簡単に答えて「そーそー色々大変なのよ」と椅子の背もたれに身体を預ける】

【そして次に相手が放った言葉に跳ね返るようにして前かがみになる。】


もし氷にも厄介事が及ぶようなら………その前に水も櫻も消えてもらうよ。
嗚呼勿論、フィクサーぶって自国を好きに操作しようなんて考えてる連中をだけどね

おいおい気軽にレディーに触るなよ!今のご時世危険だぞ!


【一瞬、アイスブルーの冷たい瞳がどんよりとギラつくが頭を掴まれすぐに終わる】
【わしゃわしゃとされる事自体は拒まないが、どこか不満げに口を尖らせて不服そうである。】

【そして相手が帰り支度を始めればコニーは座ったままその様子を見ている。】


そりゃ改名でもしない限りは大丈夫でしょうよ。


【立ち去る相手をひらひらと手を振って見送り、姿が見え無くなれば大きなため息をついて自席に戻った。】


//お疲れ様でした!


492 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/12/31(月) 10:49:03 PMzGIUuA0
>>490

(やっぱコイツただの貿易商じゃねーな。)
まぁよく噛む事はいい事らしいからね、脳に刺激がいって。

そーそー、良ければハナムラもなんか使えそうなものがあれば紹介してくだせーな


【相手の垣間見える本性に眼を細めながらも、適当な事を言ってその場を濁す。】
【ハナムラが氷の国に興味を示せば簡単に答えて「そーそー色々大変なのよ」と椅子の背もたれに身体を預ける】

【そして次に相手が放った言葉に跳ね返るようにして前かがみになる。】


もし氷にも厄介事が及ぶようなら………その前に水も櫻も消えてもらうよ。
嗚呼勿論、フィクサーぶって自国を好きに操作しようなんて考えてる連中をだけどね

おいおい気軽にレディーに触るなよ!今のご時世危険だぞ!


【一瞬、アイスブルーの冷たい瞳がどんよりとギラつくが頭を掴まれすぐに終わる】
【わしゃわしゃとされる事自体は拒まないが、どこか不満げに口を尖らせて不服そうである。】

【そして相手が帰り支度を始めればコニーは座ったままその様子を見ている。】


そりゃ改名でもしない限りは大丈夫でしょうよ。


【立ち去る相手をひらひらと手を振って見送り、姿が見え無くなれば大きなため息をついて自席に戻った。】


//お疲れ様でした!


493 : 名無しさん :2018/12/31(月) 22:45:41 b/tJxvnc0
>>488

…………そんなこと、ないですよぉ。だって、私、カワイイですし。ほら、八課のアイドル〜みたいな、……、まあ、駄目ですかね。
かわい子ぶってる先輩居ますし、先輩にお花持たせてあげます。私は引き立て役でだいじょーぶですよ。うふふ。アリアさんの専属アイドルになっちゃおうかな――。

【少しだけ頬がむくれた。そんなことないって言いながら、実質そうであるのだからどうしようもない。カルト教団の幹部であったころから、仲良い人などいなさそうだった】
【とはいえそれより以前にさかのぼれば友達には困らない程度居たのだから、単に環境が変わっただけなのかもしれない。今だってお友達を作ることに引け目はないらしいから】
【とりあえず自分は可愛いから大丈夫だなんて自信たっぷりである。――ただ先輩に花を持たせてあげまーす、なんて、にっこり。"そういう"人もいるらしい、なんて、】
【(というか初対面で虐められたものだから根に持ってるだけなのだけど。続く言葉だってちょっと得意げに見せつけてやろ、なんて、色をしていて)】

ほんとにひどいです。私まだ十七歳なのに、愛人だなんて、有望過ぎないですか? ちょっとステップアップが早すぎるって言うか、
ホップステップ大気圏みたいな感じでちょっと困るんですよね……。…………すでにそうですよぉ。まあ、怪我とかしてたし、あんまり、何もしてないですけど……。
それだってアリアさん、いーっつもあの人とばっかで、まあ、私、まだ、いろいろ教えてもらってるところだし。この前聞いたなんとかかんとかのなんとか、思い出せないし……。

でーもー。…………アリアさんが"せんせー"してるやつ、全部勝手に行っちゃおうかな。ライブで彼氏面する男みたいな顔して。

【はーっと大仰なため息、十七歳にはちょっと早すぎるって訴えて。――とはいえ、彼女自身の人との関わり方もきっとあった、いーっつも、後ろ、ついて歩くから】
【だからって別に他の人とも喋っているつもりなんだけれど。それとも案外世の中の人間は秘書=愛人という政治家的な思考回路が根付いているのだろうか。なら致し方ない?】
【なくない。なかった。――やがて漏れ出るのは羨ましい溜息。思い浮かべているのは黒髪の"彼女"で、二人話しているときに割って入るには、小娘の顔をする以外には不可能だから】
【――それが悔しくて羨ましいだなんて相手に言ってしまっても意味はないから、今宵は口を噤むのだけど。最後にもう一度おっきな溜息するなら、立てた膝小僧に顎を預け】

まあ、今すぐじゃなくてもいいんですけど――そのうちゴハンくらいは、行きましょうね? 私もそろそろ帰っていいって、お医者様が。
最近のお医者様は顔があって凄いですね。めちゃくちゃしゃべるの上手だし。………………。

【今すぐ――となると、ここでやるしかないから。それだとさすがにつまらないから。そのうちどっかでご飯でも食べようって、オシャレで高いお店に行く必要はないけど】
【用意もお片付けも誰かがやってくれる食事というのはどうしたってやっぱり楽だから。――――続く言葉は何か遠くを見る目にて。…………。数秒後ふっと噴き出すよう笑うなら】
【冗談ですよーなんていうんだろうか。(なら彼女はきっと蛇教の医療係の話をしていた。アルジャーノン。顔の潰れた看護師。だっていつも世話になっていたんだから)】

あー。

【あー】

通りで――、……、まあ、いいですけど。

【いいらしかった。細める目は何かを理解していた。ふーんて吐息一つ揺らすなら、やはり終わったことであるらしい。なら】
【――ぱあと目をきらきらにして、「食べます」なんていうんだろうか。まったく気ままに生きているらしかった、――――そのくせ心の防寒機能、意外と弱くて仕方ないのだから】


494 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/12/31(月) 23:53:07 WWVNCmoM0
>>493

自分で可愛いって言うかね……。自画自賛もほどほどにしなよ。まぁ私はかえでの事を可愛いとは思うし
(黙ってれば)純情可憐な美少女だし、ね。引き立て役だなんて自分を卑下するんじゃないよ。
(色々価値観がぶっ飛んでたり世間とズレてる所があるけど、かえでほどの美少女ってそうそう居ないし)


【事実エーリカはかえでの事を可愛い美少女だって思ってる。ただし贔屓が多量に絡んでいるけど】
【そうして言葉の〆には、"アリアさんの専属アイドルってまたジャンル違いじゃんか"って苦笑混じりで】
【心の中でつぶやく言葉は決して口にはしていないけど、隠し事が下手な性分だからきっと察する事も出来る】


確かに表現が飛躍しすぎてるよねー、くくくっ。ごっめん、ちょっと笑いのツボに入っちゃったかも。
つーかホップステップ大気圏って何だよっ、ぶっ飛びすぎ。愛人って表現を有望って形で捉えるのもあれだしさぁ。

……なぁるほど。普段アリアさんはそのぶりっ子の先輩とやらと一緒にいるんだね。
でもそれは仕事での範疇だろ?だったら本妻は本妻の領分で存分にアピールすりゃいいじゃん。
私はその先輩とやらの事全くわっかんないけど、そいつがアリアさんを奪うって事はないんだろうし。

だったら悩ましげにため息つくんじゃないよ、幸せが逃げちゃうよ。
もしそのぶりっ子が略奪愛の一つでもカマすんなら私がそいつののど笛に噛みついてやるんだからっ。
だからあんまり出しゃばらない方が良いかな。余裕が無い人みたいだしみっともないよ。


【"もっと鷹揚に構えなよ。本妻の余裕ってやーつ?あの人だってかえでを一番に据えてるだろうしさ"】
【自然と漏れ出る苦笑と混じりっけのない無邪気な笑み。それだけでなく自分はかえでの味方だって告げるなら】
【もっともらしいアドバイスの一つでもくれてやるのだった。でも、まあ。かえでの気持ちも理解出来るっちゃ出来る】
【自分が踏み込めない場所が在って、それを眺めることしか出来ない時間。嫉妬の一つも抱かない方が無理がある】


【―――】


そだねー、近いうちにゴハン食べに行こっか。
かえでの退院祝い兼歓迎会。んでもって私の転職祝いって感じ?

―――――――……………???
(冗談にしては突っ込み難いんだけどぉ、……やっばい。反応に困る。
 口べたはともかく顔の無い医者なんて居ないだろ。サイレント●ルのバブルヘッド某じゃないんだからさぁ…)


【にこやかな表情に陰りが見える。そして首を傾げて怪訝な表情を浮かべて】
【想像もし難い言葉に曖昧な相づちを打ってやり過ごす。冗談ですよって言われた時の顔を見れば】
【何となく察しがつく。郷愁に駈られる様な遠い目は、きっと、つまり、そういう事なんだって理解するから】


んーと、今から切り分けたいんだけど紙皿とかってある?あとフォーク。

無かったら病院内の売店とかで購入しなきゃなんだけど。
まぁ切り分ける為の刃物は幾らでも調達出来るからそれは心配無用なんだけどねー。


【いそいそとごまかしの言葉でお茶を濁そうとするエーリカ。もし無いと言うのなら彼女は一度かえでの居る病室から出て】
【売店なりコンビニなりに足を運んで必要なものを調達することになる。となれば一時的にかえで一人を残す事になるから】
【やや後ろ髪を引かれる思いを抱くのだろう。でもかえでがどう思うかはかえで次第だから】


495 : 名無しさん :2019/01/01(火) 00:42:19 b/tJxvnc0
>>494

言いますよお。だって、私、可愛いじゃないですか。全人類からでも上から数えた方が早いと思うんですよね。今って……七十二億人でしたっけ? 
多分一億五千万位くらいの可愛さです、悪かったとして二億位は行かないですね。ばっちりです。ふふん。鏡を見れば超ラブリーですから。
卑下してませんよお、先輩のお顔を立ててあげてるのー。お酒一気強要の仕返しでーすー。

……うふふ。アイドルはやっぱり歌って踊れなくっちゃですよね。カラオケで練習しないと。最近の曲って、よく分かんなくって――。

【ばっちりにっこりパーフェクトな笑顔を浮かべていた。自分で自分は可愛いってよおく分かっている人間の顔。ランキング参加人数が多すぎるのもどうかと思うけれど】
【それにしても本当に自信たっぷりであるのだからよっぽどだった。――というよりも単純に悪意なく可愛がられて育てられたのだろう、自尊心だなんてそうしないと身に付かないから】
【そうして以外にも養われた自尊心をへし折られるような所業を蛇教の中でも受けなかったらしいのだ。そうして今となっては毎日好きな人に可愛いと言われて、何の不満があろうか】
【――アイドルのイメージは正しいとしても、どうしてアイドルを目指すことになったのかは気にしていなさそうだった。そんでもって多分三十秒後にはどうでもよくなって、いるから】

ホップとステップで大気圏突破しちゃったんでジャンプしようにも足場がなくなっちゃって無限に飛んでくんですよ。
…………だってー愛人って43歳くらいの熟っれ熟れの熟女がやるやつじゃないですか? こう、なんていうか……団地で……違いますね。

――――――――――まーあー、私の方が可愛いですから。別にそんな心配、してないですけど! ……あ、ミレーユさんには、内緒ですよ?

【しれっとよく分かんないことを言っていた。――蛇教時代はそういうものの言い方がたくさんのサーバントを困らせまくっていたのだけど、自覚あっても直しはしないから】
【愛人のイメージ図に対する誤りに気づくならすぐに撤回してしまうから狡かった。――それから相手の言葉には、にんまり笑って言うのだから、たぶん、あんまし、気にしてない】
【いえーいって感じでぐうって背中を伸ばすなら、曰く下着をしていない胸元がたゆ、と揺れるから。――――――、わずかに細めた目は、相手の困惑を見つめて】

アルジャーノン。会ったことなかったですか?

【――――、】

ないです! ……うーんと、さすがに手づかみはパワフルすぎますよね。ゴリラじゃないんだしって感じで……。私は手ベタベタにならないんで、いいですけど。
エーリカさんがベタベタゴリラになっちゃう……。私お留守番してますよ。そりゃもう自分の部屋みたいに寛いで待ってますし――。

【自信満々だった。――とは言え一応、ベッドサイドのテーブルの引き出しを開けて見たりして、確認はするのだけど。やっぱりないって結論の再確認だから】
【指先で唇に触れるなら、呟く言葉がひどかった。だから買い出しに行くのに置いて行かれたって平気だって、伝えるのだから】
【自分の部屋みたいにというか自分の部屋なんだけれど。――。慣れてくるといろいろ変なことを言うタイプらしい。これで何人ものサーバントを困らせてたわけなのだけど(二回目)】


496 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/01(火) 10:55:03 6.kk0qdE0
>>466>>467

「ふむ、共闘に関しては問題は無さそうだな」
「ええ、戦力の相互扶助に関しては、どうやらお互いが望む所である様ですね」

【現状、双方が自由律として動ける者が限られるならば、共闘はこの場合都合が良く】
【それでいて櫻国陸軍としては、任務も兼ねている、この上ない条件と言える】


「なるほど、此方には切り札足り得る能力者がいる、と?」


【海軍の行動を驕りである、と断言するアーディンに、杉原が目を向けて尋ねる】
【話を聞く限り、どうにもアーディン達の仲間の1人の様だが】

「だが、仮に黒幕の異能封じや魔導海軍の海上戦闘にすら対応出来る者が居たとして、奴等は軍だ、要は群れだ、単身では分が悪いのでは無いか?」

【反面、疑心顔で聞くのは、百合子の方であった】
【いかな海上海中を自在に動ける能力者であっても、対軍では厳しいのでは無いか、と】

「外務八課とは、虚神の戦いの中で知り合ったと、厳島中尉も同じ様子ですね」
「確かにい号文書の中にはそうあるな、外務八課、中尉も正式な協定の会談を行う直前に捕縛されたからな、詳しい記述は無いが、この国の特務機関の一つらしいな」
「メンバーの1人と連絡先は交換済みですが、必要とあらば、仲介致しますが?」

【アーディン達が必要とあらば、会談の申し入れを行う、と】
【この場においては、関係者達に繋がりを持って貰うのも重要な事であると考えて】

「もちろん、新たな情報が入れば即時知らせよう」
「判じて頂く必要が出て来ますからね、何分、これから先櫻は動乱を迎えるでしょう、黒幕も円卓も、或いはこの国も他国も巻き込んで」

【そう言うと、杉原はメモ帳の1ページに記載した自身と百合子の連絡先をスッと3人の目の前に置くだろう】
【情報の迅速なる共有は、恐らくこの場の全員が望む物なのだろうから】

「何事か事情がお有りの様ですが、今は堪えて下さい、必ずや、奴等を討ち亡ぼす機会は訪れますから、或いは……その為に我々は集っているのですから」
「レヴォル社に囚われの身か、代表のセリーナは、その上白神鈴音ってのも虚神に魅入られ、散々な状況だな、正直仲間に引き込めるなら此方に欲しい所だが……」

【ただ事では無いシャッテンの様子に、何か感じる所があったのか、杉原が宥める様に言って】
【一方でUTの件は報告されていたのだろう、事情は知っていて】
【百合子が答えた】

「人間ごっこ、ですか……解らない感情です、私も軍曹も生まれながらに、人間でしたから」
「この溝は人間でない者しか、理解が出来ないのかもな、安い同情や気休めの慈悲は何の意味も無いのかもな、種族感情になるわけだから」

【ラベンダァイスの話には、やはり悲痛な面持ちを見せる杉原と、意外にも冷静に答える百合子】
【但し、2人とも一度はみらいの方に視線を向けて】

「お、と、な?に、なる?」
「いき、る?わ、たし……お、いちゃ、おにい、ちゃ」
「わたし、の、み、ち……わた、し、み、つけ、る……」
「……うん、わか、った、わたし、みつけ、る!」



「杉原、家族っていいな」
「……さあ、そんな感覚は忘れましたが」

【3人の顔を其々見渡して、やがてみらいは、泣きながら笑って、そしてそう答えた】
【一方でそんな様子を見守りながら、2人は短くこう話して】


497 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/01(火) 10:56:10 6.kk0qdE0
>>466>>467

//>>496続きです

「頼みたい、無論、条件は飲もう」
「ええ、彼もまた紛う事なき重要人物ですからね」

【カニバディール……黒幕、虚神の戦いの中で重要な局面で幾度も接触した相手】
【この任務において、外す事の出来ない人物の1人】
【そう考えて、アーディンに仲介を頼み】

「カノッサ機関、円卓派のナンバーズで、魔導海軍とも交戦記録がありますね」
「あれは大した物だ、たった4人で混成部隊と互角にやり合った様だからな……しかし、そんなヤバイ奴だったとは……ありがとう、事前に聞けて良かった」

【無論、接触経験は無く情報も足りない相手だ】
【事前に話が聞けるのは有り難いことで、重要な心構えは貴重な情報であり鍵だ】

「リオシア二等海兵とは会った事があるのか?」
「サーペントカルトの戦いですか?或いは別の、何れにしても意外ですね」
「和泉教官は、あーあれだ……師匠なんだ私のな、いや歳は若いぞ、私よりちょっと上だ、強いし、超可愛いし何かスタイルいいし……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!師匠おおおおおおおおおお!!何処に!!何処にいいいいい!!!!」
「すみません、気にしないで下さい、軍曹はいつもこうですから、もし2人に会いましたら、連絡の程よろしくお願いします」

【ダメ元であったが、リオシアとの面識は意外な事だった】
【だが、やはり現状については知る訳も無く】

「取り敢えず、伝えるべきは伝えたか……何か聞きたい事はあるか?」

【意外にも早く冷静さを取り戻した百合子が、3人にそう聞いた】
【伝えるべき情報と協力関係の締結は成った、と】
【特に疑問が無ければ、2人は帰り支度を始めるだろう】
【無論、飲食代はきっちりと置いていくが】


498 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/01(火) 16:44:45 oFkCLf9I0
>>460

よし、それなら向こうとの連携も取れそうだな
多少はマシな状況になってきた

【連絡が可能だという事実にディミーアは満足げに頷く】

ひとまず外務八課の状況を聞いた方がいいか……?
お前たちはどうだ、俺に何かさせたいことはあるか?
外務八課に協力するってのと、関係者の捜索が選択肢にはあがってるが

【顔を上げ、具体的な方策について尋ねる】
【すべきことは二つあった。問題はどちらから、誰が着手するか】
【三人揃ってどちらかの行動を取るというのもあるし、分担するという方法もあるだろう】


499 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/01(火) 21:59:58 X5lLIsjc0
>>480

【幼げな挙措の一ツ一ツに、アリアは瞼を緩めて微笑む。遠い夕暮れの色を帯びつつ、片眼鏡の白無垢を隔てた碧眼は、夜明け前の空より深い感傷を知っていた】
【耳朶の冷たさすら心地よい絹地の指先から浸みれば、柔肌越しに熱を分かち合う時間は多幸的であった。 ─── 長い外套に包み込んで、手を繋ぐのであれば、そこは唯だ2人だけの聖域】
【伴侶の体裁を立ててやるのが女の役目であるならば、それは姫君であっても変わらぬのだろう。性急なほど広がって凍りゆく、橙色に煤けた黄昏の中へも、絡めた指先があるのだから】
【やはり母親の表情が相応しい装いの女であった。脚元に淀んだ大気を掻き分け、乙女らしいパンプスを共にして、淑やかに石畳を踏み締めるブーツの靴底】

【かえでが困ってしまうくらい。 ─── 静かな息を漏らしながら、アリアは笑って返事とした。どこか愉しげな含みのある温度をしていた】
【さらば見上げる横顔の真白い頬が優しげに緩んでやまない理由も、解することはなくとも察し得るだろうか。悴けるほど澄み渡った大気は、眩しげなイルミネーションさえ、幻想に暈していた】



   「そうね。 ……… 想い合う、寵姫と女帝。」「そんな所、かしら?」



【尋ねられるならば、結い上げた銀紗を儚く揺らして、潤む隻眼が見つめ返すのだろう。片手指を唇に添えて、悪戯めいた答えを囁く。 ─── そうして、】
【不意にアリアは吹き出して笑った。気取った台詞の可笑しさに、己れで堪えられていないのだから世話がなかった。頻りに肩を震わせながら、愛しく詰まった呼吸を軽やかに吐いて】
【この手の油断をふんだんに振り撒くような女ではなかった。 ─── それを独占する少女は、恋人として何よりも幸福であろう。蕩けたように笑う少女を、誰よりもアリアは慈しんでいた】

【やがて煌めきの小径の半ばほどまで至れば、やや大通りの脇に逸れて、辿り着くのは喫茶店であった。 ─── 深青のネオンとライトアップに彩られた、どこかエキゾチックな店構え】
【やや狭く仄暗い店内の照明は悉く青く、2人の表情も群青に染め上げて、限りなく静かだった。そうして何より、どこに視線を遣っても配されているのは、小さなアクリルに隔てられた水底】
【選ばれたのはアクアリウムのカフェテリアであったらしい。 ─── ウェイターに促されるがまま、適当な2人席に座るのだろう。木製の壁に埋め込まれた水槽にて、幼い海月が回遊していた】
【それなりに辺りを見回せば、爬虫類の類が納められた水槽も見つかるかもしれない。何れにせよメニューは開かれるのだろう。ごく神妙な面持ちで、ドリンクのページを覗き込む、碧眼。】


500 : 名無しさん :2019/01/01(火) 22:38:58 b/tJxvnc0
>>499

【見上げる頬が緩んで止まぬなら、少女の顔もまたどうしようもなく柔らかであるのだろう。どんな風にだって困ってしまいたかった、だって今日に限って、】
【心配事も恐ろしい事も起こりっこないのだから。だから起こりうる困りごとの全部は貴女に関連する事柄であればよかったし、あるべきだった】
【だから世界一繊細な宝石を手に入れたお姫様みたいに笑って繋いだ掌に柔い力を籠めるのだろう。素肌で触れたらどれだけ嬉しいかを知っているけど、少しだけ我慢】

アリアさんがー、……女帝? ――駄目ですよ、今日はアリアさんがお姫様なの、だから、うーんと我儘して、よくって……。
だからね、母娘ですかって言われたら、目の前でキスしてやりましょうね。――――ふふふふっ。

【見つめ返されるならぱちり瞬いて。次いでわずかに頬っぺたを膨らませる、青く染めた眼をいくらか拗ねたように細める演技はごく一瞬のことで、】
【次の刹那にはひどく悪戯っぽい笑みにすり替えられていた。驚かしてしまいましょうねなんて呟いた、声が。――相手が噴出し笑うのなら、少し遅れて、釣られたみたいに】

――――ねえねえ、アリアさん、後でね、イルミネーション。見に行きましょうね、駅前の広場が綺麗になっているらしいですから。
やっぱりちょっとは王道なこともしたらいいですよ、だからね、イルミネーション。見に行きたくて。それで、それで――、わあ、真っ青ですね。
なんかいましたよね、青いものを家の周りにばらまく鳥。その鳥のメスが喜びそうですね、青いから――ふふっ。

【そうして二人いくらか話しながら歩くのだろうか。しきりに提案するイルミネーション、どうやらそれが、最後に見に行きたいって言っていたものらしい】
【曰くなんか何とかっていうフラワーアーティストが作った花のアートがライトアップされたりしているらしい。――見たいというという割には少しフワフワした知識だったが、】
【二人で何かそういうところに行ってみたいのかもしれなかった。――店につくのなら、やはり青さが目に付いて、店内に入れば、きょろきょろとめぐる視線が忙しい】
【――着いた席の傍らに海月入りの水槽を見つけるのなら、しばらく見ているのだろう。色気より食い気よりちいちゃな海月っ気が大事であるらしいのならば、】

【どれだけ神妙な顔してメニューを見ようとも、少女はしばらく黙っているんだろう。なら彼女の分だって勝手に決めてしまってよかった。アレルギーのたぐいはなかったし】
【嫌いと言って憚らない生肉も刺身こんにゃくも生のイカも生の貝類もドリンクに入りようがないのだから。――そんなこと言っている間にも、きゃあと嬉し気に綻ぶ声が】

ねえねえねえねえ、アリアさん、爬虫類! 変温動物っぽい奴! 

【――――それでもめいっぱいに潜めた声はいつもよりいくつもトーンを上げて、口元を手でメガホンみたいに覆って囁くから、その向こう側の笑顔も、また、見せつけていて】


501 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/01(火) 22:52:25 X5lLIsjc0
>>481

【祝祭日に託けて贈り物を奉じ合う関係でない事は確かであった。そのような距離感をきっと彼女らはとうに通り過ぎていた】
【感傷など呼ぶには乾き過ぎた間柄であることを自嘲していたのだろうか。何れにせよ女は語らなかった。哀しそうな瞬きを幾度か重ねながら、噤んだ口許を淡く緩めていた】
【そういう態度で不満げな少女の口ぶりを聞いていた。決して忿怒する事はなかった。救われたと述べるには大仰であっても、何かしら心の澱が蕩けていく感覚を、胸裏に吟味していた】


「 ───……… まったく、」「耳が痛いわ。昔の私に言って聞かせてやりたいかしら。」
「そういう情けない男だって、 ……… 解っていて、」「それでも彼を相違なく、 ─── 愛していた、筈なのにね。」


【そうして飛び切りの嘆息を吐き出せば、それは涙の補綴であった。幽かに上ずった声は涙の一雫だけ湿っていた。それでも溢れる熱はなかった】
【 ─── 目尻を下げて微笑む隻眼が、もう一度だけ少女に向けられるのだろう。やはり結局のところは羨むような潤いを宿していた。それでも全ては追憶でしかないのだから】


「 ……… ふ、ッ」「そう。 ………─── 優しいのね。夕月さん。けれど、 ─── でも。」
「もう、いいの。」「 ……… あの時は、どうしようもなく馬鹿だったって」「私も彼も、よく解ってるわ。よおく、ね。」


【腑に落ちたような表情を浮かべながら、またも女は静かに笑った。体面だけを取り繕っている訳ではないようだった。】
【決着のついた命題を今更に蒸し返しても詮無き事であるのだろう。ただ吐き出す捌け口だけを、きっと女は求めながら、今日まで生きてきた】
【「動かない時間は、もう要らないから。」 ─── ならば、かつて愛し合った2人が進むのは、また別の時間であるのだろう。同じ時を刻む秒針は止まってしまったから】
【少なくとも今この部屋で日々を重ねる彼は、情けない男ではなかったのだから。「そろそろつく」浮かぶ通知の緑色だけが、無知であって】


502 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/02(水) 13:41:41 WWVNCmoM0
>>495

【背中を伸ばした時に目の当たりにした揺れる胸元。そこらへんに無頓着なのはかえでらしいやと思う】
【自分の事を可愛いって信じて疑わない姿も年相応のあどけない仕草も、無軌道な言動もすべてすべて】

おーけぃ、おーけぃ。内緒にしといてやる。私とかえでの二人の秘密。
可愛いかえでがそう頼むならそうするだけ。

【だからか言葉は少なめになってしまってて。かえでの言動に振り回されて着地点を見失ってしまっていたなら】
【続く言葉には言葉ではなく、首を振ることで応えるのだった。―――そんなやつ知らない、って】

――――………ッ!?!?!?(べたべたゴリラだとう?)
(つーか自信満々にないです!なんてよく言ってくれるな。にしてもべたべたゴリラ、ゴリラ?)

【脈絡のない言葉にエーリカの目は見開かれて、口元がぴくぴくと痙攣したみたいに動くなら】
【自分がゴリラみたいな生き物であると見做されている事に驚愕を隠せない、ありていに言えばショックである】
【クソガキだとか乳臭い小娘だとかの誹りは受けてきたが、ゴリラ呼ばわりされた事はなかった】

【21年生きてきてゴリラ呼ばわりされたのは初めてで。更に少女はゴリラじゃないんですとお澄まし顔で言うのなら】
【言葉を失うのだった。ただエーリカの胸裏に大人げない衝動は確かに芽生えて。今はその素振りは見せないけれど】


――――……あ、ああ。解った。今から諸々買いに行くから大人しくお留守番してるんだよ。
間違ってもメロンに齧り付いたりするんじゃないよ。そしたらかえでの頭齧ってやるからな…っ!


【徐に立ち上がり病室から出る。その際に残した言葉は決して本意ではないけれど】
【もしかして程度に浮かび上がった疑念、つい先ほどの遣り取りがそうさせたなら】
【言葉に少しばかりの力を込めるのだった。よっぽど糸を引いているのだろうか】


【病院から近くのコンビニに向かう道中。かえでは手持無沙汰であるだろう】
【ところでエーリカも偽りの身分だったとは言え表向きサーペントカルトの一員であったなら】
【蛇念を使って暇をつぶす事が出来るだろうか。仮にそれが使えるのならエーリカはかえでの蛇念を拒絶出来ないのだから】

【その事実をエーリカは知らない。そんな事知る由も無くコンビニでフォークとか紙皿とか色々なモノを購入しようとしている】


503 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/02(水) 13:49:01 6.kk0qdE0
>>498

「よし!連絡は此方から入れておくぞ、救出作戦の後にでも面会しに行こう!」
「無論、作戦が成功する事が前提ですがね」

【早速ではあるが、杉原が外務八課の連絡先を交換した人物にメッセージを送信している様だ】
【接触の足掛かりは出来ただろう】

「そうだな〜、先ずは先程出た通り、海軍関係2名の身柄捜索だな、和泉文月戦技教官、リオシア二等海兵、この2人だ」
「特に、和泉文月……師匠は私の剣の師だ、頼みたい……ああああああああああああああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!師匠おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「あ、すみませんいつもの病気です、気にしないで下さい」

【よほど和泉文月に思い入れがあるのか、頭を抱えて振りながら叫び出す百合子】
【先ずは、手を借りる部分は関係者の捜索と保護】

「続いてですが、チームM以外での中尉への協力者達、記載のある人物達で未だ行方や所在がよく解らない方々が居ます」
「夕月なる方と銀ヶ峰つがるなる2人です」
「ディミーアさんには、この2名の接触と必要があれば、身柄の保護をお願い申し上げます」


【タブレットを見ながら、こうディミーアへと告げる杉原】
【淡々とした口調とは裏腹に、目は常に光を絶やさずに、睨みを絶やさずに】


504 : 名無しさん :2019/01/02(水) 14:11:11 wfgrPpr60
>>502

【絡めた指先ごと身体をめいっぱい伸ばすのなら、少しだけ詰まったような吐息が心地よさそうに漏れて。ぱっと指先解放するなら、吐息もまた、小さくはじけ】
【動かないから、凝るんですよね――なんてちょっとだけ愚痴ぽく漏らすのだ。頑張ればちょっと歩けるんですけど、なんて言いながら、まだ元気ではないから、】
【外には出ない方がいいと言われて大人しく引きこもっているんだった。それでもまだ傷つけられた恐怖が癒えたわけではないのなら、利害の一致という部分が大きくって】
【――けっきょく二人他愛ない話題に興じているのは、少女はまだあまり話したくないのかもしれなかった。こんな場所に過ごす原因になった女性のこと、だから――、】

アリアさん、取り分けるみたいなもの、あんまり、買ってこなくって……。あったとしても、あーんしてくれるので。ないんですよね、紙皿……。
やっぱりあった方が便利ですよね。ビーズ細工やりたくなったときとかのためにも。ライオンさんとかも描けますし? ――今度買ってきてもらおうかなぁ。
でもその前に退院しちゃいそうなんですよね。うふ。若いので骨くっつくのも早いんです。若いですからねっ、十七歳なのでー。

【ベッドサイドの引き出し以外に何か入ってる場所はないらしかった。なら私物はごくミニマム仕様、数冊の本くらいしかないんだから、物欲が薄いのか】
【ちゃっかり惚気ているのかもしれなかった。取り分ける必要があっても手ずから食べさせてもらってしまうから必要なかったって。だからって箸もないのはどうかと思う】
【――十七歳だから治るのも早いらしい。嘘である。十七歳で治りが早いのは本当だけれど、間接ごとにへし折られた傷が治るのには早すぎるから、最高級の治療を受けておいて】
【さも自分の功績ですみたいな顔してるんだから魔術師にグーで殴られるべきだった。――にこにこ笑顔が無邪気であるのが狡かった、十七歳らしい表情は持ち合わせるんだから】

手で食べるのは、別に、まー、いいんですけどね。

【手で食べる=ゴリラ】
【手で食べたうえに手がベタベタになる=ベタベタゴリラ】
【自分は能力で手をベタベタにしないから能力者ゴリラ。――そんな思考回路、辿らなくていいし辿る必要もないけど、わりに彼女はそんな子だから】

してますよお。…………え? 何でですか? 食べないですよ、皮とか、何ていうか、舌触り最悪そうですし……。肉割れすると褒められるってメロン最高ですよね。
……?? なんで私が齧られるんですか? しないですよお、丸かじりは、ちょっと……。私、口大きい方じゃ、ないんで。

【いい子にしてますってにこり笑うならピースマークを見せるのだろう。信用できない。――けど、まあ、ミッションとしてはじいっと待っているだけだから、出来るのだけど】
【――ただなんか自分はいろいろ言うくせに「えぇ……?」って顔をするのだ。非道い話。マジレスすぎるマジレスが返ってきた辺りで、部屋を出るなら】

【「あー、忘れてました、欲しいやつあって。ミルクティーなんですけど。ミルクティーが欲しいです。飲む時間限定されない方のやつ」】
【「あとー、お菓子食べたいです! 洋菓子がいいですね。一袋にいろいろ入ってるアソートのクッキーとかでいいですよ」】
【「いい子で待ってるからお願いします♥」】

【――――こいつメールみたいなノリで未来式魔術を使いやがる】


505 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/02(水) 14:59:05 WWVNCmoM0
>>503

【振り向きざまに見やるかえでの笑顔。添えられるピースサイン】
【これだけ見れば天使のような可憐な美少女と言っても過言ではなくて】
【だからエーリカも幾らか溜飲を下げて、目元も口元も自然と緩んで笑みを零すんだった】


(ふぅ、あんな顔されたらさ、何にも言えないんじゃか。やだ可愛いって思っちゃうもん)


【そそくさと部屋を出たのはきっと紅に染まる頬を見られたくないから】
【それでいてお高いメロンを分け合って一緒に食べ合いっこしたいなって思ったから】
【足早にコンビニへと歩みを進める―――そんな道中に不意打ちの様に襲い掛かるものがあった】


……わわっ!!かっ、かえでっ!!メール感覚で"こんなもん"使うんじゃないよっ!
って、うひゃあっ!。………気のせいです。ゴメンナサイデス。電波ってコワイデスヨネ。


【病院内。患者も医師も看護師も行き交う場所で不意に放たれる蛇念、今に至るまでその存在を忘れていた】
【脳内で鮮明に再現されるかえでの無邪気と要求。良い子で待ってるからって可愛く言った処で不意打ちに対して】
【口を尖らせずには居られなかったから。けれど場所が場所だから、無表情で意味を成さない予防線を棒読みで紡ぐなら】
【脱兎の如く病院内を駆け抜けて、近場のコンビニに逃げ込んで。必要とされてるもの一式全部を購入するんだった】


(―――、……いつか、なかせてやる。)


【果たしてどの意味で「なかせる」のか。その日は当面来ることがなさそうだけど】
【使い捨てのフォークとか紙皿、ミルクティに詰め合わせのクッキー、それに口直し用の水とかお手拭きタオルとかを買って】
【歩くような速さでコンビニから病院、かえでの病室へと戻ったなら、開口一番"あんな不意打ちするんなら前もって言ってくれよ"と毒づくんだった】

【その後エーリカはもともと座っていた椅子に腰かけて、かえでのほしいもの一式と使い捨てのフォークとか紙皿を布団の上に置くなら】
【徐に"ヘルエッジロード"って呟いて、変哲のないナイフを召喚してメロンの切り分けを行おうとする】
【その際にかえでに問う、「パフォーマーみたいに派手に切り分けるのと、フツーに切り分けるの、どっちが良い」と】


506 : 名無しさん :2019/01/02(水) 15:16:19 wfgrPpr60
>>505

【あくまで"それ"は少女にとって、言い忘れたお願いを伝える手段に過ぎなかったのだろう。それこそメール。SNS。そんな感覚、だから、】
【それ以上には送られてこないんだった。ならメールでも十分に良かったはずだった。――だからきっと揶揄いのつもりなんだった。相手が"どう"なってるか、分からないなら】
【きっと少女はご機嫌でふふーんなんて鼻歌を歌ってベッドに足をぱたんぱたんしているんだろうと思わせて――やがてアンダンテの速度にて、相手が戻るのならば】

――あ、おかえりなさーい。ほらほら、いい子で待ってましたよお。……だって、なんていうか、こう、サプライズ! ですよ? 大事じゃないですか?
まあ、――――あんまり、使わないので。もう、だからちょっとくらいは大丈夫かなあって。

【ベッドにうつ伏せて、やはり足でベッドをぱたんぱたんしていた。その手元にはさっき読んでいた本――また畳むなら、寝転がった格好、無防備な身体のラインを見せつけて】
【背中の流線形からきゅうっとへこむ腰元。至上のベッドより柔らかで甘いと理解させるお尻のラインに、細すぎない太もものライン。――腰元から薄手の毛布をかぶっているけれど】
【それがかえって何かを隠していたから。そうしてまた足元をぱたんぱたんとするたびに捲れ上がって、戻って、捲れ上がって、――どんどんお尻のあたりに布地が溜まっていって】
【最終的に太ももの白いのを半分くらい曝け出したところで、――よいしょって起き上がるのだ。とろんと甘く蜜の滴るみたいに揺れる胸の仕草、やっぱり、素の色合いなら】

【――――(ちょっとくらいなら大丈夫かなあ、なんてものの言い方は、何か使ったらいけない理由があるみたいだった。あるいは使いたくない理由があるみたい、でも、あり)】

エーリカさん、フルーツカービング出来るんですか? わあ、じゃあ、バラがいいです。バラ! 

【パフォーマーみたいな、というのを、どうにも彼女はそう捉えたらしかった。違うなら違うって言えば、納得するのだろうけど】
【そうでなかったとしてもどうせなら派手な方がいいって言うんだろう。――――だって病室暮らし、案外暇で仕方がないんだから】


507 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/02(水) 15:34:50 AlSEJK/U0
>>501

【通知が来たらスマホを拾い上げてついとなぞり、返信だけはマメにする】
【了解、とかそういう意味のスタンプ。ぺちっと押したらそれっきり】
【終わったらまたスリープに落として、ちょっと悩んだ末にポケットに直してから】

……そお。じゃあ、もうすぐ帰って来るみたいだから、
…………あたし外出とこうか? ここにいても、特にやることないだろうし……

【女が来るまで、自身が包まっていた毛布を手繰り寄せる。羽織るように肩に回し】
【それで温まってもいない部屋の外で待っていようか、とでも言うけれど】
【どちらかと言うとあんまりここに居たくないから自主的にそう言っているようだった】
【少なくとも、自分の恋人が昔の恋人と、仲睦まじい話とは言わなくても――何かしら】
【そういう話をしているのを見たいと思うような根性はなかった。だから廊下に出ようとして】

【――――べつに、羨んでいるのはこっちだって同じことだった、し】
【だってこういうの、初めてやるから、昔の恋人とかどうとかそういうのよくわからないし】
【そもそも恋心というもの自体、よく知らなかった。あこがれに似た淡い感情を抱いたことがあっても】
【それ以上のことは何も知らない。相手に踏み込んでいくやり方を、よく知らないんだから】
【今だって何が起こっているのか、正直よく理解できてないし――。毛布の裾を尾っぽみたいに棚引かせて】

【廊下へ届くドアへのノブに手をかけて、特に止められないなら外に出る】
【冷たい空気に身を晒すのに、一瞬だけ身を震わせて――毛布を固く握るから】
【そのまま彼の帰りを待つのだろう。玄関前に座り込むなら、よく懐いた犬か猫に似て】

……さむいな。

【室内といえど暖房がついていないなら、ふいに息が漏れてしまう。毛布を握る手に力を込める】


508 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/02(水) 15:35:14 oFkCLf9I0
>>503

救出作戦については手を貸してもいい。そのあたりは向こう次第だがな

【頭を抱えて叫び出す百合子には、ディミーアは変なやつを見る目を向けていた。多分、間違ってはいないだろう】
【錯乱ぶりにはあまり触れずにおいた】

夕月……か
そのつがるってのは知らないが、夕月という名前には覚えがある
接触も可能かもしれないから、やってみよう

【告げられた名前の片方に剣士が少しばかり驚いたような表情を浮かべる】
【過去に一度だけだったが、会ったことのある少女の名だった。今どうなっているかは全く知る由もなかったが】


509 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/02(水) 16:05:26 WWVNCmoM0
>>503

【病室に戻った彼女の目に留まる少女の無防備な姿。それは煽情的に思えてしまうのなら】
【疚しい感情がもくもくと煙の様にのぼるのだった。足元をぱたぱたさせる度に捲れる太もも】
【それが半分近く素肌を晒すのなら蠱惑的に映る。しかも無邪気な装いで為される揺蕩う胸もそれを助長して】


――――、……わわわぁっ、目のやりどころに困るよっ。幾ら私達しか居ないって言ってもさぁ。
さっきの蛇念よりそっちの方がよっぽどサプライズだってっ!どっちにせよいい子じゃないってぇの。
SNS感覚で蛇念使うかえでも、無邪気に煽情的なかえでも。どっちも悪い子だよっ。


【頬を紅潮させて、さっと顔を背ける彼女の視線はそれでいて晒された素肌へと向けられて】
【つまるところ"むっつりな一面があります"って言外に告げてるのと同じだった】
【言葉尻はやや強めにしてる筈なのに、言葉を紡ぐ声は緩んでいたから結局蛇念の事も許してしまうのだった】
【一度好きになった人の事なら余程の事がない限り許してもらえそうだって思うなら、その通り】


【――――】こほんっ。


んー、フルーツカービングって何ぞ?聞いたことないワード何だけど。
ちょっと調べてみても良いかな?――――ふんふむ。なるほどなるほど彫刻芸術の一種ねぇ。

……見る限り簡単そうだけど、折角の高級メロンだしぃ?今回はふつーに切り分けちゃうね。
なーのーでー、フルーツカービングはまた今度。お披露目する時を楽しみにするよーにっ!


【そう言うや否や、メロンを桐の箱から出してかえでから距離を取る。取り出したメロンを紙皿の上に置いて】
【膝立ちみたいな姿勢を取って、まずはナイフで横薙ぎ一閃。鋭い銀光はメロンを確かに切り裂いて、それでいて鋭い一閃だったから】
【切断面はぴたりと合わさって。そうして上と下を手で取って離したなら、かえでに使い捨てのフォークを彼女に向けて投げるよう要求する】
【投げ出されたフォークをうまいことキャッチするなら、器用にメロンのわたを取って、均等に切り分けるのだった】


510 : 名無しさん :2019/01/02(水) 16:27:59 wfgrPpr60
>>509

――――――――、あれぇ。エーリカさんどしたの、"どきどき"しちゃいました? もう、駄目ですよお。
エーリカさんたらえっちな子ですね。いけない子ですー。私はアリアさん一筋って決めてるのに……そんな……。そんなの駄目です――。

【にやり。さっと背けられた頬っぺたの赤さと、横目で戻ってくる視線を見つけるなら。少女はひどく悪戯っぽく笑うんだろう、あれえ、なんて、わざとらしい声一つ】
【どきどきしちゃったの、なんて言って、自然なシルエットと柔らかさの胸元を腕できゅうっと寄せるのだ。ならば胸元に寄るライン、豊かな胸の狭間に布地が落ちこむのなら】
【たっぷりと柔らかさを見せつける、その間に指でも挟めば、夢見心地を保証されているのと等しかった。ならば神様だって羨む胸元、ぎゅう、と、寄せたまま】
【頬っぺたに手を当てて、わざとらしく"しな"を作った声でささめくのだ。ほんの少し唇を噛んで、目線を下げて――、だからやっぱりひどい揶揄い方をしていた、だって、】

――さ、メロン食べましょう。

【――次の刹那にはにこにこってして色気より食い気に走って行くのだから】


【――】

あれですよ。スイカとかなんか甚振るやつ。石鹸とかでもやるらしいですけど、――多分スイカが一番有名ですね、綺麗だから?
子供のころになんかのイベントで見たことがあるんですよ。本当にすごいんですからっ、多分あれ結構奥が深いタイプですよ、猫ひっかき病待ったなしって感じですね。
…………えー。まあ、そうですね。さすがのエーリカさんも、ぶっつけ本番じゃあ、かわいそうですし――。しょーがないですねー。

【フルーツカービング=スイカを甚振る奴。その認識は多分あんまり正しくなかった。よほど間違っちゃないけど、――だれもスイカを虐めるつもりではやってない、はず】
【――ちょっと不満っぽかった。それでも「まあ仕方ないですね」なんて顔をするなら、如何にも、なにか自分の優位を騙るようなもの、大人しく見守るなら】
【――――きらきらした目。わーすごーいなんて文字にすると簡単だけれど、本当に楽し気にぱちぱち拍手なんてするのだろうか、きちんと綺麗に切られたのを、きらきらした目で】
【そりゃもうきらきらした目をしていた。きらきらしていた。目が。きらきらして、――――、そんなにメロン好きなのかなって思われてしまっても仕方ない、くらい】


511 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2019/01/02(水) 19:48:53 ZCHlt7mo0
>>496-497

――――おいおい、誰も『一騎当千』を要求している訳ではない。要は、「奴らの継戦能力に痛手を与える程度の被害」を、喰らわせてやればいいんだ……
仮に1隻でも、1人の人間によって沈められるような事があれば、彼奴等はそれだけで大きな痛手を被る事になるんだぞ?
奴らが、水の国に駐留させられる艦隊の規模……そうだな、仮に巡洋艦、戦艦、空母、潜水艦、そして補給艦の類を合わせて30隻程度と考えようか……
……実際には「全軍を以って当たる」と言っても、動けるのは精々8割ぐらいだろう? 戦闘の損害を考慮して、どんな時でも予備を残すのは、軍隊の常識……
そして、その予備で以って戦線を立て直すにしても、そう簡単に動けるものではない――――つまりは、先の1人はそれくらいを目途に、頑張ってもらえばいい……
――――つまり、おおよそ、巡洋艦を4隻、戦艦・空母・潜水艦の中から2隻、これくらいで良い……計6隻、これなら、立ち回り次第で現実的じゃないか?

【憶測こそ混じるが、アーディンは具体的に数値目標すら見据えて、この案を提示していた様だ】
【他国に、あくまでゲリラ的に蔓延る敵(つまり自分たち)の為に展開する艦隊だ。そう大規模なものとは考え難い】
【なら、全体数の一定割合に損害を与えてやるだけで、当座の戦いは、相当に有利に進める事が出来る――――アーディンは、そう踏んでいた】

後は、実際に乗り込んで破壊するなり、攪乱するなりして、1隻1隻を使用不能にしまえばいい……そういう時には、俺とヴァルターの出番だ……
――――俺たちの戦いに『異能』はさほど関係ないのでな。事前に装備さえ整えれば……まぁ、勝手こそ違うが、勝算がない訳じゃないさ
――――その事は、みらいとの一件を見ていたという、君たちなら分かるんじゃないか?
「……アーディンの旦那は流石に背伸びだと思うが、まぁ、俺はね……乗りつければ、特に問題はない……壊すのは、得意だ」

【勿論、その『1人』に、全てを託すような戦い方をする心算はない。そこから先には「異能を封じられてもさほど問題のない戦力」を投入し、突入戦を敢行する】
【――――砂浜の戦い。アーディンは身一つのスピードとアジリティで、そしてヴァルターは、姿こそ見せなかったものの】
【代わりに、奇妙なメカニックのパワードスーツで、戦っていた男がいる事を覚えているだろうか】
【もう一人の、2m越えの大男は、流石にサイズが合うまい――――つまり、単純な消去法で行けば、あのパワードスーツの男こそ、ヴァルターなのだろう】
【対人装備さえ整えれば、というアーディンの言葉も、そして「勝手こそ違うが」という一言も、突入戦である事を意識しているのだろう】

……仮に、ここまで首尾よくいけば、奴らは全体の4分の1以上の戦力を喪失する……何せ艦艇だ、既に100億の損害は下るまい……
……そして、他にも戦力にアテはあるんだろう? なら、別方向からの攻撃が、もう少し奴らにダメージを負わせる事になる……
ここまで行けば、流石に誰でも慎重にならざるを得ない……奴ら全員が、命を捧げるように戦える面々ならともかく、な。それは、絹張の事を隠蔽工作した時点で無い……
そうすれば、奴らは戦力を立て直し、同時に『裏』の手を使って動いてくるはずだ――――そこを突くのが、情報部たる、君たちの役目だよ

【一定の損害を与えれば、どうしても普段とは違う動きをしなければならない。単純な消耗戦なら、勿論小規模である自分たちが不利だが】
【軍隊の動きは、個人に比べてどうしても大仰になる、というリスクを負う。同時に――――あの演説の蘆屋の言動から考えて、ここで大人しくするはずがない】
【つまりは、その「敵の立て直し期間」こそが、身内であり情報部である、土御門派の、最大のチャンスだろうとアーディンは示唆する】

――――戦力を自由に行使する権限さえ、奪還してしまえば、如何に艦隊を展開しようと『張子の虎』だ……
そうして、櫻の国を、『黒幕』の外からのパイプと切断し、内に蔓延る獅子身中の虫――――ヨシビ商会と将軍奥方の外戚一派を、討滅する……これで、完了だ
その最後の詰めは――――櫻の国の人間たる、君たちに任せる事になるだろうな

【アーディンの語るマスタープランは、ここに結ばれる。策士を策に溺れさせてしまえば、後は正面切って戦うだけなのだ、と】
【――――『黒幕』派の最大の弱点は、世論を嵩に着て陰謀を進める分、その名分を失えば、ただの賊党一派に成り下がるという事だ】
【そうすれば、外の『黒幕』派からも、切り捨てられることになるだろう。全体ではなく一部なら、そうして戦っていく事が出来る】
【敵を知り、己を知れば、百戦危うからず――――後は、各々がベストを尽くせば、問題ない、と】

/続きます


512 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2019/01/02(水) 19:49:13 ZCHlt7mo0
>>496-497

……いや、連絡先と言う事なら、俺も既に交換してはいる……素性までは、知らなかったがな……

【一応、アリアの連絡先は知っている。かつての邂逅の際に手渡されたものだが、勿論問題なく機能するパイプだろう】

……よし、お前たち、しっかりと確認しておけよ……
「勿論だってんだ……」{了解……}

【そして、彼らとの連絡手段も確保する。これでまた、ネットワークが1つ、繋がりを得た事になるだろう】

{――――勿論さ。僕だって、そこまで馬鹿じゃない……そこまで、馬鹿じゃない……}
……やはり、レヴォル社か……いい加減、あそこも攻め落とさなければ……――――

【自分に言い聞かせるような、シャッテンの反芻。実際、そうして気持ちを静めているのだろう。確かめるように、小さく頷いて】
【そして、セリーナの問題は、アーディンとしても頭の痛いものの様だった。機さえあれば、手勢の総力を以って踏み込む――――そこまでをすら、考えているのだが】

――――アレが、従属型の生体兵器である事が、大きかったんだろう……みらいは、まだ独立した一個の存在だ……アレの繰り返しになる事は、無いと願いたいが……

【人間でない者の心は、人間には分からない。まさにそれだろう――――アーディンもまた、憂う様にみらいの事を見つめる】
【せめて、彼女には――――そんな悲惨な命の在り方を、己に当てはめて欲しくはない】

【――――そして、拙くもハッキリと宣言された、みらいの意志。3人の男たちに、温かい笑みが浮かんだのは、気のせいではないだろう――――】

――――自分の事を、あくまで『小悪党』だと言い張っていたが……只者ではないというのは事実だな
今となっては、機関の中でも古参の部類、しかも相当の部下を、機関とは別個に、独自に連れていると聞く……
一時的とはいえ、これと手を組めるのなら、奴らとの戦いも大分楽になるだろう……茨の道である事は、変わらないとしてもな……
……まぁ、襟を正して、喧嘩腰にならない事、これだけ考えれば良いだろう……利害が分からない奴じゃない

【カニバディールの事について、自らの印象も混じるが、アーディンはそれなりの補足を口にする】
【現状、1つのキャスティングボードとしてキーパーソンである事は、間違いないだろう】

……いや、リオシアの事は、全くの偶然だ……荒事が絡んだ訳でも無い。どこかの組織に属してはいるだろうと思っていたが、櫻の海軍だったとはな……意外だよ

【たまたま、道端で声をかけただけ――――それを説明するのも面倒と、アーディンは大幅に端折る】
【まぁ、認識として重要なのはそこではないので、それでも問題は無いのだろう】

――――シャッテン
{そうだねぇ……情報交換中に発狂するのは、ご遠慮願いたいところだよね――――ッ!}

【和泉教官については――――ある意味、それどころではない風野の狂乱に、呆れた様子でアーディンはシャッテンにアイコンタクトを飛ばす】
【委細承知――――シャッテンは先ほどの『影の腕』を、今度は10本全部、風野へと伸ばさせた。少し黙ってもらおうと、茶目っ気を含めた脅しなのだろう】

――――あぁ、それでは1つだけ……――――君たちの手合いは、定期的に我々の下に『客』として顔を出すと、そういう認識で良いのか?

【最後の問いとして、アーディンは確認をする。コンタクトは、どの程度の頻度になるだろうか、或いは完全に単発的になるのか、と――――】


513 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/02(水) 21:38:31 WWVNCmoM0
>>510

どっ、どきどきしてないしっ!えっちな子でもないしぃ!
胸を寄せて誘ってるような奴の口にする言葉じゃないだろうにっ!

いけない子でエッチな子なのはかえでの方だし。
わっ、私がヤラシイ女ってわけじゃないんだからな!……自分の事よーく解っててやってるだろ?

【説得力のない言葉、仕草。二人に欠落する説得力はどこ吹く風か】
【言葉で否定をしながらも視線はかえでが強調する胸元に注がれて】

【言葉通りに否定をしようとして視線を上に向ければ、嫋やかでいて色気のある仕草に行き着いて】
【結局胸元をちらちら見る始末。この体たらくでどうしてえっちな子ではないと言い張れるのか】
【初めて面と向かって言葉を交わした日の柔らかさを思い出してしまったのが全てだったから】


【―――、食い気に走る少女の言葉は発情にも似た駄犬の頭を冷やすには十分だった】


えぇ……、スマホで調べたらスイカとか甚振るやつじゃなかったよ?
ふつーに彫刻の一種だってさ。猫ひっかき病がどうとかは解んないけど確かに奥が深そうではあるよねー。
変哲のないスイカとかメロンで花とか龍とか彫るんだからやばない?って思っちゃう。

まぁ私も少し練習すればできると思うし?今日は我慢しなさいな。退院祝いの時にやったげるから。


【少し練習すればできると豪語するエーリカ。動画とかを見る限りでは決して難しいように思えなくて】
【そも人の行う事であるならば、時間の多少は置いといて誰でも出来るんじゃないかって考えの女である】

【鋭い銀光が残すは鋭い一筋の跡。二つにぱっくりと割れたメロンの断面。それはエメラルドの宝石みたいにキラキラで】
【煌めく断面を眺めてるだけで満足しそうな気がしたけど、結局食べて初めて満足するものなのだから】

【手際よくわたを取った後、均等に切り分けて、ご丁寧に一口サイズの切り込みを入れて。それを紙皿にのっけてかえでに渡――】
【さない。渡さないのだ。わたを取ったフォークで一口大の果肉を突き刺して、かえでの口もとに持っていくなら】

【"ほら、あーんしたげるから、精一杯ねだるような声で懇願するんだねっ!"とささやかな意地悪をする。大人げない】


514 : イル ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/02(水) 22:08:04 arusqhls0
>>313

【君の涙を僕は知らない、多分きっと、知っているフリをしてるだけだから】
【網膜の掬う麗らかな一瞬、零した末尾は涙に滲む、そんな劣ってもなお等しく思いたいいじらしさ】
【だから彼女は愛おしくとしか思えなかった、平行線であっても心が混じる、そんな歪な関係なのは】

【────── 世界がもうきっと歪んでしまっているから】


そうだよ、きっと、そうじゃなきゃダメなんだ、素敵な恋バナの終わりはハッピーエンドじゃなきゃ
そうでしょ? 鈴ちゃんもきっとそう思うでしょう、少女は寂しく息絶えましたなんて、手慰みにもならない
王子様に連れられて、王子様に睦まれて、それでオシマイ、ボクが唄うと神話の終わり

取り返しに行くのさ、ボク達で、神様が間違えちゃった偽りの世界を壊して
そしてキミと、願わくば素敵な終末を、叶うなら喝采と拍手を
ボクはキミの涙を乾かすためにここまでしたんだから


【重なり合う二つの少女片、片方の花弁は神様で、もう片方は病魔で、救いようのない愛憎の連鎖と】
【時にそれは憂鬱に似ていた、乳白色の視界を濁らせる吐息の残照、危惧する慌ての隠り世に近い】
【蓋し、─── 謀りばかりの中には、盲目的な真実が潜んでいるのだと】


────── あは、いいね、そのフレーズ、じんじんって来たよ、ゾクゾクしちゃう
私を病気にしてだーって、可愛いのっ、そーゆー鈴ちゃんの被虐的で悲哀的なとこ、大好きだよ♪
唆る、ってゆーか、なんとゆーか、背徳的で官能的で、それでいてどうしようもなく破滅的でさ




【 強く押す、────── ベッドに吸い付くように、羽毛の中へ貴方を殺すみたいに】



【倒れこむ姿は逢引の様相、触れる姿は恋人の慕情、浮かべるのは悦楽の表情】




【キミを】 【キミを】 【キミだけを、──────】




鈴ちゃん、鈴ちゃん、鈴ちゃん、──────




【病ましてしまいたい】


愛してるよ、愛してる、世界で一番、愛してる




【入水するみたいに顔を近づけて、彼女は指先を貴女の口元へ突っ込む、そして強引に口を開かせて】
【形に良い唇の輪郭、少女らしい愛らしさと、蠱惑的な肉感を兼ね備えた、貴方の口】
【寂しく震えていた、響く鈴の音は嬌声に似て、媚びる声は耳腔を揺らし、鼓膜を蕩かし、脳髄さえも舐め回す】


【開いた貴方の唇へ、彼女は艶やかに舌を垂らす、赤子がする様に、或いは遊女がする様に、そうして、そうして】
【液の末端までも逃さぬように、夜露が子葉を濡らす様に、滴り落ちるは彼女の唾液、透明色が世界に落ちて】
──────────── 【貴方の中に届けばよかった】


【それが体内に入った瞬間、貴方の体に異変が起きるだろう、全身の気怠さ、目眩、吐き気、腹痛、それらの不調が身体の芯から湧き出て】
【そして節々が猛烈に痛んだ、声を出さずにはいられない程に、耐えきれない痛みを、身体がどうにかして逃す様に】
【────── 揺るぎない病であった、彼女が、貴方に与える、最大級の】


515 : イスラフィール ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/02(水) 22:26:45 arusqhls0
>>361

【そっと指先が伸びた、白い手袋に包まれた細長い指先、指揮者の振るうタクトの如く華麗に舞って】
【貴方の目の前で止まる、鼻先を制すとは正しくこの事で、やんわりと貴方の言葉を遮って】
【そうして静かに微笑む、鮮やかな木漏れ日の窓辺、佇む姿は淑女という言葉を絵に描いたが如く】

【 ────── あの子が大人になったなら、きっと、こんな雰囲気になるのだろう、って】


乙女の秘密を探るものではありませんわ、私は違いますと言っているのですから
それでもと、食い下がるのはやや不作法ですこと、私の好みは紳士な殿方なのです
ふふ、でも、────── そんなに男の子を悩ますのは、女の子冥利に尽きますわ


【続く能力に関する問いかけをはぐらかすかの如く、バンビちゃんをぎゅーぎゅー抱きしめる】
【おもちゃ売り場の 女児か、或いは、恋人とふたりきりで買い物するカップルか】
【いずれにせよその様子は悪意の無いもので、純粋に喜んでいることが伝わってくるだろう】

【ドラの言葉を聞く、椅子に腰掛け背筋を伸ばしたなら、確かな緊張感をそこに生んで】
【生け花に近い、凛とした佇まいには一片の無駄も容赦もなく、ただひたすらに慄然たる彼女であったから】
【彼女はその言葉に小さく頷いてみせた、それが明確な答えになったから】


でしたら私は眩いままに、私の正義を追い求めますわ、例えそれがどれ程過酷でも
私はこの国を護ります、私の大切な人々が護ったこの世界を、護り抜くのです
継承、────── とでも言いましょうか、平和の祈りを、無くさないためにも

今の所は表立った活動はしてませんわ、まだまだ人材集めといった状態ですので
けれども、バックアップや資金面には私の私財で出来た “財団” がありますの、必要なのは実働部隊です

能力や確かな力を持って悪に立ち向かう、そのための人材を求めているのです

ですので連絡先さえ教えていただければ、私の方から召集いたしますわ、来てくれなきゃ、拗ねちゃいますけど


【悪戯っ子の様に微笑む、姿の名残はあどけなくて、大人びた佇まいの中にふわりと混じるエッセンス】


516 : 名無しさん :2019/01/02(水) 23:47:38 qwo3G9J60
>>513

えー。横目でちらちらって見てました、それなら、真正面から見た方が、嫌らしくなくって、いいと思うんですけど――。
いけなくないし、えっちでもないですー。はしたなくもなくって。私これでも、偉い子なんですよ? 

【みんな好きですねって感じの顔をしていた。――だのに狡いんだ、自分だってアリアの胸元に搦めとられたらどうしようもなく負けてしまうんだって、言わないから】
【顔をまーっかにして赤ちゃんみたいに甘えてしまうのに。ふふんって笑うなら自分はお姉さんだって言い張るみたいに。偉い→権力ではなくって、】
【純粋に偉い子なんだって言い張るなら、えへんと胸まで張っていた。――そんな風に言い張るよりよっぽど子供みたいな性格、しているくせに】
【きっとバレていないって思っているから――いるなら――やっぱり子供の浅知恵なんて言えてしまうのだろうか。十七歳は大人ぶってもまだ未成年に過ぎない】

え……だって、スイカをじわじわとなぶり殺しに……。やるならひと思いに切り落としてやればいいのに、いくつもの小さな欠片を作って……取って……。
見た目大したことないけど奥が深いのが猫ひっかき病ですよお。にゃんこに噛まれたら気を付けてくださいね。「怖くない……」とかやっても噛まれるときは噛まれるんで。

――じゃー、今度の時に楽しみにしてます。ふふ。アリアさんにも見てもらいましょうね。たぶんアリアさん結構そーいうの好きですから。
まあ、食べるとき大変そうですけど……あれって食べるのはあんまり考えてないんですかね? それはそれで勿体ないですね、カボチャより日持ちしなさそうですし……。
ていうか、今の時期にスイカ、あんまりないですよね。メロンだと大変そうじゃないですか、なんか、柔らかいし――。スイカの時期まで、我慢しますよ。

【――もしかしなくても少しずつ切り取って模様を描いていく段階を甚振るとか言って遊んでいるらしかった。喩え話も適当に組み立てたなら、おててはにゃんこのポーズ】
【にぎにぎ二回でにゃーにゃーなんて言ってみたなら、もしやめちゃくちゃ暇だったのかもしれなかった――なんて? にんまり笑った頬っぺたがなんだか嬉し気なら】
【なんだかんだで結局夏までいいらしい。スイカ食べたいなんてお高いメロンを前に言い放つのだからよっぽど自由人、それでも当然、メロンが要らないわけじゃ、なくって、】

――――――あー! 意地悪です、いじわる……。むぅ――、……こほん。じゃあ、ちょっとだけ、失礼して……。ん゛、んっ、……。

【わーいなんて言って紙皿を受け取ろうとした瞬間、だった。すいってお皿が逃げるなら、はしたなくおっきな声。じとり責める眼差し、見上げ数秒】
【おねだりが必要だと聞かされてば、数秒そうやってジト目をしていたのだけど。口元に手をやってわざとらしい咳払い。あー、、なんて、喉のテストはバッチリ百点】
【もう一度小さく咳払いするなら、――ゆると開けた眼差しがとろんって蕩けて、ふうっと、肺腑の奥の奥から震わすような吐息が小さく薫る、ベッドの上、腕をついて、乗り出すなら】
【やっぱりたっぷりおっきな胸元をきゅうっと寄せて――、あーん、と、開けた口元。何もせずとも薄紅に色付く唇から覗き込む口中は唾液にてらつく、粘膜の色】
【真っ白い肌と、真っ赤な口と。肌と歯の白の間に薄紅の唇が遮るなら、そのどちらもぐうっと目立たせて。無意識に僅か蠢く舌先は愛情の苦さすら知っているから、】

――ちょー、らい?

【――ほんのちょっぴり小首をかしげて強請るのだ。ならばちょうど跪き男に尽くす女のような姿勢でもあった。ねじ込む何かがありさえすれば、それすら許される、――気がした】


517 : 名無しさん :2019/01/03(木) 01:04:18 qwo3G9J60
>>514

【どんなけ平行線だってお互いに手を伸ばしたら届く気がした。そうして届くのなら、抱き寄せてしまえばよかった。そしたらどんな距離感だって一つ線にしてしまえるから】
【王子様に無視された人魚姫も王子様の来てくれない髪長姫も家まで靴を履いてきてしまった灰被り姫も王子様に柩ごと放っておかれた白雪姫も白兎を見失ったすゞ子ちゃんも】
【一つに重ねて束ねてしまえば単なるグラデーション、どんな嘆きも後悔も一処に纏めてしまえば誰にも観測できやしない。何もない部屋に一つぽっちの哀しみは目立ったって、】
【こっちゃこちゃに汚いお部屋の中に散らばるたくさんの哀しみを探すには時間がかかるから。その間にお客様は追い出してしまおう。――先にわたしたちをそうしたのは、あっちなんだから】

――――――――そう、だよね、だって、わたし、いっぱい、頑張って……。……イルちゃんだって、そうでしょ? ――ねえ、だって、
生まれてきたのに、なにもなくて。――何もないなんて。……しあわせになれないなんて。しあわせになったら、いけない、なんて――。

【――――ぱちり、と、瞬きが揺れた。枝垂桜の風に靡くよりも幽かな仕草、何より向こう側に透かすのは蒼穹ではなく眼球の色であるのだから、咲き誇る桜に勝るはずもなく】
【それでも決して満開の桜の持ち得ぬ何かを孕んでいた。――どうしようもない感情の揺らめきは御神籤を委ねられた水面みたい、答えを透かすより先に、見てみたい未来があるから】
【指先が微かに伸びるのだろう。そうして相手の頬へ触れようとした。そのまま触れるのなら、するりと頬骨をなぞるみたいに指先を動かすのだろう、その行為に意味があるというよりか、】

【(どうして貴女はわたしにそんなにたくさんのことをしてくれるの?)】

【尋ねそこなった言葉を指先に載せて、その頬っぺたに。撫でつけておいたなら、忘れてしまわないままでいられると信じた、みたいに】

【――ならば少女はそのまま羽毛の中へ埋められるのだろう。何か言葉を発するかと思われた一瞬だけが亡骸みたいに横たわっているのなら、身動ぎの背中で居心地を整えて】
【だって死んでるお姫様だって寝心地が悪かったら毒林檎だって吐き出してしまうに決まっていた。桜の木の下の死体がそんな風に生き返ってきたら、王子様だって驚くんだ】
【そんな風に驚き逃げてしまう王子様にわたしたちの何を任せてなんておけるのかしら。口付けに目覚めを教えてくれない王子様に何の意味があるのかしら】
【だからやっぱりわたしは病気なのだと思う。――。女の子は誰だって王子様に憧れるんだから。王子様に絶望してしまったなら、お姫様の条件、喪ってしまうって分かってる、けど】

【――――生まれたなら幸せになりたいから。食べたらいけない林檎を食べてしまった女の子の末路、もはや林檎は魂の奥まで根を張ったから、】
【ならきっと二人お似合いだって信じていた、抉じ開けられた口で愛を囁くことが出来なくて、だからせめてその指先を小さく舐める、暖かな湿度にて沿うなら】

――――――――――――――――――――――あ゛ッ、……っ、つ、あ、――っ、ぁ゛、

【鈴の音がくぐもって揺れた、湧き上がる不調を吐き出そうとしたみたいにびくり強張る腹から濁る咳が漏れて、それすら身体の痛みを助長するから】
【喉の奥を鳴らすような咳に吐き気を飲み下す、けれど呑み込んだ唾が余計に吐き気を煽り立てて。びぐびぐ慄くお腹に呻き声を響かせるなら、逃れようと足を引き摺り寄せる】
【叶うなら身体を小さく丸めてしまおうとするのだろう、――叶わぬなら、涙にぬれる眼差し、貴女を見上げるのだろう。身体の奥底まで届いた証、孕めない胎にも病は宿れるから】


518 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/03(木) 01:04:45 pY/BT7Jw0
>>500


【「貴女が女王様なのよ。」だから、かえでから私にキスをして。 ─── 一頻りの可笑しさを肺腑から吐き出せば、握り返された絹手袋越しの熱量を、指間のより深くまで重ねていた。】
【静かな会話の距離感だった。これほどまでに絆を分かち合う間柄にしては、やはり女は寡黙であった。尤もそれには元より決して口数の少ない人種であるという前提もあり、】
【また一度言葉を紡ぐのであれば、そこに籠る寵愛はひどく重く澱んでさえいた。 ─── なれば、幼気に行き先を強請る仕草にも、全く嬉しそうに微笑んでいた。「では、仰せのままに。」】
【やはり何方が王子であるのか判然としないようだった。少なくとも少女の願いを何より重んじているのは確かだった。その出会いから今に至るまで、何より彼女はそれを欠かさなかったから】

【エアレーションに酩酊して、ブルーライトを当て所なく揺蕩う海月たちは、何かしらの暗喩であるのかもしれない。 ─── 円い水槽の中を回遊し、およそ来客へ媚びずに憚らない軟体だった】
【ともあれ彼女は果たして何を思惟しているのか。片眼鏡の奥、憂いがちな隻眼は何時もよりも少しばかり剽軽ではあったが、悩ましげにメニューの隅を眺めて止むことがなかった。】
【テーブルの上に預けられた両胸は、編み上げられた深紅のウールに覆われて、にも拘らずその豊満な輪郭を強調するのであるから肉感に満ちていた。嘆かわしげな息にすら、薔薇の香は帯びて】
【一先ずコートはハンガーに吊るされていた。ガラスの机上に滴るお冷やの雫を円い指先が伸ばしていた。血よりも愛しげに染められた、紅く円い五爪であった。そうして、】


    「 ……… あら、 ─── まあ。」「どこかしら 、 ……… ?」


【 ─── 嬉しむ少女に黄色く呼び掛けられて、ようやっとアリアは顔を上げるのだろう。幾ばくか意表を突かれたような顔貌であった。編み込まれた銀色のシニヨンが、乙女らしく揺れた】
【まず日頃の彼女では有り得ないように、御目当ての水槽を探すのに苦労していた。鼻先を彼方此方へ振り、驚いたまま開かれた左眼は、少女の笑顔が示す先を探して】
【すれば果たして何のメニューに拘泥していたのかも見易くなるのかもしれない。 ──── 何のことはない。カップル向けのドリンクであった。馬鹿馬鹿しいくらいに惚気た値段をした、】
【矢鱈と大きなグラスへ注がれた青だか赤だか解らない色素の、ただ幸せに甘ったるいという味が明白な、ハートに結ばれた双頭のストローが刺さった一杯。彩りのハーブは申し分に過ぎない】
【これを頼むか否かが肝要であるらしかった。流石に恥じらうものがあるのだと推察もできた。 ─── 眇めた隻眼で辺りを探る白い頸は余りに無防備だった。水底より湧き上がって、静かに弾けて止む事のない、気泡がささめく。】


519 : 名無しさん :2019/01/03(木) 01:23:58 qwo3G9J60
>>518

【果たして海月は何かを考えて生きているんだろうか。考えるとして、何を思うのだろう。水の温度。波の強さ。餌の味は分かるのかな、なんて、思考が流れて】
【あぶくに巻き込まれてさっきからおんなじ場所をぐるんぐるん廻ってしまっている海月を誰か助けてあげたらよかったのに。仲間意識はないんだなって当たり前のこと、考える】
【あの子はあのまま死ぬまであそこで回るのだろうか。――なんてことない、一度目を離して次に見たなら、もう抜け出していた。いつの間にか分からなかった、けど】
【別の海月に絡まるみたいな距離で泳いでるやつが"そいつ"なような気もした。目が廻っているのかもしれなかった。だから少女は他人事であははって笑ってしまうから】

あっちですよお。アリアさんたら、どうしたの? ――――、あははは、分かっちゃった。ふふ。じゃあこれにしましょうか。

【珍しくきょろきょろとするアリアを見るなら、ごく無邪気な笑みがまっすぐ出迎える、――意地悪なことに、いつしか少女は相手のこと、まっすぐに見つめていたから】
【視線の先を探すのならどうあがいても自分に行き着くに違いなかった。三秒と半秒をそうして見つめ合ったなら、我慢しきれぬように溢れ出る笑みが決壊して、さらに数秒】
【あっちだといって指差す先に確かに彼女の言っていた水槽があった。――それはそれとして少女はその手元を覗き込もうとするのだろう、メニューの端っこを捕まえ、机に押し付けるようにして】
【よいしょって覗き込む時に、耳元に毛をかけるような仕草をしていたけれど、そこにあるべき毛先は編み込まれていた。珍しく曝け出した耳元が、寒さに中てられたまま、赤い色】

今日はアリアさんがなんだって我儘していいんですから。何欲しいって言われてもいいように、お財布だって当社比ですよお、……家とかは、だめですよ?

【――だからにっこり笑ってメニューを貰ってしまうのだ。海月ばっか見てて何があるのか全く分からなかったから。見渡したところで、希望が変わるわけでもないなら】
【なんにもなければ当たり前な顔して頼んでしまうのかもしれなかった。そういう意味の恥じらいはあまり持ち合わせないのかもしれなかった。――当社比なになのかは知らずとも】
【どんな我儘だって叶えちゃうつもりであるのは本気に違いないなら。――「せめてジュエリーとかにしてくださいね」冗談めかして、邪気ない笑み、真っ青に照らされてても、楽しげに】


520 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/03(木) 11:52:45 WWVNCmoM0
>>516

【――――、強請れと確かに言った。お預けを食らって弄ばれる構図を見たかったのに】
【眼前に映る少女の仕草は少女のものとは思えない程に艶めかしくて色っぽくて、有体に言えばエロい】
【こほんとした咳払いと食い気によって意識の奥底に押し込んだ情欲が勢いよく顔を覗かせて】
【更に可愛らしい生娘の甘さに獲物を絡め取ろうとする蜘蛛の様な大人の色気、その狭間に揺蕩う妖しさ】
【自己主張の激しい胸元、酸いも甘いも知るてらつく唇と蠱惑的な舌先に紅白の色合い。かえでの全てがエーリカを惑わせる】


――――……しっ、仕方ないなぁ〜。そっ、そんなにねだるんなら食べさせてあげるのも吝かじゃないなぁ。
(――――エロすぎんだろ、………年上の私よりも色っぽいって何だよ、……悔しいけどめっちゃ可愛いしエロい(二回目))


【その仕草一つで主導権が奪われるなら、それは二人の関係の表れで。普段の遣り取りでは間違いなくかえでに振り回されるのだろう】
【でもそういうの嫌いじゃなかったし寧ろ心地よいと思えた。だって素の自分で居る事が出来て、そんな姿を見られたいなって思うから】

【強請れと確かに言ったのだから、強請られたならメロンを上げない訳にはいかなかった】
【真っ赤な顔のまま、血走った目つきのまま。やや上ずった声で"はい、あーん"なんて体裁を取るなら】
【待ち望んだメロンはかえでの口の中に入る。その仕草をエーリカは眺め続ける。その姿を愛おしく思えて】


………どう?おいしい?………美味しかったら、……もっかい、さ。あーんしても良い?
(だってクセになっちゃうんだもん。可愛い小動物に餌を与えて悶える感覚に似てるし、可愛いもん、かえで)


【大人げない所を見せる彼女は、やっぱり大人げない事を口にする。以前話した大人の威厳とやらは何処に行ったのか】
【大人と子供。ではなく、少女と少女がじゃれ合ってる様な構図、それでいて弾んだ表情を浮かべるのは、きっとそういう事だろう】
【だから"おねだり"を強要するなら、今度は自身がおねだりする始末。そんな遣り取りの後に普通に切り分けたメロンの皿を渡すのだけど】


521 : 名無しさん :2019/01/03(木) 12:15:45 qwo3G9J60
>>520

【――――ふうっと甘い吐息の中に何か悪戯っぽさを隠していた。あともう少し待っていたら、無邪気な笑いが弾け出してしまうって、きっと誰でも見て分かった】
【"こほん"と咳払いで演じたのは色っぽさ。発情しきった雌の表情。それでも限りな素面であるなら、ただどこまでもメロンが欲しいだけ。おいしいメロンが食べたいだけだから】
【もじり擦り合わす内腿すらも演技だと言うのだから狡かった。――。演技でない色合いをアリアなら知っているのだろう。なんて思ってしまったら、負けなのかもしれないけれど】

――――――わあ、おいしー。エーリカさん、これすごいおいしいですよっ。ヤバいおいしいです、わー、お高いのって本当においしいんですね――うふふっ。
富裕層ってこういうのばっかり食べてるんですね。いいなあ富裕層……。ご贈答パねえな……。――もっとくださーい、――ぅふ。いいですよお、あーん。

【――ぱくんっ、って頬張ったら、その瞬間に少女の顔は単なる少女へ戻るのだろう。綻ぶ色合いは口の中でじゅわっと解けたメロンの果肉と、溢れ出た果汁に対して】
【うわぁおいしいなんて言って目をまあるくキラキラに輝かすから、おいしいおいしいってうるさいのだ。最終的にはご贈答凄いなんて言っている。語彙力絶無】
【ならばもっと食べたいのなんて当然なんだから。――言われる前にもっかい自分からあーんって口を開けるのだろう、でも、さっきよりも子供っぽい、普通の行為になって】
【もう一回食べさせてもらえば、またおいしそうに咀嚼する。――、その途中から、ごく悪戯っぽく目を細めていた、なら、】

エーリカさん、お顔真っ赤ですよお。メロンの色相反転って感じ。"こーいうの"好きなんですか? ぅふふふふ。
のんびりしてたらなくなっちゃいますよ、私がぜーんぶ食べてしまうの。――ご贈答メロン〜♪

【けらけら笑って揶揄うのも当然なんだろうか。お顔真っ赤ですよ、なんて言いだして。自分の頬っぺたを指先でとんとん、相手のそこが真っ赤なんだって伝えるのなら】
【もらったお皿のをぱくついているから、やっぱり色気より食い気。謎の歌を漏らすくらいには、ご贈答用メロンが気に入ったらしかった。――おいしい、なんて、ご機嫌な声】
【ならば本当にうかうかしてたら全部食べられてしまいそうな予感がした。――――予感だけで、ほんとは、エーリカの分には手を付けないのだけど。だってお姉ちゃん、だから?】


522 : 名無しさん :2019/01/03(木) 12:17:09 qwo3G9J60
【街中――――人気のない通り】
【元旦の浮かれ気分も夜の寒さに中てられて沈みゆく時間だった、もう少し下手すれば雪でも降ってきそうな空模様と、寒さにて】
【大通りの人気を嫌がった人間が逃げ込んでくるような裏路地に小さく漏れる声、「――――――えっ」なんて、なにか、ごく呆然とするような、】
【次いで聞こえるのは"ごしょん"なんて音であるのだろう。喩えるのなら、そう、あのやけに柔らかいペットボトル、中途半端に飲んであるのを、落としたような、――】

――――――え、ちょっ、――ちょ、え、待っ、たなくても、いいですけど!? え、いや、ちょっと、待っ、――――はっ? 初詣? 初詣ですかこれ?
え……初詣って普通こっちから行くんじゃ。……神様から来る初詣ってレア過ぎないですか? 去年一年いい子だったからかな――。いや……。――ちょっと!

【――ならばそこに佇むのは、何かひどく呆然とした少女であるのだろう。ならばやけにべこべこやらかいペットボトルを落としたのも彼女であるらしい、足元に転がるから】
【なにかめちゃくちゃに奇妙なものを見たらしかった。だからか頻りにきょろきょろと辺りに視線を巡らせて、刹那、――いやいや、なんて呟いて、走り出すなら】
【ペットボトルは当然のように置き去りだった。――。真っ白い髪先がひるり翻って揺らぐ、或いはいくらか前より少女を見ている誰かなら、状況を分かりもするだろうか】

【まず先に通りを歩いていたのは銀髪の少女だった。ペットボトルのお水を飲みながらの行儀が悪いうろつき、ちょうど、ボトルのキャップを閉めて、さあ鞄にしまおうなんて瞬間】
【暗がりの細道から人影が一つ出てきたのにびっくりして立ち止まる。――――、それが知り合いだったか、何かだったか。ペットボトルを落として、先ほどの状況になるのなら】
【細道から出て来て、白髪少女より十数秒も早く脱兎で逃げ出したのは髪の黒い少女だった、――真っ白い肌に、左右で色違いの瞳。ふわふわしたスカートとピンヒールの癖に、早い】
【――――銀髪の方も、別に遅くはないし、むしろ早い方なのだろうけど。呆然としていた時間のせいか、どうにも、逃げられてしまいそうであって。真っ青の眼差し、瞬かせ】

【まっすぐな通りをしばらく行って、道なりに曲がる。そうしたら真っ黒い毛先の少女は目についた細道に飛び込んで隠れてしまうのだろうし、】
【或いは誰か捕まえてくれたりするのなら、追いかける少女だって追いつけそうだった。それとも逃げるのを手伝ってやってもいいのかもしれなかった。――なんて、】
【――どちらにせよ、突発的に発生した切羽詰まった鬼ごっこ、は、目立ちすぎていたから。なんせ二人とも高いかかとの靴であったから、静かな通りに反響しすぎていて】

/お引越しのやつですっ


523 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/03(木) 15:29:47 WWVNCmoM0
>>521

【ぱくっと頬張る少女の表情は何の装いも無い無邪気なもので、見ているこっちも嬉しい気持ちで満たされる】
【二口めを求めるのはお互いさまで。なら子供みたいな仕草、子供染みたおねだりも、ある意味当然な事で】
【そして、おねだりを求めた時の少女の装いが演技だという事は知る由も無かった。秘密に伏せた花を知るのはあの銀色だけだから】


だろぉー?美味しいに決まってんじゃん。もう戻れないかもしんないねぇ。舌だけ富裕層になっちゃってさ。
こんな美味しいの知っちゃったら、今まで食べてたメロンなんて慰みの一つにもなんないね。

だからと言ってがっつかないの、メロンに羽が生えて逃げたりしないんだから―――ってッッ!?


【美味しいメロンに舌鼓を打つ少女を眺めるだけで幸せな気持ちになるのはきっと気のせいではない】
【そして曰く"お姉ちゃん"であるかえでの揶揄う様な含みのある顔と言葉。改めて指摘されるならもう、歯止めは聞かない】
【ブレーキは役目を果たさないから、取り繕うにも取り繕えない。だから、もう顔を背ける事もせず、開き直るなら】


―――――、ぅう、うっさい、うっさい!そうさ、そうだよっ、"こういうの"大好きで何が悪いんだよっ!
大切に思ってる人のする"こういうの"は一等大好きなんだからっ。だってスタイルの貧相な私じゃそんなん出来ないし。
そもそも思わせぶりな事をするアンタが悪いんだろうがよ。誰が見たって私と同じリアクションするっての!


【同性の何気ない仕草にどきどきするのはきっと少数派。そしてそんな目で見るのも少数派だから】
【でも"こういうの"が大好きなのは、自分の好きだって思う人たちがするからこそで。誰が行っても同じという訳ではないのだ】
【しても顔を赤らめすぎて、狼狽えすぎで。そして突けば突くほど少女の嗜虐心を擽る反応をするんだろうって】


それに私の分は私が食べるんだから!えろくていやらしーかえでに渡してやるもんかー!
折角の高級メロン、私だって一度も食べたことなんて無いんだから―――って、うっま!……旨すぎっ!


【勢いそのままに自分の分のメロンを頬張る。―――食べた事のない高級品の味わいは確かに高級品たる所以があって】
【少女と同じようにエーリカも語彙を失う。語彙レベルがかえでと同じ水準にまで落ちて、同時に無邪気な笑みを零した】
【にへらー、っと気のゆるみきった表情。この二人を見れば、間違っても外務八課の一員であるとは思えないだろう】


524 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/03(木) 23:03:24 BRNVt/Aw0

【とある街中。年明けの浮わついた空気が未だ漂う大通り】
【それなりに賑わう人並みを縫って颯爽と歩く白く小柄な少女が一人】

【月白色の肩まで伸ばした髪。十代半ばの、しかも小柄な小娘が着るには不相応な、本来であれば背丈も胸も大きな大人の女性が着こなすような、そんなブランド物の真っ白いコートに身を包んでいて】
【その裾からは黒いタイツに包まれた脚が伸びており、それを更にヒールの高い灰色のブーツで包んでいる】
【余り気味で指先しか見えない袖からのぞくのはお洒落なデザインの紙袋。どうやら何処かのブランドショップの福袋のようで】
【それを購入出来たのがよっぽど嬉しかったのだろうか、上機嫌に鼻唄まで歌いながらヒールを鳴らして】






【……いた、のだが】




【──ばさり】

【不意に歩道に放り投げられたブランドショップの紙袋】

【少女の金色の瞳は冷たく濁って】

……やっぱ、つまんない

……つまんないつまんないつまんないつまんない……

【不服そうな顔色、気怠そうな仕草で周囲の人々を一瞥すれば】
【「此処にいる誰かでも殺したらちょっとは楽しい気分になるのかなあ」と物騒な事を呟いて】



/土曜まで募集しますー


525 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/04(金) 00:15:01 E1nVzEpQ0
>>507

【であれば矢張り手前勝手な女であるのだろう。己れの感情へ何処までも傲慢であることに恬として恥じぬのを、気高さと呼ぶ事も出来るものか】
【 ─── やや胡乱げな視線を遣りながら、廊下へ出て行く少女を見送っていた。そうしてリビングの扉が締まれば、暫しの思索に押し黙った後】
【それを無意識な当て擦りと解釈したのであろうか、 ─── 一ツ大きく嘆息して、ごく背の高い躯体を立ち上がらせるのだろう。そうして、】

【冷え込んだフローリングの向こう、先日に張り替えたばかりの玄関扉。錠前が動いて、開いていた鍵を閉じてしまった。幾らか不思議がるような間を置いて、今一度ノブが回り、「ただいま」】
【漸く彼はドアを開く。もはや部屋着同然にまで落ちぶれたミント色のワンピースと、口許を隠す白いマフラー、厚手のレッグウェアに何時ものパンプス。気紛れなポニーテールを腰まで揺らし】
【華奢な肢体に支えるには尠からぬ量の紙袋を抱えながら、 ─── 何故か廊下に出ている想い人と、その後ろから現れる嘗ての恋人に、眼鏡の奥に納めた碧眼を、ごく円く瞠していた。】


   「 ─── 貴女と話していたら、言いたいこと皆んな、吐き出してしまった気がするわ。」
   「同じ恨み言を二回も繰り返す趣味はないの。」「もう良いから、彼に存分に温めてもらいなさい。」


【煙草と薔薇に薫る嘆息を添えて、女はそう言い残すのだろう。 ─── 玄関から射し込む光に揺らめく長い白銀は、甘い香油を纏っているようだった。それでいて】
【どこかで確かに消し得ぬ獣の匂いを帯びているのだから、それは女の本質でもあるのだろう。まだ呆然としているままの、玄関先の彼へと/あるいはその伴侶へと、別れの挨拶を宛てながら】



     「世話をかけたわね。 ─── 機会があれば、また会いましょう。」



【終ぞ振り向く事もなく女は去っていくに違いなかった。 ─── 残っているのはその香りだけであった。好き勝手に爛れた雌の芳香だけをぶちまけて、その女は行ってしまうのだろう。】
【「 ……… どしたの?」殆ど素っ品の顔立ちで、それでも変わる事のない白皙のまま、彼は漸く何かしらの疑問を呟くのだろう。全くもって彼は、悉く理解していなかった】


526 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/04(金) 00:45:35 WMHqDivw0
>>525

…………。……えぇ? よくないでしょ、……そんなのずるいじゃん。
なんで、お互いにズルいことしてばっかじゃん! もう、……もう。

【ドアの向こうから出てくるのを振り向いて、そのまま脇を通り抜けるのを横目で追いかけ】
【するりと前を、悠々と歩いて去って行かれるのであれば――やっぱり何もわからない】
【何の理屈もよくわからないから。だから見送る顔はひどく不満げに歪み、頬を膨らませて】
【そうしたところで振り返ってももらえないのなら、毛布の中で握る拳がもぞりと蠢く】
【少しだけ香水と煙草の匂いが染み付いているような気がする。これでは気持ち良く眠れないから、】

おかえり、……………………おそい。あと鍵、……鍵変えといてよ。
合鍵持ってる人がいるなんて知らなかった。これから先も勝手に入って来られたらこまる、
エーノはあたしの素っ裸、誰かに見られてもいいの?

【じっとり見上げるような視線は、残された彼にだけ注がれることになる。ほとんど八つ当たり】
【少なくともあなたがいなかった時間、楽しいことは起きませんでした、と訴えるような目付きで】
【冷えた毛布、寒さが入って来ないように前を固く閉じていたのを少しだけ解く。ちらちら動かして】
【その向こうを見られかけたのだと訴える。(そもそも裸で毛布に包まるのをやめればいい話なんだけど)】

【しかしそれも、リビングへ並んで歩いていくうちにちょっとずつ、不安と心配を含む表情に変わっていく】
【怒らせちゃったのかもしれない。だったらなんで怒ったのかよくわからない。そもそも、】
【直接渡すって言ってたのになんで帰ることにしちゃったのか。わからないし、ずるいと思う】
【なんにもわからせないくせにこうして不安感だけ置いていかれるのは実にずるい――そう思う、ので】

【リビングに戻ったら例の箱はテーブルの上に乗せられたままなのだろうか。ならば少女は】
【それに目もくれず、ソファに飛び込むみたいに横になったら、頭まで毛布に包まってしまうのだろう】
【拗ねていた。それから、怯えていた。外を見ていたくないのは明白だった。ふん、と鼻を鳴らして】

知らない!

【吸殻の掃除も使用済みグラスの洗浄もほっぽらかして、しばらく籠城してしまう。何訊かれてもだいたい、そんな返しばっかり】


527 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/04(金) 17:16:03 k8a4Pxgw0
            "Death seed, blind man's greed"
死の種、分別のない者の強欲。

                      "Poets' starving, children bleed"
                       詩人は餓え、子どもたちは血を流す。



"Nothing he's got he really needs"
欲しいもの、本当に必要な物は何も手に入らない。




                ―――――"Twenty first century schizoid man"
                        21世紀の精神異常者。



【年明けから四日ほど経った水の国。年明け特有の酩酊から醒めて、徐々に日常の空気を取り戻しつつあるそんな日】
【うす暗い路地裏はどんな時も変わらず薄暗く淀んでいた。差し込まれる光さえも飲み込む様な昏さに真っ当な人間の本能は警笛を鳴らす】
【それも今日、この時は。殊更に。―――――鉄臭い香りが充満し、命の音を絶やした肉の残骸が幾多にも散らかるこの空間ならば、尚の事】


【針金細工のような瘦身、灰を被ったかのような短髪、黒いスラックスに白のカッターシャツの上に羽織る黄緑色のフード付のコートを羽織り】
【フードで覆い隠した顔、それでも隠せないのは普通の人間とは見ているものがまるで違うと察する事の出来る胡乱で血走る眼光が特徴的な人物】
【名をブルー⁼ダグライツ。カノッサ機関のNo.44『欠落者』と呼ばれる精神異常者/スキッツォイド・マンであった】
【背後にある幾多の人間だったもの、そこから流れる命の残骸に靴底を濡らし上機嫌に何かの曲のリリックを口ずさむなら、それは虐殺者であると堂々と告げて】

【今日この時、この修羅場に迷い込むのは果たして何者なのか―――どちらによ、騒乱の兆しが産声を上げているのは間違いない】


528 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/04(金) 17:40:17 arusqhls0
>>527

【掌で太陽を覆い尽くしても、溢れる陽射しを止められない、幾ら願っても心の底から憂いは消えない】
【或いはその詐称に似て、─── 幾ら路地裏が暗かろうとも、永劫の闇は存在せず】
【気狂いに慰めはいらない、ならば、泣き通すなんて、できない】


─── ”平穏な暮らしを願うなら、自ら進んで闇に触れる事はない“ 父さんはいつもそう言っていた
俺もそう思うよ、実際の所、俺の進むべき道と、正義を為す事はそこまで類似性は無いんだから
でも、たった一点だけ、俺は君に言わなきゃいけない事があるんだ

【ダークグリーンで癖のある短髪を、左右は空いて後ろへと流すように生やしている】
【薄手の黒シャツに、ジッパーを締めずに開いたままの白いジャケットを重ね着にして、首元に銀色の無機質なペンダントをぶら下げた】
【すすけた感じの印象を漂わせる、がっしりとした重厚な体格の、身長170前後の少年、────── 声の主は彼だった】

【路地裏の入り口から歩いてくる、注ぐ視線が、真っ直ぐに虐殺者を捉えて】


君が今殺した相手は、昨日俺が薬を調合した相手だった
これで楽になったよ、ありがとうって、────── そう言って別れた相手だった
彼には未来があった、彼は明日を見ていた、少なくとも、こんな明日を信じてはいなかった

────── 言いたい事はそれだけです、言いたい事は、ですけど


【視界から姿が消える、蜃気楼を思わせる一瞬の所作、砕けるほどに体勢を低くし彼は駆ける、一つ二つと地面を蹴って】
【表情は固かった、食いしばった歯に浮かべるのは、一体どのような感情か】
【間合いを詰め、拳を振り抜く、その顔面を真っ直ぐに撃ち抜こうと】


529 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/04(金) 22:32:29 yIn3gyD60
>>528

【精神異常者の周辺に転がる死体には奇妙な共通点があって】
【皆一様に"目"を潰されていたり抉り取られていたりしている事だ】
【それはまるで精神異常者の抱える理屈、その中身を表す縁だった】

【精神異常者は死者を振り返らない。彼をいつも振り向かせるのはいつだって生者】
【決意を秘めた意思が、嚙み殺した感情が、今を生きる者が持ち合わせる心がそうさせる】


                 【ぐ る り】


           ―――――、……ぁぁああん??
               何だ、なんだ、ナンダ、コバエか、子蠅の囀りかァぁ??
                         

                       【ぎ ろ り】


                   うぜぇ、うぜぇ、うぜぇ、うぜぇ。……"食べ残し"かァ?



【彼にとって生者は誰も彼も不快な生き物で、声を聴くだけでも精神を鑢で削られる様な不快感に苛まれるのに】
【振り向いて淀んだ双眸に映してしまった少年の"目"、視線は一等精神を荒ぶらせる――ソノ目デ、オレヲ見ルナ】


…………ぁあぁああぁああん??だったら良かったじゃあねえかよ。
明日からオクスリに頼る必要もなけりゃ想像を凌駕する明日と出会わなくても良くなっただろ?


            ――――だァから、死んで万々……


【"万々歳じゃねえか、イヒヒヒヒッ"―――と紡ぐ前に自身の顔面に衝撃が走る。曖昧模糊な表情は衝撃に備えてるわけもなく】
【思いっきり吹き飛ばされる。取っ散らかった屍たちの場所まで吹き飛んだなら、少しして身体を揺らして不気味に笑いを零す】
【"くひっ、くひひひひひひっ――――――来い、スキッツォイド・マン"】【彼の背後に黒い人型の何かが現れる】
【スキッツォイド・マン。不定形の黒い人型の右手は腐ったかのようにポトリと地面に落ちて、軈て、三つ首の狗に姿を変え、少年に襲い掛かる】


530 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/04(金) 22:35:37 yIn3gyD60
>>528

【精神異常者の周辺に転がる死体には奇妙な共通点があって】
【皆一様に"目"を潰されていたり抉り取られていたりしている事だ】
【それはまるで精神異常者の抱える理屈、その中身を表す縁だった】

【精神異常者は死者を振り返らない。彼をいつも振り向かせるのはいつだって生者】
【決意を秘めた意思が、かみ殺した感情が、今を生きる者の持ち合わせる心がそうさせる】


                 【ぐ る り】


           ―――――、……ぁぁああん??
               何だ、なんだ、ナンダ、コバエか、子蠅の囀りかァぁ??
                         

                       【ぎ ろ り】


                   うぜぇ、うぜぇ、うぜぇ、うぜぇ。……"食べ残し"かァ?



【彼にとって生者は誰も彼も不快な生き物で、声を聴くだけでも精神を鑢で削られる様な不快感に苛まれるのに】
【振り向いて淀んだ双眸に映してしまった少年の"目"、視線は一等精神を荒ぶらせる――ソノ目デ、オレヲ見ルナ】


…………ぁあぁああぁああん??だったら良かったじゃあねえかよ。
明日からオクスリに頼る必要もなけりゃ想像を凌駕する明日と出会わなくても良くなっただろ?


            ――――だァから、死んで万々……


【"万々歳じゃねえか、イヒヒヒヒッ"―――と紡ぐ前に自身の顔面に衝撃が走る。曖昧模糊な表情は衝撃に備えてるわけもなく】
【思いっきり吹き飛ばされる。取っ散らかった屍たちの場所まで吹き飛んだなら、少しして身体を揺らして不気味に笑いを零す】
【"くひっ、くひひひひひひっ――――――来い、スキッツォイド・マン"】【彼の背後に黒い人型の何かが現れる】
【スキッツォイド・マン。不定形の黒い人型の右手は腐ったかのようにポトリと地面に落ちて、軈て、三つ首の狗に姿を変え、少年に襲い掛かる】

//文字化けがあったので微修正版を投下します


531 : 名無しさん :2019/01/05(土) 00:08:36 010YzM3Q0
>>523

そうですね、人のお金で食べるものは何よりおいしいって、隣の家のばっちゃも言ってましたよお。人のお金で食べる焼肉はおいしい。世界の真理ですから!
即ち人のお金で食べるメロンもおいしくって当然なんです――おいしい。

【ならばごくにこにこと笑って頬張るのだろう、他人のお金で食べる何かはだいたいおいしいだなんて非道いことを言ってもいたけど】
【メロンに羽はない代わりに、少女の指先は無慈悲だった。ひょいぱくひょいぱく繰り返すから。――やっぱりそれでも自分の分はわきまえてはいるのだけれども、】
【時々悪戯っぽく、エーリカの皿を狙うのだから抜け目ない。もし油断してたらカラスに食パンを攫われるみたいに、ひょいっと、持ち去られてしまうなら】

――私は悪くないですよお。"ちょこっと"おっぱいぎゅうって寄せて、言われた通りに、あーんってして、おねだりしただけです?
それを見て"へんな妄想"してたのはエーリカさんですからっ。私はメロンが食べたかっただけですー、なのにエーリカさんがあ、お顔真っ赤にして、ドキドキして……。
エーリカさんたら、えっちな子だったんですね。――――私はえっちじゃないから、分かんなかったです。ふふっ。

【――】

エーリカさん、おっきいおっぱい、好きなの? 私のは別にいいですけど、――アリアさんのは駄目ですよお。私のだから!

【――、もちろん思い出すまでもなかった。蛇教時代の彼女の振る舞い。誘いようだか彼女の気分次第だか、或いは何方も重大要素、だけど、けれど、たしかに、そう、】
【彼女なりの何らかの基準はあるようだが、割合誰とでも寝るだなんてウワサ。噂ではなかった。実際に彼女はそうしていたから、事実だった】
【しかし今更ほじくり返すことでもないのかもしれなかった。――――誰かが勝手に録画した"なにか"なんてものも、ごく親しいサーバントの中では極秘裏に流通していたらしい、が、】

【――――とりあえずそれはさておきめちゃくちゃにいい笑顔で宣言していた、なんて、】

メロン食べたら―、メロンくらいおっきいおっぱいになるかもしれないですよ。

【なんない】
【社会的に死んだ二人の会話とは思えないことは確かなのだろうけど。ただもう一つ確かであるなら、きっと、彼女らはとても楽しそうに違いないから、――、いい?】


532 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/05(土) 00:51:09 yIn3gyD60
>>531

【美味しい食べ物は人を笑顔にする。そこら辺の料理漫画の常套句が脳裏を過る】
【確かにその通り。二人がそれを分ち合うのならきっとささやかな幸福と呼んでも良い】
【社会的死人たちは口を揃えて"美味しい"、と。二人の間で交わされる符牒みたいに】


ぜんっぜん"ちょこっと"じゃないじゃんっ!どの口が言うんだいっ!?
"あんなの"見せられたら誰でも"変な妄想"の一つや二つするっての……!

むむっ、――――確かにおねだりしてって言ったのは私だし、今更えっちな子なのも否定しないけど。
でもでもっ!かえでも十分えっちな子だしぃ!おすまし顔で誤魔化しても私にはお見通しですぅ。
無自覚なだけだよ、無自覚なだけ。かえでも十分えっちな子ですっ!はい決定確定ですっ!


【こうも弄ばれては大人の意地とプライドが許されない。……随分子供染みた感情である】
【いたずらっぽく笑う少女に対して向けるのは、涙目できゃいんきゃいん吠える子犬の様な彼女の表情】
【自分の皿に置かれたメロンを取られまいとして狙う仕草の度にさっと引っ込める姿も幼げなものである】


――――あーっ!、この際だから白状してやるよ!大好きだよ、大好きっ!
おっきいおっぱいが大好きで何が悪いのさっ、自分にないものが好きで何が悪いっ!

つーかアリアさんのは狙わないってぇの。上司にあたる人のそれを狙うほど節操なしじゃありません。
私が狙うのはエト姉ぇにシロ、かえでみたいな心を許せる大切な人たちだけですぅ。(あと、あの子)
それにかえでから言質取ったから、―――今から、悪い子のかえでにお仕置きしまぁす!


【"メロン食べてメロン程におっきくなったら私は苦労しない"って言い残して、かえでの胸に飛び込もうとする】
【もし静止がかかるのなら、それは止められて。そうでないなら昔日の喫茶店の時や何時ぞやのミルクティの構図になる】

【蜜姫かえでの過去がどうであれ、エーリカは雪待かえでの事しか知らない。だから蛇教の幹部様が何してても】
【知ったことではないし、仮にそうであったとしても今まで通りの接し方は変わらない。だって、一緒にいて楽しいって思うから】


533 : 名無しさん :2019/01/05(土) 01:06:50 010YzM3Q0
>>532

【おいしいものを食べて笑わぬ二人が居たら、それはとっくの昔に冷え切った離婚寸前の高齢夫婦くらいなのだろう。そうなるには二人まだ早すぎるなら、】

ちょこっとですー。まあ、エーリカさんは、マンモグラフィーくらい寄せても、ダメかもしれないですけど……。
でも、ほら、間一髪紙一重で攻撃とか避けられるかもしれないじゃないですかっ、私は"この分"大振りに避けなくっちゃいけないですから――。
――むー。えっちじゃなーいーでーすー! 十七歳ですよ? えっちな本とかも、見たことないですし? ふふんっ、偉い子なのでー。

【ちょっと揶揄う言葉はいくらかルール違反でも、自分だってさんざんえっちだなんて言われているから、きっとその仕返しだった。雑すぎるフォローを添えたら】
【この分、何て言いながら、たっぷりの胸元をよいしょって持ち上げる。――。やっぱり下着をしていないらしかった。指の形にへこむ胸元、見せつけて】
【十七歳はえっちじゃないらしい。――。それにしても全くお終いの見えないやり取りだった、偉いでしょうって胸張るたびにおっきい】

【――――なら、いきなり窓の外を指差して、「あーっ!」なんていうのだ。ブラインドはまだ降りっぱなしだった。それでも気が逸れれば、間違いなく、メロンを狙うから】

わあ……。エーリカさん、この部屋、監視カメラあるって言ったら、どうし――――きゃあっ!

【エーリカの"白状"。あんまりに潔いものだから、揶揄っていた少女も困ってしまったらしかった。ぱちりと瞬き一つ、フォークを持ったままの手、内緒話の形にして】
【そっと身を乗り出してささめ――く最中に、飛び込まれるのなら、そのままぼふんっとベッドに押し倒される形になるのだろうか。ばたっと暴れた足もと】
【見れば部屋着のワンピースがはだけて、――――。喩えるなら真夏の青空に浮かぶ雲のような。喩えるなら冬に初めて降った初雪のような。喩えるなら。Fだけで表現できるような】

ちょっ――とおっ! エーリカさんっ、なにするの……っ。ほんとに監視カメラあったら、どうするんですか? 悪いわんちゃんですね、もおっ――。
あーっもお、パンツ出てるじゃないですかあ、寒いと思った――っ、太ももから風邪ひいたらどうしてくれるんですかあ、――。

【メロン果汁たっぷりの紙皿をひっくり返さないだけで確かに偉いお姉ちゃんなのかもしれなかった。ベッドの上、遠いところぐいっと押して置いたら】
【むーむー言いながらばたばた暴れているのだけれど、もちろん戯れの仕草であるなら。――ならわざとらしく口に出すのも攻撃の手なのかもしれない、なんて、】
【――ただ、おへそのあたりまでが本当に丸出しになっていたものだから。ぐうっと手を二人の間に突きこんだなら、スカートをもとに戻すのだろう。白。白かった】


534 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/05(土) 12:44:01 yLfEXSPo0
>>533

えっへん、どうもわるいわんちゃんです!
今日は悪い子のにぎゃふんっ!と言わせたくて飛びつきましたっ。

そも社会的に死んでから一度たりとも忠犬であった事も良いわんこだった事もないんだし。
やーっと狼狽えた姿を拝ませてもらったよ、ははっ。大人の実力とくと見たかーってね?


【一度決めたら最短で真っすぐに一直線に。そんな単純めいた思考の駄犬に対して】
【監視カメラという言葉は何の抑止力にもならない。ただの言葉でしかなくて】
【彼女に怖いものなんて無いのだから、悪戯っ子にも人懐っこい犬にも見える笑みを浮かべる】

【怪我人に対するスキンシップにしては過激で暴力的で。でも少女が本当に嫌がる事は決してしないから】
【寒いと口を尖らせるのなら、ごめんの一言を口にして身体をそっと離して――知らぬ間に確保してあったメロン】
【かえでとエーリカ、二人の首輪付きわんこのじゃれ合いがひと段落着いたなら――――】


ごめんごめん、風邪ひいたら宜しくないもんねぇ。
私がお見舞いに来たら体調が悪くなるとか言い触らされたら堪ったもんじゃないし。
だからさ、そのお詫び。私の分まで食べていいよ、"ご贈答用高級メロン"。

ちょっと調子に乗りすぎた。……傷が開いたとか傷が痛むとか、……無いよね?
大人げ無かったカモ……。――――………少しだけ、反省するよ。


【しゅーん、とずぶぬれの子犬みたいにしおらしい態度を取るエーリカ。いろんな意味で大人げないと思ったのだろう】
【そうして言葉にするのは終始変わらぬ彼女らしい気遣い。―――その一点だけはずっと同じだった】


535 : ◆KP.vGoiAyM :2019/01/05(土) 14:32:33 Enp65S6I0
本スレ>>571

気にしなくていい。君のその思いは何万何億の人も持っている願いだ。
そして、何千何万年と繰り替えされてきた思いなんだ。
残念ながら、僕ら人間の感じる悩みや苦悩なんてものは自分だけの特別な
ものじゃない。僕ら人間が同一に感じうる共通項なんだ。

だからもう、終わりにしたいんだ。一人の母から始まったこの世界の歴史を
僕たちはまた遠くの世界に旅立つべきなんだ。この世界で学んだ優しさや、出会いを糧に
さらなる世界へ。困難と幸福が待ち望む世界を。

【青年は変わらず笑顔を浮かべていた。少女が能力を用いても何一つ動かず】
【彼へ向かって投げ出された氷柱は途中で砕かれることもなく、避けられることもなく狙い通りに当たることだろう】
【額にでも当たったなら、ふらりと体勢を崩して、頭を大きく揺らしその場に跪くだろう】
【割れた額から赤い血を流しながら――血はちゃんと赤色をしていた――また立ち上がるだろう】

イテテ…まあ、うん。身分を明かせばそういった態度になるのは仕方のないことだけれど…やっぱり悲しいな
そうだね。世界を終わらせようとするカノッサ機関の六罪王。…紛れもない悪だ。
人類を救うために僕の身勝手で勝手に世界を終わらせようとするんだから。…でも、あんな未来にしなくていいのなら

…人類を救うためなら…どんな悪にだって堕ちてみせる。

【彼は真っ直ぐな目を少女に向けた。その目に込められた意志はまるで―他の機関員がもつ常軌を逸した狂気や、憎悪や悲しみではなく】
【正義の者たちが誰かのために立ち上がったときの希望に満ちた闘志に似ていることだろう】

能力を…僕に能力を使わせないでくれ。…使ってしまうと。"終わりが始まってしまう”。


536 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/05(土) 22:15:31 n2sxNqtI0
>>519

【重なる視線であった。一度は何のことはなく伏し目がちに見過ごして、そうして今一度ばかり瞠される二度見であった。 ─── 甘い瞬きの後】
【やおらに吹き出されてしまうならば如何とすることもできなかった。ごく優しく奪い取られるメニューに、待ってと言いたげな白い指先が縋ろうとするのも、詮無きこと。】
【 ─── すれば、纏め上げられた少女の髪先から垣間見える、何時もよりも淡く彩られた白肌を見つめることだけが慰めであった。悩ましげな嘆息を乾き始めた薔薇の香に絡めて】
【くだらない巡に関する全てを諦めながら、白銀のシニヨンを俯かせるのだろう。 ─── 態とらしいほどに困ったような上目遣いを、やはり片眼鏡の奥から、送るのであれば】


   「 ───…………… もう。」


【果たして何に対して呆れたのかはアリアの内心だけが知るところであった。確かであるのは溜息に萎んで尚も、紅いウールに包まれた胸許の柔らかさは変わらなかった】
【漏れる声音は透き通るほどの瑠璃色であった。 ─── 其処ら中の水槽から湧き出る気泡の音さえも同じ色合いに染まっていた。幽けくむくれた白頬の、チークに淡く紅さして】
【瑞々しくも悪戯げにアリアは笑った。誇らしげだった。誰よりもキスの甘さを少女に教えてきた唇の奥にて、静かな唾液に濡れた白磁が、はにかんでいた】


  「それなら、お姫様らしく。 ─── ディナーの御代くらいは、受け持って貰おうかしら?」
  「 ……… そうね。20インチのペスカトーレピザ。デザートも何か、食べるのも良いわね。」



【己れから電子呼鈴に紅い爪先を伸ばして、そっと押し込んでしまうのだろう。「 ─── かえでも、何か食べるかしら?」】
【ひどく女は健啖家であった。馬鹿げた質量の食事を三食ごとに摂って噯


537 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/05(土) 22:16:12 n2sxNqtI0
>>519

【重なる視線であった。一度は何のことはなく伏し目がちに見過ごして、そうして今一度ばかり瞠される二度見であった。 ─── 甘い瞬きの後】
【やおらに吹き出されてしまうならば如何とすることもできなかった。ごく優しく奪い取られるメニューに、待ってと言いたげな白い指先が縋ろうとするのも、詮無きこと。】
【 ─── すれば、纏め上げられた少女の髪先から垣間見える、何時もよりも淡く彩られた白肌を見つめることだけが慰めであった。悩ましげな嘆息を乾き始めた薔薇の香に絡めて】
【くだらない夋巡に関する全てを諦めながら、白銀のシニヨンを俯かせるのだろう。 ─── 態とらしいほどに困ったような上目遣いを、やはり片眼鏡の奥から、送るのであれば】


   「 ───…………… もう。」


【果たして何に対して呆れたのかはアリアの内心だけが知るところであった。確かであるのは溜息に萎んで尚も、紅いウールに包まれた胸許の柔らかさは変わらなかった】
【漏れる声音は透き通るほどの瑠璃色であった。 ─── 其処ら中の水槽から湧き出る気泡の音さえも同じ色合いに染まっていた。幽けくむくれた白頬の、チークに淡く紅さして】
【瑞々しくも悪戯げにアリアは笑った。誇らしげだった。誰よりもキスの甘さを少女に教えてきた唇の奥にて、静かな唾液に濡れた白磁が、はにかんでいた】


  「それなら、お姫様らしく。 ─── ディナーの御代くらいは、受け持って貰おうかしら?」
  「 ……… そうね。20インチのペスカトーレピザ。デザートも何か、食べるのも良いわね。」



【己れから電子呼鈴に紅い爪先を伸ばして、そっと押し込んでしまうのだろう。「 ─── かえでも、何か食べるかしら?」】
【ひどく女は健啖家であった。馬鹿げた質量の食事を三食ごとに摂って噯気にも出さなかった。ならばこの程度のピッツアは前菜でしかないのだろう。青年のウエイターが程なくして席へと至り】
【 ─── ありふれた名前のカップルビバレッジを注文するのはアリアの口からとなるだろうか。少女からの容喙がなければ、軽食をオーダーするのにも躊躇いはなかった。】
【結局のところ海月も爬虫類も一部始終を観測していた。これだけの甘ッたるい遣り取りを見せつけられて尚も揺蕩っていられる彼らには勲章が相応しかった。高く暗い木造りの天井さえ、遠い】


538 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/05(土) 22:40:53 n2sxNqtI0
>>526

【 ─── さらば、斯様な女の申し分を解そうとするのであれば、やはりその本質を知悉した通訳が必要であるのかもしれない。すなわち】
【去り行く白銀と苛立たしげな紅色の間で狼狽えるばかりの彼に、鬱屈した一部始終を伝えてやれば、何かの知見も得られるのだろう。尤も】
【悉く不快な想い出をわざわざ掘り返し、雪折れん恋心に暴行を働いてまで拭いたい不安感であるかどうかは、少女にしか分からなかった。つまり、取り残されてしまった青年に能うのは】
【遣る瀬無い少女の憤懣を打つけられるスケープゴートの使命でしかなかった。 ─── 仔猫のように当惑していた。帰り際の抱擁に冷え込んだ四肢をぬくめることさえ許されないのだから】

【想定し得る限り最悪の接近遭遇を経験したのだと主張してやまぬ少女が、毛布ばかりを被っているのはどこか滑稽であった。それでも】
【 ─── 愛しい人に向けられる暴力的な感情というものを彼は恐れがちであった。無論ながらこれしきで崩れる絆ではないと知っていても】
【泣く姿と怒る姿の何方も見せつけられたとしても言うことを聞いてしまうのがエーノという人間だった。ましてそれの起因が、今の彼には如何ともしがたい場所から生じているのならば】



    「 ─── ええ、ッ」「なあっ、なッ、」「それはヤだよ、でも、ええ ……… ?」
    「 ……… ごめん、」「ごめんよぉ。」「だから怒んないでよお、シグレぇ ─── 。」



【おろおろしながら少女の後ろをついていき、答えにならぬ答えを尋ねるのは、一度きりでやめてしまうのだろう。 ─── 代わりに、ソファに寝転がる少女の後ろから】
【適切な距離感を喪失したまま、空のグラスも燃殻の残る灰皿も知らぬまま、当然ながら机上の置き土産も理解せぬまま、その背中に抱き縋ろうとするのだろうか。】
【やはり彼の躯体は柔らかくしなやかであった。遠くに追いやっても隠せない胸板の堅牢さにすら甘えさせていた。薔薇と煙草の臭いを消し去るように、気取らない柑橘の一雫を纏っていた】

【 ─── であれば、その夜。不器用ながらも諸々の事情を理解した彼は、幾分も不機嫌な通話を何処かの誰かに寄越していた、けれど】
【確実であるのは懐中時計が何処かに行ってしまったということだけだった。捨てられてしまったのかもしれなかった。ただ彼は肝要な所で貧乏性でもあった。枕元のニキシー管は、その夜も炯々と、朧ろな電熱に時刻を示していたのだから】


/この辺りがキリよいでしょうかね、、、?もしそうでしたら、おつかれさまでした!


539 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/05(土) 23:02:07 BRNVt/Aw0
>>535

……皆そんな思いを抱えて生きているっていうの?
道行く誰も彼もが、私が大切にしていた人達も、私が厭う奴等さえも、そんな思いを抱いているっていうの……?

……私は、人間じゃない、妖怪だ
けれども……そんな私が抱いているものが人間なんかと一緒だっていうの……?

終わりに……
遠くの世界に……
それが、貴方の望みなの?
【少女は相手の動向を伺うかのように青年をじっと見据え】

【放たれた氷柱はきっと青年の額へと当たるのだろう。そうしてそこから赤い血が流されれば少女は金色の双眸を驚愕に見開かせて】

──ちょっと!貴方馬鹿なの!?普通そういうの避けるとか弾くとかするじゃない!
機関員なら道行く人を盾にしたりとかするんじゃないの!?
【死にたいの!?と少女は叫んで】
【そうして一歩踏み出してから「反撃、も、しないの……?」とおずおずと尋ねて】

攻撃の意思がないのなら私もそれ以上は何もしない、けど……

人類を救う為に世界を終わらせようとする……遠い世界ってさっき口にしてたけど……何をしようとしているの……?
貴方のいた未来に何があったの……?

魔能制限法──
貴方のいた世界の歴史にはその単語はあったの?
【少し困惑した表情で、しかし真っ直ぐな瞳で少女は男に問い掛けて】


540 : 名無しさん :2019/01/05(土) 23:04:02 74uwuSts0
>>534

【押し倒された姿勢は横から見たらMの字に近いもの、しばらくそうして突っ張っていたのだけれど、そのうちに疲れてしまったのか、背中をとすんとベッドに付けて】
【膝は立てたまま、その間にエーリカを招き入れたまま。――さらり散らされた白銀の毛先がきらきらと煌めいていた、少し拗ねたみたいに瞬く眼差しはどこまでも青いから】
【やはり彼女を生かしたのはあの白銀の狼であるのだろうし、それ以外ではありえなかった。――吐息に揺らぐ柔らかな胸元を、ぎゅうっと、腕組む仕草が抱き寄せ】

もお。胸張って言うことじゃないですよお。"大人"の実力も何も、いきなり押し倒した、だけですし――。

【身体を離すなら、よいしょって起き上がるのだろうか。真っ白な太ももを晒して見せたら、もぞもぞって引っ繰り返るみたいに、起き上がって】
【いくらか責めるような目をしていたが怒っていないのは十分に伝えるのだろう。むすくれたような頬っぺたは、それでも、何か楽し気な色を隠していたなら】

えっホントですか――?

【――それでも拗ねた色をたくさんに撒き散らしていた。視線を少しだけ逸らして、ほっぺたをむくーっとさせて、いたのだけど。それが、ぱぁっと綻ぶ瞬間があって、】
【それはもちろんメロンをエーリカの分まで食べていいって言われた瞬間であって。まさか"それ"を待ちわびていたのではないのだろうけど、それでも、狙ったようなタイミング】
【やったあーって言ってにこにこ笑うならぱっとおててを出して"くださいな"のポーズ。だけれど、――ずぶぬれの子犬ちゃんみたいなエーリカを見るなら、ぱちり瞬き一つ】

……。……あ。あー、よく考えたら、なんかちょっと、痛いかも……。いたいよお、兄貴……。……兄貴? 
――――――――あはははっ! 兄貴って誰だろ、――、うふふふっ。痛くないですよお。だいじょーぶです。だーかーらー、メロンは半分で許してあげます!

エーリカさんの分、半分もらってー、食べたらー、さっきより元気になります!

【うーっと小さな呻き声一つで少女はベッドに蹲るのだろう。それにしてもわざとらしい豹変だった。肩のところを抑えて、うーんって呻くなら】
【――伏せた顔越しに肩が震えて、なら、限界は近かった。決壊するみたいに笑っちゃうなら嘘っぱちだとすぐバレて。なら、――その詫びにか、メロンは半分で許すらしい】
【それでなにか偉いお姉ちゃんですって言うみたいな顔をしているのが問題だった。――あげるふりして全部自分で食べてしまってもいいのかもしれなかった、だって、】
【大人をだまくらかすのは悪い不良娘に違いないんだから。――。なんて】


541 : 名無しさん :2019/01/05(土) 23:33:05 74uwuSts0
>>537

【そうして見つめ合うしばしの瞬間を、また海月の一匹があぶくに巻き込まれながら彩っていた。奪い取った体のメニューを眺めるなら、背もたれに身体を預け】
【少しお行儀悪くも投げ出す風の爪先を音もなくぱたぱたしながらドリンクメニューを一から十まで眺めるのだろう。――ちらと遣った視線が、ちょうど上目遣いと重なって、】
【ぱちり瞬くなら、メニュー表で口元を隠したまま、目元に笑みの予感をさせるのだろう。元から甘く垂れた眦をもう少し甘く蕩かすなら、間違いなく恋人同士の色合い】

そうですよ。好きなのぜーんぶ、頼んでよくって。……。お腹いっぱいになるまでキャビア食べたーい、とかは、ちょっと、泣いちゃいますけど――。
私とサメのお母さんが泣いちゃいます。――そしたら、私もなんか食べたいです、鶏肉とか……。……これって辛い奴でしたっけ。辛いの、あんまり、ダメなんですけどー。
……ダメなんですけど、好きなのは好きなんですよね。あーと、えっと、さ、サンドイッチ? えーっと……これ――。

【えへんと胸を張る仕草が決まりきらないのはやはり本人の気質なのだろうか。きっとおそらく多分サメに泣くための機構などないのだけど、気にはしないから】
【覗き込み指差していたのはジャークチキンだった。ウェイターをちらちら横目に焦ってしまうなら、メニューはじっくり決めてから店員を呼びたいタイプらしかった】
【あわあわしながら結局欲しいと訴えるのは辛い鶏肉と店自慢の手仕込みローストビーフのきれっぱしをふんだんに使ったと謳い文句のサンドイッチで、】
【――幾分か、というより、相当焦ったらしいから、数十秒後にはサンドイッチの具も忘れていそうだった。それはそれとして、美味しそうな写真は添えられていた、というか、】
【おそらく写真が載ってるから反射的にこれにするって言った気配があった。ついでに今のタイミングでデザートまで聞かれれば頭が爆発してしまうはずであって】
【それでも爆発なりに決めるならチョコレートケーキがご希望だった。――。おそらく片隅に小さく記載された洋酒使用の文字には気付いていなかった、なら?】

――――ねーねー。アリアさん、お手紙入っていた時、びっくりした? 字体とか、変えたんですよお。紙も、ただのメモみたいなのにしてー。
でも、私だって気づいてくれてなかったら、どうしようって。だって、何にも言ってこないから……。そしたら、今日、来てくれなかったらどうしようって。

【そうして注文を終えるのなら、――少女はごくにこにこしながら、そんなことを尋ねるのだろう。ごく武骨なメモ用紙に要件だけを書いたお誘い、確かに字体は違っていたけど】
【やたらめったら何かを気にしてそわそわにまにましている少女を見れば誰だって分かる問いだった。バレてないって信じてるのは一人だけ、子供ぽい笑みばっかしていた】
【――今もおんなじ笑みをしていた。気づいてくれてなかったらどうしよう。それで来てくれなかったらどうしよう。――サプライズも不発じゃ意味がない】

――ふふ。やっぱり私のお姫様、かわいい。

【お行儀悪く机に肘をついていた。指を絡ませて、隠したつもりの口元はごく甘たるい笑み。蜜漬けの眦だって柔らかに蕩けてしまうから】
【珍しいネイルアートに指先を伸ばして見たりもするのだろう。爪を一つ一つ全部眺めたら次は変な占い師みたいに掌まで確かめるのだから、浮付いたテンションであるのは、間違いなく】


542 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/05(土) 23:39:41 WMHqDivw0
>>538

【箱に気付くよりも先に此方に向かってきたのは、こいつ的には合格。だけれども】
【毛布の向こうからふんすふんすと荒い鼻息の音ばかり、響かせるだけだった】
【まんじゅうみたいに丸まったまま、その表皮が綻びはじめるのはたっぷり数十分後、】
【躊躇いがちにぺらっと捲って、そこからそろそろ腕を伸ばして。相手の腕をつかまえる】
【そうしたらずるずる引き摺り込んでいく、温もりきった毛布の中、さらにそれから「一枚」内側】
【じじじ、とジッパーの開く音がしていた。そんな音が鳴るのは毛布の中では一か所だけだった】

………………………………やっぱり、おっきいほうが好き?

【急いで着たから下着も何もなし、素肌の上に羽織っただけのジェラートピケ。そのトップス】
【パーカーの形状になってるそれの前を開いた音だった。すなわち、その内側にあるのは】
【温もりきって汗ばみはじめてすらいる素肌だった。肉付きの薄い胴体、その中で】
【一番――とは言っても本当に申し訳程度にふくらむだけの、胸元に、相手の手を誘導して】
【さわらせて、恨みがましい涙声を一言。それから、つめたい、って勝手が過ぎる文句を言ってから】

【べつにそこが肝要ではなかったはずなのに。でもなんでだか、負けたくないとか思ったのか】
【とりあえずは毛布に染み付いた香りが上書きされていくことだけが嬉しくて、しばらくは、そのまま】


【――そうして夜になっても微妙に機嫌は戻らなかった。早々にベッドに入ってしまって】
【さっきしたみたいに布団を頭まで被って、話し声を聞かないように、努めていた】
【うまく眠れなかった。喉の奥がごわごわして目がピリピリしてお腹がざわざわする感覚】
【寄り添って抱き締めて宥めてくれるまできっと、穏やかな寝息なんて立てない。それはきっと、】
【「嫉妬」という感情から来る不安なのだ――ということすら、こいつは、知らなかったのだから】


//長いことありがとうございました、おつかれさまでした!


543 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/06(日) 00:05:34 LKwPAQt20
>>540

【離れる身体。その間際に目に留まるのは白銀の煌めき、柔らかな息遣いと揺れる胸元】
【本当に怒ってる訳じゃないと察したのは幼げに拗ねる少女の顔色とそれに見え隠れする愉しみから】
【だからだろう。ずぶぬれの子犬の様相が少しだけ晴れやかに柔らかなものになっていったのは】


ああ、ちょっと待っててな。
急かさなくても―――、ってやっぱり"さっきの"でどっか痛めた?

大丈夫かいっ!?――――――、……って脅かすなよ、心配した私が馬鹿みたいじゃないか。
今の私はそこら辺の素人の三文芝居でもアッサリ騙されちゃうんだから、……つーか兄貴って何だよっ!?
私は乙女ですぅ、兄貴呼ばわりしないでくんない?どうせならお姉さまとかお姉ちゃんとかさ、言ってくれると……


【"って何いってんだろーね、私。ぷっ、あっはははははっ"なんて釣られて笑うから】
【さっきまでの表情はどこ吹く風か。少女と同じように幼く、無邪気に笑い合うのだった】

【だってお互いに悪い子だから。しかも互いに自分の事、お姉ちゃんですって豪語するなら】
【お詫びの印、まだ手を付けてないお高いメロンが乗った皿を"はい、どーぞ"と屈託無く笑って差し出した】
【出会った時から今に至るまでどれだけ互いの胸を涙で濡らしただろうか。でも今、こうして笑い合えるなら】
【流した涙にも意味があったって思えるから。でなければ、笑いすぎて目尻に微かな涙を浮かべる彼女は居ない】


ああ、半分といわず全部食べて元気全開にでもなっておくれよ。
可愛い妹分で大事な親友に病室のベッドは似合わないからねぇ、無邪気に燥ぎまわってる姿の方がよっぽど似合ってる。


【あくまで姉は私ですって事を遠回しに口にするあたり大人げない】


544 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/06(日) 00:21:39 n2sxNqtI0
>>541

【慌て頻りの仕種を見るに ─── も少し時間を作っても良かっただろうか、と。えも言われぬ苦笑だった。開き直りに押し込んだ呼鈴ではあったとしても】
【それでも万事が恙無く決まるのであればそれ以上のことはなかった。アリアは笑っていた。ならば少女も笑っていた。青い流し目をウェイターへ遣って、待ってくれるかしらと無言に尋ねて】
【 ─── イカもタコもホタテも、極めて海の幸がふんだんなピッツァだった。トマトとチーズのマリアージュが交わるなら、どう作っても不味くなる事はないのだろう】
【デザートはストロベリーソースのシェイブドアイスを選んでいた。やはり何処までも山盛りな掻き氷であった。冬に食べるには不相応でも、2人で食べるなら相応というものだった】
【よく見ればどうやら分け合うビバレッジにも何かしらの甘いリキュールが使ってあることにもアリアは気付いていないようだった。 ─── それでも既に酩酊と等しいようなものだった】
【一頻りの注文を終えればウェイターは立ち去っていった。どういう間柄であるのかはどんな不孝者から見ても明白であった。蕩けた眦に応じるのは、やはり蕩けた眦でしかなかった、から】


「驚いたわ。 ……… でもね、」「やっぱり、嬉しかった。 ─── 嬉しかったの。」
「貴女がね、 ……… 貴女から、私のこと、求めてくれて。」「デートのお誘いを、かえでから貰えるなんて、思わなくって ─── ふふ。」


【青く穏やかな光の中、僅かに小首を傾げつつ、滔々と女は語るのだろう。愛しげに湿ったソプラノは、閨所にて名前をささめく音階に等しく】
【 ─── 熱くなった膚を如何にかして冷やすように、長く細い掌と手指を、色付く両頬に添えていた。それでも化粧の落ちぬよう、触らずに】
【夢遊のように少しだけ俯いた視線の行く先は尚それでも少女を見つめていて慕わしさを隠そうともしなかった。その白貌が如くの若く蕩けるのを見るのは少女に許された特権であった】
【それでいてやはり見つめ合っていなければ収まりが付かぬのだった。擡げた瞼と瞳の愛嬌は、しなをつくるような上目遣いだった。詠嘆のように漏れる吐息が、両耳より垂れた白銀を揺らした】



        「大好きよ、かえで。」「 ─── 貴女の為なら、私だって、お姫様になりたいの。ふふ。」



【 ─── 告白は雌らしく上擦っていた。徐ろに少女の指先を手繰り寄せるのは、女の指先であるのだろう。深紅のマニキュアに彩られた五爪を、纐纈よりも懇ろに包んで、己れの口許へと】
【そうして手の甲にそっと口吸いを捧げて、リップと幽かな内出血を残すのならば、敬愛と服従のキスであった。 ─── 媚びるような上目遣いすら、求めるように眇められていた】
【然らば宣告であるのかもしれなかった。貴女の身体に隅々まで、消えないものを残したいの。こんな光景を見せられてしまう海月は、ディナーの到着を待つより他がない】


545 : 名無しさん :2019/01/06(日) 00:25:03 74uwuSts0
>>543

大丈夫ですよ。私、これでも、丈夫なんですよ? おかげ様で、いっぱい骨折れましたけど、元気ですし。
……だって、こういうのって、兄貴いーって言うじゃないですか。チンピラが二人組で……わざとぶつかってきて……兄貴いてぇよお!って。
あれって、絶対、骨粗鬆症ですよね。そうじゃなかったら、脱臼癖がついてますよね。肩。脱臼ならともかく、骨粗鬆症だなんて、まだ若いのに……可哀想……。

…………えー? ダメです、エーリカさんは、お姉さんって感じ、しなくって。

【えへんって胸を張る仕草。――それでも匂わすのは重傷の名残、あと少し何かが違っていたらへし折られた肋骨が肺を貫き穴あき風船にしていたっておかしくなかった】
【関節という関節を逆さまに折られたにしては確かに元気すぎるくらいに元気なのは彼女の能力やらの関係もあるのだろう。それから、あとは、やっぱり、たっぷりの手厚い治療と】
【それからこうして構ってくれる人が居るから。――架空のチンピラの骨密度に思いを馳せるくらいには元気。それってつまり、もうきっと、めちゃくちゃ元気】

【――だからこそ"しれ"っと、ダメですけど、みたいな顔、しているのだけど。ダメらしい】

わあ、いいんですか? やったー、後は、ちょっと、アリアさんの分と……。……。……だめですか? ダメなら、いいですけど――。せっかく、なので……?

【それでメロンを貰うなら、やっぱり嬉し気だった。ちっちゃい子犬がぶんぶん尻尾を振ってお尻まで揺れちゃってるみたい嬉し気な顔、したなら】
【――どうやら大好きな人にも食べさせてやりたいらしかった。いくらかを食べたら後はしまいこんで、二人、クッキーでも食べましょうって誘うような目もしていたけど】
【"それ"はどちらかと言えば父親に甘えてお菓子を買ってもらうときの長女みたいな目だった。――つまるところ、自分の都合いいほうに現実を動かしたいときの目、だから、】

――――もう、私のこと、なんだと思ってるんですか? 私は、エーリカさんみたいにわんちゃんじゃないから、そんな風にはしゃがないです!
ほら、私、窓際で……深窓の令嬢というか……高嶺の花というか……。そういう感じの……。が似合う顔、してるのでっ。尻尾ぶんぶんはエーリカさんに、お任せかなあー。

【確かに顔つきはそんな顔をしていた。きゅと唇を噤んで、物憂げな伏し目をして机の木目でも数えていたら、十分に"映える"顔をしているのは、たしかだろう】
【それでいて中身はUFOから出てきたばっかりの宇宙人みたいなテンションをしているんだから詐欺もいいところだった。薄幸の令嬢詐欺。にまぁと笑う顔、程遠い】


546 : 名無しさん :2019/01/06(日) 00:53:41 74uwuSts0
>>544

【めいっぱいにわあわあした注文は、きっとクリスマスイヴの夜には不釣り合いなほどだった。いくらか多く頼んでしまってもきっと食べてくれるって信頼があった】
【――彼女は特別にたくさん食べる性質ではなかった。OLでもやっていれば自分で詰めて来たサラダとスープジャーと小さいおにぎり二つですべて片付くタイプに違いない】
【それでいてよく食べる想い人と食卓を囲むのなら、最近は少しよく食べるのかもしれなかった。――それでも自分のメンテナンス方法はよく分かっているし】
【何より体質的にそう肥るタイプではなかったから。――。なんて余談だった。誰も気づかぬアルコール度数を誤魔化すにも甘さだけでは足りないから】

――なら、良かったです。その、あの、普通に誘っても、良かったんですけど。……。"こういう"方が、なんだか、いいかなって――……。
………………。……あれ。もしかして、――、バレてました? おか……おかしいな――あれ、わ、私、……バレてないって、思っ、……えぇ?

アリアさん気づいてたの? ……、えぇー……。…………。

【もはや耳に馴染みすぎたソプラノはそれでもテーブル越しであるのなら、なにかを保っていられるのだろう。ごく気恥ずかしいように笑って吐露する何かが、】
【――周回遅れにて何かに気づいて、少しだけ訝る目をした。小さく漏れる吐息。尋ね返す声はいかにも恐る恐るという風であるなら、ひどく恐ろしいことを聞かされたみたいに】
【――――倒れこむみたいな温度にて椅子の背もたれに身体を委ねるのだろう。膨らました頬っぺた。ならば心底正体不明の鵺を演じているつもりだった、らしくって】

【じとり批難がましい眼が向いて、数秒。甘やかな上目遣いに小さな呻き声をしばらく発していたのだけど。「――言ってくれたらよかったのに」。言われたところで、困るけど】
【だから結局自分の不手際を恥じて顔は真っ赤であるのだろう。ならば口付けた水のコップ。微かに柑橘の味がした。――後でその顔真っ赤にしてやる、と、心中にて呟くから】

私だって、大好きで――アリアさんはいつだってお姫様です。だからもっと、うんと甘えてくれてもよくって……。…………――。――。もぉ……。

【ぷーっと拗ねたような頬っぺたは、それでも長続きするはずもない。告げられる告白に緩んでしまうのなら、空気など溜めておけるはずがない。なら】
【格好良くって可愛くって狡かった。なら格好いいところも可愛いところも独り占めしたくなってしまって自分に困ってしまう、そんなに欲張りな子だって知らなくって】
【格好良く振る舞うのはまだ少し覚束ないけれど、――こんなに可愛らしい女の子のためなら、乗馬クラブの体験コースに申し込んだって良かった。白馬ってどこで借りるのかしら】
【――手の甲に口付けられる頃には、黙ってしまうのだろう。わずかに俯いてしまうなら、向ける視線はどうしようもなく潤んだ上目遣い。エスコートするべき王子様はお姫様に敵わない、みたいで】

【口紅と内出血の赤が交じり合ったような掌を指先に擦るのは何か恥ずかしさの誤魔化しなのだろう。仕返ししてやろうかと画策するなら、その刹那に飲み物が届くから】
【――果たして甘さという飲みやすさに誤魔化してしまうなら、アルコール度数に気づかぬこともあり得るのだろう。下戸はそのままでも、近頃は酒の感覚には慣れてきつつあり】
【ましてこんな場なのだから、――――つまりは気づかぬまま口に含んでしまうのだろう。企みが破綻せぬ程度で済めばいいのだけど。なんて、彼女らは気づかぬのだから】


547 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/06(日) 01:42:07 h7nAXcQg0
>>344
ふ、ふ。それはいい。欲しかった称号だよ
さて、聞いていたかどうか……だが、そうだろうな。あの時のお前の目線から見れば、私はどう動くかわからない爆弾だっただろう
私としても、あの時のお前との出会いには蚤の心臓が縮み上がる思いだったが

ふっふふふ……そうだな。お前は確かに、そういうのは柄じゃあなさそうだ
次は、そういう時に陣頭に立つのが得意そうな相手を見繕うとしよう

【まったく、お互いにそんな思いを抱いているのだから、つくづく妙な話だ。肉屋にとっても、彼女は出会ってからこれまで】
【恐るべき相手として、敵対すらしておきながら、今は身内を除けば誰より近しい気すらしていた】
【お互いに言い出すことはないのだろうが。ともあれ、彼女が置かれた運命はその頃からすでに数奇だったのだろう】

【他に誰もいなかったから、慣れない交渉役までやる羽目になって。だから次は。そう、次があれば、その時はもっと他にやりようもあったのかもしれない】


――――そうか。いや、そうだろうな。すまない、余計なことを言った

【そう、彼女が。セリーナがこの場にいれば、事態はどれほどか違っただろうか。ないものを求めたって、仕方がないけれど】
【だから、それも泡沫の夢。今、自分たち以外に誰もいないこの酒場のように】

へびさまの方は、お前ほどには悪い子にはなり切れていないといったところかね?
お前がそう望むなら、言わせずに済むさ。何せ、神様の望みだからな
ああ、そうだ。全くその通りだ。だから、今は飯を食おうじゃあないか

【出来ることと、すべきことは違う。ならば、彼女はこうなるべきではなかったのだろうか。彼女自身にすら、それはわからないかもしれない】
【本当に稀有な例だ。だが、起こった。彼女が納得しなかった。ただ事実だけがある】

【それを飲み込むには足りないだろうが、それでも肉の焼ける音と香りは五感を刺激する】
【そうして、供された料理を見て、素直に食欲がわいた】

ありがとう。流石、美味そうじゃあないか

【シンプルながら細かい気遣いが詰まった料理は、やはり彼女が鈴の音の少女であることを示している】
【家庭的ともいえるが、だからこそ異形にとっては久方ぶりのまともな食事だった。手下たちの食事の面倒ばかり見ていたから】
【これで異形はテーブルマナーは心得ている。箸も、太い指で意外なほど綺麗に持って使った】

ある意味では、この酒場の郷土料理かもな
――――美味い

【肉片を口に運べば、舌に広がる旨味。自然と、美味だと言葉が漏れた。ワインも流麗な仕草で一口】
【箱の方は、彼女が気遣ってくれたならとても嬉しそうに笑って。三日月口から、舌らしき細長いものを伸ばして肉を浚った】
【カタカタと揺れる動きは喜びを伝えてくる。どうにも奇妙な食卓はしかし、確かなひと時の共有があった】

【――――それからは。時間をかけて、話始めるのかもしれない。お互いに、会わなかった間にあったことを】
【少女が神様になっている間、起きて来た様々なことを】

【さしもの異形も、未来は語れず。この先、この酒場で起きる『黒幕』の起こした悲劇と】
【それに対する、異形の精一杯の抵抗は、話の席に上ることはないだろうが】


548 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/06(日) 01:52:57 h7nAXcQg0
>>436
頼もしい限りだ!
手段も立場も何もかも違うが、脆い世界をどうにかしようとしている点では同志というわけか!

【表面上は笑い、しかし内面では歯噛みする。シェルターが完成した以上、当初の目的たる誘拐の遂行は困難となった】
【音が遮断されたことは、異形にとっても僥倖である。ノイズを聞かずに済むし、何より対峙する相手の本性を見られたのだから】


――――そっちが本来の姿かね? 先ほどまでよりもずっと似合いだ
少なくとも私の知る限り、ちょっとばかりという範囲に留まらないくらいに特殊に見えるがな
官僚よりも戦場の前線の方が向いていそうだ

シェルターにサイコキネシスと続いて、お次はどんなメニューをご馳走してくれるんだ?

【少なくとも、無頼の悪漢にとっては先ほどまでより遥かに接しやすい態度であった】
【議員たちがこれを聞いたら、どんな反応をすることか。腰に回した手をへし折られなかったのは、彼らの肩書きに利用価値があったからに過ぎないのだろう】

【大尉の階級は、書記官の称号よりよほど彼女を映えさせて】
【それに気を取られる間もなく、新たな一手が場にもたらされる】


【機先を制すことはならず。ロズウェルの光線銃は、隊員の何人かを麻痺させたものの、肝心の本命は撮り逃す】
【確かに、シェルターまでの道は空いた。同時に、ギターケースも開け放たれたまま】

全方位警戒!

【カニバディールは叫び、首に複数の眼球を生やして周囲を睥睨する。オブライエンはどこに?】
【配下たちも、武器を構えて見渡すが発見できず。ステルス機能か、あるいは。駆け巡る思考は、盗賊どもの動きを止める】
【次に仕掛ける機会は、オブライエンが有することになるだろう】


549 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/06(日) 03:25:29 h7nAXcQg0
>>468-469
不器用なものでね。隠匿性の低い、見た目だけは派手な悪事を重ねてきて、顔と名前は無意味に広まった
まあそれも、他の大きなニュースの前には隠れる程度だが

さあて、それはどうだろうな? 先ほども言ったが、私がしてきたことなど表面上目立つだけで大したことはない
触れられなくなるのは、単に他の囚人を守るためだ。服役している囚人を食い殺されては刑務所の方もたまらんだろう
私としては、想像するだけでゾッとするがね。人肉を口に出来ない生活なんて

【ガチガチと鋭い歯を打ち鳴らして見せる異形。現在の動きに詳しくないなら、より大きなニュースに埋もれるという点は事実だ】
【石化と拉致という行動も、今までとはかけ離れた特殊な事情によるもの。気がつかないのも無理はない】

よく言われる。図体に見合わず心臓のサイズは小さくてね
ふうむ、さて……人並みに慌てたり動揺したり、といった感情の動きは確かにあるようだが……
分類としては、強者の方に属するように見える。だが、単に個人の強さというよりは……
やはり、『乗り掛かった船』の存在が大きそうだ。単体の力とは別種の、もっと大きな『流れ』の一部……

【カニバディールは分析する。全身全霊で危険人物だと叫びまわっているような自分とも、うさん臭さがにじみ出ている〝P〟とも違う】
【先ほどまでの慌てぶりは演技ではないだろう。だが、それだけでは済まない何かがある】
【単なる個人の武勇とは違う、もっと大きな影響力のような。手数を武器にするカニバディールだからこそ、そんな匂いをかぎ取った】

【―――――そして、その予想は異形にとって最悪の形で的中する】

ほう、この場で見せてくれるのかね。それは光栄な――――!?

【耳をつんざくその音は、この場の空気を根こそぎ女性の方へともっていかんとするがごとく】
【その笑みに底知れぬ何かを感じた、直後。新たな気配がこの場へと踏み込んできた。自分への意趣返しのように】


【三つの人影。判を押したような外見の酷似。クローンか何かか。異形の脳裏をそんな言葉がよぎった】
【だが、思考は全てかき消された。彼らの胸に留められた、そのバッジを見た瞬間に】

――――!!!? バカ、な……!!

【彼女の余裕綽々の台詞も、ほとんど頭に入ってこなかった。大男の巨躯がよろめく。精神を直接殴られたかのように】
【彼女の意識が最初に〝P〟に向いていなければ、今度は異形が一切の余裕を失っていたことだろう】

……明示されずとも、聞き伝えている……ああ、ああ、確かに出来るだろうとも……!!
それが背伸びなどではないことは、嫌というほどわかる……!!
何せ、『アルターリ』よりはるか以前に、実際にやってのけているのだからな!! 『ホウオウシティ』の悪夢……

当の昔に、消えたものとばかり……ずっと、ずっと、今の今まで……潜伏し、機会を待ち続けていたというのか……!!
〝暴蜂(バウフェン)〟――――!!

/続きます


550 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/06(日) 03:27:07 h7nAXcQg0
>>489
世間的に見れば、とても良心的とは言い難いだろうがな
それに関しては図星だ。私は混沌の方が好みだね

……それについても、まあ一部は同意できる。完全な世紀末となっては、流石につまらない

【透き通ったように屈託のない笑みが不気味だった。その向こうに何も見通せないような透明】
【その上で、彼はコントロールされた混沌を望むというのだ。そのレールを敷くのは、自分たちだと言わんばかりに】

恐ろしいのは、お前も同じだと思うがね……
根本的な……それこそ、〝レール〟を引き抜くような手段か
原始的な力による闘争……それは、このタブレットに詰まったラインナップの数々というわけかね?

商品とは違って、個人的なプレゼントか? 担当営業によって中身が変わるというような?
なるほど、興味深くはある

【営業マンそのものな大げさな仕草を横目に、おススメの項目を眼前にする】
【金額の入力画面は、確かに盗賊としてのカニバディールを誘惑した】


>>ALL
【だが、そんな悠長な思いは打ち砕かれる。暴蜂から受けた衝撃も冷めやらぬうちに、更なる追い打ちがかかった】
【〝P〟もまた、この場を戦場に出来るだけの力がある。文明の利器。英知の炎。聞こえのいい言葉は並べられても、起こす惨劇は変わらない】

【手元のタブレットが伝えてくる。周辺の座標や地形把握は盗賊の基本。ゆえに、すぐにわかる。わかってしまう】
【今まさに、自分たちのいるここが。ターゲット】


――――蓋を開けてみれば、結局のところ一番の小物は私か……!!
お前たち!! 金を持ってすぐ来い!!

【カニバディールが冷や汗を隠さずに叫ぶと。その巨躯から湧き出すようにいくつもの人影が現れた】
【顔中にピアスを付けた彫りの深い男を筆頭に、異形の手下の主だった者たち。いずれ劣らぬ醜悪な姿だが】
【状況は理解しているのだろう。表情は深刻そのもの。そして、全員が大きなアタッシェケースを抱えていた】

【前門の虎後門の狼。ひとまず、前門の虎には交渉が通じると信じて】

〝P〟!! 今すぐ、ここでキャッシュで買う!! おススメを含め、ラインナップの兵器も選ばせてもらおう!!
せっかくの営業成績アップの機会を、この場で焼き払うとは言うまいな!?

【異形の配下たちがアタッシェケースを開け放つと、ぎっしりと高額紙幣が詰まっている】
【盗賊の分際で、財産は相当にため込んでいるらしい。その間も、カニバディールはジリジリと】
【蜂のバッジの面々から距離を取り、明らかな畏怖を含んだ視線を送っている】

【とんだ相手に手を出してしまったという、後悔を必死に押し隠し。それは、暴蜂がどれほど恐ろしい存在か、よく知っている証左でもあっただろう】


551 : ドラ ◆UYdM4POjBM :2019/01/06(日) 12:56:30 XqQAhkbc0
>>515

【やんわり諫められるドラは「まいった、まいった」と手をひらひらさせながら肩をすくめおどけた様子を見せると】


わかった、わぁーかったよ
OK、ひとまずきみのいう事を信じて飲み込むことにしたよ。どの道ぼくとしてはどちらでも構わない
おそらくバレバレだろうから隠しても仕方ないし言っちゃうが、ぼくは元より……きみみたいな女性が好みのタイプなんだよね

だからぼくを今日初めて見たというならさ……よりいっそうぼくの良さを知っていただきたいじゃないの
これからぼくのカッコいい所、アピールしてくからよーく見ときなよ―――……一応"紳士"のたまごだし?


【BANG!と指で鉄砲を作り小粋な様子でイスラフィールに笑いかけるドラ―――初めから素で悪戯好きな一面がありありと見える】
【趣味がよく分かったので、バンビちゃんのぬいぐるみの他にも二つ、三つと取り出し差し出してお土産にと送るだろう】
【大事に持って帰れるようにやわらかい布で作った手提げバッグまでつけて、だ―――】

【イスラフィールの理念はほぼ理解できた。戦闘時に力を貸す事に支障はない】
【一通り聞くとうんうん、とうなずきながら彼は言うだろう】


その辺は心配ないよ、ぼくはどっちかというと『呼んでもないのに来やがった……!!』と疎まれるタイプだからね
なるほど……前にジンジャー博士がやったみたいに先立つものをしっかり積み上げてから組織を立ち上げたわけだね
世の中の物事の9割はだいたい金でどうにかなるからね……そこがしっかりしてるなら大丈夫だろう

わかった!じゃあぼくの"W-Phone"の番号をきみに教えておくよ……いつでもかけて構わないよ
てゆーか考えてもみればぼくの家、水の国で"造った"んだしもしかしたらご近所さんかもね、歩いてウチにこれるほど近いんじゃないの?


まあそういう訳で、これからよろしくイスラフィールさん!ぼくが戦力に加われば損はしないよ!―――……まあ倍くたびれるかもしれないけど


【自分のじゃじゃ馬ぶりも自覚しており、それを隠すつもりもないようだが……ともあれ共に戦うことに支障はないと判断】
【紙に自分の水の国の住居の場所とW-Phoneの電話番号を書くと、そのままイスラフィールに差し出すだろう】


552 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/06(日) 21:54:10 6IlD6zzI0
>>545

いや、……あれ自己申告だし、……中には本当にそういうのいるかも知れないけど。

えっ?ダメ?……かえでが何と言おうとも年齢的にはおねーちゃんです。はい決定ー。
別におねーちゃんであることには拘らないし、年の近い親友同士で同僚って事でも良いけど。

【姉である事に拘らない。それはその通りなのだけど、年下に見られるのは何となく嫌だから】
【豊かな双丘をたゆんっと揺らして俗にいうドヤ顔でエーリカを見遣るかえでは何処となく愛くるしい】
【軽口を叩き合える状態であるのなら、もう十分に心も身体も元気になってるのだろうか】
【むぅーって唸り声めいた音を鳴らすのなら、でもそう出来るのは何気ない日常と変わらない】

【差し出すメロン、それをアリアの為に残したいというのなら快諾の意を表す彼女】
【代わりに出すのは詰め合わせのクッキー。おねだりする様な目をされたら尚の事答えざるを得ないから】
【――――どうやら彼女は泣き落としとか甘えた仕草に弱いらしい。あと嬉しげな仕草とか】

アンタも尻尾ぶんぶん振り回してわんわんって鳴かないとだめな身分だろうに。
自分だけ深窓の令嬢を気取るなんて吃驚するよ、このお嬢様風味のお転婆娘。
……まぁ滅茶苦茶な素がばれないでかつ黙っているのなら、そりゃあ見目麗しい令嬢だろーけど。


【クッキーに手を伸ばして、ひと齧り。……思ったよりも美味しいと思えた】
【でも、かえでの語る言葉に偽りありだろうと思って一言、"この宇宙人め"と軽い口調で】
【そんな他愛ない遣り取りを繰り広げたなら、お見舞いに来てから幾分時間が経った頃だろうか】
【余程の事がない限りは面会時間には制限があるからいつまでも病室に居られる訳ではなかった】


553 : 名無しさん :2019/01/06(日) 22:33:14 iinKRRn20
>>547

――――今からだって、名乗ってみせたら、きっと誰だって信じるのに。駄目だなんて言わないよ、だって、あなたは――。

【わたしが知る限り一番悪くって怖いひとなのだから。――そんな言葉は音にならない表情のままで伝えて、】

……そうだよ。"そういう"のは、次から別のひとがやったほうがいい。カニバディールは、特別だから。……だから、わたしにも、"できた"だけ。
ねえね、もし、あの日、お話に来たのが別のひとだったなら。……そしたら、どうしてた? こわーいひとたちに、そのまま、教えちゃったのかな。――なんて。

【伏した眼が曖昧に笑みのような色を宿していた。この奇妙な間柄を説明しようとするには、あんまりに、時間が足りなさすぎる。きっとそれまでに世界だって終わってしまう】
【だから曖昧な仮定を尋ねてみるのだ。――そのうえで、相手がどんな答えをしたところで、責めるはずもなかった。ただ、相手にとっても、自分に何か意味があったらきっと嬉しかった】
【分かつべきではないものを分かってしまった宿命なのかもしれなかった。――そうだったら嬉しいなんて言うはずもないけど。それでも。どこかに。微かに。そんな気が、して?】

――――――――へびさまは、優しいから。ばかみたいに優しくて、ばかみたいにいいひと。生きていくのにお願いだってほとんどなくって。……ただ一つだけ。
ずうっと昔に死んでしまっただいすきなひとに、もう一度逢いたくて。そのためにいっぱい頑張って。だからわたしが生まれて。……わたしはあの子の生まれ変わりだから。
だけど、わたしはもうその子にはなれなくて。……へびさまは、もう二度と、その子に会えなくて。わたしがここに居て。――でも、今のままだと。

――……ご先祖様には、優しくしなくっちゃ……、でしょ?

【或いは。彼女はとっくに自分のいのちに絶望しているのかもしれなかった。しかし死にきれぬ存在であるなら、なにか信じるものがなければ、生きてはいけなくて】
【生きる目標として定めたのが蛇への恩返しなのかもしれなかった。――自分が幸せになることで先祖に恩を返す。誰かと逢いたかったひとの気持ちを無駄にさせないために、】
【だから/ならば、今あるいのちを間違いだなんて言わせて許すはずもない。――供したハンバーグばかりがかえって異質であった。日曜日の夕方の匂い。みんなが揃う晩御飯の匂い】

どういたしまして、――。……ふふ。良かった。セリーナも、美味しいって言ってくれたの。――もちろん、ほかのお客さんも。子供たちも。

【――彼が食べるのをいくらか見てから、彼女も自分の分に手を付けるのだろう。笑みがちに横目で見るのは箱の食事風景。なにか貝みたいだって、ふっと思った】
【そうして話しながら食事を勧めるのなら。どこか重たげな表情は、彼女がそれらの情報にアクセスできない状況にあったのだと伝えるのだろうか、少なくとも、】
【ほとんどのことを全く知らないような素振りだった。――未来のことは誰にも話せぬとしても、十分なだけ情報はやり取りするのだろう。それが分かるだけ、充分であるなら】

【――――――かちり、と、時計の音が。もちろん二人は大人であるから門限など存在するはずもないのだけれど、】


554 : 名無しさん :2019/01/06(日) 22:53:29 iinKRRn20
>>552

煮干し食べた方がいいですね――。こう、なんか、でっかい煮干し? あるじゃないですか。あれを咥えながら、ぶつかって……。
そしたら、骨粗鬆症感も薄れて、いい感じです! だって、ほら、いきなりぶつかられて、兄貴ー!ってされても、この人カルシウム足りないのかな?ってなっちゃって――。
可哀想になっちゃってお財布の紐も縮こまっちゃいますからね。――まあ、私、そーいう、チンピラみたいな人。怖くないから、大丈夫ですけどー。

ダメです。――それに、私は年下かもしれないですけど、ホントにお姉ちゃんでしたから。ふふん。爽ちゃんのお姉ちゃんなんだから、今でも、おねーちゃんですよ?

【自己申告だとしても駄目らしい。それにしてもウルメの煮干しか何かを咥えながらぶつかってくるチンピラはどうかと思われた。――いい感じも何もなかった。なさすぎた】
【けれど真面目に話してないときの彼女だなんて"こう"なのだと、――そう遠くないうちにエーリカも学ぶのだろう。真面目に取り合う限りどこまでも突っ走るから】
【真面目に取り合わなくても独り言で楽しそうにしているのだけど。思考回路がたびたび混線するタイプらしい。"ムリフェン"だったころは本当にもう少し令嬢っぽかった、のに】
【――いつかは本当の"おねえちゃん"だったからと言い張るのはなかなかに苦しい言い訳だった。それでもどこまでも彼女はきっと"爽ちゃん"とやらの、姉であるなら、】

わーい! アリアさんもきっと喜びます。エーリカさんが持ってきてくれたーって、自慢します! うふふふ。ありがとうございます。
だから今度はブドウとかもいいな――。ほら、高い奴。あるじゃないですか。すーっごいおいしいけど一房が二千くらいするやつ……。あれがいいです。
モモもいいなあ――まあ、そんな怪我はしたくないですけど。エーリカさんも、駄目ですよ?

【――アリアの分もとっておいていいとなれば、やっぱり少女は喜んで。ラップとかあればかいがいしくかけてやるのだろう。なかったら、……あとで誰かにもらうから】
【そのくせに次の瞬間には次はブドウが食べたいとかモモもいいとかいろいろ喋って。――最終的には当たり前の現実に帰結する。誰も怪我なんてしたくない。当然のこと】
【だからエーリカも気を付けてだなんてふうな声と表情で彼女は言葉を締めくくるのだ。それこそイイカンジに纏めた風を装っていた。なにか少し厳かな顔すらしていた、なんて、】

やーでーすー。それに、後藤さんには言ってありますよぉ。私アリアさんにしか興味ないですーって言ったの。
まあ、アリアさんにわんちゃんするのは、ヤじゃないですけど。でも、アリアさんも、あまえんぼさんだから……。……。

そこらへんは"女の子"なのでだいじょーぶです。ふふっ、こう、場をわきまえてますから。あのね、少しだけ下を向くのがコツなんです。これくらいの睫毛の角度で……。
。なんていうか生理二日目の痛みをこっそり堪えてるみたいな感じの顔して……こうやってちょっとだけ口角を下げて……。――こうです。

【ならばひどい"飼い犬"だった。いっとう気高い銀狼に懐いて付いてきちゃった子犬みたい、尻尾ぶんぶん振って見せるのは、よほどレアであるらしいなら】
【――まあとにかくそれでいいならいいのだろうと思われた。本当にいいのかはよく分からなかった。……し、多分、きっと、彼女もあんまり興味がないのだろうから】

【そうしたらやっぱりめちゃくちゃなドヤ顔をする。宇宙人だなんて言われたらごく拗ねた顔して、「宇宙人じゃないですー」とか言って、だからかえってムキになる】
【だから"実践"して見せるのだろう。甘やかな垂れ目の瞼をごくわずかに伏せるなら、長い睫毛が眼差しを翳らせる。紺碧に深い影を落とし、かえって色の鮮やかさを際立たせ】
【あどけない顔を物憂げに染めるのなら、真っ白な頬など陶器だと信じてしまいそうなほどだった。色薄くそれでも瑞々しい唇の、口角を沈痛そうに下げるのなら】
【最後にぽつんと黙ってみせて、完成する。――――。そうしてみるのなら、すり替えマジックを疑うみたいに、ほんとに、別人みたいに、儚く仄暗い少女性、纏うようで】


555 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/06(日) 23:32:20 E1nVzEpQ0
>>546

【変わらぬ穏やかな微笑をアリアは浮かべて憚る事はなかった。 ─── 狼狽える云為がそうなるのだと、恰も知っているような笑顔だった。】
【掌の上で踊らせていたと形容するには慈愛に満ち過ぎていただろう。我が子の挑戦を見守る母親の振舞いであると呼ばうのが適切であった】
【気付いていたのと聞かれて、瑞々しい唇は特段の言葉を返さなかった。ただ悪戯げに緩められた、幽かに色付く頬の白さが、全てを代弁し】
【下弦を象る明眸が、ふくよかな涙袋を愉しげに潤わせていた。 ─── 上目遣いを映しこんで、尚も深く澄んで煌めく、片眼鏡の奥の独眼】

【膨れた頬を突ついて凋ませるだけの距離はなかった。揶揄おうにも勝手に詰めた息は抜けて、にへらと蕩けた笑みになるのであれば】
【まして捧いだキッスは果てしなく柔らかに湿っていて、 ─── ほんの少しだけ、誰にも見えぬよう露わにした舌先で、白肌を舐って】
【手袋をしていたのかもしれない。左手だけを匿していたのかもしれない。兎角、アリアは少女の右手へ口付けていた。ごくごく悦ぶように艶やかな目尻のまま、囁く言葉は】



「 ─── その顔が、ね」「わたし、見たかったの。」



【 ─── 気付かぬふりをしていたのも、優しい口付けを落としたのも、これから何処かに少女をいざなうのも、詰まる所はそれが理由であった】
【少女の薄っぺらな微笑ばかりをアリアは知っていた。多少なり己れは彼女を愛でて、屈託なく幸福な表情を知っていた、のだとしても】
【ひとかけらの奉仕さえ必要としない、無償に与えられる愛情というものを、きっと女は教えたがっていた。 ──── なんて】
【詰まる所はポーカーフェイスの聖女に己れしか見たことのない感情を示してほしいという動機へ帰結した。神よりも深い独占への欲求だった】



  「今でも沢山、甘えているのよ?」「こんな事をしてあげられるのは、かえでだけ、だから。」
   「でも、貴女に甘えてもらうのが、大好きなの。」「ずっと、ずうっと、甘やかしてあげたくって。幸せでいて、ほしくって、 ……… 。」




【やがてテーブルに置かれるのは矢張り大きく背の高い杯であった。トロピカルグラスに注がれて、ハーブとチェリーに彩られた青いカクテル】
【果肉と共に沈む粘度の高い紅色はストロベリーのリキュールであるようだった。夕暮色のグラデーションは、澱んだ深紫を境目として】
【 ─── 少女に倣って、アリアも片方のストローを咥えた。媚びるような上目遣いを、ひどく嬉しそうに色めく瞳へ囚えて、離さずに】
【アルコールの純度はそこまで高い酒ではなかった。ましてや恋心の甘さしか理解させないような味わいであるのだから刺すような酒精は覆い隠されていた。それでも喉越しに鬱陶しさはなく】
【ストロベリーがブルーハワイと綯交ぜになる頃には、半ばテーブルを埋め尽くしてしまうような大きさのピッツアが、運ばれてもくるだろうか。節操のない飲み方をさせるには相応しいカクテルであろう。であれば、】


556 : 名無しさん :2019/01/07(月) 00:29:32 iinKRRn20
>>555

【ならば初めてのお使いにて与えられたミッションは想い人のサプライズに驚く顔であったのだろう。小さな子が言葉巧みに家から出されるのに似て、】
【けれど子供じゃないから、気づかれていたって。見守られていたって。知ればちょっとくらいは不機嫌ぶっても見るのだ、それでも、素のまま繋ぎたい右手だけが肌色をしていたから】
【ましてや右利きであるなら、食事の際は余計にそうすることが多かった。火照る頬を血液越しに冷やしたくてお冷を飲み干しても未だ赤い頬が拗ねた感情を宿したまま、】

いじわる……。

【頬杖突いて不満を表明するだけが彼女に出来る唯一の行為になってしまうなら、少女はめいっぱいに拗ねて見せるのだろう。梃子でも動かない素振りして、口付けに蕩けてしまうなら】
【今でなくても良かった。ただとにかく口付けの約束をしてほしいのに違いなかった。それでも拗ねて弄くる爪先から少し目を逸らせば、口紅の付いた手の甲がまさにそれ、であり】
【今日はめいっぱい王子様みたいに振る舞うって決めていた決意が端っこから解れていく音すらする気がした。こんなはずじゃなかった、――はず、なんて?】
【――そもそもサプライズがサプライズでなかった時点で、"こんなはず"からは逸脱していたのだけど。気づく余裕もないなら、ぱっと出す手が、相手の分のお冷まで強請って】
【駄目でなければそのまま飲んでしまうのだろう。――――アルコールを飲むときはチェイサーを用意することが常なのだけど、やはり知らぬなら】

だって、もっと、お姫様みたいにしてあげたくって……。私はいつも、してもらってるから――、してもらってるじゃないですか、だから、
それに――、……。いっぱい甘えてますよお、たぶん……ですけど……。えっと――足りない、ですか? ……よく、分かんなくて、その、

【だってきっとお姫様にされてみたいのだと思っていた。それに自分ばかり甘やかされるのは何か落ち着かなさを覚えてしまうのは、長女の性質なのか、個人の性質なのか】
【いっぱい甘えてるつもりなのだと真面目腐った顔が言い放つのに嘘はなくとも、実際のところ、彼女はそんなにべったりと甘えて仕方ないタイプでもなかった、なら】
【膝に乗っけられてロシアンブルーの子猫みたいに可愛がられるのも好きでも、おんなじくらい一人ベッドに転がって読書に耽るのも好きであり】
【――足りないですか、なんて、やはり真面目な顔が訊いていた。"すき"が分からないと泣きじゃくる声にて告白したあの夜はうんと遠い過去でないのだから】

【上擦る思考回路と甘やかさに誤魔化されてしまって、そうしてまた気恥ずかしさを誤魔化すために、――それから最後に、好きな味だったのだろう。仕上げに無警戒と油断をトッピングして】
【何か食べる前の下戸がしてはいけない勢いで飲んでしまうなら。――。うんとおっきなピザが届く頃にはいやにぼおっとした目、しているに違いなく、】
【そうしたら本人も何か違和感に気づいてドリンクメニューを手繰り寄せていた。――数秒おいて「うあぁ」なんて声。現実が追い付く音、】

――――――これ、お酒入ってるじゃないですかあ、……アリアさんの意地悪――……。もお……。ダメなの、知ってるのに……。
ストローでお酒飲んじゃいけないんですよっ、それっくらい小学生でも知ってます、紙パックの焼酎マジヤベエってパパが言ってたもん……。

【――――ならば、どうにも彼女は、"分かっていた"アリアにハメられたのだと思ったらしくて。すぐに頬っぺただって真っ赤になってしまうから、やっぱりお酒には弱すぎて】
【口元に添えていた手の向こうからちっちゃな呻き声がしばらく漏れていた。飲んでしまったものは仕方ないと気づくまでの儀式に等しかった。なら】
【ぶつくさ言っている間に辞書くらい分厚いようなサンドイッチも届くのだろうか。それから辛いチキンも。――――、】

サクランボ、私がもらいますからね。ミントはアリアさんにあげる。

【カクテルに添えられた飾りの処遇を勝手に定めれば、それでなにか納得したらしかった。――食べ物が食べごろを逃さぬ程度、一分にも満たない沈黙であり】
【ふわふわした指先ではあるけれど、食事するにはまだ困らぬ程度であるのだろう。それでもかあっと赤い頬と潤んだ眼差し、ずいぶんと効率のいい身体だなんて】


557 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/07(月) 07:42:51 5p38.LtA0
>>508

「救出作戦に関しましては、外務八課が特殊作戦を考案している様子ですね、我々も共闘を打診しましたが、どうにも技量が不足のようでして……」

【専門的な知識と経験、そして訓練を要求される作戦】
【そちらは、完全に外務八課の手にゆだねられる形となるのだろうと】
【杉原も、チラリと百合子を見たが、再び視線をディミーアへと戻し】

「本当か!?文書によれば夕月ってのとつがるってのは接点があるらしいからな、夕月に接触できればつがるとも接触できるかもしれない」

【錯乱からもう持ち直した百合子が、今度は答えた】
【この状況において、お互いの役割分担は決まったと言えるだろう】

「これ、私と杉原の連絡先だ、何か進展があったら連絡してくれ」
「外務八課へは此方から連絡しましょう、近く一堂に会する機会もあるやも知れません」

【そう告げて、小さなメモ紙を手渡す百合子】
【何も聞くことがなくば、このまま二人は立ち去るだろう】


558 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/07(月) 08:47:15 5p38.LtA0
>>511>>512

「おいおい、それは……マジか?マジで言ってるのか?」
「確かに、数こそ30から6と現実的な数字となりましたが……」

【相手はあくまで軍艦、艦隊同士による海戦ならばいざ知らず、生身の能力者対軍艦】
【一隻であっても、余程強靭な能力者で無ければ難しかろう、と】
【あるいは、艦内の海兵達の数もこちらの比ではない筈だ】
【どうあっても、厳しい戦いを要求されるだろう】
【スケールの大きな話に、思わず目を剥く二人だった】

「……確かに、作戦としては理に適っていますね」
「乗艦しての内部からの各個撃破、なるほど、あのパワードスーツ、あれお前か?なら対人戦闘技能も申し分無さそうだな……」
「さらに本隊からの分断と継戦能力の奪取、表と裏の連動した両面作戦、時間稼ぎ、そして首魁を叩く……軍学のフル活用ですね」
「だが、その作戦だが、誰かの小さな一つのミスでも全ての致命傷とならないか?」

【アーディンが提示したのは、まさに完璧な、完全な戦争のプランだった】
【だが、完璧であるが故に、誰の一つの、どんなに矮小な失敗すらも許されない】
【その部分に、不安を感じたのか、百合子が訝しげにこう聞いて】

「よし、外務八課との関係性は何とかなりそうだな」
「ええ、何かあればこちらの連絡先にお知らせください、早急に対応致します」

【パイプは繋がった】
【前代未聞の共闘戦線となるであろう、この事象だが、連携は確実に出来上がっている】

「同じく軍事的な覇権を狙うレヴォル社、何だか嫌な予感がしますがね」
「ああ、シャッテンとか言ったか、事情は知らないが……あまり自分を追い詰めるなよ、話なら聞くから」
「ん?おい、ちゃ?」

【少し考えるように、伏目がちに答える杉原に】
【シャッテンの、やはり尋常ではない様子を気にかける百合子】
【そして、アーディンに意味ありげに見つめられれば、きょとんとした顔で小首を傾げるみらい】

「解った、最も……陸戦隊の本隊相手に正面から立ち回る奴が小悪党ってのは得心行かないけどな」
「それだけに、やはり只者ではないと言う事でしょう、無論、険しい交渉の場となるでしょうが、光明は御座います」

【話はカニバディールの事となるも、一筋縄ではいかない人物と言うのはありありと伝わり】
【アーディンが考える通り、間違いなくカニバディールもまた、今後の戦いにおいて、重要な立ち位置となる人物に違いない、と】

「なるほど、リオシア二等兵とは……意外ですが、偶然の接点とは、彼女はこの国で中尉達に保護され現地登用された様ですね、少々生い立ちも複雑な様です」
「いやあああああああああああああッ!!あ、ダメ!これ怖い怖い!!あ、全部来た!!あああああああああああ無理いいいいいいいいいい!!あ、ちょ、ちょっと何処触って!?あ、いや、ダメええええええええええええ!!!!ああああああああああああああ!!!!」

【リオシアとの偶然の遭遇、これもまた運命めいた物を感じる】
【一方でシャッテンの影の腕は10本で百合子を囲み、絶叫が悲鳴へと変わる】
【やはり騒がしい事に変わりは無いようだ】

「はあはあはあ……あ、危うく新たなプレイに目覚めてしまう所だったぞ……」
「勘弁してくださいデコ軍曹」
「あ?お前今デコっつった?」
「言ってませんよデコ」
「言ってるだろうが!!あとせめて軍曹付けろ!!肝心な部分が消えてないんだよ!!」

【腕から開放されればそんなやり取りを始める二人】
【なるほど、確かに旗から見れば軍人というのは疑わしいかもしれない】

「ああ、その認識で間違いないな」
「無論、端末での連絡は密に行いますが、我々は幾らか定期的にここに顔を出したほうがいいでしょう」

【服装を整えながら、そうアーディンの質問に答える】
【ある程度、頻繁とはいかないかも知れないが、それでも、でき得る限りは密に店に通うことになりそうだ、と】

「じゃあな、後の連絡は端末に入れる」
「お邪魔しました、今後の事、よろしくお願いします」
「それと……ステーキ旨かった、次も注文するぞ」

【やがて帰り支度を整えれば、店を後にするだろう】
【芽吹いた共闘の結託と、そしてこれから起こる比類なき動乱と戦いの予感を残して】




//お疲れ様でした、ありがとうございました
//この辺りで〆でよろしいでしょうか?


559 : イル ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/07(月) 15:44:01 arusqhls0
>>517

【断末魔の生き様に似ていた、白鼻芯の如く甘やかな白に、相応しい紅潮の彩り、或いは悪徳】
【栄える冥合の塵と塵を、剰え愛と呼ぶのであれば、その二方の契り程に、愛に相応しいものはなかった】
【触れる頰


560 : ベルガー ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/07(月) 15:57:21 arusqhls0
>>529

【少年の表情に浮かぶは驚愕、けれどもそれを、寸刻の間に押しとどめた ────── 噛み締めた奥歯の痛み】
【鮮やかな痛みが視界を照らす、目の前に存在するのは、現世の理から外れたもの、ならば】
【拳に残る確かな感触、直撃だ、振り抜いた右腕越しに相手を見た、──────】


っ ───!! 成る程、キミの醜悪な姿に見合った、醜悪な従者だね
飼い犬は飼い主に似ると言うが、その真理はどうやら正しく通じるらしい
だが、お生憎様、─── 所詮は鎖に繋がれた野生、牙を抜かれた獣に怯える程、俺は柔じゃない


【彼は振り抜いた右腕を眼前に構える、三つ首の狗に敢えて噛みつかせる様に】
【狗が噛み付いたならその腕の真実が曝け出される、牙で破れたジャケットの下から、見えるのは】
【頑丈そうなガントレット、並の牙であれば傷つけることさえ出来ないほどに】


そうだろう、キミが本当に獣であると言うのなら、こんな鎖容易く噛みちぎってみろよ
本当の獣性はそんなもんじゃないだろう、思いも信念も執念も全て捨てて、──────
ただ一つの獣になる、それが本当の獣性なんだ

分からないなら、鎖に繋がれた家畜が、丁度いいでしょう


【寸刻、足元から出現するは “柱” 三俣に分かれたそれは、トライデントに近い】
【そうして襲いかかる三つ首を、それぞれ一本ずつ下から貫こうとする】
【鋼鉄製の柱、────── それこそが彼の能力だろう】


561 : イスラフィール ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/07(月) 16:12:14 arusqhls0
>>551

【白百合ばかりの花園に、悪戯心の撫子を交えたなら、きっと今の彼女に相応しい】
【今の今に至るまで彼女は一流の淑女であり、飛び切りの令嬢であり、比類する者のない高貴であった】
【でも、いまその瞬間だけは、─── あどけない少女の様に、表情を綻ばせた】


ふふ、ドラ様はお世辞が上手ですわ、冗談と分かっているのに私は心がドキドキとしてしまいます
貴方様の様に逞しく雄々しい殿方に好かれるのは、誠に嬉しいものですから
ええ、楽しみにしております、ドラ様が私にたんと、貴方様のカッコいいところを、見せてくださるのを


【彼女はお土産を見て、わぁ、と声をあげそうになる、瞬きの合間にそれを飲み込んで】
【こほん、と咳払い一つ、まぁ、と言い換えて、大事そうに抱きかかえるだろう】
【眼鏡の奥の理知的な瞳が和らいだなら、大きな瞳が鮮やかに可憐な蕾を付ける】


頂いたものは仕方ありませんわ、やっぱり返しては無しですから、ええ、もうだめです、私のものです
私がお前たちに立派な名前を授けますから、立派なうちの子になるんですよ?
えいえい、─── ああ、もう、可愛いですね ──────

先人から学ぶのが賢者の流儀です、良い手本は見本にし、悪い手本は教訓にする、失態は一度以上必要ございません
此方こそご覚悟を、と申し上げましょう、ドラ様、貴方様が選択されたのは、言わば茨の道
決して楽ではない選択肢ですわ、─── それでも宜しいのですね?


【彼女はそう言って手渡された電話番号を丁寧に仕舞い込む、一つ一つの仕草が洗練されて】
【それは茶道の所作に似ていた、呼吸一つ、瞬き一つ定められた作法がある様に】
【彼女はまるで、美しく振る舞うのが使命であると言うように、その彩りを飾り立てる】


562 : イル ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/07(月) 16:20:16 arusqhls0
>>517

【断末魔の生き様に似ていた、白鼻芯の如く甘やかな白に、相応しい紅潮の彩り、或いは悪徳】
【栄える冥合の塵と塵を、剰え愛と呼ぶのであれば、その二方の契り程に、愛に相応しいものはなかった】
【触れる頰


563 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/07(月) 16:32:38 arusqhls0
>>517

【断末魔の生き様に似ていた、白鼻芯の如く甘やかな白に、相応しい紅潮の彩り、或いは悪徳】
【栄える冥合の塵と塵を、剰え愛と呼ぶのであれば、その二方の契り程に、愛に相応しいものはなかった】
【優しさに偽りはなく、然れど真実もない、都合の良い優しさ程、傷つける心はないのだから】

【だから彼女は誠心誠意、キミに見せつける、優しさの衣を剥がした醜い真実を】
【あまりにも深い愛情が傷つけずにいられない、身悶えする程の疚しさが、貴女を殺すまで】
【輪廻の果てに蘇った貴女へ、不可侵の鼓動を突き付けたかった】




だからボクはキミを愛そう、だからボクはキミを愛してる、だからボクはキミを傷つける
苦しんで欲しいんだ、綺麗な綺麗なその顔が苦痛に歪む姿を見ていたい、苦悶に捩る姿を見ていたい
だってそれは美しいんだもの、醜悪と醜形と醜聞に、ボク達の本質が詰まってる

ボク達はキミを傷つけずにはいられない、そうして永劫の苦しみの底で、キミが死ぬ事を願っている
そうしてまたキミは戻ってくるんでしょう、─── そうしたなら、またキミを殺してあげる
やがてそれすらも楽になったなら、ボク達の中に矛盾はなくなるんだから


【それはあまりにも矛盾した理論と、破綻した理屈と、破滅した論理によって導かれた】
【けれども、反転した世界の中ではそれが道理になる、と、彼女は言外に伝えたい】
【有り余る愛の果てなら、─── 苦しみは楽になり、痛みは喜びになる】

【私たちが肉欲の妄執に取り憑かれている以上、その理由だけを求めよう、僅かばかりの躊躇いもなく】
【彼女は両手を取って、貴方の頭上で一纏めにする、そして覆い被さるのだろう】
【特等席で見ていたかった、貴方がどこまでも苦しむのを】


564 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/07(月) 20:13:32 oFkCLf9I0
>>557

よし、お互いにやることは決まったな
殺されてくれるなよ。さっさと反撃といこうじゃないか

【メモ紙を受け取ってローブの中にしまいこむ】
【それからディミーアは周囲に目を配りながらフードで顔を隠し、ビルの出入り口へと向かっていった】

//乙です!


565 : ◆KP.vGoiAyM :2019/01/07(月) 20:22:37 Ty26k7V20
>>539

そう。だから、多くの人は時代を超えてシェイクスピアをみて
涙を流し、ドストエフスキーで何かを思う。誰もが皆同じ思いをしているからこそ、だ。

…それは嬉しいことなのか悲しいことなのかはわからないけど。おそらく、そうだね。
少なくとも300年後の未来に生き残ったボクですらこの時代の誰とも変わらない者を持っているんだから
この時代に生きる妖怪ならもっと同じものを持っていても不思議じゃない。

うん。僕は、この幸せな世界を終わらせることだ。幸せなうちにね。
終わらずに忘れ去られてしまうよりずっと。幸せだと思うから。

【氷柱の当たったところに手を当てて、痛そうな表情をしながらも彼は笑う】

だって…危ないじゃないか。他の人に当たったりしたら…

あ…そうか、ごめん。カノッサ機関の一員だった。


【彼は笑っていた。一切の悪意のなさそうな表情で。だが、未来の話になれば打って変わって】


…この時代は転換期なんだ。虚神や、魔能制限法なんかが同時に起きて多くの因果が絡み合っている。
だが、誰がこの時代の勝者になったところでその結末は300年も経てば過程が違うだけでどれも一緒なのかもしれない。

僕の居た時代はある人物が魔能制限法をつくった派閥を打倒した。だがその先の未来は戦争に次ぐ戦争、伝染病の流行
…力を持った人々による支配。それに反抗する人々の争い。そうして、破壊の限りを尽くした後、残った瓦礫で僕は暮らしてきた。

汚染された大地や水は植物は育たない。技術はもはや何も残されていない。あるものを残されたヒトが奪い合ってなんとか生きている
けど、それも時間の問題だ。希望の一欠片も残されていない。…そんな世界に僕は能力者として生まれた。


何かがあったんじゃない。…何もなくなってしまったんだ。


566 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/07(月) 20:28:09 5p38.LtA0
>>564

「それはこっちの台詞だ!」
「それでは、外務八課との連絡がつきましたら、ご連絡いたしますよ」

【ディミーアと同じく、周囲を警戒しつつマンション跡から出る二人】
【動乱の火は確実に広がり……】






――水国レヴォル社本社前――


「さて、アポ無しという物ではあるが、果たして会えるかな?」
「……存じません、相手様にも予定はあるでしょう」

【アルターリの件は、もはや知る人ぞ知る物であるが】
【このレヴォル社本社前に、この日二人の人物が立ち、そして中へと足を踏み入れんとしていた】
【一人は純白の詰襟軍服に幾つもの勲章とモール、櫻国海軍司令長官、蘆屋道賢】
【もう一人は感情も光も消えうせた瞳の、少女だった、言葉にも抑揚はなく、感情もなく、ただ淡々と話し、楚々として佇み、櫻国の所謂着物は黒く、髪は短く切り揃えられて】

「では、参ろうか『果心』ブランルと言う男を訪ねに……」
「その名前で呼ぶのは止めて下さい」

【二人は社の硝子の自動ドアの向こうへと、足を踏み入れた】


//お疲れ様です、ありがとうございました!


567 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/07(月) 22:08:44 E1nVzEpQ0
>>556

【 ─── わざとらしい不機嫌さの表象さえも慕わしくて仕方のないようであった。意地悪であると咎められて、些細な角度で傾げられた小首と、揺れる白銀の煌めきが答えだった】
【自棄っぱちに飲み下される御冷の行く末も許していた。 ─── 姫君のように持て成したいのだと胸を張られて、それを無為にするのはアリアも本意でなかった。然して】
【結局は愛らしい貴女を蝶よ花よと愛でていたいという欲求が先んじてしまうのであるから仕方のない話であった。待てと命じて待っていられるほど狼は飼い馴らせるものではないのだから】
【銀色の背後で泳ぐ熱帯色の小さな魚群も水槽越しでなければ貪ってしまうのが道理というものなのだろう。テーブルの上をなぞる指先 ─── とん、とん。愛撫に似て、立てる柔らかな音】


「 ……… こう見えても、わたし、寂しがりなのよ?」「 ─── かえでには、ずうっと甘えていて、ほしくって。」
「かえでは、1人でも大丈夫だって言うから、切なくって ─── 。」「 ……… ただ、知って欲しいの。わたしの、"すきなこと"、 ……… 。」


【 ─── 苦しげに湿り、だというのに掠れる語末の温度の、なんと生温い事であろうか。慈しみに満ちた微笑へ、淡い悪戯の半ば混じる音階】
【然らば半ばは本心であった。少女の気性を殊更に辛抱させる事は好ましくなくも、己れに望ましく歪めてしまえるなら吝かではなかった】
【もう少しだけ欲しいかしら。 ─── 艶めく目尻が強請っていた。姫君の願いを叶える王子になりたいという少女の切実な内心を厭らしく擽ろうとしていた】
【それでいて本質としては姫君よりも王子よりも余程に爛れた行為を望んでいるのであるから狼でしかないのだろう。誤魔化した積もりの微笑を、青い瞳は捉え/囚え続けていたのだから】

【ストローの先で軽くステアしながら、 ─── アリアもまたカクテルを啜った。ショートの勢いで飲むような一杯ではなかった】
【だとしてもアリアはアルコールの味わいには慣れていて、啜った舌の上で転がす甘美さの中に、何が秘められているかも理解していた。それでも、知っていて、掣肘はせずに】
【飲み終えた時点で緩やかに企みげな口端を緩ませているのであるから悪辣であろう。戸棚の赤ワインを偽りに飲ませるよりも余程に残酷で、慈愛に満ち満ちて、また零す軽やかな笑いの質料】


「 ─── ふふっ。」「可愛いわ。」「大丈夫かしら、王子様?」
「酔いどれちゃっても、いいのですから。」「わたしがお家まで送ってあげるの。ふふ、 ……… 。」


【とん、とん、とん、 ─── やはりテーブルの端を、愉しげに叩く指先であった。責めるような少女の目付きさえ、濡れた瞳中に呑み込んで】
【青く静かな室内灯に照らされて尚も鮮やかな、唇の端を微かに舐り、果肉の残滓を舐り取る舌先。唇にてらつく唾液を残す音さえ淫靡で】
【 ─── 何の事はないのだろう。階段一歩分だけ品のない、少女だけが見る事を許された御転婆さであるのかもしれない。然して、そうでないのならば?】


      「 ─── はあい、」「どうぞ。」「あーん、して?」


【言うが早いか ─── カクテルの底に落ち込んだチェリーを、摘まみ上げるのはアリアの指先であった。机上に肘を立て、少女の口許へ伸ばし】
【然して親指と人差し指で、そのままに果実を包んでいた。くす、と微笑む息が漏れた。眇められた隻眼は、穏やかな青色のヴェールに覆われて、尚も嗜虐を燻らせていたから】
【ごくごく愉しげに歪む目尻はどうすべきであるかを半ば命じているようなものだった。長い爪先が仄かに果皮へと食い込んで、白い指先より酒精の混じる紅い果汁を滴らせていた】


568 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/07(月) 22:31:17 WMHqDivw0
【深夜:繁華街――から枝分かれして、けれどそう深く潜り込んでいかないうちにあるような】
【言ってしまえばだいぶ下品なネオンの立ち並ぶ通り。風俗店であるとか、その紹介所であるとか】
【そういうのばかり並ぶ道であるなら、「そういう」用途に使う宿屋さんだっていくらでもあって】
【ご休憩とご宿泊。ふたつのメニューが並べられた看板が、びかびかする電球に照らされていて、――】

――――――――〜〜〜〜、〜〜〜〜〜〜♪

【その出入り口からひとりだけ出てきた。本来ならふたりで出入りするようなその場所でひとりきりだと言うなら】
【一仕事終えた、「そういう」商売の人なんだろうとは思うだろうが。それに似合った顔とカラダをした女だった】
【――けれど何か、ひどく異質な部分が目立つのだ。機嫌のよさげな鼻歌は、流行曲のメロディーをなぞるのに】

【仕事終わりの商売女に似合う、安っぽいニオイがする黒髪ショートボブ、もみあげだけがやたら長くて銀色】
【そういう奇抜な髪型に目を瞑れる程度には、「残り香」があった。ホテル備え付けの低品質なシャンプーでは消せない】
【鉄錆と脂と、あとは何かしらの腥さ。ゴキゲンたっぷりにひょこひょこ揺れる髪先から零すように匂わせて】

【服装だって何だか妙だった。前をきっちり閉めて着込む、ファーが揺れるフード付きのモッズコート。そりゃあまあ、】
【この季節に着るなら何らおかしなものではないのだが――問題は下半身だった、長い裾から伸びる脚】
【まっしろい素肌を、爪先までまるまる晒していた。タイツやストッキングのたぐいはおろか、靴下も、靴すら履いてない】
【裸足でぺたぺたコンクリートの地面を踏み締めるなら、さぞかし寒かろうに。けれど震えのひとつも見せてない】
【吐く息ばっかり白いから、この世界は確実に冬になったってわからせるのに。防寒具の類はコートしかなさそうで】

……………………あ、今のお星さまカナ? んーん、よくわかんないや……ただの飛行機だったかもぉ。

【けれど浮かべる表情は限りなく楽しそうに笑んでいた。どこかあどけなさすら見せる顔立ち、しかし確実に処女の気配はなく】
【菫色の瞳が無遠慮な照明に照らされるのにはひどく慣れているようだった。あは、と笑い声を零すなら、白い息に変換され】
【それを突っ切るようにスキップ。したかと思えばぴたりと止まってまた天を仰いで――きゃはは、とまた笑って】
【およそ素面の人間がするような動作はしていなかった。酒か薬か、知らないけれど、何かしらに酔っているらしい】
【そう、きっと、何かしら。未だ髪先から零れ落ちていく異臭の源がきっとそうさせたのだと、思わせる程度には――】


//再利用のお引越しみたいなやつです……。


569 : 名無しさん :2019/01/07(月) 22:34:20 ggy2rRXY0
>>563

【――――げほ、と、水っぽい咳を漏らすなら、それは半ば嘔吐であるのかもしれなかった。それとも受け入れたはずの貴女の唾液、身体が本能的に拒むみたいに】
【けれどどこまでも気持ちと身体は矛盾するから、なにか吐き戻そうにも吐き戻せない。或いは単なる忌避であるのかもしれなかった。たとえ神様に愛されたとしても心は拙く】
【べちゃり転んで折ってしまった脚をきちんと治せなかったなら、きっと醜い脚になってしまうのだろう。ならば歪に拉げたままの心、今からどうしたって治せない】
【治せるはずない。――それでも真っ先に外敵に襲われる弱さを嫌った。他のみんなみたいに走り回れる脚が欲しかった。そう戻りたいって願った。なら、】

――――――――っ、あ、ぃ、――っ、る、ちゃ、くる゛、し、……。…………。

【――もしかしたら、病だなんてやったことがないのかもしれなかった。"だいたい"の場合、彼女の身体は良い状態に保たれる。――故に死すら覆す仕組みであるのなら】
【身体中の不快感痛み苦しみ辛さに身悶えてただ無意味に身体を撫でつけ時として苦痛からの逃避として肉に爪先を喰い込ます指先を捕まえられ、掲げられ、抑え込まれれば】
【彼女はきっとひどく絶望した目をするのだろうか。――人間として死んだ日も。自分が化け物だと気付くきっかけの死も。それ以降の全部も。何度死のうと苦しみは苦しいまま】
【けれどただの一度だって"こんな"風に死んだことはなかった。大好きな人の病に罹患って。恋患いすら生易しいものに苛まれて。愛しい人に見守られて、――、なんて、】

【真っ白な肌は蒼褪めきっていた。色違いの眼差しから流れる涙がただひたすらに透明なことすら無慈悲と思える様相。いっそ赤い涙でも流して見せたら、救いもあったのに】
【(そんなはずはないのだけど、そんな風に思ってあげたくなってしまうから)、】
【譫言の唇から漏れる言葉を手繰る必要もないのかもしれなかった。――強いて辿るのであれば、「ごめんなさい」「くるしい」「イルちゃん」、それらが主であるのだろうから】


570 : 名無しさん :2019/01/07(月) 23:01:29 ggy2rRXY0
>>567

だって、――、……アリアさんが寂しがり屋さんなのは、知ってます、けど――。……。だって、本を読んだりするときは、一人が良くて。
一日の内に、一人ぼっちで膝を抱えてぼおっとするような時間が無いと、私、嫌です。――、だけど、構ってほしい時は、いっぱい、構ってほしくて……。

【ならばやはり彼女はスズランの花に実る朝露のような生き方が好きなのかもしれなかった。夜のうちにこっそり貯めこんだ潤みを朝の鮮やかさに煌めかせて、そうして気づけばそこに居ない】
【気質は十分に気まぐれで、そうしてちょっぴりと呼ぶには少し行きすぎる程度には、変人ぶって。――伝えているのはどこまでも我儘だった、それでも至極真面目な色合い、】
【一人がいい時は一人が良くて。そうじゃないときは二人が良くて。幕越しに見る二人がいつまでだって一人であるには、もう少し放浪癖があって、仕方がなくて】
【そうかと思えば、泣きじゃくるような甘え声で、身体中どこだって触れてほしいと強請ってやまぬ夜もあるのだから。だからやっぱり気まぐれなのかもしれなかった】

【――――、「もっと?」】

【何か困ったような、それでも薄皮一枚向こうに感情を隠した表情をしていた。"すきなこと"はたくさん知っているって言いたげな目をしていたし、】
【誰かに聞かれたら当たり前だって言って胸を張るのだろう。そのくせ本当は二人きりの時は、もっと弱気になってしまうのだから。――もっと知りたい、けど、】
【ちょっぴりの悪戯の気持ちで尋ねているんだった。ぼうっと赤い頬っぺたはアルコールのせいだか化粧のせいだか分かりやしなくて、ましてや、恋慕の色なのかも、きっと、】

――――――だめっ、駄目です、イルミネーション見ないと嫌です! お家に帰るのはその後じゃないと、絶対、イヤで……。
――だ、って、クリスマスのデート。なら、イルミネーション行くじゃないですか、やっぱり、王道は押さえておかないとじゃないですか、だから……えっと……。

【――だから、とにかくまーっかであるのが確かだった。そうして直帰しないと告げる声がいやに意地っ張りな気がした。ぐうと眉根を寄せて揺らす首は酔いのせいなのか】
【いくらか不明瞭な言葉を紡いでいた。やっぱりカップルはイルミネーションだとか。そういうのも一回くらいはやってみたいだとか。――、ならやはり隠し事は下手だった】
【きっと何かあるのだと容易く知れるのだろう。――ぶちぶち言い訳しているうちに、気づけば、その眼前に示されているのは、真っ赤に染まるシラップ漬けの果実、なら、】

――もうっ、とんだお姫様ですね、そんなじゃ、そこらへんの王子様じゃ、敵わなくって……。私じゃなきゃ、釣り合わないですっ、こんなの……っ。

【酒に塗れた蜜漬けの赤さと同じくらいに真っ赤な頬をして発する言葉は言い訳なのだと思わせた――噤んだ口元、噛んだ唇の端っこがなにかわなわな小さく震えて仕方ない】
【ならどうしようもなく潤んだ目と下がり切った眉の角度が言外に命じられる仕草を理解していたし、理解するよう躾けられていた。――躊躇いがちに開く口元、】
【濡れた粘膜の色合いに真っ白な歯をちらつかせて。真っ赤な舌先はやっぱり愛情の苦さを知っているから、艶めかしく。――、せめて勢い付けるのが仕返しだったなら】
【その指先すらわずかに口に含むのだろう。唇で食むように捕まえたなら、ちらりと舌先でキスするように触れて、逃げる。頬張るには小さすぎる果肉は、少し甘すぎる気がした】


571 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/07(月) 23:30:12 BRNVt/Aw0
>>565

……うん、昔の読物でもそれに描かれた人間模様がいつの時代でも読む人々の心を打つっていうのはそういう事……なんだよね?
でも、何だか釈然としないなぁ……嫌いな奴と同じ思いを抱えてるっていうの、なんか嫌なんだけど……
【少女はじとりとした目でため息を吐いて】

そう、なんだ……
確かに幸せなら幸せな内に終わらせた方が良いのかもしれない……
知らない事を知らないままにしていた方が幸いだった、なんて事だってある、し……
【呟いた少女の表情がふと曇る。何か、恐らくは自分の身に遭ったその様な事案でも思い出してしまったのだろう、頭を勢いよく振って】

【青年の屈託のない笑顔に少しばかり呆れ顔になりながら「……貴方本当に機関員?」なんて尋ねるも】
【そもそも300年後から来ているのだし多分その時代ではまたカノッサ機関の概念が違っているのだろう、と自己完結したらしく】

何だろう……もう……貴方はそのままでいれば良いと思う、うん……
【何処と無く生暖かい目を青年に向ける】

【けれども話が彼の来た未来の事となれば険しい表情となり】

……多くの因果……確かに、色々と起こり過ぎてそれが絡み合ってしまっている節はあるんだよね……
でも、300年後の結末は誰が勝者となっても一緒かもしれない……か……
魔制法を作り出した派閥を打倒した人物はいたけれどもその未来は明るいものではなかった……
【そうなんだ、と呟きながら少女はふと思案する】
【派閥とは水の国の政治家の派閥を指すのか?否、今対峙する人物は曲がりなりにも機関員なのだから『黒幕』と『円卓』という機関内での派閥争いが嘗てあった事は知っているのかもしれない、と】
【その真相はさておき『黒幕』が何者かに打倒される未来が存在する、という情報は彼女にとってはある意味朗報ともいえた】
【けれども──それは同時にある懸念をも生じさせて】
【『黒幕』を討ち滅ぼしたのが思い浮かんだ"彼ら"なのだとして、其処に"彼女"はいるのだろうか?もし其処に"彼女"がいないのだとすれば】
【──あの子は何の為にあれ程までに傷付いたの?】

その人物が掴んだ未来が絶望に満ちていたというのならば──

それは人間が何度も繰り返して来た歴史の過ち、なんだろうね

何かを変える為に悪を討ち滅ぼした者や王と為った者が権力などに溺れて結局酷い未来を創る……
人間はきっと、いつまでも変わらないんだろうね
【それもまた貴方が言う人はすべからく同じ思いを抱いていきる、という事なのかな、と少女は呟いて】


572 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/07(月) 23:36:30 6IlD6zzI0
>>554

【少女と言葉を交わす内に薄々察した事があって。真面目に取り合う限り無軌道な会話が展開され続けるという事】
【でも楽しいから苦では無かった。血みどろのヘルエッジ・ロードを綱渡り続ける人生からすれば心休まる花畑だったから】
【もう少しだけ。少女の無軌道に振り回されても良いって思えたから。穏やかに、それでいてやや呆れた顔で】


くくっ、そんなのダサいよ。世に蔓延るチンピラが揃いも揃って煮干し咥えてたら威厳ゼロじゃん。
それにそんなのに当てられたってカルシウム不足よりもおつむが足りないのかなって思う方が先じゃない?
………まぁ、私もチンピラ風情が何匹集まったってちっとも怖くないけどねー。


【やがて表情を崩してくすくすと笑い声を零すなら。他愛無い会話を楽しんでる証拠で、会話に意味を求めない少女同士である】
【本当に姉だったと告げるかえでの言葉だって否定しない。初めて聞く子の事なんて知らないから。かえでが姉だというのならそうなのだろう】


こらこら、わがまま言わないの。お見舞い品目当てで入院してるんじゃないんだから突拍子もない事はだーめ。
怪我なんてしたらあの人も私も心配で心配でたまんないんだからさ――――、でも……私の事を案じてくれるのは嬉しいな。

私も数か月前に辻斬りに遭って胸を袈裟懸けに切り裂かれて入院してたんだけどね。
入院生活なんて暇すぎたし、沙羅って言う年増女のクソ上司しかお見舞い来なかったし、しかも嫌味だけ残して足早に去ってったしで散々。


【"未だに胸に傷が残ってるから水着とかは着れないな"ってやや伏し目がちに力なく笑いながら首を少しだけ横に傾けて】
【やや厳かな顔をするかえでを見遣る。どこまで本気かは知らないけど、でも。この子はどうでも良い人間にはこんな顔しないって知ってるから】
【言葉を素直に受け止めるエーリカであった。……たとえいい感じ風を装ったものであったとしても】


【やがて少女は今日一番のドヤ顔を見せつけるなら、化け猫の様にもの憂げで儚い少女の装いをする】
【内心どきりとした。かの狙撃手と一戦交えた時の遣り取りが脳裏を過るなら、それはその通りだと再認識して】
【でも、それは所詮装いだから。えいやと右手を伸ばす。伸びる先は少女の頬っぺた。そこに行き着くなら、彼女の指先は少女の頬っぺたに】
【柔らかく沈んでいくのだろう。"えいえい、深層の令嬢風だなんて化けの皮被ってんじゃないよ"って揶揄いながら】


573 : イル ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/07(月) 23:51:41 arusqhls0
>>569

【花盗人は許されるのは、その美しさに敬意を払ったから、それならば穢してしまう事は許されるのだろうか】
【繊細に組み上げられた可憐という名の楼閣、鈴音の美しさとはそれに過ぎた、陽炎よりも儚く、泡沫よりも尊い】
【だから壊してしまいたくなる、貴女を抱き締める、キミを摑


574 : 名無しさん :2019/01/07(月) 23:53:27 ggy2rRXY0
>>572

えー? でも、美味しいですよお。煮干し。カルシウムも摂れるし、美味しいし。おダシもとれるし――、あとはネコちゃんが喜びます。ふふっ。
それに、ほら、医食同源って言うじゃないですか。お魚にだって脳はありますから。ちょーっとはマシになるかもしれないですよ?
――だって、前に、流行った歌あったじゃないですか。ほら、魚を食べるとおいしいみたいな歌。

【――――こんな女の子みたいな温度と距離感、本当に久しぶりなのかもしれなかった。それくらいに頬っぺたが緩んでいた、素の彼女なんてきっとこう、なんだけど】
【さらにもう一枚壁の内側にまた少し違った顔も隠しているのだから狡かった。ひらり翻るスカートの中に見えるのは結局布地であるみたいに。ならばその内側の彼女は、】
【きっと愛しい人にしか見せぬものであるのだろう。――――魚を食べると頭もマシになるかもなんて言っているなら、曲の歌詞だってきっと覚えているはずなのに】

当たり前ですー。怪我はしません、だって、ほら、こんなにお肌だって綺麗なのに……。メロンだけじゃその損害は賄えないですからっ。
まあ、これが、国とか……世界とか……とかだったら、まあ、ちょっと考えるかもしれないですけど。うふ。そしたらね、私と手を組んだ暁には世界の半分をあげます。
とりあえずー、私が素敵な方もらうので、勇者には素敵じゃない方をあげますね。五十パーから上は私で、五十パーから下は勇者ですね。ばっちりで……、……。

……エーリカさん、怪我してたの? ……もおっ、なんで言わないんですか、えっと……お見舞い……。

………………お見舞い……。

【えへんと胸を張る仕草。曰くこんな麗しい白肌を傷つけられて手に入るのがメロンだけじゃー到底釣り合わない、だなんて、自信たっぷり、言い切って】
【ただし見舞いの品が国とか世界なら少し考えるらしかった。――。古の魔王みたいなことを仰る。そのくせ古の魔王より薄汚いことを仰っている】
【――そんな顔が、はたり、と、停止するのだろう。えっ、なんて小さく声に出したら、水着とか着られないほどの傷――というのはだいぶ重傷じゃないか、なんて、】

【少し慌ててから差し出すのがアソートクッキーの一つだった。思い切りエーリカが買ってきてくれた奴だった。――申し訳なさげな上目遣い、はともかくとして、】
【お見舞いにしてはいささか遅すぎた。というよりその人に買ってきてもらったものでお見舞いしようとするのがおかしかった。――それでもこの部屋に他に何にもないんだから】

――――――――――――ふやっ!? ――なにするんですかあっ、せっかく、せーっかく、薄幸の令嬢〜梅雨のある日〜バージョンだったのにいっ……。

【――――ほっぺた突かれれば、そこからぺりぺりって化けの皮だって剥がれてしまうのだ。梅雨のある日バージョンとはそもそも何なのか。真夏のある日バージョンもあるのか】
【ぶすくれて膨らむ頬っぺたを改めて突けば、焼いたお餅みたいにぷしーっと空気だって漏れ出てしまうのだろう――なんて、】


575 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/08(火) 00:13:49 6IlD6zzI0
>>560


           あーあーあー、だらしねェ駄犬共め。クソの役にも立たないクズが。
      
      にぃ、しても。うるせえなあ。うるせえ。ご高説垂れる口は手前ェの目玉と同じくらい喧しくて煩わしいな。
       誰が口からクソを垂れ流して良いつったんだよ?クソ塗れの口から垂れ流すクソは一等臭くて敵わんぞ。


【駄犬と呼び捨てた三つ首の狗。冥府の門番のケルベロスを想起させる出で立ちのスキッツォイド・マンの切れ端は】
【少年の召喚した三又に分かつ鋼鉄製の柱にて貫かれる。その姿は喧しい犬の口に杭を打ち付けて黙らせるかのように】
【痛みを感じぬはずの三つ首は自分よりも強い力でねじ伏せられて声にならない声を漏らしながら霧散していく】


            あぁ、あぁ、あぁ。気に入らねえなあ。ソノ目、その口。
           その目、誰の目だよ。おい、そこのお前、オマエ、おまえェ?
            射殺す様な目でオレを見るな、見縊った目で俺を見るな。

              ――――見 る ん じ ゃ な い ッ !


【焦点の定まらない視線。薬物中毒者めいた胡乱な言葉、見るに堪えないその乱雑さ。忌々しげな口調】
【何も見ていない瞳は"像"として少年を捉えるけれど、今の今に至るまで一度も少年の中身を見ていない】
【ダグライツからすれば突如現れた人型の何かが喚いているとしか思えなくて。故に、雑音同然だった】
【兎にも角にも――――排除するべき雑音。不愉快極まりない視線を注がれているから、次の一手を打つ】


【"分裂しろ、スキッツォイド・マン"―――、そう告げたなら黒い不定形の人型は二つに分かれ】

【片方はダグライツの腹部を中心に纏わりついて巨大な蜘蛛の足のようなモノに変貌して】
【もう片方は黒い槍へと変貌を遂げる。その黒槍は一人でに浮遊してそれそのものが意思を持つかのような気配を漂わす】

【スキッツォイド・マンを纏ったダグライツは地面から壁へと伝って距離を取ろうとしつつ】
【それと同時にもう片方である黒い槍は少年へと襲い掛かる】
【勝手に浮遊して襲い掛かる黒槍は不吉を孕んで。貫かれたら肉体の内側で黒い獣が牙を向く様な不吉を予期させる】


576 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2019/01/08(火) 00:19:20 WMHqDivw0
>>295
【モニターの向こうでは、男がワインを片手にしていた】
【喋らなければ、何やら悪の秘密結社めいた雰囲気も出しているのかも知れないが。それでもどこか滑稽な、誂えたような似姿は拭えないだろう】
【一方で男からは、イスラフィールの姿はどう映っているのか】
【隠すこともなく身を以て語られる美しさを網膜に届けるには、隔絶された空間を繋ぐ映像は些か役者不足で有っただろうが】

そう、スナークは虚神だが、それを宿すイル=ナイトウィッシュ、またどうしようもなくヒトなのだ。
故に我らが放置することを赦してはくれない。

レッドへリングやアナンターシャが奴の手によって悪意を以て運用されたように。
本来であれば、悪食な物語に過ぎないそれらを現実の脅威として、使うことが出来た。


だとするならば、貴様の言う、"固執させられた"と言うのも強ち間違いではあるまい。

能力者達は従う必要のないルールに乗せられ、奴らの土俵で戦わざるを得なくなった――


【思えばスナーク自身もグランギニョルと言う存在に執心していたように思える】
【なれば、グランギニョルの基点とは、むしろスナークとイル=ナイトウィッシュだとさえ言えるかも知れないのだ】


まぁ、それはそれ、だ。
能力者達が虚神を追う理由は難しくもあるまい。

仲間を救うためであり、憎い仇を殺すためであり、今この時点においては、スナークとウヌクアルハイが気に入らぬから、と言うものだろう。


【世界を救うなどと言うお題目に拘っている者などそう多くもあるまい】
【鈴音自身が語っていたことだ。"世界は滅びない"。例え虚神達を放置したとしても】
【或いはスナークに飲まれている者達に取っての"世界"は終わるのかも知れないが】

私もまた極単純な理由で虚神を追っている。
奴らを構築しているロジックに興味が有る。
例え、それが危険な好奇心であろうとも、解き明かさないまま終わる謎などあってはならないだろう?


【好奇心は猫を殺すらしいが、猫は死んでも自分は死なぬと、男は確固たる理念で理解している】


それを言うならば、貴様もだ、イスラフィール。
再三疑問に思ったことではあるが、何故今になって虚神を追う気になった?


577 : ベルガー ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/08(火) 00:38:25 arusqhls0
>>575

【少年は冷めた目で男を見る、スキャッツォイドマンの異名通り、男が零すのは纏まりの無い散文】
【それでいて何処か機知を示す様なスキット、────── それが余計に鬱陶しい】
【だがその実力は不気味であった、霧散する狗を傍目に、彼の集中は男へと向く】


見られるのが嫌なら外に出ない方が良いです、そうすれば訳の分からない道理で殺人をする事もない
自分の中で完結するのは理屈じゃありません、他者も納得できて初めて理を生むんです
喚き散らして暴力を振りまく、────── 駄犬は何方ですか

貴方を躾けてくれる飼い主が居なかったのが残念ですね、我儘な小僧は大人になったら手の付けられない暴君になると言いますが

────── あながち、間違いじゃなかったみたいです


【醜悪な様相であった、蜘蛛の足、思わず眉を潜めるには十分な程に、けれども闘志は消えない】
【重力を感じさせない動きに困惑しつつ、彼は黒い槍へ対処する】
【トライデントの形をした柱が一旦消える、────── これが彼の能力か】


残念だけどお呼びじゃない、俺を捕まえるには少し大振りが過ぎますよ
一般人を傷つけて満足している内に、腕が鈍ったんじゃありませんか?


【身を大きく屈ませる、身体能力の高さが伺える、吐いた息が路地裏を濡らして、視線の動きを伝える】
【最小限の動作、けれども次の手が遅れる、アドバンテージは男にあった】


578 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/08(火) 00:38:45 E1nVzEpQ0
>>570

【「 ─── そう。」一握りの落胆をそのまま手放してしまうのであれば、それは悲しげにひずんだ白眉の影でしかなかった】
【然してそれが愛しい人を慮るが故の色合いであるかどうかは判然としなかった。 ─── 己れの欲望に沿う形へ、想う貴女を歪められるなら、それだって構わない】
【なればこそ問いかけに明瞭な答えは無かった。解るでしょうと静やかな微笑が教えて/躾けていた。きっと女の悪癖だった。昔話の狼は、決して無理矢理に肉とワインを口にさせなかったから】
【どのように道を封ぜられていたとしても結局おのれが選び取る決断ほど心を膝折らせるものはないのだと深く深く知っていた。 ─── 悦びに満ちて緩められた頬に差す赤みは、粧された物で】
【それだけ少女の内心を知悉しているのだから、あくまでイルミネーションに固辞する口振りを宥める事はなかった。「連れて行って頂戴、ね?」少しだけ酔いの回ったような、声音は】
【せめて少女の面目を立ててやろうという姫様なりの優しさであるのだろう。デートの出来不出来を採点するのは王子様ではないのだろうから、 ─── それでも、少なくとも】



     「 ─── ふふ。」「ありがとう。」



【耽美にてらつく咥内を見せつけて、甘えるように爪先まで咥え込むならば、女としては無謬の奉仕だった。 ─── 細められた瞳の輪郭に、いっとう嗜虐も垂ろうというものだから】
【ごく満足げに両端を吊り上げられてやまない唇を少しばかり解いて、僅かに舌先を曝すだろう。口許より遥かに紅くて艶かしげに、ざらついた湿り気の法悦を幾度となく教え込んだ色合いは】
【桜桃の果実よりも柔らかな白指を押し付けられて、留まる果汁と唾液の残滓を余さずに味わい、 ──── 「美味しい。」蕩かす囁きの色合いは、閨へ誘なう彩度に等しく】
【それでもここは喫茶店でしかなかったのだから、全ては生々しい暗喩に過ぎぬのだろう。今夜は斯うして貴女を嬲ってあげる ─── そんな宣告であるかどうかは、杳として教えぬ、まま】



 「"こういう"のだったら、かえでも嫌いじゃないのでしたっけ?」「美味しいものね。 ……… 今度、うちでも作ってみようかしら。」
 「ねえ。新しい家、暖炉なんてあったら、素敵じゃあないかしら。」「冬は程良く寒くて、夏は心地よく暑い所が、良いわよね ─── 。」


【意味深な代名詞が指す言葉の意味さえ疑わせた。 ─── 愉しむままに伏せられた視線が向かうのはピッツァへと。ならば火を通せば魚介も嫌いではないのかと問うているらしく】
【切り分けた欠けらをナイフで小皿へと運び、軽く折って淑やかに賞味していた。ほんの少しだけ前に甘い指先を甘く舐った口であった。舌の根も乾かぬ内であった】
【そうして会話はごく世間話の体裁に擦り変わるのだろう。 ─── 新しく買い付けようとする一戸建てについての話であるようだった。少女と共にカタログを開く機会もあったろう】
【櫻式の玄関と、大きな庭と、ガレージと、二階か三回建て。1LDKでは足らないようだった。それでいてローンで払うつもりは毛頭ないのだから、変わらず回遊に勤しむ海月でさえ、呆れるよう】


579 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/08(火) 00:40:04 6IlD6zzI0
>>574

【歌通りに魚を食べて頭が良くなるならかえでの例えのチンピラたちは一様に頭が良いという事になる】
【"―――私よりも頭の良いチンピラ。どんなホラーだよっ!"と思ったなら笑いが吹き出してしまう】
【一瞬だけ自分もポッキーの代わりに煮干でも咥えて頭良くなったろうと思ってしまったのが愚かしい、愚かしい】

【でもこの愚かしさは楽しくて。久しぶりに人らしい会話に興じている気がした。その後に見せるかえでの表情】
【誇らしげな可愛らしさから一転して心底心配げな表情に変わって。それがいたたまれなくなったから、なってしまったから】


ん、ありがと。気持ちだけで十分さ。そのアソートクッキー、美味しく頂くね。
だぁからね、そんな顔しない。幸せが逃げちゃうんだから。そも、とっくに退院してるし、身体動かすには問題ないからへーきへーき。


【でも刻まれた傷痕は見せるだけで/度に、かえでを心配させるに違いない】
【強がりに見えるかもしれない。実際そうなのだが、強がりを自覚していない彼女は幸福か不幸か】
【――――それは解らない。最早傷つけるのも傷つけられるのも日常だから】


ふふっ、別バージョンもあるのかい?見てみたい気もするけど私は口を尖らせてるかえでとか
んー、……笑ってるかえでの方が好きだな。例えば―――――こぉんな風に。


【膨らんだ紙風船を針で突いた時みたいにぷしゅーと空気の漏れる音を出したなら、エーリカの指先(人差し指と中指)は】
【かえでの唇に触れて、スライドするようにその両端へと動いていき、やがて口角をやさしく吊り上げる――すると】
【笑ったような口元が浮かび上がる。作られた笑顔。でもこういう顔が一番好きなんだって無言で告げるなら、柔和な笑みで告げるなら】
【―――――本当にかわいいって思えた。化けの皮を剥がしたってかえでは世界でトップクラスに可愛いんだって胸張って言える】

【かえでにした事と同じことを自分にも行う。すると自分も同じように笑ってる。無邪気に朗らかに笑っていた】


580 : イスラフィール ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/08(火) 00:52:07 arusqhls0
>>576

【黒陽の理論に彼女は頷いた、グランギニョルの基点とは即ち、件の病魔にある事は疑いの余地が無いのだから】
【スナークとイルとが始めたミクロな物語が、世界を巻き込むマクロな広がりを見せ、ミクロに収束していく】
【或いは荒唐無稽でありながらも、それは芝居という枠組みに沿う事しかできない、残酷劇の様でもあった】


ジャ=ロもロールシャッハも、ニンゲンとは異なる倫理観で存在していましたわ、時として私達の利益となり得た様に
しかし、イル=ナイトウィッシュは違いますわ、彼女はニンゲンを、剰えこの世界を嫌悪しています
それもあまりに馬鹿げた、ちっぽけな理屈で、────── だからこそ厄介なのですが

拗ねた子供が力を持つのが最も恐ろしいとは、誰が言ったのでしょう、私もその通りであると思いますわ

能力者達が虚神を追う理由も人それぞれでしょう、それも、ミクロな世界での理ですわ
結局の所、収束していく帰結とは一つです、────── そう思ったなら
存外、荒唐無稽に見えたお話も、それ相応の筋書きがあったのでしょうね

貴方様が追い求める謎もまた、きちんと解法があればよろしいのですが


【彼女はふと、虚を突かれたかの如く目を開いた、そのままぱちくり、と瞬きをする、はて、なんて言葉も合わせて】
【理知的な仮面が崩れて、そこに現れたのは素顔、────── あどけない少女の顔立ち】
【立ち振る舞いや化粧、言葉遣いで取り繕っているのは、ある種、背伸びしているものなのだろうか】

【呼応する様に微笑んでみせた、窓際の席、ふと視線が交錯したなら、微笑み返してくれる同級生みたいに】


────── 私はロールシャッハの記憶を読みましたわ、そこで私が果たす “ロール” を見たのです
私は “財団” の創設者でした、────── 件の “INF財団” ですわ
私は確信しております、私がその様な組織を作るはずがない、と、────── ええ

だからこそ、その運命に抗おうと思ったのですわ、ロールシャッハが見せた未来を変える為にも


【簡素な言葉であった、けれども理屈の上では道理が通る用にも、思えるだろうか】


581 : 名無しさん :2019/01/08(火) 01:14:01 ggy2rRXY0
>>578

でも、でもっ、――――――〜〜っ。

【ならばきゅううと心臓の奥が痛むような気がした。引け目を色で染めるなら、きっと、こんな色合いが一番似合った。――思わず眉の下がってしまう色合い】
【喧嘩に負けた犬がお腹を見せてきゅんきゅん泣いちゃう/鳴いちゃうみたいな顔をしていた。であれば、早くって今宵から、彼女は、"もっと"甘えるようになるのだろうから】
【やがて甘える手段さえ思いつかなくなる日が来るなら、どんな優等生より真面目な目をして教えを乞うこともあるのだろう。でなければ十七年の人生は二十八年に敵わない】
【――――、甘やかされるような言葉にはやはり気づかずに、「あたりまえです」なんてせめて強気を偽っていた。けれどもうとっくに耳まで赤いまま】

【――、指先を戯れるように咥えたのは刹那のことであるのだろう。それでも瞬間向けていた眼はきっとどこまでも屈服させられた雌のもので、あるのなら】
【結局どこまで行っても組み敷かれるように愛されるのが一番好きだった。背中の全部をぴったりベッドに押し付けられたまま、ただの一度だって逆らえないのが好きだった】
【喉の奥から引きずり出されるように苦し気で泣きじゃくるような嬌声を止める方法すら分からぬほど脳髄を溶かされるのが好きだった。いっそ本当に泣くことすら、稀にあり】
【泣きじゃくり謝罪を繰り返しながら勝手に跳ね上がり潤む腰を抑え込むときの腰に指先が埋まる柔らかさすらも慣れたものなのだろうから】

なにして……っ、――っ、おみせ、なんですけどぉ、……っ。
……だめですよお。今日は、サンタさん来るから。私は良い子だったから、……。……アリアさんは、どうでしょう、悪い子の処には、来ないんですよお……。

【真っ赤になってしまった頬っぺたに、潤んだ瞳の煌めきが目立っていた。言い捨てるみたいに顔ごと視線を逸らすなら、そのまま、机に据え置かれた紙ナプキンを取って、】
【周りに見えぬように種を吐き出すのだろう。――蜜漬けにされて芽吹くことのなくなった種。そのまま包んでしまって、端っこのほうへ】
【せめて子供の戯れのような口ぶりがかえって躾けられた弱い犬のようだった。唇を噛んだ色合いは、それでも、せめて自分を律するような色合い、してる、気がする】

生じゃなければ、――好きです、けどお。……。だって、ヤじゃないですか、生だと……、なんか……。…………。
――――、狡いよお、アリアさんのばかあ――っ、――知らないですっ、もぉ、犬だって、猫だって、飼ったら、――いいじゃないですかっ。
私より、ワンちゃんのほうが、よーっぽど、甘えるの上手ですよっ。そしたら、アリアさん、寂しい時は、ワンちゃんに慰めてもらったらよくって……よくって……。

【結局彼女が苦手なのは"ああいう"食感なのだろう。味とかではなく食感。もっと言うと舌触り。そのくせめいっぱいに甘やかされるキスは一番好きだ、なんて】
【急に話がすり替わるなら、ついてゆけるはずもなく惑ってしまう。ましてや火種を放りこまれた胸中を上手に諫める方法を十七年の人生ではまだ獲得できていない、なら】
【今すぐに抱きしめてほしくって仕方ないのをめいっぱいの口ぶりで誤魔化す。今すぐ抱きしめてほしかった。間接的じゃないキスをしたかった。けれど、我慢するしかなくて】
【――誤魔化したはずの口ぶりで微妙に凹んでいるらしかった。ふさふさのゴールデンレトリーバーに全部の愛情を注がれてしまうのは悲しくって泣いてしまうって伝えていたから】

あのね、あのね……、屋根裏部屋があったら、いいな……、

【――――ごく甘えて媚びる声と目をして。伝える我儘。持て余すなら、指先はパン生地の表面をけばけばにするのに夢中で、】
【だけれどやっぱり弱虫であるなら、けばけばから全部が崩壊する前に、口の中をサンドイッチでいっぱいにしてしまうのだろう。それでも時々向く視線を辿るなら】
【その淑やかさに文句の一つ二つじゃ足りないような目をして、けれど、どこまでも熱を帯びた様子で、口に運ばれる生地を繰り返し見ているのだから、分かりやすい】


582 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2019/01/08(火) 01:17:08 WMHqDivw0
>>580
奴等の存在は当初からある種の反則だった訳だが……それ故に本来は容易に認知されないものだ。
それを成すならば無視出来ないほどの悪意を晒け出しぶつける方が都合が良い。

……つまるところ自らを最弱の虚神と据え置いたイルの役割とは、このグランギニョルと言う物語の語り部と言える訳だ。

【レッドヘリングで虚神の悪意を、アナンターシャで虚神のスケールを順を追って見せ付けた】
【それはその後に存在を構築させるウヌクアルハイへの下準備だったのだろう】
【結果それがどこまで上手く行ったのかは定かではないが】

【そうしてふと、イスラフィールが素の自分を垣間見せたように見えた】
【それまでの華美な程に飾った姿はあるいはイスラフィールと言う政治家のパブリックイメージなのかも知れないが】

なるほど、確かに筋は通っている……が、納得出来ると言うほど明確にも見えんな。
大体においてINF財団とはINFオブジェクトを管理するための組織だった。
"虚神に抗う"と言う大目標はむしろ財団の設立に近付くようなものではないか?

【先程イスラフィール自身が言っていたことだ】
【自らがロールシャッハの見せた未来を辿るはずがないと確信しているのならば、取るに足らないと無視することこそが解法なのだから】


583 : イスラフィール ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/08(火) 01:28:54 arusqhls0
>>582

【それ故に、イルの存在によってグランギニョルが幕を下ろすのも当然の流れと言えた】
【互いが納得したのはその結論であった、多少の齟齬があれど結論は一つだろう】
【最後にイルが攻勢に出るのも納得できよう、そしてそれに未来がないことも】


むぅ、そういうものでしょうか、────── ああ、いえ、別に私は否定している訳ではありませんわ
ですが、こう消極的に何もしない事や、無視するのは私の性質に反します
月並みな言い方ですが性格です、それで押し通すのも些か乱暴ではございますが

少なくとも私が正義を以て行動する以上、ロールシャッハの描いたビジョンにはなりませんわ
それだけは確信しています、虚神達は確かに強大な力を持っていましたわ
けれども、誰も彼も、その一柱として、心を理解出来た存在はいなかったのですから


【頰


584 : 名無しさん :2019/01/08(火) 01:34:27 ggy2rRXY0
>>579

【なら、しゅんと耳と尻尾を垂らしてしまった子犬みたいな顔をしているのだろう。投げてもらったボールを見つけられない子犬みたいにしょぼくれた目をして】
【適したお見舞いを用意できなかったのを主原料に。あとは――、今の今、教えられるまで、心配もできなかった自分への反省であるらしい、なら】

じゃあ、あの、今度、――、私も良くなって、それから、もっと、うんと暖かくなったら。どっか、――行きましょう、ほら、海とか、プールとか……。
傷があるとか誰にも言わせないですからっ。どうしても気になるなら、貸し切りのプールとか、プライベートビーチとか、私、準備しますし――。
――ね? だからね、着れないとか言っちゃダメです。着たかったら着ていいし、どこだって行っていいんですよっ。

【せめていつかプールとか海とか行く約束してしまおうとするのだ。明日も分からぬ私たちだから。明日滅ぶかもしれぬ世界だから。――傷口なんて理由にさせないから】
【それでもやっぱりどうしても気になってしまうっていうなら、どんだけ広いエメラルドグリーンだって貸し切ってしまうから。真っ白な砂浜だって金にひれ伏させようって】
【――単純にプールとか海とか行きたいお年頃であるような気もした。けれど一人で行ったってつまんない。大事な友達や大好きな人と行ったら、何十倍だって楽しくなるって知っている】

あります――、TPOに併せて使い分けてるんです。――――――むー。

【TPOも何もない気がした。とりあえず"っぽい"感じの顔しておけばオールオッケー略してTPOなのかもしれなかった】
【――やがて唇を勝手に吊り上げられれば、せめて抵抗みたいに少女は拗ねた顔をするのだ。じとりっとした目に対して口元は笑顔。であるなら】
【――――――人間の脳みそは意外とばかだから、口が笑っていると楽しいって勘違いしてしまうらしかった。そうでなくっても、だって、今この場は、――楽しい、】

――――――っ、あははは、もお、人の顔で勝手に福笑いしないでくださいー。お正月まで待ってくださいっ、お正月でも、駄目ですけど――。
……ふふっ。うふふ。――、アリアさんもーすぐ帰って来るって。どうします、エーリカさん、挨拶していきますか? まあ、だからって、
ベッドの上で"こう"みたいな感じのドッキリは、私、お手伝いしませんけど――。"このあいだ"、大変だったんですよ? めちゃ心当たりないのにー。

【だから笑みだって溢れてしまうのだろう。勝手に福笑いしちゃダメらしい。といっても口元だけ好きにされるのが福笑いであるのか、は、知らないけれど】
【結果として笑いであるのは間違いないのだろう。福は多分笑っていたら勝手に来るものだった。笑う門にはなんて、昔から言うのだから。きっと、たぶん、そういうもの】
【――少し沈黙してから確かめるのは彼女自身の携帯端末だった。伝えるのは二人きりの時間が終わること、挨拶していくというなら、もう少しいればいいって】
【――――それでいて、ベッドの上で"そーゆー"感じのみたいなドッキリは手伝ってくれないらしい。さっきの光景は見られていなくてよかったって言外に安堵するのなら、】

【よっぽど怒られたのかもしれなかった。――なんて、】


585 : イスラフィール ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/08(火) 01:41:55 arusqhls0
>>582

【それ故に、イルの存在によってグランギニョルが幕を下ろすのも当然の流れと言えた】
【互いが納得したのはその結論であった、多少の齟齬があれど結論は一つだろう】
【最後にイルが攻勢に出るのも納得できよう、そしてそれに未来がないことも】


むぅ、そういうものでしょうか、────── ああ、いえ、別に私は否定している訳ではありませんわ
ですが、こう消極的に何もしない事や、無視するのは私の性質に反します
月並みな言い方ですが性格です、それで押し通すのも些か乱暴ではございますが

少なくとも私が正義を以て行動する以上、ロールシャッハの描いたビジョンにはなりませんわ
それだけは確信しています、虚神達は確かに強大な力を持っていましたわ
けれども、誰も彼も、その一柱として、心を理解出来た存在はいなかったのですから


【僅かに膨らんだ頰


586 : ?????? ◆auPC5auEAk :2019/01/08(火) 21:19:40 ZCHlt7mo0
>>489

……もう、面を被ってるのも面倒ですから、ぶっちゃけちゃいますけどね。人の共感、引いてナンボの仕事してるんなら、そりゃあ無いんじゃないですかねえ?
そんな事をして、客を意固地にさせちゃうと、売れるもんも売れないって……これは、専門じゃない私にだって分かる、基本みたいなものだと思いますけども?

――――何より、当たり前みたいな顔して踏み込んでくるの、気に入らないのよね

【先ほどの続きの様に、惚けた態度で話を合わせる姿勢から一転――――女性は、露骨な不機嫌顔で〝P〟を見据える】
【切りたくなかった『札』を、切る羽目になった事に、どうやら苛立ちを感じている様だった】
【しかし、開き直ってしまえば――――事態は、次のステージへと移行する。場のやり取りが、その本質を変異させたのは、間違いないだろう】

――――武器なんざあ、今更要りませんねえ。そんなこんなも全部自前で、このお兄さん方は調達して、行動するもんなんですから
で、折角だから私からも、逆に聞かせてもらいましょうか〝P〟さん?
――――ただ、金儲けしたいだけがあなたの仕事じゃないでしょう。……こんなとんでもないものまで取り出して、何を狙ってるっての?

【自分たちも武器商人かと聞かれれば、Noと答える女性と銀髪の男たち】
【むしろ、それを行使する側と言えば、より正確なものになる。だが、だからと言って〝P〟の顧客たり得るかと言えば――――恐らくそれは無いのだろう】
【自前の戦力だけで、既に相応のバックは付いている。それを見せつけるための増援なのだから】
【――――そして、周辺一帯を掌握しているというアピールに対して、遂に女性は本質へと斬り込む。こうまでして、何を狙っているのか、と――――】

「……未知の航空機が、接近・旋回している……」
分かってますっての。わざわざ教えてくれてますからねえ……いざとなったら、あなたたちにもお願いしますからね?
――――こちらの営業マン、相当な狸らしいですから――――事と次第によっては、一悶着あるかもねえ……ッ

【3人の男の内の1人が、キョロキョロと空を見回し始める。既に映像として提示されてた女性とは別に、その不可解な航空機を察知したようだ】
【それを受けて、女性はタブレットを操作していない方の手をその場に軽く掲げる――――チリチリと、青白い電光が火花となって散り始めた】
【こちらの『秘密』――――腹の内は提示された。ならば〝P〟にも、その腹の内を吐いてもらおうというジェスチャーである】
【――――もう一方の一行の様な、取り乱す態度は、そこには見えなかった】

>>549-550

ッ、か――――――――っ。……ちょっとちょっと、まさか、私が『旨そうだから』声をかけたとか、そんな話なんじゃあないでしょうね……?
……まさか、『箱舟』と書いて『食糧庫』と呼ぶような、そんな話だったりするんじゃあないですか――――『肉屋』さん?

【その返答を受けて、遂に女性も、大男――――カニバディールの正体に気が付いたらしい】
【猶更、その行動には混乱を禁じえないが、或いは――――本質としては『これまで』と何も変わってないのかもしれない】
【思いがけずの勢力との接触に、女性はどう対応してよいのか、改めて考えを纏める必要に迫られていた】

【――――尤もそれは、彼らにとっても同じ事の様だったが】

ッ、へえ……パッと見で、このお兄さんたちの素性に気づくとは思いませんでしたよ。やりますねえ……あそこの偉いのと『お友達』なんですよ、私
それじゃあ、もうしょうがないですから、ハッキリ言っちゃいましょうか――――この国を牛耳るのは他でもない、『暴蜂(バウフェン)』の皆さんですよ……
『V.I.C.特別区』が、今どれだけ危険なガラパゴスになってるか……まぁ、天井知らずにイメージを増幅してて頂戴な……?

【『暴蜂』の存在を知り、そして恐れるカニバディールに、ここぞとばかり女性は言葉を重ねる】
【一大経済団体が、一夜にしてテロ組織へと転身した『ヴェイスグループ』――――そしてその居城である秘密都市『V.I.C.特別区』】
【――――7年の時を経て、休火山のマグマは、知らぬ間に爆発の時を迎えようとしていたのかもしれない――――】

/続きます


587 : ?????? ◆auPC5auEAk :2019/01/08(火) 21:20:08 ZCHlt7mo0
>>549-550

あれま、こりゃまた――――随分と形振り構わない感じですねえ。……まさか『これくらい』を切り抜けるのに、本当に必死になってるって奴ですか?
心臓が小さいって言うのは、どうやら本当らしいですねえ、いやはやなんとも

【〝P〟に対して、飛びつくような態度で『命乞い』をする――――実質的に、そう言ってしまって構わないだろう――――カニバディールの姿に、女性は肩をすくめる】
【無論、女性とて今の状況には焦りを募らせてはいるものの、ここで弱気になっては全てはご破算だ】
【3人のクローン兵に、それぞれに警戒はさせつつも、彼女自身はあくまで、力を背景にした『対等』の態度を崩そうとはしなかった】

>>489>>549-550

――――さてさて、こんな状況になって、もうしょうがないんだから、色々と明け透けにしちゃおうじゃあないですか
どうやら決して軽くはない『力』とアクセスできる3人が、こんなところに集まったようですし?

【当初の、追い詰められた弱者の仮面を完全に脱ぎ捨てて。女性は鷹揚に場の全員に声を張り上げた】
【自前の軍団を操る機関員、危険を隠そうとしない武器商人、そしてテロ組織に連なる女性――――場は確かに、キャスティングボードのせめぎ合いとなった】

……もう面倒くさいから、色々とぶっちゃけちゃいましょうよ。どうせあなた達、知ってるんでしょう?
……この国が『どっち』に針を振り切れるか、あなた達が何やかんややってたのも、そこに思惑があるからって事で、もう間違いないですよねえ……
――――この際、敵と味方はハッキリしときましょうよ――――あなた達……『どっち』なのかしら?

【女性は、具体的なキーワードを何も口にしていない。だが、今までの虚々実々の――――言い換えれば、白々しい――――駆け引きの中で】
【既に公然の秘密と言ってしまって、構わないのだろう。水の国を舞台に、激しくぶつかり合う『黒幕』と『円卓』との戦い】
【3人は3人とも、そこに関わる形で策動し、そして今この場で行き当たった。それに間違いないのだ】
【――――なら、次の世界の形を変えかねないこのバランスゲーム。どこに与しようというのか、それを言って見せろと、女性は言い放つ】

【――――言いながら、自分はそこに言及しようとしない。女性の態度はそう映るかもしれないが】
【それはもう、今更だからという事なのだろう――――水面下で、戦争の準備を虎視眈々と進めてきた『暴蜂』と、彼女は協力関係にある】
【それは、彼女の身を任せようとしている流れを、既に暗示しているも同然だったのだ――――】


588 : アーディン&ヴァルター&シャッテン ◆auPC5auEAk :2019/01/08(火) 21:21:33 ZCHlt7mo0
>>558

……俺たちの『海の切り札』は、それだけの存在という事だ……全く想定外だったが、僥倖としか言いようがない……
{ま、旦那と組めば、な……軍艦シージャックも、舐めてかからなきゃ、何とかなるさ。船内じゃ、精々ライフルまで、防衛側がグレネードなんて使えないからよ……}

【彼らの言葉も尤もだ。通常、軍艦隊相手に組み上げる作戦ではないだろう。だが、アーディンはなおも確信を持った様子で、その『切り札』を推す】
【風野の言葉を暗に認める形で、ヴァルターも頷いた。中核こそ明かさないが、彼らの中では既に、明確にビジョンとなっているのだろう】

「……勿論、これが全部うまくいくとは思ってないさ。そうなんだろ、アーディン……?」
あぁ……その時には、腰の軽さを活かして、その時に対応する次善の策を検討する。我々がゲリラの形になったからには、その恩恵を最大限に活かすまでだ……
上手くいかなければ、無理に貫徹する事はない。その時には、すぐに立ち止まり、或いは姿を晦ますまでだ
……それに、これはあくまで俺たちの戦力で完結した作戦だ……余所からのフォローが期待できるなら、もう少しタイトさも薄れるだろう……

【失敗の可能性も、勿論考えてある。しかし、その場合はその時になって検討するしかないだろう――――それが出来るのなら、それに越した事はない】

……流石に、八方手を尽くすとまでは、行かないな……手が足りなすぎる。放置していい問題ではないというのは、重々承知なんだがな……

【レヴォル社の問題は、迅速な対応を求められるが、それが実質的に不可能に近かった。それもまた、アーディンの頭を悩ませる】
【UTの再起不能が、現実味を帯びてくると――――このまま、世界は混迷の極みに堕してしまうだろう】

{……っ、大丈夫さ、心得くらいはあるよ。自分を、制御するのは――――狂い回るのは、時を待てば良い……ッ}

【宥められるまでも無いと、シャッテンは静かに首を振った。勿論――――どこかに無理をしているのが見て取れるものでしかなかったが】
【その時の瞳には、さほどにギラついた光は宿っていなかった。案外、口先だけと言う訳でも無いのだろう――――「狂い回るための時を待つ」という言葉を含めて】

――――なんでも無いさ。気にしなくていい……

【そっと、アーディンはみらいの頬を撫でる。やはり――――今は、ラベンダーの事を、この子に伝える必要はないと、判断したのだろう】

……そうか、当の厳島も、さほどに詳しい訳ではなかったのか……――――まぁ、無事である事を祈るしかない。今はまだ、手掛かりはないからな……
「……何というか、その辺相変わらずだな、旦那……」

【どうやら、厳島の関わり方も、そこまで深いものではなかった様だと、アーディンは認識する。となると――――今はどうやって逃げ延びているのだろうか】
【そうして、子供の様子を気に掛ける様を見て、少し苦笑しながらヴァルターは頷いていた】

{……はぁ、何を言ってるんだか――――『そういうの』がご希望だったら、味わわせてやっても良いけどねぇ……流石に、馬鹿らしい……}

【ちっとも静かにならない風野に、呆れた様子でシャッテンは影の展開を止める。これでは、一人相撲と大差なくなってしまうと認識したようだった】



――――まぁ、ともあれ……今日は色々と話せてよかった。そちらも……気を引き締めてかかってくれ。俺に言われるまでも無いだろうが、な
「みらいの事は、俺たちに任せておけ。……こういう責任を果たす目為に、オヤジってのはいるもんだ……」
{……奴らは必ず戮する、それは、絶対に忘れないよ……!}

【そうして、去っていく2人の姿を、3人は――――否、みらいを含めた4人は見送る。とうとう自分たちは『戦争』に参加するのだという、その事実を胸に刻みながら】

/はい、お疲れ様でしたー!


589 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/08(火) 21:26:13 6IlD6zzI0
>>577

             
                満足ゥ……?くひひ、生まれてこの方一度もないぞ。
             命を食らえば一時は満ちるかもしれねえが、結局腹は減るんだよ。
              だから直ぐに飢えに喘ぎ、渇きに喉を掻き毟る事になる


【生身の人間ではありえない壁への張り付き。その姿は宛ら醜悪な巨蜘蛛の様】
【ダグライツの背中から展開される蜘蛛の足が壁を穿ち、標本の様にピンと張り付いて、俯瞰】
【蜘蛛の目は人の何倍も多く存在するが、この男の目は二つ。しかし蜘蛛の目よりも遥かに悍ましい】
【何故ならその目は本質的な何かを一つも映さない。ただ硝子細工のビー玉みたいにあるがままを映すだけだから】


              【ぁあぁぁあぁぁああぁぁあぁあぁああぁあ―――――】


【聞くに堪えない声が漏れ出る。間違いなく物の怪と評しても過言ではない異形の鳴き声】
【声の主はダグライツ自身。そして、黒い不定形のスキッツォイド・マンそのものから聞こえた】
【という事は―――蜘蛛の形をした"それ"と黒い槍の形の"それ"から聞こえるという事だから】

【それ即ち大味な軌道を取って躱された槍は"まだ"生きているという事。少年の背後でピタリと止まり】
【吐き出す息に絡みつく耳障りな音が合図だった―――槍は突如として形を崩し、無軌道無修正に広く枝分かれし始める】
【線では無く面での攻撃。間違いなく背後で凶兆が唸り声をあげた筈だから、殺気だとか直感的なもので察する事が出来るだろう】

  
             訳の分からねえ道理ィ?………腹が減ったから食事をしただけだろうが。
          外に出なけりゃ命を殺せ/食えねえだろうがよ。飢えて死ぬのなんざ死んでもご免だ。
            お呼びじゃないないなら死ね。死んだ人間だけが俺にとって良い人間だ。


590 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/08(火) 21:51:45 6IlD6zzI0
>>584


―――……、


          【"そうだね、暖かくなったら水着を着て思う存分遊ぼっか"】


【なんて言葉を紡ぐのに躊躇いを覚えたのは何故だろうか。きっと色んな意味でかえでが眩しかったから】
【頼もしい言葉に、荒唐無稽な言葉。――――心地良かった。気にしないって、言わせないって言ってくれるなら】
【少女の言葉は実現しそうな熱を帯びていたから、それらを心の中でかみ砕いて飲み込むのに少々時間が掛かった】


そうだね、暖かくなったら水着を着て思う存分遊ぼっか。でも水着はちょっと恥ずかしいかなぁ。
胸の傷云々じゃなくて、その、…あの。私って身体つきが女っぽくないし、貧相な身体つきだし……。

でもプライベートビーチとか貸し切りのプールなら気にしなくてもいっか。
そしたら思う存分遊び倒してやるんだし。忘れられないひと時にしてやるんだから覚悟しなよー。ふふっ。


【瞳を閉じて、言葉を紡ぐ。やや観念したかの様な雰囲気は次第に歳不相応な雰囲気に変わり】
【何時しか普段通りの自分に戻っていた。心を許す相手に見せるありのままの自分。気が楽である】


正月でもダメなら今しかないよねー?世界で何番目か知らないけどメッチャ可愛い美少女の福笑いなーりー。
こんな事出来るのって私とかアリアさんくらいだけど、アリアさんがこんな事すると思えないからやっぱり私だけの特権。

――――、そうだね。アリアさんにもひとつ挨拶するとしようか。
前みたいに「かえでなら私の隣で寝てるよ、\ばーん/」なんてしないし誤解を招く事もしないから安心しなよ。
まぁ、その節はご迷惑をおかけしてごめんなさいだけどさ。でも嘘は言ってないじゃんって思うけど話が拗れるからここまでにしとこっか。


【楽しいひと時が過ぎ去るのは早い。魔法をかけられたシンデレラが12時を越せないのと同じで、このひと時は留めることが出来ない】
【それが少しだけ口惜しくて。でもこんな事はこれからも楽しく紡いでいけるって信じるから、少女に屈託のない笑みを贈るのだった】
【"かえで、元気になったらアリアさんと私で、いや他の人も巻き込んで楽しくて幸せな時間を紡いでいこう"って言外に告げる】


591 : ◆rZ1XhuyZ7I :2019/01/09(水) 00:05:09 PMzGIUuA0
>>548

【唐突にオブライエンの声が響く。】

おいおい勝手にお仲間にすんなよ!
ああそうさ、まぁこの社会で生きていくには色々と被らなきゃいけないわけよね
うら若き私ですらこの気苦労だから諸々揉まれてそうなアンタはさらに抱え込んでそうだよな

―――だがまあ、私は普通のちょっとかわいいだけの書記官ですよ。

そんでもってお次のメニューは………首の切り落としだ。


【周囲を見渡せば、その姿を捉えることができるだろう。】
【オブライエンは空中を高速で滑空していた、まるでスケートリンクのように】
【予測するまでもなくこれは異能の力によるものだった。彼女の異能は「空中舞踏/エアリアル・サーキット」】
【〝脚〟を起点に空気を操作し空気弾から現在のように空中を高速で移動する事も可能な能力だ。】
【能力の行使には安定した大気の流れが必要であり暴風や高速で移動する列車などでは効果は制限される、だが】
【この場のように一定の広さがある屋内であればその力の幅はかなり広がると言える】

【そして右手には、先程のギターケースから取り出した武装。】
【大きな刃が装着された身の丈ほどの大きさがある白いブレードライフルだ。】


―――そんじゃな。



【オブライエンはそれを難なく構えながら、かく乱するように三次元全てを高速で移動しカニバディールの頭上に接近】
【そしてそのまま空気を蹴り、凄まじい落下の勢いをもってブレードライフルの刃でカニバディールの首を切り落とそうと―――】



                 『そのあたりにしておきたまえコニー』


んなッ―――ッ!?



【突如響く穏やかな青年の声、オブライエンはそれに動揺し振り下ろした刃を何もない床に突き刺してしまった。】
【冷静なように見えたオブライエンがここまで動揺するほど声の主がここにいるのは意外だったのかもしれない】



『彼のしぶとさは計り知れない、そして―――彼とはまだ話すべきだ。』



【穏やかな声は続く、それはカニバディールたちが入ってきた入り口の方から聞こえてきていた。】


592 : ベルガー ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/09(水) 12:30:08 arusqhls0
>>589

【正しく異形の様相であった、彼は口元に隠しきれない嫌悪感を示し、そして同時に察知する】
【狂気の具現に近かった、妄執と迷妄と、分裂症よりも更に醜い、────── 槍はまだ死んでない、と】
【咄嗟にふりむく、攻撃範囲が広い、低くなった体勢は次の動作を遅くする】


────── “Terrible Object” ──────!!


【彼の身体が大きく飛び上がる、否、正確には “射出” される、空中へと躍り出て槍を少しでも回避しようと】
【足と地面との隙間に、射ち上げる様に柱が出現していた、作用と反作用、射出の負荷に強く顔を歪めて】
【視界の端に男を捉える、獰猛な肉食獣が如く、食らいつくべき獲物をハッキリと認識した】


嗚呼、じゃあ貴方が死ぬんですね、────── そうすれば俺にとっても “良い人間” になります


【空中に浮かび上がった彼の手元にもう一つの柱が出現する、右手の側に出現したそれは、戦車の砲塔を思わせた】
【銃口が真っ直ぐ壁に張り付く男へと向いたなら、間髪入れず柱からレーザーが射出される】
【高出力のレーザーであった、上から見下ろす分、攻撃の範囲は広い】

【オフェンス8:ディフェンス2】


593 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2019/01/09(水) 21:49:33 WMHqDivw0
本スレ >>631

【未来無き少女が、愛する者と無理心中――或いはそんなセンチメンタルな情念も有るのやも知れないが】
【それならば、勝手にやれば済む話】
【この期に及んで能力達を挑発しに来た以上、そこに人類への悪意が無いはずがないのだ】


インシデント"新世界より"で、イルは表立っての動きを止めた。
故に我々は、その後の虚神達の動きがどこまで、"予定通り"だったのかを知る術がない。


【少なくとも、サーペントカルトの崩壊の時点では、概ねにおいてイルの目論見通りに事は進んでいたはずだ】
【ならば、そう低くない可能性として、"何もかも予定通りだった"と汲むことも出来る】
【グランギニョルと言う舞台のお膳立てをして置きながら、その虚神達が尽く全滅するところまで待っていたのだとして】
【その先の目的が、白神鈴音との心中だと言うのならば如何にも遠回りに過ぎる】


つまり何かしらの勝算を持ち込んでいるはずだ。
未だ、能力者達はグランギニョルの箱庭とルールに囚われたままでいる。


【先に語った通り、スナークと言う虚神の能力を封殺しなければ、イル=ナイトウィッシュを倒すことは出来ない】
【それが"本物"であることは最早イル本人にさえ保証できないのだ】
【それも筋書き通りか、散々にヘイトを振り撒くイルは、多くの能力者達に"執着"されていると言って良い】
【スナーク狩りの舞台はとっくに整っていることだろう】


【男はワインを一口飲んだ。最後のインシデントはもう間近に迫っていることだろう】


なるほど――と一応言っておくとしよう。
貴様の感情を否定するほどの材料には持ち合わせがないのでな。


【頬を膨らます娘の様相――様々な貌を見せるものだ】
【果たして"嘘を言っているようには見えない"と、その主張であるかのような横顔ではあるが】

【男の言葉は徹頭徹尾無礼ではあった】
【或いは対面で有ったのなら、もう少し機微も違いを見せたのやも知れないが。内と外を区切る明確なラインが二人の間には存在している】

【さりとてそれは、この段になっても未だ埋まっていないピースではある】


確信している、か。
虚構現実は、有り得たかも知れない未来の一つと言う訳ではない。
基底現実を基盤として派生させた、"こういった可能性もある"と言う類の空想の産物。

逆説的だが、本来の神話が過去を辿った空想であるならば、虚構神話は未来を辿った空想なのだ。


――だが、それでも所以の無いものは描かれない。
理由は、有るはずなのだ。貴様がそのロールを背負うに至った理由が。



ロールシャッハの記憶を読んだと言ったな?
読んだのはINF財団の設立に至ったと言う"結末"だけか?


594 : 名無しさん :2019/01/10(木) 00:01:52 NjSny9NE0
>>590

どうしてですか? おっぱい小さくっても、いいと思うんですけど――。だって、ほら、銭湯とか、大なり小なりですよ。だいじょーぶです。
ていうか、銭湯どころか、プールとか海の時点で大なり小なりですよお。まあ、そりゃあ、私は、結構大きいですけど……。おっきいって思ってたんですけどお。
アリアさんすっごい大きいから、最近、なんか自信なくって……。当社比三倍くらい、保湿しちゃうんですよね……。おかげでもっちもちですけど――。

……何の話でしたっけ。温水プールなら、明日でも行けますね。でもー、水着はやっぱりじっくり決めたいですよね、だからあ、明日じゃ早すぎてー。
もお。大丈夫ですよ。私、記憶力めっちゃいいんで! 六歳の時に爽ちゃんにブロックの角っこでぶたれたの覚えてるもん。

とゆーわけで、アリアさんと比べたら誰でもなんかちっちゃく見えちゃう感じなので。大丈夫ですよお。

【何も何一つ大丈夫ではなかった。――温水プールならすぐにでも行ける根って話をして、きゃららと笑って、勝手に終わった感じにしてしまうのだろう】
【即ちどこぞのタイミングでプールか海に行くのは決定事項らしかった。――。やはり爽ちゃんというのが彼女にとっては大事な人物の名前であるらしかった、なら】

もーっ! 順位下がったら、どうしてくれるんですかっ。私の順位が右肩下がりしたら、それだけで世界的損失ですよお、世界が涙して後追い自殺が増加しますっ。
株価は大暴落して全世界でデモが起こって大変なことになります! それからいろんなお店が一気に潰れて、暖冬で冷夏になって――。

【顔を好き勝手にいじられるままの言葉だった。順位が下がったらどしてくれるの、なんて言いながら、――内容としては、なんていうか、世界の終わり〜序章〜って感じで】
【終末のラッパの音とかが聞こえてくるべき場面っぽかった。けれど実際はごく親しい二人がふざけ合っているだけ、なのだから】

当たり前ですっ、まあ、本当に、寝てましたけど――。だからって、言い方があるじゃないですかぁ、――もーっ。
ほんとに大変だったんですよ! 今度、退院したら、お茶奢ってくれないとヤですよお。ロイヤルミルクティーと、鰐口のスコーンと――。
それか、ジャムをたっぷり入れた紅茶と、甘いパンケーキ、とか――。……。――とにかくっ、"その分"、今度埋め合わせてください、あと、私の顔で勝手に福笑いした分もです!

【――――ならば、そんな風にふざけた声音も、親しみに変換できるのだろう。他の誰かにかわいがってもらうことに引け目を感じぬ性質であるらしいなら】
【結局初めて会った日は奢ってもらうだの言っておきながらエーリカの分まで支払いを済ませて帰ってしまっていた。――そういう性質でもあるらしかった】
【故に結局二人で茶にでも行ったなら、良くて割り勘がせいぜいなのだろうから。とっておきの紅茶とばっくり割れたスコーンにたっぷりのクロテッドクリームを添えてみたり】
【何か遠い目をするなら思い出すことがあるのかもしれなかった。けれどエーリカの知らぬことだった。――少女が蛇の聖女でなくなった日のこと、】

【――とかく、和やかな会話をして、時間が過ぎるのだろう。であればそのうち目的も果たせると言うもの】
【最後に帰るエーリカを見送るのなら、また今度、とか、ごちそうさまでしたとか、ありがとうございましたとか、――そんな風に、手を振って】

/おつかれさまでした!


595 : イスラフィール ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/10(木) 13:12:42 S/DUh6T.0
>>593

【思案に表情を落としたなら、瞳の上に広がる静謐、張り詰めた佇まいは菖蒲よりもまだ尊き】
【物語の最終盤に於いて、向かう矛先が弱いのは彼女も同意する、黒陽の見立てに狂いは無いだろう】
【けれどもその先の目的までは暗中といったところか、泥の下に咲くにはあまりにも毒々しい】

【未来を辿った空想とは言い得て妙であった、神話とは必然過去から生まれてくる空想であり】
【その正当性を歴史が補筆する、ならば、未来を象った虚構の神話を誰が保証するのか】
【 ────── そう、それでも今では荒唐無稽な絵空事ではなく、可能性として認識されているのだから】


貴方達はそれを “可能性” と認識しましたわ、虚神という存在も、虚構の現実も、皆が皆、可能性の一つであると
或いは私達の試みそのものが、空想を可能性へと昇華せしめる通過儀礼なのかもしれませんわ

貴方様の素敵なレトリックに倣いましょう、一般に過去に神話が存在し、現実がそれを補強していくといいます
信仰から伝承が生まれ、それを祀る催事が生まれる、それを脈々と受け継ぎ、神話が完成しますわ
現実の事件から神話や伝承が起こる事もあり得るのでしょうが、それらの事件は、神話を見越して行われたものではありませんわ

然して、虚構神話はそれが完全に逆転しています

虚神達が催した数々のインシデントは、虚構神話という未来からの裏付けをするのです
今に至るまで行われてきた数多の戦いによって、貴方達は否応なく虚構神話そのものの現実性を受け入れる
そうあるいは、彼らの死自身もプロセスに過ぎず、────── 全てはグランギニョルの完成の為に

と、するとスナークの目論見も何となく見えてくるかもしれませんわ


【一転、頬を微かに緩めたなら、艶やかな口元に宿るは冷笑、支配者よりもまだ瀟洒に彼女は彩ってみせる】
【黒陽の指摘は正しい点を付いていたのだろう、隠し立てもせずに話す、私達が虚神と対峙する事】
【それそのものが神話の一部に含まれる以上、否応無しに虚構現実は力を持つ】


同時に私が私の意思を持ち、財団を扱うという理由も此処にありますわ
もう既に自体は見過ごされる段階にあるのではなく、正しく対応しなければならないのです
寧ろ、何もしない事が最も恐ろしいのです、────── お分かりでしょう

グランギニョル神話という体系が確立した以上、虚構神話へと至る道筋が根絶する可能性はあまりにも低いのです
つまり、否が応でもその未来へと進む可能性があると、────── 確かに、今虚神達は多くが消滅していますわ

けれども、それが永劫に続く平穏とはなり得ません、だとすれば、敢えて道に沿うのも一つの手立てと
確固たる意思を持って未来を騙す、────── 私はその心に於いて “財団” を作りますわ

────── 答えはノーですわ、私は文字通り、その瞬間彼が持っていた記憶を全て読み取りました
普段は脳のアーカイブの中にしまっているのですけど、必要とあらば抜き出す事も可能ですわ

ですが、全ての目論見を話す事は出来ません、その多くは、言ってしまえばロールシャッハの主観なのですから
それを語る事は即ち、未来への矛先を更に強めてしまう
誤った伝承が誤った神話を生むなど、洒落にもなりませんわ


【頬に手を当てて彼女は視線を逸らした、儚い横顔、朝焼けに溶ける新雪よりも淡く、残照に反射して煌めく】
【潤いに満ちた口元に憂いを投げ掛けて、滴り落ちる暗澹をも雫と嘯く】
【思いを投影するには殊更気高く、また同時に、何処までも危うく、言の葉を揺らす】


596 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/10(木) 19:53:09 6IlD6zzI0

>>592

【枝分かれした黒槍だったものは少年を貫かない。機敏さと咄嗟の決断力に舌打ち一つ】
【苛立ちを隠さぬ様相は宛ら思い通りに事を運べず癇癪を起す幼子の様に。ギリッと歯軋りの音がした】

【"早く死ね、騒音を撒き散らすな、煩い煩い煩い煩い。息遣い一つさえ耳障りだ"】

【ダグライツと少年の目が合ったその時―――初めてベルガーという存在と認識した】
【散文気味に揺らめく視線と意識に感情(さつい)。それらが一つの方向へ傾注していく】


     
        あぁ、あぁ、あぁ。お前、そんな面してたのかァ。その目、気持ちが悪ィんだよ。
          ――――――俺の平穏を乱す塵芥め。その言葉、そのまま返してやる。
        疾く死ね。殺してやる。手始めはいけ好かないその目からだ。――抉ってやる。


【新たに現れた柱が命を奪う銃口を連想させたのは決して間違いでは無かった】
【自身に向けられた銃口から放たれるレーザーは自身の死を容易に連想させて、だからこそ次の手は早かった】


        ――――――っっっ!!来いッ!『スキッツォイド・マン』!!


【即座にスキッツォイド・マンを解除し自由落下に身を委ね回避行動を取れど間に合わない】

【故に再度スキッツォイド・マンを発動し、全身にそれを纏わせる。纏うそれは宛ら甲冑の様に】
【鋼鉄ほどの強度を持つ甲冑を身に纏ったその直後に襲い掛かるレーザー。それはダグライツに直撃して】
【勢いそのままに壁に叩きつけられながら尚も落下していく。未だ死んでいないのは身に纏う甲冑のお陰か】
【今のところ生きながらえているが、直撃を受けてしまった為に即座の反撃は難しいであろう】


597 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/10(木) 20:12:23 6IlD6zzI0
>>594

【ふざけあってる二人。彼女たちの言葉は散文的でありがならも何となく意味が通じ合うから】
【つまるところ親しい者同士の何気ないひと時に他ならない。脈絡のない言葉に対する困惑はまだ在ったけど】
【やや影を落とした表情はいつの間にか消え去って。けらけらと笑いながら適度に振り回されるのだった】


いやぁ、……寝坊助で言葉を選ぶ余裕が無かったから勘弁して。あの後私もちょっとした修羅場みたいな状況だったし。

お茶奢るくらいならお安いもんだよ。好きなだけ頼んで好きなだけ甘いものに舌鼓でも打って頂戴な。
でもそれは"お泊り"の分であって、福笑いの分は含みませんよー、だっ。
だって楽しそうな顔してたじゃん。嫌だって顔じゃなかったじゃん。だからぁ、福笑いの分を要求するのはナシって事でね。


【"じゃないとアリアさんの目の前で福笑いしちゃうぞ、なんてね。OK、OK。退院したらお茶とプール行こうか、約束だよ"】
【って悪戯っ子めいた顔で約束事ふたつ。その最中に垣間見た少女の遠い目は敢えて触れない。その中身は知らないし】
【土足で踏み入って良い領域ではない気がして。少女が話してくれる日があるならその時に聞くだけだから】

【そうこうしている内にアリアが現れて挨拶を済ませるのなら、エーリカは病室を去る。彼女の顔はとてもにこやかで】
【"また今度ね"って不確かな約束事をする友達同士みたいに、それでいて親しみの籠った言葉を残して――――】

//お疲れさまでしたっ!


598 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/10(木) 20:42:42 uVMngQ7g0
>>581

【然らばアリアはさも少女がそうする事を自ら望んだかのように迷う挙措の全てを導くのであろう。 ─── 赤らむ耳朶を、言葉にはせず】
【やはり天賦の巡り合わせだったのだろう。愉しげに細められた碧眼が宿す、怜悧な愛情は貪るばかりの嗜虐でしかなかった。】
【誰であろうと組み敷いて愛するのが好きだった。絶望的なほど耽美な肉感に満ちた肢体に、抱擁し愛玩し籠絡する事を好んでいた。】
【嬌声さえも溺れさせるようなキスを好んでいた。 ─── 何一ツ抗えない少女に、唇の柔らかさと舌先の粘らかさと指先の長さと恍惚の何たるかとを教え込む刹那を、何より好んでいた】
【そうして少女の求め続ける愛欲を、より深々と充たしてやるのに何の忌憚もありはしなかった。彼女は義体者であった。己れの身体に都合を付けるなど造作もないのであれば、畢竟。】

【「私はもう、大人ですもの。」にべもなく悠然としていた。たとえ白髭赤衣の老人を信じていたとして、プレゼントは手前で用立てるのだと】
【 ─── 彼女にとって何よりの供物が何であるかなど殊更に問うまでもないのだろう。断末魔にも似た、あえかな少女の抵抗を、ただ見守って】
【だのに甘ったるく諛う乙女の仕草の何たるかを目敏く見出して忘れる事はないのだから残酷だった。拗ねたように糊塗する情愛の抑圧さえ】
【優しげな苦笑を浮かべながら、静かに頷くばかり。 ─── しっとりと唾液に艶めいて、平生よりも血色を帯びて鮮明な唇と、くぐもって遠く蠢く舌先の温度と湿度】
【言葉の一ツさえ遣らずに少女を調伏する手口さえ熟(こな)れたものであった。あれだけ版図を広げていたピッツァの生地も、既に切り分けられた残滓を遺すだけと、なるなら】


    「 ─── 素敵よ。」


【丹念に拭った指先を、そっと少女の頬に伸ばして、 ─── 硝子の机上へしなだれかかるように、紅い頬を音もない掌が包むのだろう。】
【赤染めのウールに覆い隠された胸許が、少女だけへ向けられた蠱惑としてひしゃげた。皺寄れた首回りの隙間より、鎖骨の白膚に刻まれた淡い口付けの跡が、垣間見え】
【見えぬ雪煙に似て香り立つのは、揺れる銀髪からの香油と、纏う芳烈な薔薇の雫。仄かな唾液に煌めく口端が、艶麗に緩められて吊り上がるのは、サディズムでしかないのならば】


  「 …………… うふふ。」「そうね。かえでは良い子、ですものね?」
 「そうしたら、御褒美をあげるべきかしら。」「ピザの一切れでは、足りないでしょう。」

     「 ──── ねえ、かえで。」「貴女は、何が欲しいかしら。」


【 ───── 少女にだけ捧げられて掠れる囁きは、徹底した服従の命令と同義だった。擽ぐるリップノイズと、音節ごとにひちゃりと揺れる甘美な唾へ、潤う咥内】


599 : ベルガー ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/10(木) 20:42:53 T9M2g6ng0
>>596

【自由落下の作用、呼吸を整え、手元の柱を路地裏の壁に突き刺すだろう】
【ガリガリと壁面を削りながら勢いをかき消し、柱の上に乗るようにして地の利を保つ】
【甲冑にまでなる応用性の高い能力であった、口元に微かな舌打ちをひとつ】


今のを耐えるだなんて大したタフさですね、しぶといのは狂人の常ですがまさかこれ程とは
俺は貴方に傷付けられるつもりは毛頭ない、殺されるなんて以ての外です
受けた傷の少しでも分かっていたならきっと、無闇に人殺しなんてしなかったのでしょう

────── ですが、もう遅い、貴方は死ななければならない


【ベルガーは強く柱を蹴る、落下の速度と合わせて弾丸のように男へと距離をつめ】
【右手に握るは拳、振り抜く一閃砲撃の如く、その顔面に叩き込もうとする】


600 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/10(木) 21:14:06 6IlD6zzI0
>>599

【人の形をした弾丸とも形容できる少年の姿】
【狙いは自身の顔面。最初にしたのと同じように拳を振り抜くというのか】

【避けようにも身体が言うことを聞くには時間が足りない。故に全身を覆う甲冑は自身の顔に集まり】
【分厚いヘルメットの様な形状を取る。その結果、拳が男の顔面に減り込み、頭蓋に収まる脳を揺らすと言う結果を免れる】
【しかし、衝撃は十分で無理をして起こした上半身は再度地べたに叩きつけられることになる】


   
          受けた傷を理解したところで何になる。そんなもん俺には微塵たりとも理解できない。
       人の痛み何ぞ俺には理解する気にもならない。お前とてそうだろうが。臭い口でそう宣うのならば

           ―――――お前が死ね。俺が人を殺すのは俺が俺として生き永らえる為だ。
       生きる為に与える傷なぞそれ以上でも以下でもないだろうが。何ゆえに義憤に燃える?度し難いぞ。


【自分本位を突き詰めれば、そこにあるのは自分とそれ以外の供物、障害、塵芥】
【人の形をした何かが悦に入った様子で鼻の曲がるような悪臭を垂れ流している。それが不快でたまらない】
【ならばこそ、この不快感を払拭するには目の前の少年を喰らう他ないから―――――】


            【あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛】


【ヘルメット状のスキッツォイド・マンは少年の拳を受け止めたまま、唸り声をあげて二つに分かれ襲い掛かる】
【その構図。まるで獰猛な肉食動物の様に。剣呑さを孕む牙が生え揃った顎の様に少年の右腕を喰らわんと襲う】
【少年に迫る顎は鰐や鮫を彷彿とさせる。違うのはそこに潜む殺意と腕を喰らわんとする顎の大きさであろうか】


601 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/10(木) 21:34:06 T9M2g6ng0
>>600

【不定形の狂気に似ていた、思わずベルガーはゾッとする、触れた拳の感触よりも更におぞましい光景に】
【直ぐ様手をひこうとするが間に合わない、根元から食いちぎられるのは避けるが、裂傷が右腕全体にはしる】
【地面を蹴って距離を開ける、たらんと垂れた右腕がダメージの大きさを伝えて】


っ……はぁっ……はぁ、─── なら、貴方が生きている事を、俺は許容できません
生きながらえる為に生命を喰らう、俺達は大なり小なり生命を喰らっている、それは真実です
でも、それを罪だと認識しているからこそ、俺達は人間でいれます

────── でも貴方は違う、罪とも考えず、ただ道理であると人を殺すのなら
それは動物と代わりません、人を殺す動物を、一体誰が許す事ができますか

そっくりそのまま返します、貴方が死ね


【出現していた柱二つが消え、ベルガーの傍に柱が一本出現する、レーザーの発射口の様に銃口を向けて】
【呼吸を一筋、微かな為の後に再びレーザーを射出するだろう】
【高火力高速の弾道、────── だが直線的に過ぎる、この近距離で扱うには些か不便か】


602 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/10(木) 22:05:18 6IlD6zzI0
>>601


      ああ、やはりな。生きてるやつは気に食わねえ。
    ああ言えば、こう言う。俺には分らない言葉で俺を否定する。
   死んだ奴だけが良い奴だ。死人は永劫黙っていてくれるからなァ。


【許しを請う心算もない。そも自分が人を殺すのは自分に由来しないもの全てが敵にしか映らないから】
【自身を軽んじ蔑む目、罵詈雑言のような聞くに堪えない騒音、それらを捉えるだけでささくれ立つ精神】

【"人と動物、何が違うというのか。人間なぞ高尚な生き物では無いだろう。化けの皮剥がせば誰だって精神異常者/スキッツォイド・マンだろうが"】
【過剰な自己愛に満ちた排斥の双眸。正しい人間の在り方を説かれたところで馬の耳に念仏。ただのノイズでしかないのだから】

【噛みつきは一定の効果があったようで、少年の右腕は力なく垂れ下がり、代わりに現れる柱】
【それを見た瞬間、"顎"は元の黒色の不定形に戻りダグライツの背面に集中して蜘蛛の脚を形成する】

【地面に背を付けたまま、蜘蛛の脚で壁に張り付く動作を以てレーザーを回避しようとするが高速故によけ切れない】
【左足が貫かれる。痛みにはけたたましい叫びが伴って。それが合図だった――蜘蛛の脚が数本消え去り】
【代わりに先端の尖った棒が二本形成されたなら、その二本ベルガーに襲い掛かる。狙いは不確かだが果たして―――】


603 : 名無しさん :2019/01/10(木) 23:05:36 cprpZ.FU0
>>598

【ならばやはり少女に出来る振る舞いなど、真っ赤な顔の色を酒のせいにして、拗ねた形に唇を据え置くことだけなのだろう】
【そのうえで強いて言うのなら、きっと硬く噤んだ口元は、気を抜いたならその瞬間にキスを強請ってしまいそうなのを必死に堪えているのだと十全に伝えてやまぬのなら】
【拗ねた色でありながら核融合炉よりよっぽど熱っぽくチョコレートファウンテンより溢れてやまない蜜漬けパンケーキの甘たるさを宿してバターみたいに蕩ける瞳は証明で、】
【せめて少女が決して裏側を見せぬお月様みたいに振る舞おうとするのは、二人が雌であり錠前であるからなのだろう。――それですらこんなに敵わぬのに】

大人でも駄目ですっ。大人の人のところにだって、いい子で信じてたら、サンタさん、来てくれるんですよ――。
アリアさんは、やーっぱり、悪い子だから、だめですねっ。きっと駄目です。サンタさんは、アリアさんのところ、来てくれなくっ、――、――っ。

【悠然とした振る舞いにまけじと気取るのが調子に乗った小娘の振る舞いであるのだから、やはり彼女は未だ子供でしかないのだろう。ほんの少しの酒にだって酔ってしまうのに】
【酒より強く深く甘く惑わす狼に敵う道理があるはずもない。――。ふふんと強気に笑ってみせた頬をするり撫ぜられるのなら、丸く瞠られる眼差しの青と、頬の赤】
【真っ白い肌に伝えるのは酒だけには到底説明できぬ頬の熱さなのだろう。瞠られた眼がどこへ縫い留められているのかをわざわざ記すまでもないなら】
【吐息のたびに甘やかに揺らぐ白がどれほどに素敵かを彼女はもうとっくに知っているのだから。陽だまりの毛布に埋まる子猫よりも甘えてしまうんだから】

――――――――――――――――――――――そう、ですよおっ、こんなに、良い子、どこ捜したって、いなくって……。
――そうですっ、ご褒美を、もらって、当たり前ですっ、そう、ですよ、ごほうび……。――――――――――。

【吐息が微かに震えていた。瞠ったまま沈黙したたっぷりの十数秒の間、きっと彼女は何も考えていなかった/考えるだけの余裕を見失っていた】
【いくらも遅れたなら、乾ききった口の中が引き攣るような声。――あまりに余裕のない声が出てしまって、彼女自身狼狽えているような温度があったなら?】
【やはり気の大きくなった年頃の少女みたいに気取ろうとするのがかえって上滑りしてゆく始末。――ましてや、最後には、そう演じることもできなくなってしまって】

【――――、酒のせいだなんて言えないくらいに顔を赤くしていた。唇をぎゅうと噛んで、伏せた眼差しを覆い隠すように、長い睫毛がただただ震えて】
【仕返ししてやりたい気持ちだった。けれど頭の中が丸ごとすこんって抜き取られてしまったみたいに言葉が出なかった。仕返し。仕返し。――狼狽えさせてやりたいのに】
【その顔を真っ赤にしてやりたいの。いつかの日に可愛いと囁いた時みたいに。だのに気の利いた言葉も何も出て来やしない、それどこか、なにも、なにひとつさえも、】

――っ、じゃ、じゃあっ、そ、ですね、そぅ、――っ、――――っ、そお。じゃあ、――、赤ちゃん、とかあ……。

【――ひどく掠れた声をしていた。顔は真っ赤すら通り過ぎてしまいそうで。表情を見るに頭の中は「?」で埋め尽くされているらしかった。なら、】
【ご褒美としての答えというより、何か仕返しのような突拍子のない揶揄いのつもりで発せられた言葉なのだろう。――と、きっと、伝えて】
【そのくせにどきどき鼓動を隠しきれない吐息の震えるさまがいやに少女性に不釣り合いな湿度を証明するのだから仕方がない。――さあ狼狽えろって言いたげな目線、わずかに、持ち上がり?】


604 : ベルガー ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/10(木) 23:11:28 arusqhls0
>>602

【射出されたレーザーが男を撃ち抜く、少年の顔に僅かに見える喜びは若年の甘さか、状況はすぐに変化する】
【ベルガーへと襲いかかる二本の棒、左手一本を楯に庇う、ガントレットが多少のダメージを軽減するが】
【かくん、と膝が崩れる、蓄積したダメージ量もかなりのものか】

【肩で息をしながら見据えるは狂気、それでもなお、彼は正気で相対する】


─── 知らないなら教えてあげましょう、貴方は許されざる罪を犯した
人を殺した事よりも、人を傷つけた事よりも、人を穢した事よりも
貴方は罪の意識を感じていない、それが一番の罪です


【柱を一旦消した、直ぐにまた攻勢に移れる様に、と────── だが、傷の深さは変わらない】
【次の攻防が最後と彼は認識している、吉と出るか凶と出るか】


605 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/10(木) 23:32:07 6IlD6zzI0
>>604

【痛みが意識を苛む。全身を打ち付けた事による痛み、足を貫くレーザーの痛み】
【全部が今になってどっと押し寄せる。気を保たねばスキッツォイド・マンも維持できず】
【そも意識さえも手放しそうだったから、次の一手が互いにとってのチェックメイト】



          啓蒙の心算か。そんなもん単なる独り善がりだろう。
         ――――― 要らねえよ。黙ってくれりゃあそれでいい。



【飛びそうな意識ではスキッツォイド・マンを分裂させて操作する事も難しく】
【故に蜘蛛の足取りは地面へと向けられて、覚束ない足取りでダグライツが降り立って】
【スキッツォイド・マンをもとの黒色の不定形へと戻せば、すぐさまドロドロした人型を形成して】



           【 い゛ た゛ た゛ き゛ ま゛ ぁ゛ す゛】



【黒色が喋る。目の前の食事にありつけるのが当たり前と言わんばかりに】
【猿叫にも似たけたたましい叫びと共にスキッツォイド・マンはベルガーに迫る】

【単純明快。真正面から襲い掛かり、顔の殆どが裂けた口となった異形が食らいつくだけの捕食行為】
【だが幕引きには十分で。スキッツォイド・マンがやられたならば、ダグライツも同じであるから】


606 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/10(木) 23:40:07 h7nAXcQg0
>>553
お前にそうまで言ってもらえると、誇れることでもないのに嬉しくなるものだな
何せここ最近は、『黒幕』に『円卓』に『虚神』にと、自分より遥かに強大な存在を散々見せつけられて
どうにも、自身喪失気味だったものでね

【彼女の言葉よりも雄弁な表情を見て、異形も口元を綻ばせた】

……そうだな。私とお前だったからこその、特例だ。だが、あのタイミングで私を相手にする事に限っては、この上なく的確な人選だったよ
さて――――あるいは、ギアかセリーナだったならお互いの出方次第で話をすることくらいは出来たかもしれないが
それ以外であったなら。殺し合いになっていたことだろう。『黒幕』に教えもしなかっただろうがな。あの時点で、すでに彼奴等には不信感を抱いていた

要するに、お前以外なら高確率で『いつも通り』の有様になっていたということだ

【カニバディールもまた、その醜悪な三つ目に近し気な笑みを浮かべていた。本当に、自分たち自身すら想定していなかった縁だ】
【敵でもあり、通ずるものもあり、お互いに曝け出した間柄でもあり、その詳細は筆舌に尽くしがたい】
【確かなことは、彼女の望んだ通り。異形にとっても鈴の音の少女は特別で、彼女であったからこその意味があった】
【喜ぶ、というには確かに場違いだ。だが、それでも。悪いものではないと信じたい】


……大切な誰かに会いたい。唯一の願いがそれで、後は何も望まずにか
確かに、この世界には勿体ないくらいの善人だ

それすらも、叶いはしなかったというなら……そうだな。せめて、子孫に優しくしてもらうくらいしたところで
罰は当たらないだろうさ。罰を当てる側が、そもそもお前かもしれないが
その通りだ。ご先祖は大事にすべきだよ。まして、すぐそばにいるのなら

【まったくひどい。神すらも恨みようがなくなったこの世界の理不尽、いったい誰を呪えばいいのか】
【絶望しているのに死にきれず、それ故に誰からも憎まれて。その根底にあるのは、こんなにも切実で誰しもが抱くだろう想いだけだというのに】
【自分は、間違いだなんて言いはしない。間違いだらけの自分のような悪党だからこそ、そう断言できる】

【口には出さない。彼女は、葛藤はとっくに味わい尽くしている。だから、今はこの希少なほどにありふれた香りだけを】


当然だな。美味いものは、誰が食べても美味い。私のような悪党でも、正義の味方でも、一般市民でも、神でもだ
ここだけは、舌が正常である限りは平等だよ

【貝というのは言い得て妙かもしれない。いや、貝以上に自我が希薄で動かない存在だが】
【それでも、箱は楽し気に笑った。テーブルの上を交わされる、どうにも重たい近況報告を聞いている間も】

【鈴音が体験してきたことを聞けば、異形も結局は沈黙のうちに。ただ淡々と自身の知る事実を告げていくしかなくなる】
【奇妙で特別な関係だが。深く踏み込めるわけでもない】

【――――時間が過ぎていく。やがて、話もひと段落つくだろうか】

……お前たちが動く日も。遠くは、ないのだろうな?


607 : ベルガー ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/10(木) 23:40:32 arusqhls0
>>605


────── ッ そう来るよな、そう来なきゃ、────── !!


【歯を食い縛る、それは覚悟の証であった、死中に見つけるにはあまりにもか細い活、けれども】
【見つけるのではない、最早手に入れる、────── 伸ばした手が掴む最後の力は】
【確かな勝利でなければ、自分が救われないのだから】


おおおおおおおお!! ────── くらい、やがれ ────── !!


────── “Terrible Object” ────── !!



【左腕を噛み付かせた、血飛沫が舞う、ガントレットごと噛み砕くその行為はまさに、捕食】
【表情に混じるは苦悶、痛みと恐怖とが、食い破られた皮膚から噴出する様に】
【神経が断ち切られる、プチプチと毛細血管が弾け、感触が薄まっていく】

【食らいつかせた、骨の髄まで、後はもう、逃さない】

【左手に出現させるは “柱” 食いつかれた口内を、内部からぶち破る軌道で柱を出現させようとする】
【まさに肉を切らせて骨を断つ、────── だが、その代償はあまりにも大きい】
【捨て身の一撃と形容してもまだ足りない、どれだけ身を削れば辿り着けるのか】


608 : ティナ ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/10(木) 23:52:59 arusqhls0
>>647

【軽く胸の下で手を組んで、片方の手はほっぺたに当てる、一つ一つの仕草に媚態が映し出される】
【表情は可憐に、それでいて動作は艶やかに、相反する二通りが生み出すのは蠱惑】
【それを自然体で出しながら、彼女は最大限の武器にすべく、コケティッシュな色を醸し出す】


やっぱりダーリンは話が早いですねっ、私の言わんとしている事が簡単に伝わっちゃいます
それは私にとっても飛びっきりの幸運なんですけどもぉ、周囲の短絡的なおバカさんがお相手なら
案外ぽっくりと私は死んじゃいまして、哀れ哀れ、この美しい少女は乱暴狼藉に露と消えるのでしょう

まぁと言うわけで平和的な方法論が一番ですよん、私もダーリンも、何方も得をするんですしっ

ええ、可笑しいです、あれが『悪法』である事を、ダーリンが見抜けない筈ないじゃないですか
私のイケメンセンサーがそう言ってます、ダーリンの様な聡明な男性がする判断じゃない、と
例えそれが手段であったとしても、毒を用いる事は限りなくリスキーなんですから


【恐らく彼女は相応の “下調べ” をして彼に近づいて来たのだろう、先程の発言もまたちょっとした謀りだ】
【それ故に彼女はガゼルという男の智慧を、思慮を高く評価している、────── つまり】
【彼が見ているのは更に先であると判断した上での、コンタクトであったのだから】


ダーリンも分かっているでしょう? ダーリンの支持者が求めてるのは、能力者との共存の様な甘っちょろいものじゃなくて
危険な動物は殺してしまう、みたいな短絡的な解決なんです
妥協点なんて、最初から見つかる筈がないんです、それを求めてはいないんですから

────── だから私は此処に来たんです、ダーリンの力を、より正しくふるえる場所へ導こうと


609 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/10(木) 23:57:18 6IlD6zzI0
>>607

【スキッツォイド・マンにとっての捕食とは命を喰らうことに他ならない】
【血を啜り、骨ごと肉を食むのは単なる過程でしかないから、まだ足りない、満たされない】



           【じゅる、じゅる】
                 

                  【がじがじ、がじがじ】



【捕食行為は今なお続く。暴食の顎とも呼べる口は左腕、更なる奥へと向けられて】
【だがしかしてそれは叶わない。何故なら――口の内部から貫く杭がそれを許さなかったから】
【奇しくもそれは三つ首の狗を黙らせた時の構図に似て、決定的に違うのは切れ端か本体かという事】



 
           『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛………』



【スキッツォイド・マンは満たされる事無くその体を後ろによろめかせながら】
【力なく霧散していく。それと同時にダグライツも少年への対抗手段を失い、連れて意識を失う】
【最後に残した断末魔。それはダグライツ自身が発したものなのか、彼の分身のものなのか】
【それとも精神異常者/スキッツォイド・マン達のものなのか――――】


610 : スクラップズ ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/10(木) 23:57:56 h7nAXcQg0
>>591
ハッハッハ、それはすまなかった!! 我々に仲間呼ばわりされるのは、そりゃあ侮辱以外の何物でもあるまい!!

誰しも仮面を被って生きていくのは確かに当然だが、お前のそれはその中でも相当に高性能な仮面らしいな
一瞬、二重人格かと疑いそうになったほどだ

わかってもらえるかね? 自分たちで選んだ道ではあるが、まあ疲れるものは疲れる
く、ふふ、本当に氷の国は良い人材を揃えているな。このレベルが普通の書記官か

おっと、もうクライマックスかね? そこまで焦らずともよかろうに

【配下の一人が彼女を発見し、能力による視覚共有を果たしたスクラップズ全員がそちらを向いた】
【だが、それでもやはり遅かった。全員が銃口を彼女に向けたが、捉えようのない速度を見せつけられた】
【空中全てが彼女の舞台であるかの如く。洗練された優美さと、鍛え抜かれた鋭さが同居するその姿は】
【切っ先を向けられるのが自分たちであるという状況でさえなければ、見とれていたかもしれない】

【取り出された凶器の長大さ、それでも彼女はきっと手足のように用いるのだろう】
【次々に銃声が響き、広間の天井に銃弾が突き刺さっていく。そのすべてを潜り抜け、今まさに彼女が死そのものとなって降ってくる】

――――そう簡単にいくかな?

【それでも、異形は笑った。生命力なら自分の十八番。たとえ首を切り落とされようとも、蘇生して見せる】
【首の肉が膨れ上がり、防御の姿勢を取る。そこへ、彼女の刃が今まさに――――】

む……!!?

【彼女の剣が床に突き刺さる音が、妙に耳に残響した】
【カニバディールも不意を突かれたと見え、怪訝な顔で振り返る】

【自分たちが入ってきたはずの入り口が、妙に遠くに感じられた】

――――どうやら、『上官』殿のお出ましといったところかね?

【オブライエンに視線を戻し、問いかけて見せる。未知への恐怖はひた隠しにして】


611 : 名無しさん :2019/01/11(金) 00:07:13 cprpZ.FU0
>>606

【まして、彼女は自ら望んで"こう"なったわけではなかった。むしろ誰よりも"こんな"こと、望まないのが彼女なのだと、きっと、彼にはよく分かるから】
【死んだはずの自分が再び目覚めてしまった異質に誰より絶望したのは彼女だった。そして、黄泉帰りの化け物に誰より恐れたのは彼女だった。――それでも、】
【それでも憧れたものを諦めきれなくて。なのに今となっては世界を滅ぼす化け物として世界から排除されようとしていて。かちり鳴った時計を見やる目、ひどく、冥い色】

……………………、わたしは、わたしを大事にしてくれなかった世界が、きらい。だから……、――だから、でも、

【どこかのタイミングで用意した茶はすでに冷めきっていた。それどころか、湯と茶葉が分離して、上澄みなどもはや水と変わりない色になっていた】
【そんな液体をコップごと揺らして混ぜて、そのまま煽る。――美味なはずもなかったから、少女の表情はやはり晴れないのだろう。"でも"、なんて、未練がましい】
【けれど彼女の言葉を辿るなら、「もう」なんて言葉を彼女は使っていたのだ。さんざん期待したのに。さんざん憧れたのに。さんざん待っていたのに。なのに/でも/だから、】

馬鹿げてるって、分かってるの。でも、馬鹿だから、期待したの。

【(或いは、あのとき居合わせた"だれか"が言っていたみたいに)】
【(誰も彼もが彼女に優しい言葉を投げかけて、すべての頑張りを労って、――これから大事にするからと誓うのではなく、いま大事にしていると示したのなら)】
【(けれど悉く無意味な仮定だった。過去を変える方法なんて、この世界では、まだ、完成していないのだから)】

【彼女は確かに世界を怨むけれど、――きっと同じくらいに世界を愛しているのだから。(だからこそ裏切られたと思ってしまったなら、)】


612 : ベルガー ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/11(金) 00:10:11 arusqhls0
>>609

【────── ゆっくりと、彼はその場に蹲った、吐いた息の乱れが激しい】
【身を削って漸くの善戦、戦闘よりも遥かに悍ましい、殺し合いと呼ぶのが相応しいほどに】
【或いは食物連鎖の如く、血で血を洗う生存競争とも呼ぶべきなのだろうか】


っ……くそ ────── 殺さなきゃ、いけない、のに


【彼は認識する、これ以上の継戦もまた彼には出来ない、と、────── それをしたら最後】
【彼もまた力を失いその場に倒れこむことをはっきりと認識していたから】
【踵を返す、憎き相手を殺さずに逃がす、屈辱に塗れる心地は止まらない────── だが】

【心には僅かな感情が揺らいだ、その正体は、まだ分からない】


/こんなところでしょうか! お疲れ様でした!


613 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2019/01/11(金) 00:12:05 WMHqDivw0
>>595
【黒陽と言う男は、サクリレイジの中でも最も中核に位置するメンバーだった】
【もしも、ボスと言う男の実存が、"サクリレイジ"と言う組織そのものなのだとしたら――……この男は最も彼の思考に近い部分に寄与しているのだろう】


決して死なぬ者と、決して倒されぬ者――似合いと言えばその通り。
奴らはその気になれば何度でも結末を延長し、繰り返すことが出来るだろう。

或いは、倒されたとしても――


【黒陽は言葉を止める。ふむ、と一度を顎を撫でて】


信仰によって神は創られる。
確かに虚神達はその順序が逆であり――実際に存在するINFオブジェクトを"神"と言う枠に定義して、神話として創り上げている。

これまでの虚神達は、強大な力を持ち得ていたが……
それでもあれらは言ってみればただの化け物あり、更に言うならば、強力な能力を持った"能力者"であったとも言える。

奴らを神たらしめるのは"虚神"と言う名前と、"本来はもっと強大であった"と裏付ける財団の報告書。
それらを揃えることで、"未来では世界を滅ぼすほどの力を持った神"と言う神話が成り立つ訳だ。


INF財団こそが、未来の世界において迫害と監視の下に置かれた哀れな能力者達の末路――INFオブジェクトを神へと仕立て上げた。
それは、この基底現実においても、有効性を持っていると言える。


【ならばウヌクアルハイはどうなのか】

白神鈴音には本来、世界を滅ぼすような力は備わっていない。
いや、白神鈴音に限らず、他の誰にも、だ。


ならば、これは恐らく"実験"と言えるのかも知れない。
――この新世界と言う檻の中で、如何様にして世界を滅ぼすに足る力を持たせることが出来るのか。

レッドへリングがアドバタイズを仕掛ける。
アナンターシャは白神鈴音を餌とすることで、虚神と言う空想――その時点では"妄想"であったそれを、を能力者達に無視できなくさせた。

【被害者たる白神鈴音を救うために。如何にすれば良いのか。能力者達は頭を捻る。虚神を理解しようとする。それによってミームは刷り込まれていく】

ジャ=ロをいくつものインシデントで矢面に立たせ、準備と伏線を重ねることで、かつて世界を滅ぼした虚神としての格を持たせる。

【"世界を滅ぼした"――それもこの新世界と地続きの世界を。その格を得ることは容易ではあるまい】
【"新世界より"と"巡礼の年"の二つのインシデントを経て、サーペントカルトとシャーデンフロイデと言う強大な敵を倒す経験を糧に、ジャ=ロはそれを得ることが出来た】
【しかし、いざ格を得てしまった時点でジャ=ロは既に用済みであったと言える】
【そこからはロールシャッハの出番となった】

そして、ロールシャッハによって、この世界の基盤に対して揺さぶりをかける。


奴の最期の一幕では、多くの能力者達がロールシャッハの思考に引きずられ、自分を操るより上位の人格を夢想した。
ミームの汚染は既に十分過ぎるほどに浸透していると言う訳だ。


【あの荒唐無稽な真実を、もしも誰もが一笑に付したならば、虚神と言う概念の侵略は頓挫していたのかも知れない】
【だが、事実としてそうはならなかったし、そうならないと言う確信も有っての試みだったのだろう】


そこまでの準備を重ね、ようやく能力者達に、そして彼らが構築する"新世界"そのものに、世界を滅ぼす資格を得ることが出来る――
或いは、"出来るのか?"と言う実験の一端である。


――私はこの一連の事件をそのように読み込んでいる。


【イルの目論見である、と語るには些かペダンチックな推論で有ったのだろう】
【或いはこの事件よりももう一歩先の話であるのか】
【今の事件の話でないのであれば、何故イスラフィールにそんな言葉を語るのか】
【つまるところ、この婉容なる女のことを――全く信用していないのだと知れる】


614 : イスラフィール ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/11(金) 00:31:43 arusqhls0
>>613

【イスラフィールは黒陽の述懐を静かに聞いていた、相槌を入れる事もせずただありのままに】
【それは一つの解釈であった、神話を体系づけて考えるように、事実を体系づけて神話を作り上げるかの如く】
【或いは私達の行いそのものが、神話という枠組みの中にすっぽりと収まっているのかもしれない】


────── 正しく荒唐無稽な話ですわ、私の口からは合っているとも間違っているとも言えません
けれども筋は通ります、最後の柱としてスナークが残ったのも納得できるでしょう
ですがお分りの様に、貴方様の推論には、────── いえ、敢えて推理と言いましょう

決定的に足りないピースがあるのではありませんか、そう即ち
それら流れを構築した『黒幕』が、いるべきではないのでしょうか
若しくはそれが、未だ姿を現さないグランギニョルそのものであると想定も出来るのでしょうが

だとすれば随分と質が悪い虚構神ですこと、自らの同類を数多犠牲にしたのですから

一つ手掛かりを差し上げましょう、ロールシャッハの記憶の中にもグランギニョルに関する記述は御座いませんでした
それはつまり、ロールシャッハそのものもまたグランギニョルについて本質的な知識を得ていなかったのです

最初の記述を思い出してみましょうか、嵯峨野 鳴海が作り上げた<harmony/plan>それがすべての始まりですわ
その中で嵯峨野はグランギニョルの元となる因子を命名していた、────── とすると
グランギニョルそのものを正しく理解していたのは、今は亡き嵯峨野 鳴海だけなのかもしれませんわ


615 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2019/01/11(金) 01:25:49 WMHqDivw0
>>614
グランギニョルについては決定的に情報が不足している。
故にこれについてはそれこそ憶測で話を埋める他は有るまい。


だが、今まで出て来た虚神達のように依代を以て、我らの前に姿を現し、その打倒に奔走するような類の相手ではないだろう。


【それはロールシャッハも口にしていたことだ――イスラフィールの言を信じるならば、彼自身もその本質を理解していなかったようだが】
【何より今になって、全ての黒幕として姿を現すには遅過ぎるし――他の虚神達が既に世界を滅ぼし得る格を持っている今、どのような能力を持ち込んで顕現したとしてもインパクトの弱さは否めないだろう】
【さりとて、スナークのように搦手を用いることが許されるポジションでもない】

【それでも】

サクリレイジの目的はグランギニョルの打倒に変わることはない。
そしてそれさえ成せば他に何柱、虚神が残っていたとしてもそれで終わりだと、我々は考えている。


――だが、この事件の裏にもし『黒幕』がいるとすれば、それはグランギニョルではあるまい。


性質が悪いと言ったな?
それには同意しよう。
――全く、人間的な性質の悪さだ。


616 : イスラフィール ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/11(金) 01:34:47 arusqhls0
>>615

【サクリレイジという組織の終わり、その言葉は矛盾を秘めていた、けれどもそれは受け入れる事の出来る矛盾であった】
【今ある現実の不安定さを彼女は理解していた、そしてそれは黒陽もまた無言の内に知っている】
【だからこそ明言すべきなのだ、それぞれの存在性の行き着く場所を、飾り立てた後に辿り着く場所を】


何れにせよ私達は待たなければならないのですわ、先んじて出来る事は、スナークに関しては私の方からはありませんもの
或いは、サクリレイジの方々は何かしらの手筈を考えていらしたりするのでしょうか
きっとそれらは私の想像もつかないような、飛び切りのアイデアと、奇想天外な技術によって成り立つもので

そう考えると私は、少しの寂しさと、確かな高揚を感じるのですわ、この世界の行く末も探しながら
ええ、きっと、世界も現実も、続いてゆく限りどこまでも広がっているのだと
ですから私達は滅ぼさせてはいけないんのです、この世界を


【彼女は一息置いた、もう何時間も話している様な、そんな気もしたから】


考えは纏まりましたか? 私の様な者でよければ幾らでもお付き合いしますが
はぐらかしている事実がある事については謝罪致しますわ、しかしこれは私個人の問題でもあるのです
全てを明らかにするには、まだ私は貴方達を信用しきってはいません


617 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2019/01/11(金) 01:52:32 WMHqDivw0
>>616
【この事件の行末がどのような結果に終わるかは定かではないが】
【どう終わったとしても、その先の世界に"サクリレイジ"は存在しない】
【外様の彼等が、この世界に干渉する最初の約束であったのだから】


さて――準備はしているつもりだが、モチベーションに関して言えば、既に我々以上にやる気の者達がいるだろう?
何しろイル=ナイトウィッシュと白神鈴音は人気者だ。

世界への脅威と、親しき者への仇と言うのみの役割であった他の虚神達とは話が違う。

【或いは、エカチェリーナや――……"鵺"であれば、近しいものは有ったのかも知れないが】


我々はスナークを滅ぼさねばならないが、イル=ナイトウィッシュの行く末には関知はしていない。
ウヌクアルハイの顕現は阻止せねばならないが、白神鈴音を殺すことには興味はない。

それらを成すのは新世界の住人達の仕事であろうな。


【勿論、事件に赴いたメンバーの主義主張によっては、当てはまらない話なのだが。男は肩を竦める】


それでよかろう。仮に全てを審らかにしたとしても、それを鵜呑みにできるほど、私も貴様を信用してはいないのだから。

"貴様がまだ何かを隠している"
その事実を知るのみで、今は十分だ。


【――"この先"が有ったとしても、それを語る機会は、彼等には用意されてはいないかも知れないが】


潮時か。時期に次の演目も始まるだろう。
見応えのある物語で有れば、何よりのことだ。


まぁ、仮にそれで世界が滅んだとしても私だけは生き残ってみせるが。


【最後には、そんな男らしい傲慢さを語るのだった】


618 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/11(金) 01:53:39 h7nAXcQg0
>>611
【そう、カニバディールはわかっている。皮肉にも、敵である己にはわかっているのだ】
【鈴音という女性が、どんな道をたどってきてどんな意志を抱いてきたのか。彼女が、どれほどこの世界を愛したか】
【彼女の仲間たちが、へびさまが、子供たちがいるこの世界を】

【だが、それが彼女への救いとなろうか? ただ、知っているだけの自分の存在が】
【否。仮に慰めにはなったとしても、救いには決してなり得ない。だから、彼女は今、こうなっているのだから】

【時計の針の音すら、不快に思えた。いっそ時など止まれば良いのだと】

――――……未練だ、などとは思わない

【味の変容した茶は、変えられない過去の暗喩のように。彼女の喉が鳴るのを見ていた】
【未練がましいなんて、誰が言えよう。少なくとも、自分は知っている。「もう」だなんて、怒りに身を浸しても】
【それでも、まだ絞り出されるのだ。その思いは】


……そんなお前が馬鹿なら、世の中全てが大馬鹿だよ

【目は伏せられる。自分自身もまた、あの場にいながら『出来なかった』一人なのだから】
【彼女と言葉を交わしていたのに。ある意味では、あの中で一番罪深いのはこの異形か】
【元より、人食いの盗賊なのだから、一番罪が重いのは当然なのだが】

――――それでも、まだ憎むのと同じくらいに愛しているのなら
やはり、その箱は持っていけ。ないよりは、ある方がマシだと私は信じる


619 : ◆KP.vGoiAyM :2019/01/11(金) 02:10:24 Ty26k7V20
>>571

そうかい?そりゃあ、合わない人だっているだろうけど
もしかしたらわかり合えるかもしれない。それだけで、十分じゃないかな。

【彼は見た目通りに純粋で、正直だった。博愛主義というやつだろうか】
【それならばそこらの宗教家よりもよっぽど芯の通った主義者だろう】

時間はあまりないけれど、考える猶予はある。いくらなんでも僕一人でなし得るのは
時間もかかるし、簡単なことじゃないけど。それに、できるだけ多くの人にわかってほしいんだ。
少なくとも、因果に大きく関係している人たちには。

僕は悪役だ。世界を終わらそうとしているのだから。だから、多くの人たちが反発するのは至極当然だと思う。
だけれども、単純に『機関』や『終末』といったワードから反射的に反発しないでほしいと思っている。
だから僕は対話を求めている。そしてヒトであるなら思考してほしい。

それでもなお、この世界に未来を求めるなら。…見せてほしい。その希望を。覚悟を。
そして、僕を打倒してほしい。そう、願っている。

【「君に押し付けているわけじゃないよ」と、彼は慌てた様子でつけたした。】


……うーん。どうだろう?この時代はまだ僕は生まれていないし…この時代の機関は
納得してくれるかな?…そこまで考えてなかった
この時代のカノッサ機関は強力で世界の脅威だってきいていたから何処かしらで誰かに
会えると思っていたから。


人類は繰り返してきた。それはすなわち正義が勝ってきた証拠でもある。なんでも立ち上がった。
だが悪もそれは同じだ。そしてついに…最後に、歴史上初めて、悪が勝つことになる。
…願わくば、僕も終わっては欲しくないんだけどね。この時代って面白いから。
新しいカメラも買ったばかりだし。


620 : イスラフィール ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/11(金) 02:15:58 arusqhls0
>>617

【ふと、彼女は緩やかに微笑んだ、妻が夫に向ける、─── 柔らかな労りの微笑み】
【集中して格闘していた書類から顔を上げて、ふっと横を向いた時、黙って珈琲を差し出しながら】
【そうして携える微笑みであった、─── ある種の賛辞も含めた、そんな彩りで】

【帰りの準備をさせるのだろう、彼女が一つ連絡を入れたなら従者が黒陽の装備を片付けようとする】
【明確な味方では無かった、言ってしまえば理外が一致した程度の関係性、それでも】
【共に向かう先が微かでも一緒なら、彼女が躊躇う理由にはならないのだから】


ええ、きっと、これは叶わぬ願いです、ですから世迷い事と思って聞いてくださいませ
貴方達の旅路の終着は直ぐ近くにありますわ、否が応でも列車は終わりに向かって進んでいきます
私だけが取り残されているのです、私はいつも皆様を見て、辛い心持ちになるのですわ

それでも私は送り出す役目を選んだのです、どの世界線に於いても、私は見送るべき存在ですから
そしてそれは虚構現実でも変わりなかったのでしょう、ですから私は “財団” を作ったのだとそう認識していますわ
ふふ、お分かりでしょうか、─── もしかすると、解かれる事のない問い掛けかもしれませんが


【扉が閉まっていく、遠くなる彼女の表情に僅かばかりの寂しさが浮かんだのなら】
【それはきっと運命の分かれ道、微かに交錯しただけの一瞬に想いを馳せるには淡すぎて】
【けれども確かに、──── 信じるには十分すぎる瞬間だから】


願わくばまた会いましょう、その時は私を、貴方様の論理で丸裸にしてくださいませ
それでは皆様、良い終末を ──────


【扉は閉じる、賽は投げられた、次なる演目はリーフレットに記された最終段】
【貴方はそれを予期する、貴方はそれを描く、例えそれがどんな荒唐無稽な話であっても】
【今はそれが真実であるのだから、──────】


/こんな所でしょうか! お疲れ様でした!


621 : 名無しさん :2019/01/11(金) 02:39:13 cprpZ.FU0
>>618

【ならばやはりどこまでも奇妙な縁だった。――。――。彼が居なければ、また何か、彼女の人生は変わっていたのだろう、けれど、それは、きっと、悪い方に?】
【どんだけ理解しあうべきではない間柄だとしても。そうだったとしても。或いは、そうだったからこそ。なにかどうしようもないものを分かり合った二人だからこそ、】
【もはや茶でもない茶を飲み干す姿すら安心して見せられたのに違いなかった。ふわふわのお洋服で着飾るのは何か隠したいから。もうそんな意味もないのかも、しれないけど】

――――――――みんな滅んで死んじゃったら、みんな、馬鹿が治るかな?

【冗談めかすような口ぶりで、けれど、声音はどこまでもなにか堪えているものだった。――自嘲めいて曖昧に笑う顔は、もう、たぶん、つかれてしまっているから】
【頑張ったのに報われなくって疲れていたし、なにより自分を望んだという蛇に憑かれていた。疲れ切ったまま、蛇が報われるためにまだ頑張る。それがきっと今の彼女なら】
【きっとどこまでも退廃的な狭い世界に生きていた。たくさんのストレスに狭められた世界でもがいて、せめて、せめて、――何か一つくらい、報われてみたい、なんて、】

貴方のせいじゃないよ。

【――かたん、と、小さな音で立ち上がる。伏せられた目であるなら、視線は合わないのだろう。それでも確かに彼女にとって、彼は、恐ろしいけれど】
【それ以上に彼女を傷つけはしなかったのだから。――。そんなはずはなかった。彼もまた彼女を傷つけていた。そうだとしても、やはり、二人奇妙な関係であるから】
【赦したはずはなかった。それでも、今は味方だった。ちっぽけな勇気を後押しする言葉をくれた。話を聞いてくれた。星を見た。――そうして今だって、】

【黒い箱を抱き上げて、指先が撫ぜて、】

こんな世界、だいっきらいだけど、だいすきだよ。……。わたしも、みんなみたいに、当たり前に生きて、みたかった……。

【――――――ぱたん。小さな音。ちっちゃなちっちゃな水飛沫。鈴の音が曖昧に震えて】


622 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/11(金) 03:11:01 h7nAXcQg0
>>621
【この世にイフはない。それでも、考えてしまう。あの時、ああでなかったなら】
【出会わなければよかった出会いも、出会えて良かった出会いもある。この二人のそれは、どちらだろう。答えは神様すらも知らない】

【でも、それでも、お互いに心のうちを少しでも晒して、その上で今この場で共有する時間だけは事実のはずだ】
【隠したいものと見せても平気なものを、同時にこの場に置いておける程度には】


馬鹿は死ななきゃ治らない、という言葉が真実なら、解決方法はそれしかなさそうだ

【ほんのわずかな苦笑を浮かべて、しかし異形の声もまたいつも以上に重苦しかった】

【疲れる。誰もがそうだろう。生きるということはエネルギーを使うし、その道が険しければなおさらだ】
【誰もがそうであるのに。まして彼女の道は、他の誰と比べてもこの世界屈指といえるほどに、険しく酷薄な道であったはずなのに】
【そんな彼女が報われてはならない道理が、あっていいのか】


――――……そう、か

【異形も、三つもある視線を一つも合わせられなかった】
【敵として殺し合って、あんなに傷つけて。なのに、今彼女を傷つけようと思わない存在が、自分以外にどれだけいるのか】
【こんな時、あのテンガロンハットがいてくれたら。今宵何度目になるかわからない、そんな身勝手な思いがまた浮かんできた】
【一度は彼女を瀕死に追いやり、拉致されるきっかけを作ったこの男が。今や違う存在に攫われた彼女の帰還を望まずにはいられなかった】

【そうだ、そんなかけがえのない鈴の音の少女の姉を傷つけた己を、誰が赦すものか。だけれど】
【ならば、何故自分と彼女は。共に食事をして、言葉を交わして、星を見上げて。何故なのだろう】


【水滴が落ちる音。異形は、ほんのわずかに牙を噛み締めた。本来なら、彼女のために歯を食いしばる権利もないから、わからないように】
【ただ、抱き上げられた箱だけが。彼女を見上げて、三日月の口を開けたまま】
【側面から、人の形を取っていた時の腕を伸ばして、彼女を労わるように撫で、抱きしめようとした】
【何も知らない箱がゆえに、ただそうした】


623 : 名無しさん :2019/01/11(金) 03:36:06 cprpZ.FU0
>>622

【一度溢れてしまったものをとどめるのが難しいのは、きっと、どんな時でも、どんなことでも、"そう"だった】
【ならば彼女は特別に堪えようともしないのだ。――かといって、子供みたいに泣きわめくでもない。それでも、大人みたいに我慢もできなくて、】
【――――ましてや、優しく撫でられ、抱きしめられるのならば。どこに我慢できる理屈があるのだろうか、ひぐ、と、ちっちゃな吐息の引き攣りが、目印で】

――――っ、ぅあ、あぁあ、――――っ、

【ちっちゃな/けれどおっきな泣き声を聞かせてしまうのも、やはり、二人の奇妙な関係性が故なのかもしれなかった。縋るように箱をぎゅうっと抱きしめるのならば、】
【そのままぺたんと床まで座り込んでしまうのだから。――、ならば彼にはちょうど黒髪のつむじまでも見せつけるのだろう、ふっと心変わりをしたなら、容易く殺せる距離感にて】
【まるでここが安全な場所だと信じているみたいだし、きっと信じているのだろう。武器だらけのこの酒場も、それから、奇縁を紡ぎ続けてきた、彼のことも】
【ふうわり広がったスカートだけが一人ここが花畑だと信じてしまっているみたいに可愛らしかった。そのくせ身に着ける少女の涙は何より絶望色をしていたのなら】
【ぽつりぽつり咲いていくのは綺麗な花々ではなく、涙が散った時の飛沫なのだろう。それでも花のように散るから、まだ何か救いのようにも思える、気がして】

【――なにかに赦しを乞うみたいに身体を丸めて泣きじゃくるのが世界を滅ぼす神様であるなら、やはり舞台は演目を間違えたみたいに、惑うのかしら】
【それとも観客はそれこそを待ちわびているのかもしれなかった。そうだとしたら、あんまりに、――、なんて、】

【――――――どうあれ、彼女もやがて泣き止むのだろう。彼がどんな風にしようとも、何もせずとも、何かを、したとしても】
【そうすれば、真っ赤な目を腫らして、彼のことを見送ろうとするのだろう。――。いくら神様であっても、泣きじゃくった後の腫れた瞼を見られたくは、ないらしいから】
【希望があるのなら、世界中のどこまでだって送っていくはずだった。そうでなければ、――、せめて酒場の裏口の扉を開けてやるのだろう。表からでは、彼は、目立ちすぎる】


624 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/11(金) 23:23:30 BRNVt/Aw0
>>619

分かり合える、なんて事はないんじゃないかなぁ……人が妖怪だと知った瞬間今まで優しくしてた態度を一変させてくる奴等とかいるし……そもそも分かり合えてたら魔限法なんか生まれてないんじゃない?

……確かに一人ではそんな事…………時間はかかるけど出来はするんだ?

うん、そうだね
この世界では機関は悪とされてるし大概は世界なんて終わらされたくないに決まっている
けど、対話は無理じゃないかな?私もさっき機関って聞いて反射的に攻撃しちゃったし……一度悪いと決めつけたら皆問答無用で根絶するのに躍起になるし……
押し付けてる訳じゃないっていってもね……因果に全く関わりのない私にこの話をする時点でなんだか間違ってると思うよ?
もっと他の関係してそうで理知的な……理知的な……

……いるのかなぁ……
【神様怒らすような人達だもんなぁ、と少女は苦笑して】

納得、は……どうなんだろうね?私も機関員じゃないから分からないかな
そもそも最近は機関がまとまって起こす事件もないみたいだし……機関自体一枚岩ではないみたいだし…………うん?
【考え込んだ脳裏にふと浮かんだのは三つ目の異形。そういえばあの人も機関員だったな、と思い起こして】
【ひっそりと笑う。まるで何か悪戯を思いついた子供みたいに】

……そうだ、カニバディールって機関員をあたってみたら良いんじゃないかな?
精力的に活動してるみたいだし、何より貴方が探す因果に大きく関わる奴でもあるよ?
何処にいるのかまでは流石に分からないけど
【そうして人の好さそうな笑みを浮かべて提案する】
【少女にとってこれはある意味件の食人鬼に対する意趣返しのようなものだった。<harmony/>社では手柄を横取りされたし、自分の居場所だった所に食中毒事件起こされるし、これくらい良いよねって】
【──その"名前"が青年達の時代ではどんな意味を持つかなんて彼女は知らないから】

正義が勝ち、悪は敗北してきた……
そうして歴史上"初めて"悪が勝利する……
初めて、ではないんじゃないかな?多分だけど……悪とされてきたモノが勝利して正義の概念を得た、なんて事はあると思う……勿論逆も然り、ね
勝てば官軍負ければ賊軍なんて言葉もあるくらいだもん、本当は"悪"なんて概念存在しないのかも

……私も、正直終わって欲しくはない
でもそれは私が嫌だと思う人物と方法による終わり方の場合
私が友達だと思っていた"あの子"の──わるい神様に成ってしまった"あの人"の怒りで世界が終わらせられるのだったら
【それは仕方がない事かなって、と少女は笑って】

……考えてみたら私、そんな未練らしい未練もないからなぁ……それを作る為に思いついた事をやってみて好きな事とか本当にやりたい事を探してはいるけれども……
会いたい人だって………
【彼女はそう言って思考を巡らせる】
【ふと浮かぶのは大切だった赤色の笑顔。慕っていたネイビーブルーの優しい声】
【カレーライス、結局教えて貰えなかった。そうだ、教えて貰うっていえば『あの子』に料理を教えて貰う約束も、傘を返す約束だって"きっと"果たせてない】
【嗚呼、けれども、きっと皆私がいなくても大丈夫、なんだろうな──】
【ぎゅ、と瞑った金色。それをゆっくりと開けて少女は苦笑する】

──うん、全く思いつかないや
【そうして、嘘を吐いて】


625 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/12(土) 00:14:36 h7nAXcQg0
>>623
【きっと、誰しもがそうだろう。一度決壊してしまえば、もう止まらない】
【まして、今までずっと耐え続けてきた彼女だ。今この時くらい、許されるだろう】
【この酒場では、彼女は神ではなくただの給仕なのだから】


――――

【彼女の泣き声を聞きながら、カニバディールはただそこにいた。縋りつかれる箱だけが、彼女を優しくなで続ける】
【人体には詳しいゆえに、今彼女がどういう状態かもわかる。このまま頭頂を撃ち抜くことだって造作もない】

【そうはしなかった。したくなかった。敵であるはずなのに。ここは敵地だったのに。あの日、重力に飲み込んで滅ぼすつもりだった場所なのに】
【スカートの広がりが何とも華やかで、そこだけがかえって異質。飛び散る涙は、何を象徴するのか】

【世界だって滅ぼせる。そう信じた彼女なのに、今目の前のこの鈴の音は】
【これを知るのが、何故己だけなのか。彼女を憎む者たちには、この小さく激しく鳴る鈴も、忌々しい不協和音なのだろうか】
【この舞台に観客がいるなら、きっとひどい奴らに違いない。これを作り上げた作家たちは、もっと】


【彼女が、泣くのを止めて顔を上げれば。後は二人の間に言葉はなかった】
【その心情を読み取って、彼女の顔は見ないように。音もなく静かに、踵を返して】
【そうしたら、後は彼女の見送りを受けて裏口へと向かう。飛ばしてもらうのも考えたが】
【なんだかこの場からは、自分の足で歩き去りたかった】

【ドアのきしむ音。別れの証に、軽く背中越しに手を挙げて】
【異形は闇の中へ消えていった。神の手の中に、その箱一つ残して】

/こんなところで締めでしょうか……? 本当に長期間になってしまい、申し訳ありませんでした……ありがとうございました!


626 : 名無しさん :2019/01/12(土) 00:34:55 f9wzQWko0
>>625

【扉の軋む音。――内側より扉を開け放つなら、ぴゅうと冷たい風が吹き込むのだろう。冬が深くなっていくときの風の匂いがした。きっとこれから、うんと、寒くなる】
【そのころにまだ世界は在るのだろうか。この世界が変わらず春を迎えるのなら、その時、そこに彼女は居るのだろうか。分からないけれど。――。分からないから】
【開けた扉が閉まらぬように押さえながら、彼女は道を彼に譲るのだろう。――ひどく俯いていたから、表情はよく伺えなかった。少し長めの前髪は、きっと、そのためだった】

ばいばい。

【――――――――それは、彼が、店外へ足を踏み出したタイミング。振り返ったところで、その瞬間に扉は閉ざされて、その内側から鍵をかける音がする】
【ならば今宵はどうしたってお終いだった。裏口であるなら閉店を示す看板なんてもの、ありはしなかったけれど。――。風が冷たくて、空ばかり綺麗で、嫌気が差す】



【――――、そして、新年を迎えたあくる日。ひどく寒い夜だった。――そうして、また、夜深い時刻だった】
【彼の端末にぽつんと通知が灯る。午前二時三十七分。――。「おねがいがあるの」。数分後にもう一度着信。――。どこかの場所を指定して。着信。「朝まで待ってる」】
【馬鹿げたデートの誘いに似ていたが、そんなわけはなかった。――その場に訪れるのなら、少女はそこに居るのだろう。(いつかセリーナとともに彼と戦った公園だった)】
【ベンチに腰かけていた。その胸の中に誰かを抱き留めているみたいだった。――。彼の姿を見止めるのなら、ひどく冥く、けれど確かに安堵したように、笑って、】

カルラを、――、――――――。

【――"からっぽ"になってしまった女の子だった。そうしてきっと彼なら、その女の子のことも分かるのだろう。"たんぽぽ"によく訪れていた、少女】
【いろんな子のお姉さん役をやってくれていた子だった。そのためにひどく傷つけてしまった子だった。――。生きていた。けれど、それは、命と呼べるのかしら?】
【寒くないように上等の毛布でくるんでやって、彼に委ねてしまうのだろう。全部投げ出すにしては絶望的な目をしていた。なにか死期を悟った獣と似通う冥さを孕んでいた】

【そうして有無を言わさぬままで、少女は姿を消してしまう。うんと細い三日月の夜だった。――、一月十日。日付が変わって、一月十一日の、出来事だった】

/おつかれさまでしたっ!


627 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/12(土) 00:42:05 6IlD6zzI0
>>568

【身体を売る商売女たちは宛ら誘蛾灯の様に、欲を持て余す男たちを誘惑していく】
【目を刺激する様な下品な煌めき、人間が持つ下世話な欲望をまざまざと見せつける街並み】
【――――はっきり言って嫌いだった。道に迷わねばこんな掃き溜めに足を運ぶことは無かったのに】



―――――……煩いな。眠らない街に潜む黒ネズミ共が犇めいているみたいで気色が悪い。
……普段と違う道を選んだのは失敗だった。俺の店から此処までがそう遠くない場所にあるとはな。



【仏頂面で口を尖らせながらネオン街を足早に抜け出そうとしているのは一人の男。名をグラヴィス=ザーランドと言った】

【白のワイシャツの上に羽織った黒色のトレンチコートと黒色のスラックスと革靴という組み合わせ】
【くすんだ赤色の髪を全て後ろになで上げた、無精ひげ厭世的な雰囲気を漂わせている偉丈夫であった】

【言葉の通り、どうやら普段と違う道を選んだ結果ちょっとした魔境に足を踏み入れてしまい後悔しているようだった】
【くるりと踵を返して普段通りの道に足を進めていこうとした矢先―――、一人の商売女とぶつかってしまうだろう】

【もし商売女がしりもちをついたり倒れたりしたなら、彼は謝罪の言葉を添えて商売女に手を差し伸べる筈だ】
【そして彼女の寒々しい身なりと素足、それ以上に本能的に警笛を鳴らす何かの異臭に顔を顰めて訝しんだから】
【"―――――、お前、匂うな。………堅気じゃあ無いな?"と警戒の色を滲ませて、伸ばした手を引っ込めようとする】


628 : カニバディール ◆q0a1oKbey. :2019/01/12(土) 00:56:34 h7nAXcQg0
>>626
【連絡には、すぐに反応が返った。異形は何かを悟ったかのように、即座にその場に直行した。深夜であることも、寒さも振り捨てて】
【ああ、この公園。もう随分昔に思える。あの時は、敵と味方で、正義と悪で、幸せなくらいにわかりやすかった】

【彼女の顔を見た。こんな笑顔を、何度か見たことがある。こんな風に笑って見せた奴らは。一人残らず死んでしまった】
【その腕の中を見る。知っていた。己がかき乱した食中毒事件以降、行方が分からなくなっていたはずの】
【ギアともども、自分たちの不甲斐なさを嘆いたものだ。何も出来なかったのだから】


……わかった

【せめて、肯定しよう。すべて、肯定しよう。彼女の思いを。それでも、最後の戦いには赴くことになるだろうけれど】
【何をもって生きているとするか。異形も人殺しとして、考えてみたことはある。答えは出なかった。だがこの少女を死んでいるなどと、誰が言える?】

【そのあまりに暗い、消えて無くなりそうな、その燃え尽きる直前に激しく燃え上がるロウソクのような光】
【カニバディールは、カルラを受け取った。そして、彼女を見送った】

【即座にアジトにかえって、ウィーヴァーと美鈴を始めとした医療班を呼び出す。受け取った少女を傷一つ付けず、厳重に保護するよう命じる。眠っているのと区別がつかないくらいに】
【そうして、一月十一日から十二日までの間に。この異形にしては珍しく、部下たちの尻を叩くように総動員して】
【あちこちで狩り立てた。鈴音が嫌いそうな者たちを。幼い子供を痛めつける者を。強姦魔を。自分たち以外の、弱気を踏み躙る者たちを】

【そうして、惨たらしく殺した罪人たちを更にズタズタに引き裂いて、祭壇に捧げるように並べた】
【せめて、神になり行く彼女の慰めになることを祈って。祈る神が彼女自身なのだと分かっていながら】

【惨劇の音の届かぬ奥深くでは、神様が残していった毛布に包まれたまま、からっぽの少女が静かに眠り続けていた】

/最後にもう一つ失礼します! お疲れ様でした!


629 : ガゼル=イヴン=カーリマン ◆auPC5auEAk :2019/01/12(土) 10:22:29 ZCHlt7mo0
>>608

……ふむ……
「…………」

【どこかで、意図的な仕草なのだろう。扇情的なティナのさりげない振る舞いに、男所帯であるガゼル一同は居心地の悪さを感じている様だった】
【まだしも、ガゼルは目を細め、それを余裕を含めた様子で見送っていたが、周りの『黒装隊』達は、どこか落ち着かなげに肩をゆすり、視線を泳がせる】
【緊迫している場での、思わぬ艶やかさとの遭遇に、平常心を持て余しているのだろう】

……そこも覚悟の上で、あの場に乗り込んできたというに、何を言うのか……
それに、ただで殺されてやるつもりも無いのだろう? そこら辺の計算も立たずに、行動に出るタイプではないと見たが?

【蛇の道は蛇――――とまで言うつもりはないが、詐略の上において、互いにその事の意味は、よく咀嚼しているのだろう】
【ならば、ティナの言葉にも相応に意味があるようには思える。だが、ガゼルは、ティナの『女狐』っぷりから、それはないだろうと読んでいる様だった】
【あの場における勝算を、十分に見積もった上での行動。ならば、失敗した時のリカバリーも用意しているはずで】
【――――最悪、周りの備えに対抗して脱出するだけの手段は、携えているはずだ、と】

――――ほぉ…………
……確かにその通り、水の国の先行事例、あれは『悪い見本』だよ。あんなもの、早晩遠からず破綻する……それでなくても、国益には、なんら寄与しないものだ……
だからこそ、我々は我々の形を取って、この国なりの『魔能制限法』を成立し、施行させる……

あんな、民間企業との癒着、『特区』周辺の急激なスラム化、他国籍軍隊の大規模常駐……治安は悪化する一方ではないか
――――国を引っ掻き回すような真似をした、水の国の民は、揃って救えない愚図だ。奴らの頭に『国益』という概念は無いのだろう……あんな国に、希望の未来は無い

【『魔能制限法』の危うさ。それを指摘されれば、ガゼルも然りと頷く。それは必要だと説くが、水の国の轍を踏む事は望まない】
【それどころか、ハッキリと失敗だと言い切り、その為に大規模な代償を支払う羽目になるだろう、とも――――】

――――あれは『魔能制限法』などではない。実態は『能力者排斥法』だ。まぁ、精々大規模に内戦でも起こすと良い……
そこを『治安維持のための介入』名目で、他国に踏みにじられるのは……さて、既に軍を置いている櫻の国かな、それとも我が国か……?
その衝突を起こそうとしている時点で、あの法が国家のためにあるものではないというのは、明白なのだ……むしろ、特定個人の思惑だろう……

【水の国は、『魔能制限法』があるからこそに、破滅の未来を目指しているとすら、ガゼルは断言する】
【禁止されればなくなるなどという、お目出度い話などこの世には存在しない。無論、それを排斥するための手段は、相応に用意しているのだろうが】
【それでも、黙って粛清されて行って、平穏無事に済むはずがない――――水の国は、恐らくは史上最大の戦乱を迎えようとしている】
【そのまま行けば、『魔能制限法』の為に、国家が滅びるのだ――――】

――――その『短絡的な解決』をさせないために、私は居る……なんならそんな愚か者、危険な能力者と共に殺してしまおう……
私は「能力者の横暴を許さない」と言った。「世界を、大衆の下に取り戻す」と言った。だが……「能力者を皆殺しにする」とまで、言った覚えはないぞ?
……能力が規制されなければならないなら、軍事兵器はどうなのだ? 護身拳銃くらい、もはや平気で流通している。それ以上の物もな……
異能は危険だが、マシンガンは安全だ、などという馬鹿は居まい……それを口にするなら、そいつは異能の代わりに、自分が蹂躙者になりたいだけだ……

――――我々は、そんなもの、双方許さない。正しい異能、正しい兵器、バランスを取る事が重要なのだよ。それを作るために……『魔能制限法』の看板を借りる……!

【ガゼルの見識は、少なくてもここまでの言葉までなら、一貫しているだろう。異能とは、単に形を変えた力に他ならない】
【治安を悪化させ得る要因は、今や一般人でも簡単に手に入る。だからこそ、一方を締め上げるだけでは意味がなく、妥協点を探らなければならない】
【それをしないのであれば、そもそもが、法の理念と、最初から自己矛盾を起こしてしまう。理念に則るなら、法の下に何らかの規制を受けるのは、能力者だけに限らない、と】


630 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/12(土) 16:36:07 oFkCLf9I0
【路地裏】

【軍服の男が身体のあちこちから血を流して壁際に座っていた】
【無精髭やよれた服装からだらしなさが見て取れる。乾いた唇から嘆息が漏れ聞こえた】

……くそ。あのガキに言ったとおり、ひっそり死にそうだったぜ
ま、華々しい死に方ならいいかって言われりゃ、どうなんだって話なんだがよ

【苦痛に眉根をひそめながら軽口を叩く。「なぁ?」──そう言って隣の影に声をかける】
【男のすぐ傍には異形の姿があった。四つ足に強靭な爪。内臓を裏返したような不気味な表面は黄土色】
【胴体の至るところに穴が穿たれそこには生物の顎口に似た器官が収まる。頭部は同様に鼻より上部のない形状】

【四足歩行の獣に似た怪物が、死体と化したホームレスの男を食い散らかしていた】
【鋭い牙が皮膚を貫きそのまま肉を引きちぎる。血と肉片が飛び散って路地裏の地面を赤黒く染めていた】
【その様を軍服の男が眺め、嫌そうに顔を歪めた】

もうちょっと綺麗に食えねえのかよ
いやまぁ、いいんだけどよ……

【怪物の胴体から顎口に似た器官が飛び出し、宙を飛び回る。並列する牙の隙間からは眼球が覗く】
【痙攣するように震える眼球が死体を視認すると無数のそれらが飛びつき、さらに死体を細かな肉片と臓物に解体していく】
【それを見た男が再び溜息をついた。怪物が咀嚼する音ばかりが路地裏に響き渡る】


631 : ティナ ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/13(日) 14:11:40 S/DUh6T.0
>>629

【ティナは周囲の視線に気づいて、長い睫毛をこれでもかと瞳で濡らして、艶やかな流し目一つ、ウィンクの狭間に接吻した】
【扇情的に開いた胸元、成る程、ただの男性であったなら軽く籠絡してみせるのだろう】
【然して相手は “手強い” ─── 冴え渡る理論と知性の結晶は、金剛石よりも密に出来ている】


確かに理想も目的も立派も立派、銅像の一ダース作っても足りないくらいに素晴らしいです
でも肝心の方法が間違っています、目的の為には手段を選ばないとは君主論の基本ですけど
目的の為にも手段は選ぶべきなんです、案外皆々様大切な事を見落としてるんですけど

─── ダーリンがご自身で言ってるじゃないですかん、あの法を作り上げたのが特定個人の思惑だって
でしたらその個人は “少なくとも” バラバラな野党を一纏めにし、国会へ法案を提出し、それを可決させ
加えて特区の制定と実験的な導入、土建屋も市政もちゃっかり籠絡してるんでしょうね

ふふ、大丈夫です、ちゃんとわかってますよ、ダーリンも “本気を出せば” それぐらいできるなんて、ちゃーんと
でも違います、その誰かは “既に本気” なんです、聡明なダーリンよりも先に世論を構成しちゃいました
拙速は巧遅に勝ると言いますが、巧速で来られた以上、どんな手段を用いても後手後手であるのは代わりません


【ガゼルの見識は正しい、持つ思想もその行先も、政治家として、或いは革命家として正しい資質を持とう】
【けれども、この法律に関して言えば完全に後追いでしかないとティナは断じた、意外にも強い言葉で】
【ガゼルが紡ぐ言葉は正論だろう、けれども、─── 正論が通じるのは、正しい理の中だけである】


相手の立場に立って物事を考えるのは大切です。もし、ダーリンが「魔制法」を作ったとして、それで満足しますか?
敵対者の中に、自分と同じくらい聡明な存在がいると想定したりはしませんか?
況や、自分の支持者として近付いてきて、寝首をかこうだなんて連中が、居ないとでも?

ぜーったい借りちゃいけません、それだけは確かです、─── まぁそんな風に考えてちゃ身動き取れなくなっちゃいますね
少なくとも内部から是正する線は悪手だと思いますけど、ダーリンに勝算があるのかもしれませんが
ですから私はダーリンに方法を提示いたしましょう、出血大サービスです


【ティナは胸元にむんずと手を突っ込み、がさごそぷるんぷるん、怪しげなオノマトペが描かれて】
【取り出したるは一枚の名刺、そこには ──────】


【水の国 最高議会 議員 イスラフィール 第一秘書 ティナ “蜜月” ヴァレンタイン】


【と書かれていた】


632 : ガゼル=イヴン=カーリマン ◆auPC5auEAk :2019/01/13(日) 21:17:37 ZCHlt7mo0
>>631

――――――――ん゙ん゙っ!!
「!!」

【周囲の『黒装隊』たちの、浮ついた空気を察したのだろう。ガゼルは、思い切り喉を鳴らした咳払いで、場の空気を引き締めに掛かる】
【実際、シャッと背筋を伸ばす様が見て取れたのだから――――ティナの振りまく蠱惑は、こんな集団にも染み渡っていたという事だろう】

っ……なに?

【しかし、熱気を帯びるティナとの議論は、次第にガゼル自身でも意外な程に回転していく】
【確かにティナは思惑があって行動している節があったが、それでもその見識は、ハッキリとした政治的視野を持った人間の指摘だ】
【単に、『魔能制限法』に反対している能力者の一員、というだけではない何かを、彼女は持っているのかもしれない】
【反対意見の意外な手応えに、ガゼルは思わず聞き入っていた】

ッ――――――――、な、なんと…………!?

【そして――――ここに来て、ティナが取り出した名刺。オフィシャルな身分と肩書にある『水の国 最高議会』の文字に、思わず絶句する】
【ただの個人ではない。自分たちの様な、ロビー団体とも政党とも言い難い集団でもない。ハッキリと、水の国の国政に介入している人物】
【そことの繋がりを物語る名刺に、ハッキリとガゼルは押されていた】

――――く、ふ……ふふふ……ッ
……これは一本取られたな……ッ、想像以上の『狐』だ、お前は……!
この『狸』が、今の今まで化かされていたと、そういう事になるのか……ッ!
……敵対者を賛同者として引き込むくらいでなければ、本物の「力を持った言葉」とは言えないだろうと、自然に力を込めていたが……
――――敵対者にこそ、アプローチしようと考えていたのは、お前も同じだったという事か!

【いつの間にか――――ガゼルは素だった言葉を、1人の観客への演説でも行う様に、節をつけて整えていっていた】
【それは、反対者・乱入者たるティナを、主張を叩きつけるだけに留まらず、逆に篭絡してしまおうと画策していたからであったのだが】
【どうやら、その思惑までもが『鏡写し』だったのだと思い知らされ、腹立たしさと自嘲とを上塗りして隠した、凄絶な笑みを浮かべていた】

――――しかし、ティナとやら……これは後戻りの利かない冒険となるぞ……!?
我々『導人会』は、公的に『魔能制限法』を推進している――――その幹部の一角たる俺に、このカードを提示する事の意味、分かっているんだろうな……!?
『魔制法』の反対派が、わざわざ国外の一結社にまで、何を望んでこんな冒険をする?
事と次第によっては――――会う必要が出てくるではないか、イスラフィール議員に……!

【ガゼルの所属する政治団体『導人会』――――その面目という意味でも、そして彼女たちの立場という意味でも】
【この非公式の接触は、色々な意味を内包し、そして同時に危険なものでもある】
【わざわざ、自国と直接に関係のない勢力にまで、接触を求めて――――その先に、何を見出しているのか。推し量る様にして、ガゼルは問い返した】


633 : 俺に勝てる夢でも見たか? :俺に勝てる夢でも見たか?
俺に勝てる夢でも見たか?


634 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/13(日) 21:56:57 WMHqDivw0
>>627

〜〜〜〜♪ 〜〜〜〜、おっとぉ?

【どん、とそう軽くもない衝撃。女は目を丸くしてよろめきかけるも】
【その場でくるりとターンをするようにして、体勢を整えて。運動神経がいいらしい】
【倒れこんだりすることもなく、夜に浮かぶ銀色の毛先が線を描いて――やがて墜ちる】

【男に警戒の色が滲むのを見るや否や、女は愉快そうに笑った】
【調子っぱずれの鼻歌も鳴りを潜めて。くつくつ、鍋底を揺らすような声を響かせながら】

カタギじゃないって言われればまあ〜そーだけど!
ヒトサマにどーどーと言えないオシゴトしてるのはホント、娼婦やってんの。
一晩ホ別2、それでオプション無料だからけっこーオトクなのは自負してんよ!

そんでさあ、オニーサン……ギンちゃん、あっあたしギンコっての。だからギンちゃん。
そのギンちゃんがネ、なんと今夜はまだまだヤる気マンマン! 元気イッパイ!
って感じでさ〜、カラダがまだまだ全然あったまってないワケね。だからさ、

【「どう? 一晩。ゼッタイ満足させてあげられるよ」】

【――モッズコートのフードについたたっぷりのフェイクファーの向こう側で、】
【にぃ、と横に裂けるような口の動き。潤って色付いた唇から覗く白いエナメル質】
【それがやたらと光っているように見えた。きしきし。擦れ合うような音すら零して】

【とん、とん。いつの間にやら寒々しい足元は、楽しげなステップを踏んでいて――】


635 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/13(日) 23:05:34 6IlD6zzI0
>>634


生憎だがキャンキャン騒がしい小娘は趣味じゃない。
幾ら商売とは言え随分と安い女だな。何処までも発情気味の狗っころめ。


【"自分本位のマイペースな女だな、まるでどこぞの用心棒みたいだな"】
【怪訝な顔に隠した感情。女の振る舞いは自分の店に住み着いた童顔の用心棒に似て】
【でも決定的に違うのは豊満な身体つきと―――血腥い香り。鼻腔を刺激し続ける程の】


――――、だがしかして。お前は俺を満足させる自信があるという。
普段とは違う事をして普段では遭遇しないモノに出くわしたなら。

ノってやるのも吝かでは無いが―――どう満足させられる?
果てたが最後そのまま昇天させてくれる程か、それとも―――


【"お前の欲望に振り回されるのが関の山の独り善がりか?"】
【血腥い香りと女から発せられる妖しい輝きに似つかわしくない無邪気な言動】
【ミスマッチに思えたから。女の内に潜む何かは酷く危うい気がして】

【お誘いを受ける最中でありながらも彼我の距離を離そうとしていた】
【だから厭世的な顔色に紛れて猜疑と警戒色の視線が女を貫くのだ】
【楽し気なステップに合わせて踊る気など無いと告げるかのように】

【―――そんな男女の背後から聞こえるのは、喧騒とは意の異なる騒がしさ】
【それはまるで何かの事件が明るみに出た時特有の熱気を伴って】


636 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/13(日) 23:23:16 E1nVzEpQ0
>>603

【賢しらに愛らしい少女の口ぶりへただ微笑をもって答え続けるのは獲物を嬲る所作にも似ていた。塒の中に閉じ込めた小鳥を戯れに締め上げる大蛇のような】
【あるいは脚を折った小鹿の腹腸を引き摺り出す狼のような、とかく単に殺してしまうだけならば、凡そ狩猟には必要のない振る舞い。 ─── 赦しを乞う事を懸命に堪えてやまぬ唇を】
【一思いに塞いで貪って、舌の髄まで甘い唾液を染み込ませてやれば、従順さを思い出させるには十分であったのだから。包む掌のすべらかさは、絹織を潤ませて未だ足りぬ程だった】
【 ─── 言葉ごと呼吸を詰まらせる少女を、喉筋まで射貫くに似て弧を描く双眼にて、アリアは見つめていた。何を急かす事もなかった。せめて強いて述べるなら】
【穏やかなまま溢れ続ける白銀の芳香と、片頬を覆い尽くして変わらない柔らかさを示す掌と、答えを待って煌然と坐する片眼鏡越しの碧眼が、残酷だった。 ─── 然して】

【ぱちり、 ──── 長い睫毛が一ツ瞬くのは、さだめて驚懼が虹彩へ宿るが故だった。子守唄のような呼吸が、瞬息、止まり】
【 ─── そうして、ひどくひどく無慈悲な愛情に満ち満ちた笑みが、血色の唇を弓形りに吊り上げさせた。甘美な唾液を呑み下すような、輪郭のぼやけた響きは、果たして幻聴だったろうか?】
【もう数寸だけ乗り出した鼻梁が、少女の耳朶を探った。理解させる前にキスが落ちた。はあっ、と呼気が、肺腑の一ツ分だけの質量を吹き掛けて、蠱惑するならば】


          「はらませてほしいの?」



【 ────── 掠れ切った声量の囁きは、疑いなく少女を殺すに足りていた。】
【優しいキスが繰り返される。口先だった。ふちゅ、と柔らかさを目一杯に押し付けて、お互いの二房を生ぬるく圧し潰した。粘らかな残滓が残った】
【掌ごと口先も離れていく。そうして己れの席に腰を落ち着けるのだろう。どこまでも嬉しそうな嘆息が漏れていた。独白のように呟く言葉は、されど少女が何より耳を欹てるのだと知っていた】



   「 ……… ふふ。」「 ─── 嬉しいわ。」
   「私も、ね ─── かえでに、お願いしようと、思っていたから。」



【くすり、くすり。 ─── 喉に残った吐息を惜しむような笑い方だった。銀色の上品なシニヨンと、編まれたウールが隠す豊潤さが揺れた。】
【取り計らわれたようにデザートが配された。ショコラ色のチョコレートケーキと、苺と練乳が呆れるほど盛られたシェイブドアイス。何事もなかったかのように瀟洒なスプーンの輝き】
【答えを聞かなくてよいという素ぶりだった。ならば何を願おうとしていたか答えなかった。 ─── この場で交わす質疑でもないと判じてもよいのだろう。こんなに彼女は素知らぬ顔だから】


637 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/13(日) 23:24:49 WMHqDivw0
>>635

前にねー、高いって言われたから値下げしたノ。
もーちょっと高く取ってもいいかな? ねえ、どう思う――?

【けたけた。「それを判断するためにもやっぱ、一晩どう?」】
【誘い文句は吐き出される白い息よりよっぽど軽々しく宙を舞っていた】
【そうして、距離を離されようとするのなら――ぺた、ぺた。素の肉が地面を踏み締めて】

そりゃーもう天国逝きだよお。そこはゼッタイ保証したげる、
一瞬でいいの、天井のシミを数えてもらってたらすぐ終わるだけのことだからあ――

【女は随分と耳聡いようだった。ざわめく何某かの音をすぐに聞きつけて】
【しかしそこから逃げようなどとは思わない。思えない。目の前の男が、惜しい】
【今宵絶対にこいつを「やらねば」後悔する。そんなことを考えていたらしい】
【ひたり、ひたりと一歩ずつ詰め寄る足取り、酩酊の危うさなどどこにもなく――】

【――――ひらり翻る長い丈のコート。その内側に、確かな銀の煌めきがあって】
【女はそれの柄を既に掴んでいた。もう、誘うのももどかしくなったらしい】
【一刻も早く「やって」しまいたい。だってこんなに落とし甲斐のありそうな首が、ここに――】

【風切り音。軽いそれは、女の右腕がコートの中に隠されたそれを一気に外に曝け出し】
【横薙ぎに振るった音だった。刃渡りおよそ――一メートルもないくらいの短めの刀身】
【くの字に軽く折れ曲がった形状の刃。ククリと呼ばれるタイプのそれを、もう、出していた】

【狙いはまっすぐに男の首。それが男の肉を抉ろうが、空振りになろうが――女はきゃは、と笑うのだった】


638 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/13(日) 23:47:40 6IlD6zzI0
>>637

【女の足取りは単なる商売女のそれじゃなかった。まるで獲物を捉えるかのようなもの】
【――――背筋にうすら寒いものが走る。それは決して間違いではなかったから】


――――、その言い草だと隙間を埋める奴は誰でも良い様に聞こえるな。
さぞかし自分の技術に自信があるとみえ―――――ッッ!!?


【背後から聞こえる異変が戯れ合いに終止符を打つ】
【女は装う事を止めて、内に潜む獣の感情を解き放って実際に行動に移したから】
【それ即ち、男も宇佐美ギンコの情欲を満たす為の慰み者にされるという事】


―――――づぅ、ッ……!!
………堪え性は無いみたいだな。もう発情しきって我慢できないと見た。

―――――――、……お前から漂う鉄の香り。さてはもう"ヤッた"か。
それでもなお"ヤリ足りない"と見た。血腥い劣情を催すなら他の男に向けてくれ。


【銀色の太刀が空を切る。そして血肉を食む。―――咄嗟に飛び退いて尚、彼の首筋には裂傷が刻まれる】
【致命傷とまではいかないが、それでも無視できない傷を付けられて。だから、だから―――】


                  【Aqua Venus】


【彼は能力を発動させる。背後に現れる人型は徐々に輪郭を明確にしながら寄り添う様に現れて】
【その人型は記憶屋と呼ばれる都市伝説の女の姿になり、彼の傷口に手を添える。すると忽ち傷が塞がっていく】
【そして彼は勢いよく駆け出していく。そして女の膝目掛けて蹴りを放つ。機動力を削ぐ狙いだろうか】


639 : 名無しさん :2019/01/13(日) 23:48:39 joWqV.DM0
>>636

【――ばかみたいに強気な顔をしていた。そうして実際彼女はきっとばかだった。狼の真似して振る舞おうと、中身はふわふわの子犬みたいにはしゃいじゃうから】
【こんなふうなことを言ったらきっと貴方だってびっくりしてしまうでしょってごく悪戯っぽい角度の眦、きりと釣り上がる眉に、何一つ動じないような笑みを浮かべて、】
【そのくせ唇の端っこは慄くように震えていて、平然とした装いを演じても顔は耳まで真っ赤で。落ち着いた風を気取って少しだけ震える指先でとりあえずお冷のコップは空っぽ】
【つまりはよっぽど上擦っているって伝えすぎていた。酒のせいだと思われた。ふわふわに緩んだ脳細胞同士の結合のせいにしたかったから。――、空っぽに気づく、】

【少しだけの気まずさを誤魔化すようにコップをもう一度指先で遠くに押しやる瞬間だった。気づかれていやしないかと横目に伺う刹那に見るのが、その表情であるなら】
【刹那に停止してしまうのは車道に躍り出た猫と等しい。――見開かれた眼が喰われることを気取った子羊より潤んでいた、耳元へ肉薄され、口付けを落とすなら】
【見えぬはずの表情すら幻視するのかもしれない。ごく湿っぽい吐息に曝されて、吐息すら忘れてしまう。――、】

―――――――― な、――ッ、! なに、い、っ、

【ぞくと脳髄に宿る感覚を演算するならきっと果てるのと等しかった。何言ってるの、なんて、平静を装おうとした声がきっと人生で一番混乱していた、なら、】
【意味不明の喃語と混乱色した吐息をランダムに吐き出すしか出来ない唇へのキスだって受け入れてしまうのだろう、――、お店で良かった。その意識がなければきっと、――だから】
【そうだとしても身体中を石にされたみたいに固まってしまう。人生初のお見合いに緊張頻りの処女(おとめ)のような顔をしていた。なら多分何にも考えてない/考えられない】
【パソコンがフリーズするみたいに黙り込んだなら、その眼前にデザートすら供されて。――水の一杯くらいはもらってやるのが優しいのかもしれなかった、夕焼けより赤い顔】

あっ、えっ、――、っ。っっ。

【泣いてしまいそうな目をしていた。唇の端っこをどうしようもない感情に慄かせるのが精いっぱいで、なんだかよく分からないまま床に転がって喚きたくなる激情】
【泣いちゃいそうなくらいに恨めしかった。ぜったい敵わないんだって何度目かもわからないけど思い知らされていた。――立ち上がれるのかしら、腰すら抜けてる気がする】
【ならば誤魔化すようにチョコレートケーキだって口をつけてしまうのだろう。型抜きされた生チョコ一つ。お星さまの形。乗せられた金箔は星空の模倣】

――――っ、うやぁっ、! 

【――、チョコレートは空いているらしかった。本を読みながら手につきづらいチョコ菓子を食べていることも多かった。なら、驚いたような顔と声に、意味はきっと通じて】
【洋酒の味に驚けど吐き出せないし呑み込めない。かといって口の中にある限りアルコールが揮発して血管に溶けていく気がする。じんわり涙目は、王子様だなんて到底呼べぬ】


640 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/14(月) 00:03:43 dRhZJwPc0
>>632

【ティナはすっと三本指を立てる、ピアニストのようにしなやかな指先を指揮者のように降るって】


三つ、ダーリンには利用価値があります。


一つめ、『導人会』が公的に『魔制法』を推進してる事です。ダーリンが離反する事で、何人か引き抜く事も出来るでしょう?
────── "風雲児" ガゼル=イヴン=カーリマンの名は伊達じゃないってとこ、証明してくださいな

その大きな意味合いは言わずもがな、単純な人的資源の獲得だけでなく、他の政治結社への牽制にもなりますし、それによって連鎖的に利益を得ましょう

二つめ、ダーリンの活動拠点が『風の国』である事が大きな意味合いを持ちます。
ダーリンが指摘した様に、今『水の国』はガタガタです、他の国からすれば鴨がネギ背負って鍋に浸かってかもーんしてるみたいな
他の国からすればこれを見逃さない手はないでしょう、それ故に『水の国』は協調相手を求めています。

そうすれば勝るとも劣らない先進国である『風の国』と協調路線を取ることは想像にかたくない筈です。

そうしたなら今後国際社会の中心は水ではなく風になります。その為の布石を今示すのです。


最後に三つめ、ダーリンが『聡明』であることが、何よりの意味合いを持つのです

私が思うに『魔制法』の立案者は、─── 恐ろしく人心掌握に長けた存在です、それはつまり
有能な存在を、排除するのではなく融和する事で、大きくなってきたのでしょう
ダーリンがこちら側に寝返ったなら "必ず" コンタクトを取ってくる事が考えられます

─── ダーリンには、餌になってもらいましょう、飛びっきり上等な

ハンティングの開始です、─── なんてね


【そういってティナは腰に挿しっぱなしだった、薔薇のブーケを取り出した】
【そう言えば彼女はウェディングドレス姿である、ある意味かなり珍妙だが】
【両手でブーケを持ってガゼルに差し出した、バラは表面にしかなく、その奥には札束が詰まっている、数百万、下手すればそれ以上】


愛を込めて花束を、─── 親愛の証ですの


641 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/14(月) 00:09:35 WMHqDivw0
>>638

【 「ばれちゃった?」 ――――白々しく呟いて 】

【表情は狂おしいまでに笑顔に固定されていた。爛々輝くすみれ色の瞳が】
【抑えきれない喜悦のきらめきを帯びている。そうしてもう一本、懐から】
【二本目のククリを取り出すならば――その柄同士は細いワイヤーで繋がれていた】

あはっ、何何なあに!? 傷付いても治っちゃうの!?
サイコーじゃないそれっ、何回でも何回でも楽しめちゃうカンジぃ――ッ!?

【その二振り目を振り抜こうとして――膝に向かう蹴りは、直撃】
【がくんと崩される体勢。細い脚ならば折れたかもしれなかったが――どうやら】
【それに合わせて膝を曲げ、最低限の受身は取ったらしい。傾ぐ上体、このままなら倒れ行く】

【――――しかし。片手の刃が宙に投げ出される。びいん、と二つを繋ぐワイヤーが伸びて】

おもたぁい! きゃははっ、やるやるゥ!
それでこそだネ、「マグロ」の相手してたってつまんないんだもん――――

【地に着けられる片手。そのまま、側転する勢いで脚を真上に投げ出して、上下逆さに倒立したなら】
【恐るべきこと。先程投げた刃の柄を、天衝く脚の爪先がぱしりと「掴み取る」。そしてそのまま】
【真上から、真下へ。倒立の姿勢から通常の姿勢へ戻りがてら、思いっきり刃を振り下ろすのだ】
【狙いはやはり男の脳天。真っ二つにカチ割ることも厭わない攻撃――この女は】
【どうやら「脚」の具合がいいらしい。腕でなくても、刃を自在に操れるらしく】
【なればそこを重点的に潰せばいいだけの話にも見えた。そう上手く行くかどうかは、知らないが】


642 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/14(月) 00:34:37 6IlD6zzI0
>>641

【膝蹴りを喰らわせた。直撃した感触もあった。だが女は止まらない】
【笑みに固まる表情、欲しい欲しいと強請る玩具を手に入れたかのような燥ぎよう】
【対してグラヴィスの表情は険しいまま。キッと鋭く睨む眼光は二人の温度差か】


残念だがガキの様な無邪気に付き合えるほど俺は若くない。
お前は何度も楽しむ予定なのだろうが、俺は一度たりとも楽しむ心算は無い。

―――――出来る事なら、さっきの膝蹴りで黙っててくれたらよかったのだがな。


【毒づく言葉。それは先の攻撃で体勢を崩さず、アクロバットに攻撃に転じる女に対して】

【女は器用に受け身を取って、剰え倒立からの刃の振り下ろしを繰り出すのだった】
【その姿に彼の目は微かに見開いた。人ならざる動き、獣の様なばねの良さに驚嘆さえ漏らしそうで】
【だからだろう。彼の動きは微かに遅れる。断頭台の如き刃はよけ切れないと判断して】

【―――――前に出る。切っ先ではなく根本で刃を受け止めると決めたのだ】
【交差させた両腕で頭をガードして刃を受ける。当然肉は裂け、血は滴り落ち、苦悶の表情を浮かべる】


   ………グッ、づぁああああッッ!!!………こっ、の、雑技団か、オマエッ!
   "だからこそ"の素足か。………初めから獲物を狩るために徘徊してやがったか!


【だけど腕は切り落とされない。脳天は勝ち割られない。自身の能力が傷口を徐々に癒し始める】
【刃を受け止めた直後。両腕を交差させたまま、彼は姿勢を落として女にタックルを仕掛ける】
【女に身体の自由を与えては不利になる。だからこそ強姦魔染みた押し倒しを以て動きを封じる算段を立てる】


643 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/14(月) 00:41:07 E1nVzEpQ0
>>639

【 ─── きっと女は全てに愉悦して、魂の根幹から充足を得ていた。新雪を踏み締めるように、擦られた氷は一口ごとに悲しい音を立て】
【練り尽くされたコンデンスミルクと、幾らかのリキュールに甘ったるく漬けられて原型を留めるストロベリーソースと、舌の上で転がされ】
【どうにも何かにつけてアルコールを交えたがる店であるようだった。 ─── 喫茶というよりかはパブに似ていたのかもしれない。ともあれ】
【今となっては詮無きことで、慕情を抱く乙女をふしだらな酩酊に誘うための悪辣な手段であるかどうかは、誰にも解らぬ事だった。また、一口】

【 ─── 「御馳走様でした。」かくして溶けるようにカキ氷の山は消えた。その全てがアリアの肚で蕩かされてしまったのだと示していた】
【楚々としてナプキンで口を拭っていた。淡い色合いの口紅が真白い織地にぼやけた痕を残していた。それよりも遥かに鮮明な傷痕を女は少女の首筋に刻んでいた】
【そうして一頻り己れの食事を終えるなら、 ─── 小首を傾げて、ごく邪気のない笑顔で笑うのだろう。月の色合いを宿した首筋を擽り、室内灯の仄暗い青さを煌めかす、白銀】



    「 ─── あら、あら。」「随分と酔ってしまったみたい。 ……… 可愛いわ。」



【くすり、くすり。 ─── やはりまるで素知らぬ顔をしていた。殆ど公の場で己れの想い人を手籠めにしたようなものだった。だのに】
【ただ見つめているのだろう。チョコレートの甘さにすら自家中毒を引き起こすような一時を、助け舟の一ツも出してやる事はない】
【まんじりともせず待っていた。視線を向けられたのなら不思議そうな媚笑を返すのだろう。 ─── ならば獲物を嬲る所作でしかなかった】
【それでもいずれ食べ終えるならば脱いだ外套も手渡してやるのだから何様のつもりであろうか。「 ……… そろそろ、行きましょうか?」搦め取るように手を取り誘う、優しげな非道】


644 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/14(月) 00:54:19 WMHqDivw0
>>642

【足指が器用に掴んでいた柄を、もう一度空に放る。ワイヤーで引き寄せてキャッチ】
【――しようとして、できないことに気付いた。刃が男の肉に埋まったまま動かない】
【であれば地に着ける予定だった脚も宙ぶらりんのまま、倒立の姿勢は崩さない】
【逆さになった顔がきょとんと呆けた表情を浮かべていた。そうであるなら、次の瞬間には】

――――――――――お、ッ?

【タックルはものの見事に入るのだろう。異様な身のこなしが出来ようとも、所詮は女】
【男のそれより細く脆く、であるなら簡単に倒される。どたん、と音を立て、土煙を立てて】
【その場に倒れ込むのだろう。そうして、マウントポジションを取られるのであれば】

けほっ、………………ははっ、そーいう体位もまあ、嫌いじゃな〜い!

【背中をしたたかに打ち付けた勢いで咳が零れる。けれど未だ狂ったように笑い続けて】
【地面に寝かされたまま。しかし勢いよく、下半身――両足だけを跳ね上げるなら】
【それを男の腰に絡みつけようとするのだろう。そして――ぎり、ぎり、ぎりぎりぎり】
【――女ならざる、どころか、人ならざる怪力が発揮され始める。先の異様な動きも鑑みるなら】
【こいつはもしかしたら単なるニンゲンの女ではないのかもしれなかった】

【とはいえ、上半身。押さえ付けられてでもいるのなら――今は刃を振り抜くことができない】


645 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/14(月) 01:00:19 5p38.LtA0

――水国、軍港の街――

『続きまして、先月クリスマスに発生しました、櫻国駆逐艦轟沈事件に関しまして』

「杉原!!私に構うな!一人で逃げろ!!」
「出来る訳ないでしょう、私一人で、十分ですよこんな連中……」

『依然として逃亡した脱走兵四名とテロリストの行方は知れず――』

「能力も武装も解禁だ、止まるなよ!」
「軍曹が行くなら、何処へでもお供しますよ……」

『専門家によれば、魔能制限法に反対する危険な能力者集団ではないかとの見方を強め――』

「軍曹ッ!!」
「す、ぎ、は、ら……」

【先だって、櫻国海軍駆逐艦『雷』が何者かの手により轟沈し】
【そして魔導海軍決戦級戦艦『大和』が、水国公安水上警備部に貸与され係留されている軍港の街】
【時間は夜だった、多くは夜の店が明かりを灯し、酔客がちらほら見える】
【うら寒い冬の街】
【だが、その港沿いの民間倉庫軍に聞こえる声は、決して平凡な日常のそれではなく】

「……」
「……このような所で陸軍の狗が、何の御用で?」

【全身を古めかしい、クラッシックなスーツと外套、で身を包み】
【高山帽を目深に被った集団が、二人の人物を取り囲んでいる】
【一人はかなり小柄な少女、もう一人は対照的に大柄な男性】
【自動小銃を手に、グレーの都市用戦闘服と黒のチョッキ、弾帯には予備弾倉と拳銃、大型バヨネット】
【少女の方は二振りの小太刀を帯刀している】
【そして、少女は腕と足にそれぞれ怪我を負っている様子だ】

「お前たちに……答える道理は無い!」
「軍曹!会話は無駄です!来ますよ!」

「……」

【男達は見えない視線を二人に向け、その数により二人を取り囲んでいる】
【この場に現れる者は、果たして――】




//白桜さん、つがるさんご予約のです


646 : 名無しさん :2019/01/14(月) 01:08:32 joWqV.DM0
>>643

【たっぷりのアルコール分を孕んだ生チョコレートを飲み込むのに、彼女は結局一分ほどの時間を要した。その間に、泣きじゃくるような目が何度も助けを求めていたのに】
【石造の聖母様みたいな顔しかくれないんだ。――だからやっぱり怨んでいるのに違いなかった。はああと漏らす吐息に混じるのはカカオの香りと隠し切れぬ洋酒の香り】
【幸いにもケーキ本体には酒精は混入していないようだった――というのは気のせいだった。生チョコレートの洋酒に中てられて舌がばかになってしまったんだから】
【――ならば食べ終える頃には酩酊の顔色をしていた。酔っぱらった人間の顔をしていた。せめて死に切る前にもらったお冷だけが命綱で、だのに、足りない】

あー……、もお……。アリアさんのばかあ……。

【だからせめて机に突っ伏した一瞬に文句を漏らすのが仕返しであるらしい。そろそろも何も酒を抜くまで動きたくなかった。――、だってこんなままじゃ、って、】
【それでも手を取られるなら無抵抗であるのだろう。ずるり溶けた猫みたいな挙動で立ち上がる足元が頼りなく振れていた。――やっぱり王子様じゃない】
【――立ち上がったなら、そのまま胸元に体重を預けてしまうのだろうか。ぼおっと両手を広げる仕草、――、「着せて」だなんて、果たして彼女は何歳だったかしら】
【着せてもらうのなら/着せてもらえないのだとしても。どっちみち胸元のボタンを閉めるのは自分でやるのだろう。海溝より深いため息を吐いた、】

【(こんなはずじゃなかったのに)】

ねむいよお……。アリアさんのばか。ばか……。……ばかぁ! ――――――ばかあっ、

【――――それでも勘定を済ますのに支障はないのだろう。店先でふらつく足取り、せめてめいっぱいしゃんと立っても、赤い顔と潤んだ目で並べるのなら、プラマイマイナス】
【せっかく可愛くお化粧した目元を無意識に擦ってしまって慌てたように手を戻した。震えるように漏らす吐息は白くって甘くって、頬張れたなら、きっと、わたあめと等しい】
【それでも絡めたままの指先がめいっぱいに甘えていた。いばら姫より白雪姫より王子様のキスを待ちわびていた。――ベッドの上でないことだけが何かを保っていたから】

――――っ、イルミネーション! 見て、お家帰って、寝ますっ、――っ、アリアさんのばかっ、――今日は、サンタさん来る日だから、――なんにもしない、ですからっ。
せえっかく一年、いい子だったのに、台無しになっちゃいますからっ。――っ。もお! ――もおっ、うー……。

【ぐいっと引く腕の仕草は間違ってもエスコートとは違っていた。いつかの日の零点のお誘いと同じ色をしていた。言葉とは裏腹に彼女こそ我慢なんて出来ないって伝えていたなら】
【だからやっぱりイルミネーションを見ることに何か意味があるらしい。もっと言うのなら、サンタクロースにもやたら固執しているようだった。分かりやすい】
【行き場ない何かをぶつける先を見つけらないなら、せめて繋ぐ手はカップルだらけの人込みに逸れてしまわぬように丁寧に絡むのだろう、緊張の湿度が、糊より二人を護って】
【――何事もなければ駅前まで戻るのだろうか。待ち合わせの時計塔とは少し離れた場所。駅前広場。――コンピュータに精密制御された光の群れ、彩り豊かな電気式蛍の群れ、】

【とりあえず確かであるのはやたらめったらを三乗したくらいにカップルだらけなことだろうか、――分かり切っていたとはいえ、それでも、すごいなら】
【ふと気づけば隣の少女はむーむー不機嫌そうな顔をしていたし、その目はイルミネーションなんて見ていなかった。だから、やっぱり、目的は違ってて、分かりやすい】
【――――それでも、頭一つ分の位置から見るに綺麗であるのは確かなのだろう。――人並みの向こうに主役らしいフラワーアーティストの作品があった、これもまたライトに彩られ】


647 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/14(月) 01:17:20 6IlD6zzI0
>>644

【人ならざる気配。マウントを取った彼は依然として優位であるとは思っていない】
【傷は徐々に癒されつつあって、今では少し無理をすればある程度自由に動かせる】
【そして動きを封じた筈なのに。でも、胸裏に過る一抹の不安を払拭できない】


――――、外でそういう事に興じる趣味は俺には無いんだがな。
……こういう状況でなければ、だがな。――――先ずは、黙って貰おうか。


【拳を女の顔に叩きこもうとした瞬間、腰に絡みつく女の両足】
【万力みたいにぎりぎりと締め付けるその力は人ならざる気配の一端を担って】
【"がっ、はッ――――ッ!"と途切れ途切れの息を吐いて、ついでに痛みが走る】
【アクアビーナスという能力は外傷を癒すには適しているが、"こういう"痛みに対しては効きが悪い】

【故に、この状況はチキンレースの様相を呈していた。こちらの身体が悲鳴を上げる前に】
【―――――、女の意識を奪う。オとす。あくまで無力化を図る彼と殺意全開の彼女とでは前提が違う】


―――――、………まるで婦女暴行だな。そうも、言ってられんがなッ!!


【彼は体全体に力を込めながら、女の顔めがけて拳を叩きこむだろう。ひとつ、ふたつ、みっつと】
【だが十全な威力は出せないし、女も抵抗するだろうから彼が望むような展開にはならない】
【状況次第では女が抜け出すことだって十分にありうるから――、躊躇いなく拳を振るうのだった】


648 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/14(月) 01:29:57 BRNVt/Aw0
>>645

【それは偶然だったのか、或いは何らかの運命だったのか】

【その時"彼女"は気が立っていて】

【気がつけば港の倉庫群へと向いていた足】

【──嗚呼、なんて騒々しいのだろう】


──ねえ貴方達、そんな所で何してるの?

【かつり、と響いた高いヒールの音】

【その音に目を向ける者がいたのならば男達の背後には一人の少女が立っていて】

【月白色の肩まで伸ばした髪に小柄な少女には不似合いな白い大人びたコート。裾からは黒いタイツと灰色のヒールの高いブーツに包まれた脚が伸びていて】

【ひぃふぅみぃよ、と数えたのならば少女は虚ろな金色の瞳を一団に向ける】

……まあ、何をしてようが関係ないか
それよりね、私、今ちょっと虫の居所が悪いの
【だから、ね、と呟くと同時に少女の周囲に何本かの氷柱が生成され】


──死んでくれる?

【辺り構わず氷柱を飛ばそうとして】


649 : worldEnd ◆KP.vGoiAyM :2019/01/14(月) 02:21:00 Ty26k7V20
>>624

どう思うかは人それぞれ、自由だ。…なら僕は、美しいものを信じる。それだけのことだよ。

…まぁね。でも、協力できる仲間は居るんだ。多くないけどね。
機関とか関係なしになんだけど…機関にも是非力を借りたくて…

……カニバディール?……ああ、機関について調べている時に聞いたことがある。
うん、彼を探すことにしようかな。ありがとう。…ありがとうでいいのかな?
今君は、世界の危機に手を貸しちゃったわけだ。…いや、まだそれは言いすぎかな。


【やはり彼は無垢な笑みで彼女の言葉を本当にありがたそうに笑っていた】

そういう考えもできるか…うん。それは面白いね。やっぱり、色んな人と話すのは面白い。
自分がどれほど無学で一つの見方しかできていないかが思い知らされる。
……えっと、なんていうんだっけ?井の中のなんとかって。
ハハッ、300年後じゃコトワザを言う人も居ないからね。本もほとんど瓦礫の下だ。

僕は、手伝ってくれる人たちのことを<FLOS> と呼んでいる。彼ら彼女らは
美しいままに散りゆきたいのだから、美しい花と一緒だろう?


どうかよく考えてほしい。この世界――いいや、自身の幸せについて。


【彼は自身の腕時計の文字盤を見やる。そして、またニッコリと微笑んで】

そろそろ行くとするよ。こんな外にずっと居たら風邪を引いてしまうよ?
僕が引き留めちゃってるしね。あはは、ゴメン。つい、お喋りだから。
――それじゃあ、さようなら。また会う日まで。

【いくら壮大な設定を持つ青年だったとしても、目の前で消えたりするでもなく】
【真っ白なその姿は遠く、人ごみに紛れるまでよく目立っていた】
【見た目以外、どこまでも等身大だった。】

【次に会うときは――エンドロールだろうか。】


/急な感じもあるかもしれませんがここらへんで〆させていただきたいと思います
/長期間お付き合いありがとうございました!!お疲れ様でした!


650 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/14(月) 09:50:25 BRNVt/Aw0
>>649

美しいものを信じる、ね……私には到底出来ない事だよ
【……裏切られたら怖いもの、と少女は呟いて】

機関だとかそういう垣根も一切無しに協力出来る仲間、か……
うん、だったらその人は適任、かもね──理由は秘密、だけどね
……あはは、どういたしまして
世界の危機に手を貸した……っていうのはちょっと聞き捨てならないけど……まあ傍観が"そう"なんだとしたら今も世界の危機に手を貸してるようなもんだし今更なのかな……?

……そう?私の考えが少しでも勉強になったんならそれもそれで嬉しくはあるかな……
『井の中の蛙大海を知らず』だね……大海、か……300年後の未来にもまだ綺麗で広い海が残っていればいいな……

え、えーと……『ふろ』……?ごめん横文字は苦手なんだけど……とりあえず私もそれになったって考えて良いんだよね?

私の幸せ、か
……私の幸せ、は──
【俯きかける少女の頭上、青年は別れの挨拶を述べて】
【きっと少女はそれに生返事を返すのだろう】

【そうして】

私の幸せ────

もうわかんなくなっちゃったよ、そんなの
【青年を見送る金色の瞳】
【人混みの中に声は消えて】





/長時間の絡みお疲れさまでした!


651 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/14(月) 15:16:14 6IlD6zzI0
>>645

【"カイ"共通の親友であるエーリカは言っていた。「夜景ってとっても綺麗だから一度は見てごらんよ」】
【そんな事を言っていたのを不意に思い出して、宛ても無く流離って、軈て港の倉庫群に行き着いた】


――――、むぅ、よわいものいじめ。
どんな事情があるかはしらないけれど、群れてる人達が少数をいじめる構図は嫌い。

         
        そこのふたり。―――――……たすけて、ほしい?


【紺色のセーラー服の上に羽織られた袖余りの黒色のダッフルコートと首に巻かれた赤いマフラー】
【雪のような綺麗な白髪とぼんやりと遠くを見てるような琥珀色の瞳が特徴的な少女は修羅場に足を踏み入れ】

【凛と澄み渡るような声で窮地に陥る二人に声をかける。そして淀みなく腰から取り出したのは白い拳銃】
【その銃口を高山帽を被る集団へと向けて、ひとつふたつと慣れた手つきで引き金を引けば弾丸が襲い掛かるだろう】
【学生を思わせる服装から飛び出る非日常の武器を顔色一つ変えず扱うのだから、普通じゃないって思わせるには十分】


殺しはしないけど。事情を聴くのに貴方達は邪魔だから、散ってて。
少なくとも私は、いいや私達"カイ"には勝手を押し通すだけの力があるから。

――――邪魔をするなら、容赦しない。痛い目の一つや二つは見てもらう。


652 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/14(月) 21:22:24 WMHqDivw0
>>647

【男の太い腕が振りかぶられても依然、脚でぎちぎち締め付けるのはやめなかった。けれど】
【一発――顔のど真ん中に拳が埋め込まれる。ぱきんと何かの弾ける感触が伝わるだろう】
【鼻っ柱でも折れたらしい。びくんと細い背が弓なりにしなって波打つ。けれどそのまま】
【二発――男がそれを振りかぶるころには、引き戻される拳にべたりと血が付いているのだろう】
【粘性の高い鼻血。それでぬめれどももう一発、確実に埋め込まれる。また体が痙攣する】

【けれど。三発――――それが振りかぶられるころに、ようやく女は口で大きく息を吸って】

あ゛ッはあァ〜〜――……、……ッ、商売道具傷つけられちゃったヨォ!

【ぶぱ、と間抜けな音を立てながら。両の鼻腔から鼻血を噴き出して――それでも笑っていた】
【けれどこのまま受け続けるのは確実にまずいと悟ったらしい。すみれ色の瞳に魔力が満ちる】
【零れんばかりの輝きを放って、瞬きを一つ――「パーティ!」漏らす一言はどこまでも喜色】

【――――次の瞬間。男の拳と、女の顔の先――鼻先のすぐ近くとの間に、一枚の】
【防壁、とまでは呼べない。ただそれなりの厚みがあるだけの板っぺらがひとつ、展開される】
【刷り硝子のようにぼやけた透明と、それに似合った強度をしているそれは、一撃で割れ砕ける】
【だろうが――厄介なのは、硝子と同じように破片を撒き散らすことだった。男の拳にも、女の顔にも】
【平等に降り注ぐ。乱雑な切っ先をそこかしこに向けて――女の頬にいくつもの裂傷が刻まれてゆき】

【もし、男がそれに怯んだのなら。その隙に、絡ませていた脚をほどいて、下半身の力だけで】
【上に乗る男を振り払って、強引に立ち上がる姿勢に戻るだろう。そうしたらまた刃を構えて】
【――やっぱり不気味に笑っている。鼻から止め処なく赤黒い血を垂らしながら。それで唇が汚れても――】


653 : ドラ ◆UYdM4POjBM :2019/01/14(月) 22:38:33 XqQAhkbc0
>>561

もちろんだよぉ!男なんてのは馬鹿な生き物でね……
女の子の前でカッコつけるのが一番大好きなもんなの!古今東西多かれ少なかれね
ぼくの方もきみの強みはこれからしかと探していくよ。共に戦場を駆ければわかってくることも多いだろうし

おばあちゃんが言っていた……『誰にもわからない様に隠し味をつけるのは楽しい
だが、それを見つけるのはもっと楽しい』ってね。これからの戦いは退屈させないよ

大した用がなくてもかけてきていいよ!休日遊びに行く用でもね!きみの誘いなら大歓迎!


【人差し指を天に掲げ、かつて教わった格言をイスラフィールに伝えるドラ】
【自信満々に立ち振舞う中、逆に彼女と共に行くという事は茨の道であると伝えられると、態度を改め真顔になる】
【はたして覚悟はあるのか?と問われたところでドラは……服を少し直して座る位置を正すと真摯に話をし始めるだろう】


ご心配痛み入るね!……けど大丈夫だよ、楽じゃない道なんてもう慣れてる
……てゆーか25年の人生で楽だった瞬間が手の指で数えられる時くらいしかないもん

こちとら両親も双子の姉も亡くしておばあちゃん以外身寄りもないみなし子一歩手前の手前のきっついスタートを切って
ようやく生活がゆとりが持てるって所だったのに15歳で日本から暴力と異能力が飛び交う見知らぬ異世界へと吹き飛ばされて鉄火場の連続だもん


【と、ここまでを口にこそしても……全く悲壮感にあふれず、逆に悪戯っぽく微笑みながら】


―――……けどね、それを差し引いてもおつりがくるくらいにこの世界は刺激に満ちた楽しい世界だもん
ぼくはね、もうこの世界に骨をうずめてもいいなって思えるくらいにはこの世界を気に入ってるんだ。いつか一度は日本に帰って
ノビタ君や剛太郎、こっちで友達になった日本人を送り返して、おばあちゃんとこに顔出して挨拶してぼくが決めた事を伝え終わったらさ


……それが終わったらこっちの世界に永住しようと思ってるんだよね。けどこの世界は今危機に瀕してて
戦える奴を求めてるんだから。じゃあ……戦うに決まってるじゃん。ここはもう……ぼくの生きる世界なんだから


【戦うのは、今ここにいるのが『これから自分が生きる世界』と定めた場所だから】
【そこを守るためならば戦うのは当然。何の気もなくドラは言ってのけた―――戦う"義務"までは求められてなかったはずなのに】
【さも当然のように、だ―――当のドラは特に変わったことを言ったつもりもない。頼んでからちびちび飲んでた紅茶を飲み終わり、あらら、と口を覆っている】


654 : イスラフィール ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/14(月) 22:51:08 arusqhls0
>>653

【ドラの纏う真剣な雰囲気に意図せずして、イスラフィールもまた惹かれる、道化師の見せる泣き顔は曖昧よりも深いから】
【千変万化の表情を辿ったなら、その表層の奥に沈む、理知的な素顔も見えるのだろうか】
【真摯を真っ直ぐに描いて、─── 眩しいばかりの輝きをそこに見た】


……それでも尚戦うと貴方様は申し上げました、それだけの決意ができる殿方がどれほどいるでしょう
困難な道を進むには、深い意思と精神と、何よりもはっきりとした信念が必要ですわ
心強い言葉は他者をも奮い立てます、─── これからも貴方様が付いていて下さるなんて心強いのです

私はいっぱいお頼りしますよ? 政治家は罪な人種です、有能な人間を遊ばせておくなんて世界の損失ですから
そして同時に一人の女として、─── 素敵な殿方に関われる事を嬉しいだなんて思ってしまいますし
思う存分電話をさせていただきますわ、お仕事でも、─── プライベート、でも


【なんて、冗談ですわ、と言って舌先を出した、淑女とは思えないぐらいの奔放さで】
【託した微笑みの色合い、少女の様にあどけなく、乙女の様に麗らかに】
【やがて彼女は立ち上がり、その場を跡にするのだろう】

【新たに増えた仲間、確かな力と知性を兼ね備えた、飛びっきり頼りになるパートナー】
【少しえっちなのが玉に瑕、─── それぐらいなら許容範囲かもしれない、けど】


/こんな所でしょうか! お疲れ様でした!


655 : ドラ ◆UYdM4POjBM :2019/01/14(月) 23:13:55 XqQAhkbc0
>>654

【イスラフィールの称賛に、両手の人差し指を頬にあてて右目でウインクしおどけた様子を見せると】
【懐からある物を取り出す。――タロットカード、大アルカナ19番 『太陽』のカード】
【成功、誕生、祝福、約束された将来を暗示するポジティブな意味を持つ一枚だ。ドラはこれをひらひらと見せながら】


うふふ、ぼくという『太陽』が頭上で輝けば、困難に陥ろうと皆が活路を見出すエネルギーを
ひねり出すようになるさ―――荒野を行く旅人には月と太陽、空の灯りが命の導となるものだからね

困ってる時にはおのずときみの前にもはせ参じるし、困ってないときも突然現れぼくが困らせに行くのも悪くないねえ
お呼びをいつでも待ってるぜ敏腕政治家さん!


【「お勘定お願いしまーす!」と、声をかけてレジで紅茶の代金を支払い終えれば】
【イスラフィールに続いてドラもまた店を後にする用意を始めるだろう。おみやげのぬいぐるみも洋酒ももうない、手に持つのは傘だけだ】
【店を出て気ままに振り回しながらやがてイスラフィールと逆の方向の道へ足を運び、彼もその場から去るだろう―――その間際】


んじゃあねイスラフィールさん。次会う時にはもしかしたらビッグな手柄を持って帰ってくることになるかもね
その時を楽しみにしてなよ!バイバーイ!!


【ぶんぶん手を振りながら別れを告げ、その場を立ち去っていくだろう】
【―――あ、結局おっぱいを狙う再チャレンジはできずじまいだったな、と少し悔しそうに呟きながら】

【To Be Continued→】

/はいです、お疲れ様でしたー!
/またの機会にでも絡んでやってください……


656 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/15(火) 07:31:09 5p38.LtA0
>>648>>651

「……何を?と」

【先ず掛けられたのは少女の声】
【声の主は、月白色の髪に白いコート、ヒールブーツの音を響かせて】
【そして男達が次に目にすることになるのは、空ろな金色に写る自らの姿】

「杉原!?」
「解りません、一体、あの娘は……」

【中央に囲まれた戦闘服の少女と男性は、ただ立ち尽くすのみで、そしてその奇妙な少女の行動を見守るに徹し】
【やがて、少女の周囲には氷の柱が精製され】

「杉原!!」
「無論です!軍曹!!」


「――ぐうッ!」
「氷の、能力……くッ!!」


【氷の塊が周囲に射出されれば、複数名の高山帽が押し潰され、或いは傷を負い、身を切られ】
【中央の二人は、男性が光の槍を出現させ、構え、それを打ち払い、二人分の身を守り】

「能力者……」
「能力者だ、対魔能戦闘用意」

【そうして高山帽の集団が僅かに身構えた時だった】

「……!?」
「……新手ですか?」

【別方向から聞こえるのは、再び少女の声】
【声は全く違うのだが、恐らく年齢的には程近い】
【主は、セーラー服の少女だった、あまりにも不釣合いな学生服、黒のコートに赤いマフラー、白い髪の、何処か儚げな】

「助ける!?何を!?」
「危険です!ここは離れ……ッ!?」

【中心に囲まれた戦闘服の少女が男性が、こう答えたその時に、セーラー服の少女は既に白い二丁の拳銃を取り出し、高山帽の集団に向けて放っていた】

「……ッ!?」
「――ッぐッ!!」

【さしたる抵抗を見せずに、再び、今度は弾丸に撃ち抜かれる幾人かの高山帽】
【氷の能力の少女も含めて彼我不明の相手は二人】

「――戦闘用意」
「了解、全員戦闘用意」

【仲間が数名倒れる中、号令とともに高山帽の集団は一斉に外套を脱ぎ捨て、帽子を取り払い】
【其処には、カーキ色の陸戦用水兵服に身を包んだ男達が居た】
【肩口には階級章と、そして櫻国魔導海軍を示す意匠】

「小銃隊、前へ……」

【淡々と、抑揚のない号令と共に、機械的とすら思える統制の取れた動きで】
【着剣したボルトアクションライフルを構えた数名が前列へと出る】

「其処の二人!!逃げろッ!!」

【少女が叫ぶ、だが……】

「――放て」

【白いコートと、セーラー服、二人の少女に向け、小銃隊は一斉に引き金を引いた】
【一人に対して凡そ5発程の弾丸が放たれる】


657 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/15(火) 13:40:57 BRNVt/Aw0
>>651 >>656

【浮遊し、射出されていく幾つもの氷柱。その切っ先は山高帽の男達を切り、或いは穿って】
【ふと少女が向けた金色。その先には光の槍を構える男と、それに護られる少女の姿】
【成程、山高帽達はともかくあの大柄な奴は能力者か、と少女が思案したその時だった】

【響いたもう一つの声】
【見れば自分と似たくらいの年頃なのだろうか?一人の少女が其処にいて】

……何?せっかく人が八つ当たりしてるってのに──ああもう!
【言い掛けた刹那男達に放たれた銃弾。その凶弾に倒れる男達に目をやれば月白色の少女は不快そうに顔を歪めて】

……どいつもこいつも何で他人の邪魔ばっかり……!
そんなに他人の邪魔がしたいんなら貴女一人で……
【やれば、と言い掛けると同時に月白色の少女の声に被る号令】
【何、もう!人が話してる時に大きい声出すな!と苛立たしげに叫びながら男達に向き直った少女の双眸は忽ち大きく見開かれて】

【カーキ色の陸戦用水兵服の、その肩口に示された意匠】
【見忘れる筈などなかった】

──櫻国魔導海軍……
【少女はぽつり、と呟いて】

……やっぱりさっきのなし
貴女がどっか行って……
【此奴らは私の"獲物"だから、と月白色の少女は黒いコートの少女へと告げ男達を強く見据える】

【抑揚のない号令、機械的な統制のとれた動きで進み出る海兵達、構えられた小銃】
【その向けられた銃口に月白色の少女はびくり、と身体を跳ねさせ固まりかけるが】

大丈夫……もう怖くない……あれは"解放"……だから……
【何事か小さく呟いて】

……っ、わっ……!?
【そのせいで反応が少し遅れたのだろうか?トリガーが引かれた瞬間に銃弾を避けようとした少女の足首に一発の銃弾が撃ち込まれ】
【更には脇腹にももう一発】
【痛みを感じないのか、それでもなお少女は平然とした様子で立っており】

ああもう!このコート結構高いのに!
【五本の細い氷柱を生成するとそれを掴み小銃部隊の喉元を目掛けて投擲し】


658 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/15(火) 19:43:31 6IlD6zzI0
>>652
【有無を言わさず蹂躙する感覚、鼻骨を折る感触、血液が纏わり付く不快感】
【気は乗らない。寧ろ自己嫌悪にさえ陥れど、それでも拳を振るい続けるのは】
【目の前の女がある種の捕食者に思えて。黙らせなければ此方が喰われてしまうから】


それは済まないな……ッ。だが、俺には知った事ではない。
―――――まだ、喋れるとは随分と丈夫と見た。……もう黙れ、耳障りだ!


【吐き捨てる言葉に絡みつくのは"この攻防で女を無力化しておきたい"というある種の逃げの願望】
【それ以上に胸中に渦巻く嫌な予感を払拭したくて。己が希望的観測を口にしたのだ】
【しかし女の変わらぬ喜色の笑みはそれを許してくれない。今なお嫌な予感を強くさせるから】


【―――拳を振るう。えも言えぬ不安を払拭するために四発目の拳を振るう】
【でもそれは女の顔に叩き込まれる事は無かった。突如として現れたガラスの様な壁に防がれる】
【人の拳程度で壊れるそれは破片となってグラヴィスの右拳に幾多の裂傷を刻み、肉が抉れ血が滴る】
【"アクアビーナス"にて行われる自己修復も間に合わない。痛みと予想外の展開にて隙が生まれた】


―――――……グぅ、づぉおおおおおおおっっっ!!?
(……何だッ!?、突然"何か"が現れやがった…!コイツ、"能力者"かッ!)


【そして女の尋常ではない下半身の力にて、馬乗りになったグラヴィスの体勢が崩れたなら】
【背中から地面に倒れてしまい頭を打ち付ける。咄嗟に上体だけを上げるが立ち上がる事は儘ならない】
【構図としては女を見上げる大男と言った処か。兎にも角にも大きな隙を晒している状態である】

【右拳の損傷は時間経過で回復すれど、今現在使える状況には無くて痛みに顔を顰めながら、女の一手をうかがう】
【無理に立ち上がって大きな隙を与えるよりは、女に攻撃させてからのカウンターを狙った方が良いと判断したのだろう】


659 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/15(火) 20:08:44 6IlD6zzI0
>>656 >>657

【不快感に顔を歪ませる歳の近いであろう少女の心情を歯牙にもかけない白桜】
【暖簾に腕押し。どこ吹く風か。彼女は何処までもマイペースだったから――――】


……八つ当たりは、良くない。
それに"そこの二人"を助けるなら"それ以外"の邪魔をするのは当然の話。

貴方の助けは要らないから、言われなくても――――


【"そうするから"――――と言い切る前に眼前に広がるのは機械を思わせる振る舞いと号令】
【機械の兵隊。人間の意思を見せない魔導海軍の兵隊たちを前に微かに顔色を曇らせる】
【両手に握った拳銃をだらんと下したまま、ライフルを構える兵隊たちに向けて―――】


まるで機械人形。……"ヒトオニ"である私よりの方がよっぽどヒトらしく見える。
――――、邪魔するなら、まかり通るだけ。それだけの力があるから、逃げる道理なんて無い。

("フェイ"、起きて……あなたの好物が目の前にあるから、力を貸して)
(『Ha、コイツぁお膳立てか、白桜。くくっ、無感情な木偶人形相手に興じられるか知らねえがよ。
 まぁ相棒のおめえたってのラブコール。受けてやろうじゃねえの。おい、"アレ"やれよ』)


【"わかってる。―――――Heaven's Hell"】


【天国と地獄の境目が曖昧となったなら、雪のように綺麗な白髪に痛んだ茶色が混じって】
【ぼんやりした儚い雰囲気に剣呑さと獰猛さが絡み始めたら、一斉射撃が為される刹那に横に飛び退き】
【先の儚さからは想像も出来ない俊敏な動き。宛ら獣の様なバネで素早く弾丸を回避する】
【それと並行して二挺の拳銃から五発の弾丸が兵隊たちに向けて放たれる】


『Ha、逃げろだって?冗談抜かせ。それにそこの不格好のガキンチョ、どっか行けなんて釣れねえ事言うなよ。
 仲良くダックハント/鴨狩りとしゃれこもうじゃねえの。つーかなんだよこの服装、年頃のガキみてえな恰好してんなよ、白桜』

(――――、むぅ。寝起きから口が悪い。それにこの服装はエーリカ一押しのチョイスだから……)

【命の遣り取りに発展している最中、独り言の様な言葉を吐く姿。それは一つの身体に二つの人格が居ると察せられるには十分で】
【周囲の人間たちにただものじゃないと知らせる。"ヒトオニ"、その言葉と変貌した容姿と口調もそれを後押しする】


660 : ガゼル=イヴン=カーリマン ◆auPC5auEAk :2019/01/15(火) 21:11:43 ZCHlt7mo0
>>640

「っ、先生……ッ」
――――ッ

【ティナの言葉は、流麗に響く。ガゼルを高く評価し、その立ち位置を誘導する効果の高さを謳い】
【そして、水の国にて『魔能制限法』を推進する一派の立ち回りを想定する――――なるほど、事前に色々とリサーチしてきたというのは、本当なのだろう】
【そうして提示される戦略を、じっくりと胸中で咀嚼して、そして差し出される花束を見やる――――】
【周りを囲む『黒装隊』達の、緊迫した吐息が伝わってくる。正に目の前で繰り広げられる、組織幹部への寝返り工作】
【これを、どう受け止めれば良いのか――――兵隊に過ぎない彼らには、判断しかねたのだろう】

――――――――悪いが、今は『これ』は受け取れんな

【そして、結論付ける――――ガゼルにとって、この話に乗るのは得策ではない、と】
【ブーケから視線を離すと、真っ直ぐにティナの瞳を覗き込む。その視線は厳しく、しかし同時に静かだ】

――――『導人会』という土台抜きに、俺に活動をしろと、容易く言ってくれる……
要するに、形を変えた引き抜き工作ではないか。随分と大胆に話を持ってきた割には、平凡な内容だ……

――――悪いが、そこには俺個人の、政治的なメリットが見出せん。目指すビジョンに対して、大きく遠回りする事になる……
その代価が『これ』では、割に合わんな……「狡兎死して走狗烹らる」とまでは言わんが、メリットを享受するのは、お前たちの方ばかりではないか
大体にして、私が……いや、俺がここに来て、方針転換をする、その大義名分がない……大衆の怒りの代弁者である事を止めれば、『私』に価値は無いんだよ……!

【ティナの説くところは――――ブーケの意味も、そして『黒幕』――――ガゼルはどうやら、その存在を知らないようだが――――の恐ろしさも、十分に理解した上で】
【その上で、彼個人の目指すものへの斟酌が、感じ取れない、というのである。金で、意に沿わない転身をしろと、そういう事になると考えたのだろう】
【更に、今スタンスを変える事は、ガゼルのネームバリューに、小さくない傷をつける事にも繋がり、第1の前提が怪しくなってしまう、とも口にして】
【あくまで、仄めかす程度ではあるが「利用されるだけで終わり」の可能性も、警戒しているのだろう。アジテーターに近い存在でもあるのだから】

……大衆の留飲を下げるための材料としての『魔能制限法』……お前の言う通り、甘美な毒である事は間違いない
だが、あくまで俺個人の皮膚感覚に過ぎないが……風の国の議論は、まだ混迷の中だ……つまり、水の国の様に『染まり切って』いないというべきか……
――――今なら、付け込める。そこに、我々の用意した、我々の為の楔を、打ち込める……その段階は、順調に踏まれているのだよ……!
それを、今この場で放棄する事……それに釣り合うだけのものが、得られる道には見えないのだがな……!

【ブーケの中から、一輪のバラを引き抜いて、ガゼルは滔々と説く。ティナの目には、勝算ありというガゼルが、甘いと映るか、それとも狡猾に映るだろうか】
【あくまで、水の国と風の国との『魔能制限法』は、別物となすと言う、ガゼルの狙い――――無論、取り込まれる可能性は高い】
【だが、一方でガゼルの、政治的な意味におけるキャラクターは強烈だ。あるいは、『本気を出せば、今からでも実現できる』とも、言えない事もない】

【その中で――――ガゼルは『個人的な政治の方向性』『調停者としての実績を作っての、政治家としての勇躍』『費用対効果』を難点に上げ】
【そして、「自分が『走狗』として、ただ良い様に使われるだけの可能性」を、懸念しているのだろう】
【そこに、何らかの回答を返す事が出来なければ、ガゼルを説得するのは、難しいのだろう】

【ただし――――暗い材料ばかりではない。例え拒否されたとしても、1つだけ、ガゼルは本当に微かなメッセージを、ティナに向けて、暗に仄めかしていた】
【抜き取った一輪のバラを指先で弄びながら、ティナの返答を待つ――――その表情は、静かで、そして切れ味鋭い力に満ちていた】


661 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/15(火) 21:12:40 WMHqDivw0
>>658

【そいつは折れ曲がった鼻の向きを素手で直した。ごぎん、と嫌な音が鳴って、また鼻血が噴き出るのを】
【手首の内側で乱雑に拭う。それでも止まるわけないから、べろり舌なめずりのついでにいくらか舐めとって】
【それが終われば両手に刃を握り直した。ぱしり、ぱしり。小刻みに軽く宙に放り投げてはキャッチ、繰り返し】

あ゛ァ〜…………痛。これどんくらいで治ると思う? それまで稼げなくて困っちゃうヨォ。
最近ネ、高いってクレーム来たからずっと値下げしててサァ〜……サムいんだよネ。フトコロ。
ねぇやっぱオニーサン、ギンちゃんを買っとくべきだったと思うんダァ、だって買ってさえくれりゃ
こんなまだるっこしい痛みなんか感じないまま一瞬でイけただろうしサァ〜〜〜〜、
それにギンちゃんのフトコロもあったまってー、うぃーん、うぃん? になったハズじゃん、ネェ?

【ただ、先程までのような思い切った――曲芸じみた動きが少なくなったのは事実だった】
【ひとつ動くたびに折れた鼻が痛くて仕方ないらしい。故に少しずつ距離を殺す足取りは、一歩一歩慎重に】
【爪先からそうっと地面に触れてゆくような、水面を犯すような歩き方。そうして両者の距離があと数歩】
【斬り込むにはあと少し足りない。けれど逃げ果せるにも少し足りない、そんな間合いまで侵入したならば】

だからもうさっさと死ね。

【左手の獲物を握ったまま。右手のほうの獲物を、勢いよく男の首目掛けて投げつけるのだろう】
【男が動かないならばまあ間違いなく刺さる、くらいの精度。逃げようとするならいくらでもそうできるだろうが】
【こいつの獲物同士は、細い線で繋がっている――伸縮性のあるワイヤー。それを考慮するのなら】
【逃げられたところで振り回して、肉を追いかけるだろうことくらいはわかる。わからせる。それくらいにはもう、】
【痺れを切らしているようだった。痛いのもまだるっこしいのも好きではないようだった。当たり前のことではあるが】
【スカルプの鋭利な爪先が若干の苛立ちを孕んで空を切っていた、――、大振り。隙として見るには、十分なほどに】


662 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/15(火) 22:08:43 E1nVzEpQ0
>>646

【外套を着付けてやる所作も全く手慣れたものだった。 ─── 面倒見のよい気質はアリアもまた同じであった。酒精に火照った体温を愉しんで】
【半ば千鳥の足運びを不安がり、半ば漸く肌を触れ合わす事を歓んでいた。少女を籠絡する為だけに柔らかな胸許の豊かさは、抱き締めてしまえば余さず薄藤色を包み隠せた】
【然して今は白銀を模していたから、自ら財布を開かせてやるほどの慈悲を与えもしていた。潰れ切った面目を愛でてやるのも、せめて嗜虐趣味者の天命なのだろう。会計係の視線は無為だった】

【深蒼の室内灯から歩み出れば、 ─── 街並みはとうに暗さと冷たさを増していた。西の空に残る残照さえ消えれば、絡める指先と寄せ合う体温なくして振舞うことは許されなかった】
【ごく苦笑の色を帯びた微笑にて、だがアリアは少女の手を離さなかった。切なく急くような足取りは、酩酊の色さえ青ざめてしまったかのように、確かなものであったから】
【 ─── 円やかな光に眩く煌めいてやむことのないイルミネーションに、どこか憧憬の色合いを帯びて、呟いていた。馬鹿馬鹿しい人混みの喧しさなど、冷たく透き通る大気を介せば大した事ではなかった】


      「 ─── きれい、ね。」


【それでいて人工の煌めきなど初めから瞳の奥に宿す気のない少女の挙措には鮮やかに気付いていた。置き去るような感傷に満ちた言葉を漏らした、次の刹那には】
【己れの胸の高さで不満げな唸り声を上げている白い喉筋を、ひいては何処か悲しげに潤んだ習作の碧眼を、慈愛に眦を蕩かした隻眼が見下ろしていた。 ─── 徐に、外套の奥に隠してもなお華奢な腰つきへと、掌は伸びて】
【編み上げられたウールがいよいよ泣いてしまうほど幸せな抱擁を与えるのだろう。キスの予告であるかのように艶めかしく開く唇が何かを呟いた。「どうしたの?」冷え込む世界の中にあって、呼吸さえ交わし合う距離感】
【覗き込むに似て小首を傾げていた。情欲を注ぐ抱き方ではなかった。なにか在るのならば、するり胸間から逃れられるような、でありながら決して嘘偽りは赦さない唇の紅さ。爪先立ちにもなるだろうか。夜の輝きを映し込んで、紺碧の虹彩】


663 : 名無しさん :2019/01/15(火) 22:41:23 8RXMmeGw0
>>662

【――であれば、やはり、ボタンだけでも自分で留めてしまうのが、せめてもの抵抗であるらしかった。酔っぱらった指先で一つ一つと留めて、(――いっこずれて)】
【いくらも不機嫌な目をして全部外してしまえば上から留め直していた。全部やり直す必要はないように思われた。――。冷静さは桜桃の種と一緒に吐き出してしまったらしい】
【だからせめて身体中をめぐるアルコールも吐き出してしまいたいかのように、ため息を吐く。"こうなる"ってきっと分かってたから、酒なんて飲む気、ないに違いなかった】
【待ち合わせから何から何まで失敗してる気がして悲しくなる。いっぱい考えたのに。――考えた時にはうまく行くはずだったのに、なんて、経験値不足の言い訳以外の何でもなく】

……………………私には見えないです。

【靴底を入れれば頭の高さは百七十ほどであるのだろうか。ごった返すカップル――特に男の方――にちょうど遮られてしまうなら、彼女の目には髪の毛ばっかり映っているから】
【せめて貴女みたいに背が高かったら、通りすがりのチャラついた馬鹿みたいな男の阿呆みたいな二度見すら見下して、イルミネーションだって、見られたはずなのに】
【私の高さではチャラついた馬鹿の阿保面が目線がきっちりきっかりアイレベルなの。――そういう不満をつむじの真ん中にまで満たしていた、絡むみたいに繋ぐ手だけが世界の全部で】
【――ならばその指先が腰元まで伸びるのなら、見上げる目はどうしようもなく情けないのだろう。きゅうと抱きしめられたなら、そのまま抱き縋ってしまいたくて、だのに】
【――――得意げに振る舞った過去が途端に気恥ずかしいものになってしまうって分かっているから、そうともできず。「――どうもしてないです」、不機嫌に平坦な声】

――――ううううぅ。

【誘いこまれるみたいに踵すら持ち上がってしまうなら、呼吸すら混じる距離に、涙目の湿度を伝えるのだろう。屈服した子犬と同じであった、もうお腹だって見せているのに等しくて】
【――ならば意を決するような一秒間。少女はすらりと胸中から逃げ出すのだろう、そうしたなら、やっぱり降参の一言を発しそうになる喉を律して、伝えるのは、】

――アリアさんここで待ってて! 目開けちゃダメですよっ、――っ、世界が滅んでもダメ! 絶対ダメだから!

【――――――ごく中途半端な場所だった。待ち合わせ場所にするにはいくらも不自然と不便が過ぎた。そもそも人の往来のど真ん中でもあった。】
【そんなことも気づけない子犬は好き勝手にきゃんきゃん言ったらぷいっと人込みの中に姿を消してしまうのだろう、――ならば言うことを聞いていなくてもよかった。少なくとも、】
【いくらか横にずれて、せめて人通りの真ん中から脱するくらいは当然許されるべきだろう。そしてまた、一度消えたらなかなか戻ってこられなさそうな人込みの中、】
【お姫様をほっぽって居なくなるダメな王子様の穴埋めにイルミネーションを見ていることだってきっと許された。――そして彼女はほんとに数分は戻ってこられないのだから】

【――もし律儀に目を閉じて待っていたなら、ひどく泣きそうな声が届くのは、五分は過ぎて、十分は過ぎてないような、そんな頃合い】
【イルミネーションでも見て待っていたなら、――目があった刹那にわぁと泣きそうに潤む眼差しは待たされた代金にてはやはり安いのだろう。どちらにせよ――うしろに何か隠していた】
【何一つ思い通りになんてなってない顔をしていた――けど。せめてこれから思い通りにしたい目をしていた。――人込みにもまれて、白銀の毛先、くちゃくちゃになっていた】


664 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/16(水) 06:45:56 HykzflAc0
>>657

【血飛沫を散らせ、もしくはそのまま氷柱を突き立てられ、浅くは無いダメージを負わされる高山帽達】

「誰だ!?敵か味方か!?お前は!」

【戦闘を八つ当たりと宣い、問答無用の攻撃は中心の少女と男性にも及び、堪らずに少女が叫びに近い問い掛けを少女へとして】

「……何者だ、あの娘」
「柴田、来るぞ」

【実弾を受けても、尚立ち上がり痛みを感じる素振りすら見せない】
【これも能力の一つか、或いはそもそも痛みを感じる事のない存在なのか】
【やがて月白色の髪の少女は、虚ろな瞳から戦意を込めて、明確に海兵達を見据え】

「ぐッウ゛……」
「がッはーー」
「小癪な、退がれ」

【5本の氷柱の内2本は喉元に命中し、2人の海兵を絶命させた】
【血溜まりの中に死体と、そしてねっとりとした血に絡む氷柱がその場に残されて】
【そして残りの氷柱は、前に出た海兵の1人が地面に伏せ手を触れ、地面より土の壁を出現させ、土壁により防がれた】
【この場に置いて、其れだけは澄んだ、氷と分厚く硬い土がぶつかる音だけが聞こえ】

「図に乗るな、小娘如きが……」

【次には、その海兵は壁を出現させた際と同じく、地面に手を触れ、少女に向けて錘状の尖った土の槍を連鎖的に突出させて、攻撃を仕掛ける】
【まさに、地面から次々と迫り上がるランスだ】

「だから逃げろって言ったろ!!」

【中心にいる負傷した少女は、状況に歯噛みして叫ぶ】

>>659

「ヒトオニ?知らん名だが、貴様もバケモノか?」
「人ならざるバケモノ如きが、魔導海軍に楯突くとは……」

【相変わらずの抑揚のない口調なれど、白桜の口上には、こう心底小馬鹿にしたかの様に答えて】
【刹那ーー俊敏との戦いが始まった】
【髪色を変え、口調も声色も、姿すら先程とは打って変わり】

「くっ、本物のバケモノとは……」
「ま、さか……バケモノ風情に……」
「ぐッーーあッ」

【機敏にして俊足の回避と反撃であった】
【瞬く間に放たれた弾丸は、3人の海兵の息の根を止め】
【残りの弾丸は指揮官とその傍の副官と思しき男の前に立った海兵が、信じられぬ事かもしれないが、切り払いを放ち防御を敢行したのだ】
【刀でもサーベルでも無い、己の腕で】

「油断したなバケモノ、我等は魔導海軍陸戦隊、異能持ちは貴様らだけでは無い……」

【己の両の肘から掌迄を、まるで鋭利な二振の刃物と変えて】

「今度は、此方からだ」

【跳躍、一気に距離を詰め、頭上からの斬り付けを放つ】

「アイツ、姿が変わったぞ!何者なんだ!?」
「解りません、ですが、まさか……那須曹長の接触者の報告に、いや、まさか……」

【フェイの姿を目の当たりに、呆気に取られた少女と男は、こう会話して】


665 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/16(水) 14:10:11 BRNVt/Aw0
>>659 >>664

るっさいなぁ!此方は八つ当たりしてなきゃやってらんないんですー!
……だぁぁもう!そっちもうるさい!私からしたら魔導海軍に襲われてる貴方達の方が……
【頬を膨らませて黒いコートの少女に文句を言っていたかと思えば、飛んでくる怪我をした少女の叫び半分の問い掛けに叫び返そうとする】
【とかく忙しい少女だ】
【だが、怪我をした少女に叫び返す途中で何かに気付いたらしく】

……貴方達は『旧派』?それとも『新派』?分からないならそれ以外だろうけど
【中心にいる二人に大声で問い掛ける】
【彼らは魔導海軍の襲撃を受けていた。つまりは魔導海軍に関係する者なのだろう】
【だとしたら『病に倒れたという前司令官派=旧派』か、もしくは『蘆屋派=新派』か。問いの意味が分からないのならば恐らくは先の『雷』事件の下手人かその関係者か】
【少女は彼らをそう判断したらしい】

【喉元に氷柱を刺され、倒れ伏す海兵達】
【少女はその様子に少しばかり喜色を示し、何やら「ダーツならいけるかもしれないな」などと呑気な事を呟いていたが】
【残りの海兵達の前に土の壁がそそり立ち氷柱の攻撃を防いだのを見れば、うげぇっ……そんなのアリぃ!?と再び不快そうに顔を歪める】
【土の壁に阻まれた氷柱は地面に落ちて砕け散って】

──はぁっ!?誰が不格好なガキンチョだって!?つーか貴女だってガキ……
【そんな中で掛けられた声。恐らく先程の黒いコートの少女だろうか?彼女はそちらに向き直り、一瞬ポカンとする】
【其処にいたのは先程とは違う雰囲気と髪色に変わった少女】
【え、何これ?と言いたげな表情で頭のてっぺんから爪先まで見回すも】

……却下!手柄を横盗りされちゃたまんないからね
【気にしない方が良いだろうと判断したらしく拳銃の少女の言葉に返す】

【その瞬間、少女の方へ向け土の槍が迫り少女は慌てて後ろに飛んで回避する】
【そうかと思えば着地した場所からまた別の土の槍がせりあがり】
【その度に跳び跳ねて回避しようとするせいか、土の槍を生成する兵士への狙いもなかなかつけられないようで】


666 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/16(水) 17:46:09 6IlD6zzI0
>>661

商売上がったりとは個人事業主同士として同情する……とは言い難い。
お前が何をしでかして今に至るのか―――足りない頭で考えてみるんだな。

だからお前の事情など知った事ではない。身勝手な理屈にも付き合う道理もない。
――――……一つだけ老婆心ながら忠告してやる、一人善がりな女は嫌われるぞ?
焦らすのも焦らされるのも男女の駆け引きだろうよ。それが解らない内は大人の女とは言い難い。

【窮地に陥っている。受けた痛みを反芻するかのような女の言動は、それを否応なしに実感させる】
【女の言うとおりにしていればwin-winの関係であったのか―――否、そんな訳がない】
【文字通り一瞬で"逝って"しまっているだろうから。正真正銘女の"慰みモノ"に成り果てるはずだから】

【獲物を手慰みにしながらにひたひたと歩み寄る女を前に不敵な笑みを口元に宿した】
【弱みを見せるには不十分な相手だから。いいや、女を悦ばす色なぞ見せたくなかっただけ】


………断る。俺の生き死には俺が決める。お前の決める事ではない。
―――――くくくっ、にしても堪え性の無い商売女め。お前自身の程度が知れるな。

鳴いて/泣いて、喚けば、この世全てが自分の思い通りになると思うなよ―――ッ!


【女の感情を代弁する様に投げつけられた獲物が迫る。それを避けるには不十分な体勢だったから】
【首を横に逸らしながら側転する事で致死を免れる。しかし、初手よりも深く首の右側、その根本を裂くのだった】
【薄皮を削ぐのではなく肉を裂いて。でもすぐに死ぬ程の深さでは無かったから深手を負った右手で傷口を抑えながら】
【能力の出力を上げて治癒に全力を注ぐ―――そうしたら側転から立ち上がり、キッと女を見据えれば二撃目の攻撃が襲い掛かる】

【ぎりっと歯軋りひとつ。覚悟を決めた。"肉を切らせて骨を断つ"。文字通りの状況に冷や汗が止まらないが、立ち止まるわけにもいかない】
【大振りの獲物を左の肩口で受ける。"アクアビーナス"の治癒力を以てしても肉は引き裂かれ、血は勢いよく飛び出て、傷口からも滴り落ちる】
【しかし獲物を離すまいと傷口に力を籠めながら女に肉薄していけば、首元の傷口を添えた右手を伸ばして女の首を掴もうとする】
【傷口を治癒しながらでも出血と損傷は確実に彼を蝕んでいるからこその一手。長期戦になれば膾切りにされてしまうだろうと直感しての一手】


667 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/16(水) 18:26:57 6IlD6zzI0
>>664

『Uh――huh――? 何だよ何だよ、テメエら"仕込んで"やがったのかぁ?
 軍人様は手品師であらせられるのかよ。直ぐにネタ晴らしするなよ、興が削がれちまうだろ?
 Ha、面白くも無いジョークだ、テメエらの理屈を拝借すりゃあ手前らも同じバケモンだよ』


【本物の化け物、化け物風情―――呪詛の言葉に絡む血と怨嗟の香り】
【最初の弾丸で葬った雑兵など一顧だにせず、意識を向ける先は指揮官と副官】
【両腕を刃に変える能力者を前に食らい応えのある獲物が現れたかと卑しく笑う】

【命の遣り取りに笑みを零す姿、破綻者染みた表情は化け物呼ばわりされるには十分】
【銃把を握る手に力が籠る。改めて臨戦態勢を整えれば、跳躍にて距離を詰め頭上を取った相手を睥睨】

【"ガッついてんじゃねえよみっともねえ。焦らし焦らされも大人の嗜みだろうが、なァ!"と蔑んだ笑みを向ける】


『おい、Jackass/間抜け共。銃に刃物じゃ――――勝負は見えてるぜ?手前らじゃ力不足だ。
 刃物でアタイとF××Kしたきゃ馬鹿犬のエーリカか、白桜が入れ込んでる和泉文月とやらでも連れてくるんだなッ!!』


【頭上からの切り付けに真向正面から立ち向かうのは馬鹿らしいから、"カイ"は軽やかに後ろに飛び退いて】
【"よく来たな―――コイツぁアタイからの贈り物だ。遠慮しないで受け取れや"と吐き捨てて、引き金を3回引く】
【2発は指揮官と副官に向けて、急所と呼べる場所に放った、残りの1発は何方かの生身の何処かに当たればよいと乱雑に放って】
【やがて弾切れとなったなら、改めてリロード。次からは能力を持った弾丸が装てんされる可能性が高いからより脅威となるだろう】


【ところで、"カイ"が口にした言葉、"和泉文月"―――その名を口にしたのは単なる偶然。しかし周囲に聞こえるような声で放たれる】
【だから、"カイ"という人物は手負いの二人にとっての数少ない手がかりであると知らしめていたのだ】


『なぁ、そこのチンチクリン。こっちのランデブーが終わったらおめえの獲物も横取りしてやろうか?
 それが嫌なら抗ってみろよ、アタイは自分勝手に喰らうだけのオニだからな。相手の事情なんざ考えないぜ?』


668 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/16(水) 20:03:41 WMHqDivw0
>>666

あは――――――すっぱり斬れないヒトは嫌いなんダァ。

【男の忠告もその一言ですぱりと斬って捨てた。すなわち、生き延びてうだうだ言うヒトは、】
【こいつにとって好ましいヒトではないのだろう。だから殺すし、一回きりで遊んで捨てる】
【そういう女だった。悪党と呼ぶには品格のない、獣と呼ぶにも作法のない、破落戸でしかない生物】

【故に――文字通りにすっぱり斬れない男の肉を見るのなら、忌々しげに、それか、驚愕に】
【まるい瞳を歪めるのだろう。手首の返しだけでは抜けぬ深さまで食い込んだ刃をどうにかするには】
【糸を引くだけではなく、きちんとこの手で柄を握りしめてやらなければならない。その選択に、手間取った】
【あ、と声を上げた時には既に掴まれている。きゅ、と喉の奥が締まって、音が鳴って】
【ながーいお耳を掴まれてポイ、されるだけで許される間柄ではなくなっていた。だから】

きっ、――――たねェ手で触んなッ!!

【近寄ってくる男に対して、前蹴り。足の裏を前に押し出す、ヤクザキックの姿勢にて】
【今までさんざ見せつけてきた脚力を以てすれば、もしかしたら男の肋を折るか、あるいは】
【内臓のひとつやふたつ、水風船みたいにぱーんと景気よく「やって」やれることだろう。けれど】
【あまりにも直線的で見え透いた攻撃だった。ならばそれを避けるも、その脚すら掴み取るも自由だろう】

【――そうされるなら女はひどく不思議そうな顔をするのだろう。どうして? 「やる」のは、こっちのほうなのに】
【ただ純粋に意味がわかっていないようだった。今から振るわれるのであろう暴力に対する怯えとか、】
【後悔であるとか、そういった類の表情をしないことが――あんまりにも理不尽だった】


669 : キング ◆/iCzTYjx0Y :2019/01/16(水) 22:44:08 YPBLlEbw0
前前スレ>411

【目の前にいる女性、かつてはベイゼ・ベゲンプフェンと名乗っていた―――その人から出た単語、悪魔の名。】
【〝マモン〟―――上で悪魔の名、と言ったが。大悪魔、と表現するのが本来は相応しいだろう。キングが〝役所勤め〟にあるのと】
【関係がなくその名を広く魔界に轟かせる一大城主―――サタンとの仲は、よく言えばグレー。悪く言えば―――不鮮明。そう、〝何とも言えない〟】

【だからそう。そんな名前がぽつり、と口をついて出た後には―――哀れな事に〝役所勤め〟クンの表情は見る見るうちに変わっていき。】





――――……。




 ……ああ! なるほどね、マモ……マモン。……マモンね!





――――――――………、えぇ……(小声)

 (いや、いや―――いやいやいや! 確かによ、あの〝チート娘〟を囲っておける悪魔つったらそりゃァスゲエ奴に決まってるぜ!けどよ!)
(よりにもよって―――あろうことか〝マモン〟!?あの、〝マモン〟だよな!?同姓同名の別人って可能性も―――……いや、希望的観測か。)
(チッキショー、またサタンとは微妙な関係の奴持ってきやがってよォ〜! まだ仲が悪いとかの方が幾分か楽だったぜ、どうせ敵対勢力だしなぁ!!)

(つまり、コレってアレだよな!? オレがトチッたせいで魔皇城との仲が悪くなったりとか、なんかそういうよ〜!)
(そういうアレだろ!? 可能性が無きにしも非ずというか、ほとんどそんな感じになっちまう、危険があるってこったろ〜!?)
(や、やべェぜ……此処は大人しく頭下げてリリアちゃん借りる方面で―――いや、ややや、アナちゃんの前で前言撤回か!?できるか!?)

(……お、オレが……二言……二言は……ぐっ、だ、ダッセェぞソイツはよ……〜〜〜どうすんだよこれ、オイ!)
(なんかかっこつけてよ、言っちまったけどよ〜!! やらかしたぞコイツは……どうすんだ、どうすんだ、どうすんだ、コレ!?)


【くるり、と後ろを向いて。頭を抱えながら悶々と、一人悶々と何か考えてあーでもない、こーでもないと】
【ぶつぶつ呟いている訳だが―――もうこの姿が既に、大分その、カッコ悪いとかそういうのはナシにしても―――】
【長考の末ゆっくりと、ゆっくりと、ゴゴゴゴゴ、と黒いオーラをたぎらせながら、半分青ざめた表情で彼は振り返って―――】



……し、知らねぇ悪魔だなぁ〜……聞いたこともない! マンモスだっけか? トロそうな名前しやがって、なぁ!?!?!?
た、大したことねえ奴だぜそりゃ。……い、いける……だろ。いける……いける、いける、いける!! こっそり奪還だ!!! やる!!!

やるったらやるんだ、オレは!! できるんだよ!!! かっこよく!!!! スーパーヒーローみてえにな!!!!!!!!


【―――殆ど恨み言に近い言葉を残し、クールな女ひとり、フールな男一匹の旅が始まる。】
【たどりつけば魔界、キングは心なしか震えており―――寒さかな? いや違うな……寒い時はもっと、体を震わせるもんな!】
【ガチガチ歯を噛み合わせながら、それでも一歩、一歩と城内へ忍び込み―――その中でも濃い、一層濃い〝魔〟の気配が漂う部屋へと、潜入していき―――……。】



……あ、アナちゃん……て、手握ってもらえる??

【飛び切りカッコ悪い言葉を呟いて、部屋の中へと入ろうとするだろう―――。】


670 : セリーナ ◆/iCzTYjx0Y :2019/01/16(水) 22:44:36 YPBLlEbw0
>>238>>255-256

【こつ、こつ、こつ―――靴の音が冷たい廊下に鳴り響く。乾いた空気を割いて、静かな気配を漂わせ、〝彼〟は間違いなく降臨せしめる。】
【ブランル―――ミドル・ネームやファミリー・ネームは存じ上げないが、そういえばこんな男にも産みの親なんて者が、間違いなく存在しているんだな、と―――】
【そんな風に考えてしまうほどに、この廊下に、この好機に、〝彼〟が現れたことはセリーナの心に深い絶望感を齎す。頼む、もう逃げてくれ―――ヴァルター、逃げてくれ、と。】


ブランル……玩具なら、お前の〝大好きな遊び相手〟なら、此処にいる!
その男に構うな、ブランル……ッ!! ――――〝ノーバディ〟!! いつまでそんな所でグズグズしてん……っ!?

(無線機で……二人組、そうか仲間が近くに……成程賢い手だ、情報伝達だけはこれで確実に―――っ!)
(でも、この場でヴァルターまで捕まってしまったら……戦力が削がれていくことだけは避けなきゃいけない、〝それ〟だけは……絶対に!)

……〝ノーバディ〟、早く行けッ!! その男の―――〝ブランル〟の目的はアタシだ!!
アンタは今すぐ離脱すればなんとか―――……、な……は!? なっ―――、何を―――……っ、……。


【―――はてな、が浮かんだ。とにかく逃がす。ブランルの気を引いてでも、これからもっと酷い事をされたとしても。】
【どうせ〝今夜〟も拷問紛いの〝遊び〟は続くのだ。だからとにかく、彼を逃げられるようしなくては、と―――それで一杯だった、彼女。】
【その脳裏に、クエスチョン・マークが多量に浮かんだ。目の前の〝体を売ってでも逃がしたい男〟が、突然珍妙なポーズで、不思議な口上を口にし始め―――たのだ。】

【ある時は〝代行者〟、ある時は〝便利屋〟―――この口上、そう〝口上〟だ―――聞き覚えがある。】
【これは幼き頃に見た数少ない記憶の一つである、〝ジャパニーズ・TOKUSATSU〟のTVショーに出てくる……仮面を被ったり】
【一瞬で変身したりする、あの〝ヒーロー〟達が登場する時に口にする〝ソレ〟だ。言わば―――〝名乗り口上〟。こんな時に―――、いや。】

(……こんな時、だから……か。)

【ヒーロー、についてほんの少しだが彼と言葉を交わした今のセリーナには、なんとなくその意味は分かった。】
【寒い風がひゅう、と通り抜けて、頭の中で腐るほど見た〝採石場〟のチャチな火薬爆発が浮かんでも―――笑わない。馬鹿には、しない。】
【これは宣言だ―――逃げるわけでも、撤退するわけでもないのだ、と。これからおまえを倒し、アタシを助けるのは〝この俺―――ヒーローだ〟、と。そういう、宣言。】

【そしてその後に紡がれた言葉には深く心を痛める―――どうやら、本当に長い間、自分は捕まっているらしい。】
【はたして世の中は、この企業のイカレぷりをどこまで認識しているのか―――復興に携わっているという情報からは、とても。】
【その危険性と暗躍に気が付いているとは思えず―――、セリーナは絶句する。成程、キングの奴はサボり気味らしい。……だが、だとしても。】


……それでいい。そこまでで、いい……分かった、ノーバディ、〝理解できた〟ッ!!
―――今が大体どんな状態か……分かった、分かったよ……。―――分かったから、もう……っ。


【―――これ以上、聞いていられない。頭がガンガンする。ブランルが近づいてくる。その状況に、体が震え―――歯が鳴り出す。】
【こんな状態、こんな恥ずかしい恰好、こんな―――こんな、情けのない姿。見せていられない。もう、今できることは耐えることだけなのだ。だから―――】


―――――逃げろっ!!

【それだけを、告げる―――、聞いた情報の整理は、また後だ。】


671 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/16(水) 23:00:06 E1nVzEpQ0
>>663

【ともすれば魔性めいた抱擁から逃れる少女をアリアは引き止めなかった。 ─── そのくらいの面目は立たせてやるのだと】
【蜜漬けの水底に隠しておいた告白の言葉を取り上げてしまうほど無慈悲ではなかった。それに、碧い隻眼に宿した情念は】
【例え少女が素面であったとしても容易く屈服に至らせる媚毒に等しかったのだから何を焦る必要もなかった。己れの毒牙の如何程たるかを、少女の次によく知悉していた】
【 ─── 想い人との約束を薄っぺらな気遣いで無碍にするほど酷薄ではなかった。静かに瞼を落としたまま、雑踏の中に立ち尽くす魁偉が、奇異と畏怖の目線に晒されても無頓着であり】
【いずれにせよ人垣よりも頭一ツ二ツ抜けた白銀のシニヨンと新雪の顔貌を見出す事に苦労ができる筈もないのだろう。 ─── 泣き腫らすように慄く音吐を、惑わずに聞き分ける耳朶は、白く】


   「 ………─── はあい。」


【であるが故に礼節を以って閉じられていた隻眼を開くなら、 ─── ごく我が子を甘やかすような、或いは我が子に甘えるような、囁きは】
【決して少女でなければ聴き得ない類の吐露だった。それもまた一ツ彼女の本質であるのだろう。冷徹な白皙は己れの性分を隠す為のペルソナに過ぎぬのかもしれなかった】
【両掌を後ろ手に組んでいた。くちづけに慕情を抱いた若い乙女と等しい表情だった。垢抜けたばかりのように緩められた頬より、ほんの仄かに穢れない白磁が垣間見え】
【重ねる視線は果てしなく青かった。夜空の果てを描くならば、斯様な秒間も生まれ得るのだろうか。涙さえ湛えてしまいそうなほど蕩けた眦は、然してそれでも、見逃さないのだから】


   「ふふ、」「 ……… なあに?」


【ほどいた片手が伸びるのは己れと同じ色合いをした白銀だった。 ─── 乱れた御髪を長い指先が梳いてやるのだろう。そのまま抱き締めてしまいたい衝動は辛うじて抑えているに過ぎず】
【やはり甘ったるく歓ぶような声音はゆるゆると悪戯めいて何か少女に強請っていた。/焦らさないで。わたしに教えて。だって貴女を愛しているの】


672 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/16(水) 23:32:56 oFkCLf9I0
>>255>>256>>670

【暗号に明らかな変貌の予兆。そして何事かの前口上】
【そのどこであろうとこの男は何かを差し挟む余地があった。魔術だろうと異常な力であろうと何だろうと】
【やろうと思えばいくらでも先手を打てた。だが、この男はしなかった】

【ただ鉄格子に身体を預けて、見通すことのできない暗闇の双眸で男の行いを眺めているだけ】
【何故か。それは余裕によるものだった。この男の力はもはや“戦い”というものを根底から否定している】
【であれば侵入者が一人いようが何の問題でもない。ならば、何をするのか眺めるのも一興だった】

【──ただし、それだけが理由ではない】

【男が意味深な言葉を続けたとき、ブランルの双眸は眼前の侵入者ではなくセリーナにこそ向けられていた】
【まるでその反応を見るかのように、この状況が彼女に何を与え彼女が何を受け取るのかを窺うように】
【この男の意識はセリーナにのみ向けられているのだ。とはいえ、客はもてなさなくてはならない】


……いや、お見事。見事な前口上とスピーチだったよ
その……何だ? ナートなんとかや、Mr.ノーバディだったっけ?
そういった名前も何というか……うん、童心を思い出すようで少し面白いな


【ブランルの手元から乾いた拍手の音が鳴らされる。表情が心底から感心したようなものへと変わる】
【勿論、本心などではない。そうであったとしても、この男は表情など自在に変えられる】


さて、どうしようか?
セリーナはさっきから逃げろと助言しているようだが、君にその気はないのかな?
なのであれば、私としてはもう少し歓待しなくてはならないな……


【腕を組み考える仕草をする。『今日の夕食は何にしようか?』と同程度の気軽さでその悪意と狂気の思考が走る】
【ほんの数秒でブランルは何かを思いついたように顔をあげた。その視線はセリーナへ】


そうだなぁ。この男の意識を残したまま身体を操り、私とともにお前で愉しむというのはいかがかな?
あるいはたまには嗜好を変えて、お前にこの男の歓迎を任せてもいいかもしれないな
私が“仕込んだ技”が彼のお気に召すかは分からないが、状況が状況だ、十分に愉しめると思わないか?

──なぁ、どうする、セリーナ?


【その言葉、視線、そして醜悪な笑みはセリーナにだけ向けられる】
【そして暗に示すのだ。お前が選べ、と。お前が私の作る地獄を選ぶのだ、と】
【あえてセリーナに偽りの選択肢を与えるという酷薄な行動。当然、この男の趣味に合うようなものを選ばなければ、そのときは──】


673 : 名無しさん :2019/01/16(水) 23:34:52 XbdCre2Y0
>>671

【くちゃくちゃになった白銀が翻ってイルミネーションのピンクに染められていた。真っ白な頬っぺたは酒の赤さと息切れの赤さに染められて、吐き出す息が真っ白で】
【涙が紺碧の瞳を滲ませていた。ベッドの中であったなら、きっと今すぐ泣きじゃくってしまいたいのに違いなかった。見つけ出した瞬間の泣きそうな呼びかけ、から】
【実際そのすぐそばまで行くのにまた時間がかかること。きっと気ばっかり急いているなら、流れの速さを無視してしまって。ぶつかられるたびに、涙の一粒だって落としてしまいそう】

――――あの、あのねっ、まえに、――……まえに、来た時はっ、もっと、すぐ、行けて、……すぐ戻れてっ、二分、くらい、……、――三分、くらいでっ、
だから、だからっ……、"こんなに"かかるはず、なくって、だからっ……。ごめんなさい……。

【――ならば、真っ先に伝えるのは謝罪の色した言い訳なのだろう。一人っきりロケーションをハンティングしたときは、こうではなかったと。こんなに人はいなかったのだと】
【どちらにせよほんの数分にて戻れる計画であったのだと。――彼女はどうにも人込みの予想を間違える傾向があった。なら、恋人とのクリスマスだなんて、初めてだと証明して】
【泣きじゃくるに等しい甘え声はやっぱり屈服させられている証なのだろうから。――お姫様をひとりぼっち放置してしまったって引け目は、やはり、当然、あるらしいから】

【そうして毛先が綺麗に揃うまで、少女は彼女に甘えることを選んでいた。何をしてきたのかと問われるのは当然だった。――責める色合いであったなら、きっと、泣いてしまってた】
【しかしてそうでないのなら、――、往来のど真ん中であっても気にしないのは二人ともであるらしい。未だ申し訳なさに潤む眼差しを一度伏せたら、ちいちゃく黙る一瞬の間、】

【――差し出すのは白いバラの花束であるのだろう。開きの甘いものはころんとまあるい形、それより少し咲き進んだものはオープンカップに蓄えた花びらの白さを見せつけて】
【一番外側の花弁は微かに波打つフリルを帯びていた。ならばごく繊細なかんばせをした花であるのだろう。掠れる白のラッピングペーパーに、たっぷりと白のラッピングペーパーを重ね】
【きゅうと結わえたリボンも豪華にいくつかを重ねたものであった。――バラだけを束ねた九輪の花束。であればそこまでは大ぶりではなく、けれど、決して、寂しくもなく】

………………あの、えっと、ビジュー・ド・ネージュって、いうのですって、……その、一番、きれいでしたから、……、えっと、

【よほど大輪の花ではないけれど、もっと咲き進んだなら、たっぷりした表情を見せてくれるのだろうと予感させた。ほんのごく微かなティ香も、貴女ならきっと気づけるから】
【はにかんだ顔がひどくまっすぐな好きを宿していた、――、だって九本であることにも、白いバラであることにも、意味があるのだから。けれど言ってしまうのは無粋に過ぎるから】

あと――、えっと……。一緒に……。その。お茶、するじゃないですか、……。いろんなやつ、いっぱいあったら、……選べる、じゃないですか、……。だから……。

【それからもう一つは紙袋であるのだろう。――ならばこちらの中身はティーバッグの詰め合わせであると言う。小洒落た書架を模した内部までは見通せずとも】
【たくさんのティーバッグの詰め合わせたのと、それからやはり缶詰に詰め合わせたシュガーベール。瓶詰のクッキーもいくつかの味が一つずつ】
【つまるところ受け取るのなら割とずっしりした重さをしていて。――おそらくは駅のロッカーにでも隠していたのだろう。紙袋には微かにバラの香りが、しみ込んでいたから】


674 : 『ナート・サンダー』 ◆auPC5auEAk :2019/01/17(木) 15:58:16 ZCHlt7mo0
>>670>>672

(……無茶すんなよ。まだ小娘だろうが、お前……――――自分から、そんなボロボロになるとよ、見てられねぇ……
 ……本当に、俺もおっさんになったもんだよ、全く……)

【足幅を広げ、膝を曲げて、重心を低く構える。まずはブランルからの攻撃を警戒した格好だが、幸いにも、向こうは物見遊山半分の様子見を貫いているらしい】
【それよりも――――背後から聞こえてくるセリーナの、必死にヘイトを稼ごうとする言葉に、『ナート・サンダー』は揺れた】
【互いに、戦士である事を理解しているはずなのに。その覚悟の叫びに、良心がざわめく】
【ヘッドギアの奥、バイザー越しにはその表情は漏れ出ない事が、せめてもの幸いだった】

……ハッ、ガキのごっこ遊びってんなら、まだ可愛げがあるだろうがな。生憎、俺は『ホンモノ』だぞ?
その油断が命取りだ……お前の『命』、どこから引っ張ってくる事やら……そして、『N2文書』にどこまで噛んでいるのやら……
それも知らないで、帰る訳にはいかないんでな……!

【ギチッと拳を握りしめ、『ナート・サンダー』は真っ直ぐにブランルと相対する】
【無論、忘れた訳ではない――――セリーナから引き出した情報。『幾ら粉砕しようと復活する』という、それを考えれば】
【今ここでの本気の戦闘は、無謀以外の何物でもない。しかし、もう少しだけ、情報を引き出しておく必要があった】
【――――『レヴォルツィオーン社』の陰謀、それが『黒幕』派と繋がっている事実。そこを確かめなければ、この侵入、目的を果たしたとは言い難い】
【道化を演じ、敢えて笑われる事で、相手の口が滑るのを、期待もしているのだろう。その振る舞いは、本人の性情でもあるのだが……】

【そして、その再生のカラクリ――――『何』と『どう』繋がっているのか。それを理解しなければ、ブランルは倒せない】
【なまじ、かつて『虚神』の1体と遭遇戦になった経験から、そうした手順を踏まなければ、彼を倒せない事、それを重々理解していたのだ】

――――――――ッッ
……悪いが、そんな悪趣味に付き合うくらいなら、俺はこのチ[ピー]ポコ……じゃねぇな、『ふぐり』とさよならするだけだよ……!
……真っ当に『育てた』なんて、口幅ったくて言えたもんじゃないが、一粒種は娘として花咲いてくれた後だ……もう、そんなに後悔はない……ッ!

【――――流石に、戦慄に引きつったのが、一瞬霞んだ声から伺えるだろう】
【ブランルは、或いは自分さえ『玩具』に見立てて、捕らえた後の愉悦を思い描いている。尤も、流石に男の自分の場合、より直接的に『血』を見る事になるのだろうが】
【幾らなんでも、そんなものは真っ平御免だった。仲間に、最低限の情報は渡った今、虜囚として虐待を受けるなら、自分で始末をつける覚悟はある――――】

――――大丈夫だ、離脱の為の手段くらいは、確保してあるし、想定も組んである……最低でも、ここが要塞化するくらいなら、なんとか、な……

【潜めた小声で、セリーナにのみ伝える己の胸中。強引に逃げ延びるための『アテ』も、既にあるのだと】
【無論、ブランルが想定外の凶悪な力でも行使すれば、話は変わってくるだろうが、彼はどうやら、積極的に力を振るうつもりはないらしい】
【ならば、最悪の場合――――逃げに専念すれば、落ち延びることくらいは成立するはずだと。プロとして忍び込んだ『探偵』であり『ヒーロー』である男は、軽くうそぶいた】

――――さてな、だったら1つ、見せてくれよ……出し物ってんならな
お前さんの『暗黒』……どこまで深いもんか。俺はこんな痛ましい性奴隷なんぞより、そっちの方によっぽど興味があるんでね――――『バーニングブーメラン』!!

【パワードスーツの左腕に、緑色のエネルギーがチャージされる。それをその場で振るうと、炎の様なエネルギーで構成されたブーメランが、ブランル向けて放たれた】
【グッと弧を描きながらも、確かにその身体を切り裂かんとするエネルギー体は、まずは牽制だ】
【その力のほど、そして『再生』の有様を、その目で確かめようというのだろう――――】


675 : ティナ ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/17(木) 18:47:20 zzFZ7RCw0
>>660


【考え込む様にティナは真っ直ぐ貴方を見つめる。大きな瞳が少女然とした輝きを供えて】


あらら、でしたら交渉は決裂ですね、もう少しばかり愚かな方なら、喜んで飛び付いてくださったんでしょうけど
成程、理には適っています、正直な所私の方には選択肢として、それを越える理を提示する事は難しいですし
─── ええ、もちろん、誤解なきよう、難しいのです、難しいだけです、今のダーリンに差し出す事は

何故って? ダーリンは未だ、私にとっては一つの可能性に過ぎませんもの、ダーリンは地に足着いた考えを用いました

私はそれに対し可能性しか示す事しかできません、私とダーリンはまだ、結ばれる運命にない恋人同士ですもの
こんなにも恋焦がれているのに、残念です、ダーリン、貴方はどうしてダーリンなの、なんて
受け取ってもらえないのでしたら、そこまでです、御主人様のとこに戻って、私はえんえん泣きながらお仕置きを受けましょう、しくしく


【存外にあっさりと手を引く素振りを見せるだろう、主な主張としてガゼルの立場を暗喩する】
【つまりまだ身内ではない、と、─── 敵になりうる可能性を持つ以上、必要分の可能性しか示さない、と】

【─── 不思議に思うかもしれない、熱弁から一転、見せるのは些かあっさりとしすぎた引き際】


676 : ガゼル=イヴン=カーリマン ◆auPC5auEAk :2019/01/17(木) 19:44:07 ZCHlt7mo0
>>675

――――この期に及んで、更に謀りとは、どこまで言っても狐だな……!

【ティナのその言葉は、要するに「乗ったらアウト」の類だったのだろう。軽重のほどはともかく、それを受け取ればどこかで見限られる】
【二重三重に真意を隠し、相手を翻弄し続けるそのやり方には、ガゼルも苦笑を隠せなかった――――苦笑しつつも、米神には青筋が浮かんでいる】

……だが。その腹積もりを知れただけ、大きな収穫というべきだな
少なくとも……お前の主であるイスラフィール議員は知らんが、お前は『政治』というものを分かっている様じゃあないか、ティナよ……!
「……?」

【抜き取った一輪の薔薇を、棘で痛い目を見ないように慎重に携えながら、ガゼルは笑みを浮かべる。戦いの前の様な、凄みのある笑顔を】
【――――この薔薇は、何も気障ったらしく振舞うために抜き取ったものではない。第一、ひたすら押しの強い雰囲気のガゼルには、似合わないだろう】
【その仕草こそが、暗に仄めかした、ティナへのメッセージ。読み取ったかどうかは不明だが、少なくともティナの方では、望ましい受け取り方をしたようだった】
【自分たちの関係性は、未だ不透明なのだ。それは、良くも悪くも――――】
【そのやり取りの意味するところは、周囲の『黒装隊』の面々には理解できていないようだったが――――】

面目を立てないといかんと言うのなら、1つだけ手土産でも渡してやろう……
次からは、こんな乱雑な接触をするのは止せ……『導人会』の『広報・実働部』に「『狼』に取り次いでくれ」とでも伝えるんだな……!
『私』にとっての、優先度の高い連絡を意味する、単純な暗号だ……大した意味はないが、コンタクトは取りやすくなるだろう
――――間違っても、あんな真似を繰り返してはくれるなよ……今回は小規模だったが、集会の費用というのは、決して安くはない……

【現状は不明だが、敵に回ってもおかしくない相手との取引、そんな塩梅に丁度良い、ガゼルのカードがあった】
【どう考えても、ティナはめそめそと仕置きを受けるような人間ではないが、それでも一応、収穫を持ち帰らせて『華』を持たせてやろうというのだろう】
【より確実に連絡を取る事の出来る暗号――――それをティナに、ひいてはイスラフィールに持ち帰らせる】
【流石に、開く集会にああも乱入されるのは、ガゼルにとっても堪える話の様だった】

――――しかし、助かった。これで、この場で血を見る必要は、無くなった訳だな……!
我々の事務所ならともかく、ここで死体の処理は面倒だ……一々『これ』を外すのも、面倒な話という奴だ

【スーツの袖の上から、腕に嵌めた『リミッター』を撫ぜながら、ガゼルは満足げにうなずく】
【やはりというべきか、ガゼルの制御をかけている能力もまた、何らかの形で他者を害するに長けたものなのだろう】

では、ティナ……イスラフィールの代理人として、この『非公式会談』で話す事、もう残ってないのか?
お前たちの敵については、お前たちで決着をつけるしかない話になるだろうが……
他な密約の類なんかは、俺の扱う範疇ではないが……担当者に話を持っていく事ぐらいは出来るだろう

【恐らくはやり取りに一段落ついて、ガゼルはティナに問いかける。勿論、メインの話というべきものは、一応の決着を見たのだが】
【付随して、何らかの話を持っていないとも限らない。とりあえず、『話は通じる相手』であるうちに、話しておくべき事が、あるのなら――――】


677 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/17(木) 20:23:04 6IlD6zzI0

>>668

【傷だらけの右手で女の首を掴めど、十分に力が入らない。力を籠める度に痛みと損傷が邪魔をする】
【歯軋りひとつ。奥歯が割れそうになるまでぎゅうっと噛み締めながら、射殺す様な眼光を携えて】
【女の意識を落とそうと試みる。肩口の裂傷、手の損傷、傷口からの出血―――何処までもままならなくて、断念】


いやよいやよも好きの内――――と言うだろうが。
まぁ……俺とて身勝手な殺人鬼に何ぞ触れたくは無いんだが、なァ……!


【迫る前蹴り。尋常ではない脚力から放たれるそれを真面に受けたなら確実に命に係わる】
【ただ先ほどまでのトリッキーな動きと違い、何処から放たれて何処に向かうのかという気配が見えたから】
【首を掴む手をパッと離したら、バックステップを少しだけ踏んで前蹴りを避けようとした】

【だが、積み重なったダメージと疲労は戦闘から離れていた彼の足を縺れさせたから、直撃と言わないまでも】
【胴体に女の前蹴りが減り込んだ。ボキボキっと肋骨が折れる音がする、喉から血がせせり上がり口から流れ出す】
【でも、それでも。衝撃の直前に両足に力を込めて踏ん張ったなら。――まだ目は死んでいないのだった】


    ――――ごふっ、……!………この阿婆擦れめ…ッ!
   お前のような殺人鬼にくれてやるほど、俺の命は安くは無い……ッ!


【女の脚を両の手で掴んだのなら、前蹴りを放った脚を思いっきり手前に引き寄せてバランスを崩そうと試みる】
【もしバランスを崩したのなら、比較的損傷の少ない左拳で女の脇腹を力任せに打ち抜こうとする――それは肝臓打ちに近い】

【眼前の殺人鬼の脅威は躊躇いの無さと驚異的な身体能力であるならば、ボディブローを以てフットワークを削ごうと考えたのだ】
【その時に垣間見せる女の不思議そうな顔―――ひどく不思議そうだ。彼からすればその顔こそが不思議に他ならない】


678 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/17(木) 21:27:40 WMHqDivw0
>>677

【首から手を離されたなら、蹴りが相手の肉体に減り込んだ感触がしたなら。一瞬ばかり「やった」と思うのだが】
【しかしその表情も瞬時に、また――どうして、というような顔に変わる。あどけなさの残る童顔がそうするならば】
【第三者がこの場を見るなら、ひどく陵辱的に映るのだろうか。現実はそれとは正反対なのに。――、】

――――――――――――――あ゛イ、ッ

【咳き込む、と言うにはあまりにも水っぽすぎる声を漏らした。事実女の身体からは水音が鳴っていた】
【どこからそんな力が湧いてくるのか、本当に不可思議でならないような細い胴体に目いっぱい詰められた内臓】
【それに男の力強い拳が抉り込む。いくらかが潰れる勢いで猛烈に揺れる。すればその内容物も揺れて】
【おそらくは胃だった。夜ご飯のジャンクフードの残滓が数かけらくらい残っている消化液が、大波を打つ】
【だからどぽん、と音がする。それに追従するように、周囲の肋が折れる音――中でそれが突き刺さっただろうか】

【かぱっと開いた唇のスキマから、どす黒い血と唾液と吐瀉物が混ざり混ざったカタマリが、こぼれる】
【それを切欠にして――女の身体が崩れ落ちる。拳を叩き込まれた箇所を中心に、くの字に折れ曲がるみたいに】
【許されるならそれ以上に。だんごむしみたいに全身を丸めて――そしたら濁音交じりの声を上げながら】
【連鎖するみたいに何度か嘔吐いて、下のほうから競り上がってきたものをいくらか吐き戻すのだろう】
【けれどそれすら許されないなら、引っ掴まれた脚はそのまま。それを投げ捨てるみたいに振り回されるのだって】
【いくらでも許してしまう。兎角この瞬間、この女には何かしらの抵抗を試みようとする余裕すらないのだから】

【――――――すみれ色の瞳が揺れていた。左右揃わない方向を見ていて、だから焦点も合ってない】
【だけどまだ、意識は途切れていなさそうだった。ギリギリの分水嶺を綱渡りしている。そういう状態】
【きっとこの波が引いたらまた、獲物を振るい始める――元気があるかどうかは、わからないが】
【今までさんざんに化物っぷりを見せつけていたんだか、らここで「どうにか」してやったほうがいいのかもしれなかった】
【それも全部男の行動に依存される。耐久力は化物の範疇になさそうなことが、救いなのだから】


679 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/17(木) 22:04:23 E1nVzEpQ0
>>673

【「いいのよ。」 ─── 口下手な言い訳の全てを一言で肯定するのだから非道な女だった。貴女のすることに何一ツ機嫌を損ねる事はないと】
【も少し愛しい人が涙ぐんでいたのならば往来の多寡など構わずに眦を舐め取ってしまっていた。それがアリアという女だった。なればこそ】
【 ──── 純潔の色をして目前に咲く薔薇の九輪に、息を呑むような声を漏らして、一ツだけの青色を瞠するのだろう。きっと冷然さなど冬の彼方に置き去ってしまった、果てしない紺碧】
【青い薔薇が花開く事はない、 ─── なんて誰かが吐いた嘘に違いなかった。気恥ずかしげな笑顔と、愛おしく咲き誇る花弁を織り込む虹彩の中にて、その丹青は確かに宿されていたのだから】
【暫し躯体は言葉を失うのだろう。誰より少女を抱き留めてきた胸許が涙を堪えるように震えた。当て所なく口許に添えられた、白く長い両掌の指先が、なにか求めるように唇をなぞっていた。そうして刻限さえ冱つるような雲耀の後、】



   「 ────…………… うれしい。」


【漸くアリアが紡ぐ言葉は、甘やかな唇より掠れつつも上擦って、きっと涙に濡つようでさえあった。 ─── 揺らぐかに似て歩み寄る、両脚】
【縋るように伸ばされた両手がひしと包むのだろう。受け渡された儚い花束は然して決して散る事を知らぬと運命付けられていた。紙袋に染み込んだ深く愛しげな情念が、どこまでも薫って】


   「 ……… ありがとう、かえで。」「わたしね、 ───………… 今、すごく、幸せ。」
    「貴女と出会えてよかった。」「貴女を愛せてよかった。」「 ……… 好きよ。 ……… 大好き。愛してるの、 ……… 。」


【然るべきように両の手へ捧ぎ物を納めながら、 ─── アリアは再び少女を抱き上げようとするのだろう。なよやかな腰と背中を抱擁に囚われるならば、此度こそ少女は逃れられない】
【少女の情愛を魅了してやまない豊満さと嫣然さに口付けの痕を刻んだ首筋を挟み込んで、愛らしいパンプスの爪先を目一杯に立たせて辛うじて届くような、肌膚の甘さを分かち合う距離感にて】
【止め処ない慕情を吐き出す声音は乙女のそれでしかなかった。 ─── 狂おしいほど蠱惑を帯びた薔薇の芳香に、陶酔へと追い詰められてしまうならば、ひどく愉しげに開く唇が告げていた】

【 ─── そうして少女の口先を塞ぐのは溺れるようなベーゼだった。蕩けきった隻眼の瞳に、見下ろしながら少女を閉じ込める、慾望の色】
【熱量を分かち合い、唾液を流し込んで、舐り上げる舌先が心を犯すキス。僅かに傾げた頤ゆえに、幽娟に揺れる白銀が擽るのも、切なくて】
【一方的な口付けでもあった。少女が何よりそれを望むと濡れた眦は知っていた。呼吸すら許さずに注がれる粘液と、好ましいものは全て知り尽くす狡猾なざらつきと、耽溺する唇の柔らかさ】
【ずっと少女が何を望んでいたのかをアリアは知っていたのだから呼吸が果てるまで続くのも吝かでなかった。/その純真な恋心が望むもの全てを充たしてしまいたいのに未だ足らないならば、遠く煌めくイルミネーションさえ厭わしい】


680 : 名無しさん :2019/01/17(木) 22:49:12 XbdCre2Y0
>>679

【ビジュー・ド・ネージュ/雪の宝石。そんな名を与えられた九つの純白は、世界で一番幸せになるべき花嫁のために天使が織ってくれたドレスのような色と手触りであるのなら】
【意味合いとして果てなく近しい概念であるのだろう。たとえ花嫁が抱きしめたとて釣り合わぬはずない白さと儚さと豪奢さと繊細さが、全部、似合うって思ったから】
【だからきっとある意味ではプロポーズとも等しかった。言われるばかりだったのだから仕返しなのに違いなかった。――ほんの一瞬の沈黙は、それでも微かな不安に彩られ、】

……、――――――――よかったぁ。

【――その瞬間に破顔する頬っぺたの温度が全部を証明していた。拙さと不慣れに飾られて歓喜が際立つのなら、それこそ誰にも見せたことない顔であろう】
【つまんなげに頬杖ついて薄幸の令嬢ぶるのがいくら上手であっても本質などでは決してないのだから。眦も頬も口角も蕩かしてしまう笑みこそ咲き誇るバラの色をするなら】
【それでもいくらか子供っぽさの残る笑みが、そうだとしても最上級の鮮やかさをしていた。空っぽになった指先が安堵を宿して頬っぺたを包み込むなら、イチゴのショートケーキより赤くて白くて】
【何よりうんと甘やかであるのだろう。血と土埃と涙とに濡れてきた頬がまだ柔らかい赤を宿せるのこそ神様の奇跡であるのかもしれなかった。――なら/から、】

――――、

【きゅうっと腕を抱き上げられたなら、酔いどれの千鳥足はバレリーナには遠く及ばなくって、それでも、転んでしまうわけはないのだから、全部委ねてしまう、瞬間に】
【抱きしめられる距離感だけが全部を観測させた。それ以外の人間などもはや世界から消えてしまったのと等しかった。――――、泣きそうに震える睫毛が砂糖菓子より幽かに煌めいて】
【眼差しを潤ますのは決壊した我慢以外の何でもないのだろう。――なら餌を強請る雛鳥より甘えて見せつける口中の赤色。待ちきれなくて、爪先立ちより爪先を伸ばす刹那の仕草】
【瞳を閉じてしまうのなら青色は白色に閉ざされてしまって。であれば青空に掲げられる白旗と限りなく同義であって。――腰元に埋めた指先はもはや王子様の装いなんて投げ棄てていたから】

――っ、アリアさん、すき、すきい……。だぁいすき、です、――っ、すき……。すき……、あう、すき――。

【互いのリップが交じり合い濡れた唇から漏れる言葉など咲きすぎたバラがひらりひらり散る仕草と等しいから、どこまでも甘やかに、鮮やかに、王子様の散華する様であるのなら】
【胸元に口元を埋めるのならばニット越しでも吐息が白肌を撫ぜるのだろうか。眉根をぎゅうと寄せてしまえば、溺れ死んでしまいそうに抱き縋る指先は藁になんて頼るはずなく】
【――荒い呼吸がもはや酸欠に因るものなのかもわからなかったし、きっと、考える意味もないのなら。耳まで真っ赤な温度に誘われて、シャンプーの甘い甘い香りだって、届かせて】


681 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/18(金) 00:12:11 E1nVzEpQ0
>>680

【終わりを忘れたようなキスが漸く終わるのに果たして如何程の時間を要したのだろうか。 ─── 二人同じ香料を纏い、だが決然として違う何かを孕んで薫り高いならば】
【ぬらりとした唇が離れてゆく感触は切なくも替え難い悦楽に満ちていた。口端から溢れゆく二人分の清い残渣を舐め取る仕草を彼女は好んでいた。ならば何のことはない】
【青い瞳もまた示された紅色の鮮やかさに毒されていた。 ─── 抑えのつかないものを吐き出す先を求めていた。揉みしだかれる指先が幸福だった。甘い舌舐め擦りを見せ付けるのも、嗜虐で】
【膨らみと呼ぶにも余りあるような肉感が限りなく潤んでいくのは少女の吐息が故のみならぬのだろう。腰を抱く手に紙袋を委ね、解き放たれた右腕の指先が、徐に少女の背筋をなぞりあげ】
【 ─── やがて頸へと至り、口付けの痕を弄び、頤を柔く掴むのだろう。王子の演目も終幕であるならば、ごく軽い力で擡げられる少女のかんばせが知るのは、女帝の残酷さでしかなかった】


   「つづきは、」 「 ─── ね?」


【そうして、 ─── 鼓膜さえ舐り濡らし躯体の髄まで痺れる甘美な囁聲は、何をか言わんや総てを理解させ余りあらなければならなかった。】
【紅色の耳朶を優しく食んで、抱き留めたままの両腕は執念に等しい。熱に揺らぐ足取りを慈しむように、或いは雑踏に白薔薇を穢されぬように、すれば消し得ぬ所有の権利を誇示するように】
【爪先立ちの抱擁のまま人波を掻き分け、やがて人混みより歩み出るのだろう。凡そ人目を引く事も構わずに、路面の傍に立つならば、呆れるほど通りかかるタクシーを呼び付ける】
【後は閨所へと帰るのみなのだろう。 ─── 決して離そうとはしないのは熱病とさえ呼べた。もはや王子でさえないのならば渡賃を支払うのも彼女だった。タワーマンションの麓に吹き降ろす、どこか粘らかな夜の海風だけ、暗示のようで】

【( ─── 然して、そうして肌膚のかけらも離れない時間を過ごすのならば、一握の違和を覚えるのかもしれない。)】
【(無欠の耽美を孕む肉体に、一ツ新たな情欲が宿るような、脈動を帯びた恍惚。きっとそれは少女に望ましくも、微笑むままのアリアは、截然とは言葉にしていなかった)】


682 : 名無しさん :2019/01/18(金) 00:57:52 XbdCre2Y0
>>681

【なれば夜につうと連なる銀糸はイルミネーションの彩りに染められてなお艶めかしい艶を孕むのだろう、周りより向けられる視線は見てはならぬものであるかのよう次々逸れ】
【それを良いことに爪先立ちの限界を相手に委ねたまま、世界中で一番甘美なるものを誰にも渡さずに独り占めている。頬張ったなら神様だって羨んで止まぬと知っているのなら】
【世界中の果実を全部集めて一つにしたとて到底及ばぬ果汁の甘さに脳髄まで浸されてしまっているのなら。酒より致命的な泥酔の有様、――持ち上げられた眼差しは恍惚に濡れそぼり】
【であれば眼差しだけで済むわけがないのだから。唾液にぬらめく唇はやはり飢え死に寸前の雛のように口付けを求めてやまない、残酷さにそれでも懇願する、芸をする象より無惨に、】

――――――――――やだぁっ、やだ……。やです……。やだよお――。

【泣きじゃくるみたいに甘える声は未だにサンタクロースの存在を信じていた。そして同時に今この場所にて今一度の口付けを求めていた。未来のことなど考えられないのだと言って】
【そのくせ未練がましく何かを訴えていた。潤み切った眼差しにていやいやを繰り返す仕草は最後に残った理性のひとかけら、遺言より儚く、そうして摘み取られる運命を示し】
【狼がどんな風に花を弄る/嬲るのか骨の髄まで理解しているのだから、――抱きあげられるのなら、お人形さんより無抵抗に従うのだろう。足先までもを脱力させてしまうなら】
【首根っこを噛まれて運搬される子犬や子猫みたいに完全服従を証明してしまう、――それとも或いは首吊りの亡骸みたい、毛先から爪先まで全部貴女に捧ぐから、】

【――――だからシートベルトなんて大っ嫌いに違いなかった。ほんの少しだって側が良くて、ぐいって引っ張るなら、しつけのなってない散歩中のワンちゃんみたい】
【お化粧の崩れるのももうどうでもよくなって肩口に甘えて頻りなのだろう。だってキスしてほしくて仕方ないから。してくれないなら首筋に犬歯の甘噛み、何度も、何度も】
【しなだれかかるみたいに顔を寄せて――赤信号。ふと予感がして目を向けたらルームミラー越しに運転手と目が合う。逸れた。――だからもう見ないよう、いっとう甘えてしまって】

【たとえ何かに気づくのだとしても何を言うはずもないのだろう。夢遊病患者より無作為に柔らかさを求めてやまない指先、繋ぐ以外で大人しくなりやしないのだから】


683 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/18(金) 15:45:50 5p38.LtA0
>>665

「旧派?新派?お前は何を言って……」
「いえ、軍曹、もしかして……」

【何やらと忙しく騒ぐ少女だが、ここで二人にとっては気になる一言を言っていて】
【男の方は、その意図に感付いた様子で】

「我々は陸軍です、櫻国国防陸軍!海軍の派閥の中には居ない者です!」
「強いて言うならば、旧派って事になるのですが……」
「そもそも、貴女はその話、何処で聞いたのですか!?何者ですか貴女は!?」

【男性が大声で答え、そして少女に問い返した】
【あるいは、そう『中尉』達の関係者なのかもしれないと判じて】

「余所見をしている余裕があるのか小娘……」

【連鎖して土の槍がせり上がり、少女に迫る】
【回避一徹、少女は何とも軽やかな身のこなしでそれらを回避してゆくが】
【反撃に転ずることは、出来ないで居た】

「ちょこまかと、小賢しい者だ」

【土の槍を出現させていた海兵は、次には少女の着地地点を予測し】
【再び地面に手をつき】
【その箇所から予測位置まで、地割れを走らせる】
【地割れに足を取らせる策のようだ】


>>667

「手品?違うな」
「――異能だ、化け物よ、貴様と同じではない」

【カイの煽りにも似た切り替えしだが、海兵達は尚も表情一つ変えずに答えて】
【そして彼女に迫るのだった】

「残念ながら、化け物相手に欲情する趣味はない」

【跳躍からの頭上から迫る両の腕の刃物】
【だが彼女もまた、歴戦の強者だ】
【後ろに飛びのき最短の動きを持って、それを回避】
【素早く反撃に打って出た】

「焦らし焦らされ?言語道断だ――ぐッ!?」

【素早い反撃の弾丸は、刃物の海兵の右肩を貫通】
【僅かに、その動きを崩す】
【そして、指揮官と副官に向け放たれた弾丸は】

「小柳津……」
「了解です」

【前に迫り出した副官が、右腕でマントを翻すような動きをする】
【すると、周囲より大量の蝙蝠が飛来し自身の身を犠牲にし】
【飛来する二発の弾丸に、飛び込んでいくように、纏わりつくようにし】
【多くの死骸をその場に落としながら、弾丸を止めてしまった】

「魔弾でも無ければな……」

【――そして】

「油断したな、俺の能力は腕だけではない、四肢を刃物に変える事」
「命取りだ……化け物め……」

【左足を刃物に変え、先ほど後ろに飛び退いた、カイ目掛け蹴り、否、横一線に迫る『斬撃』を放った】

「な、なん……」

【更に別の箇所で、先ほどカイが何気なく放った言葉に目を見開き顔を引きつらせる人物が居た】
【この騒ぎの中心、怪我を負った少女だった】

「い、今、お、お前……和泉文月って言ったか!!??」
「和泉文月を、師匠を知っているのか!!??」

【大声で、只ならぬ様子で、少女はカイに問いかけた】


684 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/18(金) 17:29:26 oFkCLf9I0
>>670>>674

【男の言葉にブランルは寒気さえするような優しい微笑を浮かべた】
【力の全貌を知らず。その内なるものを知らず。自らが置かれた状況を知らず】
【その上で啖呵を切ってみせるなど、なんと────】


なんと────健気なことか
ああ、そうだな。お前は『ホンモノ』だろうよ、Mr.ノーバディ?
その“物事が最低限には上手くいくだろう”という狂信は、まさしく『ヒーロー』のそれだ


【仄暗い瞳がセリーナへと向けられる。言葉は眼前の男にだけ向けられたものではなかった】
【徐ろに手が掲げられる。魔力も異能もそこにはなかった】


人間は手折れ、跪き、崩れ落ちて腐り果てる。それを“お前たち”はあまりにも知らなさすぎる
だが“我々”は違う。“私たち”だけが違う。全ての行動は無に帰して、ただ非情な現実だけが屹立する
それを知らねばならない。その中に飲み込まれねばならない

“お前たち”は────“お前”は


【語られる言葉は弱者の言葉だった。人の弱さ、脆弱さを語る言葉だった】
【あらゆる努力が無駄に無意味に終わり、それに絶望して人は崩れ落ちていくのだと】
【逆説的に人はそうでなくてはならない。そして、そうならないのではなくそれを知らぬ者が『ヒーロー』などとと呼ばれるのだと】
【ならば知らねばならないと言う。果たしてそれは、どちらに向けられた言葉だったのか】


何も知らずにここに来て、何も分からぬままに力を振るう。まさしく健気と呼ばずに何と呼ぼうか?
であれば、その遊びに合わせて私は悪役として無様にお前にやられる予定なわけだ……なるほど、愉快な役目だ

ならば、その無知と無謀の結果を受け取るがいい


【掲げた腕は無防備にそのブーメランの軌道上に合わせられる。そして何の抵抗もなく何の障害もなくエネルギー体は腕を引き裂き、切断した】
【血の尾を引きながら腕は宙を舞い、鈍い音を立てて床に落下。腕の断面からは血がにじみ出て、噴出し始める】
【苦鳴がブランルの口から漏れ出した。肉体損壊には苦痛を伴うらしい。しかし、再生の様子はなかった】
【異音。同じような鈍い音が鉄格子の向こうから聞こえた】

【────セリーナの腕も全く同様に、切断されていた】


685 : セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y :2019/01/18(金) 19:02:44 lp4TKcVo0
>>672>>674>>684

【ゾッ、とした―――冷たい感覚が背筋を疾駆する。一瞬にして、希望足りえた筈のヴァルターが暗く、薄い影に覆われる。】
【あろう事かあの〝魔人〟は、目の前に居る気高き英雄すらも、セリーナを犯し、嬲り、穢し尽くす為の道具としてしか見ていない―――そう。】
【ブランルがそう見ている、という事は、セリーナがどれだけ抗おうと、ヴァルターがどれほど強かったとしても、確実にそう出来るという、自負があるという事。】

 
              【隠す事は出来ない―――震える歯をカチカチと鳴らしながら、無様にガンマンは乞う。】

……い、や・・・……いや、いやだ……っ、やだっ、やだっ……!!
その人は……っ、そのひとはっ、かんけいないでしょうっ!? アタシが、なんでもするっ!

―――舐めろと言うなら、どこだって舐める……尽くせと言うなら尽くします、だから―――……おねがい、〝ヴァルター〟……っ!!

もう―――いますぐ、逃げて―――……っ、


【関係がない、筈がない。情報も少ない現状、逃げ帰れる訳もない。ブランルがそんな言葉で納得する―――理由がない。】
【矛盾をこれでもか、と。こんなに〝冴えない回答をする女だったか〟と。ガッカリさせるような、酷く無様に、恥ずかしげもなく。】
【セリーナは乞う。どうかやめてください。逃げてください。とにかく、とにかく〝今まで通り〟を維持できる様に、そうまるで―――……、】


【―――このままで居たいと、思っているかの、様に。】



【だがそれも数刻の事。放たれし英雄の刃は魔人の腕を易々と裂く。血飛沫が上がり、嗚咽が漏れる。】
【再生が始まるまでにラグがあるのはここで分かるだろう、だがそれより衝撃的なのは―――ブランルの嗚咽を。】
【ヴァルターの攻撃音を。数々の返し言葉を、嘲笑い塗り潰すかの如く強烈に過大な〝悲鳴〟が轟いた事―――女性の、悲鳴だ】


―――っ、ぃ……ぁ、は……ぁぁっ、――――――あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝ぁぁぁぁぁぁ……っ!!
あっ、ああああっ!! 〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝あっ!! かっ――――、ァ、ァァァ……っ!!


【セリーナ・ザ・"キッド"は、右利きだ。神速とまで謳われるファスト・ドロウ<早撃ち>も、右腰に携えた愛銃を】
【超常現象と見紛う程の速度で〝右腕〟で一瞬に引き抜き、撃ち放つ事で完成する。左腕でも驚く程の速さで抜き撃ちが出来るが―――】
【その本懐は右腕、右側にこそ存在する。長きに渡る鍛錬、弛まぬ研鑽、闘争の中で、生き残り続け培ってきた技術の粋が、詰まっているその〝右腕〟が―――、】

〝あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝っ……いたい……っ!! いたい、いたいいたい痛い痛いいたい……!!

みぎっ……て、が……ぁっ………


【完全に、切り裂かれて。ボトリ、と冷たい牢屋に落ちた。】


686 : 『ナート・サンダー』 ◆auPC5auEAk :2019/01/18(金) 21:19:12 ZCHlt7mo0
>>684-685

――――ハッ、気取んなよドサンピン
お前程度に超越者を気取られても、こちとら、1度マジモンの『神々』に殺されかかってる身なんでね……
そんな分際に絶望させられてるようじゃ、『ヒーロー』どころか『人間』やってられねぇってんだよ……!

【眼前の男が、どれだけの力の持ち主であるかは分からない。何より、ここであっさりと決着を――――などと、甘い事を考えている訳ではない】
【ただ――――かつて、異世界からの侵略者である『神』の1体との戦いを思い出して。『ナート・サンダー』は怖気を走らせそうな己の芯を、冷徹に抑え込んでいた】
【時間や因果など操って見せた、あの邪神に比べれば。大抵の事物は、脅威としては格下のはずだ】
【確かに絶望的だが『あの時』程じゃない――――その認識だけが、彼の身体を支えていた】

(――――人間を、やってられないってのか……? 本当に、相当派手に、ぶつけられやがったな……ッ)

【そんな啖呵を切って見せている背後には、すっかり委縮しきり、気力を萎えさせ切った、セリーナの哀れな姿があった】
【それは、尊厳ある者の取って見せる態度ではない。自分を誤認して、せめてもの反抗としてプラスチック皿を投げつけてきた、あの気概はどこに行ってしまったのだろう】
【――――人間、壊れればここまで壊れるものかと、苛立ちに歯を食いしばる】

ッ――――――――ぁ、は…………!?

【そして――――状況は、本当にあの『虚神』と同じくらいに、難解極まる相手を敵としているのだと、『ナート・サンダー』は思い知らされる】
【ブランルの腕が切断される。そこから始まるのは再生ではなく――――セリーナの、連座するような腕の脱落】
【何が起こったのか。流石に思考が空転するのを、防ぐ事などできなかった。思わず、眼前と背後とを何度も振り返り】

――――――――っ、てめぇ――――――――

【何か、やりやがった――――それだけは確かだろう。『ナート・サンダー』の声が、数段低くなる】
【これ見よがしに、己のダメージを、セリーナへと繋げて見せたのだろう。赤黒い憎悪が、心の底から湧き上がる。それが一面、意識を塗りつぶさんとして】

(ッ……そうか……『共感・共鳴・一体化』……つまり、繋げられちまってる訳か……恐らく、ブランル側優位のジャンクション……畜生め……ッ!)

【寸でのところで、理性が状況の整理に追いついた。そうでなければ、恐らく彼は、考えも何もなしに、怒りに任せて荒れ狂っていただろう】
【恐らく――――現状、ブランルを攻撃すればするだけ、セリーナを危機へと追いやっていく】
【それどころか、接続した相手にダメージをスワップできるという事は、わざわざ自らの身にダメージを残す事もなく、完全に置き換える事すらできるのだろう】
【つまり――――そこの繋がりを遮断しない限り、ブランルは倒せない。仮説としては浮かんでいた話だが、現状見せつけられて、なお確信的に理解させられた――――】

……俺も、すっかりとオッサンになったもんだ。こういう時は、狡すっからいもんでね……ここはやっぱり今一度、逃げるが勝ちって奴だわな……!
――――セリーナ! お前の現実はここにあるッ!! へたばってんじゃねぇぞ!!
忘れんなよ、俺の姿、俺の声、そしてあのウィスキーの味!! ……そして、こいつへの憎悪を――――――――ッ!!

【届いているだろうか――――恐らく期待薄だろう。だが『ナート・サンダー』は、激痛にのたうつセリーナに、最後の叱咤をぶつける】
【――――ここは確かに、ブランルの管理が全ての世界だ。だが、自分という異物が、ここに現れた事。それこそが現実だ。その意味だけは、捨ててくれるな――――】
【なんだったら、安易に引き金を引いた自分自身を、憎んでくれてもいいと――――宣言しながら、逃げる覚悟を固める】
【その一撃だけで、もう理解したのだ――――これ以上、無駄にセリーナを傷つけても、仕方がないと】

――――――――『ソーンスパーク』!!

【だが、それはそれとして――――逃亡の為には、もう少々ブランルを痛めつけておかなければならない】
【左腕に、今度は電撃を迸らせると、その腕を思い切り地面へと叩きつけた。そうして、電撃は茨の様に地を這い、足元からブランルに襲い掛かる】
【ダメージと同時にスタンさせて、動きを封じる。そして、その横を抜いて『想定していた脱出経路』へと駆け抜ける――――それが彼の作戦だった】


687 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/18(金) 21:47:38 oFkCLf9I0
>>685>>686

【腕が切断された苦痛は普通の人間と同じように存在していた。そもそもが狂気に満ちた男、痛覚の切断などという“無粋”なことはしない】
【それ故に表情は苦痛で染まっていた。強烈な痛覚の刺激にうめき声をあげ、しかしその上で唇は微笑を形作ってみせる】
【だがその黒絹の双眸がセリーナに向けられたとき、微笑は消え去って苦痛の色合いさえも消失する。ただどこか、見定めるような冷静さがあった】

【時間にすればたかだか数秒。黒衣の男はそうして壊れたような女を見つめていた】
【そこにあったのは愉悦でもなければ興味でもない。もっと何か、冷たい別の何かがあった】
【僅かな男の反応。それもすぐに微笑へと戻り、小さな哄笑を響かせる】


くっ、くくくっ……どうだ、セリーナ、私の感じる苦痛は? 中々に甘美だろう?
そして、なんとかいう男よ……いや、私は驚いたよ。まさか、こんな状況で攻撃してくるとは思わなかった
誰がどう見たってこの女は人質だろうに。それとも私に攻撃をしてきても、私はこの女に何もしない善人に見えたのかな?

……少しは…………考えたまえよ
ついでだが、再生するところが見たかったようだがそれも今回はお預けだ


【息も絶え絶えに、しかし愉快そうにブランルは言葉を語る】
【切断された腕からは夥しいほどの血が流れ落ちて足元に血溜まりを作っていた。それでも、再生は行われない】
【あるいはそれは、再生のタイミングさえも自由自在だという情報として与えられるだろうか】


…………現実はここにある、か


【小さな独白が紡がれた。その意味は誰に伝えられるものでもなかった】
【床を這う電撃をブランルは魔術によって打ち消した。受けたところでダメージでもないし、セリーナに分けることもできただろう】
【しかしそれはしなかった。逃げるナート・サンダーを追うこともできたが、それもしなかった。もはや、興味は失せていた】


688 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/18(金) 23:27:54 BRNVt/Aw0
>>667 >>683

国防陸軍……知らない派閥、だけど……旧派って事は取りあえずは私の味方って事で良いんだよね!?
何処で聞いたか……っていう訳じゃないけどそれを匂わせるようなヒント自体なら秋にあったあの長官殿の演説にあったから!
前長官が病に倒れて私が代理として就任したって報告の直後に厳島"さん"達が──わっ!?

【男の問い掛けに答えようとする少女。だがせり上がる土の槍をかわす事に気をとられて答えられなくなってしまい】
【それでも、気付いただろうか?彼女は確かに厳島を「厳島さん」と呼んだ。つまり彼女も中尉の関係者だと匂わせて】

──今は悠長に話してる場合じゃなさそーだな……
本当に信頼出来るかもまだ判断しかねないし、取りあえず今は
──
【土の槍を避けようと再び飛び上がった少女】
【避けた刹那海兵は再び地面に手をついて】
【瞬間、ピシリ、と音をたてて裂け始める地面】

【そうであれば、と少女は直径数十cmはあろうかという氷柱を五本生成すると地面の裂け目に向けて氷柱を射出する】
【氷柱がもし裂け目にうまく刺さったのならば裂け目は次第に凍りつき始めるだろう】
【そうして少女は氷柱の側面を足場として海兵へと接近しようとする】

──『謎の化け猫娘』とでも名乗っておくよ


689 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/19(土) 00:53:23 E1nVzEpQ0
>>682

【酷薄なディープキスだった。冷徹さの片鱗さえ消え去って、ただ慈恵に潤んだ白皙の微笑は、然して何より雄弁な嗜虐の析出でしかなかった】
【儚げな苦しみを聞き入れもせず随喜の涙に濡れる睫毛を屡叩かせていた。蠱誘を意味する青い流眄は行為の前に向けられる宣告と同義だった】
【今から貴女を嬲り尽くしてあげるの。 ─── 慄くばかりの少女の躯体は総て総て、指先と舌先を悦ばせる為だけに在るのだから】

【どうしようもない少女の懇願に矢張りアリアは微笑むばかりであった。望むのであれば相応の服従を示しなさいと命じていた】
【 ─── 故に首筋へ甘えられるならば続くのは凄惨なほどふしだらな口付けへの耽溺なのだろう。商用車に蔓延する無機質なゴムの匂いさえ、蜜と薔薇の香を前にして無為であり】
【唾液の弾け合う耳障りな音さえ遠のいてしまう。まして誰かの視線などぼやけきっていた。少女の望む限りに、望まれなくとも、生温い甘さへ溶かし込まれて注がれ続ける悦楽は果てしなく】
【そうして中毒と同じだった。それを無くして生きられない絶望的な口付け。重ねる毎に本能の最奥へ焼き付けられる多幸感より、とうに少女は逃れられないのだと、眇める眦は知っていたから】
【いよいよ抱擁は終わらなかった。路上へ降り立ち、エントランスに入り、エレベーターの中、ネームプレートの前、 ─── オートロックを開いて、愛しい病巣の中へと誘われれば、最期。】


   「 ……… ねえ、かえで。」
     「赤ちゃんが欲しいって、言ってくれたでしょう?」


【夜の差し伸べた一縷の残光すら、玄関扉の閉ざされる音と共に、暗闇へ帰結する。 ─── この世界には貴女と私しか居ないのだという告解。】
【貴女の逃れられる場所など何処にもないのだと愉しげにささめくソプラノと執着めいて背筋に甘く立てられた爪先が言い渡していた。玄関先で靴を脱ぐ所作も慣れて】
【答えを待つように一歩ずつ、足取りは窓際のベッドへと向かう。フローリングが軋んだ。ランプを付ける事はなかった。ネグリジェに着替える事さえないのだから】
【これから少女の散りゆく先も分かりきった事だった。 ─── テーブルの上には硝子の花瓶が置かれていた。白薔薇の花束がそっと差し込まれて、満たされた水を静かに啜る音がした。】
【紙袋はソファの上に預けられた。己れの外套を脱ぎ捨てて、次に少女の外套を脱がせた。ベッドの縁に腰掛けて、尚も甘やかなキスは続いていた。ならば、きっと】


690 : 名無しさん :2019/01/19(土) 02:00:23 XqqlKERI0
>>689

【赤信号のたびに窓辺で悲し気に揺れる交通安全のお守りがきっと運転手の命綱だった。ぴかぴかの新しさをふんだんに纏って、だのに、気づけばそれすら甘くなるなら】
【もうほんの少しだけ密室であったなら、すべてがこの場にて事足りたのだろう。自動運転技術も発達しつつある世の中で、運転手が人間か機械かだなんて関係ないのだから】
【堪え続けた虚勢の亡骸を足元に蹴りつけるなら、擦り合わさる太ももの質感は足先を絡め合う瞬間と同じに違いない。指先を絡ませて、舌先を絡ませて、足先が絡まぬ道理などなく】
【ましてや吐息と唾液までもを絡ませてしまうのだから、やはり無惨すぎる亡骸だった。慈悲深い聖女すら目を逸らし足早に駆け抜けるほどの様相は狼に似合いなのだとしても】

――――――……ぁ、……むり……。アリアさん、だっこしてぇ……。

【なんせ最上級の蜜に溺れ死んだ蝶々のような目をしていた。もう少しだけあとちょっとだけと手を伸ばしてどこまでも落っこちてしまったみたいに、全身に甘さをまぶして】
【吐息も唾液も涙も汗すら甘いなら桃だけを与えられて育てられた子のような。――なら栄養不足と偽ってみせるのも仕方ないのかもしれない、なんて、】
【――どうあれ酔いどれだった。駅の一件でおそらく走ったのだと思われた。ならば一層酔いの廻った脳裏は容易く焼き切られて、気づけばそこまで甘えてしまいたい】
【――――すでにその散りざままでも予感するのなら、きっと、余計に。だから車の停まる先、少女の爪先が地面を蹴飛ばすことは一度もないのだろう。故に、服従を誓うに等しく】

あ――――――――――、ん、ん、

【差し込む一条の光が消えるのなら、問いかけに少女はごく不明瞭な声を返すのだろう。――たとえ最初が冗談めいて揶揄いの色をしていたのだとしても、】
【そのたぐいの冗談が通じぬ相手なのだとはとっくに理解していた。――おそらくは目覚めた時にきっちり私物が減っている自室を認識した日、それから、ほかにも?】
【確かであるのは、嫌なはずなかった。まして今となっては叶うはずない我儘を叶えてほしくて仕方がない。その耳元に寄せた頬が甘やかなむずがりを伝えて、ほおずり一つ】

――――でも、私のお腹じゃ、駄目ですよ。きっと、居心地、わるいから……。

【外套と、それからいくらかの服飾と。手をかけるなら、やはり現るのは傷跡であって。端っこのところを引っ掛けてしまったセーターみたい、縒れてしまった痛々しさ、肌に縫い付けたら】
【そうっと撫ぜる指先は悔やんでこそいないが悲しそうに震えてやまぬのだろう。――いつかここに宿った子らはみな神様の処へ行ってしまって、そうして二度と宿らないのなら】
【甘ったるい口付けの狭間に漏らす声音もやはり同じ色をしていた。――その指先がふと伸びて、頭の後ろ側まで、ぎゅうっと抱き留めるのだろう。スズラン色した甘さのささめき、】

【(それなら私がアリアさんを孕ませてしまおうかしら)】

【――、そのまま、ベッドまで引き倒そうと。理性は聖女より青魚より足が速いから、今の一瞬ですら死んでしまう。死にゆく亡骸はきっと脱ぎ捨てられた衣服の形をしていて】
【蕩け切った全身を委ねるのにもはや戸惑いがあるはずもないなら。いつかはやはり冗談めかして言った言葉、けれど今宵は、いくらも、命乞いと懇願の色を帯び】

                           久しぶりだから、やさしくして…………――――。

【生娘ぶって閉じた眼差しは似合わぬ緊張に震えて、そのくせ開くのなら、濡れた紅紫色が透き通る。だからもう白銀すら脱ぎ捨ててしまっていた、蛇すら色鮮やかに見せつけるなら】
【悉く"自分"というものを塗り替えていった人をけれど一片の淀みもなく愛してしまっていた。命と名を貰ったなら生まれ直すのと等しかった。だからやっぱり服なんて、要らない】


691 : セリーナ・ザ・〝キッド〟 ◆/iCzTYjx0Y :2019/01/19(土) 14:13:45 lp4TKcVo0
>>686>>687
【銃で撃たれた事がある。肉片が飛び散り、血飛沫が上がる感覚は、そう久しい物でもない。】
【剣で斬られた事がある。骨まで達した刃がカルシウムを裂き、身体に走る神経をズタズタにされたのも昔の事ではない。】
【槍で突かれた事がある。内臓を押しやった鋭利な先端が、貫通するかしないかの所で停止し、胴体に深々と巨大な血穴を作ったのは、つい最近の事だったか。】

【殴られたことがある。焼かれたことがある。電撃を浴びせられたことがある。骨をへし曲げられた事だって―――ある。なんでも、ある。】
【セリーナ・ザ・〝キッド〟は、超人ではない。単なる人間だ。銃が無ければ相手を倒せず、鎧が無ければ身を護れない。そういうひ弱で、脆弱な存在だ。】
【だから戦闘と言えば、それは痛みと向き合う事と同義であった。どんな傷でも負ってきたし、どんな怪我でも克服してきた。そう、乗り越えて来てはいたが―――、】


ぁぁぁ……っ、あ、ぁ……――――ごふっ……っ!! コホッ、けほっ……い……ひ……ぎ、ぃ……っ!


【――――体の一部を丸々。切断された経験は、無い。零れ落ちた我が右腕に、最早視線も向けられない。】
【〝傷を負う〟のと、〝肉体を失う〟のは、同義ではない。欠損―――まるで包丁が豚肉を容易く切り分けるかの様に。】
【ハサミが紙を両断する様に。一切の刃こぼれも、なく。断面に荒い跡も、見えず。見事なまでに彼女の腕は切断―――されている。】

【ピンク色というには少し鈍い、独特の朱色が、切断面より溢れてくるヘモグロビンによってより赤黒く変色していき。】
【千切られた腕からも、まるでそれが生きていた〝一部〟である事を必死に訴えるかのように、ドクドクと血の泡が吹き出し続ける。】
【通常の刃物ではない、特殊な刃で斬り取られたブランルの腕に完全にリンクする様に、見た事もない程綺麗に裁断された円筒状のセリーナの腕―――】


ひっ、ひっぃっ……、っ〝ぁぁあ……! う、でが――――……うで、が―――ァっ……!!
あ、たしのう、で……っ、うでっ……うでぇぇ……っ。やだ―――やだ、やだぁ……っ!


【それを失うという事。何の能力も持たないこのガンマンが、身体で最も重要な部位を、奪われるという事。】
【それは単なる痛みとは別種の―――何か〝脅迫めいた〟黒い感情を、身体から溢れさせ、そして周囲にまき散らす事だろう。】
【聞いている分には単なる呻き声。痛みに堪える苦悶の叫び。だが―――そこには明確な、セリーナの〝恐怖〟が混じっているのだ。そう――――、】


なきゃ……っ、うで、なきゃ……っ、やだ、やだ、やだぁぁっ……!! だめ、だめぇ……!!


【―――これが無ければ。】


あたしは……〝これ〟がなきゃ……っ!! 〝これ〟が―――……っ、ない……と……っ!! ――――――〝だれでもなくなっちゃう〟……、ぅ……っ。


【―――この腕が。この銃を握る手が。この、〝戦うための武器〟が。なければ、こんな女など。】


―――――――――だれにも、……、いらない……。


【何かを感じ取ったというのなら、ブランル―――稀代の魔人よ。恐らくそう、君は正しい。】
【もとはと言えば、君はもはやセリーナであり、セリーナも君自身であるのだろう。だからそう、〝分かってしまう〟。】
【どうして、この女がここまで病んだのか―――どうして、この女が鈴音と喧嘩をしたのか。どうして、どうして―――単身乗り込んできたのか。】


たたかえ、ない……っ、も、う……っ!!

【無辜の民に死人まで出してしまった、"弾"末魔という凶悪な武器の処遇を巡り、セリーナは今外の世界で英雄としての是非を問われている。】
【そんな物手放せばいい。そもそも何故UTが未だ存在しているのか。〝メンバー〟なんてもう、片手で数えるほども居ない様な状態なのに、なぜ?】
【簡単だ―――答えは簡単だ。考えるまでもない。セリーナの抱える根源の闇の、正体は容易く看破できる。そう、なぜなら彼女は―――ただの、人間。】

【世間は必要ないと言っても、―――――――。だからだ。】


692 : 〝P〟 ◆rZ1XhuyZ7I :2019/01/19(土) 14:34:24 smh2z7gk0
>>549


【―――ザザザ、―――ザザザ、世界に―――ノイズが―――走る】
【ルートが切り替わったかのような、―――ザザザ―――ざわめき。】


―――〝暴蜂/バウフェン〟?なんだいなんだい実は彼女は大物だったのかい?

つまり君も混沌は混沌でも〝意味〟を持っている混沌の方が好きという事だ。几帳面て良く言われるだろ?
YES、人類が生まれ落ち木の枝を棍棒とした時から人と武器は一蓮托生さ。


【にこやかに笑いながらカニバディールの言葉に協調するように何度も頷く。】
【どうやら〝P〟は〝暴蜂/バウフェン〟については知らなかったようだが、カニバディールの反応に興味を示す。】

【そして彼の部下が大量のアタッシュケースを持ってくれば、子供のように手を叩いて喜ぶだろう。】


アッハッハッハッッハッハッハッ!いいねぇ話が分かり易くて助かるよッ!
よほど彼女たちは危険と見える。―――特別サービスだ、好きな兵器を持っていくといいよ。
何なら今すぐ〝取り寄せる〟事だってできる、好きにやりなよ。


―――そして、僕からの〝カード/権能〟はこれだ。

                   《〝Ability Record〟》


【―――いつしかアタッシュケースの中の札束は全て消え去っている。】
【そして〝P〟が満足げに指を鳴らせばカニバディールの手元にいつの間にか一枚のカードが舞い降りている。】
【裏には〝黒いピラミッドの中に金色の瞳〟が描かれており、表にはレコードのイラストが書かれている。】
【そして表面にはさらに下記のテキストが書かれていた。】

【『〝一度〟のみ使用可能。貴方の記憶の中にある〝力〟を99%出力で行使できる。』】

【まるでカードゲームだが、カードを手にした瞬間カニバディールは感じるだろう。】
【もし使用すると念じればそれはは実際に〝起こる〟と。】
【〝力〟。それは異能かもしれないし兵器かもしれないし技術かもしれない。】


>>586

【ザザザ―――ザザザ―――〝虚数領域〟の減退。】
【―――〝存在〟の置換―――ザザザザザザザザざざざざざざza】


アッハッハッハッ!確かにね!これはこれは御教授どうもありがとう。
キミもつんけんしてるけど割と律義だよね、まぁそこの彼も含めて嫌いじゃあないよ。

まぁ間に合っているという事は分かったよ、残念残念。
いやいや僕が狙っているのは単純な利益だけさ、そしてその障害になりそうなものの排除………かなぁ?


【相手に不快だという視線を向けられながらケラケラと笑い続ける。】
【利益、この男の言う利益とは武器やそれに関連する売り上げに他ならない。】
【争いが起きれば起きるほど人々の危機意識は高まり防犯目的での販売率も上がり、軍や警察の装備の質も上がる】
【とはいえ、いくらなんでもこのやり方は非常識であるのには変わりない。】


まっ営業なんてみんな狸だよ、飲み会ばっかりやってるからビール腹でねぇ。
………一悶着?いやいや何を言っているのさ、もう〝戦争〟は始まっているんだよ?


【一瞬、〝P〟の顔から笑みが消えてとぼけたような真顔になる。】
【無人航空機の接近速度は緩む様子はない―――むしろ加速しているようにも思える。】


>>ALL


―――だから、『どちら側』かなんてどうでもいいのさ。
〝戦争〟はどちらにもサイコロが転がるし、僕は武器が売れるのならどちらにだって売りさばく。



ゼロサムゲームに参加するつもりはないよ、僕は戦争を加速させ経済を回したいだけなのだから。



【そしてUAV(無人航空機)はビルの屋上へと到達する。大気を切り裂く激しい音が鳴り響く。】
【―――警告はない。ただ無慈悲に、機械的にUAVの機体下部が開口しそこから対地爆撃が屋上へ向けて放たれる】
【一瞬にして屋上は爆炎と暴風に包まれるだろう。】

【だが、散々接近模様を中継していたし〝P〟自身の発言からもこの事態は事前に予測が可能だろう。】
【であれば大きな力を操る事ができる二人は何かしらの対策を講じることが可能なはずだ。】


【そして―――〝P〟自身も爆炎に飲まれた。】

//大変遅くなりました!


693 : 『ナート・サンダー』 ◆auPC5auEAk :2019/01/19(土) 15:53:42 ZCHlt7mo0
>>687>>691

……寝ぼけた事を言うのも大概にしやがれ、「考えろ」なんてのは、こっちのセリフだ……ッ
どうせ、俺がただ尻尾巻こうが、ここでとっ捕まろうが、てめぇは同じ事しやがるだろうが――――こんな芸当出来るなんてのは、流石に想定外、あぁ迂闊だったよな……
――――この代償は、後できっちり払わせるぞ、糞野郎……8人で、いや……ともすれば10人で、てめぇを殺す
ネタが上がりゃ、てめぇは丸裸だよ……ッ!!

【『ソーンスパーク』を放ちながら、『ナート・サンダー』は呻くように憎悪を吐き散らす。どうせ、セリーナを虐げ、痛めつける事には変わらないだとは、認識していても】
【こうして、変則的に『盾』として使ってくるとまでは思わなかった。自分が払う分にはまだマシな代償が、他人に振られると忌々しい】
【今はまだ、空吹かしの威勢だ。今はまだ――――だが、仲間たちの力は、その大枠さえ捉えられれば、強引に突破して見せるだけの力を持っている】
【次の機会を掴みさえすれば、もはや、ただでは済まさないと――――その為に、今の無念と恥をかき捨てる事など、なんとも思わなかった】

(――――それが、オヤジってもんだ……!)

【――――覚悟は既に、決めてあるのだから】

【だが、1つだけ、やり残したことが出来てしまったようだ――――まさに絶望、それそのものに染まろうとしている、セリーナの呻き】
【駆けだそうとした体が、思わず振り返る。察したのだ――――この一挙がトドメとなって、心が本格的に壊れかかっている事を】
【同時に――――先ほどまでの罪悪感を帳消しにするような、半ば八つ当たりの、しかし「『仲間』の代弁者」として、叩きつけておかなければならない怒りが湧き上がる】

……「誰でもなくなる」…………んな訳あるか、『小娘』――――ッ!
お前、もう1度同じ事を言ってみろ……その左腕までも、切り落とすぞ――――俺じゃねぇ、『ブラックハート』の分だ……!

【咄嗟に、泣き叫ぶセリーナの顎を捕まえて、無理やりに自分へと向けながら、『ナート・サンダー』は、低く押しつぶした怒りの声を轟かす】
【――――彼女に関する込み入った事情は、少なくとも既に承知済みだった。2人の間に何があったのかも――――だからこそ、怒り交じりの叱咤が、自然とそこに乗る】

お前はどこどこまで行っても『お前』だ……ブラックハートの奴もそうだ……
どこどこまで行っても、奴は断罪され続ける人殺しで、両手両足削ぎ足しても戦い続ける、馬鹿だったじゃないか……!
殺されたってしょうがない、それでも自分はこうして生きて、自分である事を止める訳にはいかないって、そう言ってたあいつに……顔向けできないお前になって、良いのかよ
お前が「だれにもいらない」人間になるのは、そのラインを折れちまった、その瞬間だぞ……分かってるのか、あぁ!?

【その自虐、その絶望は――――セリーナがかつて保護し、そして道を取り戻して見せた『ブラックハート』への冒涜だと、『ナート・サンダー』は怒りに言葉を震わせる】
【腕がちぎれたぐらいで、生き方を見失ったぐらいで――――唾棄すべき悪人であっても、その程度では、彼女は折れなかったはずだ、と】

あのクソガキ……トライデントとかいうクソガキだって、そうだった……!
片腕ちぎれて、両目が潰れて、それでも「俺は俺として生き、俺として死ぬ」って言い張って、死にかけの姉ちゃん引きずって、今も戦い続けてんだ……!
――――そんなんだからお前、あのガキに憎まれてんじゃねぇのか……――――生きる理由に、てめぇ以外の何がある、言ってみろ!!

【更に、『ナート・サンダー』は意外な名前を口にする。トライデント――――詳しい様子ではなかったが、どこかで接触があったのだろう】
【どうやら、かつてのセリーナの危惧通り、破滅的な状況に自ら首を突っ込んでいるようだが。逆説的に、彼ならば、セリーナの今の絶望を、屁とも思わないだろう】
【屁とも思わないからこそ――――不自由な体でも、戦い続けるのだ。「所詮『宿命』からは逃れられない」と言い続けて】

――――俺はヒーローだ。どうしようもないヒーローだ。救えなかったものの方が多い、そんな3流ヒーローだ……ッ!
今だって、救えない。出直してきたところで、もう救えないかもしれない…………けどな、こんな状況、黙って見てるつもりはねぇ…………叩き潰してやる、必ずな

【言うべき事は言い切った。もうこれ以上、セリーナにさえ、かかずらわっている場合ではない。拳を振り上げると、外へと突進していく】
【時間を食って、余計な事をしてしまったが――――もしブランルが妨害しなければ、そのまま室外に、そして強引に施設外に、脱出していくのだろう――――】


694 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/19(土) 18:12:36 KuQs9r5I0
>>691>>693

【もはや『ナート・サンダー』を止める理由のないブランルに──そう、理由はなかった──妨害の意思はなかった】
【観客はいなくなった。残ったのは自分と彼女だけ。ならば取り繕う必要もなくなった】
【腕を切断されて、あるいはもっと大事な何かを失いそうになって、泣き叫ぶセリーナに反してブランルは平坦な表情となっていた】


お前……お前ねぇ……
あの男の言ったお前とは、一体誰のことなんだろうな
私には……“私たち”には分からないよ、セリーナ


【穏やかな声だった。小さな悲哀さえ感じさせるような声だった】
【『お前』という言葉はセリーナ──セリーナ・ザ・“キッド”を示す言葉だ。UTのリーダーであり、世界のために戦うガンマンを指し示す言葉】
【しかし、ブランルにとってそれは彼女の一部に過ぎない。ならば、セリーナ・ザ・“キッド”に『のみ』向けられた言葉に意味はあるのだろうか】

【ブランルの切断された腕が振るわれる。瞬時にその異能が欠損した肉体を修復する】
【それに合わせてセリーナはその激烈な痛みがなくなる。腕を見てみれば、ブランルと同様に完全に修復されているのが分かるだろう】


どうしてなんだろうな……あの男に限らず、人間たちとはいつもそうだ
何も知らず、何も理解できず、しかし何かは出来ると思い込んでいる
どうしてあの男は、お前に何があったのか、お前が何に苦しんでいるのかを分からないままに、『お前のままでいろ』などという無責任な言葉を吐けるのだろうな

“私たち”には……それは冷酷なことにしか思えない
膝を折るな、立ち止まるななどと……どうして、言えるんだろうな


【疑問の言葉は続く。苦痛を理解することなく言う言葉ほど空虚なものはない。ならばどうして人間はそうしてしまうのか】
【あるいは、真に理解した上での言葉だったのかもしれない。だがブランルにはそうは見えていなかった】
【黒絹の瞳に宿るのは憐憫。肉体的・精神的に彼女を追い詰め続けている男が、身勝手にもそんな感情を見せていた】

【黒衣が鉄格子を透過して部屋の中へと入り込む。ブランルはセリーナの前で座り込んだ】


さて、と
何はともあれ、どういう言葉であったにせよ、仲間は助けに来てくれたな
どうやら少なくとも一人はお前のことが必要なようだが……どうだ、“気分”は?


【落ち着いた平坦な声でブランルはセリーナに語りかけた。そこには狂気も熱情も微塵も存在していなかった】
【彼女が抱えている闇をこの男は知っている。それに少しでも相反する出来事が起きた。ならば、セリーナはどう思っているのか】
【静けさを湛えた双眸が、目の前の非力な女を見つめていた】

//ラギの人、お疲れ様でしたー


695 : セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y :2019/01/19(土) 18:42:18 lp4TKcVo0
>>693>>694

【痛みに呻く。苦痛に悶える。そしてそれ以上に、"自分が自分でなくなっていく"恐怖に―――震えていた。】
【怖い、苦しい、嫌だ、そんなのは―――"そんなのは"嫌だ。誰にも必要とされない。皆がもう、自分の存在を望んでいない。】
【世界に必要なのは、今や"悪を理解して正義を騙らない"自分の様な独り善がりの英雄ではなく―――公的な存在、そして各個の意志であるのだと。】

【捨てられる様な感覚―――いや、それ以上に。もはや自分が居なくなる事に喜びを感じる人間だっているのではないか、と。】
【セリーナは一度カニバディールに完膚なきまでに敗れ、そして正義を破壊された。だがその代わり、悪を理解し偽りの義を捨てる"覚悟"を手に入れた。】
【だが―――今回は違う。悪人の批判が届く位置に降りたセリーナに降りかかっているのは、むしろ無辜の民の声と、護るべき人々、そして仲間の存在―――彼等の言葉、現状だ。】

【だからそう、その闇を振り払うのに必要なのは本当は―――ひょっとすると、……"―――――"の、声なのかもしれない。】


……っ、ぁ……っ、のー、ばでぃ……っ、いやっ、いやだ……っ、やめて……ききたく――――っ。

【ブラックハート。そしてトライデント。両名共に、セリーナと斬っても切れない関係を持つ戦士。】
【一人はセリーナが導き、そして微かでも救いの光を繋げた少女。もう一人は、……いまやセリーナを戒める鎖、其の物。】
【かつての自分が救った一人、そして今の自分が対峙するべき一人―――そんな両名。それはセリーナが積み上げてきた物と、"失った物"の象徴。】

【確かにハートを勇気づけ、生きろと伝えたのは自分だ。運命に抗え、血の宿命など気にするなと―――トライデントに説いたのも自分だ。】
【しかし蓋を開けてみればなんてことは、無い。一番に誰かに「生きろ」と。「抗え」と、言って手を繋いで欲しかったのは、この失墜したガンマンだった。】
【いや―――正確に言えば違う。あの時のセリーナは、真剣にそう言っていた。それは偽りではない。だが―――ヒーローを挫折して尚、まだそれに縋るヴァルターには、分かる筈。】


                            【英雄とは―――時が経てば己が身を焼く炎である、と。】


【戦ってきた。護ってきた。そうしていつしか―――全てが責任として伸し掛かって来ていた。】
【それを共有する事は、出来ない。それはそうだ、だってこの世界には―――"実名を公表して堂々と組織を立ち上げ"、】
【"そして全ての責を担い民を守護する存在"なんて――――残念ながらこの女くらいしか、居ないからだ。そう、他に、誰も。誰も。誰も。居ない。】

【皮肉にも培ってきたすべてがセリーナの身を犯す最悪の毒となり、今。彼女はそれに、打ち震えていた。】
【過去の人間の名、聞いてうれしい筈の其れが、今やセリーナを一番に苦しめ、そして"此処"から逃がさない為の楔にしか、ならない。】
【ヴァルターの声が、どこまで彼女に届いたのかは分からない。ただ、全てはここで起き、そして終了した。ブランルがゆっくりと近づいて、セリーナの前に、座る。】


……、……なんで、……聞くの。そんな事……。

【本当は分かっているのかもしれない。けれど、元に戻った腕を片手で摩りながら。セリーナは、負け犬の様に呟いた。】


696 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/19(土) 18:59:00 KuQs9r5I0
>>695

【セリーナの言葉にブランルは僅かに答えを逡巡した】
【少しばかりの沈黙の後に、冗談めいた言葉を返す】


わざわざここまで必死こいてやってきたんだぞ?
嬉しいのか鬱陶しいのか、ここの管理人である私としては当然、感想ぐらいは聞きたくなるさ
あの男の決死の潜入がどの程度の効果があったのかぐらい、聞く権利はあるだろう?


【責任者として知る必要がある、などというのは当然、大嘘だ。そもそもレヴォルツィオーンの活動とセリーナの捕獲はほとんど無関係だ】
【周囲では劣悪と化した牢屋の中を触手が這い回り、散乱した汚物を消滅させて周っていた】
【一分もすれば周りは元どおりに綺麗なものへと戻る。これも“いつも”の作業だった】


まぁ、どうしても言いたくないというのなら、私も無理強いはしないがね
あの男はお前を助けに……“助け”に来たらしいな。外に連れ出すために
それはどうだ。お前の中に…………何か芽生えたか?


【男は徐ろに右手を──切断され修復した右手を掲げ、セリーナの頬に合わせる】
【様子を伺うようにとても慎重に。怯える者に触れるように】


697 : ◆rZ1XhuyZ7I :2019/01/19(土) 23:01:53 smh2z7gk0
>>610

【光が差し込む入り口を背に、一人の男が入ってくる。】
【コッコッコッコと規則正しい革靴の足音がホールへと木霊していく。】
【その人物はスクラップズ達の間を気に留めず歩いていき、カニバディールと隣に並ぶだろう。】


『ああ、彼女の上官をさせてもらっている〝ミヒャエル・テルミドール〟という者だ。』
『階級は大佐、氷の国軍の特務機関を統括させて貰っている。お会いできて光栄だよミスターカニバディール。』

『貴方の噂は聞き及んでいる、しかして暴虐な悪漢でありながら理知的な一面も兼ね備えているようだ。』


『―――コニーが世話になったようだね。』


【鉛色の腰まである長髪に銀色の瞳をした20代後半、身長180cm程の男だ】
【全身は飾緒や勲章が幾つも装飾されたネイビーのコート型軍服で包まれており、腰には一差しの騎士剣が付けられている。】

【男は落ち着いた調子でカニバディールに語り掛けると、まるで外交のワンシーンのように手袋を取って握手を求めるだろう。】
【そして視線を傍らでブレードライフルの刃を引き抜くオブライエンへと向ける。】
【視線を向けられたオブライエンはバツが悪そうに視線を逸らした。】


『貴方とは色々と話が出来そうだし、良い関係も築きたい。』
『―――必要とあれば奥の〝彼ら〟を連れて行ってもらっても構わない。』


なッ――――――!?



【そして友好を示すように微笑みながら、視線をさらに奥のシェルターへと移し】
【先程までオブライエンが命をかけて守ろうとしていたものをいとも簡単に売り渡そうとする。】
【これにはオブライエンも眼を見開いて驚愕し、ギリと奥歯を噛みしめる音が聞こえるだろう。】
【そしてサイコ・フェンリルはいつしか体勢を立て直し、シェルターの前で綺麗に整列をしている。】


698 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/20(日) 10:09:33 6IlD6zzI0
>>678


【息を吸う、息を吐く。交互に行う動作の一つ一つに痛みが伴う。折れた肋骨はそれだけで彼を苦しめる】
【ズキン、ズキンと痛むというものでは無かった。1か所の痛みが全身からのものだと錯覚する程の苛む痛み】
【肝臓打ちに近い要領で放った渾身の一撃は痛み分け。でも状況は大きく異なっていた―――――】


がはっ、ぐうッ……ごほっ、ごほっ……!

(マズい……気を抜けば意識が飛ぶ。……"AquaVenus"の治癒が間に合わん。
 ―――――……、にしても嫌な感触だ。見るに堪えない景色だ。
 ……"こういう"血腥い事からは足を洗った筈だったのにな。―――、クソッ!)


【蹲る女を見下ろす。口元から漏れ出す吐瀉物、焦点の定まらない瞳、聞くに堪えない呻き声】
【拳を振るった直後に手を離したものだから、必然的に"そう"なるのだった。痛みと不快感に表情を大きく歪ませる】
【女は楽し気に殺し合いに身を投じていた。だが彼は違った。肉に減り込む感触と眼前の光景に苦虫を咬む思いだった】


―――――――――…………、ぐふっ、ごほっ、ごほっ、
はぁ、はぁ、ッ……………傍から見ればとんでもない光景だ、……俺は命がけなんだがな。

【依然として女の意識は手放されていない。時間経過で再び牙を向くだけの気力が蘇るのは目に見えていた】
【だから―――】

【ふらり、ふらり。痛みに顔を顰めて幽鬼の様に覚束ない足取りで女の背後に回り込めば、首根っこをぐいっと掴み】
【――――裸締め。櫻の国の柔道と呼ばれる格闘技の技の一つ。左腕で女の首を絞めつけ、損傷激しい右腕でホールド】
【狙いとしてはあくまで無力化。意識を落として失神させるつもりなのだろう。だが満身創痍から繰り出されるそれは】
【決して万全の状態で放たれていないから、予期せぬ事態や想定していない事態にも陥る可能性がある】


699 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/20(日) 16:22:08 6IlD6zzI0
>>683 >>688

『……!?、かはっ、マントを翻したら蝙蝠共が現れるたぁそっちの方がよっぽど手品だろ。
 魔導海軍ってのはビックリ人間の集まりか?雑技団とかサーカスに鞍替えしやがれよ。そっちの方が金になるぜ?』


【狙いすました弾丸は蝙蝠によって遮られ、そこに残るのは鉄仮面めいた変わらぬ表情】
【"ちったぁ食らい応えがあるか"というよりは"面倒な野郎だな"と内心で毒づいたなら―――】


『鈍らを増やしたところでアタイの喉元には届かねえぜ?―――そんな宴会芸じゃ興じられねえな。
 ―――――――ッッ!?、Ha、鈍らにしちゃ切れ味が良くなったかぁ?だがまだ不十分だ。
 アタイを天国までイかせたきゃ、テメエの命で刃を研いでからにするんだな――――ッ!!』


【横薙ぎ一閃。"カイ"は咄嗟に飛び退いたが、ダッフルコートごと切り裂かれたら】
【横に曳かれた線から赤い血がつぅっと流れて、微かに目を見開き痛みに顔を顰めれど、直ぐに僅かばかりの喜悦を滲ませる】
【にぃ、っと口元を卑しく歪ませたなら、目尻を卑しく緩めて――人でなしの表情を浮かべるのだった】


『先ずはテメエからだ、Hard nuts/堅物野郎。死力を尽くしてジルバの一つでも踊り倒してみせろ。
 アタイの歩幅に付いて来れなきゃ―――忽ちダンスマカブル/死の踊りになっちまうぞっ!』

『ああ、そこの女。でけえ声で喚くんじゃねえよ。
 和泉文月を知ってるも何もアイツとは顔見知りだ。ついで言うなら相棒の白桜はアイツの妹分だしな。
 お姉はん、お姉はんって呼んで慕って懐いてる程には仲良しだぞ、ああ白桜ってのは最初のぼんやり顔のヤツな』


【相対する軍人に向けるのは意識と銃口。二挺の拳銃に付加された効果は「追尾」と「平衡感覚の混乱」】
【距離を一定に保ちながら銃口を向けたなら、目の前の軍人の身体――腹部、左側の太腿、額――に3発の銃弾を放つ】
【普段見知っている銃弾の動きとは異なる軌道を描く弾丸は確かに命を奪いにかかっていた。異質な弾丸は魔弾と呼ぶに相応しい】


700 : ティナ ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/20(日) 18:01:37 arusqhls0
>>676

【瞬きの合間に視線を傾ける、甘えの色を帯びた媚態細工の綾言葉、錦触れるは微かなる、ちりんと風鈴響くは雅】
【彼女は修辞的に瞳を開いて、そして瞼に透かす、湖畔に伸ばした指先が爪先だけほんのりと濡れるみたいに】
【一輪の薔薇が示す言葉、無碍に扱われぬ事を彼女は好意的に受け取った、けれども、丁重に扱われなければ同じ】


あれま、あれぐらいの奸計見抜いてもらえてると思ったんですけど、意外とダーリンの信奉者達はおバカさんなので?
でしたらより一層、私の所に乗り換える事をオススメです、今なら週八でお嫁さんついてきますしっ
あはは、大丈夫です、わかってますって、─── あれは信者でもなんでもないんでしょう、正確には信者のなりかけ、と言いますか

ダーリンにとっての飯の種、だなんてわっるぅい表現しますけど、実際その通りじゃないのですか?
ダーリンがダーリンであるために必要な燃料、その候補として存在しているんですから、余計な火種は厳禁、と
良い符牒もしれちゃいましたし、ご主人様も許してくださいますわ、ふふ、役得役得〜


【とまあこんな具合でニコニコしながら、物騒な事を言い出す、ガゼルならば察する事ができるだろう】
【厄介な奴に目をつけられた、と、─── そして同時に、厄介な奴に泣き所を知られてしまった、と】
【ガゼルが扇動者として活動する以上、扇動される大衆が力の拠り所となる、そうであるとすれば】

【引き潮見せるは神秘的な残照、─── 滴る首筋に蜜月の跡】


んーそうですねっ、ご主人様から言われたミッションは大体のとこクリアなんですけど、乙女のおねだりを聞いてもらえるのなら、ね
今日のダーリンは機嫌が良いものですから、私もそーおーに甘えちゃっても宜しいんでしょう
んもう、寝室だと乱暴狼藉、私を縛って辱めるのに、公の場だと紳士的なんですからっ

そうですね、今後『風の国』での政治活動の自粛、並びに政治結社としての公的活動を休止、定期集会は『導人会』のメンバーのみの参加を徹底する事。
後は現在『導人会』に属するメンバー全員の詳細なプロフィールの提出、こっちは顔写真付きでお願いしますね。
これぐらいしていただければ取り敢えずは大丈夫です、私も安心して帰国できますしっ


【ティナは満面の微笑みを向けた、朝焼けに溶けた吐息の行方、朧よりも儚い白を柔肌に落として、無垢雪の如き穢れなき輪郭】
【愛らしく綻ぶ目元の艶、流麗に彩られた白皙が耽美な指先を透かして、そうして描くのは女神の如く】
【一編の曇りもない真円に似て、昏迷は手習い、綴る幾許か、─── 喩えもせず】


701 : セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y :2019/01/20(日) 18:09:46 YPBLlEbw0
>>696

【楽しんでいる―――のだろう。斬ろうが、潰そうが、何をどう奪おうが。その命すらも、もはや。】
【全てがブランルという男の掌の上であり、彼女は完全に玩具と化している。生殺与奪の一切を、握られているのだ。】
【だからこの問答についても、単なる興味か、若しくは新しい遊びの一助として聞いているのだろう―――と、セリーナは考えていた。】


……必死……必死、ね。必死こいて……、ひとの腕を……、斬って、もどして。
さぞかしそれは……"大変"だったんだろう、ね……。決死の潜入と、そう―――分かっていながら。
"マトモに相手"すら、してやらないんだから……それはもう、必死で、とても、すごく―――"愉快だった"でしょう、……ねえ。


【摩る。そこに自身の腕―――"存在理由"がまだあると、安堵の息を漏らしながら。】
【下を向き、俯いたままブランルの顔は見ない。セリーナは吐き捨てるように言葉をぶつける。】
【しかしもう、与えられた恐怖の大きさ故に―――そして自分でも理解しきっていないくらいの、自身の弱さに。】

【あからさまな"嫌悪"を示す―――ブランルと、自身への思いの本音がそれだろう。】
【奪わないでほしいモノ。絶対に無くなってはいけない物を、一番大嫌いな相手に、すべて握られている事実。】
【そのうえで、セリーナに"言わせようと"しているのだ。そう、"認めさせようと"、している。或いは、"自覚させようと"―――して、いる。】


……っ……。、どう……しても。アタシの……口から、言わせたいのね……アンタは……。
……最低だ。最悪だ。―――人でなし。アンタなんか……あんたなんか……っ!! 人生でいちばんの、クソッタレだ……っ。

【―――そして。残念なことにセリーナの人生で一番の、理解者。それがブランルであった。】
【セリーナは認めようとしない。それが何であるのかは、もうブランルには筒抜けであるというのに。】
【この女は世界情勢を聞いたとき、改めて酷く狼狽し、そしてあからさまな拒否反応を見せた。そう、そこだ。】

【―――この惨めな"英雄もどき"にとって。今、外の世界とは即ち―――――――――。】


702 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/20(日) 21:57:03 KuQs9r5I0
>>701

【楽しんでいるか。そう問われればどうであるか答えるのは難しい】
【少なくとも──意外だろうが──この男にはいつもの表情はなかった。愉悦に歪むあの恐ろしい笑みはなかった】
【勿論、それを観察するような余裕が今のセリーナにはないのだろうが。平時のこの男とは違っていたのだ】

【一瞬、瞳が逸らされる。思考の火が灯り、決断と共に視線がセリーナへと戻される】
【小さな微笑。この表情であれば、何を意味しているか誰にも読むことはできない】
【狂気であれ、愉悦であれ、憐憫であれ、歓喜であれ。友だろうが敵だろうが、その意味するところは誰にも分からない】


──良い言葉だ
ならばその、“人生で一番のクソッタレ”とやらに敗北し陵辱され心のうちまで暴かれたことへの怒りを
決して忘れてくれるなよ、セリーナ?


【立ち上がり、黒絹の双眸が目の前の女を見下ろす。無様で哀れで弱々しい女を見下ろす】
【ここまで来たのならば、この状態まで連れてきたのならば、そしてその上でなお認めがたいというのならば】
【ならば、伝えてやらねばならない。今となっては鏡の如く、身に巣喰うモノを知ればこそ】


哀れな女よ
もはや世界はお前たちに──お前に、疑念の目を向けその“存在理由”を疑っている
注目は全て叱責に変貌した。お前の組織には存在価値がなく、お前の仲間でさえもう数えられるほどもいない

誰もお前には期待せず、ただただ物事の責任のみを追求するばかりだ
もう、お前をヒーローと期待する者などどこにも見当たらない。ならば、戦うことのできないお前は一体なんだというのだ?
さらにはお前がいなくともこの世界は回っている。お前一人がいなくなった程度では、何の問題があろうかと告げるように!


【事実の一つ一つをゆっくりと積み上げていくように、言葉の一つ一つが重々しく告げられていく】
【世間は彼女に戦う力を持たせることさえ嫌い、彼女が幽閉された今でも世界は存続してしまっている】
【そんな世界は──そんな“外の世界”は一体何なのか、などと】


そうだ──お前は戦わなければ何者でもない。お前自身がそう規定した
戦えず、人々の役にも立たないお前を誰も見はしない
そんな世界は、そんな外の世界はお前にとってさぞ辛いだろう?


────私の元にいることが、そんなに心地良く感じるぐらいには、な


703 : セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y :2019/01/20(日) 23:25:54 YPBLlEbw0
>>702

【愉悦に歪んだ表情ではない―――そんな事にまで、今のセリーナは気が付かない。】
【きっと"今までのセリーナ"であれば、相手の所作、そして表情から色んな物を読み取り、そしてそれを戦術に活かした。】
【相手が今どう思っているか。何を考えているか。こちらについて"どういった感情を抱いているのか"―――どう、分析しているのかを。考慮し、見抜き、使った。】

【―――だが、そうではない。此処にいるのはかつて、10代ながらに賞金首を次々と捉え、処刑台送りにし、】
【莫大な財を築き、培った人材を駆使して組織を立ち上げ、人々の希望になった女――――では、ない。此処にいるのは。】


……やめて


【―――今現在。ブランルの目の前にいるのは。】


……やめてよ……っ、やめろ――――っ!


【この世界に。この瞬間に。確かに、存在しているのは。】


哀れじゃ……ちがうっ! ちがう、ちがう!! ちがうちがうちがう、違うッ!! ちがうんだ!!


【嘘偽りなどなく。包み隠さず。真実の人間だ。真実の―――そう、真実の。】


仲間なら……っ!! なかまなら、いるっ!! ちがうっ!! やめろっ!!
外は―――そとは、"外"は、そんなッ……そんなじゃないっ!! みんな……っ、みんな、大変なんだ……っ!!

あたしがいなきゃ!! あたしがいなきゃっ、ダメなのっ!! "そうでないと"―――――そうでないと、だめなのっ!!
まやかしだ、ききたくない!! いつもそうだ、そうやって、ただ……っ、めちゃくちゃな言葉でただ、惑わして苦しめてッ!!



ちがう―――ちがうっ!! 出鱈目いうなっ、この――――――――――。




【――――ただの、人間。】
【世界からは必要とされない。もはや、"過去の存在"。】
【広大な歴史を持つこの世界の、ほんの一瞬、たかが一瞬、短い期間に存在し、儚く光った、それだけの。】

【――――それだけの、存在。】
【変わり続け、進み続け、紡ぎ続けられるこの残酷だが美しい世界における―――"記録"<ログ>の一部。】
【そうしていつしか、忘れられる。そういえば―――"セリーナ・ザ・キッド"だなんて、キャラクターが居て。"UTなんて組織も、あったような―――"そんな風に、語られるだけの。】



―――――――――……そんなの……いやだ……っ。


【ガラガラ、と。音を立てて鎖が巻き上げられていく。耳を塞ごうとしたセリーナを、拘束する。】
【閉ざすことは許されない。拒否することは認められない。ただ、両手が壁に、磔にされて。一糸纏わぬ、"素のままの彼女"は。】


やだ……っ、やだ……――――やだよぉ、やだぁ……っ!! ひっ、えぐっ―――っ、やだぁ……。


【失われていた少女の時代を、皮肉にも取り戻すかのように。まるでそう、幼子のように―――泣きじゃくっていた。】


704 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/21(月) 09:24:37 HykzflAc0
>>688

「……なるほど」
「厳島『さん』って言ったか!?やはり、中尉達の関係者!!」

【少女の返答は、少女自身が何者かを示すには余りに十分で】
【更には、新派旧派、つまりは蘆屋派、土御門派の派閥争いについても察しており、尚且つ、土御門派は味方と言っているのだ】

「……これは、避ける事は叶うまいーーな、なんとッ!?」
「くっ、土の能力が……いかん、堰き止めらあれ……」

【すんでの部分で土の槍を回避する少女、やがて迫る地割れには氷柱を射出、それらは地割れにハマるように突き刺さり】
【結果、周囲を凍らせながら地割れの侵攻を食い止め、足場を固めて】

「くっ、こ、小癪……」

【哀れ海兵は咄嗟の対策を取れず、殆ど無抵抗な姿を晒し、少女の接近を許す事になる】

「化け猫娘……まさか……」

【タブレットを取り出し、男が少女と画面を交互に見ながら呟くように】


>>699

「真、口の減らぬバケモノよ」
「奇術では無い、周辺の蝙蝠を呼び寄せ使役する能力よ!」

【変わらぬ挑発には、些かの怒気を孕んだような声色で答えるも、やはりハナからカイの事を人外として見下した様子は変わらずに】
【然し乍ら、能力者対能力者の戦い、並みの、普通の戦法では難しいのだろう】

「鈍らとは、豆鉄砲使いが図に乗りおって」
「これは剣、歴とした研ぎ澄まされた刀、凡ゆる全てに勝る剣術の能力よ、鳴神一刀流も和泉一心流も我が能力の前では童のチャンバラ遊びと変わらない」

【鼻で笑うかのように小馬鹿にした口調、自身の能力と戦闘技能に余程自身があるのか】
【和泉一心流の名前も出して、それすら凌駕したかの様な言い草】

「顔見知り!?何処で何処で出会った!?師匠!!文月師匠だ!!探しているんだ!!」
「相棒が、妹分!?話してくれ!知っているのか!?師匠が今何処にいるのか!!」

【和泉文月の話が出れば、忽ち少女は傷から血が吹き出るのも厭わずに声の限り叫び】
【冷静さをかなり欠いた様子だが、それ程少女にとって大事な人なのだろうか】

「バケモノの言葉で踊ってやる趣味はない」
「先ずは、とは、此方の台詞だ」

【浅いが一太刀、まずは浴びせられた事に気を良くするも、直後に見せたカイの狂戦士すら思わせる戦線に立ち続けた者の笑みに、僅かな明確な恐怖を覚えたのもまた事実で】

「また、何とやらの一つ覚えを、無駄だとーーッ!?」

【二丁の拳銃から射出された、3発の弾丸】
【先程同様に、見切ったとばかりに両腕を刃に変えて、切り払いを試みるも】

「な、んだ……こ、の、軌道……」
「魔弾……ガフッ……」

【それら全て、空を切る事となる、虚しい風切り音だけを後に残して】
【先ずは2発、腹部と太腿に着弾、動きを止め】
【続いて間を置かずに額に着弾、海兵は絶命し崩れ落ちて】


>>688>>699

「能力者が更に2人……私も能力を使う、時間を稼げ」
「了解、此方は十分に時間を稼げるでしょう」

【もはや、2人だけとなった指揮官と副官】
【カイと化け猫と名乗った少女2人の前に、副官が立ち塞がり、後方に一歩二歩下がった指揮官は何か魔能の術式を構成し始める】

「かかって来い、バケモノ共」

【副官はマントを翻す動作を見せ、多量の蝙蝠を再び呼び寄せ、そして2人に向け放つ、一匹一匹は然程では無いが、喰らえば纏わり付かれ、牙で皮膚を噛み破られ、吸血されるだろう】


705 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/21(月) 21:39:27 HykzflAc0

ーー水国レヴォルツィオーン社前ーー

「果心、我々以外の人目に着くのは久しぶりかね?」
「道賢様、その名で呼ぶのはおやめ下さいと」

【この話は、今から僅かに前に遡る】
【ちょうどクリスマス直前、年の瀬を控えた慌ただしいオフィス街】
【一際巨大な企業ビル、レヴォルツィオーン社の本社前に2人の人物の姿があった】

「では青蛾、向かおうか……何、アポ無しと言うものだが、縁があれば良い、問題無かろう」
「随分と行き当たりばったりな、でも良いでしょう先ずは一側面、レヴォル、そして次にはもう一側面オーウェル……」

【豪奢で些か凝った作りの、大きなガラスの自動ドア、前に立つのは白い詰襟軍服の男と黒い和装の少女】
【男は口元に笑みを貼り付けた様な表情で、少女は常に一貫した無表情で淡々と感情の無い話し方】
【男の名は蘆屋道賢、櫻国魔導海軍司令長官】
【少女は道賢に、果心、或いは青蛾と呼ばれていて】
【2人は静かに、それでいて洗練された身のこなしで、エントランス、受付の者に面会の旨を伝える】
【希望する人物は、開発主任ブランル】
【通常、事前のアポイントメントが無ければ会えないであろう立場の人物であろうが、果たして?】


//ブランルさん予約です、宜しくお願いします


706 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/21(月) 22:37:09 BRNVt/Aw0
>>699 >>704

【裂け目へと突き刺さる氷柱】
【その切っ先から伝うように凍りついていく地面】
【凍てついた事で強固となった"足場"を蹴るように足掛かりとしながら海兵に迫る少女】


……櫻国は北、万象凍てつかせる術持つ猫の怪異在り

怪異、月白の毛並みを持ち、獅子程の大きさなりて

──その名を『垂氷(たるひ)猫』と


【少女はそのまま海兵の頭を掴んで凍らせようとして】
【その行為が成功したならば海兵は地面に引き倒されるだろう】

……なーんて、にゃ♪
【少女は不敵な笑みを浮かべ、海兵達を見やる】
【……明らかに調子に乗っているようだ】

【そうして目の前に副官らしき海兵が立ちはだかったのを見れば、残りは二人か……と呟いて】

……ねぇ、そこの……えーと、刀握ると性格変わる系女!
雑兵の数じゃ負けてるけど大将首は渡さないんだからね!

【もう一人の女へと声を掛けると副官をしっかりと見据える】

【副官はマントを翻す動作を行い、蝙蝠を召喚すると少女達に差し向ける】

……ぇ!?はっ!?蝙蝠!?
【すかさず細い氷柱を十本近く生成し、飛び交う蝙蝠達に向けて飛ばす事で応戦する少女】
【しかし隙を突かれたのか一匹が左腕へと噛みついて血を吸い始め】

……だぁぁ、もう!何これ!?
あんたの方がよっぽど『化け物』じゃない!?
そーゆー怪異此方の大陸にいるんですけど!?吸血鬼っていうんですけど!?御存知ない!?
【左腕に噛みついた蝙蝠を右手でひっ掴んで凍らせながら引き離すとそれを地面目掛けて勢いよく放り投げ】
【再び細い氷柱を十本程度生成すると蝙蝠と副官目掛けて飛ばす】


707 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/21(月) 22:49:15 KuQs9r5I0
>>703

【残酷な現実を大人が子供に突きつけるように。泣きじゃくるセリーナを前にして、ブランルは哀れんだ表情さえ浮かべていた】
【目の前にいるのはただの子供だ。力もなければ理想も見失い現実の前に儚く砕ける夢の前に“嫌だ”と泣くことしかできない子供だ】
【それを前にして、その心を打ち砕いて、その上で嗤わないのは何故なのか。退屈さ故か、それとも────】


では、確かめるとしよう


【黒衣の男の唇が厳粛な宣言を下す。鎖に固定されたままのセリーナへと歩み寄り、ゆっくりとその手を頬へと伸ばす】
【魔術師の細指が指先で涙を拭い、手のひらが恐ろしい暖かさを持って冷え切った頬を包み込む】
【指先が緩やかに下っていき顎に添えられ、そのまま持ち上げて女の瞳を自分へと向けさせる】

【そして顔が近づき、唇が重ねられる。身動きが取れずどれだけ拒絶しようとも強引に】
【唇の間に舌が押し込まれ、口腔内を蹂躙する。粘着質な音を立てて、執拗に追い込むように】
【こんな強引な行為なんてものはいつものことだ。それこそ数えきれないほど散々、行われてきた】

【唯一、いつもと違うのはそれが続けられて十数秒後。奇妙な硬い物が口の中に渡されてくる】
【丸い先端に滑らかな表面。独特の苦味。舌で味わったことはなかったかもしれないが、しかしセリーナであれば何度も扱ってきた代物】
【舌で押し込まれたそれは、一発の弾丸だった。セリーナの口腔内に押し込んだ後、ブランルは顔を引き剥がす】


……別れのキスだ。惜しいか?


【愛しい女に語りかけるように──それが嘘か真実かは誰にも分からない──ブランルは耳元で囁く】
【勝手に彼女の髪を我が物顔で撫でる。身勝手な扱いだっていつものことだ。今更じゃない】
【だが、その言葉の意味するところは────?】


708 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/21(月) 22:58:25 KuQs9r5I0
>>705

【事前のアポイント無しでの面会要求。腐ってもレヴォルツィオーンはそれなりの企業だ】
【そういう無礼を許していては来訪者が後を絶たなくなってしまう。受付の担当者は一瞬、辟易とした表情を見せた】
【しかし職業意識がそれを瞬時にかき消す。そして定番の文言を伝えて断ろうと口を開くだろう】

【そこで起こったことはおそらく重要ではない。二人がもしもその所属を伝えたならば、受付の者は表情を強張らせて確認を取る】
【所属を伝えなければ──幸か不幸か、あるいは縁か──受付に謎の連絡が入り、疑問を飲み込んだ受付の者は彼らを通すだろう】
【いずれにせよ二人はその企業の中へと入ることに成功するのだ。経緯がどうであれ、そんなことは重要ではない】

【二人が通された部屋は何の変哲もないオフィスの一部屋だった】
【扉には“開発主任室”と書かれたボード。中には電算機と資料が積み重なった机。あとはコーヒーメーカー】
【どこにでもあるようなステレオタイプな部屋だ。何一つとして不自然なものはない──不自然なほどに】


……えーっと、軍人さんが私に何か御用ですかね?


【椅子に座って応対する黒髪の男は困ったような表情を浮かべていた】
【作業服のような技術者特有の服装。歳は若く見えるが、浮かべる表情には苦労人の気配さえあった】
【この男がブランルだった。大企業で少し上のポストにいるというだけのただの企業人にしか見えない】

【──二人が、その表の顔しか知らないならば、だが】


709 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/21(月) 23:18:35 6.kk0qdE0
>>708

【訝しげな様子を僅かに見せるも、定型と言えば定型な方式通りの返答を返す受付嬢】
【しかし、それは同様に格式ある国軍よりの来訪】
【見掛け上ではあるが、礼を崩す事なく、或いはアポ無しの非礼を詫び、所属を告げて】
【すると頑なであった表情は、強張った物へと変わって行き、確認が取れたらば、ビル内のそのオフィスへと案内される事となる】

「ブランル殿、是非貴殿とはお会いしたかった」

【歳若いのだろうが、苦労人の色を覗かせる人物、レヴォルツィオーン社開発主任ブランル】
【だが、それはあくまで表の、そう、あくまでも2人に今見せている表情と同じ、表の顔で】
【目に入る彼の研究室は、何とも普通に過ぎる様子だ、不自然で、あまりにも奇妙】
【常人なれば、彼の本性を見抜けない程に……】
【一見、ありがちな困惑の色を見せるブランルに対して】
【友好的な笑みと、そして口調と、握手を求める手を差し出す】

「隠す事はございますまい、貴殿のお話は予々諜報員の報告に上がって居ります故、セレンディピター号の事、UT代表セリーナ・ザ・キッドの拉致監禁、先のアルターリの件……本日はビジネス、そう貴社との取り引きに参りました」
「……」

【笑顔を崩さぬままに、そう告げる蘆屋道賢】
【傍の和装の少女は、その2人の様子を無表情のまま見据え】
【会談は、この一室に似合いの奇妙さで進行を開始した】


710 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/21(月) 23:27:41 6IlD6zzI0
>>704 >>706

【迫る海兵に叩きこまれる弾丸都合三つ。すべてポインターを貫いて、撃ち抜いて】
【額に弾丸が撃ち込まれた瞬間、フェイは"―――At Pinballッ!"と口遊み、半月に口元を裂いて嗤う】


『生娘みてえにぎゃんぎゃん喚くんじゃねえよ、耳障りだ。
 あんまり"ダンス"の腰を折るってんならおめえの頭にどデカい風穴開けてやるぞ。
 ―――だから、黙ってろ。"オーディエンス"は指を咥えて鑑賞でもしてやがれ』

『―――――"踊り"終わったら相棒にタップリ"唄わせて"やるから、それ以上口挟むな』

【その声はあまりに鬱陶しかったから光の灯らぬ双眸を少女に向ける】
【酷く冷え切った取り付く島もない視線、苛立ちを隠さぬように顰める顔】

【それでも忠告に留まっているのはフェイという女の荒っぽい気質を考慮すれば幸運そのもの】
【言葉で少女を突き放したなら視線を切って、改めて敵の指揮官と副官に意識を傾ける】


『Ha、蝙蝠ってのは櫻の国では裏切り者の象徴らしいぜ、指揮官殿よう。
 蝙蝠野郎に時間稼ぎなんて出来ると思ってんなら脳内お花畑のノータリンなんだろうな。
 劣勢に陥ったら裏切られてアタイらに泣きつくのが関の山だぜ――ぎゃは、楽しみだ』

『おい、そこの化け猫。大将首なんぞくれてやるからアタイの足を引っ張んじゃねえぞ。
 もとよりアタイの仕事でも何でもねえ、単なる戯れでしかないからよ――好きにしな』

【つがるへの返答は彼女にしては角の立たない言葉で連ねられる。初めから殺した数を競う心算も無い】
【殺した数だけ報酬が増えるならいざ知らず、殺した数を重ねても何にもならない露払いでしかないから】

【そうこうしているうちに迫る蝙蝠の群れ。左右に飛び退いたり強引に腕で振り払ったりしていると】
【その内の一匹が"カイ"の左腕に牙を立て肉を破りて血を啜る――それを右手で握ったグリップの底で力任せに叩き潰す】

【Heaven's Rushの効果の一つBurst Impactであれば蝙蝠の群れを吹き飛ばせたが現状その能力は付与されてない】
【だから蝙蝠を叩き潰したのち、二挺の銃口を副官に向けて4発の弾丸を放つ。腹部、脚部、腕部、胸部】
【花弁をあしらったポインターは副官の身体に浮かび上がり、普通の銃弾では考えられない軌道を描きながら襲い掛かる】


711 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/21(月) 23:39:36 KuQs9r5I0
>>709

【「はぁ」と気の抜けたような返事をしてブランルは握手に応じた】
【蘆屋道賢の言葉を聞き、しばらくは表情を変えずにいた】
【しかし、ある瞬間に一変。その表情は柔和な笑みに置き換わっていた】


おやおや、よく調べているじゃないか
では、初めまして──私がそのブランルだ


【声色がどこか危険で蠱惑的な音色へと変わる。それと矛盾するような優しげな笑みを浮かべ続けたままに】
【作業服が黒衣へと変貌。漆黒の瞳を携えた正常ならざる気配の魔術師がそこには存在していた】
【部屋中に瞬時に魔力が満ちる。一瞬で結界が展開されて外界と遮断される】


我がレヴォルツィオーンとの取引のために、私の元へ来るとは殊勝な心がけだ
かの国の軍の一翼を率いる長が来たのであれば、さぞかし面白い話が聞けるのだろうな?


【その所属、立場の大きさを眼前にしてこの男は礼儀を知らぬような態度だった】
【口端が持ち上がり歪んだ笑みを浮かべる。この男の本質を知らしめるような底知れぬ闇を見いだせる笑みだった】


712 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/22(火) 00:14:37 6.kk0qdE0
>>706>>710

ーー曰く、其は櫻国の怪異ーー

「不覚……ぐっ……くッ……」

【月白色の少女が、割れた地面に足場を構築、一気に距離を詰めて来たと思ったのも束の間の事で】
【次には頭を掴まれ、氷結させられ、地に引き倒される】
【凍らされた頭は、倒された衝撃でヒビ割れ一部は砕けて】
【まさに、凍てついた赤と白と黒の花】

「誰が生娘だ!とっくに失ったわ!!って……ひっ!!す、杉原……」
「今は黙っていた方が良さそうです、あの眼は本気だ」

【向けられた言葉と眼は、少女を押し黙らせるには余りにも充分な気迫を有し】

「ダンスが好きなお方だ……我々をオーディエンス呼ばわりとは……」

【男性はそう小さくボヤいて】
【やがて、副官が前に出て蝙蝠の大群が2人に向かい放たれる】

「初耳だな、裏切り者とは随分と下らぬ冗談をほざく妖物よ」
「吸血鬼とは、また下らぬ……化け物共は考える事も短絡的よ」

【2人の回避運動は、常人ではまさに成し得ない業だが、しかし完全とは行かなくて】
【其々に、一匹ずつ、取り付き噛みつき、血を吸われる】
【取り付いた蝙蝠は、或いは凍らされ異様に綺麗な音と共に地面に叩きつけられ、或いは力任せに叩き潰され、一匹一匹は並の蝙蝠、二人に掛かれば簡単に潰され殺せるだろう】

「ぐぅっ!まだだ、まだ……」

【放たれた残酷な程に純粋で綺麗な氷柱と、見た事も無いポインターに導かれるように複雑に迫る4発の弾丸は、胸部や腹部と言った致命傷となる物は大群の蝙蝠達の捨て身により防御が試みられるも】
【数撃たれた氷柱と、そして、通常では余りに有り得ない、考えられない軌道で迫る弾丸はとてもでは無いが、全て対応出来る訳もなく】

「ぐぅっ!はッ、うぅ……」

【副官は動かす事も難儀する程に、左右の肩と両の太腿を負傷する】
【だが、その場に血溜まりを作ってもなお、立ち続けて】

「泣きを見る、い、命乞い、する、のは、き、貴様らの、方だ……」

【肩で息しながら、そう二人を睨みつけ、やがて】

「よくやった、小柳津」
「術式構成完了、化け物共よ案内しよう……殺し間へ」

【指揮官が副官に並び】
【魔法陣が広がり、術式を展開する】
【広がる景色は、全くの闇、少なくとも先程の倉庫群では無く】
【其々は、自分の姿以外見えない場所に立たされている、海兵も横で共に闘っていた人物も、中心の少女と男性も、死体も消え失せて】

「ーー……お前の」
「君のせいだ……」
「お前のせいだ……」
「助け、て……」
「タスケテ……」

【すると、2人には其々声が聞こえ始める】
【そして足元を見やれば、先程は無かった光景が広がっている】
【死体だ、全身を切り刻まれ、殴打され、撃ち貫かれた死体の集団】
【死体の集団が、口々に少女とカイを責める】
【月白色の少女には、その死体は、両親かも知れない、厳島命かも知れない、夕月かも知れない、白神鈴音かも知れない、或いは関係ある他の誰かかも知れない】
【カイには、その死体は、親兄弟かもしれない、那須翔子かも知れない、エーリカかも知れない、和泉文月かも知れない、或いは関係ある他の誰かかも知れない】



【知古の人物の無残な死に掛けの身体が、迫り掴み、自身を怨嗟をもって詰る】



【幻覚と幻想による、強力な精神攻撃】


ーー夢想の殺し間ーー


713 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/22(火) 00:52:58 6.kk0qdE0
>>711

「ええ、アルターリの件では我らが下らぬ諜報員共がお世話になりまして、ああ、地下施設の件もありましたね」

【当初は何処か間の抜けた表情で、握手に応じたブランルであったが、次の言葉より、その表情を一変させる】
【口調が変わり、そして装いすらも変貌する】
【瞳には怪しげな色が宿り、それと反した表情は慈愛に満ちた優しげなもので】
【より一層、この男の闇を引き立たせる物であった】

「漸く、正体を見せた、いや素晴らしい、それでこそ貴殿よ」
「まあ素敵……」

【結界に閉ざされ、外部より隔絶され、一変に魔力が満ちる部屋】
【一体どれ程を経れば、魔術師とは此処までの存在に昇華出来るのか、と】
【道賢は、やはり満足げな嗤いを口元に浮かべ、しかし眼は眼光鋭く光を湛えて】
【黒い和装の少女は、感心した様子で周囲に視線を巡らせ】


「いいでしょう、先ずは、我が海軍が推し進めている魔導イージス艦計画に関してお伝えしましょう……」

【先ずは魔導イージス艦に関する計画の話をする、この部分で伝えられる話は、陸軍の2人がディミーアに話した内容と然程変わりはない】
【違う点を挙げるとするならば、ここに櫻国の将軍家奥方公、櫻国の妖怪輸出会社ヨシビ商会、そして黒幕が明確に関与している事を告げられるだろう】

「さて、その話を踏まえた上で、本日の取り引き内容だ、先ずブランル殿、我らと共に『完全な形』でのホムンクルス、つまりは、魔導イージス艦の鍵の製造に手を貸して頂きたい」
「そして、話にあった不死の兵士を条件付きで幾らか買いたい、条件と言うのは、それは、これより話す内容に関係がある……」
「無論、必要資金は此方でも出そう、貴殿への報酬も言い値で構いますまい、望む物があれば、無論、対応させてもらいたい」

【如何か?と話の確認も踏まえて、一旦話を切るようにブランルを見据えて】
【尚、口振りから、まだ海軍は多分に秘密を隠し、其れをこれから話していこうという姿勢が伺えるだろう】
【少女の妙に黒く綺麗な瞳は、そのままにブランルを映して……】


714 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/22(火) 04:17:50 h7nAXcQg0
>>586-587
おや、私の二つ名は知ってくれていたのか。光栄なことだ

いいや? 『箱舟』はあくまで、滅びを回避するために保管しておくために作ったものだ
今ある世界の形を、少しでも保つために。ゆえに、放り込む相手は選ばない。多様性を維持するためには、あらゆる命が必要だからな

当然、『食糧庫』になどしては本末転倒だ。そんな真似はしない
が、それは別として。お前の肉は、見たところ上質なのは確かだ

【全く嬉しくもないだろう肉の品評を口にしながら、カニバディールは彼女の言葉を否定する】
【この行動は、異形の本質とは違う。彼なりに利を追求した結果の、保全行動なのだと】
【とはいえ、それを戯言だと切って捨てるだけの力が向こうにはある】

これでも、機関員だ……過去に機関が関わった事件や組織くらいは頭に入れてある
だが、その中でもトップクラスの厄ネタ……お友達だと? そんな相手と友誼を結べる手段があるなら、ご教授願いたかったくらいだ……

――――それがこの上なく現実的な未来の可能性だと、わかってしまうことがこの場では恨めしい
『暴蜂(バウフェン)』なら、やり得るだろうさ……

『V.I.C.特別区』……『暴蜂(バウフェン)』の母体たる『ヴェイスグループ』の本拠地……
あの秘密都市が、まだ息づいていると? 勘弁してくれ、〝虚神〟がようやく消えうせたところだろうが……!!

【知っているからこそ、恐怖は増す。彼女の発する言葉一つ一つが打撃のように己を打ち据える】
【かつてあの"Justice"とすら互角以上に渡り合った、一大テロ組織。豊富な資金とそれに裏打ちされた武装、人道を踏み越えた技術】
【更には、抱える戦闘員に強力な能力者もいるだろう。それが、この混沌とした世界に投げ込まれれば、更なる災禍となるは必定だ】


何とでも言え! 相手が悪すぎるんだ、体裁を気にしていられるか!!

【生き延びるためならば、手段は選ばない。その上で、己の立場も維持しなければならない】
【臆病な男ではあるが、それを強引にでも両立させてきたからこそ、生き延びて来た】
【今回は、どうだろうか。ノミの心臓は見抜かれても、少なくともPとはまだ取引相手足り得る。ならば、そちらに飛びつく。判断は瞬時】

【そこへ、女性の良く通る声が響き渡る。一瞬の均衡。Pの放った火が着弾するまでの】
【短い時間だが、答えねばならない。立ち位置を明確にするのは、こちらも望むところだ】

……お察しの通りだとも、その両天秤のせいでこうして駆けずり回っているんだ……
そこへ、お前たちが参入すれば、天秤が素直にどちらかに傾くかすら怪しい……!!


すぐわかることだ、答えてやる。『黒幕』は私の敵だ。彼奴等の目指す『理想郷』には反吐が出る
(元々が経済グループとして、数々の戦争の裏側に巣食ってきた『ヴェイスグループ』が、あの特区のような気色の悪い統治を望むはずがない、と信じたいところだが……)

【半ば以上、願望である。それだけ彼女は、底が知れない。戦争の準備を進めているなら、戦乱を求めるなら】
【経済に食い込む『円卓』であるはずだと。無論、だからといって味方とは到底言い難いままだろうが】

/続きます


715 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/22(火) 04:18:27 h7nAXcQg0
>>692
知らないか? かつて世界中で暴れ狂った組織の一つ……巨大経済組織、『ヴェイスグループ』総帥直属の戦闘部隊だ
優秀な能力者たちに加えて、豊富な兵器にクローン技術まで有する名だたる悪の一つだった……
要するに、相当に年季の入った悪の組織だということだ

……神経質、とも言われるがな。まあ概ねその通りだ。混沌とは本来無意味なものなのだろうが
それでも、全くの無意味では私の腹が満たせない
その武器を扱うお前たちは、人類の首根っこをひっつかんでいるもっと恐ろしい何か、といったところか?

【口数の多い異形がわざわざ解説を入れる。この状況でも舌だけは回るのは、もはや性だ】
【あるいは、商談となればこうして無邪気な子供さながらになる彼のそれも性と言うべきなのか】

商談成立だな!? ならば遠慮なくもらっていくぞ!!
随分とサービスが行き届いていることだ!! ならばさっそく使わせてもらおうか!!

!!? これは……

【アタッシェケースの中身が消失したことに、驚きなどもう感じない。この場ではもう、何が起こっても不思議ではないのだ】
【だがそれでも、手元に出現したカードに記されていた文言を見れば、その巨体がわずかに揺らぐ】

【奇怪な紋章とイラストに彩られたそれは、金で買えるものとしてはあまりに強大な力】
【本当に、それを行使する権利を買い取ったのだと。カニバディールは確信と共に、そのカードを操作した肉の中にしっかりと埋め込み】
【同時に、目を付けていた兵器の購入ボタンを片っ端から押し込んだ。代金はすでに支払い済み、おそらくはアジトに届けられるだろうか】


>>ALL

死の商人らしい考えだ!! いっそ清々しいわ!!

【どちらにも売る。ゲームには加わらない。まさに商売人といったPの言葉に片手間に叫び返しつつ】
【異形は、〝取り寄せた〟。ラインナップの中から探し出した、ジェットパック。即座に背中に装着する】

【その時にはもう、カニバディールの手下たちはその巨体に重なるように吸い込まれて消えており】
【一人残った異形は、即座にジェットパックのスイッチを入れた。噴き出す火炎が、カニバディールの巨体を屋上から引き剥がす】

【膨らませた肉で爆炎から少しでも身を守りつつ。飛んできた爆撃ミサイルと入れ違いに、カニバディールは空中へと逃れるだろう】
【視線は、眼下へ。あの恐るべき二人は、どうなった――――?】

/勝手に兵器想像してしまいましたが、問題がありましたらお手数ですがご指摘願えればと思います


716 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/22(火) 04:29:27 h7nAXcQg0
>>697
【彼が歩くと、スクラップズの悪漢どもは自然と道を開けた】
【頭目譲りの危険性の察知。わかっているのだろう。この男は、恐れるに値すると】

国軍特務機関の最高責任者……これはとんだ大物だ
光栄だというのは私が言うべきところじゃあないかね、テルミドール大佐……

過分なお言葉だな。少しばかり他の悪党より臆病で、理性がまだ残っているというだけだ

……ああ。非常に優秀な部下をお持ちだな、大佐

【若い。第一印象はそれである。この若さでこの階級、この立場】
【飾られた勲章と騎士剣は、この男の辣腕ぶりを端的に示す。この男は、間違いなくプロの軍人だ】

【怯えは強引に押し殺す。カニバディールは伸ばされた手を一瞥し、ゆっくりと大きな手を伸ばして握手に答えた】
【外交というにはあまりに殺伐とした場面だったが、その手に感じた重みは国家間の大きな外交にも匹敵する緊張があった】

【視線一つ。それだけで、あの強者たるオブライエンも目を逸らす。行動一つ一つが伝えてくる。只者であるはずがないと】


――――交渉の初手としては、見事な一撃だな大佐
彼女が慣れないだろうドレスを着こなしながら、どうにか守り抜いた者たちを差し出そうとは

……それほどのことまでして。いったい、私に何を求めるおつもりかね?

【オブライエンの歯ぎしりすらも響くほど、不気味な静寂をカニバディールは感じ取る。この男がそうさせているのだろう】
【サイコ・フェンリルもこうなっては、お行儀のいい軍人となり。もはやここに自由意志を振るえるのは、二人だけか】

【だからこそ、わからなかった。それほどのカードを差し出してまで。一盗賊に、この悪党に】
【辣腕たる大佐は、何を求めようというのか?】


717 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/22(火) 14:14:46 BRNVt/Aw0
>>710 >>712

【地に引き倒され凍てついた花を咲かせる海兵】
【その様に少女は一瞬表情を曇らせ】
【しかしその表情はすぐにかき消えて】

【女剣士との短いやり取り。相手が大将の首級に興味を示さないと見れば少女は目を丸くして】
【変なの、なんて呟くが】
【そんな中で迫り来た大量の蝙蝠】
【短絡的だと称されれば少女は声を荒らげて】

【それでもやがて彼女は副官を追い詰めてゆくのだろう】
【傷付いてもなお立ち続ける副官】
【その睨み付ける視線に少女が睨み返せば】
【副官に指揮官が立ち並び】
【構成された魔方陣】
【広がるそれは暗く、暗く、少女を闇へと包み込み】


【──やがて少女の耳、一つの声が届く】

「──貴女の所為ですよ、栂流(ツガル)さん」

【聞こえたのは涼やかな女の声】
【少女の身体がビクリと跳ねて】

【声の方を見たくなど無かった】
【だって、其処にはきっと──】

……おかぁ、さ……ん……?

【足元を、見てしまう】
【其処に在るのは銃創をつくり赤い血を辺り一面に広げて倒れ伏す月白色の生き物】

ゃ……だ……っ
【踏鞴を踏む】


「──君の所為だ、つがる」

【何かに触れる踵】
【響いた声に振り向いた先、倒れ伏すのは混ざり合う暗褐色とネイビーブルー】

「何故、助けに来てくれなかった……?」
【君が来てくれなかった所為で私がどうなったのか、分かるだろう?と問うのは父の様に慕っていた人物の無惨な姿で】

……違……っ、わたし、は……ッ
【頭を振る】


/続きます


718 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/22(火) 14:15:49 BRNVt/Aw0
>>717

「──何で助けに来てくれなかったの」

【恨みがましい音色で響いたのは鈴の声】

【足元、黒い髪を振り乱し赤い沼から手を伸ばすのは姉の様に慕っていた"かみさま"の凄惨な姿】

「やっぱりつがるちゃんは役立たずだよね」
「うざいし」
「──■■■■なんか任せなきゃ良かった」

【底冷えするような、地を這うような鈴の音色】
【ぢりぢり、ぢりぢりぢり────】

ゃ、だ……っ……やだぁ……っ
【頭を抱える】


「ほーんと、つがるんってば役立たずだよねえ」
「あたしが誰の所為でこうなったと思ってんの?」

【蔑むような少女の声が響く】
【視界の先、映るのは赤い少女の姿】
【"あの日"、あのモニターの中で泣いていた"あの時"の友達の姿】
【自分の手を取ってくれた暖かな腕も、自分を導いてくれた赤い靴を履いた足も、全部なくて】
【髪にも、自分を睨む瞳にも、負けないくらい真っ赤な血の池にその身を浸して】

「助けに来てくれないつがるんなんか、友達じゃない」


嫌……嫌だよ……っ……やだぁ……っ
【叫び、踞る】


嫌だ……嫌だ……っ
分かってる……分かってるの……っ!
私なんか要らないって!私なんか役立たずでどうしようもなくて要らないって分かってるからぁ……っ
私の所為だって……っ……ちゃんと知ってるからぁ……っ
最初から私なんか必要なかったってちゃんと理解してるからぁ……っ
だから……だから怒んないでぇ……っ
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ……っ!
【泣き叫ぶ】

【けれども声は、姿は消えない】

【苛む】

【■■■が】
【厳島命が】
【白神鈴音が】
【夕月が】
【オムレツが】【リュウタ・アリサカが】【ケイ・ガーウェイが】【ユウト・セヴォランディが】【ユーイが】【ポーツィオ=カーネ・ダ・カッチャが】【身体を重ねたあの男が】【"ワールドエンド"が】【■■■■の子供達が】
【苛む】
【苛む】
【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】【苛む】


719 : セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y :2019/01/22(火) 17:20:55 lp4TKcVo0
>>707

【思えば酷な話だ。英雄が必要とされるのは、世が荒れている時。だから本当は、ヒーローなんて居ない方が良い。】
【それを―――この女はそれこそが居場所だから、と。"自分が必要であってほしい"、"そうでないとダメなんだ"―――と。酷く。】
【酷く残酷な言葉を発していた。そして何より、何より本当に無残なのは―――今も世の中は荒れていて。それでも尚、彼女は不要だ、という事実】

【其処に理由はある。しかし、其処に居場所は無い。ならばこの女は、もう"此処"にいるしか、ないのだろうか。】


……いっぱい、戦って………いくらでも、傷ついてきた……やってきた、やってきた、やったんだ!! あたしは!!
なのに―――ねえ、なんで……なんで要らないの……!? どうしてアタシから、こんなアタシから、生き場所まで奪おうとするの!?

やだよ……もう、いやだ……っ、こんなの―――こんなの……っ!! "こんな事"言いたくない!! 考えたくない!!
本当は、本当はこんな事思っちゃいけないんだ!! こんな風に、考えるの間違ってる!! みんなは悪くない、誰も悪くない!! なのに―――……


どうして……アタシをUTのセリーナで、いさせてくれないの……。


【醜い。まるで赤子だ。言葉は選んでいても、言っている事はもはやただの子供だ。他人は聞く耳も持たない。】
【だがその全てを―――弱者の心を抜き取り、一部として、その身体に包み込んできた男は聞いている。"聞いてくれて"いる。】
【だから、誰にも吐けない毒の全てが身体から漏れ出していく。自分の身体を伝う涙が、こんなにも穢れた液体だと思ったのは、これが初めてだった。】

【近づいてくる。ブランルが歩みを進め、腕を伸ばし、セリーナの頬に触れる。髪を撫で、指でなぞり、労わり、包む。】
【もう―――抗おうという気にもなれない。無駄だというのも分かっていたし、何よりこうなってしまっては―――"こうなってしまったセリーナ"には。】
【ひょっとすると、この空間とブランルだけが理解者であり居場所であり、存在価値を認めてくれるただ一つの希望、なのかもしれなくて。そのキスを、ただ彼女は受け入れて―――。】


ん――――――、っ、ん、んんっ……っ、―――っ!、……かはっ、……うぇっ……。……っ?


【そうして、目の前の男が愉悦を隠している訳でもなかったその理由が、此処に来てようやく判明する。】
【舌の中に感じる"何か"。きっと男の手より触ってきた、今までの人生の"相棒"と呼んで良いだろう"ソレ"―――、】
【久しく触っていなかったものの、舌で転がせば直ぐに分かる。45.コルト。愛銃―――S.A.Aや"弾"末魔に用いられる、弾丸だ。】

【―――お別れの言葉と共に。手向けに渡された、一発の弾薬。】
【これが何を意味するのか、それはもう分かるだろう。セリーナは今度こそ、今度こそ。】
【真に絶望し、そして生きる気力の一切を奪われた悲しみに直面する―――嗚呼、そう言う事。お前は、ブランル。お前は……、】


――――――――……ほんとうに……イヤなやつ……。


【弾を噛み締めながら。その瞳を覗き込む。此処にさえ、貴方の所にさえ、居させてくれないのか、と。】
【そうして下を向き、俯いたまま黙り込む。どうやら―――ブランルは本当の意味で"悪人"の様だ。これまでに……無い程。】
【セリーナが会った事が無い程に。徹底的に。弱者の味方である―――容赦ないまでに。だからそう、……この女の味方は、してくれないのだろう。】


720 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/22(火) 20:24:39 ef40Xvm20
>>713

【黒衣の男は笑みを携えたままその恐ろしい計略の一端に耳を傾ける】
【目を閉じてそれに聞き入る姿はまるで至上の音楽を愉しむかのような悠然としたものだった】
【世界の均衡と平和を破壊する一節でさえも、この男にとっては心を踊らせる美しい音律と等しい】

【道賢の質問にブランルは答えず、ただ目を見開きゆっくりと背もたれに体重をかけて天を仰ぐ】
【余韻に浸るように。あるいは、これから巻き起こる狂乱に想いを馳せるように】
【黒絹の如き漆黒の双眸が二人へと戻り、再び口端を持ち上げて嗤ってみせる】


思った以上に素晴らしい話だ
妖魔に妖怪、そして“ホムンクルス”──まさしく私の得意とするものだ
兵器との融合も踏まえた上で、我が全力を以ってそれを形にしてご覧に入れよう
勿論、不死の軍勢も売ろう。元々そのための“副産物”だからな


【ブランルは「おっと」などとわざとらしく言って口を押さえる。真実ならば、不滅の兵士でさえも──】
【男は悪戯っぽい笑みを浮かべて唇に人差し指を立てる。子供が何か秘密を漏らしたような、そんな純粋さのある表情で】
【こんな人間が浮かべる表情など真実のはずがない。しかしそう思えない奇妙な“ズレ”のある男だった】


721 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/22(火) 21:04:22 ef40Xvm20
>>719

【弱者の味方──そう、その通りだった】
【不死の存在であり強大な魔術を操り瑕疵のない精神を誇り現実への影響力を持ち権謀術数にさえ長ける】
【都市アルターリを殆ど独力で闇に沈め百戦錬磨のセリーナ・ザ・“キッド”さえこうして捕らえて意のままに扱う】

【そうであったとしても、この男は────否、“この者達”は弱者の味方だった】
【無力で、何事も成せず、努力さえ出来ず、何者にもなれず誰にも認められず誰かが覚えてさえいない】
【嫉妬心と憎悪と憤怒と恐怖と悲哀だけで構成された意識の群。“彼ら”はどこまでも弱者の味方だった】

【────だからこそ、『本当のセリーナ・ザ・“キッド”』の味方ではないのだ】


……お前は知った。知らねばならないことを
だがまだ終わりではない。私とお前とこの世界の戦いはまだ終わってなどいない
まだ結論を下すには早い。ならば、お前は確かめねばならない
お前が“何者”なのか。お前が守ろうとするこの世界と人々は何なのかを


【深い闇を湛えた瞳が真っ直ぐにセリーナを見据えた。たとえ彼女が目を逸らそうとも】
【『ナート・サンダー』と対峙したとき、この男は何を“知らねばならない”と言っただろうか】
【それはこの世界の非情な現実そのものだ。人は立ち止まり絶望し得るのだと】

【だが、今となってはセリーナはその只中にいる。心は砕け信念は見失い力さえも持ち合わせていない】
【それ故に、こんな場所で立ち止まってしまっている。全てはブランルの思惑通り、仕向けたように】
【それでもまだ、と言うのならば。ここまで絶望した姿をセリーナが見せたにも関わらず、戦いを終えないのならば】

【あるいは、この世界の誰よりもこの男はセリーナのことを────】


今は恐らく分かるまい。だが、いずれお前は私の言ったことと行ったことの意味を理解するだろう
それを真に掴んだとき、もう一度向かってくるがいい。私とお前の決着をつけるために


【幼子のように弱り切ったセリーナに向けて、理解できないと知りながらもブランルは言葉を続ける】
【右手が自らの黒衣を剥ぎ取る。それは漆黒のローブと化してセリーナにかけられた】
【さらにセリーナの足元に弾薬箱と回転式拳銃が放り出される。彼女が頼り重要な力だとした“弾”末魔ではないただの銃だ】


今のお前にはそれで十分だろう
いや、それでなくてはならない。力がなければ困るようなやつに力は渡せないから、な


【ブランルの足元の影が広がり、部屋の全てを覆い隠す。壁も鉄格子も床も、ブランル自身も】
【セリーナの視界の全てが一面の漆黒と化す。見えるのは足元の弾薬と銃。そして自らの姿だけ】
【一瞬の静寂と哄笑。姿の見えない黒衣の怪物は最後に嗤ってみせたのだ】

【────視界が晴れたとき、彼女は荒野の中にいた。彼女ならば、そこが地の国だと分かるかもしれない】
【身体の怪我は何もかもが治っていた。汚物やら何やらさえ消失。衣類は男が渡した黒のローブだけ】
【荒野に放り出され、まともな衣服もなければもはや地位もない。武器は簡素な銃と何の変哲もない弾丸だけ。全てゼロだ】
【いや、一発だけ特別なものがあった。口の中に押し込まれていた銀の弾丸。怪物を倒すためのシルバー・バレット】

【銃も弾丸も全ては嘲笑混じりの挑発。ここまでやって尚、お前は私の元にやってこれないのか、と】
【いくつもの戦いを経たセリーナを赤子のようにあざ笑う傲慢さから来る侮辱だった】
【今はそれに気づく余裕もないかもしれない。それでもそんな意味を込めるからにはきっと────】

【ブランルの姿はどこにもない。彼女は外の世界に解放された──されてしまったのだった】


722 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/22(火) 21:35:02 WMHqDivw0
>>698

【ぶれる両目がしきりに前を向こうとしていた。垂れ流す吐瀉物と唾液を拭おうともしないまま】
【それでもじっと前を見ていた。そしてきっと男を見ていた。それでいて、両手の獲物は取り落とさないでいた】
【つまるところまだ、殺意は消えてないのだろう。生きている。自分も相手も。ならば殺せるから】
【それならば気絶なんかしている暇などないって。そんなことを思っているのだろう。だけど、しかし、】

――――――――――――……、

【その気持ちに体がついていけるかと言われれば、それは話が別。ふらつく足取りは回避も逃避もままならず】
【ただその場で二歩三歩、たたらを踏むように動いたのだって、もしかしなくても意識が限界だからってだけであり】
【偶然そういうふうに動くことができただけに過ぎない。故に、首を掴まれるなら、小動物より軽く持ち上げられ】
【締め上げられるならぎゅうと気道の締まる音がするのだろう。そうしていつか、前だけを見ていた視線は】
【ぐるりと上を向く。寒空に生える星を見て、それから――すとん、と。あんまりにも簡単に、落ちるのだろう】

【しかし、――――――さすがなんて言うべきではなかった。両の手は獲物を握りしめたまま、固く結ばれ】
【どう動かしても解けそうになかった。それなら拳ごと砕いてやったほうがいい気もするけれど】
【やっぱりすべては男に委ねられるのだろう。意識を失った女がひとり。そこに在る、それだけで】


【――――――――遠くからサイレンの音。向かってくる、さびれたネオン街。誰かの噂話を聞くのなら】
【最近このあたりのホテルで首無しの死体がよく見つかるとのことで。――。どうしてやったって、よかった】


723 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/22(火) 23:01:13 6IlD6zzI0
>>712 >>717

『命乞いするのはテメエの方だ―――――、Ha、天国にでも連れてってくれるのかよ
 ――――――………ッ!!?………随分と趣味の悪ィモン見せつけやがって……ッ!』

【黒に塗り潰された世界。黒よりも暗い闇に身を落とし込まれれば】
【それ即ち指揮官の展開する異世界、術中に嵌った事を意味していた】
【五感に働きかける作用はどれもこれも呪詛で満ちていて―――不意に聞こえる声があった】


フェイ、お前なんて生まなければ良かった――この恩知らずの親殺しめ!
フェイ、俺はお前の父親だぞ!黙って俺のいう事を聞け!父親を悦ばせるのも娘の務めだろうが!

      
    死ね、死ね。死んでしまえ。お前が私/俺を殺した時と同じように!


【呪詛の幕開けは最初に殺した"両親"と呼ばれる人間】
【フェイ=エトレーヌを産み落としたロクデナシの男女。二人とも額に幾つもの風穴が開いて】
【ヒトならざる音を吹かせながら呪詛の言葉を紡いで彼女の脚を掴んで死の淵に引っ張ろうと躍起になる】


【水底から伸びる呪詛の手を強引に蹴り払い、その手を踏みにじれば――次の声が背後から彼女を突き刺した。
 その声の主は―――那須翔子。それにフェイに縁深い人物・櫂傑臣(カイ・ジィエチェン)】


カイさん。―――私、死んでしまったのに。苦しみ抜いて死んでしまったのに。
ちっとも助けてくれなかったじゃないですか、「何がおめえの銃になってやるよ」ですか!
このうそつき。うそつき!うそつきっ!あなたなんか、あなたたちなんか死んでしまえばいいんだ!

ははは、結局ドブネズミのまま生き彷徨っているのか。相も変わらず人殺しを生業にしているのか。
それでいてエーリカやお前の相棒とやらに依存して、ヒトオニだと嘯いているその姿は痛々しすぎる。
――――やっぱりお前はあの時死ぬべきだった。俺たちのアジトに降り注いだ訣別の火に焼かれてな。


【ぎりっと歯軋り。歯が欠けそうになるほど強く噛みしめて激情に身を委ねそうになる】
【目が血走る。アイツらの皮を被った悪意風情が知った風な口を利くなと、咆哮しそうになるのを】
【自身の内側に引っ込んだ白桜が必死に抑制する―――そうしたらフェイに向けられた矛先が白桜へ】

//つづきます


724 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/22(火) 23:03:40 6IlD6zzI0
白桜。……きみはもう死んでしまったというのに。僕を助ける為に散らした命じゃ僕は救えなかったというのに。
何故のうのうと生きているんだい?和泉文月なんて清らかな光に惹かれたんだい―――所詮鬼子でしかないのに。
―――――烏滸がましいな。生き汚いよ。あるべき地獄に戻るんだ。きみは人らしく生きて良い道理なんてないんだから。


【安らぎの音色で構成された呪詛の言葉。それは物腰穏やかな面持ちの、海の様な色合いの双眸の男性から―――名を梧桐と言った】
【彼は白桜の育ての親。鬼哭の島で生まれ育った彼女の父親。その人物がやさしい口調で辛らつに死へと導く】
【親同然に慕う人からの呪詛の言葉に白桜は動揺して、揺れ動いて、言葉を失う――フェイと混じってなければそれで済まされなかった】
【そして――――――"カイ"共通の親友にして一番の理解者たる社会的死人・エーリカが音もなく眼前に現れる】


ねぇ、エトレーヌにハクラ。―――――気持ち悪い。死んでる二人が寄り添って生きてるふりしてるなんて最高に気持ち悪い。
そんな人擬きのオニ風情がさ、私に触らないでくんない?見てるだけで反吐が出るから死んでよ。
今すぐアンタたちが握ってるそれで頭をぶち抜いて自決してくんない?ほんとは――――――………■■■■くせに。


【心の底から滲み出た嫌悪。フェイはそれを知っている。けれどそれは過去の話で今は肩を並べて笑い合える間柄だったから】
【顔色から伺える拒絶の色。白桜はそれを知らない。だって知り合った時から一度だって彼女はそんな顔した事無かったから】
【悪意の波状攻撃。四方八方から言葉という無限の刃でささくれ立った心をズタズタに引き裂けば、次第にフェイも白桜も居た堪れなくなる】

【フェイの両親が、白桜の育ての親(梧桐)が、那須翔子が、櫂傑臣が、エーリカが二人を責め立てる】
【そして最後に現れたのは――――白桜が姉と慕ってやまないあの女性。和泉文月という華の様に烈しく生きる女性の呪詛】


                       【■■■■■】


【言葉は聞き取れなかった。でも白桜にとって最大級の衝撃で、最も聞きたくない■■の言葉だった】
【故に白桜は錯乱し泣き叫び、フェイは半狂乱して引き金を無操作に引き続ける。弾切れしようとも引き続けるなら】
【それはせめてもの抵抗。心が折れない様に抗う作用。酷く拙く、脆さを隠すようにケダモノめいた雄叫びを上げ続ける】
【声が枯れても、喉から出血しようとも、昏い悪意に塗り潰されぬように叫ぶそれはフェイのものか、白桜のものか――"カイ"のものだった】
【兎にも角にも、先ほどまで死を振りまいていたオニは今や指揮官の男の手のひらの上にあるに等しかった】


725 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/22(火) 23:37:21 6IlD6zzI0
>>722

【意識の落ちる音が聞こえた。身体が弛緩する感触が伝う――、これで命の遣り取りに決着がついたのだ】
【失神してもなお握られている獲物に一抹の不安が過り、僅かばかりだが戦慄を覚えるのは女の在り方ゆえか】
【ぱっと腕を離してやれば、ばたっと音を立てて糸の切れたマリオネットみたいに倒れる女――それを見下ろして】



―――――がはっ、がはっ……っ!、………危なかった。
俺が生き延びたのも紙一重か。―――――だが、づぁああああっ!
小枝の様に肋骨を折りやがって……っ!、お陰で満身創痍だ。その上強姦魔に間違えられかねないぞ。


【横たわる女の姿を見遣る。――――婦女暴行では済まされない程の姿に罪悪感を覚えた訳ではないが】
【それでも商売道具である顔だけはどうにか治してやろうと思ったのは単なる自己満足かアリバイ工作か】
【――――どちらでも良かった。ただ、女の顔を傷モノにした事実が残るのが嫌なだけだった】


………保身のためとはいえ、俺もヤキが回ったな。
―――――、くくっ、"ヴィーナス"、お前もそう思うか。俺もだ。
だが、せめて。俺には微笑み続けてくれ、苦笑めいた顔色は似合わない。


【背後に付き従う"ヴィーナス"。記憶屋の女性に酷似したそのシルエットは微かに苦笑を浮かべて】
【でも最後には言葉通り微笑んでくれる。そしたら彼の上着のポケットに収められたスキットルの中身を】
【商売道具たる女の顔に振りかける。"AquaVit/命の水"と呼ばれる能力は鼻骨の骨折だとか腫れとかの損傷を癒す】

【最終的には彼と遭遇した時と変わらぬ状態に戻すのだった―――、顔だけ。身体は癒さないし見逃す心算も無い】
【とりあえず獲物を引き剥がそうとした瞬間、心身ともに弛緩して。ぐらりと巨体が前のめりに倒れる】

【そしたらその後の遣り取りは全くのノータッチ。女の顛末がどうなったかは知らない。だが彼は気が付いたら病院に居た】
【目を覚ました時、自称看板娘のリゼが泣きそうな顔をして"心の底から心配したんだからなー!この馬鹿っ!"と叫んでいた】
【それに対して一言「済まなかった」と謝ってリゼを安心させるんだった。全治数か月の大怪我、でも10日で無理やり退院したらしい】

//ここらへんで〆、ですかね。長時間の絡みありがとうございました!


726 : テルミドール&オブライエン ◆rZ1XhuyZ7I :2019/01/23(水) 00:09:06 smh2z7gk0
>>716


【握手に応じるカニバディールに、にっこりと笑みを向ける。】
【今まで何回も何回もしてきたのであろう作り物のような笑顔だった。】
【『しかし大きな手だな』と味気ない感想を言うと手を離し、再び手袋をはめて腰に手を当てる。】


『ふふ、君の方こそ買い被り過ぎだ。』
『軍や警察などという国家機構は今まで散々君たちカノッサ機関を始めとする悪人達に屈してきた
いつも矢面で悪の野望を阻止してきたのは民間団体かもしくは強いつながりを持った個人たちだ。』
『その事実は永劫変わる事はない。』

『そしてその正義の使徒たちの攻撃を掻い潜って今まで生き延びた君こそ強かな悪人だ。』


『ああ、ありがとう。手塩にかけて育てた部下でね。』
『―――まぁ腹の底ではまだ甘さが抜けていないのは私の指導不足だが。』



―――〝水〟は私に任せるんじゃないのかよ、ミヒャエル。



【『ご覧の通り上官への口の利き方も分かっていない』とテルミドールは肩を竦めて笑う。】
【オブライエンはイライラとした表情で身の丈もあるブレードライフをクルクルと回しながら減らず口を続けた。】


『ああ、勘違いしないでほしいのは彼らは確かに守るべき者だ。コニーの判断は正しい。』
『だが物事には優先順位がある。大を得るために小を犠牲にするのは基本中の基本ではないだろうか。』


『〝グレート・ゲーム〟だよ、カニバディール。じきに世界の均衡は崩壊し巨大な争いが始まる。』
『それを生き残るためにはあらゆる手段を求める必要がある。』


『ぜひ君の力を〝氷の国〟へ貸してほしい。勿論謝礼はするし国際指名手配されている君たちをもう少し生きやすくしよう』
『いい加減〝大家族〟を抱えて逃げ続けるのも疲れてきているのではないかね?』


【―――使えるものは全て使う。それは〝氷の国〟の在り方の一つであった。】
【勿論オブライエンもそうした一面は持ち合わせているが、このテルミドールはまさにその体現であった。】
【だが、カニバディールが引く手数多である事もこの男は知っている。】
【〝それら〟も汲んだ上で言っている、カニバディールという存在はそういった面でも魅力的な存在だからだ。】


727 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/23(水) 14:51:55 h7nAXcQg0
>>726
【仮面だ。カニバディールは悟る。今まで幾度も目にしてきた。立場ある者が被る仮面】
【だが、眼前のこの男の仮面は今まで見た中でも屈指の、見事にその腹の底を覆い隠す笑顔の仮面であった】
【『図体だけは昔からデカくてね』とこちらも何ともつまらない答えを返しつつ】

背負うものが大きければ、それだけ動きは鈍る。結果、前線で活躍するのはフットワークの軽い『正義の味方』……
世の理と言うやつだろうさ。それでも、そちらにとっては苦い事実であることに変わりはないのだろうが

光栄だな。まあ危機察知と逃げ足は盗賊の必須スキルというだけの話だ

幼少から面倒を見て来た子飼いと言ったところか? 甘いとはいうが、その若さでここまでに仕上がっているならむしろ末恐ろしいがね

【『言葉遣いに関しては、確かにまだ教育が必要そうだ』と真面目に頷いて見せて】
【その視線は、オブライエンが未だ装備しているブレードへと向く。彼女のことだ、この状況でも決して油断はしていないのだろう】


……上に立つ者ゆえの、非情だが必要な決断というわけかね。指導者としては確かに基本だろうが
それでも、相応の犠牲を払ってまで求めるのが私のような悪党の力というのだから、この世界を取り巻く状況の異常性もわかるというものだ

〝グレート・ゲーム〟……なるほど。流石に、裏事情には精通しておられるようだ
〝氷の国〟の民を生かすため、全てはそのためか

【じっと三つの目でテルミドールを見つめる。厳寒の地を生き抜く、生粋の氷の民の目】
【過酷な環境の中で培われた、手段を選ばぬ強かさ。それが氷の国のお国柄だ】
【カニバディール自身、ひそかにシンパシーを感じたこともある。だが、だからこそ油断ならない】

――――ご存知だとは思うが、私は心臓のサイズが図体に反比例した、病的な怖がりでね
契約内容の全てを把握しておかなければ、それがどんな話でも判を押す手が震えてしまう
詳細を話せとまでは言わないが……私の持っている何を利用するつもりなのか。暴力か、数か、繋がりか、生命力か
それを、いつまで使うつもりなのか。それくらいは聞いておきたいな

その前に……私の方からも、譲れない部分は明らかにしておこう
私には、決して裏切れない人物と、決して許しては置けない敵がいる
恐らくは、そちらでも調べがついているのだろうがね、大佐。私の家族が随分と膨れ上がったこともすでに知っているようだからな

――――カノッサ機関の参謀と会計係……このお二人の不利益になるような話には、私は乗らない
そして、虚神との戦いで大いに活躍した、水の国ご自慢の『外務八課』。私は、彼奴等の存在を許さない。彼奴等に与するような真似はお断りだ

もう一つ、付け加えておこう。確かに、大勢を抱えて逃げ回るのはエネルギーを使う
だが、私も私の部下たちも、自らそれを選んだ。どれほど疲弊したからといって、表社会の手にみっともなく縋りつきはしない
たとえそれが、取引による報酬だったとしてもだ

……謝礼の方は魅力的だがね。その上で、もう一度聞こう
来るべき崩壊の時を切り抜けるために、私の何を利用するつもりで、そのためにどんな飴玉を並べてくれる?

【カニバディールは臆病者である。そして、自らが邪悪であることを認識し、打ち倒されることに怒り、のたうち、恐れ、足掻きはしても】
【常に狙われ憎まれ追われ、泥水を啜って這いずるように生きることそのものは受け入れていた。自分たちは、そうあるべきだと】

【何より、彼らの手助けを受けて世界の糾弾を凌ごうとするならば。それは、『氷の国』に多少なりとも首根っこを晒すことになる】
【カニバディールはそれを恐れた。裏切れない二人に不利益を与えることや、憎んでやまない組織を攻撃できなくなることと同じくらいに】

【自らそれを晒したうえで、異形は再び問いかけた。何を企み、何に自分を利用し、そのために何を引き換えにしてくれるのかと】


728 : ◆ImMLMROyPk :2019/01/23(水) 21:58:15 Nt7ZtIVU0
【随分と平穏で、とりとめのない時間が流れる毎日が何時までも続けば良いと、誰もが祈る】
【けれどその平穏を手にすることは舞う蝶を手にするように難しく、それ故に尊い物だと語る者もある】
【だからこそ、平穏な日々に生きる我々は幸福である。幸福を決して忘れぬように。いつか幸福が消えた時、正しい幸福を思い出せるように】


【──────風の国・平原──────】
【少年は本を読んでいた。自身のメモリ、即ち脳に新たな情報を刻む為に、訪れた街の図書館で本を借りてはそれを読破する】
【隅から隅まで舐めるように読み、記憶した書物は既に七百と七十四。そして、今この瞬間に七百と七十五になった】
【パタリ、と書物を閉じると、彼は常に変わらぬ能面のような表情で空を見上げた】


(あの時……マリアベルに導かれた夜に、俺を動かしたナニカ)
(あれは一体何だったのだろうか?どうしても、それだけが思い出せない。何故だ……何故だ……?)


【彼は、恐らく意図的に自らに封じられている力を薄々ながら感じていた。その正体を探る術が何処かに転がっていないか】
【ひたすらに古い書物を読み漁るも、今日までに目立った手掛かりは得られていない。時が経つにつれて、疑問は深まるばかり】


俺は……俺を作ったのは誰だ?


【人が自らの造物主を語る時、多くの者はそれを神と呼ぶ。仮に彼を作り出した者がいるとして、それが彼にとっての神たり得る者か】
【それを見定めるには、彼は余りにも未熟過ぎた】

/予約置きです


729 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/23(水) 22:01:19 WMHqDivw0
>>725

【――――目を覚ましたら朝日に硝子体を焼かれた。呻いて寝返りを打つのなら】
【そういえば顔が痛くない、ということに気付く。乾いた血で鼻腔が詰まっているということもない】
【自分で力任せに、曲がっていたのを直した痕すら残らない。ので、あれば、ゆっくり起き上がって】

【あんなに騒々しかったネオンはすべて沈黙していた。当たり前のことだった。こんな売女だから】
【間違っても腕時計なんかしているはずはない、だけど、今が朝であることくらいはわかる】
【昇りきらない陽光に独特の黄色っぽさ。目を細めて、ぼうと見やるのであれば――――】


…………………………また「ヤって」もいいってコト? あははっ。


【自分が生きている証だから。ならばまだ殺せる。何人でも、何回でも、好きなように】
【死んでいないならどうでもよかった。「ヤり損ねた」ことだって左程恨まずに――けれど】
【もう一度会えたならその時は、二度と、損ねない。そればかりは確証させるような笑い声の残響】
【残して――痛々しく危うげな足取りは、薄汚い路地の枝分かれしたどこかへ消えていった。沈黙。――、】


//ありがとうございました!


730 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/23(水) 22:55:21 X5S7xS660
>>690


【シニヨンを解いた。零れ落ちる天河色の錦紗。ニットを脱ぎ捨てた。露わになる残雪色の体躯。軋むスプリングの上で月明かりに照らされて曖昧になるボディライン】
【誇示するように組んだ両手を伸ばせば、甘い肉付きが弓形りに反る。悉く酷く薄い色調だった。 ─── だというのに豊潤であり耽美だった。】
【艶かしく伸びた指先が、少女を守る布地を酷薄に剥ぎ取っていった。そうして曝け出された痛みさえ、慈しむように指で撫で上げて、やがて】
【いざなう為に細い手首へ辿り着き、その末梢を指先に搦め取る。とうに脚先は絡めていた。青く澄み渡る隻眼は、その透明度を檻として、震える呼吸を囚えていた】



    「 ……… やぁよ。」「私、その為に貴女へ尽くすんだって、決めたの。」



【引き倒されるまま哀れな少女へと跨る。探り合うような距離感で囁く声はやはり残酷だった。】
【しなだれかかるように上体を下ろす。柔く圧し潰すように体重をかける。漆黒のレースに彩られたショーツも脱ぎ捨てられてしまうなら】



       「安心なさい。 ─── わたしは、」「"はじめて"ですから。」



【何度目かも分からないキスに意味を求めても仕方がなかった。 ─── そうして、きっと、解らせるのだろう。絶望を命じるように、明かりは消えた】

【妙齢の服飾に隠されていた、得体の知れぬ熱の正体。何処までもそれは雄と獣性の結実でしかなく】
【それでいて少女の教え込まれたどのような法悦よりも巨躯であり凶暴であり膨大であり兇器だった。だというのに完成されたアリアの白い肢体に何処までも相応しい】
【彼女はひとでなしだった。このような身体に成り果てるのも容易い事だった。ブラインドは落ちていた。カーテンは閉ざされていた。ならば朝が来る道理もなかった】
【 ──── 少女が待ち望む乳と蜜さえ、その胸房に孕む身体になっているのだから、夜伽は果てしなかった。どれほどに吐露しても、尽きぬ情ばかり、重ねて】


731 : ◆rZ1XhuyZ7I :2019/01/24(木) 01:22:11 smh2z7gk0
>>727


『ああ、だからこその〝特務機関〟だ。』
『フットワークを重視し国家の繁栄のため〝あらゆる手段〟を模索する。』

『―――まぁ兄妹のようなものだよ、〝氷の国〟を守護するために作り出されたね。』


【不満そうなオブライエンを横目にテルミドールは続ける。】
【〝国家を守るために作られた〟という言い方は様々な想像を呼ぶかもしれないが、その真意は不明だ。】


『悪党、だからこそだよカニバディール。』
『先述した通り非合法な任務にもつく我々だが、それでもやはり限度というものがある。』

『そこでだ、君達のような数と質両方を兼ね備えた強力な協力者が欲しい。―――というのは一つ目の理由だ』

『もう一つは君のその小さいながらも柔軟性のある心臓、それによって齎された様々な〝縁〟。』
『出来れば仲介をしてほしいのだよ、我々が表立っては取引が出来ないような相手との交渉のね。』


『―――譲れない部分については承知した、肝に銘じよう。』


(八課の連中とは犬猿の仲ってか、私の立ち回り次第では色々と面倒な事になりそうだ)


【真っ当な、真っ当すぎるほどの理由を並べるテルミドール。】
【その脇で〝外務八課〟と少なからず繋がりのあるコニーは奥歯を噛みしめた、厄介な事になると】



『ふむそうだな、まずは簡単な一仕事を請けてみないか?それで旨味があるようであれば手を広げていってもらう』
『最初の謝礼についてもその案件の際に提示させてもらおう。』



【テルミドールはここに来て〝引いてきた〟。一気に話の規模は縮小する。】
【そこには単純かつ明確な意図がある。だが石橋を叩いて渡るカニバディールはどう受け止めるか。】
【静寂が流れる―――騒ぎが起きてからしばらく経っているのは確かだ。】
【もしかすれば、テルミドールの今までのやり取りは〝時間稼ぎ〟の可能性も浮上するかもしれない。】


732 : 名無しさん :2019/01/24(木) 04:06:28 EoFUhrnY0
>>730

【シニヨンを先に解かれてしまったのが引き裂かれてしまうみたいに悔しかった。せめてその毛先を解放してやるのが、私のこの指先だったなら(何も変わりやしないけれども、)】
【泣きじゃくるように恨めしそうな目がじっと見上げるのだろう、それでいて、その本質はきっと限りなくお腹を空かせた赤子と等しくて。寝返りの作法すら知らぬ新生児のように】
【どこまでも白い頬をどこまでも赤く染めあげて、だからきっと赤い女王様だって満足してくださるに違いなかった。――タイツを抜き去られる足先など、与するよう爪先を擡げ】
【やがて隠し切れない発情を隠すせめてもの布地すら容易く取り払われてしまうのなら、真っ白な/蛇の指先は間違いなく逃げ出す仕草として、その後頭部を捕まえて】

【――だから無限に等しい数秒の果てに観測するのは、やはり恨めしそうに細められた両眼なのだろう。うんと色素の薄いマゼンタの紅紫、残酷さに涙ぐむから】
【それでいて決して本当に泣きだしてしまいやしないのは、結局どこまでも組み伏せられ屈服させられるのが心地よいという自供であるのだろう、ならば罪状は読み上げるだけ無駄であり】
【私刑にしか裁けぬのだと誰にだって理解させるのなら、絡めとられる指先は怯えに似て震えながら幼子よりよほど愛おしく握り返す、うんとおっきな掌と繋ぐ作法も慣れたもの】
【そうしてゆるり体重を掛けられるのなら、――圧し潰された胸元から漏れる吐息は無為の色合い、耳元をこそばく擽るのすら仕返しの色を持たぬほど、顔も赤いんだから】

【ならば、張り裂けてしまいそうに喧しい鼓動すら聞かれてしまうのかもしれなかった、瞬きのたびに呼吸すら忘れてしまいそうなほど、どきどきしているのに】
【だから頭だって撫でてほしかった。耳元に優しく愛だって囁いてほしかった。首筋にキスを落として、それから、それから、――そんな"行為"、一度だって、知らないけれど】
【知ってるはずなのに知らないふりして生娘ぶって硬く結ぶ唇すら解かれてしまうと運命づけられているのなら、何もかもが神様の定めた通りだって、(本当に?)】

――――――――――――――――――――安心、できない、ぃ――っ、

【唇を抉じ開けられる瞬間に上がる声はどこまでも今際の瞬間に似ていた、遺言と全く同じ意味合いを持って、けれど残るものがあるとして、金だなんて下らぬものではないなら】
【たとえ子を孕めぬのだとしても彼女は少女であることを選んで生きていたから。傷だらけの小部屋を宥めすかす方策さえあるのなら、それとも血と共に滴る一粒を拾い上げられるなら】
【とかく確かであるのは抱き縋る腕の力強さには心当たりがあるのだとしても、耳元で泣きじゃくる/鳴きじゃくる声の甘ッたるさ、一度たりとも聞かせたことがない色をして】
【よしんば聞いたことがあるのだとしても、――安物のディスク越しでは決して再現できぬ体温も湿度も香りも味もがそこにあった、汗に縒られた薄藤のキューティクルの一片すら見せつけて】
【一息ごとに息絶えるように詰まる湿っぽく固形じみた吐息が肌を撫ぜる感覚も色鮮やかに伝えてしまうから、法悦と享楽は終わる必要すらないのだとしても、】
【――――踊り食いの白魚みたいに慄く足先も無限ではありえないから。朝は来ずとも甘やかな声が嗄れてしまう刹那に、気絶によく似て、ふっと眠ってしまうのならば】




733 : 名無しさん :2019/01/24(木) 04:06:58 EoFUhrnY0


【けっきょく彼女が目を覚ますのはサンタさんも一仕事終えて、たっぷりいいお酒を飲んで、とっておきのごちそうを食べて、――疲れて眠ってしまっただろう、そんな頃合いで】
【くしゃくしゃの寝ぐせを整えるより先に時計を気にして、――文字に翻訳出来ないような声をしばらく上げた、その喉だって、嗄れ果てていたから】

【(そうして眠った、夜。日付的には二十五日から二十六日に替わる夜であった。――――そして、迎える、朝)】
【(枕元に見慣れぬ"なにか"、並べられているのだろう。そう大きなものではないが上等のテディ・ベアが二匹。足裏に縫い取られたシリアルナンバーすら連番であり)】
【(ちょっとだけ"遅すぎる"赤いマントと赤い帽子をかぶっているのが不慣れと不憫を彩っていた、――とはいえどちらも紐を解いてやれば着脱できるものであったから)】
【(そして未練がましく/後生大事に抱えているメッセージカードにはいくらかの書き慣れぬ様を隠しきれない異国の文字列、言い訳じみて/意地っ張りに似て、)】

"Dear You Two Princesses,

Sorry to be late!

With love,
Santa Claus xx"

【――ひとまず確かであるのは、やっぱりサンタクロースは実在するらしかった。ただ、とりあえず、あわてんぼうの奴もいれば、おんなじくらい、のんびり屋も居るらしい】
【それとも二人世界中のなによりお互いを愛していたから、気を利かせて再配達をしてくれたのかもしれなかった。――不在表を投函していくだなんて、無粋すぎるのだから】
【だから、――、もし気づいていたのだとしても、なにも言わないのが賢明であった。まだあまり多くない少女の私物、ここ数日ばかり、やけに一か所にまとめ上げられて】
【まるで何か隠すみたいだった、なんて、――。――「アリアさんいい子だったからサンタさん来てくれましたね――」なんて、照れ笑いする少女のあどけなさを護りたいなら、だけど】

【(それからも一つ。"その"夜から、少女の甘え方、少しだけ、変化して。――前より直接的になったと思わせるには十分だった、甘えん坊さんにはまだ少し、物足りないけれど?)】


734 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/24(木) 14:21:16 5p38.LtA0
>>717>>718>>723>>724

「な、何だ!?どうしたんだ!?」
「解りません……ですが、これは幻術?となれば、強力な精神攻撃?いやしかし、これはあまりにも……」

【その様子を傍から見ていた二人には、何が起こっているのか把握しかねていた】
【魔方陣に囲まれれば、其々が一人でに苦しみだし】
【或いは、何か喚きながら泣き始め】
【或いは、銃をまさに無鉄砲に乱射しては同様に叫びを上げて】
【見るに耐えない、あまりにも悲痛な顔は、この精神攻撃の効果を如実に示し】

「ふっ、脆い物で御座いますな……」
「バケモノと言えど、心はあるらしい、なればその心を砕いてしまえば後はこちらの意のままよ」

【夢想の中で】
【ありもしない知古の者達の、あるいは親の、あるいは大事な誰かの】
【死に姿を見せられ、口々に罵倒され責められる】
【苛みは蝕みへと変わり】
【何たる苦痛、何たる凄惨な仕打ちであろうか】
【常人ならば、その場で発狂しても何ら不思議はないであろう】
【少女も女性も、とてもではないが戦うことは愚か、立つ事すらままならないではないか】

「さらばだ、バケモノ共、来世にでも期待するが良い……最も」
「地獄に落ちなければ、だがな……」

【軍刀を引き抜き、指揮官が、先ずは月白色の少女に迫る】
【冷たく光を反射する軍刀は、正確にそのほっそりした首目掛け】

「杉原あああッ!!」
「軍曹、見ていられません……行きますよ!!」

「させると思うてか、陸軍の狗共!!」

【妨害に出ようと、怪我を押して中心の二人が飛び出ようとし、それを副官が止めんとしたその時だった】

――バウウウウウウウウウウウウウウウッ!!

「何、何者ッ!!があッッッッ!!」

【その場を裂いたのは、エンジン音と】
【そして一筋のヘッドライト】
【一台のオートバイだった、青いフルカウルツァラーバイク】
【前輪を上げて走行し、その前輪は少女を葬らんとしていた指揮官の顔面を正確に捉え、そして弾き飛ばした】
【あるいは、月白色の少女にとっては、別のオートバイを連想するかもしれないが……】
【運転者は、グレーのスーツに黒い冬用ライダースウェア、マットブラックのシステムヘルメットの男性】

「お、遅いだろう!!お前!!」
「すみません、アリアさんもミレーユさんも連絡が付かなくてですね、僕だけ単独で来たんですよ……何はともあれ……」

【システムヘルメットのシールドを上げながら】



――外務八課、状況開始ってね――


【弾き飛ばされた指揮官は、何とか軍刀を杖にヨロヨロと起き上がろうとするも】
【少なくとも、少女とカイに掛けられた幻術は解けただろう】
【少女とカイの二人の目には、闇がひび割れ、自分たちを罵り苛んでいた者達の死に姿が風に舞う砂の様に、或いは溶け出す氷の様に、その場に消えて】
【元の倉庫群の風景が広がっている筈だ】


735 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/24(木) 14:43:54 5p38.LtA0
>>720

【まるでそう、至上の音楽を聴くような、そんな心地良い表情のブランルだった】
【この男もまた、紛う事無き闇なのだ】

「お気に召して頂いた様で、何よりですブランル殿」

【こちらもまた、ブランルの上機嫌な様子に、ニイと口角を吊り上げる様な笑みを浮かべて】
【その様子を、少女は相変わらず無表情のまま眺めているのだが】

「その言葉を捉えるならば、ブランル殿、貴殿は死の軍勢すら本来の目的ではないと仰られるか?」

【面白い事を聞いた、そんな表情で、ともすれば悪戯を思いついた子供の様にも見える表情で】
【そう訊いて】
【真、この二人、表情からは真意を読めず、かつ、そう何処かに決定的なズレがある様で】

「良い取引が出来そうです、流石はレヴォル屈指の実力者……」

【返答には満足げに、こう答えたらば】

「そして、これより開発するホムンクルスも、そして不死の軍勢もある一点改良を加えて欲しいのですよ」

【やや、間をおいて、こう切り出して】

「一台のコンピューター、その制御システムに繋げ意思を、行動を、能力を、管理出来る様にして欲しいのです」
「そのコンピューター、及びシステムはこれよりオーウェル社に発注するつもりなのですが」
「これこそ、計画の肝の部分……出来ますかな?」

【再び顔の半分にシルエットを落としたかのような表情で、こう聞いた】



――そう、異能を魔性を、人が、科学が完全に使役し利用する、これぞ究極の兵器の姿――


【表情はどこまでも、口元のみの笑みを崩さず、瞳は光を湛えて……】


736 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/24(木) 16:57:03 YINBk/ww0
>>728

【風が羽ばたくその名残、微風と呼ぶには猛々しく、暴風と呼ぶにはささやかに、時に荒ぶが世の常に】
【一陣吹き抜けるのは多分、風、その熱量が冷たいと感じさせて、傾いた月の憧憬を案ずる】
【彼は立っていた、貴方を見下ろす様に、その呟きをはっきりと聞いて】


君がどういう思考で "作った" と表現したのか俺は知らんが、聖職者たるもの悩める子羊を導くのが仕事だろう?
物質的な存在として君が出来たとするなら、君を作ったのは "両親" だ、─── だがこの場合は "産んだ" と表現するのが正しい
ならば君は無意識的に言葉の選択を誤ったのだろうか、それを否定する材料はそこら辺に散らかった書物にある

哲学書に科学書、魔術書の類もあるな、だとすれば君はそれなりに高度な知能を持つと類推できる
故に君はそれ相応の意志を持って "作った" と表現したのだろう、思考の出発点としては悪くない
君が人間でない、という仮定もまた、この条件節から導けるのだが


【黒い短髪を派手に撫で付け、胸部を大きく露出した耽美的な黒のドレスシャツ】
【黒の司祭服を袖を通さずに羽織り、首元には申し訳程度のロザリオを垂らして】
【真紅の瞳が印象的な長身の男性であった、止まることなくつらつらと述べて】


ふむ、ここで一つ尋ねてみるとしよう、君は自分を作ったのは、何だと思う?


737 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/24(木) 19:54:29 YINBk/ww0
【トリカゴ本部、電波塔】

【彼は塔を登っていた、体重を感じさせない軽やかな足取り、羽ばたく鳥ですら、その名残を辿れず】
【鼻歌混じりの囀りが、僅かばかりの無垢と溶けて、軈て綴るは吐息の調べ】
【最上階、─── 我らが飼主に、溢れんばかりの託宣を】


今朝、小鳥が一人旅立った、空より遠い場所に憧れて、あの雲さえも置き去りにして
僕はそれを見送った、百と二十一時間、僕は彼女と児戯の様な巣を作って、少しばかり慰めあった
ねぇ、キミは僕をどう思っているんだろう、僕らの飼主、僕らを僕らと定義する籠の主よ

また僕は一人佇む、その寂しげな枝葉に、小鳥が止まる様願いながら


【黒い襦袢の襟を覗かせ白衣を纏い、その上からローブの様に千早を羽織る】
【黒袴と白い足袋、草履を履いた出で立ちは完全に巫女装束であり】
【長い純白の髪と濡羽烏色の双眸、女性的な顔立ちであったが、何処か鋭利な印象が目立つ】

【 ────── 止木が一人、榧、彼はまた、巣作り相手と死に別れた】


聞きたいかい、彼女がどうして死んだかを


738 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/24(木) 20:30:19 WMHqDivw0
>>737

【頂上には真っ白い部屋があった。そう広くもない空間に、ベッドがひとつ、ぽつんと在って】
【その周りには管。管。管――毛細血管めいて其処彼処に廻らされるのなら、循環を司るのはいくつかの機械であり】
【彼はその末端に繋げられたひとつの細胞みたいに、やはりぽつんと小さく其処に在るだけだった】
【斑鳩・澄生。いかるが・すみお。ただひとりの男の名。枯れ木と呼ばわるにしても頼りなさげな輪郭と】
【彩と艶を失って久しいような、ぱさぱさで真っ白な髪と肌を持つその男は、齢をまじめに数えるならば】
【ちょうど人生の折り返し地点に到達した、くらいのそれのはずなのに――もう、老い切っていた】

……………………聞きたい半分、聞きたくない半分。
榧、きみはどうも――どっしりと安定した巣を作るのが、苦手みたいだ。
いや、…………本当はそうではないということはわかっているよ。
きみは器用だ。小鳥が永く留まれるような巣だって、本当はいくらでも作れるはずだ。

ずっと不思議には思っていたんだ。……どうして小鳥を守ってやらない?

【細い咽から迸る、枯葉の擦れ合って立てるような声色。それは穏やかな感情を孕んでいて――】
【――あるいはもう、感情を乗せることすら出来ないほどに弱り切った掠れ声であるだけかもしれない】
【とにかく彼は、怒らなかった。けれど籠の中で死んだ小鳥への哀れみばかりは拭うことができず】
【すこしだけ責めるような言葉遣いはしていた。それは彼を守ってやるべき大人としての態度だったのか、あるいは】


【――――かたわらには女がひとり佇んでいた。パイプ椅子に座って、彼を生かす機械の手入れをしている】
【小鳥の誰かが言っていた、「みどりさんは飼主様の秘書ってヤツなんだよ。一番近しい部下!」。もしくは、】
【止木の誰かが言っていた、「飼主様が一番偉いってコトになってるけど、本当はみどりさんが一番すごい人らしいぜ」】
【いろいろな噂の飛び交う女。齢は寝そべる彼と同じくらいだろうに、まだまだ若々しさと柔らかさに満ちている】
【緑為す黒髪の艶かさと、黄味がかった白い肌を淡色のスーツに隠す女。名は織部みどりとされていて】
【ほんとうにいろいろな噂を纏っていたが、それらに共通する事項としては、「常に斑鳩のそばにいる」ということがあり】

【「榧くん、あまり刺激するような言葉は言わないであげて頂戴ね。澄生くんは体が弱いから」】
【そう言っては――もう一つパイプ椅子を用意してやるのだった。座ってもよいということだろう。そうしなくても、いいけど】


739 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/24(木) 20:38:35 ef40Xvm20
>>735

【究極の兵器──その寒気さえ感じさせる一言に黒衣の男は笑みを深くする】
【口端の角度が上がる。そんな何の変哲もない表情の変化。だがそこには小さな意味が含まれていた】


……究極の兵器、か
“子供のような”純粋な夢だな、蘆屋道賢


【語りかける声音には僅かな侮蔑。その遠大な計画を携えた一国の海軍の司令長官を前にして】
【魔術師はまるで出来の悪い生徒を見るような瞳を向けていた。傍らに副官と思しき女性がいるにも関わらず】
【さらには取引を持ちかけてきた“客”であるにも関わらず、そんな言葉を向けるほどにこの男は傲慢だった】


良いだろう。人体を部品と見做すことには慣れている
お前でも動かせるように“たった”一台の演算装置のための調整を施してやろう


【礼儀を失した態度はそのままに、ブランルは道賢の要求にもあっさりと答えた】


しかし、一体何のために“そんなこと”をするのだ?


【友人同士の会話のような気軽さでブランルは質問を一つ投げかける】
【そんなこと──それは一つの装置で軍勢を操作可能にすることでもあり、イージス艦計画そのもののことでもある】
【その計画や武力のその先に何があるのか。それを問うていた】


740 : ◆ImMLMROyPk :2019/01/24(木) 20:40:50 Nt7ZtIVU0
>>736
【芽吹き始めた草花が微風に揺れ、来訪者の存在を彼に告げる】
【視界を埋めるように立つ男、彼より幾らか背が高いように見える。彼と同様に真紅の瞳を持つ、恐らくは人間】


長々と解説している所で申し訳ないが、お前は誰だ?
聖職者……であれば、神父か牧師だろうか。標準的な神父牧師の姿とはかけ離れているように見えるが


【単刀直入に眼前の男へ問いかける。その口調は壁に物を投げつけるかのように冷ややかで】
【独り言、と思われても仕方のないようものだった。対象が明確な今はそう思われる心配も無いだろうが】


俺を作った者……?それは……
人間は親となる個体によって製造される。だが、俺は……わからない
俺には親の記憶などは存在しない。目覚めた時点で、俺は俺だった


【聖職者らしき男の想定通り、彼は平凡な人間とは言えない存在だ】
【そして、彼もまた自らが何者なのかを追い求めている。ただ只管に、野を走る獣が如く、絶え間なく追い求めている】


741 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/24(木) 20:46:21 YINBk/ww0
>>738

【勧められた椅子に悠然と腰掛けた、みどりに対する微笑みは媚態を帯びていた、流麗な目元に憂いを垂らして】
【誘惑、それは彼の習性とも言えた、無意識か意識か、何れにせよ彼は誰でも手を伸ばす】
【そこに僅かばかりの意図がなくとも、結果的に答えが浮かぶ】


─── 小鳥を守るべき、だなんて価値観を僕は理解できなかった、僕ら止木は、小鳥に守られるべき存在だから
スゴモリ自体もそうでしょう、僕らの力は双方向じゃなく、一方的な指向性を持っている
それは雨が逆流しない様に、僕らは一方的に、小鳥に守られる事しかできない

キミがそう僕達を作ったんだ、だから僕はそれに従う


【管に繋がれた貴方を見つめる、その瞳に微かな彩りを映して】


最後、サエズリが聞こえた、────── 断末魔かな、悲しい悲しいさようならの行方
僕が言いたいのはそうじゃない、彼女の最期を僕が汚したい訳じゃなくて

─── どうして彼女がハバタキを使わなかったのか、だ


【彼は一つ謎を提起した、自分達の身に起きた、事件を】


742 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/24(木) 20:54:58 YINBk/ww0
>>740

【ふん、と鼻を鳴らした、凡庸な答えだと思ったのだろう、表情に浮かべる色は変わらない】


俺はマーリン、まあ今の所はそれでいい、名前を告げることそのものに意味はないからな
標準的ってものは曲者だ、制服で個性を塗り潰してしまう事は一方的な虐殺でもある
全ての人間を平等に扱うのも良いが、それは時として平等さを失う結果にもなる訳だ

平等に与えるか、平等になる様に与えるか、だ、─── 今の本質とは関係ないから詳しくは省くが
個性的である事を表出する為には、標準的からかけ離れる事も必要、と言っておこう


【思案する様に表情を変える、興味深そうな色合いを示して】


ふむ、だとすれば一般的な人間という枠組みからは離れる訳だな、一つ目の指針だ
もう一つ聞こうか、君は生まれた時点で俺という自我を持っていたと表現したが
身体的な状態は? 今の君と同じ位の体格で、身体的特徴を有していたか?

加えてそれは何時ぐらい過去に遡る? 何十年も昔か、或いはつい最近の事か
記憶はなくとも記録はある筈だ、まずはそれを知らなければならない


743 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/24(木) 21:25:49 WMHqDivw0
>>741

【座った脚を斜めに並べて、みどりはただ微笑んでいた。可愛らしい子供の悪戯だと思っているのか】
【あるいは。――、どちらにせよ諫めるような物言いはしないのだけど、態度がそう語っているようで】
【見えないバリアを薄く薄く張っているような気配があった。柔らかく長い睫で、視線を誘導する】
【あなたの話すべきはわたしではないでしょう。そうとでも言いたげに、顎を一度だけ引いて】

守り守られる、お互いにそうし合うことを目的として、そうしたつもりなんだけど――
空を自由に羽搏いて疲れた小鳥を癒す力。ぼくはそれを、きみたちに与えたんだから、
有効に使ってくれないと…………、…………。

………………ハバタキを使わなかった? 何故。
いつも命をたいせつにするようにと言い聞かせているはずだよ、…………、

子供には反抗期がある、それくらいは解っているけれど――
何もそんなところで反逆しなくても。…………何があったんだい。

【その向こうには僅かに身じろぎをする男の気配があった。それだけで何かしらのアラートが鳴る】
【すればみどりが顔を顰めて、天井から吊るされた立ち上がって点滴パックを弄りだす】
【桃色のポリッシュで薄く塗り固めた爪先、それでどこかの壁をかすかに小突く。抽斗が出てくる、】
【その中に仕舞われていた注射器のカバーを外して、パックに打ち込む。アラートが鳴りやんで】

【「恐ろしいお話をするのなら、わたしを挟んでからにして頂戴。ずいぶん前の駒鳥のときだって」】
【「澄夫くんたら動揺して、ひどいことになったんだから」 ――空になった注射器を捨てる、】
【すれば床が静かに波打って、それを飲み込む。そうしてまた白い部屋に静寂が満ちる――続く言葉を待って】


744 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/24(木) 21:37:04 YINBk/ww0
>>743

【榧は怜悧な瞳でそれを眺めていた、表情の機敏が薄い、それは当事者と言うよりかは観察者の目】
【凡そトリカゴに存在する人間とは思えなかった、滔々と語る言葉には温もりが薄く、白妙の如く】
【けれども、彼は確かに止木であった、何処まで行けど、心は見えず】


価値観の違いだね、キミの定義付けと僕の理解とが交わらないって事は、僕の行動に変わる余地が無いってことだから
でも僕はそこまで冷たい人間じゃない、傷ついた小鳥が寄ってきたなら、スゴモリを施す事もする
だが、出来なかった、彼女は自分が死ぬ瞬間に於いても、ハバタキを使わなかったのだから


【状況は榧を止めない、彼は淡々と言葉を重ねた、そこに至る事実を綴って】


僕は考えた、彼女は死にたがっていたのか、と、少なくともそんな素振りは見せなかった、加えて、───
彼女は僕なんかよりよっぽど、君の信奉者であったから、その教えには忠実に従う筈だ
なら答えは一つしかない、彼女は死ぬ間際に於いても、"ハバタキを使えなかった"


────── だから僕は此処に来た、君に確かめる為に


僕らの力は君から受け取ったものだ、それならば、君が奪う事も出来るのではないか、と
僕は君を疑っている、僕らの偉大な飼主は、籠の中の鳥を曖昧に殺すのではないか、と


真実を聞こうか、────── 君は僕らから能力を奪えるのかい?


【それは質問の体裁を借りた追求にも思えた、あまりにも苛烈な】


745 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/24(木) 21:43:53 6.kk0qdE0
>>739

「究極の、とは余りにチープな、子供の表現であったかな?ブランル殿、しかし、それ以外に言い様もございますまい」

【ブランルの僅かに侮蔑を込めた様な視線と物言いであったが、其れでも尚、愉快そうに口元は嗤い】

「武器とは画一的に利用され、安定して運用されて初めて意味を成す物です」
「魔能や異能とは、単体毎で見れば非常に強力な力だが、個々人のポテンシャル、力量による部分が余りにも大きい」
「現に、我々は『みらい』にも逃げられる始末だ……故に魔能や異能を兵器、軍用品たらしめるには、科学による制御と統制が不可欠と言えるでしょうね」

【この部分、理屈としては非常にシンプルな様だ】
【あくまで、軍学の基礎に則った、極めてシンプルで、極めて当然の理屈】

「ご理解、ありがとうございます、『部品』や『材料』が足りなくなりましたら、幾らでもご提供させて頂きます、何、我々は軍、幾らでも調達出来ます」
「必要がありますれば、ヨシビもご紹介しましょう」


【そして極めて、黒幕の其れに近しい考え方】
【ブランルの承諾には、この様に答えて】

「良い質問です、流石はブランル殿……」

【思えば、当然の疑問かも知れないが】
【ブランルが其れを口に出せば、更に気を良くしたかの様に、こう口元のみの笑みを深めて】

「其れは、彼女に関係があります、此処からは妲己様にすら申し上げていない話」

【傍の黒い和装の少女に顔を向けて】

「ブランル殿、疑問に思われませんでしたかな?」
「ホムンクルスや、異能、魔能の運用、魔力の運用方法、これらは本来櫻には無い魔術の系統であると」
「魔導海軍は、あくまで陰陽家や櫻の魔術師、異能使いの家が主体となって作り上げられたもの」
「特に、ホムンクルスを駆使した軍艦など……完全に錬金術師の領分だ」

【此処で視線をブランルに戻して】

「その技術は、何処から齎らされたのか?と」

【このまま話を続けても構わないだろうか、その様に気遣う様に、確認する様に、ブランルに問ひ返す形で、彼の姿を見やり】
【もう1人の少女も、また、静かに感情の色無き両の瞳がブランルをじいと捉えて】


746 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/24(木) 21:55:31 WMHqDivw0
>>744

………………。使えなかった? ぼくがきみたちにしてやれるたった一つのことが、
できなくなった、…………そんなまさか。あのドクトル・ジンジャーにまで協力を仰いだんだ。
そこまでやってきみたちに与えた異能が、消えるわけがない…………。……、

――――――奪えない。そんなことができるはずない。それは確かなことだ。
卵を破って生まれた雛が、また殻の中に戻るようなことなんて、現実には起きないだろう。
そして、罅割れた殻を元通り――継ぎ目のひとつもない状態に戻すことなんて、不可能だ。

それと同じだ。ぼくたちは、ぼくたちが与えたチカラをきみたちからは奪えない――――


【……………………ならば、】


………………奪われたとでも言うのか? 誰に。例の、オメラスとやらの人間か――


【――――電子音。また新たなアラート。うんざりしたような顔でみどりがそれを止めに行って】
【戻ってくるならば、今度は注射器ではなく、新しい管を手にしていた。持ったままベッドのそばに立って】
【男の病衣の袖を捲る。枯枝より細い腕に駆血帯を巻き、消毒液で満ちた綿で拭って、】
【管の先端に取り付けられた針を、音もなく白く乾いた肌に埋めていく。一連の動作を無言で終えたら】
【また離れて椅子に座りなおす。静かな動作だった。珊瑚色の唇の隙間から吐息を零して】

【胡乱な視線の先で斑鳩はやはり動揺しているようだった。ちゃちな精神性をした男だった】
【きっとひとつの組織を包括するに値しない人格であるのだろう。であれば、みどりの噂にも信憑性があった】
【陰ですべてを操っているのはこの女なのではないか。……それにしては、彼女は何にも興味なさそうな顔をしているが】


747 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/24(木) 22:06:41 YINBk/ww0
>>746

【そうであるならば、榧の言葉は斑鳩に向けた様でありながら、その奥にいるみどりに向けたものなのだろう】
【アラート、対応、繰り返される動作は日々の様相を思わせて、進むことの無い無為を示すが如く】


────── なるほど、"オメラス" というのか、能力を奪う人間がいる、そういう理屈なら
なら理解できるね、何故ハバタキを使わなかったのか、嫌、正確には使えなかったんだろうけど
さぞ無念だったろうね、彼女が持った力、羽ばたく力を失った小鳥が地に落ちるのも道理だ

ねぇ、"キミ達" はどう思う? 飛べない小鳥は死ぬべきかな、好まれない止木は死ぬべきかな
だとすればあまりにも救われない、そうとも、どこまでも救われるべきではないのだから


【自問自答する様に言葉を辿る、榧は時にこの様な言い回しを好んだ】


でも、僕はキミに尋ねたい、僕達が狙われる理屈が分からない
例えばそれが無差別であったとしても、僕達は何かしらの理由を求めよう
もし、その理由がキミや、キミ達にあったとしても、責める気は無いけどね

────── 何でもいいんだ、過去へ置き去りにした罪でも構わない


748 : ◆ImMLMROyPk :2019/01/24(木) 22:20:58 Nt7ZtIVU0
>>742
俺はマーカスだ
マーリン、お前が一体何者かは現状では不確定要素だ。だが、少なくとも一定以上の知識を保有していると解釈する
その上で、俺はお前の質問に答えていく


【相手の素性は一切が濃霧に覆われ、完璧に秘匿されている。しかし、それは些細な問題に過ぎない】
【今優先すべきは自己解釈の更新だ。その為ならば、他人に先導されることも厭わない】


俺の身体に目立った変化はない。後々頭髪を整えた程度の変化だけだ
一般に人間と呼称される生物の特徴は概ね有していた、と記憶している

二ヶ月程前だ。それ以前の具体的な記憶、記録は保有していない。俺が『オレ』を認識したのも、その時が初めてだ


【人間的に言えば彼は生後二ヶ月弱と言うことになる。それにも関わらずここまで知性が発達しているのは不可解だ】
【何らかの特異要素を初めから、或いは目覚めてから少しの間に獲得した、と考えるのが妥当だろう】
【それだけの技術力を持つ者は、少なくとも現代では限られていると思われる】


749 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/24(木) 22:22:07 WMHqDivw0
>>747

【――――――ぷつん、とひとつ、スイッチのつまみを動かす音がした】
【薄桃色の爪先が、みどりが、そうしていた。すれば男の顔、薄い瞼が静かに降ろされ】
【息を引き取るよりも穏やかに、意識を途切れさせる。あるいはさせられる。そうして】
【次に響くのは椅子を引きずる音だった。立ち上がるみどりが、榧に向かい合うように座り直して】


「やめて頂戴ったら。榧くんは悪い子ね。…………それで、そう、理由。
 きっと澄生くんにわかるはずなんてないわ。そういう人だもの。いつでも自分の見たいものしか見ないの」

「だから本当に心当たりなんてないんでしょうね。だから、わたしが口を挟ませてもらうとするなら」

「…………、…………そうね。榧くんは、澄生くんのこと、どんな人だと思う?」


【つい、と。枯枝の腕をなぞる指先。いくつもいくつも刺された管の間を縫うように、迷路を解くように】
【一言一言、探して、型にはめてみて、違ったら外して、正解だったら組み込んで。そうして編んでいく】
【あるいは慎重に解いていくように。みどりは少しずつ、少しずつ、言葉を零していくのなら】


「澄生くんはね、ひどい人よ。自分がしたいと思ったことをするためならなんでもするの。
 たとえば、ひとりっぽちで死んでいく運命を定められた子供たちを好きなだけ拾い集めて、
 望んでもいない力を押し付けて、それで救った気になっている。そういう人だと思わない?」

「昔から、そうだった。彼ね、公安だか、警察だかは忘れたけれど――そういう組織に属していたのよ。
 そこでいろいろ、やりすぎちゃった。正義の味方になりたくて。強くなりたくて、いろんなことを、試していた」

「…………榧くんくらいの歳の子でも、知っているかしらね。哲学者の卵、そんなものにも手を出して――」


「だから、そう――――そのあたりじゃあないかしら。“何か”、あったのだとしたら。
 変な人に目をつけられてもまあ、おかしくは、ないかもしれないけれど。……わたしだったら放っておくけどね」

「そんな、勝手に、頼んでもないのにみずから羽を折って墜ちていく人なんて。面白がる人は、いるかしら」


【ならば、好きなように組み直して好きな形に整えるのは榧がやっていいことだった。欠片は勝手に散らばしているから】


750 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/24(木) 22:23:27 ef40Xvm20
>>745

【道賢の主張は全くもって完全に正しい。その正しい主張を、しかしブランルは読み飽きた書物を見るような瞳で聞いていた】
【正確な論理、真っ当な見解、正しき運用。科学者たる黒衣の男は当然それらの必要性を理解している】
【しかしその上で────】


────退屈だな、それは


【苦笑と共に、あっさりと切り捨てた】
【だがだからといって協力しないわけでもなければ、文句をつけるわけでもない】
【退屈そうに見えることだが、それでもその先に何を作り上げるのかは依然として興味があった】
【何より退屈であったとしても、『魔導イージス艦』はそれでも魅力的な兵器だと思えた】

【疑問に対する答えが始まる。ブランルはその黒絹の双眸を道賢の傍らで佇む少女へと向ける】


確かに、櫻の国では聞かない技術だ
魔術は技術。完全な異能とは違い、血統や突然変異によらずある一定の人間ならば習得が可能な技法だ
とはいえ、それでも才能は要る。その技術を兵力に転用するならば、確かにそれを持った何者かの手引きが必要だろうな?


【道賢の話に応答する言葉を選び出し、以って先を促す】


751 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/24(木) 22:33:36 YINBk/ww0
>>748

【マーリンはその言葉を心地よく感じ取った、表情に僅かばかりの愉悦を浮かべて】


────── いいぜ、そうこなくちゃ、つまり君は……ああ、ちげぇ、俺のパーソナルはそうじゃない
つまりお前はこう言いたいんだ "二ヶ月前に初めて生まれた" と
はは、お笑い種だろう? 一体どこの種族に二ヶ月でここ迄知識を蓄える事が出来る?

そう、"有り得ない" 人間でないのは珍しくない、人外なんて掃いて捨てるほどいる、だがな
それでもそいつらには、そいつらなりの理があるんだ、言いたい事分かるだろう?
つまりお前は何処まで "理屈" に合わない、存在そのものが理から外れてるんだ


【人間より知性の優れた人外は多い、けれども、それらにはそれらなりの理があった】
【それは人間より永く生きる種族であったり、人間より理解力が高い種族であったり、だが】
【少なくともマーカスの存在は、それそのものが突然変異であった、時代という枠組みに明らかに沿わない】


いいぜ、いい感度だ、昂ってきやがった、────── これぐらい荒唐無稽じゃなけりゃ考える価値もねぇ
正直に答えろよ、お前この二ヶ月で "何か変なこと" あったか? 自分の存在価値を一変するような何かが
多分ねぇよな、そんなあちらこちらで奇跡が起きてたまるか

だとすればお前の智恵は完全に先天性のものになる、いきなりその状態で生まれ落ちて知性も高いってどんなインチキだ
くく、────── いい感じにとち狂ってやがる、それをお前自身が認識してないこと、それが一番狂ってるがな

なぁ、お前、────── 何か "目的" を感じたことあるか?


【マーリンは見下ろしながらそう聞いた、彼にしては抽象的な問いであった】


752 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/24(木) 22:46:31 YINBk/ww0
>>749


孤独、虚無、偽善、────── 悲哀、僕が彼を形容する言葉なんてこれぐらいだよ、"みどりさん"

君の言う通りだ、彼の行いはただの偽善だ、一人で生きられない人間を生きられる様にする
無駄な延命治療と変わらない、傲慢な自己満足の為に生かされる者の気持ちを分かっていないから

そんな僕に誰が止まろう、安らぎを与える事なんて出来ない、僕は安らぎを知らないんだから


【榧は眠る斑鳩を一瞥した、冷たい視線であった、侮蔑と侮辱と、溢れんばかりの悲しさを含んで】


"哲学者の卵" ──── 本で読んだくらいだ、確か、そう、カノッサ機関が用いた悪性兵器
本当に愚かな人だったんだね、偽善者もここまで来たらタチが悪い、全くもって不愉快だ


【榧は背を向けた、用事は済んだと、立ち去る様に】





────── 全くもって、愚かだよ、────── 父さん



みどりさん、小鳥と止木達に伝えて、"必ずバディで行動しろ"って、電波塔から飛び立つ時が来た
相手は知らない、けど、何らかの理由を持って僕達を狙っていると考えよう

僕達は籠の中の鳥だ、でも、────── ただ食われる訳にはいかない


753 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/24(木) 22:48:30 6.kk0qdE0
>>750

「そうですね、全く持って、貴殿としては面白く無い話でしょう」
「余りにも、普通過ぎるのですからね……」

【今会ったばかりと言うのに、まるで双方を知り尽くしているかの様な、知古の者同士の様な遣り取りだった】
【その、薄く貼り付けた笑みを絶やすことは無く】
【そして、その表情のままに、話を次に持って行くのだ】

「ご理解が早く助かります、ブランル殿……」
「魔術とは紛れもなく魔力を運用する技術、技術なれば、その技術体系の延長であるのが道理、別の技術体系に飛躍するなど、通常では考えられない話だ」
「古代……シュメール人と言う者達が居ました、メソポタミア文明の礎を築き、出自は謎のまま、されど非常に高度な、その当時では考えられない程に高度な、まるで飛躍したかの様な天文学、医学、数学、科学の知識技術を有した民族だ」
「人類の進化もそう、猿からピテカントロプスへ……進化の飛躍は余りにも謎と疑問が多い」

「即ち、そう……歴史の要所要所、突如として導き手が現れ、人類を先導して来たかのように……」

【まるで散文詩を誦んずるかのように、道賢はブランルへと、妙にスケールの大きな話を語り出す】

「ブランル様……アカシックレコードはご存知?」

【黒い和装の少女は、此処で初めて口を開き、ブランルに問い掛けた】
【その佇まいによく似合いの、淡々とした感情の感じ取れない声と話し方】


754 : ◆ImMLMROyPk :2019/01/24(木) 22:58:15 Nt7ZtIVU0
>>751
あぁ、俺が人間とは違う。別種の存在らしきことは俺も認識している
理……つまりルールか。自然界における食物連鎖などの自然的法則から外れた異物(イレギュラー)ならば一定数存在すると思うが
そう言った単純なイレギュラーとも違う……言うなれば特異点(シンギュラリティ)と呼ぶのが適切か


【マーリンの推測は大よそ正しい。少年は今まで一人で書物を漁ることしかしてこなかったが、他者との議論により思考が加速することもある】
【外的刺激によって新たな考えが生まれることは、知的生命に許された発達方法の一つである】


変なこと……?少なくとも、俺の脳機関に劇的な変化が訪れたと感じたことはない
単純に、記録している情報が増えただけだ。フレームそのものが変化することは、俺が知っている限りでは無い

目的……目的は……?


【そこで、彼は答えの無い命題を押し付けられたように黙りこくってしまう。そして、情報を収納した脳の引き出しを全て解放し】
【何かしらの些細な変化でも思い出さんとする。辿り着いたのは、かつて怪物と戦闘を繰り広げた夜】


俺は少し前、マリアベルと言う女に連れていかれた場所で怪物と戦った
その時、薄っすらだが……
この世界に仇なす存在を、排除しなければならないと感じた。その後のことは、申し訳ないが記憶されていない


【目的。それも、他者を排除すると言う極めて攻撃的な目的が、彼の中に小さく存在していた】


755 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/24(木) 22:59:09 WMHqDivw0
>>752

【「そう」 ――――橙色を僅かに孕む桃色、珊瑚の色。そういう色の口紅を彼女は好んでいて】
【そこから漏れる音階はひどく平坦なものだった。榧の言葉を肯定も否定もしなかった】
【おそらく彼女は彼の口にした感情のすべてを斑鳩澄生に向けていて、あるいは、どれすらも持っていない】
【そう予感させる程度には、本当に色のない返答だった。きっとこの女は、籠の中の子供たちに興味を持たない】
【澄生と違って。絶望的に違うから、やはりこの女は――どこか不気味なのだった】


「――――――――――――それでも、父と、呼ぶのね」


【ただその一言だけを零して、彼女は視線を眠る男にスライドさせる。規則的な呼吸を繰り返す薄い腹を見て】
【(澄生くんは、「そう」なのに、わたしのことは、「そう」呼んで、くれないのね) ――などという感傷など】
【抱いたかどうか定かではないが。瞼を半分落として、去り行こうとする榧の背中に視線を戻すなら】


「そう。それでは、そうするけれど」

「あなたは、どうするの? 榧くん。新しい小鳥を、見繕うのかしら」


【やはり平坦な声色でそう訊くのだから、きっと情なんてかけてそうしたわけではないのだろう。ただ純粋に、】
【榧のゆくえが気になるだけ。……それすらそうでないのかもしれないが、だけど、だって】
【それでも小鳥を拾わないと言うのであれば――じゃあ、あなたは、喰われるつもりなのかしら。】
【それくらいは聞いておいてもいいだろうと思ったのかもしれない。一応、大人ではあるのだから】


756 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/24(木) 23:19:48 arusqhls0
>>754

【マーリンは些か皮肉めいた表情を見せる、問答法という手段を取ったのは正解だった、けれども、正解に過ぎた、と──────】


いい表現をするな、まったくもってその通りだと思うぜ、特異点、ぴったりだ
ならば特異点はどうして生まれた? この時代、この地域、この瞬間にお前という特異点が生まれた意義だ
異物であるのなら気にしなくていい、それは単なる合成ミスだ、だが、お前を特異点とするのなら話は違う


【マーリンは歩み寄った、マーカスの答えを聞いて、僅かに笑っていた表情から笑みが消える】


全ての仮定を肯定しようか、お前という存在は特異点であり、それは出立の時点から異なっていた
とならば、目的が必要だ、お前という存在を、目的を持ってデザインした何者かがいる
いいか、もう一度聞くぜ、お前は本当に “この世界に仇なす存在を、排除しなければならない” と思ったんだな

だとすれば答えは明白だ、お前をデザインしたのは “この世界” そのものでしかありえない

この世界そのものによって作られた存在、それがお前なんだろう

ならば、────── その目的とはなんだ、どうして世界がお前をデザインしなければならない?
或いは、そう、或いは ────── 果たしてお前一人だけが、その役割についたのか
もう一つ、何故お前は自分自身を、マーカスと名乗っている?


757 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/24(木) 23:28:15 arusqhls0
>>755

【彼は彼女に期待していなかった、ありとあらゆる思いを託すには、その沼はどこまでも深いから】


君に任せるよ、みどりさん、危なっかしい小鳥が居たら僕の所へ呼べば良い
僕はこんな止木だから、急場をしのぐには丁度良いでしょう、ほとぼりが冷めたら直ぐに別の木へ
それぐらいの役割にはなってみせるよ、僕も少しは、大人になったから


【榧は去っていく、少しばかりは熱のある返事だっただろう、榧にしては珍しく小鳥を見繕う事を肯定して】




【 ────── だが、みどりは勘付く筈だ、榧は元来、小鳥を取っ替え引っ替えする男である】
【特に “小夜” を失ってからはそれが顕著であり、着いた小鳥が数日で離れる事さえもあった】
【そして曰く、件の “ハバタキ” をせずに死んだ小鳥、とは極端に仲が良くなかった】

【有り得ない、────── けれども、榧という男自体がイレギュラーである事もまた、事実であるのだから】

【ここに一つの可能性が生まれた、即ち、榧が最初の段階から嘘をついていた場合】
【榧は自らの手で小鳥を殺し、小鳥がハバタキを使わなかったと飼主に報告する、何故か】
【それによって、“新たな小鳥” が見繕われるのが明白であるからだ、元来トリカゴはバディで行動するのを手本としているのだから】

【だとすれば榧は、自分が容疑者から逃れつ、新たな犠牲者を手に入れる為に、一芝居打ったのではないか、と】



【 ────── 榧の行方は、もう知れない】



/こんな所でしょうか! お疲れ様でした!


758 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/24(木) 23:39:29 WMHqDivw0
>>757

「………………………………。そう」


【去り行く背中を見つめる。そうしてから椅子を直して、ベッドに向き直るなら】
【静かに瞑目する。榧の「よくない」噂はいくらだって耳にしていた】
【あるいは自分と同じくらいに好き勝手言われているのではないかと思うくらいに、――、】


「…………澄生くん? 澄生くん。おはよう、榧くんは、帰ったわ。
 やはり誰かに、狙われているんですって。だからなるべく、ひとりで居る子には、
 早く巣作りをさせるように、と。言っていたわ、ええ、言っていた、けど」

「どうかしらね。…………澄生くんは、そう思うの? なら、それで、いいんじゃあないかしら」

「信じてみればいいんじゃないかしら。“息子”、なのでしょう? どうぞお好きに、して差し上げて」


【――――やがて目を覚ます男の手を握りながら。女は静かに微笑んでいた】
【きっと何もかもに興味がないからそんな顔をする。そんなことを言う。本当に、どうだっていいのだから】
【たったひとつの何かを除いて、織部みどりにとって世界とは、どこまでもつまらない代物だった】

【(だからきっとこの女は母になどなれないのだろう。そんなこと望んでもいないのだから。いないくせに)】


//ありがとうございました!


759 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/24(木) 23:40:38 BRNVt/Aw0
>>734

【魔方陣に囲まれ、踞り、頭を抱えて泣き叫ぶ月白色の少女】

──分かってる……分かってるからぁ……っ!
もう嫌だぁ……っ!やめてよぉ……っ!
私なんか要らないって知ってるからぁ……っ!
ねぇ、もう……っ、もう……死ぬからぁ……っ
要らない子は死ぬべきだってちゃんと知ってるからぁ……っ

【泣き叫ぶ少女】
【その背中に大きな一本の氷柱が生成され】
【その切っ先を彼女自身の背へと向けて】

【迫る指揮官】
【その声は、少女には聞こえなくて】
【──当然、唸るオートバイの音も】

【瞬間、少女の幻想でひび割れた闇】
【浮かび上がっていた自らを苛む者達の姿はさらさらと消失して】

────!

【それでも、少女は絶望に虚ろな瞳を揺らす】
【苛まれたって、それでも】
【唯一の家族/大切なひと達だ(った)から】

【置いていかないで、って叫ぼうとして】
【けれども嫌われてるって判っているから声に出せなくて】
【その手を伸ばそうとして】
【けれども誰もその手を取ってくれる筈ないって判っているから手を伸ばしかけたまま止まってしまって】

【虚ろな瞳は、誰も映してなんかいない】
【風に揺れた髪が晒した人の耳は何にも聴こえていやしない】

【だから、彼女の背にはまだ氷柱の切っ先が向いたままで】


760 : ◆jw.vgDRcAc :2019/01/24(木) 23:48:11 cYFHkbEU0
>>46

【――――そして、彼は消えていった。】
【寂しくないと言えば嘘になる。でも、もう悲嘆はない。あるわけがない。だって、あんな表情を見れば】
【彼が満たされたという事を、確信できるに決まっているから。―――それ以上、望むことがあるだろうか。】

【散骨するという選択。つまりは、誰かが訪れて死を悼んだりすることを、彼は望みはしなかったのだろう。】
【「そこに私は眠ってなんかいません」なんて、誰かが歌っていたっけ。墓標はあくまで彼が生きていた証であって】
【死を悼み名残を求める為のものではないのだろう。ならば、彼に会いに行くには墓標を訪れるのではなくて……】

そう、ですか。……ふふっ。そうですよね。
あなたは、人目に付く場所に留まりたくなんてないですよね。

……なら、思い出の中で会いに行くだけにしておきます。
きっと、あなたもその方が喜んでくれるでしょう?

【そう。思いを巡らせば、きっといつだって会うことが出来る。それでいい。それがいい。】
【言葉を投げかける相手は、もういない。再び一人になった自室に、呟いた言葉は響いて消えていく。けれど】
【きっと、言葉が届いていたなら彼は肯定してくれていただろう。そっと、伝った涙をぬぐって】
【自室を消灯して、暫く目を閉じる。先ほどまでのやり取りを、もう一度想い起しながら】

――――ありがとう、アルクさん。

【最後に会いに来てくれたこと。こうまでして、想いを伝えてくれたこと。これまでの感謝。他にも、色々。】
【最後の言葉が互いに「ありがとう」だったことは、きっと何よりも幸せな事だったのだろう―――】

//最後の最後にお返事が遅くなって申し訳ないです……!こちらこそ、ありがとうございましたー!


761 : ◆ImMLMROyPk :2019/01/24(木) 23:57:50 Nt7ZtIVU0
>>756
この世界……世界その物が俺を生み出したと、そう言いたいのか?


【突拍子もない、されど可能性は0とは言い切れない論をマーリンは提示してきた。それを踏まえ、彼は思考する】
【もし、世界が己を作ったのならば、何故初めから全容を開示しないのか。意図的に、小出しにするかのようなやり口の意味は】


マーカスは人に与えられた名だ。チンザノ・ロッソ、そう名乗る男に与えられた
世界も、俺も関係無い。単純な識別コードだ。だから……っ!


【その時だった。彼の瞳がぼんやりと赤く輝いたかと思うと、痛みに苛まれるかのように顔を抑え出す】
【眼球の中を流れるのは判別不能な古代文字らしき何か】


判別コード起動……外部接触による自己認識の変化を確認……第一封鎖機関解放……基底情報を更新……



『下がれ。人の子よ』
『これ以上の素体負荷は許可される段階では無い。直ちに接触を中断せよ』
『我が名は八光王バルフート。割拠する八王が一翼。人の子よ。我が子の魂を掻き乱すのであれば、黙して看過するに能わず』
『繰り返す。直ちに接触を中断せよ』



【突如として彼の口調、そして纏う気配が変化し、命令とも取れる内容を口にする】
【まるで彼の中にもう一人、彼では無い何者かが存在しているかのように、高貴かつ異様な雰囲気を醸し出していた】


762 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/25(金) 00:09:47 arusqhls0
>>761

【マーリンは見ていた、マーカスの変容を、僅かに片眉を上げてその様相を見下す】
【藪をつついて蛇を出した、────── 否、蛇ならばどれほどマシであったか】
【表情には出ない、此方もまた不遜な表情をしていた、その内面は伺えずとも】


……これはこれは、どんな秘密が隠れてると思いきや、飛びっきりの存在じゃねぇか
八光王ね、生憎と古錆びた神話に興味は無いんでアンタの名前を聞いたことも無いが
何やら随分と “偉そうな” 存在だな、─── いや、実際偉いのか

そのお偉いさんが “我が子” って言うくらいだもんな、なるほど、大体見えてきたわ
じゃあ言葉を返しますがねぇ、ちょっと突いたぐらいで乱れる魂ってどうよ
知性を持たせたならばそのリスクまで考えろよ、自分自身が何者か逡巡するのは知性を持つ存在なら当然だ

─── アンタもそうだろう、マーカス作れるぐらいの超越的な存在なら


【彼は言葉に於いて一歩も譲歩を見せない、それ程までに自身の力を過信しているのか】
【否、違う、─── 彼が信用しているのは徹頭徹尾自分の知性だけであった、何処までも】
【そう、何処までも正しく理を結ぶ、その点に於いて、彼は革命家であった】


なぁ、ついでだから聞かせろよ、アンタは一体 “何者” だ
大方王だなんて付いてるもんだから、六王とかそこら辺の親戚かよ
浅学な俺に啓蒙頂きたいね、アンタという存在の理由をな


763 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/25(金) 00:33:18 6IlD6zzI0
>>734

【白桜ひとりなら泣き崩れて為すがままだった】
【フェイひとりなら狂乱した挙句に仕留められる獣でしかなかった】

【でも、"カイ"という存在は二人の命で成り立っていたから】
【辛うじて心は保っていた。脆くても、儚くても。二人で一つのヒトオニだから】



(やだっ、やだっ、やだっっ!!――――あおぎりもエーリカも、お姉はんもそんな事、…言わないでっ
 ………つかませておいて、手をはなさないで―――――、死んでても生きたい………だめなの?)


【予期せぬ乱入者が現れて幻覚から解放されて尚、内に潜む白桜は取り乱す。今も幻影の齎した毒にもだえ苦しむ】
【きっと泣き顔で、顔をくしゃくしゃにして、頭を抱えて蹲った姿は―――年端も往かぬ少女の様に】

【一方、フェイは嚇怒に身を委ねて折れそうになる心を支えたなら】
【今度は己と混じる相棒、悪意の底なし沼に落ちていく白桜の手をぐいっと力任せに握って引き寄せる】


(『死んでたって生きてるのがアタイらヒトオニだろうが。
 ―――――アタイだけはてめえの手を握り続けてやるぞ、相棒。
 アタイ達の行く手を阻む奴はすべてブチ抜いてやる。だから―――手ェ、取れよ、なあ白桜』)


【二つの魂が混じった事で記憶と意識が混濁する。双方経験した事のない記憶が流れ込み、そして】
【フェイの荒々しく真っ黒な感情ながらも奮い立とうとする意志が白桜に混じるなら――目の前の景色は元の彩を取り戻す】
【白桜はフェイの手を取ったなら、蹲った身体も併せて無理やり起こして――先ほどとは異なる姿で立ち上がる】

【灰色に染まる髪、琥珀色の瞳に混じる黒交じりの赤、儚げな表情に混じる底冷えする眼光―――
 白桜をベースとしながらも目つきはフェイの剣呑なそれ。普段のぼんやりした表情とかけ離れた鬼のような顔】


「――――、この声、……リュウタ・アリサカ?………理由は解らないけれど、礼を言う。
 にしても……よくも、私達を弄んでくれたな。偽りの死を用いて命を弄ぶ愚か者共、それ相応の報いを与えてやる。
 本当の死を教えてやる。それが何かは――――――――、"死ねば、わかる"」


【握った二挺の拳銃、二つの銃口は改めて指揮官と副官に向けてられる。リュウタ・アリサカの援護射撃とでも言わんばかりの構図】


764 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/25(金) 01:37:43 6.kk0qdE0
>>763>>759

【方や、泣き叫び自らの命すら絶とうと試みる少女】
【方や、心をボロボロに突き崩されて、尚自身を叩き上げ、2人の力を合わせて立ち上がる女性】
【指揮官が、先ずその手に掛けんとしたのは、少女だった】

「ーーッぐ、うぅぅ……き、貴様、何者!?」

【指揮官を弾き飛ばした、白銀のオートバイ】
【少女の命は、間一髪で救われたと言える】

「水国外務八課、ライガ・カシワギ、貴方達の敵です」

【指揮官の問いに、バイクの上からそう答えるグレーのスーツの男性】
【カイであれば、エーリカの現在の所属先の名と同じであると気がつくだろうか】

「スマホさん、行きますよ!」
「はいよ!ライガいつでも行けるよー!!」

「変身!!」

【その声の後に、その場に立って居たのは、銀と黒の強化外骨格様のパワードスーツに頭から顔全体を覆う銀の頭部、複眼の様な眼の部分は緑色に光り】

ーー白桜がその手を取ったのは間違いじゃなかった、絶対に……ーー

「何だアイツ、姿が……」
「どう言う理屈何ですかね、あれは……」

【カイもまた、その姿を変えていた、白桜にフェイが、フェイに白桜が混ざった様な新たな容姿】
【中心にいた少女と男は、息を飲んで、カイの姿を見て】

「ぐ、ぐあああッ!!」
「小柳津!ぐっ!はぁッ!」

「ありがとうございます、誰かは解りませんが、ご協力感謝です」

【ヒーロー然とした姿に変身した、その男は援護射撃と言わんばかりに銃を向け、放つカイに、そう告げて】
【ライガは、右足を突き出す飛び蹴りを放った】
【その蹴りは、先ず指揮官を庇って前に出た副官を、今度は確実に仕留め】
【そしてカイの怒りの射撃は、一手目に指揮官の右肩を、左の太腿を、撃ち貫き】

「くっ、最早……これまで……」

【二手目に、頭と胸を、正確に撃ち貫いた】
【彼の作り出した幻では無く、本物の死体と化したのは、皮肉にも彼自身の方で】
【夥しい地の中に、倒れ臥す】
【一方で】

「しっかり、大丈夫ですか!?」
「くっ!こんな物……駄目だ、幻想に囚われている」

【男性が駆け寄り、少女の背中の氷柱を光の槍で叩き落とさんとして】
【其れが成ったならば、少女を抱き寄せ、声を掛けて】

「しっかりとなさい!『銀ヶ峰つがる』!!厳島中尉が貴女を待っているんですよ!!」

【こう、騒ぐ様に大きな声で】


765 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/25(金) 02:17:52 BRNVt/Aw0
>>763 >>764

【白銀のオートバイ、変化する青年、立ち上がり進み続ける女性】
【その全ては少女の目には入ってこなかった】

【ただ、虚ろな金色が此処ではない何処かを眺めるだけで】

【叩き割られる大きな氷柱】
【光の槍に破壊されたそれは恐ろしい程にキラキラと輝いて】

【掛けられた声。自分の名前、大切だった人の名前】

────そ、だ……

【少女は虚ろな金色を男に向けて、そうして乾いた声を発して】

うそ、だ……
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……!
厳島さんが私を待ってる……?
そんな訳ないじゃん……!
私は何の役にも立たないんだよ……?
私はあの人にとって要らない存在なんだよ……?
私なんかいなくたってあの人は大丈夫なんだよ……?
はじめから私が情報を提供する必要なんかなかった……私じゃなくたって他の情報提供者がたくさんいた……
私なんかいなくたってあの人にはテロリストの汚名を背負ってまで助けてくれる人達がいる……
私なんか最初からあの人にとっては要らない存在だった……
私なんか誰も待ってなんかいない……私なんかいなくたって皆平気なんだ……皆私なんか要らないんだ……
だから──もう、良いの、全部、全部……
【少女は男の腕を引き剥がそうとして】


766 : セリーナ・ザ・"キッド" ◆/iCzTYjx0Y :2019/01/25(金) 15:22:08 lp4TKcVo0

>>721

【或いは、何となくだったのかもしれない。ブランルと言う男が、その能力が、強力強大無比なのは間違いない。】
【しかして、他者と他者を繋ぎ、その精神を共有し、痛みすらも受け入れ、歪んだ思想も辛い思いも苦悩も弱音も何もかもを、"感じる"。】
【共に、感じる―――そう、この能力の裏にあるのは、"共感"というワード。誰かと繋がりたいという―――寂しくも人間的で、そしてどこか"弱さ"を孕む言葉。】

【それを何となく、本当に感覚的な部分のみで感じ取れたのかもしれない。そして、それに気づいたという事は】
【セリーナは矢張り、自信の弱さをよく自覚し、他者の呪いの様な負の心、弱さに"触れた"という事でもあって。これは―――】
【ひょっとすると、進化であっても退化ではないのかも、しれない。或いは、それを決めるのはこの後のセリーナ自身、とも言えて。そう。】

【―――解放され、出たくはなかった外の世界に、逃げ出さ"ざるを得なくなった"セリーナ、自身のみが決められるのだろう。】


……しりたく、なかった……あたしが……こんなに―――……っ
こんなにも、こんなにも……"こんなにも"っ!! よわくて……悲惨で、醜い人間だったなんて……

知りたくなかった……知りたくなかった!! でも―――あんたは、いうんだ……"まだ、知れ"って……!!
っ、これ以上!! あたしが、何を知れば良いっていうの!? おわりじゃない……!? もう、もう終わりなんだ……!!

こんなあたしに……あんたはこれ以上、何を求めてるっていうんだ!! ようくわかったでしょう!?
セリーナ・ザ・"キッド"は!! あさましくて、いやらしくて、どうしようもないほどうぬぼれで自分勝手!!

誰かに求められなきゃ誰かを助ける事だってできない!! だれかにみとめられたくて、だれかに必要とされていたくって!!
みんなの輪の中心にいたくって!! みんながわすれちゃうなら、もうどうでもいいやって!! むしろ、どうにかなっちゃえって!!

―――恨んで、嫉妬して、憎悪と、憤怒と、恐怖と、悲しさだけでいっぱいなんだ!!
こんな人間に……っ、こんな"やつ"に!! 人を助ける権利なんてない!! 度量も勇気も、本当は無いんだ!!だから――――

……っ、分からない……分かんないよ……何を掴めっていうの……! いやだ、いやだいやだいや!!
ブランル、お願い何でもするから!! ここから――――出さな、……っ!!



【立ち止まり、下を向き、闇を見つけ、影を知り、そうしてそこに気づいたことでホッとする。】
【絶望とはきっと、そういう感情の事だろう。これでいい。私はこれでいいという、心が屈した瞬間の事。】
【文字通りセリーナは絶望していた。そうして、やっと得られた自分の居場所に、安堵を覚え始めていた。だからこそ】

【追い出される―――その行為には激昂する。やめろ、いやだ、呪詛の言葉を散々と吐き出して。】
【私も仲間に入れてくれ、と。お前のその思念体、絶望の形を成した悪夢の中に、いっそのこと閉じ込めてしまってくれ、と。】
【懇願する様に泣き叫んだ。だが、本当に必要とされているのは"誰"なのか。ブランルが必要としているのは―――、どんな人物なのか。弱い人間か。】


【多分、きっと、違うのだろう。それはもう、"沢山いる"。真に彼が欲しているのはそれを―――――――、……。】



なんでぇ……なんでなの、なんで……なんでだよっ!! どうして―――……あなたすら、必要としていないの……っ?


【掻き抱いたのは自らの体、それのみ。脇に落ちたシングル・アクション・アーミーには、触れもせず。】
【そのグリップには、かつてカウガールを最速のガンスリンガーにまで育てあげた、"師匠"の物であった事を物語る"鬼"のエングレーブ。】
【それが荒野の砂塵に塗れ、見え辛くなっている―――砂に覆われ、銀の弾丸とS.A.Aは、まるで今の誰かを物語っているかのようだった。何故ならば、そう。気づいてはいないが。】


【―――どんな闇が覆っても、砂が姿を隠そうとも。真実は決して、世界から消え去る事が無い物だからだ。】


【セリーナ・ザ・"キッド"、9か月の拷問拘束期間を経て―――遂に、元の世界へ。風の国南部の果てにある荒野、ただ一人―――――――――。】

/こちらはこれで〆、とさせていただきます。本当に長い時間、有難う御座いました


767 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/25(金) 16:05:55 ef40Xvm20
>>753

【一国の技術革新から人類史にまで発展する。その飛躍を魔術師は決して嘲笑いはしなかった】
【むしろそういった夢想の如く掴み所のない物事こそ、この男の関心を引くものだった】
【少女の問いには首肯でもって答える】


この世界、宇宙の全てを記録していると言われるものだな
ときには“集合的無意識”と比較されることもある……私は別だと思うが


【余計な私見を付け加えたことを謝罪するように、片手が挙げられて続きを促す】


768 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/25(金) 16:11:39 ef40Xvm20
>>766
//レスをするとキッパリ言ったばかりだったのに……スマンありゃウソだった
//乙です! 長期間ありがとうございました


769 : セリーナ諸々 ◆/iCzTYjx0Y :2019/01/25(金) 17:03:49 5loDe5JU0
>>768
/はいさーい!だいじょぶです!我ながら完璧な締めでしたからね!うふふ。
それでは、お疲れ様でした。ありがとう御座います。


770 : ◆ImMLMROyPk :2019/01/25(金) 19:51:41 Nt7ZtIVU0
>>762
【ゆらりと幽鬼の如く少年の身体が揺れ、蛇を思わせる鋭い瞳でマーリンを睨みつける】
【秀麗な顔立ちからは想像も出来ない程の鬼の形相。間違いなく、先程までのマーカスは其処にはいない】


『人の子よ。貴様の心には闇が見える。ただ人を狂わせる闇では無い』
『ともすればこの世、理すらも狂わせる闇。叢雲の如く膨れ上がる闇。それを抱く者に、おいそれと我が子を譲る訳にはいかない』


【その存在はマーリンをただならぬ人間として認識していた。即ち、世の混乱、世界の裏に属する者の気配を感じ取り】
【セーフティとして作動したのだ。少年を作り出した者か、それとも管理者に近い存在か】
【実態は定かではないが、これだけは言える。少年を作り出すことが出来る程の技術を持った文明が、確かに存在したと言うこと】


『貴様がそれを知る意味は無い。しかし、これは警鐘である』
『我が名は八光王。八大龍王に連なる者。壊れゆく世界を憂う古き星の残滓である』
『今は萎れし翼なれど侮るなかれ。我らは常に、世界と共に在る。手慰みの如く世を狂わせる者に、平穏など無いと知れ』


【そして、少年は力なく膝をつく。既に人ならざる何かの気配は無く、ただ微風が頬を撫でるのみ】


今のは……俺か……?


【少年の意識もまた、巡る風のように彼の身体へと舞い戻っていた】


771 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/25(金) 20:13:51 yU056NT60
>>770

【マーリンは職務上、数多の驚異に晒されてきた、死線をくぐって来たのも一度や二度ではない、だが】
【これはなんだ、と自問自答する、目の前に君臨する存在、マーカスという男の身を借りてはいた】
【けれどもそれは明らかに、神域に踏み込んだ存在であることは確かと言えよう】

【格が違う、たかが人間である自分とは、丸っきり存在の次元が違うのだから、────── しかし】


く、くく……はは、────── ひゃははははは!!
どんな表現をしてくださると思ったら、闇か! 聖職者たる俺様に、神の敬虔なる信徒たる俺様に、闇だとよ!
旧教の連中が泣いて喜びやがるな、時代遅れで良ければ御神体になれるぜ?

いいかい龍王様よ、アンタが星だろうが世界だろうが関係ねぇ、今この星は誰のもんだ?
古い時代の存在が喚いてんじゃねぇよ、自分の子が大事なら懐にしまっとけ
過保護は毒だぜ、────── アンタはもう選んだ訳だ、この世界に自分じゃなく我が子を落とす、と

闇から目を背けるな、温室育ちの坊ちゃんに一体何が見えるって言うんだ?


【返答は期待しない、上位者との問答程噛み合わないものは無いと知っているから】
【やがて元に戻ったマーカスを一瞥し】


────── おい、お前、"教会" に来いよ


【見下ろしながらそう紡いだ】


772 : ◆ImMLMROyPk :2019/01/25(金) 21:10:50 Nt7ZtIVU0
>>771
【先程までの言葉は、薄ぼんやりとだが脳裏に響いていた。それでも、自身の存在を、真実を鵜呑みにすることは出来ない】
【だが、この問答と衝撃によって、彼の中には一つの思考が生まれていた】
【自分の存在理由を探すだけではない、世界の在り方をこの目で見てみたいと】


教会……それがお前のいる組織か?
……断る。俺は、もっと俺のいる世界のことを知りたい。俺自身の目で確かめたい
その為には、誰にも左右されない目が必要だ。だから、俺はお前にはついて行かない


【自分以外の人外、世界のどこかにいる同族、全く違う価値観を持つ人々】
【それらをこの目で確かめて、より自分自身を確認したい。それが、今の彼の欲求だった】


始めに言った。お前は不確定要素だ。ただ、お前の知識を認めて情報を開示した
……構わないな?


【少なくとも、彼にマーリンに従う意思は存在しないようだった】


773 : !乱入申請! ◆3inMmyYQUs :2019/01/25(金) 21:57:11 qJ7onZu20
>>771>>772



そうですよお。


“教会”は何も教えてくれませんよお。



【一枚だけ異なる本の頁が挟み込まれていたように】

【その声は一切の文脈を欠いてしかし場に整合して響いた】



【振り向けば女がいるだろう】
【少年と枢機卿と等しく間隔を空けて、正三角を描くように】




【女。若すぎないが老いてもいない】


【睫毛を一度正確に伏せて、再度精密に起こす】


【真円に近い円らな瞳の表面に、両者の姿が反射する】
【微笑とも硬直とも付かぬ無機の顔貌が、定理のようにそこに存在している】


【シルエットは水兵服、しかし】
【全繊維の先端に至るまでが完全な純白色をした非既成品】


【古い既知であるかのように、泰然と後ろ手を組み】
【異物は再び、自動的な瞬きを一つだけした】



 あなたはわたしたちと還るんです。


 そのために起きた。
 ――憶えてますよね。



【無感情の抑揚が、少年へ響きかけた】
【耳朶から染み込み神経を撫で脳髄を噛むように】




/ロールをしないと言ったな、あれは嘘だ。
/誰も彼も〈円卓〉に引き込まれちゃあたしも商売あがったりなんでね、
/ちょっとちょっかい掛けさせてもらいますよ。メーワクでなかったら混ぜてくださいご両人!


774 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/25(金) 22:28:13 6IlD6zzI0
>>764>>765


【宣言の通り、指揮官を殺した】
【ライガの援護がなければ今頃死んでいたのは自分たちだから】


ライガ・カシワギ、一先ず礼を言わせてもらう。ありがとう。
金髪の子犬は元気……?あの子は好き嫌いが激しいから少し心配。


【指揮官の姿に一瞥をくれて。感慨ナシ、感傷ナシ――もうその男に向ける感情は無い】
【儚い面持ちから能面の様に。感情を読み取りにくいから、思考が読み取り難い】
【すたすた。すたすた。すたすたすた。カイは騒動の渦中にいた少女に歩み寄る】


……そこのひと。私に聞きたいことが、あるんでしょう?
今の私たちは意識も記憶も酷く混濁してるから望んだ答えを…くれてやれないかもしれない。
―――――、和泉文月。お姉はんの何を答えればいい?

……真っすぐで綺麗で素敵なあの人を、薄汚い鬼子の口から語りたくはないけれど。
でも、どうせ話すまで離してくれないのでしょう。だから……聞きたいなら気が変わらない内に、どうぞ。


【身に振る火の粉を払ったとはいえ、自分の意志で人の命を奪ったのなら】
【曰く、鬼の子。もうあの人の妹として相応しくないって思いこんでしまったから】
【半ば自棄。でも鉄仮面に微かな陰り。相応しく無くても心の底では妹で居たいと願う】
【血に汚れた自分のせいで美しいと思うひとを汚したくないという二律背反に苛まれる】


775 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/25(金) 22:51:09 WMHqDivw0
【「闇市」――読んで字のごとく。よくないものが沢山、売り買いされるような場所】
【露店がひとつあった。「パーツショップ」と自称している、けれど実際売ってるものは】
【歯車でもネジでもなんでもなく、機械部品の店というわけではない。ならば、】
【何を売っているのかと訊かれたら、ナマモノ。臓器から皮膚、血液や細胞データに至るまで】
【あらゆる生体部品を取り扱っている、らしかった。その店で、物見をしている「客」がいて】

えーうっそお。こぉんな爪先のカケラみてーなちっこいやつでもこんな値段すんの?
ぼったくりじゃね? てゆかホンモノ? ニセモノだったら怒るよお。

「バカ言わないでくれよ、冒涜者殿相手に偽物なんか売れるもんか!
 正真正銘■■の■■の一部だ、これでもギリギリまで値下げしてるんだぞ」

あー、ンン……今日はネ、ミアのおつかいじゃねーの。
おれ個人の買い物なの。だから請求はいつもンとこじゃなくて、ここにして?

【ノーネクタイの黒いスーツの上からダウンコートを着た、長身の若い男だった】
【褐色の肌によく映える明度の高い銀髪と、黄色い虹彩。穏やかな笑みの形につくられて】
【請求先の書かれたメモと、ごくごく小さな小瓶。店主らしき中年の男と交換している真っ最中】
【どうやら二人は知り合いらしい。そんな雰囲気が漂っていた、ならばこいつは「お得意様」か】

「あんた個人の買いモンだあ? なんでまた、そんなこと。
 ただのお付きじゃなかったのか? こんなもの、個人で持ってたってどうようもないだろうよ」

【――違うみたい。彼は「お得意様」の付き人であったらしく、店主は怪訝そうな顔をして】
【普段はまったく「買い物」をしない彼が急にこんなことをし始めるのに、疑問を持ったらしかった】
【対して、男は。……受け取った小瓶を小刻みにゆらゆら、手慰みのように弄びながら】


……………………………………………………。


【無言で、笑っていた。理由は教えたくないらしい、あるいは「こんなところ」でも言えない内容なのか】


776 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/26(土) 03:29:56 X5S7xS660
>>732>>733

【日付に意味がないのならば、太陽と月が何度ほど天蓋を巡ったかも意味がなかった。 ─── ブラインドより眩く射し込む、赤い朝焼けにこそ意味があった。】
【夜明けの静寂。白い無意識が開いた瞼の先を、青い意識が朧げに視認する。薄暗い部屋と枕元。喘ぐように安らかな寝息を胸許に抱き締めていた。乱れたままのシーツ】
【ずっと空調機が低く呟いていて夢の中にまで語りかけていた。寝惚けた瞬きを重ねる。置き慣れた家具の匂いに馴染まない香りがした。】

【日が高く昇った頃が、次の目覚めとなるのだろうか。ダイニングに立つアリアの姿と、IH上で躍るフライパン】
【 ─── いつの間にか2匹のテディベアは、純白の薔薇が飾られる花瓶の傍に座り込んでいた。何かを抱えていた。細長い紙箱はクリスマスのラッピングを纏う】
【リボンを開いてみれば全く上等なウイスキーであった。聖人が贈るには幾らか倫理と教義に悖るものだった。まして白薔薇と紅茶と熊に比するとして】
【例え甘い銘柄だとしても飴色の酒精と、刻み込むように幾度も最奥へ注いだ白色の吐精には、凡そ釣り合いが取れなかった。 ─── それでも、「お早う、かえで。」】



「 ──── ふふ。そうね。」「全く、 ……… こんなに優しいサンタクロースも、居たものかしら。」



【机上に届けられるベーコンエッグの白皿と、揃えられた数斤のデニッシュと、御誂え向きのカフェオレと、 ─── 変わったのは】
【憂いも冷たさも拭われたような、穏やかな微笑と愛しげな呼びかけに、稚気な言い訳を見逃す慈しみであろう。或いは、強いて述べるなら】
【躾けた通り胸房に甘える少女の喉を潤す乳と蜜の甘美さと、少女が今まで教え込まれた法悦など児戯でしかないのだと嘲笑うように刻み付ける兇悪な蹂躙と熱量。】
【執拗であり、執念であり、執着だった。忌々しい陵辱の記憶を、少なくとも銀狼は知っていた。己れの与える悦びに勝るものなど、決して在ってはならなかったのだから】





【すれば光陰は年さえも跨いで、 ─── 永く続いた神話にも、一ツの結末が語られた。】
【傷の癒えた夜。ベッドランプだけが灯った部屋。「ねえ。」しとどに濡れた声音が、枕元の薄藤に語る。】


     「流星群を観に行きたくはない?」


【裸体を抱き締める白い指先が、微かに湿ったウィステリアを絡めて弄ぶ。/キスを終えたばかりの音吐は、貴女にしか聞こえない囁きだった。】


777 : マーリン ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/26(土) 06:03:20 arusqhls0
>>772>>773

【少なくともそう言い放つマーカスを、彼は快く感じていた、マーカスは今啓蒙を得た、自分自身について知る機会を手に入れたのだから】
【だとすれば、胸の中で燻る種火を消すのは野暮であろう、それは時に燃え盛る焔となり、永劫を燃やす意思となる】
【今マーカスは気づいた、知を足るに相応しく踏み出した、────── 僅かばかりの無念さはあったが、概ね想定内だ、そうであった】

【 ────── その乱入者を、除いては】


────── ッ!!!! マーカスッ!!! “聞くな”!!!!


【身を畢る狡猾な蛇、無垢混じるは痛覚の残留、ぞわりと爪剥ぐ針の筵、雲雀が純然たる謀りを嗤い、槿は咲く、言い得て曰く病葉】
【更級朽ち果てる因果に蜜、茫漠と瘻蓮の狂ったサングラス、─── 私達は其れを異物としか認識できず、不快としか理解できない】
【ビニールを素手で引き千切るが如く、等間隔の正三角を掻き乱す、マーカスと女の間に割り込むように、マーリンは走る、つらりと落ちる汗が一錠】


……よう、俺はアンタを “知らない” ─── だがな、アンタを “理解” できない事を、理解しちまった
見知らぬ国で見知らぬ言語で話しかけられる、意味は分からずとも、直感が叫ぶだろう、何を伝えたいかなんてよ
あれと一緒だ、俺にはアンタが理解できない、────── だったらどうする?

悪いがこちとら過保護な王様から苦言を呈されたばっかでな、悪い友達とは付き合うなとよ
だが、優しいばっかの友達よりはずっと良いだろう? 俺はお前みたいなイレギュラー嫌いじゃないぜ、マーカス
確かにお前の事は微塵も理解できねぇが、お前が善を目指してるのは、なんとなく理解できるからな


【口角を釣り上げた、野性味溢れる風貌が、狼の如き笑みを飾り立てる、それは孤高でありながらも崇高、孤独でありながらも雄弁】


/んま、私とマーカスさんの寝室に入ってくるだなんて失礼な方ね!
/懲らしめてしまいましょう、こちらはオーケーです!


778 : ◆ImMLMROyPk :2019/01/26(土) 14:33:21 Nt7ZtIVU0
>>773
>>777
【何があろうとも、少年は進む。知的好奇心と言う名のエンジンが少年の心を突き動かしていた】
【だが────────────】


はっ……?


【細波のように穏やかで、優しく頬を撫でるノイズが少年の脳髄に突き刺さる】
【一体誰だ?などと言う些細な疑問は一撃で吹き飛ばされた。それ以上に、彼の内的世界に生じた揺らぎが必要な情報を求めている】
【憶えている?いや、憶えていない。覚えていると言えば、きっと覚えているのだろう】
【信号が絶えず行き交う。既知と未知がコンクリートミキサーにかけられ、視界の果てで混ざり合う】


聞くなと言われても、もう聞いてしまったんだ
それで、俺が俺でなくなる訳は無い。けれど、どうしても俺はお前に、そこの白いお前に聞かなければならないことがある


お前───────────────何番目だ?



【確証がある訳ではない。確信がある訳ではない】
【しかし、少年は問いかけていた。遥か昔に知っているような、ずっと前から憶えているような、その声の主へと】

/こちらも問題ありません!よろしくお願いします


779 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/26(土) 19:09:48 cOIwYYGU0
>>775

【両者に影がかかる。一瞬で明かりの全てを覆ってしまうほどの巨大な影が】
【振り返ればそこにいたのはたった一人の男だった。不審な影も気がつけばなくなっており、人並みの影が差すだけ】
【男は大きな不透明の瓶を片手に持っていた。かなりの体積があり液体なら数リットルは入りそうだ】

おや、お客様ですか
こんにちは。今日は冷えますね?

【客である彼を見るなり男は柔和な笑みを浮かべて挨拶をする】
【軍服姿に右目には眼帯という変わった風貌の男だった。ブロンドの髪は右目にかかる部分だけは不自然な黒】
【眼帯の周囲には爬虫類の鱗が点在している。何より変わっているのは、巨大な棺桶を背負っていることだった】

【左目の碧玉の瞳が彼が受け取った小瓶を興味深そうに見つめる】
【そうしながら巨大な瓶を店主の足元に降ろす。ごとん、と重々しい音が響いた】
【「これ、頼まれてたやつです」──そう言う男はどうやら客ではなく取引先らしい】

変わったものをお買い上げですね?

【笑みを崩さないままで、男は客に声をかける】


780 : ミチカ ◆3inMmyYQUs :2019/01/26(土) 19:26:17 qJ7onZu20
>>777>>778


わたしに番号はありませんよ。








でも、
『三つの白い虹』はとても美味しかったです。



【 一瞬時、風速が逆流した】
【真空が全てを飲み込むような女の眼差し】


【途端、】

【名状しがたい『共鳴』が彼に叩き付けられるだろう】
【外宇宙から伝播したるような遠大極まる不可視の波動】



【それはある遙かな記憶の温度――】

【『三虹王』の鼓動を、多次元的に含んでいる】



【だが女自体にその面影は一量子ビットすら存在しない】
【存在しないことが全てを物語っている。無限に雄弁に】



【乱丁したように女の座標が書き換わる】
【次頁では少年の後方に存在、】
【ちょうど彼を挟み枢機卿と対峙するごとく】



【残響が語る】



   待たせましたね
 (――“待たせたな”――)



  さあ、一緒に還りましょう
  (――“共に還ろう”――)






      ゼロへ
   (――“零へ”――)





【少年を誘うのは、透明に歪む波動、その連鎖】
【“同胞”と“真実”の色をした見えざる響きが、重力さえ捻るように彼を掻き抱く】

【締め付けられる無色】
【双極の圧が彼に強いるだろう】


【――選択するのか、“選択しない”のか】


/いやったあ! じゃあ遠慮無くルパンダイブです、よろしくお願いしまーす!


781 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/26(土) 19:38:16 E1nVzEpQ0

【水国首都、某日某所。 ─── 国防総省、地下施設。機密第■会議室。】
【湿度の薄れた冬の陽射しがここに届く事はない。官給品の空調機と最上級の調度品が快適な住環境を提供する】
【例え本土が戦略核攻撃に晒されたとしても関係者の安全は保障されていたし、幾度となく首都を襲った異能者たちのテロリズムに耐えてきたのが、何よりの証左だった。】
【 ──── 濃紺色のセダンが、メインゲートで検問を受けていた。程なくして彼らは通過を許された。そうして】


「 ─── このような突然の訪問にも、ご快諾を頂けるとは。」「おれのような粗忽者にも、優しい方々ですな。」


【あなたが誰であれ、数日前に連絡を受けているのだろう。 ─── 会談の申し出。ごく前時代的な書簡にて】
【差出人の名義は公的機関のそれだった。外務省国際法交渉及執行部。通称は八課。外務八課。】
【セダンの後部座席から降りて、煩雑な手続きとエスカレーターに則り、件の会議室にやってきた2人組。】
【白いスーツを纏い、不自由そうでもないのに杖をつく、中肉中背壮年の男。印象の薄い微笑を貼り付けていた】
【黒いスーツとロングコートを纏い、長い銀髪を惜しげもなく煌めかせる、ひどく背の高い妙齢の女。透き通るほど造物じみて耽美な白皙を、まんじりともさせない無表情】
【促されることがあれば男は席につく。女はそうしない。その壁のような魁偉をもって、彼の隣に立ち尽くす】



     「 ……… それで、だ。」「今回お話したいのは、他でもありません。」



【「"円卓"について、おれたちもコンセンサスを得たいのです。」 ─── 世間話もそこそこに、彼は切り出すのだろう。指と掌を組み、僅かに身を乗り出す。安い微笑。】


/よやくです!


782 : マーリン ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/26(土) 20:36:10 yU056NT60
>>778>>780

【全く持って慮外の事態であった、マーリンは微塵もその事実を知らず、その情報を辿れない】
【けれども "理解" できた、─── それが彼の唯一にして無二の能力であったから】


(八光王 ─── だったっけな、さっきの親バカが名乗ったのは、それに対するマーカスの言葉)
( "お前は何番目だ" と解いた、ならば、奴の言った八大龍王には序数が含まれていると考えられる)
( ─── 三つの白い虹、と、この気色悪い女はお仲間か?)


こんな時は少しぐらい、困った表情する方が可愛げあるだろ?


【マーカスの反応に少しばかり笑ってしまう、冷静といえば聞こえは良いが、僅かにも焦らない様子】
【────── 不気味と言っても良かった、マーリンにとっては都合がいいとも思えるが】


なるほどな、"食っちまった" と、虹が喰えるかは知らんがそう言ってるもんな
分かるだろマーカス、目の前の此奴はとんだ悪食だって、俺が注意しなくともな

付き合う事ないぜ、─── こんな出鱈目、相手するだけ時間の無駄だ


783 : ランスロット ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/26(土) 20:45:38 yU056NT60
>>781

【彼は柔和な笑みで迎え入れた、対面の席に座る、─── 好青年を絵に書いたような人物】

【金色の長髪を後方で一纏めに結い、白を基調としたロングコートに身を包む】
【腰には一本の剣、それが無ければモデルか何かを見間違えるぐらいに、整った顔立ちをしていた】


いえ、来る者は拒まず受け入れる、〈円卓〉は誰もが等しく機会を得る事の出来る証明ですから
誰もが等しく同じ立場、と、少なくとも私達〈円卓の騎士〉はその様な認識です

はじめまして、"外務八課" の方々ですね、私の名前はランスロット
ミズキランスロットヴァレンタインと申します、どうぞお見知り置きを


【彼はそう紡ぐと一音節置いた、後藤の紡ぐ言葉を相槌を打ちながら聞いて】


構いませんよ、〈円卓〉の庇護の下に置かれたいとは誰もが望む事です
それでは先に聞かせてもらえるでしょうか、貴方達が何を私達に差し出せるのか、について


784 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/26(土) 20:58:05 WMHqDivw0
>>779

あー? ……んん。寒いネェ、コニチワ。
すげーでかいじゃんソレ、片手で持てるのやばくね?

【視線を目の前、店主の男から外して――眼帯の男に向け直す】
【少しばかり探るような胡乱さで彼を眺めるのなら、まずは品物らしき瓶】
【それから眼帯を経て――最後に棺桶に行き着く、が、追及はしない】
【なにしろ「こんな場所」だから。誰がどういう目的でここに来た、なんてことは】
【いちいち探っていたらキリがないのだから。しかし、この褐色の男は――】

そお。買ったおれもよくわかってないんだけど――――
「異世界」のさらに「外の世界」から来た、邪神かなんかの……
…………髄液だっけ? 血液? どっちでもいいや、とりあえずそんな体液。

【「そんな場所」でも、世間話をするのは嫌いではなかったらしい。人懐こく笑んで】
【小瓶の中身をそちらに向けてみる。「見る? 見すぎるとあんまよくないらしいけど」】
【眼帯の彼が興味深そうにそれを見ていたのが印象に残ったか、どうであろうと】
【この男には、ひったくられるかも、なんて不安はないらしい。あるいは自信でもあるのか】

【――――事実、】

これをねえ、取り込むの。おれの中に。

【こいつが文字通り只者ではなさそうなことは確かだった。――魔力探知スキル、あるいは】
【極めて鋭敏な感覚か、勘があるのなら。こいつの内側が「まとも」ではないことがわかる】
【「中」に宿っている「要素」が「一つ」ではないのだ。何十、何百もの生命のかけらが】
【人間の形に押し込められて、蠢いている。――その中に、この小瓶の中身を、取り込むらしい】


785 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/26(土) 20:59:54 E1nVzEpQ0
>>783



「 ─── ミズキさん。成る程。いや、 ……… ランスロットさんと、呼ぶべきでしょうかな。」
「後藤です。後藤椋持。外務八課の課長を務めさせて頂いております。」「 ─── 彼女はアリア。実働部隊の指揮官と呼べばよいでしょうかな。」


【幽かに嗄れた壮年の声は穏やかに語った。 ─── 焦茶色の双瞳が何の威圧もなく青年を見つめていた。】
【長躯の女は何も語らなかった。色の薄い瑞々しい唇を結んで黙していた。仄かな薔薇の香水を纏っていた】
【そうして青年の問い掛けに彼は首肯した。一呼吸を吐き出す沈黙。徐に開かれた乾いた脣が、滔々と紡ぐ論理】


「ご存知かもしれませんが、おれたちは以前よりジルベールさんとのコネクションがありましてね。」
「"銃をもって立ち塞がるものあればこれを撃て" ─── まァそういう契約で、それなりに懇意ではあった訳です」

「そうして今回われわれも、"円卓の騎士"という体系が新たに設立されると伺った。」
「あなた方も重々承知の上で行われている事でしょうが、これは言うなれば軍拡路線の正道を征くに等しい。」


【「元より円卓における直接的示威だったわれわれが、あなた方と結託し助力する事。 ─── それはまったく無謬であり、義務とさえ言えるでしょう?」迂遠な語り口。】
【長台詞を言い終れば彼は口を噤んだ。彼からの言葉を待っていた。微塵の忌憚もありはしなかった】


786 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/26(土) 21:10:37 cOIwYYGU0
>>784

邪神? …………外界の神、ですか?
それはまた随分と変わり種ですね

【一聞しただけでは妄言にさえ思える内容を男はあっさりと信じた】
【こんなわけのわからない世界に生きていては、神だろうが何だろうが実在しているだろう。そう思った】
【差し出された小瓶の中身を、やはり興味深そうに見つめる。警告は聞いていたはずだったが】

…………なるほど
どうやら貴方はちょっと特殊な方のようですね

【その内に潜む気配を男は瞬時に感じ取れたようだ。笑みはそのままに感想を述べていた】
【その異形とも呼べる状態に眉ひとつ動かさずに、だ。まともでないのはお互い様のようだった】

貴方の中にそれを取り込むと、どうなるのですか?
初対面で不躾なようですが……僕、とても興味があります

【好奇心に爛々と瞳を輝かせて、邪神などを取り込むというのに臆しもせず期待した様子で言う】


787 : ランスロット ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/26(土) 21:16:47 arusqhls0
>>785

【ああ、協力の申し出ですか、と軽く彼は言い放った、それはどうもご丁寧に、と頭を下げて】


〈王〉と懇意にされていたのですね、〈王〉は深い度量の持ち主ですから、今更驚きもしません
助力していただけるのなら心強い、〈円卓の騎士〉は強力な分、個々の戦力としてはあまりに大きすぎる
些末な揉め事を対応していただく機関が、一つや二つ必要とは〈円卓会議〉でも議案に上がってました

それを貴方達がやってくださるのでしたら有難いお話です、〈王〉もきっと喜びますよ


【もう一度微笑みを添える、僅かばかりの思いやりを振って】


────── 義務だなんてそんな表現しないでください、私も貴方達も同じ〈王〉に仕えるんですから


788 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/26(土) 21:35:09 E1nVzEpQ0
>>787


【「言ってしまえばそうなりますなあ。」 ─── 瞼を落として、恬淡と後藤は笑った。投げかけられた微笑にも】
【やはり彼は同種の表情を投げ返すのみで、そうして決然的に青年のそれとは色彩が違っていた。また一ツ、呼吸】


「ええ全く、 ─── 我々も小間使いというのは嫌いではない。だが好きでもない。仮にも我々は秘密機関です。」
「その辺りの兵隊や事務屋に出来る職務を与えるのは、些か無駄が多いというものでしょう。お互いに。」

「一騎当千の強者が揃う、"円卓"の戦力。」「 ……… それに比肩し、貴方の選択によっては貢納し得るだけの人材を、我々は有しているのですよ。」


【 ──── 僅かにその嗄れた声量へ、静かな熱意が篭ったように感じるだろうか。だが彼の微笑は変わらず】
【すれば幾分か挑発的な文脈を含む語り口も、その真意が何であるかは察し難かった。「ご査収ください。」】
【徐に彼はファイリングされた書類を差し出す。 ─── 軍隊式の経歴書。添えられた顔写真は、寸法越しにも冷徹でしかなかった】



  「単刀直入に申し上げましょう。」「 ─── アリア・ケーニギン=デァナハト。彼女を、"円卓の騎士"として推挙したい。」



【長方形の証明写真に映り込んでいるのは、ひどく美しくも無表情な女の顔だった。銀髪の女。右目を隠した青い隻眼の女。アリアと呼ばれた女】


789 : ランスロット ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/26(土) 21:46:52 arusqhls0
>>788

【彼は微笑みを絶やさない、一瞬一瞬が絵画の如く、まるでそうあるべきと定められた様に】


────── ああ、でしたら必要ありません、能力、素質、性格、頭脳、全てに於いて<円卓の騎士>に満たないので
先程も述べた様に、我々が今必要としているのは、<円卓の騎士>ではなく、その下、我々が出るまでもない雑務を担当する人材です
<円卓>という組織の泣き所で、どうしても秘密主義が先行する分、大袈裟に求人を出す訳にはいかないのが実情です

加え入れて、各国の秘密機関から募集したとしても、それぞれが自国に利する様に派遣するものですから収拾がつかない
ですから、私達は<王>の個人的な知り合いである貴方達が“その辺りの兵隊や事務屋に出来る職務”をしていただけると助かるのです

貴方達は自分達を小間使いと表現しましたが、小間使いにだって格があるでしょう、<王>が見窄らしい従者を従えていてはお笑い種ですから


【彼はそう言って差し出された書類を一瞥もしない、ただ置かれたままにしていた】


790 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/26(土) 21:52:40 WMHqDivw0
>>786

そお? 今となってはもうわりと「外来種」なんて珍しくもねーんじゃねえかな。
オニーサンは噂で聞いたことないカナ。異世界のカミサマが最近、暴れまわってたっての……

【小瓶を揺らす。中の液体を揺らす。――重力や遠心力に逆らった波打ち方をした】
【なるほどこいつは「本物」であるらしい。そんなもの、片手で弄びながらの世間話】
【ずっとしていようとするのなら、痺れを切らした店主に口を挟まれるのだろう】
【「あんたらが何をしようったってどうでもいいがよ、ここではやるなよ、他の客の邪魔だ」】
【言われれば男は従って、へらへらと手を振ってその場から離れるのだろう。眼帯の男を連れて】

【そうして移動するのなら――闇市の中でもひときわ人の少ない路地裏で】
【そこら辺にある木箱か何か、適当に見繕ってきて座ろうとするのだろう。もちろんもう一人の分も、用意して】
【座り込むなら彼はまだ薄ら笑っていた。改めて、瓶をゆらゆらやりながら】

どうなるかって言われたらネ、………………実はおれにもわかんない!
あはは、どーなると思う? やっぱ中から喰われちまったりするかなァ。

【――そんなことを言い始める。何がどうなるのか、予測もつかないのに】
【そう安くもないだろうこんなものを買って、あまつさえその身に取り込もうだなんて思うのに】
【へらへら軽薄そうに笑っているんだった。そして、その尾をくつくつと詰まる笑い方に変えて――】

……………………だからほんと、オニーサンに目ェ付けられてよかった。「丁度良かった」。
あんさ、おれ、今からこれ飲んでみることにするんだあ。だからさ、オニーサンにお願い。

もしも「そうなったら」――これを取り込んだおれが、やべー化物になったらさ。
その瞬間にばーっと殺してくれよ、他の人に害を及ぼさないよーに。
あんだけ力持ちだったし、なんかやれそーな気配するんだもん、それくらい、できっしょ?

【――、やっぱりそういう無責任なことを言うのだ。今この場所で、はた迷惑なことをするから】
【それが「やばい」ことになりそうだったら、止めろと。言うのだけれど、……そういえば】
【肝心の、「何故そんなことをするのか」――理由は語らないままだった。ならば、問い詰めてもいいかもしれない】


791 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/26(土) 22:05:39 cOIwYYGU0
>>790

【店主に文句を言われた眼帯の男は「これは失礼しました」と丁寧に謝罪をした上で】
【男に従って移動をする。差し出された木箱にもやはり丁寧に礼を言ってから腰を下ろして】

もしも「そうなったら」、ですか?
ここまで来てしまいましたし、それを取り込むところは是非とも見てみたい
いいですよ、それぐらいの見物料は支払いましょう

【迷惑そのものの申し出に、それでも眼帯の男は穏やかな笑みと共に快諾をする】
【それこそどんな化け物が出てくるのか分からないのはこちらも同じなはずなのに】
【そこまで好奇心が強いのか。それとも──よほど、自分の力に自信があるのか】

ただ、そうですね
遺言じゃないですが、どうしてそんなことをするのか聞いてもいいですか?
僕も一応は命懸けになりそうですからね。ひとつ、サービス代わりに教えてください

【付け加えて、眼帯の男は理由を問いただした】
【声音には冗談のような音色。自分の命を失うかもしれないのだから、と】
【そこには怯懦などなかった】


792 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/26(土) 22:06:04 E1nVzEpQ0
>>789


【にべもない微笑には取り付く島もないと形容すべきであろうか。 ─── アリアと呼ばれた女は無表情であり】
【そうして後藤と名乗った男もまた、微笑という名の無表情だった。数拍の沈黙を終えた、後】
【やはり緩やかに彼は言葉を紡ぐ。 ─── 一度として視線は外さなかった。鳶色の瞳に宿るポーカーフェイス】


「 ─── 成る程。 ……… いやはや。それは、全く残念なお返事です。」「だが確かに道理でもある。」

「では一ツ、後学の為にお伺いしたい所です。」
「 ─── 果たしてあなた方の求める"騎士"とは、何をもって"騎士"に相応しいのでしょうかな?」
「あなたは我々の素性さえ、こうして今日に会うまで知らなかった。ジルベールさんと旧知の仲である事すらも」

「当然ながらおれの推挙する彼女についても貴方は何も知らない筈だ。 ……… だというのに、貴方が行ったのは」
「ただの一瞥のみに過ぎず、それをもって不適格とした。 ─── おれのような木っ端役人ならば兎も角」
「僭越ながら貴方のような高潔な人物が、そのような些か無理解な振る舞いを行うとは」「 ─── 幾らか、節度に欠けるという物ではありませんかな?」



【突き返された書類を後藤は受け取らなかった。やはり彼は笑っていた。 ─── 明白な挑発にも似ていた。漸進的に張り詰める議題の流転】


793 : ランスロット ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/26(土) 22:15:01 arusqhls0
>>792

【少しだけ不思議そうに片眉をあげた、微笑みから目が覚めたと言うには、あまりにも淡いが】


単純ですね、“貴方達を知らなくても問題なかった” からです、私達は<円卓>の一員として高度なネットワークを保持しています
つまり、私達にとって、脅威とは事前に知っているもの、そうでないものはつまり、気にかけるまでもない
私達は来るものを拒みません、けれども、それは正しい位置に置かれなければ意味がないのですから

現在の<円卓>の考え方と一緒ですね、能力を持つ者は正しく能力を活かせる場所へ、と

もう一つお伝えしましょうか、私がここまで言葉を紡ぐのも貴方達への敬意の表れです
<王>と親しい方々ですからね、礼節を尽くした結果がこの対応とも読み替えられます

貴方達は理解できていない、その道理では、騎士を迎え入れる事などできないのです


794 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/26(土) 22:20:34 WMHqDivw0
>>791

……ほんとに運がよかったナー。あんがとねえオニーサン。
自信満々にそー言ってくれるヒトをおれは探してた。

【「ヤバいことする自覚くらいはあっからネ」。……一瞬だけ驚いたように目を見開いて】
【すぐに穏やかな笑みの形に細める。そこには親愛と、信用の色が籠っていた】
【瓶の口を開ける。――僅か、ほんの僅かだけ、周辺の空気が澱んだ、気がするかもしれない】
【こいつは、そんなものをこれから口にすると言う。その通りに瓶を口元に持っていって】

【――――――しかしそれも、はたと止める。斜め下を見やる、回想の目線】

そんだけでこんなこと受けてくれるなんて、サービスいいナァ。
オニーサンは優しいネ、ふふ、そーだネ、どーしてこんなことするか……

……あんさ、オニーサンはさ、殺し方のわからないモノをどうしても殺したいって思ったとき、
どーいう行動に出る? とにかくシュギョーしてみる? それか知恵を絞ってみる?
それがあればそれを殺せるかもしれない――って、ヴォーパルソードでも探しに行っちゃう?

だったら、…………おれにとっての「それ」が「これ」なの。
殺したいけど、どーすれば殺せるかわかんないヤツがいるの。おれは絶対そいつを殺さなきゃならない。

だからこれに賭けてみる。もしかしたらこれがヴォーパルソードかもしんないって――これで挑戦、さんかいめ。

【そうして紡ぐのは――そんな理由だった。得体の知れないものを殺したい】
【そのために尋常ならざるチカラをこの身に宿したい。そのための無茶なやり口を――これで三回目だと言う】
【ならばこれまでは、悉くが失敗だったと言うのだろう。そんなことまでして、殺してやりたいモノとは、どんなモノなのだか】


795 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/26(土) 22:26:47 cOIwYYGU0
>>794

殺し方のわからないもの、ですか?
僕は殺せないものはないというのが持論ですが……そうですねぇ

……まぁ、貴方のように力を求めたり、ですかね

【語られた理由の中、説明のための質問にさえ眼帯の男は丁寧に答える】
【刹那、笑みが深くなる。柔和だったそれは一転して獰猛で凄絶なものへと】
【ただのたとえ話などではない、仮定の話などではない気配がこの男からはしていた】

三回もやって殺せない相手も凄いですが、三回もやって死なない貴方も凄いですねえ
そこまでして殺せない相手ってのは、一体どんな相手なんですか?

【興味は続く。答えに対して新たな質問を重ねる】


796 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/26(土) 22:28:15 E1nVzEpQ0
>>793

【僅かに後藤は悲しげな表情をした。 ─── だが、ここまでの鉄面皮であろう男が、此の期に及んで】
【安い同情を買おうとする理由もなければ、感情的起伏を抑えられぬ道理もない。漏らす嘆息を続けて】


「 ─── そうでしたか。」「でしたら、あなたの言い分にも同意できない訳ではない。」
「我々も我々が関与するまでもない事案には、敢えて参画しないのがポリシーですから。」


【言葉を区切る。数秒の沈黙。ならばそれは果たして、妥協の内心を意味するのだろうか】


「では一先ずは伺ってみましょう。 ……… 仮に我々が貴方達の隷下に付くとして」
「具体的にはどのような勅命を下されるおつもりでしょうかな。なにぶん我々と貴方達の間には、随分と価値観の相違があるようだ」
「聞いてみれば存外、我々にしかこなせない職務であるかもしれない。 ─── おれもやはり、相互理解というものを深めたいですから」


797 : ランスロット ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/26(土) 22:36:30 arusqhls0
>>796

【此方もです、と言いながら彼は目を細めた、変わらず後藤へと視線を注ぎながら】


現状必要なのは<円卓>メンバーの中で下位に位置する方々の警護でしょうか
何分物騒ですからね、かといって<円卓の騎士>達が警護するには人手が足りません
便宜的に下位と表現しましたが、彼らもまた<円卓>の一員ですから、粗相の無い様にしていただきたいのです

物資の運搬や会合の手続き、─── 表沙汰に出来ない仕事はそれなりにありますからね、そちらを手伝ってもらえるのでしたら

此方としては何も言う事はございません、より良い協力関係を築けるでしょう


【要するに、雑用全般と彼は言外に言い放っていた、─── 責任のある仕事は任せない、と】


798 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/26(土) 22:38:29 WMHqDivw0
>>795

【眼前の男から笑みが消えたのを見て、やっぱり、と確信する】
【頼んだのがこの人でよかった。少しばかりは心配したのだ、「やさしそう」だから】
【まかり間違ってかわいそうなので殺せない。などと腑抜けたことを言いそうにもない】
【そんな確信を得た。そして、続く言葉には苦笑いを返す。こんこん、かかとを鳴らして】

んーとねえ。やってはいないの、まだ、実行に移せてなくって――
それ以前の問題で失敗してばっかなんだよネ。うまく取り込めない。

……オニーサンならもう、なんとなく、わかってくれてるっしょ?
おれは「ふつう」の生物じゃない。天然モノじゃない、カガクゴウセイヒンたっぷりの不純な体。
だから「ちゃんと」できなくなっててさあ――アレだよアレアレ、違法改造したスマホってさ、
壊れても公式のショップで直してもらえなくなるでしょ? あれと同じ――

【「おれが純正品じゃないからいけないんだよナー」。それでも、こうして何度も何度も】
【無茶苦茶していい理由になどならない。……それでも、やりたいことがあるらしい。曰く、】

どんなヤツって。……おれの好きな子、泣かせたヤツ。

【――そんな、くだらない理由。けれど男にとっちゃ沽券のかかわる話であるからして】
【自分がさらなる化物になったって構わないし、それで死んでも――ああ、死ぬのは、よくないか】
【とにかくそんな単純な話であるらしい。好きな子を泣かせたヤツを殺す。……呆れてしまわれる、かもしれず】


799 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/26(土) 22:49:52 E1nVzEpQ0
>>797


「それは、それは。」「 ─── 全く光栄な事ですね。趣のある、お話だ」
「上座も下座もないとは便宜の上での事でしょうが、そういった所から漏出するものも有るというものです。 ……… 例えば、そうですね」


【直ぐに後藤は静かな声音と微笑を取り戻した。大仰そうに彼の言葉へと頷いて、検討してみせるような顔をした】
【だというのに議題は直ぐ様その傍流へと変わるのだから本心ではない事など解りきっていた。滔々と続く言葉。】


「現在この情勢下において、なぜ"円卓"が攻勢の拡大を図り始めたのか、など。」「 ─── おれとしては興味深かったんですよ。」
「"黒幕"の実力は未知数だが、それでも彼らの暗躍は鳴りを潜めている。世間を騒がせた何とかという邪神たちについても、今や寡聞として聞かない」
「あなたがたにとって脅威とは事前に知るものでしょう。 ……… では、貴方達は必然に駆られた訳だ。」「存外、我々と観ている先は同じなのかもしれませんね。」


【 ──── 思わせぶりな言い回しだった。少なくとも男が何を知っているのか、青年の関知するところではなかった。】


800 : ランスロット ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/26(土) 22:58:52 arusqhls0
>>799

【一つ二つと相槌を打つ、慣れた動作であった、<円卓>の一員として、処世術もまた、騎士の嗜みと言ったところか】


どう推察されるかは自由ですが、それを口に出すのはリスクがありますよ
特に貴方もまた一つの組織の長である以上、貴方が述べた言が組織の代弁と取られる可能性がある
余計な火種は持ち込まないに限ります、一つ私から伝えておきましょう

でしたら、貴方達には<円卓>の業務を補佐していただく形で依頼しても大丈夫でしょうか
それなりに経費がかかると思いますが、その辺りは自己負担で、元より<円卓>は集金システムの側面もあります
その運営に余計な負担がかかるとなると、本末転倒でしょう?


【ランスロットはそう重ねた、徹底的に後藤達にとって不利な条件を加え入れるのだろう】


801 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/26(土) 23:12:10 E1nVzEpQ0
>>800

【苦笑のような色調に微笑は変わった。 ─── はっは、と漏らす声音。やはり乾いたものだった。】
【壁のように立ち尽くしていた女が幽かに身動ぎした。なにかを諒解した所作であるようだった。一頻りの哄笑】
【そうして彼は一ツ息をついた。満足げに頷いていた。出会った時より変わらない、穏やかな表情。】


      「 ─── 全く、有り難い忠言ですな。」「貴方というのは親切な方だ。」


【初めてそこで己れの迂闊さに気付いたような言い回しだった。 ─── やはり大袈裟に何度か頷いた。態とらしく無精髭を幾度か撫ぜた後】


「良いでしょう。では、"検討いたします"。」「返答については後日お伝えしましょう。」
「一先ず我々は今までと変わらず、ジルベールさんの勅命によって動かせて頂きますので。」「 ……… そういう形で、どうか宜しくお願いしますよ。」


【詰まる所それは櫻流の否定であるに違いなかった。 ─── 彼が返答を寄越さない事は分かりきっていた。それでも彼は笑っていた】
【「それでは、このあたりで。」ごくあっさりと彼は立ち上がる。クリアファイルを懐に仕舞う。呼び止める道理は、あるものだろうか】


802 : ランスロット ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/26(土) 23:23:39 arusqhls0
>>801

【巨大な湖の表面に石を投げ込んだとしても、それが浮かべる波紋はとても小さく】
【ただ永劫の如き泡沫に、些かばかりの感情を生むのだろうか】
【お気をつけて、と離席を促す、────── あまりにもあっさりと、邂逅は終了するだろう】

【ランスロットは再び業務に戻る、後藤の手前悠然と振舞っていたが、実際の所雑務に回す手が足りないのは事実であった】
【けれどもそれは急を要しない、最高意思決定機関である“キャメロット”を除けば、<円卓>の序列は騎士にある】
【それはつまり、騎士の存在そのものが“キャメロット”の意思にあると言えた、────── ランスロットは仄めかす】

【アリアには正しく “能力、性格、素質、頭脳” が足りなかった、それはアリア単体を指すのではなく、“外務八課のアリア” という単体を指すのだから】

【言ってしまえば<円卓の騎士>とは、”キャメロット”が描く世界のパワーバランスそのものであった、各国の拮抗を念頭に置いて作られていると言っても過言では無い】
【それは、騎士達がそれぞれに於いて理解している事であった、─── 彼らは各々の意思に於いて、騎士に相応しい人材とも言えよう】
【故にランスロットが真っ向から否定するのも道理とも言える、<円卓>が”外務八課”と共通項を結ぶには、あまりに存在性が違いすぎるのだから】

/こんな所でしょうか! お疲れ様でした!


803 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/26(土) 23:28:39 E1nVzEpQ0
>>802



【 ─── 濃紺のセダン、その後部座席に腰を下ろす2人組。頭痛を忍ぶように目尻へ指を添える壮年の男と、その醜態を冷ややかな流眄で見つめる女。】


「 ……… で?」「喧嘩だけ売った挙句、物の見事に言い包められた気分はどうかしら、後藤さん?」

「ダメだよ彼は、アリア君。 ……… やられたもんだ。ジーク君を出さなくて正解だった。」
「真正面から攻め入る外堀にしちゃあ、矜持と理解が深すぎる。より良い艀(はしけ)を探してくるか、もっと脆弱かつ効果的な部分から攻めていくか ─── 。」



     「何れにせよ、先ずは情報からだね。」「 ……… はいはい。」



【呆れたような嘆息を彼は甘んじて受け取った。 ─── 「出してくれるかな。」セダンのアクセルが踏み込まれる】
【午下りの街並みへと左ハンドルの車体は紛れていった。不毛であったとしても、不毛である事を把握できたのならば、それもまた収穫だった】

/おつかれさまでした!


804 : 名無しさん :2019/01/26(土) 23:48:20 uQ7YoBgo0
>>776

【ぼぉっと開かれた眼はふとした脳裏の気まぐれであった、眠たげに潤んだ紅紫はどこを見るでもなく、ただ、ただ、愛しい人の全部にくるまれる安堵に緩んで綻び】
【名前を呼ぶような曖昧な音を宿した吐息を漏らして、それからその胸元に口元を埋めて、もう一度寝入るのだろう。――眠る母親の乳をまさぐるのすら下手な乳飲み子のように】
【それでいて子供と呼ぶには大人に近づきすぎた年頃であるのなら、背中に回した指先が掴む布地を探して、見つけられなくて、諦めたみたいにただ指先を垂らす、抱き留めていてくれるって知っているから】

【――――――だからきっと、そんな夜更けの幕間のことを彼女の脳は記憶などしていないのだ。空調の呟きを胎内の血流に見立てて、柔らかで暖かな母に抱かれた気でいるのなら】
【今度こそ明確な意識を持って開いたはずの眼差しはそれでもいくらかの視界を枕に侵食されていた。――枕に埋めていた顔を擡げるのなら、頬に走る布地の痕跡も邪気なく】
【おっきな欠伸を漏らす仕草に続けて目元を拭うなら、どこまでも気怠いような、それでいてどうしようもなく心地よいような重さに支配された身体を転がす、寝返り一つ】
【――自分の脂ではしっこがカリカリになるベーコンの匂いと、ぴちぴち跳ねる卵の白身の音を聞いていた。だからここでシーツにくるまっていたら、きっと、起こしに来てくれるけど】

【くしゃくしゃの寝ぐせとそれから"そのまんま"の身体を見られるのはなんだか気恥ずかしい気がして、その前に起き上がるのだろう。――なら、姿を見せるのは、少しあと】
【そうだとしても下着を穿いて、寝間着にしているけだるいワンピースをかぶって、寝ぐせを梳かした程度なのだけど。――白肌に刻まれた布の痕も秒速で消えていく若さなら】
【――――――――――――――――ごくテディ・ベアを凝視しながら席についていた。その途中に抱きかかえる何かを掠め取っていた、前の前に配膳される皿を横目に】

サンタさんの国って十六歳でお酒飲んでよくなるようなとこなんですかね。

【――細めた眼に何か宿して、ひどく意味深な顔をしていた。一生のうちで"こんな表情"の出番は、そのほとんど、九割以上がクリスマスの朝なのだと相場が決まっていた】
【即ち、"サンタさん"からのプレゼントだと"理解"しながら、――目の前に居る人に意図を問うてみるときの顔。意味のない行いだった。それでいて、それが何か楽しいのだから】
【ともあれ朝から酒を飲む趣味などないのだろう。――もっと言えば本当なら酒などあまり飲まずに生きたいのだけれど、そうはいかないらしいから。――飲まされる前に、朝食に手を付け、】


【――――――、ふうっ、と、湿っぽく重たく甘ったるい吐息が漏れ出た、わたあめに湿度を与えたなら、きっとこんな風になるのだろう、吐息】
【口に含めば酩酊だけじゃ済まさぬような甘やかさは、けれど、狼だけに捧げられる花束であると誓ったのだから、――、鈍い声が呼びかけに答えた、眠たげにも聞こえて】
【だけれどその理由のいくらかにベッドから出たくないというのがあるのに違いなかった。眠たいふりして、寒さを言い訳にして、――、このままずうっと触れ/られ/ていたいから】

――――――――――、――そこらへんのビルの上。……とかじゃあ、イヤですよ? 

【それでもその"お誘い"には意味があったから、――。睫毛が眼球すら撫ぜてしまいそうな距離間にて、なにかに潤んでいた眦が、ついと悪戯ぽさを宿す瞬間を観測させたら】

それに、お洋服だって、着なくっちゃ、いけなくって…………――――。

【――ならば悪戯ぽくひそめた声が提案するのは、こんな寒い夜にわざわざ厚着をしてから出かける必要などないのだと、】
【このままベッドサイドの明かりだって消してしまって、暖かな室内、もおっと暖かさに埋もれるって選択肢もあるのだと。――くす、と、はにかむような吐息一つ、】

――――行きたい。行きましょう。

【揶揄うよに刹那だけの口付け一つ勝手にしてしまって、そうしたら彼女は起き上がるのだろうか。甘く甘く枝垂れる胸元を片腕に掬い上げたなら、もう片っぽで纏うべき下着を引き寄せて】
【その気になったら早いものだった、――なんて。薄情なわけではなくって、かといって特別にお星さまを見るのが好きなだけでもなくて、――大事な人と見る流星群に意味があるのだから】


805 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/27(日) 00:21:31 E1nVzEpQ0
>>804

【掠めるようなキスに仄かな嬌声を漏らした。 ─── 乳房を口吸いに甘えられるよりも、幾許か穏やかな声音】
【茫漠とした淡い暗闇に満たされた室内に残響する。そうして苦笑のままに上体を起こした。サンタクロースの倫理観を問われた時、浮かべたものと同じ彩色の微笑】
【微温湯のような空調の温度に身を浸しつつ、少女を甘く溺れさせた真白い肉感の裸体が、纏うべき温もりを守っていく。湿った濡羽色のショーツを履き】
【溢れそうな豊満を辛うじてブラジャーのホックに収める。純潔色のブラウスに、破瓜よりも愛しく血塗られたニットを重ねて、夜を溶かしたストッキングに足を包み】
【首筋へ甘える白銀の色合いを疎むように梳いて整えて、不愛想に長いスラックスを引き上げ、 ─── 着慣れた黒いコートを纏えば、その嬌姿もどこか毅然としていた】



         「安心なさい。」「行く場所はもう、決めてあるの。」



【手を繋げばそっと耳打ちをして、外套の中へ少女を抱き締めるのだろう。湿った口先がささやかなキスを上塗りする。脚先の付かない甘美な屈服のベーゼ】
【特別な夜でも躾ける陋風は変わらなかった。腰を抱き寄せたまま、織り上げられたウールの内側に体温を護って】
【 ─── ならば開かれた玄関先より吹き込む玄冬の夜風は、肌を嬲ろうとも刻まれた疼痛を癒せる筈もなく】
【揃って慣れた足取りで地下駐車場へと向かうのだろう。恋人と夜を過ごすには、誰もが羨む漆黒のクーペ、2人乗り】


   「着くまで寝ていてもいいのよ。」「 ─── 眠らなくても、私は大丈夫だから。」



【助手席にはタオルケットがあった。後部座席には星図と望遠鏡が積み込まれていた。低い車高が緩やかに宵へと滑り出す】
【 ─── 周期的で落ち着いた車体の振動は、眠りを誘うに相応しいものだろう。程なくして高速道路に乗り上げる。横滑りの夜景も見慣れたものだった】
【ノイズも入らないカーラジオは何か流行りのポップミュージックを流していた。沈むようにシートへ身を委ね、それでも緩やかにハンドルを切るアリアは、微笑んだまま】


806 : 名無しさん :2019/01/27(日) 01:11:03 uQ7YoBgo0
>>805

――――、なら良しです。ぅふ。……。

【揶揄うキスに起こした身体に衣服を纏い直すのは逆回しの仕草なのだろうか、ならば三つホックの行方を委ねるのも逆回しの証明なのかもしれなかった、なんて、】
【少し伸びた髪先でもその指先を邪魔することはあり得ないのだけど。それでも癖になっているみたいに首を傾げたなら、真っ白なうなじを思う存分見せつける、刹那に】
【吐息を含んだ笑みは王子様を手玉にとって当たり前だと信じているお姫様を気取っていた、――暖かい肌着に、それから、トイプードルの子犬みたいな手触りのニットを重ねて】
【結局どうあれ冬の服装なんてものはニットが楽だった。どこか信仰にも似ていた。――それでも夜に出ていくなら、幾らも満ちる警戒心、ごく厚手の裏起毛のタイツなんて引っ張り出して】
【ロングスカートに隠しこんだなら、選んだ上着は冬のスズメみたいに膨らんじゃうからあんまり着ない暖かいコート。それから、それから、――、背伸びの囁き声、】

【「アリアさん、"どっち"がいい?」】

【――スラックスのベルトに指をかけて背伸びする、お着換えはほとんど仕上がっていた。ならば、星空より近く瞬く煌めき、赤色と、青色、どっちが好きかって聞いていた】
【どうせ夜なんだ。――そんな風な色を帯びる問いかけは悪い遊びに級友を誘うみたいな音律。ゆえに揺らす毛先の色も、長さも、いっしょに違ってしまうんだって、分かりやすい】

【そうしてとっておきの"おめかし"を選んでもらったなら、少女が選ぶのはお行儀のいい高さのかかとしたパンプスなのだろう。腰折るようなキスをしてほしいから、"わざと"】
【けれど実態として彼女はどこまでも躾けられていた。屈服させられたままで揶揄う瞬間は気まぐれと呼ぶにはいくらも艶めかしくて、――夜風に縮こまる背中、抱きしめていてくれるなら】
【右巻きつむじは機嫌のよさをうかがわせるには十分なくらいぴょこぴょこ歩幅に合わせて揺れるのだろう、誰に羨まれたって気にしない車に乗り込むのだって、よく慣れて】

――大丈夫ですよ。帰りは寝てるかも……しれないですけど。

【ご機嫌な横顔は、――二人海を見に行った時などとは根本的に違う色をしているのだろうか。どこまでも無邪気に、それでも用意されたタオルケット、膝にかけるなら】
【もこもこした上着は脱いでしまっていた。そうしてひっくり返して自分にかぶせていた。窓枠に白と蛇の指先を添えて、――手袋は持ってきてはいたけれど、】
【そうしてしばし他愛ない会話でもするのだろうか。時折流れる曲に触れたり、触れなかったり。明日の晩御飯はあれがいい。――半年前には思いもよらなかったこと、ばかり話し】
【――けれど夜景が武骨なフェンスに隠されてしまうなら、素直にシートに委ねた背中、瞬く速度が緩く淀んでいく、気づけばずりと五センチは低くなった座高、――即ち、】

【そこからさらに数分もすれば、きっと彼女は目を閉じてしまっていた。――すやと規則的な寝息は高速道路の景色よりよほど変化に乏しくて、】
【きっと赤ちゃんの頃から変わらない寝顔も、また、同じく。――大丈夫だって言い張ってから、十数分しか経っていなかったから。意志薄弱も甚だしいのだとして】
【せっかくの星空のしたで眠気を訴え不機嫌になるよりはよほど良いに違いないのだから――どちらにせよ色彩の薄い毛先がトンネルのオレンジ色に照らされて、艶めくから】


807 : マーリン ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/27(日) 08:50:33 arusqhls0
【件の邂逅から一昼夜、此方もまた、一通の手紙が届くだろう】
【乱雑な字であった、凡そ人に見せるつもりのない荒れた筆跡、取り繕う様な言葉もなく、ただ日時と場所とを指定した手紙】
【本来ならばただの悪戯であった、特に気にせず廃棄すれば丁度良い、─── しかし】

【貴方は見つける、気づいてしまう、その手紙を封するのに使われた蝋、────── それは】
【 “教会” の、─── しかも “枢機卿” だけが使う高次式に依って編まれていたのだから】


頭でっかちの前任者共は、アンタらみたいな胡散臭い存在が嫌いでね、曰く全てが神を冒涜してるんだとよ、お笑い種だろ?
その理由は十全に理解できる、奴らは恐れていたのさ、自分達の理解できない枠組みで行動する集団を、その理念を、微塵もな
だからアンタらにしてみれば、話がわかる方の俺様が権力を握ったのは、望外の喜びだろう?

────── マクスウェルマーリンウェーバー

聡明なアンタ達なら、俺の来た理由ぐらい、分かるだろう?


【黒い短髪を派手に撫で付け、胸部を大きく露出した耽美的な黒のドレスシャツ】
【黒の司祭服を袖を通さずに羽織り、首元には申し訳程度のロザリオを垂らして】
【真紅の瞳が印象的な長身の男性であった、呼び出した先は何の変哲も無いカフェ、護衛も付けず不遜に振る舞う様子は、些か無防備に過ぎる】

【タイミングの問題であった、話の流れとしては流麗過ぎる程に無駄がなく、不自然な程に自然であろう、このマーリンという男】
【 “教会” 内部に於いて次々と宗教改革を推し進め、圧倒的な支持者と反発者を兼ね備えた、まさに “劇薬” と呼ぶに相応わしい男であった】
【故にその知名度は高く、彼が何者か、そしてどういう男なのか、それは既に伝わっているだろう、問題は ──────】

【なぜ、計った様にこのタイミングで彼がコンタクトを取ってきたか、であった】


808 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/27(日) 13:36:39 6.kk0qdE0
>>765

【カシャン、カシャンと叩き落とされた氷柱は、冬の路上に砕け】
【周囲の光を反射するそれは、何とも哀しげな宝石のようで】

「しっかりなさい!!」

【振り解かんと、暴れる手を再びぐっと力を込めて】
【決して離すまいと、杉原と呼ばれたその男は一喝しながら】

「中尉は本当に役に立たない者や、力無い者を不用意に巻き込むような愚を犯す様な人ではない!」
「何故勝手に決めつける!?虚神のインシデントも白神鈴音の事も、貴女の力添えがあって初めて戦えたのだ!其れは此方にある資料を読めば明白だ!自身の実力を過小評価する、それはいい、だがそれに甘んじて殻に閉じこもり他を見ない聞かない、見向きもしない、そんな事は愚の骨頂だ!!」
「思い出せ、銀ヶ峰つがる!!中尉は誰の助力があったからたんぽぽを気にする事なく動けたか?誰の助力で夕月と言う協力者と出会えたのか?誰の助力で虚神の探索任務を遂行出来たのか?誰の助力でセリーナ氏も鈴音氏も居ないUTを気にすること無く戦えたのか……中尉だけじゃ無い、他の全てにとって貴女はそう言う存在だった筈だ」

「もう一度言う……中尉達は外務八課に救出され、現在その身柄を保護されている」
「中尉は、君を待っている」

【そこまで話し、強めていた腕を握る力を弱めて】


>>774

「金髪の仔犬?ああ、もしかしてエーリカさんって人の事ですかね?まだ一回も会ったこと無い人ですが、新しい課員のリストにありましたね、あれ?お知り合いの方何ですか?」

【変身の状態を解除し、元のグレーのスーツ姿に戻れば、張り詰めた先程とは変わり、少し間の抜けた様な雰囲気】

「うっ……それは有り難い……私は師匠の櫻での剣の弟子で国防陸軍軍曹の風野百合子だ」
「単刀直入に聞く、師匠に会いたい、何処にいるとか連絡先とか、知っている事を教えて欲しい……」

【怪我を負った箇所を抑えながら、立ち上がる、カイから見ればかなり小柄に見える少女だろう】
【そうして、名乗り、知りたい事を真っ先に聞いたら】

「……というか、お前達何者だ?1人じゃ無いのはさっきの戦いで解ったが、アレだ、あの幻術は気にするなよ?幻術ってのは大体が記憶を元に構成される出鱈目だ、決して真実じゃない、気に、病むなよ?」

【先程の戦いの後から、様相を変貌させたカイ、しかし随分と自虐的な事を言うカイに心配しつつ、そう言って】


809 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/27(日) 14:08:46 6.kk0qdE0
>>767

【あまりにも荒唐無稽】
【余りにも、突飛に過ぎる】
【されど、眼前の魔術師は話に興味を示したらしく少女の問いにも、嘲笑すること無く答える】

「ええ、その認識で合っていますブランル様」
「この星の記憶、幾多もの未来すら記録された巨大に過ぎるデータバンク」

「そして……人を超えた者が辿り着く先でもあります」

【ブランルの回答に、緋色に変わる瞳の色を見せて少女は答える】
【淀みない両の緋色には、ブランルが映っているのだろう】

「果心居士、徐福、色々な名で呼ばれて来ましたが、私は青娥と言います」
「その昔アカシックレコードに触れた、人を超えてしまった者、仙人とも言います」
「アカシックレコードに触れた、『超越者』は人類史に深く関わっています」
「人類を正しき未来へと導く導き手として、それがアカシックレコードの、星の意思と解釈して」

【すうっと少女、青娥はブランルに近付き顔に手を添えて、ある種扇情的に顔を撫で】

「人を導きます、この歪な平和に、不必要な停滞に別れを」
「今の世には、絶対的な戦乱が、全てを巻き込む進歩が、必要なのですから」

【青娥の瞳は、次の時には深い蒼色に変わり、またもブランルを見据え】

「手を貸して、下さいますか?ブランル様」


810 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/27(日) 20:11:52 cOIwYYGU0
>>798

紛い物、というやつですか
それはそれは、悪くない。紛い物だからといって真物に劣る理由はありませんから

【常識からすれば無茶を通り越した自殺行為をする男を眼帯の男は責めるわけでもなかった】
【それぐらいこの男の常識も曲がっているようだ。紛い物と、その言葉には少しばかりの熱が込もる】
【さらに無理をする理由には、にやりと笑ってみせて】

あぁ、それは──命を賭けて殺しにかかるには十分過ぎます
良ければ貴方の名前と、その好きな子の名前、殺す予定の者の名を聞いても?
もしも貴方に何かあったとき、“色々”と引き受けられるかもしれませんから

【色々──そこにはそれこそ複数の意味が込められていた】
【怪物と化したときの処理、その伝達、そして狙っている相手を──】
【柔和だった笑みは今ではどこか禍々しい気配さえ孕んでいた】


811 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/27(日) 20:23:56 cOIwYYGU0
>>809

アカシックレコードに触れた、だと……!?

【アカシックレコードに触れた者──仙人、あるいは『超越者』】
【目の前にいる存在がそうだと聞かされて、さしものブランルも驚きを禁じ得なかった】
【疑うような観察するような視線が少女の全身を見つめる。表情から怪訝さは消えない】

【その手が顔に触れ、なおもブランルは視線を外さない】


……一つ、聞かせろ
何故、戦乱が必要だというのだ? 何故、今の状況が停滞だというのだ?
一体どういう基準でもってそうだと言い、そしてお前の言う変化が必要なのだ?


【彼の意思はその瞳に未だ溶け込まず、超常的な存在を前にしても毅然とした態度を崩さない】


812 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/27(日) 21:26:55 WMHqDivw0
>>810

――――――「リンネちゃん」。こっち、好きなコのほうの名前ネ。
そっから、殺したいほう――――「ミチカ・ソネウエ」。
ある時は婦警だったり、あるときは保母だったり――ワケわかんねー女。

【凄惨に笑む隻眼に、やはり何かしらの信頼を預けたらしい。首を傾げて笑って】
【それだけ伝え終えたらようやく、瓶の縁に口付ける。最期のキスと言うには聊か乱暴な】
【自棄っぱちな仕草で押し当てたら、それを一気に傾ける。嚥下の音、――、】


【――――――ごぽり。男が瓶の中身をすべて飲み干した後に、最初に響いた音】
【あらゆるものを煮詰めすぎて粘度の高まった鍋の内容物が、沸騰して泡を立て】
【それを弾けさせるような音。それは確かに、男の内部から響き渡ったものであり】

…………………………………………ッ、え゛っ、

【ごぽ、ごぽり、ごぽごぽごぼっ――それが何度も何度も続く。のであれば、】
【すでに体内での変容は始まっているのだろう。男が苦し気に上体を折り曲げる】
【取り落とした瓶が地面に落ちて爆ぜる。その破片を、のたうつステップで踏み締めて】

ッ、づ――――――お゛ェ、……オニー、サ、ん……ねえっ、おれ、
おれってさあっ…………ドんな、カタチ、だった、カっ、――覚えてル?

【――――やがて男の輪郭が融けゆく。自身の持っていた本来の形を、忘れつつあるらしい】
【褐色の肌、銀の髪、黄色い瞳――それらが全部真っ黒に塗りつぶされて。どろりと揺らぐ】
【このまま放っておけば不定形の化物として、完全に溶解しようということはなんとなく想像がつきそうだ】
【それを踏みとどまらせてやるか、あるいは、――――、それはすべて眼帯の男に任されるだろう】


813 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/27(日) 21:49:49 cOIwYYGU0
>>812

覚えておきましょう、その名前
では、どうぞ────

【信頼に応えるように頷き、小瓶の中身を飲み干すのを見届ける】
【変容が始まり、眼帯の男は興味深げに目を細める。どこか楽しげな笑みさえ浮かべて】
【声をかけられて首を傾げる。身体に棺桶を固定する鎖が金属音を響かせた】

…………それは、重要ですか?
貴方がなりたい形は? 以前と同じものですか?
違うでしょう……貴方がなりたい形は、好きな子を泣かせた“敵”を殺すための形だ

それ以外の瑣末ごとなど────考えるんじゃあない

【それは地の底から湧き出るような恐ろしい声音。引きずりこむような禍々しさと蠱惑の入り混じった言葉】
【踏みとどまらせるなんて冗談じゃない。好きな女のために進むというのなら“徹底的に”やるべきだ】
【そうでなければそれは嘘だ。だからこそ、信頼に応えるならば──突き落としてやるべきだ】


814 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/27(日) 22:03:47 E1nVzEpQ0
>>806

【「 ─── 今は、そのままの貴女を、見ていたいわ。」】
【どこまでも慈母に似た顔貌は、然して濡れた声帯からそう囁いていた。耳朶を撫ぜる生温い呼気さえ添えていた】
【ならば彼女もまた"収まり"など付かぬのかもしれなかった。だとしても飢えを堪える高潔さだけは残すのだから】
【傾げる月光より穏やかな左ハンドルを握る指先も物欲しげだった。誰より少女に向ける優しさを知る横顔だった】
【バリトンのような駆動音と、窓ガラスの向こうで輝きつつも飛び去る曖昧な夜景と、紅紫を映し込んで包み込む夜風の音。 ─── 当て所ない会話は、愉しげに】
【流行りの楽曲よりは古典的なものを好む女であったし、夕飯と呼ぶよりは晩餐と呼ぶべきものを作る女でもあった。それでも決して、安らぎに満ちた会話は、淀まず】


    「 ──── ふふ。」


【では今日の朝食はダイナーで摂ろうかしら、 ─── そんな問い掛けにも、答えが溶けてしまうのならば】
【仄かに口端を緩ませるような機微より儚い笑いを浮かべて、ギアを変える挙措さえ嫋やかだった】
【カーラジオが時報を呟いた。日付が変わる時間だった。やがて路面から曲線は息絶えて、眠らない夜にくすんでいた星と月が、少しずつその神秘を取り戻していく】

【 ─── いずれ気付けば、車は何処かの幹線道路を走っていた。暗い草原に走る真っ直ぐな舗装路。疎らな車内灯の柔らかい光だけが文明を在らしめていた】
【街路灯すら整備される事を諦めて、 ─── 辛うじて古いモーテルのネオンが、振り向いた遠間に見受けられる程度の、いっそ荒凉たる世界】
【どれだけ眼を凝らしても林立する摩天楼に隠されてしまっていた星原は呆れるほど煌びやかに、黒く濃紺の空へ鏤められていた。月光であっても今ばかりは寂しげだった】
【車窓から見える分でこれだけならば、果たして寒風に身を晒す事を厭わないなら、どれほどの輝きを瞳中に得られるだろうか。 ─── カーラジオから流れる訛りも、異世界のように変わっていた】


815 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/27(日) 22:16:14 E1nVzEpQ0
>>807


「 ……… 全く、ですな。」「幾ら我々のような組織であっても、やはり国家の庇護あってこそ成立します故」
「貴方のような方に表沙汰にてご唱導いただけるのであれば、凡そ望外の喜びというものです。」

「マーリンさん。 ……… "ご存知の通り"でしょうが、おれは策謀というものが不得手でして。」「できればそう、するり、すぱり ─── そのようにお話したいのです。」


【 ──── また優男であるか。枯れた微笑と鳶色の奥に隠された後藤の感情というのは、その類であった】
【よく仕立てられた白いスーツは彼の一張羅であるのかもしれないが、壮年の猫背には全く似合っていなかった。】
【護衛を付けぬのは彼も同じようだった。尤もそれは護衛に見えぬだけかもしれない。何れにせよ些事であった】
【冬の乾いた陽光が、例え窓硝子越しにでも射し込んでくる事、 ─── それだけが今は重要であるに違いない】

【言い分に反した長広舌を終えた後、後藤は呼吸を置く。静かな双瞳の輝きが、躊躇いなく青年を見据えた。】


    「何を我々にお望みですか、枢機卿。」


【可能性は選択肢の数だけ考えられた。つまりは際限がなかった。 ─── 依頼であると考えるのは楽観的だった】
【縄張りで彷徨く狼を追い払おうと考えるのも十分に道理ならば、銃口が向けられぬ事を今は祈るより、他はなく】


816 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/27(日) 22:22:08 WMHqDivw0
>>813

【液状化した全身が波打つ。まるで返事でもするようなタイミングで――ごぽり】
【それから、――ばしゃん。「自立する生物の形」すらも失って、地面に広がる水溜りになり果てる】
【彼は、彼の形を完全に忘却したらしい。着ていたスーツも履いていた革靴も意味を為さなくなり】
【196センチもあった身長も、肌の色も髪の長さも瞳の彩度すら忘れた、ただの粘液と化して】

【――――――そのまま、しばらく地面を彷徨っていることだろう。ずるずる引き摺る音を零して】
【ただ何かを探しているような動き方をしていた。ずる、ずる。小石が転がっているのならそれに乗り上げて】
【壁があったらそれに這い上がってはずり落ちて、べしゃりと墜落音を響かせて――ずる、ずりゅ】
【あるいは、隻眼の青年の足元へと這い寄って行きもするだろうか。その場合は、きっと「よくなく」て】
【容赦もなく「飲み込もう」としてくるだろうから。払い除ける必要が出てくるが――それだけ】
【液状の身体と化しているから、物理的な衝撃はダメージとして受け取れないようになっているらしかった】
【打とうが斬ろうが、痛そうな素振りは見せるが、然したるダメージは通らない。そんな手ごたえを与えて】

【     ………… ぢぢっ、と。何かの鳴き声。それに振り返るのなら、ありふれたネズミが一匹】
【道の脇を走っているから。……「試してみる」なら、そいつを液の中に放り込むのが丁度よさそうではあった】
【触れたものを飲み込もうとする、異質な液体。かつて長身の男だったそれに、喰わせるのなら】
【……、ヒトを喰わせるよりはまだマシだろう、という程度ではあるが。興味があるならそうしたってよかった】


817 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/27(日) 22:32:49 cOIwYYGU0
>>816

……さて、これで何が生まれるのか
ここまでけしかけておいて自分だけ隠したままというのは、少し無礼かな

【木箱から眼帯の男が立ち上がる。重量のあるはずの棺桶を背負ったまま、まるで重さなどないかのように】
【左手が眼帯を取り払う。周囲を鱗が取り囲む右目が開かれる────瞳孔が縦に鎮座する爬虫類の瞳】
【魔力さえ内在した異形の瞳が汚泥と化した存在を見定めるように見つめていた】

さ、貴方“も”生まれ変わったというのなら、その姿を見せてご覧なさい
たった一つの渇望を全てとして生き長らえる“怪物”になったのかどうか……

【足元に寄ってきたところを避けて歩き、ネズミの一匹を爬虫類の瞳が捉える】
【視線を受けたネズミはまるで石になったかのように動かなくなった。それをゆっくりと右手が掴み取り】
【汚泥の中へと無造作に放り込む】


818 : 名無しさん :2019/01/27(日) 22:38:59 uQ7YoBgo0
>>814

【ならば薄藤はいっとう特別な夜によく映える色をしていた。紅紫の眼差しもまた同じであるなら、幾度も重ねた出会いの中で見せてこなかった表情ばかりが浮き彫りに、】
【知らぬ間にずいぶんとあどけない顔を見せるようになったものだった。神様に傾倒してやまぬ少女が一度だって見せなかった表情ばかりを見せていた、きっと、ごく普通の人間としての】
【まったく分からぬ流行曲を聞くでもなく聞き流して話す距離感は一対一の人間にしかあり得ぬものであるのなら。――すやりと緩む甘やかな寝顔は、限りなく信頼を証明していて】

【――寝言の一つも呟かぬ眠りであるのだろう。口元をコートに縫い付けられたフェイクファーに半分埋めて、吐息の感覚は見せつけないけれど、お行儀よく並ぶ睫毛が安眠を見せつけるから】
【やがて見える景色ががわりと変わってしまうのだとしても、――すやすやと安らかな寝息は規則正しいから、やはり彼女は夜に起き上がること、ほとんどなかった】
【一度眠ってしまったらなかなか目覚めないタイプ。無理やりに起こしたとして、そのほとんどはよく分からない寝言の呻きを漏らすばかりで、また気づけば眠ってしまうなら】

――――――――――ふゃっ、

【――――だけれど、今宵、"その"心配は不要であるらしかった。景色も様変わりして少しした頃、彼女は起こされるでもなく目を覚ます、ごく奇特な鳴き声と共に、だけど】

……。……あ。ぁー。……。寝てたあ――、――起こしてくれて、いいのにい……。

【それでも眠たげにうつらうつらする仕草、そのたんびに瞼をこする薄藤の前髪を疎むように指先で退かしてしまうなら、曖昧な指先、求めるのは起き抜けの水分補給、というよりは】
【暖かな車内の温度に窓が曇るようなら結露を拭って。そうでなければ、さっきまでそうしていたみたいに、遠足が楽しくて仕方ないみたいな、子供みたいな仕草】
【窓の外を覗き込もうとして――、「くらぁい」なんて呟いてから、戻ってきた。また少しだけ眠たげな眼差しをしばたかせて、それでも、しゃんと座り直すなら】

んん……。でもちょっとすっきり……。言ってくれてたら、明るいうちに、お昼寝したのに……。

【漏らす欠伸を指先に誤魔化して。見やる横目は少しだけ拗ねてみせていた、ならば道中だってたくさんお話をしていたかったんだって、きっと、伝えて】
【放っておいたら"良い子"の小学生みたいな時間に眠ってしまうような規則正しさは、それでも一定の睡眠時間を取れさえすればズレは構わぬと彼女は定めていたけれど】
【――おてての冷たいラッコさんみたいに指先で目を擦っていた、やがて終えるのなら、見せつけるみたいな色鮮やかさはいつも通りの眩さを取り戻して、いて】

――お外、寒そうですね。コンビニかどっかで――カイロでも買って来たほうが、良かったですかね。うふふふっ。

【綻んだ頬の彩を隠そうともしない/隠す必要なんてないんだから】


819 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/27(日) 22:43:23 BRNVt/Aw0
>>808

【力強く掴まれた腕。それでも少女は振りほどこうとするのを止めはしないで】

──現に、やってるじゃない!今!やってるんじゃない!
私が与えた情報なんか一つも役に立ってないじゃない!
厳島さんが動けていたのは私じゃない他の人の情報のお陰じゃない!
虚神の事だって、私何の役にも立ってないよ!?
鈴音ちゃんも夕月ちゃんも助けてないもん!
資料だって大幅に盛る事だって出来るでしょう!?文書だけじゃ分かんないでしょ!?
たんぽぽの事は夕月ちゃんのお陰だし!夕月ちゃんと厳島さんが知り合いだったのも私とは何の関係もないし!虚神を探せたのだって私は一切関係なくて他の人達のお陰だろうし!
UTの事なんか一つもやってないし!
……それに……そーゆー存在は駄目なの……!
前線に出ないで戦いもしないで!信じて待ってるだけの存在は駄目なの!大切な物を心配してそれでも信じて待っているのは!いい御身分で!詐欺師で!友達なんかじゃなくて!それだったら仲間でもないの!
そーゆー存在なんか必要ないの!
私は誰の仲間でも何でもない!

外務八課っていうのに保護されたんならそれで良いじゃない!
あの人の仲間はその人達で良いじゃない!
遅れた情報しか提供出来ない役立たずで厳島さんを助けにも行かなかった詐欺師の私なんか仲間なんかじゃない!
役立たずの半妖なんかいなくたって他の頼りになって情報に明るくて窮地も助けて貰える沢山の仲間がいるんだから、それで良いでしょう!?

【吹き荒ぶ吹雪のような声だった。冷たく、痛さを与えるような声だった】
【緩んだ手。それをやっとの事で振り払って】
【反動で力なくその場に座り込む】

──それに、厳島さんが仮に待ってるとしてもそれは『私』じゃないよ……
あの人が待ってるのは、情報通で役に立って勝ち気だけどちょっと御調子者で母親想いで仲間想いの『銀ヶ峰つがる』ちゃんでしょう?
役立たずで臆病で弱虫でちょっと思い込みが強くて嘘吐きで母親想いでも仲間想いでもなんでもない『私』なんかじゃない
【失望した?でもこれが本当の『私』なの、と少女は自嘲気味に笑って】

……ほら、ね?私の事なんか厳島さんは待ってないでしょう?


820 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/27(日) 23:05:56 6IlD6zzI0
>>808

ええ、知り合いだけれど。……前の職場を辞めてから元気にしてたか分からなかったから。
元気そうであるなら幸い。………どうか、あの子を宜しく。

【外務八課の彼に顔を向けて短く言葉を紡いだ後、再び百合子に顔を向ける】

何者……?私は、私たちはひとおに。一つの身体に二つの魂を宿した人の数ならぬ身。
だから姿形が良く変わる。雰囲気も、言動も。時には今みたいに混ざってしまうけれど。
さっきまで楽し気に"踊っていた"のはフェイ、そして今表に出ているのはわたし。白桜。

櫻の国の鬼ヶ島育ちの鬼子。鬼哭の島という流刑地育ちともいうけれど。
――――、気に病む事じゃないとしても、結果的に自分の意志で命を奪ってしまったなら……
もう文月お姉はんに顔向けできない。――――記憶よりも結果が私を苛むから。


【その慰めはありがたいけれど、真に病むべきは自発的に人を殺してしまったという事実】
【正当防衛であったとしても、自分の意志で殺す事を選んだから。生前、鬼哭の島で生きていた頃の自分そのもの】

【それは戒めた筈の自分。心根の優しい白桜にとって重い事実】

―――、連絡先を教える前に聞きたい事がある。
あなたはお姉はんに会って何をするの?まさかあの人まであなたたちの争いに巻き込むと?
……もし、そうなら。私は教えるわけにはいかない。諦めてもらう。たとえあの人の弟子であっても。

【姉として慕う。それも確か。でも聊か過剰に過ぎるきらいがあった】
【凍り付いた表情に隠した弱い自分。今にも零れ出そうな感情を必死にせき止めるのは、姉と呼ぶ人が居たから】


821 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/27(日) 23:23:29 WMHqDivw0
>>817

【水溜りに投げ「入れ」られる哀れなネズミ。それは、波紋もなく音もなく黒い水面に飲まれてゆき】
【長い尾の先っぽまで見えなくなったところで――ごぽり。またも沸き立つ泡の群れ】
【それは立ち上ってゆくようにごぼごぼと立体的に、しかし左程大きく膨らむこともなく】
【ちょうどネズミくらいのサイズまで膨れ上がってから――カタチを、色を成してゆく】

【――――最終的にその泥は、先程のネズミと変わらない姿に、変身していた】
【薄汚れた毛皮と欠けた耳、不揃いながらも野生生物としての鋭さを失わない歯と爪を携え】
【細長い針金のような尾をくねらせて、ぢぢ、と鳴く――これだけならさっきと何も、変わらなかったが】


「オー、」「なんだコレ」「ヤバ」「見」「てる?」「オニー、サン」
「おれ」「ダヨ」「見て見て」「すごく」「ネ?」

「――――――ヂヂッ。おれ、ネズミになっちゃ」「っ、たァ」


【眼球だけがあの男と同じ色をしていた。過熱した卵の色合い。それは確かに男を見上げていて】
【そして何と、人語を発していた。小さなネズミの器官から発せられるものだから、音量は小さく拙いが】
【耳を澄ませたなら、本当にそんなことを言っていた。ぢぢぢ。また鳴いた、笑い声の代わりだろうか】

【――――――であるなら。こいつは、「喰ったモノに変身する」能力を、身に着けたのだろうか】


822 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/27(日) 23:30:45 cOIwYYGU0
>>821

おやおや、可愛らしくなっちゃいましたね
喰らったモノに変身する能力、ですかね?
これは便利ではありますが……さて、気分は?

【人語を話すようになり──意思が宿ったのを見ると木箱に再び腰を下ろす】
【爬虫類の瞳と人間の碧玉の瞳が二つ揃って小さなネズミを見下ろす】
【──その瞳には威圧感を覚えるかもしれない。さらには、全身が重くなったかのような感覚も】

今の貴方が何ができるか気になるところですが
ネズミちゃんでは好きな子のために戦うのは大変そうですね
……僕がもう少し、良いものをあげるのも悪くなさそうだ

【意味深な笑みを浮かべて、左手の指が右目の周囲にある鱗に軽く触れていた】


823 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/27(日) 23:39:57 WMHqDivw0
>>822

「なんか」「ネー」「マワりが全部」「でかくて」「こえー!」
「こりゃネコ、こえーわ」「カラスも……」「そー、考える」「と」
「ネズミって」「けっこー」「苦労、」「して」「ン」「の、ナー」

【ぢぢぢぢぢ。やっぱりこの断続的な鳴き声は、笑い声の代わりであるらしい】
【しばしの間ちろちろ動き回ったり、自分の身体を探りまわったりしていたが】
【眼帯に隠されることのなくなった瞳に見つめられるなら、ヂィ、と唸り声のようなものを上げる】
【カエルではなくとも怖いらしい。抗うすべもないのでそれを受けていたが――】

「多分」「ネー」「こうして色んなもの喰っ」「て、色んなカタチを」
「覚えていく」「のが、当面の」「やるべきコトに、なりそー」
「なんかネ、わかんの」「喰ったモノが」「さあ、どういうモノ、なのか」
「なんとなくだけど……」「ワカルよーになるから」「これからイロイロ、」「食べないと」

「――――――それで。オニーサンが、」「なんか喰わせて」「くれる」「ノ?」

【見上げる小さな小さな瞳に期待の色味が混じるなら――ごぽり。ネズミの身体が波打って】
【投げ込まれたモノをいつでも「喰える」よう準備している、ようだった】
【ネズミの姿に完全固定されているわけではないらしい。むしろその本質は不定形であるようで】


824 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/27(日) 23:52:14 cOIwYYGU0
>>823

色々食べる、ですか。それもまぁ大事でしょうね
選択肢が多いに越したことはない……でも、いざってときの選択肢も欲しくないですか?

【ガリ、と爪先が鱗と肌の隙間に入り込み、小さな鱗を皮膚から引き剥がす】
【僅かな血を引きずったそれを男はちらりと見遣ってから、微笑を浮かべた】

これは生物の中でも“特別”ですからね
きっと貴方の役には立つでしょう。僕の役に立っているように、ね

【男は返事も聞かないままにその鱗を投げ込んだ。鱗は蛇の鱗ではなかった────その正体は龍だ】
【強靭な肉体。圧倒的な魔力。種によっては高度な知性。その全てを併せ持つ最強の生物の一角】
【それを取り込めるようにと差し出した。つまりはこの男は────?】


825 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/28(月) 08:27:25 6.kk0qdE0
>>811

「然り……」

【ブランルの驚愕混じりの問いには、ただ一言静かにそう頷いて肯定の意を示して】

「お答えしましょう、貴方もまた、この時代の鍵なのですから」

【驚愕の色を隠せず、されど毅然とした態度を崩さないブランル、青娥はゆったりとその手を離し】


「カノッサ機関は黒幕と円卓が拮抗し、企業が跋扈し、ああ、レヴォル社もその一つでしたね……能力者達はその波に翻弄されながら時に組織を結成し、時に個人で暗躍している、虚神の侵攻等もありましたが、概ね国家単位で見れば状況に変化は無いと言えるでしょう」
「国家間は条約と同盟、国際法の名の下に薄氷の平和を享受して久しく」
「人々の認識もそう、戦争と言えば遠い創作物の中で、テロや内乱はディスプレイの向こう側に押し込み、仮初めの平和の上に安眠している……」
「進歩も進展も拒みながら……与えられた文明を貪る事のみ、人も国も」
「この状況を停滞と言わずして如何に呼ぶべきか……国家間の戦争と闘争無き世界は滞り、そして誰も気がつく事なく、滅びて行くのです」
「それは、過去の歴史が証明しているでしょう」
「我々超越者が現れ、定期的に技術や発展を与えても尚……」

「何をもって、と仰いましたが、ブランル様、貴方が生きて来た中で、一度でも世界地図が変わった事はありましたか?国境線は?植民地は?民族の壊滅や淘汰は発生しましたか?」


「故に、今の世にこそ、国家間戦争は必要なのです」
「其れが、この世界を、星を、時代へと導くからです」

【次に瞳は、金色のそれに変わり】
【青娥はブランルの質問に答えた、曰く、同一国家内での、能力者同士の小競り合いのような事はあっても、戦争行為は無くなり久しく、また人や国家が求めるものの意識も、現状維持の即ち停滞へと変わっている、と】
【それ故に、強力な外圧の力が人類を導く為には不可欠である、と】


826 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/28(月) 09:25:16 6.kk0qdE0
>>819

「……愚かな」
「何と、愚かな思い込みを」

【つがるの、まるで嵐のような、吹雪の様な、感情の激流だった】
【溜め込んでいたものが、一気に噴き出したかのような、そんな氾濫した感情】

「役に立たなければ、仲間でも友人でも無い?そんな事は誰が決めた!?」
「成果を挙げなければ、役立たずか!?ならば私や軍曹も役立たずの仲間入りだ!虚神のインシデントに関して言えば中尉達も同じだ!全員揃って役立たずだ!」
「周りはお前に成果を求めたか!?戦果を挙げられねば叱責したか!?」
「前線に居ない?それは我々含め全ての後方支援職種への侮辱か!?」

「……全く、必要があれば、海軍やヨシビ商会から身柄を保護、アリアさん達に取り次いで、中尉の元まで送ろうと思って居ましたが……これでは……全く、役立たずで何が悪い、何故悪い……」

【ペタンと、その場に座り込むつがる、冷ややかにその様子を見下ろして、そう最後に呟いた杉原】
【その肩に手を触れ、目線を合わせて、顔を覗き込むように話しかけたのは、別の人物だった】

「どうも、その話題の外務八課です」
「ライガ・カシワギって言います、つがるちゃんだっけ?」

【優しげな口調と、肩に回した手で】
【話を続けるだろう】

「救出戦の時は、僕もちょっと手伝ったんですよ、ちょっとだけですが、アリアさんとミレーユさんって2人だけで船に乗り込んで」
「無事に救出して、船を爆破までして、凄くカッコよかった……」
「気持ちはわかりますよ、僕も、外務八課じゃ役立たずだ、虚神との戦いも、今回の件も、でもアリアさんもミレーユさんも佳月ちゃんも、僕のことを仲間じゃないとか、詐欺師とか、そんな事一言も言わない」
「中尉達も、そうなんじゃ無いのかな?仲間になるとか友達とか、役に立つ立たない、戦う戦わないとかそんな事どうだっていい、そんな事を越えた先にあるんじゃ無いかなって、僕はそう思いますよ」

「だから、会いに来ませんか?中尉達に」

「いい所も悪い所も、2つ合わせて『銀ヶ峰つがる』違います?」

【ぽん、と最後に肩を叩くようにして】
【ライガはまた、立ち上がる】


//分割します


827 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/28(月) 09:59:24 6.kk0qdE0
>>820

「え!?あ、そうだったんですか!?」
「いえ、すみません、此方こそ宜しくお願いします、ああ、まだ会ったことありませんが、その時には貴女の事もお話します」

【一礼して、こうカイに答えて、やがてライガは別の少女の元に、そして話は百合子の方へと向くだろう】

「白桜にフェイ、なるほどなヒトオニと来たか、しかし難儀だなー、1つの体に2人の存在ってのは」

「鬼哭の島?いや、私も櫻の出身だが、そんな島あったか?と言うか流刑って……罪人?」
「そんな、さっきのはあくまで正当な戦いで、悪いのはアイツらだぞ、白桜は何も悪くないだろ!」
「そんな状況なら、師匠だって戦うぞ、戦うとなれば命も奪うことなるし」

【余りにも白桜は優しすぎたのかも知れない、気に病むのは、自分が自らの意思で命を奪ったと言う事実で】
【それが、枷となり文月に顔向けが出来ないと言う】

「何をするって、身柄の保護だ……巻き込むって言うか、実際はもう巻き込まれている、海軍は師匠の身柄も追ってるからな」
「叶う事なら、身柄を保護し本国に安全にご帰還頂くのが一番だが……本人の気質を考えたら、そうはなりそうも無いな」

【その部分、隠す事はしなかった、事実をありのまま述べた】
【和泉文月への白桜への想いは、過剰な程の心配かも知れないが、それでも、文月を危険な目に合わせられないと言う気持ちは、同じ様で】

「師匠は、海軍陸戦隊諜報部の戦闘教官を引き受けててな、あー、というか、白桜にフェイだっけ?2人とも、この話何処まで知ってるんだ?」

【何かを言いかけて、ふと、その部分が気になり、こう聞いた】


828 : マーリン ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/28(月) 13:30:52 S/DUh6T.0
>>815

【言葉を聞き彼は顔に手を押し当てる、漏れ出る笑い声を噛み殺し、低く唸った】
【指と指の隙間から野性味溢れる眼光が見据えて、彫りの深い顔立ちをより一層深めるのだろう】
【────── 彼は言い放つ、後藤の内面に向かって、強く】


ハハハハハ!!! いいねぇ、策謀が苦手な輩が徒手空拳で俺の前に来るかよ、寝言にしちゃ及第点だ
少なくとも "お呼び出し" だと解釈したのなら、その対応では有り得ない、そこに誠意はないからな
故に、アンタは俺の個人的な依頼だと半ば確信を持っている、だからこそノコノコとやって来たんだろう?

もう一つ愉快なのは、表面上は兎も角アンタは俺と同等であると感じてる点だな
言葉の上では恭順の意を示しても、その内心は自分達の利益を第一にしてる、そんな目だ
くく、────── こういう時は間髪入れず袖の下だぜ? そこまで頭が回らない木偶か? それとも、──────


【背もたれに深く身体を預ける、言外に伝えていた、お前は後者である、と】
【自分の考えや性格を読み切った上で、気に入る様に振舞っているんだろう、────── だからこそ】
【気に入らねぇ、凡そ教会という価値観から最も遠い男に見えて、その実正しかった】


まあいい、別に俺は他者をいびって悦ぶ、生産性の無い行動にかまけるつもりはねぇしな
それに嬲るなら女の方がいい、教会にはそれなりに上物が揃ってるし、相手には困らない、意外とモテるんだぜ?
本題に戻ろうか、────── 俺の依頼だったな、そうだ、その話をしなきゃならねぇ

────── ランスロット から連絡があった、大きな獲物を放流したと
下請けみたいに動くのは癪だが、全体の利益を考えた場合、俺の感情なんてものは優先度の最下層だしな
有難く喰わせてもらう事にした、丸々と太った権力の豚をな

正直に答えろよ、──────〈円卓〉に何を見てる?


829 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/28(月) 18:50:54 Z1xWs9og0
>>825

【現状の分析とそれの打破。その部分に関してブランルが疑念を差し挟む余地はなかった】
【深刻な戦争はもう長い間起こっていない。『それを停滞だと定義するならば』超越者の主張は正しい】
【星と時代を導く。荘厳な目的を語る超越者の前で、黒衣の男は不遜な笑みを浮かべる】


──かつて、『ネル・ナハト』という組織が似たような思想を掲げていたな
曰く、闘争という手段を以って秩序の全てを破壊して万人に平等な世界を作る、だったか
もちろん、そんなものは大したことじゃない。誰もが否定して、『Justice』とかいう連中が討伐して終わりだ


【ブランルは十年近く前の一国と少しの規模で起こった事件を引き合いに出す】
【言葉の通り、今となっては大した話ではない──青蛾と道賢が語るのはそんな小規模な話ではないからだ】
【『ネル・ナハト』は単なるテロリスト集団だったが、この二人が画策するのは世界全体を巻き込むものだ】

【ただ、この男が言いたいことはそうではなかった】


二番煎じは如何なものかな
今時、戦争を起こせば発展するなどという埃をかぶったようなことを実行するやつがいるとは思わなかったが
それが極めて単純な発展に過ぎないということは、それこそ過去の歴史が証明していると思うが?


【戦争という手段。それ自体がこの男にとってはいまひとつ退屈なものだった】
【それが人間の意識を革新に導くだとか、人類の文明のステージを上げるだとか、そういう思想を持ち合わせていなかった】
【だがこの企業は兵士を商品としている。闘争という手段それ自体は同様に行なっているのだが──】


重ねて言っておくが、お前たちを非難したいわけでも話を断りたいわけでもない
私としても、そろそろ国家間戦争を見てみたいという思いだってある
戦争ともなれば正義組織だの何だのという小さな力など、簡単に飲み込んでしまえるわけだしな

ま、何にせよ、お前たちの思想は分かった
私としてはもう少しぐらい工夫を凝らすところではあるが……それもいいだろう
改めて、この仕事は引き受けさせてもらおう。『魔導イージス艦』の中心たるホムンクルスの作成は任せろ


830 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/28(月) 22:02:45 WMHqDivw0
>>824

「イザ?」「なんか」「そーいう」「アテ?」「でも、あるノ?」
「まー、」「そりゃ欲しい」「ケドォ……」「……、」

【満足に動けないのはそのままに。小さくて、虹彩ばかりが大きな瞳をしばたかせ】
【それでも小首を傾げる動作だけがいやに人間じみているから、やっぱりこいつはネズミではない】
【かといって間違いなく人間であるはずもなくて――だから、投げ込まれた鱗も】
【こつんとぶつかる音も立てずに、静音のまま飲み込む。沈ませる。額から――一息の後に】
【びしりびきりと罅割れの音が響いた。見るならば、針金めいて細長い尻尾が、変容していた】

「………………あれマ、」「オニーサン、そんな“レアモノ”だったの?」

【太さは人の五指を揃えたくらいの直径まで。増えて、その表面に亀裂が走っていた】
【鱗。蛇のものほどすべすべしていなくて、魚のものほどぬらぬらもしてなくて、――いや】
【この世に存在するどんな生物の鱗とも、何もかも格が違うのだろう。硬度だけで言うのなら】
【きちんと鍛えるのなら鉄にだって負けないのかもしれなかった。それで、てし、と地面を叩いたら】

【――操る言葉がいくらかカタコトしているのさえ、少しだけ戻っていた。より人間のそれっぽく】
【しかし合間に挟まるぢぢぢ、という鳴き声だけは消えず。……けれどそれを発する口元】
【生えているのは平べったい「歯」などではなく、間違いなく鋭い「牙」に変わっていた。それに、】
【黄色い瞳にいくらかの橙色――魔力のかけらが渦巻き始めているのさえ見えるだろう】
【それでも全体的な形は、ネズミなんだけど。(……あるいはネズミの形に、必死に押しとどめているのか)】


831 : ◆ImMLMROyPk :2019/01/28(月) 22:08:33 Nt7ZtIVU0
>>780
>>782
【ノーナンバー。そう語る女の声音は、角笛のように鼓膜に響く】
【三つ目の虹を抱く者は、確かにそこにいた。否、〝いる筈だった〟】
【実数と虚数の間で揺れる情報が繰り返し、繰り返し、繰り返し電流となって脳細胞を刺激する】


付き合ってはいない。そして、俺にとっての時間の無駄は、何一つ情報が得られない時間だ


【視界にはマーリン一人。背後に女の気配が移動した】
【双の圧力が彼の体を潰していく、じわじわと双つの世界が彼を飲み込もうと叫んでくる】


【だから、選ばなくては】


【折角、もう少し見たいものが出来たのだから】


【AかBかで問われたら、そうだな。選択肢を提示された上で──────】



俺は、俺の好きにやるよ
さっきそう言っただろう?俺は〝俺のしたいようにする〟



【マーリンと、白い女に対して言い放つ。選択するのか、しないのか。選択肢を出され、どちらかを選べと言われたから】
【彼はどちらも選ばない。提示された選択肢の上から、自分で作った選択肢を覆い被せるのが彼の答えだ】
【選択肢を作ることは、自己認識の一つだ。〝一人〟で〝作る〟と言う行為は、知恵を持った生き物に許された特権だ】


【真に勝手ながら、少年は更に一歩人間らしくなった】

/遅くなりました……申し訳ありません!


832 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/28(月) 22:11:59 Z1xWs9og0
>>830

【鱗には龍のものらしい尋常ではない魔力が付与されていた】
【これを取り込み変身できるようになれば、それこそ小さな街の一つぐらいは壊滅させられる】
【そう思って放り込んだのだが、なんとも変容が微々たるものだ】

あれ、おかしいですね……なんだかあんまり強くなさそうです
魔力が足りないのかな……もう少し、入れておきますか?

【抑えているのかそうでないのか。そのことを確かめないままに】
【男はもう一つ鱗を剥がして小さな小さなネズミの方へと放り投げる】
【今度はさらに余計に魔力──禍々しいまでの魔力を込められたものを】


833 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/28(月) 22:38:22 WMHqDivw0
>>832

「エッ、いい、いい!」「たぶんこれ以上ブチ込まれたら」「おれの腹がパンクする!」
「いいって言ってんの」「ニ」「あーっ!」「お客様!!」「ウワーッ!!!」

【投げられる鱗を転がるようにして避ける! ……避けるけど、もらうだけはもらっとく】
【粗末な毛皮と髭の間に挟む。そしてぢゅう、と唸るような鳴き声。どうやら抑えているらしい】
【曰く、いきなりこんなすごいもの喰ってもお腹壊れちゃう。処理しきれない。だそうで】
【「数日何も入れてない空きっ腹にトロトロ脂の霜降りステーキ入れたらどうなる!? ピーピーでしょ!」】
【そういう感覚と一緒、らしい。……あるいは、この期に及んで壊れ切るのが怖いのかもしれず】

【けれど大事のときのためにそれを捨てずにおこうとするのだから、臆病でありながらも図々しかった】
【やがて黄色い瞳の、尻尾だけがやたら立派なネズミは後ろ足で立ち上がり。ぢぢ、と一鳴きしてから】

「ンー、」「ん」「でも、あんがとネぇ」「見守ってくれたうえにお土産まで」「つけてくれちゃって」
「ホントにあんがと。いつか」「また、いつか、元の姿に戻れる日が」「来たらさ」

「そん時にメシでも酒でもなんでも奢ってお礼したげる。……そん時のために」

【「オニーサンの名前、教えといて」 ――ネズミの姿から一向に変わる気配なんてないのに、】
【いつ来るかわからない、そもそも来るかもわからない時のための約束をしたがっていた】
【元のあの、青年の姿なんてきっとどろどろに崩れて原型もないが――それでも戻るつもりがあるらしい】
【その瞬間のために。「おれはオムレツ、よく焼けた卵色の目のオムレツくん」。そんな珍妙な名を、名乗るのだ】


834 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/28(月) 22:45:03 BRNVt/Aw0
>>826

【冷ややかな目でつがるを見る杉原。彼女は鈍い金色を相手に向けて】


──だったら……だったら蜜姫かえでにそれを叫べよッ!
お前の主張は間違ってるって蜜姫かえでにそう叫べよッ!!
のうのうと生きて大切な人と幸せになってる彼奴に!
その主張が間違ってるなら蜜姫かえでを糾弾してよッ!
私が間違ってなかったんなら……何で彼奴が幸せになってるの!?
よりにもよって"あの女(ひと)"と同じ口調でッ!その主張を宣って!私を嘲笑した彼奴が!鈴音ちゃんだって否定した彼奴が!
……ねえ、私が間違ってなかったのなら何で私は苦しむの!?
私、頑張ったよ!?
お母さんに捨てられないように怖かったけど好きって思い込んで錯覚したよ!?
化け猫ってバレないように一生懸命人間のふりしてたよ!?
一生懸命お母さんの死体探したし、鈴音ちゃんが何処行ったのかも翔子さんって人も頑張って探してたよ!?
■■■■だって……夕月ちゃんがいない間ずっと頑張ってたよ!?子供達が私以外を求めたってちゃんと対応してたつもりだったよ!?
情報だっていっぱい集めたのに……虚神の手がかりだって頑張って探してたのに……!
それなのに何で私は独りにならなきゃいけなかったの!?何で村の皆に冷たい目で見られて誰も助けてくれやしなかったの!?何で夕月ちゃんがあんな事になってそれを見せられなきゃいけなかったの!?何で自分の無力さを再認識させられなきゃいけなかったの!?何で折角掴んだ虚神の手懸かりをあの軽薄そうな金髪野郎とかカニバディールに横取りされなきゃいけなかったの!?何でいきなり記憶を消されるなんて怖い目に遭わなきゃいけなかったの!?何でカニバディールなんかに■■■■を!私の居場所を潰されなきゃいけなかったの!?何で蜜姫かえでなんかが生きて幸せになってるの!?何で鈴音ちゃんが蜜姫かえでなんかの味方するの!?

何で──何で誰も私を救ってくれなかったのよぉぉぉぉぉぉッ!!!!!

間違ってなかったんなら……っ、間違ってなかったんならぁ……っ

…………っああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!

【咆哮】
【ボロボロと涙を溢して、叫ぶ】
【ただ泣き叫ぶ】

【八つ当たりにしか聞こえないかもしれなかった】
【けれども少女にとってはとてもとても大切な事だった】
【薄藤の聖女が破棄捨てたのはきっと些細な言葉だったのだろう。ともすれば誰もが歯牙にかけぬような。けれどもその言葉は少女の心を巣喰っていて】

【ライガが顔を覗くとすればきっと彼女が泣きじゃくっている時なのだろう】
【その言葉だって聞こえていなくて】
【そもそも──蜜姫/待雪かえでは八課の一員でライガの仲間なのだから】
【きっと仲間を侮辱されたのならばその感情は良い方に傾く筈がなくて】

【──だから、きっと見棄てたって良いのだろう】
【少女の叫びを一蹴しても良いのだろう】
【だって、誰からも愛されるべき聖女を貶めようとする化け物なんか退治されて然るべきなのだから(ほんとうに?)】


835 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/28(月) 23:34:08 E1nVzEpQ0
>>818


     「ごめんなさいね。 ─── あんまりに、可愛らしい寝顔でしたから。」


【悪びれない苦笑が暖色系のインテリアへと響いていく。 ─── 助手席のドリンクホルダーに収まっているのは】
【どこかのサービスエリアで買ってきたものだろうか。スチール缶のホットココアだった。手に取れば、まだ熱い】
【ワンコインほどの値段で買えてしまう飲み物を収めるには立派に過ぎる保温器のお陰であるらしい。やはり目覚めに飲むにはちぐはぐであっても】
【夜のドライブとはそういうものだった。時間も、味覚も、景色も、何もかもが奇妙な互い違いで、それでいて闇が全てを時めかせてくれる。変らぬ耽美な白皙さえも】


「差し迫ってから言わないと、 ─── サプライズにならないでしょう?」「驚く顔も、見たくって。」
「かえでなら起きててくれるって思っていたのだけれど。 ……… でも、矢っ張り可愛かったから、許してあげる」


【冗談粧して揶揄う声音など、アリアは滅多に紡がなかった。 ─── 例え嘗ての恋人の前でさえ、きっと一度も】
【ハンドルの縁を細い人差し指が、小気味好く上機嫌に叩いていた。カーラジオから流れる曖昧な音楽に併せて】
【進行役の言語も変わっていた。どこか陸路で国境を超えたらしい。午前3時46分。もう夜明けの方が近かった】

【呆れるほど長い直線を不意に外れて、車は速度を落としつつ、より暗く鬱蒼とした林道の中へと入っていく。辛うじて舗装された登り坂も、遂に何処かで途切れてしまう】
【下らない怪談ならば立ち並ぶ木々の間から得体の知れぬ怪物が飛び出すところだった。然してそれを恐れる必要もないのだから、脚先はアクセルを少しずつ緩めて】



    「 ……… そろそろ、ね。」「後ろの荷物、少し取っておいてくれる?」



【 ─── ごく甘えるような呼びかけ。2ドア4シートの狭苦しい後部座席へ、窮屈に山積みになっているのは】
【星図盤や望遠鏡のみならず、レジャーシートに未開封のカイロ、折り畳み椅子、一眼レフ、三脚、─── 凡そ雑多に積み上げられて】
【"こういう所"は余り几帳面でない節があると、少女も理解してきた所だろうか。思い出した様に車体は大きく揺れる。それなりに苦労はするのかもしれかい】


836 : ◆1miRGmvwjU :2019/01/28(月) 23:49:29 E1nVzEpQ0
>>828

【なにか共鳴する様に後藤もまた高らかに笑った。無精髭の顎先を高く持ち上げて洪然としていた。】
【そうして深遠な睨視が向けられた時には既に淀みなく見つめ返していたのだから食えぬ男だった。嘆息を、一つ】


「いやァ、面目ない。 ─── よもや警告や布告ではないと、おれも思いはしませんでしたから」
「"我々の領分を彷徨くな、さもなくば薄汚い狼一匹など射殺すまで" ……… それくらいの事を、忌憚なく仰るお積りなのだとばかり。」

「ですが狼に芸を仕込もうなどと、無道な話ではあるのですよ。」「"こういう遣り方"しか知らないんだ。おれも、おれたちも、等しく。」


【いよいよもって後藤はそれなりの本性を顕していた。手先で胡麻を擦りつつも、剃刀の刃を研ぎ上げる】
【そのような一面が彼にある事はマーリンの看破した通りであった。だがそれもまた、一つの本質に過ぎず】
【ならば互いに手の内を晒し合うような風采でありながら、互いに隠すものは幾らでもあった。「では、遠慮なく。」一呼吸を置いて、語られる言葉】


「あなた方の行為は"軍拡"だ ─── おれがそう申し上げたのを、果たして聞き及んでらっしゃるか解りませんが」
「ジルベールさんがどうお思いになられているのかは判じかねるとしても正直あなた方は"恐ろしい"。 ……… ええ、世辞じゃあ有りませんよ。本当です」
「群れを嫌う狼と言えど、群れの規範には逆らえない。」「特に我々などは、随分と大喰らいの狼です。先立つ物というのも、まァ必要なものでして」
「回される予算と権限だけでは維持も威容も儘ならない。そんな時に現れたのが貴方たちだ。ますます我々は飢え、嫌われ、追いやられる羽目になる。」


   「難しい事は申し上げません。出来うる限り、"仲良く"したいのです。」「 ─── 本来であれば、"彼女"を送り込みたくはあったのですが、致し方ない」
     「"そちらの目的"については、すぱりと諦める事としましょう。取捨選択という行為も、組織の存続には不可欠ですからね。 ……… 申し訳ない事をしました」


【彼が望むのは協約であるらしかった。"円卓"の恩恵に与ろうとする己れたちを、どうか妨げないでほしいと】
【そうして出来れば寝首など掻き合わずに、互いの発展のため手を結んでいたいのだと。 ─── 先日の来訪は】
【自身らのジョーカーを送り込む事により、牽制と監視を行う目的であったと。要言すれば、そのような所】
【迂遠で慇懃な物言いでこそあったが、全く無礼な要求であるとも受け取れた。それでも彼は薄笑いをやめない】


837 : 名無しさん :2019/01/29(火) 00:03:35 LkOVQnSA0
>>835

【椅子に寄り掛かったままの睡眠は、強いて呼ぶなら仮眠に近しいのかもしれなかった。乗り心地は当然悪くないのだとして、――それでも少しだけ固まった背中を】
【ほぐすのにぐうっと身体を伸ばすのだろう。それから少しだけ窮屈げに胸元を抑え込むシートベルトを引っ張っていた。まだ温度を保つココアには気づきながらも、】
【暖かな車の中で口を付けるにはもったいないと思ったのかもしれなくて。――たとえ少しぬるくなってしまうのだとしても白い息をめいっぱいに吐いてこその、暖かさに違いないから】

――、アリアさんは、サプライズ、好きですよね――。先に言ってくれてたら、気取った台詞の一つくらい、考えといて、あげるんですけど――。
――――――――あふ。だめですよお、……寝てる時間じゃないですかあ、これ、朝って、いうんですよ……。朝あ……。――、もぉ……。

そしたら、もーっと、可愛くなってー、全部許されちゃおっかなー。うふ。アリアさん今の声かわいかったからもっかい。

【ならば拗ねたような横顔をして窓の外を見やっているのは"ポーズ"でしかないのだと、考えるまでもないのだろう。好きな人に可愛いって言われて不機嫌になる子なんて居なくって】
【――だから戻る視線と、努めて下げられた口角はすぐに緩んでしまう。けれどそもそも考えたところで破綻してしまうらしいことはいつかの聖夜が証明していた、けれど、】
【――――考えに考えたプランはきっともっと、なんて、今さらすぎる言い訳をするでもないけれど。待ち合わせも、花束も、紅茶も、(熊も、)――もっとうまく出来るはずだったのにって】

【思い出してしまったなら、欠伸と一緒に吐き出してしまう。浮かんだ涙を拭う指先を、改めて引き摺り上げたコートの掛布団の中に収納しきったなら】
【にんまり悪戯ぽく笑って冗談めかすのだ。やっぱり褒められ上機嫌になった足先は見えづらいけれど爪先をぴこぴこ揺らして、いくらか調子に乗った声が、二度めを急かす】
【だめといわれるのなら「じゃあ頭の中で何かいでも思い返しちゃいます」なんて言うんだろうか。――、とかく、荷物を、だなんて、言われれば、これもまた大人しく従うのだけど】

はあい――、何要るんですか? お写真撮るの――? どろんこじゃなかったら地べたでいいですよお。私は……ですけど。――ふやあっ、

【――そうして咎める誰かも居るはずないんだから、シートベルトだって外してしまって。振り返る後ろ側、よいしょって手を伸ばすなら、いろんなもの、ひっかきまわすから】
【少女も少女で特別に几帳面ということはあんまりなかったなんてことは余談であるのだろう。――なんせ地べたでいいとまで言い放つから、潔癖症は泣き出してしまう】
【未開封のカイロをちょうど引っ張り上げた時だった。がったん大きく揺れるなら、椅子にぎゅうっと抱き着く刹那。半年前より幾らも伸びた薄藤の毛先が跳ね上がり】

熊さん出そうですねえ。そうじゃなかったら魑魅魍魎――。

【やがていくらか座ったままで抱えられるような程度にめぼしいもの、手に取ったなら。雛鳥を抱く親鳥みたい、それごとまたタオルケットを、それからコートをかぶって】
【熊>魑魅魍魎。どちらにせよやはり少女にとってもそれらはあまり恐れるものではないらしい。今となっては神様すら怖くないのかも、しれないなら】


838 : マーリン ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/29(火) 00:06:10 arusqhls0
>>836

【霧の中で研ぎ澄まされる刃の切れ味、随分と尖った男だと噂は聞いていたが、その実は見えない】
【マーリンは暫し観察をする、その表層をどう描こうか、と】


悪いが俺は無駄が嫌いでね、必要な事は必要な回数しか伝えないんだ、一回で分かる相手に何度も注意するか? 普通
どれだけこっ酷くやられたかなんて聞かんでも分かるしな、利益を上げる最良の方法は無駄を無くす事だ
それに、一回打たれた方が素直になる、─── ある意味万物の真理だ、互いにな

随分と “愚かな” 手段を選んだもんだな、あんな利権と柵でガチガチの集団に他所の犬っころ入れる訳ねぇだろ
いっそ娼婦だとか奴隷だとか、献金がわりに奉った方が幾許か可能性の欠片でもあったろうに、それとも何か
────── ケチな矜持が邪魔をしたのかね、狼とは名ばかりの室内犬だな


【不遜な物言いとも言えた、真っ向から罵倒するかの如く】


分かってるだろう、今の<円卓>に取ってアンタらの重要性は限りなく低い、それ程までにこっちは完成しちまった
<王>が支配する形から、<王>で支配する形へと、相反する方向に向いていた舵取りが指向性を持ったなら、それは遥かに早い
後手も後手も後手も後手、─── もう道理は完成しちまった、アンタらが住み込むスペースは無い

さてと、どうしようか、────── <円卓の騎士>としての俺はアンタらを別に必要としちゃいない、それはランスロットもそうだろう
だが、マクスウェルとしての俺や、ミズキとしての彼奴は別だ、─── 言いたいこと、分かるよな
────── アプローチを変えれば、<円卓>との関係に類するものは、得られるだろうよ


839 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/29(火) 07:57:37 YIh6RNXM0
>>829

「暗躍結社ネル・ハナトと正義組織justiceの戦い、ですか、さて私はその話は明るくは無いのですが……」

【ブランルの疑念を他所に、膝を組み直してゆったりとした姿勢のまま】
【その口ぶりのまま、道賢は答える】

「二番煎じとは、これはまた手厳しい……極めて単純な発展とは、また異な事を……ブランル殿、レヴォル社は軍需企業の筈、なればこそ、戦争による発展を、その根源にある人の生への渇望を、否定は出来ますまい」
「そして、歴史とは、文明とは、その極めて単純な発展の積み重ねであるとも……」

【口元の笑みに加え、目元にも怪しく光を湛え、尚も道賢は答えて行く】
【宛ら、仏僧の問答の様に】
【淡々と、ゆったりと、或いは悠久の時の様に……】
【ブランルと道賢、先にも挙げた正義組織からすれば、2人とも等しく悪であろう】
【だが、2人の間には決定的に、考えの違いがある様だ】
【或いは、嗜好の違いかも知れない】

「もう少しの工夫ですか、それは例えば如何様なものですかな?」

【決して油断なき鋭い眼光は、興味深げにブランルにこう、問いかけ】

「流石はブランル殿だ、話が早くいらっしゃる……」
「御礼申し上げます、ブランル殿、我々に良き未来があらん事を」

【兎にも角にも、この場に協力関係は締結された】
【魔導イージス艦計画二番艦、その鍵となるホムンクルスの開発計画】
【程なく必要な、極めて単純な事務的やり取りを交わせば、そして特に呼び止める事、尋ねる事が無ければ、2人はこの場より退出するだろう】
【新たな悪意の火種を、着実に残して……】


//お疲れ様でした
//ロールありがとうございました、此方で〆で宜しいでしょうか?


840 : ミチカ ◆3inMmyYQUs :2019/01/29(火) 09:44:34 uF5CLOqQ0
>>782>>831


【「………………………………」】


【少年の返答にまずは深い沈黙がもたげた】
【固定した女の無機な唇は微動だにしないまま】
【しかしその遙かな深遠から、何か思念的な震動が舞い降りた】


 ―――― ―――― ― ―


 ―― 樹は折れぬから雄々しいのか

 花は枯れぬから愛しいのか ――


 ―― 曲がらぬ光だけでは虹は描けぬ ――



【名状しがたき超越的波長】


 ―― 幼子よ、
 吾が君に伝えよ ――


 其方は恒に赫きに過ぎる ――

 ―― 故に因果の背反は必定


 ―― 愚かしき光は遍く神々の逆鱗を照らすだろう ――


 ―― あと幾星霜の皮を剥げば其の瞳は澄むのか

 救済は霧と闇の彼方 ――

 ―― 月下にのみ響き渡る



【永劫の夜において謳いあげられたような】
【接触する全てに量子的な静謐を強いるような】
【この世ならぬほど深く遠き揺らぐ声響が告げた】


 ――往――け、幼―― 子よ

 捜――我が――落と ――子を……――――――


【氷を研ぐような流々とした思念が、途端、】
【何かに圧し潰されるように歪み、ひしゃげ】

【そして】


【(ぶつっ)】


【全ての誤謬を消すように、絶えた】


/つづき↓


841 : ミチカ ◆3inMmyYQUs :2019/01/29(火) 09:45:27 uF5CLOqQ0
>>782>>831

【女の真空の眼差しは】
【少年を透過し、奥の枢機卿を据えていた】

【口の両端が、完全な左右対称で微かに吊り】


どうせお説教するなら
“本当のこと”を言ってくださいよ。

『嘘つき』にはいつかバチが当たりますよ。


【はらり】
【髪を解くような、頁を捲るような】
【切なき一瞬の間ののち、】



( ――“言葉”には気を付けてくださいね )



【“擦れ違う”刹那、囁きを遺す】
【過程は無い。顕れるのはただ、結果のみ】


【(ぷつっ)】











【それきり】
【乱丁は消え失せた】

【立ち返る正確な静寂】


【世界の整合性を取り繕うように】
【冷えた微風が一陣、地表を撫でる】


/という感じで、短いですが私からはこれで。
/お二方とも無茶を聞いてくださってありがとうございました、また!


842 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/29(火) 14:23:27 Z1xWs9og0
>>839
//よろしいでございます
//乙です


843 : ガゼル=イヴン=カーリマン ◆auPC5auEAk :2019/01/29(火) 16:04:00 ZCHlt7mo0
>>700

ふん……巡らす奸計の意味など、上の方だけが理解していればそれで十分だ……
見どころがあるなら、その限りではないが……今のところ、この者たちは『兵隊』に過ぎん。だが、『私』の大事な手足であり、原動力だ
――――口先だけで全てを解決できるのなら、私にだって彼らは不要だろうよ

……この独特の感覚は、実際に我が身を政略の業火に潜らせた人間にしか分かるまい……

【――――人間、『主張』が変わる事がそうそうあっては困るが、『立場』が変わる事は往々にしてある事で】
【何より、政治を戦場とする者にとって『事情』が変わる事など、それ以上によくある話だ。それが『政治』というものである】
【だが、その「よくある事」も、相応の経験を積まなければ、中々に理解できない話というのも事実だろう。だからこそ、ガゼルにとっての『黒装隊』は、兵隊なのだ】

穿った見方をするのなら、確かにな……『飯の種』という表現も、間違っている訳ではない
だが、政治というのは所詮、人と人との取り決めを決定していく事に、構造的な命がある。人が居なければ、政治家など、やってられんのだ

【また、大衆が『養分』である面は否定できないだろう。だが同時に、だからこそガゼルは政治家としての生き方を歩む事が出来る】
【つまりは、政治家・ガゼルの生殺与奪の権を握っているのは、同時に大衆であるというのも事実だ。物事は、その両面を理解しなければ把握できない】

――――おいおい、あまり調子に乗るな
確かに男たるもの、ベッドの上『以外』では紳士で居たいものだが……そこまで良い顔ばかりもしていられん……

【すっと表情が静かになると、ティナの4つの要望には首を横に振る】
【唐突に応じる卑猥なジョークに、何人かの『黒装隊』が思わず忍び笑いを零していたが、当の本人は冷徹に――――】

我々は、単なる政治サークルの規模に留まるつもりはないし、その程度で収まるには、規模が大きくなり過ぎたのだよ……
『私』が居なければ、『導人会』は大衆訴求力と言う、大きな『力』を失うというのは事実だが、それでも『導人会』は何も私の所有物と言う体ではない
幹部衆……『導人長老会』の他の仲間たちに、確たる理由も示せずに、そこまでの活動縮小などできるものではないぞ――――それは、私の意志を超える話だ

――――それに、今ここで『導人会』が大衆の不満の代弁者である事を止めれば、困るのはお前たちの方ではないのか……?
我々が大衆の支持を集めなければ、その空席に、誰が座る事になるのか、分かったものではないのだぞ?
……その『誰か』が、安易に「水の国の『魔能制限法』に倣い、同法をコピーの上で適法します」などと言い出さなければ……そして大衆がそれに、騙されなければ良いがな?

【ティナの立場とすれば、『導人会』が活動を続けて、風の国の世論が『魔防法』待望論に傾いていくのは避けたいのだろうが】
【それは、泳ぎ続けなければ死んでしまう回遊魚の様な『導人会』には、簡単に受け入れる事の出来ない提案でもある】
【人の熱意をそのままに止まる事は出来ず、また潜伏したままで相応の期間を耐えられるほどの地力がある訳でも無い】
【泡沫の結社から成り上がり始めた組織の、微妙な時期による痛手が、それを単純に受けにくくしているのだろう】

【同時に――――ガゼル自身、『導人会』の要となる存在ではあるが、頭や首長ではないと、そこにも首を振る】
【あくまで彼は『権限の大きな幹部の1人』でしかないのだろう――――それでも、自分が居なければ『導人会』は成立しない、という自負はあるようだが】
【そして、政治家として大事な点「立場を安売りしない」。まだ『魔能制限法』に「穏健的賛成派」である自分たちがここから退いたら、困るだろう、と――――】

――――出来る事は精々、他の『導人長老会』、つまり幹部連中に紹介するなり、軽く情報を流してやるだけだ……
『まだ可能性の1つに過ぎん』……これは、お前が言った事だぞ

【ガゼルはあくまで「軽度な情報を渡してやる」以上の、この場での協力は出来ないと告げる】
【急接近によって、互いの間合いを取り合ってはいるが、自分たちはまだ、中立関係でしかないのだから――――】


844 : ?????? ◆auPC5auEAk :2019/01/29(火) 17:20:51 ZCHlt7mo0
>>692

――――まあこれでも、得るものが何もないなんてのは、嫌な話ですからね?
隠したかった、恥ずかしい秘密がバレちゃった日には、もう明け透けにしていくしかないでしょうよ。その先にまだ、何がある、何がある、なんて言われたくはないですから?

【接触の仕方さえ違えば、まだ可能性もあったのだろうが。女性は退きつつも探りを入れ、そしてある種不毛な結論に肩をすくめた格好だ】
【――――ただの一般人という体裁を、保たせてもらえるのであれば、まだ交渉の仕様もあったのかもしれないが】

ッ――――性質悪いわねえ、こりゃ私以上だわ……その蝙蝠根性、私だって考えないじゃないけど、でも、普通実行はしないものよ?
あなた、『王』に嫌われたものが、排斥されずに生き残っていけると、思ってるのかしらねえ?
呆れた蝙蝠さん、上手く立ち回ってくれなきゃ、私はがっかりしますよ――――――――っと

【勝ち馬に乗って、旨い汁を吸う――――実に、やってる事はこの女性も同じようなものだ】
【ただ、彼女にも相応に、懸ける『立場』と言うものがある。事によれば、己が破滅を招く事にもなると、それを覚悟の上で、アレコレと策謀を巡らせているのだ】
【その中にあって、どちらが勝っても構わない――――という〝P〟の言葉には、同族嫌悪じみた感情が生まれる】
【『死の商人』を突き詰め切り、そして悪びれもしないその様子は――――ここまで行くと嫌いたくもなると、世間の良識に、この時ばかりは同意させられたのだろう】

>>714-715

っ……なるほどね、言いたい事は分かりましたよ……。随分とまあ、素直な『箱舟』であるもんですねえ……ッ
あなたの行動を、そんな一言で斟酌できるってのは、ある種感動ではありますが――――私を食ったら、はらいた起こしますよ。これは言っときます

【予想以上に『箱舟』の目的が、それそのものである事に、女性は驚いていた。無論、彼自身の為なのだろうが、その保全は、ある種真っ当な理由に基づいている】
【無論、手法は強引だろうし、その先にあるものも、決して光ではないのだろうが――――自分の人肉食については、怖気を振るいながら首を振って】

――――世界に打って出るんなら、その程度の駒は無いと話にならないって事な訳ですよ、ええ
むしろまだ、心許ないんじゃないですかね? ……どこかの世界の化け物たちが、片付いたって言うのは、初耳ですが……
でも、そりゃ嬉しいニュースですよ。『素直に有形力で叩き潰せる邪魔者だけになった』って事でしょう、ねえ――――?

【『暴蜂』とのコネクト、間違いなくそれがこの女性の持つ最大のカードだ。かつての機関の同盟者とは言え、それは限定的なものだし、今も盟約が生きているとは限らない】
【だが、何より――――ある意味で最大の敵である『虚神』の収束は、彼女には嬉しいニュースだった】
【実力で敵わないかもしれない敵勢力が1つ、姿を消したという事なのだから】

――――まぁ、あなた方にとってはね、そりゃ『黒幕』どもは忌々しいものでしょうよ
……さりとてあなた、『円卓』の方にも良い顔をしたい訳じゃあないんじゃないですか? この『プロジェクト・ノア』を見てたら、ねえ……?

【カニバディールからは、立場の言質を引き出す事が出来た。だが、女性はまだ満足できていなかった】
【その方向性からは、今のこの行動と乖離しているものが感じられたからだ。現体制を維持したまま、混乱によって『上』へと至ろうとする人間が、こんな保全をするだろうか?】

>>692-714-715

「来る……ッ!」
――――『電磁の女王』が命じます。辻自己脱離身体(跪きなさい)――――“Lighting Strikes Again”!!

【航空機の飛来、そして爆撃――――咄嗟に3人のクローン兵は身を固め、そして女性は両腕に電気を漲らせる】
【直後――――爆炎は屋上を蹂躙し、4人を含めた者たちの姿を飲み込んでいった】

――――舐めた真似を、してくれたものね……私の顔、身体……これでも結構、高いのよ……ッ

【轟――――と、炎のカーテンが空ける。その中には、強力な磁界のバリアで難を逃れた4人の姿があった】
【とは言え、その電磁バリアを展開するために、相当な力の行使があったのだろう――――女性の顔、首筋、そして両腕に、引き攣れた電流火傷が、ありありと走っていた】


845 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/29(火) 18:32:56 Z1xWs9og0
>>833

であれば、それは“そのとき”のために取っておいてください
そして必要なときが来たら躊躇わずに使うこと。そうでなければ見守った意味がありませんからね

何、安心してください────戻れなくなったとしても、そのときは僕が“迎え”にいきますから

【迎えに行く、と。何食わぬ顔で男は言うが、その意味するところは恐らく後処理だ】
【目的があると知らされてからはその全てにおいてこの男は協力的だった。相手が命を失うことも当然のように】
【あまりにも理解が早い────柔和な笑み。碧玉の瞳の奥には仄昏い闇が広がっていた】

【木箱から立ち上がり男の影が起き上がる。屹立した影は人間の身長などを優に越す大きさとなった】
【風切る音と共に男の背に一対の翼が生える。蝙蝠と似た翼膜のある両翼────竜の翼だ】

僕は『ヴィセリツァ』のクリストファー・シェーンハウゼン

────人を喰らう竜です

【浮かべた笑みは穏やかさなど微塵もなく】
【ただ獰猛なばかりの凄絶なものだった】

//今回はこのあたりで。ではまた!


846 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/29(火) 18:40:19 6IlD6zzI0
>>827

――――でも、私はっ、罪を背負ってしまった。
………ただでさえ人扱いされない鬼の子なのに。


果たしてあなた達にお姉はんの身柄を保護できるか疑問符が付く。
保護する側がお姉はんに保護される側にならなければ良いのだけれど。
お姉はんを戦いに巻き込ませる意図は無いとしてもあの人が現状を知ったら―――

私やあなたたちの静止を振り切ってでもこの騒動に首を突っ込みそうだから。
―――――………あなた達がお姉はんの事、守れると言い切れるなら、教えても良い。
鬼子である私よりよっぽどその資格があるから。――――本当は、教えたくない。


【伏し目がちに視線を地べたに落として独り言ちるような物言いで告げる了承】
【完全に信用したわけでもない。寧ろ教えたくはなかったけど。鬼子に戻ってしまった自分よりは】
【生まれた時から人として生きている百合子が、姉と慕うひとの傍にいた方が良いと判断したなら】

【日の差す場所に生きるものを嫉妬する薄暗い穴倉の生き物の心境の様なものを言葉と儚げな表情に絡めて】
【根深いのは、人扱いされない鬼の子という認識。資格がないと言い捨てるのはその所為か】


………そこまで知っているわけじゃない。お姉はんが指南役を務めている事くらい。
お姉はんも追われてると知ったのはこの場で初めて。

―――――、そもそも文月お姉はんを追う理由は?邪魔だから?


847 : ◆S6ROLCWdjI :2019/01/29(火) 19:15:15 WMHqDivw0
>>845

「ウン」「ありがたく貰っとくねえ」「じゃあまたネ」「クリストファー、」
「クリス、くり……」「きんとん」「ヴィセリ、つぁ?」「なんだろ、なにそれ組織?」

【教えてもらった名に秒速で珍妙なあだ名がついた気がするかしないか、それくらいのころには】
【すでに地面に広がる影はネズミ一匹など芥のごとく飲み込めるほどに、大きくなっていた】
【羽搏く音がしたのなら適当な場所にしがみついて、吹っ飛ばされるのを耐えるのだろう】
【そうして見送る目線には、やはり怯えの色などなかったから。ぢぢ、と、また鳴き声】

【――――そうして静寂が戻ってきた路地。取り残された小動物の背に、】
【ありきたりな獣の唸り声が浴びせかけられていた。しゃあ、と独特の呼吸音も】
【そして四つ足の肉球が殺す歩行音。ありきたりな野良猫が一匹。餌を見つけてじりじりと近づいていた、が】


「あははっ」「ネズミと来て、ドラゴンと来て」「次はー、」「ネコチャン!」
  「………………なんか順番おかっしくネ? ま、いいや」


【    ごぽ り。 汚泥の沸き立つ音すら共に響かせて――人間の、笑い声ばかりがその場に残った】


//ありがとうございました!


848 : カニバディール ◆ZJHYHqfRdU :2019/01/31(木) 03:44:34 h7nAXcQg0
>>731
まさに〝あらゆる手段〟だな。私のような悪党を利用することすら、その範囲内というのだから
……物騒な兄妹もあったものだな

【踏み込みはしない。この場には関わりのないことだ。だが、意識の端にはやはり引っかかる】
【国家の為に作られた。オブライエンもテルミドールも。国というものは、時にあらゆる非道を肯定する】
【この〝兄妹〟の過去にも、どれほどの闇があったのか知れたものではない】


だろうな。裏であろうと国家公務員だ。あまり好き勝手やっては、いざという時に我々賊のように逃げることが出来ない
そこを埋めるために、私というわけか

……そちらがメインといったところかね? 確かに、その縁こそが私が持っている乏しい力の中で最大のものと言える
その間を取り持つ、と。責任重大じゃあないか……心臓が縮み上がるね

【筋は通っている。この時点ですでにヤバイ話ではあるが。話自体を疑ってみても、もはや進みはしない状態だ】
【そも、このやり手の大佐の内面を見通せるほどの力は持っていない】
【それでも観察しようと努力していた聖で、コニーの歯ぎしりは見逃していた】


(――――大きな案件を提示しておいて、手が届く範囲に規模を縮める。交渉手段としては常道ながら効果的だな)
(同時に、これ以上の逡巡は許さないという通告でもあるのだろう。このやり取りがすでに、時間稼ぎにもなっている――――)

……いいだろう。話に乗る

【異形は、石橋に足を踏み出した。たとえ崩れ落ちても、自分は死にはしないと、そう心に誓って】


849 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/31(木) 14:12:36 5p38.LtA0
>>834

「蜜月かえで?誰ですかそれは?」
「存じ上げません、少なくとも私の面識の在る者の中にはそんな名前は存在しません」
「先のサーペントカルト、かの教団の幹部にそんな名前が在ったような気もしますが」
「だが、貴女のそれは、ただの無価値な八つ当たりだ……」

【搾り出されるように、何よりも悲痛な怨嗟を込めて放たれた人物の名は】
【杉原という人物には、全く引っかかる部分が無かった様だ】
【そして、努めて冷静に、努めて淡々と、そして冷たくそう言って】

「そんなに、蜜月かえでなる人物が憎いのですか?」
「ええ、そうです、貴女は努力した、仮に足りなかったとしても、仮に結果を結べなかったとしても、その場で出来る最上を尽くした」
「だから、中尉は貴女を目にかけた」
「だから周囲は、貴女に手を差し伸べた」

「それを自分自身で否定するのですか?自分の過去を、自分の確かな足跡を、自分自身で否定するのか?」

【強いて言うことがあるとするならば、少女は不幸だった】
【不運だった、巡り会わせが悪すぎた】
【きっと誰も、同じ境遇に立たされればつがる以上に自分自身を崩壊させてしまうだろう】
【故に、杉原はあえて厳しいことを言おうと、そう考えた】
【銀ヶ峰つがるは、きっとまた立ち上がれる、と考えて】

「貴女が今すべきは何か、もう一度考えなさい、本当にすべきは何かを……」

【刹那、まさに魂の叫びだった】
【少女はそのまま、膝を折り、泣き叫びだした】
【無数の、大粒の、心からの涙を零しながら】
【悲鳴にも似た、叫びを上げながら】

「――よく頑張りました」

【直後、直ぐそばで、覗き込む顔がある】
【すると、つがるの身体をもう一つの体温が覆うだろう】
【頭にも、掌の体温が乗せられて】

「蜜月かえでさん、僕も書類と報告でしか知らない人ですが」
「現状、それを判断できる材料はありません」

「――でも」

【ぎゅっとつがるを抱きしめながら、ライガは続ける】

「僕には貴女がとても辛そうに見える、嘘で無く、足掻いている様に見える」
「自分を救えるのは自分だけです」
「答えも同じく、自分の中に在ります」

「――厳島中尉達に会いたいですか?」


//分割します


850 : ◆zlCN2ONzFo :2019/01/31(木) 14:28:41 5p38.LtA0
>>846

「お前の言う鬼の子ってのが、何なのかは解んないが、ちょっとネガティブ過ぎじゃないか」
「師匠は、少なくともそんな事気にしないと思うが……現に師匠には、愛されてたんだろ?」

「守りきる……って言いたい所だが、ちょっと自信は無い、正直に言うが」
「少なくとも私達二人だけじゃ、キツイな」
「だが、本国の陸軍部隊、この国の協力者達の力を借りれば、勝算はある」

【怪我した箇所を見せるようにして】
【たかが一部隊のわずかな人数相手にして、この様だ】
【向こうはあくまで軍、この何千倍、何万倍の兵力を常に保持している】
【少なくとも、百合子と杉原二人だけでは手に負えないのが現状だ】
【だがこの二人も軍組織の人間、加えてこの国には嘗て海軍諜報部が暗躍した際に手を貸した多くの協力者がいる】
【外務八課もその一つだ、なればこそ……】

「邪魔ってのもあるだろうな」
「考えられる大きな理由としては、知られちゃ拙い事を知られているかも知れない、からだろうな」

【疑念と羨望】
【儚げな、美少女と形容するに相応しいその容姿に浮かべた、仄暗い感情】
【やはり、白桜の出生に、大きな何かがあるようで】
【やがて、百合子は、手にした自動小銃をその場に置き】
【腰の一対の小太刀を二振り抜き】

「私的にはあれだ、是が非でも聞き出さなきゃならないが……どうしても教えたくないって言うんならこういうのはどうだ」
「私と立ち会え、白桜、それで判断すれば良い、どうだ?」

【バヨネットも抜き取り、口に咥え】
【手にした小太刀の右の方を、白桜に向けて】


851 : マーリン ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/31(木) 16:13:28 iN/musLY0
>>831>>840>>841

【嵐の様な女であった、吹き荒ぶ波乱の後に凪の如き静寂が訪れる点が雄弁に告げる】
【心の中、滴り落ちた汗を拭う、舌根の乾いた感触が苦々しく、思わず彼は舌打ちをして】
【紡がれた言葉を反芻する、今の段階では意味を持たない羅列であった、だとすればそれを言葉と取るのが無粋に】


────── 誰が嘘つきだよ、誰が


【忌々しく吐き捨てるのみなのだろう、心あたりは山ほどある、けれどもそれを心残りとするには彼は多弁に過ぎる】
【描き消す、一流のアスリートがそうであるように、彼もまた自身の切り替えを熟知して】
【マーカスへと思考を切り替えた、幾分か彼よりも落ち着いている様に思えたから】



はん、俺は俺の好きな様にやる、ね、────── 大した肝っ玉だこった
この世界において一体どれだけの存在が、そんな自由を手にしてるんだろうな
言っておくがそれは茨の道だぜ? あっという間に死んじまっても、俺は驚かねぇが

────── こう見えても聖職者だ、ま、困った事があったら門を叩きな
クソ忌々しい事に神の門とやらは万人に対して開かれてるらしい、てめぇんとこみたいな選民思想もねぇしな
悩める子羊に道を示すのも、信徒の行いだからな


【飴玉を舌先で転がす様に、彼は冷ややかに言葉を弄ぶ、結ぶ結末は時に鮮やか】
【幸いにして "教会" の関係機関は各国にあった、マーカスが困った事があればここに来い、と伝える様で】
【彼もまた役目を果たしたと言いたげに、くるりと踵を返し、その場を立ち去ろうとする】


852 : ティナ ◆Dfjr0fQBtQ :2019/01/31(木) 16:34:28 iN/musLY0
>>843

【ぺろり、と舌舐めずりをした、────── 頬に浮かべて恍惚の表情】


あらん、ダーリンってば饒舌ですねっ、睦言以外でそこまで雄弁に語る事も、あったんですね、ティナちゃんびっくり!
確かにそれは最もらしい理論です、最もらしいって言葉がぴったりですけども
もう、ダーリンったらわかってる、くっ、せっ、にぃ〜! そんな安易な誰かをなんて言うかご存知でしょう?
泡沫候補です、ふーっと浮かんでぱりんと割れる、ダーリンの面の皮よりうっすいうっすい可能性

それを交渉道具に使うだなんてダーリンも耄碌しちゃいましたか? んー、ちょっと期待はずれカナー?
可能性で私が引くわけないじゃないですかもー、そこまで甘く見られてたなら悲しいです、えーんえーん
分かってると思いますけどっ、一応こういうのは形が大事だから言っておきますねっ!


【 ────── 音が響き渡る、ティナのブーツが地面を叩いて、悠然と足を組み替えた】


立場分かってんのかしら、まだ寝惚けた事言ってるのなら顔を洗って "出直しな"
此方は "利用してあげる" って言ってるの、こんな塵芥みたいな政治集団掃いて捨てるほどいるけど
貴方はほんのちょっぴりだけ可能性があるわ、だから私達の歯車として使ってあげるの、お分かり?

子犬みたいな従順さで、可愛らしく尻尾を振ってくれるなら、此方も首輪を付けて精々愛玩するけど
牙を立てるなら容赦なく、屠殺だって厭わない
随分と『風の国』の政治は生温いのね、銃口が頭にくっ付いてるのにまだベラベラ喋ってるもの

────── 此方の要求を飲むか、それとも死ぬか、どっちかなのよ、坊や


【ティナは示す、ガゼルの対応は最もであった、理屈としてはこれ以上無いほど正論である】
【しかし、正論が通用する時点を最早越えていた、『導人会』と『現職の議員』立場の上下は分からない】
【だがティナの存在そのものが証明であった、敵の陣中へ裸一貫で飛び込む秘書を有している、それはつまり】

【 ────── 持ちうる可能性の大きさ、示しうるパターンの広さを思って】


853 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/31(木) 23:26:33 6IlD6zzI0
>>850
―――……愛されてる、と思いたい。
鬼ヶ島の出だと言っても微笑んでわたしの事を可愛い鬼さんと言ってくれたし、
……泣きそうになった時、お姉はんはわたしを抱きしめてくれたから……


【であるなら、百合子の言う通り愛されていたのだろう】
【でなければえいやえいやと頭を撫でられる事も将来を案じる事も】
【そしておでこを重ねて愛を謳う事も無かっただろうから】


………わたしもあなたもそれを知らない。それ処かお姉はん本人も知らない可能性がある。
でも"そう"見做されているなら、………!?


【放っておけない】

【と口にする前に向けられる刃。決意の籠った切っ先は全てを切り払って圧し通る意思を覗かせて】
【それを前に静かに得心する―――この人も本気だ、と。ならば、想いでは負けたくなかった】


お好きにどうぞ。――――……あなたの刃が鈍らではないと嘯くなら。
あなたの想いを押し通すだけの力があると証明できるなら―――


(フェイ……、ごめんなさい。今だけは手出ししないで)
(『オーライ、相棒きっての頼みだ。今だけは観客席で黙っててやる
 だが、今のアタイらは混ざり合ってるから思わぬイレギュラーは許せよ』)

【依然としてHeaven's Hellは発動し続けており、それが証拠に灰色の髪はそのまま】
【でも表に出ている人格は白桜そのもので、儚い雰囲気に混じる剣呑な気配は鳴りを潜める】
【代わりに決意の様な何かが見え隠れして、軽やかに身を後ろへと飛び退かせたなら】

【両の手に握られた銃は百合子に向けられ、引き金を二度引く。すると二挺の拳銃から一発ずつ弾丸が放たれる】
【能力の付与されていない魔力弾。それらが百合子に的を絞って襲い掛かるのだ。――越えてみせてと祈りを込めて】


854 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/01/31(木) 23:47:17 6IlD6zzI0
【都市伝説があった――――その名は会わせ/逢わせ屋・ファウスト】
【悪魔の代理人たる女の差し伸べる手を取れば、死に別れた者と再会できるという噂】
【それは今もなお語り継がれる噂話――――では無い。今もなお、噂の主は手を差し伸べる】


【水の国・歓楽街から少し離れた路地裏付近。そこから土竜の様に光指す方へ現れるのは―――】


先日の公安、D.R.U.G.Sの若頭に、怪しげな物質………。
兎にも角にも戦火の兆しが燻っている様に思える。……今の平穏はうたかたの夢、か。


【男用の神父服の上に葬列の際の付き人用のコートという異様な着合わせ】
【装飾過多と形容するに相応しい程のアクセサリーに両耳のピアス達、こげ茶色の長髪と妖しい眼光が特徴的な女】
【彼女こそが都市伝説の一つ・会わせ/逢わせ屋 ファウスト。悪魔の代理人とも自称する女である】


最近は"協会"も動きを見せているとか、な。くくっ、また"追いかけっこ"となるだろうか。
懲りない奴らだ―――まぁその時が来たら痛い目に逢わせるだけだがな。


【異質な女性が街の雑踏に紛れ込もうとする瞬間、誰の目にその異質が留まるのか】


855 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/31(木) 23:48:41 BRNVt/Aw0
>>849

サーペントカルトの幹部だよ!彼奴が私に言ったんだ!
後方支援なんかしてそうして他の人が切り開いた道を悠々と進むなんて良い御身分だって!お姫様みたいって!そうして「信じてた」なんて言うのは詐欺師だって!
八つ当たりなんかじゃない……
彼奴が憎い!ううん、憎いどころじゃない!深く深く怨んでる!
仮に京が一に私が真の幸せとは何かを掴みかけたところで彼奴が生きている以上私は幸せにはなれない!
億歩譲って彼奴が生きているとしても間違っているって糾弾されて愛した者達に苛まれ石を投げつけられ不幸なまま生き続けるんじゃなきゃ幸せになれない!
けれどもそうなったとして私が蜜姫かえでを赦す訳じゃない!彼奴には摩訶鉢特摩すら暖かい!垓度転生を果たしたところでその度に不幸になればいい!それで罪を認識して額が擦り切れ骨が見えるまで額づいて那由多程心の奥底から謝ろうとも赦してなんかやらない!
私に私を否定させているのは誰!?私が私を否定しなきゃいけなくしたのは何!?
あんなに苦しかったのに誰も救ってくれないんだったら、誰も私のしてきた事が正しかったって肯定してくれないんだったら、私が間違ってたから今こんなに辛いんだって否定するしかないじゃない!

……わかんないっ……そんなのぜんぜんわかんないよぉっ……!

──っわぁ゙あああああああああああああああっ!

【少女は泣く。泣き叫ぶ。深い怨嗟を吐き出して】
【ぺたりと地面につかれた両手。そこから少しずつ、ミシリミシリと音をたてながら地面の凍結が始まって】
【ならばきっと、もう手遅れだった。怨憎はこの氷結の如く蛇の聖女のみならずその怨みを判らぬ世界にすら──】




/続きますっ


856 : ◆XLNm0nfgzs :2019/01/31(木) 23:49:59 BRNVt/Aw0
>>849



【──広まら、なかった】

【ぎゅっと抱き締められた身体。頭に乗せられた温かな手】

【やっと、やっと。ようやくの事で聞けた言葉だった】

……っひぐっ……
【少女がしゃくりあげれば凍結はそこで止まって】

自分を救えるのは……自分だけ……?他の誰かは救ってくれないの……?
それならば正義は何の為にあるの……?

ねえ、会いたいよ……ほんとは凄く、凄く、厳島さんに会いたいよぅ……っ
ううん、厳島さんだけじゃないの……っ……夕月ちゃんにも、鈴音ちゃんにも、会いたいよぉ……っ
行きたかったお店のパンケーキを食べても、食べたかった流行りのスイーツを食べても、高いブランドの大人っぽい服をいっぱい買っても、使い捨てカメラで写真撮ったって、全部、全部つまんなかった……っ
だって、皆が、いないんだもん……!
皆と一緒に居たかった……!皆が私の居場所だった……!
でも、もう駄目かもしれないって……怖い……こわいよぉ……っ
母親想いだった私なんか、勝ち気で強かな私なんか、嘘なの……っ
最後に会った私なんか嘘なの……っ
でも、もう前の私になれないの……っ、全部分かっちゃったから演じられないの……っ
もう、頑張れないかもしれない……前以上に何にも出来ないかもしれない……っ
そしたら厳島さんに見捨てられちゃうかもしれない……っ、夕月ちゃんだって……っ、鈴音ちゃんの時みたく、うざいって捨てられちゃうかもしれない……っ、嫌われちゃうかもしれない……っ
それ以前に夕月ちゃんには負い目があるし……っ、顔を見るのも辛くてどうして良いか分かんないし………っ
でも、でも……っ、会いたいよぉ……けど……怖いよぉ……っ
【ぽろぽろと零れる涙。吐き出される不安】
【深い憎悪を抱く反面、きっと彼らには深い愛情を抱いていたに違いなくて】
【けれども、受け入れて貰えるか──大好きだった友人の一人に辛辣な言葉を掛けられたからこそ(そうしてその友人は彼女が深い憎悪を抱く相手に味方してしまったからこそ)、怖くて仕方がなくて】


857 : ◆r0cnuegjy. :2019/01/31(木) 23:58:36 UghhvzHU0
>>854

……おーい、そこの姉ちゃんよぉ
ちょっと手ぇ貸してくんねえかぁ?

【雑踏に向かう直前で女を呼び戻す声があった】
【路地裏の隅に棄てられたゴミ袋の山。その上というか中にくたびれた風貌の男がいた】
【よれた軍服に無精髭。全く身だしなみを気にしていない容姿の三十代前半の男だった】

チンピラに絡まれちまってよぉ、身体が上手く動かねえんだよなぁ〜

【顔には擦り傷。軍服もあちこちが破れていた】


858 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/01(金) 00:08:15 6IlD6zzI0
>>857

【振り向いた先、それは暗闇で。宛ら深淵を覗き込む様な気分】
【闇から伸びる手に思えて―――気まぐれて、彼女は踵を返す】


【すたすたと軽やかに闇夜を闊歩する。肩で風を切りながらすたすたと】
【すると情けない姿の中年男に行き着いた―――思わず、睥睨。下卑た風貌と風体がそうさせた】


――――そこで寝てれば直に立てるだろうが。
女に助けを請う男の構図。情けないな―――男が廃る。

だが気まぐれた。―――その情けなさに免じて手をさし伸ばしてやる。
たったの一度だけだ。          ………取れよ。


【怜悧な口調と共に伸ばす手。それは悪魔の代理人としての手では無くてリセルシアとしての手】
【彼がその手を取るならぐいっと力任せに引っ張って起こそうとするのだろう】


859 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/01(金) 00:14:46 UghhvzHU0
>>858

【侮蔑を含んだ視線を受けて、男は見た目どおりの下卑た笑みを浮かべる】

ひゃはは、いい顔するな姉ちゃんよぉ
そうそう、俺みてえな男を見る女ってのはそういう顔すんだよなぁ……
人を虫かゴミみてえによぉ。まったくひでえ話だよなぁ

【まるで他人事のように話しながら手を受け取って立ち上がる】
【だらん、と重力に引かれて首元の銀の弾丸のネックレスが垂れ下がる。腰のベルトには回転式拳銃】
【それと鎖で巻かれた分厚い魔道書。確かに軍人らしい装備ではある】

いやぁ、助かったぜ姉ちゃん
最近じゃあ路地裏も物騒になっちまってよ。そのへんのガキが殺しにかかってくるから面倒だぜ
財布もスられちまうし、今日は散々だ、厄日ってやつよ

【不幸を口にする男は話す内容に反して軽薄な笑みを浮かべたまま】
【酒の臭いと微かな腐臭、それらに紛れる血の臭いが男からはしていた】


860 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/01(金) 00:24:37 6IlD6zzI0
>>859

その風体では厄ばかりが押し寄せるだろうよ。
お前自身の在り方も、お前の腰に提げているけったいな"本"も相まってな。


【鼻を衝く様な入り混じった悪臭に顔を顰める】
【嫌味の一つでも言いたくなったのか、彼女の口調は刺々しい】
【だがそれだけだろうか――魔導書の存在は彼が普通では無いと知らしめる】


良い歳の大人が子供に良い様に嬲られるとはつくづく情けない。
それでも軍人か、お前。軍人なら軍人らしく振舞えば痛い目には合わずに済んだだろう。

なにより――――腰に提げている魔導書でも使えば厄のひとつは払えただろうに。


【顰めた顔は怪訝な顔色に。軍人らしい装備、ただの人間らしからぬ装備】
【特に鎖に巻かれた魔導書は彼が普通じゃないと察するには十分で】
【だからこそ不思議に思う。彼は怠惰な男なのだろうか、と】


861 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/01(金) 01:12:02 6.kk0qdE0
>>853

「師匠……いや、師匠はそう言う人だな、誰にも等しく、優しい人だ」
「(鬼ヶ島?やっぱりコイツ何かあるぞ……)」

【かくして、歪な開幕ではあるが】
【和泉文月の縁同士の戦いは、開始された】
【紛う事なき、一対一の真剣勝負】

「本気で来いよ!そんなんじゃ、師匠に鍛えられた私は倒せない!」

【能力か、両の手の小太刀に、炎が走る】
【被弾した箇所から、傷が開き、血が吹き出すもそれすら百合子は気にしない様子で】
【迫り来る2発の魔力弾、当たるか当たらないか、その部分で切り払いを放ち、防御を試みると共に】
【駆け出し、後方に飛び退いた白桜目掛けて、距離を詰めようと試みる】
【しかし、やはり怪我の為か幾分か速度も身のこなしも遅い】
【口に咥えた、大型のナイフも含め刃は三振り】
【身を守りつつ戦うには、充分と】

「私の剣が鈍らか見る前に、自分の銃が豆鉄砲かを疑った方がいいんじゃないか?」


862 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/01(金) 01:44:13 6.kk0qdE0
>>855>>856

「そう言われたから、恨む、と?」
「それでは、貴女の幸せは、生涯とは、随分安い物になってしまう」
「貴女の人生は貴女の物です、それは他でも無い、貴女自身が決定し、貴女自身で作り上げるからです」
「他人をそこに介在させ、尤もらしい理由を付け続ける、それは只の依存と執着です……他人に自分の人生の理由を求める者に」
「ーーすみませんが、私は掛ける言葉が無い」

「自分の人生は、自分で決定しなさい、貴女にはそれが出来るでしょう」

【つがるの怨嗟は最もな理由かも知れない】
【ただ、杉原には理解が出来なかった】
【生きるとは、他人に拠らない、他人に何を言われた、何をされたでは無い、自分がどうしたいか、或いはどうすべきか】
【それを決定するのが、生きると言う事だと、杉原は考えているから】
【だからこそ、つがるの考えも行動も、彼には理解が出来なかった】
【一見怨みであっても、実質は他ならない、人生の理由を依存しているのだ、と】
【だからこそ、最後の言葉を投げて、彼はこの場から背を向けた、背中には泣き崩れ落ちる、つがるの姿があったのだろう】

「はい、結局自分を理解してくれるのも、自分だけですから……悲しい話なんですけどね」
「正義は、一人一人の為にあります」
「一人一人、世界全ての人間達の中に、一人一人自分の尊厳を守る為に」
「君には君の、僕には僕の正義があるってね」

【ここでつがるは話し出す、腕の中でボロボロに泣きながら】
【本当の自分、居場所とは……】

「それ、ちゃんと周りの人達に話しました?」
「一人で抱え込んで、悩んでるから辛いのでは?」
「それとも、貴女の信じる周りの人達と言うのは、そんな貴女を軽く見捨てるほど軽薄な存在なのですか?」

「周りの人達が居場所って言うなら、僕は周りを信じます、それで洗いざらいブチまけて、その後で笑いあえれば良いじゃないですか」
「……まあ身勝手な理由なんですがね、それでも一人で悩んでるより、よっぽどマシです、少なくとも僕はそう思います」

【依然、泣き止まぬ少女の頭を撫でながら】

「だったら、君は会うべきです、会いに行くべきです」
「善は急げ、ですね!アリアさんとミレーユさんには……後で怒られましょう!」

【そう言って、グレーのスーツの男は、少女にバイクに据え付けられていた、もう一つのフルフェイスタイプのヘルメットを手渡す】
【来い、と言う事なのだろうか、果たして受け取るか受け取らないか】


863 : ◆XLNm0nfgzs :2019/02/01(金) 13:06:14 BRNVt/Aw0
>>862

【少女はただ泣いていた】
【男が言っている意味なんて解らなかった】
【あの女を怨んでいるのは単にそう言われたからじゃないのに】
【そう言われて、一度はそれが否定されて、けれどもそれがあたかも真実であるかのような事があって。だから死ななければいけないのだと思う程苦しんだ。そういう事なのに】
【(だからこそ「悪いのは彼奴なんだね、君は悪くないよ」って励まして欲しくて)】
【あの聖女を怨むのは、大切な人も自分の在り方も否定されて、それがよりにもよって恐れていた母親と似た口調だったから。だから無意識に母親に今の自分を否定された気がして、それで更に苦しんで、苦しみ抜いて。一度はあの女は苦しんで死んだんだって思っていたのに生きていて、しかもあれ程の悪事を働いて、自分も苦しめたというのに幸せになって生きていて】
【だからこそ、なのに】
【自分にとって本当の幸せが何かなんてとうの昔に分からなくなっていた】
【今まで存在する"世界"から棄てられたくなくて必死で。それを否定して「自分の人生は自分のものだ」なんて教えてくれる人なんかいなくて】
【それでも十七歳にしてやっと自分の為に生きようとし始めたのに、好きな事も本当にやりたい事も分からなくて今必死にもがいていて】
【それなのに遠くに押しやった筈のものがちらほらと顔を見せて、今だってまたこんな形で顔を見せて】
【(独りで頑張らなきゃって、判ってるのに)(独りぼっちは寂しいけど、辛いけど)(だけど)(なのに)】
【ならば、彼の言い分なんか少女にとって理不尽でしかなくて】

【──本当はあの陸軍の男が言ってる事は判ってる】
【そうしようってもがいてる】
【でも、私が"あの時"夢見てた幸せは■と■■に■■──】
【"それ"がいけないのだとしたら】
【ワタクシノ、ホンタウノ、サキワヒハ、ナンナノデシャウネ?】

【惑うから、堕ちそうになって】
【けれどもそれを引き戻すのが彼女を抱く青年なのであるならば、やはり彼は『ヒーロー』なのだろう】


……でも、私は私が分からないよ……?何が好きで、何が得意で、何がしたいのか……
正義は一人一人の為に……人それぞれに正義があるなら……"彼奴"が他の人を拐ってたのも、私を否定したのも……"彼奴"の中の正義に則った行為だったって事、なの……?
他の、私が嫌いな奴とか、虚神達の行為も……
だったら、悪者なんか本当はいないの……?やっぱり勝てば官軍負ければ賊軍って事なの……?
【つがるは涙ながらにライガの顔をじっと見つめる。あの少女の行為もまた違った正義だなんて、少しは否定して欲しくて】

……ううん、言ってない……"それ"に気付いたのは最後に皆に会った後の事だったから……
皆は軽薄じゃないって信じたい、でも……
【そこで彼女は少しだけ言いよどむ。けれども意を決したのか、人間の耳を引っ込めて代わりに月白色の猫の耳をぴょこりと頭頂部から生やして】

わ、私……半妖で……っ、故郷にいた頃それを隠してて……母親が殺されて一緒に連れてかれる時親しい人達にそれがバレて……っ、そしたら、皆……冷たい目で見るだけで助けてくれなくて……っ
【一息で必死に言い切って、再びしまわれた猫の耳。また代わりに人間のそれがあるべき場所に戻って】

そんな事があったから……だから……人なんか簡単に掌を返すって知ってるから……
【また、零れ落ちる涙。優しく接してくれているライガに半妖だと明かしてしまって、彼女の言葉通り掌を返されるのが怖いのだろう】
【そうして、洗いざらいぶちまけて笑えれば、と言われれば、本当にそうなれば良いのに、と呟いて】

……ね、周りの人が"居場所"とか"世界"とか……そんなのはいけない事、なのかな……
他の人が拠り所じゃいけないのかな……
【ぽつん、と涙ながらに尋ねる。先程の杉原に言われた事を思い出したのだろうか】

【そうして、これらの問いの解答が得られたのならば漸く先程渡されたヘルメットを持って、涙を拭って】
【強く頷くのだろう。中尉に会おう、と】


864 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/01(金) 17:24:00 6IlD6zzI0
>>861

【炎を纏う太刀二つ。譲れないものの為に燃え盛る】
【手負いの相手もまた警戒すべき相手だと知っているから―――何より】


     ――――……減らず口。
  お望みなら、弾ァ鱈腹食わせてやんよ。


【見縊られた。煽り文句を放たれた。琴線に触れた】
【雪のような白色にとっては和泉文月の事がきっかけで】
【痛んだ茶色にとっては豆鉄砲であると揶揄されて】


【二つの魂は依然として混じったままだったから】
【二人分の声色が重なって、一つの対象に的を絞る】
 
  
   【――――上等だ。平伏してやる、と】


【魔力弾は切り払われて、役目を果たせず仕舞い】
【しかしこれは二度目。一度目は和泉文月が見せたから】
【瞠目する事無く、下卑た喜びを見出すこと無く】

【冷静に展開された結果を受け入れるなら――距離を保つ】
【円を描くように走りながら、二人の距離を保とうとしながら】
【能力を発動。自身の拳銃にHell's Rushの効果を付与】

【何が出るか分からないが、今度は一切合切の予断無く】
【百合子の手足に狙いを定め、引き金を3回引いた】
【動きに陰りがある相手だからこそ、平伏せさせたいからこその一手】


865 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/01(金) 17:25:19 6IlD6zzI0
本スレ>>322

綺麗な音色。鈴の音みたいで心に響くわ。澄んだ音色は心地いい、けれど。
そう――――けれど、寂しげね。寒さに震えて身を縮こませる子猫の鳴き声みたい。


【少女は恐る恐る顔を覗かせる。それは物陰から周囲を伺う子猫に似ていた】
【似つかわしい声色。そして、この場に尤も似つかわしい振る舞い――迷いネコみたいだった】

【肌を刺すような寒さや後ろ向きな感情で赤らめた頬も】

【今にも泣きだしそうな目で向ける威嚇も】
【拒絶に隠した本当も、すべて、すべて】

【靴底を鳴らして、ゆっくり、ゆっくりと】
【歩みを進める。倒れないように、倒さないように】


【歩みを進めるうちに一人の少女に行き着いた。その瞬間に顔を引っ込めるのは警戒からか】
【無理もないと思った。独りで泣いている時に現れる赤の他人ほど煩わしい生き物は居ないから】
【でも回れ右する選択肢は無くて。互いに顔を見せない懺悔室にも似た構図に行き着くのは必然である】

【少なくとも近づく事は拒絶されなかったから。少女の気まぐれを待つ】
【お話出来る位のお許しは得ているみたいだから。記憶屋は無理を強いる真似をしない】
【ただ互いの心地良い線引きを探りながら、少しずつ歩み寄る。言葉という形のない形で】

独りで泣いていても幸せは訪れないわ。寧ろ不幸を引き寄せるの。
ご存知?不幸は今のあなたみたいな顔が大好き。項垂れた姿だとかやさぐれた感情とか、ね。

――――、顔は見せなくてもいいわ。貴女の抱えてる感情を吐き出してごらんなさい。
拒絶はしない。罵倒もしない。ただただ私は貴女の"独り言"を聞くだけなんだから。

そしたら、きっと。幾らかは楽になるわ。――――貴女がそれを望むのなら、ね。

【少女に背を背けて、慎重に座り込む記憶屋】
【今にも泣き出しそうな夜空を見上げて、独り言みたいに言葉を紡ぐ】

【二人の顔は見えないままだけど、声のトーンで解る――悪意も害意も無い、と】


866 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/01(金) 17:50:06 qVbLFw5U0
>>860

いっひひひひひ、好き放題言ってくれるじゃねえか、姉ちゃんよぉ
しかし厄ね、厄……面白いじゃねえか、言い得て妙だ
この本を開いたら厄が払える、ね……ひひひひ、そりゃあ傑作だぜぇ

【嫌悪感の込もった罵倒にも何がおかしいのか、痙攣したような笑い声をあげる】
【魔道書からはどこか異質な魔力が感じ取れる。それこそ、この世のものではないかのような】

まあなんだ、未来ある若人を痛めつけたくなかったとかなんとか
そのへんで納得でもしておけよ……ガキを殴る気分じゃなかったってこった
そもそもいくらチンピラ相手とはいえ、魔道書を開けるなんてのはまともじゃねえや

それより、姉ちゃんはこんなとこで何してんだよ、客でも探してんのかぁ?
でも娼婦には見えねえな……なんだっけな、その服?
どっかで見たんだけどなあ、どこだっけなあ?

【女の服が神父服だということさえ思い出せずに男は首を傾げて唸っていた】
【なんだっけ、と言いながらポケットから煙草とライターを取り出して煙草に火をつける】
【そのまま適当に煙を吹かす──相手に向かわないように、なんて気遣いは皆無だった】


867 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/01(金) 18:13:18 6IlD6zzI0
>>866

こんな服を着ている奴らなど教会にでも行けば幾らでもいる。
―――――尤も、私は神父でも男装の麗人でも無いがな。


【配慮無く吸われる煙草、燻る煙】
【――――あからさまな嫌悪を示し、ぱたぱたと手で煽ぐ】
【けほけほと咳込みながら、煙草の煙は嫌いだと静かに睨む】

【見るに堪えない言動、風貌。気味の悪い笑い方】
【どれもこれも場末のスナックに屯する冴えない中年みたいで】
【けれど腰に提げている魔導書だけで普通では無いと察するから】


【―――これは、単なる気まぐれ。答えてやることにした】


私が何をしているかって?客でも探しているかって?ある意味正解だ。
くくっ、身体を売って金を得なければ生きられない娼婦じゃないのは確かだ。
娼婦がこんな色気のない服装を選ぶと思うか?娼婦ならばソソるような恰好をしているさ。


【まぁ、私はそんな生き方願い下げだがね】
【などと〆の言葉に添えて、不敵な笑みを口元に浮かべる】
【娼婦では無いのは確か。しかし神父でも無いという】

【となれば、都市伝説―――会わせ/逢わせ屋という名の都市伝説】

【噂では神父服に葬儀の際の付き人用のコートという着合わせの女だと】
【実しやかに広まっていたから、それを知っていれば、きっと答えに近づく】

【もし知らないなら、彼女は男を揶揄う様に誘う――お前が私の客にでもなるか、と】


868 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/01(金) 18:24:50 qVbLFw5U0
>>867

神父……あぁ、そうか! そりゃ神父服か!
あーあーあー……女が着てるせいで分かんなかったぜ
つーか神父じゃねえのに何で着てんだよ、コスプレか?

【煙たそうに噎せて睨んでくる女を見て男はまた下卑た笑みを浮かべる】
【がたっ──不意に魔道書が独りでに震えて鎖が擦れる金属音がした】
【男はそれに驚きもせず、煙草を持ったままの手で魔道書を上から叩く】

客ぅ? 娼婦じゃねえし神父でもねえし、商売人にも見えねえお前が何売るってんだよ

【どうやら噂話をこの男は知らないらしい】
【怪訝な顔をしながらも、女の商売には興味を持った様子だ】


869 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/01(金) 19:55:31 6IlD6zzI0
>>868

コスプレなどと言ってくれるな。これは"当てつけ"さ。
神様を信奉する馬鹿共に対する当てつけ、同族を装っての不敬は格別だからな。

【ふははっ、っと意地悪く笑えばきっと察せる】
【この女は神さまも神に属する者達も総じて忌み嫌っていると】
【女にしては高い身長、そこから見下ろす先にあった魔導書は】
【勝手に震えて自己主張して。女の魔力に反応でもしているのか】


くくっ、身体を売る淫売じゃなくて済まないな。
こんな路地で客引きするなら大抵商売女が相場だからな。

売るものは――――しいて言えば、"サービス"だ。

彼岸と此岸に別たれた者共を合わせる仲介屋。
分かりやすく言えば、会いたいと願う相手と引き合わせるのが仕事だ。

お前には、居るのか?―――会いたいと思う相手が。

【迂遠な物言いの意味。それは死者と生者を引き合わせるという意味】
【辛辣で、時折皮肉げな目は――この時だけいたく真摯なものだった】


870 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/01(金) 20:15:35 qVbLFw5U0
>>869

神様を信奉する馬鹿者って……
んなこと言ったらこの世界のほぼ全部が馬鹿になっちまうぞ?
そりゃあ、俺も全人類は馬鹿だと思うけどよぉ

【それでいいのか?──なんて視線が女に向けられる】
【意見の前提には大抵の人間は何かしらの神を信奉しているだろうと】
【そういう認識があった。例えそれが神父服を着るような人種でなくともだ】

彼岸と此岸……?
…………………………あ、この世とあの世のことか?
もっと分かりやすく言えよなあ。それじゃ客商売できねえぞ

【かなり考えてからその意味に辿り着いた。見た目どおり頭は良くないらしい】
【文句を言いながら嫌がらせのように煙草を吹かして煙を吹き付ける】
【また魔道書が震えてそれを男の手が叩いて止める。忙しない】

会いたい……会いたいねえ
そりゃあ、贔屓にしてる娼婦のユラには会いたいけどなあ

逆に聞くがお前、俺がそんな「いい思い」してるように見えるかよ?
そんな、誰かを呼び寄せてでも会いたいとかよぉ、そんな相手が今までの人生にいるように見えるのかぁ?
そんなに俺はイケメンのイカしたやつに見えてるのかね……ケケケ

【真摯な目に返されたのは何も変わらない笑いだった】
【自嘲している割には男は楽しそうだった】

しかし、そんなことどうやるんだ?
まあ、どうせ詐欺みたいなものなんだろうけどよ


871 : 名無しさん :2019/02/01(金) 22:24:38 IJEh8GJE0
>>865

【それとも或いは捨てられ子猫。ダンボールから身を乗り出したらころんって零れ落ちてしまって、段ボールへ戻れなくなったから、彷徨っているよう】
【だから向ける目はやはり好ましい感情を宿さぬのだろう。だけれども、またどうしようもなく他者を求めてやまぬ目をしていた。――母親に包まれた優しさ、覚えているみたいに】
【――声を褒められてもあまり嬉しくはないみたいだった。割合に特殊な声をしているから、もしかしたら気にしているのかもしれなかった。だなんて、相手には関係ないこと】

――――子猫だなんて、そんな風じゃないもの。ほんとうに可愛いだけの子猫ちゃんだったら、よかった……。

【ならば再び相手が観測するのは、もう一度膝を抱え直した少女の頭頂部なのだろう。右巻きつむじの様相まで見せつけて、枝垂れる黒髪の狭間より、うなじの白が覗く】
【――ふと手を伸ばし掴み取るなら、容易く引き摺り上げて、そのまま手折ってしまえそうな首筋であった、――呼吸と泣き声を通したなら、それだけでめいっぱいの細い白色】

――――――――――――――夢が叶ったはずなのに、ちっとも、ちっとも、嬉しくないの。

【ほんの一ッ跳び、貴女が気まぐれを起こしたなら、そのまま飛び掛かれるような距離感にて。頭を伏せたままの身動ぎは相手への拒絶と呼ぶには穏やかであるなら】
【本当は寒くて仕方がないのかもしれなかった、――そうだとしてもどこぞに帰りたくなる気分じゃないって、うんと丸まった背中が伝えていて、】
【或いは――或いはもっと親しいのであればその背中を撫ぜ擦り、指先にて痩躯に浮かぶ背骨の数を一ツ一ツ確かめることすら許されるだろう。だなんて】

【――――――伏した顔を覆う腕の隙間から、ちらと色違いの眼差しが相手のせなを覗き見た。そうしてまたゆるり閉ざした暗闇の中に、逃げ帰ってしまう】
【なれば彼女にもまた敵意も害意もあるはずはなかった。抱きかかえる刀が凶器たりえることもきっと忘れてしまっていた。そして何より刀を収める鞘には麗しい桜の模様が刻まれて】
【だから結局ごく小さな震え声が言葉を漏らした、――――それでいて、あまり細かなことは話したくないのだとも、きっと、伝えていた】


872 : ガゼル=イヴン=カーリマン ◆auPC5auEAk :2019/02/02(土) 20:20:41 ZCHlt7mo0
>>852

――――っ、なに……?

【相変わらずの飄々とした態度。その中に辛辣な言葉を織りませていくというのは、ティナの先ほどからのスタイルだった】
【だが――――この時、何か趣が変わった。ガゼルは、先の言葉を聞くよりも前に、それを察したのだろう。その表情に、微かな戦慄が走り――――】

【――――そして、ティナの言葉の色が一変する。相手の油断を誘うような甘さに装われていたものから、苛烈かつ尊大な『威圧する者』のそれに――――】

「ッ!!」
――――ッ!!

【周囲を取り巻く『黒装隊』達も、その言葉の変容に面食らったのだろう。だが、何よりもその見下す目線の言葉に、怒りが湧き上がった様だ】
【一様に、黒衣の懐に右手を突っ込んで、左の腋の下のあたりを探る。典型的な『銃を取り出そうとする』動作】
【それを、咄嗟にガゼルは右手を跳ね上げて、その仕草で周囲の武装を制止させる。その表情には、何よりも焦りが走っていた】
【――――ここで、こんな挑発に乗るようでは、致命的な『躓き』は避けられない。ここは、有形力を行使すべき場面ではないのである】

――――愚かな事を。立場が分かっていないのはどちらか、どうやら分かっていない様だな
そもそもが多数派を握りながらに、こんな切羽詰まった裏工作に走らなければならない時点で、お前たちの底は割れているじゃないか……ッ
それでもなお、お前たちに分があるとするなら、それは『名分』――――『義』や『理念』故だ
お前たちは沈みかけながらも、そこに力や価値を宿している。だがそれも、正しき現状認識があればこそ、だ――――

【ゆっくりと、腕を組みながらガゼルは冷徹な表情で、足を組んでその場に『据わる』ティナを、真っ向から睨みつける】
【まるで、最初の会場の時の様に、両者の間に火花が散って――――しかし、その重みは、先の『茶番』とは比べ物にならない】
【この場の主の如く振舞う――――実際、主客は逆転しつつある――――ティナに対し、ガゼルは再び『1人きりの大衆』を相手にする様に、言葉と表情に力を込める】
【それは、普段の彼――――弱き者たちの怒りの代弁者としての姿、そのものだった】

――――政治を舐めているのは一体どこの誰だ、我々の革命精神を甘く見るなッ!!
銃を突き付けられた程度で、我々は我々の理念を捨てる事は無い。我々は、我々自身に、そんな事で止まる事を善しとする事は無いッ!
――――見限られつつあるお前たちは、再び人に認められるまで、凋落した権威者に過ぎないのだ!!
そんな自らを省みる事も無く、同盟者を対等に扱う事もせず、自らの策略の踏み台である事を喧伝して憚らない!!
そんな為政者など、早晩価値を失うものだ。盟約を結ぶ相手として、此方から願い下げだッ、精々頭を冷やしてくるが良いッ!!

【――――ガゼルが自ら「こういう方向には口が回る」と言っていた、大衆の煽るその口調のままに、ティナに対して昂る『否』を叩きつける】
【『理』と『情』のバランスを探り、その両輪で以って人の心に訴えかける。ガゼルの手法はその実践にあった】
【言葉にするのは簡単だが、これをその場その場で匙加減を利かせながらに行うのは、難しいものである】
【――――無論、この時ガゼルが煽ろうとしていた『大衆』は、ティナではない。周囲の、7人の『黒装隊』達だった】
【懐に手を突っ込んだままの姿勢で、7人は7人共にうんうんと首を頷かせている。ティナは恐らく、これで折れるタマではない。だからこそ、仲間に訴えかけたのだ】

【――――ガゼルはティナにこう言っている。「利用『してやる』などと言えた立場ではないだろう。だからこそ、『我々など』にコンタクトしてきたのだ」と】
【「既に大勢を覆されつつある中で、そんな虚勢を張っている様な相手とは、手を組む事は出来ない」と】

【「名分こそが、お前たち最後に残された力の筈だ」と主張するガゼルの言葉は、どこまでも「自分たちは大衆に支持されている」という確信と】
【「自分たちは、目指す者の為だったら命を懸ける事さえ厭わない。その覚悟をここででも示してやる」という決意に、満ち満ちていた】


873 : ティナ ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/02(土) 20:35:31 arusqhls0
>>872

【ふぅん、と軽く口先で遇らう、艶やかな目元に溶かし込む潤んだ瞳の流し目一つ、然して状況はそれで流される場面を超えていた】
【ティナの誤算はガゼルの “弁舌” ────── 想定外に弁が立つ、此処に於いて再び論議の主導権を握ってきた】
【幾ら利を説こうが、理を説こうが、それが効力を持つのは言葉が確かな力を持つ場面でしかなく】

【 ────── 今この場は既に終結していた、ガゼルが攻勢に出た時点で勝敗は決していたのだろう】


あらら、ダーリンったら難しい言葉を拱いて、声を荒げるだなんたらしくないんじゃないですかぁ?
言いたい事はちゃんと、分かりやすく伝えるのが世の常ですよん、ダーリンは怖いんでしょう?
私達が “どれだけの力” を持ってるのか、それがハッキリとしないから、敢えて断定しなきゃいけないの

疑うのなら逆ができるのかしら、ダーリンが一人で、うちのセンセの事務所に乗り込んで来られる?
言うは簡単よ、簡単簡単、アンタなんか怖くないって嘯くのは全然、ティナちゃん許してあげます
でもね、それに引っ張られて真実を見失うのは、どうかと思うなー


【ティナの言葉もまた、ガゼルではなく周囲へと向ける、────── だが後の祭りであろう、理屈が既に意味合いを持つ期間は過ぎた】
【勝算はあった、けれども覆された。ガゼルの持つ話術が、ティナの行った誑かしを真っ向から否定したと言えよう】
【政治家としての能力の差か、あるいは持っている信念の違いか、────── いずれにせよ、答えは出ず】

【ぴょこん、と椅子から飛び降りたならくるり、と背を向けて】


ねぇダーリン、送ってくださらない? 愛しい、愛しいハニーのお帰りよ?


【小首を傾げて振り向き加減、小悪魔が容易に羽ばたいて現世に落ちる】


874 : ガゼル=イヴン=カーリマン ◆auPC5auEAk :2019/02/02(土) 21:24:39 ZCHlt7mo0
>>873

(――――最後の最後まで、油断のならない女狐めが……ッ!)

【言葉の応酬、そして意志と策略のぶつけ合い。その中で、ガゼルは額に汗をにじませながら、真っ向からティナの瞳を覗き込んでいた】
【例え衆目に触れていなくても、こうした言葉のぶつけ合いは、一戦一戦が重要な意味を持つ】
【その言葉の応酬では、負ければ負けるだけ、自分の持つ『価値』が損なわれていくのだ。そこに自身の立場を懸けるのは】
【ほぼ身内ばかりのこの場であっても、大変な心労とプレッシャーを跳ね返していく作業になるのだろう】

――――フン、そうか……まぁ良い。今ここで、これ以上『未確定の未来』の話をしていても、不毛なだけだ……

【再び、どこか鼻に掛かったような甘言を取り戻すティナに、ガゼルも気を吐く。気を張り詰めて論戦する、その時間は終わったのだという空気が流れる】
【だが――――周囲の、7人の『黒装隊』達の緊迫は、まだ解れ切らなかった。ある意味で、当人たちよりも緊迫していたのだろう】
【2人の言葉も重みも、それぞれに彼らの胸に迫った。それをまだ、咀嚼しきれていなのかもしれない】

……さて、な。そんな事を必要とする状況など、出来れば来ないで欲しいものだが……
――――これでも軍人上がりだ。危険を前にして心を固めるその気構えは、常人以上の物は持っていると自負しているさ
まぁ……危険なのだろうな。どうやら、凡百なボンクラ政治家どもとは、根本的に違うものを、お前たちは持っていそうだ。それは間違いないだろう……

【今回の主客が、本当に逆転していたら。その過程に、ガゼルは顔を顰める。自分たちには『黒装隊』という、分かりやすい力があるが】
【イスラフィールに、これに相当する力は存在するのだろうか。否――――それはティナを見れば分かる。相応の『手駒』を、彼女も抱えているのだろう】
【能力者としての己を封印し、ただ軍隊経験者として振舞うだけでも、そうした危機に対処――――出来ないとは言わないが、厳しいものがあるはずで】
【例え、自らに課したリミッターを解除したとして、そこまで大胆に振舞えるかと言われれば、流石に厳しいと言わざるを得ないだろう】

……ふぅ、やれやれ……まぁ、我々の接触が、ただの敵対で終わらない事を証し、そして願うにはそれが一番か……
――――2人だけ、ついて来い。残り5人はここの掃除と撤収準備だ……
「……ハッ!」

【やがて、帰り支度を初め、そして見送りをせがむティナに、軽くため息を吐きながら、ガゼルは人数を割り振ってそれに応じる】
【傍に控えていた2人の『黒装隊』がガゼルの背後に付き従い、残りの面々はあわただしく動き始めた――――】

――――悪いが、こいつらの同行は多めに見てもらうぞ。流石に2人きりの場を、どこかの与太者に見られたくはないんでな

【1人がドアを開き、もう1人が外へと先導する。その様を受けて、ガゼルはティナの隣に立った】
【2人の『黒装隊』の振る舞いから考えて、恐らく言葉通りに、ティナ個人より周囲の目を警戒しての同行なのだろう――――】


875 : 〝P〟 ◆rZ1XhuyZ7I :2019/02/02(土) 22:17:37 smh2z7gk0
>>715

【業火が屋上を包み込み、無人航空機はその役目を終えてどこかへと過ぎ去った。】
【そして〝P〟は爆炎に包まれた屋上で〝立っている〟。】
【愉快そうにパンパンと両手を叩きながら、先程と全く同じ位置で立っているのだ。】

【―――傷一つない、完全な姿で。】
【なぜか、〝紙〟が燃えているような匂いが周囲に立ち込めていた。】


アハハ、中々面白い商品を選んだねぇカニバディール。
でも君は話が早くてとてもよかったよ、今後とも是非御贔屓に―――。

それで、彼女たちはどうした方がいいかな?


【ジェットパックで舞うカニバディールに向けて、三角形が並ぶ異形の瞳を向けながら営業スマイル。】
【もはや完全にヒトではない。死の商人とはよく言ったものであった。】
【そして視線は爆撃を凌いだ〝暴蜂〟の一団へと向けられた。】

>>844


ハッハハ、やるねぇあれを凌ぐなんてさ。
カニバディールの言う巨大組織というのはどうやら本当らしい。

そう、僕は蝙蝠さ油断していると全部吸い尽くしてしまうよ―――?


【未だ残る炎の海の中を服すら汚さず悠々と歩いてくる、あまりにも異質。】
【だがそれが逆に何らかのカラクリがある事の証明でもあるという事でもある。】
【〝P〟は愉快そうに一同へと語り掛ける、攻撃を凌いだ事で俄然興味が湧いたようだった。】


それは失礼、僕とした事が価値を見誤ってしまったかな?
まぁこれでウチの商品についてのプレゼンもできたし改めて


――――――〝武器を買わないかい?〟


【この期に及んでそんな事を口にした。】
【追撃の様子はない、さすればカニバディールか、女性の動きによって事態は変わるのだろう。】


876 : ティナ ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/03(日) 09:23:10 arusqhls0
>>874

【ぴとりと、彼女は側に立ったガゼルへと身を寄せる、寵愛される姫君の如く、うら若き乙女の手慰みに似て】
【靡く様に頬を持ち上げ、貴方へと視線を注ぐのなら、そこには少女然とした大きな瞳の風情、潤んだ目元が可憐に囁く】
【一つの手を両手で重ねる様にして、貴方の腕を抱きしめながら、睦じいパートナーの様に振る舞うのだろう】


────── ねっ、ダーリン、式は何処であげよっか?
水の国がベストですけどぉ、最近は星の国でも新しいプランができてるらしいですよ、何でもやり手の経営者が企画した、とかで
地の国も大分整備されてきましたしぃ、金の国の魔術式プランも面白そうじゃ無いですか?


【掴み所のないままに、彼女は去っていくのだろう、怪しげな雰囲気だけを残して】

/こんな所でしょうか! 長時間お疲れ様でした!


877 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/03(日) 12:00:50 6.kk0qdE0
>>863

【少女の境遇を、男は知らない】
【少女の苦難を、周囲は知らない】
【少女の心を、誰も知りはしなかった】
【故に、少女にとっては不幸であったと言える】
【誰も少女を知らなかった、それは不運であったとも】
【或いは、少女にとっての本当の幸せとは?】
【男はただ、泣き噦る少女に、冷ややかな視線を向けるだけであった】
【泡沫の如く、淡く儚いーー在りし日の夢】

「もう、泣かなくていいんですよ」

【その中で、少女をギュッと抱き締めるのは、別の男性】
【別の確かな、温かみ】

「人間って、大体自分の事が1番解りません、僕もそうですが」
「貴女にとっては、嫌な事実かも知れませんが、そうですね、そう言えるでしょう」

【少女の正義に関する質問には、はっきりそう答えて】

「僕にも正義があります、貴女にも、中尉にも、それは全く同じとは言えません、生きてきた環境が違うんですからね、サーペントカルトの幹部にも、虚神にも、恐らくはあったんでしょうね」
「でも、彼らと我々は違う点があります、それは、他人の正義を尊重して、決して無理矢理自分の正義を押し付けない事です」
「それをやってしまう先には、彼らの例を見るまでもなく、そして言わずもがな、争いしか道が無くなります」
「自分の正義を信じるのは結構です、でもそれは絶対では有りません、これを忘れないで下さい」

【頭を撫でながら、そう語り掛ける】
【納得行くかは判らない、だが、彼なりの回答であるとして】

「……なるほど」

【すっ、と頭から手を離す】
【少女の頭には、猫の物のような耳、そしてスグにそれは引っ込められて】

「可愛いですね、よく似合っていると思います」

【何とも口から出る一声は、間抜けな物だった】

「辛い過去ですね、半妖ですか……向こうの国の文化は良く解りませんが、僕は何とも思いません、そんなんだから、掌だって返しようが無いんです」
「君の好きな人達も、皆そうだと思いますよ……きっと……」

【少し笑みを含みつつ、耳が引っ込められた頭を再び撫でながら】
【そして、ヘルメットを渡し、バイクに跨り】

「さっきも言いましたが、僕は自分で心の拠り所とする分にはいいと思います、でも……」
「其れを人に要求してしまったり、強要してしまったり、若しくは、逆に自分の主体性が奪われる程になってしまったら……それは違うと思います」

「自分の世界は、あくまで自分が存在の中心なんですよ」

「いいんですか?」
【杉原が、ため息混じりにライガに聞いた】

「いいんですよ、これで、人間はそんなに強く生きられないですから、僕も貴方もね」

【つがるが後ろに乗るのを確認すれば、そのままバイクを走らせるだろう】
【厳島達が待つ、外務八課に向けて】


//お疲れ様でした!
//ロールありがとうございます、一旦此方は〆で宜しいでしょうか?


878 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/03(日) 12:30:32 6.kk0qdE0
>>864

「いい度胸だ、燃えてきた!」
「師匠直伝の剣技、たっぷり喰らわせてやる、悪いが師匠と過ごした年月は安く無い!」

【気力、気迫に両者は満ちて】
【軈て、白桜の放つ魔力弾をもって、開始の合図とされた】
【魔力弾への切り払い、此れは成った様で、防御には成功するも】
【再び距離を取られてしまう、今度は円状に走り】

「来たか……実弾!」
「和泉一心流、二刀『快活天空』!!」

【その場にぐっと、足を踏みとどまらせ、肩幅に開き、腰と頭の位置に平行に刀を構え】
【着弾の瞬間を見極め、再びの切り払いを放つ】

「グッ、な、なんの……これくらい!!」

【しかし、上手くいっても、切り払えるのは2発が限度だろう、弾丸の1発は、左足へと命中した】

「タダで……やられるか!和泉一心流、一刀『飛翼練利』!!」

【その場にバランスを崩しかけ、片足を着き掛けるも、口に咥えたバヨネットに炎を宿し、白桜の元へと一直線に投擲する】
【狙いは、身体の何処か、命中し動きを止められれば、それで良し、と】


879 : ◆DqFTH.xnGs :2019/02/03(日) 16:25:38 7WBrMX8Q0
【街中】


…………、どう、して────


始まっちゃうよ…………始まっちゃう、のに…………


【彼女はふらふらと歩く。雑踏の中。雨なんて気にもせずに】
【紫のレインコートに赤い雨靴。成人と未熟の狭間といった風体の彼女は】
【小さく、同じ言葉を繰り返す。その短いフレーズが、誰かに届くまで】


/緩めな投下です


880 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/03(日) 18:43:33 WMHqDivw0
>>879

【ばたばたばたっとビニールの傘から水滴が、地面に落ちる音がした】
【誰かが傘を傾けたらしい。おそらく肩に立てかけて、片手で軽くで持つようにした】
【そうするのならもう片方の手はフリーになるわけだから、……差し伸べる、少女の前に】

どーしたの? 迷子? いくらカッパ着ててもそんなしてたら濡れちゃうよ、
この寒いのに……。カゼひくよ? おとーさんとかおかーさんとか探してるなら、
手伝ったげるから。だから一回、屋根の下行って身体拭きなよ――

【その手、左のもの――薬指に銀色の指輪が植わっていた。青い石の嵌め込まれた】
【シンプルで上品なデザイン、だけど袖口からその主の姿の全容を辿っていくならば】
【すこしばかり、下品とまでは言わないけれど。ただ間違いなくお行儀のよさそうな人の服装ではなかった】
【若者向けのストリート系ブランドのロゴが入った、オーバーサイズのトレーナー。ダウンコート】
【80デニールのカラータイツに、……何故か足先だけ、流行遅れの厚底靴。奇しくも雨靴と同じ色】

………………? なんか待ち合わせしてんの? 始まっちゃう、って。

【――――傘の下で不思議そうに傾げられて流れる頭髪と、丸く開かれる瞳もそうだった】
【そうして覗き込もうとする。レインコートのフードの下、濡れているであろう少女の顔を】


881 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/03(日) 20:56:47 sgW45W620
>>871
【首をちらりと後ろに動かして、見遣る少女の姿】

【猫であれば良かったと弱々しく呟く願望】
【仕草と声の形も余計にそれを助長しているように映る】
【いっそ無邪気ならよかったのか?きっと違うのだろう】
【術を知ってしまったから。そうせざるを得なかった】

【邂逅の砌より変わらぬ態度を取るのは二人とも同じで】
【少女は失意と涙声で頭を垂らして、心の中から生まれた感情を吐き出して】
【記憶屋は少女に背を向けたまま、溢れる感情を静かに受け止め続ける】


――――、それは悲しいこと。夢が叶ったのに嬉しくないだなんて。
夢破れた人たちが聞いたら怒り狂ってしまうわ。

――――……その気持ちは解らなくは無いけれど。
描いた景色と掴んだ景色。……それはいつの間にか形を変えてしまって。
こんな筈じゃなかったのに、と。項垂れる仕草は失望や落胆に似て。

………やりきれないでしょう?だから感情をもて余してしまう。


【記憶屋にも似た経験があるらしい。推測が正しければだけれど】
【夢を叶えたのに項垂れる姿。首根っこを掴んで好き勝手出来るような無防備】
【すがる様に抱えるのは散る桜を留めた鞘。それは二度目に振り向いた今この時にはっきりと】
【気紛れひとつでどうにでもなる距離感。泣きじゃくる子供と虚無的な大人の距離】


……、話したくなければ、話したいところだけでいい。
けれどいつまでもこんなところで泣きじゃくるのはどうなのかしら。

だって、ね。――――あなたとおんなじで、お空も泣き/鳴き始めたから。
泣くのならせめて暖かな部屋で、暖かなスープを口にしながらでも良いと思うわ。


【遠回しな物言い。彼女の言うとおり雨模様の空から溢れる雨粒】
【次第に勢いを増して、徐々に、ごうごうと】

【それらの音が何かの音を紛れさせた。その何かとは】
【キャロラインの立ち上がる音、そして手を差し伸べる音】
【その手は少女の背後から不意に伸びて、姿を現すのだった】


882 : ガゼル=イヴン=カーリマン ◆auPC5auEAk :2019/02/03(日) 20:57:38 ZCHlt7mo0
>>876

「ッ……」
――――ふむ…………

【スキャンダラスな光景と為さないための同行者。だが、ティナはそんな事お構いなしに、ガゼルの腕を抱きすくめてくる】
【その大胆さに、思わず同行した2人の『黒装隊』は息を飲み、そしてガゼルは、露骨なため息を吐いた】
【――――「この女、結局最後の最後まで、油断ならない相手という事か」――――振り払う気力もなく、ガゼルは胸中で鼻白んでいた】

――――さてな……俺の生まれ育った砂の国も、決して悪いものではないと思うがな
オアシス式というのは、意外と好評なのだと聞く……慣れていない人間には、あの熱帯の情緒が、情熱的に響いてくるものだそうだぞ?
この風の国で、火と風を以って夜を焦がして祝う事も、悪くはないと思うのだがな――――

【ここで余計に事を荒立てても仕方がない。ガゼルは、調子を合わせるようにティナの話題に乗ってやることにした】
【所詮は、別れる間までの短い時間の事だ。少ない話題の種でも、それを膨らませる術は、ある程度心得ている】

【そうして、ある意味で最後まで翻弄された格好のまま、ティナと別れ、その背中を見送っていた――――】



「……先生、良かったのですか……あの女……」
――――まぁ、まだどうとなるとも決まっていない相手だ。今は、余計な事は考えまい……
向こうも、あれだけ釘を刺しておけば、そうそう露骨に敵対してくる事も、無いだろう……

【――――帰路。2人の『黒装隊』を伴いながら、ガゼルは思索に暮れていた。今回の接触で、考えなければならない事は多い】

――――だが、水の国もどうやら、相当に危険な状態にあるようだな……その混乱が波及してくる前に、必要な態勢を整えられれば良いのだがな……
「では……『導人長老会』に連絡を……?」
あぁ……『戦略・対策部』のジャファーと、『財務部』のネルガルに話を通しておいてくれ……イスラフィール議員と「どう転ぶかは分からないパイプが繋がった」とな……

【指先には、ティナから抜き取った一輪のバラ――――それを指先で弄びながら】

――――このバラ一輪、高くつくか……? いや、むしろ……俺にこれを差し出した事の方が、高くつくぞ、ティナ……
……“Unknown Pollution”――――――――ッ

【リミッターの中、最低限の行使として、能力を発動させる――――指先のバラが、見る間に萎れていった】
【そうして、脆く萎れ切ったバラを、ギッと握りしめる。琥珀色のサングラスの奥にある瞳は、熱く、静かに、前を見つめていた――――】

/はい、お疲れさまでしたー!


883 : ◆DqFTH.xnGs :2019/02/03(日) 22:27:24 K2hmc6qc0
>>880


   ────おとう、さん…………



             …………おかあ、さん────


【手を取ることはなかった。見開かれたのは金色の目】

【揺れていた。大切なものを遠くに置いて来てしまった目】

【唇を噛む。栗色の髪がそうっと震えた】

【レインコートでは弾き切らない雨粒が、少女の頬を濡らして】



…………戦争が、始まります


みんな、バラバラになります


おとうさんも


おかあさんも


こどもも


【予言。狂言。想像。妄想】

【嘘なのか。真実なのか】


────あなたは、聞いてくれるんですね

わたしの、言葉。わたしの、声。わたしの、想い


884 : ◆XLNm0nfgzs :2019/02/03(日) 23:11:54 BRNVt/Aw0
>>877

……そうなの?貴方も、なの……?

……そっか
【憎悪の対象といえる人物。彼女の中にあるのもまた正義と言われれば少女は悲しげな声で返し】

他人の正義を尊重して無理矢理押し付けない……
悪いけど、私はそれは出来ない……出来ません……
だって、そうしたら彼奴は後悔も改心もしなくて良くなるじゃないですか……
もしそうだとしたら、私の苦しみも憎しみは、彼奴に大切な人を殺された人達の悲しみや恨みは……
【何処にぶつけたら良いの、と少女は呟いて】

【そうして、告げられた少女の正体。青年はそれを見て、何とも場違いな答えを返す】
【少女は一瞬目を瞠って】
【そうして続いた言葉。少女は、本当かな、と呟いて】

皆は私が半妖だと知ってるから良いんですけど……確かに皆怖がったりはしなかったんです、けど……
やっぱり、今までの事をひっくり返すような事を言う訳だから……ちょっと、不安になるんですよね……

【本当の私も、受け入れてくれれば良いのにな、と少女は不安げに呟き】
【撫でられる頭。何だかお兄ちゃんみたいだ、なんて思って】

……そっか
強要したり要求したり……とかは、どうなんでしょうか……
主体性が、っていうのは……そうなっていたかもしれない、けど……"あれ"は拠り所とかいう好意的な言葉じゃないし……うぅん……
【少女は眉間に皺を寄せて一瞬考え込む、が】
【ライガがバイクに乗っているのに気付くと慌てて自分も後ろに乗り】

【杉原をチラッと見れば「べーっ!」とおもいっきり舌を出して】

【そうして、バイクは進み始める】
【少女の大切な人の元へと】



【白い仔猫の夢見ていた幸せ】
【それは、ネイビーブルーと、黒色と、赤色と、黄色】
【だいすきな色達に囲まれて】
【皆で楽しく笑う事】
【──いつか、叶えたかった、泡沫の夢】




/長時間の絡みありがとうございました!
/そうですね!その後はまた後日!


885 : 名無しさん :2019/02/04(月) 00:27:30 iKyES5bk0
>>881

【――もしもわたしの生まれが可愛いばかりの子猫だったなら。きっとみんなに撫ぜてもらえた、おでこのところも、耳の付け根も、首のきもちいところも、口のキワだって】
【まだぷにぷに薄い皮膚の突っ張るような肉球を触られたらちょっぴり嫌だからそしたらみぃみぃ鳴いてやるの。そうだとしてもきっと誰も聞いてやくれないって分かってるけど】
【うんと細くて先っぽの尖った尻尾をピンと立てて、もちもちした手触りのクッションをお菓子みたいに細い爪先で何度も揉んでみる、お母さんを恋しい気持ちは一緒に違いないのに】

【一番初めに少女が頻りに話しかけていたのはきっとおそらくはその刀であった。それのみで芸術品のように美しく仕上げられた鞘の彩りは、それを証明して余りあるほど】
【だのにずいぶんと冷たげなことに、彼女はずうっと無視されているのに違いなかった。――でなければ泣いてしまう理由もきっとないのだ、彼女は寂しいのに違いないのに】
【無視されているから泣きじゃくっているんだった。きっと。――。ならば少女だって分かっているのだろう。(どれだけ可愛い子猫だって不要であれば棄てられるのだと)】

――――――――――――。

【ならば漏れ出る吐息はごく怨嗟に等しい。ともすれば「叶わなければよかった」なんて言ってしまいそうな自分を、ただひたすらその心中で殺し続けるような息遣いにて】
【故に心象風景などとうに死屍累々であるのだろうし、そうあるべきだった。――そうでなければこの寒い雨すら降り出す日の夜に外に居るだなんて、用事でもない限りないのだから】
【或いはそう言い切ってしまえるのならよほど幸せなんだろう。"そう"言ってはいけない理由を彼女はきっと世界中の誰よりも知っていたし理解していたし言わないであげたい】
【――――――だのに蝕む現実の痛みに泣きじゃくるしかない。あとからいくら悔やんだって虫歯になったら勝手に治らないみたいに、不条理な病の様相、後悔先に立たず、なんて?】

【――渦巻く感情の一端が吐息を濁らせるのだとして、やはり二人はどこまでも初対面であるのなら、彼女も容易く言えは、やはりしないのだろう】
【それほどの分別は付いている/というふりをして、本当はどこまでも臆病なのかもしれなかった/手ひどく扱われてきた子が大人になっても振りかざされる手に頭を護るみたいに】
【毛先に絡んだ綿埃を取ってくれる指先と力の限り頬を打つ掌の区別すら付けられない。――――ならば/やはり/どうしようもなく、差し伸べられる手に、彼女は頭を腕に埋め】

――だれにも、わからないよ、わからないの、だって、――、だって、わたしにだって、――わたしにも、わからな、――。

【震える声がだんだんと掠れて聞こえなくなった刹那と、雨粒が一つ彼女のうなじに落ちたのは同じタイミング。びくり、と、震える身体をちぢ込めて】

――――どこにいくの? ……、――、わたしのこと、誰も知らないところがいい、――、わたしが誰も知らないところがいい、……、

【差し伸べられる手、――見ないままに手探りで伸ばすのは、左の手。右手にはしっかりと刀を抱き留めたまま。ならばきっと左は利き手じゃなくて、だけれどそれはどうでもよくて】
【誰も彼女を知らなくて/彼女も誰も知らない場所。少女が求めたのはそれであった、――――"今まで"の全部なんにも関係のない場所。でないともはや、息継ぎすら難しいみたいに】


886 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/04(月) 02:42:07 6.kk0qdE0
本スレ>>366

「うん!あれって水兵服、海軍の服装……でも何で風のこんな所に……」
「解りません、でも駒子さんが言う通り、飼い主様に聞くのがいいのかも」

【そして、開始された戦い】
【2人に其々異能の海兵が相対し、近接の戦いを繰り広げるのであった】
【駒子の、まるで礼儀正しく、まるで優美な舞踏の様な動作】
【それは、先程同様の……即ち能力行使の動作に他ならず】

「ほう、全て受けきるとは中々の手腕だ、無刀の剣士……では、これはどうだ!?」

【次には右の4本の刃、それらが一斉に横薙ぎの斬撃となって放たれる】
【左の4本は、動かさずそのままで、駒子のトゥシューズの音がその場には響く】

「駒子さん!気をつけて!」

【遁走曲を奏でながら、アカシアが伝える】
【異能の海兵達、普通の軍人達では少なくとも無い、何かある、と危険を感じて】


887 : ◆ImMLMROyPk :2019/02/04(月) 12:58:59 Nt7ZtIVU0
>>840
>>841
>>851
【快晴の空を襲う驟雨のような邂逅は、冷ややかな停止で幕を閉じた】
【それきり、〝第三〟の気配も消滅する。出会えると思ったあの人は、結局どこにもいないままだ】
【だが、収穫はあった。最期に告げられた言葉。捜せ、我が落とし子を、と受け取れば良いのだろうか】
【即ち、第三の王の落とし子も世界の何処かに存在している。今はそう信じるしかない】


……わかった。捜すよ
なんとなく、そうしたくなってきた。それに……他人がどんなものか、もう少し知りたい
だから、安心してほしい


【理由はわからない。しかし、何故だか彼は既に掻き消えたその思念に、安らぎを与えたくなったのだ】


自由。自由とはこう言うことを言うのか
茨の道……しかし、道は道なんだろう?なら、問題無い。神の門とやらには、必要があったら向かう
最後は……あぁそうだ。さようなら、だ


【遠ざかっていく枢機卿の背中にそう告げると、彼も散らばった古書を集めて歩き出す。まずはこれを返さなければ】
【仮に、彼の光が神々の逆鱗を照らし、雷が天から降り注ぐのであれば─────────】


【それもまた一興だ】

/遅くなりました。こちらはこれで〆となります。お二方ありがとうござました!


888 : アルバート・ウィンチェスター ◆/iCzTYjx0Y :2019/02/04(月) 16:14:42 lp4TKcVo0
本スレ>300

【じゅうじゅうと、肉が焼ける音。ソースが熱され、高く香り立つ。コトコト煮込まれたスープに、白いお米のふわりとした匂い。】
【お腹が減っていなくとも、見ているだけで、その場にいるだけで、涎が出て来てしまいそうな昼食が揃いつつあった―――調理の音と、鈴音の声以外には】
【他にどんな音もしない様な、本当に静かな昼下がり。平和だ―――その陰に隠れて、怖い事も、危ない事も、まだまだたくさん起きているけれど。今は―――この場所だけは。】

【平和でゆったりとした、落ち着いた空間がそこにはあった。ほんの少し前まで、"当たり前"の様に広がっていた光景が、そこにあった。】
【楽しみたくて、うれしくなりたくて、美味しい気分になりたくて、落ち着きを求めて、いつも誰かが店に居る―――そんな在りし日の、光景だ。】
【だが、そう遠い物ではない。今だってそう、本当に"いろいろ"あり過ぎて困ってしまうくらいだけども―――それでも、こうして。また、見れるのだ。】


「―――……セリーナのヤツのコトはよォ。あたし、そんなに知らねえ。どれだけ凄い奴か、どれだけ偉いのか……知らねえ。
なんにも、知らねえ。会った事くらいはあるし……アルバートのオッサンが世話になったらしい、ってのも……なんとなく、聞いてる。」

「けど……、居なくなっちまったのはよ。そのセリーナが……嫌になっちまったから、じゃねえのか? むずかしいこと、りんねがわかんないくらい、
大変で、めんどうくせえことが、いっぱいあったんだろ? だから……そんなモン、"だれだって"いやなんだよ! りんねは……なんにも、"はじる"コトねーって。」

「だから―――……」

――――そこまでにしようか、スタン君。まあね、難しいお話はご飯を食べた後でも構わない。そうだろう? 鈴音君。
もうお腹もペコペコだ、こんなに美味しそうなハンバーグを前に、顔を突き合わせて眉を顰めたって胃が痛くなるだけだ。ふふ。

―――それじゃ、頂きます。

「……そうだな。……うん、そうだなっ! おっしゃ、食うぜりんね! あたしは食うぞ、このすごいやつ!! いっただっきまーふ!!!」


【頂きます、と言い切るよりも前に、スタンはその"良く焼かれたハンバーグ"に食らいついていた。】
【とっても幸せそうな顔で、口の周りを目玉焼きで真っ黄色にしながら、茶色いソースをめっちゃ白のタンクトップにつけながら。】
【本当に嬉しそうに、久方ぶりの鈴音のハンバーグにかぶりつくだろう。美味しいという、シンプルで強力な感覚が支配し―――さっきまでの事も、どこへやら。】

【アルバートは礼儀正しくフォークとナイフで切り分けて、一口、二口と頬張る。「うん、美味しい。」と、一言漏らして。】
【スープを一気飲みしてしまうスタン、スプーンでゆったり味わうアルバート。なんとも、対照的。だが二人とも、よく味わって食べていた。】
【溶けるチーズも伸びきって、皿が真っ白になるまで―――むしろ皿毎食べようとするスタンをアルバートがなんとか抑えて―――二人はハンバーグを完食した。】


「――――ぷはぁ〜! ……っ、ぷ。ん〜〜〜〜!!! 美味かった! ごっそさん、りんね!」

ああ、本当に―――君は料理上手だな。素晴らしい焼き具合だった、味も抜群だよ。是非レシピを聞きたいぐらいだ……
ウチのコックに同じものを作らせられたら良いのだが……いや、また食べたくなったら此処に来るのが、一番かな。ふふふ。

いや、すまないね。来て早々に働かせてしまって。でも、すっかり空腹も満たされたよ。
ありがとう―――、ふぅ。……おや。


【ちら、と横目で見れば……珍しく気を使ったりしたからだろうか、それとも道中が長かったからか。】
【"何時ものお昼寝タイム"を取っていなかったスタンは、空腹が満たされると同時に机に突っ伏して―――くうくうと、寝息を立て始めた。】
【ふふふ。とアルバートがそんな様子を見て笑い。「まあ、寝顔は普通の子供の様なんだがね。」なんて、親か教師の様な事を言い―――そういえば、教師ではあったが。】


―――……さて。それじゃあ、……此処からは少しだけ。
とはいっても、怖い話ではないけれど―――君と私と、……セリーナ君について。お話しようか、鈴音君。


【静かに、言葉を紡ぐアルバート。スタンの寝息をBGMに、静かな午後はその姿を少し、変えようとしていた。】


889 : 院長中身 ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/04(月) 17:01:59 lKgZFXkM0
>>887
/お疲れ様でした! 長時間ありがとうございます!


890 : 名無しさん :2019/02/04(月) 18:33:42 iKyES5bk0
>>888

【――スタンの言葉に、彼女が浮かべたのは笑みであった。それでいてどこか目だけが笑っていないような、薄っすらとした。はにかみと呼ぶには頬すら白すぎるままの色をして】
【愛想笑いと呼ぶにも何かが違うもの。――。だって彼女もまた長いこと"逃げて"いたのだ。半年以上も音沙汰なく行方知れずで過ごしてきたのだから、もはや、どちらも責められず】
【ごく一部の人物とは数度出会ったりもしていたようだけれど、頻繁ではないのなら。――――――今となってはもはや何も言えないのかもしれなかった、(或いはそれすら分からない)】

――――――――、ありがと、ね、

【けれどもやはり同じ場を共有して、少なくない不穏が世界に満ちつつあるのだとしても、暖かな室内で。食べ物の匂いに包まれて。そんな風な場は、荒んだいくらかを癒しはするらしい】
【そうしてまたきっとスタンの立ち振る舞いもそれを後押しして。――難しいこと考えなくっていいだなんて言ったら、失礼なんだけれど。それよりもっとずううっと、ずっと、】
【単なる"ふたり"になって、のっぱらでお昼寝だって、日向ぼっこだって、鬼ごっこだって、そんないろいろなこと、なんだってできちゃうような、元気に"中てられる"ような】
【――勝手に元気にされてしまうような感じ。どうしたって俯きがちがお好みの少女にとって、そのような気質を持つスタンが限りなく意味を持つのは、運命みたいに】

【だから、】

【「はいどうぞ、」――甘やかにささめくよな声が、二人に促した。そうしてきっと二人が食べるのをじっと見ていた。今度こそ浮かぶ控えめなはにかみは嬉しげに緩むなら】
【スタンの食べっぷりに眼差しすら柔らかくたわむのだろう。――――ただいくらかして、スタンの纏う服の"現状"に気づけば、紙エプリン、なんて、ちいちゃな声が漏れ出て】
【しかし今更出しても。いやでも白い服に付いたら落ちなさそう。食事の邪魔をしても。――。逡巡がミルフィーユみたいに積みあがる頃には、そもそもスタンなら食べ終わってしまう】

――――よ、よかった、……。……スタン様、後で、お洋服、貸してね、――。……わたし、洗うから、――その、……。取れなく……なっちゃう……。

【ぷはあっと食べ終わるのなら、せめて彼女はお湯で濡らして絞ったおしぼりを差し出すのだろう。或いは頬っぺたとか拭ってやるのかもしれなかった】
【ソースだなんてくっつけたままではお洒落じゃないし肌荒れだってしてしまいそうなのと、――それから、お洋服のことに気づけなかった申し訳なさの詫び、みたいに】

……、わたし、は、その、……お料理、お勉強したりしたわけじゃ、ないから……。お母さんが作ってくれたの、少しだけ覚えているのと――。
――――ご飯を作ったり、食べたりするの、好きだから。……。それだけなの、レシピだって、量とか、てきとうで――。コックさん、に見せたら、びっくりしちゃう、からっ、

あ…………。

【そうしてそのおしぼりを回収するなら、手慰みみたいにきちりきちり折りたたんでいくのだろう。レストランで修行をしたこともないし、料亭で修行したことだってない】
【お高い三ツ星レストランはどうしたって気後れと緊張なんてしてばっかりで、そういった"きちんと"したご飯を食べた思い出は肝心の味すら覚えてない、何が何風だったのかすら】
【なれば彼女の料理は母親に作ってもらったようなものが基礎であるのだろう。――そうして間違いなく彼女が出したもの、お家以外のどこでもみないような、SNSに映えるはずないもの】

【――書いては見たけれどそれ以上の意味合いを持たないレシピを本職に見られるなどあってはならぬ末代までの恥であるかのように首を揺らしたなら、】
【照れ隠しに皿を片付けようとする。――そのタイミングで、彼女もまた気づくのだろう。すやすやと規則正しく膨れて萎むスタンの背中の丸い角度、だから、】

【回収した皿を流しで水に浸して。そうしてカウンターから出がけに持ってくるのは一枚のひざ掛けと、それから一枚の盆】
【ふわふわフリース素材のものは貴女にい要らないのかもしれないけれど、――スタンの背中にそおっとかけてやるのだろう、それから、お盆には】
【二人分のお茶の用意、――彼女が示すのは、スタンの眠るカウンター席ではなくて、独立したテーブル席。眠る隣でするには、いくらも気が引けるのだと表情が伝え】
【そうしてまたお茶については、――場を取りなす役割なのだと、それもまたきっと表情が伝えていた。だって、ティータイムには早すぎるし、そんな顔をしていなかった】

――――――――――――――――――――――――――――――――――――うん、

【やがて二人テーブル席へ場所を移すのなら、――、これより執行される死刑囚というほどではないけれど、表情が変わる。ある意味は本番が始まるときの、緊張感と共に】


891 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/04(月) 18:51:35 Z9VpUvLk0
>>870

私は別に商売人ではないのだから意味が通れば良いだろう。
そもそも分かりやすく言わずとも求める奴は勝手に求める。
いわば殿様商売にも似ている。―――外見どおりの下種め。

全人類すべてが馬鹿であるというのは、私も同じ意見だ。
下種の分際でそこだけは馬が合う。……そこだけは、な。

【そこだけは。彼女は前提として神様を信奉して"いた"】
【その頃は確かに馬鹿だった。大なり小なり信じていた頃は】
【片眉を微かに吊り上げて、くくい、と首を僅かに傾けて】
【見せる色合いは―――嘲笑と侮蔑。あとは自嘲と自虐】


―――お前に問うた私が馬鹿だった。愚問だったな。
おまえ自身が言うようにその面は時化ている。決して色男ではないな。
(まぁ別の意味での"色"を好む男ではあるだろうが)……くくっ。


【愚問。この状況を表すのに、その一言で十分だった】
【それでも興味を引くものがあるから。彼女は言葉を継ぐ】
【視線を傾けた先、只ならぬ魔道書。パンドラの箱めいた書物】


腰に下げている吃驚箱だとかパンドラボックスに比べるなよ。
そちらの方がよっぽど詐欺だと思うがね。

……どうやるかなんてその時にならねば教えてやれん。
かといって詐欺と謗りを受けて心中が穏やかな訳でもない。
………知りたければ、お前の手品のタネを明かしてから、だ。


【皮肉げな顔色に混じる不穏な感情。彼女からすれば】
【男の下げている書物こそサギみたいな物だと思えた】
【それは良くも悪くも、程度の多少に問わず】


892 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/04(月) 19:06:16 Z9VpUvLk0
>>878

【気迫を乗せたバヨネット。それが肉薄するなら―――】
【気圧される。百合子の言葉が嘘ではないと証明するように】
【円を描くように走る白桜の右腕、その二の腕辺りに刺さる】
【動きが止まり、痛みに顔を歪ませる。凡そ少女の許容を超える痛み】


    ぐぅぅ、づっぁああっっっ!!
  ―――……想像以上にできるひと…っ。
 

(腕に刺さるのも厄介だが、刀身が燃えてんのも厄介だな。クソがっ!)


【燃え盛る炎、それはセーラー服ごと腕を食んでいき】
【放置すれば加速度的に燃え盛って、雪の様な白肌に消えない傷を残すから】
【右手に拳銃を握ったまま、拳銃を手放した左手で刀身を無理矢理引き抜く】
【当然左手は裂傷と火傷の苦痛に苛まれ暫く使い物にならなくなるが】


それでもっ、わたしだってっ!お姉はんへの想いで負けたくないから!
   ―――――これで決着をつける。その身で知るといい。


【言葉のとおり、二人とも満身創痍に近くて。ならばこの戦いの決着も早い】
【そう考えた白桜は立ち止まって、静かに銃口を百合子に向ける】
【狙いなんて無い、だた引き金を引いて、相手に知らしめる――その言葉の重みを】


893 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/04(月) 19:28:15 Z9VpUvLk0
>>885

そうね、……あなたのお望み通りの場所。
あなたの事を誰も知らない場所。あなたが誰も知らない場所。

つまるところ私の家よ。そこには私しか住んでいないのだから。
お望みには適っているとは思っているけれど。

ふふっ、まるで王子様みたい。白馬に乗ってないし見ず知らずの少女を誘拐する悪い人みたいだけど。
でもそれくらいの方が良いかもしれないわ。悪い人は良い事だけじゃなくて悪い事も知ってるのだから。
――――………手は掴んだようね。さぁ立って。立てないというなら、おぶさってあげるわ。


【雨が降りしきる。堰を切ってこぼれる大粒の雨は少女の心境に思えて】
【ただ、キャロラインは知る由も無い。少女の心象風景が死屍累々の屍山血河で満ちている事を】
【それも赤黒い色さえも失ったモノクロの虚無。色を忘れて失って。それでも形だけは残っているから】

【だから彼女は少女の手をぎゅっと握った。やさしく、やさしく。壊れないように】
【冷たい雨が二人に等しく注がれるなら、滑らないように、零さないように確りと注意して】
【ゴミ捨て場で雨に濡れる少女と大人の女。構図としては間違いなく異様だった】


【その最中、目に留まるものがあった。それは少女の仕草と抱える刀】
【余程大事なものなのか。そして差し伸べた手に俯いたまま応える程の絶望なのか】

【虚無で満ちた記憶屋とは違う絶望。でも似たように絶望に飲まれるのなら、せめて苦しみは取り除いてやりたいと思った】
【記憶を維持する為の糧なのか、それとも同情なのか。―――少女が手を取って歩こうが、記憶屋の言葉通りにおんぶして】
【ゴミ捨て場から離れようとしようが抱く感情は同じだった。そして懺悔室で広げられる様なお話もまだ終わらないのだった】


ああ、御免なさいね。私、傘は持っていないから。ずぶ濡れになって街中を歩くことになるけれど
それは私も同じだから―――といっても、今のアナタにはそれを気にする余裕はないかしら?


【だから、ゴミ捨て場から離れようとする道中だとかキャロラインの自宅に歩みを進める最中でも】
【声をかける。それっぽく装った気遣い。虚無的な悲観主義者の彼女らしからぬ、いいやだからこその装い】
【はっきり言って雨に濡れる冷たさも嫌ではないし、自分の心もそれに近いくらいの冷たさなのだから】


894 : 名無しさん :2019/02/04(月) 20:34:41 iKyES5bk0
>>893

【"いつか"の自分であれば、躊躇うこともないのだろう。だって、きちんと死ねないのなら、――どれだけ危ない場所へ行ったって関係がない、だから、どうでもいいって】
【だけれども今の彼女にそんな奇跡は存在しないのだから、ならば誰かが叱ってやるべきなのかもしれなかった、もっと自分を大切にしろ――だなんて?】
【――根本的な話として、自分を大切にする術を知っている人間は、今にも雨の降り出しそうな冬の日に、ごみの不法投棄場で蹲ってなぞ、居ないのだけれども】

――王子様なんて、いないよ、どこにも、……、いなかったもの、どこにも、いない、見つけたと思っても、にせものばかりで、――、――。
――――――、どうして、こんな、"へん"な子、つれていくの、――、全部、壊して、殺して、しまうかも――しれないの、あなたの大事なもの、ぜんぶ……。
わたしの大事なものだって、もう、よく、わからないのに、あなたの大事なもの、そうだって分からないまま、だめにしちゃうかも、しれないのに――。

【そうして握られる手は、――ごく華奢なものなのだろう。そうしてまた冬空に抱きしめられすぎて、すっかりと冷え切ってしまっていて】
【ざああと雨が降り出してしまうなら、彼女の全身はあっという間にずぶぬれてしまうのだろう。長い黒髪が水を孕めば、皮肉なまでに綺麗だった、つやりと麗しい艶を孕んで】
【力ない細い指先までも容易く濡れてしまうのなら、そこで初めて彼女はきゅうと力を籠める、――親に抱き縋れない猿の子は死ぬしかないけれど、ならば彼女は、まだ?】

おんぶして……。

【ごく泣いている時の声ではあったが、彼女の顔を濡らすのが雨なのか涙なのかは、もう誰にも分からないから。引かれる腕の仕草に、けれど足がついて来ないなら】
【ぺたんと座り込んでしまって、それでようやく"おねがい"するんだろうか。そうして負ぶってくれるというなら、やはり見た目通りに酷く軽い、今にも死にそう、――ではないけれど】
【雨の中放っておいたなら明日の朝には凍っていたかもしれないと思わす程度には――なんて。どちらにせよ、抱き留めた刀、そのままで居たがるから、背負いづらいかもしれない】
【どうしても――と言われるのなら、大人しく"しまう"。といっても空間に溶けて消えるみたいになくなって、おしまい。"そういう"風に出したりしまったりするものらしい】
【そうでなくても、手元で握っているだけで満足らしかった。――その場合、刀をぶら下げる少女を背負う、という、ずいぶんとまあ人目を惹く構図になってはしまうのだけれど】

【――あるいは、乞われなくとも、そうやって"強制的"に運ばなければ、きっと、彼女は付いてきやしないんだった。気づけば消えてしまうのに違いない、なんて、】

――――。

【話しかけられる言葉に、彼女は曖昧に首を揺らしただけだった。返事というには物理的にも言葉足らず、籠めた意味合いすら曖昧に】
【ただ強いて言うのなら――冷たさが嫌でないと思うあなたと違って、どうにも彼女は寒がっている風ではあった。――――たとえそうなのだとしても、】
【傘を持っていないことを責めるでもないし、ずぶぬれでも文句を言ったりしないし、気にする余裕は分からないけれど、気にしていられる気分でないのは、確かなのだろうから】


895 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/04(月) 20:35:50 7bLeRBZU0
>>891

はぁ? おいおい、こんなものの中身が見たいっていうのか?
別に構わねえけどよ、大して面白いものなんか入ってねえぞ

【男は僅かに驚いたように言うと腰の魔導書を引き抜いた】
【錠前が独りでに外れて魔導書が開かれる。ページが自動的に捲られていき停止】
【白紙のページの上で青白い燐光を伴った魔法陣が展開。異質な魔力が吹き出す】

【そこから姿を現したのは黒々とした触手。大小様々な無秩序な群れが威嚇するように先端をくねらせる】
【異質な魔力の正体はその触手そのものだった。だが触手だけではその総量と釣り合っていない】
【すなわち魔導書の中身はそれだけではない。膨大な“何か”がまだ背後には控えていた】

見てのとおり、ただの召喚用の魔導書だ
そりゃあそのへんの魔術師が持ってるやつよりは“ちょっと”面白いけどよ?
女のお前が見て楽しいものとは思えねえがな……何なら試すかい?

【男の下卑た笑みが深くなる。試すという言葉が何を指し示しているかは分からないが】
【それでも不吉な気配を与える何かがあった。少なくともこの男が楽しそうだということは、そういうことだろう】


896 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/04(月) 21:18:55 WMHqDivw0
>>883

【一瞬だけふっと不思議に感じることがあった。なんとなく、なんとなくだけど】
【その目の色を見たことがあったような気がして、目を見開く】
【それからちょっとだけ怖気づいたように、少しだけ顎を引く。ぱち、と一つ大きく瞬いて】

……………………戦争? んん? えっと……
うん。聞こえてるよ、聞いてるけど、…………、
…………んええ!? なに、めっちゃテツガクテキなこと言うじゃん!
あたしちょっとそーいうの向いてない! 難しい! もっと簡単に言って!

えっとつまり…………あんたのパパとママが戦争でどっか行っちゃったってこと?

【次の瞬間にはとがったまつ毛が困惑のかたちに歪む。ぐええ、と呻き声すら零して】
【推理にもなっていない憶測を、とりあえず口にする。傘を持つ手が緩むから】
【ざーっと水が流れていく。足元を盛大に濡らす、赤い靴のエナメル質は、余程大事にされているのか】
【律儀に水の粒を弾き続けていたが――この調子ではもうすぐに、それもダメになりそうだった】


897 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/04(月) 21:34:56 WMHqDivw0
>>886

【ぎゅっと地面を踏み締める音は、ひとつの動作の予備として】
【バレエというのはそういうもの。一つ一つのパ(動作)を華麗に繋いで、決めていくもの】
【結局は動作と動作の間にあるスキを、どのようにして上手く隠すかがバレリーナには求められる】

【――――――――――故に、】

ケンシだなんてモンじゃないよ、コマはねえ――エトワールにしかなりたくないの!

【ひゅん、という風切り音は手でも脚でもない部位から放たれた。長い長いツインテール】
【二つに纏められたその毛先が、線を描く。普通であれば邪魔でしかない長髪も】
【彼女の異能のために綺麗に整えられたものだった。それが演者としての在り様だったから、】

【ぎィん――――四の刃を受け止める音はその二本が立てるのであろう。そうして】
【それが砕けた後に次いで曳かれる線は、鋭利なトウシューズから放たれるもの】
【優雅でいて鋭敏な回転、バレエで言うところのピルエット――からフェッテ、脚を投げ出す動作】
【回し蹴りと呼ぶにしてはあまりに形が整いすぎていた。けれど、線の異能として振るうには】
【十分すぎるほど鋭利であり。待ち構える四の刃にも、真正面からぶつかれる程度の強さはある】

おっけーアーくん、アーくんの曲のおかげで調子いいんだから! ダイジョブダイジョブ!

【そうは言うけれども。空色の瞳は一点だけを見つめていた、決して油断はならぬと言うように、前だけ】


898 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/05(火) 08:56:06 6.kk0qdE0
>>892

「よっしゃ!命中だ!」

【放った大型ナイフは、右腕に命中、その周囲の衣類を焼き、皮膚を焦がし、裂き】
【引き抜いた左手にもダメージを与えた】
【動きは、止まった】

「お互い……ボロボロだ、でも……」

【再び見合う】
【両者認識しているのは、次の一手がこの勝負を決するという事】
【百合子は刀を鞘に其々納めて】

「和泉一心流は、二の太刀要らずってね、見せてやる、これが真髄だ!」

【その、一刀の鯉口を切り、駆け出す】

「和泉一心流居合い……和切合合!!」

【白桜も同時に、銃を構え、そして放った】

「ぐっ!ま、まだ……だッ!」

【渾身の弾丸は、腹部を貫いた、一瞬身体を折り曲げ、鈍る足、だがそれにより止まる事は無い】
【そして、刀の間合い】
【居合いの一撃が、白桜に……見舞われる事は無かった】

「ぐッ、し、師匠……」
「ダメ……力、入らない、よ」

【柄に手を掛けた、正にその姿勢のまま、力尽き倒れた】


【軍配は、白桜に上がったのだ】


899 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/05(火) 09:19:42 6.kk0qdE0
>>897

「エトワール?栄誉ある踊り手と?益々解らぬな、私には能力を行使する、我々と同じ戦士にしか見えぬが」

【地面を踏み締める音、次いで聞こえるのは風切り音】
【そして、次に響くのは、鉄と何かがぶつかる金属音】
【所作として完璧なまでのバレリーナの動きは、そのツインテールが残した奇跡までも美しく】
【そして何より、合理的な戦いだった】

「弾かれたか!?くっ!!小癪ぅ!!」

【次の手を取ったのは、駒子の方】
【トゥシューズから優美に、そしてしなやかに回転され放たれた蹴りは、線の刃となりて襲い来る】
【何とか、片方の4本全てを持って防御するも、咄嗟の事に体制を崩す】

「小癪!小癪な、小娘が!!」

【かなり乱雑な形になるが、駒子向けて、バラバラの方向からの切り込みを放つ】
【両手合わせて6本の腕が、その身体を刻まんと各方向から迫る】
【最も、体制をかなり崩しているため、狙いは甘く、また、胴や頭、脚がガラ空きと言う有様でもある】

「駒子さん……はい!ありがとうございます!」

【演奏は尚も続く、前線を鼓舞する楽曲は止まる事無く奏でられ】

「甘い……魔力は十分か?」
「は!術式構成、そろそろ宜しいかと」
「数秒の後に放て、餓鬼共が手間取らせおって」

【その奏者を2人を狙う影があるとも知れずに……】


900 : ◆DqFTH.xnGs :2019/02/05(火) 10:39:14 RCR/piJk0
>>896

…………、……………………戦、争……、…………が


【彼女もまた、困惑で表情が歪む】

【言いたいことがあるのに、伝わりきれない歯痒さ】

【口が半分開く】    【閉じる】

【開く】    【僅かに開いた口腔。舌が彷徨う】

【──閉じる。繰り返される所作】

【伝えようとして、諦めて】
【何度も何度もそれを繰り返し】


【ぱしゃりと。赤い雨靴が水溜りに浸かる】
【ゆっくりと彼女は歩き出す。せめて、屋根のあるところまで】


────パパと、ママ。

戦争で、いなくなったのか…………戦争が、始まったから、いなくなった……のか
戦争が…………、始まる前からいなかったのか…………、もう、分りません


    で、も


パパも…………ママ、も…………あんなものが、なければ────
あんなところに、いなかったら……ずっと、一緒にいられたん、です


【独白にも似た呟きは、ざあざあと雨音に紛れていく】
【灰色の雑踏の中。紫色のレインコートは雨粒を弾き続け】
【やがて一つ、矢張り灰色の景色の中にその姿を落ち着かせる】


    【 た ば こ 】


【もう何年も前に廃業した煙草屋。看板は傾き、“たばこ”の文字には錆が湧き】
【シャッターの落書きすら、風雨のせいで滲みかけていた】
【上階のコンクリートの出っ張り。そのおかげで、煙草屋の真横には】
【雨に濡れていない数十センチの小さな避難所が出来上がっていた】

【誰からも見向きもされなさそうな僅かな空間】
【彼女は再び、金色の視線を投げかける】



────<円卓>なんてものが、あるから



だから…………戦争が、起きます



…………、起きるん、です



────未来、で



【ざあざあと、雨は振り続けていた】


901 : ?????? ◆auPC5auEAk :2019/02/05(火) 15:06:23 ZCHlt7mo0
【水の国 公園】

――――っく、全く……

【傍目にもまともに手入れをしていない事が分かるぼさぼさの赤髪が、険があるものの端正な顔立ちを小汚く彩り】
【デニム生地のベストと枯れ草色のミリタリーパンツ、安全靴と思しき重厚な靴で全身を固めている】
【何らかの異常を起こしている事が見て取れる、赤黒く濁った眼をした、左腕の欠落した身長170cm前後の青年が】

【ベンチに陣取り、隣に据え置いたビニール袋の中身を、右手で引っ掻き回している】
【取り出したのは、ファストフード店の紙箱と、紙コップ――――そこから、照り焼きチキンを取り出すと、青年は荒々しく齧り付いた】

ん、ぐ……――――っ、ふぅっ……やれやれ……

【昼下がりの公園は、この時期にしては温い風と陽光が満ちており、久々に凍える寒さから解放された雰囲気があった】
【だが、同時にそれは、どこか落ち着かない生ぬるさとしても感じ取れるようで。この時、青年以外の人影は、公園の中にはいなかった】
【そんな中で、青年はチキンを頬張り、紙コップのストローを乱雑に吸い上げる】

――――なんだか、おかしいな。最近……どうなっている……?

【半分ほどを平らげた頃合いで、青年はふと一息つきつつ、動きを止める】
【ここのところの寒気で、冴え切った青空が、頭上に広がる。その中の微かな陽気は、本来なら清々しいもののはずなのに】
【青年の心境も、場の空気も、もう一つスッキリしないものを抱えていた】

……このまま、ケチな賞金稼ぎ稼業で、落ち着かせてくれるとは、思わないんだけどな……ッ

【嫌な空気を振り払うように、青年は食事の続きに耽っていた。片腕だけの、不便で荒々しい食事に、何かから目を逸らすように没頭して――――】

/木曜一杯辺りまで待ちますー


902 : ?????? ◆auPC5auEAk :2019/02/05(火) 15:06:37 ZCHlt7mo0
【火の国 繁華街】

「……ッ、ひったくりー! 誰かーッ!」

【賑わう街並みの中、突然の悲鳴が響く。道端に躓いた女性が、走り去る青年の背中を指さしながら、あらん限りの声で叫んでいた】
【走る青年の手には、女物のバッグ――――白昼堂々の出来事に、多くの通行人は面食らい、咄嗟に動けなかった】

――――ッ、〜♪

【そんな中――――青年の行く手にいた1つの影が、ふらっとその足元へと忍び寄る】

【前ポケットがやけに大きく膨らんでいる白のパーカーと、同じくポケットが目立つアウトドアズボンを着ている】
【明るい紫色の短髪と、勝気そうな金色の瞳が、元気の良さを印象付ける】
【ともすれば人ごみの中に消えてしまいそうな、身長130㎝前後の小柄な少年】

【走り抜けようとしているひったくりの青年の足元に、何気なく近づいて――――】

「退け!!」
わぁっ!

【呆気なく蹴り飛ばされる少年。青年の足は相応に早いようで、正に疾風の如く、町の奥へと消えていく】

「ッ、捕まえろ!」
「ぼ、坊や……大丈夫か?」
う、うん……大丈夫

【ようやく事態に対応した大人たちが、声を張り上げ、青年の後を何とか追いかけようとする】
【それを見送りながら、少年は立ち上がり、脇へと退いていった――――口元に、微かな笑みを浮かべて】

――――そういう時こそ、ガードって甘くなるんだよ、バーカ……よっし、ゲーセンでも行くか……

【――――ポケットへと忍ばせたのは、女物の財布。咄嗟に、青年がひったくったバッグの中から、財布だけを抜き取ったのである】
【騒ぎに、周囲の目は完全に青年へと引き付けられており、当の青年も、ここから俊足を生かして逃げ去る事で精一杯の状況である】
【咄嗟に漁夫の利を獲得した少年は、そのまま騒ぎの中心から消えていって――――】


903 : ?????? ◆auPC5auEAk :2019/02/05(火) 15:06:56 ZCHlt7mo0
【風の国 ファミリーレストラン】

【――――「法的に扱いが曖昧なままである、これが能力者や異能を巡る、最大の問題と言うべきです」「それで、『魔能制限法』を……?」】
【――――「その通り。水の国に倣い、かつ我が国の事情に合った、『魔能制限法』を新たに制定すべし。それが我々の主張です」】

【少し値の張る食事処に、据えられたテレビがインタビュー映像を流す。それを見入りつつ、客たちはそれぞれの食事を楽しみ――――】

【――――「近頃、『導人会』は活発に、大規模に活動しているとの事ですが、何故、このタイミングなのでしょう?」】
【――――「『UNITED TRIGGER』の機能不全、そして世情の不安、そこに迅速に答えを出さなければならない為、という事です」】

あ、注文良いですかな? ホットチョコレートを1つ……

【その放送を見やりながら、通りがかった店員に注文を伝える、1人の男がいた】

【前ボタンが開いたままのライトブラウンのスーツとスラックス、真っ白なYシャツにマリンブルーのネクタイを締めており】
【褐色の肌をした、スキンヘッドで鼻筋の通った顔立ちに、琥珀色のレンズのサングラスを掛けている】
【がっしりとした筋肉質の体格の映える、身長170㎝前後の男性】

【既に食事を終えた後の様で、食後の軽いデザートを追加注文する。それに応えて、店員はいそいそと厨房へと歩き去っていった】

【――――「――――このように、『導人会』は明確に、水の国に端を発する『魔能制限法』議論に賛成の立場を取っているとの事です」】
【――――「また、その公開討論会や集会は、常にその主張に賛成する人々の熱狂に包まれ、現在、国内小規模政党の中では最も活発に活動している1つとなっています」】

【インタビューは終わり、わずかな解説を挟んで、番組は次のプログラムへと移行する】
【それを見届けて、男性は事も無げに、窓の外へと視線を向ける――――そんな仕草を、周囲の客の何人かは、チラチラと横目で伺っていた】

【――――先ほどのインタビューに応えていた男性。それと、食事を取っている琥珀色のサングラスの男性は、全くの同一人物だったのである――――】

/木曜一杯辺りまで待ちますー


904 : ?????? ◆auPC5auEAk :2019/02/05(火) 15:07:09 ZCHlt7mo0
【風の国 オフィス街】

「――――いやー、急な話で悪かったね。どうしたものかと思ったけど、助かったよ!」
はい……こういうのは、お安い御用です。また、何かありましたら、小夜に話してくださいね……
「あぁ、それじゃあこれ……本当に助かった、ありがとう!」

【とある倉庫の前で、ビジネススーツに身を包んだ男性から、薄い封筒を受け取る1人の少女の姿があった】

【夜の色をした長髪をサイドテールに結って、月をあしらった簪で片方に垂らす】
【華奢な体躯を包む淡桃色の着物は左前、紫陽花色の帯が鮮やかに姿を染め上げて】
【足袋に履いた質素な草履、総じてお淑やかな印象を与える小柄な少女】

【心底、安堵した様子の男性と別れ、少女は町の中へと歩を進めていく】
【途中、封筒の口を切って中身を確かめ、小さく頷くと、その封筒を袂へと仕舞い込んで――――】

……そうだ、折角だから、何か買っていこうかな……

【静々と歩を進めていた中、ふとデパートの前で立ち止まり、その建物を見上げる】
【どこか、力なく儚げな雰囲気の振る舞いだったが、どこまでも優しい微笑を浮かべて。じっと、案内板とにらめっこを始めていた――――】

/木曜一杯辺りまで待ちますー


905 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/05(火) 19:24:06 WMHqDivw0
>>899

悪いかしら? セントーもこなすエトワールって、ニュージェネ的でいいじゃない――――

【もう一回転してから華麗に着地。するのであればやはり次の動作に繋げる予備動作が入り】
【膝を屈める、プリエ。そこへ狙いこまれる乱切りへの対応は――――】

【跳躍。足を180度、前後に開くグラン・ジュテ。そうして前進すれば、斬撃は確実にその身に入るが】
【甘い狙いで定められた地点から動いたこともあって、刻まれる傷も浅い。このくらいであれば】
【「小鳥」にとって怪我のうちには入らない。死なないのであれば、彼女らは永遠に羽搏ける、――】

【然るに、鋭利な爪先が次に狙ったのは男の胴。真っすぐ突き込まれる軌跡は槍の一突きに似て】
【戦闘用に加工された、硬い硬い爪先で打ち据えるように抉り込む。まともに入れば、肉は裂けずとも】
【腹肉の下の内臓のひとつやふたつは潰してしまえそうでもあった。加えて、血飛沫舞う中での跳躍の軌道】
【優雅な爪先も流れる髪先も、いくらでも次に繋げられそうではあった。――――しかし、】

(…………おっかしいな。あんなにたくさんいたのに、前に出て戦うコマとキーちゃん)
(それぞれに一人ずつしかつかないのは、どうして? …………あれ、えっと、んんん?)

【嫌な予感は、予感だけに留まってしまう。それに今は大振りな動作のさなかにあった】
【故に何か、急に仕掛けられたところで「上手い」対応はできないのだろう。ふわり舞うフレアスカート、】
【押さえる動作もなく。ただ、少しだけ頭の中にひっかかることに、視線を傾げて――何もしない、できない】


906 : アルバート・ウィンチェスター ◆/iCzTYjx0Y :2019/02/05(火) 19:32:19 YPBLlEbw0
>>890

【或いは。逃げてこそ、走り続けられるという物でも、あるのかもしれない。逃げる事すら辞めれば、そこには停滞あるのみだ。】
【逃げた先にあるのが良い結果ばかりとは限らない。しかし、それもこれも、あれもどれも"生きていて"いれば、こそ。鈴音には―――本当に。】
【去年多くの事象が降りかかり、曇らせ、陰らせ、深い位置まで心を潜らせたのだろう。だがその先に、彼女は"生きている"という現実その物を、手に入れた。】

【―――逃げ続けてきた。スタンだって、なんとなく―――大変そうだ、という事は知っていても、足を運ばなかった。】
【そしてそれは、このアルバートにしてもそうだ。みんなどこかで、身を守るために、心を守るために、逃げたり、消えたり、する。】
【逃げ続けた結果として、けれど行き着くのは、向き合うことが必要と言う現実だ。この三人はそうやって、曲折を経て遂に、此処へ集ったのだ。】


【―――とはいえ。こんなにシャツをソースだのご飯だので、べっとべとにしているところを見ると―――呑気その物、だったが。】


……ふふ。ああ、そうだね。寝て起きたら、その時は洗濯を頼もうかな。
おお、そうそう。お風呂は―――ものすごく抵抗するから。水浴び、程度に抑えた方がいいよ。

―――ま、そういう事なら。君のやり方をよく見て、体で覚えることにさせてもらうよ。鈴音君。
レシピをコピーするより、その方が身のためになりそうだしね……ふふ。私もね、昔はこれで料理をよくしたものだよ。

家を出て一人で暮らしていた時期も長かったし、それこそ野宿だの、サーカスだので働いていたことも―――っと。
これは余計な話、だったかな。いや失敬、歳を取ると昔話がどうにも癖でね。今度お礼に、私が得意なインド風カレーをご馳走しよう。


【おしぼりであれこれと、スタンの口元だったり、腕だったり、首元だったりを拭う鈴音を見ながら、楽しそうにアルバートは言って。】
【ぐっすり寝ている様子のスタンは全く起きる気配がないが、なんとなくご機嫌層にも見える。隣で、難しい話が進行し始めているのは、知らないままだ。】
【やがてアルバートは鈴音に従って席を移し、テーブル席へと座って。そこで上着の茶色いコートを脱ぎ、きっちりとしたシャツとベストのみの恰好になって、鈴音と向き合う。】


―――……まま、そう固くはならないでくれ。
議論を吹っかけて悩ませたいとか、長い話で困らせたいとか、そういうつもりはないからね。

ただ―――そう。話さなくてはならないと、思ってね。私の此処へ来た理由と、―――これから何をなそうとしているか、を。
でも、まずは君の話を聞こうと思う。君がいつ、セリーナ君と別れて、そして今日までどう過ごしてきたのか……その様子では。

……随分。色々あったのだろう? 勿論……話せることだけで、構わないからね。


907 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/05(火) 19:37:30 WMHqDivw0
>>900

【移動するならついていく。厚底が水溜りを踏み締めて、幾重にも波を作り】
【同じ屋根の下に入って傘をたたむのなら――やはりよくわからないと言うような顔をするのだろう】
【とりあえずはパパもママもいない。それはわかった。ならば次にかける言葉は慰めにしようか】
【そう思って開きかけた唇が――止まる。ぽかん、とまるい形になって】

………………、………………円卓?

…………え? 待って待って、なんで。
「最近」、円卓何もしてなかったでしょ? なのになんで円卓のせい?
「あたしたち」にはわからないところで何か動いた? えっ? 戦争?

【そいつは何故だか、「関係者」みたいな口ぶりをしていた】
【<円卓>。ありとあらゆる富を弄ぶ人々が秘密裏に囲む闇のテーブル】
【そんなものを何故だかこいつは知っていた。街を歩けばいくらでも見つけられそうな服装の】
【まだ若い、少女の範疇に留まる見た目の、ありふれた人間の見た目をしたやつが。何故か、何故だか】

【そうして、】

え、っと、…………………………ミライ?
今の話じゃないってこと? じゃあなに、あんたは未来から来たヒトなの?

【「まっさかぁ。最近の子供ってSF、たしなむんだ――」 誤魔化すように笑うけれど】
【気付いている。「最近の子供」は、<円卓>なんて言葉を知り得ない】
【普通であればこいつだって知らないはずの用語を、何故か、何故だかお互いに交し合っていて、】

なあに、「タイムマシン」に乗ってきただなんて言いたいワケ? ………………、

【一笑にふそうとして、できなかった。その方舟の名を語る少女だって知っている】
【マッキー、初瀬麻希音。友人。その子だって<円卓>の存在を知っていた、――、】

【いやな絵柄のパズルのピースが噛み合う音がした。のを、雨音でどうにか掻き消したくって】


908 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/05(火) 20:27:15 /2omCu6s0
>>895
【玉手箱は開ければ青年を老人へと変貌させる】
【そんな理屈を期待して鎖で縛られた魔導書を見遣れば】
【そこから這い出るのは触手。この世ならざる異形】


くっくっく、その魔導書は飾りではなかったか。
確かに確かに、お前の言うとおりちょっとだけ面白い。
少なくとも"協会"の連中の魔術よりよっぽと面白い。

―――で、その触手で何を試すんだ?言ってみろ。
下賤の輩が好みそうな事でもしようというのか。
例えば―――あられもない姿にして、辱しめて楽しむ、だとか。

【不吉を孕んだ気配。それは魔導書に潜む主からか、それとも男からか】
【しかして彼女は不遜な態度を崩さない。不適な笑みを口許に宿していた】
【"小娘みたいに泣き叫びながら辱しめを受けるつもりは無い"と言いたげに】

"生きるため、汝自身を用意せよ"

【鍵句は短めに。そうしたら彼女の眼前に大きな鏡が現れて】
【鏡面から現れるのは男の魔導書から出でるそれと全く同じもの】
【それが男の魔導書から姿を表している触手に向かって襲いかかる】
【それが彼女の商売道具―――死者と生者を引き合わせるよすが】


909 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/05(火) 20:35:32 /2omCu6s0
>>898

【危なかった―――紙一重だった】
【もし百合子が万全であったならひれ伏していたのは自分】
【そして戦いを通じて思い知る―――百合子の抱く姉への想い】

【有り体に言えば同情だったのかもしれない。情けだったのかもしれない】
【思い足取りで、血を滴らせながら、白桜は百合子の元に向かう】


……戦いには勝った。
けれど、万全でもないあなたにここまで追い詰められた。

だから―――あなたに文月お姉はんの事を教える。
その想い、その覚悟。確かに伝わったけれど。

あなた一人じゃ不十分だから、わたしも一緒に着いてく。
わたし一人じゃ不適格だから、あなたも一緒に着いてきて。


【吹けば消え去る陽炎のような表情、握れば砕けそうなほどに儚げな雰囲気】
【ぺたん、と地べたに座り込んだ白桜の視線は百合子に注がれて】
【彼女が目覚めるのを待つ―――その手を握って。幼げな面持ちで】


910 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/05(火) 21:06:09 7bLeRBZU0
>>908

おーおー、お前の想像どおりだぜ
つっても、お前みたいなやつ相手にやるのは何だか大変そうだなぁ
たまにはそういうこともしたくなるがね……今日は気分じゃねえな

【怯えぬ相手に気が進まなくなったのか、あるいは言葉どおりにそもそもその気がないのか】
【どちらにせよ、とにかく男はこの場でおかしなマネをするつもりはないらしく】
【下品な笑みを貼り付けたまま女の所作を眺めていた】

【「おー」と気の抜けた心の込もってない驚嘆の声をあげると】
【特に抵抗することもなく、鏡から這い出た触手が自らの魔導書から一部を覗かせている触手に絡みつくのを眺める】
【数多の触手は絡み合い、よく分からないことになっていた】

なーんか便利そうだなぁ、それはよ
こいつらはちっとも便利じゃねーから羨ましいぜ、ケケケ
俺の言うことなんざ聞きやがらねえからな

【音もなく漆黒色の触手が魔力の青白い燐光に分解されて、魔法陣の向こう側へと吸い込まれていく】
【逆再生するように魔導書が閉じられ、鎖が絡みついて錠前がかかる】
【男は魔導書を腰の固定用ベルトに収納すると、腕時計を見遣った】

あ? もうこんな時間か
じゃ、あばよ

【何か用事でもあったのか、唐突に理由さえも告げず踵を返して男は路地裏の向こう側へと向かっていった】

//お疲れ様でした!!


911 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/05(火) 21:35:59 /2omCu6s0
>>894
どうして―――……そうね、気紛れ半分、身勝手半分。
どうせ一週間もすれば私は今の出来事を忘れてしまうから。

今の私を、一週間後の私は覚えていない。一週間後の私は同一人にしてまた別人。
だったら"今"の私の大事なものを壊されたって解りはしない。
そして殺されたって大差ない。何せ一週間単位で定期的に死んでるんだから今更怖くもないの。


【らしからぬ心配に思えた。自暴自棄な少女が見せる的はずれな心配】
【そもそも今のキャロラインに大事なものなんてなかった。そう、大事な"もの"なら】
【彼女の記憶の奥底にある記憶。幾重にも鎖で縛り付けて、重りで沈めた記憶】
【■■■■■と■■として過ごした日々というなの■■。それを除いて大事なものをなんて無い】

【ふと、手を取った少女の髪に目が留まる。―――無雑で綺麗なものに映った】
【艶やかな髪、おしとやかな指先。暗い感情。すべて冷たい雨に濡れるなら】
【彼女の取る手もまた冷たい。身の芯から、心の芯まで――それでいて穏やかな笑みを浮かべて】
【それは雀蜂のような警戒色を上から塗りたくるようなクリーム色、包み込む色合い】


………くすくす、仕方の無い子。良いわよ、ほら、おんぶしてあげる。
ああ、そう。あなたの抱える刀は邪魔だから仕舞っておいてほしいのだけれど。
どうしてもというなら邪魔にならない所にでもどうぞ。

白馬の王子でもホワイトナイトでも無いけれど、要望にはなるたけ応えてあげる。
ねぇ―――――ずぶ濡れのおひめさま。


【後ろ髪を引かれるとき、きっとこんな感じなのだろう】
【そう思ったのは、少女がぺたんと座り込んでおんぶしてとおねだりしたとき】
【やや困ったような表情を作り、要望通りにおんぶしてあげる。その感触は冷たくて、軽かった】

【生きてるのかと不安がよぎったが、それを払拭するのは背中越しの呼吸と鼓動】
【それが彼女を安堵させる。その安堵そのままに、二人はごみ捨て場を後にして町中に紛れる】
【雨の降りしきる夜なのに、二人は傘を差さないからずぶ濡れで、それ故に奇異の視線に晒される】

【でもそんなの知ったことじゃなかった。好き勝手奇妙な光景に首でも傾げて揶揄していれば良い】
【しれっとした顔で、普段通りの歩く速度で歩いていけばやがてキャロラインの自宅アパートにたどり着く】
【そしたら―――"ついたわ、誰もあなたを知らない場所"と耳打ちするように告げて】
【中に入ったなら、まずは冷えた身体を暖めることから始めるのだろう。タオルなりお風呂なりの出番】


912 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/05(火) 21:37:16 /2omCu6s0
>>910
//お疲れ様でした!


913 : ◆DqFTH.xnGs :2019/02/05(火) 21:51:11 Cfi7SkVE0
>>907

 【 ざあざあ   ざあざあ 】

【雨は止む気配を見せず。灰色はよりその気配を濃くする】
【金色の目は、真っ直ぐに彼女を見ていた】
【それは紛れもなくヒトの目。髪は栗色】
【ばら撒かれたピースは、ヒトカケラだけではなく】


────あなたは、……少しは、分かっている人…………なんです、ね


【不意に少女が手を動かす】
【傘を持つ彼女の手に、触れようとする】



【けれど彼女の手が】



【温度を与えることはなかった】



【触れて、いない】



【透けていた】



【ゲームのバグのように】



【────ERROR?】



【否。これが現実】



本当は…………タイムマシンを、使いたかった、です
でも……、他の人が、使っちゃってた…………から

旧型の、古いマシンを…………ちょっと拝借、しています


<円卓>は────また、動き出します
戦争を始めて…………本当に、……クソ、です

あぁ…………でも、
最初に話を聞いてくれたのが、あなたで…………
…………分かっている人が相手で、……よかった



【 ざあ   ざあ 】

【少女は見続ける。他ならぬ彼女を】



あ、の────お願いが、あるんです



【 ────ざ、   ざ、ざ 】

【そして口にする】
【嵌めてはいけない、1つ目のピース】




──── <円卓>を、 壊してくれませんか?




【 ……………………ざあ──────── 】


914 : ◆1miRGmvwjU :2019/02/05(火) 22:12:17 E1nVzEpQ0
>>837

【「だあめ。」こういう咲い方は強請られてするものではないの。 ─── 意地の悪くも優しげな横顔は、暖色灯が降ろした帳に包まれたまま、微笑んでいた。】
【常緑樹に覆われた坂道の林道を登り続ける車体は揺り籠に似ていた。ボンネットの向こうに見える、梢に遮られた狭い夜空が、少しずつ近付く】
【「適当に取っておいて頂戴。 ─── 何か出たら、私が追い払ってあげるから。」声音は冗句を多分に含んで】
【ロングコートさえ脱がずにハンドルを握り続ける彼女はやはり何処かで無精だった。とうとう樹陰の隧道を抜けるならば、一夜には短い旅路も終わる。】

【息を呑む間に消える暗闇は葉擦れを伴っていた。果てなく透徹した気層の先に、あえかな光を星月夜は降らす。】
【天球に鏤められた青白い星々の明滅は儚くも空の全てを覆っていた。平原を見下ろす丘陵の緩やかな稜線にあって、車体は少しずつ速度を落としていった。】
【 ─── 踏み均された轍の路傍より、月光に霞む地平線の彼方まで、広がる大地の全てに夜色の純白が咲き誇っていた。見渡す限り、見渡せぬ彼方の朝にまで】
【宇宙の晴れ上がりを祝福するように、充ち満ちる一面の待雪草-Schneeglockchen/誰一人としてその聖域を汚すことは能わないのだから】



        「 ──── 、 ……………… きれい。」



【なにか恍惚を知るような呟きを、語りかけるようにアリアは呟くのだろう。後輪が止まる。エンジンが息を止める。車内灯さえ消えてしまう】
【青白い夜光だけが彼女たちを在らしめる縁だった。クーペのドアが開く。雪原よりも愛しく冷え込んだ夜風が吹き込んで、漏らす呼吸を白く染める】
【彼女の見せたいのは夜空でなかったのかもしれない。それでいて間違いなく彼女は夜空を見せたかった。 ─── 一眼レフと、レジャーシートと、細々とした天体器具を】
【小脇に抱えながら乾いた轍に降り立つ彼女は、途方に暮れているようでさえあった。慕情と寵愛に掠れる声さえ喪いながら、ただ影のように立ち尽くす。月光を見上げるひどく高い上背は、きっと寄り添うものを求めていた】


915 : ◆1miRGmvwjU :2019/02/05(火) 22:23:13 E1nVzEpQ0
>>838

【立て板に注ぐように並べ立てられる文句にも後藤は眉一つ動かさなかった。ただ落ち着いた壮年の男として】
【結んだまま微かに吊り上げていた唇の端を、青年の言葉が止んでから、数秒の沈黙を置いて開いた】


「 ─── それは全く、ご親切な物言いですな。」「まったくこのような手負いの獣に、一度ならず二度も牙を磨く機会を下さるとは。」
「相違なく理解いたしました。」「 ……… いやァ、正直を言えば、円卓とは既に疎遠になっていたものでして。」「未練がましい伝手に縋るものではありませんな。」


【はッはッは、と臆面なく笑う男だった。必要以上に口を開く事を、本来なら憚り始める齢であった】
【一通り笑ってから彼は深く息を吸い込む。両肘をテーブルについて、その指先を組む。微かに半身を乗り出した】


「 ……… 同じ事を二度も仰るのは、お嫌いなのでしょう?」「ならば直々に貴方が我々を招聘なさったのも、お流れになった商談を繰り返す為ではない筈だ。」
「"何を我々にお望みですか、枢機卿"。」「 ……… この牙に見合う獲物を教えて頂けるのであれば、我々は我々の意志をもって、喜んでそれに喰らい付きましょう。」


【 ─── ならばやはり、変わらぬ語調で紡がれる言葉は、彼なりの挑発であったのかもしれない。】
【なぜ青年が改めて彼に話を持ちかけてきたのか。なぜ八課でなければならなかったのか。なぜ彼は今ここにいるのか。 ─── 緩やかな微笑はそれら全てを諒解していた】


916 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/05(火) 22:31:31 /2omCu6s0
>>894
/修正版です。

どうして―――……そうね、気紛れ半分、身勝手半分。
どうせ一週間もすれば私は今の出来事を忘れてしまうから。

今の私を、一週間後の私は覚えていない。一週間後の私は同一人にしてまた別人。
だったら"今"の私の大事なものを壊されたって解りはしない。
そして殺されたって大差ない。何せ一週間単位で定期的に死んでるんだから今更怖くもないの。


【らしからぬ心配に思えた。自暴自棄な少女が見せる的はずれな心配】
【そもそも今のキャロラインに大事なものなんてなかった。そう、大事な"もの"なら】
【彼女の記憶の奥底にある記憶。幾重にも鎖で縛り付けて、重りで沈めた記憶】
【■■■■■と■■として過ごした日々という名の■■。それを除いて大事なものなんて無い】

【ふと、手を取った少女の髪に目が留まる。―――無雑で綺麗なものに映った】
【艶やかな髪、おしとやかな指先。暗い感情。すべて冷たい雨に濡れるなら】
【彼女の取る手もまた冷たい。身の芯から、心の芯まで――それでいて穏やかな笑みを浮かべて】
【それは雀蜂のような警戒色を上から塗りたくるようなクリーム色、包み込む色合い】


………くすくす、仕方の無い子。良いわよ、ほら、おんぶしてあげる。
ああ、そう。あなたの抱える刀は邪魔だから仕舞っておいてほしいのだけれど。
どうしてもというなら邪魔にならない所にでもどうぞ。

白馬の王子でもホワイトナイトでも無いけれど、要望にはなるたけ応えてあげる。
ねぇ―――――ずぶ濡れのおひめさま。


【後ろ髪を引かれるとき、きっとこんな感じなのだろう】
【そう思ったのは、少女がぺたんと座り込んでおんぶしてとおねだりしたとき】
【やや困ったような表情を作り、要望通りにおんぶしてあげる。その感触は冷たくて、軽かった】

【生きてるのかと不安がよぎったが、それを払拭するのは背中越しの呼吸と鼓動】
【それが彼女を安堵させる。その安堵そのままに、二人はごみ捨て場を後にして町中に紛れる】
【雨の降りしきる夜なのに、二人は傘を差さないからずぶ濡れで、それ故に奇異の視線に晒される】

【でもそんなの知ったことじゃなかった。好き勝手奇妙な光景に首でも傾げて揶揄していれば良い】
【しれっとした顔で、普段通りの歩く速度で歩いていけばやがてキャロラインの自宅アパートにたどり着く】
【そしたら―――"ついたわ、誰もあなたを知らない場所"と耳打ちするように告げて】
【中に入ったなら、まずは冷えた身体を暖めることから始めるのだろう。タオルなりお風呂なりの出番】


917 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/05(火) 22:38:51 WMHqDivw0
>>913

【幽霊みたいに透けて通り抜けてゆく子供の手。見て、顔をこわばらせて】
【傘を取り落とす。ばしゃんと音を立てて水溜りを弾けさせ――】
【それでも濡れるのはこいつだけなのだろう。水滴を帯びて垂れ下がる髪の向こう】
【見開いた眼がしきりに瞬きを繰り返していた。それで、】

壊すって――――――――どうやって?

【YesでもNoでもなく。How――それしだいで出来るかどうかを判断するつもりなのだろうか】
【けれどこいつはあまりに頼りなかった。お世辞にも頭がよさそうだなんて思えないし】
【覇気を帯びて誰にも負けない気概を持っていそうにも見えないし】
【何があったとて決して折れぬ根性を持っているようにも、見えない、の、だけど】

【――――ただひとつ信頼できそうなことがあるとするなら、】
【その視線があまりにもまっすぐであることくらい。人を信じることにおいては、きっと誰よりも得意そうだった】


918 : 名無しさん :2019/02/05(火) 23:26:30 SIBJ5P4c0
>>906

【本当は今すぐしたいのだけど。――少女の眼差しはそうやって訴えていた、けれど、眠ってしまった子の服をはぎ取る犯罪者めいた趣味などないのだから、諦めがちの微苦笑】
【お風呂が苦手なのだと聞くなら、何かシンパシーというわけでもないけれど。彼女にもそんなところあるのなら、特別に何を言うでもない。――そうなんだ、って、小さな呟き】
【サーカス。その単語にかすかに瞬いて見せた。インド……という場所について彼女はどうにも知らぬようだったが、この場合の"風"という意味合いとカレーという単語を知っていたから】
【――おおよその意味は伝わったらしい。しかしやはり本筋ではない。本当ならそんな話ばっかりして終えたいのかもしれないけれど――――それではやはり無責任すぎる、もの】

セリーナとは、ね、――、喧嘩。したの。ちょうど、一年くらい――それか、今から、もうちょっとだけ後のころに。…………その前にも。
わたし、――――――勘違いして。警察のひとを怪我させたかも、しれなくって。――、それも、どうなったのか、分からなくって……。何もできないのに。
出来ないこと、やるって言って――、

【二人着いた席のなんと無機質なことだろう。さっきまでのカウンター越しの温度感はすっかり冷え切ってしまう、暖かいスープとハンバーグとご飯がなければこんなにも】
【思い返すにもいろいろなことがありすぎた。だからいくらか不明瞭な言葉の色合い、忘れてしまったほど薄情ではなくって、だけど、だけれども、】

/分割しますっ


919 : 名無しさん :2019/02/05(火) 23:26:46 SIBJ5P4c0
>>906>>918

――――――――――――――――――――――――――――――――わたし、神様だったの。

【言葉を探すように俯いてから、十数秒後の言葉だった。たっぷり満たした沈黙の果て、思考の器より溢れて口から零れる言葉の意味合い、果たして正気かと疑うような】
【疑ってやるべきなのかもしれなかった。それほどまでに消耗しているのかもしれなかった。もはや自分が神だと妄執に囚われているのかもしれなかった。――本当に?】
【それこそ疑うのであれば、確かであるのは彼女はきっとどこまでも本当のことを言っていると伝えるのだろう。それが妄執の末路だとして、嘘や冗談のたぐいではないのだ、と、】

――嫌なことがたくさんあって。わたしは――へびさまに、……神様に呼ばれて生まれた、子だったから、……。神様とずうっと一緒に居て、見ていたから、
嫌なことがあって、――嫌なことばっかりで、――――人間なんか嫌いって思って、――――――世界なんか嫌いって思って、――――――――神様に、なっちゃってて、
だけど、それも、知らなくて。ほんとうはそんなのずっと前からで、――、もう何年も前のことで。ずっと自分が"何"なのかもわからなくて。こわくて。……。

黒幕に脅されて、人間の身体じゃなくなってしまったこと間違いだって言われて、――――――嫌なもの、みて、全部、ぜんぶぜんぶ、嫌になって――。

"みんな"が"わたし"を"違う神様"にしようとしたの。たくさんの蛇の神様の中で、もう分からなくて。世界だってなくなっちゃっていいと思ったの。だって。
今までのいい事全部じゃ我慢できないくらい、嫌なことばっかりで、きっとこれからもそうで、きっとこれからもそうなら、――――。

【俯いたまま紡ぐのなら、気づけば声は震えていた。長い前髪が隠した表情の向こう側で、ぼとり落ちる雫が見えた。ならば、――彼女は何かを解決して、何かに納得して、戻ってきたのじゃなくて】
【戻ってくることになったから戻ってきたのだと。そこに自分の意思はきっとあまり関係がなかったのだと。――それとも、あるいは、無視できぬ誰かの大事な意志が遺っているのだと】

――――"サーペント・カルト"が信じていた神様は、"わたし"。

【サーペント・カルト。――半年と少し前の頃に、ひどく世間を賑わせた名前だった。曰く信者はみな蛇の入れ墨を入れて、蛇を信じ、そうして地獄の所業のような"修行"に耽る】
【一般人の拉致はもとより殺人なども数多繰り返していたものだから、直接的間接的問わず被害者は多く。ただ――ちょうど梅雨の終わること/眼前の少女の誕生日の前日】
【なにか大きな儀式をしようとして、そうして、今までの"悪"がそうであったように、サーペント・カルトもまた、その志を半ばで折られた。世間では、それで終わったとされた、はずだった】

【――そうしてまたいくらか後に、サーペント・カルトの信者の大量自殺がニュースを騒がせた。やがて自殺者は信者に関わらず増えていった。――それさえも終わってからは】
【きっともう話題に上ることも減った話題。そう、今時はもっと"アツい"話題は掃いて捨てちゃうほど、あるのだから】

ウヌクアルハイって呼ばれてた、――、今は、違うの。"あのころ"のこと、――神様のやりかた、もう、思い出せなくて。
わたしはどこまでも居て、どこにだって居てたくさんの蛇とおしゃべりする言葉だって分かってた、――、

【――――――だけれども。邪教に祀り上げられていた神様は自分だと。そんな風に云う者がいたらば、嫌でも記憶を思い返さねばならぬのだろう、だって、"彼ら"はあまりにも、】


920 : 名無しさん :2019/02/05(火) 23:51:23 SIBJ5P4c0
>>911>>916

…………忘れてしまうの? ぜんぶ?
――ねえ、どうして、怖くないの。怖がらずに、――いられるの、――――わたしは、こわかったよ、何回死んでも、何度死んでも、……いつも、いつも、いつも、
でもね、一番怖いのは、死んだはずなのに目が覚めること、――――今もここで生きていること。

【微かに震える鈴の音が、か細く、けれど確かに、驚きを宿した。どれだけささめいたとて、声を発したことを隠しきれない声音をしていた、ならば余計に目立つのだろうか】
【であれば異質な感情も宿すのかもしれない、――この邂逅をいつか忘れてしまうのだと聞いて、安堵に似た声を発する人間などどれだけいるのだろう、きっと犯罪者が九割だ】
【――自暴自棄に似ていた。初対面の人間に言うようなことではなかった。だけれど、忘れてしまうのなら、いいでしょう、なんて?】

【――――――委ねた身体の重さとしめっぽさ。しかして冷たさは増えあうのならわずかに和らぎもするのだろうか。そうだとしても、平熱とは程遠い】
【邪魔だと言われたら、――、いくらか渋々の沈黙ののちに、彼女の手元から刀が消える。ならば、縋るものがなければ生きていけないみたいに、ぎゅうとその服を掴み】
【余談ではあるのだけれど、彼女は百六十センチの背をしていた。ほとんど同じ背丈。――ならばいくらか背負いづらいといって引きずったとしても、やはり文句は言わぬなら】

お姫様なんて、なれないよ、――――――――わるいこだから。

【ざあっと強い雨の音。気づけば通りを歩くものなどいなかった。傘を差していたって、この雨は冷たすぎるし、強すぎて。誰だって屋根の下に潜り込んでしまうような夜】
【だから彼女もきっと貴女へ縋る。首元に回した手は父親に甘える童女と呼ぶには冷たすぎて、ならば実質的には溺れた手が掴み取る藁と呼ぶ方が、正しいのかもしれなくて】

………………。

【――――やがて辿りついた、そのアパート。けれど二人室内へ入るなら、きっと彼女はひどく泣きそうな目をする。――びちゃびちゃの身体では何もできないって気づいたみたいに】
【縋るみたいに視線を落とすのは掌であっても、単なる掌に変わりなかった。――相手からすれば意味の分からぬ行為であるのだろう、なら、バスタオルでも投げてやればいい】
【そうしたら大人しく包まるのだから。――――――、そうしてからようやく伝える一言、「おじゃまします」、小さな会釈と共に】

【だからきっと借りて来た猫よりちっちゃくなって、――――、それでも暖かさにか、それとももう雨に打たれないという安堵にか、表情はさっきより、きっと、柔らかい】


921 : 名無しさん :2019/02/06(水) 00:19:36 SIBJ5P4c0
>>914

【ごく不満げな鳴き声を少女は漏らすのだろう、だからやっぱり不満を表明しようとして開かれた唇が、けれど、その横顔に魅入られて、何も紡げなくなる】
【見つめ合っていたなら、それしか考えられなくなってしまったと予感ではなく理解させられていた。全幅の信頼と絶対の服従とを十全に仕込まれていた、そう躾けられたから】
【「アリアさんは怖いものないの、レンガのお家とか――」だからせめて反抗期の子供みたいに窓枠に頬杖を突く、流れすぎていく木々を見ながら、楽し気に声音が綻んで】

【――――だから、やがて、視界には夜色に染め上げられた白色が充ち満ちる。頬杖をついたままの恰好は、けっして、けして、無感動ではないのだと】
【だってまあるく見開いた眼は瞬きすら忘れていた。そんな彼女の代わりに星空の星々が瞬いてくれていた。その瞬きが一面の白色に星空のテクスチャをオーバーレイで重ねて】
【待てども車から降りてこない少女を星空の下に引っ張り出してやるのなら、やはりごく丸い眼がやっと瞬きを思い出す、白い息が天まで届いて雲になってしまうのすら恐ろしかった】
【詰まらす息は目の前の光景に捧ぐには十分だろうか、どれだけの言葉を重ね合わせようにも、紙を四十二回も折れないみたいに無理難題、輝夜姫だって折り紙のお迎えじゃ期待外れで】
【真っ白い馬に乗った王子様をご所望に違いない。――だから地上に佇むままで言葉を忘れる少女に似合うのは真っ黒いクーペなんだろう、羽織直したコートのポッケに、ココア一つ】

――――――――、ふあぁ、っ、

【故に彼女が言葉らしきものを発するのは、そこからたっぷり数十秒、或いはそれ以上、一分とか、二分とか、――いいや、二分まではかからないかしら、なんて、頃合い】
【うんと白い肌が秒速にて寒さに赤らんで――けれども瞳の色鮮やかさはほんの少しも負けないまま、ともすればそれ以上に煌めいて。瞬くたびに星を模した煌めきすら落ちてしまいそう】

――――、すごい、すごい、――っ、きれい、すごい、

【伸ばした指先がぎゅうっとロングコートの腕の処を捕まえようとしていた、そうして捉えるのなら、ビックバンみたいに溢れかえる感情の本流、伝えたいみたいにぐいぐい引いて】
【きらきらした目は子供みたいに制御きかない喜色を湛えてやまぬなら。――もう十四年ほど子供であったなら、ぴょんぴょこ跳ねても伝えられぬ気持に癇癪でも起こしただろうか】
【それでも今となってはもう少しだけの語彙力を得ているのだから、癇癪を起す必要もない。――星と花と夜とそれから愛しい人を何度も何度も何度も繰り返し視線で巡らして、】

【――剥き出しの激情だった。いつかの日に見せた泣きじゃくるほどの怒りとおんなじで、けれどそれよりよほど、よほど、晴れ渡る夜空よりどこまでも、幸せそうな】


922 : ◆1miRGmvwjU :2019/02/06(水) 01:08:52 LYQrbhk60
>>921

【 ─── 縋られるより先に、喜色に跳ねる上背へ伸びた手指が、カシミヤの裏地へと少女を抱き寄せるのだろう。人でない肉体の、人でしかない温もりと、柔らかさ】
【170cm前後の背丈さえ胸許に抱き留めてしまうような長い躯体が、甘い薫りを帯びたコートの中へ少女をいざなっていた。こらえられない薄藤色を見下ろすのは】
【母親よりも父親よりも色濃い慕情を孕んだ慈愛の表情だった。緩められた白い眉根と円い目尻が物語っていた。滾滾たる幸福が、夜闇を纏う深い碧眼に沈んでいた】



   「 ……… ここに、ね。」「貴女と一緒に、来たかったの。」



【レジャーシートを広げようとして、その手間さえも惜しむべきなのだと、きっと気付いていた。 ─── 細々とした星見の道具も、みな助手席に置いてしまって】
【ドアを閉じ、ロックをかけて、そぞろな歩調で稜線を歩く。少女の背中を深く抱き寄せたまま、鼓動のかけらも逃さないように・呼吸の温度を分かち合うように】
【 ─── ならば彼女にとっても、ここは単なる抒情的な絶景ではあり得なかった。眦がひどく潤んでいた。恐れるように言葉を失って、然して何も恐れてなどいない。】
【おのれの屋号に纏わる逸話を、かつて彼女は語って聞かせていた。今アリアは同じ語りを繰り返そうとはしなかった。それだけで何もかも語るに足りた】
【ただずっと仰ぐように満天の燐光と星海を見上げながら歩いていた。 ─── 涙など流し尽くしたのだとしても、世界はこんなにも美しく在る】



       「 ──── 見て、かえで。」



【やがて道は途切れてしまう。丘のいっとう高い天辺。見渡す限りの花々と星空にだけ彼女たちは包まれていた。】
【そこでアリアは立ち止まった。そうして一ツ呟いた。苛むように冷たい大気に、楔のような見えない霜を残した】
【 ─── 輝くもの天より墜つ。星々の間隙を縫うように星屑が瞬いた。紺碧のカンバスへ須臾の光条を残して、呼吸よりも早く消えてしまう。それでも】
【降り注ぐ煌きは決して一つであるはずもない。据え置かれる三脚と、カメラと、望遠鏡。午前4時45分。東の空へ流星が全て消えたなら、それが夜明けと等しいのだろう】


923 : 名無しさん :2019/02/06(水) 02:27:13 SIBJ5P4c0
>>922

【満面の笑みからきらきらって零れ落ちる感情の煌めきは決して目に見えるものではなくて、だというのに、こんなに色鮮やかに見せつける、何か伝えたさばかりが先行して】
【ひどく拙い言葉の羅列は国語の先生が無言で首を横に振るほどなのだとしても、抱き留められる胸元、ぱちりと瞬き一つ。――――、破顔の瞬間、ただひとり占めにさせるから】
【大切に育てられた子なのだと、その表情のみですべての幼少期を証明していた。大事に愛されて育てられた人間のみが織りあげることを許されている至上の笑顔、躊躇いなく捧げたら】
【コートの裏側に腕を通して、その腰元にぎゅうっと抱き着いてしまうのだろうか、胸元でたっぷり息を吸い込んで。それから、それから、発せられる声、かつてなく甘く染め上げて、】

────……………うれしい。

【――結局その胸元に甘えてしまうのだけど。きらきらの眼が瞬きすら惜しがって見上げていた。色鮮やかなマゼンタ色を、縁取るウィステリアは誤魔化しきれないから】
【ならば忘れているはずもなかった。いつか聞かせてもらったお話。世界で一番愛しい人と、その人に縁のある地にて、二人きり、過ごすことに。嬉しくないはず、ないのなら】
【ましてや隣に立つのを許されるなら/選ばれるなら。それより幸せなことって、きっと、世界中に数えきれる程度しかなくって。両手を数え切ったなら、足の指だって使っちゃって】
【それだって足りなくなったら、隣から指を借りたらよかった。それも足りなくなっちゃったら、――やっぱり足の指だって数えちゃって、それでも、足りなかったら?】

【(そのころにはきっと家族だって増えているのかしら。数える幸せ全部、私と、貴女と、それから、その子に纏わる出来事なんだって、もう、上から下まで、予約済みだから)】

――――――――、あ、

【コートの中に包まれて歩くのは何分ほどだったろうか。――何分だってよかった。それがたとえ数秒だって数分だって数時間だって星が一回滅んだって、同じだけの意味を持つから】
【どうしても黙りがちになるのは処理落ちの作法に則って。がりがり言わないだけせめてマシだった、時折気が逸れて転びかける足取りすら、或いは、気づいていないようなら】
【――促されて、気づく/そんなはずなかった/ずっと見ていたはずだった/――――そうなのだとしても、促された瞬間に、やはり彼女は認識したのだろう、そうして、理解する】

【きらり堕つるのは流星だけに留まらない。瞠られた眼から零れるのは空に見る流れ星とおんなじ大きさと光量の涙粒、ひとつふたつが続けて落ちて、そこからは、よく分からない】
【もはや一粒の判断すらつかぬほどに止まぬなら、群れを成して飛び交う流星と全く同じ意味合いであるのだろう、コートの温もりから抜け出す刹那は、何か追うように】
【そうしてまたきっと事実として追いかけていた。追いかけて想っていた。むかしのこと。――――まだ彼女が単なる少女だったころのこと、】

きれい――――――、

【だからきっと悲しげに泣いていた、だのにその口元はきっと嬉しげに笑っていた、感情がごちゃ混ぜになってしまったなら、涙で滲んだ星空に、果たして星は見えているのやら】
【とかく何かのタイミングで彼女はコートの中に再び潜っていた。カンガルーとかコアラの子みたいに、めいっぱいにお母さんの暖かさに包まれて、それが幸せなのだから】
【寒くないのだとしてもせっかく温まってくれているココアへの礼儀としてきちんとココアも飲むのだろう。そうしたら白い吐息、もっと、もっと、めいっぱい、白くなって、あどけなく笑う】
【何の変哲もないはずのココア缶には気付けばいろんな意味合いが託されていて、きっと今宵にもまた思い出の中で一つ意味合いを貰ったのだろう、「最後の一口あげる」なぜか誇らしげな頬】


924 : 名無しさん :2019/02/06(水) 02:27:27 SIBJ5P4c0
――――――――――、ねえ、あのね、あのね、――アリアさん。好き。だいすき……。アリアさんのこと、大好きです、――今までも、これからも、世界で一番、

【――渡した缶が空っぽになるのなら、受け取るフリして伸ばす手が通り過ぎる、そのまま、白銀ごと抱き留めて、ぐうっと、引き寄せるのなら】
【なんにもなくたって甘くって仕方ない口付け以上を期待させて、けれど、唇を埋めるのはその耳元、ささめきの湿度と密度と糖度と、ぜんぶぜんぶ、脳髄まで浸すみたいに】

――、私、アリアさんが居なかったら、きっと、あの日、死んでしまっていて、――、それで良かったの、それが良かったの、神様のために死ねたら、幸せだって、
アリアさんに会わなければよかったって何度も思ったの、苦しかったの、出来るはずのことが出来なくなって、――出来ないはずのことが、出来るようになって、
少しずつ"私"が変わってしまうの分かっていて、だけど、どうにもできなくて、――どうしたらいいのか、分からなくって、

神様のこと、信じてなくちゃって思えば思うほど、アリアさんの声、聴きたくて、――、夢でだって、見て、自分が何してるのか分からなくなって、だけど、分かってて、

【表情を見せぬ狡い告白は、耳よりもいくらか上の頭皮を濡らす生暖かさに彩られる。背の高い貴女には少し辛い体勢なのだとしても、遠慮ないまま、抱きしめたまま】

――――――――――――――――――――やっぱり、ひどいよ、こんなに好きになるつもりじゃ、なかったのに……。

【震えるささめき声は、けれど、限りなく笑んだ唇の角度を伝えていた。そうしてきっとうんと下がった眉の角度も。ようやく抱きしめていた腕を、解き放つなら】
【ごく穏やかな泣き笑い。やっぱり"ムリフェン"にはあり得ぬ仕草。――どこまでも"かえで"には似合いの仕草。ならば張り詰めた聖女の装い、自虐と等しかった、なんて、】
【――――――――――――そうだとしても生涯赦されるべきでないことに間違いはなかった/そうなのだとしても、この表情にも、ちっぽけな間違いの一つすら、無いのだから】

【だから、】

責任取ってくれなきゃヤですよ、――、ね、リーリエさん?

【冗談めかして囁いたなら、空っぽになった缶を取り返して、――ポケットに戻す。ふふんとちょっとだけ得意げな右巻きつむじ、揶揄ったフリした照れ隠し、もっと言うなら、】
【、いつかの頃から夢に見るほど好きでした、なんて、こんな場でないとおそらくは言えないのだ。かといって心に収めておくには気恥ずかしすぎたのだ。思春期じゃないんだから】


925 : マーリン ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/06(水) 19:58:35 S/DUh6T.0
>>915

【不機嫌そうに睨めつける、霞のような男だと彼は思った、事実間違ってはいないのだろう】
【一つ、二つ、と静謐を伸ばして、薄墨の向こうに僅かばかりの嘆息を隠した】


────── 古来、戦争の原理は "利益" にあった

単純な話だ、利害の不一致、貨幣経済が根付く前は土地の奪い合いが主だし、根付いてからは表層的には富の奪い合いが主となる
突き詰めていけば利益の問題になるが、─── まあ、その根底は基本的に変わってないとしていいだろう

だが、封建社会から資本主義社会への転換を通じて、国家が持つ力よりも、個人の持つ力の方が大きくなっている

民間の企業が持つ技術力、生産力、経済力。情報のグローバル化は国家の垣根を超えて、国という枠組みの意味合いを薄めた
だからこそ、戦争を起こすには国家という枠組みでは最早足りない、"国のため" に戦争する連中が何処にいる?
外発的な動機づけが必要不可欠となった、その結果が "大量破壊兵器を保持している" なんて言い掛かりを産むわけだ


【前提として話しきる、封建社会に於けるシステムの崩壊、資本主義に端を発した個人思想の行き着く先は国家という垣根の崩壊】


だから俺は〈異能主義/Meritocracy〉というイデオロギーを作り上げた、"新たな戦争の火種" として
勘違いするなよ、俺は戦争を起こしたい訳じゃない、戦争を行う為の大義名分を用意したまでだ
"能力を持つ者は、その能力に相応しい場所へ" イデオロギーを正しく解釈した者は、国家とかいう外発的な動機づけには最早興味を持たない

言わば内発的な動機づけだな、思想の明文化は、よりシンプルな行動理念を保管してくれる、その意味合いは分かる筈だ

そして、『魔制法』を推進する連中を仮想的な敵として位置付けられる、だとすれば今まで抑圧されてきた連中
────── つまりは『能力者』だな、奴らを上手く抱き込む事が出来る


【寸刻言葉を置いた、ここまでは "過去" の話であった、マーリンが行なってきたことの】


んで、"枢機卿" としてアンタらに依頼したいのは ────── "抹殺"

水の国に "オーウェル" って企業がある、ガチガチの『反異能』思想の糞厄介な企業
表向けはどう理由をでっち上げてもらっても良いが、『外務八課』という公的権力で処理してもらいたい

少なからず〈異能主義者〉達にとっての希望にもなるし、俺は水の国への足掛かりを得る、加えて〈円卓〉にとってのアピールにもなるだろう
『黒い狼だろうと白い狼だろうと、獲物を狩る狼は良い狼だ』


926 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/06(水) 20:44:37 JPOKnE/c0
>>920
【忘れることを恐れないのか。即ち生き死にを繰り返す事に恐怖を抱かないのかという問い】
【―――怖くない訳がない。昨日までの自分と今の自分が別物である恐怖。失いたくないものまで奪われる恐怖】
【思い出という名の積み上げた城は砂上の楼閣でしかなくて。びゅう、と風が吹けば跡形もなく消え去るものだから】

【形は違えど、記憶屋と少女は似た者同士、ある種の同類だった。―――だから、鈴の音の声には答えない】
【記憶屋の言葉には嘘があったから。彼女は記憶を失うことを恐れていないのではない】
【失い続けるしかない自身の心を虚無で満たして麻痺させて。失うことには慣れていると嘯くだけだから】
【で、あるなら彼女は沈黙を貫く。道中耳朶を震わせるのは少女の言葉だけ。なきじゃくった幼子の戯れ言】
【すがる様に回される手の感触も、芯の芯まで冷やす雨の感触も等しく同じ。映る景色は、ひたすらにモノクローム】


【―――】


―――……お互い濡れたままだから服を乾かさなきゃいけないわね。風邪を引いてしまうわ。
……はい、バスタオル。先ずは水気を取って。そしたら濡れた服は洗濯機に入れておいて。
着替えは私のものを使えばいい。幸い似たような背丈であることだし。

それが終わったら風呂を沸かしておくわ。要らないというならシャワーを勝手に浴びていればいい。
その間に"もてなし"の一つでも振る舞う準備をするから、どうぞご自由に。


【先程より微かに柔らかい表情の少女は、宛ら雨の日に捨てられて拾われた黒い子猫のよう】
【その姿に向ける彼女の表情は変わらず穏やか。しかし、微かに混じる灰色の気配】
【その色は虚無の色合い。本当は何も思っていないかのようなからっぽの装い】
【虚無の感情は自己防衛に似ていた。入れ込みすぎない事で彼岸と此岸の線引きを明白にしていふのだ】

【少女がタオルにくるまったりシャワーなり湯船に浸かってたりしている間】
【びしょ濡れのまましれっとした顔で台所に向かう彼女はビーフブイヨンやウォッカ、塩胡椒に小鍋、二人分のマグカップを用意して】
【何やらスープみたいなものを作っていた。ビーフブイヨンやウォッカが小鍋でことこと温められて】
【頃合いを見計らい塩胡椒をぱらぱら振り撒いたなら、それはブルショットというホットカクテルの完成を意味していた】

【ブルショット。暖かなスープのようなカクテル。素性を知らねば不思議な味わいのスープでしかない】
【こんなものを用意したのはきっと、彼女自身も似たような経緯でこの一杯を口にして暖められたから】
【自身の奥底に閉じ込めた記憶のひとかけら。それは彼女が生来からの虚無的な人間ではないと示して、でも自覚はなかったのだ】


927 : 名無しさん :2019/02/06(水) 21:40:35 SIBJ5P4c0
>>926

【返事が返らぬのなら、彼女はやがて黙り込むのだろう。自分から話しかけ続けるだけの元気もないというだけの仕草であるから、横たわるのは単なる沈黙、静けさだけで】
【もう少し帰路が長かったなら、或いはその背中にて寝息すら立ててしまいそうだった。――――寒さと冷たさに少なくない消耗をしているらしいなら】
【――だから、やはり、彼女の目に映る景色も、白黒色に違いない。それでも招き入れられる室内に表情が緩むのなら、(相手のように振る舞うことの出来ないへたくそさ、見せつけて)】

……――、ぁりがと、ござい、ます、……、――、あの、でも、……ごめんなさい、お水、怖くて、……、だから、シャワーで――、

【バスタオルを受け取って。そうしたら彼女はいろいろ拭いて濡らしてしまう前に、真っ先に顔を埋めるのだろう――とはいえ、ごく遠慮がちな十数秒の沈黙の後に、だけれども】
【それからたくさんの水を吸ってしまった毛先やら、服やらを、ぼたぼたと雫の垂れない程度に宥めて。濡れた服の扱いやその後の着替えについては、こくこくと頷きで返す】
【ただ一つどうしても申し訳なさそうに伝える事柄もあった。――どうにも水が怖くてお風呂には浸かれないのだと言って。悲しげに伏せる睫毛、ならば彼女は風呂の暖かさを知っていたけど】
【――とかく、浴室という場所そのものは借りるつもりであるらしい。すと立ち上がった刹那に相手がびしょぬれのままだと気づけば、ごくごく曖昧な鳴き声を数度発することになり】

風邪、ひいちゃ、

【――――つまり自分も乾かしたりなんだりをしてほしいと。濡れたままでは駄目だと。控えめそうな声は、けれど、意外としつこく粘るのだろう】
【タオルをかぶる程度でも何かしないとなかなか納得してくれやしないようだった。――、拾われてきたのは自分だと言うのに、ずいぶんと我儘だ、なんて、言われて仕方なくて】
【とかく何かしらで彼女を納得させるなら、それで、浴室を借りるのだろう。言葉通りにシャワーの音がする。――ぬれびしょの服は言葉に甘えて、乾燥機の中】

【――ならば、彼女がお風呂から出てくるのは、シャワーにしては少し長めの入浴のあとなのだろう。新しいタオルを借りて、洋服を借りて、いくらかましな顔色になって】
【とはいえ、長い黒髪はぜんぶ乾かすには時間がかかりすぎるから、タオルドライを頑張った、程度でまだ湿っぽく。ぼたぼた垂れてはいないから、彼女はよしとしたらしい】
【マグカップに入った暖かな飲み物を渡されれば、――どうにも素直にスープだと思ったらしい。受け取るために伸ばした指先の震えは止んでいて、だから、】

――――――――――、おいしい、

【初めて見せる笑みなのだろうか。寒さに凍えた全身の筋肉をシャワーが解してくれたのだとして、凍り付いた表情筋を解したのは、その一口なのだと、伝えるなら】
【そうしてみるなら、割合に幼い顔つきをした少女だった。暖かい部屋でベッドに寝転んで、友達とくだらないメールでもしているような、そんな、】
【――――――それでいて、そんな人生、一秒たりとも過ごしたことがないのだろうから。だから今、彼女に連れられ、ここに居るのだから】


928 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/06(水) 22:58:03 JPOKnE/c0
>>927
【―――彼女自身、自分のことは無頓着であるきらいがあった】

【どうせ一週間もすれば今の自分の事なんて覚えていないからと自棄になってる節があった】
【それを少女に諌められるのならら最初は無視するつもりだったけど――雰囲気が許してくれない】
【地べたに落ちたガムを踏んだときよりも粘っこい意思表示かま、彼女の濡れた身体を拭いたり乾かせたりさせる】


――――……くすっ、存外にまともなことを言うのね。


【ほんももの感情。言葉にするには手短に、でもそれで十分だった】
【朗らかな微笑み、柔和にたわむ目尻。やや厭世的であっても麗しさ、見せるなら】
【年相応の落ち着きと仕草を以て少女の目の前でタオルを被り、頭を拭く振る舞いを見せる】

【そしたらここから先は少女のシャワータイムの幕間、ブルショットを振る舞うまでの小話】
【自身の衣服も乾燥機に入れるなら、それのスイッチを押して服を乾かし始める。ぐるんぐるんと回るのを見守らず】
【自分の分も含めた着替えを用意して、先に着替えて、そのついでに部屋の暖房を付けたなら】
【台所に戻り少女が浴室から出るタイミングを見計らってブルショットをマグカップに移すのだった】


……そう、それは良かった。美味しいと言ってくれるなら幸い。
このカクテルはね、ブルショットって言うの。ただのスープじゃなくて、お酒の入ったカクテル。
くすくす、未成年飲酒になってしまったかしら。だとしたらあなたはわるいおひめさま、私も悪いお姫様ね。

ただ、冷えきった心と身体を暖めてくれるのは温かなスープと親しき隣人。
―――――、……これはどこかの誰かの受け売り。それが誰かなんて思い出せないけれど。


【作り笑顔の隅っこ、そこから微かに溢れる寂しげな気持ち。誰がいったか思い出せないなんて嘘だから】
【目の前の少女みたいに凍てついた表情を解してくれたのは、■■■■■の作ってくれたブルショットだから】
【幼い顔つきからのすうっと染みる笑みに彼女は追憶せり。――それを振り払うように、彼女は問う】

さて、一呼吸ついたなら―――――お話、しましょうか。
聞き手はワタシことキャロライン=ファルシア。語り部は―――――アナタ。名前は何て言うのかしら?

先ずはそこから。そしたら心の赴くままに言葉と気持ちを吐き出しなさいな。
ワタシは拒絶も批判もしないで、静かに聞くだけだから。


929 : 名無しさん :2019/02/07(木) 01:28:25 SIBJ5P4c0
>>928

【――――――――――降りしきる水を浴びていた、雨なら冷たくって、シャワーなら暖かいのがどうしようもなく不思議に思えた、――当たり前のことなのに】
【身体を洗うというほど汚れている気もしないなら、冷え切った身体を温めるためにお湯を浴びている。それでようやく指先まで血が通えば、やっと少しだけ、気が向いて】
【ちょっとだけボディーソープやシャンプーを借りたりもするんだろうか、――――――"ちょっとだけ"というには、彼女の髪は少しだけ長すぎたけど】

カクテル――――、おさけ? ……スープの味がする。……。……――、わたしは大人だから、だいじょうぶ……。二十五歳、だから――。

【暖かいカップの中を吹いて飲む仕草は相違なく未成年の振る舞いであるのだろう。しかして相手の言葉に瞬く眼差し、色違いの視線がわずかに丸みを帯びて、貴女を見つめたら】
【少しの沈黙の後に、少しだけ細めて――どこか悪戯ぽく――また、ふうふうやってから口を付けるのだ。自らは大人なのだと、――だから、二人とも、悪くなんてないのだと】
【嘘のように思えた――それくらいに彼女はあどけなさを残していた、湯気の湿度を受け取った唇が微かに艶めく、色合いの薄い生娘めいた桜色。――掌にカップを包み込み】

――――――――――――――おいしい。

【作り笑いの端っこから零れる寂しさには、――気づいているのかも、しれなかった。そうだとしても、彼女は言及しなかった。ただもう一口、暖かさを飲み込んで】
【ごく穏やかに緩んだ声が呟くのだ、"だれか"の言葉も振る舞いも全部正しいのだと証明してみせるみたいに。冷え切った身体で、お腹を空かせて、何もいい事はないんだと】
【――分かっているはずなのに、落ち込んだ時にはどうしても小さく丸まって冷たくて、お腹を空かせて、――そういうのが落ち着いてしまうのは、きっと、気質なのだけれど】

――、りんね。――――白神鈴音。…………でも、わたしには、なんにもないの、――聞かされて、たのしいような、お話なんて――なにも、……なにも。
拒絶と批判が嫌なのじゃ、なくて――、――肯定。してほしいのでも、きっと、なくて。……。……。どうしたらいいのか、分からなくて、どうすればいいのか、――わたし……。

【伝えるのは櫻の人間らしい名乗り。必要であれば字も伝えるのだろう。「白い神様の鈴の音」――、悲し気に細まる眼が瞬いたなら、】
【マグカップを机なり、床に座っているなら床なり、――とかくどこかに戻して、俯いてしまう。そうすると長めの前髪は容易く表情を隠して、だから、これは、他者を拒む壁なのだと】
【そうして同時に現実を遮断するためのシェルターなのだと伝えるのだろうか。――俯いてしまえば、なんにもみえなくなる。そういう、下ばかり見て来た、人生、透かして】


930 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/07(木) 15:25:07 6.kk0qdE0
>>905

「にゅーじぇね?ふむ、全く、理解が出来ない、戦闘の片手間にお遊戯とは、小娘が馬鹿にしているのか?」

【森林の木漏れ日が作る光の中で、舞、戦う少女は紛れもなく一級のバレリーナのそれであり】
【また、極めてアンバランスな光景とも見える】
【ーーそして、次手】

「小癪!ちょこまかと……」
「たかが、たかが能力を持った小娘如き……何がエトワールだ!下らん、実に下らん!」

【乱切りによる斬撃も、幾多もの刃も、少女を止めるには能わず】
【舞踏は続く、何処までも可憐に、何処までも優美に】
【身を切らせ、幾多もの傷を作り、それでも止まらぬのは、少女がトリカゴの鳥であるからか……】
【やがて舞踏は、再びの攻撃に変わる】

「ーーッ!?」
「がッ!ば、バカな……ッ!!」

【爪先での蹴りの一撃は、正に槍の刺突の如く】
【正中線の中心を正確に捉えた一撃は、確かな衝撃と感触を専用のトゥシューズに伝えて】
【相対する海兵は、大量に吐血して、その場に倒れ伏した】

「駒子、大丈夫?」

【別の方向から声が掛かる】
【その方向を見やれば、雉が、細かな怪我は幾分か追っている物の、無事な姿で】
【その後ろには血溜まりに倒れた、巨漢の海兵が】

「犠牲は生じたが、安いものか……準備は終わったな?」
「無論に……能力行使ーー嘴丸ーー」

【その場を包んでいた、遁走曲が途絶えた】

【響いたのは、バイオリンがその場に落下し、転がる音】

「うゔぅッくっ、あぁ……ッ」

【音の方角に目を向ければ、其処には先端が大きな嘴状になった奇妙な形の鎖に、キツく締め上げられ、首元を噛み捕らえられているアカシアの姿を目にするだろう】
【鎖の主は指揮官と思しき男の、横に控えた海兵、その伸ばした右手の先にある魔法陣からだ】
【更にその周囲に、再びライフルを構えた数名がアカシアに狙いをつけていて】

「あ、ああ、あ……アカシアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

「動くな、貴様ら、許可なく動けば……解っているな?」

【指揮官は拳銃を取り出し、駒子と雉、そしてアカシアに交互に向けながら】

「駒子……さん、雉、お姉ちゃん……ごめん、なさい……」
「2人とも、逃げて……僕に、構わず……ゔぅッ!」


931 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/07(木) 15:38:02 6.kk0qdE0
>>909

「し、しょ……」

【先程の戦いの時とは違う、だが同じで】
【暖かく、キメの細かな白い少女の肌】
【歩み寄り、握られれば、きゅっと握り返し】
【閉じた瞼の端には、涙が一筋溢れ、やがてそんなうわ言を呟いて】

「全く、万全で無かったのは貴女も同じでしょうに」

【もう1人、百合子に近づく者が居た】
【杉原と呼ばれていた、男性兵士だ】
【百合子の身体を抱き抱え、所謂お姫様抱っこと呼ばれる体勢】

「言質は取りましたよ……フェイさん、白桜さん……厳島中尉では無く、那須曹長の接触人物に、同じ名前がありました」

「そうであれば、教えねばなりませんが……知りたいですか?我々に、和泉文月に、魔導海軍に、そして櫻国に何が起ころうとしているのか、を」

【目は真剣そのもので、白桜を、いや、カイを見て、こう尋ねた】


932 : アルバート・ウィンチェスター ◆/iCzTYjx0Y :2019/02/07(木) 17:43:13 lp4TKcVo0
>>918

【まあ、本人は脱ぐのが―――と言うより、"着るのが"好きではないタイプだから、脱がすのも吝かではないが。】
【問題は彼女、多分だが下着とか、なんかそういうのとか、色々。着てなさそうだし、脱がすのにも一苦労しそうな所―――か。】
【さておきアルバートは、鈴音の言葉に耳を貸して。カップの中の液体を啜りながら、それこそ教師が生徒の話を聞くように―――静かに、待った】


……なるほど。喧嘩……そうか、"喧嘩"ね。成程、電話越しの彼女から感じた焦燥感は―――"ソレ"が原因だった、か。
しかし、その感じだと喧嘩の直接的な原因は、警察官を傷つけた云々より……もうちょっと、別の所にありそうだね。

"出来ない事をやる"と言った―――だったか。まあ、それとなく察しはついたよ。いやね、隠していて悪かったが、
実は一年前、恐らくは鈴音君と喧嘩した後だと思うんだが……彼女から電話を受けて。―――酷く、狼狽していたよ。

……本当なら、その時に此処へ来るべきだったんだが。すまなかったね、彼女と私の間は結構……これで複雑、なんだ。
でも、それはまた後で話そう。今は、君の話が優先だね。嗚呼―――そうか、そうだったのか。鈴音君、君は―――……、


【そうして語られた、自身の生まれと育ってきた環境、そして体の中に居た同居人の事を聞けば、アルバートは眼を閉じる。】
【産み出されてからずっと、自分自身が誰で、そもそも"何"なのかが分からない感覚―――唯一分かるのは、"ひと"ではないという事、のみ。】
【そうしていつしか、狂っていく世界の歯車に飲み込まれ、傍に居てくれた筈の"あの女"さえも居なくなり、その後釜も姿を消し、辿り着いたのは一つの、災い】


―――……君が、……あの"ウヌクアルハイ"だったのか。


【サーペント・カルト。奇怪で、不可思議で、残酷なこの世界に現れた邪教の集団。その名をあっという間に轟かせた―――恐ろしい組織だ。】
【その祭り神であり、祟り神であり、主神であった唯一無二の存在、それが彼女だったという。あれだけの死傷者を出し、大きな事件にもなったカルト教団の。】
【語られる事実にはアルバートも動揺せざるを得ない。だとして、今無事に帰って来れているのは、奇跡か。或いは、―――それが運命だったのか。分からないけれど、それでも】


……いやはや。君といい、セリーナ君と言い、スタン君と言い……若人が業を背負う事に。
私は反対だ……苦労を買ってでもしろ、なんて意見はね。私と相反する物だ。幸福に生きられるのが、一番と信じている。

参ったな……そうか、――――想像しているよりずっと、……なんてことだ。
去年一年、何もしなかった事を恥じなくてはいけないと、ようやく確信したよ。


鈴音君―――無関係だ、と君は言うかもしれない。
何故貴方が―――と、鬱陶しく、不可思議に思うかもしれない。けれど。


けれど言わせてほしい―――――――、 ……我々大人が、我々先人が。
君の様な人間に……辛い思いをさせてしまって。"こんな世界"にしてしまって―――、本当に、すまない。

ごめんなさい。君を沢山傷つけた。―――"それを放置していた"。申し訳ない。


【意外な事に、アルバートと言う男は―――糾弾もせず、卑下するような眼も見せず。】
【ただ、ただ謝罪を述べるだろう。すまない、申し訳ない―――大人を代表して、ではない。そんな意図はない。】
【しかし自分が動かなかったことは、"力があるのに"動かなかった事は、目の前の現実を見れば明らかだ。だから―――謝った。申し訳ない、と。】


933 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/07(木) 19:37:29 WMHqDivw0
>>930

ふんっ。おユーギしてるコムスメにも勝てないんじゃ、セワないんだから――

【――爪先からの着地、血を舞い散らしながら。して、鼻を鳴らして半回転】
【倒れゆく男を振り返って――そのまま視線を追い越す。駆け寄ってくる雉に手を振って】
【「らくしょーらくしょー」、笑って言うのだ。だけど。…………だけど、】

――――――――――――――あ、

【囚われるアカシアを見るなり表情を凍り付かせる。向けられる銃口なんか意識の範疇になくて】
【ただ彼のことを見ていた――そして直感。「まずい」。大変、だとか可哀想、だとかより前に】
【それは小鳥に特有の思考であった。小鳥である自分たちは、止木がいる限り無敵であり】
【だからこそ――止木の死は、そのまま自分たち、小鳥の死に直結する。このままでは「ふたり」死ぬ】
【瞬時にそれを判断できる程度には、トリカゴという組織に染まっていた。だから、】

………………。……待って。コマが行く。
コマがトーコーする、あなたたちについていく、だからアーくんのことを……放しなさい。

キーちゃん、キーちゃんは絶対のぜっっったいに、行っちゃダメだからね。
わかる? アーくんを守れるのはキーちゃんだけ、キーちゃんを守れるのはアーくんだけ。

そしたらコマを守る人が誰になるか――――わかるよね。わかるなら、……絶対、ダメだよ。

【両手を挙げて、一歩前に踏み出す。そうして周囲に投げかける言葉はひどく据わっていた】
【横目でちらり見やる雉にもそうする。駒鳥が四六時中周囲にアピールしているパートナーのこと、】
【合歓という少年のこと。きっと雉も知っているだろう。なれば理解せよと、駒鳥は歌うのだ】
【雉の止木はここにいて、駒鳥の止木はここにいない。ならば――ここで「捕まっていい」のは】
【間違いなく、この少女しかあり得なかった。駒鳥はそのすべてを理解していた、けれど】


934 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/07(木) 20:30:31 7bLeRBZU0
【路地裏】

【魔制法成立による影響はどこにでも現れていた。ここ路地裏もその例外ではない】
【今日も薄暗いその一角には真新しい血の臭いが漂っていた】
【倒れこむ若い男女数名の群れの傍らで、神父姿の少年が木箱に座っていた】

……やれやれ
俺も色々とやってきたけど、まさか世間様の流れが理由で襲われるたぁ思わなかったぜ

【苦々しい表情で嘆息をつく少年は、両手の指の間に柄の短い剣を握りこんでいた】
【刃の上を血が滴り落ちる。周囲の死体には切創と刺し傷。犯人は明らかではあったが】

そんなに異能持ちは嫌いかね……魔術師も対象じゃ、もう戦争でもするしかねえんじゃねえか?
ま、人間ってのはいつまで経っても戦い好きってことか……

【どうやら少年は魔術師らしく、防衛の結果こうなったようだった】


935 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/07(木) 20:46:43 arusqhls0
>>934

【世界が地続きだなんて誰が言ったのだろう、数秒前の認識は既に覆り】
【墜滅する燕雀達の嘆きに似ていた、寸刻ばかりの情緒は怨嗟】
【隔離された二粒の綻び、────】


936 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/07(木) 20:53:04 arusqhls0
>>934

【世界が地続きだなんて誰が言ったのだろう、数秒前の認識は既に覆り】
【墜滅する燕雀達の嘆きに似ていた、寸刻ばかりの情緒は怨嗟】
【隔離された二粒の綻び、──── 一つは私、そしてもう一つは】



【 "────" ぞる、と脳裏が捲れた、雑音混じりの言の葉が脳内にリフレインして】




【それは一欠片さえも真実では無かった、蠢く大衆、迷妄する謀り】
【軍歌と軍靴と軍化に過ぎる、蹄鉄踏みしめ鳴らすはHi-HO、6度ばかり真円に遠い】
【貴方は見る、路地の隙間、──── 裏側からやってきた狩人に】




               良い "匂い" だ




【宵月が輪郭を映し出す、煌々とした輝きが、寸刻の程にレタリングを済ませて】



【黒い修道服を着た大柄の男であった】
【赤い長髪に顎髭、長い髪から覗く右目には無造作に包帯が巻かれており、残った左目が少年を見据える】
【一歩、また一歩、と少年へと近づいてくるだろう、大股、──── 闊歩という表現に近い】


                 【鼻をひくつかせた】


【曖昧ばかりの世界に於いて、その仕草が、幾分かばかり滑稽に】


937 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/07(木) 21:06:19 7bLeRBZU0
>>936

【やってきた男を見遣るまでもなく、何故だかその接近に気がついた少年は】
【先ほどよりも遥かに深い嘆息をつく。顔の苦味も二割増し。肩をがっくりと落として】

日頃の鬱憤を晴らそうとするチンピラの次は、路地裏ご当地特産の狂人かぁ?
全く……こいつも“運命”ってやつなのかもしれないが……もしくは単に不運かね

【たっぷりと愚痴を零してからやっと少年は男に視線を移した】
【その風貌を見て、眉根を寄せる。今度の苦味は五割増し】

おいおいおいおい……よりによって“同業者”かよ
良い匂いってのは一体どれのこと言ってんだ? 生憎と俺ぁ香水は使ってないんだがね

【危険な気配を醸し出す男に対して、少年はおどけるように肩をすくめてみせた】
【右手には未だに剣を握りこんだまま。警戒心があるのは隠す必要さえない】


938 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/07(木) 21:14:34 arusqhls0
>>937


     【同業者であろうか?】
                             【否、同業者である筈が無い】   【例えるならそれは摂理】

【神代の時代から変わらない、】  
                     【一筋ばかりの常套句】

                                       【それはつまり】



        ──────── 俺は "狩人" だよ、血の匂いに誘われた



【男の姿が消える】【 ──── 上】【視線の先には翻る神父服の残照】
【およそ人の身とは思えぬ跳躍力】


【落下する速度で、少年を捉えたなら】



【骨すら容易に砕きそうなほどの握力で、】   【少年の首を絞めようと手を伸ばす】
【呼吸、変遷、──── 渦巻く風は闇】



【ただ我儘に暴力を振るう】


939 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/07(木) 21:27:26 7bLeRBZU0
>>938

【超速の運動──視界から消えるほどの速度に少年の視線は動かなかった】
【頭上に男がたどり着き落下による強襲。その段階になって時間が遅れたように】
【ようやく少年の視線は真上へと動いた。静謐な双眸がその姿を捉える】

【破砕音。男の腕が捉えたのは少年が座っていた木箱だけ】
【細かな木屑が砂塵のように舞い上がって冷えた夜風に流されていく】
【姿はない。消えたのかといえば、そうではなかった】

──じゃーやっぱり路地裏特産品の狂人様じゃあねえか
ま、そっちの方が分かりやすくてなんぼかいいかもな
最近の法律がどうの、イデオロギーがなんだとかいう話はどうにも面倒でいけねえや

【声は男の背中側の上方から聞こえてきた】
【建物の外周に備え付けられた非常用の足場。その手すりに脚を引っ掛けた状態で】
【少年は逆さとなって男を“見上げて”いた】

しかしよ、狩人だっけ?
だったら獲物はもうちょっと吟味するもんなんじゃあねえのか?
つまりは……なんで俺を狙ってんだってことだよ!!

【手が袖に引っ込み、小さな柄を数本握り込んで戻される】
【魔力の反応。柄からそれぞれ金属の刃が生成され剣と化す】
【両腕を交差させて戻す勢いで投擲。計六本の剣が回転しながら左右から男へと向かう】


940 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/07(木) 21:39:16 arusqhls0
>>939

【捲られた頁の様に、彼は振り向き】

【徐に伸ばされた両手が剣を片っ端から叩き落とす】
【一つ、二つ、──── 演舞が如く、それは風に舞う芥】
【ついぞ首を伸ばした白鳥の、羽ばたく前の手慰みにも似た】


【 ──── しかし、その内一本が掻い潜る】
【男の眼前へと刃が迫り】



【 “────” 破砕する金属音 】  
【飛び散る残滓は椿の形相】



【彼は "噛み砕いた" ──── 咀嚼する様に歯をしならせ、そして】



【噛み砕いた金属片の一部を口から飛ばす】
【弾丸の如き一発が、少年の顔面目掛け放たれた】



弱肉強食が世の摂理だ、貴様とて同じ事だろう?
弱き者を殺し、糧とした、ならば俺もその道理に従おう

狩る者は常に怯えている、だからこそ、狩り続けなければならない



──── "バスカヴィル" ──── 貴様は俺の、糧となれ



【逆巻く赤毛、草原を風が吹き抜ける様に、男の顔面が変容していく】
【艶やかな毛並み、獰猛を絵に描いた様な牙、刮目される片方ばかりの瞳】
【大柄だった身体は更に大きく、逆さにつられた少年へ肉薄する程に】



【 ──── 人狼と、形容された】


941 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/07(木) 21:51:29 7bLeRBZU0
>>940

おいおい、冗談じゃねえぜ
何なんだよこいつは──…………っ!

【通じると思って放った攻撃でもなかったが、その全てが淀みなく打ち落とされる様に】
【少年は思わず驚嘆していた。さらに剣が噛み砕かれればその表情には得体の知れない怯懦も混じりこみ】
【刹那、その小さな弾丸の飛来を感知。僅かに頭部を揺らすだけでそれを躱してみせた】

【単なる身体能力──動体視力や肉体の動き──だけではないあまりに精緻な動作】
【そのほぼ不可視の一撃を避けるためには、何がしかの能力、異能が必要なことは】
【恐らくは想像に難くないだろう。男の答えには少年は力無い笑みを浮かべる】

はは……根っからじゃねえか。こいつぁ困ったな
別に俺はそいつらを糧にしたわけじゃないんだがね……

大体、俺の格好を見て何か思わねえのか? こちとら神父様だぞ!
仮にも聖職者がそんな原始的な思想を口にするかよ
…………って、人間じゃねえのかよっ!!

【二度目の驚愕と共に、脚力と腹筋のみで上体を引き起こして手すりの内側に着地】
【その後、即座に跳躍。こちらも人間離れした身体能力を発揮して三階部分の手すりまで跳ぶ】
【眼下に人狼を見下ろした状態から再び剣の投擲。上方から一直線に三本の剣が向かっていく】


942 : 名無しさん :2019/02/07(木) 21:52:55 iJqIovGE0
>>932

――――――――、そう、だけど、少しだけ、違ってて。……。わたしと――たくさんの、蛇。それが、"ウヌクアルハイ"。
――"ウヌクアルハイ"を知っているひとのことを、わたしは、"見"られた、――"わたし"を知っているひとと、おしゃべりすることも、少しなら、――、できた。
それで、――、それで、セリーナを、探しもした、――だけど、見つけられなかった、……。セリーナは、"ウヌクアルハイ"を知らない、――、きっと、知れない場所に、いて。

【蛇のしるしを身体に刻んだ人間たちの所業はひどく速度を持って世界を駆け巡ったものだった、それ以前より知る者はその名を知っていたらしいが、そこまで凶悪ではなく】
【――、けれど、ある日花開くようにその名は知れ渡って。しかして彼女が"ここ"に居るのなら、やはり、結果は"ご存知"の通りだ。儀式の失敗と、信者たちに相次ぐ自殺と】
【残党はもはやいないのではという扱いであった。いたとしてももはや何もできないだろうと誰かどこかのコメンテーターが言っていた。下卑て笑いながら、世界が綺麗になっただなんて】

【――――とはいえ、彼女は、そのカルト教団の方については、あまり詳しくないようだった。言葉を信じるなら"見て"はいたらしいが、――、】
【たくさんの神様に埋めれてみる現世は泡沫の夢にも等しく。なればよほど彼女に縁のある人間が時々意識に引っ掛かって来る、程度のものであるのが、多かったのかもしれない】
【どちらにせよ確かであるのは、全世界を駆け巡ったカルトの名前と、それが崇めていた邪神たる蛇神"ウヌクアルハイ"、――少女が見落としただけなのかもしれない/そうであってほしい】

【("あの"ガンマンが、"それ"を全く知らずに過ごすだなんて、――)】
【(嫌な想像、してしまいそうに、なるから)】

――――――。だけど、ごめんなさい。……。全部のこと、わたしは、よく――分からなくて。眠っていること、多かったから、――。
生きている子、――ひとりだけは知っているの。――たぶん、今も、生きていて。……でも、――その子には、嫌われているから。勝手に言ったら――、

【嫌がられると思う】
【そんな小さな囁き声。祀られてた神様は世界中を見渡す目を持っていたとして、瞼をおろしてばっかりだったなら、その実、"なにがあったのか"には、割合疎いらしい】
【ならばいつか"ウヌクアルハイ"を信じていた人物を少なくとも一人は知っているのだという。そしてきっと今も生きていると。――ただ、素直な関係性でないというのなら】
【責任として求められるなら伝えるが。――とかく相手に任せるような気配があった、今更もっと嫌われようとも別に構わぬのだけれど、連絡先も知らぬ間柄でしかない、他人のことだから】

……………………………………………………。

【――――謝られたくないわけでは、なかった】
【自分が今まで受けて来た仕打ちを、――今までの人生に満ち満ちていた不条理を、誰かが謝ってくれること、気分悪いなんてことはないのだ、――だって彼女は清廉潔白と程遠く】
【怨みと妬みと嫉みと憎さと恨めしさと、――ありったけの冥さを詰め込んだ箱に、同じくらい、或いはそれ以上の、憧れと理想を詰め込んだなら、神様にだって生まれ変わってしまうのだから】

【(ああそれだのに、願い叶って人間になったってひとかけらだって嬉しくないのね、なんて、自分が嫌になる)】

…………いいの。もう、大人に、なっちゃったから。……。――。それよりも、今の子供たちを、助けてあげて、謝らなくって、――いいから、

【ならば、どれだけ呑み込んでもきっと足らぬものをただひたすら求めてしまいそうな自分を諫めることくらいはできるのだ、――大人だから。もう、今年で、二十六にだってなる】
【毎日今日はどれにしようと選ぶ程度には服装にだって困らない。寒かったら羽織る上着だっていくつも持っている。真冬に暖かなお湯を浴びることだって、出来るから】
【お腹が空いたら(お財布の中身と相談しながらではあるけれど)どこかしらのお店に入ることに躊躇いを持つこともない。喉が渇いたら喫茶店だって入ってしまえるの】
【うんとうんと歩き疲れてしまったらタクシーだって呼び止められて、それだって面倒になったら安いビジネスホテルだってきっと泊まれるんだ。そんな大人に、気づいたらなっていて】

【――――それで"よかった"はずなのに。真冬の寒さに眠ることすらできず凍り付くような指先を擦り合わせて見上げた星空に流れ星を探していた頃には、それで、よかった、はずなのに】
【――だから、今"それ"をやっている子たちをどうにかしてやってくれ、だなんて。――拒食症患者が人にはたくさん食べさせたがるのと似ているのかも、しれなかった、けど】


943 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/07(木) 21:53:40 WMHqDivw0
【治安のよろしくない通り。夜に賑わう露店の並ぶ道】
【ビニールのカーテンで囲われた、串刺し肉と酒を振る舞う屋台。やつはそこにいた】
【裸足で丸椅子の上に胡坐をかいている。だけどそれを下品だと咎める人種は、ここにはいないから】

ぷあーーーーーーーーっ、オシゴトの後のおサケとおニクはおいしいナーーーーーっ!!

【黒髪ボブ、だけどもみあげだけが銀色でやたら長いのが印象的な、うるさい女だった】
【まん丸い目のすみれ色はすでに軽く酩酊の色合いに融けていた。ぱっかり半月の形に開いた口】
【はしっこから覗く八重歯が、彼女を未成年に見せていたけど――やっぱりそれを咎めるような人も】
【ここには、いないから。ぶつっと切られた大きな肉と厚い輪切りのタマネギを焼いて、タレをかけたやつ】
【それを大きなお口で頬張りながら、ジョッキを傾けていた。黄金色のハイボール。レモンは既に絞られて】

ねーッねーッアナタもそう思うでしょ!? 思わない!? やだもーっ!!
何しにココ来たのーっ!? 無職ーっ!!? よくないぜーっそんなのーっ
ちゃんとシャカイのハグルマを回しなーっ!? このギンちゃんですら回してンだからよーっ!!!

【――――そうして、隣に座っているのだろう「あなた」にダル絡みを始めるのだ】
【品のない屋台だ。酔っ払いに絡まれることもまああるだろう――とは思うかもしれないが】
【さすがにここまでうるさいのはそうそう居ないとも思うだろうか。もしあなたがうんざりして、振り払うなら】

えっだってヒトリで飲んでんのサビシーじゃん。遊んで遊んで、ギンちゃんと遊んでよーっ
…………あっ、ギンコ! あたしギンコって言うの、だからギンちゃんね! アナタのお名前は!?

【などという勝手な動機で、勝手に名乗って勝手に名を訊き始める始末なのだ、こいつは】
【よほどのハズレ店でハズレ席に座ってしまったと思うだろうか。少なくとも、店主はそう思っているようだった】
【とんだハズレ客を引いてしまったなあ――みたいな顔して。でも追い出さないし、あなたも助けない。そういう場所だから】


944 : ◆DqFTH.xnGs :2019/02/07(木) 21:56:39 2EEDGTFE0
>>917

【レインコートが、跳ねた水滴を弾く】

【透けることはなく】

【旧式のマシン──何らかの機能が不足している】

【生者への干渉制限。有機物への接触制限】

【考えられる可能性は多いようで、少ない】


【驚かれても、少女は悲しまなかった】
【そんなことは彼女にとっては些末事だった】


…………ひとつ。

<円卓>……には、…………王様と、お妃様が、います
でも…………狙うのは、その2人じゃ……ダメ、です

狙うのなら……<円卓>の、核
……頭じゃなくて、…………。核を、狙わなきゃいけません

<キャメロット>────そう、ママは言ってました
イスラフィール、って人が……関わっているって
…………内緒話。こっそり、聞いちゃってました



【しぃ、と唇に指を当てる】
【年相応にも思えるあどけなさが垣間見えた】



けれど────多分、これはとっても難しい方法です
<円卓>は<システム>だから…………
だから…………頭を潰しても、核を潰したって…………、きっと、<円卓>そのものは、潰れません
同じことが…………戦争が起きないことの、保証にはならないと思います


だから…………、一番、一番、簡単な方法、は




【その金色は、覚悟している目だった】
【紡ぐ言葉に躊躇いはなかった】
【きっと彼女には、“そうする”しか方法はなかったのだろう】




あなたたちが、…………きっと、<黒幕>って呼んでいる…………

その派閥に、力を────貸してください


<システム/円卓>を斃せるのは…………、同じ<システム/黒幕>、…………だから



【 「────お願いします」 】
【最後にそう呟いて…………少女は、頭を下げた】


945 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/07(木) 22:09:42 arusqhls0
>>941


【首筋を伸ばす、王へと傅く従者に似ていた、月を見上げて啼く作用】
【鮮やかな毛並みに光が落ちて、夜更けに眠る白亜の如く】
【瞑目、開眼、──── 瞳見据えるは、その然】


【跳躍、壁を蹴って更に上へ、再び跳躍】
【路地裏を反復しながら、上昇を続け】


【流星の如く降り注ぐ剣閃を、羽虫でも払うように消し去った】
【単純な筋力はかなりのものか、だとすれば】


【その見た目が示す符号は、全て一致するのだろう】


喰らう獲物に差異はない、俺は思想や理念で家畜を差別しない
富める鶏も白痴の鶏も、等しく扱う事に、狩人としての矜持を持つ


──── "上位者" だよ、れっきとしたな



【逝く付く先は少年よりも遙か高み】
【壁を使った三角飛びで、高度まで移動を続け】



【ついに少年を見下ろす位置まで、躍り出る】
【──── 右足が壁を踏み抜き、強引にその場に止まる】




血塗られた意思の匂い、物言わぬ骸の怨念が匂い、青き小僧と力の匂い
俺の鼻は良く利くんだ、──── "Smells Like a Teen Spirits"



【男が右手を翳す、──── 出現するは "剣"】【少年が最初に放った六発の剣】
【更に右手を握る、──── 重ねて出現する "剣"】【少年が次に放った三発の剣】


【回転する六本の剣が周囲から、そして三本の剣が真っ直ぐに、少年へと降り注ぐ】


【暴風雨の中に居る心持ちであった】【降りしきる雨が明確に命を狙う】【顎が命を削り出す】
【剣線、耳鳴り、白昼夢が如く】【触れる刃の痛みだけが】【ただ只管に真実と告げる筈だから】
【轟々と鳴り止まぬ氷雨に濡れて】【ただ立ち尽くす闇夜の狭間】           【──── 深淵は絶え】


946 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/07(木) 22:11:46 JPOKnE/c0
>>929
【マグカップに口をつけている間に聞こえた言葉、少女と思っていた存在は自分と同い年であるという事実】
【―――ある種の詐欺だろう、鯖を読むにも程がある。なんて、微かに見開く目が静かに告げる】
【マグカップを両の手で包み込むように持つ仕草。あどけなさを残す表情。これで自分と同い年なのだから、人は見かけによらない】
【(尤も、キャロラインは知らない。白神鈴音は単なる人間でない事を、人間の理屈からはずれた存在である事を)】


リンネ、知ってるかしら?不幸は今のアナタみたいに下を向いて俯くひとが好きなの。
自分の殻に閉じ籠って、俯いて、しくしく泣き続ける子がこの上ないご馳走で、大好物。
涎を垂らして今にかぶりつきたくなる位に大好きなの。


【床に座ったふたり、ベッドを背にして、もたれ掛かる。並んで座っていれど、ふたりの間には微妙な空白があって】
【見えない壁で隔たれていた。けれどそれぐらいが丁度良かった。互いが警戒しない距離感、パーソナルスペースを侵害しないから】

【だから構図的にはバーのカウンターに似ていた。顔を向き合わせることなく、内から沸いて出た感情を口にするだけの無遠慮さ】
【それが許される空間。ただバーのカウンターと違うのはバーテンダーなんて居なくて、そこにいるのは―――記憶屋であるなら】
【踏み入って欲しくない所まで、土足で踏み入れるのだ。それが証拠に彼女は鈴音の顔を隠す前髪をすらりとした指先で】
【そっと、やさしく、やわらかく、すうっと、抉じ開けるのだった。それではあなたの顔が見えないと言いたげに、強引に】


どうしていいかわからないなら、先ずは吐き出したら?
思いの丈、全部。それと、悪い女に持ち帰られる迄の経緯。

こんな言葉を知っていて?
『見えないと始まらない。見ようとしないと始まらない』
この場でも同じ事。アナタの経緯が見えないと何にもできないの。否定も肯定も無く聞き続ける事さえ出来ないわ。

流石に何の断りもなしに"荒療治"は出来ないもの、してもいいけれど。
有無も言わさずアナタを白痴にして無邪気にさせなきゃならないほど備蓄した『記憶』に不安を覚える程ではないから。


【指先の強引さ、声に出される言葉の穏やかさと不穏さ】
【でも、装いは変わらず穏やかで落ち着きを与える微笑を湛えているなら、鈴音の言葉に肯定も否定もしない】
【ただ聞いてるだけだから、都合のいいサンドバッグか何かと思えばいいとさえ告げていた】


947 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/07(木) 22:14:42 WMHqDivw0
>>944

【今なら弾けるウォータークラウンだってよく見えそう。それくらいの勢いで】
【少女をじーっと注視していた。薄く眉間に皺を寄せながら。そして】
【次に口を開くときには、やっぱり首を傾げている。なんにも理解できてなさそうな顔だった】

核――――<キャメロット>?
知らないよそんなの、聞いたことない……あたしたちが下っ端だからかなあ。
そんなのあるの? イスラフィール、……イスラフィール、どっかで聞いたこと、あるような……

…………んん、システム、っていうのはちょっとだけ知ってるけど……
えっなんで? 核狙えばいいって言ったじゃん。なんで?
潰しても壊れないってそれもう核じゃなくない? なんなの?
めっちゃ難しいじゃん、えっ何……簡単な方法? やだもー、
それがあるなら最初に言ってよお、めっちゃ考えちゃったじゃん、脳つっかれたし……

【はあやれやれ。みたいな顔で見下ろしつつ――けれど次の瞬間には】
【据わった目で見つめられるのだから、少し怖気づいたらしい。ざりっと靴底の滑る音】
【きゅっと唇を結んで、じっと見返しながら、聞いていた。たったひとつのさえたやり方、】

【――――――――――――しかし、】


……………………、…………えっ無理……。
<黒幕>の味方するとか、生理的に無理……。ごめん……。


【――――――――――――返ってくるのは0.2秒もかけない無慈悲な回答。】
【幼い少女の決死の覚悟にすら心底ドン引きしてるみたいな顔するから、救いようがなかった】


948 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/07(木) 22:24:54 7bLeRBZU0
>>945

ちっ、青臭いガキとは言ってくれるぜ。これでもいい歳してんだけどな……!

【投擲は再び容易に弾かれてしまい、舌打ちが追加される】
【上位者たる狩人は真上。見上げる少年──正確には青年だが──は次の手を決めかねていた】
【そうしている間に敵の動きが先行する。嫌な気配を感じ取り、身構えた】

【視界に出現する九つの剣。いずれも寸分違わず自身が放ったものと同一】
【僅かな驚愕が表情に走る。これが相手の異能か。厄介さにさらに舌打ちをした】
【細く息を吸い込む。眼前に迫るのは水平の曲射と直射。逃げ場はない──が】

────っ!!

【足が持ち上がり、真っ直ぐに落ちて足場を踏み鳴らす。震脚と呼ばれる武術上の技法】
【本来のそれではこのような使い方はしないが──その瞬間、暴風の如き衝撃が少年を中心に発生した】
【その暴威に晒された九つの剣は吹き飛ばされていく。衝撃の正体は彼から噴出した魔力そのものだった】

よぉし、そっちがその気ならこっちも本気でやってやるぜ!
後悔すんじゃねえぞ、犬っころがっ!!

【身を撓めて跳躍。爆発的な速力を得て壁に止まる人狼へと直進】
【空中で腕を引き、掌底を人狼へと打ち込む。当たれば身体の小ささからは予測できないほどの破壊力だ】


949 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/07(木) 22:33:23 arusqhls0
>>948


【早送りされる書割の行方、暗転する幕間の悲劇、ストロボに照らされる一瞬の攻防】


【吹き飛ばされた剣】
【金属の雨を縫い、迫るは肉体】



【唇を噛み締めた】
【地面を蹴っての跳躍】    【 ──── 一手遅い】          【衝撃】



【気付いた瞬間には、眼前に少年がいた】



────────ッ!!! かはっ……!!! 効くな、これは!!



【掌サイズの爆薬が弾けた】【大砲に弾き出されたかの如く後方へ】【苦悶の声が漏れて】



【ぐるり】
【空中で体勢を整える】【右の手が徐に伸びて】【壁に穴を開ける】
【そのまま衝撃を殺しつつ、後方へと引き摺られる】【右手が描いた跡】【 ──── 雪原に刻まれるシュプール】



【右手一本で壁にぶら下がる】【曲芸じみた行為をしながら、目は少年を見据え】【荒々しく息を吐いた】


950 : ◆DqFTH.xnGs :2019/02/07(木) 22:33:59 2EEDGTFE0
>>947


…………、……………………そっ…………、か



【失望。落胆。────“それでも”】

【少女は彼女に背を向ける】
【次にその眼に映すのは、雑踏だった】
【灰色の群れ。人の群れ。意識の群れ】


…………<システム>は、……壊れないから、<システム>って言うんだと思います
ちょっとしたバグで使い物にならなくなったら……それは、<システム>じゃあ、ないです
修復機構。やり直しの方法……それがあるのが、<システム>────、だから

核を壊して回避出来る戦争は…………<わたしがいた未来の戦争>……

<円卓>が集金システムに還ったところで…………また、次の<核>や<王様>が現れないとは……限らないんです
…………<円卓>のみんなを、一つずつ潰していくっていう方法もあります、けど……
でも…………それは、きっとすごくすごく、大変だから────



【赤い雨靴が、水溜りを踏む】
【紫のレインコートが、雨粒を弾く】

【非難も叱責もなく】

【少女は歩き出していた】

【“探し”に行くんだと、そう思わせる】

【誰か────誰でもいい】

【未来を変えてくれる、“誰か”を】


951 : 名無しさん :2019/02/07(木) 22:34:18 iJqIovGE0
>>946

【――――ただし、それも過去のことであった。白神鈴音はもはや他の個体と大差なく人間である、――無慈悲なほどに、ただの人間であるから】
【今すぐ頭を踏み砕けばそのまま死ぬ。今すぐ首を圧し折ればそのまま死ぬ。胸を切り開いて心臓を握りつぶせば死ぬ。腸を蝶々結びにしてみたってきっと死ぬのだろう】
【ならば今なお残る違和感は神様の残滓、奇跡と依存と強迫観念の残骸であるのかもしれなかった。――。そうしてまた哀れな神様の涙一粒、彼女を苛む色をして】

――――――。

【ふるふると弱く首を横に揺らした、――さっき聞いたような気もしたが、それまで知らなかった言葉だ。ならば知らぬと等しい、だから、知らぬのだと答え】
【野良猫みたいな彼女にとってきっとその距離はひどく好ましい/そしてまた寂しくて仕方ない少女にとってきっとその距離は遠すぎて、泣きそうになる】
【――だから、前髪を抉じ開けられるような距離に入り込むのは、きっと容易くて、けれど向けられる眼は、ひどく円く驚きを帯びているのだろう。――そんなこと、されたことないみたいに】
【ちいさな声が漏れた、――泣きそうに睫毛が震えてから、視線が逸れる。やはり俯いてしまうのなら、それでも閉ざす前髪がないだけ、困ってハの字になる眉が、今度は見える】

――――――――――――――――――なんでも出来るくらいすごくなったら、誰にも虐められないって、――ひどいことされないって、思ってたの。
――だけど、そうじゃなかった、……。いろんなひとがわたしのこと、殺そうとした、――、それでも、――それでも、なんでもできるぐらい、"すごい"から、
わたしに非道いことした全部が、――、――きっと、謝ってくれるって、――、今までごめんねって、……。これからはもう非道いことしないって、――、謝って、くれるって、

【すらと持ち上がる指先は白魚よりよほど白い、抉じ開けられた前髪を閉ざすみたいにしたなら、膝を抱えてしまうのだろう。沈黙のあと、やがて漏れ出る声は、ちいさく掠れて】
【――くだらない理想であった、うんと強くなったら、今まで傷つけられてきた全部が頭を垂れるのだと。そうして謝ってくれるのだと。――声が震えていた、泣きそうになって】

――――――、――――――……、荒療治?

【――――けれど、泣きださないのは、いくらか不穏な言葉を聞いたからだろうか。涙をこさえた眼差しが持ち上がって貴女を見つめた、――、ふたり、まだ、やっぱり何も知らない】


952 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/07(木) 22:41:50 7BKb5Ysg0
>>949

【掌底を叩き込んだ瞬間の強烈な衝撃。その正体も先ほどと同様に魔力だった】
【接触の瞬間にそれそのものの打撃力に加えて魔力を放出することで衝撃を発生させる──】
【それが小柄な肉体から破壊力を生む機構。これこそがこの少年の持つ異能だった】

喧嘩売った以上、簡単に逃げられると思うんじゃねえぞ──っ!!

【その機構ゆえに、掌底を打ち込んだ少年は反動でその速力を減速させた】
【だが空中に身を投げ出そうともその動きに淀みはない。人狼と同様に壁を蹴りつけて空中を移動し】
【さらに異能の応用か、『宙を蹴って移動する』などという離れ業も披露する】

【握りこんだ剣を投擲。回転した二本の剣が壁とは反対側から迫り人狼の移動先を塞ぐ】
【その上で少年は空中で魔力を爆発させて推進力とし、人狼へと真っ直ぐに突撃──】
【そう見せかけて直前で真上に軌道変更。頭上を取れば、上空から強烈な回転かかと落としを繰り出す】


953 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/07(木) 22:45:19 WMHqDivw0
>>950

んー……たしかに円卓潰すにはそれがいいのかもしれないけど、
…………でもやっぱり黒幕に力は、貸せない。

あいつらは、あたしの大事な友達にひどいこと、たくさんした。
だからダメ。たとえその場しのぎのウソでも――無理。

【少しばかりの罪悪感はあるようだった。湿ったまつ毛を半分伏せて】
【逸らされる視線を追いかけていた。それもすぐに見えなくなった】
【であれば引き留める理由もそう見つかりはしないのだろう。その場に立ち止まったまま】

……………………なんだ。大変だけど、無理ではないんでしょ?
そっちでいいじゃん。じゃああたしはそれを「やる」。
端っこからひとつひとつ、全部潰していくの。
なあんだ、そっちのがわかりやすくてイイじゃん――――いいよ、やったげる。

【「どーんとでっかくぶっ飛ばすの、得意なの」 ――去り行く背中にかける言葉は】
【きっとあまりにも軽々しく笑っていた。だけど断言するかたちで口にした】
【だからつまり、少女のことを見捨てたわけではなかったのだ。口先だけかもしれないけれど】

【――少女の背後で傘を開く音がする。こいつもまた、帰ろうとしているのだろう】
【あんまりにも気軽に、重たい重たい口約束だけをその場に残して。――、】


954 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/07(木) 22:54:48 arusqhls0
>>952


【視界が僅かにふらつく】【状況は既に変化した】【無理矢理に呼吸を整える】
【独特の香りであった】【ただの肉と骨の作用では無い】【そこに加わった異物】


【彼は咀嚼する】
【 ──── 一流の料理人が、卓越した味覚で暴く様に】



【右手を壁から離す】【自由落下の速度で落ちて】【 ──── 彼もまた、空中を "蹴った" 】



【口元から笑みがこぼれた】【象徴的な鼻が蠢く】【それは嗅覚の作用】
【香しい芳香は全てを伝える】【見るよりも鮮やかに】【聞くよりも豊かに】  【そして】



【味わう事で、それは完成する】




──────── なるほど、こういう仕組みか



────"Smells Like a Teen Spirits"────



【人外の動体視力、開かれた隻眼が軌道を捉える】【能よりも緩やかに見えた】
【放たれる踵落とし】



【左の手がその踵に触れたなら】




悪いが喰わせてもらうぜ、──── 俺は絶対的な狩人だからな



【魔力が "弾ける" ──── 少年の突きと同じ原理であった、魔力の放出を彼は模倣する】
【否、オリジナルよりも出力が上がっていた】
【彼の卓越した嗅覚は、喰らった攻撃の道理を解し、剰え】



【それ以上の風味を、彼自身によって描くのだから】



【強烈な魔力の放出によって、踵落としを防ぎつつ】【側面から弾き飛ばす形で反撃に転じよう】
【虚を突かれたなら衝撃はいかほどのものか】【人狼は空中に "立っていた" 】
【既にその作法を、──── 彼は解しているから】


955 : ◆XLNm0nfgzs :2019/02/07(木) 22:55:41 BRNVt/Aw0

【晴れ渡った冷たい、冷たい夜だった】
【澄んだ空気は星々をいつもより多く見せていて、まるで星が降るようで】
【そんな冬の夜空の下。何処かの路地裏】
【周辺の建物の粗大ごみだとかの置き場にでもなっているのだろう。やれ横倒しの洗濯機だ、中身が空っぽで開けっぱなしになった冷蔵庫だ、古臭いフォントで古臭い文言が書かれた塗装が剥げたベニヤ板だ、割れた路地用の看板だと様々な物が放置されて積まれていて】
【そんな中に一つ転がるのは女の姿を模した精巧なマネキンのようで】

【ベリーショートにした黒い髪。廃棄されたマネキンならば当然のように何も纏ってはいなくて、豊かな胸元もほっそりとした四肢も地面に投げ出していて】
【ただ、マネキンにしては妙な所があるとするならば、所々についた傷が生々しい色合いをしている所と、その目が閉じられている所、ではあったが】


──くちっ……!
【誰もいない筈の路地裏。ふと小さな声が響いたかと思えば】
【地面に伏していたマネキンがもそり、と動く】
【気だるげに開かれた橙色の瞳。どうやら精巧なマネキンではなく本物の人間の、それも十代後半程の少女のようで】
【ゆっくりと頭をもたげ、辺りを見回す】




/本スレからの移動です!


956 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/07(木) 23:09:40 7BKb5Ysg0
>>954

【動きの制御に無駄はなかった。そう自負できる。戦いなど目を瞑っていたってできる】
【それだけの自信が持てるほどには彼には戦闘経験があり鍛錬の時間があった】
【フェイントのタイミングも完璧。この速度にはそうそう対応など──】

(────な、に)

【瞬間、強烈な違和感が脳裏を駆け巡った。この技法はそう高尚なものではない。しかし】
【こんな短時間でこれほどの精度で模倣するなど、予想できるはずがない】
【相殺──否、相手の方が強力で弾き返された。その一瞬の思考の間隙を追撃が突く】

ぐっ────!!

【衝撃に苦鳴が漏れる。弾き飛ばされた少年は非常階段の踊り場に激突。軽金属が破砕される破壊音】
【背中を強打した少年はすぐに顔を上げる。視線の先には空中に止まる人狼】
【表情に焦燥が浮かび上がる。種族特有の圧倒的な身体能力に、それを上乗せしてしまう自身の異能】

…………最悪な組み合わせだったってわけか
ちっ、迂闊だったぜ。とはいえ、“これ”無しじゃ基礎能力で負けそうだしな……

さーて、どうしたもんかねぇ

【力無い笑いが思わず溢れた。一瞬で最低最悪の窮地に追い詰められていた】


957 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/07(木) 23:28:19 JPOKnE/c0
>>951
【開けた景色―――暴かれた困惑に揺れる瞳、線を曳く一筋の涙】

【大体想像通りの顔だった。雨など入らぬ部屋なのに、未だ雨に打たれて打ちひしがれる子猫の様相】
【だからと言ってキャロラインは表情を崩さない。身に余る出来事が降りかかった人間に言葉を届けるのは至難の技だから】
【猫にタイプライターを叩かせて、シェークスピアの戯曲が出来るのを期待するぐらい無謀な事だから】


――――――、随分とスケールの大きなお話だこと。そして皮肉だこと。
いじめっこ達が何を思ってアナタを殺そうとしたのかは知らないけれど、その口ぶりが事実であるなら難儀な目にあったのね。

―――――可哀想に。人を殺したいほどの感情は触れる全てを蝕む劇薬に似てるのに。触れただけで心がヤスリがけされてしまうのにね。

そもそも何でも出来るほどの、いわば神さまのような全能の意識を手に入れても望む結果は叶えられないなんて


【―――とっても、残酷な世界。謝って欲しいという"だけ"のお願いなのに、それさえも叶えられないなんて】


【キャロラインは目を細めたが、それは同情からではない。単に鈴音の言葉をなぞっただけ】
【願い事の叶わない現状に涙する鈴音の感情を逆撫でせずに思いの丈を吐き出させるための振る舞い】
【装いの裏で思案を巡らせる。何をすればここまで恨まれ、涙で頭を垂れることになるのか、と】
【だから―――】

で、リンネはどうされたいの?叶わなかったであろうそれをしてほしい?
酷いことをしたすべてに謝って欲しいの?
もう二度と酷いことしませんと誓って欲しいの?
そうしたら泣き止んで俯くことをやめるのかしら?―――あくまで仮定のはなしだけれど。


【弱った相手によくやること。やさしく抱き締める、やわらかく頭を撫でる、ぽんぽんと背中を叩いてあげる】
【キャロラインはそれらのどれもしなかった。中立の立場で言葉を紡いで付かず離れずを保つ】
【否定も肯定もしない、単なる聞き手。鈴音の望む対話の形、否、思いの丈を吐き出す行為】


―――――……今は気にしなくてもいいわ。荒療治なんてろくなものじゃないから。
どうしようもなくなって、それを望むならその時に教えてあげる。
(死にたいと言って、殺してあげようとしたらやっぱり死にたくないと叫ぶ子がいたから)


【あくまで能力による荒療治、記憶を奪うという行為は取らない方針らしい。でも、鈴音がそれを望むなら―――?】


958 : ◆1miRGmvwjU :2019/02/07(木) 23:38:12 x85zdLZI0
>>923
>>924

【音もない温度を残したまま、スチール缶は白く大きな掌に包まれた。 ─── 霑れた青い隻眼。落ちるのはただ星屑のみだった】
【堰を切ったように儚い光の白雨は止めどなかった。幾度となく泣き腫らした少女を囚えてきた碧色の虹彩は、今宵も全てをその水底に沈めていく】
【それは流れる随喜の涙であり、追憶の星屑であり、見つめ合う刹那に交わす凡ゆる情念であった。 ─── 幾度なく慾望を打ち付けた細い腰を、欺瞞のように抱き寄せて】
【だのに互いに体重を預けあっているに違いなかった。女にしては余りに高すぎる背丈を、ごく長い二ツの脚で支えられる筈もないのだから】
【 ─── まして、夜空に浸して大地に埋ずめた想い出を、取り出す身体が震えぬ筈もなかった。それでも涙を流さず、ひどく抒情的に咲うのは、きっと】
【暗い缶の底に澱んだ粉っぽいココアにそっと唇を寄せる頃には、とうに冷たくなっていた。それでも一思いに飲み干すならば、深く甘い嘆息を漏らしていた。ならば】


    「 ────…………… 。」「 ………… ええ。」「私もよ、 ……… かえで。」
     「愛してるわ。」「大好きなの。」「ずっと、ずうっと、 ───…………。」


【熱した砂糖を蕩かすよりも飴色の声音は、瞬きの間に散りゆく流星さえ、その内奥に絡め取るのだろう。缶を包んだままの掌は、行く先を失って】
【然して長い上背を抱き寄せられるのであれば、宛先など無くとも幸福だった。 ─── 幽かに背筋を震わせて、きっと少女の望む通り、腰を折る】
【同じ背丈になれば、ただ涙に慄く声を慰めるために、少女のせなと薄藤色を、柔らかな片掌が撫ぜるのだろう。涙と嗚咽をどれほど流しても、この白銀が全て湛えるのだから、それで良かった】
【 ─── 泣き腫らした少女を見つめるのは青く潤んだ瞳だった。慈母のような微笑みだった。穢れひとつない白銀の髪が、ヴェールのように陰翳を飾っていた。星降る夜と咲き誇る残雪に祝福されて、それは密やかな誓盟だった】


        「 ……… 安心なさい。」「私は、 ─── "ひとでなし"、ですから。」


【そうして、深く深く、唇を奪ったなら。アリアが捧ぐのは少女の望んだ口付けだった。緩やかにシャッターの落ちる音がした。三脚に預けた一眼レフが】
【果てしない流星の夜空と華やぐ雪化粧の大地、 ──── 女王にも似る月光を背景に、影色に立つ二人のキスを映し取るのだろう。】
【互いに首を傾げて、互いの髪先が絡まり合う、互いに深く嵌め込むようなキスだった。爪先を伸ばした少女と、上体を曲げた女の、求め合うシルエット。午前5時16分。写真に刻まれたのは、星雨の消えゆく時刻】


959 : ◆DqFTH.xnGs :2019/02/07(木) 23:40:50 2EEDGTFE0
>>953

【────ぱしゃん】

【歩みが止まる】

【振り返ることはなく】

【それでも、語る声には明るさが紛れ始めていた】



…………うん。…………、…………ふふ

あなた…………、なんだか…………ママと、似てます



“教会”────、後は、…………水の国の、議員さん

“ヨトウ”に多いって…………それと、それと…………



【いくつかの固有名詞が羅列された】
【少女が知りうる限りの、<円卓>の人々】
【大手企業の名もあれば、そうでないものも】

【玉石混交だった。大物も小物も入り混じり】
【けれど彼女が紡ぐ以上、それらは円卓や戦争の関係者のはずで】


……………………、ありがとう。お姉さん

<円卓の騎士>には、気をつけてください…………ね

<騎士>たちは、…………<円卓>の……、戦力

ランスロット、マーリン────伝説の騎士の名前を真似っこした、13人

あの人たちは…………、とっても、強い人たちばかり、……だから


【最後にひとつ。<円卓>と戦う上での不穏因子の存在を告げ】

【そのまま、少女は人混みの中に消えていった】


/お疲れ様でしたー!


960 : 名無しさん :2019/02/07(木) 23:53:49 iJqIovGE0
>>957

【ぽつりと小さな吐息が漏れた、言葉を探すような沈黙。探すべき言葉は死屍累々のさなかにうずもれているから、簡単に見つかりはしなくって】
【だから途方に暮れる、ましてやどれだけの言葉を並べなくてはならぬのだろう、すべての前提を共有しようと思うのなら、それすら、、絶望的過ぎるから】
【――だから可哀想にだなんて言われるのは仄暗く甘美であった。どこまでも少女は清廉潔白から程遠い。黒い髪と白い肌はこれ以上なく白黒つけているのに、中身は真っ赤な溶岩みたい】
【怨んで憎んで燃え滾る"祟り"の全部と分離されたのだとしても、鍋の焦げ付きみたいに抱いた感情までは消えてくれないから。むしろ――発散する方法をなくしたかのよう】

――――――――――、いまのわたしは、もう、なにも、なにも、ないの……。

【なんにもできるような万能性を手に入れた少女の望みは何一つ叶わないまま、そうしていつしか、抱きかかえた力すら喪われていた。後に残るのは溶岩すら抜けたがらんどうの空間】
【故に悲しむのかもしれなかった。どれだけ身を焼き尽くす猛毒なのだとしても、何一つない空っぽのがらんどうと比べて、どっちがマシかなんて、きっと決まっているから】

――――、もう、わからないよ、――わからないの、――――――、仲間に、いれてほしかった、それでもいいよって、――、
ここに居るのに、それがだめなら、わたし、なんのために、

【ぐちゃらに絡まった感情の先っぽなんて見つけ出せない、がらんどうの中はほんとうはそうじゃなくって、一面に、こんがらがってどうしようもなくなった色とりどりの毛糸が詰まってて】
【お洋服を編もうにもお帽子を編もうにも先端が見つからない。お終いだって見つけられない。こちらを手繰ればあちらと絡んで、あちらを辿ればそちらが絡む。そういう地獄みたいに】
【――けっきょくくだらないことを言っているばかりだから、みんなだって彼女の言葉を聞かなかったのかもしれない。或いはもっと、こうしたいって気持ちがあったなら、――なんて?】

【"そんな"言葉もまた劇物であるのなら、】

【――――――だから頭を伏せてしまう。体育座りの膝の中に小さく収まって、全部の世界を拒絶する。一人きりになりたいのかもしれなかった/一人きりだなんて死んでもなりたくない】
【荒療治だってなんだっていい気すらした。こんな世界の何か一つでも"よく"なるなら。そもそも彼女はその内容すら知らないから。――知ったとして、どうするかは、まだ分からないから】


961 : ◆1miRGmvwjU :2019/02/08(金) 00:20:00 x85zdLZI0
>>925


「利潤の為の手段。」「 ─── 成る程。実に全く、宗教家らしい聡明な手法です。」
「いずれにせよ、"結果は手段を正当化する"。 ……… いやァ、結構な事ですな。」「魔能者たちへの謂れ無い弾圧が止むのであれば、これに越した事はない。」


【疎わしげな視線を歯牙にもかけぬよう鷹揚と後藤は頷いた。組んだ掌を解き、無精髭に人差し指を添えていた】
【その言葉に皮肉や軽蔑の温度は介在しなかった。だが字面通りの手放した賞賛であるとも述べ難かった】
【 ─── いずれにせよ、青年の言葉が"本題"に入るのであれば、彼は薄笑いを幾らか驚かせるのだろう。そうしてまた、ごく軽率に唇の端を吊り上げる】


「 ……… それは渡りに船のお話だ。」「 ─── まったく丁度、我々も彼らへの宣戦を予定していた所ですよ。」
「本来ならば我々は上意下達の命令を良しとしませんが、結果として命令に従う形となるなら、その限りではない」
「法曹の人間には腕のいい知り合いも居ます。そして実力の行使であれば、我々が如何に長けているかは、貴方もよくご存知の筈だ。」

   「仰せの通りに、枢機卿。完膚なきまでに、彼らを処断してご覧に入れましょう。」「 ─── です、が。」


【その表情のまま、 ─── 後藤は言葉を止めた。焦茶色の濁った双瞳が、微かに上目を向けるような慇懃さで、マーリンを見つめる。】


「"狡兎死して走狗煮らる"。しかし繰り返す通り我々は狼だ。」「少なくともおれは、同じ言葉を連ねる事に抵抗のある人間ではない。ずぼらなものでして。」
「古くより貴やかなる方々は鷹を愛で、鷹狩りと称して共に狩猟を楽しむと言います。 ─── そう、"楽しむ"のです。"用いる"のではなく、楽しむのですよ。」

「なにぶん血生臭い獣ですから、よもや鷹と等しい扱いをしていただきたいとは申し上げません。 ……… ただ。」
「虎は死して皮を残しますが、狼が死して残すのは、決して皮だけでは有り得ない。どうか重々、胸の内に留めていただければ幸いです。」


【 ─── 言い終えたなら、また後藤は幾らか肩の力を抜くのだろう。詰まる所それは楔を刺す行為だった】
【"能力者"の集団である八課を徒らに解体するような愚行を眼前の青年が犯さぬ事を、後藤の気だるい視線は知っていた。だとしても】
【知れぬ全容に対しては、如何なる状況の変化も有り得る話だった。何より彼らは決して反りの合う指導者同士では有り得ないのだから】


962 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/08(金) 00:27:31 JPOKnE/c0
>>960
【出会ったばかりのキャロラインの言葉なんて紙切れ一枚よりも軽いし、一円玉よりも価値がない】
【―――――解りきっている事。ただならぬ背景、煉獄の残り火は燻り苛んで。ともすれば言葉ではなく身体で伝える他無かった】
【でもキャロラインはそうしない。親密な間柄でも無いし、そんな間柄になろうとも思わない】
【虚無に満ちたペシミスト。そんな彼女からすれば、さっさと"荒療治"の一つでも施してどこかの捨てればよいだけなのだから】


―――――だったなら、それはもう世界はアナタを拒んだというだけのこと。
力で屈服させて謝らせたりするような我が儘な輩を仲間の輪に入れてくれる訳がないじゃない。
駄々をこねる子供と一緒。逆恨みして僻んでるだけの子供―――だったら、何処にも居場所なんて無いわ。


【ずばっ、すばばばっ、すばばばばっさり、と】

【冷淡な口調、とりつく島もない冷悧な言葉。突き放すような氷の視線。それは切れ味の鋭い刃で、癒えぬ/言えぬ病巣ごと乱雑に切り裂いて】

【―――否定するんだった。白神鈴音の願いを、祈りを、ぜんぶ、ぜんぶ、そう、ぜんぶ】
【そうしたら―――キャロラインは、顔を伏せる鈴音の頭に手を乗せる。やさしく、やわらかく】
【それはDV男が見せる飴と鞭に似ていた。違いは肉体的暴力が伴わない事と、"そういう"関係では無いこと】
【それでも頭に手を乗せて、ぽんぽんと羽よりも柔らかく叩くなら―――告げる】


ねぇ、リンネ。今の苦しみを全て取り除けるなら―――荒療治を施すけれど。

今のアナタがずっと項垂れてたって何の解決もしないもの。仲間外れにされた挙句、"絶交"されるのが関の山。


963 : 名無しさん :2019/02/08(金) 00:41:21 iJqIovGE0
>>958

【涙に濡れた頬っぺたがどこまでも寂しそうに、どこまでも嬉しそうに、かたどられていた。いつか自責に踏みつぶされて拉げ下向くしかできなくなった眼差しすら、綻び】
【だからうんと背の高い貴女でないとならなかった、青い瞳を見つめたかったら上向くしかなくて、でないと人はきっと生きていかれないから】
【――抱き寄せられるのなら身体を預ける/預かる。世界一の錬金術師が一面に咲き誇る花を全部摘み取って煮詰めたとしてもその咲いに及ばぬと信じていたし、そうであるべきで】

【合わせてもらう目線の高さで見つめ合うのも、その声を耳元で聞くのも、――薄藤から背中までを一続きに撫ぜられるのも、彼女は好きだった。まるで母に甘える仔犬みたいに】
【ある日唐突に喪われたものを埋め合わせてくれる人を貴女と定めたのなら、自分だってそうなりたい。怖かったら抱きしめてあげるから。そうしたら怖いものなんてないから】
【自分がそう躾けられたみたいに。――怖がりの泣き虫さんだって知っていた。ならば抱き留めた指先、ごく優しげに頭を撫ぜるのだろう。だからきっと涙は気づけば止んでいて、】
【――其の代わりに手を取っていた。小さな掌をそれでも上手に当てはめて、親指で手の甲を撫でている。強いて言えば恥ずかしい告白の照れ隠し、まだ気障なままじゃいられないし】
【――――そもそもそんな風に云うには可愛らしすぎた。おしゃまさんがお砂場のお城の前で結婚式をやるかのような拙さとあどけなさ。せめて頬の涙だけ、拭ってしまって】

――――――――――、ふふ。とんだ狼さんですね、ですけど、アリアさんこそ、安心したらよくって――。私は狼のお腹に石を詰めたり、煮たり、しませんから。
だから――、――、だから、ずっと、私に笑ってほしくて、――。一人ぼっちに、しないでほしくて――。――"みんな"みたいに、居なくならないで、ほしくて。

ぜったい、――ぜったい、ぜったい、約束、してほしくって、――――――、

【だのに、すぐに濡らしてしまうのだから。慈しむように撓めた笑みの角度が拉げてしまうなら、長い睫毛が震える。甘い色したスズランの声が崩れ落ちて、】
【であれば、よほどあの日の言葉が刺さったのだと見えた。――未だに泣いてしまうくらいに怖かったのだと遠巻きに訴えていた、だからきっと慰めてほしいんだ、なんて?】
【きゅううと喉の奥がねじくれるような声を漏らして誓いを強請る。――ならば口付けを受け入れるのはごく当たり前に。涙粒を孕んだ睫毛を震わして、いっぱいいっぱい、刻むよう】
【何があっても忘れてなどしまえぬように誓わせるし全く同じ言葉を誓う、――ずっと笑いかけるし一人ぼっちにしない。それだけじゃ足りないなら、文言なんていくらでも書き足してしまおう】

【(私より先に死んだら許さないから)】

――――ね、アリアさん、ついでだから、朝焼け、見ましょうよ――。それまでアリアさんのお話いっぱい聞くの。

【夜明け前の寒さに吐き出す白色は、その瞬間同じ輝度であるのだろう。二人の体温の平均値の色、だって私たち二人で一人だから】


964 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/08(金) 01:01:55 icVuFiXA0
>>931
【何かが違えば、倒れていたのは白桜だった】
【意識を失ってなお、口にされるのは姉の呼び名】
【―――少しだけ羨ましかった。そして誇らしかった】
【そんな折だった、繋いだ手が離れたのは―――】

―――むぅ、それは言わぬが、華。
沈黙は金、雄弁は銀……、どちらにせよ金も銀もあげられない。

言質を取らなくたって、私たちはにげない。
だから、聞かせて。海軍なんてどうでもよいけれど。

お姉はんの愛する桜桃/ゆすら までも戦禍に巻き込まれるなら。
お姉はんそのものに危機が迫るなら―――私は妹としてたたかわなきゃ、いけないから。


【徐々に白くなりつつある髪、琥珀色の瞳は確かな意志を表して】
【杉原を見据える。そして促す。―――心から慕う姉に魔の手が迫るなら、その時こそ、力の使い時だから】


965 : 名無しさん :2019/02/08(金) 01:07:17 iJqIovGE0
>>962

【"その"言葉に、例えば、泣いたり、怒ったり、耳を塞いだりができたら、どれだけ良かったのだろう。無慈悲すぎる一言、切り株より出てきた蘖すら断ち切るように】
【色違いの眼差しを微かに見開いたのが唯一であり最期の仕草であった、――薄い吐息は詰まることもないまま平坦に繰り返されていく、すぐ隣の置かれたマグカップの水面すら揺らがず】
【ただ凍り付いてしまったみたいに。今更凍り付いてしまったみたいに。どうせ顔を伏せているのなら、そんな仕草も伝えないのだろう。黙りこくるのが処世術だと信じた末路】

――――――――じゃあ、なんで、わたし、うまれたの

【伏せたままの顔より視線はいつかを見つめていた、神様との約束を思い返していた。百年間。――人間の人生一回分を過ごしたら、それから、身体と魂とを、返してあげる】
【――神様が望んで願ったのは"彼女"であって"彼女"ではなかった。同じ身体と魂を持っていたとして、時代と環境とが変われば、容易く心は違えてしまうから】
【――――だから彼女は神様に望まれて生まれながらにそうではないモノ。むしろ神様の願いを邪魔したモノ。優しい神様の恩情によって命を許されたモノ。なら?】

【"わたし"の居場所はどこだろうって考えた時に、――"ここ"だって言えた場所。疑わずに信じていられた場所。お父さんとお母さんの居る、あの日の、――(もう十七年以上も前になる)】

【ならば頭を撫でられることに何の意味もなかった。安らぎもしなければ不快でもない。空気が触れているだけみたいに何もない。だからきっと世界だって無意味なんだろう】
【ぜんぶが無彩色の世界だったらよかった。そしたらきっと何も妬まずに済んだ。そんな場所で幸せになりたいなんて思う人はきっと誰も居ないのだから】
【誰も幸せじゃないならわたしだって幸せじゃなくって普通なんだから。みんな白黒遺影になって世界だって滅べばいい。――滅ぼせばよかった。こんな世界。後悔が遅すぎて嫌になる】

――――――――――――――――――――――――――――――――もういいよ、なんでも、――――もう、いいよ。

【(がんばったのに)】


966 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/08(金) 13:54:47 6.kk0qdE0
>>933

「アカシア!!アカシア!!」

【雉は、余りにもあるその状況に錯乱を隠せないでいた】
【駒子の方が、この場に置いては幾分も冷静であると言えるだろう】

「……!?駒子?だ、ダメ!戻って、コイツらが約束を守る保証なんて……」
「待って、待って!幾ら合歓が、止木が居ても、危ない、危ないから!」

【駒子の言葉の意味は、錯乱している頭でもよく解った】
【だが、幾ら保険である止木が居たとしても、未知に過ぎる相手だ】
【危険に過ぎる賭けで、必死の呼びかけで止めようとするも、駒子が足を止める事は無かった】

「良し良し、良い子だ、初めからそうすれば良かったものを……」

【指揮官と思しき水兵は、そのまま駒子に近づき】

「良く見れば、中々に可愛い顔をしているな……これは、過ぎた悪戯のお仕置きも兼ねて、色々と言う事を聞いてもらうしか無いな……」

【生唾を少し飲み込み、ニタリと口元に厭らしい笑みを浮かべて】
【徐に、駒子の身体に触れようとする】

「放す?何を言っている?サンプルは多ければ多いほど良いに決まっている、其れが任務だ、我々櫻国魔導海軍のな、2人とも連れて行くに決まっているだろう!」

【舞台役者の様に、大仰かつ無防備にこう言って】


967 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/08(金) 13:57:55 arusqhls0
>>956



【瞬きの隙間に空中を蹴る】【肉薄する人狼】【振り上げた右手に暴力的な筋肉が見える】
【唸り声】【身体の底から響き渡らせる】【鼓膜を強引に揺さぶる程の呪縛】
【本能的な恐怖を与え】【貴様は被食者で】


【 ──── 俺が捕食者だ、と】【言外に伝えた】



貴様の匂いは覚えた、──── 何処に居たって、失わない


その首筋に牙を立て
腹を割いて臓物を喰らう
骨の髄まで残さず舐り


貴様の痕跡すらも飲み込もう




──── それが、狩られる者への礼儀だ




【右腕を振り下ろす】【獣性を宿した爪が見えた】【猛獣独特の鋭利さ】
【出来損ないの悪夢が如く】【苛烈に振り下ろされる手が首筋を狙う】【突き立てられたなら】



【その刃は容易に皮膚を裂き】【血管を抉り】【肉を削ぐ】
【砕けた骨が周囲に飛び散り】【白い華を咲かせよう】



【何度も】
【何度も】
【何度も】



【奇妙に鼻をひくつかせて】


968 : ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/08(金) 14:15:00 arusqhls0
>>961

【どうだか、と内心侮蔑する、──── 彼はまた、後藤から優越の安心感を嗅ぎ取った】
【〈異能主義〉の理念から言えば、後藤は最良の人間と言えた、能力を持ちながら、正しい場所にある】
【それでいて、能力を持つ者を正しい場所に配置している、──── これ以上無い体現者であった】

【だからこそ、"気に入らない" 同族嫌悪という言葉が示すのは、その奥に真実を内包する】

【即ち生存競争である、と、似た種類の人間は、本能的に相手を嫌悪する、それはつまり】
【あまりにも高度な自我が他者を否定するのであった、相手を生かしておく事に、深い苛立ちを覚えて】
【示して曰く、互いが互いを排他的にしか捉えられない、──── そんな所か】


──── ふん、まどろっこしい事言わずに "邪魔すんな" で良いだろう?
おっかなびっくり上の顔を覗うって面か? ふてぶてしくふんぞり返ってる方がまだ可愛げあるわ
こっちも態々手を出すつもりはねぇよ、〈騎士〉連中は兎も角、俺個人の手持ちの戦力はそう大した事ないしな

だから、アンタらが成果をあげ続ける限りは、俺としては "使い勝手" がある、それなりに飢えさせるのが調教のコツだ
アンタらも、俺を通じて切れかけてた〈円卓〉と通じるのも利益を見いだせるだろう、必要な分は共有してやる
俺はアンタらが気に入らない、信頼しない、──── だが、信用はしている、そんな所か


【だが、──── と一音節置いた、今度は彼が、唇の端を持ち上げて】


奇妙な話だよな、俺が "目障り" だと思う理由は明らかだろう、──── "オーウェル社" みたいな連中をな
〈異能主義〉 に真っ向から反発してるしな、反異能のガチガチの科学系企業だ、目の上の瘤どころか悪性の腫瘍だろ
だから切除する、院長は俺で、執刀医はアンタらだ、──── と、ここまでは良い

だが、解せないのは "アンタらが宣戦を予定していた" って所だ、少なくとも俺の見立てでは、アンタらにその理屈は無い
イデオロギーの対立で無ければ利益の奪い合いでもない、そこにらしい理由が無い以上、俺は疑うしかない訳だ

それとも飢えた狼は、辺り構わず見境無く食いつきにかかるのか? 狂犬病の犬だろ、そいつは
示してみろよ、その正当性を、──── 場合によっちゃ、プラスにもマイナスにもなるが


969 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/08(金) 14:20:14 6.kk0qdE0
>>964

「……解りました」
「貴方達は、本物の戦士の様だ……」

【少し呼吸を整えて、杉原は白桜を見た】
【はっきと答えられたその瞳は、紛れもなく戦う者の眼で】
【誇り高き者の眼だ】

「和泉文月が、この国に潜入していた海軍陸戦隊諜報部、厳島中尉や那須曹長の下に戦技教官として派遣されたのは、先程も伝えた通りですが」
「彼女の着任から数ヶ月の後、海軍連合艦隊司令長官、土御門晴峰元帥が御病気の為一時的に退かれました、代理として着任したのが現司令長官、蘆屋道賢海軍大将です」

【ニュースを、或いは街頭のモニターの中継を見ていたら解るかも知れない、これまでに2度、演説を放送した櫻国海軍の提督、彼こそが蘆屋道賢であると】

「彼には、ある野望がありました……妖怪や妖魔を使いホムンクルスを使った非人道的な新鋭兵器、魔導イージス艦を主力とした艦隊により、この世界の軍事バランスを崩壊させ、魔導海軍が世界の制海権を得る事です」
「この野望の為に、今まで土御門晴峰元帥に仕えていた将校達を次々と粛正、秘密に気が付いた、厳島中尉達は身柄を捕縛されました」
「和泉文月もまた、何かの秘密を握っている物と見なされ、現地徴用兵であるリオシア二等兵共々、身柄を追われる身となりました」
「無論、名目は参考人としての身柄の保護ですが……実態は中尉達同様に、身柄を抑えるのが目的です、何を知っているか、誰から何を聞いたのかを、拷問同然の聴取で徹底的に聞き出して……後は言わずもがな、ですね」
「幸いにも、リオシア二等兵も和泉文月も、上手く逃げている様ですがね」

【ここまでは、大丈夫ですか?と白桜を見て】
【和泉文月に関係した話のみ、最初に優先的に伝えた形になる】


970 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/08(金) 18:00:56 7BKb5Ysg0
>>967

(お互い一打ずつ……まぁあってないようなもんだろ
 問題は完全に身体能力で負けてるって点だ。魔力を入れたってそれは同じこと
 だとするならば、技量で打ち勝つしかないが…………)

【大急ぎで勝ちの目を探すが、どうにも状況が悪すぎる】
【とにもかくにもあらゆる点で相手の方が上回ってしまっている】
【残された優位性は技量のみ。しかし、それを使うためには条件があった】

(人狼、か。二足歩行に関節の箇所。大体において人間と変わらねえとは思うんだが……)

【この少年が他の能力者に優っていると言える部分。それは“人体破壊”についてだった】
【どこをどう破壊すればどの機能がどのように止まるか。その殆どについて彼は熟知していた】
【何故、神父がそんなことを知っているかはさておき──問題は相手が人狼であって人間ではないということだった】

ま、やるしかねえな……

【柄を数本、右手に握り込む。相手の身体構造を見破る方法はない】
【であれば、試す他なかった】

ポエムの発表なら余所でやりな、野良犬がぁ!!

【強靭な爪に対して、あえて左腕で受け止める。猛獣の刃が皮膚を肉を貫き、骨さえも打ち砕く】
【激烈な痛みを押しのけて柄に魔力を注ぎ込み刃を形成。切っ先を相手の右肩部めがけて突き出す】
【狙いは単にダメージを与えることではなく、それより下の腕部を動かせなくすることにあった】

【肩部には腱や神経といった腕を動かすのに必要な部位が固まって存在している】
【神父に突き出した剣はそれらの箇所を正確に切断するように向かっていった】
【だが、あくまでそれは人間の場合の話だ。人狼であれば箇所がずれることもありうるし、避けられればそれまでだ】

【いずれにせよ成否に関わらず、神父は剣を手放してその場から即座に跳躍】
【向かい側にある建築物の屋上まで壁を蹴り上がっていく】


971 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/08(金) 19:36:29 WMHqDivw0
>>959

教会、……………………、…………。

【その単語を聞くなり急に、萎れるような息遣いを聞かせた】
【何かしらいい印象なり、思い出なり、そういうものがないのだろう】
【ただ、次の瞬間にはその呼吸を飲み込むような音も零すから、聞いていないということはない】
【気をつけろ、と言われた騎士なるものには――やっぱり首を傾げるのだけど】

…………ん。おっけーおっけー、そいつらをブッ飛ばせばいいワケね。
じゃあ未来で待ってて。平和な世界が追っかけにいってあげるから、……、

…………あれ? でも今から未来を変えたら、あんたは、
えーっと……パラレルワールド? になるんだっけ? それで? あれ??
だから待ってても意味ないんだっけ、あー、んぅー……、……まあいいや。

どっちにしたって――――――――――――――――また、ネ。

【開いた傘がばたばたばたっと水滴の群れを受け止める音、響かせて、】
【こいつもまたどこかへ消えていくんだった。残すのは再会を願う笑顔だけでいい。――、】


//おつかれさまでした!


972 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/08(金) 19:48:16 WMHqDivw0
>>966

【触れられたのは頬だったろうか。それとも肩か。それとも、ひらめくスカートの下】
【厚いタイツのさらさらした布地を撫ぜられるだろうか。いずれにせよ駒鳥は歌わない】
【口を引き結んで、じっと大人しく、羽搏きすらしなかった。数拍の沈黙のあと、】

そう。じゃあ、コウショウ……カツレツ? だよ。
コマは行かない。アーくんも連れて行かせない、勿論キーちゃんも。

サクラ? マドウ――――はんっ、ドードーと名乗っちゃって!
いいのかなーっ、コマはバカだからよくわかんないけど!
キーちゃんもアーくんも賢いんだから、あなたたちの名前ちゃんと覚えられるんだから!

したらどうなると思う? ――コマたちんトコのエラい人に、あなたたちの情報、ツツヌケなんだからね!

【選んだのは、相手の動揺をなんとか引き出さんがための発言。……だがしかし】
【ない頭をオーバーヒート直前まで唸らせて、この程度しか言えないんだからどうしようもなかった】
【この小鳥の底などたかが知れるようなものだ。けれど、彼女は自分が一人ではないことを知っている】

【――――――――ちら、と雉を見やった。暑くもないのにつうと汗が流れている】
【ここら辺が自分の限界だから、何かしら助け舟を出せるなら出してほしいと。そういう類の視線】
【同時に、何か期待をしているようだった。――わたしたちに与えられたチカラが、あるはずよって】
【たとえば、二人以外誰にも悟られぬテレパシー。たとえば、二人の間の距離を無くす瞬間移動】
【二人が揃っているこの場でなら、まだ手の内のばれていないうちに、何かできることがあるんじゃないかって】
【そう信じていた。裏を返せば、自分たちにはそれしかないから。依存するのにもどこか似ていた】


973 : アルバート・ウィンチェスター ◆/iCzTYjx0Y :2019/02/08(金) 19:48:30 lp4TKcVo0
>>942

【"ウヌクアルハイ"を知っている人を、探し出せたと少女は語った。まさに神通力、神の御業のなせる奇跡。】
【信仰とは"知る事"から始まる―――認識し、理解し、そして自身の中に取り込んで。頭の一番上の方に、"置かせてもらう"。】
【そうやって生まれるのが神との繋がりである信仰だ。であれば、知らない人間には、語り掛ける事も探し出すことも出来ないのは、自明の理。】

……、なるほど。君なりに"彼女"の捜索はした、という訳だね。
しかし見つからない―――という事は、世俗とは掛け離れた場所に"閉じ込められている"―――可能性も、高い。

しかし君は、今"わたし"を知っている人……と、言ったね。それは"ウヌクアルハイ"としての君、なのか。それとも―――
鈴音君自身、なのか。前者であればセリーナ君が見つからない事には、納得がいくのだけれど……後者も含むのであれば、……或いは。

―――、……"最悪の場合"を考えなくてはいけないかもしれないな。
我々が生きるこの世界に―――……"既に存在していない"、可能性についても。


【そうしてアルバートが告げるのは……"ウヌクアルハイ"を知っている人しか探せなかったのか、という質問と】
【もしそうでないのだとしたら、事態は想像以上に深刻で、悲惨な結果を既に迎えている可能性も高い―――という、無情な言葉だ。】
【無論、彼の表情からはそんな事態になっていると、信じている様子は微塵も感じさせない。"生きている"と強く信頼している表情では、あるのだ。だが。】


……あくまで、可能性の話、だがね。


【そこまで、"危惧"はしなくてはいけない。それだけ本気で、動き出そうとしている証拠でもあった。】
【しかし、"鈴音自身"はウヌクアルハイであった時のことを、そう多くは覚えていないのもまた事実、の様であり。】
【それを知りたければ一人、神であった頃の彼女を信奉していた"その子"を探すのが近道であるという―――アルバートは目を伏せ】


……ああ、分かったよ。話してくれて、有難う鈴音君。因みにだが……"その子"とは、
仲が悪い―――のかな。嫌われていると言ったね、神としては信仰されていても、嫌われているとなれば―――……

その子は鈴音君自身の旧来の友人か、或いは神である事を辞めたのを切っ掛けに、君を嫌悪する様になったのか。
詮索する様で申し訳ないが……君自身、君がどういう状況だったのかを、君を信奉していた人間たちがどんな者達だったのかを。

余り知らないのであれば……聞いてみるのも、悪い事ではないのかとそう思ってね。
君自身、既に教団とは関係を断っている状況ではあるが―――どうだい。もう、"過去"として受け入れられて、いるかい?


【無理やり、"カルト"を知っている人物と話をする必要は、無いと思う。けれど、もし。】
【鈴音の中にしこりがあるのであれば―――アルバートは是非、その子と連絡を取りたいと申し出るだろう。】
【実際には、鈴音の返答次第。もう関わりたくも思い出したくもない、という事であればそれまで。だが、そうだとしたら……】

(わざわざ、"信奉していた人物の中に生き残りが居る"となんて、言ったりもしない、はず。)
(だがすべては鈴音君の心持によりけり、だ。―――カルトについては、もっと知る必要があるだろう。)
(セリーナ君の為にも。そして、私自身……この少女と、もっと理解をし合う為にも。きっと……必要な筈なんだ。)

【アルバートはそう考える。せっかく彼女が口に出してくれた情報だ。深入りは深入りだが……無視も可笑しい。】
【そうして、鈴音が答えたアルバートの謝罪への言葉に、感銘を受けて。この子は確かに―――とても、とても。優しく、そして大人なのだ、と。】

……そうだね。私にできるのは、こうして罪を一つ一つ理解していくことと。
それを償う為に、話を聞く事。そして……二度とそうならないよう、動く事。それだけだ。

だから、協力させてほしい。私の当面の目標は、セリーナ君を探し出す事。
君を支え、UTを"一先ず"は通常再開させる事―――勿論、たんぽぽも、だよ。そして。


……―――……。

―――此処からは、申し訳ないが地の国の政治にも関わってくる話になる。
鈴音君、実は……私はね、―――セリーナ君から相談を受け、此処二年ほどずっと、政府と交渉を続けてきた。

―――セリーナ君が、……


          ―――――――――UNITED TRIGGERを、畳む準備をする、為のね。


974 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/08(金) 20:35:25 BhNywCds0
>>765

【装いはべりべりと剥がされるのなら、鈴音の色違いの双眸に映し出されるのは】
【何処までも虚無に満ちた灰色の表情。先ほどまで複雑に混ざり合う暖色と寒色は消え失せて】
【キャロライン=ファルシアの表情から、記憶を奪い去る怪人の表情へ】
【――――つまり、都市伝説で噂される怪人・記憶屋としての彼女の顔色へと変貌を遂げる】


アナタの生まれた理由なんて――――………赤の他人のワタシが知るわけ無いじゃない。
自分自身で答えられないなら、誰に問うたって無駄でしょうに。愚問よ、愚問。


【客観的に告げる言葉。取り付く島もなければ、他者を慮る余地も無かった】
【物腰穏やかな振る舞いをするくせに、その本質は虚無的な悲観主義者だから】
【生まれた理由だって知るわけがないとバッサリ切り捨てるんだった――何処までも熱の通わぬ素面で】

【それでも鈴音の頭に手が置かれているのは、相手が荒療治を望んでの事で】
【そうなら――――やっぱり記憶屋から見た景色も白と黒で色あせて擦り切れている】
【けれど鈴音と異なるのは、記憶屋となった今でも後悔の念なんて無かった事】

【――――――で、あるなら。鈴音の自暴自棄な自殺願望を聞き入れてあげるのだ】
【少女めいた女の喜怒哀楽、25年間の全てを奪って、白神鈴音を殺して白神鈴音ではない何かに仕立てる所業】
【非人道的行為で在りながら、記憶屋にとっては卓袱台返しめいた、たった一つの冴えたやり方なら――】



       ――――Amnesia Syndrome――――



【鈴音の頭に触れるのは、記憶屋の手ともう一つ。幽霊めいた右手、記憶を奪う悪なる右手】
【最初に消したのは二人の邂逅の砌から。そこから遡って新しい記憶から旧い記憶を奪い去る手はず】
【――――順調に鈴音の記憶が奪われていく。文字がびっしり書かれた手帳を白いペンキで塗りたくる様に】
【無表情に"白神鈴音"を構築する記憶を奪っていけば―――やがて、記憶屋の表情が歪み、身体をくの字に曲げて悶え始める】

【………後悔した。甘く見ていた。この女の記憶は人の身では耐えられない程の劇薬】
【――――記憶を奪う事によるフィードバックは今までの比で無いなら、鈴音は記憶屋の手を払いのける事が出来るだろう】
【けれど鈴音がそれを望まないのなら、記憶屋の心が壊れぬのなら、鈴音の記憶を奪う時間はまだ続く。けれど牛歩の如き歩みで】


975 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/08(金) 21:08:01 BhNywCds0
>>969

【蘆屋道賢大将―――確かに聞き覚えがある】

【何時だっただろうか、エーリカと一緒に服を買いに行った時だったか】
【コスプレ衣装ばかりの揃った服屋に足を運ぶ道中に流された街頭モニターの中継】
【聞き覚えのある名前と顔が在って――――胸中が穏やかでなかったのを覚えている】


………蘆屋道賢の世界征服に興味なんて無いけれど。
海軍の内部抗争なんて勝手にやっていれば良いけれど。

――――自分たちの勝手な憶測で、お姉はんにまで危害を加えると言うの?
華の様に烈しく、そして綺麗なあの人を邪な思惑で傷つけようとしてると言うの?

(おい、白桜ッ!あんまりお熱になってんなよ…ッ!また"混ざって"しまうだろッ!
 まだ和泉文月に鎖付きの首輪が付いたわけでも無ェんだから勝手に想像して
 テールライトを真っ赤にして滾ってんなよ。―――アタイらが先にガラ捕えればいいだけの話だ)


……………、だったら、海軍よりも早くお姉はんと会わなきゃ……。
―――、この手を血で汚したとしても、心から慕う人を汚されるよりは、…良い。
………、お姉はんの連絡先、を……教えるから。―――ちからを、貸して。


【そうして白桜の上着ポケットから出されるスマートフォン】
【ぎこちない手つきで電話帳を開いて、画面を下にスライドさせる指先が軈て止まって】
【示される文字の羅列――――和泉文月、と。それを杉原に向けて、見せつける】


976 : 名無しさん :2019/02/09(土) 00:09:11 0uOg83F60
>>973

【――――、こくりと頷き一つ。「うん、した」。神様の目を使って、世界を見渡して。――"あの"出来事は世界中を駆け巡ったから、いろいろな場所、探すことが出来た】
【"なのに彼女は/ウヌクアルハイはセリーナ・ザ・"キッド"を見つけられなかった"。それが一つ事実としてあるのなら、残る可能性は大きく二つ、彼の言うもので正しくて】
【ならばほんの少しの訂正を加えなければならない、彼女の足りない言葉を彼女自身に補わせるのなら、】

"ウヌクアルハイ"を知っている人を、"ウヌクアルハイ"としてのわたしは、探すことが出来た、――、
その中から、わたしが知っているひとを、わたしを知っているひとを、探すことも、――ちょっとだけなら。――、だけど、あんまり、……良くなかった、みたい、
――"すこし"やりすぎちゃったから。……。だから、途中から、やめたの、――。だけど、セリーナのことは、探してた、ずっと……ずっと――。

【曰く、ウヌクアルハイ/神様としての目線は、神様/ウヌクアルハイを知っている人間のみを見定めて。その中から、――"彼女"を知っている人間を探すのは、きっと、全手動】
【――そうして数度試みたこともあったのだろう。ただし結果としては"少しやりすぎた"らしい。何をどうやりすぎたかは知れずとも。――悪いことをしたような目、少しだけ】
【――――だとしても、件の彼女のことはずっと探していたらしい。けれどそもそも神様ですら見つけられなかった。だから、そう、"彼女"はきっと、知らないだけだって、】

【そうやって信じたいから、】

……わたしが、その子の信じていた神様を、だめに、――して、しまった、から、

【旧来の友人ではない。ただし、縁も縁もないと言えばずいぶんと嘘になる。ある意味では少女と蛇神様の関係性に似た複雑さ、けれど、現世では初対面だから】
【――ならばその人物は、彼女が関わる以前よりのウヌクアルハイを信じていたのかもしれなかった。そういわれてみるなら、確かに、サーペント・カルトはある時期から凶悪化して】
【ニュースでかつての信者が証言したりもしていたかもしれない。――――ある時期を境に、突然、恐ろしく悍ましく変貌したと、それこそ邪教と呼ばれるにふさわしい変質を経たと】

――――――――――――――過去、なんだと、思う、――、

【(だって今のわたしは神様でもなんでもない)】
【伏し目が一つ瞬いた。――吐息が微かに漏れ出て、けれど室内であるのなら、無色透明、白くすらなれないまま】
【――そうして、沈黙していた。彼の言葉をあまりに静かに聞いていた。悲しまなかった。怒りもしなかった。受け止めきれないみたいに、素通りしていってしまったみたいに、】

――ねえ、アルバートさん、黒幕って……知っている? ――――水の警察はもう、たぶん、……だめになってて。世界を駄目にしてしまおうとしていて。
"食中毒"のこと、――、カニバディールが庇ってくれたの、……だけどやったのはカニバディールじゃない。スクラップズじゃない。"そのこと"でわたしたち協力していて。
"たんぽぽ"は黒幕にやられたの。――わたしは、そのことで、脅されてたの。麻季音ちゃんを寄越すか、――カニバディールを殺す。でないと、――――――。

――――――ロッソさんは、悪い奴が全部分かって、全員引き摺り出したら、その時がセリーナの出番だって、――、そう、

【小さな声だった。けれどしゃんと筋通った声は、鈴の声質も相まって、静かな室内によく響く。――何かを訪ねていた。普通の人は知らぬ出来事だった】
【ならば彼女が知っているのはおかしくもあった、――、"いつ"からかは分からないけれど、彼女はきっと巻き込まれていた。ごく一部の何か共有している人以外に、話せもせず】
【妄言のようなことを並べ立てるからやっぱり彼女はとっくにおかしいのかもしれなくて、――けれど、やはり、どこまでも真面目な声をしていた。嘘を言わぬ目をして】
【――水の国の警察は腐敗どこか壊死していると。この建物より出た食中毒はそのせいだと。食中毒の後にスクラップズがまるで自分たちの所業のように振る舞っていたこと、あれも嘘だと】
【――――"たんぽぽ"の子供たちを人質に取られていたと。だからきっとその交渉は決裂していた。だって何より彼女は神様として世界から姿を消していたのだから】

そっか、辞めちゃうんだ。

【ぽつと小さな呟き、――そのロッソ/ヒライだって死んでしまった、らしい。誰もそんなことで嘘を吐かないだろう。それすら長い間、知りもしなかった】


977 : 名無しさん :2019/02/09(土) 00:51:33 0uOg83F60
>>974

【――それでも、いくつか、幸せだって混じっていた。けれどそれら全部を足しても、哀しみはちいとも薄められない。それどころか、かえつてその苦味を引き立てて】
【だからきっと彼女は愚かだった。――今度こそ幸せになれるかもしれないって何度も期待した】


978 : 名無しさん :2019/02/09(土) 00:52:26 0uOg83F60
>>977
/途中送信です!ごめんなさい!


979 : 名無しさん :2019/02/09(土) 01:24:22 0uOg83F60
>>974

【――それでも、いくつか、幸せだって混じっていた。けれどそれらを全部足しても、哀しみはちいとも薄められない。それどころか、かえってその苦みを引き立てて】
【だからきっと彼女はおろかだった。――今度こそ幸せになれるかもしれないって何度も期待した。今度こそ。これで。もう。そうやって思えば思うほど、心は腐ってしまうのに】
【泣きじゃくって悲鳴を上げて全部を怨んでもどこかで何か期待していた。――――世界を滅ぼせる神様になって真っ先に望んだのは、誰からも虐められることのない世界だった】

【受け入れてほしい。頑張ったから。認めてほしい。頑張ったから。褒めてほしい。頑張ったから。非道いことをされたくない。頑張ったから。――――――頑張ったのに】

【――――故に、だろうか。彼女は拒まなかった。こんな記憶はすべてすべて忘れてしまいたいのかもしれなかった。どこを間違ったのかも分からぬ二十五年間を】
【それこそ嘘か真か分からぬ都市伝説の怪人に縋る人間みたいに。――彼女は貴女を探してきたわけでは、なかったけれど。"それ"が救いに思える程度には、**したから】

くるしい?

【――――――――――――――、色違いの眼差しが気づけば貴女を見つめていた。けれどもそれ以上のことは何もなかった。憐れむでもなく、怒るでもなく、悲しむでもなく】
【ましてや手を払いのけてやることもない。――――だからきっと彼女は分かってほしい、辛かったねって、大変だったねって、頑張ったねって、言ってほしい】

【――"じゃあ今すぐこんなに可哀想なわたしを抱きしめてよ"】

【いつか白銀の"狼"に告げた言葉も彼女の記憶には残っていただろう。ならばそれが正解だった。それで正解だった。ならば彼女はやはり何もしない、ただ、ただ、静かに、見ていた】


980 : ◆1miRGmvwjU :2019/02/09(土) 13:03:37 E1nVzEpQ0
>>963

【縋られるのだから抱き寄せた。苦しげな滂沱に髪を梳いた。悲しい笑みには微笑をもって答えていた。薄絹のような夜の帳がそれらを皆な覆っていた】
【 ─── 微かに隻眼が見開かれて、そうして悲しげに緩んだ。少女の細い指先に、穢れ一ツ無い白銀が絡むのは、どこか縋り付く行為にも似ていた】
【キスをするのと同じほどに、キスをされるのが好きであることを、少女は知っているのだろう。そういう狼だった。そういう女だった】
【掌を撫ぜる指先へ、白く長い指先が結び付く。愛しげだった。ただ包み込むよりも、なよやかに力を込めていた。言葉ごとに少女の喉から溢れる驚懼には】
【やはりひどく悲しげな眼をして、揺らぐ背筋を慰める。戸棚にパンとワインがあるのだと詐る云為と同義であった。 ─── なのに、紺碧の星空をふたり受け容れる】


「 ………─── かえで。」「ずっと、 ……… ずうっと、一緒よ。」「もう、 ……… 離れたり、しない。」
「この笑顔は、 ……… 貴女の為だけに、有るから。」「 ─── もう、誰も」「貴女の許から、いなくなったり、しないから、 ……… 。」


【懺悔の音階であったのかもしれない。悲しげに笑う唇に涙が這わぬのは、獣に涙など有り得ないためだろうか】
【どうあれ瞬きと共に開かれる唇からは甘美なリップノイズがした。剥き出しの心臓を搦め取る粘つく糖蜜】
【ならば口付けの執拗さと濃厚さも予感させて、 ─── 事実その通りに唇と舌先と唾液は少女を犯した。疼く傷痕を互いに遺す首筋で、貴く煌めくお為ごかしの艶髪】
【畢竟は少女の震えを慰めようと、腰から抱き上げて爪先の付かぬ支配と服従のキッスを味合わせるのだから、 ──── それだけで果てれば良いと、願う/呪う】
【私たちの味方は、もう星々だけじゃない。(だから貴女の命さえ、このキスの間に奪う苦しげな呼吸のように、呑み込んでしまいたいの)        そうして】


        「 ───……… そうね。」「朝ご飯は、フレンチトーストと、よおく冷えたミルクと、キャラメルのポップコーンがいいの。」


【 ─── 少女の涙が乾くまでキスは続くのだろう。すれば碧色からも悲しみは消えていた。】
【垂れる唾液を軽く口付けて啜る。爪先を土の上に下ろしてやる。ひどく淫靡な笑い方をしていた】
【「子供の頃、よく食べていて。」 ─── それなのに語るのは想い出の追憶でしかないのだから何処か歪んでいた。最期の星屑が地平に消えれば、東の空が淡く色付く】


981 : ◆1miRGmvwjU :2019/02/09(土) 13:33:12 E1nVzEpQ0
>>968



「これは失敬。」「 ─── 簡潔に述べるのは余り得意ではないのです。」「しかし、ご理解いただけたのであれば、それ以上の事はない」
「もしも顔色を伺うのであれば、嫌味や忠言など呑み込んでしまいますよ。」「まあ、 ……… おれなりの誠意と見て頂ければ、幸いです。」


【申し分の立たぬように後藤は笑った。 ─── やはり続く言葉は迂遠な物言いだった。そういう気質であるらしい】
【何れにせよ彼らもまた、マーリンに対しては同じ態度であった。同志であるが同胞ではない。それ以上の関係を望むこともなく】
【 ─── 然して、能面のような彼の薄笑いも、青年が返す言葉へ機微を示した。そうしてまた、困るように笑っていた】


「 ……… さすがに、慧眼でいらっしゃる。」

「いやあ、かないませんなぁ。」「ご賢察の通りです。我々に、彼らを屠ろうとする直接の動機はない。」
「無論ながら我々が"異能者"を中核とし、なおかつ表沙汰にはならない"死の部隊"であるが故に、彼らを危険視しているという理由もあります。」
「外患誘致も内政干渉も平気でやる異能者の集団。 ─── 存在自体が極めてスキャンダラスだ。矛先を向けられれば、外務大臣の首が飛ぶだけでは済まない。」



「ですが、 ……… それ以上に。」「我々にも通すべき道義がある。決して正義を自称する事はなくとも」
「"黒幕"を打倒する為の計劃を立てているのは、"円卓"だけではありません。 ─── お分かり頂けますか。」



【淀みなく後藤は語って口を噤んだ。 ─── 深く問う事もできるのかもしれない。だが答えぬかもしれない】
【何れにせよ彼の言葉が指すのは異能者であるに違いなかった。どこまでを推測とし、どこまでを疑義とするかは、他ならぬマーリンに委ねられていた】


982 : 名無しさん :2019/02/09(土) 23:15:42 Yvp/hYiI0
>>980

【そうして縋り付く暖かさはきっと何より彼女を安堵させた、そうなるように躾けられていた。その体温と香りと柔らかさとが、触れればそれだけで脳髄まで力を抜かせるから】
【また同時に縋りつかれるのなら、暖かさと甘さと柔肌が全部を受け止める。そうやって躾けるみたいに。少しだって心が陰るなら、いつだって頼ってくれていいの】
【指先同士が絡むなら、お互い深淵まで堕つることはないのだろう。そうでなければ、二人とも同じ深淵まで堕ちるのだろう。――――二人一緒ならどこだって天国に出来るもの】
【繋いだ指先は引き留めるものでありながら引きずり込むものであるのに違いなかった。――貴女がそばに居てくれさえすれば、どんな罪だって、罪だなんて思わない】

――――――――――――――――――――――うん、

【ぜんぶの緊張が解れて天に還るような温度にて彼女は笑うのだろう。涙からすら白く湯気が昇るような夜に、それでも、きっと寒さなんて感じない】
【抱き上げられるのはいつも通りの所作、たらりと疑いなく脱力する爪先は親に抱かれて眠る幼子のようにすべてを信頼しきって、世界すら甘やかに観測するから】
【中から外から鼓膜を直接弄るように音色が響けば砂漠で行き倒れた旅人よりもよほど渇いてしまう、――もっともっと欲しくなって、ずっと奥まで、舌を伸ばして】

【――――――、この人を誰にも渡さない。肺の中の空気はもとより、全身をめぐる酸素すらお互いの匂いだけになるまでの長くて深い口付け、終えるなら、独占欲は夜空より深く】
【果てなきものであるのだろう。だからもうすぐにでも夜が明けることのみが救いだった。深く深くどこまでも高い夜空が白み青く染まりゆくなら、流星すら家に帰る時間】
【どこまでも願われて、呪われて、眼は甘く甘く緩んでいた。背筋を逆走する疼きをそれでも懸命に堪えるのは、――寒すぎる夜の温度がためであるのだろう、から、】

――――アリアさん、フレンチトーストは、甘い派ですか? しょっぱい派? ――そしたらね、今度、そういうご飯にしましょうよ、――。
――これから、そういうお店、探してもいいですし。でも、朝ごはん食べるようなお店に、ポップコーンはあんまりないですかね。コンビニのとかで良ければ、買えますけど……。
それか、どこか映画館で買うとか。もうちょっと待っていたら、開きますよ。そしたらキャラメル味だってきっと売ってて。――、あ。

お家帰るまでにポップコーン買って、それで、フレンチトーストの準備して、寝て起きたら、それって朝ご飯ですよね?

【はたと瞬き一つで何かに気づいた少女は指先を伸ばす、そうしたら唇を拭おうとするのだろうか、きっと貴女自身気づいていない艶めきの一滴、指先に拭い取れたなら】
【いつもの仕返しみたいに指先をちらと舐め取る、――照れ隠しの一瞬をよぎらせたなら、尋ねるのは。けれどきっと甘い方が好きなのだと知っていた、うんと甘くて、薫り高いやつ】
【――ならばそんな朝ご飯今度やってみましょうなんて笑う、「アリアさんの好きだった朝ご飯、食べてみたいですから」――、はにかみの色合いで頬を彩って】


983 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/10(日) 12:41:10 6.kk0qdE0
>>972

【まず最初は肩に触れ、頬に、胸に、最後はスカートの中、タイツに包まれた太腿を秘部を臀部をそのサラサラした生地越しに撫でる様に】
【全く微動だにせずに、何も言わず、声も出さず、ただ黙って耐えて】
【それは、少女にとってどれ程の苦痛であったのだろうか】

「決裂(ケツレツ)だ、何を言っている?元より1人も逃すつもりはない、我々の情報も漏れる事は無い」
「君達は最初から、我々に連行されるより他は無いのだよ」

【駒子の必死の時間稼ぎであった、だが、それすらも一笑に付して】
【だが、ここで動くものが居た】
【駒子のアイコンタクトを受け取った、雉だ】

「(合図したら、行くよ、駒子を助ける、アカシア、そうしたら直ぐにハバタキを使う)」
「(解った、僕も合わせる、雉お姉ちゃん……気をつけて)」

【サエズリで策を話す、2人にだけしか通じないテレパシー】
【それは、この状況を打破する危険の大きな賭け、だが、やるしか無い賭けだ】

「さあ、来るんだ、もたもたとしている時間は無い」

【駒子の肩を掴み、強引に連れて行こうとした、その時だった】

ーーぎゃあああああああッ!
ーーな、何事!?
ーーぐあああああッ!!

「くっ、馬鹿な!刀が勝手に!?ぐっあっ!あ、う、腕!腕があああああッ!!」

【二振りの小太刀は、両端から回転しながら飛来し、次々と此方のに銃を向けていた海兵達の腕を斬りつけ】
【そして、嘴付きの鎖でアカシアを拘束していた副官の腕を切り落とした】
【その小太刀は、紛う事無く、雉の周囲を浮遊し彼女が操っていたそれで】

「アカシア!」
「雉お姉ちゃん!解った!」

【ハバタキにより、アカシアのすぐ前に仁王立ちして、浮遊する和盾を構える雉】
【もう、此方は大丈夫と言う事だろう】

「くっ!な、何と……我が海軍の、陸戦隊が……こんなガキ共に……」

【指揮官と思しき海兵は、たじろぎながら、駒子の前から後退り、撤退を決め込もうとしている】


984 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/10(日) 13:35:15 6.kk0qdE0
>>975

【やはり、と言うべきか、あのモニターに映し出された演説は、白桜も見ていた様で】
【他ならぬ、那須翔子の関連として記憶されていた様だが】
【それ故に、察しはついたらしい、此方としては話が早く助かると言うものだが】

「確かに、端的に言うならばその通りです、が、落ち着いて下さい」
「先に拘束された厳島中尉達も、今は外務八課が救出し、現在保護下にあります」
「和泉文月も、また海軍同様に我々も身柄を捜索しています」
「海軍に捕まりさえしなければ良いのです、その前に我々サイドが彼女を保護しさえすれば……」

【和泉文月に関するならば、海軍の手に落ちる前に】
【そうで無くば、何が待ち受けているか、想像に難く無い】
【そして、それは白桜も同じ気持ちらしく】

「ありがとうございます」

【白桜から出されたスマートフォン、そこに出された連絡先を、杉原は自身の端末に写して】
【やがて、名刺大に折り畳まれたメモ用紙を白桜に渡す】

「此方は、私と軍曹の連絡先です」
「教えておいた方がいいでしょう、力をお貸し願います……和泉文月だけじゃ無い、この国の、そして櫻の為にも」


985 : バスカヴィル ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/10(日) 15:14:21 S/DUh6T.0
>>970



っ────── !! 中々やるな……!! だがっ!!



────── っ!! ──────!!




【神父の刃が人狼を貫く、右肩への一撃、────── 致命傷にはなり得ない、────── だが】
【表情に浮かぶは驚愕】 【まるで糸の切れた傀儡が如く】 【その先に力が入らない】


【異能か、と彼は判断する】 【寸刻の呼吸】 【────── 否、何の匂いもしない、ならば】
【純然たる技術であった】 【交錯する最中での技術】 【どんな技量だ、と苦虫を噛み潰した様な表情で】


【 ────── 半ば落ちる様にして地面に着ち、屋上へと上がった姿を見て】


…………ここいらが潮時か


【小さく吐き捨てる、────── リスクの大きさを考えた、この状態での継戦】
【負けるつもりはない、だが、得るものも等しくないだろう、そう考えたなら】
【くるり、と踵を返し、────── 去っていく、少なくない無念を重ねて】


/こんな所でしょうか! お疲れ様でした!


986 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/10(日) 15:29:45 7BKb5Ysg0
>>985
//お疲れ様でした!


987 : マーリン ◆Dfjr0fQBtQ :2019/02/10(日) 15:29:58 S/DUh6T.0
>>981

【マーリンは沈黙する、伊達男然とした瞳は射殺す様な相似形、────── 示して曰く、その答えに対する不満の表情】


枢機卿連中ならそんな受け答えしねぇぜ、俺の機嫌を損ねるのが分かってるからな、────── はん、そんな奴等に話すつもりもないが
いいぜ、それがアンタらの “返答” っつーなら、一言一句の侮蔑もなく受け取ってやる、アンタにも俺にも意地ってもんがあるだろ、男の子なんだから


しかし、奇怪な組織だこった “水の国” みてーな権威主義で凝り固まった国の機関とは思えねぇぐらいに柔軟性がある
加えて頭に “意思” まで持たせるんだもんな、一経営者として見習いたいもんだ


【笑う表情は銀幕のニヒル、少しばかり自嘲を交えたなら大した千両役者、一つ分の空白を置いて】
【有能な部下はどの組織に於いても必要不可欠な条件であった、しかし、有能すぎる部下は些か始末に負えない】
【だとすればそれを補って余りある程に有能と、────── 或いは】


アンタらは “何処から” 来た? 何処のどいつがこんな連中を集め、組織した?
部分的に手を組むのは良い、だが、俺は気になった事を放置できない人間だからな
────── そんなもんだから教会でもアカデミアでも異端児だったが……まあいい


返答によっては振り出しだ、何処の馬の骨か分からん連中を使うのは危険だと、アンタもそう思うだろう?


【有能性を示しすぎたと言外に伝えた、”外務八課” のバックボーンにまでマーリンの追求が向いたのも反動である】


988 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/10(日) 18:55:02 aV9SxEkE0
>>984

【那須翔子。あの子とは妙な縁があった】
【水の国での怪獣との共闘、そこからの協力関係】
【そして今――この二人と繋がる縁が生まれるのだった】


―――那須翔子も……、無事?なら、あの子にも言っておいて。
「私達"カイ"は今も貴女のための拳銃、引き金を引くのは変わらず貴女の意志」、と。

そして、ここからが本題。

――――私はお姉はんのために戦うのであって、それ以上の強い理由は存在しない。
国だなんて抽象的なもののためには戦わない。あくまで一個人を守るため。

その延長上に思惑が交わるなら、その時はきっと力になるから。
私も、フェイも。……ただ、フェイに頼むならお金の用意だけはしておいて。


【渡されたメモ用紙、そこに記されているのは杉原と百合子の連絡先】
【それをポケットにしまい込んで白桜は立ち上がり、踵を返して、立ち去ろうとした時】


――――、……そこのひとが目を覚ましたなら、伝言を一つ、……お願い。
"文月お姉はんの傍にいるのは貴女の方が相応しい"って。


【自分の意志で命を奪った事実、生前の自分に戻ってしまった事実】
【それが今でも白髪の少女を苛んでいるって知らしめる言葉――、でも意固地でも無くて】
【何かきっかけがあれば、自己否定めいた自虐も鳴りを潜めるんだろう】


989 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/10(日) 19:50:02 aV9SxEkE0
>>979

【頭に触れる手は力なく自由落下の作用に委ねられて、するりと落ちていく】
【キャロライン自身の手も、アムネジア・シンドロームの効果で現出した手も一緒に】

【記憶を遡り始めた時点で死があった。少女が泣きじゃくる場面から飛んで肉体がはじける場面】
【ついで幾多もの縁者たちとのやり取り、エーリカ=ファーレンハイトとの昏い感情のぶつけ合い】
【とくにエーリカの口喧嘩が気休めになる――などと振り返る事になるとは思ってなかった】

【■■■■とのやり取り。その記憶を奪った時は何ともなかった。
 ヴァニラ・フィクション/ありきたりなお話 だったから。しかしその後、記憶の収奪が進んだ時。
 そこから流れる黒色の感情に顔色が悪くなり、表情が歪んだ、景色が軋んでぐにゃりと歪む】

【何人もの男に襲われた時の記憶、魔力を供給される事で生き永らえる少女の魔力供給の切断の記憶】
【特に後者は今までに体験した事のない未知。人が既知にしてはならない未知――本当の死の記憶】
【故に、キャロラインは蹲り、くの字に身体を曲げて、大粒の涙を際限なく流し続けることになった】
【その未知に添えられる既知、希望を願い開けたパンドラボックスの齎す絶望も人の身には辛すぎて】


――――……ぁぁっ、ッ、ぁあああぁっっっ……!!
ぐうっ、ぅあっ、ぁああああああああああっっっ!!!


【声にならない叫び、言葉を忘れたかの様に。言葉を持ちえぬ赤子が何かを主張する為に泣き喚くのと同じ】

【本当に死んだ時の記憶など触れたことが無かったから。生き物全ての終着点の痛みに耐えられるのは】
【――――――誰も居ない。そんなの、人の身では到底耐えられるものじゃないから】
【記憶が一週間で消える記憶屋であったとしても、一週間も持たず、否一日も持たずに心が壊れてしまうから】

          
         【だから、尋ねられる】


                    【くるしい?って】


        【そうに―――】………きまって、ぃる、じゃ……ない。
        ほんとうの、……意味で、……あなたを、理解………したのは
         私だけ……、なんだ、か、ら。――――


【そこから先は言葉にされない。何故なら嗚咽が彼女の言葉を遮ったから】
【それでも涙で濡れてくしゃくしゃの顔を鈴音に向けるなら、色違いの視線とぶつかって】

【よろよろと芋虫の様に這いつくばって鈴音に近づくのなら――抱きしめようとする、でも出来ないから】
【身体を寄せ合うのが関の山だった。決して鈴音に入れ込んだ訳では無かった、そうしないと心が壊れてしまうから】
【いわば自衛だった。自己防衛として、反射としての行動だったけど――そうしてくれる誰かがいる/いたのなら?】


990 : 名無しさん :2019/02/10(日) 21:13:08 imUVOxS.0
>>989

【するりと堕ち行く指先を捉える温度があった、そうして包み込み慈しむように絡み合わせる、まるで恋人たちがするみたいに、――見るなら、きっと彼女は、笑っていた】
【何をされているのか、――きっと分かっていた。秒速で消えていく"自分"をきっと認識していた。しているはずだった。そうだとしても、――そうなのだとしても、或いは、】
【(だからこそ)】

【"普通"に生きることがこんなに難しいだなんてちいとも知らなかった。どうしてみんな教えてくれなかったの。大人だなんて、勝手に、気づいたらなれてるものだって思ってた】
【だけれどみんなはきっと途方もない苦労をしたんだ。わたしは駄目な子だから頑張りが足りないんだ。もっと頑張らなくちゃいけない。もっと頑張らなきゃ、普通にだってなれない】
【普通になりたいって願えば願うほどに普通になれない自分に嫌気が差した。みんなが当たり前に大人になるのを見ていくだけで、拉げそうなほどに辛いのに、それが普通だから、】

【(こうなるって分かっていたなら、生まれてこなかったのに)】

【全部のきっかけはたった一つの問いかけだった。十二歳のある日。悪い施設の悪い大人に殺されたあの日。その瞬間に死にゆく少女が見た夢、けれど実在のやりとり】
【望んだ存在にけれど望まれず宿ってしまった人格を、蛇の神様は消してしまえなかった。死んだばかりで怯え泣く子に、尋ねた一言、――、生きたいか、なんて、】
【――――死にたくない。それが答えだった。だけれど彼女はそれをどこまでも後悔していた。嫌なことがあるたびに。どうしようもない現実があるたびに、】

【(こんなことになるならあの時死んでいたらよかった)】

【けれどそんな言葉をぐうっと呑み込んでいた、お腹がぱんぱんになるくらいに呑み込んでも呑み込んでもなくならないのを、それでも、めいっぱい、頑張って】
【きっといいことがあるから。頑張ったからご褒美だってもらえるかもしれない。仲間に入れてもらえるかもしれない。普通に生きること、できるかもしれない。思い描いて】

【――――――――――そして、ある日。夢が叶った。"叶ってしまった"。人間になれた。人間になった。人間に"なってしまった"。だから、気づいてしまった/ほんとはずっと分かってた】
【白神鈴音という人格は、人間に憧れながら人間を憎悪しながら本当は大嫌いなのを大好きだと思い込んで紛れ込んできた、それで、絶対叶わないって分かって、全部の理由にしてきた】
【何か出来ないことは全部"人間じゃないから"と言い訳する。嫌なことも"人間じゃないから"。理不尽な目に遭うのも"人間じゃないから"。――だってわたしは人間じゃないから】
【何かいいことがあったとしても"人間じゃないのに"とは思えない。そのあとに嫌なことがあったなら当然に"人間じゃないから"と思う。そうやってやってきた、そうやって生きてきた】
【"人間"というものに憧れも絶望も喜びも怒りも煌めきも哀しみも何もかも何もかもを全部押し付けて生きてきた、そうじゃないとやっていけなかった、なのに】

【人間になってしまったなら。――。或いはそれこそ一番の絶望なのかもしれなくて、けれど、"そう"思ってはいけない。だってこの奇跡は、*************、】

/↓


991 : 名無しさん :2019/02/10(日) 21:13:20 imUVOxS.0


――――、うれしい。

【到底"人間"にはできぬ表情をしていた。すべての感情を煮詰めて神様に変質する瞬間を貴女に押し付けたなら、覚えていないはず、だのに、だのに、あまりにも凄惨な笑み】
【抱きしめようとする仕草が届かないのなら、彼女が抱きしめてあげる。ぎゅうっと優しく抱きしめてあげる。――わたしは本当はこうしてもらいたいたかったの(分かるでしょう?)】
【背中を撫ぜる、赤子がミルクを吐き戻してしまわないように。――――記憶屋が記憶を吐き出してしまわないように。優しく指先が背中を撫ぜた、そうして嚥下を促していた、】

――ねえ、わたしの全部、あげる、――わたしの全部を、貴女にあげる、"そう"なんでしょう? だから、――だから、ぜんぶ、ぜんぶ、食べていいよ。
――白神鈴音は貴女にあげる。だから、――わたしを、からっぽにして。

【毒を食らわば皿まで。優しい抱擁はやけっぱちを促していた。思い切ってはいけない思い切りを促していた。崖っぷち、じりじりって背中を押すみたいに。真綿みたいに】
【繋ぎ止めた指先を導くならば、先ほどまでのように自身の頭に触れさせさえするのだ。――。貴女が耐えきれぬと涙する記憶を、わたしは、わたしというだけで背負ってきたから】

【――"わたし"から逃げ出す方法があるのだと知ってしまえば、もう、逃げてしまいたい。死ねないから生きてきただけだった。死にたくないから生きてきただけだった】
【そうして時として生きたくないから死んで来た。――事実彼女は何度も自分で自分を殺していた。それでも生き返るから諦めて生き続けてきた。でも、だけど、そう、今なら】
【空っぽにしてくれたら、"わたし"は"わたし"を辞められるのなら。――。それでも彼女は"わたし"の哀しみをどこまでも理解していた。だからせめて抱き留めてやる腕だけ、慈母より優しく】
【同時に地獄の鬼よりよほど、――。――溺れた人間は藁をも掴むという。きゅうと掴み取ったままの貴女の手、――、その手の暖かさと、未だ濡れた髪の冷たさ】


992 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/10(日) 22:29:49 aV9SxEkE0
>>990>>991

【普通に生きる事の難しさ――そんなのを教えてくれる人も普通じゃないのだ】
【自分だってそうだ。普通とかけ離れた境遇、ある日を境に記憶が一週間しか保てない、普通じゃない子】
【頑張ったって普通じゃないなら普通じゃない事を受け入れれば良かった、術など知らぬ幼子の様に】

【手を離した時点での奪った記憶の中に含まれていたのは、白神鈴音の歪みの本質】
【"人間じゃない"って免罪符(おもいこみ)を都合よく振り回して、振り回されて】
【そのくせ"人間"という存在に全ての感情を押し付けて自分を静めて、やがて"それ"になったなら】

【それこそが絶望―――厄災の詰められた箱に込められた希望という名の絶望】
【いっそ無邪気なら良かった、術など知らなければ。知ってしまう事、願いを叶える術を持つ事】
【―――――――――――、捩れない道理なんて無い、歪な存在にならない術なんて無い】


―――――………っ、あ゛あ゛あっッ!
づっ、ああああっ…………、           だきしめて。


【依然として苛まれ続けている。でも苦悶を浮かべた表情に一筋の安らぎが見いだせるのは】
【鈴音がキャロラインを抱きしめていたから。柔らかかった、においも、ふんいきも―――】

【構図として見れば同い年の女性と女性が抱擁を交わしているだけのもの】
【でも中身は違う。自分で自分を抱きしめる不可思議、自分がされなかった事を自分の手で叶える自力救済】
【だからだろう、キャロラインが口にした言葉は鈴音のしてほしかった答えであるのは――――】


――――――――         ………あなたが、 
       それを、      のぞむ        なら。


【背中を撫ぜられる感触も、鈴音の手の柔らかさも、抱き留められた温もりも】
【全部自分のものだと錯覚してしまえど、彼我の境界線があいまいなものになれど】
【それでも記憶屋としての自分は"まだ"鈴音の記憶に飲まれていないから、口に出された願いを聞き入れる】

【自分の全てを忘れる、どうしようも無い自分を殺して、新たな自分に望みを託す事】
【きっと今までと変わらない。やり方と結果こそ変われど本質が変わらないなら結末は似たようなものになるのだろうか】
【でもキャロラインは都市伝説の怪人・記憶屋であるなら、その願いを叶えるだけなのだ】


――――――………まっしろに、して、……あげる。


【絡まる指先は二人を繋ぐ縁、ならば導かれるのは悪なる右手、記憶を奪う右手であるなら】
【記憶を奪うことによって襲い掛かる激痛を和らげるように柔らかく、柔らかく支えてくれるのだった】

    【(分かるわ、あなたのしてほしかったコト―――だから、叶えてあげるわ)】

【再び、記憶を奪う時間が動き出した。今度は一人では無く二人だったから】
【耐え難い痛みと苦しみであっても辛うじて記憶を奪い続けられる、尋常じゃない程の汗と疲労はご愛敬】
【それだけで済むなら安いモノ。そうしてキャロラインは鈴音の記憶を奪っていく―――彼女の望むところまで】


993 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/10(日) 22:37:53 6.kk0qdE0
>>988

【怪龍との戦い、そして、蟲の魔族との戦い】
【思えば不思議な繋がりだった】

「無事は無事なのですがね……わかりました、伝えておきましょう」

【何やら含みのある言い方ではあるが、そう答えて】

「あくまで、和泉文月の為なのですね」
「少し羨ましく思いますよ、その行動理由は、我々はあくまでも国家の為にしか動けない、それが軍人なのですからね」

【連絡先を仕舞い込み、立ち去ろうとする白桜】
【そこには、純粋に好きな人の為に、ただ1人の人の為だけに戦おうとする少女の姿があって】

「……」
「……ええ、わかりました」

【去り行く最中、頼まれた伝言には、短くこう答えた】
【幾分もの、憂いを含んだ視線で、それを見送り】

「何故、それ程までに……想えるのだ」

【後ろ姿が視界から消えれば、やがて自らも立ち去るのだろう】


//お疲れ様でした
//この辺りで〆でよろしいでしょうか?


994 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/10(日) 22:54:51 aV9SxEkE0
>>993
/そうですね、ここら辺で〆としましょうか
/長いことお付き合いいただきありがとうございましたっ


995 : ◆r0cnuegjy. :2019/02/10(日) 23:59:32 7BKb5Ysg0
【路地裏】

【薄暗く冷えた空気の漂う路地裏に小さな叫び声と怒号が響く】

「てめぇ、能力者だなぁ!? よくも俺の弟分を痛めつけてくれたな!!」

【怒鳴り声をあげていたのはチンピラのような風貌の若い男だった】
【男のすぐ隣では同じような見た目の巨漢が手を押さえて「いてえなおい!」と】
【痛がりながら一緒になって怒鳴りつけていた】

【男たちの前にいたのは一人の軍服姿の女。少女と成人女性の中間のような顔つき】
【薄紫の少し長めの髪が片目を隠す。もう片方の髪と同色の目が困惑げに伏せられていた】

能力者……?
確かに軽く打ち払いはしたけど、
それもそもそも君たちが僕の腕を引こうとしたからであってだね……

「軽く払ったぐらいで“こんな風”になるかぁ!! どう見たって能力だろぉが!!」

【女の反論に男がさらに激昂する。男の言うとおり巨漢の腕はかなり腫れ上がっていて】
【とても細腕の女性が払った程度では説明がつかないほどの怪我だった】
【それでも女は困惑した表情を変えることはなかった。それに男たちがひたすらに怒鳴り声をあげ続ける】

【彼らの声は表通りにまで響いていた。それも“この能力者め”という危険なワードと共に】
【そのせいで道行く人々は聞こえていたとしても誰もが素通りしていた。助ける義理はないと言わんばかりに】


996 : 名無しさん :2019/02/11(月) 00:02:20 imUVOxS.0
>>992

【それでもきっと"憧れた人間"そのものになれたなら、きっと彼女は幸せになれたんだった。当たり前にお父さんとお母さんが生きていて。何もかもが当たり前の人生だったなら】
【だけれど、"それ"は"人間"に付随するものじゃないのなら。人間になったからといって幸せが発生するわけじゃない。それに気づいた。そうして理解した、理解してしまった】
【理解してしまったら、それで、十分だった。今まで抱いていた憧れの全部が致死性の現実でしかなかった。屋上の柵に身体を預けていられるのは、それが壊れないって信じているから】

【だからキャロラインにはきっと全部が伝わるのだろう。当たり前だった。彼女を苛むものそれそのものが彼女の記憶なのだから。自分自身が彼女を苛むのだから】
【"たんぽぽ"を始めた理由。二度目の孤独に耐えるための現実逃避。――本当は自分が優しくしてほしかった。餓えて眠れぬ冬の夜に、誰かが部屋に招き入れて暖かいスープをくれたら】
【けれどそんな奇跡はなかったから。自分の中の自分を癒すための行為という意味合いを否定することなんてできなかった。自分の中で未だに震えている子を慰めてあげたくて】
【子供たちにだれにも助けてもらえなかった"自分"を重ね合わせては一人仄暗い安堵に浸る。自分が助ける誰かの中で自分が助かる。薄暗い部屋での自慰行為にも似て】

【――"黒幕"はそれさえ踏みにじっていった。うそつきだと言われた。うそつきだった。言い訳もできなかった。だからもうやっぱり空っぽになってしまいたい】

――――――――、

【ぎゅうっと抱きしめる身体が暖かくて、風呂を借りた後であるなら、きっとキャロラインと同じ香りをしていた。――だからこそ、二人の境界、分からなくなってゆく】
【そうでありながら、彼女はもはや抉れた彼女であった。プリンをスプーンですくって食べるみたいに、少しずつ、少しずつ、白神鈴音は貴女の中に移し替えられて】
【なれば記憶はやはり差し出されるままであるのだろう。――――やがて幼い記憶へ辿りつくのだろうか。父親も母親も当たり前に生きている頃の思い出、全部が普通の生活】
【八つになるその日まで、彼女の生活はごくありふれたものだった。――それすらも彼女を苛んでしまうのだからどうしようもなかった。それとも、】
【――ほんの少しの日常だって知らないままであったなら、未だって彼女は当たり前に生きていられたのかもしれなかった。母親の温もりすら、劇物と等しく】

【――――――――――だから彼女は全部を忘れてしまいたがる。とはいえ"人間"であるための知識ばかりは、彼女が抱き留めていたのか、奪われることないまま】
【けれど"白神鈴音"を成すものは、きっと、ぜんぶ。だから今となっては"貴女"が"そう"だった。人間なんてものは結局どこまでも記憶でしかないんだから】
【記憶を持たぬ白神鈴音だった人間と、白神鈴音の記憶ぜんぶを持っている貴女なら。――、気づけば少女は目を閉じてしまっていた、眠ってしまっていた、その肩口に顔を委ねて】
【憎しみも憧れも何もかもぜんぶぜんぶ"忘れて"しまったなら、――皮肉なくらいに安らかな寝顔は、赤子のそれと、きっと、等しい】


997 : ◆zqsKQfmTy2 :2019/02/11(月) 00:28:22 aV9SxEkE0
>>996

【記憶を奪うという行為、それはその人の全てを奪う所業、そして――】
【人格、心だとかの見えない領域を丸ごと移植する行為、当然拒絶反応だって現れる】

【それでも記憶を奪い続けられたのは、抱きしめられる暖かさ――それはもう"どちら"のものなのか】
【分からないくらい混ざり合って。二つの色は決して綺麗とは言い難い色に混ざり合っていく】


【たんぽぽを始めた理由】
【建前に隠した本当の自分】
【触れて欲しくない場所を踏みにじられた痛苦】

【酷く人間臭い心境、――徐々に記憶屋の中に白神鈴音が構築されるなら】
【自分の事の様に、痛くて、辛くて、苦しくて――張り裂けそうな心を必死に縫い合わせる】
【ハリボテみたいに継ぎ接ぎで。そうしないと心という形が保てないなら――壊れては補修して】
【ある意味死んで生きての繰り返しに似ていた、破壊と再生。理解して、分解されて、再構築される】


―――――………、


【そうして白神鈴音がキャロラインの中に宿るのなら、最後に行き着いたのはありふれた生活】
【今となっては遠き理想郷。けれどこのまま真っすぐに育ってくれたなら、今しがた通り過ぎた苦しみだって】
【もっとマイルドで乗り越えられるものだったに違いない。――欲するものに付随するものさえ劇薬な今と違って】


【抱きしめられる感触はとても懐かしくて、けれど自分で自分を慰める構図だったから】
【誰かの温もりは、独りの寂しさに蓋をしている記憶屋にとっても劇薬だったなら、二人似た者同士だった】
【だからだろうか、自分の中に他人が住み着いたってすんなりと受け入れられるのは――――】


―――――………、―――――――………


【記憶を全て奪ったなら、白神鈴音だった人間はすやすやと眠っていた】
【身体を預けて眠りにつく姿、寝顔は純粋無垢のそれで。もはや"白神鈴音"同然であるキャロラインも】
【疲労困憊をとうに迎えていたから――望んだ形かは定かではないが自身が与えれられる限りの救いをもたらして】
【自分も今だけは救われたいって願うから、残った力を振り絞って、ぎゅうっと抱き締める】
【"だって、アナタは望んだでしょう―――抱きしめてよって"なら、キャロラインもやっぱり安らかな寝顔だった】


998 : 名無しさん :2019/02/11(月) 00:54:11 imUVOxS.0
>>997

【ならば二人抱き合って眠るんだろうか、――自分のことなんてずうっと大っ嫌いに過ごして彼女にとって、きっとほとんど初めてのような、優しさめいっぱい】
【繰り返す吐息の甘やかさがごく久しぶりのものであると誰が判別するのだろう、怖い夢も悲しい夢も見ることのない眠り、何一つ心配事がないままで眠れる安らぎを抱き留めて】
【眠りはどれほど深いものだろう。どちらにせよ彼女は長眠者であるのなら、放っておけばしばらく寝こけるのは想像に容易かった、――或いはしばらく眠れていないようだったなら】
【好きなだけ寝かしてやるのなら、おそらくはキャロラインの方が先に目を覚ますのだと思われた、――、けれど、少女の眠りは気絶に似たもの、開く双眸、観測させないまま】

………………。……――――、? ……?? ――――うあっ、! あ……? 

【――ごく小さなうめき声が漏れた、床に腕をついて身体を起こすなら、濡れていたはずの髪の毛は乾いてしまっていた。ざらりと雪崩れて、床に渦巻いて】
【身動ぎの足先が床に置いたままだったブル・ショットのマグを蹴り倒してしまう、ならば漏れ出る声、鈴の音でありながらどこまでもニュートラルな、驚きだけ示して】
【反射的に引っ込めた足の爪先が不安そうにぎゅうと握られていた、――数秒してから、もたもたと引っ張り出すのは近場にあったタオル、自分が借りていたものとも分からずに】
【床をそれで拭いてしまうんだろう、水気をたっぷり吸いこんだタオルがぺたぺたぴちゃぴちゃと触れ合うたびに小さく鳴く/泣くみたいに音を立てる、――、】

……。…………。

【――――床にタオルを置いたまま、誰でもない彼女は部屋の中を見渡すのだろう、めいっぱいに不思議がる顔はやがて微かな怯えすら宿して。なら吐息の無為さだけ、色を持たない】
【めいっぱいに"はてな"を巻き散らしていた。あひる座りに恰好を変えてもそわそわとするのは変わらないから、もぞりもぞりと繰り返される身動ぎ、眠りを妨げるには十分なほど】
【そうしてやがて彼女はキャロラインにも気づくのだろう、――それでも、おっかなびっくりに瞬くばっかりで、まだ、なにも、しないから】


999 : ◆S6ROLCWdjI :2019/02/11(月) 01:48:45 WMHqDivw0
>>983

【気持ち悪いのも泣きそうになるのも全部耐えていた。だって、】
【自分は一人ではないと知っているから。ならば誰かに任せる気持ちは、信頼と呼べただろうか】
【あるいは依存と呼んでも差し支えなかったのかもしれなかった。鳥籠の仲間たちに対する】
【それが少女の強みであり、弱みであった。ぎりと歯噛みする音を響かせて、――】

――――――――――うんっ、信じてた!

【次の瞬間にそれが果たされたならぱあっと笑う。空色の瞳によく似合う晴れやかさ】
【であればもう、何も怖くない。ぎゅっと踏み鳴らす予備動作の音、そうして】
【指先が空を撫でる。伴って、白い毛先も二条の線を引き、それから地を滑って踏み締める脚が】
【バネ仕掛けのように高く高く、爪先が天を向くまでに挙げられたなら。イタリアン・フェッテ】
【スピードはない、けれど優雅で大きな動作で回転する技術。そこから放たれるのは、】

コマたちの絆、甘く見たね!? それが一番許せないんだから!

【腕が描く軌跡、二本。髪先が描く軌跡、二本。脚が描く毛先一本――合計五本の線にて】
【重なるように描く複雑な斬撃の奇跡、――上手く致命傷にはならぬよう、急所を避けて】
【あくまで狙いは敵の無力化。四肢を動かせなくなるように――おまけの一本は首のスレスレ】
【皮一枚を隔てて空を切るように。いつだって殺してやれると示すような意思を込めて、放たれた】


1000 : ◆zlCN2ONzFo :2019/02/11(月) 11:02:14 6.kk0qdE0
>>999

【どれ程の恥辱も、どれ程の苦痛も耐えて】
【それは、信頼と言う名の力】
【絆と言う名の、もう一つの戦い方】
【やがて、少女に笑顔が戻る、快晴の空の色と同じ瞳と笑顔】

「っくッ……撤退だ!撤退!」
「全員この場より退避だ!!」
「っひぃ!?」

【さすれば、再び舞踏は開始される】
【爪先が天を向き、繰り出されるのは、優美なる回転と、そして5本の線】

「ひっ!き、絆!?な、何を、何を!?」
「小癪な、小娘如きに……」

【この場よりの逃亡を図ろうとしていた、指揮官】
【だが、それよりも早く、そして複雑に迫るのは】
【5本の斬撃の軌跡】

「ひ、ひいいいいいいいいいいッ!!」

【先ずは、両の脚、太い血管を切ったのか多量の出血と共にその行動を阻害して】
【その場に崩れ落ちる所に来たのは、両の腕への斬撃の線】

「ぎやああああああああああああッ!!」

【両の腕を深々と斬りつけ、肉を断ち……とてもでは無いが、まともに動かす事はもはや困難】

「ひっ、あああ、あ……」

【首のスレスレを通過する斬撃の線】
【命は絶たれずとも、その精神的ダメージは計り知れない】
【意識を手放し、その場に白目を剥き、無様に崩れ落ちる指揮官】

「駒子!!」
「駒子さん!!」

【その直後に、駆け寄る2人がいた】
【この場に残されたのは、戦闘不能状態の指揮官の海兵のみ】
【雉は駆け寄れば直ぐに、駒子を抱き締めるのだろう】

「大丈夫?無事?駒子に、何かされてたら……私は……」

【鎧も陣羽織も、浮遊する小太刀も和盾も、もはや解除され、駒子を強く抱き締めるのは、柔らかな身体と体温のみだろう】
【俄かに、震えている】


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