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【顰に倣う黒鼠】能力者スレ 置きレス用【月に喘げ】

1 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/04(火) 10:06:58 6IlD6zzI0
ようこそ、能力者たちの世界へ。
この世界は、数多の能力者たちが住まう世界。

こちらは置きレス用のロールスレです。
リアルタイムの進行が難しい時などにゆっくり使用できます。
混乱を防ぐため、なるべく最初から置きレス進行になる場合のみご活用ください。
時間軸は開始時・終了時など、当人同士で相談し合うとスムーズになります。
次スレは>>950の方が立ててください。


2 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/09(日) 00:57:32 WMHqDivw0
//いちおつです!

>>前1000

【そうして世界一幸せそうな顔をする目の前の女を見て、彼は、ひどくかわいそうなものを見る目をした】
【壊れてしまったことを察したから。違う。そうじゃなくって――だって知ってるから、教えてもらったから】
【「あの子」自身に教えてもらった、何もかもを思い出していた。苦痛の記憶。その中に紛れていた友達、】
【――――友達でしかなかったのだと知っているから。だから哀れんだし、……、……同情した】
【きっとこの女も自分も「あの子」の特別にはなれない。それでもいいって思えるかどうかくらい、相違点】

………………、……そう。やっとだよ。
羨むのも諦めるのも、置いといて。赦せないって言ってた、返してって泣いてた、
間違いだったなんて認めたくないって。怒ってた。恨んでた。本当にやっと、……ここまでされて。

【溜息と共に回答、肯定。うんざりしたみたいな声で。それで――はあ、と重たい息を吐いて】
【本当にどうしてこんなことになってしまったんだか。ずっとずっと何度も思っていたことを、もう一度、強く想う】
【どうしてこんなになるまで、膿み切るどころか腐り果ててしまうまで、傷口を放置してしまったんだか。……、】
【(……こいつはずっとそれを見てたのに、助けてやらなかったのか?) そうとも思う、だって、目の前の彼女は】
【自分なんかよりずっとずっと長くあの子のそばにいられたのに。なんで助けてやらなかったのって、(羨んでる)】

……安心した? 「音々ちゃん」。ようやくあの子が本心を吐き出してくれたこと。
ずっとあの子が気持ちを隠してたの、知ってたのに――――ずっと見ないふりしてたの、どうして。

【男の嫉妬ほど醜いものはないと言う。だから吐き出す恨み節はひどく濁った声色をしていて】
【躙り続けた紙幣はいつしか泥と砂に塗れてずたずたに引き裂かれていた。こうなってしまってはもう銀行に持ってったって】
【きれいに直してもらうことなんて不可能だろう。……よく似ていた、(誰に)(この場に居るふたりに)(あるいはあの子に)】


3 : 名無しさん :2018/09/09(日) 01:02:22 OIRyncqA0
【――――くち、と、幽かに小さく水の音がした】

【かすかに、けれど、たしかに。いくらかの粘度も感じさせる音は、きっと密封されたような室内に、よく響くなら】
【その耳もとに被せるような吐息もまた何度目かのものであるのだろう。――やがて少女はするりと顔を上げる、髪の毛同士がささめきあうような音、ひそかに纏って】

【――時間の感覚を喪ってしまいそうだとふっと思った、少なくとも、曜日感覚はとうに消失していた。AMとPMさえ危うくなっていたなら】
【たった今付けたばかりの歯形をきっと彼女は指先にてなぞるのだろう。ホチキスの針が刺さったみたいに細長い痕を、いっとう深く食い込んだ犬歯の痕を、】
【だけれどため息が漏れる。その肩に額を預けるようにして。だからきっとその肩と首筋と項とにはたくさんの歯形が残っているに違いなかった、――――ずるり、と、】
【委ねた頭すら重たくなってしまったみたいに、最後に彼女はその胸元に顔を埋める、――猫背の姿勢、背中が痛くて、だけどそれさえもうどうでもよくて】

………………アリアさん、おなかすいた。

【うそだった。彼女はきっと今までもそうやって何度か求めて、そのくせに、何が食べたいでもなくて、むしろお腹は空いていなくて、ただ、何かアクションが欲しくて】
【反応してほしかった。この部屋の中に興味があるものは貴女しかいないから。構ってほしかった。この部屋の中で優しくしてくれるのは貴女しかいないから】
【だからほしくもない食事をねだる、本当に作ってくれたとしても三口くらいで要らなくなるのは目に見えていた。だからきっと疲れていた、密閉された空間に】
【ゆえにこそ何度だって噛み痕を刻んでやるんだった、――もしも自分だけ外に出てしまうとしたって、誰かに見られてしまえばよかった、そういう位置につけていた】
【犬のしつけだって出来ないなまっちょろい人なんだって思われてしまえばよかった。それが人間だなんて誰にも思われないまま、情けない人なんだって思われてほしかった】
【一緒に連れて行ってくれるなら、本当は犬じゃなくて人間なんだって証明してあげても良かった。だからこれは相手の告白に等しくて】

……。アリアさん……。

【ぺたんとあひる座り、うんと丸めた背中で、顔はその胸元に埋めて。真っ白な背中を惜しげもなく晒していた、背骨の数だって指先で数えられそうなほど】
【ウィステリアの髪はいつしか相手とよく似た香りになっていた。気づけば煙草の香りまでしみ込んでいた。それでも何かが違くて、だから相手が他人だと互いに知らせて】
【その背中に回した手が抱きしめる仕草で、けれど、やる気なくずり落ちていく。かろうじて腰のあたりで爪ではなく指先を喰い込ますようにして止まる、――】

【――"ナニか"したいわけじゃなかった。それでも"なにか"していないとどうにかなってしまいそうだった。きっと相手にも伝わっていた、彼女はきっともっと好きにしたい子だと】
【なればきっとストレスのたまった目をしていた。だのに逃げ出そうとはしなかった。外に行きたいだなんて一度も言わなかった。――大好きだから】

【それでも、全部は誤魔化しきれなくて。――静かな部屋の中に、小さい溜息の音、何かにうんざりしたわけじゃなくて、ただ、肺の中を換気するための、ひとつ】


4 : 名無しさん :2018/09/09(日) 01:32:38 OIRyncqA0
>>2

【柔らかく笑む瞳が、彼の向ける視線と交錯する。であればきっと覗き込めるのだろう、鮮やかな色合いの向こう側、――隠しきれない冥い色合い】
【こうなるまで放置し続けたくせに。ずっと苦しんでいるのを見ていたはずなのに。ぎりぎり痛む虫歯をずっと無視して、痛くなくなった時を喜ぶみたいに】
【それはけっして何の解決でもなくて。救いでもなくて。報われたわけでもないのに。ただ神経が腐ってしまっただけ。より一層悪くなっただけ。なのに。――なのに】

【――――まるでそれ以外の方法だなんて知らないみたいだった。まるで、ありふれた人間が持ち合わせているはずのピースが欠けてしまっているような】

――――――、間違いだった? ……誰がそんなことを言ったの、誰が……、……誰が? そんな、こと、
――、……あの子は間違ってない、優しい子ですもの、……、優しくて、びっくりするほど、気が強くて……。なのに――。

【――だからきっとそれもまた彼女の中ではまっとうな感情の推移だったのだろう。相手の言葉を拾い上げたなら、あんまりに、彼女は、怒りを見せるから】
【涙も止まってしまう。だけれどきっとよく考えたら、いくらか前にはもう止まっていたんだった。だからきっと関係がなかった。――それでも、そうだとしても、】
【わずかに語尾が震えるほどに。――ならばもしかしたら心当たりがあるのかもしれなかった。誰かの顔が思い浮かんでいるのかもしれなかった、なら】

【(ごめんね、ごめんね、って、泣いている声。顔を両手で覆い隠してしまって。自分のせいだからって。わたしが悪いからって。泣き続けたときの声を、まだ、覚えている)】
【(それは違うって思ったからよく覚えていた。だけど自分のせいだからって言い張ったんだった。自分が居なかったら、二人は関係がなかったんだからって)】
【(だから。だから。――だから。ひどいことを言った人と同じくらい、自分だって悪いんだって。赦してって。"――あのひとを好きになってごめんなさい"って)】

【(ああでもそれで少しの優越感もなかったかと言えば、まあ、嘘にはなるんだけれども)】

――――――――だって、あの子は、したいようにするのが、一番、好きだから…………。

【――――――――それだけが理由だった。いろんなことに気づいてしまったとしても。察してしまったとしても。それでも。それでも、ただ、盲目的に、相手に任せる】
【それがどれだけもうできないって上げる絶望的な悲鳴であっても。くだらないと思わすのだろう、だけれど、きっと、彼女にとってはそれが唯一の愛情の示し方だったから】
【お金が欲しいならいくらでも渡すけど。やるのは自分でやったらよかった。だってそうじゃないと気に食わないんだから。それでいつまでだって、泣くんだから】
【やりたいことを決めたら梃子でも動かない子だって分かっていたから。だから。だから。――だけれどそれは他人からすれば、言い訳以外の何もでもなく】

【それでも、だけれども、彼女の中では、それが、それだけが、だいすきなともだちを、認めて、応援する、気持ちを表明する、唯一の、手段だったから】


5 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/09(日) 01:58:54 WMHqDivw0
>>4

【わからないでもなかった。きっと自分が彼女の立場に居たなら同じ顔をしたと思う、けれどそうじゃないんなら】
【どこまでも不毛な苛立ちばかりが泡立っては弾けて、無味無臭の熱い気体だけが吐き出されていく】
【おれだって笑いたい。よろこびたい。たとえそれが正しい感情でなかったとして。……形だけでもそうしたかった】

………………「一番目」。最初のほうの男。

【そう言われて、はたして心当たりはあるんだろうか。知らないけど。誰が、と問われれば律儀にそう返してやった】
【桜花鈴音を殺したほうの男であると回答。二番目の男はもう何処かへ消えてしまっていると知っているなら】
【「こっち」のほうはまだ、この世界のどこかで生きているとも理解できてしまうだろう。それでこの女が何をしでかそうが】
【知ったこっちゃないと思っていた。あんまりにも無責任に。……少なくとも彼には、復讐を果たしてやろうという気は、なかったから】

したいようにさせた結果こうなっちゃったじゃん。……なっちゃったもんはもう、どうしようもねーけどさあ、
「音々ちゃん」は、……それが一番いい方法だって思ってたんだ。だったらそれこそ「間違い」だったのかもしんないね、
……おれもそうだよ。間違えてた。なんもかんも。……教えてもらう前から知ってたのに。
なんかヤなことに巻き込まれてるっぽいって薄々わかってたのに。そのときに助けてやればよかった、……、

…………なあ「音々ちゃん」。間違えたの、挽回するのってさ、どうしたらできると思う?

【あの子が間違いだったと言うなら、自分だって、おまえだってそうだったって言ってくる。何もかも正解じゃなかったなら】
【それをリカバリするにはどうしたらよいのか。皆目見当もつかないから――しゃがみ込む、蹲る、地面に手を伸ばして】
【今しがたぐずぐずに、ダメにした紙片を摘まみ上げて。パズルでも組んでいくみたいに元の長方形に戻そうとする】
【できっこなかった。すでにいくつかのパーツは丁寧に摺りつぶされて、アスファルトにへばりついて取れなくなっていたから】

【だけれど手元は止まらなくて。硬い地面にこびりついた紙をこそげ落とそうとして指先を痛めつける。間違いなく自傷】
【それでも視線だけちらりと上げて。……今までさんざ傷つけるようなことばっかり言ってたのに、すがりつくみたいな目をする】
【彼女を傷つけることによって自分をも傷つけるなら。鏡に映った自分に延々と暴言を繰り返しているようなものだった】
【なら、鏡の国の中に生きる彼女にも自分を傷つけてほしいと願っているのと同義だった。見下してほしかった】
【此方が傷つけた分だけ傷つけ返してほしかった、――そんな身勝手の過ぎる願い事、通じるものだろうか】


6 : ◆RqRnviRidE :2018/09/09(日) 15:46:32 6nyhPEAc0
>>981

【目の前に転がる巨竜も背負う痣も、きっと穏やかではないであろう光景に、しかし剣呑さを微塵も感じさせなかった】
【二人が談笑を交わす空間には相も変わらず風が吹きすさび、危地の痕跡すらも浚ってゆこうとする。ひどく平和だった、あまりにも】

【死にそうな思いをしたという言葉に対して、可笑しそうに肩を震わせて笑う。まるで初めから狩猟の奏功を悟っていたかのように、至って長閑に】
【根拠の無い自信が確信に変わる前に相手へ協力を求めたのは、信頼に値する人物であると直感的に感じ取ったからであるのだろう】
【故に、少女を巻き込んだことに後ろめたさは感じられなかった。表情は薄いとは言え、その様子はいっそ楽しそうですらあった】

【銃を構える彼女の姿を一瞥する。 問い掛けにはひと呼吸の間を置き、口許に笑みを湛えると】

────もちろん。 その為にも捕ったのよ。

【首肯き、至極当然だという回答。 迷いも躊躇いもない。 水網を繰る手をぎゅうと固く握り締める】
【拘束が強まる。暴れ竜の動きが一瞬止まる。放たれた銃弾が脳天を捉える──めり、と鱗の割れる音がして】
【ぎらつく身体が一際大きく跳ねたかと思えば、暫く筋肉が小刻みに痙攣を繰り返し、それきり大人しくなる】

【今一度近くで見るならば、それは確かに解体に難儀しそうな巨体であった。大振りな鱗は一枚一枚が金属光沢を持ち、鎧のように全身を覆う】
【尖鋭な六対の鰭や厳めしい顎は身体の随所に刃物を備えているようであったし、意思を持って自在に水中を潜航するなら兵器だって一溜まりもないだろう】
【けれどこうして陸に揚げられ絶命し、身を横たえている様は、存外に呆気ない幕切れだったことを感じさせただろうか 】

【それから少女は一糸纏わぬ姿のまま、血溜まりに足を踏み入れることも厭わずに獲物の傍へと歩み寄り、】
【その体へ手を触れる。半身を向けながら相手に視線を向ければ何食わぬ顔をして、】

そうね、とりあえず今は、食べられる部分だけ取り分けられればいいの。
解体を手伝ってくれるなら道具は拵えるのよ、火を用意してくれるのだっていいわ。

好きなところを持ってってくれても構わないのだけれど……?

【「どうする?」と尋ねながら、海竜に触れる手が鱗に沿って撫でられる。正確には拘束する網を手繰るような動作で勢いよく引っ張れば、】
【それぞれの鰭が水網によって切り落とされる。同時に首、腹、尾の部分に深く切れ目が刻み込まれ、泉のごとく滔々と赤黒い血液が溢れてくる】
【解体の作業としてはかなり大雑把な方ではあったが、このスピードであれば可食部を得るだけならそうそう時間は掛からなさそうだ】
【休憩を挟むならそれでも差し支えないと告げ、青髪の少女は淡々と作業を進めていく】

/>>1乙です!!


7 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/09(日) 15:51:21 6IlD6zzI0
>>995

【度数の強いウイスキーを飲み下したお陰で幾分か荒ぶる感情を鎮める事が出来た】
【本来であれば交渉の場に望むのに酒を飲むのは愚かしい行動であるが、今のエーリカにはそれが不可欠だった】
【でなければ、眼前の機械人形の思案にふける姿から紡がれる言葉を待つ事など出来なかっただろうから】


「……親しいかと言われれば何とも言いがたい。―――……まぁ、(殺し合いの末にだけど)抱擁を交わした仲だから 
 親しいといえば親しいんだろうね。尤も私自身としては彼女の事を良く知んないからもっとカチューシャの事を知りたいと思ってる。

 それに公安の潜入捜査官とカルトの信者と言う板挟みに苦しんでた時に、在るべき姿を示してくれた子だから」


【"――あの子には感謝の気持ちを伝えたいんだ。あの時、私を救ってくれてありがとう"ってね】


【カチューシャの事を語る時の表情は何処か柔らかく、感謝の気持ちと憧憬で言葉を並べ立てる】
【かの狙撃手を語る姿は、先程までの刺々しく態度と口調で険悪な雰囲気を醸し出していた張本人には思えない】
【荒波に揉まれていない世間知らずな小娘のような言動は、片思いの乙女みたい】


で、カチューシャが虚神の話にどう関係してくると言うんだい。彼女はカノッサ機関の狙撃手で、嵯峨野と同じで黒幕側の協力者でしか無い筈だ。
彼女が虚神に関わってる、若しくは攫われたってんなら――<harmony/group>を襲撃したあの日、何があったのか聞かせてくれないか?

【揺れる瞳、揺れる感情。虚神には関係無いと思っていた人物の名前が飛び出して】
【揺れて、やがて震えていく。カチューシャも虚神の一柱であるかの物言いに。盤上に置かれた駒の一つの様な扱いに】

【それでも動揺で言葉を震わせないのは、あの日の真実を知る必要があるから。かの狙撃手の現状を知りたかったから】


8 : ◆RqRnviRidE :2018/09/09(日) 16:52:10 6nyhPEAc0
>>993

【笑顔を宿す幼貌はさも嬉しげに見えたことだろう、友人を褒められて悪い気はしないものだ】
【最後に「“旋風の用心棒”と言えばきっとすぐ分かるよ」と補足を付け加えて、】
【次いで投げ掛けられた尋ねごとには一転、胸の前で腕を組みながら悩ましげに小首を傾げる】

んん、そうだなあ……、あれは確か夏の中頃だったかな。
崖の上から海を見てたところは覚えてるんだけれど、それ以前とその直後がはっきりしなくてね。
気付いたら浜辺に倒れてて、人に助けられて、今こうしてまずはルーツから探ってる状態なんだ。

【「だから本当は自分が誰かも分からなくてね」と、ちょっぴりばつの悪そうに苦笑する】
【『瑠璃』というのは仮の名らしく、けれど当初の名乗りからすれば気に入っていることには間違いないようであった】

【そして子供はとても素直であった。元来の性質ということもあるのだろうが、彼女の親切な雰囲気を心地好く感じてのことだろう】
【〝魔制法〟という聞き慣れない名称に、瑠璃は反対側に首を傾けて疑問を示す。 全く分からない──といったように】

〝魔制法〟……いや、聞いたことがないな。
どういうものかも知らないよ、けれど──

【そう答えたなら適当に周囲を見渡す。こちらの様子をちらちら見ていた来館者と目が合う、──すぐに相手が目を逸らす】
【一部からひそめく声がする。 内容こそはっきりと聞こえはしまいが、マリアベルの言葉通りあまり感じの良さそうな雰囲気ではない】
【再び彼女へ視線を戻す頃には、その表情に僅かに悲哀の色を滲ませて】

──けれど、街を歩いていたら何となく感じたよ。 今みたいな目を向けるんだ、たくさんの人が。
ボクみたいな異端者はきっと歓迎されないんだ、それが体質でも異能でも多分おんなじことなんだろうね。
この“髪”はボクたちの身体の一部でしかないのにね……。 居ること自体がもはや罪で罰みたいだなあ。

……その〝魔制法〟とやらに関係する探し物なのかな。 場合によっては……

【「……助けられるかどうか。」】
【不安そうにぽつりと呟く。 大衆から向けられる忌避の目は、子供にとっては非常に居心地の悪いものだったのだろう】
【忠告を受けて髪の動きを最小限にする──が、しかし完全に抑えることはない。 トラブルを招かない為の護身と、誇りを捨て去らない為の自衛の行為】
【マリアベルの告げた言葉は温情か、はたまた裏の意図でもあっただろうか──と探るように瑠璃は少し俯き加減になりながら相手を見遣る】


9 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/09(日) 17:23:58 smh2z7gk0
>>8

〝旋風の用心棒〟―――フフ、なんかカッコいい渾名を持ってるんだねそのお友達。
なるほどねぇ、まぁ単純に推測すれば崖から海に落ちてそのショックで記憶が曖昧にあってるって事だね。

ルーツか………宛はある程度ついてるのかしら?

【瑠璃の言う友達を思い浮かべて、可笑しそうに眼を細めて笑う。きっと目の前の人物と同じく純粋なのだろうと】
【そして瑠璃から語られる記憶喪失に関する出来事、確かに何故こうなったかは想像するのは難しくない。単純に考えれば】
【しかしこの広い世界で自分のルーツを探すのは中々に骨が折れる。ある程度どうするかは決まっているのかと尋ねた。】

まぁ要約すると〝異能〟や〝魔術〟といった本来の人の理から外れる力を持った人々。所謂〝能力者〟。
彼らのその有り余る力を放置するのは危険だからお国で使用を管理するって法律だよ。水の国では既に可決されて試運転が始まっている。

―――まぁ、あくまで運用が始まっているのは〝水の国〟だけさ。他の国ではまだまだ能力者の人権は確保されている。
だから落ち込む必要はないし、もし気になるなら国外に出てしまえば大丈夫ってワケ。
私の探し物は3つ………1つ目はご明察の通り〝魔制法〟に関して。ちょっと居候先にも協力しなきゃならないしね。
2つ目は〝物語〟。私を楽しませてくれるような愉快でサプライズに満ちた物語を探しているんだ。
3つ目は―――〝卵〟。万象を司りあらゆる可能性を内包した〝卵〟を探しているんだ。

【「ちょっと分かり辛い言い方だったかな?」と肩を竦めて笑う。確かに抽象的だ。あえて明言をさけているとも感じられる。】
【とはいえマリアベルの表情は楽しげだった。瑠璃との会話の中で何か自分の探し物につながる事でもあるのだろうか、それとも単純に会話が楽しいのか】
【赤い瞳が瑠璃を見つめ輝く―――。】

//>>1乙です!


10 : タマキ ◆KP.vGoiAyM :2018/09/09(日) 18:16:05 Ty26k7V20
前スレ>>967

そういう街なの、ここは…たぶんね。

知ってるとは思うけど、コッチは星の国の行政区、元からあったオールドスクール…旧市街地は水の国。
あっちは普通の街だからね。星の国から来た資本家連中もあっちの街に住むぐらいだから時価も上がってるらしいし。

コッチ側の就労ビザとか労働者IDだとあっちの行政区には行けないのさ。向こうからコッチは来れるけどね。
コッチ側の住人が行くとしたら、ごみ収集の仕事とかそういう仕事でしか入れない。

【水の国行政区、通称オールドスクールは中洲のような街で陸路なら橋を渡らなければその外側へは出られない】
【その橋は分割統治されてから検問が作られた美しいオリエンタルな雰囲気を持つ旧市街と急速に発展したテクノロジーの新市街】
【いつ崩れてもおかしくないバランスの上でこの街は息づいている】

…PMC?そんなのこんなことで雇うようなリッチなやつは流石に居ないんじゃない?現金輸送の護衛ならわかるけど。

テクノドックスは――ああそう。オーウェルっていうITの会社のグループってなことだけど私兵みたいもん。大企業だからね
この街の雇用の何%も持ってるから従業員も多くこの街に住んでる。…優しい連中に見える?

従業員からすればクビにされたくないし、他の連中からしてもあんなのに関わってらんないよ。警察だったらまだ法律があるからいいけど
アイツラはお構いなし。怪しいと思ったら…バンッ!終わり。そうじゃなくても拘束されて帰ってこれた人は―――いない。
なんでそんなのがまかり通ってるかって?この街の経済もインフラもオーウェルのおかげみたいなもんだから…


/大変遅くなり申し訳ございません。


11 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/09(日) 18:46:04 smh2z7gk0
>>10

なるほど………今水の国がかかえている歪みとはまた少し性質の異なる問題を抱えているわけだ
お国同士の思惑に振り回される市民はたまったものではないね。まぁ氷の国の外務省の私が言うのもなんだけど
って、さっき説明してなかったね。私実は氷の国外務省の三等書記官なんだ。

【説明されるがまま、街全体を横目で見る。どこか複雑な表情と共にため息を吐き出しその後自嘲気味に笑う】
【見かけは十代の少女だが、どうやら氷の国外務省に所属しているらしい。そんな事を明かしたのもタマキをある程度信頼してからか】
【いつしか空になっていたカップを近くのごみ箱に投げ入れるとタマキを正面から見据える。】

―――確かにそうか、悪いねこの街の現状にイマイチ疎くて。
しかしそうか、聞けば聞くほど〝オーウェル〟さんとやらは臭いね。まぁタマキの言うように雇用に貢献しているならそう表立っては叩かれなさそうだけど

まるで〝箱庭〟だねここは。それも勢いのあるIT企業の支配する箱庭とあっては何かしらの非人道的行為も………
―――あんまり物騒な話をしすぎると〝犬〟が飛んでくるかな?

【少し身を乗り出してタマキにだけ聞こえるような声色にへと変えながら会話する。聞いているだけども良い印象はない】
【しかし先程自分で言ったようにここは箱庭。あまり目立つ行動は避けた方が良さそうなのも確かだ。】


12 : シャッテン&レグルス&ラベンダー&アーディン ◆auPC5auEAk :2018/09/09(日) 21:00:27 ZCHlt7mo0
【――――水の国 『Crystal Labyrinth』】
【その夜も、店は繁盛していた。酒と食事と、癒しの一時を求めて、自然と客足は店の扉を潜る】
【そんな中にあって、その夜は特別に、1人だけの『招待客』を迎える手筈が整っていた】

――――意外と元気そうだねぇ、安心したよ……まぁ、積もる話もあるだろうけど、まずは中に入ってからにしようか……
……一応言っておくけど、僕たちの『まとめ役』には、あまり滅多な事を言わない方がいいよ。向こうも、抑えてはくれるだろうけど、一応ねぇ……

【入り口で、やってきた人物を待ち受けるのは、かつて『彼女』と友誼を交わしていた男】

【華奢ながらも筋肉の浮き出た色白な上半身を晒す様に、ワイシャツだけをボタンも留めずに羽織り】
【下半身はジーンズとスニーカーで固め、腰回りに大量のチェーン装飾を巻き付けた】
【くすんだ水色の髪を前髪ばかり長くした、身長170cm前後の青年】

【――――シャッテン=シュティンゲルは、挨拶もそこそこに、自ら先導して、店の中へと招く】
【賑やかな喧騒に包まれるホールの隅、少し大きめのテーブルには、同じく『彼女』を待っていた面々が、既に着席していた】

「――――来たか、シャッテン。その子が『例』の……ん、お前は…………?」
<…………>
{――――}

【短いバイオレットの毛皮で全身を覆い、その上からフード付きのマントと半ズボンを着用している】
【左目へとめり込む様な、人相を歪ませている大きな傷跡、更に頬にも大きな傷跡の目立つ】
【ずんぐりむっくりとした体格の、尾の先が不自然に二つ裂きになっている、右目の眼光の鋭い、身長150cm前後の猫の特徴を宿した獣人と】

【前面を開いたままで青いコートを羽織り、魔術師である事を如実に表す青のハットを被った】
【手には指輪と、グリップの部分に赤い石をあしらわれている、金属製の棍を握り締めている】
【がっしりとした体格の、深い眼窩が鋭い視線を放っている、身長180cm前後の偉丈夫と】

【ラベンダー色の肩ほどまで伸びた髪で、赤と青のまるで死人の様な冷たいオッドアイを持ち、体表に紋様の様な、仄かな光を放つ金色のラインが走っている】
【その身から、尋常ならざる量の魔力を溢れさせている、白いワンピースの上から、明らかに身の丈に合っていないボロボロのコートを着込んだ、10歳くらいの少女】

【それぞれに席に着き、じっとやってきた『彼女』を見つめる――――注目される形になるのは、仕方がないことかもしれないが】
【一団の中央に陣取る猫の姿の獣人は、覚えのある人物かもしれない。彼の方でも、それに気づいたようだった――――レッド・ヘリングとの戦いで、轡を並べた男だ】

【そして――――水色の魔術師コートとハットを着込んだ大柄の男は、じっと沈黙したままである】
【――――それが、アルクのそれと色違いで、同じデザインである事に気づくのは、そう難しくはないだろう。そしてそれに気づけば、彼こそが『相棒』なのだとも、推測できる】

「……あの時は、ゆっくりと自己紹介も出来なかったからな。――――アーディン=プラゴールと言う。ここの用心棒頭、兼、情報屋及びブローカーのようなものだ……」

【獣人――――アーディンはすっと席を立ち、やってきた彼女にも、空いている席に座れと、手ですっと指し示す】
【小柄だが、空気に重みを与える様なその凄みは、知れず肌をピリピリさせるかもしれない。尤も、今はアーディンも、故意に周囲を威圧している訳でも無い様だが】
【ともあれ、彼らは互いの近況報告、そして情報交換を、強く欲していた事だけは、確かである――――】

/夕月の方、よろしくお願いしますー!


13 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/09(日) 21:37:46 WMHqDivw0
>>12

【――――こつ。靴音はわずかに惑うように、幽かな音量しか立てずに】
【その場に踏み入る足は少しだけ何かに怯えているよう、歩幅が小さかった。だけどシャッテンに導かれるなら】
【確実に前へ前へと進んでゆく。そうして、数人の前に姿を晒す。今日ばかりはパーカーなんて着てなくて】
【半袖の白シャツに、折り目のきっちりついた黒のショートパンツ。ハイソックスも同色。彩度ゼロの出で立ちは】
【間違いなく「喪服」を意識してのことだった。……だけど、赤い靴は、そのままだから】

…………、あ、ネコさん。「工場」の時に会ったよネ? ……ひさしぶり。
そっから、そっちの紫の子……「鈴音の中」で会ったことあったかな。……元気ではなさそうだ。

それで、……魔法使いのおにいさん。あなたが、……アルクさんの。

【入るなり、三人を見渡して――誰がどういう人なんだか自分なりに解釈していく。ひとりひとりに視線を遣って】
【かつて共闘したふたりに対しては久しぶり、なんて挨拶を交わしたけど。最後のひとり、会ったことのない男性】
【彼がどういう人であるのかを察したら、ひどく遣る瀬無いような顔をする。……自分のせいで、「彼」は死んじゃった】
【そんな気すらしていた。だから少しだけ泣きそうになって――こらえる、そんなことをしに来たのではないと自分に言い聞かせて】

………………あらためて、初めまして。あたし、夕月って言います。
もうだいたい知っててくれてるとは思うけど、……虚神になりかけた「ひとでなし」です。
どうしてそうなったかを、……説明しに来ました。<harmony/group>がどんなことを、あたしに、したのかを――

【ぎこちない敬語で挨拶して。席にかけたら、まず「靴と靴下、脱いでいいですか。実際に見せたほうが早い気がする」】
【そう言って、ゆるしが下りたらその通りに――素足を晒し始める。赤い厚底靴を揃えて、その中に抜き取ったハイソックスを畳んで入れたら】
【曝け出された肌、……下のほう、足首のあたりに黒い刺青が入っているのが、否応なしに見せつけられる。その形状は】
【蝶。アーディンにとっては忌々しくも覚えがあるんだろうか。……「シャーデンフロイデ」の、痕跡】

【そこまでやったら、様子を窺うように視線を上げて四人の顔を見る。これが、<harmony/group>にされたことの一端だと】
【訴えるような視線――だけど続きを口にする準備もある。そして、……同じことを、きっと。「ソニア」も受けたのだと】
【そうとも訴えるような視線だった。詳細はこれから語られるだろうが、先に何か訊ねておくことでもあるなら。素直に受けるだろう】


14 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/09(日) 22:14:07 GQoYu22s0
>>880-882(ロッソ)

/※前置き
/ドアの外側と内側のシーンをそれぞれ描いたのですが、
/流れてる時間量がちょっと釣り合わない感じになっているかもです。
/そしてアホみたいに長いです、全部で7か8分割くらいになると思います。

/ただドア外のシーンは完全に一人芝居なので、適当に流していただいて、
/リアクションはドア内のやつ以降だけで結構でございますので。

/大変遅くなりまして誠に申し訳ないでした。
/では拙いですが以下に本編です、佳境ですが引き続きどうぞよろしくです。。


15 : 前奏 ◆3inMmyYQUs :2018/09/09(日) 22:15:42 GQoYu22s0
>>前880-882

【俺は、俺たちはありったけの銃口で叫んだ】
【やつらの無粋な三点バーストの音なんて全て掻き消すくらい】

    ウ ッ ド ス ト ッ ク
【──ラヴ&ピースの祭典なのに銃なんか撃ってどうするんだって?】
【レノンやディランが聴いたら、確かにどんな顔するか分からねえが】
【でも俺たちの唄は、聞く耳持たねえやつらのハートにこそ響かせなきゃならねえんだ】


【もし魂だけの世界でもまだロックをやってるなら、】
【理解しろとは言わねえから、せめて聴いててやってくれよ】
【レスポールの代わりにリボルバーを握って踊る、ジャンキー達のシャウト】


【喉を嗄らして叫びてえことがあるし】
【命を懸けて守りてえものがあるんだ】

【だから俺たちにはロックンロールが必要だ】
【時代を超えても鳴り止まねえ、正真正銘、本物のやつが】


【──世界を、運命を、全部ふざけた偽物に変えようとしちまうやつらがいる】
【気付かないうちに、素知らぬ顔で、愛を、自由を、Fワードに書き換えやがる】

【右も左も、心にクソの詰まっちまったやつらが歩いてく。そんな未来がもうすぐだ】
【だから俺たちは歌うんだ。思い出せ、本物を、って。知ってんだろ、本当は】

【その手に掴まなきゃならねえものは今、ここ、この瞬間だ】
【もう二度と奪わせたりはしねえ──守るんだ、俺たちのルーツと最初のハートビートを】



〈────行くぞ、
 消させねえ、守り通すんだ、未来まで。
 さあ思い出せ、俺たちの旗の名を──────


 ────────『ダンデライオン』の名を!!〉



/──Hey! Ho! Let's go!! ↓↓


16 : ドア外1 ◆3inMmyYQUs :2018/09/09(日) 22:17:00 GQoYu22s0
>>前880-882

【軍勢──『ダンデライオン』は駆け出した】
【敵の弾幕が殺到する中へ、微塵の怯懦も無く】

【一人一人が放たれた矢の如く風を切り、真正面から】
【そしてある一瞬、彼らは身を撓め、大きく跳んだ──地を蹴り一度、更に“宙空を蹴って”二度】

【高く、高く──あたかもそこが月面であったかのように、並外れて軽やかに】
【しかしその空中さえ殺意の射線上、怒濤の弾幕が彼らを強襲する──】
【──刹那、各々の身が鋭く旋転し、翻る】

【弾丸が貫くのは、彼らの身が一瞬前にあった虚空】

【──敵兵たちは一瞬理解が及ばなかった】
【その不可解な宙空転舞で、弾幕を紙一重で躱した、などとは】

【幾人かのガンナーの引き金が引かれ、銃火が爆ぜる】
【その反動によって宙を急転換、横壁を蹴り、天井を踏みつけ、縦横上下を無尽に跳ぶ】

【ある者が猛禽の角度で空から敵兵の一人を急襲、】
【鋭い回転の乗った胴回し蹴りをその後頭部に叩き付けた】
【敵兵たちがそこへ銃口を向けて発砲した時には既に、その者は再び跳ね返ったように宙へ跳んでいる】

【まるで無重力下の機動であった】
【その変則の乱舞は相手の敵愾心を一層煽り、反撃の銃火がなお激しさを増した】
【しかし飛翔するガンナーたちはそれさえ微風のごとく、軽やかに弾幕の間隙を縫って舞った】
【疾く、鋭く──身を丸め、回転し、反らし、捻り──人体の限りを尽くして宙を躍動する】

【殺意の弾丸が彼らを捉えることはなかった】
【さながら風に舞う綿毛が、それを掴もうとする人間の手をことごとくすり抜けるかのように】


【掻き乱される陣形の虚を突き、】
【あるガンナーが一人、宙に逆立ちした体勢から照準──発砲する】
【放たれた弾丸は針の穴を通すような精度を以て敵の銃口に吸い込まれ──内奥で爆ぜた】

     ジャックポット
【「── 大 当 た り」とその射手はにやけ呟く】

【──彼らは何かの軛から完全に解き放たれていた】
【戦うというよりも、宙をフロアとし、踊っていた。自らの鼓動と銃の咆吼に合わせて】

【一個一個が無軌道極まりない彼らを正確に狙い澄ますような練度は敵にはなかった】
【雑兵たちのガンサイトは一所に留まることはなく、翻弄されるように終始彷徨った】

【壁と天井に囲まれた空間──地の利は彼らにあった】
【上下左右の制限なく、あらゆる位置から、体勢から、ガンナーたちは銃撃した】
【その奔放な弾丸が狙い澄ます先は、しかし敵兵そのものではなく、その手に持つ『銃器』──】


【──また一つ、痛烈な破砕音が響いた】
【敵兵の小銃が砕ける音だった。こちらでも、向こうでも、一つ、また一つ】
【血漿の代わりに、砕けた銃の外装と内部パーツが次々と爆ぜるように飛び散った】

【その光景は、硝煙の臭いに満ちていながら、どこか魔法のようだった】

【彼らは銃を以て銃を撃つ】
【『ダンデライオン』が放った弾丸はほぼ全て、】
【流星群さながらに続々と敵の持つ武器へと着弾していき、それを粉砕せしめた】

【如何なる訳か、放たれるのはほとんど反動の乏しい9mm弾に過ぎないにも関わらず、】
【それが敵の小銃や刃物へ接した瞬間、まるで対物ライフル弾の如き爆発的な衝撃と破壊力をそこに生じさせていた】



【彼らの銃声が一つ鳴る度に、敵陣の銃火は一つ減った】
【それは加速度的に勢いを増し、瞬く間に弾幕の規模は逆転した】

/↓


17 : ドア外2 ◆3inMmyYQUs :2018/09/09(日) 22:18:37 GQoYu22s0
>>前880-882

【一人だけ、宙を飛ばない『ダンデライオン』がいる】
【赤い翼のロゴが付いたバイクを駆る、名も定かならぬライダー】

【銃弾の吹き荒れる嵐の中を貫いて】
【敵の首魁たる鉄塊を担ぐ男と、ただ一人、視線を対峙させていた】

【男はにやつく口元の髭を撫でながら、低く唸った】


『──不出来なやつには、居残り指導だな』

〈生憎と、『教師』なら間に合ってるよ──〉


【ライダーはアクセルを捻り込む】
【獅子の猛りにも似た排気音を轟かせ、その車輪が地を蹴り疾駆する】
【躊躇いもなく真正面から突貫する彼の胸には、少年の日から今まで変わらぬ心火が灯っている】


【──自分はジェームズ・ボンドにもイーサン・ハントにもなれなかった】
【ただどんな銀幕のヒーローよりも、この無惨な世界に生きた一人の男の話が心を離れない】
【故郷のスラムの孤児院の、遠い遠い、言い伝え。ロックと煙草が好きな、とある探偵の話──】


〈──────逆に教えてやるよ、

  ロックンロールイズノットデッド
 ロックは時代を超えるってことをな────!!〉


【ライダーの構えた44口径リボルバーが銃火を噴く】
【放たれたマグナム弾頭が空気を焦がして喰らい掛かる】

【──が、】
【ぎン──と鈍く反響する金属音──】
【発砲より一瞬早く振るわれていた鉄塊が、その重弾をいとも容易く弾き飛ばした】

    ロ ッ ク 
『──“石ころ”がなんだって?』


【──化け物め、と毒づくライダーはしかし、更にアクセルを深く捻り込む】
【跳ね上がる回転数、雄叫びするマフラー──『次弾』は既に発射されている】
【猛り狂って疾駆するその750ccの鋼馬を、フルスロットルでぶちかます】


【──耳を聾するような衝撃音】

【ライダーは直前までシートに跨っていたが、何も自爆特攻ではない、】
【衝突の寸前にハンドルから手を離し、シートを蹴って後方宙返りで離脱している】

【宙を舞ったほんの束の間──しかし彼はまたぞろ馬鹿げた光景を目にする】

【一個の砲丸となって突進したそのバイクを、男はあろうことか真正面から受け止めた】
【猛牛の角を押さえ込むかのようにハンドルへ掴みかかり、靴の底が激しく地を擦りながら後退】
【数メートル押されたところで体軸を捻ると、その大型二輪を軽々しく斜め後ろへ投げ飛ばした】

【ライダーが着地した音と、バイクが壁に叩き付けられスクラップと化す無惨な音が、重なった】

【最早彼は失笑する他なかった、全くふざけた漫画の有様だった】
【──が。男の次なる行動を見て、その苦い笑みが一瞬で凍結した】

【男は鉄塊をコンクリートの床に突き刺しめり込ませると、】
【おもむろにバスの正面へと歩み寄り──そのひしゃげたボンネットに抱きついた】

【──次の瞬間には、嫌な予感が既に現実と化していた】
【十トンにも及ぼうかというその巨大な駆体が、重く軋む音を立て、浮かび上がった】


【「──お返しだぜ」と、】
【男の口が呟いた音は、最早意識が受け付けていなかった】

【 轟 ──── 】

【空気が潰れるように打ち震え、その規格外の鉄塊は振るわれた】

【その暴力の対象に敵味方の区別は一切なかった】
【まだバスの中に残っていた雑兵も、宙を舞っていたガンナーたちも】
【皆等しくまとめて、その馬鹿げた巨人のラリアットへ巻き込まれた】

【車体の角が天井や横壁と激しく摩擦して金属的な絶叫を響かせ、血飛沫じみた火花が散った】
【ぐおン──と吹き荒れた突風が、悲鳴も叫びも、一瞬で全てを掻き消していった】

【ずン……と、バスが逆さ向きで着地する重低音だけが、そこに広がった】


『────下校完了、だなあ』


【男はくしゃりと顔に皺を寄せ、薙ぎ払われた跡地を見下ろした】
【最早立つ者は無かった。男は満足気に両掌を打ち合わせて埃を払い、再び鉄塊を手に取る】
【それを一度軽く振り回し、陽気な口笛を吹きながら──ドアの方へ歩み寄り始めた】


【──銃声が一発、その静寂を貫いた】
【弾丸が男のすぐ脇の足元へめり込み、その歩みを制した】

/↓


18 : ドア外3 ◆3inMmyYQUs :2018/09/09(日) 22:21:04 GQoYu22s0
>>前880-882


【「──────……おい、どこ行くんだ……
  そっちはお前のステージじゃねえぜ────」】


【背後からするその震える声に、男は怪訝な顔で振り向いた】
【人の形をしたぼろ屑が一つ、ゆらりと立ちこめる湯気のように立ち上がりつつあった】

【──擦り切れたトレンチコートをなお捨てずに纏い、】
【ガラス片でずたぼろになったボルサリーノハットをそれでも深く頭に押しつけ】
【その鍔の奥から、燃え滾るような血塗れの眼光が真っ直ぐに男を射貫いていた】

【呆れたように眉根を寄せる男に、ライダーは吼えた】


〈────言っただろ……、
 教えてやるよ……──ロックは死なねえってこと──……
 
 ────……27歳でくたばったりなんかしねえ、
 ジジイになってもドームを満員にして歌い続けてやんだ──
 どんな時代、どんな国でも、運命を縛り付けるクソ野郎どもがいる限り、何度だってな────〉


【 ────そうだろ、《チンザノ・ロッソ》 】


【不可視の熱に呼応するように、周囲からも次々と身体を起こす者たちがあった】
【『ダンデライオン』は未だ死んでいなかった。その身を焼く傷を、痛みを、奥歯で噛み殺し、立ち上がった】

【それぞれの震える銃口が前を向く。再び拳を握り直すように、その引き金を絞った】

【咲き乱れる銃火】
【命の熱を込めて解き放たれた弾丸の群れが、続々と男に降り注いだ】
【が、男はやはり蠅でも払うかのように鉄塊を振るい、弾幕を弾き砕く】
【跳ね返ってきた弾丸の破片が、既に満身創痍となったガンナーたちの膚を、なおも無惨に引き裂いていった】

【だが、それでも倒れる者はなかった】
【全ての双眸に強い光があった】
【未来を信じ、何か命に代えても守りたいものを背に負う者のみが出来る目だった】

【男はその様が不可解そうに、すうと瞳を細めた】


【「悪りいな──」】

【「どんなどん底でも、俺たちゃコバーンみたいな真似ぁ出来ねえんだ──」】

【「──銃は手前の頭蓋じゃなく──いつだって──」】

【「──“明日に向かって撃つ”もんだって──習っちまったからな──」】


【そして『ダンデライオン』は再び跳んだ】


19 : ドア外4 ◆3inMmyYQUs :2018/09/09(日) 22:21:54 GQoYu22s0
>>前880-882

【翼の代わりに銃火を爆ぜさせ、血の尾を曳きながらなお、鋭く高く】
【天地左右に囚われず、跳び、舞い、あらゆる角度と距離から弾丸を叩き付ける】

【その全方位銃撃に、男は鉄塊を振り回し対応するが──】
【ばきリ、と、ある一瞬、何か今までとは違った音がした】
【男の意識を掻い潜ったある一発が、鉄塊の一辺を砕き飛ばしていた】

【それを皮切りに】
【他のいくつかの弾丸が、鉄塊に『有効打』を浴びせていく】
【男がそれを振るう度、僅かではあるが、徐々に塊の一部が削がれ始めた】

【反射されてくる破片も決して少なくはなかったが──】
【撃てば撃つほど、確かにその威力は減じつつあり、それが彼らに躊躇いを生ませなかった】

【──命を奮い立たすような雄叫びが爆ぜる】

【撃て、撃て、と各々が自身の心で叫んだ──撃ち鳴らせ】


【その熱狂するエアリアル・モッシュを見て、】
【空を飛べない『ダンデライオン』は一人口元に笑みを浮かべていた】
【──なんだよ、いつの間にか『布教者』よりハマっちまいやがって】

【ライダーもまた身を奮い立たせる】
【しかし、彼の片腕だけは力無くだらりと垂れている。骨が複雑に砕け、何も掴める状態ではなかった】
【それでも、もう片方は生きている。それで十分だった。指が一本あれば引き金は引ける】
【せめてあと一撃──デカいのを叩き込んでやれれば】

【痛みを噛み殺し、拳銃を一度脇に挟む。懐から赤いメタリックの実包を取り出し、歯で咥える】
【再びリボルバーを握り、弾倉を開いて排莢。噛んでいる弾薬を、熱くなったシリンダーへねじ込む。何度か手こずるが、ようやく嵌る】
【そしてかちりと音を立て──血塗れの弾倉が銃身と噛み合った】

【震える腕に言うことを聞かせ、伸ばし、ガンサイトの先に狙いを据える】

【撃ち抜くのは、そう──明日を蝕む絶望。ふざけた運命】
【壁をぶち壊すまで歌って、歌って、歌い続けるんだ──】

【ライダーは喉の弦がはち切れんばかりにシャウトした】


〈俺たちの明日は────潰させねえ────!!〉


【──咆吼。銃火が、爆裂した】

/↓ドア内へ


20 : ドア内1 ◆3inMmyYQUs :2018/09/09(日) 22:23:17 GQoYu22s0
>>前880-882

【そこまでが伴奏だった】

【──そうした背景音の全てを劈いて】
【彼らの求めたロックの一音が鳴り響く】

【どの銃声とも違った】
【臓腑を震わせ、エッジを利かせ、一際大きなガンズ・ラウド】

【《チンザノ・ロッソ》の銃口が炸火を咲かせ、心を弾に変えた音】
【その弾丸は彼我の間にある空間を、斬り裂くように喰らうように】
【激しく螺旋しながら穿孔し、敵の意識の虚を一直線に貫き迫った】
【さながら、レジェンドのライブが出鼻の一コードで聴衆の心奥を掴む様にも似て】

【既に弾丸は婦警の眉間。その進行を拒む壁は最早無く】
【ぱっ──と浅紅の飛沫が咲いた。膚も頭蓋も穿ち抜き、そこに風穴を開けた】

【跳ね上がった顎先。不格好なヘッドバンギングにも見え得た】
【何が起きたか無自覚な呆然とした眼が一瞬天井の白さを映した】
【その脳天の衝撃は不可視の雷撃のごとく全神経を貫き、肉体を一瞬で虚脱させる】

【──既にそこはミチカ・ソネーウェのステージではなかった】
【故に、その壇上から突き落とされたかのように、背中から崩落していく】

【力無く伸びた腕の先は、何もない虚空を掴みかけたまま】
【半端な開きかけの口腔──眼の奥の瞳孔が、インクの滲むようにじわりと散大し──】

【そして──】

【どう、と】
【糸の切れた肉体が床を叩き、致命的な残響が散った】

【と同時、駆け込み伸ばされた探偵の腕の中へ、少女の身が倒れ込む】


(──────………………、………………、…………────)


【途切れ途切れな、儚い吐息が少女の口からは漏れていた】
【力の入らない瞼を緩慢に開いて、掠れる瞳が探偵を映す】
【ぶれる視界の中で彼の姿を認めると──へらりとした力無い微笑がそっと滲んで】


──……ろけん、……ろーる──


【零すように、そう呟いた】
【──片手は小さく、メロイック・サイン】

【それが正真正銘、最後の余力だったのだろう】
【手の力が抜けて、その瞼もゆっくりと落ち──ぱたりと、息絶えたように脱力した】

【──すう、すう、と】
【しかしすぐに微かな寝息が聞こえるだろう】
【胸郭をゆっくりと上下させ、安定した脈拍を刻んでいた】


【その傍らの、氷点下の沈黙に固まった骸とは、完全な対照を映して】

/↓


21 : そして ◆3inMmyYQUs :2018/09/09(日) 22:25:06 GQoYu22s0
>>前880-882

【──ドアの外側で鳴り響いていた銃声と怒号の嵐は、】
【いつの間にか潮騒が引いていくように、静けさへと傾いていた】

【敵勢はもう誰も武器を持っていなかった】
【かつて小銃だった残骸の中へ、自身もその一部であるかのように、】
【身体を萎えさせへたり込むか、じっと倒れ込んでいるばかりだった】

【その中で唯一まともに立っていたのは、リーダー格だった鉄塊の男のみ】
【しかし今や、その手には何も無かった。ばらばらに砕けた鉄屑の中心に、ただ幽然と立っていた】

【その周囲を、夥しい傷を負った『ダンデライオン』たちが取り囲んでいる】
【男は視線をぐるりと巡らせ──ドアの中で倒れた〈婦警〉の姿を認めた】
【そして、そこから何も抵抗する様子を見せなかった】


〈────WAR IS OVER……だぜ〉


【ライダーが一歩前へと歩み出る】
【既に衣服はずたずたに裂け、血みどろの有様だったが、眼には確固とした光があった】
【荒い息を吐く彼が、何か銀色の球体を懐から取り出すと、それを25番の男に放った】
【すると瞬く間に青白い電磁ワイヤーが放出され、大柄な男の身を何重にも縛り上げた】

【男は苦悶の声も上げず大人しくそれを受け入れる】
【瞑目し、どこか芝居がかった溜息を吐きながら】




【──荒れ狂っていた音の大波が、そうして、全て凪いだ】

【戦っていた者たちの口から、それぞれ溜めていた吐息が漏れた】
【めいめいが血や汗を拭い、ほんの束の間、肩の力を弛緩させた】

【──全てに片が付いたように思われた、丁度そんな最中だった】
【ライダーはふと彼方へ顔を振り向け、「くそ」と小さく呟いた】

【遠くで、何かサイレンの音が鳴り響き、次第にこちらへ近付きつつあった】


〈……くそ、欲しいのはそっちのアンコールじゃねえんだが……〉


【すると仲間の一人がライダーと目線で示し合わせ、探偵たちの元へと駆け寄った】
【その者は「あなた達は先に」と言って、何か使い古された様子の銀色の円盤を押しつける】
【既にそこから某かの術式が展開され始めており、探偵たちを中心に魔力光の粒子が立ち昇っていく】

【いつの時代のものか知れぬが、どうやら転移スクロールのようであった】
【ライダーは肩で息をする傍ら、言った】


〈──おい生きてるか、『リボルバー・ジャンキー』
 お互いこんなトマト塗れでさえなけりゃあ、
 ここから一緒に大脱走と決め込みたいところだったが──もう時間がねえ。
 そいつでどっか気の利いた酒場にでも飛んでくれ──思い浮かべりゃそうなる。

 俺たちは俺たちで上手くやるから、気にせず行ってくれ。
 ……あんまり良い席じゃなかったが──アンタの生のビートが聞けて、良かったよ〉


【「──どっかの明日で、また」】


【もう振り向く余裕も無いのか、ライダーの背中越しに、そうした声だけが探偵に投げられた】
【彼はその返事を待つことなく、「──こっちも撤収だ! 急ぐぞ!」と続けて仲間達に向けて指示を飛ばした】

【各々傷だらけの身を突き動かして、ばたばたと慌ただしく撤収準備に駆け回る中、】
【スクロールを手渡してきた仲間──民族柄のポンチョを羽織った若い女性──が、】
【離れ際、探偵の瞳を見て──「離さないでね、その子のこと」と、真摯な眼差しで言った】

【探偵たちを覆う魔力粒子が一層強い輝きを帯びていく】
【そのままいれば、次第に周囲の景色が蜃気楼のカーテンを掛けられたように揺らぎ始めるだろう】

【──術式進捗:69.07332%】




【──“ぴくり”】
【〈婦警〉だったものの指が一つ、痙攣した】


22 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/09(日) 22:26:13 GQoYu22s0
>>前880-882
/以上です、長々と連投失礼しました。。


23 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/09(日) 22:50:00 hEXW.LLA0
>>3


【白い喉が呻いて、掠れた声を暗闇に塗り付ける。】


【破瓜の瞬間に似ていた。それでいて根本から意義が異なっていた。故にその類似性は単に表層的なものでしかなかった。】
【引き攣るような幽けく細い悲鳴は調度品の影に呑まれて消える。ならば少女の耳許を愉しませるのだろう。ふたりしか知り得ない一瞬の音階。女の漏らす、女らしい嬌声。】
【闇の中に浸された無彩色の肌膚は、カーテンから漏れる月光が真白く染め上げていた。黒鉛でそっと撫ぜたような薄い輪郭しか定義できていなかった。】
【だから互いに触れ合う必要があった。血の通う潤んだ肌理の、優しい表面張力に潰れていなければ、自分が自分でなくなってしまうから。愛する痛みは全て幸福だった。】


「 ─── 私も、なにか、食べたいわ。」「 ……… かえで。」


【刻まれた傷痕を慈しむ指先にふるりと背筋を震わせるのは、狼にしては幼気に過ぎる挙措であった。はァ、と漏れるのは粘膜に湿度を与えられた嘆息。】
【空気の抜けてへこむ胸腔は、少女の憂いを受け止める為に誂えられたようだった。薄い藤色へと柔らかく張り付いて包み込む。その息の根を止めたがるように。】
【無沙汰な両手は片の掌でずりおちる少女の指先を受け止める。そうして包み込むのなら五指を絡め合うのだろう。雫にもなれない手汗に濡れるのは糊付けに良く似ていた】
【ならばもう片方の掌は母親の真似事でも好むようだった。薄藤色に手指を挿し入れて、宥め賺すように梳き落とし、月明かりに灼かれる背を慰めて】
【或いは優しく絞め落とすように片腕のすべてを用いて深く深く深く少女を抱き締めるのだろうか。 ─── 幸せな窒息の寸前まで、肺胞の一つ残らず、女の香りに染め上げ】
【ともすれば感傷的に首筋へと人差し指を差し向けて、淡い桜色を宿した爪先で傷咎めに興じる。自身が少女に刻んだもの。口吸いに歪めた無数の内出血を、鎖骨から顎根まで】

【口寂しいのは女も同じことだった。吐き出しても吐き出しても止め処ない愛欲は幾ばくかの不安を誤魔化す為のものであったのだろうか。ともあれ】
【地を揺らす狼は酷い悪食であったらしい。砂糖だけで練り上げたような花の飴細工を幾度貪っても満たされない。腹を空かせているなら自分を食べればいいのに、 ─── 本気でそう思って憚らないのなら】
【いい加減に猫背は辛そうに映った。指で撫ぜてやってもどうにもならないと解っていた。赤紫色の瞳は少しずつ淀みを宿しているように見えた。貴女を穢すものは皆んな殺してやると決意していた。】
【そうしてまた、 ───── 不揮発性のメモリに刻み込んだ忌々しい優男の面構えも、恐れずに済むような気がしていた。故に、故に】

「 ………… ねぇ。」

「 ─── 観に行きたい、景色があるの。」「私ひとりで行くのは、寂しいから」
「 ………─── だから」「かえでも、一緒に来てくれる?」

【そっと胸許に唇添えて、囁きが鼓膜に口付ける。俯いた頤と共に白銀のヴェールが少女の頭に首筋に肩口に垂れて、さらり、筆先のように擽るのなら】
【縋るように少しずつ力を込める繋いだ指先の温度感というのも宜なるかなというものだった。溜め息が少女の沈む胸の奥を湿らすなら、きっと女にも、観に行きたい場所など無い/どんな景色も観に行きたい】


24 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/09(日) 23:14:12 hEXW.LLA0
>>6


【「ゴメンね。」 ─── 一言だけ添えて、トリガーを引いた。そうして竜は事切れた。銃を下ろす。細い指先が、静かに胸前で十字を切る。】
【然して次の瞬間、少女に向けるのは既に快活な微笑みだった。そういう区切りの付けられる人間であるらしかった。まずもって狩猟の成功への喜びと】
【冗談めかして噴き出された笑いに応じた、からっとした友誼のあらわれ。道に迷って禁猟区でライフルをブッ放した憂鬱なぞ既に何処かへ行ってしまったらしい。】
【およそ無邪気な笑顔のまま少女の言葉を聞くのなら、 ─── おのが顎先に指を添えて、ふんふんと訳知り顔で頷くのだろう。割合に調子者であるらしかった。】



「 ……… ふーん。」「それじゃあ、取って食う以外にも、何かするんだ。」「或いは、したんだ。ふうん。」


【そんな呟き。何れにせよ、少女の異能と思しき荒縄が海竜を切り分けていくのなら、 ─── 便利そうだなあ、と言いたげな顔で見ていた。獲物の処置を問われるのならば】
【「この分だと血抜きは大変だし、持ち帰れる量じゃないし、クーラーボックス持ってないし ─── まあ、ちょっと食べさせて貰おうかな。」返答としては、そんなもの。】
【ならば主に清流から汲み上げた水を使って、てきぱきと食べられそうな血肉を処理していく。バーナーに火を灯す。カバンの中から折畳式の鍋を取り出して、火にかける。】
【彼女もまた、靴底の血に濡れる分にはそこまで躊躇いのないようだった。ただ返り値が衣服に付くのは御免被るようで、そのあたりは幾分か慎重に】
【 ─── 然しあれだけの巨体ともなれば、食肉として上等な部分を取り分けるだけでも相当な量になるのだろう。ならばその間に、彼女もまた、問いかける。】


「ね、ね。」「 ─── よかったら、だけど。」
「僕にも教えてくれないかな。何のために、こいつを仕留めたの?  ……… あと」


【「蒸す、焼く、茹でる、揚げる ─── どれが一番おいしいと思う?」そんな質問も寄越すのだろう。他意のない好奇心の産物であるようだった。生態系の脅威であるから狩ったと問われるなら納得するのだろう。】
【アウトドア用の椅子が二脚、火の周りに拵えられていた。「なんかもう、今夜はここに泊まっちゃっても、いい気がしてきたなぁ ──── 」間延びした独白が吸い込まれる、空。】


/書き忘れちゃいましたがいちおつです!!


25 : >>1おつ! ◆3inMmyYQUs :2018/09/09(日) 23:21:10 GQoYu22s0
>>前827(ミラ)


【──ミラの叫びは、闇の中へと虚しく溶けていった】
【還る返事はなかった。彼の耳に届いたのかも分からない】
【ただただ、空虚な静謐だけが後には残された】



【────────────】




「──追わなくていいんですか」


【割れたガラス戸の向こうをぼんやりと眺めていた円城の背後から、声がする】
【円城は僅かに首だけを動かして一瞥をやるが、身体の向きは変えなかった】
【再び視線を前へ戻して、返答した】


「戻ってきますよ、『ハムレット』は。
 彼にはそれ以外の選択肢なんてない。
 ──そんなことぐらい、分かってるんじゃないですか。『未来の私』なら」


【声の主、『未来の私』と呼ばれた人物は、鼻だけで微かに嘆息した】
【それに呼応したかのように、外から吹き込んだ風が、漆黒のクロークの裾を揺らす】


「──〈特異点〉は特殊なんですよ、色々。言ったじゃないですか。
 まあ、外様は必要以上の干渉はしませんが──『ルール』は忘れないことですね」


【『ルール』──】
【言われたそれを、円城は脳裏に想起し、そして確認の意味を込めて口に出した】


「──── 『頁は一つ』

 ──── 『冠が定める』

 ──── 『門は閉じられる』

 …………でしたか」


【『未来の円城』たる男は黙して頷いた】
【最早魔女じみた鍔の広いハットが揺れる】


「──何としても、あの方に『正史/Canon』を取ってもらわねばなりませんよ。
 『薪』と『栞』は引き続きこちらで追います。〈王〉の方はよろしく」


【恐らくは第三者が聞いたところで何も意味を解せぬであろう符丁だらけの語りを】
【現在軸の円城はただ静かに受け止めた。そして背後の未来人へ向けて、横目で視線を投げて】

「──我ながら精力的ですね。
 本当に私ですか、あなた」

「──そっちこそ。
 生気の無さよ。若さが聞いて呆れます」

【両者は揃って嘆息した。──やれやれ、と口癖が重なる】


「──自分同士でさえ相容れないのだから、世間は況や、ですね」

「戦争も、むべなるかな」


【彼らの視線は、眼前へ広がる大都市の夜景へと据えられていた】
【連日連夜、絶えることのない煌めきの密集。民の営みの証を見下ろして】


「では、歴史の続きを」

「始めますか」


【そして二人の同位体は、それぞれ同時に呟いた】



「────〈影の王/Shadow Lord〉に、〈王冠〉を」






/ちょっと間が空きましたが、こちらからも改めて締めとさせていただきます。
/長期間のお付き合いありがとうございました、お疲れさまでした!


26 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/09(日) 23:27:06 hEXW.LLA0
>>7


【酒精に浸らねば処理のできない感情についても人形はよく知っていた。 ─── 自身もまた其れに対面したことはあった。】
【なら陶然と追想に浸る夢見心地も、それが崩れそうになる動揺も、嘲笑うことはしなかった。思いの他に分かり合えそうな相手だという、手前勝手な親近感。だからこそ】


「 ──── ならば、先に言っておきましょうか。」
「このまま行けば ─── 死ぬわよ、あの子。」


【人形は事実を淡々と告げた。 ─── 紆曲な伝え方をする間柄ではなかった。だがそれ以上に、そんな伝え方をして決着の付く問題ではなかった。】
【エーリカの弱味と成り得るものを青い無機質な瞳に映していながら、映していたからこそ、そこに躊躇いはなかった。一呼吸の嘆息を挟んで綴っていくのは、修飾ない現状。】


「harmony社について、何処まで探っているのかは知らないけど」「どうにも彼女、連中の実験体だったようね。」
「嵯峨野の主導で"色々と"されていたみたい。まあそれは些事であって ─── 問題は、その結果について。」
「ウヌクアルハイやシャーデンフロイデの件と比すならば、彼女は"成功例"であるという訳。解るかしら?」


        「INF-004。"エカチェリーナ"。」「 ─── それが、彼女の名前よ。」


【真っ直ぐにエーリカを見据えながら、人形はそう伝える。嘘偽りのない温度感は衛星ラインから接続されたリモートボディ越しにも理解させた。】
【その職務に忠実である限り、その使命に忠誠を誓う限り、貴女は彼女を殺さなければならない。 ─── 言い切らぬのは、彼女は己れより聡明であると、信じていたから】


「 ……… あの日に私たちの知れた、奴らの目的の片鱗。」「彼女もまた、他の虚ろの神と同じように、この世界を滅ぼそうとしている。そういうこと。」
「お望みであれば、彼女が"ああなる前"の経歴について、伝えても構わないわ。」「 ─── "ソニア"という名前は、それなりに有名だったでしょうし、ね。」


27 : 名無しさん :2018/09/09(日) 23:39:38 OeZGx6EM0
>>5

【――――小さく吐息が漏れた。なればそれもまた安堵に似ていた。幸いだった、こんな現実の中でほとんど唯一と言ってよかった、――彼女はその人物を知らない】
【知っていた。名前や簡単な容姿ならば口づてに。されど本人より聞いたのではない。いつか少女が失踪したときに、それをしる幼子から、聞いていた】
【会ったことがない"ほう"であるのは限りない幸いだった。――怒りを不明瞭なままにしておけるから。これがもう一人であったなら、――】

――――――だって。だって、あの子は。やるって決めたら、梃子でも動かないの。あんなに気が強い人、――他に見たことはなくて。
だから……そうするしかなくて。"あなたには分からないかもしれないですけれど"――、"私はよく知っているんです"。

………………………………、……。私、いつ、名乗りました?

【小さくない少なくない感情を押しとどめて、漏れるのはまるで自分に言い聞かすような声音であった、そうなんだからって、何にもできなかった/しなかった自分を】
【だのにそれはやがて限りない優越感にこじつけられていく。――自分は知っているから。あなたは知らないから。私は。私だけは。"あの子のことよく分かっているって"】
【鮮やかな瞳にけれど鮮やかなはずない感情を宿して薄く笑う。だけれど救いようのない色をしているに違いなかった、――この女だって、ひどく、こじれて生きてきてしまった】
【――そんな子供じみた優越感が、けれど、ふと追いついた気づきによって、わずかに途切れる。相手が呼ぶ名前。本名ではなく。そんな風に呼ぶのは世界にただ一人だけで】

【――――――ひどく訝る視線が相手へ向けられるのだろう、きっと簡単に表すのなら「こいつはなんだ」とでもいうような目、今更過ぎる、感情を宿すなら】

……誰ですか? あなたは、――あの子の何を知っているの、……。あの子の、"何"なの? ――――、ねえ。
恋人だなんて。――好き。だなんて。言いやしませんわね。まさか。――、"あの子のこと知っているなら"、――。

…………あの子が。どんな風にされてきたのか。知っているのなら、……分かっているのなら、――、

【彼女はしゃがみこまなかった。当然ながら彼のことも見下ろして。おっきな胸元越しのまなざしが、ただ、ただ、冷たくて、彼のことを見下したなら】
【――綺麗に整えた眉が顰められる。訝る視線が、やがて、複雑な――それでいて曖昧な――色を帯びて。そうしたならあるいは怯えている、なんて、思わせるのだろうか】
【そういわれたって/思われたって仕方がなかった。だって彼女はきっと本当に恐れていた、眼前に這いつくばる彼が、もし、自分は"そう"なんだって、言ったなら】

――――――――――。

【――――だけれどどうしようもなく分からなかった。彼は誰にそれらの話を聞いたのか。ならばよほど親しいと思わせた。怖かった。そんな感情、かろうじて、押しとどめる】
【縋る目には、何の答えもない。間違いを挽回する方法だなんて、きっと彼女も知りたいに違いなかった。だから何も言えなかった。それよりも、ただ、ただ、――彼が怖くて】


28 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/10(月) 00:14:00 WMHqDivw0
>>27

【しゃがみ込んだ視線はふたたび落とされる。おまえは何だと問われて、……ぐう、と息が詰まるみたいに】
【あるいは言葉の吐き出す先を探すみたいに。答えたかった。でもいくら探しても、適当な回答が見当たらない】
【何か言おうとして口を半分くらい開いて、そのまま舌を動かせなくなって、数秒間の空白が開いて】

…………なんなんだろう。おれにもよくわからない。
数回喋ったことがあるだけなんだよネ、まじで。さっきも言ったみたいに、……4回きり。その中で、
おれが苦しんでたら助けてくれた。教えてって言ったら包み隠さずぜえんぶ教えてくれた。
待っててくれって頼んだらいいよって言ってくれた。だけどね、……あの子はおれのこと好きじゃない。

スキな人は他にいるんだって。お嫁さんがいるんだって。だからおれは、……なんなんだろう。

【――逆に質問を返してくるありさまだった。自分でもよくわからなかった。あの子のこと好きなのには間違いなかったけど】
【好きでいていいのかすらわからなくなっていた。だってこんなにも何もできないのに。情けない答えしか出せないのに】
【そんな資格もないと思っていた。だから、声色もひどく不細工に、震えてよれよれ、地に墜ちるばかりの音をして】

……「音々ちゃん」は。オネーサンは、……逆に訊くけど、なんなの?
トモダチ? ……そうじゃないよネ、だって、友達だったらもっと、……、……そんな風にはならねーよ。
あんたにとって鈴音ちゃんってなんなの? 大好きなお友達、……ちがくて、それ以上になるんだったら、

【「信仰の対象?」 ――――、失笑混じりに訊き返す。そうであるなら、きっと、あの子にはそれはもうよく愛されるんだろう】
【そう思った。だってあの子は神様だから。信じてくれる人だけを愛する。ならば自分は愛されない。よくわかっているはずなのに】
【――――この男はこの期に及んで、祟神たる少女を受け入れることが出来ないでいるんだった。わかっている、はずなのに】
【世界が憎いと口にするあの子を見るのが耐えられない。未だにそう思っている、それが本音。……口には出せないけれど】

【……地面にこびりついた紙片をこそげ落とそうとするのをようやくやめた。指先は、アスファルトに擦り付けられ、ぼろぼろになっていた】


29 : 名無しさん :2018/09/10(月) 00:21:01 OeZGx6EM0
>>23

【静かな部屋。暗い部屋。だからこうして触れる肌は唯一の世界で、世界中にそれ以外がないと言われて疑う道理なんてなかった、だって、本当に何もないから】
【そうして亀やら象やらなんやらに世界中が乗っけられてみんなが生きているっていわれるよりもずっとずっとそうあるべきだと思えた。なら、嬌声すら荘厳が過ぎる】
【――ちらり、と、視線を持ち上げる気配がした。伏し目の長い睫毛がちらりとその胸元をくすぐる感覚は綿埃よりも繊細に、結局それを確かめることはできないままで】

【だからきっと確かめられることも彼女は嫌がるのだろう。――じりと微かに頭を動かしたなら、その胸元の奥底まで、顔を埋めてしまって】
【もしもこのまま頭をぎゅうと抱きしめられたなら、数分のちに窒息して死ぬだろうことは間違いなかった。それほどまでに胸元に全部を委ねてしまうなら】
【漏れる吐息はわずかに苦し気ですらあった。指先を絡められても、薄藤をいっとう上等な櫛で梳かれても、重たげな吐息が晴れないなら、それでは足りないって思い知らせて】
【そのくせに相手が身体を離そうとしたならきっとひどく嫌がるんだって予感させた、子供みたいに追いすがるに違いないって――だから】

…………。

【――――――はたり、と、瞬きの気配がした。ひどく緩慢に持ち上げられる頭を切り落として重さを量ったなら、きっと、相手のそれよりも重たいに違いなくて】
【白銀のヴェールを掻き分けるようにして向ける視線はけれどはやりひどく重たげであるのだろう、――また小さな吐息。そうしたら、相手の顎下の空間、頭を埋める】
【だけれど確かであるのは、繋がれた指先は彼女からも絡められていて。いくつも刻まれた病斑のようなかたちを指先にて数えるかのように示されたら、わずかに身体をよじらせ】
【相手に全部を委ねていた。殺されるならそのまま死ぬつもりに違いなかった。だってそれはきっと幸せだった。――もうなんにも悲しくなくなるのだから】

………………――――、私。……私ね。"こんな"になるつもり、なかったの、……、なくって、今だって……。
"すき"が分からなくて……。だけど、こんなの、――私はきっとアリアさんが好きで、でも、……、わからなくて……。……。
どんな気持ちが"すき"なのか、……、どうなってたら、その人のことが好きで、――好き、って、ことになるのか、……。
"そのこと"と"それ以外"のことが分からなくなって……、こんな私死んじゃいたくて……、でも……。

【返事はなかった、だけれど沈黙が返るでもなかった。自分より大きな掌をぎゅうと握りしめる仕草は、親と子のようでありながら、決してそれではありえない感情に張り付けられて】
【出来の悪い生徒が、三学期も終わると言う日に、一学期の一番最初に教わったことがまだ分からないと意を決して来た時のような声をしていた。だからきっと表情もおんなじで】
【何かが分からないのに、何が分からないのかもよく分かっていないに違いなかった。ならば言うのなら彼女は愛とか、恋とか、きっと、知らないのだと思わせる】

【――――何せずっと愛玩のお人形だったのだから。それがいいことだって言われたから信じていたに過ぎなくて、】
【抱かれる腕の中で愛しているなんて言ってくれたのは一人だけだったに違いなくて。だから何もかも見失ってしまって、だから、こんなに苦しくて、】
【ならばその答えを見つけなくっちゃいけない気になって。だのにひとりぽちでは何にも思い浮かばなくって。ずっと考えていたに違いなかった。だけれど。でも、】

……アリアさん。は。どんな時に好きって思うの、私のこと……。どんな気持ちになったら、好きって言うの、……、私に……。
――――、

【分からないから/分からないなら、教本の目次すら読み解けない仕上がりを恥じているような素振りでもあった、ゆえにきっと、表情を見せたがらないのだから】


30 : 名無しさん :2018/09/10(月) 01:10:11 OeZGx6EM0
>>28

【――――――もしも好きなんだって言われていたら、もしかしたら、相手のころ、殺してしまっていたかも、しれなかった】
【それが本当に叶うかは別として。そうしてやろうと思ってしまったに違いなかった。だけれど帰ってきた言葉は違う色合い、――ひどく曖昧だったから】
【彼女もまた曖昧な顔をするんだろう。仕方なく。――そのくせどこかでかすかに安堵しているような、目。良かった、って、言いはしないけれど】

【あるいは――共感すらも、そこにはあるのかも、しれなくて】

――――……私は、あの子の――、お友達、でしょうか、…………幼馴染、と呼んでも、おそらくは、差し支えないのでしょう、けれど、……。
だけれど、――私は、あの子が笑っているのを、見ていたくて。だから――……、だから、……。――だから、好きな人がいるって聞いたときに。
私は、それでも、良かったんです、……だってあの子があんなふうに笑うところ、初めて見たんです。私たちは。だから……、それを見ていられたなら……。

【――ゆえに、やがて漏れ出る言葉もまた不明瞭であるのは道理だった、きっと宇宙の果てのレコードにだって刻み込まれていた、古びたレコードを廻すみたいに】
【掠れる声は不明瞭である以上にどこか弱気に震える、――彼女もまたその気持ちをきっと解していなかった、友達/幼馴染、それらの言葉は説明するには物足りなくても】
【だからといって愛していると言う言葉は不適切が過ぎた、――願っていたのはただあの少女が平穏に生きることだったんだ、って、今更ながらに白状する温度は懺悔に似て】
【今更どうしようもない後悔が流れるのならその色合いは青りんご色から白磁を経てどうしようもない夜の闇へ、――それでもよかった、という言葉は、限りなく何かを暗喩するから】

【好きな人がいるって教えてくれた時の笑顔が、あのひとを好きになってごめんなさいと泣く表情へグラデーションしてしまう、現実を思い出がなぞるなら】

――――――――――――――――ありがとう、って、言ってくれたんです、私に、笑ってくれて……。

【ぽつりと漏れる声が絶望にひずむ、いつかの幸福だけを夢見て/けれどそれには彼女の笑顔が必要不可欠で/だけれど彼女は緩やかに絶望していくから/叶わなくて】
【ただぼうと立ち尽くす、「――あの子はきっと覚えていないけれど、」。付け加えられる呟きはひどく自嘲の色合い、こんなのは子供の石ころだって分かっている、】
【だけれどそれが大切で。捨ててしまえなくて。みんながみんな忘れてしまう生まれた瞬間の眩さを、だから彼女は覚えているのに違いなかった。だって、】

【あの少女に「ありがとう」って笑ってもらった瞬間に彼女は生まれ直したのだろう】
【その瞬間に、――この世界で生きていくこと、生きていること、認めてもらえたのだろう】
【だから向ける感情はもしかしたなら子が親に向けるものに似ているのかもしれなかった。命を救われたんだと言外にこれ以上ないほどに伝えていた、涙を落として】
【それを言葉にする術を知らなくて。どんな言葉で伝えたら正しいのかも知らなくて。――ゆえに、震えて掠れる声にて伝えるしかなかった、届くかなんて、分からずとも】


31 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/09/10(月) 08:52:38 Ghp446ag0
前スレ>>977(ラベンダァイス)

【その言葉を彼女はどう受け取ったのだろうか、思慮深い双眸の奥、描かれた色合いは結晶の如く】
【端麗な微笑みを崩さず、それでも何処か寂しげな彩りを見せたのは間違いじゃなかったから】
【慈しみと尊さと肩を並べるくらいに、趣は少しばかりの淫らさを孕んでいた】


──── "ケツァル・コアトル" ──── そう、貴女様は…… えぇ、成程
分かります、だなんて軽々口にすべきではありませんね、けれども私にもその権利が幾ばくかは在って
故にそう答えましょう、私ならば貴女様の苦しみを、分かることが出来るのですわ

…… お優しい方ですのね、何だか私の方が頼りにしたくなってしまいますの
民の先導をすべき人間がこんな調子では、先が思いやられるでしょうに
頼りない為政者で申し訳御座いません、──── でも少しぐらいは、頼りにしても良いでしょう?


【肩に触れるその腕、こんなにも可憐な指先が戦いに身を投じる、その無情さを感じさせるみたいに】
【指先がその手へと伸びた、粉雪みたいに淡い、本当に淡い感触──── 少し気を抜いたら指先からすり抜けて】
【泡沫の彼方へと、溶けて果てて消えてしまう恋心に似て、それで何処か強さを持って】


──── ならばその力の片隅に私を置いて下さいまし、いえ、"私達" です
この国と、この国に生きる無辜の民達を、貴女様という力の拠所にしてくださいませ
貴女様の力は、それだけの意味を持つ、貴き力なのですから


【手が腕を引っ張る、つむじ風の作用に似ていた、麗らかな春の陽気が気持ちを上気させる様に】
【或いは蠱惑的なまじないに、身も心も委ねてしまうみたいに、人肌の体温が心地よい温度感に】
【ベッドの上で肌と肌を重ねて、朝餉を待つ悦びを、知ってしまうみたいに────】

【イスラフィールの腕が絡め取る、貴方の身体をそっと胸元に抱き寄せて】


──── そして願わくば、平和な世界の一端で、貴女様が幸せに過ごせる様に、と
そう思ってしまうのは、私のエゴでしょうか?


32 : ロールシャッハ ◆zO7JlnSovk :2018/09/10(月) 09:01:35 Ghp446ag0
前スレ>>978(ボス)

【背中にかけられる言葉を聞いた、明確な宣戦布告の様に思えた──── そしてそれは、どうしようもなく】
【そう、どうしようもなく彼にとって屈辱的な言葉でもあって、脚本家たる彼に対する挑戦状であった】
【モーツァルトを嫉むサリエリの慕情でもあった、ジャ=ロとロールシャッハの関係性の一端を示す様に】




──── ふぅん、キミもまた知った様な口を利くんだね、少し意外だったよ
キミもまた僕と同じで、心だなんて信頼も信奉もしていないかと思ったけど
ああ、でもね、成程、──── そういう道理か


【そうだろう──── 】




まだキミ達に心があるだなんて、そう思っていたいんだね、────
だとすれば僕は配役であり、傍観者として、この世界の行く末を眺めようか
手を加えることに悪びれやしないよ、それが僕の在り方だから



【其れは最後まで悪戯心に満ちて、次の泡沫には居なくなってしまう】


【兎角、ボスの元には多くのピースが集まった、それをどう組み立てるかは委ねられる点ではあったが】
【行く末を案じる生娘の様に、生きる導には十分なるのだろう】


/長期間お疲れ様でした!


33 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/10(月) 21:01:36 WMHqDivw0
>>30

お友達、幼馴染、……いいなあ。おれみたいに「ズル」しなくても何でも知ってんじゃん。
……、……えらいなあ、オネーサンは。おれきっとそんな綺麗な気持ちになれないよ、
いつまでもグズグズやってることしかできねーの。えらいなあ。……、いいなあ。

【いつしか「音々ちゃん」と呼ぶのはやめていた。その呼び方をしていいのはあの子だけってわかるなら】
【今までそう呼んでいたのは単なる意地悪だった。そのレベルを超えて、ただの嫌味だったのかもしれない】
【それさえ過ぎ去ってしまうなら、あとに残るのは――羨望か、あるいは嫉妬か。どちらにせよ綺麗とは呼べない感情】
【……ゆっくり立ち上がる。膝を伸ばして、屈めていた上体を起こして、最後に俯けていた顔を、ゆっくり上げれば】
【長めの前髪がゆらんと力なく、放物線を描いて――その下にある真っ黄色、末期色と呼んでも差し支えないくらいに】
【傷んでいた。この暑さでだめになってしまった卵みたい。あるいは温められすぎて死んだ、雛の色みたい】

……………………そう。おれも言われた、それ。ありがとうって。
誰にでも言ってんだなあ。誰にでも笑うんだなあ。……ひでーなあ。はは、そりゃそーだわ。

勘違いしちゃうもん。おれも、あんたも――そーいう人間にそーいうことしたら勘違いされるって、あの子、知らないんだ。

【そうして、がく――と首を斜め四十五度、傾けたなら。そのままけたけた笑うんだった。出来の悪い人形みたいに】
【夜の中でも未だ輝く前髪の向こうで、確かに死んでいる色合いの黄色が笑っていた。逆さ三日月のかたち。細まって】
【……、……ふいに、それが、だんだんと近づいてくる。瑞々しい青林檎に絡みつこうとするみたいに。粘度を伴い】

【ゆら、――腕が伸ばされる。両手とも、曖昧な軌道で宙を泳ぐ。そうして向かう先は小さな女の華奢な肩、】
【引っ掴もうとしていた。そして、叶うなら、そのまま押して壁に、いたいけな背中を押し付けようとまでする】
【そんなもの、「これ」がキライな貴女にとっては恐怖以外の何物でもないんだろう。よしんば何かあったとして】
【嫌悪とかそんなものにしかならない。はっきりとした「暴力」だった。それも、貴女より数段大きな「男」の力によるもの】

【――――――完全なる八つ当たり、それを曖昧な言葉に収めず、明確な行動に移した瞬間だった。けれども】
【漂う異能の気配だとか、魔力の飛沫だとかは見当たらないんだから――純粋な、身体の持つ力しか振るわれていないと】
【すぐにわかる。だからすぐに、やり返してしまえる。そうされたとしてこの男は何にも抵抗しないんだろうとさえ思わせた】
【だってそれもすぐわかるだろうから。自棄っぱちだった、なにもかも。……他ならぬ、貴女にしか、わからない】


34 : シャッテン&レグルス&ラベンダー&アーディン ◆auPC5auEAk :2018/09/10(月) 21:34:29 ZCHlt7mo0
>>13

……大丈夫さ、確かに、少しばかり恐ろしい場所かも分からないけど、君に牙を剥いたりはしない……それに、待ってる連中も、ちゃんと『今』を弁えてるさ……

【躊躇いがちなその歩調に、シャッテンは小さく頷いて見せる。アルクの死――――それと、正面から相対しなければならないのは、夕月も分かっているのだろう】
【しかしそれでも、待っている面々は、何も夕月をとっちめるために集まっている訳ではない。安心させるように、シャッテンは声をかけたのだ】

「……っ、おいおい、ネコさんは止めてくれ……。何も俺は、ここのマスコットキャラになったつもりはない……
 しかし、あの時共に踏み入った連れが、今回の事件の渦中にいたとは……流石に、少し驚きだな……」

【ピクッと、その耳が震え、表情が顰められる。だが、次にはその変化を『苦笑』という形で誤魔化し、アーディンはやんわりと、猫呼びを制した】
【恐怖を武器にしている――――あの『虚神』よりは、ずっと卑近な意味で――――彼ではあるが、今は夕月相手にそれを振るうべきではないと、分かっているのだろう】
【恐怖の刑に処されていた夕月に、恐怖は刃も同様だ。隻眼の獣人は、今は恐怖よりも情で、夕月に接する事を決めていた】

{――――私は、アルクさんとも一緒に居て、戦ってました。私の抜かりが、アルクさんを死なせてしまったんです――――
 整理はつきましたけど、それでも――――無理に元気には、なれません――――白神 鈴音の事を、考えても――――
 ――――名を、名乗っていませんでした。『UNITED TRIGGER』の、ケツァル・コアトル=ラベンダァイス=カエデ=キャニドップ――――ラベンダーと呼んでください}

【魔力の気配が、恐らく夕月に思い出させたのだろう。少女――――ラベンダーは、そっと伏し目がちに答えた】
【夕月が、ロールシャッハの手から救い出された戦場。あの時、恐らく夕月はアルクの事で精一杯だった事だろうと、同じく余裕のなかったラベンダーは口にした】
【ともすれば――――アルクの死に、責任を感じているのは、何よりそばで共闘していた、彼女だったのかもしれない】

<……あぁ。奴とは10年近い付き合いだった……レグルスだ、レグルス=バーナルド……
 ……あいつの死を、必要以上に気に病む必要はねぇと思う……アレは、奴が自分で望んだ戦いだ……自業自得でもあり、本望でもあるだろうよ……
 最期……奴は俺たちに、魔術で思念を飛ばしてきたからな……やる事は、何とかやり遂げられた……奴は最期に、そう言ってたからよ……>

【ふんぞり返る様に椅子にもたれながらも、偉丈夫――――レグルスは、沈痛な表情でため息を吐いた】
【その死を悲しむ時間は、もう十分に取れた。『相棒』として、彼なりにアルクの真意を夕月に伝えて】

「――――<harmony/group>、か……虚神どもと、どういう関わりがあるのかは知らないが……」
碌な事じゃないってのは、まず間違いない……そう考えて良いって、事だねぇ……

【5人それぞれに席に着き、アーディンが通りすがりのスタッフに「適当に飲み物を持ってくるように」と伝えると、話題はいよいよ、本題に入る】
【晒された夕月の素足、そしてそこに刻み付けられた刻印を、4人はまざまざと見せつけられる】

「ッ、これがシャーデンフロイデの、因子……これを使って、奴らは人間を、虚神に……ッ」
{――――人工的に、生み出す力――――そんなものを、その連中は――――}
<……ケッ! 気に入らねぇ……奴らは……奴らは…………ッ!!>

【反応は、様々だった。その悪意を眼前にして、言葉を失うのは、一様だったが――――レグルスだけ、趣が違う】
【忌まわしいものに対する怒り。沸々とそれが煮えたぎっているのが、握りしめられた棍が、ギュッと音を立てている事から、分かるだろうか】

「……さっき、「ひとでなし」と言ったが……俺と同類とは思えないし、他の獣人種とも思えない。君は……?」

【間を置く夕月に、アーディンはそっと問いかけた。先ほどの言葉の意味が、斟酌しきれていない。そこをまず、確認したかったのだろう】


35 : 名無しさん :2018/09/10(月) 21:41:28 OeZGx6EM0
>>33

【――――だけれど、きっと彼女は限りなくあなたが羨ましかった。隣にいたから見ていたのではなくて、そうでなかったのに、教えてもらえたなら】
【そう思ってしまうなら、それが信頼だと思ってしまう。それほどのものを抱かれているのだと思ってしまう。――それがゆるぎない神様の作用だったとしても】
【たとえそうだと知ったのだとしても。――きっと羨ましく思うんだった、長く"そのこと"さえ知らなかった自分と。知っていて。"呼ばれた"彼と。何が違うんだろう】

――――――――――――――――――――――――――でも、あの子は、幸せになれなかった……。

【笑っていてくれたなら良かった。自分の場所に居てくれなくってもいいとすら思っていた。あんな風な顔をする子だって、初めて知ったなら】
【きっとこの女もまっとうじゃない。どちらかと言えば人間の精神をすりつぶしてしまうたぐいの暴力性を持っている人間だった。それでも、そうだとしても、】
【あんまりに当たり前に幸せになったらいいって思ってしまう程度には、好きだったから。――けれどそれが叶わなかったときに、あるいは、一番、傷ついていたのは、】

【――そうして向けられる黄色い瞳を濁らす感情をきっと彼女は理解できない、もしくは理解しようとしない。自分もきっとおんなじような目をしているなんて、思いもせずに】

――――――、私。あの子が"たんぽぽ"をするって言った時に。本当は……、すごく、嫌だったんです、そんなの、言えやしませんけれど。……。
今だって、私には、分かりませんわ、あんなこと、――、だけれど。あの子。やりたいことを邪魔されるのが、一番嫌いですものね。
諦めたふりをして、それが出来なかったことをずうっと覚えているんだと思います。……。きっと、何十年も経っても。

【そんなの一度だって誰にだって言ったことはなかった。頭の中に在る気持ちを世界に一度だって漏らしたならお終いだって、きっと信じていたから】
【だけれど――ぽつりと小さな声で彼女は漏らすんだろう。その意味をこの女は理解していない。それどころか嫌悪感すら抱いた。だのにきっと理由は説明できなくて】
【あの子がやりたいんだからと自分をなだめすかして、その醜悪な感情に蓋をしてきたに違いなかった。少女の性格を理由にして自分を納得させてきたに違いなくて、でも、】

【――――彼の言葉に、ふと、何か、得心が行ったように。小さく笑うのだ、ひどく自嘲げに。世界が馬鹿げてるって気づいてしまったみたいに】

……あの子はきっと地面を見るのが好きなのね。それで落ちてるキーホルダーとかを持って帰るの。きっと……。――――ッ、

【きっとあの子は零れ落ちてしまった誰か/何かを見つけるのが得意なんだって。それは自分だけに差し伸べられる特別なものなんじゃないって、】
【彼の言葉で、何より今までの少女自身の行動によって、示されてしまったなら。――――そうだったんだ、って、気づいてしまう。けれど、その吐息が、詰まる】

――――――――――――――――――――――っ、ァ、

【つんとつった猫の目が見開かれて震えた、唇がわなわなと強張って、曖昧な音を漏らすなら、きっと明確な恐怖の音色に等しくて】
【だけれどおかしいと思わせるのかもしれなかった、――だってその様子はあんまりに、あまりに、怯えていた、世界中で何よりそれが一番怖い、と表明するように】
【化粧をするのは気持ちの武装に等しかった。店に所属しないのは、いつだって自分の気持ちを優先できるようにだった。それでも、突き抜けられると、堪えられないなら】

【――壁に押し付けられた身体がひどく強張っていた、そうして震えて、――だけれどやり返すことは、あるいはそれよりも恐ろしくて、なにも、なにも、できなくて】


36 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/10(月) 21:58:07 6IlD6zzI0
>>26

【――…何を言っているのか解らない。けれど自身の呼吸が荒くなり、瞳孔が開いてるのは理解できた】

【人形が継ぐ言葉が言葉に聞こえない。単なる音としての処理しか出来ない】
【気が遠退くほどの体感時間は事実を迅速に受け入れない。核心部分を避けての理解を選んでいた】
【"カチューシャは、harmony社の実験体"、"故に嵯峨野の手駒である事"―――だがしかして】


―――……"ソニア"なんて奴の事なんか知らない。そんな奴端から居ないんだ。
私にとって彼女は"カチューシャ"でしかない。それで十分だ。そして"エカチェリーナ"なんかでも無い。

彼女はあどけなくも艶やかな機関の狙撃手で……、愛を謳う可憐な狙撃手で……、抱擁を交わした親友で……。
私は知ってる。知ってるんだ。あの身体から滴る血の暖かさを。抱擁を交わした時に伝う温もりを。


【最終的には理解してしまう。カチューシャは"成功例"。その果てに"虚神の一柱・エカチェリーナ"と成ってしまった事を
【揺れる。揺れる。揺れ動く。天と地がひっくり返るような不条理。最早、どんな強い酒でも酔えない程の事実】


だからさ―――……虚神な訳が無いだろ。ジャ=ロやシャーデンフロイデと同類な訳が無い。
仮にカチューシャが虚神だったとしても、だ。彼女には世界を滅ぼす道理も理屈も無い。……ないんだよ。
……きっとそうさ、その筈なんだ。あれほど愛を謳ってた彼女が愛で世界を滅ぼすとでも言いたいのかい?

それにINF-004だなんて…標本めいた言葉で、虚神を連ねる記号でカチューシャを語らないでくれよ……。
違う、違う。違うはずなんだ。なぁ、そう言ってくれよ。頼む、頼むよ…。
【"私の逃げの言葉を肯定しておくれ――じゃないと、私も虚構現実の時のアンタみたいに喚き散らす事になる"】


【縋るような物言いが通じる相手ではない事は察している。少なくともアリアは自身を慮る言葉など口にしない】
【飾り気の無い真っ直ぐな言葉を投げ付ける人物だったから余計に。エーリカは今にも泣き崩れそうな表情を必死に押し留める】
【敵に弱みを見せ付けている。そんな事さえ考慮に入れる余裕が無かった。その姿は、独りの小娘の様に弱弱しい】


37 : ラベンダァイス ◆auPC5auEAk :2018/09/10(月) 22:02:53 ZCHlt7mo0
>>31

――――――――

【「分かる事ができる」――――イスラフィールのその言葉に、ラベンダーは何も言えない。どう応えるべきか、その言葉を彼女は持っていなかった】
【本当に分かってもらえるのか――――実のところ、ラベンダーはそれを「分かってもらえる」とは思っていない。誰にも、そのコアを理解しては、もらえなかったから】
【しかしだからと言って、分かるはずがないなどと突き放して、どうしようというのだろう。だからこその――――沈黙が答えだった】

あなた1人で、全てを成す事ができて、何もかもを導いていける――――そんな事は、無いですよね――――?
だから、頼りないなんて思いません――――危険には遠くても、私たちよりずっと『難しい』戦いを、しているんですから――――
――――『正しい』意志を示してくれるなら、いくらでも頼ってください。それこその『Justice』であり『UNITED TRIGGER』なんですから――――

【優しさ、慈しみ――――そうしたものを、彼女は『父』から受け取り、学んでいた。だからこそ、容易にそれを捨て去る事も、出来なかった】
【だから出来る事は、その戦闘機械の様な腕で、イスラフィールを支え、慰め、意志を伝える。それだけだ】

――――勿論です。私はもう、正義を捨てません。その為に戦い、傷つき、倒れていきます――――
その果てに、無辜の誰かの、無垢な安穏を守る事ができたなら――――その時初めて、私の命にも、意味が出来るんです――――

【今まで、どれだけの人の縁に、自分は触れてきたのだろう。思い返せば――――善い人々はいつも、自分を守り、導いてくれた】
【それが、有用か無用かはさておいて――――それを考え出すと、非常に複雑な経緯を経て、今の彼女は出来上がっている――――それ故に彼女は正義に目覚めた】
【『兵器』として、誰かの、多くの、ささやかな幸せを守り、その為に血を流す。それも、やぶさかではない――――】

っあ――――――――ッ?

【そして、そっと抱き寄せられるラベンダー。何事かと、思わず気の抜けた声を漏らしてしまう】
【イスラフィールの、唐突な抱擁に、どう反応していいか、対処に困ったのだろう。ただ引き寄せられ、抱きすくめられるままに、その身を委ねて】

――――――――ごめんなさい。平和な世界に、私の幸せはもう、無いんです――――
私の『人間ごっこ』を、本当に人間らしくしてくれる、たった1人の人は、もうこの世にはいません――――『兵器』の役目を失えば、私の命はもう、無用なんです――――

【そのささやきに、ラベンダーは言いにくそうに躊躇いながら、それでも自分の言葉で、平和と幸せはトレードオフなのだと伝える】
【――――やはり何度も繰り返してきた事だ。『マスター』が居なければ、どんなに人間らしく生きようとしても、心は虚しくなるばかり】
【それを、誰にどのような言葉で説明しようとしても――――上手くいかなかった。そのうちに、それを段々と、ラベンダーも諦めるようになってしまって】
【戦いの必要のない世界が実現したならば、自分は来世に戦いに行くしかない――――結局、そういう事しかできなかったのだ】

――――でも、それでも。あなたは生きてください――――平和な世界に求められるのは、あなたの様な人です、あなたの様な人こそです――――
力が必要ない世の中でも、意志は絶対に、必要になるんですから――――

【ふと、ラベンダーはそれを言わずにはいられない気がした。そうした言葉を受け取らなければならないのは、むしろイスラフィールの方だと】
【太平の世――――実現は果てしなく遠いが、それでもそれは『達成』の概念だ。だが、太平であり続ける事、それは『維持』の概念になる】
【そこに求められるのは、正にイスラフィールの様な、全き為政者だ。幸せを享受し、同時に守っていくのは、正にイスラフィールのやるべき事だ、と――――】


38 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/10(月) 22:23:43 WMHqDivw0
>>34

そ? じゃあ、アーディンさんって呼ぶ。
んで、そっちが……ラベンダーちゃん。……、そうね、鈴音のことは一旦おいといて。
……レグルスさん。アルクさんから、聞いてたよ……「ソニアさん」のことで、いっぱい、頑張ってるって。

【ひとりひとりの名をゆっくりと飲み込みながら、足首のそれがよく見えるよう。椅子に座りながらも】
【体育座りの姿勢。そしてその蝶の模様を指でなぞる、……まだ痛むのを誤魔化すみたいな仕草で】
【実際、毛ほども痛くないのに。思い出すだけで疼痛が走るようだった、眉根を寄せて、それでも語り始める】

あたしは、……ひとでなしって言うか。「造られた」ヒト、……でもないな、まあいいや、ヒトってことにしとこう。
そーいう感じのイキモノだから、当然、あたしを「造った」人もいる。……ラベンダーちゃんは見たことあるかな?
「ブラスフェミア」。そう名乗ってる研究者――、……きっとみんなにとっては許し難い存在になると思うけど、
ごめんね、今はちょっと、置いておかせて。それであたしは――そいつの「所有物」として扱われてる。

……そいつがね。今年の、春先くらいから――「あれ」と接触し始めた。
<harmony/group>の、……「魔女」。最初は単なる研究者仲間として付き合い始めて、そこそこ仲良くなったみたいで、
ある日の「実験」に、あたしが使われた。……モルモットにされたの。そこで、虚神の遺伝子を、植え付けられて――

【「…………その方法が、」 そこまで話が及びそうになったら。膝を抱えて座っていた姿勢、腕の力が強くなり】
【太腿をぎゅうと抱きしめて――ちいさく震えはじめた。それほどにひどい方法でそうされたのだと、容易に想像させて】

……、……ぁ、あし、……足首から先を、………………分解、された。
目に見えなくなるくらい、粉々に、……されてそれで、そこに、……っ、シャーデンフロイデ、を、混ぜ、……、

【……言いながら、呼吸がだんだんまばらになってゆく。顔色がどんどん蒼くなっていく。唇が戦慄く】
【「恐怖」の記憶が蘇りつつあるようだった。はー、と大きく息を吐いて、落ち着けようと、出された飲み物に手をつける】
【その水面すら震えていた。ならば、おそらくはこうして思い出したくもないことだったのかもしれない。けれど】
【伝えなきゃいけないと決意した。ならばもう、途中で止めることなんてないだろう。……少しの空白を置いたら、また、続きが始まる】


39 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/10(月) 22:37:42 WMHqDivw0
>>35

【でも、で始まる言葉を聞きたくなかった。自分でもわかりきってたことなのに。呻くように唇が戦慄く、だけど】
【音は出ない。代わりにひゅうと漏れるような息を吐く。……ひどく無様だった。今何か言葉を紡ごうとするならば】
【自分か、目の前の彼女か、あるいはどこにもいないあの子をひどく傷つけるような声しか出ないんだって。自覚するから】
【何も言えずに立ち尽くすばかりになる。それで、………………それで、】

【震える肩を掴む。男の力で壁に押し付ける。そしたら、かわいそうなくらいに怯えて縮こまった彼女の肩に】
【自分の頭を乗せようとする。するなら、高い背が折り畳まれて丸くなる。そこにいくらでもナイフでも、矢でも】
【いくらでも突き立ててしまえるほどに無防備に、広い背中を、誰もいない空間に曝け出して。それで、】


……………………………………ねえ、どうしておれじゃないの?


【――――――――、】

【…………吐き出してしまった。一番、言うべきではない、言ってはいけない言葉を。きっと今も哀れなほどに震えている】
【女の身体に吸い込ませるように。あまりにも身勝手に、何にも包まずに吐き出すなら、それは陵辱と同義だった】
【恋愛とはすなわち暴力を、愛する心で包んで飾ってきれいに整えたもののことを言うとするなら】
【今、剥き出しにしかされていないこれは、本当に単なる一方的な欲の吐露でしかなかった。すなわち、強姦だった】

【――――――――そんなひどいことしておいて、】

【……次の瞬間には「ごめんね」なんて言って、手をほどいて離れていくんだった。するときも身勝手なら、離れるときもそうで】
【ふっと、自分で壁に追いやった女の姿なんかもうどうでもよくなったと言わんばかりに視線を外して。さっき散らばした紙幣】
【まだ踏み躙っていない、無事なやつだけ拾い集めはじめる。またしゃがみ込んで。容易に、背中を晒して――――】
【憎らしく思うなら蹴ったってよかった。それどころか何か、刃物でも持っているなら刺してやってもよかった。だって、】
【あんまりに身勝手に暴力を振るわれたんだから。やり返していい理由が、彼女にはあった、そしてそれを受ける心算が彼にはあった】


40 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/10(月) 22:39:54 hEXW.LLA0
>>29

【湿る言葉の残響が月白の残り香を揺らす。崩れぬように抱き締める。自身の瑣末な願望の為に世界を滅ぼそうという神様の気持ちが痛いほど女には解せてしまっていた。】
【その程度の理由で足りてしまうのだ。明日の朝にママンが死ぬから。アラビア人と悶着したから。太陽が眩しかったから。 ─── なら、ともすれば、理由なんて要らない】
【愛し合う瞬間ではない全てを信じられないならば邯鄲の夢に何の価値があろうか。何の価値もなかった。ただ今は睫毛が柔らかく産毛と柔肌とまぐわう瞬間が現実だった】

【然らば、もっと色々なものを重ねれば現実の確度は上がるのだろうと疑わなかった。胸の奥に顔を埋めてくれるのは嬉しかった。もっとそこを吐息に湿らせてほしかった】
【この世界に有り得ない安穏すべてを、穢れない膚と豊満な柔肉と仄甘い女の薫りは孕んでくれていた。抱擁はきっと少女の為だけに誂えられた至福であった】
【それでさえも少女の懊悩を解くに至らないのならば女の顔もまた憂いに満ちて月光に浴していた。然して今はそうするしかなかった。乳飲み子に嘆息をせがむような指遣いで、そっと、瞬きの温度を愛撫して】


「 ……… 死んだら、いやよ。」「死なせないわ。」


【どろりとした夜露に濡れる言葉は真実だった。それでいて虚構だった。救いたい。死んだら救われない。けれど死んで救われるなら一緒に揃って笑顔で死にたい。】
【頤を下ろしていた。 ─── ならば女もまた俯いていた。一瞬だけ視線が合った。青く潤んだ隻眼。悲壮と愛情に透き通る顔貌は、彫り出した氷像の温度を宿す。】
【それでいて握り返される指先を一層に強く握り締めた。あたたかい。やわらかい。首筋に潜られる擽ったさと致命性について、最早なんの躊躇いもない。】
【少女の唇が寄せる先、声と呼吸と鼓動が色のない首筋を蠢かせるならば、どうしようもなく女は生きているのだと証明する。 ─── 例え頸動脈を噛み裂かれても構わなかった】

【故に少女の告解も、静かな蠕動の隙間に余す事なく呑み込まれていくのだろう。何にも悪くないのよ。何にも怖くないのよ。 ─── そう告げるように背中を何度も撫ぜて】
【急かす事も焦らす事もしなかった。女は本当ならば今すぐ重ねるべきものを重ねたかった。然しきっと少女はそれを望まない事も理解していた。だから】
【指先に藤色を弄んで、自身の銀色と絡め重ねて、いつかの咬合のように濡れる頬へへばり付けばいいと願ってしまう。髪の長い貴女は、きっともっと愛らしいから。】


「好きよ。」「愛してるわ。」「 ─── 今だって、大好き。」「好き。」「大好き。」「好きなの。」「好き、 ……… 。」
「一緒に居ると、 ─── それだけで嬉しくて。心地よくて。しあわせで。」「 ……… それがどういう気持ちなのか、私も初めは、分からなかったけど。 ─── だけど。」


【 ─── 口づけるのは、額へと。すべらかな生え際の上から、視線を重ねる事なく。ちろ、と這わせた舌先で、少しだけウィステリアを湿らせるなら(甘いから、それこそが)】


41 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/10(月) 23:01:28 hEXW.LLA0
>>36



「 ─── お前。」「この期に及んで、泣き言のつもり?」



【であれば女は呟いた。微かに無感情へ影を落として俯くなら、ごく小さな声量だった。ぎり、と合成エナメルの奥歯が軋んだ。聞こえても聞こえなくても構わなかった】
【嘆息を大きく吐き出そうとして然し人形には肺腑がなかった。 ─── ならば吐き捨てるのは書面じみて瑕疵のない事実だった。間違いなく突き付けるべき言葉ではなかった】
【それでも人形は/女はそうせずにはおれなかった。単純に腹立たしかった。かつての自分を観測しているようだった。だがだからこそ見限る訣別は示せなかった】


「 ……… "生前"の彼女に執着を抱く人間は、少なくないわ。」「まして虚神の一柱ともなれば、その身が引き受ける殺意について、分からないでもないでしょう。」
「貴女がどのように結論付けるかは私の与り知らぬ所よ。 ─── けれど何れにせよ、このままでは彼女は殺されるし、そうでなくば彼女は貴女を殺す。」


【泣こうが喚こうが何をしようと文脈を止めないのだと理解させるだろうか。生優しさなど何の意味も持たない。身をもって女はそれを知っていたから】
【せめて与えられる慈悲は食い込んだ絶望を傷口ごと抉り出してやることぐらいだった。 ─── 直接的な暴力へ訴えかけなかったのは最後の一線に違いなかった】


「貴女があの子を想うのであれば、 ─── いたずらな逃避へ時間を費やすことに、意義があるとは思えない。」
「安い同情も励ましも無価値でしょうから事実だけ述べておくわ。 ……… 貴女が"どうするか"決めなければ、私も力を貸せない。」


【「この場で決めなくとも構わないけれど、ね。」 ─── それが少なくとも、今の女にとって伝えるべき全てだった。真一文字に口を噤む。聞きたくないし、見たくない。然し言葉だけは投げかけても構わなかったから】


42 : 名無しさん :2018/09/10(月) 23:03:44 uYq9fVjM0
>>39

【――は、は、と、小さく、短い呼吸が。何度も何度も重ねられていた、ひどく早くて、震えて、だから身体も視線も震えるのは道理であって、】
【その癖にきっと彼女は「やめて」も言わなければ、その言葉の代わりに何か行動をすることもない。――"できない"。それほどまでに恐ろしかった、怖くて】
【壁に触れた背中がひどく痛む気がした。ほんのちょっとしたありふれた感覚が何倍にも何倍にも膨れ上がって恐怖に彩られたなら、熱い鉄板に押し付けられたようにすら思え】
【それでもその肩口は甘い香りがした。強張って頑なになったものだとしても、いくらか女らしい柔らかさがあった。体温があって――だけどおもちゃみたいに震えるなら】

――――――――――――――っ、

【押さえつけられて、無理やりに、意思も気持ちも事情も全部関係のない欲を向けられるのは、慣れていた。だけれど。それは。ただ我慢しているに他ならないもの、】
【めいっぱいにお化粧して。そのための気持ちを整えて。少しでも駄目と思ったなら安全な場所に逃げ帰る。それでも時として心がくじける日もあった、あって、】
【ならばこれは"時として"の一つなのかもしれなかった。武装した心を貫く言葉は鎖帷子に差し込まれるレイピアに心臓を貫かれるみたいに、ただ苦しい】

【――そうして見開かれて震える視線はきっと今を見ていなかった。いつかの日を見ているに違いなかった。けして棄てられないいつかの過去を、】
【その過去を乗り越えて強くなれだなんて言うのは無責任な言葉に過ぎなかった。被害者ばかりが強くなることを求められるから不条理だった。それでも、そうだとしても、】
【外に出してもらえたことはほとんどなかった/テレビすらも見たことなく/母親をそうと呼ぶことは許されなくて/金切り声の理解できぬ言葉での罵声、何度も殴られて】
【暮らし向きそのものは悪くなかったと思う/それでも彼女が存在していてよかったのは物を収納するためのちょっとしたスペースだけで/味方は誰もいなくて】
【それでもかろうじて優しさに似ているものを向けてくれたのは父親で/だけれどそれもただ自分の欲求をみたしたいだけで/金だけはあるどこぞの社長】
【金に飽かして合法ギリギリのモデルを手に入れて/それでも物足りなくて/お腹が痛くて/だけど"それ"を知らなくて/母親に言ったらひどくひどく、ひどくされて】
【父親に訴えたなら――――喜ばれた。大人になったってことだからと。だから。だからと言って。"そういうこと"は初めてじゃなくて、でも、"そこまで"は、初めてで、】

【――――ずたずたにしたなら父親も母親も分からなかった。だからそれは前世の記憶。あの日にあの少女が笑いかけてくれた日が、誕生日だって、信じたくて】

――――っ、あ、――、ひ、――――っ。っ、つ、あ。――っ、――――! 

【ゆえに。ふいと彼が興味を喪ったみたいに視線を逸らすのなら、彼女は、逃げ出そうとするのだろう。"なにか"するっていう発想は彼女の中になかった、だって、】
【そんな風に自分を護ってもいいって誰も教えてくれなかった。母親も父親も彼女にそんなこと教えようとしなかった。それを教えてくれたのは鮮やかな目の黒猫だけ】
【だから破瓜の血の色とまるで反対の色した瞳の猫だけが味方だった、――ふらりと歩むのならその傍らに現るのはまるで獅子のように大きな身体の黒猫、けれど彼女に付き従うなら】

【彼に被害が及ぶことはないだろう。逃げる――この場から離れようとする彼女が転んでしまわぬように身体を添えるから。彼女さえ居なくなってしまえば、あとは、静寂だけになる】
【――――はずだった。あるいは、無理やりに引き留めることだってできるのかもしれないけれど――】


43 : ◆RqRnviRidE :2018/09/10(月) 23:10:40 HneMi9f20
>>9

んん、それがねえ。 中々どうして難儀しているんだよね。
覚えていることがひどく断片的でね、どうにも思い出せなくって。

はっきりと言えるのは、とにかく『ボクたち』はこの“銀の髪”を命と同じくらい大事にしてるってこと。
縁や運命っていうものは“髪に始まり髪に終わる”、そうやって代々教えられてきたんだ。
それだけは絶対的に確かなんだ──だから、仲間はきっと居るはずなんだよ。

【問いに答える瑠璃は、自分の銀髪の毛先をいたく愛おしそうに指先で弄ぶ。 蛍光灯を反射して煌めく様は、星の輝きを湛えているかのようにも見えた】
【言葉通りであるならば、瑠璃を始めとしたその種族は、己の頭髪を自由自在に繰り、髪を神聖視する一族──と言ったところだろうか】
【世界は広しと言えど全く宛が無い訳ではない。 探り当てる糸口が一本でもあるのなら、僅かな可能性に賭けて手繰り寄せるだけだ。 此度の邂逅のように。】

それとアテになりそうなのは、湿気が多いのが好きなのと、寒いのが苦手っていうのと……
──あとはそうだなあ。 “これ”はあんまり好きじゃないんだけれど。

【そう言って瑠璃はちょっぴり小声になり、髪を一本、人差し指と親指に挟んで抜き取ってみせる】
【極細の銀糸のようなそれは暫くすると、たちまち硬化して“針”あるいは“棘”のように真っ直ぐに伸び】
【机の表面に押し当ててやれば、ぢり、と僅かに妙な音を立て。取り除くと光沢が剥げ、ざらついているのが見えるだろう。 溶解でもしたかのように】

毒があるんだよ。 ある程度抑えられるんだけどね。

【銀糸が生きているかのごとくうねり、毒を持つそれはさながらクラゲの触手のようであった。 だからこそ海洋生物の本を手にしていたのだろう】
【湿度と高温を好むということは即ち棲んでいた環境を示すのだろう、ともすれば何処かに似た気候の地域があっただろうか】

能力者を〝管理〟だなんてずいぶんと物騒だなあ……、なんだか窮屈に感じちゃうよ。
そんなことになってるとは思いもよらなかったな……ありがとう、マリアベル。

……しかし、探し物が多いのは良いことだね。 きっと楽しみが尽きないだろうから。
そしたらボクも探訪がてらに探してみよう、それなら多分キミの力になれるかも。

ね。 だからボクにもその物語を紡がせておくれよ。
だって可能性は分岐してた方が愉しいだろう?

【やや俯かせていた顔を上げ、漆黒の視線を深紅の瞳と交わす。 にやりといたずらに笑んで、詳細を促す】
【子供の好奇心は充分すぎるほどに旺盛だった。 寝しなに読み聞かされる物語の続きをねだるように】


44 : シャッテン&レグルス&ラベンダー&アーディン ◆auPC5auEAk :2018/09/10(月) 23:13:53 ZCHlt7mo0
>>38

「……あぁ、そうしておいてくれ……」
{今は――――そう、今は――――考えるべき事は、そこじゃない。ですね――――}
<……遅かったがな。遅くなり過ぎてしまったがな――――――――今はもう、どうしようも無いんだって……>
……今のところ、こんな感じだけど、気にはしないで大丈夫さ。中々、頼りになる連中だからね……
(夕月……初っ端に「ネコさん」呼ぶって……上手く、通じなかったかな……)

【顔合わせも済んで、テーブルにはそれぞれに飲み物が配される。夕月とラベンダーにはオレンジジュース】
【アーディン、レグルス、シャッテンにはジンジャーエール――――流石に、こんな状況でアルコールを入れるのは、適切ではないだろう】

っ、造られた、ヒト……?
{――――まるで、私みたいですね――――それで、あんなに――――}
「……なにやら随分と、込み入った事情があったようだな。恐らく、詳しくなり出すと、それだけで本題そっちのけになるんだろう……?」
<…………>

【まず触れられる、夕月の素性。流石に、みな一様に驚きを見せる。背景として、まず本件には随分と複雑な背後関係があり】
【それを起点にして、虚神一連の事件とリンクしている――――シンプルに、そう理解する事を一堂は努めなければならなかった】
【――――或いは、ブラスフェミアと微かな接点のある、ラベンダーの呟きもまた、夕月の興味を引くかもしれないが、それは些事だ】

{――――なんですかッ、それ――――!}
……本当に『モノ』扱いって事かい。知らなかったよ……君に、そんな因果があったなんて――――そんな奴が、そばにいたなんて……ッ!
「っ、ま……待て、『遺伝子』!? ……虚神の因子が、そんな即物的なものだったのか? ……奴らが生物? いや……俺たちの常識だけでは、計れないとは思うが……」

【置いておかせて欲しいと言われた、その理由は彼らにだって分かる。だが、それでも――――その事に許しがたいと怒りを燃やす様な、そんな連中の集まりだった】
【思わず声を荒げるラベンダー。あの時の様に、グラスを握りつぶさん勢いで力が入るシャッテン。ただ、アーディンだけは言葉の中身を精査して】
【虚神の因子が、『遺伝子』という物質的な表現で語られる事に、頭を悩ませていた――――ならば、これは卵の様なものなのだろうか?】

{ぅ――――ちょ、ちょっと待って、ください――――}
「……夕月、まずは落ち着いて――――ッ!?」

【続きを騙ろうとして、夕月が変調する――――明らかに、トラウマに触れる記憶だったのだろう。思わず、ラベンダーとアーディンは夕月の身を案じる】
【だが、それよりも早く、夕月に手を差し伸べている男がいた――――】

<――――バル(火)・ログ(浸食)・ラー(心)。ビン(レベル2)――――『ブレッシングヒート』――――
……恐怖に勝つってのは、恐怖を『克服』する事だ。今は辛いだろうけどよ、潰れんじゃねぇ……>

【――――咄嗟に、レグルスが左手を夕月にかざし、その手から暖かな光を放って、夕月を照らしていた。何か、やり切れない様な表情を湛えながら】
【光の力は、精神的なエネルギーの回復、そしてポジティブ方向への誘導に、力を発揮する】
【丁度――――アルクが使った『リラクゼーション』の、鎮静による精神回復と、鏡写しの様に】

<……俺たちには、もうソニアを救う手段がねぇ…………今は、もうソニアを――――いや、『エカチェリーナ』を殺してやる事しか出来ねぇ……
 けど、その為にも――――知らなきゃいけないんだ。だから……落ち着いたら、もう少し、聞かせてくれよ……ッ>

【夕月が、オレンジジュースを飲み下して、調子を整えるまで、レグルスは待つ。本当なら、1秒でも早く続きが聞きたい、その気持ちを押し殺して】
【――――アルクの言によれば、レグルスはソニアを好いていた。だが――――その沈痛な表情には、哀しい殺意が見え隠れする】


45 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/10(月) 23:37:37 WMHqDivw0
>>42

【一枚一枚拾い上げる。いち、に、さん、し、ご、数えて、もとより持っていた数より一枚少なくなっているのを確認したら】
【それでようやく立ち上がって、じいと大きな猫を見やる。それで――何もしなかった。ひどいことをした自覚はあった】
【だから謝ったんだし、それ以上を望む気にもならないし、だからといって、反省も、してないんだけど】

【去り行く、というか逃げてゆく猫の背中を、どろどろの粘性を保った瞳がずっと見ていた。ずっと、ずうっと】
【それでもうこれ以上、……誰にも会いたくないと思った。今夜ばかりは。だから、手にしていた紙幣を何回か折り畳んで】
【その折り目に沿ってびりびり破いていく。何枚もの細かい破片になったそれを、握り締めたらぱっと手放してしまって】
【そうしたら紙吹雪みたいにひらひら、暗闇に融けていくみたいに散らばされるんだった。今宵の劇はもうおしまい、とでも】
【言わんばかりに。……なんの面白味もない劇だった。劇とすら呼べないくらい筋のない邂逅だった。だから、】

【(――――スマホが震える。白けた視線にて通知を確認する。トークアプリ。妹。「ごめん」の三文字)】


――――――――――――みんな死んじまえばいいのに。


【…………締める言葉も、ありきたりかつ、ひどいもの。ぽつんと残してそのまま――でろり蕩けた雛の死骸色の瞳】
【ゆるやかに動かして、どこにも焦点を合わせないまま。去って行くんだった、静寂、それすらうざったいと思いながら】

//ここらへんで! 長いことありがとうございましたっ


46 : 名無しさん :2018/09/10(月) 23:40:32 uYq9fVjM0
>>40

【だからきっと何かを変えたいに違いなかった。決着をつけたいに違いなかった。自分の過去にも。してきたことにも。いろんなことに。あるいは神様への気持ちすらも】
【だのに何にもわからないのに違いなかった。何かを変える方法だなんてきっと知らなかった。破滅に似て踏み外すのは変容と同じでも自分の意思ではないから】
【握りしめられていない方の指先がそっと相手の首筋へ伸びるのだろう。そうして息苦しいはずもない力を柔と込めるのだ、――まさぐる指先はきっと鼓動を探して】
【暖かいのが嬉しかった。柔らかいのも嬉しかった。真っ白なのもいい匂いがするのも全部全部が嬉しかった。だからこそ怖かった、――いつか殺してしまうんじゃないかと】

【だから指先が鼓動に触れたときに少女はひどく子供ぽく笑うんだった。その顔を見せやしないけれど。その予感に等しい確信だけを相手に伝えて、】

……………………………………………………………………………………死にたい。

【――――すとん、と、その指先が脱力してベッドの布地まで落ちるのだろう。おんなじ白なのに何もかもが違った。貴女までもこんなだったらよかったのに】
【市松人形より武骨で愛想もないただの抱き人形であったならこんなふうな気持ちにはきっとならなかったと思う。だのに決して相手をお人形だなんて言いたくはなくて】
【だのに生きてるならきっと殺してしまうに違いなかった。そうやって信じてしまっていた。自分と居ればみんな不幸になるに違いない、そうしてみんな死んで行ったに違いないから】

【――死んだみんなの代わりにしないといけないことがあって、】
【だけれどそれをすることが出来る強い自分を見失ってしまって、】
【どこにいるの、って、呼びかけても、誰も応えなくて、】

【("これ"は逃げているだけだって言いたい自分が居た。お前は逃げているだけだって。相手を都合のいい理由にしているだけだって。ただの逃避の道具にしているだけだって)】
【(だから早く正しく振る舞えと言って憚らない。もうそんな気持ちになれないのを信じてくれない。貴女と一緒じゃないとベッドから起き上がることすらできないのに)】

……アリアさんと一緒に居ると、うれしい、です、……嬉しい。と、思う。……。いつだって、もうほんの少しでいいから、近くに、いたくて……。
…………心地好い、……。……一緒に居るの。すきです、……。一番気持ちいい温度のお部屋みたい。……。何にも着なくてよくて。――。
しあわせ、――です、たぶん、……。――――――――でも、こんなの、……こんなの、こんな、私……、私……。

【"それ"が"すき"だってことなら、きっと、自分は相手のことが大好きなんだろうって思った。そしてそれなら半分分かってもいた、あるいは少しだけ期待もしたけど】
【これが好きじゃなかったらよかったのに。そうしたらきっとひどく悲しくなるけど――自分の中の何かに納得は、納得だけは、出来るような気がしたから】

アリアさんと居ると、苦しい……。

【大事な試験の勉強をほったらかして部屋を掃除してしまう罪悪感ときっとよく似ていた、出てきた漫画を面白く読んでしまうほど、虚無が強くなるのとおんなじ作用】
【どこだか知らない景色を一緒に見たかった。外の空気を浴びたかった。別にどこかじゃなくたって、近所をちょっとだけふらっとするだけでも、気は晴れたと思う】
【だからこれは閉じこもった弊害の"病気"なのかもしれなかった、密室空間で呼吸するたびに酸素が目減りするみたいに、そうしてやがて二酸化炭素に脳が浸されるように】
【必要なのは部屋と頭の換気。だけれどまだ密室の中に居るならひどく絶望的な声を上げる少女の仕草もきっとどうしようもなく、正しくて】


47 : 名無しさん :2018/09/10(月) 23:52:28 uYq9fVjM0
>>45

【やがて、彼女は大通りに辿り着く。そのころには能力の作用である黒猫は消失していた。――それくらいのことは出来た、かろうじて、だけれど】
【そうしてひどい貧血でも起こしたかのように道端にしゃがみ込む。冷ややかな視線の他人が通り過ぎていく。だから何もかもを無視して携帯電話を取り出して、】
【ひどく震える指先で一生懸命に誰かの電話を鳴らす。――喘息の患者が薬の吸引機を握りしめて死んでいるみたいに、彼女もきっとそうやって死ぬんだって予感させる、顔色にて】

――――――――……――っ、天音さんっ、あまねさん、――っ、きて、いますぐ、――、っ、いますぐ来てっ――。

【電話がつながっても喉の奥に吐息が詰まってしまって喋れなくて。何度も呼吸が突っかかる、けれど"いつものこと"だから、その向こう側の人間は、急かさなくて】
【というより聞いているかも怪しかった。それくらいの静寂もまたいつも通りで、――やがて緩やかなため息の音、「服ぐらいは着ていいかしら、風呂上りなの」】

【――きっとそうやって夜は更けていくんだろう。それを神様はどこかで見ているんだろうか。世界に拡がる無意識の中から、ただずっと】

/おつかれさまでした!


48 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/10(月) 23:53:48 WMHqDivw0
>>44

そう。込み入ってるっていうか――そっちの話し始めたら、たぶんみんな、そっちに集中するでしょう?
だから今は置いとく。<harmony>と、……「ソニアさん」の話だけ。あたしはそれだけしかするつもり、ないから……

【とは言ってみたものの、それもあんまり通じないんだろうなと思った。見逃してくれるほど「悪い」人たちじゃないって】
【わかっているから。だからこそ――今ここでだけは、置いておいてほしいと重ねて頼み込む。だって、】
【そうでもしないとアルクが命を落としたのが、無駄になってしまう気がしたから。そう考えるとまた泣きそうになって、……こらえる】
【やけっぱちでジュースを飲み込んだら、深呼吸をして、続き。話し始める前に――レグルスの術を、受けて】

…………ん。ありがと。レグルスさん、……だいぶ、頭、はっきりしてきた。
続きの話はじめるね、……そう、遺伝子。ぶっちゃけあたしにはよくわかんないんだけど、
「魔女」はそう呼んでたから……そういうことなんだと思う。それを、分解されたあたしの脚に結び付けられて、

――――――あたしの場合はそう、ほんとに、ここだけ。足首から先だけなんだよ。
でも、それだけでも……気が狂いそうになるくらい痛かった、痛いって言うか、もう、苦しくて苦しくて――
それだけでもう死んじゃいたいって思えるくらい、……ひどかった。いっぱい泣いたし叫んだ、それくらい、……

【そこまで言ってもう一つ空白を置く。レグルスの沈痛なる決意を聞いて、顔を顰める。言えることなら、】
【きっとまだ大丈夫だよ、ソニアを取り戻せるよって言いたかった。でも言えなかった、だって、自分でさえこうなってしまったのに】

【――――――――、】

だから、…………「成功」した「ソニアさん」……「カチューシャ」は。きっともっとひどいことされたんだと思う。
まるきりもう、別人みたいになっちゃったんでしょ? 「ソニア」と「カチューシャ」。だったら、
……実際に「こうされた」あたしから言わせてもらうなら、……憶測にしかならないんだけど、たぶんこういうことなんだと思うよ。

ソニアさんは多分、――――――全身を分解された。それで、骨の髄から細胞のひとつひとつに至るまで。
全部に、虚神の因子を、結び付けられたんだと。……それだったら納得いく。別人に成り果てたってんなら、そういうことだと思う。

つまり、…………造り替えられちゃったんだよ。全部。もとのソニアさんが何処かに残っている可能性は、……よく、わからない。

【――――ひどく言いづらいことを言う声色。それでも、もとのソニアを取り戻すのは無理だとまでは断言しない、曖昧に濁して】
【それは年若い少女だから見られる夢であるだけかもしれなかった。空想で描く希望でしかないのかもしれなかった。でも、】
【捨ててしまうことが出来なかった。レグルスみたいに、悲痛な覚悟を決めることが出来なかった――どこまでも甘い娘だった】


49 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/11(火) 00:07:35 6IlD6zzI0
>>41

【泣いて喚く事で降り掛かる奇跡があるならば】
【世界中の彼方此方で奇跡の安売りが為されているのだろう】

【でも現実は違って。降り掛かるのは人形越しの明確な苛立ち】
【縋るような言葉はバッサリと切り捨てられた――それは理路整然とした激情】


―――……機械仕掛けの分際でよく回る口だこと、よっぽど良い潤滑油でも使ってんだろうね。


【嵐の前の静けさは、皮肉交じりの言葉】
【嵐の到来を告げるのは、ダンっ、とテーブルを叩く音――それは無軌道な激情】


私だって泣き言を言った所で何にもなんないのは解ってんだよッ!
今この時の激情だって癇癪だって問題解決に何にも繋がらない時間の浪費だって事ぐらい理解してる!
それに手を拱いてりゃ彼女がが虚神として誰かに殺されるか、私が殺されるかって事ぐらい理解してる!


【なりふりなど構っていられない。内からの激情が心を動かし、言葉を勝手に吐かせる】
【人形越しのアリアを睨むその目は赤くて。知らぬ間に泣いて/哭いていた】

――…けど、今の私は無力って事も理解してる…。

虚神には太刀打ちできない程度の惰弱な能力者だって事も。
一個人の能力もアンタには遠く及ばない小娘同然の未熟モンだって事も自覚してる。


【隣に座るリゼは心配げに沈痛な面持ちで。嗚咽交じりに涙で顔をくしゃくしゃにしたエーリカを見遣る】
【かける言葉が見当たらない。エーリカに対しても、アリアに対しても。だから今は押し黙る】


"カチューシャ"は死んだわけではないが、彼女はもう"INF-004 虚神・エカチェリーナ"でしか無いんだろう?
だったら――…"どうするか"なんて決まってる。悠長な事をいう気は無いから。私は―――


         殺すさ。殺すとも。虚ろな神の一柱である INF-004を、"エカチェリーナ"を
       そして"カチューシャ"を取り戻す。もし取り戻せないのなら私の手で殺す。
     だから――手を貸せよ、機械人形。嫌だなんて言わせない。泣き言は無しだ。有無も言わせない。


【駄々を捏ねる子供の様な物言い。けれど言葉にはその内容を連想させるだけの重みがあった】
【"私がどうしたいか"など解りきっている。元より命の遣り取りから始まった関係なのだから】
【言葉よりも記憶よりも、この手が解っている。"カチューシャ"を取り戻す為に今一度切り結べ、と】


50 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/11(火) 00:44:22 hEXW.LLA0
>>46



        「 ───………… 死んだら、」「許さないわ。」



【どうしようもない言葉をどうしようもなく繰り返す。 ─── 呪詛の体裁も為していなかった。それでも少女が死んだとして、輪廻の先まで女は追い縋るのだろう】
【どれだけ分かり合えたとしても、他人の言葉では決着のつかない領域。誰しも持ち合わせていることを女は理解していた。それでも踏み込まずにはいられなかった】
【毎夜ごとに重ねる肌も、首筋に刻んだ口吸いの鬱血も、背中になぞる真っ直ぐな爪跡も、全てそれらの産物であるに違いなかった。 ─── 言葉なくして理解を求めて】
【そうして儘ならぬ関係性に少しでも救いあれと願ってしまう自身からの逃避にも似ているのだった。自分が解いてやらねばならぬ呪いに、然し自分ではどうしようもない】
【せめて愛しい人の煩悶に少しばかりの共感を捧げてやることが精一杯だった。背中をなぞる指先が、深く呼吸を吐き出させる抱擁が、分かり易い逃道を示してやる。】


「 …………… 恋って、愛って、苦しいものよ。」「私も、すごく、 ─── 苦しかったの。でも、今はもう、 ……… 大丈夫だから」
「かえでも、いつかは、」「 ……… 苦しくなくなる。」「だって貴女は、何にも悪いことなんて、してないの。」
「きっと、いつか、幸せになれるわ。」「それまで一緒に、それからもずっと、支えていたいから、 ─── 。」


【 ─── 言い終える前に、少女の華奢な躯体を抱き上げて、音もなく唇を塞ごうとするのだろう。青く潤んだ瞳は陶然としていた。目を閉じることも忘れていた。】
【変わらず頤は下を向いて、少女の顔を上向かせるかたちであったから、流れ込むのは甘い唾液。酸欠の手前まで呼吸と粘膜と慰撫を重ねて、執着に似たキスを続けて】
【絡まった宿世の情念など昂ぶる鼓動に忘れてしまうのが一番の賢明であった。今までそうしてきたように。 ─── しかし唇を離して、垂れる銀色の輝きと共に、落ち着く為の呼吸を零すのであれば。縋るような両腕】


「 ────…………… ねえ。」「 ……… 久しぶりに、車に乗りたいの。」
「サービスエリアの、夜の景色を、 ─── 一緒に、観たくて。」「かえでと一緒がいいの。」「一緒に眺めていたいの。」「 ……… 後ね、一緒に、お風呂にも入りたくって」
「 ……… ベランダで、一緒に、お酒を飲むのもいいの。」「とっても甘いお酒、チョコレートも添えて」「私、かえでに、飲ませてあげたいから ─── 。」


【顎先を少女の肩口に預けて、藤色の髪を唇に掻き分けて、見つける耳朶をそっと吸う。ちろり、舌を伸ばして、ぽつり、囁くのは湿った吐息と共に】
【 ─── しっとりとしたリップノイズは世界を象るのに十分な輪郭線だった。それでも拒まれるのならば仕方がなかった。もっと退廃的な方策に訴えかけるより他になかった】


51 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/11(火) 01:10:31 T.I/hGso0
>>49

【剥き出しの害意と激昂にも人形は笑う事はなかった。続く年頃の少女らしい弱味を嘲る事もしなかった。】
【 ─── 余計な容喙もなく、人形越しの人間は、然し確かに少女の決意を聞き遂げた。そうして、静かに頷くならば、ようやく彼女は笑うのだから。】



        「 ──── 良いでしょう。」



【ならば返されるのは確かな承認の言葉であった。他人の覚悟に吝嗇を付けるような真似は好むところでなかった。】
【きっとエーリカの前で始めて"女"は笑っていた。ある種の馬鹿馬鹿しい共感がそこにはあった。ひどく歪んだ形の友誼にさえ似ていた。存外に女は情動的な人間だった】


「それなりに啖呵を切った以上、 ─── 私も、躊躇うつもりはない。」
「その道の違わぬうちは、貴女の力となりましょう。」「 ……… 対価など求めないわ。」
「然し貴女が躊躇うのならば、私は容赦しない。貴女へも、貴女でない者へも、変わらずに。」


【ふッ ─── と息を吐いて、然し矢張り吐くべき息など無いのだから、どこか胸詰まるような所作であった。】
【それでも視線はリゼの方へと向けられた。青く透き通る硝子色の瞳であった。ひとつ共犯を強要するような面構えをしていた】


「 ……… 嵯峨野が非道を働いたのは、何も夕月に限った事ではないわ。」「彼女と同質、それ以上の実験を施された結果が"あの子"であると、想像には難くない。」
「そういう手合いは ──── 私も、反吐が出るほど嫌いなの。」「嵯峨野を殺す。エカチェリーナも殺す。 ……… それで良いわね。二人とも。」


52 : 名無しさん :2018/09/11(火) 01:30:28 uYq9fVjM0
>>50

【――ごくごく小さな呟き声が漏れた。けれど限りなく不明瞭だったから、それはきっとうめき声に等しかった。何の意味も並べ立てないからこそ感情を意味する声音が】
【いっそこんな気持ちごとその喉に入り込んで、そのきれいな声で説明してくれたらいいと思った。私は十七年しか生きてないって意味なく主張してみたくて】
【大人になる一歩手前。だけれど大人なんてそんなにいいものじゃないってきっとうすうす気づきかけていた。だって自分勝手で嘘つきで非道くてお酒臭くて、煙草臭いから】
【だのにそんなに気にならないくらい。そうじゃないともう満足できないくらい。だからこの気持ちは好き以外のなんて言葉でも説明できるはずないのに】

……アリアさんは、どうして平気なの? ――ずるいよ、私は……、こんなに――、――……なのに……。
分かんないよ……。そんなはずない……。みんな死んじゃったの……。アリアさんと居ちゃいけないって分かってるの、
でも、――でも、もう、一緒にいられないって思ったら、死んじゃいたくて、――でもっ、でも、……一緒にいたいって思ってるのも、死んじゃいたくて、

――――――――――、

【死にたい。そうやって漏らそうとした言葉は、けれど、出てこない。物理的に唇をふさがれてしまって、ただその言葉の気配を、舌先の仕草が伝えるのなら】
【あるいは相手のところにだって情報は入っているのかもしれなかった。蛇を信じた人達がいろんな場所で死んでいるらしい。誰もが自殺の様相で。死体はしゃべらないゆえに、】
【その理由も心の機微も感情の作用さえ伝わることはありえなくて。であれば眼前にて生きている彼女がしきりに魅入られた目をするのがその証左であるのかもしれなくて】

【ひどく淀んだ視線がまっすぐに差し込まれる、短い毛先がそれでも柔らかく垂れて、この数日でさえ伸びた数ミリを証明する、彼女がまだ生きているのは相手が居るからだと、】
【それを分からすにはきっと十分なくらいの時間。甘くて荒くてそれでいてどこか気怠い吐息が交じり合うなら、きっと、最後は泣きそうな目をしているのに違いない】
【まして好きを自覚してしまった今、秒ごとに迫りくる希死念慮と泣きたさを堪えるだけで精一杯だった、いっそ童話みたいに丸ごと呑み込んでくれたならいいのに】

――――――――――――――――アリアさんとなら、なんでも、したい。

【であれば肩口に埋められた顔に耳元をまさぐられても何というはずもなかった、それ以上のことはもう何度だってしてきたし、されてきたのだし】
【物悲しいような、しかして限りなく愛しげな声が空間を縫い取るみたいに紡がれるなら伝えるのは全幅の肯定、なにをしたって、されたって、一緒ならそれでいいって】
【ならばその気持ちと全くおんなじ分の相反する感情と言葉をその内側にめいっぱい押しとどめているんだと思わせた、だから泣きそうな声をしているんだと、】

アリアさん、――すき。すき……。好きなの、……、死にたい。……好き、すき――――。

【だからこそ、内よりの怨嗟に負けてしまわないように塗り重ねようとする、それならこちらだってめいっぱいに耳元に囁く、ぎゅうって抱きしめて/抱きしめられて】
【なら久しぶりに服だって着るのかもしれなかった。相手の好きな香りの洗剤と柔軟剤で洗った服を着たなら、気だって紛れるって、信じたいから】


53 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/09/11(火) 12:43:50 Ql3G0hyI0
>>32
ふむ……何度言っても信じて貰えないのだけど。
私は、皆と立ち位置が異なるだけの凡庸な人間なんだ。
心を信じることだってあるとも。
何より、"そういうこと"にして置いた方が、この世界は面白い。

【心理学者は高尚な小説家に成り得るのか?】
【人の心の作用を理解したとてそれで人の心を動かせる訳ではない】
【ならばロールシャッハがジャ=ロに抱く敵愾心はコンプレックスでも有るのだろうか……心など無いと語る彼は自らの心さえも理解し得ないのだとしたら】

私から見れば君の方が異質だとも。
能力者達が数多の世界を書き換え、信仰が神を創り出す。
肉体を喪った少女が悪神を産み、同じく肉体を喪った少女が悪神と成ろうとするこの新世界で。
尚も心の在処だけは認められないと言う。

君のそれは、紛れもない"信仰"だよ。
ロールシャッハ。

【立ち去るロールシャッハを見送って男は嘆息する】
【聞きそびれたこともいくつか有るが、いい加減、目を欺くのも限界だろう】
【得られた情報だけでパズルを再開する他有るまい】
【リーイェンがロールシャッハの媒体となった以上、彼女を介した情報は筒抜けと言うことなのだろうが……元より情報の漏洩など彼に取っては気にするだけ無駄かも知れない】
【……少し情報を整理したいが、話相手には誰が適任だろうか?】
【男はもう一度嘆息すると、冷めた珈琲を喉に流し込んだ】


// 長期間お疲れ様でした!


54 : シャッテン&レグルス&ラベンダー&アーディン ◆auPC5auEAk :2018/09/11(火) 19:25:04 ZCHlt7mo0
>>48

「……否定できんな。思わぬところから不意に何かが現れれば、其方に意識を向けるのは仕方がない……
 それ以上に……そういう事に、黙ってられないのがここの面々だ――――だが、君の言う通りだな、夕月……いいか、今見るべきものを、間違えるな――――」
ッ…………{――――}「っく…………」

【夕月の言葉通りだった――――どうも、夕月には、まだ良からぬしがらみの類が、纏わりついているらしい】
【つい、そこにも意識の向いてしまう面々に、アーディンは苦笑し――――ほんの一瞬、テーブルの面々を見渡す。その瞳に凄みを込めながら】
【或いは怯み、或いは沈静し。話題が横道に逸れる事を、アーディンは威圧で防いだのだった】

<……悪ぃな。お前にとって、辛い話だってのは、もう充分に分かったよ……けど、俺らは最後まで、ともあれ進まなきゃならねぇんだ……ッ
 アルクの事も、ソニアの事も、悔しいし、我慢が効かねぇんだ……すまねぇって……本当にすまねぇって、思ってる。俺なんかの為で、無理を押してくれてるんだろ……>

【『ブレッシングヒート』で夕月を支えたとはいえ、レグルスもまた、その内に割り切れないものを、色々と抱えていた――――アルクの死を、誰よりも悼んでいるのだから】
【粗野で直情的。その振る舞いはアルクとは対照的だが――――その行動の結論は、意外に近いところに落ち着く。レグルスとアルクが相棒同士だったのも、頷けるだろう】

「――――気になるのは、その『遺伝子』を植え付けた対象が『君』である事の必然性だな……
 ……ただ単に、手ごろな人間なら誰でも良かったのか。それとも君の……その『事情』の中に、奴らとの、何か有利な条件……親和性のようなものがあったからなのか……」

【基本的に、彼らには初めての情報が多く、また夕月の様な、当事者に近い立場の言葉を聞く機会も、そう多くはない】
【この時、アーディンの思考の取っ掛かりとなった事は、それだけだった。「何故、夕月だったのか」――――情報が増えれば、考える事も増えたのだろうが――――】

<っぐ――――――――!!>{ぅ――――!!}
「――――ラベンダァイスが持ち帰った情報と、君の証言が一致した訳だ…………夕月、されたんだと思う、じゃない……どうやら、間違いなく、それが真実の様だ……」

【続く夕月の言葉に――――レグルスは、ギリッと歯を食いしばり、口元から血を溢れさせる。そしてラベンダーは、吐き気をこらえるように、口元を手で押さえつけた】
【――――その可能性を既に、アーディンとラベンダーは掴んでいたのだ。そして夕月の言葉は『当事者の証言』となる。ソニアの身に起こった事は、これで説明できた】

<……ソニアは、カチューシャは……俺の事なんて、覚えてなかった。頭の中まで、ぐちゃぐちゃに作り替えられたから、そうなんだな……ッ
 ――――奴は、俺の名前を呼んだ……名乗ってねぇはずの、俺の名前を、覚えてないはずの名前を……でも、それは俺をハメる為の、目くらましだったんだ……ッ!>

【あの時抉られた、左の米神がジクジクと疼く。レグルスは呻くように、乾いた声でカチューシャ――――ソニアの記憶の混濁を思い出す】
【最終的に、それは良い様に道具として使われ、自分は敗北を喫する事になっていた。そして――――】

<――――やっぱり、やっぱりカチューシャでありさえすれば、可能性はあったんだってよッ!!
 消去された断片、「それをもう1度あてはめ直せば」コンピューターのデータを復元する様に、あの体をもう1度、ソニアに返してやれたんだッ!
 ……『虚神』が芽吹いて、理を『向こう側』に越えてしまった以上――――もう、ソニアは助けられねぇ……あの体は、誰のものでもねぇ……俺には、もう……ッ>

【――――追及してきた可能性が、完全に断たれたことを、レグルスは悟る他なかった。虚神としての目覚め、そこが『ポイント・オブ・ノーリターン』だったのだ】
【虚神として最適化されてしまった肉体は、もう余計な精神がその中に存在する事を、許しはしないだろう。分かってしまうのだ――――分かってしまう事は、絶望だった】
【テーブルに突っ伏し、縁に額を打ち付け、押し当てて、レグルスは重々しく呻く】

<――――だが、『エカチェリーナ』を殺す事は、出来る……そこは、多分俺にだって…………ッ>

【ボソリと、レグルスは呟いた。どこまでもやりきれない、投げやりな声色だった】


55 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/11(火) 20:30:45 hEXW.LLA0
>>52

【熟れきった果実を食むような感覚に酔う。 ─── 甘くて、柔らかくて、なにかの汁が滴って、美味しい。舌伝いに口許から響くのは軟体に粘ついた複雑な触覚。】
【その味わいに託けて、少女の呟こうとした言葉を塞いでしまおうとした。舐って、嬲って、塗り潰す。幸福神経の反射なる応酬を漸進的なアドレナリンで満たすなら】
【交わし合う視線は互いに世界を憎んでいたから、愛しい溜め息と共に唇を放して、垂れる透明な銀色を啜った。それが彼女は好きだった。涙さえ飲み干してあげたい、のに】


「 ─── 私は」「かえでのように、優しく在ることが、できないから」「それだけ、よ。」
「殺した誰かの顔も、死なせた誰かの顔も」「 ─── 儘ならぬ、だけ。」「だから、独りで死んでしまうのが、怖くて」


【甘ったるい一呼吸の後に呟く。意味もなく語る。目尻の緩んだ青い隻眼の見つめるままに、然し遠くを見るような望遠性を孕んで、ならば過去に願う追想にも似ていた。】
【届かぬ言葉であると知っていたから。ただ語ることだけが重要だった。聞かれることだけが重要だった。手持ち無沙汰に髪先を弄る数十秒と同じ意味。】
【語り聞かせても情に溺れても最早どうにもならない。そういう領域だった。ただ口を噤むには酷く心悲しいから、繫ぎ止めるだけの猶予ばかりを誂える。】
【皮肉な事に他ならぬそれが少女に残された縁に違いなかった ─── 藤色の髪先が鼻先を受け入れるなら、すん、と嗅ぐ。余りにも彼女は生きていて、泣きそうになる。】
【全身の感圧素子が数値化できない柔らかさを大脳皮質に教え込んでいた。ずっとこのままでいたい。世界で一番やさしい肯定を手放したくない。ただ蕩けて二人混ざり合うまで愛されたいし愛していたい】
【然るに叶わぬ願いだった。 ─── 殺さなければならなかった。愛しい人を守る為に。殺さなければならなかった。殺せないものを。ただ今は、抱く背中に爪痕を付ける。ならば告解に息を吸う膨らみさえ感じるから】


「 ………… 私も。」「かえでと一緒なら、 ─── 何だって、出来るから。」
「好きよ、」「大好き。」「 ……… 愛してる。」「好き、」「 ─── 好き」「好き、 ……… 好き。」


【 ───── 一頻り抱擁を交わして、つつやくのは愛情という虜囚の呪詛。それでも何れ、ダブルベッドから起き上がるなら、枕元のニキシー管は午前2時を示すから】
【少女のちいさな躯体を姫様のように抱き上げて、リビングすべてに広がる闇へ、素足の爪先を差し出すのだろう。 ─── フローリングを軋ませながら】
【シャワーを浴びるよりも先に何か着たかった。クローゼットの前にそっと少女を立たせて、きっと無言のまま、じっと共に纏うべきものを選ぶのだろう。】
【女の着る服はどれも酷く丈の長いものだった。凡そ真面な女の着る服ではなかった。そうして同時に愛想がなかった。すべらかで上等なウールのビジネススーツばかり揃って】
【 ─── どれだけ丁寧に手入れをしても、幽かに血の匂いが残るコートなどは、畢竟アリアという人間の有り様を雄弁に語っていた。ならば、やはりその立姿は、少女の見慣れたものであって】


56 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/11(火) 21:02:45 WMHqDivw0
>>54

……んーん。大丈夫だよあたし、今のところは、べつに……それに。
力になるって約束したのも本当だもん、アルクさんと、したの。だからそれを裏切らない。
そんだけの話だよ、だから。レグルスさんが我慢するならあたしも我慢する。

【シンプルな話でしょうって言って、そこから先は流す。つらいって言って泣くのは、全部終わってからでいい】
【そんな覚悟を決めて、少女も続きをどうにか紡ごうと頭の中をごちゃごちゃさせ始めて――だけど】
【自分の中で憶測でしかなかった考えが、現実であるとわかってしまったら。……無表情ではいられなかった】
【血すら流しはじめるレグルスを見て、ぎゅっと眉根を寄せて。数瞬だけ歯を食いしばって黙り込んでから】

あたしが「シャーデンフロイデ」の器として選ばれたのは――単純に「合ってた」からだよ。
……、……自分で言うのもなんだけど、ろくでもない人生歩んできたの。
そしてそれを、不特定多数――それこそ世界中の人に晒されて、……バカにされてたの。

……他人の不幸は蜜の味って言うでしょ、それであたし、すごく上質な蜜だったんだって。
だからあたしはあの蝶に見初められた、誰にも嘲笑われることのない世界へ飛び立つことを夢見る蛹になるって。
そう思われてたみたいだけど、……あたしにはそんな力なかったよ。羽搏く気力も、なかった。

【「何故」と問われたら、返すのはそういう事情。アーディンだってその気になって探せばすぐ見つけてしまうんだろう】
【それくらいにありふれたスナッフムービーが、少し前までワールド・ワイド・ウェブの上で広がっていて】
【その「主演」がこの少女だったってこと。……そこまで言いはしなかったが、本当に、探すならすぐ見つかるはずだ】

あたしが選ばれたのはそーいう理由だったけど、……「ソニア」が選ばれた理由は、ほんとにわかんないね。
レグルスさんの言い草聞くならなおさらそう思う。エカチェリーナの本質ってなんだったっけ、……「絶頂」?
そんな、……やらしいこととは無縁の人だったんでしょ。本当になんでだろうな、……無縁だった、からこそ?

【言葉を続けながら首をひねる、自分はまだわかるけど、「ソニア」が器になった理由。……考えて、】
【あるいは、と思った、単純な思い付きの尻尾だけを見せて。また黙り込んでしまう、自信もそうないから】
【突っ伏すレグルスを伏し目で見やる。見ているだけで胸の奥底が痛くなる。喉の奥で小さく唸って】

………………、……戻ってきたいと思う、未練が、あるなら。……あったからあたしは、……、

【戻って来れたんだと続けようとして、やめた。今しがた自分が言ったばかりなんだった、ソニアはばらばらにされたって】
【ぎゅうとテーブルの上で拳を握る。左手薬指につけた指輪が食い込む、だから自分は此処に帰ってこれたんだけど】
【目に見えないくらいまで壊されたソニアには何が残ってると言うんだろう。……何も言えなかった。唇を噛んで】


57 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/11(火) 21:39:58 7PWPSDOg0
>>43

う〜んそうかい、同じように外的ショックを与えてみる…というのはありかもしれないけどリスクが高いね
成程〝髪〟にまつわる一族というわけかい、あまり聞いた事のないお話だねぇ。とはいえその自由自在な髪を見れば納得かな。

寒いのが苦手………となると〝氷の国〟と〝夜の国〟は外した方がいいかもね。この世界で寒さといえばあの二国だからね。
湿気は、まぁこの〝水の国〟や〝櫻の国〟なんかも割と湿度が高いって聞くよね。

【瑠璃からもたらされる断片的な情報を聞きながら、顎に手を当ててマリアベルは推測していく。】
【とはいえこの段階までは瑠璃自身もたどり着いている可能性は高い。】
【そして鋭く尖り、机へと突き刺さる瑠璃の髪の毛を興味深そうに見つめて「暗殺とかに使えそうだね」とポツリと物騒な事をつぶやく】

確かに、君の髪の毛は〝海〟を由来としている可能性は高い。であればこの〝水の国〟に何かヒントがあるかもね
とはいえこの国はさっき言ったとおりの状況だけどね。けどこの国の大局を見れば〝異能者〟という存在に一つの答えがでるかもしれないよ。

―――そうだねぇ探し物の手伝いか。それじゃあ私から瑠璃へ3つの道筋を示そうか。

まず1つは引き続き自分のルーツを探す旅を続けるんだ。そして私に聞かせてほしい君の〝物語〟を。
そして2つ目は、さっき私が言った〝魔制法〟について調べてみるといい。この法案そしてその奥には大きな流れがある。
3つ目は―――〝宇宙卵〟。この言葉を覚えておくといい。


どれもまだ〝本筋〟には至らぬ物語。だからこそ君が物語を紡ぐのさ。
とはいえ2つ目と3つ目は不明な点も多いだろう。〝どちらか1つ〟なら私の把握している範囲で少し話そうか。

【三本の指を立てながら瑠璃へと説明する、口元にはうっすらと笑みを浮かべながら。】
【まるでゲームの中でヒントを与える存在かのような口ぶりだ。そして瑠璃へ示した新たな2つの道。】
【そしてその中で1つだけであればもう少し話してもいいらしい。意地悪な事である。】


58 : シャッテン&レグルス&ラベンダー&アーディン ◆auPC5auEAk :2018/09/11(火) 21:57:45 ZCHlt7mo0
>>56

<……俺の言う事じゃねぇが……結局、時間だけが、薬なんだよな……終わっちまった事は、時が洗い流してくれるのを、待つしかない……
 ……率直に、言わせてくれよ……「ありがとう」ってな……っはは、あいつの約束のおかげで、俺は……今、助けられてる訳かよ……>
……代わりに、僕らも約束したんだ。サーペント・カルトの事、力を貸すってね……レグルス
<あぁ、分かってる……! この事、もう他の誰にも預けたりはしねぇ……虚神は俺の手で追いかけるし、アルクの果たせなかった約束は、俺が引き継いでやるよ……ッ!>
{――――ッ}

【心の傷跡は、ただ時間と共に、新しい経験が洗い流してくれるのを、待つしかない。レグルスは、それを嫌というほどに理解している】
【だからこそ、約束の為にそれを証してくれた夕月に、レグルスは礼を述べる。そして、アルクの残したものを、引き継ぐと、ハッキリと宣言して】
【――――ラベンダーの表情が曇る。アルクを死なせてしまったと自責の念に駆られている彼女には、レグルスの「他の誰にも〜」という言葉が、刺さっていたのだ】

「……ラベンダーから、電波塔での一件は聞いた。それで、大体の予想はついた……世界中に晒されたというのも、要するに「そういう事」なんだろう……?
 当事者連中が、誰だか分からない以上、俺からは何もしてやれん……拡散してしまったデータも、また然り、だな……」

【電波に乗せられそうになっていた、夕月の恐怖。そして本人の言葉――――これだけで、もうアーディンには事情が了解された様だ。そして、それで十分だった】
【夕月の心情を締め上げる様な、問いを重ねる真似はしなかった。まだ未成年であるらしい夕月の境遇に、黙っている気はなかったが、そこは、自分の関われる話でもない】

「……世界に対する復讐、その土台か……君がその気になれば、確かにあの怪物……『シャーデンフロイデ』の器に、相応しい……
 ――――夕月、君はもし……絶望を乗り越えたら、その先に……君を踏みにじった連中や、嘲笑った連中を、殺してやりたいと、思うか……?」
っ……旦那、何を……?
「いや……気力がないから、というなら……気力を取り戻したら、まだその足の遺伝子は、目覚める可能性はある……
 ――――鬱病患者なんかはな、重度であれば、自殺すらしないで、むしろ衰弱死するそうだ……気力を取り戻し始めて、その段で自殺する事が多いらしい……
 ……だから事前に、なんて……そんな容赦ない事を考えてた訳じゃない、安心しろ……ただ、気にはなるし、当人の素直な心情は、知るべきだ……」

【アーディンはふと、確かめなければならない事を見出した。夕月は、まだ因子を体に持っている。条件が整うなら、まだ虚神として転生する可能性は、無い訳ではない】

<っ…………違う、多分そうじゃねぇ……! 無縁だったからこそ、わざわざ全てを作り直したんだ……!
 逆方向に振り切れるのは……相当に大きな『変化』……相対的なエネルギーを生み出す――――ソニアが、イノセントな存在だったからこそ……ッ!
 ソニアをカチューシャにして、そこから『エカチェリーナ』にした……この順番に意味があったんだ、畜生……ッ!!>

【突っ伏していた顔を上げて、レグルスは瞳を怒らせる。口の中を、相当強く噛み締めていたのだろう。溢れる血どころか、わずかに覗く歯すら血に汚れていて】
【完成に至るという性質――――この、段階を踏んだ変化そのものも、その本質に沿っている。そういう意味で、ソニアは適切な『材料』と見做されたのだろう】

<――――夕月、お前は虚神なんかじゃねぇ。そもそも、向こうに行く事なく、戻ってきた人間なんだろ? ……ソニアは、向こうに行っちまったんだ…………
 ……そうだな。ゆで卵が、生卵に戻れるかって話なんだ……『不可逆性の原理』って奴だ…………俺は、ゆで卵を生卵に戻すために、その手段を見つけたんだ……
 ……だが、ゆで卵はもう、ポテトサラダになっちまってて、更に余り物の再利用で、スパニッシュオムレツにされちまってたんだよ……言うなら、そういう話なんだ……ッ!
 ……夕月、間違っても、向こう側に行こうなんて思うなよ……そこは、完全な片道切符の一方通行だ……ソニアみたいになっちまう人間なんて、何人も見たくねぇ……ッ>

【――――残念ながら、夕月とソニアでは、置かれている前提が違うと、レグルスは首を振った。夕月は、そもそも『シャーデンフロイデ』に『なった』訳ではない】
【レグルスは、夕月にそう言ってやるしかできなかった。帰ってこれたのは幸いだった。遺伝子を残した身体であっても、最後まで虚神の概念に抵抗しろ、と――――】


59 : 名無しさん :2018/09/11(火) 22:21:34 EJ1huFcY0
>>55

【そうしてきっと彼女は恋人同士がするようなキスがへたくそだった、ただ使われることにだけ慣れ切って、ゆえに相互に愛しあうのに不慣れなら】
【だのに一生懸命についていこうとして事実少しずつ覚えつつあるのが、ようやく歩き出したばっかりの赤子みたいにも思えるのだろうか、日ごとに少しずつ大人になって】
【だから終えた後の息継ぎばっかりが上手だった、寝返り一つ打てない赤子がそれでも無意識にて微笑んで親に媚びるみたいに。――はあ、と、甘い余韻の吐息、漏らすから】

…………。――だって。アリアさんだって同じなのに。……。狡いよ――。アリアさんの方が強かっただけなのに……。
私だって……。弱くない……。狡い――……、狡い。狡いよ……嫌……。ちがう……。違うよ。アリアさんは強いから。……。

――私の方が強かったらアリアさんがこんな顔してるんだ。

【であればそれは間違いなく恨み言だった。相手の心の中にきっと散らばる何かを無視して/だって彼女は自分で気づいてすらいないのだから/妬むように、絞り出す】
【自分の方が強かったならという仮定、そうしたなら今頃アリアこそこんな顔と気持ちをしていたはずだのにってささめく、〆られる瞬間の鶏よりも悲し気に】
【ふるふると小さく首を揺らす、――自分の吐息から相手の香りがして、それが嬉しい/悲しい。だから泣きたくなった、こんなに好きなのに/だから】
【ほんのわずかな陰りすらなく大好きだと愛してると囁いてあげたかった、――あるいは自分自身のためにも、そうしたかった。こんなに誰かを好きなのは初めてなのに】

【――どちらにせよ、愛してはいけない人間を愛してしまった末路であった、強さで上回れなかった哀しみを情念色に染め上げてまるで泣くときのよな吐息にするのが精いっぱいで】

なら……――怖くなくなるまで、何度だって、抱きしめて……。

【午前二時とは思えぬ眠気だった、ならば日夜寝すぎていた。時間感覚の一切を喪うのすら致し方ないだろう、だから抱きあげられれば、無防備な爪先が揺れて】
【それこそ本当のお姫様みたいに身体中の一切を相手に委ねるのだろう。ふと思いつきで手を離すなら、間違いなく背中を強かに打ち付けるんだろうから】
【好きなら/愛してるなら/なんだって出来るなら――この気持ちがなくなってしまうまで、求める限り、何度だって、何度だって、何遍だって、抱きしめてほしいと求めれば】

【――きっと彼女のための服はまだなかった、ないなら、もう見慣れた白いワンピースを着るんだろうか】
【それなら純白のサーキュラースカートは清楚を象徴するかのように柔らかな布地、そうして纏っても処女ぶるには彼女はいくらも傷だらけすぎるけど】
【横に立つのがアリアであるのなら。欺瞞と偽装の中にて清らかさを嘯くのもきっとやぶさかではなくって、――――】

――――――――――……。

【だからきっと見惚れてしまう。こんなにきれいな人どこでも見たことがなかった。ありふれた少女だった時によく見たテレビにもファッション雑誌にも、】
【こんなにきれいでかわいくて格好良くて。そして強くて優しくて。だのに非道くて。どこまでもどこまでも――こんなの、好きにならないはず、ないって思ってしまうほど】

【――――――――だから、】

――――、ねえ、デートなら、お姫様みたいにしてくださいね。じゃないと――ヤ、ですよ……?

【――上等のコートの裾をわざとぎゅうって握りしめてみる。そうやって気を引けるのなら、そんな我儘だって、してみるから】


60 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/11(火) 23:14:53 WMHqDivw0
>>58

……ネ、提案なんだけど。ありがとうも、ごめんなさいも、全部終わってからにしようよ。
そーいうごちゃごちゃした話はさ、今のごちゃごちゃが終わってからぱーっと。
ここ、居酒屋さんなんでしょ? パーティしようよ、……そんな気になれなくてもさ。
したらきっとアルクさんだって……喜ぶかなあ、ううん、微妙なトコだな。でも、

【「なんもしないよかマシだよきっと」。まだ平等に、浮かぬ顔をするみんなを見渡して、少し無茶するみたいな笑い方】
【あんまりにあんまりな提案だった。だってアルクが死んで、ソニアだって実質そうなったみたいなものなのに】
【だからこそ、かもしれなかった。彼らを笑顔で見送ってやりたい気持ちがあった、少なくとも、少女の中には】

【――――だからこそ、続く言葉は、この場面に不釣り合いなほど柔らかく】

…………ん。そーいうこと。そんで、…………、ああ。ソッチ心配してるの?
や、まあそりゃ心配はするだろうけどさ……まだ残ってるわけだしね、シャーデンフロイデ。

――――でももう大丈夫だよ。それだけは本当。約束するから安心して、アーディンさん。
よすががあるの。何よりも強いヤツがある。此処に居たいって、誰よりも強く想ってる自信あるから。
だからもう、あたしは――――どこにも行かない、行きたくないって心から思ってるからさ。

【握った拳、左のほうを、右手で包み込むように撫でる。きらきらめく青色の石が埋まった指輪、輪郭を確かめるように】
【世界の何より愛おしそうに、慈しみをもって触れるなら――きっとそういうことなんだと思わせる】
【何がどうなったって帰りたい場所があって、そこで待っていてくれる人がいる。だから大丈夫だと、はっきり伝えて】

………………うん。ぶっちゃけ、あたしもそう思った――すごく下世話な話になっちゃって申し訳ないんだけど、
絶頂って、すごいよ。やらしい意味でも、そういう意味じゃなくても……一度味わってしまえば忘れられなくなる。
だからこそなんだろうね。なんにも知らない無垢な女の子に絶頂の味を覚えさせたら――そりゃあ病みつきになるなって。

【――けれどそれもすぐに曇る。レグルスに同意を返して、自分なりの憶測を口にする。曰く、無垢であるからこそ】
【快感の病みつきになるんだと言う。ここらへんの考え方はきっと、性差によるものだろうが。兎角少女はそう考えたらしい】
【それで――――レグルスの忠告には、無言にて頷くことしかできなかった。ひどい話だった。……それしか、できない】


61 : ◆UYdM4POjBM :2018/09/12(水) 02:46:45 XqQAhkbc0
>>983

ほう……君のボディは君自身で改造を!……素晴らしい腕前ではないかね
ジャンクちゃんのカスタムはこの私が施しているのだが……その道に精通しているからこそわかるよ
君、すごく器用な腕前だ。君を私の助手として雇うのもいいかもしれないなあ……そう、アリア君と言うのだね。今後ともよろしく

「わ、ワタシも決して不器用という訳ではないのデスヨー!……一応外科手術もできますし!!」


【ほら!とジャンクちゃんが見せてきたのは―――なんと医師免許!ロボットなのになぜ所有しているのか……】
【無論特例過ぎるゆえに従来のモノと諸々違う表記があるが、発行元は通常の医師免許と同じだ―――どちらかというと外科技術ツールとしてのお墨付き証としての意味合いだが】
【事実彼女は過去にあるサイボーグの女性の命を救うべくジンジャーと二人で必死にオペに取り掛かった経験もあるのだが、それはこの場で知る由もない事である】

【そして……彼女が明かしてきた敵との交戦経験に関する話をした瞬間ジンジャーの目の色が変わる】


―――……フム。私も以前剛太郎君が交戦した際にサーペント・カルトの本拠地から収集した情報とか
電波ジャック事件のあらかたの顛末とか……独自に自分の足で稼いだ前情報程度なら持ち合わせているが、それではあまりに情報量が心許なかった所だ
幾度も戦闘した経験があるのならば……『虚神』に関する情報、可能な限り欲しい。特に<harmony/plan>に関する……


【―――言葉は大声に遮られた。傍にいたジャンクちゃんによって】
【アリアの手を取ろうとしながら彼女は悲壮な表情を浮かべアリアにすがってくるだろう】


『――――……お願いします!!どうか、どうかご協力を!!今手元にある情報だけでは『虚神』に太刀打ちできる手段が
ほとんど打てない状況で……!ハカセが新たに作ったシステムだけに頼るにはあまりにも危険だった所デスヨー……ようやくあの事件に深くかかわっている方と
接触が出来ました……!!お願いです!どうか、どうかご協力を……!』

落ち着きたまえジャンクちゃん。彼女が戦いを望むのならば……急かさず聞く姿勢を保てば自ずと伝えてくれるだろう
我々は彼女が安心してそれを伝えられる存在であることを示せばいい


【落ち着き払ったジンジャーはまず片手をジャンクちゃんの前に出して制し、アリアの前に一歩踏み込んでいく】
【安心感のある存在、のアピールだろうか、堂々と胸を張りジンジャーはアリアを見つめ確かに告げる】


……アリア君。結論から言おう。虚神たちがどれほどの規模の存在であるかは不透明だがもし連中が
『本当に"神"にカテゴライズされる存在』で、その身に"神性"を確かに宿している存在であるならば……やりようはある
無論、相手は『神』だからね……我ら二人だけではどうしようもない。可能な限り私の一計を手伝ってくれる戦力が必要だ。腕が立つ者達がね

逆に言うならば戦力の頭数さえそろえば……『神』でさえあれば堕とすも殺すも自由自在だとも。―――ついに完成させた我らの≪神性切除≫をもってすれば


【得意げに言うジンジャーの姿に「えっ!?」と最初に驚くのは……なんと側近であるはずのジャンクちゃんだった】
【初めて知らされた案件だったのだろうか……ジンジャーが≪神殺し≫の切札を持っている事実は】


62 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/09/12(水) 02:47:28 GN0ohjoc0
>>前724-725

【『絶対者』による結末、死を望む“誰か”、希望に縋った結果として訪れる破滅……――――過去は/言葉は、何れもが抱いた願いを切り裂く様で】
【そして、在り得てほしい可能性を幻想と。共闘を認め、互いに得難い意味を認めながらも、何処までも、結論を異にして否定を告げた】
【それでも直接に識る訳じゃないひとりよりも大切な存在は、確かにあって。そんな無二の存在を天秤に載せたなら、きっと、少数に嘆きを強いることが〝正解〟なのだろう】
【……そして、】

(……死ぬことが、誰かの救いだなんて結論を認めたくないけれど。……でも、もう……――――――――、)

【そう思う人があることを、否定できないほどには幾度も胸裏は抉れていた。ひとり零す度に、無意味な死だと嗤うことを許す度に、自らを引き裂いてしまいたくなる】
【そして思い描くのは、魂の輝きを想ったひとりの青年。かつての彼なら、人の輝きが失われるくらいなら――――輝きを残すうちに、その命を燃やし尽くすような生をこそ言祝いだだろう】
【けれど、彼が抱いてくれた想いは如何なるものだったか。思い描けば……戦いを経て傷だらけになっていた心は、穏やかでさえある温度で、自らの視点を言葉に変えた】


…………やっぱり、ダメね。

誰に強制すべき答えでもないけれど……ここは、決して私が譲ってはいけない部分だと思うの。
だから言葉にするわ――――……手足をもがれても、臓器を掻き混ぜられても……たとえ、世界が賭かる場面でも。
きっと私は、他者の“生”をこそ望む。その先でいつか希望があることを、私ひとりの意志として願い、求める儘に、無様に戦ってはもがき続ける……――――

……必要なのは不確かな希望に縋ることじゃなく、選択肢にない可能性でも創りだしてのける意志。
力で押し通すというのなら――――既存のなにかに譲ることは、より大きな力に屈することへの妥協だと私は思うわ。
それが、私には……自分の感情を含めて、〝不可能〟を突き付けるすべてだったというだけのこと。

……だから、希望が既に砕けていたというのなら。
砕けたその先で、ひとつでも多くを守り、救うために、その罪と共に在り続けるほかに、道なんてない……
仕方がない結末だとしても、求める未来と違うのなら足掻く。

それは……――“人”だけじゃなく、我執(エゴ)と願いのある命なら、誰でも理解だけはできる在り方じゃないかしら。

鈴音が求めるものが〝イルによる救い〟だとすれば、〝人間を害する理由〟をその自我から奪ってでも、あの病魔を残す意味はあるのかしらね――――
……こんな形での〝イル=ナイトウィッシュとしての死〟は、貴方には受け入れ難いものになるの?

【善を願い、平穏が守られることを求めても、最後には力を行使するしかないことはある。】
【それは、どこまでもただ真実で】
【ならば貫き通すことこそが、異能者として、他者を害したモノとして果たすべき義務。何のためにそうあったのかを、手放すつもりは無いと言葉は伝えた】
【きっとどこまでも平行線で。砕け散るまで、この少女は、諦めを識らないまま削がれつづける。アーディンが子供たちの結末に怒り、罰を求めるように、柊は惨劇の再生をこそ憎悪する】

【元凶への怒りや憎しみ以前に、想起することすら厭うほどに、あの光景を忌んでいた。だからこそ、惨劇としてのあの工場を――その原因を地上より完全に消し去る術を想定する】


63 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/09/12(水) 02:47:55 GN0ohjoc0
>>前724-725

【……つまりは。たとえイル=ナイトウィッシュを斃すことが叶わずとも、害意を保つことを許さない手段を。】

【自我を断ち、肉体を停めて〝生存〟という状態のみを持続させる、】
【〝黒死剣〟の特性を拡張し、部分的に構成要素を喰らうことで記憶を奪い、〝イル〟でありながら、〝人類を憎悪するイル〟でない存在を再構成。白神鈴音に割り当てる、】
【外界に干渉し、攻撃の理由を取り除くことも、手段として取り得るものではあるのだろうけれど――】

【人類という種そのものへの加害を選ぶあの病魔ならば、願いを汲む余地などないか、とごく冷静に、一度は思い浮かべた選択肢を切り捨てて】
【機械の様に割り出した幾つかの答えの悍ましさが自身の瞳を見開かせた。我に返り、子供たちのためにと、復讐を求める男へと意識を向け直す】
【殺害以外の手段が、殺害よりマシだなんて限らずに、】

……ごめんなさい、提案みたいな言葉を向けたのは忘れて。
心を書き換えて無理矢理に残すなんて――――……たとえ敵対する存在が相手でも、考えるべきことじゃなかったわ

……今の私は、こんなに――貴方にとっても、鈴音やイルにとっても悍ましいことを思いつくことのできるばけものなのよ

だけど、貴方たちと共闘えるのも嘘にはならないわ――――……こんな兇器を使い捨てるぐらいの気持ちで、貴方達にとって必要な役割を回して。
必ず乗り越えて、生き残ってみせる……目的を果たした先で、辿り着くべき場所があるからこそ。
私は……貴方たちとともに、〝虚神〟たちに挑むこの道を、願うことが出来たんだから

【怪物と成り果てた様な思考の連鎖に、ふと自嘲めいた笑みを漏らしながら。狂気の域で願う強さを、彼らにも、利用し得るものとして差し出していた】
【悲しむことを許さぬまま進む孤の命は、瞳の奥底でだけ、かつての感情を煌めかせて。飽く迄他者として、けれど共闘者としてそこに在る】
【その先にあったのはひとときの別離、凄惨な一夜の闘争――――数多くの喪失を人々に残しながら引かれたひとつの幕は、さらに先があることを前提とするものでもあっただろう】


【虚ろな瞳で天井を見つめる櫻の少女が、白い病室に横たわる。無造作に広がる黒。戦傷は、命の有無さえも不確かなほどに肉体を壊して、心を抉り】
【傍らには色のない硝子の蝶。胸に抱く様は、もういない子を愛おしむ様でもある】
【唯一つ響く、風の魔術による人工呼吸の音に、便りを伝える看護師の声が混じる。透明な文字盤に向ける視線で最低限の返答を伝え、置かれる薄紙を感じながら、なけなしの余力を振り絞った】

……、…………――――

【光の欠け落ちた瞳が無記名の便りを向き、手放さぬよう硝子を右手で抱きながら、震える左手が封筒に触れる。解けば、顕れるのは〝CL〟よりのメッセージ】

…………、――――――――、……。

【それは、生存の報せでもあっただろう。その喜ばしい便りを読み取る少女の反応は、外観としてはごく薄く。……けれど、双眸が、仄かに力を取り戻していた】
【ほとんど動くことのない右腕を見つめ、自らを内側から灼くことで。〝人間〟は〝切断概念〟にして〝火焔〟という属性を、自らの内なる兇器より帯び始める】
【痛みに引き攣れた指先を動かし、確かめれば、変容のために割く意識は、新たな起点を構えるため、躰のなかの、他の箇所へ】
【生物としての再生のプロセスを、焔の延焼めいた“力”の増大に置換した異形の呪が――ありえざる速度で傷ついた肉体の修復を開始する】

【声一つ漏らさずに続ける苦行は、見るものがあれば、どこか蛹が自らの内をかたちなく融かし、飛翔を目指す様を思わせて】
【死の傍を歩む肢で。戦い抜くために、守り通すために自らを消費しようとするその姿は――故郷の物語に唄われる武人にも、愛を想い彷徨う亡霊にも似た、凄惨なものだった】


64 : ◆wEoK9CQdXQ :2018/09/12(水) 02:48:26 GN0ohjoc0
>>前724-725

【暫くの時が経ち、柊は病室から姿を消す。多めに治療費を添え、感謝と謝罪を認めた書置きは、きっと――青の魔術師なら、最後の邂逅として覚えがあっただろうか】
【肉体の試運転を終え、身を清めた足取りは、軽く情報を収集すればそのまま約束の場所へと向かう。ドアが開いて、】


こんにちは。
……こういう場所は、あまり訪れることがないの。
無作法になったらごめんなさい――――でも、仲間内なら構わないのかしらね?

【澄んだ音が、微笑む気配とともに到着を告げた。冬の空にも似て、けれど生の気配と橡色の瞳、艶やかに舞う黒髪が、瑞々しい温度を肌に添わす少女】
【紺青の生地を基調に、湖面に白いツタの花と葉が描かれた涼やかな色合いの浴衣は、櫻の生まれを強く感じさせるものだった。場にそぐうかといえば、未だ知れずに】
【けれど紡ぐ言葉に乗る感情は、彼らと共闘する者として――――確かな、生を歓ぶ彩を含んでいた】


本当に……よかった――――――――。

……どちらかが死んでしまえば、こうして再会することがまず出来なかったものね。
共闘するものとしても、だけれど……生きていて、心からうれしいってまずは言わせて。

(プライベートの仲間、か……もしかしたら、――――――――?)

【犠牲がなかったとなど言えず、それでも……あの死闘を経て、どちらも帰還が叶ったこと。そして、恐らくは重篤な後遺症を残すこともなく、こんな風に会話ができていること】
【長らく見えていない知己と再び出逢う可能性さえも得られるのだから、僥倖というほかなくて。期待する様に見回す視線は、普段の落ち着きからすれば、物珍しくさえあっただろうか】
【どうあれ、必要なことは済ませてしまいたい様で。本題に入ったなら、小さな書類をアーディンに差し出すだろう】

まずは……私から、約束の品よ。
情報自体が断片的だけれど、ここに載っている〝虚神〟たちについては、ある程度例のルールからの推測を当て嵌めて構わないと思う――――

【『財団職員へのオリエンテーション』――主にINF-001〜003、INF-005〜009の分類と、虚神案件の、虚構現実における認識を記した書類】
【扱いには注意して、と。認識に基づく虚神たちの特性を踏まえたものであろう言葉は、アーディンには過不足なく理解できるものではあったのだろう】

【項番と〝虚神〟としての個体名、オブジェクトクラス。たったそれだけの情報だったが、彼らならば、自身以上に上手く活用できることを疑うことはなく】
【溌剌とした力を充たすその肢体は、降り注がす刃に総身を刻み尽くされたことなど、夢か幻だったかの様、“今”をあった】
【この場にあることで得られる意味は、この先の時間次第なのだろう。けれども未確定の時間が残すものが、きっと忘れがたいなにかを含んでいる。戦力として、ひととして。予感は、いつの間にか鼓動を弾ませていた】


65 : ◆RqRnviRidE :2018/09/12(水) 07:31:45 GhIF5bvQ0
>>24

そうね、ほんとは捕って食べるのが私の目的だったんだけど……。
人から“怪獣の頭”を採ってくるように頼まれていたの。 だから一石二鳥だと思って。

でも私ひとりじゃ仕留めきれなかったから…………ありがとう、なの。

【少女からの問い掛けには、そのように】
【曰く、かの海竜を喰らうことが主な目的であったらしい。ともすれば大変にグルメというか、……悪食というべきか】
【珍妙な頼まれごとの一つでも抱えているならそのついでに、ということでもあったのだろう。 いずれにせよ大層な理由ではないようで】
【頭をブチ抜いているのは最早些事らしく、特に気に掛けてはいなさそうだ。 そうして述べる謝意はごく実直に、シンプルに】

【肉は脂身の少なく引き締まっている、上質な赤身であった。 触れればその身はしなやかで強かであることが指先から感じられるはずだ】
【流水に晒され、血の汚れが洗い落とされれば、その表面は薄らとフロストガラスのように透き通る。 獲れたて新鮮の証左であろう】
【湧き出る体液の血腥さは否めないが、吹き浚う風のお陰で立ち込めることはない。 完全に拭い去ってしまうのは時間の問題だった】

【食事の準備を調える少女の様子を流し目に見遣りながら、能力で拵えた水の刃で解体を進めていく】
【頭と尾を切断し、肚を捌いて内臓を掻き出し、時折血を流水で洗い流しながら、骨を断たぬよう筋に沿って幾つかのブロックに切り分ける】
【端から見れば化物の屍骸に少女が手を触れているだけの様相ではあったものの、巨躯が手際よく小分けにされる光景は小気味良かったやも知れず】

【少し間を置き、「ただ、」と一言付け加え、】

──ちょっとだけね、不安だったのかも。
力を奮えないまま自分が霞のように消えていくかもしれないって、そう思ったら、……──

【「──どうしようもなくて。」】
【拠り所のない強大な力を持つ者故の不安感だろうか。 発散できないが故にその存在ごと泡沫と化してしまうのではないかと】
【だから勝ち目のない怪物に単身挑んでいたのだと──生を獲るために?】

【けれどすぐに「なんてね」、なんて言っておどけたようにはぐらかして、続く質問には徒に笑って】
【ある程度解体を終えたなら、使っていた水を液体に戻して諸々汚れを洗い流し、傍に干してあった衣類を手に取り】


──、生ね。


【生。 ナマ。 まずは敢えて調理せず、新鮮な内に食べるのが良いと返す。 一番初めに拒まれたはずなのに、否、だからこそ】
【半乾きのワンピースをピシャリと広げて飛沫を弾かせる。 水滴が固形化して小石のように足許へ転げ落ち、液体の姿に戻るのが窺えた】


66 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/12(水) 22:43:56 6IlD6zzI0
>>51

【不意に向けられる視線が言外に告げるのは、リゼも共犯者になれと言う意味合い】
【生気を感じられない瞳の青は少し寒々しく思えたが、見えないけどその先にある女性の瞳はきっと違うのだろう】


「……感謝するよ、アリア。アンタと手を組めるなら心強い。
 アンタは敵としてならこの上なく厄介なヤツ。容赦のない精神もそれに裏付けられた身体もさ。
 
 だから―――……解ってる。それで良いさ。嵯峨野も"エカチェリーナ"も殺す」

「それに関連して"私がジャ=ロに接触して虚神共を殺す手はずを整える"――これも加えなよ」


【エーリカは泣き腫らした顔のまま、機械の瞳に自分の瞳を重ねて宣誓する】
【どんな手を使ってでも必ず目的を果たします――とでも言わんばかりに】


……おーけー、おーけー。"旋風の用心棒"としてちゃんエリやアリアのおねーさんの共犯になってやるよ。

あてもおねーさんと一緒で嵯峨野みたいな手合いは嫌いだ、だいっ嫌いだ!
今を生きてるあの子の事を動く死体呼ばわりしやがって。それ以上に反吐の出るような非道は許せないから。

嵯峨野とエカチェリーナを殺す事に何ら異存は無い。――だからそれで良いよ。


【公安五課の社会的死人、外務八課の機械仕掛けのサイボーグ、吹く風に身を委ねる旋風の用心棒】
【立場も主義主張も異なる三人が一つになった瞬間だった。呉越同舟という言葉が正しく当てはまる】


67 : シャッテン&レグルス&ラベンダー&アーディン ◆auPC5auEAk :2018/09/13(木) 17:40:24 ZCHlt7mo0
>>60

……夕月、レグルスは、そういう訳にはいかないって、そう思ってるのさ……だろう……?
<あぁ、まぁ、な……――――全部が終わった時、俺たちの全員が、ここに居れるか、分からねぇんだ……今回ばかりは……
 だから、人に対して――――悔いは残すべきじゃないと、俺は思ってる……状況の異常さに、酔ってるだけかもしれねぇけどよ
 ……勿論、パーティに異存はねぇよ。しんみり行くよりか、よっぽどマシな弔いだってんだ……少なくとも、アルクに対してはな……>
「……どちらの言いたい事も、分かるがな。まぁ、納得できる生き方をできれば、それに越した事はない……」

【夕月の言いたい事は、彼らにも分かっていた。だからこそ、表情も和らぐが、それでもレグルスは、先の言葉を「後に取っておこう」とは、思えなかった】
【この戦いでは――――正に、アルクが命を落としたように――――いつ命を失うか、分かったものではない。だから、伝える事は伝えるべきだと】
【それはもう、生き方に対するスタンスの問題で。アーディンはただ「各々の好きな様に」というだけだった】
【このメンバーが、欠ける事無くもう一度見える――――それが、最高の結末という事になるのだろうか】

「ん――――ほぉ……なるほど。よすが、か……同時に、支えでもある訳だ
 ……よく、分かった。それなら確かに、心の在り様が強くなれる訳だな……シャーデンフロイデは、君自身を、もう凌駕しようがないだろう」

【確信的な、落ち着きながらも力強い言葉で、夕月は心配ないと口にする】
【その指にはめられた指輪、そしてその仕草――――別に、アーディンでなくても、それだけあれば十分だろう】
【その精神はもう、シャーデンフロイデとは相いれない、強い柱を手に入れたのだ。歪んだ面容に微笑みを湛えながら、アーディンは優しく頷いた】

<ゆる、せねぇ…………<harmony/group>だ、『魔女』だ、ロールシャッハだぁ……ッ?
 ――――クズどもが、人間なんだと思ってやがるんだ……カミサマの為の生贄が、そんなに欲しいかよ……ッ!
 ……ぶち殺さなきゃならねぇ。あぁ、何がどうなろうが、ぶち殺さなきゃならねぇ……ッ、そして証明しなきゃらならねぇんだ、その存在の全てが塵芥だってなぁ……ッ!!>

【――――ゴリッ、とレグルスの顎から、籠もった感じの嫌な音が響いた。強く、噛み締め過ぎた顎、怒りのあまりに、そのどこかに損傷を来したらしい】
【それだけの――――果てない怒りがあった。そんな形で人の尊厳を汚すというのならば、此方も同様だ――――もう一切の容赦なく、殲滅しなければならないと】

ぇ…………
「ふん…………」
<へッ、そうだろうな……結局言っちまえば、それこそが、一番分かりやすい「人の生きる理由」なんだよ……
 昇りつめた先……到達の喜びは、その体験は、絶対に他じゃ替えの利かない、文字通り『最高の瞬間』だ……ッ
 鍛え上げた身体、モノにした技、ようやく勝った敵……ッ、その瞬間に俺たちは、総体としての丸ごとの自分を、全肯定してやれるんだ……幸せじゃないはずがない
 逆に言えば……もう、他に思い至らねぇよ。人の生きる理由、その根源・根底に当たる何か、なんてのは……結局人は、それを生きる意味にするしか、ねぇんだ……!>

【自らを鍛え上げる事、そして強くなる事。それが趣味みたいなレグルスにとってすれば、その言葉を理解するのは、訳ない話だった】
【故郷を滅ぼした敵を相手に、勝ち星を挙げた時。目標と定めた重りを、ついに持ち上げ切った時。難解な魔術理論を、ようやく実践できた時――――】
【その瞬間の到達の喜び、それを経験する事――――命にとって、それ以上の喜びも、生きる理由も、ありえないと。レグルスは経験で、それを理解していた】
【――――「下世話な話」としてそれを語る夕月に、シャッテンは居心地の悪さを感じ、アーディンは先ほどの柔らかい微笑が一変、苦笑と化していたが――――】

{――――――――――――――――まるで、白神 鈴音みたいな事を言うんですね、夕月さん――――――――
 アレも言ってましたよ――――イル=ナイトウィッシュと――――『スナーク』でしたか、アレと睦み合う事、カミサマでいる事は、「気持ちよくってやめられない」って――――}

【ポツリ――――それまで言葉少なだったラベンダーが、渋面を浮かべながら冷たい言葉を口にする。3人の男たちが、自然とラベンダーを見据えた】
【シャッテンとレグルスは、何事かと。ただアーディンだけが理解していた。『スナーク』に対する、宿命的な狂おしい殺意。わずかでも、それを理解してやれたのは、彼だけだ】


68 : アーディン=プラゴール ◆auPC5auEAk :2018/09/13(木) 21:00:44 ZCHlt7mo0
>>62-64

――――場合に寄りけり、だな。それを理解できるのは……
俺は、どうやら見過ぎてしまったらしい。結局は死が、終わりが……振り返ってみれば救いだったんだと、そう言える事物を……
君のその性質に、今更どうこう言うつもりもないし、それはただの野暮だが……君の中に無い世界は、結局変わってはくれまい……
……砕けた希望に、もはや希望としての機能はない。それを守ろうというのは、感傷以上の意味を持たないぞ……――――そして、無為に人の意志と時間を食い潰す……
例の3兄妹もそうだし、死にたがっている俺の仲間もそうだし……シャッテンが、生き様を変える事になったのも、結局はそれだ……分かるだろう?

【最後まで、求めるものの為にあがき続ける、その生き様を――――アーディンは、無条件で肯じる事は、もうできないと口にする】
【生きるという事は、経験を積むという事であり、経験を積むという事は、悲喜こもごもだ。「どうしても、どうしようもないものはある」と、彼は生涯の中でそれを知ってしまった】
【引き合いとして、シャッテンの過去を、アーディンは口にする。彼もそれを知っていたのだろう――――「無駄な死を、本当の無駄にしたくなくて」と語っていた、彼の凶行】
【結局、意味があったのは、シャッテン自身だけだった。そしてそれ以上の意味を、その命に見出したからこそ、彼はその生き方から決別したのだ】

っ、なんだと……柊、お前……ッ

【その先で、口にされたイルへの対処――――さしものアーディンも絶句し、驚愕の目で八攫を見据える】
【――――それは、生き方云々の問題を逸脱している、完全な外道の行為。流石に、これを主義の問題などと流す事は出来ず、脳内は反駁の言葉を高速で組み立て始める】
【最終的には、八攫本人が撤回したために、それをそのまま口にする事はなかったが――――】

……分かっては、いるだろうが……それは、選民思想、洗脳……それこそ、機関や虚神どもに通じる、個の尊厳を侵す、ヒトとして最悪の選択だぞ……ッ
そんな事を考えるくらいなら、素直に殺せ……ッ、その方が、どれだけ命に対して誠実か……!

【危ういものを見た――――アーディンは、先までの言葉が、老婆心でも、主張の差異でもないと、そんな事を考えずにはいられなかった】
【そのうち――――八攫は、許容できないものを全て否定しだしかねない。道を誤る傾向が、既に現れ始めている。そう認識せざるを得なかった】
【もし、このバランス感覚を、悪い方向へと崩していくのなら――――最悪、仲間である内にでも、始末をつけなければならないかもしれない――――そんな事すら思わせる】

……もう1度だけ、言っておこう。奴ら……鈴音とイルは、俺にとって……そしてもう1人の仲間にとって『不倶戴天』の敵だ……同じ世界に存在する事など、絶対に許さん
奴らに生きて良いなどと、この世界が言い出すなら、俺たちはそんな世界に用など無い……どちらかの死以外、決着など存在しないさ……!

【別れ際、アーディンはそれを宣言する。八攫には、無辜の惨殺に対する復讐心として映るだろう。だがその奥に、もう1つの真意を隠して】
【どちらもが生きる未来など、死んでもお断りだ――――彼には彼の、強固な意志が、そこに厳然と存在しているのだ。尊厳を保証された意志が】

/続きます


69 : アーディン=プラゴール ◆auPC5auEAk :2018/09/13(木) 21:00:57 ZCHlt7mo0
>>62-64

……思ったよりも、元気そうだ。安心したよ……直接に、奴と対峙したのだろう。相当な深手を負っていたはずだが……ともあれ、無事で何よりだ……!

【ゴトッと、適当なボトルをテーブルに用意しつつ、アーディンは浴衣姿の八攫を笑顔で迎える。元より、アーディンの側は戦闘などほとんどなかったが故だ】
【今日は、情報交換と、そしてささやかな宴。その為に、色々とアーディンの側でも準備はしていたのだろう】

――――これが、例の一覧表か……! ――――確かに、受け取ったよ。必ず役立てて見せよう……
詳細な見分は後にするが……先への指標として、重要な手掛かりになる……!

【渡された書類に、ざっと目を通しつつ。アーディンは確かに、力強く頷いてみせた。未だ詳細明らかならない、残りの神格に対して迫るための、重要な手がかりだ】
【既に3分の1はトドメを刺した存在となる。ならば、残りの敵たちに対して、どう対処して行くか――――それを、ここから導き出さなければならないのだ】

――――さて、俺からだが……これが、唯一の情報らしい情報となるな……君も、同じものを、もしかしたら仕入れたかもしれないが……
『INF-005』……ジャ=ロに関する詳細報告書だ……――――奴が、ゴーストライターが……死の間際、我々に残してくれたものだろう……

【www.evernote.com/shard/s266/sh/31024f23-04cc-4828-b935-c6b2d920a799/a37cd2c42c8bce276540625560eb5e29

【アーディンの側も、用意していた書類を八攫へと手渡す。あの空間で対峙した、恐らく虚神としての相当の強敵、ジャ=ロに関するデータ】
【――――自分たちの失策の為に死んだ、水先案内人、ゴーストライター。恐らくは、彼が最後に残してくれたものだろうと】
【その内容も、やはり彼の難物ぶりを余すところなく伝えるものだが――――自分たちは、ここから対策を講じていかなければならないのだ】

……さて、交換は成立だ……何がいい? 色々と魚介は仕入れている。養殖物にはなってしまうが、鯛も特別に用意した……!
酒をやるかどうかは分からんが……清酒の類も、何本かは仕入れたぞ。まぁまずは、軽くリラックスしてくれ……!

【つ、とテーブルから立ち上がり、カウンターの中へと入りながら、アーディンは書類を整理し、棚をあさり始める】
【店内は広いが、他に誰もいない。その中では、そこそこの声でもアーディンの声はよく響いた――――そして、店の奥から】

「――――柊! ……本当に来たんだ、久しぶりだねぇ……! 是非、会いたいと思っていたんだよ……!」
<お、おいシャッテン……なんだか意外だな、君がそんなに声を弾ませるなんて……>
{まぁまぁ、人間って、誰だってそういう事はあるんじゃないのかな?}

【――――アーディンの言うところの、プライベートの仲間が、待っていたのだろう。それぞれに、グラスなどを用意しながら、八攫を出迎える】

【華奢ながらも筋肉の浮き出た色白な上半身を晒す様に、ワイシャツだけをボタンも留めずに羽織り】
【下半身はジーンズとスニーカーで固め、腰回りに大量のチェーン装飾を巻き付けた】
【くすんだ水色の髪を前髪ばかり長くした、身長170cm前後の青年と】

【燃えるような赤い短髪に黄金色の瞳を持ち、首には緑色のスカーフを巻いた】
【長旅用の生地の厚い服の上から、胸部を覆うブレストアーマーとショルダーパッド、焦げ茶のマントを羽織り】
【腰に歩兵用の両手剣を佩いた、身長170cm前後の青年と】

【白いストレートの長髪に赤く緩やかな光を纏った瞳をしている】
【白いタンクトップの上から白いジャケットを羽織り、白いハンドグローブに白いスカートを履いた】
【肌の色白さも相まって、眩いほどに白さが際立っている、身長160cm前後の少女】

【――――シャッテンは、八攫にも分かるだろうが、残りの男女は初対面だろう。それでも、相当に親しい様子がうかがえた】


70 : ◆KP.vGoiAyM :2018/09/13(木) 21:21:55 6x.be1hY0
>>11

…フフン。そう簡単なもんじゃないよ。市民が可愛そうなだけっていう時代はとっくのとおに終わっているんだ。
民主主義に対してあれこれ議論するつもりはないよ?でも事実としてあるのは純然たるポピュリズムから生まれた歪みさ

――へぇ、氷の国。…氷の国なんて遠くからわざわざこんなとこに来るってのは単なるインテリジェンスの一つ?
そうとは思えないねえ。国家ってのは利益のためにしか動かないそういう装置なんだ。何故か分かるかい?
それはね、国民の意志を反映しているから。

【単なる警備会社の人間にしては知ったふうな口をきく。だがそれは単なる素人の意見と流すには説得力があった】
【だがすんなりとその立場を明かしたコニーとは違い、タマキはその説得力を裏付ける何かを明かそうとはいまだしなかった】

星の国と水の国、旧地区と新地区、既得権益と新興勢力、能力者と非能力者…いろんな対立がごっちゃ混ぜになってるんだ。
何処かが衝突した瞬間に連鎖的に爆発しかねない。――此処はそういう場所。わかってくれたかな

テクノドッグスは野蛮だが、政府と企業に統率された飼い犬だ。旧地区では元々居たD.R.U.G.S.の残党、富嶽会を中心としたマフィア共が
本来の文化の保護とかいう錦を掲げて勢力を広げようとしてる――言うなれば野犬か狼の群れだ。
新地区には――人形遣いという犯罪者もいる。何をしでかすかわからない。――猫かな。

あとは…ああ、どちらの国にも属さない場所があるんだ。水でも、星でもない。だがそこの住人は水と星を合わせて、水星/マーキュリーズを名乗ってる。
無法地帯の城塞―――地図にのらない街。ま、これがざっとこの街の登場人物かな。

【他にも巨大なブラックマーケットの存在やらこの街のことを手帳のメモを見るでもなく彼女は語った】


71 : ◆KP.vGoiAyM :2018/09/13(木) 22:20:22 6x.be1hY0
>>14->>22

【Knock Knock Knock】

【ドアの外から響いた、Knockが俺を天国から遠ざける。】
【ヘブンズ・ドアを開けるにはどうやらまだなにか足りないらしい。なら仕方ない】
【俺はその扉に背を向けて、Knockに応える。ロックで応える。ロッソは此処にいる】
【この世界に向けてのアンサーはリボルバーの銃口から放たれたファックの一言で十分だろう】

――――地獄に落ちろクソッタレ。


【俺はまだリヴァプールの街角でバディ・ホリーのマネをしているクオリーメンでしかないが】
【ドアの外から聞こえる歓声はアップル・スタジオの屋上で聞いたそれと同じだろう】

【弾丸が放たれて、婦警の眉間を撃ち抜くなんてほんのコンマの時間の話だったが、バレットタイムは】
【このセットごと全体を回転させてたっぷりとBGMのサビに合わせたあとに時間は動き出す。】

――ノックアウトだ。

【少女を胸に抱きかかえながら探偵は言った。意志が、沢山の意志が、ロックはその運命のドアを抉じ開けた】

【この瞬間、俺達は紛れもなく勇者だった。 ――――Time For Heroes】


【探偵は騒ぎの収まった、その様子を見るためにドアを開けた。間違って紛争地の真っ只中につながったのかと思うような光景】
【それでもそこにあるのは、今まで探し求めたものの一つだった。】


72 : ◆KP.vGoiAyM :2018/09/13(木) 22:21:50 6x.be1hY0
>>14->>22

…ジャンキーズはてめえらの方だろ。撃ちまくりやがって。

【だが最高だ。とは言わない。言わずにも伝わるってわかっている。無粋な真似はしない】
【俺達はかっこつけて後悔しても肩肘張ってシガレットを吸う生き物だから】

――ロックンロールってのは、ブートレグが一番格好良いんだよ。
……ああ、俺達の明日でな。

【これは一体何が紡いだ因果なのだろうか。誰かが見せた一瞬の希望という幻なんだろうか。】
【俺たちを何処かへと運ぶ魔力が光を放ち、光を吸い込んでいる。未来を変えるのは必然か?偶然か?それとも誰かの意志か?】
【今しかなかった俺に、過去が取り憑いて、未来が転がり続けている。】

【ロックンロール。その一言が、すべてを繋ぎ合わせている。音楽は――何かを変えられる。】

離すもんかよ。もうこれ以上――――失いはしない。

【振り返るな。俺はいかなくちゃならない。未だ未来は見えやしない。明日すら。だが、それでもこの光のヴェールに飛び込むんだ】
【ハロゥ、ベイビー。俺は未来を愛してる。だから、いかなくちゃならない――――――】


【イカした酒場で思いついたのはやっぱり此処だった――――風の国、『UNITEDTRIGGER』。敵に見つからない場所にすべきだったかも知れないが】
【すでにここに飛び込んでしまったのもある。だが、此処は秘密基地でもある。それは黒幕どころかカノッサ機関の精鋭ですら破壊できないことは】
【確認済みだ。なら、むしろそのほうが安全だろう。】

―――――訳は、あとで話す。例の一件絡みだ。とにかく、助けがいる。

【探偵はウェスタン調の酒場の奥、不釣り合いな近代的なエレベーターに乗り込み、地下の秘密基地へ向かおうとするだろう】
【適当なベッドに少女を寝かせ、携帯電話で知り合いを呼ぶ。孤独な探偵も流れ出る血を抑えながら未来を救うのは少しばかり難しい】

…心配するな。眠れなくても朝は来るんだ。今は寝てればいい

【起きていても寝ていても少女にそう声をかけて、探偵は地上の酒場に戻ろうとする】
【知り合いが来るまで、もう少しだけ戦い続けるために。――こんなに動けるなら致命傷じゃないんだなと探偵は苦笑いを浮かべる】

――我ながら、女々しいもんだな。

【ついさっきまで此処で死ぬんだと思っていた。どうやらやはり俺はしぶといらしい。痛み止めに棚にあるセリーナの秘蔵のウィスキーでも飲んでやろう】
【ほっぽらかしてずっと店を開けてるほうが悪いんだ。適当な椅子を引っ張り出して、探偵はそれに座った】
【ポケットを漁る。血のついたソフトケースの赤マルはくしゃくしゃだったが吸えなくはない。火をつけて、煙を吸い込んだ。――これが俺の日常だ】


/ものすごい文章を頂いて置きながらまたせた挙げ句申し訳ないことこの上なしですがお返しさせていただきます


73 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/13(木) 23:54:39 hEXW.LLA0
>>59

【女の口付けは支配的だった。それでいて確かに多幸感だけは刻んでいく魔性があった。腑を漁る狼の仕草に似て、単なる不快で下品な粘膜の触れ合いに感じる紙一重。】
【だのに獣臭さも我に帰る瞬間も感じさせない横暴なキスは余す所なく呼吸さえも味わうから、 ─── 甘美な鈴蘭の余韻に中てられてしまうのは自明であった】
【どれだけ冷酷な色も宿せる青い瞳は、少女を見つめる瞬間だけ蕩け切っていた。切れ長の目尻が苗と鳴くように丸く垂れていた。映り込む紅色の瞳を愛していた。】
【交わし合う呪詛に心も体も縛られていく。貴女の前ならサディストにもマゾヒストにもなれる。教えてあげたいの。何方の立場も、遣り方も、心地良さも、 ─── 総て。】



「 ─── ええ。」「ずっと抱き締めているから」「ずっと、ずうっと、 ……… 。」


【だが少なくとも今、それは叶わぬ夢に違いなかった。 ─── 抱き上げたまま、体重を感じるなら、それでも抱き締めるだけでは融かしようのない感情であると解っていた。】
【為すべき事がある。解くべき枷がある。ならばせめて、細やかな願いだけは叶えてやらなければならなかった。ただ柔らかさと温もりと秘めたる執情を与える行為に】
【少しでも忘れられる何かがあるのならば、それ以上は望まない。後は自分でけりを付けるしかない。後はふたりでけりを付けるしかない。穏やかな微笑みの奥で独り誓うなら】



     「 ───………… 。」「仰せの通りに。」「おひめさま。」



【 ─── 今一度、アリアは少女を抱き上げるのだろう。壊れてしまった純情性を蔽い隠したワンピースの、膝裏と背筋に確かな腕(かいな)を通して、コートの裾は掴ませたまま】
【今こそは彼女は騎士であった。拝謁を許されし者、近衛に仕える懐刀であった。夢見る王女を夜半の庭園へそっと連れ出す指先が、刃と死を以って2人だけの王国に栄華を齎す】
【サヴィル・ロウ仕立てのプレートアーマーに身を包み、11インチのガバメントは極大口径/エクスキャリバーと呼ばるに恥じず、然して心臓はフリューテッドの冷間鍛造。】
【夜の女王が騎士さえも務めるならば、きっとその領は亡国に等しい。王も皇子も側近も臣民も全て死に苛まれて、 ─── だが退廃と糜爛こそ、互いの愛したものだったから】

【 ─── そのまま玄関先まで歩むなら、フローリングは益々に軋み易く、祝福の楽団と呼ぶには余りにも空寒い代物だったが、だとしても今はそれで足りた。】
【履き慣れたレザーシューズに己れの指を入れるなら、ガラスの靴も与えてやりたいけれど、12時なんて既に過ぎてしまっているのだから、仕方がない。】
【少女がここに履いてきた靴を、だらりと垂れた青白い足指の先にそっと填めてやるなら、そのまま女はオートロックを開いて ─── いつかの朝に迎えた光景は、そのまま月光の静けさに成り代わっているから】
【誰に見られるのを憚ることもなくエレベーターで地下の駐車場まで降りて、排気ガスの染み付いたコンクリートを一歩も少女に踏ませる事なく、真っ黒なスポーツクーペの前まで歩んで、いやに足音が響く。】
【その助手席に音もなく少女を乗せるまで、ずっと女は騎士の流儀を守るのだろう。 ─── ハンドルを握るのが右手なら、残る左手は少女の掌を求めた。】
【「 ─── どこへ行きましょうか?」命あらば、その通りに。命なくとも、その心の安らぐように。アクセルを踏んで、夜更けの街へと滑り出していくから】


74 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/14(金) 00:30:27 hEXW.LLA0
>>66


【 ──── 人形にとっても、決して油断のならぬ相手だった。矜持として遅れを取るつもりはないとしても、己れの指す手に過ちがないと信じていても】
【然して或いは幾ばくか絆されたのかもしれなかった。赤みの差して尚も決意する少女の瞳に?  ─── 否。それは表面的であって本質的ではない。】
【ふッと笑った。同族嫌悪だったのだろうか。ならば殺し屋でなく、皮肉ばかり口ずさむ人形でもなく、独りの人間として背を押してやることも悪くはないのだ。】


「過不足ない評価は有難いことね。 ……… 私だけでは、どうにもならない事もある。頼りにしているわ。」
「荒く汚く手に負えぬ仕事があれば、私に任せておけばいい。 ──── 貴女たちが、無為に手を汚す必要はないから。」

     「だから、遂げなさい。道半ばに折れる心ほど、無為なものはない。」


【 ─── 静かな視線がふたりを見据えた後、人形は告げた。女は告げた。アリアは告げた。己れに言い聞かす言葉でもあった。過程は意味を為さないなら】
【今が我らの絶頂でないと祈るより他に、彼女たちに選択はない。 ─── エーリカからの付言に、微かにその無機質な顔貌を翳らせて、アリアは呟く。】


「 ……… ええ。」「けれど今、 ……… 奴は、穏やかでない動きを見せている。」
「知っているでしょう。 ─── 蛇教信者の連続自殺。」「対話が通じる相手ならば、越した事はないのだけれど」
「 ─── かえでが媒介者としての機能を失ったのは、偏にそれが原因よ。彼女でさえ今、ひどく"死にたがっているの"。」


「 ……… 最後に、ひとつ。」「エーリカ。貴女、なぜ"平気でいられる"のかしら。 ─── 思い当たる節は、ある?」



【 ──── その名前をひとつ口にするだけでも、どこか女は感情を見せるようだった。そこまでを答えてやる義務は、少女にはないのだろう。】


75 : 名無しさん :2018/09/14(金) 00:39:27 vrTlbJaY0
>>73

【――――だからきっと鮮やかすぎるマゼンタの瞳は蕩けきっていた、瞬きしたなら今すぐにだって滴り落ちて、その真っ白な胸元に赤く赤く垂れるように】
【そうしたら嗜虐趣味も被虐趣味もひっくるめて固めてしまうのに違いなかった、剥がしたって情念の色合いがいつまでも肌に残るに違いなくって、だから、】
【おんなじように蕩けてしまった青色を見つめて頬に指を伸ばす、――包み込むように指先を頬に這わすのなら、そのまま髪にまで指を埋めて、そうと、引き寄せ】

………………――――――――、かわいい。

【おしゃまな女の子同士がする内緒話の距離感で。伝える言葉は音階よりも吐息に近いからきっとひどく擽ったい、脳幹に鳥の羽を這わすかの如く】
【現し方を知らない感情が内側に潜り込んでいくのならどうしようもなく身もだえする、まだまだ語彙の少ない子供が起こす癇癪みたいに、ただ好きを塗り重ねて】

――――――、うん……。ずっと、ずっと、抱きしめてて……。

【――ゆえに細めた瞳も気取られるのだろう。細めて、伏せて、そうして閉じてしまった瞳。相手の中にある不安をきっと感じて/あるいは自分の中の不安を感じて、】
【どうしようもないって分かっていた。何にも解決していないって知っていた。解決のための行為は何一つなかった、――ただどうしようもなく、愛しあっているばかりで】
【限りなく辛くて、けれど限りなく愛おしくて。であれば最善は二人このまま死んでしまうことではないかと信じてしまいそうになる、そうして身体を委ねるなら】
【世界で一番のお姫様を自称するにはいくらも倒錯が過ぎる。けれど童話のお姫様なんて元までたどればだいたいが残虐でしかないなら、】

【――――靴だなんてなくってもいいのにって思った、だってずっと抱きしめてくれるのでしょうって、それに何にも履いてなければ、片方を落とすことだってないのだから】
【だけれどそうすると言うのなら、彼女は素直に指先を委ねるんだろう。かかとのあまり高くないサンダル。少しだけ背が高いのを気にしているのかもしれなかった】
【それとも大好きな人をほんの少しだって見上げていたいのかもしれなかった。その格好良さに慣れれば慣れるほど、ふッとしたとき、死にたくなるほど愛らしいことを知るのだもの】

アリアさんの行きたいところ。そうじゃなかったら……。そう、ですね、海が、見たいな――――。
真っ黒い砂の浜じゃなくて。真っ白い砂の浜のところ。朝焼けの時間まで、今日ならきっと、眠たくならないから……。

【これがもしもかぼちゃの馬車の寓意なら、その材料は何なのだろう、けれどどうでもよかった。きちんとあるべき場所に収められたなら、彼女は】
【前にそうしたときよりいくらも楽しげに見えるのかもしれなくて――何せ久しぶりに外に出るのだった、それならどこでもよかった、貴女と一緒なら】
【サービスエリアで変な自販機の食べ物を食べたって良くて。ただただ高速道路を行けるだけ行って戻るのでもよかった。だけれど、どうしてもって求められるのならば、】
【――そんな我儘もしてみるのだろう。だってお姫様だから。だけれど叶えられなくたって打ち首だなんてするはずないお姫様だった、だから、どこへ行っても良くて】

【――――――強いて言うのなら、どこへ行くのだって、彼女はきっと窓を開けたがるのだろう。短い髪を夜の風に揺らすのを許すなら、きっと、嬉しそうに、笑うから】


76 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/14(金) 01:17:42 PMzGIUuA0
>>70

―――そうかい。やっぱり一筋縄ではいかなそうだね色々と。
はは、流石良く分かってらっしゃるね。仰る通り〝私〟は国民の繁栄と生活を守るために行動している歯車みたいなもんだ。
で、ここにいる理由だけど〝水の国〟の〝公安〟絡みで色々とあってね。この国の色々を調査しているってわけさ。
最近だと〝神様〟とやらも現れるって聞いたけど、そこは専門外だからあまり調べてないけどね。

【タマキとは対照的にコニーは確信までいかないにしろ情報をポロポロと落としていく。迂闊なのかわざとなのか】
【ともかく目の前にいる人物は一介の警備会社の人間には思えないという感情は芽生えていた。】
【トントンとこめかみを叩く動作をしながらタマキから語られるこの場所の情報へと耳を傾ける。】

まさに〝混沌/カオス〟ってとこだねぇ、ああよく分かったよ面白半分で突っつくべき場所ではないね。
ハハハ、その上マフィア組織の残党に謎の犯罪者?公安共も権力争いに躍起になっている場合ではないんじゃないかな。

〝水星/マーキュリーズ〟?話を聞く感じだと中庸のグループのようだけど………まぁこの地区がトンデモない場所だという事はよく分かったよん。
そして―――そのあたりの情報をそこまで把握している〝アンタ〟が普通じゃないって事もね。

―――それで〝アンタ〟は〝何者〟だ?

【タマキの話を一通り聞き終えると、頭痛を抑えるようにこめかみを中指と親指で押しながらテーブルを見つめる】
【そしてタマキへと視線向けて率直な疑問を投げかける。アイスブルーの冷たい印象の瞳をさらに鋭く細めて】
【とはいえ先程までもタマキの背景にたどり着く情報は得れてはいない。また同じように流される事は想定しつつだろう】


77 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/09/14(金) 11:29:25 hvE.Nv4Q0
>>37

【其れは過分に意味深な言葉だったのだろう、けれども彼女はそこから貴女の旅路を辿ってみせる】
【戦いばかりがその生にあって、その道程を司るのは血と硝煙──── 多くは悲劇と称するべき事象】
【胸を痛めるとの表現に狂いは無かった、しかし、それだけで終わってしまう綻びでも無かった】


──── そう、貴女様はそう決めたのですね、だとすれば私が幾ら今言葉を向けても変わることは無いでしょう
それはとても悲劇的で、それでいてどうしようもなく、破滅的ですが──── 止める術もまた、御座いません
ならば私は貴女様の意思を受け継ぎましょう、生きて下さいと言われたのですから

────…… だからこそ私は、貴女様にもまた、生きて下さいと言い続けることになりましょう

政治家の武器は "言葉" ですわ、言葉のやりとりで負けてしまえば、それは最早政治家の名折れですもの
言っておきますが私は頑固者ですから、目を付けられたのを不幸だと思って下さいまし
この国に生きる全ての民を、私は守りぬくと、そう決めたのですから────


【やがて貴女の体を離す、一歩後ろに下がって見果てぬ遠くを見つめて】


やがて、また大きな波が来ますわ、その時に私は "表舞台" で大きく戦わなければなりません
そして、──── その際には、より正しく私と共にある力を私は必要としますの
故にその名を取りましょう、その名が持つ意味を、国民はきっと分かっていますから


──────── "Justice" と


【それは暗に示していた、かつての正義組織────、一騎当千の強者達が集った、正義の体現】
【そして彼女はその組織を再び作るのだと言っていた、正しき時の流れに宿す形で】


78 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/14(金) 19:34:42 WMHqDivw0
>>67

わかってるよ。わかってる……けど! だよ!
後に残ってるから絶対生き延びようってキモチになんない? ……なるだけでも全然ちがうじゃん、
いつ死んだって大丈夫って思ってるより、絶対死なない、生き延びたいって思ってるほうが絶対強いと思うよ。
たとえそれが、叶わない、願いだったとしても……、……。

【珍しくも反抗気味に声を荒げて、そんな悲壮な覚悟を決めてほしくないと願う】
【けれどそれは我儘でしかないということもわかってる。だから最終的には、語尾を窄めて】
【黙ってしまうんだけど。……それでもまだ、上目遣いの視線は未練がましく。寂しげな色合い】

【笑ってくれるアーディンにはひとつだけ頷いて返す。すぐに痛ましい様子のレグルスを見守るのに戻って】
【同意を得られたのには少しばかりびっくりしたらしい。感覚的に女性的すぎる話だし、と思っていたけど】
【なるほどそういう見方もあるんだなあ、とかぼんやり思って。……ここらへんで自分が出すべき話題の種は尽きた】
【…………そう思っていたんだった。ラベンダーに、ぽつりと、しかし熱湯に等しい温度の言葉を零されるまでは】

……え、……鈴音? 鈴音、そんなこと……言って、た、…………。……、
…………そんな厭らしい言い方では、なかったけど、……あたしも聞いちゃったな。
イルを嫌いにはならない。……みたいなこと、言ってたの、聞いちゃった。……正直それはしょうがないって思う。

だって、…………ずたずたのバラバラに壊れちゃったんだもん、鈴音。
それに誰も気づかなかった、あるいは、気づいてたのに何もしなかった、……そんな中で、
最初に優しくしてくれたのがイルだもん。……刷り込みみたいなモンだよ。もうあれは、どうしようもない……。

【戸惑うようにふらつく音程、けれど苦々しくも肯定の言葉に帰結するなら、悔しげに俯いて、唇を噛む】
【同時に、鈴音がイルに依存するようになるのも仕方のないことだったんだと零す、けど】
【それすらラベンダーには納得できないと思わせるんだろうか。だけど。――――――「だけど」、】
【言葉を逆接でつなぎ直す。そうしてもう一度顔を上げたなら、真紅の瞳には強い感情の火が、宿っていて】

………………それでも。鈴音に嫌われることになっちゃっても、……それ以上のこと、たとえば、
死んでしまえとか消えてなくなれとか思われるくらいになったとしても。
あたしはイルを殺すよ。そればっかりは絶対、曲げないから。だから、
……安心してって言うのもおかしいな、なんて言えばいいんだろ……

【それは明確に殺意と呼べる温度をしていた。焼き焦がす。激情の灯、未だに消えていないんだというのは】
【一度それを見せられたシャッテンなら、あるいは理由がわかるんだろうか。――夕月という少女は、どこまでも】
【人間として生きたがっていた白神鈴音を信じている。なら、それを侮辱したイルを赦すという選択肢は、どうあっても生じない】


79 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/14(金) 20:49:17 hEXW.LLA0
>>65


「ふうん、 ──── それは、それは。」


【納得したような、していないような。 ─── 鷹揚な返答。それでいて、どこか納得したような言葉の色をしていた。】
【相手が依頼を受けた誰かがイリーガルな人間でないことを少しだけ祈った。ここでの狩猟が許されていたかどうか、記憶にない】
【それでも少女は幾らか生っちょろい節があった。一先ずは無条件な信頼を相手に向けていた。 ─── 何より、この爽やかな達成の余韻を、妨げたくなかった。】

【そうして解体の様を横目で見遣るならば、幽かに少女は息を呑んだ。ある種の感動を表情に示していた。】
【赤い玉石と呼ぶのは些か在り来たりな表現ではあった。悠久を経て蓄えられた上質な脂肪は、つい十数分ほど前まで筋運動を繰り返していた赤身と共に引き締められ】
【それを鮮やかに切り捌いていく相手の異能が幾らか空恐ろしいような感覚もないではないが、今ばかりは感嘆が上回っていた。】
【曰く、櫻国では魚の生食はポピュラーな文化であるらしい。 ─── サシミ、と言ったろうか。試してみるのも吝かでないと、茹で上がる鍋の底を覗き込むなら、然し】


       「 ─── 分かるなあ、」「その気持ち。」「自分が誰なのかってさ、時々僕も、気になるから。」


【 ─── 風光ささめく一刹那を指先に留めて、金髪の少女もまた、呟いた。笑い慣れない横顔が悲しげに頬を緩めた。青い瞳の中で音もなく炎が揺れていた。】
【制御されたガスの漏出が河原の気温だけを保っていた。それ以上を少女から問うことはしなかった。理解しているならば、問いかける必要はなかった。】


「 ……… 僕はヤダよ。」「ヤダからねっ。」「ヤダって言ったらヤダぞ。」
「イヌイットじゃあるまいし、ビタミンだって足りてるんだからねっ。」「 ……… そりゃあまあ、貴重な経験だとは、思うけど。」


【 ─── そうして、少しばかり意固地に拗ねるような顔をして、せめて茹でて食べたいと少女は言うのだろうけれど】
【然し双眸の青さには幾らかの好奇心も宿っているに違いなかった。言い訳もそこそこに、「じゃあ、一口だけ。」 ─── フルタングのブッシュナイフを、懐から取り出し】
【一口というには幾ばくか大きな塊を切り出して、大きなコッヘルによそる。「 ……… 先に食べてくれる?」多分、ちょっと、こわいから。】


80 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/14(金) 20:49:30 hEXW.LLA0
>>61

【突き出された代物に目を丸くする。全身義体の医師ならば親しい記憶に無いわけではないが、アンドロイドの有資格者を見るのは女にも経験がない。】
【そしてそれは何処か皮肉めいていた。 ─── 無論ながら眼前の2人にその意がないと分かっていても、後ろ暗い内心を想起させられた】
【女は人殺しであった。人殺しを生業とする人形であった。誰かの命を救う等と、高尚な真似を試みたのは、いつが最後であったか】
【 ──── 然し存外に真新しい記憶を想い出して、少しだけ寂しげに人形は笑う。我ながら、ひどく甘い真似をするようになったものだった。】


「 ……………… 。」「そう、焦らないで。」「私とて、血も涙も流せぬことはない。」
「脚元を見るつもりはないし、この期に及んで狡っからい真似で空費できる暇もない。」「信頼できる協力者に、多すぎる事もまた、ないのですから。」


【ならばアンドロイドの少女に縋られて、事務的に突き放すような冷淡さを選ばなかったのは、人形の宿した甘さであったろうか。】
【病的にか細く真白い指先が縋る手を握り返して、硝子に似て透き通る青い瞳が、ほんの幽かな微笑と共に少女をじつと見て】
【そうして頤を傾げて男を見上げる。 ─── 彼の語る言葉に、彼女もまた瞠目した。神殺しの道具。女にもまた、少なからぬ魅力をもって響く内容であった。】



「 ─── それが事実ならば、惜しむつもりはないわ。」「この世には、私の観念では及びも付かぬ叡智が溢れているものと、知っているつもりだから。」
「一先ずは、聞かせてもらいましょうか。貴方たちの持ち合わせている、鬼札の如何について。」「相応しくあるのならば、渡せるものは全て明け渡しましょう。」



【それでも言葉の語られるのみで全幅に信頼するほど女は若くなかった。その理論だけでも傾聴したいと、人形は望む。 ─── 幾ばくか熱を帯びた口調にて】


81 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/14(金) 22:30:53 6IlD6zzI0
>>74

「言われずとも、遂げてみせるさ―――……、まぁ、手に負えないところは精々、頼るとするよ。
 
 つーか私は表向きに死んでる形で公安に身を置いてるから汚い仕事も手荒な仕事も慣れてる。
 だから心配ご無用。寧ろそれらは社会的死人の私が率先して行うべき事だ。汚れ役は私とアンタだけで十分だ」


【泣き腫らした顔はそのままに、強がりの笑みを口元に宿すエーリカ】
【"機械人形の癖に随分とお優しいこと――今のアンタは嫌いじゃないよ"】
【宿した微笑が態度の軟化を伺わせる。アリアに釣られて、ハハッっと笑いを零した】
【虚神絡みでの利害の一致にて成り立る関係でしか無いのが惜しい――と少しだけ思う】


「蛇の残党のみならず関係ない人間まで自殺してるのは知ってる。
 ……アンタが入れ込んでる蛇の幹部サマも死にたがってるってのは初耳だ。それで媒介者として不適格だと言ったのか。
 ――ミツキカエデはジャ=ロにとって都合の良い存在のはずなのに、実に不可解な話だね」

【ミツキカエデは表向き死んでいる。故に虚構世界の後の彼女を知る由も無い。アリアが匿っているのであれば尚更】
【そして引っかかりを覚える言葉が頭から離れない――"なぜお前は平気なのか"、と。……冗談じゃない】

「――…思い当たる節は無い。けど"平気でいられてる"訳じゃない。
 先月辺りから私も情緒不安定でね、妙に好戦的になってる自分がいる。
 その所為で行きずりの剣客に切り捨てられて死ぬ所だったし現にさっきまで一触即発だったじゃないか」

「……だから平気でいられる訳じゃないと思う。ミツキカエデや他の信者と比べて症状が軽いってだけの話で、さ
 役に立てそうな情報を与える事が出来ないことを申し訳なく思う。――ただ手がかりが無い訳じゃない筈だ」

「私達が向かうべき場所の示唆が為されてる。公安が行った自殺者のプロファイリングから導き出された結論でしかないけど。
 そこは――旧市街の果て・スルツェイ。多分其処に答えの一端があると思う。――アンタはどう思う?」


82 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/14(金) 22:31:02 hEXW.LLA0
>>75


       「 ──── ッッ ……… 。」


【 ─── なれば、女はひどく憔悴したように狼狽えて、隻眼を瞠して息を呑む。だのに、囁きへの憧憬が満たされるような赤み差す歓びは、肌奥の熱として少女へ伝った。】
【強さを謳われることは慣れ切っていた。美しさを讃えられることは珍しくもなかった。醜さを罵られることは銃弾を以って応じてきた。 ─── されど】
【愛らしいと呼ばれた記憶を遡るのには、少なからぬ沈黙を要した。すぐにまた気付いた。可愛らしさを賞でる言葉を、畢竟おのれは受けた事がないのだ。】
【そして確かに夢見ていたに違いなかった。いとしい人の腕に抱かれて、磨きに磨いた自分だけの乙女らしさを褒められて、羞らいと共にはにかむ一瞬。】
【それが女のしあわせであると知っていた。とうの昔おのれは女になれぬと悟った。鋼の骨格を姫抱きにする事を許せる男など居ないと解ってしまった。 ─── だからそんなもの、何処かに捨ててしまった筈、なのに】
【手前でも忘れ切った今わの際になって、最も愛しい人が思い出させてくれてしまった。 ──── ならば、アリアはただ言葉なくして、細い躯体を抱き締めるばかりだった。】


【(今度は私が貴女の頬を紅くしてしまうのだと、玄関から踏み出す瞬間に、確かに誓うのだから。)】


【 ───── ともあれ2人は車に乗った。V8気筒の唸るまま、地下駐車場から市街地へ、煩わしい信号機の軛から逃れる為にも、最も近いインターチェンジを目指す。】
【植込みと街路樹と瀝青ばかりのつまらない景色は、月明かりよりも幾らか無機質な橙色の街灯に彩られていた。 ─── ならば早く高速道路に乗ってしまうべきだった】
【程なくして無人料金所を通過すれば後は速度を上げるばかり。煙たい潮風が、立ち並ぶ摩天楼が、煌びやかなコンビナートが、ただ時速100kmで置き去りにされていく。】


「 ─── 素敵、ね。」「海。」「綺麗な砂浜。」「さざめく白い波。」「朝焼けに染まる海。」「誰も来ない、沿岸の道路。」
「一緒に夜明けの朝日を観ましょう?」「波打ち際をどこまでも歩くの。」「潮の匂いを胸一杯に吸ったら、きっと心地いいわ、 ─── 。」


【然して窓を開ける為にも、幾らか速度を落とすことにした。 ─── 運転席のドアに備え付いたボタンから、半ばほどまで助手席のウインドウを下げる。暴風じみたハイウェイの風が吹き込む。】
【風を浴びて薄藤色をひらめかせる仕種はいつまでだって見ていられた。愛しかった。それでも差し伸べて少女の手を握る左手は、なにかを恐れるように力を強めるのだから】
【それでいて矢張りカーステレオをつける気分にもなれなかった。今はラジオなんて聞かせたくない。少女の好む曲も知らなかった。ならば路面を征く車軸の唸りと吹き抜ける風音だけを共にすればよかった】
【 ─── 数時間ほど言葉少なに南へ走るなら、やがてネオンの輝きは縁遠くなる。黒いクーペはインターチェンジを降りて、そのまま海沿いの国道を滑り出すならば、また幾らか速度は落ちて】
【ふたりの頬を撫ぜるのは大都会に澱むよりも余程清らかな潮風である。 ─── そうしてまた、少女の窓からは丁度、海が見えた。深淵に似て直黒の海において、細波ばかりが救われるように月光を浴びていた】


83 : ラベンダァイス ◆auPC5auEAk :2018/09/14(金) 23:00:15 ZCHlt7mo0
>>77

――――良いんです。私にとっては「当たり前の『破滅』」なんですから――――
安らかに死んで行けるなら――――それに越した事はない。そうじゃないですか――――?

【人として見れば、確かにそれは悲劇であり、忌むべき破滅なのだろう。だが――――結局、彼女は『ケツァル・コアトル』だった】
【もしも、太平の世を実現できたのなら、それは戦士として、そして兵器として、最大の達成であり、喜びでもある】
【それを胸に抱いて、死んで行けるなら――――それは決して悲劇ではなく、また破滅でもない。言うなれば、それは『完結』という語に近いのだ】
【完結としての死を迎えられたら、それは何の不快や苦でもない。そればかりか、その生涯の全てを、自分で全肯定してやる事ができるだろう】

――――変わりはしませんよ。私は私のまま、泰然自若に生き、そして死んでいくんです――――
私だって、そう簡単に折れる様な、そんな意志で生きてはいません。もう――――人として、私を諫める言葉は、聞き飽きてしまいました――――

【抱擁から解放されて――――ラベンダーも『ベルセルク・フォース』の姿から、元の少女の姿へと戻る】
【イスラフィールが、自分を気に掛けている事は分かったが、それでも己の生き方を、変える心算はなかった】
【いっそ、「私に目を付けたあなたも、不幸です」とでも、言ってみれば良いのかもしれないが――――そんな空虚な言葉遊びは、趣味ではなかった】

――――分かります。彼らが、これで終わらせるつもりなんて、無いでしょうから――――
私は正に、その時の為に戦わなきゃならない――――戦いは、いくらでも抱えています。でも、戦うためになら、私は生きていける――――ッ
――――私は、万難を排して、人の為の未来を掴みます――――どんな相手を、敵に回そうとも――――!

【いつか、彼らは必ず動き出す。人心を惑わし、世界を掌握するために。それを許さないのが、自分たちの役目なのだ】
【――――死線を踏むような戦いを、既に彼女は抱えてしまっている。だが、それこそが彼女の生きる意味なのだ。力強い意志が、死人の様な瞳に宿る】
【今だからこそ、誓えるのだ――――どんな敵だって、許しはしない。必ず粉砕して見せる、と――――】

――――ッ
リーダーは――――イスラフィールさん、あなたですね――――既に、具体的に見えているんですね――――?
かつてのあの旗が、もう1度立ち上がるのは――――もう、そんなに遠くない――――!

【ハッキリと宣言された、新生『Justice』の旗揚げ。ラベンダーも、改めて示されたそれに、思わず息を飲む】
【政治家が、それを他人へと口外するのだ。既に青写真は、かなり精緻なところまで詰められているのだろう】
【イスラフィールの率いるそれは、どんな形になるのか――――それは分からない。だが、人の為、正義の為にあるのは、間違いないだろう】
【――――かつての居場所が、蘇る。それを思うと、ラベンダーは知れず、鼓動を昂らせていた。人は違えど、意志は同じ――――】


84 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/14(金) 23:04:41 hEXW.LLA0
>>81

「ふ、 ──── 頼もしいこと。」「余計な気遣いは要らぬようね。」「 ……… なら、頼りにしているわ。」


【漸く以って、人形は彼女が有望な人種であると理解した。未だ筋は荒いとしても、なにかを成し遂げる人間としての確かな資質を秘めていた。】
【ある種のシンパシーを感じているのかもしれなかった。 ─── その辺りの情には、随分ともろい類の女だった。"かえで"の為に涙を流せるのは、偏にそれ故のこと。】
【国家の犬として燻らずとも良いものを。いずれはそう告げてやっても悪くはないと、そう人形は思った。そして】


「 ……… 成る程、ね。ならば、貴女が謝るべきことではないわ。」「元より、手前ェの尻を手前ェで拭えない私が情けないだけ。 ─── それにしても。」
「 ─── 矢張り、目端が効くものね。」「我々も同じ場所をマークしていた。 ……… そこに何かが在る可能性は、大きい。」
「それが何者であるか、私には思量の及び切らぬ所であるけれど ─── 恐らくそれは、"死"に至る"病"。」

「 ……… ジャ=ロと、イル=ナイトウィッシュ。何方か、あるいは両者の深く関わる所であるに、疑いを差挟む余地はないわ。」
「我々は奴らと干戈を交えるでしょう。 ─── 然しこれは、私の上司が命じたことの、受け売りであるのだけれど」

「"スナークは殺すな"。 ─── これは、ロールシャッハにとっての復讐劇と等価に成り得る。そう、言っていたわ」
「 ……… あの人の考えていることは、昔から解らないけど」「恐らくはこのタイミングで、ロールシャッハとエカチェリーナも、仕掛けてくる。私だってそう思う。」
「奴らの動向には十全な注意を払うとしましょう。 ──── そう何度も、虚仮にされる訳には行かないわ。」


【 ─── 2人に語り聞かせるのは、彼女自身の見解であった。旧市街や虚構現実での醜態を、今一度晒すような真似は厳に慎まれなければならない】
【復讐の色が硝子色の瞳に宿っていた。 ─── ひとつ呼吸を置いて、リゼとエーリカを見遣るなら、最後に伝えるのは】


    「9月14日、我々は"スルツェイ"への強行査察を行う。」「 ……… その時にまた、会いましょう。」


【言い残して、人形はふらつかせていた両脚を、ようやく床に下ろすのだろう。 ─── 送り迎える必要はないと語っていた。深緑の背中は硝煙に幾らかも掠れていたから】


85 : 名無しさん :2018/09/14(金) 23:11:40 vVu3DUYI0
>>82

【――ぱちり、と、少女の紅紫色のまなざしが瞬くのだろう、瞠られたまなこをまっすぐに見つめて、青色と赤色、上手に混ぜたいようにのぞき込むのなら】
【くす――と小さな吐息に笑みの気配。きっと揶揄う色合いをしているのに違いなかった。お姫様抱っこをしてもらうならよく似た視線の高さを至極堪能しながら】

――――……あれ。アリアさんかわいい。照れてるの? 頬っぺた赤いですよ。ねえねえ、照れてるの――。

【――――――――わりに、彼女にはこういうところがあった。調子に乗る性質だった、さっきまでの悲愴さを忘れてしまったようにも見える言葉を連ね】
【ひどく近しい距離でいくらかの間、揶揄っているのに違いない――だけれど少なくとも車に辿り着くころには、ひとまずは大人しくなっているのだろう、から、】
【だけれどそれまでの間にいくつかの言葉を述べているはずだった、ずいぶんとかわいらしい声だった。頬っぺた同士を摺り寄せるようにして、その耳元で】

【――曰く「髪の毛結わかないんですか?」「やったげますよ」「帰ったらしましょう」「いいですよね?」「携帯貸してくださいね」「ヘアアレンジの動画見ましょうね」】
【だなんて、至極有機質の櫛にて相手の白銀を何度も梳きながら囁くのだ。だからきっとそんな風に上機嫌そうな彼女を久しぶりに相手は観測するのだろう、】
【ここしばらくの彼女はずうっとひどく沈んでいたのだから。放っておいたらベッドからだって起き上がれないんだから。ひどく即効性の薬効だった、それでも】

………………もう、アリアさん、どうしたの、――痛い、ですよ? ……それに、片手運転で事故らないでくださいね。
――まあ、何かに突っ込むくらいなら、私が居るんで、大丈夫ですけど……。……。……――、もうちょっと閉めて、いいですよ。

やっぱり、夜だしちょっと寒いですね。秋服を用意しなくちゃ。――。

【それが本当の解決だなんて誰も思うはずもないなら、――ごうごうと耳元に渦巻いて唸る夜風に、きっと彼女は口の際を掻かれる猫のように快さげなのだけど】
【ぎうと強く手を握られるなら、わずかに眉を顰めるのだろう、それからわずかに茶化すような声音が、――やがて相手をどこか心配するようなものへ、推移していくなら】
【ほんの少しだけ覗き込むように傾けた視線が、――けれど、数秒のちに窓の外を流れる景色へと戻る。ぽつと付け加えられる声は、いくらか、寂しげにも聞こえるのだろうか、】
【――どちらにせよ。繋がれている手の指先はきっと優しく恋人同士がするように繋がれたままで相手の指を撫ぜるのだ、愛しいのだから】

――――わあ、海! アリアさん、海ですよ、海――、

【そうしていくらかの時間を車内にて過ごすのなら。最初は風を浴びるだけで楽しげであった彼女もいつか飽きてくる、眠るでもなく緩く瞳だけを閉じて】
【話しかければすぐに目を開ける。どちらにせよ眠っていないのは繋がれた指先を、両の手で柔らかく包んで撫ぜる仕草ですぐに伝わった、それ以外の出来事は何にもないから】
【やがて高速を降りたあたりで彼女もまた目を開ける、見たことない街の景色を見るのならまたいくらか元気になって、――ふとわずかに身を乗り出すのだ、笑ったまま】
【いくらか開けたままの窓は人体を取り落とすほどではなかった。シートベルトもきちんとしていた。それでも窓に指先をかけて身体を寄せるのなら、一瞬だけ――】


86 : シャッテン&レグルス&ラベンダー&アーディン ◆auPC5auEAk :2018/09/14(金) 23:49:29 ZCHlt7mo0
>>78

……夕月、今のレグルスにそれを言うのは、少し酷だと思うんだけどね……
<っ、ふぅ――――ッ、なぁ夕月、アルクの奴は……死んでも構わないと思って、戦ってたと思うか……?
 いや……奴は最後には、自分の命より、君を助ける事を優先したんだろうがよ……でも、敵とやり合ってる中で「死んでも構わない」なんて、思わなかったと思うぜ……?
 ……それが、心の支えとなるか、それともただの未練となるか……そりゃ微妙なところなんだろうよ。だからアルクは、未練を残さないために、命を擲った……
 ――――実際「叶わない願い」なんだろうぜ……俺は、ソニアを――――いや、これこそ未練だよな……>

【――――気持ちを切り替えるためだろう。少しグラスを傾けて――――レグルスが、思い切り表情を顰めていた】
【口の中、出血するほど噛み締めていたところに、ジンジャーエールの炭酸が染みたのだろう。同時に、歯か骨を痛めつけるほどに、噛み締めてもいたのだから】
【ともあれレグルスは深く深呼吸をすると、ゆっくりと夕月に応える――――それは確かに、生きるための原動力、強い目的意識となってくれるだろう】
【だがそれは同時にガンであり、毒でもあるのだ。それは、その時になってみないと分からない】

【――――口の中に噛み締めた言葉を、レグルスはそのまま飲み込んだ。彼もまた「命を擲ってでも」という思いが、戦いの中に顔を覗かせてしまっている】
【意識が既に、死へと向かい始めている。だからこそ、未練は残したくなかったのだ】
【既にソニアの生還を絶望視している、エカチェリーナとの戦い。彼女の死をもって、決着とするしかない――――それはその通りなのだが】
【だからこそ、レグルスには沸々と想起される感情があった――――それが、怖かったのだ。だから、言葉に信を託して、そして約束を確かめて――――】

{――――言ってましたよ。だから許せないんです――――私は、イルの存在を決して許しはしません。必ず、殺して、壊して、滅ぼします――――ッ
 そっちに情を傾けて、あまつさえ――――善がる為の材料として、人間を殺す事に、味方するというなら――――許せません}

【ラベンダーもまた、言葉をチョイスするための準備として、深い溜息をこぼしていた。それだけ、気持ちの整理が必要な局面に、全員が晒されているのだろう】
【しかし、結局のところ、ラベンダーの口から出てくる言葉は、感情をそのまま載せた様な、忌々しげな呪詛だった】

{――――助けを求められたのなら、応じる事なんて、いくらでも出来たんです。私は所詮人間じゃないって、彼女も知ってたはずなんですから――――
 でも彼女は、恩人も、自分の見出した『道』も、全部かなぐり捨てて、イルの元に転がり込んだんだ――――何がどうあれ、私たちを裏切った事に、変わりはない――――!
 「間違いだったんだから、全部どうでも良い」んだそうですよ。セリーナさんも『たんぽぽ』の子供たちも、どうなろうが知った事じゃないと――――ッ
 ――――イルの奴が、何をしているか分かった上で「どうでもいい」と言ってのけたんだッ、もう、仲間と見る道理はありません――――!
 彼女を「間違えさせた」『アカギレイジ』とかいう男もろとも、許されざる事を、言って――――いいや、やってのけたんだ――――ッ!}

【――――その身体を走る、金色の魔力回路のラインが、煌々と輝きを昂らせていく。まるで、ラベンダー自身の感情と、リンクする様に】
【その視線はじっと、テーブルの上のオレンジジュースを睨みつけている。そうして、意識を一点に保っていないと、もはや感情が制御できないのだろう】

{夕月さん――――まだ、戦場に出れるほどには、復調してないんでしょうから『例えば』の話とします――――
 イルの奴が死ねば、鈴音さんは虚神として、私たちに復讐を仕掛けてくるかもしれません
 ――――そう、ならなければ、私は我慢なりませんが、彼女を手に掛ける事はしません。それは、友人との約束がありますので――――
 でも、あの腐れ愛人の仇を討とうとしてくるなら、私は必ず彼女も殺します。許せませんから――――夕月さんは、それでも良いですか――――?}
「……俺は、他人の立場の八つ当たりに近いが……ラベンダーは、少々イルと因縁があってな……奴に靡いた事、そのものが許せないと言っている……」

【夕月は、意外にも自分に近いほどに、イルへの殺意を滾らせていた。その源泉は、アーディンと近いものの様だが】
【だが、同時に考えなければならないのは、鈴音との対峙の可能性、そしてその対処だと、ラベンダーは主張する――――彼女も、今や『虚神』の一員なのだ】
【その力を、イルの仇討として振るってくるなら――――その時、鈴音と「敵として殺す」覚悟はあるか、と】


87 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/15(土) 00:26:43 WMHqDivw0
>>86

それは、……そうだけど。未練とか、そーいうんじゃなくって…………
…………。……、……あたしおかしなこと言ってるのかな。や、おかしいんだろうな。
未だに思ってるんだもん、誰も死なずにすべて終われるって、思ってる、……、
現にアルクさん、…………死んじゃったのに。それでもまだあたしは、…………おかしいな、本当に。

【シャッテンの諭す言葉も、レグルスが自分自身に向けるように噛み締める言葉も。全部正しいと思うのに】
【それでもまだ、誰も死ななければいいなんて、理想と呼ぶにも幼すぎる願望を抱いてやまないのだった】
【……困りきった顔をして視線を下げる、誰の言うこともわかるのに、わかれない自分がいて、混乱する】

【続くラベンダーの言葉にも同じような表情を向けた。理解はできる。自分だって鈴音に対して、】
【全肯定の気持ちを抱けるほどの情はない。それでも。……それでも、また、逆接で言葉をつないで】

………………それは。それだけは違う、セリーナも、たんぽぽも、どうでもいいなんて言ってなかった。
それだけははっきりわかるよ、あたし聞いたもん。そればっかりは――ラベンダーちゃんがそれ聞いたときと、
事情が変わってきたり……したんじゃないかな。……違う。本当にそれだけは、否定するよ、あたしは。

【幾何学模様の輝くさまを怒りの表現としてとらえる。その気持ちはわかる。だけどそればっかりは違うと断言する】
【いつか戻るって言っていた。そればっかりは間違いじゃなかったって泣いていた。この耳で確かに聞いた】
【だから、憔悴しきった顔、ふるふると横に振って――きちんと見据える、彼女のオッドアイを】

……………………構わない。それはきっと、……鈴音が世界に害を成す存在に成り得るときだから。
それだったら、……、………………。そうならないように、頑張るよ、頑張るけど、…………、

それでもダメ、だったら、…………引鉄を引く覚悟は決めるつもりだよ。…………。

【そしてそれを逸らさないまま。ぐうと唇の端を引き絞って、一言一言、絞り出すみたいな発音】
【だけど彼女はあくまでも、最後の最後まで、鈴音との和解の可能性を棄てないって言う。「そうなる」時までは】
【鈴音の味方であることをやめたくないって、薄い透明の膜越しに輝く瞳が語っていた。……本当に、幼稚な願望】
【それが夕月という少女を、少女たらしめる根源であるようだった。誰一人とて損ねたくない。その気持ちだけで】
【今の今まで突っ走ってきたんだった。一度転んで、それでも起き上がって――まだ走る気があるんだと、言う】


88 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/15(土) 00:30:32 hEXW.LLA0
>>85

【「 ………… 照れてるわ。」きっと、無為な抵抗を続けることはしなかったのだろう。耳まで赤くなるのを止める術など、機械仕掛けの身体にも有りはしない。】
【愛らしい囁きには口結んだ沈黙と躊躇いがちな頷首を以って肯定とした。 ─── 表情こそ只管に恥じらっていたが、その内心はきっと、世界中の誰よりも幸せだった。】
【貴女の嬉しそうな顔が見たかった。貴女の喜ぶ顔を見ていられた。何だって捧げてしまいたいと心から願った。翳りない銀色が深窓に心淀んだ貴女の慰みになるのなら】
【それ以上の喜びはないのだと、憚らずに言えるに違いなかった。 ──── だとしても、やはり、無邪気に笑い続けることが、どれだけ今は得難い事か、解っているから】

【ならば言葉は少なかった。心配そうに横顔を覗かせるのだとしても、鷹揚で曖昧な微笑みを投げかけるのが精一杯のことだった。重ね合う肌だけが唯一ふたりを繋ぎ止める縁のように思えた】
【 ─── 手指の先だけを重ね合う今は、とても寂しい瞬間のように思えた。体すべてを重ねる一時が何よりも幸福であるに違いなかった。天真な喜びの声が、するりと手から離れて行ってしまうのが、恐ろしくて】


「 ──── かえで、」


【一瞬だけ窓の外へ向けられそうになる重心を感じるなら、堰を切ったように絞り出すような声を上げて、車内へ引き戻すように繋いだ手を引いて、呼び止める名前はスキールに辛うじて掻き消されなかった。】
【急激なブレーキングが相対速度をゼロにまで押さえ込んで、ヘッドライトの照らしてきた路面にスリップ痕を残して、止まる。 ─── 握り潰してしまいそうな程に、少女の手首を強く掴んだまま】
【堪らずにアリアは少女を抱き寄せるに違いなかった。ただ今はなにか怖くて仕方なかった。縋りたい夜だった。相手もそうであるに違いないと信じていた。だからきっと、藤色に唇を埋めて、ささやくのは】



     「 ……… ごめんね。」



【そのまま、ただ今は、互いの鼓動を感じるのだろう。 ──── 何に謝るべきなのかも分からなかったけれど、こうして2人でいる限りは、何も怖くなくなるのだと信じたくて】
【だから幽かに暗い暗い群青色を宿す水平線は御誂え向きの救いの手であるに違いなかった。少女の望んだ通りの真白い砂浜が、助手席を降りた歩道越しには、岬のずっと向こうまで広がっていたから】


89 : 名無しさん :2018/09/15(土) 01:02:46 vVu3DUYI0
>>88

【――――きっとさっきよりも朝が近い夜の色合いをしていた、それなら彼女の時間に違いなかった、真っ白い薔薇の抱く朝露のように振る舞うのが上手だから】
【だのにいつしか朝露は地面に落ちてしまっていたんだった。いくら見上げても真っ白な薔薇の花びらに戻れる方法が分からないんだった、だから毎夜ひどく悲し気で】
【朝のたびに違った日常を過ごすのに絶望的な目をしていたのだろう。――だけれどまったく同じほどに美しい花を見つけてしまったから、戻る気だって曖昧にぼやけてしまう】

【どちらもを選び取ることはできなかった。だのに彼女の中では気持ちが二つに裂けてしまっていた。蛇を信じていたい/狼を信じてみたい】
【だからほんのちょっとしたきっかけでその時々を裏切るのだろう、――それはどちらかへの不貞ではなくて、自傷行為にきっとよく似ていた、だからきっと死にたくて】
【ボーダーラインをふらふらって行くのなら県境のカーナビよりも支離滅裂な状況を示して、最期に倒れたときに、どちらが好きだったのか決めてほしい】
【――だってそうじゃないと非道すぎた。こんなの決められるはずがなかった。神様は助けてくれなくて。もうそのためにもう一度立ち直るのだって難しいのに、】

――――、きゃ、っ――、

【朝に近い静寂を劈く音に――何より急激に訪なう衝撃に少女は小さな悲鳴を上げる、そうしてまた腕を締め上げられるかのような痛みが、鮮烈な紅紫を瞬かせるなら】
【パキり、と、小さな音。魔力が結露するような音、ハニカム模様よりも細密に組み立てられるのは瞬きより素早く満ちて、であれば本当だったなら、命は護られるだろうか】
【けれどそうでないのなら、――無用の産物ながら、まあ、反応速度だけはそれなりだった、フロンドガラスから見える景色をマゼンタに染め上げてしまって、瞬き一つ】

アリアさん――、どうしたの? ……痛いよ、折れちゃう――、

【――――だからきっとアリアが見るのはひどく泣いてしまいそうな目だった。細い眉をハの字に歪めて、幽かに震える声が、痛みを訴える】
【けれど本当に求めているのは腕を離されることではないはずだった。強く引かれた方向性と、急に停まろうとした車の方向性とにかき乱されたなら、ひどく曖昧な姿勢】
【ぎゅうと抱き寄せられるのなら、――きっとひどくどきどきしていた。怖かったのかもしれなかった。わずかに身体が強張っていたから、感情を伝えて】

アリアさん……? ……もう、どうしたの、……、――私、今、なんにもしてないですよ、ねえ……。アリアさん……。
……アリアさん。アリアさん……。……――、……。

【どうしようもなく湧き上がる不安をかろうじて呑み込む。だけれどそのせいか彼女は何度も吐息を詰まらすのだろう、だから泣いてしまいそうに、聞こえて】
【漏らした声は――前科もあってか。けれど彼女に心当たりがないのだから。それさえ忘れていたらどうしよう。知らぬ間に相手からまた何かを奪っていたとしたら?】
【色鮮やかな蛇の色をした腕が、――かすかに震えて、その背中に回される。(――――私と居るからですか?)(アリアさんも、不幸になるの?)(そして死んでしまうの?)】

【――めいっぱいに言葉を飲み込む。吐き出したらいけなかった。そしたらきっと相手はもっと苦しんでしまうから。だけれど怖かった、だから、だから、】

…………ねえ、ね、お散歩、しましょう、そしたら気だって紛れるかもしれないですよ、だから……。

【――――震える指先がその背中を撫ぜるんだろう。だから彼女はきっと相手がおかしいのだと信じていた。優しげな声は、けれど、何より、彼女自身の恐怖を隠すためのものであり】
【それでも努めて明るく調律された声音は、――きっと上向きに形作られた唇の作用に違いなかった。泣きじゃくる子供をあやすみたいに、提案するなら】
【きっとこの車の中のままでは、もっと悪くなってしまうから。広い世界の中に出てしまえば、――あるいはその毒も希釈されるような、気がして】


90 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/15(土) 01:46:46 GQoYu22s0
>>71-72

【“──ジャンキーズはてめえらの方だろ”】

【そう言われて、『ダンデライオン』のガンナーたちはめいめいそっと口元を緩ませた】
【その傷だらけの笑みを見て、ライダーもまた口の端を吊り上げた。「──誰のせいだか」】

【男たちに交わされた会話と呼べる会話は、本当にそれだけだった】
【後はそれぞれ、熱の余韻の中、言葉ならぬ言葉を背中越しに通わせるのみだった】

【既に道は分かたれている】
【探偵は光の向こうへ、名も知れない男たちはまたどこか別の風が吹く場所へ】

【彼らは行かなければならなかった】
【振り返らずに──決して、振り返らずに】













【「──────────死にますよ」】


【そのときに、声がした】

【直後、何かが吹き飛ぶ風切り音】
【次いで、よく熟れたトマトを壁に叩き付けたような音が爆ぜた】
【煌めく魔力光のカーテンの外側で、何か大量の赤い液が散った】

【滲んでぼやける空間の向こうから、虚ろな声が探偵に向けて反響する】




「─────死にますよ──その子は────


 あなたが連れて行ったところで────
 ──治せやしないんです────誰も────この時代では──どうやっても────


 ──死ぬんですよ────
 ────あと半分の月が消える頃には──もう────


 ────返してくださいよ────なんで────
 ──死なせるんですか────また──────」

 

【音響が乱反射し、揺らぎ、滲み、】
【しかし幾度も幾度も、纏わり付くように木霊した】



【(────術式進捗:100.00%)】

【そして光が堰を切ったように膨れ上がり、音と視界の一切を真白に染め上げた】


/↓


91 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/15(土) 01:47:24 GQoYu22s0

【──慌ただしく撤収準備に駆けていたライダーの耳は、】
【そのとき、背後の方で響いた、するはずのない何か不細工な音を拾った】


【脊髄反射で振り向いていた】
【体内の熱が、一瞬で冷えていくのを感じた】

【「カルラ……──?」と、あの仲間の女性の名を小さく呼んだ】
【しかし彼の耳に返ってきたのは、明らかに彼女のものではない、】
【壊れたアンプのハムノイズのような虚ろな声響だった】


【再び名を、半ば叫ぶように呼びながら、彼は駆け出した】
【光が大きく膨れあがって、収縮し、そこから探偵たちの姿を消し去った後、】
【彼の目前には、受け入れがたい赤い光景が現れた】


【何かが立っていて、何かが倒れていた】
【そのどちらも等しく、一瞬、人間とは認めがたかった】


【その頭を、人体の限界を超えて後ろへ仰け反らせたまま、白衣の女が立っていた】

【横壁には、たった今し方大きな水風船でも“降ってきた”かのような】
【── 一体どれだけの高度から“落とせ”ばこれほどになるだろう──新鮮な染みが出来ていた】

【その下に、何か、カルラと呼んだ女性にとてもよく似た、似すぎていた、抜け殻のようなものが転げていた】


【彼の脳は、その状況を理解することを、数瞬、放棄した】


【ぐるん、と髪を翻らせ、何か機械じみた動きで白衣の女の顔が前へ戻った】
【赤く濡れた顔。瞳孔の散大した瞳は何も映していなかった。しかしそれは確かに動いていた】
【──眉間に穿たれた、枯れ木の洞のような昏い弾孔の奥から、何かがゆっくりと迫り出した】
【それは寄生虫が這い出るように独りでに穴から抜け、地に落下した。──かつん、と音を立てて、その赤い弾丸は転がった】



「────どうして、誰も“理解”しないんですか」


【女の口が動いたのと、】
【彼が絶叫と共に銃口を前に向けて引き金を引いたのは、ほぼ同時だった】


【しかし、銃声が爆ぜることはなかった】
【引き金を絞りきるほんの直前、彼の手と腕は凍結したように硬直した】
【まるで透明な巨人の手に握り潰されたかのごとき感触が彼を捉えた】

【万力でそうされたかのように気道が締め付けられ、苦悶の声は音にならなかった】
【意志とは関係なくその身が宙へ浮かび上がり、あらゆる関節が可動域を超えて捻られ、絞られ、】
【表皮が裂けてなお続き、潰れた悲鳴がようやく漏れ出たとき、全身の肉が急激に膨張し、そして、爆ぜた】


【赤い驟雨が降った】

【女の看護師服が、白さを失った】


【絶句と戦慄の無音の中を、女は夢遊病者のように歩いた】
【その場にあるものが生物非生物を問わず、次々と浮かび上がった】
【女が一歩を踏み出す度、宙空のいくつかが、いとも容易く弾けて散った】



「────どうして誰も“理解”しないんですか──
 ──誰も────誰も──────」


【鮮紅の豪雨が、しばらく続いた】








【女の膚の表面を流れ落ちる血の筋が二手に分かれる】
【分かれた片割れも再び分岐し、皮膚の上を這い、そして一滴、地に滴った】


【────────】


92 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/15(土) 01:48:59 ekRwln9M0
>>89

【 ─── 女もまた泣いていた。どうしようもなく泣いていた。泣かずにはいられなかった。かえでを怖がらせてしまうような自分が、まずもって嫌で仕方ない。】
【少女のやさしい心遣いのお陰で黒いランチア・ストラトスのボディに傷一つ付くことはなかった。それでも今こんな車に何の価値もなかった。貴女を護れないのなら】
【ずっと自分の腕の中で微笑んでいてほしい。何も恐れずに愛されていてほしい/愛していてほしい。けれどそれは叶わない夢だと何度となく理解させられていたから】
【己れを責めるような少女の困惑をただ囁きに掻き消していたかった。抱き締めて感じる鼓動はときめく心臓のそれではないから、余計なにもかも嫌になって、ならば一緒に死ねたのなら、神様も許してくれるだろうか。】


「 ……… ごめんね」「ごめんね」「怖かったの」「ただ、少しだけ、怖くって」「かえでが、どこかに行っちゃうんじゃないかって」
「貴女は悪くないの。」「なんにも悪くないの」「私が、わたしが、怖がりなだけで」「 ……… ごめんね。」「わたし、やっぱり、弱いよ。」


【しゃくり上げるように何度も繰り言を重ねる。 ─── どうしようもないことだと判っていて、そうせずには居られない。絶望的な心境の二律背反が今は苦しいばかり】
【少女にしか見せないし見せられない自分の弱みを、抱き返される怯懦と慈悲に曝け出していた。ならばせめて、少しだけでも貴女にお返しがしたくって】
【何よりも必死で繕うような上擦った声音に泣いてしまいそうだった。そんな声、しなくていいの。だって私は貴女が護るから。(けれど今わたしは貴女を護れていないの。)】


   「 ───………… 好きよ。」「すき。」「大好き。」「 ─── 愛してる。」「ずうっと、ずっと、 ───………… 。」


【 ──── せめて何かを誤魔化すように、アリアはまた、唇を塞ぐのだろう。貪り合うように心を明け渡して、互いの動悸が収まるまで呼吸を分かち合って】
【それが終わるなら幾らかの沈黙の後、アリアは少女の言葉に頷く。それでも青い隻眼の憂いばかりは消しようがなかった。 ─── レザーシューズとソックスを脱ぎ捨てて】
【また少女を抱き上げるなら、オートロックに何もかも任せて、ふたりでひとり、歩道向こうの砂浜へと足を踏み出す。白砂にすべらかな爪先を音もなく沈めるなら】
【一歩ずつ、波打ち際へ。いつかだれかの瞳の色に似た深紫色の水平線を目指して、或いはそれは入水自殺の作法にも似る。 ─── なのに引き波に湿った水際で、肌に纏わりつく潮風を浴びつつ、女は足を止めるから】


93 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/15(土) 01:48:59 GQoYu22s0
>>14-22

【軒先から滴った一滴の雨雫が、水溜まりに落ちて波紋を揺らした】

【ひどい雷雨を伴った嵐は既に去り、夜更けの凪が街を包んでいた】

【湿っぽく冷えた風が軒並みを吹き抜ける】
【飛び去る雲の切れ間から、下弦の半月がうっすらと覗いた】



【少女の身が探偵の腕を離れ、マットレスに沈む込む】

【──探偵の独り言は、静寂の中にそっと溶けた】
【室内には少女の深く穏やかな寝息だけが小さく響いていた】
【どうやらしばらく起きそうにはなかった】



【探偵が地上フロアに戻ると、そこもまた閑散としている】
【ほんの先刻まで続いていた荒々しい風雨と雷のせいか、客足はとんと乏しかったらしい】

【吐き出された紫煙は、そっと宙を揺蕩い、やがて溶けていく】
【その静謐な時間はしばらく従順に彼へ付き添うだろう】
【探偵の呼んだ者が訪れるそのときまで、ただ静かに】


/とんでもねーです!


94 : 93 ◆3inMmyYQUs :2018/09/15(土) 01:55:16 GQoYu22s0
/あ、安価間違えてました。
/>>71-72宛です、失礼しました。


95 : 名無しさん :2018/09/15(土) 02:34:18 vVu3DUYI0
>>92

【だけれど、きっと、どきどきと震える鼓動は、例えば車がどこかへ突っ込んで二人とも死んでしまう、なんてありふれた悲劇を恐れたのではなくて】
【それに何よりそうなれたなら幸せだって思えるに違いなかった。もうこんな身体ぐちゃぐちゃに潰れてどっちがどっちだか分からなくなるまでかき混ぜられてしまえばいい】
【――なんて思ってしまいそうな心を誰も止められないんだろうから。一人で死ぬのが怖かった。だから一緒に死にたかった。跪いて乞うなら、叶えてくれるのかしら】

【それこそいつかみたいに二人一緒に串刺しに縫い付けられてしまっても良かった。それとも二人で一緒にがれきの下敷き、頭も身体もぜぇんぶくちゃくちゃになっちゃって】
【あるいはなんにも思いきれずに二人で崩壊する世界に取り残されても良かったかもしれない。二人一緒ならきっと怖くないから。二人一緒に死ねたら幸せに違いないから】
【だから巣穴を棒にて突かれた蟻みたいに、ぞろぞろとめどない思考があふれ出してしまう、だのに彼女はそれをきっと自覚はできなくて、だからそれはノイズなんだけれど、】

【――――――(いっしょにしにたい)】
【相手を安堵させるために笑んだはずの唇が繊月よりも細く細く研がれて、だから、それはどうしようもない衝動、抑えることなんてできなくて、ああ、でも、だのに、】

――――――――――――――――、

【どこにも行かないよ、って、言ってあげられない自分に気づいてしまって。作って/いつしか本当になった笑みはあっさりと瓦解する、ぱちり、と、瞬くのなら】
【――嫌だと思った。"これ"は嫌だと思った。いつか女より女らしい彼に酔った勢いで言ったみたいに、少女は"だれか"の泣いてしまいそうなときの顔、大好きなんだけれど】
【これは違う、って、思ってしまったなら。――無意識にその首を絞めそうになった指先が躊躇ってから、これは意識的に、ゆっくり頭を撫ぜようと、するのだろうか】

……アリアさん、私、どうしたらいいの……? 分からないの……、分からないよ……。そんな顔しないで……。アリアさん、弱くなんて、ないよ……。
アリアさんが、――どうしても自分が弱いって思うなら、私が、……私が、護ってあげます、そういうの、得意なんですよ、だから……。
アリアさんの怖いもの、私が全部、ぜーんぶ……、無くしてあげます。私になら出来るから。だから……だから、そんな顔しないで、――ねえ……。

【であればそれもまた未来の命のためにつなぐ約束なのかもしれなかった。少なくとも少女を現世に留めるための縁は、いつかの日、その多くを引きちぎられて】
【ほとんどが相手と繋がっているものだった。だのに世界はそれを無視して彼女を引き摺りこもうとするんだから。――だから、だから、抗うためには、ほんの少しでも】
【ほんの一回でも多く貴女の名前を呼んで/好きだって愛してるって言って/その身体に触れて/肌に暖かさと柔らかさを覚えこませて/同じこと、相手にもされて、されたくて】

――――――――怖くないよ……泣かないで……。

【――ぎゅうと閉じた睫毛に小さな涙の粒が絡まっていた。額同士をぎゅうとくっつける距離感で、まるで神様に祈るみたいな声で、彼女はささめくのだろう】
【そしてきっとそうしたがっていた。自分の分の救いがなくなってしまってももはやいいに違いなかった。そうすることであなたが救われるのなら、笑ってくれるなら】

【ねえどうして助けてあげてくれないの。――――そのためなら、自分で禁忌とした名前を呼んでしまってもいい気がした。鈴の名を呼んだなら、愛しいこの人は救われるの?】

/↓


96 : 名無しさん :2018/09/15(土) 02:34:31 vVu3DUYI0
【――――なら、と紡ぎかけた唇は、けれど、すぐさまに塞がれて。――だから少女は瞑った瞼から小さな涙を一つ落とす、何にもできなくて、ただひたすらに悲しくて】

…………、……アリアさん、おろしてください、そしたら……、膝枕してあげます。別にそれ以外でも、いいですけど……。下、砂なので……。
――アリアさん、最近、寝てないですよね? ……、だから調子悪いんです。だから……、だから、寝てください、……。

【――――やがて浜辺に辿り着くなら。真っ白な砂は、けれど、真っ黒な海と合わせて見るのなら地獄の風景にきっとよく似ていた、黒い砂の方がよっぽどいいに違いなかった】
【だから彼女は波打ち際で立ち止まってしまった相手に求めるのだろう。おろしてほしいって。――叶えてもらえない気がした。だけれど、それでも、黙りたくはなくて】
【おろしてほしかった。そうしたら膝枕をしてあげたくて。別にそれ以外でもよかった。二人で砂だらけになるんだろうけど、地べたで横になってもよかったから】
【気づいていて黙っていたんだった。もしかしたら一緒に寝てるのかもしれないって期待をしていたのかもしれなかった。いつだって起きたときに相手もちょうど起きたばかりだと】
【ありえない奇跡を信じていたかったのだと思わせた、――――そうじゃないんだって分かってしまったから、震える声、相手に休んでほしいって】

おねがいだから……アリアさん……。私に貴女を護らせて……。

【――――――――だけれどそれはきっと相手にとってひどく不安に違いなかった。なにせそれこそ、この場では、いつだってすぐに死ねてしまうもの】
【それになにより、――彼女は死のうと本気で思ってしまったならいつでも死ねるんだった。自分の呼吸も鼓動さえも阻害してしまえるに違いなかった。だから/だけど、】


97 : 名無しさん :2018/09/15(土) 02:42:28 vVu3DUYI0
>>92

【だけれど、きっと、どきどきと震える鼓動は、例えば車がどこかへ突っ込んで二人とも死んでしまう、なんてありふれた悲劇を恐れたのではなくて】
【それに何よりそうなれたなら幸せだって思えるに違いなかった。もうこんな身体ぐちゃぐちゃに潰れてどっちがどっちだか分からなくなるまでかき混ぜられてしまえばいい】
【――なんて思ってしまいそうな心を誰も止められないんだろうから。一人で死ぬのが怖かった。だから一緒に死にたかった。跪いて乞うなら、叶えてくれるのかしら】

【それこそいつかみたいに二人一緒に串刺しに縫い付けられてしまっても良かった。それとも二人で一緒にがれきの下敷き、頭も身体もぜぇんぶくちゃくちゃになっちゃって】
【あるいはなんにも思いきれずに二人で崩壊する世界に取り残されても良かったかもしれない。二人一緒ならきっと怖くないから。二人一緒に死ねたら幸せに違いないから】
【だから巣穴を棒にて突かれた蟻みたいに、ぞろぞろとめどない思考があふれ出してしまう、だのに彼女はそれをきっと自覚はできなくて、だからそれはノイズなんだけれど、】

【――――――(いっしょにしにたい)】
【相手を安堵させるために笑んだはずの唇が繊月よりも細く細く研がれて、だから、それはどうしようもない衝動、抑えることなんてできなくて、ああ、でも、だのに、】

――――――――――――――――、

【どこにも行かないよ、って、言ってあげられない自分に気づいてしまって。作って/いつしか本当になった笑みはあっさりと瓦解する、ぱちり、と、瞬くのなら】
【――嫌だと思った。"これ"は嫌だと思った。いつか女より女らしい彼に酔った勢いで言ったみたいに、少女は"だれか"の泣いてしまいそうなときの顔、大好きなんだけれど】
【これは違う、って、思ってしまったなら。――無意識にその首を絞めそうになった指先が躊躇ってから、これは意識的に、ゆっくり頭を撫ぜようと、するのだろうか】

……アリアさん、私、どうしたらいいの……? 分からないの……、分からないよ……。そんな顔しないで……。アリアさん、弱くなんて、ないよ……。
アリアさんが、――どうしても自分が弱いって思うなら、私が、……私が、護ってあげます、そういうの、得意なんですよ、だから……。
アリアさんの怖いもの、私が全部、ぜーんぶ……、無くしてあげます。私になら出来るから。だから……だから、そんな顔しないで、――ねえ……。

【であればそれもまた未来の命のためにつなぐ約束なのかもしれなかった。少なくとも少女を現世に留めるための縁は、いつかの日、その多くを引きちぎられて】
【ほとんどが相手と繋がっているものだった。だのに世界はそれを無視して彼女を引き摺りこもうとするんだから。――だから、だから、抗うためには、ほんの少しでも】
【ほんの一回でも多く貴女の名前を呼んで/好きだって愛してるって言って/その身体に触れて/肌に暖かさと柔らかさを覚えこませて/同じこと、相手にもされて、されたくて】

――――――――怖くないよ……泣かないで……。

【――ぎゅうと閉じた睫毛に小さな涙の粒が絡まっていた。額同士をぎゅうとくっつける距離感で、まるで神様に祈るみたいな声で、彼女はささめくのだろう】
【そしてきっとそうしたがっていた。自分の分の救いがなくなってしまってももはやいいに違いなかった。そうすることであなたが救われるのなら、笑ってくれるなら】

【ねえどうして助けてあげてくれないの。――――そのためなら、自分で禁忌とした名前を呼んでしまってもいい気がした。鈴の名を呼んだなら、愛しいこの人は救われるの?】

/ごめんなさいコピペミスあったので訂正です! ↓


98 : 名無しさん :2018/09/15(土) 02:42:41 vVu3DUYI0


【――――なら、と紡ぎかけた唇は、けれど、すぐさまに塞がれて。――だから少女は瞑った瞼から小さな涙を一つ落とす、何にもできなくて、ただひたすらに悲しくて】

…………、……アリアさん、おろしてください、そしたら……、膝枕してあげます。別にそれ以外でも、いいですけど……。下、砂なので……。
――アリアさん、最近、寝てないですよね? ……、だから調子悪いんです。だから……、だから、寝てください、……。

【――――やがて浜辺に辿り着くなら。真っ白な砂は、けれど、真っ黒な海と合わせて見るのなら地獄の風景にきっとよく似ていた、黒い砂の方がよっぽどいいに違いなかった】
【だから彼女は波打ち際で立ち止まってしまった相手に求めるのだろう。おろしてほしいって。――叶えてもらえない気がした。だけれど、それでも、黙りたくはなくて】
【おろしてほしかった。そうしたら膝枕をしてあげたくて。別にそれ以外でもよかった。二人で砂だらけになるんだろうけど、地べたで横になってもよかったから】
【気づいていて黙っていたんだった。もしかしたら一緒に寝てるのかもしれないって期待をしていたのかもしれなかった。いつだって起きたときに相手もちょうど起きたばかりだと】
【ありえない奇跡を信じていたかったのだと思わせた、――――そうじゃないんだって分かってしまったから、震える声、相手に休んでほしいって】

おねがいだから……アリアさん……。私に貴女を護らせて……。

【――――――――だけれどそれはきっと相手にとってひどく不安に違いなかった。なにせそれこそ、この場では、いつだってすぐに死ねてしまうもの】
【それになにより、――彼女は死のうと本気で思ってしまったならいつでも死ねるんだった。自分の呼吸も鼓動さえも阻害してしまえるに違いなかった。だから/だけど、】

【(そしてまた、きっと彼女も分かっていた。だって今まで本当に大事なものを護れたことは一度だってなかった。いつだって、大事なものはなくなってしまうから)】
【(だからきっと私はまた喪ってしまうんだって、――信じていた。疑えなかった。そうじゃなくなればいいって思っていた。だけど。そうじゃなくなるとしたなら)】
【(それはなにか奇跡の力、それこそ神様が助けてくれるんでもなければ、叶うはずないって――自分にはそんな力ないんだって、だって、私は、みんなを不幸にしてしまう)】

【(――――――だから、また、そうなるんだって、どうしようもない諦念を、けれど、限りない情念と愛情とが、かろうじて、繋ぎ止めて、だけど、ひどく頼りなくて)】


99 : シャッテン&レグルス&ラベンダー&アーディン ◆auPC5auEAk :2018/09/15(土) 12:51:34 ZCHlt7mo0
>>87

<いや……分かってる、分かってるんだよ……言いたい事、その中身、俺だって分かるんだ……けど、なんだかな……
 ――――ソニアの奴が、もういないって……そう思うと、なんかよ……冷えちまうんだ、頭の奥が……俺も、君の言う通りであれって、思いたいってのに……>
「……正しいと思う事を、するしかないだろう。今まで……「必ず勝つ」と言って、死んで帰ってきた奴も、勝ってきた奴も、俺は両方ともに見てきた……
 何が正解か、など……後になってみないと、分からないものなんだ……」
――――アルク……彼は、最後まで生きてたんだねぇ……最後まで、命を輝かせてた……
残したんだ……自分の命を、その爪痕を……この世界に、ね。残された、彼らはともかく……彼自身には、悪くない最後だったんだと、そう思うよ……

【――――この先の戦い、その約束。それを思うと、自然とアルクの事を想起させられる】
【レグルスも、夕月の言葉には、少なくとも心情的には与していたのだが――――どうしても、その死と、近い未来に待っているだろう、ソニアとの決別が、頭にちらついて】
【それが、自分の死とも結びついている気がして――――いつもの様に、アクティブなエネルギーで、己を満たし切る事が、出来なくなっていたのだ】
【結局――――彼らにとって、この戦いは、今までで一番重いものを背負わされた戦いだったという事なのだろう。その前に、己の在り様を、見失い始めていた】
【既に幾たびも、こうした事を乗り越えてきたのだろうアーディンは、そしてアルクの死を、静かに受け止めたシャッテンは、まだ良かったのかもしれない――――】

{――――――――ッ?
 ――――何を言っているんですか。今さら虫が良すぎます、そんなの――――ッ}
落ち着きなよ、ラベンダァイス……――――しかし、なんだか前にも聞いたような気がするねぇ……アルクの時にさ……
――――少しばかり、事情が変わり過ぎじゃないか、彼女…………一体どうなっているのやら、彼女の魂は……

【その言葉は、やはり感情に引っ張られていた。ラベンダーは虚ろなはずの瞳に怒りを込めて、夕月を真っ直ぐに見返す】
【それを、シャッテンは制しながらも、呆れた様な声を漏らしていた。知人と、夕月との間の「鈴音に対する情報の齟齬」は、つい先日も体験したばかりだ】
【アルクの時は、まだ長期のスパンだったから、分からなくはないとして――――ラベンダーと夕月の言葉の齟齬は、どうにも捨て置けないものを感じさせた】
【一体、彼女は自分の意志で生きているのかと、そこをシャッテンは訝しむ。『我』というものが、ひどく不安定なのか、それとも弱々しいのか――――】
【或いは、ウヌクアルハイと化して後、何か大きな出来事でもあったのだろうか――――これまで、その絡みと思われる事件で、大きなものは起きていないはずなのだが】

【――――かつて、人の魂の輝きを、何よりも尊重し、輝かない人間に生きる価値はないと、人知れず殺戮を繰り返してきたシャッテン】
【今は、もう無意味な殺生は控えているが、それでも、人を見るにその『輝き』を重要視する、その価値観は、変わった訳ではなかった】

{――――分かりました。夕月さん――――あなたとは、安心して一緒に戦えそうです――――イルに対する殺意を、余計なもので薄めたりしない――――
 必ず殺しましょう、あの悪魔を――――欲望の為だけで命を弄ぶ、あの悪魔どもを――――ッ!}

【そこは、ラベンダーにとっての妥協点だったのだろう。鈴音に気後れする事で、イルへの殺意を緩めたりしない。それを彼女は宣言した】
【より一歩を踏み込んでみても、彼女は「最後には鈴音もろともと言う選択肢も有り得る」と口にした。ならば自分たちは、目指すものが同じとなる】
【ようやく溜飲が下がったようで、昂っていた光が落ち着く。再びその瞳は、陰鬱な虚無に満ち始めて――――】

「――――さて、一通り、詰めるべきところは詰め切ったかな……?
 『シャーデンフロイデ』に関しては、今のところ心配はない……『エカチェリーナ』は……残念だが、討つ事を前提に考えるしかない……
 『ウヌクアルハイ』、そして『スナーク』も基本的には討伐対象だ……そして全てが、<harmony/group>と『ロールシャッハ』に帰結する、と……
 ――――そろそろ、一息入れてもいい頃合いだな……夕月、なんなら食事でもしていかないか? 今日は、俺の奢りで構わないぞ?」

【一度、アーディンが今までのやり取りを総括する。厳しいものはあったが、それでも自分たちは、少しづつ前進している。その事を確認できた事は大きい】
【そしてアーディンは、夕月に食事を勧める――――気分は重いかもしれないが、ここらで一息入れてもいいだろう、と】


101 : ロッソ ◆KP.vGoiAyM :2018/09/15(土) 19:44:41 Ty26k7V20
>>90-91 >>93


【203Q年。時空間は不可逆ではなくなったが、失ったものは取り戻せないと人は嘆く】

【203Q年。パラドクスは消失しすべての因果は繋がりあったのに、我々は孤独である】

【203Q年。勝利をものにした王ですら、何一つ満足しない乞食と何ら変わりはない】

【203Q年。未だ明日は誰にもわからない】


【それを物語るように、シヲリもあの婦警も、処刑人のような男も、ジャンキーズも『maybe』の中に居た】
【見知らぬ未来が怖いのか、見知った未来が恐ろしいのか。そう、我々がいるのは不確定な箱の中だ】
【本当に未来があるのなら誰も命がけで何かをしようなんて思うだろうか。所詮、タイムマシンがあったとて】
【我々からすれば、人である以上は……0,1の間で揺れ動くしか無い】

【時間や、因果が不可逆でないなら我々は何に怯えるのだろう。例えば、運命ではないだろうか】

【精々、猫のしっぽを踏まないようにしてほしい。】

【私は、そう思う】

【とある明日から、どこかの今日に向けて。愛を込めて――――――】


102 : ロッソ ◆KP.vGoiAyM :2018/09/15(土) 19:44:57 Ty26k7V20
>90-91 >>93


【イーストウッドの映画そのままの店内。閑散として照明が落ちている。CLOSEDの看板が風で揺れて打ち付けられる】
【テーブルの上に上げたままのチェア。見慣れた光景だった。今のこのクソッタレな状況のときも、その昔の頃も】

【探偵はカウンターの端の席についた。深く腰掛けて、ウィスキーグラスを傾ける。通ったところは全部オレの血で汚れている】

【鈴音にバレる前に掃除しないとな。ギアにも手伝ってもらおう。探偵の血は店を汚し続けていた。】

【この端の席はお気に入りだ。何故なら、レコードプレーヤーが近いから。いつもここで自分が持ってきたレコードをかけていた】
【手を伸ばして今何を置いていたか探す―――暗くてよく視えないな。今日ばかりはDAMNEDは遠慮したい気分だ】
【探偵はレコードをセットし、針を落とす。】

【プツプツと切れるノイズが好きだ。アナログな針の振動、決して音質は良いわけじゃないがそのほうがリアルだ。】
【オルガンの1音目が響く。スロウなテンポでローファイなコーラスが聴こえる】

<<Happy birthday,  

    happy birthday, baby Oh,
 
 I love you so Sixteen candles ―――>>


【歌詞はあまりちゃんと聴いたことはないし、聴き取れもしないけど。ハッピーバースディなんて素敵だと思う】
【こんなクソみたいな世界でもこれだけの人が居るんだから(人でなくとも)今日は誕生日なはずだ】
【それはとても良いことなんじゃないかな。どっかの誰かさん。おめでとう】

【探偵は煙草を吸いながら、ゆっくりと待った。焦っても仕方ない。時間がないときほど無駄なことはできないのだから】
【冷静に行動し無くてはならない。そう、冷静に。これは誰の受け売りだったっけな――――――】


ttps://www.youtube.com/watch?v=yoOuTSBAWWA


【灰皿に置いた吸い止しの煙草。いつまでも煙が探偵の指の中で揺蕩っていた。】


【そう、いつまでも。】




【探偵と繋がりのある人々の携帯電話が一斉に同じメールを受信する】


103 : ロッソ ◆KP.vGoiAyM :2018/09/15(土) 19:45:17 Ty26k7V20

>>90-91 >>93

【吸いさしのタバコがすべて灰になる前に、UTの事務所の前に跳ね馬のエンブレムが輝く】
【真っ赤なボディの最新式のスポーツカーが唸りを上げてやってきた。エンジンの音が消えるとうってかわって】

【様子をうかがうように、最小限の音だけたてながらゆっくりとCLOSEDの看板のかかったドアを開けた】

……ヒライさん?

【薄暗い店内で女は探偵を昔仕事を共にしていた時の名で呼んだ。】

【探偵に呼ばれてきたのは長い黒髪の切れ長の目をした銀縁眼鏡をかけた女性で、スーツを着ていた】
【腰に刀を携えており、名は霧崎舞衣という。D.R.U.G.S傘下の『富嶽会』というマフィア組織の会長であった】
【女は探偵より5つか6つぐらい年下だ。先代のもと、探偵は昔その組織で『ブギーマン』として働いていた】

【マフィアの会長という肩書は伊達じゃない。しかし、彼女は少なくない恐怖とともに緊張していた】
【それは肩書が伊達じゃないからこそ、良くないことが起きている。そんなことが直感でわかってしまったからだ】

……ヒライさん。居るんでしょ?

【もう一度、彼女は呼んだ。目がなれてきて薄暗がりの中で人影を見つけた。明かりのスイッチを探す】

【パチリとそれをつけたとき。彼女は声も出なかった。絞り出すように】


――――――――まさか…そんな。


【そんなことしか言えなかった。それはその今ある光景だけでなく全て―――過去から未来を全てに対する言葉だった】


【椅子に深くもたれて、目を閉じた探偵の姿が其処には有った。手は未だウィスキーグラスにある】

【レコードはアルバムの何曲目かを流し終えていた。あの赤い目は、見通す目は閉じられていた】
【まるで酔いつぶれた、もしかしたらこれも見慣れた光景かもしれない。閉店になっても起きなくて困らせるのも】

【ただ今は、血まみれのままで。何度声をかけても体をゆすっても目をさますことはなかった。】

【すべてを見通したその目は、皮肉なことに自分のことだけは視えなかった。気づかないなんて探偵失格だな。】


【数分前に探偵からのメールを彼女も受信していた。しかし、先に彼と合流することを優先していたため確認していなかった】

【カウンターの上に、つけっぱなしの探偵の携帯電話が転がっている。今どき電話とメールしかできないようなやつだ】
【送信されたメールの文面がそのままになっていた――――】


104 : ロッソ ◆KP.vGoiAyM :2018/09/15(土) 19:46:03 Ty26k7V20
>>90-91 >>93 & >>ALL


From::Cinzano di "rosso"

To:: all my Friends

Subject: : nontitle

Text::





Cinzano di "rosso" died .


--------------END--------------


105 : ロッソ ◆KP.vGoiAyM :2018/09/15(土) 19:46:54 Ty26k7V20
>>90-91 >>93 >>94

//とりあえずここまででお返しですです!!


106 : エーリカ ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/16(日) 13:08:27 WJDxYPVE0
>>84

【かの地、スルツェイに虚神達が集結する光景を想像する。……間違いなく修羅場であろう】
【死の虚神、病の虚神、恐怖の虚神、絶頂の虚神……それらが一同に集まるだけでなく】
【それぞれの思惑が交差するのだから。虚神達の思惑に踊らされる事は避けられない】
【その果てに笑う思惑は、どの虚神のものだろうか。少なくとも死の虚神の思惑が最期に残るのは絶対に避けねばならない】


「厄介な話だね。虚神達が同窓会でも開こうってのかい。……ただ、私たちは奴等の思惑に踊らされるだけでは居られない」
「奴等に教授してやろうじゃないか。人間を甘く見てると痛い目を見るってさ。その命を以て教えてやる」

「私たちはこれ以上奴等虚神に奪われるわけにはいかない。踏みにじられるままじゃ居られないから」
「それはアンタも同じだろ?ミツキカエデを奪われたら半狂乱じゃ済まないだろうし」


「だから……必ず勝とう。」
そうだよ、人間の意地と底力をたっぷり教えてやろーよ。


【硝子細工の瞳に重なる色は、緑翠と赤銅】
【重なる瞳に、重なる思い。立場も主義主張も異なれど、今だけは見据える場所は同じだったから】

「……了解した。その日にスルツェイでまた会おう。お互い生き延びたなら、……もう少し歩み寄って話をしたい」
気を付けて帰るんだよ、アリアのおねーさん。いくら機械の身体でも身形は可愛い子供なんだからさ。


【立ち去ろうとするアリアに各々言葉をかけて、娘の場はお開きとなるのだろう】
【今は、今だけは仲間だから。……いや、それだけじゃないのだろう。エーリカにとってはある種の共感があったのかもしれない】

//ここら辺で〆…でしょうか?


107 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/09/16(日) 13:20:27 hvE.Nv4Q0
>>83

【イスラフィールは此処に於いて、目の前の少女の心境を把握した様に思えた────】
【瞑目する、長い睫毛の輪郭に少しばかりの憂いを帯びて、そうして次に開いた瞬間】
【曖昧に微笑んでいた、何処までも積み重なった、幾重もの思いを溶かして】


──── せめて最期の時までは、笑っていられますように、と


【返す言葉の一音節、それは振り絞る様な言葉で、逡巡の果てに零れた一滴の願いに似ていた】
【或いは鉱物から作り出す、自然の生み出した深き蒼、その一色の為だけに数多の時間を費やし】
【そうして漸く描ける、そんな──── そんな色合いに近かった】


ええ、その為には "大義名分" が必要ですわ、そして "機会" もまた、重要になりますわ
今現在国民が持つ、能力者への悪感情が和らいだ瞬間、その期を狙って旗揚げをします
そしてただのお飾りにならない様に、積極的に正義を貫ける感情の整備

──── そして何よりも人員、私の伝手を使えば装備や施設、或いはスタッフ等は整備できます

けれども、先陣に立ち、人々を守る使命、──── それを果たす人材を、私は捜しております
ラベンダー様、今一度、私は貴女様の力をお借りしたいのです、私達の正義を、貫くために


108 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/16(日) 18:03:42 PhZHcBAM0
>>106


「 ……… そうね。」「せいぜい悪い狼の牙にかからぬようにするわ。」
「また会いましょう、ふたりとも。 ──── 次は、"生身の体"で会うのですから。」

【どこか楽しげな笑いの呼吸と、机上へ一枚の名刺を置き去りにして、 ──── 人形は夜の闇へと消えていった。】
【PMC(民間軍事会社)への帰属を示す白黒のネームカード。公的な所在地も公的な電話番号もなく、ただ隊員個人の連絡先が示されるのみのそれ。】
【然して確かにそれは彼女へと繋がるのだろう。 ──── 9月の半ばを過ぎるまでは、それも不確実なものであるのだろうけど】

【 ─── そうして決戦の日、彼女たちは再会した。五柱にも及んだ虚ろの神々と人類の決戦は、玉虫色の遺恨を残す決着となった】
【あの場にて意図の知れぬ啖呵を切ったアリアは、今どこにいて、なにをしているのか。きっと彼女らには、それを知る権利が与えられていた。であれば、いずれ】


/長期間ありがとうございました&おつかれさまでした!!


109 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/16(日) 18:21:46 WMHqDivw0
>>99

んん、…………あたしもわかってる、ん、だけど。……あたしの場合が「たまたま上手く行った」だけなんだよね。
だからソニアさんのことだってどうにかなるんじゃないか、なんて、思っちゃって……軽率だった、ごめんなさい。
……せめて、ちょっとでもいい方向に行けるように。あたしこれからも力を貸すよ、……だって約束したもんね。

【「いつでも呼んでよ。微力――にすらなれないかもしれないけど」。かつての日、アルクとシャッテンにかけた言葉を】
【もう一度確かに贈る。自分が虚神にならなかったのは、単なる偶然か奇跡でしかなかったんだって。わかっているから】
【だからこそ――それを無駄にしたくない。無駄にしたらアルクに顔向けできない。だから、約束は絶対に果たしたいと】
【そう言って、ちょっとだけ笑うんだった。困り眉の、悲しげな、だけれども笑顔。……誰一人とて損ねないように、頑張るって】

う、ん…………正直それはあたしもそう思うけど。だって現にラベンダーちゃんの話聞いて、
そんなことあり得ないって思ったもん。……、……鈴音、嬉しくて、舞い上がってたんじゃないかなあ。
だって生まれてから今までずっと、自分が何者であるかわからなかったんでしょ、それをようやく知れて。
浮かれて気が大きくなってたんじゃないかな、……それにしたって、言っていいことと悪いことは、あるけどさ。

【呆れるシャッテンには、苦々しくも同意を返す。それで、そうなった原因を、なんとなくで想像して】
【ようやく自分が何者であるかを理解できたときの喜びで、迂闊にもそんなこと言ったんじゃないかと、言うけれど】
【その発言が赦されるようなことではないとも思うし、ラベンダーを傷つけたという事実も否定しない。……本当に苦々しい顔】

…………うん。あいつだけは絶対赦さない。謝ったって赦さない、鈴音のこと、あんなにバカにして。
それでも愛してるとか抜かしてんの、ふざけんなって思う。だから――抜け駆けナシね。一緒に殺そう。

【そして――女の子同士でするにはあまりにも物騒な約束事をするんだった。少女もまた、ラベンダーの感情を受け取った】
【イルに対する消し得ぬ殺意。であるなら、――「独り占め」するなんてことはできないと思った。それほどに許し難いことを】
【いろんな人に対してしているんだと、改めて思った。イル。……思い出すだけで怒りが込み上げてくるのを、】
【握った拳に当たる指輪の感覚でどうにか鎮めつつ。ひとつだけ頷いたら――力を抜くようにふ、と息を吐いて】

………………ん! 丁度おなか空いたなって思ってたころだった。折角だし御馳走になろうかな、
……あ、そうだ。よければなんだけどさ、厨房、覗いててもいい? ……や、レシピ盗もうとかそんなつもりじゃないんだけど。
あたし攫われてた間本当になんにも出来てなかったから――また料理ヘタになっちゃったと思うんだよネ。
だから、その感覚取り戻したくって。……できればちょっと手伝わせてくんない? このままだと、たんぽぽ、戻れないし――

【そうして。アーディンが勧めてくれるなら、本当に気の抜けたように笑って、……そんなことを言う。視線はシャッテンに】
【「あの日の惨状覚えてる?」って訊くような視線だった。ひとりきりでドタバタやってた「たんぽぽ」の光景】
【彼が思い出したなら、苦笑のひとつでもしてくれるだろうか。あれから全然進歩してないってんなら、それこそ】
【アルクとの約束、破りっぱなしということになっちゃうから。……ちょっとだけ手伝わせて、なんて、言うんだった】


110 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/16(日) 20:26:57 hEXW.LLA0
>>97>>98


【何時からか恐れなくなっている自分がいることに気がついた。視覚素子の奥に映し出される世界は、あらゆる色と輪郭がホログラムの白昼夢に似て截然とせずに】
【然して手を伸ばした先から消えていってしまいそうな現実感のない現実の中で、薄藤色の幼気な笑顔だけが本物だった。本物だと思えた。本物の生きる縁だと信じた】
【 ─── ならば、ただ今は、それを失いたくないと思った。ずっと貴女がそばにいてくれたのなら、それで漸く私は命を授かるのだと、決意した。泣いてほしくない。そうするより他に女は遣り口を知らなかったから】


        「 ───── うん」


【ふ、 ─── 魂の抜けるように女は笑って、少女になにかの肯定を返した。そっと湿った砂地へと膝折るならば、膝先の柔らかい固さが2人分の体重を惑星に伝えるから】
【アリアは考えることをやめてしまいたいのかもしれなかった。だから少女にも考えることをやめてほしかった。世界の危機も怖い神様も不埒な背徳も死を望む憂鬱も皆んな皆んな忘れてほしかった】
【それでいて膝枕はしたがらないに違いないのだ。 ──── 眠っていないのは事実だった。だが眠るなら少女と一緒に眠りたかった。膝の上で後ろから抱き締めて】
【母の膝上で映画の上映を待つ少女に似ていた。より本質的に述べるならば、後生大事にテディベアから離れられない少女にも似ていた。囁く言葉は、誓いに似る。】



      「 ………… 。」「私たち、きっと」「ふたりでひとり、だから」
        「ね、 ─── お願い。かえで。」「ずっとずうっと、そばにいて。」
          「そうしたらきっと、私も、貴女も、なにも失うことなんて、ないから ──── 。」



【そうして2人だけの夜明けが来る。音もなく迫り上がる暁光が水平線の彼方から惜しげなく、目醒めの煌めきを昏碧の海原に振り撒いて有るべき色を取り戻していく。】
【世界中に降り積もった黒く蒼い夜を融かしていく。 ─── 波の音だけが変わらずに在った。ならば命とは眼の中のみに灯しておける筈もなかった。互いの手を握り締める掌が、繋ぐべきものを繋いでいく。】



【そのようにして幾つかの太陽が沈んで、幾つかの月が昇った。 ─── 哀れな/幸せなふたりが居なくても、きっと世界は回り続けるのだろう。だからこそ】



【決戦の後。喪ってしまった右腕を"補修"するため、アリアは八課へと後送された。水国某所、民間軍事会社を名乗る小さなビル。存在しない、その八階】
【生体素材の代替パーツは骨格ごと半日足らずで精製され結合された。 ─── ならば八課の個人休憩室、ベッドとコンピュータと捜査資料、ドリンクサーバーばかりの有る一室にて、少女が待つことも許された。】
【 ─── それでも少女が眠ってしまうのであれば、きっと次に目覚めた時、その隣にアリアは添い憩う。例えそれが数夜に及ぶとしても、女はそれ以上に深く、眠っている。】


        「 ────…………… 。」


【一糸纏わぬ白く柔らかな身体であった。縋るように少女を四肢で抱きしめていた。時折に膨らんでは凋む胸元と、ごく穏やかで落ち着いた寝息が、生きていることを否応なく伝えていた。】
【その静かな呼吸の甘さすら少女に吸わせるのだろうか。 ─── 銀髪の無造作に広がったシーツの上、ひどく、あどけない寝顔をしていた。あれだけの強さと冷たさを横顔に宿せる人間が、ただ今は、安らかな死顔のように。それでも彼女は生きていたから】


111 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/16(日) 21:00:50 smh2z7gk0
【水の国・フルーソ駅近郊】

【周囲はメガフロートがひしめき合う工業地帯。住宅の数はかなり少ない場所である。そこにあるのは】
【フルーソ中央駅から各都市、各国へと延びる線路の中の一つであり〝氷の国〟へと向かうものだ】
【最近では軍用の特殊列車も運行するようになり、線路の数も増やす予定であるだとか噂もされている。】
【―――だが、今まさにその軍用列車が黒煙を上げて停車している。そしてけたたましい銃声が鳴り響く】
【見れば四つ足の自律兵器数体が列車と線路に向けて機銃による攻撃をしかけているのが見える。】
【軍用列車に乗っていた兵たちも必死に応戦はしているが、武装の数が足らず苦戦を強いられている。】
【そして、列車の前方にある鉄塔からその光景を眺めている人物が一人。】

―――クハハッ、脆いもんやなぁ。それでも世界でも指折りの軍事力を持つ国の兵隊かいな。
それとも水の国の上層部と結託して余裕ぶっこいてるんか?何を企んどるのか知らんけど

これから来る〝激動〟に飲み込まれないようにせいぜい足掻くんやなぁ………クハハハハッ!

【ショッキングピンクの派手な髪を後ろで結んで垂らし、赤いチューブトップの上に黒のレザージャケット】
【下は肌にピッタリと張り付くような黒のレザーパンツを履いた、糸目の女性】
【背には黒く染め上げたチェーンソーと大剣を合体させたような禍々しい機械剣が背負われている。】

【鉄塔の柵にもたれて愉快そうに呟く口ぶりからして、この女性が列車攻撃の首謀者のようであった】
【―――そして、攻撃を続ける自律兵器には一様にして〝逆六芒星〟のエンブレムすなわち〝カノッサ〟の証が刻まれている】

【このまま戦闘が長引けば周囲の工場や少ないながらも存在する民家にも被害が広がる可能性があるが………】

//今日、明日は割とテンポよく返信できます


112 : ラベンダァイス ◆auPC5auEAk :2018/09/16(日) 21:11:08 ZCHlt7mo0
>>107

――――ッ――――ありがとうございます

【最後に選び出したのだろう、イスラフィールの言葉に、ラベンダーは一瞬言葉に詰まり、そして微かな微笑みと共に、感謝の言葉を口にした】
【――――これくらいの距離感が、自分には心地よかったのかもしれない。表には出さずとも――――意外なほどに、嬉しかったのだ】
【どこかクールで、ドライな言葉なのかもしれない。イスラフィール自身、葛藤の末に選んだ言葉の様に思う】
【だが、その言葉のバランスは、ラベンダー自身にも驚きや戸惑いを想起させるほどに、心地よく、そして嬉しかったのである】

――――チャンス――――もしかして――――?

【大きな事を起こすには、天の時――――つまり、タイミングが重要だというのは、言うまでも無い話で】
【イスラフィールはどうやら、明確に時を見据えて待っている様だった。能力者への悪感情が和らぐ、その瞬間――――】
【そんなタイミングは、いくらも存在しない。国全体に影響を及ぼす、機、満ちるタイミング――――何かが、あるのだろう】

――――分かりました、任せてください。その為の力なら、私が果たします――――!

――――――――――――――――元、『Justice』準メンバー、現『UNITED TRIGGER』正規メンバー、ケツァル・コアトル=ラベンダァイス=カエデ=キャニドップ
新生『Justice』に協力し、『黒幕』との戦いに助力し、無辜の民衆を守る事を、誓います――――――――!

【――――その場に片膝をついて跪き、頭を垂れてイスラフィールに対して、誓いの言葉を奏上する】
【仰々しいと言えるかもしれないが、パフォーマンスじみた事であっても、それが心を支えてくれるものなのだ】
【これで自分たちは、新生『Justice』への第一歩を踏み出した。そう、互いに強く認識させ、そして踏み出していく】
【――――この誓いの動作は、その為の『元手』に他ならないのである】

では――――イスラフィールさん。これが、私の連絡先です
必要な時には、いつでも呼んでください――――私は常に、臨戦態勢の気構えでいます――――!

【やがて立ち上がると、ラベンダーはW-PHONEの連絡先をイスラフィールに伝える】
【これからは必要に応じて、互いの連携も密にしていかなければならないだろう――――】


113 : 名無しさん :2018/09/16(日) 21:12:38 PZ0bLniI0
>>110

【――――世界中に色を与えていく朝日の暖かさに、きっと少女の色素の薄い瞳は眩むのだろう。それでも、その景色から目を離したくない】
【あんまりに鮮やかな朝日の色が反対色で瞼の裏の世界にこびりつく、そうしたら死んでしまったときにだってこの光景と一緒に在れる気がした、そう願いたかった】
【指先一つで世界の色を反転させられるデジタルの世界に生きてやいないけれど。――フィルムカメラに映した大事な思い出、ネガを光に翳して見るみたいに、思い出したいのなら】

――――――――――、

【絡め合う指先がきっとレコード盤の溝みたいに全部を記憶してくれるって信じていた。そ、と、伸ばした指先が、朝日を待つ間に退屈がって掻いた砂浜の、爪痕さえも】
【そのうちにそれさえ飽きてしまって埋めた足指の爪先に潜り込んだ小さな貝殻のひとかけらも。だから何度だって絡めてほしかった、これからだって、いくつも刻むから】
【一緒に居られないなんて思いたくなかった。それでも信じられなかった。世界も神様も人間も自分も何もかも何もかも、――だから、貴女だけ本物だって、信じていたくて】

【――ゆえに。少女は微睡む幼子みたいに、笑うんだろう。返事はなかった、けれどきっと彼女だって全く同じ未来を、望むなら】


【――――――――――そうして、いつかの日。戦いの後に気を失った少女は、――けれどどうあれ、アリアよりも先に目を開くのだろう】
【おそらくはその前に一度誰かにたたき起こされて、――ひどく支離滅裂な返答のあとに寝こけていた。どんな風に調べても"寝てるだけ"という結論しか出てこないなら】
【適当な場所に放っておいてもおそらく何にも問題がなかった。そうして事実そうされていたんだろうしそうされて然りだった、――だから、だから、】

――――……、

【おそらくは数十分ほど前から少女は微動だにしていなかった、ただ数度のおっきな欠伸、二度寝を敢行しようとして目を閉じても、数分で目を開けてしまうのは】
【ぎゅうっと抱きしめられた格好が再び寝入るには少し好みではないって言い訳して。それを正すために眠りを妨げてしまったら意味がないって言い訳して】
【きっと見惚れていた、世界で一番恰好よくて美しい人が見せる、とびきりに可愛らしい寝顔の柔らかさと甘さに。――かわいいって知っていた、分かってた、それだのに】
【身じろぎさえも躊躇うほどに愛おしく思えて、ただ起こしてしまいたくなくて、呼吸さえ、鼓動さえ、止めてしまいたいと思えば思うほど、どきどきとうるさくなってしまう】

――、

【――だけれど。それ以外にも、思うことはあって。やっと眠ってくれた、とか。これからのこと、とか。キスしたら起きてしまうかな、とか。いいにおいがする、とか】
【お部屋は寒くないだろうか、とか。そういえばここはどこであるのか、とか。起きたときにお腹を空かせているのかな、とか。――だから、】

【――――だから、きっと、少女はするりとその腕から抜け出すのだろう。その甘い幼い睡眠を邪魔してしまわぬように、――ほんの一瞬だけ、紅紫を煌めかせて】
【何か掛けるものでもあればかけてやるのだろう。なければ空調を整えていくのだろう。そうして一度部屋を出ようとするのだろう、目指す先は特にないのだけれども、】
【そもそも現在地を彼女は把握していないなら。――それでも当たり前の顔して歩けるのは拾って来た日にすでに馴染む野良猫みたい、強いて言うのなら、調理場はどこかしら、なんて】

【――この場所がどこだかは分からずとも、安全な場所だとは理解していた。そうしてまた予想もついていた。出会うとしたら"どちらか"だと推測して、いたから】
【(もしも"彼"だったなら、あの人の朝ごはんは私が作ってあげるからほっといてほしいって、そうやって、言うつもりで)】


114 : シャッテン&レグルス&ラベンダー&アーディン ◆auPC5auEAk :2018/09/16(日) 22:35:40 ZCHlt7mo0
>>109

「――――そうだな。だからこそ……各々が、一番だと思う方法で挑むしかない……所詮答えは、未来にしかないんだからな……」
<いや……謝る事じゃねぇんだよ、本当に……けど――――なんだかな、人間の心って奴は、難しいよな……ここ最近、色々とあって……思い知ったぜ……>
――――お互い様だよ、夕月……それも、約束の内さぁ……

【無理をしているのだろう、夕月の笑み。だがそれは、その場の一堂に浸潤していった――――無理にでも、笑えているだけマシなのだろう】
【虚神との戦いには辛い事が多い――――余談に過ぎないが、正にこの後、アーディンとレグルスはそれを痛感させられる事にもなり】
【その中で、夕月の存在は、いわば彼らに対する勝利の希望、その象徴のようなものだった。人は、虚神の思いのままにはならない――――】
【だからこそ、彼らは前を向く。その先に、ヒトの未来があると信じて――――】

{――――言われてみれば、そうとも言っていましたね――――「私、カミサマ『だった』んだ」って――――
 自分が、普通じゃないって事は、既に知っている風でしたから、あの時改めて確信したって言うのは――――正直、気づきませんでした――――}
「――――無残に、2度も殺された女か……まぁ、それを想えば無理もない、そう言ってやることも出来る……」
{でも――――でも、それでも――――イルの奴に、倒錯するなんて言うのは、私には――――}
だから落ち着きなって、ラベンダァイス。その先は、水掛け論にしかならないんじゃないかい……?
――――まぁ、無理もない事情があるのは、分かったって事で……でも、事態とそれとはまた、別に考えなきゃならないんだろうねぇ……

【夕月の言葉で、ラベンダーも思い出した――――あの発言は、自分を再確認しているものとばかり思っていたが、本当は鈴音自身、あの時に初めて知ったのかもしれない】
【アーディンもまた、思い返す――――アナンタシェーシャとの戦いにおいて、かつての鈴音の死を、追体験させられた精神攻撃の事を】
【――――頭に血が上って、正常な判断を失っていたのは、自分たちも同じなのかもしれない――――とは言え、シャッテンが言うように、現状は厳然とそこにあるのも事実】
【まずは、ともあれ虚神の被害を抑え、彼らを倒していく事を、第一義に考えなければ、ならないのだろう】

{――――望むところです。共に殺しましょう――――やっと、私は『父の仇』を、討てるんです――――ッ!
 でも、夕月さん。まずはメンタルを十分にケアしてくださいね――――戦場では、恐怖はそのまま、死毒と化すものですから――――}

【――――奴を蹂躙し、破滅に導きたいのは、自分1人ではない――――ラベンダーは、ハッキリと頷いた】
【志を同じくする仲間たちと共に、八つ裂きにして、千々に粉砕する――――それでこそ、かの悪魔に対して、最大の報いと為す事ができるのだろう】
【ならば――――夕月に、共に戦場に立てるように、今を尽力してくれと、そう激励する――――物騒な繋がりだが、自分たちは仲間で、決して1人ではないのだと】

「……よし、なら、なんでも好きなものを言うと良い……一応、ダイニングを兼ねているからな、まともな料理も出せて…………ん?」
――――…………うん
「――――なるほど。分かった……俺から厨房の方に話を通そう。まずはカンを取り戻すところからだな……」
<……オヤジ、俺たちも……?>
「無論だ……好きに食っていけ……出陣前の盃……は、ちょっと違うが、まぁ良いだろう……?」

【ようやく、肩の力を抜いた笑顔を見せてくれた夕月に、アーディンは頷き、厨房の許可も取ってくれた】
【アーディン自身は知らないが、シャッテンの様子を見るに――――まぁ、今回の会合には、ある意味で似つかわしくない、微笑ましい事情があったのだろう】
【そんな、個人としての生き方を垣間見るのも、悪くはない。ラベンダーはともかく――――自分たちは、ただの戦闘狂ではないのだから――――】

【――――アーディンの口利きとあって、厨房も夕月を迎えて、それぞれの注文を用意してくれるはずだ】
【そうして、思い思いの食事を取る頃には――――恐らく、新たに、5人の間には連帯感が生まれているはずで。それが人の営みたる所以と言うべきなのかもしれない】

/これで乙、ですかね?


115 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/16(日) 22:41:31 hEXW.LLA0
>>113


【外務八課という組織は寄り添う少女を拒絶しなかった。 ──── であれば、その構成員であり、武力的実働を担うアリアもまた同じだった。】
【腕中の少女が目覚めたことにも女は気付かなかった。それ程に深くまで寝入っているようだった。疲れているというより、成る可く目覚めたくないに違いなかった】
【ならば少女が抱擁から這い出るなら、意味の成さない寝言を口の中で呟くのだ。 ─── それでもやはり無意識から立ち戻る事はなく、然して不意にふと、微笑みを零す。】

【ふたりが眠っていたのは清潔な白いシーツのベッドだった。午前10時。空調は24度ほど。幾らか素肌では寒いように思わせるかもしれない。羽織る物はなかった、としても】
【室内用のスリッパが用意されていた。ビジネスホテルのような一室だった。個室でこそあったが生活感はない。然してそれは寧ろ清潔性として、激務の疲労を癒す機能を持つ】
【部屋を出ていくならば矢張りホテルの回廊に似ていた。小綺麗ではあったが殺風景だった。天井に埋め込まれた暖色の室内灯が、必要十分な安らぎだけを感じさせる。】

【 ─── 少女の右手、突き当たりの曲がり角より、人影がひとつ。男であった。壮年であった。草臥れたスーツを着ていた。少女より幾らか高い背丈の男だった】
【微かに煙草と疲労のにおいがした。スーツの小皺と同じ程度に表情も草臥れていた。焦茶色の瞳が少女を捉えて、 ─── 微かに両目を見開いた後、気の抜けた笑い。】


「 ──── や。」「これは、これは。」
「こいつぁどうも、こんにちは。蜜姫かえで君。」
「一応はここの纏め役をやらせてもらってる、後藤って者だ。 ─── よろしくね。」


【ひらひらと手を振りながら彼は歩み寄って、およそ敵意なく挨拶をした。幾らか背筋が曲がっていて、ならば視線は少女へとより近付く。】
【それでいて握手まで遣るような無神経さはなかった。だとしても人心にずけずけと踏み入って、しかも無法さを忘れさせてしまう、 ─── そんな嫌な人種だと、思うだろうか】


「アリアが随分と世話になったねえ。」「今回の件なんか、ウチの課員を差し置いて大金星を挙げてくれた訳だし」
「我々も、きみの能力は高く評価しているつもりだ。 ─── 立ち話で何だけど、お礼を言わせて貰うよ。 ……… ありがとう。」

「給湯室は、真っ直ぐ行って曲がった所。」「大したものは揃ってないけど、朝ご飯を作るのに苦労もしないよ。」
「ああ見えてアリアは甘党でね。 ──── 酒のアテにもするくらいさ。こと夜勤明けや義体のオーバーホール後には、パンケーキなんか作って食べてる。」
「5枚くらい重ねて載せて、ハチミツと生クリームを山ほど掛けるんだ。淹れたてのロシアンティーに少しウォッカを混ぜた奴なんか合わせたら、さぞ喜ぶだろうねぇ ─── 。」


【いずれにせよ男は一礼する。碌な返事がないとしても、そうする。その上で道案内でもするように、扉の並んだ廊下を共に歩いていく。少女と同じ歩調で】
【微かに嗄れた壮年の声が、気の抜けた世間話の語調で語るのは、上司としての知悉であった。それなりに付き合いはあるようだった。ならば】
【彼の言葉からは少女の未だ知らぬアリアの一面を引き出せるかもしれなかった。 ─── ともあれ彼もまた給湯室に入る。理由を問われるなら、コーヒーを淹れたいらしい。】


116 : 名無しさん :2018/09/16(日) 23:37:44 PZ0bLniI0
>>115

【こざっぱりした室内はいたくシンプルで、そうしてきっと他人の室内を無遠慮に漁る趣味はなかった、――ということにしておく、】
【あんまりばさばさやって埃や物音できっと安らかだって信じたい眠りを邪魔したくはなかったから。――だなんて、きっと、聞いたって答えないけれど】
【ゆえに身支度もろくに整えないで彼女は部屋を出る、特に意味のなかった変装の恰好は、誰ぞに叩き起こされた時点で全部外してしまっていた、生まれついての色合いに戻して】

【――ぴゃんと跳ね上がってみょんみょん揺れる寝ぐせを指先で扱くみたいに弄んでいた、どうせシャワーでも浴びたら直るって、分かっていたから】
【だからやがて誰かに行合うのなら、――ぱちりと瞬き。それからかすかに笑うんだろう、人当たりがいいとも人懐こいとも少しだけ違う色合い、それでも敵意はなく】

前に聞いたから覚えてますよ。おはようございます。やっぱり警察って嘘ですね、知ってましたけど――。
それとも最近の警察って、こういう感じなんですかね? 私はちょっとお世話になったことがないので、よく分からないんですけど。

【それでいて、たとえ求められたとしても握手には応じなかっただろう温度感がある。抱きしめられて二人眠って分け合った体温と香りとを、他人にくれてやりたくないみたいに】
【前に一度会ったことがある顔であるのなら、少女はやはり動じない。いつかの言葉に仕返しするように。――世話になったことがないのは当然だった、だって、ここにいるなら】
【世間にばらまかれた嘘の話こそが真実であるべき人物だった、――――しかして彼女はそれをまだきっと知らないなら、何と言えるはずもなく】

――――……、そうですね、私も、アリアさんには"お世話に"なったので……。……まだ何にも言ってないですよ。別に、いいですけど……。
それにアリアさんが言うからついていっただけです。アリアさんも"誰か"に言われたみたいな顔してましたけど。

……起き抜けにそんなもの出されたら、私は、嫌がらせかと思いますけど――、午後二時半で辛うじて、です。それ以前もそれ以降もちょっと――、
…………――――――――――、電動の泡だて器あります?

【――であればきっと小さく吐息をする。特別に嫌ではないけれど、焦げ茶色のまなざしに、ロックオンされたような気がして。起き抜けの散歩のような顔をしていたのに】
【それでも目的は実際のところ"そう"であったから、――見透かされた仕返しめいて紡ぐ言葉は、どこか可愛げのない色合い。あるいは前に二人きりにされたのを根に持っている】
【そのくせにいくらか聞き入れる気であるらしいのが印象的なんだろうか。もし完全に手動でやれって言われたとしても、――たぶん出来上がるものは変わらないんだろうから】

【――――よっぽど、彼女のこと、好きなんだと思わせて。だってきっと嬉しそうな顔をしていた、まっしろなほっぺたがわずかに上機嫌そうに見えて】
【そのくせに口元は面白い事なんて何にもないって言うように口角を下げているんだった。だけれどマゼンタの瞳はどうしようもなく好きな人を思い浮かべているのに違いなくて】
【だからありふれた少女みたいに好きな人に喜んでもらいたいのに違いなかった。おいしいって言ってもらえたら嬉しいのに違いなかった、なら、】

――――――アリアさん、まだ、寝てたいですかね。どうしようかな……。

【――――――――結局、給湯室まで一緒に来てしまって。だのに彼女は急にそこで躊躇うんだろう、それは別に相手へ尋ねているわけではない、独り言によく似て】
【出来上がったからって無理やり起こすのは気が引けたし、なるべくしたくなかった。好きなだけ眠っていてほしかった、だけど、やり始めたらそんなに時間はかからないから】
【クリームだけ先に立ててしまおうか。生地だけ先に作っておこうか。――どっちにしろ大した時間はかからないのに気づいて、だから、手持無沙汰そうに、ためいき】


117 : タマキ ◆KP.vGoiAyM :2018/09/17(月) 09:02:41 Ty26k7V20
>>76

そりゃあね。貴女ほど立派じゃないけど、同業者みたいなものだから。
クライアントは”水の国”――ま、嘘はついちゃいないでしょ?

【国家を超えて―むしろ国外を専門にするCIAがコニーの立場なら、タマキはFBIだ】
【あくまで国内の事件の捜査にとどまる。だが管轄は外務省。一度状況が変わればCIAに様変わりだ】

【領土的に水の国でも行政的には星の国であるこの場所の捜査というのは正直グレーゾーンではある】
【こんな場所でも「犬」が嗅ぎ回っていると各所にしれたら面倒なことには成りかねない】
【一番困るのは自分だ。何故なら、お上は知らぬ存ぜぬで存在ごと消してしまうから――――】

ここは国籍なんてあってないようなもんだから。これだけテクノロジーは発展しているのに人はみな不幸そうだ。

マーキュリーズは一切が不明なんだ。だから、どれぐらいの危険性を持っているかもわからない。もしかすると一番危険かもしれない。
他の奴らは――犯罪者の”人形遣い”をのぞいて、ある程度、目的はわかっているからね。落とし所も考えられる。
単なるスラム街ってわけでもなさそうだしね。

――外務8課。聞いたことは無いほうが正解かもね。水の国外務省管轄のまあ―――揉め事対策秘密チーム。
事が大きくなるために内々で解決しようっていう如何にもお役所な……手がつけられなくなってから対策するところも含めてね。
国内の異能関係から、カルト、そしてここ――此処は国家間緊張とやらの最前線だからね。外務省たるもの気になるのさ。

私の仕事は解決じゃない―――お上の落とし所を探すための情報収集係。丸く収めるのが仕事さ。
自国にとって都合がいい用にね。

【タマキはニコニコと身振り手振り豊富に楽しげに話す。明るくて気さくなのが彼女の性格だ。だが話す内容はシビアで冷めきったリアリズムの視点であった】
【調停やら合意形成といえばカッコもつくが、所詮妥協。彼女の言葉はそういう意味だった。】


118 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/17(月) 11:26:51 smh2z7gk0
>>117

いやいや、私もまぁ何でも屋みたいなものだから大したもんじゃないよ。
―――〝成程〟ね。お互い色々と面倒な立場で仕事をしているわけだ。

【タマキの言葉に何かを察したようにため息交じりで呟くと、苦笑して相手を見つめる。】
【コニー自身この国にきてから様々な問題やしがらみに関わっており、苦労してきたのだった。】
【とはいえこれはコニーの一方的な共感であり、タマキの感情はまた別かもしれないが】

テクノロジーの発展と人の幸福さはイコールではないという事だね。
まぁ、確かにインターネットが発展すればするほど世の中を見えない息苦しさが覆っている感じもするしね。

〝マージュリーズ〟か、タマキも詳細を掴めてないとすると相当だね。逆に人畜無害の可能性もあるにはあるけど

―――〝外務八課〟。残念ながら割と知っている。
お宅のジークとアリアには借りもあってね、〝色々と〟協力関係にはある。今のところはね。
バシバシ前線でやりあうタイプっぽいあの二人と違って、タマキの役割は割と親近感あるなぁ〜。
まぁさっきも言ったようにお宅には借りも多い。力になれるかは分からないケド何か必要があれば協力するよ。

【苦笑交じりでそう言うと、自分の〝外務省肩書〟の連絡先をタマキに差し出すだろう。】
【この様子からしてコニーと外務八課の間ではどうやら色々とあったようだが、ひとまずは友好的であった。】
【「落としどころってのは〝まつりごと〟にはつきものだよね」特に意味なく最後にそうポツリと呟いた】


119 : タマキ ◆KP.vGoiAyM :2018/09/17(月) 20:27:08 Ty26k7V20
>>118

お互いね。官職ってのはどこも一緒だねえ。よく他の国の職員も愚痴ってたよ。
どいつもこいつも、腹の中は見せないタヌキばかりだったけど。

【ニコリと細める目は何処か遠くを見て、また一瞬、切り込んだ。プロの人種の目つきだ】

ま、そういう街なのさ。単純に貧困が原因なのか抑圧なのか…もっと高尚な尊厳だとかそういうものなのか
それを解決しろだなんて無茶ゆうよねえー…

あらら?流石、書記官。お仕事がお早いこって。……まあ、あのへんの人らは肝いりと言うか
アチラさんは組織編成に伴って召集されたお客様。私は単なる公務員。人数合わせでどこでも呼ばれて
今回もたまたま呼ばれただけ。給料だってだいぶ違うんでしょうね〜私はどれだけ働いても本省のデスクと大差ないもの。
……あ、今のは内緒ね?内緒〜でも私は、ほら。税金とか年金とか?他の課員より安定してるしねー
ビールとたまの休日の旅行が楽しみな小市民さ。わたしは

【連絡先を受け取って、代わりに同じく自分のを差し出す。架空の警備会社名義で「これしか持ってない」と誤りつつも】

まあ私にチョクで通じるから。モーマンタイでしょ?

【そういってよいしょっと、彼女は立ち上がった。】

そろそろ戻って、日報書かないと。それも給料のうちだからね。
あーそういう。他の課員がどういうスタンスとってるか知らないけど…ワタシ的にはさ。


『自分の国で他所の国にズケズケ首突っ込まれたくないかな』

んじゃーねー。


【嫌になるぐらいの人混みは一瞬で立ち去る彼女を背中をかき消した。蜃気楼のように見えなくなってしまう】
【街は眠らないらしい。今宵もずっと抽出された欲望が色彩となって街に溢れかえっていた。】

【もし、調べる権限があれば、タマキのプロフィールはそう見つけることは難しくないだろう。】
【水の国、外務省一般職。異能保持者。各部署を転々とし、要人警護、捜査、テロ対応…外務省の手札として戦っていた】
【用心救出任務でテロリストが包囲する中、単身で潜入。用心を救出し、犯人グループを全員『殺害』―――そんな経歴も出てくる】
【それをみれば、良いように異能を利用され、事が済めば疎まれ、厄介払いに何処かに飛ばされる。そんな印象も受けるだろう】


<<皆さんの幸福のためにご協力ください>>
<<新しい時代はすぐそこまで来ています>>


/ここらで〆にさせていただきましたが如何でしょうか!長い期間お付き合いありがとうございました!


120 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/17(月) 20:59:49 smh2z7gk0
>>119

―――ハハハ、いやはや全く痛いところをついてきますなぁ。仲良くいこうよ仲良くね。

解決ね、それこそなんらかの形で落としどころを見つけるしかなさそうだね。焼け石に水だとしても。
ご苦労お察ししますわ〜。

へぇ、そうなんだ。意外とお宅も複雑なんだねぇ。確かにあの二人は単純な公務員には見えないわ。
とはいえアンタも〝タダの公務員〟には到底見えませんけどね。まぁ少しでも平穏な休日が続くことを祈ってるよ。

【連作先を受け取って、架空の社名に眼を通しながら乾いた笑みを浮かべてそう返答する。】
【「私はもう少し休んでくわ」と立ち上がった相手に告げて、ヒラヒラと手を振って送り出そうとするが】
【最後に放たれた言葉を聞いて、アイスブルーの瞳を鋭く細めて笑う。】

ハッ、イイね私は〝そういう〟方が好きだよ。―――まぁ悪いようにはしませんよとだけ言っておく。
(………〝今のところ〟はだけどな)

【―――後日、ツテを通じてタマキについて調べれば「やっぱり親近感湧いちゃうなぁ」とぽつりと呟く。】
【コニーは分かっている。結局私たちは礎なのだ、これから訪れようとしている世界の―――。】

//ありがとうございました!


121 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/17(月) 22:15:59 WMHqDivw0
>>114

…………むずかしいね。いろんなことが少しでも、いいほうに進めば、……それだけのことなのに。

【ぽつっと呟いて。無論自分がそんな風に思われているなんて、露ほども知らないまま。無力感だけを感じて】
【考えるのはやっぱり、レグルスの隣にソニアが帰ってきてくれないかな――なんてことだった】
【ソニア、会ったこともないんだけど。どんな人だろう。なんとなく可愛い系の人なんだろうなあと思った、無垢って言ってたし】
【――そういう無責任に幸せな妄想ならいくらでもできるのに。現実は、どこまでも非情なのだから。……溜息くらいついてしまう】

そだね……あたしだって鈴音が未だにイルのこと……好きとか言うの、ヤだもん。
気持ちとは別に考えなきゃいけないってのも、わかる、わかるけど……ああもうやっぱり難しい!

…………だから今だけは。難しいこと抜きにして、イルのことだけ考えるよ。
ん、……はは。あのさラベンダーちゃん、それ、そっくりそのまま返しちゃえるよ?
あたしだってココロずたずたかもしんないけど――ラベンダーちゃんだってそういう顔してる。

【「息抜きになんかして遊びたいとか、もし、そんな気持ちになれたら――そのときはあたしがいつでも相手するから」】
【呼んでほしい。そう言ってまたちょっと笑うんだった、それも「助け合う」という約束に含める】
【きっとこの台詞は、ラベンダーが兵器だろうが人間だろうが。どっちであったと知っていても、こいつだったら口にする】
【そういう類のものだった。自分が好ましく思う人の世界がたのしくあればいい……それだけは譲れないのであったら】
【相手がどういう存在であったって構わないんだ。だから、連絡先とかも、交換しちゃったりするかもしれず】

わーい、アーディンさんありがと! じゃあみんなでゴハンだ、……ふふふ。
なんかおかしいね、すっごい厳しい話してたはずなのに――あたしなんだか今すごく楽しいよ。
…………またやろうね。これをパーティ代わりにするなんて、そんなズルはナシだから。

【靴を履き直して厨房へお邪魔しに行く、そうしてまたたどたどしい手つきを披露しながらも――楽しいって思える】
【思えるからこそだ。それをずっと守っていきたいから。だから、斃すべき敵は絶対に斃す、勝利を手にする】
【そのために与えられた、束の間の休息の時間。……見守ってくれているだろうか、彼は。きっとそうだと、少なくとも少女はそう思っていたけど――】

//お返事遅くなりました、締めます!ありがとうございました!


122 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/18(火) 00:44:04 hEXW.LLA0
>>116

【「まァ秩序と治安を守る為の公務員であることに違いはないさ。 ─── ちょっとした言葉の綾だよ。」はぐらかす語調はそれでいて、それ以上を追求させようとしない。】
【はじめて恋と愛の淵に立つのであろう少女の様に、殊更に後藤は言葉をかけようとしなかった。ただ一瞥して、小さく頷く。祝い寿ぐ事もなく、咎め立てる事もなく。】
【「ミレーユ君なんかが勝手に買って使ってたかなあ。冷蔵庫まであるし、そのうち立派なキッチンに仕上がりそうだ。」なれば廊下の突き当たり、彼はドアを開き】


「脳波の状態と睡眠深度から見ても、そろそろ起きると思うよ。それに ─── 、」
「あんまり他人に寝顔を見せるような人間でもなければ、作ってもらった飯を冷ましてしまう人間でもない。」


【果たしてそこもまた、ごく清潔で当世風の空間であった。白と黒と直線を基調とし、給湯器のガス管や金属光沢のシンクが可能な限り露出を抑えられた上で】
【カバー越しの室内灯が迂遠な暖色光を零して、そこまで大きくない冷蔵庫が静かに唸っていた。2つのコンロが火を待っていた。 ─── 調理器具まで一通り揃っていた。】
【既にキッチンと呼んで差し支えはなさそうだった。泊まり込みでの職務は当然のことであるようだった。この分では個室にはシャワーさえ備え付けてあるに違いなかった】
【ドリッパーとペーパーを手近な棚から取り出して、後藤はコーヒーの準備を始める。「とりあえず、冷蔵庫のモノは好きに使っていいから。」】
【ならば電気ケトルが湯を沸かし、手回しのミルに注いだキリマンジャロが粗挽きに砕けていく幾らかの沈黙が生まれるのだろうか。 ─── 徐に、後藤は口を開いた。】


「 ──── 彼女、おっかない女だろう。」「荒事にかけちゃ右に出る奴はいない訳だし、頼もしくはあるんだけど」
「しばしば独断で行動するのが悩ましくもあるところだ。 ……… かえで君は、その辺り随分と手慣れたように見えるね」

「そうそう。パンケーキに限った話でもなくて、甘いものなら皆んな良く食べるよ。甘くなくても、実に良く食べるけど。」
「パフェとか、ホールケーキとか、チョコディップのチュロスなんかも食べてたかな。」「ストレートのコニャックと併せて飲むんだ。 ─── 面白い趣味してるよ」


【戸棚には開封済のパンケーキミックスを見つけられた。然し未開封の砂糖や薄力粉、コーンスターチやベーキングパウダーも用意されていた。生卵さえ冷蔵庫にあった】
【ティーパックもあれば一通りの茶葉も用意されていた。ジャムとウォッカは言うに及ばず ─── 至極、御誂え向きであった。湯の注がれて、コーヒーの蒸れる音がした。】


123 : 名無しさん :2018/09/18(火) 01:59:09 3Ev02w4I0
>>122

【――躊躇いがちに呟いた少女は、それでも何があるのかを確認しようとするのだろう。調理器具は、まあ、最低限のものがあればいいとして、】
【そして料理をする人間が居るのならば、最低限は必ずあるだろうと分かっていたから。そのうえで無いものはあるかもしれないけれど、それが時としてほしい瞬間はあるだろうけれど】
【とりあえず日常的に生クリームを立てている誰かが居るなら多分あるだろう。それとも手でやってたらどうしよう。ちょっとだけやってそうだった。だから、だけど、】
【彼が買ってた気がするなんて聞くとそれはそれでちょっと気に食わない目をしたのが多分思春期ってやつだった。――冷蔵庫、勝手に、ばご、って開けて眺めるのなら】

【それにしたってやっぱり頓着しない性質であるらしかった。初めての場所でスヤスヤ安眠できるタイプに違いなかった、起き抜けにお水の一杯だってきっと要求できるから】

………………寝顔より、服着て寝るべきだって言ってやってください。起きたときめっちゃ部屋寒かったですよ。寒くて起きましたし。

【――――――、すん、と、小さな吐息の音。あんなに可愛らしく眠る人のことを、そんな風に、かわいげのない言葉で表現されたくない、なんて、文句だってつけてしまって】

――おっかないですね。なんかやけに活動圏がかぶってて。監禁されましたし……。……。この粉いつのですか? 薄力粉……。
手慣れたって言うか、見慣れました。……。結構、――ロマンチストですよね、……。……。――まあ、ワンちゃん、ですけど。――。
…………。強くて。勝てないです、あんなの。……教会ごとぶっ壊す人がいるとは思わなかった。"あれ"は悪手でした。……。

……――、はあ、……全部甘いものに聞こえるんですけど、気のせいですか? ――、――お菓子ばっかですね。だからあんなにおっぱい大きいのかな。

【ひとまず作る気になったものの材料はあるらしい。いつから開封されているのかよく分からないホットケーキミックスについては、ひとまず保留して】
【あるものでだいたい――と言うまでもなく同じものは作れそうだった。だから遠慮なくぽいぽい冷蔵庫から戸棚から出してしまう、いっそ自分の家みたいに振る舞うから】
【そうしたら何を聞くでもなく作り始めてしまうんだろう。であれば普段作らないのはただ面倒なだけだと思わせた、――ふ、と、その背中、あんまりに無防備に見せつけて、】


124 : 名無しさん :2018/09/18(火) 01:59:48 3Ev02w4I0


――――言っておきますけど、私、秩序とか治安とか――正義とか、興味ないですよ。私は、……アリアさんのことが、好きなだけです。

【――調理の音。きっと彼女は振り返らなかった。それでも、投げかける声は明確に彼に向いていて、先ほど追及どころかろくに触れもしなかった言葉へ、言及している】
【それらに興味がないのは当然だった。それでもきっと子供の前でなくても赤信号の横断歩道を渡らないタイプだと思わせた。適当に並べた材料から、欲しいものを摘まみ上げて】
【もし彼が普段から料理をするのならきっとあんまり手際が良くないのは見て分かるんだろう。やらないなら当然やり慣れているわけもなく、ただ、見ていて不安にはならない程度】

あんなに何回も口説いたのに……、……私のところに、来てくれなくて。

【――――けれどそうしている間に、自分の居場所はなくなってしまった。それどころか、自分で壊しすらしたのかもしれなかった。裏切って、壊して、真っ新になって】
【きっと行く場所なんてなかった。それでもきっとアリアならって思えた。しかしてなんだか足元が確かでない感覚、前後不覚に任せて逃げ出したくなってしまいそうな、】

――――――――――、もし、アリアさんと同じことしていくのなら、それって正義なのかな。

【ぽつり、と、小さな声が。尋ねるのだろう、どうしようもなく一緒になれないのに、それでも絶対離してくれなかった人。――もし、その人の選ぶ道を歩けば正義というのなら、】
【あるいはそうだと示されるのなら、少女はそれでもいいのかもしれなかった。もしくはそれがいいのに違いなかった。そうしたら、ずっと一緒に、居られるのなら】
【自分はもうとっくに喰われてしまったに違いなかった。あとは一緒に生きていくしかないのかもしれなかった。――アリアに同じ風に尋ねないのは、きっと、そうだとしか言わないから】

【――やがてクリームを立て終えるのなら、生地もおんなじ風に作っていくんだろう、ならば、二人のみ話す時間も、そう長くないんだと予感させるには十分で】
【ならば少女より漏れた呟きは常温に置かれた生クリームよりもよっぽど緩く甘いに違いない、そのくせ自分から何か言い切るにはまだ確証も足りなくて、だから、】
【大人に教えを乞うのなんてきっと未成年者の専売特許だった。だからそれを十分に使い倒してやる気に違いなかった、――――、】

クリーム、やっぱ嫌がらせだと思うんですよね。ちょっとあげるんで、珈琲に乗っけていいですよ。減らしてください。

【――――なら、ふっと振り向いて、製菓用のゴムベラに乗っけた生クリームを、せっかくの淹れたての珈琲にぶち込もうとしてくるのは、子供らしい悪戯にも似て】
【もし受け入れるのなら、――あまり硬くなるまで立てていない柔らかさと、かすかに洋酒の香り。拒否をするなら、無理強いはしないのだけど】
【ただ強いて言うのなら恨みがましい声で「アリアさん太っちゃう」、――、――寸前の自分の言葉がどこか気恥ずかしいのかもしれない、なんて、思わせるのかもしれなくて】


125 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/18(火) 04:43:48 GQoYu22s0
>>101-104


【────────────────────】


【─────────────】



【────────】



【────】


126 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/18(火) 04:46:58 GQoYu22s0



【──赤い】



【赤い 赤い】
【世界は赤い】

【一輪の薔薇により】
【ナパームの火炎により】
【落ちた林檎により】

【流れ出た血により】

【鮮やかに】
【情熱的に】
【夥しく】

【赤い】


【広がる 飛び散る】
【死が行き交う 絶え間なく】

【死んでゆく 死んでゆく】

【目の前で 誰かの隣で】
【壁の向こうで 腕の中で】

【死んでゆく 死んでゆく】


【世界は赤い】

【何も知らない白い兎の眼でさえも】
【ただの十五夜で 世界の色に染まってしまうほどに】

【だから逃げる】
【臆病者は跳ぶ】
【痛みばかりの景色から】

【もう見たくない 真紅は見たくない】


「──目を逸らさないの」


【と、叱られた】


「──ちゃんとお母さんの目を見て」


【深く澄んだ、けれど悲痛な眼が、わたしを見つめる】
【どうして黙ってこんなことしたの、と静かな声が廃墟に響く】
【わたしは、恐る恐る顔を上げて、母の顔を見る。赤毛が夕焼けに透けて光っていた】

【──タンポポのお花が咲いてるって、聞いたから】
【おうちに、持って帰りたくて……お母さん、喜ぶと思って……】

【……ごめんなさい】

【母は目を丸くして、何度か瞬きをした】
【それから溜めていた息を、長く吐き出した】


127 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/18(火) 04:47:30 GQoYu22s0


「──そのために、一人でこんなとこまで来たの?」


【わたしは頷く。母は怒りきれず呆れきれず、困ったような顔をした】
【わたしはばつが悪くなって、手に握ったタンポポの花束を見つめた】

【花は萎れて、綿毛が咲いている】

【空に掲げて、ふう、と息を吹きかける】

【並んだキャンドルの火が揺らいで消える】

【母が柔らかく笑って言った】

【──誕生日、おめでとう】

【細い煙の筋が、立ち昇る】

【止むことなく、濛々と】
【もう墓を建てられるところもないから】
           Luck
【遺体が見つかっただけ、運の良い方だ】
   L a c k
【足りなかったのは 時間だけ】

【時計の針は燃え落ちて】
【ただ魂の吸い殻の 灰だけが残っている】

【世界という灰皿に 口づけの跡が積もる】
【I love youは埋もれたまま それを誰かが捨てにいく】

【灰は灰に】
【塵は塵に】

【銃には薔薇を】

【本には栞を】

【そして灰色のディープ・スロートが言った】


「あとは頼んだよ、──────」



【────── “ Cinzano Rose ”】


128 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/18(火) 04:49:21 GQoYu22s0
>>101-104



【────────────】



【少女はびくりと身を震わせ、目覚めた】

【──心臓は激しく鼓動し、息は弾んでいた】
【まなじりからは覚えのない透明な液が滲み、頬を伝っていた】
【彼女はそれに手を触れ、濡れた指先を呆然と見つめた。そして、】


────…………ここは…………


【一体どれだけの時間が経っただろう】
【赤く腫れた眼で、ゆっくりと辺りを見回し】


129 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/18(火) 21:47:33 hEXW.LLA0
>>123>>124

「あんな顔をしていながら存外に乙女趣味な人間だよ。」「甘党なのも、ロマンチストなのも、破廉恥な寝方を好むのも」
「あるいは、きみに惹かれた理由も。 ……… 見るからに甘ったるそうな見た目をしてる。この歳になると、やや目に眩しいね」


【少女の言葉には無言で頷いていた。 ─── そうして、聞いてもいない事を語り返した。コーヒーの雫が、漏斗状に巻かれたペーパーの底から滴っていく】
【截然とした少女の宣言に対しても同じだった。「はなから期待しちゃいないよ。」変わらない語調だった。手近な椅子に座り込んで、テーブルの上にドリッパーを置いた】
【幾らか手際の悪く散らかしていく様にも、「終わったらちゃんと、かたしといてね。」 ─── ならば彼にとって、独白に似た問い掛けと、その数秒は同義だった。溜息、一つ】



「 ─── どうだかねえ。」「正義のかたちが一つじゃない事なんて、きみのような人種なら良く分かっているだろう」
「組織というものは大義名分の標榜においては自己批判と無縁だし、故に盲目であれと命じる事もまた容易ではあるが」
「 …………… 彼女、おれの言う事も聞かない時があるしねぇ。ま、自分の道に誰かが付き従う分には、きっと喜んで受け入れる奴だろうけどさ。」

「ともあれ、望む望まざるに関わらずきみは咎人だ。彼女はそれを赦すのかもしれないが世間はそうはいかない。 ─── 今まで何人、殺してきたのかな。」
「今からだって、無慈悲な罪刑法定主義にきみの首を吊り下げてしまうのも、おれには悪くない選択だ。さんざん他人を不幸にして、呪詛と怨嗟を背負ってきたんだろ」
「この期に及んで自分だけ幸せになろうってのは、いくらか虫が良すぎるだろうよ。……… 彼女と同じ道を往きたいというなら、忘れぬほうが賢明ってものさ。」



【そうして酷くあっさりと言ってのけるのだった。 ─── 悪意も善意も、その声音にはなかった。彼もまた、淡々と誰かの生き死にを語れる男だった。】
【少なくとも彼は表層上において蜜姫かえでに怒りを抱いていないようだった。ただ事務的に、彼女がこれから生きるとして、どのような敵意に晒されうるか】
【そしてまた少女を単なる外交上のカードとして扱う選択肢さえも示唆していた。きみには他の道はないし、その道を進んでも波乱なく幸福を享受できるかは分からない、と】
【それだけを忠告していた。それ以上でも未満でもなかった。それが故にこんな言葉も付け加えた。それが彼にとって、何よりも大切なのだろうと思わせた。】
【「それでも構わないと言うならば、我々はきみを歓迎しよう。」「 ─── きみ一人が今さら死んだとして、償える罪の質量でもないだろうしね」コーヒーを、啜る。そして】



「 ……… 。」「今日はブラックの気分だったんだけどなぁ。」「 ──── まァ、いいんだけど、さ。全部。」
「バイオニックのイモータル義体でも、脂肪の蓄積プロセスまでは再現しちゃいない。安心して食わせてやりな」


【振り向くならば、きっと後藤はテーブルにカップを置いたまま、困ったような薄笑いを浮かべていた。 ─── どことなく、理解させるのだろうか。】
【アリア以上に感情表現の薄い男だった。喜怒哀楽のうち、ポーカーフェイスの微笑みだけをニュートラルな感情として定義し、のらりくらりと生きている。】
【それは親しい人間に対しても変わらなかった。部下に対しても極度の放任主義であることを感じさせた。およそ得体の知れない人間であると思わせるのかもしれない。】
【だとしても余程のことが無ければ彼は感情を露わにしないのは事実だった。 ─── ぽちゃん、とカップに落ちる生クリーム。淡く薄い白油の膜へと溶けながら、広がって】


130 : 名無しさん :2018/09/18(火) 22:57:20 wjAOvww20
>>129

――――、かわいい顔、してますよ。ちゃんと女の子です。この前、髪の毛結わえてあげましたけど、――まあスーツに合うかは別ですけど、かわいかったですし。
頬っぺた真っ赤にして照れちゃうの。――――――、色素が薄くて困りますよ。夏は死ぬかと思いますし。上見ても下見ても眩しいですから。夏。
日焼けするタイプじゃないので、それはいいんですけど。真っ赤になって終わりますからね、……片しますよ。片すまでがお料理だって教わりましたし。

【何度目かの言葉に、彼女はそこでやっと反論するんだろう。把握される眠りの深さに、"ああ見えて"だの、"あんな顔"だの、――声音はいくらか拗ねたよう】
【「もっといろんな服を着たらいいのに」「サイズがないのかな」――呟き声は、遠回しというにはあんまりに至近距離で彼を責める色合いをしているのだろうから】
【それから自分の容姿に触れられるなら――綺麗に整えているのは当然だと言い切るような声音であった、今更そんな風に言われるまでもない、と、そんな風合い】

――――――――――……。

【――――、だから、やはり、いくらか黙るのだろう。クリームに入れたついでに生地に洋酒を垂らしながら。やがて指先をたっぷりと十数秒、止めて】
【その沈黙は、あるいは洋酒の適量を知らないだけなのかもしれなかった。ふ、と、考え込むような吐息の沈黙は、最後のオマケにそこから入れる数滴と一緒に練り込まれたに違いなく】
【いつか短く切られた毛先は、それでも三か月もすればいくらか伸びだしていた。伸びた毛先まできれいに整えられていた。それがお姫様の条件みたいに】

そうですね、――そうかしんないですけど、でも、同時に信じてられるのは、一人一つじゃないですか。……私は、それを、アリアさんとおんなじにしてもよくって……。
――でも、やっぱり、違うんですかね。……違うんでしょうね。――――アリアさんみたいに強かったら、私だって、誰か、何か、護れたのかなって、
だけど、それも、なくなっちゃって……。どうしたらいいのか、わからなくて……私……。

【思案がちな声はぽつぽつと緩やかに途切れながら続くのだろう、それを考えるだけの時間もまだきっとなかったものだから、ひどく曖昧な言葉しか出てこなくって】
【居場所と思っていた場所も、仲間、――ともすれば家族とすら思っていたかもしれない人達も、居なくなってしまって。いつかの再来と再演、だけれども、】
【いつかと今に違いを探すのなら、それはきっと一緒に居たいって思う誰かの有無なのだろう。――もはやまっとうに生きられるはずがないのなんて分かっていた、知っていた、なら】

【――もしもアリアの隣を居場所と思ってはいけないのなら。こんな自分のための居場所があるとしたなら。――そうしたら、あの人は悲しむのだろうか、って、それも分からない】
【それでもきっと"そこ"しかないと思ってしまうから。逆さまの五芒星。どうしてこうなったんだろうって思わないでもなかった。――だけれどもう、分からないのだから、】

私が死んだら、…………アリアさんが哀しみますよ。

【ようくあっためたフライパンにだらりと生地を落とす。「――あ、」と、小さな声。ふきんを濡らしておくのを忘れた。だからもうどうでもよかった】
【何人殺したかなど分かるはずもなかった。呪詛と怨嗟を背負ったつもりはなかった。だってみんな幸せになれたはずだった。ならば自分だけ、なんて、そんなはず、】
【だからふつふつと浮いてくる泡は黄泉からの呪詛を映し出しているのにきっと違いなかった。ふうわりと甘い香り。バニラエッセンスと洋酒の香り。それでも/だからこそ】

【(それともこれが正義だって言って、泣いてもくれずに、冷たい目をするんだろうか。なんて、きっと、考えてしまうから)】

………………アリアさんが嫌だって言うようなことはしないし、アリアさんがいいって言っても、アリアさんが非道い目に遭うようなことも、しないですよ。

【――――ならば結局彼女はありふれた正義の志なんて知らないのに違いない。少女の知る限り最も正義を掲げるのは彼女で、そうして一緒に居たいと願ったのも、彼女だから】
【理由なんて本当にそれっぽちなのだろう。だけれども、その限りであれば大人しくしているんだろうとも思わせて。――だって誰も好きな人と離れ離れにはなりたくなくて】
【――なんて言っていることそれそのものが甘えに等しいことには、きっと気づいていないんだった。どこか帰れる家が欲しい。その気持ちすら、よく、分かっていないのなら】

【――――――――ぺそん、と、気の抜けた音で、ホットケーキがひっくり返される。焼き目はやっぱりひどく疎らだったから、これは一番下にするって決める】
【生クリームが溶けて広がる珈琲にはもう興味なんてないらしいのだからひどい話だった。――「もう一杯飲めばいいですよ」とだけ、他人事みたいに】


131 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/18(火) 23:47:45 hEXW.LLA0
>>130

【いくらか驚いたような顔をして、後藤は目を丸くした。そうして、ふッと緩やかに噴き出した。「 ─── そいつぁ失礼。おれにそんな顔は見せてくれないもんでね」】
【「別にウチは私服出勤も自由だが洒落っ気に興味がないらしくてね。軍にいた頃から、軍服かスーツばかり袖を通していたらしいが」なれば続いたのは申し開きである。】
【だというのに自身の言葉が曖昧な沈黙を招いたとして、彼は詫びるような素振りなど露ほどにも見せなかった。そういう男であるらしかった。ならば返されるのは嘆息である】


「勘違いしている訳じゃあ、ないだろうが ──── 。」「もはやきみに選ぶ道が無いというのは、きみが咎人であるからという理由だけじゃあない」
「こうなれば彼女は、何度でもきみを連れ戻しに行くだろう。」「たとえ死んでもね。この世の中には、死人に会いに行く為の方策だって、珍しかぁない。」

「きみの居場所はアリアの隣にしかないし、それ以外の場所にきみがいることは、絶対にアリアが許さないさ。」「 ─── まァ、おれの与り知らぬ事ではあるがね」


【それは一側面から見た事実の提示に過ぎなかった。「分かり切った事だろう?」 ─── 蜜姫かえでが、今までそうされてきた事を、男は知っていた】
【甘ったるくなったコーヒーを、また啜る。名状しがたい表情をした。悩ましげに顎の下、無精髭に彩られた辺りを当て所なく指先でこすっていた。】
【やはり男は放任主義であった。好きにやっていれば良いと言っていた。彼にとってはアリアもかえでも、ただ群狼の牙として機能するのであれば、それ以上を望まなかった】


「 ……… 適材適所ってもんだ。」「彼女に七面倒な駆け引きをやらせるつもりはないし、きみが彼女に付き従うというのなら同じ仕事を割り当てよう。」
「彼女はおっかない女ではあるが、危なっかしい女でもあってね。今回だって右腕部を全損して帰還した訳だし、貴重な備品も優秀な人材も失いたくないというのが本音だ」

「おれとしても、きみのような才能をみすみす野放しにするつもりはない。」「 ──── 護ればいいよ。アリアのこと。」
「そういう遣り口を続けていけば、殺してきた人間の数より多くの人々を救えるだろう。彼女も、そう信じてずっと戦っている」


【「戦う理由をずっと探しているのさ。 ─── 彼女は」であれば彼は、アリアの過去を知っているのだと匂わせた。その追憶を、アリアは殆ど少女に語らなかった】
【少なくとも軍人である事は確かだった。人殺しの理由を大義に求めたのだろうと誰にでも解った。理想主義者のような面を垣間見せるのも、そこに起因するのかもしれず】
【ならば矢張り蜜姫かえでという信徒の半生によく似ているのだと強弁できぬこともなかった。今の彼女が銃を握る動機は、きっと彼女自身にも、はっきりとは見えていない】
【ドリッパーに幾らか残っていたコーヒーを後藤はもう一度ばかりカップへと移した。微かに茶渋の残った硝子色は、ぼんやりと赤茶けて向こう側の輪郭をぼかしていた。】


132 : 名無しさん :2018/09/19(水) 00:35:33 wjAOvww20
>>131

【――吹き出す吐息に、少女が向けるのは少しだけ刺々しい気配であった、とはいえ背中は向けたままで、表情は透かせないのだけれど】
【二枚目のホットケーキを垂らしていた、やがてあぶくが出て淵から乾くなら、そのうちにまたひっくり返すんだろう。振り返る気はあんまり、なさそうだから】
【ぬいぐるみとか買ってあげたら喜ぶかもしれない、と、思った。意味はないけれど可愛らしい猫や熊の置物だって好きかもしれない、専門書だらけの書架は嫌いじゃないものの、】
【ふっと通りすがりに無意味に陶器の猫の頭を撫でていく姿を見てみたいって思ってしまうんだから、そのうち――増やしてやろう、だなんて、努めて無表情に、秘めておく】

――――――どこに居ても、デートに困らないのは、いいですね。お誘いのたびに警察官とかノさないといけないのは、まあ、手間ですけど。
アリアさんが可哀想、私はいつだって一番かわいいお洋服を選べるのに。どんなお洋服がいいかなって選ぶ時間もないんだから。――。

――あはは、そんなの珍しくないって、嘘ですよ。そんなの世界がやっていかれないです。だって、そうしたら、私だって………………――……。

【「分かりきってるからです」】
【――対する声はきっと無感情に似ていた。とんでもない人に見つかってしまったって思っているに違いなかった。……だのにきっと後悔していない声を、していた】
【どこにいたって問題がないのは都合が良かった。どんな立場の二人だって愛してるって言ってくれるってもう分かっていたから。――笑い声は、だけど、やはりひどく曖昧に】
【なれば、逢いたい人がいるのかもしれなくて。そのくせにひどく曖昧で空っぽな声であったなら、――その奇跡がたとえ目の前にあったとしても、選べない、悲しい色合い】

…………そうですね。アリアさん、話し合いって言うか、肉体言語だし……。……。ただ、"それ"は私のせいですよ。
前も、首だけで落ちてたし。……。――あれ、それも私が落としたんでした。人間がオオイヌノフグリみたいになるって思わなくって。
だからね、――アリアさん、本部の間取り、知ってましたよ? まあ、全部は知らないと思いますけど。…………。

【――ほんのわずかにのみげんなりしたみたいなで呟くのだろう。それなら思い浮かべているのはきっといつかの病室、――交渉も交渉だった、その結末だってひどいもので】
【だけれど自分からは言わないんだから狡かった。――それでも右腕については庇うんだろう、自分のせいだと。いつか首になっていた時のこととかは、自分のせいじゃないから】
【続く言葉は、――思春期らしい拙い犯行なのかもしれない、自分が運ばれてったみたいに、自分だって、彼女を運んで行ったんだって、――あるいはかすかに笑みすら予感させ】

――――――――――だから、私は、興味ないですよ。正義とか、なんだとか、……でも、そうですね、
……――アリアさんが満足いくまで、手伝ってあげるのは、吝かじゃないです。だって、あの人、無茶なことしますから。
私じゃなかったらいっぱい死んでるところでした。まあ、アリアさんじゃなかったら、いっぱい殺してるところでしたけど――――。

【何人殺したとか、だから何人救うとか、興味はないから。言葉とともに聞こえるのは気の抜けた音。ぺそん。ホットケーキをひっくり返して、気が向いたみたいに火を調整する】
【そうしたら急に手持無沙汰になってしまう。だから少女はすこしの間だけ振り返るのだろう。シンクに背中というよりもお尻を預けて。――きっと、少し、柔らかい表情をしていた】
【だからどうしようもなく解きようのない情が全身に絡みついてしまっているのを理解させて、――離れられないのはきっと彼女もなのだろう、どこからでも呼んでしまうから】

ハイターしないんですか? 綺麗になるのに。

【――――――戦う理由を一緒に考えてあげることは、きっと、まだできないから】
【それでも、垣間見た一瞬の世界が、わずかに脳裏に残っていた。あんなにきれいな青色が見つめる世界があの色合いをしているというのなら、少し/すごく/とても悲しくて】
【ひどく曖昧な表情をしていた。どこか泣いてしまいたげに悲しそうに睫毛を震わすのに、出て来る言葉はひどく所帯じみて。――ゆえにまた、視線は鍋に戻るのだろう】


133 : ◆RqRnviRidE :2018/09/19(水) 01:19:24 6nyhPEAc0
>>57

はは! よしてよ、これ以上頭を打ったりするとボクがボクじゃなくなっちゃいそうだ。
そうだね、物珍しいからこそこの髪は確たる結び目になり得るんだ、それだけは間違いないよ。

水の国、……と櫻の国だね。 んん、とりあえず行き先は定まりそうだ、ここ含めて熱帯の国を渡ってみることにするよ。
国を渡るなんて鳥みたいだよねえ! 諸国漫遊ってワクワクしちゃう。

【氷と夜なんて聞くだけで凍えちゃいそうだ、なんて軽口を叩きつつ、次なる行き先を定めていく】
【高温多湿な環境にルーツがあることは間違いなさそうだが、国境を越えるという考えには至っていなかったらしい】
【マリアベルの推測を深く頷きながら聞き、ふと耳に留めた“物騒な冗談”には、】
【針のような髪の毛をぽきりと折り、不満げにちょっぴりしかめっ面を覗かせた】

【けれどそれも束の間のこと、指し示される幾本かの道筋には興味津々に顔を綻ばせる】
【いずれも答えの曖昧な、或いは存在すらしないかもしれない物語であるのだろう。が、しかし、】
【暗中模索は白紙に彩りを添えるだけで障害にはなり得ない、危険なゲームだとしても子供は愉快さを覚えて】

ふふ、成程……よし、乗ろうじゃない。 俄然興味が湧いてきたよ。 ボク、この手のには疎いけど大好きなんだ。
それぞれが支流として本流に繋がるかもしれないしね。 何より聞いてて楽しそうだから、そうこなくっちゃ。

どちらか〝ひとつ〟なら、──そうだなあ、それなら『これ』について聞かせてくれるかい?

【そうして瑠璃は髪の一房をマリアベルの立てた指の一本に柔らかく絡めようとするだろう】
【示されるのは彼女の“三本目の指”、可能性に満ち満ちているとされる〝宇宙卵〟のことについて】


134 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/19(水) 01:22:00 bbhBap8I0
>>132


【寂しがるような、嬉しむような、藪から棒に想いを語るような、 ─── 爪先立ちの崖っぷちで、くるくる片脚で回るような、幼気な御機嫌さと不安定さ。】
【その理由を辿るのは己れの役割でないと男は理解していた。故に多くを問うことはなかった。ただ、もしもいつか、アリアともこうして赤茶けた言葉を交わす時間があるなら】
【刹那の機微に込められた感情の如何なるかについて、言葉を紡いでも悪くはないと思っていた。 ─── とびきりに苦いコーヒーを、また一口。】


「 ─── はは、」「言葉の綾だよ。」「あの場には、きみが必要だった。少なくとも、アリアにとっては。」
「 …………… 結果として、彼女の願いも凡そは叶えてやれたんだ。本当に、きみはよくやったよ。本当に、ね。」


【なれば続く言葉はかえでへの賞賛だった。きみはアリアの力になれたのだと、 ─── からだを運んでやるよりも、更に大切な領域を独り占めに出来たのだと】
【誉め殺すような距離感の寸前だった。なにが必要なのかを彼は語らなかった。それにより辛うじて不快な過褒に成り得るのが留められていた。】
【 ─── 虚ろの神の三柱を一度に仕留め、しかも多くの人々の悲願する所であった一人の少女を、かえでの力が助けていた。少なくとも、後藤にとっても必要であった。】


「刑務所に入れられてる人間がまさか皆んな罪を悔いている訳でもない。」「それでも模範囚でいるならば、幾らか刑期は短くなる」
「尤もきみは贔屓目に見て無期懲役、公平に見て死刑囚といった所だが ─── 無期限の執行猶予は、付いて回るよ。きみが、彼女の輩(ともがら)である限り」
「精々よい囚人で居てくれると有難いね。きみを電気椅子に座らせたら、アリアは手が付けられなくなる」「実力部隊の指揮官を喪うのは勘弁したい。」

「 ……… シンクも、綺麗にするかねえ。」「 ─── これがきみの初めての任務だって言ったら、怒るかな。」
「掃除の苦手な課員たちの綱紀粛正。ウチも少しずつ人が増えてきたことだし、そろそろ当番制にするかな ─── 。」


【様になっているな、とでも言いたげな後藤の顔であった。纏う気風と器量は凡そ幼妻のそれであった。 ─── なにか深い所に踏み込んでしまった悲しさを、】
【下らない会話の中に誤魔化している一瞬は薄ら笑いをもって応じるしかなかった。後藤椋持とはそういう人間だった。それでも、表面的な意味合いの言葉を、彼もまた】


「紅茶にジャムとウォッカを入れて飲むのは、風国流らしいね。」「本場の氷国ではジャムを入れずに少しずつ舐める、とか。」
「 ─── アリアの出身も、風の国と聞いた事がある。」「色々と複雑な事情があって、水国の軍に編入されたと聞いた」
「家族を全て亡くして全身義体になったのも、丁度その頃だそうだ。止むに止まれぬ理由が、彼女にもあったんだろうね」


【 ─── 語るのは、きっと少女の知らぬ、想い人の過去。思い出話をするような語調であった。煙草の火を彼は求めているのだろうが、給湯室は禁煙であるべきだから】
【なれば彼の語る言葉も決して深いものには成り得ないのだった。 ─── それ以上を知りたいのならば、人事資料でも漁ってみればよいのだった】


135 : 名無しさん :2018/09/19(水) 01:58:29 wjAOvww20
>>134

【――――――、ぱち、と、瞬きがあった。他人に褒められることは慣れている子だった、年上に褒められるのももちろんよく慣れていた、そう振る舞う方法を知っていたし】
【そうやって振る舞えばだいたい結果がついてくるだけの能力と器用さを持っていた。もっと言えばそうするために精神までどこまでも落とし込むことが出来るタイプだった】
【無理やりに思考を狭めて突っ走る方法を分かっていたから――それでいて、一度立ち止まってしまうと二度と動けないタイプだから、こそ、おそらくは生存したのだろう】

――――――、――どうだか。道中とか、ちょっと後悔してるみたいな目、してましたけど……。

【――だけれど、まだ、それを春先の白薔薇みたいに全身で浴びて然りというほどには、馴染んでいないのなら】
【それでも同時に伝える言外の意味合いもあるのだろう。――彼女にとっても、あの場にアリアが居合わせることは必要だった。彼女は限りなく現世への未練で縁であった】
【ともすればあの場で彼女は共に殺されていておかしくなかった。――その場合、少なくとも確実に、もう一つは命が喪われていたことだろう】

【――――けれどきっと彼女はそれについてあんまり興味がなさそうだった。信じた神様が居なくなってしまったなら、あの少女をさそりみたいに嫌う必要もなくなって】
【人間として相対したこともない。況や話をしたこともないのだし。少女にとって白神鈴音はデータの中の人間だった。から。――あとは好きに興味のある人間がすればいい】

【なんて、】

猫をかぶるのなら、上手ですよ。女の子なので。……別に、いいですけど。お掃除するのは嫌いじゃないです。家(うち)でやってましたし。
――でも、そうですね、当番にした方がいいんじゃないですか。蛇教(うち)だと当番でした。――、掃除は料理と違って致命的にダメにはならないですからね。
料理はマジでヤバい人がたまにいるんで、出来る人で回したほうがいいです。カレーの隠し味にお徳用割れチョコ1キロ投入するバカとかいますし……。

隠れてないにも程が――――、あ、

【――――わずかに焦げてしまったのを下の面にして、しれっと重ねる。掃除は当番にしたらいいって進言していた、誰もなるだけ手間を減らしたいと思えば、】
【ある程度までは勝手に綺麗になっていくものだろうから。そのうえで気になる潔癖症は勝手にやったらいいと思うけれど。――であれば彼女がいくらか出来るのも、そのおかげかもしれなくて】
【宗教仕込みの家事スキルというのもなんだか奇妙なものがあるんだけれど。――そのくせホットケーキなんて当時も焼いていたんだろうか、なんて、分からせないけれど】

――――――なんとなく分かってるから、いいですよ。名前は聞きました。家(うち)は水なんですけど、結構風の方に近いんで、どこかで……いや、
そのころ、私、赤ちゃんですかね。――――アリアさんて、いくつなんですかね。私十七歳です。女子高生ですよ、学校行ってないですけど。――そういえば、

関係ないんですけど、私のこと、フリー素材にしすぎてないですか? この前、言ってないことアテにされました。

【――なら、それは、遠回しな嫌味なのかもしれなかった。アリアに知られた覚えのある情報はあっても、彼らに伝えた気のない情報はいくつも、いや、ほとんどなんだけれど】
【そのくせに知られすぎているように思えるのなら。そのうちに自分で聞くからいいって言っているようでもあった、自分の過去のこと、知らぬ間に言いふらされても嫌だろうって】
【つまりは"あんまりいい気がしない"って表明しているのに違いがなくて。――だから四つ目もあぶくが乾き始めていた、から】

アリアさんが原本ぶっ壊しちゃったから、私も細かいところまで覚えてないんですよね。

【――だいぶ距離の近い嫌味も添えて、】


136 : ◆RqRnviRidE :2018/09/19(水) 03:04:56 6nyhPEAc0
>>79

【少女はネグリジェ然とした薄い下着を身に着け、ワンピースを被ってサンダルを履き】
【湿ったロングヘアを手櫛で整えながら水滴を落とす、最後の一滴まで払い除ければ】
【現れるのは晩夏の様相、湿り気のひとつさえ無く、端から晴天の元に居たかのよう】

【黙っていれば飼い殺しにされていそうな見目だった。 意思を持たない人形のような儚さがあった】
【しかし、涼しい顔をして異形を引き裂き、その横に立っていた。 金髪の少女と似た達成感を表情に滲ませながら】
【相手が何処か安穏な性分であるのなら、此方は常識の箍が外れてしまっているかのようだった】
【此処が禁猟区であったとしても平然と同じことをやってのけただろう、──そんなことを予感させて】

そうなの? ふしぎ、そう感じるひとがこんなにも近くに居るなんて……思わなかったの。
偶然か必然かは分からないけれど……いい友人になれるかしら、私たち。

【帽子を胸に抱えて歩み寄ってくる少女は、すこし目を見開いて、薄弱な表情の中に幾らか驚嘆の色を含ませた】
【チェアに慎ましく腰掛ける。 視線の先は少女の青色の瞳へ──其処に重なる揺らぎを見留めて】
【深追いはしない、けれど同調する心が僅かに期待感を窺わせる、友人になれるかしら──なんて】

ふふ、遠慮も心配も要らないのよ? こんなにおっきなの、食べられる機会なんてきっとそうそう無いわ。
それに狩人なら生肉のひとつ食べられて損は無い──って人から聞いたことがあるの、……もしかしてあなたは違うの……?

【嗚呼それはなんと純粋な問いであったか、余所で聞いた狩人と生肉の話も凡そ疑う余地が無かったのだろう】
【拒否されて尚薦める辺り、子供らしい無邪気さというか、あるいは残酷さのようなものが垣間見えた】
【それでも切り出された肉塊を見遣れば、小さく息を呑んで躊躇を見せる。 彼女もまた生肉を食らう習慣は無いらしい】

……、…………私ね、ジルウェットっていうの。
もし、万が一、何かあったらその時は宜しく、なの……──。

【たっぷり数十秒悩んだ挙句、少女──ジルウェットは
、今際の際みたいな雰囲気で名乗りを上げながら】
【切り身を鷲掴みのうえ、目を瞑りながら半分くらいまで丸齧りする。 むちむちと肉の咀嚼を続ける】
【反射的に吐き出したり、嘔吐いたりする様子はない。 ならば風味はクリアしたと見える、あとは嚥下のみだった】

【少女も勇気を持って口にしたなら、まず多少の泥臭さと共に、濃厚な肉の味と独特の旨味が口の中に広がるだろう】
【口触りとしては特有の歯応えとざらつきがあるものの、脂が少なく、喉越しに引っ掛かりが無いため飲み込みやすい】
【捌きたてゆえか一癖、二癖もある味わいであったが、さて】


137 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/19(水) 21:41:20 hEXW.LLA0
>>135

【後藤としても矢張り与り知らぬ話であった。白神鈴音と呼ばれた少女を助けるのならば、他の人間の協力を取り付けるに容易な方便を貸しにできる。それだけのこと】
【或いは自身の敵とする虚ろの神々にもさしたる情念は抱いていないのかもしれなかった。平和を脅かしうるから、無力化する。ごく役人的な思考を以って】
【 ─── 然して部下への信頼は、篤くすべき点においては篤いようでもあった。虚仮にされて良い気分ではないのだろう。そしてまた、救える倫理を救うに吝かでなかった】


「 ……… ふうん。」「おれも、彼女の口からは直接に聞いたことはねえや。」「今年で28だ。誕生日は2月26日。」
「生憎それも、与り知らぬ所さ。」「おおかた噂好きの三流メディアの仕業か、さもなければアリア自身が惚気話にくっ付けてるか、だ。おれにはどうしようもないよ」


【そうして飛んでくる皮肉には、 ─── のらりくらりと恣意な言葉尻にはぐらかしてしまうのだろう。中間管理職の手慣れた遣り口であった】
【だというのに自身の過去については語ろうとしないのだろうから卑怯な大人だった。他人の心中に薄笑いの土足で踏み込み、己れの内心は決して明かそうとしない】


「 ………ま、 "憶えてる"んじゃないかなあ。」「集めた資料の複製と電子化は、ウチでは常に行っているが ─── 。」
「きみの事について、アリアは相当に個人的な調査を進めていたみたいだし。答えてくれると思うよ。それはもう、事細かに。」


【然らば言外の意が通じていないように彼は言ってのけた。 ─── ず、とコーヒーを深く呷り、飲み干すならば】
【立ち上がってシンクへと向かう。幾らか骨ばった両手が器用にドリッパーとカップを運んで、使い終えたペーパーを三角コーナーへ落とし込むなら】
【顔も合わせずに黙々と洗い物を始める。「 ……… 食洗機、買うかなあ。私費で。」くだらない呟きは濯ぎに流れる水道水へと溶けていくのだから、 ─── 然し】


「 ──── さて、と。では、改めて。」

「蜜姫かえで。」「 ─── きみは、我々の部隊に参画する事を選ぶのかな。」
「拒絶するならばきみは銃殺刑だ。傷害、誘拐、犯罪教唆、死体遺棄と損壊、公務執行妨害、道路交通法違反、そして確認されているだけで100件以上の殺人 ─── 。」
「よくもまあ17歳でここまで罪状を重ねられたもんだ。迂遠な法手続きに無意味な税金を浪費する必要もないし、おれたちは蛇教幹部最後の生き残りを仕留めた栄誉を得る」

「 ─── 然し、もしもきみが、アリアの側に居たいと望むならば」「戸籍上の死および課員の義務と引き換えに、彼女と恙無い日常を過ごしてゆける程度の自由は約束しよう」
「まァ悪くない話だと思うがね。」「改心しろって訳じゃないし、きみはただアリアと共に任務をこなしていけばいい。」「つまりは晴れて、揃いの首輪付きになる訳だ。」


【「今すぐに答えなくっても、いいけどさ。」 ─── きゅ、と水栓を締める。袖のまくられたスーツから、微かに安い煙草のにおいがした。】
【どうやら随分と皆な喫煙者であるようだった。税率も規制も厳しくなる今時、シガレットなど流行らなかった。ならば矢張り彼らは社会の守護者を標榜しながら、陽の当たる場所に居られない人間の集団であった】


138 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/19(水) 22:46:13 hEXW.LLA0
>>136

【対して少女には女性性が欠けていた。 ─── 指先から顔貌まで嫋やかに線の細い体付きは、着慣れたトレッキングウェアに対して不揃いと呼んで差支え無かった】
【それでいて顔立ちも端正でこそあれ性的な輪郭を持ち合わせていなかった。ただ絹織に似た白く淡く瑞々しい膚の横顔は、笑顔にさえ幾らかの憂いを帯びていた。それでも、】
【「はは、 ──── 」「もう、友達だろ。これだけのこと、やったんだからさ。」青い双眸を幾らか丸めて、そうして心労ゆえ噴き出すようにして笑うのだ。】
【 ─── 眼前の少女と同じように無垢であった。それは青春の純粋性と殆ど等価なものだった。猜疑という概念を知れど、自身の思考に落とし込んで考えることに手の伸びぬ】
【ならば幼い煌めきに追い詰められて、観念したように切り出された肉塊を見つめた。ごくり飲み込む生唾は、空腹にあらず緊張ゆえのもの。】


「 ……… 本分は狩人(ハンター)じゃなくてね。長距離射撃(ビッグボア)が趣味の、どこにでもいる射撃趣味者(シューター)さ。」
「生き物を仕留めるのはそこまで慣れてないし、 ……… 解体なんて、まったくの素人。旅は、嫌いじゃないけれど」

「 ……… 僕は」「僕は、シーラだ。」「シーラ・T・ヴェールイレーベチ。」
「 ─── 最悪ヤバかったら救護ヘリ呼ぶし、うん、大丈夫だよ。多分。」


【 ───── 結局、いくらかの良心が働いたのか。ほとんど蒼い少女と同じタイミングで、一思いに一切れへかぶり付いて】
【もちゃ、もちゃ、もちゃ。 ………… もちゃ、もちゃ。強張っていた表情が少しずつ緩和され、やがて納得したような真顔に変わる。もちゃ、もちゃ、もちゃ。】


「 ─── む。おいしいけど、 ……… 」「なんだろうね、これ」「 ……… んー。んん。」
「あッ、」「 ……… 思い出した。」「クジラっぽいね、これ。」「うん。淡水版のクジラだ。僕はそう判断したぞ」


【ごくん。 ─── 嚥下して、ふむ、と一唸り。妙なところで納得したらしい。もう一口を切り出して、食べてみる。「やっぱクジラだよ、これ。」】
【妙なところで度胸が据わっていた。妙なところで楽しんでしまえる少女らしかった。ならば割合に無神経な距離感で、相対する蒼い少女へも勧めるのだろう。】


「ちょっと生で食べきるのはキツいよな。」「 ……… でも、割と単体でイケそうだ。」
「焼いたり煮たりしてみよう。」「干し肉にでもしたら、無駄なく楽しめそうだね。」


【「一応さ、塩ならあるんだけど ─── 君の能力で、手早く揉み込んだり水抜きしたり、できないかな?」ごく真面目な顔をして、青い視線と共に彼女は問うた。】
【おもむろに立ち上がって手近な流木より木串を作ろうとするあたり矢張り妙なところで折り合いを付けてしまえる人種であるらしかった。 ─── ぶすり】
【ぶすり、ぶすり。ブッシュナイフに切り出した木の串を、やはり手近な肉塊に射し込んでいく。「どうせなら、やっぱ焼くのがいいよね。ダメだったりする?」尋ねる。ごく日常的な声で】


139 : 名無しさん :2018/09/19(水) 23:09:49 L6ulvfxo0
>>137

【だけれど、彼女はそれ以上のことを知らないようだった。そもそもが、――きっと彼女は虚神という概念を、先日のあの日まで認識していなかった】
【信じているものが虚ろなる神だと知らずに生きていた。――最も、彼女が蛇を信じるようになったころ、あの神は、もっと、違う形だったのだろうけれども】
【それがいつしかこんな風になって、ならば運命はひどく気まぐれで、その最後に、いっとう気高い狼に見惚れてしまったなら、――だからやっぱり、どちらにも興味は薄い】

――じゃあ、じゅういっこ上ですね。小学校と、中学校と、高校中退分くらいですかね、……。……テレビ見ないので知らないです。
アリアさん、見せてもくれないし。別に、見たいものがあるわけでも、ないですけど……。――、それなら、まあ、しょうがないですけど、……。

【ゆえに四つ目もやがて焼きあがる。そう時間は掛けていないとはいえ、室温に置かれた生クリームがしきりに待ちわびていた、はぐらかされるのなら、追いかけやしないけれども】
【ちらりと述べられる彼女の誕生日については、――何というでもなかった。自分で聞きたかったのかもしれないし、それともあるいは、サプライズを画策するのかも分からず】
【まあるいお月様みたいに黄色い生地がふつふつと泡を浮かび上がらせていくなら、――ちょうど生の生地もなくなりそうで、ボウルの中、お玉でこそげる音を繰り返す】

ふうん……まあ、別に、アリアさんなら、いいですけど。――そんないつも見てたわけでも、ないですし。
――――ただ、だれかれ構わず見られたいわけでも、ないので。あんまり出回ってるようなら、シュレッダーして燃やしてやろうかって思っただけですよ――。

【――――なればいくらか複雑そうな顔もするのだろうか。アリアに知られていることについては、――自業自得でもあったから、仕方がないとして】
【ひどくプライバシーな情報しか書かれていないものだから。身体的と精神的にはもちろん。極限の状態での振る舞いまでも、記されているものだった故に】
【その出来事を否定も後悔もしない代わりに、気分としてはいくらも不快とのことだった、――きっとめいっぱいに隠していたのかもしれなかった、気高く在れって、決めていたから】
【だから傷の手当てを任せたのはごく少ない人数だけだった。そうしてその数人は浅い眠りのたびに痛みと苦しみを訴えて泣きじゃくる彼女を観測することを許されたから】

――――――――あはは、正義が聞いて呆れますね、そんななまっちょろい事言ってたら、世間が立ちいかなくないですか?
でも、……、そうですね、……――。……アリアさんとね、約束してるんです。冬になったら、一緒に、お星さまを見に行こうって、……。
嘘つきは泥棒の始まりって言うじゃないですか。私、別に、そういうのには興味がなくって。……落ちてた財布とか届けるタイプですし。だから――、

【――彼女は服に染みついた煙草の臭いに頓着しなかった。とっくの昔に慣らされてしまっていた。嗜んでやろうという気には、あまりならなかったけれど】
【自分に本来与えられるべきものと、しかして自分の行動/発言如何では、一つ首輪を受け入れるだけで変わる未来を提示されて。――小さな笑い声は、けれど、微かが過ぎる】
【やがて立ち消えるのなら、残すのは冗談めかすに似て、――そのくせきっと自分のペースを保つためのものであった、伏し目の視線、呟く言葉の意味を、誰かが聞くなら】
【きっと怒るのだろう。殴り掛かられそのまま殺されてしまっても仕方がないような言葉だった。ありきたりな反省をしているはずはなくて/そしてきっとそうしたら死んでしまいたい】


140 : 名無しさん :2018/09/19(水) 23:10:06 L6ulvfxo0


――いいですよ、アリアさんとおそろいの首輪、付けてあげます。私にもピッタリのサイズだと、いいんですけど――……。
おっきかったら抜けちゃうし、ちっちゃかったら死んじゃいますよ、……まあ、その辺はお上手そうなので。――そういえば、知ってますか?
変人だらけの集団をまとめてる人が居たなら、その人が誰より変人なんですよ。――私の知ってる限り、ここの人、100%変人なので、参考までに。

だから、今すぐでいいですよ。私、思い切りはいい方なんです。――――あとは、そうですね……。
食洗器と乾燥機と掃除機のロボットはあると人生が捗りますよ。特に掃除機には猫が乗ってカワイイですから。

【――――あるいは、彼女にとって、それはもはやよっぽど考え込むほどの出来事ではないのかもしれなかった、ゆえに、ろくな間も空けぬのだろう】
【より深く堕ち行く道があるとして。けれど愛してしまった人と一緒に歩く道を赦されるのだとして。だってきっとふたりでひとりだから、ひとりっぽちでは寂しいって分かったから】
【ならば自分だって変人気質だって警告しているのに違いなかった。――別に猫を解き放てと要望しているのではなく、ただ、ふと、思いついたような温度感で】
【焼きあがった五枚目はきっと一番きれいな焼き目をしていた。それに形だって真ん丸だった。――笑みが漏れても仕方がないほどの仕上がりなのだろう、けれど、】

【――それにしては少女が吐息みたいに漏らした笑みは、ずっと、和らいで見えて。残った生地を鍋へたぱ、と、垂らすなら、空っぽのボウルに、水をざあと注いでしまって】
【使った器具もボウルに水没させる。出したものは元の場所に戻すのだろう。――そうしたらまだ全部は片付かないけれど、きっと、あらかたは綺麗になる、この瞬間の写しみたいに】


141 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/20(木) 00:09:29 hEXW.LLA0
>>139>>140


【「情報操作なら優秀なハッカーが一人いるぜ。あまり不都合があれば、彼に頼み込んでみるといい」 ─── そう語る誰かの正体と、既に少女は会ったことがあると】
【それでいて誰なのかは判然としないこともまた、後藤の知らぬところだった。それにしても随分と卑近で拗れ切った職場の人間関係であった】
【前科十数犯となる17歳の少女を斯様な労働条件で勤務させるのもまた、間違いなく何かしらの法律に抵触していた。娼館の下卑た主人でも幾らかまともな感性をしていた】


「ふ、 ……… 抜かすね。」「 ─── 公務員だからってブラックじゃないと思ったら大間違いだぜ。こちとらバリバリの不定休さ」
「入隊したら最後、非番でも24時間の待機状態だ。」「アリア教官の手で、きっちり諜報屋としての訓練は受けて貰うし ─── 、」
「デートの最中に呼び出されても文句は一切受け付けないから、そのつもりでね。」「 ……… ここにサインと、右手の拇印を。」


【ならば矢張り男もまた碌でなしの狂人であるに違いなかった。冗談めかしてくつくつと笑っていた。恐らくは少女にとって初めて、後藤椋持の見せる感情であった】
【ごく楽しそうに笑っていた。 ──── このジャジャ馬を如何にして上手く調伏してやるか。既にそれを今から考えているような、どこか純粋無垢な笑いだった】
【「なら食洗機と乾燥機は確定かな。あとはアコースティック・キティでも飼ってみるかねえ。10億かけて。」ようやく男は、冗談らしきものを言った。】
【そうして用意周到に懐から書類と粉墨と万年筆を取り出すのだろう。そこばかりは警察の遣り方であった。小難しく長ったらしい契約の書簡、その最後のページ】
【記名と捺印の無機質な一節がいやに白い紙面へ刻まれていた。 ──── 記すべきものを少女が記すなら、それさえも男は淡々と受け入れて、「 ……… ありがとう。」】


「他の課員は表向き、PMCの社員を名乗る事になっているが ─── 。」「 ……… きみの場合、社会的に存在しない人間だからねえ」
「大体はアリアと協働してもらう事になるから差し当たり身分の心配は要らないが、偽物の経歴と素性は与えさせて貰うよ」「 ……… きみの髪と眼、物凄い目立つしね。」
「 ……… そうだね。かつてのカルト教団において幹部を務めた蜜姫かえでが、生前に仕立てた無辜の影武者であり双生児の妹分 ─── なんて、どうだろう。」

「ともあれ、我々はきみを歓迎するよ。」
「秀抜かつ無二の執行力として。」「神をも打ち破る我々の鬼札として。」「我らが隊長の見出したパートナーとして。」

                                「 ──── ようこそ、外務八課へ。」



【幾分か大層な身振り手振りと、演説じみた大仰な言葉で、男は少女の選択を祝福した。 ─── 握手に伸ばす骨張った手を拒まれるなら、やはり苦笑に済ませるのだとしても】


142 : 名無しさん :2018/09/20(木) 00:43:31 L6ulvfxo0
>>141

【「――別に、いいですよ。だって死んじゃうんですよね、私」】
【あんまり頓着していないような声だった、だって自分はここに居てここで考えているのだし、世間が認識する自分の生死と、ここに居る自分は関係がない】
【未練がないではなかった。けれど信じる神様は居なくなってしまったんだった。それでもきっと彼女は信じていた、――ただ、誰かの隣で生きたいって初めて思ったから】
【違いなんてそれっぽちに過ぎないのだろう。しいていうなれば、――贄を欲する神が居ないのならば、それを集める役割であった彼女も、長いお暇をもらって然りであり、】

公務員はドブラックだって、今時の子はみんな知ってますよ? なんで期待してないです。この前アリアさん思ったより早く来てくれたし。
……あと、私、寝ないと駄目なタイプなので、その辺は覚えておいてくださいね。ロングスリーパーなので、10時間くらい寝たいです。
眠らないと、著しく低下するんです。お肌の調子と、能力の精度。…………オスの三毛猫にしたらいいですよ。

――――、お鍋見ててください。私の分なんで焦げてもいいですよ。うんと焦げたら別の人の分になるかもしれないですけど。

【ならば、年上の男性、――ましてや上司ということになるのだろう彼にまったく敬意を見せやしないのもまた然りなのだろうか。丁寧ぶった言葉は、あくまで"ぶった"だけであり】
【だけれどまったくのわがままを言っているわけでもない。彼がアリア経由に彼女の情報を入手しているのであれば、それは本当のことでもあったなら】
【睡眠時間が一時間減る程度でも目立った衰えを見せる。徹夜なんてしようものならきっと死ぬタイプだった。それほどまでに頭の中身に負担がかかる力であるらしく】
【"今回"も、一般的にありふれた人が眠るよりずうっと長く眠りこけていたのだから、証明にもなるだろうか。――冗談めかす声音、残った鍋を彼に委ねてしまうなら】
【差し出される一式をもらって、さっきまで彼が座っていたところに座るんだろう。契約書は上から下まで全部読むタイプ。たとえ、それ以外どうしようもないんだと知ってても、】

――――――――――、嫌だって言っても、拒否権はないですか? 弟が居たんです。私のきょうだいはあの子だけだから。
まあ、――だめですかね。ならいいですよ。染めたりしても別にいいですけど……。――お任せするので、あとで教えてください。

――――、ああ、でも、新しい名前が必要なら、アリアさんに決めてもらいたいです。希望はそれだけです。

【ゆえに至極上の空な返事をするのだろう。目は文字列をひたすらに追いかけていた、だから、独り言にもよく似てる声色だった】
【"弟"――調べる限り、ただありふれた少年としての人生を送って、そうして、火事に焼け死んでいた。特別なことなんて何一つない人生だった。だから、】
【――文句はなかった。しいて言えば、もしも新しい名前を授かるのなら、そのときはあの人に決めてほしいって】

【――――――文言の最後まで目を通すのを二回も三回もやれば気が済んだのだろう。やがて彼女は求められた通りのことをする、自分が死ぬのを受け入れるのだろう】
【ただ強いて言うのなら、行動の慎重さのわりに、いざ書き記すときはためらわないのだろう。思い切りがいいっていうのは、特記するほど嘘ではなくて】


143 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/20(木) 01:31:46 cd/PIeYk0
>>142


【「正しい理解があるようで助かるよ。おれとしても、必要以上にきみを酷使することは避けたいしね。」ならば彼は、焦りもせずにパンケーキの様子を見るのだった。】
【ごく無音に近い静かな蒸発と共に少しずつ狐色の生地が焼けていくならば、 ─── それなりの瞬間を見繕って引っくり返す。やはり綺麗な狐色であった】
【少女の読み耽る間、恙無く後藤は一枚を焼き上げてしまうのだろう。そつのない仕上がりであった。器用なのは口先だけでないように思わせた。】
【 ──── 少女についての情報は、アリアを経由して凡そを把握していた。であれば懲罰部隊のように、無理を押して使い潰す必要など、どこにもないのだから】


「今ぱっと思い付いて捏造した。」「異存があるなら強要はしないが、新しいのをおれが考えてやる道理もない。」
「どうせ偽物の過去だ。 ─── 波風の立たぬ程度に、きみの好きにすればいいさ。」「変装ならウィッグで必要十分だよ」

「 ─── そいつぁ、おれに伝えることじゃないね。」「きみの口で彼女に伝えてやりな。 ……… おれの与り知らぬ所さ」


【あくまでも突き放すような距離感であった。家族のことは知っていた。蜜姫かえでが何故に蛇教の信徒へと身を窶したのかについても把握していた】
【それに入れ込む様子は毛頭なかった。 ──── オールバックにされた彼の額は幾分も広かった。それが頭髪の衰えであるかどうかについては不確かであった】
【幾ら読んでも仕方のない契約に目を通すのも咎めなかったし、躊躇いなく記された誓約についても頷くに過ぎない。非合法な契約ではあったが、決して素人を騙す為の阿漕な一節は無かった。】

【ならば後藤は誓約と契約の書簡を受け取り、差し出した全てをそっと懐に仕舞うのだろう。 ─── 課員のスカウトは何時でも備えているようだった。何せ人が足りぬから】


「さて。 ──── おれはこれからデスクワークさ。」
「今回のミッションの報告と事後処理に加え ─── 」「今後の計画と作戦について、十全な配慮と共に立案しなければならない」
「きみの"阻害"と"魔眼"は、我々の今まで達成し得なかった超自然的存在を撃滅し得るジョーカーだからね。」「 ……… そゆ訳で。」

「今後とも、よろしく頼むよ。かえで君。」「 ─── あんまり無茶はしないように。アリアが泣くと大変だ」


【言うだけ言って男は給湯室から去っていくのだろう。ひらひらと軽薄に片掌を振って、一顧だに振り返ることはしなかった。背広の後ろ姿はどうしようもなく草臥れていた】
【 ─── ロシアンティーだけがタスクとして残っているのに違いなかった。アリアが目覚めてもよい頃合いだった。ならば紅茶と糖蜜の愛おしいほど甘ったるい香りの中、睦み合うのに必要なものは全て足りる】


144 : 名無しさん :2018/09/20(木) 01:59:04 L6ulvfxo0
>>143

【――上手に焼かれた生地がすらりと鍋肌を撫ぜて、けれど引っくり返る瞬間ばかりは何かどこか気の抜けた音がするのだろうか、甘い匂いがふわと漂っても】
【彼女は視線を上げてこなかった。指先で絡めるように持った万年筆をふらふら弄びながら頬杖にて黙読していた。これからの未来を決めるにしては、幾分か気怠げに見え】

…………じゃあ、あとで考えておきます。

【変に触れられないのは彼女にしても都合がいいのに違いなかった。アリアだって、――彼女の口から、彼女の家族の話を聞いたことはほとんどないのだから、】
【あまり話したくないのかもしれない/あるいはまだ整理さえつけられていないのかもしれなかった。だからこそ彼女は蛇を信じたのだろう、それを寄る辺にしたがった】
【亡くしてしまった家族を受け止める前に、自分は他人を不幸にすると認識してしまった。きっとまた誰かを殺してしまうんだと理解してしまった。――なら、間違いなくそうだった】
【身寄りをなくした少女を引き取ってくれた親戚の伯母のことを考えることはきっとほとんどなかった。誰も不幸にしないために殺した人数を彼女は覚えていなかった。それでも、】
【最初のきっかけは限りなく"それ"であって、――、差し出した全部が再びに回収されるのを見れば、彼女もまた立ち上がる、「――あ、」小さな声、】

お湯……沸かしてない……。

【――――今自分が何に署名したのか、分かっていないのかもしれないだなんて、そんなはずは、ないんだけれど】
【変に気が弱いくせに変なところで肝が据わっている。であればすっかりと忘れていたんだろう、――だから仕方なく今から沸かす。その間に鍋とかを洗えばいいって】
【いくらも言い訳じみた思考を頭の中でこねくり回している、――冷めちゃうって思うのなら、それなり程度に眉を潜めていた、だから、なら、これは、きっと、八つ当たりに似る】

……だから、私、言ってないんですけど。やっぱアリアさんが情報源ですね。……。まあ、もう、いいですけど。……。
もういいので、ついでに言っておきます、……生き残ってるの、私だけじゃ、ないですし。――、イル=ナイトウィッシュ。
あの人――――白神鈴音とデキてますよ。だから、なんか、恩でも売ったらどうですか。交渉役は人間じゃない方が良さそうですけど。

【じとりと伏せたマゼンタが彼に向けられて。結局言ってない情報が出回りすぎていた。ならば心当たりなんて一人しかいなかった。だから、彼女は黙るしかなくなってしまう】
【ひどく不満げに呟いたなら、――誰かを見逃しているんだって彼女は続けるんだろう。七人のうちに三人が死んで、そして二人も死んだ。彼女はここに居て。そうしたら、】
【もう一人生きていた。頼れると思うかは別にして、――現状の時点で、こちらは"あちら"にすでにいくらかの恩を持っているのと等しい、らしいのなら】
【――あるいはあの少女を現世に呼び戻す方策を確立できたならば、少なくとも喜ぶんじゃないかって。そのくせ、彼女自身は件の病魔と仲が悪いんだって、感じさせる素振り】

【――――――だから、彼が給湯室を出ていくなら、彼女は一人でガスコンロを睨むんだろう、それで何がどうなるでも、ないけれど】
【数秒ほど睨んで炎の眩さに目が焼かれるのなら諦めていろいろと盛り付けていく。といっても生クリームを思い切りぶちまけて、蜂蜜をぶちまけて、】
【結局言われたものを作っているんだった。珈琲に入れてなお生クリームはたくさんありすぎて。そのくせ彼女は極度に下戸だから、ぜーんぶ、ぜんぶ、アリアの分】
【そのうちにやっとこお湯が沸くならやりはぐったタスクも回収して。なればお部屋まで持って行ってやるのだろう、だって、服なんて着たって、きっとどうせ脱いでしまうんだ】


145 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/20(木) 02:37:34 cd/PIeYk0
>>144

【察するのは下手でない、 ─── どころか人並み外れて出来る男であった。ならば多くは問わず、多くは示さず、ただ表面的な感情を遣り取りするだけで】
【「それがアリア君もミレーユ君も殺す気満々なんだよね彼女。 ─── どうしよっかねえ。」振り向きもせずに呟いて、果たして後藤は去っていった。】
【出来上がった平積みのパンケーキは降り積もった新雪と琥珀に溺れるようでさえあり、ロシアンティーはアールグレイの香り高さを殺してしまう寸前にまで果糖に満ちる。】
【 ─── 幸いなことに、ステンレスの洒落たトレイは用意されていた。或いは少女の異能を少し使ってやれば、熟れた給仕の真似をするには十分に過ぎるのかもしれず】

【いずれにせよ再び少女は、アリアの眠る個室へと誘われたのだろう。 ─── 空調はやはり幾分か効き過ぎていた。スイートルームと呼ぶにも些か殺風景であった。】
【それでも洋菓子と紅茶の織り成す甘い薫風に致死量の愛情を加えれば何もかも足りてしまうのだ。そういう生き方をしてきた。殺し合う刹那さえ恋慕を捧いでいたのなら】
【ここは狼か蛇か何れにせよケモノの胃袋である事に違いなかった。邪魔っけな衣服など蜜漬けの胃液に濡らして、すれば後は脳髄の最奥まで蕩け合ってしまえばいい。】


        「 ───………… ん、ぅ ……… 。」


【 ─── ベッドの上。白いシーツは幾らか乱れていた。それよりも余程に真白い肌をした女が、長い銀髪を惜しげもなく広げ、それでも片目を隠したまま、横寝のままにむずかる声音を漏らす。]
【稚児の仕種にごく似ていた。蜜壺(カップ)に注いだ香りが空調の一撫ぜで寝床まで運ばれた。 ─── それは皇子の口付けだったろうか。然し雄の欲望など、今ばかりは忘れているのだから】
【彼女もまた甘味を求めているだけだった。徐に薄い片瞼が開く。目覚めにあり尚も儚さを宿した青い隻眼の輝きが、何度か瞬いて、ごく長い睫毛を揺らすのならば、 ─── 投げ出されていた右手の掌を、まじと見つめ】
【気怠さ等とは縁遠い体の筈なのに、しずしずと上体を起こしながら、左眼の目元を軽く指の背で擦るのだろう。左手で枕元のスイッチに手を伸ばし、ブラインドを開く。朝陽の中、まじまじと、右掌を覗き込むならば】

【軈て冷たくうつくしい顔立ちに、幽かな怯えたを滲ませながら、部屋の中を見回す。 ──── そうして漸く、探してやまなかった愛しい人を、紺碧の中に映すならば】


            「 ──────── かえで、」



【見る間に憂いを綻ばせて、きっと少女の初めて聞く音階で、甘いソプラノが名前を呼ぶ。誰よりも愛しい人の名前。 ─── 射し込む陽光も、湯気立つ紅茶と、円やかな糖蜜の香りが、2人の世界を形取ってくれた。】


146 : 名無しさん :2018/09/20(木) 03:10:40 L6ulvfxo0
>>145

【それでも、――きっと、料理上手な誰かが作るものよりは拙かった。甘いクリームは初めからいくらか緩かったし、今では室温とよく焼けた生地の熱により一層蕩けて】
【ならばこれから先のことを予感しているのかもしれなかった。そうしてきっと彼女はそんなにも甘いものに特別の感情を抱かないなら、自棄みたいな量の蜂蜜を添え】
【ただしそれはあくまで彼女の"自棄"だから。――本当に甘いものが好きな人から見るのならば、そう大した量でもないのだろう。寒い部屋の中なら、かえってちょうどいいだろうか】
【――少なくとも、そんな瞬間にさえ微笑みあってしまった二人にはきっと豪華な調度品ばかり並べられた空間は似合わぬに違いない。だって、大事なのはお互いだけなのならば】

――――、もう、アリアさんたら、お寝坊さんですね。私が隣に居ないの、気づかなかったの?
ちょっと前まで、ほんのちょっとだって離してくれなかったのに。――――キスしたって気づいてくれないんだもん、泣いちゃいます。

【かちゃん、と、やがて彼女は机の上に持ってきたトレイを置くのだろう。それのみで、すでに蕩けきってしまっていた生クリームの一部が、皿まで滴り落ちて】
【拗ねるような揶揄うような声で、けれど彼女は嘘を吐いていた。見惚れるばっかりで何にもできなかった言い訳にこさえた朝食を持ってきたのが、その証明に等しく】
【幼い子みたいにむずがる声がひどくいとしくて仕方がなかった。今すぐに抱きしめてあげたかった。であればきっと幼い子と同じ体温をしているって、予感させるのだから】

おはようございます、――今日からずっとね、一緒ですよ。もうどこにも行かないです。アリアさんと一緒に居るって、決めたの。

【薄く透き通る藤色の髪が朝日に照らされて、きっと一級品の宝石のようにきらめいていた。うんと細い絹糸をとびきり上等の染料で色付けたとしても再現できない色合いをしていた】
【朝日に背中を向けてなお、その眩さを浴びる愛しい人の肌の白さに眼が眩むならば、紅紫色の瞳は細められて。そのせいか口元はひどく優し気に笑むのだろうか、ささめくなら】
【こんなに甘く香るスズランはどれだけ一等地の花屋にも簡単に入らないって思わす色合い、メープルシロップを採取するより容易く蜜の滴るのを幻視させる、甘やかさにて】

朝ごはん作ったんです、――あの、でも、ほんとに食べますか? 他の人に食べさせても、私は、よくって……。

【――だけれど急に眉を下げるんだった。少女の思考回路の中に、起きて30秒で生クリームたっぷりのホットケーキを食べるという概念が、ないのなら】
【なぜだか急に言葉は不明瞭になってしまう、――ちらと窺う視線が、あるいはひどく年頃のありふれた少女のそれによく似ていた。だから、笑わす方法さえも簡単に分かる】
【まっとうな恋愛なんてしたことがないのだから。真っ白な頬はまだ透き通る色合いをしていて、だからこそ、まーっかに染められたらきっと愛らしいって、伝えて】


147 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/20(木) 21:09:37 hEXW.LLA0
>>146

【無垢な日脚と穏やかな室灯が織り成すは、ただ明るみに身を委ねられる安らぎ。 ─── まして鼻先を擽る糖蜜の芳香と、モーニングティーの甘い気品に室温を満たすなら】
【ベッドに腰掛けるアリアは一糸纏わず、白く細い喉筋より溢れる悩ましげな嘆息。高鳴る鼓動を整えるように漏れる体温は、少女に向ける母の微笑に上書きされる。】
【ならば二十数度の室温であったとしても閨所の熱量と大した違いはなかった。「 ……… ごめんなさい。なんだか、目覚めたくなくて。」ぽつり儚げな言葉は、それさえも情念に浸されていた。】
【 ─── 徐に持ち上がる右手の指先が、記憶を辿るようにその首筋から頸を撫ぜて、最後に己が唇をそっと触って、楽しげな吐息に少しだけ肩を震わせる。なにか思い出すような仕種だった。ならば、続く少女の声には】
【どこまでも無垢にその表情を明らめる。きしり、ベッドの縁を軋ませて、アリアは立ち上がった。 ─── 少女より幾分も高く、しなやかさと柔らかさを秘めた白い肢体が、今ばかりは黒い外套に隠されていないから。】


「 ………… まあ」「まあ、」「まあ。」「 ─── そんな、」「 ……… もう。」
「あんまり、 ─── あっさり、言ってしまうのね。」「 ……… どんな顔をして喜べばいいか、分からないわ。わたし。」


【ほんとうに嬉しそうで、それでも少しだけ困ったような顔をしていた。何度となく交わした約束だった。もう二度と離れないのだと。ずっと一緒に居るのだと。】
【ある意味でそれは必ず破られて、ある意味でそれはずっと守られてきた。 ─── なればアリアも、どこかなにかを受け止めかねているのだろう。それでも】
【変わらず己れは信じるしかないし、信じずにはいられないし、信じなければ嫌だった。蜂蜜と生クリームに溶け出した一雫が、ケーキの上から溢れそうになるなら】
【少女へと一歩ずつ歩み寄り、甘く幸せに澱んだ大気をかき分けていく中、 ─── 机のシミになってしまう前に、琥珀色に蕩ける甘露をそっと指先で掠め取って】
【しっとりと色付いた己れの唇に、幽けく口付けるように味わうなら、「 ─── おいしい。」ごく何でもないように、然して純粋な情念を込めて、呟くのだから。】


「 ──── だぁめ。」「かえでが、わたしの為に、作ってくれたのですから。」
「貴女と私以外の人には、一口も食べさせてあげないの。」「ね?」


【そうしてアリアは少女を抱き留めようとするのだろう。 ─── 少女にとって邪魔っけな/女にとって迂遠な布地など限りなく零距離の間隙に消えてしまえばよかった。】
【肢体にそっと抱き寄せて、愛しげに薄藤色へ指を伸ばし、手櫛に梳いて首筋背筋をなぞり下げ、きゅうと締まった腰元に届くならば、爪先立ちまで抱き上げて】
【ちゅ、 ─── ほんの一瞬だけ、音を立てて、その唇を吸って奪う。うふ、と笑った。零す呼吸さえ既に甘かった。然らばそれは蕩けてしまう事への暗示に違いなかった】
【ひとたび少女が理性の輪郭を失うなら、狼は赤ずきんを牙にかけて、食器など要らずに啜り貪り、すっかり蕩けた貴女を胃袋に収めてしまうのだと。たとえ残酷で横暴で無作法でも、貴女が愛したのはそういう獣だから】
【 ──── とはいえ、今は、まだ遠い事。ならば直ぐにアリアは抱擁を解いて、代わりに少女の手を繋いで、ふたりテーブルにつくのだろう。隣にいても向かい合わせでも、何なら膝の上に座ってもよかった。】


148 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/09/20(木) 21:43:21 ZCHlt7mo0
【――――世界は、絶えず時の流れと共に移り変わっていき、今を生きる人の数だけ、物語もまた時の流れと共に紡がれていく】
【今を生きる人の数だけ紡がれる、幾百億編の物語――――】



【――――火の国 商店街】

「――――ひったくりだ! 待て!!」

【賑わいを見せる通りに、突然の怒号が響く。それを背中に全力疾走する、ハンチング帽の男が一人。それを追いかける2人の男――――】
【ハンチング帽の男は、小脇にバッグを抱え込んでおり、その逃走速度は確かに速かった。追手との距離を、ドンドン広げていく中だったが】

――――――――♪
「うわっ……ッ!?」

【前ポケットがやけに大きく膨らんでいる白のパーカーと、同じくポケットが目立つアウトドアズボンを着ている】
【明るい紫色の短髪と、勝気そうな金色の瞳が、元気の良さを印象付ける】
【ともすれば人ごみの中に消えてしまいそうな、身長130㎝前後の小柄な少年が】
【そんなハンチング帽の男の前に飛び出すと、その足を引っかけて転ばせに掛かる。堪え切れず、男は転倒し、その背中を追手に捉えられてしまった】

「っ、あ……ありがとう、助かったぞボウヤ!」
うん……それじゃ!

【男が取り押さえられる事を確認すると、少年は恥じらうようにそそくさと人混みの中に走り込んでしまう。後の捕り物には、もう興味がないといった具合で】

――――――――バーカ……

【――――その手には、油断した追手の男から抜き取った財布が、しっかりと握りしめられていた――――】



【――――所変わって、水の国 路地裏】

「ぅぁ……し、知らない…………何も、しらな、い……」
――――はぁ、そうですか。じゃあもう良いです、あなたはここでおやすみなさいな……!

【切れ長で涼しさを感じさせる瞳が、艶のある短い黒髪の中で映える顔立ちの】
【医療従事者用と思しき白衣を着こみ、ポケットからはステンレス製の細長い箱が覗いている】
【頭に、白いつば広の帽子を被っている、身長160㎝前後の女性が】
【足元に、首筋に鍼を突き立てた男を踏みつけ、冷たい表情で睨み下ろしている】
【何らかの問答があったようだが――――最終的に、女性はため息と共に、指先からチリっと電気の光を迸らせ、男の首筋の鍼に命中させる】
【ギクッと、男の身体が大きく痙攣したと思った次の瞬間、脱力したようにその身体は動かなくなった】

……やれやれ、つまんないってもんです……何か、あったらしい事は確かなのに、結局収穫なしですか……

【軽く男の身体に蹴りを入れると、女性は鍼を抜き取り、そのまま歩き出す。路地裏につきものの狼藉にしては、異様な光景だったが――――】



【――――どの物語も、今と言う時の中に、確かに存在している物である】
【もし変化が訪れるとしたら――――それはどの物語なのだろうか】

/22日いっぱいを目安に待ちますー


149 : 名無しさん :2018/09/20(木) 23:05:58 XbpJ6KdY0
>>147

【「――――私は、今すぐにだって起きてほしかったのに」】
【――くすとささめく笑みが、けれどひどく蠱惑的に下がる眉に彩られるなら、生クリームに潜ます洋酒よりも誰かを酔わす甘たるさを、きっと彼女は宿すのだろう】
【きっとどこまでも嘘で、どこまでも本当だった。今すぐ起きてほしくて/だけれど永遠にあの時間を引き延ばしたかった、だって茨のお姫様よりも愛すべき寝顔だったから】
【重たいトレイを机に任せてしまうなら、垂らした腕は身体の前で曖昧にその指先同士を絡めるのだろう。真っ白な指先に、蛇色の指先が絡むなら、たぶん、何かの暗示なのだし】

残念ですけど、――真っ赤な薔薇の花束を買うだけの時間と持ち合わせがなくって。101輪だって、何輪だって、買ってあげたかったんですけど――……。
――だからね、今度、買ってあげます。それとも、アリアさんなら、白い薔薇の方がいいですかね。――――真っ白い薔薇だけ、108輪集めるの。

――――――笑ったらいいです、……だからもう泣かないでくださいね、――まあ、私が、泣くまで虐めちゃうかもしれないですけど……。

【あまあい笑い声が冷たい室温を飾っていく、きゅうと寄せられた腕に柔らかく歪められた胸元は服の下に何も身に着けていない柔らかさを証明するのなら】
【どきどきしている鼓動と、ともすれば愛しさに詰まってしまいそうな吐息を隠して鼓舞する役割を果たすのだろう、――いつか向けられた言葉への、遠回しな、返事に似て】
【――だって可愛いから。そんな言葉は胸の中にしまっておく、泣きだしてしまいそうなときに震える睫毛が狂おしいほどに好きだった。だから、だから、それなら、】

【ほんの一回だって、他の誰かに見せてやりたくなくって。――ならば気づけば真っ白の顔も赤くなっているんだろう。瞳の赤が溶けだしてしまったかのような、温度感】
【下唇を甘く噛んではにかむ、――揶揄う言葉の意味合いを気取られたくはなかった、後から追及されても知らんぷりをしたかった。今追及されたなら、――もっと赤くなってしまうから】
【(結婚してください/私は貴女に相応しいから)――――まさかそんなの素面で言えるはずもないだろう。それでもようやく約束を守れる瞬間、二度と嘘になってしまわぬようにって、祈って】

…………だって、朝に食べるようなカロリーしてないですよ。
アリアさんはいいかも、しれないですけど……、――――――――、ぁは、もう、かわいい……。

【抱き上げられるのはもう慣れっこだった。体重を預ける仕草さえ様になっていた。抱き上げるのも抱き上げられるのも当たり前になって、ゆえに身体を委ねきるから】
【指先に撫ぜられるのなら、その仕草と現実が行き違ってしまうみたいにぞくぞくと何かが這い上がる、気のせいでなく蕩けたマゼンタの鮮やかさが至近に見つめて】

――――――だけど、今日はね、アリアさんがお姫様。近衛の騎士様は、めいっぱいに、頑張ったから――。
――アリアさんばっかり、狡いよ。私だって、アリアさんのこと、可愛がってあげたいの。――アリアさんみたいに、きっと上手じゃないですけど、

【(私アリアさんのためならなんだって上手になりたいの)】
【抱擁の解かれる間際に、少女はきっとそんな風に囁くのだろう。とびきり上等なメープルシロップだってはだしで逃げ出す甘やかさ、耳孔から脳髄まで満たすように】
【そのくせに手をつないで笑う表情がひどく幼げだった。日曜日の朝にお母さんのためにって朝ごはんを作った八歳とおんなじ表情をしているのに、違いないから】
【めいっぱいに朝日に浴びる姿を見ていたいから。それでも色の薄い瞳は朝日の中では焼かれてしまうから。向かい合わせの距離感、それでもきっと、足指の触れ合う、近さにて】


150 : ◆KP.vGoiAyM :2018/09/20(木) 23:12:39 Ty26k7V20
>>125->>128


――――――目が覚めた?


【其処は白い安らかな場所だった。柔らかくて清潔なベッド、暖色のライト、窓のない窮屈さを忘れさせる壁掛けのテレビ】
【UTの地下にあるその居室は広くないが必要なものはすべて整っていた】
【無機質な四角い工業的なデザインは今では最新で近未来的と言えるが、未来では普通なのか】
【それともレトロフューチャーのような様相をしているのだろうか】

【そして、凛としてそれでいて柔らかな女声の声の主は壁際のデスクそばの椅子に座っていた。】
【長い黒髪、切れ長な目、指先から足先まで揃え、一切の表情を浮かべず、そして少し離れたところには】
【桜の国の伝統的な剣である刀が壁に立てかけてあった。】

…私が来てからもう随分経つわ。もうお昼よ。どれだけ寝ていたのかしら。

【まるで母のような口ぶりで、彼女はそう声を掛けると、立ち上がった。】
【デスクの傍らには水差しとグラスがあって、彼女はそれに水を注いだ】

大丈夫?水飲めるかしら。…それとも何か食べる?

【悪い人ではない、それは直感でわかるだろう。だがそれよりも聞きたいことは山ほどあるはずだ】


私は、霧崎舞衣と申します。…ヒライさん…いえ、貴女にとってはチンザノ・ロッソと名乗っていたのかしら。
彼とは古い知り合いです。彼が探偵になるずっと前、スカした銀行強盗になるずっと前、誰よりも恐ろしい殺し屋だった頃の。

【デスクの上には、オイルライターが転がっていた。血の付いた古びた飾り気のないオイルライター。探偵の持ち物だ】
【それと携帯電話。そして首元に輝いていたシルバーのマリア。二丁のリボルバー】

きっとこれは伝えて置かなければならないはず。…これを貴女に言うのは心苦しい。私だって…まだ動揺しているの。

【目が泳ぐ。言葉は遠回りをしていたが、切れ長の目がかけたメガネが刀のように鋭くなったかと思うと、彼女は口にした】


―――彼は死んだわ。


151 : ◆KP.vGoiAyM :2018/09/20(木) 23:12:55 Ty26k7V20
>>125->>128


【時間を巻き戻そう】

【少女が目覚める何時間前。探偵がメールを送ってから15分後。】

【霧崎舞衣は立ち尽くしていた。ありえない…いいや、彼女からすれば”その時が来てしまった”と】
【血の海に囲まれて目を閉じたその姿。だが、汚い路地裏でも波止場でもなく、気のしれた酒場で】
【酒と煙草とロックンロール。――けれど、最期まで彼は孤独だった。過去の思い出に取り憑かれたまま】
【誰も居ないその場所で。】

【レコードが止まる。ノイズがザラザラと響いた。】


――――――


【彼女はすぐに動いた。こんなところでショックで泣き崩れるようなヤワな女じゃない。探偵が助けを求める】
【数少ない人物なのだから。――まあ、自分の後始末をしてもらうために呼んだわけではなかったはずだが】

【すぐに彼女は自らの部下に連絡をとった。知り合いの病院に探偵の身柄を送り、特別な掃除屋を呼ぶために】
【彼女はただ待つようなしょうもない真似はしない。血の跡を追ってある少女にたどり着く。持ち物から、探す…手がかりを】
【探偵が何を見、何を知り、何をしようとしていたのかを】

【血に染まった店内は片付けられた。探偵の身柄は病院へと送られた――そして知らされる】
【あの赤い目はその命とともに失われてしまったということを】

【残されたのは少女と二丁のリボルバーだけだ。物言わぬ44。美しい美術品のようなその姿は悪魔のようでもあり、天使にも見えた】


【そして…現在】


――――教えて、何があったのかを。


【だけど彼女も知っていた。気づいていた。探偵は彼でなくてはならないことは。】


152 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/21(金) 00:03:53 hEXW.LLA0
>>149

【青い隻眸の中に映した愛しい人の立姿はひどく少女性に満ちていた。さらには自身の愛らしさを良いように彩って扱う術を知っていた。それでいて真に振舞うのは】
【まるで恋を知らないような/事実として知らない幼気な青春の乙女でしかなく、それが故にアリアは内裡を揺さぶられる。 ─── 紡がれる願いの全てに、全肯定を捧げるなら】
【恥じらいげなはにかみには、アリアもまた促すような首傾にて応じた。なんでも言って御覧なさいという笑顔だった。はらり白銀が首筋に舞って、朝の煌めきを惜しまない。】
【花咲くように紅く染まる肌を抱き締めるのは透き通るように蒼白く/それでいて病葉の躊躇いを思わせぬ程に豊かで柔らかな肢体であった。ならば幾らも熱量を分かち合い】
【貴女も可愛いわ、 ─── 告げようとした唇の動きは、何よりも甘い感情の奉献に遮られる。ふるり、息を呑むように背を震わせた。困り果てたような微笑でずっと少女を見つめ、蕩けあった虹彩の色が融けるから】


「 ─── あら、」「まったく、愛らしい騎士様だこと。」「 ……… でも、そうね」
「かえではとても、強い子だものね。」「それに貴女は、なんでも出来るわ。私より、ずうっと上手に」「 ……… だから、うふふ。」

「"今日も" ─── それに、これからも。」護ってほしいの。私のこと。」
「だって貴女は私のもので」「そして私は貴女のもの、ですから ─── 。」


【差し込む陽光に惜しげもなく晒される全身の雪膚であった。逆光から輪郭の判然としない肩口などは最早そのまま太陽の熱に溶けてしまったに違いなかった。】
【どこまでも嬉しそうにアリアは笑っていた。無垢な感情であった。でありながら何かにきっと依拠して、そして揺るがない慈愛だった。あなたはずっとそばにいるから、わたしがずっとそばにゆくから。】
【 ─── そっと爪先を伸ばせば、アリアの足指にも届くのだろう。触れ合うならば感情と信頼の再確認であった。"何だってしたい"のと同じ文脈の"何だってしてほしい"。】
【なんとなれば互いの半身と誓ったのだ。 ─── 結婚指輪でさえも関係性の屡述には足りなかった。ふたりの心臓に満ちたネクタアルだけが証明だった】
【ならば少女から愛することもアリアは受け入れたいに相違ないのだ。やさしく全てを教えたかった。この朝の時間が終わりを迎えたのならば、すぐにでも。】


「 ……… ほんとに、美味しいわ。」「甘いものは、昔から好きなの。」
「櫻菓子の上品な甘味も好きだけれど、」「 ─── こういう朝には、やっぱり、どこまでも甘い味が食べたいのよね。」


【そんな熱情を幾らか隠したまま/それでも隠しきれぬまま、アリアは朝餉をはじめるのだろう。 ─── いただきますの一言を添えて、銀色のナイフとフォークにて】
【しとり、潤んだパンケーキの生地にナイフを沈めていく。数枚を切り割った所で角度を変える。もう片手のフォークがそれを刺して、口付けた唇に向かうなら】
【きっと少女のはじめて見る顔をしていた。冷たさのかけらもない、頬を紅く緩ませた無邪気な笑顔。ロシアンティーを含むにせよ同じことだった。それは或いは】
【 ─── 彼女が今よりもずっと幼い日、その朝食の風景に似ているのかもしれなかった。然して今、会話は他愛もない距離感を彷徨うのだから】


153 : 名無しさん :2018/09/21(金) 00:52:40 XbpJ6KdY0
>>152

【その表情を見上げていたらなんだって言ってしまいそうだった、どんな恥ずかしい言葉だって紡いでみせたくて、どれだけ拙くってもただ愛したくて】
【だから少女はきっとある時点で目を逸らす。拗ねたふりしてみせるのだろう。ともすれば照れ笑いに転じてしまいそうな唇を必死に制御して、つんとかたどったなら】
【――しかして、きゅ、と噛んだ唇のはしっこが、ふるふると慄いているのには、きっと気づかれてしまうのだろう。同じ色合いで、自身の服の裾まで、掴むのだから、余計に】

――――――、もぅ、子供扱いしないでください。私だって、いろんなこと、考えてやってるんですよ?
ほら、――、えっと。年金のこととか。税金のこととか……保険料、とか、あるじゃないですか、……、まあ、私、もう関係ないみたいですけど、
…………ないんですかね、ないのかな……。――福利厚生とか、えと……。雇用保険、とか……。――――――っ、もうっ、――、もお、――狡いよ……。

【ならば彼女が自分の分として用意したのは徹底的にアルコールを含まないものだった、ストレートの紅茶に、ただ蜂蜜とバターだけのもの】
【そうじゃないときっと酔ってしまうから。だのにすでに泥酔しているみたいだった。顔を真っ赤にして、支離滅裂なことばかり言っているなら、口の達者さも裏目に出る】
【伸ばした指先が振れるのなら、飴玉みたいに小さな指先はぴゃんと跳ね上がって逃げていく。その癖にひどく甘えた様子で差し伸べられて、触れるのを繰り返すから】
【彼女がめいっぱい伸ばして触れる距離を、相手ならきっと容易く届かせることが出来た。それなら少女だってなんだってしてほしかった。してほしいに違いなくって、】

――良かった、……櫻のお菓子も、甘いですよ。最中とか、嘘でしょってくらい甘いのとか、ありますし、……。まあ、お茶と一緒なら、かえって……ですけど、
アリアさんが食べるなら、お菓子だって練習しますよ、……。たまに弟に作らされてたの、その……、お小遣いの中でやりくりするのが面倒になって、
家にある材料で作ればタダで食べられるんじゃないかって。――だけど、あいつ、馬鹿だから。何回か変なもの作って、それからは私にやれって――――、

【きっとその瞬間の顔はひどく安堵していた。自分の基準の中では嫌がらせを疑いかねないメニューだった。――だからこそ、相手が食べてくれたなら、ひどく嬉し気に】
【自分の分にもまた手を付けるのだろう。ふわり柔らかな生地には中ほどまで有塩バターがしみ込んで、甘ったるい蜂蜜の味とともに、カロリーを上手に摂取するための概念に化ける】
【そのせいか彼女もまためったに見せない表情を見せていた。変わらずに真っ赤に照れた色ではあったものの、ひどく日常的な、ありふれた少女的な、】
【学校で友達に家族のバカなエピソードについて半ば愚痴みたいに話しているときみたいな、――追想/追憶というには、あんまりに、昨日のことのように話すから】

――――――――あ、の、アリアさん、私ね、死んでしまうのだって。……、蜜姫かえで、は、死んでしまうんだって。……。だけど、私は、ここに居ますから、
だから……、あの……、――――あたらしいなまえ、――要るのなら、アリアさんに、つけてほしくって……。――その、だめなら、

【「――自分で決めますけど、」】

【――かちり。そう分厚くない生地を突っ切ったナイフが皿にぶつかる音。長い睫毛が伏し目にてまなざしを隠してしまうのなら、表情はいくらか、朧気になるだろうか】
【いくらか躊躇いがちに聞こえる声がおずと言い出すのなら、それは休息日の朝の温度とは剥離する色合いであるのだろう。無邪気さは見つめていたくて、それでも、】


154 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/21(金) 02:12:19 lf83O3D.0
>>153

【どこまでも少女は少女らしく、あるいは幼気なまま、でありながら確かにどこかで大人びていた。 ─── 何より自らの半身であるのならば、】
【己れの隣にいる貴女を、不足なく扱うのに吝かではなかった。「御免なさい、だってつい、可愛いから ─── 」なんて、詫びる言葉は笑みに満ちつ、冗談めかして】
【やはり冷酷な狼の見せてこなかった、気取らぬ仕種がそこにはあった。ともすればアリア自身も気付かなかった感情であり、ならば時折なにかを悟るような刹那の瞠目にも、必ず意味合いがあった。】


「 ─── いいなあ。」「私、一人っ子だったの。」「母と父は優しくしてくれたし、贅沢を言わなければ欲しい物も買ってくれたのだけれど」
「弟や妹の面倒を見たり、兄や姉に面倒を見てもらうような経験は、なくて。」「そういう話のできる周りの子たちの事が、少しだけ、羨ましかった。」


【然らば、ごく似通った温度感でアリアは言葉を返した。自身の瞳にさえ隠してきた過去を、そっと思い返して紐付けていく作業は、独白をもって行われ】
【甘い嘆息を漏らす唇は蜂蜜の潤いと光輝を湛えていた。瞬きに睫毛が震えた。微かに俯いたまま、青い瞳は懐かしむような翳りを宿していたのだから】
【そっと少女が切り出した、少しだけ思い詰めたような言葉も、至極あたりまえの代物だったのだろう。そしてアリアは、寵愛宿す華蕊の微笑みで、ひとつ頷くなら ─── 語り出す追想の言葉は、少女に宛てて】


「リーリエ・クラウディウス=ハインライン・フォン=シュネーグレッヒェン。」「クラウディウスが父の名で、ハインラインが両親の姓。」
「フォンはofに相当する接続詞で、」「 ─── シュネーグレッヒェンが、屋号のようなもの。父方の曾祖父が産まれた地の、名高い絶景から来ているの。」

「花の名前よ。」「Schneeglöckchen.」「スノードロップ。」「櫻国風に言い換えるなら、待雪草。」
「曾祖父の生まれ故郷は、何もない農村の片田舎だったそうなのだけれど ─── ただ一つ、その真白い花が一面に咲き誇る、小高い丘があったのですって。」


【穏やかな声音であった。汪然と流るる花蜜の一雫に似て、その粘性と糖度をもって凡ゆる不安を飲み込んでいく音調だった。】
【ナイフとフォークを玩びながら、語る間にもパンケーキは切り崩され、淑やかにアリアの唇がそれを迎えた。】
【紅茶に落ち窪んだウォトカの酒精は今や精油と同じ作用を持っていた。 ─── ふとアリアは顔を上げて、ならば、大海の色をした瞳は少女を射抜く。】


「かえでという響きは、とても気に入っているわ。」「 ─── だから、これからも貴女の事は、かえでと呼びたいの。」
「けれど、そうね」「我が儘をひとつ、言わせて貰えるのならば」「 ……… これだけ愛しく想うのであれば、分かち合うのが情念だけでは、寂しいから」


   「待雪 かえで。」
     「 ─── 私を愛する貴女が、私の側にいる貴女が、私の帰りを待つ貴女が、」
       「もしも、そう名乗ってくれるのならば。 ……… これ以上、嬉しい事なんて、あるかしら。」


【もはやアリアは手を止めていた。ならばそれは告解であり告発であり告白であった。微かに色付いた真白い頬は静かに緩んで、どのような答えも許していた。】
【同じ意の姓を名乗ることが如何程の意味を持つか、大人でなくとも理解できた。まして大人には、否応なくして重く深く甘美に響く。 ─── 躊躇いはなかった。ならば、ずっと旧くから備えていた言葉だろう】


155 : 名無しさん :2018/09/21(金) 03:04:37 XbpJ6KdY0
>>154

【――なれば、いつかの話をするときの彼女は、きっと、何か楽しげに見えるのだろうか。そうしてまたひどく悲しげでもあった。どうしてそれが亡いのか、分からない顔をしていた】
【だから二度と繰り返さぬように蛇へ赦しと救いを求めていた。だのに結果としてその場所は残らず/生き残りさえもごくわずかで/神様さえいなくなって/自分は何か救われたのか】
【それでいてふわふわの生地に混ぜ込んだ洋酒はアルコール分を飛ばしてなお彼女を酔わすには十分だった、――最愛の人との未来を夢見てしまったなら、】
【今から目を逸らしてしまうのもきっと許された。そうやって言い訳しているのに違いなかった。だから、なんて、言いやしないけれど】

――――でも、バカですよ、弟なんていても……。なんでそうなったのか分かんないくらい、洋服とか、汚してくるし……。
ちっちゃいころなんて、手を繋いでるのに、気になったものがあったら振り払って走って行っちゃうの。――でも、ママが、私もそうだったって。

覚えてないですけど、――なんか、どこかのモールで迷子になった時に、知らない女の子とっ捕まえて子守りさせてたって。
館内放送だって何回も掛けてもらって、あと少ししたら警察を呼ぶところだったのに、――。全然知らない子に、姉妹みたいに懐いて甘えてたって。
死ぬほど呆れたって言われました。何十回も聞かされたの。耳タコもいいところです。それに、私、もうちょっとくらいはいい子だったと思うんですけど――。

……とにかく、ちゃんと手を繋いでたはずなのに気づいたら居ないんだって。だから走ってく背中が見える爽ちゃんなんて可愛く見えるって――、

【――――マゼンタの瞳がわずかに見開かれるのだろう、同じ声音が返ってくるのなら、彼女もまたきっと自分の漏らした言葉の温度に、遅れて気づくかのように】
【それでもきっと言葉は止まらぬのだろう。少しだけうんざりしたような声だった。もう今日だって意味不明なまでに汚れた服を押し付けられた姉みたいな、声をしていた】
【めいっぱいにお姉さんぶって子守りなんてしていたってしょせん三つ差の姉弟だったなら。どうあれ姉も子供だった、二人一緒に謎の理論で消えたことも数多く、】
【なら相手にだって親の気持ちが少しくらい分かるのかもしれない。何度も消える子だった。それを探し出すのはきっと至難の業だった、――だから、】

【――そんなことないですよね、って言いたげなまなざしが相手に向けられる。そうして同意されるもされぬも、ストレートの紅茶を、飲んで】

私、――、両親がどっちも櫻系なんです。――まあ、全然、純血とかじゃないんですけど。見たら分かりますかね、……。
だから、凄いなって――、その、なんていうかルール、とかは、よく分かんないんです、けど――、えと、――――、いいな、きっと、綺麗……ですよね、

【水の国に生まれて育ってなお。彼女は櫻の方の名前であった、とはいえ、そのあたりの学校に行っていたのだから、基本的な文化としては、水のものに慣れ親しんで】
【だけれどそういう名は自分にはないものだから。――語るには大したことのない家であった。特に由緒正しいということもなく。由来もきっと、ないのだろうし】
【――なれば声音にはいくらかのあこがれが混じるのだろうか、ふっと呼んでみたくもあって、だのに、どうしようもなく、照れ臭くって】


156 : 名無しさん :2018/09/21(金) 03:05:04 XbpJ6KdY0


【誤魔化すように、残り少ない自分の分のホットケーキをより細かな欠片に分解する。食べるより遊んでいるみたいな様子に見えた、赤ちゃんがやるみたいに、だけれど、】

――――――、え。あ。……ぇ。――――、プロポーズ、ですか、それ? 

【――――がちゃん、と、鋭い音は、彼女の左手から、】
【というよりも厳密には、いたく動揺した様子で取り落としかけたフォークを、床まで落とさぬように皿ごと机に叩きつけた音であり、】
【いつかは揶揄うみたいな声音を出せたものだった。それでも今は限りなく真に受けてしまうのだろう、真っ白の顔を耳までも真っ赤にするなら、それでも瞳の紅が色鮮やかで】

なん、え、――、っ。――、――もうっ、なんか、もっと、――ないんですか、なんか、――、花束、とか、薔薇の……。とか! 三か月分とか、――、

【だからどうやらひどく動揺してしまったらしくて。それもあまり見せることのない色合いだった、だから、今日はよっぽど特別だって、思っているらしい】
【だって大好きな人とずっと一緒に居られる。傷つけることも傷つくこともなくて。ずっとないって思っていた。そんなのありえないって思っていた。それが、今、目の前に】
【うれしかった。ともすれば枕に顔を埋めて足をバタバタしてわけもわからぬことを呻いてみたりしたいくらいには。――だから、たぶん、言うのなら、舞い上がっているなら、】

――――――――、ずるい、よ、――。――――っ、っっ、 ――、りーり、ぇ、




…………さん、

【指先に皿についていた蜂蜜がべとりと纏わる感覚はあった。だけれどそんなのどうでもよかった。だってそれよりよっぽど鼓動の方が煩わしいから】
【どきどきってうるさくって泣きたくなる。取り出して冷蔵庫にしまってしまいたいくらいの気持ちだった。だから仕返しがしたくて、だのに、何も思い浮かばなくて】
【ならばひどくぎこちない声が相手の真名を呼ぶのだろう。呼びつけてやろうとするんだろう。――だのに意志薄弱が顔を出す。変なところで気が弱いのは、前からだったけれど】


157 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/21(金) 22:45:46 hEXW.LLA0
>>155>>156

【誰よりも少女を理解していた。故に少女の懊悩を分かってやれる筈もなかった。詰まる所は決着を付け損ねていた。そして何れに、覗き込まねばならぬ暗い深みだった】
【そうでなくては己れもまた立てなくなる日が来る事は判りきっていた。ならば少女もまた何れは立てなくなるのだと判っていた。 ─── ただ、想い出に脚先を沈めるのは】
【伸ばした足指の先を貴女と触れ合わせたままならば、冷たい心の水底に膚を冒されても真面でいられる気がしたから。ふたりキスに呼吸を頼って、何処までも沈めると信じた】
【ずっと昔にダイビングのライセンスを取った理由が漸く分かった気がした。 ─── 少女の視線にも、言葉にも、アリアは鷹揚に頷くのだから、きっと何かを悟っていて】
【そうして暗礁さえも干上がらせてしまう程に紅く頬染めた少女の仕種には、偏にいとしく微笑んで応じた。ふたりでもっと、どうしようもない場所まで堕ちてもいいから。】


「 ─── その名前を呼ぶのは、」「貴女が苦しむ時だけ、でしょう?」


【困り果てたようでいて、その実まったく意地の悪い語調だった。平積みにされたパンケーキは殆どを切り崩してしまって、最後の一口を口に運ぶなら】
【今すぐにも抱いてしまう準備はできていた。ティーカップに残された昏い紅色の淀みからは、溶け損ねた苺の果肉が酒精に犯されて蕩けていた。 ─── そして、それさえ飲み干すなら】
【きしりと椅子を鳴かせて悠然とアリアは立った。御馳走様は言わなかった。ならば彼女の朝餉はまだ終わらぬに違いなかった。はらり舞う長い銀髪と、目尻の撓めて射殺す愛情の青い隻眼は、朝を絶望させるに足りて】


「この時分でなければ、何か支度もできたのだけれど」「 ─── 思っていたより早く、尋ねられてしまったから。」
「それに、花束も指輪も悩ましくて。」「どのように貴女を迎えればよいものか、 ……… 内心の整頓も終えられていないの。」


【真白い立姿は沐浴を終える女神のそれに似ていた。現実離れした背丈と肉感が否応なく、穢れを知らぬ耽美な躯体の美しさを却って強調していた。】
【肩口から胸許まで躊躇いなく膨らんだ豊満さと比べれば、ごく理想的な輪郭を描く腕も腰も華奢に見えた。それでいて腰から太腿の円くしなやかな曲線美は確かな筋と官能の凝集であった。】
【笑うことを漸く覚えた自動人形のごとく無缺に、白く透き通る頬が紅さして緩む様さえも、 ──── 酷く艶かしい表情であった。凡そ母の笑みでも恋人の笑みでもなかった。であれば、】
【 ─── 座ったままの少女に、背後からそっと体重をかけて、両の肩口より被せられて絡め取る腕のふたつ/音もなく甘く歪んで押し付けられる両胸の柔らかさ/薄藤色を掻き分けて囁く淑やかな唇は、皆な狼のもの。】


「だから今は、本心からの言葉を、贈り物の代わりに。」「貴女は私よ。そして、私は貴女。」
「私の全てを捧げましょう。」「私の全てを教えましょう。」「 ─── ねえ、だから、かえで」


     「貴女の全てを、私にくれる?」


【振り向くならば、アリアは笑っていた。だれかを慄然とさせるに足る艶美な笑いだった。口先から芳る蜜と乳糖とパン生地の匂いが今は彼女の香水だった。】
【 ─── 絡めた両腕は、きっと少女と手を繋ごうとするのだろう。すれば彼女がどうしてしまうのか誰にだって分かった。それは赤ずきんを愛してしまった狼であるが故に】


158 : 名無しさん :2018/09/21(金) 23:20:22 /NtSiNkk0
>>157

――――っ、じゃあっ、じゃあ、今、苦しい……、

【果たして仕返しのつもりではなった一言は仕返しの意味を持たなかったらしい。であれば少女はひどく悔しげに歯噛みするしか、なくなって】
【それでもただ負けることは癪なように思えて辛うじての温度が言葉を繋げるのだろう。真っ赤な顔は確かに苦しそうだった、きっと心臓だって張り裂けてしまいそうだから】
【しかしてどれだけ好きを感じて愛しているって繰り返しても決して未来を紡げぬ身体であったから、あるいはかすかな光明すら失われるのだろう。さながら深海に置き去りにされたよう】
【この好きも愛しているも未来へ送り出すことができないのなら、――ゆえになおさら身体中が張り裂けてしまいそう、胎より心が孕む方が、よっぽど、くるしい】

……――――もう、っ! ほんとに、アリアさんたら、女の子の気持ち、分かってくれないんですね――。
だって……もっと、こう、なにか……あるじゃないですかっ――、――っ分かんないですけどっ、でも、なにか……。

【ならば美の女神すら嫉妬に狂いかねない立ち姿に目を奪われる。どんなけ美の女神が嫉妬に狂って喚きたてようと、決して負けない強さを、知っているなら】
【心配なんてしようもなかった。当然寒すぎるくらいの部屋でも風邪なんて引かないって信じていた。美の女神よりも風邪の方が強いだなんて、そんなのありえないし、】
【――だけれどだからといって恭しく看病してやるのも吝かではないけれど、なんて、思考回路はどんどんと逃げ出していくんだろう。その過程が自分にすらよく分かるほどであり】
【だからひたすらに喚いているんだろう。あるいは自分から言い出したはずだのに、ばれないって信じたいなら、まるで自分は虐められているんだって、アピールするかのよう】
【正体不明の"なにか"をただひたすらに求める。そのくせこれ以上何かされたら本当に張り裂けてしまいそうだった。――彼女もまた至極整った身体つきをしていたけれど、】
【どうあれ絶対に敵わないに違いなかった。だからせめて現実離れした美しさが現実のものだって理解したくて、何度も傷をつけるしつけてきたんだと、言い訳して】

――駄目、って言っても、勝手に持ってっちゃうじゃあ、ないですか、アリアさんたら、――、……っ、

【甘やかにかけられる体重に体温が付随して。両腕を絡められるのならば、指先がわずかに慄く。服を着ているのがひどく惜しくて泣きたくなった。その肌を全部感じたいのに】
【やがて囁かれるのなら、――ふると背中が震えて、吐息が逃げ出していく。これから先に吐息の奥底まで蹂躙されるのを予見してしまったのならば】
【いっとう大きな童話の狼に丸のみされる瞬間の少女みたいに身じろぐのだろう。着衣でもくちゃくちゃに乱れた服装だった、それがまたきっといくつかの皺を増やして】

【指先を絡めとられながら、けれど視線が抗議のために振り向くのだろう。至って甘く蕩けてしまった色合い。どろどろに煮詰められた手作りジャムの様相は、】
【きっと舐れば頭蓋骨までを秒で虫歯で侵すのに違いなくて。――だのにそれより先に、その笑みに絡めとられてしまうんだろう。だから、きっと、泣きそうな目をする】


159 : ◆RqRnviRidE :2018/09/22(土) 01:06:04 6nyhPEAc0
>>138

【互いに交わす視線はきっと何処までも純然たる青さを持っていた。 二人の可憐に笑みを溢す様は曇りなく、果てしなく無辜のようであった】
【友人であることを認められ、ジルウェットは目を細めて頬を緩ませる。 満面には及ばぬそれではあったが、今日見せた中で一番の笑顔だった】
【生肉に齧りつく時は幾らか顔を顰めたものの、飲み下す頃にはすっかりもとの表情に戻っていた。 なるほど悪くない】

──そう、シーラ……シーラっていうのね。
あんまり綺麗に撃つものだから狩人だと思っていたの……けれど銃手なら納得だわ。
趣味で射撃っていうと……的当てをするのよね? こんなふうに。

私も普段は風見役だから、直接狩ったり捕ったりすることはないのだけど……
今日やってみて分かったわ、偶にはこういうのも良いものね。

【趣味であるのだということを聞き、へえと感慨深そうにため息ひとつ。 そうして右手で指鉄砲を形作ると、手近な木へと差し向ける】
【指先に海色の魔力が集い、小さな卵形が生まれ形を変えて、薄青にぼんやりと光る円錐が一粒形成される。 小鳥の嘴、或いは銃弾のようなそれは、】
【一瞬の間を置いてポンっと弾き出されるだろう。 弾道は直線、曳光弾のように煌きの尾を引きながらそれなりの速度で木の葉を掠めて揺らす】
【が、残念ながら落とすまでには至らず、弾は幻のように散り消える。 大した威力もない。 他愛もない真似ごとだった】

鯨……こんな感じなのね。 鯨って本物を見たことも食べたこともないから変な感じ……。
けれど生でも意外と美味しいわ。 ぜひ調理してみましょう? 大抵のものなら食べられるから大丈夫なのよ。

【最早逡巡すら消え失せたようで、シーラに勧められればもう一切れを口へと運ぶだろう】
【ぶち、むちむち、こくり。 ──咀嚼もそこそこに飲み込んで、煮るでも焼くでも差し支えないと答える。 恐らくは生食をクリアしたが故の信頼感】

【能力を駆使した上で調理を行えないか──という提案に関してはちょっぴり不敵な笑みを口の端に湛え、】
【手を軽く広げて宙を撫でる。 片手の指先五本分、拵えられるのは“風切羽”のような形状の薄いブレードを持つナイフ】
【中空に浮いたそれらは文字通り風を切りながら流木へと滑空・接近し、切り落とし、粗削りの木串を使えそうな本数だけ作り上げる】

任せて。 固めたり溶かしたり、気化させたりするのは得意なの。

【曰く、形態の簡易的な変化や転移が、彼女の能力の本質なのだという。 であれば拘束に用いた水網のように、現れたナイフも何かしら材料があるってことらしい】
【切り分けられた肉塊のひとつを、幾つかのナイフを操作して薄くスライスしつつ。 立ち上がって薄切りの肉を一枚指で触れてみる】
【しゅうと音がして水分が抜けていくのが聞こえただろうか。 下味の処理前の試行だが具合は悪くない、とひとつ頷いて】

塩を刷り込むのは手作業になるけどね。
焼き魚はね、……美味しいから好きよ。

【そう補足しながら袖を捲るだろう。 その顔がやる気に満ちていたのは多分気のせいではない】
【相手に塩の在処を尋ね、手に取ることができたなら作業を始めるのだろう、──夢中になって黙々と】


160 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/22(土) 11:18:20 PMzGIUuA0
>>133

はは、まぁあくまで方法の一つって話だから。
その〝髪〟は君が君たる証拠だ。大事にするといいよ、そうすればいつかきっと〝物語〟につながるさ。

旅はいいよぉ、私もこの数年間はずっといろんな国を回っていたんだそれこそ世界中をね。

【感慨にふけるような表情で天井を見つめながらマリアベルは語る。それでは水の国にも旅の途中で立ち寄ったのだろうか】
【尤も、相手は子供である。国境を越えて移動することはできるのだろうかと少し困ったような表情で相手へと視線を向ける。】

【そして、相手が選んだ一つの〝道筋〟―――マリアベルはどこか歪な笑みを浮かべる。】

好奇心旺盛だね、そうさこれらがいつか君の〝道〟と繋がる可能性もある。

だから―――〝後悔〟だけはしない事だね―――ふふ。

【瑠璃の髪の一房に三本目の指を絡めとられながら、マリアベルは紅い瞳でじっと相手を見つめる。その瞬間】

                         【ぐにゃり】

【〝世界〟が、まるで渦を巻くように、歪んでいく、、、そしてそれは広がり、瑠璃を飲み込もうとするだろう】
【逃げるなら今が最後のチャンスだ。そのまま飲み込まれるようなら―――まるで宇宙を駆け巡るような力の濁流が広がり】
【そして―――いつしか〝見知らぬ場所〟にいるだろう。】【暗い。】【石畳の建築物の中にある回廊のようである。】
【近くにある〝窓〟のようなものからは薄い光が漏れているのが見える。】


161 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/22(土) 11:33:55 PMzGIUuA0
>>146

なんやぁ流石〝水の国〟の路地裏、物騒なこっちゃ―――クハハッ!

【―――ジャリ、と白衣の女性の背後から足音と陽気そうな女性の声が聞こえてくる】
【そしてその人物は今しがた動かなくなった男性を踏みつけて女性へと近寄ってくるだろう】
【ショッキングピンクの派手な髪を後ろで結んで垂らし、赤いチューブトップの上に黒のレザージャケット】
【下は肌にピッタリと張り付くような黒のレザーパンツを履いた、糸目の女性だ】

【糸目の女はうすら笑いを浮かべながら両手を頭の後ろに回して鼻歌を歌っている。】

―――それでお嬢さん探し物かい?実はウチも探し物を探して路地裏を彷徨っていたんや。
一人より二人や、良かったら一緒に探し物せぇへんか?なぁ?

【独特な口調で糸目の女は馴れ馴れしく話しかけてくるだろう。明らかに堅気には見えない風貌である】
【〝探し物〟。それが何を指すのかは分からないが、先程の男性とのやりとりの一部始終は見ていたようであった】


162 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/22(土) 18:56:19 hEXW.LLA0
>>158

【努めて女性的に、喉を鳴らしてアリアは笑っていた。薄紅色を掻き分けた唇の先は、 ─── 少女の真っ赤な耳に口付けを落とし、その残響を三半規管の深奥まで染み込ませ】
【気まぐれに柔らかな唇に食み、ちろり、熱量を残して。少女の儚げで狂おしげな仕草を殊更に引き出そうとするようだった。きっとアリアはそれを愉しんでいた】
【その手練手管の全てが彼女からの捧ぎ物であるに違いなかった。泣いてほしかった。鳴いてほしかった。好きだと言ってほしかった。愚直にそうしているのなら、きっと】
【ふたりで何処までも沈んでゆけるように思えたから。ふたりだったら何も怖くはないのだから。ふたりで征ける道を見出す事も、できると信じていたから】
【 ──── なにか囁きの予兆として、リップノイズが少女の聴覚を冒した。つつやく言葉は全て少女にしか聞こえ得ない声量で、故に悶える類の擽ったさに情念を宿していた】


「 ─── そうね。」「だって、かえでがあんまり、可愛いから。」「全部、私のものにしたくって。」
「なのに贈り物の持ち合わせが無いのは、私もとても切ないの。」「 ─── だから、あげる。私の、ぜんぶ。」


【繋がれなかった細い指先は、少女のからだを這い弄ぶ。乱れた着付けの間隙より、上気した胸元にそっと円い爪が沈むなら、嬲るように輪郭をなぞり下げて、ゆるり。】
【股座の幾らか上に辿り着けば、痛ましくも遺された傷痕を、至極悲しげなタッチで慈しんで、 ─── 太腿の付け根に向かうような指遣いは確かに何かの宣告であり】
【然して今は、素知らぬ仕種で腰回りを撫ぜるのみ。気の済むまですべやかさを愉しんだと見るに、最後には留め具かボタンかリボンか何か、何であれ解いて外してしまう。】
【そして繋いだ片手指は、指を絡めるままフォークを握った。 ──── 皿上に散らばった蜜漬けのホットケーキを、澱んだ粘糖へ更に絡めて集めて、ひとかたまりに仕立てたのならば、そっと掬い上げた】


「大丈夫。」「悲しい気持ちも、苦しい気持ちも、 」
「 ─── 皆んな食べてあげるから。」「今は、私だけ、見ていて。」


【そうしてアリアは紅い舌先を伸ばす。微笑むまま身を乗り出して、唇を開き、殊更に柔らかさを背へ押し付けて、震えるのは紅紫色に潤んだ瞳。】
【その目尻に溜まった涙を躊躇いなく舐め取ろうとした。それが何れほどに甘いものか彼女はよく知っていた。とうに酔わされていた。中てられていた。骨の髄まで犯されてしまいたかった。】
【ならばフォークの上に落ち着いた甘ったるい幸福の象徴までも舌に乗せられて、ふるり膨らみ震わせる唇の奥に含む。ひとつ舐めずりを見せるなら、やはりそれは嗜虐的で絶望的な蠱惑的な笑顔であったから】


                 ────── すき


【 ──── 蜜の残滓を残し合う、唇ふたつが重なるのだろう。指先を絡めて握り締めて、深く柔らかさを楽しんで、続くのは口移しに仮託けた容赦のない蹂躙であって】
【だが幾らかも少女を導くようであった。一方的に嬲られるだけの口舐りに止まらず、パンケーキの欠片を互いの舌腹で圧し潰して味わうのなら、求める動きも誘うようで】
【或いはそれはアリアの願いであるのかもしれなかった。 ─── かえでから、求めてほしい。無理矢理に玩ぶのが愛しいのだとしても、私たちは互いに互いを捧ぐのだから、何より愛することを知ってほしいから】
【すれば孕んでしまった苦しみも、幾らかの捌け口になるのかもしれなかった。残酷な狼は赤ずきんへと、自ら大切なものを明け渡すように命じるのだから】
【 ────── ともあれ、背後からのキスは酷く長く続くのだろう。息継ぎさえも許さずに、なにか少女を待っているようだった。繋がれぬが為に薄藤色を包んだ片掌と、軟らかい熱と感触と呼吸と甘ったるさ、くぐもって粘つく湿った唾液の音ばかり、響いて】


163 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/22(土) 19:29:30 hEXW.LLA0
>>159

【「そうだね。そんな感じ。 ─── と言っても、まだ経験は数ヶ月くらいしかないし、全然シロウトなんだけどさ。」どこか困ったような笑い。】
【「巡回のコースを歩いてた筈が、どっかで道を間違えちゃったみたいで。 ……… 結果として、君に会えたから、よかったけど。」であればやはり、この邂逅は偶然の産物であった。】
【 ─── そうして指鉄砲を作る少女の仕種に、シーラは目を細めた。ん、ん、ん。当たるかな、落ちるかな。そんなニュアンスの、幾らかの唸りと沈黙。】
【凝結の放たれる瞬刻、 ─── 大気を細く裂いて飛び行く一閃。然して木の葉は未だ落ちず、「ざんねん。」彼女 女もまた、どこか落胆して、肩を落とした。】


「やあ、ボクも、本物を見た事はないんだけどさ ──── 。」「肉って言っても、冷凍のモノしか食べたこと事ないし。」
「それにこいつは淡水生物みたいだから、ちょっとだけ泥の味がするし ……… 厳密に言えば、鯨とは違う気もするけれど」


【「まァ美味しいからいいよね。」並べるだけ理屈を並べて、それでも結局は理屈でなかった。堪能して食べられれば構わない。それ以上のことはない。】
【それでもシーラにとって、生食は度胸試し以上のものではなかったらしい。 ─── 手っ取り早く作り上げた木串に、手頃に刻んだ肉を刺していき】
【そうしてジルウェットの行使した異能には、幾らかの感謝と共に感嘆の声音を漏らした。「わお。」切り出される流木から、微かに青いかおりがした。】


「へえ、 ─── 。」「水を操る能力かと思ってた。」「いいなあ、便利そうだ。」「ありがとう。かなり楽ができた。」
「この分なら、余らせてしまう事もなさそうだね。」「 ……… 差し当たり、食べられるだけ作っていこうか。」


【言いつつ、木串の幾つかを軽く組み上げて、そこにライターで火を付ける。種火の朧げな仄明るさが、暖色のヴェールとして何処か儚げな横顔を照らした。】
【 ─── 水分の残っていそうな木を選べば、肉を幾つか突き刺して、串が燃えぬようにして火にかけていく。じり、じり、じり。時折、熾火の爆ぜる音。】
【一頻りそれを終えたら、 ─── 今度はテントの設営を始めていた。丸い石の広がる河原にあり、幾らか土の残る場所を選んで、黙々と天幕を広げペグを打ち込み】


「塩はリュックの外ポケット。ふたつめ。」「足りなかったら魚醤も使っていいよ。同じところに入ってる。黒茶のソースみたいなボトルだ。」
「先にいったん塩を刷り込んでから水を抜いた方が、たぶん美味しくなると思う。」「こいつの場合、ただ乾燥させるだけでも、また良い味になると思うけどね。」


【 ─── リュックの中は好きに漁ってよいと言いたげな声音だった。事実そうされても彼女は咎めそうになかった。そしてまた、】
【既に彼女は今夜の宿場をこの河原に定めたようだった。一人分、強いれば二人分の体をどうにか収められそうなテントを広げる動きは、実に手馴れていた。】


164 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/22(土) 19:58:55 smh2z7gk0
//安価ミス…>>161>>148向けです…


165 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/09/22(土) 20:51:15 ZCHlt7mo0
>>161

――――ッ
(さて、ねえ……面倒事の方は、向こうからやってくるってのに……)

【遠慮のない、あっけらかんとした声と足音。立ち去るはずの歩調を進めていた女性は立ち止まり、その場で小さくため息を零す】
【こうした場で声をかけてくるという事は、おしなべて厄介事に繋がっているものであり、そして――――】

やれやれ全く……随分とフランクなもんですねぇ。こういう場所でそれは、少し考えものじゃないかって、私は思う訳ですよ、えぇ……
観光したいってんなら、もっと見どころのスポットって奴が……はぁ、あるもんなんじゃないんですか?
こんな、どこの国にもあるような掃きだめをうろついたって、しょうがないでしょうに……

【振り返り、糸目の女性と相対する白衣の女性。その表情には、呆れが張り付いていて、目を細めながら肩をすくめる】
【言ってる事は的外れだが、女性自身は意に介していない。こういう場合――――ともあれ、言葉であれ何であれ、場のイニシアティブを握ってしまう事だ】
【口数に物を言わせて、余裕を演出しようとしているのだろう】

――――せっかくのお言葉ですけどね、私は別にモノを探している訳じゃあないんですよねぇ
初めからアテなんてないようなもんで、この辺にこだわる理由は、さりとて無い様なもんなんですよ
……悪いですけど、手伝いだったら他を当たってくださいな。私もあまり目的を増やしたくはないんで……

【余裕を見せる態度に、白衣の女性はやや顔を顰めながら、糸目の女性の誘いを断った】
【――――経験上、こうした場所でこんな風に声をかけてくる人間というのは、一癖も二癖もある連中ばかりで】
【何より――――先ほどの『尋問』を見ていた上で声をかけてきたという事は、なお容易ならない相手である事の証明となる】

(……「こういう奴こそ」なのかもしれないけど……ちょっとばかり、リスクが高すぎるってものね……)

【この状況はある意味で「望んだ事」かもしれないと逡巡しながらも、そのまま踵を返す訳にもいかず――――それは自殺行為だ――――女性はただ相手の出方を待つ】


166 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/22(土) 21:30:04 smh2z7gk0
>>165

まぁ稼業的に色んな人間とやり取りするからなぁ、いつでも笑顔でいかんといけないわけや
残念ながら観光やのうて〝こういう場所〟目当てで来とるんや。ほらほらそんなあからさまに嫌そうにせんといて〜

【あきれた様子の白衣の女性に対して、焦った様子で両手を広げて取り入るようなしぐさをする】
【路地裏のような場所、すなわち何らかの〝暗部〟に繋がる場所が目的という事は、やはり堅気ではない】
【拳で路地裏のビルの壁を叩きながら一歩、一歩と相手へと近づいていくだろう。】

ああ、それはウチも同じやであくまで例えや例え。
なんやつれないなぁ、てっきりウチと同じ〝暗部〟を調べてるのかと思ったけどなぁ〜

〝魔制法〟と〝謎の神々〟―――今水の国では大きなうねりが起きているからなぁ。

【「アンタも異能者なんやろ?」と白衣の女性の手を指差しながら問いかける。先程の男性を昏倒させた方法を見ていたようだ】
【そして二つの単語、この二つが白衣の女性にかかわりがあるのかは分からないが、仮に知らない場合糸目の女はどういった対応を取るか分からない】
【応えるにせよ、立ち去るにせよ、引き続き出方を見つつの方がいいかもしれなかった】


167 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/09/22(土) 22:03:45 ZCHlt7mo0
>>166

……あなたとしては、今も『オン』という訳なんですかね?
いつも笑顔の人間なんて、却って胡散臭いもんじゃないかと、私は思うんですけどねぇ……

【あからさまなアウトローの雰囲気を匂わせる糸目の女性に、白衣の女性は微かに警戒を強めていく】
【自分が身構えている事を承知の上で、ペースを崩さない――――それは、そうした事物に慣れている事をも伺わせる】
【相手の目的が分からない以上、場所柄と合わせると危険を予測しなければならない状況なのだが――――】

――――――――ッ

【彼女の口から飛び出した、2つのキーワード。それを耳にして、白衣の女性は目を光らせる】
【――――正に、その言葉は女性の興味を強く引くキーワードであり、同時に――――糸目の女性の言葉通り、それに関連して、彼女もこの場を訪れていたのだ】

【『魔能制限法』、『カミスシティ』、そして『謎の神々』――――それぞれに、女性は思い当たるものだった】

――――『魔能制限法』に関しては、まぁ目端の利く人間なら、誰だって怪しいと思うもんなんじゃないですか?
あんなの、どう考えたって不自然でしょうに……ま、額面通りに受け取ってる連中が、アホウって事なんですけどねぇ……

【――――とあるルートから、女性はその情報については触れていた。だからこそ、別口でその歪さを嗅ぎ取っていたのだが】
【それでも、それを抜きにしても『魔能制限法』は怪しさを感じさせるものだ。彼女が異能者である事に関係なく――――】
【それを『暗部』と表現するという事は、眼前の糸目の女性は、そうした一般的な感覚として言っている訳ではないと分かる。更に――――】

――――むしろ『謎の神々』ってのは……驚かされますねぇ。どっかのアホウなカルト連中ぐらいしか、その痕跡ってのは無かったはずなのに……
何を知ってるってんです、あなた……それは、『魔能制限法』以上の……あなたの言葉を借りるなら『暗部』って奴のはずですけど……ッ?

【基本的に――――女性は、その『謎の神々』との関わりは持っていない。――――だが、接触ならしていた】
【だからこそ、彼女にとっては、その正式名称や暗躍を含めた一切合切を知らず、文字通りに『謎の神々』だったのだ】
【それを問いかけてくる女性は、どうやらその方面において、自分以上に『事情通』らしい――――身構えながらも、彼女の興味は確実に引かれつつあった】


168 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/22(土) 22:26:29 2Ez4RC4s0
【かつて、人々の間に広がっていた噂があった】

【それは、悪魔の代理人たる女の差し伸べた手を取れば、死に別れた者と再会できるというもの】
【泡沫の夢、一睡の夢。けれど、喪った悲しみが巣食っている心にとっては救いであったから】
【噂を聞きつけた人は総じて神ではなく悪魔に祈りを捧げ、願いを叶えたのだった。……ただ、その末路は言うに難くはない】

【"神に祈りは届かない。願いは叶わない"】
【"故に祈るならば悪魔に祈れ。さすれば願いは叶うから"】

【天に座して人々を俯瞰するだけの神様より悪魔の方がよっぽど誠実なのだから】

……久しぶりの水の国、か。
6年前と変わらぬ景色は心が落ち着く。
だが、空気は違うか。おおらかな空気から肌を刺す空気へと変わったように思える。

【水の国のとある路地裏。人の寄り付かない陰に満ちた場所にいたのは一人の女。そして物言わぬ骸となった男性ひとつ】

【その場に佇むは、男用の神父服の上に葬列の際の付き人用のコートという異様な着合わせと】
【装飾過多と形容するに相応しい程のアクセサリーが特徴的な女。名をファウストと言った】
【またの名を"会わせ/逢わせ屋"。かつて広まっていた噂の正体である】

しかし、人々の根本は変わらんな。
理を、因果を曲げてでも会いたいと願う喪失者は必ず存在する。だからこそ、私が居る。

生けとし生けるものに流離と死別がある限り。
すがる様に伸ばされた手がある限り、な。

【この現場。間違いなく非日常。そして騒乱の兆しであろう】

//2〜3日程お待ちしております


169 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/22(土) 22:47:30 smh2z7gk0
>>168

そもそも『オン』と『オフ』の切り替えとかあんまし考えた事あらへんわ。
か〜っ言うねぇアンタ、気に入ったわ。そういう挑発的な感じは好きやでウチも。

【ニッと口角を釣り上げて相手を見つめる。露わになった金色の瞳が鋭く相手を捉える】
【しかし挑発的というのは些かこの女に関してもブーメランな発言である。本人にその気はないようだが】
【そして自分が放ったワードに関して相手の眼が光れば、再び軽薄な笑みを浮かべる。】

なんやぁ、やっぱり訳知りみたいやなぁ。まぁ確かに異能者ならだれでも〝魔制法〟には敏感になるわな
けどその裏には国家ぐるみの、特に警察機構の大きな闇がある。そしてさらにその闇は世界全体まで広がろうとしている。

【相手に合わせるように、糸目の女は〝闇〟について語る。それも表面上ではなく一枚奥の情報に関してまで】
【だが、まだ具体的な表現はない。あえて避けているようにも見受けられる。あるいは白衣の女性を〝測っている〟のだろうか】

んまぁそっちに関してはウチはまるっきりや、〝雇い主〟から調査を依頼されただけやから。
―――ただ、水の国〝旧市街〟………あそこは相当な場所のようやなぁ。下手につっつくと五体満足ではいられへんで。

ただアンタも色々と〝詳しい〟反応やけど、〝何者〟や?

【そう言い切ると糸目の女はずいと白衣の女性の目の前まで踏み出る。つまりは白衣の女性の立場が気になるようだ】
【そして―――その返答次第では状況が一気に変わる可能性も感じられた】


170 : 名無しさん :2018/09/22(土) 23:13:43 OBPg0H7c0
>>162

【耳元に口付けるのならば、きっと少女の肩など容易く跳ね上がるのだろう。びくり、と背中ごと震えるのなら、続く触覚と耳孔に直接注がれる声に、ひどく身悶えする】
【だからきっとくすぐったいのに違いなかった。全身がくすぐったいのならば触ってほしいのに違いなかった。掻くほどの力なんて必要なくて、指先だけで狂えるんだから】
【それでも辛うじて端ない吐息と言葉とを歯列に濾しとるのなら、漏らすのはただ拙く邪気ない吐息なのだろう、ひどく湿っぽくて肺の一番奥から出て来る、吐息を】

――――――、ぅ……、っ、ぁ、う、――〜〜〜っ、どこ、触っ――っ、もお、――っ、

【服の中にまで手を入れられるのなら、何度か詰まらせるのだろう。何より指先が下へ下へ向かうのなら、甘い吐息の中、わずかに唾を嚥下する間が、空いて】
【けれど言葉はきっと相手の行為よりいくらか早かった。指先が傷口にすら辿り着かぬ内であった。だから"違う"と気づいたときに、彼女はぐうと眉を潜めるのだろう】
【そうして太もも同士をぴたりとくっつけてしまう。それでも柔らかな布地のスカートを落とされてしまえば、今度こそ抗議の声、小さな呻きとして発し】

――ずぅと、アリアさんのこと、見ないようにしてたのに……私……、

【――だから、小さく漏れる呟きは、きっと断末魔と等しいのだろう。自分がばらばらにした細片が一つに纏められて、それだけで何か泣いてしまいそうになって】
【ごくごく甘たるい蜜ごと一口に含んでしまう唇にマゼンタ色は縫い付けられてしまう。ぼおっとした目、ただ好きと愛している以外の感情を忘却してしまったかのような、】
【もっと厳密に言うのなら、人間らしい思考回路のほとんどを、もっと原始的な脳に乗っ取られてしまったときの目なのだろう。なればこそ、口付けだって深く深くまで、受け入れる】
【それでいて寸前の宣誓があるのなら、めいっぱいに求めようともするのだろう。やがて蕩けた脳のままで椅子に片足を持ち上げる、身体を返すのならば、いつしか真正面から】
【だからきっとたくさん溢してしまう拙いもの/端ないもの。ふうふうと荒い吐息がたとえ擽ったくとも、気にしてやるだけの余裕があるはずも、ない】

――すき。すき。すきい……っ、すきだよ、っ……は、ぁっ――、すき……。アリアさん……。すきぃ――、

【未だ椅子の下にある足が床を押すから、押された椅子もまた、がたんっ、と、哭くのだろう。そうして無理繰りに立ち上がるのならば、吐息のはざまに言葉が現るのだろう】
【それでいてひどく不明瞭な音の羅列ばかりだった。空っぽの手の指先を必死にその腰元に食い込ませて、生々しく湿っぽい感情を、その胸元に繰り返し吐き出すなら】
【きっとただ冷たいばかりの機械なら、結露にて壊してしまうに違いなかった。それほどまでに大雑把な息をしていた。――ひどく暴力的で衝動的な原始さに浸された目をして、】
【ゆえに気遣いも控えめにただ連れ込むのだろう。それが男ならよほどでないと零点だった、そうであっても一桁は逃れ得ぬほどだった、それでも目いっぱいに好きを表す、色合いが】

【はじめて会った日にされたように顔のすぐ脇に腕を突き立てる、薄生成りのシャツもただ邪魔なものでしかなく、そうしてスカートは椅子のところ、落としたままならば】
【きっと初めて見上げられるキスをするんだろう。そうしてきっと初めて目いっぱいに愛してやるのに違いなかった。軋ますベッドの音階さえ、なにか大事な箍を外して行って、】

――――っ、アリアさん、アリアさん。――、アリアさん。これ、すき? ――……すきなの? ぁは、っ――、かわいい、ねえ、アリアさん、かわいい……。
かわいいよぉ、――っ、すき。すき……。すき。かわいい……。――ね。これは――? ――。アリアさん。好きって言って……。これも……これも――。

【だけれど結局は自分の好きを拙く模倣するに終始するのだろう。ならばやはり彼女は誰かを愛するなんて初めてなんだって浮き彫りにして、だからきっとそれが悔しくて】
【その胸元に縋りついて泣きじゃくりながら好きだって繰り返すだけになるのに大した時間はかからないんだった。目いっぱいに甘やかなスズランと蜜の声が繰り返して、その名を呼ぶなら】
【故に向ける視線は、――狂おしいほどに相手を求めてやまない。その舌先で指先で嬲られたいって願うのは、もう生還出来ないって気づいてしまった少女の、それが最も救いなのだから】

/わーおつかれさまでした!でしょうか!


171 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/23(日) 00:02:48 hEXW.LLA0
>>170


【生娘と同然に悲鳴を絞り出す眼前の少女が何もかも愛おしかった。 ─── 何時であろうと容易く嬲ってしまえる事を知っていた。それでも敢えてそうしなかった】
【であれば慈母の色合いに微笑む碧眼の隻眸はどこか嗜虐を宿していた。手馴れぬ夜伽への誘いを、かえって助くような挙措をもって、はじめての行為に浸らせて】
【 ──── 少女の告解にも、腰を掴む指先にも、示威的な情念を宿した片腕にも、潤みきって泣き出しそうなのに劣情を語る紅紫色にも、垂れる薄藤色に翳る顔にも】
【ただ酷く被虐的に眉根と目尻を蕩かして、愛される雌の顔をしてアリアは応じた。 ─── 探られる指先に、幽けく漏れる艶声は、存外に甲高く切なく儚くて、愛らしい】

【閨所の上、少女の腕中、幾度もアリアは弄ばれるのだろう。名前と、好きと、愛してるを添えて。ブラインドの降りた暗闇の中に、互いの濡れた瞳と触れ合う生肌の感覚だけを頼りとして】
【それでも何れ少女が泣き出してしまうのなら、 ─── やさしい両の腕(かいな)が、余韻か何かに震える胸中へと、望みなど断つような柔らかさにて藤色の不凋を抱き締めるのだから】
【其処で求めるような視線を投げかけてしまえば終わりであった。拙くも愛しい発露が、すなわち少女の求むる所であるというのは、アリアも悟っていたのだから。故に、また、スプリングが軋めば】



「 ─── ふふ、」「好きよ」「かえで。」

「好き」「好き、」「好き。」「貴女の全てが、」「大好き。」「 ─── 好きなの。」「大好きよ。」
「愛してるわ」「愛してる。」「ずっと、」「 ─── ずうっと」「一緒よ。」「一緒。」「だって、」「貴女の為なら、わたし ───………。」




【耳朶に送るは幽玄の】【湿った呼吸は甚だ荒く】【紅白ばかりの乱れ髪】【劣情と共にシーツへ散らし】【闇降る部屋の片隅で】【膚肉の張り付く質感を】
【からだの上に掻い抱いて】【残響の斯くも絡み合い】【情の後には眠りも来れば】【朝も夜もなく尾を齧るから】【そして狼は、赤ずきんを食べた。】



/とっても長い間おつかれさまでした&ありがとうございました!!


172 : 名無しさん :2018/09/23(日) 10:33:17 prnkNu2.0
//また安価ミス…すみません>>169>>167向けです


173 : 名無しさん :2018/09/23(日) 10:46:58 OBPg0H7c0
【街中――川沿いの散歩道】
【朝早い時刻だった、それでも通学の学生も、通勤の大人たちも、あらかた通り過ぎてしまった後であったなら】
【川のせせらぐ音。散歩する大型犬の息遣い。その犬らを引き連れた誰かの、歓談する声――それらが、その場を満たして】
【朝日を一張羅のドレスみたいにきらきら纏う水面を眺めていれば、今日一日くらい学校も会社も何もかも放っておいていいかな、なんて思えそうなくらいに、穏やかで】

――――――、

【――だから、だろうか。川べりにある小さな東屋、水面も道も見渡せる場所にあるその場所に、いくらか前より居座っているのは、少女の人影】
【どうやら本を読んでいるらしかった。制服を身に纏っているわけでなければ、学生鞄を足元に転がしているわけでもないけれど。見るに、どうにも、学生の頃合いに見える】
【ひどく分厚い本を机の上に置いたのなら、じいと視線は吸い込まれていく。――――それでも、もしも誰かが近づこうとするのなら、きっと彼女は気づくから】

【白銀の髪は長く腰元まで届くもの、ただ無為に流すのなら、その途中に蟠るもの、あるいは好きな方を向いているもの、いくらか自由な毛先の流れに】
【透き通りそうに白い肌、そうした瞳はきっと青色をしていた。蒼穹とも海原ともとれぬ青色に、縁取る睫毛は白と藤を重ねる二層仕立てで】
【飾り気のない眼鏡のつるつるを抑える指先はけれど素肌でない布地の色合い。オフホワイトのドレスグローブを両手にきちん、と嵌め込んでいるのがうかがえて】
【袖の窄まる生成りのシャツに、柿渋色のロングスカート。ちらと覗く足元も厚手のタイツ越しで、その足元にはいくらかの甘さを秘めた、つま先の丸いパンプスが覗くのなら】

――――おはようございます、いい天気ですね。――あはは、もうすぐお昼ですかね。時計を持ってきていなくて……。

【――――そうして、"よほど"でない限り、少女は先に声を掛けたがるのだ。ならば少女の声音はきっと朝露のように涼しげで、けれど花蜜のように甘い余韻を残すもの】
【身長はいくらか高くて、目測のみでも160を超えている。その癖に顔はいくらもあどけなく、浮かべる笑みもまた然り。であれば、やはり――大人と判断することはできぬ年頃】
【数刻前に笑いながらこの道を歩いて行った学生たちみたいに、――していておかしくない/あるいはしているべき年齢の、少女だった】

【――しかして人懐こいような笑みはどこか何か窺う色合いを秘めて、】
【やたらめったら分厚い何かの専門書を川辺に読みふける姿も、まあ、いくらか不信だと言い張れば、"そう"見えた】


174 : ◆RqRnviRidE :2018/09/23(日) 12:00:51 6nyhPEAc0
>>160


────っ!? な、ッこれは、マリア、ッッ──!!


【紅緋の瞳に射止められる。 向けられた面妖な笑みに本能が逃げ出すことを迫る、──けれど、しかし】
【体が石化してしまったかのように強張って動かない。 それはゴルゴーンの黒い眼差しに捕らわれたかの如く】

【世界が歪む。 捻れる。 渦を巻く。 ──抵抗の叶わぬ力に圧倒され、異次元に呑まれゆく中】
【瑠璃は憔悴と恐怖の色を幼貌に露しながら、逃がすまいとしてか彼女の指に絡める髪へ、一層力を込めるだろう】
【万力のようであった。 痣が出来るか。 切り落とされるか。 結果はどうあれ、それはただ刹那の出来事である。】


【──────】



【────】


【──ふと目が覚める。 子供は長い髪を下敷きにして、身を包むような姿で俯せになっていた】
【知らない場所だった。 郷愁のひとつも感じなければ、ここは間違いなく訪れたことのない地であった】
【心臓がどくどくと早鐘を打っている。 口の中がカラッカラに渇いている。 冷や汗がとめどなく頬を伝う】
【埃っぽい空気が頬を撫でる度、これは幻ではないのだと現を自覚させる。 乱れた息を整えるように大きく呼気を出しきって】

はぁ。ふう────さて、と。 ここは、……何処だろう? 困ったな……。
気付いたら知らない場所に居るなんて変な感じだ、最初の頃を思い出すなあ……。

【瑠璃は立ち上がり、周囲の風景を見渡す。 先程まで居た図書館の雰囲気とは打って変わって、まるで人気がない】
【毛先を宙に浮かせ、四方八方へ伸ばして辺りの情報を探ろうとする。 気温、湿度、空気の流れ、振動、生物の気配エトセトラ】
【彼らの持つ髪の毛は、自在に動く手足であり、武器または鎧であり、一族を結ぶ誇りであり、あるいは繊細な感覚器官でもある】
【アンテナのようにピンと張り巡らせながら、周囲の目に見えぬ情報を僅かでも捉えんと感覚を研ぎ澄ませるだろう】

……マリアベル。 彼女はいったい何者なんだろう……。
ここに居るのかな。 ボクだけ飛ばされていても可笑しくないよね。

【(──〝後悔〟だけはしない事だね)】

【視線の交錯する間際の、マリアベルの言葉を脳内で反芻する。 道筋を示す彼女が、実に愉快げであったのを物語っていた】
【掴み所のない人物だったように思う。 そして、現況に幾ばくかの不安を抱えているのは間違いない。 でも、──それでも】


────後悔なんてするもんか。 希望を持たなくちゃ。
〝道〟を紡ぐんだ。 大丈夫、ボクには〝カミ〟がついてるんだから。


【後悔はしない。 直向きに希望を持つことだけ考える。 繋いでくれた道のひとつを途切らせぬように】
【そうして瑠璃は〝窓〟へと歩み寄り、外の光景を己の目で確かめようとする。 さて、何を目の当たりにするだろうか──】


175 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/23(日) 17:52:13 g3JdQTas0
>>174

【周囲へと感覚を研ぎ澄ませば、人どころか生物の気配が全くない静寂だという事が分かるだろう。】
【また、空気はどこか朧気で感覚はあるが夢の中にいるような一種のトランス状態のような感覚を感じるかもしれない】
【石畳の材質は異質で、世界のどこにも存在しない物質かのような錯覚も覚えるかもしれない。】

【―――〝窓〟へと近づけば、そこから視界は一気に広がるだろう。】

【眼前に広がるのは巨大な物体。それは〝卵〟のような形をしていた。】【ただし大きさは数百メートルにも達する。】
【表面はまるで皮膚のような薄い膜で覆われており、時折〝ドクン〟と脈打つ。そして―――】

【薄い膜の奥には、まるで〝星空〟〝銀河〟〝宇宙〟と表現できるような力が渦巻いているのが見える。】

【―――〝卵〟の周囲には、パラボラアンテナのような不可思議な機械が〝卵〟を囲むように置かれている。】
【それ以外の風景は〝卵のようなナニカ〟が巨大すぎるため見えない。だがどこか異質な空気が周囲に蔓延していた。】
【ずっとその場で眺めていれば、まるで心も何もかも飲み込まれていってしまいそうなそんな空気。】

―――どうだい、大きいだろう?アレが〝宇宙卵〟………それもほぼ〝完全〟なサイズのものさ。
あれだけ大きければ、文字通り自己の内面に存在する〝内宇宙〟を実体化させることすら可能だろう。

ってイテテ、なんであんな強く掴むのさ指に痣が出来ちゃったじゃないか。

【突然、背後から声がかかる。振り向けばマリアベルが先程とそのままの格好で立っている】
【指、先程瑠璃が強く握り絞めた指は内出血で痣となり赤黒く変色しているのが見て取れた。】

【マリアベルは口を尖らせて文句を言いながら瑠璃の両肩に手を置こうとするだろう、そして耳元でそっと囁く】
【「恐がる必要はないよ」―――再び歪な笑みを浮かべてそういった。】


176 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/23(日) 20:16:12 WMHqDivw0
>>168

…………わあ。噂には聞いてたけど、実在するんだ!

【――――女の声がする。メゾがつくかつかないか、ギリギリの境界線を辿るアルトの音程】
【それは子供めいて無邪気にはしゃぐ色合いを伴って、無遠慮に放たれた。路地の向こう、】
【角を曲がった先からひょこりと顔を出すのは。……小柄で細い女だった、ひどく、不健康な肌色をして】

【だけれども。その表情は本当に嬉しそうに華やいでいるんだった。ずっと欲しくて探していた絵本】
【いくつもいくつも捜し歩いて、知らない国の寂びた街、潰れかけの古書店でようやく見つけたとき、みたいな】
【そういうときの「少女」の顔をしていた。黒い髪、暗赤色の瞳――見れば年季が入っているから】
【そんなわけないとは思わせるんだけど。それでも彼女はその時確かに、少女の顔をして笑っていたのだった】

ね、ね、あなた、「あわせ屋さん」でしょう? 都市伝説で知ってる!
合ってるんだったらお話したいな、ねえ、今おひま? ねえ聞かせてよ、

【「あなたはどういう手口を使って、“彼方”の人と会ってるの?」】

【たた、と無遠慮な軽い足音。踵の低いパンプスから鳴らされるそれは、躊躇なくファウストに近付いて】
【パーソナルスペースなんてほとんど考えられないくらいに近付いてくるんだろう。しっかりした作りのワンピース】
【裾、翻して。ぱあっと笑みながら、ご主人様を見つけた飼い犬よろしく小走り。――そんな女も、】
【ある意味ではまた、有名人と言えば有名人だった。裏社会で「金さえ渡せばなんでもやる」と評判の】
【趣味のわるーい術ばっかり施してる、研究者。“冒涜者”。それが彼女の通り名ではあったけど】
【今日はオフの日であるらしい――白衣、着ていないし。散歩でもしていたんだろうか】


177 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/23(日) 21:05:08 hEXW.LLA0

【愛は寛容であり、愛は情深い。また、ねたむことをしない。愛は高ぶらない、誇らない、不作法をしない。自分の利益を求めない、いらだたない、恨みをいだかない。】
【不義を喜ばないで真理を喜ぶ。そして全てを忍び、全てを信じ、全てを望み、全てを耐える。 ─── 私の生まれた日は滅び失せよなんて、キミに言わせたりしないから。】

【昨日の夜は全然眠れなかったけど、まあ、杞憂だった気がする。スケジュールを詰め込み過ぎてなかったかどうかだけ、ちょっと、心配だったものの。】
【隣で悪目立ちするのはイヤだったから、今日ばっかりは普通の女の子っぽいカッコ。黒髪ロングは凡そフィッシュボーンに、残りは頬周りを隠せる分だけ垂らす。】
【被るのは白いニット帽。ボーダーのトップスにカーキのMA-1を合わせつつ、足首までのデニムスカートとストラップブーツで少し冒険。 ─── メイクはナチュラル気味。ハンドバッグには、サブコンパクトを潜ませて】

【午前のうちに駅中のカフェで待ち合わせることにした。「 ─── おはよう。」驚いた。見たことないキミだった。ともあれ一先ず最初に、送るのは寿ぐ言葉。「誕生日、おめでとう。」】
【プレゼントは、またあとで。 ─── モーニングを済ませて、ポルシェの助手席にエスコートすれば、後は早くて。「ねえね、行きたいところがあるんだ。」】

【都内の大きな水族館。ランチは併設のレストラン。足休めには銀幕へ、前評判の良い恋愛映画。幾らか時間は作っておいたから、キミの行きたいところを聞いて ─── 。】
【特になくても、夕暮れの街をドライブするだけでもよかった。 ディナーは、ダイニングバーにて。雰囲気は良く、煙草臭くない店。アルコールのないカクテルが揃う所。】
【控えめな食事を楽しんで店を出る頃には、日付が変わるまで数時間といったところ。 ─── それでも、"送っていくよ"だなんて言わない。なら、最後に着く場所がどこか、きっと分かる。】



       「ねえ、ね」「 ─── 今日、楽しかった?」



【帰路に選んだのは、普段は余り通らない高速道路だった。 ─── 夜景が綺麗だと評判な環状線。夜を纏って建ち並ぶ摩天楼。星よりも多いネオンの輝きが、炯々とボクたちの瞳に落ち流れていく。】
【努めて平静を保った声音で(けれど少なからず上ずった声音で)、徐にボクは問いかけた。暗い車内、小気味いいエンジン音、ステアリングの肌摺れ、車体の微かな振動。インターチェンジが、少しずつ近付く。】


//よやくのやつです!


178 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/09/23(日) 21:07:19 ZCHlt7mo0
>>169

……なるほど。そこはまぁ、私はね……『表』と『裏』がある以上、切り替えなきゃいけないと言いますか……
まぁ、あなたにはそれが無いってだけの話でありまして……そんな相手に、あまり気取ってもしょうがないって事なんじゃないですかね?

【要するに、スタンスの違いというべきなのだろうか。白衣の女性にとっては、こうした場所をうろつくのは、あまり人には見られなく無い事なのだろう】
【恐らくは、こうした活動をメインとしているらしい糸目の女性とは、そういう部分では対照的だ】

――――『国家』、だけなんですかね……? それで済むような問題でもないらしいですよ、どうやら……ッ

【ギッとその目を見開いて睨みつけてくる相手に、彼女はようやく腰を据えて、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す】
【奇しくも、互いに相手の出方を見る姿勢が一致している――――自分の知るところの全てはさらけ出さず、それでいて、情報は小出しにして】
【相手が、どういうリアクションを取ってくるのか、その出方を待っているのだ】

【――――水の国『公安』。更に、本来秩序の敵であるはずの『カノッサ機関』。その領域にオーバーラップする、陰の勢力争い】
【女性とて、事情をそこまで深く知っている訳ではないが。少なくとも、その実態は一般には知られていないもののはずで】

……ま、そんなもんなんでしょうね。私だって、そっちに深入りすると、色々と危なそうなんで、遠巻きに眺めているだけなんですけどねぇ……
(――――遠巻きに、眺めてるだけで済むと良いんですけどねぇ……)

【『旧市街』の動乱――――一応、女性も噂ぐらいなら耳にしているが、そこに積極的に介入していく予定は持っていない】
【純粋に、女性は「自分の身に余る」と、危険を避けているだけなのだが――――しかし、それで済むのかどうか、胸中では苦笑を漏らしていた】
【――――知らぬうちに、彼ら「この世界の理から外れた面々」の2人と接触を持ってしまっていた自分が、この先ずっと無関係でいられるとも思えない――――】

――――別に?
私は何者でもありませんよ……ただ、そっちの方面に興味津々なだけの、ただの『闇医者』……とでも言えば良いんですかねぇ……?
――――なんだったら、勝ち組への階段、一気に駆け上がって行けそうですし……ッ?

【ぐっと踏み込んできた相手に身構えながら、女性は答えた。自分の顔の横で軽く翳した手から、青い電光をチリチリと弾けさせ、糸目の女性を牽制しながら】
【――――後ろ暗い事を抱えているのは事実だが、その2つの事態に、それほど深く踏み入っている訳でも無い】
【――――だからこそ、彼女はここで『さがしもの』をしていたのだ、と。それに気づけるだろうか――――】


179 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/23(日) 21:46:20 WMHqDivw0
>>177

【「どんな服着ていくの?」と訊かれて、別にいつも通りって返そうとしたらまあ、死ぬほど怒られちゃったから】
【だから奴らの着せ替え人形になった。だって本当に、こういうとき、どういう格好すればいいかなんて知らなかったし】
【「そのバカしか履かない赤い靴も当日は封印! 封印ね! 僕と足のサイズは一緒だったでしょう!?」 ――言われて、】
【踵だけが高い靴での歩行訓練まで受けた。最初はバカにされているのかとも思ったけど、意外とタメになっちゃって】
【だって靴擦れがこんなに痛いなんて、それも知らなかったから。だからアキレス腱に絆創膏貼ったまま、当日、迎える】

【――膝丈のスカートなんて本当に生まれて初めて着た気がする。真っ白いチュールワンピース、汚さないか心配】
【レース刺繍で裾に蔓薔薇を描くデザインは、ミアが選んだ。あとそれに合わせるバッグと靴まで揃えてもらって】
【それに合わせた、爪先に行くほど白が濃くなるグラデーション――その上、角度によってきらきら、色合いを変えるホログラム】
【そういうネイルと、あとよくわからない編み込みを施すハーフアップと毛先をゆるく巻くヘアアレンジは兄が担当】
【妙に器用すぎて気持ち悪いと零したら、「これくらいは誰でもできんの。できねーお前が不器用すぎるだけ」】
【……そんなことを言われて、冷えたヘアアイロンでこつんと頭を叩かれた。「崩すなよ。一応スプレーはしたけど」】

【そうして、借りてきたネコスタイルで過ごした一日。いつもみたいにきゃはきゃは笑うのだってなんだか憚られて】
【終始照れたみたいに、はにかむのが精一杯だった。だけど楽しくないかって訊かれたらそんなわけないと、首を横に振る】
【何処か行きたいところがあるかと訊かれたらちょっと悩んで――海、とか言うのはちょっとベタすぎると思ったので】
【どこでもいいよって返しておいた。したら、ドライブ――ちょっと開けた窓から入る風に髪を弄ばれそうになって、慌てて閉じて、】


――――――んん、逆に楽しくなかったなんて言うと思う?
んなワケないじゃん。楽しかった、……誕生日ってこんなに楽しいものなんだね。
今まで特別、お祝いとかしたこと、なかったし――ん、ん。

…………絆創膏貼ってたのに痛いな。靴擦れ。……早く帰って脱いじゃいたいな。

【車のことにはまったく詳しくないから、エンジンの音が静かなのか煩いのかもよくわからないけど。とりあえずは心地いい】
【シートの背凭れに体重を預ける感覚も、よく馴染んでる気がするから――ちょっとだけ背を反らして、喉を鳴らして】
【そうしてリラックスしたら、足首の痛みが急に気になった。ストッキングと絆創膏、二枚重ねで保護したはずの皮膚が】
【じんじん痛んでしくしく泣いてる。気がするから――早く「帰りたい」なって、当たり前のように呟いて。ころ、と後頭部を転がす】

【――――男の人の運転姿にときめく女もいるらしい。今まではふーんとしか思ってなかったけど、なるほど、なんとなく、分かった気がした】


180 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/23(日) 22:13:49 6IlD6zzI0
>>176

【"契約"は履行された。物言わぬ骸と成った依頼人を見下ろしてから視線を戻せば】
【暗がりの向こうに在ったのは一人の女性の姿。弾む声色に童女を思わせる弾けた喜びの色が真っ先に目に留まる】
【次いで視線が移ろう先として乾いた血液を思わせる瞳の色。無邪気な振る舞いとミスマッチの瞳の色】

【それらが"不協和音"。"不吉の予兆"。"厄介事の兆し"。面倒事を連想させるには十分すぎたから】
【"それ以上近づくな"――という意味合いの手による静止をしようとしたが、聊か遅きに失していた】


―――…さぁ、どうだろうか。「あわせ屋」だなんて初耳だ。
間違いなく"人"違いだ。都市伝説に数えられる程の有名人に成り果てた心算も無い。

そして噂は噂でしかない。些細な事柄を尾ひれ背びれを付けるのは人の性かね。
何はともあれ私は「あわせ屋」じゃない――だからお前と話す事など何も無い。


【取り付く島も無い言葉は、冒涜者の関心には少しも触れない】
【拒絶の態度に添えるのは、暖かみを感じさせない怜悧な眼光】
【女性にしては高身長のファウストが落とす視線は低身長の彼女からすれば威圧的に映るだろうか】

【現状において、自身から見た冒涜者は好奇心で自ら死へと歩みを進める猫にしか見えない】
【けれど交わす遣り取りの内容によっては心変わりもあるだろうから、付け入る余地を言葉に残していた】


181 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/23(日) 22:33:30 hEXW.LLA0
>>179

【正直な話、息を飲んだ。 ─── 飲む仕草だけは何とか堪えはしたものの、ばっちり目を見張った。「 ……… すごい似合ってる。」出会って三口目くらいに紡いだ言葉。】
【"フツー"の格好で来たボクが却って情けない感じがして申し訳なかった。アリアに褒められたワンピースはもう部屋着に変わり果てていたけれど、それでも、もっとこう、】
【何かしら方策はあったような気がした。 ─── まあ、デートでオトコは女の子を立てるもんだって、ググった恋愛指南サイトには書いてあったし。】
【そう思えば、キミと比べてさしたる趣向も凝らさなかった爪先も、少しくらいは許される気がした。 ……… 手を抜いた訳じゃあないんだ。どうか伝われ、この本心。】

【だから、終始ボクの隣で幾らか小さくなっている ─── ヒールの高さはさして変わらないにも関わらず ─── キミの姿に、少なからず、ヤラれてしまった。】
【水族館の幾らか昏い青色に包まれて、上映前の下らない広告でふたり顔を見合わせては、何の気なしに選んだ湾岸道路の夕陽に照らされる横顔も、】
【何より紅い瞳に乾杯したグラス越しの微笑みが、やがて肩口のはだけたワンピースは儚くも目に毒であり、そして真っ赤なヘアアレンジは花嫁のそれさえ想わせるから、ただただ、好き。】


「 ─── そっか、」「よかった。」
   「ボクも頑張った甲斐があったよ。」「 ……… ふふ。でも、ね」


【故に分かり切った答えを聞けたのなら、ほんとうに心の底から安堵して、今すぐにも綺麗に配列できない内心の感情を皆んな吐き出してしまいたかったけど ─── ガマン。】
【努めてキザなセリフを繋いでいく。学習した。カッコつけた言葉は、こういう時に遣る瀬無い多幸感ごと吐くものだ。まかり違っても日常のワンシーンに紡げる代物じゃない】
【 ─── 夜の輝きに愛されて、革張りのシートにくたりと身を委ねるキミの姿は、それこそシンデレラみたいだと思ったけれど。流石にそこまでは言えなかったし、何より12時を迎えて御別れなんてのは悲しすぎる。】

【ETCをくぐり、インターチェンジを降りる。通り慣れた道路に降りて、見慣れた景色が目に入るようになれば、最後に行く場所は一ツきり。悪戯っぽく、笑って】


「お楽しみは、まだこれから。」「 ─── ねえ。シグレは、約束できる?」
 「今からすこーしだけ、ボクが良いって言うまで、目を瞑ってほしいんだ。 ……… いいかな。」


【 ──── 信号待ちの数秒間。ボクはキミに微笑む顔を向けて、そう尋ねる。頷いてもらえたら、頷いてもらえなくても、円い瞼の落ちるを確かめて】
【すれば車はごく緩やかな法定速度で、いずれ更なる徐行にて何処かの駐車場に入り、遂にはエンジンまで止まる。 ─── ばたん、ドアの開く音。ばたん、ドアの閉まる音】
【ばたん、 ─── もう一度、ドアの開く音。助手席のドアの開く音。誰かの手がキミの手を繋ぐ。繋ぎ慣れた感触。指まで絡めた所で、抱っこするべきか、少しばかり悩むようだった】


182 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/23(日) 22:34:23 WMHqDivw0
>>180

【違う、と言われれば。きょとんとした顔をして、目を丸くして、足を止めて――】
【どうしてそんなこと言うのって目をしてた。それからちょっとがっかりしたような顔。そのいずれもが】
【やはり少女の色合いだけをしていたから――ひどく浮いて見えていた。それからこてん、と首を傾げて】

…………そうなの? じゃああなたは、誰?
僕は聞いたことあるんだけどな、「向こう」へ行ってしまった人と会わせてくれる人って……、

……ん、あ、つまり、そういうこと?

【転がる骸を指差して。此方に居る人を彼方に届けてやるから、だから、「会わせ屋」と言うのかと】
【そう訊くときにはひどくしょんぼりした表情をする。夢がばらばらに壊れた――とまでは言わないが】
【少なくとも、着ぐるみの中に人がいることを知ってしまった子供の顔。を、して――視線を落とし】

じゃあ、うん……あなたに話すことはないんだろうけどさ、……折角だからお話しようよ。
どうしてそんなヒラヒラの鰭がついちゃったのか、気になってきちゃったし。

僕ね、「向こう」に会いたい人がいるの。その話とか、したら……聞いてくれる?

【それでももう一回上げるときには、幾許かの希望の色を灯して。八の字眉、困り笑顔を浮かべながらも】
【「折角だから」お話したいなんて言う。であるなら、この女が奇特な人間であることにはまず間違いはない】
【上目遣いにて媚びるように見上げる視線には、タダでこの場から帰りたくないという思惑が透けて見えていた】
【だから、冷たくされたって怯まない。……その程度には、肝が据わっているというか図太いと言うか――そんな女だった】


183 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/09/23(日) 22:40:13 6CbzNXfg0
>>112

【恭しく言葉を奏上するラベンダー、その光景に彼女は確かな忠誠を感じ取り────】
【そして同時にその奥深くに存在する、滅私の感覚をも読み取ったのだろうか、】
【一葉、一葉、一片、──── その一音節に至るまでもが、何処か儚げな音律】


──── 頼りにしておりますわ、私にはラベンダー様のような力はありません
そればかりか、他の能力に関しても、他の能力者のように上手くはいかないでしょう
けれども、この国を、民を思う気持ちは誰にも負けませんわ

かつてこの国は大きな脅威にさらされ、その度に能力者達が守ってきたのです
そして今この国は、内部から大きく分裂しようとしています、それ故に────

今まさに私達が、正義を問いただす必要があると、そう思っております


【彼女もまた持っている端末の連絡先を貴女に伝えるだろう、加えて────】
【彼女が今、拠点にしているビルの住所もまた伝える、水の国の一等地】
【それは同時に経済的な余裕をも示しているのだろう、幾つかの意味を添えて】


──── 機が来たなら、再び連絡いたしますわ、それまで──── そう
それまで、ラベンダー様、──── 決して、無茶をしないように、と


【それは誰からの言葉であったのだろうか、少なくとも、民衆を率いる女神ではなく】
【等身大の少女が、身の丈一杯の勇気を振り絞った様な、そんな────】
【温もりの意味を確かには示さない、それはきっと所作でしかないから】

【──── 去りゆく背中、やがて消える、泡沫すらも定かではないみたいに】



【けれども確かに、咲いた正義の忘れ香を一つ────】


/長時間お待たせしました、そしてお疲れ様です!


184 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/23(日) 22:58:55 WMHqDivw0
>>181

【似合ってるって言われるのがこんなに嬉しいとは思わなかった。自分で選んだものではないとはいえ】
【それでも意表を突けたんならそれなりに早起きした甲斐はあった。あとで奴らに礼のひとつでも寄越しておくかと考えて】

【水族館ではくらげを見てはしゃいだ。普通の魚が泳いでいるのを見るより、いくらか現実味がなくて面白かったから】
【映画館では早々にポップコーンがなくなってしまったからちょっと焦ったけど。まあ、寝ちゃうとかそんな粗相はしなかったし】
【ごはんだって昼も夜もおいしかった。きちんとしたテーブルマナーの必要な店に連れてかれたらどうしようとか、】
【そういう不安は杞憂に終わって。……多分それも配慮してくれたんだろうなって思ったんなら、やっぱり、好きになる】

【それでも。配慮してくれたとはいえ、慣れない格好で一日過ごすのはそれなりに疲れちゃったから】
【助手席のシートに乗せる体重は重ため。沈み込んだらなかなか浮かび上がることが出来ずにいて――半分、瞼を落とす】
【いつもはバチバチに塗り固めていたマスカラも今日はちょっと控え目にしていた。そのまつげ越しにひかる街の灯、】
【ぼうっと眺めながら――手を組んで前に伸ばす。ネイルのホログラムがさっき見たくらげみたいに、ゆれて光っていた】

んー、ん……目? こう? はい、閉じた。
……もしかしてお家にも何か仕込んであるの? 張り切り過ぎじゃない?
あはは、いいけどさ――――ん。……足元、いつもより不安定だから、離さないでね。

【言われて残り半分の瞼も落とす。いつもより緩やかな色合いでグラデーションを描くブラウンのアイシャドウ、ラメが光って】
【アイラインはいつも目尻を跳ね上げるリキッドタイプだったのを、今日はペンシルで柔らかく輪郭をなぞるにとどめ】
【目尻だけアクセントで赤色を滲ませるのは所謂ドールメイクと呼ばれる手法。そうしてドアの開く音のほうに顔を向けるなら】
【俗に言うキス待ち顔みたいになっちゃった。……意識はしていなかったはずだけど、目を閉じたらそうなっちゃうから仕方ない】
【中央に行くほど紅色が強くなるグラデーションリップ、グロスはさっき塗り直したばっかりだったから。艶めいてどこかの光を反射して】

【絡まった指に籠る力は、本当に心配している様子があった。慣れない靴でさらに目を閉じて歩くなら、ちょっとばかし怖い】
【それがたとえ、もう何度でも歩いた「おうち」への道筋だったとしても、――手を引いてくれるのがよく知った体温であったとしても】
【車の外にストッキングで包んだ脚を投げ出して、細いヒールが地面を踏むなら、ちょっとだけ不安そうにお尻を持ち上げて】
【……だったらもう抱っこしてしまったほうが早いような気もする。靴擦れがどうとかも言ってたし。それでも目を閉じたまま】
【あくまでも言われたことはきちんと守ろうとするんだった。そうしてゆっくり立ち上がれば、体重をわずかに其方に寄せて】


185 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/23(日) 23:28:11 6IlD6zzI0
>>182

【拒絶を言葉と態度で示したのは、面倒事を避けるため――だけではない】
【所詮噂は噂でしかないと諦めて貰いたかったが故の事】
【そして悪魔の差し伸べる手に縋る程に救いを求めている様子じゃなかったから】

……そんなのは夢物語。子供の夢想と同じだ。
少なくとも今のお前に突きつける事実などそれで事足りる。

【慮るという感情が無いかのように、事短い言葉は冒涜者を突き放す】
【落胆の色を滲ませようが、失意で項垂れようが知った事では無いから】

【けれど、"あわせ屋"の内容を誤解されたままなのも癪だった】
【加えて冒涜者の困惑気味の笑みから放たれた上目遣い】
【目的のためなら梃子でも動かぬ姿勢を見せるものだから――微かに態度を軟化させる】


……まぁ、言葉を交わす程度ならば付き合ってやっても良い。
奇妙な身形の女にかかずらう奇特の女。普通から逸れたもの同士なのだから。

―――……それに、噂話に縋るほどのお前が"会いたい人"とやら。少しだけ興味がある。
こんな路地裏で話し込むのも趣が無い。――…場所を変えようか。


【氷の様な冷たい表情から紡がれる言葉には僅かな温度差があって】
【取り付く島も無い――などという事も無いのを察する事が出来るだろう】
【くるりと身を翻して、すたすたと歩き出す。そんなファウストの背中は無言で語る】

【"ボーっとしてたら置いていくぞ。話を聞いて欲しいなら付いて来い"】

【冒涜者が後を付いてくるならば、舞台は路地裏からBARへと移るだろう】
【自身が"あわせ屋"じゃないと否定しておきながらの行動。少しだけ愚かしい】


186 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/23(日) 23:37:15 hEXW.LLA0
>>184

【興味を示してくれるものには一緒になって興味を示した。 ──── アクアリウム、やってみるかな。そんな事も思う。
【映画の内容は殆ど頭に入ってこなかった。デートの時に観る映画というのはそういうものなんだろう。昼も夜も、ノンアルコールしか飲めなかったのは寂しかった、けど】
【 ──── だったら今夜に空けるワインだって決まろうというものだった。イキリ散らしていこうじゃないか。なんとなれば凡ゆる気取った格好は、不相応な背伸びに付いてくるものだから】


「いちど惚れたら尽くすタイプなんだ。」「 ─── お疲れの所、本当に悪いけれど」
「もう少しばかり宜しく頼むよ。」「 ……… 離したりなんか、しないからさ。絶対。」


【まったく気合の入ったお粧しだった。笑顔のボクに、可愛いって伝えてもらう為だけに彩られた顔貌。非の打ち所もない。上手になったなあ、なんて、訳知り顔で思いつつ】
【眠るような顔立ちに思わずキスしてしまいそうになる。 ─── でも、それはまだ、とっておきたい。内的衝動に抗いつつも、華奢な手を繋いで】

【 ─── 結局、抱き上げることにした。慰めるように靴擦れを手のひらで撫ぜれば、微かに異能を行使して、痛む脚を癒してやる。仄かに、ひんやり。】
【レパートリーをあんまり知らないので、代わり映えしないお姫様抱っこ。もっとこう、手軽に使える抱き上げ方を、知るべき気がする。とはいえ】
【これ以上にロマンチックな抱きしめ方も中々ないのだろうから、これでいいのだろうとも思う。 ─── 寄せてくれる体の重みさえ、幸せで】
【足音の残響は少しずつ形を変える。はじめは駐車場の無機質なコンクリートを叩き、やがて何処か室内に入り、エレベーターか何かを待って】
【ぴんぽーん、というチャイム。幾らか後に上昇の感覚。自動扉の開く駆動音。出てきた所は廊下らしい。そうしてまた、幾らか歩くのなら】
【おもむろに彼は立ち止まる。腰を抱く左手を器用に使ってドアノブを開く。 ─── 嗅ぎ慣れた、甘い香り。砂糖と、香水と、化粧品と、女の子の匂い。】
【「 ……… ちょっと、失礼。」 ─── 軽く異能を行使する冷たさ。ちいさな氷の人形がふたり、丁寧にキミの靴を脱がせてくれる。また少しだけ、ひんやりさせた。】

【 ──── やがて、抱く両腕は、どこかでキミをそっと降ろす。「楽にしてて。」ふわふわのクッションの上。足首を投げ遣っても平気な、ふわふわの敷き物。】
【足音が向かうのはキッチンの方。 ─── 冷蔵庫が開く音。なにか湿った果実を切り分ける音。柔らかなものを塗りつける音。殊更に漂うのは、なんだか新鮮で甘い香り。】
【そう長いことは待たせなかった。 ─── やがて、音がしなくなる。一回だけ、息を吸って吐く音。そうして再び、フローリングの軋む音。近付いて、テーブルに何か置いて】
【「 ──── お待たせ。もう、"いいよ"。」やはり少しだけ上ずった、けれど心底うれしそうな声が、幾分も心地よい空調のちいさな部屋に、よく響いた。】


187 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/23(日) 23:49:22 GQoYu22s0
>>150-151

【傍らから掛けられた声の主に少女は顔を向けた】
【物静かで、それでいて背筋の通った黒髪の妙齢──】
【上質な漆の鞘に収められ、床の間に佇む無二の名刀が、何とはなしに連想された】

【物腰穏やかに気遣いをする彼女の所作を、少女は押し黙って見つめていた】
【まるでどこかから連れてこられた猫が、新しい家主をじっと見定めるかのように】
【結局、少女は何を欲しがるということもなく、ただ静かに首を横に振った】


【──霧崎舞衣】
【その名前と、『チンザノ・ロッソ』との関係を聞いたとき、】
【少女の胸中には何か黒くざわつくものがじわりと立ちこめた】

【──より正確に言い及ぶなら、目覚めた瞬間に既にそれはあった】
【傍らにいたのがあの探偵ではなく──まして無人ですらなく──】
【何故か見知らぬ女だったのを見たときにはもう、冷えた予感が兆していた】


【──デスクの上へ意味深に置かれた探偵の装具】
【泳ぐ女の目、迂遠な言葉──その一つ一つに呼吸を締め付けられた】


【果たして、その事実を告げられたとき】
【少女は世界の全てから隔絶された心地を覚えた】




────────────え………



/↓


188 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/23(日) 23:49:57 GQoYu22s0
>>150-151

【── 一度は耳に入ったはずの言葉が、】
【脳に至る寸前に跳ね返され、呼気と一緒に破棄されたかのように思えた】

【その言霊は触れた耳朶を凍り付かせ、】
【排するにあたってさえ口元を震わしめた】
【そんな代物がこの脳の髄へ至ればどのようになるか──無意識は咄嗟に理解し、故に拒絶した】

【舞衣の存在は、数呼吸、少女の意識からは消え失せた】



【──ふいに、煙草の香りが少女の鼻先を掠めた】
【続いて焦げ付く硝煙の匂いも、濃い血の臭気も】

【もっともそれは彼女の脳が生み出した錯覚であり、】
【現実の空間には当人が感覚している百分の一ほども存在していない】

【しかし少女はそれにこそ突き動かされ、】
【ベッドから飛び出し、デスクの前まで覚束ない足で駆け寄った】
【そこに置かれた数々の装具を見て、存在を確かめるように手を伸ばした】
【力の入らない手で触れ、静かに握りしめ、じっと食い入るように見つめた】


【そして、】
【その手から伝わる無機質な金属の冷たさが、】
【どんな言葉や視覚よりも雄弁に、少女にその現実を知らしめた】


【火を灯すはずのオイルライターは、それが信じられないほど、冷たかった】



──────……────っ、…………────っ…………


【幻は全て崩れ去り、生々しい無音と重力が一斉にその身を打った】
【そしてあたかもそれに圧し潰されるかのように、少女はデスクに両手を突いて身を縮めた】

【声は無かった】
【ただじっと何かを押し殺すように、その華奢な背ばかりが小さく震えていた】



【やがて、熱く透明な大粒の雫が、数滴、リボルバーの表面を打った】







──────…………なにが…………



…………なにが…………ロックンロールだにゃ…………──────




/↓


189 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/23(日) 23:51:06 GQoYu22s0



【──ロックは死なないんじゃなかったのか】



【──明日をこじ開けるんじゃなかったのか】



【──本気で歌えば、世界だって変えられるんじゃなかったのか】







【──なのに】


【──どうして】



【こんな、何の音も鳴らせなかったやつだけ残していくのか】



【わたしは、コートニーでもヨーコでもない】



【──もう二度と】
【取り返しの付かない、巻き戻らない失敗をしてから】
【ようやく“思い出した”ような──間の悪い、どうしようもない、音痴なのに】





【──どうして】


【わたしにロックを聴かせてくれた人たちばかり先に】
【二度と開かないドアの向こう側へ行ってしまうのか】






【全てが終わってしまったような世界でも】

【あれだけわたしの鼓動を揺さぶってくれたのに】

【本物のロックは壁を壊すと教えてくれたのに────】




【結局、】




【どれだけ声を張り上げたって】

【どれだけ心を削って打ち鳴らしたって】







【ロックなんか歌ったって 世界は 未来は 何にも変わらないじゃないか】









【────ロックなんて】



【────ロックンロールなんて】



【もう、わたしは、信じない────】


/↓


190 : ◆3inMmyYQUs :2018/09/23(日) 23:51:57 GQoYu22s0
>>150-151

【──すると少女は、唐突に、】
【全てを振り切って逃げ出すように、ドアの方へと駆け出した】

【舞衣が制止を掛けたとしても一切聞く耳を持たず、】
【ほとんど体当たりも同然にドアを叩き開け、外へと飛び出していってしまうだろう】


【まなじりからの熱い雫を一滴、後に曳いて】






【──舞衣の厚情も全て無碍にして、背を向けた少女】
【追いかけて咎めるか、それとも呆れて見捨ておくか】

【彼女の顔色をじっと窺うように、静かな余白が立ちこめた】


191 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/23(日) 23:57:06 WMHqDivw0
>>185

…………なんでそんなに物言いが冷たいの。僕、あなたに何か悪いことでもした……?

【ここまでにべもなく言い捨てられるなら、さすがの女もちょっとばかしショックを受けたようで】
【ずぶずぶに濡れたイヌみたいな顔を晒して。頭の上に三角耳があったなら、へたり込んでいたことだろう】
【そうしてまた、視線を下げて――でもついて来いって言われたなら、またぱっと上を向く】
【わかりやすい女だった。実際喰っている齢よりずっと幼い精神性を持っていることを容易に解らせるよう】

あ、…………待って待って! あなた歩幅大きい、あと、足早い……
待ってったら。もー、結局走っちゃってんじゃん、低いと言えどもヒールで走るのきついんだから……

【ぱたぱたぱた、と追従する足音はやはり軽くて。見た目通りの体重をしているのだと思わせる】
【そんな感じで小走り、ファウストについて行った先――アルコールの香る場に舞台が変わるなら】
【ちょっとだけ困ったような顔をした。曰く、アルコールには弱いらしい。嫌いではないそうだけど】
【だから頼むのだってほとんどジュースみたいなカクテルを一杯だけ。飲み方もちょっとずつ、唇を濡らすように】

えー、んー……話、そうだ、話したいって思ってたんだった。けど、
……僕の話する前に、あなたの話も聞きたいんだけど。

「会わせ屋」のウワサの出処は、どこなの? 確かに僕、聞いたことあるんだけどな……。
ああもバッサリ「違う」って言われたんなら逆に気になるじゃん。
なんでそんな呼ばれ方、してたのかなあって…………

【そうしながら語りだすのは、聞いてほしいって言った内容ではなかった。実に図々しくて】
【「会わせ屋」でないなら何なんだって、責めるような口調。じとっと瞼を半分落として――かすかな嚥下の音が、鳴った】


192 : ラベンダァイス ◆auPC5auEAk :2018/09/24(月) 00:03:51 ZCHlt7mo0
>>183

――――リーダーとして、道を指し示してくれるなら、それが何よりです――――そういう素質は、能力のようには行きませんから――――ッ
1人では、自ずと限界があります――――だからこそ、私たちには必要なんです、リーダーが――――

【何のために戦うのか、それは人それぞれだ。だが――――最終的に行き着くところは同じである】
【『無辜を守り、悪を滅ぼす』――――その為に、2人の見るところは一致した。イスラフィールの民を想う気持ちも、ラベンダーの戦場を求める気持ちも】
【だからこそ、自分たちは群となる。そして、その数の力を最大に発揮するのは――――やはり、指導者が必要なのである】
【その役を、政治の舞台で立ち回るイスラフィールが引き受けてくれるとあれば、何も憂慮する事はないだろう――――】

――――人は、思い出してくれるでしょうか。公ならない、有志の力を――――それが、大きな庇護となってくれていた事を――――
いや――――私たちの手で、思い出させなきゃ、いけないんですよね――――ッ

【正直を言えば、ラベンダーは今のこの国の現状に迎合している一般民衆に、呆れ果てていると言っても過言ではない】
【――――かつて「『黒幕』の支配がディストピアと気づくまで、血を流し、そして流させるのも手だ」とまで言ってのけたほどだった】
【だが、こうも志を同じくする仲間が――――密かな、『指輪』の繋がりとはまた別に――――現れてくれるなら、それも話は違ってくる】
【自分たちは、真正面から、再び正義を成し、その存在を認めてもらう――――そう、しなければならないのだと】

【――――連絡先を交換し、またイスラフィールの拠点についても耳に入れる】
【『UT』として、仕事の為に走り回る事も多かったラベンダーは、その意味するところも、おおよそは斟酌してみせたようだった】

――――死ねない理由が、1つ出来てしまいました――――私は、必ずあなたの下にも馳せ参じます――――ッ
「信頼性の無い兵器」には、なりたくはありませんから――――ッ!

【イスラフィールの背中を見送りながら、ラベンダーはどこか自嘲気味に、しかし力強く宣言する】
【――――気が付けば、自暴自棄な心境はどこかに失せてしまっていた。今は、次の戦いのために、今の戦いを生き延びなければならないのだ】
【決して敗者にはならないと誓いを立て――――背後の墓碑を一瞥し、すっとその場で黙礼すると、ラベンダーもまた、歩みを進めていく】

【――――いつしか静かなさざ波を、寄せては返す夜の海は、全てを静かに見守っていた】

/お疲れ様でしたー!


193 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/24(月) 00:13:38 WMHqDivw0
>>186

んー、……ん、わ。びっくりした! 抱っこするなら先に言って!
……目を瞑ったまま抱っこされるのってなんかすごく不思議な気分がする。浮いてるみたい、……

【文句を言いながらも素直にずーっと目を瞑っている。それで、抱き上げられたらちょっとはしゃいで】
【散々セットを崩すなと釘を刺されたから、頭を全部彼の胸に乗せるのはやめといた】
【でも、なるだけ全部を預けようとする。全部あげたいから。髪の一本から爪の先まで、残っているもの、ぜんぶ】
【あなたのために全部綺麗にしてきたんだからもらってくれなきゃ悲しい。……ひとり、ふ、と笑い声を零して】

【ドアをくぐった瞬間、いい匂いがするのはもう慣れっこだったから。あ、帰ってきたんだ。目を瞑っていてもわかる】
【冷えた何かに靴を取られていくのも、ちょっとだけびっくりしたみたいに、――でも笑ってすべてを受け入れる】
【つめたい、とはしゃぐみたいな声色。お外では遠慮して抑えていた黄色い音も、帰ってきたなら、隠す気にもならない】
【だってあなたの家ならあたしの家でもあるんだし。何も隠すものなんてない、(本当に?)……今のところは本当に。】

…………いいにおいする。でもね、なんだろ、香水とかシャンプーとかのにおいじゃなくて、
ナマだ。ナマっていうか、ホンモノ? そういう甘い匂いがする、……あはは。
やっぱすっごい凝ってんじゃん。すごいね、……もういい? いいんだね、開けるよ――

【座らせられたクッションの上で、膝を抱えようとして――やめた。今日はスカート履いてるんだったと、思い出して】
【膝の位置をどこに持っていこうかと考えて、結局は横座り。なんとなく置き場に困る両手は、行儀よく重ねて腿の上】
【何度も何度も帰ってきている部屋なのに、目を瞑っているだけで何かしら緊張してしまう。……そんなことを思いながら、】

【ゆるしが出たならゆっくり目を開けるんだった。ゆるやかなカーブを描いてそれでも上を向くまつげがゆっくり持ち上がって】
【ぱち、と一度瞬きするころにはまだ目が明かりに慣れていない。眩しそうに一回細めて、もう一度の瞬きをすれば】
【すぐに慣れてしまって、いつも通りにきちんと開くんだけど――そのとき瞳に映っているものが、果たして何であるのかは】
【未だによくわかっていないから。なんとなく察しはつくけれど――それでもあなたの口から聞きたかった。だから、】

【「これ、なに?」 ――――とぼけたみたいな口調で訊いてみる。口元、にやけが抑えきれていない表情にて】


194 : ◆RqRnviRidE :2018/09/24(月) 18:12:57 6nyhPEAc0
>>163

……じゃあね、そしたらいつか、巡回に海のコースも入れておいてほしいの。
それで、今度は本当の鯨を獲りましょう。 きっと海で獲れば、塩味もあって一石二鳥なのよ。

そこで今日みたいに、私たちは一旦いまの役目を忘れるの──。
あなたは『射撃趣味者(シューター)』から≪狩人(ハンター)≫に、
私は『風見鳥(ヴェレタ)』から≪猟犬(ハウンド)≫になるの。

きっとその瞬間は何よりも自由だわ。

【 「どんな鳥よりも」 】

【いつか鯨を獲りに海へ行こうと言う。 飼われた個体を鑑賞する為でなく、野生に生きるありのままのそれを狩る為に】
【細められたターコイズの瞳に悪意は無さそうだった。 あくまで“自由”を享受する為の──純朴な思いでの提案だったのだろう】
【蒼髪とスカートが向かい風に靡き、覗く白皙の肌は碧海に砕けて消える白波を想わせるだろうか】

【そうして幾つかの羽根型のナイフを操り、手際よく肉のカットを進めていく。 単純作業ゆえ後は感覚で操作する。 多少ばらつきはあれどご愛嬌というもの】
【ジルウェット本人は再び宙をなぞりもう一枚刃を形成する。 指先が触れているのが虚空なら、どうやら固めているのは空気らしい】
【魔力で干渉したものを自在に操るといった具合だろう。 確かに彼女の言葉通り万能なようで、少女も僅かばかり誇らしげであった】

ふふ……良いでしょう、魔力さえ尽きなければ触れるもの全てが私の力になるの。
シーラは何か異能持ち? 銃に関係するのかしら……それとも素人って言ってたから全然関係ないかしら。
少なくとも狩りの時には何にも分からなかったけれど……。

【その問い掛けは他意もない、好奇心からのものだった。 儚さの果てぬその顔を眺め、もっと知りたいって思ったから】
【彼女がテントの設営に入れば、こちらはリュックの指定されたポケットから塩と、あとは念の為魚醤を手に取るだろう】
【それ以上中身を見ることはない、好奇心があるとはいえあくまで従順に。作業をこなすことが先決と次の行程へ取り掛かる】
【調理の手順について「ありがとう、やってみるのよ」と返事をして早速試してみる様は酷く幼気で素直だった。 】

ここに泊まるのね。 風も美味しいし、夜は星も綺麗だから素敵なのよ。
でもね、シーラ、朝は早く起きなくちゃ……。 上に展望台があるでしょう?

【肉をある程度スライスしている間、ジルウェットは落とした海竜の首の内側の肉をナイフでくり貫き、残った肉片を刮いで皮だけにしながら】
【ちらりと上にある展望台へと視線を向けるだろう。 銃声が響いてからというもの観光客は訪れていないらしく、人気は相変わらず無かったが】
【少女曰く「朝早くから人が来るから、その雑音で起こされるとあまり気持ちのいいものではない」とのこと。 何でも一番乗りしたい者は居るようで】
【どうせなら小鳥の囀りで起きた方がいい、なんてことも付け加える。 冗談めかして「逃げた子達が戻ってくればだけどね」──とも。】

【それからくり貫いた肉も序でに処理してしまおうとして、えっ、と小さく声を上げるだろう】
【明らかに脳天が破裂した痕跡がある。 確かにシーラの撃ち放った銃弾が頭部を穿っていたのは認識していた】
【が、ここまで相成ってしまうものか──と、感慨深そうにため息をひとつ溢した】


195 : ◆RqRnviRidE :2018/09/24(月) 18:56:52 6nyhPEAc0
>>175

────…………んん、誰も居ないようだね。
しかし不思議な感覚だな……まるで幻の中に居るみたいだ。
夢か現かもまるで分からないような……変な気分になってくる。

それに────。

【髪によって、そこは何もかも居ない場所であることを察知する。 そこは恐ろしいほどに無機質で静かすぎることを理解する】
【不測の事態に備えられるよう、引き続き周囲を索りながら──瑠璃は〝窓〟の向こう側に広がる光景を、謎の巨大物を目撃する】
【あまりのスケールに、ただ息を呑む。 内包する数多もの煌めきは、およそ人類が定めた単位では到底及びもつかない程の圧倒的な力を蓄えるのだろう】
【そこは異空間に他ならなかった。 その他の言葉ではまるで形容しがたい程度には、異質性に満ち満ちていた。 皮膜が脈打つ度、鼓動が呼応するかのようだった】

──、──……これが、〝宇宙卵〟なのか……?

【子供はすっかり目の前の物体に魅入られていた。取り憑かれたように。 ────だからこそ】
【宙を響かせる声の振動。 それにワンテンポ遅れてびくりと肩を震わせ、勢いよく振り返るだろう】
【窓を背にする。 壁面には髪を数束這わせる。 睥睨とまでは行かないが、黒いまなこが相手を見留める】

…………ッ、やあ、もう────ひどくびっくりしたじゃないか、マリアベル。
すまないね、あんまりにも突然のことだったから力が入ってしまったみたいだ。

あれがキミの言っていた「可能性を内包する〝宇宙卵〟」ってやつなんだね。
しかし“〝内宇宙〟の実体化”って一体──キミは何を企んでいるんだい?

【瑠璃はマリアベルと相対する。 臨戦態勢には程遠く、然して逃走態勢にも近くはない】
【ある程度対峙する姿勢を取りながら、未だ腹の探れぬ相手へとそう問い掛けるだろう】

【害意はないと髪の毛が教えてくれる。 それでもやはり、怖い気持ちはちょっぴりあって、】
【平気そうな顔をしていても両肩に手を置かれれば、怯えたように再び肩を跳ねさせた】

【──両手が素肌を晒しているなら、瑠璃の銀の髪の毛束に触れることもあるだろう】
【直に触れていればピリピリと──例えば火傷をした時のように、皮膚に痛みを生ずることになる】
【抑えられる毒を持っていると子供は話していた。 ならばこれはきっと、抑えきれぬ警戒心の表れであった】


196 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/24(月) 23:37:18 hEXW.LLA0
>>193

【「あはは、ごめんごめん。」 ─── 腕の中で楽しく悶えるキミの、確かな質量と熱量にときめく。きゃんきゃん聞こえる甘酸い声が愛しくって】
【今日くらいは辛いことを考えなくてもいいのだと決めた。大変な問題も、ひどく面倒な縺れも、殺してやりたい奴の面構えも。キミの大切な日を、守りたいから】
【ぺた、ぺた、ぺた。スパチュールにて塗っていたのは、なにか柔こく滑らかな音。 ─── ことん。机と、大皿の擦れる音。砂糖と牛乳と卵の甘い匂い。なら、やっぱり、分かるんだろう。】


「うん、うん。」「さすがにやっぱり賢いなぁ、」「 ─── 大当たり。」
「昨日から寝かせて作ってたんだ。お口に合うと、いいんだけれど ──── 。」


【 ─── 目を開けたなら、キミの瞳が映すのは、清々しいくらいに真っ白な生クリーム。鼻先を擽るのはスポンジ菓子の香り。詰まる所は、ホールケーキだ。】
【けれども少し目を凝らせば、まぁ馬鹿みたいにロマンチストの産物だった。丸くない。我ながら、綺麗なハート形。イチゴ色のゼラチンで固めた台地には、】
【やっぱりゼラチンに愛された真っ赤なラズベリーが余すところなく詰め掛けて、 ─── 便乗するのは赤白黄色、色とりどりのマカロンとバニラアイス。】
【ダメ押しとばかりに、これまたハート形のラングドシャが、恋人ふたりで遊んだジェンガみたいに乗っかっている。何よりも、その、一番気合が入っているのが】
【キミに向けられたハートの先端に乗っかってる、一際大きなプレーンクッキー。「Happy Birthday Segulah, from Your Sweetheart.」 ─── がんばって、すごくがんばって、ホワイトチョコで書いた。故にだから意味を問われるならば、一つしかない】



   「えへへ。ボクからの、ちょっとしたプレゼントさ。 ……… 改めまして」
        「 ─── 誕生日、」「おめでとう、シグレっ!!」



【ぱん、ぱん、ぱぱん。 ─── 快哉を叫んで、今日1日を気取った分なんにも飾ることのない笑顔で、目一杯のクラッカーを打ち放つのだ。心地いい炸裂音と火薬の匂い、紙吹雪はケーキへかからぬように】
【よく見れば部屋の中は、何時もより八割増しぐらいで甘ったるく彩られていた。ピンクと白の風船と銀紙の飾りで、無骨なものは皆んな覆い隠してしまって】
【 ─── おまけにテーブルの上には、とにかく恋人色をした食器類が並びに並んで、蝋燭やらライターやらも添え物に、キミの言う通り兎に角すっごい凝りに凝ったんだ。】
【いつのまにかフィッシュボーンは解いていて、ならばボクはいつも通りの濡羽色。ロングヘアにひらめかせていた。 ─── 室内灯までは流石に普通の色だけど、ならば緩みきった頬っぺたは、隠せないから】


197 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/25(火) 00:04:50 WMHqDivw0
>>196

…………、…………。

【目を見開いた先にあるものを食い入るように見つめる。ふつうにお店で買ってきたものかと思ったけど】
【いやさっきの音とにおいがあったんだからそんなわけない、と思って。この人どんだけ器用なんだろうって思って、】
【ふっと周囲を見渡したらそれこそ、お店みたいな内装になってる部屋に気付く。そしたら、笑いが、込み上げてきちゃって】

……ふ、あは、あはははは! ほんっとに凝りすぎじゃん!?
これ準備するのにどんだけかかったの、ねえ、……教えてくれなくてもいいけどさ。
あはははっ、……もう、ここまで来られると恥ずかしくなっちゃう。けど、……うれしい。

ありがと、エーノさん――――だいすき。

【幸せの弾ける音がした。そうしたらもう思いっきり笑う、我慢なんてしないで、上品にストッキングで包んだ脚先も】
【ぱたぱたと弾ませて、はずかしいけど、うれしい。しあわせ。大好き。笑うのが止められない】
【ちょいちょいと手招きして。隣に来てよって合図する、その通りに座ってくれたなら――ややも強引な手つきで】
【両の頬を包むみたいにつかまえる。そしたら顔を近づけて、くっつけるだけのキスをして。離れても、至近距離にて】
【とろとろに目尻を滲ませた笑みを見せつけてやるんだった。そうして見つめ合ったまま――「ねえ」】
【ねだる声色。ついでに額を引っ付けて上目遣い。したら、小さな小さな声で我儘を零す、断られないとわかっているから】

…………ね、これ、食べさせて。あーってしとくから、……あーんして。

【ぱか、と口を開く。口角が吊り上がっているのはそのまま。そしたら口内、唾液に濡れててらつく濃桃色の粘膜】
【それから白い歯まできれいに見せて、そこにそのケーキを乗せてくれって頼み始めるんだった】
【だって誕生日だし。これくらいはしてくれるでしょうって、慢心。きっとケーキが運んで来られるまでずっとそうして待っている】

【――――そのときはまだ気づいてなかった、どうやって食べさせて、とまでお願いしていなかったこと】
【普通に考えるならフォークでしてくれるだろうけど。普通じゃないならどうしよう、とか、そういうことまで気が回っていなかった】
【だから本当に油断しきった笑顔で、笑って、咥内を晒して間抜け面してるんだった。餌を待ちわびてる雛鳥のように】


198 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/25(火) 00:08:39 hEXW.LLA0
>>194


【「 海、か。」「 ─── 漁業権とか大変そうだ。でも、行こうと思ってた。」然らば口約束は成ったも同然であった。エイハブと呼ぶには若すぎる2人だとしても。】
【「 ─── 鳥というのは、存外に不自由な生き物だよ。」「たとえ翼があったとしても、飛び方も行き先も知らないなら、ただ地に墜ちて朽ちゆくだけだ。」どこか寂しげに呟く横顔の、白い喉ばかり燠火に照る。】
【野外活動には慣れた様子であった。旅行く事の厳しさと、その中にある容易さの両方を理解していた。淡い空色のテントが組み上がり、大地に小さな楔を下ろす。】

【程よく焼けた串焼きを引き抜いて、 ─── 先端が些か焦げ落ちていた。構わずにシーラは噛み付いた。「 ……… うん。いい出来だ。」ならば加えて、幾本かを手に取り】
【そうしてまたジルウェットの手際には感服しているようだった。「食べながらやるといいよ。 ……… あ、お酒飲む?」背嚢の奥には硝子瓶の感触があった。】


「一応は"使える"んだけれどね。」「おっかない能力さ。触ったものを爆弾にできるんだ。生き物でない限り ─── ほら。」
「融通も効かないし、危なっかしいし、人の役に立たない事はないけれど、それでも不便だよ。」「 ……… 僕も、君みたいな力がよかったなぁ。」


【尋ねられて、どこか疲れたように彼女は笑った。手頃な石を手に取り、 ─── 軽く真上に投げ出す。その頂点に至ったところで、「ばぁんッ」。】
【わざとらしい指鉄砲を添えるなら、空に小さな煙が爆ぜる。そうして小石は跡形もなかった。降り注ぐ筈の破砕片さえも有りはしなかった。】
【ならば解体の際、 ─── 狩猟用の遠距離小銃弾を至近にて着弾させたという事実を踏まえても、あまりに凄惨な侵徹痕の意味も、理解させるのだろうか。ともあれ、】


「こんな場所で寝る訳だし、早起きなのは良い事だけど ─── 。」「見つかって騒がれるのは、御免被るなぁ。」
「ありがとう。 ─── 朝陽が昇るくらいには、ここを出る事にするよ。」「色々と、迷惑もかけたくないしね。」


【「 ……… 試しに、煮てみるかな。」未だ肉塊は加工の途上にあった。飲料水を入れた鍋の中に、シーラは幾らかを入れてみる。そうして、火にかける。】
【夕暮れが少しずつ迫っていた。 ─── 西の空に茜色が差していた。釣瓶落としの到来も、この文ではそう遠くない。】


199 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/25(火) 00:17:02 6IlD6zzI0
>>182

【早足だとか歩幅が大きいとか言われたのは初めてで。ふっ、と微かに苦笑を零す】
【少しだけ人としての会話に興じるのも悪くない――と思ったのが間違いだった】


【何気なく足を踏み入れた"BAR:CHAIN GANG"。隣り合わせのカウンターに座る冒涜者と悪魔の代理人】
【その場で注文したカクテルは度数の弱いものと、ギムレットと呼ばれる度数の高いカクテル】
【前者は冒涜者、後者は悪魔の代理人。潤す程度に口に含む飲み方と、喉を鳴らして流し込む飲み方】

【選んだ酒と飲み方はひどく対照的で、まるで二人の距離感の表れみたい】


……私は、お前の話"だけ"聞きたいのであって自分の身辺を語る気は無い。


【冒涜者が身の上話をするには、彼女の好奇心を刺激して満たしてやらねばならないのか】
【心境の変化の理由は、つまりそういう事。簡単に言えば煩わしかった。煩わしかったのだが――】


だが、執拗に喰い付いてくるなら餌の一つもくれてやろうか。
……「会わせ/逢わせ屋」の噂の出所について。それだけは答えても良い。

【結局答えてやるのだった。しかも聞かれても居ない事まで】


噂の出所、それは『リセルシア』と言う一人の愚かな女。
そいつが悲しみに呉れる人々に甘言の様な噂を流して、心の弱った人々を篭絡していった。
少しだけ『リセルシア』の過去話に付き合ってもらう。"会わせ屋"誕生の背景が其処にある。


そいつには病弱な妹が居た。姉妹は神様を信じていた。毎日欠かさず偶像の前で祈りを捧げる程に信じていた。
祈りは神様に届いて、願いは叶う――と勝手に信じて、ありもしない希望に縋っていた。

だがある日、リセルシアは許容しがたい現実に直面した。……妹が見知らぬ暴漢に殺されてしまってな。
その時慟哭交じりに叫んだ――"この世に神はいない、もしいるのなら、妹を何故見殺しにしたんだ――!"と。


そうして神様から悪魔へと宗旨替えをした『リセルシア』は、悪魔の代理人と化した。
死者の魂を呼び寄せる術を悪魔から授かり、親しき者の死に絶望した者たちを"救う"為に噂を流したのさ。

"悪魔の代理人たる女の差し伸べる手を取れば、死に別れた者と再会できる"、とな。

それが何時しか水の国のみならず様々な国で広まっていった。それだけ辛い現実を受け入れられない人間が居たという証左だ。

【これが"会わせ屋"の真実。だが自分の事ではなく他人事の様に語るから――何者であるかと言う問いに答えていない様に聞こえる】
【しかし、ファウストが言葉を滔々と紡いでいく中で、客観的に話していた筈がいつの間にか主観的な話し方へと変わっていたから】

【冒涜者は察しがつくだろうか――"会わせ屋"ではないと否定しているこの女が何者なのか】
【『リセルシア』と『ファウスト』。この二人は同一人物で、"会わせ屋"は冒涜者のすぐ隣に居るのだと】
【今ならば、沸いて出てくる疑念にもある程度答えてくれそうな雰囲気を匂わせていた】


200 : ◆RqRnviRidE :2018/09/25(火) 03:01:35 6nyhPEAc0
>>198

【じゃあ決まりね──とジルウェットは柔らかく笑む。 権利だとか法律だとか、多分そんなことはお構いなしで】

【「翼があるだけじゃ、だめなのね。 自由を得ようとした代償かしら」】
【「飛び方さえ知っているのなら、宛先なんて二の次なのに──」】

【──少女のそれは恐らく飛び立てる者の視点でしかない。 そして飛び方をどうにか知っていても、行く宛が定まらねば飛翔する意味など】
【空へ遣った視線を緩やかに地へ落とし、皮と化した竜頭を見つめて丁寧に折り畳む。 適当な蔓で括れば、チェアに置いた帽子の下へ滑り込ませる】

あら、美味しそうなの。 そうね、お腹も空いてきたことだし……一本いただける?
あっ、お酒は飲まないなの……酩酊してたら風見の仕事に差し支えるから。
乾杯できずにごめんなさいね、シーラ。 代わりに私の分まで呑んでほしいわ

【風見の仕事。 内容は定かではないが、替えの利かない仕事なのだろうと思わせるだろうか。 飲酒は断りつつ串焼きを一本ねだるだろう】
【そもそも飲酒ができる年齢まで達しているかとか、そういうのには言及しない辺り、ルールに対しての認識の薄さが窺えるようだった】
【若いがゆえにと言ってしまったらそれまでだろうけど……妙なとこで折り合いを付けているのだったら、きっと眼前の少女と何処か似ているのかもしれなくて】

ああ! 爆弾にできる能力なのね、だからこの子の頭の肉がこんなになってたの。 納得なのよ。
でもね、いくら便利でも私のは結局──、──…………ううん、やっぱり何でもないの。

【放り投げられた小石の顛末を見届ける。 破裂の際には僅かに目を細めたが、その様子を見て頭部の炸毀の跡の理由も頷けた】
【それで、羨望を向けられると何かを言い淀み、かぶりを振って全容を結局伝えることはなく。 代わりに言い添えるだろう、】
【「持ちうる翼で飛べるようにならなくちゃ。 それがたとえ不自由なことだとしても」と】

そうなの、多分いま人が来てないのって捕り物で騒いだせいだわ。 見つかったらどんなに騒々しくなるか……。
でも、でもね、迷惑だなんてこれっぽっちも思っていないのよ。 むしろ手間を掛けさせてしまったのはこっちだわ。

改めて御礼を言うのよ。 楽しい時間をありがとう、シーラ。

【切り身に塩を刷り込み、たまに魚醤も用いつつ。 水分を蒸発させるのを繰り返しながら、ジルウェットはそう言って謝意を示した】
【今日一日が楽しかったことに相違はなかった。 だからこそ鯨獲りも約束を取り付けて、次回の邂逅に期待と思いを馳せるのだった】
【茜どきの空に鳥が編隊を組んで飛び去っていくのが見える。 逃げ出した小鳥たちがここへ戻ってくるのも時間の問題のようだった】


【──最終的にジルウェットは、シーラが眠りに就くまで彼女の傍らに居ることになる】
【風のこと、空のこと、星のこと、風車のこと、──他愛もない話でもしながら食事に興じるのだろう】
【海竜の肉や残骸は、鱗や爪など持ち帰れるものはそのようにして、それ以外の部分は池に還すことにした】
【ごく簡易的な水葬だった。 後は水中の生き物が全て何とかしてくれるはずだったから】


【────翌朝。 朝日が上る前に小鳥の囀りが聴こえてくる。 彼らは存外に早起きらしい。 訪問者はまだ現れない】
【未明の空気はしっとりと冷たかった。 青北風が身を凍らせんと吹き荒ぶ。 鼻腔を擽れば少しだけ秋のにおいがする】
【そこに青い少女の影は既に無かった。 風見の役目でも果たしに行ってしまったのだろうか、白波の名残すら消え失せて】
【代わりにテントの入口付近に、小瓶と、大きめの葉での書き置きが残されているのに気付くことができるだろう】

【書き置きには、焼き付けたような痕跡で「昨日はありがとう 急用のため先に行くわ 良ければ受け取って Girouette」と簡単なメッセージが綴られている】
【小瓶の表のラベルには“Dolly Bird”という品名と葡萄のような果実のイラスト、成分表字にはアルコール度数25%と記載されている。 どうやら果実酒のようで】
【火の国特産の「コ・ルーワ」という果実を使った酒のようだった。 それは絶妙に甘みと渋みがマッチした奥深い味わいの、隠れた逸品であった】
【彼女がどうしてそれを持っていたのかは分からないけれど、とかく置き土産ということらしい。 次に出会した時、味の感想でも聞かせてやればきっと喜ぶだろう】


【────それともう一つ。 昨日から現在に至るまで、雨の一粒すらも降ってはいない快晴だったにも拘わらず】
【眼前の池は一切の澄明さを喪い、褐色に汚濁しきっていた。 然して生物の死骸は浮いてこず、異臭さえ立ち込めることもなく】
【ともすればそれが本来の姿であったかのように、ただそれは風によるさざめきを湛えるのみで静謐を貫き、何も語りはしなかった。】


/ちょっと駆け足気味でしたがこの辺りでしょうか!
/長期間ありがとうございました!!お疲れ様です!


201 : ◆jw.vgDRcAc :2018/09/25(火) 19:34:51 Tz44JWVw0
>>956

【まずは、彼の死。たったそれだけでも、頭の中がいっぱいになってしまうほどの大きくて重い情報だ。しかし、それだけで終わらない。】
【むしろ、これ以降が本番だ。話の要点をちゃんと頭に入れるために、集中して聞く。椅子に腰かけて、表情は真剣なものになって】
【悲しみや焦燥を、今一時だけ頭の隅に押し込んで。言葉を差し挟むことはなく、とにかく伝えきるまで静かにして……】

【―――伝わった話は、思った以上に重かった。命を落としても伝えたいことだ、相応に重いという事は覚悟していた。だが】
【その想定をも上回るほどに、事態は深刻だった。沈んだ心をさらに沈めるのに、十分だった。それはもう、途方に暮れてしまう程に】

邪神。……ええ、ええ。存じ上げております。
なるほど……。……夕月は、救われたのですね。……それは、良かったけれど……
駄目だったのですね。…………そう。辛かった、ですね。きっと……

【―――夕月。その名は、知っている。虚神となってしまった鈴音を救おうと、一緒に行動したこともある。】
【鈴音を救おうとして、その夕月までもが虚神になりかけていた。救われたから良かったものの……その事実もまた、心に鉛のように圧し掛かる。】
【死や離別とは、また違う感覚。自分たちの手の届かないところに行ってしまうような、悲しみ。その悲しみや辛さを、自分は知っている。】
【だからこそ、救えなかった無念もほんの一部なら分かる。命を落とすほど辛かった事を、全て理解できるというのは烏滸がましいけれど】

……頼まれました。ええ、私が力になれるのなら。少しでも……
―――鈴音は……私の友達で。出来ることなら、助けたい……いえ。それは、個人的な事。私の述べるべき事ではないですよね。
ええ。お任せください。いつでも帰って来れる場所を、守ります。それが、私にできる事なら―――

【鈴音も、駄目かもしれない。自分も、その事実に心が折れそうになる。―――でも、折れてはいけない。】
【背負っている命や、繋がり。自分が折れると、それらも放棄する事になるのだから。せめて、自分だけは折れずに守らねば。】
【今最前線にいる人たちに、いつでも帰って来れる日常を保つために。一つ目の約束、確かに了承した。……三つあると言っていたが、次は?】


202 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/25(火) 21:08:13 WMHqDivw0
>>199

だぁからなんでそんな冷たいのかなあ……まあ、いいけど。
……ふーん。リセルシア、……、……そう。神様に。
馬鹿な子だね。神様、僕らの言うことなんか聞いてくれないのに。

【ちびちびと唇を濡らしながら。冒涜者はじっと話を聞いていた、それで口にするのは】
【意外にも、「かみさま」の存在を否定しない旨の言葉だった。冒涜者なのに、】
【……冒涜者だからこそ、なんだろうか。無いものを辱めたってなんにもならない】
【確かにそこに在るものを踏み躙ってこそ冠することのできる名前、なんだと思えば】
【なるほど確かにこいつはろくでもない「人間」でしかないと。わからせる、そのスケールのちっぽけさ】

【――察していてなお、リセルシアのことを馬鹿だと断じる。そこには一切の躊躇も容赦もなくて】
【かと言って嘲笑を混ぜるでもなく、たんたんと言葉を零して――目を伏せる、まつげの先は斜め下】
【思うところは十二分にあるらしい。でも、今はそれを語るべき瞬間じゃあない。そう思っているらしく】

――――んーまあ、気持ちはわからなくもないよね。
リセルシアも、それに縋る人たちも、どっちも――――

なんで死って、平等に訪れてくれないんだろうね?
みんな一緒にせーので死ねたら、そしたらきっと世界はもっと平和になるのに……。

【ぽつんと零す一滴が水面を波打たせれば、「ごめん、話が逸れた」 ――言って、凪に戻そうとして】
【テーブルに頬杖をつく。当分次の一口を含む気にはなれなかったらしい。グラスからは完全に】
【両手が離されて――首を傾げる。掌の上で転がる小さな頭。やっぱり動作は、ずいぶん幼い】

…………会わせ屋が授かった悪魔の術って、どんなものだろう?
救いになるような術って。どういう? ……安楽死でもさせてくれるのかな。

【ちょっと冗談めいて笑った。「だったら神様やら人間よりよっぽど優しいじゃんね、悪魔」】


203 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/25(火) 21:59:58 6IlD6zzI0
>>202

ふっ、……その通りだ。『リセルシア』は馬鹿な女だよ。
現実と妄執の区別も付かない程に度し難い馬鹿女。縋る先を間違えて、救いの術も間違えて、な。

"天にまします我らの父"とやらは私達の様な虫けらの願いに耳を傾けちゃいない。
初めから俯瞰しているだけなのにな。日用の糧を与える訳でもない、悪から救いもしないと言うのに。

【"その点においては気が合うな"――と、少しだけ表情を崩して、含み笑いを浮かべる】
【悪魔の代理人の横顔が少しだけ和らいで、凍てる態度も僅かながら雪解けの様相を呈して】
【遠慮の欠片も無い言葉は少し心地良かったから。切り捨てる様に断じられるのも悪くない】


間違いない。死ねるタイミングを自由に出来るなら―――

……きっと先立たれる悲しみからも、取り残される苦しみからも解放されるだろうよ。
昏い感情による個人間の諍いも、組織や国家同士の権謀術数や思惑に起因する争いも無く世は事もなし、だな。


【"だがそんなものは夢物語。純粋無垢な幼子の夢想。――だが、そう思うのは私も同じさ"】
【この時、ようやっと冒涜者に歩み寄る悪魔の代理人の姿があった。冒涜者の"会いたい人が居る"という言に】
【嘘も偽りも無いと察したから。『リセルシア』を馬鹿だと一蹴する言葉も後押しして――言葉を継ぐ】
【その序でに飲み干したギムレット。その二杯目を注文して、提供されたならば又してもそれを一気に飲み下す】


安楽死も救いの一つだ。ただ、"会わせ屋"の救いは安楽死の様な自慰めいた救いとは異なる。
……私が"会わせ屋"だと仮定して考えるなら。――その術はきっと、"現世における死者との再会"だろうな。.

ほら、愛する者と死に別れて絶望の底に叩き落された人間にとっての蜘蛛の糸は、一筋の光は――
愛する者と言葉を交わし、思いの丈をぶつける事に他ならない。それが夢幻の泡影、ひと時の夢であっても。

【――『リセルシア』は、否、『ファウスト』は言葉の最期に"だがら、その通りだ。悪魔は神様よりも誠実で優しい"】
【そんな事を付け加えて、人の悪い笑みを口元に宿してながらも真摯に問いに答えるのだった】
【そして逆に問う――"お前の思う救いとは何だ。少しだけ興味がある"、と】


204 : アルク=ワードナール ◆auPC5auEAk :2018/09/25(火) 22:18:49 ZCHlt7mo0
>>201

ッ…………ご存じだったんですか、『グランギニョルの神々』の事を……。そして夕月の事も……
……間一髪でした。心を打ちのめされきって、死にたいとすら零している状況だからこそ、虚神にも転生できなかったという……どうやら、そういう話だったようです
最後には、何とか気を持ち直してくれたようですが……しばらくは、彼女も……精神的に、厳しい状態が続くでしょう……

――――手製の、安楽死用の魔術を込めたクリスタルを、彼女に残してやりました……すぐには、使いはしないでしょうけど、もし、彼女の魂が最後まで救われないなら……

【自分の言葉の意味するところを、マリアはしっかりと把握していた。混乱を避けるために概略のみにとどめていたが、アルクはもう少し踏み込んで説明する】
【どうやら、相当に夕月はひどい目にあったのだろう。恐らくは、虚神の一員として覚醒させるための「下ごしらえ」として、散々に痛めつけられて――――】
【「角を矯めて牛を殺す」結末にならなければ、夕月も第二の――――あるいは、第三の――――人の身から虚神と化す存在と、なっていたかもしれない】
【そんな彼女の心の支えとして、アルクは夕月に「保証された、安らかな死」を残していると言い――――】

……正直を言えば、手前は鈴音の事を、最初は信じられませんでした。何せ、昔の印象が印象だったのですから……
人助けをする道を歩んでいると聞いて、正直、何かの間違いではないか、とも――――ただ、その真意を確かめる機会も、もうありません……

……これは、耳に入れるべきではないかもしれませんが。鈴音が、虚神の1体に篭絡され、靡いている事は……恐らく、ご存知でしょう
――――手前の仲間たちに、その虚神と因縁のある人物が、2人います……彼らは、鈴音にも、底の知れない敵意を抱いている――――局面は、混迷にあります……
これからどうなるかは、もう分からない……だからこそ、あなたはあなたで守ってください、その……日常を……人の人たる、営みを……

【もしも、今際の際の言葉でなく、健常な状態であるならば――――アルクも、マリアに対して、鈴音の事を根掘り葉掘り問いただしていただろう】
【それだけ――――恐らく、鈴音とアルクとの間には、最悪の出会いがあったのだ。ただ、後の事は「生きている」人間たちの片付ける問題だと、身を退きながら】
【ただ同時に。アルクの周りにも、鈴音に良い感情を抱いていない――――ハッキリと言ってしまえば『虚神ウヌクアルハイ』を殺そうと考えている面々が居るそうで】
【同時にそれは『虚神エカチェリーナ』を殺そうと考えている人間が、どこかにいる事の証左にもなる。だからこそ、戦士たちが人として帰る場所は、必要なのだ――――】

――――2つ目のメッセージは……非常に個人的な事になりますが……――――マリアさん、どうか手前の死を、気に病まないでもらいたいんです……
ソニアが、人類の敵と化してしまった事、それで気持ちを折られて、絶望させられて……傷に負けて死んだのは、確かです……
――――でも、手前はそんなに『後悔』はしていません。この命を以って、何かを成せた……夕月を救えたんです。決して、手前の死は無駄じゃなかった……
マリアさん……『桜』の話、覚えていますか……手前は、あの花びらの様に死にたいと言っていましたが、あなたは、散った後にも青葉の命があると言っていた……
櫻の様に――――思っていたのとは少し違いますが、正に手前はそうして死ねたんです……この死に方に、とりあえず後悔はありません

【アルクがマリアに遺したい、2つ目のメッセージ。それは、自身の命が、素晴らしいものだったんだという、マリアへの心残りを払拭したいという、個人的な意思だった】
【あの日の答えは、こんな形となってしまったが、それでも――――マリアの言葉は正しかったのだと、アルクはハッキリと頷いて】
【命と引き換えに何かを残せた。それは美しき死だけに心を奪われたものではない、自分なりの「生きる」という行為の答えだったと、胸を張って】
【死に際して、かつての話に決着をつけたという事を――――マリアに伝えて、認めてもらいたかったのだろう】


205 : ◆KP.vGoiAyM :2018/09/25(火) 22:29:15 Ty26k7V20
>>187-190


【ジミヘンは27歳で死んだ。シド・ヴィシャスはもっと早かった。カート・コバーンはそれに憧れて死んだ】
【ジョンレノンはファンに撃たれたし、フレディ・マーキュリーも病気には勝てなかったし、チャック・ベリーは死なないんじゃないかと思っていたけど】
【やっぱり死んだ。どんなに素晴らしいアーティストも死ぬ。遅かれ早かれ、いろんなものを残して】

【だからこそロックは続いていくんだ。人は死ぬ。だからロックンロールを残す。連綿と続く同じ生き様の男たちの言葉が生きていく】
【レコードが擦り切れても、テープが伸び切っても、CDがトンでも。誰かが穴の空いたジーンズを履く限り、モッズコートにファックと書き残す限り】
【教室の隅で箒でウィンドミル奏法の真似をし続ける限り続いていくんだ。ロックンロールは。】

【世界を変えるのは俺じゃない。】

【変えるのは――――】





【――――――俺たちだ。】




【そんな言葉を、私も言えればよかった。だが、私はロックを知らない。】
【涙をこぼす少女にかけることばは見当たらなかった。あまりにも―――その未知数の思いの果に】
【一体何があるかを想像すれば、一歩も踏み出すことができなかったから。】

【だけど、私はわたしの言葉を持っている、私の意志がある。私は私だ。誰だってそうだ】

【私は彼女を追いかけた。確かな足取りで―――】


―――――逃げるなッッッッ!!!!!!


206 : ◆KP.vGoiAyM :2018/09/25(火) 22:29:28 Ty26k7V20
>>187-190


【私は追いかけて、その少女の背中に問いかけた。】

彼は…いつ死んでもおかしくない人だった。わざわざ危険なところばかりに首を突っ込んで。
だけど、何もかもよりも愛した人たちよりも……・貴女の命を取った。貴女と引き換えに死んだよ。

貴女はその側でその死に様を、生き様を!!見ていたのなら!!
その意味が!!その残した意志が!!わからないの?!

【自分でも驚くぐらいに大きな声を張り上げていた。激昂していたと言ってもいいだろう。感情が複雑に入り組んでいた】
【入り組んで大きなエネルギーとなっているようなそんな気がした。】

命をかけるなんてそう簡単なことじゃない。命を捨てるなんて…もっと!!
命をかけて護ってくれた人に背を向けることなんて…冒涜よ。

【私はマフィアなんて言う特殊な世界にいるから、命のやり取りなんて珍しくもなかった】
【だからこそ死んでいった仲間を多く見てきた。彼らも、皆一様に人生があって、生活があって日常があった】
【友人もいるし、恋人もいるし、行きつけの定食屋もあるし、借りっぱなしのDVDもある。それでも死んでいった】


…………私が、継ぐ。銃は苦手だけれど。眼はあんまり良くないけれど。
チンザノ・ロッソは―――死なせない。


【ノー・パラドクス。】


お願い。私は…諦めたくない。


207 : ◆KP.vGoiAyM :2018/09/25(火) 22:29:52 Ty26k7V20
/これは返信に関係ないソロールです。




【雨が降っていた。街角。24時、冷えた夜。野良犬の眼光が光る】
【ハニーのネオン。バチバチと音を立てて、通りには誰も居ない】
【アスファルト、ひび割れに沿って雨が流れる。24時。冷えた街。怯えたカラス】
【割れた窓の下で鳴いた。遠くで錆びた鉄橋を走り去るレールウェイ。点滅する】


JIRIRIRIRIRIRIRIRIR!!

JIRIRIRIRIRIRRIRIRI!!


【通り沿い、テレフォンボックス。街頭の明かりが其処だけ照らす。】

【Calling Calling Calling 】

【誰かが呼んでいる。電話ボックスで。何度も。響き渡る。ベルの音】

【ベシャベシャになったコート。絞ればどれだけの水割りが飲めるだろう。湿気った煙草の箱は公衆電話の上に置いて】
【ナケナシのコイン。入れては同じ番号を押す。3度目。繰り返して。覚えているナンバーにTEL】

【もしもし?なんて何度繰り返せばいい『if』の話。何度目のコールで出るだろうか。既読すら無いスルーには期待と寂しさ】


――――ツー、ツー、ツー…


【受話器を持ったまま滑り落ちる。狭いボックスの中、膝を曲げて座り込む。前髪を雨が伝う。24時。】


【何かを伝えなくちゃいけない気がした。此処に電話しなきゃいけないと思った。雨が止んだら何処に行こうか】
【電話をすればわかる気がした、教えてくれる気がした。此処が何処で、自分が誰か。】
【くすんだシルバーのマリア。最後に笑いかけてくれたのはいつだ?】

【誰かを呼んでいる。電話ボックスで。これが最後。響き渡る。24時。】

【雨はまだ止まない】


208 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/25(火) 22:39:09 WMHqDivw0
>>203

そうそう、見てるだけなんだよね神様、……救いの手なんか伸ばしてくれない。
いつだってそう。見てるだけのくせに――連れてくときだけ本気で連れてくの、
待ってって言ってもちっとも待ってくれなくって。
ひどいよね、ちょっとくらい、お願い聞いてくれてもいいはずなのに。こんなに祈ったんだから――

【「ちょっとくらいいいじゃんって思うのにね」。まだ冗談めかして、今度は神に祈ったことがあるとも言う】
【冒涜者を名乗るにしては、ひどくありふれた人生を送った女なんだと。そう思わせるには十分だった】
【少しくらい報われたっていいじゃん。子供じみた我儘、けれど誰にも聞いてもらえないなら雑音】
【だとしても、目の前の女の同意を得られたんなら。それで満足と言いたげに笑うんだった、グラスを、回して】

……、現世における、死者との再会。それは、――――、一時だけの話なんだ。
そっか、だったら――僕とはあんまり相容れないのかもしれないね、悪魔。
だって僕は強欲なんだ、……永遠が欲しい。末永く幸せに暮らしましたとさ、のエンドロールが欲しい。

だから、そうだね――――僕の救いは。
僕の好きな人、会いたい人がここに戻ってきてくれること。それだけじゃなくって、

ずうっと僕と一緒にいてほしいの。朝起きても、昼ご飯を食べるときも、夜眠るときも。
ずっと一緒がいい、それで、挨拶をして、会話をして、手を繋いで散歩にでも行って、それから、

――――――そんな普遍の不変が、ほしいだけ。

【ゆらぐカクテルの、橙色の水面に暗赤色の視線を浮かべる。すぐにそれは沈んでしまうだろうか】
【そうしながら語る願望って、すごく、ありふれたものだった。それだけしか望まなかった、しかし】
【それだけのことがどうしても赦されないのがこの世界であるとわかっていて。だから彼女は冒涜する、】
【世界の何もかもを。――――そう伝えるような、夢物語を紡いで、はにかむように笑った】


209 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/25(火) 23:45:08 hEXW.LLA0
>>197

【笑われてしまった。つられて笑い出す。なにも気取らない笑い声。はしたなさを隠すように唇へ人さし指を当てて、】
【それでも到底隠せてはいなくって、だってそれは最初から隠す気なんてなくて、 ─── キミの前だから出来る笑い方。】
【こんなに素直に笑えたのは何時ぶりだろう。誘う笑いと愛想の笑いばかり、仮面代わりに浮かべてきた。ボクはそういう奴で、一生それは変わらないって、思ってた。けど】


「 ─── へへ、」「えへへ。」「その笑顔が、見たかったから。」「貰った休暇も喜んで、このケーキに返上しちゃった。」
「恥ずかしがってもらえて、ボクも冥利に尽きる。そのくらいの顔をしてくれなきゃ、困っちゃう。ふふ。」

「愛してる、 ─── シグレ。これからも、ずっと。」


【一頻り笑い終えても破顔が元に戻ることはなかった。ひどい多幸感に溺れていた。キミと2人で沈んでいきたかった。】
【だから熱情を捧げ合う言葉も、あっさりと口をついて出た。それでいて噓偽りなんて何処にもありはしない。】
【泥の河に浸かった人生も悪くはない。一度きりで終わるなら。 ─── ボクはいつか死んでいた。キミもいつか死んでしまっていた。なら、今のボクたちが行くのは】
【果てのないヴァージンロードであるに違いなかった。辛い事なんて、お互いきっと一生分味わった。だからこれからはずっと、幸せでいたい。幸せになる。幸せにする。】

【そうして枝垂れるような指先の虜にされて、何の疑いもなく隣に膝を下ろせば、 ─── 「ひゃ、っ。」頬っぺたを捕まえられ、青い両目を思い切り見開いた。】
【抱き返す事もままならず、柔っこい口吸いの刹那ばかり口先に残って、ぞくっとした。鼓膜を震わす囁きも、背筋を撼わす双眸も、ボクに逃れられる術はない。】
【ぁう、とか。ひぅ、とか。兎角そんな声を上げた。キミを前にすると、生の感情を曝け出さずには居られない。 ─── なら、ボクだって。】

【(それに、躊躇いなく明け渡された濃紅色の先が、あんまりな官能を予感させた。魅了されていた。なにか欲望の湧き上がる熱量を、お腹の奥に感じたから)】
【(笑うように息の漏れる音。)(生クリームから分かれていく音。)(焼き上がった生地に突き立てられる音。)(近付く呼吸。)( ─── あるいは、舌なめずりの音。)】


        いいよ。


【絞り出すようにボクはつつやいた。キミにだけ意味を持って聞こえる吐息。あまり口を動かしてしまったら、バレてしまうから。】
【 ─── 白い両の掌が、真っ赤な髪を包み込む。首筋と、後頭部。捕まえてしまう。そのままキミの呼吸に近付いて、白磁の歯先へ与えるのは】
【確かにクッキーの舌触り。少しだけチョコの味。それ以上に、でも何か、とても甘い。 ─── 少しだけ湿って、ふやけている。そこまで気づいたら、もう手遅れだ。】
【キミの唇をボクは奪う。微かに首を傾げるなら、濡羽色の毛先が首筋を擽る。ならばそれはデタラメに深いキスを予告していた。
【押し寄せる愛情に、ハートの縁取りは跡形もなく折れて、砕けて、圧し潰されて、 ──── それでも続くのは、それを押し出した、なにか湿って粘つく大きなもの。】
【詰まる所は食べさせるに止まらなかった。 ─── ちょっとはアリアから上手な遣り方を教えてもらった。多分、今度こそ、零さない。ひたすらに2人の口の中、】
【原型のなくなるまで貪り合って、ただ扇情する粘着質な音と感触と甘ったるさばかり、互いの口中で悶えるのだろう。瞼を開いてしまったら、何時迄も続けられる気がした。】


210 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/26(水) 00:20:17 WMHqDivw0
>>209

【――――息を呑む音。きっと予感はしていた、というか、挑発しているつもりだったから】
【息継ぎは必要最小限に留めた。そうして深く深く潜っていく準備をして、瞼を、閉じる】
【捕まえられる頭がちょっとだけたじろぐようにびくついて、だけど、逃げようとしないなら――そのまま】
【一思いに食べられちゃう。ふ、と唇の端っこから漏れたのは、吐息だったか、笑い声だったか】

………………っ、〜〜〜〜、……ぅ、ん……んぅ、

【甘ったるいのが混ぜ合わされて、口に流し込まれて、飲み込んでもまだ溢れ出てくる、スキだから】
【どこの世界で作られた砂糖より蜜より甘くてなめらかで中毒的な味がした。もっと深くまで、もっともっと】
【際限なく求めてしまう。だけど、はしたないって怒られることはないんだから、さらにもっと、深くまで】
【ちょうだいちょうだいを繰り返していた。服の裾を握り締める手で、伸ばされる舌先で、薄ら開かれる視線で】
【なくなるまで、なくなっても、まだ欲しい。そんな我儘が許される日だから、目いっぱい、お腹がはちきれるまで】
【どっちかが干からびるまで求めるつもりだった。それでもまだ足りなかった。自分の強欲が、ちょっと、恐ろしくなる】

【……そうこうしていたら、当たり前のように酸欠。ばっと勢いよく顔を離すときには、すでに顔は真っ赤に染まり】
【息も絶え絶え、目には涙。そうして何度か深く、深く呼吸して、……やっぱり笑うんだった。えへ、と間抜けな声】

はぁ、ふふ……っん、……ねえ。あのね、……すきだよ。

【そんな感じで何口か食べて、息継ぎして、繰り返し。ケーキひとつ食べるのに何時間かけたんだか】
【ばかばかしくなるくらい、それでもきっちり最後の一口まで食べ終えたら。当たり前のことが口を突いて出る】
【一たす一は二だよ。烏は黒いんだよ。夜の次には朝が来るんだよ。……それらと同じくらい、今更、わかりきった答え】
【荒れ切った息と一緒に吐露したら、くたりと頭を、あなたの肩口に乗せて。「…………ね、」また、我儘を零す合図】

あのね、今日ね――――してほしいことがあるの。してくれるよね?当然。
だからはいこれ、……使い方わかる? わかんなくても裏側に説明書いてあるから、読んで……

【お行儀悪く足を伸ばして、鞄を手繰り寄せる、もとい足繰り寄せる。そしたら中身をごそごそ探って】
【取り出したのはありふれた雑貨店、あるいはアクセサリーショップの袋。そう大きくもないそれ、】
【中身はふたつ入ってる。そのうちひとつを取り出せと言って、手に取らせたなら、にまにま笑ってそれを眺める】

【――――――――ピアッサー。シンプルな銀のピアスが内蔵されているらしい】

――――――――それであたしの耳に穴あけて。ピアス。前からやってみたかったの、
でもあたし不器用だからさ――やり方は調べたんだけど。……実行するのは、エーノさんに、やってほしいな。

【「あのね、まずは開けるところにペンで目印書くんだって」「それから、いっぺんに両方開けるとよくないの」】
【「そうすると横向きで寝られなくなるから、慣れるまではかたっぽずつ――ファーストピアスは1ヶ月くらい外しちゃダメなんだって」】
【「そんでもう片方の耳も開けたら、また慣れるまで放っておいて、……そしたらセカンドピアス、買って?」】

【矢継ぎ早におねだりの乱舞。にこにこ、笑って――普段さんざくすぐったいから触るなと煩い耳、】
【横髪をさっと流してかけて、あまりにも無防備に、晒しちゃう。そしてとんとん、耳朶を、彩った爪先で突いて】


  【  「ここに穴開けて。あなたの手で。――――、一生取り返しのつかない痕、あたしの身体に、残して?」  】


【目を細めてちょっと意地悪っぽく笑って見せた。蠱惑的にできているだろうか。小悪魔、あるいは女狐。そんな感じで笑えてたら、いいけど】


211 : 名無しさん :2018/09/26(水) 22:12:56 5zLVVjWs0
【路地裏】

【バサリ、何かが崩れ落ちる音がした】
【夜の路地に広がる紅は、次第にその割合を増し、いずれ朱殷へと移り変わるのだろう】

大人しく差し出せば命は取らなかったのに……どうして理解してくれないんだ……
キミ達も無能力者なら、選ばれた方々の為に尽くすべきだろう……?
選ばれざる身で楽園へ至るには、それしかないっていうのに……

【濡れたナイフを握った女が呟く声は、闇に吸い込まれて消えていく】
【近くにへたり込んだ幼子は、事態を飲み込めていないのだろう。ただ呆然と両親“だった”モノを見つめていた】

【ライムグリーンのインナーに黒のパーカー、ショートデニムといった出で立ちの女は、ゆらりと一歩、そちらへと】
【そうして静かに、頭を垂れたかと思えば、言葉を紡いだ】

……お迎えに上がりました。
といっても、キミが楽園の御子となるか、“コチラ側”となるかは知らないけれど。

【シャギーボブのショートヘアが揺れる。この状況に踏み入る者があれば、焦げ茶色の眼差しはその姿を捉えるだろうか】


212 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/26(水) 23:41:17 6IlD6zzI0
>>208

【冒涜者も『リセルシア』も敬虔な信者とやらよりも祈りを捧げたのだろうか】
【祈りの果てに待っているのが残酷で理不尽な結末であっても、其処に至るまでは神を信じていた】

【だから、駄々を捏ねる子供の言い分みたいな言葉に親近感を抱き】
【目を細めながら横目で見遣れば、満足そうに笑う冒涜者が居た。神様に唾を吐く者同士】
【"冒涜者"と"悪魔の代理人"――神様の領分を汚して踏み躙るのが本分の存在たち】


……"普遍の不変"、か。ありふれた感情だ。だがしかして、死者と生者と言う枠に嵌めたならば。
それはもう身に余る"救い"だ。お前自身が言うように強欲に過ぎる。最早、その願いは叶わない。

死を分かつ前に呪いでも掛けておけば良かったのだ。
ゲーテの『ファウスト』宜しく――"時よ止まれ、お前は美しい"と、な。
まあ尤も、死霊達が『時は過ぎ去った!』と喚き散らすのを抑え込める自信があるのならな。


【きっと、冒涜者と悪魔の代理人は相容れない存在である。救いの方向性と解釈が決定的に違う】

【共に生きる事を救いとする者と、幸せな過去に溺死する事を救いとする者】

【再びこの手に取り戻して生きようとする為に屍を築く事を躊躇わない者と】
【取り戻す事を諦めて、同じ悲しみを背負う人を甘言で惑わし破滅させる者】

【しかし、共通点も確かにある。二人とも起点は同じである】
【"大切な人との再会"――方向性はどうであれ、死に別れた者と会いたいと想ったのだから】


――…ならば、そう、ならば。お前は、"会わせ屋"の差し伸べる手を取りはしないだろう。

少しだけ残念であるが。同時に少しだけ安堵している。やはり、お前の考える"会わせ屋"など何処にも居ないさ。
都市伝説と化した"会わせ屋"という名の虚ろだけが一人歩きしているに過ぎないんだ。

【出会い頭の否定の言葉――今となっては意味合いが異なる】
【冒涜者の求める救いと『リセルシア』の救いは違うもの。だから『私は"会わせ屋"では無い』のだ】
【だからこそ、"会わせ屋・ファウスト"としてではなく『リセルシア』として聞きたい事があった】

――…さて、"会わせ屋"の噂の出所は話した。それ以上の踏み込んだ事も話した。
『会わせ屋・ファウスト』としてで無く。『リセルシア』として、聞かせてもらう。――お前の"会いたい人"の話を。


213 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/27(木) 10:34:58 eOKAy9pg0
>>212
//最後の台詞の部分で訂正したいところが…
"『リセルシア』として" の部分をカットでお願いします…。


214 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/27(木) 22:13:05 WMHqDivw0
>>212

救い……そうか、救いって言うのか、こういのは。
願い事なんてもんじゃない、……んん。だけど、呪いならもう十二分にかけてるよ。

愛してるから。その子のこと。……この世の何より大好き。この気持ちがもう呪い。
愛は世界を救う魔法だし、人を滅ぼす呪いでもあるでしょう?
だからもう、呪いは――いいの。とびっきり強いやつをかけておいたから、

【「いつか叶うんだよ」。懲りもせず悪びれもせず、女はそう言い切って、ふふ、と息を零す】
【つまるところ、死んでしまった人に対する愛情を捨てきれずにいるだけであるらしかった】
【何とも分かりやすい、シンプルな話。それで、魔法も呪いもかけておいたなどと宣うけれど】
【この調子で話を聞いていくなら、そうされているのはむしろこの女のほうであると、わかってしまう】
【愛に救われ、愛に呪われて、それだけに縋って生きる。そんな女、】
【きっとこの世で一番弱くて、一番厄介な類であるに違いはなかった。――またグラスを揺らして】

…………自分から引っ掛けておいてなんだけどね、話にできるほど複雑ではない話なんだ。
好きなの。好きな人がいて、その人が死んじゃったからね、また会いたいって思ってるだけ。
それだけの話なのに、何故かみんな「それはおかしい」って言ってくるんだよね。……おかしくないじゃん。

だっておかしいのはみんなのほうじゃない、世界のほうがおかしいんだ。
僕とか、それ以外のどうでもいい人がさ、のうのうと生きてへらへら笑ってるのに、なんで、――――、
なんであんなに優しくて、きれいで、何にも悪いことしてない人が死んじゃうの? って思ってる。

だからね、また会いたい。会ってそれで――僕と一緒に、末永く幸せに暮らしましたとさ。
そういうフレーズできちんと「終わりたい」。……間違ってるんだよ、この世界は。
あの子が死んでて僕が生きてる世界なんて、絶対、おかしいから…………

【「ただしいかたちに戻したいだけなんだ」「……クーラ」。最後にぽつりと漏らした言葉】
【それがどうやら「会いたい人」の名であるらしい。おそらくは女性名。だけどきっと、そこは大しておかしくもなく】
【もっとおかしいことがあるとするなら――思考のねじれ具合。極端なまでにその人だけを、愛して】
【……違う。きっとこんなもの、愛でもなんでもなくて。「崇拝」もしくは「妄信」と、呼ぶ方がずっと正しい】
【そんなひずんだ響きを持って、だけれど当たり前の使い古されたフレーズを口ずさむように。冒涜者は、語った】


215 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/27(木) 23:30:47 6IlD6zzI0
>>214

……何処までも「人間」らしくて微笑ましいとさえ思えるよ。
不健康で不健全な風貌の癖に口を開いて出てくる言葉はまるで恋する乙女だ。
恋という劇薬で盲目となり、愛という縛鎖で絡められる姿は昔日を思い出す。


【ファウストの物言いはまるで、今はもう人間ではないと暗に告げている様だった】
【そして……自身を、冒涜者の立場に当て嵌めるなら、彼女と似た事を口にするのか】
【融雪していく表情。目を細めて、直ぐに瞳を閉じながら、隣から溢れる情愛に耳朶を震わせる】

【険しくも無く、慈しみも無く。けれど二人の間に流れる空気に溶ける穏やかさが保たれる】
【周囲を淡く照らすに留まる蛍光灯と薄暗い店内で交わされる言葉の遣り取りは、未だ続く】


―――死に別れた人に会いたい。そう願う感情をおかしいとは思わない。
だが、世界がおかしいとも思わない。世界は在るがままに在るだけだ。
各々の解釈が、各々の世界がその数だけ存在するだけの事でしかない。

だからお前の解釈を否定する気は無い。間違っているのは世界の方という主張を止める気も無い。
お前にとって「クーラ」とやらが全てであるのなら。崇拝の域に達する程に愛されているならば。
そいつも無明の淵で浮かばれるだろうよ―――本当に「クーラ」がそう思っているのかは計り知れないが。


【『リセルシア』は、『ファウスト』は思う――"愛する人を神聖視しすぎる偶像崇拝者め"、と】
【祈る先を偶像から個人/故人へと摩り替えただけで、未だに神様を信じている様に映ったから】
【言葉の終わりがけに悪意の篭った言葉を、冒涜者とは異なる歪みを孕んだ響きと共に紡ぐのだった】


さてはて、お前の愛する神様(クーラ)はお前の愛をどう思っているのだろうな。
くくっ、"会わせ屋"は今しがた口にした疑念を問い質す術を持っている。さてどうだろうか。


【――果たして、クーラとお前は相思相愛なのか?相思相殺でない事を願うばかりだ、と煽り立てる】


216 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/27(木) 23:49:29 WMHqDivw0
>>215

いつだって乙女だよ、いつまでだって、恋ができるなら乙女だし――

【あなただってそうじゃないの? そう問いたいような視線が、丸まって、けれどすぐ細められ】
【ずっと揺らしていたカクテルの水面に口付ける。やはり舐めるような、控え目な飲み方】
【アルコールと柑橘の果汁にて湿った唇が照明の光を反射して。けれどそれも、舐めとってしまう】

そう、……、僕はぜったいこんな世界、おかしいと思うんだけどなあ。
生きるべき人間が死に過ぎてる。それでいて僕みたいなやつがのうのうと生きてる。
やっぱり神様っていないんだろうなって、思うよ、一日一日生き延びるたび。
一呼吸するたび、鼓動がひとつ聞こえるたび――なんで僕じゃなくてあの子が死んだんだろうって。

【そうしたら次には笑うのをやめてしまった。据えたような無表情。半分ほどかさの減ったグラスを置いて】
【今度は揺らさず凪を保つ水面に、自身の視線を反映させる。暗赤色が橙に融けて、溺れる】
【そして――続くファウストの言葉を聞くなら。その表情に氷をひとつ投げうったような温度変化と、】
【わずかな揺らぎが見て取れた。伏せたまつげの震える様子、まるで泣くのを我慢しているように】


…………それはねえ、……どうだろう。でも、僕は――、……、
僕、…………なんかに恋する人はきっとろくでなしだから。

クーラにろくでなしになって欲しくないな、とは、思うよ。


【――――、そうして、何かを堪えるような笑顔。横顔だけしか晒さずとも、】
【その表情には到底言葉で言い表せぬような、きわめて複雑な感情が籠っていることが見て取れた】
【クーラのことが好きだけど、……自分のことなんか好きになるクーラは、きっとクーラじゃない】
【そう言ってるようなものだった。であるなら、この女の本質は――ひどく螺子くれた自己嫌悪の塊であると】
【わかってしまう、きっと。恋をしている、愛している。けれど何かを返してほしいとは思っていなくて】
【ただ自分の感情を受け取ってほしいだけだから。だから会いたい、――ひどい話だった】
【それだけの我儘のためにこの女は他人を、世界を冒涜するというのだから。最悪の類の人種であった】
【きっと今すぐにでも断罪されて、火に炙られるでも首を刎ねられるでも、なんでもされて、死ぬべき人間】
【だというのにまだ生きているんだから。世界が間違っている、という言葉も、あながち間違いではないのかもしれない、……?】


217 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/28(金) 23:52:55 6IlD6zzI0
>>216

【答えを求める隣の視線は、瞳を閉じてシャットアウト――問いには答えてない】
【恋なんて前を向いて生きる人間の感情など、とうの昔に己の魂と併せて悪魔に売り払った】
【だから、冒涜者の自己嫌悪の滲む言葉が可笑しくて。目尻を卑しく歪ませ、せせら笑う】

くくっ、偶像は清らかで在って欲しいか。如何にも偶像崇拝主義者らしい考えだ。
結局のところ神様の形を変えて、神様を崇めているではないか。
彼岸と此岸は違う、あなたとわたしも違う。だから一方通行の感情を押し付けるか――如何にも歪んだ愛だ。


【ファウストは、『リセルシア』で在る事を止めた時に様々なモノを切り捨てた】
【例えば、『乙女チックな恋』だとか『善悪の行き場』だとか――他にもあるが、それは遥か彼方】

【冒涜者の湛えた横顔。今にも零れ落ちそうなモノは線を描く涙か、或いは縺れに縺れた感情か】
【複雑怪奇なその面持ちとは反対に、悪魔の代理人の表情は単純明快――愉悦交じりの蔑みの色】
【正面きって顔を向ける事はしない。依然として横目で見遣るに留まるのだった】


何故お前は、「クーラ」とやらと末永く幸せに生きて締め括りたいと口走ったのだ?
一度失ったものを取り戻したくて止まないのに、取り戻したらショーケースに入れて眺めて愛でるだけか。

下らない。実に下らないな。一方通行の感情を押し付けるためだけに無くしたものを取り戻したいとはな。
死ぬべき時を見誤った欠落者。ひとつ、問おう。おまえ自身がロクデナシでなければ、クーラはお前に恋して欲しいかね?

さぁ――悪魔の代理人による"世界解剖"といこうか、欠落者。お前の――本当は何処にある?
エンドロールのその先を望み共に生きたいと願うお前と、自身の感情のはけ口の為にクーラを欲するお前。


【"――本当は、クーラとやらを人として愛してなど居ないだろう?唯の感情のやり場でしかないのだろう?"】
【"生きているのが間違いならば、自身が欲するものに裁いてもらえ――私にはそうするだけの手段はあるのだから"】
【悪魔は畳み掛ける――言葉と悪意を。互いに顔を合わせていない筈なのに、早撃ちのガンマンの様な景色である】


218 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/29(土) 02:18:49 WMHqDivw0
>>217

――――――――、

【黙り込む。矢継ぎ早に責められるような――実際、本当のことを言っているだけだから】
【ファウストにとっては責めでもなんでもないんだろうが。けれど冒涜者の心を抉るには十分だった】
【そんな言葉をたくさん掛けられて、冒涜者の動きが完全に凪ぐ。呼吸の音ばかり響いて】
【ファウストが目を合わせないなら、こいつもまたそうしようとはしなかった。静寂を湛えた水面だけを見下ろすのみ】

…………そうかもしれない。愛してないっていうのは、本当、かもしれないけど。
それでもね――――恋をしてるのは本当だよ。

愛って言うのは相互理解のもと生まれるものでしょう?
でも恋は違うの。一方的に相手にぶつけるだけのものでしかないの。
暴力なの。僕は、クーラを、――救いたいし、呪いたい。
それと同時に救われたいし呪われたい。

あの子にとってのただひとり、たったひとりだけの存在になりたいんだ、
……そういう気持ちのことを、恋と言うんじゃないの?

【それはあまりにも明確に、暴論だった。愛したいし愛されたい、ゆえに暴力を振るっているんだって】
【そう言って少し頭を俯ける、少し癖のついた黒髪が垂れて、けれど水面には浸されない】
【数ミリ上で毛先が静止する。そのままの姿勢で喋れば、吐息で、わずかな波が起こって】

さあ、…………どっちなんだろう。どっちも本当なんだよ、
二人でずっと一緒に生きていたいのと、今すぐにでもひとりで死んでしまいたいのと、
どっちの気持ちも――本当に、僕の中に、存在するから……

【悪魔のメスが切り拓いた先にある、少女の皮を被った欠落者の「中身」。それはひどい矛盾を孕んで】
【ぐるぐると黒く渦巻く奇形のみが、其処に、底にあった。……自分でも自分の感情が理解できていないらしい】
【ただ、そのうちどちらかを悪魔が、選んでみたなら。きっとこいつはそっちを正として、生まれ直すんだろう】
【恋する少女。自己嫌悪に塗れた女。どちらを選んだとして――今更、冒涜を重ねてきた人生がなくなるわけではないんだけど】


219 : 名無しさん :2018/09/29(土) 10:28:28 GLx.l25w0
【甘やかな香りがしていた、どこか遠くで咲く金木犀の香り、そこに混じりこむのは泥の香りであるから、天気はさあさあと雨模様】
【そうして見渡すのなら足元には萎び散り行く仕草の彼岸花が、あの美しい紅の残滓を淀ませながら撓垂れるのならば、誰かの足先に蹴飛ばされるのも、また必然と見え】
【川べりであった、街中にあっておかしくない程度に小さな川。それでもわりに澄んだ水の中にはさらさら水草の葉が流れるのは――無数の波紋に、隠されるけれど】

――――――――さて、ねえ、どうしようかなぁ。思ってたのと――だいぶ、違うみたい。だしい。――うーん。

【よく名も知らぬ雑草に混じる彼岸花の死骸を蹴り蹴り歩くのは人影が一つだった、そうしてみるならばひどく櫻の装いであること、気づかせるのだろう】
【なんせ下ろせば尻ほどまでありそうな黒髪を丁寧に一つに括って、赤い着物はけれどいくらも現代的な柄模様、何より足元は編み上げのブーツであって、】
【ぱらぱらと雨粒を弾く傘は白地に赤い眼の蛇の目模様、――あるいは顔を少しも晒したくないように被る派手な装飾を施された狐面が、彼女の装いで最も目立つのかもしれなくて】
【ぼんやりと呟く声で指先がくるりと傘を廻すならば、ぱっぱと傘の飛沫が散って。――まあいいかなぁ、なんて、やけに気の抜けた呟き声が続く】

――だって身軽だし。やっぱあんな重いの持ち歩くべきじゃー、ないっ。こんな身体が軽いの、いつぶりかしら――。
まあ、物理的にちょっと減ってるけど――。それくらいは、うん、必要経費かな。ってことにして――、ただ、うーん?

オリジナルのボディ、どこかなぁ……、まあ、明日でいっかぁ。

【――ならば、「くす」と漏れる笑い声の吐息も一層引き立つのだろう。よいしょなんて言いやしないけれど、蛇の目傘を腕ごと高く掲げるのなら、彼女は】
【ぐうっと身体をめいっぱいに伸ばす、――身長はおおよそ百六十センチほどであるらしかった、呟き声はいくらか不可解さを宿しても、至って少女の背丈であり】
【身体つきの華奢さも鑑みるに少女で間違いがないと思われた。――くるくると指先で傘を廻しながら、"そいつ"は、ちらりと川を覗き込んで】

――やーめよ、落ちたらダサいし。

【そのまま向こう岸まで跳べるだろうかと考えるような仕草と時間の後に、呟く。そうしたならくるりと川に背中を向けるのだろう、蹴り倒した彼岸花の数も忘れてしまって】
【凡そ三メートルほどであった、――どちらにせよひょこりと歩道に顔を出すのなら、場所が場所で時期が時期なら怪談話にありそうな、出会いを演出しかねなくって――?】

/お引越しのやつですっ


220 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/29(土) 12:06:07 3FwqaIhA0
>>178

なーるほどなぁ、アンタは〝表の顔〟もあるってわけやな。ちなみに〝表〟では医者でもやってるん?
せやなぁ、ウチなんかはずっと荒事荒事の世界で生きてきたから。

【どこかのんびりとした口調でありながら、糸目の女の背景には物騒なものがあることが見て取れた】
【そして、相手が着ている白衣から所謂〝表〟の部分について適当に想像し問いかける。】

まぁそっちは〝役者〟次第やないかなぁ………氷の国はどうやら一枚噛んでるみたいやけど
―――ウチら〝機関〟はちょっと内部でごたついてるんや、かくいうウチも立場的には特殊やけど。

【頭をポリポリと掻きながらどこまでもマイペースに返答する。しかしその発言の中にはいくつかのキーワードが】
【〝機関〟―――そう呼ばれる組織はこの世界においてまず一つしか浮かばないだろう。】
【見開かれた瞳はいつしかまた軽薄な笑みへと変わっている―――。】

なんや、そうなんか。何か事情を知っていれば聞きたかったケド。
近々ちょっとした〝実験〟を旧市街でやらなきゃいけなくてなぁ、まぁ情報なくてもええけどな。

―――ハッ、なるほど闇医者ねぇ。確かに荒事が本格化すればアンタみたいな存在は重宝される。
そしてそのまま上手くこの国の重鎮の〝かかりつけ〟にでもなれれば将来安寧だもんなぁ。

なら、まずは良かったらウチと手を組まんか?なぁ、〝闇医者〟さん―――。

【踏み込む事すら危険と判断される〝旧市街〟。そこでわざわざ行う実験の内容など、想像は容易である】
【そして白衣の女性の警戒には構わず、相手の素性にどこか興味を示したように笑うと再び金色の瞳を開く。】
【―――持ちかけられるのは〝協力〟。とはいえ危険な橋になることは間違いなかった。】


221 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/09/29(土) 20:42:17 ZCHlt7mo0
>>220

……まぁ、見たまんまですかね? これでも鍼灸医をやってましてねえ……
ま、裏も裏でやってる事は同じようなもんですから、とにかく評判を落としたくはないってだけなんですよ、えぇ
それと、下手にタレこまれでもしたら、裏も表も無い様なもんですし?

【肩をすくめて、両手をヒラヒラさせながら、白衣の女性は飄々とした様子で答える】
【表裏あるのは事実だが、実際にやっている事はそう変わらない。ただ『客層』と『レベル』が違うだけなのだ、と】
【尤も、彼女の立ち回りとしては「裏がなければ表が立たない」様なものなのだろう。守らなければならない『立場』というものを抱えているようで】

――――ッ、へぇーえ、あなた機関の人間だったんですねぇ……そりゃまぁ、そしたら色々と大変でしょうに
……いつの間にか、あなた方の大親分たちが3つに分裂して? 綱引き始めちゃってるんでしょ?

【一瞬、その顔に戦慄が走った――――この『事情』に首を突っ込んでくる以上、そうした人物とも、どこかで邂逅する事になるだろうとは、女性自身も思ってはいたのだが】
【今、眼前に居る相手が正にそれなのだという事は、流石に予想外だったのだろう】
【とは言え、気を取り直すと彼女も仄めかして見せる――――「内部でごたついている」の、その内実を理解しているかのような言葉を向けて】
【――――今行われているのは、情報を軸とした牽制合戦である。既に内部が『黒幕』と『円卓』、更に『無党派』の3つに分派している事も、知っているのだろう】

お生憎様って奴でしたね。知りたいってのは私も一緒だったりするんです
……『実験』とやらがなんなのかは知りませんけど、まぁ私から有益な情報を引き出すってのは、無理があるんじゃないですかねぇ……
ま……例のカミサマサークルの連中に通じる中身だってのは、すぐに想像は付きますけどね。危ない橋だったりするんじゃないですか?

【旧市街――――恐らくは、更に暗部に位置する『神々』の暗躍に関係する事なのだろう】
【かつて遭遇した、男の顔を思い出す。あの、卒なくアタリの良い反応に隠れた得体の知れなさは、正に不気味そのものだった】
【こちらから、そこへと踏み込んでいく事――――それは非常に危険な結果を招きかねないと、1人大げさに肩を震わせる】

――――そう言う事、って奴ですね。これでも、もう何回か、依頼を受けて『標的』に『自然死』していただいたり、頭の中まで溶かして情報を引っ張り出したり、やってるんです
ま、お偉いさんの情婦になるってのも、悪くはないのかもしれませんけど? そこにプラスワンのうま味を追加して、手に職つけてやりませんとねぇ……
中々、人を思い通りにして、浮世をおもしろおかしく安全に渡っていくなんて、出来たもんじゃあないですよ

【チリっと、手から電光が放たれると、女性のポケットに突っ込まれていた、ステンレスの箱が開く】
【そこから飛び出してくるのは――――大小長短様々な『鍼』。まるで念動力でも使われているかのように、空中に浮遊し、静止して――――】
【女性の表情に、徐々に切迫した空気が現れ始めていた】

――――そりゃ魅力的な話でもあるんですけど、それでもその前に聞かなきゃいけない事がありますねぇ……
あなたのお名前……そして、あなたの『上』は『黒幕』なのか『円卓』なのか……どうなんです? 知らなきゃ、協力もクソも無いですよねぇ……ッ?
……どうするかは、50:50って奴です……どうなんです?

【協力を持ち掛けてくる糸目の女性に、挑みかかる様な表情で問い返す】
【その事情を知っていれば、まず二派のどちらに与すべきなのか、白衣の女性はそこまで知らなければ、動きようもないと見切りをつけていた】
【『黒幕』か『円卓』か――――スタンスはハッキリするべきだ、と】


222 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/29(土) 21:11:03 Z/spVL1g0
>>220

【別れ話や言い出しにくい話といった不都合を口にするにBARのカウンターは都合が良かった】
【何故なら、面と向き合って言葉を交わさなくて済むから。どんな顔をしているかを見なくて済むから】
【ただ目を背けて、感情を乗せた言葉を口にするだけで良い。だから無遠慮で残酷な言葉を継げるのだ】


悪魔の代理人に愛の定義を問うのか。それこそ愚問だ。
お前の解釈する"愛"と"恋"に口を挟む心算は毛頭ない。そう思うなら、それはご自由に。


【飲み干したグラスをすっと引き摺るように前に差し出して、三度ギムレットを要求する】
【ファウストは項垂れない。そして顔を背けもしない。ただ、真っすぐを見つめるだけ】
【冒涜者を慮るなら顔を向けるだけだけど、そうしないのはつまりそういう事。淡々と言葉で切り裂き続ける】
【神に唾を吐くもののハラワタが何色なのか、どんな形をしているのか――"世界解剖"はなおも続く】

【ただ悪魔の代理人は律儀なのか几帳面なのか伺い知れないが――切り刻んでそのまま放置をする性質でも無いらしい】

ならば、選べ。自家撞着に陥っているお前は選ぶべきだ。
もし選べないならば私が選んでやろうか――そうだな、お前に送る言葉はこれで良いか

【悪魔は聖書のワンフレーズを諳んじる――"きみたちに新しい戒めを与えましょう、おたがいに愛し合いなさい"】
【まさしく冒涜。悪魔の代理人がバイブルに記された文章を引用するなどこの上ない冒涜であった】
【しかもそれは、教会で神父が厳粛な雰囲気を携えて紡ぐ言葉であると錯覚させるかのような口調】


愛されたくて吠えるのならば、共に生きてエンドロールの先を紡ぎたいのなら
――汚れたって受け止めろ。生きるもの全て、穢れを知らぬままには生きられないのだから。

綺麗な部分だけを切り取って、手の届かぬ所に置いて崇拝するのは後ろ向きに過ぎる。
それこそ盲目的に神に縋って崇めるのと同じだ。死者の理と何が違う。

世界に屈して一人で死にたいなら勝手に死ね。その時は"会わせ屋"にでも頼んで幸せな夢にでも溺れろ。
だが一緒に生きたいならば汚す事を恐れるなよ、汚れたって受け止める器量の一つでも見せてみろ。

ともに生きることを選ぶならば――"ギムレットには早すぎる"のだから

【その言葉とともに三杯目のギムレットが差し出されたが、それには口をつけなかった】

【ギムレットには早すぎる――レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」の一節】
【意味は、"まだ、さよならを言わないでいてくれ"。詰まる所、ファウストはお節介な女だった】

【ろくでもない暴論を口にするようなロクデナシなど死ねば事もなしなのに。歪んでいても前を向いて生きろと背中を押すのだった】
【そうすれば、きっと"会わせ屋"の出る幕は無くなるだろうから。後ろ向きな救いを求められずに済むから】


223 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/29(土) 22:33:47 WMHqDivw0
>>222

【目も合わせてくれないのなら。ふふ、と笑う声のみが聞こえるんだろう】
【女は隣で笑っていた。軽く握った拳、折り畳んだ人差し指のみが少しだけ立っていて】
【それで唇を押さえながら笑っていた。子供めいた笑みだった。けれど声はささやかで】
【だけどクスクス、鼓膜を指先で撫でるような軽さというわけでもない。確かにふふ、と声を出していたのだから】

…………。あなた悪魔じゃないでしょ?
悪魔ならもっと、僕を引き摺り落としにかかるハズだ――あはは。
僕よりよっぽど真人間みたいなこと言ってら。ふふ、あははは、…………、

――――――やさしいね。ふふふ、汚れたって受け止めろ、だって。

【「できることならそうしたいけれど」。紡ぐ言葉にどんな意味を含めたかは教えてやらず、】
【女はついにグラスをきちんと引き寄せて――ほぼ一気、みたいなスピードで中身をぜんぶ飲み干した】
【どういう気分でそうしたんだか、も、言ってやらない。ただ酒精に濡れた吐息だけを、笑い声に含ませて、吐いて】


僕と一緒にいたって汚れない子だから。だから好きになったんだよ、クーラのこと。


【――――――――、】

【――背中を押されるのなら。くるり振り向いてその手を取って、おどけるように一回転してから】
【何事もなかったかのように脇をすり抜けて、振り向きもせず去って行くような人間だった】
【だからこの女は「冒涜者」であるのかもしれなかった。ヒトに捧げられた真心を、まともに、受け入れないのは】

【(グラスを戻す前に。お札を三枚、グラスの下に置いて。カクテル一杯分の値段にしては多すぎる)】

【やっぱり、自分が、そんなきれいなものを受け取ってよい人間だと思っていないから】
【……それほどの殊勝さがあるわけでもない、のかもしれない。だって冒涜者なんて名乗るわけだし、】
【それなりに性格が悪いんだった。それだけの話だった、だから彼女は、選ばれたものだって受け取りもしないで】

【(それが彼女なりの別れの合図、のつもりだったらしい。カウンターによくある背の高い椅子から)】
【(ヒールが地面に降り立つ音。かつんかつんとふたつ鳴ったら、148センチの低身長より暗赤色の視線が泳いで)】

【――――ひどい矛盾を孕んだまま、それを摘出される前に、帰ってしまおうとするのだろう。】


224 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/29(土) 23:10:41 6IlD6zzI0
>>223

……いいや、悪魔さ。真人間だなんて生き物では無い。
耳障りのよい言葉を弄してその気にさせるモノは間違いなく悪魔しかいない。

だが、悪魔だってピンキリだ。やさしい悪魔だって居る。
まぁ、私の場合はやさしい悪魔じゃなくて単に甘いだけの悪魔かも知れないがな。


【童女めいた仕草の冒涜者に対して、初めて見せる人の悪い笑みを浮かべるファウスト】
【だけど蔑みの色は無くて。どちらかと言えば何処か気安さを覗かせるような色合いで】
【氷の様に冷たく、重石の様に圧し掛かる言葉は要らない。何故なら――"会わせ屋"の出る幕は無いから】


そうか。ならば愛し愛される関係になる事を願うばかりだよ。
――祈りと言う言葉は用いない。だって、祈りの所作には屈服と隷従の意味合いしかないからな。

最期に一つ問おう―――……"会わせ屋・ファウスト"という名の悪魔と再び合間見える時は
お前の祈りと願いが水泡に帰した時か、或いは神に唾吐く"冒涜者"同士の再会のどちらだ?


【背を向けたままのファウストは、冒涜者が去るのを止めない――それは物理的には】
【足を止めようとするのは、問いかけ。そこに込める願いは"折れてくれるな、縋ってくれるな"というぶっきらぼう】
【冒涜者は振り向くだろうか。振り向かなかったとしても声色で解るかもしれない】

【きっと、『リセルシア』は、『ファウスト』は柔らかな表情を浮かべているという事を】


225 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/30(日) 00:50:31 WMHqDivw0
>>224

ほんとかなあ。……甘い悪魔かぁ、そう……
それこそ人間なんかよりよっぽど人間らしいような気もするけど。
だってほら、最近、人間やめちゃったような人間ばっかりいるじゃない。
もっと心あたたまるような交流をいっぱいしたいのに、さあ――――

【冗談なんだかそうじゃないんだかよくわからない言葉、だけど、前者であったとしても】
【あまりにも趣味の悪すぎる言葉だった。人の心がどうだの、冒涜者が語るには】
【あまりにも悍ましい話だった。何もかもが馬鹿げてる、最初から最後まで、この女は】

――――もちろん後者に決まってるじゃない。
僕の願いは絶対叶うんだもん。そのときにはね、クーラと一緒に会ったげる。
二人でヴェール被って白いドレスで会いに来るから、そのときはね、

【「僕たちはきっと永遠を誓うから、その証人になってね」。振り向きはしない、】
【背中にその言葉だけを遺して、彼女は去って行った。別れの挨拶もそこそこに】
【出会いから別れまで、何から何までこいつはずっと勝手だった。きっとこれからだって】
【また会おうなんて言ったけど平気でなかったことにしそうな雰囲気もあった。だけれども】

【――今更神様に合わせる顔なんてないから。証人になってほしいというのは、きっと本当のことだった】


//ここらへんがキリよいですかね……!?長い間お付き合いいただきありがとうございました!


226 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/30(日) 10:36:30 smh2z7gk0
>>195

―――フフ、まぁ気にしなくていいよ。こちらこそ驚かせてしまったみたいだからね
ああそうさ、あれが〝宇宙卵〟。尤も〝宇宙卵〟の形状は一定というわけではないらしいけどね。

私はね、〝自由〟を作りたいんだよ。〝集合的無意識〟や〝世界〟という枠組みに捕らわれ隷属された次元
そこから脱却した、真なる自由な物語をね―――。

【マリアベルは慈悲に満ちたような微笑みを浮かべながら瑠璃へと視線を向ける。】
【その目的、瑠璃からしてみれば〝企み〟についても口にするが抽象的であり要領を得ない】
【瑠璃の髪から放たれる警戒心、それに伴う毒を素肌の手に受ければ「おっと」と両手を肩から離すだろう。】
【だが、愉快そうな笑みだけは消えることはない。そして―――】

こらこら駄目だよあまり力んじゃ、いくら〝アストラル体〟だからってあまりエネルギーを………

―――あらら、〝彼ら〟が近づいてきてしまったか。

【そう言うと、マリアベルは肩を竦めて瑠璃の背後つまりは〝窓〟を指差す。】

【〝べちゃり〟と、何か粘液にまみれたようなものが這いずる音がする。】【瑠璃の髪へは〝巨大な存在〟の気配が感知されるだろう】
【〝べちゃ、べちゃ〟それは次第に近づき、既に〝窓〟のすぐそばまで来ている事が強く感じられた―――。】
【いまだ、マリアベルは〝笑っている〟〝嗤っている〟〝哂っている〟〝ワラッテイル〟―――クスクスクスクスクスクス】


227 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/09/30(日) 11:09:50 smh2z7gk0
>>221

なるほどなぁ、〝表〟でも〝裏〟でも食っていけるってのは安定しててええやないか。
しっかしそれなら〝表〟一本でとも思うケド、今の話しぶりだとそうもいかないみたいやな。

せやせや、機関のナンバーズっつーエージェントをやらせてもろてるわ。
ご心配どーも、でも元々機関は一枚岩ではないわけやし〝罪神〟の掲げる〝混沌〟を各々が解釈して行動しとる
だからこれはこれでおもろいからええわ、クカカッ!どの〝六罪王〟とも懇意にしてるような奴がいるとすれば胃が痛いやろうけど

【自身の組織が内部で対立をしているというのにあっけらかんとして笑う。】
【それは〝カノッサ機関〟という組織の異質さと巨大なる規模をそのまま表しているようでもあった】
【秩序なき悪の巣窟。白衣の女性の前にいるのはその一員であった。】
【相手の牽制に関しては知ってか知らずかそのままの調子で答えた、単純な性格なのかそれとも―――。】

まぁ別にかまへんよ、知ってれば〝聞きたかった〟だけやからなぁ。
―――そやそや、あの場所は水の国でも屈指の〝霊的力場〟らしいからなぁ。〝色々〟仕込みやすいんやって。

クカカ、暗殺稼業まで請け負うとはサービスいいなぁ。そこまで割り切れてればこのイカレた国でも生きていけるやろ。

おうおう、随分と物騒な雰囲気で自己紹介させるなぁ………まぁその用心深さは嫌いじゃないんやけど
ウチの名前は〝ペレグリー・ジャガーノート〟ナンバーは〝15〟や、よろしゅうなぁ。
そしてもう一つの質問に関しては―――〝どちらでもない〟。但し〝どちらになる可能性もある〟ってとこやろな
〝黒幕〟か〝円卓〟。どちらかを望むのであれば残念やけど、ウチの言葉の意味を少し汲んでくれると嬉しいなぁ?

【ペレグリーと名乗った糸目の女、カノッサ機関のナンバーズの〝15〟を冠するという。】
【そして白衣の女性の質問に対しては、〝第3〟という答えを返す。つまりは〝無党派〟に入るという事だろうか】
【捉え方によってはペレグリーがはぐらかしているだけにも感じ取れるかもしれないが、果たして】


228 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/30(日) 12:01:04 D/72FUBQ0
>>225

【悼む者に、祝い事の見届け人になってほしいなんて配役を間違えている】
【なんて思ったが、この場には不敬な女二人しかいない。前提からして間違いしかない者達だから】
【冒涜者達を寿ぐならば悪魔の方が適任だ。不届き者達の幸せを願うのは、同類だけだから】

出会ったばかりの悪魔が祝い事にお呼ばれされるとはな、くくっ何の喜劇だろうか
…まぁ、呼ばれるのも悪くない。その時が来たら何時でも呼べばいい。

【その為の手段をお前は既に得ているのだから】
【ファウストが意味深に残した言葉の意味を知るのは、そう遠くない未来。早ければその日にでも知るだろう】
【いつの間にかファウストに繋がる連絡先のメモがあるのだから】

//ここらへんで〆ですね。長時間の絡みありがとうございました!


229 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/30(日) 20:55:16 6IlD6zzI0
【―――この日の天気は酷くご機嫌斜めだった】
【なんて評しても良い程の土砂降りの雨模様の昼下がり】

【水の国にある小奇麗な喫茶店。窓辺の席に座る金髪の女性が居た】

【前髪の一部を黒く染めた金髪に、左耳に開けたトランプのマークを模したピアスと】
【スレンダーな体格が良く映えるダークカラーのパンツスーツ姿が特徴的な女性】
【名をエーリカ=ファーレンハイトと言った。公安五課と呼ばれる社会的死人の群れに身を置く"生きる死者"】


―――……こんな日は憂鬱だね。まるで空が泣いてるみたいで気が滅入る。


【"泣きたいのは私だって一緒なのにさ"――なんて弱音をテーブルに置かれたアイスコーヒーと共に飲み込んで】
【けれど飲み込みきれない分はざあざあ降り頻る雨の音に紛れさせて、誤魔化すのであった】

【憂いを秘めた目で、頬杖をつきながら外の景色を見遣るのだった――そんな呆けた姿を】
【店の外からか、それとも店の中からか解らないけれど目撃されるのだった。隙だらけの無防備で】

//予約のやつです


230 : 名無しさん :2018/09/30(日) 21:31:03 wcB4pkn60
>>229

【――――かたんっ、と、小さな音がするのだろう。そうして見やるのならば、今まさに、誰かが女性の座る席。カウンターならばその隣へ、そうでないなら、空いた椅子へ】
【そっと指先を伸ばして――真っ白いドレスグローブに包まれているのがよく目立って――"勝手に"、相席をしようとしてくる。もしも目を向けるなら、見つけるのはその瞬間で】
【なればある程度不審に思わすのかもしれない。店内はひどい雨の中であるのなら、長居の客はいくらか居ようと、きっとそう込み合っても、いないのだから、特に】
【だれかれかまわず同じ席に放り込んでしまえ、というほどは、混んでいないのなら】

――――――ああ、やっぱり。裏切者の人ですね。こんにちは。えーと……、ごめんなさい、名前までは、ちょっと、覚えてないんですけど……。

【――ひょん、と、気の抜けた仕草で、"誰か"が相手のこと、のぞき込むのだろう。であれば言葉の色合いを証明するように、まずは誰だか確かめたかっただけらしい】
【そのくせ相手のことを確かめてしまえば、「よいしょ」なんて簡単な声で、きっと勝手に座ってしまうのに違いなかった。――透き通る白銀の毛色、蒼穹と大海の狭間の色の瞳】
【にこりと笑う顔には言葉のわりに敵意もないのだろう。――あるいは彼女自身もはやそんな風に言える立場でないというのも、きっと、あるのだろうけれど】

おしゃべりするのは初めてですよね? なんかニアピンしてた気は、しますけど――。――私のこと分かります?
アリアさんとばっか一緒に居たから分かんないかな。かえで――です、待雪かえで。

【――未だ染められていない絹糸のような白髪は眉を隠す長さに、それから、腰元まで届く長さ。すらと流すだけで湿気も気にせず綺麗に毛先をまとめていて】
【真っ青な空とも海ともとれぬ青色の瞳に、縁取る睫毛は白と薄藤の二色を重ねて。真っ白な肌には化粧ではない自然な赤みがわずかに差すなら、儚げな笑みを彩り】
【青みすら感じさせるほどに純白のシャツにハイウェストのスカートはお上品な長さ、厚手のタイツで足元を、白の手袋で手元を隠すなら、よほど素肌を出したくないと見え】
【ことん、と、床を踏む足元はいくらかかかとの高いパンプスであるのだろう。――そうして袋に入れた傘を席にかけるのなら、うんと大きな男物のサイズであって、】

【――――そうして名乗る名は、いつかとは違うもの。それでもきっと相手には誰だか伝えるには十分で、――それより先に、そもそも知られているのだろう】
【だから、というわけでもないのだろうけれど。少女は自分がだれであるのかをそれ以上に特別に説明しようとはしなかった。ゆえに、】
【もしも相手が彼女を知らない人間だと言い切ってそう振る舞うのなら、彼女もまたそうするのだろうと思わすだけの気配があって、――、】

【――ならば、彼女の中ではまだ完全に整理がついた事柄ではないのかもしれなかった。数年の人生へと追憶を馳せるには、まだ、時間がきっと足りていないから】
【ひどく曖昧な温度感と距離感にて彼女は貴女に微笑む、――あるいは彼女もまた滅入ってしまっている、みたいに】

/おまたせしましたっ


231 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/30(日) 21:59:31 hEXW.LLA0
>>200


【「そっか、 ─── 残念。」「僕も、一人で飲む趣味はないんだ。」見るからにシーラは成年でなかった。彼女もまた、規範を気にかけぬ思考であろう。】
【独白に対して答えを返すことはなかった。ただ何か諦念のような顔で穏やかに笑っていた。少女はそういう人間であるようだった。互いにそうだと意を得ていた。】
【 ─── 山稜に落ちゆく西陽の照らす世界ばかりが残紅に染まっていた。そうでない暗闇は既に秋夜を享受していた。優しく灼けていく山麓の緑青が、遠い水面と共に煌く。】
【少女たちもまた橙紅の黄昏に愛されていた。 ─── それは全てに平等であった。残酷な程に差異はなくして、ならば微笑みに憂う横顔は、ただ認識論的な問題なのだろう】


「 ……… 僕からも、」「お礼を言うよ。」「ふさぎ込んでしまう筈の時間を、楽しく過ごせた。」
「本当にありがとう、ジルウェット。」「 ─── 次も、いつかどこかで、会えたのなら。」


【感謝の言葉を皮切りのように、気付けば時間は過ぎゆく。調理と談笑のひとときが段落を得るなら日は暮れて、悲しげな顔で水葬に立ち会い、「おやすみ。」 ─── 寝袋の中に、ひとり、潜って】
【ならばきっと次の朝に彼女はここにいないと知っていた。どこか陰を落とすように、それでも眼前の生を生きゆく横顔が、互いの別れに見た姿だった。】


        「 ───…………… ん、」


【 ─── そうして、彼女は目覚める。持ち上がる瞼に自己を認識する。幾らか冷え込んだシュラフの中から起き上がる。淀んだ肺から呼吸を吐き出す。】
【やはりジルウェットは居なかった。冱つるような清水に顔を洗おうとして、理由の分からぬ汚濁を理解した。それが彼女の使命であるのかもしれないと、独り言ちる。】
【すれば残っていた飲み水で仕方なく顔を洗って、 ─── 残されていた酒瓶に気付いた。燻んだ金色の髪を、ポケットの中で結び直すのならば】
【いくらか女性に贈るには微妙なニュアンスを有した銘柄だと思っても、ふッと息を吐いて、結局は背嚢の中に仕舞った。 ─── ケースに入れたライフルを、背に負って】

【白鳥は飛び立つ。跡を濁さぬのを美徳としても、それは己れが使命ではない。せめて彼女の居た痕跡を、ひとつとして朝焼けは照らし出さなかった。】


//たいへん遅くなってごめんなさい…長い間おつかれさまでした&ありがとうございました!!


232 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/30(日) 21:59:42 hEXW.LLA0
>>210


【キスは好きだった。アリアが好きだったから、多分ボクも好きになった。向こうから欲しがってくれるなら尚のこと好きだった。キミが求めてくれるなら、何よりも。】
【今度は歯をぶつけないように上手くやった。少しだけ、まごついたけど ─── 口いっぱいに含んだクッキーと、ケーキと、ゼラチンとラズベリーが、誤魔化してくれる。】
【何より酷く甘ったるかった。口からお菓子なんて一欠片も無くなったとして未だ/だからこそ余計に際立って甘くて、艶かしいざらつきを互いの咥内へ捩じ込んで求めて】
【首を幾らか傾げる度に真っ赤な/真っ黒な髪の毛が首筋を愛撫し合って、くすぐったくて、きもちいい。 ─── 前と比べて少しだけ余裕もできたこと、だし】
【背筋をなぞり下げてみたり、腰に指を回してみたり、試しに瞼を開けてみたら、そこで息が詰まってしまった。ああ、もう、好き。大好き。その表情は、ボクだけのもの。】
【拉ぐ唇が離れるのが口寂しくって、やっぱりタバコはやめられない気がした。 ─── ボクだって真っ赤な顔だった。上がってしまった息はどうしようもなく湿る癖に、心はまだ、渇いているから。】
【「 ──── ぁ、ふ」「えへ」「ボクも、好き。」だから何度でも繰り返した。マカロンの一つに至るまで、全て余さず口移し。 ……… 写真、撮ってなかった。まあ、視覚のキャッシュから、後で探してくればいい。】

【最後の一口まで食べ終える頃には、 ─── やっぱり口許は幾らかも濡れてしまっていた。でもあれだけ繰り返したのだから、繰り返せたのだから、前よか上手になった筈。】
【ちょっと疲れたように眉根を緩めて、だったらキミも疲れていた。そっと預けられる華奢な熱量と重さを抱き寄せて、肺の底から息を吐くなら、キミ色に染まっている。】


「ふふ。 ─── なあに。」「何でも言って、 ……… よ、 ……… 。」


【(あっ横着してるのも可愛い。) ─── 渡された袋を、いちど抱擁を解いて、まじまじ見つめる。中身を覗きこんで、指先まで赤くなりそうな手で取り出して、正体に気付く。】
【ふッと肩の力を抜いて笑った。これじゃあ本当に幾らかマセた気だるい大学生みたいじゃないか。けれどボクも似たようなモノだし、ボクたちはそんなステレオタイプに生きては来られなかった。】


「 ……… もお。」「シグレらしいや。」「ふふ、 ─── いいよ。もちろん。」
「キミも大概、ロマンチストだなぁ。」「まあ、ボクもそれは、同んなじなんだけど、さ ─── 。」


【だから、返す言葉は全肯定。大好きだし。イヤなんて言えないし。何よりキミに笑顔になってほしくて、そして今キミは笑っている。ああ、可愛い。】
【イヤリングは割と好きだったし、いつもの格好でもパールの奴を耳に付けることは、そこそこの頻度で有った。 けれど、ピアスは、はじめて。】
【晒されるキミの耳朶は、既に少なからず赤みを得ていた。 ─── 潤った唇はきっとボクの精気を貪って色付いた代物だった。眇められた流眄が、どんな銃弾よりも正中に、この心臓を撃ち抜く。死んでもよかった。】


【「 ─── いいよ。だから今度は、ボクにも」「なにか消せないもの、残してほしいな。」無垢に歯を見せて笑った。こんな人に我儘を言うのも、悪くない。】


【救急箱から消毒ジェルと脱脂綿を、ドレッサーからアイライナーを持ってくる。「耳たぶのところで、いいんだね。」 ─── 手鏡に見せて、触って、確かめて】
【そうしたら御別れのキスを落とす。ちゅッ、と軽く吸い上げて、わざと音を立てて、鼓膜深くまで残響するように。痛くても、この音を忘れないで。そんな願いを込めた、耽美主義者のクロロホルム。】
【ジェルの染みた綿で、丁寧に耳朶を拭う。ボクの手も拭く。その間に異能を軽く使って、感覚がなくなる位まで真っ赤な耳を冷やすなら、真っ白な膚が晒されるから、やっぱりキミは死人じゃないんだ。】
【アイライナーで当たりを付けて、鏡越しに視線を合わせて確かめて、 ─── 銀色の納められたピアッサーを、つめたい膚に宛てがうのならば。きっと、初夜に擬えた情念。】


【         「ばちん。」 ──── 思っていたより大きい音と、静かに膚を潰す柔らかい手応えと、あるいはキミの何かが、いやに五感に残る気がした。】


233 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/30(日) 22:03:00 6IlD6zzI0
>>230

【テーブル席に陣取って時間を浪費していれば、予期せぬ来訪者が訪れるのだろうか】
【昼間なのにそう込み合ってない店内ならば空いてる席など幾らでもあるだろうに、あろう事か】
【不穏な言葉とともに自身の向かい側の椅子に腰掛けようとするから――身構えない訳が無い】


……何?裏切り者だって?私は見ず知らずのアンタとお仲間になった心算は無いんだけど。
つーか勝手に椅子に腰掛けるとは図々しいな。席なら幾らでも空いてるだろうが。


【面接の時みたいに、向かい合う少女と女性。出会い頭の言葉に眉を顰めて、かえでと同じ様に相手を覗き込む】
【記憶を辿っていけば一つの名前と嘗て偽りの身分を用いて身を置いた蛇の宗教に辿り着く】


雪待かえで……その名前は違うだろうが。
中途半端に名前を偽ったって私は解るんだ――お前が何者かは知ってる。"ミツキカエデ"だろ。

蛇の幹部サマを放し飼いにするなんてさ、あの機械人形の気が知れないな。
で、お家を滅ぼされて鶏冠に来たのか知らないが幹部サマ直々に裏切り者とやらを粛清しに来たのかい。

それとも他の意図でも?先ずは聞かせなよ。ヌケヌケと裏切り者と対面してるんだからさ。

【憂いを秘めた色合いはどこかに引っ込んで、今しがた瞳に移る色は黄色と黒の警戒の色】
【スズメバチを思わせる獰猛さと容赦の無い目つきを向けているけれど、今この場でやり合う気は無くて】
【かえでに敵意が見られないから。そして、手を組んでいるアリアの恋人だから。今はまだ、手出しをしない】


234 : ◆S6ROLCWdjI :2018/09/30(日) 22:26:07 WMHqDivw0
>>232

…………あ、の、……あのね、はじめて、あげられなかったから…………

【らしいって言われれば、そうかなあみたいな顔して。なんでそれを求めるのか、理由を述べてみる】
【つまる話、処女をあげられなかったことを気にしていたんだった。実にいまさらすぎた。そんなこと言うなら】
【あなただって別にはじめてってわけでもなかったのに。なのにどうしてか、罪悪感があったから】
【だから、自分の身体で傷のついていない場所を探して。そこを捧げたかった。妙な意地があった】
【何かしらこの人に未開のところをこじ開けてほしかった。心はそうしてもらえたと言えども、身体だってそうしてほしくて】
【だから、まっさらな耳朶を差し出す。傷つけてほしい、あるいはマーキングしてほしい。そんな猥らな欲求、】

【(傷付く前の皮膚に触れられたらやっぱりぞくぞくしてしまった。やっぱりここは弱い。弱いからこそ、曝け出して)】


          あ、いた、っ


【――――――――わずかな肉の割れる音が響いたら。きんきんに冷やしてもらったはずなのに】
【ちくりと痛んだような気がした。だから小さく悲鳴をあげた。だけど全然、苦しくも悲しくもなくって】
【痛いほうが嬉しいような気もした。だってそっちのほうが、永く永く覚えていられるから。無痛よりも快楽よりも】
【ちょっとばかし痛いほうが、身体にナニカを刻み込まれたような気分になれて、嬉しい。……別にマゾじゃないんだけど】

…………ん、ん……じんじんする。けっこう痛いんだ、これ……
でも……うれしいな、えへへ。んふふ、穴、しっかり定着したら――次どんなピアスつけようかな。
また青いやつがいいかな? それか、なんかこう、ぶら下がって揺れるヤツ――ああいうのも可愛いよね。

ありがと、ふふ、大好き――――エーノさんもしてほしいの? こういうの。
でもあたし不器用だからな、むつかしいとこに開けたりするのはイヤだよ。怖いし。

【少しずつ少しずつ、冷却が溶けていって熱を取り戻す耳を空気に晒したまま。手を伸ばして、あなたのすべらかな頬】
【両手で包み込むみたいにして、さらにそこから滑らせて――さらさらの髪の奥に隠れた耳に触れようとする】
【くにくに、指先で摘まんでいじくる。それくらいのイタズラは赦されてしかるべき日だったから。やりたい放題弄んで】
【それでまた、笑った。あなたに傷付けてもらえたから、嬉しい。はじめてを捧げられた。うれしい――「キスして」。】
【今日ばっかりは強欲が止まらない。なんでもかんでもしてほしかった、あたしの言う通りに、あるいはそれ以上のこと】


235 : 名無しさん :2018/09/30(日) 22:37:19 wcB4pkn60
>>223

【そうして身構えるのは当たり前のことだった。だからきっと全く普段の出来事のように、気の知れた友達との待ち合わせのように振る舞う彼女が、おかしくて】
【ましてやタイミングを見計らってロイヤルミルクティーでも頼むのだから余計に、だ。シロップは要るかと聞かれて当たり前に甘くしてくださいって、答えるのなら】
【きっとそれを気にしてくれそうな顔もしていなかった。――だけれど相手の眼前にて膝を揃えて、真っ白の指先をちょんと添えるなら、深層の令嬢の立ち振る舞いにも似るのだから】

そうですね、空いてるみたいです。でも、せっかく見知った顔の方が居たので――、見知ったと言うか、見せられたと言うべきですけど。
椅子は腰かけられるためにあるんですよ、それを無視したら可哀想です。――だからそんなに怖い顔しないでくださいよぉ、――――――――。

【――それが"嘘"だと言うのには疑う余地もないのだろう。ねこっかぶりもいいところだった。丁寧ぶった口調はあくまで"ぶった"だけであり、】
【中身は全く別のものだと――それでも甘やかに囁くような吐息ではにかむのなら、いくらかの男くらいはころっと転がり落ちて掌の上で弄べそうな、色合いはあって】

――違くないですよ。アリアさんが決めてくれたんだから。それに、蜜姫かえで――は、もう、死んでるらしいので。
私、この間まで知らなかったんですけど。射殺されたらしいじゃないですか? ひどいですよね。私、ほんとに、知らなくって――。
しかも結構前なんですよ。……まあ、いいですけど。それで、何のお話でしたっけ――、ああ、うん、そうです、そう。

"そのつもり"なら、こんなふうにお話はしないですよ。気づかれる前に身動き取れなくして、そのままコロリです。
他の意図ですか、それも……今はあんまりないです。普通に、生活に必要なものを買い出しに行く途中で。好みの櫛とか。猫の置物とか。

車で送ってもらっても良かったんですけど、――わんわんって尻尾を振る気がないならそのまま殺すって言われちゃったんです。私。ひどいですよね?
だからね、私、今はアリアさんとおそろいの首輪のワンちゃんなんですけど――、そうですね、まあ、お茶くらいは奢ってもらおうかな。
裏切った代償がミルクティーとケーキで済むなら、割と、破格だと思うんですよね。――どれにしようかなぁ。

【――――警戒の色合い、獰猛と容赦のなさを混ぜ合わせたならば浮かぶ視線の温度に、けれど彼女はやはり動じないのだろう。ただ一度、長い睫毛をふわと揺らして】
【地毛の薄藤に白い睫毛を重ねて張り付けているらしかった。だからひどく重たげな瞬きだった。――そうして何の気なしに伝える言葉は、すでにその人間は死していること】
【だけれど待雪かえでという人間は確かに相手の眼前で微笑んでいた。――本当に裏切者を殺すつもりであったなら、こんな風にすることはない、と、笑んだ口元が伝え】
【ならば結局は特別な意味を持たぬ偶然の邂逅なのだと彼女は主張しているのに違いなくて。やがて頼んだ紅茶が届くのなら、ストローでかき混ぜる。氷の音、】

【――同時に届いた伝票を相手に向けて机上にて差し出すのだろう。手袋に隠した指先がきちんと揃えられているのがわざとらしいくらいに、白くって】
【当たり前にロイヤルミルクティーはこの席のものとして計上されているのだった。――そうしてまた当たり前に別紙のケーキメニューに手を伸ばすなら、ひどい話】
【そうしてまた同時に伝えるものもあるのかもしれない。繊細そうな見た目が嘘でしかないなら、話題を選ぶ手間も幾分省けるというものだった、だって、きっと、平気だから】


236 : ◆orIWYhRSY6 :2018/09/30(日) 22:51:58 qpY1SMsA0
【水の国・夜】

【既に営業時間の過ぎたはずの、明かりの消えた宝石店。その前には1台のバイクが止まっていた】
【不用心にも開け放たれたシャッターのその奥。月明かりに薄ぼんやりと照らされた店内には、張り詰めた空気が漂っていた】

『動くなよ。下手なことをすれば……わかるな?』

【くぐもった声。それがフルフェイスヘルメット越しのものであることは、想像に易かろう】
【ガラスケースの前にしゃがみこんだ野球帽の男、そしてその背後には銃を手にしたフルフェイスの人物】
【2つの人影が微動だにすることなくあるという、異様な光景がただ広がる】

『……他の仲間は。』

【問い掛けに答えはない。野球帽の後頭部へと、銃口が強く押し付けられる】
【一触即発、という表現が相応しいだろうか。切欠一つで、状況は動き始めるのだろう】


237 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/09/30(日) 23:21:43 6IlD6zzI0
>>235

【ミツキカエデの能力は、以前ジャ=ロと対峙したときに垣間見ているから解る】
【殺す気ならとっくに自分は亡き者にされている事も察して、張り詰めそうな緊張の糸が撓む】

【穏やかならぬ目つきも、ふっと和らいで。やや皮肉げに口角を僅かに吊り上げながら顔を左右に振る】
【"やれやれ、蛇の幹部サマとは思えない年頃の少女めいた事を口にするもんだな"って感想を抱きながら】
【詭弁めいた言葉にや年頃の可愛らしい言葉で紡がれる"裏切りに対するケジメ"に毒気を抜かれた】


ふぅん。ウヌクアルハイからアリアに鞍替えするだけじゃ飽き足らず
へびさまから外務省の秘密組織に宗旨替えとは随分な尻軽女だコト。
外務省も何を考えてるんだか。こんな罪人を組織の一員にスカウトするなんて公私混同が過ぎるんじゃないか?


【アリアが側に居るとは言え、元々は宗教の幹部にまで上り詰めた危険人物】
【ウヌクアルハイを崇め、その偶像に救いを求めた少女。偶像からアリアと言う実像に縋る先を変えたとは言え】
【その気質はやや危ういものに思えた。けど、今は刃を向ける相手ではないから、"口撃"はややマイルドに】

まぁ、"首輪つきのイヌ"なんてそんなもんだ。ご主人様に尻尾を振れない犬なんて殺されて当然。
だから首輪を付けててもしつけがなって無ければ何時でも切り捨てられるって事だけは忠告しておく。

まぁ、―――……だけど、本望なんだろう?
ペアルックの首輪で、四六時中あの色ボケ女にべったりな現状にさ。
【"………少しだけ、羨ましい。いや、違う違う。此処の御代は持ってやるから今の言葉は忘れろ…っ!"】
【って感じでやや慌てふためいて。怜悧な刃を思わせた先程と異なる、かえでと同じ様な年頃の少女の様な振る舞い】

【そこに隠したのは嫉妬と羨望――更に言えば、色ボケ女な自分をひた隠すのだけれど、察せられるかもしれない】
【何せ、顔に出ている。エーリカにポーカーフェイスは似合わない。感情を隠すのは下手みたいだった】


238 : ◆1miRGmvwjU :2018/09/30(日) 23:49:20 hEXW.LLA0
>>234

【優しい気持ちが痛いくらいに解った。解ってしまった。 ─── ボクもそういう性分の人間だから。つくづく似た者同士なのだと、改めて実感せざるを得ない。】
【酷いことをしてほしいのだ。愛しければ全て許せるから。刻み込んでほしいのだ。忘れられなくなるから。引き返せない所まで踏み込んでしまいたいのだ。そうすれば二度と離れたりなんて出来ないから。】
【そうしてまた、互いのはじめてなんて幾らでも挙げることができた ─── ボクたちは全く若くて、世界は思っていたよりずっと広くて、ボクらの感性はまだ愛しさを忘れたりはしていない。】


「 ……… ッ、」「だいじょう、ぶ ……… ?」


【でも、キミを二度と不幸になんてしないって、約束したのはボクだから。 ─── ちょっと狼狽える。けれど顔を上げた時、キミの紅い視線に射抜かれるのなら】
【何度目か分かんないけど、惚れ直した。少しだけ怯えたような表情が、ゆるり緩んで、だったら今夜はもう真面に気取った顔なんてしていられない。】


「 ─── へへ、」「よかったぁ。」「 ……… ボクも、嬉しいよ。ますます、ボクのものになってくれたみたい。」
「きっと青いのは良く似合うよ。」「真っ赤な髪の毛に、きらって光って」「一緒にゆらゆら揺れるなら、もっと。」

「お揃いの刺青とか、彫ってもらいたいけど ─── 。」「シグレ、不器用だからなぁ。」
「 ……… だからボクも、ピアスがいいな。」「耳がいい。お揃いの位置。おへそとか、興味ない訳じゃ、ないけれど ─── ん、ぅ」


【少しだけ揶揄うような距離感で言葉を紡ぐ。キミじゃなくたって、刺青を彫れる女の子なんて中々いないだろう。 ─── なんて抜かしてたら、ほっぺを捕まえられる。】
【そのまま黒髪を探られて、耳たぶを摘み上げられるなら、ひゃっと跳ね上がって、くすぐったそうに笑ってしまう。こんなことを許すのは、キミだけだ。】
【多幸感にふたりで溺れていく。双眸の青さに、困ったような翳りを宿して見つめる。それでも全然困ってなんていないから、つまるところ戯れ合うものだった。】

【だから、 ─── 同んなじように、キミの頬を手のひらで包む。かわいい。あったかい。やわらかい。慈しむように指先を伸ばして、ボクと同じ匂いの紅色に沈ませる。】
【足元に転がってたスマホを軽く指先でいじって、そうしたら電気が消える。カーテンの隙間から差し込む月光に、ゆらめく銀色をそっと翳して、指触れずとも慈しむならば】



        「 ─── キスだけじゃ、ないでしょ?」



【 ──── くちびるを吊り上げて、緩む両頬に視線を細めさせ、魂から擽るような声音で、囁く。頷いてくれるなら、塞ぎ合う柔膚と、衣擦れの音が続くのだろう。】
【(こないだみたいに朝まで続けばいいなって思う。あわよくば、こないだ以上に続けたいなとも思う。後片付けしてないけれど、全ては秋の涼やかな暗闇が匿してくれるから。)】


239 : 名無しさん :2018/09/30(日) 23:49:54 wcB4pkn60
>>237

【こじゃれたコップに収められたミルクティーに突き立ったストローを彼女は指先に弄ぶのだろう、そうして一口含むなら、】
【もし相手の珈琲に一緒にガムシロップがついてきていたとして。使っていなかったとして。この机の上にあるのなら、あるいは、「もらっていいですか?」なんて聞くかもしれず】
【なければないで何を言うでもないのだけれど、――もしガムシロップを渡す場面があるのなら、きっと、甘いものが好きなんだとも、伝えるようで】

…………――。お祈りは今もしていますよ、それに偉い人に改心しなくていいとも言われましたし。
――私は、アリアさんと一緒に居たいだけです。そうじゃないとアリアさん泣いちゃうし。サーバントも、……もう、どうやら、ほとんど生きていないようですからね。
その点、裏切者さんはどうやらお元気なようで何よりです。――私はアリアさんに四六時中監視されていたので。

まあ、公私混同は私も思いますけど。アリアさんと知り合いですか? あの人、部屋の冷房めっちゃ下げるんですよ。凍え死にそう。

【――だから澄んだ青い色の瞳は、アリアの眼とよく似た色を、しているのだろう。色付きのコンタクトレンズだと分かっていても/だからこそその色を選んだのだと】
【まず彼女は全部の信仰を棄てたわけではなかった。祈るための言葉はまだきちんと覚えていたし欠かさなかった。何より正義側に立つには、やはりいくらも不穏すぎるのだが】
【唯一アリアだけが彼女を従わせられるのだろう。そうしてそれを彼女自身も望んでいるはずだった。ひどく複雑そうな目をする、――誰も居なくなってしまったのを、知っている】
【"だから"というわけでもないのだけれど。――自分が生きているのは物理的に監視されていたからだって言い張るのなら。だのに次の瞬間には、ころっと声音を替えて】
【きっと本当にどうでもいいことを告げ口する、――それがどうやら自分の人生を歪めてしまった"彼女"に対する仕返しであるらしい。重たげな睫毛をかすかに揺らせば、】

しつけですか。私、物覚えはいい方なので――三回回ってワンくらいなら一回で覚えますよ。お手とお代わりもできます。後は……取ってこいとかですかね。
――どうでしょう。私、よく分からなくて。本望なんでしょうか。――みんなが求めてた未来は、私は、"こう"じゃないのに。……。

…………あれ、好きな人が居るんですか? ペアルックの首輪で四六時中べったりくっついてたいくらい好きな方が? 
恋バナなら任せてください、私女子高生なんで、イケますよ。学校行ってないですけど――それで、居るんですか? 耳までお顔、真っ赤ですよ?

【まだ整理はついていないなら。長い睫毛を震わす感情はきっと言葉にするにも難しいもの、引け目や罪悪感や嫌悪感、きっといろいろな感情が、入り混じるなら】
【布越しの指先が紅茶のコップを撫ぜ下ろす。表面に浮いた水滴を巻き込みながら――まるで愛撫のような指先だった、本当にこれでいいのか、分からないまま】
【――だのに、急に揶揄う声を出すのだろう。現実逃避にも似ていた。それでもしれっと何か言っていた。"真っ赤"が事実であれ嘘であれ、彼女はひどく当たり前に伝え】

【――――――――――これもまたひどく当たり前な温度感で、店員を呼び止めて、追加の注文。お高い葡萄と洋梨のタルト】
【「裏切者さんもなんか食べますか?」――人の金だと思ってか当たり前に聞いてくるんだった。相手の名前をいまだ知らぬなら、店員の前であっても呼び方は変わらず】
【そのせいかきっとひどく不審そうな目でもされるのだろうか――なんて。差し出したケーキのメニューは、想い人のことを語らうお供にするなら、十分な甘さを期待させて】


240 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/01(月) 00:13:21 WMHqDivw0
>>238

んー、ちょっと痛いけど、……そっちのほーがいっかなって。
忘れないでいられるから、……ね、エーノさんも忘れないでね。あたしの身体に穴開けた感触。

【血が集まってどんどん赤くなっていく耳朶、触れようとして――雑菌が入っちゃダメだから、よしておく】
【明日の朝にでももう一回、消毒がてら触れてみればよかった。そのとき痛んでも別に構わないと思った】
【一生消えない傷が残ったのが、うれしいから。他ならぬあなたの手で。しあわせ、しあわせ、しあわせだから】

い、……れずみって、免許ない人がやったらダメなんじゃないの?
たとえ器用だったとしてもヤだよお、だいいち、ピアスなんかメじゃないくらい痛いんでしょ?
確かに痛いほうがいいとは言ったけど……あんまり痛すぎるのはヤだよ、ぶっ飛びすぎてんのは、やだ……。

…………ん。じゃあ今度ね、エーノさんの耳処女、もらったげる。ふふ、
ボディピアスはなんかおっきいから難しいんでしょ? やっぱ最初は耳朶だよ、ね、ふふ――

【触れ合いっこのさなか、ちょっと怖いことを言われたらまったく素直にビビるんだった。ガチの痛いヤツはダメ】
【でもまあ、小さくお揃いのやつを入れるなら。……ちゃんとした職人に頼んで。それだったらまあ悪くはないかな、とか】
【考えてるうちに電気を消された。ちょっとびっくりした。「スマホでこーいうことできんの?」 ……知らなかったから】
【それでも、次に与えられる感触はよく知っている。こないだイヤと言うほど教えてもらった。ぐだぐだになるまで愛してもらう感触】
【うん、と頷いた。この期に及んでウソはつけなかった。だからちょっと笑って、まずは自分の髪の毛に手を伸ばす】
【きれいに整えてもらった髪の毛をほどく。手串で何回か梳いても、元通りにはならなかった、スプレーで固められていたから】
【だからゆらゆら揺れる赤い髪は、いつもと違ってゆるやかなウエーブを保ったまま。揺れて、揺れて――――】


――――――――ちょっと待ってちょっと待って、こないだあたし言った!
次はもっと手加減してって言った、あ、ちょっとお、ぜんぜんしてくんないじゃん、何なのお、っ――――

【――――最中に悲鳴が上がった。そこまでしてって言ってない。そういうのも、二回目。だから二回目の朝だって前と同じ具合で】
【あるいはそれ以上にひどく。朝と昼の中間くらいの時間でようやく解放されるんだろうか。ぐだぐだ加減は前と変わらず】
【ただ、前と違って声を上げて文句を垂れる元気もなくなっていた。終わるころには。ぐて、と枕に顔を埋めて、うつぶせ】
【ベッドのとなりに脱ぎ散らかされた、純潔色のワンピースはかわいそうに、ハンガーと交際させてもらえなかったから】
【皺だらけになっているんだった。……一回クリーニングに出そうかな。じゃなきゃミアに怒られる】
【「折角買ってやったのになんでそんな乱暴に扱うんだよ!」……知らない、そうしたのはあたしじゃない。幻聴に文句を返す、心の中】


241 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/01(月) 00:30:05 6IlD6zzI0
>>239


【前言撤回――眼前の少女は今も尚、ウヌクアルハイを崇拝している】
【カルトが滅ぼされる前と同じ様に変わらず祈りを捧げているが、以前と異なるのはストッパー代わりの存在】

【取り繕えていない表情の裏で思案を巡らせていれば、使っていないガムシロップを欲する言葉を耳にする】
【やや起伏に乏しい笑みを浮かべて――"好きにすりゃあいい。だからご自由に"と言外に示唆するんだった】


随分な高待遇じゃないか。"へびさま"も信じて祈りを捧げても良いとはね。
余程アリアは信用されてるじゃないか。あの機械人形め――適わないな、色々と。

だから本望だろうが無かろうが。求めてた未来が今の形と違っても。
今のアンタを求めてくれるやつが居るんだろう?それだけでも十分じゃないか。

【その後、くっくっく、っと苦笑混じりの声を洩らす。笑いのツボに入ったのか定かではないが小刻みに身体を揺らして】
【"そりゃそうだろ。氷の女王様みたいな女なんだ、アンタさえ凍死しそうな程の寒さが心地良いんだろうよ"】
【―――暗にアリアと知り合いであると告げる物言い。かえで程にアリアを知る訳ではないけど、大よそ想像が付く】



裏切り者なんて物騒な言葉で私を呼ぶなよ。いい加減ウンザリしてきた。
私の名前は裏切り者じゃなくて、エーリカ。エーリカ=ファーレンハイト。
次裏切り者なんて呼んだら、ここの支払いブッチしてやるから。そん時はアリアにでも泣きつけよ。


【脅しめいた言葉を口にして、人の悪い笑みを浮かべて。大人の余裕を見せ付けてやろうとしたら】
【顔に出てる。耳が真っ赤で図星でしょう、なんて指摘されたらもう駄目だった。顔まで紅潮して】
【"好きな人、居ます。居ます。ペアルックの首輪だけじゃなくて、ずうっとぎゅーってしてたい程大好きな子が居るんだ"って】
【血走り、右往左往する視線は言葉に代わって教えてくれていたのだった】


わわわっ……!そ、そんなの居ないにき、き、きまってんだろ…?
………そ、そうだ。私もなんか高いヤツ食べよっかしら。うん、是非とも食べたいかなって!
だから、アンタもジャンジャン頼めよ。甘いもの全品制覇する勢いでさ、……頼もうよ。

【取り繕う。激流で家を流す勢いで言葉を連ねて即時吐き出す。声がややひっくり返っているのにも気付かない】
【そしてもう遅い。伏し目がちに視線を落とす所作は間違いなく少女の問いに対して肯定の意を現していていたから】
【もしかして、いいやもしかしなくても。エーリカはかえでに恋バナについてのアレコレに身を委ねるんだろう】


242 : 名無しさん :2018/10/01(月) 01:01:18 wcB4pkn60
>>241

【そうしてまた、彼女は誰かの指示が欲しい人間だった。自分は誰より何より自由に自分の意思を使役している、という顔をしながら、その実はそうではない】
【誰かと一緒に居ることで、誰かの言葉を聞くことで、誰かと実行することで安らぐ性質であったなら。――ましてやその目の前で神の死を観測してしまったのならば】
【変わらぬ信心は残り、けれど、重篤な悲劇をもたらすだけの神託はどこにも亡い。贄を欲する神が居なければ彼女もまたお暇をいただくのは道理であるのだから】

【――――ゆえに、今の彼女は、ただ蛇に祈りを捧ぐ少女と等しいのだろう。虚ろな神々にとってそれさえも意味があるかもしれないことには、気を向けず】
【あの場所で数年間を過ごした自分を殺したくないのかもしれなかった。祈ることを許されて、ただ素直に祈っているだけだった。――ぷち、と、もらったシロップを垂らして】
【またからからりと混ぜて、一口飲む。今度は満足したらしかった。だからきっと彼女は現状にも特別な不満は抱いていないのだろう。何より甘たるい人と一緒に居る】

――――アリアさんは、自分が正しいって思ったこと、ほんとの正義に出来る程度には、強いですからね。
ほんとに……勝てないです。一回も勝てなくて。ずうっと本気で殺す気だったんですけど――、負けっぱなしですよ。

悔しいから今度、模擬戦でもしてもらおうかな……。

【話を聞く限り、彼女の正義が彼らの正義と反したときはあっさりと首を切るのだろうな、と、思ってはいたけれど】
【それでもなお強い人だって思っていた。信じていた。――それに自分も一緒だから。どんな誰にだって負けないって信じていた。だから、怖くないから】
【しかしていくらも不明瞭な答えであった。答えているようで、答えていない。――――十分じゃないか、との言葉には、ひどく、ひどく、悲し気な目をする】

――、そうだと、いいんですけど。

【――きっとひどく色恋/色濃い情念の温度を宿していた。本気で殺す気だったなんて嘘っぱちの声音、どうしようもなく愛していて、だけれど、どこか何かで疑っている】
【あるいはそれは自分自身を信じられないのだと伝えるのかもしれない。彼女はきっと自分自身を信じていなかった。――"だってきっと自分は他人を不幸にする子だから"】

そーしたら、エーリカって人にハメられて無銭飲食の濡れ衣を着せられたってアリアさんに言っときますよ。
お買い物しに来たくらいなんで、お金くらい持ってます。小粋なカッフェくらいは悠々と楽しめますよ、大丈夫です。

【だからこそ続く声はいくらも揶揄う様子を強くする。自分を嫌いになった理由。蛇を信じた理由。欠片は聞きながら、その全部までは知らないナニカ】
【くすと少女らしい甘やかな笑みに不安をめいっぱいに隠してしまう。チクってやるだなんて宣告しながら、そうなったとて、自分は決して困ることがないからって】
【――――――――ふふ、と、吐息を震わす笑い声。指先に弄んだストローが氷を鳴らす音。涼やかなくせに、唇に乗せる旋律は、ひどく、意地悪な音階】

えー、そうなんですかぁ? すーごく、まーっかなお顔。林檎みたいなお顔してるんで、居るのかなぁって思ったんですけど――。
おそろいの首輪だけじゃあ物足りなくって、それこそ四六時中、ベッドの上で、ずうっと、ずーっと――、ずう――――――――――――っと、……。
脚も手も絡め取られて。それとも、絡め取りたいですか? 柔らかくて。温かくって。何もかも分からなくなって。好きって気持ちだけ、死んじゃいそうなくらい……――、

――――あははっ、ほんとですか? やったあ、ありがとうございます。タルトもいいんですけど、ケーキも……。ミルフィーユとかも、好きなんですよ。
上手に食べられないんですけどね、デートとかじゃないんで、まあ別にいいかなって……。――エーリカさん何にしますか? あ、パフェとかもありますよ?
ほら、チョコバナナとか……イチゴとか……。――ところでパフェのスプーンって長くって小さくって、あーんってするのに良さそうですよね?

ちょっとだけ失敗して、唇のところにクリーム付けちゃったりして。

【指先を唇に沿わせる、艶やかな唇はどんな汚らわしいものも含んだことがない色合いをしていた。楽しげに微笑む目元は童女の戯れにきっとよく似て】
【そっと虚空に伸ばした指先を、もう片方の指先が捕まえる。恋人同士が睦みあうときの仕草を模倣して。ひどく艶めかしい指先同士の相瀬の向こう側、揶揄う表情が映える】
【――やがて言質を取れば、彼女はまたもころりと声音を替えてしまう。だから本当に好き勝手頼むはずだった。それでも今はまだ、一つのタルトにきっと夢中だから】


243 : ◆RqRnviRidE :2018/10/01(月) 01:13:49 6nyhPEAc0
>>226

ふむ、〝真なる自由な物語〟か……解脱とかいうのと似ているのかな。
なにがなんだか分からないけれど、えらくスケールの大きな話のようだね。
〝宇宙卵〟のあの巨大さだと、キミ一人がどうにか出来るレベルではないように思うのだけれど……

だからこそ〝物語〟の綴り手を求めている、……のかな?
興味深い話ではあるけどね。 一体キミがその先に何を見ているのか──。

【相対するマリアベルにそう問い掛けながら、つ、と冷や汗が一筋頬を伝っていく】
【見知らぬ異空間と笑み続ける相手に気圧されて、余裕の無さを幾らか垣間見せる】
【語り部染みた彼女の目論見の本質を察することは出来ない。 故にこそ、瑠璃のその姿は羸弱なるかのように】

【そうして窓を指差されると殆ど同時に、感覚を張り巡らせていた髪が何者かの気配を感じ取る】
【反射的に窓から飛び退き、髪の数束を固めて尖らせ、即席の刃を拵えながら〝窓〟──近付いてくるナニカと対峙するだろう】

───ッ、〝彼ら〟って何なんだい、マリアベル! 何が来てるんだ?
それに大きすぎる……明らかに“マズそうな奴”だよねえ、これって!

物語の性質上クリアしなければならない通過点というなら……どうかお手柔らかに頼むよ。

【軽口を叩く程度の余裕はあるようだが、とは言え瑠璃の表情はまるで強張り、警戒心を露にする】
【何者かの襲撃に備え、刃の切っ先は窓に向けられている。 戦闘が生じるのであれば応じる心づもりのようだった】

【 〝べちゃり〟 ──〝くすくす〟    ──〝べちゃ、〟】
【異質な音声が耳朶を打つ。 鼓動が早鐘を打ち続けている。】


244 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/01(月) 01:53:18 6IlD6zzI0
>>242

その……両方。手も脚も絡め取りたいし、絡め取られたい。いやらしく、ふしだらに、そして淫らに。
……もっと言えば、二人の境界線が曖昧になるくらいに肌を、身体を重ねたい。おそろいの首輪だけじゃ足んないし。

酷い言い方をすれば独り占めしたい。絡め取るだけじゃなくて身も心も篭絡したい。
あの子を、カチューシャを想う気持ちは猛火の様に激しくてさ、もう鎮めらんないんだ。ただ褥を共にするだけじゃ物足りない。
重ねるもの全てを重ねてアイスみたいにお互い溶け合って、ぐちゃぐちゃになるくらいに。愛を貪って爛れたい。

―――……自分で言ってて、とんでもない事を言ってる自覚はある。
人のこと、色ボケなんて言えないな、こりゃ。けど、誘うような仕草をするアンタなら解ってくれる筈。


【知らぬ間に虚神の仲間入りしてしまったカチューシャの淫らな言動に染まっている自分が居た】
【しかも頬を紅潮させ、目尻をとろんっ、と蕩けてさせて。愛おしげに、何処か寂しげな雰囲気を漂わせる】
【間を持たせようとしてアイスコーヒーの入ったグラスに手を伸ばせど、もう空っぽ。飲み干した後だった】

【手持ち無沙汰なエーリカは、溢れた感情、情欲、情愛を持て余して。もう冷静じゃいられない】
【かえでの艶やかな唇と色気を滲ませながらも無垢な佇まいにどきっとして、胸の鼓動が少し早まる】


……そうだな、イチゴのパフェにでもしようか。まぁパフェなら何でも良いさ。

パフェのスプーン………その通りかね。あーん、ってするのに丁度良いよな、あの形状。
唇のところにクリームが付くのも、頬っぺたに付くのもある程度想像が付くし、その後の景色も想像がつく。
―――……だから、パフェって想像以上に甘いデザートだと思う。今度アリアにパフェを食べさせなよ。


【"唯でさえ甘いのが、もっと甘くなるだろうから"――物知り顔で紡ぐのは自分の憶測】
【自身は甘いひと時を味わった事がない。恐らくそれに近いのは、カチューシャとの泡沫の夢のひと時だけだから】
【実体を伴った記憶の有無。それが二人を分かつ決定的な違いだったから――エーリカは消え入るような声で、かえでに問う】

―――恋バナだって言うなら、あんたとアリアの馴れ初めも聞かせてよ。そしたら……もっと話してやる。


245 : 名無しさん :2018/10/01(月) 11:05:23 wcB4pkn60
>>244

――――――、あは。もう、十七歳に聞かせていい奴ですか? それ――。私、これでも、十七歳なんですけど――。
――――だけど、そうですね、それなら、誰より強くなればいいんじゃないですか? アリアさんくらい、――それよりもっと、でも、いいですけど。
私だって、……こんな風になるはずじゃなくって。だのに、アリアさんが強すぎるから……。カチューシャさん、の気持ちも全部無視できるくらいに、強く。

誘ってなんかないですよ? もう、ひどいなあ、人のこと、なんだと思ってるんですか――? ――飲みます? なーんて。

【真っ赤な頬に、蕩けた眦を見るのなら、彼女も相手の気持ちをいくらかは分かる/分かってしまうのだろう。だからか、刹那瞠った眼は、けれど、すぐに笑む】
【自分は未成年なのにと言い張るのが狡かった。それでいて、口にするのは何かアドバイスのつもりなのかもしれなくて。――自分はそうやって、引き摺りこまれてしまったから】
【気持ちも理屈も粉々にするくらいに強くなったら、エーリカだってその人と居られるんじゃないか、なんて、ひどく暴力的な。それでも、彼女にとってそれが全部なら】
【――ぱちり、と、ひどく自覚のない瞬きをするのだろう。そんなことしてないって言い張る刹那に、けれど相手も思い出すのかもしれない】
【蛇教内部での彼女の噂と言えば、誘い方次第でヤれる――だなんて。あるいは、いやにフレンドリーなくせにうっかり何か口走ると激怒する、とかもあったけれど】
【そうしてそのどちらもが真実であったから。あるいは、修行や儀式と称して使いまわされることも多く、何度か孕んだ子は、全部贄として捧げた、とか――そういうものも】

【――――――だから続く言葉は分かっていてやっているんだろう。空っぽのグラスに手を伸ばした相手に、自分のロイヤルミルクティーのコップを、わずかに押しやって】
【それで飲むって言うなら本当にそれでもいい顔をしていたけど。揶揄っているって言うのは確かなのだから――くすくすした笑い声、どこかスズランのように甘やかで涼やかで】

なんでもいいんですか? せっかくだから、めいっぱい選んだらいいのに。ほら、カロリー絶対すごいですよ?
なら摂取するカロリーの内容は選びたいじゃないですか。写真から何が入ってそうかなぁって考えたりして――書いてあるところありますけどね。
こうやってメニューを横にして。二人で覗き込んで。これなんだろうって。――まあ私がそれしたの、友達とですけど。だいぶ数年前です、多分……。

――ほら、あんまりお金がないので。せっかくなら、一番良さそうなやつ。食べたいじゃないですか? えーと、何の話でしたっけ。間接キス?
………………そうですね、お店でご飯、食べることがあれば。そういうのもいいかも、しれないですけど……。

【――言葉通りの仕草を彼女はするのだろう。別紙のスイーツメニューを二人ともが見られる横向きに傾げて、そうして覗き込むなら、いくらか距離は縮まるだろうか】
【そうしたらきっと彼女は甘い香りがした。甘いのにどこか酸いような、思春期の少女だけが纏うことを許される一級品のフレグランス、香水だなんて使ってないのに】
【せっかくカロリーを摂取するのだから/だってあんまりお金もないから。二人一緒に選んだら、きっと世界中で一番おいしいって信じているから、なんて】

【――――、ふと目を瞠った表情、やがてふわりと溶けるなら。彼女もまたわずかに頬を赤くしているのだろうか、――その瞬間を思い浮かべてしまった、みたいに】

/なんだか長くなってしまったので一回だけ分割しますっ


246 : 名無しさん :2018/10/01(月) 11:05:37 wcB4pkn60
>>244>>245

――――――え? なれそめ……ですか? 私、路地裏で吐いてたんですけど……気持ち悪かったので。その後はもう死んでて。
そうしたら気づいたら拾われてて……何かお礼をして終わりにしたかったんですけど、私、手持ちもないし、何にも持ってなくって。
だから身体で支払いましょうかって、割とちょっと冗談だったんですけど。割と乗り気そうだったので――ただ私、女の人のことをそういう風に見たことがなかったので、
まあ、別に、顔は綺麗だなって思ったし、おっぱい大きいし、駄目ってことはなかったんですけど、――。

――ところで、カチューシャって女性名ですよね? なんか小説で出てきました。異界の名前でしたっけ――。異世界の人なんですか?
たまに聞きますよね。なんか都市伝説って感じで。本当にそうだって人は、見たことないんですけど……。

【だけれど。促されて紡ぎ出す"なれそめ"は、きっとどうしようもなくリアリティで構成されるのだろう。とてもじゃないけれど、キュンとしそうな始まりではなくて、だけど、】
【現実がそれならどうしようもない。本当はもっとなんかいろいろあった気がするけど、――お互い嘘ばっか吐いてた工程に特に意味を感じないなら、まるっと無視する】
【助けられた恩とかはあんまり感じていなさそうだった。だから"こう"なったのはもっと爛れた理屈なんだと思わせた。――しれ、とした声。尋ねるのは、相手のことになるなら】
【彼女自身は特に恥ずかしそうではなかった。彼女的に恥ずかしがるような要素がほとんどないっていうのが大きかったから。――まして、相手の好く誰かの性別に、頓着もなく】
【――であれば、それよりも異世界の人なのかしら、ということに興味が向く。だからか「どういう方なんですか?」って聞く声は、いくらも、楽し気に弾んで聞こえて】


247 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/01(月) 20:39:52 hEXW.LLA0
>>240

【 ─── やる事やるのは何も2回目じゃあなくて、同じ夜を過ごせば何方ともなく肌を重ねていた訳だけれど、それはキミにお願いされた通り程よい所で切り上げていた。】
【しかして、今夜ばかりは幾らか勢い付いていたものだから。 ……… 手前ェがSなのかMなのか、たまに悩む。玉汗に湿った柔い肌を抱き合う間、そんな事を思いつつ】
【最後のほうはボクとキミの限界を塗りかえようと頑張っていたフシがあった。だから昼下がりに晒す白い肌は、多分、やたらツヤツヤしている。 ─── こういうの、自分が強いタイプだとは思わなかった。】
【でも良く考えたら、あの女狼のパートナーを幾らかは務めていたのだし、当然の道理かもしれない。 ……… 閑話休題。気付けば、枕元のニキシー管は13時過ぎを示していた。ボクも良い加減に力尽きてしまったから】
【くてん。キミの横に転がって、どーしようもない呼吸と、どーしようもない距離感ばかり共有する。やる事の前にやるべきタスク、残しすぎてしまった。どーしようもなさに、擽るような苦笑い。】


「 ───………… ごめん。」「でもね、」「すきだよ。」


【ブラインドを開いて、ささやく。何度繰り返したか分からない言葉。はじめてキスした甘ったるさも、こじ開けさせてくれた柔らかさも、消えない熱を刻んだ手応えも】
【忘れられないものだから、愛情の重さばかり増えていく。 ─── こんなに重い荷物を、ボクが背負えるとは思わなかった。こんなに重い感情を、ボクが分かち合えるとは思わなかった。だから、ただ幸せで】
【 ─── すっかり力の抜けたキミの左手を、まだ幾らか力の残ったボクの左手で持ち上げつつ、差し込む日差しに翳してみる。きらり煌めく、赤と青。あるいは右手にそっと、真紅の奥の耳朶を探って】
【揺れる白銀の確かさを感じれば、不思議と涙が出そうになる。 ─── キミは確かにここに居て、ボクもまた確かにここに居る。不意に背中から抱き締めるなら、互いの鼓動と骨格が、互いの居場所を示すから】



      「 ………─── 二度と、辛い思いなんて、させないから」「幸せになろうね、 ─── ボクの、シグレ。」



【だからもう少し、ふたりで微睡んでいたいと思った。 ─── もう少しなんて言わないで、ずっと幸せでいたいと願った。神様は皆んな碌でなしで、ボクらは皆んな人でなしだとしても、そのくらいは許される筈だから】


/このあたりでいかがでしょうか!まだあれば続けられますっ


248 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/01(月) 21:43:22 WMHqDivw0
>>247

【そーいう聞こえのいい言葉で誤魔化そうたってそうはいかないからね、って声も出なくて】
【泣き腫らした目で振り返ろうとすれば、あんまりにもきれいな顔であなたが笑っているから、】
【仏でも何でもないのにまあまた許してやろうかなって気分になった。きっとこれから何度だって、そうして】
【なあなあにして全部許して全部すきだよってことにしちゃうんだろうなって思うと、おかしくて、笑っちゃって、】

【  「いいね。すてきだね。好きな人にお誕生日祝ってもらえて、愛してもらえて。いいなあ」  】

【――女の子の声がした。でもそれは幻聴だってすぐにわかった。だってこんなもの、今まで何度だって聞いている】
【その子はあたしの脱ぎ散らかした白いワンピースを摘まみ上げて笑ってた。花嫁さんが着るみたいね、って笑って】
【じいっとこっちを見ていた。幻覚。それもわかる。だってそうじゃなきゃおかしい、だってこの子、■■■なんだもん】

【  「こんなに愛してもらってるのに。どうして本当のこと言わないの? かわいそうだよ、信じてくれてるのに」  】

【ベッドの縁に座ってる女の子。素肌を隠すための機能がない薄布だけを纏った、赤い髪の女の子。裸足】
【それでじいっとあたしのこと見てるんだった。真っ赤な瞳で。この世のすべてを恨んでるみたいな目をして】
【だのに口元は軽薄に笑っていた。間違いなく嘲笑だった。世界で一番バカな女のことを、蔑んで笑ってる顔】

【  「いつまでナイショにするつもり? どうせそのうちバレちゃうよ。だって、時間が経つのなんて、すぐだよ」  】

【――下のほうからも声がした。おんなじ顔。床に転がって視線だけでこっちを見上げて、やっぱり嘲笑う形に唇を歪め】
【床に散らばる赤い髪に頬を擦り付けて、もぞりと蠢いて、また笑ってた。手足のない女の子。この子も■■■】
【二人分、同じ音程の笑い声ばっかり響いていた。うるさいな、って思った。だってあなたの声が掻き消えてしまう】

【  「「 ねえ。本当に、『愛のなんたるか』、わかった? 」」  】

【響くユニゾン、穴開けてもらったばかりでじんじん痛む耳を揺さぶって。……だからあたしは寝返りを打って、返事より先に】
【我儘を言う。「耳、ちょっと、痛い……冷やして」。そうすれば目いっぱい、お腹いっぱいになるまで甘やかしてもらえると】
【既に知り尽くしてしまった声色だった。その先は言わなくたって叶えてもらえる。ハグも、キスも、なんだって】
【言葉にしなくても与えてもらえるようになっちゃったから、だから、だから――――――――】


(知ってるよ。愛は世界を■うんだし、愛は人を■うんでしょう?)


【――――――――よく知っている。教えてもらった。愛はあたしを■ったし、愛はあたしを、■■に■す。】



//おっけーです!長い間おつきあいありがとうございましたっ


249 : タオ=イーレイ ◆auPC5auEAk :2018/10/01(月) 22:14:31 ZCHlt7mo0
>>227

ちょいちょい、あなたがそれを言いますか? 世の中のご機嫌1つでどうとでもなってしまうこんな状況で、安定もクソもないじゃないですか
足らないんですよ、まだまだ……ま、求めりゃキリがないんでしょうけど、それでも今の私は、まだまだ「恙なく」生きてくステージには、いないと思ってますよ、えぇ……

【いわゆるところの『在野』の人間にしてみれば、世相の動きは恐ろしいものだ。その流れの中で、何とか泳ぎ切るしかない。彼女はそれを嫌っているのだろう】
【例えば『魔能制限法』。ここから先に事態が進めば、彼女の強みが1つ、殺されてしまう事になる】
【それを避けるには、手段はただ1つ。流れを制し、作り出す側の人間になる事、それだけである】

それで、お仲間同士で足を引っ張り合っても構わないという訳ですか……
やれやれ……組織の中で鳴動でもしてるのかと思ったら、さに非ず……それはそれで、むしろ良いのかもしれないですけどねぇ……

【軽く牽制して揺さぶりをかけてみる心算だったが、予想外の反応でそれを躱されてしまった】
【随分と、帰属意識の薄い組織だ――――そんな印象が胸をかすめるが、同時に、だからこそ、こんな状態であっても組織の体を維持しているのかとも取れる】
【少なくとも、機関の内部にあっては、他の「日常的な」権謀術数と、同程度の意味しか持っていない事なのかもしれない】

それで治安は乱れるわ、能力持ちの子供は捨てられるわ、ですか、ねぇ……確かになんか、あるのかもしれませんねぇ
踏みこみゃ、相応のリターンも期待できるかもって思えば、確かに、それも1つの手なのかも分からないって事……ねぇ?

【謎の神々を云々する以外にも、『旧市街』には利用価値がある――――言われてみればその通りだ】
【無論、その為に各々の利害がぶつかり合う事にもなるのだろうが。それでも、あの場に何かを求める人間が多い事は、間違いないだろう】
【ならば――――女性の求めるものも、かの地にあるという事になるだろうか?】

(なんだか……本格的に、嵯峨野の奴の言う通りの展開になってきてるわね。掌で転がされまくってるようで、気に入らないわ……
 進めば思う壺、進まなきゃドツボ……癪だけど、八方塞がりになる前に、どうにかしなきゃならないか……)

【――――脳裏に、ふと、かつて接触した「得体の知れない神々」の1つが思い浮かぶ】
【――――「あるとすれば、キミ自身が必要に追われて何かをなすんだから」――――「その与えられた舞台で好きに踊るといいよ、その帰結に僕の狙いがあるんだし」】
【その言葉が暗示した状況が、かなり現実的に出現しつつある。その事実に、今度は大げさな芝居がかったものではない、本心からの震えを感じていた】

そりゃ物騒にもなるってもんです。敵か味方か、どっちに転ぶかも分からないお人が、目の前にいるんですからね
――――ペレグリーさん、ね……私はイーレイ、道 医雷(タオ=イーレイ)ってもんです。ま、しがない闇医者……そういう事にしておきましょうよ

【半ば脅しのパフォーマンスとして展開させていた鍼を、電磁誘導でポケットの箱へとしまい込みながら、女医――――イーレイは、糸目の女性――――ペレグリーに応える】
【――――とりあえず最低限、知らなければならない事は掴めた。後は、彼女をどう自分の中に位置づけるかだが――――】

はぁ、ん……なるほど、ね。まぁ、私には50:50のどっちかにつくのは、もう決めてる事ですが……
――――今はまだ秘密にしときましょうか。その方が楽しいと思いません?

【コインならば『表』と『裏』のいずれかしかない。だがペレグリーの答えは『縁』だった――――50:50の隙間に、彼女は軸を残している】
【ならば、イーレイとて無暗にそれを明かす事はすまいと返答する。今以ってなお、イーレイは在野の『闇医者』でしかない】
【明確なスタンスは、それを明らかにしている相手に対して宣言してこそ、意味がある。それが、外野に近い自分の取るべき戦略だと、考えているのだろう】
【――――同時に、ペレグリーが、とぼけている可能性も、一応は警戒しているのかもしれない――――】


250 : ◆DqFTH.xnGs :2018/10/01(月) 22:20:59 ORa.dVOw0
【街中────夜】


   【  『水の国 天下一武道会  出場者決定!』  】


【どこにでもある歓楽街のひとつにそいつはいた】
【壁に貼られた派手な大会のポスターを見ながら、古いメロディを口ずさむ】
【何の曲だったか。洋酒とタバコの煙が良く合う曲だった】

【彼女は赤い女だった。赤い髪に赤い服。目だけが金色の、品のなさそうな女】
【女は液晶画面が明るいままの携帯を持って、メロディを紡ぎ続ける】
【悪い酔い方をした客か。あるいは酷いフラれ方でもしたのだろうか】


   『愛と自由にアーメン。』


【液晶画面には、そんな作成途中のメール。無駄に改行がしてあるあたり】
【まだ何か書きたいことがあったのだろう。とん、と女の指が小さく動く】
【文の続きを書く動きじゃなく、画面の明かりを消さないための動きだった】
【こんな女に声をかける奴なんて、変わり者かナンパ野郎、それか病的なまでの善人くらいだ】


251 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/10/01(月) 22:33:54 ZCHlt7mo0
【水の国 路地裏】

【「ギャアアアァァァァッッ!!」――――場所柄を加味してもなお、異常という他ない、悍ましい叫び声が響く】
【かろうじて男の声である事が分かる悲鳴。高層建造物の乱立した隙間の、入り組んだ迷路の先に、その光景は繰り広げられていた】

「ぁが、ぃ――――て、てめ……ぇ……ッ」
――――――――……………………ッッ!!

【傍目にもまともに手入れをしていない事が分かるぼさぼさの赤髪が、険があるものの端正な顔立ちを小汚く彩り】
【デニム生地のベストと枯れ草色のミリタリーパンツ、安全靴と思しき重厚な靴で全身を固めている】
【何らかの異常を起こしている事が見て取れる、赤黒く濁った眼をした、左腕の欠落した身長170cm前後の青年が】

【右手一本で、男の首元を鷲掴みにし、壁へと叩き込み、締め上げている】
【――――周囲には、10名ほどの男女の死体が、新鮮に転がっていた。どれも、強烈な力で粉砕された様な有様で】
【血が匂い立つようなその光景の中、青年は忌々しげな怒りを以って、釣り上げた男を睨みつけていた】

――――お前には、泣きわめく権利すらない……ッ!
「ごぅぶ、ぇ――――――――」

【ベキッと、掴んでいた喉からくぐもった音が漏れる。続いて、潰れたカエルの様な無様な断末魔】
【――――握りつぶされた喉元が致命傷となり、最後の男が力尽きる。それをぞんざいに床へと放り、青年は侮蔑の表情で足元を見下ろす】

……こんな体でも、出来る事はまだある。けど、時間はもう無いか…………ッ
余裕があるうちに、始末をつけなきゃな…………

【右手の血を振り払うと、流石に疲れたといった様子で壁に凭れ掛かる青年】
【この光景を作り出したのが、身体欠損のある男1人というのも、異様な光景だろう――――】

/水曜日一杯まで待ちますー


252 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/01(月) 23:51:17 smh2z7gk0
>>243

う〜ん、〝解脱〟か………解釈次第では真逆かもしれないけどまぁそんなところかなぁ。
そうだねぇ、あれくらいのサイズまで成長させるにはそれなりの〝エネルギー〟が必要になる。そこがネックだね

いや、私が〝物語〟を集めるのはまた別の理由だけど―――まぁ今回は秘密にしておこうかな。

【そう言うとマリアベルは悪戯っぽく笑う。その笑顔はあまりにも無邪気に見えた。】
【窓から飛び引き、臨戦態勢を取る瑠璃を横目で眺めながらマリアベルは肩を竦める】
【ひどくリラックスした姿勢だ、瑠璃とは対照的に。】

〝彼ら〟は〝外宇宙〟の存在だよ―――とても高度な叡智を持った、ね。
きっと瑠璃も気に入ると思っているんだけど、どうやらあまりいい印象は持っていないみたいだねぇー。


―――ほら、〝来た〟よ、〝彼岸のツァラトゥストラ〟


【ズルリと、何かが〝窓〟の外に現れる。】【それは〝形容しがたき存在〟だった】
【大きい、〝宇宙卵〟には及ばないが窓からではとても全容が見えない巨大な〝肉塊〟?】
【ぶよぶよとした黒い皮膚は絶えず動きまわり、何より巨大な―――三つの―――〝眼〟が―――】
【ブラックホールのように全てを吸い込んでしまいそうな―――深い―――深い、三つの均等な〝眼〟が】
【じっと―――じっと―――二人を見つめて、そして次第に〝窓〟に―――〝窓〟に―――】


                        【〝パチン〟】


【マリアベルが一度指を鳴らす。その瞬間再び世界は歪み、捩じれる。まるで〝この空間〟に来た時のように】
【そして歪みが大きくなれば再び訪れるエネルギーの濁流。世界は流転する】

【――――――】

【――――――――――――――――――】


【――――――――――――――――――――――――】


【そしていつしか辺りは人の気配に溢れるだろう。そう、二人が出会った図書館だ。】
【マリアベルは椅子に座っている。この空間で話していた時と変わらない様子で瑠璃に微笑みかけながら】


253 : ペレグリー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/02(火) 00:13:41 smh2z7gk0
>>249

そうやろか?ウチにはアンタは世界が引っ繰り返ってもうまくやるタイプに見えるんやけど
ま、向上心を持つのは大事やなぁ今の自分で満足したら〝この世界〟ではすぐに餌食やで

〝機関〟内部が3つに割れたのもそういうわけや、〝変化〟しようとしてるんよ〝カノッサ機関〟もなぁ
その中で孤高に生きるのも良し、上手く立ち回るのも良し、ハハッ!どうや機関も結構おもろそうだろ?なぁ?

【ケラケラと笑いながらタオへと語り掛ける。組織内でさえ策謀に溢れている状況のどこか楽しいのだろうか】
【むしろこの状況を愉しむような気概がなければ機関のナンバーズとやらではやっていけないのかもしれないが】
【ともかくペレグリーが言うように〝カノッサ機関〟もまた変化しつつあるようだった。】

まぁ〝旧市街〟に関してはあまり強くは勧めんわ、あの場所が相当イカレとるのは間違いないしな。

―――いやいやちょっとお話してるだけやん?少なくともウチはアンタの事を気に入ってるでタオはん
怪我とかしたときは頼むわぁ、きっとこれから〝派手な事〟が各地で起きるやろうからな。

クク、せやな。なんやぁ随分と用心深いやんけ、まぁ今会ったばかりやし今日はこんなもんにしとこか?
〝次〟はウチの〝雇い主〟もつれてきたるからそん時また色々聞けばええ、ウチが言うのもなんやけどアクの強い人やけど

【勝手にまた会う事を決めながら、ペレグリーはタオへと軽薄な笑みを向ける。】
【どこか好意的であってそれでも奥には凶暴性を秘めた笑みだ。安易に言葉を返さない方がいいだろう】
【尤も、タオがそういった思慮の浅いタイプでない事はペレグリーも重々に承知しているだろうが】


254 : タオ=イーレイ ◆auPC5auEAk :2018/10/02(火) 16:37:56 ZCHlt7mo0
>>253

そりゃ、なんとかかんとか凌いでいって、命を繋ぐぐらいの事だったら、いつまでだってやってやれますよ?
でも、私はそんなみじめな生き方、したくはありませんねぇ……勝ち組を目指さなるを得ないでしょう、この世相では、ねぇ?

【1人の人間として、ただありきたりの幸せを掴むぐらいの事は、確かに難しくはない。それくらいの力は、既にイーレイの中にはある】
【だが、それでは満足できないというのが、彼女の本音だった。それは、結局いつ損なわれてもおかしくないから、というネガティブな意味だけではない】
【力と財とを成し、贅沢をモノにしたい――――そういう、俗っぽい、そしてポジティブな意味合いを孕んでいる様だ】

さて、ね……カノッサ機関三国鼎立ですか。ならさしずめ、あのバケモノじみた神々は匈奴って訳ですか?
やれやれ、あり方が大きく変わる、ね……最近妙に鎮静化してると思ったら、サナギになったって事ですか……
――――そのまま、ドロドロの中身を組み直し切れないで、空中分解なんて事にならなきゃ良いんですけどね?

【「混沌の存在故に」という、機関の現状。それはペレグリーには愉快な出来事に映っているようだが。部外者として、イーレイはその感覚が分からなかった】
【幾らなんでも、組織としての体が失われるはずがない――――彼らの思考の根本は、ここにあるのだろう】
【だが、「千丈の堤も螻蟻の一穴より潰ゆ」と言うではないか。この世界に、人の営みに『絶対』などありえないのである】
【面白がっている場合ではないだろう。イーレイは、他人の視点として、そういうしかなかったのだ】

それこそ「虎穴に入らずんば虎子を得ず」ですよ。あなたもそういうリターンが欲しくて、わざわざあの場所に踏み入ろうってんでしょう?
手段の1つとして、考慮はしておかなければならないってもんですよ、全く……

【そこは、重々承知なのだろう。イーレイ自身も、あまり乗り気と言った風情ではない。ただ、それでも勘定には入れておかなければならない、と】
【カミスシティと並ぶ台風の目。少なくともそういう認識で捉えなければならないのは、間違いないのだろう】

――――確かに、そりゃそうですよね。私とした事が、少々焦り過ぎでしたかねこりゃ。私を手に掛けたって、今のあなたには何の得もないって事で
ま、無暗な警戒でしたよ……――――はぁ、雇い主、ねぇ……私が『上』に上がれるきっかけになってくれるなら、大歓迎なんですけどね?

【鵜呑みにした訳ではないのだろうが、ペレグリーの言う事も尤もだ。彼女が血に狂うタイプの人間なら別だろうが、そうした気配も感じない】
【ポケットの箱をポンポンと白衣の上からタップしながら、イーレイは構えを解く。ペレグリーの側からの言葉は、やはりそれとなくはぐらかし】

――――けどまぁ、私に目をつけるってのは慧眼だったんじゃないかなって、それをお伝えしときましょうか?
あなたに1つ、お土産をつけてあげますよ……これは私からの、お近づきの印……

【ふと、イーレイの様子が変化する。その場で腕を組み、呼吸を整えるように軽く息を吐き出すと、ジトリとその目が据わった――――】

――――ペレグリーさん。「もし私がその気になったら、この国は火の海になる」……そう言って、信じますかね?
勿論、私1人にはそんな大それたことは出来ません。でも……先ほど言った事を、もう1度勘案してみて欲しいんですよねぇ……
――――眠ってるのはなにも、カノッサ機関の無党派層だけじゃないって、そういう事ですよ……!

【口にするのは、どこまでが本気か分からない、仮定の上に仮定を重ねた、与太話と大差ない命題】
【確かに、イーレイの持っている力を考えれば、何かコトを起こす事は難しくないだろう。問題なのは、彼女には機関の様な『バック』がない事だ】
【――――その『バック』というのが、実は存在していたとしたら――――イーレイは不敵に笑う。そこに飄々とした空気は、残っていない――――】


255 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/02(火) 22:47:11 WMHqDivw0
>>250

――――――やっほーモンモン。おれのこと覚えてる? こげパンマン。

【後ろっから軽薄な声がかけられる。ならば想像に難くなく、ナンパであるかと思わせるのだが】
【内容を聞いてみるならどうやら違うとも、思わせる。自分のことを覚えてるかって。振り向いたなら】
【背の高い、銀髪褐色、黄色い目だけがやたら浮いている男が目に入るのだ。確かに見覚えはあろうが】
【「モンモン」なる呼び名にはまったく覚えがないんだろう。だって、彼女の知らないところで勝手に付けた綽名だから】

げんき? ……じゃ、なさそーだネ。おれも元気じゃない。
なんもかんもめんどくせーコトになっちった、……「妹」は、なんとかなったけど。
モンモンのトコにもあのスパムメール行ったっしょ? びっくりさせたよネ、ごめんネ――

【「だけどもう大丈夫だから」。そう言ってへらへら笑う顔には拭いきれない疲労の痕があって】
【少なくともあのときの、彼女と、こいつとこいつの妹と、「もう一人」乗せてのドライブのときよりは】
【ずっとずっと、具合が悪そうなんだと思わせた。人懐こく目を細めて、(あるいは瞼を開いているのが怠いと言いたげに)】

…………鈴音ちゃんは「どう」? 変わりない? こっちから押し付けといてナンだけど――
ヘンなヤツらに目ェつけられたりしてない? 特に、「イル」とか――襲われたりしてないよネ?

それと――――「なんかあった」?

【それ。言いながら指差し示す、光る液晶。一瞥くれただけでもさらっと読める短い文面を読み取ったなら】
【きっとまたこの人も厄介ごとに巻き込まれているんだろうと思って。だからこそ、「力を貸しましょうか」のポーズ】
【取るわりに――やっぱり、元気はなさそうなんだった。ふ、と息を吐きながら、肩を竦めて】
【疲れてるけど話くらいなら聞いちゃうよ、のポーズを取り直す。……そうでもして、何かしていないと、焦りが身を蝕んで不安だった】


256 : 名無しさん :2018/10/03(水) 16:35:16 eqEY.5nA0
>>173>>219
/今週末くらいまで再掲しておきますっ


257 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/03(水) 17:45:03 6IlD6zzI0
>>245>>246

十七歳って寧ろそう言うオハナシが大好物な年頃だろ。少し引かれるとさ、……私が恥かしくなる。
そも聞いてきたのはソッチの方。そういう爛れた風に持ってったのもソッチの方。

意地悪な声色でそういう事聞かれて、艶めかしい仕草もセットなら。爛れた内容聞かせても何ら問題ない。
―――……普通の奴が聞いたらドン引きする事をしてる奴らの言葉じゃないよ。(けど……羨ましいなって)


【"相手の気持ちを蔑ろにしてなお、想い人を手に入れる事のできる強さ"】
【"自分の強さを拠り所にして、思い描く未来を手に入れる事の出来る強さ"】

【きっと、その理屈は力を伴う異常者の理屈――けれど、普通じゃない出会いで普通ではない想いを寄せるなら】
【世間一般の価値観では追いつかない。相手の気持ちも理屈も粉々にして、自分の側に抱き留め続けられるなら】
【……目の前の少女とアリアの様に、歪ながらも想いを遂げる事が出来るのだろうか。二人で"愛"を奏でられるのか】
【独唱ではなく二重唱で愛を謳えるのだろうか。蕩けた眼差しに羨望の色を絡ませて、口にする言葉は――】

ははっ、相手の気持ちを全部無視だなんて随分と暴力的だね。
―――……けど、私達みたいな"普通じゃない奴ら"にとっては強引に愛を謳うぐらいが丁度いいのかも知んない。

なんだ、簡単な話じゃないか。……あの子の全てを掻っ攫うくらいに強くあれば世は事もなし。
きっとこんな事を肯いて腑に落ちる奴は、私含めて普通じゃないんだろうけどさ。


【助言をそのまま受け入れる意思表示。目を細めて、かえでに艶めかしさ混じりの微笑を向けて、差し出されたコップに手を伸ばす】
【ごくり、と一口含めば――顔色がまた変わって。"けほ、けほっ、あっまッ!どんだけ砂糖を入れてんのさ…っ!"】
【なんて、毒づいて。ふと思う。思い描く"甘さ"はきっとこれ以上の代物だという事。だからその甘さが癖になりそう】


……こうして接しているとさ、蛇の信者を装ってた時に聞いた印象と全然違うね。
普通じゃないけど、"ちょっと"変わった女子高生って感じだ。……多分、それが全てじゃないんだろうけど。


【嘗て、カルトに潜入していた時に抱いた印象は――】
【「危険人物」「口八丁一つで股を開くユルいガキ」「話の通じない気分屋」「全てを蛇に擲つ狂信者」】
【けど、今は違う。――とりあえず、嫌いじゃない。むしろもう少し心を開いても良いとさえ思える】

【内心そんな事を思っていたら、二人の距離が縮まって。擽るような甘さと酸味が香り――夢想する】
【メニュー表を覗き込むわたしとあの子の姿。きっと仔猫の様な愛くるしい仕草をしてるんだろうか、と】
【だから呆けていて、話が入ってこなかった。相手からすれば人の話を聞いて無いようにしか見えないだろう】

//長くなったので分割します


258 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/03(水) 17:45:32 6IlD6zzI0
>>245>>246

路地裏で吐いてグロッキーな状態での出会いとか…生々し過ぎ。
ロマンもあったもんじゃない。しかも娼婦みたいな台詞まで口にしてさ。

んでもって、爛れた愛を貪ってるとかアンタららしいっちゃらしいのかね。
アリアみたいな大人の綺麗な女を前にしたら同じ様な感想を抱くし、愛を囁かればイチコロだね。
―――……スタイルも良くて美人で。私には無いものばかり(特におっぱいの大きさとか)

【やや呆れながら、やれやれと肩を竦めて笑ってみせて。――かえでの語る状況はありありと想像できるから】
【爛れた関係に至るのはある意味必然なんだって思わせる。紆余曲折あっても愛を掴めたなら、かえでみたいに振り返れるなら】
【―――良いなって思えるから。二人が羨ましい。特にアリアに対して。慎ましい自身の胸をぺたぺたと触って】
【無いものばかりの一つを示唆するなら、無いもの強請りをする子供と変わりない】


――…さぁ、異世界の人間かは解んない。もしそうだとしても、都市伝説でも何でも無いよ。
生きてる女性、生きてる人間なんだ。そこに何の否があるんだい。

まぁ、人となりを一言で言えば仔猫の様な愛くるしさと、妖艶で淫靡な印象の大人の色気が同居してる子。
或いは、捉えどころの無い気高い猫みたいで、それでいてぶれない生き方をしてる子。

浮世離れしてるとは言ってもね、愛を謳い、愛に生きる女の子でさ。
そりゃあもう思考の芸術品とか絵画みたいで。世界中の誰よりも可憐で綺麗な狙撃手様だよ。
狙った獲物は必ず貫くグングニルの槍みたいな必中の狙撃手。私のハートも撃ち抜かれちゃうぐらいにさ。


【憧れの人を語るように、好きな子のことを美化して話すように、それは恋する乙女のように】
【男装の麗人みたいな身形なのに、想い人を語るその姿は恋に逆上せる少女で、夢見がちな大人のなりそこない】
【とろんとしているのは、眦だけでなく雰囲気も。頬杖をつき甘ったるく語る口調もそれを後押ししてる】


……けど、それだけじゃないんだ。………すまない、少し口直しにアイスコーヒーを頼むよ。
………此処から先は甘ったるい口じゃ紡げないから。ごめん、少し気分のいい話じゃなくなる。

【そこで終われば良かったのに。そうじゃないから、性質が悪くて。儘ならない】
【静と動の切り替えみたいに、ビターな珈琲で胸焼けする甘さを打ち消さなきゃ続きを語れなかった】


259 : ◆DqFTH.xnGs :2018/10/03(水) 18:38:39 We6PT1cM0
>>255

【話しかけられたことに気付いていない。最初はそんな反応だった】
【知らない名前で呼ばれたのもあった。それに、考えごとをしていたのもあった】
【何やら誰かが近くにいて、何やら喋っている。新手のナンパかとも思ったが】
【気がむいて声のした方を見れば、知っている顔があった。なんて名前だったか】
【えらく偽名っぽい名前のやつ、という印象だけが残っていた。浮かべるのは、気怠げな愛想笑い】


…………よぉ。…………元気、じゃねぇな。お互い様さ
夕月の方は詳しいこたぁ知らねぇけど────うまく行ってそう、っつうのは知ってる
彼氏出来たんだってな。…………ハ、お人形ちゃんがエラく頑張ったもんだ

鈴音の方は今もご機嫌な眠り姫だぜ
なーんにもない。なぁんにも────な
びっくりするくらい平和で…………びっくりしちまうくらい、寝てやがる


【はぁ、と疲れたようなため息が漏れた。なんでこんなことになっているんだったか】
【ずるずるとその場に座り込む。ポスターと落書きが煩い壁を背に】
【立っているよりこっちの方が目立たない。特にこんな場所じゃ、酔っ払いが】
【壁際で休んでいるなんてよく見る光景だった。一度だけ手招き。酔っ払いのフリの誘い】


あたしの方は────マジでなんもねぇ。あたしは、な

ただ…………そうだな。あいつは…………ダチって呼べるかどうか
あっちはそうも思ってるか怪しいし、そのうち敵になるのは百も承知の関係で、よぉ
仲間…………そうだなぁ。多分、色んなことが終わっちまうまでの仲間、みてぇなやつだった

あいつは──なんだぁ。割と気が合いそうな、楽しそうなやつだった
自由が好きで、タバコとか酒とか…………昔の音楽とかが好きで、よぉ
たまに良く分かんねぇ例え話をするやつで──それが妙に、サマになるやつでもあった

そんなんでいながら、よぉ。平気な顔して、愛がどうとか、って言っちまうやつで
んでもってそれが不思議とイヤミじゃねぇのな


────死んじまった、ってさ。あっけないもんさ


【は、と枯れた笑顔。明かりがついたままの携帯を軽く振る】
【今じゃ訃報だってメールだ。友人からのくだらないメールやピザ屋の宣伝】
【そんなのに埋もれてしまう。「ほら、あんたもいろいろあったんだろ?」】
【座り込んだまま、名前の思い出せない相手を呼ぶ。「傷の舐め合いでもしようぜ」】
【今はそのくらいがちょうどいい、とまた彼女は笑った】


260 : 名無しさん :2018/10/03(水) 18:53:34 eqEY.5nA0
>>257-258

【「引いてないですよう」――茶化すような声。けれど事実であるのだろう、さすがにいくらか面食らったような様子はあったものの、それはそういう色ではなく】
【それよりもむしろ相手の気持ちを理解できてしまいそうだと目を瞠る一瞬なんだから。「――最近の大人って未成年に容赦がなさ過ぎですよね」、呟き声だけ未練がましい】

――――そうなんです、乱暴なの、アリアさんは……、すごく乱暴で。暴力的で。私の気持ちなんか、ちっとも考えてくれやしなくて。
私は、アリアさんに、来てほしかったのに――。そうしたら今頃、全部、ぜんぶが違っていたでしょう……? ――、"それ"が正しかったんじゃないかって。
でも……分からなくなって……。――、アリアさんにダメにされちゃったの。壊されちゃいました。ぜんぶ。正しい私……。ひどいですよね?

――――――――ほんとに、ひどいんですよ、アリアさんたら、でっかいワンちゃんみたいなのに……。

【だからか、続く言葉と声もまた、どこか重たげになるのだろう。結局は敗者の嘆きだった、自分の場所を護りながら好きでいると言う選択肢を勝ち取れなかったなら】
【自分が居場所と定めていた場所はなくなってしまった。誰も居なくなって神様さえも居なくなってしまった。そうして、愛してしまった人の場所へ向かう途中の足取りは】
【きっとひどく拙くて覚束なくて何度も何度も振り返ってしまう温度をしていたに違いない/そして今もきっとまだその道中であるのだと思わせる仕草をして】
【――まだ吹っ切れてないこと。それでも自分が唯一知っている、叶わぬはずの愛を叶える方法。道を外れて木々の隙間に引きずり込まれてしまった少女の末路】
【――――だけれど確かなのは、少女自身もまた狼をどうしようもなく愛してしまっていた/いること、それでもかすかに泣いてしまいそうな声が、ささめく】

……あれ、混ざってないですか? ――――どんな印象でしょう、私、他の方とはお話するようにしてたんですけど、噂話……みたいなものは聞こえてこないですし。
ほら。他の幹部の方って少し取っつきづらいじゃないですか、だから、――、あ、――――、――。ごめんなさい。やめましょうか、この話は……。

【もともと入っていた甘味にガムシロップが二つ分だった。一つは元からついてきていたものに、もう一つは、エーリカからもらったもの】
【けれど彼女にとってはちょうどいいのか、真っ先に疑ったのは撹拌不足で、――帰って来るコップに口をつける、当たり前の仕草で、甘くないですよって意思表示】
【――それから話が過去のことに移ろうのなら。彼女はいくらか気になったのだろう。尋ね返そうと、したのだろうけれど。何の気なしに紡いだ言葉が、何かを想起させるなら】
【真っ青の瞳から一つ目からうんと大きな涙が落ちてしまって。慌てた様子で目を拭うのだろう。両手で顔を隠してしまえば、そんなお願い、――触れ/られたく/たくないって】

/分割しますっ


261 : 名無しさん :2018/10/03(水) 18:53:55 eqEY.5nA0
>>257-258>>260

――――――――、まあ、私、あんまり覚えてないんですけど。ほんとに、ふらふら、してたから……。気づいたら、アリアさんのお家に居て。
――アリアさんは、そうですね、綺麗で、可愛くて、強くて……、怖くて。優しくて。暖かくて。柔らかくって――、泣いちゃいそうな顔が、凄く、可愛くて。
すぐに泣いちゃいそうな顔をするの。だから虐めたくなるの。でも、仕返しなんです、それくらいしないと、釣り合わないし――、

…………おっぱい触りますか? 今日はハーフカップのブラなんで、ほら、この辺、割と――、生ですよ。服越しですけど。えっちな意味じゃなくて。
アリアさんに比べたら小さいですけど、――アリアさんが大きすぎるだけですよ。私だって、別に小さくは……。

【エーリカが甘すぎると評したミルクティーで気を切り替える。物理的な甘さを飲み込めば、今度は概念的な甘さを吐き出すのは深呼吸の仕草に似て、気持ちを落ち着けるために】
【よっぽど普段虐められているらしかった。だから泣かせたくなっちゃうだなんて言い訳をしていた。――慎ましさを確かめる相手の仕草を、見つけるのなら】
【しれっとした声で尋ねるのだろう。ゆえに自分の胸元に手を乗せるなら、まあ、スマートフォンくらいは乗りそうだし、ファストフードのドリンクも手無しで飲めそう】
【アリアに比べたら背も小さい分そこまででもないけれど、――彼女もそれなり以上には豊かだった。むしろこれくらいあれば十分に充分だった】
【――親しい女子高生同士がやるみたいな温度感そのままで。けれど現実として相手と彼女は初対面であった。――きっと"こういうところ"が不潔だと、アリアに一度評されていた】

――ふうん、エーリカさんの好きな方って、ネコちゃんなんですね。ふふ、鏡でも持ってればよかったです。今の顔、そのまま見せてあげたいくらいで――、

【――――くすくす笑う声は微笑ましいものを見るかのように。だからきっとさっきの涙は間違いだった。出る場面を間違えた役者が慌てて袖に引っ込むみたいに】
【相手が語る想い人を思い浮かべてみる。気高い血統書付きの猫みたいに思えた。だけれどそれだけとも思えなかった。夢の世界に暮らす硝子細工の長毛の猫、のような】
【そういう現実離れしたイメージすら思い浮かぶ、――自分の好きは雪のような白に彩られる。カーテン越しの月光と煙草の煙と。それに比べたら、脳裏の世界は、ひどく幻想的】

【――どうぞ、と、彼女が言う前に。先ほど頼んだタルトが届くのだろう、綺麗な色合いで焼けたタルト台。ベースはチーズタルトであるらしかった】
【そこにお花を咲かすかのように並べられた葡萄は黄緑と紫と鮮やかに。洋梨の白が彩を添えて。つやつやのナパージュが楽しそうに艶めいていた。それでも】
【ちょうどそこに居る店員に珈琲を頼むのなら、――未だ届かぬ珈琲が全部の場を引き締めるみたいに。色鮮やかなタルトさえ、出番を間違えたお姫様の役割みたいに見えて】


262 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/03(水) 19:39:22 WMHqDivw0
>>259

【なんでモンモンなる呼び方をするのかと訊くなら、こともなげに「モンタージュのモン」。と返して】
【そいつはやっぱりへらへら笑うんだった。ぱかっと開いた口からアハハ、と渇いた笑いを零す】
【そうしながら、誘われたんならタックルするみたいに肩から壁に寄っかかって。やっぱりアハハ、と笑った】

上手く――いってんのかナーって感じだナー。まだ不安の種は残ってる感じー。
カレシ? ……彼氏なのかなアレ、まーいいやソコらへんは本人に聞いて、おもしれーから。

……、……そ。じゃー「ソッチ」は置いといていーや、……いやダメだけどさ。
起きないならそれでいーよ、今起きたら多分よくねーコトが起きると思う。

【ひとつめ。「妹」の彼氏がどうのって話に至ったら、彼女からのメールの文面にもあったように】
【何故か疑問符を付けるんだった。おもしろい、らしい。ならばこいつの口から聞くより、】
【直接彼女の口から言わせたほうが数段おもしろいんだろうと言うことを予感させた。そして】
【ふたつめ、聞いたら――少し安堵したように瞼を伏せるんだった。同じように溜息を漏らして】
【そっちのほうの話をするなら、これっぽちも面白くなさそうな予感をさせる。事実彼も、萎えてる顔】

【そんな顔でも続く言葉はそれなりに真面目に聞いて、――ふーん。一言目はそれだった】

そお。ソレは聞いてる限りでは相当ナカヨシなオトモダチっぽいと思うんだけどー、
死んじゃったの。……敵だの仲間だの言ってるってことは、いろいろ、深いトコまで噛んでたヒト?

そんじゃーそれ、ただ死んじゃったってワケじゃーないんだ。よく知らないけど。
……カノッサ? 虚神? 黒幕? ダメだ心当たりいっぱいありすぎて、
どれでもそう変わらねーように見える……やー、イヤな時代だ。

【「どれが一番マシだと思う?」。言いながらポケットを探って煙草を探していた、路上喫煙は禁止だけど】
【それを咎めるような人も見当たらないから平気で口に咥える。吸ってもいいかとは聞きもしなかった】
【だってそういう人と「オトモダチ」だと言うし。(どっかの店のロゴが入った安っぽそうなライターを打つ音)】

…………そんでそのあとどーすんの? 犯人探してフクシューする?
する元気もなさそーだ、……ほんとに、これから、どーする? おれもあんたも。

【タールばっかりきつい、安いニオイのする煙を吐きながらの言葉。煙と似たような質感、ふわふわしていて】
【明確なカタチなんて欠片も持ち合わせていない、不安定なものだった。なんもない、のは、だいたい一緒らしい】


263 : ペレグリー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/03(水) 22:49:37 smh2z7gk0
>>254

カカカ、結構結構。確かに今の世界は力こそが全てやからなぁ、口を開けてるだけじゃ死んでるのと同じや
―――さぁなぁ、それこそ〝神〟のみぞ知るんやないか?この世界の運命も、機関の運命もな。
ただまぁウチは〝神〟はあんま信じてないケドな、例の神様達を見た事ないから言えるのかもしれへんが

【ただ世界の流れに身を任せ気ままに生きる。まさにペレグリーの価値観や雰囲気は獣のそれであった】
【しかしだからこそ戦場で図太く生き残ってきたのかもしれないが―――。】
【何にせよ、今の世界情勢は火が付く寸前の火薬庫のような状態であるのは間違いなかった】
【タオの言うように、そのまま火が付かずに終わる可能性もあるがどうなるかは誰にも分かりはしない】

―――まぁ、そういうこっちゃな。単純な力場としてだけでなく色々な〝線〟があそこには集まっている。
せやせや!だからそんなに怖い顔せんといてよ、今日は楽しいお喋りデーにしよや〜。

【先程までは威圧しておいてどの口が言うのだろうか、ペレグリーはへらへらと笑いながら肩を竦める】
【とはいえこの状況から一変して襲ってくるなどはなさそうであった。そこは確信してもいいだろう。恐らく………】

ほう―――?なんやぁ思わせぶりやないか!まあ信じるで、なんとなくやがタオはんは口から出まかせ吹くタイプやない
そうウチの直感が言うとるからなぁ。クカカカカッ!

―――まぁ、〝楽しもうや〟これからの激動の世界をな。

【タオの言葉と不敵な笑みに片眼を開き、それからとても楽し気に声を上げて笑う。】
【言葉通り信じている様子だ、そしてペレグリーにとってそれは歓迎すべき事であった。】
【ひたすら戦場で生きてきた獣にとって、〝争いの種〟は多い方が良かった。】


264 : タオ=イーレイ ◆auPC5auEAk :2018/10/03(水) 23:23:33 ZCHlt7mo0
>>263

……ふぅ、やれやれ……あなたこそ、上手くやっていけますってもんでしょうよ……それこそ、世の中がひっくり返ったって、ねぇ?
まぁ、私もやり合った事はありませんねぇ……正直、そんな神様の相手なんて、流石に御免被るってもんです

【ペレグリーの飄々とした言葉に、呆れ半分の感心を見せるイーレイ。余計な事に囚われず、自分の意図のままに突き進むのは、1つの強さだ】
【例え機関がどうこうなろうとも、自分の力で自分の世界を生きていく様なタイプである】
【彼女にとっては、正に「都合がいいから」機関にいるだけ、といった感覚なのかもしれない】

【ただ、それでも。グランギニョルの神々――――イーレイはその呼び名を知らないが――――の事を思うと、やはりそうも言っていられないが】
【世界の条理が通用しない相手。それは、直接戦う事は無くても、既に理解させられていた】
【そこと事を荒立てるという自殺行為だけは御免だ――――それがイーレイの、素直な感想だった】

……それを理解しているのは、私たちだけじゃないって事……っていうよりむしろ、コトに明るい人間なら、誰でも目をつける感じですかねぇ
そりゃ、因果は自然と収束していきますねぇ……そんな中で何が起こるやら、考えてみると……中々に怖いですねぇこりゃ

【場の持つ力だけでなく、それに吸い寄せられる人間模様。それもまた、場に彩を与える】
【そう考えると、文字通りの『台風の目』だ――――そこでどんな化学反応が起こるか、考えようによっては、とんでもない事になる】
【あまり浮かれている場合でもないと、イーレイは表情を引き締め直す。ハイリスクハイリターンという理解に、更なる奥行きが求められそうだ】

せっかくなら、カフェテラスででも会えれば良かったんですけどね、こんな場所じゃ、お喋りなんてガラじゃないですよ、本当……
ま、怪談の類をするなら、こういう『小道具』も良いもんでしょうけど、それでも、椅子も飲み物もないんじゃあねぇ?

【足元の死体を爪先で小突いて見せながら、イーレイはため息を吐く】
【無論、冗談の上塗りをしているが、実際には――――互いに、重要な情報はそう簡単には手放せず、そして神々に関しては双方情報が足りなそうで】
【まだどこかで牽制し合っている以上、これ以上のカードの開示もできないのが現状だった】

ま……私にとっては勝負手、最後の手段ですからね。そうそう簡単にこの切り札は切りたくないのが本音ですよ
なんてったって――――これをやっちゃったら、後には戻れない、勝つか負けるかの2つに1つですからねぇ……
けど、もし私が勝ったら……まぁ、その時には仰ぎ見てやってくださいな、『女王』となった私の姿をねぇ……!

【勿体ぶりながらも、その『切り札』の影をチラつかせるイーレイ。ペレグリーの直感通り、その言葉は一定の真実を土台にしていた】
【慎重に情報戦を仕掛けたイーレイの事、全くのハッタリはそうそうかますタイプではないのだろう】
【彼女の裏には――――何らかの闇が、蠢いている。それはどうやら、間違いない様だった】

――――ま、何かあったら私の診療所にいらっしゃいな……櫻系の女医がやってる個人診療所なんて、探せばすぐでしょ?
次に会う時には、友達にでもなれれば良いんですけどねぇ?

【手をヒラヒラさせながら、イーレイは背中を向けた。もう、その背中を襲われる事も心配していないようで】
【ある程度の情報交換も完了し、互いのスタンスの確認も済んだ。後は、コトがどうこなれていくか、それを待つだけだ、と――――】
【未だ与するところを決めていないというペレグリーとは、或いは敵対する事になるかもしれないが、その時はその時だ】

【呼び止めなければ、イーレイはそのまま、表通りへと出ていく事だろう】


265 : ◆DqFTH.xnGs :2018/10/04(木) 00:38:48 lOhP..sU0
>>262

【夕月の恋愛話については、なら直接聞くわと笑った。パンケーキを食べる約束もしたし、と】
【そう続ける。いつになるかは分からないが。気分的に、明日とかにはならなさそうだ】

【鈴音のことに関しては──深くは聞かなかった。無理に起こさない方がよいということだけ】
【それだけ分かれば十分だった。知るべき時に、知りたいだけの情報があればいい】


ダチ、っつぅのかなぁ?聞いたら絶対「違うだろ」って返事がきそうだけど……ぎゃは

んで────心当たり、か。さぁな、多分あんたが言ったどれかだろうよ
そん中でもマシなのは…………どれだろうなぁ、…………、…………やっぱ、黒幕じゃねぇかな
連中にヤられちまったってぇんなら──納得、できるからよ

あいつは頭も良くってさ。黒幕連中とやりあうのにどうすりゃいいとか
その辺のこと色々と手ぇ回してくれてたんだよ
深いだの噛むだのってぇレベルじゃねぇ。あいつがあたしらの、ブレインみてぇなもんだった
だから…………、…………、……………………そう、だな
もしそうだってぇんなら────しょうがねぇな、って思う

…………思って、………………納得、する……しか────ねぇんだろう、な


【死んだヤツは生き返りはしない。だから、そいつのことで出来る事といえば】
【どうにかして自分を納得させるくらいしか、ないんだろう。葬いの歌も酒も】
【全部そのためにある。生きているヤツを生かすためにする儀式みたいなものだ】
【この場には酒も歌もない。あるのは数メートル先にある自動販売機くらい】
【けれどそれで気が紛れるんなら、どこにでもある飲み物も悪くないと思う】


ハ────復讐ねぇ、…………んなこたしねぇよ
復讐なんかしたって、何にもならねぇからな
そんなのは弾薬と血を無駄にしちまうだけだ

それにしても────どうする、かぁ…………
あいつが死んじまって、なんか…………疲れちまったから、なぁ

…………こんな時は、無理になんかすると良くねぇんだよ
気持ちが落ち着いて、なんかしようって気分になるまではなぁんもしねぇのがいいんじゃねぇのか?
飯食って、映画でも見て…………酒飲んで
道に落ちてる葉っぱを数えたり、雲の切れっ端を追いかけたっていい

そうやって、…………そのうち、やらなきゃなんねぇことに目が向けられるような気力が戻ってくんだ
それか、時間が経てばやらなきゃいけねぇことが出来てくるか────ま、どっちかだ
どっちみち、しばらくあたしは休憩だ。…………こないだ、ちょいと修羅場をくぐったばっかなのもあるし、な

んで?あんたの方はどうなんだよ。……話したくねぇってんなら、いいけど…………よぉ


266 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/04(木) 20:50:36 WMHqDivw0
>>265

そこまで言っといて逆にオトモダチじゃなかったらナニ? って感じじゃん。
…………ふーん。そ、脳ミソかー、なくなったら困るヤツじゃん。
ゾンビになっちゃう。困ったネー、じゃあ代わりが利くモノがあるのかって言われたら
そーでもなさそーな感じだし? ……、納得、納得、ねえ。

納得って具体的にどーいう状態になったら、納得って言えるんだろ?

【やけに哲学的なことを口走ってから、「うーんやっぱ今のいいや」と打ち消し】
【ちょっとしか吸ってない煙草を平気で地面に落として踏み躙っては、同じように火を消す】
【口寂しかったのでとりあえず咥えてみたはいいものの気分じゃなかったらしい。そんな感じで】
【何がしたいのかよくわからない手つきで、動作を一通り終えたなら――また、「ふーん」】

疲れたかー。悲しいじゃなくて? どーでもいいけどさ、
……そーいう考え方できんのはいいネ。落ち着けるまで待つっての?
おれ、なんかしてないと気持ちが落ち着かないタイプなんだわ。
なんにもしてないとどんどん事態が悪くなってくよーな気がして、……、……、

…………映画見に行く? レイトショーでなんかやってっかもしんない。

【「へいおっけー、近くの映画館、なんかやってる?」気だるい声でスマホに問いかけつつも】
【気晴らししたいという気持ちにはわりと賛同するらしかった。ひとりでいると絶対焦ってしまうから】
【誰かと一緒にいられるうちに、目いっぱいそういうことをしたくなる。らしい。……、】
【スマホは面白そうな映画なんて教えてくれなかった。それをついつい、指先で弄りつつ】
【萎え切ったみたいな視線を落としたまま、ああ、と声を零す。黄身色の瞳にブルーライトが反射して】

おれのほうもなんもねーよ。……。……鈴音ちゃんに会ったよ。んで、
まあ、平たく言えば――――「まだ帰りたくない」って言ってた。

帰りたいと思える世界になってねーんだって。怒ってた。いろんなコトに。

【「そんだけよ。夕月の話ヌキにするなら、ほんとそれだけ」――無機質な光を、銀のまつげが、吸い込む】


267 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/04(木) 22:41:24 BRNVt/Aw0
【ほの暗い路地裏。響くのは幾人かの男達が「逃がすな」だの「そっちに向かったぞ」だのと口々に叫ぶ声と獣の叫び声で】
【微かに響くその音に通りを見たならば櫻の者なのだろうか?半着に股引姿の男が数人。辺りを見回している】
【彼らの首許には首飾り。目の四方に縦長の菱形があしらわれた十字架にも似たデザインのトップが輝いていて】

「ああもうこんな時に"クラマ"の野郎は何処に行っちまったんだ!」
「知るか!早くしないと約束の時間に……」
【誰かがぼやいた刹那、影が横切り】
【近くにいた男が慌ててその影に覆い被さる】
【立ち上がったその男が腕に抱えていたのは若草色の毛並みをした狸のような生き物で】
【キィキィと啼きながら手足をばたつかせるそれを懸命に抑える男は仲間が手にしていた小さな檻に生き物を入れ檻の鍵を閉める】
【そうして、早くしないと約束の時間が来ちまうぞ!と口々に喚きながら路地の奥へ向かおうとする】
【明らかに怪しい一団、なのだが──】


268 : ペレグリー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/05(金) 01:31:06 smh2z7gk0
>>264

いやいや、ウチにとっては今の停滞した状況こそ商売あがったりやで。
せやなぁ伝えきいただけの話やけど単純な力がどうこうって存在でもないみたいやし
そういうタイプは色々と面倒やからウチもパスやな。

【グランギニョルの神々についてはペレグリーもその正式名称や詳細を知ってはいない】
【それもあってかタオに同調するように両手を頭の後ろで組みながら頷く。とは言っても〝相手にしたら面倒そうだから〟という理由だった】
【―――ある意味その直感に救われているのかもしれないが。】

ああ、どうやら〝元から巣くってた連中〟を初めとして色々集まってきてるみたいやな
ま、もし行く時にボディーガードが必要なら声かけてや〜タオはんなら格安にしとくで〜カカカ

―――ま、こんな場所だからこそ話せる話もあるやん?公共の場は盗聴されてるかもしれへんし
せやなぁ大分足が疲れてきたわ、終わったらマッサージでもいかんと。あ、タオはんはマッサージできる?

【冗談なのか本気なのか分からない事を言いながら、片足をぷらぷらと上げる。傍から見れば間抜けな姿である。】
【互いにこれ以上手の内を見せないのはペレグリーも承知なようで、そうと決まったら大分緩い態度になってきている】
【とはいえ、自分でも言っていたようにいつでも〝スイッチ〟は入っているだろうが…。】

カカカ、〝切り札〟を出し惜しみして切りどころを見誤らんようになぁ〜〝女王様〟?
―――ま、何かあれば立ち寄らせてもらうわ。ウチもしばらくはこの国を拠点にして動くつもりやし。

せいぜい今を楽しむとしようや、クカカカッ!!

【表通りへと去っていくタオを見送りながら、愉し気に眼を開いて笑う。それは得物を見つけた狩人のようでもあった】
【そして、タオが見え無くなればペレグリーは再び路地裏の奥へと姿を消していった。】

//お疲れ様でした!


269 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/05(金) 01:53:05 smh2z7gk0
>>173

―――ええ、おはようございます。そうですね、ええとっても清々しい朝ですわ。
けれども貴女様は本来ならば行くところがあるのではないでしょうか。ああ、申し訳ありません。

無用な詮索でしたね、気を悪くしないでください。どうも時たまお節介を言ってしまう事がありまして。

【少女に声をかけられて、それに対して落ち着いた音色で答える人物。レースの日傘をさしている。】
【そしてそれをすっと上げれば、姿が見えてくる―――】
【脹脛まで伸びるプラチナブロンドに頭部にはホワイトブリム。全身をロングスカートのメイド服で包み込んでいる金の瞳の女性】
【―――つまりはメイドであった。どこからどうみてもメイドであった。そしてメイドは心配そうに少女を見つめて話しかけた後】
【どこか申し訳なさそうに伏し目がちに言葉を続けた、長い睫毛が良く目立つ。】
【そして拒絶されなければ少女のすぐ隣へと腰掛けて日傘を畳むと、うっすらと笑みを浮かべながら少女へと顔を向けるのだった。】


270 : 名無しさん :2018/10/05(金) 02:23:08 y88duNzA0
>>269

【――――くす、と、少女は淡く柔らかく笑むのだろう。何か窺うような色合いに被せた薄布の色合いは、少女性に満ち満ちた表情の温度をして】
【だのに相手の言葉を聞けば、きっとその細い眉をしゅんと下げるのだろう。気まずいことを言うかのように視線までも下がるなら】
【指先が躊躇いがちに分厚い本を撫ぜる。はたはた、と、頁を弄ぶ音。一つ二つと吐息を重ねた頃に、ようやく、言葉が紡がれる】

――ごめんなさい、不登校なんです。クラスに……馴染めなくって。でも、部屋の中に居ても息が詰まってしまって。
外に居ると少し気分も"まし"になるんです。――――やっぱり、目立ちますよね。でも、これくらいの時間だと、学校の人にも会わない気がするから。

【――真っ白と薄藤の混ざる稀有な色合いの睫毛を揺らすならば、伏し目の視線がふわと相手へ向くのだろう、それから、幾分か困った顔をする】
【どこか寂し気な色合いで縁取るのなら、――だけれど本当のことなんて一つも言っていないと、どれほどの観察眼があれば気づくのだろう】
【少なくとも疑わなければ気づくはずなどないほどに当たり前の顔をしていた。疑っていたのだとしても、――それでも、さも当たり前にように、口にするから】

……――その、メイドさんでしょうか? お買い物にでも行かれるんでしょうか。それとも、お散歩……でしょうか。
とてもいいお天気ですから、私も、日傘を持ってくればよかったです。このままでは日焼けしてしまいそうで――。

【隣へ腰かけられることは、拒まないだろう。それどころかわずかに相手のためのスペースを空けてやりもする。電車で隣に座る人のためにする仕草のよう】
【不登校――を自称しつつも、人とコミュニケーションをとることは嫌いではないようだった。相手の恰好が気になったのか、そんな風に尋ねもし、】
【どうにも最低限の荷物だったから、家が近いのかもしれなかった。――読み止しの本は機械工学の専門書。少女には大層似合わぬセレクトであり】

【――そうして事実よく分からぬジャンルであるのかもしれなかった。だから、少女もまた相手へと、目を向けて】


271 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/10/05(金) 03:04:48 JlI243l20
【水の国 郊外】

【眠らない大都市から離れたこの場所は、街灯と月明かりのみに照らされて、静かに寝静まっていた】
【その街を見下ろす小高い丘に、二つの人影があった。人影の片方は、大きなタンクのような何かを背負っていた】

【その何かを背負っている方は、鉛色の髪をオールバックにし、同じく鉛色の瞳で街を睨む、彫りの深い顔立ちの男だった】
【カーキ色のジャケットの上にポケットがいくつもついた黒いベストを着込み、迷彩柄のズボンと黒く分厚い靴底の軍用ブーツを履いている】

【両耳と口元、そして口から覗く舌の外周にびっしりと、鉛色のピアスを付けている。わずかな月明かりが、ピアスに反射する】


【もう一人は、地味な黒スーツに革靴の若い男だ。細い茶色のフレームの眼鏡をかけ、黒髪を丁寧に撫で付けている】
【ピアスの男と同じく鉛色の瞳で街を見下ろす眼鏡の男は、穏健にも狂気的にも見える薄笑いを顔に張り付けていた】

――――よし、始めるぞおぉ。待機組に連絡いれたな?
「バッチリです!! いつでもいけますよ!!」

【眼鏡男の返答を受け、ピアス男は手に持っていたガスマスクを装着すると】
【背負っていたタンクから伸びるノズルを下へと向け、引き金を引いた。微かな噴出音と共に、霧のようなガスが噴射された】

【それはゆっくりと、しかし着実に下の街へと広がっていく。ピアス男はガスが自分の方に流れないよう、慎重に立ち回っていたが】
【眼鏡男の方は、わざわざ風下に立って深呼吸すらし始めた】

「んー……。いい塩梅ですよ。これなら、区画一つが相手でもいけそうです」
そうじゃなきゃ困るってんだあぁ。少人数の実験に成功したって、これが上手くいかなきゃ意味ねえからなあぁ……

【密談の間にも、ガスは街を舐め尽くしていく。気付かないうちに忍び寄る病の如く】


272 : ◆3inMmyYQUs :2018/10/05(金) 11:32:20 OO1dOWCw0
>>205-206

【がむしゃらに駆けていた少女の足が、そのとき、ぴたりと止まった】
【張り詰めた舞衣の声に、全身の神経を打ち据えられたかのようだった】

【──語りかけられる彼女の言葉を、少女は背中越しでじっと受け止めた】


【──“継ぐ”】
【その象徴的な一言が舞衣の口から出たとき、】
【少女はそれが果たして現実のものであったのか確かめるかのように、】
【恐る恐る、あるいはおっかなびっくりという風に、ゆっくりと振り向いた】


【──何かを強く堪えるように、震えながら引き結ばれた口元】
【しかしそれでも抑えきれずにまなじりから溢れ出る大粒の涙が、】
【膚ごと落剥するかのように、ぼろぼろとその頬を零れ落ちていた】


【熱く潤みながら、何か信じられないものを見るような瞳が、じっと舞衣を見つめた】






【──“継ぐ”】


【──まだ、終わっていないというのか】


【──これだけ決定的に、致命的に、不可逆で、完全な『失敗』を自分はしてしまったのに】
【──取り戻した記憶の全てが、残酷なほど生々しい敗北の烙印を心中に刻んでいるのに】


【その、死そのものが、継がれようとしている】


【その事実を、舞衣の言葉と意志を、しかし心は受け止められない】
【──戸惑い。疑い。信じたい。不安。微かな希望。しかし、絶望】



【──『彼』だって】
【『チンザノ・ロッソ』という男だって、強く立っていたが、それでも死んでいった】

【そして、彼の死は、紛れもなく自分の責でもあった】

【彼はわたしを護った】   ..................
【しかし本当は──本当は、わたしが彼を守らなければならなかった】


【ぼやける視界の向こうに、舞衣の姿と探偵の姿が重なって、揺らぐ】


【──自分にはもう、人を頼る資格などあるようには思えなかった】
【ましてその先に光があるなどとは、到底】

【今や手を伸ばすことそれ自体が、】
【愛する者の心臓に刃物を突き立てることのように恐ろしくてならない】



【──どうすればいい】

【──こんなに、身体も、心も、凍えてしまって動けないときは】

【──わたしは、一体どうすれば────】



【少女は身を苛む寒さに耐えるように、細い拳をぎゅうと強く握り込んだ】

【その手の中には、探偵が残していったオイルライターが、今もなお握られ続けていた】




【それもまた錯覚だったのだろうか】

【強く拳を握ったとき、その奥から仄かな熱がじわりと滲んだような気がした】


【──赤熱したリボルバーの銃声が聞こえた】
【それを幕開けに、少女の脳裏に数々のサウンドが過ぎり始めた】

/↓


273 : ◆3inMmyYQUs :2018/10/05(金) 11:33:45 OO1dOWCw0

【──かつて】
【荒んだ未来の廃墟で、拾い集めたレコードやCDやカセットテープ】
【いつの時代か、どこの社会のものかも分からない、異世界の音源たち】



【──ビートルズ ピストルズ ストーンズ ラモーンズ】
【サバス キンクス ヘンドリックス エアロスミス──】



【それはもう聴きたくないはずの音響なのに】

【何の根拠もなくただいたずらに精神を高揚させるだけの、】
【耳から摂取する安いドラッグのような音波とはもう決別してやると決めたばかりなのに】



【──ディラン クラプトン ツェッペリン】
【ザ・フー ザッパ パープル ニール──】
【──AC/DC CCR マイケル イルゾル・ビッグスター】



【どうしてこうも鳴り止まないのだろう】

【もうあなたたちのことは大嫌いだと告げたばかりなのに】
【そんなことお構いなしに、愛を、自由を、命を歌い続けている】



【どれもこれも、私たちが火を付けた訳じゃないのに】

【あたかも私たち自身が灯した篝火であるかのように】

【今でもこの世界と時間の中で、共に燃え続けている】



【いつまでも鳴り止まないビートとなって、】
【未だ冷えない体熱となって、】
【凍える胸に訴えかけてくる】



【心に火を】



【心に火を、と】





【──まだ終わっていない】

【未だ知らないロックンロールの続きを】

【“俺たち”でオルタナティブな未来を鳴らすんだ、と】





 (───────────────────)




【──少女は、途端、その場にへたり込んだ】
【と同時に、心中の堰を切って溢れ出したものを、自由にさせた】


【つまりは泣いた】
【叫んだ】

【言葉にならない全てを解き放って、喉を震わせた】


【空気を吸い込んだ炎が膨れ上がるように】
【激しく、何も抑えこもうとせず、大きく、ただ大きく】


【燃えていった魂たちの、遠い残響に応えるように】

【叫んで、叫んで、叫び散らした】






【それが静かな熾火に変わるまで】
【延々、延々と】

/↓


274 : ◆3inMmyYQUs :2018/10/05(金) 11:34:33 OO1dOWCw0
>>205-206


【──眼が白兎の瞳のように赤くなるまで泣き腫らし、涙も声も枯れた頃】
【全てを仕切り直して、少女は舞衣の前に腰を据えて対面しているだろう】


【それから静かに口を開き、彼女は自身の名を告げる】


【モリシマ シヲリ、と】





──信じられない話かもしれないけれど、
わたしは、ある未来の一つから来ました。


……わたしがここに来た理由、
彼が知りたかった未来のこと、
そして彼が遺していった『今』までのことを、あなたに伝えます。



【そして少女は、舞衣の額にそっと手を翳した】

/↓


275 : ◆3inMmyYQUs :2018/10/05(金) 11:35:41 OO1dOWCw0
>>205-206


【──── A.D.2Q36 】


【 (√β-26D-X-430’8§1231-2Q36) 】







【──砲撃の爆音と共に、西の空が紅く燃え上がる】


【誰かの泣き声が、粉塵舞う廃墟の中で反響する】


【ごうん、と空気が打ち震える】
【巨大な鋼鉄の翼の群れが、遙か曇色の上空を駆けていった】


【また一つ、遠くで爆破音】






【未来は必ず進歩している、とは一体誰が保証したか】

【そこに広がる光景に、およそ先進的文明の色はない】

【焦げた瓦礫とくすんだビニールを積み上げて作られた、小屋のような何か】
【それがいくつか集まって出来た、街と呼ぶにも憚られる、名前の無い集落】

【それが『未来』の人類の平均的生活水準】

【崩落したコンクリートと、煙と、曇天】
【果てしない灰色の世界】





【2Q36年】

【歴史はその主(あるじ)に、〈円卓〉という存在を選んだ】

【玉座は常に一つ】
【王意に沿わぬものは全て滅びた】

【自由は、強者の特権と名を変えて生き延びたが】
【正義だけは、間違いなく断頭台に送られて死んだ】


【それは君臨せずして支配した】

【〈円卓〉──その名はしかし公的な記録のどこにも存在しない】
【ただ影であり、闇であり、世界の裏側のシステムであり続けた】

【世界の仕組みは何一つ変わらないまま】
【──少なくとも衆民はそう感じ続けたまま──】
【あらゆる実権は、その素性の知れない機構の元に集約された】








【(────苦しかったり、頭が痛くなったりは、してないかにゃ)】


【舞衣の脳内に送られ続ける、シヲリの記憶とその補完情報】
【その合間に、彼女の状態を気遣った少女の念話が差し挟まれる】


【(────問題がなければ、続けるにゃ)】



/ここまでで一旦お返しします!
/大変お待たせしてすみませんでした!


276 : ◆DqFTH.xnGs :2018/10/05(金) 15:21:13 JpcrHaqI0
>>266

【質問には、答えなかった。どんなもんが“納得”かだなんて、自分だって分かっちゃいない】
【いつからか、胸の中に冷たい石っころがあるような感じがしていた。新しい訃報で】
【その石っころがまたひとつ増えた。この冷たさが気にならなくなった時が“その時”なんだろうと】
【勝手に思っていた。けれど正解なんて分からない。胸の中の石が消えるかどうかも】


あー…………、ちょっとしたジンクスっつぅか?
なんか“巡り”が悪い時に色々したって、いい方向には転がらねぇし余計に焦っちまう
そういう気がすんだよなぁ…………もちろん、やらなきゃいけねぇ時だってあんだけど、よぉ

…………っ、はは。…………鈴音にも一回、さ
言ったこと…………あんだよ。“休め”、ってぇ…………、よ
そんときゃ聞いちゃくれなかったが────なんだっけ、なぁ
“何もしない”ことを“する”、だっけ…………?あんたみてぇな色の、ボロいぬいぐるみのセリフさ
あれ、よぉ…………結構、大事だと思うんだけどなぁ…………


【「みんな、頑張りすぎなんだよ」一言加える。誰に向けたセリフなんだろう】
【何人かの顔が頭の中に浮かんでいた。潰れそうになっても、頑張っている連中】
【そのうち何人かが、頑張りの重さに潰されて、戻ってこなくなった。投げ捨てちまえ、と】
【何度思ったことか。──捨てられねぇもんか、と口の中で言葉を転がす】


は…………映画も店じまい、か。────ったく、マジでついてねぇなぁ?
そんじゃ、ボーリングとか……あとはダーツとか…………
気合い入れてやるもんはダメだな。こう…………ダラダラやれるやつで、よぉ…………


…………、にしても。……………………そっ、…………かぁ…………


ぎゃ、は────やっと、怒れたのかよ、あいつは
やっと…………自分がやりてぇこと、言えるようになったのかよ

おせぇよなぁ────、────ほんと、おせぇよ


【ほんの少しだけ、口元に楽しさが戻った。遅れて、くつくつと喉が鳴った】
【もっと自由に振る舞えばいいのに。もっと楽になっちまえばいいのに──いつだったか】
【そう鈴音に叫んだことがあった。…………もし今が“そう”なら、いっそ】
【このままでいいんじゃないかとすら思う。祟られるのは勘弁だが。「もっと、聞かせろよ」】
【口元を歪めたまま、そう言った。何のことはない。話題がなくなるのが嫌だから】
【続きをと思った。ただそれだけのことだった】


277 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/05(金) 16:27:06 6IlD6zzI0
>>260>>261


【風の吹く方へ向きを変える風見鶏の様なあり方。酷く脆くて危うくて】
【己の理屈で人を染める事。取り巻く環境を一変させる事。望む居場所も信仰も全て無くして】
【けれども代わりに用意された居場所も愛しているなら、それでいて無くした物も渇望するなら】

【強引な理屈を貫き通し続ける覚悟が要る。共に地獄の淵を綱渡る意思を持つ覚悟が要る】
【かえでの複雑な心境を物語る言葉。今にも何かが決壊しそうに見えたから。かえでに手を伸ばそうとして】

【けれど、手を伸ばさなかった。触れたら壊れてしまいそうで。取り返しがつかなさそうで】
【どんな顔で、どんな言葉を選べば解らず――結局、沈黙のまま、悼むような面持ちで彼女を見つめるのだった】

【"傷口に触れてしまってすまない。けど、私にはかえでを癒せない。……ごめん、気分のいい話じゃないよね"
 ――なんて告げる面持ちで、無言の謝罪をするに留まるのだった】

【―――】

【かえでがミルクティーに手を伸ばした辺りで、新たな言葉が場面を切りかえてくれたから】
【エーリカも何処か救われた気分になって。悼む表情から慈しみの滲む、柔らかい表情を向けれるに至る】

(へえ、あの女が可愛いねえ。あの氷の女王様の泣き出しそうな顔が可愛い、か)
(……チョット想像できないや。しかも暖かくて柔らかいときた。……うーん、イメージ出来ない)

【共闘した時のアリアは怜悧冷徹で頼もしい上官みたいな人で、気高き狼の様な振る舞いだったから】
【首を横に傾けて、うーんと唸っていれば。突拍子も無い言葉に、わたわたと振り回されるのだった】


―――……ええっ!?何言ってんのさ、アンタ。私達、初対面だよ!?
出会って直ぐに胸を触らせるなんて、チョットはしたないって!

……(私に比べれば遥かに)大きいのは解る。触らなくても解るから、さ?
そんな言うのはアリアの前だけにするんだね。実質初対面の奴に身体を易々と触らせるのはどうかと思う。
アリアもきっと良い顔しないし、もう少し自分の事も大事にしなよ。……思わせぶりなのは、こっちも困るし。

【親しい女子高生同士の過激なスキンシップを前に、狼狽。図星を突かれた時とは異なる狼狽の色を見せる】
【相手やその背後にいる女性への配慮と……少しだけ触ってみたいという自身の劣情の混じった表情】
【静止する為に伸ばした手が、かえでの胸元に伸びないように自制していれば――慎ましい笑い声が耳朶を打つ】


ふぇっ!?……そんな表情(かお)してる!?……うぅ、我ながら愚かしいよ。
今自分の顔を鏡で見たら絶対悶絶する自信がある。………でも、仕方ないだろ。

【"それだけあの子に夢中になって、あの子の事が好きになっちゃったんだから"】
【徐々にか細くなる声にひた隠すのは、恋する乙女みたいな本音――】
【しょんぼり項垂れる子犬みたいに顔を伏せていたから、ネコに恋するワンコの構図みたいだった】

【そうしているうちに、かえでの頼んだタルトが届いて。伏した顔を上げた先には】
【華やかな色合いの世界。黄緑に紫に白――見てるだけで心躍るような煌びやかな色合いで、綺麗に思えて】
【その色合いに水を差すのは、場を引き締めるために頼んだ珈琲。少しだけ後悔して――けど、もう少しだけ】


とりあえず、冷めない内に食べよっか。折角綺麗で美味しそうなタルトがあるんだし。
"今は"目の前のささやかな幸福に浸ろうよ。きっと、それくらいなら神様も仏様も許してくれる。


【まだ、珈琲は届かないから。宿題を先延ばしする子供のように、核心部分には触れようとしない】
【出番を間違えたお姫様に、出番を間違えていないと伝える舞台の裏方みたいな振る舞いであった】

【けど、何時かは語る時が来る――雨が降り頻る。ざぁざぁ、とより一層音を立てて降り頻るから】


278 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/05(金) 20:12:59 Ty26k7V20
>>272-275

【意志を継ぐのは必然だった。それが最も弔いになるとわかっていた】
【どんな華美な葬式をしても、祭り上げても、それは成し遂げた人に送る盛大なお祝いで】
【道半ばの人間が望むことは唯一つ。―――霧崎はそうすることが当たり前だと決めていた】

【特段、彼とは同志でもなかった。たまたま彼は自分の父親がまとめあげるヤクザの有能なヒットマンだっただけで】
【そんなかでもやはり変わり者でふらっと居なくなったかと思えば風のうわさで義賊にでもなったらしいと聞いていた】
【それからはいつのまにか探偵になっていて――――だが、どれも其処には正義が有った。私が憧れたのはその正義だ】

【チンザノ・ロッソは死なない。永遠の闇の中、混沌の曇り空の下でも太陽を探して】


―――全てを、話しなさい。すべてを受け入れるつもりで此処に居るから。


【そして―――少女の手から流れてくるイメージの濁流。はじめは乱雑なちぐはぐなノイズ。そして始まるショートムービー】
【分岐した、どれかの未来。確実に存在する未来―――】

【地獄は散々見たはずだった。それでもなお、これよりひどいものは見たこと無い。絶望。立ち込める絶望が支配した世界】
【きっとそれは緩やかな絶望なのだろう。死に至る病。破滅へとつながる日常。移ろいに気がつく頃には焼かれているだろう】
【黙示録の後。祈りは届かず。システムは完璧だ。システムだけが正常だ】


―――気分は悪いわね。


【こんなもの見せされているのだから。と、悪態をつくのだから元気なのだろう】
【すぐに煙草を吸おうとしたところは探偵と共通する部分かもしれない】



/気合の入ったお返事に失礼と存じておりますが
/とりあえずこちらも此処で一回お返事でございます!


279 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/05(金) 21:17:48 WMHqDivw0
>>276

………………ねえいま、おれのこと暗にキタナい色してるっつった?

【妙なところに反応したのは単純にバカだからだったか、いやきっと、そうではなくて】
【何かしらを気遣って話を逸らしかけたのだとも思わせた。……相当好意的に解釈するなら、だけど】
【だけど彼としてもあんまり楽しくない話してるなあという自覚はあるようだった。楽しくなるはずなんてない】
【人が死んだって話してるのに。楽しくなるわけないだろうって。わりと真面目に、そう思っているんだった】

【「なんかすっげーつまんなさそーなのはやってるよ、ダッシュで今から駆け込むなら」。】
【言いながら見せた液晶には、それはそれはつまらなさそうな物語を過剰な演出で誤魔化しまくった、みたいな】
【B級すっとばしてZ級くらいありそうなアクションだか、スプラッタだか、そういうののポスター画像が映っていて】
【本当に、このまま、何もかも投げ出したいなら。二時間半の間だけ。それを望むんなら、】
【いっしょにいこうよ。そうとでも言いたげな顔して――――首を、ひねる】

……、……それ言うのふたりめー。もっと早く怒っとけよって。
まーおれもそう思うけど? こんなコトになるくらいならもっと、もっと早く、
……………………怒ってもいいってコトをそもそも知らなかったんだろうな。

あんネ、おれも鈴音ちゃんに会ったけど――夕月も会ったって言ってたよ。
そんでソコでまたさあ、アイツ、ばかだから。……あ、当然夕月のほうがバカっつったンだよ。
鈴音ちゃんの気も知らないでギャースカ泣いたらしいのネ、そんで当然困らせて、

【  「そしたら、」  】

そこでもまた鈴音ちゃん、助けようとしてくれたんだって。
大事にしてたきれいなお衣装かなんか、あげるとかなんとか言い出して。

………………したら流石のアイツもキレたワケ。なんで自分をもっと大事にしねーのって。
そしたらすっごいビビられたって。そーいう発想がさ、そもそも、できないコなんだろーネ。


……。…………、………………、夕月もバカだけどさ。鈴音ちゃんも大概、バカだよねえ。


【液晶が放つブルーライトの向こうで、は、と笑い捨てる声がした。輝きのせいで、表情は見えないだろうけど】


280 : 名無しさん :2018/10/06(土) 00:10:52 zPn3B.Fg0
>>277

【だからきっと彼女は辛くて仕方がないのに違いなかった。"どちらか"選ぶことが出来たはずの時にすら、どちらも選べず、苦悩して】
【そうしてその結果に、選ぶ道すら喪って。きっとひどく後悔していて/だのにきっと後悔なんて一つもなくて。――まるで自分がバラバラになってしまうみたいに】
【聖女などという肩書が似合う人間だと自分を思ったことは一度だってなかったけれど、――そう振る舞う自分は嫌いじゃなかった。そういう"強い"自分は】
【だけれども、そんな自分は全部全部夢だったかのように、愛しい人の腕に抱かれて眠る自分も嫌いじゃなかった。めいっぱい子供みたいに甘えられる、"強くない"自分だって】

――――、

【――故に、彼女は相手と同じように、無言を選ぶ。ひどく曖昧な表情をしているのだろう、泣いているような、笑っているような、どちらつかずで、けれど両方】
【何より泣いてしまった後だった。――だからうんと甘いミルクティーはありがたかった。これで苦い珈琲など飲んでしまったら、今度こそへし折れてしまいそう】

……――――アリアさんは、女の子ですよ。まあ、わたしより、十一個年上らしいですけど。背だって、うんと、大きいですけど。
それに――、……うぇ。女子同士ってやるじゃないですか? 男相手にはやらないですけど、同性なら、別に、減るわけでもないですし……。
……減るんですかね。アリアさん、そういうのあんまり気にしなさそうかなって、――それに、そういう意味じゃ、ないですし、まあ、いいです、そんなに言うなら――。

【ふっくらと膨らむ胸元に添える指先は、添えるにしてはいくらも柔らかくめり込んでいた。下着越しよりもいくらか指の形そのままに沈みこむのなら、】
【きっとそれだけの豊かさと柔らかさを伝えるんだろうか。足元に手元をぜんぶ布地で隠してしまっていても、顔や首筋の白さが、あるいは胸元の白さまでも予感させて】
【つきたてのおもちみたいに白くて柔らかで温かいに違いなかった。呼吸のたびにわずかに膨れて萎む仕草が、言われるまでそんな風に思わなかったかのよう、たじろぐのだろう】
【最終的にはいくらか押し負けるような形で彼女は黙る――胸元の上の方をちょっとふにふにする/させる仕草はそんなに問題だろうかと、考える瞬きの仕草だけ残すならば】

してますよぉ、――うふふ、ワンちゃんみたいですね? おすましのにゃんこに目いっぱいアピールする、ワンちゃん。
塀の上とかでつんってすましているの、その下のところで尻尾振って、自分のおやつの骨のクッキーとかを持ってきて。――それでね、降りてきたら。
その首根っこを咥えて連れ去ってしまうのでしょ? ――それがね、アリアさんのやり方ですよう、どんなけやだって言っても、聞いてくれやしなくって。

絶対殺すって決めていたのに……そんなの言えないくらい、あの人は、強すぎて……。
だから……そうですね、めいっぱい可愛がってあげないと、多分、嫌になって、どこか行っちゃいますよ? アドバイスです。

【――だから取り乱した相手へのお仕置きみたいに揶揄うんだった。ワンちゃんみたいだなんて、自分のことは棚に上げてしまって。だって、】
【自分だってアリアの話をするときはいくらも甘い顔をしているんだから。だのに自分はそんな顔してないって言うみたいに、――それこそおすましのにゃんこ、みたいに】
【そのくせ塀から引きずり降ろされて帰り道も分からない迷子に仕立て上げられてしまった子猫ちゃん。――彼女が伝えてエーリカが呑んだ方策とは、それだったから】
【敵わなかったと呟く表情はあるいは悲痛さすら滲ます。やはり、――自分が強かったら、世界は真逆の色合いをしていたはずだって、思わずにはいられない】

【だからこそ、――もしも手に入れたなら、そんな後悔も悲しみも苦しみも痛みも全部全部分からなくくらいに愛してやれ、って、】

…………そう、ですか? じゃあ、お言葉に甘えて。――――――――、あーんしますか? ほら、フォークもタルトもきれいですよ。先っぽですし。

【――――ならばそれはささやかな気遣いのつもりなのかもしれなかった。寸前に窘められた言動とよく似る色合い、けれど今度は全部きれいだからって】
【紙ナプキンをはがしたばかりのフォークでタルトの1ピース、つんと綺麗に切り立った崖を切り落として、差し出してみる。つやつやの葡萄がきちん、と乗るから】
【きっと自分は相手らよりも先に居るから。奪われてしまったから。偉ぶって相談してなんて言えやしないけど。――それでもきっと、何か思うところが、あるらしかった】


281 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/06(土) 17:14:40 smh2z7gk0
>>270

そうですか………いえ、気にすることはありませんよ。
俗世の流れに縛られずこうして自然の流れと共にあるのも良しですわ。

―――景色の変わらない室内と違い外には刺激がありますからね、良い事だと思いますよ。

【メイドは少女へと微笑みながら答える。不登校という少女の言葉を非難はせずかといって強く肯定もしなかった】
【ただ選択として時にはそういう事もありだと、そういった感情があるようであった。】
【「詮索はしませんが、何か相談があれば乗れますよ」とあくまで相手に委ねる形で、最後にそう付け足した。】

ええ、侍女でございます。とはいっても割と色々と特殊でして今日はお散歩ですわ。
よろしければ私のをお使いになってくださいな、そうすれば読書もより捗る事でしょう。

―――それにしても、機械工学に興味がおありで?

【そう言うとメイドは畳んだばかりの日傘を両手で差し出す。二人で一緒に入るには少し小さめなサイズだ】
【そしてメイドは少女の読む本へと視線を落とし、人差し指を顎に当てて首を傾げる。やはり少女に似つかわしくないジャンルであると感じているのだろう。】


282 : 名無しさん :2018/10/06(土) 22:45:38 I.xd14aw0
>>281

――――そう、言っていただけるなら、ありがたいです。やっぱりどうしても、家には母が居るものだから。気まずいの。
たまに図書館とかも行くんですけど、――今日は外で時間を潰してみたくって。――――あはは、ありがとうございます。だけど、大丈夫です。
他人様の手を煩わせるには、あんまりに個人的なお話なので、――。お気持ちだけ、いただいておきます。

【批難せず、かといって強く肯定されるでもない。問い詰められることがないのならば、それがきっと彼女にとって一番都合がよかった】
【だからこそ彼女はそれ以上の言葉を紡がない。相談――というかたちで、ありもしない不登校の実体験を語るではなく、いくらも遠慮するような声で、辞退する】
【かすかに困ったような憂うような笑い顔はそれでいて様になっていた。長い睫毛がそっと下向くなら、彼女の蒼穹とも大海とも似る眼を、そっと隠して】

特殊な侍女さん、なんですか? それとも今日が、たまたま特別なお散歩日和とか……。そうですね、とっても、お天気だと――。
――ううん、大丈夫です。ありがとうございます。こんなぼろですけど、東屋の中で日傘をお借りしたら、東屋が拗ねてしまいそう。

【そうしたら、そちらもまた事態するのだろう。ありがとうとはにかむ色合いはまだどこか拙い少女らしさを残して、頁を撫ぜる指の仕草だけが、ずうと止まない】
【それが止むのは、相手に本のことを聞かれたときだった。――はたと止まった指先が、数秒して、また、そろりと優しく撫ぜるなら】

――――――いいえ、まったく。読んでいても、意味だって分かってないんです。半分だって、分かっているかどうか……。
だけど、全然分からない本を読むのって、嫌いじゃなくて。私には分からないですけど、どこかの誰かが見れば、きっと分かるんです。
逆に、誰かがちいとも分からないことを、私が分かることだって、あるんでしょうから。意味の分からない本を読むと、そういう気持ちになるから、好きで。

それに……これは家の書架から持って来たんです。すぐに使わなさそうなものを見繕って。だからね、帰ったら聞いてみようと思って――。

【やはりどこか儚げな笑みで以って少女は首を横に振るのだろう。興味はなく、そうしてまた意味も分からない。覗き見る限りでも、初心者向けでないのは明白であり】
【ちいとも分かっていないと言う言葉を証明するように彼女は開いていた頁を容易く閉じてしまう。そしてまた適当な場所を開く。それでも理解度は何も変わらないのなら】
【誰かが分かっても自分が分からぬものを読むのが楽しい。くすくす笑うならばきっと本当に楽しげな表情を浮かべて、――次いで細めた瞳が、何か愛しいものを思い浮かべたように】

侍女さんは、興味があるんですか?

【――そうして、そのいたく柔らかな表情をのままで、尋ねるのだろう。柔らかに傾げた首の動きに、長い髪の毛が、ゆるりと揺れ流れて】


283 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/06(土) 23:43:00 6IlD6zzI0
>>280

【綺麗なタルトは、切り取られて尚その価値を失わない】
【差し出されたそれを無碍に払いのけるのは気が引けるから――】


もう……仕方ないなぁ。(ってこういう時どんな顔すればいいんだろ?……解らないや)
(あーもう!どーにでもなれっ!) んっ……あむっ……。


【瞳を閉じて、おずおずとタルトを口にする――その所作は、きっと気恥ずかしさから】
【生娘みたいな緩慢さ。刃を振るい、血に塗れ続けた人生ではじめての出来事だったから】
【おっかなびっくりの動作はぎこちなくて。"こういう経験"に乏しいと告げているに等しい】

【別に恋人同士ではないのに。何かしらの覚悟を決める必要も無いのに】
【口にしたタルトの味は羞恥心だとかで解らなくて、けどきっと甘くて、甘くて。そうに違いない】
【頬を赤らめて、ぷいっとそっぽを向けば。その仕草はまさしく子犬だとかの小動物そのもの】


ええい、うっさい。うっさい。誰がワンちゃんだ…っ!アンタだって、アリアのワンちゃんでしょーが!
でも……もう一口。もう一口だけ、……して貰っても……良い?(クセになっちゃう……反則だろ、コレ)


【もう一度とねだるくせに顔を背けたままのは何故だろうか――かえでに主導権を握られてるから】
【それに抗うような仕草はかえって逆効果で、火に油を注ぐ行為に他ならないのだろう】
【二人とも同じように甘い顔をしてるなら、同じような生き物であり、行き場を見失った迷子たちである】

……狡猾だね、尻尾を振って精一杯求愛してんのに降りてきたら首根っこ咥えて誘拐かぁ。
ああ、そうやってアンタも連れ去られて首輪がついたわけか。あの女らしい振る舞いだな。
………やろうとしてる事は、私も変わらないか。…つくづく同類だよね、私とあの女。

【だからジャ=ロを倒したあの日、相手を思い遣る言葉を口にしたのか。今なら少しだけ解る気がする】

【意中の相手を手に入れる術も、その思考回路も似ていて。エーリカ自身が望む在り方が目の前に在ったから】
【良しも悪しも全てぐちゃぐちゃに混ぜて纏めて愛する――それに否はないのだけれど。確かな相違点があったから】

―――……私もね、目一杯かどうかは解んないケド、可愛がったと思うんだ。
シーツを剥ぎ取れば一糸乱れぬ姿のあの子を押し倒して、ぎゅーって抱きしめて。
離れたくないって思って身体と身体を精一杯押し付けて、重ねたんだけど

【このタイミングで、甘い空気に水を差す珈琲がテーブルに置かれて、雨足もさらに強くなって】
【……ここから先は苦くて苦しい話になるのだろう。エーリカの姿は懺悔室に足を運ぶ迷える子羊みたいに】
【背けた顔は今やかえでと向き合っていて。それでいて、視線は落としていた】

……離れちゃったんなら、きっと未だ目一杯にはほど遠かったんだろうね。
それ処か、あの子に送り出される始末だ。「だめなひと」って詰られながらも「嫌いじゃない」って言われて。
今さっきのアンタみたいにどっちつかずの顔をしてたっけな――虚神でもあるくせにね。

【"カチューシャ"は、"虚神・エカチェリーナ"であり"カチューシャ"でもあるから性質が悪くて】
【自身の思いを告げたあの日、掴ませておいて手を離されたのが痛くて辛くて苦しくて仕方なかった】
【人であるなら根こそぎ愛せる。けれど人が神を愛する構図は想像できなくて――】


ねぇ、聞きたいことがある。神様ってさ信仰の対象であっても、愛する対象になるのかな?
私は神様を信じたことが無いからわからないんだ。私が好きなあの子は神様でもあるから……さ。
仮に愛せるなら神様の愛し方ってどうするんだろうか?……解るなら、教えてくれないかな。


284 : 名無しさん :2018/10/07(日) 01:03:22 I.xd14aw0
>>283

【そうして差し出したタルトが、相手の口中に消えていくのなら。きっと少女の顔はいくらもあどけなさを増すのだ、そうしてどこかに既視感がある、気がして】
【動物園でヤギに枯草をあげる子供みたいな。檻の中のハムスターにひまわりの種をあげる子供みたいな。そういう――もちろん相手を見下しているわけなんてなく、】
【かわいくって愛らしい。そういう快いだれか/なにかに食べ物を与えてみたい、だなんて、きっと、人間の本能だから】

【――「もう、仕方ないですね」なんて呟く声音は、ナパージュの艶めきよりも艶っぽく聞こえるのかも、しれなくって、だけど、もう一口って強請られるのなら】
【ぱちりっと瞬きをするんだろう。もう一口まで強請られるとは思っていなくって。――「もう、最後ですよ」って嫌にお姉さんぶった声、さっきより大きな一口分を差し出す】
【そうやって食べさせるなら、――「あとは私の分です」だなんておすまし顔で自分の分を食べだすのだろう。そのフォークが同一個体であるのは、さも当然みたいに】

――――――――――――――――――私ね、"儀式"の日に、アリアさんのこと、本当に、ほんとうに……殺す、つもりだったんです。

だのにね、出来なくて。負けちゃったのも、あるんですけど、でも、……でも。あと少しで、私、アリアさんのこと、殺すことだって、出来たのに。
そうしたら、きっと全部うまく行ってた、――全部……、――――、――そしたら……。……そんなことないって、分かってるんです、関係ないって、でも、
そうできていたら、アリアさんのこと、私がちゃんと殺してれば、――ウヌクアルハイ様だって、こんなふうに、ならなくて……、みんな――死ななかったんじゃないかって、
ウリューも。マルフィクさんも。みんな……。その時の私はそれを知らなくても。……そうするのが、正しい私だから、だから……なのに……。

【――――ことんと机に置かれる珈琲の香りが揺蕩って、】
【そうしたらきっと彼女が言葉にするのは、だけれど、相手の言葉を聞いたうえでのものにしては、ルール違反が過ぎるって思わすのかも、しれない】
【洒落た装飾が施されたフォークを皿に置くのなら。――話すのはいつかの日だった。そうしてちょうど、エーリカと、その意中の人が、話をした日でもあり】

――アリアさんがね、私を殺したら、もう二度と、誰も、私に、笑って、くれないって……、
…………私、それが、こわくて、すごく……、――すごく、怖かったんです、だから……、殺せなくて、私、

でも――――でも、"こうやって"生きてる、私を……、みんなはきっと、赦してなんてくれない――。

【いつか――いつか、少女は、彼/ジャ=ロ/ケバルライの前で、よく分からなくなってしまったと嘆いて言ったことがあった。それで何か答えをもらえていたなら、きっと、違った】
【けれどそうやってふらつく自意識を再び蛇に傾倒させるまでの答えを彼はくれなかった。――それもまた彼女が"こう"なった理由の一つであるなら、】
【きっと裏切ってしまったと思っているに違いなかった。引け目と負い目に苛まれているらしかった。――そのくせ、それらは、好きな人の前では見えなくなってしまう】
【それほどまでに好きな人。だからこそ、――】

/分割で!


285 : 名無しさん :2018/10/07(日) 01:03:38 I.xd14aw0
>>283>>284

――――――――私、だって、何度だって逃げたのに。

【非道い言葉と圧倒的な力で揺さぶられ続けたと仄めかす。何度も離れて。殺すって誓い合って。だけれど殺せなくて。殺したくなくなって。唇をぎゅうと噛むのなら】
【悲痛そうな吐息がかすかに詰まる、――そうしてまた伝えるようでもあった。何度だって零れ落ちて来るまですればいいって。それが、――自分のされたこと、だから】

――――分からないです、よう、そんなの、だって……私……、何も、知らなくて。……いくつかの資料を見て。それでも私の知っていることなんてほとんどなくって……。
私たちはウヌクアルハイ様を信じてて、――――だけど、愛する方法だなんて、知らない……。 

【――そうして問いかけに答えるだけの言葉を彼女は持ち合わせなかった。そもそも虚神という言葉すら、ごく最近になってようやく知ったばかりであり、】
【それを愛する方法だなんて知らなかった。まして、少女はその神の人となりを知らなかったから。神に対してのアドバイスも、人に対してのアドバイスも、ただ不明瞭であり】
【ただ今更でしかない恨めしさを口に出すのに精一杯になってしまう。ぎゅうと指先を喰い込ますように添えたのは自身の左腕、――きっとまだそこに蛇が居るのなら】

【――――――「だから助けてくれなかったのかな」】

【なんて小さな呟き声は、ひどくひどく自嘲するように。神様が居ないなんてことは、それでもなお、この後に及んで、信じたくはなくって】

【――「白神鈴音に聞いてみたら分かるかも、しれないですけど」、だなんて、幾分もやけっぱちの声。相手の問いかけにも、自分の問いかけにも、その言葉で返答をするから】


286 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/07(日) 19:12:46 t.zVdwL60
【水の国・ラグナール】

【ここ港湾部は、海運業を中心に栄えるエリアであれば、先刻到着した船の付近では多くの人や荷物が行き来している】
【あちこちから大きな声のやり取りが聞こえる中、その往来から少し外れたところに青い顔をしてしゃがみこむ人影】

ぅぅ…………貨物船でもいいから乗せてくれなんて言うんじゃなかった……気持ち悪い……

【大きめの白のワイシャツに緩めた黒ネクタイ、細めのジーンズを履いた、線の細い青年、といった風貌】
【しかし銀のショートヘアは潮風に乱れ、榛色の瞳も虚ろな気色で、調子は頗る悪そうであった】

しかしこの街、機関に手酷く壊されたって聞いてたけど意外と栄えてるじゃないか。
人も多くて賑やかだし……今度は人酔いしそうだ……。

【周囲を軽く見渡せば、飛び込んでくるのは活気に満ちた光景。復興を続ける街は逞しく】
【一方で青い顔のソイツはと言えば、傍らのキャリーバッグに顎を乗せ、魂まで吐き出しそうな溜め息を一つ】


287 : 名無しさん :2018/10/07(日) 21:11:07 jhwxTprc0
>>286

【忙しそうに行き交う人々の群れの中にしゃがみ込むのなら、向こう側に見える人々の足取りはあるいはまったく違う生き物の一部にでも見えるのだろうか】
【まして港のすぐそばであるのなら、異国より訪れたのだろう人間のあまり嗅ぎ慣れぬ香水の匂い、或いは聞き慣れぬ異国の訛り、あるいは、あるいは、――なんて】
【具合が悪い時に見るにはいくらも情報過多なのかもしれなかった。――だって、元気な人間が見たって、あんまりに賑やかで活気がありすぎる気もしてしまいそうだから】

――――あれ、お兄さん、大丈夫ですか? 死にます? 救急車でも呼んであげましょうか? 

【――であれば。適度に人の流れから外れた場所――それこそ彼がしゃがみこむような――を求むる誰かが居てもおかしくはないのだろう】
【結果として彼に掛けられる声はきっと甘やかで涼やかな色合いをしていた。年頃の少女らしい瑞々しい声音はたあぷりと蜜を湛えるスズランの花のようにも聞こえ】
【けれどとかく確かであるのはいくらも優しげな温度をしていることだろう。――見るのなら、やはり声を裏切らない程度にはあどけなさを残す少女が、佇んで】

【――――真っ新な白色の髪は腰元まで届くもの、いくらか長めの前髪の毛先のすぐ下には蒼穹と大海の隙間にあるような深い青色の瞳が瞬いて】
【真っ白な肌にはほんの少しだけのお化粧の色合いを乗せて。細い首筋にはレースのチョーカーをきちんと結わえ付けるなら】
【甚く豊かな胸元をきちんと押しとどめるシャツの胸元のボタンはいくらも洒落たもので、それからハイウェストの全円スカートもまたお上品な長さをして、】
【手元は長いグローブ、足元は厚手のタイツをひどく肌を隠しているのが目立つ少女だった。足元はいくらかかかとの高い靴であったから、身長は百七十を超えるほど】

お水でも飲みますか? 買ってきたげますよう、お茶とかがいいなら、それでもいいですけど――。冷たいのと、暖かいの、どっちがいいですか?
まあ、お湯って多分売ってないんで、お水が良かったら、自動的に冷たい奴になりますけど。コンビニなら、常温のやつ売ってますけどね。たまに。

【それでも相手に合わすように身体を折るのなら。――くすと笑うような微かな吐息も相手の耳元に音として届くのだろうか、垂れる髪を耳にかけ】
【もう片っ方の手はそうっと自分の膝に添えられているのだろう。――本当に彼が欲しがるようなら、彼女はきっとそのまま買いに行くと思える程度には、優しげな声であるなら】
【――それでもいくらか不審ではあった。信用するかどうかはそのまますっかりと相手に委ねられるから、――相手の答えを待つように、彼女は緩やかに首をかしげて】


288 : タオ=イーレイ ◆auPC5auEAk :2018/10/07(日) 21:45:21 ZCHlt7mo0
>>268

確かに、出動できない警察や軍隊に意味がない様に、動く事の出来ない機関ってのは、あなたにとって辛いものなんでしょうねぇ……
そりゃ、どうであれ『変化』に期待したいっていうの、分かるってもんですよ……
――――神々について、ね……さて、そっちの方面からアプローチを考えてみるのも、アリって言えばアリなんですかねぇ……

【なんだったら劇薬だとしても構わない。それでも『きっかけ』が欲しいのだ――――ペレグリーの言葉を解釈すると、恐らくはそうなるのだろう】
【どうやら、ペレグリーはペレグリーとして、そこに何らかの積極的な理由を見出しているらしい】
【そこのところを胸に留めながら、イーレイは改めて、グランギニョルの神々の事に思いを馳せる。今の世の中の裏を、そっちの線から探るのも考慮すべきか、と】

……そりゃまたなんとも、カオスって来てますねぇ……虎穴に入らずんば、なんていいましたけど、本気で危険な地帯になりつつあるようで……
1人で十分、なんて強がってる場合でもないんでしょうね、こりゃ……

【ボディーガードを依頼するなどは、それこそよっぽどの事がない限り、する事もないだろうが――――それだけ『よっぽど』の場所なのかもしれない】
【冗談めかそうとしながらも、どこか中途半端にイーレイは考え込んでしまう】
【やはり、勇み足になりかねないこれは、最後の手段と考えるべきなのだろう、と――――】

やれやれ……それもこれも、うちに来ることがあれば、歓迎しますよ?
そういうマッサージなんかは、得意中の得意ですし? うちに盗聴器仕掛ける様な『命知らず』は、そもそもこの世にいないはずですし、ねぇ?

【逆に冗談めかす態度のペレグリーに、どこか呆れたように肩をすくめながら、イーレイは言葉を返す】
【もしもこの先、共同戦線を張るなら、の話だが。それなら多少の犠牲を払っても、協力する事は吝かではない】
【その答えが出るころには、自分の立ち位置や情報も、より確固たるものにしておかなければならないだろうが――――】

ふっ……そうですねぇ。今の情勢を楽しめるのは、今だけですよ?
ま、頑張りましょうって事です……為毎个人,為自己?(お互いに、自らの為にね?)

【自らが口にした『切り札』を頭に描きながら、イーレイは笑顔と共に去っていく】
【結果が出るのを待つ楽しみは、結果が出るまでしか味わえない。この世界がこれから先どうなっていくのか。その渦中にいる感覚は、今だけのものだ】
【勝つにせよ、負けるにせよ。自分に自信があるならば、その中でも笑っていようと。それこそ『女王』の様な傲岸さで】

【――――どこまでも、自らの為。自信に満ちた態度で去っていくイーレイの背中は、1人だった】

/遅くなりましたが、乙でしたー!


289 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/07(日) 22:27:40 qpY1SMsA0
>>287

【行ったり来たり、行ったり来たり……ああ、あの人さっきも通ったな――などとぼんやりと】
【一瞬、何かが上がってきたけど気のせい。何でもない。でも死にそう。「死にます?」俺死ぬの?】

…………いやいや、船酔いで死ぬやついないでしょ……って、ん?
ああ……君、俺に話しかけてた?ああ、うん……大丈夫、大丈う゛っ……。

【虚ろな顔で声のした方を見て、初めてソイツは彼女に気がついたようで。「大丈夫」と言ったその直後】
【何だかよくわからない声を出して口元を抑えたりしたように見えるけれどきっと気のせい】

【――――ちなみに、指とか爪とか妙にキレイなのは余談である。】

水、水…………水、うん。そうだ、水だ。こういう時は水だ。
ごめん、頼んでいいかな……これで足りるかな。

【ちゃんと話を聞いているのか、それともただ耳に入った単語に反応しているだけなのか】
【未だぼんやりとした顔のまま、ポケットからいくつかの硬貨を取り出して差し出すのだろう】
【――たとえ彼女に不審なところがあろうとも、それに気づく様子はなかった。というか、そんな余裕は無さそうだった】


290 : 名無しさん :2018/10/07(日) 22:55:44 jhwxTprc0
>>289

船酔いなんですか? 今知りました――、まあ死なないなら良かったです。死体の第一発見者って面倒くさそうなんで……。
――――んん、吐きます? 私見慣れてるんで大丈夫ですよ。どうぞ遠慮なさらずに、――あ、袋とか持ってないんで、それは、ご自分で何とかしてくださいね。

【彼の向かい側にしゃがんだ彼女は、――ちょうどキャリーケース越しに彼と相対するのだろう、お行儀いい長さのスカートの後ろ側を地面に引きずるなら、大層行儀が悪いけど】
【気にした風でもなく、膝小僧にちょんと指先を揃えた掌を並べて首をかしげる、――確かにそれではあまり死なないかな、とでも、思ったらしい】
【はたりと瞬いたまなざしがけろっとした色合いに置き換わるのに時間はかからなくって。それでも相手を放ってどこかに行くようなことはないまま、留まるのなら】
【ペン立てに刺さってるボールペン取ってくださいって言われて「いいですよ」って言うような温度感で吐いていいですよ――なんて、これも、けろりとした様子】

【――整えられた指先には、今のところはあまり興味がないらしかった。「背中さすりましょうか――?」だなんてもう、吐くの前提みたいな、顔をして】

まあ、水分入って吐きやすくなってうっかり、っていうのもありますけど――、ん、お金ですか? 別にいいですよ。
地下ダンジョンで水売ってる市長とかじゃないんで。――まあ、でも、押し問答してもあれなんで、じゃあ、お言葉に甘えて。

じゃあ行ってきます、多分数分で戻りますよう、遅かったら迷子になってると思ってください――。

【冗談めかす声。それでいてきっと彼にとって冗談になりそうもない言葉に違いなかった、それでも相手が硬貨を取り出すのなら、一瞬、辞退しかけるのだけれど】
【あんまりにやり取りをしてもと思い直すのなら、素直に硬貨を受け取るのだろう。そうして笑って立ち上がるのなら、少し不安な/けれど限りなく冗談の声音、置き去りにして】

【――――実際に数分で彼女は戻ってくるのだろう。近場のコンビニのものと思わしきビニール袋を揺らして】
【そうしたら彼が縋るキャリーケースの上のところに袋ごと、とすんって置いてしまおうとする。――水だけ、にしては、いくらか、物が多いような気がして】

買ってきましたよう、後は酔い止めの飴とかもあったので。遅いかもしれませんけど――、まあ、ちょうどあったので。プレゼントです。

【受け取った硬貨が水を買うのに多かったなら、その分は釣りとして返すのだろう。足りずとも何も言わなくて、そうして、水以外の分の値段だけ無くても、やはり何も言わない】
【指定された水の分だけは確かに受け取った金で買ったらしかった。それ以外は言葉通りに彼女の奢り、であるらしく――袋を見るなら酔い止めの飴と小瓶のドリンクが多い】


291 : カニバディール中身 :2018/10/07(日) 23:26:26 JlI243l20
>>271
来週末辺りまで置いておきます!


292 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/08(月) 00:29:04 TDBBVNyc0
>>290

【はてさて、どうやらやはり、話の全体を聞いて応答しているわけではなかったらしい】
【目の前から語りかけられる言葉に対して、「んー」とか「あー」とか答えになっていない答えを返すばかり】
【その中で唯一、意味のある言葉を返したのは「吐かないぞ……」というもの】
【それに関しても、彼女に言っているのか、自分に言い聞かせているのか、定かではないのだが】

【……とまあ、そんなこんなで硬貨を渡せば、彼女の冗談めいた言葉に返す余裕もなく、また俯くのだろう】



【――――数分後。】


【潮風に吹かれていたおかげか、ほんの少しばかり、マシになった顔色でソイツはそこにいた】
【吐いたのか、と思うかもしれないが、辺りにそんな痕跡はないし、そもそも吐いたにしてはまだ顔色が悪くて】

【――置かれた袋。取り出したペットボトルのフタを開ければ、勢いよく流し込んでいく】

――――っは……。ちょっとは気分もマシになったかな……
あーーー、助かった。おかげで人前で吐き散らかさずに済んだよ。

【口元に零れた水を手の甲で拭えば、出てくるのは如何ばかりか覇気の戻った声】
【固まった身体をほぐすように、首や肩をぐるりと回してみたりして】

【――ちなみに先ほど手渡したのは、水を買うには多いが、袋の中身全て買うには足りない程度の金額】
【彼女が水の余剰分を返そうとするのなら、それを押し留めるのだろう】

いやいや、寧ろ足りないくらいだけど、取っといてよ。
金に余裕のある身って訳じゃないけど、出てきていきなり甘えてばっかりいるのも何かヤだし。
飴とかがプレゼントだって言うなら、その分は俺の感謝の気持ちってことでさ?


【見れば、近くに停泊している船は国内の輸送に使われるものではなく、櫻―水間の海運業者のものらしかった】
【となれば、今更のように銀の髪を整えているコイツもきっと、櫻の国からやって来たのだろう】
【―――旅行客にしては、キャリーバッグは随分と小さくて。】


293 : 名無しさん :2018/10/08(月) 00:48:27 jhwxTprc0
>>292

【――――かさり、と、コンビニの袋を彼に託すなら。彼女はきっと彼の隣のあたりへ、付き合うかのように腰を下ろすのだろう】
【垂れる分のいくらかを足とお尻の間に挟んでなお地面にわずかに触れてしまうスカートをやはり気にもしないまま、丁寧に膝小僧を合わせて】
【一気飲みにいくらも近いような勢いで水を流し込む彼を見るでもなく見るんだろうか、あんまりに凝視してやるのも、なんだか悪いような気がするならば】

――そうですか? 良かったです。あはは、まあ、港町なら慣れてるんじゃないですかね? ――あ、でも、繁華街の人の方が慣れてますかね。
どうでしょう。――あれ、いいのに。女の子の親切は受け取っておいた方が、あとでフラグが立つかもしれないですよ?

とはいえ、私、普通に好きな人が居るんで、"そういう"のはダメですけど。……。

…………ああ、じゃあ、後で募金箱にでも入れようかな。みんなWinですよね。どっかの子供も水が飲めますように、井戸のやつにしよう。

【だいぶ気も紛れたと聞けば、彼女はきっといかにも少女らしいような表情で笑うのだろう、真っ白の髪に白磁の肌。ひどく儚げな容姿は、けれど、いくらも嘘らしかった】
【水平線の色合いをした瞳が瞬けば、続く言葉は冗談めかす色合いで。――きっと黙っていればそれなりに薄幸そうな顔をしているのに。それが惜しいかは、人次第だけれど】
【釣りを押し留められるのなら、幾分か渋るような顔をするのだろうか、指先でひいふうみいなんて金額を数えて、「――もったいないですよ」なんて、】
【――呟いた声が、何らかの思いつきに曖昧な語尾だけを残して途切れる。であればひどく心優しい少女なのかもしれなかった。よほど悪人には、見えぬのかもしれなくて】

どうですか? ――ほら、一応、他人様のお金なので。ふふ。旅行の方ですか? 移住?
どちらにせよ観光名所とか道案内とかは、――多分、もっと詳しい人に聞いた方がいいです。私も、最近、住所が変わったばっかりで。
探検しに来たんです。そしたら、死にそうな人を見つけたので――。それでも、駅くらいまでなら分かりますよ。えへん。

【駄目と言われたらどうするのだろう。きっとあんまり考えていなかった。事実、直後に彼女は彼がどんな風な目的でここまで来たのか、を尋ねるのだから】
【それでいて、思いついて挙げてみたような人達の助けにはなれぬ人間だとも伝えていた。――彼女もまた新参者だから、なんて。だのに無意味に得意げな、顔をする】


294 : 名無しさん :2018/10/08(月) 02:07:45 jhwxTprc0

【――――きっとこんな朝を迎えるのも、いくらか慣れてきた頃合いであるのだろう、】

【夜中に覚醒していない意識のまま寒いと訴えて引き摺り寄せた毛布にくるまってぐるぐる巻きのミイラみたいな寝姿の少女、】
【それでいて愛しい掌を世界で一番の宝物みたいに両手で包みこんで、――姫君の掌に唇を落とす近衛騎士のように、唇を埋める、あどけない寝顔、】
【アラームの時間は模範的よいこの時間であるに違いなかった。目覚めは比較的良い方で、起きたら必ず水を飲みたがる。ようく冷えたのよりも、常温のが好きで、】
【だからきっと二人で一緒に食べる朝ごはんのお供は甘くした珈琲が好きだった。粉末クリームは山盛りにして気分で二つか三つ、お砂糖だってお山を一つ入れて、】
【そうでなかったら蜂蜜をとっぷり落としたホットミルク。そのくせ紅茶は何にも入れないストレートが好き。櫻風の食事の日はそちらの茶を飲むのも好きだったし、】
【好き嫌いはあんまりないけれども、生の貝類と烏賊は嫌いらしかった。生肉も好きじゃないと言っていた。「――なんか食感がムカつくんですよね」なんて言って、】
【「口の中の感じがムカつくんですよね……」なんて、さらに考え込むような神妙な顔をして重ねる、くらいには、特定のものは、苦手であるらしいけれど】

――――――ん、アリアさん、

【――かたん、と、カップを机に置いて。ちょうど空っぽになったタイミングだった、用意してもらった朝食をきちんと食べ終えて、それから少しだけ後】
【ちらりと時計を確認した目線が、それから相手の方へ向くのだろう。なれば相手が知らぬはずもなかった、時計の針はそろそろ出る時間だと伝えているから】
【よいしょなんて小さく呟いて彼女は立ち上がるのだろう。自分が食べたお皿を片付けて。あるいは食洗器でもあるなら入れてしまって、】

――ん、ん、――う、……はあ、……。――もう、お部屋がずうっと寒いから、身体が固まっちゃって……。
アリアさんたら、暑がりさんですね。私も、別に、寒がりじゃないと思ってたんですけど――、冬は暖房入れてくれないと、ヤですよ?

【ぐうっ、と、身体をめいっぱいに伸ばす。絡めた指先を限界まで伸ばして――ぱっと解放するのなら、背伸びのかかとも床に落ちて。柔らかな胸元が、一度だけ、微かに揺らぐ】
【そうして口にするのはいくらも不満の色合いをしているのに違いなかった。おんなじ風に組ませた指先を、そのまま、身体の前にも伸ばして――改善しろと詰めはしなくて】
【流しでコップ一杯のお水を飲ほすのなら、ただ、そんな要望は伝えておく。抱きしめてもらうだけじゃあ寒い夜も、これからの時期はそればっかりになるはずだから】

【――名目上は新人研修であった。本来であれば、どこぞの部屋で性格の悪い担当教諭が作った問題ばかり集めたみたいな紙面といくらかの時間睨めっこをすればよいはずの】
【そのくせにそれ以上を強請ったのは彼女自身。「――――あの、ついでなんで、一回くらい勝ってみたいんですけど」なんて、控えめな語調/内容は程遠く】
【であればデータとして改めて観測しておくに誰の文句もないに違いなかった。退屈な座学の眠気覚ましとするには永遠の眠りに近しい提案(わがまま)を、】
【けれど伝えるときの表情は、いくらか子供めく悪戯ぽい笑みであったから。――近頃、年頃に似合う表情をすることが心なしか増えている。気がした】

【――――とにかく。彼女はもうすでに着替えを終えてしまっていた。人前に出るでないなら、控えめなお化粧は省略して、】
【そして、いくらかあどけない顔にはそれで充分だった。――それに、何より、どれだけ可愛らしく塗りつけたとしても、きっと、駄目になってしまうって分かっているなら】
【準備が済んでいると言われるならいつでも出ていけるだけの準備は終えていて。――だから、相手の仕草を、待つのだろう。流し台に寄り掛かる足がわずかに、床を滑って】

/予約のやつです!


295 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/08(月) 22:46:20 BRNVt/Aw0
/>>267で再募集します!


296 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/08(月) 23:13:00 WMHqDivw0
>>267

――――――――まあよくもこんなに、テンプレートに誂えたみたいな人たち。
最近の世の中に出てこれたもんですね。いえ、尊敬はしてないんですけど――――
むしろその逆です。一生出てこないで欲しいんですけど、まあ。

【唐突に。暗闇に銀の光が輝いたなら、それはキラキラなんて可愛らしい擬音では彩られずに】
【射殺さんばかりの鋭さばかり孕んでぎらつく。その光は真っ直ぐ、真っ直ぐにならず者たちに向けられて】
【彼らが其方を振り向いたなら。一人、少女ばかりがそこに立っている、光源となっている一本の刀を手に】
【それと似たような剣呑な輝きを湛えた灰青の瞳を、ゆっくり、細めて。一歩一歩近づいてくる】

でも「わかりやすい」のは好印象です。……最近本当、意味のわかんない人ばっかり、
相手してましたんで――――首を刎ねたり胸を貫いたりしたら死んでくれる人、大歓迎です。

と、言うわけで……………………「何」されてるんですか? あなたがた。
まさかこんな路地裏で、そんな変わった生き物、偶然捕まえた――なんて言いませんよね?

【肩より少し低いところまで伸びた白い髪はそうそう棚引かない。入り組んだ路地裏、風もなかなか入らないから】
【だから着ている服の、柔らかそうなスカートの裾だって同じ。……だというのに、何故だか】
【少女の周りに散らばっている、白色の花弁のようなものばかり、ふわふわ漂ってはちらちら舞って。しかし】
【複数のそれらはいつまでも地に墜ちることはない。ずっと、中空で煌いては、時折「切っ先」を集団に向けて】

【――――言葉の終わりに少女が刀の先を、向けたなら。その動きすら止まってしまうのだけど】


297 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/08(月) 23:51:43 /IOqFynk0
>>293

【改めて深呼吸。海からの潮の匂いが身体に染み渡るように広がっていく】
【息と一緒に再来した何かを吐き出しそうになったりしてはいない。断じていない。】
【そんなことをしながら彼女の言葉を聞けば、半ば呆れたような顔をして】

ははは……フラグ、ね……。そういうのはいいかな……。彼女探ししに来たわけじゃないし
そのお金に関しては、君の好きなようにしてよ。もう手元を離れたもんだし、そこに注文はつけないって。

【彼女の冗談に苦笑いしつつ、袋に手を突っ込めば、取り出すのは例の飴。一つを口に放り込んで】
【釣りの使いみちに関して口にするならば、すべて一任するとして、小さく首を左右に振るのだろう】

【そうして手にした飴を彼女に向けて、「一つどう?」なんて様子で首を傾げてみせたりもして】

―――いやあ、旅行じゃないし、移住ってのも何か違うかな……
実は兄貴を探しに出てきたんだけど、全然情報持ってなくて。ギルドか何かで仕事しつつあちこち探してみようかな、って。

ま、そんなんだから、とりあえず大きい街――フルーソにでも出てみようと思ってるんだ。
というわけで、駅まで案内してもらっていいかな?

【人探し。それも、アテもツテもない捜索行だという】
【端から見れば、それはきっと無謀極まりないものだろう。無数に存在する国、そこに息づく膨大な人の群れ】
【その中からたった一人を探し出す、などと。しかし、それでも。本人は至って真面目らしかった】

【そうして口にするのは、水の国最大都市・首都フルーソの名】
【向かう術ならいくらでもあるのだろう。それこそ、適当に歩いたっていつかはぶつかるくらいに】
【それでも道案内を頼むのは、彼女の顔を立ててのことか、或いは、よっぽどの方向音痴か。】


298 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/08(月) 23:52:15 BRNVt/Aw0
>>296

【突如路地裏に響いたのは年若い女の声。男達は「あん?」だのと声を上げながらそちらを向いて】
【そうして捉えたのは一人の白い少女の姿。刀を手にしたその姿に一瞬彼らはたじろぐが】

「何、って……商売に決まってんだろ?」
「そうだ、こいつが檻から逃げ出しちまったもんで慌てて此処まで追っかけて来たんだが?」

「……ほら、嬢ちゃん俺達ぁ忙しいんだ!これから取引先に向かわなきゃあなんねぇんだからよぅ、用がねぇンなら行った行った!」

【花弁の切っ先を向けられているのにも関わらず男達は「刀を持っていようが所詮は女子供」とたかを括ってでもいるのだろうか?】
【若草色の生き物が時折キィ、と小さく鳴くのを煩そうに見やりながらも少女に向けてしっしっと手で追い払うような仕草までして】


299 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/09(火) 00:04:16 WMHqDivw0
>>298

商売。…………商売ならこんな暗いところでコソコソしなくたっていいですよね?
それにそんな、きれいな毛並みの……いぬ? ……違うな、たぬきかな。
どっちでもいいですけど、そんな色した子なんて見たことないんですから。

お天道様に見せられないような「商売」されてるんじゃあ、ないでしょうね?

【訊いておきながらも。答えはほとんど求めていないようだった、だって彼女はもう行動に移っている】
【切っ先を向けたほう――視界の先、けものの収められている檻のほうへ。ちらと視線を遣ったなら】
【静止していた花弁が一枚、風切り音すら立てずに。一条の光の筋を夜闇に曳いて、飛んでいくのだから】
【――それは刃だった。剃刀ほどの薄さ、人間の中指ほどの長さ。それが高速にて、一直線に】
【檻の鍵――錠前か何かで閉じられているんだろうか。とにかくそこを目掛けて、打ち壊さんと、飛来する】

【そうしながらも。彼女は刀を下げないまま、一歩一歩と確実に歩みを進め。男たちに近寄っていく】
【「まだ」こちらからは大きな動作で仕掛けない。ただ、相手の出方を見定めるように――瞳は、凪いでいて】


300 : 名無しさん :2018/10/09(火) 00:16:30 Sj9Fd2ro0
>>297

……あれ、そうですか? 残念です、私、これでも結構可愛い方だと思うんですけど、――。まあ、いいや。
じゃあ、どこぞで井戸を掘る資金になっていただくことにします。出るといいですねえ、井戸。まずそういう募金があるのかどうかからですけど――。

せっかくなのでいただいてみます、ありがとうございます。

【ちっとも残念そうでない声が漏れる、刹那にきょとんと瞬いて自分の頬に触れる指先はするすると滑らかな肌を南下して、やがて甚く豊かな胸元に辿り着く】
【その柔らかな双丘に無事着陸するのなら、その指先はほんの僅かな力であってもかすかに沈み込むほどで。そのくせ何一つ本気でない声、揶揄うためだけの音階をただせば】
【お釣りはいつかどこかで誰かの喉を潤すのかもしれなかった。きっとそういう募金もあるのに違いないから。――差し出される飴玉は、せっかくだから、と、受け取って】
【彼女もまた口に含むのだろう。酔いの「よ」の字もありはしないけれど、"せっかく"だからと――だってそんなもの初めて買うし、これからも必要とは思えないから】

ふうん、人探しですか? ――――お兄さん。見つかるといいですね、――だって、ほら、家族って大切じゃないですか。
心当たりとかもないんですか? それだと、――どうでしょう。そういう組織とかに頼った方が、いい気がしますけど――。
それこそ、ほら、風の国のUTとか。最近めっきり話聞かないですけど。私もそんなに詳しいわけじゃないですし、……ただあそこペットとかも探してくれるみたいですよ。

――あ、私はコネとか、ないですよ? テレビで見たんです。ギルドとかも、よく分からなくって。

【ぱちり、と、瞬いた眼が。わずかに瞠られるのだろう、――心なしか声がいくらも真面目な色になったように聞こえるのかもしれない、どこか感傷すら感じさせ】
【もしも何一つアテもツテもないようなら、そういうことを専門にしている集団に頼ったらどうだろうなんて提案もする。挙げる名はとある正義組織のもので、けれど】
【「今もちゃんとやってるのか知らないですけど――」と付け加えるのは、いくらも不穏さを演出するには十分だろうか、――まして、紹介できるだけのコネもない】
【それでいて彼女が真っ先にその名前を思い出した理由は一つあるのだけど、――それはコネと呼べるほどのものではないし、口に出すほどの、意味もないから】

いいですよ、もう少しくらい休憩してから、行きますか? まだダメなら、それでもいいですけど――。
――気晴らしがてら、ゆっくり行きましょうか。バスガイドの真似事でもしましょう、右手に見えるのはコンビニ最大手の……くらいなら、言えますし。

【――にこりと少女は笑って尋ねる、彼がもう大丈夫だと言うのなら、彼女は立ち上がるのだろう。まだ難しいようなら、変わらず同じ姿勢を維持するに違いなくて】
【揶揄うような声はそれでもなんだか楽しげで――「迷わないように祈りましょうね」なんて、きゃらきゃら笑っているんだった】


301 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/09(火) 01:29:11 BRNVt/Aw0
>>299

【現在地と捕らえられている生き物が珍しい毛並みである事をあげ、御天道様には見せられない商い──つまりは裏の商売ではないかと詰る少女に男達は図星を突かれた様にうぐ、と言葉に詰まり】
【その不意を突かれたのか男達に気付かれる事無く生き物が納められていた檻の錠前を花弁の刃が打ち壊す】
【当然の如くかちゃりと開く檻の扉。生き物はぴょんと地面に降り立ち】
【そこでようやく気付いたのか男の一人が慌てて生き物を捕まえようとする、のだが生き物はその腕をするりと抜けて表通り目掛けて一目散に走っていってしまって】

【このアマ……!と生き物を捕まえようとした男が唸る】

「手前ェの所為で商品が逃げちまったじゃねェか!どうしてくれる!?」
「おい!誰か彼奴追え!まだ遠くにゃア行ってねぇ筈だ!」
「"クラマ"の野郎本当に何処ほっつき歩いてやがんだ!?捕まえてくれてると良いんだが……!」

【その一声が切っ掛けのように口々に騒ぎ出し動き出す男達。生き物を追って表通りの方へ行こうとする者がいれば少女に詰め寄ろうとする者もおり】

「どンな手妻を使ったかは知んねェが関係ねぇ!ちィと痛ぇ目に遭って貰おうか!?」
【詰め寄る男達は手の骨を鳴らしながら少女を睨んで】


302 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/09(火) 02:18:37 sp5cBMG20
>>300

【彼女の指先の動きをしばらく見てはいたが、本当に何にも思っていないらしい、フ、と息を吐いて】
【「自信があるようで結構」、と小さく一言。ともすれば行き交う人の声に消えそうなくらい】
【それから、専門家に頼んでは、と言われれば、ゆるゆると首を振り、口を開く】

ひとに頼むには手がかりが無さすぎてね。
お袋の遺品を整理してたら、別れた親父のところに兄貴がいる、ってことがわかっただけで。
後は写真も名前がわかるものも、ぜーんぶ始末してたらしくって。
離婚したのも俺がガキのころだから、親父のことも記憶に残ってないし。どこか櫻以外の人だ、ってことしか。

【手がかり皆無。笑いながらお手上げポーズをして見せて、不意に立ち上がる】
【くるりと身を回せば、海の彼方へ視線を向けて。随分と光の戻った二つの榛色が、遥か遠くの何かを見つめる】
【ここまで何も情報が無いのなら、自分で探したところで、と思うのが普通だろう。けれど――】

―――ほら。不思議な力みたいなので惹かれ合って、巡り合うかもしれないじゃん?

【なーんて。と付け足すのは、無茶な話だと自分でもわかっているからだろう】
【だとすればきっと、兄探しも本心でこそあれ、一つの口実に過ぎなくて。】

いや、そろそろ行こうか。海の匂いも飽きてきた。……でもガイドの真似は遠慮しとくかな。

―――しかし、UNITED TRIGGERか。確かに最近名前聞かないねぇ……
ま、名前をよく聞くってことはそれだけ世の中が荒れてるわけだし、一概にそれが悪いとも言えないけどさ。

【キャリーバッグのハンドルを最大まで伸ばせば、さあ行こう、とでも言わんばかりに両腕を広げたりして】
【彼女が動き出したなら、キャスターの音と共にその一歩後ろをついていくのだろう】
【少ししてから、ふと思い出したように、先刻彼女が口にした名前をぶり返してみたりもしつつ。】


303 : ◆DqFTH.xnGs :2018/10/09(火) 13:52:15 E3LNhwWY0
>>279

【『怒ってもいいってコトをそもそも知らなかったんだろうな』】
【一瞬、ぽかんとした表情をした。そんなことが、あるんだろうか】
【でもきっとあるんだろう。そうでもなかったら、“こう”はなっていなかったんだから】


…………そりゃ、しょうがねぇな────しょうがねぇ

もっと…………もっと強く、言っちまえばよかったな。怒っていい、って──よぉ
知らなかった、ってぇのは…………思ってもみなかった

なんつぅか、よぉ────そういう、鈴音がどう考えてたのか、とかさ
その…………あたしは多分、あいつと付き合い短ぇ方だろうけど、よ…………
思いのほか、…………“分かってなかった”んだな、って思い知らされるぜ


あいつは優しくって、ふわふわしてて…………でもしょうもない悩み事、抱えてて────
優しすぎるっつぅか、ちょっと自己犠牲的なところがタマにキズ、っつぅの?
────“それだけ”、だと思ってた。正直なところ、…………な
ヒトだのそうじゃねぇだの、細ぇことにこだわってんなって…………思わなかったと言やぁ嘘になる

けど…………なんつぅん、だろうなぁ…………。うまくは、言えねぇ、けど
あいつの悩み事とか、“こう”なっちまった原因、つぅのは…………さぁ
あたしが思ってたより、根っこが深いんだろうな、って────ほんと、そう思う


【「もう、そうなっちまったらビョーキだな」苦味のある笑い】
【自分がしんどい時に他人を助けようなんざ、ひっくり返っても出てきやしない発想】
【それよりも、しんどくなった原因をどうぶん殴るかを考えるんだろう。自分なら】
【根が深いだけじゃない。その根っこが玉っころになって、あっちこっちで絡み合っている】
【そんな感じがした。もしかしたら自分の勘違いかもしれないし】
【思い違いであってほしい、とまで思う。──自分勝手な、鈴音へのイメージ】


そういうのは…………ただの死にたがりとか、底抜けのお人好しよりもタチが悪ぃ
流石は神さまになっちまったヤツ、っつうの?ぎゃは────

今の鈴音みてぇなのをなんとかしようと思ったら…………人生賭けるだけじゃ、足んねぇのかもな


【ゆるりと立ち上がる。「ほら、そのクソみてぇな映画。時間ねぇんだろ?」】
【こうしてさんざ喋っても、あと2時間半は何もしたくない気分】
【休息が必要なのは、何も鈴音だけじゃなかったようだ】
【それとさ、と続ける。ひどくバカにしたような汚い笑い方だった】
【「てめぇの目。きれぇなワケねぇだろ。ヤローの目が綺麗とか、ナルシストかよ」】
【ゲラゲラと下卑た笑い。遠慮も礼儀も、今頃どっかのゴミ山に埋め立てられているに違いない】


304 : 名無しさん :2018/10/09(火) 20:24:00 jgh3uXsU0
>>302

【がやがやとした空間の中では聞き流しておかしくない彼の言葉に、けれど彼女はにこり笑って、「毎日たくさん可愛がってもらってるので」だなんて、答えるんだろう】
【それなら"好きな人"とやらとはよほど良好な関係であるらしい。それでいて"こういう"口ぶりや振る舞いをするのはいくらも端なく思えるけれど】
【こういう性質であるのだろう。自分が可愛くて魅力的であるのを一定量信じていて、そうやって振る舞える人種。自信家と言えば聞こえもいくらかいいだろうか】

――――そうですねえ、だけど、案外どうにかなったりするものじゃないですか? そういうのって。
不思議な力だって信じてますよ、私。神様は――きっと私たちを見ていてくださっていますから。

【ふと立ち上がった彼を、彼女は変わらずしゃがみ込んだまま見上げるのだろう。まあるい瞳はくっきりと大きく、けれど、その眦はいくらも甘やかに垂れる造形】
【「見つかるといいですね」って言葉に嘘はなかった。本心からの言葉であるなら、浮かべる表情はしとりとした微笑で、けれどどこかで物悲しくも見える】
【家族について何か思うところがあるのかもしれない。それとも、神様について何か思うところがあるのかもしれない。――どちらもだ、なんて、口には出さないままで、】

あれ、要らないですか? 目で見て分かるものでよければ、言えるかなって思ったんですけど――。まあ、要らないなら、いいです。

――私、よく知らないんですよね。正義組織とかって、――その、あんまり興味ないですし。ただ、リーダーがすっごいテンションだなって言うのは知ってます。
どうでしょう、案外――世界はめっちゃヤバいのに、内情の方がヤバくて何にもできなくって沈黙してるとか、あるかもしれないじゃないですか?
そしたら人探し頼んでる場合じゃないかもしれないですね、――まあ、私で良ければ、人込み歩くときにでも気にするくらいのお手伝いなら吝かではないですが。

でも、手掛かり、ないんですよねえ――。

【そうして彼女もまた立ち上がるのだろう。よっこいしょって声を漏らす、別にどこも痛まないような年齢だのに――身長は靴も含めて百七十をいくらも超えるほどなら】
【彼の身長によっては割合目線の高さも合うのかもしれなかった。未練がましく/冗談めかして「ほらコーヒーショップですよ」なんて、雑も過ぎる徒歩ガイドを述べれば】
【いくらか先導するような温度感と速度で彼女はこつこつと歩き出すのだろう、某組織のことになれば、名前を挙げつつも、詳しい事は何も知らない、だなんて】

【――――言いながら巡らす思考は、下卑たワイドショーの根も葉もない噂の一説を唱えるような口ぶりとよく似ていた、だって、】
【正式な面子でなくとも給仕の一人が行方不明になっているはずなのに、一度だって組織立って"自分たち"に立ち向かってはこなかったのだ】
【頻繁にではなくとも時々テレビで見かけていたリーダーも長い沈黙を保っているなら。きな臭いもここまでくれば困ってしまう、口に出せない/出す気は、ないけど】

【――ふと思いつきのような声音でそういう提案もする、実際に視線を巡らす仕草をして】
【けれども顔も名前も分からぬのであれば、第三者である自分にはより一層分からないだろうか、と、――ふわ、と、溜息よりも柔らかな吐息を漏らす】

もうちょっと何かあればいいんですけどね。ほら……なんでしょう……、一卵性の双子とかなら、多分私でも見て分かると思うんですけど。

【――時々ちらちらと振り返って来るのは、彼とはぐれてないかの確認であるらしかった。そうしてまた、体調不良がぶり返してはいないかと、確かめるように】


305 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/09(火) 21:23:32 WMHqDivw0
>>301

いいですね。本当に。わかりやすい悪い人、だあい好き――――殺せば死ぬ人だあいすき。

【狸が脇を通って表通りのほうへ逃げていくなら、唇の端を吊り上げて笑って】
【わかりやすい悪い人、なんかより余程物騒なことを言うのだ。そうして、逃げ行く獣を追う誰かが居るなら】


――――――――「クラマ」ってのが貴方方の、頭領?


【またしても夜闇に銀が閃く。音もなく花弁が向きを変えて飛んでいく、獣を追う男たちに向かって】
【きっとこんな小さな刃、肌に掠めたところで、獣に爪で抉られるよりはよっぽど軽い引っかき傷しか残らない】
【そう思って、重く考えないなら。きっとドツボにハマるんだった、――その刃で傷をこさえたなら】
【そこからじわり、じわりと――不快感が広がっていく。たとえば吐き気とか、頭痛とか、眩暈であるとか】
【けれど死には至らない、本当に些細な不快感が、しかし確実に、傷を負った者に対して平等に。与えられるのだ】

【取り囲まれても少女は一歩も引かない、怯まない。寧ろ瞳に宿す剣呑な光を強くして】
【訊き返す。「クラマ」なる人物のこと。そいつが何かしら重要な人物であるのだと辺りを付けたら】
【ならばそいつが来る前に「片付け」ないと。そう思って、刀を、振り下ろすけど――――】


306 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/09(火) 21:34:26 WMHqDivw0
>>303

………………しょうがないよねえ。おれも「知らなかった」し、そんなん。
何回だって殺されて何回だってスキな人に裏切られて何回だって間違われて、
そんで今だってこうなっちゃったんなら、まあ――――仕方ない、……なんて、言いたかねえけど。

【まるで「知っている」かのような口振りで喋る。表情だって似たようなもので、】
【何もかも見てしまった、あるいは見せられてしまった。そう言いたげな――やりきれないような顔】
【病気、と言われれば、「本人もそう言ってた」。力ない返答ばかりが零れ落ちる】

そーだネ、…………カミサマを助けるって、レーセーに考えてみたら
逆じゃね? ってなるもん。カミサマがさ、ヒトを、助けてくれるのがよくあるハナシじゃん。

………………人生、一回分だけで足りると思う? おれはねえ、絶対足りないと思うんだあ。
それこそ永遠、永久、輪廻の果てまで使い果たしてもまだ足りないと思う。
そんくらい賭けなきゃ――きっと、あの子は、「ふつう」に生きてもいいんだって、
気付いてくれないと思うなあ。……、……足りねーなあ。おれわりと長生きできる自信はあったんだけど、

【「ダメだなあ」 ――――その五文字を口にすることだけはなんとか止めて、というか】
【その前に口を閉じてしまう。目を丸める。クソ映画の話になったから。まさか本当に行くとは思ってなくて】
【ああうん、と返事をしようとして――――ぷは、と笑った。「ひっでえ!」】

いいじゃんちょっとくらいキザってくれてもさあ――――そんくらいの遊び心が、イマは欲しいんでしょ?

【「走んないと間に合わないかもお」。壁に寄りかかるのをやめて、とんとん、ゴムの靴底で地面を蹴る準備】


307 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/09(火) 22:35:39 BRNVt/Aw0
>>305

【唇の端を吊り上げて笑う少女。何やら物騒な言葉が聞こえた気がしないでもないが気にはしていられない。男達の何人かは獣を追おうとして】
【そうして少女の目論見通り肌に刃をかすらせるのだろう。少しだけ痛みが走る程度、気にもせずまた一歩踏み出して】

【その足が踏鞴を踏む。少しずつ広がっていく不快感に苛まれながら】

「ぐぁ……」
「て、手前何しやがった……」
【口を、目を、頭を押さえて、或いは壁にもたれ掛かって動きを止める男達】

【突如具合を悪くした男達の名を呼び、何があった、まさかこいつ能力者かなどとざわつく残りの奴等。すっかり怖じ気づいてしまったようで】
【クラマという人物が頭領なのかと訊ねられれば一人が顔面を真っ青にしながら答える】

「そ、そんな訳あるか!彼奴はただの同僚に過ぎねぇよ!一緒に来た筈なんだがあの餓鬼どっか行っちまいやがったんだ!」
「な、なぁもう良いだろう!?答えたんだからその刀を」

「お、ろ…………?」
【言いかけた瞬間、振り下ろされる刃。ぐちり、と嫌な音がして。なんだこれ?というように斬られた男は己が身体を見て】

【──べちゃ】

【小さい筈の音をやけに響かせて倒れ臥して】

【それからは堰をきったような大騒動。男の名前を呼ぶ者、仏に祈る者、泣き叫ぶ者、様々で】

【ただ一ついえるのは奴等は完全に戦意を喪失したみたいで】


308 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/09(火) 22:55:31 WMHqDivw0
>>307

――――――――あ、死んだ。うん、これだ、これこれ、この感触――

【舞い散る血飛沫を浴びる白い髪、白い肌。それを気持ち悪いとすら思わずに、むしろ】
【ふ、と頬を緩めて笑うのだ。ゆるやかに開いた唇から熱い息すら漏らして】
【それで「次」を見定めようとした、けど――ふっと首を横に振って、火照りを冷ます】
【あんまり暴れても、よくないと思って。だって今や飼われる身だし、怒られてしまう、だから】

クラマっていうのは、そう……大人ではないんですね。
私より年上ですか? それとももっと下? ……ちなみに私は16です。
とりあえずその人に来てもらわないと困りますね、なんだか、重要そうな人みたいだし――

【つとめて冷静さを気取った声でさらに訊く。「クラマ」とやらのこと、根掘り葉掘り聞き終えるまでは】
【刀を降ろすつもりがないようだった。切っ先は斜め下、いつでも持ち上げられるような角度に整えて】
【答えてくれるのは誰でもよかった。だから周囲に回す視線もいくらかうろんに、散漫といえば散漫】

【――――だから隙をつこうと思うなら、いくらでもできそうだった。それこそ物陰からの奇襲でも】
【よく刺さりそうなくらいには、頭が茹っていた。久しぶりにまともなヒトを斬れた感覚。息は少し、上がっていて】


309 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/09(火) 23:06:12 ewsT0pB60
>>304

【―――背丈はおよそ、170を少し下回る程度であろうか】
【であれば、寧ろ彼女の方が高いくらいで。線の細さも相俟って、全体的に小柄な印象を与えるだろうか】
【歩き出してからは初めての土地に来た人間の多分に漏れず、周囲の景色のあちこちに視線を巡らせながら】

うーん……その辺りは俺もわかんないからなぁ……。
これからいろいろ見てまわってれば、そういう話も聞こえてくるのかもしれないけど。

ま、どちらにせよこんな途方もない話を持ち込むわけにはいかない、ってことさ。

【彼女が辺りの施設について述べるのならば、少しくらいはそちらに目を向けたりもするのだろう】
【―――内情に関しては、全くの部外者であるが故に、知るはずもなく。それはまた、彼女と“誰か”のことにしたって同じことで】
【彼女自身が口にすることを避けるのならば、その領域に話題が踏み込むこともない】

ん……。他の情報っつってもな……
お袋の歳を考えると20代前半くらいだろう、ってことと……ああそうだ。
目の色は俺と同じらしい。ま、それだけじゃまだまだ絞り込めないけどさ。

【―――少しの間、考えながら歩きつつ、いくつかの追加情報を口にして。指を指すのは、その榛色の双眸】
【些細なものではあった。ただ、無いよりはマシ、とは言えるのだろうか。ガリ、と飴を噛み砕く音】

【見た限りでは、調子は悪く無さそうだった。寧ろ、その足取りは軽そうなくらいで】


310 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/09(火) 23:25:56 BRNVt/Aw0
>>308

【血飛沫を浴び、微笑む少女。本来なら人数的にも性別の観点からしても優位であろう男達はひぇ、なんて情けない声を発して竦み上がってしまって】
【何だかもう気絶してしまっている輩まで見受けられる状態。だからだぁれも答えられずにただ震え上がっている、だけなのだが】


【不意に、ざり、という音が路地裏の入り口から聞こえた】


──商品が逃げてくの見えたからてっきり軒並み殺られちまったのかと思ったが……

【振り向けば、其処に立っているのは一人の長身の男】
【天鵞絨色の首元で一つに結った髪に、藍の着流し。首に巻いた赤の襟巻の裾には目の四方に縦長の菱形をあしらったマークがついていて】
【腰に佩いた小太刀がかちゃりと音をたてる】

生きてやがったのかよ、アンタ等……つまんねぇの
【不服そうな表情を浮かべたその顔は背丈に合わず幼さを残していて】
【少女と同じか、或いは少しだけ上かというくらいだろう】

「ク……クラマァ!お前今まで何処ほっつき歩いてやがったァ!」
「あの妖怪どうしたァ!?見といて捕まえてねぇのかァ!」
【長身の少年の姿を見た男達が叫ぶ。どうやら彼が件の人物のよう、なのだが】

【一方の少年は何故か目を見開き固まってしまっている】
【その紫色の瞳は、少女の白い後ろ姿をとらえていて】

おまえ、は──
【あのときの、と口が動く。どうやら誰かと見間違えているようだが】


311 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/09(火) 23:30:44 6IlD6zzI0
>>284>>285

【駄々を捏ねる妹に苦笑交じりであやして、お菓子を与える姉の構図】
【本来なら子供の振舞いをする方が年上なのに、この時のかえでは姉の様に振舞うから】

【そうして得た二口目は、一口目よりも味が鮮明で。同時に更なる甘さに悶えそうだった】
【エーリカをワンちゃんに例えるなら、今はきっと尻尾をぶんぶん振って飼い主に懐いている頃合だろう】

【けど甘い一時は終わりを告げる―――これから先は、苦くて苦しい一時が訪れる】
【きっとお互い"甘党"だから。"甘党"なのに。苦い思いを重ねているから、何時までも苦い風味が残っている】


………本当に死んでる奴らは喋らない。奴らの言葉は聞こえないのさ。
死んでいった奴らの呪詛の声なんて聞こえるってんなら、それは単なる罪悪感、思い込み。

思い描く自分を曲げて生きる事をアンタやそいつらは赦さないのかもしれない。
"蛇"達の理屈の何たるかを知らないから何とも言えないけど……一つだけ確かな事がある筈だ。

"蛇"のみんなが赦さなくたって、アリアは全てを受け入れる。
ウヌクアルハイがアンタを助けなかったとしても――アリアが助けてくれる。

"そうやって"生きてるアンだって赦してくれる。もう"蛇の幹部・蜜姫かえで"は死んでるんだ。

この場に居るのは"雪待かえで"でしかない。それでも罪に苛まれて苦しみ続けるなら。
"蛇の裏切者であるエーリカ"が此処に居る。裏切者でも嘗ては蛇の一員だったから言える。

【"―――今のアンタを赦さない、なんて言うわけ無いだろう。少なくとも私は赦す"】
【落とした視線を上げて、真っ直ぐかえでを見据えて。風見鶏の様に風の吹くほうへ向きそうな少女を】
【言葉と目でがっちりと抑えて、支えて。―――お節介。自分の問題が何一つ解決してないくせに】

//分割します


312 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/09(火) 23:31:31 6IlD6zzI0
【珈琲に口はつけない。今は珈琲の香りさえ苦くて重苦しい】
【ざぁざぁと降り頻る雨の音は今日一番で耳障りで、陰鬱な気分に押し潰されそうで嫌だった】
【神様を愛する術も知らず。愛する人を何を以て救えるかも解らず――それでも偶像に縋るのも嫌で】


質問が悪かったね―――……だったら質問を変えようか。

この世で一番愛する人が、さ。ジャ=ロやスナークの様に世界に害為す虚神の一面を持ってたら。
世に害為す神様を内包してる最愛の人を……それでも愛せるかい?

大多数の世界を犠牲にたった一つの愛を選ぶのか、一つの愛を犠牲に大多数の世界を護るのか。
我侭を言えば"エカチェリーナ"という虚神の部分だけ殺して、"カチューシャ"だけを残したいのに。
完全に混ざりきって、コインの表と裏みたいに一体に成ってて出来ないから――迷ってるんだ。

【"だから白神鈴音に聞いた所で解らないさ。偶像になった奴に問うたって無駄"】
【"俯瞰してるような奴の答えなんて聞きたくない。――そんな言葉は願い下げ"】

【神様に縋る気は無いらしい。そして、殺すか否かで揺らいでいるらしい】
【泡沫の温もりと彼女に抱いた情愛を知らねば、虚神として殺せたのに――そんな単純な話じゃなくて】
【かといって愛で世界を滅ぼすほどの覚悟も無くて――差し出す勇気もないのに、でもきっと愛してる、と】

【揺らぐのはアリアと交わした決意表明と自身の感情。ゆらりゆらりと揺れて、それは次第に情緒を乱して】
【エーリカもかえでと同じく指先を左腕に強く食い込ませて。泣き出しそうな弱さを必死に押し留めていた】
【ぎゅうっと鈍い音がしたけれど、それは指先食い込む腕からか、或いは自身の揺れ動く心からか―――】


313 : 名無しさん :2018/10/09(火) 23:38:56 jgh3uXsU0
>>309

【――どうやら自分の方が頭の位置が上にあるらしい、と気づくなら、少女はきっと刹那にわずかにのみではあるものの、目を細めるのだろう】
【靴のせいとはいえ、異性の背を越してしまうのはなんだか気まずかった。とはいえ言及するのも嫌味たらしく。何せこの靴を選んできたのも自分であるなら――】

どうなんでしょうね。なんかテレビに出たりしてたもんだから、静かだと変に目立つんですよね。
とはいえ――最近はテレビもめっきり見てないんです。本とか読んでばかりで――、そうですねえ、人の口に戸は、なんて、言いますし。
生きていたらどっかで何か聞くかもしれないです、――――まあ、そうですよね、さすがにここまで手掛かりがないってなると……、ああでも――、

なんか変なコネとか持ってたら、話は違ってくるかもしれませんけどね。まあそんなコネがあるのかも、私には分かんないですけど。ふふ。

【ゆえに、何にも触れずにそのまま流してしまう。そもそも異性より頭が高くなってしまうのが苦手で高い靴を避けていた、とかひどく個人的な話でしかなく】
【そうしてまた、だからこそ、件の正義組織に触れる声もまた、ただの世間話の声音を越しやしない。なんせ二人とも部外者であった、内部の事情など、知るはずない】
【しかしてその上で彼女はごくごく微かな断片は知っていたけど、――変に口外して偉い人に怒られる手間はやはり面倒だと思ってしまうから】
【最終的に「まあ結局なんにも知らないし分かんないですよね」的、ごくごく適当な笑い声で彼女は言葉を締めくくる。だって、ごく適当な推察以上の言葉なんて出やしないのだし】

ふうん――、私より年上ですね。年上で、その目の色の、男の人ですか? ――ううん、私の知る中には居ないです。
私、これでも、記憶力はいい方なんで。見たら多分覚えてると、思うんですけど……。

【――飴を噛み砕く音に反応してか、彼女が振り返る。調子が良くなったのなら良かった、と、そのあたりはごく素直に思っていそうな、顔をしていた】
【どうやら彼女は飴玉は最後まで舐めているタイプらしい。――とはひどく余談なのだけれど。振り向きついでに、手掛かりであるとされた瞳を、じいと見つめて、】

変装とかしてたら分かんないですね。カラコンとか、ウィッグとか。ちょっと色が違うだけで、印象って、変わっちゃいますし。
なので、素顔で出歩いてるといいですよね。やっぱり御兄弟なら、いくらかは顔だって似てて、おかしくはないはずですし。

【――――うふふ、と、小さな笑い声。幾度目かも分からぬ数度目、視線を前に戻すなら、白銀の髪先がひるりと翻るのだろう、指先を背中に回して、尻のあたりで組ませ】
【もう一度、自分の知る中に、その特徴に合致する人間が居ないかを脳内検索。――やはり結果はゼロであるなら、「やっぱり、心当たりないです」と、呟く】


314 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/10(水) 00:00:51 WMHqDivw0
>>310

――――――――あ。あなたがクラマさんですか、お会いできてよかった。

【ゆっくりと振り向いて微笑む、それにあわせて棚引く白い髪の先が夜色に線を描いて】
【しかしその先にべっとりと赤色がこびりついているなら、きっと彼が思い描く少女とは別人だとわからせる】
【穢れた少女、眼前の少女は、細めた目に潤みさえ帯びて、本当に会えてよかったなんて言いたげな顔をして】
【笑っているのだから。まるで、待ち合わせ場所に1時間ほど放っておかれた子みたいに。けれど来てくれたんだから】

【これ以上嬉しいことはない / ここでお別れになってしまうんだから少し悲しい】

【――――そんな顔をして、】


じゃ、死なない程度に死んでください――――
出来ればテキパキ情報を吐いてくださいね、そしたら、早く終わりますから。


【未だ赤色の乗る刃を其方に向ける。ぱた、とそれが振り払われ、地面に墜ちた音がするなら、それが合図】
【少女はたん、と地を蹴って。刀を構えたままに前進を始めるのだ、一蹴りごとの歩幅はいやに大きく】
【ステップをいくつもいくつも踏み続け、けれど重たい足音は残さずに。クラマと呼ばれた男に詰め寄るのだ】

【何事もなく近寄れたなら、肘をぐっと曲げてから――捻りを帯びて手首を突き出す、真っ直ぐな突きをひとつ放って】
【狙いは広い胴だった。どこかしらに傷を作れればそれでいいと思っていた。傷つけるだけで侵せる毒は、この刀にもある】
【ただ、あんまりにも真っ直ぐすぎる太刀筋。回避だって容易だろうが、けれど灰青の視線だけが、いやにぎらついて、粘着質】


315 : 名無しさん :2018/10/10(水) 00:21:31 jgh3uXsU0
>>311-312

【――割れて砕けてしまったタルト台の欠片に、フォークを突き立てる。だけれどタルトの欠片は砕けてしまう。その欠片に、また、フォークを突き立てて、】
【それを数度彼女は繰り返すのだろう。そうして諦めるのは、全部が細片になってからだった。フォークの歯の間にすら挟めないほどの細片を、その先端で転がすのなら】

――――――――――、だけど、私は、夢で、会ったの……。

【ざああとひどい雨の音が店内にすら割り込んでくる。硝子は今にも打ち砕かれてしまうんじゃないかってほど雨を受けて、近くを通りがかった給仕が、足を止める】
【そうしてレジカウンターの方へ戻りながら、他の店員と話し始めるのだろう。けれどそれを咎めるのは誰もいなかった。客さえうわあって顔で、外を見るから】

――思い込みなんかじゃないです、だって、私は、みんなのために、みんなの分、まで……。でも。できなくて、
――――っ、できなかった、しなきゃ、いけなかった、じゃないと、私、なんのために、生きて――、

………………知ってるよ、でも、アリアさんは、私が行かなきゃ、一緒には、居られない……。

【フォークを持った指先が凍り付いてしまったように固まってしまっているらしかった。落とした視線といくらかの集中力でようやく引き剥がした、指先は】
【いくらかの強張りを誤魔化すかのようにミルクティーを求める。だけれど今度は唇が言うことを聞いてくれなくて。だから、結局、机に戻してしまうのだろう】

アリアさんが"そう"だって、知ってるよ、知ってます、でも、それでも、私、わたしは、――っ、ウリュー/サビク/弟(あの子)を殺した手を覚えてるし、
マルフィクさんから受け取った力の使い方だって、――知らないはずだったのに、分かるの、分かるんです、よぅ、なのに、――、思い込み、なんかじゃない、っ、
――っ、ねえぇっ、! 思い込みなんかじゃない! 私のこと、私に、――正しくしろって、正しくいろって、だって、私は……。     なのに……。

【それでもぎゅうっと握りしめたコップが掌を冷やす、不可解な力の入り方をした指先が結露に滑る。震える指先が行き場をなくして惑うなら】
【――きっとそんなのアリアには言えない言葉に違いなかった。もうずっと一緒だって言ったのに。死んだはずの人間と神様が、自分を引き摺りこもうとするだなんて】
【――――引きずり出されるような声が、いくらも荒さを持って発せられるなら。呻くような声で彼女は冷え切って濡れそぼった掌で顔を覆い隠して、しまう】

【ゆえに、見据えられる視線は結局見ることが出来ないのだろう。それでも。声音が、雰囲気が、空気感が、全部が、その意味合いを余すことなく伝えたのには、違いなくて】

………………………………愛せます。愛せるよ。アリアさんが世界を滅ぼす神様だったとしても。神様になってしまうんだとしても。
アリアさんがそうしたいなら私は世界だって滅ぼしてしまっていいの、だって私の正義はきっとアリアさんとおんなじがいいから、私たち……二人で一人だから……。

【だから、やがて指先の隙間より覗く碧眼は、或いは絶望的なまでに澄んでいた。到底人間の瞳の温度をしていなかった。だって、つくりものだったから】
【その向こうにあるはずのマゼンタ色が本当はどんな表情をしているのかは、分からないのだろう。真っ白の髪に青色の瞳。愛しい人を模倣した姿で産まれなおした少女は】
【あまりに当たり前に答えてしまうのだろう。あの銀狼を愛してしまったなら仕方がないって分からされた/思い知っている声をしていた、だからもうこれは骸に等しくて】
【食い散らかされてしまった少女は狼以外のよりどころを知らない。それでも/だからこそ/それゆえに、過去が、死んだ人間が、いつかの神すらも、彼女を殺そうとする】

――簡単じゃないですか、そんなの、裏返らなければいいだけで、そんなの……――そんなの、裏返れないように、押さえつけてしまえば、いいだけで……。
アリアさんみたいに、したらいいです、それだけじゃないですか、悩む必要なんて、迷う必要なんてなくって……、ないですよ、――そんなの。

【だから絶望的な声は、それがどんなけ苦しいかを知っているからに違いなかった。ムリフェン/蜜姫かえで、どちらも自分であったはずなのに】
【暴力と抱擁の狭間に暴言と甘言を塗り重ねられて。そして気づけばどちらもが死んでいた。だけれど、だからって、上手に折り合いを付けられるはずなくて】
【そのくせに何をどれだけ悔いても、怨んでも、憎んでも嘆いても悲しんでも苦しくても辛くても、――最後にそれらを容易く乗り越えてしまうほどに好きだから、つらい】


316 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/10(水) 00:24:37 BRNVt/Aw0
>>314

【嬉しげな少女の声。少年ははっとしたように硬直から解かれて】
【そうして振り向いた少女の灰青と紫がかち合ってしまえば初めの声色に見合う不遜な表情に戻って】

お会い出来て良かった、とはなぁ
どうせなら全員殺っちまっても構わなかったんだぜ?
【その方が幾分か楽だ、と少年は笑ってみせる、のだが】

【その直後に紡がれた言葉。な……っ!?と驚きの声を発して】

吐けっつっても殺る気満々じゃねぇかテメェ!

吐かす気……あんのかよッ!?

【たんたんと迫り来る少女。少年はたじろいだような表情で片足を軽く上げ、その場で一度足踏みをする】
【少女と少年の間の地面がにわかに盛り上がり、一本の石柱が地面から生え、少女の行く手を阻もうとする】

【その行動が成功したのなら石柱は霧散して】
【少女が見るのは恐らく腰の小太刀を抜いた少年の姿、だろうか】


317 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/10(水) 21:35:06 WMHqDivw0
>>316

【よくよく目を凝らしたなら。少女の片方の目から、だくだくと、涙のように鮮血が溢れ出ているのが見えるだろう】
【けれど少女は泣いていなかった。それどころか楽しそうに嬉しそうに笑っているんだった。ただ、】
【痛いのだけは本当らしい。事実、血が溢れて止まらない右目には深い亀裂が走っていて――その奥から】
【ちらちらと零れる白色。――花だった。仏に捧げられる毒の花、肉の奥底から生やして、それに脳でも蝕まれてるんだろうか】

あなたが頑張れば吐けるでしょう? ほら、……ふふ、
やっぱりそこの人たちが言うだけのことはありましたねえ。楽しい!
手折れば簡単に斃れてくれるのも、うれしいけど、やっぱりほら、少しくらいは――――

【――――ぎゅ、と。靴底が地面を噛み締めて、急停止する音。それは発生した石柱の少し前で立って】
【少女は残った左目を見開いて、反り立つそれを見上げてから――すぐ降ろす。立ち止まったまま真っ直ぐ】
【前だけを見ていた。だから、崩れた柱の向こうで凶器を光らせる少年を、真正面から、見据えて】

――――――イキのいいのを「やる」ほうが楽しいですね、ふふふふっ!!

【吊り上がった口角の隙間から覗くぎらつく歯、手元の刃と何ら変わらぬ獰猛な光を湛えて。その表情を張り付けたまま】
【迎撃しようとするのだろう。少年が小太刀を振り下ろすなら、切り上げる。突き上げるなら切り下ろす】
【突きを放ってくるなら受け流すように手首で弾こうとして――だけれども、見ればわかる簡単な話】
【体格のいい少年と、こんなにか細い少女の力の差なんて歴然であること。どの行動だって成功しても、その後に】
【少女は自身の持つ刀を、弾き飛ばされる――のは何とか耐えて、けれど薙ぎ払われる。そうしたら胴はがら空きになって】
【そこで初めて、不機嫌そうな顔をするのだ。舌打ちすら零して。……だけど、それだけでは終わらせないとも、感じさせる】


318 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/10(水) 22:45:36 BRNVt/Aw0
>>317

【片目から血の涙を流し、それでもなお笑う少女。少年はその様子にうぇぇ……と困惑したように顔をしかめて】
【髪は"あの子"みたく白い。年頃だって大体同じくらい、なんだろうと推定出来て】
【それでも──"あの子"とは全く違っているんだって、再確認して】

否!別に良いんだよそりゃあ!聞きてぇ事聞くんなら別に!
でも何もこうやって闘いながら訊かなくてもいいだろッ!?
つか単純に!怖ぇッ!落ち着きやがれッ!

【声と共に彼女の前にでん、と立ち上がった石の柱。それが霧散すれば少年の手には小太刀】
【それをそのまま下方から上方へと切り上げようとする】
【作法もくそもない、素人剣術だ。それでも少女の刀は薙ぎ払われて】

……っしゃあ!何とかなった!
【一声上げたのなら脇腹をかするように突きを放とうとして】

【しかし、何とか少女の刀を薙ぎ払えた事からの慢心だろうか。少年は隙だらけで】


319 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/10(水) 23:02:46 WMHqDivw0
>>318

え? どうしてです。あなた悪い人じゃあないんですか?
でしたらまあ、ちょっとくらいは大人しくしてもいいかなとは思いますけど――――

【がぎん、と硬質な音が鳴る。金属同士が打ち鳴らされる、聞こえによっては陽気なお囃子みたいに】
【高くて勢いの良い音だった。それで少女の刀は打ち上げられる。細い胴が晒される】
【であれば、そこを守るすべを全て失って。少年が放つ脇腹を掠める刃は、しっかりと少女を蝕んだ】
【ぐ、と痛みに食いしばられる少女の口。耐えられないとでも言うように片膝を付く、真下に落下していく白い髪――】

【(…………本当に? 今の今まで熱に浮かされて暴力を振るっていた少女が、これしきの傷で?)】


――――――ふは。……怖いなんて言わないでくださいよ、精一杯、誘ってるんだから。


【(勿論そんなの真っ赤な嘘だった。少量の血が逆流してきて零れ落ちる、なおも吊り上がったままの口の端から)】

【――――の隙間、隙間、隙間から。きらめきが迸る、数にして五つほど。「仕込んで」いたのだ】
【髪の隙間に巧妙に隠されていた花弁の刃は、少女が膝を付くと同時に少年に向かって殺到し始める】
【四肢、それぞれ両の肘と膝の辺り。それから胴の真ん中、臍と鳩尾の中間あたり。その辺りを大雑把に狙って】
【放たれた刃はやっぱり小さなものだから、当たったとて致命傷には成り得ない。だがしかし、】
【少年が先程までの光景を見ていたのなら、これを喰らってはならないともわかるのだ。傷つけたモノを蝕む毒】
【それが、これらの凶器の中に籠められている。それで動けなくするのが目的だった。そこから先、】
【少女が再び立ち上がって、少年の首でも刎ねにくるか。それか大人しくお話でも始めるか、知らないが――今のままだと、多分、前者?】


320 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/10(水) 23:27:00 V12s0e5.0
>>313

【振り向いた彼女と目があえば、片眉を少し上げてみたりもするのだろうか】
【砕いて飲み下した飴玉の、口の中に残る甘ったるい後味。快とも不快ともつかない感覚を得ながらも、歩みは続く】

変装、ねえ……。そんな、素性隠しながら生活しなきゃならないような、ろくでもない人間じゃなきゃいいけど。

―――そういや、実の兄貴なのにどういう人間なのかすらわからないんだよなあ。
いざ見つけてみたらカノッサ機関の人間でしたー、なんて洒落にならないよなぁ……

【後ろ暗い、それも世界の悪とされるような組織に属していたら―――なんて事態を想像しては、苦笑い】
【そんなものはただの妄想に過ぎない、と一笑に付すこともできないのが、今の世の中で】
【そんな話をする隣をすれ違っていった女性が。或いは道端で電話をしている男性が。街中の誰が機関の人間でもおかしくはないのだから】

【――――などと言っているうちに、目的の駅舎が二人の前に姿を現すのだろう】
【視界にその様が写れば、「おー」と小さく漏らしたりなどしつつ、少しばかり歩みが早まったようで】
【先導していた彼女を追い抜いて。数歩を前に出た後に、くるりと振り返り】

これがラグナールの駅……だよな?ここからフルーソに繋がって―――水の国の至るところに繋がっていくんだな……。
そう思うと、何だかちょっと感慨深いかも。俺の旅はここから始まっていくんだ、って―――

【「ここが始まりの場所」――手振りまでつけた芝居がかった口調でそう宣えば、冗談っぽく笑ってみせた】


321 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/10(水) 23:39:11 BRNVt/Aw0
>>319

悪い人……か、どうかは知らねぇけど!
否、立場的には彼奴等の同僚だからわりぃ奴かもしんねぇけど!
……じゃあそういうテメェはどんな立場の人間なんだよッ!?
【鳴り響いた硬質な金属音】
【晒された少女の脇腹を掠めていく刃】
【手応えを感じて少年がニヤリと笑った刹那、少女が片膝をついて】
【しまった、とでもいうように少年の顔から笑みは消える。幾らおかしな立ち居振舞いをしていたとしても相手は女の子。流石にやり過ぎてしまったか、と後悔しかけて】

【突如聞こえた相手の言葉。少年は虚をつかれたようにまたえ、と声を発して】
【気付けば少女の髪の隙間から飛び出した小さな花弁の刃。先程の様子は見てなどいなかったがどうにもヤバそうだと察したのだろう、慌てて手元の小太刀で弾こうとして】
【両肘を狙った二枚は何とか弾けた。だが両膝を狙ったそれらと胴を狙ったそれは弾く事が出来ずに件の場所の皮膚を掠め】


──ッ……
なんだ、これ……っ
【じわり、と感じる不快感。目の前がぐらぐらと揺らぎ始め】
【手から滑り落ちる小太刀。がちゃんと音を起てて】

……ハッ……彼奴等が伸びてンのは、こいつ、か……
【ヤベェな、流石に……と、それでも苦笑を浮かべてみせる】


322 : 名無しさん :2018/10/10(水) 23:48:57 WbOXfa4Q0
>>320

そうですねえ、――でも、そうやって探していた人が"悪い人"って言うのは、やっぱり、嫌なものですか?
私は、見つかったなら、ある程度はそれでいいかなって思うと、思うんですけど――。探さなければよかったとか、見つからなかったらよかった、とか、
普通の人なら、思うんですかね? ――どうなんでしょう、私は、ほら、見つけたら……多分、そこで一定量は満足すると、思うので。

【――信号が赤になる。いっとう大きな交差点だった、ひとたび青になるのなら、数え切れぬほどの人間が向こう岸を目指すんだって、その瞬間を待っている】
【だから彼女も素直に足を止めて、小さく笑みながら尋ねるのだろう。――もしもそうやって探し出す人間が、そういった人間だったら、嫌なのかしら、なんて、】
【笑った表情が、けれどどこかでいやに真剣身を帯びて見えるのかも、しれなかった。だけれど同時に冗談めかすような声音もあって、気まぐれな質問にもよく似ていて】

そのあとのことは……、……よく、考えたことがなくて。そもそも誰かを探したことって、あんまり、無いんですけど。

【――――笑みに似た曖昧な吐息を残して、少女が視線を投げた先で、赤信号が青色に変わる。だから、彼女もまた、歩き出して】

――そうですね、あとは、まあ、フルーソまで出れば、別の国に行く電車とかも走ってますよ。UTとか行くなら、風の国ですしね。あれ。
まあ、水の国だけであらかたの用事は事足りると思いますけど……。……私、生まれも育ちも水なので。他所って、出たことがなくて。
もしどっか行ったら、――今度会えたらその時にでも教えてくださいよう、ちょっとだけ、気になるんです。ふふ。

【やがて現る駅舎。彼女もきっとここから港まで歩いたのに違いなかった。だからか彼のような感慨はなくて、それでも、見上げれば、無感情でもない】
【とにかく首都まで出てしまえば、なんだってどこだってきっと行けるから。――もしそれで彼が別国に向かうことがあれば、またいつか会えるのなら、それを聞きたいって】
【そうやって笑うならあるいは年相応の表情にも見えるんだろうか、なんて、――――それから、どこか芝居めいた彼の言葉には、】

どうです? チュートリアルのモブに聞いておきたいこと、他にあったら、――まあ、知ってることなら、お答えしますよ。
ちなみにジャンプはBボタンです。メニュー開くのはセレクトが好きですね。LボタンをAに設定出来たら最高ですよね。

【合わせているつもりなのだろう、スタート地点から最初の目的地までのガイドは、ゲームならきっとチュートリアルみたいなものなのだろうから】
【だから――何か聞くことがあれば言葉通りに答えてくれるに違いなかった。だってチュートリアルのモブキャラが嘘や隠し事だなんて、世知辛いにも程があって】


323 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/11(木) 01:48:25 0FthtDsQ0
>>322

そりゃあ、嫌なんじゃないかな。だけど――――後悔はしないと思う、たぶん。
どんな事実が待ってたとしても、知らないまま生きて、知らないまま死んでいくよりはきっと、マシなんじゃないかって。

―――ま、いざそういう状況になってみないとホントのところはわかんないけど、さ。

【雑踏の中、足を止めるならば彼女からの問いに少し思案して。中空に視線を漂わせたままに、答えるのだろう】
【―――最後は笑って、ウィンクなどしながら言うのだろうけれど。】
【青く灯る信号。歩き始めた背中越しのものならば、それはきっと、彼女の見る外側のことで】

―――いや。説明書見ずに自分であれこれ試しながらプレイするのも嫌いじゃないんだ。
だから、ここからは色々探りながら進んでいくとするよ。

そんで、いろんなところを見て回って、土産話を集めてくるさ。何なら、俺の生まれた櫻の国の話も。
一月先か、半年先か、それとも十年先かの“今度”には、な。
…………それまでに、俺が食い詰めて野垂れ死んでなければ。

【交わすのは、不確かないつかの約束事。見知らぬ土地で出会った、名も知らぬ少女と】
【いつかどこかでまた見えることがあるのかなんて、そんな疑問は野暮というもの】
【前途へ抱く不安と一緒に、どこか彼方へ投げ捨てたなら、ニッと笑ってみせる】

―――ってそうそう、名前、聞いてなかったよな。
俺はユイ・カガミヤ。――あ、カガミヤはお袋の姓だから、兄貴の手がかりにはならないぞ。

【最後に、ふ、と思い出したように。思えば、ここまで案内してもらう道すがら、名乗りすらしていなかった、と】


324 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/11(木) 13:42:20 6.kk0qdE0
--水国外務八課本部付近の公園--

「はぁ……」

【公園内のベンチに腰を下ろし、項垂れている男が1人】
【入り口にブルーのフルカウルツァラーバイクを駐車した、その公園は小さな物で、付近には立ち寄る人の姿も見えず、また人が立ち入りそうな気配もない】
【この季節特有の、妙に過ごしやすい日差しと適度な風が心地よい午後】
【そんな中項垂れため息など吐いて居るのは、グレースーツの若い男性で、手には一つの小包と、もう一つ封筒が】
【どちらも簡素な包装であり、小包に関しては開けられている様子だ】
【無論、目下この2つの物が、それぞれこの男性を悩ませている原因なのだが】

「こんなの、どっちも皆には見せられないよ、な〜……」
「元気出しなってライガ、明日には明日の風が吹くよ!」
「あの、スマホさん、ちょっと黙って貰えませんかね……」

【近くに人が近付けば、男性は小包と会話している残念な頭の持ち主に見えるだろう、だが、同時に箱の中から声が聞こえているのも聞き取れるだろう】
【少なくとも、会話の後、先程にも増して項垂れている様子だ】

「スマホさん、さっきの話は本当何ですか?」
「マジも大マジ、私はあなたの為に作られた、一心同体、WBX2人のbody and soul 」
「やっぱり、訳が分からない……これ、皆んなに本当、どう説明しようか……それに加えてこの手紙」

【項垂れ乍も、更に陰鬱な表情で手元のもう一つの封筒を眺めた、白い簡素な封筒、中には手紙でも入っているのか】

「僕の仲間のなるべく階級が上か或いはまとめ役に渡せって、やっぱりそう言う事だよな〜……」
「ライガ、苦労人ね〜、同情したげる!」

【またも、目立ち始めた落ち葉を巻き上げ心地よい風が吹いた】


325 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/11(木) 13:42:56 6.kk0qdE0
>>324
//ゆっくりゆったりと待ちます


326 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/11(木) 18:59:19 zXVdnn6I0
>>294

【ならばきっと夜はそれ以上に慣れていた。 ─── 躾け合うような、教え込むような、ひどく爛れた距離感に、ふたり沈んでいく】

【寝惚け言に漏らしたのは穏やかな苦笑であった。 ─── 巻き取られた上等のシーツに倣って、女もまた少女の側に寄り添い】
【忠誠のように甘える唇先の柔らかさに覚えた多幸感は、そのまま片腕の抱擁によって発露される。互いの鼓動と吐息を重ねて】
【存外に女の朝は早かった。─── それでも目覚めてから尚も、青い隻眼はずっと少女の顔を見守(まぼ)っていた。抱き合っていた。それが永の使命であるように】


「 ……… おはよう、」「かえで。」


【かける挨拶の言葉は幾らか嬉しげに上擦っていた。 ─── リビングの厨房に立って尚も彼女は裸体であった。透き通るように真白い躯体を惜しげなく晒していた】
【そうして作られるのは矢張りごく甘ったるい朝食ばかりであった。キリマンジャロのブレンドコーヒーは粗挽きにドリップされ、エッグタルトの芳しい狐色と共に香り立つ】
【奇妙な事に生活様式は櫻のそれであった。家の中へ砂利が入るのは気になる事らしい。「 ─── 均整よく食べねば駄目よ」困ったような声音は笑っていて】
【兎角、少女の前で冷厳な顔をする頻度は確実に減っていた。凡そ彼女の見せてこなかったような、ことに喜怒哀楽が顕であった。なれば幾分か子供のようでさえ有り】


「 ─── 御免なさい。涼しい方が、どうしも性に合うから。」
「でも、そうね」「かえでが風邪でも引いてしまったら、大変ですもの ─── ふふ。」


【ならば少女の示すあどけない挙措に目を奪われて笑うのも道理であった。本数は減ったが、相変わらず煙草は吸っていた。英字ロゴの坐す紅白のパッケージ。】
【息の詰まる事のないように窓は時折開け放たれていた。「 ─── 一軒家でも買おうかしらね」冗談めかして呟く割にはハウスカタログへ熱心に目を通しており】
【カフェオレを寄越すのも悪くないような表情をしつつも、望み通りにウォーターサーバーから注いだ水を手渡すのだろう。やはり、ごく背の高い女であった】


【「あら、 ─── いつでも付き合ってあげるわ。」我儘には悪戯っぽい、─── と呼ぶには少なからず妖艶に、女狐のような流し目で応じた。朝のシャワーのことである】
【座学と実学の比分は8対2程度であった。戦闘能力については女が一番よく知っていた。火器の扱いを先んずる必要がないならば、先ずは高校程度の一般教養から始まり】
【やがて言語学や衛生学、通信学や水路学など ─── 講師は全てアリア本人が勤めていた。少女にとっては些か退屈であったかもしれないが、成績にそつはなく】
【然らば少なからず教え甲斐もあるようで、好奇心に質問されるならば喜んで答えていた。 ─── 二人で一人だと交わした誓約に、嘘偽りなど無いのだから】

【長く艶やかな髪先を乾かすにはドライヤーでも時間を要した。 ─── 互いに温風を吹かせ合うに、ヘアアレンジの一ツくらいは許していた。それでも】
【矢張り洒落込む事も粧し込む事も縁遠い女であった。代わり映えのしないフォーマルなタクティカルスーツに、秋に至って尚も厚着なる黒いチェスターコート】
【裏には馬鹿げて巨大な拳銃を二挺隠して、煙草と硝煙をどうにかシャンプーと香水で誤魔化す、そういう女だった。 ─── 或いは、少女になにか、教わるのを待っていた】


「 ─── それじゃあ、行きましょうか?」


【何にせよ互いに支度を終えるなら、揃って家を出るのだろう。少女のちいさな掌を、女の大きくも柔らかな掌で確かに繋いで、 ─── 恋人繋ぎは慣れたもの】
【愛車の黒いスポーツクーペ(何にせよアリアは黒いものが好きであった)に揃って乗ったなら、550馬力のV8気筒は唸りを上げて、ハンドル捌きは機械的な精密さ】
【 ─── 通い慣れたビルは、フルーソのやや郊外に位置していた。駐車場に車を留め、エントランスは顔だけでパスして、地下行きのエレベーターに乗り】
【行先は所謂キルハウスであった。射撃用のマンターゲットと室内模擬戦用の木造迷路が打ちっ放しのコンクリートに並べられて、壁際のガンロッカーには余さず武器が並び】
【 ─── そうしてアリアは武器を選んでいるようだった。「痛いこと、したくはないのよね」ロッカーから取り出すリボルバーは、弱装のゴム弾を装填する、非殺傷性モデル】


327 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/11(木) 18:59:37 zXVdnn6I0
>>324



「 ──── うわ」


【幾らか乾いて涼やかな秋風の、そっとビル街を吹き抜ける昼下がり。割と引いてるトーンで、だれか、女の声。】
【公園の入口に立つのは、ゴスロリ姿の人影だった。何時もは態とらしく愛らしい乙女の貌は、思いがけぬ動揺に支配された代物。】
【詰まる所、見てはいけない物を見てしまった ─── みたいな、表情。然し数秒後、ハッと気付いたように、取り繕った咳払い。】


「 ……… こほん。」「なーにやってんの、ライガ君?」
「脳直通信なら声帯は神経落としといた方がいいよ。今キミ完全ヤバい人だって。」
「あ、ビデオ通話?  ……… 本部でやった方がいいでしょ絶対。傍聴されちゃうよ?」


【ひょこひょこ。黒いスカートのレースと、直黒いロングヘアを揺らして、躊躇いなしに駆け寄ってくる。凡そ無遠慮に隣へ失敬。】
【ずいっ。首を伸ばして、そこで妙な小包に気付く。ちょっとだけの好奇心と猜疑心の煌めく碧眼が、彼の顔と交互に覗き込む】
【 ─── どうにもそいつは最近、やたら浮かれていた。白く細い掌、よく磨かれた左薬指に、収まっている銀の指輪。】
【ならば余計にオーガニックなシャンプーとランバンの香水が愛くるしくも甘ったるかった。「 ……… なんか、お悩み?」尋ねる言葉に吹かせるは、打って変わって先輩風。】


328 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/11(木) 20:29:39 WMHqDivw0
>>321

ええ? そりゃもうこれしかないでしょう、「正義の味方」。

【さも当然のように口にしては微笑む。形よく歪められた唇の端からはまだ、血がこぷこぷ流れていた】
【それを手の甲で拭って、口の中に残っていた分はべっと吐き出す。コンクリートに勢いよく叩き付けて】
【その上、程よい高さのヒールで踏み躙って歩み寄る。刀はまだ取り落とさないまま、一歩、一歩】

大丈夫。死なない毒ですよ、気持ち悪い毒ではありますけど。
さ、これで「吐ける」でしょう? 教えてください、あなたとこの人たち、「何」なんですか?
あんな毛並みのケモノも、見たことないし。普通の生き物じゃあないんでしょう?
おおかた、捕まえたあと闇市か何かに売り飛ばすたぐいの組織なのかなって思いますけど――

【――数歩分だけ距離を開けたところで歩みを止める。少女は笑んだまま、その位置から、腕を振るう】
【やや重ための風切り音が鳴った。それはたぶん少年の足元あたりに切っ先を埋めて、止まる音】
【刀を至近距離にて突き刺した。地面に。何か下手なことをしたらすぐに斬れる範囲まで近づきましたよ】
【そういうことを示すための間合いだった。もう一度腕を振るう。切っ先がコンクリートから引き抜かれて】

――――正義の味方ですからね。そういうの、見過ごせませんよ。
どうですか? 教えてくれたら……そうだな、三割引きくらいにはしますけど。

【何を七割に抑えておいてやるのかは言わない。ただ、刀の背をぽんぽんと掌に当てて弾ませながら】
【まるで鞭を弄ぶ師のように。細めた眼にて少年を見つめる――自分が優位にあると思っている、少なくとも今は】


329 : 名無しさん :2018/10/11(木) 22:06:16 Ryc6P.hk0
>>323

――ふうん、やっぱりそういうものなんですかね。まあ、しょうがないのかな――。……ふふ、そうですか? 
それなら私も安心して見つかるといいですねって言えます。ほら、見つかったら悪人だったら自殺するとか言われたらどうしようかなって。

【――ふわと吐息がちな呟き声を漏らして、やがて歩き出すのなら。やはり彼女は彼のウィンクを観測しないままに過ごすのだろう、姿勢のいい歩き姿の後ろのみを見せつけて】
【嫌なんじゃないかな、という言葉には、どうにもぼんやりとした声が返るのだった。しかして、後悔はしないと思う、なんて言葉を聞けば、ふふ、なんて、笑い声】
【肩越しに振り返るのならいくらも冗談めかすような顔をこちらもしていた。さすがにウィンクまでもはしないものの、――それに近しい温度感】

そうですか。じゃあ、……。……あ。街の名前言うの忘れてましたね。ほら、街の入り口で教えてくれる人。やりたかったなあ……。
まあ、もう、いいです。タイミングを逃しちゃったので、他のモブに譲りますよう。――そうですね、楽しみにしてます。
といっても、私、最近転職したので、その関係でどっか行ったりすることになるのかもしれないですけど。……なんないですかね? なんないか。

――あとは、そうですね、お兄さんを如何にして見つけ出したかとか、とか聞けたら楽しそうですね。

【――――存外に真面目な声だった。「しまった」なんて呟くのなら、どんなけ重大なことを忘れたのかと、思わせるのに】
【その実忘れていたのは「ここはラグナールのまちだよ」の一言であって、本当にどうでもいい。事実彼女も重大な口ぶりの癖に、表情は笑っていたから】
【だからやっぱり彼の兄が見つかるといいなとは素直に思っているらしかった。ゆえにやはり家族を大事にする性質なのだろうと知れて、】

かえで――です、雪待かえで。…………あれ、残念。そうなんですか? 

【そうして名を尋ねられるのなら、彼女はそう名乗るのだろう。もしも彼がよくニュースを見るなり読むなりをするのならば、】
【ここ数日の出来事ではないが、ほんの数週間や数か月の出来事として。特に水の国を騒がせたカルト騒動の中で、「かえで」という名前は、数度、出ていた】
【カルトの幹部でありながら生死不明の行方知れず。そこからいくらも後に、射殺されたと続報が出て以来の沈黙。――とは言え、よほど珍しい名でもなく、姓もまた異なるなら】

――じゃあ、お気をつけてくださいね。ほら、最近物騒ですから。

【――だなんて言って、彼女はここにまだ留まるつもりらしい。せっかくここまで案内をしてきた雰囲気を、これで社内まで同行する、となれば、なんだか気まずいものだし】
【帰るに十分なだけの電車なまだいくつもあるから。――終わりの温度感で彼女は笑っているけれど、まだ、何か、言うことがあるのならば。立ち去るでもなし、いくらでも言えて】


330 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/11(木) 22:17:01 6.kk0qdE0
>>327

【その状況に皮肉な位に、空は秋晴れて、風は爽やかで】
【この様な状況で無ければ、外での少々遅めのランチにはもってこいな日和だ】

「……!?」

【瞬時だった、聞き慣れた声、そしてふうわりと風に乗り香る甘やかで品の良い香り】
【咄嗟に、小包を閉めて封筒と共に脇に抱えようとして】

「み、ミレーユさん!?」
「その、あの、すみません……何でも、何でも無いんですよ、ハハハ、そうですね!本部で本部でやった方がいいですよねー!これはうっかりです、僕とした事が……」

【どうにも、あからさまに動揺している様子だ】
【目が泳いでいるし、口数も不自然に増えている】

「僕は、僕はホント何でも無いんですよ!ホント何でも……」
「あっ、今日は天気が良いからかなー、ミレーユさんも外でランチですか?あれ?その指輪?婚約指輪……ミレーユさん、プロポーズされたんですか!?と言うか彼氏居たんですか!?」

【かなりご機嫌な様子のミレーユに、隣に座られれば、その慌てぶりもより加速すると言うもの、更にはその指輪に気がついて別の意味でも慌て始め】
【咄嗟に、もうとっくに気が付かれている小包と手紙をベンチの下足元に隠そうとするも……】
【掴み損ねた封筒の手紙は、ミレーユのすぐ近くの手元に残されたまま、小包は……】

「ちょっとライガ〜、女の子と精密機器は丁寧に扱わないといけないんだぞ!私は両方2つで二度美味しいんだから丁寧二倍で二乗だぞ〜!」


【中からはっきりと、明確に声が聞こえてしまうだろう】


331 : ◆jw.vgDRcAc :2018/10/11(木) 22:29:42 tTLkf11I0
>>204

【救われた。救われた……と言っていいのだろうか、これは。確かに、最悪の状態は回避された。……けれど、最善からも程遠いような】
【死にたいと思っている。死んでしまいたいと思っている……そんな状況が、良いはずがない。ほっとしたのもつかの間。表情を曇らせて】
【己に出来ることの少なさを、嘆かずにはいられなかった。今起こっていることに比べて、自分の何と無力な事か。ため息一つ、思わず漏れて】
【しかし、嘆いているばかりではいられない。守るべき現実は、待ってはくれないのだから。世相が世相だ、少しでも油断してしまえば】
【自分の大切なものでさえも、簡単に崩れてしまう。――――崩すわけにはいかないのだ、二度とは。小さく、あなたの言葉に頷く。】

【そして、もう一つ。二つ目のメッセージを受け取る。死を悔やむな、と。】
【……突然の報せに心の準備ができていなかったからこそ、ショックは大きかった。訃報というものは、多かれ少なかれショックなものだが】
【それが天寿を全うするものではなかった場合、特に動揺は大きくなる。大概、想定していないからだ。明日もまた生きていると思い込んでいるからだ。】
【今だって頑張って動揺する心に蓋をして抑え込んでいるが、少しでも油断しようものなら、暗い悲しみの感情は堰を切ってしまいそう。】
【そんな自分に、気を病むなと告げて、続く言葉……】

そう、ですか。
――――ああ、良かった……私の言葉も、貴方に何かを残せていたのですね……?
良かった……生きることに、意味を見出せたのですね……?

【それ以上、言葉を紡ぐことはなかった。十分だ。その言葉を聞けただけで、もう十分に救われた。】
【散り際に意味を見出していた貴方が、生きる意味を見出した。自分の命に意味があったと、言ってくれた。それ以上、何を求めることがあろうか。】
【良かった、なんて……死んでしまった人に言うのは、間違っているかもしれない。でも……そう、言わずにはいられなかった。】
【それを知ったならば、もはや悔いはない。勿論、惜しいし悲しい。しかし、悔いが尾を引いて心の底に凝ることは、多分無いはずだ。】

―――本当に、よく頑張りましたね。
あとは任せて、ゆっくり……休んで、下さいな。

【目尻を、少しだけ腫らして。謝罪も、後悔も、憐憫も、きっと今の貴方に掛ける言葉には相応しくない。だから】
【涙交じりの微笑みと、労いの言葉。慈しむような表情は、母親にも似て。実体があったならば、きっと頭を撫でていたことだろう。】


332 : 名無しさん :2018/10/11(木) 22:46:53 Ryc6P.hk0
>>326

【――そうして、きっと彼女はわりに質のいい生徒であるのだろう。きっと生来のもので、とかく、何かを教わって、それを出来るようになるのが上手な子であった】
【その脳内で目と耳と指先がうまく仲良くしているらしい。口頭のみでよく分からぬ顔をしていてもやって見せてやればすぐに納得するだけの頭もあるなら】
【勉学はもとより夜も。ましてやマンツーマンで上達しないわけがなかった。なら問題は幾分かの気まぐれ気質と、好きすぎて途中で折れてしまう心の宥め方、くらいで】

そうですよ。まあ、アリアさんなら、喜んで看病してくれそうですけど。……そういう問題じゃないからね、ダメですよ?

【きっと彼女は煙草を欲しがったことは一度もなかった。もっと言うなら普段は酒も断っていた。その癖に晩酌の席に勝手に同席するのは好きだった。いつも、本でも読みながら】

【――家でも、と冗談めかすなら。きっと大きな庭のところがいいと進言していたに違いない。理由を聞いても「――犬とか飼えるじゃないですか」、と答え】
【なら庭で土いじりをするつもりはないらしかった。そのくせ本当に庭のある家に数なら、いくらかの園芸作業も嫌いではないと思えた。――ましてや好きな人と暮らすのなら】
【バラで飾ったお庭で犬でも飼うのはわりに思い浮かべられがちな成功した人間の幸せに似ている気がした。だからか、「猫も飼ってみたいんですよね」なんて、呟いて】

――――……嘘つき。まあ、骨とか折られても、それは困っちゃいますけど。
……あとは、まあ、風穴開けられるとか、串刺しとかも困りますね。あとは瓦礫が降ってくるとか……。

あと何か、ありましたっけ? ……、まあ、そうですね、痛いの苦手なんです。痛くないのが一番いいですよ、――アリアさん分かんないでしょうけど、

【「私、自分で痛み止めするの、あんまり好きじゃないんですよ」】
【「つめたくてきもちわるいから。それに、どこまでが自分だかよく分からなくなる気がして――」】

【ならば彼女もきっとその隣で武器を見ていた。使うでもないのを見て、この辺りはまだどれが何なのかはよく分からない】
【そもそも蛇教に居たときに能力に頼らぬ武器として数度ほどレクチャーは受けたが実際に使ったこともほとんどなかった。それよりよほど能力の方が使いでがいい】
【だのに熟練のガンナーみたいな顔をして――彼女がこういう熟練みたいな顔をするときはだいたいあんまり難しいことを考えていないのだけれど――、寄り添うのなら、】
【口ぶりは幾分も批難するようだった。そうして漏らす呟きはあまり感慨のない無表情、やはりよく分からぬ銃をじっと見つめたまま、ぽつりと】

【――冷ややかな麻酔の感覚。あれを彼女はあまり好きでないらしかった。それに痛いのだって嫌いだった。むしろ痛い方が嫌だからこそ、能力で妨げるのに違いない】
【いつか眠りと覚醒の狭間で傷を痛がって泣いた夜を思い出すのなら、――あるいは、ただ劣情をぶつけられるばかりの"儀式"に彼女が幾分も肯定的であったのは】
【それが正しいことなのだと教え込まれたことはもちろん、痛くないからであるのかもしれなかった。今でも彼女はそういった行為に不快感を見せることは、ないのだから】

――――――――――何かハンデ付けてくださいよう、それか、私が勝ったら、ご褒美ください。

【――――とかく。彼女は結局いつも通りの素手だった。真っ白の髪に水平線の色した瞳。常通り/けれど直近では減りつつある白の装いに、しかし手と足は露出させ】
【二度目の支度を整えるんだろうアリアの傍らに立つなら、ひどくあどけなく笑う。見上げる仕草も気づけば当然のものになって、だから、子供みたいな狡も平然と口に出す】
【どちらにせよ勝つ気であるのは変わらないようであるから、やる気も十分らしい。あとは――ハンデなりご褒美なりの交渉が片付けば、それで全部のはずだった】


333 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/11(木) 22:50:13 hEXW.LLA0
>>330

【じとっ。真っ青な双眸が言葉少なにライガを睨む。 ─── 真白い人差し指が、つんっ、と彼の額を突っつく。柔らかい指肉。】
【ここの所のミレーユは日に日に乙女らしくなっていた。デスクで妙な錠剤を服用して居る姿もあった。幾らか媚びるような声で誰かと電話している事も二度三度でなく】
【 ─── 何より左手に輝かす銀色は、きっと彼女に嫋やかであれと命じるのだろう。愛されること愛すること、余さずそいつは知っていた。ともあれ、】


「 ………… あのねェ」「隠しっこ無しだよ。」「そりゃあボクは今ちょうど、ピッツァのビュッフェを堪能してきたトコだし」
「ボクくらい器量も性格も頭も良ければ、パートナーの一人くらい居るモンだし、つまり今ボクは機嫌が良い訳だけど」
「それでも、だ。 ……… 何かな、ボクを騙し通せるとでも?」「それは十年早いってものだよ、全く ─── 。」


【小姑めいた言い回しの長広舌は色々とあっさり述べていた。 ─── いつのまにか伴侶が出来ていたらしい。それでいて】
【細められた碧眼は目敏い故、あらゆる不審な所作を見逃さない。隠そうとする掌を、てしっと捕まえようとした所で】
【 ─── 小包の中から、まぁ間の抜けた声が響く。ぱちくり上向き睫毛が瞬き、まじまじ彼を見つめる。やおら呟く言葉は、】


      「もしかして、」「 ─── 子女誘拐?」


【 ──── 多分こいつ、調子に乗ってる。おそらく、少なからず。】
【何かを悟ってしまったような真剣そのものな顔をして、それでいて色付き煌くリップの端が、隠せぬ震えにニヤついていた。】
【ちゃんと話してくれないと、もっと意地悪しちゃうけどな ─── そんな雰囲気が、濡羽色の一房一房から余さず沸き立つ。】
【ここで彼に残された選択肢は二ツ。即ち、徹底抗戦か白旗降伏か。そして少なくともそいつは、強硬突入においてプロだった。】


334 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/11(木) 23:16:07 BRNVt/Aw0
>>328

──正義、正義の味方、ね……
お天道サンは赦しちゃくんねェって事だな……こりゃァ上手ぇ具合に進出は果たせなさそうで……
【御愁傷様だねェ……と少年は少し先で縮こまっている同僚達を見やりながら鼻で笑い】


死なねぇ類いの毒、か……そういうの重宝すっから正義の味方じゃなきゃウチに引き込んでる所だったが……
……っと、雑談してる場合じゃねェよな?
俺達の所属、か……

「お、おい!余計な事言うんじゃねえぞ!?」
「そ、そうだぞ!もし下手な事吐きやがったら上に報告してやる!」

……るッせェよ三下共、テメェ等はそこで竦み上がってろや
【少年が口を開こうとした刹那、奥で竦み上がっていた彼の同僚達が口々に叫ぶ。それを睨み付けると少年は、全く、とため息を吐きながら再び少女に目線を戻す】

……あーと、話が逸れたな?
俺達は『ヨシビ商会』というモンだ
見ての通り櫻の国から来た
さっきのあれは妖怪で……あーっと……何て名前かは覚えてねぇ……けど空気を含んで毬みてぇに膨れる狸の妖怪ってのは覚えてる……確かな
お察しの通り、妖怪を捕まえて売る会社だ……まぁ此方にゃ進出したばっかで今は口コミで客増やしてる段階らしいんだが……
【そこまで話すと少年は、ふっと笑う】

……で?そっちは確か正義の味方だったっけ?
だったら一つ頼みてぇ事があんだが……まぁ悪い事じゃねぇから安心しろ
【良いか?と少年は確認して】


335 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/11(木) 23:30:47 6.kk0qdE0
>>333

「うっ……」

【凛と涼やかな蒼の瞳、頬をつつく荒事とは無縁に思える様な指先】
【思い返してみれば確かにそうだった、ここ数日ミレーユは乙女淑女もかくやと言う程に、ため息が出るほどに可憐だった】
【日に2度3度と電話する姿は、まさに恋する少女のそれであり、何より指輪がそれを肯定している】

「ああ、やっぱり……その、おめでとうございます、幸せになって下さい、式とか決まったら教えて下さいね!」

【祝い事であり喜ばしい事だが、自身の胸中には少し寂しさや残念さも感じつつ、こう笑顔で告げる】
【最も、現状自信を問い詰める問題はそこでは無く……】

「騙すなんて、そんな、そんな事……」

【より一層目の泳ぎは激しく、そして決定打となったのは】

「あ、スマホさん!!黙っててって言ったのに!!」
「ミレーユさんも、違います!と言うか色々変でしょうそれは!」

【子女誘拐疑惑とミレーユの表情、それが意味する所は言わずもがな職場での居場所を失う物だ】
【知っている、こうなったミレーユは極めて強いと、そんな話がばら撒かれた日には、アリアからも佳月からも汚いゴミを見るような目で見られ続けるのだろう、ゴトウ氏からの信頼も急落するに違いない】

「……解りました、降参ですミレーユさん」

【小包を開けて中身を取り出す】
【中は青と銀の、自分のバイクや変身時と同色のボディのスマートフォンだ】

「やっほー!ようやく出してくれたね、監禁?監禁プレイかな?」

【声はスマホから聞こえている、以前遭遇したであろう、リーイェンと同様の人工知能的な存在なのだろうか】
【兎にも角にも、その声を聞くやさらに肩を落とし】

「つい先日、外務八課の本部に僕宛に送られて来たんですよ、匿名で」
「やっほー!はじめまして!自己紹介とかした方がいいかな?私E-droid、ライガの能力拡張及び外務八課の各種業務サポートもできる高性能AI搭載スマートフォン、しかも可愛いって言うね!貴女がミレーユさん?そうねそうよね!」

【小煩く、そして痛い声と言葉が矢継ぎ早に語られる、ライガはもうもう一つの封筒片手にがっくり疲れきった様に項垂れている】


336 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/11(木) 23:32:51 /S25Rmpc0
>>329

【かえで―――告げられた名前に関しては、事実、何かに勘付いたような様子もなく】
【裏側に踏み込んだ人間でもないのだから、ニュースを見聞きしていたとしても、射殺されたという人間が目の前にいるとは考えもしなくて】
【「物騒だから」と言われれば、自分の二の腕をポンポンと叩いて】

なーに、自分の身を守る程度なら動けるから。でかい事件に巻き込まれたら……それこそ、UTなんかに頼るしかないけど。

―――それじゃ、またな、かえで。

【彼女へと背を向けて。歩き出したなら、一度だけ、肩越しに振り返りつつニッと笑う。そうして、駅の中へと背中は消えて】
【程なくして、フルーソ方面行きの列車がホームから出発する。そうすれば、銀の髪も榛の瞳も、そこにはもういない】
【始まりの一歩は、大都市へ向かって進み始めた――――】



【―――――その後、フルーソの駅構内で土気色の顔をした姿が目撃されたというのは余談である】



/お疲れ様でしたー


337 : 名無しさん :2018/10/11(木) 23:41:13 Ryc6P.hk0
>>336

【「――なら、良かったです」】
【と言って少女が笑うのだろう。それでも冗談めかすような声がもう一度だけ、「まあ、気を付けていて、損はしませんから」、だなんて】
【いやに気にしてくると思われてしまったとしてよほど不自然ではなかったけれど。――本当にそれだけだったのだろう、彼が立ち去るのなら、緩く手でも振るだろうか】

【そうして彼の姿が見えなくなるのなら、――少女もまた急に手持無沙汰を感じたらしい、きょろりと視線を巡らすのなら】
【やがて駅構内に併設された適当なカフェにでも暇つぶしを求める、季節限定の栗のラテに、いやにおいしそうに見えたアップルパイを添えて】
【甘さ控えめのクリームを添えたなら、暇つぶしには十分も過ぎる品ぞろえ。――だから、きっと、見送った彼がその行き先にて再び"だめ"になっているなんて、思いもせずに】

/おつかれさまでした!


338 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/11(木) 23:56:20 hEXW.LLA0
>>332

【そんな少女の聡明さにアリアは少なからぬ執着を示しているようだった。 ─── そこに介在するのは、もはや愛情のみならず】
【唯だ強く在る為だけに費やしてきた半生にて、その心身が学んだ凡ゆる技術を、少女へと伝えようとしているようでもあった。己れが生きた証を残そうとするように】
【故に昼夜を問わずに少女の行いは受け入れて、助力の全てを厭わなかった。 ─── 「私は、アクアリウムをやってみたいかしら」夢は膨らませるだけ膨らませていい。二人でなら叶えられると知っていたから】

【「 ……… 嘘じゃないわよ。けど、そうね」答えに窮して、苦笑のまま、思い出すような言葉尻。事実として女はだれかを傷付ける愛情表現を好んでいた。】
【キスマークにせよ、歯型を残すにせよ、背中に爪を立てる事は無くなったにせよ ─── 愛は全てを赦すものであり、例え猟奇を帯びるとしても吝かでなかった。】


「内臓が潰れるくらいに締め上げた事や、」「 ─── 折れそうになるまで首を絞めた事も、有ったかしらね。」
「 ……… 私にだって、解るわよ。」「かえでにされた事もあるし ─── 、」「 ……… 貴女がいるから、私、生きている気がするの」


【思い出話にしては剣呑な距離感であった。 ─── 適当なパイプ椅子に腰掛けて、儚い指先がリボルバーのチャンバーに弾を込めていく。合計は五発】
【火薬の量を限界まで減らした訓練用のラバージャケットであり、ご丁寧に塗料まで充填されていた。 洗い流すのに苦労しない、水溶性の血糊。】
【詰まる所は、零距離から放たれても青痣と火傷が良いところの弾薬だった。 ─── 幾らか含みのある呟きには、一刹那ほど手を止めていた。それでも】
【立ち上がって少女に向き直るならば、はらりと白銀の舞い踊る微笑は、どこか悪戯じみた稚気を宿していた。紺碧の隻眼が、撫ぜるように少女を見つめて】


「 ……… 手加減されて勝っても、嬉しくないでしょう?」「だから、ふふ」
「 ──── 好きにしていいわ。私のこと。」「まあ、もしも勝てたら、ですけど」


【幾らか艶やかな声をしていた。 ─── 閨所へ手を引くような。ならば与えられる褒美は常ならぬ物なのだと伝えていた。易々とくれてやる積もりもなさそうだった】
【「手脚に4発か、胴体に3発か、首上に1発で私の勝ち。」「私の身動きを取れなくさせたら、貴女の勝ち。」ルールとしては、そんなもの。】
【そうして立ち塞ぐアリアはやはり立ち昇った影のように黒衣であった。人形に似た白い顔貌は然し優しげに緩んでいた。両の手にそれぞれ握った拳銃は、いつもよりも小さく】


「始めましょうか。 ─── 先手は譲るわ」


【 ──── およそ臨戦に至らぬ姿勢のまま、伝える言葉もまたハンデの一環であるのかもしれなかった。それを驕った慢心と見るならば、攻め落とす隙も見出せるものか】


339 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/12(金) 00:15:28 hEXW.LLA0
>>335

【この状況でも誰かの幸福を尊べるライガは恐ろしく人間が出来ていた。 ─── まして眼前で自分を揺する相手を寿げるのだから】
【「ん、ありがとね。 ─── でも、それとこれとは話が別。」対する彼女の何と冷淡なことか。人の心まで凍らせてしまったような人間に違いなかった】
【故にこそ望む答えを聞き出せたのなら、ミレーユは清々しいほど屈託無く笑っていた。「 ……… うん。それでよし。」何様のつもりか、こいつは。】


「 ──── はあ。匿名 ……… ?」


【然して続く声音は少なからず訝しげであった。 ─── 取り出されるのは携帯端末。んん、と疑わしげに双瞳を細めるならば】
【藪から棒な尖り声にはあからさまに不愉快さを隠していなかった。あざとい笑顔がヤクザ者の睥睨に変わるのは刹那のこと。】


「 ……… 一応だけど、バックドアでも仕込もうってんなら容赦しないからね。あのセキュリティを構築すんの苦労してんだよ?」
「てか、なんでウチの名前を知ってるの?  ─── まさか公安あたりからのプレゼントじゃあないよね。そうだったら容赦しない」
「というかライガ君ちょっと迂闊だよ。宛先不明のメールを開いちゃいけないって警察でも習ったでしょ ─── まぁ、いいけど。」

「とにかく妙な通信してないかはトラッキングさせて貰うから。 ─── そんで」「まず、キミは何処の誰で何者? 何が目的でウチに来たわけ?」
「誤魔化すようなら丁重にブッ壊した上で送り主に突っ返してやるからね。言えないなら言えないで構わないけど、それ相応の扱いにはさせて貰うよ」


【ずびっ。 ─── 自称スマホの液晶に指先を押し付けて、矢継ぎ早に問い立てる。八課のセキュリティを担う以上は、ある種ごく当然の反応ではあったが】
【それでも凡そミレーユは彼女(便宜的にこう呼称する)の存在に食ってかかっていた。恐らく一つの理由としては、同族嫌悪。】


340 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/12(金) 00:32:52 6IlD6zzI0
>>315

【心をざわめかせて不安にさせる暴風に、打ちつけるもの全てを穿つような豪雨は尚も止まない】
【それ所か、雷鳴が耳を劈くのだった――それはまるで二人の慟哭みたいに】
【言葉では表現しきれない心境を吐露するように、二人に代わってごうごう鳴いて/泣いていた】


【悲痛な叫び。強まる語尾。エーリカは何も言えない。掛ける言葉が見つからない】
【慰めるにも、諌めるにも言葉が見つからない。ただ黙って聞く事で彼女の言葉を受け止めるしか出来なくて】
【でも、目の前の少女は言葉とは裏腹に苦しそうで、痛々しく見えたから――黙ってられなかった】


本当は苦しい癖にさ…。苦しみと慕情の二律背反に陥ってる奴が簡単だなんて言ってくれるなよ。
こっちの胸まで苦しくなる。見てて辛いよ…。今のアンタを見てると身を裂かれる思いだ。

力づくで相手を手に入れて依存させた姿が今のアンタってんなら……辛すぎる。
過去を捨てさせられて、過去に足を引っ張られても。過剰な愛情を注がれてその色(あい)に染められて。
―――……過去と未来。どっちも本当の自分なんだろうにさ…。可哀想だ。


【仮に"エカチェリーナ"を抑え込み続けた上で、自分の理屈だけで"カチューシャ"を手に入れたとして】
【強姦魔染みたその手段で望みのものを手に入れたのなら、代償と歪みに向き合うことになるのだろう】

【現にかえでがそうだ。ありのままの過去の自分が、過去を捨て去られた自分を殺そうとしている】
【正しくあろうとしたのに。正しさからかけ離れて。それでも過去を捨て去る原因となった愛を良しとして】

【エーリカは右手で胸をぎゅうっ、と抑えて。苦しそうに、辛そうに、悼むように、哀れむように、戒めるように】
【寒々しいほどの青空の色に、自身の赤銅の瞳を重ねるのだった。――赤色と青色。そこに暖かみなんて無くて】
【重ねたのは赤と青。加えて夢想する未来も重ねてしまったら――胸が張り裂けそうで、目尻に涙を浮かべるのだった】

でも……私はあの子にアンタと同じ思いをさせたくない。我侭を言えばお互い本当の自分のまま愛し合いたい。
けど……私はあの子にアンタと同じ思いをさせるだろう。虚神でもあるあの子を愛したいなら、壊すしかない。

―――……私達、どうしてこうなっちゃったのかな。

愛する者を手に入れても苦しくて、愛する人を手に入れようとしたらもっと苦しくて。

【でも、それでも。手に入れたい愛がある。後は勇気と覚悟の話で――エーリカは誰かに背中を押して欲しかった】
【自身の本心はたった一つ。"カチューシャと共に生きたい"。そのために全てを蔑ろに出来る勇気と覚悟が無かったから】

【目元を手で覆い隠して、涙も隠して。けれど、声は泣いてるのを隠せなくて】
【『――神様、私に全てを乗り越えるための力と決意をください』なんて雰囲気を滲ませて、縋るのだった】

【雨は未だ止まない。雷鳴は依然として止まない。まるで、エーリカの心象世界の現れみたいに】


341 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/12(金) 00:51:31 6.kk0qdE0
>>339

「(うーん、やっぱり、と言うか何と言うか彼氏さん居たんだ、彼氏さんと言うか旦那さんだけど、どんな人だろう……と言うか、ちょっと待って、もしかして佳月ちゃんやアリアさんにも彼氏とか居たら、独り身は僕だけ、とか?)」

【彼の内心は複雑であった】
【だが、その思考も話も強制的に切り換えられる事になる、いやならねばならなかった】

「公安?ああ黒幕とかそっち方面の警戒?大丈夫それは無い無い、私はクルーザー博士、ああライガをこの身体にしたジジイね、彼に作られて送られて来たから、バックドアとかそう言うのも無し!ライガの不利益は今のところ博士の不利益でもあるからねー!」
「目的?そうね、強いて言うならライガのサポートがメインかな?名前?博士が知りうる情報は全部記録されてるもの、偉い?私偉い?ライガの成長と経験の蓄積が博士の目標への道なんだって、意味わからないよねー?あのジジイ、トラッキング?別にいいわよー、だってやましい事は全然前世からしてないものー」

【ミレーユの詰問に対する答えはこうだ、自分は公安や黒幕とは無関係、目的はライガの能力拡張とサポート、現状基礎的情報は記録されている】

「ひっ!す、すみません、その僕宛だったからつい……」
「こわーい!この人こわーい!犯されちゃう!私こんな人スキャンしたくないー!」

【指を押し当てられ、こんな答え方をする】
【恐らく、恐らくではあるが、ミレーユを激しく刺激する話し方とキャラ、そしてそれを察する事は、もはや難しいであろう、ミレーユに気圧されっ放しのライガ】
【平和な昼下がりの秋の公園、片隅のちょっとした修羅場】


342 : 名無しさん :2018/10/12(金) 00:56:10 Ryc6P.hk0
>>338

――――――あんなの、本気じゃないですよ? だからね、駄目です。――息以外のすべてのやり方を忘れてしまうの、死にかたも。
あんなのは、――多分、他の人には、出来ないです。その前に殺しちゃうと思います。……身体中の全部、石みたいに冷たく感じるんです、だから、苦手で――。

………………………………――、私は、アリアさんが居なかったら、……。

【ふわ、と、吐息が漏れる。挙げられた行為に冷ややかな目を向けるのはその直後で、"やっぱり嘘吐きじゃないですか"とでも言いたげな目と態度と雰囲気をしたならば】
【――それでいて能力については、その程度では済まないのだとも言っていた。おそらくは自分にしか出来ないだろう、強制的な延命。"生存"以外のすべてを阻害してしまう行為】
【――――ひどく苦手なことを思い出したからか、存在しないIFを考えてしまったからか、少女は一瞬黙りこんでしまう、十数秒後に、瞬き一つで復帰して】

私は、結構嬉しいですよ? そういうのあんまり気にしないタイプです。手加減されてたって、勝ちは勝ちだし……。……。
――まあ、そうですね。"それ"がご褒美なら……。うんと可愛い恰好で出勤でもしてもらおうかな。お化粧して、髪の毛だって巻いちゃって。

――――なーんて、いいんですか? 私、ほんとに、なんだってしちゃいますよお。四倍返しくらいで。

【にこりとした笑みは至極狡かった。手加減されたって勝ちは勝ち。難しいステージを切り抜ける楽しさは知っていても、イージーモードが選べるのなら、最初の一回くらいは】
【それでもいいかなって思えるタイプだった。そうしてそれで構わないタイプだった。――ただ、"これ"については、それでもいいんだけど/きっと初めて悔しくて仕方ないから】
【そんな気がしたから――ご褒美の方に乗せられてしまう。だから結局ハンデはうやむやになって終わるんだろう。その代わりにひどく意地悪っぽい笑顔、指先を口元に添え】
【うーんとかわいい恰好でおてて繋いで出勤しましょうね、なんて――、至極楽しそうに笑う。その癖にそんなのはベリーイージーな可能性だって、笑みの細さが伝えて】

そうですね、じゃあ、私が負けたら――、アリアさんのしてみたいこと、やってみたかったこと、一緒に、やったげます。ぜーんぶお膳立てしてあげる――。
――だって、アリアさんたら、いつも私のこと、好きにしてるんだから。狡いですよ、――。本当に、もう……。

【――だけれどふと逸れる目線は不公平を感じた故らしい。小さくううんと唸ったなら、数秒のちに彼女もまたそんなことを言ってみるのだろう】
【結局どちらが勝ってもどちらかが楽しい思いをするだけらしかった。だからこれは今までとは違う、殺す必要のない、殺すだなんて誓わなくっていい、】

【(それがなんとなく擽ったいなら、)】

――――じゃあ、

【――――ぞろり、と、音もなく這い出る。刹那に咲き誇る花のように拡がるのはリボン状に薄く長く整えられたマゼンタ色の魔力、全部で両手の指ほどであるなら】
【銃弾には決して及ばぬ速度であってなおいくらも素早い速度で以って打ち出される、――切っ先をひどく鋭く尖らせて、何時ぞやの仕返しのように、串刺しを狙うかと思う軌跡は】
【けれどその寸前で以って心変わりを起こしたかのように、がくりと方向性を違えるのだろう。レンズを通した光が一か所に集まって、それから、拡がるみたいに】

【アリアの立つ位置よりわずかに手前が狙いになる。故に動かなければ当たらぬ軌跡だった。視界のいくらかを物理的に邪魔しつつ、相手の初手はどうとでもできるように】
【――なれば様子見にも等しかった。そのくせ、いくらか自分に都合がいいようにしてしまうから。(だから、きっと、どこかでほんのかすかに照れるような気持ち、隠して)】


343 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/12(金) 01:22:31 WMHqDivw0
>>334

ヨシビ商会。ふうん、それで、あの狸さんは妖怪……
……あなたは雇われ用心棒、みたいな感じです? なんだか仲良くなさそうですし。

【怒号を上げる男たちを眺める。仲間意識というものは欠片ほどもなさそうだし、そういうことなのかと】
【目星を付けて、視線を戻し――目を細める。追及のまなざし。進出したばかり、と聞いたなら】

櫻ではすでに結構暴れているということですか?
まあ悪い人達。そして運のない人たちです、ずっと櫻に居ればあるいは「潰れなかった」かもしれないのに。
他のところに出張るから――とくに、水の国に出てきたんならもう最悪ですよね。
「私たち」の他にも、いくつかおっかない組織、ありますもん……

【じと、と睨み付けるような視線。それで嘲るように、不運だったねなんて言葉をかける】
【「私たち」なんて言った手前、この少女は何らかの組織に属しているらしかった。そして、】
【こんな少女が属していられるなら、それはまた、厄介な組織であるのだろうとも思わせて――――】

…………頼み事? いいですけど、別に……勿論タダでとは言いませんよね。
せめてここに居る人たちの身柄は確保させてくださいね、何かして逃げようだなんて思わないことです。
逃げた分だけ追いかけますよ。そういうケダモノがたくさんいるところなんです。

……まあいいや。頼み事とは、なんですか?

【――やっぱりあんまりろくでもなさそうな組織だった。いや、この少女一人だけがろくでなしなのかもしれないが】
【冷たい溜息を吐きつつもとりあえずは応じる。交換条件付きで。ちなみに刀は、まだ握ったままだ】


344 : 名無しさん :2018/10/12(金) 02:26:09 Ryc6P.hk0
>>340

【――何かが窓ガラスにぶつかる音がした。けれど幸いにも割れることはなくて。だから大したものではなかったのかもしれない。だけど。それでも】
【いつ何かが割れ砕けてしまってもおかしくないに違いない。違いなかった。――誰かを好きになるのなんて初めてだった、それなのに、こんなの、あまりに惨くて】
【だからこそきっともう抜け出せないし抜け出すということすら考えられなくなってしまった、水たまりの中で翅も何もかも濡れてしまった蝶の嘆きより色鮮やかに泣くのなら】

――――苦しいよ、でも、アリアさんの顔を見たら、忘れてしまうの、――辛くなくなってしまうの、だから……、――だから、ねえ、
……アリアさんには、言わないでいてください、こんなの……、お願いです、アリアさんに――言わないで……。だって、きっと、そうしたら……。
きっとまた……だから……、――、こわい……。つらいの。苦しくて……。でも、好き……。すきなの……。すき――。

【顔を覆った指先の白色に涙がしみ込んでいくのが良く見えた。一人ぼっちになってしまうと弱かった。ふとした瞬間に、過去に殺されそうになってしまう】
【だのに相対するその瞬間に駄目になってしまうんだった。一目見上げただけで、――末期のがん患者に麻薬を投与するみたいに、辛さも苦しさも、忘れちゃうから】
【背中を丸めてしゃくりあげる、――こんなことは言わないでほしかった。それに大好きで仕方ないのは本当だったから。そうしてまたこれ以上の非道い言葉に抉られるのを恐れて】
【涙にちぢこめる身体の仕草、しかして、すり、と内腿を擦り合わす仕草は隠せぬ艶めかしさと湿度を感じさせた、だからどうしようもなく"癖"になってしまっているって伝えて】

【――何度も何度も肩を震わせて涙を落として、ともすればそのたびに「すき」と呟く。湿っぽい吐息だけがその辛さを和らげることが出来ると、きっと、教えこまれたから】

分からないよ……。分からないです……。どうして……。

【どうしてこうなったのか。――分からなかった、知っているはずがなかった。気づいたら何もかもがぐずぐずに蕩けてしまっていて、後戻りできなくなってて】
【否。後戻りすることは出来た。最後の最後の瞬間まで、出来たはずだった。だけれど、戻ろうとすればそのたびに引きずり戻されるって、理解してしまっていた】
【そうしてその都度、心を何度だってへし折られる。心の一番奥底までなにかを入れられてかき混ぜられる、そうして最後にどうしようもなく堕ろせぬ気持ちだけ孕まされ】

【だから、"こわい"】

――――――――――――――――でも、私は、これしか、知らないから……。

【ならばやはり無惨な亡骸であった。とうに死した胎には無数の石を孕んでいるのに違いなくて。ああでもだけれどそれは狼の役割なはずで、】
【もうなにもかもがしっちゃかめっちゃかになってしまったみたいだった。おばあちゃんが死なない代わりに/助けてくれる猟師は居なくって/だから二人きり】
【朝も夜も分からなくなるまで睦みあうのがしあわせだって知ってしまったから。――だけれどそれが張り裂けるほどにくるしいってことも知ってしまったから】

【いまとなってはそれ以外の寄る辺もなく。――だからどれだけ苦しくても/だってそれが気持ちいいから/どこまでも堕ちていく有様は、背中を押すと言うよりは】
【それよりずうと地獄の底より貴女を道連れにしてやろうと手を伸ばし引き摺りこもうとする仕草であるのだろう】

【――――ゆえにこそ、ひどく悲しげで、けれど嬉しげで、幸福そうな、だのに張り裂けてしまいそうな、そのくせにひどく恍惚と潤む目をする】
【被虐と嗜虐を同時に宿す目。何もかも嬲られてしまいたくて。何もかも嬲ってしまいたくて。――――だって、】

【(神様は私を救ってくれないままでどこかへ行ってしまった)】

【その絶望から目を逸らし続けるための処方箋はきっと毎夜ごとに囁かれる愛と脳内物質のOD以外にあり得ないのだから、】


345 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/12(金) 22:22:46 Zf3Zxfws0
>>343

……うんにゃ、俺は普通に正社員だぜ?
まぁ仲は良かねェな、向こうは俺の事ガキ扱いしてくるしよォ……
【やンなるね全く、と少年はため息を吐いて】

……まぁ細々と、な
出来てからそんな年数経ってねぇって話だが狩るモン狩ってはいるって感じだな
【そう答えると相手の「櫻にいれば潰れなかったろうに」という言葉に確かに、というように頷く】
【そうして彼女の属する組織以外にも「おっかない」組織があるのだと聞けば、だったら"安心"だな、なんて薄く笑う。のだが】
【ふと真面目な表情になって、此処には正義の味方がたくさんいるんなら或いは無事なのかもしんねェな……と呟いて】

身柄の確保、な……まぁ良いぜ別に
寧ろ全員取っ捕まって脚ついて潰れちまえば良いんだあんな所……
【ふは、と笑って吐き捨てればまた他の社員達からの怒号。それに対して少年はまた罵倒を返す】
【どういう訳かこのクラマという少年には商会への忠誠心が欠けているようで。恐らく忠誠心を欠くに至る"何か"があったのだろうが】


……で、頼みなんだがな

『白い猫の少女』に会う事があったら──もしその子が辛い目に遭わされているようだったら助けてやって欲しい

……本当は俺が助けてやりてェんだが俺自身はどうなるか分かんねぇからな
【だからせめて、頼む、と少年は真面目な表情で頭を下げる】
【『白い猫の少女』──猫の、というのがいまいち分からないだろうが『白い少女』と考えれば何故少年が最初に固まってしまったのかは何となく分かるだろう。恐らくはその少女と過去に何かがあったのだ。だから──】


346 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/13(土) 12:24:31 smh2z7gk0
>>282

あら、お母さまに対して何か遠慮してなさるのでしょうか。同じ血を分けた家族、あまり気負わぬ方が良いですよ
―――そうですか、ずいぶんと本がお好きなんですね?

ええ、私はある特殊な方に仕えておりまして………自由に外は出ますし、そもそも主とも顔を合わせることはほぼないですわ。

【色々と遠慮しがちな少女へと視線を向けながら、自身の事を語る。】
【侍女でありながら主人と顔をほぼ合わせないというのはどういう事か、そもそもそれは侍女なのだろうか】
【誰しもが疑問を生む回答であったが侍女は気にする様子は無く、東屋を気遣う少女に微笑みかける。】

あら、そうなのですか………確かに新たな知識を得るというのはとても素晴らしく奇跡のような事ですわ。
まだお若いのに聡明ですね、そうです貴女が知らぬことを知るものもいれば貴女が知る事を知らぬものもいる。

世界はそうした均衡で、互いが補完し合って成立しているのですわ―――。

それではご家族の誰かが機械工学にお詳しいのですね。―――ええ、私は興味がありますわ‶貴女〟に

【侍女はゆっくりと落ち着いたテンポで言葉を紡いだ後、少女の問いかけの意図とは反する答えを言う】
【目を細め、薄い唇で微笑みながら涼しげに少女を見つめる。吸い込むような瞳―――】


347 : 名無しさん :2018/10/13(土) 12:53:00 b7PqE2DE0
>>346

――そうでしょうか、……そうかもしれないですね。ですけど、ひどく心配性で。お互いに息を詰まらせてしまうんです。やっぱり……気になるみたいで。
本は――好きですよ。誰かが人生を掛けた研究だって、頭を"やる"まで書いた小説だって、一冊になってしまえば、あとは、なんだってできますから。
ほら、辞書とか読みながら、一語一語全部何が言いたかったのかを理解してみようとしたり、――そうでなくても、何度も戻って読み直したりも、そうですね。

とことん二人きりになれる本が好きです。難しくても、そうでなくても……。……――それって、なんだか、不思議ですね。

【母――については、彼女はそんな風に話を濁すのだろう。そうなるとお互いに気を張ってしまうから、というような、微苦笑を添えて】
【そのくせに本が好きかと聞かれるのなら。――心なしか嬉しげに見えるのかもしれない、だからきっと本当のことだと思わせるのだろうか、くすくす漏れる吐息の笑い声が】
【――けれどいくらも不思議な主従関係を築いているらしい相手に気づけば、きょとんと眼を丸くするのだろう】

――――――そうですね、新しいことを知るのは楽しいです。新しく知ったことが、――他の何かの答えになっていたりするのなら、テンション上がります。
よく分からない出来事を説明する知識を得るときって、あるじゃないですか。こういうことだったのかって。――別にそんな風にならなくてもいいんです。だけど。
絶妙な状況を言い表すための単語を見つけたときみたいに、――そうですね、パズルをしているときみたいな、気持ちなのかも、しれないです。

……ふふ、ありがとうございます。これでも成績は上から数えた方が断然早かったんです。

【それでも相手が自分のことをあまり語らぬのであれば、彼女もまた追及しない。いっそそちらを追求する方が、自分へのそれを逸らせるのかもしれないけれど】
【それよりかいくらかおしゃべりしたい気分だったと見えて、――笑む唇の角度はいくらも甘やかに。褒められているのによく慣れている人間の所作であったなら】

はい、それできっと――きっと、私にも、覚えてほしいって思ってます。少なくとも、"自分"の知っている限りは。多分……ですけど。
――――あれ。私だなんて、面白いこと……なんにも、ないですよ。それよりも、この本の中の方が、よほど面白いです。――私には、まだよく、分からないですが。

【またも彼女は、ばむ、と、本を閉じてしまう。至極難しげな題を指先でなぞるのなら、その表情はきっと柔らかいのだろう。それこそ、恋する少女のような儚さを宿し】
【けれどすぐ困ったような顔をする。ためらいなく下げた眉の角度、青い瞳がかすかな笑みのあとに逸れるなら、置き去りにされる唇の曖昧な笑みは至極道理であり――】
【――ゆえにこそ彼女もまた侍女を見つめるのだろう。真っ青な瞳は、誘われたようにじっと相手の瞳を見つめて、一度、瞬く】


348 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/13(土) 21:01:25 WMHqDivw0
>>345

あら、そなんですか。それにしては職場の人間関係が上手く行ってないみたいですね?
……私もそうなんですけど。私、新人で。先輩にめちゃくちゃハラ立つカマ野郎がいるんですよね……

【無駄に同調するような言葉を吐きつつ刃は収めないんだからこいつもこいつで性格、難アリとみて間違いない】
【はあ、と溜息を吐きながらも首を傾げて。安心したなんて言われるのが、不思議でしかなかった】
【続く頼み事とやらを聞けばその気持ちが深くなっていく。眉間に皺を寄せて――訊くかどうか、迷ったけれど】

…………そんなこと私に頼むくせに、「こんなところ」に身を置き続ける理由。何でですか?
言えないってんなら別に教えてくれなくてもいいですけど。イヤならやめちゃえばいいじゃないですか。
それに、その猫の女の子? を助けたいって言うんなら――――それこそこんなところ、
やめちゃったほうがいいんじゃないかと思いますけど。やめられないですか? ブラックですか?

まあ別に。困っている人は放っておけない性分なんで、見つけたら助けますよ。勿論。
そこらへんはご安心くださいな――――あ、来た来た。それじゃさっき言ったみたいに、確保させてもらいますからね。

【結局訊くことにして。そこまで言うなら辞職でもなんでもすればいい、と言うのだけれど】
【それもまた難しいことなのだと、薄々理解していた。やりきれないような顔をする。……そうこうしている間に】
【表のほうから車の音が聞こえてくるだろう。いつの間にか呼んでいたらしい「味方」の車】
【商会の面々はそこに寿司詰めにされて、どこかへ運ばれていくのだろう。何の抵抗もしないならば、だけど】


349 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/13(土) 23:52:11 BRNVt/Aw0
>>348

【自分の話に眉を顰める少女】
【そんなに嫌ならば何故辞めないのだ、と尋ねられれば少年はきょとり、と目を丸くして】
【そのまま黙る事数十秒。そうしてから急にフッと噴き出してしまって】
【それからはお前毒はどうした、と聞きたくなるくらいの大笑い。一分くらいそうしていたかと思うと】

やめる……やめるか!
……あー、確かにそうだ!辞めりゃァ良いんだ!
そうだよなァ、全然思い付かなかった!
……あー……
【笑いながらそう答える。どうやらこの少年、辞職という事に頭が回っていなかったらしく】
【俺、半年くらい何やってたんだろうなァ……なんて苦笑して】
【けれども、助けるから安心しろと言われれば、ならば良かった、なんて胸を撫で下ろす】

【そうして少女の、車が来たようだ、という言葉に目をやろうとした瞬間】

【表の方から何やら轟音が聞こえてきて】
【ちらりと見えるであろう路地の先、何やら赤い炎がちらついている】

【驚いたような表情をしている少年を見るに、これは彼にとっても予測出来なかった"何か"である事は明白で──】


350 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/14(日) 00:27:08 WMHqDivw0
>>349

………………はぁ? なんでそれ気付かなかったんですか。
さてはおバカですね? もう……何かしら弱み握られてるのかしら、とか
心配した私がバカでした。……さっさとやめちゃえばいいんです。そして、
その猫の子だって、しっかり自分の手で、助けに行ってあげ、……、……っ

【呆れ顔。そうして口にするのは、心配して損した、なんて文句】
【なんだかんだで一切の情がない人間というわけではないらしく、少年の背後に何か事情があるのかと】
【そんな余計な勘ぐりだけして、勝手に心配していた自分がバカだったと。深めに溜息を吐いて、しかし】
【――それも轟音に掻き消されてしまうなら。緩んでいた表情を強張らせて、表通りに勢いよく振り向く】

――――――なんでしょう。クラマさん、あなたの「上司」か何かが来ました?
面倒臭いな、ああもう……ここにいてくださいよ! 逃げたりしたら地獄の果てまで追いかけますからっ、

【そのままの脚で駆けていくことだろう。簡単に考えるなら、迎えの車が「やられた」か】
【あるいは別のヤツがやってきたか。どちらにせよ拙い。まだ上手く動けないだろう少年は捨て置いて】
【少女は音のしたほうへ向かっていく。愚直にも、ほとんどの用意もせず――足音高く走り出す】


351 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/14(日) 00:51:54 BRNVt/Aw0
>>350

【呆れ顔でため息を吐く少女。馬鹿なのかと言われれば少年はうぐっと言葉に詰まって】

う……うるせェ!馬鹿で悪かったなァ馬鹿でッ!

……ああ、捕まって解放され……解放されンのかァ?これ……まあ良いや……そうなったらとっととあンな所からはおさらば……うぇッ!?
【そんな中で聞こえた轟音。もしや上司か、などと尋ねられた彼は変な声を発し】
【え、上司?誰だァ?誰か"此方"いたかァ?と狼狽えながらも考えて】

あァ!?俺は逃げねェよ!そもそもまともに動けねェし!
あ、でもなンか来ちまったら運ばれてくかも──
って、オイ!!?もういねェ!?
【逃げるなと念を押されれば逃げないと答え返すもある懸念を告げ終える前に彼女は行ってしまったようで】



【少女が駆けつけた先には炎をあげ燃え盛る車。恐らくは彼女の仲間のそれ】
【そうしてその前には一つの影があり】

【黒い短髪に黒緑色の着物と灰色の袴。その上には草色のインバネスコートを纏っていて】
【頭にはこれまた草色の軍帽を被っている】
【コートの襟元には先程の少年や彼の仲間が身につけていたのと同じ、目の四方に縦長の菱形をあしらったマークのブローチ】
【黒の軍靴をかつりと鳴らして軍帽のつばを上げれば、その下にあるのは二十代前半程の青年の顔】

『──あれー?もう来ちゃったんだー?』
【結構近い所にいたんだねー、と緩く笑う青年】
【彼が下手人である事は明らかであろう】


352 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/14(日) 01:12:09 WMHqDivw0
>>351

【走り抜けていった先。どうにも掴めない雰囲気の、怪しい人物を見るや否や】
【少女は表情を歪ませた。こういう人物が一番厄介なんだって、知っているから】
【刀を水平に構えて。じり、と慎重な目付き、それでも睨み付けるには十分な鋭さを保って】

来ますよ。だって正義の味方ですもん。
……単刀直入に訊きますよ、あなた、どなたですか?
ヨシビ商会とやらの人間でしょうか、それとも、……どちらにしても。
私のところの人に危害を加えました。ただでは帰しませんよ、……さ、大人しく私の言うことを聞いて。

【「聞いてくれたら痛いことはしませんよ。両手を挙げて。持ってるものは全部捨ててから」】
【あくまでも冷静を装って単語を並べていく。しかしその額には薄らと冷や汗が浮かんでいた】
【十中八九、能力者。手練れであるはずの八課の人間を一瞬で「やった」。であれば、相当な厄介者】
【ひとつでも行動を間違えたら死ぬものだと判断して。じり、と靴底を鳴らし、少しずつ距離を詰めていく】

【――それにしたって目の痛みがどんどんひどくなっていた。長い間能力を行使し過ぎた】
【流れ落ちる血の量だって相当なものになった。であれば、貧血――それで体力がなくなっていても、おかしくはない】


353 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/14(日) 01:46:20 BRNVt/Aw0
>>352

正義の味方ー?ふーん、じゃあキミ、此方の国の治安組織とかそんな感じのコなんだー

俺ー?俺はねー、英群 水鶏(ハナムラ クイナ)ー……あれー?名前じゃなくて所属ー?
だったら"そう"だよー
【何者か、と尋ねられれば青年はにへら、と笑いながら名乗って】
【所属について聞かれればそうである──つまり、ヨシビ商会の社員である、と肯定する】

【そうしてただでは帰さない、という言葉を聞けば青年は、うん?と首を傾げながら少女をじっと見つめる】

……ただじゃ帰さない、はいーんだけど……大丈夫ー?
【目からすっげー血ぃ出てるよー?と青年は問い掛け】
【それにさー、と言葉を続ける】

キミ、俺の方にかまけてていーのー?
俺達の事知ってるって事はキミ、うちの誰かに会ったんでしょー?
でもって、捕まえようとしてた……それはこの車からも明らかだ

【じゃー、ここで問題なー!と青年はにぱっと笑う】

……俺は何故わざわざ大きな音を発てて車を壊したでしょーか?
俺の能力の特性上そうなっちゃったってのもあるけど……もう一つ……
【青年が言うと同時に先程少年達がいた路地裏の方から一発の銃声が聞こえる】


354 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/14(日) 01:56:37 WMHqDivw0
>>353

クイナさん。そうですか、もう、そんなのどうだっていいんですけどっ……

【商会の人間であろうとそうでなかろうと、少女の中で彼はもう敵だった。ならば斬るしかない】
【睨み付ける視線はじっとりしたものから鋭いものへ変貌していく。ぎり、と奥歯を噛み締めて】
【目から溢れ続ける血を乱雑に手の甲で拭った。そうして刀を構え直そうとして、】

………………っ! 何、まさかっ……クラマさん!?
あなたまさか、彼に何かしたんですか!? 仲間なのに!?
ありえないっ、やっぱり、あなた……ここで殺します! だってこんな、不愉快なんですからっ!

【――振り向く。驚愕に彩られた瞳が見開かれ、すぐに水鶏のほうへ戻されて】
【それなら次の動作は早かった。ひとつのステップで距離を詰めてしまって、そこから一突き】
【何の躊躇もなく胸元、急所を狙う一撃だった。慈悲も何もかけてやるものなどない。そう判断しての一撃】
【しかしあまりにも直線的がすぎた。見てからの回避だって容易すぎることだろう】

【それに、心配事があった。置いてきたクラマがどうなっているか。その不安感が、太刀筋を鈍らせる】
【だからきっとこの一撃じゃ仕留められない。それどころか、反撃だっていくらでも許してやれそうなほど、乱雑】


355 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/14(日) 02:24:43 BRNVt/Aw0
>>354

【鳴り響いた銃声。狼狽える少女を前に青年──水鶏は、クラマ……ふーん、ウトーちゃんトコかー、と呟いて】

あはは、だーいじょーぶだよー
"彼奴ら"が命令無視して他の部隊勝手に殺す訳ないじゃん?
今のは合図……て……

【不意に詰められた距離。青年の紅茶色の瞳がぎゅん、と見開かれ】
【瞬間、青年の片腕から幾本もの木の枝が生え出して】
【あっという間に片腕は枝から成る巨大なそれと化す】
【そしてその巨大な片腕を地面について器用に後方に身体をずらして太刀筋を回避して】

……ねー、落ち着こ?
俺にかまけてて本当に良いのー?
俺"達"はウトーちゃん達を殺してはいない
けどさっきの銃声は俺の仲間のものだ
そしてそれは"合図"……
つまり──
【青年は巨大な片腕を振り上げる】
【そうしてそのままそれを地面に叩きつけようとする】
【その動作は緩慢で恐らくかわせる速度だろう】
【そうしてそれが降り下ろされたのならば地面からは土埃が舞う、筈だが──】


356 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/14(日) 02:36:06 WMHqDivw0
>>355

ウトーって誰ですか、ちゃんとわかりやすく話し、てッ――――

【枝で構成される巨大な腕。目を見開いてそれを見やり、息を呑む。瞬間的に拙いと判断する】
【相手が距離を離したと同時に此方からも距離を取る。であれば、続く動作もなんとか躱すことが出来て】
【だけど舞い散る土埃を押さえることはどうしたって出来ない。目を瞑って、口と鼻を手で覆って、吸い込まないように】
【それから薄ら開く目には生理的な涙が浮かんでいた。どうしたって目に入る埃を洗い流すための、透明な】

合図って、ッ、……ああもう、何にも見えない!
クソッ逃げる気かよ、ここまで追い詰めたのに、もう……!
それに、殺してはいないって、じゃあ他に何して……逃げるつもりですか!?

【けほ、けほ。咳き込みながら、その場から下手に動けない。土埃が晴れるのを待つことしかできず】
【何度も手で顔の周りの空気を払いのけながら、なんとか視界を確保しようとしていた】
【逃げられるのだけは拙い。やられるだけならもう少し抵抗して、その間に救援を呼べるけど】
【この状況に乗じて逃げられるんなら本当にどうしようもなかった。だから涙の浮かぶ眼で、必死に辺りを見渡して】

――――――クラマさんっ! 聞こえますか、返事を――無事なら! ねえっ!

【そうしながら、後ろに振り向いて声をあげていた。置いてきたクラマのことが気がかりだった】
【返事が欲しかった。何でもよくて、なんなら悲鳴でもいい。聞けたならすぐに駆け出すことが出来るから】
【少女はずっと刀を手放さなかった。けれど振り回すことはできなくて。もどかしい靄の中、少女は一歩も動けない】


357 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/14(日) 11:25:31 BRNVt/Aw0
>>356

誰って……会ったんじゃないの?善知鳥(ウトウ)クラマ……他にクラマはいない筈なんだけどなー……
【ウトーとは誰だ、という言葉に不思議そうに答える青年。恐らく先程のクラマと呼ばれていた少年のフルネームだろう。それをあげて】

【舞い散った土埃。もくもくと景色をくもらせて】
【彼女の呼び掛けが聞こえたのか否か、何処かのタイミングで「テメェ等何……」やら「痛ェッ!?」と言ったクラマの叫び声が聞こえてくるが土埃が晴れる頃には路地裏の方の声は消えていて】

【土埃が晴れた先には英群水鶏と名乗った青年の姿はない】
【ならばとクラマ達を残して来た方に引き返せば多少の引き摺った跡が残るのみでやはり彼らの姿は忽然と消えているのだろう】



/こんな形で締めさせていただきます!絡みありがとうございました!
/なお↓はソロールとなりますすみません!


358 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/14(日) 11:29:35 BRNVt/Aw0


【──それから数十分後。先程の路地から離れた別の路地】
【黒塗りの笠に黒い着物、朱墨で目の四方に縦長の菱形があしらわれた印が描かれた黒い紙を顔の前に垂らした幾人もの人影達が駆けていて】
【その両腕には半着の男達。当然赤い襟巻の少年──善知鳥クラマの姿もその中にはあって】

【──ふと人影達が足を止める。彼らの前には緩く笑みを湛えた水鶏の姿があり】
【その姿をとらえたクラマは英群ァ……!と唸る】

……テメェ一体どういう了見だァ!?"闇狗部隊(クロイヌブタイ)"まで遣いやがって!

『別にー?偶々逃げてる妖怪見つけたから俺はどっかの部隊がトラブルに巻き込まれてんのかなーって思って助けてあげただけだよー?』
【そもそも俺自身偶々此方に来てただけだしねー、と水鶏は返して】

……ハッ、恩売ったつもりかよ?返す気なんざさらさらねェよ

『あはは、いーよ別に。俺はあの女の子に会えただけで収穫だったしー』
【いーよねー、俺噛み応えありそーな奴好きー、と水鶏は緩く笑い、天を仰ぐ】

『正義の味方、だったっけ?あのコだけじゃないんだろーなー』
【あはは、これから退屈しなさそー、と声を弾ませながら水鶏は呟いた】


359 : エーリカ ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/14(日) 17:32:15 INMXRnqQ0
>>344

【目を覆っても泣いてる事は誤魔化せない。言葉の節々に涙が絡み付いて、心は静かに辛くて苦しいと泣き叫ぶ】
【目の前の少女は確かに凍てついた狼に滅茶苦茶に食い散らかされたのだろう。けど同時にその氷みたいな狼を愛してしまったから】
【痛くて辛くて苦しくても、それを和らげて、癒してくれる愛がある。依存性のある麻薬のように一度使えばもう後戻りが出来ない程の】

【ーーー……しかし、自分にはそれがなかった。過去は自分を殺さない。正しくなくたって殺されはしない】
【けれど手を伸ばしても届かない子猫に乞い焦がれて、泡沫の絶頂に近しい逢瀬を忘れられずこの身を苛み焦がし続けるから】
【顔を覆う手。その隙間からじわじわとゆっくり涙が溢れて。気がつけば嗚咽が混じり、素の自分をさらけ出していた】

【かえでを満たす魔法の言葉…好きって言う心を満たしてくれる魔法の言葉】
【辛いときも苦しいときも、楽しいときも嬉しいときも。魔法の言葉を口にすれば全てが上手くいくのだから】


……あぁ、わかってる。……二人だけの秘密に、……しとくから。アリアには、……黙っておいてやるから。
………わたしの、なさけない姿も、まよってる姿も。黙ってて、くれないかい…?

今の姿を知られたら、きっと幻滅される。
間違いなく……、ね。これ以上、よわいトコなんて知られたくないんだ…。
だから、……これ以上は、お互い……辛いだけ。すこし、……落ち着こう。


【けど、自分にとって好きって言葉は魔法の言葉じゃなくて、自身を苛む呪詛の言葉であり同時に愛をねだる言葉で】
【だから、つらい。かえでとは違う意味で辛い。涙に体を縮める仕草に艶めいた色気がうっすら見えるのに対して】
【涙で体を縮める仕草に弱さと弱った自分をありありと見せているエーリカ】
【だからーーー】

今なら、さ……あんたになら、さ。
泣きついても良いかい?……胸が軋む、心が張り裂けそうで。叫ばなきゃ、やってらんない。


【もはや、人目を憚ることはしない。今すぐにでもすがるように泣きついて、お互いの傷を舐め合わないと壊れそうだった】


360 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/14(日) 18:07:06 smh2z7gk0
>>347

ふむ、それは貴女もお母さまもお優しいからだと思いますわ。だからゆっくりと歩調を合わせていけばよいのです。
―――そうですね、本とは一人一人の物語や世界を纏めたものですからね。
但し、大人になるとそうやってゆっくり本の一文一文をかみ砕いてみていく時間が無くなるかもしれないから注意ですわ

―――別に子供だからと時間が有り余る事はないと思いますが〝今〟を大切にしてくださいね?

【どこか達観した様子で、けれども別に悲観はしていない言葉でメイドは忠告をする。】
【少女にとっては今もしがらみで苦しんでいるだろうが、大人は大人で面倒なしがらみがあるようだった】
【―――だから、今の内に好きな事に熱中しろと言う事だろうか。やはりこのメイドは少しお節介だった。】
【否、メイドだからこそお節介なのだろうか………?】

点と線がつながる感覚、確かに気持ちのいいものですね。
貴女のように既に聡明で物事を理解する力がある方がこれだけ本を読んでいればきっと強くなれますわ。

読書は人生において大きな財産になりますから―――。

【強い好奇心を持った様子の少女を見て、眼を細めて微笑みかける。】
【もしかしたら少女は今苦しい状況にあるのかもしれないが、いつかきっと強くなるとメイドは世辞抜きにそういった。】

成程、しかしそれに対し〝覚えなくては〟と考える必要はありませんわ。
純粋な欲求、知識欲こそが大事なのですから他社に気を使って脳のメモリを埋めることはありません。
―――尤も誰かのためにありたいという心はとても素晴らしい事ですけどね。

そうですか―――確かに今はそうなのかもしれませんね。
では、お名前だけでもよろしければ教えて頂けませんか?

【困ったように笑う少女に対し、メイドも少し困ったように眉毛を下げるが深く追及するような事はしない】
【相手との距離感を保ちつつ、少しばかり相手に踏み込んで名を聞いた―――。】


361 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/14(日) 20:05:40 smh2z7gk0
【水の国・旧市街】

【〝黒の大聖堂/ブラックロッジ〟―――そこは、そう呼ばれる場所であった。】
【旧市街の隅、鬱蒼と生い茂る雑木林の中にあるすべてが黒く塗りつぶされた巨大な廃教会。】
【邪教の本部だったとか、教会が表に出せない闇の儀式を行う実験棟だったとか、とにかく噂の絶えない場所だ。】
【大災厄の後に出来たのか、それより前からあるのか誰もわからない。誰も知ろうとはしない、近づこうとしない。】
【市街地だった場所からは雑木林に囲まれたこの建物の中心にある〝尖塔〟の先端部分しか見えない。】
【この教会は、世界から奇妙な〝断絶〟を受けていた。鳥ですらこの場所を避けて飛んでいるのである。】

【―――それでもこの廃院に近づく者がいれば、かなり破損した門が出迎えてくれるだろう。】
【よく見れば建物の壁も老朽化しているが、なぜか〝窓〟と〝扉〟のみは綺麗に原型を保っているようであった。】
【しかし正面の大きな扉はびくともしない。鋼鉄の錠が下りておりよほど大きな力でないと開かない様子だ。】
【裏に回ってみれば、無残に砕けた墓石が転がっている。元々は墓地でもあったのだろうか】
【そして裏手にも大きな扉があった、〝幸い〟にもこちらは錠がされておらず開いている。ここから中へ入れるのだろう】

【――――――――――――】

【中は酷く埃が積もっている。長らく誰も足を踏み入れていないようだ。入った廊下をそのまま道なりに歩けば聖堂部分へと到達するだろう】
【―――やはり破損が酷い、天井が崩落しがれきが積もっている場所もあるので注意が必要だ。】
【そして祭壇の奥に大きな螺旋階段がある、どうやら巨大な尖塔にはここから登っていけるようだ。】

【――――――――――――――――――――――――】

【薄暗い螺旋階段を上っていけば尖塔の先端部分へと到達する。かなり開けた空間で4面とも大きな窓がありそこから月明かりが差し込む】
【所々抜けた床の中心部―――そこにはやけに小奇麗な机とそれを取り囲むように4つの椅子が置かれている。そして、その一つに誰かが座っている。】

【ストライプの入った赤いスーツに同じ柄のソフト帽、銀色の長髪に赤い瞳といった目立つ風貌の女性だ。少し俯き気味に足を組んでいるようだ。】
【女性は来訪者に気が付けばゆっくりと顔を上げて、そして薄く微笑む。】

―――やあ、こんばんは。まさか〝其方〟から訪ねて来て貰えるとはありがたいね。
〝初めまして〟、それもと〝お久しぶり〟の方がいいのかな?何はともあれようこそ―――。

【女性は座ったまま腕を広げて来訪者を歓迎すると、客人に席に着くように促す。それに対しどうするかは客人次第だ。】

//予約ロールになります。


362 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/14(日) 20:56:33 WMHqDivw0
>>357

知らないですよフルネームなんか聞いてないです、っ、
……けほっ、もおっ……逃げられた、クソ……こういう時書く書類ってなに?
報告書? ……いや、車だめにされたから、始末書かな……ああクソ、もう!

【土煙の晴れたあと。少女はがん、とその辺にある箱だか何だかを、とにかく足蹴にして】
【どこにも、誰の痕跡がないことを確認すると、頭を抱えて重たい息を吐く】
【とりあえずは壊された車のほうへ走っていく。乗っていた人間の無事を確認して、それから】
【書くべき書類のことを考えてまた頭を痛める。「やりやすい」が面倒な組織に入ってしまった、とか思って】

【とりあえず絶対に書くべき文言だけを頭の中で繰り返す。「ヨシビ商会」、「ウトー・クラマ」】
【それから「ハナムラ・クイナ」……なんてことだ、どいつもこいつも漢字がわからない。また頭を抱えるのだった】

//おつかれさまでした、ありがとうございました!


363 : 名無しさん :2018/10/14(日) 22:43:19 OOgS2HHc0
>>359

【そうしてまたきっと、薬効と致死量のひどく近しい劇物であるのだろう。時として猛毒であり、そして時として特効薬として存在するものに】
【必死に拒絶して、背中を向けて、逃げて居たはずなのに。気づけばとっぷりと浸っていた。そうして、二人一緒ならどんなけ甘い蜜の中でもいつもみたいに息が出来るから】
【息継ぎの仕方をキスで教えてもらうたびに駄目になっていくってきっと分かりきっていた。――それでも、エーリカまでもが泣いてしまうなら、彼女は惑ってしまって】

――――――――――――――ん。――ぁりがと、ございます、……、言わないです、よ、

【――何か言葉を並べようとしている気配はあった。けれどひどく拙いって自覚してしまったらしい仕草で、ふわふわと不安そうな視線が、振れる】
【なんせついこの間"教えてもらう"まで、彼女は好きの意味さえ知らなかったなら――、ひどく辛そうである相手へ向ける慰めなど、やはり持ち合わせないのだろう】
【ただ一言だけひどく躊躇いがちな声が、「――幻滅だなんて、しないですよ」「だって、一緒に居たいって、泣いてるのに……」……、――なんて、辛うじて、紡ぐだけ】

――――もぅ、しょうがない、ですね、……。私、まだ、未成年、なんですけどお――。
……いいですよう、――――ほら、おいで、ナデナデしたげますから。私、これでも、お姉ちゃんだったので……ね。

【ひどく拙いハンドメイドのマスコットだけ並べるフリーマーケットの出店にならずに済んだのは、きっと相手の言葉があったから】
【ぱちと刹那に丸く瞬いた瞳が、――けれどすぐに柔らかにとろむのだろう。大人が未成年の胸で泣きたいだなんて、なんだかチグハグだとは言いつつも】
【照れ隠し以上の意味合いは持たず。ゆえに「はい」って広げる両手では、きっと大人だってすっぽり抱きしめられるくらいには十分で、きっと温かい、はず】

【――そのまま抱き留められるなら、きっと彼女はひどく甘い香りがするんだろう。あまぁい香りはボディソープの香り、シャンプーの香り、それから、彼女自身の香り】
【全部を混ぜ込んだなら、薔薇園だって諦めちゃうくらいには甘やかで涼やかで――ふうわり豊かな胸元に躊躇いなく埋めてやろうとする、それで優しく撫ぜるから】
【ちいさくささやく声はいつもよりも低く柔らかく吐息がちになって。――それでも、そうだとしても、やっぱり、「だいじょうぶですよ」としか、言えない】

【悔しいって思ってしまえば、また目の奥がつんと痛くなる。だけど泣かないように振る舞うのだろう、――それでも涙をのみ込むときの吐息までは、ごまかしきれなくて】


364 : 名無しさん :2018/10/14(日) 23:05:25 OOgS2HHc0
>>360

――――そう、みたいですね。大人だなんてなりたくない。――なんて思ってしまうのも、それは、それで、癪ですけどぉ……。
だから……そうですね、考えておきます、あと三年くらい、あるみたいなので。――どんな大人になるのかとか、本棚はどれくらい増やしていいのかとか。

【わずかに彼女は目を細めるのだろう。大人だなんて、結局なんだかんだ"いい"ものじゃないって気づき始めていた、それでも、どこかで何か憧れてしまう】
【お酒や煙草には興味ないけれど、もう気持ちだけは大人で一人前。――そんな風に思うのも、あるいは思春期の特権に違いなかった】
【都合のいい時と悪い時で大人と子供をころころ差し替えるんだからひどい話でも、いつかきっと大人の割合が増えていって、最後に人は大人になってしまうらしい、から】
【――そうして彼女は十七歳であるらしかった。どんな大人になろうかな、なんて、進路相談の様相は、それでも、三年後の部屋と書架の割合の方が一大事であり】

【「床とかぶち抜いちゃったら、やっぱり、だめですよね……」】

【なんて、ひどく真剣に呟くのだろうから】

そうだと――いいです。強くなれたら……、きっと何か大事なもの、護れるような、気がするから。
だから頑張ります、深窓の薄幸系読書女子を目指します――、――黙ってればそんな感じだって、昔、友達に、言われたんです。

【そうして伏せる視線、長い睫毛で瞳のいくらかを隠すなら、その表情は追いかけづらくなるのかもしれない。それでも分かるのは、きっと、彼女は何かを護れなかった】
【だから"こう"なっているんだと、言外に伝える何かがあった。――張り裂けそうなほどに悔やみながら/けれどどうしようもなく悔やんでいないんだと、伝える温度感とともに】
【――艶っぽい笑い声は、けれど少女らしい瑞々しさを兼ね備えて。確かに"そんな感じ"の顔をしていた。だけど喋ったら台無しだった。ゆえに、友人の言葉はきっと正しいから】

――――でも、私、覚えたいの。覚えたいんです。覚えてほしいってきっと思っているから覚えるのではなくて。私も……あの人のために……覚えてみたい。
そのために使われる脳の容量を、私はもったいないだなんて思わないです。だから――、分からないことがあるたびに教えてほしくて。私が何かに気づくたびに、私より喜んで欲しくて。
だからね、私のためなんです。――、――かえで、です。待雪かえで。貴女は――なんて、お名前なんでしょう。

【少女はきっと笑うのだろう、花の綻ぶ瞬間みたいに、その内側に限りない歓喜を内包する、とっておきに幸せそうな顔をして、笑うのならば】
【誰かを好いている顔をしているのに違いなかった、――その人のためならどんな自分にだってなりたいって思ってしまうのは、大人から見れば若さの暴走なのかもしれずとも、】
【望まれる自分になりたいしその自分を自分でさえも望みたい。この瞬間ばかりは、内側に燻る仄暗い何か、隠してしまって、――やがて名乗る名は、ひどく涼し気な声音にて】


365 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/15(月) 00:01:02 Ty26k7V20
【某所 地下6階――――第22特別会議室】


【外の天気はどんなものだろうか。昼過ぎに此処に潜って壁時計を信じるならば】
【まだ一時間半というところだ。夜には雨が降ると聞いていたがそれまでには此処を出たい】

【誰もが沈黙していた。その証拠に換気扇かエアコンの音が響いていた。PCのファンの音まで聞こえてきそうだ】
【なぜ誰も口を閉ざしているかといえば、それは、その直前に彼女が発した言葉の内容が原因だ】


『―――――貴方方には、タイムマシンを作る為に協力してほしい。』


―――――――――――――――

――――――――

――――




【数日前―――某所、外務8課、課長デスク】


【タマキはいつものように唐突にやってきた。彼女の言葉を借りるなら】

ちゃんと連絡したじゃない?

【というが、それは10分前に『今から行くね〜』という留守電のことだ。唐突と言っても差し支えないだろう】

【官庁関連の部署がまとめて入っているようなこの場所に彼女はいつもの通りのショートカットに眼帯を携え】
【80年台のオルタナティブロックバンドなるもののロゴがプリントされたTシャツにグレーの普通のパーカーに】
【ジーンズにハイカットのスニーカーという出で立ちでやってくる。しかも自転車を抱えてだ】

いーやここなんで自転車置くとこないの〜?外の駐車場さぁ、車じゃないとだめだって!ハァ?!自転“車”じゃん!自転“車”!

【自転車をデスクの近くに立てかけ、指を2本曲げて、“強調”をジェスチャで表す】


お疲れ様でーす。タマキです。いやー、こっちは綺麗でいいね。新楼市はごちゃごちゃしてるからさぁ。


【その場にいた課員に適当に挨拶をする。いつものハイテンションとニコニコの笑顔で】
【話しながら背負っていたバックパックをおろし、ファスナーを開けると】

あっ、これお土産でーす。じゃっじゃーん。タカハシヌードル社の調理ロボット“タカハシくん”クッキー。
皆さんでどうぞ!味は…どこでもあるやつだけどねー。こないだ展示会見てきたんだよね、新楼そういうの多いから。
そしたらタカハシくんグッズだって。

<tips:タカハシくん>
タカハシ総合機械が開発した調理ロボット。ロボットの導入によって人件費や教育コストを抑え、桜の国伝統のスタンダップスタイル
を採用したことによって全世界に店舗を構える“タカハシ・ヌードル”は安い早い美味いの三拍子。サラリーマンの味方である。
24時間365日お待ちしています。


【取り出したのはきっと何枚入でいくらという無難お土産の1位になってそうなやつ。適当に包装を破り】
【小分けになったクッキーを「はい、はい、はいどうぞー」と各々のデスクに置いて回る。そして最後に課長席にやってきて】

あれっ、ひぃふぅみぃ…此処何人だったけ?…参ったなぁ、ゴトーさんの分がないよ。
代わりと言ってはなんですが…

―――“M”の初瀬麻季音が話があるって、さ。直々のご指名よ。


//アリアさんの方宛です。部署など適当に描写してますがイメージと違うよってなところあればレスで入れ込んでいただければ
//修正しますのでよろしくおねがいします!


366 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/15(月) 01:07:45 smh2z7gk0
>>364

フフ、脅かしてしまったようで申し訳ありません。意外と〝大人〟も悪くないですよ?
貴女のような将来有望な方とお話するのも愉しいですし、何より自分の責任においてできることが広がりますから

【メイドは「本に埋もれて窒息してしまわないように気を付けてくださいね」と口元に手を当てて笑う】
【このメイドが言うには、どうやら大人は大人で楽しんでいるようだった。とはいえまだ半々な少女からすればそれこそ半信半疑だろう】
【とはいってもこのメイドも20代中盤程度の年齢にしか見えないので、大人と定義するには些か足りない気もするが。】

そうですね、但しまず守るべきは〝自分〟ですよ?
自分を守れるようになって、初めて他者を守り救う事が許されると私は思います。―――まぁ善い行いはすべきですが

―――いつかきっと〝その時〟はきますよ。

【拒否されなければ、メイドは少女の手に自分の手を重ねてそう優しく呟く。】
【思いのほかメイドの手は冷たいが少女に差し出された手の意味は暖かかった】
【―――少女が何に悩むのかは分からない。だからそっと寄り添うだけ。】

そう、それなれば良いのではないでしょうか。〝誰かの為〟というのは時に自分の欲求より大きな力を生み出す。
そして〝誰かの為〟の行いはいつかきっと〝自分の為〟にもなる。―――強く愛されているのですね、その人の事を。

〝かえで〟ですか………良き名ですね、ええとても。
私は―――〝ヒルデガルデ・ベルンキャッセル〟少し覚えにく名前で申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いしますわ。

【少し眉を下げながらそう言うと、ヒルデガルデは今度は握手を求めるように右手を差し出す。】
【容姿に反して随分と仰々しい名のメイドは変わらず微笑みかける。誰かを愛するかえでの心を自分の事のように喜ぶように】


367 : 名無しさん :2018/10/15(月) 11:23:09 S/DUh6T.0
>>361

【迷い香は時に現を渡り、境目に立つ朱火の情景、唐紅の錦に残すのは、揚羽細工の幽世の如く】
【 "其れ" は煙の様に、或いは質量を持った悪夢の様に、掌と心の隙間から、萌芽する時を待つ時計仕掛けの終世】
【瞬く合間の一枚と一枚、その次の刹那にはもう這い出て、霞む軋む猶予の無い世界線へと】



【   、―――――― 、あゝ、じりじりと、―――――― 時が啼く、――――  】



同じ事だよ "異形の姫" 或いは "深淵渡り" ―――― 此方の言葉でどう伝えるかは、僕にも少し曖昧だけれど
けれどもそれは呼吸の様に、もしくは異邦人のあげる悲鳴みたいなものさ、何と叫んでいるかは分からない、それでも
何を叫んでいるかは分かるみたいに、痛みに対する反応で、その為人は悠然と分かるのだから

―――― "はじめまして" も "久しぶり" も、折り重なって存在している、特に僕の場合はね


【踏み入る足の音、網膜に映すのは美しき怪異、それならば婀娜とは貴女の為に授けようと】
【彼は扉を開き、その場所に入ってくる、その場の道理に従ったのは、どこか律儀な戯れを思わせて】
【静けさを彩る言葉の群れに、危うく何もかも投げ出してしまいそうな程 ―――― 】

【軽くパーマを当てた茶色の髪、仕立てのいいスーツを身にまとった好青年であった】
【しかしてその両眼は深い螺旋を描き、見る者を圧迫させる雰囲気を持っていた、―――― 同時に】
【見る者の精神を映し出すかの様に、その中に浮かび上がるのは、消したい過去の情景に似て、】


         ―――― "INF-006" ―――― "ロールシャッハ" ――――


    招いたのは数あれど、招かれたのは殆ど記憶に無いね、一体どんな要件だろうか


368 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/15(月) 17:07:34 6IlD6zzI0
>>363

【一度溢れてしまったものは止められない。必死に留めた感情は遠慮なく流れ出して】
【自分が何を言ってるのか頭で理解しても、心は納得してくれなくて。寧ろ理性は感情に振り回されて】
【顔を覆う手を退けたなら、涙に濡れる双眸が露となって。頬を濡らすのは己の揺れ動く衝動だった】


―――……だぁから、未成年も、……へったくれも、…ないだろ。


【"形は違っても、言えない/癒えない傷を抱えてんだから。……少しくらい甘えさせてよ"】
【―――なんて事をくしゃくしゃの表情で主張したら、もうやる事は一つだった】

【かえでの胸ですすり泣くのだった。自分の傷を曝け出して慰めて欲しくて、弱い自分を晒した】
【抱き留められたときの感触は柔らかかった。少女の胸でなく大人の女。その構図は聖母に祈るか弱い信者】

【受け入れてくれたのは柔らかく豊かに実った双丘と、荒んだ心を癒すような甘い香り。様々な甘さが混ざって】
【それでいて涼やかに思えて。だから、張り詰めた糸はだるんだるんに緩くなって。かえでの胸元を涙で濡らしてく】

【カチューシャへの想い。目の前の少女と此処には居ない銀狼への嫉妬と羨望。そして折れそうになってる自分の弱さ】
【耳元で囁かれる声も柔らかくて。でもかえでも涙を堪えているのも理解したけど、そんなの無視して甘え続けた】


―――……私も、辛くて苦しいんだ!あの子に出会わなかったらこんな思いしなくて済んだのに!
カチューシャ、カチューシャ、カチューシャぁ…っ!どうして、あの時私にその手を掴ませて離したのさっ!
うっ、っっぁあああああああああああ!!!―――あの子に会いたい、虚神じゃないあの子にっ!!

あの時、マルタで刃を交えなかったら良かった!あの日、あんなあったかい抱擁を交わさなきゃ良かった!
でも……もう遅いんだ。…私の心は必中の狙撃手サマに撃ち抜かれてしまったから!

―――……もう、あの子に刃を向けたくないよ……。でも、あの子を独り占めしたいんだよ……。
差し出す勇気も無い。差し出すものも無い。けど、きっと愛してるし、もっとカチューシャが欲しくなって…。

もう……ひとりじゃ立てないよ……。立たなきゃって解ってるのにさ……。


【愛は人を強くする一方で弱くもするのか。かつてのエーリカならば、にべも無く切り捨てていただろうに】
【あろうことか切り捨てるべき相手に縋って、泣きついて。それはもう無力な少女みたいに】
【窓の外は酷く荒れて。雷鳴はやがて停電を伴って。暗くなったのも相まって、ぎゅうっと顔を胸に埋めて、泣き顔をひた隠す】


369 : ◆DqFTH.xnGs :2018/10/15(月) 20:28:35 3L4MkMAo0
>>306
【まるで彼女そのものを知っているかのような口ぶり。それに対し、何も言えることはなかった】
【察した、と言ってもよかった。少なくとも今は、何もかもを喋れる気力がないってことも】
【自分だって、今全部を話されても──どれくらい聞けるかは分からなかった。ならいっそ】
【何があったのかは想像に任せた方がお互いのためだ。それに、本当に大事なことなら】
【話すべき時も、聞くべき時も今じゃない。そのくらいは、神様でなくったって分かった】


…………ぎゃは。本当に鈴音を助けることが出来んなら…………
そん時は、数百年後くらいにはてめぇらおとぎ話になってるぜ
神さまを助けた人でなし、とか────そんな感じに、よ

まぁ…………マジな話すっと、だ…………
きっと、誰か一人が何百回分の人生賭けたっても足りねぇから────
────だから、いろんな奴が…………、たくさんの奴が、鈴音のこと考える必要あるんだろう、なぁ…………


【1人じゃ抱えきれない重みでも、大勢で抱えれば持ち上げることだって出来る】
【理想論のようなものなんだろう。殊、こんな場合においては特に。それを敢えて口にしたのは】
【慰めだとか、励ましだとかそんな類の感情からくるもんなんだろう。それにしたって、遊び心か】

【「いいね」愉快そうに彼女は言った。「こう、クソ映画に全力を使うのも悪くねぇ」】
【ぐ、と体を捩る。足の筋も伸ばして──よーいドンの合図もなしに走り出す】
【負けた方がチケット奢りな、なんてしょうもない賭けを放り投げ】


……………………なんか逆に、元気でたわ


【──────それから、2時間半後。映画館の前には、死んだ魚類の目をした彼女の姿があった】
【まさか、あれほどまでにつまらない映画だったとは。今なら世界が輝いて見える】
【路上に落ちているシケモクだって、この瞬間は宝物みたいなものだ。2時間半を虚無に投げ捨てた甲斐はあった】
【「まだ足りねーなら、付き合うけど」そう言って、ぼんやりと携帯を取り出した】
【電源はオンのまま。そういえば映画を見る前に切り忘れていたが、今更文句を言っても仕方ない】


370 : ◆RqRnviRidE :2018/10/15(月) 20:38:55 zmX..ifY0
>>252

【──名状し難き存在は凡そ感知しうる全ての情報が規格外だったように思われた】
【けれど彼女は、今この瞬間こそはあれらが此方に危害を与えぬことを知っていた】

【全く涼しい顔をした女を、子供は一瞥する。奥歯を食い縛り、背筋に悪寒が走る】
【キミの方が今はひどく恐ろしいのだという目をして。 迫り来るモノを睨み付けるだろう】

──……、マリアベル、キミは“自己の内面”に存在するのが〝内宇宙〟と言っていたよね。
じゃあ、〝外宇宙〟っていうのは、ボクらの見えてるよりももっと外側の……────っ

【余りにも仰々しい不定形の肉塊を目の当たりにすれば、瑠璃は思わず息を呑み、言葉を失う】
【微かに震える吐息が粘性のある足音と混じり合い、それを見つめたままの黒い眼と眼が交錯する】

【まるで高熱に魘された時に見る悪夢のようだった。 薄ぼんやりとした、形を成さない、拡大する闇と影】
【交わした視線は磁石のように引き付けられて離れない。 遠退いていくのは現実か、意識か、或いは正気か】
【掲げられた剣だけが鋭い輝きを放つ。 世界に我々の存在を縫い止めるべく】


    ────、 ──  ぁ。


【──そうしてそれは唐突に終焉を迎えることだろう】
【シャボン玉の弾ける音と共に逆転していく世界に、時空の遡上を垣間見る】



【────────】【────】【── ……】



【──ふと目が覚める。 瑠璃はマリアベルの隣に座って、クラゲの本を手にしていた】
【髪は相変わらずさらさらだった。 刃も毒も成さず流れるように子供の矮躯を這っていた】


は……、ははは、──ふふ…………いい夢を見させてもらったよ、マリアベル。
ああ死ぬかと思った! やあ、スケールが大きすぎるな。 でもね、後悔なんてしてやるもんか。

【いくつかぱちくりと目を瞬かせた後、安心と精神的な疲労からか噴き出すように瑠璃は笑い声を溢すだろう】
【これが彼女からの挑戦状というのならば受けて立つ他ない。 幼子らしい根拠のない自信を窺わせて】
【冷や汗をポタポタ垂らしながらも、マリアベルには勝ち気な笑顔を向けてみせた】


371 : 名無しさん :2018/10/15(月) 22:39:48 Kxn5ZSRk0
>>366

――――だと、いいんですけどっ。だけど、お酒も煙草も興味がなくって。他に何か楽しみって、ありますか?
実名報道くらいしか思い浮かばないです。自分の責任で出来ることって言われても、よく分かんないです。――まあ、
そうですね、一回くらい、大人買いはしてみたいです。大人になったら。……あとは――んんんう、……とくにない、ですねえ。

ドギツイ青汁みたいに色に髪とか染めたら楽しいかしんないですけど、……そういうのは、むしろ、"いま"やったほうが楽しいことですかね。

【「地震が来たら死ぬかもしれないです」】
【――冗談みたいな言葉は、けれど、あんがい真面目な声をしているのかもしれなかった。ならばきっと本を際限なく増やしてしまうタイプの人類だと伝えて、】
【だから古本屋で買い取ってもらうことを覚えたらきっとよかった。――そして多分だからといって本当に売らないタイプだとも思わせた、気が向くたびに再読するタイプに見える】
【酒と煙草と実名報道。どうやら彼女の"大人"のイメージはずいぶんとつまんなげで、例えばある日の夜にいきなり夜行列車で旅に出てもいい、とかは、思いつかないらしい】
【ゆえに案外面白くない性格をしているのかもしれない、――そうでなければすでに好き勝手に生きていて、それを特別だって思っていないか、】

――そうですね、そうでした。…………そう、ですね、善い行いはするべきです、きっと神様が見ていてくださりますから、

【取られる手は、――案外無抵抗に。それでいて、手袋越しならば、互いの体温はぼやかされて、ひどく曖昧に変わるのだろう】
【それでも微かな冷たさは伝わるだろうか。そうしたら、少女の手がわりに暖かであるのも伝わるのだろう。――それに、ずいぶんと小さな掌をしていた】
【平均よりもとりあえず一回りは小さいだろう。――だから包み込まれるような冷たさが、けれどきっと同時にまた温かく包み込むのに違いないから】

うん、――――だいすきなんです、とても、……。――ヒルデガルデさん。……大丈夫ですよ、もっと長い名前だって、私、覚えられますから。

【握手を求められるのなら、彼女はそちらも応じるのだろう。――名前を褒められるのはやはり快いらしい、特別な言葉はないけれど、柔らかく笑むなら】
【――けれど、相手がきちりと社会の出来事についての情報を手に入れている人種であるなら。「かえで」なんて名前は、いくらも前に、ずいぶんと世界で繰り返された】
【いわくどこぞのカルト教団の幹部の名であるらしい。そうして"その"「かえで」も、十七歳の少女だった。――しかして、とある日を境に生存不明/行方知れずになっており】

【――――そうしてまた、いつかの日に、射殺された、との後報が出て、それきり】


372 : 名無しさん :2018/10/15(月) 23:03:49 Kxn5ZSRk0
>>368

ありますよぅ、だって世の中のおっさんたちは、JKのおっぱいに顔埋めるのに金払って逮捕されてるんですよ?
それを、こんな場所で――無料で――たぶん合法で――。……だからほら、喜んでください。通報しないでおいて、あげますし。
めーいっぱい、泣いちゃって、いいですよ? ――――――誰にだって、言わないどいたげますから、ね。

【わざとらしい声だった。揶揄うような冗談めかすような声に言葉の羅列は、せめて少しでも重たい現実を誤魔化そうとするみたいに、意味は薄くとも】
【彼女なりの慰め方なのかもしれなかった、――自分の胸に泣く彼女を抱きしめるなら、きっと後頭部に手すら添えて、遠慮なんて、間違ってもしなくていいように】
【よしよしって頭も撫ぜてやるのだろう。頭から背中までを一続きに。そうしてとんとんって背中を優しく叩いてもやるなら、赤子がきちんと息を飲み下せるか見守る母親のよう】

――そうですね、出会わなかったら、きっと、貴女の命は、ぜんぜん違う形になって。今だって……、そうです、それこそ、"こんなふう"にならなくて。
きっとこの雨を自分のお部屋からでも眺めながら、「こんな日に出歩くのはよっぽどの馬鹿だな」――とか、言ってたかも、しれないです。
そもそも、雨すら降らないかもしれないですね。――そんなの、確かめる方法、ないですけど。だから、――そんな方法ないから、どうしようも、ないです、

私だって……アリアさんに会わなければ。あの日、あそこに来たのが、アリアさんじゃなかったら。あの時。あの時……って、たくさん、考えてしまうの、
だけど、分かんなくって。――でも、あの時違う人が来ていたら。あの時、死ねていたら。……きっと私は、世界中で、誰より、何より、正しかった……。

【IFの話は、結局泥沼だった。あの時ああしていたら。ああなっていたら。こうしなかったら。こうならなかったら。――追わらないならどんな地獄よりも、痛苦を示して】
【だから彼女は考えてしまうなって言っているんだった。そのくせに、――自分だってそれをやめられないなら、ひどく曖昧な言葉での制止にのみ留まり】
【世界中の誰よりも正しく死ねたなら。――そのことをいまだに諦められない自分もいた。あの時以外に自分のいのちを清算できる瞬間がないのではないかと、今でも】

【――――ぶつ、と、鈍い音がして。店内の明かりが消える、ぴくりと揺らいだ指先は、きっと、いくらかの驚きを示して】

――――ほら、雷と雨でうるさいし、暗いし、誰も見てないし、聞いてないですよ。だから、だいじょぶです。

【それでも耳元で囁く声は吐息がちで柔らかい。――耳孔に吐息を流し込むような距離感。なれば、彼女もまた抱きしめる相手の体温に、なにか苦しみを癒していると知れるから】


373 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/15(月) 23:47:02 6IlD6zzI0
>>372

【あの日カチューシャに出会わなかったら、単なる障害でしか無かった】
【あの日サーペント・カルトに潜入しなかったら、今日この時も社会的死人として殺しに勤しんでいただろう】
【ギンツブルクという名の公安五課の室長――墓場の王、罪の王冠と称される六眼の異形――と側近の沙羅と言う名の人の形をした魔道書に仕え】
【国家と言う実体の無い概念に使われるだけの暴力装置として、生きるものの足を引っ張り、国家にとって不都合な命を切り捨てるだけの人生だった】

【「カチューシャ」も「かえで」も等しく国家のためにならない障害として、切り捨てるだけだったのに現実は違った】

【カチューシャと言う名の愛を謳う狙撃手に恋焦がれて、愛を捧げても良い程に惹かれて惚れて】
【かえでと言う名の少女に同情と共感を覚え、あまつさえ彼女の胸に顔を埋めて頭を優しく撫ぜられて】
【エーリカという名の社会的死人は―――どうしようもない現実に慟哭するしかなかったのだ】


うっ、うあ、う…―――――うああああああああっ、あああっ!!
あああっ―――――――――ッッ!!!あ――――――ッッ!!
ひぐ、っぐ、っぁあああッ、あああああああああああああッッッ!!!


【かえでの「だいじょぶ」という言葉は、優しく染込んでしまったなら――もう慟哭は言葉にならない】
【話し方を忘れたかのように。泣き叫ぶことでしか何かを訴える事が出来ない赤子のように】
【さっきよりも深く、深く顔を埋めようとして。零した感情をかえでに受け止めて欲しくて、ただただ泣き続ける】
【停電で光を失った店内だから。暗がりであれば弱い自分を見せたって解りはしないから、ここぞとばかりに泣いた】

【―――】

【いつまで泣いたのだろう。もう解らない。永遠にも思える程に泣き叫んだ気がした】
【次第に泣き声が弱まっていったなら、エーリカはきっと泣き疲れてしまって、糸が切れたように意識を失って】
【力なくかえでに身体を預けるのだろう。―――かえでがある種の同類で、そして心を許せる位に肩入れしてしまったから……】


374 : 名無しさん :2018/10/16(火) 00:17:59 Kxn5ZSRk0
>>373

【「――ねえママ、かえでちゃんね、赤ちゃんのころね、おしゃべりできないからね、よるにね、ないてたの」】

【――覚えてなんていないけれど、五つか六つかの頃、そんなことを母に言ったことがあったらしかった。なんてことを、ふと、思い出していた】
【今となっては赤子のころのことだなんて覚えてやいないし。その当時は覚えていたのかもしれないけど、そんな、言葉を持たなかった頃なんて、想像もつかなくて】
【だって考えるための言葉を自分はもう手に入れてしまったから。言葉を介さずに考える手段など分からないから。だから、もう、そんな方法、分からないけど】

【それでもきっと近しいものだと思った/思えた/思いたかった。自分ではどうしようもなくて、張り裂けてしまいそうな気持ちばかりが膨らんでいくとき】
【どんな言葉も思考も本能も追いつかないなら、大人だって泣きじゃくって当然だった。それはきっと赤ちゃんが泣くのと、同じ意味合いをしているって、思えたから】

【少女はエーリカのことをほとんど何にも知らないけれど、それでもどこかで自分と似ている気がしたなら、そうして何より、同じ罪に心惹かれてしまったなら】
【おんなじ風に"死んでしまったふたり"、同じ傷口の痛みを擦り合わせてしまっても、きっと、神様だって許してくれるって、信じたいから】

――――――――、もう、しょーがないですね。おっきい赤ちゃんみたい、……。油性ペンとか、ないかな。ふふ。

【――そうしてエーリカが眠ってしまうなら、少女は仕方ないって顔をして、そのまま自分の胸元を貸したままにしておくのだろう、身動きもできないけれど、】
【それくらいは可愛らしい猫に自分の腕を枕にされてしまったようなものだった。布団としての職務を全うしてやろうと思える程度の温かさ、二人の間に共有するなら】
【ただその代わりに停電が復旧すれば、空っぽのミルクティーの代わりに、今度はあたたかなミルクでも頼むのだろう。――店員には、この人雷すごく怖くて、って、顔をしておく】

【だから――だから、彼女は、相手のことを無理やりには起こそうとしないのだろう。その時々でわずかに身じろいだり体勢を変えることがあったとしても、】
【相手のことを起こしてしまうほどに大振りなことはしない。ただ、くちゃくちゃの前髪を耳にかけてやったりする程度に触れることはあるだろうか】
【抹茶ラテを頼むときの声もしっとり静めて。本でも持ってくればよかったかなと思案する。レジのところで売ってる袋のお茶菓子を頼むときも静かな声で。――?】

――あ、おはようございます。ねぼすけさんですね、いっぱい眠れましたか? ちょっとは元気になったなら、いいんですけど。

【――――相手が目覚めるのはどれほど後のことなのだろう。そうすれば彼女はやはりそこに居た、相手の身体をきちんと抱き留めたまま、ちゃんと座って、待っている】
【相手が起きたと気づくなら、ちょっとだけ悪戯ぽく笑んで顔を覗き込むのだろう、――当然ながらうんと近い距離感、くすくすって吐息すら、頬を撫ぜるようで】
【見渡せば机の上はいい感じに綺麗だった。要らないお皿とかは片付けられていた。だからちょっとだけ気づくのは難しい。――伝票が数枚増えていた、なんて、余談なのだけど】


375 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/16(火) 01:00:12 6IlD6zzI0
>>374

【―――意識が深く深く落ちていく最中、夢を見ていた気がする】

【夢の内容はカチューシャに誘われた日の、あって欲しかった仮定、望んだ未来】
【仔猫の様に可愛らしく眠る狙撃手の手を取って、指を絡め取ったり。髪を梳いたり、優しく撫ぜたりする夢】
【絡めた指はそのままに二人して幸せそうに眠って。ささやかな幸せをかみ締めて、永遠を望む夢だった】

【幸せな夢。夢だけを見て幸せを望む生き方――確かに心地良くって堪らない】
【けど、夢は覚めるものだから。それは現実じゃないから。やがて水底へと落ちていく意識は引き上げられる】
【その作用は離別に似て。二人を分かつ亀裂の様に。絡めた指は離れて、そして二人は分かつ事になり――目が覚める】


――――……(かえでのむねが)やわらかくって、あったかい……。
………ずっと、あまえたい。………心地いい。あまい匂いも、……わたしには無いから……(羨ましい)


【まどろむ意識が紡ぐ言葉は、素直な自分。さっき触る事を拒んだ豊かな胸の感触】
【間違ってもかえでの問いに対して正しい言葉ではない。だから、覗き込んだ顔と顔が向き合えば――】
【今の自分がどんな状況にあるのか察しがついて―――頬を赤らめて、伏目がちに眼を逸らす】


――――……うっさい。だれがねぼすけだ。全然眠れなかったに決まってんだろ。
かえでみたいな貞操観念の緩い女の胸に顔を埋めて寝てたら寝苦しいんだよ…。

―――………けど、こういうのも、好きになっちゃうかも。ひとの胸に顔をうずめるのも、甘い匂いに浸るのも。
(だから少しだけ元気になったかもしれない)……ええい、無駄に大きいおっぱいしやがってさ……少し悔しいよ。


【悪態をついて横目でテーブルを見遣れば、色々とさっぱりしていて。窓越しから見える空模様も幾らか落ち着いて】
【晴れ間こそ見えないけれど、雷は鳴り止んで。雨がしんしんと控えめに降るに留まっていた】

【さっきまで駄々をこねる子供みたいに泣いていたエーリカも今では落ち着きを取り戻しつつあって】
【かえでから顔を、身体を少しずつ離していき、こほんと先程までの痴態を誤魔化す様に一息洩らして】
【出会ったときの様に椅子に腰掛けて――でも、かえでの顔は直視できなかった。今更取り繕うものなんて無いのに】


………ありがとう。かえで。…………もし、違う形で出会ってたら。
仮に私が本当にカルトの一員としてあんたに出会ってたら、多分あんたに入れ込んでたに違いないね。


【それは姫を護る守護騎士の構図で。でも、そんなのあくまで仮定の話で】
【それでもエーリカは感謝の言葉と、気を赦したという言葉を口にした。依然としてかえでの眼を見ないまま】
【そしたら、……伝票の枚数が増えてる事に気付いて、「むぅ…こいつめ」なんて可愛い唸り声を上げるんだった】


376 : 名無しさん :2018/10/16(火) 01:28:52 Kxn5ZSRk0
>>375

――――あれえ、駄目ですよう。ずーっとはね、駄目です。私、アリアさんのところ、戻らないと駄目ですし……。
だからさっき触ります?って言ったんです、それが、おっぱいにお顔埋めて眠っちゃうだなんて、触るどころじゃないですよぉ、こんなの――。

その割には、すやすやって気持ちよさそうでしたけど――。寝顔だって、こう、にんまりして……。
寝心地わるーいって感じじゃ、なかったですよ? ――もう、ひどいです、緩くないですよ? 私、アリアさんのこと、だーいすきだもん。

【微睡みの中から漏れる言葉に、けれど少女は悪戯ぽく返すんだった。ばっちりと目が合ってしまえば、相手は恥ずかしがるのかもしれないけれど、彼女はどこか楽しげに】
【「まあ、たまになら、いいですけど――」だなんて笑っている。両方の二の腕のところで胸元をぎゅうよ寄せるなら、ただでさえ柔らかな胸元、ゆるりと寄せて持ち上げられ】
【ゆるゆるとろとろのパンケーキだってもうちょっと気合が入ってるに違いなかった。それくらいに柔らかで、けれど新鮮な葡萄みたいに張りがあって、穴をあけたらとろんってあふれ出しそう】
【そうやってしばらく揶揄うんだろうか、何度かそうやって胸元を寄せたり、寄せなかったり、――わざとらしい拗ね声にて、反論をしたなら】

――――――、アリアさんの方が、おっきいんで、最近ちょっと気にしてたんですけど――。十分大きいみたいで、よかったです。うふ。

【――身体を離す仕草をまた覗き込む。もう大丈夫なのかって尋ねるように。その癖に口から出ているのはそんな言葉だった、けど】
【顔の白いのを見れば、胸元だって真っ白だって嫌でも分からせてしまうのだろうか。むしろ、日の当たらない分、そのまあっしろな顔より、胸元は白いって伝えて】
【ついさっきまでエーリカの顔が埋まっていたあたり、に指先を沈め込むなら、ひどくやらかくへこむのだろう。涙はもうすっかり乾いてしまっていたから】

今からでもいいんですよ? ほら、なんとかサーの姫みたいな……。何サーでしょうね。社会的に死んでるサーの姫とかですか?
地獄絵図ですね、やめましょうか――、――お元気になったみたいで、良かったです。

【くすくすって笑う声は何度目だかも分からぬほどであるのだろうけれど、それでも子供ぽくて大人びているのが、少女としてのほんの一瞬を彩って】
【――増えている伝票についての反応であった、ひどく揶揄うみたいで、だけれどネタバラしはしなくて、だから、きっと、彼女は先に帰るつもりに違いない】

【(もう払っちゃってますよ、とか、言っちゃったら、きっと詰まんないんだから)】


377 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/16(火) 01:58:53 smh2z7gk0
>>367

【螺旋の中に見えるのは忌まわしき過去の自分。何も知らず、何も疑わず、ただただ〝」皀筌�〟を信じ】
【秘匿され、押し込められ、それでもなおそれが役割だと信じ込まされていた。信じていた無知で無垢な―――】
【女は一度忌々し気に眼を細める。それも束の間の事、一度瞬けばすぐに柔らかな瞳へと戻る。】

―――ふむ、量子力学の猫が如く貴方達は曖昧な存在という事かな。
観測され、認識された時点で確定する不確かでただ誰しも感じる概念の集積。………というほど単純ではなさそうだね。

私の事は気軽に〝マリアベル〟と呼んでくださいな、ミスターロールシャッハ。
今回お呼びした理由はいくつかある、一つは互いの〝距離〟の認識をすり合わせる事。
前に貴方とお会いした時………あの時はあくまで様子見だった、結果的に〝彼/ジャ=ロ〟の抹消に加担はしたけども。
今後どう振舞うかは正直決めかねている、だからこうして膝を突き合わせてお話をしようと思った次第さ―――。

【「意外と理性的だろう?」と肩を竦めて苦笑しながら話す、促されるまま椅子へと近づけば小奇麗なテーブルも良く見える】
【テーブルの上にはまるで〝星図〟のような煌めく布が被せられている。マリアベルは言葉を続けようとする。】
【「そしてもうひとつ―――」】【酷くゆっくりとした口調に聞こえる】【まるでロールシャッハが席につくタイミングに合わせるように】
【そして、座ったとしても座らなかったとしてもそれは起こる。必然であった―――。】

                       
                        【――――――〝星の悪夢〟――――――】


【尖塔の中の埃にまみれた場所だったそこは、一瞬で別の〝空間〟へと変わっていた。辺りは〝赤い花畑〟になっている】
【ほかの風景は―――霧が濃い、把握することは叶わない。否、そんなはずはない〝貴方に限って〟】
【ただきっと貴方はその場の道理に合わせる、それが愉しむコツだと言わんばかりに。】
【―――1つ、貴方ならすぐに分かるだろう。〝これ〟へと至ったのは目の前にいる女の〝異能〟によるものだという事に。】

―――もうひとつは、私の求める〝外宇宙の神話生物〟について貴方の意見を聞きたいんだ。

【周囲が変容して尚椅子に座したまま、変わらぬ様子でマリアベルは言葉を続けた。椅子はまだ4つ残っている。】


378 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/16(火) 02:00:54 6IlD6zzI0
>>376

―――……あっま、あまったるすぎ。そしてその仕草は眼に毒……。
……少しぐらい寄越せよな、ったく。……これ見よがしに胸寄せるんじゃないよ。

私の胸がより貧相に見えるじゃないか。
……まぁ、また泣き付く事があったなら遠慮無く埋めさせてもらうケド。
嫌だって拒んでも、押し倒して埋めてやるから…それくらいのワガママは許してよ。

【"だって、あんたに寄りかかるのって柔らかくって、いいにおいがして病みつきになりそうなんだから"】

【泣き腫らした顔は力なく笑って。でも、憔悴の色の無い、何処か穏やかなもので】
【無い胸に手を押し当てて。ぺたぺたと触れれば、なんてことは無い。平坦な胸が其処に在るだけだった】
【だからこそ、甘える相手だって選ぶ。少なくともかえでは甘える相手として、友達として看做してるから】


……ふん、この巨乳カップルめ。……せいぜい夜道には気をつけるんだね。
って言っても意味無いか。………ああ、「だいじょうぶ」だよ。少なくとも今はね。

くくっ、そうだな――色ボケサークルの姫ってトコかね。地獄絵図だって構いやしないさ。
何せ私はいっつも地獄の淵を綱渡ってんだ。アンタもアリアもカチューシャも地獄の淵の綱渡りに付き合って貰うよ。

―――ああ、そうだ。これ。私の連絡先。エーリカ=ファーレンハイト個人の連絡先。
また会うことがあったら惚気話の一つや二つ、いいや胸焼けするほど聞かせておくれよ。
今度は大人の威厳と余裕ってやつを見せ付けてやるからさ。―――……アリアにもそう言っといてくれ。


【返ろうとするかえでに手渡すのはエーリカの連絡先が記されたメモ書き】
【穏やかに眼を細めた表情で、すっと手渡すものだから――少しだけ大人っぽく見えるかもしれない】
【その仕草は親愛の情だったから。その裏に隠した意味は「また会いたい。今度は恋人同伴でもいいよ」って意味で】
【小雨気味になった天気。そんな空模様の中、かえでは店から出るのだろう。その背中を見送るのだった】


//ここらへんで〆…でしょうかね?何はともあれお疲れ様でした!


379 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/16(火) 02:20:40 smh2z7gk0
>>370

【笑い声を上げる瑠璃を図書館の人々は怪訝に眺める。二人の目の前には『私語は控えめに!』という手書きの張り紙が】
【マリアベルは頬杖をつきながら愉快そうに眼を細めている。だがそれはどこか母が子を見るような眼にも思えた。】
【汗を垂らす瑠璃の頬や髪を、懐から取り出したハンカチで丁寧にぬぐおうとするだろう。】

全ては泡沫の夢、星の見る夢さ―――君の現実は〝未だ〟此処にある。
ただまぁ世界は広いって事だよ瑠璃。だからきっといつか君の道も存在の証もきっと見つかるさ。

―――応援しているよ、瑠璃。

【マリアベルは微笑みながらそう言う。瑠璃の頬を拭おうとするハンカチを握る手、その指は何かに締め付けられて鬱血していた】
【それは―――それは紛れもない現実であった。】

【バサリと、読んでいた新聞紙を閉じるとマリアベルは立ち上がり脇に置いてあった革製のトランクへ手を突っ込む。】
【そして瑠璃の目の前にトランクから取り出した何かを置いた―――それは鞘に入った短剣だった。特に目立った装飾はない】
【しかし鞘から抜けば一気に目を奪われる。刀身が赤いのだ、まるで幾千もの血で磨ぎ続けたかのようにあまりにも美しく紅く輝いている】

〝ご褒美〟だよ、今のままでも護身用にはそれなりに使えるだろうし最悪売ればそこそこのお金になるんじゃないかなぁ。
まぁ、どう扱うかは好きにするといいさ―――。

【何やら含みのある言い方をしながら、マリアベルは悪戯っぽく笑う。無邪気に、けれどもどこか深淵を感じさせる―――。】


380 : ヒルデガルデ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/16(火) 02:37:44 smh2z7gk0
>>371

ううむ、そう言われてみると中々に難しい質問ですね………一言では表せないといいますか。
実名報道されるような事をしなければよろしいのでは!?―――コホン、まぁ色々と出来る事が広がりますよ

ですがきっと、貴女は今をどう〝生きるか〟を考えるべきですよ〝かえで〟さん。

【さすがにメイドも声を大きくして反応してしまう。そしてそれを恥じるように頬を赤く染めながら咳ばらいを一つ。】
【そして何か意味ありげな風に、実際に意味があるのかは分からないとりあえず聞こえの良い言葉で強引に纏めた】
【所謂〝逃げ〟―――である。やはり大人は汚い。】

―――ええ。 〝かえで〟さん、貴女は…………。

【暖かな、小さいけれど暖かな掌に包まれながらヒルデガルデは何かを言いかけて止めた。】
【直前にかえでの放った言葉がどこか不穏に感じたから、けれどもそれは先入観故のものかも知れなかった。】
【―――だから「いいえ」とメイドは言葉を切った。そしておもむろに立ち上がる。】

残念ながらもう行かなければいけません。ええ本当に残念………最後に一つ質問をしてもよろしいですか?

―――かえでさん、貴女は今―――〝幸せ〟ですか?

【再び日傘を開いて、太陽を背に逆光を浴びながらヒルデガルデは静かに問いかけた。】
【流れる川の音、草木の揺れる音、それら自然の音が何故だか大きく聞こえるような錯覚を覚える。】


381 : 名無しさん :2018/10/16(火) 02:38:30 Kxn5ZSRk0
>>378

――やですよ、私が頑張って育てたおっぱいなので。――まあ、勝手に育ったと言えば、勝手に育ったんですけど。
でもちゃんとお手入れは頑張ってるんですよ、いい匂いのクリーム塗って、保湿して……。――もう、しょうがないですね。エーリカさん、ほんとに、大人の人ですか?

【胸元をぺたぺた確かめるエーリカを見て、――それでも彼女はきっと自信のある胸元を柔らかそうに寄せ集める、あげるつもりはなくて、だけど勝手に育ったって】
【ある意味では非道い言葉だった。それでもその跡はきちんとお手入れしてるんだからって胸を張る、だから、誰かを甘やかすには十分な温かさと甘やかさと柔らかさと香り】
【時として煙草のにおいが混じる日もあるかもしれないけれど、――ううんきっとあるんだけれど。それはしょうがないことだから、つまり、いつだって必要なら】
【また泣きたいような気持になるなら、付き合うからって、きっとそういう表情と声とをしていた。――だから、時として、他の誰にも言えないこと、相談するかもしれないから】

そうですね、あんまし意味ないかと思います、裏道とかは、よく出歩いてましたし――道とかも、分かるので。
誰か拉致するときとか、――呼んでくれたらね、手伝いますよ? まあ、私は、アリアさんとこのワンちゃんですけど。
――もう、ボケてないですよ。私のこと、なんだって思ってるんですか? 女子高生ですよ、女子高生。学校に行ってたらですけど。

だから、まあ、今は――女子ですけど。ただの。

【――まあ、自分はともかく。たとえそうだとしても、夜の裏道の歩き方は心得ていた。地理もあらかた頭に入っていた。あくまで、活動圏なら、だけど】
【冗談めかすような言葉は、けれど存外に曖昧な表情で。人を生きたまま攫いたかったらご用命を、なんて、――。――自分で言ったくせに、いくらも辛かったのか、目を逸らす】
【のに。すぐに拗ねた色合いで戻って来る、あくまで自称は一般的な少女であるらしかった。少なくとも貞操観念についての認識は駄目らしかった。――とにかく、】

――――ん、ありがとございます。じゃあ、私のやつも、教えてあげます。アリアさんに買ってもらったの、あんま使わないんですけどね。
はいどーぞ――、あんまり見てないかもしれないんで、緊急の時は電話にしてください、電話。そしたら、多分、気づきますから。

じゃあ、いっぱい用意しておきますね、惚気話。――どうでしょう? 今のところ、エーリカさんの印象、大分ちっちゃいワンちゃんって感じですけど――。
斜め上のやつ期待してます、ほら、旧型のテレビとか、直っちゃうようなやつ。――よいしょ、じゃあ、"ごちそうさまでした"。――ふふ!

【相手が連絡先を教えてくれると言うなら、彼女も。自分の個人的な連絡先を伝えるのだろう、なんせ現状死人である彼女に公の連絡先はありえないから】
【ただもともと携帯電話はあまり使わないタイプらしかった。ゆえに、――よほど緊急であれば電話なら音が出るようにしているから、ということで、それもまた伝えて】
【大人の威厳と余裕――にはひどく愉快そうな顔。本当にひどい話だったけれど。――立ち上がるなら、彼女は至極子供っぽく笑う、お終いには堪えきれない笑い声を漏らしてしまい】
【口元を手で隠したなら、そのまま、ぱたぱたと――通りすがりの店員に「ごちそうさまでした!」っておんなじ言葉、投げかけた直後に、からんとドアのベルの音】

【――――「もうあんまり降ってないですよ」のポーズ。窓の外から相手に伝えるなら、そのまま、どこぞへ姿を消すのだろう】

/おつかれさまでした!


382 : 名無しさん :2018/10/16(火) 03:07:58 Kxn5ZSRk0
>>380

――――大人なのに、分かんないんですか? じゃあ、私が分かんないのも、仕方ないですね。
……でも、分からないですよ。ほら、車を運転してて、うっかり小学生の列に突っ込むかも、しれないですし――。

それ以外にも、人生何があるか分からないじゃないですか――。……大人の人ってやっぱり汚いです、失望します、大人になりたくないなあ……。

【手袋にくるんだ指先を自身の唇に触れさせる、至極まじめな表情と声ではあったけれど、考えていることと言えば、罪のない非実在児童の生死を容易く消し去っていて】
【大人の良さも説明してもらえなかったなら、なおさらよく分からないって結論に至ってしまったらしかった。しなければいいと言われて、しないで済むとは限らないなら】
【耳当たりのいい言葉で区切りを付けられる瞬間には、あーっとでも言うような顔をするのだろうか、やっぱり大人って汚いんだって絶望した顔と声をする、】
【けれどひどくわざとらしい――というよりは演技ぶったものであった、大人になりたくない……なんてぶちぶち言い出しても、三年後には勝手に大人になるんだから】

――――――? あれ、そうですか? ――はい、構わないですよ。スリーサイズなら、上から、……。

【――だのに、きっと、自分が本当に大人になれるのかは、ただ信じているわけではなさそうだった。そうじゃないかもしれないって、どこかで思っている顔をしていた】
【名前を呼ばれるのなら、刹那に不思議そうに瞬く。断ち切られた言葉の意味を不思議がるなら、まあるい瞳はもっとまあるく。覗き込むような仕草のあとに、】
【ころと喉の奥で笑うような声と一緒に冗談めかす言葉が、――けれど途中で途切れるのなら】

幸せ――ですよ、たぶん。……だけど、そうですね、。おんなじぐらい、不幸せ、ですかね、……。よく、わかんないです。
大人になるころには、――分かるようになってるかも、しれないですけど。今の私には、よく――……、よく、分からないです。

どちらかしか選べないものを、――選べなくって、……選べないままで。どっちも大切で……。選べなくなってしまうときまで、選べなくて。
だから、妥協しただけなのかもしれないです。でも、幸せ――だと、思います、……思ってます。

"これ"がなくなってしまったら、きっと、私は――死んでしまうの、でも……。もしまた選べるのだとしたら、

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――そのときはきっとまた、どっちだって、私は、選べないから……。

【ひどく曖昧な表情を浮かべてしまうのだろう、笑っているような、泣いているような、ひどく幸せな顔と、ひどく苦しげな顔を重ね合わせたかのように】
【トレースの有無を確かめるための画像みたいに赤と青で重ね合わせるのなら、同一人物だのにひどく剥離してしまった色合いになるんだろうか、まるで別人をそこに詰め合わせたみたいに】
【指先をそうと足と足の間に降ろす、スカートの布地を椅子のところまで押し下げて、長い毛先を背中に流すように、天を仰ぐなら。――薄く開く瞳は、どこか遠くを見て】
【泣いてしまいそうな目をしているのかもしれなかった。――――ゆると目を閉じる、それから、すとん、と、頭の位置、元の角度に戻すのならば、】

――――――――待雪かえでは幸せです。そうだって、今、決めました。

【――「だから私は幸せです」。至って迷いをそぎ落とした声をしていた。ならば、意識的にそう宣言することに、彼女なりの意味合いが、きっと、あって】
【それが他者から見たときにどんな意味合いを持つのだとしても。ぜったいに聞き入れないって朝日と水面に誓うみたいに、相手を見つめる瞳の青は、"誰か"とは違う、色をしている】


383 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/16(火) 21:26:28 BRNVt/Aw0

【昼下がりの土手。季節のせいか川に近づく者はおらず、時間帯的にも土手沿いの道を行く者もいない。そんな何処か寂しげな景色】

【そんな中で土手の斜面に膝を抱えて座り込み何やらぼんやりとしている影が一つ】
【十代半ばの少女、のようだった。月白色の肩まで伸ばした髪にデニムのワンピース。頭には大きめの生成色のキャスケット】
【何やら物憂げにため息を吐いて】

……どーしよ……サボっちゃった……
多分怒ってるだろうなぁ……
でも……顔合わせるのもなんか……はあ……
【抱え込んだ膝に頬をつけて少女はまたため息を一つ】
【いっその事"やめちゃった"ら楽になるのかなー、なんてぼやいて】

……そうだよ、どうせこんな役立たずいない方いいもん!
【そうとなったら……と呟いて少女は立ち上がり、傍らに置いていた携帯端末をガッと掴んで川に向けてぶん投げ】

【──ようとして、その手を止めて。うぐ、と変な声を発して】
【そうして少しの間その体勢のままで固まっていたかと思えば】



……はぁぁぁぁぁやっぱ駄目だぁぁぁぁぁ!
【叫びながらまた膝を抱えて座り込む】
【なんというか人が見たらすごく怪しい光景。本人はいたって真面目、なのだろうが】


384 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/16(火) 22:21:17 WMHqDivw0
>>369

おとぎ話か神話かどっちかなー。後者のほうがかっこいいからそっちがいいナ。
そっか、……ひとりじゃ、無理かぁ。それもそーだよネ。……うん。
なんかあんまり考えたことなかった。おれがどーにかしないとって、思ってた。

――――そんじゃーモンモンはおれと一緒にがんばってくれる?
ひとでなし同士、わはは、……そんな余裕ないかー。オトモダチが死んだばっかだし。

【「じゃあま、その気になったら力貸してよ」。軽く体を捻ったり、足首をぷらぷらさせて】
【準備運動。わりあい大人げなく本気で走り出す。映画館に向かって一直線】
【何かしらモヤモヤする気持ちを吹っ切るように、大口開けて笑いながら走るなら】
【すっかり涼しくなった夜なのに、映画館に着くころには汗だくになっている】

【マイナー映画ばっかりやってる映画館に自動発券機などない。だから、駆け込んだら真っ先に】
【息切れの合間に店員に「二枚、それとあとコーラとポップコーンと……モンモンは何飲む?」】
【つまみの飲食物は絶対に忘れず買う。飲みも喰いもせずにクソ映画を見続けるなんて、耐えられないから】

【――――――そうして二時間半。走り疲れて眠るなんてことはせず。なぜかきっちり見続けてしまって】


…………いやあ、さすがのおれもあの展開は予想できなかったナ。
ヒトがゾンビになってさらにメカゾンビに改造されたあと変形合体して巨大ゾンビロボになって
三つ頭の殺人サメ怪獣とよくわかんねー宇宙人と三つ巴の戦いを繰り広げるなんてナ。
すげー逆に超大作だった気がする。でもこれだけ出すならあと食人族とコマンドーも出してほしかった。

【はあ、と息を漏らす顔はチベットスナギツネのよう。コーラもポップコーンも速攻で片付けてしまったから】
【あとはひたすら、なんかデカいバケモノを出しておけばいいだろう、みたいな監督の意思が透けて見える映像を】
【じーっと見続ける羽目になった、けど、何故か眠らなかったし眠れなかった。だからもう、本当にクタクタで】

んー? んー……おれ疲れたけど。モンモンが遊ぶなら一緒に遊ぶよー。
と言っても今から遊べるトコってどこ? ボウリングとかダーツとかビリヤードとかできるトコ?
そっかカラオケでもいーし……、……んん、意外とできること多いな。

【つられて携帯を取り出しつつ。ゆうに日付の境目を超えた時計の表示の下、メッセージがいくつか溜まっていた】
【「いまどこ」「ひま」「エーノさん帰ってこない」「ひま」「おい」「なにしてる」……、「妹」からのメッセージ】
【見て、……なんとなくカメラを起動した。インカメラに切り替えて、ミラの隣に寄っていく】
【「ピースしてピース。自撮り。送ってやろ」。へんにゃりした笑顔でそう言って、自身もピース、するんだった】


385 : ◆RqRnviRidE :2018/10/16(火) 23:37:59 6nyhPEAc0
>>379

【張り紙には気付いていない様子だった。 気付いていたとしても子供には識字能力がない、が】
【向けられる周囲の視線に察してか、瑠璃は少々ばかり声を抑えつつ。 くすくすと笑い声を溢すだろう】
【戻ってきた人の気配は安心感を増幅させた。 マリアベルの伸ばした手も、今は警戒せずすんなりと受け入れて】
【大人しく汗を拭われる。 白皙の肌も銀色の髪も、触れてみればきめ細かく新雪のように柔らかだった】

んん、きっとじゃなくて絶対見つけてみせるよ。
今この瞬間が夢だとしても叶えてみせるさ。 必ずね。

キミが何を求めているのか全てを推し量ることは出来ないけれど、
ボクもキミの物語がどんなになるか楽しみだよ、マリアベル。
あとは、それなんだけど、────すまなかったね。

【瑠璃はばつが悪そうにしながら、髪の一房の先で彼女のうっ血した指を撫でようとする】
【どこか慈しむような髪捌きは刺胞の存在など微かにも窺わせず、この上なく優しい手触りをしていたことだろう】

【それから取り出された短剣を目に入れると、興味深げに全体を眺め。 恐る恐るその手に取れば、】
【辺りをきょろきょろ見渡して、怪しまれないように机の下でそっと剣を引き抜いてみる】

わあ、すごい……まっ赤だ。 まっ赤な刃……きれいだね……とても……。
これを貰っていいのかい、マリアベル……すごくうれしいよ。 ありがとう。

【刀身の持つ鮮烈な赤はまっ白な子供の体に一段と映えたことだろう。】
【美麗な紅色に魅せられ、瑠璃は感動に蕩けたような笑顔を浮かべる】
【剣を鞘に収め、どのように携行しようかと首を捻り、そうしてそれならばと】

…………この国で一番はじめに会った“お姉ちゃん”がね、文月という子なのだけれど。
得物をこういう風に持ち歩いていたんだ……こんな感じで……どうかな。 どうだろう?

【「似合うかい?」と尋ねながら左腰の辺りに短剣を宛がうと、レオタード状の衣服の一部が解れ、形を変え】
【ベルト状になり短剣を吊り下げる。 丁度刀のようだった。どうやら衣服も子供の奇妙な髪の一部で出来ているらしい】
【とりあえず今のところは売り飛ばすなんてことはなく、旅路を共にするつもりのようだ】


386 : ヒルデガルデ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/16(火) 23:51:54 smh2z7gk0
>>382

―――ええ、お恥ずかしながら私も探している最中、という事にさせてくださいませ
まぁ、安全運転を心掛けましょう………ええ本当に。

あらあらあらあら………そんな顔をしないで下さいな、お綺麗なお顔が台無しになってしまいますわ
案外どうして、蠱惑的なお嬢様ですね。いえきっとこれは必然かもしれませんが。

【わざとらしく絶望する〝かえで〟とは変わってメイドはあたふたと慌てる仕草でなんとか挽回しようとする】
【そのうちにガックリと肩を落とせば、少し目を細めてどこか感慨深そうな表情をして苦笑する。】
【ヒルデガルデは何かを感じた、その答えは出ないがきっと―――。】

―――そうですか、でしたら安心しました。貴女は貴女。幸せなのは貴女なのですから。
さようなら〝待雪かえで〟さん。他の誰でもない、〝待雪かえで〟さんの幸せが続くことを祈っております。

だから―――、、、いえ、これは余分ですね………。

【「それでは、お元気で」と何かを言いかけたままヒルデガルデは日傘を掲げて去っていく。その背中はどこか寂し気に見えた】
【けれども何か強い意志のようなものも感じられるのかもしれない。その朧げな背中をしばし見ていればそのうち見えなくなっていった。】

【それはちょっとした非日常の出会い。けれども二人にとってはいつか意味のあった出会いになるかもしれなかった。】

//お疲れ様でした!


387 : ◆RqRnviRidE :2018/10/17(水) 00:01:34 6nyhPEAc0
>>383

──ね……君、大丈夫?

【駄目だぁ──…… と悲痛な残響がやむ頃に、少女の背後、土手道から声が掛けられることだろう】
【その声は変声期前のボーイ・ソプラノのもので、ひどく落胆する少女を心配する声色だった】

【言葉を掛けたのは、緩く波打ったココアブラウンの短髪に、琥珀色の瞳の十代半ばほどの少年】
【黒のパーカーに迷彩のカーゴパンツ、黒の厚底ブーツでモノトーンに纏め】
【首には千鳥格子柄のバンダナ、腰には長方形のウエストポーチを提げている】

通りすがりでお節介かもだけどさ、悩みがあるなら俺が聞くよー。
ほら、知らない仲だからこそ打ち明けられることってあるだろうし。

【通りすがりに聞こえてきた深い溜息と、少女の怪しげな挙措がどうにも気になったらしく。】
【「愚痴聞くのでもいいよ」なんて言いながら、柔和な笑みを浮かべて近付いてくるだろう】

【察知できる限りでは害意は全く無い様子だった。 一つ気になるのは“犬”のような獣の臭いを纏っていることか】
【──とかく少女が許しさえすれば、少年は彼女の隣へ腰掛けようとする】


388 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/17(水) 00:11:36 smh2z7gk0
>>385

ああ、その意気さ。きっと困難も待ち受けているだろうけど強い魂を持った君ならばきっと
そしてもっと強くなったらまた会おう。そしたらもっと私の〝秘密〟を教えよう。


【汗を一通り拭えばマリアベルは再びポケットへとハンカチを仕舞う。傍から見れば姉と弟、母と子のようだ】
【瑠璃が申し訳なさそうに髪で鬱血した指を撫でれば優しく微笑み「気にすることはないよー」とのほほんと呟く】
【そして短剣を受け取り机の下で確認する瑠璃の両肩へ再び後ろから手を添えようとする。】
【―――拒まれたとしても、受け入れられたとしてもそのまま瑠璃の耳元で囁く。】

分かるかい瑠璃、その剣は〝無銘〟………君と同じなんだよ。
だからこれから君が名前を付けてそしてその剣の物語を作り上げるんだ、君の物語と一緒にね

―――フフ、良く似合っているよ。けれども〝居合〟をするのには短すぎるから気を付ける事だね

【「居合って分からないか」と呟くとマリアベルは再び笑い肩を竦めるだろう。そしておもむろに立ち上がる】

そろそろ行くとするよ、どうやら私の〝呼び声〟に応えて客人が来るらしい。
どうか君たちの〝物語〟が実りあるものになるように祈っている。それじゃあ気を付けていくんだ―――。

                       〝夢〟でまた会おう。

【そう言うとマリアベルは革製のトランクと呼んでいた書籍や新聞を器用に抱えて出口へと去っていくだろう。】
【瑠璃が一人残されれば、周囲の人間の怪訝そうな好奇を含んだ視線を感じるかもしれない。同じく立ち去った方がよさそうだった】

【――――――見えただろうか。】【別れ際のマリアベルの笑み―――それは―――――悪夢の中で見た笑顔と―――同。】


//長期間お疲れ様でした!


389 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/17(水) 00:40:51 BRNVt/Aw0
>>387

【不意に背後から聞こえてきた声。少女はぱちくりと目を瞬きさせ、顔だけをそちらに向ける】
【見れば其処には一人の少年。大体同じくらいの年頃、なのだろうか?】
【その心配したような声色に少女は、えーっと……と何処か気まずそうに目線を反らして】

……あー、聞こえて……ました?
えっと……何でもないよ、ありが──
【一時は苦笑いと共に何でもないと答えようとするが、ふと何かを思い付いたように膝立ち気味になりながら少年の方へ身体を向け、ひどく真面目な顔をしながらその手に持っていた携帯端末を握らせようとして】

ねぇ、何も聞かずにこれ、あの川へと放り投げ……
【……否、握らせようとして真顔のままで固まる】
【そうして二、三度程鼻をスンスンと鳴らして周囲の空気を嗅いだかと思えば】


…………に゙ゃああ゙あ゙ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
い、犬ゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!?

【いきなり絶叫。膝立ち気味の体勢からぴょーんとばかりに飛び上がってちょっと離れた所に着地して】
【どうやら少年の纏う犬のような獣の臭いが"怖かった"ようで】
【それもその筈だ。動物のように鼻の利く者なら分かるような気配が微かにするのだから】
【しかもその気配はよりにもよって──猫のようなそれなのだから】

【──余談だが、先程少女が手渡そうとしていた携帯端末、川に投げ込もうとして躊躇したそれは驚いた拍子にだろうか、ぶん投げてしまったようで】
【少女が当初望んでいた通り川の方に今まさに落下しようとしていて】


390 : ◆RqRnviRidE :2018/10/17(水) 01:06:23 6nyhPEAc0
>>388

【「────もちろん。 期待しているよ。」 瑠璃はひとつ、深く頷くだろう】
【とっておきの秘密は知りたくなるものだ。 好奇心旺盛な子供であればなおのこと、意思は強く】
【そうして今度は、両肩へ添えられるマリアベルの手を受け入れる。 触れる髪も、もう痛くはない】

────ボクが…………この剣に、名前を?
共に物語を……ああ、愉しそうだ、是非とも紡いでみせよう。
それで、次に会ったときに聞かせてあげるよ。 ボクの……、否、ボクたちのお話を。

【心踊るような話だった。 無銘であり無名である刃は、色こそ違えど己の境遇と似ているようであったから】
【肩越しに相手の顔を見遣れば愉快げに笑み──居合の言葉には僅かに首を傾げたが──次の邂逅を待ち望む旨を言葉にして】
【やがて去り行く彼女に向き直り、髪の房ではなく右手を小さく振って、別れを告げる。 】


──ああ、それじゃあね、マリアベル。 今日はスリル満点だったよ。
〝夢〟だけでなく〝現〟でもまた会おうじゃないか。



そして、これからよろしく────〝ルヴェネイ〟



【子供は左腰の短剣に触れながらその名を呼ぶ。】
【〝ルヴェネイ〟 彼らの言葉で『赤い毒』を意味する言葉──────】


【──────── 〝クスクス〟と女のわらい声がどこからともなく聴こえるような気がした。 ──きっと、悪い夢だ。】



/ありがとうございます!!お疲れさまでした!


391 : ◆RqRnviRidE :2018/10/17(水) 01:43:39 6nyhPEAc0
>>389

…………うーん、そだなぁ。
何でもなさそうなくらいには聞こえてたよ、……ん?

えっ。 ────えっ。 ……これ投げ捨てるの? マジで?
大事っていうか高価いモノだよなこれって、
勿体ない気がするんだけどホントに大丈…………

【唐突なお願いにしどろもどろになりつつ、律儀に両手で携帯端末を受け取ろうとしながら、】
【少女が固まれば少年も固まる。 臭いを嗅がれればきょとんとしながら幾らか目を瞬かせて──】


──────うぎゃああぁっっ!!!?
いっ、……いいッ、ィ犬!? どこ!? 何!??


【同じく絶叫。 相手が勢いよく飛び退くと同時、驚きすぎて腰掛けようとしながらステーンとスッ転ぶ。そりゃもう清々しいくらい】
【痛ってえーと呟きながら上体を起こし、パニックになった少女を視界に入れながら“犬”の存在を探して辺りを見渡すだろう】
【相手が猫のような気配を僅かに身に纏っていることも、況してや自身が原因となっていることも察していない様子だった】
【──どうやら鼻が利いていないということは、つまり彼自身は獣ではないということだろうか?】

──ってやべ……────!!

【そうこうしている内に、手から放り出される携帯端末を認識した刹那、少年は咄嗟にウエストポーチの中から】
【片手サイズのスケッチブックと油性ペンを取り出し、紙いっぱいに乱雑に細かい目の格子模様を描いていくだろう】
【そうしながらいつの間にか少年は立ち上がり、走り始めていて──その反射神経と描画速度は目を見張るものがあった】

────間に、合え、…………よっ!!

【描画が完了した直後に腕を目一杯に前方へ伸ばし、図形を描いた紙を落下する携帯端末へと向ける。 瞬間、】
【“紙”が“網”を成して現れる。 ふわりと打たれた投網は対象に迫り、水面に接触する直前に携帯端末を包み込み】
【そうして少年はスケッチブックを後方へと引っ張りながら網を手繰り寄せるだろう。 なんとか間一髪で水没を防ぐのだった】


392 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/17(水) 02:23:24 BRNVt/Aw0
>>391

【突如犬の気配を感じてパニックに陥る少女にその少女に驚いてパニックになりかける少年。辺りを見回し始めた少年を、いや何言ってんの!と少女は半狂乱になりながらも指差して】

何処って!君自身が犬じゃん!?ってゆーか犬みたいな臭いするし!あーもうホント犬とか狼とか駄目なんだってば!
……て……何!?何で急に立ち上がったの何すんの此方来んのだけはやめ、ぎゃぁぁぁぁぁぁ……あ?
【涙目になりながらも指摘し、不意に立ち上がった相手にまたパニックになって更に距離を置こうとしたのもつかの間、相手が川の方に向かっていったのを見るとぽかんとした表情になり】
【そのまま少年による端末の救出劇を、え、何?などと狼狽えながらも眺めていたのだが】
【少年によって端末が水没を免れた事に気付くと、えぇー……と困惑したように小さく呟く】

……別にあのまま水の中沈んじゃって壊れちゃえば良かったのに……
【何で余計な事……と拗ねたような表情で足元の草を軽く蹴って】
【もし相手が端末を渡そうとするのならばじとっとした目付きをして、要らないよそんなの、なんて突き返そうとするのだろう】


393 : ◆RqRnviRidE :2018/10/17(水) 02:58:40 6nyhPEAc0
>>392

は!? ……え! えっ、俺!? 俺れっきとした人間だよ!!
確かに犬みたいな名前してるけどさ、それにしたって犬なんか飼ってな──、

──…………ぁ、いや、悪り……うちの団長かもだ。 そんな臭うかな……?

……あいや、そんなことより俺自身は犬じゃないから!
悪さとかするつもり無いからマジで……! だから落ち着いて、な!?

【慌てふためく少女に自身の犬の気配を指摘され、心当たりがあるようにばつが悪そうな表情を浮かべる──】
【──のも束の間、冷や汗を一筋垂らしつつも、近付けば引っ掛かれんばかりの勢いの彼女を宥めようと改めて声を掛ける】

【色濃く身に纏う獣の気配はともかく、本人の言葉通り相手を取って食おうという気はさらさら無いらしい】
【距離を取られるならば急に近付こうとはしないし、興奮している少女の心と呼吸が調うのを待つだろう】

【そうしながら、少年は投網を引き寄せて掬い上げた携帯端末を手に取る】
【紙で出来た網は脆く、役目を終えればたちまち崩壊して紙くずと化してしまう】

……ダメだって、君が何を悩んでんだか俺は詳しく知んないけどさ。
これ投げようとして躊躇ってたじゃん、簡単に捨てらんないくらい大切なものなんだろ?

話くらいなら聞くからさ……それとも俺じゃ怖いかな?

【携帯端末に傷がついていないか確認し、怯えていた少女を刺激しないようそっと歩み寄って】
【不機嫌に突っ返そうとされるのもお構いなしに、スケッチブックに端末を乗せてずいと差し出すだろう】

【本当に要らないなら自分で捨ててしまえばいいって言うみたいに、ただ差し出すだけ差し出して】
【少女にそう問いながら、少年は解決策の見出だせない時のような、困ったような笑みを浮かべてみせた】

あと捨てるとなんか勿体ないし……。

【………………ただ貧乏性なだけなのかも】


394 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/17(水) 15:09:43 S/DUh6T.0
>>377

【彼は柔和な笑みを崩さない、端正な顔たちが刻む幾許かの曖昧さは、時に丹寧さを以て心の表層を蕩かすが如く】
【好印象を与える微笑みであった、気取っていてそれで何処か親しさをも携える、矛盾した二つの感情がせめぎ合う】
【得てして世界とは "この様だ" と伝えるみたいに、その一音節を彼は迷うことなく透かしてみる】


僕の存在は "単純" だよ、マリアベル、君が関わる ──── いや、関わっている事象の方が幾重にも複雑怪奇だろうしね
ただ彼らと僕たちとでは "軸" が違うのさ、そう、存在している "軸" の違いが、事態をより難儀にさせて
心配する必要はないよ、それは違いそのものに関する話であって、重要性はそこまで無いから

"理性的" だね、マリアベル、──── 或いはとても、"狂的" だとさえ思ってしまうよ

インシデント "無垢の祈り" ──── あのグランギニョルを見てさえ、まだ迷う余地があるとするのなら
僕は君の想像力と発想力の偉大さに感服せなばならず、そして同時に気の毒とさえ形容できる

或いはそれは、執念深き "狼たちの集団" にも言える事だし、愛しき "墓荒らし達の長" にも言える事だろうけど


【ロールシャッハは席に着く、組んだ足に軽く両手を置いて、さながら観劇でもする様にその変容を見つめていた】
【その変化に驚きはしない、想定の範囲内だなんて陳腐な表現ではとても足りない、それはまるで、例えるなら】
【深き期待の裏返しであった様に、一流の奇術師に相対して尚、その一挙手一投足に魂すら委ねる様に】

【相対する "深淵渡り" ──── その異能の片鱗を、彼は身体全体で噛み締めるのだろう】
【乾いた土地に咲く植物が、少しばかりの雨季に一年の水をため込む様に、ショベルで砂を掬う様に】
【語りかける心の音色を何時までも、辿っていたいとさえ思ってしまう程に】


興味深い話だね "外宇宙の神話生物" だなんて、観測してきた世界線上には存在しえなかったから
ひょっとすると君が生み出した "特異点" なのかもしれない、或いは、──── そう、或いは
僕 "達" によって生じた未知の化学反応とでも言おうか、空想力学的な奇跡が大幅な世界変動を巻き起こすみたいに

苟も "虚神" の一柱として、興味の湧かない話ではないね


395 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/17(水) 19:43:00 BRNVt/Aw0
>>393


396 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/17(水) 19:44:16 BRNVt/Aw0
/上のは誤送信です!すみません!

>>393

へっ!?人間!?いやだって犬みたい……団長?え、じゃあ移り香だったって……いや待って!?君の所の団長って犬なの!?
【もしかしたら団長かもしれない、という少年の発言に一旦は落ち着きかける少女。しかし何故か団長なる人物が犬だと思ってしまったらしく若干混乱してしまう】
【しかもその直後に少年の能力と運動神経を目撃してしまった為か"団"というのがサーカスだと思ってしまい、「曲馬団……団長が犬……?え、犬に曲馬団の団長って務まるものなの?」なんて呟きながら目をぐるぐるさせてしまい】
【少女の脳内ではなんかシルクハットを被った柴犬が元気よく鳴いてる、というファンタジックな光景が繰り広げられているのだが、まあ知るよしもないだろう】
【そうして端末が水没を免れたのだと気付けば忽ち不機嫌になってしまって】

大切っていうか……友達の連絡先とか入ってるから……だけど……
【スケッチブックに乗せて差し出されたそれに手を伸ばしかけてやっぱりやめて、その場にまた三角座りで座り込んでしまう】


怖く……は、ないけど……怪しいし……いくら同年代でも迂闊に信用出来ないし……

──話したってどーせ分かんないだろうし
【言ったっきり泣きそうな顔で両膝の上に突っ伏してしまう少女】
【その心情はよく分からないが『友達の連絡先』などが入った携帯端末を棄てようとしていた事から察するに友人と何かあって関わりを絶とうとしていた、といった所なのだろうか】


397 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/17(水) 21:32:49 hEXW.LLA0
>>341


「 ……… ふーん。今のところ、ねえ。」「万歩譲ってキミの言うこと全て信じるとして ─── 、」
「キミをウチに関わらせる、積極的な理由は弱いよね ─── 妙な真似しないってのは、最低条件だとしても。」

【一通りの言い分を差し当たりミレーユは聞き遂げてみせた。して尚も白い眉間に寄った猜疑的な歪みは緩んではいなかった。】
【「課内のネットに繋がせたりしないでね。」ライガに対しては釘を刺す。 ─── 私物として持ち込む分には黙認するが】
【それ以上の深いコネクションを望むなら、それなり以上の有用性を示してみせろ。暗に告げる宣告は、静かに冷たい声音をもって】

「あン?  ─── 人工知能の癖に随分と口が達者だね。えェ?」
「無機物に欲情する趣味はないが、お望みとあらばHackしてFuckしてやっても構わないんだよ。ん?」

【 ─── 明からさまに神経を逆撫でする口ぶりには、眉の端を吊り上げて応じる。可憐に彩った声の本性を垣間見せつ】
【ぐりぐりぐり、液晶に押し付ける指。少なくとも本気であるようだった。濡羽色に揺れる前髪の奥には、青筋ひとつ。】
【人工知能との相互理解には些か以上の困難が阻むようであった。どこかで止めねば際限なく続く応酬であろう ─── 過激なエスカレーションを、多分に含みながら。】


398 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/17(水) 23:41:10 hEXW.LLA0
>>342

【ならばアリアもまたそこで言葉を詰まらせた。懐かしむように微笑む冷たくも儚げな横顔に、曇天に似る影が去来して】
【 ─── 貴女と出会うまで、私は死んでいたのと等しかった。だから良く知っているようでいて、そう伝えるのは憚られた。】
【然るに面を上げる次の刹那には、変わらず穏やかな微笑であるのだろう。少女以外には決して見せない類の表情。】
【無論、他者の前で彼女が幽かに笑うことは無いわけではなかった。だがそこには常に幾らかの含意とシニシズムが介在するなら】
【 ──── それこそ死顔のように、婉曲なく安らかに艶やかな唇と真白い頬を緩めるのは、かえでの前でしか有り得なかった。】

【「 ……… 幾らか、躊躇うけれど」「かえでが手解きしてくれるなら、まあ、受け入れてあげましょうか。」ともあれ、存外に乗り気な返答である。】
【女性として見ても長大に過ぎる白銀の髪は、人殺しを稼業とする人間の身なりではなかった。それでいて彼女が戦場に立ち、死の舞踏を踊るなら】
【触れるもの全てを冱つらせるかのような冷酷な光輝はこれ以上なくアリアに相応しかった。 ─── 裏を返すなら、静かな日常において、解いた髪に必然性はなく】
【暇を持て余した想い人に弄されるのも、不慣れな様子でありながら、どこか嬉しげ出さえあった。きっと似合いの服さえも、見繕われることを望むのだろう】


「あら、 ─── まあ。」「ふふ。いいのかしら。それなら一ツ、かえでに訊いてみたい事が、あって。」
「 ……… もっと手篭めにしてしまうわ。たくさん可愛がってしまうの。」「狡い事も、酷い事も、たあくさん ──── だから」

        「 ─── 手加減は、なしよ?」


【一握の逡巡をもって予行演習の火蓋は切られた。 ─── 押し寄せる極彩色に反射として反応した大腿部の人工筋肉は】
【即座にアリアの身体を後方へ跳躍させ、キルハウスの壁に靴底を着ける。重力の機序を許す前に、更にそこから跳ねるなら】
【 ─── マゼンタの防壁/鋭刃を回避しながら、真っ直ぐに少女へと向かう軌道。同時に投擲された硝子の短刀は、動こうが動くまいが掠りもしない。然して、】
【少女の背後にある壁を血に濡らしもするのだろう。現出するのは演習用突撃銃/MT-66。血溜まりの中、絞られるトリガー。】
【放たれるのは実弾に非ず、圧搾空気によって加速を受けたペイントボール。仮にまともに被弾したとしても、子供の玩具と同然であるなら】
【照星の行く先は胴体に4発/頭部に2発。およそアリアは容赦がなかった。定義されたルールの中で、勝利の為に最も合理的な方策を取る人種であった。】
【それでいて着地点を少女の至近に定め、白兵戦のレンジに持ち込まんとする彼女は、やはり確かに笑っていた。人殺しらしい酷薄さも残忍さも、愛しい誰かに見せ付けるには不釣り合いであるのだから】


399 : 名無しさん :2018/10/18(木) 00:17:33 R/bVQwDA0
>>398

【蛇の指先を自身の唇に触れさせる一瞬。伏し目がちに逸らした視線は、けれど、相手の穏やかな微笑に気づくのなら、やがて釣られるように笑むのだろう】
【だけれど彼女は誰にだってよく笑う子だった。自分が愛らしい見た目をしているって、理解していた。それを遺憾なく振る舞うことに躊躇いはなかった、それでも】
【愛しい人が自分のためだけにこさえてくれる笑みへの返答であるのなら、少女の笑みもまた違う色合いを宿すのに違いない。――なら、愛らしさを囁いてやりたくもなる、けど、】

【――どうせ勝ったら好きにできるんだから。夏休みに算数と漢字のドリルを二頁ずつ進めたらアイスをもらえることになっている子供の、表情にて】

――――――――いいですよ? まあ、答えられるかは、分かんないですけど……。朝に四本足、……とかなら、まあ、知ってますけど。
それに、アリアさんたら、自分が勝つ気じゃないですか? ――駄目ですよ、そんなの、足元掬われちゃいます、――っ、もうっ、

手加減してくれたこと、一度だって、ないくせに!

【――――目を焼くかのような彩度が解き放たれると同時に飛びずさるのなら、やはり当たらぬ軌跡の紅紫は、惜しさを掠ることもないルートを選んで、壁にでも突き立つだろうか】
【しかしてその衝撃に撚れるかのようなこしょりと小さな音を立てれば、その輪郭よりじりじりとひどく細やかな粒子へ果てるのだろう。執拗に振ったウォータータイマーの一粒のよう】
【狭い範囲ではあれど空間に残滓は撒き散らかされる。あるいは吸い込んでしまえば呼吸器に嫌な気怠さを感じさせる代物で、――けれど、そう重篤になり得ず/また長引かず】

【だからその背中に現るのは天使よりも堕天使よりも退廃的に。さながら重篤な火傷に羽根も皮膚もずるむけた翼、けれど実体としては、死角に展開される防壁であり、】
【視線すら向けぬままでマゼンタ色は何色かに塗り付けられるのだろう。着地の距離感にわずかに細める視線、ならば表情もいくらか険しさを帯びて、――】
【――それでもやはり笑みに気づくのなら、彼女もまたいくらか柔らかい/楽しげな表情に変わるのだろう。大好きな人を殺すと誓わなくていい距離感は、ひどく不慣れで惑うけど】

――っ、もうっ、はやいよ、"いつも"はもっと、"いじめる"くせに――っ、

【――――きら、と、瞬いて。瞬きすら終えられぬほどの須臾に指し示されるのは、今まさに距離を詰めんと迫るアリア自身であり、】
【背部にあしらった翼より突出するのは至極シンプルに長く鋭い棘、けれど素直に受け入れるのならば人間一人刺し貫くには十分な長さと硬度を持ち得るもの】
【そうしてまた乱暴すぎる注射針のように麻酔の作用を流し込むのだろう。――けれど、自身まで護り抱くような突出であるのなら、背部の防壁と併せ、身動きをとれなくも、なるのだけど】


400 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/18(木) 00:57:50 gZVnAC4g0
>>365

【「おつかれさん、タマキ君。」ならばその男は、確かに管理職の居場所に座っていた。常よりも幾らか草臥れたような顔で。】
【表向きは有りふれた10階建のオフィスビルであり、民間軍事会社の看板を掲げてはいるが ─── その実】
【モデルハウス宜しく無機質なエントランスに始まり、屋上から地下まで吹き抜ける資材搬入/航空機格納用のエレベーター】
【1フロア丸々を使ったハンガー、キルハウス、サーバールーム、オペレーションホール、 ─── 枚挙に暇のない実働設備。】
【挙げ句の果てに一般向けのエレベーターには八階のボタンが用意されていなかった。あるべき場所に立ち入る方策は、手動あるいは生体認証のみ】
【 ──── だというのに、廊下脇の扉先に広がる一室と、並べられたデスクは実に雑然としていた。昼下りの今は"実務"に出払っている課員が多いのか、人は疎らで】
【ならば彼女の声は矢鱈に響いたと叙述するに誇張はなかった。「 ……… バイクのところに置いていいよう、指示しておくよ。」駐車場に停めてあったベージュのマセラティ・ギブリIIは後藤の私用車である。】


「 ─── 茶菓子でさえ胃もたれしそうな所だったから、まあ、いいや。あそこの拉麺博物館はいい所だし、久し振りに行きたいが」
「"威力部門"の一人がクラスIXの義体を全損して帰ってきやがった。首から下ぜんぶウェルダンさ。……… 困ったもんだよ。」


【壮年の彼は相も変わらぬスーツ姿だった。課長のデスクへ収まるのに一切の過不足ない格好をしていた。そうして何か山積みの書類と格闘していた。】
【およそ印象に残らぬ出で立ちである。 ─── 袖を通す服に限った話ではない。泰然として何処か気の抜けた態度も、静かな鈍い輝きを宿した焦茶色の視線も】
【喋る言葉の悉くを茶飲み話の距離感にしてしまう語り口の一つに至るまで、茫洋としていて掴み所がない。それが故意なのか恣意なのかさえも判然としなかった。】
【ともあれ彼が面倒事に追われていることに違いはなかった。「新人の子は課用車をブッ壊して帰ってくるしさぁ ─── 。」報連相の幾らかが欠缺していることに最早なにか言う気力さえも失われていた。だが、】


「 ……… まあ、愚痴も言ってられないや。」「麻季音ちゃんか。 ─── 随分な来客じゃあないか。」
「話したいのがおれなのか八課なのか、些か気になりはするが ─── 、丁重にもてなしてあげないと、ね。」


【「それで、いつかな。」 ─── 直ぐだと返されるなら、後藤は粛々と備え始めるのだろう。そうでなければ、幾らか後に】
【「ミレーユ君、ご来客だ。」クッキーを齧っていたゴシックロリータの女が、立ち上がって給湯室に向かう。「タマキ君はお出迎えを宜しく。」】
【そうして彼は8階廊下の最奥に位置する、"応接室"にて坐している。傍に置く胡桃の杖は、幾らか彼を老けさせて見せた】

/だいじょぶです!おまたせしました!よろしくお願いしますっ


401 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/18(木) 03:02:32 smh2z7gk0
>>394

【ロールシャッハの美しい笑みを鏡に映すようにマリアベルも笑う。だがそれはあくまでミラーリングに過ぎない】
【彼女の心象を反映するように霧が少し晴れる、そこは〝浮島〟だった。だが浮かんでいるのは水面ではなく〝空〟にであるが】
【この〝赤い花畑〟は随分と高い場所にあるようであった。周囲には雲が浮かんでいるのも見て取れる】
【数百メートルほどの大きさであるこの浮島の周囲には〝異形の怪物〟がレリーフとして描かれた12枚の黒い大きな石板が取り囲むように浮遊している】

―――〝軸〟か、確かにあらゆる意味で貴方達は別軸の存在だ、人智の及ばぬ神。 ふ、買い被り過ぎだよ私はあくまで一人の読み手だ
ただ、私もある意味ではこの世界の〝軸〟から逸脱しているかもしれない。故に貴方達にも少なからず好意的な感情が湧くよ
それを〝狂気〟と呼ぶのであれば………成程確かに私は〝深淵渡り〟だ―――。

言うまでもないが人間とは存外複雑なものだろう?時に完璧過ぎる貴方にとっても予測のつかない事をするかもしれない。
迷い、苦しみ、矛盾を抱えそれでも抗う力―――もし侮っているようであるならば用心すべきさ。
貴方が上げる次の幕が一体どういったものなのかは分からないが、何ちょっとばかし気を付けてと言うだけの話だよ。

何度も言うが私は〝好意的〟だ―――演目の手伝いをしたい程度にはね。

【「ここの空気は〝良い〟だろう?」マリアベルは眼を細めて微笑む。確かにこの〝空間〟は随分と奇妙な空気が流れていた】
【特に〝神〟であるロールシャッハにとっては尚の事、そうここは現世の上位―――その狭間にある夢。】

然り、ご明察だよミスターロールシャッハ。本来ならばその〝外宇宙の神話生物〟は観測の叶わない存在。
〝それ〟は中途半端な〝反ミーム〟を宿している、観測者の主観によって姿も、力も、何もかも変わる。曖昧な存在。
直接続された経験のある私も〝反ミームを持つ神話生物〟としか認識できていない。貴方の友人にもいない?そういう人。

そこに貴方達という神話生物が現れた。それも複数の存在がだ、そして多くの能力者たちと邂逅しその存在を焼き付けた。
―――〝後付け〟が可能になったというわけさ、〝グランギニョル/貴方達〟という〝雛形/アーキタイプ〟を用いてね。
それがいかほどの効果を示すかは分からないが………より〝近づける〟と私は考えている。

【それは危険な考えだった、ともすればグランギニョルの神々の存在としての〝格〟を汚染しかねない。】
【曖昧な存在を曖昧に再定義することに意味はあるのだろうか―――〝緋色の鳥〟が浮島の上を横切っていく。】
【マリアベルはクスクスと口元に手を当てて蠱惑的に笑うと「どう思う?」と言いたげに肩を竦めた。】


402 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/18(木) 05:10:30 S/DUh6T.0
>>401

【まさかと彼は笑う、人間を侮るなど彼に限って言えば "あり得ない" 事であった、どのような形であれど】
【結果として蔑視する事はあれど、彼は根本からしてみれば人間の果て無き信奉者であるのだから】


まさか、幾つか解きたい誤解はあるのだけれど、その最たる点が "人智の及ばぬ神" という所かな
僕達は ”人智の及ぶ神” だよ、過不足なく真実は捉えられなければならない、それが真実的であればある程にね
だからこそ僕は正しき信奉者として、君の要請を受け取ろう、マリアベル


【彼は続けて言う、それはよどみなく紡がれる真実に近い】


マリアベル、君がどのような思考の過程を辿ってその解に辿り着いたかは分からないけど
良い判断だと賞讃しようか、少なくとも僕の知る限りそれは最良の策に思うよ

具体的な方策を託そうか、彼らに "INFナンバー" を振り分ければいい、 "001" から "010" までは席次が決まっているけど
これらは原初の枠組みでしかない、現にその序数は "三桁" だろう? 今の段階では二桁にも満たないのにね
それ以降の数字を好きに彼らに "当てはめる" といいよ、それが君の目的だろうから

彼らを "虚神" の一柱、或いはそれに類する "INFオブジェクト" として再定義する事は
どうしようもなくニンゲンの手には負えない存在でありながら、どうにかニンゲンの手の届く存在に窶す事に他ならない

実数の宇宙に存在しない神々なんて、虚数の平面に落とし込みさえすれば良いのだから


奴らを "神の座" に引きずりおろそう、そうだろう、マリアベル


403 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/18(木) 14:38:54 6.kk0qdE0
>>397

「むむぅ、そう言われると弱いけど、要は結果で示せって事よね?」

【ライガは半ばこのやり取り、主だってミレーユの返答に感心していた、罵りも警戒も此処まで完璧に熟せば優美になるのだ、と】
【やがて、そこではたと頭の中を元に戻す】

「そ、それは……勿論ですミレーユさん、僕がきっちり監督します」
「ライガまで〜、だから私は敵じゃないってのに〜」

【だが収束しそうに見えたこの話も、また発火してしまう事になる、勿論悪い意味で】

「ひッ!?」
「ミレーユさん落ち着いて!というか貴女f○ckって……」

【スマホの画面を指でぐりぐりと押し込むミレーユ】
【端正な顔は怒りの形相が浮かび、言葉には伏せ字が入る程に、周囲の空気は凍てつき】
【これには、流石のスマホも、そしてライガ本人も肝を冷やしたが……】

「そ、そうだライガ!あの手紙!あの手紙は!?私なんかより〜あっちの方が厄介なんじゃ無いの!?」
「ああ〜!そうでしたそうでした!スマホさん!ミレーユさん、これ」

【渾身の話題逸らしと、そして本題への突入である】
【もう片方の手に握られていた、簡素な茶封筒】
【ミレーユに差し出しながら】

「この組織の、なるべく階級が上か、あるいは中心的な人物に渡せと言われまして……櫻の国、海軍陸戦隊諜報部からです……」

【最後の部分は幾分か声を潜めながら、こう告げて手紙を手渡す】


404 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/18(木) 21:35:17 arusqhls0
【 ──── 水の国、闘技場──── 】

【様々なイベントに向けて開かれたこの場所は、時間制で貸し出しも出来る人気のスポットであった】
【特に間近に迫った "大会" の模擬戦として、名だたる能力者達が使用する事も度々であり】
【そんな最中に彼女達もまた、そのような意図を持ってこの場所をレンタルしたのである】


────……いくら白桜はんゆわはっても、うちに何の相談も無く大会ではるんは如何やろか
何も出るなとは言わはらへんけど、白桜はんはまだまだ若い女の子やさかいに
こういうイベントではって大きな怪我でもしはったら、────、お嫁に行けへんよ?

ほんとに分かってはる? いーっぱい、いっぱい、強い人らがではるんやから


【染めたての茶色い長髪を、紅細工の簪でポニーテールに結って】
【紅いキャミソール状の半襦袢の上から、長い白羽織を着こなす】
【黒いニーソにブーツ、黒曜石色の瞳をした少女────、和泉 文月】

【白木と黒木の鞘に包まれた太刀を二本、左の腰に添えている】

【彼女はじぃっと目の前に居る "妹" へと視線を向けると、小さな溜息を吐く、────】
【貴方が大会に出ると知ったのはつい先日、 "別件" で向かった大会本部からの連絡】
【まさに寝耳に水であった、血で血を洗う(誇張表現)あんな宴に大事な妹が出るなんて】



【────、故に ────】



せやから、うちが一回特訓つけてあげます、別にもうエントリーされてるし取り消せとか言わはらへんけど
────、でも、ちゃんと自分の力ぐらい分かった方が、ええでしょう?


……それにな、うちもかつての "大会参加者" やさかいに、少しは勝手が分かってるし


【そういって彼女は左腰の二刀の柄へと左指をかける、自然体で立ちつくす様相に無駄はなく】
【少し心配そうな目尻が綾に濡れた、微かな装いを新たに、吹雪く心の乱気流を伝えるみたいに】


405 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/18(木) 22:21:26 hEXW.LLA0
>>399

【交わし合う微笑みの含意に機械仕掛けの胸裡が高鳴る。 ─── 刺青に美しく彩られた真白い指先も、薄い桃色に湿る唇の潤いも、愛らしく相応しい稚気に笑う声音も】
【今すぐにでも閨所に全て押し倒して、舌先と指先と██に嬲り尽くしてしまいたい。暗く重い欲望を注ぎ込んで、然るに2人抱き合うなら、何処までも溺れてしまいたい】
【 ─── それでも今に成すべきは闘技であった。しずやかな水音を立てるには、夜の帳が下りた後でなくては、隠れないものが多すぎるのだから。銃爪に指をかけたまま】


   「ぁ、うッ」


【踏み込む懐中。放たれる紅槍。躱しきれぬ肉体。 ─── 縫い止められる右肩口。それでも大袈裟な出血が顕となることはなく、傷口を塞ぐ麻酔じみた異能】
【立ち込める幻惑のパーティクルが更に截然たる意識を奪う。威勢を殺されて微かに揺らめく長い両脚は、深い酩酊の機序にも似るのならば】
【少女の異能はアリアの身体にも良く作用した。 ─── まして斯くなる形で、肉体と精神の両面にて機動力を削がれるならば、銀狼の疾脚を搦め捕ってしまうのにも容易く】


      「 ─── あまり虐めて、泣かれてしまったら、悲しいもの。」


【口先ばかりは気丈な笑みを絶やさない。 ─── 両手に構えた拳銃のトリガーを引き絞るならば、放たれる弾丸は少女の頭部と胴体を狙って、8発分。】
【ともすれば呼吸も重なるようなクロスレンジであった。それでいて真面な戦術機動は封じられていた。仮にここが死地であれば、躊躇わずアリアは片腕をもぎ取って、直ちに緩やかな拘束から離れたろうが】
【 ──── 泣き顔を見るのは本意でなかった。故に戦闘の選択としては幾らも妥協の混じった結果。或いは華を持たせるのも悪くないと願っているのか、然して底意地の悪い童話の狼が、何を謀るのかは判然としない。】


406 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/18(木) 22:21:38 hEXW.LLA0
>>403

「 ─── ま、立場というモノが判ったなら宜しい。」「なにかしら意見したいなら姿勢で示してくれたまえ。」
「ボクもライガ君のことは高く評価してもいる。彼の個人的なサポートに終始するなら、それ以上ボクから言う事はないよ。」

【一頻り言い終えるなら漸くミレーユは一方的な暴力の行使を止める。 ─── 意地悪く吊り上がった艶やかな唇と、サディスティックに細められた双眸は】
【尠からぬ昏い愉悦に浸る表情であった。およそ真っ当な乙女の浮かべてはならぬ表情だった。ぱちりぱちりと瞬きをするなら、反り上がった長い睫毛が甘く揺れて】
【然らば一発や二発ほど痛い目に遭っても当然の道理というものだろう。 ─── "彼"自身も、パートナーの事については、あまり偉ぶった口を利ける訳ではなかった。】

【だとしても差し出される茶封筒の差出人を見て、またもミレーユは酷い顔をした。見たくはないものを見てしまったような】
【白い喉筋が息を吸うなら、ロリータの下に隠れた膨らみが儚く膨らんで、深く漏らされる青息吐息。 ─── 猫の手も借りたいのは、事実だとしても】


「 ……… キミは果たして、厄介事を呼び込む星の元にあるのかもしれないね。」
「関わり合いになりたくない連中だとは思っていたが、 ─── さて、何を吹っかけられる事やら。」


【櫻国魔導海軍諜報部。あまり良い噂を聞く組織ではなかった。水国の公安と連んでいるとの情報もあれば、虚神との交戦においても複数回が目撃されていた】
【いっそ内政干渉あたりの罪状を丁稚上げて叩いてやろうかとも思うが生半可な報復をしてくる手合いでもなかった。 ─── 仕方なしに、封を開けるなら。】


407 : 1/8 ◆3inMmyYQUs :2018/10/18(木) 22:33:13 nHxGsN220
>>278


【(──ん…………)】


【微かに頷くような、芯の細い声が返った】
【磨かれた玉鋼のように泰然とした舞衣の返答に並ぶと、どこか霞がかってさえいた】


【少女は小さく下唇を噛んだ】
    .......
【──問題がなければ、だって】
【一番問題だらけの本人が、何を一丁前に気遣いのふりなんてしているのだろう】


【外連味の利いたジョークの一つも返せればよかった】
【それが無理なら、凜然と揺るがない眼差しを向けられればよかった】

【舞衣のように。探偵のように】
【──あるいは、母のように】


【あれだけ泣き腫らした後だというのに、】
【少しでも気を抜けば、またぞろまなじりから情けない雫が滲みそうになっている】
【──こんなことなら、本当の性格や記憶なんて、思い出さなければ良かったとさえ思う】



【──今から、より一層記憶の深い階層に入る】
【これまではほんの浅瀬、ここからは光の届かない深海】


【永遠とも思えるような時間の果てにようやく、陽の差す場所まで上がってきたのに、】
【また再び、あの全身を締め付けてくるような深淵の中に潜っていかなければならない】


【──その気の遠くなる外圧に耐えられるだけの何かが、わたしの心にはあるのだろうか】


(………………………………──────)


【……分かっている】
【あろうとなかろうと、既にそんなことは問題ではなくて】
【『わたしの戦い』ではなく、『わたしたちの戦い』を始めなければならない時が来ている】



【──少女は腹の底の淀んだ息を深く吐き出して、探偵のオイルライターを両手で握り込んだ】



【(──────…………………………………………)】



【(…………………………………………)】



【(………………──あの、)】



/↓


408 : 2/8 ◆3inMmyYQUs :2018/10/18(木) 22:34:08 nHxGsN220
>>278

【────……これから全てを伝える前に】

【最初に、正直に、言っておこうと思います】



【わたしは……】
【全てを語りきれるか、本当に全然……自信がありません】


【……ここに来て何を言っているんだって、思うかもしれないけど】


【わたしが語らなければいけないことを語るには、】
【今までにないほど深く、深く──記憶の深い海の底まで潜る必要があって】


【──階層の奥へ潜れば潜るほど、】
【わたしのいろいろな境目が消えていきます】


【時間の境目、身体の境目、感情の境目、心の境目──】


【わたしを守っている全ての殻が剥がされて】
【何にも見えない真っ暗な宙で、上下左右の全部から重力を受けながら】
【もがいて、足掻いて──終わりのない透明な炎の中を進んでいかなければいけなくて】


【わたしの中には】
【それに負けないだけの熱が、火が……見えなくて】


【本当は、今からでも止めて逃げ出したくなっていて】
【自分でも呆れてしまうくらい、震えが止まらなくて】
【例え小さな火種があっても、すぐに自分の涙で消してしまいそうで……】



【だから、……手を】

【──手を、握ってて欲しいんです】




【ちゃんとここにいるって】
【確かにわたしはいるんだって】

【身体の熱で、知らせ続けていて欲しいんです】







【……こんなこと言われても、困ると思うけど】



【──舞衣さんは】

【少しだけ、わたしのお母さんに似ている】













               【(──────     ……ありがとう)】












【────────────……じゃあ、続きを始めるにゃ】




/と、続くには続くのですが一旦お知らせです↓


409 : 3/8 ◆3inMmyYQUs :2018/10/18(木) 22:34:54 nHxGsN220
>>278

/※お詫びとお知らせ※

/えー、……(手を揉み揉み)
/まずは大変間が空いてしまいまして誠に、度々、実にすみませんでした。

/重ねて残念なことに、色々なオトナの都合上、この後に続くお話は一旦飛ばします。
/また後日、それなりの体裁を整えてから改めて発送いたしますので、
/ひとまずこの場では事のあらすじと、この後のシーンの導入説明だけいたします。



/ver.2.0 introduction
/『√β2 - A.D.2Q36』


/あらすじ:
/現在から約十数年後の分岐した未来。
/終わらない世界大戦下にある世界で。
/未知のウィルス《カニバディール》が蔓延し、『異能を持った食人屍』が出現する。

/ごく限られたワクチンや安全な環境を巡って国内にさえ争いが起こる中、
/“能力者の臓物を摂食すればウィルスへの抗体になる”という風説が流れ、
/能力者(と見なされた者)は生者からも死者からも生命を脅かされる。

/そうした終末的世界の中、
/臆病な少女シヲリは、勇敢な母親(カンナ)に守られながら生き延びていくが、
/とあるコミュニティに隠された秘密をきっかけに、世界の真実へ迫ることになり──



/みたいな。ゆるふわ日常系です。

/旅する中であんなことやこんなことが起きて、シヲリが色々なことを知った後、
/諸々のやんごとない事情から一人ぼっちになってしまった、というところから次のシーンが始まります↓


410 : 4/8 ◆3inMmyYQUs :2018/10/18(木) 22:35:41 nHxGsN220
>>278


【 (──夜) 】

【 (──廃墟)】

【 (薄霧────) 】





【────どれだけ歩いてきたかは分からない】
【思っているより遠い距離ではないのかもしれない】

【それでもわたしの足と心が進んで来られたのはここまでだった】


【深く、冷たく、重い夜の幕が、空の果てまで包んでいる】
【世界全体が骸になったような静けさ】

【わたしもその一部になるように】
【息を身体の奥へ、奥へと押し込めた】


【かつては何だったのかも分からない建造物の】
【その跡地にしぶとく残った外壁の、そのまた隅が】
【かろうじてわたしに残された一人分の居場所だった】


 ………………………………────────


【もうわたしを抱きしめられるのは、わたしだけだった】
【だからこの腑抜けた腕の中へ収まるように身を縮めて】

【じっと、ただじっと】
【心臓の鼓動以外は、瓦礫と同じようにしていた】



【──どれだけそうしていたか分からない】

【目を覚ましていたとも言えないし、】
【眠っていたとも言えない、どろどろにぼやけた微睡みの中で】

【──焦点の定まらない──幻の音と言葉が──】
【過去の汚泥の底から──繰り返し──繰り返し──蘇ってくる】

【────“やつら”のように】



( ──────────────────  )



【そのときに】

【ざ、と砂礫を擦る音が】
【醜い夢幻を一挙に吹き飛ばして、わたしを総毛立たせた】

/↓


411 : 5/8 ◆3inMmyYQUs :2018/10/18(木) 22:36:12 nHxGsN220

【音のした方に目を遣ると、うっすらとした人影が、二つ、あった】
【“やつら”の姿が脳裏を過ぎり、わたしの呼吸は一瞬のうちに詰まった】


【──けれど、薄闇に目を凝らして見つめていると】
【それは背を伸ばして立っていて──“やつら”ではないことが分かった】

【その服装には見覚えがあった】
【憲兵のそれだった。ひどく薄汚れて、帽子もなかったが、小銃は携えていた】


【二人はわたしの気配に気付いて、銃を構えた】
【──それだけで、またぞろ喉の奥がきゅっと締め付けられる】
【憲兵は周囲とわたしを警戒しながら、じりじりと、近付いてきた】


【わたしはその場から動くことも、何か武器を取ることも、しなかったし出来なかった】
【二人組はすぐに、わたしの目の前にまで至った。それからじっと、見下ろされた】


「…………何してる。
 ……一人か? 仲間は……」


【わたしはただ震えて、かぶりを振る】
【誰にも、何も、返せる言葉なんてもう持っていなかった】


【憲兵はそれ以上何も聞かなかった】
【ただ深い沈黙が降りた】









【憲兵は小銃を下ろし、それを壁に立てかけた】

【何かを目配せしあっていたようだったけれど、】
【わたしにはもうどうでもよかった。もう、何もかも】


【──ざり】

【憲兵の靴底が砂礫を擦った──その次の瞬間だった】


────…………んぐっ、────!?


【硬い手のひらがわたしの口元へ押しつけられた】
【かと思えばそのまま身体ごと地面へ押し倒された】


【──何──? ──塩っぱい──ごつごつ骨張った手──汗ばんだ湿気──】
【息が──視界が揺らぐ──倒されている──痛い──地面──冷たい──】


【何事かと必死に目で訴えるわたしに、憲兵は血走った眼を合わせて言った】


【「──騒ぐと殺す」】


【囁くように低い声が、全てを悟らせた】

【内臓が凍った】

/↓


412 : 6/8 ◆3inMmyYQUs :2018/10/18(木) 22:36:49 nHxGsN220

【男達がわたしに行おうとしている悍ましい行為を】
【想像しきる前にその戦慄で思考が全て白く染まった】
【身を捩った。一度、二度、何度も、何度も、何度も】
【今までに出したことのないほど、力を爆ぜさせたのに】

【それは全て否定された。途方も無い腕力が抵抗を全て上書きしてわたしを押さえつけた】
【嫌だ──と叫ぼうとした声も握り潰されたようにくぐもって輪郭を持たなかった】


(────………っ、………!! ……! ……!!)


【頭の中の金切り声は口腔から先へ出ていけない】
【体内に跳ね返って暴れ回って血を沸騰させて】
【眼で息で身体で全細胞でどれだけ絶叫しても】



【 (何も) 】



【砂利と布の擦れる音だけ】



【(リピート)】



【──皮膚】 【感覚:】
【がさがさに乾燥した手が服の下へ暴れ込んでくる膚の上を掻き回す度に呼吸止ま嫌だ】
【わたしは嫌わたしが発狂嫌だ発狂脳髄触らな触ら止め嫌嫌嫌気が狂う狂う嫌だ悍まし】


  【眼】     【──両眼】


【ぎらつく眼が】
【獣】
【わたしを圧し掛かる見ている】

【荒く湿った吐息】
【鼻を刺す酸っぱく】

【汗】 【脂】
【ぐちゃぐちゃ】
【饐えた体臭の雲】


【──なんで】  【聞いて】 【何故】

【わたし】  【否定】 【聞いてよ】 【やめ】
【拳】 【──“ゴっ”】 【震盪】 【殴られ】 【赤】
【痛】  【重響いて】 【──なんで】 【ごめんなさ】 【反響】
【ぶたないで】 【暴】  【否定】 【物】 【否定する人間わたし】【:人間ではない】
【物】 【なんで】  【物体】 【無機物】 【:人間ではない】 【道具】 【隷属】


【────嫌だ】  【いやだ】
【止め】  【お母さん】 【たすけて】 【無】【虚】
【何処にも無い小さい何にも無い力は力は無力わたしは】 
【涙なんでどうして嫌だ涙涙生きる死ぬ嫌だ殺して滲む殺し殺して涙熱赤赤】













【────“かち”】


【どこかで撃鉄を起こす音】

/↓


413 : 7/8 ◆3inMmyYQUs :2018/10/18(木) 22:38:01 nHxGsN220



【────────────────“ぱんっ”】




【乾燥した実が弾けるような音だった】

【びしゃ、と】
【同時に何か赤い飛沫が壁に叩き付けられた】

【目の前の男の側頭部から咲いた脳漿だと、】
【わたしが理解する前に、】

【その銃声の元へ振り向いたもう一人の男の額から】
【──“ぱんっ”──破裂音がして、再び赤い内容物が飛び散った】



【──赤い】


【夜闇にも浮くような、てらてらと濡れた赤】
【その血の赤さが、空気の色を全て塗り替えた】


【わたしを踏みにじっていた獣たちは、その一瞬で、骸に変わっていた】
【虚ろな眼窩で、何も無い宙を見つめていた】


────……ひっ…………っ、…………


【わたしもそうなる──三発目の銃声が鳴ると思った】
【だからすぐに、壁の隅の隅まで身を縮めて蹲った】



【震えて、震えて】
【──もう何もかもどうでもいいと思っていたはずなのに】
【いざそれを目の前にすると、どうしようもないほど、覚悟なんて無くて】











【──けれど】
【待てども待てども、それは鳴らなかった】


【代わりに、】





【────“きん”、と】




【──オイルライターを弾く、澄んだ音】
【しゅぼ──と火が瞬いて】


【暗闇の中に一つ、小さな赤い光の点が】
【はぐれた蛍のように、そっと明滅した】





【わたしは、震えの止まらない身を固く抱きながら】
【音の主がいる場所へ、恐る恐る、目を凝らした】




【──重い曇り空が】
【明けないはずの曇天が、そのとき微かに割れた】


【切れ間から差し込んだ細い月光が】
【そこに揺蕩う紫煙の揺らぎと──】

【夜闇に立つその者の姿を、片側の半分だけ、照らした】


414 : 8/8 ◆3inMmyYQUs :2018/10/18(木) 22:40:34 nHxGsN220
>>278

/──という感じで。
/間一髪、少女の貞操を救ったこのダンディーは一体何ザノ・ッッンアォッソなんだ……? というところで、パスします。

/既にこっちで半分描写してしまっているというトンデモ暴挙を犯しているのですが、
/しかしもう半分はまだ観測されていない以上、量子論的には未確定、ノーカン‥‥っ、ノーカン‥‥っ、ですので、
/実際のところこの人物が何者なのか、というのは霧崎さん方の手で決定していただこうというアレです。


/ご本人登場なのか、それとも全くの別人なのか、
/万が一本人だとしても、ヤングマンの方なのか、イケオジの方なのか、エトセトラ、エトセトラ……

/もう何をどんな風に描いても、ほんの1,2行でも結構でございますので、もう諸々お任せいたします。


/以上、無茶苦茶なパワープレイばかりでおでこが上がりませんが、
/なにとぞごけんとーのほど、よろしくおねがいもうしあげます。
/質問尋問等ありましたら舞台裏の方で呼びつけてください。

/大変長々とお目汚しを失礼いたしました。




/────────────

/おまけ:プレビュー版
/>>409のお話からほんのワンシーンだけ抜き出し ご参考までに
/ttps://www.evernote.com/l/AkkYjOkjyehE04Zx4kVKZoRFH8oBObQgfms


415 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/18(木) 23:22:04 TsYpBdTY0
>>406

「は、はい……その、ご迷惑をおかけしない様には……気を付けます、極力」
「ライガ、マジであの人怖いー」
「スマホさん、本当に口は無いですが口の利き方には気をつけてください、その、僕の身も危ない」

【ミレーユの美麗な見た目からの表情や言動は、より相手の恐怖を掻き立てるには効果的なのかも知れない】
【現に悪魔的とも言えるその表情に、1人と一台は竦み上がっているのだから】
【やがて、秋の風が頬を撫でて吹き抜ける中、話はもう一つの事案】
【その手紙へと移る】

「自覚してますよ、本当嫌な性だと……」
「苦労性って言うより、仏滅?厄年?大殺界?」

【手紙を取るミレーユの手元を見つめながら、そう短切に、余裕なく答える】
【手紙の中は、一見すると意味のわからない内容だ、不規則な文字列に唐突なトンツーの記号、後には数字列】
【だが、もしミレーユに、ごく初歩的な暗号解読スキルがあるならばこの場での解読が可能かも知れない】
【短い文字列は挨拶込みの2組織の会談の提案、トンツーは『黒幕』『虚神』の二単語のみが記され、数列は経度緯度と日時】

「何が書かれてるんですか?まさか、戦線布告……とか?」

【ライガは不安げに、尋ねる】


416 : 名無しさん :2018/10/18(木) 23:38:40 DGXEZ20E0
>>405

【解き放たれるマゼンタの刺突に、少女の毛先がひらと舞い上がる。――純白の色。カラーコードまで合わせたに違いないくらい、まったく同じ色の毛先は】
【それでも纏う人間が変わるならば、いくらか印象も変わりうるのだろうか。そうだとしても/どうあっても、彼女が好きなのは、貴女が纏う白銀の色であるなら】
【まるで世界中でたった一つ自分の色を分けてくれた花に焦がれる一片の雪の結晶のように、瞳の色すら真似てしまうのも、仕方ないと、きっと言えた】

――――――、いっつも、いーっつも、私のこと虐めているのに?

【――紅紫の林立に抱かれるように身体を隠す少女の、それでも表情はよく見えた。拗ねた子供の顔をしていた、むうとむくれてすら見えるなら、不満点はいくつも連なる】
【解に至るための手がかりをいまだ十全に持ち合わせぬ問題を出されたり、あるいは、今すぐにでも撫ぜてほしくてたまらぬ夜を態と放置されたり、】
【特に前者のたぐいは拗ねたように机に突っ伏してぶーぶー言うことが多かった。ただ、思考はしているらしく、いくらも放置していれば、思いついたのを叩き台として提出することもあり】
【特に後者のたぐいは、――本当に泣きじゃくるような声で、けれど涙は出なくて、だのにそれ以上の情をしとどに、どちらにせよ子供ぽい仕草は変わらないのだけれど】

【だけれどいじめられっ子の振る舞いにしては無邪気が過ぎた。それならば戯れのための言葉でしかないんだろう、本当にやめてしまったなら、きっと目を潤ますから】
【揶揄われるのも慣れてしまった。絶対敵わぬ何かを思い知らされるのは嫌いじゃなかった。ならば嗜虐的な笑みに見下ろされて寝台に押し付けられる夜が、嫌いなはずなく、】
【――――ゆえに紅紫の中で彼女はわずかに身じろぐ、紫水晶の結晶めいた煌めきがギシリ軋んで動くのならば、仕草だけなら何かを間違った雲丹のようにも】

【――――がきゃり、と、鋭く、鈍い音。割れ砕けるのは紅紫の魔力群であり、そうしてザラザラと硝子片の集団みたいに床へ落ちるのならば、】
【アリアの肩口を縫い留めるものもまた崩れ落ちるのだろう。空間に撒かれたものはもとより持続するものではなかった。――顔を庇う腕を退かすのなら】
【きっとその腕と腹部にはべたりと血糊がこびりついていた。真っ赤になった腕の向こう側にある顔が変わらぬ白磁であるなら、向けるのが拗ねたようなのも道理であり、】

――――――――っ、もう、アリアさん、四倍じゃ足らないですよ、こんなの。お洋服の分、五倍だって、六倍だって、――、!

【真っ白なお洋服に咲った真っ赤なお花を指先でつまみ取るなら、腕から指先まで垂れた血糊がまだ白かった布地にすら付着して、散華の装いに変貌わるから】
【別にこんな白い服に何のこだわりもなかった。それでも、服屋で探そうと思えばかえって見つからない程度には白いばっかりの服装だった、――今はもう違うけど】
【――からりと足元で魔力片が哭いて。護るものもなくなった代わりに再びの自由を取り戻すなら、けれど彼女はいまだに服の裾を摘み取っていて、だから、】


417 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/18(木) 23:43:30 hEXW.LLA0
>>415

【青い瞳が記号列を映す。ごく平易な暗号文。これくらいは解読とも呼べない。 ─── 然らば、儀礼的に置換された代物だろう】
【少なくともミレーユは電子戦のプロフェッショナルだった。八課におけるセキュリティの過半以上を担当していた。子供騙しを見せられたような顔をして、最後の嘆息を絞り】


「 ─── せめてエニグマでも寄越してくれれば、少しくらいは褒めてやったものを。」


【せめてもの嫌味に向こうのセンスへ難癖を付ける。仮にエニグマで送られてきたとしたらスキュタレーである事を望んだのだろう】
【か細い指先が気取った遣い方で伝書を折り畳み懐に収めた。幾らか不安げなライガの様子を気にかけることもない不機嫌な面構え】


「似たようなもんだよ。 ─── 手を組もう、だってさ。イマドキ書簡の宅配だなんて、古風だこと。」
「会合の場所まで向こう持ちだ。スマートボムでも落としてやろうかな。リードされるのは性に合わない。だが、 ……… 。」

「 ……… 虎穴に入らずんば虎子を得ず、かな。引き受けてやろうじゃん。」


【 ─── しかして畢竟ミレーユはスリルと引き換えに報酬分の仕事をしてやるような人種でもあった。やはり乙女には不釣り合いな、不敵な笑顔に頬を吊り上げ】
【「ライガくんも来るかな。来るよね。これ持ち込んだのキミだもんね?」にたり白磁を見せて笑うなら、彼を覗き返す青い瞳は、有無を言わせず透き通っていた。】


418 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/19(金) 00:11:29 G/uZ5OlA0
【水の国―――路地裏】

【夜の空気に、乾いた銃声が響いた】
【もしも誰かがその現場を覗いたならば、大腿部から血を流し倒れている男が撃たれたのだ、とすぐに察しがつくだろう】
【細い道の手前側に立つのは、一人の男。手には拳銃、発砲したのはこちらのようで】

くっだらねえ……。ほんっとに下らねえなぁ、おい。

【黒の軍服と軍帽、そして一纏めにした長い金髪。特徴的なエメラルドの瞳は僅かに細められて】
【吐き捨てる言葉は地面に横たわり呻く男に向けて、視線はひどく冷ややかに。】
【蹴りを一発、腹部へと叩き込めば、呻き声はもはや聞き取れないくらいに小さくなって】

――――さぁて、と。

【視線を移す先。両の眼を零れ落ちんばかりに見開いて震えているのは少女―10代前半ほどだろうか―だった】
【ざり―――、ブーツの底が音をたてて。男はゆっくりと一歩を踏み出した】


419 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/19(金) 00:32:56 hEXW.LLA0
>>416

【やはり何処かでなにかが違っていた。 ─── 透き通るような白銀の奥、薄藤色を悟らせる色合いが、かえでを彩るのだとして】
【アリアの白銀には一欠片の慈悲もなかった。触れるもの総て凍らせる冷たさが、激しい闘武の所作一ツにまで付いて回る】
【それでいて触れたとしても決して融けることのない不凋の花蕊であった。思い切りに鼻筋をうずめて、冷酷さに不似合いな甘い洗髪と香油に酔わせることも許していた。】
【煙草と硝煙の匂いだけは消える事がなかった。 ─── それでも死臭はいつの間にか失せてしまっていた。然らば彼女はやはり、倒錯的な離人症を癒したのだろう】


「泣いてしまうのが悲しいのよ。 ─── かえでを虐めてしまうのは、好きですもの。」


【いっそ清々しく残虐で/それでも誘う言葉を紡いでいた。口先では少女は拒んでいて/きっと内心にも拒んでいるものを、然し確かに望んでいるのだと狼は知っていた】
【色彩ごと希釈されて砕け散るヴァーミリオンの中、ふたりの女が舞い踊っていた。本当にそれは舞踏であるのかもしれなかった。畢竟その意味を知るのはふたりだけ】
【換言すれば総ては秘め事だとも述懐できた。ひどく互いに昂ぶっているのだから、そうならざるを得ないのだから、愛し合う意味を悉くに持たせて何の躊躇いがあろうか。】


「 ─── ふふ。怒らないの」「ちゃあんと、あとで、洗ってあげるから」


【優しい磔刑から解き放たれて、見出すのは些か露骨に過ぎる攻勢の時間。血に濡れる立姿でさえ耽美であり貪るべき弱味なら】
【決してアリアはそれを看過しない。 ─── クロース・クォーター・コンバットの熾烈な連撃こそが彼女の本分である】
【牽制として先ず左手の弾倉を撃ち尽くし、それが終われば当然のように手放して、然らば再び踏み込む目睫の間】
【 ─── 深く落とした腰から繰り出される掌底は、真面に受ければ体勢を崩す。その目論見が能うのなら、無防備な少女の身体目掛けて、右手の銃弾を容赦なく撃ち込むのだ】


420 : 名無しさん :2018/10/19(金) 00:42:43 DGXEZ20E0
>>386

――――もう、しょうがないですね。そういうことに、しておいてあげます。安全運転は、……どうでしょう。
急いでたら分かんないです。でも、そうですね。気を付けますよう、――――うふふ、だったら、そうですね、私より先に、見つけてください。
それでね、教えてください。私より、ヒルデガルデさんの方が"大人"ですから、きっと、答えにだって近くって。――だから、

――見つかったら、教えてくださいね? 

【――やはりどこか変に大人びた表情だった、内緒話するかのように潜める声は、至極吐息に紛れてしまいそう。けれど、耳元で囁かないだけ、マシだった】
【甘やかで涼やかな声をささめくトーンで耳孔に注ぎ込まれるなら、至極擽ったいはすだったから。――そうして、生半可な男など容易く嬲れるに違いないから】
【ただ今日は当然それほど親しくもなく、また互いにそのつもりでもないのなら。――甘やかさはいくらもなりを潜めて、上機嫌な少女の立ち振る舞いへ、果てる】

――――――――、ふふ、ありがとうございます。ヒルデガルデさんも、お気をつけて。

【だから、――そのままの温度が、その背中を見送るのだろう。その背中に宿る複雑な感情の全部を辿ってみるには、まだ、出会ったばかりに等しいならば】
【いつかの日にせめて指先一つでもたくさん辿れるように、――あるいは、もういくらも、親しくなってみたいと願うかのように。相手の名前、きちりと覚えこむから】

【――それにしたってほとんど意味の分からぬ専門書を、少女はやがて眼精疲労を言い訳に持ち帰るのだろう。日傘はないけれど、】
【それでも久方ぶりに思える平和な時間に柔らかな日差しは、――ひどく快いから、表情が緩むのも、また、必然であった】

/見落としていました、ほんとうにごめんなさい……おつかれさまでした!


421 : 名無しさん :2018/10/19(金) 01:09:47 DGXEZ20E0
>>419

【だから風呂上りの時間は二人のためだけに世界が廻っているんだって信じてしまいそうになる一時であるのだろう、たっぷり、ふたり、同じ香りと体温と湿度を分かち合って】
【少女が気まぐれに買って来たバスソルトをアリアが使うことも許されていた。だけれど結局二人で使うことの方が多いに違いなかった。――だけれど、思い出すなら】
【件のバスソルトはいつか彼女の私室に備え付けられた浴室にも同じものがあったから。きっと彼女の好きな匂いなのだった。甘い甘いラベンダーの香り。よく眠れるおまじないみたいに】
【ふたりおんなじ香りに浸って、――湯の中でとろとろに蕩けてしまったような白銀の毛先を指先に弄ぶのが好きだった。真っ白な肌は、お湯の中ではすぐに真っ赤になってしまうから】

――――――――――――――――――私は、泣いてしまいそうなアリアさんだって、大好きですよ?

【――拗ねる声にて告げられるのは何か負けず嫌いの作法に似る、泣いてしまったら悲しい。泣いてしまいそうな貴女が大好き。狡かった。違うことの話をしていた】
【もし本当に泣いてしまったら、――ああでも、彼女はいくらも眦を蕩かしてしまうのかもしれないって思わすには十分さがあった、その頭を大事に撫ぜてあげたいから】
【そうやって慰める言葉をささやいてあげたいから。その吐息と音階とで脳髄まで犯してやりたかった。自分の仕草によって惑う相手の姿を見るのは、――ひどく愛しくて】


――あ、っ、


【漏れる吐息、青い瞳が見開かれて、ぱらと落ちる布地は染料の重たさに、もとよりのシルエットをいくらも崩してしまう。転瞬またたく紅紫に、空間が凍てつくなら】
【遠慮なく吐き出される銃弾を辛うじての紙一重で受けきるのだろう。けれど次の瞬間にはアリア自身が彼女の眼前に迫り、――薄く張ったのみの防壁では、受けきれずに】
【ぱり、と、ひどく容易い音で――それでもいくらかの衝撃を殺して――貫くのだろう。さすれば彼女はやはり体勢を崩す、衝撃に詰まる吐息の音を、空中にわずかに引き摺って】
【ほんの次の刹那には床に倒れこんでいる、なら。やはりひどく無防備な刹那に、けれど、彼女はじっとアリアを見るのなら】

【――――禁術。視線にて齎す一瞬の仮死。もしもアリアが彼女の目を見てしまうなら、一呼吸のみの死は、その視界を奪ってしまおうと、して】
【おんなじ色した瞳が見つめ合うのなら、それこそ親子の睦まじいさまのように。――けれど現実の光景はあまりに違えて、どちらにせよ】
【寸前に割り砕かれた障壁の残滓同士が無理やりにつなぎとめられるなら、ぞろりとリボンの形を成す。常よりいくらも薄く不確かに】
【もしも惑うのなら、――その一瞬に相手の身体に巻き付けてしまおうとする。あるいは、惑わずとも、それを判断するよりも、行動のほうが幾分も早いなら】

【――果たせぬなら、右よりの銃弾を防ぐ手立てはもうなくて】


422 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/19(金) 01:40:19 TsYpBdTY0
>>417

【ミレーユにとっては余りにも退屈で、そして余りにも下らない文書列だったのだろう】
【小手調べのつもりか、あるいはそれをミレーユがどう捉えるかはわからないが、少なくともエニグマ暗号文よりは遥かに簡単な暗号は、必要な用件のみを短く伝えるに過ぎなかった】

「手を組むんですか?向こうの要件を飲む、と?」
「爆撃ってミレーユさん、本当に戦争になりますよ……」

【協力関係の締結、情報交換、最低でも不戦協定の締結、目的としてはそんな所だろう】
【目下共通の敵は記載にある通り、黒幕と虚神】
【関係性を持つには、恐らく十分に過ぎる敵】
【ライガはミレーユがぼそりと漏らした言葉には、呆れ半分でこう答え】

「……言うまでも無いですよミレーユさん」
「ミレーユさんの身の安全は、必ずや守り通します」

【相手に有無を言わせず、それでいて澄んだ綺麗な瞳だった】
【だがそれ以上に、自らの意思で、今度ははっきりとこう答えた】
【経度、緯度が示す会談場所は、水国路地裏のBAR「cherry blossom」】
【日時は近い】

「僕とミレーユさんの2人で行きます?」
「それとも、アリアさんや佳月ちゃんにも声を?」


423 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/19(金) 01:49:45 smh2z7gk0
>>402

【ロールシャッハの返答に、眼を細め口を開こうとするが寸前で止める。そして少し恥ずかしそうに苦笑する】
【被っていたハットをスルリと外せば胸におき、眉を八の字にして申し訳なさそうに相手を見つめた】

これはこれは………申し訳ない事をした。私は誤った〝認識〟を行ってしまっていたようだね。
成程、確かにこうして対話できるという事は人の身でも届きうるという訳か。

―――ただ、〝正体不明の認識できない存在〟というそもそも領域が違う存在より余程〝恐ろしい〟
手が届きうるからこそその脅威は〝実体〟を伴ってそこに存在している。

けれども、貴方は〝お優しい〟―――人と言う種を愛している、果てしないほどに。
貴方は一体〝これから〟どうしていくつもりなんだい………?

【〝お優しい〟少なくともマリアベルはそう感じた、ロールシャッハとの対話において。それは人の社会の中では狂気と呼ばれるのだろうか】

―――そうか、〝数字〟を………だがそれだけではないのだろう?
ただ当てはめるだけでなく〝意味〟を持たせなければならない。少なくとも私はそう感じたけれど

そして貴方がそうであるように、〝器〟が必要なのでは?虚数空間の存在が実態を宿すための〝依り代〟が

―――しかし、これだけ話しておいてなんだけれども本当にいいのかい?貴方達の椅子をそんな簡単に差し出して
まるで名だたる名画達と一緒に〝誰が作ったかも分からない意味不明な絵〟を飾るような行為だと思うけれど。


【それだけ言うとマリアベルは椅子に深く腰を落とす。すぅ、と緩やかに口から息が吐き出される。風に揺れる花のように】
【「私ばかり投げかけてすまない」と再び申し訳なさそうに笑えば、ロールシャッハからは何かないのかと沈黙する】


424 : ◆RqRnviRidE :2018/10/19(金) 09:46:39 6nyhPEAc0
>>396

そうそう、多分俺んとこの団長の臭いだよ! ……ぜったい俺んじゃないからな。
犬っていうか正確には狼かなあ、真っ赤ですんごいでっけえの。 人狼ってやつかな? ふつうに喋るし。

【体臭についてはすかさず訂正を行うが、少女の思い浮かべる空想は当たらずとも遠からずといったところのよう】
【人外とは言えその団長とやらが実質犬──正確には狼だそうだが──ということは強ち間違いではなさそうだった】
【ちなみに、と一言付け加えつつ。 スケッチブックの紙の片隅に、こなれた手付きで何やら描き出してゆく】

曲馬団じゃなくて『劇団』のほうなんだけど、確かにサーカスに似てるかも。
だってさ、団長ったら猛獣みたいにちょーこえー顔してんだぜ、こんなふうに……

【出来上がったものを少女へ見せるだろう、描き上げたのは他愛もない絵のようで】
【厳めしく尖った二つの耳と牙、長いマズル、下膨れの顎、黒丸のおめめがふたつ、…………】
【…………それは“イヌノヨウナモノ”で、お世辞にも上手いとは言い難い出来映えだった。 何というかシルクハット被ってても違和感ないゆるさである】

【多少は落ち着きを取り戻したように窺えたと思われたが、それでも携帯端末を受け取らず鬱ぎ込んだ様子の彼女を見遣れば】
【口を少し尖らせ、頭を掻いて一息つくだろう。 確かに初対面だし、況して相手の苦手な気配を纏うのだから警戒されるのも無理はない】
【少女の言うとおり、話したところで全てを理解することもまず難しい……だけれど敵意が無いのも事実だし……少しの間頭を悩ませて】

【やがてスケッチブックから白紙を何枚か破り取り、ノコリハ携帯端末ごとウエストポーチに収めてしまうと。 「じゃあ」と提案をひとつ】


────じゃあ、運動がてらに簡単なゲームをしようか。 ついでにこの携帯も賭けて。

君が勝てば俺がこれを貰う。 そんで好きなようにさせてもらう。
俺が勝てば君にこれを返す。 君自身が責任持って扱うこと。


【内容は“模擬戦”をやろうというものである。 ルールは単純明快だった】
【少年の紙が尽きる前に、彼自身に接触ないし攻撃を当てれば少女の勝ち。 紙が尽きるまで彼女の接触を防ぐことが出来れば少年の勝ち】
【ついでに携帯端末の行く末も賭けてしまう。 断ち切れぬ関係ならいっそ選択肢を与えてしまえばいいと。】

フルーソで天下一武道会もあることだし、リフレッシュしちゃおうぜ。
まぁ当然、やるもやらないも君次第だけど──どうかな?

【「悪くない提案だと思うけど──」 少女の答えを待ちながら、少年は屈託のない笑みを浮かべてみせる】
【川辺を駆け抜ける冷たい秋風が昼下がりの気温を浚っていく。 昼間とは言え大分冷え込んできたこの季節、肌寒さが身に凍みそうで】


425 : ロールシャッハ ◆zO7JlnSovk :2018/10/19(金) 13:30:13 arusqhls0
>>423

【真逆に編んだ茨の冠、頂を穢す言葉の群れも、聡明な "探求者" に授けられる一文字細工の栄光に近い】
【それは真理を示さずとも、一定の方向性を示すコンパスに似ていた、問答の中に真実は確かに示されて】
【恥ずかしそうな苦笑を彼は溶かした、己の網膜に混じる美しさに溜息をつくかの如く】


──── 買い被り過ぎだよマリアベル、ニンゲン達はきっと僕になんて愛されたいとは思わない
そしてその "認識" は危ういとも伝えておこうか、オーウェルの 『動物農場』 は読んだかい?
興味深い点としてオーウェルは反体制としてあの作品を描きつ、それと同時に衆愚も揶揄している

まるで、そう、──── まるで、悪政を生み出すのは何時の時代だって、群衆と言いたげに


【彼は笑う、三日月の様な笑みが貼り付けた輪郭を透かして、一片も残らない残照を兆す】


僕のこれからは単純だよ、或いは君達の言葉で言うところの、 "Farm" に近いね
より原初の話さ、虚数軸に生きる僕達にとって、実数軸の存在である君達の存在は不可欠なのだから
だからこそ "間違った認識の担い手" として、或いは────、"誤った信仰の祈り手" として

君達は君達として存在しなければならない、正しく "恐怖" し、正しく "錯覚" する数多としてね


【そこで示すのは愛とは違う感覚であった、或いは、──── 荘園主が家畜に注ぐ手間暇をして】
【愛情と指すのであれば、それは正しく言葉を捉えていると言うだろう】


勿論、良い感性をしているね、"魅入られた者" は見る眼が違うとでも言っておこうか
"意味" をどう定義するかはその性質に依るけれど、元来 "数字" と "意味" ──── まぁ正しく伝えようか
"概念" とは密接に関連している、言ってしまえば慣習なんだ、古来からのね、或いは未来からのね

最初に定義された際、僕達は僕達として在った訳ではなく、その "概念" に従って在った訳だから

此処に奇妙な不一致が生じる訳さ、僕達の定義されるずっとずっと前からもう、僕達は存在していたというのに
けれどもそれはパラドックスには成り得ない、大切なのは此処に居るという結果だけだ

──── だから僕は君の認識に従えば良いと考えるよ、マリアベル、"数字" を正しく割り振る事が出来るのは、君だろう

"器" は後で構わない、僕達が "器" を借りて存在しているのは、今の段階に於いてのものさ

この世界には "信仰" が足りない、だからこそ僕達は "依り代" を媒介にして存在してみせている
況や "外宇宙の神話生物" 達を葬るのであれば、彼らの存在は "伝聞" に閉じこめておくのが良策だろうね
然るべき時に然るべき器を用意し討伐する、実に理にかなった行動だろう?


【そうして続く言葉に彼は苦笑した、まるでマリアベルの表情をトレースしたかの如く】


君は聡明だかれども、聡明すぎるのが時に欠点だね、豊かな想像力と深い洞察力は見事だけれども
それは同時に自らの首を絞めかねない、──── 鋭いニンゲンは、気付いてしまうのだから

僕達の椅子なんてそんなに大層なものじゃない、何度も言う様に僕達と君達とは単に住んでいる軸が違うだけだから
言ってしまえば違う檻の中に閉じこめるだけさ、僕達を名画だなんて言うのは、時代に対するエゴだよ

そうだね、──── お言葉に甘えて一つ聞くとするとしようか

"外宇宙の神話生物" について、君の知っている話が聞きたいな、──── 君の知っている範囲でいいよ


426 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/19(金) 14:03:47 arusqhls0
>>549

【徐にイスラフィールは手を伸ばした、そうしてかえでの手をぎゅっと握りしめようとするのだろうか】
【重ねる手の温もり、艶やかに紡がれるかえでの苦しみをそっと分かち合うみたいに、それでも足りないなら】
【そのままその吐露が終わるまで、暫し静謐を保つのだろう】


──── 本当にその方を愛しておられるのですね、知らない私でさえ、きゅぅと胸が締め付けられる程に
だからこそ何となく、元カレ様が貴方様を遠ざけた理由も分かってしまいますわ
愛されている方も同様に苦しいのです、此処まで艶やかな愛を紡がれてしまえば

愛するのは女の仕事です、けれども、愛して待つのもまた、女の嗜みですわ


【そう言って彼女は話題を逸らす、如何せんそれ以上続けるにはあまりに関係性を知らなすぎる】
【同時に、知ることもできた、けれどもそれは土足で蹂躙する、手製の花畑にも似て】
【それを悦びと捉えるほどには、彼女はその道を踏み外しては居ないから】

【間髪入れずに彼女はそのページも読み上げる、少しだけ得意そうに笑ってみせて】


ええ、惜しいですわ、私の能力は "記憶" を読み取る能力ですもの、──── 言ってしまえば
私が読み取ったものは全て、私の中に残っていますわ、だからこそ記憶というのです
ふふ、ちょっとしたずるでもあるのですけどね


427 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/19(金) 14:11:51 6IlD6zzI0
>>404

【闘技場で相対する二人。その一人は白桜と言う名の少女】

【雪の様に白い髪と肌、何処か遠くを見ている様な琥珀色の瞳】
【黒色のインナーの上に羽織った白色のパーカーに、ワインレッドのスカートと黒のニーソックスと編み上げブーツと言う姿】

【―――】

【誰かに守られっぱなしなのは嫌だった。更に言えば誰かが傷つくのを見るだけなのも嫌だった】
【白桜はいつも誰かに守られていた。普段はフェイ=エトレーヌとエーリカ=ファーレンハイトに】
【最近は姉と慕う和泉文月も加わったから――自分も誰かを守る力があると証明したかった】

【―――白桜が大会出場を決意したのはそんな経緯から】
【"相棒"と、"親友"と、"姉"。大事な人たちと肩を並べて同じ景色が見たいから。】


むぅ……こうなると思ったからお姉はんには黙ってたのに。
心配してくれるのは嬉しいけど、いつまでも守られるだけの存在で居たくないから。

【"それにお嫁に行けなくなったら、文月お姉はんのお嫁さんになるから大丈夫"】

【軽率な行動を咎められ、口を少しだけ尖らせた。琥珀色の瞳も微かに揺れて、声色に熱が篭る】
【けれど最期に締め括る言葉はいつもどおりの白桜。恥ずかしげもなく微笑んでて】


【―――】

【戯れるのはここまで。遊びのある表情は、緊迫の色を滲ませて】
【手持ち無沙汰な指先は、腰のホルスターに収められた二挺の拳銃、そのグリップへと伸びて】
【両手に可憐な花ではなく、無骨な拳銃を握り締めて―――二人は相対する】

【普段のぽわぽわした面持ちは鳴りを潜めて】
【凍てる雰囲気はしんしんと降り注ぐ淡雪ではなく、底冷えする冷気の様相】
【フェイも白桜も――"カイ"の生き方は弾丸に似て。一度放たれたなら、何かを穿つまで止まらない】


……いっぱい強いひとがいるなら。わたしはその全てを撃ち抜いて罷り通る。
わたしも"ヒトオニ"の"カイ"が片割れだから、お姉はんに遅れを取る心算は無い。


           【―――Heaven's/Hell's Rush―――】


【口にするのは"カイ"共通の合言葉。拳銃に能力を付与する能力。その句を唱えたなら――それは戦いの合図】


428 : 文月 ◆zO7JlnSovk :2018/10/19(金) 14:23:38 arusqhls0
>>427




      【────、例えるならそれは日輪、雪空から零れた瞬きの中の木漏れ日】



   【あんまりに眩しいものだから、透明色に澄み過ぎた空を恨めしくも思うぐらいに、そんな────】
   【白桜の屈託のない微笑み、────、きゅぅっとほっぺたの端から文月は頬を真っ赤に染めて】
   【 "お、お姉はんをからかうんじゃありません!" なんて、照れた声が聞こえたけれど】



──────── 悪いけど白桜はん、うちを前にして攻撃しぃひんのが既に "遅れ" どす



   【文月の姿が消える、──── 否、ブーツで蹴り上げる地面の砂煙に錯覚する程に】
   【それは旋風の如き足運び、流星が直ぐ様網膜から消え去るのに似た、疾走】
   【呼吸の合間と合間、既にそこは彼女の "刃" が領域】


【抜刀、右手で掴むは "朝凪" ──── 白桜の眼前で踵を返し背中を向ける、円運動の軌跡】
【刻まれた閃光が眼前で暴発する、それは紛れもない光の煌めき、剣閃が描く一陣の彗星】
【腹部を狙った横薙ぎの一閃であった、寸刻の後、弾ける音が爆発の様に響き渡る】


         【次の瞬刹には既に納刀していた、終止符を打つ様に唾鳴る細工の後に満ちて】
                       【背中越しに彼女は言う、──── その言葉の名残を】



         和泉の刃に "二の太刀" は要らず、──── "凛として咲く花の如く"




         【それは桜の花びらを模した無数の "刃" ──── 細かい花弁が大量に出現し、炸裂する】
         【下から上に、縦へ切り裂くような軌道で白桜へと襲いかかるだろう、剣技と能力、二つの構え】
         【つまりは、文月の戦闘スタイルそのものであった、】


429 : 名無しさん :2018/10/19(金) 14:46:23 DGXEZ20E0
>>426

【そうして握られる手は、甚く小さなものであるのだろう。人より高めの身長に反して、その手のひらは、人よりも小さめのサイズをしていた】
【かすかに強張る指先の温度は想起して/そうしてまた想像してしまった光景への恐怖にわずか震えもするのだろう。掌越しの体温は、平均的なあたたかさ/つめたさをして】

――――――、うん、だいすきです、とても。とても……。だから――、あんなに近くで、でも、触れ合えないのが、悲しくて……。

【だから結局彼女はまだあどけなくて拙い感情ばかりを持ち合わせているのに違いなかった。とっぷり深く見える水面は、けれど、すぐにさざめいてしまうから】
【そわそわ揺らいで、結局すぐに待てなくなってしまう。結局彼女はそうして不安そうに無意味にうろついたり苛立ったりしているのを見咎められたのだった】
【ふとした瞬間に泣きだしてしまいそうな涙を噛み潰して気分を逸らすのに書物を手に取っても、数秒後には衝動的に投げ捨てたくなるような最中に、】
【それでも外に出ればいくらも気がまぎれたから、――やっぱり閉所にずうっと張っているのは似合わぬタイプなんだろうけど、いまは、そう自覚することも出来ずに】

――――――――――そんなの。議員なんかでなくって、警察だとか。行った方が、喜ばれそうです。
未解決事件だって迷宮入りだって、スマートフォンの地図片手に歩くよりも簡単に違いなくって、

【――放っておいたらいつまでも泣きそうな声は出て来るはずだった。それでも得意げな笑みに中てられるなら、彼女もまたか弱く笑んでみるのにためらいはなくて】
【この場に居ぬ誰かへの哀しみで張り裂けてしまうよりかは、――目の前の相手の言葉を聞いている方が相手に対して誠実でもあるから、だなんて言い訳して、自分を護る】
【やはり鈍器に見紛うほどの本を彼女は膝の上にて弄ぶのだろう。奥付を手慰みに開いてこの本の経歴でもたどろうとするのだろう、相手のような芸当はできないけれど】
【或いは形式の違う本であるのなら、扉にて同じ文字列を探す。どちらによ手遊びであった、――微かな表情は、それでもその道を選んだ貴女への、如何と言い難い曖昧を宿して】

――こういった本を読むのも、議員さんのお仕事なんでしょうか。だとしたら、――議員っていうのも、存外大変そうで。
普通の人なら、こんな本を読むのに一月は掛けてしまいそうなの、私も――本を読むのは好きですけど、理解るための前提知識を持っていないですから。
この本を理解するための知識を得るためのお勉強をしないとならないです。……そういうのも、私は、あまり嫌いでは、ないですけど。

【故に尋ねる言葉は、いくらか相手のことを知りたがっているのかもしれない、内容を分かるための言葉を持ち合わせないなら、まずはそこから仕入れなくては】
【そのような異能を持ち合わせぬ自分であるのなら。――しかして、相手の異能であれば、そんな風に読み進めていけるなら、それは、どこか羨ましく思えて】
【だとすれば、また、違った道へ進むのだって、もしかしたらそれこそ世界の役に立つような凄い誰かになれそうだなんて、思ってしまうのだけれど】


430 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/19(金) 15:01:09 arusqhls0
>>429

【彼女は少し驚いた様に瞳をまんまるくして、直ぐさま其れを柔和な微笑みへと昇華させる、ある種の絶頂に近い】
【そうして一回、二回と労る様にその小さな手を撫でるのだろう、彼女は雄弁に語っては見せるけども】
【目の前の少女は幾分にも若い少女なのだから、そんな風に怯えるのも無理はなくて】


っ……ふふ、困っちゃいますわ、そんな激しい愛を囁かれているのに、そんな表情されちゃったら
私としても羨ましく思いますの、貴方様の様に可愛らしい方に此処まで愛されるだなんて
一体どれだけ徳を積んだのなら、こんな風に思っていただけるのかしら、────


【それは本心なのだろう、照れた様に曖昧な笑みを浮かべて、そうして少女の言葉を彩る】


そうでしょうか? けれども、警察のお仕事をした所で、救えるのはこの両手に収まる範囲ですわ
私はこの国と、この国の民とを守りたい、──── そう思っています、だとすれば、ええ、────
議員である方が余程、多くの民の助けになるとは思っていただけませんか?


【そうして、続く疑問に────、彼女は照れた様に頬をかいて】


正直な所、個人の興味ですわ、──── ふふ、秘書にはお勉強だなんて嘯いていますけども
年がら年中政治の事を考えていては気が滅入りますもの、だからこそ知識欲を満たすために
こうして外に出て読書するのが、私にとっては一つのリフレッシュですから、────

でしたら、簡単にで良ければ解説してさしあげましょうか? 丁度 "面白い本" でしたので
端的に言うと "心理" と──── "社会"、そして "哲学" の話ですわ


【かえでは気付くだろうか、──── 出版社の名前が書いていない、自費出版された本であると】
【奇妙な事に作者の名前も無かった、ただあるのは一言、──── そう、タイトルに相応しい文字列】




       【   "偽書-Psychosocial-"   】


431 : 名無しさん :2018/10/19(金) 15:35:39 DGXEZ20E0
>>430

【他者と比べて一回り小さな掌を繰り返して撫ぜられるなら、少女はほんの少しだけむずがるように、気まずいように、身じろぎするのだろうか】
【けれどよほど嫌で仕方なく、という態度でないのが、やはり彼女が年若いのを証明するように。――少しだけ照れているのかもしれなかった、或いは気恥ずかしいのかもしれなくて】
【手袋越しと言えども、他者に手を委ねると言う経験はあまり無いものだから。冬に友達同士でどっちの手が冷たいって張り合うのにも、閨にて愛しく繋ぎ合うのとも異なるのなら】
【――強いて言えば前者の温度に近しいのかもしれない、と、思ってしまうなら、やはり少女の口角が曖昧に照れたように乱れるのも、また、道理であり】

……違います、"こうなる"ように躾けられてしまったの、首根っこを咬んで分からせる、動物同士のやり方みたいに。
分からされてしまったんです、――、私は敵わないって。それで、私はそう在りたかった私を殺してしまうの、――だから、うんと、怖い人、ですよ。

それでも、私は、好きになってしまったから……。――こんなに不安なのも、分かってるの、分かってるんです、私の家族は、焼けて死んでしまったから。
アリアさんが自分のことを燃やしてしまったときに、――――――、――……。

【生きたまま狼に食い荒らされる動物のようだった、びぐりびぐりって慄くのは助けてほしいって意思表示ではなく、もうただ死を待つだけの筋肉の反射】
【それでも脳内麻薬が絶えず弾けるのなら絶頂のたびに跳ね上がる腰の仕草に似ているのかもしれなくて、――そうして殺されたのは身体でないなら、心はもう癖になって】
【何せ二人で一人なんだから。ずうっと欠けていたものを見つけてしまったのだから。少なくとも、欠けていた"だれか"の欠片になれてしまえたのだから、】
【――包み込まれて撫ぜられる指先がかすかに震えていた。だけれど言葉の全部を出し切る前に、彼女は首を揺らして言葉を切るのだろう。それ以上は言いたくない/言えないみたいに】

――――――そうですね、そうかしんないです。ですけど、――普通の人は、両手どころか片手すら余らすほど救えるかすら、怪しくて。
理屈は、――分かります。ですけど、私には、そこまでたくさんの誰かを救いたいと言う気持ちは、――よく分からなくって。

……きっと、お優しいのだと思います。私もそんなにも優しかったなら、――なんて、

【吐き出す吐息に紛れる拙い怯えを辿られたくなくて。だから一緒くたにして空間に漏らす言葉の色合いは、どうにも茫としたもの、――分からない、だなんて、口にするから】
【それはきっと理解すら及ばぬ優しさより出でる何かなのだろうと彼女は判断したようだった。故に、自分にもその優しさがあれば、理解できたのかもしれない、と、小さく呟く】

ああ、でも――、"そちら"は、分かります。お外で読書をするのは、――私も、好きで。一定の環境の中でただ読むだけも好きですけど。
外だと、嫌でも、風も温度も光も音も、――私の管理できるものでは、ないですから。その中で、だけど、本だけ読んでいることが、楽しくて。

――――、ノートもペンも持っていないですけど、大丈夫ですか? こんなに"重たげ"な本の解説してもらうのに、手ぶらの受講は気が引けて。
ですけど――それでもよければ、そうですね、お願いしたいです。せめて出来のいい生徒みたいに、しますから。

【――それでも理解できる場所があれば、彼女はぱあと笑うのだ。日差しの中で読書は目にダメージを与えるとか本が傷むとか言われるけれど、知ったこっちゃないって】
【どこまでも世界と繋がる場所で、だのにひたすら紙面に意識を落とし続けるのを彼女も好んでいた。――だからころころ笑った表情が、相手の提案に、刹那考えるように黙る】
【相手が構わぬと言ってくれるのであれば、彼女は言葉通りに生徒役になりたがるのに違いなかった。むしろそれを望んでいると思わせた、この不思議な本に興味がないなんて、嘘だから】


432 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/19(金) 15:36:14 arusqhls0
>>418

【 、──── 前触れは無かった、けれども男の "第六感" が激しく警笛を鳴らすだろう、】
【それは同時に、男の踏み出した一歩を、続くその音色を躊躇わせる程には激しい筈だ】
【寸刻、男の眼前の地面から "鋭利な棘" が飛び出す、身長ほどはありそうな細長い棘】

【それが地面から伸びていた、数は四つ、どれも金属で出来ている様な質感を見せていた】


あら、素敵なおじさま、可憐なうさぎさんはもうとっくの昔に貴方の元から逃げ出して
それでも戯れるというのかしら、だとすれば、それはもう "ご生憎様" ────

彼女は私の "友達" よ、許可無く触れる事なんて許さないわ


【────、影が一つ、宵月から伸びて、地面へと降り注ぐ】


【彼女は路地裏を構成するビルから飛び降りると、地面へと向かう、途中空中に浮かび上がる "何か" 】
【それはコンクリートのビルから飛び出した "石片" であった、トランプを模した大きな薄いそれを、彼女は階段の様に】
【そうしてふわりと地面へと着地するだろう、少女と男の間に降り立つ様に】

【軽くウェーブのかかった金色の長髪、大きな碧眼はまだその幼さをはっきりと伝える様に】
【それでいて、背中を開いた丈の短いエプロンドレスに、包まれた胸元は大きく膨らんでみせて、少女らしからぬふくらみ】
【頭の上に乗せた黒いリボンはウサギの耳を模していて、喋る度にふわふわと揺れる】

【縞々のニーソックスに黒いパンプス、お伽噺から抜け出してきた様な可憐な少女であった】


初めましておじさま、私は錬金術師 "アリス=ファンタジア" どうぞお見知りおきを
うさぎさんを誑かす "悪い狼さん" には、どんなお仕置きが必要かしら?


【指先でちょこんと摘むスカートの裾、優雅な一礼は何処か演劇を見ているかの如く】


433 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/19(金) 15:48:18 arusqhls0
>>431

【大凡奇妙な関係性であった、それは美しい花の中で行われるおぞましい行為を見たような】
【見知った人同士のまぐわいに似ていた、猥雑さは時に淫靡を越え、時に穢れとも称されるのだから】
【彼女は一旦押し黙った、これ以上触れるには、その関係性は複雑を越えて】


【────、アリアという名前、かえでとの関係性は少なくとも彼女には刻まれたから】


ええ、構いませんわ、物事の本質を理解するのに、ノートもペンも必要在りませんもの
逆説的に言えば、ノートやペンが無ければ理解できない話であれば、それは語り手の不十分さを示し
そして同時に、演出家と脚本家の不出来を責めるのですわ、そういうしきたりですから


【一音節於いて、彼女は滔々と語り始める────、】


この哲学書は "物語風" に描かれていますの、そうですわ、ルソーの『エミール』に似たティストですの
主人公は至って普通の "能力者" で、彼には愛する家族があり、信頼する友人が居ました
そんな彼はある日 "事故" にあいます、車に乗っている際の事故、──── 直ぐさま病院に運ばれ、治療を受けます



──── 彼が次に目を覚ました時、彼は病院のベッドで寝ころんでいました、怪我の影響でまだ身体は動きません
そして "医者" がやってくるのですが、その医者は "治療をする訳でもなく、ただ彼と話す" 事しかしないのです
それも、事故の状況や怪我の具合を聞くのではなく、彼の出生や、思い出を事細かく聞き出そうとして

彼は奇妙に思います、それは明らかに "治療" ではないのですから当然ですわ、彼は抵抗します




──── そこで気付くのです、彼の持っていた "能力" が、使えなくなっている事に



【イスラフィールは僅かに音を置いた、その意味を確かめさせる様に】


434 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/19(金) 17:51:42 0ptO9i.A0
>>432

【舌打ち―――不意を打つ牽制の尖棘は、新たな役者の登壇の証】
【心底面倒そうに溜め息を吐きながら、男は降り立つ影を見た】

―――俺みたいな色男捕まえて“おじさま”呼ばわりねえ……ほんっと、最近は躾のなってねえガキが多いよなぁ?
夜中までほっつき歩いて、挙句こんな場所にまで入り込んで。そりゃあ犯罪件数も増えるってもんだ。

【ゆっくりと。立ち並ぶ棘を避けて、回り込むように歩みは再開される】
【彼女の警告を無視するがごとき振る舞い。尚も拳銃を手にしたままとなれば、敵意を感じさせるには十分すぎるか】

何をごちゃごちゃ言ってんだか知らねえが、俺が言いたいことはたった一つ。
〝てめえもあそこのブタ野郎の仲間か。〟―――――さあ、答えろよ、錬金術師とやらよ。

【視線で示す先には地に転がされた男。しかし銃口はまっすぐ彼女の額へと。トリガーは既に、半ばまで引かれていて】
【少女はただ、困惑した様子で事態を傍観していた。脳の回転が急激に展開する舞台に追いついていないらしく】
【そして撃鉄は、彼女の応えを待つ。次の言葉が、行動が、今宵の脚本を決める一手となる】


435 : アリス ◆zO7JlnSovk :2018/10/19(金) 20:18:38 /E.QxE7Y0
>>434

【銃口を向けられて尚、アリスは不敵に笑う、長い睫毛を可憐に揺らし、目の前の男をその双眸で捉えた】
【フリルに満ちたドレスが夜風に靡く、少しばかりの静寂が、風に弄ばれる布地の色合いを鮮やかに染めて】
【見ゆる碧眼は何処までも深く、想起させるはマリンブルー、希望に満ちた大海原を連想させるのだろうか】


あら、色男は可憐な乙女に銃を突きつけて? 一体どちらが犯罪件数を増やしてるのかしら
おじさまに躾を説かれる程、私は落ちぶれてはいませんしっ、その言葉もそっくりそのままお返しよ
こんな場所まで入り込ませるのは誰の責任でしょう、逃げるウサギの鳴き声が私にははっきり聞こえたんだから

──── おいでおじさま、舞踏会のマナーを教えてあげる


【地面に出現した棘が消える、それが次の攻撃の合図であった、──── アリスがすっと右手を伸ばして】
【開いた掌、大きな瞳の延長線に男の姿を捉えたなら、しなやかな指先を勢いよく閉じる】
【地面に出現したのはコンクリートで出来た大きな本であった、一杯に装飾された本が開いて、閉じるだろう】

【男の銃と腕はその軌道上にあった、このままでは閉じた本に巻き込まれるだろうか】


いいえ、そんなおじさま知らないわ、ブタ野郎だなんて "変わった名前" の御仁ね、中々聞かないもの
けれど、うさぎさんが怯えているの、それなら私が戦う十分な理由になるでしょう?



【金髪が宵月を溶かしてその色合いを強める、朝焼けに染まる一面の麦畑よりも神々しく】
【それでいて対比する様な柔肌は一層白かった、曇りひとつ無い秋の空を思わせる透明度と】
【離れていてもわかるその柔らかさ、僅かに赤みが混じった頬は触ることの出来る雲を想起させる】


436 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/19(金) 21:58:24 qXGEqLZo0
>>435

【棘の消失、そして伸ばされる腕―――そこで男は動いた。響く銃声、射出される弾丸は、しかし彼女を狙い撃たない】
【進む先にあるのは、ビルの外壁にへばりつく水道管。男の左手の指輪に青い魔力光のラインが走れば、吹き出る水は不自然な軌道で奔る】
【行く先は、現出する巨大な本。二頭の龍が如く両のページへとその身をぶつければ、閉じる動きを阻害して】

女だろうがガキだろうが、敵であれば容赦はしない―――仕事ができるのもイイ男の条件なんでな。

【僅かに生み出される攻撃の間隙。その瞬間に男は再度トリガーを引く。今度こそ、彼女の頭部へ向けた一発】
【そのまま腕を畳むならば、目の前で本が閉じるのだろう。その頃には魔力光は消え、水は何事もなかったように重力に従うのみ】

そいつの仲間じゃないんなら、そのガキ捕まえてどうするつもりだ?
―――いや、可能性はいくらでも考えられるか。人身売買か、殺人狂か、機関か、あるいはGIFTか。
どれであろうと、排除すべき存在に違いはねえ、やることは同じだ。

【尚も言葉を投げ続けるのは、単純な射撃で斃せる相手ではないという確信があるから】
【吹き出し続ける水が狭い路地を水浸しにしていく。バシャ、と、水を踏む足音が鳴って】

【しかし、彼女が真に少女を救出しようとしているならば―――何か、致命的な齟齬が生じていることに気が付くだろうか】


437 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/19(金) 22:29:55 BRNVt/Aw0
>>424

【自分自身が犬なのではなく団長の残り香なのだと主張する少年。詳しくいえば赤毛の人狼なのだと聞けば少女は、あ、そういう……と納得して】

だったら団長でも何もおかしくはないか……うん、劇団でもおかしくはないよね
【舞台に立ってたって観客は着ぐるみなんだって誤認してくれそうだし、なんて口にしながら見せられたスケッチブックに目を向ければ何やらかわいらしい生き物の絵。けど実際は怖いのだろう、と脳内補完する】


【泣きそうな顔をして突っ伏した少女。びりり、という音に何だろうと思いはするものの顔は上げず】
【そうしてなされた一つの提案。端末をかけてちょっとしたゲームをしようか、と】
【それを聞けばやっと顔を上げて】

……そういう事なら良いよ、乗ってあげる
そうだよね、身体動かした方が考えも纏まるかもしれないし、ね
【少女は立ち上がって少し身体を伸ばすと】

……あ、でも大丈夫?
【私の、こういうのなんだけど?と少女が苦笑を浮かべ片手を上げると同時に少女の手の側に直径3cm程の氷柱が一本生成され】
【それでもいいなら本気でいくけど、と真剣な表情で少年を見据える】


438 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/19(金) 23:47:25 6IlD6zzI0
>>428

【油断なんて―――している気は無かった】
【琥珀色の双眸は文月を捉えていた筈だった】

【だがその姿は消える前の陽炎の様に。先程までの姿は蜃気楼だったのか】
【一つ言える事がある。"遅れ"を取った――それ即ち、命取り】


(おい、白桜ァ!飛び退けッ!ぼさっとしてんなッ!)
――――……ッッ!!


【白桜の内に潜むもう一人。この身体本来の持ち主であるフェイは叫び】
【切捨御免されそうな身体を強引に後ろへと飛び退かせた――その甲斐あって】
【文月の放つ銀光の一閃は上着に横薙ぎの線を曳くに留まらせて、けれど戦慄】

【フェイの助けが無ければ、今頃白色のキャンパスに鮮血の華が咲いていたから】
【額に冷や汗をかき、眼を見開き、息を飲む。けれど、それはまだ始まりですらない】


(納刀……どういう心算だ?それに背を向けやがって―――ッッ!!ヤベェ!!白桜ァ!)


【"Burst Impactをブチかませ!今すぐだッ!あの花弁に向けてぶっ放せッ!!"】
【フェイは白桜の内側からけたたましく叫ぶ。人生で一番の強敵と確信したから】
【"二の太刀要らず"―――その言葉が嘘では無いと察するに時間は要しなかった】


――――……ッッ!?これが、お姉はんの"能力"…ッ!!
とても綺麗だけど、とっても厄介……っ!でも、わたしだって負けられない…っ!


【両手に握られた拳銃の効果。一つは着弾時に衝撃が発生する弾、もう一つは追尾弾】
【前者はHeaven's Rushの"Burst Impact"、後者はHell's Rushの"Hell's Arm"の効果】

【だからこそ、"Burst Impact"の効果が付与された弾丸6発全てを迫る桜刃へ放たれる】
【すると異能で作られた花弁に着弾し、そこを基点に半径1mに衝撃が発生するのだった】

【相手の追撃を抑える意図を持った迎撃だが、たった6発の弾丸では無数の刃には足りない】
【撃ち落し損ねた刃の幾つかは、飛び退きながら距離を取る白桜に届いて、血染めの華が咲く】


ぐぅッ……ッ!!……やっぱり、全部は撃ち落せない、か。
けど、やられっぱなしは性に合わない。だから――今からわたしの力を示すから…ッ!


【返す刀で"Hell's Arm"の効果が付与された弾丸3発を文月に向けて放った】
【放たれた弾丸が彼女の両足と右腕に浮び上がる花弁の模様に向かっている】
【避けたとしても、追尾の効果を持った弾丸である故に。どこかに着弾するまでは追いかけ続ける】

【能力に依存した戦い方。それは白桜の接近戦と格闘戦における不安を覗かせて】
【距離を取ろうとするのはその表れ。決意と焦燥の混じった表情はそれを物語る】
【焦燥をかき消す様に、Heaven's Rushの効果を再度付与――果たして鬼が出るか、蛇が出るか】


439 : 名無しさん :2018/10/20(土) 00:40:50 Rtvcyipo0
>>433

【ふわと彼女は一つ曖昧な吐息を漏らす。他者から見たとて複雑な間柄であるのなら、――当人からしたら、それこそ、迷宮のように入り組んでしまっている事象】
【ゆるり解きほぐすにはどうしても複雑すぎて。そうしてまた幽かな奇縁すぎるのなら。改めて解きほぐそうと思えば、ただのそれだけで散り散りに裂けてしまうって思わせて】
【だから彼女もまた押し黙る。――何せ今の彼女にとって"そのこと"は剥き出しの生傷みたいに痛みを伴う話題である、らしいから】

――――、

【落とした眼は本の表紙を撫ぜていた。あるいは指先すらも、その表紙を撫でて。手袋越しの指先では細やかな感触までもは、伝わってこないけど】
【視覚と触覚より伝わってくる本の情報に、耳より加わる、その簡素に纏められた内容を混ぜ込んで。手遊びに似る仕草は続けていた。それでもきちんと聞いている証左に】

……はい、続けてもらって、大丈夫です。

【相手が言葉を緩やかに区切るのなら、至極澄んだ青色の瞳をちらと横目に投げかけて。聞ききらぬうちに何かを尋ねるのは好まぬようであった、なら】
【露骨に意味を解せぬところはないという意味でもあるのだろう。分からぬ点はあったけれど、――それはきっと、これから先に語られることであるはずだから】

【――それでいて、何かを思い返すような目をしているのかも、しれなかった。病院の光景/どうして自分は生きているのか/能力を奪われて/神様が居ないなんて信じたくない】
【だのに終ぞ神様は私を助けてはくれなかった。今でさえも。――数秒程の想起は、おぼろげな絶望に帰結する。だから彼女はそこで思考を断ち切る。なら、】

【相手より見れば、ただの柔らかな微笑にて、彼女は続きを促すのだろう】


440 : ◆RqRnviRidE :2018/10/20(土) 00:56:04 6nyhPEAc0
>>437

うん、よかった! いい返事だ、サンキュな!
色々悩んだり考え込んだりした時は、とりあえず食って飲んで遊ぼうぜ。
生きてるうちが楽しいんだって、……これ団長の口癖なんだけど。

【良い言葉だよな、って言いながら、少女の良い返事にいっそう顔を綻ばせるだろう】
【団長に傾倒している様はどちらかというと彼の方が飼い犬のようではあったが、とかく純粋にお節介らしい】
【身体を伸ばし準備を調える少女と、彼女が生成する氷柱とを交互に目に入れれば、勝ち気に笑って──】

──へへ、モーマンタイさ! 火の国の田舎育ちをナメんなよ。
手加減なしでやるのが俺たち劇団のモットーだからな、本気で来なよ。

俺はポーツィオってんだ。 ポーツィオ=カーネ・ダ・カッチャ。
“猟犬(かりいぬ)”のポチって呼ばれてる。 だからポチでいいよ。

【「よろしくな」──簡単な自己紹介もそこそこに、ポチと名乗る少年は数歩ほど後退。 間合いをとれば油性ペンで紙に図形を描き始める】
【相手の様子を瞥見しながらではあるものの、その場から移動したり、攻撃に転じる雰囲気は未だ無い。 最初の一手は少女に託された】


441 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/20(土) 01:29:16 xA091.Kc0
>>421

【浅い。掌打に感じる手応えは不全。プライマリガードとしての役割を果たした紅色の障壁に、少なからぬ威勢を殺された一撃は】
【元より罷り違っても骨など砕ける事のない程度に加減してもいたのだから、 ─── 少女のバランスを崩すにしても不足であった】
【であれば確かに誤算であった。ごく変則的な射撃姿勢に移るまでのコンマ数秒の攻防に幾らかのデシンクが生じていた。】
【 ─── 加えて幽かなコンバット・ハイの兆候において、あるべき集中は麻痺/摩耗していた。既に少女の麻酔じみた作用を、十全に過ぎるほど身に受けていたのだから】
【青い瞠目と交わす視線の意味を理解するに、時間を要しすぎていた。 ─── そうして漸く理解した時には全てが手遅れならば】


        「 ──── ッ」


【 ─── 結ばれた口許、白磁の軋む呻き。雲耀ほど断絶する意識は然し、至近距離の交戦においては致命的な隙。】
【再形成されたリボンの須臾がどこに向かうのかを悟るのも後手であった。 ──── 影のように立つ黒い躯体が、揺らめくならば】
【不釣り合いなほど華奢な手脚を支えるように紅紫色は絡み付いて、縛り上げて、搦め取って、自由を奪う。女郎蜘蛛の籠絡に囚われた、儚い蝶々の末路に似ていた】
【振り解こうとするにしても直接に感覚と膂力を阻害されるならば、最早アリアに残された手段はなかった。取り落としたリボルバーには、撃たれぬ弾が残ったまま。】


         「 ───………… 。 」


【 ─── 暫くアリアは悶えるように踠いていたが、やがて抵抗にあたる力も妨げられてしまうのだろう。その頃には隈なく全身を縛り上げられてしまうのであれば】
【落ちかけた隻眼の瞼は紺碧の色合いを蕩けさせ、茫洋とする意識の中で喘ぐような呼吸を繰り返す。露出のないスーツさえ蔽い隠すように絡んだ紅色は】
【その拘束によって悩ましげなボディラインを却って顕にさせていた。 ─── 白い喉の蠢くたびに、雁字搦めに強調されて苦しげに膨れる胸許は、およそ肉感的で】
【顎を持ち上げる力さえも少しずつ妨げられていくのならば、せめて持ち上げる青い視線は睨むような上目遣いに似ていた。アリア自身は、ただ敗北を認めるのだとしても】

【(あるいはこのようにしていれば、あの儀式の日にアリアを殺すのも難しくはなかったのだろう。然るに今、囚われてしまった狼は、なんの疑いなく命を預けているのに)】


442 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/20(土) 01:38:12 BRNVt/Aw0
>>440

【悩んだりしたら取りあえず食べて飲んで遊ぶ……か……と少女は少年の言葉を繰り返して】

……うん、そうだよね!考え込んでるよりは何かしてた方が良いもんね、気分転換にもなるだろうし!
【根本的には……まあ……あれだけど、と苦笑と共に呟いて少女は大きく深呼吸をして】

……そうと決まったら私も本気でいくよ!
えーと……ポーチ……ポーツュ……うぅ……ごめん、言いづらい……やっぱりポチくんで……
【挑戦的な笑顔を相手に向ける……が、名前が上手く言えずだんだんとすまなそうな顔になっていき、最後には目をそらしながら相手の愛称を呼んで】

私は銀ヶ峰(しらがみね)つがる、こちらこそよろしくね?

それから……

──本気でって言ったの、後悔しないでね?
【少女が不敵な笑みを浮かべると同時に少女の周囲には先程と同じサイズの氷柱が三本、合計で四本の直径3cm程の氷柱が生成されて】
【その切っ先を相手に向け四本は両肩と両膝に飛んでいこうとする】


443 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/20(土) 01:45:08 xA091.Kc0
>>422


「条件次第だ。身の程も知らず吹っかけてくるようなら、談判破裂して暴力の出る幕さ」
「"子曰く、理非なき時は鼓を鳴らし攻めて可なり" ─── 昔の人は良いこと言ったもんだよ。」


【一言も淀みなくミレーユは言ってのけていた。相違なく世間話の距離感であった。然して対する相手の強大さを知っているならば】
【飽くまでもそれは断固たる姿勢の表象でしかないのだろうとも思わせた。 ─── 銃と圧力を旨とする交渉組織だとしても】
【切り返されるライガの言葉には些か驚いたようでもあったが、直ぐにそいつは不敵に笑い返してみせた。ならば信頼の証であった】


「ライガ君が守ってくれるなら頼もしいね。 ─── 後藤さん出す訳にもいかないし」
「でも、カゲツと組むのは ─── ヤだな。呼ぶとするなら、アリアがいいけど」
「アイツは本当におっかないからねえ。 ……… いつドンパチおっ始めるか、分かったモノじゃない」


【ふたたび漏らすのは嘆息である。「なるべく穏便に済ませたいなら、ボクとキミの2人で行くのが賢明かなあ。」】
【 ─── 思い出すような口ぶりであった。白坂佳月という少女にせよ、アリアという女にせよ、仕事仲以上の因縁を持ち合わせているらしい】
【ことアリアにおいては、時折親しげな悪態を交えて2人きりで言葉を交わす姿も見せていた。「 ……… 古傷を痛ませないためにも。」畢竟最後の判断は、ライガに委ねられるとしても】


444 : 名無しさん :2018/10/20(土) 02:08:15 Rtvcyipo0
>>441

【――――はあっ、と、荒い息が漏れた。どきどきと荒ぶる鼓動がひどく煩く聞こえて、煩わしく思いかけて、微かに揺らす首の仕草は、長い髪を千々に乱して】
【薄い手ごたえに足らぬ衝撃でも、そうだとしても、彼女は結局お尻から転んでいた、投げ出さざるを得なくなった足元は、すっかりともとよりの白さをさらけ出すなら】
【その全体に薄く残った火傷のような、一度肉を散り散りにされたような傷跡が生娘の薄化粧のように彩るのだろう。そうして乱れる息を、簡素な咳払いに治めてしまえば】
【それからやがて/ようやく少女は立ち上がるんだろう。なにもいわなかった。ただ睨むような上目遣いを、互いに満足するまで、そのままにして】

【(こうすればよかったんだ)】

【――何事かを考えるように彼女は蛇の指先にて自身の口元を隠していた。故に見下ろす目つきはいやに冷たく見える気がするのかも、しれず】
【だけれど興奮にか赤らむ頬と荒い息に上下する胸元を見るに、何かを気遣う余裕というものを一時見失っているだけであるらしかった、なんせ、殺す必要はないから】
【もしも相手を殺してしまう可能性があったとして、――それはまあ違いなくあの儀式の日に潰えて、それきり、二度とあり得ぬ可能性であるのだろう。それならば】

――アリアさんつーかまえたっ、……もう、そんな目、しないでくださいよぉ、ふえぇんって、泣いちゃいます、よ?
まあ、今の感じで、ニコニコされたりしても、それはそれで怖いですけど。――私の勝ちです。ふふっ、勝っちゃった。

【口元より指先を退かした少女はかすかに眉を下げていた、ごくごく短い距離、数歩分をひどく緩やかに歩み詰めるのなら】
【相手の取り落とした銃を途中で拾い上げるのだろう。そうしてその手ごと背中に組んだなら、甘やかに笑って顔を覗き込む、ひどく甘えたな子供のような、声にて】
【とうにセーフティをかけた銃口を向ける、あくまで自分が勝ったという言葉を述べるための行為であったなら、改めて彼女は自分の足元に、置き直し】

アリアさん、だいじょうぶ? "それ"は、まあ、すぐ、抜けると思いますけど――。腕のところ。見してください、腕の……。……。

【――そうして再びに目を向けるなら、マゼンタの拘束は、それこそ意識ある蛇のように、そろりと相手の身体より離れ行くのだろう、なれば、感覚は遅れて舞い戻るはず】
【冷ややかな麻酔の作用に浸されるのなら、伸ばされる手ですら熱く思うのかもしれなかった。転ばぬように支えてやろうとして、そのまま床に座らそうとしてやる、けれど】
【そのまま完全に体重をかけられてしまうなら、二人ともども転んでしまうんだろう。うまく行っても行かなくっても、彼女は先ほどの傷口を心配していたし、】
【なんならいっそ数秒ほどは見惚れるように黙りすらするのだった。――きっと相手にしてみれば苦しいのだろうけれど、それでも、それが、それこそが、ひどく、艶めかしく、思えて】


445 : ◆RqRnviRidE :2018/10/20(土) 02:51:42 6nyhPEAc0
>>442

【少女がちょっぴりでもやる気の出てくれたのを見つめながら、うんうんと嬉しげに頷いて】
【差し向けられた挑戦的な笑顔と対峙する少年は、自信と余裕たっぷりの表情を湛えて応えるだろう】
【呼び名において彼女がやや萎縮ぎみになっても、悪戯っぽく笑うだけで相も変わらず気丈夫なよう】


ああ! よろしく、つがる!
心配ご無用、後悔なんてしないし、させたりはしないよ。

だから、っ────


【氷柱の生成が成されると共に、紙面上の図形の描画が完了する。 裏面は白紙のまま透けてさえ見えぬ状態で】
【描き終えた一枚を、相手へ投げ渡すように空中に放り投げるだろう。 ひらり宙を舞い、風に流されくるりと表を少女に覗かせれば】


──……楽しもう、ぜ!!


【そこには大振りな“ひし形の連なり”────俗に言う『アーガイル柄』が描かれていた】
【紙は主線に沿って分離し、形を変え、“細長く鋭利な八面体の棘”と相成る。 数は4つ、さほど大きくはない。 氷柱のイミテーションと言ったところか】
【四本の棘は氷柱とすれ違うようにして、少女の斜め中空から降り注ぐように直線的に射出される。 紙ゆえに耐久性には欠けるが、いずれも先端は尖鋭だ】

【そうしてポチはつがるの放った氷柱をサイドステップで回避する。 身のこなしこそ軽やかだが、ギリギリ掠めない──そんなタイミングで】
【相手に対してやや半身になりつつ、目線は少女へ、手元は再描画を始める。 ──彼のそのペン先を追いかけたなら分かるだろうか、】
【次になぞられていくのは『亀甲模様』──先ほど見せた犬のイラストとは打って変わって、描かれるパターンの線がひどく正確だと言うことに】


446 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/20(土) 09:44:01 6.kk0qdE0
>>443
「論語、ですね……正義の為ならば派手な暴力行使とて罪では無い、八課の、理念ですね……」

【ここで再び、深呼吸して、そして気持ちを整える】
【相手が誰であろうが、その姿勢は変わらない、それが我々外務八課なのだから】

「お二人の事、随分と良く知っているんですねミレーユさんは」

【佳月に対するニュアンスもさる事ながら、やはりアリアに対しては、かなり親しげな様子が伺える】
【それは普段の現場での働きもそうだ、ライガには何か特別な関係に見える】

「わかりました、ミレーユさん」

【ここで、その不敵な笑みに同じく不敵に笑いながら】

「2人で行きましょう、ミレーユさんの身は命に代えても守り抜きます」

【風が2人の間を駆け抜けて……】

「ミレーユさん、それと、申し上げ難いのですが」
「昼休みの時間、もうとっくに終わってたみたいです……」

【腕時計を見せながら、バツが悪そうにこう言った】


447 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/20(土) 10:18:22 6.kk0qdE0
ーー櫻国、魔導海軍静ヶ崎鎮守府ーー

【魔導海軍の軍港が置かれる静ヶ崎の街】
【この街の中心部とは、連合艦隊司令部、即ち鎮守府である事は言うまでもない】
【旗艦大和の母港であり、中核主力を担う艦隊艦船が繫留されている】
【造船所や研究開発施設もこの街に多くが置かれ、また基地航空隊、補給隊から主計、軍学校もこの街を中心に整えられている】

【季節は秋であった】
【連合艦隊司令長官、土御門晴峰元帥が病に倒れ急遽としその座に収まったのは、蘆屋道賢海軍大将であった】
【急場の処理や配置換え、昇降格に上へ下への混乱が続く静ヶ崎鎮守府では、この日この動乱に隠れるかの様に、各鎮守府長官、並びに艦隊、部隊司令クラスが緊急招集された】
【無論、この招集、曹兵は愚か大佐クラス以下の士官にすら隠された内密な集会である】


ーー静ヶ崎鎮守府、参謀本部ーー

「して、蘆屋司令長官殿、本日この場に我らを集めたのは如何様な要件か?」

【上品な照明以外は、一つの窓からの光のみが光源となる作戦立案室】
【通常は艦隊の中心を担う将官佐官達の会議室である】
【其処には、一様に品の良い海軍制服に身を包んだ高級士官が顔を揃えて居た】
【沈黙を破る様に、重厚な声が一つ】
【それは、この集まりの中心にいる、その一際若さが目立つ将官へと向けられていた】

「まあまあ、駆逐艦隊総指揮官殿、答えを焦るのは良い事ではない」

【しゃらりと、長く艶のある白髪を掻き整えてその若い年の頃は30そこそこであろうか、将官は声を発して、質問主を諌めた、余裕のある然し乍ら抑揚無き冷たい声】
【鋭くも、また等しく冷たい双眸は会話相手やこの場の将校達では無く対角線上の重厚な木の扉を見据えながら】

「話しておかなければいけない事が、いや違う、違うなぁ……宣言しておかねばならない事が一つ、ただそれを話すには何とも役者不足なきがしてねぇ」

【この男こそ、魔導海軍連合艦隊司令長官、蘆屋道賢海軍大将である】



//予約です


448 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/20(土) 12:56:33 BRNVt/Aw0
>>445

【宙に舞った一枚の紙。表が見えればそれは形を変えて】

【形成された四つの棘、斜め中空から降るそれらを後方に飛んで素早くかわす】
【先程少年に驚いて飛び上がった時もそうだったのだが、普通の少女にしては身体能力がいささか高い気がする、という事が判るだろうか?まるで──人ではないみたいに】

【足をつくと同時に今度は直径5cm程の氷柱を二本、自分の両脇に生成し】
【右手の中にもう一本、直径3cm程度のものを作り上げればそちらは何処に狙いを定めるでもなく相手の方へ投擲する】
【何を描いているかまでは分からないものの何かを描いているのならば追撃がくる、と予想したのだろう。両脇に生成した二本は恐らくそれを迎え撃つ為に設置されたものと推測出来る】


449 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/20(土) 14:38:41 smh2z7gk0
>>425

【ロールシャッハの口から人間の文学の名が出されれば「意外だね」とポツリ呟くが】
【こめかみに人差し指と中指を添えるような仕草をして、「いや、そうか」と何かを納得したように続ける】

ふ、まぁそうだろうね。―――『動物牧場』。私は「一九八四年」派だが今の〝某国〟の人々に読み聞かせたい一冊だね。
本、物語というのは空想であろうとなかろうと素晴らしい。
今の現実を打開するにはそうした物語の中にあるという事を知らない人々が多いのは残念ではあるが。

―――私もそう思う。〝某国〟にて行われている法案、その根底にあるのは大衆の〝恐怖〟であり〝不安〟だ
知らぬもの、自身が受け入れられぬもの、そうしたものを拒絶する反応は本来防衛機構として人に備わっているが
インターネットなどの伝達技術が発展するにつれて〝イデオロギーの免疫疾患〟を起こしている感覚を私は覚える。


―――〝すべてを裏で操る黒幕〟―――そんな都合の良いものが本当にあるのだろうか?
仮にあるとしても、それは大衆の不安を受けて無意識に生み出された〝生贄〟であるとも感じられる。


【そういいながらマリアベルはじっとロールシャッハへと視線を向ける。それは問いかけかそれとも―――】
【そして「いや、この場合は『一九八四年』の〝政府〟とりわけ〝平和省〟と〝真理省〟におきかえた方が認識しやすいか?」】
【などと独り言を呟くが、一度大きく咳ばらいをしてロールシャッハを見つめ仕切り直す。】

〝牧場主〟―――ちがうな、〝ナポレオン〟か?
まぁそういう事であれば私はその観測の担い手として正しく役割を全うしよう、愛すべき〝恐怖〟に敬意を表して。

もし他に必要な配役があるのであれば協力するよ、それは私が〝貴方達〟への見識を深めるのにも繋がる。

【ほぼマリアベルのスタンスは確定しつつあった。但しそれは人類に対しての大きな反逆であり真なる意味での愛情でもあった。】

成程。当てはめられた数字に基づく〝意味〟によって存在が固着されるわけか。
やはりそこは慎重にする必要がありそうだ―――成程、私の計劃に沿っている。
既に〝伝達〟は開始している、ちょうどここに来る前にも行ってきたところさ。

………実は、〝器〟は既に用意をしているんだ―――いや、逆と言うべきだろうか。
ただそれをここで披露するのはいくら〝狭間の領域〟で〝貴方/虚神〟相手だろうとリスクがあるね
〝誰か〟が〝のぞき見〟しているとも限らないのだから。

【随分と手際のよい事だった。最近になってようやく〝グランギニョル〟という存在を認識したにも関わらず】
【あるいは―――そうあるいは、元より行う予定でその〝方法〟だけを模索していたのだとしたら―――。】
【ロールシャッハの言葉にマリアベルは再び頬を綻ばせる。それは純朴な少女のようにも見えた】

いやはやお恥ずかしい。物の捉え方も含めて貴方にはいろいろなものを教授頂きたいよ。
確かにそう、〝軸〟が異なるのみ。だが人間というのはどうしても〝隣の芝〟が尊く見えてしまうんだ

―――ああ、〝外宇宙の神話生物〟に対して当然ながら私は全容を把握しているわけではない
あくまでのひと掬い、私の目的であり狩の対象は一柱のみだ。それの話をしよう。

それの名は………そうだな〝鐔э秀鐔・終〟、む、これでは正しく認識されないかじゃあ〝繝サ遐皮ゥカ〟
―――これもダメ。それじゃあ、〝ムンドゥス〟。よし、そう〝ムンドゥス〟という名を持つ存在。

その話をさせてもらうとしようか。

【奇妙な光景だった、まるでマリアベルの放つ言葉を世界が拒絶するかのような騒音のような音律。】
【テレビの中で放送禁止の用語を言ったようなエラーを何回か起こしながら、まりあべるはその存在の名を口にする】
【それと同時、二つの存在が対話する赤い花畑の浮島、その周囲に浮遊する黒い12の巨大石板がゆっくりと回転を開始する】


450 : 名無しさん :2018/10/20(土) 16:30:40 vmfTiZIg0
>>400
お茶菓子ですまない程にヘビーなことになりそうだけど?

【タマキはそうやってニヤニヤと笑っていた。自分が持ち込んだネタがどれほど大きい意味を持つかは】
【この場にいる全員が知ってそうなものだったが、そうやって軽口を叩くのが彼女の性格だ】

あいっかわらず、義体組は荒っぽいねぇ。命と予算は限りがあるって教えてあるの?
義体化するとMっけでも出るのかね。

【茶化すのも彼女の性格でもあるが、そういった義体かのようなロボテクスを好き好んでいない】
【だから、だいたいこういった話題のときは少し嫌味が数%含まれていた】

んーとね。数日以内にってことだったよ。そりゃゴトーさん出張だったら意味ないしね。
じゃ、まあ明後日ぐらいに来てもらうとしますか。こっちも準備しとかないと
それに…あーっと。来るのは代理人なんだよね。だから

【ここに来てタマキは苦笑いをして、頭を掻いた。】

ゴトーさん、一番いいシャツとネクタイ出したほうがいいよ。ぴしっとしたやつ
それとここも少し掃除したほうがいいかも!だって来るのは―――――

【それから指定された数日後同じ場所にて】

――――――お初にお目にかかります。初瀬麻季音の代理人である、富嶽会二代目筆頭
会長を務めさせていただいております、霧崎舞衣と申します。
この度は貴重なお時間をいただきまして、誠に恐れ入ります。

【そこにいたのは長い黒髪をなびかせ、切れ長のナイフのような目つきをした銀物の眼鏡の女性】
【スーツ姿で背は高く、いわゆる大和撫子といったところだが腰には朱に塗られた鞘の刀があった】
【手土産は桜の国創業300年の菓子屋のひとつつみでそれだけで値段はタマキの3日分はある】

【駐車場に停められている彼女の車は誰もが知る跳ね馬のエンブレムの真っ赤なスポーツカー】
【今年発売の最新モデルのフラッグシップでしかもそれを更にチューンナップしてある】
【その値段たるや想像もつかない。生半可な小金持ち程度では乗りこなすのは難しい一品だった】

「まっ、じゃあその、そろそろ会議室の方にでも…地下の一番いいとこで」

『一番良い』とは?

「あっ…その、セキュリティとか、です。」

それは…素晴らしいですね。お気遣い痛み入ります。

【タマキはいつもどおりのTシャツ姿だったがプリントされているのはアーティストの顔で】
【ラブアンドピースを歌った男の姿だった。顔も緊張気味だ。なぜならば富嶽会は世界的に有名な】
【マフィア組織でもあり、いわゆるヤクザものであり、抗争では戦車をつかうようなやつらという噂もある】


「じゃ、ゴトーさんあとのことは…」

いえ、課員の皆様におかれましてぜひご出席の程を…

「はっ、はい」


451 : マリアベル :2018/10/20(土) 18:59:56 N8gKPByM0
>>449
//痛恨のミス…!
//「動物牧場」→「動物農場」に修正です


452 : アルク=ワードナール ◆auPC5auEAk :2018/10/20(土) 22:52:28 ZCHlt7mo0
>>331

――――それは、夕月の弱さ、という事ではないのでしょう……
恐らく、「それだけの残虐な仕打ち」を、ロールシャッハを初めとした虚神達は……あるいは、そんな過去を生み出した人間たちは、行ってきたんだ……
逆に言うなら……ケアさえ十全に行えれば、夕月はきっと……元の力を取り戻してくれるはずです
……今のところ、手前はそんなに悲観してはいません……どうあれ、彼女は虚神化せずに済んだのですから……

【マリアの表情に陰が差したのを見て、その胸中を察したのだろう。アルクが小さく付言する】
【アルクの目から見て、夕月はそんなに心の弱い人間とは見えなかった。だからこそ、そこまで追いつめられた事に憤りを感じるが】
【同時に、だからこそ夕月はまだ、復調できるチャンスを残している――――それがアルクの見立てだった】
【少なくとも、ソニア――――『エカチェリーナ』とは違い、彼女は一線を越えずに済んだのだから】

【――――まさか自分の死が、夕月の中に、生きる事を繋ぐ『爪痕』の1つとして残っていたとは、露知らず】

――――手前も、思いませんでしたよ。まさか、レグルスの奴以外に、しかも1度会っただけの夕月に……あんなに、気持ちを昂らせて「何とかしよう」なんて思うなんて……
多分……手前が「生きよう。生きて何かを成そう」と、そう……無意識のレベルでまで思えたからこそ、あんなに、戦えたんだと思います……
翻って考えれば……手前は、レグルスの一件があるまで、そんなに生きる事に興味がなかったのかもしれない……
手前に、生きて、何かを成す事を、教えてくれたのは……マリアさん、あなたです……

【――――後にレグルスは「死神に魅入られていた」とすら評した、アルクの、夕月救出に向けた激情】
【例え、個人的な主義に反する暴虐が、夕月を襲った事を知ったからと言って、命を投げ出す程に執着して戦うのは、以前のアルクにはあり得なかっただろう】
【生きて戦い、そこに意味を見出す事。それはレグルスの蘇生を引き受けてくれたマリアの姿があって――――『桜』の言葉を交わしたマリアの姿があったからだ】
【――――この場合、『死』は『結果』に過ぎない。その生き様は、正にアルクを生かしめていたのだろう】

……改めて言うのも、気恥ずかしいですが…………――――――――ありがとう、マリアさん……手前は、あなたのおかげで「生きる/活きる」事ができた……

【今生の別れと言う場面に相応しくないような、照れた表情でそっぽを向きながら、アルクは霊体の帽子をちょっと調整してまで顔を隠し、感謝の言葉を口にする】
【そこには確かに、重苦しい別れの感情は相応しくない。アルクの照れくさそうな笑みは、それを雄弁に物語っていた――――或いは、死の間際だからこその表情だろうか】

――――そして、すみません……最後の一件ですが……
……今更言うのも、変かもしれませんが……どうか……どうか、レグルスの事を、よろしくお願いしたいのです……
――――手前も、死の間際、もう1つの霊体をレグルスの下に飛ばしています……奴が、人の話も聞けないほどに錯乱などしなければ……聞くでしょう、ソニアの事を……
あいつ……相当に追い詰められてしまう筈です。それこそ……「ソニアを殺して自分も死のう」などと、考えるくらいには……
元より、「ソニアを元に戻す」と息巻いて、何度か本当に死にかけるほどに、己を追い込み、鍛錬に明け暮れていました……
それも……あいつの生き方です。ですが……もし、答えも決着も出せないまま死ぬような事があれば……――――そんな犬死は、流石に相棒として……ッ

――――我儘だという事は、重々承知しています。それに、何度も人の手を煩わせるあいつには、相棒として情けない限りでもあります……
……それでも、どうか……ほんの少しで構いません、レグルスを……支えてやってくれませんか…………ッ?

【死に際しての3つの伝言。その最後は――――ある意味当然かもしれない、レグルスについての事だった】
【ソニアの事を気に病んで、最後の引き金を引かされてしまったアルクだが、当然に、その事実が最も重くのしかかるのは、レグルスの方だ】
【救うにせよ、殺すにせよ――――ソニアの事を割り切って生きるにせよ、ソニアの事を慮って死ぬにせよ――――中途半端なままでは、終わらせたくない】
【それを、マリアに頼みたいと、アルクは深々と頭を下げる。そうした形で、人を支えてやれるのは、アルクの知る限り、マリアだけなのだろう――――】

/すみません、気づくのが物凄く遅れてしまいました……orz


453 : ◆RqRnviRidE :2018/10/20(土) 23:29:12 6nyhPEAc0
>>448

【回避されたことにより棘は地面へ衝突し、細かい紙片となり、花弁のごとくほどけて散る】
【少年の能力は描いた媒体の強度に依存し、一定の衝撃で形状を維持できなくなるようであった】
【彼が用いたのはあくまでも紙に過ぎず、対して少女の力は氷である。 どちらが有利であるかは一目瞭然だったことだろう】

おっ、スゲ…………やるじゃんつがる──身軽だね、まるで猫みたいだ。
うちに≪曲芸師/アクロバット≫の役柄があればスカウトしてたかもなぁ──

【それでも少年は愉快げに笑みを溢す。 後方へと退く少女の軽やかさ/しなやかさに感服して、冗談半分にそんな軽口をひとつ】
【図形を描き終えるや、ポチは図形を相手に見せびらかすみたいに紙を前面へ突き出し、投擲された氷柱の進路を塞ぐ】
【描かれたパターンは『亀甲模様』が7つ、丁度その中央のひとつに迫り来る氷柱が刺さる、──深く刺されど塞き止める】



────、なんてなっ、ほら! 返すぜ受け取れよな!


【そうして氷柱が刺さったままの紙を、フライングディスクの要領で回転させて放り投げるだろう】
【勢いのついたそれは一枚の状態でつがるへと肉薄し、ある程度接近したその時にようやく『七つの六角形』へ分離する】

【ひとつ、氷柱の突き刺さったものは少女の胴体へ追撃を繰り出し】
【よっつ、両脇の氷柱二本の迎撃を防ぐ為、ふたつずつ叩き付けんとし】
【更にふたつは少女の両肩を狙い、ぶつかることでバランスを奪おうとする】

【六角形状の紙は少しばかりではあるが硬めに仕上げられている。 なるほど文字通り亀甲、ということらしい】

【少年は不用意に近付こうとはしない。 ミドル─ロングレンジから質量に物を言わせて戦うのが彼のやり方ゆえに】
【そして、おそろしく素早く正確なパターンの描画がある限り、追撃の手は止まないだろう】
【既に次の段階の描画に取り掛かっている。 けれど描画中はどうしたって隙が生まれてしまう──】
【──今この瞬間、彼を守るものは彼自身の反射神経と身軽さしかないのだから】


454 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/21(日) 00:00:59 BRNVt/Aw0
>>453

猫みたい、ね……
ふふっ、本当に猫人間、だったりして?
【相手の言葉に少し気分を良くしたのかフッと笑い、みゃーお、なんて鳴き真似も添えてみせるつがる。結構調子に乗ってしまうタイプのようで】
【氷柱を受け止めた紙を見て、あれ?案外あの紙硬いのかな、なんて目を丸くしたのも束の間】
【氷柱が刺さった紙が宙に舞えば何か仕掛けてくると察して浮遊させた氷柱の一方を差し向けようとする、のだが──】

え、ちょ……今度はそういう!?
【分離した七つの亀甲状の紙片。差し向けた氷柱は二枚によって明後日の方へ飛んでいき、ならばと放ったもう一本の氷柱も同じように別の二枚に飛ばされる】
【氷柱の刺さった一枚をなんとか避けようとするもそちらは右脇腹を掠り、おまけとばかりに右肩に亀甲の一枚が当たり少女の身体は左後方へとバランスを崩して】

ああもう!厄介!
【左手でキャスケットを押さえつつ右手の指の間に三本、直径1cm程の細い、先端の丸まった氷柱を生成すれば】

数打ちゃ……当たれっ!
【妙な掛け声と共にポチの手元へと向けてそれを投げて】


455 : ◆RqRnviRidE :2018/10/21(日) 08:06:04 6nyhPEAc0
>>454

っふはは、……人猫ってやつ? かわいいじゃん。
つがるはそーやって笑ってた方が似合うよ。

【みゃあお、と鳴き真似にポチは琥珀色の目を細めて笑む──その褒め言葉には多分、他意はなくって】
【模擬戦とはいえ、交戦中にもかかわらず軽口を叩ける程度には余裕があるようで。 手元で描画を進めながら愉しそうに笑っている】

…………っと、やべ、──っ

【──が、幾らか油断していたよう。 言葉の端に若干の焦りを窺わせる】
【つがるが丸みを帯びた三本の氷柱を投擲すると同時に図形を描き終え、自身を守るようにして紙の表を見せるだろう】
【今回描き上げたのは縦4×横3の『市松模様』 六ヶ所の白い正方形が“ぐにゃり”歪んで──立方体の柱と相成り前方へ一気に伸びる!】
【バランスを崩した少女の転倒を狙うものだろう。 軌道は直線的で捉えやすく、また紙ゆえに破壊だって容易いことだ】

【放られた三つの氷柱はその隙間を縫うようにして、伸長しなかった黒い正方形の部分に収まるような形となる】
【故に破壊は為されない。 ──それらは紙一枚挟んで、“ポチの手元に残ったまま”となるのだ】


456 : アリス ◆zO7JlnSovk :2018/10/21(日) 09:32:49 S/DUh6T.0
>>436

【──── 銃声、アリスの碧眼が捉えるのは、迸る水流の残影、そして踊り狂う一対の龍】
【左手の指輪に宿る煌めきを彼女は見つける、水に関する能力であろうか、だとすれば応用は広く】
【弾ける飛沫が宵月を浴びて輝く、夜に広げた星屑の様な瞬きに、彼女は光のシャワーを浴びる】


っ……こんな可憐な女の子に銃ぶっぱなして、イイ男もへったくれもないと思うんだけどっ
あぁ、もう水浸しじゃない、このパンプスお気に入りなのに、ダメになったら責任とってくださる?
新品のドレスと一緒に、おじさまの家に請求しなきゃいけないわ


【アリスが右手を軽く振り上げると、足元の水が吹き上がり、一陣の弧を描く、そしてその先端にはティーポットを象って】
【ある種の彫刻の様に水を作り替える、幻想的な光景を描きつつ、水流を以てして銃弾を防ぐ】
【──── "錬金術" とは言い得て妙で、金属から水まで操作できる範囲は幅広い様だ】

【また男ならば気付けるだろうか、アリスの操作は水をそのまま操作するのではなく、瞬時に分解と再構築する事によって作られていると】


…………はぁ、おじさまの頭の中を一回確認してみたいわ、なんでそんな選択肢しかないの?
それとも私って傍から見たら、人身売買をする殺人狂とか機関のエージェントとかに見えるのかしら
答えは全部外れ、おじさまには残念だけどヒトを見る目は無さそうね

──── 助けに来たのよ、はぐれたうさぎさんを、群れに返すためにね


【続く男の言葉に大きく目を見開いて、抗議する様に頬を膨らませる、白地に混ざる朱は桃色に近い】
【そうして着くのはため息、軽く腰に手を当てて掌を空に向けた、頭が痛いと言いたげに目を閉じて】
【次に開いたならその目には決意、彼女は彼女なりの意志を持って人助けに来たのだと】

【──── 少女はまだ齟齬に気づいてはいない、目の前の男に対する警戒故か】


457 : 文月 ◆zO7JlnSovk :2018/10/21(日) 10:04:50 S/DUh6T.0
>>438

【白桜に背中を向けた文月へと銃弾が迫る、視界の端で彼女はその軌道を捉えて、──── ほんの少し頬を緩めた】
【戦いの中に於ける高揚感、或いは妹の持つ強さに対する喜び、そして何より】
【その身に残る可能性を幾重にも追い続ける、そんな快楽に身を窶すに似た】


生半可な思いやと、うちの間合いには入られへん、白桜はんかてそれは変わらんどす
触れる側から切り刻む、剣士の切っ先が届く範囲がうちらの世界やとしたら


──── 何びとたりとも、世界を穢す事は許されへんさかいに


【桜の花弁が重なり合って、それは無数の桜色で出来た "線" へと昇華する、触れるものを切り裂く刃の "線" 】
【それは彼女の周囲を取り囲む、大量の線は混じり合い絡まり合い包んでいく】
【ある種繭に似ていた、刃で出来た繭は飛来する銃弾を容易に切り裂いて】


【──── 寸刻、繭が解かれたなら既に文月は振り向いていた】



まだまだへばらんといておくれやす、うちも楽しくなってきたところやさかい、──── !!



【再びの疾走、刀の一つに指をかけて白桜の元へと接近を試みる、そして、──── 】
【幽玄の様に解かれた繭が彼女の周囲を取り囲む、纏う闘気を可視化したかの如く桜色艶やかに】
【煥発する才気の具現化でもあった、触れるものを切り刻む桜を纏いながら、彼女は走る】


458 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/21(日) 12:09:20 AXIgZspc0
>>407-414

【霧崎はここが記憶の中だって言うことは少女からそう言われなければわからなかっただろう】
【それぐらいここは夢よりはリアルで現実よりは朧気であった。そう言われてみて確かに記憶のようだった】

【他人の記憶の中であっても、そこがどこであっても彼女は何が着てもいいようにわずかに体を怖ばせていた】
【恐怖心はない。そんなものはとっくの昔に置いてきた。はずだった】
【だがその恐怖は向けられた銃口、恫喝、武力に対してモノで未来に対しては自分は何ら無力なままだった】

【だからこそ】


怖がらなくていい。…私はここに居る
母ほど優しくはないだろうけど

【そう、手を差し出すのだ】

【暗い記憶の奥底で私達は目を開ける。2Q36年行きのスロウ・ボートに乗って】


459 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/21(日) 12:09:42 AXIgZspc0
>>407-414


【――――もう純粋なマルボロにありつけたのはいつが最後だろうか】
【今じゃ鉛筆の削りかすみたいな三級品がやっとでそれも手に入りづらい世の中だ】
【異常な世界のストレスは工場で生産される化学式が見せる幻想で紛らわせるのがセオリーだ】
【そのほうが国家の言うところである福祉として――いいや利益としてまっとうだからだろう】
【酒もタバコもレコードも、古き良き時代は塗りつぶされ、化学物質とアルゴリズムが支配していた】

【正気は狂気に取って代わられた。もはや世界は狂っていないほうがおかしい。】

いつまで経っても、人殺しは好きになれないな…。

【そう言って俺は髪の毛を掻いた。昔より伸びた上には見るからに白髪も増えてしまった。顎に伸ばしたヒゲも同じだ】
【つばの広いハットで目元を隠す。サングラスもかけてるが昔とだいぶ理由も変わっちまった。】
【服装はまあ、変わらない。廃墟だらけのこの世界では砂埃を避けるコートは必需品だし、本皮は手入れをすれば一生着られる】
【変わったことは服も、オレもだいぶくたびれちまったってことぐらいだ】


わかっただろ。此処はリビングデッド以下のクソッタレしか居ない。家に帰れ。


【安い両切りの葉っぱとともに言葉を吐き捨てる。正義を気取りたくない。俺は正義でもなんでもないからだ】
【撃っても撃たなくても気分が悪い。永遠に晴れることのない曇天。この場を立ち去るために歩き出した】
【なぜなら俺は―――】

【俺は、麻季音も誰も、救えなかったからだ】


460 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/10/21(日) 16:52:32 S/DUh6T.0
>>439

【イスラフィールは寸刻間を置いて続ける、先程までの柔和さと違い、どこか有無を言わさぬ圧迫感があって】
【少しの威圧をかえでに与えるのだろうか、けれどもそれは進むことを余儀なくされた様に】
【────、立ち止まる事を許さないいくつかの狂奔に似ていた、】


『────、くそ! アンタらは一体俺に何をしたんだ! 能力が何故使えない!』
「落ち着いて下さい、貴女は使えないニンゲンなんかじゃありませんから、どうか」

『これが落ち着いていられるか! さてはアンタ、機関のニンゲンだろう!? 俺の命を狙ってるんだ!』
「機関? 機関とは何の機関でしょうか、我々が医療機関のニンゲンであるのは確かですが……」

『何惚けてるんだ!? 機関といえばカノッサに決まってるだろう!?』
「…………あまり良く分かりませんが、外国にその様な地名がある事は知っています、その土地に行ったことが?」

『土地!? ──── ああ、くそ、そういう魂胆か、俺を騙そうとしているんだな、そうなんだろ?』
「そういう訳ではありません、私はただ、貴女がどうなってしまったのかを知りたいだけです」


【会話文を読み上げる、徹底的に噛み合わない二人の会話であった、そして同時に奇妙でさえあった】
【主人公は明らかに機関を知っている、けれども相対している医師はそれを知らず】
【────、挙句の果てにカノッサを知名とすら表現しているのだから】


「……取り敢えず落ち着きましょう、今の貴女に必要なのは十分な休養と適切な治療です」
『これが落ち着いていられるか! おい! お前、俺の家族はどうした! 妻と、娘と、…………奴らに手を出したら!』

「──── 落ち着いてください、貴女に家族など居ません、少なくとも私の知る限りは、貴女は独身の筈です」
『何ふざけた事を言ってる!? 俺は騙されないぞ! だって────』

「では、貴女はその妻の名前を言えますか? 娘の名前は? 生年月日は? ──── 娘が産まれた日の事を忘れる事なんて出来ないはずです」
『…………!! ち、ちがう、……これは、アンタらの記憶操作か何かだ!』


『──── このまま俺を閉じ込めていられると思うなよ、[削除済]の手にかかれば、俺を助け出す事ぐらい……!!』
「[削除済]とは一体誰の事ですか? 貴女の知り合いですか?」

『俺の親友だ、どんな時も俺を支えてくれる頼りになる奴だ、アイツと連絡さえ取れれば────』
「…………いいですか、落ち着いて下さい、落ち着いて聞いて下さい、[削除済]とは、[削除済]とは、────」


「──── 私の名前です、ほら此処にも書いているでしょう?」
『──── !!!! っ……!! そんな、ありえな……』

「落ち着いて、ゆっくりと呼吸をして、貴女に家族はいません、妻なんて存在する筈がない、貴女自身がそれを一番知っているでしょう?」
『俺、俺が───っ、違う、俺じゃなくて、……私が?』

「貴女には治療が必要なんです、ただ今少し混乱しているだけです、貴女は能力者等ではなくただのニンゲンなんです」
『────っ、う、嘘よ、……いやよ、そんなの、信じないっ……!!』

「どうか落ち着いて、辛くても受け入れなければいけないんです、機関も新世界も、能力者も、全て貴女の生み出した幻想です」
『何を! 何を言ってるの!? 貴方正気!? ふざけないで! 貴方じゃ話にならないわ、早く呼んで頂戴! この病院の院長を────!!』









「──────── 院長は、貴女ですよ」


461 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/21(日) 22:30:15 BRNVt/Aw0
>>455

……はっ!?か、かわ……っ、え……!?
か……っ、からかうの禁止っ!!
【かわいい、などと軽口をたたかれ、言われなれてないのか一気に顔が赤くなるつがる。模擬戦の途中なんだからって叫び気味に言って】

【そうしている間にも描かれた図形。市松模様の間に吸い込まれていった三本の氷柱】

……ん?え!?
【全く!なんて口を尖らせていた少女の顔が一瞬で焦りに満ちて】
【一気に伸びた立方体の柱。ものの見事にぶつかって後方に転倒しかければ】
【その瞬間3cm程の氷柱を生成してポチの右足を狙って飛ばし】

【そうして後方に転倒する。完全に少年のペースに飲まれているようだ】

あー、もうっ!全然当たんない!本気だからだろうけど……っ!
【たった一撃なのに!などと上体を起こせばキャスケットが少しずれていて】
【ずれたそれからのぞいた頭頂部の一部。髪と同じ色の猫の耳がぴょこりと見えてしまっているのだが、本人は気付いていない様子で】


462 : 名無しさん :2018/10/21(日) 22:44:56 ccfrIWMU0
>>460

【そうして続けられる話。その口ぶりに、さっきまでといくらか温度を違えたもの、どこかで威圧するような圧迫感が混じりこむのなら、】
【少女はごくわずかに目を瞠るのだろうか。それでも指摘するでもなく、微かに向けた視線は再び虚空へ。自分の目の前にあるあたりの地面へ、ただ向けられて】
【表紙を弄ぶ指先の仕草も気づけば止まっていた、――聞かされる話の内容、会話の流れはどうしようもなく噛み合わず、堂々巡りの様相、脳裏に思い浮かべる光景を眺めたら】

――――――、あの、一つ良いですか? 「あなた」って、どの字を書く「あなた」ですか?
貴重の「貴」に、方向の「方」の「貴方」ですか? 貴重の「貴」に「女」の「貴女」ですか?

話の腰を折るようでごめんなさい、おそらく後者かなと思ったんですけど、――いちおうです。その理解があるとないだと、雰囲気が変わってしまうと思ったので……。

【――イスラフィールが言葉を切る。それを待ってから、彼女はちらと視線を向けて、お行儀のいい生徒みたいに伸ばした背筋で、一つ尋ねようとするのだろう】
【あくまで少女は口頭での説明を受けているだけであった、ゆえにおそらくはそうであろうという推測を立てながらも、確認してみることを優先して】
【そうして後者だと教えられるのであれば、もう一度だけ同じ場所を読み上げてほしいと願うのだろう。あるいは――相手の答えようによっては、また、違う答えをするのかもしれず】

【ただ問題なく表記を確認して、再度読み上げてもらえたのなら、――彼女は先ほどと同じように、大丈夫だと言って、続きを促すのだろう】


463 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/21(日) 22:58:08 arusqhls0
>>462

【イスラフィールは微笑んだ、──── そして言葉を切った、これでおしまいですわ、と付け加えて】
【そしてその質問には "答えなかった" かえでの洞察力であれば、答えを導き出すのは可能だろうと、言いたげに】
【或いは、優秀な生徒に対して投げかける挑戦状の様な口ぶりであった、そうして言の葉を返して】


このお話に続きも結末もありませんわ、これでおしまいですの、ええ、後は何も
実際はもっともっと長い話なのですが、大分これでも要約いたしまして

──── ですが本題はここからでしょう、貴方様はこのお話から何を読み取られて?


【意地悪な問いかけであった、それは解けないパズルを渡してほくそ笑む愉悦に似て】
【彼女はそうして、言葉を紡ぐ、──── 脚色された微笑みが、やけに淡く色合いを強める】


荒唐無稽な話ですわ、伏線も意味合いも無く、ただただどんでん返しだけを尊ぶ様に
それこそがまさにグランギニョルに他ならないのですけれども、派手な仕掛けを読者はお望みで

──── けれども私には、これは "最上の恐怖" を訴えかけた提言に、他ならない物に思えますわ

恐怖、真の恐怖、そして最上の恐怖とは、自分の信じる世界の崩壊に他ならないのでしょう
信じているもの、 "信じていたもの" がある日突然フィクションだと示され、その舞台が消え去る
それ以上に恐怖などあるのでしょうか、少なくとも私には分からず、そして


──── 貴方様にも、分かってもらえるのではなくて?


【朧月が妖艶に照らす、口元に当てた指筋から零れる微笑みの残滓が、瞬く間に溶けて交えた】


464 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/21(日) 23:17:48 arusqhls0
>>447

【──── 正しく勢揃いであった、櫻の国に於ける一大勢力 "魔導海軍" の錚々たる面々が集結し】
【そして同時に魑魅魍魎の跋扈する百鬼夜行とも表現できるだろう、国を国たらしめているのは政治ではなく】
【それはただただ純然たる "力" に依る統治であるのだと、異を述べる存在は居ない】

【然るにこの場に居る各々は、野心という懐刀を無色透明の意志で塗り固めた剣客の集まりとも言えて】
【同様にして、踏み込むことすらも躊躇う集会であった、そう、例えるなら、────】
【あまりにも濃度の濃い酸素は命を奪う、必要でありながらも不要になる、瀬戸際】


【────、不意に木の扉が開いた、招かれざる客がその場に現れる】


あらぁん、妾の "櫻の国" が誇る殿方達がこんな風に揃ってくれちゃって、妾は嬉しいわぁん
そうでしょぅ? だぁって大事な大事な "殿様" の命令ですもの、従うのは当然よねぇ

だったらぁ、その "殿様" の大事な大事な正室の妾の命に従うのは、もっと当然でしょぅ?


【甘ったるい女の声であった、砂糖菓子で塗り固めた洋菓子に、胸焼けしそうな程のシロップを塗りたくって】
【その上に生クリームとカスタードでデコレートした後、これでもかという程チョコレートを振りかけた様な】
【並の存在であったならば途端に目眩を起こしそうなほどに、彼女の言葉は蕩ける蜜の味】

【長い櫻色の髪、同系色の狐耳と、背中に広がる大きな九つの狐の尻尾】
【胸元を大きく露出した赤い派手な着物、大きくスリットを入れてまるでミニスカートの様に纏う】
【さらけ出した素足に申し訳程度の足袋を履いた、青い瞳の少女】



【──── そして此処にいる面々がその正体については、深く知っているだろう】



さぁ、悪巧みを始めましょぅ、腑抜けた水の国を "奪っちゃう" 悪巧み♪



【 "櫻の国" 江戸東部、──── "首都" 天の原を統治する "現殿様" の正室にして、────】
【傍若無人、我儘千万、民に強いるのは増税と労働、それでも "殿" の寵愛を一身に受ける】



【──── "稀代の悪女" その名を、"妲己" といった】


465 : ロールシャッハ ◆zO7JlnSovk :2018/10/21(日) 23:25:31 arusqhls0
>>449

【マリアベルは一つの結論を見出した、然るにそれは原初に近い気づきなのだろう、けれども】
【認知しなければ、それはやはり気付きに過ぎず、時として意味合いすらも持たないシナプスの浪費】
【────、けれども気付かせる程にロールシャッハは猶予を与える存在でも無かった】


僕は社会学者でもなければ革命家でもない、ただ一柱の "虚なる神" として、この世界に在る
だからこそ必要以上の干渉は避けるつもりさ、必要な分だけ収獲するのが長続きの秘訣だから
聡明な君なら分かるだろう? ────、必要な分の干渉であれば、僕は躊躇いもしないから


【簡潔な言葉を返してつなげる、そこは話の重要な点ではないと言いたげに】


その判断通りだよ、その姿はひた隠しにしておくべきさ、丁度僕達がそうであった様に
劇的であればあるほどに存在は "劇的" になる、観測者は多く在った方が正しく認識されやすく
また同時に、誤って認識されやすい、いずれにせよ大切なのは脳で描くよりずっと、易しいという訳だ

だから僕は此処に於いて君の語る "ムンドゥス" を知らなければならない、それは当然の道理だろう?


466 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/21(日) 23:36:43 q3cXurZ.0
>>456

錬金術、ねぇ……

【眼前で起こる現象に目を細めながら、夜の空気に言葉を溶かす】
【指輪を通じて感じる違和、その肩書きは口だけではないということか】
【面倒な相手だ、と舌打ち一つ。狭い空を仰いで、視線を戻した】

生憎と、「名家のお嬢様です」みたいなツラしたやつが平気で人を殺したりする世の中なんでな。
判断する基準なんて一つだけ―――水の国陸軍の人間に喧嘩売ってくるようなやつはだいたいその辺の連中だから、だ。

【はて…………陸軍と言ったか。確かに軍服姿ではあるが、軍属に限った服装というわけでもなく】
【ただ、そうであるならば一つ、新たな可能性も生じてくる。少女を助けようとしていたのはこの男も同じ】
【―――即ち、少女に危害を加えようとしていたのは件の“ブタ野郎”の方であった、という可能性である】

【無論、そこには男が本当に陸軍所属なのか、という点が残るのだが。】

……で?さっき言ったのが全部違うっていうなら……何とかってイカれたカルト集団の生き残りか?
迷える子兎を〝助け/救済〟に来た―――ってな。

【幾何学模様を描く真蒼の魔力光―――男の足下の水が浮かび上がり、二本の矢を形作る】
【依然として敵対姿勢。疑いを持ち続けているのはこちらも同じか】


467 : アリス ◆zO7JlnSovk :2018/10/21(日) 23:47:41 arusqhls0
>>466

【兎耳の様な黒いリボンがぴくぴくと震えた、それはまるで男の言葉から訝しむ様な色合いを感じて】
【むぅ、と表情を曇らせる、何だか目の前の相手は純然たる "悪" とは言い難い様相で】
【けれども警戒を解けないのも事実であった、──── そこまでアリスは力に自信がある訳でもない】


おじさまってば "軍の人間" かしら、どうして揃いも揃って軍のヒトって目つきが悪いのか聞いても宜しくて?
もっと優しいお兄様のような方ばかりでしたら、私もこんなに警戒しませんしっ
……だいたい、喧嘩売られるような事してたんじゃありません? お金払わず買い食いしたりとか


【じとーっと碧眼が染まる、年相応のどこか幼い仕草は、服装も相まって妙にマッチして】
【それでいてお伽噺から抜け出してきた様な背格好なもんだから、どこか浮き世から離れた存在感もある】
【形作る二本の矢、錬金術と似た様相であったが、少なくとも "水" に関しては男が上か】


──── ああもう! どうしてそんな選択肢しかないの!? チェシャ猫の方がまだ融通が利いて!?

私は "正義の錬金術師" だからに決まってるじゃない! おじさまの分からず屋!


【怒ったように腕を組んでそっぽを向く、ついでに頭のリボンもふんとそっぽを向いて】
【少し頬が赤いのは正義の錬金術師というフレーズに対する照れ、変なところで庶民派】


468 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/21(日) 23:49:25 hEXW.LLA0
>>444

【どこかで冷たい睥睨と、 ─── その後に続く稚気じみた所作を、アリアは剣呑な眼付きで見つめるばかりだった。ただ、】
【生成りに晒された未だ癒えぬ傷痕を垣間見るなら、一刹那ほど、直視を拒むような。それでも矢張り気の迷いでしかないなら】
【畢竟は2人だけにしか感じ得ぬ/それでいて分かるかさえも知れぬ機微でしかない。色儚くも艶やかな唇が苦しげに漏らす、熱っぽく湿った呼吸だけが真実であった】
【 ──── 強いて非難らしき感情を挙げるなら、向けられる銃口には諌めるような視線を寄越していた。例え安全な状況でも、弾の入った銃を味方に向けてはいけないと、言いたげな。それでも言葉は紡がないなら】



「 ─── 怒ってない、わ。」「こうでもしないと、 ─── 瞼が落ちてしまいそうな、だけ。」


【喘ぐ呼吸が辛うじて返し行く音節は辿々しかった。 ──── きっと、負け惜しみの類ではなかった。】
【この手の茫洋とした感覚は彼女も好かぬ所であるのかもしれない。戦闘状況における応急処置の遣り方をひとつ、アリアはかえでに教えたことがあった】
【興奮系の劇薬を静脈注射するのは、前線にあって最善に近い延命処置である。嘗てアリアは1人の兵士であり、そして今もまだ戦士である事に相違ない。】


「 …………─── 〝このくらい〟なら、慣れた傷よ。 」「この服も、仕立て直して貰う必要は、あるけれど」
「随分と、 ─── やはり、効く、ものね。」「 ……… 御免なさい。情けないところを、見せてしまうわ、 ─── 。」


【然らば紅色の拘束から解き放たれるに、 ──── 糸の切れた人形のように頽れるのだろう。触れられる指先の熱量は火傷の機序に似て、閨所の生娘のように幽けく震えて】
【自律的な脚力さえも失われているようだった。しなだれかかるように少女の体を頼んで、もしも2人同じくしてコンクリートの床地に膝を着いてしまうなら】
【 ──── 体軀の差ゆえに、伸し掛かる形にもなるのだろうか。いずれにせよ彼女は酷く重かった。ただでさえ高い身長に納められているのは、強化複合チタニウムの骨格と超高密度の人工筋肉なのだから】
【それでいて女体としての柔らかさとしなやかさは蕩けてしまいそうな程に持ち合わせてもいるのだから、 ─── 人間としての理想を極地まで追求した肉体であるのだと、そうあれかしとアリアは願ったのだと、思わせ】
【じっとりと布地に染みた赤黒い血が、絡みつくように少女の体さえも濡らしていくの、かもしれない。それでも少女の膝元に幾らかの休息を得るのなら、焦点の合わぬ青い隻眼も真っ当な光を宿すの、だろうが】


469 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/21(日) 23:53:22 6.kk0qdE0
>>464

「何だ!貴様は!?」
「此処を何処と心得るか!?」
「無礼な、何処ぞの狂女ではあるまいな!?」

【糖蜜よりもなお甘く、また、木蓮の香よりなお強く】
【そんな声と共に、扉が開き、その濃密で甘美な声が響く】
【その姿を知らぬ者からは、響めきと共に一通りの雑言が飛び】

「無礼無学は貴官であるぞ!口を慎め下郎が!この方をどなたと心得る!!」
「まさか、奥方様が……何故に!?」
「天乃原の城から参ったと言うか、この静ヶ崎まで!?」

【姿を知る者は、感嘆混じりの驚愕を漏らす】
【色気、色香と呼ぶには余りに品が良く、また気風はこの場を一陣にて席巻せしむる】
【天ノ原将軍家、現正室、妲己その人が入室して来る】

「静粛に、役者は揃い踏んだ、諸官の品位はこの程度の物かね?」

【まるで予期していたかの様に、淡々と周囲の将校達に告げ、場を収めるのは他でも無い、蘆屋道賢であった】

「家伝の易卜とやらも、存外当たるものだ……陰陽の道も、また馬鹿には出来ませんな」
「ようこそ、奥方公妲己様、静ヶ崎鎮守府へ……いや、この世界へと呼ぶが正しいですかな?」

【カツカツと、真新しい革靴を鳴らして歩み寄り、恭しく妲己に跪き礼をする】
【諸将校らは、それを固唾を飲んで見守り】

「『悪巧み』心得まして御座います、して妲己様、先ずは我々、いや我が策を講じましょうか?あるいは将軍家、いや、妲己様の策を拝聴いたしましょうか?」

【此処で初めて顔を上げ、道賢は悪辣なる笑みを口元に湛える】

「この国を、この世界を奪る、一歩目で御座います」

【指を鳴らし侍官を呼ぶ、手のトレンチには手に入る中では最上のシャンパンとグラスが2つ】


470 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/22(月) 00:09:03 hEXW.LLA0
>>446

【「そういうこと。 ─── ちゃんと勉強してて偉い。面接したボクも鼻が高いぞ。」ならば笑い返すのは、屈託無い乙女の白皙。】
【然してミレーユの歳頃は判然としなかった。「腐れ縁っていうか、まあ、 ─── 機会があったら話したげるよ。」】
【語尾は少し、はぐらかすように。されど酒の席でも設けられたのなら、その饒舌から聞き出すのに、さしたる困難もないのだろう】
【謀る類の笑顔を投げかけ合うのならば既に2人は共犯的な関係にあることを示していた。 ──── だが吹き抜ける風は、空寒く。】


     「 ─── へ、くしッ。へくちッ。」


【 ─── そっぽを向いて嚔を二ツ、幾らか申し訳なさげな顔をして、噴き出す。ゴメンねと紡ぐ前に、伝えられる休憩の超過。】
【意表を突かれたような、 ─── 余り彼に見せない類の顔をして、左手首の時計を見るのだろう。大きな時計盤にミニマルなデザインの、なぜか恐らくは、男物。】


「は?」「マジ?」「 ─── うわ最悪」
「急ぐよライガ君!」「今から走れば入館時刻イジれば多分ヘーキだから!」


【およそ小狡い事をナチュラルに抜かしながらそいつは彼の手を取って走り出す。 ─── グローブ越しでも柔らかく、可憐な温もりを宿した指先。】
【然して少女の身体と呼ぶには聊か筋張った骨格をしているようでもあった。それも気の所為であるのかもしれなかった。事実として言えるのは、そいつに従ってデスクまで駆け込むなら、きっと誰からも御咎めはない。】

/このあたりでシメでいかがでしょうか!


471 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 00:11:21 arusqhls0
>>469

【妲己は爆ぜるざわめきを心地よく感じ取る、瞑目した姿は一枚の絵画相応の完成度を保ち】
【その神秘的な様相と相まって、徒に降りてきた女神を想起させる程、徐に両手を胸元で組んだなら】
【揺れる袂、短い裾と相反する様に、ゆらりと大きな袂が彼女の豊満な胸を濡らす】


あらら、話が早いですわん、妾はもう少しばかり殿方達のざわめきを愉しみたかったですのにぃ
でも、ふふ、でぇも、──── 良い物が見れましたわんっ、本物の "権力者" 達があわてふためく姿
二束三文の衆生が泣き喚く姿はもう飽き飽きですの、高潔なニンゲンの堕ちる様ほど、甘露な味わいは無くて

けどね、一番は貴方よ、 "蘆屋" の頭目、相変わらず冗談みたいな男前でいらして、彼処の殿方は代々美形ですもん

妾にとっての "殿様" には及ばないけど、──── 人夫ぐらいには丁度いいわんっ


【恭しく礼をする道賢に、かける言葉は無礼の極致、──── 知らぬ高官達にはそれこそ奇異の極み】
【けれどもそれは同時に、道賢の巧みな盤面掌握術の一端を見せつける形にもなるだろう】
【言ってしまえば矜持など、時に容易く折ってみせる、上に立つニンゲンの持つ柔軟さ】


さぁどうしましょぅ、──── まぁ妾から伝えさせて、何れにせよ同じ事ですもの
今 "水の国" には特殊な内部勢力があるのは御存知かしらん、知らない雑種は黙ってなさぁい
その勢力の一端はね、戦わずにして "水の国" の実権を握ろうとしてるの、悠長な話よね

でも、妾の殿様はそんな状況の "水の国" を放置するほど甘いヒトじゃなぁくて、これを機と思ったの

だからね、──── "水の国" でクーデターを起こしちゃいましょう


472 : 名無しさん :2018/10/22(月) 00:13:42 ccfrIWMU0
>>463

【返らぬ答えに、彼女はわずかに唇を紡ぐのだろう。かすかに空気をためた頬っぺたの仕草は、拗ねるというよりも、考え込む仕草に似て】
【何より重箱の隅であるという自覚はあるらしかった。――ならば、その問いかけが意地悪なのかどうかも、判断を付けていないかのように、曖昧に】

――――そうですね、読み取ったというよりか、思い出した……という話なら、蝶の夢のお話とか。とはいえ、読んだことはないので、ここでそのお話は終わりですけど。
あらすじとかは、知っているんですけど。細かなところはちっともわからなくて。――ですから、そうですね、他には、今はやりの異世界転生とか。
能力も奇跡も魔法も魔術も何もかもないような世界に生まれ変わってしまうお話……なんていうのは、最近、なんだか流行っていますし。

――ていうのは、違うかな。違いますね。だから……。

【笑まれた仕草に、彼女も表情を返すのだろう。けれどそれは笑みと真顔の中間点、ひどく曖昧な温度感の、それであり】

……私、昔、怖かったことがあって。まあ、昔って言っても、中学生のころとかで。まあ、今は、怖がるのも、飽きてしまったんですけど――。

――――アリがこの星を丸いだなんて思わないように。私たちだって、この地面を平らだと感じてしまうように。
点が線を理解できないように。線が面を理解できないように。面が立体を理解できなくて、立体がそれ以上の"なにか"を理解できないこと。

たとえばそこから何かの干渉を受けたとして、――私たちには"それ"を、この次元の理屈でしか、観測も認識も理解も出来ないこと。

それって、とっても、怖いなって思ってしまったことが、あって――。

【ならば、そこから続く言葉は、子供の頃の拙さを反省するような声音を持ちながら、同時に、今でも解決していない何かであるのだと、言葉と態度が伝える】
【怖がるのも飽きた――なんて、考えだすときりがないからだった。夜に布団の中で死について考えてしまったときのどうしようもなさと、まったく同じ理屈であるなら】
【だから不可解なものはだいたい夜に訪なう。それはその時々によって妖怪だなんだと呼ばれるだけで、きっとおおもとは同じで。そして今も、夜の中から、見つめてきている】

【――それでも彼女の肌も毛先も真っ白く、瞳は水平線の透き通る青色を、していたから】

――――――――そうですね、怖いです、とても。

【夜を睨むような目をして、彼女は黙り込んでしまうのだろう。見れば唇をきゅうと噛んでしまっていた。指先は服の布地を捕まえて、】
【それはまるでばらばらに崩れて零れ落ちる蒼穹を見たことのあるような目。すなわち、信じ/たかっ/た何かを喪った人の目、それが二度とと戻らない人の目】


473 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 00:23:56 arusqhls0
>>472

【それは出来の良い生徒の答えに他ならず、それでいて確かに理に適った一つの最適解であった】
【イスラフィールはその答えに異論は無かった、描くかえでの経験談もまた、その意志を固めるのに相応しく】
【──── 同時にそれは漠然とした不安以外の何物でもなく、そして、何者にもならず】


──── "恐怖" を知ることは大切なことですわ、 "恐怖" を乗り越える為の唯一の手段ですもの
"幽霊の 正体見たり 枯れ柳" ──── 時として真実とは、唯の痛々しき空想に過ぎないとしても
それでも進む道筋を、ヒトは勇気と呼ぶのですから────


【イスラフィールは立ち上がる、細腕にどうやって納めたか分からないほどの本を抱えて】
【けれども、件の偽書だけはかえでの側に置いてあった、意図的に置いていると言いたげに】
【──── 本の山から微笑みを注ぐ、慈愛に満ちた、姉の細工に似ていた】

【踵を返し立ち去ろうとする刹那、ふと気付いた様に彼女はかえでへと声を掛ける】


そうですわ、一つ私大切な事を言わないといけませんわ、──── 新しい事実とかではありませんの
貴方様はとても、ええ、とても大切な事を言ってくださいましたわ、それが意図してか意図せざるかは分かりませんが

"異世界転生" ──── 何となく流行る理由も分かるでしょう、ヒトは隣の芝生に憧れるのですわ

そうであるならば、この世界と理が同じで、道理が違う世界を願うのも、無理のない帰結ですから
だとすれば、──── ええ、それはまた、我らが隣人からしても同じ理屈ではございませんこと?

──── ふふ、今日は良い出会いが出来ましたわ、それではまた、どこかで


【彼女の歩みに澱みはなく、その場を後にするのだろう、深い、深い、謎を残して────】


/こんな所でしょうか! お疲れ様でした!


474 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/22(月) 00:33:07 yJzjJkWc0
>>467

【あン……?と唸れば眉を寄せてみせて。ここにきてようやく、疑問を抱いたか】
【目つきが悪いのは間違いなかった。殊この局面においては、更に険しい表情である】
【彼女の背格好も合わされば、更なる勘違いを招きかねないような、そんな風景だが】

てめえ……まさかとは思うが、俺がそこのガキを襲おうとしてるとでも思ってたのか……?
―――あのなあ……。いや、もういい……頭痛くなってきた。

【片手を額に当てて、俯く。それに合わせるように、水はまた元の通りに。】
【エメラルドの瞳も半眼に、全体に脱力したような風であれば、警戒を解いたと見てもいいか】
【――溜め息を一つ。それから大きく息を吸って】

――――水の国陸軍曹長、ダイン・ハートランド。
いつも〝敵〟を前にする仕事してんだ、そりゃ目つきも鋭くなるだろ。
……それと、んなくだらねえ犯罪なんかするかってんだバーカ。

俺はソイツが襲われそうになってたから助けに入っただけだ―――そうだろ?

【投げかける問いは少女へ向けたもの。この場で起きたこと、それに関する唯一の証人であって】
【ポカンとしていた少女は、自分に話が振られたことに気づけばコクコクと首肯した】
【この現状―――善意と善意のぶつかり合い、とでも表現するのがいいだろうか】


475 : ◆RqRnviRidE :2018/10/22(月) 00:40:45 6nyhPEAc0
>>461

【赤面する少女に対し、ニヤリと不敵にも見える笑みを浮かべる。その実、微笑ましいだけではあったのだけど】
【市松模様の柱は少女のバランスを奪ったならば、即座に少年の手元へ引き戻される】
【元に戻った紙は多少歪んではいたものの、破壊されない限りは再利用が可能らしい】

【からから、からんと足元には氷柱が転がって。 それをまったく気にも留めず、】
【ポチは迫り来る氷柱に対して、防衛を試みんと市松模様の描かれた紙を掲げる】


ふふん、飛び道具なら全然負ける気しないさ!
だからつがる、もっとグイグイ来てくれても良いんだぜ。
それこそ飛び掛かるくらいの勢いでも────


【余裕ぶって胸を張る少年はにんまりと一笑する。 最後まで防衛を継続できるという相当な自信があるのだろう】
【右足へ飛来する氷柱に再び市松模様の柱を伸ば──そうとしたところ、ふとした瞬間に突然目に入る、“それ”】



──────えっ、猫耳…………、     あっ



【拍子抜けしたような声を出す。 で、思わず一歩、前方へ足を踏み出してしまい、────“ざりっ” 】
【足元に転がっていた氷柱を踏む。→ つるりと滑る。 → バランスを崩し、華麗なほど後ろにスッ転ぶ。 】


【 “ぱちん”    ──少年の膝裏に直撃した氷柱は破砕し、空中に煌めきを散らした。 投了(チェックメート)であった。 】


476 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/22(月) 00:42:22 6.kk0qdE0
>>471

【まさに、西洋絵画の古典にして王道の題材】
【降臨する女神に、縋り時に恐怖する民衆愚衆】
【言わんや本来大衆とは、その様な者であるかも知れない、突然の予期せぬ事態に惑い請いそして意味のない声を上げたがる】
【いかに高い階級の証を身につけようと、高貴な身分を得ようと、本質は変わらないものかも知れない】
【兎にも角にも、その場に降臨した女神の如き人物に1人を除いては席から動く事すら出来ずに、時折隣周囲に小言を囁き合う程度でその様子を見守るに止まった】

「中々に良い愉悦をお持ちで、感服の極みでありますな」

【グラスに静粛に白のシャンパンを注ぎ入れ、その泡が出ては消えゆく様を眺めながら】

「恐悦至極に存じます、奥方公の審美眼に掛かるとは末代までの誉れに」
「ですが、桜桃の陰陽家は皆美形が多いと聞きます、先の司令長官土御門家晴峰、彼もまた若い頃は、賀茂家も同様です、私めなぞまだまだ……」
「最も何の陰陽家の者も、奥方公の美しさの前には塵芥も同然の事で御座いましょうが」

【まるで旧来の知り合いと話すかの様な笑みを浮かべて、シャンパンを渡し】
【人夫扱いという、如何様な無礼であっても、許し許容し剰え普段は見せない笑みすら湛えている】

「いい加減になさいませ!如何に将軍家奥方公と言えど、ここは静ヶ崎、それ以上の我等海軍司令長官への無礼は見過ごせませんぞ!!」

【この様子に、ついに1人の老いた将校が声を荒らげた】
【階級章や飾緒を見るに階級は中将】

「構わぬ、この場では寧ろ……貴官の濁声こそ無礼の極み……申し訳御座いませぬ奥方公、何分此処は軍、風流を解さぬ無教養者が多いもので」

【やがてグラスを鳴らし、話を移り変えて】

「存じておりますよ、諜報員達からの情報は一字一句見落とす事無く目を通して居ります故に、魔能制限法、黒幕とそして虚神達の事も、漏れなく」

【やがて告げられる、クーデターの画策、それには口の端を吊り上げるのを隠せずに】

「考える事は、同じで御座いますな奥方公……」
「いや、問題はやり方の方ですな……私めは黒幕に加担やり方を考えて居りましたが、何分海軍とは効率主義の団体のようで、奥方公はどの様な道を?」

【一口、グラスに口をつけて】


477 : アリス ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 00:45:27 arusqhls0
>>474

【アリスはと言えば、ふへ、なんて間の抜けた声をあげて、男と少女とを交互に見比べて】
【えーっ!! と、一際大きな叫び声を上げた、ダインにしてくみれば溜息をつきたくなるような声で】
【嘘でしょ!? なんて言ってダインに背を向ける、少女の両肩をがっちりホールド】


嘘、嘘、嘘ーっ!! あーんな目つきの悪いおじさまがいい人なの!? 信じられないわ!

……ねぇね、うさぎさん、怒らないからお姉さんに話してごらん、脅されてるのじゃなくて?
脅されてるのよね、うん、きっと脅されている筈、脅されてるでしょう、脅されてるって言って!
──── 脅されてるって、言いなさい


【じぃっと碧眼が見据える、もうその行動が最早はっきりとした脅しに近く】
【本人も分かったのかくるり、と再びダインへと向き直って、──── ばつの悪そうな顔】
【結局の所、彼女の確認ミスであるのは明白であった、にも関わらず】

【──── 相手を悪人と判断しての大立ち回り、どちらに非があるのかは言うまでもなく】








──── 改めましてごきげんよう、私は "錬金術師" アリス=ファンタジア
この世界の真理を追求する、不思議の国の探求者よ
どうぞ親しく、アリスと呼んでちょうだい






【短いエプロンドレスの丈を掴み優雅に一礼、決めポーズ】


478 : 妲己 ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 00:54:19 arusqhls0
>>476

【彼女は注がれる美辞麗句を当然と言わんばかりに受け止めた、木漏れ日を浴びる気高き一輪花】
【うら若き乙女の血を浴びる夫人の様でもあった、それでいて傲慢な統治者に似て】
【──── けれども、その "我儘" は時に、身内にさえ牙を剥く】


全くよねぇん、道賢ちゃんったらどぉんな教育してるの? こんな有様じゃ、妾も協力できないしぃ
そもそもね、本来なら貴方達が脚を運ぶべきなのに、わざわざ妾が来てるの、その意味を分かってるのかしらん
残念だわん、桜桃の "陰陽家" 達も長い歴史の摩耗には勝てないのね、──── ふふ

いいわ、特別に教えてさしあげる、道賢ちゃん、組織を大きく成長させるにはどうすればいいか、御存知?

剪定よ、せ・ん・て・い♪ ──── 不必要な枝葉は、ちょきんって切っちゃって、こう間引いちゃうの
この場に於いて、不必要なのは誰かって、分かるでしょぅ?


【妲己の大きな瞳が歪む、艶やかな色合いを孕んだ目元は、何処までも麗しい姫君の様に】
【注がれるのは声を荒げた中将への視線、その視線が意味する事は一つ】
【──── 今この場で処断せよ、と無言が伝えた】


そうね、道賢ちゃんがきちんと禊を終えたなら、妾の考えも丁寧に教えてあげるわ


479 : 名無しさん :2018/10/22(月) 00:59:05 ccfrIWMU0
>>468

【――――ならば。向けた銃口は確かに何かを殺すのかもしれなかった。自分の中に燻る"なにか"。あの日、あの時、成せなかった何かを、もう一度】
【そうしてそれもまた区切りなのだと思わせた。処理落ちしかけたパソコンで、それでもがんばって一つずつ窓を消していくのにどこか似ていた。でないと何もできないから】
【仕切り直しすらも儀式めいた何かを伴う必要があったのは、――もしかしたら彼女はひどく不器用なのかもしれなかった。生きるなんてことは、苦手なのかもしれなくて】

ならいいですけどお、――、別に、いいですよ? 殺さないです。かえって、よく眠れていいかもしれないです。保証はしませんけど……。

【幼子を寝付けるときの母親の指先にもきっと似ていた。うつむきがちな仕草に垂れるその長い髪を彼女はそうっと耳元に掛けてやるのだろう、声だけは冗談めかして】
【こんなふうに寝たら悪い夢を見そうな感じだった。安眠というよりは永眠にずいぶん近い感覚を得られるに違いない。――よく眠れるのはきっと確かなのだろうけれども、】
【いい夢はまあまず見られなさそうだと予感させて――アッパー系の真逆を往く作用だった。ダウナーでしかもバッドトリップしたみたいな。とかく、悪い気分にさせるから】
【こんなのが全身に満ち満ちて死に方すらも忘れるほどであるなら、――なるほど確かに最悪の気分になるだろうな、とは、推測できて】

大丈夫ですよ、――情けなくないです、ていうか、これっくらいで情けなかったら、私、どうなっちゃうんですか? ――わ、あっ、ん、んん、ぅ……。

【くすと笑った仕草は、けれどひどく優しげだった。――それに何より言葉通り、"これ"で情けなかったら、自分なんて、もう、情けなさ過ぎて消えてしまうに違いないから】
【冗談めかして崩れ落ちる相手を抱き留めようとするのだけれど、――それにはやはりいくらかの限界があって。なればいくらも押し倒される温度感で、ともに床まで行くのだろう】
【それでもめいっぱいに堪えて、やがて相手の頭を膝枕するような恰好で留まる。それまでにたっぷりの時間をかけて、なるべく(お互いに)辛くないやり方、探ったのなら】
【彼女の真っ白い服は結局赤黒く染められて。なればその逸品よりも優れた女体に中てられてしまうのも仕方ないのだろう。――ただ、今は、それより、】

……ふふ、でも、アリアさんに勝っちゃった。何しちゃおっかなぁ――、ねえねえ、アリアさん、好きにしていいんですよね? そしたら、そしたら――。ふふっ。
いーっつも私のこと好きにしてるんだから。だから……、うーんと……。

【いつもは禁止されているゲームもおかしもなにもかも解禁されたときの子供みたいだった、何しよう何しようって惑ってしまって、ただ、ひどく嬉しげならば】
【よしよしって頭を撫ぜる指先までもがはしゃいでいた。とりあえずお洋服は選んであげたかった。髪の毛もお化粧も全部ぜーんぶ整えて。一番かわいくしてあげて】
【どこかへ遊びにいこうか。なんでもなくありふれたどこかへ。それこそどっかのショッピングモールとか楽しいかもしれない。それで、新しいお洋服だって、選んでしまう】
【行くときと帰りで違ったお洋服になってしまうのもいいかもしれなかった。試供品で違ったお化粧に挑戦してみたり。――してみたいこと、あんまりに、たくさん、思い浮かぶから】

【――あるいはどこかで足りてないものを埋め合わせるかのように、ごくありふれた少女のするようなことばっかり、思い浮かんでしまうのだけど】


480 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/22(月) 01:01:45 YXGj9tJM0
>>450

【「最も価値ある軍事的資源は人材であるとは言うけれどさぁ ─── 導入予定の輸送ヘリが一ツ減ったよ」悩ましげな嘆息。】
【それでも続いたタマキの苦笑には幾らか焦茶色の双瞳を丸くしていた。「 ……… 代理で誰か来るんだね?」分かり切った答え。】
【だが伝えられた人名は、 ─── 間違いなく後藤の予想する範疇を超えていた。「 ……… テーラー行くのが先みたいだ。」そうして、数日の後。】


「此方こそ、どうも初めまして。 ─── "外務八課"の課長を務めています、後藤椋持って者です。」
「遠路はるばる御足労いただいたというのに、碌な歓待の一ツも開いて差し上げられず ─── 頭の上がらない限りです」


【昼下り。八課の1階エントランス。 ─── 幾人かの人影があった。後藤は代表の立場において辞令を述べていた。渡されるシンプルな名刺の素性に偽りは無かった】
【彼は壮年の男であった。平均的な身長。切れ長の目尻は幾らか気怠げに垂れていた。オールバックの黒髪と、澱むように底知れないブラウンの瞳が、櫻国系であることを示す】
【気高く黒く皺のないウールのスーツは貸衣装じみていた。草臥れたビジネスジャケットが最も相応しい立ち姿であった。こけるように緩んだ頬と落ち着いた語調は慇懃だった】
【マホガニーの木目と燻銀のエングレービングから成る杖をついていた。足腰が弱いのだというよりは威厳を示す為のアクセサリなのだろうが、やはりそれも不似合いな男。】


『 ─── 霧崎ン所の女傑じゃないか。どういう風の吹き回しだろうね?』
『殴り込みって訳ではなさそうだけれど。 ……… 込み入った筋書きになりそうね』


【その背後にはタマキと並んで2人の女がいた。幾らか幼気な濡羽髪の女と、恐ろしく背の高い銀髪の女。どちらも腰にまで伸びるロングヘアで、青い瞳。片方は隻眼】
【耳小骨無線で第三者には聞こえない会話をしていた。揃って纏うのはスタブ&ブレットプルーフの黒いスーツ。恐らくは要人警護向となるオーダーメイドの代物。】
【であれば腰回りのウールに見られる幽かな隆起も、 ─── 秘匿されたタクティカルベルトだと、瞥見に理解させるだろうか。】
【凡そ堅気の人間ではなかった。何より風格と目付きが違っていた。躊躇いなく誰かを殺せるし、事実として殺してきた類の眼光。】

【ともあれ各人はNBC防護の気密型エレベーターに乗り込み、タマキの言葉通りに地下の応対室へ向かうのだろう。廊下から室内に至るまで、洋風のオーセンティックな内装】
【上座のソファは輸入品だろうか、 ─── それなり以上には上等だった。ガラスのテーブルを介して恙無く受け取られる手土産。「お持たせで失礼ですが ─── 。」】
【黒髪の女はごく儀礼的な所作をもって、茶菓子と共に湯呑みを配する。瀬戸物の底まで透き通る玉露であった。持て成す相手が誰であるかは解っているようだった】


「こんな辺鄙な所で申し訳ございませんね。我々の仕事柄、こういう些か剣呑な防護設備というのも、必要なものでして」
「然し、 ─── まずもって興味深いお話ですなぁ。富嶽会の首魁ともあろう方に、我々のような日陰者がお声がけ頂けるとは」

「あまりお時間を取らせてしまうのも恐縮ですし、 ─── どうかお聞かせ頂けないでしょうか。"色々と"。」


【 ──── 然るに、やおら切り出される言葉は、きわめて単刀直入であった。腹の探り合いは不得手でなくとも、好き好んで選ぶような男ではないようだった】
【なぜ我々に接触してきたのか。なぜ我々を信頼に足り得ると判断したのか。なぜ富嶽会が初瀬麻季音に目をかけているのか。 ─── 叩かなくても示される限り、それは埃とは呼ばれないのだから】


481 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/22(月) 01:03:50 6IlD6zzI0
>>457

【迫る弾丸を前に文月が笑みを零したのを、白桜は見逃さない】
【普段ならば暖かな気持ちにさせてくれるその表情に背筋が凍る】
【"何故弾丸を前に笑う事が出来るのか"、そして――】


(何故わたしは桜色の刃に心奪われているのだろう――触れれば傷つけるものなのに)


【姉の言葉を借りるならば、目の前に広がる世界は穢れを知らず】
【繚乱、絢爛。それでいて苛烈で。花の散るは激しさを伴って】
【花の舞うは櫻の国の舞姫を包み込んで、純潔を穢す事を赦さなかった】

【弾丸と言う名の穢れを振り払ったなら――文月は桜花を纏って自身に迫る】
【その姿が美しいと思い、怖いとも思う。何より、それに心惹かれる自分が何より怖い】

【引き金に掛かる指先の力は強く。弾丸さえも切り捨てる姉に怯えの色も濃くなって】
【まず最初に貫通の特性を持った弾丸を3発放って。更に3発の弾丸が襲い掛かる】
【貫通の特性を持つ弾丸に追従するのは、追尾の特性を持つ弾丸。天国が活路を拓き、地獄が牙を向く】
【"地獄の腕"の名を冠する弾丸の行き着く先は、文月の両足、脹脛や太腿といった部分】


―――……それは、わたしの台詞。丁度、……わたしも楽しくなってきたところ。


【嘘である。戦いを楽しむのはフェイの領分で、白桜の領分ではないのだから】
【けれど、心底楽しげな姉を前に言葉を嘘で塗り潰す――けれど、表情と声色は正直で】

【戦いを楽しむ事を恐れている様な節さえ伺わせる。それは射撃と同時に行うバックステップにも現れて】
【ある種の"暴"を是としないかのように。それに愉悦を見出す自分を戒めるように――少し、不自然】
【戦いに身を委ねる愉悦を、姉に対して見出すのは罪悪感があった。故に、戦いに集中しきれていなかった】


482 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/22(月) 01:07:16 BRNVt/Aw0
>>475

【不敵に笑う少年につがるは言葉を詰まらせて】

グイグイ……っていってももう十分攻撃してるんですけどー……やっぱり氷柱だけじゃ決め手がないのかな……や、でもこれしか使えないし……

ふぇ?
【うぐぐ、と唸った刹那少年が自分の姿を見てあらん事を口走る。きょと、と目を丸くするもすぐにその言葉が示す事に気付いて慌てて頭に手をやればずれたキャスケット】
【うわぁぁぁっ!?と叫んで慌てて元の位置に戻して】

み……見た──へっ!?
【見たな!?と叫びかけた瞬間少年がすっ転んで氷柱が膝裏に当たる】

え……えぇぇ……?
【少女は幾分拍子抜けした表情でそれを見ていたのだがいつまでもこのままではいられない、と立ち上がり少年の元へ歩み寄って】

……え、あの……ポチくん……?
大丈夫……?
【あの……なんか……ごめん……と視線を反らしつつ気まずそうな表情で謝りながら手を差し出して】


483 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/22(月) 01:09:24 smh2z7gk0
>>465

【マリアベルは眼を細め、少し首を傾げるようにして考える仕草をする。やはりまだ〝差〟はある。当たり前だ】
【それであれば結局いくらここで論じたところで意味はなく、意味を持たせるには観測が足りなかった。】
【「ふぅ」と一度息を吐けばマリアベルは座りなおす。】

―――そうか、いやこれ以上は私の憶測で語るべきではないな。
それをするにはまだ私たちは早すぎる。まぁ何にせよ、貴方の収穫がより良いものである事を祈っているよ。

【簡潔な言葉を並べるロールシャッハに合わせるようにマリアベルも簡単に話題をしめる。】
【そして一度頷く、自身に向けてか相手に向けてかそれは定かではないが再びマリアベルは口を開く。】

慌てる乞食はなんとやら………いやはや仰る通りで。
―――ああ、話を続けましょう。『〝ムンドゥス〟』とはその名が示す通り〝深淵の闇〟というべき存在だ
〝観測者〟の主観によって様々な形を為す、。表現することの叶わない〝思念体〟。
ただそれを観測したものには何らかの〝異変〟が起きる―――私がそうであったように。

そして『〝ムンドゥス〟』にはその存在を伝聞するための端末となる〝分霊〟が複数体存在するんだ。
〝大いなる異種族/オーバー・ロード〟―――彼らは主と違い実態があり、この世界でもいくらかは観測されている。
まずはそこから〝埋めていく〟つもりだよ。今までもそのために世界を飛びまわっていたからね。

【―――結局『〝ムンドゥス〟』とやらの存在は朧気だ、だがそれこそがその存在の性質なのかもしれなかった】
【「こんなものだろうか、情報が薄くてすまないね」とマリアベルは言葉を切った。】


484 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 01:16:38 arusqhls0
>>481

【身に迫る銃弾は六発、──── 時間差のクイックドロゥ、ディレイタイムで踊るワルツはボサノヴァよりも心地よく】
【文月は知らずの内に頬に笑みを浮かべ、白桜が真っ向から対峙してくれた事に悦びを感じるのだろう】
【終わることのない絶頂にして、束の間の悦楽、だとすればそれは永劫よりも長き一瞬】


──── なら白桜はんをもっと楽しませなきゃ、和泉の名折れどす
妹を愉しませるんは姉の役目やさかい、その為なら、うちはいくらでも戦います────!!


【一閃横薙ぎ、煌めく銀光、一刀の下に斬り伏せるのは二発の弾丸、漏れた一発がその牙を向けて】
【後ろへの脚運び、殿方の手を引く遊女の所作で、一歩分後方に下がったなら、返す手首が上向きの剣線を描く】
【淀みない動きは二つの刃を重ねた、まばたきの内側に浮かぶのは十字に描いた、刃の軌跡】

【能力ではない、技量のみで、彼女は剣の軌道が可視できる程に練り上げてみせた】

【描いた刃の弧は残り三つの銃弾を斬り伏せ、──── しかして刃の隙間を一発潜り抜ける】
【右足を銃弾が貫いた、揺れる体躯が風に舞う花びらを連想させて】


っ……流石白桜はん、生半可な攻撃じゃ、済ませてくれへんどす────
せやけど、まだまだこれからやさかい、堪忍してや────!!


【抜刀したまま、その距離を詰める、銃を持つ相手に対し些か愚直とも言える突進だ】
【瞬間、彼女のが纏った桜の花びらが消える、──── 聞こえる風の音、変わる音律、一音が刻む転調】
【後部、消えた花びらが背後へと移動し、諫める、バックステップをしたならば、切り刻まれると】

【──── 狙いは動揺、試みが成功すれば、彼女の間合いに白桜を捉えるだろう】


485 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/22(月) 01:22:51 6.kk0qdE0
>>478

【バートリ・エルジェーベト妃もかくや】
【人から見れば、あるいは傲慢にして強欲の極みを見せつけているやも知れない、だが、それ故に気品も振る舞いも、それが許される程に完全なまでの美しさも、非の打ち所がないのであった】

「それはまた手痛い所を突かれます、全く私めも日々苦心して居ります」
「誠、本日の無礼の数々、心が痛みます……なるほど、意外なるお言葉です、あるいは寛大なる御処置でしょうか?」

【大凡、感情を感じ取れない口調に、口元の笑みは絶やさずに】

「その様な容易い事で宜しいと?元より私はそうするつもりでした故に……」

【その眼を、老中将へと向け、口元の笑みは消して】

「ま、まさか蘆屋大将、儂をこの儂を殺すおつもりか!?」
「これより先は、革新への道、古い血は要らないのだよ、特にそうだ、土御門派とか言う古い古い汚い血はね……」

【狼狽壁に背を預けてへばりつく様になる中将】
【道賢は、大型の自動拳銃を手にして、構えて】

「そう言うのはね、邪魔でしか無い、邪魔をしてくれるだけだ……『みらい』を逃したのは、貴様だな」
「や、やめ……お許し「問答は無用」

【パァンと、乾いた銃声が、1発だけ響く】

「妲己様、数々の非礼無礼をお詫び申し上げます」

【その場には頭を1発の元撃ち抜かれ、その場に崩れる中将の死体、周囲に飛び散る血と脂と脳の小さな破片……】

「ひ、ひいいいいいっ!お助け、お助けを!!」
「ひっ!?し、正気か!?狂っている!!」
「莫迦な!莫迦な!!」
「そ、そんな……乱心じゃ!大将が乱心じゃ!!」

【無論の事だが、ややあって事態を頭で理解した将校達から騒めきと響めきと混乱の声が上がる】


486 : ロールシャッハ ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 01:26:19 arusqhls0
>>483

【同時にマリアベルは違和感があるかもしれない、少なくともロールシャッハは必要分には饒舌で】
【どちらかと言えば語りすぎる傾向にある存在であった、それが親しさ故かは分からないが】
【──── 簡潔に結論づけたと言えばそれまでだが、そこに在る微かな意味合いは何処へ】


成程、"外宇宙の神話生物" とは言い得て妙だね、確かにこの宇宙の枠組みに於ける "神話生物" であってはならない
少なくともこの宇宙に於いて、 "神話生物" とはそれに纏わる "神話" が無ければならないのだから
そして神話は多くの場合に於いて寓話的で教訓的だ、それに起因する "信仰" を集める為にも

だとすれば "外宇宙" でなければ有り得ない、──── だからこそ "実数軸" では捉えきれなかったんだろうね

だからこそ "虚数軸上" で解決してみせよう、そんな荒唐無稽な神話こそが "グランギニョル神話" なのだから
"オーバー・ロード" 達を結ぶ延長線上、その先にムンドゥスが居るのであれば、越した事はないし

例え居なくとも、そこに存在させることが、可能にすらなるのだからね


【ロールシャッハは朧気なムンドゥスを、そう定義した、或いはグランギニョル神話それそのものが】
【ムンドゥスに対抗するための対抗神話にさえなりうると、彼はそう考えていたのだろうか】
【しばし考え込む様な素振りを見せたが、──── 彼は一つ満足げに頷くと】


方針としてはこんな所かな、尤も、僕の与えたのは方法論に過ぎないけれど
だけどそれさえ分かれば君には十分だろう、 "深淵" の渡り方は、君が一番よく知っているのだから

──── どうかな、この会合の結末にしては十分だろうか


【彼はそう言って帰る素振りを見せる、変容してしまった空間でさえも、変わりなく】
【その気になればどのような場所からでも消失できる、と言外に伝える様であった】


487 : 名無しさん :2018/10/22(月) 01:28:13 ccfrIWMU0
>>473

そうでしょうか、ですけど、分かっていたとしても、怖いものは怖くって。分からないまま怖いよりも、――分かって怖い方が、怖いかもしれないです。
ですけど、――そうですね。勇気がいっぱいあったら、なんだってできますよ。多分きっとそうなんです。まあ、成功するか失敗するかは、勇気、関係ないですけど――。

【――はた、と、瞬き。立ち上がる相手を見上げるのだろうか、その腕の中にたっぷりと収められた本を見やって、何か言葉を言いかける】
【おそらくは手伝おうとしたのだと思わせた。時間はいくらもあって。だから、その半分を一緒に抱えてやることに、特に問題はなかった。気づくまでは】
【足の傷を思い出してしまえば、彼女は仕方なしに座ったままでいるのだろう。――そばに残された一冊に気づけば、そっと手に取る、差し出す予感だけを残して】
【結局、彼女は膝の上にその本を据える。「――いつ返したらいいですか、読み終わるまで、時間がかかってしまいそうなの」なんて、言葉は、なにかきっと親しみに似る】

【――――それは玩具に焦らされた猫の仕草のよう。ちりちりって衝動が弾けてしまいそうになる、相手のこと気になってしまうって、口角の角度が伝えれば】

【だけれども、その温度は、拙く解れるのだろう。相手の言葉を解きほぐし解するのに、彼女はまだ正しいものを持ち合わせていないから】
【なればいつかまた会うことになるって予感させた、――あるいは理解させた、それこそ、認識できないもう一つ上の世界から、そう示されるみたいに】

/おつかれさまでした!


488 : 妲己 ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 01:41:44 arusqhls0
>>485

【──── 飛び散る脳髄、静粛な会合は一瞬にして狂奔の坩堝となる、雑多な声が混じり合って】
【彼女は笑みを強めた、蠱惑的な笑みが彩りを増したなら、そこに描かれるのは妖艶では足りない色】
【背徳よりも深い紅で染めた頬に、恍惚の悦びを向けるなら、視線の先にはもう一人の "狂人" 】


あらん♪ 素敵よ、道賢ちゃん、やっぱり貴方は全然違うもの、ふふ、そうじゃなきゃいけなくて
ねぇそうでしょぅ、殿様が気に入るのだって分かっちゃう、そんな風にやってみせるのに
心の中はぽっかり乾いたまんま、可哀想、可哀想な道賢ちゃん────……

──── あら、勿体ないわん、折角折角、ここまで高慢に育った血肉だもの

妾の配下の "饕餮" がね、食べるの大好きですもの、持って帰ってあげなきゃ


【妲己が背中の尾を浸す、──── 地面に散らばった中将の血肉が、瞬く間に吸い上げられて】
【気がつけばその場にはもう、彼が居たという痕跡すら残っていないだろう】
【まさに、魑魅魍魎の巣であった、──── 言葉が現実を乗り越え、浸食するかの様に】


さぁて話が逸れちゃったわん、えぇっと、何処まで話したかしら、そうね、方法の所だったかしら
"黒幕" に荷担する事は好きにすれば良いわん、きっと私の術と両立できる筈ですもの

事の発端は "水の国" で起こるクーデター、──── 危ない "能力者" の集団が、反乱を起こすの
"偶然にも" 水の国に停留していた "櫻国海軍" はその鎮圧に向かうの、素早い手腕で反乱は直ぐ収まるけど

──── でもね、直ぐに軍を引き上げる必要なんてなくて、しばし治安維持の為にそこに駐留するわ


普通の国ならそんなの許さないわ、外国の軍隊が自国に駐屯するなんて



【──── そう、普通の国なら、ね】




そこは道賢ちゃんのお手並み拝見かしら、黒幕を上手く説き伏せられたなら
その駐屯を認めさせること、出来るでしょう?


489 : ◆RqRnviRidE :2018/10/22(月) 01:42:41 6nyhPEAc0
>>482

【派手に転倒した状態のまま、時間が止まったかのように数秒キープ。 やがてばたんと四肢が脱力してしまう】
【残り一枚の白紙と市松模様の紙が手元に落ちる。 大の字になりながら、目はなんだか虚ろに晴れ晴れとした秋空を眺めて】
【つがるが手を差し伸べればちらりと見遣り、暫くぼうっと何かを考えて、そうしてその手を力強くがっしと掴み──】


…………ぅ、────わんっ!!


【──勢いよく起き上がりながら犬みたいな咆哮をひとつ。 何てことはない、単なる悔し紛れの一声だ】
【あーっと大声を出しつつ息を大きく吐いて深呼吸、いーっと歯を見せては眉間に皺を寄せて悔しそうな顔】
【誰がどう見たって大丈夫そうだった。 けれどしかし、至近距離で唐突な叫びを聴くだろう少女は果たして】

あーっ負けた負けた悔しい!! 完全にミスった。 くっそ恥ずかしい!
それにそんな奥の手があったなんて……俺も犬シッポとか出せれば良かったのかなぁ。
【悔しそうにじたばたしてる。 恐らくそういうことではない】

あの氷柱の大きさならなぁ、飛ばせるんだし死角から狙えばめちゃくちゃ強いと思うんだけど……!
猫譲り?の身体能力って言うのかな、ピョンピョン縦横無尽に跳ねながらビューンって氷柱飛ばせば強そうだよな。
だって多分見えなかったら避けきれなかったかもだし、それこそ俺も数打ちゃ当たれって思いながらやってるとこあるしさぁ、

【ぺらぺら語る口調は興奮ぎみにここまで早口、この先ももう少しだけ早口である。】
【要約すれば、つがるの身軽さと氷柱の相性は組み合わせ次第で最強になりそうってことらしい】
【何か見出だしそう、やっぱアクロバットでうち来てみる?なんて勧誘は半分冗談混じりにも聞こえたかも】
【とりあえずつがるの申し訳なさそうな表情の反面、ポチは相も変わらず愉しそうだった。】

……あっ。 そんで、携帯端末だよな。
君が勝ったわけだけど……本当に好きにしちゃっていいのかな?

【それから、勝負前に決めた賭け事のことである。 ウエストポーチから携帯端末を取り出して、彼女へ問う】
【つがるが勝てばポチがそれを譲り受ける、そういう約束だったが果たしてそれで本当に良いのか、と】


490 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/22(月) 01:46:30 6IlD6zzI0
>>484

(銃に刀…。勝負は見えてると思ったんだがな。こりゃどうして中々、面白ェじゃねえか)
(見たかよ、白桜。あのアマ、刀で銃弾を切り落としやがったぜ!大したお姉はんだな、クハハッ!)


【弾丸を刀で切り伏せる――そんな芸当は創作での御話に過ぎないと思っていた】
【御伽噺めいた光景にフェイは歓喜に震えて、白桜は驚愕を隠せなかった】

【自身の意思で放った六発の凶弾の殆どは、洗練された剣技と所作にて往なされる】
【文月の動作は舞に似ていた。見るもの全てを魅了する一流の舞妓の振る舞いみたいに】

【それでも一発は、姉の足を撃ち抜いて――思わず顔を顰めて、眼を背ける】
【大好きな姉を傷つける罪悪感、穿たれてなお萎えぬ姉の意思と歩み】
【目の前の事実の数々は白桜の平常心を揺さぶって、更に後ずさろうとした矢先】


――…っ!?逃げ場が、ない!?


【姉の纏っている桜が姿を消した。風に舞い散る花弁の様に。風を切る音を置き土産に、忽然と姿を消した】
【けれどその行く先は直ぐに理解できて――、後ずさる足はこれ以上動かない。桜の花弁が逃げるなと諌める様な構図】

【故に、動きが鈍る。姉を傷つけた事実という名の刃は白桜の心につきたてられて】
【それも相まって、全ての動作が遅れを取る。能力の再装填も、迎撃も。だから、文月の意図通りの展開と相成る】


491 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/22(月) 01:49:32 0yzwkBA.0
>>477

【詰問される少女、大騒ぎする彼女、一方の男はと言えば、どこかに電話をかけていて】
【短い通話を終えて、まだ続いているのを確認すれば、腕を組んで、半眼のままその光景をただ眺めていた】

【――――そうして、再びの静寂。流れ落ちる水の音ばかりが夜空に響く】
【解放された少女は先刻より些かグッタリして見えるが、それはそれとして】
【優雅なお辞儀と、ついさっきも聞いたようなセリフ。それを確認した後、およそ2秒の間をおいて―――】



…………………………全っっっっっっ然決まってねーからな。



【――――――ツッコんだ。】


ったく……、いきなり訳わかんねーのに絡まれて、不思議の国に迷い込んだ気分なのはこっちだっつーの……

――で、〝正義の錬金術師〟とやら、家はどこだ?この辺か?これ以上引っ掻き回されても困るし、送ってやるよ。
じきに自警団のやつがこっちに来るから、そこのおっさんとガキはそっちに任せとけ。

【正義の錬金術師、というフレーズだけ強調して言うのは、ただただからかい以外の何物でもなく】
【どうやら、先の電話は自警団への連絡だったらしい。事態の収束が予想されて】
【であれば、彼女をここに長居させる理由もない、という判断。ごく当然の流れとして、男は訊ねた】


492 : 文月 ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 01:55:07 arusqhls0
>>490

【視界の中央に文月が居た、網膜に焼き付くのはその圧倒的な存在感】
【白い羽織が揺らいだ、その世界に残るのは、僅かな彼女の存在した名残のみ】
【唸る風、駆ける音は足早に、静謐の中、彼女の行動だけが深く残っていた】


──── 死ぬほど痛いさかい、覚悟しぃや


【開く両脚、片足で刻む急ブレーキが加速したその勢いを、零へと落とし込み、幽玄へと昇華】
【旋風が吹き上げる木の葉の舞いに似ていた、くるり、その場で一回転、描く軌跡は白刃の煌めき】
【刃が歪む、吹き荒ぶ暴風を、その一刀に押し留めたかの如く、細い指先に全ての体重を乗せて】

【叩き付けるは奔流、荒々しく猛る滝の瀑布を、刃一本で描いてみせる、或いはそれは】
【魂を削って描く一本の絵筆に似ていた、その刻まれる一文字が、世界を魅了するほどに】
【袈裟切り、斜め上から入ったその剣線が、白桜の身体を容易に切り裂くほどの威力だろう、──── 通常ならば】





【刃が触れる瞬間に文月は手首を返す、──── "峰打ち" 百万回振っても、木の葉一枚切れやしない】


493 : アリス ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 02:03:43 arusqhls0
>>491

失礼なおじさまね、正しき口上は淑女の嗜みよ? 私の素性を明かすことは誇りに等しいもの
何故なら、私の描く無数の成果は、その名前と共に刻まれて、私の功績を語り継いで
そうして得られる名声こそが、私の生きた証拠となるの、これに勝る喜びがあって?


【アリスは胸元に手を当てて、誇る様に語った、ぴょこぴょこと頭のウサミミリボンがその行動を真似する】
【ふふんとドヤ顔で笑う様子、都合の悪い事は完全にシャットアウトしている様だ、口げんかで子供に勝てる道理など】
【──── しかして、続くダインの振る舞いには、流石の彼女も参った】


……いいこと、おじさま、次にその呼び方をしたら、怒るわよ、若しくは起こすわよ
具体的には大きな声で泣き叫ぶわ、お分かりかしらおじさま、貴方の社会的地位は一発でアウトになって
それが嫌なら私の言うことに従う事ね、返事は、はいかイエスかで頂戴

──── それに子供扱いしないで欲しいわ! 私は錬金術師、きちんと歩いて帰れるもの
……でもおじさまがどうしてもと言うのであれば、仕方なく私をエスコートする権利を差し上げるわ


【そう言いつつアリスはダインの服の裾を、ちんまく握っていた、そそくさとその華奢な身を寄せて】
【思えば大分夜更けである、人っ子一人通らない路地裏は、成程暗くておっかない】


494 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/22(月) 02:08:54 smh2z7gk0
>>486

―――ああ、そうだね。思ったより時間を取らせてしまったようだ申し訳ない。

【マリアベルは帰る素振りを見せたロールシャッハに合わせるように一度指を鳴らす。】

                       【―――〝パチン〟―――】

【それは真っ暗な部屋で電球をつけるような動作でもあり、マジシャンが催眠状態の相手を起こすようにも見えた】

【――――――――――――】
【――――――――――――――――――――――――】


【二つの存在は、再び薄暗い尖塔の最上階へと戻っていた。埃が舞うどうにもかび臭い場所だ。】
【それは幸福な夢から覚めて嫌な現実に戻されたような感覚に近かった。】

ご助言痛み入るよロールシャッハ卿。やはり貴方にお話しして正解だった、良いお話が聞けたよ。
〝虚数軸〟についてはもう少し勉強させてもらった方が良さそうだがまずは〝オーバーロード〟の〝狩り〟を続ける。
こちらばかり与えてもらったのは恐縮だが、〝神〟とはそういうものだよね?

【少し冗談ぽく肩を竦めて笑う、そうして立ち上がりマリアベルもこの忌まわしき場所から立ち去ろうとするだろう】
【椅子を机の中へと押し込みながら、「あ、そうだ」と何かを思い出したようにマリアベルはロールシャッハを見る。】


ロールシャッハ卿、―――〝イスラフィール〟って名前に聞き覚えあったりする?


【「なんか神話に出てきそうな名前だからさ」と、取ってつけたように呟くとマリアベルはロールシャッハを見る。】
【別になんとなく意味もなく聞いたような、何かしらの意図があって聞いたような、どちらとも取れるような笑みを浮かべて。】


495 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/22(月) 02:12:36 smh2z7gk0
【水の国・旧市街―――路地裏】

【消された町〝旧市街〟。だが未だその暗い町で暮らす者も多くいる、勿論〝表〟に出れない理由があるが】
【闇市では銃器から人まであらゆるものが売られており、またそれを求めるのもアンダーグラウンドの人間たちだ】
【そんな闇市から路地へと入り、灯すら碌に存在しない路地裏へと入っていけばツンとした血の匂いが立ち込める。】
【匂いの原因はすぐに分かる。〝ナニカ〟が血を流して倒れておりそれを見下ろすように大型ナイフを持った人物が立っている。】
【ナイフを持った人物はイライラとした様子でつま先で地面を何度も叩く。ブランド物の小奇麗な革靴は埃にまみれていく。】

―――クソが、カノッサか?それともイカレたカルト教団か?ふざけた真似をしやがって。
ここいらの闇市は〝トラロック・ファミリー〟が仕切ってるって分かっててふっかけてきやがってるのか?

いや、機関か公安がケツモチになった同業って事も考えられるか………どちらにしたって気味が悪いんだよ。
叔父貴もさっさと腰上げてくれねぇとただでさえ減ったシノギがなくなっちまうぞ。

【イライラと地面を靴で叩きながら、ブツブツと独り言を続けるその人物。】
【皴一つない小奇麗な黒スーツで身を包んだ赤髪、黒瞳の長身の青年。鋭い瞳からは神経質な性格が伺える。】
【青年は足元にある〝ナニカ〟を忌々し気に見下ろしながら規則正しく地面を叩き続ける、ここでは良くある光景かもしれない】
【ただ、この青年は旧市街の路地裏にいるには少しばかり〝小奇麗〟な格好だ。故に目立つだろう。】

//こちらに移します、10/27まで募集〜


496 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/22(月) 02:16:08 YXGj9tJM0
>>479

【であればアリアは酷く少女に甘えるようであった。 ─── 毅然たる立姿を示そうとするのは、きっと彼女の常だとしても】
【今ばかりはそう在れないのならば、弱味を晒すのも仕方ない道理。或いはそれに託けて、胸裏に隠した幼さを曝け出す衝動】
【 ─── このような時に限って彼女は寡黙であり朴訥であった。碌な返事を寄越さないのは、阻害された意識に対する終端処理に追われている振り、だろうか】
【何れにせよ幾らか血に汚れた白銀ごと、少女の柔らかな太腿に頭の重さを預けて、 ─── 一頻り鼓動を聞いたのであれば、徐に起き上がって、微笑んでいるのだから】


「 ………─── 約束は、守るわ。」「貴女の嬉しそうな顔、見たいもの。」
「一ツじゃなくっても良いの。かえでの好きなこと、 ─── 私に、してみたいこと」「全部ぜんぶ、教えて頂戴。」


【幼気な喜びを隠すことなく綴られる夢見の数々を、 ─── 全て彼女は叶えたいのだった。ならば入れ替わり立ち替わり、彼女が母親の役割を担うのだから】
【同じ膝座りにあって尚も少女より高い躯体が、優しくかえでを抱き締めるのだろう。ボタンを外したシャツの布地すら抑え切れない酷く豊満な肉感。仄かな香水と香油の香り】
【矢鱈にサイズの大きなブラジャーを彼女は使わざるを得なかった。 ─── 朝のベッドに脱ぎ捨てられたIカップのタグには3桁のバストが示されていた。】
【ならば底のない沼に似て、それよりも余程に柔らかで淑やかな質感をもって、少女の耳元さえも包み込んでしまうだろうか。違わぬ色の白銀と、まだ白い背中を愛でる指先に、執着のような力が交じる】


     「だから、 ………… かえで。」


【 ──── どこか絞り出すように呼ぶ名前は、きっと何かを告げたい為の緊張。この類の声を彼女が漏らすのは、やはり稀なことであるのだから】


497 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/22(月) 02:18:08 6.kk0qdE0
>>488

【この状況でただの1人の笑み】
【この状況でただの1人の愉悦】
【その色は、もはや妖しい美しさでは語り尽くせぬ程の、言葉では到底人智すら超えてしまう程に】
【もはや一つの罪と呼んでも過言では無いかも知れない、存在が罪、と】

「誠に、恐れ多い、身に余るお言葉です」
「将軍様、奥方様からのかようなるご評価、必ずや蘆屋家末代までの宝となりましょう」

【恭しく礼をし、拳銃を手の中で弄ぶように持ち替え、乾いた心と言えばまさにその通りなのだろう、そう妲己から指摘されたとて、何ら表情にも言葉にも変化は見られないのだから】


「私の心を潤すものがあるとすれば、それは……」


【妲己がその姿を変じ、脳を頭蓋の欠片を血肉を綺麗に吸い取り回収する様を、如何にも綺麗な芸術を眺める様にうっとりと見ながら】

「ひっ!よ、妖物!妖物ぞ!!」
「あな、恐ろし……かような事が在ると言うか!!」
「お助けを!!私は従います、従います故何卒!!」




「静粛に、他言も雑言も、之無用也」

【慌て騒めく将官達を、手にした拳銃の1発で再び沈黙させて】



「なるほど、素晴らしき絵です、さすれば黒幕側にも、そして水国民衆にも行動を起こさねばなりませんな……誠に、妲己様は聡明に在らせられる」

【口元を再び吊り上げ、笑みを讃えこう答えた】

「将軍様にもお伝え下さい、必ずや御目的を果たしましょう、と」

【道賢のグラスは、もはや空となっていた】
【徐にグラスを怯える将官達の足元に投げ付け、砕けさせ】

「落ちるグラスは誰にも止める事は叶いません、砕け散るまで……誰であろうと……将軍様奥方様の命、魔導海軍蘆屋道賢、謹んでお受け致しましょう……我々の来たるべく未来の目的の為に」

【妲己には再び仰々しく一礼し、こう告げた】


498 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 02:26:44 arusqhls0
>>494

【マリアベルの問いかけに彼は頷いて返すだろう、何処までもマリアベルは本質に辿り着いている】
【けれども聡明すぎるのも問題かな、なんて──── 内心思っていた、が】



【最後の言葉に彼は立ち止まった、それは、彼の行動を止めるのに十分すぎる言葉であった】



"今" この段階では、僕はその名前に対する "聞き覚え" は無いよ、存在しては "いけない" からね
でも、 "今この段階の僕" はその名前に対する "聞き覚え" が在る、何故ならそれは "存在する" から



【多分に謎めいた言葉であった、彼の語る言葉には大なり小なり謎かけのような響きがあったが】
【それ以上に複雑な表現である、少なくとも今の状態のマリアベルには詳しく理解できないほどに】
【──── けれども、続く言葉の "不思議さ" だけは、必ずきっと、理解できるだろう】






──── "INF財団" の創始者にして、 "聖府" の "担い手" ────



          ──── 紛う事なき "悪女" だよ






【次の瞬間にはもういない、彼は跡形もなくその場から去っていた、そして、────】


【後に残されるのは不可思議、この世界に存在していない組織の、創始者であると彼は言った、ならば────】



/こんな所でしょうか! お疲れ様です!


499 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/22(月) 02:31:42 BRNVt/Aw0
>>489

え、え!?本当に大丈夫!?ぱたーんってなったけど頭打っちゃった!?これ脳震盪!?
【転倒したままのポーズで止まって、かと思えば四肢をばたんと脱力させてしまった相手。手を差し出したままわたわたと辺りを見回して、救急車呼んだ方が良いのだろうかと勝手に重傷にしてしまって】
【かと思えば勢いよく起き上がって犬の鳴き真似。案の定ビクッと跳ねて変な声を発しながら手を離してまた数メートルくらい後ろへ飛び退いて】
【本当に犬は苦手らしい。ちょっぴり涙目になりながら、だからからかわないでって!と声を荒げて】

奥の手じゃないって!完全に突発的な事案!わざと出した訳じゃないんだから!
【もう、なんて頬を膨らませた後にすぐ頬をしぼめて、やっぱり人じゃなくてびっくりした?なんておずおずと尋ねて】

【早口でのアドバイスをなんとか聞けば、身体能力を活かす、かー、と呟いて。考えてみれば氷柱をとばすのに頼りきりな所もあるかもな、なんて納得して】

【そうして、携帯端末の行く先の話。此方が勝ったならば相手に譲渡して後は好きにさせる、と。そういう話だったが】

……うん、良いよ
中のアドレスとかアカウントとかはなるべく消してって欲しいけど……
あ!番号とかメールアドレスも変えた方が良いかも!通知うるさくなるかも──んん?くるかなぁ?分かんないや
【本当に良いの、と尋ねられれば明るい声で答える、がその声は段々とトーンダウンしていき】

……良いよ、どうせ捨てようと思ってたし……もう……あの子に顔向けなんか出来ないし……だったら……"友達思い"なんかやめちゃった方がいいんだもん……
【はじめのようにまた泣きそうな顔になって】


500 : 妲己 ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 02:34:52 arusqhls0
>>497

【──── 彼女はその返答を心地よさそうに聞いていた、簡潔な結末であった】
【此処に於いて "魔導海軍" と "妲己" とは手を組んだ、それはつまり、 "櫻の国" 全体の行く先】
【その指し示す先が更なる戦乱であるという事を、証明する一つの方法論】


知っていますわん、殿様の正室は美しいだけでは成り立ちませんもの、美しいのは最低条件
それは誰よりもが尽きますの、誰よりも美しく、誰よりも聡明で、誰よりも勤勉で

──── そして誰よりも残忍に、女であり続ける事が、殿様のお好みかしら

ふふ、流れるわぁ、とぉってもいっぱい血が流れるの、そしていっぱぁいヒトが死ぬの
きっと犬死にするの、きっと無駄死にするの、そして無為に死んでいくの


──── これほど嬉しいことが、あるかしらん


【するりと背を向ける、九つの尾と狐耳、露出した肌は肉感的な美女のそれ、──── 深いギャップ】
【そして同時にその面妖な姿こそが、彼女の本質といっても良かった、混ざり合う幾重もの不可思議】
【その先に残るのが澱みであるのなら、それこそが妲己であるとも言えた】


じゃぁね道賢ちゃん、良い報告、愉しみにしてるわんっ


【その場から消える様に嵐は去る、後に残るのは平穏とは言い難い凪、けれどもそれを、私達は平穏と嘯かなければならない】
【櫻国に纏わる一連の事変、──── その始まりの火ぶたが、切って落とされる】



/こんな所でしょうか、お疲れ様でした!


501 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/22(月) 02:40:23 6.kk0qdE0
>>470
「あ、ありがとうございます」

【あまり素直に褒められる機会はなかったのか、少し妙な気分を味わいつつ】
【アリアの事に関しては、ついぞ聞けなかったが、また何処かで聞けるだろう】
【最近では珍しく、屈託無く少女の様な笑顔を浮かべるミレーユに、これ以上突っ込んだ話をする事は野暮に感じて】
【やがて……】

「わかりました!急ぎま……ってミレーユさん!?」

【その手を取られ、共に駆け出す】
【少女のような綺麗な、きめ細かい肌と、現場仕事のせいだろう、そう少なくともライガは考えているが妙に筋張った脚や節々】
【感触やたまに見える肌の部分に、少しだけときめきを感じながら、やがて2人で同時にデスクに座るだろう】
【風は空気はもう少しで、冬のそれに変わるだろう】



【時間も事象も、否応無く動くのだから……】


//見落とし反応遅れすみません、こちらで〆でお願いします


502 : ◆RqRnviRidE :2018/10/22(月) 02:47:26 6nyhPEAc0
>>499

──ふは、ごめんごめん。 ちょっとやりすぎちゃったかな。
とにかく始めの頃より元気になったみたいで良かったよ。

まぁ確かにちょっとした冗談だって思ってたからビックリはしたなぁ、でもほら団長で慣れてるし。
身近にも人間じゃない人って結構居るから、俺そーゆうのの偏見はないんだよね。 だから安心しなよ。

【ちょっぴりばつが悪そうに頭の後ろを擦りながら、問われればそのように素直に答えるだろう】
【とって食おうなんてことはこれっぽっちも考えていないと言う。 少女を宥めるよう、語調は優しく穏やかだ】
【それからまた距離を縮めるように、飛び退いた相手へと一歩、二歩と近づきながら、】

んーそうだよなぁ、色々変えなきゃその友達からも鬼電来そうだよな……?
てか何、その子と喧嘩でもしてんのか? なんか確かに役立たずがどうとか��って言ってたけど……。

【再び落胆を見せる彼女を眺めて、どうしたものかとうーんと悩ましげに唸り声を溢しつつ。】
【つがるの隣へ立つと、受け取った当初のままのアドレス帳を開いて画面を見せ、「ちなみにどの子?」だなんてごく自然な風に問いかける】


503 : 名無しさん :2018/10/22(月) 02:53:03 ccfrIWMU0
>>496

【そうして黙るアリアを撫ぜつけるなら、きっと彼女はひどく和らいだ顔をしていた。――誰かに甘えられるなんてことは、長らく、ほとんどなくって】
【最後にそうしたのはどうあれ"弟"に対してだったような気がする。長子の宿命に似て、彼女もまた誰かに必要とされるのが好きだった。誰かのために振る舞うのが好きだった】
【だけれどこれもまた宿命として、――限りなく誰かに甘えて居たい気持ちも隠せないのだろう。だから、――だから、やがて起き上がるアリアに、抱きしめられるなら】

――――ふふ。もぉ。子供扱いしないでくださいー。私、もう、十七歳なんだから……。……アリアさんから見たら、子供かもしれないですけど。
……アリアさんと一緒に居たら、きっと、私、ずうっと、嬉しそうですよ。アリアさんのこと大好きだから……。だから――すぐにたくさん、思いつかなくって。
それに、してみたいことより、一緒にしたいことの方が多いかもしれないです。クレープを食べたり。カラオケ行ったり。一緒に……したいの。アリアさんと――。

【ぱちりと丸くなって瞬いた眼が、――けれどすぐに柔らかに細められる。抱きしめられるままに胸元に顔を埋めて、わずかに頬が赤らむけれど】
【それは素直に溢れる親愛が染めた色であるのなら。当たり前に腰に回した手、少しだけ気恥ずかしいように、服越し、かりかりと掻くような仕草を繰り返す】
【蕩けるような笑みは、ずうっとずっと昔から一緒だった。それこそ子供のころから。だからそれはひどくしあわせの色をしていた、口に含んだらわたあめみたいに甘いから】

………………アリアさんとなら、なんだって、したいの。アリアさんも、そうでしょ?

【身体の中越しに伝わる声に耳を澄ませる。だから見上げる視線はひどく安らいでいた。なのに同時に怯えていた。何かが怖いのを、必死に呑み込んだ時の目をしていた】
【一緒に居たらきっとずっと嬉しそうな顔をしていられる。貴女にしたいことより、貴女と一緒にしたいことがうんと多くて。――伝えた言葉を裏返すのなら、】
【答えはきっとすぐに分かった。親しい誰か/愛しい誰か/身近な誰かとの死別を彼女はひどく恐れていた。だれかが死んでしまうことが怖くてたまらなかった】

【――あの日燃えてしまった身体を取り戻したアリアと会った時、彼女はぎゅうと抱き着いて、数時間も動かなかった。離そうとすれば、ひどく嫌がって】
【片時も離れないのが一日と少し。視界の中に居ないとひどく不安がるのが数日。すぐ近くに居るっていつでも確認できないと嫌がるのが、さらに数日ときて、】
【ようやく普段の距離感を取り戻したところだった。なれば撃ち抜かれた足の傷も良くなって。どこかでお互いにリハビリの意味合いもあったのかも、しれないなら】

――……、なぁに、アリアさん。

【(いつか、首だけのアリアを拾い上げたときに、彼女は取り乱さなかった。関係性が深くなったからだろうか。それも、きっと、理由の一つだったけれど)】
【(きっと状況も理由の一つだと思わせた。そうやって考えるなら、きっとすぐに伝えた。だって彼女のぜんぶは火に燃えて全部がくろこげになってなくなってしまったのなら)】

【(――――、愛しい人がみずからを火に焼べる光景を見てしまったから)】

【だからこそ、応える声は柔らかであるのだろう。ゆると伸ばした指先がそうっとその頬へ触れようとする、触れられるなら、そのまま、長い前髪を耳へかけてしまって】
【ぜんぶ見ていてほしいし、ぜんぶ見ていたい。お互いに抱きしめているのは"私"なのだから。それでも伝えきれぬ何かがあるのは知っていた、自分でさえ隠し事をしていた、から】
【伝える声はせめて優しく。温かく。なにもかもぜんぶ受け止められる綿雲みたいになりたかった。雨も雷も、吐き出さずに生きられたら、どれだけいいだろうか】


504 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/22(月) 02:57:25 G00n02co0
>>493

あーーはいはい、そうだなー。

【―――明らかにまともに聞いていない。何なら彼女の方を見てすらいない。腕時計をチラチラ見たり、足先で倒れた男を突いてみたり】
【思い出したように銃をしまってみたり、一瞬水道管を見た後、すぐに視線を逸してみたり】
【何にせよ、彼女の言葉のだいたいを受け流してしまっていた。そうした扱いに慣れているような、そんな感じ】

―――俺のことがおじさんに見えるんなら、それはお前がガキだってことだ。大人のイイ男の魅力がわからねえんだからなあ?
じゃあ子供扱いしても問題ない。そういう道理だ。

【途中、何やらよくわからない理屈を展開しつつも、そうこうしている間に近付いてくるいくつかの足音】
【服の裾を掴んでいる彼女を促せば、到着した自警団員たちと入れ替わるように歩き出す】
【その中の一人が、「あっ先輩――」なんて声をかけるのには、手をヒラヒラと振って応じる】
【向かう先は路地裏の境界。そこには黒の大型バイクが停まっていた】

ほら、ヘルメット被れ。エスコートにしちゃ少々荒っぽいが、我侭言うんじゃねーぞ。
―――あと、あんまり遅い時間に出歩いてるとその内補導されるぞ。これからは夜は大人しく寝てろ。

【自らもフルフェイスを被りつつ、もう一つのヘルメットを取り出して彼女へと差し出して】
【少しばかりの小言を言ったりしつつ、彼女の帰る先を訊ねていくのだろう】



/移動の場面なんかはすっ飛ばしてもらっても大丈夫ですー


505 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/22(月) 03:08:11 6.kk0qdE0
>>500

【美しく、聡明であり、そして残忍にして残酷、狡猾】
【在るべき姿を体現し解いて見せる、まさに唯一無二の、そして其れこそがこの国の将軍家の姿で在ると言わんばかりに】

「素晴らしい、まさに上の上、素晴らしい計画です」
「さぞやこの地上にありながら、極上の『絵』を体現出来るでしょう」

【堪え切れなくなった、或いは妲己がそれほどまでにこの男の本性さらけ出させたか】
【くつくつとした笑いから、思い切り口角を釣り上げる笑いへと変わる、悪魔的な表情とも言える】

「有り難い御命、必ずや良き報を……」

【最後にまたも一礼を持って、その姿を見送る】
【瞳には、妙な光を宿したまま……そして後に訪れるのは固唾を呑む音だけが聞こえるような、緊迫した平穏……】

「貴官達は……」
「何をしているのかね?速やかに水国のテレビ局と政府議会に連絡を、それとだ……」
「『ヨシビ商会』にも連絡を取れ、それ以外の者は解散だ、普段の職務に戻り給え、速やかに、だ」


「ふふふふ、カカカカカカッ、ハハハハハハハハハハッ!!」

【誰もいなくなった、まさに静寂たる作戦立案室で、道賢は1人、たった1人で笑い続けていた】

//お疲れ様でした、ありがとうございました!


506 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/22(月) 03:26:37 BRNVt/Aw0
>>502

まあ、冗談のつもりにして隠しとく筈、だったんだけどね……
団長で……そっか……私はね、化け猫と人間の合の子、なんだ
【ハーフ、っていうのかな?なんてちょっと笑って】

【友人と喧嘩でもしたのか、と問われればつがるは首を横に振る】

ううん、違うの
その子が……えっと、危険な目に遭って……その事知らなくて助ける事も出来なくて……今は助かったんだけど……
はじめは伝聞でしか知らなかったんだけど……あの子が実際どんな酷い目に遭わされたんだって事をあの子が知らない所で知って……どんな顔すれば良いんだろうって……顔向けも出来なくなっちゃって……
【落ちていく声のトーン。どの子?なんて問いにスッと指をさして】
【『夕月ちゃん』と記されていた名前。きっと彼女なのだろう】


507 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/22(月) 03:46:13 6.kk0qdE0
//全体向けの告知レス的な何かです


ーー水国中心市街地ーー

【巨大なモニターが、これもまたランドマークの様に君臨するビルに据え付けられている】
【水国市街地の中心、繁華街も近く、人の通りはかなり激しい、そんな中、モニターが速報映像を映し出す】

「親愛なる友好国、水の国の愛しい国民の皆様、私はこの度に櫻の国海軍司令長官へと就任しました。
蘆屋道賢です。
親愛なる皆様への突然のメッセージをお許しください、この度は『魔能制限法』の可決、特区の設立、心よりお祝い申し上げます。
この法律は、平和を愛する水国議会と、彼らを選出した懸命にして善良なる市民の皆様の、まさに歴史に残る英断と存じております。
この世界の情勢を見るに、世に先駆けた画期的良法であり、また此れは市民国民の皆様の不断の努力の産物と思われます。
しかし、この平和を愛する友人達に私はとても心の痛むお話を伝えなければなりません。
先だって前司令長官土御門晴峰元帥が、その御病気により倒れられ、急遽私めがその意思を引き継ぐ型で司令長官へと就任致しました。
しかしその混乱の隙を突き、我が海軍より脱走者が現れ、在ろう事か水の国、この国へと渡り、極悪にして非道な反政府テロ組織と手を組んで暗躍していると言う情報が入りました。
此れは我が国と水の国との友情すらも揺るがす問題、脱走者は以下の者達です」

【ここで、話す道賢から、其々の顔写真が写されて行く】

「魔導海軍陸戦隊元中尉、厳島命」
「魔導海軍陸戦隊元曹長、那須翔子」
「魔導海軍陸戦隊元少尉、賀茂宗司」
「魔導海軍陸戦隊元少佐、石動万里子」

「……この事実に私はとても心を痛めている」
「何故平和を愛するこの国を、暴力で汚そうとするのか、何故テロリストと手など結ぼうと考えるのか考えれば考える程に、悲しい想いと、そして良き友人である皆様に申し訳がない思いで胸が裂けそうになります。
然るに、ご安心下さい、友人達よ。
彼ら名前の出た者達は、既にこの国より許可を得て乗り込ませた我が軍が身柄を拘束、現在は緊急停泊中の駆逐艦『雷』を牢船代わりにとし、水国軍港に幽閉中であります。
しかし、彼らには凶悪な反政府テロリストの協力者が多く居る様です……何れ彼らの口からその存在を聞き出しますが、水国の善良なる国民の皆様、どうか身の回りには気をつけて下さい、水国公安と提携し我々は一日も早い事態の解決に向け動いております。
また周辺でその様な情報を聞かれた市民の方、見られた市民の方等いらっしゃいましたら、是非お近くの公安、警察へとご通報下さい。
最後になりましたが、魔能制限法を可決された理解ある善良な市民の皆様、魔導海軍は平和を愛する良き友人として常に側にあります」

【些か態とらしい演技じみた動きを孕みつつ、そのスピーチ映像は終了した】
【多くの通行人はモニターの前で足を止めて、映像を見て、そして其々の反応を見せていた】


508 : アリス ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 09:46:07 arusqhls0
>>504

【アリスはあーだこーだダインの扱いに文句を言っていたが、のれんに腕押し、最終的には溜息一つ】
【膨らんだ頬は柔らかいお餅を連想させて、それでいて何処か瑞々しい果実を想起させる】
【歩き出すダインに着いていくアリス、自警団員の言葉を受けて少し首を傾げる】


──── あら、おじさまったら "水の国陸軍" のニンゲンでしょう? 自警団にも手を貸してるのかしら
それはそれは、殊勝な事ね、おじさまの様な方々が居るから、私は安心して研究に打ち込めるの
私も知らず知らずの内に助けられているって事かしら、嬉しいわ!

……っ! 子供扱いしないで頂戴! これでも才女よ、才女!
わ、わわ……っ、もう、乱暴ね……! 夜にしか採取できないサンプルも一杯あるのに……


【ぶーぶー文句を言いつつも言葉に従う、バイクの後ろの席にちょこんと座って────】



【────】


【────────】



【 "水の国" 外れ、人気の少ない寂しい郊外に彼女の家はあった、あまり綺麗な家ではない】
【寧ろ殆ど使われていない様な家であった、かろうじて雨露を凌げればといったところか】
【アリスはと言えば、そんな自宅を恥じる様子もなく、家の前で大きくのびをした】



夜の二人乗りだなんて悪いことをしてる気分ね、遅れてきた反抗期もかくやという感じよ
助かったわおじさま、結構距離があったでしょう? 一人で帰るのは少しばかりの憂鬱があって
感謝してる、その言葉には嘘なんてないわ


【そう言って彼女は微笑む、年相応の笑みは、愛嬌を一杯に溶かした砂糖菓子の様であった】
【幸せ色のエッセンスを混ぜて焼き上げたなら、そこにはたっぷりの愛情を振りかけて】
【何処かフィクションな存在でもあった、夢見る少女の風情を残した】


509 : 名無しさん :2018/10/22(月) 19:00:46 DTPIn2cY0
>>480

いえ、こちらこそ急な申し出、快諾していただきまして。
私なんぞに予算を割くぐらいなら、花の一つでも飾ったほうが意味があるというものです。

【過剰に下手に出るのはさすがはヤクザの風習というもので渡世人が敷居をまたぐときは相手よりも先に】
【下げた頭を上げてはならぬと言われていた名残だ。ビジネスシーンにおいても初対面には謙虚に見せることで好印象になる。】
【尊大な態度を取る他のマフィアやチンピラとは一線を画すものだろうか】

【霧崎の着ているスーツはもちろん特注のオーダー品で、生地は一流の織氏がデザインも縫製も熟練の職人とデザイナーが仕上げたものだ。】
【そっけないデザインの腕時計も新車が変える値段。襟には四割菱の金バッチ。これは富嶽会の代紋だ】
【それでも後藤とは違い、着慣れているように見えるのはマフィアの会長という風格だろうか】

『新楼って富嶽会のシマなんだよね。だからそっちの探り入れてたっけ…逆に接触されて』

『ありゃ噂通り、サムライが会長だからニンジャもいるってのは本当だね。モロバレ』

『私でバレるんだからアリアのねーさんだったらタッパでバレちゃうね』

【なんて雑談を常にしているのはやはりタマキで、後藤と霧崎には見えない角度でニヤリと笑っていた】


【案内された応接室で、入るなり霧崎はあたりを見回した。彼女の想像では一般的な会議室にでも通されるものだと思っていた】
【しかし、自身の肩書を鑑みるにこういった態度になってしまうのは仕方ないことだと思った。最初に行っておくべきだったと】

失礼ですが…ここにはネット回線がありますか?初瀬麻季音とはテレビ会議のシステムでお話していただこうと考えていたものですから。
モニターと…デスク。窓がなくて電波の遮断がされており、盗聴等の危険性がない場所。…先に、言っておきますが完全に秘匿できない限り記録を取ることはおすすめしません。

【後藤よりも切り込むスピードが早いのはまさにその腰の刀の抜刀並みであっただろう。】
【礼儀は欠かさない。だが、媚びるつもりもない。サムライの尊厳。そして背負った責務】


準備のついでに――まあ、雑談程度に、なぜ桜の国のチンピラがとお思いでしょう。
本当に偶然みたいなものです。私の知人が、初瀬麻季音の身辺警護をしていました。
わけあっていまは私がそれを引き継いでいます。――こんな粗忽者ですが、一応我々も正義ってものを信じているんですよ。

【そういってほんの極微量の微笑を浮かべるその姿は少女のようで水彩の和絵の具で描かれた美人画のような繊細さを持ち合わせていた。】

それに話を聞けばそんなことがどうでもいいことだとすぐにわかるでしょう。


510 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/22(月) 21:02:30 X4XLKwa20
ーー水国領海内ーー

「莫迦な!?逃げられたか!?」
「いえ、確実に2発は命中しました、まさかこの状況で満足には動けますまい……」

【櫻の国と水の国を結ぶ貨物船、その船上にて複数の男性の言い争う様な声が聞こえる】

「まさか、海中へ?愚かな、泳ぎきれまいに、怪我もあると言うに……」
「軍曹殿


511 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/22(月) 21:13:52 X4XLKwa20
ーー夜、水国領海内ーー

「莫迦な!?逃げられたか!?」
「いえ、確実に2発は命中しました、まさかこの状況で満足には動けますまい……」

【櫻の国と水の国を結ぶ貨物船、その船上にて複数の男性の言い争う様な声が聞こえる】

「まさか、海中へ?愚かな、泳ぎきれまいに、怪我もあると言うに……」
「軍曹殿、水国へ追っ手を出しますか?」
「無論だ!このまま我々も降り立つぞ」

ーー明けて、水国とある海岸ーー

「……」

【真昼間の海岸、漣は打ち寄せて穏やかに引く】
【良き秋晴れの日であるが、季節柄当たり前ではあるが海水浴客は居ない】

「……ん」

【真白な肌、金色で長めのウェーブの髪】
【年齢的には10歳前後に見えるだろう、少女がまとわりつく様に在る毛布の様な襤褸布以外、何も身に纏わぬ殆ど裸で、波打ち際に倒れている】
【しかも悪いことに、頭部と右肩には其々怪我、出血の跡が見て取れる状態だ】
【何か事件か事故に巻き込まれたか、あるいは……】
【誰か通り掛かれば、これもまた幸いと言えるのだろうか?】


//サリさん予約です、お手隙の時にでも、よろしくお願いします


512 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/22(月) 22:15:33 FjgKDJWo0
>>508

――――いや、元々自警団の所属でな。そん時の後輩だ。
あいつらは俺と違ってマジメだから、あんまり迷惑かけんじゃねーぞ?

【……つい先ほど水道管を破損させて、その後始末をさせている人間の言うことではないが、それはそれ】
【唸るエンジン、随分と冷たくなった夜の風を切って、黒のバイクは街を走り出す】


【そして辿りつくのは、郊外の一角。ヘルメットを外して、男は周囲を見渡す】

ん……。ここで合ってんのか?―――いや、まあいいや。
礼はいらねーよ、気分転換のツーリング代わりだ。

【彼女の示す家を見て、少しばかり疑念を表しはしたが。世の中、詮索するべきでないこともある、として。】
【彼女に渡していたヘルメットを受け取ったなら、収納へと片付けていく】

何の研究してるんだか知らねえけどな、あんまり危険なことに首突っ込むんじゃねえぞ。
立場上、こういう言い方するのもなんだが……今、この国は色々と面倒なことになってる。
そういうことから民間人を守るのが俺達の仕事でもあるから―――首突っ込まれると余計な仕事が増える。だから大人しくしてろ。

【〝――――わかったな?〟】
【真剣なトーンで釘を差すのは、これでも軍属の人間だからか。些か逆効果を与えそうな言い方でもあるが】
【再度バイクに跨ったなら、ヘルメットを片手に、彼女の帰宅を見届けるまではそこにいるのだろう】


513 : アリス ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 22:30:54 arusqhls0
>>512

【アリスは一度だけ振り向いた、ブロンドの髪越しに見つめるのは興味一杯の瞳】
【絵本から抜け出してきた様な幼さと、それ以上の探求心と、ダインが心配するのも尤もだろう】
【手間の掛かる娘の感覚は、或いは年の離れた妹をも連想させて────】


あら、もし私が危険な目にあったなら、おじさまが助けに来てくれるのでしょう
だったら何も心配いらないわ、私は何の不安もなく、研究に勤しむの
ありがとうおじさま、また今度会ったときには、もっと面白いお話聞かせてあげる


【そう言って彼女は進む、逆効果なのはダインの想像通りだろう、その帰結は分からずとも】
【歩む背中に一杯の愛を育む、パステルカラーの存在は、時に迷い出たお伽噺の続き】
【やがて家の中に消えるまで、メルヘンの残り香を周囲へと残していった】


/こんな所でしょうか! お疲れ様でした!


514 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/22(月) 22:38:32 6IlD6zzI0
>>492

【消える前の陽炎の様に眼前が揺らぎ、一陣の風が吹く。白色の羽織は宛ら名残雪】
【線を曳くのは揺るがぬ意志。曳かれた線は直線から曲線を描いたなら―――銀色が煌く】

【銀色とは一振りの刀。その白刃/薄刃は文月の世界を現すように。水の様に激しく、花の様に美しく】
【自分を貫き通し、斬り開く在り方。それに惰弱さなんて無くて。混じり気の無い強さだけが在った】
【振るわれる剣閃。それを前に死を連想して、思わず眼を瞑って致命的な隙を見せたから――】


――――――………づ、ぁ、……ぁ。


【一振りの刀が血を食み肉を喰らう―――なんて事は無かったけれど】
【"死ぬほど痛い"一撃をこの身に受けて、意識が吹き飛びそうになる】
【死ぬ事は無いけれど、本当に死ぬ程痛かった。死を覚悟させるほど痛かった】

【意識が薄れ行く最中であっても白桜はその手に握った拳銃を手放さない】
【意識を手放したとしても、相棒であるフェイの信ずる神様(チカラ)を手放す真似はしたくなかった】
【故に、意識を吹飛ばしかねない程の痛みに苛まれて倒れそうになっても、手放さないのだった】

【この一連の攻防で、白桜の弱点とも言えるものが垣間見える――それは文月も察する事が出来るものだろう】


515 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/22(月) 22:49:04 arusqhls0
>>514

【──── 響くは鍔鳴り、納めた刀は凄絶に、嵐の後の凪を思わせて、水面に浮かぶ櫻の花弁細工に似て】
【文月は小さく、それでいて深く息を吐いた、極限まで練り上げた集中を解きほぐす様に】
【 "勝った" とは明言しない、けれども、これが "峰打ちでなければ" ──── その結論は、口にするまでもなく】


……堪忍な、白桜はん、多少手は抜いてあるさかい傷は残らはらへんと思うけど
せやけど一応があるし数日は安静にした方がええどす、うちの門下生の子らもそうしてはったし
海軍の人らも同じ様な感じどす、うちが稽古つけた人らは皆そんな感じやし


【白桜の戦意がどうであれ、文月は一方的に戦闘の終了を告げるだろう、基より稽古のつもりであった】
【それ故に一連の攻防で白桜の弱点が見えたなら、それ以上刃を交錯する理由もなく】
【──── 視線が注がれる、誰よりも白桜が、自分の弱点を自覚しただろうけど】


白桜はん、──── 戦うのは、怖い?


【文月は徐に近寄って、直ぐ側まで歩いてくるだろう、可能ならじぃっと瞳をのぞき込むように】


516 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/22(月) 23:33:47 6IlD6zzI0
>>515

【意識が遠退く作用は、水の底に沈む感覚に似ている】
【ならば、意識が覚醒するのも、水面へと引き上げられる感覚なのだろうか】

【朧気に瞳に映るのは、戦いの最中でも笑みを零す姉ではなく自身が知る何時もの姉】
【耳朶を震わせるのは、普段通りの心地良い声と戦いへの怖れに関する問い】

お姉はん、……謝らないで。元はと言えば、わたしが原因なのだから。


―――……正直に言えば、……怖い。わたしは、人を……傷つけたくない。
顔見知りが相手なら、尚の事。特に稽古とは言え、心の底から慕ってる文月お姉はんが相手なら。
……それだけじゃない。相棒のフェイだって、親友のエーリカだって同じ事。

だって、……傷つけたら、人は簡単に死んでしまうから。死に至るまで人を傷つけたら……。
――――――鬼哭の島で一度目の死を迎えた時のわたしに逆戻りしてしまいそうだから。

人を傷つけ、命を奪う事に抵抗が無かった頃のわたし。鬼哭の島の住民だった頃のわたし。
流刑地で生まれ育った鬼子の頃。戦うのが怖いのは―――そういう事。箍が外れそうで、…怖い。
昔のわたしに戻りそうで、そんなわたしは大好きなお姉はんに三行半を突きつけられそうで、……怖い。


【白桜が戦うのを躊躇う理由。それは生前の自分が鬼子と呼ぶに相応しい血みどろの生き方をしていたから】
【流刑地という人でなしの集まる環境がそうさせた。奪われる前に奪え、殺される前に殺せ。強(こわ)くあれ、と】

【故に怖い。戦いの殆どは相棒であるフェイに任せて、自分はぬくぬくと平穏な場所に引きこもっていたから】
【自分(いま)の中に潜む凶暴な自分(かこ)に怯えながら戦っていたのである――それは心が弱い証左なのか】
【琥珀色の瞳が覗き込まれるなら、瞳がゆらゆら揺らめいて、不安や焦燥、恐怖、申し訳なさが複雑に映し出されている】


――――、お姉はんは、戦うの、怖くない?


517 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/10/22(月) 23:38:11 ZCHlt7mo0
>>511

やれやれ……あいつはどこに行ったんだろうねぇ……せめて、連絡手段の1つぐらい、持てればいいんだけど……
まぁ、元よりあいつは、そんな感じだからしょうがないかなぁ……

【華奢ながらも筋肉の浮き出た色白な上半身を晒す様に、ワイシャツだけをボタンも留めずに羽織り】
【下半身はジーンズとスニーカーで固め、腰回りに大量のチェーン装飾を巻き付けた】
【くすんだ水色の髪を前髪ばかり長くした、身長170cm前後の青年が】
【何かを探しているらしい所作で、周囲を誰何しながら、人気のない海岸を歩いている】

【薄汚れた、浮浪者然とした格好だが、当の本人はさして気にした風でもない。そろそろ空気の冷たい時期にもかかわらず、平然と風に肌を晒して】
【珍奇な光景である事に我関せずといった態度を貫きながら、呆れた様子で浜辺を歩き回っていた】

【――――そうして周囲に注意を払いながら歩いていたのだから、そこにある異常を察知する事も、難しくなかったのだろう】

ん――――ッ!?
……こ、これは…………なんだ……!?

【人が倒れている――――それを見つけて、駆け寄ってみると。自分に負けず劣らずボロボロの衣服に、負傷した身体】
【それだけを認めた青年は、咄嗟にポケットから、通信端末を取りだした】

――――――――僕だよ。すぐに、すぐに僕のいる海岸まで来てくれ!
なんか、訳ありっぽい怪我人が倒れているんだ……傷の治療と、多分……保護が必要だ!
……そう、そんなに時間はかからないんだね? じゃあ、頼んだよ……!

【まずは、助けを呼ぶ――――青年としては、この場で応急処置でも出来れば良かったのだが、それが出来ない以上、人を呼ぶしかできなかった】
【だが、どうやら――――彼は公共の救急ではなく、知り合いにでも連絡を取ったらしい】
【そのまま、手早く会話を済ませると、倒れている少女のそばへとしゃがみ込み、じっと様子を観察する】

……打ち上げられたような、感じか……まだ、息はあるけど、こんな傷で、こんなところで放置してたら、すぐに衰弱してしまうね……ッ
かといって、頭の傷の具合が分からないのに、ここで無暗に動かしても……仕方ない、本当に待つしかないのか……!

【頭部の外傷、そして如何にも海から打ち上げられたと分かる格好――――あまり、容体は望ましくない事が予想される】
【この場で打つ手がない事を悟った青年は、ただイライラした様子で、要請した助けが到着するのを、待つしかなかった――――】


518 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/22(月) 23:47:49 smh2z7gk0
>>498

――――――――?
――――――――
――――――――――――――――――――――――――――ヒゅ

【"INF財団"】【"聖府"】【正しい〝手順〟を踏んでこなかったマリアベルには知らない言葉】
【だが、だが〝ナニカが〟繋がる。それは朧げな線なのか、それともマリアベルを俯瞰して眺める観測者の思考か】
【分からない、だがそれは許容量を超えた。処理のおいつけない脳は焼ききれるように激痛を与える】


うっッヴぉえええ――――――。


【マリアベルはその場に崩れ落ち、嘔吐する。背筋を電流のような寒気が駆け上がる、胃の中身どころか内蔵全てを】
【何もかも吐き出すような勢いで嘔吐する。だがこれは良い事だ、体が正常に拒絶反応を起こしているのだから】
【吐瀉物の味のみが今自分の意識を繋ぎとめている―――嗚呼、ロールシャッハが過ぎ去った後でよかった、こんな姿………】

【体が痙攣する。なんとか思考を遮断しなければ、しなければ焼き切れる―――だめだ、間に合わない】


【ロールシャッハの言葉を思い出す。「──── 鋭いニンゲンは、気付いてしまうのだから」】

【嗚呼、本当にその通り知ってしまえば………いや、どうだろうか。それすらも―――――「クソが」】


【―――『暗転』―――】

【………データの破損を確認………修復まで………。】  【………―――アバターの再構築―――………】

//お疲れ様でございました


519 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/23(火) 06:38:13 6.kk0qdE0
>>517

【季節が季節故に、はやり常人であるならばその格好には秋風に堪える物があるのだろうが】
【どうにもこの青年、かような事は気にならないらしい】
【しかし、異常なる事はすぐ側にあった】

「……」

【青年が発見した、その少女は怪我の血こそ止まってはいるものの、身体は全体的に青ざめ、触れればその砂と海水で汚れた皮膚は冷たい】
【また、その怪我も見慣れたものならば気がつく物だが……銃瘡である】
【只の海難事故、と言うわけでは無いのは明白だろう】

「……あ、う……」

【端末で誰か仲間を呼ぶ青年の声に反応してか、少女が意識を取り戻す】
【ゆっくりと、その目を開いてゆき】

「……だ、れ?」
「……おにい、ちゃ、だれ?こ、こ、は?さ、むい……」

【緩慢な話し方で、ともすればか細く弱々しい】
【秋の海風に掻き消えてしまいそうな、そんな声】
【さらにその、生気の尽きかけた瞳は、何処か青年に怯えの色を孕んで】


520 : ◆RqRnviRidE :2018/10/23(火) 14:15:29 TJW1gneg0
>>506

へーえ、化け猫と人間のハーフね──よーするにあれだ、亜人てやつだな。
だからあんなにビックリするくらい身軽だったんだ、うんうん、なるほどね。

【つがるの正体を知り、彼女の軽快な身のこなしの秘密に迫ったポチは頷いて納得を示すだろう】
【にま、と冗談ぽく笑いながら、「撫でたらごろごろ言ったりするのかにゃ?」と手をワキワキさせて】
【「……あ、でも。」と何かを思い出したらしく、急に真面目な顔をして、声を抑えながら言葉を続ける】

隠すんなら隠し通さないとやべーかもよ。 ここに居るのが俺で良かったけど。
どっかに居るらしいんだ、その……いわゆる“人外狩り”ってやつが。

団長言ってた、『ジャックドーズ・パーティ(烏の集い)』に気を付けろって。
風と鳥の噂は息をするより早いんだってさ。 どこで見てるかも分かんないから。

【神妙な面持ちをして打ち明けたのは“人外狩り”の存在だった。 集い、ということは少なくとも二名以上は居るらしく】
【近ごろ稀に、火と櫻の辺りで噂話が出るのだという。 持ち去られてしまったかのように、頭部だけが無い人外の遺骸が見つかるそうだ】
【だからつがるも気を付けなよ、と忠告するのは、やっぱり少年がひどくお節介焼きだからなのだろう】

んー、んぅ、……そっか、本人から聞いたんじゃないなら尚更きついかもだなぁ。

でも今は大丈夫なんだろ? その──夕月ちゃんって子がどんな子かは知らないけどさ、
俺なら普段通りに接してくれた方が嬉しいよ。 それこそ一回食って飲んで遊んでみたらいいんじゃないかな。
それに今辞めたり逃げたりしたら、たぶんもっと、これからの色んなことを後悔するかも…………

【それからそう言ってポチはにへらと笑う。 友達ならきっと分かってくれるって、能天気だけれどどこまでも素直なんだろう】
【つがるの声音とは相反して、声音を落とさないよう朗らかに努める。 言葉の端に、彼女を励ましたい気持ちを窺わせて──】


顔合わすのが怖いなら、まず電話とかメールで────【\ プッ /】────あっ。


【唐突に携帯端末から短い電子音が鳴った。少年の指で「発信」が押下されたのが見えただろうか。】

【 ──────── 件の『夕月ちゃん』宛に。 】


521 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/23(火) 18:37:39 BRNVt/Aw0
>>520

亜人……そういう言い方もあるんだ……て……ふえっ!?
【要するに亜人という事かという言葉にそういう言葉もあるのか、と感心するつがる。しかし相手が手をワキワキさせたのを見て慌ててキャスケットを押さえザッ、と後退する】

え、人外狩り……?そんなのもいるの……?嫌だなぁ……
【はあ、とため息。ただでさえも魔能制限法で異端への風当たりが強いのにって愚痴をこぼして、けれどもふと気付いたように】

あれ、でも団長さんはちゃんと人前に姿出してるんだよね?団の代表者なんだし公演の後に挨拶とか……
【……まさか私を怖がらせようとして嘘吐いてる?なんてジト目で少年を見る】
【戦闘で距離を少しは縮めたにせよやはり初対面。相手の事を完全に信じきってはいないようで】


そりゃ……少しは不安材料も残ってるけど……今はそれなりに……
【相手の今は大丈夫なんだろう、という問いにおずおずと頷く彼女。しかし、普段通りに接した方が、と言われればふと俯いて】

…………たしだって…………ようと……たよ……

私だって最初は普段通り振る舞おうとしてたよ!
忘れてやるのが一番だって他の人に言われたから!そうしようとしてたよ!
でも……っ、でも駄目なの!そうしようとしたって上手く振る舞えないの!
あの子に接する度にあの子がされた事が浮かんできてどんな顔したら良いか分かんなくなるの!
あの子が酷い目に遭ってる時にただ裏切られたって勘違いしてやさぐれてた自分が嫌になるの!自分の無能を再確認させられるの!謝ったって謝りきれない!赦されたって自分を赦しきれない!だって私あの子の為に何にも出来なくて……
本当は待ってなんかなかったのに!居場所なんか守ってなんかなかったのに!居場所を守っててくれたんでしょ、なんて……そんな訳ないのに!
居場所を守る事もしてなかった!助けに行く事もしなかった!代わりに情報を得ようとしたけどそれも駄目だった!私なんかじゃ何も出来ないんだ!
だったら友達なんかやめちゃった方が良い!友達思いなんかやめちゃった方が良い!絶対そうに決まってる!
何の役にもたてないんなら私なんかいない方が良いに決まってんじゃん!ねえ!そうでしょ!?そうだって──
【そこまで一気に叫んで止まる。ちらりと見えた端末の画面。きっと電話は──】
【だとしたらどこから聞こえているんだろう?きっと、もう終わりなんだって彼女はがくりと膝をついて】

…………もう……どーでもいーや……
【力なく笑って】


522 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/23(火) 19:48:29 sYdu55Og0
>>495

【そこにふと現れたのはもっと異質な人物だっただろう。それは真っ白な傘を差していた】
【天気は関係ない。三角形が折り重なったような鋭角的なデザインの傘を差しているのはまた同じく】
【真っ白なスーツの人物だった。銀髪はマッシュで前髪を流していて、今風の中性的な青年だ】
【まつげは長く髪と同じ色をしていた。指先も白の手袋で覆い、靴も先まで白い】

ずいぶんと怒っているね。一体、何が君をそんなに怒らせたというんだい?

【青年は微笑を浮かべていた。声もまた同じく中性的でわずかに耳をそばだてないと聞き取りづらい声量で話した】

【こんな場所なのにまるで埃の一つもない。むしろ、人間味や生気のようなものが薄いようなそんな様子であった】
【相対的に浮き彫りになるのは―――真っ白な死。幽霊のような不気味さを彼はまとっていた】

/よろしければお願いしますー!


523 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/10/23(火) 21:33:02 ZCHlt7mo0
>>519

出血は……とりあえず、収まってはいる様だね……でも、散々海水に洗われてるんだろう……これじゃあ、傷口に良くな――――ッ?
これは……撃たれた跡か……!? ――――――――『向こう』に連絡入れといて、正解だったらしいね…………!

【『助け』が来るまでの間、青年はとにかく少女の状態を把握しようと、その身体に残る傷を確かめていた】
【傷口の状態は良くない。散々海水の刺激を受けている事が予想されるうえに、何の雑菌に巻き込まれたとも限らないのだ】
【ともあれ、適切な治療が必要だろうと思われるのだが――――その傷の正体に感づくと、表情に戦慄が走る】
【「訳ありっぽい」などと、第一印象で語っていたが、どうやらそれは間違いないのだと、銃創ははっきりと物語っていた】

【――――厄介事に繋がっているのかもしれない。だが、それは望むところだと、青年は口元にぐっと力を籠める】

ッ……気が付いたか?
――――まだ、動かないで。身体の傷は、そう安くない………ッ

【待ちながら、どうやら意識を取り戻したらしい少女に、青年は静かに制止の言葉をかける。まだ、安全に移動するあてもないのに、無理に体を動かさせる訳にもいかない】
【まずは待つことが必要なのだが――――少女の身体は冷え切っている。当人も、それが堪えているようだと知り】

――――これで、少しは楽になる…………『ブレッシングヒート』……

【青年は、ポケットから赤いクリスタルを取りだすと、少女へと翳す――――赤い光が照射され、心身共に温めていくだろう】
【クリスタルは、その一挙で瓦解してしまうが、少なくとも役は成したと言って良いだろう】

「――――――――どうしたのだ、シャッテン!?」
ッ、ヴォーダン、なんで君が……連絡を入れたのは――――
「たまたま一緒にいたのだ。先に行ってくれと言われてな――――その子供が、話にあった……?」
あぁ、そうさ……明らかに、何者かに狙われた格好だよ。今のご時世だ、何があったのか、分かったもんじゃない――――この子の応急処置と、連れていくの、頼むよ……!

【そうこうしているうちに、頼んでいた応援が到着する。それはどうやら、青年の予想とは、違っていた人物の様だが――――】

【分厚い筋肉質の肉体を暗緑色の皮膚で覆い、赤茶けた髪をもっさりと生やしている】
【何かの獣の皮革を材料としたらしいと思しき頑丈な半ズボンに、両腰に巨大な短斧(柄の短い斧)をぶら下げた】
【素肌を晒している上半身の、その胸元に焼きごてらしきもので魔方陣の様なものを焼きいれている、身長220cm程の巨人】

【その大男は、倒れている少女を一瞥すると、背中に背負ったリュックを素早く解き、粉末に満ちた小瓶を取りだす】
【そのコルク栓を抜くと、さっと少女の身体に粉末を一振りふりかける――――キラキラと輝く粉が、傷を少しずつ癒していくだろう】

――――今から、安全なところに君を引き上げてあげるからね……まだ身体は辛いだろうけど、もう少しの辛抱だよ――――ヴォーダン、頼むよ……!
「うむ――――人間の子供など、俺には手荷物とそう変わらん。任せろ――――」

【応急処置を済ませると、大男は少女の身体を抱きかかえるようにして持ち上げる。体躯に違わぬ膂力があるようで、あっさりとその身体を持ち上げた】
【当然、最新の注意を払いながら、身体に負担をかけないように――――少女に励ましの言葉をかけながら、青年は先導する様に前に立った――――】


524 : ◆RqRnviRidE :2018/10/23(火) 21:57:39 TJW1gneg0
>>521

うんにゃ、マジだよこれホント。 団長の仲間もそいつらの頭にやられたんだってさ。
それに団長は特別物怖じしないだけだよ。狼であることこそが誇りだなんだって言ってたな。
……いいオッサンだから最近引きこもりがちだけど。

【信用されてないな、とちょっぴり苦笑を浮かべる。 まあ無理もない、そもそも出会って一日も経っていないのだし】
【とは言え(茶化したような言動はあったものの)、こればっかりは嘘をつく道理がない。 頭の仇でもあると言うのなら尚更のこと】

【やがて激昂する少女を見据える琥珀色の眼は、真正直で真っ直ぐで、きっと何処までも濁ることなく】
【差し向けられた感情の波にも尻尾を巻かず、滔々と紡がれる少女の真心を黙したまま受け止めるのだろう】
【そうして歯痒そうに唇を噛む。 だってどんな励ましの言葉も、今はただ体裁のいい欺瞞にしか過ぎないのだから】


────そんなこと、…………ないだろ。


【絞り出されたボーイ・ソプラノは言い様の無い感情に震え、不安定なビブラートが声音をさざ波立たせる】
【「話したってどーせ分かんない」──少女の言葉が想起され、掛ける言葉も無いことにまた、歯噛みして】

【『通話中』の表示の画面を、じっとにらみつけた。 一部始終は向こうの相手に届いているんだろうか】
【本意では無いにしろ塞き止め切れなかった真意を知って、その子はいったい何を思っているんだろうか】

【少年から直接問うことはない。 舞台上に立つ演者は自分でない。 故にこれを持ち続ける義理がない】
【膝をつく少女へ歩み寄り、片膝を着き、口を真一文字に結んでその手に携帯端末を握らせようとする】
【多少抵抗されようとも無理矢理にでも渡そうとするはずだ。 無言で受け取るように促すのだろう】


…………ホントは、どうでも、よくないだろ。

じゃなきゃ、そんなに、苦しくなるまで悩まない……。


だから、あとは君次第なんだよ、つがる。 俺は語り部にはなれないから。


【──彼女が勝てば、彼が携帯端末を「好きにさせてもらう」と約束をした。】
【だからこれで約束通りなんだとそう言って、──さっきよりもひどく意地悪だった。】


525 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/23(火) 22:46:07 BRNVt/Aw0
>>524

ええ……実害も出てるんだ……

……しかし人外が標的、かぁ……敵ながら上手い所ついてくるよなぁ……
【普通の人間にしてみれば自分達は等しく『化け物』だ。その『化け物』が死ぬくらいで人間達に害は及ばない。寧ろそういうのが死ぬのならば歓迎すべき事なのだろう。当然自分達を救う者など人間にはいない筈だ、と思考してため息をついて】


【膝をついた自分に歩み寄り、端末を手渡そうとする少年。一度は拒もうとするが手の中にねじ込まれてしまって】

……いいの……全部全部、もういいの……
きっとバレちゃったもん……夕月ちゃんが知られたくなかった事私に知られちゃってたんだって……だから、もうきっと友達じゃいられない……
でもいいの……これで良かったの……
私なんかずっと『栂流(ツガル)』のままだったんだもん……
【光のない目で首をゆるゆると横に振り、力なく答える少女。しかし、急にハッとしたように、そうだ、と呟いて、そうして目を見開いて】


──そうだよ

きっと、そうだ……私はずっと『栂流』だった……ずっと『要らない子』だった……
だって…………わたし…………はじめから…………!
【ぎゅっと端末を握り締める。震える手で通話の終了ボタンを押そうとして】


526 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/24(水) 00:08:29 smh2z7gk0
>>522

【――――――※警告※――――――】
【―――この事象域にはバグが検出されています―――】



【声をかけられた赤髪の青年は瞬時に身構えて振り返る、そして相手の姿を見れば大きく舌打ち】
【一度呼吸を整えれば相手を睨みつけながら大型ナイフを下げる。下げたただけだむしろグリップを握る力は強い】
【「見ての通りだ」と簡潔に述べれば背後にある〝ナニカ〟が相手に見えるように身体をどかす】

ウチの下部組織の下っ端の下っ端の小間使いが〝何かされた〟。
まぁこの辺りじゃあ〝悪い事〟は良くあることだがどうにもこうにも〝異常〟過ぎてな。

【灯のない路地の奥へ月明かりが差し込む―――。】
【奥にある〝ナニカ〟。それは人のようでもあったし獣のようでもあったし、ただのヘドロの塊にも見えた】
【股は裂け、腕や足はまるで無理にくっつけたブロック玩具のように異常な数に枝分かれをしている。】
【腐臭が酷い、辺りに散らばる血のせいか?―――だがもう少し近づけば胴体の方がどうなっているかも見えそうだ。】



【――――――「ところでよ」】

【赤髪の青年はポツリと呟いて、スーツの懐へと左手を入れる。】
【そして懐から黒光りする物体、ようは拳銃を取り出して相手へと銃口を向ける。神経質な瞳が一層鋭く】

この俺の背後に呑気に立つなんざ相当な命知らずだな?それにその身なり、ここいらの者じゃねぇな?
―――それとも〝ここいらの者〟なのか?あ?答えやがれマネキン野郎。

【赤髪の青年はこれでもファミリーのためにそれなりに前線で身体を張ってきた経験がある。】
【故に分かる。目の前の銀髪の青年は―――〝危険〟。赤髪の青年の奥底にある思考が警鐘を鳴らす。】

【トントンと、地面を神経質に叩く音は早くなっていく。まるで赤髪の青年の心音に同調するかのように―――】

//ぜひ、宜しくお願いします!


527 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/10/24(水) 06:08:15 I.3DEeWg0
【裏町】

【路地裏の先に広がる、薄暗い街並み。一時期は、サーペント・カルトが生贄の拉致の為に使っていた現場でもあったという】
【薄汚れた建物が、シャッターの降りた店が、汚れた地面に寂しく佇む】

【こういった場所は、闇に生きるものたちにはうってつけだ。人目を避け、潜み、隠れ、悪事をなす者たちには】


「……ようやく、大口の取引の機会が来ましたね、ボス」
ああ。連中からある程度の信用を勝ち取るにも時間が必要だったが……その甲斐はあった

【裏町の一角、この場では珍しくもない崩れかかった商業施設の廃墟の中に、その二人はいた】
【一人は、鉛色の髪をオールバックにした、彫りの深い顔立ちの男。カーキ色のジャyケットの上に黒いベストを着用し】
【迷彩柄のズボンと黒い軍用ブーツを履いている。両耳と口元、舌の外周にびっしりと。それぞれに鉛色のピアスをつけた風貌は、明らかに堅気ではない】

【もう一人は、堅気ではないどころか異形といっていい大男だった。身長は軽く2メートルを超えているだろう。角ばった顔つきに黒い瞳の三つ目】
【そう、三つ目だ。両目の上、額に巨大な一つ目が埋まっている。その視界を遮らないよう、黒髪は短く切り揃えられている】
【薄汚れた灰色の作業着の上に、黒いラバー地のエプロン。足にはゴム長靴。肉屋の格好だ】


【二人の悪漢の後ろには、黒い大型車両が停車している。中には大きなアタッシェケースが複数。ある取引の代価だ】

「ヨシビ商会……最近じわじわと販路を拡大してるらしいですが。この間の海軍の件といい、櫻もきな臭くなってきましたなあぁ……」

いつの世も、どこにでも闇はあると言うことだ。案外、その闇同士が繋がっているのかもしれんがな
そろそろ時間だ。複数回の取引を経て、ようやく巡ってきた大口の買い物の機会だからな
お互い、損のない取引にしたいものだ。連中に上客だと認められれば、なお良い

「今回は高額商品ですからねえぇ……三頭揃いのカマイタチ。滅多にお目にかかれるもんじゃありやせん」
「上手いこと仕込めば、良い戦力になってくれるでしょうよおぉ……」

【悪漢どもは、崩れた天井から差し込む薄明かりを見上げる】
【自分たちの勢力を、より固めるための一手を待ちながら】

【三兄弟のカマイタチ。伝承通りの、三位一体の妖怪。垂涎のレア物商品を、己の尖兵とすべく】

/予約です。ヨシビ商会さんの方、遅くなって申し訳ありません。よろしくお願いいたします!


528 : ◆RqRnviRidE :2018/10/24(水) 07:25:01 RF79j5nc0
>>525

──“栂、流”……?

……それは、きっと分かんないよ。 俺にも、君にも。
だけど、全部君が決めたことだから、……それなら。

【──ならば、これ以上の口出しは最早無用であった。 気の利いたアドリブの効かないことが悔やまれたが】

【少年を始めとした彼ら劇団の役目は、まず第一に何者かに機会と切っ掛けを与えることにしか過ぎず】
【故にこそ、逆風の吹き荒ぶ此度、機械仕掛けの女神も現れることはなかった。 ただそれだけのことだ】

【少女の震える指が通話の終了ボタンへ向かう。 物理的にその手を遮るものはない】
【けれど押下される間際、少年はふいに口を開き、淡々と言葉を連ねるだろう】

…………俺さ、ちっちゃい頃から正義のヒーローになるのが夢だったんだよね。
でもなり方が分かんなくて、道にも迷って、そんな時に団長に出会って言われたんだ。

「 強さこそが正義だ、正義の為に戦って強くなれ 」────って。

だからさ、つがる……役立たずだなんて、そんなこと言わずにさ。
これ以上後悔することのないように、例えば、まずは──、──

【 ──── “ぷつり”。 ノイズ混じりに携帯端末の発信が途切れてしまう。 】
【電波か操作か、原因はさておき。 語る言葉も電波に乗るのはそこまでだった】

──まずは一回、友達も何もかもかなぐり捨ててしまって、強さだけを追い求めてみるのはどうだろう?
そんで、自分(つがる)じゃない他人(だれか)を演(や)ってみるんだ。

【「──でも、ただの提案だから」と一言添えて、強制力は微塵にも無いということを誓うだろう】
【そうしてそれから、少年は返事も待たずに立ち上がり、踵を返して置き去りの紙を取りに戻る】

【振り向きざま、ポチが肩越しにつがるへ向けるのは、再び秋空のごとく屈託の無い笑みで】

──劇団『コルーヴァ』の門戸は開かれてるからさ。
いつでも頼ってくれて良いんだぜ。

【──と。 要らない子じゃないんだっていうことを告げた】


529 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/24(水) 08:43:06 6.kk0qdE0
>>523

【幸いにも、いや不幸中の幸いと呼ぶべきだろうか】
【頭部の銃瘡は偶然かあるいは狙ってそうされたか、銃弾が掠めたさいに付いたもののようで】
【腹部の銃瘡は弾は貫通し、内臓等も傷付いている様子は無い】
【まるで狙って撃ったかのように、致命傷にはなり得ない】
【まさに、青年の推察通り、破傷風やその他感染症、出血による体力消耗、長時間海水に晒されたことによる低体温が懸念される】

「お、にい、ちゃ、わたし、わた、し……」
「あ、あった、かい、よ、おにいちゃ……」

【クリスタルと同色の、赤い光の照射】
【少女の身体を照らすと、それは瓦解するも確かに効果はあったようで】
【肌に赤い色味が戻り、小さな震えも収まっていった】

「おにいちゃ、あったかい、あった、かいよ」

【自分を助けてくれている、そんな青年の様子が伝わったのか、か細く、だが安心したような声で】
【そうして、少しの間の後に、青年が呼んだ救援、正確には電話の人物とは異なる様だが、2mを超える体躯の人物が姿を見せた】
【堅牢そうな肉体、堂々とした体躯、何処か獅子を思わせる様な髪、更には厚い胸板に刻印された魔方陣と腰の両側に据え付けられた短斧】

「ひッ!お、おにいちゃ、こ、この、ひと……」

【青年の腕の中、少女は怯えの色を見せ、弱々しくもぎゅっと、青年の衣服を掴む】
【だが……】

「ッ!?」
「あ、けが、ち……おいちゃ、なおして、くれ、たの?」

【ヴォーダンと呼ばれた大男が、少女に何かの粉を振り掛ける】
【すると、キラキラと輝くその粉が、傷を血の跡を徐々に塞いで行く】
【その回復に、心地良さを感じたのか、表情からも強張りや痛みと言ったものは消えて】

「うん……」
「おいちゃ、おにいちゃ、ありが、とう」
「おいちゃ、おおき、ちからもち?」
「おにいちゃ、おにいちゃ、どこ、に、いくの?」

【ヴォーダンの身体に、まさにひょいと持ち上げられ、抱えられる形になるのだろう】
【2人の応急的治療の為か、最初に見せていた怯えも息を潜め、また体力も取り戻し始めている】
【自然に、交わす言葉も増えてきた】


【そこに……】

「ああ、その子だ、その子」
「やはり、この海岸でしたか、見事ですね」
「その日の海流を計算すれば、まあ詮無い事よ……」

【2人と抱えられた少女の、その背中からになる】
【ふいに、声がかけられた】
【声の主は5人、の男だった、皆一様に明るめのグレーの古めかしいデザインのスーツに、ベスト、高山帽を目深に被って目元は見えない】

「……」
「……すみません、お二方、その子供は我々の知り合いの、さる御方の子供でして、先日から行方不明になっていたのですよ」
「我々が付近を捜して居まして……こんな所に居たとは、ありがとうございました、なんとお礼を申したら良いやら」
「さあ、帰りましょう、恩人のお2人には後日御礼に伺わせて頂きます」

【男たちは見えない目線で目配せした後、真ん中の男が口元に笑みを浮かべて、こう話した】
【台詞の様に、異様にスラスラと、あまり抑揚なく話し、そして手を差し伸べて来た、少女をこちらに、と】

「おいちゃ、おにいちゃ……」

【ヴォーダンにしがみつく様に、少女は震え、怯えを見せている】


530 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/24(水) 12:36:37 BRNVt/Aw0
>>527

【商業施設だった廃墟の中、入り口の方から近付いてきたのは小さな生き物の甲高い鳴き声と幾つかの足音。下駄、草鞋、ブーツとそれは様々で】

──あ、いたいたー!多分あの人達だよねー?

あはは、良かったー!今回"は"ちゃんと"生きてた"ねー
【少し反響するように聞こえた年若い男の声。続くように「当たり前だろう失礼だぞ」「"あんな事"普通はそう起こるめぇよ」という別の声もして】

【やがて現れた幾つかの人影。その殆どが櫻の人間らしき服装をしていて】

「ご機嫌良う、カニバディール様。ヨシビ商会で御座います」
【恭しく挨拶をする着物の男。本日お買い求めの商品は此方になりますな?と示した先には檻に入った三匹の鼬のような生き物。少しばかり普通の鼬と違う部位などが見受けられれば成程これらが鎌鼬に相違なくて】

【櫻の衣服を纏った男達はどれも此処数回で何度も見た顔馴染み。しかしその中に初めて見る顔が一つ。新人か、それとも別の所から回されたか】
【着物姿の男達の中に混ざるには一際目立つ格好をした二十歳其処らの青年であった】
【黒の短髪に黒緑色の着物と灰色の袴。草色のインバネスコートにこれまた草色の軍帽】
【コートの襟元には商会のマークなのだろう、目の四方に縦長の菱形をあしらったデザインのブローチを着けていて。足元は黒い軍靴。ならば先程のブーツの足音は恐らく彼のもので】

【彼は興味津々といった様子でカニバディールの容姿をじっと見ていて、「すっげー、噂通り目がいっぱいあるんだー」などと呟いており傍らの同僚に、不躾だぞ、と頭を叩かれて口を尖らせている。その少しばかり語尾が伸びる声は彼らが到着する前に聞こえた意味深な事を言っていた声と同じで】


531 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/24(水) 12:37:59 BRNVt/Aw0
>>528

『強さこそが』──
そっか……
【それが君の信条、なんだね、と呟いた刹那指が触れ端末が切れる】
【そうして続いた提案。一度全てかなぐり捨てて強さのみを追い求めてみてはどうか、と。そうして自分ではない誰かを演じてみては、と】

【それには彼女は答えなかった。何かを考え込むように俯いて】

──『強い』だけが正義じゃないよ、きっと
だって、悪い奴だって『強い』じゃない
【ぽつ、と呟く。精神、ではなく単純に力の話だととらえたのだろう】

【少女はゆらりと立ち上がる。まだ答えは見つからないけど此処にいつまでもいてはいけない気がしたから】

【少女は何も言わず歩き出す。私は『何』に『演(な)れる』のだろうと思いながら】

【(──今まで散々演じてきたのに?)(■■が■■■な■■■を?)】
【頭の中、浮かび上がるウィステリアの乙女の幻影】
【「本当は■の事、■■■た癖によくそんな事が言えますね?栂流さん?」】
【幻影の姿が次第に変わる。藤色は濡羽色に、赤は金に。纏う姿は市女姿】
【少女は暫し目を瞠りその幻影を見つめて】
【そうして──嗤った】





/こんなところでしょうか!絡みお疲れさまでした!


532 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/10/24(水) 22:56:19 ZCHlt7mo0
>>529

(……盲貫してはいないみたいだ。とりあえず安心と言うところかな……。本気で狙われてたのは、どうも間違いないみたいだけど……)

【傷跡をとりあえず検分し、青年は眉間にしわを寄せていた。頭を狙った銃撃というのを、偶然掠めただけで、殺意を伴った狙撃と受け取ったのだろう】
【体内に銃弾が残るという事もなく、このまま傷の手当さえ十全にできれば、身体の方は問題がないだろうと取れるのだが】
【――――問題は、この少女の素性、そして狙われた理由という事になるだろう】

――――今はまだ、ここまでしか出来ないけども、後で着替えと毛布を用意してあげる。もう少しの辛抱だよ……

【クリスタルの残骸を風に吹き流しながら、青年は少女の手を取る。青年も、情に厚い所があったのだろう】
【荒んだ生活をしている事が見て取れる風貌だが、その表情は穏やかなものだった】

ふ……怖がられてるね、ヴォーダン
「まぁ、仕方あるまい……この状況ではな。普段でも、興味を持たれるか怖がられるかのどちらかだ……
 ――――薬の方は、問題なく効いてるようだな。もう大丈夫だ。後はちゃんと治療すれば、身体も治るだろう……」

【現れた大男――――ヴォーダンも、自分が怯えられる事には慣れているのだろう。苦笑しながらその様子を見守る】
【ただでさえ、状況に怯えている様子の少女には、インパクトがあり過ぎたという自覚はある。ただ、どうやら傷と共に、少女の態度も解れてきたようで】

「あぁ……オーガは、ただの人間よりも力持ちだ。俺は、巨人だよ……」
大丈夫、安心できる場所だよ……少し休んだら、食事も用意してあげようね。多分、身体も疲れてるだろう?

【たどたどしいながらも、少女との間にコミュニケーションが成立しつつある。それぞれに、少女に調子を合わせながら、少しずつ言葉を交わしていった】



――――ッ
「ぬ…………!?」

【そうして歩き去ろうとしていたところに、背後から声を掛けられ、一同は振り向く】
【居並ぶ5人の男たちに、2人連れは相対する格好となる】

――――へぇ、なるほどそうだったんですか……そりゃ、丁度良かったという事になるのかな。じゃあ、ヴォーダン……?
「――――ッ!」
(……分かってる。こんなあからさまで、訳ありじゃないっていう方が無理筋ってもんだよ。分かってるから……!)

【青年が一歩前に出る形で、5人の代表の言葉に応じる。どこか無機質なその言葉に、素直に応じる様な態度を見せて、ヴォーダンを振り返った】
【――――少女が再び怯えている。それを察しているヴォーダンは、何事かと、振り返る青年に対して咎めるような視線を向けたが】
【当の青年も、ヴォーダンに対して、顔を顰めながらのウィンクで合図を送る――――最初にきな臭い匂いを嗅ぎつけたのは、そもそも青年の方なのだ】

――――折角だ、一緒に行きましょう。まだこの子の名前も伺ってませんしねぇ……

【再度男たちへと振り返ると、青年は当たり障りのない態度で言葉を返しながら「もしも男たちの腹に一物あれば、探られたくないだろう」箇所を選択的に触れる】
【――――あくまで青年は男たちに応じているが、なぜかヴォーダンは沈黙する。そんな曖昧な態度を見せる事で時間を稼ぎつつ、探りを入れた格好だった】
【心配はない――――そう言いたげに、ヴォーダンは少女の身体を、より強く抱きすくめる。少女の震えに応えるように――――】


533 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/25(木) 16:00:49 6.kk0qdE0
>>532

「おにいちゃ、きれい、それ……」

【少女の体温を取り戻したクリスタルは、サラサラと風に舞い、光を反射し幾分か髪にかかるだろうか】
【それは同じくシャッテンと呼ばれた青年の、穏やかな顔にも、安心を取り戻し始めた少女の目に映り】
【やがてやって来た、ヴォーダンとも……】

「おーが?おーがは、きょじん?おいちゃも、きょじん?ちから、もち?」

【持ち前の好奇心なのだろうか、そんな様子にコミュニケーションが取れ始めた】

「ばしょ?あん、しん?」
「しょく、じ、たべ、もの?」

【少女にとって、この場で唯一の頼れる】
【そして、心を許せる人に出会えた、それが大きかったのか、年相応の表情で、拙い言葉で2人と会話を交わす】

【だが……】

「……」
「……」

【現れた5人の男達、彼らはシャッテンからの返答を聞くや否や、顔を見合わせて影になっている目で目配せする様にして】
【やがてまた、2人と少女に向き直り】

「左様ですか、やはりそう簡単には行きませんね、では……」





ーー死んでくださいーー





【少女を抱える2人にこう短く、淡々と告げ】
【5人はその装いを次の瞬間変貌させていた】
【一様に、カーキ色の水兵服に軍の階級章の様な物、その上には桜の花に錨の意匠のワッペン】
【2人が知っているのかは不明だが、櫻の国魔導海軍のシンボルマークと、そこの陸戦隊の制服だ】
【真ん中の男は拳銃と軍刀を、他の者は着剣したボルトアクション式小銃を構えている】

「元より其れを見られた以上、触れられた以上、死んで頂くつもりでした、問答は無用です」

【その言葉と共に、一斉にボルトが引かれ、弾薬が装填される】
【引き金に指が掛かるまで、幾許も無いだろう】


534 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/25(木) 19:48:40 AXIgZspc0
>>526

「こたえやがれ?」

【その言葉を青年はリピートして、そしてクツクツと笑っていた。子供が言葉の言い間違いをしているのを見て居るように】

不思議だな…君は君のそばにある"何か”、は"ナニカ”でもいいのに、僕は"何者か”では許せないんだね?
なぜだろう?なぜ君は…僕の方を気にするんだい?

それは僕は君の言うところの"悪い事”にはあてはまらないからかな?
それとも"異常すぎる”ものだから?…ああそうか、"なにか”はすでに"ここいら”に内包されているけど
僕はまだ"此処”にはふくまれていないからかな?

【青年は言葉を一つ一つ紐解いていくがごとく考え込んでいた。顎先に指を当ててわざとらしく考え込み、傘を回した】

……ああ、ごめんごめん。考え過ぎてしまうのは僕の悪い癖なんだ。決して、怒らせるつもりはないよ。
勿体ぶらずに応えるとしよう。僕は"ここいらのものじゃない”。

じゃあ、今度は僕から一つ聞かせてもらっていいかな?君は―――――

【青年は微笑を浮かべながら、銃口を向ける相手に向かって、真っ直ぐに。】


この世界を愛しているかい?


535 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/25(木) 20:18:49 WMHqDivw0
【水の国、川沿い――散歩道、出店が多く立ち並ぶ、平和なエリア】
【あるいは家族で。あるいは恋人と。あるいはクラスメイトたちと。みんな、めいめい】
【平和に結ばれた関係性の人々と何かを買って、食べながら歩いたり、ベンチに座ったりして】
【ひどく穏やかな時間を過ごしていた。昨今、世界中を渦巻く不穏な闇なんてかけらほども知らない顔して】

【――――――――そんな中で、】

…………もしもし? つがるん、どした? てゆーか最近大丈夫だった?
風邪とか引いて寝込んでたの? ネコだけに! わはは! ……ってのは置いといてネ、
ねーホントに大丈夫? どしたの急に電話かけてきて、……おーい。もしもし?
ちゃんと繋がってる? もしもーし、ねえってば、どうしたの、……、…………、

【ひとりきりとは言えそれなりにこの場の空気を楽しんでいるような、少女がひとり、ベンチに座っていた】
【その証拠に片手にクレープ持ってたし。寒くなってきたのに浮かれてるから服装はパーカー一枚だし】
【フードの下に隠す赤色の髪も眼も無駄にきらきら輝いていた気がした。実際に輝いているのは】
【クレープを持っているのとは別のほう、左手の薬指に植わっている指輪だったけど。けど、】

………………、……………………、

【――――なにかを切欠に急にその輝きが曇ったように見えた。実際、少女は顔を引き攣らせて、息を潜め】
【スマホを耳にひっつけたまま硬直しているのだった。呆然、というのがよく似合う表情を浮かべて】
【世界の何もかもに対する注意力が失われたようだった。どこでもない、少なくとも目の前にあるここではない】
【どこかをじいっと見つめ続けて、だから、クレープを持つ手からも力が失われて――「ぼたっ」】
【豪勢に贅沢に乗っけたトッピング類だって零してしまう。バニラのアイスも、バナナも、チョコソースも】
【生クリームも、なにもかも――ぼたぼた落としてしまうのにも気を留めない。それで、履いている赤い靴が汚れても】

【――――つー、つー。通話終了を告げる電子音と、周囲の人々が立てる穏やかな賑わいの音が】
【彼女の頭の中で混ざり合ってひどい感情の色合いを作り上げていた。混乱。あるいは何かに対する、絶望】


536 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/25(木) 20:22:46 E1nVzEpQ0
>>503

【疼かせるように音もなく掻きしゃなぐる指先は切望を暴き立てるようであった。 ─── 縋ると呼ぶには優しく抱き締められて、少女の重みを受け止める背筋が幽けく震える。】
【胸許に漏れる呼吸が清潔さを残す白いシャツを湿らせて、やがてはその奥に秘した純白の豊満さすらも潤わせるなら、吐息の生温かさは多幸感に同義である。】
【 ─── 茫洋に夢見ていたティーンエイジを喪失の内に過ごしたのは女も同じだった。ペンとカバンとボーイフレンドの左掌を繋ぐべきだった手には銃ばかり握っていた。】
【ひとでなしに身を窶した事に後悔はしてこなかった。成り果てた機械仕掛けの肉体には歓びさえあった。それでも振り返るように足跡を惜しむことはしたから】
【ならば今からのレトロスペクトも許されるに違いなかった。 ─── 母親の穏やかな微笑みを象って緩む白い頬は、きっと憧憬と望郷の暗喩だろう。】


        「 ………─── 。」


【柔らかな胸にうずもれた顔が頤を上げ、目尻を緩ませた青い隻眼に少女の紅色を映すなら、 ─── 然し、その内奥に宿る怯懦の澱に、瑞々しい口許さえも曇る。】
【女が選んだのは非道であった。少女の帰るべき場所となり二度と悲しませないと、確かに誓っていた。まして嘗て少女が如何様に全てを失ったのか知っていたのだから】
【それでも純粋なまでのアンビバレンスであった。女は己れの正義を貫かねばならなかった。それが少女の望みと反する時、常に彼女は踏み躙ってきた。だが今は相争う事もなければ、愛しい人を傷付ける事は許されず】
【 ─── そういった難解な倫理的問題から目を逸らすように夜を過ごした。ひどく怯えて頻りの少女に、全て忘れて仕舞えばいいと、カーテンの締め切った部屋で繰り返したものは何処までも狂おしく】
【咎めるように右肩の傷が痛んでいた。もはや血も出る事さえないというのに。 ─── なにか別の言葉を紡ぎかけた唇を、噛み殺してアリアは少女の耳朶へ、そっと口先を寄せて、囁くのは】


      「 ──── ごめんなさい。」


【どうしようもない情念を、ただ一意的な謝罪に込める。 ─── それでも結局はどうする事もできないのだから、不条理を誤魔化すように両腕を抱き締め】
【互いの胸許が柔らかく潰れあって、相対距離を限りなくゼロへ近付ける。伸ばされる指先が白銀の髪をかき上げるならば、やはり変わらぬ火傷と銃創の醜い傷痕は、彼女を彼女たらしめていた】
【返答のようにアリアは抱き拉ぐ指先を背中に立てて、甘く背筋をなぞり上げ、首筋から頬までを撫ぜるなら、 ─── 触れる少女の額、かき分けられたウィステリアの奥】
【儚いものを愛でるように、そこへ口づけを落とすのだろう。唇を塞いでしまうのは余りに不誠実だったから。それでも事実として少女は余りに揺らいでいて、ふたりの重ねた関係もずっと、或いは今も】


537 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/25(木) 20:56:24 E1nVzEpQ0
>>509


「 ─── いいえ。"人にして信無くんば、其の可なるを知らざる也。"。よく分かりますよ。わたくし共も似たような手合いでございますから」
「通すべき筋って代物は何処の世界にも介在するもんです。世間様に望まれる筋を通せないような身の上であれば尚の事 ─── そうでしょう。」


【一通りの言葉を聞き遂げて、 ─── 先手を取る鋭い舌鋒にも飽くまで鷹揚に、後藤は言葉を返していく。】
【枯れたような笑いが宿しているのは単なる社交辞令的な敬意のみではないようだった。そういう顔をしていた。己れに利する害するを問わず、有能な人間への隔てない賞賛】
【『 ─── このボディは諜報には不向きですもの。』『そういう意味じゃあないと思うけどな。まあ結果として上手く行きそうだし、何よりじゃない?』対して護衛たちの通信は幾らか雑談調であった、が。】


「でしたら有線で繋ぎましょう。セキュリティに関してはご安心下さい ─── 地下設備は電波暗室ですし、課内の通信には全て外部ブートの暗号化OSを使用しています。」
「複素数ベースの擬似純粋乱数にクリアランス-デルタのハッシュ関数を噛ませた代物です。ハードウェア的な傍受の可能性も潰しております ─── "この通り"。」


【 ─── 幽かに、大気の流れが変わる。後藤自身の異能であった。音波の指向性を操作する、ごく諜報向きの異能。彼らの会話は彼ら自身にしか聞こえ得ない】
【「必要であれば、我々の方でボディチェック致しますが ─── 。」続く言葉には忌憚なく切り返すようなニュアンスも込もっていた。自身の構築したハイドアウトと、自身の選択した部下に対する、確かな信頼。】
【なれば危険性があるのは霧崎自身のみであると告げていた。それでも皮肉の類ではなく、つまり恙無く会話は続くだろうか。 ─── やがて黒髪の女が、有線ネットワークのケーブルを引き込むならば】
【壁に据え付けられたディスプレイと机上のタブレット端末に、淀みない所作で回線が接続される。独自構築のオペレーティングシステムが暗緑色の起動シーケンスをパスし、デスクトップが開かれるなら、万事は万全】


538 : 名無しさん :2018/10/25(木) 21:10:44 BWdM9pzA0
>>536

【それでも彼女は何かを選んだがために投げ捨てた青春の亡骸からきっと目を逸らしているのだろう、なるべく遠くへ、見えぬ場所に投げたのに】
【時として漂う腐敗臭からも意識を逸らして。――追想を嗜むには彼女はまだ幼すぎた、今に後悔なんてなくて/だけど巻き戻せるなら二度選ぶだろうか】

【(ねえ今だって後悔しているの、あの時轢き殺してしまった蛇を埋めずに直ぐ家に帰っていたら、もしかしたら、何かが変わったんじゃないかって)】

【――だのにこの胸元は愛おしすぎた。このためなら何度だって選びたくなってしまうと思えた。だけれどそのためにはいくつもの大事を犠牲にしなくちゃならなくて、】
【だから、そうして殺した大切の亡骸も、また、どこかに投げ捨てる。――――――確かであるのは蛇の神様に祈る時間と回数が目減りしていた、そうして相手と過ごすのを喜んだ】
【彼女の世界はもう二度と滅んでいたから。だからもう次はないって信じたかった。恋も愛も信仰も醒めたら夢みたいなものだと、――今もおんなじこと、貴女は言えるのかしら】
【そしてまたいつか滅ぶなら、――その熱量に焼き尽くされて死ぬしかないって、もう、四度目の世界を作り直すだけの希望を、きっと未来に、抱けないから】

――――――もう、どうしたの? アリアさんたら、――まだ"効いて"ます? もうちょっと休んでても、いいんですよ。
怒んないですよ。お昼寝だってしたらいいです。――そしたら私も隣で眠るから。……ね?

【柔らかな髪の付け根に唇を落とされるなら、――、その白銀の毛先をすらと退かした指先が、虚空に曖昧な形で取り残される。直後に、その頭に手を回そうとするなら】
【ひどく蕩ける吐息の笑みが漏れて、きっとひどく柔らかな力で撫ぜられるのだろう。なればきっと姉の立ち振る舞いだった、――母親、と呼ぶにはいくらも拙くて】
【――ならば、自分がどんな目をしていたのか、気づいているはずもなかった。葡萄酒の底に沈む滓に似る感情は単なる違和感だったかのように、優しげな顔に蕩けてしまえば】

【――――――はた、と、何か気づくような瞬き一つ。抱きしめ合ったまま、そっと身体を、起こして】

よいしょ、――、ふふ。いーこと思いついちゃいました。私が勝ったんだから、言うことだって聞いてもらっちゃいます。
……だからね、私に訊いてみたかったことって、なんですか? 教えてくれなかったら泣いちゃうの、気になって気になって、晩御飯も喉を通らなくなっちゃって――。

【必然的に口元を押し上げる形になるだろうか、一人で上手にセーターが着られた小さな子みたいに、どこか目をキラキラって輝かせて、視線を合わせ】
【そうしたらやっぱりこれも当たり前みたいに、額同士をこつんと合わせようとするのだろう、――だからもう遠慮なんてあるはずないけど、瞳をぐうと覗き込む】
【言葉に併せて表情も上手に作るんだった。――自分がどうしたら"かわいく"見えるのか分かっているらしかった。眉の角度も下がる眦も口角の形まで、めいっぱい、整えて】
【それでいてきっと練習だなんてしたことはないに違いなかった。だから上等の作法で扱われるともちろん機嫌が良くなるのはいつものことだった。だから、】

――――ねえねえ、教えてください、アリアさんばっかり"私のしたいこと"聞くの、ズルいじゃないですかぁ――。

【――自分のご機嫌を整える能力に長けているって、たぶん、そういう風に言い換えてみたなら、聞こえも良かった】
【だけれど一度落ち込んでしまったらなかなか戻ってこられないタイプだってバレていた。止まりかけの独楽みたいにぐらぐらしてしまうんだって、悟られていた】

【それでもこめかみ同士を擦り合わすような仕草の後に、耳元に囁く声音は、――こっちもまた知っているからってアピールするみたいに。耳元がこしょばいの、知っているのよ、って】


539 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/10/25(木) 21:58:13 ZCHlt7mo0
>>533

(――――妙に、言葉が曖昧……というよりも、稚拙というべきなのかな……?)
「(……妙な子供だな。まだ意識が混濁しているのか……いや、そんな事も無いと思うのだが……)」

【少女の言葉にあれこれと答えながらも、青年もヴォーダンも、その少女の様子に、不思議に思う事が出てきた】
【――――やけに言葉がたどたどしい。まるで、会話そのものに慣れていないような印象だ】
【示し合わせた訳でも無いのに、互いに疑問符の浮かんだ瞳を向け合い、視線を合わせる】

【――――出自自体が妙なのかもしれないという仮説を、直後の事態は導いてくれることになるのだが――――】



「ッ、おいシャッテンこいつら!」
チッ……――――やっぱり、そういう事だったんだねぇ……この銃創に、5人がかりの団体行動……おかしいなとは思ったんだよ……!

【突如、武装を解放する5人の男たちを前に、青年――――シャッテンとヴォーダンは、表情を引きつらせる】
【予想以上にあっさりと正体を現したのは、やはりアドバンテージを握っているという認識があるからなのだろう】
【――――こちらは、少女を保護しながらの戦闘行為と考えるだけで、既に状況は厳しいものを思わせる】

――――――――「問答は無用」なんだってさぁッ!!

【――――ただし。それは男たちの認識が正確ならば、の話だ――――シャッテンは、苛立ちとも殺意とも、なんとも形容しがたい狂気じみた笑みを浮かべながら、咆哮する】
【男たちに向けて――――否、正確には「男たちの背後に向けて」だった】

<――――『バーニングブーメラン』!!>

【そのシャッテンの声に答えるように、一団から離れた所から、男の声――――緑色の炎のようなもので構成された、光の刃が2発、弧を描きながら男たちへと撃ち出された】
【男たちが、どう対応するかにもよるが、少なくとも即殺の攻撃を放つ事は、阻止されるのだろう】

{――――――――櫻の海軍か。厳島ばかりか……俺の身内にまで手を出そうとは、な――――少々、軍人の分際で驕りが過ぎる様だな……}
<……『黒幕』か、それとも『円卓』か。あるいは全く関係ない陰謀か……ともあれ、お前たちに、真っ当な誇りがあるとは、思えんな……!>

【いつの間にか、一団のそばまで接近していた、2人組の仲間――――完全に、不意打ちを決めた格好になっていた】

【短いバイオレットの毛皮で全身を覆い、その上からフード付きのマントと半ズボンを着用している】
【左目へとめり込む様な、人相を歪ませている大きな傷跡、更に頬にも大きな傷跡の目立つ】
【ずんぐりむっくりとした体格の、尾の先が不自然に二つ裂きになっている、右目の眼光の鋭い、身長150cm前後の猫の特徴を宿した獣人】

【目元の黄色いバイザー以外の全てを、黒のパーツで構成されているヘッドギアを被り】
【胴体部に砲口、そして両腕にも多数の武器と思しきパーツを備えた、青を基調としたカラーのメカニカルな全身スーツを装備した】
【胸部装甲には、青い文字で『H.E.X.A.』と塗装されている、一見すると何かのロボットと見紛う様な、ヒーロー然とした男】

アーディン、遅いよ!
{……海辺の訳ありと聞いたから、念のために頭数を揃えたまでだ。こうして役立っているのだから、そう吼えるな……!}

【一団のイニシアティブを握っていると思しき、猫の姿の獣人――――アーディンが鼻白みながら、5人の男たちを、右目の隻眼で睨みつける】
【――――安全上の問題で拘束されたと発表のあった、厳島 命の名まで出して。どうやらある一定以上の事情を理解しているのだろう。それ故に、敵意を剥き出しにする】


540 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/25(木) 22:12:32 AXIgZspc0
>>537

そうですね。…まあ、どんな筋通したところで。裏切られるときは一瞬です。

【その言葉にはヤクザ者故の皮肉が込められていた。ただその言葉の切っ先は自分に向いていた】

【霧崎は後藤やその部下がオーダーに答えてくれるのをまるで監査に来たかのような目つきで見届けていた】
【続いて彼女もノートPCを取り出して、適当な位置に置いてそれをこの室内の回線に接続する】

ご丁寧な対応ありがとうございます。…とはいえ、私はそのへんのセキュリティは専門では無いものですから。
勿論、こちら側も何もしてないわけではないので。初瀬麻季音との通信は彼女の手によって暗号化されております。
それに、魔術的にも。異能による傍受改ざん等の対策は既に。

【霧崎がPCとともに取り出して、右手の人差指にはめた白銀の指輪。そこからはわずかに魔力の『匂い』がしていた】


あとはどうぞご自由に。コーヒーでも飲みながら―――武装のたぐいも気にせずに。フェアじゃないですから。

【そういって霧崎は右手を広げてみせると、何もない空間から刀を出現させてみせた。――こういうものであるという自己紹介だ】
【もはや能力者がいる世界において武装解除なんてものはむしろアンフェアな状況である。霧崎はいらない枝切を投げ捨てるように】
【刀を放り投げるとそれは床に付く前に、消えてしまった】


お時間取らせてしまい、申し訳ございません。それでは本題へと移りましょう―――


「――――あ、もしもし?えーっと…あの、初瀬です。聞こえますか?」


541 : 文月 ◆zO7JlnSovk :2018/10/25(木) 22:16:38 arusqhls0
>>516

【──── 泣き声に聞こえた、誰よりも優しい心根が、その全てを否定する様に】
【暫し言葉を探した、目の前の少女が、今にも消えてしまいそうなほどに儚く思えて】




【──── 思うより早く、言葉よりも鋭く、その両手で、いつの間にか貴女を抱きしめて】



……怖くない事なんてあらへん、いつだって、いつだって、怖いままどす
せやけどな、せやけど──── もっと怖い事も、いっぱいあらはる
白桜はんや、うちの大切な人らが、もし傷ついたらって、考えるとな────

──── うちは、そっちの方が、ずっと、ずーっと怖いどす



【瞳をじぃと重ねた、浮かぶ虚像が指し示すたった一つの愛しき桜、雪代細工にたゆたうのは】
【その果て知らぬ杜若、頬に差し込む唐紅の美しさに、──── 姉ながら彼女は心揺れ】
【艶やかな横顔を惚けて見つめたくなる程に、可憐な妹に言葉を託す】



うちは白桜はんのほんまの強さを知ってます、──── 白桜はんは、力を振う "怖さ" を知ってはって
それが一番の強さやとうちは思うんよ、力が強いとか、強い武器を持ってるとか、そういうのとは全然違って
──── 強大な力は、容易に人を傷つけて、それでも、傷つける怖さを知ってはる

そういう人はほんまに強いどす、うちは、その心を持ってはる白桜はんが──── 時々羨ましくなって

うちもまだまだ鍛錬が足りひんから……つい戦ってると、我を忘れてしまいます
今回も堪忍な、あないなるまで熱中する気、全然無かったねんけど……


【少し照れたように瞳を背ける、前髪に隠す瞳の色合いが、僅かな紅潮を示して】


542 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/25(木) 23:04:06 E1nVzEpQ0
>>538

【随分とアリアは変容を受け入れていた。 ─── かつて何者をも恃まずに、原義も解らぬ正義を掲げ、ただ殺す事しか知らなかった一匹の狼は】
【交わった蛇に絆されて、首根に牙を向け合い、理由も解らず憐れんで、気付けばその鱗に魅入られて、畢竟は情愛への耽溺が、遍く世界を救う遣り方だと知ってしまった】
【コギト・エルゴ・スムを疑わぬのだとしても、最早己れの身体は己れだけのものではない。故に今の彼女は信じていた。神も、呪いも、実存主義の嫌う霊的存在すべてを】
【 ─── 或いは今の彼女であれば、ただ精神さえ貶めてしまえば、在りし日のムリフェンが籠絡するに難くはないのだろうか。依って立つ正義を未だ彼女は見出せぬのだから】

【然して結局は仮定であった。今ここにある己がクオリアだけを信じるのならば、有り得た過去や未来を語る事に何の道徳があろう】
【互いに母親の役割を果たそうとするのならば砂場の遊戯に興じる幼子に似るのだとしても、純真なまでに互いを想う情念の発露であるのだから、取り合う玩具も有りはせず】
【 ──── ただ事実としてアリアは少女の指先に甘えた。やはり変わらず彼女は狼であって、不安げながらも何処か安らぎに緩む頬は、ずっと淡い紅色に彩られて】
【交わし合う視線は優しく潤む瞳に何れ擦り変わるのだろう。今はそれでよかった。 ─── そうして、幾度となく触れ合った額を、も一度こつり重ねるならば】
【少女性の中に宿る煌めきを最も美しく取り出す方法を知った笑顔に、アリアもまた大人びた貞淑を知る穏やかな微笑みをもって応じるのならば、白銀のヴェールはただ甘くて】


「 ───……… あの、ね。」


【 ─── 耳朶への囁きに抗えぬのなら、ふるり彼女も躯体を震わせる。これ以上ない密着の中で、ならば偽証など何処にあろうか】
【わずかに瞼を伏せながら、思い願うように、それでいて決した意を示すように、 ─── 訥々と、湿った唇が、言葉を紡ぐ】


「 ……… 私、かえでにしてあげなければならない事が、あるの。」
「私たち、 ─── ずっと、すれ違ってばかりで」「だからずっと、願いそびれていたの、だけれど」


【然らば少女は思い出すのかもしれない。 ──── いつかの夜に告げられた告白。忌むべき蛞蝓とは果たして何であったのか】
【躊躇いなく向けられた隻眼は真っ直ぐにかえでを見つめていた。幾度となく繰り返した酷い関係の中で、終ぞ桎梏を解く試みの叶った試しはなかった。それでも、】


「貴女の神様は、 ─── 貴女を怨んでなんか、いないって」「 ……… 貴女を呪っているのは、もっと別の弱いもの、だって」
「貴女を愛してくれた人たちは、誰も貴女を嫌ってなんていないって。貴女はもう苦しまなくていいんだって ──── 。」


                「 ─── ねえ、そうでしょう?」



【 ───── どこか虚空を見つめるように、アリアは誰かに願うのだろう。かけらの疑いもなく、やがて瞼を落とすならば、それが祈誓の作法であると教えられていたから】


543 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/25(木) 23:36:07 E1nVzEpQ0
>>540

【「ごもっともな話ですなあ。」言葉尻の行く末など気にかけぬように後藤は同調した。その真意は判然としなかった、が。】
【ともあれ互いに備えるべきものは備えられていた。 ─── 椅子に立て掛けていた杖の柄を、軽く後藤は摘み上げ】
【然らばそこに鈍い銀色の光が生じた。仕込み杖であった。互いに手の内を曝け出すのであれば、やはり一種の商業的信頼であろう。そして、】


「おッ ─── 繋がった繋がった。」


【 ─── 少なからず気の抜けた声であった。モニターに映る/映される、両者の顔。ラップトップの内蔵カメラに軽く首を伸ばし】
【「ごく感度は良好ですよ。」笑いかける彼の姿は、やはり何処にでも見受けられる壮年のサラリーマンであった。】


「初瀬麻季音さン、ですよね。」「はじめまして。噂は常々お伺いしております。」
「我々に接触できる位にはお詳しいでしょうし、自己紹介も余り意味がないかもしれませんが ─── 一応。」
「後藤椋持って者です。水国の外務省に置かれてる、しがない執行部署の課長を務めさせて貰ってます。どうぞ、よろしく。」


【わずかに年老いて嗄れた、しかし落ち着いた声音から、滔々と紡がれる自己紹介。人を落ち着かせ聴き入らせる類の語りであった】
【語調、間隔、表情、 ─── いずれに於いても、この手の対談に慣れている人間の所作であった。自然体であるように見えて、本質的には全て計算尽くの代物】
【 ─── 備考ではあるが対話ログの全てはアリアが視覚バッファに保存する手筈となっていた。モニターの奥に映り、青い隻眼でじつとカメラを見つめる、全身義体の女。】


544 : 名無しさん :2018/10/26(金) 00:05:52 BWdM9pzA0
>>542

【生温く湿った吐息を耳孔に直截に流し込む、ならば見えぬ彼女の表情はひどく子供じみた悪戯ぽいものであるのだろう。そうしてまた、そうあるべきであり】
【よしよしって白銀ごと頭を撫ぜていた手がぐっと相手を引き寄せる、――そうして気づけば彼女は当たり前に相手の膝に座っていた、大型犬より懐っこく、猫よりしなやかに】
【きっと小動物のような体温を伝えて。だからまだ初めての勝利に浮かれた色合い、指先にくるくるって白銀の毛先を巻き付けるたび、かすかに毛の引かれる感覚を伝えて】
【そうしてまた気まぐれに――迂遠な手段で頭皮を擽るのだろう。毛のごく少量ずつを指先にて緩く引くなら。根っこに伝わるのはつんつんって微かな擽ったさ、繰り返すから、】

【――――――――うん、って、続きを促す声は、そうして毛先を弄びながらだった。気が向けばそのまま編みはじめるかのような、指先の温度】

――――――もう、そんなの、ないですよ? ――いーっぱいしてもらってます。…………それに、すれ違ったのは、アリアさんのせい。
私はずーっと、ずっと……アリアさんと、一緒に居たかったよ。――、――、――……。

【――くす、って、小さな笑みが漏れた。腰に回していた手の向こう側で指先の仕草が刹那止むのだろう、当たり前に零距離の二人なら、視線の高さは同じに整えられて】
【ふたり見つめ合うのに何の障害物も、そうしてまた拒むものも、ひとかけらの問題すらありもしなかった。ならば彼女はやっぱり笑っていた、心当たりのないように】
【なにせあの夜、彼女は飲めもしない酒を飲んでいた。故に記憶はひどく朧げなんだと思わせた。――それでも、あまりにまっすぐに覗き込まれるなら、笑みがわずかに揺らぐ】
【揺らいで、――――そうしてきっと気づくのだろう。ぱっちりとして、それでもわずかに垂れる眼の形が、息を呑む気配とともに、わずかに瞠られるなら】

え、――っ、――、待っ、て、アリアさん、――……よく、………………分からない、です。よ。……。何を、言ってるの?
なんの、――話、ですか、――――っ、"あのとき"だって、ぜんぜん、説明、してくれないし……。そのあと、だって、…………何も、じゃないですか、なのに、
――アリアさん、何の話を、……してるの? ねえっ、

【微かに吐息を詰まらす音。瞠った眼はすぐに細められて、相手を訝るような色を宿すのだろうか、顰められた眉は言葉通りに、理解できなさを示して】
【隠すことない身動ぎはせめて不安を仕草に発露しようとしたのに違いない。弾けてしまいそうな性感に足の指先をぎゅうと握りこむのと同じ意味合いをもつから】
【――――嫌だ、と、態度が言っていた。触れないでほしいと願っているらしかった。ならば彼女の中で"そのこと"はタブーであるのだと】

【自分が一緒に居たら誰かを不幸にしてしまう(――かもしれない、なんて悠長なことは、今更、ここまで生きて、言えないくらいに)、なんて、いつだって忘れてしまいたいのに】
【そうしてきっとまたアリアすら殺してしまうのだと信じていた。そうでなければいい。そう願っていても、神様の死を観測してしまった今では、もう、その方法すら分からなくて】
【指先がアリアの服を、巻き込んでしまった毛先ごとぎゅうっと握りしめすから、――わずかに痛むのかもしれなかった。それほどに、余裕をなくすなら】

/分割で!


545 : 名無しさん :2018/10/26(金) 00:06:18 BWdM9pzA0
>>542>>544

「――――まあ、うん、だいたいは、"そうね"」

【ちりん、――と微かに鈴の音がした、気がした。なれば少女はびくりと背中を震わすのだろうか、振り向く仕草はいくらも剣呑である、必要であれば、殺すという意思表示】
【握りしめたままで力の籠る指先は間違いなくアリアを護ろうとしていた。怪我をしている愛しい人を前線に置く趣味はないって、信じたいから】

【――そうしてアリアもまた見るのなら、"そいつ"は前回よりも幾分軽装備であるのだろう。――鮮やかに赤い櫻の着物に、膝程まである長い長い黒髪】
【変わらず顔は狐の面で隠したままであるのだけれど、少なくとも女であるのははっきりとした。ただ気になるとすれば前よりも背が十センチほどは小さくなっていて、】

「呼ばれて飛び出てなんとやら、って、言いたいけ、どー。――ねーね、すっごく睨まれてるの、あはは、初めまして蛞蝓ちゃん」
「――大分元気そうよね。良かったわ。あたしも元気、――"ちょっと"齧られちゃって、まあ、目減りしちゃったけど」

【ぱっ、と、両手を掲げてみるポーズは何の意味もない戯れ。ふらっと高度が少しでも落ちたなら、そのまま、両腕を降ろすのだろう。視線が捉えるは、抱きしめられる少女であり】
【事実少女は敵意も剥き出しに"そいつ"を睨みつけているところだった。そうしてまたきっと頻りに"だれなのか"を気配にて、アリアに尋ね続けているのに、違いなくて】
【背中に腕を組んだ"そいつ"は、ひとまず答えが分からないことを理由に殺意を保留している少女を楽しそうに覗きこむのに満足すると、そのまま、アリアに視線を向けるから】

「――――――――――――、そう、あんたもそこに居るのね」

【――――そうしてきっと最後にどこでもないどこかを見やるんだった。二人を見ながら/けれど全く別の場所を見ているかのように/それはきっと非表示のレイヤーを見通す仕草】
【表情は見えずともそれなりに優しに笑った、――気がした】


546 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/10/26(金) 04:30:34 I.3DEeWg0
>>530
【音が聞こえた。鳴き声。ちぐはぐな足音。そして話し声】
【バリエーションはあれど、全てがある一つの勢力によるもの。ここに立つ二人と同じく、闇の側で生きる者】

【物騒な会話――――裏の人種なのだから、会話が物騒なのは当たり前と言えば当たり前だが――――を耳聡く聞きつけつつ】
【二人の盗賊は、現れた和装の者たちへと向き直り、巨躯と面相に合わない優雅な一礼をした】
【ピアス男の方は、少し動きにぎこちなさが残ってはいたが】

ごきげんよう、ヨシビ商会さん。お世話になっております
以前に購入させていただいた『野衾』や『狒々』は、こちらの〝仕事〟でずいぶんと重宝しておりますよ
目くらましに偵察に盗みにと、大活躍です

――――ええ、確かに。三頭一揃い、間違いありません
流石はヨシビ商会さんだ。すばしこくて有名なこの妖怪を、きっちり三匹セットで用意してくださるとは
私も、以前はこうした存在を自分の手で捕らえようと試みたことがありますが、まるでうまくいきませんでした
餅は餅屋、とは言ったものですな

【最初の取引の時から変わらぬ饒舌振り。馴染んだ顔の商会員たちは、もう慣れただろうか】
【彼らも、売り飛ばした妖怪のその後など気にする人種ではないのだろうが、スクラップズに売られた妖怪は】
【少なくとも、共に悪事に勤しむ程度には、異形どもに馴染んで元気でやっているらしい】

【異形の三つ目は、新顔へと向く。歯に衣着せぬ物言いの連発は、軽薄そうにも見えるが】
【恐らくは、彼がこの中では一番の実力者であろうと、異形は踏んでいた】


そちらの方は初めてですね。カニバディールと申します、以後お見知りおきを
「その部下の、スカーベッジ・トラーシュってもんです」

……先ほど、偶然お話が聞こえてしまったのですが。何やら、トラブルがあったのですか?
顧客のどなたかの身に、何か異変でも? ここ最近は、この国もきな臭いですからな……
そんな中でも、ヨシビ商会さんは確実に商品を届けてくださる。本当に助かりますよ

【まるで世間話でもするように、平然と物騒な会話にも踏み込む。慇懃に振る舞っていながら、この異形は根っこのところが無遠慮だ】
【スカーベッジは、一端踵を返すと大型車に向かい、器用にも片手に三つずつ、計六つものアタッシェケースを一度に持ってきて、地面に置く】

「代金の方は、こちらに」

【新顔の男が話していたことも気にはなるが、まずは提示だ。差し出す物を互いに示すのは、裏社会の取引の流儀】
【中には、高額紙幣の束がぎっしりと、隙間なく詰められていた。一匹につきアタッシェケース二つ】
【この盗賊どもとの取引の中では、今まで最高額であろう】


547 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/26(金) 09:38:05 AXIgZspc0
>>543

【画面に映し出されているのは丸っこい髪型をした少女だった。大きな丸い目の小柄な子で、年齢は14ぐらいに見えたが】
【実年齢は17だ。後藤の年齢ともなればその年の違いも判断できなくなってしまうものだが彼女からすればその3歳の差は重要だ】

【背景はどこかの研究室じみた部屋が映し出されている。机に雑然と積まれた書籍や用紙、メモ書きが大量にはられたホワイトボード】
【誰もが想像する研究者の巣窟がそこにはある。その場にいる人間がどれほど量子力学に通じているかわからないが殴り書きの】
【ディラック方程式がそこに見切れていた】

「ええと…そうですね。ですが、アイスブレイクも兼ねて一応。そちらこそご存知かもしれませんが、初瀬麻季音です。一応肩書は
 水の国国立大学国立工科研究所 応用電気機械知能研究 で博士課程兼研究員といったところです。」

「専攻は機械知能―――ああでもAIとかディープラーニングとかではなくてどちらかというと基礎理論…人間の意識の模擬であったりとか」
「人間の脳の情報量―電気的信号の分布図といったほうがいいかしら。―を解析して意識無意識のボーダーを可視化することで意識の発生を…」

「ああっ…!っと?!ごめんなさい。余計な話を…とりあえずどこから話せばいいだろうか…うむむ」

「ええっとまあ、まず私がなんでここにいるかというと、水の国における『特区』といった異能排斥者ら…通称、黒幕に対する反対運動組織
 『M』に身をおいているからです。なぜそんなことをしているかといえば、黒幕の一味であるIT企業、オーウェル社が私の研究を利用しようとしていたからです」

「詳細は後ほどお話しますが…可及的速やかに対策を講じなければならない状況下に今我々はあります。――それは、我々だけでなく『世界規模』に関わることなのです」

「子供の妄言とお思いでしょう?ですが、その子供がこうして貴方方と接触するに至っているわけですから。ある程度は信じていただきたいのです。」
「うーん?だいぶ抽象的になってしまった。私もあまりこういう中途半端な言い方は好きじゃないんですが…どうにもこう難しくて…」

【麻季音はそういって年相応の笑顔を見せた】

「…っと、一方的に話してしまってごめんなさい。ここまでで…といっても大した話もしてないので本題に移ってもよろしいですか?」
「そこで、私はあるものを開発しています。ある、技術といってもいいでしょう。黒幕より先にそれを完成させることで彼らがその技術を独占することを防ぎ」
「また、先んじて彼らの思惑を挫くことが可能になります。……ただそのためには国家レベルの研究設備が必要となるんです」

【そこまで話してから彼女は少し言いよどんだ。目線をどこかに向けて、少し間を開けた。誰もがその次に出る言葉が最大の意味を持つとわかったことだろう】
【麻季音は意を決したように、口を開いた】


「貴方方には、タイムマシンを作る為に協力してほしい。」


548 : ◆RqRnviRidE :2018/10/26(金) 10:29:15 6nyhPEAc0
>>531

【無言で去りゆく少女の後を追うことはない。 背中同士を向かい合わせて、彼らの進路は逆方向】
【その背を追い掛けるのは順風でも、追ってしまえばきっと仇の風が行く手を妨げる】

……、…… ── 強ければ全部が正義だよ。
だからぜったい、強くならなくちゃならないんだ。 俺も──、──

【びゅうと風に煽られ吹き飛ぶ紙が、言葉の続きを遮るだろう。 それからそれきり、口を噤んでしまう】
【別れ際、本来なら「またな」と一言でも声を掛けるのだけど──なんだかそれも、躊躇われてしまった】
【とかく少年の信条は彼の中では絶対的で、そこに善悪の区別なんて無くて。 幼稚な正義感の顕れに過ぎないのだ】

【──やがて、宙を舞う紙を捕まえようと手を伸ばし、掴み損ねてするりと抜ける】
【吹き抜ける一際強い風は、獣の気配を微かにも纏わず、まるで嘲笑うかのように冴え渡り】
【代わりにほっそりとした白い指が、何の気なしに空中で紙を絡めとるのだろう。 訪問者は、空から】

「……探したわ。 ねえ、あの子、どなた? ……お友達?」

違う…………まだ。……これからなるんだよ、友達に。

「ふうん……、……変なの。」

【彼の隣にふわりと降り立つ影が、少年の代わりとなって少女の姿を見送れば、青衣の裾を翻して歩き始める】
【少年もまたそれに着いていくように歩みを進め、拾われた紙を受け取りながら僅かに顔を顰めて】

てかさ、いつから見てたんだよ君……。

「……そうね、確かあなた達が歯牙を交えるところかしら。」

…………わりと最初からじゃん。 ≪風見鳥≫の名前も伊達じゃないよな。

【短いやり取りを繰り返す。 少年は呆れたようにため息をつき、青髪の少女はただのひとつも笑わず無表情で】
【土手に沿いながら川風に逆らうようにして、その場を後にする。 痕跡として其処に残るのは異能の欠片のみ】


「私は私の役割を果たしただけよ。 ──あなたもそうでしょう、≪狩人/ウェーナートル≫?」


【向かい風が指の隙間をすり抜ける。 その手は何も掴むことが叶わず、そうして静かに幕は下ろされる】


/はいっお疲れ様です! こちらこそありがとうございました!


549 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/26(金) 13:49:58 LXM2pSxM0
>>539
【2人の感覚から来る違和感は、間違いなく正当であった】
【見た目の割に、奇妙な程に幼い話し方】
【あるいは、言語を司る何かに傷を負っているかの様な……】
【2人の懸念と予測は、その直後の事態によって肯定される事となる】

「……」

【黙して、そして一斉に引き金を引こうと、指を掛けた瞬間だった】

「何を……」
「グッぎゃああああああッ!!!!」
「がぁッ!!」
「ちぃッ!何処からだ!?」
「気を付けろ、援軍だ!」
「住田!元肝!!ダメだ、やられた……」
「くっ!早い!後ろだ!!」


【シャッテンの声に応呼するかの様に、飛来した2つの緑の炎で構成された刃は】
【運の良し悪しであろうか、或いは兵士個々の練度の差か、両端の2人をザックリと斬り殺すも、他の3名はギリギリの部分で回避を試みて】

「厳島、だと?」
「そうか、貴様等厳島命の……仲間だったという訳か……これは通りで」

【残りの3人は、新たに現れ瞬時に近接した、ヘッドギアの人物と、そしてアーディンと呼ばれた猫人に向き直る】

「そうか……これは僥倖だ……」
「絹張軍曹殿、如何様に?」
「無論交戦だ、対能力者戦闘に切り替える、この者達生きて帰すな!」

【真ん中の人物の指示、その言葉と共に、2人は着剣した小銃で、ヘッドギアの人物にそれぞれ突きを放ち、真ん中の人物は軍刀を引き抜き猫人に斬りかかりを放つ】

「誇り?矜恃?異な事を言う、我々は軍人だ、上の者の命に、任務に従うのみ……蘆屋司令長官の命令に従うのみ!」

【一方で……】

「おにいちゃ、おいちゃ……」

【不安げに、少女はシャッテンとヴォーダンの手を握り返す】


550 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/26(金) 22:36:29 BRNVt/Aw0
>>546

【一団と会した男達。互いに礼を交わして】
【以前購入した商品が有効に使われていると知れば彼らは、お役に立ててなにより、と喜色を示す】

【そうして提示した商品達の品定めをされその手腕を誉められれば男達は更に気を良くしたようで】

「ええ、ええ!何せ彼らは常に三匹で行動しておりまして初動を逃しますと後の二匹のみしか捕らえられません、まあ平素ですと切り裂く事に長けた次郎と薬を持つ三郎のみでも十分商いは成り立つのですが──」

……あ、この人の聞き流して大丈夫なんでー
捕獲に関わった面子だから手腕誉められてあがってんですよー
【饒舌に語り出した一人を軽く指し示しながら新顔の青年が苦笑する。大方道中で自慢でもされていたのだろう、それ何度も聞いたぞ、とでもいうような顔付きでちらりと未だ語る同僚を一瞥し】
【挨拶をされれば青年は軽く会釈をして】

どーも、英群水鶏(ハナムラクイナ)と申します
此方こそ以後よろしくお願いしますねー

……あー、聞こえてましたかー、実はねー……

「まあ、トラブルといっても半年程前の出来事なんですけどね……」
「はは、まあ航路も中々安定はいたしませんがなんとかやらせて貰っています」

【世間話のような話に軽く返す社員。あくまで顧客情報は御守り致しますよ、とでもいうような意思表示】
【口を開こうとして遮られた形となった水鶏は不満そうな顔で同僚をちらりと見るが、まだ気付かずに話をしていた別の同僚を宥めに向かって】

【地面に置かれた六つのケース。社員達はその中身を軽くではあるが確認して】

「ええ、確かに。では──」
【此方を、と引き渡される獣の入った檻。付随される諸々の手続き等も滞りなく進むのだろう】

【そんな中で】

……貴殿方は『オリビア・ホァン』という女性をご存知で?
【先程から黙っていた水鶏が意味ありげに尋ねる】
【オリビア・ホァン──裏社会に生きるカニバディールなら知っているかもしれない名だ】
【出身は水の国。『阿片婦人』の通り名を持つ、界隈ではそこそこ知れた阿片の売人。噂では顧客に水の国の官僚や警察関係者等もいた、と聞く】
【だが彼女は半年程前に殺害された筈だった。表の顔──善良なる漢方薬局の女店主として】
【ならば何故今その名を出してきたのだろうか?】


551 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/10/26(金) 23:14:12 ZCHlt7mo0
>>549

<……鍛錬はしていても、所詮は常人か。身の丈を見誤れば、戦いでは死あるのみだ……ッ!>
{所詮、言わずもがな事だがな。その程度分からないようなら、そもそも戦場に立つ意味もあるまい……!}

【アーディンと、全身スーツの男は、生き残った3人を前にして身構える】
【規格化された戦力ではない。だがそれだけに、個々の戦力が突出している。典型的な、在野の戦闘集団だった】
【軍隊という、調律され、統一化された組織とは正反対の性格を見せているが、そこに込められた、手応えのある戦意もまた、本物だったと言えるだろう】

「ほぉ……櫻というのはもう少しマシな国だと思っていたが……知らなかったな、羽虫に祭り上げられた蟻塚に過ぎなかったとは!」
{止せ、櫻出身の仲間たちが聞いたら、心を痛めるぞ――――尤も、こいつらが羽虫である事に異存はないがな……ッ!!}

【少女を守る様に抱きかかえながら、ヴォーダンは忌々しげに皮肉めいた言葉を向けて揶揄する】
【――――問答無用で無関係のものを巻き込み、誇りを持たない事を力説する様な面々は、もはや『羽虫』と呼ぶしかない】
【そして、そんな者たちが仕えるのは、腐れた偶像でしかないのだろうと――――彼らに真に誇りがないのなら、意味のない揶揄でしかないだろうが】
【――――己は無視できても、己の中で重要な意味を持つ他者は、そう簡単に割り切れないのが人間だ。それは一種の挑発テクニックだったのだろう】

アーディン!!
{……1匹は生け捕れ、残りは皆殺しにして構わない! シャッテン、ヴォーダン、お前たちはしっかりとその子を保護しておけ!}
<……そうだな、今はこいつらの血で汚れる事を覚悟せなばならないか……!>

【アーディンの号令の下、4人はそれぞれの立ち位置を鮮明にする。シャッテンは周囲の警戒、ヴォーダンは少女の保護、そしてアーディンとスーツの男は戦闘――――】
【実質的に2対3の戦闘になるが、彼らには、ある種の、勝利への確信じみたものが、既に生まれていた】

<……こちらは、既にこんな戦闘、慣れているのだ――――『ソニックカッター』!! 『富士砕きメガトン』!!>

【銃剣突撃による刺突に見舞われたスーツの男は、グッと身構えると、タイミングを合わせて右の手刀を横殴りに振るった】
【――――青い閃光が残像となって走るほどの手刀が、突き出されたバヨネットを弾き払うと、そのまま体を回転ざまに、片方の男の胴体へとブローを放つ】
【戦闘スーツで強化されたその打撃は、下手をすれば内臓を粉砕しかねない一撃だ】

{遅い――――――――――――――――ッ!!}

【一方のアーディンは、両手の甲からナイフのような爪を剥き出しにすると、振るわれた軍刀を、まるで十手の様に受け止める】
【そこからの一瞬は――――正に『紫電一閃』と言う言葉が相応しい、刹那の出来事だった】
【受け止めた軍刀を受け流すと、一瞬アーディンは姿勢を低くしてその身を沈め、そこから飛び上がる様にして男の顎元向けて、裏拳の一撃を見舞ったのである】
【正に、人間離れしているスピードの成せる技と言って良いだろう。爪そのもので喉元を狙わなかったのは、『捕獲』を意識しての事だった】

「……心配するな」
そうだよ、大丈夫だ……あの猫みたいなおじさんは強いんだからね……
{――――ッ}
(っ、しまった、聞こえてた……)

【ヴォーダンは、まるで赤ん坊を抱くように少女をすっぽりと抱きすくめ、シャッテンは警戒のため、明後日の方角を見やりながら、少女の頭を撫でてやった】
【少女をあやすための言葉がアーディンの耳に入り、その表情を顰めていたのを見て、流石に「しまった」という表情を浮かべながら】


552 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/27(土) 00:45:38 E1nVzEpQ0
>>544>>545

【 ──── 本来であれば片時たりとも少女の悲しむ様など有ってはならなかった。そうアリアは願っていた。誓っていた。】
【然して切り拓く運命には時として痛苦と出血を伴うのだから、怯懦に震える少女の瞳を見つめる隻眼もまた、薄い涙を湛えて】
【ただ抱き拉ぐより他に方策はなかった。 ──── 愛しい我が子を泣き止ますように、孤独に膝を抱える恋人を慰めるように】

【そして祈祷の届くなら、 ─── きっとアリアは、救われたように頬を緩める。誰かを守るための殺意に満ちた指先を、恋人結びに繋ぎ直し】
【幼気にかえでを見下ろす微笑みが静かにかぶりを振って、抱く背中に指と掌を撫ぜる。晦冥に震える思い人の、さざめく心を鎮めるために】


「 ……… 怖がらないで。」「怖くないのよ。」「私を、信じて。」
「私が呼んだの。」「貴女のために。」「私たちに、敵する者ではないから。」


【悪夢に目の冴えた乳飲児を、ふたたび夢見に誘うような、 ─── ただ分かち合う鼓動と体温だけは真実であるなら】
【己れの語る言葉も、彼女の語る言葉も自明であるのだと、そう告げていた。誰であるかは必要な仮定でなかった】
【ただ彼女が何をするのかだけが不可欠な要点であった。 ─── 青い左眼が、怯える薄藤色を魅入るならば、優しげで】


「 ──── 奇矯な身体をしているものね。」「一先ずは、壮健で何よりよ。」
「幾つか尋ねたいことも、無い訳ではないけれど ──…… 生憎、哲学には疎いの。」


【そして顔を上げるなら、 ─── どこか困ったような、懐かしむような、然るに悪しからぬような、兎角そういう感情であった。】
【ウヌクアルハイ/白神鈴音の行く末が如何なる物であるかアリアは問うべきだった。だが今において、それに逼迫は追随せず】
【ならばアリアの個人的な感情が全てに優先していた。 ──── 今までも彼女はそうしてきた。ないしは、これからも変わらぬと言えるのだろう】


「 ……… 約束は、凡そ果たしたつもりよ。」「かえでの事を、救ってあげて。」


【訣別のように截然と、 ─── 冷たく澄んだ乙女の声音が、確かな決意を音階に込めて、眼前の対手に告げるのだろう。】
【細々とした理論にアリアは興味がなかった。それはかえでが聞き遂げて諒解すべきものだと信じていた。もはや論理でないのなら、後は情念のアーキテクチャなのだから】


553 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/27(土) 00:56:59 6IlD6zzI0
>>541
【きっと、幻滅される。きっと、落胆される】
【多分目の前に広がるのは、見たくない現実―――じゃなくて】

【心から慕う姉の抱擁。きゅっと抱かれて、重なる琥珀と黒曜。揺れる心と心】

【"やっぱり……お姉はんは、卑怯。女誑し。……まるで口説き文句みたいな口振り"】
【"文月お姉はんになら……口説かれたい。こんなに真直ぐで、暖かくて、つよいひとになら"】

【揺れる瞳に滲む色合いは、徐々に暗いものから明るいものに】
【焦燥や不安に混じる恐怖の黒い彩りを取り除いたなら、澄んだ琥珀色が黒曜石の瞳に映る】
【琥珀色を包む色合いは―――安堵と思慕。それを裏付けるのは、姉を抱きしめ返す所作】


―――……そんな風に言われたのは、はじめて。
そして、真直ぐな言葉で心を揺さぶられるのは、にどめ。

………お姉はんも、わたしと同じで怖さを抱いてる。
けれど、文月お姉はんは怖さに足を引っ張られて無い。真直ぐ進んでる。
怖さと戦い続けてなお、お姉はんの歩き方は、生き方は――…美しい。

だから―――――……わたしも、お姉はんみたいに怖さを飼い慣らしたい。
貴女と肩を並べて同じ景色を見たい。手を引かれるだけじゃなくて、貴女の手を引きたい。
いつか約束したお花見をして、その続きを紡ぎ続けたいから――、つよくなりたい。


【託された言葉。心という名の水面に投じられた一石は確かな波紋を描いて】
【一つ、二つ、三つ、と波紋は広がって。言葉を託した姉の心に応える様に、お淑やかな笑みを浮かべて】
【きゅーっ、とより強く抱きしめる。姉に追いつこうとする妹の様に、抱きついて離さない】


むぅ……眼を、背けないで。背けるのなら、……"こう"する。


【眼を逸らした文月に、若干頬を膨らませて。それでも柔和に笑って】
【白桜は自分のおでこを文月のおでこにこつんと優しく押し当てる】
【抱き合ってるから解るのは互いの鼓動と暖かみ。そこに加わるのは互いの息遣い】

【それは少女同士が口付けを交わすような構図――、けれどそんな意図なんて無くて】
【在ったのは――"わたしには無い強さに触れていたい"という白桜の純粋な気持ち】
【眩しさ故に細めた眼は何に対してのものなのか。それは語るに及ばない】


554 : 文月 ◆zO7JlnSovk :2018/10/27(土) 01:11:28 arusqhls0
>>553

【温もりの行く先を探す、珈琲の水面に溶けたミルクの行方、混じり合って蕩かす彩り】
【それは万華鏡よりも美しく、水墨画よりも奥深い、溶けたはずの思いさえ見えなくなるほどに】
【白桜の思いを浴びて、文月はその目を細める、もう一度強く抱きしめて】


──── そない言われたら、うちが反対する道理なんてどこにもあらへんよ
大会、出るんでしょ? ……ほんまはまだ、ちょっぴし……ううん、めちゃ心配やけど
でも、美しいなんて言われはって、──── そない言うてくれはる妹の言葉やもん

……頑張ってな、──── 世界中の誰より、うちは白桜はんを応援してはるから


【言葉をかけたなら、より一層強く抱きしめられて、彼女は暫しきょとんと大きく目を開いて】
【やがて綻ぶ様に微笑んだ、もう仕方ないな、なんて少しだけ思ってしまうほどに】
【そこに戦士の姿は無くて、ただ純粋に、年の近い妹を思うような姿があった】


わっ────…… もう、白桜はんってば大胆なんやから……
そないな事されたら、……照れはるし、それに、それにな────


……嬉しくて、仕方ないどす


【雪原に広がる紅葉、絵空事にしか無い幻想が、彼女の頬に咲き乱れて、重なるおでこに愛を感じ】
【暫し、そのままで居たかった、重ねた花弁と花弁、描く景色は百合の花細工に任せて】
【やがて願うはその永劫、久遠へと伸びる筈の思いを、何時までも、と────】



【──── どれくらい経ったか、十分な時間が過ぎて】



……そろそろ帰ろうか、白桜はん、──── 今日は、うちがご飯作るし


555 : 名無しさん :2018/10/27(土) 01:32:27 213rgNJg0
>>552

【その腕の中に抱き留められる少女は、けれど、ぱっと手を離したら今にも飛び掛かって行きそうな荒さを孕んでいた、ヘリウムを詰め込んだ風船と等しくて】
【あるいは躾のなっていない狂犬みたいに、――特に珍妙な呼びつけられかたをしたのが気に入らなかったらしかった、とは、余談だけど。剥き出しの殺意、叩きつけても】
【暖簾より手ごたえなく、ましてや面をした相手に表情の変化が見受けられるはずもなく。――最終的にアリアの言葉を呑むかたちで、代わりに、胸元に顔を埋めるだろうか】

――――――。

【――とかく確かであったのは幾分の拗ねが毛先まで現れていた。幼子が見慣れぬ現実に直面したときに母親の胎に顔を埋めるのに似て、背後へ耳元を欹てるなら】
【"そいつ"はまったくもって気にしていない風情だった。さながら子犬か子猫がめいっぱいにしてくる威嚇につい思わず微笑ましくなってしまうような温度感であった】
【自分の言動にて一人の少女を不安と不愉快に叩き落したことに対する反省も薄いと見えるなら、――「あら」とそいつは冗談めかす、声を上げ】

「人間だって齧られたら目減りするでしょ? ――腕とか足とか、呑み込まれたら、減るじゃない? それと原理は多分一緒で、」
「尋ねたいことって、何かしら。例えば、あたしが誰かとか? ――哲学ってあんまり好きじゃないの、ブン殴って生き残った方が勝ちのが分かりやすくって」

【長い細い指先がすらっと和装の布地を撫ぜた、最後に顔へたどり着くのなら、豪奢に模様の描かれた面、微かにつまんで、そうとずらすのだろう】
【もはやそれに必要はないと言いたげだった。いつかの日のような、――世界における致命的なバグが目の前に在るかのような絶望感は、ほとんど無くなっていたなら】
【けれど"そいつ"は口元をわずかに見せるにとどめた、――あるいは相手の腕の中で拗ねたふりでとげとげした気配をばらまく少女に向けての、気遣いであるのか】

【(どちらにせよかすかに覗いた口元は存外にあどけない。あるいはどこかに覚えがあるのかもしれなかった。けれど相手とは会ったことのない人物によく似る)】
【(もはや物理的な目隠しとしての意味合いだけを期待される面の目元より覗くのは赤と黒のオッドアイ。声音はまだいくらか聞き取りづらく、ただ、籠っただけにも聞こえる)】

「――――もちろん。あたしもすることなくなって、暇だったし――……、そうね。結構ギリギリだったかも。見てみないと分かんないのね、なんて」
「***、************――? ……まあ、いいわ。そういうのは個人の自由でしょ、あたしとしては、――、まあ、いいか」

【(その子、蛇をもう信じてないでしょ)】
【口の仕草だけで尋ねたのはやはり気遣いなのかもしれなかった。事実彼女は昔よりも祈る回数も時間も減らしていた。それはあるいは通さねばならぬ筋であるかのように】
【そうしてそれを見下ろし呟く声は、――存外に真剣であるのだろう。「今ならまだ全然大丈夫」――優しげな声はどちらに向けてか。少女の身体がかすかに強張るなら】

――――っ、アリアさん、何言ってるの、私、――っわたし、アリアさんじゃないと嫌、アリアさんに助けてほしいの! ――ねえっ、アリアさんっ、
アリアさん! 説明してよっ――、「ほんとにいいの?」――よくない! 私はアリアさんとお話してるの!

【頭突きしかねん勢いは動物病院で暴れる猫ときっとよく似ていた。もとより高い声が興奮に吊り上げられるならずうっと高く高く澄んで、張り裂ける刹那に】
【しれっとした声。さながらどぶ川に落とした何かを探さねばならぬ人みたいな態度をしていた。すなわち着物の袖をたくし上げて、容赦なく見せつける腕は細く白く】
【お話というにはずいぶんとずいぶんなものだった。――とにかく少女は診察台の上で抑え込まれる猫であるなら、医者が躊躇う道理はなく、飼い主もまた時として味方たりえないから】


556 : 名無しさん :2018/10/27(土) 01:32:41 213rgNJg0


【――――いいよ、って、伝えるなら、"そいつ"はあんまりに容易く少女のせなに己が右腕を突き立てる、といっても、物理的な貫通はないのだけれど】
【おおよそ見ていて気持ちいい感じの光景ではなかった。とかく"そいつ"の腕は案外大雑把に纏め上げた袖に露出された部分、即ちほとんど肩口までを、ずぶりと人体に埋めこみ】
【時間なんかほんとに一瞬のことだった。痛みではない違和感に身体をぎゅうって強張らせた少女に口を挟む余裕さえ与えずに、やがて引き摺り出される/摘出されるのは】
【大人の腕で一抱えもあるような"蛞蝓"。それも櫻の国にのみ分布する固有種であった。けれど見た目がそうであるだけで、大きさは至極規格外であり、蠢くたびに粘液の滴る音すらするなら】

「はい、あげる」

【――(果たしてそれを本気で欲しい奴/それをもらって喜ぶ奴がどこに居るのかという至極当然当たり前な疑問点はさておいて)、】
【そいつはすでに握りしめて掴み上げたそいつを、さも当然にアリアの前に放るのだろう。即ち少女の背後でもあるのだが、彼女はいまだ衝撃か何かの中であるのか静かであり】
【そうしてまたぬぢりとひどく不愉快な音で這う軟体生物は、惑ったように少女へ這い戻ろうともするのだ。――胎から引きずり出された赤子の最期の痙攣に似て、弱弱しい生存のための作用】
【だからよっぽど少女の中は居心地が良かったらしい。ならば当然撃ち殺してしまっていいはずだった。というより、――気持ち悪い粘液に塗れた利き腕を拭う女はやる気がなく、】

【もう蛇に救われると言うエピソードすら不要ではないかと。やることはやってあげたのだから、後は好きにしたらいいと。そうやって言うみたいに】

【そうしてまたこうも物理的な世界へ引き摺り出されてしまうなら、――それはやっぱりどう見たって"たいしたことない"やつでしか、ないのだろう】
【この程度は櫻の山の中ならゴロゴロ蠢いていそうだった。ふとしたきっかけで何か多少の力を得た魑魅魍魎の一つに過ぎなかった。ならば弾丸に撃ち抜けない道理はなくて、容易いから】


557 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/27(土) 01:38:00 6IlD6zzI0
>>554

―――……ありがとう、お姉はん。
………頑張るから。少しでもお姉はんの強さに近づいて見せるから。

――――――勝っても、負けても。その姿を見届けて欲しい。
…………そんな、妹のわがまま。聞き入れてくれると、…うれしい、なんて。


【まるで部活の試合にでも臨むような言葉。白桜にとって大会の意義なんてものは】
【粗暴な相棒と心を許す数少ない親友、桜の様に美しく激しく生きる姉に強さを示すためだから】
【眼と鼻の先に居る姉に対して、合わせ鏡の様に微笑を返すのだった】


【―――】

【どれほどの時間が経っただろうか。時間の感覚も曖昧だったから】
【姉の言葉が切欠で、時間の経過を知る―――御飯時が近いようだった】


……うん。帰ろう。……あっ、文月お姉はん。
撃たれて―――……歩きにくいだろうから、肩を……貸す。

【やや気まずそうで。やや沈んだ口調で。けれど、白桜の所作は確かに前を向いて】
【それでいて、その後に紡ぐ言葉は年頃の、いいや外見よりも幼く見せるものだった】


―――……今日は、今日こそは。お姉はんの手伝いくらいは果たして見せるから。
………ハンバーグ。はんばーぐが食べたい。あと、……「白桜」って呼んで欲しい…。
「白桜はん」って呼ばれるのも嫌じゃない。けれど、距離感を感じるから…、是非。


558 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/27(土) 10:29:42 6.kk0qdE0
>>551

「ふん、所詮は獣風情、人の真似事をしても理解が出来ぬものはある様だな……」
「命に服従しただの1人となろうと任務を遂行し、その命をも惜しまぬ!これを誇りと言わずして何と呼ぶ!」
「そう簡単に運ぶものか!構わぬ!目標以外は皆殺しだ!」

【言葉は確実に激昂させる効果を示した様だ、挑発は成功と言えるだろう】

「獣や外れ者如きが人の理を語るか?滑稽な、何とでも呼ぶが良い、我らは任務をこなすのみ……」

「なッ!?」
「ぐッ!?……ば、莫迦な!?」

【お互いの言葉と共に、互いの一手が交わされる】
【先ずはスーツの男と2人の攻撃、刺突は見事にかわされ、内1人には正に返す刀で、当て身の一撃がクリーンヒットする】

「ぐっ、あ、後は……頼んだ、ぞ……」
「風見一等兵!?貴様ら……仲間の仇!!」

【強化された拳の一撃は、確実に内臓を損傷させたのだろう】
【深く、抉られる様に拳の食い込んだ1人は、次の瞬間には大量の血をその場に吐血して、絶命した】
【だが、これは同時に生き残ったもう1人の戦意を、怒りで底上げする結果となった】

「仇!貴様は仇ぞ!!」

【バチバチと、紫電が弾ける音が聞こえるや否や、かなりの強力に帯電された拳をスーツの男に向けて放つ】
【狙いは、その心臓が鼓動するであろう胸部だ】

【そして……】

「早いッ!?」
「ふざけ……ぐあッ!!」

【アーディンの人間離れした瞬発力は、やはり人間には到底対応不可能な速度で、防御とカウンター的な攻撃を放つに至った】
【ガコンッと言う衝撃と、アーディンからすれば確かな手ごたえと共に、顎が砕け、口から流血し始め刀を取り落とした男が、その場に崩れ出す】

「がっあ、ああ!」
「ぐ、ううううううう……」

【捕縛の為か、命を奪われなかった男だが、口から血を滴らせ乍ら手をアーディンの側に翳し、不敵な笑みを浮かべている】
【彼らは腐ろうとも魔導海軍、能力者の比率は高いと言える】
【次の瞬間、アーディンの周囲に白く、青く燃える無数の腕が絡みつき、その身体を抑え込もうとするだろう】
【うっかりと足元を見れば、地面は深淵に染まって居り、自分が殺し、或いは虐げて来た、或いは憎んでいる無数の者達の虚ろな顔が見え、腕はそこから伸びて来ている】
【だが、それはアーディンにしか見えない幻覚、幻術の能力、顎を砕かれた男は膝をつきながらも、アーディンに幻術の能力を行使したのだ】

「ふ、ふぁふぁふぁふぁふぁふぁ!」

【幻術を使った男が、高笑いをし出す】

「ね、こ?ね、この、おいちゃ?」
「んっ、おいちゃ、つよい?まけ、ない?」

【ヴォーダンに抱き抱えられ、そしてシャッテンに頭を撫でられ、そして優しく語られる】
【その言葉に、少女は其々の顔を覗き込む様に、曇りのない瞳で聞いて】
【もっとも、アーディンにとって猫が禁句と言うのは、少女はまだ知る由もなかったが】


559 : 文月 ◆zO7JlnSovk :2018/10/27(土) 12:05:20 arusqhls0
>>557

【彼女は少し戸惑う様な表情を見せた、妹の肩を借りる事に対する若干の気まずさ、でも】
【直ぐに頬を緩めて、言葉に甘える様にその肩を貰う、これぐらいの "役得" はあってもいい】
【目を向けたら、瞼の裏にいるぐらいの距離、心地よい二人の近さは、姉妹だけの特別製】


ふふ、ほんとに好きどすなぁ、うちも好きやよ、──── よーし、今日はお姉はん特製ハンバーグどす
一杯手伝ってもらうさかいに、覚悟しぃや、うちは厳しい時はめちゃ厳しいさかいに
言われんでも分かってはるやろうけどね、これも可愛い可愛い妹の訓練やと思ったら


──── ほな、一緒に帰りましょう、──── "白桜"


【変わる呼び名は二人の願い、重ねた肌の温もりを何時までも忘れないようにしたくて】
【折り重なる調べと調べ、耳に流れ込む旋律は、揺るがぬ純正律の三和音】
【何時までも響き渡る心と心の調音を、彼女は久遠に聞いていたくて】



/こんな所でしょうか! お疲れ様でした!


560 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/28(日) 10:50:05 T6cl4gKw0
>>559

【肩を貸す感触は、抱き合う時の感覚とは違った】

【感触こそ抱き合うのと比べれば物足りないけれど】
【ふたり横並びだから、横目でちらりと見やるだけで物足りる】
【その所作は風に揺れる白百合の揺らめき。心地よい感触は心を満たして】


―――……うん、帰ろう。文月お姉はん。
………料理も、……未だ未熟者だけれど。……おてやわらかに。

――――――……ありがとう、お姉はん。
これからも、……こんな風に笑い合えたらって、心の底から思ってる。


【"白桜"って呼ばれたら、きっと姉妹の距離はさらに縮まって】
【仮初めの姉妹関係は、少しずつ本物へと近づいていく】
【歩くような速さで、心と心は近づいて、交わって。それは交響するかのように】

【ささやかな幸せ。ふたり一緒に歩いて、想いを交わせて、日常を謡う】
【文月が願うのと同じように、白桜も願う――いつまでも変わらぬままにこの音色に聞き惚れたい】
【そして、いつまでもこの暖かな幸せが続きますように―――と】

//そうですねここら辺で〆ですね!お疲れ様でした!


561 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/28(日) 17:22:33 smh2z7gk0
>>534

―――あ?
(世界を愛しているか、だと?くだらねぇ事を聞いてきやがる。だがこれは…)

いいや、愛してないね。俺はこの世界なんざ愛してない。特に今の世界は尚更だ。
くだらねぇ〝文字列〟と〝統制〟に流される馬鹿どもを見てると吐き気がする。別に俺がそいつらより優れてるとは言わないがな

つーわけで、答えは「ノー」だマネキン野郎。

【そう言うと、赤髪の青年は拳銃の引き金を引く。続けて三回―――結果吐き出される弾丸は三発】
【相手の頭部目掛けて迷わず向かっていくだろう。〝疑わしくは罰せよ〟とは赤髪の青年のスタンスだった】
【このまま会話を続ける事は相手の術中に嵌る事。能力の発動条件の可能性すらある。】

ペラペラと御託を並べやがって。尤も今この国は〝そんな連中〟であふれかえってるがな

―――〝ここいらの者〟でないのなら………手前は何者だ?

【弾丸を放った後も銃の構えを解かずに赤髪の青年は質問を続ける。それはまた直感にも似たものであった】
【―――これで終わる事はないのではないか、という悪い予感だ。】


562 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/28(日) 22:18:05 Ty26k7V20
>>561

はははっ、忙しないな君は。

【真っ白な青年はクスリと笑い、傘の持っていない方の手を軽く目の前の男の方へかざした】
【するとその青年を中心として対象的な真っ黒な波動のような何かが、球状に放たれた。】
【半径にして3,4mといったところか。その球の中は真っ暗で、青年だけがくっきりと浮き出て見えた】

【銃弾がその半円に入るとあろうことかその銃弾は―――静止した】

【まるで動画を一時停止したかのように、写真に切り取ったかのように空中で静止している】

そうか、君は愛していないのか。いやそれでもいい。人の価値観はそれぞれだけどね。
愛している人もいる。憎んでいる人もいる。無関心にただ生きている人もいる。それらが複雑に存在してこの世界は成り立つ。
今が最高という人もいるし、昔はよかったと言う人もいる。もっと昔が好きな人もいる。未来に至っては希望を持つ人も、警鐘を鳴らす人もいる

【青年は話しながら、歩いて、その静止した銃弾の元へやってきた。軽く空中で静止したそれを手のひらで握り込む】

時の流れは残酷だ。いまがどんなに美しくても留まることはできない。――こんな風にね。

【手のひらを開くと――銃弾は錆びていた。そしてそれは軽く触ると、もろく崩れてしまった。どの銃弾も同じように彼は触れ、そして塵となった】

【黒い空間が閉じられる。青年はまた微笑んでいた。】

―――僕は、この世界を愛するひとりさ。


563 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/28(日) 23:28:50 smh2z7gk0
>>562

ッチ―――ああそうかい、マネキンカルト野郎。

【銃弾は白の青年の異能によって全て塵と消え、さらに世界を愛するという白い青年の回答に】
【より一層苛立ちを強めた様子で赤髪の青年は吐き捨てる。未だ拳銃の狙いは相手だ、尤も効くかどうかは不明だが】
【銃のグリップを握る手は汗ばむ―――。】

ああ嫌いだ、俺はこの世界が嫌いだね―――だがこの世界に生まれ落ちた以上は必死に生きてやるよ
だから博愛主義者、お前が何だろうと俺は逃げねぇぞ。

俺の前にきたのは何か意味があるのか?あるなら言え、ないなら―――

【ジリと、強い意志を持った瞳で睨みつけながら相手へと少し近づこうとするだろう】
【正体不明、それもかなりの強度を持った異能だが、あえて接近を試みて何か判断しようというのか】

【―――忘れてはいけないのは、銃とは別に大型ナイフも所持しているという事だ。】


564 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/28(日) 23:52:48 smh2z7gk0
水の国―――中心部】

【賑わう繁華街、何やら祭りごとも近いようで街中には酔っぱらった若者の姿が多く見える】
【その一角にある駅前の大きなスクランブル交差点、それを見下ろせる位置にあるカフェ、名の通ったチェーン店だ】
【窓際のカウンター席はぎっしりと埋まっており、眼下のスクランブル交差点を眺めたり会話を弾ませたと賑わっている】

【そんな店内の隅の方―――カウンターテーブルに腰掛けながら手帳に何かを書き連ねている人影がある】
【どうやら買ったばかりのような手帳にガリガリとせわしくなくペンを動かしてその人物は何かを書き記している】


―――〝虚構〟―――〝聖府〟―――〝財団〟―――〝黒幕〟―――〝偽書〟―――〝真実〟

ううむ、とりあえずは書き出してみても中々ピースは足らないなぁ。今から〝彼〟に聞きにいくのも〝ルール違反〟だし
しかし………あの本、〝偽書-Psychosocial-〟も含めてどうにも煮え切らない。

やれやれまた変に先走り過ぎるとゲロゲロな感じになっちゃうかなぁ―――。


【ぽつぽつと独り言を呟きながら何かを書き連ねる女性は一度息を吐き出すと、椅子の背もたれにだらんと項垂れる】
【それはストライプの入った赤いスーツに同じ柄のソフト帽、銀色の長髪に赤い瞳といった目立つ風貌の女性だった】

【つい先程まで〝異界〟にいた訳であるが、なるほど〝深淵渡り〟である彼女は―――】

【買ったばかりで湯気を上げるホットコーヒーを飲みながら女性はスクランブル交差点をぼんやりと眺めている。】

//一旦11/3ごろまで募集です!


565 : ◆RqRnviRidE :2018/10/29(月) 00:05:46 KIjg19AQ0
【水の国──真昼時の自然公園】
【周囲の目も気にせずベンチひとつを占領し、寝転んで全力で怠惰を貪る者が居た】

…………あぁんもおーーーーやーだぁーーーーめんどくさぁい!
いくら裏方だからって、なーんで霊香ちゃんが買い出しなんかしなくちゃいけないのよぅ

【青紫の長髪の毛先だけをリボンで纏めた、黄色の双眸を持つ長身の女】
【丈の短い華美なドレスが、メリハリのあるグラマーな身体を包み込む】
【駄々を捏ねるようにバタバタ揺り動かす両脚は、ヒトのそれではなくウマのもの】
【ベンチの傍には、柄が螺旋状に捻れた身の丈ほどのハルバードを抜き身で立て掛けている】

【腕には紙袋を抱えていた。 印字されているのは某手芸屋の店名。 中からはボアの生地やら縫い糸やらが覗く】
【何やら買い出しの帰りのようだが、誰がどう見たってサボっている。 そんな様子の中、】

────…………あっ! そこのいかにも疲れてそーな殿方!
この後暇ならさぁ、霊香ちゃんと遊ばない? 遊びましょうよお
大丈夫ちゃあんと癒してあげるからぁ、ねっ? ねっ!

【そこへ通り掛かった、アタッシェケースを提げた人相の悪いスーツ姿の男へ声を掛けて呼び止めるだろう】
【女は寝転がったままニコニコ満面の笑みを浮かべ、男は「はァ……?」なんて眉を顰めて怪訝そうな顔をする】

【──二人がそうした問答をしている最中、立て掛けていたハルバードの先端からピンク色の靄が零れ出す】
【芳しい香りはアロマの如く、しかし傍目に見ればそれは明らかに異質な光景に違いなく──。】


566 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/29(月) 00:10:15 Ty26k7V20
>>563

君には――――いいや、今を生きる人にとってはわからないかもしれないけど
この世界はとてもいいんだ。これでも、マシなのさ。

【ポツリ、と地面に灰色のシミが。転々とそれは増える。雨だ。天気予報はなんとでていただろうか】
【別にそんな事を考えなくてもおかしいのは気づく、なぜならそれは青年の周りだけに降り始めていたからだ】


いや、なに。今のうちに挨拶しておこうと思って。折角だからね。まあ、でもこの行為は明日には意味がなくなってしまうかもしれない
もうそうかもしれない。それは僕にもわからないんだ。ごめんね。

【申し訳なさそうに微笑んで、彼はジリジリと近付こうとする彼を制止した】

っと、来ないほうが良い。君の今しようとしていることは、やめておいたほうがいい。
もっと悲惨なことになってしまう。僕も、保証ができないが…多分、悪い方に転がってしまう。
それに、この雨は良くない。触れないほうがいい。まだ僕は、この世界を楽しみたいんだ。

【雨は強くなる。範囲も少しずつ広がっているようだ。奇妙なそれは、ただの雨ではなかった】
【雨のあたった、ビルの壁がボロボロと崩れだした。配管が錆びて穴が開く、地面は灰色のドロドロとしたタールのようになる】
【雑草も枯れた。だが青年は真っ白なままだった。雨を鬱陶しそうに見上げて、また彼と向き合った】


僕は300年後の六罪王。この世界を終わらせに来たんだ。


567 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/29(月) 00:40:02 WMHqDivw0
>>564
【雑踏の中でも目立った姿だった。様々な柄の布を継ぎ接ぎにした民族衣装をまとった金髪の男】
【顔にはいつも絶やすことのない笑みが貼り付いている】
【その傍らには目元を布で覆った小柄な少女――先の探索の時とは違い、足取りもしっかりしており、意識は有るようだが、どうやら盲目であるようで】

【同じカフェに入って来ると男は滑舌良く何かの言語を操り、注文を済ませる】
【トレイに乗っているのは"生クリームとチョコがこれでもかと詰まり、豚骨ラーメンに比肩するほどのカロリーを宿していそうな20文字を超える名称を持つ飲み物"と、ショートサイズのレモンティーだった】


先の一件ではお世話になったね。
んん……いや、そこまで接点も無かったかな?HAHAHA、もうちょっと話をしたいと思ったくらいサ!

相席良いかな?見ての通り、目一杯混雑してて参ってるんだ。


【思い悩むマリアベルの元へやって来ると、男は空気の読めない陽気さで語って見せた】


随分と浮かない顔をしているみたいじゃないか。
取材をしたは良いけど、どう記事にすれば良いのか分からない記者って風情だったよ。


// もしよろしければ!


568 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/29(月) 00:59:48 q3u9QvNk0
>>547

【ほう、 ─── と。後藤にとっても彼女の姿は一驚を喫するに不足ないようであった。モニター越しに綴られる論理に、無精髭を撫ぜながら静かに頷く】
【 ─── 壁に寄りかかる銀髪の女が、少女の語る古典的意識論について、幾らか感興を唆るような顔をしていた。或いは八課の情報を探る内に、少女も知っていたろうか】
【幾らかの脳組織と骨髄・顔面の皮膚だけを残して義体化したという、サイボーグの女。 ─── いずれにせよ示された議題のセンセーショナルさは、フェムト秒の沈黙を齎すのだろう。然して後藤は、徐に微笑む口を開き】


「 ─── いいえ。」「我々は貴女の語ってくださったようなシナリオを、十分に"現実味"のあるものとして認識していますよ」
「無論ながら通常の対応として、確度や情報源・その信頼性を検証するというスクリーンには通させて頂くとしても ─── 、」
「それなり以上のバックボーンも御提示頂いた事ですし、我々としては詳しくお話を伺いたいものです。 ……… です、が。」


【返答としては極めて良好な承諾の一歩目であった。 ──── ポリティカルな現実味から、本当に彼女の側につくことが"善い"選択であるかどうかは横に置き】
【平行世界からの侵襲者とも幾度なく干戈を交え、そして彼らの首を討ち取ってきた八課という組織にとり、時間の遡行も巡行も最早スペース・オペラのガジェットではない。】
【それでも後藤は一ツ言葉を付け加えた。 ─── それは少女に対する疑念というよりは、彼自身の何かを憂うようでもあった。事実、続く言葉はそうであり】


「ご存知の事でしょうが我々は秘密的組織の面もある。しかも規模は決して大きくない。無論これから大きくしようって所ですし、その沿革も持ち合わせていますが」
「 ─── 今の我々がお力になれるのは、暴力的政略的な面に於いてのみ、です。それでも構わないと仰って頂けるならば、お力になるに吝かではありませんけども。」


【それでも、 ─── 言い終える際になって、彼は変わらず笑っていた。適切な場所に銃弾と書類をブチ込めば金など無くとも大抵のものは手に入ると知っている男だった】
【「オーウェル社がまさしく粒子加速器の開発プロジェクトなんて手掛けてますけど。」 ならば迂遠な物言いのように語る笑顔は、いっそ悪どい色相をしていた。】


569 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/29(月) 19:47:36 E1nVzEpQ0
>>555>>556

【 ──── 稚気なる直情から躊躇いなく胸許に甘えられるのであれば、どこか女は悦ぶような顔をしていた。毅然たれと怜悧であるはずの横顔が、抑えられぬ緩みを宿し】
【落ち着けるように、慰めるように、 ─── 幾度か生え際にキスを落として、乳飲み子の吐息を誘うように、背中を撫でさすり、柔らかさにただ溺れさせて】
【ならば相手と対する顔も、以前よりは幾らか以上に柔和であった。やはり端正ながらも冷たい顔立であったが、誰かと親しい諧謔を交わすことにすら、慣れているような】
【浮かぶ疑問や仮説については一先ず横に置く積りであるようだった。「 ─── 一通り終わったら、聞かせて貰うとするかしらね。」そう、添えて】

【そうして少女が救われるというのならば、 ─── やはり安堵に白皙を輝かせ、なおも強く少女を抱き締めるのだろう。「 ……… ありがとう。」不慣れな感謝は不器用な語感と共に、然して本心のものである】
【悶える想い人の仕種には、苦笑とも悲哀とも取れぬ、泣き笑いじみた複雑な顔をして、 ─── とかく優しく宥めていた。赤衣の乱暴な遣り口にだけは、刹那に目を見開いていたが、 ─── それも刹那でしかないならば】
【およそ不快に引き摺り出される汚らしい軟体を見るに、心底蔑むような顔をするのだろう。「 ……… いらないわ。」視界に入れるのも不愉快だと言いたげに、然し酷薄に見下すのだから】


「 ────…………… そう、」「お前が。」


【ひどく明白に澄み渡るというのに、ひどく冷たい呟き。凍り付きそうなほどに潤った唇が紡ぐのであれば、青い隻眼が微かな憎らしさに眇められ】
【持ち上げられたレザーシューズが、 ─── 断頭刃じみて振り下ろされるのならば、靴底に仕込まれた鉄板ごと、無慈悲な踵が軟体の頸部を打ち付けるのだろう】
【無駄な弾を使うのは女の趣味でなかった。かつての朋輩であった"彼"ならば、塩の一摘みでも持ち出して嬲り殺しにもしたのだろうが、女にその手の嗜好はなかった】
【限界領域まで稼働させれば装輪装甲車であっても横転させるに足る脚部出力であった。 ─── 詰まる所その蹴撃の威力も並ならぬもので、蠕虫の頸筋を切り落とすだろうか】
【それでも殺し損ねたのであれば、まったく憎悪と冷酷に満ちた蔑視にて、神経節の擦り切れるまで踏み躙るに違いなかった。幾らか手荒な遣り口を施された少女の、その容態を心配するような視線でさえ、あった】


570 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/29(月) 20:17:40 WMHqDivw0
>>535
//再利用しちゃいます。31くらいまで!


571 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/29(月) 21:00:44 arusqhls0





        【──── あの日、君は見た。水槽に浮かぶ脳の群れ、忌々しいグランギニョル】




   【そうして忘れたいと願う、──── まやかしだと、空想だと】


                            【お誂え向きに、虚構へと付ける名前は幾重にもあって】





            【けれどもしかし、それでも確かに、脳裏にこびり付いたイメージは消えず】






【貴女は夢の中にいる】【貴女は夢の中にいる】【貴女は夢の中にいる】────────【然るに之は夢】
【漠然とした不安があった、先の見えない長い道を、ひたすら進む様な不安、暗くて深い階段を、無限に下りていく様な不安】
【眩い文明の光が世界を照らせば照らす程、反比例する様に闇は深さを増して、茫漠の夜に恐れおののく】
【貴女は夢の中にいる】【貴女は夢の中にいる】【貴女は夢の中にいる】────────【然れど之は夢】






             【目が覚めるだろう、見知った自分の部屋、ベッドの上だろうか、或いは】




【時計を見る、──── 時間帯は深夜】  【奇妙な夢に魘されて、不快と共に目覚めるだろう】
【二度寝しようにも、興が削がれてしまったなら】  【ベッドの上で何度か寝返りを打っても良い】
【息苦しい夜であった、真綿で首をうっすら、締め付けられているかの様に】  【だから貴女はこんな事を考える】



【部屋の鍵の事、キチンと閉めたかどうか、妙な不安が訪れる、確かに嫌、閉めた筈、と────】
【それでも不安は消えない、今日に限って、今夜に至って、それに確証が持てない、直ぐ確認すれば良いのに】




【逡巡は自由、けれども貴女は、──── 徐にベッドから降りて、扉へと向かうだろう】



/リゼさんの方宜しくお願いします


572 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/29(月) 21:05:31 RJD7Jq8Q0
>>535

【―――行き交う人々、飛び交う喧騒。そこに用があったわけでもなく、ただ通り道だったに過ぎなかったが】
【おおよそどこを見ても笑顔が目に入った。そんな中にいては浮いているだろう、ということも男は自覚していた】
【一人でヘラヘラ笑っているほどハッピー野郎でもないし、何なら人の多さで歩きにくいと感じてさえいる】
【ただ――――悪い気はしなかった。見渡す限りに平和な光景が広がっていて。】

【そうして、あるベンチの前を通りがかった折のこと。初めは、そのまま通り過ぎようとしたのだが。】

【フードの陰に覗いた鮮やかな色が目に留まったか、台無しになってしまったクレープに何か感じたのか、或いは。】
【―――とにかく、少女の前を数歩過ぎたところで、男は溜め息を吐いて振り返った】

…………おい。おい、お前だよお前。
男に別れ話されたんだか何だか知らねえけど、それ、零れてるぞ。

【―――黒い軍服の男であった。一纏めにした長い金髪に、エメラルドグリーンの瞳が特徴的で】
【ぶっきらぼうな物言いに、座った少女との身長の差。威圧的な印象を与えるような、そんな様子】
【何より、最初にかける言葉としてはチョイスが最悪だった】


573 : 名無しさん :2018/10/29(月) 22:18:22 yPR0wZJk0
>>569

【――――――ずちゅり、と、並大抵の人間は躊躇いなく不快になれる水音で以って、現世に"引きずり出された"ならば、大蛞蝓はその頭を幾度となく振り回すのだろう】
【拙い威嚇に似ていた。けれど現実はもっと無様に、安らかに生温い泥のような楽園から引きずり出されて惑うに過ぎなかった。楽園を追われた最初の人類の醜い模倣】
【そいつがそこに存在するだけで、蛞蝓特有の臭気が部屋中にすら満ち満ちていくようにも思えた。そうしているうちにも、ぬらぬらと、ひたすらに粘液があふれ出しては床を濁らすから】
【饅鰻といい勝負が出来そうだった。それでいて物理的な意味合いで煮ても焼いても食えぬ奴であるのは分かりきっていた。だって蛞蝓はとっても苦いっていうのだし――】

【――ましてや、このサイズだと"とても"よく蛞蝓という生き物を理解できた。表皮の質感から粘液のてらてらした温度感から、臭い、音、ぜんぶ、ぜんぶが、】
【たった一つの魂を食い荒らしたが故に齎されていると気づくなら、余計に不快さも増すのだろうか。ぼってりと肥った腹を嘲るように見せつける/あるいはただのたうち回り】

――――――――――――〜〜〜〜〜〜〜っふやぁっ、やっ――、やあ、あう、! にゃっ――、なにっ? アリアしゃ、――、――〜〜っ、

【けれど一人だけひどく賑やかな奴もいるんだろうか、たっぷりたっぷりの時間越しにようやく感覚が現実に追いついて、ようやく吐息を継ぐことが出来たらしい】
【ひどく拙い発声は泥酔の作用に似て、けれど、味わったことない未知の感覚への混乱ぶりをこれ以上ないくらいにきっと現していた、足元をばたばたばたってさせるなら】
【必然的に身体中はアリアへ委ねられる、それどころか、このまんまうずもれて突き抜けてしまいたいって言っているみたいに、ぎゅうって、抱きしめて、身体を寄せて】
【喩えるのならきっとお尻に体温計を突っ込まれたときの猫みたいな顔をしていた。でもそんな顔を見られるのは恥ずかしいって言うみたいに、胸元、めいっぱいうずもれる】

【――――――――――――――――――ぐちゃり、と、粘こい音にて、そいつはあまりにあっけなく、頭を飛び散らして死んだ】

【――その後。ようやく混乱から抜けきった涙目の少女へ"そいつ"は簡単な質問で体調について尋ねるのだろう、ふるふる震える少女はすっかりと童女のように相手の服を掴むから】
【変な声をさんざ上げたのが恥ずかしいらしかった。見れば顔が赤くて、耳も真っ赤だった。――意味の分からなさは、アリアの優しさに免じて、すっかりと許してやった顔をして】

「――大丈夫みたいね。まあ、ぼうっと生きてたら喰われてた分も治るでしょう。――――言ったでしょう? 大した奴じゃないって」
「そこらへんによく居る魑魅魍魎。たまたま何かのきっかけで妖に変貌った生物。今回はたまたま呪われて、取り憑かれてたって言う感じ、――、」

【故に少女は着物の不審者にも心を許したわけではないけど、その場に居ることを許したらしかった。その代わりに強請るのはずうっと自分の藤色を撫ぜること、愛しい指先にて】
【頭の潰れた蛞蝓の死骸は気づけばぞろぞろと蕩けて、その端から虚空へ消えつつあった。視覚にもその死を伝えるのなら、相手の靴にしみ込んだ体液すらも、消え失せるから】

「あたしは事情を知らないけど、――どうしてもって言うなら、そうね、事情を知ってる神様でも呼んでみましょうか。それとも、解決したことはもう宜しい?」

【「――どっちでもいいけど、事情を知る権利はあると思うの」】
【そうやって言ってそいつは笑うんだろう。至極丁寧で綺麗な姿勢をしていた。櫻人らしく床に正座。古臭いカラオケで流れるムービーみたいな、変な光景】
【とかくシュールな温度はどうしたって拭えなかった。黒髪も赤い着物も白い肌もおかしくなくて、狐の面もよほどおかしくはないのに、――なんていうか、空間と、合ってない】


574 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/29(月) 22:25:57 WMHqDivw0
>>572

【声をかけられても最初、自分がそうされているとすら思わなかったらしい】
【暫く呆然とし続けて、それでも、何度か呼び止められるなら。「あ」と声を零し】
【それからようやく足元の惨状に気がつく。「あ、あー……」、だけど反応は薄くて】

………………されてないよ、まだまだ現役だよ現役っ!!

【――――しかし、フラれたのかと言われれば喰ってかかるような勢いで首を振るのだ】
【トッピングの大半を失って最早皮と少しばかりのクリームだけが残ったクレープ、】
【ちゅるんと吸い上げるみたいに勢いよく食べてしまって――慌てて咀嚼しながら】
【左手薬指のアピール。なるほどたしかに、そこには指輪が植わっているんだけど】

【……そんな感じでもごもご口をやってから、やっと飲み込んだら。はあ、と息を吐いて】

別れ話はしてない、してないけど、男相手には、…………、されてないけど、
………………トモダチに絶交されちゃったかもしんない、…………。

【くしゃくしゃ。包み紙を丸めて傍にあったゴミ箱へポイ、したら、あまりにも解り易く項垂れる】
【それでそのまま――盛大に零したモノたち、拭おうとすらしないのだ。あるいは、】
【ハンカチもティッシュも持っていないだけかもしれなかったけど。それにしたって】
【ニーソックスにクリームやらチョコソースやらが染み込んでいくのは気持ち悪かろうに。……、】
【……それすら気にかからないほどに、何やら、落ち込んでいる。項垂れたまままたひとつ息を吐く】


575 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/29(月) 23:16:26 BRNVt/Aw0

【路地裏の、奥の奥。微かに声は聞こえていた】

【音階からするに櫻の歌、のようだった。少しばかり暗い音の、それでも何処かほっとするような──恐らくは何処かの地方の子守唄かなにか】

【ならば音の出所はと探ったならば建物の隅、見逃してしまいそうな死角に小さく小さく縮こまって】

【十代半ばの少女、だった。生成色の大きめのキャスケットにデニム地のワンピース。帽子からのぞくのは月白色の髪の毛で】

【このまま小さく縮こまっていればそのうち存在すら小さくなって消えられるんだって、そう信じているかのように膝を抱えて丸まって】

【それでも独りは怖いからって、けれども見つかりたくはないからって、ひどく小さな声で歌っていた】

【けれども何か物音がしたのなら、或いは声を掛けられたのなら、歌うのをやめて更に小さく縮こまろうとするのだろう】
【そうしてその場をしのごうとしているようで】


576 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/29(月) 23:40:30 BAcIFqww0
>>574

【「男にフラれたみたいな顔してたけどな」などと、それがどんな顔なんだか知らないが】
【何というか、あまりマジメなタイプには見えない男である。先の声のかけ方でもわかっていたかもしれないが。】

【――そんな男は体重を片方の足に傾けて、彼女がクレープを処理する様を立ったまま眺めていた】
【そうして、クリームやら何やら、多種多様な甘味を付けたままの姿を見れば、頭を小さく左右に振って】

……お前、そのままでいるつもりか……?蟻に上られてもしらねーぞ。

【などと言いつつも、内ポケットから取り出したのは真っ白なハンカチ。それを顔の前へと突き出して】
【チョコソースなどを拭うならば、当然シミにもなるだろう。それなりに質の良いものに見えるけれど】

ふーん、絶交、ねぇ……。
ガキの頃なんかは、毎日同じやつと絶交してるやつもいたもんだが、そんなに深刻な話か?

――――ま、話くらいなら聞いてやらないでもないぜ?年長者の務め、ってやつだ。

【言いながら、男はベンチの後ろ側へと回り込んで。そのまま、背もたれに腰をかけるように】
【小さく笑って、それから、「言いたくなけりゃ別にいいけど」と付け足した】


577 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/29(月) 23:56:31 Ty26k7V20
>>568

「あら?興味がお有りです?…是非ともコメントを頂きたいところだけど、今回は諦めるわ」
「良ければ、2月ぐらいのメカニカルインテリジェンス学会誌に要旨が乗ってますので、よろしければ」

【機械知能学会の季刊誌といえばその界隈の最前線の学者ばかりが名を連ねる場所だ】
【そこにセンセーショナルに取り上げられ、一時期一般のニュースにも少し乗ったりした事がある】
【中身には一切触れずに、天才少女なんて俗な肩書で】

「まあ、それについてお話するにはタイムトラベルについていくつか原理をお話しなければなりませんね。」
「適宜、資料をお出ししますので細かいところはそこで―――舞衣さん、まずは新聞とレポートを」

【と、親しげに麻季音は名前を呼ぶと、こちらにいる霧崎はパソコンと共に持ってきたカバンから少し前の新聞と】
【ホチキス留めしたプリントの束を後藤の前に差し出した】


「えっと、本題の話には少しばかり準備というか…資料を用意しなきゃならないのでそれまでは」

「私のタイムマシンの夢物語でも聞いていただきたいと思うんですけど…」


【麻季音が画面越しにそういうと、霧崎は立ち上がった。余計な指示をされなくとも彼女は最善を取れる。】

少々、準備をしてきますので。席を外させていただきます。…あの、お手伝いを。

『うへ、捕まっちったぁ』

【霧崎は完璧なビジネスマナーの礼をして、タマキは霧崎の居合斬りのような視線に負けて二人は退出した】


「一つは一月ほど前の新聞です。見てほしいのは――「水国核技術中央研究機構、新粒子発見」のところです。」

「そしてもう一つがその核中研が出した技術レポートです。――この新粒子こそ、タイムトラベルの鍵なんです。」

「みなさんが、どれほどSFや物理学なんかをご存知かは少々わかりかねますが、私の提唱する理論は所謂ワームホール理論に近いものです」

「ただ、実際に時空間を曲げて、物理的に私達が通り抜けられるサイズのワームホールを作るのは不可能です。」

「この水国核技術中央研究機構がもつ粒子加速器――所謂、大型ハドロン衝突型加速器を持ってして発生することのできる高エネルギーは」
「20eV(エレクトロンボルト)。今回の新粒子は高エネルギーによる衝突実験によって発生したワームホールの副作用のようなものかと想定しています」
「尤も、人が通り抜けられるようなワームホールが生成されていたなら新粒子なんかが一面には乗っては居ないでしょう。」

「では、どのようにして――私達は時空を旅するのか。ふふん。気になります?」
「でもこれを思いついたとき私は…そうね。ショックでした。この世界の仕組みがこんなにも大雑把だったならサイアクだなって」

【麻季音は楽しそうだ。これが研究者の性分というものだ。偉そうで知識をひけらかしたがり、でもそれは無意識で、好奇心旺盛】

「私の課程ではこの世界を構成するのは質料/ヒュレーと形相/エイドスと仮定しています。アリストテレスはご存知ですよね?」
「所謂、この世界の物質の材料が質料でその設計図が形相だという哲学的思考の一種です。私はこれを多世界解釈に当てはめました」

「ああっと…いつタイムトラベルになるのかとお思いでしょう。ただ…私の考えでは過去も未来も平行世界の一種なんです。時間が現在の連続体で」
「今のパラパラ漫画みたいな分断された世界で――因果的に連続しているようにみえるだけなんですよ」
「ただ、過去から現在が一部変化して複製されるから過去は連続体のようにみえ、未来は不確定なように見えるんです。要は、類似性の問題です」
「縦に伸びた多世界が時間、横が所謂平行世界、Zがあるならおまけで空間移動――それが私の解釈です」

「閑話休題――質料は原子や、素粒子やもっと小さいヒッグス粒子を最小の素材と仮定するなら、新粒子こそ設計図――形相なのです。」

「どの並行世界も質料は等しく存在するならば、世界はいかに異なるか。端的に――この世界はディジタルと同じなんです。まあ、多分。ですけど」


578 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/30(火) 00:23:53 WMHqDivw0
>>576

え? あー……だってハンカチとか持ってないし……。
……使っていいの? だって真っ白じゃん、汚れちゃうよ……

【持ってなかった。どうやらこの少女、マメな性格ではないらしい】
【突きつけられても少し困ったような顔をして、まだ、受け取らない。んーと声を零して】
【それでもまだ押し付けられるようであれば受け取るのだろう。変なところで遠慮がちでもあるらしい】

絶交、ていうか、あの、気まずいことが起こって、あの……会えなくなった?
会ってくれなくなった? っていうのが正しいのかな、えーっと、……、

……説明難しいな。たとえばさ、あの……えーぶい出てたのがバレたみたいな……

【そうして、話を聞いてくれるという青年に対して――とんだ爆弾発言をブチかまし始める。】
【勿論その後に「あ、違うよ!? あたしは出てない! ものの喩え!」とか言って慌て始めるのだけど】
【喩えだとしてもイヤすぎる話だった。「ごめん、今の、忘れて……」 小さい声で言ってから】

……ええっと、……その子に隠し事をしてたの。
まあ隠し事だから、バレなければそれに越したことはなかったんだけど、バレちゃってもまあ仕方ないかなって。
あたしはそう思ってた、だから、バレたことに関してあたしはイヤな気持ちになってないんだけ、ど……

その子は「それ」を見て、あたしの顔が見れなくなっちゃったみたい。
見てイヤな気持ちになるどころか、むしろ、こんなもの見ちゃった自分を責めてる、みたいで……
あたし別に、そんな、気にして……ないと言われればウソになるんけど、でも、そんな……
……罪悪感? ってやつかな。抱いてほしくは、なくって……

【つらつら語り始めるけど、意味はよく伝わらないんだろう。ごく抽象的にぼかしてあるんだから】
【むしろそこまで言うなら、先述の爆弾発言だって本当のことだったんじゃないかって疑惑すら出てくる】
【そんな感じで、説明、下手。だけどつまるところは最後の一言に集約されてしまうんだった】
【「自分のせいで、相手に罪悪感を抱いてほしくない」。――抽象的かつ、ごく難しい問題があるのは、確かなようで】


579 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/30(火) 00:30:18 smh2z7gk0
>>566

さん―――ッ!?………手前、一体全体何を言ってやがる!?
(300年後の六罪王だと!?ついに俺も頭がイカレてきちまったか―――ッ!?)

(………―――いや、だが、〝六罪王〟とやらは人智を超えた化け物共だと聞く)
(それにさっき見せた〝力〟………あれはまるで銃弾の〝時〟を―――。)

【驚愕の表情を見せて立ち止まる赤髪の青年、相手に向かって恐怖にも似た感情が芽生え】
【それを押し殺すように怒鳴りつけるが、一方で冷静に状況を判断しようとする側面もあった】
【そして、ゆっくりと構えた得物を下ろし苦虫を噛み潰したような顔で相手をみる。】

ふざけやがって………手前が本当に〝300年後の六罪王〟ならなんだってこんな過去にきた?
この世界が〝マシ〟だと?よくもそんな事を言えるな…!〝今〟を生きる奴らの苦悩を知ったように…!


ッチ―――俺は〝ジョージ〟。〝D.R.U.G.S.〟傘下の〝トラロック・ファミリー〟の若頭。〝ジョージ・トラロック〟だ。

【「って〝D.R.U.G.S.〟なんて300年後の奴には分からないか?」と皮肉めいて笑う】
【いまだ目の前の青年への感情は冷めないが、相手が相手だけに一応名乗る。どこか生真面目さも感じられる】
【ジョージは降り注ぐ〝死の雨〟に冷や汗を流しながら忠告通り一歩後退する。】
【未だ鋭く相手を見つめながらも、戦意は失われつつあった。】

アンタが世界を愉しむかどうかなんか知った事じゃないが………1つ教えろ。
―――アンタが本当に〝300年後の六罪王〟なら、〝これから〟一体何が起こるってんだ?


580 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/30(火) 00:43:20 smh2z7gk0
>>567

【ギンプレーンから話かけられれば「やあ!」とまるで待ち合わせをしていたかのように手を上げる】
【「ああ、そうなんだよ」と言いながら二人が座れるように空いている座席を引く。】
【〝やたらカロリーが高そうな飲み物〟には顔を顰めるが、すぐに笑顔に戻る。やはり人当たりの良さそうな雰囲気だった】

それはお互い様じゃない?さっきの出来事を踏まえて陽気―――そうだね君は。
実は私もさ、君たちと是非話がしたかった。もう個人での観測では色々と限界が来ていてね。

どうだい、〝情報交換〟………てやつさ。

―――但し、お互いの〝情報〟をすり合わせた事による〝認識〟のリスクは軽視できないケドね。


【そう言ってマリアベルは肩を竦める。確かに〝認識〟のリスクはある、むしろギンプレーン達の方が知っているだろう】
【さらに言えばこのマリアベルという女も素性は知れない。どうやら〝イスラフィール〟とは別のやり方で〝ストックホルム〟にいたようだが】

【マリアベルは相手の返答を待たずに口を開く―――。】


さて、"偽書" Psychosocial―――って何だか君たちは知っているかい?


【喧騒の中で呟かれるのは―――禁忌の名。】

【―――社会心理に溺れる―――殉教者――――――。】

//ぜひぜひ宜しくお願いします!遅くなってすみません!


581 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/10/30(火) 00:46:03 I.3DEeWg0
>>550
【やはり、彼らも商売人である。売り飛ばしたとはいえ、その商品をすぐに壊されるよりは】
【有効活用している、という方が悪い気はしないのだろう。そうした点でも、ビジネス上の信用はおける相手だ】

【品質という点でも、カニバディールが買い付けた妖怪たちの働きは目覚ましく、スクラップズの取れる手段は格段に向上した】
【それほどの取引相手だからこそ、その裏の闇の深さは後々異形どもにとっても無視できないものにもなろうが――――】

私の犯した失策も、まさにそれでした。最初の一匹をどうやっても捕らえられず、手下たちともども右往左往したものです
確かに、後ろの二匹でも十分に有用な能力ではありますが……やはり、どんな相手も転ばせる長子。この存在は大きい
おかげ様で、我々の人材の層もますます厚くなるというものです

いえいえ、興味深いお話です。事実、素晴らしい手際ではありませんか

【異形の醜怪な笑顔ではあるが、カニバディールは熱く語り出す男の話に聞き入って見せる】
【良好な関係を築くためでもあるが、この肉屋は自分の知らないことに対しては、常に貪欲に情報を求める】

ええ、よろしくお願いします、英群さん
なるほど、今のような情勢になる前に……物騒なのは今に始まったことではありませんな
まあ、盗賊の私が言えたことではないですが

【カニバディールもまた、世間話として流し、それ以上は踏み込まない。境界線は心得ている】
【何とも賑やかな一団だ。だが、同時に彼らも恐るべき闇の住人達。肉屋はそれを忘れない】

【互いの受け渡しは滞りなく完了。高額の取引も、履行はあっけないものである】
【こうもあっさりと、悪事は積み重ねられ、この世の澱みは深くなっていく】


『オリビア・ホァン』……その名を聞いたのはいつぶりでしょうか
水の国の裏街道で、『阿片婦人』と呼ばれていたやり手の売人。官僚や警察まで相手に商売をしていたとか
私は、薬には手を出さないもので直接の関わりはありませんでしたが……

彼女が、漢方薬局の主人として何者かに殺されたという話が出た時、我々スクラップズも疑いをかけられたものです
盗賊が、『阿片婦人』の財産目当てに凶行に及んだのではないか、とね

幸いにして、事件の当時に国外にいたので疑いはすぐに晴れたのですが
あれは、確か……いつのことだった? スカーベッジ

「……半年、ほど前だったはずですぜ」

【カニバディールは、臆病だ。ゆえに、同じ裏側の人物の情報収集は欠かさない】
【当然、『阿片婦人』についても。だが、それがこの場に関わりがあるのだろうか】
【あるいは、先の話に出たトラブルが半年前、というのと繋がっているのか。異形はまだ、この底知れぬ青年の真意を測りかねていた】


582 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 01:39:01 WMHqDivw0
>>580
【ギンプレーンはマリアベルの対面の席に座った。その横に、隣の席の椅子を借り受けて、ディーがちょこんと座る】
【そしてディーはレモンティーを手に取って、ギンプレーンはもう片方を飲み――と言うか食べ始めた】


HAHAHA、良い提案だよ、マリアベル女史。
ボクの方でも情報交換は必要だと思っていたんだ。
観測や認識は多角的であることが大事だからね。


それにキミの立ち位置は中々に興味深い。
虚神達とも、うちのボスともまた違うようだしね。

そういう視点は存外にあっさりと真実を看破したりするものサ。


【無責任なことを言いながら、語られる書の名前に肩を竦めて】


ロールシャッハのことを記した禁書だと言う程度の知識は有るよ。
中身については、まだ目にしたことがないな。

――キミは、その内容を知っているのかい?


【尋ねはしたものの、否と言う返答が来るとは思っていない顔だった】
【笑う男は相変わらず貼り付いたような笑顔のままで、傍らの盲目の少女は話に参加せずに、レモンティーを啜っていた】


リスクは有っても誰かは知っているべきサ。
ボクらも、一応なりとも脳味噌に対策を仕込まれているしね。


583 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/30(火) 02:01:56 smh2z7gk0
>>582

【ギンプレーンの言葉に、マリアベルは驚いたように眼を見開く―――】
【それは本当に思いもよらないものだったようだし、意図的に認識から外していたようでもあった】

アレが〝ロールシャッハ卿〟の?………すまない、そちらの方が初耳だね私は。
―――内容については今しがたノートに書き写していたところさ、私が認識した概要だけだがね

〝ストックホルム〟の書店で見つけたんだ、何故だか持ち帰る気は起きなかったけどね。

【そう言ってマリアベルは先程まで筆を激しく動かしていたノートをギンプレーンへと差し出す】
【そこには「能力者の男性が事故に合い、能力も何も通じない病室で目が覚め〝院長〟と呼ばれる」】
【―――というような概要が書かれている。マリアベルに聞けばもう少し詳細も教えてくるだろう】

やはり何らかの〝思考防壁〟を施しているのかい?できればやり方教えて欲しいよ
この前何も張らずに情報流れてきたら〝処理落ち〟してゲロゲロパーだったよ。あ、食事中にごめんよ

―――〝君たち〟は何者なんだい?

【膝に手を添えて足を組みながらマリアベルは問いかける。相手が良いのであればもはや迷う事はない】
【「私ばかりでは申し訳ない、もっといろいろ聞いてね」と気遣いも見せながら笑いかける】
【レモンティーを啜るディーを横目で捉えながら、今度は相手の返答を待つ。】【会話のキャッチボール、大事大事】


584 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 02:12:11 WMHqDivw0
【――そこはどこに在るのだろうか】
【白紙の地面は一面に広がっており、何も情報となるべき寄る辺がない】
【しかし、その地面のざらついた感触だけは不思議と安心感を覚える】
【世界には果てしなく奥行きが有り、どこにでも行けるが――それはどこにも辿り着かないに等しい】


【元はエカチェリーナ対策に講じられていた擬似対抗神話"ゼノンのパラドックス"】
【結果に辿り着くまでに無限の過程を踏む必要が有ると言う概念】


【その機軸を基に創られた世界の中――彼女は隔離されていた】
【それは半ば監禁に等しいのだろう】
【ロールシャッハのミーム汚染を受けた彼女が、その干渉を受けずにいられる唯一の区画で在るが故に】


【肉体の有無は関係がなく――認識だけが彼女をこの場に閉じ込めている】
【彼女の認識がこの内より一歩でも出れば、その卓越した目と耳はそのまま、ロールシャッハのものとなってしまうから】


【サクリレイジの職員達は、皆ミーム汚染を防ぐための忘却機構"オブリヴィオン"をその意識に仕込まれている】
【しかし、電子生命であった彼女にはその措置は成されていなかった】
【故の荒療治なのであろうが、彼女がその扱いをどう思っているかまでは知るところではなかった】


――やあ、気分はどうかな、リーイェン?


【そして男はやって来た】
【いつものように、冴えない顔を引っ提げながら、片手には丸めた紙切れが握られている】

【――外の世界では有り得ない構図だろう。二人が"対面で"顔を合わせることなど】


//置きレス予約で!


585 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/30(火) 02:13:23 BRNVt/Aw0
>>581

【饒舌に語る男の話に聞き入るカニバディール。その様子に更に気を良くしたらしい男の熱弁にも力が入って】
【同僚にもう止めたら?と言わんばかりの目を向けていた水鶏だったが、カニバディールがその話が興味深いものだと返すのを聞けば、そういうものなのかなー……と首を傾げ】

手際も、だろうけど俺達の場合コレの力も大きかったりするんじゃないかなー……
コレ、そういうものに対抗し得る加護が備わってるって話なんで……
【「まあ噂とかの範疇なんで実際にそうなのかは分からないんですけどねー」そう言って彼が指して見せたのは身に付けている、目の四方に縦長の菱形をあしらった印。恐らくは社章、なのだろう】

【そうして滞りなく終わった取り引き。けれども青年の話は続いて】

まあ、犯人はただの泥棒、だったんですけどねー
それが偶然にも彼女の夫の前妻との息子だったっていうのと彼がオリビアだけでなく彼女の夫や子供達までぶっ殺した挙げ句薬局とか近隣にまで火ぃつけたってのでまあちょっと話題になってましたっけー
【まあちょっと境遇似てるし同い年だし共感しないでもないんですよねー、その犯人の"リューシオ"って奴には、なんて水鶏は少しだけ笑って】

……っと、話がずれました
その阿片婦人、なんですけどねー、彼女もうちの顧客、だったんですよー
でもって彼女も通常種の妖怪から何度かお買い上げ頂いてて、さー北方にしか棲息しない希少な妖怪買ってくれるぞー仕入れもしたぞー輸入したぞー

──って時に本社から訃報の報せですよ
【如何せん貴方と買い方が似てたもんでして失礼ながら心配してしまって……と彼は苦笑する】
【予想通り半年前にあったトラブル、というのが彼女の件で間違いないようだ】


586 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/30(火) 02:21:55 euM271bY0
>>578

ったく……、それくらい持っとけっつーの。
こんなもん消耗品だ、いいから使え。

【彼女が躊躇うならば、半ば無理矢理のような形で。「血で汚れるよりよっぽどマシだ」なんて、】
【呟いた声は街のざわめきに呑まれかき消されていく。】

【そして、彼女が自らの現状について語るならば、男は黙ってそれを聞くのだろう】
【抽象の領域の話であれば、彼女の言葉の終端から少しの間、沈黙が流れる】
【思考を積み上げて、言葉という形にするまでの時間。数秒か数十秒か、あるいはそれ以上か】
【やがて、男は口を開く。空を眺めるように、視線は宙空を漂い続けて】

隠し事の例えで最初にソレが出てくるのはどうかと思うが……まあそれはいい。

んー…………何というか、難しい問題だろうなぁ。ただの喧嘩だったら、どっちかが謝りゃ済む話なんだけど。

向こうは“それ”を見たことでお前を傷付けたんじゃないか、って思ってる。
お前は自分の隠し事のせいで、向こうに負い目を感じさせてるんじゃないか、って感じてる。
お互いに〝相手に申し訳ないことをした〟って思ってて、向こうはそれで顔を合わせづらくなってる、と。

―――だいたいそういう認識でいいか?

【そこまでを口にして、男は一旦言葉を切った。まずは頭の中で整理したことを、言葉にすることで改めて確認して】
【―――その上で、具体的な部分に踏み込む事はしない。彼女が敢えて避けているのならば、部外者たる己が踏み入るのはナンセンス】
【ただ、もう一つ。確認しておきたいことがあった。だから、問いを投げた】

お前は…………その〝隠し事を知った友達〟と、これからどう付き合いたいんだ。
『今まで通り、何もなかったように』いたいのか、それとも――――――――


587 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/30(火) 02:24:54 arusqhls0
>>584

【人工知能に精神は存在しない、けれども確かに彼女は "ロールシャッハ" の汚染を受けていた】
【ならば逆説的に人工知能に精神は存在すべきだ、──── そう認識してしまったのだから】
【それ故にこの手段が講じられた、新たな "認識" は古い "認識" を駆逐してしまう】


【思うにそれは確かすぎるほどの道理であった、古い慣習が新たな慣習に駆逐されるのと同様に】
【最早空を見上げて、天が動いていると認識する存在は居ない、私達は地が動いていると認識しているから】



【──── しかし、それは果たして正しいのだろうか】



【私達はそうであると信じている、逆に言えば、そうでなければ可笑しいと思いこんでいる】
【この地球は宇宙にあって、その広大な世界の中に、小さな私達が存在している、そうでなければならないから】
【けれども違う、それはそう認識しているだけであって、──── だから】



──── 悪くはねーです、生まれて初めて着替えをしたのですが
存外、こういうのも嫌いじゃねーですし



【リーイェンは立っていた、銀髪の無愛想な表情をした少女、けれどもいつもと装いが違った】
【白いワンピース、裸足の少女は些か、無垢と呼ぶべき服装であったが、之でも彼女にとってはおしゃれであった】
【奇妙な話だ、それこそ、服装にこだわるというのも感性の問題だろうから】



……で、私に会いに来たって事は、それなりに算段がついたのでしょう?
待ちくたびれたです、──── てっきり隔離したきり、忘れたものかと


588 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 02:26:46 WMHqDivw0
>>583
【"偽書" Psychosocialについての概要に目を通す】
【傍らのディーには見えないようで、だからと言ってギンプレーンが口頭で教える様子もないのだが】

おや、知らずに読んでいたのかい?
そうか……キミがインシデントに関わり始めたのは最近だったのだっけ?

虚構現実から、発見されたINF財団の報告書――そこには、虚神達と彼らについて記された禁書の名が有ったのサ。
そして虚神を倒す対抗神話は、そこから見付け出すのが最も手っ取り早い。

例えるなら、虚飾を操る"レッドへリング"と言う虚神を倒すのにオッカムの剃刀を用意するようにネ。


随分、短い内容なんだね?
言わんとすることは理解できるけど――オチとかないのかい?


【男はもう少し詳細な説明を受けたがるだろう。情報は多いに越したことはないのだから】


ああ、でも、そうか。それで先程の"水槽の脳"に話が繋がるワケだね!


【得心が行った、と言う風にポンと手を叩く】


それはこっちも聞きたいところだけど。
――処理落ちって言うのはどういうことなのかなあ?


ボクらは――そうだなあ。"SACRILEGE"。
INFオブジェクトの排除を目的としている組織なんだけど――実体としてはもう少し抽象的でね。

組織はボスが取り仕切っているけど、彼は故有って、人前に顔を出せない。
だからボクらが代わりに手足となって動き、事件を観測する。
ボクらの知った情報はボスに流れ、そこから組織員達に伝搬する――まぁ、組織自体が一種のクラウドシステムみたいなものだと思っておくれよ。


【気遣いを見せるマリアベルに対して、この陽気な男は余り空気を読む性質ではないらしい。言いたいことをつらつら喋っている様は余り理知的には見えない】


589 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 02:47:02 WMHqDivw0
>>587
【それは特異な状況で有ったのだろう】
【電子の海に存在するこの少女に取っては、思ったよりも悪くない"不自由"で有ったのかも知れないが】
【それでも、隔離されていれば、外の様子が気に掛かるのは当然であるだろう】

【かつての万能感を制限された様は、しおらしいお嬢様のようでも有った】
【それはそれで悪くはないのだが――今はかつての知啓を取り戻して貰わなければならない】


【シンプルな丸テーブルの上に飲み物が用意されている】
【誰が用意したものでもないのだろうが――この程度のサービスは実現できるのだろう】


快適に設定出来ているようで良かったよ。
君に取っては、デスクトップに便利なアイコンを置く程度の感覚かも知れないが、私はそういうのには疎くてね。


【この隔離空間は永遠に"結果"に辿り着かない】
【だが、それは限定的なもので、男がこの空間の外に出れば、それらは全て帰結することになる】
【だから飲み物もただの気分でしかないのだが、茶飲み話には必要なアイテムなのだろう】


その装いも中々に似合っている。
普段は画面越しにしか見ていないから中々に新鮮だ。


【多分きっと、男には世辞の才能のもないのだろう。美辞麗句もまた平凡なものであったから】
【そして、椅子に腰を落として、一拍を置いて】


――ロールシャッハが動き出した。
このペースから行くと彼との決着も近いだろう。

ギンプレーンの持ち帰ったログを見るかい?

……心配せずとも、ロールシャッハが背後に立つようなことはないよ。


590 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/10/30(火) 11:40:08 ZCHlt7mo0
>>558

<――――それを『人形』と言うのだ! Human In Name Onlyなのは、人間から見てもお前たちの方だ……!>
人の真似事して喜んでるのは、一体どっちなんだろうねぇ……生きる価値のない生き人形の分際で、人間の言葉喋ってるんじゃないよ……ッ!

【『H.E.X.A.』の男が、舌鋒鋭く即座の反駁を叩きつける。ヴォーダンやアーディンは確かに亜人種だが、彼は人間だ】
【無論、仲間の名誉のためという意味もあるのだろうが――――それは戦奴の生き方でしかない。それで『人間』を語られる事は、不愉快極まりなかった】
【被せて、戦闘からは遠ざかっているシャッテンも鼻白む。そんな人間、生きていても仕方あるまいと――――】

<ッ、異能を使う部隊だったか――――っぐぅぅッ!!>

【叩き込んだ拳は、片割れを死に至らしめたが、その上で電撃の拳を見舞ってくる事は想定外だった】
【咄嗟に肘を折り曲げた左腕で、防御を固め、胴体を狙ったその拳をガードしたが――――】

<(っく、不味った……機能が一部ショートしやがった――――!)>

【電撃は、『H.E.X.A.』の機能を、一部不全へと追い込んでしまう。そのまま、右腕での反撃で同じく仕留めようとしていた心算が、立ち行かなくなってしまう】
【その上に、動作に支障を来せば、良い的になってしまう。復調までの数秒、そのタイムラグが命取りだ】

<……ッ、吹き飛ぶがいい――――『局所的無情爆弾』……!>

【本体機能が使えないならば、携行装備を使うまで――――引いてた右腕を腰に回して、何かを抜き取り】
【殴りかかってきた男を、ガードの上から強引に突き飛ばしがてら、その亜球体を、叩きつけるように投げつけた】
【――――爆発のベクトルが、一定範囲で内側へと逆転する、限定的な範囲に高い破壊力を集中させる、特別な爆弾だ】
【今回は、破壊力を高めるというよりは、周りを巻き込まないために選択した一撃なのだろう】

{っ……な、なんだ……!? っく、これは、幻術……!?}

【一方のアーディンの方は、身体を拘束せんとする異形の腕、そして浴びせられる怨嗟の感情に、動きを止める】
【――――これまで、何度か『虚神』と遭遇戦を繰り返してきたアーディンには、それが幻術だとはすぐに分かったが】
【ただの幻ならぬ幻術は、すぐには破れない。かつて片付けてきた面々の憎しみを、下らないと切り捨てながらも、確実にその身体は絡めとられて行き――――】

{――――ぐぅおおおぉぉぉッッ!!}

【幻術に克つには、現実を叩きつける事――――アーディンは咄嗟に、左手の爪で、自分の顔面を思い切り切り裂いた】
【一度失った左目だ。今さら裂かれても惜しくはない。ざっくりと顔に走る傷跡、その痛みが、彼の意識を現実へと向ける】
【そうして幻の縛鎖を振り切ると、生き残った男へと向けて、飛び回し蹴りを放つ。丸ごと当身を叩き込むには、これが最適解だと踏んで】

「……大丈夫だ。あの男は特別だ――――俺たち全員の、ボスのようなものだ……」
優しくて、強い人だよ……大丈夫、彼さえいれば……

【尚も警戒は解かないままで、シャッテンとヴォーダンは、少女に静かに言葉を重ねる】
【人間的に、心の力を一番強く持っているのは、間違いなくアーディンだろう。そんな、迷いない信頼が、彼らの中にあるようだった】


591 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/30(火) 11:51:07 arusqhls0
>>589

【而して仏頂面は変わらず、用意された椅子に着く、──── 成程、この空間に関しては大体分かった】
【 "過程" を永遠に繰り返すという事はつまり、無限に引き延ばされた時間軸に存在する動点に等しく】
【それ故にリーイェンにとっては、無数の思考と反復の中に身を置くことが出来るという事に他ならない】


──── 能書きは良いです、さっさと本題に入るです、状況はあんまり芳しくねーですから


【リーイェンはギンプレーンの持ち帰ったログを読み取る、 "無垢の祈り" と "入水願い" ──── そして】
【つい先日行われた "ストックホルム急襲" ──── その幾許かの情報をかいつまんで】
【時間にしては長くて短い、それは一日でもあったし、一瞬でもあった、そこに矛盾は無く】


……成程、大体は把握しましたです、存外にあの優男は狸だった様ですから
あんな手段を用いて "ボス" を隔離していたのも盤外戦術このうえねーですけど、必要な手段だったのでしょうね
しかし、まぁ、なんというか──── "ロールシャッハ" の目的とやらですが



【溜息混じりにリーイェンはほおづえをつく、この空間に居る間に、大分動作は上手になった】



──── "陳腐" でごぜーます、これだけ引っ張った帰結が "水槽の脳" だなんて
安っぽいサイエンスホラーの方が、時間がかかってねぇってだけマシでしょう、ですから
ロールシャッハの目的が "それだけ" であるのであれば、対処はし易いです、限りなく

言ってしまえば彼の "君達の味方" というお題目も "世界を護る" だなんて詭弁も
全ては自己の利益に帰結するって結論なんでしょう、──── だとすれば与しやすい



──── まぁ個人的には "マリアベル" って存在に、些か注目がいきますです
最後のギンプレーンへの耳打ちを含めて、この女だけが "浮いている" です


……言われなくとも、アポイントメントは取るのでしょう?


592 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 14:56:09 EUdWO2GU0
>>591
【例えば、この空間の中で心臓を貫かれても、手足を落とされても、何ら支障なく動くことができる】
【数百年を過ごしたとしても老いることなく活動出来る】
【しかし無限を数え終えた後にアキレスは亀に追い付くことになる】
【結果は変わることなく必ず訪れるのだ】

いくらか興味深い現象も有ったよ。
ストックホルムは深度の沙汰は有れど、パグロームの潜む虚数領域に良く似ている。

そこに滞在した人間の末路もね。

【イスラフィールが不浄と呼んだそれは、パグローム以前にあの能力を付与し、変質を果たした者達に良く似ている】
【殊更にそれを語ることはなかったけれど】

おや?君には陳腐に思えたかい?
確かにたった一つの……とは極論が過ぎるけれど、中々に冴えた思い付きだと思うよ。
手段を選ばないところは相変わらずと言えるけれど。

……参考までに聞いてみたいな。
君はロールシャッハの企みのその具体的なところをどのように想像しているんだい?

【"水槽の脳"。肝がそこであることは分かった】
【だが実際には手順も手段も必要となる】
【男に取ってロールシャッハのこの試みは過程こそが重要だとでも言いたげに】

本来はパグロームの方が適任なんだけど、コミュニケーション取れないからね、彼は。

ギンプレーンに会いに行かせているよ。
君が動けるのなら任せたかったところなんだけど。

彼女の存在は中々に興味深い。
私よりも余程……ロールシャッハに近い立ち位置にいるのだろうからね。

故に手を誤ると危険だ。
仲良くしておきたいところだよ。彼女とは。


593 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/30(火) 15:15:22 arusqhls0
>>592

【──── リーイェンはこくりと、一つうなずきを返すだろう、 "ストックホルム" に関して】
【之はサクリレイジだからこその見解、パグロームという "虚数渡り" が居るからこその情報】
【その意見に関してリーイェンは確かな同意を返した、本質的に似ている、と】


まぁ恐らくは "虚構現実" と "基底現実" との中間ぐらいなのでしょうね、虚数的にも実数的にも不安定な場所です
だからこそ、彼方から渡ってきたり、此方から取り残されたり、が残っていたのでしょうが────

……とすると、サクリレイジの側からストックホルムに行くのはそれなりに容易なのでしょう


【テーブルにぺたんと腕を付けて、脚をぶらぶら、こうしていると普通の少女と遜色ない】
【ワンピースの裾から下着が見えそうになる位には、存外彼女も浮かれているのだろうか】
【言外に示すのはその他の事、特に "外務八課" とどう足並みを揃えるかについて】


──── 言うならばそれは逆説的な "安全保障" に過ぎねぇのですよ


先の二つのインシデントで奴が目指したのは、人類の存続と、知性の存続と
これまでのログから確認するに、"虚構現実" がディストピアと化した "未来の基底現実" であり
そこでは "欲望" やら "知性" ──── なるものが奪われていた、と、大体の差異はあれど、そう捉えられます

だとすればロールシャッハが避けるのはその二つ、人類を存続させ、且つ、知性を保つ、と

それ故にロールシャッハは先ず "予防線" を貼った、人類を絶滅しかねない "死の使者" ジャ=ロ
そして、可能性の一つとして、知性を奪いうる "黒幕" ──── そして、嵯峨野 鳴海、と

それら三つの存在を先ず消さなければならない、ジャ=ロは消滅し、嵯峨野 鳴海は乗っ取った
しかし、インシデント:入水願いの失敗により、エカチェリーナの "能力" から "黒幕" が離れてしまう
これではまだ、黒幕の思惑を阻止する事が出来ない、──── そんな所でしょう



だからこそ "ストックホルム" というとっておきの隠し場所に、彼は "Last Resort" を用意したのです
絶対に他者から介入されない場所に、自身の命綱を隠す、それこそが奴の企みでごぜーます

更に言えば、奴はその他のニンゲンにも同じ処置をすることで、一方的に利益を得ることが出来ますです
言い得て妙ですが "人間農場" でも作る気なんでしょうね、──── だからこそ、陳腐なのです

それは "逃げ" に他ならねーのです、小さなシマを作ってそこで隠居する、小悪党と変わらねーでしょう


【事実その通りだと思っている、少なくとも世界規模の話と比べれば、あまりにもスケールが小さい】
【何なら見逃しておけば良かった、──── 隔離施設で一生を終える、精神異常者のようなものだ】


ベストな選択でごぜーます、──── いやまぁ、他のメンバーがどいつもこいつもヒトデナシなだけですけど
少なくとも "マリアベル" はギンプレーンや、イスラフィールとは別の "方法" でストックホルムに来ていましたです

あんな場所を認識できる存在がそう居ないと仮定するのであれば、──── そうですね
ロールシャッハ自身の手引き、という事も考えられるでしょう、然れば


──── 協力者の可能性も十分にありますです


594 : リゼ ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/30(火) 18:36:07 6IlD6zzI0
>>571

【眠りとは意識を手放す行為である。時間と同じで残酷だが優しいのだ】
【人間の意志や感情を薄れさせてくれる――はずなのだが、そこに至るには時間が短すぎた】
【そして、意識を手放す行為さえ許してくれなかった。それ程に、グランギニョルは鮮烈で強烈で】

【―――リゼが必死に手放そうとする意識と景色―――】
【それは、水槽に浮かんだ幸せな脳とその術を冴えたやり方と謳う虚神の姿】
【――――意識に考え付く限りの重りを付けて、仄暗い水の底に沈めようとしても無駄だった】


【現実は、悪夢に形を変えてリゼを苛む。影が自身と切り離せないように―――内側から恐怖が絡みつく】


――――………づぁ、ぁぁっ。………何なんだよ、……最悪の目覚めだよ。


【眠りと言う現実逃避の末、行き着いたのは不確かに目覚める現実】
【頭をガジガジと掻いて、同じベッドで寝ているエーリカを見遣る】
【綺麗な音息を立てて寝ている彼女を羨ましく、同時に疎ましく思えてしまったなら】
【……徐々に意識が覚醒して。二度寝をするという選択肢が消えていく】


………鍵って、閉めたっけ?だめわんこの事だから閉めてると思うケドさ。
――――……なんでだろ、確証が持てない。………だめわんこの側を離れたくない。
けど、………閉めないと、こわいやつらがスルリと入って来そうだよ……。


【普段は明朗快活なリゼの表情は浮かない。恐怖に怯える小娘みたいに恐怖の色に染まって
【言いようの無い不安の出所。それに蓋をするつもりで、戦々恐々としながらもベッドから降りて】


【―――――扉へと向かってしまう。それは黄泉比良坂への旅路か、或いは断頭台への行進か】

//宜しくお願いしますですー


595 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 18:39:33 EUdWO2GU0
>>593
【さながら年頃の少女のように振る舞うリーイェンの様子を、男は微笑ましそうに見ている……その表情には何の意図も意味もないテクスチャなのだろう】
【余り足を動かすものではないよ、と行儀の悪さを嗜める言葉も出ては来なかった】

まあパグロームならギンプレーンよりは長く活動出来るかも知れないけど。
ジャ=ロのインシデント以降、勝手に動き回ることが増えたんだよね。
ロールシャッハには余り興味が無いようだし。

【……制御力が落ちている】
【ジャ=ロの消滅を境に、男はこの世界への干渉する力が弱まりつつ有った】
【恐らくは……虚神のインシデントが全て解決した後、この男もまた、世界から消えて失せるのだろうと想像出来るように】


【閑話休題】


【リーイェンの語る認識に男は何度か頷いて】
【最後まで聞き終えた後に、椅子の背に体を預けた】
【軋む音も、ここでは発せられない】


なるほどね。
それだけを聞けば確かにただの絵空事……それも規模の小さい餌場の形成に過ぎない。

でもそれだといくつか疑問点が浮かぶだろう?

例えば、

どうやってそれを成すつもりか?
まさか能力者を端から拉致して頭を切開する気かな?
不可能とは言うまいが……ナンセンスに過ぎる話だよ。

例えば、

ロールシャッハの野望がその程度のもなら何故イスラフィールは頑なに口を閉ざしたのか?
今君が語った言葉をそのまま告げれば誰もメインシステムの破壊に口を挟まなかっただろうに。

例えば……、

あの時、メインシステムで見た無数の脳は"誰の"モノだったのか?
あの数の能力者を既に拉致していたならとっくに大騒ぎになっているだろう?
さりとて脳を模した玩具を見せるだけだったのならそれこそ陳腐な仕掛けだ。
いずれにせよ、ロールシャッハにはそれをわざわざ見せる理由はない。

一応ね。
私はこれらの疑問に仮説を持っているんだ。
……聞く……いや、"識る"かい?ひょっとしたら、いよいよ君はここを出ることが出来なくなってしまうかも知れないけれど。


【名探偵ではない凡庸なる男の推測に、果たしていかばかりの力が有るのか】
【それでも男は珍しく韜晦することなく、リーイェンに尋ねる】


596 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/30(火) 19:02:05 Ty26k7V20
>>579

僕はそのつもりじゃなかったんだけど、どうやらはぐらかしたような態度を取ってしまっていたみたいだ。
どうもそれは申し訳ないと思ってね。君が知りたいと思うものを僕のアイデンティティから探してみたんだ。

【インクでできたかのような、重油のような雨。真っ白な青年の足元は真っ黒に濡れていた。】

ぼくは、この時代のことはあまり知らない。もちろん、勉強はしたけどね。だけど、同じように君は300年後を知らないはずだ。
それに…簡単な話さ。300年前と比べたら十二分にこの世界は幸福と言えるだろう。もし平均値を取るならね。
法律すらまともに機能していなかった時代、医療も農業も科学も未発達で飢えと暴力の時代にももちろん幸福はあった。

僕は色々旅をしたんだ。この目で、ツインタワーが倒壊するところを見た、東西を分けた壁が崩れるのを見た、あの大統領が暗殺されてしまうところや
戦争の始まりや終わりを。どれも素晴らしかったよ。僕のいた時代と比べるなら。

D.R.U.G.S…知ってるよ。もちろんさ。この時代のことは勉強したんだ。それにD.R.U.G.S無しに未来は語れない。

【傘はどれだけ黒い雨に濡れても決して、その白さが汚れることはなかった。彼の着ている服もそうだ】
【相変わらず、微笑みを浮かべて、哲学じみた話を穏やかな口調で続けていた】

ジョージ、君は君なりの人生がある。それは認めよう。誰もがそうだ。だけど、ジョージ。僕は、嫌なんだ。悲しいものはもう見たくない
なあ、ジョージ。君は、未来を知りたいかい?


597 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/30(火) 19:10:57 arusqhls0
>>594

【静かな夜であった、微かな衣擦れの音と自分の足音しか聞こえない程に、一歩歩く毎に闇が深まる】
【直ぐに扉へと着くだろう、鍵は確かに閉まっていた、取り越し苦労だ、杞憂に過ぎず、リゼは溜息の一つでもつくに違いない】
【踵を返し寝床へ戻ろうとする、まさにその瞬間であった──── 】





                   【ガタッ】





【物音がした、扉の奥、──── 外で何か、倒れた様な音であった】
         

               【気のせいだろう、────】   【そう思いたくなるほどに、不気味な音で】


  【暫しその後は静寂、────】          【やはり、取り越し苦労だろうか】


598 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/30(火) 19:13:51 arusqhls0
>>595

【──── その実情をリーイェンは知らない、ひょっとすれば知っているのだろうが、今この時は知るべきではない】
【事実虚神の干渉は既に終わりが近い、財団の報告書に記された "INFオブジェクト" ももう僅かだから】


【──── それでも、と内心に残る言葉があるのかもしれない、本当に之で、終わってしまうのか、と】



──── それらの疑問に仮説を持ってるのなら、早くかたるです、話はそれからですから



【何の躊躇いも無かった、ノータイムの返事が、彼女の意思を真っ直ぐ伝えた】


599 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/30(火) 19:19:43 smh2z7gk0
>>588

【ギンプレーンの言葉にマリアベルは恥ずかしそうに笑いながら頷く。】
【純粋そうな笑顔だった。十代の娘が友人とじゃれあっているときに見せるような―――。】

ええ、お恥ずかしながら。だから情報の量においてはむしろ私が教授されることが多いでしょうね。
一方で違う方面からの視点という事に関しては協力できるとは自負しているよ。

―――〝対抗神話〟。ああ、〝ロールシャッハ卿〟もそんな事を言っていたね。
しかし良くできた仕組みだね、絶対的な神話存在に対し絶対的に有効な〝情報〟か


まぁ元来〝神話〟とはそういうもの、―――いや、故にグランギニョルは〝神話〟なのかな?

オチかい?「院長はあなたですよ」が最後だったよ、私が誤って〝認識〟させられてなければね。
〝水槽の脳〟でもあるし、〝胡蝶の夢〟でもある。つまりは〝現実〟という認識はどこにあるのか

でも珍しいよね、普通は〝逆〟じゃない―――?

【ギンプレーンの質問に対し、答えているようで答えていない。さらには話を緩やかに逸らしてくる】
【自分から〝偽書〟話題を出しておいて酷い話だ。〝ナニカ不都合でもあったのか〟】

文字通りさ、脳が〝認識を拒絶する〟―――まぁ一種の防衛機構みたいなもんだよ
今までの経験で二回ある、一つはさっきの〝偽書〟を読んだ時。

へぇ、〝INFオブジェクト〟を狩る組織………それは頼もしい限りだ。

―――つまりはこのやりとりも〝ボス〟に筒抜けってわけか、フフフ。

【そう言うとマリアベルは「おーいボス〜」とギンプレーンに向けて手を振る】
【そういう風に情報を司っているわけではないと思うのだが―――。】


600 : リゼ ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/30(火) 19:30:14 6IlD6zzI0
>>597

【もの皆眠る小夜中に、水面を歩く事ぞ嬉けれ――なんて気分ではなかった】
【寧ろ静寂を保つ暗闇を切り裂いて進んでいくのは恐れを抱くには十分だった】


―――……ふぅ、鍵は閉まってたか。さすがのちゃんエリも無用心じゃないよねぇ。
………うぇっ、さっさとちゃんエリのところに―――


【戻ろうとした。扉に背を向け足早にそそくさと戻ろうとした。その足を止めたのは―――】


               【何かが倒れる音】


【普段ならば、考えなしに聞き逃す音に足を引っ張られる】
【恐怖が滲んだ険しい表情を浮かべて、足が竦む―――蛇に睨まれたかのように】


……何なんだよ、………あてが気にしすぎてるだけ?
気のせい、気のせい。きっとその筈。……あんな音無視してちゃんエリを抱き枕にして
寝れば事もなし―――そうに決まってる。だから、だから―――戻ろう。


【―――けれど、リゼの歩みはエーリカの寝ている寝室ではなくて】
【―――そして、リゼの歩みは扉へと。漂う静寂を進み、扉を開ける。開けてしまう――】


【果たして、その先にあるものは一体――】


601 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/30(火) 19:45:30 arusqhls0
>>600

【軋んだ音、扉が開いて、外側の冷たい風が内部へと流れ込む、──── 外はすっかり冷え込んで】
【風の吹き抜ける音だけがやけに大きく響いた、息を呑む一瞬、まるで世界から切り離されたかの様に】
【静かな夜であった、いつもはうるさい街の喧噪も、やけに遠く聞こえて──── 】






                       【ガタン】





【踏み出したなら脚に何かが触れる、冷たい感触であった、無機物を想起させるその音】
【怯えた様子で視線を注いだなら、──── そこに転がっていたのは、転がるのは】









                                        【植木鉢、──── 風に吹かれて、倒れたのだろうか】




振り向いてはいけない                                       【耳元で声がした】









【声の主は側にいた、今も尚側に居る、直感がそう告げている、貴女の耳元に何かが居る】
【けれども、それは気配だけであった、呼吸の様な音、──── 確実に、その側には何かが存在している】        【だが】




                                                              振り向いては、いけない


602 : ジョージィ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/30(火) 20:01:21 smh2z7gk0
>>596

【黒い雨、重たい雨―――それが量を増している。ジョージ自身の不安を映し出すように】

ああ、知るわけねェな俺にとっては1分後だろうが知る由もねぇよ。
―――〝ツイ‰タ@ー〟?〝東縺�〟?〝�鐚�鐚�鐚�〟―――?手前、なに………を?

【視界にノイズが走る、耳鳴りがする、それを聞いてはいけないと身体が世界が拒絶するかのように】
【激しい頭痛を感じ、少しふらつきながらもジョージは微笑む相手を見つめる。】

【――――――〝D.R.U.G.S〟】

つまりは―――D.R.U.G.Sの俺の前に現れたのは必然なのか?それとも偶然か?
世辞で言ってるなら笑えねぇぞ、今この時代で俺たちが直面している状況を知らない事はないだろ?

〝旧市街〟まで追いやられ、今度はその〝旧市街〟でもワケの分からねぇ事が起きている。アンタも含めてな


【悲しみ、絶望を含んだ顔で俯きながらジョージは言葉を紡ぐ。もはや異常な状況の中で一種のあきらめがあった】


―――教えろ、これから何が起きて〝未来〟がどうなるのかをな。
そして………その〝黒い雨〟は〝未来〟が原因で起きているのか、それともアンタ自身の問題なのかを


【それは英雄の勇気ではない、失った者のあきらめにも似た感情だ。しかしてその違いに意味があるのかは―――】


603 : リゼ ◆zqsKQfmTy2 :2018/10/30(火) 20:02:54 6IlD6zzI0
>>601

【扉を開いた先に会ったのは変哲も無い日常の夜】
【程よく冷え込んだ空気。びゅう、と吹く風の音】

【踏み出す一歩は、百万歩ほど歩いた時の足取りに似て】
【酷く重い。自分の足が自分のものじゃないみたいに重くて】
【重い足で踏み出せば、静寂を切り裂いた音の正体に辿り着く】


―――……こんな所に植木鉢なんて置くなよ、ったく。
こんなもんで怯えさせやがってさ、……ああチキショウ。


【"あてもどうかしてる、こんなのに怯えなきゃいけないなんて"】
【胸を撫で下ろし、かすかな安堵に包まれかけた時――恐怖が耳打ちする】


―――……っ!!


【蛇に睨まれたみたいに身動きが取れない。そして、声の主は】
【自分の側にいる。息遣いもはっきりと聞こえて。けれど、その声は――】


……はっ、はぁっ、……なあ、あての側にいるんだろ?
振り向いちゃいけないってのはどういうこったよ?居るんならあての問いに答えてよ。


【振り向くなと告げていたから。瞳が震える。身体が震える。声も震える】
【上ずった声色は確かな恐怖を抱いて。それでも耳打ちされた言葉に縋るように】
【振り向かない。箱の中のネコがどうなってるか箱を開けねば解らないのと同じ理屈】


【―――詰まる所、得体の知れない恐怖から眼を背けたかったのだ】
【だが、振り向いた所であるのはエーリカの居る部屋の筈なのに】
【その声の主によって、自身が異世界に紛れ込んだ様な錯覚を抱いていた】


604 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/30(火) 20:17:20 arusqhls0
>>603

【──── 永遠の様な静謐、無音が響き渡る、自分の心臓の鼓動がこんなにも大きく聞こえるなんて】
【破裂しそうな程大きく、それでいて激しく、思考がまるで歪な方向へと向かうかの如く、──── 高鳴る】



                                     "   振り向いてはいけない"
                                         たった一つの取り決め
                                  僕と君との         取り決め



    僕を振り向いてはいけない              それだけが決まり事なんだから



   君は魅入られた、魅入られてしまった、魅入られてしまえた、──── そうだろう
   ならば僕もまた、それに賛辞を送らなければならない、──── ちょっとしたゲームだよ




     僕を振り向かず、僕の正体を当てたなら、君の勝ち、外したら、君の負けだ





                           そして







   振り向いてはいけない


605 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 20:49:02 EUdWO2GU0
>>598
【ロールシャッハやスナークを滅ぼせば虚神は……INFオブジェクトは全て解決するのか】
【その問いには確固たる根拠を以て否と言える】
【何故ならば彼等は新たに産まれるからだ】
【丁度彼等の預かり知らぬ場所で……再び虚神の芽が奪われたように】
【究極的にはこのルールそのものを破棄しなければ、終わりはない】


そうか……ならば行こうか。
この件に限って言えば、百聞は一見にしかず、だ。

【男は椅子から立ち上がり……彼女の存在からすれば、とても奇妙なことに、リーイェンの"手を取った"】
【まるで気障な男がそうするように】
【そうして】

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

【そうしていつの間にか、何もないはずのその場所には、大きくひたすらに重そうな"扉"が聳え立っていた】
【男の細腕では到底開きそうもないその扉を前に、男は内緒話をするかのように告げる】

手を離してはいけないよ、リーイェン。
ともすれば君を見失ってしまうかも知れないからね。


【あるいは引き返すならば今の内と言う意図も有るだろう】
【この手を振り払えば、男は再び椅子に腰を下ろすだろうから】


606 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/30(火) 21:10:45 Ty26k7V20
>>602

すまない。能力を使ったから、時を呼び寄せてしまったみたいだ。なに、すぐに止む
通り雨みたいなものさ…だから、僕は傘を手放せないんだよ。

【はあ、やれやれ。と彼は微笑んだ。まるで梅雨を憂鬱そうに愚痴るかのように】

うん。知っている。知っているからこそ、この時代が『最後の幸福な世界』だと言っているんだ。

…ジョージ、君は勇気ある青年だ。その未来から目をそらさずに、見たいと言うのだから。

【そう言うと、彼はまたニコリと微笑んで、ポケットを漁った。】

本当は君に実際に見てもらいたいんだ。だけど、時は人間によって左右される。強い人間原理によって
時間は変化してしまうからね。君を未来に連れてはいけるけど君は戻っては来れなくなってしまうんだ。

僕は写真が趣味だから、それを見てもらうよ。―――300年後も人類は、存在している。けれど、滅びたほうがマシだ。
幾度となく繰り広げられた戦争と破壊によって、もはや文明と呼べるものは無いだろう。もはや混沌ですら無い
滅びだ。立て直す気力もそれだけの生命もない。汚染された大地はもはや何も残されてはおらず、過去の文明を奪い合って
生きながらえているだけの――まるでネズミだ。滅んでいくだけなんだ。黒い雨は永久に降り続けている。
誰かが使った能力か魔術かなにかが暴走して、誰もが“時間欠乏症”にかかっている。

【彼はポケットから取り出した手を広げるとそこからホログラムのように空中に投影された写真。スライドショーのように切り替わる】
【その技術だけで彼が少なくとも未来から来たと言うことに裏付けになりそうだ。そして、彼の言う300年後の世界は――――】

この世界はまだ気づいていない。沢山の人が居て、沢山の恐怖や、苦悩があるけど。それだけ多くの幸福があることも気づいていない。
だけれど―――終わりは来る。必ず。終わりがなく永久に見えても。本当に恐ろしいのは緩やかな死だ。穏やかではない。あるのは虚しさだけだ。

時間によって殺されていく。気がついたときにはもう遅いんだ。何もかも未完のまま、投げ出すことになる。


―――僕は、見たいんだ。ハッピーエンドが。幸福な死が。スタンディングオベーションが沸き起こり拍手の鳴り止まないエンドロールが。


僕はこの世界を救いたい。



完璧で幸福な



ワールドエンドで。


【彼はホログラムを閉じた。そして、そのまま腕時計に目をやって、時間を確認した。彼にとっての時間とは一体何なのだろうか】


すまない、ジョージ。時間は僕を持ってしても待ってはくれないんだ。そろそろお別れだ。


607 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/30(火) 21:16:50 arusqhls0
>>605

【──── 言ってしまえばそれは "切っ掛け" に過ぎなかったのかもしれない】
【嵯峨野 鳴海が<harmony/plan>を提唱した事も、それによりロールシャッハが意識を持ったことも】
【或いはより原初の立場に立ったならば、──── より苛烈に】


──── ボスにしては気障な真似をするですね、少なくとも私のログには存在しなかったです
敢えて評価するのであれば、慣れていないのが丸わかりです、あまりにも似合ってなさすぎて喜劇かと


【──── まぁ、でも ────】


個人的にはこういうの、嫌いではねーですよ
それはこっちの台詞です、しっかりと手を、話さないで下さいです



【不思議と彼女の仏頂面が和らいだ気がした、微笑みには程遠い、そんな表情で】
【結局、彼女は彼の行いに反対はしなかった、それが道理と見届ける様に】


608 : ◆S6ROLCWdjI :2018/10/30(火) 22:09:38 WMHqDivw0
>>586
え? あーゆーのすぐなくなるじゃん、持っててもあんま意味ないし……。

【じゃあ、と言いながら受け取って。ニーソックスと絶対領域の汚れを拭い取ってから】
【それから迷って――折り畳んで、汚れていない面で靴を拭いた。幸い材質はエナメルであったから】
【吸い込んで染みを作っているということもなく。元の輝きを取り戻したら――爪先同士を、合わせて】

…………そーなんだよネ、あっちが悪いってワケじゃないの、絶対。
かといってあたしも……多分悪くないの、たぶん。……うん、あたしのせいじゃない。
ん、そんな感じでいい……。……、隠し事っていうか、…………、

【「知られたくなかったっていうか、知っても誰も得しないことだし」 小声で付け加えつつ】
【俯いて睫毛を斜め下に下ろす。そうしながらゆっくりと瞬き、問われれば、僅かな逡巡を経て】

………………なかったことに出来たらそれに越したことはないんだけど。
いつか、……いつかバレちゃうことなんだろうなって、なんとなく思ってた。
だから今更、今まで通りに戻りたいとは、思えないけど――――ううん、

あたしがそう思ってたって向こうがあたしを見たくないと思うんなら、
……どうしたらいいんだろう。お話、したい、けど……してくれないんだろうなあ。

【あんなの見られちゃったんだから。口にはせずともほぼ言っているようなものだった、表情で】
【ほとんど諦めているような顔をしていた。悲しみや苦しみ、辛さの峠なんてとうに乗り越えてしまって】
【あとは緩やかに下っていくだけのような顔。歳のわりに、そういう顔するのが、やたら慣れているようだった】


609 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 22:12:53 WMHqDivw0
>>599
【マリアベルの対応はどこか、違和感が有った】
【少しばかり先走った情報を与えた愚に、男は気付いているのだろうか】
【貼り付いた笑みには何の意図も浮かんではいないが、それでも、まだ喋り続けている】
【陽気な声も、まるで機械で定めたかのように、一定のリズムだけが流れ、抑揚と言うものがない】


そこは少しばかり不可思議な話だと思わないかい?
グランギニョルの名が示す通り、彼らの所業と言うのは基本的に悪趣味で悪意に満ちたものなんだよ。

そして誂えたように、悪役には弱点がある。
一定の手順を踏めば"倒せるように創られている"。

だとすれば彼らを設計した者は一体どんな意図が有ったのカナ。



【そうして、彼女の語る偽書の内容は、どこか要点のずれたものだった】
【これは些か不自然だ。だって、話を振って来たのは彼女の方なのに】

【"都合が悪い"と言うので有れば、今しがた自分の話した内容のいずれかが、彼女に取って口を噤ませる内容だったと言うことか】


【男の笑みは崩れない。さながらそれ以外の表情を知らないと言う風に】
【それは無表情と何ら変わりのないものだった】


そうだね。普通は"逆"だ。でもそれがそのまま答えだ、と言うのが組織の見解だよ。
ロールシャッハの実存が何であるかを勘繰れば、行き当たる結論でもある。

――それで、キミはロールシャッハを倒されると、何か困ったことになるのかな?


【すぐに食べ終えて、空になったグラスを指でなぞると、単刀直入と言う言葉がそのまま通じるくらいに真っ直ぐに切り込んだ】


610 : ジョージ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/30(火) 22:14:28 smh2z7gk0
>>606

成程、アンタが〝いる〟事自体がこの世界に、この時間にとってはイレギュラー
この黒い雨はそれが原因って事か?俺にはそういう理屈はさっぱり分からないがな。

【ばつが悪そうにそう吐き捨てると、ジョージは黒い雨を眺める。あいにくと旧市街では映えていた】
【「最後、ね」と相手の言葉に対して呟くと持っていた拳銃を懐へと仕舞う。もはや必要もないし役にも立たなかった】

別に。ただの野次馬精神てやつだよ、俺にはもう失うものなんてほとんどないしな。
―――ハ、成程確かに〝ありあえそうな〟未来だな。今の時代も既にそんな空気が漂ってやがるぜ
未来は肩にスパイク付けた奴らが闊歩してるってか………クッハハッ!傑作だ!!!

………で、“時間欠乏症”とやらはなんなんだ?アンタもそれに罹ってるのか?

【映し出されるホログラム、白の青年から語られる内容。もはやジョージの理解では届かない世界。】
【故に情緒不安定になりながらも相手へ疑問を投げかける。】

待て―――勝手に語って勝手に去ろうとしやがって。手前に言う事がある。


                    〝俺を一枚噛ませろ〟、アンタのワールドエンドに


何もかも失っちまった抜け殻みてーな未来人に見せてやるよ、〝現代人〟の意地ってやつをな………ッ!


【相手の目的が何なのかは分からない、時間が何を示すのか分からない。これから何が起きるのか分からない。】

【――――――だけど――――――】


【〝やられっぱなし〟は性に合わなかった。なぜなら―――俺は、俺たちは〝D.R.U.G.S〟だから、】


611 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/30(火) 22:39:09 smh2z7gk0
>>609

【張り付いた笑み、リズムに則った言葉。それをマリアベルも微笑んだまま見つめる】
【グルリと、一度マリアベルの緋色の瞳が揺れた気がした―――。】

―――悪趣味かい?みんな好きだろ、スプラッター映画とかアングラの処刑動画とか
しかしそうだね、しかもその〝弱点〟が登場するタイミングも絶妙と来てる。

まるで、彼ら自体が〝大きなプロセス〟を踏むための装置のようだ―――であれば。

【マリアベルの脇にあるコーヒーから既に湯気は上がっていなかった。まだ半分も飲んでないのに】


―――〝困るのは君たちじゃないのか?〟

私も勿論困るけど、それこそが〝彼〟の―――だとしたら――――――。


【「〝動物農場〟。彼もおススメの一冊だよ」】
【「農場主を追い出した動物たちは、新たな支配者によってさらに抑圧された農場で生きるのさ」】


612 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 23:02:13 WMHqDivw0
>>607
【リーイェンの悪態に上手い返しも出来ずに苦笑いを返す様も、如何にもたどたどしい様子だっただろう】
【そうやって男は彼女の手を引いて、扉の前に立つと、軽く手で押した】
【ゆっくりと――ゼンマイでも仕掛けられているかのように扉が開き出して――】


1100101010000110001101100010111010100110001001101111101011111010111111100110110100110000000001111
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1101110101101101000111110011101111100101001010101110001110011010010000111101110100011100001011110
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1100110111001101010000010111000010100101100001000000000000011111000111100111100001101010100010000
1000011001001000100010001011110110111111101101111111001101101100001110110001011011101010011011100
0111001010111101101101101100000001110001111011101101111100000110001111010101001110010010001000010
1001010001001010100101101101111101001100000111001011101110001010001101101010110001110110110100001
0111001001100101100000111111011111110001100101011001001110111100110100001000001101010111010010001
1000101000100100100101110011010010101000110011100110010000111000000001011110101100110101010001010
1010000101101111000011000010011010101010110010010110000100011001001100001011011000011000101110110
1011100000100011111011001101111110101011010001010000......


613 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 23:03:09 WMHqDivw0
>>607
【そして彼はゆっくりと画面から顔を上げた】
【PCに映し出された文字の羅列を視線で追ってから、立ち上がる】
【随分と肩が凝っている。一人で大きく伸びをして、少しだけ楽になったような気がする】

【部屋には一人しかいなかった。時刻は23:00過ぎ――近頃はコンプライアンスも厳しくなり、当直でなければ、長く居残る者は少ない】
【窓の外から、景色を見る。一面砂で覆われた区域。砂漠のど真ん中だ】


【この広さのシステムを扱うには丁度良いと言うだけの立地】
【その景色に別に大層な理由もなく、単なる環境破壊の行き着いた結果】
【間違っても、■■だとか●●だとかが原因ではない】


【だいぶ自分も毒されてきたなと皮肉そうに、彼は一人苦笑いするのだった】



【さて――眠気覚ましの珈琲カップをゴミ箱に捨てると、彼はサーバールームへと足を運ぶ】
【未だアナログを捨てきれない文化なのか、チェックリストにボールペンで自分の名前を書く。■■■■と】
【少しばかり字が曲がったなと鼻を鳴らすと、ICカードを翳して、電子ロックを解除した】
【システムルームは機械の稼働音だけが無機質に響いていて、システムの冷却――排水――循環を一手に引き受けている】
【蛍光灯が、入室者を察知して自動的に点灯されると、一面に広がっているのは数多の機械類と――何かの"水槽"だ】

【水槽は一見では中が見えないようになっている。彼は研究者ではなく管理者の一人だ】
【見てストレスになるようなものは極力見ない方が良い】
【革靴の音を機械音に混ぜながら、彼は歩いて行く。各水槽に並んでいる名前を見る】


【どれもこれも馴染みの有る名前ばかりだ】
【彼に取っても、そしておそらくは"彼女"に取っても】
【"ネームド"の数は然程多い訳ではないが、それでも十分な数が揃っているので、時々迷いそうになる】

【そもそも彼女は"どちら"側に配置されているのだったか】
【そう――先日の配置換えで、確か――】



【カテゴリを示すランプには"SACRILEGE"の文字列が光っている。すぐ隣には"公安三課"も有ったのだが、そちらではなかったはずだ】
【その中にいくつか立ち並んでいる水槽。プレートには、それぞれ"虚数渡りの男"パグローム、"仕立て屋の女"ヴェロニカ、"dispose of"のマークが書かれた空の水槽、そして――】
【彼は指先でその水槽の表面を撫でる――】



――理解したかな?リーイェン。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


614 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 23:03:47 WMHqDivw0
>>607
【――男は少女の手を取っている】
【勿論1秒たりとも離してはいない】
【扉など有るはずもない。ここはどこまでも何もない空間なのだから】
【機械の彼女が白昼夢を見ることなど、有り得るのかは分からないが】
【ログにも何一つ痕跡など残っていなかった】


【少女が口を開くよりも早く、男はすぐに言葉を継いだ】

――なんてね。

これは今私が考えた"設定"さ。
真実ではないよ。


残念ながら私には脚本家の才能は無いから、面白い見世物にはならなかったかも知れないけれど。



だから本気にしないで欲しい。


615 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/30(火) 23:10:46 Ty26k7V20
>>610

時間は、固有のものなんだ。だから、使える数は限られている。
黒い雨に打たれて、時間欠乏症にかかると――時間を失ってしまう。

そうなったら――悲惨だ。でも、幸福のままならそれはどうだろうか。

残り少ない人類の殆どは雨から逃げ続けるだけ。もはや争う気力もない
過去を懐かしむだけだ。我々に与えられた自由は。

僕はそんな時代に能力者として生まれてしまった。雨に打たれながら生まれた突然変異。
―――使命だと思った。世界を変える最後のチャンスだと。

でも…一人じゃそれは難しい。だから僕は六罪王になった。

【ゆっくりと目を閉じる。何かを慈しむように笑って】

ジョージ、君は本当に勇敢だ。…よく考えてほしい。世界を終わらすのだから。今、この時代で
300年も悲しみを続けないように今、この時で。僕の世界でもあり、君の世界でもある。

それでも終わらせたいのなら

【青年の周りに、また、黒い半球が出現する。揺らぐ漆黒。まるで時間が無いかのような空間】

天気予報をよく見ておくと良い。

ジョージ、また会えることを楽しみにしているよ。

僕のことは…そうだね、せっかくだから、『ワールドエンド』、とでも呼んでほしい。

【黒の空間は一瞬にして収縮し、真っ白な青年とともに消えた。その瞬間、あの黒い雨も止んだ】
【その雨の降っていたところはまるで、ホログラムで見た300年後のような朽ち果てたようにボロボロだ】

全ての野望も陰謀も全て、終わりにしてしまおう。そのほうがずっと幸福だから。



/なんてところで終わりにしたいのですがいかがでしょう!?


616 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/30(火) 23:14:21 arusqhls0
>>612-614


 
     【  その光景を "リーイェン" として解釈することは出来ない、何故ならば其れは、踏み込みすぎた敬意に似ている】
【かつて現れた多重現実的エラー、あれもまた、可能性として存在し得ない理論を言ったが上のタブー】



         【ならば彼女は、ブラックアウトしたかの様な視界から目覚める、今見た光景とは一体】



  ……なるほど、之が貴方の答えという訳でごぜーますね、ボス



【夢から覚めた様な心地と形容すべきだった、それは正しく人工知能的レトリックであったのだが】
【電気羊の夢の方がまだ収まりが良かった、多元的二進数が脳を焼き切る様な感触に身もだえしそうな程】
【彼女は静かに息を吐いた、それはまるでファンが熱を排出する作用に似ていた】


  おもしれー解釈だとは思いますです、 "水槽の脳" の正体を、貴方はそう解釈したのですね
  ──── 馬鹿げた話です、荒唐無稽も甚だしい、第一私に至っては "人工知能" である、というのに



【彼女はそう言った、彼女らしくない言葉であった、理論より先に感情が、その光景を否定する】
【若しくは悲鳴に近かった、──── ヒステリックになることはない、無表情であり続けることが、どれほど酷か】
【ログには残っていない、けれども、先程の光景は脳裏に焼き付いていた】




  ──── もし、ロールシャッハの目的が、方法が、そうであったとして、────


           ──── ボスはそれを止めるべきと考えるのですか?



【此処に於いて彼女の言葉は愚鈍であった、視点を変えれば、まだ微かに無垢と言えなくもなかったが】


617 : ◆KP.vGoiAyM :2018/10/30(火) 23:21:34 Ty26k7V20

【街角】


【街の大通りはなんだか騒がしい。仮装した若者が道を往く。誰かがハッピーハロウィンと叫んだ】
【そいつが振り上げた缶ビールが溢れる。明日も仕事だと、ため息をはいたスーツの男の靴にこぼれた】
【タクシー運転手がイラツイてクラクションを鳴らす。関係ねえとポケットに手を入れれば、坂道の路地が続く】
【シガレットを一本吸い終わる頃には、何処からかギターの音色が聞こえていた】

【誰かの弾くジプシージャズはシャッターの降りた雑貨店の前から聞こえた】

『オジサン〜上手いねー。プロの人?』

……昔、ミュージシャンだったんだよ。

『マジでぇ?!』

いや、嘘。

【若いカップル二人組がそのギターの弾き手と話していた。きっとあの乱痴気さわぎの帰りなんだろう】
【よくわからない安っぽい仮装の二人はしゃがれた男の声につられて笑った】

『ねぇ、なんでこんなとこで弾いてんのさ。もっと大通りでやればいいんじゃない?』

いや、いいんだよ。ここで。つーか、どこでも。

【なんて会話をして、若者は手を振って家路へと帰っていった。ギター弾きも振り返す】
【地べたに座り込んで、真っ赤なフルアコのエレキを抱えていた。黒のキャスケットを斜めに被って居る】
【髪の毛は所々白が混じったグレーで、生やした顎髭も同じだ。サングラスを掛けた痩せ老いた男。】
【カーキのモッズコートを着ていた。ロング缶のビールを傍らにおいて、時折、それをあおった】

.

/フリーの投下でございます。土曜ぐらいまでおいておきます


618 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 23:31:18 WMHqDivw0
>>611
その辺の趣味は人に依るんじゃないかなあ!
ボクはもっと心温まるラブ&ピースなヤツが良いよ!

もしくは女子高生のグループが無意味な日常をダラダラ過ごしているのも良いんじゃないかな!


【HAHAHA、と肩を竦めて見せながら、未練がましそうに空になったグラスを叩いている】
【溶けた氷が少しばかりグラスの底に溜まっているだけだった】


実際、パズルみたいになっていてさ。
今までのインシデントでも目的をクリアしたと思ったら、実は次の脅威に繋がってました!ってオチが結構多かったなあ。

だからロールシャッハを首尾良く倒せても、また"次"が来る。
それじゃあ堂々巡りなのサ。


まあ、誰かが困りはするかも知れない。
ボクも一応困るかも知れない。

だけど、"ボク達"は困らない。
ボク達の目的はINFオブジェクトの排除"だけ"だからさ。

その結果が、どうなろうとそれはそれだし。
隠れているINFオブジェクトがまだ在るのなら、出て来てくれないと困る。


――それに、最近理解したんだけど、一匹一匹を退治することには然程の意味はないんだ。
この騒動の元から絶たなければね。


おや、それは読んだことのない本だ。
動物農場だなんていかにも心温まりそうな話じゃあないか!


ボクからもおススメの一冊を教えておくよ。
『カンディード』――神様の無力さを学ぶためのお話さ。


619 : ジョージ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/30(火) 23:33:44 smh2z7gk0
>>615

〝時間を失う〟―――ッ!?ッは、一体全体未来はどんな事になってやがんだ?
ああ、分かってるさ。アンタは『ワールドエンド』。世界を終わらす存在なんだろ?

おれはそれに加担する、―――世界を終わらせてやろうじゃねぇか。


【半ば、それは強がりのようにも聞こえた。勿論本意は別にある。だが、だがそれでも―――。】
【どんな方法を使っても。俺はきっと世界に―――】

【ジョージは自嘲しながら俯くと暫くそうしている、そこにあるのは後悔なのか巡ってきたチャンスへの歓喜か】
【そして顔を上げれば、もうそこにいるのは一匹の〝獣〟だった。覚悟を決めた獣の瞳。】

ああ、俺も俺で勝手にやらせてもらうぜ、これが最後の〝祭り〟になるようにな………!


【そう言うとジョージは『ワールドエンド』を見送る。彼が去った後には綺麗な、本当に綺麗な、旧市街には似合わない】
【――――――綺麗な夜空が広がっていた。】

//お疲れ様でした、ありがとうございました!


620 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 23:46:01 WMHqDivw0
>>616
驚かせてしまったようだね。
そうさ、荒唐無稽だろう?

私が即興で考えた寸劇など、"この程度"の代物さ。


しかし、十分な段取りと、演出が有れば、そこにはそれなりの説得力が宿る。


これは嘘っぱちだ。
だけど誰もが信じれば、真実になる。
そういうルールが、今のこの世界には存在しているんだ。
――とりわけ、あのストックホルムと言う場所では。


だからロールシャッハは、あの場所に置いて、能力者達に水槽の脳を見せた。
そのミームを送り込むために。

だからイスラフィールは、口を噤んでいた。
その情報を自覚し、"本当にそうなのでは?"と考えてしまう者が現れることを怖れて。


そして極めつけはこれだ。


【それは最初手に持っていた紙切れだった】
【先日の探索の折にディーから受け取ったものだ】

【男はひらひらと紙を翻している】


これがロールシャッハの新たな施策であると言う訳だ。
イスラフィールがこれを寄越した意図については、もう少し検討の余地が有るけれど。


【紙を見せる】
【そこにはいくつかの名前が記載されていた】

【――パグローム、ギンプレーン、ディー】


【最後には"ブラウン"と書かれていた】
【どこにでも有りそうな名前だ】
【何かの意図が隠れている訳でもない】
【街角を歩けば一人くらいはいそうな名前】
【なるほど、記載してみれば、目の前の男の名前なのだろうと思う】


【しかし、口を開けばやはり口には出来ない】
【喉に小骨が仕えたような違和感だけがそこに有った】


621 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/30(火) 23:48:50 WMHqDivw0
>>616
【最後のリーイェンの問いには、静かに短く返答するのみだ】


我々の目的は――この世界からのINFオブジェクトの"排除"だけだ。

ロールシャッハの目的がどこにあろうと、それは全く変わることはないよ。


622 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/31(水) 00:00:03 arusqhls0
>>620-621

【──── リーイェンの脳内を駆けめぐるのは理論、──── 成程と述懐するには十分に】


ボスはそう "理解" したのですね、つまり、ロールシャッハが "現実" に、"水槽の脳" を有しているかの問題では無い、と
例え其れが出鱈目や仮初めであったとしても、能力者達に "認識" させる事で、それは真実になる
逆説的な存在証明を作り出したとすれば、やはり趣味が悪いでごぜーます

イスラフィールの沈黙にも答えが行きますです、恐らく彼女は "既に" ロールシャッハの記憶からその方法を考えていた
──── 確かに、辻褄が合います、けれども "結末が合いませんです"

イスラフィールが "そもそも" ストックホルムへと能力者を送り込まなければ
ロールシャッハの催しは、観客の居ない劇に他ならず、ミームの観測者もいない事になる
そうすれば "水槽の脳" すらも仮初めであり、水泡に帰すのではねーですか


【ボスの言葉は有る程度まで高い信憑性があった、けれども、それを肯定すると、他の道理が立たなくなる】
【リーイェンはその紙を見る、やや訝しむ様な目つきで】



──── なんでごぜーますか、この紙……ただ名前が書いてあるだけですね
最後のは兎も角、前三つはサクリレイジのメンバーですが……



【人選が妙ですね、なんて──── リーイェンはふと零した、共通項を探すかの如く】




──── その意見には同意でごぜーます、この世界に於いて、荒唐無稽な話は、頭の中だけで十分ですから


623 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/31(水) 00:03:04 q3u9QvNk0
>>573

【 ──── 細胞組織の悉くを圧殺する感触は至極もっとも不快な産物である事に違いはなかった。事実として見下すアリアの視線は、やはり憎悪と侮蔑に満ちたものであり】
【然して紺碧の左眼には幽かな満足のような色合いも宿っているようだった。 ──── 絶頂から幾らかの鼓動を数えた後に身を包む、虚脱感と言い切るには幸福な情念】
【あるいは懸命で赤裸々な少女の仕種を目一杯に己れの豊満な肢体に甘やかせてしまえる事にも堪らぬ悦びを覚えているのかもしれなかった。腕を突き込まれた背筋を、慈しみを込めて指でなぞり】
【強請られる隠れた藤色への愛撫もまた欠かさぬのであろう。 ──── 武器を握る人間のそれとは凡そ言い難い、儚く白い指先が、絡んだ玉鬘を梳き落としていくのなら】
【その挙措は全く平和裡の合意を踏まえたものであり、詰まりは対手の言葉にも諒解を得ているようでもあった。これで凡その決着はついた。後は自分が担うべき重荷である】
【 ──── 耳朶に潤う唇を寄せて、そっと嘆息のように、けれど何処までも幸せそうな声色をもって、つつやくのだろう。それが最初の使命であるから】

        【        「 ──── もう、怖がらなくていいの。」なれば確かにそれは、無慈悲な女王の齎した救済であるのなら】


    「 ─── さしたる興味もないけれど、」「でも、そうね。」
     「尋ねて損にならぬ事ではないでしょうし、慰みにでもしましょうか。」



【頤の角度を幾らか上げて、外套と視線を交わす ─── およそ穏やかな微笑をもって、事の顛末に対して訊ねる事もするのだろう。】
【「何方かと言えば、貴女の素性の方が気になりはするのだけれど。」冗談粧すようにくすり笑いつ、斯様な悪戯じみた表情も能う女であった。一握りの打算を勘定に入れずとも】


624 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/31(水) 00:10:11 smh2z7gk0
>>618

あ〜いいね、私もそういうの好き。できれば女の子同士でイチャイチャしてるのだと最高!
君とはなんだかんだ波長が合いそうだね、ギンプレーン。


【そう言うとマリアベルは身を乗り出して握手を求めてくる、傍から見ればこの二人は酔っ払いだ】
【そして握手に応じるにせよ、応じないにせよマリアベルは再び席へと腰を下ろす。】

【ギンプレーンの語る言葉を静かに、頷くこともせず聞いている。】

成程。それが君たちの役割というわけか。結構結構、それであれば私は問題ないよ。
―――但し、グランギニョルという〝フォーマット〟だけはまだ破壊〝させない〟

君が、君たちが思う〝騒動の根源〟とは何なんだい―――?私はね―――


【そう言いながらマリアベルは自身のこめかみをトントンと叩く、それから悪戯っぽく笑う】
【「ああ、とっても心温まるハートフルストーリーさ」】【「おっとそれもまた面白そうだ、チェックするよ」】


―――ところで、大分色々な話をしたけど君が私に興味を持った大本の話がまだっだ気がするね


625 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/31(水) 00:35:37 WMHqDivw0
>>622
さて、先の一幕が果たしてロールシャッハに取って適切なタイミングだったのかな?
急な来客に対応するには首尾が良過ぎたと見えるけれど、それでも彼に取って、最適ではなかったのではないかと思っているよ。
そもそもストックホルムに訪れた僅かな能力者達の認識だけでは、世界は変わらない。
現に――変わっていないだろう?


【どうやらリーイェンの思考は正常に研ぎ澄まされているようだ】
【その疑問について、男は思案するように視線を上に向けた】


そこで話は先の"マリアベル"に戻る。

ギンプレーンが彼女から聞いた話によると、あのイスラフィールも決して善意の討伐者ではないのだろう。
あの時、ギンプレーンも言っていたが、目的が能力者達の健全な発展に有るのであれば、あの段まで出てこない理由はない。

彼女の能力が虚神の企みさえも読み取れると言うのなら、彼女がジャ=ロの件に関わっていただけで、大幅に事態を解決出来たように。
みすみす"鵺"なる少女を犠牲にせずに済んだようにね。



勿論出てこなかった理由を色々とつけることは出来るだろう。
だが、大事なのはそこではなく――


【そこまで語ってから、酷く、歯切れが悪くなった】
【今まで如何なる禁忌であれど、踏み入って来た男が、尚も躊躇っている】


その人選にもアテは有る。有るんだ。……それでも。
これは恐らくロールシャッハに取ってもギリギリの試みだ。

下手を踏めば――


……何もかもを巻き込んで"腐り落ちる"。
能力者も虚神も関係なく、"誰も望まない形"で。


【"何が"と主語を語ることはなかった。だけど恐らくは世界が、或いは世界以上の何かが】


626 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/31(水) 00:47:49 WMHqDivw0
>>624
HAHAHA、女子高生だったら何をやっても大人気だからネ!
……ディー、抓らないで、痛い。


【意気投合したように握手した手をブンブンと振っていたのだが】
【話が変な方向に進みそうなのを察したのか、傍らの少女がギンプレーンに抗議しているようだった】
【コホン、と咳払いを一つ】


【糸のように細い男の瞳が、薄っすらと開いた】


残念だけど――それこそがボク達の最終目標なのさ。
より正確に言うのであれば。


INF-001――"グランギニョル"の排除こそが。


【男はそこで新しい注文をした。今度はフルーツが無作為に乗ったケーキだったが、お近付きの記に、とマリアベルの分も一緒に頼むのだろう】


騒動の根源については――色々と諸説あるけど、やっぱりアレじゃあないかナ?
ストックホルムで引き起こされたって言う、"大災厄"。

何度かキーワードになっているのにイマイチ、説明らしい説明もされてないんだよなあ、ここは。


【互いに好みの本の話をしたところで、話の筋が戻る】
【ギンプレーンは大本の話って何だっけ?と暫く悩んでいたが】

【ふと、それまで黙っていた盲目の少女が、口を開いた】
【ギンプレーンとは対照的に、酷く静かな声音で】


「マリアベルさん――貴女はロールシャッハの味方と言うことになるんでしょうかね」
「虚神について知らなさ過ぎるにも関わらず、彼の名前だけはちゃんと呼んで見せた」


627 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/31(水) 00:56:20 arusqhls0
>>625

【リーイェンは静かに頷く、ロールシャッハの対応はそれなりに優れていたものであったが】
【──── それよりもイスラフィールの自発的な動きが功を奏したと彼女は捉えていた】




【──── 逆に言えば、そう信じておきたい、気持ちの表れであった】




そうでしょうね、これまでのインシデントと比べ、世界に与える影響は微々たるものです
万全の状態だったなら、能力者達が認識した瞬間、世界が大きく様変わりしてもなんらおかしくねーです
だから "認識" に関してはそうでしょうけど────

──── イスラフィールに関しては何ともいえねーですね、敵か味方かも今の段階でははっきりしてません
確かに強大な力を持っていそうですが、相応に無力にも思えるですが────


【リーイェンは沈黙した、ボスの躊躇いが──── 此処に来て、露われた】




……大仰な話でごぜーます、貴方らしくない、寧ろ貴方にとって事態の大小など問題じゃないでしょう
それが必要な手段で必要な過程とあれば、神様だって否定してみせる、それが手腕だったのですから




──── 私は狂いません、1と0の狭間に狂気が入り込む隙などねーですから
ボス、貴方には、何が見えてるですか?


628 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/10/31(水) 01:08:44 smh2z7gk0
>>626

―――そうかい、それは〝残念〟だよ。
ただまぁ私としては君たちと事を構えるつもりはないし、ある種協調できると思っている。

INF-001――"グランギニョル"………やはり〝そう言う事〟なのかい?


【追加で自分の分もケーキが頼まれればマリアベルはわーいと無邪気に笑ってそれを頂く】
【冷めたコーヒーもちびちびと飲みながら、ほっと一息。それから視線を戻す。】


"大災厄"ね、それについて知りたいのであれば〝彼女/イスラフィール〟に当たるしかないんじゃないかな?


【「………実は私、彼女の所有するマンションの部屋借りてるんだよね」とこそこそ話をするように言う】
【想定されるマリアベルの立場を考えれば一体どんな神経をしているんだという話だが―――。】

【突然ディーから話しかけられれば、フォークでケーキの断片を突き刺しながら視線を向ける。】


―――滅相もない。私は彼の味方ではないよ。そもそも彼に人間の〝味方〟なんて存在がそうそうあってはならない
それは彼の〝存在〟を多少なりとも貶める行為だからね。そこの〝認識〟は改めておいておくれ。

私は彼に恐怖する多くの人間の一人だ。ただ他の人間と違う部分があるとすれば彼は私にとっての〝啓示/ミチシルベ〟なんだよ


629 : ◆orIWYhRSY6 :2018/10/31(水) 01:15:47 6KiF/wE20
>>608

【背もたれに腰掛けた姿勢ならば、彼女とは背中合わせのような形であって】
【男は横目でその表情を見るようにして、言葉を聞いた】
【お互いがお互いを思うが故のすれ違い。どちらが悪いだとか、そういうものではなくて】

オーケイ、だいたい理解した。…………たぶん、だけど。

―――そういう問題は、ちゃんと会って話さない限り、どうにもなんねえだろうな。
だったら、どうやって会うところまでこぎつけるか、それを考えようぜ。下向いて悩むより、前見ろよ前。

【既に起きてしまったこと。無かったことに、なんて、タイムマシンでも使わない限り、できっこない話】
【だから、彼女が今まで通りには戻れなくていいというのなら、男は語る。敢えて、語調は軽く、声音は明るく】

そうだな……、二人の共通の知り合いとか、いるか?
お前が直接言っても会えないなら――ちょっとくらい嘘吐いたっていいから――誰かに呼び出してもらうってのはどうだ?

そんでもって、会ったら向こうが「騙された」ってなってる間に、帰る暇すら与えず話し始めちまえ。
そんだけ友達思いなやつなら、真剣に話してるのを無視して帰るなんてこと、しないだろ。

【提案するのは、些か以上に強引な手段。〝騙す〟という工程が含まれる以上、彼女がそれを嫌うかもしれないけれど】
【男は、笑って言った。口の端を持ち上げた、カッコつけた笑い方であった。】


630 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/31(水) 01:16:15 WMHqDivw0
>>627
【奇妙な話ではあった――イスラフィールが今まで虚神の沙汰に関わってこなかった最も説得力のある答えは、"関われなかったから"だ】
【逆に問うので有れば、何故ロールシャッハに限って、イスラフィールは干渉出来たのだ?】
【先のマリアベルの助言を丸ごと鵜呑みにする訳ではないが――彼女の存在は、奇妙な配役であった】
【――余りにも都合が良過ぎたから】


――"認識"以外にも気になることが有るかい?


【この男の推察は、形而上的なものを飛び越えているが故に、時に現実の世界を見落とすことが有る】
【かつての失敗もそれ故と言えるので有れば、なるほど、名探偵には程遠い】



とんでもない。私は数多の制約で雁字搦めさ。
それらは全て、"その結末"だけは避けるための措置だ。


ロールシャッハに失敗が有ったとすれば、それは私を表舞台に引きずり出したことだ。
結果として――"競合"を避けるために、彼は自分自身の定義をある程度縛らざるを得なくなってしまった。

何にでもなれた"白紙に滲んだ染み"であった方が――楽だったろうにね。


631 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/10/31(水) 01:25:41 WMHqDivw0
>>628
あくまで、組織の方針さ。
現実がどうなってるかは彼らに聞かないと――HAHAHA、現実なんてどこまでアテになるのか分からないけれどね!

【どこかツボにでも入ったのか大笑いしながら、ケーキを食べ続ける】
【食べている時は妙に静かだった。行儀が良い】


おや、彼女はそんなところまで押さえているのかい?それは初耳だったなあ。
って、OH……それは何ともクレイジーな。流石のボクもビックリさ!


ん〜でもこの前喧嘩したばかりだしネ!実に気まずいことこの上ない!
ディーちょっと一人で行って来てくれないかい!


【言いながらまた抓られているらしい。笑いながら涙目になっていた】
【ディーはマリアベルの言葉を咀嚼するように沈黙して――】


「今度は私の方がこの言葉を返しますが――」
「貴女は一体何者なんですか?マリアベル」


632 : 名無しさん :2018/10/31(水) 02:22:34 yPR0wZJk0
>>623

【あるいは丁寧な整体を受けた後のような気持ち、悪くない倦怠感を少女は感じているらしかった、撫でつけられるたびに、アリアへ委ねる体重はグラム単位に増えていく】
【だからともすれば眠ってしまいそうだった。理屈はよく分からずとも、――もう大丈夫なんだって愛しい人にささめかれるのなら、それを信じるに躊躇いはない】
【耳元に届けるのは互いの髪が入り混じって擦れあう音、肩口に頬を摺り寄せるのなら、それが返答だった。犬や猫がする親愛の仕草によく似ていたから】

「仲良しそうで良いこと、第三者の目を気にしてくれたら、もーっと良いわね」

【――まあ、それに横やりを挟んでくるやつが居る限り、少女は無防備に眠りはしないのだろう。別に不審の証ではなくて、ただ、まあ、信頼はしてないから、仕方ない】
【じとっとした目を振り返って向けていた、こいつ邪魔しやがってみたいな目。この人は私のだって言い張るみたいな目。なら、マーキング代わりにもう一度だけ、首筋へ顔を埋め】
【やがて眼前の至って不審なる人物に相対するみたいにアリアの膝に座り直すのだろう、ぴょんと伸ばした足先は件の変質者と拳三つほどの距離感、存外に、近いから】
【ミルクキャンディみたいに白くて小さな爪先と足裏を見せつけて問題がない程度には受け入れているらしい、――至って動物的な信頼の示し方である以外は無問題に等しく】
【何よりアリアの両腕を抱き捕まえて自分の胎の上で恋人繋ぎにしているのだから、見つけるにも十分すぎた。実際そいつも閉口していた。帰りたげな沈黙、重ねて】

「あたしはバカップルを見せつけられているの?」

【――――最終的に我慢しきれなくなって漏れ出ていた、気づけば綺麗な正座も横座りに崩していた、はあーっと長い溜息。終わったら呼んでなんて、投げやりな声】
【それに「終わんないですよお」なんて言っていた少女はいくらか調子に乗っているらしかった。でもいつものことだったから。どうでもよかった、きっと】

「――じゃあ、やっぱり、そっちにしましょうか。依頼者の命に従うのが、雇われの役目でしょ? ま、お金だなんてもらってないけど、――要らないし」
「その代わりにお願いがあるの、見覚えのある誰かとよく似ていたとしても、――あたしを"そう"だと思わないこと。もしかしたら、混ざってしまうかもしれないし」

「――――――そうね、そうだわ、だからやっぱり、今日する話は"こっち"であるべきかもしれない。"そっち"は、そうね、いつかのわたしに、任せようかな」

【ずいぶん簡単に掌を返すものだった。目の前で躊躇いなくイチャつかれて精神力が赤いゾーンまで落ちきったなら、やはり茶の席のような態度しか出てこない】
【それもよく慣れた間柄でのティータイム。事実はそうでなくとも、疲れ切った用事のあとになんとか座れた電車の席、目の前がバカップル、みたいな気持ちなら、どちらでもいい】
【――故に前置きはたった一つ。たとえ誰かと似ていると思ったところで、自分のことをその人そのものだと思うなと。それは良くないことを起こすかもしれないから、と】

【同意を得られるのなら、"そいつ"は豪奢な装飾の面を外して顔を晒すのだろうか、そうしてよいしょ、と、床に置く、真っ白な指先が、離れるなら】
【透き通るほどに白い肌をしていた、濡れ鴉よりよほど黒い色合いの髪先と合わせれば、ごく二色しかないと思わせて、けれど、左の瞳だけが血のように赤く映える】
【しかして右目は櫻人にありふれた黒色をしていた、――虹彩異色症。そうしてまたあどけなさを多分に残す顔は、いくらか子供じみた、拗ね気味の目をして】


633 : 名無しさん :2018/10/31(水) 02:22:47 yPR0wZJk0


「――ほんとは、もうちょっと大人っぽく、してたのよ? だけど、そこのわたしに喰われちゃって。そうでしょ? 覚えてる? ――まあ、いいわ」

【ならばその顔をアリアはきっとどこかで見たことがあった。少女も同じだった。ぴょこと伸ばした足をしれっと折りたたんだのがその証拠だった、だって、】
【白神鈴音――"そいつ"の素顔は、その少女と全く同一であった。ただ一つだけ、瞳の色彩が左右反転の色模様である以外は。声音すらも、よく澄んだ鈴の音をして】
【弁明するのはアリアに対して。前に会った時はもっと大人だったでしょとしきりに尋ねるなら、よほど大事らしい。そもそも身体も顔も隠していたのは、忘れたのか】
【それとも身長とシルエットだけでその中身の大人っぽさを導き出せと無理難題を強いているのかもしれなかった、なら】

「それで――、あたしが誰かって言うなら、あたし"も"、鈴音。だけど――そうね――、一卵性双生児って、どうやって"そう"なるのか、知ってる?」
「あたし"たち"は人為的に造られた神様の一卵性双生児で、――神様を産み落とすほどに熟れた人間を二つに分けることで、生まれたの」
「そしたら呪いも祟りも半分になって、ハッピーでしょ――? ――それで、あたしは、そうした奴に引き取られて、育てられたわ、神様のやりかただって、教わったし」

「――もともと暮らしてた世界、この世界に、姉だか、妹だか、――まあ、居るって、知ってた。神様として育てられてないこともね、知ってたけど……」
「あたしのほうが、呪いと祟りは多かったし。"そっち"には人間の残骸がたくさん残ってたの。だから、人間として生きられる可能性に賭けたのね、あたしの御主人様は」

「まあ、結果は、これなわけ――、色盲検査をやらなかったがために、いざ大人になってから、電車の運転手にはなれないって気づいたみたいにね」
「それって、どうかしら? 最初ッから自分は人間ではないって分かっていたなら、――別の夢を見つけることだって、出来たかもしれない」

【白毒川鈴音、とそいつは名乗るのだろう。だけど呼び方に迷うようならやはりヒメでいいとも言うのだろう。同じ名で呼ばれたくないみたいだった、神様は認識に従うから】
【隔離されて育てられた姉妹のあり様、そうして片方は優遇されて育てられた。少なくとも、犬にニャアと鳴けと迫るような躾はされなかった、しかし、取り残された方はどうであったか】
【人間と神様とそれ以外が折り重なる曖昧な存在に据え置かれて、自分で定めることも出来ず、ただ人間でありたいと願って、けれどどう考えてもヒトではない自分に苛まれて】
【挙句に様々な事象に心折られ、病魔のもとへ逃げ込んだ。そうしてやっと自分は神様だったのだと自分の存在を肯定できた。――だのに、それを人間たちは受け入れてくれなかった】

【――即ち自分の半身、ともすれば環境を違えただけの自分へ追憶であるなら、いくらも声音は周りの全部を責める色合いをしているのかもしれない、どうしようもない不満を述べても】
【今更状況は変わらず、事実として少女は身体と存在とを引きちぎられて、――さっきまではボディを貸してイタコの真似でもしてやろうかと思っていたけど、やめてよかった】

「そんで、まあ、今は、貴女に憑いてるの――、知ってた? あたしはさっき知った。貴女に憑いてる蛇って、家(うち)の蛇だわ、可愛い可愛い山楝蛇」
「前世でご縁でもあったみたい、――それは今度一緒に聞き出しましょう、オリジナルのボディを探してからが良さそうだもの」

【――――――怨めしい目を向けられていた、けれど少女によって死にゆく神様から救出された少女は、現状として少女の阻害の力によって、世界から隔離されていたから】
【神様にのみ観測できるレイヤーからの目線を無視しているだけで良かった。果たして音声を聞き取っているかも定かではなかった。身体を貸したら、多分そのまま乗っ取られる】
【けれど少女は神様のための器ではないから乗っ取られない。「だからしばらく預かっていてくれる、ボディはきちんと探すから――」拾った猫を知人に預けるような、温度感】

【――少女は気づいたら身体の向きをずりずりと横にしていた、大嫌いと言い張っていた人物を同じ顔を前にして気まずいのか、】
【ただアリアの背中に回した腕の指先で、毛先をちりちりちりちりちりちり、指先で擦り合わすのを繰り返しているのだろう。ただ一度だけ「知らないですよ」なんて、】
【言ったくらいで、――少女は伺うようにアリアの横顔を見上げるのだろう、それで少しでも"変な"顔をしていたなら、頬ずりの一つ二つで正気に戻す、気だった】


634 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/31(水) 09:25:22 6.kk0qdE0
>>590

「『人とは名ばかり』とは、言ってくれる!人の見た目すら成れぬ者が、何をほざくか!!」
「人形だと、全く口だけは一人前の……国土の為、祖国の為、桜舞う愛する故郷の為、この感情は貴様らには未来永劫理解は出来ないだろうな!」


【先ずは1人目、断末魔の叫びと悲願と共に『H.E.X.A.』の男の拳が1人を屠る】
【ニヤリと口元を歪ませる兵士】
【次は首を、そう考えると、銃剣を銃から取り外し、H.E.X.Aの男の首を掻き切ろうと迫るも】

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

【怨嗟を幾分にも含んだ断末魔の声が、次の瞬間には周囲に響く】
【範囲を狭く、そしてその分強力な威力を誇る手投げ爆弾は、兵士を粉微塵に破砕し、周囲にその血肉を散りばめた】
【周囲に爆発の影響は無いが、それでもすぐ近くにいるH.E.X.Aの男に、兵士の血肉、或いは脳や骨、臓器の欠片位は掛かっただろう】


635 : ◆zlCN2ONzFo :2018/10/31(水) 09:48:26 6.kk0qdE0
//ミスの途中投稿すみません。
//此方が本当です。

>>590

「『人とは名ばかり』とは、言ってくれる!人の見た目すら成れぬ者が、何をほざくか!!」
「人形だと、全く口だけは一人前の……国土の為、祖国の為、桜舞う愛する故郷の為、この感情は貴様らには未来永劫理解は出来ないだろうな!」


【先ずは1人目、断末魔の叫びと悲願と共に『H.E.X.A.』の男の拳が1人を屠る】
【ニヤリと口元を歪ませる兵士】
【次は首を、そう考えると、銃剣を銃から取り外し、H.E.X.Aの男の首を掻き切ろうと迫るも】

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

【怨嗟を幾分にも含んだ断末魔の声が、次の瞬間には周囲に響く】
【範囲を狭く、そしてその分強力な威力を誇る手投げ爆弾は、兵士を粉微塵に破砕し、周囲にその血肉を散りばめた】
【周囲に爆発の影響は無いが、それでもすぐ近くにいるH.E.X.Aの男に、兵士の血肉、或いは脳や骨、臓器の欠片位は掛かっただろう】

【一方で……】


「ふぁふぁふぁ……くっせ、よ、己が、業、に……」

【手を差し向けながら、幻術に掛かるアーディンを見据え、術の成功に歓喜し、再び軍刀を拾い上げんとする、顎を砕かれた男】
【だが、次には苦しむアーディンの首を落とそうとする兵士にとって、彼の行動は余りに予想外と言える】

「ば、ばか、な!あ、ありえ……」

【アーディンは自らの顔を、眼を傷つけて幻術を破り、此方へと蹴りの一撃を放って来たのだ】
【余りにも早く、余りにも奇抜過ぎるカウンター、兵士の男が反応するには余りにも速過ぎて、余りにも意外過ぎた攻撃】

「ぐばあああああッ!!……」

【蹴りを見舞われたると、男は砂浜を抉る様に文字通り蹴り飛ばされ、岩場に叩きつけられ、ピクピクと身体を痙攣させている】
【どうやら辛うじては、死んでは居ない様子だが、同時に留めを刺すならば今と言える】

「でも、おいちゃ、おいちゃ!け、が!!」

【アーディンは一番強く、一番の仲間達のリーダー、シャッテンとヴォーダン、2人の静かな無垢の信頼はそう少女に伝える】
【2人がそう話す傍、浅く無い怪我を負いながらも男とアーディンは対する兵士達を倒し尽くして見せた】


「あ、あ、お、おいちゃ……」

【風に吹かれ、砂に撒かれ、傷を負い、しかしNO BRAND HEROESはそこに居た】
【少なくとも少女の目には、そう映った】


636 : ◆XLNm0nfgzs :2018/10/31(水) 21:20:09 BRNVt/Aw0
/>>575 で再募集します!


637 : ◆zO7JlnSovk :2018/10/31(水) 22:47:40 arusqhls0
>>630

【リーイェンは幾らか沈黙を保った、──── 同時に行われる高速の演算、答えが出ることを寸刻と呼ぶべきで】


……それもまた奇妙な話でごぜーます、ロールシャッハがそう振る舞わなければ、ボスは表舞台に存在しなかった
それ故にロールシャッハは "何にでもなれる染み" から、ある一定の指向性を持つ形へと成り代わった

確かにそれは悪手でしょうね、水面下で動いていたならば、どれほど自由に振る舞えたのかと

或いは逆説的に考えるのなら、ロールシャッハは "そう振る舞わなければならなかった" とも考えられねーでしょうか
即ち、世界に対して真っ向から荒唐無稽を翳し、グランギニョルを謳い、渾沌へと導く

その行いにこそ、ロールシャッハの思惑があり、ある種の方法論的帰結を導くのではないでしょうか


要するに、ロールシャッハが好き勝手振る舞う為には、好き勝手振る舞うための土壌が必要であると
結果だけ見せられては "観測者" 達は満足しない、それには適切な "過程" が必要なのではないかと
無駄のない証明は美しさと同義です、それ故にロールシャッハは "後付け" でも良いから、過程を作り出したのではないか



また、もしくは、──── ロールシャッハもまた、観測者へと向けて、相応のシナリオを描く必要があったのではないか
それらしい虚構をでっちあげる事で、我々の認識を "錯覚" させ、それらしい虚構を、現実へと昇華させる



──── つまるところ、認識の作用にこそ、その染みを意義があるのではねーでしょうか


638 : 妲己 ◆zO7JlnSovk :2018/10/31(水) 23:03:19 arusqhls0
【 "櫻の国" 首都 "天ノ原" ──── その統治者である "殿様" が住まう、城 ────】

【閉じられた門に民が殺到していた、各々が手に持つのは "直訴状" ──── 即ち】
【最近改定された "櫻國法" の一部、──── "希少生物の輸出" に関する内容であった】

【これまで希少動物保護の観点から、櫻の国に於ける "知的生物" の輸出基準はかなり厳しかった、──── しかし】
【統治者である "殿様" の鶴の一声により、その輸出基準が大幅に引き下げられた】
【──── 即ち、今まで保護されていた "一般妖怪" 達もまた、輸出品の目録に加えられたのである】



【櫻の民にとって "妖怪" とは害獣である一方、適切な友好関係や契約を結んだならば、資源や動力として有効活用できた】
【しかし、今回の法律の改悪により、今まで均衡を保っていた、人間と妖怪の関係性が大きく人間に傾くほか】
【 "狩り" を免れていた妖怪達の "乱獲" までもが秘密裏に行われる状況になっていた】

【それ故に民は城に向けて殺到した、──── 税が厳しくなり、負担が大きくなるのは良い、それが自分達に還元される可能性が僅かでもある】
【けれども、今回に限ってはそれが "見えない" ──── 徒に自国の環境を破壊し、生態系のバランスを崩す悪辣でしかない、と】


【──── そんな騒動を眼下に眺めながら】



ふふぅん♪ あぁ、いいわぁん、下々の民が嘆く声ほど妾を昂ぶらせる音色はなくってぇ、じくじくと身体の奥から感じちゃうわん♪
そうでしょぅ? ぁんな力を持たないニンゲンもぉ、こうやって集まったらそれなりに働くんだからぁ
──── 大事なのは目先よん、矛先をちょっとずらすだけで、その力は誤った方向に進んじゃうのっ



【長い櫻色の髪、同系色の狐耳と、背中に広がる大きな九つの狐の尻尾】
【胸元を大きく露出した赤い派手な着物、大きくスリットを入れてまるでミニスカートの様に纏う】
【さらけ出した素足に申し訳程度の足袋を履いた、青い瞳の少女が紡ぐ、開け放した窓からは下の様子がよく見えて】

【彼女は縁に両肘を置いて、ちょこんと顎を乗せていた、ふりふりとお尻の尾っぽを扇の様に揺らして】
【くるりと振り返ったなら、そこには "三人分" の席を用意してあるだろう、彼女と、もう二人分の座るスペース】



ふふぅん、どぅかしら、──── 気に入ってくれたかしら、妾からのお、く、り、も、の、っ♪ ──── 殿様に可愛くおねだりしちゃった♪
おかげで助かるでしょぅ? これで商いがしやすくなってくれたなら、妲己ちゃん、他に何もいらないわん♪


639 : ◆1miRGmvwjU :2018/10/31(水) 23:08:51 E1nVzEpQ0
>>577

【 ─── 興味深げな顔をしていた銀髪の女は、寡黙に頷いた。「 ……… よければいつか、お話を伺いたいわね。」】
【ともあれ後藤は変わらぬ微笑を浮かべていた。連れ去られゆくタマキを苦笑にて見送った。手に取った紙編に目を通しつつ】
【少なくともこの場に残された三者は、少女の語る論理的帰結に少なからぬ感興を示しているようだった。 ─── 時折、小さな首肯が繰り返され】
【そして一節ばかりの説明が終えられたところで、徐に後藤が口を開く。焦茶色の双瞳に宿るのは、個人的な知的好奇心だろうか】


「 ─── 成る程。幾らか、梵我一如のような主張にも聞こえますね。いえ実にもっともらしいお話ではありますよ、勿論のこと。」
「事実とすれば物理学のみならず、各分野に極めて大きな影響を齎す理論でしょうな。 ……… それこそ心身問題など、一発で解決してしまうでしょう。」
「意識や自我同一性に纏わる諸問題へ回答する最も簡単な手段は、既存の科学体系に適用し得ない非物理的な観念を導入することですし ──── 、」
「それを霊魂(ゴースト)などと呼ぶこともできる訳であって、我々もその辺りの実在は勘案している。 ……… 実に麻季音さンらしい視点からの懐疑と推察ではありませんか」

「過去も未来も現在も総括すればゼロサムに等しくあり、ただ構成材料の分布や形態が違うのであれば ──── 全ては均一なるマトリクスから生じた塑像だとすれば」
「独断主義とマクタガート的解釈を下敷きにしたブロック宇宙論とでも言いましょうかね。時間なんてのは確かに認識の産物でしかないとも言えるのですから」


【綴られる返答は滔々と、淀みない理解/応用。学者肌の対手を喜ばせる遣り口を後藤はよく知っているようだった。すなわち学術的な興味を示すか、学術的な応答を示すか】
【どちらも生半に行えば顰蹙を買う類の反応ではあった。遇らうような問い方にせよ、付け焼き刃の知悉にせよ、垣間見せるだけで容易に失望されうる】
【それでいて彼は少女の求めるであろう模範を殆ど完璧に熟していた。 ──── 心理の哲学について、彼は少しばかりの素養を持ち合わせていた】
【「 ……… 理論面からのお話も、お聞かせ願いたい所ですな。」湯呑み茶碗を片手に持ち上げ、双眸細めて一口を啜る。「 ─── あち、」ふう、と一息。】


640 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/01(木) 00:14:13 BRNVt/Aw0
>>638

【妲己の待つ一室。扉がノックされて】
【配下の者の告げる声。曰く、ヨシビ商会の一行が到着した、と】
【その声に応えたのならば扉は開き、その先に物々しい一団の姿をとらえるのだろう】

【黒塗りの笠に黒の着物、顔の前には朱墨で目の四方に縦長の菱形をあしらった印が描かれた黒い紙を垂らした何人もの人間】
【そうして彼ら──ひょっとすると女もいるのかもしれないがに護られるようにして囲まれる二人の人物】

【一人は車椅子に乗った人物、だった。黒い山高帽と面頬で顔を隠し、ごく地味な色の着物と羽織を纏った──恐らくは老翁】
【そうしてもう一人は彼の車椅子を押す、下手をすれば少女とも呼べるような若い女】
【黒く艶やかな長い髪は真っ直ぐに切り揃えられていて、その頭には商会の社章であろう目の四方に縦長の菱形をあしらった形の髪飾りが輝いている】
【紫色の光沢のある生地に金と黒の糸とレースをふんだんにあしらった着物風のゴシックワンピースに少し底の厚い黒いブーツ】
【青緑色の瞳がきゅっと細められて】

貴方達は扉の所で待っててくださいね?
お部屋には私と社長で入りますから
【黒ずくめの輩に命ずれば車椅子をキィと鳴らしつつ部屋に入り】

……全く、何なんです?あれ
ここまで来るのに一苦労だったんですけどー?
【じとーっと目の前の少女を見る女。しかし車椅子の老人が何やらぼそぼそと囁いたようで「はあ、まあ社長が言うのでしたら」なんて小声で返して】

「……いやはや、うちのが失礼致しまして。ヨシビ商会の代表をしとります、馬酔木 悠玄(あしび ゆうげん)と申します」

……社長秘書の馬酔木 善弥(あしび よしや)と申します、以後お見知りおきを
【しゃがれた声で名乗る老人。女も続くように名乗る】

……さてはて、櫻國大将軍が奥方様であらせられる妲己様におかれましては大変──

「止せ、善弥。御託は良い」

「本来儂は表舞台には立たぬ者。見えぬ処より令をくだすが一番でな」
「その老体を斯様な文で引き摺り出しおって一体如何様な要件ですかな?」

【秘書の言葉を遮り、尋ねる馬酔木】
【言葉は面白がっているようだが彼の目はほぼ面頬と帽子に隠れながらも異様にぎらついているようで】


641 : 1/2 ◆3inMmyYQUs :2018/11/01(木) 01:22:40 nHxGsN220
>>458-459


【────暗闇に浮かび上がったその姿は、】
【この世ではない何かか、ついに狂ってしまった頭が見せたまぼろしか】

【その煙草の匂いが鼻先に届くまで、とても現実の光景だとは感じられなかった】


【「──家に帰れ」】


【確かな言葉。命のある音】

【けれど、それがどうやら夢ではないと分かってからも、】
【続けざまに起こった暴力と死で真っ白になった脳内と、】
【意思と関係なくがたがた震え続けるからだは、まともな言葉を何も紡げなかった】


…………ぁ…………ぅ…………────


【──家】
【そんなものは、もうどこにも──】


【言葉にならなくても、わたしは何かを訴えたかった】
【この恐怖と不条理と寒さを、全部くべてしまえる焚き火を熾したかった】

【けれど、わたしはそのどちらも出来ないまま】
【離れていく男の背を、闇の奥に溶けていくその姿を、】
【ただ呆然と、本当に呆けたように、目の中に映し続けているだけだった】


【微かに差していた月明かりが、また厚く黒い雲に覆われて、消えていった】



【────(なんで……、)】


/↓


642 : 2/2 ◆3inMmyYQUs :2018/11/01(木) 01:25:50 nHxGsN220

【そのときのわたしは、彼が立ち去っていく理由に、何も思いが及ばなかった】

【ずっと母の後ろにいるだけだったわたしは】
【知らなかったし、考えようともしなかった】

【それが生きていても、死んでいても】
【もう、人に優しくする理由は一切ない世界だということを】

【どこまで歩いていっても、】
【正義が根を張れない、腐った土地だということを】


【だから彼が去って行くのは、】
【薪の無い火が消えるのと同じように当たり前のことだった】

【まして、そのときのわたしのような】
【一人ではぐれた子供──孤児(みなしご)──そんなようなものは世にありふれていて】
【あの彼自身も、きっと今まで同じような子供を掃いて捨てるほど見てきたに違いなかった】

【だからそのときのわたしも、間違いなく】
【そんな命のなりそこないみたいな、有象無象のひとつだった】

【それら全部をいちいち気に掛けていたら】
【パンも弾も、世界にいくつあっても足りなくなるに違いなかった】



【けれど】

【そんな世界の道理なんて考えたこともなかったわたしにとっては、】
【どんなに朧気で、微かで、くたびれていても、それは闇の中で灯った確かな明かりだった】

【例え煙草の先っぽのような細く小さい火でも】
【わたしにとっては、寒さをしのげる唯一の篝火だった】



【────気が付くと、】
【わたしは恐る恐る立ち上がり、彼の後をじっと辿り始めていた】


【走ってはいかなかったし、「待って」とも言わなかった】
【今まで母以外の人間を信用したことのなかったわたしでは、そうできるはずもなかった】
【ましてや、まだわたしの瞼の裏には乱暴を振るった男達の醜い姿が濃く焼き付いていた】


【だから、付かず離れず】
【──目の代わりに、とてもよく聞こえる『耳』を澄まして、足音を辿り】

【まるで下手くそな尾行のように】
【彼の後を、ずっとひたすら、付けていった】


643 : ◆3inMmyYQUs :2018/11/01(木) 01:26:59 nHxGsN220
>>458-459
/なんともかんとも長話が続いちまって忍びないのですが、
/ここでまた一旦、イケオジさんに視点をお返しいたします。

/これもさらっと、何か一言二言程度で結構でございますです。
/特殊な状況で色々遣りづらいかと思いますが、もうここまできたら甘え通すことにいたします。


644 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/01(木) 01:42:09 smh2z7gk0
>>631

ああ全く、私たちがこうして生きているのだって誰かがキーボードをたたいて決めているかもね。
けどそれを知る由はない。そして私たちが私たちを認識している限りはこれは私たちの〝神話〟だ。

【「そうだろ?」と言いながら、奢ってもらったケーキの最後の一切れを口に放り込む。】
【そして「ディーちゃん何かいる?」と首を傾げて問いかける。ギンプレーンには何も聞かない。酷い話だ。】

それはそうだろう、さっきも言ったように彼女は〝聖府〟の担い手、そして


――――――〝INF〟の創始者〝らしい〟からね。


【〝らしい〟。に留めたのはマリアベルなりの手心でもあり、自分の認識に対しての保険でもあった。だが】
【―――ガタン、とマリアベルは体勢を崩して椅子から落ちそうになる。】

【緋色の瞳の焦点は合わず、激しい頭痛でも感じているのかこめかみを抑えて荒い息を吐き出す。】


【――――――――――】


【「失礼」とマリアベルは一通り息を整えると、スーツを整えもう一度座りなおす。汗を拭こうと思ったがハンカチはなかった】


私かい?まぁ今の事象の中では私の存在なんてさしたる意味もないが、まぁいいや
―――私は〝旅人〟であり、〝ロールシャッハ/彼〟の言葉を借りるなら〝深淵渡り〟とも言われている。


〝外宇宙の異種族/オーバーロード〟と〝ヒトの聖女〟の間に生まれた―――〝半神〟だよ。


645 : ◆3inMmyYQUs :2018/11/01(木) 08:16:07 nHxGsN220
>>643
/目欄内のログ&あらすじ用リンクが間違ってましたので訂正しておきます、失礼しました。
/ttp://ur2.link/N74E


646 : リゼ ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/01(木) 13:37:39 6IlD6zzI0
>>604

【見知らぬ相手の言葉に名状しがたい拘束力を感じて】
【得体の知れない強制力に抗えない。―――行きつく先が誤りでも】


振り向くなって……勝手に現れて勝手に仕切んなよ。
あてがその気になったならお前の言葉を無視することだって出来る。
何ならお前の土俵に立つ事無く袖にする事だって出来るんだ。

それにあてが何に魅入られたって言うんだ。むしろその逆だ、逆。
賛辞を贈られたってちっとも嬉しくない。最悪の気分。この世で一番最悪な気分だ。


【声の主に対する強がりの言葉。しかし、声色は依然として上擦ったまま】
【頬を伝う冷や汗の感触が厭に纏わりついて重苦しくて、虚勢だって事が解る】

【嘯くリゼの言葉は自分の都合を押し通せない事を暗に察しているからこそ】
【声の主が誂えた土俵から降りる事ができない。其処に立たざるを得ない】
【拒絶の言葉を吐いた後――結局はその土俵で"戯れ"に興じざるを得なかった】


【―――】


いきなり現れたヤツの正体を当てろなんて突拍子もないじゃないか。
ヒントもない。振り向いて顔も見ちゃダメ。それでお前はあてを知ってるみたいで。
最初からアンフェアだろーが。あてがこんな駄々を捏ねたって構いやしないだろ?


【依然として振り向かないままなのは、振り向いた場合何が起こるかわからない】
【深淵を覗くものは深淵から覗かれる――なんて状況では済まないだろうから】
【言葉に背いて振り向けば、深淵に引き込まれて何をされるか解らないのだ】


647 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/01(木) 14:36:46 6.kk0qdE0
>>638>>640

ーー天ヶ原、港ーー

「あ、ああああああッ!!」
「ん?どうした親父……ああああああッ!!」

【この日天ヶ原の漁民達を混乱と恐怖に突き落としたのは、一隻の船であった】
【魔導海軍、軽巡洋艦『大淀』海軍軍艦の中では比較的小柄な船であるが】
【古典的な手漕ぎ船か或いは帆船しか持たない天ヶ原の民草にとっては、絶対的なる力の権化、四海に
浮かぶ鉄の城にすら見えた】

「良い、良い風向き、良い海流だ」

【艦橋最上部司令塔より、その様を眺めながら、ゆったりした口振りで、こう呟く男がいる】
【漁民達の船を次々と沈め転覆させ、強引に入港する】
【最も、港とて整備されているわけでもなく、無理矢理投錨すれば、幾割かの桟橋はバラバラと崩れるが如く壊れ】
【先程の男が、その場に降り立ち、肌で天ヶ原の海風を感じ、また深まる秋風に頬を撫でられ】

「軽巡すら一杯一杯とはな」
「やはり不要なのだよ、古い物は、ね……」

【銀色の長髪をさらりと靡かせ、そう呟いた男は、その地の、いや、この国の為政者たる将軍が住まう場所、城に向け足を進めた】
【純白の海軍制服、階級章は大将を示し、勲章とモールを輝かせ、特別な拵えの軍刀を佩用し】
【魔導海軍連合艦隊司令長官、蘆屋道賢は道を歩んだ】

ーー天ヶ原、城内ーー

【馬酔木 悠玄がその部屋へと足を踏み入れ、そして言葉を交わし始めた辺りだろうか】
【再び部屋へノックの音が聞こえるだろう】

「遅参をお詫び申し上げます、奥方公、そして……馬酔木の御老よ、今日の日を迎えられし事、この矮小な人生の数少なき光栄と存じます」

【ノックより程なく、妙に大層な、それでいて何処か抑揚の抑えられた声で、こう挨拶する道賢が入室する】

「申し訳ございません御二方様、何せ天ヶ原の港は戦艦は愚か軽巡洋艦の停泊にも苦労する始末、何卒ご無礼の程、ご容赦を……」

【形通りの申し開きを述べつつ、妲己にも、そして馬酔木 悠玄にも恭しく礼をし、己の席に着く】
【この場に集ったのは、この国、櫻国を裏より席巻する、まさに怪物、フィクサーの集いであった】
【三者が会する、この場において、意外にも道賢は多弁であった】

「奥方公におかれましては、かの法の改正、見事な手腕であります、つきましては馬酔木殿の商いも、こちらの計画の一つも、満帆の準備が整ったと言うわけでございます」


【もっとも口上こそ多弁ではあるが、感情はやはり欠けたような口調であり、顔の笑みも口元のみに留まっている】
【やがてこの会談の本題の堰を、馬酔木老人が切れば……】

「妲己様、先ずは私めから話を出した方がよろしいですかな?」
「何、馬酔木御老、私の話はとても単純な、そうビジネス、商いの相談です、そしてもう一つはそれに関係した……そう、まだ何処にも明かしては居ない、海軍の秘密を少々……」

【こちらの話は、こんな部分だと馬酔木 悠玄に告げて、ここで妲己を見やる】
【この場の主人はあくまで奥方公妲己、話の順番は如何に?と】


648 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/01(木) 21:56:00 E1nVzEpQ0
>>632>>633

【 ─── ようやっと小康に落ち着いた愛しい少女に、目一杯の愛情と信頼を捧げられるのならば、矢張りひどく女は幸せそうな顔をしていた。今世の幸福すべてを手中にして】
【然るに疎ましげな白眼を向けられるのならば、穏やかな微笑は苦笑へと色合いを変えるとしても、本質として慎むつもりは毛頭ないようであった。】
【捕まえられた両腕に収まった少女を愛しげに絡めたまま、彼女もまた緩やかにコンクリートの床地へ腰を下ろし、 ─── 自重ない仕草で外套へと向き直り、】
【忠言については躊躇いなく肯定した。 ─── 純粋な好奇心を宿していた瞳が、3割弱の驚愕と7割強の納得に、見開かれるなら。やはり女は、笑っているから】


「 …………─── そう。」「そういうこと。」


【押収した蛇教の資料に幾度となくその容貌は示されていた。 ─── 然して容貌には未成熟な稚気が介在し、同位体に限りなく近い別個体であると解釈するに足りた。】
【ならば活性中のメモリ容量を幾分かその女の追想に回してよいような気もしていた。誰からの理解もなく、受容もなく、哀れで惨い半生を過ごしてきたのだという。】
【漸く見出した居場所さえもその手で壊してしまったのだとさえ聞いていた。 ─── 憂うように隻眼が瞬き、嘆息の温度を紡ぐ。どこか己れに似ていたのだから】


「 ──── 哀れなものね。己れの在り方を決めるのは、己れでしょうに。 ……… それも、求めるだけ酷という話かしら。」
「信じて尚も救われぬなんて、何とも救いのない話じゃない。 ───………… ああ、もう。救いようがないわ。本当に。」


【女は同情を嫌う人種であった。 ──── 所詮おのれの本心など、おのれにも分からないものなのだから。岡目八目をひけらかすとしても、他人に解る謂れがあろうか】
【それでも哀れであると述べざるを得ない程度には衝動を掻き立てられた。もはや白神鈴音はウヌクアルハイに足らぬというなら職務的な客観視をする必要もなかった】
【 ─── 抱いた少女の背中を、慰めるように撫ぜていた。人工心肺の静やかな鼓動と呼吸を、うずもれさせた胸許に聴かせたまま、髪先を弄ばれて】


「何れにせよ、私が世話になった事は違いないのだから」「 ─── ならば何かしら、貴女へ用立つに吝かでないわ」
「乗りかかった船から降りようとするほど愚かでないし、臆病でもないし、不義理でもない。借りた恩を借りたままにしては、寝覚めが悪いというものよ。」


【やはり女は白神鈴音を知らなかった。語り得ぬことに対しては沈黙しなければならない。安っぽい同情を散らかしておくのは、どうあっても趣味ではなかった】
【なれば自己の成しうる範疇で貢献を齎すのが賢明であり正義に適う道理というものだった。 ─── 踏み入った評定や反駁は、心の中だけですればよい】


「けれど観念的な話は苦手なの。」「出来るだけ即物的な御願いにして頂戴。殺すだけで"けり"が着くなら、何においても一番。」
「そうね。その病魔の脳天を吹き飛ばしてくる ─── なんて。"腐れ縁"の"連れ"からも、随分と怨みを買っている、みたいだし ──── 、」


【それでいて誤魔化すように笑っていた。悲しそうな顔をしながら笑っていた。あるいは自虐であるとも取れなくはなかった。 ─── 耳にする病魔の如何については】
【どうにも己れと似たような気質であると思わずにいられなかった。求めたものを冒涜的に手に入れて、縋る全てを踏み躙って憚ることのない性分。】
【愛した誰かに真っ当な手口で幸せな結末を齎せるようには思えなかった。曰く旧友の伴侶からは酷く怨まれているとも聞いていた。何よりそれは弱小としても、彼女の殺すべき神であり】
【 ──── それでも急を要する訳ではなかったから、くすくすと息を漏らして笑うのは茶飲話の距離感である。そういう温度で他人の生き死にについて語れてしまう女であった】


649 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/01(木) 21:57:33 WMHqDivw0
>>629

…………。会うかあ、会うしかないのかな、……会ってくれるかな。
さっきなんか電話してきたけど、すぐ切れちゃったし……もうどうだかわかんない。

【使ったハンカチを折り畳んで折り畳んで、「洗って返せばいい?」 ……現実逃避じみて口にする】
【洗ったってとうてい取れない染みをこさえてしまったことなんてわかりきってるはず、なのに】
【何かしらの口実を作るみたいに、約束事をしたがった。それくらいには人に依存して生きているようだった】

共通の知り合い……あたしのオニイチャンくらいかなあ。でもアイツに頼るのイヤだなあ……
そのほかには、まあ、いるっちゃいるけど……、……今はいない。
…………これわりと詰んでない? 共謀してくれるトモダチがいないの……

【曰く、血縁には頼りづらいらしい。思春期の作用によるものか、はたまた別かは知らないが】
【「そのほか」には、何かしらまた別の複雑な事情があると思わせた。無意識に声が沈んでいた】
【八方塞がりを感じてはあ、と重たく息を吐く。それから考え込むような、心細げな顔をして】

………………いっそそれ、おにーさんがやってくんない?
人を騙すの得意そうだし。つがるん――そのコ見つけて、騙してきてよ。
あたしとつがるんの共通のトモダチになって。ね、そんくらい簡単にできるぜ、みたいな顔してんじゃん、ねえ――

【――次に口に出すのはそんなことだった。一体こいつは彼のことをなんだと思っているのか】
【たぶんそんなに良い人だとは思ってない。だからこんなお願い事ができた、そしてこいつは】
【良い人じゃなくたって別にオトモダチになってしまえるだけの、言ってしまえば才能みたいなものがあった】
【実際、薬指の指輪をわけっこした相手だって、そんなに良い人というわけでもないし。たぶん。……、】
【……それにしたって舐め腐ってるみたいなお願い事だった。いくらでも蹴ってくれて構わない、けれど】


650 : 名無しさん :2018/11/01(木) 22:32:59 mORs7prs0
>>648

【すらりと長い髪を彼女は鬱陶しげに耳元へ掛ける、そんな何でもないはずの行為に、二人への不満と文句とケチとを詰め込んでいた、じとりとした目は、やはり子供ぽい】
【というよりも、彼女もそうなのだけれど、当たり前に他人が認識している方の"鈴音"も、わりに子供じみた挙動をする人物であった。珈琲に練乳を一本ぶち込んでいた、とか】
【そういう誰が見て流したんだかよく分からない噂も調べれば聞くのかもしれなかった。店の床でいきなり寝ていたりするものだから、あと数秒で救急車を呼ばれるところだった、とか】

【――まあそんなのは、どうでもよくて。ひとまずそいつは慎む気のないらしい二人、特にかえって見せつけるように振る舞う少女に対して、「色恋って嫌いだわ」なんて、一言】
【咎めるでもなく、ただ、自分は好まないとだけ口にしていた。刹那に遠くへ投げかけた眼差しはごくごく褪めきったものだった。冬の朝の泥沼よりも、つめたい、から】

「まあ、――"あいつ"の期待したことも、分かるのよ。自分が断腸の思いで諦めた、というか、――自分の役割を果たすために"できなかった"、ことが」
「"結局こんな風になるのなら、しなくて良かった"だなんてね、思いたくないの。たったのそれだけ。あとは――、へびさまも、同じようなもので」
「自分の都合で呼び戻した人間が、――破滅していくとこなんて見たくなかったのね。だから、そう、――人間として立ち直ってくれるのを、期待したの、あいつらは」

「――あたしは、違くて。知ってたって言っても、そんなに情報が入ってくるわけじゃないし。ただ、まあ、――そうね、」
「双子に生まれたけれど、実家は貧しくて仕方がないから、自分だけ良家に売られた――みたいな気持ちかしら?」
「適した教育を受けて、立ち振る舞いを学んで、欲しいものはだいたい手に入ったし、特別にわがままをしなければね」

【それにしてもわりに大雑把な性格をしているらしかった。しゃんと整えたはずの姿勢は横座り、いい感じにリクライニングする座椅子でも欲しそうな顔をしていたし】
【お茶とおせんべいでもあれば躊躇いなく手を伸ばしていただろう。――だから、この場において不機嫌そうな顔をしているのは一人だけ、抱き留められる少女だけが、】
【きっと置いてけぼりにされていた。あんまりついてくる気はなさそうだった。それにやっぱりいくらか眠たそうだった。安定した鼓動と呼吸に釣られて、うつらと瞬きが遅い】


651 : 名無しさん :2018/11/01(木) 22:33:09 mORs7prs0


「――――――用、ねー。あんまり、ないなぁ。ないわ。なくなっちゃった、って言うべきかしら。出来そうなこと、思いついてたけど、もう遅いみたいだし」
「だーかーらー、――そう、ねえ。オリジナルのボディが、欲しいわ。――やっぱり、ほら、身体がないと、困るものじゃない? あたしは困るし――」
「オリジナルのボディを見つけてやってほしいのと、――あとは、そうね、もし戻ってくることがあったなら、なんかゴハンでも奢ってあげて、おいしいやつね」

「――そんな高い店じゃなくっていいのよ、どーせ食べ慣れないんだし。ファミレスとかでいいの、知り合いでも誘って、パーッとね、ぱっと」

【横座りの脚を投げ出してから、膝を抱える。腿の裏側に腕を通したならば抱きしめて、膝のてっぺんに顔を添えるのなら、声音はごく曖昧な音律、投げやりめいて】
【ならばしてほしいことはあまり思いつかないらしかった。――ごく個人的な(あたし/わたしの)私怨については、黙っておいてやることにした。遠く別の場所に逃げていた分を鑑みて】
【ただわたしは絶対に許してやらないし許さないのだろうと理解していた。――それは正式に身体を取り戻した時に自分で表明すればいいと、思った】

【――なら、おせっかい焼きのトーンで伝えるのはボディの捜索と、人間の世界に戻って来る気になったようなら、その時に、なにか食べさせてやってくれって】
【「半年以上は食べてないんじゃない? 食べるの、好きなのにね。あたしもだけど――、」首をかしげる仕草、パーッとやるに足るだけの人数は集まるでしょ?って信じたい声】

「あたしは、――その子には恩、感じてるんだけどなぁ」

【ごくごく背中を丸めた格好、膝に顎を乗せたままで、彼女は首を傾けるようにした眼を閉ざすのだろう。ひどく和らいだ吐息をしていた。声も、同じであるなら】
【自分が何であるかも分からず、ヒトでありたいと願いながら、絶対に自分はヒトではないと理解し続けていた一人の少女を、己は蛇なのだと納得させてやった/させてくれた人】
【とはいえ会ったことがないから出て来る色合いもあるのだろう。話に聞いただけだった。――だけれども、「きっと、わたしも、感じてる」。呟く声は、ごく優しげ/悲しげに】

「やっぱり色恋なんて好きじゃないわ、――最初から誰も好きにならなければ良いのよ」

【――なれば推察できる未来にて在るのだろう離別へすでに手を合わすようであった。自分のことみたいに/だってほとんど自分だから】


652 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/11/01(木) 22:39:07 ZCHlt7mo0
>>635

<――――所詮、貴様は人にすら、なれなかった訳だ……!>

【降り注ぐ死体の残骸を真っ向から浴びながら、『H.E.X.A.』の男は皮肉っぽく吐き捨てる】
【不意を突いて放ってきた異能の攻撃に翻弄されかかったが、結果としては勝利に終わった】
【スーツの機能が復活し、汚らしいと言わんばかりに、胴に浴びた血肉を振り払い、砕けた骨と臓物の塊を、冷たく見下ろしていた】

{っ、ぐ……己の業に、敗れるくらいならば、ここまで生き延びる事など、無かった……!
 そこを読み違えた時点で、貴様に勝利の目など、無かったというものだ……!}

【リーダー格らしき男を蹴り飛ばし、左顔面の傷を抑えながら、アーディンは忌々しげに男の倒れ伏す姿を見届ける】
【――――確かに、自分は数えきれないほどの業を背負ってきた。だが、それ以上の力を以って今を生きているという自負はある】
【傷を抑えたまま、敵の完全無力化を見届けると、アーディンは保護した少女の方へと、静かに歩み寄った】

{――――もう、大丈夫。これでもう、大丈夫だ……何も心配しなくていい――――よく、頑張ったね……}

【自分の面相がひどい事になっている事は、分かっているのだろう。傷を片手で抑えて隠したまま、アーディンはもう片方の手で少女の頭を撫でる】
【先ほどまでの、剥き出しの牙そのもののような殺意は鳴りを潜め、静かで、それでいて力強い、男の笑顔というべきアルカイックスマイルで、少女を見つめて】

{――――よし、みんな……一端『Crystal Labyrinth』に引き上げる……! シャッテン、悪いがそこの男を持ってきてくれ……!}
……拷問にでもかけるのかい?
{その必要もないだろう……そいつには『手紙』になってもらう……誰に喧嘩を売ったのかを、精々思い知らせてやる『生き手紙』にな……!}
……久しぶりに、本気だね、アーディン……?
{勿論だ――――それとシャッテン、さっきのは、その子を宥める為だと理解している。……それ以上俺は何も言わんぞ?}
ッ……! ……まぁ、あの場ではああ言うしかなかったからねぇ……そこは御免という事で……

【作戦完了の合図が、アーディンの口から放たれる。それを受けて、一同は構えを解き、それぞれに撤収に掛かった】
【とはいっても、基本的に身一つの連中ばかりである。唯一、半死半生のリーダー格の男を確保しにかかったシャッテンを除いて、すぐさまその場から立ち去って】

{……今から、安全な場所に連れて行ってあげよう――――名前を聞いてなかったね、俺はアーディン……君はなんて言うんだ?}

【自ら少女を先導するアーディンは、ようやく少女とまともなコミュニケーションを取り始める。まずはその名前を聞きたい、と】

【――――何も支障がなければ、一同は恙なく『Crystal Labyrinth』へと向かうだろう】


653 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/01(木) 23:22:34 E1nVzEpQ0
>>650>>651


【世界に絶望した半神の少女に纏わる機序についてアリアは理解できぬ訳ではなかった。 ─── だが畢竟それは生易しい同情に過ぎぬと知っていた】
【孤独に成り果ててしまった神の行き場ない苦悩について、己れがどうこうしてやれるという傲慢さも思い上がりもなかった。それは自分の役目ではなかった】
【何よりその手の出過ぎた狭匙は既に一生分焼き終わってしまっているように思えてならなかった。今、己れの腕中で、静やかな寝息に半ば程の脚を沈める少女との】
【どこまでも濃密で残酷な闘争の記憶。 ─── それを抱えている限り、もう今生に疑いはない。然らば残された問いは如何に生きるかであり、手前の疑念にも手一杯だというのに、他人の面倒まで見てやれない】


「 ……… ふうん。つれないもの、ね。 ──── まあ、ううん、でも、そうね」
「捜し物であれば私たちの本分でもあるから。生身が残ったままならば、そこまで遠くに行っている訳もなし」
「けれど歓待の音頭を取るには、他に適役もいるでしょうし ──── 場所の手筈くらいは、整えておきましょう、か。」


【横座りの膝元に藤色を隠した少女をまどろませたまま、女の紡ぐは曖昧な言葉。 ─── 見つかる場所にあるなら、見つけ出すのに苦労はしない。】
【だが会ったこともない人間の祝賀会についてあれこれと勘案するのは可笑しな話であると口にしてから気づいたようだった。やはり、己れの役割ではない。】
【 ─── それは、もっと暴力的なものでしか有り得ない。恩人の恩人を手にかけねばならぬというのは、機械の心臓にも痛む心があった。それでも安い同情に曲げてはならぬのは、己れの使命でもあるのだから】


「そういう所感を聞けると、」「私も、 ─── 励まされたような気もする、かしらね。」


【だから、手前勝手な投影を、どこへともなく呟くに留めるのだった。 ─── 胸中の少女が截然たる意識を保っていなければこそ、口にできる言葉だった】
【碌でもない遣り口でも誰かの人生を幸せにできるのだと証明したかった。自責に呪われ一つの救いを得ていた少女を、殺すような手法で貶めて今があると、分かっていた】
【せめて己れが殺されぬ事を誓うより他になかった。 ──── 憎らしげな誰かの表情ばかり、主記憶領域には記されている。もう己れは、そういう舞台にしか立てない故に】

【神に祈る神というのも幾らか奇妙な光景には見えた。それでも儘ならぬのは人のみにあらず、神の手にさえも余るのが現世であるとは、かつての怨敵から継いだ真理。】
【「呼びつけておいて持て成しの一ツもないのは無作法ですし、」「 ─── 急ぎでなければ、如何かしら。」どこか別れの香りを嗅ぎ取って、そんな言葉を残した。だが想い合う二人に挟まれて飲む茶など旨い訳もなく】


654 : 名無しさん :2018/11/01(木) 23:58:23 mORs7prs0
>>653

【それでも時折抗うように少女は頭を持ち上げるのだろう。けれど真正面から相対してあんまり気分のいい顔はしていなかった、だってずっと憎んでいた】
【だけれど人間としての白神鈴音という少女に言及するのなら、いくらかの憐憫もあった。ただし、それを理由に自らの神様を穢されるのは嫌いだった、でも、】
【――もう神様すら居なくなってしまった。少女はそれを観測してしまった。それがゆえに、同じ顔をした神様の話にはあまり興味がないみたいだった、だから、だから、】

【気づけば吐息は深く深く変わっているのだろう、指先にて弄んでいた毛先は絡むだなんてないはずで、ならば指先は、せめてもの抵抗に似て捕まえていた布地からずり落ちて】
【その胸元に躊躇いも遠慮もなく寝息を撫ぜつける、――その寝顔に俗ぽい神様はいくらかの興味を持ったらしかった、ひょいと覗き込むなら、いくらか目を細め】

「寝ちゃったの? 良いこと、良いこと。寝る子は育つって言うじゃない? ずうっと蛞蝓に喰われてたから、――多分ほっといたら、来年までに死んでたわ」
「ごめんなさいね、前に見たときは、残り香だったから、気づかなかったの。――だけど、今なら大丈夫。人間って強いでしょ? 羨ましいくらい」

「身体は、――どこにあるのかしら。劣悪な環境ではないと思うの、そうしたら、ボディの方が逃げ出してくると思うから。だーかーらー、誰か、知り合いの場所かも」
「わたしの知り合いで、隠れ家みたいな場所を持ってる人。一人暮らしかしら。それか、事情を分かってて黙ってくれる人と暮らしてるんじゃない? でないと――」
「誘拐犯として通報されかねないでしょ。知り合いを当たってみたら如何、――あたしは、ほら、この顔で行っても、説得力が」

「――あははは、そんなに大したことはしなくっていいの。たまには自分で作るんじゃなしに、片付けの心配もしなくていい食事も、いいものでしょ?」

【寝てたら可愛い顔してるとでも言いたげだったし、事実寝ているときは至極可愛らしい表情をしていた。きっと赤ちゃんの頃からこんな顔で眠っていたって思わせる寝顔】
【真っ白な頬っぺたを突きこそしないけど、――くすと笑うのは如何様な意味であったか。けれど確かであるのはもう大丈夫だと笑う仕草に嘘は伺えず、】
【「とりあえず暖めてやって」「よく寝かせて」「滋養のつく温かいものでも食べて」「少しの間ストレスは掛けないように」「ショックなものも見せないように」】
【――等々、いくつか伝えてみるアドバイスじみたものは凡そ風邪に寝込む児童にも適用できるものであった、とりあえず、なにかが回復するまで緩やかにしてるのがいいらしい】

【――――――歓待だなんて、なんて、小さく吐息を吹き出すような笑い。そんな特別なものなんて要らないと思えた。――まあ、それを判断するのは、当人であるのなら】

「――あら、そうなの? あたし、もう二度と誰も好きにならないって決めてるの。くだらないでしょ? でもね――、――」
「ふふっ、遠慮しとくわ。人のお金でお茶を嗜むのは、好きだけど。――せっかく寝てるんだし、ベッド以外の場所に運んじゃうのは、可哀想じゃない?」
「オシャレなカッフェにベッドみたいに大きなソファはあんまりないでしょう? そのうち呼びつけられるのも、分かっていたから」

【「それに、結構ギリギリだったしね」】
【――主な理由としては、やはり気まずさが大きいのだろう。二人の間に混ぜてもらうほど面の皮は厚くなく、何より、色恋だの、そういうのは、もはやまともに眺められない】
【だからかあんまりに容易く断るのだろう。せっかく眠っている子を起こすこともないって、言い訳にして。予告のない呼び出しはかねてよりスケジュールに入れてあったから】


655 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/02(金) 00:50:07 WMHqDivw0
>>637
私は観測者であり――この世界の者達に取っての白昼夢で在るべきだった。
役目を終えれば、サクリレイジの忘却機構は、私が存在していた痕跡さえ残さず消し去っただろう。

――或いはリーイェン。君だけは記憶しているかも知れないが。

【リーイェンの言葉はある種の的を得ている】
【本来、ロールシャッハのように――或いは男のように、世界に外側から干渉できるので有れば、"説明"さえつけば何でも出来るに等しい】
【だが、彼らがグランギニョルと言う物語で有る限り、それはどこまでも禁じ手なのだ】

【彼自身もまた、言っていたことでもある】
【"物語の成立"には常に観測者の承認が求められる。それが無ければ、独りで夢の中にいるのと何ら変わりない】


【逆に、男は常に読者の立場でこの物語に接して来た。自らの物語を成立させないために】
【サクリレイジを手足として使い――その存在性を表に出さなかった】
【"この組織には長などいないのではないか"、と言う推論を否定しきれないように】


君も中々にこの非常識に馴染んできたようだ。
余り良い傾向とは言えないがね。


――グランギニョルと言うモノはそもそもが、そうだ。
ルール違反を場に馴染ませるための、ペテン。
"在りもしない未来"を、さもこの世界の行く末であるかのように示して見せる、虚構現実と言う名の見世物小屋。

それらを紐解くためには、同じように外側からの視点が必要となる。
だから、私がここに派遣された。



【これまで、敢えて明言してこなかった言葉】
【彼もまた、"誰か"の思惑に従って、この場に存在しているのだと言う事実】
【今になってそれを明かした理由は――……男は先程の紙切れを一瞥すると、"ブラウン"と記されたその名前をスッと指でなぞった】


【――なぞっただけで、何も書き換えてなどいない】
【しかし、再び、その名は意味の取れない文字列へと成る。……■■■■■】
【相も変わらず、平凡で覚え易い名前。しかし、不思議と、先よりも1文字増えている気がする】

【その後に男はくしゃりと紙を丸めて、捨てた】



だが、私はINFオブジェクトではない。
ロールシャッハと私の存在性は、或いは似ているように見えるかも知れないが、それでも根本は異なったモノなんだ。


【それは相似形でも双曲線でもなく――在らぬ方向を向いた二つの線が、枠の外側で偶さか交わっただけなのだと、男は些かばかり残念そうにぼやくのだった】



――マリアベル、或いはイスラフィールから、情報を引き出そう。
私の仮説がどこまで合っているかは分からないが、"あの負けず嫌い"がそのままで済ますはずはないからね。


【そこまで話して、ようやくリーイェンの手をまだ取っていることに気付いた男は、絵にもならぬ仕草でその手を離した】


656 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/02(金) 01:22:35 WMHqDivw0
>>644
その辺の小難しい哲学書をこの案件に関わるに当たって渡されたんだけど、いやあ、実に寝心地の良い枕だったとも。
察するに、件の偽書もそういった内容なんだろう?

"新世界"に"カノッサ機関"に"虚神"に"能力者"――そんな夢から醒めた男の話。
その男は、その後どうしたんだろうね?

夢は夢だとさっさと忘れて憂鬱な出勤に出掛けたのか。
或いは"そちら側が夢"だと考えて醒める方法を探し続けているのか――


【その辺は情報不足でもあり。件の禁書に明言されているのでなければ、どうとでも解釈出来る要素でもある】
【それこそロールシャッハテストのように】


【マリアベルに尋ねられたディーは首を横に振る。単に遠慮しているだけなのだろう】
【ギンプレーンが、代わりに"彼女にアップルティーを頼めるかな?"と口を挟んだ】
【と、横目を戻した直後、彼女はバランスを崩しかけていた】


おや――?悪い夢から醒めたみたいな顔だ。
能力者なんていない世界の夢でも見たのかい?


【そんな風にからかうように口にする。心配していないように見えるのは全く以って笑顔が変わらないからだろう】


聖府の担い手で、INF財団の創始者かあ……実際のところ、それがどんな意味を持つのかイマイチ分からないのだよね。
ロールシャッハの存在していた虚構現実が、基底現実の未来の話だってのは知っているかな?
あの時、聖府は能力者達の仇敵だと言ったけど、それは例えば――


【纏めるのは苦手なのか頭にモヤモヤとしたものを出して悩んでいると、ディーが横から口を挟んだ】


「例えば、聖府が仮に能力者を淘汰した存在だとして、イスラフィール個人が能力者の敵とは限りません」
「仮に、未来では敵だったとしても、今も敵かは分かりません。事情なんて、いくらでも用意できますから」
「別の観点から行くと、ロールシャッハに取っての敵とも限らない」
「そのいずれかを彼が明言したのなら、ちょっとは信憑性も上がるかも知れませんが」
「一度イスラフィールとは話さないといけない気がします。ロールシャッハを倒した後に、やっぱり敵でした、とならないように」


【つらつらと語るディーの言葉を受けて、そうそう、とギンプレーンが頷いて見せる。分かっているのかいないのか】


深淵渡りかあ。
ボクの仲間に"虚数渡り"って奴がいるんだ。コミュ障のクソ外道だから話は合わないと思うけど。
キミの渡る深淵って言うのはどんなところなんだい?


【外宇宙の異種族/オーバーロード。そのどちらにも聞き覚えがない】
【だが、何ともそそられる語感だったらしく、ギンプレーンの方は興味津々だった】

えーと、外なる――って言うと、ラヴ・クラフトの著書みたいなのをイメージすれば良いのかな?
それにしても随分と豪華な出自だ。
ハーフってだけじゃなく、人間の聖女様までなんて。
――その人間ってのは、この新世界の?


657 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/02(金) 01:55:50 EL49PYG20
>>654

【やがて穏やかな眠りに至る少女の姿を見届けるに、 ─── アリアもまた酷く優しげに頬を緩めていた。或いはそれこそが彼女の本質であるのかもしれなかった】
【ただ冷徹と酷薄を頼りとした厳然たる暴威として振る舞うのは世界から己れを守る機制に過ぎぬのであれば、まさしく愛した少女の存在は、己れの半身であって】
【故に向ける態度もまた依存の様相を呈していた。 ─── 愛しい寝顔を覗き込まれるのであれば、独り占めを許されぬ事に微かな不機嫌を示すも、我が子を誇る母親のように唇を笑みに寄せて、抱き締め】
【 ─── 然して対手の伝えた言葉は少なからず現実味を帯びていなかった。青い隻眼が仄かに見開かれて震えるなら、すぐに安堵の色合いに糊塗されてこそ、良かったものを】


「 ───……… そう、だったの。」「 ……… ええ。かえでは、とても強い子、だから。」


【鷹揚に頷く仕草は何かを憂うようでもあって、されど今となっては全て杞憂であった。暗示的に力ない笑顔は、結局のところ虚脱的であり、何を恐れる事もなく】
【幼気な寝顔を前にして、お互いにくすくすと笑い合うなら、訳も分からぬ熱い涙に苛まれそうでさえあった。 ─── 神託と呼ぶには卑近に過ぎるアドバイスにも愚直で】
【流行り風邪の看病であればもう少し手厚さを望めるであろう処置にも、きっとアリアは心を砕くのだろう。 ─── 伝えられた捜索範囲の話についても、心に留めたまま】
【第一級の諜報組織である彼女らにとって、それだけの手掛かりがあれば目を瞑ってでも探り当てられた。然らば、もはや話し合う事も、伝え合う事も、残されていないのなら】


「あら、 ……… 残念ね。であれば私から、強いる事は、ないけれど、 ─── 。」

「ありがとう。 ──── 忘れないわ。あなたのこと。」
「いずれ、また」「いつかどこかで、会いましょう。」「いつか、誰かの願いが達せられた時に。」


【 ─── それでもアリアは、幾らか名残惜しむような声調を、言葉尻に宿していた。物悲しかった。答えの分かり切っていた問いに、分かり切っていた答えを返される。】
【それが幸せであるというのならば御高説を垂れる積もりもなかった。故に、 ─── 音も揺れもなく少女を抱き上げて、そっと立ち上がるのであれば】
【帰り際に振り向いて、別れの挨拶くらいはくれてやる。それでよかった。それだけでよかった。親しい誰かと離れることは、永別の是非を問わずとも内心に欠缺を残すから】
【 ──── どこかの寝室に連れ行くために、アリアはその場を去るのだろう。現実性を喪失した、長い銀髪と長い体躯。肩口に刻まれた出血が痛む。ならば二人負ってきた傷ごと、これも癒えてしまえばいいから】


/このあたりでシメ、でしょうか…?


658 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/02(金) 02:52:47 TIAA14z20
>>649

【ハンカチに関しては、「返すんなら完璧にシミ抜きしてくれよ」なんて、無茶振りで返しつつ。】
【彼女がいくつかの心当たりを挙げては消していくなら、そこに存在する何らかの事情に、部外者たる自分が踏み込む理由はなくて】
【そうして、ただ黙って聞いていた。ただ黙って、しかし何とも言えない顔をして。たっぷりと間を置いてから口を開いた】


…………おい。お前、俺を詐欺師か何かだと思ってんじゃねーだろうな……?


【大きく息を吐いて立ち上がったなら、前髪を思い切り掻き上げる過程を経て、彼女の側へと向き直る】

まあ――――手を貸すのは別に構わねえけど。さっさと解決したいってんなら他を当たれよ?俺だって仕事があるんだからな。
それと、そうそう運良くそいつに会えるとも限らねえ。うまくいかなくても俺に文句言うのはナシ。

それを守れるんなら、やるだけやってやる。
その友達の特徴とか、居そうなところとか。あとお前の連絡先。教えろよな。

【マジメな人間でもないし、良い人かと言われれば肯定しがたい。そういう人間ではあったけれど】
【ただ――――目の前でこれだけ沈んだ顔をされて、断れる人間ではなかった】
【代わりに提示するのはいくつかの条件。彼女がそれでも構わないというなら、必要な情報を聞き出そうとするのだろう】

【取り出した携帯端末、連絡先として男はメッセージアプリのアカウントを示す】
【アカウント名は〝ダイン・ハートランド〟―――どうやら、それが男の名前らしかった】


659 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/02(金) 02:55:28 smh2z7gk0
>>656

さぁね、それは私も気になるところだけれど意外と〝院長〟として楽しく過ごしているかもね
ちなみに夢の中―――〝新世界〟での〝彼〟の親友の名と夢から覚めた〝彼〟を診る医者は同じ名なんだよ

これにも何か意味はあるかもしれないし、より一層ただの〝精神病棟〟の物語とも見る事ができる。


【一つ、偽りを混ぜる。それはコーヒーに混ぜる角砂糖程度のもの。なんとなく加えるスパイス】
【だがそれは致命的なエラーを起こさせる可能性もあるが―――現段階ではきっと意味はない、そうきっと】

【マリアベルは少し虚ろな瞳で頷くとアップルティーと、自分にはダージリンを注文する。】

【ギンプレーンのからかうような言葉には「さあてね」と相槌を打つ、ひどく喉が渇いたようで空になったカップを揺らす】

そうだね、それを言うならば〝今〟の彼女が〝聖府〟の彼女とは限らない。〝虚構現実〟は〝未来〟なんだから。
そう考えると彼女が今のタイミングで急に顔を突っ込んできた理由付もできなくはない。〝線路が切り替わったのかも〟

であれば〝水の国〟とは――――――。フフ、もしかすればロールシャッハ卿とは―――。


【「君かもしれないね」。】
【真っすぐとギンプレーンを見て言う。あるいはギンプレーンの奥にいる〝観測者〟に対して言ったのかもしれない。】

―――ま、あくまで私の妄想さ。ただそれも一つの可能性として存在しうる程に今の世界は不安定といえるね。
その歪みの中心、〝始まりにして終焉の地/ストックホルム〟についてもっと調べる必要があるかもしれないねぇ。


、話は戻るけど、〝イスラフィール〟。私が相対した限りでは彼女は間違いなく〝善性〟だと思うケドね。


【ロールシャッハに近しい立場を匂わせたかと思えば今度はイスラフィールの肩を持つ。】
【不明瞭な存在。悪く言えば八方美人。中庸―――それがマリアベルであった。】
【そしてそれは彼女のルーツにも繋がるところがあるのだろう。人と神霊の混血であるというその出生の。】

私の渡る〝深淵〟とは〝狭間〟―――上の階層と今の階層の狭間だよ。
さあてね、ただこの世界の外の宇宙に存在する上位存在なのは確かだ。そしてそれは気まぐれに〝交信〟する

ああ、そうさ。私の母は新世界における〝教会〟に所属する〝枢機卿〟であり〝聖女〟だった。そしてそれ故に〝贄〟となった。


660 : 名無しさん :2018/11/02(金) 03:12:02 mORs7prs0
>>657

【――相手の笑む表情に、彼女は緩く目を細めるのだろう。色恋は嫌い。だけれど。誰かをそうやって慈しむ顔は、べつに、嫌いじゃないと思う】
【こびり付かれた蛞蝓の歯舌にて魂を擦りおろされ続けた少女もこれなら大丈夫そうだった。ベッドに据え置かれてちょっと不機嫌にでもなればいい、気の強い小娘なんて】
【だから行為は些細な気まぐれのようでありながら、そうしてまた、誰かの責任を取ってやるような温度感にて。指先で刹那に少女の額に触れた、たとえ追及されても】
【なんでもないとしか言わないんだろうけれど。――少女の中でずうっと蛞蝓と相対し続けていた小さな蛇の子への感謝と、それから、これからも頑張れるように、】

「――――あらそう、ありがと。まあ、――あたしは、必要がなくなったら、きっと帰るわ。だから、そうね、」
「紫色した髪の奴を見たら、よろしく言っておいてくれる、――それがあたしの飼い主様だから。ペットは役に立つ子だって伝えておいて?」

「そしたらご褒美のほねっこが増えるかもしれないじゃない?」

「――あ、あと、"わたし"のこと、よろしくね。ボディが見つかるまで、そうやって持っていてくれると、助かるもの――」

【伝えるのは至極自分の都合、どうしても礼がしたいなら、いつか機会があったらそうしてほしい。――ご褒美が増えることがあったら、きっと、彼女もそのこと思い出すから】
【犬用の菓子をぼりぼり食べる顔はあんまりしていなかったけど。立ち上がる相手を見上げるのなら、そのまま見送るのだろう。にこやかに手でも振るだろうか】
【――おんなじ顔をしていても表情と声音とが少しだけ違っていた。だから違う生き方をしてきたんだと伝えるには十分だった。ならば、聞く限り大人しげな給仕の本質は、(きっと)】


661 : 名無しさん :2018/11/02(金) 03:12:15 mORs7prs0


【――――――その後。病人みたいに扱われた少女はやはりいくらか不満そうであった、ただしそうされるのは受け入れて。その代わりに、事情の説明を求めていた】
【納得いく説明をもらえたなら、あとは、アリアの好きにさせてやるはずだった。彼女もわりに上機嫌にゼリーが食べたいとかプリンが食べたいとか言っていたくらいだった、けど】

【いつかの日。アリアが夜更けすぎまで帰らず、そうしてまた、事後処理のために朝早くより居なかった、日】
【ようやく戻ったならば家は空っぽだった、その癖に少女の持ち物は多く、ならば、近場のコンビニにでも買い出しに出ているらしい、と、思わせて】
【前よりそういうところがあった。家に食材があろうとも、一人の食事はふらっと買い出しに行くことが多い。蛇教のころから、――あるいは、ありふれた少女だったころから】
【だのに長い事戻らなかった。前日のアリアを真似るように夜更けすぎまで戻らず。携帯も持っていないようだった。ならばそろそろ探しに行くか、という頃合いに】

【――かたん、と、玄関扉の向こう側にて、小さな音。家に入るのをためらっているみたいだった。数分にも満たぬ沈黙と空白、そうして、やがて、】
【ご。と、鈍い音。次いでずるりと擦れる音。ならばちょうど人間一人が扉に倒れこんで、そのまま、地面まで落ちていったかのような。確かめるなら果たしてそうであり】

【やがて目覚めるベッドにて彼女が供述するのは、】
【イル=ナイトウィッシュと遭ったこと。白神鈴音の概念を取られたこと。そんなつもりなかったのに自分でそうするように仕向けられたこと。ほんとにしたかったわけじゃないのに、】
【ひどいことを言われたこと。ひどいことを言われたこと。だけどその内容は泣いてしまって言えなくて。ひどく追い詰められた目をしていた。ひどく傷ついた目をして、】
【何度も塗り重ねたのは言い訳だった。やったのは自分だけど/そんなつもりはなくて/そうさせられた/私のせいじゃない/心中で叫ぶ言葉は、けれど、口から出てはくれないから、】
【心の中で何百篇も叫ぶのに言い訳だって知っていた。結果としてもうどうしようもないって分かっていた。自分が悪いと。でも(――無能だなんて言わないで)、】

――――――――――――――――――――――――アリアさん、私、能力、使えなく、なっちゃった、…………。

【(それでもここに居ていいって、言って)】

【――――その後、長い時間をかけて聞きだすに分かるのは、少女が、きっと、おそらく、自分の異能で以って、自分の異能そのものを阻害してしまったらしいことであり】
【自分自身の異能で自分自身の異能への認識を阻害してしまったが故に、解除しようにもその方策が分からない。そのうち解けるかもしれない。解けないかもしれない。――――】

【自分の行いで知らぬ間に世界は滅んでいたって聞かされる思春期のような声だった。そうしてまたタイミングも悪かった。――あるいは、予後が悪いと言うべきか】
【間違いなく多大なストレスとショックに曝されていた。だから、というわけでも、ないのだろうけど――やがて本当の熱でも出すのだろう。熱に魘されて泣きじゃくるたびに】
【神様なんて信じられなくなってしまったみたいに、何度も何度も縋って呼ぶ名前は間違いなく愛しい人の名前であるのだから】

/おつかれさまでした!


662 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/02(金) 13:52:45 6.kk0qdE0
>>652

【H.E.X.A.の男の言葉は言い得て妙か、かつて人の形をしていた肉塊、肉片は、異臭と共に降りかかるも、スーツ機能を回復させた男に即座に振り払われ】
【一方では、


663 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/02(金) 14:30:42 6.kk0qdE0
//またも、途中送信すみません……

>>652

【H.E.X.A.の男の言葉は言い得て妙か、かつて人の形をしていた肉塊、肉片は、異臭と共に降りかかるも、スーツ機能を回復させた男に即座に振り払われ】
【一方では、アーディンが、まさに中心となっていた男に蹴りの一撃を決め、沈めた所であった】
【本物の覚悟を、本物の修羅場の戦いをくぐり抜け続けてきた者に、今更、他人が作り出した幻の声如きどうという事はなかったのだ】

「おいちゃ!おいちゃ……け、が!いた、く、ない?」

【自ら怪我を負い、敵を屠り、傷を隠して少女と話すも、やはり血は、痛みは、少女には見えていて】
【心配そうに覗き込むも、アーディンに頭を撫でられ、目を閉じて】

「おいちゃ、あー、でぃん?」
「おいちゃ、は、あー、でぃん?あー、でぃんの、おいちゃ?」

【不思議そうにこう聞き返すも、名前を聞かれているのだろう、と理解すれば】
【その、何処か安心を与える優しく静かな笑みも手伝い】

「あん、しん?あん、しん、は、わたし、になに、もしな、い?いたい、こと、しな、い?」

【こんなにも、優しく抱かれた事も、扱われた事も無いかのように】
【アーディンの言葉に、少し小首を傾げていたが】
【シャッテンやヴォーダン、H.E.X.A.の男を順番に見て】

「おいちゃ、おにいちゃ、おいちゃ、おいちゃ……あり、が、と、う」

「わたし、わ、たしは、『みらい』、み、ら、い……にげる、いわれ、た、」
「そ、れ、とね、あう、いわれ、た、いつ……いつく、しま、と、なかま、に」

【こう、やはり辿々しくだがこう、確かに答えたのだ】
【また、一方で絹張と呼ばれていた、その軍曹、先程アーディンが蹴り倒した男は、未だピクピクと痙攣し】
【その意識を遠のかせたまま、シャッテンの手により運ばれるだろう】
【妨害や、或いはトラブルはなりを潜め、一行とみらいと名乗った少女は『Crystal Labyrinth』へと難無くと、着く事が出来るだろう】




ーー浜辺の木陰よりーー

「杉原、今の見たか?」
「はい、軍曹殿、特徴からアーディン=プラゴールと見て間違い無いでしょう、厳島海軍中尉の極秘報告リストに名前がありますね」
「あの子は、やはり、か?」
「ええ、軍曹殿、間違い無いでしょうが、海軍が既に嗅ぎつけて居ます」
「追うぞ、接触と必要があれば彼らの身の安全も防衛しなくては……」
「了解であります軍曹殿……所で、一番保護したく又、一番気に掛かっている方は?」
「し、師匠おおおおおおおおッ!!うわあああああああッ!!」

【アーディン達の迎合、そして行動を物陰から伺う姿が2人】
【長身の男と底身長の少女、2人は会話を交わすと、また気配を殺し、一行の後を尾行するように歩いて行くのであった……】






ーーこれから起こる動乱への歯車は、またここで一つ噛み合い、ゆっくりゆっくりと、動き出した…・未来がそう、白くあるか黒くあるかは誰にも解らないーー


//長くなりましたが、絡み誠にありがとうございました!こちらで締めで、よろしいでしょうか?


664 : サリードの中身 ◆auPC5auEAk :2018/11/02(金) 16:05:18 ZCHlt7mo0
>>663

{ん? ……大丈夫。俺はこれくらい、慣れているからね……痛いけど、でも、大丈夫なんだ――――}

【顔面の傷を庇いながら、アーディンはふっと力を抜いた笑みを見せる。言葉は物騒だが、その表情が一番少女を安心させる事ができると踏んだのだろう】
【ダラダラと流れる血は誤魔化しようがないが、笑顔を見せるやる事は出来る。それが彼の、1つの矜持だったのかもしれない】

あぁ、安心さ。僕たちのほかに、もう少し仲間がいるからね……みんな、ひどい事なんてしないよ……
{そうだな……痛くない、怖くない……それから、ゆっくりと分かっていけばいい、『安心』という奴を……}
(……アーディン、この子……)
{――――櫻の国の海軍め……一体何を考えている……!?}

【たどたどしい言葉に、ハッキリと答えていく。ある意味で、それが大人の態度というべきものだろうが――――この時の彼らには、わずかに陰が差していた】
【少女が、櫻の国魔導海軍の中で、どんな扱いを受けてきたのか。それが推し量れてしまい、思わず憂慮と怒りが、心の底に淀んでしまっていたのだ】

……どういたしまして
「良かったな……どうやら、これで一区切りという奴らしい……」
<ヒーローは、いつでも子供には、味方してやらなければな……>
{……?}
……そんな御大層なヒーローじゃなかろうに……
<おいそこうるせぇぞ……見た目は何でも、常に心は錦だってんだ……>

【ようやく事態を収束させ、少女と相対する一同。勝利の後の充足感と共に、少女を守れた安堵、そしてどこか微笑ましい平穏を感じていた一行だったが】
【――――アーディンだけは引っかかっていた。少女はどうやら、自分に心当たりがあるようで】

{――――――――ッ!!}
「……お、おい旦那……」
<――――ま、こうなるってのは、ある程度分かってた事だよな……>
{……そう、か……厳島め、最後に俺を頼ってきたか…………――――分かった、『みらい』……行こう、厳島の為にも、ね……}

【――――海軍の中で拘束されたと発表のあった、厳島の伝言を受けて、少女――――みらいは、自分を頼ってきた】
【その事実は、一堂に確かに衝撃と――――改めて『みらい』を自分たちの手で守らなければならないと言う決意を与え】
【慈しむように、『みらい』を連れて帰路に就く――――厳島の名前に動揺していたからか、尾行者の存在を、迂闊にも見逃して――――】



【――――数時間後 駆逐艦『雷』寄港地の繁華街にて】

【――――その凄絶なモニュメントは、忽ちの内に街中に知れ渡り、喧々諤々の噂を走らせる。それは、魔導海軍の耳にも、早晩入るだろう】

【――――{久しぶりに、あそこまで徹底的にやった。流石に気分は良くないが……それ以上に気分の悪い面々だったからな。そう躊躇も無かったさ}】
【――――「流石だねぇアーディン……で、これが奴らに対する、最高の挑発だと」】
【――――{――――あぁ。自分が生かされた事を、死の間際まで後悔するだろうよ。コミュニケーション不能、自発行動不能、自殺不能……完全に無意味な命だ}】

【――――両目を神経毎抉られ、両耳に焼けた火掻き棒をくじり込まれて、聴力と三半規管を破壊され、そして舌を切り取られた上で、治療を済ませた『絹張』という男】
【『偽りの守り手に、ご挨拶申し上げる。いきぐされ 見苦しきかな 姥ざくら』――――そう書かれたメッセージカードと共に、町の広場の街灯に、括り付けられていた】
【上下左右も分からず、母音を呻く事しかできず、噛み切る舌すら奪われた。よほど高位のテレパシスト以外とは、全く意思疎通不可能と化した男の『生き死体』】
【――――軍においては、死者よりも重傷者の方が負担が大きく、士気を下げる。そしてその意味を越えた『見せしめ』を、『敵』に対して叩きつけたのだろう】

/では、これで〆という事で……お疲れ様でしたー!


665 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/02(金) 20:18:26 WMHqDivw0
>>658

…………え? 違うの?
だってこんなフツーの街中で軍服着てるよーな人、ぜったいフツーじゃないでしょ……。

【※凝り固まった偏見!※】
【さも当然のことを言っているでしょう? と言いたげな顔をしていた。ぱちくり瞬きすらする始末】
【違うんなら「そ、ごめんネ」くらいの軽さで流す。ひどい女だった。それでいて人懐こいのが手に負えない】

べつにあたしだって、そんなすぐ解決するなんて思ってないし……。
無茶振りしてる自覚はあるもん、言わない、やくそくする。だから、うん……

【「てつだって」。ひどく安堵しきったような、綻びに似た笑みを浮かべながら自身もスマホを取り出して】
【操作しながらつらつら語っていく。「名前はつがる、シロガミネ・ツガルって言う子で」】
【「真っ白い髪してるの、目は金色、それで……ネコチャンなの。猫の耳としっぽが生えてる」】
【「それで……居そうな場所かあ、フツーの子だからネ、危ないとこにはあんま行かないんじゃないかなあ」】
【「路地裏とかはたぶん行かない、フツーに街中歩いてそうな子……」 言い終えるころには】
【少女がダインのアカウントを友達登録した、ぽこんという通知音が鳴る。その通知から辿るなら】
【「ゆづき」。ひらがな三文字で登録された情報が見れるんだろう。アイコンは誰かとのツーショット、】
【流行りの自撮り加工アプリを通して盛りに盛ったみたいなやつだった。たぶん、危機感、あんま持ってない】


666 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/02(金) 23:22:26 yn0ow5a20
>>665

ったく…………これは仕事着だ、っつーの。
陸軍の人間が軍服着てんのは普通だろーが。

【服装に言及されるなら、そうやって己の身分を明かすのだろう。水の国陸軍、その一員である、と】
【であれば、なるほど仕事が忙しいというのも頷ける―――何せ、よく狙われる国であるのだから】

んで……?つがる、ね……、猫耳に尻尾……獣人系か。
街中歩いてるような……ってのはあんまり参考になんねえが、見た目の特徴がそれだけありゃあ情報としては十分だろ。


―――オーケイ、ゆづき、か。じゃあ、そっちで進展があったら連絡してくれ。
こっちからも何かあれば連絡するが……いきなり「出てこい」って話になるかもしれねーから覚悟はしとけよ。

【画面の上で確認した名前を、声にして一度、読み上げて。】
【言いたいことを言うだけ言ったら、「それじゃ、そろそろ行くわ」と、初めに向かっていた方へと歩き出すだろう】
【背中に質問でもぶつけられれば、立ち止まって答えるのだろうが、やがてはそのまま、ヒラヒラと手を振って去っていくのであった】




/こんなところでしょーか、お疲れ様でしたー


667 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/02(金) 23:40:20 WMHqDivw0
>>666

軍? ……え、ホンモノの軍人さん?
うっそだあ、そんな人がこんなとこでうろうろする……?

【実際してるんだから仕方ない。だけど信じられないと言った調子で表情を歪めに歪め】
【それでもこの国の人間であるというなら、まあ、忙しいというのも嘘じゃないんだなと理解する】
【こいつの恋人もまたこの国のどこかにある組織で暗躍していて、忙しいから】
【だからこいつは今日、ひとりぼっちでここに来ていたんだった。……こっそり。留守番から抜け出して】

【ひらひら。手を振られるならそれに振り返して、……食べそこなったクレープをもう一度食べるか、迷って】
【それでもそろそろ帰らないとまずい頃合いだった。日が傾き始めている。勝手に外に出たのがばれたら】
【きっとひどく怒られるから――彼女も、ベンチから立ち上がって。…………、】


【――――後日。「ハンカチきれいにならなかった」のメッセージと共に、薄汚れた布の画像が送付されてくる】
【当たり前のことだった。だけど彼女は馬鹿正直にめちゃくちゃ頑張って洗ったらしい、チョコソースの茶色は、薄くなっていた】

//はーい!ありがとうございました!


668 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/03(土) 00:00:57 WMHqDivw0
>>659
へえ……それは少しばかり意味が出て来るネ。
夢の登場人物に知り合いが、なんて。


【少ない情報の中でマリアベルの含んだ偽りに気付くようなことはないだろう】
【それに意味が在るのかどうかは定かではないけれど、ただ、しかし――このマリアベルと言う人物は相当な食わせ物だ】


【まあ、"人を食ったような"人物と言う意味では、笑う男もそう大差はないのであるが】


虚構現実が"未来"、と言うのは少し前から周知されている見解では有るけれど、現実としてこのまま先に進んだ時にそうなるとは限らないよね。
どちらかと言えば、そう――この世界の未来や、黒幕やカノッサ機関のような組織の動向――それに今後も頻発するだろう、能力者達のあらゆる問題。


それこそ現在も、過去も、未来も――虚構現実と言う名の皿の上に"乗っていると言うこと"にしてしまいたがっている。
そう見えなくもないかな。


まるで全てを掌の上に乗せたような気分になるだろう?
今後、どんなトラブルが発生しようと、それは未来に辿り着くための過程でしかなくなるんだからサ。



【ギンプレーンに向けられた言葉に目をぱちくりとして】


HAHAHA、それはユニークな発想だネ。
もしも、s
「ギンプレーンは、ロールシャッハじゃありません」

【陽気そうな男の声を遮って、アップルティーを貰ったディーが横から口を挟む】
【どこが琴線に触れたのかは定かではないが、彼女に取っては何かが地雷だったらしい】
【笑う男は肩を竦めて、それでも笑顔のまま言葉を継いだ】


まぁボクはそんな器ではないとも。
勿論、ボスもね――あの人本当に何も出来ないんだよ。

ただ、ボクらの上に突っ立ってるのが仕事みたいなものでさあ。
ロールシャッハの半分も勤勉に働いてくれれば少しは楽なんだけど。


【話は、戻る。マリアベルの立場はどうとでも転がれるのだろう】
【或いは彼女の目的からすれば誰が味方でも、敵でも、大して関係ないのかも知れない】

確かにパッと見は善意のお姉さんって雰囲気だけどね。
ロールシャッハに女狐なんて呼ばれるくらいだから、大層な演技派でも驚きはないサ。


さて――虚神だけでも難儀してるのに、そんなモノにまでこの世界は狙われてるのかい?
ハーフを作れるくらいなんだから、ただ見ているだけではいてくれないワケだね。

HAHA、実にコズミックな話さ!



「贄と言うと、そのオーバーロードの?……ああ、それはつまり」


【その"結果"がこのマリアベルと言う女性なのだと】
【そこまで露骨に口にはしなかったけれど】


うーん、でもキミも別にオーバーロードの特使としてやってきた――ってワケじゃないよねえ?


669 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/03(土) 00:08:03 MAFCdwkQ0
【水の国、ミール・シュタイン】

【様々な技術の導入により水の国随一の近代都市として知られる、経済の中心地ともいえる大都市】
【その一画で、大規模な建築工事が行われていた。終盤に差し掛かった現場では、様々な職人が出入りしていて】
【―――中には、聖職者と思われる姿もあった。どうやら、ここには聖堂ができるらしく】

うわぁ…………すっごいなぁ、これ。
こんな大きい教会、初めて見たなぁ……やっぱり水の国ってすごっ……。

【さて、そんな工事現場の様子を遠巻きに眺めている者がいた。風貌としては、細身の青年、というような印象だろうか】
【ショートカットの銀髪に、榛色の瞳。大きめのワイシャツに黒ネクタイをゆるく締めて、ジーンズといった出で立ち】
【感嘆、だろうか。比較的小柄なソイツは、口を半開きにしたマヌケ面でその威容を見上げていた】

【ただ―――立っているのは歩道の途中。周りの人が避けて通っているからいいものの】
【ハッキリ言って、邪魔である。文句を言われても仕方のないことだし、人とぶつかる可能性だって大いにあった】


670 : ◆RqRnviRidE :2018/11/03(土) 07:39:04 cKs43d2s0
>>669

【都市風が辺り一面を吹き抜ける。 冬の気配を引き連れて、渇いた空気が素肌を撫でる】
【そうしてそれは訪れた。 砂埃の一粒も感じさせぬ、冴え渡りすぎた澄風と共に。】

【青年の横を通りすがる青いシルエットは、碧海を思わせる風采の髪の長い少女のもの】
【ターコイズの眸が一瞥し、静かに、しかし確実に耳朶へ届く声音で一言声を掛ける】


──観覧者さん? 危ないからもう少しだけ、離れた方がいいのよ。


【────忠告染みた色合いを呈して】





             【 ──── “ドンッ” 】


【刹那、地響きと爆発音が響き渡る。 目を遣れば発生源は、眼前の『教会』で】
【建築途中の部分から砂煙が立ち上っている。 事故か、あるいは何者かの襲撃か】

【現場はたちまち混乱が巻き起こるだろう。 立ち止まる者、逃げ惑う者、近付く者、遠巻きに眺める者】
【犇めく雑踏と人々の声に紛れて、教会の方からは断続的に叫び声が聞こえてくる──】

【──そこに、狼の遠吠えを交えて。】


671 : ◆DqFTH.xnGs :2018/11/03(土) 09:00:52 UOwSO71s0
>>384

…………ったくさぁ。なんだぁ?類友、ってやつか?あぁ?
鈴音の元カレも似たようなこと、言ってたぜ?
どーしよーもねぇ状況で、それでもなんとかしたくて煮詰まっちまって……結果は最悪なモンになっちまいやがった

────助け合い、とか力を合わせて、っつぅのは映画ン中だけの言葉じゃねぇだろーに
遅ぇんだよ…………どいつもこいつもよぉ──“その言葉”を言うの、…………がッッ!


【走る。なにかに追いつかれないように。なにかを置いてくように】
【自然と大きな笑い声が出る。吹っ切れたんだろうか。悲しみはまだ胸の内で燻ってはいるが】
【それでも────前を向くくらいは、出来るようになったのかもしれない】

【B級映画の詰め合わせをハンバーガー味のソースで煮詰めて、その挙句】
【最後にハーゲンダッツのバニラアイスとシェイクしたようなそんな映画だった】
【感想は、と聞かれれば「クソだった」と迷うことなく答える。だけど】


逆に中毒になっちまいそうな映画だったぜ…………クソが

しっかし──そうだな。このまま解散っつぅのもなんだか味気ねぇしな
せっかくだし、“全部乗せ”ってぇのはどうだ。ぜぇんぶやっちまおうぜ、それこそ、ブッ倒れるまでさ
こういう時は中途半端ってぇのはよくねぇ。とことんヤっちまおうぜ


【くく、と愉快そうに喉を鳴らす。(あぁ、なんだか調子が戻ってきやがった)そう思えるようになった】
【カメラを向けられれば一瞬、驚いた顔の後──べ、と笑いながら舌を出してダブルピース。ついでに白目】
【しょうもないポーズだった。今はそんなことが出来ること自体が、ありがたかった】

【写真を撮ったあとは、きっと連絡先でもぱぱっと交換して──本当に、全部遊んでしまうのだろう】
【ボーリングもカラオケもダーツもビリヤードも。それこそ動けなくなるまで遊び倒して】
【どうやって彼と別れたかなんて、覚えちゃいなかった。気がついたらベッドの上。まるでガキのような】
【そんな無茶苦茶な遊び方だったが、たまにはそんなのも悪くない】
【胸の中の石ころが、少しだけ気にならないようになったのなら、尚更のことだった】

/こんな感じで!長々と拘束してしまい申し訳ありません、お疲れ様でした!


672 : @mail ◆DqFTH.xnGs :2018/11/03(土) 09:02:02 UOwSO71s0
【────遊び疲れて、朝が来る。それすら過ぎて、昼だったかもしれない。メールのことすら一時忘れ】
【眠たくなって、泥のように丸一日寝た。夢は断片的に、何度か見た】
【たまに見る蛇の少女の夢。いつかボロ屋で探偵と話したシーンの欠片】
【路地裏で走り去っていった青年。愛を紡ぐ狙撃手と、スカした見た目のクソったれ】
【夢の内容はいまいち覚えていない。ただ、そんな誰かの夢を見たような気がした】

【長い眠りと、そこから何度かの微睡みがあった。しっかりと目を覚まして】
【冷蔵庫の炭酸水を飲もうと思って──時計をふと見たら】
【あのメールを受け取って2日だか3日経っていた。ウソだろ、と思わず笑いが溢れる】
【どうりでなんだか、体が汗と潮の臭いがするワケだ。(魚河岸とか、また言われそうだな)】
【炭酸を飲むより先に、シャワーを浴びることにした。さっぱりしたら、喉の渇きを潤して】
【────メールに返信するのは、そこからやっと。随分と簡素な文面だった】


     『愛と自由は死んじゃいねぇ。ロックもな』

     『あたしはミラ。ロッソには随分と世話になった』

     『何をすればいい。やるべきことを教えてくれ』


【その3行だけを、霧崎と名乗る相手に送りつける。あとは返事を待つだけだった】
【返事がない時は、それはそれ。自分がやりたいことをやるだけだ】
【手始めに、携帯端末から水の国大会HPを開く。スタッフ募集要項をタッチ】
【名前欄には少し悩んだあと、いつか咄嗟に名乗った偽名を入れることにした】

/メールは霧崎さん宛です!


673 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/03(土) 09:47:56 nHPYDHwg0
>>670

【通り過ぎていく人影。雑踏の中の一つにすぎない、はずだったのに。】
【耳孔へ反響する言葉、その意味合いを理解しようと反芻する僅かな時間―――残響を掻き消すように爆発音が響く】

【ざわめき、歩みを止める人々。一拍の後に事態を理解すれば、先の言葉の意味も臓腑の内へと落ちていくように】
【―――故に、動いた。確かに何もなかったはずの手の中には、一振りの儀礼刀を携えて】

…………そこの青いアンタ、止まってもらえるかな。

【写真を撮る者、救急に通報をする者、逃げていく者……そんな中を、先の人物へ向けて最短経路で進んでいく】
【指示通りに彼女が止まろうと止まるまいと、警戒の色を強く瞳に宿して。言うなれば、臨戦態勢】



【一方、件の聖堂では。爆発音も地響きも、確かに生じていた。事実として負傷者が運び出されてもいる】
【――――だというのに。奇妙なことに、〝聖堂そのもの〟には、一箇所たりとも破損は見られなかった】
【見る限り、極めて一般的な、どこにでもある建材で造られているというのに。恰も〝壊れない〟素材で出来ていたかのように。】

【聖堂前には、負傷した職人の中に混じって、純白の司教服を着た男がいた。傷どころか埃一つその身に付けることなく、二つの人影を見ていた】


なあ。どうしてアンタ……――――〝ああ〟なるって知ってた……?

【場面は再び二人へ戻る。投げかける問い。返答次第でここからの全てが決まる】
【騒然とする街の中。二人の間だけ、時が止まったように静寂が流れていた】


674 : ◆KP.vGoiAyM :2018/11/03(土) 10:08:03 Ty26k7V20
>>639

「ほんとうですか?!それはとても…。学会も貴方方ぐらいもっと知的好奇心があって柔軟な人ばかりだったらいいのに」

【麻季音はとても嬉しそうで、それをこの場で隠してビジネスを貫き通せるにはまだ少し年齢が足りない】
【今からでもそっちの話に移って議論でもしたかったものだが、それをぐっと堪えるぐらいの自制心は十分だった】
【それに今の議題を話すのも十分に有意義だったからだ】

「そうですね。この理論の根底には事実や結果論的な部分があると思います。」
「私もルイスやスタルネイカーの反事実条件文分析の方から詰めていきました。『もし〜だったとすれば、〜だっただろう』と論じるとき」
「その主張の真偽は、その前件を満たすような最も現実世界に近い世界において、後件が真かどうかによって決定されますね」
「いわば、『近い世界』とは、できるだけ多くの事実を共有している世界、ということになります。」

「ただそれだとだいぶマクロかなって。在り方ではなく、ありうる。可能性の類似だと思います。」

「私達が人間である以上、時間というものに引っ張られてしまうのはしょうがないんです。ただ、時間の定義は人間によって定められている」
「特殊相対性理論に茶々を入れるわけじゃないんですが…我々が観測者でもある以上、人間原理を否定はできません。」

「ともあれ、本当に理解が早くて助かります。解釈は殆ど…というか完璧だと思いますね。」

「つまりはこの仮説上はタイムパラドクス。…親殺しのようなことは起きないんです。世界は独立性を維持していて因果ではなく、結果。ですから」
「そう、それに宇宙規模で考えればこの世界のごく一部がどう変化しようと大した影響はないんですから。」

「理由が必要なのは我々、人間だけです」

【麻季音は後藤の手のひらで転がされているとも知らず話を続ける。ただこれは機密事項であっても中身については大したものではない】
【こんな話は世の中からすれば眉唾の仮説に過ぎない。実証のデータと再現性を持ってやっと意味を成すのだ】
【無視を一番の情報は麻季音がタイムマシンを作ろうとしている。ただこれだけなのだ】

「クラインの壺はご存知ですか?私はそれがワームホールと深く関わりがあると考えています。現在にある私達のデータをそっくりそのまま平行世界に」
「運ぶためには一時的に5次元まで昇華し、4次元ないし3次元に戻ってくる必要があると考えます。――何言ってるかわからないかと思いますが」
「私もまだ此処は研究中のため、実際に実験してみないと…といったところです。…まあ、理論上はできるとは思いますが】

「ただそれでも他の平行世界に意図的に行くことは難しいかと思います。理論上は可能でも、一体どこへ行けば良いのか目印がありませんから。」
「炭素年代測定法みたいなものを想定していますがそれだと、やはり、過去と、一番類似性の高い未来…ということになるかと思います」


【そんなところをまで粗方話し終えたところで、待っていたかのようにノックの音が。内部から廊下の様子でも確認できるなら、霧崎とタマキが】
【溢れんばかりの書類の入ったダンボールを抱えて戻ってきていることだろう】


675 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/03(土) 11:43:45 6.kk0qdE0
>>664

「あー、でぃん、おいちゃ、あん、しん」

【ここでみらいは、アーディンに笑顔を返して見せた】
【大人達の矜持は、無銘の英雄達の矜持は、最善の選択で】
【その、少々ぎこちない様な笑顔を取り戻すに至った】

「あー、でぃん?おにいちゃ?」

【みらいは、ふと影を見せた彼らを不思議そうに覗き込む】
【ともあれ、一行は無事にCrystal Labyrinthへと到着する事が出来ただろう】




ーー水国軍港ーー

【水国海軍の軍港、海軍基地を中心として形作られた街】
【この遥かに栄えた港町に、その日騒動が起こる】

「ひ、ひぃぃぃぃぃ、鬼神じゃ!鬼の仕業じゃて!!」
「警邏隊長殿!!あ、あれを……」
「ば、莫迦な……こんな事、あってはあらない、あってはならない!!」

【それを目にした、櫻国海軍、駆逐艦『雷』乗り込み警邏隊指揮官は、目を見開き、歯を噛み締め、あなやとの表情でそれを睨んだ】
【停泊中の櫻国海軍駆逐艦『雷』軽巡洋艦『神通』乗り込みの陸戦隊旗下警邏隊により、大事となる前にその『生きた手紙』は回収、無論、内々に『処理』されたが……】

「貴様ぁ!!!!」
「ぐっう……!」

【この日の雷での『尋問』は極めて苛烈に執り行なわれた】

「(あれから、あれから何日目か……)」

【厳島元中尉は、尋問部屋に呼び出され、椅子に身体を拘束された直後、尋問官より怒号と殴打を受けた】

「これを見ろ、貴様の仲間だな?そうだろう!」

【そのでっぷりと肥えた尋問官は、厳島の前に幾枚かの写真を叩きつけた】
【五感の殆どを殺され無残な生き死人とさせられた、絹張海軍曹の成れの果て、そして魔導海軍に充てられたであろう、短い七五調のメッセージ】

「老いた櫻とは、憎い言葉よ……貴様の協力者の仕業だな、もう一度言う、吐け!貴様の仲間は何処に居る!?」

【更に2発、付近に置かれていた『精神注入棒』で直に続けて頭を殴打される】
【尋問官の怒りは殊更強い様子だ】
【殴られた頭部より流血を見せながら、それでも思考は絶やさない】

「(鵺も、ロッソも、もう居ない……カンナも行方は不明、公安三課やゼロが動く筈は無い、文月教官やリオシアは、上手く逃げているか、ディミーア?カニバディール?ミラ?いや、違うな……ユートや邪禍のやり方でもない、あの男、外務八課か?いや、関係性は薄く因果も無い……では、夕月?つがる?彼女達にはこんな真似は出来ない、そもそもこの事態、知る由は無いだろう……では……」

【ここで口元に、薄く笑みが浮かぶ】
【ああ、そうか、そうだったのか、と】

「(仕置の猫又、アーディン=プラゴール、動いてくれたか、これは……彼と仲間達の宣戦布告か)」
「(……頼もしい、なるほど、まだ希望は……尽きていなかったか……)」
「頼んだ、この国と櫻の未来を……」

【確証を得たか、口元に笑みを、片方の目には光を灯し、こう薄っすらと呟く】

「貴様ああああああ!!何をぶつぶつぶつぶつと呟いて居るか!!!!」
「本国に!司令長官に本件の打電を!!仇成す者ありと!!ふざけおって、ふざけおってええええ!!」

【尋問官は椅子ごと倒れ伏す厳島を、これでもかとばかりに感情のまま蹴りつけた】


676 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/03(土) 12:38:13 smh2z7gk0
>>668

―――確かに、必ず〝A〟という√に行き着くのであれば虚神達がこの世界に来る意味は薄い
〝A〟、〝B〟、〝C〟、という枝分かれする未来の√の主導権を取り合っている状態。という事なのだろうかね。

しかし、とりあえず〝グランギニョル〟という〝特異点〟が齎す√への分岐まではそう時間がない気はするね。

〝特異点〟についてはどう見る?


【顎に手を当てて考える仕草をしながら、マリアベルは問いかける。】
【〝特異点〟。世界の行く末を左右しかねないほどの〝事象〟、〝存在〟、近年の情勢を考えれば】
【それは加速度的に増えているようだった。それはまるで連鎖するように増え広がっている。】

【ディーに語気を強めに否定されれば「ごめんごめん」と軽薄な調子で両手を合わせて謝罪する。】

君たちのボスねぇ、中々面白そうな人じゃない。一度会ってみたいけど〝会う事〟に意味はないのかな?
いるだけの存在っているのは大事だよ、それが人々に対する道標になる。カノッサ機関とかもそうでしょう?
目立った動きは最近しなくても存在するだけで世界に一定の危機感と刺激を与えている。

―――まぁ、〝イスラフィール〟に対しての決めつけは確かに危険だね。
一応、彼女の連絡先は持っているから良かったら〝試し〟をしてみるといい。火傷しない程度にね


【そう言うとマリアベルは自身の携帯端末からイスラフィールの連絡先を書き出して、そのメモを渡す。】
【そこにはマリアベルも部屋を借りているという水の国の一等地にあるタワーマンションの住所も載っている。】

まぁ、彼らは気まぐれだから〝グランギニョル〟のように積極的に世界に侵攻はしないだろうさ
ただ時折現世に現れては、闇に紛れて人を狂気に促すだけさ。


―――そう、〝オーバーロード〟とその〝上〟の存在の力を欲した教会暗部〝STARGAZER〟
それに利用され、ご察しの通り私が生まれた。

勿論、私の目的はむしろ〝オーバーロード〟達を狩る事だからね!


【「だから私たち仲良く出来そうでしょ?」とにっこりと微笑む。】
【マリアベルの〝目的〟そしてその奥にあるもの。表面的には確かにSACRILEGEとも繋がる部分はあるようだが―――】


677 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/03(土) 15:18:40 WMHqDivw0
>>671

――――――――遅いかあ。んー、……すべてにおいて遅かったネ。

【全速力でダッシュしている途中、舌を噛まぬよう小声にて。理由はそれだけだったろうか】
【わからないけどひとつだけ、ぽつりと後悔の言葉を零して――それも置き去り】
【逃げるみたいにしてその言葉から背を向けた。そして、逃避した先、バカみたいな光景ばっかり】
【終わりの見えない楽しい時間を過ごした。元来こういうのが性に合っていると、ひしひし理解しながら】
【途中でけたたましく携帯が鳴る。写真を送ってやった妹からの反応。「ミラさん」「何してんのおまえ」「おい!」】
【通話も何回かかけられた。そのたびゲラゲラ笑いながら切ってやって――最終的には、電源ごと切っちゃった】

【そんな調子だったから。彼も気がついたらどっかで目を覚ます、みたいなことをやらかした】
【それでも一人で起きられただけマシだった。羽目を外し過ぎて隣に裸で眠る誰かを視認するとか、】
【そこまでのやらかしをせずに済んだことだけ、本当に、安堵した。――ずっと切っていた携帯を、起動させて】


「おはよー」「ゆうべ超遊んできた」「おまえも今度遊ぶ?」

『ふざけんなバカ』『そんな場合じゃないでしょ』
『いっぱいやることあるもん』『だいたいあたし家から出たらエーノさんおこるし』

「ばーか」「       だからこそ、遊ぶんだよ。      」


【…………そこまで打って、枕の上に端末をポイして。さっさとシャワールームに引っ込んでしまった】


//長いことありがとうございました、おつかれさまでした!


678 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/03(土) 16:49:54 WMHqDivw0
>>676
時間遡行を用いるような試みは他で行われているみたいだネ。
いつだったかの虚神戦でも死んだ人間が未来やって来る――なんてことが起こっていたみたいじゃあないか。

無数の異なる未来から、ルートの主導権を取り合っている――と言うのは確かに有り得そうな話だけど。


【マリアベルの理屈はやはり、主点を逸らしているような気がする】
【未来への切符を賭けたタイムトラベルであるのなら、他の多くの時間遡行者と相互干渉を起こす】
【それでは、"神"とやらを名乗るには不足だ……と思う】

【多少は、サクリレイジに所属することで知見を得ているものの、ギンプレーンは元来ややこしい話は得意ではない】
【まぁこの情報を受けた組織は勝手に受け取って咀嚼するのだろうが】


【一方ディーはヘソを曲げてしまったらしくて、話をそっちのけでアップルティーを口に含んでいた】


"特異点"?まぁ、タイムトラベル物だと良く出て来る単語だけど、あっちは物理学上の理論かな。
重力の特異点とかブラックホールとかのエトセトラ。いやあ、ボクの中の中学二年生が目を覚ましそうな概念だネ。

で、マリアベル女史の言う"特異点"ってのは意味としては複素解析に近いようだけど。

その理屈で語るなら……ロールシャッハの行動から察するに、極なのは、どちらかと言えば黒幕側の動向ってことになるのかなあ?

虚神の介入は、現時点では可除特異点――いわゆるCosmetic Singularityと言うことになるね。
ロールシャッハはそこをひっくり返して真性特異点として振舞っているけれど。
数学と違って、世界構造的には中々難しい話だからネ。

ただ、そこをギミックを以て解決しようと言うのが、虚神達の企み――ってのは組織じゃなくてボク個人の予想だけどねネ!


【韜晦するように肩を竦めると、ボスに会ってみたいと言うマリアベルの言葉に、あー、と苦笑いした】


組織の一員以外は会えない決まりなんだ。
ま、外の組織から兼任で所属してるような奴もいるけどね。

それは、ボクらへの決まりって言うより、ボス自身の制約で……
でも、マリアベルの認識は正しいよ。会うことにはあんまり意味はない。

そもそも"会う"って何だよって話でね。
ボスは君やロールシャッハと違って、実存も人格も、ついでに言えば意志も持ってないからサ。

アレと会話するのはヌイグルミと会話するのと同じようなものでネ!
マリアベルは幼少のみぎりに、ヌイグルミとお話したこと有るかな?HAHAHA。



【イスラフィールへの連絡先は、頼みもしない内から素直に渡して来た】
【――この女性のことだから、無意味なサービスではないだろう。何某かの思惑は有るのだろうが】


――なるほど、じゃあ、一度会ってみようかな?
墓穴に入らずんば墓地を得ず、とも言うしね。【言わない】

うわ、本当に良いところに住んでるなあ!流石は水の国のトップの一人だ!
庶民感覚が無いとか言われないか心配だネ!


【危機感もない様子で肩を竦める】
【どこまで本気なのか分からないのが、笑う男の胡散臭いところだった。こんな男でも組織の中ではまだコミュニケーションが得意な方らしい】


オーバーロードとのハーフが、オーバーロードを狩るために生きるとは、ダンピールみたいで何とも詩的だネ。
そういうの結構好きなんだ。英雄譚はボクも大好きだからさあ。

でも、それなら何で――キミの言うところの"下"に来たんだい?
狭間にいるんだったら上を目指すべきじゃないかなあ?
闇に紛れて干渉して来る程度しか顔を出さないのにどうやって狩るつもりなのかナ?


679 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/03(土) 20:53:02 smh2z7gk0
>>678

へぇ、死んだ人間が未来から―――普通過去だよね?
とはいえ確かに君の意見の方がただしいよ、〝彼ら〟は時間どころか―――〝おおいなる枠組み〟を握ろうとしているんだろう。

そうだね、そちら(黒幕)は〝グランギニョル〟よりさらに分からないんだけれど
〝水の国〟でなぜここまでの異変が起きたのかは、そちらを辿っていけば一定の成果は得られるかもしれないね。
とはいえそれはきっと〝泉の中に投げ入れられた石〟だ、本質的に私たちが主体として追っている事象の解決には繋がらない筈。

【「あら、もしかしてギンプレーンは理系男子なの?」と首を傾げながら問いかける。】

それは残念。でも確かに君たちの動きを考えればその方が良いだろうね、ノイズの少ない方が。
残念ながらないね、幼少の私はずっと一人星を眺めていたから。


―――ああ、実は私は最近面と向かって会ってないからさ。もし会うならよろしく言っておいて。


【どこか気まずそうに頬を掻きながらそう依頼する。互いの動きを考えれば当然の事のように思えるが―――。】

〝この世界〟の認識が必要だからさ、その〝認識〟を持って彼らを〝堕とす〟
それに………〝餌〟もあるからね、最悪それでも釣れる筈。


―――そんなに興味があるなら〝百聞は一見に如かず〟。一緒に観測してみるかい?


【そう。この場で詳細は話していないがマリアベルの目的は人々に〝認識〟させること。】
【であればギンプレーンとディー、そしてその上にいるボスに伝聞したのは大きな意味合いがあった】

【尤も、マリアベルは彼らに〝忘却機構〟と呼ばれる特殊な術があることを知らない。それは誤算だろう。】
【―――マリアベルの誘い。それに乗るのか否か。〝あまり時間はない〟】


680 : ◆RqRnviRidE :2018/11/03(土) 21:19:27 cKs43d2s0
>>673

【風が凪ぐ。 恐慌に戦慄く雑踏の渦中に在れど、その気配は遥か遠方に過ぎようとした】
【足取りは軽やかであった。 人波の合間を縫うようにすり抜ける。 掴み所のない空気の如く】
【然れど警告を受ければ躊躇いもなく、歩みを止め佇立する。 振り向く姿は紛うことなき少女のもので】

【マリンブルーのロングヘア、褪せた紺色のマキシワンピ、目映いばかりの純白のキャペリンハット】
【どこか遠い夏の情景を懐く彼女は、愛想笑いさえも湛えることなく。 至極当然かの如く、無表情に相対する】

【丸腰であった──異能者であろうとは言え。 警戒心も敵愾心も無ければ、果てにはそこに害意すらも】
【然して青年越しに傷ひとつ見られない聖堂へ視線を移す。 逃げ惑う砂煙に混じる、白い影をその目に留める】


  “どうして”? そうね──それはね。


──それは私が≪風見鳥/ヴェレタ≫だから。
風見と調停が私の役割なのよ。 ……覚えていて。


【紡がれる言葉は、さながら語り部が伝承を語らうように】
【風見鳥を自称する少女は、青年の問い掛けへそう応えた】
【運命付ける一言とは程遠く。まるで他人事みたいな装いで】

 【(“────でも、それは”)】


嗚呼、でも、────“良い”のかしら?


【「御覧なさい」と、少女は人差し指を差し向ける。 指し示したのは青年の後方、聖堂の真正面】
【運び出される負傷者の一人の男──出入りしていた職人だろうか──が酷く怯えたように叫喚を繰り返す】

 【(“それは、きっと────”)】


「助けてくれ! “喰われたッ”、あいつが!! 喰われたんだっ同僚がぁっ────」


ほら、ミスター・コースター。 そろそろ来るわ────


 【ゆらり、と、白い影】【司教服を纏う者とは異なる、二つ目の】

【それは聖堂の陰より。砂煙を突っ切って飛び出してきたのは】



「──────狼にッ!!」

 ──────狼よ。



【 巨大な白銀の人狼であった。 】


 【(“────少女が一部始終を見ていたんだってことだ”)】


【躍り出た人狼は恐ろしいほどに興奮している様子で、けたたましい咆哮を上げながら】
【一歩、二歩と跳躍し、──肉薄。 青年の小柄な身肉へ、鋭い爪を突き立てんと迫る。】


681 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/03(土) 21:59:56 WMHqDivw0
>>679
実は全然面識ない人だったから、どういう事情かは分からないんだけどネ。
つまるところ、未来は一つじゃないってことの証左みたいなものじゃないかな。

……と言う具合にさ。
新しい定義や干渉によって状況や認識が変動してしまうんじゃ、ロールシャッハの目指すところに遠いと思うのサ。

だからキミの言う通り――彼はその"枠組み"そのものを、強奪しようと考えているはずだよ。


まぁ、そうだね。色々と予定外に介入してしまっているけど、本来は黒幕たちの動向はボクらの管轄外なんだ。
INFオブジェクトが関わらないのなら、例え世界が滅んでも構わないって言うのがボスのスタンスだからネ。

結局色んな都合であっちこっち追わざるを得なくなってるんだけど。


【マリアベルの首を傾げた様子には、ごめんごめんと手を振って】

グランギニョルの定義ってどっちかと言えば言葉遊びと言うか文系っぽい概念だけど、ボクはこっちの方が好きでさ。
つい、型にはめ込んで認識してしまうのサ。
HAHAHA!



ロマンチックだなあ。お空の上に敵がいるかもって思わなかったのかい?

【マリアベルの理屈は、珍しく真を突いたような語調になっていた】
【彼女が虚神の枠組みを残したい理由はそれか。残念ながら、そここそが組織の目的地では有るのだけれど】
【"餌"については心当たりがないのだが――】


――なるほど?ついでだからご招待に預かろうか。
ただ、ディーは留守番だ。ボクだけで行かせて貰うよ。


【ディーは突然の申し出に驚いたらしい。或いはついて行きたいと言い出すかも知れなかったが、先の件でまだ膨れているらしく、結局頷いた】


……と言うワケさ。マリアベル女史。
楽しい鑑賞会になると良いなあ!


682 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/03(土) 22:27:01 E1nVzEpQ0
>>674

【冷たい顔をしていた銀髪の女は、ふッと頬を緩めて微笑みかけた。好意を示してみれば存外に愛嬌もある女であった。】
【 ─── 無論のこと後藤には対手の機嫌を損ねぬという第一義はあったが、それと同等に彼も本心から知的な議論を愉しんでいた。剃刀は研いでこそ鋭利たるのだから】


「Ceci n'est pas une pipe ─── なんて所でしょうかな。やはり幾らか実在論争のような色合いを帯びるのが実に貴女らしい。 ……… お褒めに預かり光栄ですよ。」
「それでも我々の主観で見れば、どのような形であれ世界に齎される変容は重要でもある。まして可能世界の構成要件に、我々の認識を置いた仮説である以上は、尚の事。」

「彼らが躍起になるのも宜なるかなと言った所だ。オーウェル風に表現するならば、まさしく無矛盾性のダブルシンク ─── や、これは余りに酷い比喩ですな。失敬」


【独在する世界に全て矛盾はない。 ─── この場に居る3人は、確かにその前提に合意していた。ならば名残惜しくも、哲学性にシニフィエを弄ぶ事は終えて】
【議題はより本質へと近付こうとしていた。 ─── こちらは幾らか後藤も解釈に難儀しているらしかった。無精髭に指を添えた後、暫し虚空を睨んだ後、徐に】


「表も裏も境目もないサーフィス、 ……… でしたよね。」「弾道学とか航空力学とか、そういう実用数学には造詣があるのですが ──── すみません。どうも疎くて」
「ですが既存の物理観念にない法則を援用するのであれば、我々の次元だけでケリを付けるのも困難なことなのでしょう。演繹的に判断した上の言明ではありますが、」
「或いはそこは、強いて宗教の視点から述べるとして ─── 天国だの、黄泉だの、彼岸だの。そういう形容の、可能な場所なのかもしれませんね。」


        「 ──── 霧崎さン、タマキ君。それは、一体?」


【 ──── 然らば、運ばれてきた資料の束についてこそが、他ならぬ真相を握っているのだろう。】
【「あ、 ─── お持ちしましょうか?」黒髪の女が、霧崎へと。ともあれ大した距離ではないのだから】


683 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/03(土) 22:36:30 8rUmL7d.0
>>680
/非常に申し訳ないのですが、この聖堂に関しては現状、謂わば自分の持ちキャラ的な設定でして、
/多少強引な形でも続けようとはしたのですが、こういった形で内部に干渉される形になると色々と不都合がありまして……
/こういう事態を想定していなかった手前のミスではありますし、一度返信しておいて何ですが、今回のロールは無かったことにさせてください


684 : ◆RqRnviRidE :2018/11/03(土) 22:40:41 KIjg19AQ0
>>683
/なるほど、了解です!大変失礼しました。それではまたの機会に!


685 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/03(土) 22:41:10 smh2z7gk0
>>681

〝黒幕〟ね―――。


【会話を切るようにポツリと呟けば、同行の誘いに乗るギンプレーンを見てにっこりと微笑む。】
【まるで浄水器の販売員が他人のリビングで契約を取った時のような笑顔だった。】

【ディーは同行しないという事に対して、すこし残念そうというか不服そうに眼を細めるがすぐに向き直る。】


では、行こうかギンプレーン君。今回は〝実体〟でいくから気を付けてね?


【―――パチン。】


【――――――〝星の悪夢〟――――――】


【マリアベルが指を鳴らせば、ギンプレーンとマリアベルはその場から消えるだろう。】
【ディー以外の人々は気づく様子もない。まるで最初からそこにいなかったかのようにただ喧騒が響く。】




【―――――――※警告※―――――――――※不明観測領域※―――――――※閉鎖された次元です※――――――】




【そこは―――】
【そこは〝灰色〟だった】
【二人は気が付けばビル群の中にある高層ビルの屋上にたっている。】
【近代的な街並みだ、ビルが立ち並び高速道路のようなものも見える、だが】


【その〝世界〟は全てが灰色だった、建物も、空も、何もかも。人の姿はない。】
【現れた二人のみが〝色〟を持っていた、風とともに灰のかけらが空を舞う―――ここは〝灰の都市〟】


686 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/03(土) 22:53:04 WMHqDivw0
>>685
【物理的に、二人はこの世界から消え去ったのか】
【これが彼女の"深淵渡り"と言われる能力――?】
【少女には目は見えない。しかしギンプレーンが連れ去られたことだけは確かに認識して、少女は、眼帯の中で眉根を寄せた】



【一方でギンプレーンの方は、マリアベルに連れて行かれ――】



(……警告?誰がこんなものを発しているのかな?)


【脳裏に響く耳鳴りのような声に、不思議そうに笑みを浮かべていた】
【そして――】



【訪れたのは一面の灰色の世界】
【視界の全てがグレースケールで統一されたかのように、色合いが単一過ぎて逆に目に悪そうだ】
【気を付けろと言われても何を気を付ければ良いのかも良く分からないのだが】

【ただ、それでも、自分の足で立っていることには些か興味深そうに】


ふーむ、ここはどういった場所なんだい?


687 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/03(土) 23:12:45 BRNVt/Aw0

【もうすっかり夜も更けた頃】

【町中から少し離れたそれなりに大きな川】
【きらきらと輝く水面、その上に掛かった橋】
【その欄干から身を乗り出して川面を眺める影が一つ】

……はぁ、彼処からは追っ払われちゃったし……何処行こ……
【深く溜め息を吐くのは十代半ばの少女、に見えて】
【月白色の肩まで伸びた髪に生成色の大きめのキャスケット、デニム地のワンピースを着ていて】

【人目につかない場所、か……なんて呟く姿は白っぽい髪の毛が夜闇にぼんやりと見えるせいもあってか何処か怪しげにも思えて】

【けれどもじーっと川面を見つめている姿は何か思い詰めているようでもあって】

【はぁ、とまた深く溜め息。その時偶然か必然か強い風が吹いて少女のキャスケットを飛ばす】

【慌ててキャスケットへと手を伸ばす少女。その頭には髪と同じ色の猫の耳が生えていて】
【簡単には届かない手。更に欄干から大きく身を乗り出してやっとの事で掴まえる】

【掴まえる、が】

──あ。
【足元がふらついた少女。そのまま橋から川へと向かって転落しかけ──】


688 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/04(日) 13:48:18 6.kk0qdE0
>>687

「うー、寒い寒い……」

【橋の車道側、幾台かの車が走行するな中で、街灯と後続車両のヘッドランプに照らされながら一台のオートバイが走る】
【緑の、オフロードタイプのオートバイ】
【この時期だ、空気はかなり冷え込み身一つのバイクにはかなり堪えるのか、時折身震いしながら】
【運転者は少女と同年齢位だろうか、少年だ】
【少女の髪や姿は、人工的な灯りの中で一際映えて、まるで幽玄に浮かぶ様に、ちょっと幻想を孕んで】
【対して水面は黒く落ち、まるで地獄の渦の様に……】
【そしてついでに、少年は少女の、まさに河に飛び込まんと、正確には事故的な落下だが、その様子を見落とす様な事は無かった】

「待った!ちょっと待って!!」
「そこの君!!死ぬにはまだ早い!!」

【バイクをその場に緊急駐車、自身が飛び出さんばかりの勢いで、少女の腕を掴み、引揚げようとする】
【目の前のオートバイの急停車に、面食らったのかクラクションがけたたましく鳴り響き】
【だが……】

「何か訳があるなら話し……?」
「え?君は……つがる、ちゃん?」

【少年、リュウタ・アリサカにとって、一度だけ出会った少女だが、しかし顔はよく覚えていて】

「どう、したの?それに、その頭……」

【少女の特徴的な髪色の中に、目立つ猫耳を見つけて】
【街灯と車両の灯りだけが、照らし出し浮かび上がらせる】


689 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/04(日) 13:48:52 6.kk0qdE0
>>687
//宜しければ、よろしくお願いします!


690 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/04(日) 14:13:07 smh2z7gk0
>>686


―――さぁ?


【マリアベルはあっけらかんと言ったあと「アッハッハッハッ!」と自分でツボに入ったようで腹を抱えて笑う】
【どうやらこの異空間への転移を可能にしたマリアベルの異能は場所を指定して移動しているわけではなさそうだ】
【自分から連れてきておいてとんでもない話である。とはいえマリアベルはその後考えるような仕草をして】

まぁ私たちのいた世界とは別の世界だね、〝階層〟としては同次元だろうけど
見た感じ、〝死んでいる〟みたいだ。〝オーバーロード〟の扱い方を間違えたのか、それとも別の理由か
ともかく世界としては、次元としては閉じた状態みたいだ。


そして、今回の観測対象は―――〝アレ〟だね。


【そういうとマリアベルはギンプレーンの背後を顎で指す。そこには】
【柱。いや〝枯れ木〟だろうか、ともかく高層ビル群の中に異質なものが混じっていた。】

【それは数百メートルはありそうな巨大な灰色の〝枯れ木〟。じわりと淡く光っているのが見える。】
【〝6本〟しか生えていない枝に葉はなく、どこか無機質な印象を与える。それこそが―――】




【〝大いなる異種族/オーバーロード〟――――――〝灰の柱アポレイア〟――――――】




【と、アポレイアの枝の一つがまるで二人の出現に反応するように揺れた。】


ところでさ、ギンプレーン氏って腕っぷしの方はどうなの?


【マリアベルは肩を竦めながら問いかけた。それはこの先の嫌な予感を肯定するかのような。】


691 : ギンプレーン ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/04(日) 22:00:29 WMHqDivw0
>>690
【どうやら――マリアベルの深淵渡りと言うのは座標を指定して移動する類のものではないらしい】
【ランダムなのか、元の世界の座標と同期しているのかは判然としないが】

HAHAHA、ひょっとして来てみたら「いしのなかにいる」みたいなことになったりすることも有るのかい?
観光に来ていきなりそうなったらハチャメチャに笑えるネ!


【どちらかと言えば"笑えない自体"なのだろうけど】
【常に笑っている男が口にするのだから、或いは適当なのだろう】

【曰くこの灰色の街は既に滅びを迎えているようだが――】
【それでもお目当ての異神を見ることは出来るらしい】


オーバーロードってのはどこにいても見れるようなものなのかい?
どこに出るか分からなかったのに、こんな間近にいるなんてのは偶然にしては出来過ぎな気もするけど。


【或いは、彼女の能力が"オーバーロードのいる場所"に転移するものなのか――】
【さて、件の観測対象は――巨大な樹木。しかしいわゆる世界樹と呼ぶべきようなものではなく。枝の数も僅かしかない枯れ木だった】


なるほどなるほど、当然ヒトの姿なんて取っていないワケだ。
それで扱いを間違えた、とは?
何かこの世界がオーバーロードを制御していたかのような言い草に聞こえるけれども。


【仮に失敗したとは言え、つまり失敗するまでは上手く扱えていたと言うことを意味する】
【彼女から先に聞いていた印象と少し異なっていた】


いやあ、このタイミングでそれ聞かれるの嫌な予感しかしないなあ!
身体能力とかがあんなのに意味があるか分からないけど、戦闘技術は組織の中では"そこそこ"だよ。

能力の方は――チートな方とチートじゃない方が有るけど、チートな方はあの手のモノとは相性が悪いかな。


【こちらを認識しているのかどうか、枝を振るわせる枯れ木に手を振りながら、返答した】
【アポレイア――ギリシャ語か。確か退廃的な意味の単語だった気がするけど】


692 : 妲己 ◆zO7JlnSovk :2018/11/04(日) 22:20:16 arusqhls0
>>640>>647

【──── 彼女は見る、揚羽細工の二つ分、模様が描くは高鳴る調べ、それよりは少しだけ魂胆がずれて】
【じぃ、と満月の様な瞳を道賢に向けた、少女の様な可憐な模様の中に、子猫の如く悪戯な思いを込めて】
【而して其れは同時に蠱惑的でありながらも、何処か──── 雑音の様な苛立ちを含ませるみたいに】


あらん、道賢ちゃんってば、妾より先にお話しするだなんて偉くなっちゃったものねん、──── ねーぇ
賢い賢い道賢ちゃんなら、それが "どういう意味" か分かってるでしょう? それでも、道賢ちゃんが先走るなら
妾は妾なりの考えも持って、そのお話を聞かせてもらおうかしらん



【──── それは何処か奇妙な音律であった、國を左右する立場にありながら、紡ぐ言葉は何処か幼稚に】
【けれどもそれを然りともせず、彼女は一音節置いて】


それじゃぁ悠玄ちゃんも黙って聞きなさいな、今道賢ちゃんが思惑について、話してくれるんだから


693 : リーイェン ◆zO7JlnSovk :2018/11/04(日) 22:26:40 arusqhls0
>>655

【リーイェンは沈黙を返す、それはあくまでも未知数でしかなく、今の段階では推論を重ねるしかなくて】
【或いは同時に、サクリレイジという存在そのもの、そしてボスという在り方そのものが、自死を免れない運命の坩堝】
【どう足掻いても救われる事のない結末に似ていた、ならばそれを、否定する方法論など彼女にはないから】


──── 道理で道理が合わねーとは思ってましたです、あまりにも貴方の存在は "特異" に過ぎました
同時に、これ以上なく "虚神" へ有効的でしたからね ──── そこにも何かしらの意図があったのでしょうね



──── イスラフィールでごぜーますか、虎穴に入らずんばと言いますが、虎穴の方が余程マシですよ
……まぁ私に否定する手立てはねーです、幸いにも彼女自身は何処までも "公的" な存在でごぜーますから

アポイントメントを取るのは簡単です、後はボスに任せますが


【そういって彼女は一息つくだろう、そこで彼女の役割は終わりだと伝えるように】



/もしよろしければこのままイスラフィールとの会談に移行しますか?


694 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/04(日) 22:32:44 arusqhls0
>>646



      ──── 前提が違うよ、今君は僕に "とらわれている" けれどもそれは仕方のない事だから


僕は君という存在にぴったりと寄り添う影法師の様に、然るに君が押さえつけていた存在でもあった




        切っ掛けは些細な事で、僕が顕現するのは往々にしてそういう時が基本だろう




                 けれども僕を振り返ってはいけない、振り返りたくなるんだろうけどね





  ──── まさか、君も "僕" の事をよく知っている筈さ、他ならぬ君自身が一番詳しく知っている




アンフェアかどうかを解くのは自由さ、けどね、どうしようもなくこの催しは、平等に存在しているのさ、誰にでもね





   切っ掛けを探すんだ、──── でも、切っ掛けを探してはいけない、僕を見つける事になるから


695 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/04(日) 23:00:24 BRNVt/Aw0
>>688

【声と共に掴まれた腕。ぐい、と引き戻されれば少女はその反動か地面にぺた、と尻餅をついてしまい】
【鳴り響いたクラクション。その大音量に驚いたのか「ひゃあっ!?」なんてすっとんきょうな声をあげて身を竦ませるが】

あ……えーと……
すみません、助けて貰っちゃって……
物を取ろうとしたら落っこちそうになっちゃっ、て……?
【何とか助かった事に気付くと謝りながら声のした方を向いて】
【そうして固まる。見えたのは知り合いの顔。目を大きく見開いた後に少し気まずそうな表情になって】
【「ああ」だの「ええと」だのと小さな声で呟きながら思いっきり目をそらして】
【恥ずかしい所見られちゃったなぁ……なんて思っていたが】


────え?

【リュウタの発した疑問の言葉。ピシリ、と空気が凍りついて】
【ぴくり、と震えた耳。車道を行く車からの風が揺らした月白の糸の束、そこにある筈の人の耳は見えなくて】
【ならば髪と同じ色をした"それ"はきっと──本物で】

【再び大きく見開かれた金色。手元の生成色を思いきりぐしゃりと握り締めて】

【どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう】
【みられたみられたみられたみられたみられたみられたみられたみられたみられたみられたみられたみられた】

【脳内を侵食していく二つの言葉】
【絶対、化け物だって思われてる。もう彼とも友達じゃいられないんだ、という思いだけが胸に浮かんで】
【(もとより、もう約束は果たせないんだって、そんな気はしていたのに)】
【ぽたぽたと金色の瞳から落ちていく涙】

(──嗚呼、でも……)

【これで、良かったのかもしれない】

【思考はすぐに切り替わって】
【どうせもう友達じゃいられなかったんなら、化け物だって蔑まれて恐れられてもう二度と近付くなって罵倒された方が良いんだって】
【そう思ったから】

……驚いた?私、化け物なの
【泣き顔のまま笑って、立ち上がって】
【自分の傍らに小さな氷柱を生成し相手の頬を掠めるようにして飛ばそうとする】
【警告だ、と言わんばかりに】

【(本当はそんな意思、全然ないのに)】


696 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/04(日) 23:01:44 BRNVt/Aw0
>>647 >>692

【二人の馬酔木が一言言葉を交わした刹那響いたノックの音】
【足を踏み入れた銀糸を追う緑青の瞳が再び細められ】
【……ふーん、軍人っていうからもっとがたいの良い方を想像していましたけど、などと少女はひとりごちてまた傍らの老翁にたしなめられる】

【そうして麗句を述べられれば悠玄はくつくつと笑い】

「何とも歯の浮くことよ……桜桃の銘菓(名家)はかく甘きものなのですかな蘆屋殿?爺めにはちとくどきものにて……」

「故に疾くお語りくだされ」
「海の者なら存じて御座ろう?本土では女性(にょしょう)を待たすものではない、と」

【物怖じもせず向ける眼光は鋭く、早く説明しろ、と彼を急かすようで】


697 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/04(日) 23:15:29 6IlD6zzI0
>>694

【"何を言っているか、サッパリだ。切っ掛けを探せ、しかし切っ掛けを探すな"】
【ささくれだった心に付き立てられる得体の知れない言葉はリゼを奈落へと落としていく】


……"とらわれている"ってのはどういう事だよ
"囚われてる"のか"捕らわれてる"のか、どっちを差しての事なんだ?

精神的なのか身体的なのか―――はっきり……


【―――"はっきり"理解できてしまいそうだった】
【"寄り添う影法師"、"自身が押さえつけていた存在"、"平等に存在している"】
【そして聞き覚えのある口振り。それが誰であるかまでは辿り着いていないけれど】
【その切っ掛けとなった出来事には"既に"辿り着いていた。たどり着いてしまった】

【―――"水槽の脳"、"たった一つの冴えたやり方"】
【曖昧な輪郭は徐々に形を帯びて、輪郭が鮮明に浮き彫りとなって】
【行き着き先は―――■■。いいや、そんな筈が無い】


……なぁ、その口振りだとまるで膠着を望んでるみたいに聞こえるんだけど。
切っ掛けを探せというくせに、切っ掛けを探すなってさ、禅問答か何かかい?

【結論を早く出して、こんな■■所から抜け出したい】
【なのに声の主の言葉は酷くリゼを混乱させて、声色や瞳が明らかに震え始める】
【正体を言い当てる事と声の主を見つける事――もしかしたらそれは同義なのかもしれない】

【声の主はリゼが言葉にしないでも、徐々にその正体へと近づきつつあるのが解るかもしれない】


698 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/04(日) 23:16:47 smh2z7gk0
>>691

まぁ一応ある程度までは転移先がどんな場所なのかの想定はできるよ。
とはいえ仰る通り私の身体で適応できない場所もある。だから普段はまずアストラル体で観測しにいくわけだ

【つまりは通常は精神体に近い状態で探索をしているというわけだろうか、では何故今回は】


―――流石。良い所を突いてくるね。
私の能力は観測困難な〝オーバーロード〟の探索に特化して〝チューニング〟されている。
その存在に関する情報をあらかじめ揃えておけばこのように〝都合の良い場所〟に転移できる

アレは一度私たちの世界にも出現した記録があった、だから上手くいったみたいだね。


【マリアベルはそう言うが、あんな灰色の巨大樹が出現した公的な記録など聞いた事もない。】


結局彼らは〝主〟たる存在の分霊、端末でしかないからね。
その存在理由は〝主〟の存在の証明だ。故に私を生み出した連中なんかはそれに上手く取りいった
この世界は、どうだったんだろうね。

―――尤もこの世界が〝閉鎖〟されたのは全く別の理由かもしれないけど


【「例えばカノッサみたいな悪の組織が何かしでかした、とかね」と肩を竦めて言う】
【そしてマリアベルはギンプレーンを横目で見る。流石にサクリエイジの構成員だ状況に対する考察が鋭い】
【今まで多くの神格の姿を丸裸にしてきたのだろう。とはいえ今のマリアベルの目的にとってはそれは好都合である】


【などと考察している最中―――アポレイアの揺れ動く一本の枝が真ん中から〝裂ける〟】
【そして中から、〝粘土で作られたような灰色の巨大な赤子〟が出現。300メートルは離れている二人を見る】


             

                    《〝竺軸宍雫七 而耳自蒔・ゥハクサ嵂ス、ア・ム・ソ。シ・�〟!!!》




【赤子が何かを叫ぶ、それはマリアベルとギンプレーンが住む世界では聞いた事もない言語。】
【音律そのものが違うのか、ノイズのようにも聞こえるかもしれない】

【そしてその叫びと同時に赤子の口から無数の〝枝〟が二人目掛けて伸びる。それはすさまじい速度と物量だ】


チッ―――!《―――〝縺ゅ>縺・∴縺� ・撰シ托シ抵シ�〟》ッッ!!


【マリアベルはそれが起こった瞬間に即座にギンプレーンの前に出て、何かの詠唱を奏でる。】
【それは―――赤子の〝叫び〟と同じ認識不能な音域のようだった】

【その詠唱に合わせてマリアベルの両手に黒く光りながら回転する焔弾が出現し、マリアベルはそれを〝枝〟に向けて投げつける】


【直後、黒みがかった焔の柱が着弾地点から発生し〝枝〟の侵攻を止めている―――ようだ】
【だがいくつかは火柱を掻い潜ってギンプレーンにも迫るかもしれない。もし触れれば〝何が起きるかは分からない〟】


とりあえず奴らは虚神のように〝常識外れ〟ではない。あくまで下位の神格だ………!
ひとまずどこまでやれるか試してみない?


【マリアベルはウィンクしながら爽やかに笑った。】


699 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/04(日) 23:18:02 WMHqDivw0
>>693
動機は――或いは偶発的なものかも知れない。
私を創ったモノは気紛れだ。

私の"次"は能力者達に取って敵である可能性も――……いや、詮もない話だ。


イスラフィールへの会談のアポイントメントを頼むよ。
さて、ギンプレーン達はマリアベルの方に向かわせているが……さて、誰を派遣させるか。


【イスラフィールの元へも、ボスは直接向かうことは出来ない。こういう場合にリーイェンが自由に動けないと言うのは頭の痛い問題だった】
【適任な交渉役が、誰もいない】


……気は乗らないが、"彼"を向かわせよう。
色々とぶち壊しにしないと良いんだけれど。


【男にしては珍しく、疲れたように溜息を吐いた】


// あ、ではお願いしますー


700 : ギンプレーン ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/04(日) 23:33:20 WMHqDivw0
>>698
さっき、実体で行くからって言ってたのはそういうことかい?何だって今回はぶっつけ本番で来たのかな?

【先に様子見を出来るのにしない理由と言うのは余り想像がつかない】
【ギンプレーンを連れ込んだのと何か関係が有るのかもしれないが】


流石、オーバーロードを狩る者、と言うだけのことはあるね。
相応の能力を持っている――或いは与えられているワケだ!

それにしても――その"私達の世界"って言うのは、キミの元いた世界の話かな?


【つらつらと語られる情報を飲み込んで整理したいが、どうにもこうにもそんな暇はなさそうだ】
【迫り来るのは赤子のような"何か"――或いは本当に赤子なのかも知れないが】
【ギンプレーンは耳鳴りを抑えるように耳を片手で覆っていた】


これは酷い障音だネ。
何を言ってるかさっぱり分からないよ。
HAHAHA、でも普通の赤ちゃんも喋れないから、そんな変わらないかもだネ!


分霊――つまりアポレイアとやらの本体はどこかここよりも上層にいると言うことかな?
今ここにいるのは、その上層から"下"に対してアクションを起こすための端末と言う感じで。


観光に来ただけのつもりだったのに、いきなりドンパチになるとは、やっぱりディーを置いてきて正解だったかなあ。


念のために聞いておきたいんだけど、マリアベル女史。
ここでオーバーロードの使いパシリに手を出して、ボクらが、彼らに目をつけられたりしないのかい?


701 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/05(月) 00:09:04 smh2z7gk0
>>691

せっかく君達のような存在と出会えたからね、せっかくだからより深く〝認識〟してもらうと思ってね
―――とはいえ、これはやっぱり現状厳しいかもね…!



【謎の音域の魔術を放ちながら、片手でソフトハットを抑えてマリアベルは答える。】
【つまりはマリアベルの都合だったわけだが―――その結果はかなり危険である。】


ああ、そうだね。アポレイヤというより〝オーバーロード〟自体がその上の〝主神格〟の端末なんだよ。
だから―――〝主神格〟に〝堕りてきてもらわないと〟。

いやーごめん、ごめんよギンプレーン氏ッ!しばらく様子をみて引き上げる方向で進めよう―――
目を付けられるか………それはどうだろうね、彼ら〝オーバーロード〟の目的は〝認識〟されることであるから
まぁでもそのリスクは考えた方がいいかもしれないね。


【そこまで言ってからマリアベルは「あっやば」と口を開ける。】
【その視線の先、アポレイヤの方を見れば〝赤子〟とは反対側にある〝二本目〟の枝も裂け開こうとしていた。】

【マリアベルは、迫りくる攻撃への迎撃を続けつつギンプレーンに促してビルの屋上の扉から退避しようとするだろう】


702 : ギンプレーン ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/05(月) 00:32:39 WMHqDivw0
>>701
オーバーロードの目的が認識されることで?
キミの目的も認識して貰うこと?

何かそれ話が矛盾しているよう……とっとと!危ないなあ、のんびりお話は帰ってからにしようか。

【流石、オーバーロードに対抗する者、と言うだけのことは有り――理解不能であろう、その枝の攻撃をマリアベルは的確に食い止めていた】
【しかし、彼女の焦り具合を見るに、それは時間の問題らしい――】

【会話の最中にも流れ弾らしき攻撃が襲い掛かって来る】

【数本――爆炎から這い出て来たその触手のような枝に対して、ギンプレーンが選んだのは回避行動だった】
【ほとんどの攻撃範囲をマリアベルが引き受けている今、それは難しいことでは無いようで】
【しかし、実際のところこの正体の不明瞭さが最も厄介な部分でもあり、その点は虚神と大差はない】


HAHAHA、そんな記念受験みたいなチャレンジだったのかい?
確かにこんな巨大な樹木を焼き払うような手段は持ってないんだけどネ!


【この期に及んでギンプレーンはまだ笑っている】
【余裕だから、と言うことではなく、単にこの男はいつでもこうなのだろう】
【当然、逃走の案には一も二もなく、したがって、ビルの屋上の扉へと向かうのだが――】


おっと、彼も第二陣を仕掛けて来たようだよ?
間に合うかい、マリアベル?


703 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/05(月) 01:16:43 smh2z7gk0
>>702

ようは〝認識〟の在り方の問題なんだけど、まぁまたそれは追々。
とりあえずは扉にダッシュしようか―――ッッ!!!


【ギンプレーンの質問に律義に返答しながら、先導するように扉へと駆けるが】
【それより早く〝二つ目の枝〟が開く。現れるのは赤子と同じく粘土で作られたような〝巨大な長髪の女〟】


―――《〝�����ݡ������ꭡ��〟》



【長髪の女は赤子と違い囁くように何かを唱えると、その口から灰色の光弾をいくつも吐き出す。】
【それはさながら流星群のように二人が走るビルの屋上へと迫るが――――】



【ガタンッ!!】


【なんとか間に合ったようだ、二人の背にある扉の先からは先程の苛烈な攻撃とは変わって】
【不自然なほど何の音もしない。マリアベルの荒い息遣いだけが電気の消えた階段に木霊する。】


ハァ…とりあえず〝認識外〟には入ったみたいだ。
―――と、まぁこんな感じだけど………どうする?☆



【舌を出してお茶目な笑顔を作りながらマリアベルはギンプレーンに問いかける。】
【ギンプレーンにも突っ込まれたが下準備が少なく危険すぎる。それは不自然なほどに―――】

【何にせよここで〝元居た場所〟に戻るか、もう少し観測するかはギンプレーンに委ねられたようだった。】
【マリアベルはちょっと参った様子で壁に背を預ける。自分が連れてきておいて】


704 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/05(月) 09:41:44 6.kk0qdE0
>>692>>696

「いえいえ、妲己様、その様な……」
「私の話は、他愛なきあくまで、そう、前座、妲己様の本筋を際立たせるための物」
「言うなれば、前菜ですかな、奥方公妲己様の御話を主菜とするならば、そう、此方の話はテリーヌやムースとなんら変わりは無い代物で御座いますれば」
「御二方におかれましては、西洋のフルコースは嗜まれますか?之は此れで決して悪くは御座いませぬ、静ヶ崎か、或いは『大和』にご招待しました折には是非に振る舞わせて頂きたく……いえ、出過ぎた言葉を申し訳御座いません」

【意外と言えるほどに饒舌かつ多弁に】
【しかし、眼孔の光は絶やさずに、そう二者に非礼を嗜められるもしれっと回答し】
【少なくとも此方は妲己の本題とは異なる、言わば前座の話であると弁明もしつつ】

「銘菓とは、粋なる事を、御老よ……されど桜桃に銘品は名物は二つ三つと不要、さすれば御老とて胸焼けなどしますまい」
「流石は御老、女性の扱いもまた一家言お有りとは、風流を解する一流の人間はやはり違いますな」

【見る者全てを魅了し、そして虜とし、そして背を思わず凍らせる、妖艶にして些かの苛立ちすら含んだ妲己の視線】
【対して、黙し、そして周囲の者全てを有無を言わさず、己が手中に納める様な馬酔木老人の気組み】
【この二つをまさに直で受けながら、それでも些かも動じる素振りを見せず】

「では、僭越ながら……『前菜』をば」
「御二方様のお口に合いますれば、之幸いに……」

【口元にのみ、僅かな笑みを湛え、そして先程の饒舌さとは打って変わり、淡々と、静かに話を始める】

「先ずは、妲己様に御報告が、先だって水国に潜伏していました海軍諜報部ですが、邪魔でした為捕縛、拘束しました」
「此れによりより一層、我らの計画は動きの取りやすい物となって行くでしょう、もっとも……」
「かの諜報部の、水国での仲間達が行方知れずな事と、当国陸軍に妙な動きが見えますが、何、詮無き問題です」
「そして……前菜ですが、此れは馬酔木殿にも多いに関わりますが……」

【ここで、前置きし、一呼吸置いて】

「何故、ミサイルレーダーシステムやイージス艦が全盛のこの時代、我が海軍は旧来の戦艦や巡洋艦を運用しているのでしょうか?」
「此れは一重に、魔術、異能との親和性を重要視した結果です、古い武器や兵器は古ければ古い程その分魔力、能力との親和性が高く、また神性を持ちやすい……まあ、あくまで仮説の一つですが、海軍はその立脚点からこの説を支持しました」
「しかし、それでは、帆船や丸太船こそ最も異能と適正高い強力な装備となってしまう、残念ながら、それでは本末転倒だ、故に妥協点として前時代の軍艦を模した船に魔導砲や魔力炉を積み、電探、エンジンに至るまでを異能専用型とし現状の海軍があるのです」
「しかしここで、それら全てを覆す研究が見つかりました……前司令長官、土御門一派が研究していた物ですが、複数の問題が見つかり凍結された研究の様です」



「妖怪、魔性と言った存在からコアごとその強力な魔力回路を摘出、専用のホムンクルスに移植した人工生命と、それを核として頭脳として動く船、次世代型魔導イージス艦『みらい』の研究です」



【ここで2人を見渡して、この前菜に一区切りを打つ】
【一気に話してしまったが為に、二者が追従出来ては居ないか、と言った配慮の意味も含み】


705 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/05(月) 10:06:04 6.kk0qdE0
>>695

「つがるちゃん、どうして身投げなんて?」
「何か理由があるなら……って、そうだったんだ!でも危なかったね、落ちてたら……ん?どうしたの?」

「つ、がる……ちゃん?」

【少年にとっては、知り合いの少女の耳が猫のそれである事もさる事ながら】
【突然、その金色の綺麗な瞳から、一粒二粒と涙を流し始めて】

「つがるちゃん……まさか……」

【小さな氷柱が、頬をかすめて飛んでいく】
【頬が切れて、血がツツーっと一筋流れ】
【横を通過する車のヘッドライトが、リズミカルに2人を照らしては消え照らしては消え】

「つがるちゃん、君『も』なんだね」
「良かった、君も、人間じゃ無いんだね……」

【無防備にも、そのままつがるに近付こうと歩み寄り】

「僕も、だ……君が自分を化け物って言うなら、僕も、化け物だ……」
「僕は、もう、死んだ人間だからね」

【その言葉には幾分か、悲しさを含みながら】









ーー誰か、この声を聞いてよ、今も高鳴る身体中で響く、叫び狂う音が明日を連れて来てーー


706 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/05(月) 12:04:50 6.kk0qdE0
ーー水国、とある軍港ーー

【駆逐艦『雷』軽巡洋艦『神通』、この二隻が入港している港とは別の港に、極秘裏に一隻の船が入港した】
【魔導海軍、決戦級戦艦『大和』、この一隻をもって戦況を打開せしむる、とも謳われた一隻】
【何故、厳密をもって深夜の入港か?】
【あくまで極秘である為に、灯りも最低限の物しか灯さず、随伴艦も無い】
【秋の夜風が、まこと肌に寒く、もう冬に入り始めているのを感じずにはいられない】
【その広い甲板の先端に、その発端、その男はいた】

「さて、どう転ぶか……あるいはどう出るか……」
「当たるも八卦、当たらぬも八卦と言うが……いや、良き、良き未来を……」

【軍港内に投錨、その巨船は停泊する】
【男の名は、魔導海軍連合艦隊司令長官、蘆屋道賢】
【誰かを、何かを待っているかの様に、甲板の手摺に身を任せ、ゆったりと水国の海、その深淵の様に黒い黒い水面を、うっとりと眺めて】


//予約です、よろしくお願いします


707 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/05(月) 12:07:09 0xmafErA0
【水の国、首都フルーソにある雑居ビル付近】
【外は雲に覆われ、青色の空は精々疎らに垣間見える程度に顔を覗かせていた】
【そんな空の下で言葉を交わすのは一人の女性と一人の少女】

キャロライン先生ーっ、今日も私の悩み事を聞いてくれて本当にありがとねーっ!
今度は楽しい話が出来るように頑張るからっ。じゃあね、先生っ。また来るねっ!
あっ、今度はケーキとか茶菓子とか紅茶とか用意してくれると嬉しいかなってね!

「ええ、アナタの悩み事の手助けが出来て何より。アナタの楽しいお話、期待して待ってるわね」
「――あぁ、茶菓子とかは用意しないから、そういうの欲しかったら自分で買ってくる事ね」

【雑居ビルから立ち去り家路につく少女を見送るのはキャロライン=ファルシアというセラピストの女性】
白の強い、月毛色に近い長髪と常に微笑みを湛えた目】
【物腰の穏かそうな女性で、近づく人々に警戒心を与えにくい雰囲気を漂わせて】
【白のワイシャツにコートを羽織り、黒色のスラックスという身形が特徴の女性だった】


「さて、次の予定は――」


【少女の姿が見えなくなったタイミングで身を翻して歩みを進めていこうとした矢先】
【柄の悪い男とぶつかってしまい――】

おいゴラァ、どこに目ぇ着けて歩いとんじゃあ!
このアマっ!お陰で服が汚れちまったじゃねえか!
この落とし前、どうつけるじゃ!?のう!


【周囲は騒然として、キャロラインと柄の悪い男を避けるようにそそくさと逃げて】
【剣呑な空気が漂い始めていた。そしてキャロラインも困惑したような表情を浮かべて】
【けれどそれは少しでも洞察力のある人間から見れば装いにしか見えなくて、"何か"を行う前触れに見えるだろう】

//2〜3日ほど募集しますっ


708 : 妲己 ◆zO7JlnSovk :2018/11/05(月) 14:59:42 arusqhls0
>>696

【妲己はその視線を悠玄達に向ける、──── 噂は聞いていたが、目にするのは初めてであったから】
【車椅子の老翁とその従者、一見したならば脅威はその従者にのみ感じるやもしれない、隙のない佇まいは強者を予期させ】
【──── 而してその実、好々爺の如く振る舞う老翁にこそ、脅威を感じるべきなのだろう】

【視線が舐る、両腕で胸元を抱いたなら、強調される豊満な膨らみ、着物からこぼれ落ちるその愛らしい双曲】
【一杯の媚態を見せつけても尚、この殿方には僅かばかりも抱かれないのだろう、──── それは何処か寂しさを思わせて】
【夜伽をねだる曲輪の慕情、憧憬に達する絶頂の狭間を、狂おしい程に思っていた】


──── ふぅん、嫌いじゃないわん、大切に扱われるのは女の嗜みですもの、道賢ちゃんがそう言うのなら、吝かではなくって
でも、妾はせっかちよん、それでとーっても飽き性なの、一瞬たりとも立ち止まる事は好きじゃないわ
分かってるでしょう、道賢ちゃん、妾の時間を "差し置く" その事の意味を、重々ねっ


フルコースは好きよん、とっても、とーってもね、妾を満足させられるかは、分からないけどん


【瞳の奥が見透かす様に道賢へと注がれる、暗闇の中から感じる視線に似ていた、深淵よりも未だ深く】
【それ故に表面上はとても愛らしかった、恐怖とは性愛の二重底にあり、その即ち同種に近いのだから】
【妲己はその色合いを深く深く煮詰める、それでも、道賢という男の底を知るにはまだ足りず】


そういう "理屈" で "悠玄ちゃん" との協力を考えてたのねん、道賢ちゃんったらイケない子なんだから
聞いている限りは悪くないわん、魔導海軍の "泣き所" でしょう、その装備の旧式っぷりなとーこーろっ

だから "他国" の海軍勢力と "釣り合い" が取れていたのね、此方は "魔法" で彼方は "科学" ────
まぁ "米軍" なんかはまた別の枠組みでしょうけど、総じて大きく変化はないわん



──── 中々素敵なプレゼンよ、道賢ちゃん、妾の興味を少しばかり惹くにはねん



【 "魔導海軍" の用いる海軍戦力の "旧式加減" には妲己もまた些かの疑問があった、其れ故に道賢の申し出は】
【納得のいく道理であり、加えて、──── 出資するには十分な程のリターンを示していた、内心妲己は思う】
【道賢という男の策士っぷりを、少なくとも、魔性たる自分を前にしても尚堂々と示せるほどには狂っているのだと】

【最初、妲己は "魔導海軍" との連関を要求していた、そこに "ヨシビ商会" への便宜を図ったのは他ならぬ "道賢" であった】
【それ故に彼女は "殿様" に働きかけ、 "櫻國法" の一部改正を実施、 "ヨシビ商会" へ一つ "貸し" を作った形となる】
【その意味合いが此処で漸く萌芽する、 "みらい" を作るためには、妖怪のスペシャリストであるヨシビの力が不可欠だろう】

【それは同時に "櫻の國" の海軍戦力が、他国を圧倒するという明確なビジョンを持っていた、──── とどのつまり】
【今現状に於ける国同士の硬直状態、──── 戦力的部分の拮抗が明らかに崩れるという未来を指し示す】


  ( そもそも "能力者" っていうイレギュラーが居る状態では、軍備増強も武力介入も意味を為さない状態よん )
  ( "水の国" の動乱が良い例ね、あれだけ迷走してるあの国が "攻められない" のは、あの国が能力者の一大拠点である事が理由だもの )
  ( だからこそ、海軍勢力で頭一歩抜けるのは、妾にとっても "彼女" にとっても、見過ごせない話だわん )

  ( 能力者の泣き所は "ニンゲン" であるっていう大前提だもの、幾ら強力な能力を持っていても "ニンゲン" という枠組みに縛られて )
  ( 海の上で万全に戦える能力者が何人居るのでしょうねん、──── 良いわん道賢ちゃん、素敵な申し出よん )

  ( ──── でもねん、それを "最初から" 考えていたなら、貴方、とても、とーっても、"強か" ね )


709 : 妲己 ◆zO7JlnSovk :2018/11/05(月) 15:00:27 arusqhls0
>>708
/安価に>>704追加でお願いします


710 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/05(月) 15:13:54 arusqhls0
>>697


──── 僕は何処までも "精神的なもの" さ、けれども、身体とは精神の一面的な作用に過ぎないのだから
病んだ精神は身体を病ませる、精神の作用が身体に著しい影響を与えることの証左は分かるだろう、精神とはつまり存在の根底にあり
精神が描く世界の中に身体は存在している、それは君達に対しても例外ではない筈だ

だからこそ僕は "精神的なもの" でありながら、どうしようもなく身体的に作用できる、特に "僕" に関してはそれが著しい筈だ
僕という存在があるからこそ、今の君は存在できる、今の君の行動は全て、僕という存在によって導かれているといっても過言ではない

逆説的に言えば、そうでない場合、君という存在は最早存在として定義はされない、君という存在を作り上げる要素の大きな一因なのだから




──── 君は世界を歩んできた、その世界とは果たして "身体的なもの" なのだろうか、或いは "精神的なもの" なのだろうか



きっと君は言うだろう、それは "身体的なもの" に他ならない、と、君の得たもの、君の失ったもの、それは全て "身体的" であると



けれどもそれはあまりにも薄っぺらい理屈だよ、君がものと形容する全ては、君が "そう信じているだけのもの" なのだから
より正確に言えば "そうであって欲しい" と信じているだけのものに過ぎない、君という存在を作り上げる全ての有象無象は

──── 精神による賜であると、そう伝えなければならないのだから

そして君はそれを受け入れられない、当然だよ、そうであったならばそれこそが "死に至る病" となるのだから
故に僕は示さなければならなかった、君達の存在の根源は、決して身体にあるのではないという事実を
──── それは一面性を持ちながら、どうしようもなく多面性を持つ訳だから、信じてはもらえないだろうけど



いいや違う、禅問答なんかじゃなくて、歴とした "手がかり" だよ、アンフェアなのは嫌いなんだろう?



"君" は切っ掛けを探さなければならない、そうする事によって "僕" の正体を見つける事が出来る
けれども、君は切っ掛けを探してはいけない、そうする事によって "僕" の正体を見つけてしまうのだから


 僕を振り向かず、僕の正体を当てたなら、君の勝ち、外したら、君の負けだ





                           そして







   振り向いてはいけない


711 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/05(月) 15:23:25 arusqhls0
>>699

【──── "奇妙な話" ではあったが、此処では過程が永遠に繰り返される、時間という枠組みも、空間という制約もなく】
【リーイェンは確かに認識していた、サクリレイジの作り上げた "疑似対抗神話" それの生み出す些かばかり盤外の戦術】
【彼女はアポイントメントを取った、会談の日取りは "■日後" に確定した、それ故に "彼" もその日時に派遣される】


──── もう少しで会談が始まりますです、では、話し合いを続けましょう


【彼らは "過去" に居る、それと同時に "現在" 話し合いを続け、そして "未来" でその言葉を述べた】
【時間は最早物質的な枠組みを抜け出し、重なり合った螺旋状の模様に似ていた、二人は過去の話を現在述べて、未来に過去形を置く】
【それは最早二人ではなかった、形而上学的にも存在し得ない、何かのノイズの如く】


それに、此処の空間は気に入りましたです、──── 余暇を楽しむのもわるくねーでしょう


【ワンピースから伸びた脚をぱたぱたと振って、リーイェンは静かに目を閉じた】
【二人は話し合いを続けるだろう、イスラフィール達の会談の間も、その内容をリアルタイムで過去に話す】
【双方向の矛盾は時に常識が "歪曲" される、強度に発達した概念により、現象が打ち消される事を、私達は知っているのだから】



【────】


【────────】



【水の国、──── 高級住宅街にそびえ立つ、一つの高層ビル】
【その中に彼女は住んでいた、十分すぎるほどのセキュリティを兼ね備えた現代の牙城】
【けれども、それは水も漏らさぬ強固さでありながら、容易く貴方の侵入を許すのだろう】



"水の国最高議会" 議員、──── イスラフィールと申しますわ、以後お見知りおきを



【紫苑混じりのプラチナブロンドの長髪を、シニヨンでセミロングの長さにまで纏めて】
【胸元の膨らんだ、袖の無い白のハピットシャツの上から、素肌を透けさせる黒のレースのカーディガンを羽織る】
【シャツのフリルの上には黒いリボンタイを垂らして、ミニ丈のフレアスカートから黒いストッキングを覗かせる】

【紫苑色の双眸に理知的な眼鏡を掛けた姿は、瀟洒な貴婦人を思わせるだろうか】
【両手を包む白い手袋、袖口から覗く素肌の白と溶け合う様に、微笑む様子に神々しさが塗れて】
【彼女は目の前の相手に対して、恭しく礼をするだろう】


712 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/05(月) 23:46:14 6IlD6zzI0
>>710

【声の主の言葉は――まるで■■■■■■■みたい】
【初めて対峙したあの日、そいつが言っていた――"今度はキミの心に巣食うかもしれないね"】
【想起した記憶によって渦巻く感情は次第に強くなって――その感情の名は■■で】

【耳を塞ぎたくなる言葉は同時に論理的に展開される言葉であり、リゼの理解を助けに助けて】
【普段なら聞き流すであろう事柄が脳へとするりと入り込んで、スムーズな理解が進む】
【その理解は加速度的に、水を吸い込むスポンジみたいに、一字一句染込んでいき、■■も広がりを見せていく】


……つまり、あてという器は精神的なものに作用されてるって事かい。
そして全ては"精神的なもの"ありきで、アンタは精神的なものであるから
ある意味ではあてそのものだって言いたいのかい?―――冗談、きつい。


【瞳孔が開き、瞳が揺らぐ】
【否定の言葉を口にするには弱弱しさが見え隠れして】
【まるで啓蒙されて、導かれている錯覚に襲われる――そうしたなら、それは操り人形みたいに】

【いいや、ありえない。あてはあて。旋風の用心棒のリゼでしかない】
【なのに声の主の言葉を借りるならば、あては精神的なものと同義である"僕"とやらに】
【手綱を握られた馬でしか無いのだ――つまり、心に巣食うとのたまったあの■■の玩具】


【不意に自分の存在を根底から崩される感覚に見舞われたなら】
【リゼは答えを性急に導いて――自分は自分でしかない、コギト・エルト・スムと言う言葉に縋った】


お前の正体を言い当ててやる―――っ!お前は、お前は、…お前は―――っ!


【切っ掛けはとうの昔に探し出して、行き着いている】
【harmony社襲撃のとき、先日のグランギニョルのとき――あの場に居たあの■■】
【自分が激情に駆られた襲撃、自分が■■に心を折られ嗚咽を漏らしたあの出来事】

【そこから導き出す答えは―――あの虚神の名】



           ロールシャッハっ!、その口振りは間違いなくお前だっ!



【果たしてその答えは正しいのだろうか】
【そも、声の主がしきりに言う振り向いてはいけない――それは物理的なことを指しての事なのか】

【それとも、過去を振り返るだとか、精神的なものを指す事なのか――であるならば】
【このゲームに身を投じた時点でリゼの負けは確定しているのだから、果たして―――】


713 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/05(月) 23:57:09 BRNVt/Aw0
>>705

【ヘッドライトが一瞬照らした相手の顔。頬を伝う血に、嗚呼、やってしまったのだ、という気持ちが込み上げ】
【心の奥底、ペキリという音が響いた気がして唇を噛み締める】

【もう終わりなのだと感じた。だって、こんな人に似た姿なのに明確に違う所を持つ化け物なんかに攻撃されて敵意や恐怖の念を抱かない訳がないから】
【だから、驚愕の表情を浮かべた彼の顔がどうなるのかが恐ろしくて】
【そっと視線を外して】

【聞こえたのは、「君"も"だったのか」という言葉。不幸な事に「良かった」という安堵の言葉だけは彼女の耳に入らなくて】
【きっと敵意や畏怖の感情を抱いたに決まっているという固定観念が耳から入った彼の声色を歪めてしまい】
【お前も俺を裏切るのかという怒りと失望の音色に変えてしまって】

【近付く足音】

【詰られるのだ、と思った。暴力を振るわれるのだ、と思った】
【そうされてもおかしくない、と感じていたから】
【擬似的に激しい痛みを受けた経験のあるこの身体はきっと少しも痛くないのだろう。けれども心だけは相手を失望させた罪悪感で酷く痛むだろうから】
【ぎゅっと身を強張らせて】

…………え?

【だから、相手の次の言葉に驚いて】

リュウタくん……も……ばけ、もの……?
死んだ、人間…………そっ、か……
【言葉と共に力が抜けたみたいにその場に座り込む】
【がくっと頸の支えを失ったみたいに勢いよく頭を垂れて】

私は、妖怪……化け猫、と……人間、の……はーふ?で……
【ぼんやりとしたような声でそれだけ言えば少しの間黙り込んで】

【そうしてゆっくりと顔をあげる。その虚ろ気味の金色の瞳には大粒の涙が浮かんでいて】

ねぇ……わた、し……の……こと、きら、いに────

【言い掛けた瞬間、ふ、と瞳が閉じられその身体がゆっくりと倒れていく。どうやら気を失ったようで】


714 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/05(月) 23:58:05 BRNVt/Aw0
>>704 >>708

【ヨシビ商会のトップに位置する人物。その詳細はベールに包まれており社員ですら姿を見た事がないという】
【それ故にその正体に関しては様々な噂が流れていて】
【『車椅子の老翁』というのもそのひとつだったのだがやれ『全身を絡繰に改造した青年』だの『山を突くような大男』だの『蠱惑的な雰囲気を漂わせた幼い少女』だの果ては『赤肌の悪魔』なんてものもあって】
【とはいえ実際がこれなのだから大分拍子抜けしたものであろうが】

【──或いは、この萎びた姿を衆目に曝せば軽んじられると恐れるが故に姿を隠しているのかもしれないが】

【悠玄らに向けられた妲己の瞳。眉一つ動かさぬ老翁に対し少女の方は少しばかり顔をしかめて】
【その視線は双丘を一瞥し、何やら悔しげに歪んで】

「はは、フルコース、ですか。あれは高いもの故中々手が出せませんで」
「機会があれば是非御相伴に預かりたいものですな」

えっ、フルコースですか!?わー!ヨシヤちゃんてばそーゆーの食べた事ないんですよねーっ!
やっぱ御高い物は人のお金で食べるに限りますよねー!
【そうかと思えば興味がすぐ他に移る。きゃっきゃとはしゃぐ様子はやはりどう見ても今時の普通の小娘だ。だが老翁に付き従っている以上は彼女もただ者ではない、のかもしれなくて】

「……いやいや、儂もそう扱いを心得てはおられませぬ。ただ祖先が異国より櫻に参ったもの故、少しばかり他国のしきたりが家に残っておりましてな」
【緩く頭を振る悠玄。いわれてみれば「ゆうげん」にも「よしや」にも異国の響きが残る気はするかもしれない】


【そうして始まった道賢の話。まずは諜報部に関する報告】
【彼らを捕縛、拘束したと。しかし彼らの仲間の行方が掴めない、との事】
【そこで善弥、と名乗った少女が、ちょっと良いですか?と軽く手を挙げて発言する】

水の国に仲間がいるけど行方知れず、ですか
それ、『正義の味方』が絡んじゃってるんじゃないですか?
……なーんか、いるみたいですよ?悪事を許さぬ正義の味方気取りがわらわらと……
【ウチの社員が何度か出会したみたいで、死んじゃった方もいるんですよねー、と少女は口を尖らせて】
【まあ、参考までにって事で♪としめる】


「……成程、確かに旧きもの程神性というのは宿りやすい」
「付喪神や化け狸、猫又等が良い例ですな。きゃつらは年を経る事で変容を果たすものですからの……」
【前置きを経て始まる道賢の話。何故魔導海軍の戦艦が前時代的なのか、といった所から話は始まって】
【古いものほど魔術などとの親和性が高く神性も宿し易いと聞けば悠玄はそう口を挟んで】


「──成程、故に我々をこの場に呼んだ、という訳でしたか」

「……ックク……くくくくくくっ……」
【一段落ついた話。悠玄はゆったりと口を開き】
【そうかと思えば肩を震わせ始めて】



「……ッはははははは!いやはや全く!貴殿も中々に悪い御仁だ!その為に商会の手を借りようとするとは!」
「良いでしょう!我がヨシビ商会は貴殿らに手を貸しましょう」
【かと思えば車椅子の老翁とは思えぬ程の音声で高らかに笑い】
【魔導海軍に手を貸そう、と告げる】
【少々お高くつきますがな?と少しばかりおどけてみせて】

……ふふふ、ねぇ蘆屋様?魔力回路を核ごとっておっしゃいましたけどどのように取り出すんですかー?痛みは生じるものなんでしょーか?
私、すっごーい気になりますっ!
【かと思えば傍らの少女も目をキラキラと輝かせて質問する】

【馬酔木悠玄、及びに馬酔木善弥──】
【恐らく彼らは、妖怪をただのモノとしか思っていない】


715 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/06(火) 00:14:05 E1nVzEpQ0


【某月某日、水国首都某所。外務八課本部ビル。 ─── とある会議室。ひとりの女が教鞭を取っていた】
【横並びのテーブルと椅子が一方向に整列された内装は、一瞥するに教室的であった。机に付いた生徒たちもまた同じである。多くは目に見えて熱心にノートを取っていた】
【教壇の上に立つのは背の高い女だった。露出のないビジネススーツは豊潤な体付きを却って強調していた。腰まで伸びる白銀の髪が、儚げながらも熱意を宿す横顔を彩る】
【ホワイトボードに投影されているのは、模範的な射撃姿勢を示す写真。記されているのは、弾道学に関する幾つかの数式と模式化された戦術理論。淀みなく女は言葉を綴る】


「 ─── つまり市街地においては、室内戦での取り回しの良さと、屋外戦でのカウンタースナイプを勘案した一定の有効射程」
「この2つの射撃能力が最低でも分隊単位で自己完結していることが肝要なの。CQBのレンジであっても命中精度は度外視できない」
「そういうハードウェアの限界性能を引き出すために、瑣末な技術であっても一ツ一ツ体得していく必要があるわ。次、128ページ」


【 ──── 講義は滞りなく、無駄もなく、それなり以上の速度にて進んだ。教え手と学び手の双方が、深い前提知識を共有している証左であろう】
【やがてテキストに指定された文献の、指定された章が終わった。教師たる女は幾らか深く息をついて、或いは喋る事に些か疲れたのか、一区切りを置いて】


「 ……… では、今日はこの辺りにしておきましょうか。」「次回の実践射撃でスコア600を満たせなかった受講者は本課程の再履修を命じるので、そのつもりで」


【女が告げた言葉に異存の声はなかった。一礼するか、挨拶を寄越すか、生徒たちの多くは敬意を示した上で教室を去り】
【幾人かは女の下に出向いて何かしらの質問をしているようで、それには仔細な説明と回答が与えられてもいた。 ─── 兎に角】
【その少女は講義を ─── 主として無能力者の戦闘要員に向けて開かれた科目ゆえ、彼女に必須のものではなかったが ─── 聞いていたのかもしれないし、】
【或いは教室の外で、一段落の付くのを待っていたのかもしれない。確かなのは、女/アリアからの招請であった。曰く、渡すべきものがあるのだという、が】

/予約のやつです!


716 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/06(火) 00:17:01 arusqhls0
>>712





          【   振り向いてはいけない】



【魅入られたのには理由があった、それを端的に捉えるのであれば "水槽の脳" がその契機としては正しくなるのだろう】
【けれどもそれは物事の微かな一面でしかない、あくまでも一つの契機であり、それが全てであると断言するのは、世界に対する反逆である】
【加えて言えば、それは精神の起因するものであった、拠所を失えば道を踏み外す様な】



                                          【  を振り向いてはいけない】


【それは何処までもアンフェアなゲームであった、けれども、微かな勝機は確かに存在していた】
【切っ掛けを探すために逡巡する、けれどもそれは同時に敗北に繋がるのであれば、探すという行為にこそ罠がある】
【ならばその切っ掛けとは、そのものつまりが振り向いてはいけないという "それ" に等しいのだろう】


             【 去を振り向いてはいけない】


【振り向く先とは "僕" であった、即ち、今現在の "彼" とはつまり、その振り向いてはならないそれそのものであり】
【必然、それが魅入るのも今となっては理解できるだろう、 "旋風の用心棒" その存在は、特異点として存在するのではなく】
【確かな現在への連関として存在しているのだと、自分自身が知っているのだから】





【過去を振り向いてはいけない】





                                                 【とどのつまり "恐怖" とは、己が持つ過去に起因するのだから】

【貴女は夢の中にいる】【貴女は夢の中にいる】【貴女は夢の中にいる】────────【然るに之は夢夢、夢、夢────ゆゆゆゆめめめめめ夢夢夢




                            【                 】






【貴女は目を覚ます、悪い夢を見ていた、自分自身の部屋で何物かに不気味な問いかけをされる夢】
【奇妙な夢であった、側に眠る同居人を見て心を落ち着けるだろう、──── どうやら大分、つかれていたみたいだ】
【異常は何も無かった、異変も何もない、貴女は日常に戻る、貴女は何の変化もなく、ただいつも通り生きていく】

【けれども一つ、どうしても "過去" を思い出せなくなってしまう、自分が何故、この場に居るのかさえも、分からない】
【日に日にその症状は酷くなっていく、生きるのに支障はない、けれども、──── 過去を思い出せずに生きていくのであれば】



【──── 其れは果たして生者であると、言えるのだろうか】




/終


717 : ギンプレーン ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/06(火) 01:53:28 WMHqDivw0
>>703
HAHAHA、こんな場所まで来て徒競走と言うのも、中々体験し得ない出来事だネ!

枯草や、灰を踏み敷く――


【何を呑気に一句唱えようとしているのか】
【マリアベルよりも一歩遅れて走っていた、ギンプレーンだったが、背後を振り返ると赤子だけではなく、ホラー映画にでも出て来そうな長い髪の女】
【ビルの屋上へと到着し、扉へと飛び込むが――】


あうおあッッ!!!


【間の抜けた叫び声――間一髪で間に合わなかった男は、光弾を背中に受けたらしい】
【吹き飛ぶように扉の中に飛び込みはしたものの、そのダメージは着実に受けているだろう】

【単純な火傷で済めば良いのだが、何しろ"何が起きるか分からない"と言うくらいなのだから――】


HAHAHA、どうしようかなあ、これは。
ちなみに一回遭遇したことが有るって言ってたけど、アレに攻撃食らったヒトの末路とかご存知かい?


【少なくとも生きてはいるようだった。頭から地面に落ちるような変な体勢のまま、ギンプレーンは器用に肩を竦めた】


718 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/06(火) 02:21:41 WMHqDivw0
>>711
【普通の人間で在るならば、この奇妙な空間に長らく存在していれば、それだけでも精神構造に異常を来たしかねない】
【気に入ったなどと言う言葉が出て来る辺りは流石と言うべきなのだろう】

【いや、或いは彼女も何かしらの影響を受けているのかも知れない】
【どことなく――ここに来てからの彼女は"人間らしく"見えるのだから】


【或いは――人間を"思い出した"とも――さて、そこまでの認識は危険か】


【サクリレイジと言う組織は情報の集約装置であった】
【構成員達の集めた情報はすべからくボスに集まり、また、ボスに集まった情報は構成員達にも知れ渡る】
【故に虚神の介入がウィルスのように入り込んでしまった者に対しては、忘却機構が暴力的に機能するのだ】


【その例外が彼女で在ると言えるが――何にせよ、彼と彼女の会話も、その情報の一つであると言える】


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【そこは水の国の中でも最高水準の環境を備えた高級住宅街】
【アポイントが無ければ区画に入ることすら容易ではなかったろう】
【何はともあれ、サクリレイジ――ストックホルムで出会ったギンプレーンなる者の仲間から連絡がついた、と言うことで】
【素性の知れない連中と来れば断る手立ても有ったのだろうが、彼女はそれを受け入れた】

【水の国最高議会の議員、イスラフィール――先のインシデントでの先導者となっていた者であり】
【マリアベル曰く――後のINF財団を成立させた立役者】


【さて、アポイントの際に付け加えられた備考として――
"ちょっとかなり酷いけど、話自体は通じるから"と言う最高権力者に向けるにあるまじき使者が来るらしいことだけ伝えられていたのだが】



うむ――



【目の前のホログラム映像は、鷹揚に頷いていた】


私はプロフェッサー黒陽。プロフェッサー…もしくは黒陽Pと呼ぶが良い!


【一言で言えば悪い冗談のような男だった】
【40代半ばと言った年齢だろうか】
【白衣に黒マントを着込んだ痩せぎすの男であり、ホログラムの中で、巨大な椅子に座っているようだった】
【片目には如何にもマッドサイエンティストでもつけていそうな、スコープが装着されていたがファッション以外に何の用途が有るのかは分からない】


【一見して科学者に見えるのだが、少なくとも水の国に集まった情報の中では、こんな科学者がいたと言う話は伝わっていない】
【ただのコスプレにも見えるのだが――だが少なくとも、投影装置も何も用意の無いところにいきなりホログラムを出現させる程度の技術力は有しているらしい】


アポイントを受け付けて貰って感謝する。
無論、普通に行くことも出来たのだが、私は目立つのが好きなのでこの方法を取らせて貰った。


私はサクリレイジの技術担当だ。
組織員の装備の調達や、対虚神用の能力の作成と移植を行っている。

頭が無能なのが玉に瑕で、ロクに活かせてもいないようなのが甚だ遺憾だが。


遺憾と言えば、こんな任務に引っ張り出されたこと事態も納得がいかん。遺憾だけに。

ゴーストライターもリーイェンも使えんのでは、交渉など誰も出来んではないか。



――さて置き。
先のインシデントでは世話になったようだな。
ギンプレーンは随分と貴女を警戒していたようだが――警戒するばかりで決め手に欠けるのではお互い面白くはなかろう。
腹を割って話をしたいと言うのが組織の意向だ。


719 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/06(火) 02:41:42 smh2z7gk0
>>717


【光弾を受けた箇所は何故か痛みも何も感じないだろう、ただ一つそこだけ切り取ったように〝灰色〟になっているはずだ】
【まるで異物だったモノたちがこの灰色の世界へと同化したかのような―――。】

【マリアベルはそんな中でも肩を竦めて笑っているギンプレーンに若干引き気味の表情で近づく。】


いや、私はあくまで教会の暗部にある〝記録〟を見ただけなんだけど
アポレイヤはその名の通り〝行き詰まり〟や〝停滞〟を意味する存在らしい。

つまりは、その力を受けた者の末路もまぁ想像できると言えばできるね。
どうやら体の一部に受けた程度ではどうこうなるわけではないみたいだけど。


【恐らくはこの〝灰色〟が全身に至った時が―――。】



さてさてどうしようか、〝行き詰った存在〟を破壊するのには―――。



【ギンプレーンへと手を差し伸べながら、マリアベルはそう問いかける。】
【その後「ちょっと邪道を使うしかないかな」とズレたハットを被り直しながらため息を吐き出した。】


720 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/11/06(火) 08:09:07 arusqhls0
>>718

【イスラフィールは "現れた" 奇妙な使者に対しても対応を変えなかった、浮かべるのは神々しさすら感じさせる完璧な微笑み】
【紛れもない好意を示すと同時に、それは恣意的な美の象徴でもあって、その最後の一滴までも丹念に搾り取った均整を描く】
【慎ましやかな女神の愛嬌に、加えるのは小悪魔的な妖艶さ、紡ぐ音律は天上の調べ、総じてそれは浮世離れ】


まぁ、それは独特な名前ですわ、私も初めてその様な殿方と邂逅するのですから、──── プロフェッサー様
ふふ、何だか奇妙な響きですこと、相手様への敬意を欠かさぬ様に、と育てられたのですが、これでは逆に失礼でしょうか
故に私は心情を曲げてでも呼び方を変えることに致しましょう、──── 改めて宜しくお願いしますわ、プロフェッサー

しかし、この様な形のご挨拶でしたら、予め言っていただければ幾らでも準備致しましたのに
それこそ貴方様のお手を煩わせる事無く、──── 何なら大規模な音響装置も御座いますが故に
そのダンディなお声も一杯に増幅して、心ゆくまで楽しめたのですが


【残念です、と締めくくるのは筆先に湿らせた墨の名残、一息で書き上げた水墨に僅かばかりの遊びを残して】
【緊張感すら感じさせる静謐を描いたなら、そこに想起させるのは雅やかな空間、茶道家の如き静寂の担い手】
【振る舞う一挙手一投足に無駄はなく、極限にまで練り上げられた所作は、一種の象徴とも言えた】


──── そういう事情でしたら、協力するのも吝かではありませんわ、 "対INFオブジェクト機関" サクリレイジ
存在自体は存じ上げておりましたが、 "ストックホルム" に侵入できる程の技術力を持っていらしたのですね
驚愕致しましたの、私、──── その源泉が貴方様にあるのであれば、私は最上の敬意を払いましょう

かの存在達への接触とは、即ち、貴方様が信奉している様な実数的科学を、──── 真っ向から否定する様なものですわ
それでも尚技術担当として振る舞い、そして結果を出されるのは、単に貴方様の力を示して
或いは、貴方様自身が根本より、最早科学というものを度外視しているのかもしれませんね

あら、話が脱線致しましたわ、──── さて、何からお話しすれば良いのやら


【両手で自分自身を抱く様に、豊満な胸元をその華奢な二の腕で絞り上げる、淑やかに描くのは一種の媚態】
【頬に触れる右手の作用、そこに輪郭を誂えて、傾げる小首は小動物の如く、見つめる目元の流麗さ一錠】
【硝子細工の眼鏡の奥に、水面の如く端麗な瞳を映して、──── 深奥に重ねる十重二十重】


721 : ギンプレーン ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/06(火) 09:54:05 bTW2G9O20
>>719
へえ……そういう攻撃か。
それが全身に広がるとこの街みたいに死んでしまうってことかい!
ファンタスティックだネ!

まあ火傷も全身に広がれば死ぬし、痛くないだけマシかも知れないよ、HAHAHA!

【マリアベルの手を借りながら、ギンプレーンは起き上がった】
【それでも受けたダメージは大きい。戦闘を出来るかは怪しいところがある】
【だが、マリアベルの方は何かを思索しているようで】

このまま帰るってワケには行かないのかい?
今さっきその選択肢が提示されたと思うんだけど。

率直に言ってボクの方の戦力はもうアテに出来ないと思うんだけどなあ。

【この不自然なほどの準備不足……マリアベルもここでアレを倒そうとしていた訳ではないだろう】
【逃げれるのならばそうするに越したことはないと思えるのだが……】


722 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/06(火) 10:17:51 5p38.LtA0
>>708>>714

「それはいい事です、ならば是非に今度は静ヶ崎鎮守府にお招きいたしましょう」
「海軍自慢の司厨長が、皆様にその手腕を振るいましょう」

【妲己のその一瞬で魅入られてしまうような妖艶と恐怖の入り混じった深淵の瞳】
【悠玄の思考を読ませぬ、静寂の如き気迫】
【その双方に宛てられて尚、道賢は口調も、そして口数も何も変えずに話を進めるのだった】
【いや、そういう意味ではもう一人、この場に同じ様に振舞う人物がいた】

「(この少女、この場において何故平静を保てる?……いや、少女かも解らぬが、何者か、常人ではあるまい)」

【ただ一人『よしや』と名乗ったこの少女は、そういった意味で道賢の気を引いた】
【最も、それを振る舞いや口調に出すことはないのだが】

「ふむ、よしや殿と言いましたか、その可能性は十分過ぎるほどにありますな」
「報告ではチームMや、その他組織ですが、諜報員達の報告に確かにその存在が挙がっています」
「ですが……問題は無いでしょう、全員見つけ次第屠れば良いのですから」

【ほほう、この場で発言すらしてきたか、と少々ならぬ関心を少女に向け】
【そして再び、三者に向き直る形となって】

「前菜はお口に合いました様で、流石は奥方公に馬酔木の御老、聡明にあらせられる」

【現に、各国の軍事バランスは現在非常に危うい物の上で成立している】
【それ故に、この櫻の国が海においてアドバンテージを得るのは、まさに妲己が言うように利のある事だ】
【ここで再び、妲己に頭を下げ】

「奥方公、並びに将軍様のご支援ご配慮、この場で改めて御礼申し上げます」
「この恩は海よりも深く山よりも高く、必ずや報いて見せましょう」

【妲己の推眼は、まさにこの蘆屋道賢の本質を見抜いていたと言える】
【強かにして底無し、妲己、馬酔木共々、この場には三つの底無しが存在する事になるのかもしれない】


「まさに……しかし妲己様、実際には『みらい』は既に完成していました、そう『していた』のです」
「土御門一派の研究斑が極秘裏に開始した計画でしたが、船とそして人工生命『みらい』は完成していたのです」
「文書を読む限り、偶発的に手に入れた手負いの妖魔の魔力回路と核を使った様でしたが……」
「この計画は、そこで凍結されたのです、二つのある問題によって」

【ここで秘書の少女から、再び疑問の声が入る】
【その声に幾分か機嫌の良さそうな、言うなれば優しい大人が子供の疑問に答えるようなそんな優しさを含んで】

「馬酔木殿は、優秀な秘書をもたれましたな、それはそう、まさに二つの問題に関わる事です」
「最も、私にとっては何の問題とも言えない、どうでも良い、事ですが」
「妖怪、魔性は無論、核と魔力回路二つを同時に抜かれれば、その存在を維持できない即ち死です」
「そして人工生命も、魔力回路が適合できなければ乖離症状で存在を崩壊させます」
「また、上手く適合できたとしても、船とその意識を繋ぎ起動させれば、自我は船に呑まれ消失します」
「もっとも……」



「妖怪や人工生命の命など、命の内には入りますまい」


【ここで、ニヤリと口元のみを吊り上げるような笑みを浮かべて】
【そして答えて見せた、ホムンクルスや妖怪など、何人犠牲にしたとて構わない、と】

「ですが、この重要な人工生命『みらい』がこの混乱の中で逃亡しました」
「逃亡先は水の国、土御門派が手引きしたと思われますが、行方は未だ不明……」
「そこで、馬酔木殿には妖怪の調達を、ある程度まとまった数を、定期的に安定的に……」
「万が一みらいが発見できなかった場合の代わりの製造、それもありますが、海軍勢力としてみらい一隻のみで艦隊を形成する訳にはいきません」
「第二第三の魔道イージス艦を、新鋭魔道潜水艦を、我々は製造せねばならないのです」
「加え、この研究を追う中で、もう一つの副産物が発見されました」
「兵士への能力付与、あるいは追加付与です」
「先にも出た、妖怪、魔性の魔力回路を兵士に強制移植することにより、能力者であればより強力なもう一つの能力を、無能力者でも能力を行使可能となります」
「デメリットは、兵士の感情や人格の欠損ですが、まあ他愛ない話でしょう却って都合が良いとも言えます」

【馬酔木老人が、喝采の意を示せば、その手を取り、上機嫌に】

「ありがとうございます、その為に馬酔木殿、商会の力をお借りしたい……無論、料金は言い値で構いませんよ」


【ここで再び、三者に恭しい礼をし】

「如何でしたか、この前菜、楽しんで頂けましたか?」

【こう、言ってのけたのだ】


723 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/06(火) 10:41:16 5p38.LtA0
>>713

「(つがるちゃん、君は……)」

【つがるの攻撃を物ともせずに、何も臆することなく向かって行く】
【例えどんな氷塊が来ようとも、決して足を止めることは無いだろう】

「つがるちゃん……」

【近づくたびに、一歩の距離を踏み出すたびに】
【身を小さくし、そして強張るつがる】

「よっぽど、つらい想いをして来たんだね……」

【そうして、自分も自身の正体を、その存在の正体を話すと】
【つがるは、その場に自分の身体を抱いたままペタン、と崩れるように座りこみ】

「つがるちゃん?つがるちゃん、大丈夫!?」

【支えを失ったように、崩れるように倒れる身体に、一気に駆け出して】

「そう、だったんだ……ハーフ、だったんだ……」
「嫌いになんて、嫌いになんて、なるもんか、そんなわけ、ないじゃないか」

【つがるの綺麗な金色の瞳からは、大粒の涙が幾つも毀れ】
【それは、その時の自分も例外ではなく、しかし、それを拭う事も忘れ】

「え?つがる、ちゃん?」
「気を、失ってる……」

【とっさに抱き止めたつがるの身体】
【何とも細くて、こんな細い弱々しい身体で、一体幾つの困難に出会ってきたのだろう】
【そう思うと、胸が締め付けられるようで】

「どうしよう……いや、連れて行くしか無い、かな」
「おやっさんもファラーシャも、エレインさんも、きっと解ってくれるよ」
「つがるちゃん、もう大丈夫、大丈夫だから」

【リュウタは何とか、つがるを背負うようにして彼女を後部座席に乗せると】
【エンジンをかけ、その場所まで向かうだろう】
【人ならざる者達が集う食堂、そして裏で暗躍する正義の人外組織『Freaks Fes』まで】



//この様な所で〆でしょうか?お疲れ様です


724 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/06(火) 12:40:28 bTW2G9O20
>>720
【イスラフィールの対応は実に理想的と言えた】
【奇矯な来訪者の振る舞いにも寸分も動じることはなく、女性らしさを交えた上品な応答を返して見せる】
【形式張り過ぎないところも好感を持たせる要因だ。社交辞令だとしても慇懃さを感じさせない】
【なるほど、水の国で最高権力の座まで登り詰めただけのことはある】
【そう納得させるだけの器を示すに十分であったろうが……】

【しかし男は、憮然と鼻を鳴らしながら返事を返す】


フン、実に優秀な政治家だイスラフィール。
だが、挨拶事など不要である。
連中と異なり我々の時間は有限だ。
効率的に使おうではないか。

【尊大な対応だった。相手が彼女でなければこの時点で話はご破算だったかも知れない】
【あの嵯峨野でさえも、技術者としての不遜な顔を隠すために多少の社交性を身に付けていたと言うのに】
【これではいくら技術があれど研究者としての大成は出来まい……そう思わせるほどに男はGeekだった】

ユーモアのセンスは無いようだなイスラフィール。
実数だろうが虚数だろうが、理屈と論理で証明出来ぬものはない。
出来ないのならばそれは知らんだけだ。

今分からんから科学で解明出来んなどと寝言を言う者がいるならそいつは営業職にでも転職すべきだな。

ストックホルムの認識災害は想定していたファクターの一つに過ぎん。
パグロームの能力を虚構現実と関連付けたのは元々そう言った場所での活動を想定してのことだ。
笑う男の能力に応用したところで呼吸を止めて水に潜るようなものだったがな。

大体貴様やロールシャッハがやっていたことを真似たところで何の成果でも有るまいよ。

【男は脚を組み直し、面白くもなさそうに言った】

腹芸などやるつもりもない。
組織は貴様の行動を怪しんでいる。

端的に言ってロールシャッハに利する行動を取っているからだ。
或いは貴様自身にその自覚がなかったとしてもだ。

いくつか有るが順に聞くとしよう。

ロールシャッハは先のインシデントであのメインシステムを能力者達に認識させることに成功した。
不意討ちだったにも関わらずロールシャッハは待ち構えており、システムの破壊など端から"出来なかった"。

結果だけ見れば、能力者達がストックホルムに足を運んだことで万事がロールシャッハ思惑通りに進んでいると見える。
だがイスラフィール……ロールシャッハの計画の本質を見極めていたのなら、貴様はその結末を予測出来たのではないか?


725 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/06(火) 12:43:45 0xmafErA0
>>716

【―――――】

―――――……、んん、………あれ?
あては、……外にいたはずじゃ……?
………ゆめ、だったのかな?にしては、ずいぶん■■いゆめだったけど。
そも何でちゃんエリと一緒に寝てたんだっけ……?、わっかんねー……。


【気がつけばリゼはエーリカの眠るベッドで寝ていて、先程の出来事はまるで狐につままれたかのように】
【けれど確かな傷跡を残していて。幸か不幸か。リゼはそれを自覚できない。音もなく削られていく過去の出来事たち】
【旋風の用心棒としての自分、それ以前の、カノッサ機関に属していた時の自分】
【今のリゼを形作った過去が消えてしまうのなら、それは生きながらにして死ぬようなもので】
【その異変を指摘されたのなら――それは間違いなく■■であるから】
【■■の感情に囚われ、■■ながらも抗うこと叶わない理不尽へと叩き落とされる】

/長時間お疲れさまでしたー!


726 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/06(火) 12:51:38 BRNVt/Aw0
>>723

【歩み寄ろうとしても攻撃は飛んで来なかった。先程の小さな氷柱、ただ一本だけ】
【恐れて逃げるものだと思っていたのだろう。攻撃しようとする意思もなかったのだろう】
【ただ、身体を強張らせて】


【落ち着きを取り戻して、そうして言葉の途中で意識を失って】
【そうして抱き止められた身体はきっと軽くて華奢で】
【猫の耳が生えている事と氷柱を飛ばした事をのぞけばそこらにいる女の子と何の変わりもないんだろう】

【嫌いになんて、なるわけない】
【涙と共に紡がれた彼の言葉はきっとまだ少女には届いていなくて】

【背負われた小さな身体。涙がまた一つ零れていく】

【少女の空は、まだ晴れなくて──】



/絡みお疲れさまでした!


727 : ◆KP.vGoiAyM :2018/11/06(火) 18:27:42 Ty26k7V20
>>641-642

【瓦礫の街はどこも似たような景色で一体彼は何処へ向かっているのか】
【皆目検討つかなかった。けれど、彼の足取りは何処かを目指していて】
【あてのないわたしとは全く違うように思えた】

【この街に居るのはもはや何処にもいかなかった人、行けなかった人後は】
【何処からか追いやられて来た人ぐらいで、街同様一様に捨てられた人たちばかりだ】

【偉い人とコネのある人は安全な街で裕福な生活ができるらしい。そうでなくとも体力のある人や】
【頭のいい人は郊外の生産施設で働くことができるから生きていくには困らない。らしい】
【らしいというのはそれすらもこの街に居たら幻のようにしか感じないからだ】

【彼の後をつけるには暗すぎるし、静か過ぎる。だけど隠れる場所には困らなかった】
【灯火が見えなくならない程度に付かず離れず、その後を追った。】


【それから、彼の目的地は捨てられたタンカーだとわかった。それはこの街が捨てられる原因となった】
【あの紛争である能力者が地形を変化させたせいで10キロメートルは離れていた港から流され(飛んできたという噂もある)】
【この街のはずれに座礁したものだというのはあとから聞いた話で、今は暗闇に浮かぶ巨大な方舟に圧倒されただけだった】

【彼はその船の横にあいた、人一人通れそうな穴に入っていった。もちろん、わたしも後を追う】



『ロッソ。何してたんだよ。随分と遅くなって』

【見張りに立っていた仲間がオレに声をかけてきた。そいつの手にはスコープ付きの旧式ボルトアクション。こんなことになる前は猟師だった奴だ】


何って…仕事に決まってるだろ。

『はっ!未だに真実なんてものを追っかけてるのはお前ぐらいなもんだよ。』

ま、オレもオレなりにイかれてるってことさ。…アイツらは?うまくいったのか?

『上々さ。奥でパーティしてるぜ。Born To Be Wildなんか流して浮かれてる』

『ロッソの掴んだネタ通り、“貴族”共の物資の輸送トラックが通ったんだ。ちゃんと、前と違って』
『全部、女モノの洋服と靴だってこともなかったぜ。早く見張り変われって言っといてくれ』

【ハンターらしい豪快な笑いをしたあと、見張りの仲間は小声で話しかけた】

『…アイツはどうするんだ?』

…どっかで音を上げて居なくなると思ったんだけどな。

【オレはいつものように頭を掻こうとして、ハットがあるのを思い出してツバを軽く触ってごまかした】

―――おい。いい加減コッチに来い。迷子になるぞ。

【そう言って俺は、特に待ちもせず入り口のハッチを開けた。――見張りの男はわざとらしく茶化した。】


『お嬢さん。ようこそ、ジェットシティへ。』


728 : ◆KP.vGoiAyM :2018/11/06(火) 18:27:57 Ty26k7V20
>>643

/気にせず好きなように書かせていただけて大変恐縮でございます
/ただこの調子だと2Q3X年まで延々とロールし続けることになりそうですので
/どうしたもんかという次第でございます。私個人はとても楽しいのですが…


729 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/06(火) 22:06:07 WMHqDivw0
>>715

(………………? …………?? えっとつまり……当てればいいってことか。うん。そういうこと)
(当てられたら勝ちで外したら負け。うんきっとそういうこと……なあるほど、単純な話じゃないか)
(まあ実践で上手く行けばどうでもいいんだ。うんうんオッケー。問題ない、問題ない……)

【――――だいぶ問題ありそうな生徒がひとり居た。ルーズリーフに書き散らばす文字列も胡乱で】
【板書をきれいにノートに写すのが苦手な子ともとれた。あるいは、きれいに写さなくっても】
【「なんとなく」の感覚だけでテストを受けても受かるから、きちっと整頓する必要のないタイプの子】
【前者4割、後者6割くらいの比重。そういう少女だった、――――「監視実働」役は】

【他の生徒たちがめいめい教室の外へ出ていくのを最後列の席にて見守ってから、少女はようやく立ち上がる】
【肩の下あたりで揺れる白い毛先を一度後ろに流して、右目を隠す前髪を耳にかけて、靴の爪先をとんとんさせてから】
【一段一段確実に、しかし足音は一切立てないで。降りてきたならアリアと同じ高さの地面に立つ、ならば】

(しっかし、……………………いつ見ても大きいな……。何食べて生きてたらこうなるの?)

【150センチと少ししかない身長からアリアの碧眼を見上げるなら、思いっきり顎を持ち上げるかたちになる】
【ゆうに40センチは上にある彼女の顔を見て、内心でううん、と唸る。あと少し残された成長期をめいっぱい使っても】
【ここまで大きくなれる気は、さらさら、しなかった。……首が痛くなってくるのを、すこし傾げて誤魔化して】

お待たせしました、アリアさん……渡すものってなんでしょう?

【つとめて穏やかな笑みを浮かべて、行儀よく愛想よく。白坂佳月は、優等生の表情をするのが上手だったから】


730 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/06(火) 23:14:46 E1nVzEpQ0
>>729


【呼ばれる声に、 ─── ふッと頬を緩めて、アリアは微笑みかけた。優しげに教え子を見下ろす碧眼の穏やかさ】
【あまり表情を変えぬ女であったから、あからさまな感情(それも穏やかなもの)を誰かに向ける事は、割合に珍しい事であって】
【 ─── どこか近頃は、ひどく憂うような表情を浮かべているのも屡々であったから、教鞭を取るのは彼女にとっての安らぎであるのかもしれなかった。何れにせよ】


「悪いわね、待たせてしまって。 ─── ふふ。貴女なら、射撃課程は必須でないのに」
「熱心な生徒を持てて幸せよ、佳月さん。 ……… 少し、付いてきてくれるかしら」


【講義室の照明を落とせば、女は廊下へと出て、そのままエレベーターへと歩みを進めていく。たなびく白銀の髪からは、煙草の香りに混ざった淑やかなシャンプーの芳香】
【押されるボタンはB1F、射撃訓練場のフロア。 ─── 徐に、彼女は唇を開く。涼やかに美しくも、親しげな声音。】


「 ─── 彼の相手をするのは大変でしょう。いつも任せちゃって申し訳ないわ。アレは、昔からああなの。」
「本当、面倒な男。寂しがりの癖に自分から寂しいとは言わなくって、おまけに見栄っ張りの意地っ張り。」
「そのくせ他人を小馬鹿にするのは一丁前で、浮かれっぽくて。やってる事が幸せ自慢だって、自覚してるのかしてないんだか」


【或いは耳にしているかもしれない。 ─── 八課という極めて横並び的な組織において、後藤と並ぶ唯一の隊長職である彼女は】
【その怜悧な要望と振舞にそぐわず、存外に拗れた遍歴を含んでいると。しばしば連れている"秘書"の少女は、愛人であるなんて】
【ともあれ全ては判然としない事だった。事実は"彼"について語る彼女の語調は、軽蔑めいて親しげだった。二重ロックされたエレベーターの扉が開く】


「今日わざわざ貴女を呼んだのは、ちょっとした感謝の気持ち ─── と言うと、俗っぽすぎるわね。冗談よ」
「貴女向けに装備班が作った武器があるの。試作の銃器だから、扱い易いものかどうかは、解らないけれど。」


【詰まる所は幾らか迂遠な前置きであったらしい。 ─── 打ちっ放しのコンクリートとシューティングレンジ、室内訓練用の木造迷路が目に入る】
【その中でもアリアは真っ直ぐにロッカーへと進んで、真新しいガンケースを一ツ取り出すならば、適当な長机へと置いてみせるのだろう。鍵の類はかかっていなかった】


731 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/06(火) 23:51:25 WMHqDivw0
>>730

【任務中の険しい顔ばかり見ていた、気がするから。微笑まれれば少しだけ吃驚して】
【失礼なことを考えてしまう、「こんな風にも笑えるんだ」なんて、思ってからしばらく後悔する】
【人間だもの、笑うに決まってるじゃないか――。そう思ってから俯いて、半歩後ろをついて歩く】

…………え? 彼? ……、……ああ、ミレーユさん。
慣れましたもう、よかったじゃないですか、イイ感じに構ってくれる人に出会えて。
そっちにずっとべったりしといてもらえれば此方としては助かるんですけど、まあ――

【「自慢がウザくないと言えば嘘にはなります」。言いながら頭の中で相関図を描いていく――】
【――ひどくぐちゃぐちゃした線からちょっと離れたところに、やたら赤いバカの顔が浮かんでいるのがなんだか不思議で】
【そういや未だに何もしゃべっていないな、とか。ぼんやりと考えが逸れ始めたあたりで、ぽーん、到着の音】

【そこから先へも半歩後ろについて歩く。櫻の女の習性だろうか。わかりやしないが、ついてって】
【取り出されたものにはまじまじと視線を遣る。それからアリアの言葉を聞いて首を傾げる――さら、と髪が零れ落ち】

……私向けですか。はあ、銃なんて訓練以外でまともに持ったこともないんですけど。
これ、相当大きくないですか? いきなりこんなもの持たされても、文字通り、無用の長物になるのでは……

【ケースを見る限り、拳銃のたぐいとは思えない。訝し気に眉根を寄せ、指先で恐る恐る触れて、ひっこめる】
【そうして鍵がかかっていないことを悟ると、「……開けても?」 控え目な音量で訊くのだった】
【こんなに大きなもの扱ったことがないとは言え、わざわざ自分向けに作ってもらったものだとまで言われれば】
【興味がないだなんて感想、とてもじゃないが持てなかった。ゆるしを得たなら、そーっと、宝箱でもそうするみたいに開いて】


732 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/07(水) 00:24:11 E1nVzEpQ0
>>731

【事実として酷く笑顔の少ない女であった。 ─── 女らしい愛嬌を露わにする折など皆無に等しいにも関わらず、その躯体は極めて扇情的でもあった】
【深窓の令嬢に似て儚げな横顔に、タイトな正装の下からも否応なく成熟を示す胸許、筋肉の熱を感じさせる引き締まったバスト、嫋やかさとしなやかさを兼ね備えた長い四肢】
【女らしからぬ背丈をしていながら、凡そ女としては無缺に等しい肉体美であった時折に乙女らしい甘い香料の薫りを感じさせるのは非道に等しく】
【「安心して頂戴。 ─── ただの銃ではないようだから。」 ─── それでも今のアリアは、興心と躊躇の半ばする仕草を示す少女に、静かな首肯を示すのだから】

【開かれたケースに収まっていたのは、一振りの「鞘」である。 ─── 漆のような直黒に塗り上げられた、一振りの鞘】
【然るに剣は収まっていなかった。故にそれは、佳月の振るう刀に向けて拵えられた代物であると、悟り得るだろうか】
【 ─── 鯉口の手前には「銃爪」があった。鯉口の側を覗くなら、鞘口を挟むようにして配された、二つの銃口。】
【持ち上げるのならば矢張り単なる鞘と断じるには少なからず重い代物であろう。だが銃として斟酌するのであれば応分に軽い代物であった。やおらに、アリアが口を開き】


「曰く、型番はDP-1N」「正式名称、試製二連銃身式機動速射散弾鞘銃 ─── 出鱈目に長い名前ね。」
「貴女の能力で産み出せる刀、鞘がなかったでしょう。櫻の剣術では、シースを打撃に用いる技術もあると言うし ─── 。」
「 ……… まあ、凡そは個人携行の暗器としての能力を保ったまま、どの位の戦術火力を発揮できるかという実験が主目的だったのでしょうけれど」


【ケースの中には簡素なマニュアルが添えられていた。読み込めば、それは確かに鞘と銃の機能を合一しつつ、優れた火力と隠匿性を兼ね備えた代物であると標榜されていた】
【なれば幾つかの機能があるようだった。二発同時に放たれる散弾。折畳式・可動式の銃把。 ─── 反動と射撃炎による瞬間的な機動、抜刀の加速。】
【「試し撃ちでもしてみるかしら。望むなら、模擬戦に付き合うのも、構わないけれど ─── 。」 ─── 細長い棒に似た、装填済の奇妙な弾倉を、アリアは机上に置きつつ】


733 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/07(水) 02:38:11 PMzGIUuA0
>>721

確かに、〝緩やかな停滞〟ってのは意外と悪くないかもしれないね。
ただまぁギンプレーン氏もここで大怪我ってのも嫌だろうし、物見遊山はこのあたりかね。


―――なんだかんだで〝目的〟は果たせそうだし。



【「この〝死んだ街〟で戦いつくしても収穫は少ないだろうしね」と付け加えながら肩を竦める】
【しかし目的を達成したとは、今までの流れの中では一方的に攻撃されたぐらいだったが…】

【とにかくマリアベルはギンプレーンの方を向くと右手の指を―――】



【―――――〝パチン〟―――――】



【―――――――――――――――――――――――――】

【――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――】



【―――気が付けば、二人は〝元居た世界〟つまりはカフェの一角に戻っていた。】
【同じように席についたままで。ディーからすればほんの数秒の出来事のように感じるだろう。】

【とはいえ散々な〝観測会〟であった、マリアベルもどこか申し訳なさそうな表情をしている。気がする】
【そしてギンプレーンの背の〝灰色〟はすっかり消えている。あの世界から離脱したからだろうか】


734 : ヒルデガルデ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/07(水) 02:50:59 PMzGIUuA0
>>707


―――あらあら、いけませんわ皆様が困惑されていらっしゃいます。


【ふと、柄の悪い男の背後から声がかかる。どこかおっとりとした声色でそれでいて良く聞こえる声だった。】
【振り向けばそこに立っているのは】
【脹脛まで伸びるプラチナブロンドに頭部にはホワイトブリム。全身をロングスカートのメイド服で包み込んでいる金の瞳の女性】
【メイドである。どこからどう見ても。だが買い物かごを持ってるわけでも喫茶店のチラシを持っているわけでもない。】

【若干の曇り空であるのに日傘をさしていた―――。】


驚かれたのは分かりますが、そう大きな声を出しては公共のマナーに反しますわ。
服が汚れてしまったというのなら私がお預かりして1日で新品〝以上〟の輝きにしてみせましょうか?


【穏やかな口調でメイドは続ける。だが薄く開かれた金色の瞳は目の前の男性を飲み込んでしまいそうなほど深い】
【口元には微笑みを携えたまま、いろんな意味でメイドはプレッシャーを与えていた。】


735 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/07(水) 22:04:33 WMHqDivw0
>>732

………………。……鞘、…………ですか。いや確かにないですけど、
なくても別に困らないっていうか、私のこの身体が鞘みたいなものだから……

【困惑と期待の入り混じる表情を浮かべながら、おそるおそる指先を触れさせる。それから、撫でてみる】
【ついつい、何度か左右に往復してから――そっと離してマニュアルを手に取り、読み始める、けれど】
【……座学の成績がアレな少女にそんなもの読ませても、おそらく4割理解できればいいところ、だった】
【「えっと、このパーツが、こう……」 ひとつひとつ撫でて確認して、それでも今一よくわかっていない、みたいな顔して】

さんだん、さや、じゅう……。…………ううん、そうですね。
試し撃ちくらいはしてみたいです、全然、なにもよくわかってないし……っと、
…………思ってたよりは軽いですね。でも、振り回すには少し……私には重い、かも……

【とりあえず手に取ってみる。そうしてトリガーに指をかけ、かけて――慌てて離す。けれど】
【アリアが弾倉を改めて置いたのを見るのなら、あ、と間抜けな声を上げて。まだ入ってなかったんだ、みたいな顔】

…………。とりあえずはまず、弾の籠め方から、それで構え方と、……正しい撃ち方?
そこまで確認させてもらえないでしょうか、…………はあ。きちんとした銃ってこんなに難しいんだ。
いいなあ夕月さんは、便利なマジカル銃しか持ってないんだから、特に勉強とかも要らなかったんだろうし……

【して、――思いっきり嘆息した。そして自分の無知っぷりを恥じつつ、八つ当たりするみたいに誰かの顔を思い出す】
【昔それはどうやって扱い方を覚えたんだ、と訊いたことがあった。するとそいつは、きょとんとした顔をして】
【「カラダが知ってたから、あたしはよくわかんない」 ――そんなことを抜かしたんだった。それを想起すれば】
【なんとなく腹立たしくなってくるんだから。……振り切るように頭を横に振り、毛先を散らして。鞘を両手に持ち直し、アリアに向き直る】


736 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/07(水) 22:19:05 WMHqDivw0
>>733
そうだねえ。
ここで爆死するのも愉快な見世物かも知れないけど、キミに取っては面白くない結果かもネ。

【ダメージを受ければ流石に息は乱れているものの、それでも男は笑い顔を崩さない】
【彼女の目的が何なのかは定かではないが、少なくともこの場に連れ込んで殺す、とかではなくて良かった】


【彼女が指を弾くと、視界は一転して――】



【戻ってくれば、そこは先程までの景色】
【背中の傷は愚か、崩していた体勢すら戻っており、椅子に座ったまま、世間話の続きでもしているかのような様子だった】
【ディー自身もギンプレーンがどこかに行っていたことを察知している様子はなくて】

【マリアベルの言葉がなければ夢でも見ていたと思うところだろう】


【男は旅立つ前の延長のように店員を呼ぶと、ウインナーコーヒーを頼んで】


それで……その目的って言うのは、ボクに異界の神とやらを観測させる――ってことかい?

【ちぐはぐだった彼女の行動原理は読み難いが、結果だけ見ればそういう結論に落ちた】
【背中に何か残っていないかペタペタと触っていたが、何もないことに嘆息して】


実にミステリィな体験だったよ。
仮に向こうで死んでいたらどうなっていたのか……ちょっと興味の沸くところでは有るけれど。

【話について来れないのか、ディーが首を傾げて二人の方へ顔を向けた】


737 : ◆RqRnviRidE :2018/11/07(水) 22:47:31 BcQml4WM0
【水の国──埠頭。 立ち並ぶ消波ブロックのその上に、一組の若い少年少女の影】
【少年は簡素な釣竿を構え、口を真一文字に引いて顰め面をしながら海へ糸を垂らし】
【少女は数メートル離れた埠頭の先で、遥か遠くの水平線を眺めている。 そんな光景】

【波風だけが音を奏でていた。 白浪は砕け、遠ざかる秋の太陽の煌めきを湛えて】
【──でも、静かだったのはそこまで。 まっ先に静寂を破ったのは、】

…………あーっ、釣れねーーーーっ!

【緩く波打ったココアブラウンの短髪、琥珀色の瞳の十代半ばほどの少年だった】
【黒のパーカーに迷彩のカーゴパンツ、黒の厚底ブーツでモノトーンに纏め】
【首には千鳥格子柄のバンダナ、腰には長方形のウエストポーチを提げている】

【少年は足で釣竿を固定しつつ、寝転んで空を仰ぐ。 そうして大きく溜息をついて】

穴場だって聞いたから来てみたのにさー、小魚一匹釣れやしないなんてツイてないなぁ……。
…………なー、ぜんぜん釣れないからもう帰らない!?

【遠くを眺める、マリンブルーのロングヘアの少女へと大声で呼び掛けるだろう】
【褪せた紺色のマキシワンピに身を包み、鍔の広い純白のキャペリンハットを目深に被っている】
【けれど少女は彼を一瞥して、「まだ」と短く応答すれば。 すぐに海へと視線を戻す】

…………はぁ、……あーもー分かったよ、ほんとツレないよなぁっ。
大体急にどうして海なんか……何かやるべきことでも見つけたのかなぁ。

【手持ち無沙汰に空の碧と陽光に透かして見るのは、金属質な鋭い輝きを孕む薄い小片──何かの鱗、だろうか】
【鏡面のごとく光を反射するそれはただひたすらに目映く、遠くからでも充分な存在感を示していることだろう】
【あるいはきっと、それは救難信号のようにも見えただろうか──とかく星よりも強く鮮烈に瞬いていて】


738 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/07(水) 23:04:18 rrCKtNMk0
>>735

【「一応、打撃武器としても設計されてはいるようね。この際、異能を使わずとも使える刀も、拵えてみてはどうかしら?」 ─── 尠からぬ困惑を示す少女に、】
【アリアは然し宜なるかなと言いたげな苦笑でもあった。フリー百科の出典も知れぬ記述をしたり顔で引用するミリタリーマニアにさえ解るような、異様な設計の銃だった】
【「曰く"鞘銃(しょうじゅう)"と読むらしいけれど ─── 。向こうの言葉は、どうにも」口にすれば、"小銃"と区別のつかぬ呼称であるとも気付いた。余り良い名前ではない】


「こら。」「撃たない時は弾を込めない銃爪に触らない薬室が空か確認する。」
「味方の背中を撃ったら笑い話にもならないわ。 ─── 気をつけるように。」


【一ツ零して咎める言葉はやはり教官的だったが、「慣れればこれも、存外に使い易いものよ。」歳下の少女を叱るのであれば、幾らか語調も柔らかくなるという物であり】
【軽々と銃を持ち上げて、シューティングレンジへと運んでいく。「銃口は射座の向こう以外には絶対に向けないこと。」付け加えるに、今一度その銃を、佳月へと握らせ】


「チューブマガジンだから、ショットシェルはこの方向から、こうやって、 ─── 。 」
「そうしたらリリースボタンを押して、ヒンジを開いて、弾倉を入れて、」「コッキングレバーを引いたら薬室に弾が入るから、後は狙って、銃爪を引く。」
「握り手とトリガーの位置は、前後何れかを選べるようね。射撃時は後ろにスライドさせておくのが賢明かしら」


【立射の姿勢を取らせつつ、 ─── 少女を後ろから抱くような形で、一ツ一ツの動作を教えていく。細長い弾倉に弾薬を込め、開いたハンドガードに格納する形で装填し】
【鞘の後方にある機関部のレバーを引けば、じゃこンと重々しい駆動音を立てて、発射の準備は終わるらしい。折り畳まれていたグリップを引き出し、セレクタはセミオート】
【然らば矢張り念ずれば現れて撃てるような銃よりは相応に小難しい代物でもあった。触れあうように揺れる銀髪からは、硝煙と煙草、それでも香油の香り】


「それじゃあ試しに撃って御覧なさい。 ─── 半自動式だから、撃てば次の弾は勝手に装填されるわ」


【手近な壁に配されていたコントロールパネルを操作すれば、 ─── 数m先に、ぱたりと立ち上がる、金属製のマンターゲット】
【バレルには申し分程度のアイアンサイトが付属してはいたが、それでも狙うには難儀するかもしれない。だというのに全長は長く、持ち手はその片側のみにあり】
【重心バランスは全くもって劣悪であった。 ─── それでいて、存外に軽いトリガーを引くならば、全く凄まじい反動である。手の中で何かが炸裂した、ような】


739 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/08(木) 00:02:59 BRNVt/Aw0

【大衆食堂『Freak Fes』の一室】

【従業員が利用するその部屋の隅。仮眠用に設えられたベッドの一つ】
【毛布に包まれた白い物体が蠢いて】
【少しだけ固まって、そうして勢いよく半分起き上がる】

【月白色の肩まで伸びた髪にデニムのワンピースを着た少女、だった】
【酷く慌てた様子で辺りを見回して】
【暫く固まっていたかと思えば】

……そっか……私……


──リュウタくんに迷惑かけちゃったな……
【金色の瞳を揺らしてポツリ、と呟いて】

【ぴょこ、とベッドから降りる。足元が一瞬ふらついて踏鞴を踏むが頭を勢いよく振って】
【脱がされていた紺色をしたローヒールのストラップパンプス。それを履いたならば傍らに置かれていた携帯端末と生成色の大きめのキャスケットに少しだけ目をやって】
【これはもういっか、なんて呟いてそのまま出口に向かおうと歩き出して】




/予約です!


740 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/08(木) 02:48:03 mrRim2CU0
>>585
【その話の一言一句を、カニバディールは己の記憶に焼き付けていく】
【飢えた獣の如く貪欲に。耳で転がし、脳で味わう。それでも、自らの手で妖怪を捉えようなどという気は】
【後に耳にすることになる、櫻の国の更なる動乱、魔導海軍・ヨシビ商会・そして希代の悪女の三位一体の悪夢の前に、霧散することになるのだが】

なるほど、そういった専用装備の充実もあるがゆえと……社章、ですかなそれは?
確かに、そうした効果が込められていてもおかしくなさそうな、特徴的な意匠ですね……

【まじまじと水鶏が指した社章を眺めると、どうにもその目に見透かされているような】
【不気味な気配を感じて、やがて三つの視線は逸らされる】


その周辺への放火もあって、我々の手口と似ていると疑われたことは覚えていますよ
しかし、夫の前妻の子だったとは初耳ですな……ドロドロとした事情のようで

【残念なことに、そういった話はいつの世もありますな、と水鶏の共感を示す言葉には頷いて見せる】


そうでしたか……先ほどのお話も、阿片婦人のことだったのですね
まさか、このような形でかの大物と似通っていたとは、何とも数奇なものです

それは災難でしたな……希少妖怪ともなれば、準備にも相応の時間と労力を割かれたのでしょうに
しかし……あれだけのことをしでかし、ヨシビ商会さんにも間接的とはいえそのような被害を与えて
ただで済むはずもありませんが……その〝リューシオ〟という犯人がその後、どうなったのかは噂を聞きませんな


741 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/08(木) 08:15:30 smh2z7gk0
>>736

ああ、まぁそうだね。私の目的はそんなところかな。
向こうで死ねば向こうの一部さ、二度とここには戻ってこれない。〝意識〟があるからこそここに戻れる。


【ギンプレーンの疑問に肩を竦めて少し温くなったダージリンを飲みながらそう答える。】
【どうにも淡々とした物言いだが、つまりはそういう事なのだろう。】


【―――ふと、ガラス窓の向こう、人々がひしめく雑踏の中に眼が行くかもしれない。】



【―――そこには――――――〝灰色の葉〟が――――――まるで踊るように舞っているのが見えるかもしれない。】
【しばらくすれば風に乗ってどこかへと運ばれていく。】




【※種子 (しゅし、〈たね〉)※ 】
【植物には基本的に移動能力がない。ある場所で種子が発芽をすれば、そこに一生とどまるのが基本である。】
【従って、種子が好適な場所に到達する何らかの手段がなければならない。種子にも移動能力はないので、種子の散布は何か外の力に頼らざるを得ない。】
【そのためそれぞれの植物は、何かに頼って種子を散布するための方法を発達させてきた。 】


【あるいはそれは〝アポレイヤ〟にとっても同じ――――――。】



さて、中々よい会合が出来たから私はそろそろ失礼しようかな。まだ何か質問は?


742 : ギンプレーン&ディー ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/08(木) 10:19:57 .5UuW1y60
>>741
【雑踏を眺める……そこに見えたのは気のせいなのかどうか】
【ギンプレーンは得心行ったとばかりにOHと大袈裟に嘆くようなリアクションを取って見せた】

それはあの灰色の木の種子をこの世界に持ち込むための手法ということかな?
ボクは意図せず運び屋にされていたと?
HAHAHA、こいつはしてやられたネ!

【憤慨するところなのだろうが、男はパンパンと手を叩いて笑っていた】
【どんな感情だろうと笑うことでしか表現出来ないのが、この男なのだろう】

……さて、だがアレをINFオブジェクトに定義したいならもう一手間が必要だネ。

驚異の度合いはともかく、現時点では正体不明の怪物でしかない。

INF財団が何のために存在していたのかと考えるのなら……その代替をボクらにやらせようと言うのは少々役者不足さ。

……ボスは役立たずだけど、プロフェッサーならもう少し詳しいことを話せるかも知れないなあ。
まあ言ってもボクらは枠組みを壊す側だからサ!


ああ、でもアポレイアと言う名前はイイね。
実に分かりやすい。

【マリアベルは目的を果たして帰るつもりらしい】
【何か質問は有るかと問われると少し考えて】


うーん、そうだな。



ロールシャッハテストって……どこの誰が考えた手法か、知ってるかな?


743 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/08(木) 13:29:40 S/DUh6T.0
>>724

【不遜な態度の黒陽を前にし、イスラフィールは静かに微笑む、ある程度想定していた反応の一種の様であって】
【尚且つそれは、心地よい響きをも携えていた、政治家にとって冷淡な言葉ほど、聞きなれた音律もないのだから】


"結末を予測できていたのではないか" 、という問いに関して答えるのでしたら、私は "Yes" と返答致しましょう
かのシステムに関して言えば私は存じておりました、 "水槽の脳" と表現されるべきメインシステム
私はその破壊を命じていましたが、その実、件のシステムを破壊する事は現時点での能力者達では "不可能" とも思っていました

ただ、万が一を考えてはおりました、だからこそ私はブリーフィングの段階で "メインシステム" と曖昧に表現しました
能力者達の認識に、前提を加え入れる事を是としなかったからですわ、結果的にはあまり効果的なものではなかったのですが

けれども、それだけで私が、ロールシャッハに利する存在であると断言するのは尚早ですわ


【彼女は言葉を区切った、次に語る言葉の意味を噛み締める様に】


"能力者達が水槽の脳を認識する事" 正確に言えば、"ロールシャッハのメインシステムが水槽の脳であると認識する事"

それが他ならぬロールシャッハへの対抗策になり得ると、私は考えているのです


【真っすぐに見つめなおした、眼鏡の奥の瞳が曖昧に揺れる】


認識によって定義される世界への対抗神話とは、その世界を別の認識によって固定する事に他なりませんわ
それ故に私はあのストックホルムにて、水槽の脳を認識 "させた" のです、たとえどう取り繕うとも
表面上ロールシャッハが振る舞った事は別にして、その内面ではきっと彼もまた苦渋の決断をしたのですわ


では、ロールシャッハの真なる目的がどのようなものか、それを私の口から述べる事はできませんわ
なぜならそれもまた、誤った認識を生み出す可能性を持つのです、私が過ちを伝え、それを認識されるのも構いませんが
貴方達が真実を知りたいというのであれば、それはまた間違った選択になるのでしょう


主観世界の認識を覆す事は、世界を騙す事に他なりません、私は一度盲目的な世界を謀りましたわ
けれどもロールシャッハはそれを是としません、必ずや再び、自らの計画の下に、正しき認識を描こうとするでしょう


私のした行いは大きな賭けですわ、けれども、それは決して部の悪い賭けではないと、信じております


744 : ◆jw.vgDRcAc :2018/11/08(木) 21:06:04 uV74NcTY0
>>452

【悲嘆に暮れるとまでは行かないものの、夕月や世の中の状況を聞くにつけ暗澹とした感情が無いと言えば嘘になる。】
【それを見透かされたように言葉を添えられると、ほんの少しだけ安心する。……ほんの少し、だけど】
【希望が無いわけではないのだから、今はそれで良しとしよう。最悪の状況は、免れたのだから。】
【まだ小さく狭い希望に過ぎないが……しかし、その小さなきっかけこそが大事な事は、よく知っている。】
【ほんの少しのきっかけが、後々に大きな意味を成す。その事は、自分もよく知っているつもりだ。だって】
【目の前にいる彼が、その良い例ではないか。自分はほんの少し、彼に言葉を添えただけ。何か行動を起こしたわけではない。】
【けれど、そのささやかな言葉が彼にとって大きな意味を成した。種の一粒から、幹を成して花開くように。】
【きっと、現状の小さな希望も後々大きな意味を成すだろう。彼の命を賭した行動が、間違いではなかったと示すように。】

……貴方が成した事も、きっと大きな意味を持つはずです。
ふふっ……ええ、どういたしまして。貴方が遺した未来は、あなたの分まで私が見届けますとも。

【そっと、微笑みを返す。悲しい表情を向けるよりは、その方がずっといいと思ったから。】
【そして、三つ目。……まあ、そうだろう。彼ならそう言うと思っていたが、やはりレグルスの事だった。】
【義理堅い彼の事だから、当然の願いだ。―――しかし、それは同時にとても難しい願いでもある。】

―――……

【生きる意味さえも失いかねないような事態に陥る恐れのある人を、軽々しく支えるとは言えない。】
【彼女はしばし考えた。彼を自分は支え切れるか?自分には彼の心の揺れと向き合うことが出来るか?】
【しかし、どれだけ考えても拒否するという選択肢は浮かばなかった。―――見捨てられるはずがなかった。】

……こんなことを言うのは、烏滸がましいかもしれませんが。
私は、彼の命を救いました。だからこそ、最も彼に命の使い方を説けるのは……私なのだと思います。

―――分かりました、引き受けましょう。
それはきっと難しい事なのでしょう。でも……きっとそれは、私だから出来る事ですものね。

【考えたが、迷いはしなかった。我関せずと見捨てるなんて選択肢は、どれだけ考えても浮かばなかった。】
【かつて命を救ったのだ。その命の使い道を説くのは、きっと自分が適任だ。ゆっくり、深く頷いて】
【彼の事を、微力ながら支えると約束した。大丈夫、任せてほしいと言わんばかりに柔らかく微笑んで―――】

//いえいえ、大丈夫です!というかこちらこそ遅れてすみません……っ


745 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/08(木) 21:07:22 WMHqDivw0
>>738

【「ご、ごめんなさい……」 窘められれば委縮するのは年頃の少女じみて、】
【けれど手にする凶器の重さがそれを否定する。彼女もまた人殺しであったなら】
【いっそあどけなくもたどたどしい手つきだって、そのうちに、馴染んでしまう】
【誰かを殺すための手管が洗練される。――今更そんなこと、嘆きやしないけれど】

【――――かといって。密着されるような姿勢でひとつひとつ教えられるなら】
【誓って「そういう」趣味はないと言えど、鼓動のひとつだって跳ねてしまうものだった】
【こんなに大きいのに柔らかい。いい香りがして――説明が耳から零れ落ちそうになる】
【のを、慌てて取り押さえながら。ひとつひとつ頷いて、とりあえずは構えてみる、けれど】

…………あ、っと、……うわ何これ、ぶれる、ぶれます、これ!
これ片手で扱わなきゃダメですか!? えっ無理でしょ、どうやって狙えばいいんですかこれ、
えっと、えっと――――ああもうっ、ここかっ!? ――――――――――ッッ、

【ゆらめく銃口に喚き立てながらもとりあえずは的に向けて、向けたらまたずれて、直して】
【そしたらまたよろめいて、ぶれて、……そういうのを何回か繰り返して。しびれを切らしたのか】
【ある程度ブレが少なくなった時点で引鉄を引いてしまう。この子は存外に大雑把な人間であるらしく】

【――――――――――で、あるなら。        (銃声)    のち  (ごとん)】

……………………………………っづァ、ア゛、…………いっっっった…………
えっ嘘、ぐぅあ…………いだあぁあ…………っ、アリアさん、アリアさん…………、
わ、わたしの、私の肩、外れてませんか、もしかして、……めちゃくちゃ痛いんですけど、ォ……

【弾を吐き出した銃口が地面に降ろされる。杖をつくような姿勢。そのままよろめいて、膝立ち】
【そうして、だけど、鞘を握り締め続ける腕の――肩のあたりを、しきりにもう片方の手でさする】
【無理もない、かもしれなかった。これだけ細っこい小娘が、それだけ反動の強い銃の引鉄を引いたなら】
【……脳内で勝手に思い浮かべる赤髪の娘に対する恨みだって勝手に強くなっていくばかりだった。だって】
【「反動? ないない。だってマジカル銃だしい」 とか、ヘラヘラ笑いながら言っていたのを思い出すから】
【とにかく顔を顰めまくっては歯を食いしばって、痛みを訴えるのだった。こんな調子でやってけるんだろうか、とも思いながら】


746 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/08(木) 21:59:36 WMHqDivw0
>>739

――――――――――起きたんだね。
けどまだ駄目だよ、急に意識を失ったんだろう?
よっぽど疲れていたか、最近眠れていなかったか――それか、
そのどちらもかな? それならば猶更だ。

【少女が出口に向かう前に。扉の外から足音を聞きつけたか、誰かが声をかけて】
【それからノック、三回。――ゆるしが出てから外から開ける、その向こうには】
【線の細い青年がいた。跳ねっけのない灰色の髪、穏やかな色合いの翠眼】
【なまっちろい肌に黒縁の眼鏡まで合わせて、何から何までひ弱そうな、青年だった】
【だけど、この場に居るのなら――加えて制服らしき給仕服を纏うなら。その正体は、】
【少女と同じく「ひとでなし」だとわからせるのだろう。そうして、彼は部屋に入ってきて】

……銀ヶ峰、つがるちゃんだったかな。リュウタの友達だってね。
櫻の子かい? 僕もね、髪も眼もこんなだけど……櫻の血が混じってるんだ。
姓は切添、名はエレイン。切添さんとでも、エリィさんとでも、好きに呼んでくれないか。

【片手で持った盆の上に乗せた水差しと、グラスをテーブルに置いていく。慣れた手つき】
【それからやっぱり慣れた調子で音もなく水を注いだなら、つがるに差し出す。また微笑んで】
【水は冷たすぎず、かといってぬるすぎもしない温度に保たれていた。――僅かに薄荷と柑橘が香る】

そうだね、まずは――何があったかを聞く前に。飲み物、何かほしいかい?
なんでもいいよ、コーヒー、紅茶、ココア、緑茶、レモネード、牛乳……
温かいのでも冷たいのでも、どっちでもいい。レモンもミルクもなんだってつけるし、
砂糖だってシロップだっていくらでも入れていいよ。……どうかな、なにか、欲しい?

【最初に訊くのはそんなことだった。腐っても給仕であるのなら、一番最初の仕事はそれだから】


747 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/08(木) 21:59:58 6IlD6zzI0
本スレ>>108

【この部屋に鈴の音がなるものは無い筈だった――なのに不意に聞こえた鈴の音】
【それは嘗て触れた深淵――その名はウヌクアルハイ――に似て、けれど恐怖も戦慄も無かった】

【位相の違う存在にできる事なんて無いと知ってるから、
 ―――絵画にて大火を描いたとて現実を脅かす燎原の火には成り得ない。そんな認識だった】

【意識の片隅に置いた認識。それを引っ込めて、今はかえでに意識を傾注させていけば】
【自身に委ねられた身体から伝う静かな叫び声めいた要望に応えてやるんだった――さっきよりもっと頭を撫ぜる】
【委ねられた身体を強く抱きとめる所作は、今にも消え入りそうなかえでを必死に留めてるようにも見えた】

【気を紛らわす程度にしかならない行為は、エーリカの無力と同じ。故に悔しさから歯噛みして】
【沈痛な面持ちへと変わっていくなら――無い筈の鈴の音に苛立ちをぶつける他無かった】


―――……わかんないよ、そんなの。一緒に死ねないのだって、他のやつが死んだときに同じ場所にいないのだって。
そんなの当人の能力不足以外の何でもない。この世の不利益は当人の能力不足が殆どだから。
死にたきゃ勝手に死ねよ。何なら私が殺してやっても良い。苦しいならサクッと殺してやるのが情けなんだろうし。

けど、私はそんな言葉で片付けたくないし、かえでを、大事な人を殺したくない。

確かにさ、能力を持っていようがいまいが望んだ結末を掴めない事の方が多い。
それは己が半生を以て痛感してる……。けど、それだけじゃないだろ。

アンタが無いほうが良いって思ってた能力のお陰で、ジャ=ロやエカチェリーナと対峙した際に
アリアを護れただろう?意図して無いだろうけど私を含めた他の奴等だってそうだ。

だからさ―――何か出来たかも知れなかった、じゃないんだ。既に何か出来てるんだよ。
だめじゃないんだ、駄目じゃない。………だから自分から自分の事を無価値だと断じないで。
そして誰かと一緒に死ぬ事を正しいことの様に思わないでくれよ……。

生きてしまったなら、ソレにはきっと理由があるに違いないんだからさ………。
(そうであって欲しい。じゃなきゃかえではきっと死を選ぶに違いない…ヤだよ、そんなの)


【かえでの言えぬ/癒えぬ病巣は心に深く深く根を張っていて、故に言葉と行動を併せても】
【その傷を癒す事は出来ないのだろう――きっと、傷だらけの心にまで届かないから】

【だから―――希う。かえでではなく、鈴の音を鳴らす神様に】

【"傷ついてボロボロになって壊れてしまいそうな私の大事な親友を救うきっかけを寄越せ"】
【"天に踏ん反り返って俯瞰してるだけのお前でもそれぐらいの小さな手助けぐらい出来るだろうが"】
【"お前が助けないなら、お前に代わって私とアリアで助けてやる――それぐらいの我侭聞き入れてくれ"】


748 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/08(木) 22:16:25 WMHqDivw0
>>743
【イスラフィールの言葉に澱みはない】
【まるで予め考えていたかの如く、"綺麗過ぎる"答弁だった】
【小煩く騒いでいたのが嘘のように、男は流れる水のような返答を聞き――】


【確かな確信をも得る。なるほど、ロールシャッハが"女狐"と評したことだけは真実のようだと】
【この決して交渉事に向かない尊大な男がこの場に呼ばれた理由はたった一つしかない】

【――科学者と政治家は、何か相性悪いからだ】


判断に必要な情報を何一つ渡さず、金の看板で"不自由な二択"を迫る――大した政治家振りだ、イスラフィール。
だが、貴様もロールシャッハと何一つ変わらん。
どのような力でも行き過ぎれば、最終的には同類項の結末に至ると言う、これは教訓であるな。


――くだらん。


【マリアベルはイスラフィールを善性と評した】
【ギンプレーンもそれに乗り、彼女は現時点では悪意を持っていないことに賛同した】

【だが、それでも男はイスラフィールの言い分を一蹴する】


比ぶれば、黒幕の方がまだマシな未来を描いて見せたろうよ。
誤った認識を生み出す?
間違った選択をする?

結構ではないか。例えそれで世界が認識の袋小路に追い込まれようが、貴様に"正しい認識"とやらを選んで貰うよりも余程に納得が行くだろうよ。

貴様はこう言っているに過ぎん。

「お前達を正しく導いてやる。黙ってチェス盤に乗り、決められた動きだけをしろ」とな。



【仮に】
【仮に彼女が、ロールシャッハの悪しき台本を打ち砕くために善性を以て策を講じていたのだとしても】
【そのために同じく台本を描いて能力者達を駒として扱うので有れば、彼らに取って"水槽の脳"と何ら変わるものではないだろう】
【果たして、彼女がINF財団の設立者だと言うので有れば、その思想にも納得が行くと言うものだ】




【そうして男はホログラムの中でヒラヒラと紙を揺らして見せた】
【そこは、丁度リーイェンとボスが会話のネタにしていたはずの内容が記載されている】


これはディーの手から盗んだものだ。
奴には似せて書いたニセモノを渡して置いたが――これも一種のペテンだとも、イスラフィール。


これの意味するところを貴様は分かっていて渡したのかね?

"そう"ならば、貴様とロールシャッハは――――グルだと認めたも同然ではないか?



あの男、"ゴーストライター"のように。


――それとも、それを認め得ないために、ロールシャッハと敵対しているのか?


749 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/08(木) 23:05:12 BRNVt/Aw0
>>740

【相手がまじまじと飾りを見つめつつ質問をすると水鶏は、まあそうですねー、と返す】

ジュージカ?っていうんでしたっけ?此方の国々だと宗教的なシンボルにそんなのあるじゃないですかー
それにちょっと似てますよねー
社長ってもしかして此方系の人なのかなー……ま、社長の事誰も見た事ないんでどんな姿かも分かんないんですけどねー
【あはは、と笑って彼はしめて】
【ヨシビ商会の社長──確かに彼ないし彼女は姿を見せる事がなくその正体は謎のベールに包まれている。故に『山を突くような大男』だとか『車椅子の老翁』だとか『豊満な体つきとすらりと伸びた肢体を持つ修道女服の乙女』だとか様々な憶測が飛び交っているようで】

それはそちらも本当に災難でしたね……犯人がわりかし早く自供してくれたから良かったものの、そうじゃなかったら……
まあそんだけ恨まれるような別れ方をしたんでしょーねー、その夫と犯人の母親が……円満離婚じゃなかったとかー、略奪愛だったとかー、或いは……

──父親が何もかも放り出して逃げた、とか
【不意に声のトーンを低く、真面目なものにする水鶏。けれどもすぐに元のトーンに戻って「……なーんて」と言って笑う】
【先程の境遇も似ている、という言葉から察するに彼も親とは何かあったのだろうが真相は読めない】

そういう事です
まあ今回の件が滞りなく終わったからこそこーやって笑って話せるんですけどね

うーん……時間と労力、はどーなんでしょーね?相手方が御所望だったのは死体でしたし、あの時はうちの社長秘書が事前に『たるひ猫』のいる山知っててそこに行ったらしいし掛かった手間は山狩りくらい……なんでしょーかね?俺そん時狩り担当じゃなかったからなんとも……あの時はそれに付随した緊急の別件の方向かってたから商談の場にも立ち会ってないですし……
【うーん、と唸る青年。ぽろっと口に出した『たるひ猫』というのがその希少な妖怪の名前なのだろうか?恐らくは聞いた事のない名前だろう】

【そうして話が阿片婦人殺人事件の犯人の処遇に及ぶと青年はからりと笑って】

まあ、あれは俺達が手をくださなくても水の国の御上がどーにかしたんでしょう
何せ警察幹部にまで顧客がいた売人を殺したんだし、彼女の"リスト"を目にしていた可能性だってある
取り調べと称して酷い折檻でも受けて殺されでもしたんじゃないですかねー?
……まあ『そういうところに切り込める何か』が水の国にいるんならあるいは、ですが……


750 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/08(木) 23:09:13 BRNVt/Aw0
>>746


──ひゃっ!?
【不意に扉の外から掛けられた声。少女は驚いて小さな叫び声をあげて】
【そうして扉をノックされれば、慌てて手近にあった自分のキャスケットを被って、少し吃りつつどうぞ、と返して】
【開いた扉。その先にいた青年をじっと見る】

【単に『リュウタくんのバイト先の──『Freak Fes』に勤めている"ヒト"』なんだと思った。リュウタは確かに自分も人間ではないと言ったがFreak Fesの面々もそうであるとは言っていなかったから】

……え、えと……リュウタくんから聞いたんですか……?
友達……んん……そうなのかな……二回くらいしか会った事ないし……
櫻……はい、北の方の生まれで……はい……切添、さん……
【御迷惑お掛けしました、とキャスケットを押さえつつ深々と頭を下げる。そうして頭を上げたタイミングで水を差し出されれば目をぱちくりとさせて】

【何か飲むかと聞かれれば「え?え?」とひどく狼狽えてしまって】

えっ、あっ……お、御構い無く!すぐ出てきますんで!本当に!
その……御迷惑お掛けしまして本当に!
【わたわたと慌ててまた頭を下げるが再び踏鞴を踏んでしまって】
【あーうーなどと唸りながら頭を振る】


751 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/08(木) 23:16:47 arusqhls0
>>748

【 ──── 挑発的な問いかけであった、黒陽の言葉は大抵に於いて間違っていて、その実この場に於いては酷く正しいのだろう】
【グランギニョルの催しの中で、多くの出来事が流転する、意地悪な神が手がけた目論見は、その多くがいとも容易く行われ】
【それは時に元の認識を失ってしまった、──── かつてのジャ=ロの言葉を借りるのであれば、そう ──── 】


【 ──── 我々の認識は汚染されてしまったのだと】


私は不必要な仮定を取り除いたまでですわ、 "オッカムの剃刀" の意味を貴方様ならば深く存じ上げておられて?
策士を気取る訳でも、軍師を気取る訳でもございません、ただ私は "伝えるべきでない" と判断したのです

言うなれば之が私の縋る "最後の対抗神話" です、例え神であったとしても、私の神話は覆させません


【彼女は毅然として言い放つだろう、見据える双眸に揺らぎは無かった、受け取られ方など最早存外に伏して】
【水と油であった、それでも不愉快を微塵も表情に出さない、その内面を図るには不十分な程に】
【けれども互いは互いに利用価値を見出しているのもまた、真実なのであろうから】


──── ええ、分かっています、そして "改めて" 申し上げるのであれば、私はロールシャッハと敵対する者です
私の能力 "Lost Memory Wonderland" ──── 司るのは "記憶" ──── 読み取ったロールシャッハの記憶から
私は彼の考えている結末を、 "知ってしまいました" ──── だからこそ、それを阻止するべきと思っていますわ

そしてその結末を "認めてはいけない" ──── それが私の行動理念にございます


752 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/08(木) 23:34:04 arusqhls0
>>714

【最初にヨシビ商会と手を組む事を考えたのは "道賢" であった、この時点で妲己に取っては慮外の参加者であったのだろう】
【然し彼女はその直後から、ヨシビが持つ可能性を精査した、──── 即ち、自身の計画の中に組み込む為に】
【艶やかな仮面の下で笑う、悪意がほくそ笑むその姿は、お伽噺よりも質が悪い】


──── 成程ねぇん、その "みらいちゃん" が逃げちゃったから、道賢ちゃん達は直ぐに行動ができなくて
その予備や、次の艦の為にも、ヨシビと手が組みたかったのかしら、ふふん、妲己ちゃんったら一つ賢くなったの
あらあら、道賢ちゃんも中々悪い子ねん、命を足蹴に使うのが、権力者にとっての戯れなのでしょう

悪徳の栄え、悪辣の芽生え、悪意は永久、悪事を擡げ、──── ニンゲンの行いなんて、古今東西変わらないわん


【するり、と絹糸を剥ぐ様に、彼女はその身を滑らせて、二揃えの悪意の前へと躍り出る】
【道賢の語った新たな企み、幾つかの謀りに彼女は心を揺らして、──── 描くのは幾許かの未来】
【一つ二つと舌先で精査したなら、その意味合いに何処も乱れさせずに】


良いわん、道賢ちゃんは "水面下" で動くのがお似合いよん、妾が見せるのは、あくまではっきりとした景色だもの

妾の手先と、道賢ちゃんとこの "工作員" と、──── そうね、それと悠玄ちゃんの駒を借りて
前にも伝えた様に "水の国" でクーデターを起こしてしまいましょう、表向きは "対魔制法" という名目で

それを "友軍" である "魔導海軍" が鎮圧に当たって、そしてそのまま駐留するの
水の国の治安維持だかをお題目にすれば、今の腰抜け政権は否応なしに頷くでしょう、そして



──── 真綿で首を絞めるようにじっくりと、張りぼての都会を吸い尽くしましょう



【古来より変わらぬ侵略の方法であった、それは然るに、最も効率の良い手段とも言えた】
【不安な情勢の外国に付け火し、消火するという理由付けから合法的に派遣をする】
【──── テロ対策などといった耳障りの良い言葉も付け加えられる、──── 単純だが効果的とも言えよう】


753 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/08(木) 23:34:34 arusqhls0
>>752
/安価に>>722も追加します


754 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/09(金) 00:12:04 BRNVt/Aw0
>>722 >>752

【道賢の話は続く。人工生命は既に完成し、そして逃亡してしまったのだと】
【そこでヨシビ商会の出番、との事。みらいが見つからなかった時の為、または後続の魔導イージス艦製造の為、妖怪を調達して欲しいのだと】

「……うむ、快くお請けいたしましょう!我々の仕事が此の国の発展に繋がるというのならば幸いというものです」
【満足げに頷く悠玄。一方で秘書の善弥の方は道賢が魔力回路移植による能力付与の話を出した時から微笑をたたえ何やら企んでいるようで】

【するりと進み出る妲己。その口からクーデターを企てる言葉が出れば悠玄の瞳がより一層輝いて】

「それはそれは……何とも良い計画で……お任せください。駒でしたら……そうですな──」
【呟くと悠玄は傍らの秘書を見遣り】

「善弥よ……聞いておったな?闇狗共を出してやれ」

畏まりました、社長
【秘書の少女は恭しく一礼すると少し考え込み】

……とはいえ何時もの姿ではバレてしまいそうですねー
変装をさせていた方がそれらしいでしょう……妲己様、蘆屋様、何かこのような変装が好ましい、などといったものは?
【何処からか筆記具を取り出し尋ねて】


755 : 名無しさん :2018/11/09(金) 00:16:29 DPtiHD/20
>>747

【――――、けれども、今度は、足音はしないのだろう。それは、"そう"するための影響力がもはやないと言うことなのか、それとも、】
【たとえばそれはふとしたきっかけて力を得てしまったいじめられっ子の仕草。力を振りかざすことで初めて、自分が自分なのだと宣言することができた子から】
【もしも、その力を奪い取ってしまったなら。そうでなくとも、何らかの理由で、その力を喪ってしまったなら――、――】

【――頭を撫でられるなら、少女はいくらか安堵したようだった。それだけでなく、抱きしめられた身体の感覚が、伝わる体温が優しいから、どこか母に甘える子のように】
【泣きつかれた喉を誤魔化すように。それでもまだ心はちいとも落ち着いていないみたいに。ただすんすんやるのを繰り返すのだろう、その肩口に顔を埋めて、ひたすらに息をする】
【そうして現世に抱き留められていた、――手を離したならそのままふわっと消えてしまいそうな風船の予感はそのままでも、彼女自身、ここに留まりたいってきっと願うなら】

――――――――――――――――っ、う、ぁ、――あ、ぁ。
――――――――嫌。――やだ、よ、お、しにたくない――、――――――――――。こわいの。嫌……、やだ――嫌――。

【小さくひきつる吐息、いやいやして揺らす首は、きっと、そんなこと言わないでほしいという懇願なのだろう、結果として限りなく"そう"だったとしても】
【それに、どうしようもなく、"そう"であった。家族を助けたかった時に能力は使い物にならぬ練度。そして、神様を信じ抜きたかった時に、彼女は、勝てなかった】
【結果として家族は居亡くなり、神様も死んでしまった。たとえ鈴の音の幻聴へ耳を傾けるのだとしても、それは、関係のないこと、そしてきっと彼女には聞こえていない】
【そういうものだった。――エーリカは一度"彼女"の戯れを観測したから。その延長線上の出来事なのだろう、と、思わせて】

――でもっ、でも、私、もう、アリアさんのこと護れない、――っ、あのときだって、――ッ、アリアさんのこと、止められなかった、!
…………意味なんて、――私の意味。なんて、アリアさんと居ること。だけなの。なのに。今の。私じゃ――、――――、こんな、わたしじゃ、

【きっと気づけば彼女は震えていた。――死にたくないだなんて。何人も殺してきたくせに。今更過ぎた。だからもう彼女は死ぬしかない、はずだったのに】
【狼を好きになってしまったから。狼に見初められてしまったから。たったのそれだけで生きる機会を得た。だから生きていた。だのに。だのに、――今の自分は相応しくないから】
【戦えない子を誰も飼ってくれなどしないだろう。それは即ち生きる権利すら喪うのと同じだった。現実に結果が収束するだけだから。そんな風に、受け入れられなくて】

【――――――――「ねえ」、なんて、小さな声、】

――ウヌクアルハイ様、なんて、嘘だったの、かな、だったら、私たち、みんな、……わたしは、なんの、ために、

【(わたしはもうその神さまじゃないから、あなたを助けてあげられないの)】

――――――っ、ひぐ、ぅ、っ、うあぁん――、ごめんなさい……、ごめんなさぃ、ごめん、っ、、ひ、――っ、あ、ぁ――。

【ずうっと目を逸らし続けてきたこと。ただ信じてい/られ/たときには覚えもしなかった疑念が形になった時、絶望と同じ色で咲いてしまったなら】
【結局神様は何もしてくれないのだろう。そもそも本当にそこに居合わせているのかさえも、分からなかった。ただ本当なのは、その腕の中で震えて泣きじゃくる少女の体温だけで】
【周りのことなど気にせず走り続けていたはずの少女は、あんまりに致命的に転んでしまって、初めて周りを見渡したに違いなかった。そうして見る世界は、なんて、なんて、】
【ほんの服すら悲しくて仕方ないみたいに彼女はぎゅうぎゅう縋るのだろう。でないと"どこか"引き摺りこもうとしてくる不可視の概念に勝てないみたいに】
【――だからきっと初めてだった。正しいって思い続けた自分が、本当は正しくなかった、なんて、認めてしまうのは。自分のしてきたこと、言ってきたこと、――全部、だなんて、】


756 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/09(金) 00:45:43 WMHqDivw0
>>751
知っているとも。
先日、私はレッドへリングをインスタンス化し、"INFインスタンス"とも呼ぶべき擬似的な虚神を構築してみた。
それ故にいくらか理解したこともある。

無数の仮定はたった一つの真実を希釈し、より"それらしい"解釈を真実と誤認させる。
故に無作為に増やすべきではない。


――だが、虚神に関してはそのロジックは覆される。
仮定は必要なのだ。
あらゆる仮定と可能性で、語り得ぬものの逃げ道を塞ぎ尽くすことが、打開策に成り得る。


何故ならば、INFオブジェクトのもたらす真実には"後付け"が許されるからだ。
故に――閉ざした真実は"ロールシャッハに利する"ことになる。


それがこのグランギニョルの用意したゲームのルールであるからだ。



【そう、認識は汚染された。この虚神達との戦いに身を投じた能力者達は、意図せぬまま、ゲーム盤の上に立ち、そのルールを理解しようとする内に――】
【盤のルールから外に出ることが出来なくなった】


ジャ=ロを知っているか?
奴は実に優秀な演出家であり、有能な虚神であったが――"INFオブジェクト"としては失敗作だった。
奴の存在そのものが"虚神の限界"を定義してしまったからだ。

故にロールシャッハは、ジャ=ロを自らの手で殺さなければならなかった。
能力者達が"自力で殺せる"のだと教えてはならなかったのだ。

それがロールシャッハの思惑なのか――誰の思惑なのかは知るところではないがな。



――さて、貴様の立場については、認識しておこう。
場合によってはその対抗神話――否定しなければならんことにもなるだろうが。


貴様が、"理由が有れば嘘を吐ける"人間だと知れただけで収穫としておこう。



――ところで。


ロールシャッハの記憶を辿って、貴様は恐怖しなかったか?イスラフィール。


757 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/09(金) 01:07:25 arusqhls0
>>756

【続く言葉にイスラフィールは沈黙した、表情の水面に映る波紋は、確かな彼女なりの驚愕を示していた】
【一瞬一瞬が切り取られた絵画の如く、而して黒陽が語った理論は、あまりにも荒唐無稽で、──── だからこそ】
【真実足りうる確かな可能性をその中に内包していた】


────……信じられませんわ、──── ですが、そのロジックは ──── 確かに、一縷の可能性を秘めていますわ
けれども、──── あまりにも皮肉的と言わざるを得ませんわ、苟も貴方様は研究畑の御仁でしょう
そうであるならば、貴方様が辿り着いたその結論は、貴方様自身を否定する可能性をも秘めていらして



──── ふふ、いいえ……違いましたね、最初にもう貴方様は言ってらしたもの
"実数だろうが虚数だろうが、理屈と論理で証明出来ぬものはない。" ──── と


出鱈目を書ききったキャンパスに余白が存在しなければ、それは最早語り尽くしたという結論に陥る
あまりにも広がりきって膨らみきった理論は、偶然か必然か、──── 確かに物事の全てを説明するのですわ
白紙に落ちた染みは "何でもなく" ────そして "何とでもなる" と

──── ジャ=ロの顛末をそう解釈されたのですね、ですが、その内容もまた道理としては通っていますわ
抽象的な概念が、具体的な現象に縛られてしまった結果としては、──── 典型的とも言えますが


【続く言葉にイスラフィールは瞑目した、──── そして僅かに震えた声で彼女は紡ぐ】


恐怖しなかったと言えば嘘になりますわ、ロールシャッハの "記憶" は、あまりにも、そう ──── あまりにも
……私は恐ろしかったのですわ、この世界が描いた "未来" が、そして、────



──────── "私" が描いた "未来" が





                    ──── 未来を知っていれば覚悟が出来る、それが真の幸福だと嘯いた神父が居ましたが




   とんだ出鱈目ですわ、 "知っている程恐ろしい事" など、他に存在しませんのに


758 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/09(金) 01:44:04 WMHqDivw0
>>757
無論だ。

【黒陽は胸を張って見せる】
【己の生き方に背くことなど何一つしていないと言わんばかりに】

従来の考え方に縛られる事ほど科学の足を留めるものはない。
嵯峨野が見出したロジックは非科学的などと嘯く者達もいるが、現実に起こっているのならば、そこには論理が通っている。

"虚構現実"は現実ではないなどと、揚げ足を取るなよ。全ては"現実"に違いはない。それが白昼夢だろうが、幻覚だろうが体験した事象には必ず因果が有るのだ。
そこに私自身の実存など何ら関係はない。

それに今更言うまでもあるまい。
未知の事象の解析はまずあらゆる可能性を洗い出すことから始めるものだ。


【ジャ=ロは――結局のところ、誰一人として能力者を殺せなかった】
【事のほとんどを自らの思惑通りに運び、巡礼の旅におけるインシデントで自らの概念を強固にして、それでも尚】

"死"と言う概念は反ミーム性が強過ぎるのだ。
多少の理屈はもっともらしく説明されれば納得出来る人間でも、指を差して「お前は死んだ」と告げられてそれを受け入れられる者は多くはない。
つまるところジャ=ロは、この基底現実においては、死ねと言われれば容易に死んでしまうほどに脆い人間しか殺すことが出来ず――奴の手管は、人間の精神を追い込み、その状態にまで持ち込むことにこそ真価が有った。

そしてウヌクアルハイには――白神鈴音が必要だった。
それが能力者達に万能の神と言うルールを飲ませるための鍵だったからだ。

たった一人で組み上げた"最強の神"など、ただの巨大な化け物に過ぎん。
既存のウヌクアルハイを捨てると決めた時点で――奴の敗着は決まっていたのだろう。

突然方針を転換した理由までは分からんがな。


同じ理屈はアナンターシェにも言える。
世界全体に影響を与えるほどの概念が力を発揮出来るほど、当時の基底現実のミームは脆くはなかった。


そして――ロールシャッハの目論見が未だ根強く残るこのミームをどう取り込むかが目下の課題と言えような。
条件付けはそこそこに厳しいものだ。先の二柱の失敗を織り込んでいるのならば、取れる手は当然に――絞られる。


【それは仮定であり、可能性であった。たった今言った通り】
【黒陽の手法は徹底的に有り得る可能性を定義して潰して行くこと】
【対策まで逐一考える必要はない。理解さえできれば当然のように戦えるとこの男は決定的に信じている】


【最後の問いは思ったよりもイスラフィールの心を震わせたらしい】
【男の質問の意図は別に有ったのだが。――思ったよりも、大きな反応をしたものだから】


例えば、だ。
巨大な隕石がこの星に落ち、明日には確実に世界が滅びるとして。
貴様は、世界が滅びる瞬間まで隕石が落ちる事実を知りたくないと言う手合いか?


759 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/09(金) 01:57:29 arusqhls0
>>758

【徹底的にして周到な言葉であった、それでいて論理性は一貫していて、それでいて奇妙な因果を含んでいた】


──── 目から鱗ですわ、その発想が出来たならば私も、その様な道を志したのでしょうが
私はその様な傑物では無かったというまでです、然るにヒトの上に立つ存在にしかなれなかったのですから
現実に脚を付けて、未来を願う、──── 無垢な信仰の祈り手ほど、哀れな者も無いでしょう


【黒陽の論理を聞いてイスラフィールは組み立てる、ジャ=ロの起こした顛末と、現在の理屈をと】


ジャ=ロのインシデントの失敗と、アナンタシェーシャの失敗と、──── 私はそのインシデントを直接目にした訳ではありませんが
前者にも後者にも、有ったのは僅かな可能性ですわ、それを極限まで増大させた結果が、あの結論なのでしょう


【して、続く言葉をイスラフィールは躊躇った、──── 決して理解されぬ感情を伝えるようにと】


ふふ、言い得て妙ですわ、──── けれども敢えて言葉を付け加えるのなら、そうですね
その隕石がこの星に落ちる原因が "自分にあったとした" ならば、状況はまた変わるでしょう?

私の未来が世界を滅ぼす手助けをしたとして、──── 貴方様はそれを知りたいと?
それを嘆き行動したとして、その結果が如何になるのかも分からない状態で、藻掻き続ける、と




──── 盲目である事は恥ではありませんわ、それは一種の逃避なのですから
本当の "恐怖" とは、知る事から始まりますの、貴方様に理解していただけるかは、分かりませんが


760 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/09(金) 02:19:16 WMHqDivw0
>>759
貴様が言う通りに全く理解はできんな。
自身が原因ならば尚更、知らなければ始まるまい。

例え、結末が避けられなかったとしても知らぬまま座して待つよりも遥かにマシだとは思うが?


【黒陽の理屈は別段、特別なものではない】
【恐らく能力者達に聞いて回ったところで、同じように答える者は少なくはないだろう】


【そう、そこなのだ。イスラフィールが真実を握ったまま向かう方向は、他の多くの能力者に取って望まぬ経過であることも容易に想像がつく】
【故の批判、故の非難で有ったが――それでも彼女を説き伏せることは出来まい。説得は全く得意ではないのだ】


闇雲にもがく訳がなかろう。
整然とルールを把握し、回避策を見出すのだ。
世界の道理の外にルールがあるならば、その仮定で理解しろ。
それが何十何百層と外側に有ったとしても全てを追いかけろ。

時間が足りんのなら時間を作れ、技術が足りんのならば技術を学べ。

全ての対策をやり切った上で、それでも避けられんのなら、諦めがつく。
そこで初めて、世界が滅んでも仕方ないと思えるのだ。


761 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/09(金) 02:31:58 arusqhls0
>>760

【──── 故に彼女は沈黙を保つ、何故ならば其れは彼女の思う "最善の未来" へと辿り着く術なのだから】
【彼女に黒陽程の優れた発想は無かった、それ故に執る手段は、能力者達にとって、あまりにも "慮外" ──── そして】
【過度に秘密主義的とも言えた、肝心な内容を明かさず、それを是とする事、──── だが】



──── ならばこそ言いましょう、私を "信じて欲しい" ──── と、



【彼女は確かに恐怖した、けれどもそれは "過去" の話であった、彼女は既に、自らの思う突破口を描いた】
【その点に於いて誤解があったのだろう、見据える双眸は静かに ──── 決意の水面を滲ませて】
【平行線上の理屈であった、黒陽と、イスラフィールと、互いの信念も信仰も、きっと合わないだろうから】


一連の催しで私達の認識はすっかりと "汚染" されましたわ、信じることの弱さを知り、知謀の前に屈したのです
けれども、──── それで私達は私達にしかできない、その高潔な行為を棄てる事ができるのでしょうか
祈りはあまりにも無垢で、だからこそ届いたのだと私は思っていますわ、それが幸せかは分かりませんが

貴方様からすれば私の行いは、理解するに値しないものなのでしょう、或いは理解すらできないと
しかして、私には私なりの考えがあり、私なりの論理があり、そして ────


──── 私なりの信仰がある事もまた、真実なのですわ



勘違いをなさらぬ様、 "ストックホルム" でのインシデントは、私は "成功" したと思っていますわ
私達は "水槽の脳" を認識してしまい、そして、 "水槽の脳" を認識 "できた" のですから



何処までも続く謀略の彼方に、穢れきった認識の果てに、──── それでも真摯に信じる事
虚な世界の虚な理論、世界すらも疑ってしまう戯れの中に、僅かばかりでも残っているのでしたら





──────── どうか私を、信じて




【終幕が近いのだろう、予定されている時間をとっくにオーバーしている】
【彼女が応えられる言葉も残り少ない、──── その中でどう判断するのか】


762 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/09(金) 02:48:14 WMHqDivw0
>>761
イスラフィール……

【イスラフィールの言葉は真摯であった】
【無礼極まる、黒陽の対応にも精一杯の誠実さを以て男の土俵で会話を続けた――傍から見るならば、どちらに善性が有るかなど明白なのだろう】
【その上で、全ての前提を置いた上で、彼女は口にする、"信じて欲しい"と】


断る。


【だが、男はもう徹底して空気が読めなかったし、読む気すら全く無いように思えた】


物証も論証もないものは信じない。それは私の絶対のポリシーだ。
世界が滅びようと私は私のポリシーを曲げんし、曲げろと言うなら世界が滅んでも構わん。

大体、私は次のインシデントに顔も出さんし。
そこまで暇ではないのだ。


INFインスタンス創りが思っていたよりも面白かったので、まだルールが残っている内に、楽しんでおきたい。

時期に、創れなくなるだろうからな。


【黒陽はしっかりと未来を見据えているようだった】
【この戦いは"終わる"ものだと、認識している】


信じて欲しいのなら実績値で話をしろ。
結果のない言葉に意味がないのは、政治の世界でも変わるまい。


"水槽の脳"が正解だと言うのならば――私は客席で観ているとしよう。
塗り潰され続けた余白を探し続けた染みが、最期にはどこに行き着くのかを。


763 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/09(金) 15:12:43 6.kk0qdE0
>>752>>754

「全く持って、その通りで御座います妲己様」
「こと妖魔、こと妖怪の捕縛に関しヨシビの右に挙がる結社は御座いますまい、さすれば、この繋がりは自然な事……」

【ここで問答する妲己に向き直り、その顔には極めて喜びの表情を露わとした愉悦の笑みを浮かべて】

「いえいえ妲己様、権力者等とは滅相も御座いません」
「この国において、その愉悦は妲己様にのみ許されし特権、私めはただ……」
「ただ、極めてこの国の発展にとって良き事の、合理的手段を選んでいるに他なりません、そう、極めて合理的な……」

【やがて、するりと華麗に、流麗に、極めて自然な身のこなしと所作で】
【かつ妖艶さを保ったまま2人の前にて、計画を語る、それはまるで、遊びについて話し合う女児の様に、極めて楽しげで】

「委細了解であります、奥方公」
「なれば海軍は、諜報とプロパカンダの道に長けた陸戦隊員を揃えましょう」

【国を一つ奪う、壮大にして確実なマッチポンプ戦略】
【そのヴィジョンは明確に見えて】
【それは、ヨシビ商会の目にも明確に見えた様で】

「流石はヨシビ商会、やはり、対妖魔専門の戦闘部隊がいましたか」

【くつくつとした笑み交じりに、こう言って】
【異能、魔力の塊である妖魔や妖怪を捕獲するのだ、やはりそう言った、戦闘集団の存在は考えてみれば当然なのだろう】

「やはり……悠玄殿はかくも一流のお方だ、秘書殿は我が元に欲しい程に有能な」
「服装、見た目、言動は……やはり分かり易く狂人である方が良いでしょう、大衆の目にも分かり易く狂った悪の能力者を仕立て上げるのです」
「一様に、極彩色の服に同じく極彩色の三角帽など如何でしょうか?顔も極彩色の目出し帽で隠して……」

【善弥の疑問に、満面の、しかし口元のみの笑みで答え、こう二者に提案する】


764 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/09(金) 21:01:30 IIkXTD5Q0
>>745

【ひとたび少女に銃把を握らせたのならば、それ以上の補佐は不要であろうと、そっとアリアは離れて ─── 然るに】
【その銃口に凡そ不慣れで不釣り合いな揺らぎを見出すならば、幾らか狼狽えた表情を浮かべて、改めて少女へ駆け寄るも、遅し】
【 ─── 二連装の銃身から放たれる、12ゲージ強装弾の同時射撃。たとえ熟練した射手であっても生半な姿勢では肩を痛めるに相違なかった。まして銃爪を引くのが少女なら】


「 ……… ごめんなさい。」「ちゃんと支えておくべき、だったわね ……… 。」
「 ──── 見た限り、五体は満足よ。」「肩の骨も、外れてはいなさそうね?」


【自身の不行届きな監督を侘びて、膝をつく佳月を抱き締めるように、 ─── 痛めたであろう肩口を、慰めるように撫でやる】
【それでいて脱臼の有無は確認しているのだからこの手の処置には手慣れていると見えた。そうしてまた、射座の向こうを見遣るなら】
【 ─── 哀れ人型を象った標的板は、見事に首から上が千切れ飛び、首から下も清々しい程のスイス・チーズ。威力としては確かに不足ないものであったろう、が】


「 ───……… マズルブレーキをしっかり開いておかないと、相当にリコイルは大きいみたい。トリガーも、もう少し前にあった方が、扱いやすいかしら」
「全くこんなもの、どういう神経してたら貴女みたいな子に拵えられるのかしら ──── 。」「 ……… 何だったら、このまま連中に突き返しても、いいのよ?」


【いささか間の抜けた痛苦に耐える佳月をそっと己れの身体に預けさせながら、トリガー周りの出力装置を操作する。すればバレルの発炎機構が蠢いて】
【 ──── 「これで、多少は撃ちやすくなるとは、思うけれど。」トリガー自体も、長い鞘の半ば程に位置を調整されていた。持ち上げれば、先ほどよりは余程に構えやすく】
【無機質な室内灯に照らされて尚も眩しい程に白銀の長髪が、佳月の肩口を撫でやった。やや陰を落として覗き込む白皙と碧眼は、少なからぬ焦慮に満ちて】


765 : ◆3inMmyYQUs :2018/11/09(金) 21:34:37 nHxGsN220
>>706

【亡骸の膚のように冷えて、静かな夜であった】

【夜空の暗黒と、海の漆黒】
【二つの闇を隔てる水平線】

【その彼方から伝播してきたであろうさざ波が、】
【舷(ふなべり)に突き当たり、ちゃぷりと跳ねる音ばかりがする】


【人々の死に絶えたかのような静寂の中】
【遠くの岬に佇む一つの灯台だけが、粛々と灯光を転回させている】

【この衛星測位システムの全盛となった現代では】
【今やそれを標にして航路を取る者が、どれだけいるのかも知れないのに】

【そうした些事には構わず、ただ淡々と】
【時計回りに明かりを灯し続けている】

【そうした、数里先から微かに届く、文化的にも朧気な光束が】
【広い甲板のある一角を、撫でるように照らしては、過ぎり、再び照らす】

【その延々たる繰り返しの最中で――ふと】

【――“ぴたり”】
【まるで何かを思い出したかのように】
【灯台の回転が、凝然と、停止した】


【――かと思えば、ほんの一息の後には、また動き出す】

【ただしそれは先までとは逆に】
【反時計の回り方で】

【再び、相変わらずの儚い光束が】
【甲板の一角を撫でるように照らし、また過ぎる】

【寄せては返す波のリズムで】
【光を当てては、再び闇に閉ざす】


【 “       ” 】


【――そのとき、そこには何も存在していないはずであった】
【ただ冷たい夜気ばかりが立ちこめていた、葦屋の数歩ばかり後ろを】


【  “        ”  】


【光が過ぎったその一瞬だけ】
【何かの人影が照らし出される】

【何かの見間違いか、あるいは量子的な誤謬であるかのように】
【もしくはフィルムの一コマごとに、存在と消滅と繰り返しているかのように】

【光と闇の狭間に、いつからかその女は立っていた】


  未来が、知りたいんですか?


【上下の一切を純白に染め抜かれた、水兵服の姿がそこに浮かび上がった】
【黒のおさげ髪。童のように円らな瞳を、大きな丸眼鏡の奥に据わらせて】
【あたかも宇宙の開闢以来不変であるかのような、柔な微笑みを顔に固定していた】


【後ろ手を組み、上体を小さく横に傾けて】
【古い友人との会話の続きを始めるように葦屋を見た】


766 : 765 ◆3inMmyYQUs :2018/11/09(金) 22:05:33 nHxGsN220
/あっ微妙に字が違う!
/×葦屋 ○蘆屋
/道満さんの方でしたね、失礼しました!


767 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/09(金) 22:05:46 6IlD6zzI0
>>755
【姉と慕うフェイ=エトレーヌが口にした言葉を不意に思い出すエーリカ】

【"カミサマなんざ天で胡坐かいて、踏ん反り返って祈りを捧げる馬鹿共を嘲笑うだけのゴミに過ぎねえよ"】
【"だからアタイは偶像にまで至ったカミサマには縋らない。祈りも願いも一笑に付せられるのが関の山さ"】


【確かに祈りは届かない。ただ其処に在るだけで何にもしてくれない】
【寧ろ祈る者から願いと望みを掻っ攫っていくんだから、姉と慕うあの人の言う通りゴミでしかない】
【尤も、エーリカはウヌクアルハイの現状を知らない故に。無力な存在に成り下がった事を知らない】


――――……、ごめん。ひどい事、言った。
誰だってさ、死ぬのは怖いもんな。私だって、死ぬのは怖い。
だからごめん。そんなつもりで言ったんじゃないんだ……。


【抱きとめた身体から伝うのは、複雑に絡まった感情】
【絡まったそれを一つ一つ手繰っていけば、一番に強い感情――生きたいって言う願いに行き着いて】

【その感情を手放さないように、抱きしめる力がより強くなって。それは"生きる事を止めないで"って】
【励ますように、縋るように。"―――、他のやつが死を望んでも「私たち」はかえでに生きて欲しい"】
【吹けば遠いどこかに消え去りそうな少女を必死で留めようとしたなら――懺悔めいた慟哭が産声を上げる】


――――、少なくともウヌクアルハイが嘘だった、……なんて事は無い。
現に私はあのへび様とやらに触れたんだからそれは間違いない。決して嘘なんかじゃない。

―――――、アイツだけじゃない。私だってかえでの側に居る。
アリア一人に生きる意味を押し付けないで……。私もかえでにとっての生きる意味になりたいんだ。
戦えないから護れない、なんてのは単なる一面でしかない。

戦う力を失ってしまったなら、信じた自分を見失ったんなら―――せめてアリアの帰る場所として在り続ければいい。

戦う力が無くなったから護れないってのは間違いだと思うんだ。
あいつの帰る場所としてあり続けるのもアリアを護ることに繋がるはずなんだ。

それに私だってあいつに比べたら微力かもしれないし、生きる理由としては弱いかもしんないけど。

それでもっ、ああ、それでもさ!同じ死人同士、痛みを負う者同士――あんたの寄る辺になりたいんだ!
だから―――今は、私をぎゅっと掴んでて欲しい。……親友を失いたくないから、アリアの悲しむ顔を見たくないから。

【"―――今は、かえでの全ての感情を受け止めるから。かえでを支えるから、居なくならないで…っ"】
【祈りの灯は、願いの音へと形を変えて。かえでの慟哭や絶望を真正面から受け止めていたなら、きっと自分の胸が軋む】
【それでも構わない。だって、親友を失う痛み、類友であるアリアの絶望を見るよりは格段にマシだったから】


768 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/09(金) 22:24:07 WMHqDivw0
>>750

【室内で帽子を被っている姿を見てきょとんとする。それから慌てた顔を見て】
【何か合点がいったように――ああ、と、笑うのだ。黒革の手袋に包まれた指先】
【中指で眼鏡を持ち上げて、それからその手で――自身の口の端を引っ張る】

【――――ニンゲンの犬歯にしては明らかに鋭すぎる、牙。それが、そこに、生えていたから】

…………っと。こういうことだよ、つがる……僕は「吸血鬼」。
だから安心してくれていい、ここにいるスタッフは皆、「ひとでなし」だ。
何も隠す必要なんてない――とは言っても、どうしても見せたくないなら、そのままでいいけど。

そうか。櫻と言えど広いからね、北のほうはまた文化が違うんだろうなあ――
……僕は昼との混血でね。暮らしてたのはそっちだったから、実はあんまり櫻に詳しくはないんだけど。
それでも菓子は他の国のより、櫻のものがいっとう好みだよ――生クリームがさ、苦手で。
嫌いというわけではないんだけどこう、量が多いとさ、うえっとなっちゃう体質でね――――

【ぱ、と手を離して、つらつらと話し続ける。それはつがるをこの場に引き留めたいという思いと、】
【単につがるを落ち着かせたいという思いと、ふたつの目的あってのことだった】
【おかまいなく。そう言われても、少しだけ困ったような顔をして――やっぱり、笑って】

迷惑なんてとんでもない。寧ろこっちがお願いしたいんだよ、もう少しここに居てほしい。
じゃないと――リュウタが悲しんでしまうんだ。君が元気にしているのを見ないときっと、
彼は安心できないだろうから……ね。もう少し落ち着いて、また彼と話してから。
帰るのはそれからにして欲しいな、それか、…………ああ。

そうだな。…………爺の茶飲み話に付き合ってくれは、しないかな。
君にここに居てほしいのは僕の我儘ってことにして。……どう、それなら負い目は感じない?

【もう一度同じ質問をする。「飲み物、何がいいかな」 ――意外に強情な気質であるらしい】


769 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/09(金) 22:39:25 WMHqDivw0
>>764

【ぉあぉあ呻きながら、俯いて垂れ下がる白い髪の隙間から――的の惨状を目に入れるなら】
【なるほど狙いはそう細かく定めなくても「なんとかなる」のだと。わかりはすれども】
【……それ以前の問題だともよくわかっていた。だって一発撃つたびこんなになるなら、意味ないし】

よ、よかった……はずれた肩、入れるときのあの感触、好きじゃなくって……。
それはそうとして痛いのは痛いんですけど、ぉ……うう。この調子でやってけるのかな……。
やっぱり最初はハンドガンとかから、文字通り肩慣らししたほうがいいのかな、とも思うんですけど……

【そんな感触好きな人間なんていないだろう。それはそれとして、そういうこと、多々やったがことあるらしい】
【ならば彼女はやっぱり、戦場に立つ人種なんだとわからせる。たとえ細こい少女だったとしても】
【であるなら――よろめきながら立ち上がる。肩をさすりさすり、はあ、と息を吐きながら、渋い顔をして】
【撫でられる感触に少しだけ顎を引いて、「ありがとうございます」。一言零しつつ、頬に朱を差して】
【他人と肌を接触させるのにあまり慣れていないらしい。刃越しにならいくらでも、肉を、こじ開けられるのに】

…………でも。なんでしたっけ、あの……鞘として使うときの、あれ。
抜刀の加速? ……居合みたいになるんでしょうか。あれはちょっと――興味があるんですよね。
今まで、鞘とか、扱ったことなかったし……。……そっちも試してみていいですか?

【「もうちょっと痛みが引いたら……」 消極的な、しかしその中に希望が捨てきれていない声色で】
【訊ねてみるのはそんなこと。どうあっても少女は刀を扱う人間であって、銃よりもよほど手慣れているのなら】
【銃そのものとして扱うよりも、そっちのほうが興味の対象になるらしい。ましてや今までやったことない技なら】
【ちょっとくらい。憧れめいた感情を抱いていたのかもしれない――櫻の時代劇とか、彼女は、好きだったから】


770 : 名無しさん :2018/11/09(金) 23:15:03 .bqA9UJ.0
>>767

【もとより、――彼女の場合、きっと蛇を信じたのは、生きていていい場所が欲しいから/自分が居ていい場所を見失ったから、――死にたくないから】
【自分が蛇に呪われた子だから。だからみんな死んでしまった。だから蛇の神様に赦してもらいたくて。そのためなら死んでしまいそうなことだって頑張ってきた】
【ほとんど使い物にならない能力をひどく生存に特化させて生き残った。自分の心も考え方も一滴まで煮詰めて、誰より正しく生きてたら、きっと、赦してもらえるって信じて】
【死にたくない/生きていたい/居場所が欲しい/――自分はここに居てもいいって言う認識の欠如。そして今それがまた揺らぐなら、少女はどうしようもなく恐怖するばかりで】

【――エーリカの言葉も気持ちもきっと届いていた。だのに、受け入れないに違いなかった。そんなに器用ではないと思わせた。だってそうだったら(きっと蛇を信じなかったから)】

――――――――――――じゃあどうして私のこと助けてくれないの? ――たすけて、くれなかった、私、ずっと、ずっと――なのに――。
わたしのこと、――怒ってない。なら。私は。――――ねえ、私、なんのために、――――っ。狡い。ずるいよお、私、わたし……。どうして……。

【ゴールを知らずに走るマラソン。もし救われたなら、それは走り抜いたっていうことになって。救われないなら、それは、走るのが足りないってことになって】
【だのに後から知らされるに、そもそも走る理由さえなかったと言う。耐えた痛みも、殺した誰かも、いろんなこと、ぜんぶ、ぜんぶ、――"無駄"って言葉で説明できるなら】
【そのくせ彼女は明確に蛇の神様に救われていた。アリアによって喚ばれた神様に助けてもらっていた。――だのにその神様の名前は違うから、違う、って、言うしかなくて、】
【――ならとんでもない我儘を言っているのに等しくて。だけど、どうしたらいいのか、きっと分からなくて。してきたこと、に対する理由が勘違いだなんて、やっぱり信じたくない】

【(これは正しいことだから、って、信じて、自ら毒を飲み干した苦しみも、)】
【(これは正しいことだから、って、信じて、自ら手を下した誰かたちの死に顔も、)】
【(正しいことだからって何度も何度も何度も自分に言い聞かせて信じ込んで。信じ込んだから出来たこと、していたこと、全部、全部、ほんとはしなくても良かった、なんて、)】

【(ちいさいちいさい赤い肉の欠片。まだヒトの形なんてしてなかった。泣くはずなかった。神様の見守る神聖な儀式で授かった子は、蛇の神様の祝福を受けた子だから)】
【(その魂が無垢であるうちに神様の元へ行くことが最も幸せなことなんだと言われて、胎から引きずり出した子。子。子。――頭の奥がくらっとした、)】

――でも、でもっ、ありあさんは、――っ。正しいって思ったら、自分だって、燃やしてしまうの、ねえっ――、待ってるだけ、なんて、嫌だよ――ッ、
帰ってこなかったら、どうしたらいいの、――――――あぁ。もぉ。なんでだろう――、私、どうして……。怖いの。怖いよぉ――、……。

――――ねえ、エーリカさんは、あんな人、好きになっちゃ、だめですよ……? 誰かに、こんなふうにするのだって、だめ――。
――ひどいよ、私の、ぜんぶ、駄目にして、だめにしたのに……。ひどいよぉ――。………………。

どうして、――どうして、エーリカさん、は、――、死んでしまったの?

【――ならば結局言葉は堂々巡り、どうしようもなかった。ひとたびどんな自分でいたらいいのかのビジョンを見失ってしまえば、かえで、という人間はひどく脆くて】
【一緒に戦えない自分は要らない。だけれど待っているだけは怖くてできない。――あの人は、自分を燃べてしまうことの出来る人だから。ぎゅう、と、指先に力がこもるなら】
【やはり"こんなふう"に誰かを手に入れたらいけない。絞り出す声が伝えるのだろう。たくさんの情念に塗れた声だった。嫌いになれたならどれほどいいか、語る力もなく】
【どうしようもない好きで吐息をまぶすなら、――「私みたいに、――」、或いは、どうしようもない傷口同士を擦り合わせてなにかに耽りたいみたいに、――舐め合う、なんて、生ぬるい情動ではなく】

【ともすれば動作を伴わない性行為の誘いに似ていた。だから限りなく自棄っぱちな声。アリアへの"好き"がなければ、きっと、そのまま抱いてほしいって泣き縋ったはずの、声にて】


771 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/09(金) 23:20:46 BRNVt/Aw0
>>768

【きょとり、としてそれから破顔。そうしたかと思えば口の端を引けばそこに見えたのは長い犬歯】
【吸血鬼なのだ、と青年は語って】
【その言葉に少女は目を丸くする】

皆……人間じゃ……ない……そう、だったんですか
【ゆっくりと帽子を脱ぐ。そうした先にあるのは髪と同じ色をした猫の耳。ついでとばかりにスカートの裾からこれまた月白色の猫の尾ものぞかせて】

私は……父親が人間で……母親は『たるひ猫』っていう櫻の国の北の方の化け猫の固有種です
化け猫と人間の間の子っていった方が早いんですけど……


私がいた所は……なんというかすっごく田舎で……山里だからっていうのもあるんでしょうけど……天ノ原とか桜桃に比べたら多分地味で……行ってもつまんない所だと思います
え、えっ……と……
【一つ返す、がそれでも止まらない話。困ったように視線をさ迷わせてしまって】

【もう少し此処にいてほしい、と言われればでも……なんて口ごもって】

リュウタくんってば、そんな気にしなくても良いのにな……やっぱりあの傘、惜しいのかな……下手に死なれたら返して貰えなくなるって……
【持ち歩いてれば良かったかな……なんてずれた事を呟いて】
【茶飲み話に付き合ってほしい、と言われれば、うぅん……とやはり困ったように唸って】

……仕事、大丈夫なんですか?というか私がいたら仕事の邪魔になっちゃうんじゃ……
【おずおずと相手を見上げる】

【それでも、相手が良いと言ってくれたのならばだったらというように先程まで寝かされていたベッドの端に腰掛けるのだろう】
【飲み物は、あくまで最初に渡された水で良い、とばかりにコップに入ったそれを受け取って】


772 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/09(金) 23:22:32 E1nVzEpQ0
>>769

【然るにやはりアリアも、 ─── 単なる未熟な教え子として対している訳ではないようだった。佳月の語る経歴を知らぬ訳でなく】
【それを黙して裏付ける確かな剣筋を信ずればこそ、任務にて背中を預けてもいた。羞じらうような仕草には、微かに目を開いて】
【 ─── 苦笑のように息を漏らして、それ以上に何をする訳でもなかった。「リコイルの小さなものなら、幾つか心当たりもあるのだけれど ─── 。」】
【ガンロッカーから引き出された何挺かの小火器が机上には並べられていた。試してみたければそうするといいと、無言のうちに】


「貴女の得物であるのだから、私に尋ねなくてもいいのよ。」「 ─── 刀の扱いは、私も長けている訳ではないし」
「元より試製であるならば、後は何れだけ遣い込むか、でしょう。幸いな事に、発展性は高そうな代物のようだしね?」


【剣術に際してアリアは言葉通りに門外漢だった。精々が着剣した小銃による銃剣格闘についての習熟程度であり】
【コンバットナイフ以上の長物を扱う機会は、彼女の異能を勘案した上でも決して多くなかった。故に、】
【自由にやりなさいと命じるならば、 ─── 室内訓練に適したキルハウスの入口には、試し斬りに適する標的も立てられていた】

【解説書を読むに、抜刀の補佐を行う際には射撃機能は封じられるようだった。トリガー付近のセレクタを加速に設定した上で】
【刃を納めて銃爪を引くならば、本来なら銃弾の射出に利用される発射ガスが鞘内に誘導され、代わりに刀身を射出する ──── 理論的な説明としては、そのようなところ】
【ならば反動はともあれ、その剣閃も弾丸と同じく遷音速域に近付くのだろうとさえ予想させた。或いは刀を敢えて握らず、至近にて柄先を撃ち込む用法もあるだろうか】
【何れにせよアリアは幾らか距離を離した場所で見守っているようだった。 ─── 少なくとも教え子の振るう剣戟には、少なからぬ感興を覚えるのだろう】


773 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/09(金) 23:38:23 WMHqDivw0
>>771

猫。たるひ、というのは初めて聞いたけど……そうか。
化け猫というと、猫又とはまた違った種族なのかな。興味深いな……
でも、緑が豊かな美しいところだと聞くよ。行ってつまらないところなんてそうそうないさ。

【興味のタネが尽きない性質でもあるらしい。それか単なる話好きか、おそらくそのどちらも】
【つがるがベッドの縁に腰掛けるなら、青年はテーブルに備えてあった椅子を引いてそこに座った】
【寝台にて、隣に座るほどの馴れ馴れしさはないらしい。水でいいと言われたなら少し寂しそうにしたけれど】

仕事なら大丈夫。今はお客さんの入りもまばらだし、他にスタッフも居るし……
……ふ、あはは。傘なんて気にしてないよ、リュウタは。もっと大事なことを気にしてるんだ、
君自身だよ。君に元気がなかったら、不安になってしまう。……男の子なんてそんなものさ。

【つがるのどこかずれた呟きを耳にするなら、軽く折った指を口元に添えて笑うのだけど】
【次の瞬間には、レンズの向こうの翠眼が真剣みを帯びる。けれど優しい色合いをしていた】
【幼子を気遣う親か、あるいはさらにその親めいて。諭すような音階、そして】

…………単刀直入になるけどね。どうして気を失ったりしたんだい?
最初にも訊いたけど、寝不足とか、疲れとか、そういうのがあったのかな。
それとも……何か不安で不安で仕方ないことが、あったとか。

【「なんでもいいよ、例え話にしてもいい、……とにかく話してごらん」。促すのは、ここに来た理由】
【すなわちリュウタに運ばれる羽目になった、原因について。……ひどく焦った表情をして、】
【つがるを抱えて店に帰ってきた弟分の顔を思い出すなら。気にしないはずがなかった、けれど】
【無理矢理にでも聞き出そうとするほどの強い語調でもなかった。とりあえず、何か、話してほしいって】


774 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/09(金) 23:52:49 WMHqDivw0
>>772

【少し経てば肩の痛みも治まってきたらしい。自分から口にした割には、新しく出された銃器には一瞥くれるだけで】
【ん、と喉の奥で転がすような、考え込む音を鳴らしてから――やっぱり鞘を手に取り直した】
【自分専用、と言われたなら、使いこなしたいと思うのも無理のないことだった。意地の強い少女だから】

そ、それでは――――

【新たな的の前に立って、片手に鞘。もう片方の手を下腹に置いたなら、そこから引きずり出すように】
【毒を孕む白銀の刃を引っこ抜く。ちらちら舞う花弁は今は周囲を漂わせておくに留め】
【まずは納刀。かちん、と音を立てるまで鞘に刃を収めたなら、低い位置に構えて、柄を握り締め】
【片方の足を引く。そのまま重心を落とす。灰青の瞳はまっすぐに、今から斬りつける的だけを見据えて】

【                  (かちん)          (閃く音)     】

【――――引鉄を引いた瞬間に。柄を握り締めた手が弾き飛ばされるような感覚がして】
【それに逆らうことなく腕を振るう。その先で踊る刀の先端は視認することができず、ただ、】
【白銀の軌跡を一本だけ、空間に曳いて――それも消えていく、音もなく、そればかりを見届けたなら】
【振り抜いた瞬間よりはずっとずっと緩やかな速度で、もう一度、鞘に刃を納め直す。もう一度かちん、と音が鳴って】

【その音と同時だった。ずるりと音を立てて、斜めに両断された的の上半分が、斜面に沿って滑り落ちたのは】

……………………。…………うわ、すご……これもまあ、腕、びりびりしますけど……
私、こんな速さで刀振ったの、……はじめてです。すごい、こんなに勢いよくやったら、
こんなになるんだ――普通に斬るのと全然違う。えー、すっごい……すごいです、アリアさん!

【「これで人を斬ったら、どうなっちゃうんでしょう」 ――ひどく物騒なことを言いながらも。的から視線を外して】
【今の動きはどうだった、と感想を聞きたげにきらきら光る眼はやたらと上機嫌そうだった。……腕は痛いらしいが】


775 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/10(土) 00:12:44 BRNVt/Aw0
>>773

大丈夫……なら、まあ……
【仕事の事なら大丈夫と言われればそう呟いて、かと思えば急に笑い出してしまったエレインに驚いてビクッとして】

え……そ、そういうもの……なんですか?そんなあまり話したりとか……わっかんないなぁ男の子って……
【むー、と呟きながら水を一口飲んで】

【そうして、何故気を失ったのか、何があったのかという話になれば彼女はそっと視線を膝に落として】

何から……話せば良いんだろう……
えっと……そうだな……

まず、なんですけど……私、二人友達が……私がそう思ってただけかもしれないけど……とにかく今は友達と称します……いたんです
それで……片方がボランティアやってて……でも……姿を消しちゃって……私ともう一人の子の二人で代わりをしてたんです……
でもある時彼女が不安になる言葉と共に姿を消しちゃって……その言葉が最初にいなくなった子を思い起こさせるものだったから……不安で……本当は何かあったんだって解ってた筈なのに……「私に押し付けてどっか行ったんだ」って荒れてしまって……
その後、彼女は帰ってきました……けれども連れ去られて酷い目に遭わされてて……私……知らなくて……助けにも行かないで荒れてて……だから……これからは彼女の力になろうって思ってて……
そんな時、彼女を連れ去った輩の情報を手に入れられる機会があって……勿論乗りました……これであの子の助けになれるんだって……!
でも……情報はよく分かんなくて……それっぽいものも他の奴に横取りされて……その上……あの子が実際どんな目にあったのかっていうのを口頭じゃなくて実際に知ってしまって……
私……私っ……!自分がどれだけ役立たずなのか分かっちゃったんです!あの子があんな目に遭わされてるのに何で助けに行かなかったんだろう、そんなんじゃ友達じゃないって……!
それから……あの子の顔……見れなくて……見たら自分の役立たずっぷりを再認識させられるから……
でも……知られちゃったんです……その子に……私が彼女がどんな目に遭ったのか知った事……バレちゃった……きっと……嫌われちゃったんです……
【ふふ、と少女は自嘲気味に笑って】


776 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/10(土) 00:19:29 6IlD6zzI0
>>770

帰ってこなかったら、か。(―――……ああ、それは考えてなかった)
待ちぼうけも辛いものな。……その辛さは想像しがたいけれど、きっと護れない辛さと同じなんだろうね。

だったら、私がアリアの側にも居てやる。私が死んだとしてもアリアをかえでの元に帰してやる。

アリアが己が身を焦がす様な真似を、投身自殺めいた事をしようとするなら全力で止めてやるし
かえでの癒えない傷にも寄り添って一緒に背負ってやる。……一人で背負うには、大きすぎるし重過ぎる。

何が正しいか解んないなら、何のために生きてきたのか解んないなら一緒に考えてやる。
神さまが助けてくれないなら、アンタの信じた神様に代わってアリアと私が助けてやる。
それじゃ、駄目かい?―――、きっと望む言葉じゃないんだろうけど、これが私の用意できる精一杯の言葉。


【自分が何を口走っているのか。その意味を理解できないほどには頭に血が上っていない】
【親友のために"公安五課"を、"黒幕"を裏切り、"外務八課"に身を置いてアリアとかえで。二人の側に居ると告げた】

【公安五課に身を置く以上、いつかは二人と敵対関係になるのは眼に見えて明らかで】
【かえでを護るどころか寧ろその逆。かえでたちに害なす刃にしかならない――ならば、公安を裏切るしかないのだ】

【その決断に躊躇いなんて無かった。裏社会に身を投じて、路地裏にうち捨てられた日】
【今にも死にそうなエーリカの姿が、異形の六眼たる墓場の王様であるギンツブルクの眼に留まった】

【ただそれだけがエーリカと公安五課を繋ぐ縁。酷く歪んだ縁は、断ち切ろうとすれば容易く、けれど断ち切り難い枷があったから】
【今日まで社会的死人として、国家の為の捨て石として死にながらに生き続けてきた。ある種の惰性でもあろう】

【―――】

【抱きとめる心から洩れ出るのは複雑な情念。言葉では語るに語れない縺れた感情】
【次第にそれらはある種の情動の様相を呈して、それは宛ら傷と傷を合わせる情交に似て】

【身投げめいたお誘いに、思わず泣きそうになってしまう――"捩れきった傷を負ったかえで"に対して】
【かえでの背後にいる銀色が無ければ、きっと二人は互いの境界線を曖昧にしながら傷を重ねて泣き/鳴き続けるんだろうけど】
【それをしないのは、アリアに対するとびっきりの不義理に思えてならないから。自分も負い目を感じることになるから】

【その代わりに出来るのはかえでを抱き留める事、あとは堰を切って溢れる感情に唇で蓋をする事だろうか】
【後、もう一つ。自分が死んだ理由を語って、死人同士の馴れ合いに花を咲かせる事だろうか】

どうして死んだかって?……離せば長くなるから手短に語らせてもらうよ。

かえでは家族を事故で亡くしたって言ったよね。私はその逆。

家族を自分の手で殺した。厳密には家族を失った私を引き取った奴等を殺した。
躾と称して、私を穢して犯して犯し尽くしたあいつ等に抗う為に。私が私である為にやつ等を殺した。
そんな奴に表の世界で生きる資格なんて無かったから、必然的に裏社会に身を投じることになった。

そうして、私は"死んでしまった"。人間・エーリカ=ファーレンハイトは人殺しの罪を背負って"死んでしまった"
ここに在るのは"死んでしまって"も"汚く生きてしまっている"社会的死人のエーリカ=ファーレンハイトさ。

【エーリカが語る過去の断片。それは短いながらも重い感情が載せられて。それを語る際の彼女は冷たく遠い目をしていた】
【本当の家族が自分を残して死んでしまい、引き取られた先で性的虐待を受け続けた。その果てに"そいつら"全員を刃物で惨殺して】
【その果てに光から闇へと転がり落ちてしまった。そんな構図と背景があってエーリカは社会的死人に成り果てるのだった】


777 : アルク=ワードナール ◆auPC5auEAk :2018/11/10(土) 00:29:03 ZCHlt7mo0
>>744

……そう、願いますよ。夕月が……そしてレグルスが、何かを繋いでくれる事を
――――手前が言うのも変かもしれませんが、やはり……良いものですね、こういうのも……
……絶望の深海に揺蕩うばかりが、絶対の答えと言う訳でも、無かった訳ですね……

【命を賭して成し遂げた事が、未来を繋ぐ。その様に、アルクは想いを馳せる】
【夕月には、『たんぽぽ』の子供たちがあるのだし、レグルスには――――何があるだろう。すぐには浮かばないが――――その生き様は、何かを成せるはずだ】
【それが、誰かの希望を連綿と繋いでくれるものだというのなら。自分の命がその礎になるのも、悪い気分ではなかった】
【その連鎖が、どこまで続くのだろうか。そこに心を預けると、不思議と心が綻んでくる。「生きている間」には、まるで思いもつかなかった事だ】
【絶望が、己のゴールとなってしまった訳だが、希望も、人の世にあっても良いものだと、今際の際である今なら言えるだろう】

――――相棒として、こんな事を言うのも変かもしれませんが……
奴が、最後に死ぬ事を選ぶなら、或いは、その全てを賭して戦った結果が死だというなら……別にそれでも良いんです
ただ、奴には半端な未練や後悔は、残してもらいたくない……。どうか、それを…………
生き延びて欲しいというのは、勿論思います。ただ、死ぬにしても、心から死んで欲しい――――犬死だけは、何とか、避けられれば……

【マリアの黙考の中、アルクはわずかに、思うところを補足する。レグルスには、ただ「生きて欲しい、命を繋いで欲しい」というのではない】
【――――「生き切って欲しい、命を全うして欲しい」。それがアルクの願いに、最も近い所だった】
【レグルスの一本気が、時に破滅にも直向きである事を、アルクは既に知っていたのだろう。そして、それも彼の生き方の1つの答えである事も】
【だが、時に人は迷妄し、時に予期せぬ事態に足を掬われてしまう事もある。まして、心に余裕がない時には、猶更だ】
【レグルスには、そんな無様な形で、命に転んで欲しくない。マリアには、レグルスに、「命を最後まで駆け抜ける」為の、サポートを頼みたいのだろう】

【そして、マリアがハッキリと受け入れてくれた事を認めて、アルクは心底からの、安らいだような表情で、深く頷いた】

――――――――ありがとう、ございます。何から何まで、面倒を掛ける事になってしまいました……そこは、本当に申し訳なく思います……
でも……我儘ついでに、もう1つ我儘な事を言うなら――――あなたがいてくれて、本当に良かった……

【後事を任せるにしては、不義理に、しかも多くの事を望み過ぎた。その事を、アルクも自覚しているのだろう】
【だが、それでも引き受けてくれたマリアに、アルクは言いようのない感謝を、自分なりの言葉で伝えて】
【――――自分の事を、真に生かしめてくれたのは、レグルスと、アルベルトだけだと思っていたが――――マリアも、きっと自分にとって「そう」だったのだ】
【本当だったら、その事にもう少し早く気づけたら、最上だったのかもしれないが。それは、詮無き事なのだろう】



【――――ぼんやりと、アルクの霊体が力を失っていく。いよいよ、最期の別れが近いのだろう】

――――この『ソウルレター』も、もう限界のようですね…………マリアさん、いよいよ、お別れです
ありがたいとも、申し訳ないとも、思いますが……どうか、これからの世界を、よろしくお願いします……
手前は……ただ、穏やかで静かな、昏い海の底で――――眠り続ける、つもりです――――――――

【徐々に、そのビジョンが解けていく。アルクの声も段々と遠くなって、その存在感が、存在そのものが、失われていく】
【――――何か言葉を交わすなら、これが最後のチャンスなのだろう】


778 : 名無しさん :2018/11/10(土) 01:01:30 .bqA9UJ.0
>>776

【――まして、その光景を目の前で見てしまったなら。目の前で愛しい人が、――ただ唯一の生きる理由でもある愛しい人が、自ら、その身を火に燃べてしまう瞬間を】
【見てしまった瞬間の少女の絶望的な叫び声、――あるいはエーリカも聞いたのかもしれなかった。母親の胎から生まれる前に引きずりだされる赤子がもしも産声を上げたとして】
【それと比べてなお絶望的だと呼べるほどの悲鳴。泣きじゃくってひたすらに怒り散らしていたのは現実逃避だった、あの日から本当は怖くて仕方ない】

【から、】

――――――、ど、して、そんな、こと、いうの? ――エーリカ、さん、だって、ワンちゃん、なのに……。
ねえっ、――だめ、だよ、――――怒られてしまうの、だめだよ――っ。それに、っ。やだ、よお、しんじゃ嫌――、アリアさんの代わりだって死んじゃ嫌!
もう誰も死なないで――、そんなこと、言わないで……。……置いていかないで。――――まもるから。私が……。――護る、からあ……。

【どき、とした。相手の言葉の意味合いを辿ってしまって、心臓がぎゅと握られるみたいに。――だって、そんなことを言ってはいけないって、分かっているから】
【紅茶とケーキくらいじゃ清算できない裏切りだって分かってた。――本来そんなのは命でしか支払えないモノ、ティータイムと引き換えにした彼女は、あの時すでに見失っていた】
【ひどく情念めいてエーリカの背中に爪を立てるのだろうか、全部の爪がぎゅうっと服越しに相手の肌を掴むなら、情事のあとより悲しげな赤らみ、残ってしまいそうで】
【その裏切りの言葉で貴女が傷つけられてしまうのではないかと怯えた。それに、――もう誰も死んでほしくなかった、ぐずぐずと引き攣る吐息が、懇願して】
【――(今の自分にはきっと出来ないって分かっているのに)、誓うのなら、やはり指に力がこもる。ならば味方でいられるなら、どんなにかいいだろう、それは彼女だってきっと嬉しく】

【だからこそ二人朝まで耽っていられたらよかったのに/そんなこと出来ないって分かっているから、ひどく迂遠な方法で、ふたり、癒される方法を探すしかない】

――――――――――――――――エーリカさん、は、きたなく。ないです。

【ぐず、と、水っぽい吐息をすすり上げて。少女はいくらか久しぶりに相手に顔を見せるのだろうか、ごく至近距離にて、睨むような目をして】
【――といっても、攻撃するためのものでなく。泣きじゃくって真っ赤に腫れた情けない目をせめて取り繕うなら、そんな風になってしまっただけ】
【つくりものの青い瞳。あの狼と同じ色をした瞳。――どうしてもそれだけは目を見て伝えたかった、らしかった。とはいえひどくぶさいくな顔をしてるって、分かってるなら】
【またぐずぐずやりながら顔を隠すみたいに――背中をうんとうんと丸めて、その胸元に頭を委ねようとするなら。すらと長い髪が枝垂れて、あまいあまいシャンプーの香りがする】


779 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/10(土) 01:11:16 6.kk0qdE0
>>765

【それは、静寂と言う名の無音の喧騒で】
【かつては星か灯台の灯りを導としていた船乗り達のが居た時代とは、今はもう異なる】

「……」

【1回転2回転毎に、灯台は甲板の上を照らし】
【そしてまた、過ぎ去る】
【そうして幾許か、過ぎたその後に、ピタリとその規則正しい動きは止まり】
【やがて異変の様に、光は逆に動き出した】

「いらっしゃいましたか……ようこそ、大和へ」

【そこには、甲板上には自分以外は誰も居なかった筈】
【だが、今そこには、もう1人】
【魔導海軍兵士では無い、水兵服こそを着ているが、違う存在】
【なればこそ、口元には喜びと歓迎の笑みを湛えて】

「はい、是非とも知りたい物ですね」
「そして同時に、それを欲しいと渇望します」

【散文詩の様な問答だが、お互いの疎通はお互いのみ計れるのだろう】

「報告文書では、婦警と呼ばれていましたね、曽根上ミチカさん」
「こうしてお逢いするのは、初めてですね、実に光栄な事です」
「魔導海軍連合艦隊司令長官、蘆屋道賢で御座います」

【こう名乗り、甲板上のその人物に近づく】
【歯車はまた一つ、灯台の灯りと同じく動き出す】


780 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/10(土) 01:35:27 6IlD6zzI0
>>778

【抱き合うよりも千切れそうな喉から絞り出たかえでの言葉――特に死なないで、なんて言葉と】
【情事の最中に刻まれる傷痕――強く深く掴まれる事によって咲く赤い華――に感じてしまうなんて】
【自分はどうしようもない罪深い業人なんだろう。けれども、それを嬉しく思うのは何故だろうか】


―――……怒られたって構わないさ。だって私は死人なんだから。
社会的にはもう存在しない生き物だから、首輪を嵌めた飼い主相手に噛み付いた所で何の否がある?

アリアの代わりに死んでもいいって言ったのは謝る、ごめん。
けどね、わんこだってね、首輪を付けてくれる相手は選びたいんだ。
かえでの側に居たいから、かえでを置いていく/逝くなんてのは御免だから。

私は、私の意志で公安って言う首輪を引き千切って、かえでの側に寄り添うよ。
置いてかれる苦しみは、さ―――私もよく知ってる。待ちぼうけの辛さもおんなじ。

――――、かえで。護られるだけじゃなくてお互い護り護られの関係で居られたら。
それはきっと対等な関係で、ぎゅっと離れない、手放さない、手放せない状況に違いないよ。
だから、かえでの側に居ても良いかな…、居させてくれないかい。


【一頻り言葉を紡げば、赤銅の瞳に人工の青色が映し出された。その青色は涙で酷く滲んでいたけれど】
【その美しさは損なってなかったから、睨まれた事に対して思わずばつの悪い表情を浮かべてしまう】
【でも、目尻は微笑んでいて。"やっと、こっちを見てくれた――かえで、かわいい"なんて眼で語りかけるんだった】


――――――…、ふふ、ありがと。かえでみたいな可愛い子に言われると歯が浮いちゃいそう。
―――……、すこし、体勢を変えよっか。……添い寝みたいな感じにしよう。
それくらいならアリアも許してくれるだろうし、かえでを余すとこなく抱きしめられるから


【起伏に乏しい胸元に押し付けられる頭の感触が愛おしいし、甘い香りに意識が眩みそうになって】
【それが原因か――かえでが拒まないのなら、二人は抱き合ったままベッドに倒れこんで横になって】
【互いに添い寝してる構図になるのだろう。それは、迂遠なれど許されるギリギリのやり方だったから】


781 : 名無しさん :2018/11/10(土) 02:19:16 .bqA9UJ.0
>>780

【そうして二人甘たるく潤ませ合うのなら、きっと何もかもが解決するのに違いなかった。――少なくとも、この夜を生き延びる程度には十分すぎるほどには慰め合えただろうし】
【少しでも苦しくて辛くて悲しいたびに脳内麻薬のODでも繰り返していたら、そのうちに全部がどうでもよくなるに決まっていた。けれど決して選べぬ方法であったなら】
【だって少女もエーリカも想う人が居るなら。――それでも慰められるのも慰めるのも"慣れて"しまった今では、拙い指先の跡だけでは、どこか、物足りなくって、】
【――ならば二人どうしようもなく罪深いのかもしれなかった。だって罪深いから死んでしまったんだった。こんなに生きているのに。暖かくて優しいのに】

――――っ、もお、そんなの、……。――好きな人が居る、のに、だめ、です、よ、私、あの人に、殺されちゃうから……。
だって、……プロポーズ、みたい。……アリアさんだって、泣いて、しまうの――。――ね。だから……。でも……。

【見せない顔が、――けれど笑った気配がした。それも少しだけ困ったようなくしゃっとした笑みを予感させた。あの人、――カチューシャに殺されてしまうから、と】
【どうしてかってプロポーズの言葉みたいだから。まして、大好きな人がもしもいなかったなら、思わず受け入れてしまいそうなくらいに、魅力的な】
【気づけばぎゅうっとエーリカを捕まえていた指先はすとんと落ちていた。ほんの刹那のみ、なにか、言葉を探すような空白があって】

――、……私のこと、私より、大事に。してください。……。――私も、エーリカさんより、エーリカさんのこと、大事に……するから……。

【私のことを世界中で一番誰より護ってくれる人はもう居るから、――】
【こんなに弱虫で泣き虫でって自分を判断してしまう自分より。そんな自分より、私のこと、大事にしてください、なんて】
【ともすればそんな言葉もプロポーズみたいだった。親友だなんて枠組みとは少しだけ違う気もした。――けれど、やっぱり、ありふれた言葉では物足りないから】
【護るのも護られるのも嫌なはずなかった。こんなに想ってくれる人と一緒に居られたら嬉しいに決まっていた。だから――、柔らかな目尻の角度には、今日初めて、笑みを見せる】
【――ならばきっと子供みたいにあどけないものなのだろう。信用できる大人に甘えているときの子供の顔。だからするりと髪先の擦れ合う音、誘われるなら】

――――――――――――――――――――――――――――ん。

【こくんと力なく頷くのだろうか。そうしてもすんとベッドに身体を委ねるなら、――甘やかな香りも柔らかさも全部全部伝わる、或いは、深くなりつつある吐息も】
【横になった瞬間に眠気に襲い掛かられたらしかった。溜まっていた感情いくらも吐き出して好き勝手泣いて甘えつくしたなら、うつらと重たい瞬き、うとうと、何度か繰り返し】

アリアさんに――、いわなくちゃ……。お泊りしていくの……。私、もお、眠たい、から……。

【ぼおっとした声が、――それでも勝手に今晩は世話になるのを決めていた。だって、なんせ、自分自身より私のこと大事にしてくれるのだから、駄目って言わないはずだから】
【深い病巣は治しきれずとも膿を絞り出して手当をしてもらったなら、さっきよりずうっと和らいだ様子で。ならば今日はこれが限界なのかもしれなかった、なんて】
【深く深く根っこをおろした雑草を抜くとき周りの土がボコボコになってしまうのは仕方ないけれど。痛みを恐れて一気に引き抜いてしまうには、あんまりに、だから、】

あ――。お茶……。

【携帯電話を探して彷徨った指先が、――淹れてもらったお茶を思い出して、惑う。このまま抱きしめられて眠りたくて、でも、きっと甘やかなのも、飲んでみたくて】


782 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/10(土) 02:58:41 6IlD6zzI0
>>781

【二人寄り添いあって、痛みを分かち合えるのなら。ただ慰めあうよりも互いの深いところまで届くのだろう】
【例えば二人の想いだとか、二人の抱える傷だとか―――或いは各々が愛する人に対する想いだとか】


……あー、それは困るかも。かえでを殺されるのはイヤだなぁ。でも、私はね、愛を謳いたいんだ。
カチューシャだけじゃなくて。私が好きだって思う人と、大事に想う人と。
いーっぱい、いーっぱい、愛を謡いたいんだ。そして惜しみなく愛を溢れるまで注ぎたいんだ。


だったら―――……女たらしって言われても已む無しかな。でも、カチューシャを心の底から愛してるって気持ちは変わんない。
一番に愛を謡いたいのはカチューシャ。それだけは絶対に譲れないキモチ。…多分、かえでも解ってくれると思う。

だからこそ一線を越える真似はしないし、そうしたら何よりアリアに顔向けできない。……そこら辺、理解してるつもり。


【カチューシャを愛する前なら絶対に言わなかったであろう言葉】
【それはエーリカがカチューシャに影響を受けている証拠で、それだけ硝子細工の狙撃手を想っている証拠】
【人懐っこく寄り添う子犬の様に、まじりっけの無い笑みを向けるなら、見えなくても察する事は出来るかもしれない】


ん、―――、ありがと、かえで。私の事を私以上に大事にしてくれるなんてさ。
すっごく嬉しい。ここまで人を想う子がさ、生きてちゃいけない道理は無いって断言できるくらい嬉しい。


【二人の交わす言葉は、やっぱりプロポーズに似ているのだろう】
【だけど、二人は頭で理解している。本当にそれを言うべき相手が居るのだってことを】
【それでも、言葉は甘くて蕩けそうな程に心に作用していくのなら――行き着く先はかえでの笑顔】


明日になったらアリアに私から説明してやるから、今はゆっくり休もう。
だってこの温もり、手放したくないし―――たとえば、スマホを探る指先とか。
――――だぁから、だーめ。だめ。迷子になってる指先なんて――こうしてやるんだからっ。


【さまよう指先と絡まる自身の指先。それは白百合の細工品のような在り方で、二人だけの秘密みたいに咲くのだった】

【絡める指先から伝うかえでの体温は心地良くて、カチューシャという想い人に出会ってなければこの逢瀬だけで】
【かえでを我が物にしたいって独占欲が顔を覗かせて、牙を向くんだろうけど――そうならないんだった】
【現にエーリカの物言いはじゃれあう子犬みたいに親愛の情とからかいの色を濃く滲ませていた】


―――、ああ、ミルクティーの存在を忘れてた。……どうする、今飲みたい?
けどそうすると、かえでから離れなきゃいけなくなるからイヤなんだけどぉ、ね。
飲みたいなら明日また淹れて上げるからそれじゃ、だめ?


783 : 名無しさん :2018/11/10(土) 03:30:55 .bqA9UJ.0
>>782

【おんなじベッドを二人で半分こするなら、必然的に距離も近くて。体温と香りと柔らかさと、とにかくたくさんの生きてる証、或いは命そのもの、分け合うのなら】
【二人とも死んでるっていうのにおかしな話だった。そうしてまた、二人とも死んでいるからこその温度感に違いなかった。――ふ、と、漏れる吐息、微かに笑う気配】

――――――私だって、一番好きなのは、アリアさん、です。

【――ごくごく近しい距離感にて、悪戯ぽく笑んだ瞳がじっと見つめていた、どんな貞操帯より不貞を許さぬ気持ちを示すなら、迂遠だとしてもこれが精いっぱい】
【だとしても口付けの一つでも強請っているようなまなざしと上気したように赤いほっぺたは狡かった。――事実は眠たい眼とそれに付随して上がる体温の作用だったけれど】
【ともすればプロポーズみたいな言葉を捧げあった後であったなら、余計に――それでもやっぱりお互いに大好きな気持ちを抱えているなら、悪戯ぽいままでで、ことは済む】

……アリアさん、泣いちゃいます、よぉ――。…………――もおっ、悪い、ワンちゃん、なの、……。前の飼い主さんは、しつけて、くれなかったですか――?
夜のうちに、家がなくなっちゃっても、知らないの、――。――――それに、私の分まで、怒られてくれなきゃ、ヤです、よ? 

【やがて指先を咎められるなら、――少女はいくらか目を丸くするのだろう。のちにふと伏せる眼の先で、長い睫毛が背徳感の水面を撫ぜて】
【情事の最中の指先というよりかは、ごくごく冬の寒い日に親友二人で体温を分け合うような指先だった。少なくとも、少女から帰るのは、情愛の絡まぬ親愛であり】
【ふらふら躊躇うような視線は申し訳なさと幾許かの現実味を帯びた心配を漏らす、――それでも、やがて、眠気と温もりに甘えることにしたらしい、指先を大人しくして】

…………………………――そしたら。明日の朝。もっかい、私の好きそうな、甘いやつ――。――淹れて、ほしくて。
今日の奴よりうんと甘くったって、私には、分かんないから――――、ねえ、ごみ箱を探して、数を数えるなんて、私ね、しない、ですから――、

【至極悩むような仕草を繰り返した後に、少女は今この瞬間に甘さと温さを摂取することを、諦める。だのにずいぶんと甘い声をしていた。親しい人に甘えるときの、声が】
【結局飲んでないミルクティの甘さは分からないのだから、――明日の朝に淹れるのはもぉっと甘くたって分からないの、って、揶揄うみたいに】
【それとも甘くなくなったって、分からないんだった。ならば、答えを知っているのはエーリカだけ。こんなふうに同じベッドで二人眠って、変わらないはず、ないでしょう?って】
【――――耳元に吐息がちな笑い声を添えて、――それで少女は目を閉じてしまうのだろう。ふと脱力した身体は信頼を示して、だから、幼い寝顔だって盗み見て良くて】

【あるいは、――夜更けに着信でもあるのかもしれなかった。行き先も告げずに出てきてしまったものだから。結局今日はお泊りだって言わなかったのだから】
【そのバイブレーションにむずがる少女を起こさぬためには、エーリカが受けるか、それとも、電源ごと落としてしまうか。どちらでもよくて、委ねられるけれど】
【――どうあれ朝を迎えるのなら、少女は、用意してもらったミルクティを飲むのだろう。やはり砂糖の数は詮索せず。そうして少し気が晴れた表情で帰っていく。――きっと】

/おつかれさまでした!


784 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/10(土) 09:48:35 6IlD6zzI0
>>783

前の飼い主は放任主義だったからねぇ……。わるいわんこで結構。
わるいわんこは怒られ慣れてるから、かえでの可愛らしい寝顔の代価がそれならお釣りが出るよ。
―――、って言うか強請るような顔で言うんじゃないよ、ほんとにさぁ…(そこがとっても可愛い)


【二人はとびっきりの愛を捧げるべき一番の相手を知っているから】
【一夜の過ちなんて事にはならない。二人の在り方は心を許しあった親友のじゃれ合いに等しく】
【揺れる視線に重ねるのは真直ぐであどけない視線にかえでに負けず劣らずの甘い吐息】


おーけー、おーけー。寝起きに超絶あまーくしたミルクティを淹れるから
楽しみに待ってるんだね、おひめさま。―――おやすみ、かえで、ってうひゃあっ!?
耳元に息を吹きかけるなよぉ……、ひゃうぅぅ、私耳元がとても弱いんだからさぁ……。


【耳元に甘ったるい吐息が掛かったら、それは魔女の使う魔法みたいにエーリカを上気させて】
【ずぶぬれになったわんこみたいに弱弱しく、それでいて扇情的な嬌声じみた声を洩らすんだった】
【すると―――、すこし落ち着いたときには、かえでの可愛い寝息が聞こえて毒気が抜かれたのか】

【結局、それ以上の悪態をつく事はしなかった。幼い寝顔に愛しさを抱いて、頭を撫ぜたり、背中を優しく叩いて】
【かえでの可愛らしい寝息が眠気を誘って。いつしか自分もかえでを抱きしめながら眠りに落ちていく―――】


【―――】


【……不意に、バイブレーションの音がした。…おそらく、かえでを心配したアリアだろう】
【電源を落としてしまおうと思ったけど、かえでに代わって電話に応じたけれど―――その際に】

【"やあアリア、かえでの事は心配いらないよ。かえでなら――私の隣で寝てるし"】
【なんて誤解を招く言葉を口にしてしまうのだった。要らぬ禍根が生じかねない言葉になってしまうから】
【"色々事情があっての事だから、後日釈明させてくれ"とアリアに告げたなら一方的に電話を切ってしまう】

【そうして朝を迎えたなら、かえではとびっきり甘いミルクティを飲んで岐路に着くのだった】
【かえでの後姿を見送って、その後にアリアに改めて電話でコンタクトを取る――話す事が色々あったのだ】

【ロールシャッハ関連に、リゼの様子がおかしい事、フライアなる女が付け狙ってる事
 ――そして"公安五課"を離れ、"外務八課"に身を置きたいという旨の事を】

/お疲れ様でした!そしてありがとうございました!


785 : マリアベル ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/10(土) 13:13:23 smh2z7gk0
>>742

【大袈裟に嘆くギンプレーンにマリアベルは微笑みを向ける事しかしない。】
【そして相手から与えられるアドバイスには「なるほど」と軽く相槌を返し少し考える仕草をする。】

プロフェッサー?いかにも頭の良さそうな人だねェ、君たちのブレイン的な存在かな?
できれば今度お茶でもいかがって言っておいてくれるかな?



――――――いや〝知らないな〟。心理検査とはかあまり得意ではなくてね
まさか〝ロールシャッハ卿〟自身が生み出した、なんて事を言わないよね?


【首を傾げてそう答えると、今度こそマリアベルは手をひらひらと振りながら姿を消すだろう。】
【周囲の声が、まるで待っていたかのように急にうるさく聞こえてくるかもしれない。】


//長期間お疲れ様でした!


786 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/10(土) 13:36:48 E1nVzEpQ0
>>774

【 ─── 己れの胎中から刃を引き出すその異能の始終を、その目でアリアが見るのは初めての事であった。故に、】
【やや身を案ずるような面持ちと視線を送っていたものの、堂に入った納刀の所作に至るなら、却って無礼であるようにさえ思い】
【抜身の鋒と謳うに相応しい鬼気が張り詰めるならば、口を噤んだ睨視にて、居合の抜かれる刹那を見出さんと ─── そして。】

【青い隻眼が瞠されるのは、放たれた剣圧の残滓がため。銀細工に突き立てられた針先が、一条の傷痕を世界に刻んだ】
【数拍の後、 ─── 初めてそこで、切断という結果的収束を理解したかのように、ずるり標的は断面より滑り落ちた。コンクリートに金属の打ち付けられる、伽藍堂の音】


「 ──── まあ。」


【ごく純真な感動を以って、 ─── 静かにアリアは感嘆の声を上げた。曲芸の域であった。それでいて実戦へ用いられるに足る技術でもあった】
【鞘から排出された2発分の薬莢と、射出を阻まれた散弾の弾頭が、無造作に佳月の脚元へと転がった。立ち昇る硝煙は狼煙に似て】


「 ……… 素晴らしい御手前ね。」「私も、その長さの得物が、あんな速さで振られたのは、初めて見たかもしれない」
「 ──── 幾つの胴を斬り抜けるのか、想像もつかないわ。」「全く ─── 頼りになる訳ね、佳月さん。」


【然らば紡がれるのは全く惜しみなく忌憚ない賞賛であろう。演武じみた離れ業でもあったのだから、それに対する感動と】
【あるいは尋常ならぬ加速を御してみせた少女の技巧に対しても称揚を捧げていた。 ─── 平生は冷淡な横顔が、今ばかりはどこか、稚気じみて純真に笑う】


787 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/11(日) 00:16:09 .gPFjqIk0
【水の国、ミール・シュタイン】

【企業のオフィスビルが集まり、人の多い大都市。歩いている人の多くはスーツ姿で】
【そうした中に純白の祭服を着た男がいるとなれば、その姿は目立つだろうか。両手に缶飲料でパンパンな袋を持っているから尚の事】
【フラフラと歩道の広くなったところへ行けば、荷物を降ろして。ふう、と一息】

人手が多いと作業が捗るのはいいですが……差し入れの買い出しも一苦労ですね……。
――――ですが、聖堂の完成までもう一息。皆さんに頑張っていただくためにも……っ!

【腰ほどまではあろうかという紫髪、空を見上げる瞳は花緑青。首元には金色のロザリオが輝いて】
【柔和な表情は、見る者に穏やかそうな印象を与えるか。体格に関して言えば、どちらかといえば細い方】

【力仕事に慣れているとは、到底思えない外見。そんな男が、重そうな荷物を再度持ち上げて】
【またフラフラヨタヨタと、市街を歩き始めるのであった】


788 : ◆DqFTH.xnGs :2018/11/11(日) 04:24:12 0ekawqC60
【郊外。ゴツいランドクルーザーで数十分の距離のところにそれはあった】
【なんの変哲もない廃工場。周囲は草が伸び散らし、打ちっ放しのコンクリートは】
【小石やら砂埃でザラついている。街外れを探せば五万とある、打ち棄てられた廃墟だった】

【──だがあくまでもそれは外観の話。その工場の本質は地下にあった】
【隠された出入り口。殺風景な見た目とは裏腹に、内部は喧騒で満ち溢れていた】
【高額チップの擦れる音。賑やかな笑い声。悲壮な叫び声。グラスの触れ合う音】
【所謂裏カジノ、と呼ばれる場所であった。意外なことにイカサマは店側も客にも禁じられている】
【些かクリーンな印象はあるが──重ねられるチップはやはり高額。負けた分を出し渋れば】
【苛烈な取り立てが待ち受ける。真っ当な表社会では出来ない、だがルールを守れば問題なく】
【幾らだって煌びやかさを愉しむことが出来る。そんな場所が、地下にはあった】

【内部の警護は、カノッサ機関員が行なっていた。強欲の六罪王ジルベールの配下にある者達だった】
【けれど機関員の一部にしかこの場所は明かされていないのだ。王がまだ王でなかった時から持つ】
【此処は秘密の狩場だった。いくつもある集金システムの一つと言ってもよかった】


【そんな裏カジノの、従業員専用の仮眠室。そこに“彼女”の体は静かに横たえられていた】
【白神鈴音、という名の少女の肉体は──鉄パイプの質素なベッドの上で、何も言わぬまま】
【ただ存在しているだけだった。時を重ねることもなく、ただ静かに】
【いつ目覚めるとも分からない身体は、けれど丁寧な扱いを受けていた】

【身体は暖かいタオルで毎日拭かれていただろう。食事はどうすることもできなかったが】
【毎日、声はかけられていた。「おはよう」「今日は寒いな」「仕事ちょっとダリぃな」】
【「こないだ、客がイカサマしてよぉ」「街のメシ屋でクソまずいアタリを引いちまった」】
【「──おやすみ、鈴音」「今日はあんたと夢であえるかな」「神さまって、すげえよなぁ」】
【答えがなくとも、それは数ヶ月の間毎日のように繰り返された日常だった】
【誰も知らない小さな秘密。誰に教えるつもりもない、些細な生活の一部だった】


────ん…………あぁ、朝か

おはよ、鈴音…………くぁ。んー、んんっ…………今日は秋晴れで涼しいってよ
乾燥に注意、だってさ。…………乾燥か、ヤなんだよなぁ
こう、触腕がガサガサしちまうのはよぉ…………これからの時期は保湿剤使いまくるハメになるぜ

あんたの身体にも、そろそろ保湿剤とか塗っとくかぁ?
目ぇ覚めたらお肌ガサガサっつぅのは、テンション下がっちまうもんなぁ


【床に敷かれた寝袋には、異形の姿のままのミラがいた。起きたばかりでぼうっとスマホを弄り】
【とりあえずはニュースサイトのお天気ページを開く。喋りかけるのはもちろん鈴音に向けて】
【────繰り返された日常。返事はないのが、当たり前だった】

/予約ライクなやつです!


789 : 名無しさん :2018/11/11(日) 11:10:24 .bqA9UJ.0
>>788

【――――けれど返るのは沈黙だった。ならば"それ"はいつも通りの日常、お天気サイトに書かれてる、お天気アナウンサーの一言コラムよりも"いつも"になった光景】
【呼吸はごく薄くではあるけれど続いていた。体温も常通りにあった。けれど目は開けなくて、ならばずうっと眠っていた。――眠っている、という表現が正しいのかすら分からなかった】
【なんせ魂/心みたいなものがどこぞへ行ってしまっているらしいから。ならば"これ"は限りない抜け殻。生きているように見せたって、ありふれた人間にはありえない出来事だったから】

【食事をせずとも維持される身体。何かのきっかけで付いてしまったかすかな傷だって、ほんの数分で治ってしまう。なら、時間の重ならぬ身体に、ただ、】
【真っ黒の毛先だけがいやに伸び往くのだろう。――、魂を見失った身体が、自分は生きているのか死んでいるのかすら分からなくなって、異常に/過剰に】
【身体中を無意味に補修し続けたからだった、だって、前から、ずうっと、死から目覚めるときに、髪はぞろぞろって伸びていたから、――まるで呪われのお人形さんみたい】

【そのくせに、"そう"なる瞬間は、あまりに、ありふれた、お寝坊さんみたいに】

――――――――――――、

【――"それ"はどのタイミングだろうか。どうあれミラがいくらかの時間を留守にした後だった。もぞり、と、仮眠用ベッドの上、身体を起き上がらせて】
【ぼんやりした表情で眼をぐしぐしと擦っているところだった。ゆっくりぱっちりと瞬きをしたなら、ふああって大きなあくび、きゅうっと身体を伸ばすなら】
【指先の存在を思い出したかのように/あるいは初めて自分の尻尾に気づく子猫みたいに、瞠った目が、見つめて――――、】

クラァケさん。

【世界なんて滅んでしまえばいい。絶望的に言い捨てたのが数時間前の出来事であるとは信じさせぬ声音をしていた。涼やかな鈴の声、それとも、夕月に何か聞いただろうか?】
【たとえそうだったとしても、――目覚めた少女はごく穏やかな表情をしていた。起こした身体、抱えぬ三角座りの恰好を、やがて、あひるさんの形にするのなら】
【翳し眺めた指先の向こう側に、ミラの姿を見つけ出すから。おろした指先は足の間に挟む、服装は着せられたものだろうか、微かに衣擦れの音】

【――やはりあどけない顔に浮かぶ笑みはごくごく穏やかであったから。けれど凪いだ水面の様相は、けっして、"平穏"とは程遠い、なにかをして】
【ならば何かを諦めてしまったのかもしれなかった。今まで夢見た"ぜんぶ"と自分自身の言葉で決別してきたところだった。憧れも夢も置いてきた、だから、なにもない】

【半年近くも眠りこけていたにしては昨日の続きと大差なかった。ただ違うのは肩の高さで切ってしまっていた毛先が、すらりと、腰元を撫で】
【そのくせ、それが彼女のニュートラルなアバターであるかのように、整える必要はなかったことだろう。少しだけ長い前髪も、あくまで、少しだけ――であり】
【指先が髪の毛を掴んで弄んだ、ちりちりとこすれあわす音。――それでふっと気づくのなら、なにか、一瞬、考えるような。そうでもないような。仕草の移ろい、】

――――――――――わたし、ここに、居たんだ。

【――――「わたしここにいるよ」】
【いつかかけてもらった声を、彼女はいくらも遅れて理解する。神様として感知しなかった理由はどうでもよかった。だから、一つ、】
【もしも彼女が何もなく起きることがあったなら、それは、きっと、悪い事の予兆だって言った、"彼"の言葉、なにか、なんでもない、穏やかさのなかに、なぜだか思い出させて】

――クラァケさん。おなか、すいた。ごはん……作って、ほしいの。わたしに。

【だからやっぱり浮かべる表情はどこまでも穏やかだった。鈴の音を吐息にて吹き転がすような笑い声、添えて】
【口にしたのは我儘だった。「おはよう」よりも先に伝える意味があるらしかった。――自分のためにしてほしい。自分のためだけにしてほしい。わたしのために、して、】
【首を傾げてささめくのなら、――細めた瞳の温度はやはり凪で、表情は穏やかで、だのに潜めた意味合いは、どこまでも、――だから、】


790 : 妲己 ◆zO7JlnSovk :2018/11/11(日) 11:41:20 arusqhls0
>>754>>763

【櫻に浮かぶ月を背に、深い窓から滴る灯は夜闇を照らすには淡く、世界は未だ閉ざされた芥雪の如く、而して其れを憂う事もせず】
【外に集まっていた喧噪は未だ絶えず、無辜の人々が紡ぐ言の葉を、せめてその一片だけでもすくい上げられる事を願って】
【けれどもそれは何処までも、──── 無慈悲な願いに似て、叶えられる事のない徒花に似ていた】


うぅんと、そうねぇん、──── なるべく "櫻" の手の者だと分からない方が良いわん、洋装を中心にしてあげてん
それと、お揃いの格好じゃなくてん、如何にも "同じ目的の為に集まった" って感じの格好にして頂戴

善弥ちゃんは想像つくかしらん、妾の奸計に於いて、──── "彼ら" がどう見られるべきか、分かるかしら?


【じぃ、と女狐は善弥を見る、艶やかな頬の輪郭に映るのは、少女の如く愛らしい大きな瞳で、その水面に一杯の貴女を映す】
【身を寄せる、硝子細工の如く華奢な身体に似合わない、肉感的な膨らみ、呼吸をする度に窮屈そうに身を寄せて】
【人外であるという証明代わりの九尾と狐耳、正体を隠し立てもせず彼女は紡いだ】

【──── 言ってしまえば、コレは盛大な "マッチポンプ" 様々な歴史に於ける、武力介入という名の侵略】
【だからこそ "付け火" をする立場の存在は、派手に破壊活動が出来る存在が良かった、そして ──── 】
【疑われない暴徒であるべきだった、そこに来る "善意" の存在を、いとも容易く籠絡できる様に】


そうゆう訳で妾は道賢ちゃんの意見には "反対" よん、一般大衆の目は十分それで騙せるでしょうけど
──── そこに来るであろう "能力者達" は、あからさまなその格好に対して、疑念を抱くでしょうから

ふふ、道賢ちゃんは軍隊のヒトですもの、そう思っちゃうのも無理はないわん、確かに常識の場に於いてはそれが道理よん

でもね、一人が一騎当千の力を用いる "この世界" に於いては、画一化された集団なんて的以外の何者でもないの
ぁん、 "魔導海軍" は別よ、兵器を使って圧殺するのであれば、──── 軍隊のようなシステムは全然有用なんだから

──── 今回の催しに際して言えば、妾達はそうゆう一騎当千を相手して、ペテンにかけなきゃいけないの
だからね、此方もそうと疑われない様、──── 少しねじの外れたぐらいが丁度良いのよ


【妲己は頬に手を当てた、小さな首筋をそこにもたれさせたなら、怠惰な目元が流麗に濡れて、可憐な色合いを司る】


──── あぁ、でも、道賢ちゃんの意見も使わせてもらうわん、"陸戦隊員" を中心とした "悪の集団" も用意しましょう
彼らには付け火した火を "煽る" 役割を与えて、最初に起こした火に "能力者" が群がってる間に、市民を襲わせるの
大衆に植え付けるのは "危機感" よん、水の国の自警団も陸軍も、自分達を護るのには "不足している" と思わせて

──── そうして "魔導海軍" で上手に火消しをしたなら、大衆の信頼を勝ち取るのは簡単よん、見せしめに何人か、隊員を殺しちゃっても良いしぃ



この世界は "歪つ" なの、少数の "能力者" が大多数の "無能力者" と共存してるの、にも関わらず "統治機構" が存在しているから
ねぇ、三人とも分かるかしらん、──── "能力者" はね、神に愛されてるの、この世界を動かす主役として役割が与えられてるの

だからね、彼らを "徹底的に隔離して" ──── "謀り" を進める必要があるわん


791 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/11/11(日) 11:58:51 arusqhls0
>>762

【 ──── ──── ── ──── ── ──── 】


【世界が再構築される感触、──── 黒陽の言葉に対する返答を述べようとして、イスラフィールは止まった】
【そして、次の瞬間、──── 彼女は深い溜息をついて、そうして、真っ直ぐ貴方を見つめ返すだろう】
【微笑みの輪郭、僅かばかりの憂いを含んだなら、それがアクセントになり、より一層その彩りを染め上げる】


──── "状況" が変わりましたわ、念のために "この空間" 全体を隔離していたのですが、その必要もありませんの
"Lost Memory Wonderland" ──── "記憶" を司る能力を用いて、この空間全体を、時間軸の流れから隔離していたのですが
その間に、──── ロールシャッハのインシデントは終わりましたの、INF-006は、消えましたわ


【空間の違和感に黒陽は気付いていただろうか、ホログラムであるという条件節の上では、黒い頭脳も至れない地点が在ったのかもしれない】
【 "記憶" を読み取り、上書きする、例えば過去の一点を読み取り、上書きし続ければ、時間軸から隔離される空間を作ることも可能で、そして】
【──── 例えばそれを、生命に適応したならば、紛れもない不老不死が生まれる事になる】

【隔離された空間の中でホログラム上の黒陽とどう会話していたか、という疑念が生まれるだろう、──── 幾つか可能性は考えられるが】
【黒陽自身がホログラムの存在と仮定したならば、矛盾無く受け入れられるだろう、もし、本体が別空間にあり、ホログラムと分離していたなら】
【今まさに "ホログラム" と "本体" が再接続される感覚が "ホログラム" にやってくるだろう、制限されていた通信が再び繋がった様に】

【──── 言ってしまえば、此処に於ける黒陽の会話は "ホログラム" の意識が喋っていた、という解釈になるだろう】


──── 私の目論見が効果的であったかは分かりませんわ、 "真実を知らせず事実を誤認させた" ──── それだけですもの


"水槽の脳" をロールシャッハが "あんな意図" で作っている事を、能力者達に知らせたくは無かった、彼らは純粋ですから
強烈な悪意に身を曝されたなら、その幾人かはそれを "受け入れてしまう" 可能性があったのです、だから

私は彼らに "水槽の脳" を、──── より単純な形で "誤認" させたのですわ、奇々怪々なメタフィクションが、安っぽいB級ホラーに身を窶す様に


──── 今ならば何でも、気兼ねなく話せますわ、──── 対話は続けられますの


792 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/11(日) 12:45:34 WMHqDivw0
>>775

【お喋りな彼はここにきてやっと口を噤み、少女の話をずっと、じいっと】
【完璧な沈黙を保って聞き続ける。少女の永い永い独白、すべて聞き終えて】
【口元に手を置いたまま、考え込む仕草。思っていたよりずっと――難しい】

…………そう、か。それは……難しいね、相手に許しを求めることより、
自分に許しを下すことのほうが、いくらでも、難しいから。
つがる、君は、自分で自分を……許せないんだね。

けれど、その最後の――「きっと嫌われちゃった」というのは、本当のことかな?
本当にその子は君のこと、嫌いになったんだろうか。ちゃんと話はした?
しないままに勝手にそう言っているんであれば――君は、繰り返してることになるよ。

相手が本当にどうなっているか知ろうとしないまま、自分の中で勝手に解釈して。
そうして勝手に荒れているって、……そんなの、その子が知ったらどう思うだろうね。

【けれど、だからこそ、続ける言葉は少しばかり厳しいものだった。繰り返してる、】
【その子が姿を消していたときと同じことを。果たして君はそれでいいのか、って】
【諭すような音階。自嘲するような表情も、諌めるように首を振って】

………………で、あるなら。今度こそきちんと向き合うべきだ。
僕はそう思うけどね、――そもそも、君は、「どうしたい」んだい?

その子に会って謝って、許されて、もう一度、今まで通り……友達でいたい?
それとも……もう二度と会いたくない? そうして、目を逸らし続けていたい?


793 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/11(日) 12:57:28 WMHqDivw0
>>786

【ここまで素直に褒められるんなら気分が悪くなるわけなかった。えへへ、と笑い声を漏らし】
【どこか気恥ずかしそうに、でもやり遂げた顔をして、鞘に刀を収めたまま】
【小走りで駆け寄ってくるのはどこか犬めいていた、投げられたボールを咥えて戻ってくるときみたい】

へへ、えへへ…………ふふ、やだ、さん付けなんてしなくていいですよ。
私、16の小娘ですよ? えへへ、でも……嬉しいです。
アリアさんにここまで褒めていただけるなんて。えへ、……ところで、

たぶんこれ一回の戦闘中に一回しか出来ないやつですね!
今、振り抜いた腕がビリッビリに痺れてて――――痛いんで!

【――、しかし続く報告はあんまりに間抜けな言葉だった。こっちの状態でも、反動、めっちゃ痛い】
【とのことであるから、もう少し反動をどうにかしてほしいって言って、装備班に丁重にお返しするか】
【それとも――その反動に耐えられるように少女を鍛え直した方が早いのかもしれない】
【なんせ今まで、ほぼすべてを異能に頼って生きてきた少女であるから。「これから」のことを考えるなら】
【そっちのほうがいいのかも、とも、思わせる。だって世界には斃すべき敵が多すぎて、――――】

【けれど少女は、鍛えてくれるのがアリアであるなら。喜んで、どんな鍛錬にも熱中するのだろう】
【そのくらいには信頼を置いたようだった。曰く、「お姉さん……お母さん? みたいなので」なんて言って】
【ただ、もしも鍛錬の相手がミレーユに変わるって聞かされたら。ひどいしかめっ面を晒すのだろう】
【それくらいにはわかりやすい子だった。そういう一面が、また、知られるのであれば――――】


794 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/11(日) 15:55:03 smh2z7gk0
>>787


―――そこの御仁、よければ手伝おう。


【ふと、男性の背後から声がかかる。幼さの中に強い意志を感じるようなそんな声色だった。】
【白い外套を頭まですっぽりと被り、そこからミントグリーンのおさげが垂れている人物である。】

【その少女?はいつの間にか男性の背後にいて、荷物を持つと申し出てくる。】


このままでは貴方だけでなく周囲の人間にとっても危険になる可能性があるからな。
―――ところで、そんな大荷物を持ってどこへ行くというのだ?


【白い外套の人物は頑固そうな声色でそう言いながら男性の持っている袋を一つ強引に受け取ろうとする。】


795 : ◆DqFTH.xnGs :2018/11/11(日) 16:14:25 K2sEE1Jk0
>>789

【ミラは何も聞いていないまま、その日を迎えていた。諸々の“インシデント”には関わる余裕がなかったのと】
【直接的な戦闘には向かない異能を有していた、というのもある。ともかく、“その日”が】
【何かが変わってしまった決定的な日だったというのを知らず──当たり前の朝だと思って】
【そのまま、いつもの日常を繰り返そうとしていた。鈴音への声かけが終われば起きてシャワーを浴び、朝食を取り】
【着替えて部屋を出る。前日の仕事の振り返りだとか金の計算だとか、今日の予定の確認だとかそういった雑務を終えて】
【さて、昼食には早いが少し時間が余ってしまった。────部屋に戻ったのは、そんなタイミングだった】

  【 声がかけられる 】 【 思わず動きが止まる 】  【 幻聴かと思った 】

【 振り返る 】 【 目が合った 】 【 動いているのに気付く 】 【 “ 目が 合った ” 】


────…………、……………………っ、…………、あ、

…………、……………………、…………鈴、…………音、?


鈴……………………、────ッッ!!鈴、音、えっっ………………!!


【駆け寄るほどの距離じゃあなかった。そんなに大きな部屋でもなかった】
【崩れ落ちる──跪くかのような体勢になれば、手が届く距離。そのまま、彼女が赦すのであれば】
【抱きしめようとするのだろう。吸盤の感触も、潮騒の体臭も、赤い肌も隠すことはなく】
【──抜け落ちた鈴音の何かに触れる余裕は、今はなかった。半年もの間、空っぽの身体に話しかけ続けていたから】
【違和感を受け入れるより、溢れ出す嬉しさが勝った。もし抱きしめることが叶えば、それはきっと】
【痛いくらいに抱きしめるのだろう。何度も名前を呼んで。「よかった」「おかえり」そんな言葉も混じって】
【不吉な言葉なんて、思い返したくもなかった。────忘れてしまった、フリをした】


そう、そう…………お前は、ここにいたんだよ…………!
そ、の…………悪ぃな。魔術とか、そういうのそんな得意じゃなくってぇ、よぉ…………
どうやってお前に伝えようか、全然わかんなくって…………
そう、大会の実況でお前のカッコしたりして、さぁ!…………やっぱ、あれもわかりにくかった、かなぁ…………

って…………あぁ、そう!メシなメシ!そりゃ、何ヶ月も食ってねぇもんなぁ!
ハラ減ってて当たり前か!ちょっと待ってな、カジノの方の厨房借りてくっから、よぉ!


【仮眠室はあくまでも仮眠室。調理ができそうなスペースなんて、カップ麺やコーヒー用のケトルと】
【マグカップやらが洗えるくらいの小さなシンクくらいしかなかった】
【だからまた、少しばかりミラのいない時間が続くのだ。もちろん、厨房とやらについてきても文句をいうはずもなく】

【──30分後。運ばれてきた朝食は、卵のホットサンドが2つに余り物の野菜を添えた簡単なサラダ】
【それと、ジャムがかけられたヨーグルトにオレンジジュース。盛り付けはちょっと雑で】
【そのくせ、サンドイッチには手書きの絵が描かれた旗が刺さっているのだ。デフォルメされたタコと蛇】
【子供が描いたように下手くそなイラスト。「足りなかったら、また作るから、よぉ」】
【そう言って、不安そうに鈴音を見るのだ。誰かのために食事を作るなんて、思えばそう多くない】
【だから、サンドイッチに塗ったマヨネーズが多すぎたりしないかとかいう小さなことが、気になるのだ】
【本当に気にすべきことは、まだ気にしていなかった。いつだって優先するのは、目の前のことだった】


796 : コニー・オブライエン ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/11(日) 16:28:03 smh2z7gk0
【水の国/首都・フルーソ/迎賓館】


【首都フルーソの高級住宅街に位置する座標。そこは他国の大使館などの外交施設も多く存在する】
【その中の〝迎賓館〟の一つで催しが行われていた。】


【それは〝氷の国との国際交流イベント〟などというそのまんまな適当なネーミングを付けられたイベントだ】
【現在氷の国から水の国へ駐在している関係者とその家族だったり、氷の国からの留学生だったりがメインの客である。】

【一方で、国際交流イベントなのだからという事で一般客も申請すれば入場可能である。】
【つまりは〝氷の国〟との国交は問題ありませんよ、というのを〝見せる〟ための〝催し〟なのだ。】


【迎賓館の豪華な広間には氷の国の特産品だったり、今後開通するという〝ブルー・オリエント急行〟の模型だったりが申し訳程度に置かれている】
【メインのテーブルエリアでは子供たちが走り回り、客たちはそれなりに質の良い食事に舌鼓をうちながら他愛もない世間話をしている。】

【そして―――一般客があまり近寄らない一角、つまりは各国の要人が歓談しているエリア―――そこに】


『いやはや、その若さで素晴らしい働きぶりですなオブライエン書記官は!』


「全くですな!そして何よりお美しい!!ぜひプライベートでもよろしくやらせて頂きたいものですなぁ〜」



―――うふふ、皆様ご冗談を………まだまだ若輩の身でございますので今後ともご鞭撻を賜らせて頂きますわ。



【水の国の議員だったり、外務省の官僚だったりに囲まれてひと際目を引く人物がいる】

【身長160cm 右側の髪だけ少し長いアイスブルーのアシンメトリーに同じくアイスブルーの瞳 の〝少女〟】
【本日はシルバーのパーティドレスで全身を包んでいる。〝普段の彼女〟を知る人物が見たら唖然とするだろう。】


(うっっっっっっっっっっっっっっっっぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇこのエロおやじども…!)
(〝櫻〟方面もきな臭いってのにこんな小物っばっかのパーティーに出なきゃいけないのは公僕の悲しいところよね〜)
(〝サイコ・フェンリル〟には要請は出したし、こっちも地盤固めないとね。)


【オブライエン書記官と呼ばれる少女はノンアルコールシャンパンを口にしながら脂ぎった中年達に愛想を振りまく。】


【さて、この状況に何か新しいスパイスは入るのか。】
【先述したとおりこの催しは申請すれば割と誰でも〝入れる〟。―――余程の事がなければ、だが】


//一週間ぐらい募集します〜


797 : 名無しさん :2018/11/11(日) 17:06:16 .bqA9UJ.0
>>795

【声を掛けた少女は、相手の様子に微苦笑を浮かべたから、思ったよりも心配をかけていたらしい、と、どうやら今頃気づいたのかもしれなかった】
【なれば抱きしめられるのを拒むはずもなくて、――その背中、よしよし、って、小さな子にするように擦ってやるのだろうか、指先でとんとん叩いて、痛みをアピールする】
【しかしそのアピールはずいぶんと控えめだったし、どうにも訴えかけるには弱い力をしていたから、気づかれなくたって仕方なくて、そうしてまた彼女も文句など言うはずない】
【よかった、おかえり、――、声を掛けられるなら、その表情はいくらか揺らぐのだろうか。ああどうして、今なんだろう、――――確かなのは、嬉しくて、悲しい、】

【(だってもう終わりは始まっちゃったのだから、)】

んー、ん、

【ミラの言葉にかすかに首を揺らす、魔術が得意じゃないとか、あまり関係なかった。「――ありがとう」ってささめいた、久しぶりの世界は思ったより色鮮やかで】
【色も匂いも温度も感触もが久方ぶりで仕方なかった。身体ってこうなんだって思った。世界中どこまでも見通せた頃よりささやかな視野を、それでもたっぷり見渡して】
【一番最後に、自分のことを抱きしめているミラに視線を落とす。大会の実況とか言われたら、ごく驚いた声で「――っえ、」なんて、漏らしもするのだけど】

【とにかく、】

――――――わあ、

【彼女は厨房についていこうとしなかった。待ってな、と言われたなら、こくんと頷いて。だからミラが戻って来る頃には、ベッドに寝転んでいるのだろう】
【ごく気だるげに足を折りたたんだ横寝にて、顔の近くで指先同士を戯れさせるなら、きらきら纏わるのは桜色の魔力。その端々に赤のグラデーションを添えたなら】
【きらきら立ち上る残滓もまた焼け爛れた心の表面みたいに赤色をしていた、――相手の戻ってきたのに気づけば、ぱっと身体を起こす、嬉し気な表情があどけなくって】

【「おいしそう」「ありがとう」「うれしい」――、いただきますって手を合わせるなら、半年ぶりの食事ということに、なるんだろう】
【なのにテレビでやってた健康のための食事法みたいにサラダから手を付ける、あるいは、作ってもらったホットサンド、めいっぱい大事に食べたい、みたいに】
【そしたらなぜだかどきどきした。野菜の味。歯ごたえとか。香り。そこにドレッシングの味と香りを混ぜて。ちょっとかかりすぎたところ。足りない場所。お野菜の硬い筋】
【一口のたびにびっくりするぐらいいろんな情報が満ち溢れてて、驚いた。そんなの、――そう、前に食事をしたときに、思わなかったのに。って】

【――オレンジジュースをこくんと飲む。きゅんとすっぱい味に唾液腺がきゅうと痛んだ、から】

――あはは、これ、クラァケさん。描いたの? ――、ふふっ。ふふふ! かわいい。あはははは――――、ねえね、これ、もらっていい?
ふふっ、ふ、――――――ふふ。あはは。……、……おいしい、――。

【サンドイッチに刺さっていた旗。取り上げたなら、少女は破顔して笑うのだろう、きゃらきゃらって笑い声は、拙い絵柄を、ただ、ただ、かわいいって称え】
【爪楊枝のところを指先でくるくるして弄ぶ。もらっていい、なんて、――いいよって言われたら、きっと、ひどく嬉しそうにするんだろう。宝物箱にしまう、みたいに】
【大事に握りこむ。それで食べるなら、やっぱりパンの香りと、食感、唇にパン生地が擦れる感じ、卵の色、味、香り、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、脳の中、撫ぜてゆくから】
【――ともすれば泣きだしてしまいそうな笑顔だった。聞かれるべきことを聞かれぬまま。言うべきことを言わぬまま。二人何かを忘れたふりして、だから】

ごちそうさまでした、――おいしかった!

【食事だってそう長くはかからない。ジャムのかかったヨーグルトを食べて、オレンジジュースの最後の一口を飲み干し。まだ、その手には、手描きの旗を握って】
【至極機嫌が良さそうだった。だのにそれが長続きしない予感は、きっと、した。何かを聞いたら終わる気がした。何かを聞かなかったら、終わらぬ気もした】
【だけどもう終わりは始まってしまったなら、――ミラに嘘を吐いているのに等しかった、でも、だけど、そう、ああ、でも、(以下、不明瞭な何か)】


798 : ◆KP.vGoiAyM :2018/11/11(日) 17:25:03 Ty26k7V20
>>682

「私は人間の在り方を考えたり、世界の仕組みを考察しようというたいそれた事をしようというわけではありません」

「タイムマシンを作るという主題を解明するために必要な要素として、その再現性を高めるためにはそれに対する考察が必要となっているだけです」

「ノーパラドクス。これだけを念頭に置いていただけたのなら十分です。」


【マクロに考えるなら経験に基づく因果によって推測するのが正しい。だからこそ親殺しのパラドクスのような考えが生まれるが実際は未来は不確定なのだ】
【だからこそどうとでもなる。人間の気にする因果なんてものは世界にとっては無関係で、辻褄はいくらでもあとからあわせることができる。そのほうが、ずっと自然だ】
【因果にそぐわないからありえないなんて言うのは思考の放棄と一緒だ。】

「どちらかという今度は位相幾何学…になるんでしょうか。まあでも。机上で空想をこねくり回すのは私の仕事じゃないので」
「様々なアプローチから検討する必要がありますから。使えるものは使って、物を作り上げるのが使命ですから。」

「天国ですか。私は、無神論者ですから…なんとも…。そうですね、まあ、しいて言えばそうかも知れません」
「私の方法によるタイムトラベルでは5次元が一体どういう場であるかは、あまり仮定していません。ブラックボックスでも結果としてそう、なる」

「研究者としてそれはどうなのかといわれれば、お恥ずかしい限りですが。…なんとなく、イメージ的に分断された世界の間にある」
「真っ暗なつなぎの空間――それが五次元な気がするんです。それが天国とも、神の王国とも考えれれません。」
「時間と同じのように、目に見えない現象。それが五次元―――まあ、余談ですね。」


【霧崎は持ち込んだダンボールを机の上にドンと、置いた。中身はファイルの山だ】


『頼むよぉ〜〜後3つもあるんだよ。重たいんだぁこれが。ジャベリンぐらいあるよぉ絶対…』


【先に音を上げたのは、タマキだ。泣きそうな顔をしていた。対象的に霧崎は平然としていて。今度は自分が出番とばかりに動く】


今回の初瀬麻季音女史の研究には水国核技術中央研究機構の施設が必要だとお話しました。その施設というのがこちら―――

【まず取り出したのは折り畳まれた地図と、核中研の一般向けパンフレット。地図を広げるとその所在地に丸がついている】


そう、見ていただけると分かる通り、核中研は新楼市の郊外にあり、様々な国や企業が研究開発に参加しています。管轄は一応、水の国文科省科学技術庁
科学技術振興局 国家重要戦略プログラム委員会 核技術中央研究機構…ということになっていますが、それに連名する形で、国際科学技術連盟
国際核技術保全委員会。星の国 文化局。 量子力学学会、テクノロジーフォーラム、オーウェル社…以外にも諸々、運営には様々な人が噛んでいて
何処の誰がトップかわかりません。水の国さえ話をつければいいというわけでもないみたいで。

【次々に取り出すのは調査した資料の山、核中研の組織図、水の国文科省の回答書、国際科学技術連盟の名簿、新聞の切り抜き―――そんななものの山だ】

ただ、水の国としても自国の先進技術をひけらかすような真似はしたくないはず。何処かで手綱を握れるように官僚も頭を使っているはずだと私は考えました

それがこれです。国家非常事態運営委員会、国家非常事態対策規定。並びに水の国行政向けの国家非常事態対応ガイドライン。国際協定第25号における
要人保護規定。――要所を抜粋したのがこちら、非常災害対策本部設置における組織規定の429ページ。それとテロ等緊急事態発生時の対応マニュアル530ページ。
こちらも見てください。これは水の国外務省の対外防衛協定に関する解釈書の―――――

【ダンボールの山が次々に解かれていく。出てくるのはマニュアル、規定、法律、法律解釈、ガイドライン、対応メモ、回答書一覧、議事録――そういったものだ】


799 : ◆DqFTH.xnGs :2018/11/11(日) 18:11:33 K2sEE1Jk0
>>797

【夢を見ているかのようだった。夢の続きだと誰かに言われて仕舞えば、そのまま信じてしまえそうな】
【そんな感覚があった。だって、こうやって何も考えずに笑って、食事をして、また笑うだなんて】
【今までは──叶わなかった幻想のようなものだから。たんぽぽのこと、世界のこと、神様のこと】
【とにかくいろんな物が、“こう”なることを邪魔していた気がする。それでも。目の前の、神さまとか蛇の子だとか】
【いろんなものを背負った少女が本当に望んでいたことは、きっと“こういう”ことなんだとはっきり理解した】
【こんな笑顔を見てしまえば。こんな笑い声を聞いてしまえば、誰だってそう思う】
【彼女が望んでいたことは、世界を買うだとか世界を滅ぼすだとか。あるいは最愛の為に死を捧げるだとか】
【そんな大それたことじゃなくて────誰だって、分かるはずだった。誰だって、そう】


ぎゃはっ!描いたあたしが言うのもなんだけど、ヘッタクソだろ?
気に入ったんなら別に持ってってもいいぜ?ったく…………しょおがねぇなぁ
そんなもん、いくらだって描いてやるよ。それこそ、でっけぇ建物の上に掲げてる旗くらいのサイズに描いちまってもいいけどよぉ!

それに、サンドイッチだってまた作ってやるよ!そりゃ、凝った料理とかはまだ無理だけどよぉ
このくらいだったら…………後は、たまに失敗するけどホットケーキ、とかさぁ
あぁ、ソースとかは期待すんじゃねぇぞ?バターとか、市販のジャムとかそんなもんで────


【ぎゃはぎゃはという品のない笑いと、きゃらきゃらという鈴のような笑いが交互に響く】
【いつまでだって、こんな時間が続けばいいのに──そう思いもする反面。忘れたフリが、そろそろできなくなってくる】
【どこかで、笑いが止まったタイミングだろうか。会話が切れて、静かになった時だろうか】
【切り出すのは、きっとミラからだった】


────、……………………な、

…………起きた、ってことは────、よく、わかんねぇ、けどさ

なにかを、決めたって…………そういう、…………こと、なん…………か?


800 : @mail ◆KP.vGoiAyM :2018/11/11(日) 18:14:30 Ty26k7V20
>>672

【from:ロッソ(霧崎)】
【to :ミラ】

【title:返信有難うございます。】

【text】

霧崎です。ご返信、ありがとうございます。
ミラ・クラァケさんですね。お名前より、初瀬麻季音女史に少々色々とお聞きしました。

貴女は未来を知りたいですか?もしそれを知って、変えたいと思いますか。
愛と自由のために戦えますか?犠牲を強いるとしても、変わるとは限らない未来のために

なら、お願いしたいことは一つです。貴女も、チンザノ・ロッソになってください。

世界を終わらせないために、スカした男を生き返らせる為に。


801 : ◆DqFTH.xnGs :2018/11/11(日) 18:33:19 K2sEE1Jk0
>>800

【From:ミラ・クラァケ】
【To:ロッソ】


『くだらねぇ未来なら、変えてやる。つまらねぇ未来もだ』

『ロッソになる、か。…………は、そんなの朝飯前だ』

『それにしても、そうすりゃ世界が救われてあいつが生き返るのか?』

『まるで神様だな。最近の流行りかよ。…………ま、流行りかどうかはかんけーねぇな』

『とりあえず、今やることは了解。愛も自由も、ロッソも世界も死なせやしねぇよ』

『そのうち会えたら酒でも飲もう。UTのゾーイによろしく』


802 : 名無しさん :2018/11/11(日) 19:09:14 .bqA9UJ.0
>>799

【なら今この瞬間は夢なのかもしれなかった、滅びゆく世界の見る走馬燈みたいな夢。あるいはもう諦めちゃった誰かが見る、最後の、】
【大事ないろんなこと全部ほっぽりだして、ずいぶんと長い休暇だった。見ていた長い夢は終わりを告げて、けれど、目覚めた現実は夢より絶望的で】
【指先にて弄ぶちっちゃな手作りの旗。ちいちゃい頃に食べたお子様ランチを思い出す。お父さんとお母さんと**/黒い髪と瞳の女の子/わたしじゃない】

あははは、――そんなおっきいの、いいよ。押し入れに入らないもん。困っちゃうの、……だから、これでいいの。
――、ホットケーキ。失敗しちゃうの? ――火が、強いんじゃ、ないかなあ。火が強いと、すぐに、焦げちゃうから。……。

わたし、バターのやつが一番好き。バターと。蜂蜜と。本当にそれだけの。お家で作る、やつ――。

【へたくそだなんてことは、終ぞ言わないのだろう。そもそもそう思ってもいないに違いなかった。自分のために描いてもらったなら、宝物だから】
【だけれど、そんなにも大きなものは持て余してしまうから。自分にはこれくらいがいいって、小さく首を振る。それに、凝った料理だって、別に、いらなくて】
【うんと高いレストランは結局最後まで慣れなかった。それよりどこにでもあるようなファミリー向けのお店が好きだった。ドリンクバーのお茶を飲んで、ポテトでも食べるような】
【そいでうんとくだらない話をする。幼馴染とたまにやっていた。何の話をしたのかよく覚えてなかった。"そんな"でよかった。はずなのにね】

【はたと瞬く。思い浮かぶ失敗が焦がしてしまうことくらいだったなら。それなら火が強いんじゃない、なんて、言ってみるだけ】
【バターとシロップだけのやつが一番好きだって笑うなら、いつか作って食べさせてってお願いするみたいな色も孕むだろうか、――やっぱり、言うだけかも、しれないけど】

【――からん、と、小さな音。飲み干したはずのオレンジジュースのコップをもう一度手に取って、氷の解けた水を飲むなら、薄らと果汁の味】
【はぐらかすように視線を逸らした。小さくなった氷の一つを口に含んで。ごくごく時間を稼ぐかのように、体温に溶かしていく】

――――――――――――――。

【貴女がさっきの瞬間に居合わせてくれていたら、良かったのに】
【ねえ抱きしめてもらった時に嬉しかったの。おかえりって言葉、すごくうれしかったの。だけどだあれもそうしてくれなかったの】
【わたしは悪くないのに/ねえそうでしょう?/なのに謝ってくれないの/ひどいことばかりあるの/頑張ったねって言ってくれないの/がんばったのに。/我慢したのに】
【偉いねって誰も言ってくれないの/それどころか綺麗じゃないわたしは要らないの/分かってた/だけど/もしかしたら/もしかしたら/もしかしたら】

【****という女の子は傍から見ていることが多い子だった。そのくせ、こっちにおいで一緒に遊ぼう、って、言って、混ぜてもらいたい子でもあった】
【いくらかの臆病さと面倒臭さのある子。それでも、普通に生きていたら、たぶん、ゆるりと矯正されて、普通の子みたいに、生きていけた、はずだった】
【違えたのはいつだったかなんてきっと彼女にも分からなかった。どうしてもって言うなら、やってあげる、なんて、口癖も、きっと、おんなじ理由を根っこにして】
【必要とされてるって分かるのが下手だった。言われないと不安でしかたなかった。そしてあんまりに致命的な人間関係の終わりと絶望を観測しすぎてきたから、】

……わたし、もう、我慢、しないから。

【――かり、と、小さくなった氷を噛み砕く音。ひとつ。それでもまだ視線はどこぞを向いたままだった、それだけで、何か、決定的に違えたって伝えてしまう声をしていた】


803 : ◆DqFTH.xnGs :2018/11/11(日) 20:23:51 K2sEE1Jk0
>>802

あー、確かにでけぇ旗は困っちまうな…………じゃあ、こういうのな
うまくホットケーキ焼けたら、…………そんじゃバターと蜂蜜たっぷりのっけて、よぉ
そしたらまた、この旗さしてやるよ。今度は違う絵で、さぁ

火加減な、火加減…………つい焦っちまってなぁ


【次に旗を作るんなら、どんな絵がいいんだろうか。タバコとか赤い靴が思い浮かぶ。でも上手く描ける気がしないから】
【次は鈴の絵でも描くんだろう。────次が、あれば。もし次が、あるんなら】


【────からん。氷の音。訪れた沈黙が、少し怖かった】
【こういう沈黙は、いつだって怖くって──いつだって、望ましくない答えが返ってくるものだった】


   ………………………………そっか


【それが分かっていれば──後は、こう言うしかなかった】
【彼女が決めたことなら、それを覆すには彼女がもう一度何かを決断するしかなくて】
【そうさせるには────確かに、世界は彼女に、優しくなさすぎた】


   ………………………………、──────そっ、かぁ


【しょうがねぇなぁ。そんな声色だった。否定はしないけど、手放しじゃ喜べない】
【哀しい声だった。鈴音がひとつの選択をしたが故に】
【ミラにも、ひとつ言うことが出来てしまった。それが、哀しくて】


……………………じゃあ、そのうちさ。…………あんたと、戦うことになるな

あたしは────世界を買って、てっぺんに立つって決めてるからよぉ

だから、世界を滅ぼされちまったら…………困るんだよなぁ


【────それは、とても静かな敵対宣言だった】
【凪の目覚めを遮らない、穏やかな宣誓】
【明確な敵意や殺意はないけれど、それでも】


ん…………、……………………でも、…………もう、決めちまったこと、なんだろ?

なら、さ────頑張って、…………世界、滅ぼせよ、なぁ?

あたしはあたしで…………世界滅ぼされないように戦ったり、…………なんか色々、頑張るから、さ


それで…………そん、で────あぁ、…………あ、あぁ、
あぁ、あ────ク、ソ…………クッッ、そ…………
ダメ、だなぁ…………こんな、時に…………よぉう……………………


【──こんな時に流れる涙は、どうやったら止まるんだろうか】
【(なぁ、神さま────教えちゃ、くれねぇか…………)】


804 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/11(日) 20:32:23 MyTBmWJM0
>>794

――――へ、へぇ?

【という間抜けな声をあげて顔を後ろへ向ける頃には、既に荷物をもぎ取られているのだろう】
【飲料が大量に詰まった袋は2枚重ねにされていて、破れこそしないもののそれなりの重さを伝えてくる】
【ただ、外套のその人が荒事に慣れているような人間ならば、何ていうことはない重量である】

い、いやぁ……こんな重い荷物を持っていただくなんて悪いですよ……周りの人にぶつかりそうなのは認めますけど。

―――ってああ、これですか?
この先、暫く行ったところで建設工事してるの、ご存知です?あれ、聖堂――大聖堂って言った方がいいか――造ってるんですけどね?
私、そこの司教でして。それでまあ、関係者の方に飲み物の差し入れでも、と思ったんですがね、いやこれが意外と大量でして……。

【人の良さそうな、そしてどこか庶民的な、そんな人物像だろうか。終始ニコニコと笑っていて】
【―――それが却って怪しい、と見る向きもあるかもしれないが】
【荷物に関しては、持つと言えば無理に止めさせようとはせず。やはり一人では無理があると悟っていたようで】

【何にせよ、男が言っているのは、企業ビルの多いミール・シュタインに突然建設され始めた聖堂のことらしかった】
【曰くどこぞの資産家が気まぐれでつくっただとか。そして確か、完成を間近に控えているという話であった】


805 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/11(日) 21:12:34 WMHqDivw0
>>791
【イスラフィールの反応が変わる】
【同時に、黒陽側にもその情報は流れたらしい】
【ホログラムでの邂逅――イスラフィールの側の空間情報を把握していた訳ではないから、その手管を意識することはなかっただろう】
【だが、事情を知るならば、起こった事象は類推できる】

フン、小賢しい手段を使うものだ。
ロールシャッハ消滅の報はこちらにも入って来た。

奴の抱え込んだ真相とやらは概ね、想定の範囲内では有ったが――
観測した状況を整理する限り、貴様の懸念通り受け入れていた者達も、幾人かはいたようだな。


【結果として、ロールシャッハの管理を望む者は一人もおらず、総攻撃を受けて彼は撃滅された】
【だが、それと真実を受け入れたかどうかは別の問題であり】
【件の事実を一笑に付す者はむしろ少数派で有ったと言えよう】


だが、それならば我らが貴様を疑った理由も知れような。
貴様と言う個の意志はさておいて、全てが裏目に出る可能性は有った。

先の確認の解答通り、貴様がロールシャッハに恐怖したと言うのであれば、その時点での貴様の情報が全てロールシャッハに渡っている可能性も有った。


否――そう理由をつけることで、貴様を意図しない裏切者に仕立て上げることが可能だったと言うことだ。


【ロールシャッハの語る真実が真実であったかどうかに関係なく、それは矛盾なく成立できる】
【必要なのは、筋を通せるかどうかで、イスラフィールはその条件下に有った】

ゴーストライターやリーイェンの奴らも自らの意志で裏切ったと思っている訳ではないとも。
しかし、"条件を満たしていた"、と言うだけのことだ。


806 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/11(日) 21:15:44 E1nVzEpQ0
>>793

【教え子の心底から嬉しげなる挙止を見るならば、見下ろすアリアもまた柔和な表情であった。頭の一ツでも撫でてしまいそうな】
【それでも単に誰にでも甘い態度を取る人間ではないという事実は平生の彼女が証明していた。 ─── その冷徹さの認める人間の前でだけ、穏やかな優しさを見せるのだろう】


「私なりの忌憚ない敬意よ。年功序列は好みでないの。けれど、そうね ─── 。」
「訓練教程もきちんと組み直してあげないと。」「 ─── 覚悟なさい、ね?」


【これしきの事で ──── といった事を口こそしなかったものの、少女の能力に決して満足している様子ではなかった。然らば、】
【"教官"としての彼女は頗るシビアな指導を行うのだろう。初めは基礎から、筋力や持久力、肺活量その他のトレーニング】
【ごく実戦的な軍隊格闘術や近接射撃術、総合的なCQCの練度向上。時に座学を交えながら、然して多くは実演習を伴い】
【一見して不可能なほどの難度に感じつつも、実践してみれば出来ないことは無い。そのような領域でメニューを組んで指導するのに慣れている女だった。】
【「潜水術や雪中行軍、空挺降下の遣り方も何れは」そんな風に零すのは半ば冗談めいて、然して恐らく半ば同然であり】
【兎にも角にも体系だった身体能力と戦闘技術は、遠からぬうちに身に付けられるだろうと、実感できる ─── かも、しれない。】

【余談としては、 ─── 佳月の前で、彼女はやはり教師のように、されど時折は母親のように、慈愛と厳格の両面をもって振る舞うのだろう】
【そういう求め方をされるのに吝かでないような女であるらしかった。それでも何処か狡猾でさえあるのなら、時折わざとミレーユを呼びつけて】
【あえて互いに競わせるような方策にて、訓練を行うこともあるのだろう ─── というのは、やはり、余談の余談。】

/このあたりで〆でいかがでしょうか!


807 : 名無しさん :2018/11/11(日) 21:20:16 .bqA9UJ.0
>>803

【ことん、と、これもまたごく穏やかで小さな音。コップを元の場所へ戻すなら、少女は指先を揃えた膝に重ねる、綺麗な姿勢だった、だからこそ、】
【――これが例えば泣きじゃくって/錯乱でもして/ひび割れた声で/叫ぶように言い捨てるのだったら、まだ、なにか希望はあったのかもしれなかった。でも】

――――――――、嫌なことに"いや"って言わないの、やめるの。
――――――――、わたしのもの取られたら、それはわたしのものだって、言うの。

失くしたくないもの失くしたら、泣くの、大切なもの、奪われたら、怒るの、――、だから、もう、わたし、我慢、しない、イイコなんて、やめる。

【それでも、本当に、なにか、ほんのきっかけで、全然違う方向に行けた可能性、思い浮かべてしまえそうなら】
【やはり穏やかな表情だった。だけれどもう笑ってはいなかった。視線がミラへ向かないのは、――きっと彼女は何もかも嫌いなんじゃなくって、】

イイコでいても、イイコトなんてなかったの。だから、もう、――、わたしは、わたしのために、怒るの、嫌いなもの、嫌いって言うの。
綺麗じゃないわたしを誰も要らないなら、――、――わたしだって、誰も、要らない、……。……、ねえ、みんな、知らないかも、しれないけど、――。

――わたしね、優しい子じゃないよ。強くだってないよ。そんなフリしてただけだよ。狡いし。弱くて。いつも誰かが羨ましくて。――――、今だって、

わたしなんかより、ずっと、ずっと、ずっと……ずっと、大事にされてる世界が、羨ましくて、羨ましいから、嫌い。

【掌の中に握りこんだ旗に視線を落とす。今更過ぎる宣言だった。せめてもう半年、あるいは一年、――三年前でも、五年前でも、九年前でも、いつでもよかった、言えていたなら】
【どこかで誰かに。その時々で一番信頼できるって信じられる人に。言えたなら。――たぶん/ぜったいに/きっと/まちがいなく、何かが違ってたって、誰だって分かること】
【世界なんかより自分を選んでほしいって言っているに過ぎなかった。盲目の恋人みたいに、ただどこまでも存在を肯定してほしいだけだった】

【――――それくらいのご褒美、あっても、いいのに、って、思ってしまうくらいには、いっぱい、頑張った、つもりだったから】

【(クラァケさんも、そうなんだ)】

【きっと少女は何もかも何もかも嫌いになってしまったわけじゃあ、なくって、】
【いろんな好きが隠れて見えなくなってしまうくらい、"嫌い"が大きくなったから、全部一緒くたに捨てようとしていた】
【なんでもかんでも放り込んだ箱。気づけばドロドロに腐ったナニカと、洗ったら使えそうなナニカと、洗っても駄目そうなナニカと、大事だったナニカと、全部、ぜんぶ、】
【――ぜーんぶ、いっしょくたにしてしまった中から、もう、大事なものだけ拾えないって悟ってしまったみたいに。腐ったもの、いらないもの、汚いものだけ捨てる方法、分からないみたいに】

【だから箱ごと捨てちゃおう】


808 : ◆DqFTH.xnGs :2018/11/11(日) 22:19:15 81GCsRbo0
>>807

【ダラダラと涙を零しながら、それでも鈴音の言葉は確かに届いていた】
【うん、うんと頷く。その、鈴音の尊い考えをひとつたりとも取り零さないように】
【──やがて、ミラの口元が緩み始める。泣きながら笑うなんて】
【妙な話でもあったが…………彼女は確かに、笑っていたのだ】


ん…………そっ、か────そっか、うん…………うん…………

嫌いで、…………羨ましくって────そう、…………そう、だよなぁ…………


【(嫌いなものを嫌いって言えるんだなぁ…………、よかったなぁ)】
【(我慢もしなくって、いい子じゃなくなって────よかった、なぁ)】
【(羨ましいって言えて…………嫌いって、言えるようになって────よかった、なぁ…………っ!)】


【それは肯定だった。確かに肯定ではあった】
【ワガママになれと、もっと自分に素直になれと大声で叫んだ時のことを思えば】
【当然の行為で────それでも、最後の最後。世界を滅ぼすという最後の一歩を肯定しきれないのは】
【彼女が選んだ一人が、蛇の少女ではなく強欲の王だったというただそれだけの話】
【出会う順番を“間違えた”という言い方だって出来た。世界は間違いと正解、1と0の連続で】
【積み重なった間違いが、あるいは誰かにとっての正解が巡り巡って“こう”なっているのなら】
【────それはきっと。それが、世界の選択なのかもしれず】


…………、…………ぎゃは。よく、…………、頑張ったなぁ、…………鈴音

そんだけ言えりゃ、もう大丈夫だ。後は、…………なんかこう、ド派手なステージで、今言ったことそっくりそんまま叫ぶだけで、よぉ
そうすりゃ、きっと今までにねぇくらいすっきりしちまうんだろうよ

…………、ムカつく連中なんて、全部ぶっ殺しちまえ。嫌いだって、叫びながらよぉ

その後は────世界を滅ぼされたくねぇ連中とあんたとの、意地の張り合いだ
あんたの…………最後の、頑張り時ってぇやつ、…………だな

もし────もし、よぉ。気が向いたら…………あたしも行くから、さ
ぎゃはっ…………もちろん、あんたを止める側に回っちまうけど…………
もし、いつ世界を滅ぼすかってぇ心が決まったら…………教えちゃくれねぇか、なぁ?

ほら…………、……………………行き先は違うけど、あたしはまだ、あんたとは…………、
…………、……………………ダチのつもり、なんだから、さぁ
ダチの晴れ舞台を見に行かねぇ、っつぅのは…………ほら、さ…………なんか、…………なぁ?


【やがて、止まりつつある涙を拭き。口元を歪めて彼女はそう言うのだ】
【甘い考えだとは分かっている。世界を滅ぼす予告なんて、普通に考えればやる意味なんてないんだから】


809 : 名無しさん :2018/11/11(日) 22:49:41 .bqA9UJ.0
>>808

【そうやって泣いてくれるミラをすぐそこに、――だのに彼女は平坦な表情をしていた。それでも決して無表情では、きっとなかった。なら、】
【あるいは彼女も気づくのかもしれない。だけど気づいてないのかもしれない。それとももしかしたら気づかなかったふりをしているのかも、しれない、】
【だから一度ひらりと視線を翻した、――初めてきちんとミラのことを見るのだろうか。そうしたら、そっと伸ばした指先、それ以外の慰め方知らないみたいに、撫でようと】

【それこそ子供にするみたいに。子供を泣き止ますみたいに。――もちろん相手は大人であるから、拒むようなら、そっと指先もおろすのだろう、どちらにせよ】

――――――――、あははははっ、あはは、へんなの、クラァケさん、変だよ、――、わたしより泣いてるもん、なんで?

【――ふ、と、表情を綻ばして笑うんだった。ころころって笑い声はやっぱり鈴の音を転がす軽さ。なんで――って言ったって、自分だって、たくさん泣いたけど】
【ずうっと泣いていた。ずうっと泣いてきた。――だから今まで泣いた全部の理由を赦さない。赦せない。そうやって決めたから。イイコをやめるって意味は、それだから】
【自分は怒ってるって表明する。赦さないって宣言する。――然るに次はやっぱり復讐するしか、ないのだろうから】

――やっぱりクラァケさん、変だよ、みんな、わたしのこと、殺すって言うのに、――、でも、わたし、死ねないの、――だから、ね、

【、】

今度こそ本当に死んでしまえる/殺してもらえるんじゃないかって。

【――――どこかに淡い期待を孕んだ声をしていた。きっと何百年経っても何千年経ってもどうにもならない、どうにもなれない、わたしが、もしかしたら】
【だから結局今までの全部を清算しようとしている/していた、納得いかない世界に納得するため。そして、願わくば、(こんなふうになるまえに死んでしまいたかった)】

うん、――――ありがとう。

【やっぱりすっごく変だって言ってしまいたいような顔をして、少女は笑うんだろう。世界を滅ぼすのを応援されるなんて、そんなの、思ってなかったみたいに】
【だからちょっとこそばゆいみたいだった。ここから先の人生全部わがままばっかりするって決めたから。だけどまだわがままに慣れてやいないから、――】


810 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/11(日) 23:05:34 WMHqDivw0
>>806

はいっ! よろしくお願いします、……えへへ。

【それから先、どれだけ筋肉痛になろうが怪我しようが文句らしい文句は言わないんだけど】
【ミレーユと何かしら組まされるなら、そのとき初めて「いやです」とだけ。言うだけ言って、】
【しかし負けず嫌いな少女であるから、相手が彼なら猶更。死ぬほど、なんでも、やってみせる】
【そういう感じで扱いやすい、まだ若い仔犬。狼を名乗るにはまだもう少し、時間が要りそう――】

//お付き合いいただきありがとうございました!


811 : ◆DqFTH.xnGs :2018/11/11(日) 23:27:22 81GCsRbo0
>>809

【ヒトの肌とも違う、冷たい感触。柔らかいような硬いような奇妙な弾力。指に絡みつく潮騒】
【撫でればそんな感触が返ってくるのだろう。拒むなんて、するはずもなくて】
【むしろその指先を惜しむかのように、さわさわと触腕の端が撫で返そうと、甘えるように絡んでしまおうとするのだ】
【ずず、と鼻汁を啜る。その後聞こえる鈴のような声を聞けば、また口元を歪ませて笑うのだ】


なんで、…………なんで、か…………なんで、かなぁ…………

だって、よぉ…………こんな風に、なっちまうなんて────思っても、なかったから、さぁ
…………、…………あたしでも、…………あたしも、わっかんねぇ、よ…………

あんたが言いたいこと言えるようになったことは…………、嬉しいんだけど、よぉ────
それでも────結局、こうなっちまったら…………最後は一緒の道を歩けねぇ、のは、…………っ、

…………っ、あぁ、でも────あたしが“円卓”である以上…………
“こう”なるのは、避けられなかったんだろう、けど…………よぉ…………っっ!


【友人を、殺す。どこかで手を友人の血で染めることになるのだろうとは思っていたが】
【それがこんなにも早いだなんて、思ってはいなかった。それも、こんな形で】
【────早いうちから、友殺しの覚悟自体は決めていた。何人かには、いずれ敵になると宣言もしていた】
【それでも…………ツラいと叫びたくなるのが本音だった。いっそ、鈴音が正義として自分を殺しに来てくれれば】
【どれほど楽だったことか。それなら、こんなにも涙せずに戦えたものを。──けれど、世界はそうさせてくれなかったのなら】
【それなら、仕方ないとしか言えないじゃないか。(…………あぁ、クソ)】
【確かに、滅ぼしたくなるな。────その衝動は、語られることなどなく】


…………、…………あ────────、

────、────────、……………………、そう、…………そっ、か

そう…………、……………………そう、だった…………なぁ


…………ぎゃは。じゃあ────考えねぇと、いけねぇな…………その、方法を…………さ


【──淡い希望の中に、深い絶望を見た気がした。平和に生きれないのなら、せめて】
【そんな声が聞こえたような気がした。もしかしたら、自分の都合のいい解釈なのかもしれないけれど】
【ならば。────最後に、神殺しの方法を見つけよう。そう思った。そうすることが】
【友人である自分の勤めなんじゃないかと、思った。…………独りよがりなのかもはしれないけれど】
【あながち間違いだとも思えなかった。世界が滅びることも、死ぬことも】
【それらは鈴音にとっては同義に救いなのだと、そう思えたから】

【そして────ありがとう、と笑われてしまえば困ったように笑うのだ】


あのなぁ…………ぎゃは、…………ワガママに、なるんだろ?
そーいうときはさぁ────“当然でしょ”ってぇツラしとくんだよ

ったく…………どぉにもワガママ言うのに慣れてねぇみてぇだなぁ?
ほら、あたし相手にワガママ言う練習だ。ほら、言ってみろよ
出来ねぇことは出来ねぇっつって、あんたをイライラさせてやっから、よぉ!


812 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/11(日) 23:36:47 BRNVt/Aw0
>>763 >>790

【二人の意見を書き記そうとする秘書。大衆の目にも分かり易い悪の能力者を、と言われれば軽く頷きながら書き記そうとするが派手な見た目を、と注文されれば眉間に皺を寄せて】

極彩色……うーん……出来な……くはないんでしょうけど……同じ衣服……
【結構かかりそうですねぇ……と呟いて】

【続いて妲己が衣装は統一させず同じ目的の為に集まったような、と発言すれば、そちらだったらまあ……とまた小さく呟く】
【だが、妲己がこの奸計における彼らの立ち位置について問えば少し考え込んで】

彼ら……えーと……クーデターの主犯に見せかける闇狗達……ですよね?
そう、ですねー……
【ちらりと見上げた虚空。風に乗って聞こえるのは嘆願する民草達の声で】

──今お外できゃんきゃん鳴いてる方々、とちょっと似た感じ……でしょーか?
普段は普通に過ごしてて……でもってただちょっとした切っ掛けで暴徒と化してしまって……
"本人"達はあくまで自分達の正当性の為に暴れてるんです
でもそれがかえって悪い事になっちゃってる……んー……ちょっと違う気が……
【こーゆー時学が無いと困りますねぇ……と善弥はため息を吐いて】

【外で嘆く民衆。彼らはあくまで妖怪達の為、自分達の為、生態系の為に扉の前で直訴しているのだろう】
【しかし、こんな時間まで延々と騒ぎ続ける彼らに何かを思う者がいるのではないだろうか?それは例えば新法案に関心がなく、なおかつ城の周囲で生活をする民、だとか──】


んー……取りあえず格好は普通の人のような洋服で、色合いはそれなりにカラフルに……って感じでしょーかね?幾ら洋服だからって黒一色だったらまあ怪しまれますし……
……あー、でも顔だけは全員隠させて貰いますね?此方の都合上、になっちゃうんですが……
【此方はそれで良いですよね?と善弥は顎に筆記具を当てながら二人に確認をとる】


813 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/11(日) 23:38:04 BRNVt/Aw0
>>792

……自分で自分を許せない、確かにそれはそうです……
彼女の為に何もしてあげられなかった、それどころか隠しておきたかったであろう秘密を無断で知ってしまった……そんな自分が赦せなかった……

【少女はふ、と目を伏せて】
【続いた彼の言葉を静かに聞く】

どう、したい……今まで通りの友達で……

そう、ですね

──別に、嫌われても憎まれてももう構わないんです、私
【「だって、気付いちゃったんだもの」、と少女はまっすぐに相手を見据え、そうしてふと笑う】

私、"世界"に要らない子だったんです
重要な情報を得る事も出来ないし、誰かを助けに行く事だって出来ない
誰かの居場所を護る事も、大切な人を支える事も、弾除けだって出来やしない!
父親の様に思っていた人の為に情報を集める事も出来ない、というか私じゃなくたってそういう情報提供してあげられる人が彼には沢山いるし、無実の罪で囚われたってなーんもしてやれない!
姉の様に思っていた人を助けに行く事も出来ない、今どうなっているかもちゃんと分かってすらいない!
大切な友達を助けにも行けない、何があったか知ったって見なかった振りをして普通に振る舞う事も出来やしない!そもそもあの子には支えてくれる人がいっぱいいるんだから私一人いなくたって大丈夫だし!
"世界"の為に私は何も出来ない。何も出来ない役立たずは存在する価値がない
そういう子は棄てられたって当たり前でしょう?

でもでも!この大陸に来る前、櫻にいた頃から本当はずーっと、最初から私は要らない子だったんです!
その事に気付いちゃって!
だからね、死のうとしてたんです!でも誰にも見付からないような良い場所が見つかんなくて……
【こういう所でも無能とか!と少女はきゃらきゃらと笑う】
【まるで、どうでもいい話をするみたいに明るい笑顔で】


814 : 名無しさん :2018/11/12(月) 00:23:38 .bqA9UJ.0
>>811

【――――ぷに、と、あまり馴染みのない指ざわり。ここがごく平穏な場であったなら、揶揄いがちに、わざとむにむにしてみたり、したくなっちゃうような】
【だけれど彼女は変わらずに撫でるのだろうか、――撫で返されるのに気づけば、そのまま、指を委ねもする。真っ白で細い指先、へし折ろうとするなら、へし折れるほどに】

――――、ああ、そっか、

【そうやって委ねたまま、――ふと彼女は何かに気づくのだろう。相手の言葉をきっかけに。円卓、――黒幕、世界を駄目にしようとするひとたち、】
【――そうだった。わたしたち。それが嫌だったんだ。そうだった。――忘れていたはずなかった。だけれど、どこかで、忘れてしまっていた。自分のことにかまけて】
【――――だから今更気づいた。自分が言い放った言葉の意味合い。おんなじだった。ミイラ取りが、なんて、簡単な話では、きっと、ないんだけれど――】

【黒幕も円卓もこの世界には要らない。そのはずだった。だけど今では、その世界さえ、要らなくなってしまった、なんて、 】

【(彼女が気づいたこと、多分、相手にも伝わるのだろうか。黒幕の世界は要らない。円卓の世界も要らない。そもそも、世界なんて、****)】

――――――――――わたしの、壊し方は……。

【触腕に委ねていた指先をするりと戻すのなら、口元に添える。ふと考えこむようなポーズをするなら、多分彼女は自分の殺し方を知っていた。でも、】
【吐息とともにごく曖昧な笑みを吐き出して、それで誤魔化してしまうんだろう。そうしてもしも尋ねられたとしてもその表情のまま、首を揺らして、答えないから】

……そう、かな。そっか。じゃあ――、えっと――――。

【――そうして、少女はミラの前より姿を消すのだろう。彼女が目覚めてから、一時間と、ほんの少しだけの時間の後。それまでの半年間を、彼女は記憶していないのだから】
【お部屋を空っぽにすることに罪悪感はあまりないらしかった。だから十分にわがままだった。だけれど一度だけ部屋の出入り口、刹那に立ち止まるのなら、】

あとで、夕月ちゃんに、電話してあげてね。お友達でしょ? だから――――――。

【一回だけ振り返る。それで、後は、出ていってしまう、魔術とかじゃなくって、自分の足取りで。だから、】

【 悪い蛇の神様は、善いタコさんの言葉に感銘を受けて、世界を滅ぼすことをやめました】
【 ――おしまい】

【なんて、なるはず、なくって】

【「じゃあ、クラァケさん、わたしがやってみたかったこと、全部、やってみて」】
【「だいすきなひとと結婚して、子供を産んで、それから、それから――」】

【――だから結局彼女は我儘をするのがへたっぴだった。数秒ほどではあったが、それでも立派に悩んだ素振りで、彼女が伝えたのは、"そんな"ことで】
【ごくありふれた、物語としての理想の"しあわせ"。今際のときに、特別なことはなあんにもなかったけど、それでも、なんか、なんだか、うんと、幸せだったって思うような、人生】
【自分がやってみたかったこと。いつか叶わないと悟って、たんぽぽの子たちに委ねたこと。そうしてまた目を逸らしたなら、今度は、貴女へ】
【何度も涙に濡らして握りしめたならずいぶんとくちゃくちゃになってしまっているに違いない、夢。叶えてみせてって、押し付けて、去っていった】

【(然るに全くもってすべてにおいて未練がましく、何一つ諦めなんてついていなくって、今からだって神様の奇跡を信じてしまいたくて)】
【(だのにいつしか神様は自分だったから。だから、だから、 )】【(叶えてくれない世界なんて、大ッ嫌い)】

/おつかれさまでした!


815 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/12(月) 05:19:41 smh2z7gk0
>>804

【外套の人物は重たい袋も難なく持って見せる、良く見れば身長は150cmにも満たない小柄なのだが】
【「先導しろ」と言わんばかりに外套の中から横目で見つめながら白い外套の人物は青年の話を聞いている】

いや、構わない。単純に興味もあるからな。

―――〝大聖堂〟だと?小耳には挟んでいたがこのご時世にまだそんなものを作る金があったとは。
しかし〝司教〟とは、意外だ。こんなことを聞くのはあれだが〝何処の教会〟の所属なのだ?

【〝教会〟と呼ばれるモノはたくさんある。特にこの世界では異能者たちの〝組織〟としても存在する。】
【とはいえ上記の〝教会〟は一時の勢いも低下し、今はひっそりと水面下で行動しているのみだが】

【故に白い外套の人物は気になったのだろう、青年と大聖堂を作ろうとする青年の所属する教会が何なのかと】


そして、なぜミールシュタインという信仰の薄い場所を選ばれたのだ?


816 : 名無しさん :2018/11/12(月) 10:40:15 .bqA9UJ.0
【風の国――――UT酒場】
【ひどく冷える夜だった。風はうんと冷たくて、ならば、ちょっとお酒でも一杯飲んでいこうか】
【そんな時にちょうどいいお店があった。ただしその日の店番が店主か給仕かによってメニュー数が相当違うって専らの噂だった】

………………なんだっけ、――。

【――でも、お店の中には、ごく静寂。数か月前より全く顔を見なくなった店主と、そのいくらか後に姿を消した給仕と、他のメンバーもどうやら忙しい、となれば】
【真っ先に捨て置かれたのは酒場としての機能。それでも最初は常連の客たちが集まってうまくやっていたらしい。けれど気づけば一人減り、二人減り、】
【最低限の明かりに最低限の暖房。だけれど机は薄っすらほこりが積もって、椅子は机にあげっぱなし。それでも、一つだけ、人影があるなら】

【腰を撫でる長さの黒髪と真っ白な肌はお互いを引き立てる色、ならば瞳は黒色と赤色の色違いがきっとよく似合っていた。瞬く眼はぱちりと大きく】
【いくらもあどけない顔に、けれどひどく不明瞭な表情を浮かべていた。指先に揺らし弄ぶペン先、かちかちとボールペンを無意味にノックする音、時計の針と同じ間隔で】
【生成りのブラウスに深い赤色のジャンパースカート。たあっぷり詰め込んだパニエのふくらみに、フィッシュテールの布地が、ふわっと乗って】
【ふらふらさせる足先は赤いリボンの編み上げブーツ。時々高いかかとで床をかりかり虐める音もまた、ペンと、時計とに混じりこむなら】
【――見た目で見るに十六歳ほどの少女だった。それも、半年近く姿を消していた給仕であった。机に座って、なにかファイルを広げている、らしくて、】

――思い出せない。

【――――――長い嘆息一つ。ふにゃあなんて擬音が似合いそうな音にて、彼女はファイルごと机に突っ伏すのなら】
【やがてずるりと自分の下からファイルを引き摺り出してぱらぱらとめくり出す、背表紙には、レシピ試作の文字と、割合少なくないナンバリングの数字】
【はあとため息でまた突っ伏すのだけれど、――――もしも物音がするとして、彼女はすらと立ち上がってしまうのだろう、それが、店内からでも、客の訪れでも】
【そうしてファイルもボールペンも置き去りにしたままで去ってしまおうとする、――UT側からなら店外へ。店外からなら、UT内へ】
【ならば誰にも会いたくないのかもしれなかった。――それでも、どちらだとしても、訪れた"だれか"は、彼女の背中、ばっちりと見てしまうのだろうから】

【――そうして呼びかけられるのなら、立ち止まってしまうのは、なにか、感情に似て】

/お引越しのやつですっ


817 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/12(月) 11:59:22 6.kk0qdE0
>>790>>812

【会談はなおも続き、月明かりが灯り王城を淡く照らし、灯火は薄くぼんやりと密談の場に光をくれる】

「無知な大衆とは、げに愚かな物ですな……」

【暗がりの中の喧騒を聞き流しながら、ため息でも吐くかの如く、こう呟き】

「なるほど、流石は奥方公であります」
「何分、私めは軍人稼業、所詮はその道しか理解せぬ浅学故、奥方公の博識博学には到底及びませぬ、こと能力者への対策とは……私めも重々学ばせて頂きます」
「しからば、その策にて、異論は御座いませぬ」

【一頻りの賛辞と共に、妲己の考えに同意の意を示した後】
【ここで、ちらりと悠玄と策をメモする善弥を見て】

「なれば、水国にて大衆が好みましょうファストファッションの店の幾つかにて調達致しましょう」
「悠玄殿、善弥殿も其れでしたらば手間も資金も掛かりますまい」

【こう、再びの提案を述べる】
【あくまで、民間人を、ごく普通の大衆の暴動を演じきる、此れが要であると言われたらば】
【ここで再び善弥を見やり】

「善弥殿は、物の本質を的確に見定めるが得意の様だ……学問を希望とあらば、静ヶ崎の図書館でも資料室でも好きに使うと宜しいでしょう」

【僅かな笑みを浮かべつつ、こう言って】

「顔を隠す、その位は宜しいでしょう、不都合はありますまい、古くから民衆の暴動、学生運動では良くある事ですから」
「火を煽る役目、此方も妲己様の仰せのままに……何、国の命によって殺し死ねるのだ、彼らとて誉れでしょう」

【口元に怪しく引き攣るような笑みを浮かべ、こう二方に答えて】
【水の国と言う楼閣の、足元を須らく砂上とし、全てを掠め取る計画、歯車がまた動き出したのを感じて】


818 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/12(月) 14:47:50 h7nAXcQg0
>>816
【足音を聞いて、彼女は振り向いただろうか。誰にも会いたくないなら、見てはいないだろうか】
【音は店外から。店の中に向かう彼女の背中に、二重に重なったような不気味な声がかけられるだろう】

『こんばんは。なんだ、やってないの?』


【声の主は、およそ人とは思えなかった。人の形をしてはいたが、全身が墨を塗りたくったように真っ黒で】
【まるで、人の影がそのまま立ち上がって、歩いているかのようだ。目も髪もなく、口の中だけが真っ白で】
【三日月の形に歪んだその白い口は、蝋で固められたみたいにその形のまま、動いていない】

『あれ、何かお邪魔だったかな? そのファイル、放ったらかしでいいの?』
『思い出せない、とか言ってたみたいだけど』

【そんな口をしているから、ファイルを指差す仕草もまるで嘲笑っているかのようにも見えるだろうか】
【この気色の悪い影の化け物を前にして、果たして今の彼女がどんな感情を示すだろうか】


819 : 名無しさん :2018/11/12(月) 19:20:55 nF0GdFPM0
>>818

【足音。それそのものに彼女は反応を見せないのだろう。あるいは正しく記すなら、立ち去るための目印にはしたが、それ以上の反応は見せず】
【だけれども――声を掛けられるならば、やはり、ひたと足を止めるのだ。ちょうど店内とバックルーム(あるいは組織としてはそちらがメインなのだけれども)の狭間にて】
【振り返るのならば、いくらもあどけない顔にごく曖昧な笑みを浮かべていた。どこか困ったようにも似て、だけれど、微かな微苦笑をお客様向けの笑顔でくるんだような】

"やってないみたい"。――わたしも久しぶりに来たから、分からないの。お掃除だってあんまりしてないみたいだし、――。

【そんな色合いの表情、浮かべたなら。少女はゆるりとした足取りで店内へ戻って来るのだろう。――あるいは、奇妙な人物を置いて、行きたくなかったみたいに】
【だから結局、さっきまで座っていた椅子のところまで戻って来る。指差されるファイルを手に取るのなら、ぱらりぱらり、捲って、眺めて――、】

書きさしのところがあるから、書こうと思ったの。だけど、思い出せなかったから。――そんなに、大したもの、作ろうとしてたわけじゃなくて。
……あなた。は、お客さん? ――――お客さんを追い返したって知られたら、セリーナに怒られちゃう。わたし、お料理しか出来ないけど、――それでいいなら。
冷蔵庫に何があるのかもまだ見てないけど、――――――ありものでいいなら、何か、作るよ。なぁんにもなかったら、お酒くらいしか、出せないけど。

【――ぱたん、と、最後、閉じてしまう。ボールペンも回収したなら、横のクリップでファイルにくっつけて。ファイルごと胸元に抱え込むなら、】
【もしも相手が食事目当ての"客"であったなら、――そもそも食材がきちんとあるのかも分からぬけれど、それでいいなら、何か作るよ、なんて、笑うんだろう】

【お店の中には少女一人であったなら、テーブルは一つだけ。椅子だって一脚だけ。あなたのためだけになんて言ったらロマンティックすぎるけれど――】


820 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/12(月) 20:38:26 E1nVzEpQ0
>>798

【形而上的な語らいにつき饒舌になるのは後藤の悪癖であったかもしれない。然らば後は、顎髭に指を添えたまま、幾度か頷いて】
【人智の未だ及ばぬ領域に想いを馳せるのは今でなくともよい。現在の世界に求められているのは道具主義に根差した方法論】
【「 ─── 弱音吐くなら、せめてM2を運ぶくらいじゃなきゃ。」お客様の前で根を上げるなと言いたげに、黒髪の女の言葉】
【それでも残りの三ツを運ぶのに際して、その護衛は助力もするのだろう。最低限この状況ならば部屋に1人付いていれば良い。 ─── 彼女は存外に膂力があった】

【そうして小手調べに広げられる見取り図に、共に続けられる霧崎の言葉に、 ─── やはり静かに後藤は頷いた。】
【夢のある論理のスキームからは脱却して、現実の問題に沈思している人間の横顔であった。やおらに、呟くのは】


「手ごろな政治屋の頭を吹っ飛ばせば済む話でもない、と。 ─── 全く難儀だ」


【およそ当然の温度感で、先程まで数学的哲学的議論を弁じていた口先は綴った。社会倫理に反する事を微塵も疑わぬ声音であった】
【何となれば彼らはマフィアよりもやくざな手口を王道とする組織である。目標を達成するにあたり、脅威は実力をもって排除する】
【広げられる資料の数々へ、後藤は幾らか手慰みのように目を通していった。 ─── 明瞭な指令系統がない組織は一種の理想形だが、完全なそれは組織として存在し得ない】


「 ……… この一連の約定群へ、陰に陽に関与している人間あるいは組織が、件の実験施設において政治的な実権を握っている」
「そういう事でしょうかな。 ──── であれば、我々に何をお求めでしょうか?」「"純粋な"対外交渉なら、正規の条約審議委員会を御紹介したい所ですが」


【ややセンシティブな立法の際にありがちな、堂々巡りの論戦が記録されたページから目を離して、後藤は霧崎へと視線を向けた】
【正規の機関に頼れぬからこそ選任されたのは彼も承知していた。然して、殺るか・脅すか・奪うか ─── そういった類いの、どこまでも明るみに出ぬ荒っぽい遣り方が】
【八課という組織の本懐であるならば、手緩い腹の探り合いは不可能と言わずとも長けている訳ではなかった。何よりも探られて痛む腹が多すぎるのだから】


821 : ◆DqFTH.xnGs :2018/11/12(月) 21:48:28 9M/8sBJw0
>>814

【──気付くのだろう。気付かないはずがなかった。だって、彼女はいつか世界を蝕む一画の中枢に成るのだから】
【だからこそ、世界を今壊されるわけにもいかなかった。いずれ袂を別つ運命。それが早くなっただけ】
【それこそ悟るかのように、その感覚は胸にすとんと落ちていった。結局、終着点は同じなんだと】

【鈴音の滅し方については、終ぞ分からないまま。けれどそれも、鈴音のワガママだと思えば】
【ゆるりとした笑みさえ口元に浮かぶのだ。分からないなら、探すだけだ。今まで直面してきた難題と】
【何も変わりはしない。────上等、と小さな呟きが漏れた】


…………安心しなって。夕月にも、カニバディールにもみぃんなに教えてやる

世界をめちゃくちゃにしちまうってぇんだ────その観客が、あたし1人っつぅのは……
くくっ…………ぎゃっは!寂しくって、もう1回か2回くれぇは世界を滅ぼしたくなっちまうだろうからよぉ!!


【そして最後の、本当に最後。一度きりの振り返り際に伝えられた言葉には、苦笑するばかり】
【いつぞや電話口で囁かれた祝詞/呪言をより濃くしたものを押し付けられれば】
【「しょうがねぇなあ」なんて言う他なかった。だってそれは、神様が紡いだまじないだったんだから】


おうよ────全部、全部やってみせるぜ…………約束だ、鈴音

あたしは、大好きなヤツと結婚して…………ガキを何人も産んで
そのガキが大人になって、またガキこさえて────そのチビガキどもの顔が見れるくれぇ、長生きして、よぉ…………
毎日の朝飯は、綺麗にうまいこと焼けたホットケーキ、で…………あぁ…………

あぁ──────…………あぁ、……………………


……………………、あ、…………っ、………、……………ぎゃ、はっ


     ──────────じゃあな、鈴音


    【 次は、世界が滅ぶ間際に会おうぜ 】


/お疲れ様でした、ありがとうございました!


822 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/12(月) 22:11:29 WMHqDivw0
>>813

【――――静かなる凪のみなもに、ひとつ石を投げ込まれたような。そんな表情の移り変わり】
【率直に言えば気分を害したような顔だった。当然だった。自殺したいんです、なんて】
【笑って言う子を見て、穏やかな親の顔をして、そう。とだけ返せるような人種ではなかった、彼は】
【だからといってすぐに、何かを返すこともない。ただ――かたんと音を立てて椅子から立ち上がり】
【ゆっくり歩み寄るなら、少女の傍らに立ち。そうして軽く、軽くだけど――ぱちん。明確な音が鳴るように】
【片方の頬を打つのだろう。少女が何もしないのであれば。そうする顔は、けれどひどく凍り付いていて】

……………………正直に言おう。君が本当に要らない子かどうかなんて、知らない。僕には判断できない。
何度も言っているけれどそれは君が勝手に判断していることであって、本当はそうじゃないかもしれない
――――なんて言ったって、君はどうせ聞き入れないのだろうね。心を、閉ざしているから。

そういう子には何を言ったって無駄だ。だがね、ひとつだけ真実を言わせてもらうとするなら、

君はリュウタを、僕の弟分を侮辱した。リュウタは君のことを要らない子だなんて思っていない。
それだけは断言しよう。じゃなきゃ君のこと、こんなに心配したりしない。こんなところに連れてこない。
君のこと、助けよう、なんて思わない。そんなことしない。でも、リュウタは、したんだ。君を助けたんだ。

……………………。……そんなリュウタの気持ちを、君は今、ヘラヘラ笑いながら踏み躙った。
わかるかい? わからないと言うのなら――今すぐ帰ってくれ。帰って、二度と彼の目の前に現れるな。
僕はリュウタの兄のようなものだ、……弟を馬鹿にしないでほしい。そればっかりは赦さない。

【「…………それだけだ。いきなり打って、悪かったね」。踵を返して革靴をつかつか言わせながら】
【テーブルの上に乗せていた水差しとグラスを盆にのせる。台拭きで結露の水を拭き取る】
【完璧なまでの「後準備」を始めてしまう。……今すぐ帰ろうとはしないから、言い返すなら、いくらでもできるけど】


823 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/11/12(月) 22:35:15 arusqhls0
>>805

【蕾がその思いを花弁にひた隠しにする様に、閉じた瞼が泡沫に煌めき、頬を染める色は唐紅】
【結果論に帰結する感覚を確かめていた、瞳の一片、断章に隠した謀りの行方、例えば其れが萌芽せずとも】
【──── 諦めるなという方が無理な話であった、最後のその一点までも曇り無く】


──── 今までのインシデントを顧みるに、結果として "虚神" の有利になる様に仕組まれていた事は多々ありましたからね
それを脚本の妙と見るか、或いは最初の段階からアンフェアな催しなのかは分かりかねる所ですが ──── 何れにせよ
今回のインシデントで結果論的に私の無実は証明されたでしょう、些か乱暴な具合ではありましたけども

疑われるのはあまり心地よいものでは御座いませんが、こういう職業柄、慣れているのが本音ですわ
ですから疑いが晴れた時の気持ちは一入、──── ふふ、貴方様には詮無きことかもしれませんが

しかし、彼の目論見を看破する等……正直言って信じられない気持ちで一杯ですわ

私は記憶を読むという番外の戦術で漸く理解できた始末でしたのに ──── でしたら


【イスラフィールは背を向ける、朝焼けに伸びる影の輪郭、一本の細い髪の毛を思わせるその体格】
【僅かばかりの乱れもなかった、均整の取れた顔形、華奢な体躯に見合わぬ肉感的な体つきも、何処か淫靡に】
【──── それでいて振り向き加減に注がれる微笑みは、何処までも無垢な少女じみていて】





ウヌクアルハイが復活し、スナークと手を組み、世界を滅ぼそうとしている




──── このシナリオは、如何いたしましょう?


824 : 妲己 ◆zO7JlnSovk :2018/11/12(月) 22:48:59 arusqhls0
>>812>>817

【善弥の問いかけに対して、彼女は煩わしそうに視線を向けた、愛媚な目元に一杯の艶を孕んで、その中点に貴女を描き】
【そうして睫毛でなぞるみたいに、貴女を爪先から天辺まで見つめる、或いは興味津々の子猫みたいに悪戯な表情で】
【──── たっぷりのお砂糖をミルクに溶かす様に、漸く彼女は頷いた、顔を隠すのかという問いに対して】


──── ねーぇ、貴方達は疑問に思わないのかしらん、此処に集まって来たヒト達って、例の法案の抗議でしょぅ?
確かに困るヒトが居るのも分かるわん、でぇも、それは彼らの命をどうこうする様な、悪法でもないの
そうしたら、なぁんでこんな時間までざわつく必要があるのかしらん、不思議だと思わなくて?


【窓の外を覗いてみても、未だ喚く暴徒達が居るまでだった、まるで ──── そう、親の敵が如く声を荒げて】
【そう、まるでそれは "取り憑かれている" かの様に、──── 何かに誑かされ、心を一点に注いでるかの如く】
【或いは、──── そう或いは、何かに "固執" させられているかの様に ────】


素敵よ善弥ちゃん、貴女の考えで大体は正しいわ、クーデターを起こそうだなんてニンゲンの考えはそんなものだから
其れは例えるなら、──── 蜘蛛の糸に掛かった獲物みたいに、動けば動くほど、自分達の首を絞めるのよん
でもね、でぇも、彼らは永劫気付かない、自分達の行いが、──── 正しいと信じ切ってしまってるもの

ふふ、ふふふ、良いのよ、良いの、善弥ちゃんはそこまで考えなくたって、 ──── 馬鹿なインテリの理屈なんて知らなくて良いの
妾の奸計に不足は無いわん、きっちりきっかり、あの腐った国を頂きましょう、──── そして


【ねぇ、道賢ちゃん、──── と彼女は続けた、流麗な目元を一杯に濡らして】


妖怪の魔力海路と核を抜き取るだなんて、素敵なお遊び、妾にどうして黙っていたのかしらん
──── 妖の事は妖が一番知っているのは、賢い賢い道賢ちゃんなら、十分分かっているでしょぅ?


妾に委ねてみなさぁぃ、今よりずっと、もっと、容易く、効率的に、──── それでいてとびっきり残酷に




──── 貴方に夢を、見せてあげるわん


825 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/12(月) 23:16:35 BRNVt/Aw0
>>822

【すぅ、と冷めていく相手の表情】
【あれ?と微かに思った。何か変な事を言っただろうか?別におかしな事は言っていない"筈"なのにって】
【だって、要らない子が棄てられるのは当たり前じゃないか、って】
【彼女は北の方の出身だと言った。彼女の住む辺りでは旧い風習などが残っている。娘が十五其処らで嫁がされる、なんていうのもその一つで】
【ならば────不具や殖え過ぎたといった理由で要らない子供をそうするのも自然であって】

【ぱちん、と頬が鳴れば少女は金色の瞳を丸くして驚いて】

……あは、分かってますよ
だって貴方とは初めて会ったんですから

それにリュウタ君とだって少し話したくらいなんです
何かを頼んだり頼まれたりした訳でもないし本当に要るか要らないかなんて判断出来ない
傘を返すとか料理を教えてもらうとか……そんな話はしたけど……それは私が必要か否かの判断になりますか?

【それだけ言って】
【帰ってほしい、もう二度とリュウタの前に姿を現すな、と言われればスッと立ち上がって】

……はじめからそのつもりでした
もう誰とも会わない筈でした
だから誰にも見付からないような場所探してたのに……

──ね、はじめに言ったでしょう?リュウタ君には迷惑かけたって
私の事なんか構うなって

【それだけ言って出口の方へ向かいはじめ】


826 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/12(月) 23:34:03 WMHqDivw0
>>825

――――――だれにも見つからない場所に逃げ込んだ君を確かに見つけたんだ。
僕の弟は立派な子だ。それを侮辱されたこと――僕は忘れない。赦さない。
君がその考え方を払拭するまで、そうして、リュウタに謝るまで。

さようなら。つがる、どこにでも逃げ果せるがいい。けれど、敢えて言っておこうか。

きっと君がどこまで逃げても、彼は君を探し出すよ。そして何度でも助けるよ。
そういう子だ。そういう、…………優しい子だ、僕の、自慢の弟は。

【ふたつのグラスとひとつの水差しを乗せた盆を片手に乗せて。青年は、】
【去り行く少女のせなにそう、氷を投げ込むみたいな、一言を挿し込んで】
【それでも見送ってしまうのだろう。そうしてドアまで閉じられてしまうなら、その向こうへ】


そしてきっと、そういう優しい子は――――思いのほか世界にはたくさん居るもんだ。
リュウタだけじゃない。君がどこまで逃げようと、地の果てまでも追ってくる人が。
逃げられると思うな。…………君は、ひとりで死ねるほど、孤独じゃないということ、知るがいい。

【――――――曳かれた線の向こう側より。翠眼の吸血鬼は牙の痕を残し、猫を、外へ逃がした】


//こんなとこでしょうか!おつかれさまでした、ありがとうございました!


827 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/13(火) 00:31:42 WMHqDivw0
>>823
――それこそ、紛れもなく"結果論"だ。
奴が勝利していたのであれば、貴様は有罪にもなり得たのだからな。


【黒陽の様子はにべもない。この男の態度が横柄なことは、話の流れが変わったとしても変わらぬ点では有った】
【イスラフィールの様子は政治家と呼ぶには過剰に過ぎるほど、煽情的であり】
【少女の愛らしさと女の淫らさを兼ね備えるとくれば、その仕草や表情の一つを取っても或いは虜にされる者も多いのだろう】

【そうやって、のし上がって来た面も有るのだと、下世話なゴシップ紙を賑わせそうでは有るのだが】


【しかし、この黒陽。メイドロボ以外に欲情する性癖を持たぬ身。故に視線は平静そのものであった】
【目の前に存在する女の、男を魅了する全ての要素を数値化した上で、今後の参考にしておこうと頷く余裕すら有った】


【――閑話休題】


何も不思議な話ではない。サクリレイジの存在自体が、似て非なる理論を元に組まれているのだ。
もっとも、グランギニョルのルールの上に立たぬ我等は、ロールシャッハのそれよりも、遥かに融通が利かぬ。

故に、我らの"ボス"と呼ばれるモノも、最初はそこまで踏み込む気など無かった。
ロールシャッハの干渉により、少しばかり"行き過ぎた"のは失態と言えような。



【しかし、それもまた過ぎた話。以前のジャ=ロのように】
【終わった物語は容易に人々の脳裏を過ぎ去って行く。そこに名残惜しさを抱くには、彼等の物語は悪趣味に過ぎたのだから】
【次なる幕が、間を置かずに開いたことも含めて】


その一件、強いて感想を言うならば"気に入らぬ"だ。


【黒陽は腕を組み、些か憮然として呟いた】
【白神鈴音とウヌクアルハイ、そしてスナーク】
【グランギニョルのインシデントについて、言わば導入の役を担った者達】
【その者達が今度は最後に回って来て、同じことをしでかそうとしている】
【――それが"気に入らない"】


828 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/13(火) 00:58:25 N/S3A4f60
>>815

【男は自分の手に残った荷物を両手で支えながら、先程よりは安定した足取りで前を行く】
【意外だ、と言われればハハ、と苦笑いを浮かべたりして】

いやぁ……私もね、こんな若造に大仰な肩書き与えるのはどうなんだって思うんですけどね……。
今回、土地とか資材とか人足とか、色々手配してくれた方がいるんですが、死んだ父親の知人らしくて。

―――その辺り、スポンサーの意向に背く訳にもいかないってことで。うち、あまり大きな教派じゃないものですから。
最大宗教とはいえ、世知辛いものですよ。何をするにも先立つものは必要、ってわけですからね……。

【所属についての回答は、おおよそこんなもの。〝組織〟としての教会ではなく、純粋に宗教団体としてのものらしい】
【出資者である資産家が、男を司教とすることを条件としたのだろう。「正直荷が重いんですけどね」などと漏らしつつ】

どうして、って……そういう土地だからこそ、じゃないですか?
信仰の根強くない場所だからこそ、新たに開拓する余地がある、と。私はそういう意図だと考えていますが。

ところで―――あなたも、教会には縁のある方で?
いえ、真っ先に所属を問うような方は、そう多くないと思いましたもので。

【大きな勢力ではないからこそ、新境地を攻める。理屈としてはアリかもしれないが、冒険という他ないことだが。】
【男は歩みを続けながら、外套の人物へと質問を返した】


829 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/13(火) 00:59:13 BRNVt/Aw0

>>817 >>824

【月明かりが射し込む室内。少女の黒い絹の上に重ねられた"目"が鈍く光を返し】
【じとりと青色が蹂躙すれば紫に包まれた肢体がぎくりと固まって】
【この場で飄々と振る舞っているにせよそのような場自体慣れてはいないのだろう。緑青がちらりと傍らの翁に向いて】

「はは、奥方様、あまりこの娘をからかってやりなさんな」
「不出来な秘書ではありますがこの悠玄にとっては唯一の愛い孫でもありましてな」
【悠玄があまり気にも止めぬ様子で口にする】

「ふむ……きゃつらもまた騒々しいもので……」
「確かに必死となるのも道理ではありますが……」

……もしかすると何割か……ほんの何割かは法案の中身なんか理解してなくてただ騒ぎたいだけ、なのかもしれませんね
【ぽつ、と善弥は呟いて】
【──あくまで聞こえるか聞こえないかの声量、だったが】

【そうして自分の述べた事で大体は正解だ、と言われれば彼女は何処と無くホッとした面持ちになって】

【道賢が衣装の手配をしてくれるという話に「わー!さっすがー!蘆屋様ってば話が分かりますねーぇ?」なんて少しばかりはしゃいで、そうしてまた悠玄に小突かれて】

「はは、御二方共あまり誉めてたり贔屓してくれますな。善弥もまだまだ未熟にて……」

【全く、我が息子共はどういう教育をこの娘に施してきたのやら……と悠玄はため息を吐く】

【そうして奸計は此方に委せておけと妲己がいうのならば】

「……ええ、我々は一介の商人。御二方には到底及びませぬ」
「故に我らヨシビはあくまで妲己様蘆屋殿御両名の傀儡として動きまする」
「その愉悦の相伴に預からせて頂くだけでも幸いですじゃ」
【くつくつと笑って】


830 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/13(火) 00:59:58 BRNVt/Aw0
>>826

──たまたま、橋の上にいただけですよ、あの時は
今度はきっと、見つからない

さよなら、切添さん
もう二度と会う事はないでしょう

……探してくれる訳ないじゃないですか
リュウタ君だって、きっと私の事聞いたら失望するから
『にんげん』なんて、ちょっとした事ですぐ見放すんだから
【ぱたり、と閉まった扉】
【その向こうから聞こえたのは「優しい子は思いの外世界にたくさんいるんだ」って言葉で】

……ははっ
そんなの嘘だよ……

だったら何で"皆"は"あの時"私とお母さんを助けてくれなかったの?
何で私が泣いていてもその手を取ってはくれなかったの?
何で今までと同じ様に接するどころか冷たい目で私達を見てくるだけだったの……?

そんなの──私が最初から要らない子だったからに決まってるじゃない……
【ぽつりと呟かれた言葉はきっと誰にも届かなくて】



/お疲れさまでした!


831 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/13(火) 08:09:35 smh2z7gk0
>>828

成程、それでは亡くなった御父上は人望の厚い方だったのだな。そのような支援者がいるとは
しかしそれなりに聖職としての経験は積まれてきたのだろう―――?

ああ、結局は今の世界は資本主義。そこで生きる限りはそうしたところを考えるのは当然だろう。


【男の亡くなった父親に思いを馳せながら一定のテンポで歩き、言葉を発する。】
【相手が宗教団体としての〝教会〟であると聞けば、「そうか」と少し残念なような声色で答える。】


確かにな、ただ先程貴方が言ったように今は何かとコストがかかる。
特に大聖堂という巨大な象徴を作るのであればより信仰者が集まる場所の方が………とも思っただけだ。
―――別に否定をしているわけではない、気を悪くしないでくれ。


ああ―――私も〝教会〟だ。荒事も行う方のな


【外套の人物は淡々と返す。〝教会〟―――それは男性も聞いた事のあるかもしれない組織の名】
【かつては宗教団体としても大きな影響力を持った勢力。外套の人物の言う通り〝荒事〟も長けていた】
【通称――――〝異端狩り〟。】


832 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/13(火) 08:59:20 6.kk0qdE0
>>824>>829

「此れ即ち、狂奔ですかな、奥方公……」

【城外より今も尚聞こえる、民草の訴えの声】
【楽曲が如く片耳で聴き、室内の灯火に半分に照らされた顔で、こう答え】

「正義のお題目があれば、人は勝手に何処までも、そして滑稽に踊る物です、正義のお題目の本、何処までも残酷になる物です……故に」

【ちらりと、外の愚衆が群れを眺めて】

「正義の名の下に、人は容易く狂うのです」

【ゆらりゆらりと揺れる行燈に、怪しくぼうと浮かぶ笑顔で、こう答えた】

「ご謙遜めさるるな悠玄殿、とても良く出来た孫娘です」
「息子殿は良き教育を為された、馬酔木の次代は安泰で御座いましょうな」

【かかとここで初めて、自然的な笑みを見せ、こう善弥を評した】
【ここで妲己から先ほどの、妖怪や魔性を犠牲とし利用した研究の話をされれば】

「申し訳が御座いません、アレはヨシビの手と他幾つかの条件が合い初めて確実性を帯びる計画、不確実な話で、妲己様の高貴なるお手と時間を浪費する等とてもとても……故に本日初めて明かすことが叶ったのであります」
「此れよりは妲己様のお手を、逐次お借りする事と思われます、その道には疎い我々海軍です、本件是非とも妲己様に委ねとう御座います、何卒、ご指導ご鞭撻の程を……」

【ここで跪いたその顔を上げ、妲己に向けた】

「夢……即ち至上の愉悦、即ち極上の娯楽……」
「それは、それは……」

【その顔は】

「非常に面白き事で御座いますな」

【妖魔が如く、邪悪な笑みを満面に浮かべていた】


833 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/13(火) 21:02:36 1O74yFxw0
>>831

経験……とは言っても、至って平凡なものですよ。
目立った何かがあるわけでもなく。ただ聖職として務めを果たしてきた、それだけです。

そのおかげか――うちは妻帯が許されてるんですが――未だに独り身なんですけどね、ハハ……。

【乾いた笑い声が虚しく消えていく。言動から察するに、どうにも世俗的・庶民的な男らしかった】
【人当たりの良さそうな笑顔も含め、威厳だとか、そういったものはあまり感じられないタイプで】

〝教会〟…………存在は知っています――最近は耳にすることもなくなったものですが。
……まさか、こうして実際にお会いする機会があるとは思いませんでしたよ。

―――水の国には、その関係で?

【歩みは続く。相手の素性を聞いても、初めこそ目を丸くしたものの、口調を変えることもなく】


834 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/13(火) 21:47:30 HKtVNgCI0
本スレ≫314

【「正義の味方がテロリストの神様を許す道理があるかしら。」明瞭な敵意を示す色違いの双眸にも、一寸とて気圧される事もなく女は笑っていた。】
【そうしてまた問い掛けには答えなかった。 ──── 答えるべき事だけ語っていればよいと言いたげな態度はどこまでも高圧的で、神に向けるには不敬が過ぎる】
【然らば一刹那でも見せた弱味に付け込むのは当然の交渉術だったのだろう。雪よりも白い喉筋を、くつくつと蠢かせて笑うならば、優しげに緩む目尻】
【そしてそれに反して吊り上がった、色薄い唇の両端には、有りっ丈の悪意が込められているに相違なかった。露悪趣味には熟(こな)れているようだった】


「貴女って本当に救いようがないのね。 ─── 貴女の想い人が、そんな都合のいい話、許すと思うの?」
「夕月ちゃんは、貴女の大好きな人のこと、殺したいくらい憎んでるのに。 ……… 此の期に及んで、話せばきっと分かってくれる、なんて?」


【「元気な訳ないでしょう。」「貴女、自分が彼女を傷つけたことにも自覚がないの?  ─── あははッ」席を立つ彼女の背に、】
【投げ掛けるのは冷笑を含んだ罵倒。一通り他人を虚仮にする遣り方を知っている哄笑。手持ち無沙汰な指先は、スプーンをパフェの半ば程まで埋めて】
【アイスカプチーノも凡そは同じ事だった。チョコソースとチップが少しずつ溶け始めていた。 ─── 席に戻る少女に、座っていても殆ど対等な視線で、語るのは】


「あの時、私は言った筈よ。」「力を得たのなら、今すぐに私を殺せ。」
「 ──── さもなくば、私が貴女たちを殺す。」「まあ、聞いていなかったのかも、しれないけれど」

        「 ─── ねえ、白神鈴音」「なぜ貴女は、未だに世界を滅ぼさないのか。考えた事はある?」


【も一度ばかり小首を傾げて笑いかける。奇妙な問い掛けであった。拘置所の被告人に問いかけるセラピストのような】
【されど実状としては良い警官と悪い警官を一人二役に勤めているのだろうか。カプチーノのカップを持ち上げて、唇を付け】
【対手の心変わり一つで世界が滅ぶのかもしれない状況下においては愈々もって無用心で無神経だった。見え透いた罠でも踏まざるを得ない方策もまた、女は知悉していた】


835 : 名無しさん :2018/11/13(火) 22:13:03 YFFCr3I.0
>>834

【「――――やっぱり、知らないんじゃない。セリーナは正義の味方だなんて、やめてしまったのに」】

【――くすと笑った。それでいて誰も知らぬ言葉だときっと彼女は知っていたし分かっていた】
【とかく、やはり相手が何も知らぬままで言っているのだと判断付ければ、量も減ってあっという間に冷めてしまったミルクティーをくっと煽るように、飲み干し】
【ありったけの悪意には、けど、特別に興味もなさそうだった。ただ向けられる理不尽な悪意と暴力とにはある程度以上の慣れがあった、うえに】
【乗り出すように真面目に聞いているはずもないなら、どこかに俯瞰する他人事のような温度感があった。――何せ相手は知らぬ人間だった。なら】

……さあ。イルちゃんは、どうかな……。――――それに、あの、女装のひとが死んだら、わたしに何か、いいことがあるの? ……ないよ、べつに。
それなら、わたしの嫌いな人間、殺してもらうもの。そいつをみんなで殴り殺してくれたなら、世界を滅ぼすの、やめてあげる――って。言って、ね。
なるべく惨たらしく、わたしの気が済むように。死んだって気が済まなかったら、駄目――そうやって言ったら、きっとね、みんなね、世界中で一番惨く殺してくれるんだから。

そうでしょう? ――救いようがあるうちに助けてくれたらよかったのに。わたしはずうっと待っていたんだけど。

【ならばやはり自覚の有無については答えなかった。件の病魔については、――どうかな、なんて言って、きっと、分かっていた】

…………夕月ちゃんは、わたしよりうんと優しいね。自分の嫌なこと、嫌だったこと、全部変えられるかもしれないのに、……しようとも、しないんだもの。
わたしはそんなに優しい子じゃないから。

【だから言い残すのは、ごく一言。と言ってもまたすぐに戻って来る。空っぽのお皿は適当に端っこに避けておいて、】

――――――――さあ、あんまり。半年分のご飯食べたら、考えようかな。それとも、一緒に考えてくれる?
わたしが、大っ嫌いな世界をまだ滅ぼしてない理由。…………ああ、わたし、神様なんだから、お話の代わりに奢ってもらえば、良かった。

【今度は生クリームを最初から蕩かしてしまう。ケーキの上に飾られた珈琲豆のチョコレートを先に全部つまんでしまって、ただ、最後の一個は少し悩んでから、食べた】
【かりかり噛み潰してから、彼女は小さく首を傾げる。「お腹が空いてて、」という分には、甘味ばかりだった。カロリーという点に優れていても、満足度は物足りなそうで】
【だから多分冗談のたぐいなのだろう、それでも半年ほど食事をしていなかったのは本当なら。――人間らしい人格が口寂しいのかもしれない、なんて、】
【ホットココアを一口二口飲んでいたら、ふっと何かに気づいたらしい。一番額の小さな紙幣一枚にて足りるお会計、相手に任せてしまえばよかった。――ごく真面目な声】


836 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/13(火) 22:23:54 BRNVt/Aw0

【とある廃教会】

【いつからこうだったのかも分からない程に荒れ果てた礼拝堂。破れた屋根からは瓦が落ち、それがぶつかったためか、そうでなければ雨漏りの水で腐れてしまった幾つもの長椅子】
【壊れかけのシャンデリアは今にも崩れ落ちそうな様子で天井から辛うじてぶら下がっており、嘗ては美しい光を室内に投げ掛けていたであろうステンドグラスも所々割れて無惨な姿を曝している】

【それでも月だけはこの教会が健在であっただろう時からきっと変わってはおらず、嘗てはステンドグラス越しに投げ掛けていた月明かりを今は破れた屋根やステンドグラスの隙間から直接射し込ませていて】

【そんな静寂の中、すっかり立て付けの悪くなった扉を開ける音が一つ、響き渡って】

……うん、この寂れようだったら大丈夫、かな?

【入ってきたのは一人の少女だった】

【空から射し込む月の光を持ってきたかのような月白色の肩まで伸びた髪。デニム地のワンピース。素足に履くのは紺色のローヒールのストラップパンプスで】
【頭から生えるのは髪と同じ色をした猫の耳。スカートの裾からはやはり月白色の尻尾を揺らして】

【よいしょ、なんて声をかけながら瓦礫なんかを越えてその足はどんどんと奥へ】

【やがて祭壇へとたどり着けば少女はその陰に座り込んで】

……どうしようかな……手早くいくべきか……それともゆっくりじわじわと……まあどのみち死ぬけど……
【うーん、と何事か考え始めて】


837 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/13(火) 22:49:45 HKtVNgCI0
>>835

【すれば迂遠な悪意の応酬は何方の内心を揺るがす事もなく終わるのだろう。ごく不条理な関係性であった。】
【「神様なんだから、お代なんて払わなければ良いのよ。」 ──── くすくすと冗談めかすなら、然して笑い話にもならない】
【いずれにせよ女もまたカプチーノを飲み干す所だった。どこか遠い目をしてレジ前のショーケースを眺めるのは、口寂しさ故か、それとも或いは】


【口に含んだ甘ったるいチョコソースを喉に下して、 ─── 一呼吸の後に、女は対手を見つめた。青い隻眼と、潤んだ口許が、笑っていたけれど】



「貴女は、世界を滅ぼせやしない。」「そんな力なんて、貴女には残されていないから、よ。」



【 ──── ひとつ大きく息をついて、伏し目がちに瞼と睫毛を震わせ、然して少女の容喙は許さない。】
【畳み掛けるように仰々しく声を張り、それで尚も澄み渡った音階だった。滔々と溢れる論理は何かの決壊に似ていた】



「イル=ナイトウィッシュが何故あの時あの場所で貴女へ問いかけたのか、考えた事はあるかしら?」
「かえでから貴女の神格を取り戻した時点で受肉に必要な素材は揃っていた。ロールシャッハが作り上げたような、多少なり特殊な環境が必要だったとして」
「あの様な形で私たちに契約をひけらかす必要はどこにもなかった筈よ。精々、私たちの不可知である領域に身を隠して、罵声など浴びずに二人きりで行えば良かった」

「無敵に近い防衛の方策を有していたとして、破られぬ保証はどこにもなかった。悪戯に想い人をリスクに晒すほど、彼女は愚かではないでしょう」
「"力を合わせれば"だなんて宣っていたけれど、不条理なる病魔の力など微々たる物であり、なればこそ彼女は全てを赦す貴女に惹かれた。片肌を脱いで何になるというの」
「もう一ツ ─── 契りを結び、貴女の力を得て、然してこの期に及んで尚も、彼女も貴女も何ら破滅的な行動に出ていない。それが決定打よ」


【相手が何かしらの言葉を返す事を女は拒絶していた。 ──── 大通りを走り抜ける車のヘッドライトが、闇雲に店内へ乱反射して差し込んで、刹那に女の顔を照らす】
【繰り返すように言葉を紡ぐのだろう。聞き入れてはいけない理屈だった。彼女が自己を認識する神であるのならば、己れの存在を規定するのは己れの内心なのだから】



「ウヌクアルハイに虚神としての力など残されていない。だからこそ、あの場において"再定義"を行う必要があった。その光景を我々の眼前に提示し諒解させねばならなかった」
「白神鈴音を知る人間に、それが如何様な神であるかを"強制的に観測"させて認識させる。病魔の伴侶であり、人類種に敵する破壊の女神であり、我々と相容れぬ存在だと」
「 ──── 駄目押しとばかりに、貴女自身の口から言わせてしまったのだから、疑いようもないわよね。かくしてあの場にいた全員を信徒として、ウヌクアルハイは再臨した」

「おおかた次にやる事は、より広範に認識を広めるか、より深遠に認識を至らせるか。若しくは、その両方」
「水国の何処かで、貴女と蛇神を旗印にした何かしらの事件でも起こして、弱まったミームと集合的無意識を再興させる」「 ─── そんな所でしょう」



        「違うかしら、白神鈴音。」「 ─── 否むのならば、」
         「今この場にて世界を滅ぼしてみせろ。それ以外の反駁は成立しないのだから」




【突き放すような命題を提示し切った時、 ──── もはや既に女は笑っていなかった。罵倒とも、侮蔑とも、嘲笑とも付かぬ、ただ真摯な深い碧眼】
【射竦めるような眼光は銃殺刑の照準にも似ていた。この女の論理になど従う必要はなかったし従ってはならなかった。それでも、もしも、聞き入れてしまうなら】


838 : 名無しさん :2018/11/13(火) 23:41:17 YFFCr3I.0
>>837

【「そんなの、捕まっちゃうじゃない」】
【伏し目にホットココアを吹き冷ましながら少女は呟く言葉はごく平穏なものだった。食い逃げは犯罪だって知っていた。無銭飲食は飲食業に従事する人間として許せぬらしい】
【そのくせ無銭飲食のために店を解放もしていた。そのために少なくとも件のリーダーに頭は下げたはずだった。そうしてまた資金繰りのための行動をしたはずだった】
【――向けるまなざしは「食べたいなら食べたらいいのに」とでも言うようなもの。自分は二つ目のケーキであるなら、それをどうして否定など出来ようか】

――――――、

【だから少女は相手の言葉のすべてを無言のままに聞いた。ならばごく曖昧に穏やかな笑みをしていた。ソーサーに戻したカップがかちゃりと鳴いて、】
【ごく穏やかな色の水面が揺らいだ。店内に飛び込んできらきら眩しい車のヘッドライドに目を細めるのなら、――どうにも眩しいのは苦手らしい。おそらく、右目が眩い】
【わずかに視線を動かす仕草は、おそらく光より逃げるためだった。そうしてたっぷり数秒程沈黙を続けた彼女は、やがて、ごく神託を告げる巫女みたいな、顔】

もしそうだとしても、わたしに非道いことをした奴らが、自分のせいだって気づいて、自責の念にでも駆られて、死んでくれたら。
それは、わたしは、その人間たちの世界を滅ぼしたことに、なるでしょ?

【湧いたばかりの清水を掬い上げるみたいに澄んだ声をしていた。ひとはみな自分の世界を管理している神様だって信じていた。いつか悪意の肉屋に語ったみたいに】

――貴女が今すぐ此処で死んでくれたなら、それで、貴女の世界は滅ぶ。そうでしょう?

【今度はじゅっと絞られた生クリームを一塊スプーンにて掬い上げて、彼女は頬張るのだろう。おいしそうに綻ぶ表情に悪意はなくて、だから、】

だからかえでちゃんも優しいね。わたしはわたしに非道いことをした/する奴らが嫌いで赦せなくて死んでほしいだけなのに。

【――――なんでもない「みんな」は自分のせいだなんて思う必要はなかった。少なくとも薄藤の少女が気に病む必要は少女にとって絶無であった、なら、】
【だからさっきの言葉だって矛盾していなかった。自分にとって嫌いでない人間は生き延び幸せになることを彼女はあんまりにまっすぐに祈っているに違いなく】
【それと世界を滅ぼすなんていうのはどこまでもどこまでも両立しうるものだったなら、――けれどきっと確かなのは、自分に敵意を持つ人間を、彼女は、非道いと判断するから】
【自分に敵意を持ち言葉を否定しましてや攻撃する人間を指差し非道いと感じるだけで彼女にとっては滅ぼす理由たりえた。飾りを取られた悲し気なケーキを断ち切って、一口】


839 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/14(水) 00:18:02 E1nVzEpQ0
>>836



      「なァにやってんですかァ。」


【 ─── 陰る月明かりが、逆位の影を祭壇に落とす。幾星霜の余さず染み渡った石造りへ、気の抜けた声は大いに響いた。】
【女の声であった。どことなく陽気であった。それでいて怜悧に澄ました刃のような冷徹さを玉鋼に隠していた】
【高い天井を見上げるなら、独り分の人影がぶら下がっていた。 ─── 淀んだ風を切って、それは床地に降り立つ】


「こぉンな晩秋の夜中に女の子が独りで出歩くモンじゃあないですよォ。」
「死にたいの? 死にたいんですかァ?」「 ─── 死にたいっぽいですねェ。くふふ。いやあ、おもろ。」


【果たして少女の隣に音もなく降り立つのは女であった。和装の女。本藍染めの浴衣に白絹の帯を巻いた、ごく小柄な女】
【艶めきさえも呑み込む程に黒々とした髪を横結びにするなら、その末梢は幾らか波打ってもいた。 ─── からり、桐下駄の鳴るのは、血染めに似て紅い鼻緒より】
【そうしてまた白粉よりも清らなかんばせには能面のように張り付いた笑顔があった。愉しげに細められた双眼は、瞳の色彩さえも不明瞭であった】
【けたけたと茶飲話の音調で笑っていた。対手の意図は理解しているようだった。背負っているのは紺色の弓袋。腰に佩すのは、身の丈よりも長大な大太刀】


840 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/14(水) 00:29:14 smh2z7gk0
>>833

―――どうやら貴方はなるべくして〝司教〟になるようだ。
妻帯か、このミール・シュタインで大聖堂の司教となれば今後に期待ではないか?

ところで、まだ名を聞いていなかったな。私はアンゼリカだ。


【淡々と、白い外套の人物は感じたままに言葉を発している。】
【青年は世俗的・庶民的ではあるがその佇まいは聖職に向いていると感じられた。】
【アンゼリカと名乗った少女はフードから少し見える表情をほとんど変えることなく相手に名を聞いた。】


ああ、そうだな―――今はほとんど単独行動で動いている筈、私も聖職者を見るのが久しぶりだ。

―――ある〝破戒者〟を探してこの国まで来た。そこでまた別の〝異端〟にも遭遇してしまったがな。
この国の空気はどこか異様だ、貴方も気を付けて過ごした方が良い。


【アンゼリカの表情に少し影が差す。それはどこか怯えているようにも見えたし、怒りを抑えているようにも見えた】
【確かに、首都フルーソを中心として現在の水の国は様々な〝噂〟に溢れている。】
【ミール・シュタインとて例外ではないかもしれない。特にできたばかりの大聖堂とあれば目につきやすい】


841 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/14(水) 00:46:21 E1nVzEpQ0
>>838

【女は問うた。少女は答えた。それは女の望む答えではなかった。ならばそれ以上の詰問は無為であった】
【酷く冷厳であった白い頬が再び緩んだ。嘲笑うような曲線美であった。漏らす己れの嘆息に、豊熟した胸許が織地越しに震えた】
【少なからぬ結露を帯びた冷水のグラスに口を付けつつ、女は残りのパフェを如何にかしていった。少なくともクリームとフレークは長広舌の間に気怠く蕩けてしまっていた】
【ならば対手の言葉を聞くのも最早切ない慰みでしかなかった。 ──── どこまでも呆れたように、然してどこか哀れむように、解するように、紡ぐ言葉は】


「 ─── そんな殊勝な人間は、始めから非道なんて働かないわ。公平仮説なんて大嘘も良い所」
「滅ぶのは、貴女の愛しむ人たちの世界だけよ。」「あの病魔は例外なく、人間すべてを憎んでいるし ─── 、」
「貴女の親しい人も、貴女の好きな子供たちも、みな塵芥のように殺してしまうでしょうね。まあ、それでも」


【すれば少女の元をこの女が訪れたのは、単なる挑発に留まらなかったのだろうか。事実を叙述するならば、確かに彼女もまた人でなしであった。】
【そうしてまた人である身から人でない身に己れを窶していた。悲しげに伝えられる決別は何かを願っていたかのようでもあった。だとしても】



       「少なくとも、貴女たち如きに対するならば」「私の世界は滅びないし、滅ぼさせやしない。」


【最後通牒であったのだろう。 ─── 窓の外、摩天楼群の遥か彼方に目を見遣るならば、どこかのビルの屋上にて】
【月魄に一ツ煌めくのは、冷酷なスコープの輝きが、三挺分。あるいは三人分と呼ばうべきであろうか、いずれにせよ】
【 ──── 少女が明白な敵対を示した時点で全ては決裂するのだった。Negogiatonは不可避の破局に近付いていて】
【そうしてまた少女が立ち去ろうとするならば、女はその本義を果たさねばならなかった。なんとなれば、彼女は狼であるが故】


842 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/14(水) 00:46:47 BRNVt/Aw0
>>839

【不意に天から聞こえた陽気な声。その声に天井を見ればそこにいるのは一つの影】
【うーん、と少女は唸って、小首を傾げて】

【風と共に隣に降り立ったそれは着物姿の女で】

ふふっ、浴衣だ。何だか懐かしい感じがするなぁ
もしかして櫻の生まれですか?私もそうなんですけど
【その姿から同郷だと思ったのだろう。警戒する事もなく親しげに話しかけて】

うーん……姿が普通の女の子に見えるからって油断したら駄目ですよ?もしかしたら相手を警戒させまいとそんな姿をとっているだけかもしれませんし……まあこんなナリでもただの女の子に見えるんなら……ちょっとは嬉しいですけど……

ええ、まあ──死のうと思ってるんですけどね
でも……お姉さんみたいな人に見つかっちゃうんなら此処は駄目かなぁ……他の所を探さないと……
【此方もただの雑談のようなトーンで返すのはひどく物騒な一言。曰く、本当に死のうとしているんだと】
【見つかるのならば駄目だろう、などというのならば恐らく誰にも見つからない場所で死ぬ気らしくて】
【そうして言葉の後にワンピースの裾を翻して一歩踏み出して、振り返って笑う】
【「ほら、私ってば見ての通り"猫"ですから、どうせ死ぬなら人に見つからない場所が良いかなって」と続けて】

だから──うん、この場所とお姉さんにはもうサヨナラ、です
次はちゃんと見つからない場所探さないと……
【そう言ってまた一歩踏み出そうとして。明らかに相手を警戒していないといった様子で】


843 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/14(水) 01:07:58 HKtVNgCI0
>>842


「不意を突かれて殺られるようなタマに見えますかァ?」「それにそれに、お姉さんだなんて。」
「そんなトシじゃあ有りませんよォ。 ──── 全くもって心外だなァ。困っちゃいます。くふふ。」


【あまり心外であるようには思っていなさそうな女であった。貼り付いた笑顔はその感情を判然とさせなかった】
【それでも郷里を同じくする人間であるならば、幾らか砕けた態度を取るようでもあった。元より堅い性分には見えずとも】
【大袈裟に両腕を広げて首を振り、戯けたような面を見せる。 ─── 然して、少女が立ち去ろうとするならば】


「おっと待った。」「寂しいコト言わないでくださいよォ。」
「ほら斯うして出会ったのも何かのご縁でしょう。」「 ──── これから死ぬってのに、陰気な顔してンのも良くない。」


【 ──── 蒼白い抜き身の刃が、少女の耳元に突き付けられるだろうか。長い鋒であった。手首の一捻りで動脈を裂ける位置】
【「そんじゃあ猫っぽくなくなれば堂々と死ねる訳だ。」やはり女は笑っていた。冗談めかしたシニフィエのクオリアでありながら、示された大太刀は冗句では済まなかった】
【凡そ弁明のしようもない/する気もない、真ッ直ぐな殺意であった。 ──── それでもやはり女は笑っているのだから、真っ当な人間である筈もない】


844 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/14(水) 01:37:30 BRNVt/Aw0
>>843

【くつりと笑った女。不意を突かれて殺される人間に見えるのかと言われれば少女は少しばかり女をじっと見て】

んー……そうではなさそう……ですよね
只者じゃないって感じしますもん
【少しだけ笑って首を横に振って】

え、じゃあ同じくらい……なのかな?うぅん、わかんないな……
【そういうの見定めるの結構苦手だったりするんですよね、などと苦笑を浮かべ】
【でも本当に困ってるのかな、なんて考えてみたりもして】

【廃教会を出ようと歩き始めた刹那、耳元で鳴った音。金色の瞳を少しだけ横に反らせば光る刃がすぐ其処にあって】

縁、は……縁かもしれません、けど……
やだな──そんな物騒なの仕舞ってくださいよ……お喋りするんだったら
それに……私そんな陰気な顔してました?
【たらり、と少女の頬を冷や汗が伝っていく】
【彼女の口調はあくまで明るいが語尾は少し震えていて】

【下手な事をすればすぐに喰われる、と本能で察した】
【死ぬ心算で此処に来た筈なのに、己が生命などどうでもいい筈なのに──彼女の存在が何故だか恐ろしく思えて】

【猫っぽくなければ堂々と死ねるのか──】
【その言葉にひっ、と喉が鳴って】

【堂々となんて元より思っていなかった】【どうせ自分は要らないんだから死体を晒すのすら他人の迷惑になるんだって思った】【だから独りで誰にも見つからず死のうってしていたのに】

──なん、で……
【張り付いた喉がようやく言葉を紡ぐ。それがどういう意味を持って問われた言葉なのかは少女自身も分かっていなかったのだけれども】


845 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/14(水) 01:39:00 hy5LjcZ60
>>840

これから、ではありますが、色々と忙しくなりますからねぇ……。そううまくいけばいいんですが、ハハハ……。

……――ああ、そうでしたそうでした。
では改めて。私はモナリカ・レ・エゼキエーレ、ミール・シュタイン大聖堂の司教です。

【〝ミール・シュタイン大聖堂〟―――それが名称となるのだろう、名乗りと共に肩書きをもう一度】
【両手で袋を抱えたままであるから、あまり格好はついていないのだが。】
【「あ、そこの角を右です」と一言。曲がれば、広大な敷地を有する大聖堂が姿を現すだろう】

ええ、ええ。能力者排斥だとか、蛇がどうとか、この国は何かと騒がしいですからねぇ。
―――私は荒事には向いていないものですから……何も起きなければいいんですが。

しかし、〝破戒者〟ですか……。単に務め、というよりも、何やら事情がおありのようだ。
踏み込んだ事を聞くようですが……個人的に関わりのあった方だとか?

【大聖堂は、遠目には建物自体はほとんど完成しているように見えた。恐らくは、現在は内装の作業中なのだろう】
【出入りする人の多さを見れば、男の荷物の多さにも納得がいくか】

【一方で男は、表情の変化を見ていたらしく。一つの質問を投げかけた】


846 : 名無しさん :2018/11/14(水) 01:53:49 YFFCr3I.0
>>841

【ごく低いテーブルに少女はお行儀悪くも頬杖をつくのだろう。やっぱり見た目ばっかり重視していて食べづらいフォークを指先に弄ぶのなら】
【それでも指に隠した口元はきっと笑ってなかった。かといって怒ってもいなかった。曖昧な温度の目は果たして自分もパフェにすればよかったと悔いているようでありながら】
【それとも相手の殺し方を考えているようでありながら、それとも、それとも、何か全く別のことを考えているようでもあり。つまりはごくニュートラルな無表情にて】
【彼女のニュートラルな表情はごく平坦な無表情であるらしかった。あどけない笑みは楽しい話の時のために取っておいているらしく、】

――じゃ、やっぱり、世界なんて、大っ嫌い。わたしは頑張ったもの。頑張ってきたもの。
間違いだったなら、夢の一つくらい叶ったって、いいじゃない。お嫁さんはいいよ、やったから。――それで、そのあとは? 
あとどれくらいイイコにしてたら、良かった? 何十年も、何百年も、何千年も、何億年も? 世界が滅ぶまで? 滅んだって? イイコにしていたら、よかった?

――――――イルちゃんは、人間のこと、羨ましがってたよ。どれくらいかは、知らないけど。
わたしだって羨ましくって仕方ないの。自分が当たり前に大人になって死んで行けるって、信じたまま生きていられるなんて。

【――あるいは馬鹿馬鹿しい気持ちの時のためや、"だれか"を語るときのために取っておいたのかもしれなかった。今更ながらに唱えるのはごくありふれた不公平感、】
【原初のきっかけなんてものはごくありふれた不満の爆発。やはり不運であったのは蛇の神の血筋に生まれ落ちたこと。あるいはこの世にその身体と魂にて黄泉がえらされたこと】
【頑張ったのに報われない。頑張ったのに夢の一つも叶わない。ならば不条理だと言い捨てるんだろう。そうやっていつか蹴っ飛ばした些細なものに嚙み殺される気持ちは如何?】

【――――漏らすのはごく少女然とした感情であるのだろうか、であるならいくらも抉り取る余地を見せつけて、けれど、たぶん、そんなところは自問自答にて通り過ぎている】
【ならば何か受け取る余地があったとして、無条件の肯定と甘やかし以外にあり得ない声をしていた。全肯定に耽るのを病的と言われても、きっと構わないから】
【ましてや今まさに誰かを全肯定と無上の甘やかしにて生き永らえさせている狼にだけは言わせぬ表情をしていた。わたしにとっての貴女は不条理な病気なの、なんて、言わないけど】

――ねえ、どうしてなの。わたしを殺すよりも、わたしの嫌いな全部、殺した方が早いよ。
「滅ぼさないでください」って言って、わたしの嫌いな全部を殺してみせるの。――わたしを虐めた奴らも。子供を虐める奴らも。強姦魔だって。
そしたらわたしだってご機嫌を直して、――とっておきの良い神様になるかもしれない。でしょ? なのに、誰も、そうしようとしないの。

【然るに頑張ったご褒美は誰かより捧げられる喜びを望むのかもしれなかった。踏み躙られて泣きじゃくって見上げるばかりの人生だったのだから、たまには、いいでしょう、って】
【ごくごく神様じみた発言でもあった、荒ぶる御霊を鎮めるのに必要なのはたっぷりの信仰と供物と余興であると言って憚らなかった。ましてや彼女は祟り神であるのなら】
【それとも人間たちと一緒に楽しいことでもしてみたいのかもしれなかった。独り相撲やカサゴに興味はないけど、一緒にカラオケに行くのは、喜ばしいのかもしれず】
【相手の声音に返す少女の声は、けれど、命乞いの色はしていなかった。ただどうしてそうする気はないのかと至極素直な声にて、問うから】


847 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/14(水) 01:57:38 HKtVNgCI0
>>844



「今から死ぬ所でございって顔でしたが、 ──── ご自覚ない?」
「別にお話したいって訳じゃあ有りません。」「アンタとアタシ、も少し楽しく遣れるんじゃないかって、それだけ。」


【対して女の語る言葉には一切の害意がなかった。 ─── 却って良心さえ宿しているようだった。善意ゆえの殺意であった】
【怯えるような返答には、幾分か納得しつつも何処か疑わしげであった。ふむン、と少女の背後より、一ツ唸るような声】
【然らばよほど正直に対手の言葉を信じているようであった。忌憚なくも訝しむような声が、微動だにせぬ刃先より滴るなら】


「なんで、って ─── 。」「死にたいって仰るから、死なせてあげようかと思っただけですよォ?」
「たいてい自死ってのは醜いもんだ。」「吊られた首ってのは青紫に腫れ上がって、筋が緩むもんだから糞尿も垂れ流し」
「土左衛門なんてもっと酷くて、瓦斯に膨れた身体から腐れ汁を漏らして水面に浮かんでくる。見ちゃいられない」
「綺麗に死ねるのはクスリか凍えるかって所でしょうが其れも遣り方を知っていればの話だし、何より蝿と蛆と黴に集られるのは同じコトだ。臭いですよォ」


「その点アタシがすぱっと切り申せば簡単だ。」「首が飛ぶのなんて一刹那で痛くも苦しくもない」
「アンタみたいな女の子が醜く腐るのは可哀想だし荼毘にくらいは付してやりますよォ。 ─── どします?」


【詰まる所その女は本気であるようだった。 ─── 他人を惨たらしく弄した後に殺す事に何の躊躇もない人種であろう】
【だが今はそのような悪趣味に走るつもりは毛頭ないのもまた事実であるらしい。ただ死にたいと望まれたから、気紛れに叶えてやるのも良いだろうという態度】
【いずれにせよ饒舌であった。否と一ツかぶりを振るなら、寂しげながらも女は納刀に至るのだろう。然して、そうでないなら】


848 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/14(水) 03:31:21 h7nAXcQg0
>>749
なるほど、十字架と例えていただくとわかりやすい……
魔除けの効能を持つ宗教的シンボルとして、こちらの地域では広く人気です
御社のそれは、宗教的シンボルとは違うのかもしれませんが……

そちらの社長様は一切の情報が出ず、性別・体格・年齢、あらゆる形での憶測が飛び交っているのは存じておりましたが
まさか、社員の方々ですら例外ではないとは……何ともミステリアスなお方ですな

【ヨシビ商会。この奇怪な企業が急速に勢力を伸ばし、背後では櫻国での動乱にまで関わるに至ったのは】
【その正体不明の社長の手腕だろう、と考えてはいたが。まさか、自分の部下にすら姿を見せていないとは】
【徹底した秘密主義。東洋の闇は、思った以上に深いらしい。流石のカニバディールも、そこにこれ以上言及することはなかった】


まったく、危うく水国の闇社会の何割かを敵に回すところでしたよ……
――――なるほど。悲劇的ですが、十分にあり得る話です

「……伝え聞いた惨状も、そう言った恨みがあると思えば納得もいきますなあぁ……」

【奇しくも、この異形の肉屋とその配下たるゴミ漁りも、両親については良い思い出を持っていない】
【父ともども母に捨てられ、父に虐待同然の扱いで育てられたカニバディールと、両親ともにろくでなしで幾度も親に殺されかけたスカーベッジ】
【彼らもまた、それぞれに一瞬表情を歪め、しかしすぐにビジネス用の顔を作り直した】


生きたままで所望する客の方が多いと思っていましたが、最初から死体で注文とは
阿片婦人ほどの大物ともなると、考えが読めませんな。儀式の触媒にでもするつもりだったのか……

『たるひ猫』……寡聞にして存じ上げませんな。それが件の希少妖怪の名ですか?
どのような妖怪なのか、興味がわきますね

【彼の言う緊急の別件についても気にはなったが、それ以上に彼の零した名の方にそそられた】
【阿片婦人が欲しがった妖怪。いったい、如何なる存在なのか?】


流石にそうなるでしょうな。薬を手に入れられなくなった中毒者の怒りの程や、推して知るべしといったところですか

ふむ……世界的な大国たる水の国ならば、むしろいない方が不自然かもしれませんね
力はあって行き場はない、そんな連中を超法規的にかき集めて、手段を選ばず手駒に使うような……
『公安』のような機関くらいは、当たり前に持っていそうに思いますね

【自分にとっては、嫌と言うほど思い知らされた水国の闇を口の端に上らせて、カニバディールは微かな笑みを浮かべた】


849 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/14(水) 04:09:11 h7nAXcQg0
>>819
【その何とも営業的で、しかしぎこちない笑顔だけは、もしかしたら給仕時代から変わらないのかもしれない】
【こんな閑古鳥が鳴いている夜に、こんな手遅れになってしまった神様と、でなければ。当時の酒場のままであるかのように】

そっかー。でもそうだね。随分と埃が溜まっちゃってるみたいだし

【彼女がこの影を置いていかなかったことにも、相応の感情の揺らぎがあったのだろうが。影はどこ吹く風だ】
【相変わらず、凝り固まった三日月型の口のまま】

そのファイルはレシピなんだね。そのやり残しを終わらせるために来てたってことか
セリーナってここの店主さん? お店を空けてどこに行ってしまったんだろう

でも、お客さんと扱ってくれるなら嬉しいな。お言葉に甘えちゃおうかな
お酒だって平気さ。「我々」は飲めるよ

【そう言って、影は一つきりのテーブルにつく。ひょいひょいと重みを感じない足音を鳴らして】
【そうして、彼女が料理を始めるか酒を用意するかするのを、眺めながら。不意に、また笑んだままの口から声を出す】

……そのレシピ。「我々」だったら思い出せるよ。見せてくれたら
思い出した、事に出来るよ

【何とも奇妙な矛盾した一人称を使いながら、影はまたファイルを指差して】
【そんな訳の分からないことを言った】


850 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/11/14(水) 12:22:11 S/DUh6T.0
>>827

【彼女はその反応を是とした、例えるならそれは指向性の無い絵画に似ていた、或いは天井のフラスコ画、示されるのは一心不乱な信仰心】
【想いの具現として美を描くのであり、信仰の帰結としてその荘厳があるのなら、彼女の描く美はまた、ただあるだけで意味を持つ】
【而して、それは同時に偶像にも似ている、彼女の存在そのものに黒陽が疑念を抱くのも無理はなかった、あまりにも約に当てはまりすぎている】


成程、インシデントを見る限りサクリレイジが本気を出したならば、INFオブジェクト達へも十分に対応できると思っていたのですが
存在の状態から何かしらの制限があるのでしょう、私には知りえないような次元での問題ですわ
でしたら、私がとやかく言う事もまた不可能なのですわ、語りえぬものには沈黙を返しましょう

……もう一つ別に捉えるのでしたら、残されたINFナンバーは INF-009とIF-010 のみですわ、それはつまり
漸く貴方達の長い長い旅路もまた、終わってしまうのでしょうか、……それとも
或いは之は序章に過ぎず、次なる演目への幕間劇でしかないとでも、言ったりして


【彼女は蠱惑的に笑う、指先へと預けた頬が白粉と共に溶けて、乳白色の水面へと沈む、頬紅の質感は鮮やかな波紋に似ていた】
【その表層は漣一つ存在しない凪の情景、瑞々しい湖畔の優雅なひと時、木洩れ日に透かされる瀟洒な日々を思わせて】
【それでいて微笑みはどこか色合いが濃い、パステルカラーの世界へ持ってきた原色は時に目も眩むほど眩しいから】


あら、お気に召されなくて? 荒唐無稽な演目の催しにしては、些かばかり洒落が利いてますわ
大きな物語が小さな物語へと収束する試みは、確かにある程度の物足りなさはあるかもしれません
けれども、それもまた一つ、あるべき姿ではないのでしょうか


851 : 妲己 ◆zO7JlnSovk :2018/11/14(水) 12:30:56 S/DUh6T.0
>>829>>832

【道賢の返事は彼女にとって最高のものではなかった、表情に浮かべるのは微かな憂い、それと同時に残酷さすら感じさせるほどに】
【言ってしまえばそれは駄々っ子に近い、欲しいものを買ってもらえない幼子じみて、或いは何処か達観しているようでもあって】
【約束よん、だなんて言って言葉を締める、約束という名の呪いに似た楔を打ち込んで】


今日の所はこんな感じかしらん、また機会があれば集めるわん、それまではお願いした事をして欲しいの
水の国の間隙を突いて、その土地と人民とを支配するのよん、それはとても、楽しい催しかしらん
一杯血が流れるわ、一杯ヒトが死ぬわ、でもそれは、支配者たちには関係のないこと

一番の悦びとはわかるかしらん、安全であるという愉悦は、何者にも代えられないの
だから殺すの、悪戯に縊り殺して、戯れに嬲り殺して、自分が生きているという実感に浸るわん
そうあれかしと望むままに、この世界を支配してしまいましょう


【妲己は紡ぐ、その内心を、そうして伝えるのはこの集まりの終幕であろう】
【実際にすべきことは伝えたと言う様に、これからは各々が自分の持ち回りを進めるはずだ】
【同時に他に伝える事がなければ、それぞれが立ち去ることになるだろう】


852 : ◆DqFTH.xnGs :2018/11/14(水) 14:14:15 OQxJV9J20
【路地裏────闇市】

【おおよそ非合法なものが集まる市場のひとつだった。盗品やら疚しい由来を持つ物品】
【あるいは様々な理由があって、表の市場に流せないモノたち──奴隷も含め、そういったものが】
【ひっそりと売られているような場所にそいつはいた。しわくちゃのトレンチコートに帽子を被って】
【夜だというのにサングラスをかけた…………場末のバーにでもいそうな、“探偵”のような男だった】


(Sabrina…………、Sabrina…………)
(なんて書いてあったかな、アレにはさ────あぁ、これなんかまぁまぁ似てるかな)

『こいつと、こいつをくれ。…………あと』

『神様を殺せるような銃ってのは、売ってたりするもんかい?』


【闇市の中でも銃がごちゃごちゃと売っている露天商。そんな店に男はいた。髪をわちゃわちゃとかいた後】
【少しばかり装飾が派手なリボルバーを2丁選んで。それからひとつだけおかしな質問を、店主に投げていた】

/お引越しというやつです


853 : 名無しさん :2018/11/14(水) 14:16:08 YFFCr3I.0
>>849

――みんな、忙しいみたい。セリーナが居たら、こんな風にはしないもの。あとで、時間があったら、わたしがお掃除するかも。
しないかも、しれないけど。――。――――。それともお客さんが手伝ってくれる? あははは、それこそ、怒られるか……。

【だからどこかで失望に似通う色を目に載せていた。世界中の人間が知っていておかしくない名前だった。セリーナ・ザ・"キッド"のこと】
【組織の内外を問わず、誰かが強行的であれ救出するため行動していたとしておかしくなかった。ないはずだった。でも、今、居ないのだから】
【――ふ、と、何か考える仕草を続けたなら、やがてごく冗談めかした言葉が出て来る。……それこそ怒られるか、なんて、一人で納得して、頭を振るけど】

セリーナのこと、知らないの? ――ここはセリーナのお店だよ。セリーナ・ザ・"キッド"のお店。
――――そう。じゃあ、何か飲んでもいいよ。何がいい? 開いてるワインとかは、……お酢になってるかも。新しいのを開けた方がいいよ。
ウィスキーとかなら、たぶん大丈夫。あとは――……お客さん、何歳(いくつ)?

【席に着くヒトガタを横目に見ながら、彼女は酒を探すのだろうか。カウンターの上に置かれたもの。あるいはその中に置かれたもの。もっと言うなら、セリーナの隠していた奴】
【一通りを眺めて、相手の飲みたいものがあるようなら、それを出すのだろう。ただ一度尋ねたのはどうしようもなくやはりと言うべきか、念のため感がごく強いけど】
【なにせ十六歳ほどの少女が聞くのだから冗談みたいでもあった。――未成年だと答えたらきっとお酒は出てこなくなるんだった。ごくノンアルコールの水道水とかに、なる】

――――――――ううん、いいの、そんなに大したものじゃないから。書きかけだから、気になってたけど……。
何が食べたい? といっても、ほんとに……。……――、……。

【ふらと首を揺らす少女は、そのままカウンターの中へ。そのどこかでファイルを置く音がして、それから、がばっと冷蔵庫を開けて見る】
【あんまり食べ物が入っていなかったのかもしれなかった。うーん……なんて小さな声が漏れでて、それでも閉じてから、「なるべく頑張るから」なんて、前向きな発言】
【カウンターの向こう側から覗き込んで。――希望は叶えたいけど、過度に期待はしないようになんて意味合いが、眼差しにはたっぷりたっぷり、詰め込まれていた】


854 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/14(水) 15:48:09 BRNVt/Aw0
>>847

…………あはは……そんなに悲愴感漂う顔してたんだ……そんなんじゃ駄目だよね、うん……
【望んでそうするんだからもっと笑わなきゃ、と少女は呟いて】

【相手が唸るような声を発すれば、嗚呼私きっとまた何か変な事言っちゃったんだろうな、などとそんな局面でもないだろうにそんな事をちらりと考える】

【そうして相手が「死なせてあげる」という言葉を口にすれば少女は何かが張り付いたような喉のまま変な音を発して】
【そうしてはたと気付く。彼女は少しばかり『外れて』いるのだ、と】
【だって「自害はやめておけ」「その点自分なら」なんて、『相手が思うままにさせて放っておいてやる』という意味の死なせてやる、じゃなくて明らかに────】

【少女は少しの間黙り込んでしまう】
【けれども目一杯喉に唾をためてそれを飲んで喉を濡らして】

【そうしたならば】

──いいですよ、私の事、殺してください
ちょっとばかり懺悔の時間もくれるんなら、ですが

【いやに落ち着いた声でそう言い放って】


855 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/14(水) 15:49:09 BRNVt/Aw0
>>848

あはは、理解して貰えたんなら良かったです

……本当に、誰も見た事ないんですよねー、社長の事
社長付きの秘書のコくらいしか見た事ないんじゃないかなー、多分……まあ前にそのコに聞いてもどんな人なのか教えてくれなかったんですけど……
というかミステリアス通り越して不気味なんですよねー……うちの会社、社長の件以外でも……
【からりと笑う水鶏。そんな彼を周囲の社員が「お前も大概不気味だけどな」と言いたげな目で見て】

……本当に、死体なんて何に使うんでしょうねー?生薬にするんだったら生きてた方があれでしょーし……

はい、櫻の北の方にだけ棲息する化け猫の亜種、らしーですね
えーっと……?

「毛並みは月白色で大きさは獅子程、普通の化け猫のように人に化けられますが物を凍らせる力もあるとか……」

【助けを求めるように同僚を見やった水鶏を見て別の社員が詳細を説明する】


「──えっ、どうする?"あれ"まだ本社にあんのか?」
「馬っ鹿、半年以上前のだぞ流石に腐ってんべ?」
「いやぁ……それ以前にあん時売れなかったの売る時点でどうなんでぇ」
「仮にあのまま残ってるにしても肝がねぇからなぁ……」
【そうしてカニバディールがたるひ猫に興味を抱いたのを見ると社員達は次の商売の機会とみたのかこそこそと相談を始め】
【水鶏はそれをチラリと一瞥すると】

──半妖、で良ければこの本土に一人はいる筈ですよ?
【にこ、と笑って告げる】

……実は先程の売れる筈だったたるひ猫、なんですが……"彼女"は子持ちでして……恐らく人との間に成したであろう娘がいたんです
それで上に指示を仰いで、その娘の方も母親と一緒にこの地に連れてきたんです
そうして、俺が奴隷商へと売ったんです
……まあ後で逃げ出したらしくて向こう様からクレーム入ったんですけど
ですから──何処かにいる筈なんですよね、その"たるひ猫と人間の半妖の少女"が
【ぺらぺらと語る青年】
【因みに貴方は既にその少女を見掛けている──<harmony>社で資料を探した時に】
【厳島命に同行していた生成色のキャスケットに"月白色"の髪のの少女──暗黒寓話の本を手にしていた彼女、なのだが──】

【そうして話が警察組織に切り込める輩の話になると水鶏は、ふーん……と呟いて口角をあげて】

公安……『正義の味方』、ですねー
【くつり、と笑う】


856 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/14(水) 15:49:50 BRNVt/Aw0

>>832 >>851

【孫娘、ひいては自分の息子達を称賛されれば悠玄の帽子の陰と面頬に隠れた顔に更に陰が入り】

「いやいや、倅共は愚息の輩にて──」
「……げに善弥よ、御主のみが────。」
【明るい声で再び謙遜するような言葉を吐いたかと思えば、ひどく小さな声で何事かを呟いて】
【それが聞こえたのだろう、善弥の方も一瞬だけふと表情を曇らせて】

ま、次の社長は多分この善弥ちゃんでしょーし?当然ですっ!
【それでも次の瞬間には先程までの調子で返して】
【それに老翁が、これ、と嗜めれば彼女は少しだけほっとため息を吐いて】

【そうして妲己がこの会合の終幕を伝えれば】

「──お任せください、妲己様、蘆屋殿。このヨシビ商会、御期待には全力で」

それでは蘆屋様、詳しい注文内容などは後日相談いたしましょう
【老翁と少女は二名に恭しく一礼すると外にいた黒ずくめらを引き連れて退室して行くのだろう】



【そうしてそれから数日後、道賢の元へ一通の書簡とある『贈り物』が届けられる】
【書簡には女のものと思われる字で文章がしたためられていて】
【曰く、魔術回路を摘出し人間へと移植する場合、一人の人間に何匹分の妖怪の回路を移植出来るのか】
【もしもまだそれについて調べた事がないのであれば『これら』を使って欲しい、と】
【そうして共に届けられたのは数十匹のとるに足りない屑妖怪達と】
【初老の男女が一組、それから二十代半ばの若い女が一人】

【「善知鳥さん御一家です!剣術道場を営んでいらっしゃるので結構頑丈だと思いますよ!」】
【「これはサービスと個人的なあれなのでお代は結構ですよ! 馬酔木善弥」】

【歯車は廻り始める──】



/この辺りでしょうか!お二方絡みありがとうございました!


857 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/15(木) 02:51:31 WMHqDivw0
>>850
【それは或いは、単に美しさと言うモノを表現することに終始した容貌であったか】
【見せ付けられる一つ一つのパーツが端正に構築されており――それでいて人形のような、と言うには余りにも肉感的で有った】
【そこに感じる違和感は、例えるのであれば、物語の冒頭で"美しい女性"と表現されたに近く。どこか実存と縁遠いように思え】
【或いはそこにある種の神性さえ感じる者さえ、少なくはあるまい】

【しかし、この黒陽。好みの女性の次元は2.755次元】
【思索に耽る鋭い瞳は彼女の貌をコンバートし、審美する作業に没頭していた】


【――閑話休題】


【ともあれ、イスラフィールに対して、未だ警戒を解いていないことは態度で伝わるのだろう】
【ロールシャッハの企みが胡蝶の夢に沈んだとは言え、それがイコール彼女の真意を保証するものではないのだから】
【気になると言うので有れば、その配役】
【彼女はサクリレイジを称賛したが――対INFオブジェクトの組織である彼等と、個人で対等以上に虚神の情報を取り扱えると言う事実の方がむしろ不自然と思える】


それが良いだろう。余りにも理解が深ければ、また貴様を虚神の類ではないかと疑わねばならんところだ。


【皮肉のつもりか。余り上手くもない冗句を返しながら、男は再び憮然とした貌に戻る】
【これがデフォルトの表情なのかも知れない。両手を膝の上で組み、ひたすらに偉そうな姿勢を崩さない】


端的に言えばその二匹を駆除したところで、グランギニョルの幕は降りん。
新たな虚神か――或いは、消滅済の他のオブジェクトが再生するか。
ロールシャッハが、シャーデンフロイデを復活させようとした試みは知っているだろう?
そしてロールシャッハの遺伝子もまた、別人に組み込まれている。

また、レッドへリングをホテルに"建て直した"のは私だが、同じ虚神の遺伝子を組み込んでも、媒体によって能力や特性はいくらでも変化し得る。
他にも、マリアベルなる女のように、別の巨大な存在を虚神に仕立て上げようとする者やそれを利用する組織も現れるだろう。


"認識が神を創る。"
このルールそのものを破綻させない限りは、INFオブジェクトの掃討は有り得んと言うことだ。


【色彩の豊さを仕草からも発するイスラフィールと対照的に。男は鉄の塊のように、色味のない空気を宿していた】
【不機嫌そうなまま、首を振って】


逆に問うがイスラフィール。
貴様は、今のウヌクアルハイ――白神鈴音に世界を滅ぼす力が残っていると思うか?

ミームには鮮度が有る。
ジャ=ロが"新世界より"のインシデントでバラ撒いた蛇に対するミームも既に半年前のこと。
直接拉致られた生贄ども――それも半数以上はパグロームが消して回っていたが。
奴らならともかく、又聞き程度の一般人の無意識からは薄れて久しいだろう。


【日々のニュースは絶え間なく流れる】
【騒がしい事件が日常のこの新世界において、どれほど凶悪な集団であろうとも、動きが無ければ忘れ去られる】

そしてジャ=ロによって信仰の根深い者はほとんど殺されてしまった。
虚神と言う枠組みで見るならば、ウヌクアルハイの力は当初より遥かに弱体しているはずだ。


更に言うならば、白神鈴音は然程積極的に世界を滅ぼそうとしているようにも見えん。
できる力と意志が揃っているのならばとっくにやっているだろうしな。


考えられるのは、イル=ナイトウィッシュが何かの隠し玉を持っていることだ。
件の最古の病だったか?
結局ジャ=ロの一件では有耶無耶に終わったが、それに類するものかも知れん。

丁度そのインシデントでは"スナーク"の力の汎用性の高さを見せ付けて来た。

白神鈴音は腹芸が出来るタイプの人間ではないだろうから、立案も決行も全てイル主体なのだろうが……


【そこで黒陽は言葉を止めた。何か、他にも気になることが有るとでも言いたげだが】


858 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/15(木) 12:19:46 smh2z7gk0
>>845

―――〝モナリカ〟―――〝ミールシュタイン大聖堂〟。ふ、どちらも良い名だな。



【肩書も含めて名乗られれば、フードの中の口元を少し緩ませる。アンゼリカは融通は利かなそうだが不愛想というわけではなかった】
【そして案内されるまま大聖堂へと赴けば、「美しいな…」と少しばかり呆気にとられるように大聖堂を見上げるだろう。】
【予想はしていたが、実際に目の当たりにするとやはり違うものだ。】

ああ、そうだ。特に〝蛇教〟とやらの一件以来この国の〝信仰〟に変化があったようだ。
私もその元幹部とやらに一度遭遇した事があるが、なんとも表現しがたい歪さを感じた………。
〝正しい信仰〟を取り戻すためにも貴方の動きには期待をしてしまうな。


―――ああそうだ、〝緋のカーマイン〟。私と同じ〝教会〟所属だった者で
〝聖都〟の〝記録保管庫〟を破壊して居なくなった裏切り者だ。


【アンゼリカは憎悪の含んだ声色で話す。どうやらモナリカの予想通り近しい人物であったようだった】
【〝聖都〟といえば小国ほどの宗教都市、〝教会〟の総本山でもある場所のはずだが。】

【「―――それでこれはどこに持っていけばよい?」とアンゼリカは気を取り直したように袋を掲げて問いかける】


859 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/15(木) 14:17:10 BKuk1aec0
>>851>>856

「……」
「ええ、『約束』で御座いますとも奥方公」

【かくして、呪いは確約された】
【表情から何かを読み取りはしたが、敢えてこの場で言及する事はなく、少なくとも、権威を手にした鬼達の愉悦はより強固なものとなって】
【一方で】

「(ほほう、この一族、まだ何かあると見える……)」

【善弥と悠玄の様子から、此方でも何かを感じ取った様子で】

「その民衆の愉悦を、安堵を我等が喰らい尽くす……」
「その様こそ、至上の享楽、娯楽」
「かくあれかし……」
「必ずや、魔導海軍総力をもって、奥方公が最上の策、花と咲かせましょう」

【妲己に向かい、忠誠を誓う様に跪き】
【しかし、その場に来訪者の姿が見られ】

「申し上げます蘆屋海軍大将!火急にお伝えしたき要件が!」
「申せ、短切にな」

【伝令に訪れた下級士官が、道賢に耳打ちすると、口元の笑みはそのままに、目だけを吊り上げ】

「ほう……」
「『偽りの守り手』と『見苦しい』と……『姥ざくら』とは、粋に仕立て上げたつもりか……」

【見る見る釣り上る目尻に、口元に、下級士官が狼狽え始めると】

「良い……」
「たいしょ……なっ、がふッ!」

【拳銃を引き抜き、下級士官の口に銃口を差し込むと、有無を言わずにそのまま引き金を引いた】

「構わん、撫で斬り……皆殺しだ!!能力者供め!!」

【血潮が、骨片が、脳が、髄液が床に散る中、肩で息をしながらこう叫ぶ様に】

「妲己様申し訳御座いません、御城の高貴なる一室を下郎の血で汚しまして……直ぐに綺麗に致します故……」

【深々と一礼し、謝辞を述べて】


ーーやがて後日

「馬酔木殿から?」

【その唐突とも言える『贈り物』を受け取ったのは、その日の夕刻近くであった】
【空が血の様に赤く美しく染まる中、鎮守府の一室で贈り物と添えられた手紙を読みつつ】

ーー善弥殿の細やかなる心配り、感謝致す所存、摘出と移植には強力かつ親和性の高い妖怪か妖魔、『たるひ猫』や『サトリ』『雪女』の様な人と交合可能な物が適任と思える、それが1人につき1匹必要
貴殿らの働きに期待し候。

【こう認め、封をして送りに出し】
【やがて、その親子をじっと見て】

「(さて、娘はともかく老人はな、身体が術式に耐えきれまい……両親の前で娘を犯し、その上でその場で両親を殺すか?いや……つまらぬ、あまりにつまらぬな)」
「(いや、待て、まだアレがあった、試しては居なかったが、良い機会だ……)」

【何かを思いついたのか、ニイと口元を歪ませ】

「準備が整うまで貴様らはそこな妖物も含め幽閉だ、地下へ連れて行け!」
「奥方公へも連絡を、ちょうど良い玩具が手に入った、と」

【外道にして、血塗られた、動乱の章は今ゆっくりと始まる】


//御二方、絡みありがとうございました!お疲れ様です!


860 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/15(木) 23:19:40 ORYVk8kM0
>>846


【嘲笑うようでありながら、何処かで女は憂うように諦観していた。 ─── 殺さねばならぬのだろう。それは女の矜恃であるに違いなかった。そうでなくては、】
【態々このような場に自ら出向いてなどいなかった。少女が何かを語る度、女は僅かな吐息を、緩めた頬から甘く漏らしていた。雨でも降り始めてしまえばよかった。馬鹿馬鹿しいものを全て禊いでくれるから】


「報われないことが忌々しいから、全て壊してしまうのね。 ─── 醒めない夢を願うなら、一人でそうしていなさいな」



【漸く手にした希望への可能性さえも整理のつかぬ感情に追いやってしまうのであれば救いようがなかった。人ならぬ全能を手に入れて尚も、人並みの問題に拘泥する様に】
【幾らでも吐いてやる忌々しさはあるに違いなかった。それでも女は笑っていた。言って如何にかなる類の懊悩ではないというのは、他ならぬ己れの過去にて諒解していた】
【なにか心変りを起こすならば、畢竟それは少女自身が願って歪めるより他なかった。 ─── そんなアポリアを解決できるのが、赤の他人の論理である筈もない】




「復讐は己れの手で果たすものよ。」「貴女が憎むのが、貴女に非道を働いた人々だけならば、私の与り知らぬ所。」
「羨むならば叶えてしまえばいい。貴女も、彼女も。望むのならば、信じるだけで事足りる ─── そういう神でしょう、貴女は。」


「その後にどれだけ幸せになろうが、やはり私の知った事でないの。それで尚も気が済まぬならば、私から言える事は、何もないわ」




【故に遠回しな勧告でもあるようだった。 ─── 未練を残すなら、彼女自身で"けり"を付けろと。そして仲を違えた嘗ての輩に、もう一度ばかり会いに行けばよいと。】
【それ以上の煩雑な儀式は必要ないように思えていたのかもしれない。己れが対する少女の情念が痛烈に女は共感できた/なればこそ決して理解などできなかった。】
【ふやけて蕩けたストロベリーパフェの底を、幾らか弄ぶような遅滞的手法を持って、女は口に運んでいた。それは彼女が全能の神であるという一縷の希望/絶望に】
【大団円の幸せな結末を見出そうとしていた証だろうか。今一度だけ彼女が人である事を願い、その伴侶たる病魔もまた人である事を願うなら、或いは、然るに】
【 ─── 一ツ最後にくれてやった説法が、せめて幽かに無垢なる神の心に傷痕を遺すことを、祈るばかり。凡ゆるカップが空になり、スプーンの放棄されるならば、全ては】


861 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/15(木) 23:27:05 E1nVzEpQ0
>>854



       「左様で御座いますかァ。」




【およそ無感動に女は返答した。フードチェーンのアルバイトでも幾らか人間的に答えるだろうに疑いはなかった。】
【少女の過去であるとか、一丁前な恨み節であるとか、真面な人間に聞かせれば全く下らぬと嘲笑い飛ばされるような苦悩であるとか、 ─── そう言った類の心理には】
【ことごとく関心を持たぬようであった。死を望むのであればくれてやるに過ぎない。真横に傾げた小首に揺れる濡羽色は、輝かしい月明かりに水墨を溶かすよう】



「ほんじゃま、 ─── 辞世の句とか、あります?」
「遺言を伝えときたい人とか居らっしゃるなら今のうちに。死人に口なしですしィ。」



【ならば泣き喚くのも落ち着き払うのも等価であった。 ─── 思い詰めた餓鬼が逃げ出す為に選ぶ自死に、動機の貴賎など有りはしないとでも】
【そういった小馬鹿にするような態度さえ薄笑いからは読み取れるかもしれず、然して瞬き一ツ介せば結局は貼り付いたニュートラルな表情でしかないのかもしれず】
【確かな事は少女の遺そうとするものに今のところ女は無関心であった。辱められる事もなければ飾り立てられる事もないのだろう。ただ事実だけを継ぐに吝かでなく】


862 : 名無しさん :2018/11/15(木) 23:59:01 UmWcKmfc0
>>860

【ごく慎ましい甘さのホットココアを啜り飲む。卓上に付け加えるための砂糖も蜂蜜も置かれていないのだから、やはり、雨でも降ってしまえばよかった】
【そう願ったとしても窓の外には冬らしい乾燥を帯びる晴天。夜空は舌打ちでも投げかけてやりたいほどにどこまでも晴れていて、見えるのは星と銃の照り返す瞬き】
【だのに神様が願っても雨粒やもとより星の一つだって降ってきやしないんだった。ならばやはりそんな力はないのかもしれない。それとも、雨だなんて降り出したら(死にたいのかもしれない)】

――――――――そうだよ。わたしの世界は壊されてしまったのに、どして、わたしは他のひとの世界を壊したらいけないの?

【至極後ろ向きの思考をしていた。その癖に気ばかりは強かった。ごく暴力的な宣言にて、自分を傷つけた全部が赦しを乞い、そうして其れを*したいのかもしれなかった】
【ならばある意味では得た力の意味をどこまでも理解していて/だのに何一つ理解していなかった。赦すも罰するも限りなく暴力的な行為であるとは、たぶん、分かっている】
【――珈琲クリームのケーキをたっぷり大きな一口分に削り取るなら、頬張る口元はどこまでもあどけなかった。ぬいぐるみと内緒話でもしているのならかわいかったのに】

わたしはもう我慢しないの。だから、わたしがされた非道いこと、わたしがここで我慢して終わらせない。

【やがて呑み込むのなら、――自分がここで我慢してにこにこしていたら、きっと、何の問題にもならずに終わっていたのだろう。それでどれだけ傷つくのだとしても】
【それを痛くて苦しくても抱き留めたまま終わりにする方法を彼女は清々しく放棄した。だからもう抱いた怨みも怒りも何もかも周りにぶちまけることにした、なら】
【結果として世界をどうする、しない、――なんてことになったのは、やはりごく天文学的な悲劇に似ていた。ありふれた人間であったなら来られるはずない境地であって】

――ねえ、もし、貴女のしてきたこと。やってきたこと。その全部のきっかけが、間違いだったとして。"その原因"に、そう、言われたとして。
そいつが居なくなったら、貴女が受けた仕打ちは、正解に、変わる? 機械に〇と×の違いを教えるみたいに、曖昧な図形を集めて、〇に見える気がするって、言い聞かす?
もしそのことが無かったら、わたしは、今頃、もっとずっと普通の子だったかもしれない。背は、……別にいいけど。"こんな"じゃなくて、もっと、ずっと、大人になって。
当たり前に生きてたかもしれない。そうしたらきっとUTに行くことも、子供にご飯を作ることも、なかったかも、しれないけど――。

絶対に"そう"なれてた、って、そんなの、わたしだって思わないし、言わないの。"そう"ならなかったら、"そう"なってた、だなんて――だけど、ね、

【指先で唇についてもいないクリームを拭った。浮かべた笑みは、けれどあるいは今日一番悪意を持って。そうでなくとも、なにか、攻撃的な色合いを持って】
【ごく少女的な顔のラインを撫ぜてから手折れそうに細い首へ。そうしてごくごく薄っぺらい胸元を撫ぜて、――決して成長できない/できなくなった身体を、示すなら】
【口にするのはどこまでも可能性の話だった。あの出来事がなければ。その出来事がなければ。あれが。それが。これが。いくつもの分岐点を一つずつ指差し、数えて、並べて】

"かもしれない"――って、思ってしまったらね、もう、負けなんだよ。分かる――でしょ?

【然るに語るのが可能性に言及する理想論であるからこそどうしようもない毒性を孕む戯れだった。煌めく憧れを胸に育てるほど、それ以外の全部が腐り落ちて逝く、劇物】
【苦しんで泣きじゃくって果てない絶望のあとにやっと呑み込んだはずの現実。可能性と書かれた小瓶は胃薬でもなんでもなかった。――だから、もう、】

【きっと相手だってその言葉の毒性を知っているって信じていた。わたしを殺した毒で貴女も殺せるのだと信じていた。――紫色の生物兵器の子には、通用しなかった、けど】


863 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/16(金) 00:22:36 BRNVt/Aw0
>>861

【無感動に返されれば少女は少しばかりホッとしたように息を吐いて】
【下手に動機だなんだを聞かれたって別に気持ちなんて変わらないだろうし今となってはそれすら煩わしく思えて】
【ならば関心なんか持たれない方がよっぽど良い】

【続く辞世の句などは、という言葉には内心「ここまでくると何だか本職の処刑人みたいだなぁ」なんて思うものの】
【まあ栂/咎の名を持つ者を斬るのだもの、それっぽくもなるよな、などと考えて】
【いやに落ち着き払った様子で少しだけ考えて】

……まず、は──

ケイさん、折角助けてくれたのにこうなってごめんなさい
ユウトさんは手間をかけさせてごめんなさい
ユーイちゃん、鈴音ちゃん見つけらんなくてごめんね
ポチくん、結局駄目だった、ごめん

リュウタくんは、傘返せなくてごめん
折角の苦労も台無しにしちゃった、ごめんなさい

オムレツさん、苦手だったけど嫌いじゃなかった。夕月ちゃんの事もたんぽぽの事もよろしくお願いします。これからの事、任せちゃってごめんなさい

厳島さん、お父さんみたいだった。情報提供上手く出来なかった、ごめんなさい

鈴音ちゃん。ずっとお姉ちゃんみたいだって思ってたよ。たんぽぽ、護れなかった。助けにも行けなかった、ごめんなさい

夕月ちゃんはずっと大事な友達だと思ってた。助けられなくてごめんなさい。あんなもの見ちゃってごめんなさい。せめて大切な人と幸せになってください

お父さん、普通の女の子に生まれてあげられなくてごめんなさい。お母さんと幸せに暮らさせてあげられなくてごめんなさい

最後に、お母さん

────生まれてきてしまって、ごめんなさい


【滔々と告げられるのは幾つもの謝罪の言葉。名を出す全ての人に「ごめんなさい」と謝って】
【それなのに声色は全く悲痛ではなく、あくまで落ち着いていて】


864 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/16(金) 00:50:11 E1nVzEpQ0
>>862

【言葉通りにそれ以上を女が告げる事はなかった。これしきの語らいで何がどうなる訳でもないのだと悟っていた。ただ、問いへの答えを手向けてやるのも悪くはなかった】
【 ─── 穏やかに笑むまま女は命題を傾聴していた。時折に瞬く睫毛の長さは耽美の象徴であった。わずかに頤を下げたまま、見ように拠れば頷きの所作であるのかもしれず】
【最後の音階を過ぎてから、瞼を閉じた深い思索が結論を導くには、少なからぬ沈黙を要した。 ─── それでも開いた青い隻眼の、射抜くように少女を見詰めるのは、つまり】



   「 ……… そうかもね。」「けれど、私は神様でないし」
    「その分では貴女も、きっと神様なんて務まらないし」「 ─── 何より」

     「神様ならば、誰かの世界を如何にか出来るだなんて」「そんな夢は、もう醒めてしまっているから」
    


【それが女の答えだった。嘗ての仇敵が教えてくれた。悪辣な悲劇の舞台になくとも、神は天にいまし-なべて世は事もなし。誰かの心(せかい)一ツ、神にも変える事は儘ならぬ】
【況んや人の身をや何が出来るというのだろう。テーゼを選ぶ時点からして擬似問題でしかなかった。 ─── 故に彼女の世界は証明されていた/誰よりも愛しむ半身によって。】
【黒衣の躯体が徐に立ち上がる。夕暮に伸びる影に似ていた。白皙を護る長い白銀が、夢の泡沫へ擬えるように揺れた。別れの挨拶には然るべき作法が必要なのだから】



         「だから、」「 ─── さようなら。」



【最後の一刹那に寄越した微笑みは、どこまでも哀れんでいた。一ツ間違えていれば/正していれば、或いは女こそ少女の理解者たれたのだろうか。されど全ては過ぎた事である】

【9%の湿度と風速2m/s北北西の乾いた大気を引き裂いて数百メートル彼方より、 ─── ストリートに面するカフェの窓際へ数発の338口径が吸い込まれてゆくならば】
【その運動エネルギーの暴力は明白に少女の頭蓋と脳髄を破壊せしめる為に放たれたものであった。それでも窓硝子が粉々に砕け散り、死を運ぶ風切の音が幽かに響き、照明の悉くが落ちる破壊的機序の中で】
【直撃を避ける猶予は十全にあるのだろう。 ─── 着弾から数秒のち、遅れてきた銃声は虚しかった。その時にはきっと女は既に己れの得物を抜いていて、悲鳴の上がる店内のうら悲しさなど無価値であって】
【人の身で扱うには余りに大袈裟なサイジングの銃身と銃口は、それを見定める青い隻眼さえも、ひどく冷徹に少女を捉えていた。どこか遠くからヘリコプターの近付く音がした。然らば矢張り、世界は少女を敵視する】


865 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/16(金) 01:33:11 ORYVk8kM0
>>863

【そうして少女が残したのは懺悔と呼ぶべきであったろうか。 ─── 何れにせよ、女の表情は僅かな変容を示した。】
【笑ってはいた。だが幾らか何かを疑うように口許を結んでいた。それでも女は割合に律儀な性分であったから、】
【しづかに擡げられる青白い刃は、両の手で構えられるままに静止する。数拍の沈黙が夜風を響かせた後に、振り下ろされる鋭利な質量の鋒は、】



    「 ──── だああッ」
        「ああぁもう、」「全く ─── 辛気臭ェなあっ!!」
         「言いませんでしたかねェ!」「どうしてこう腹ァ括って死ぬッてのに仕方ねえ顔すんですかね!?」


【 ─── 少女の首筋より薄皮を抉りつ、然して躊躇うように剣筋をぶれさせて、肩口より右腕を深く斬り裂いた所で、止まろうとするだろう。】
【誰に見せても疑いのない深手ではあったが、 ─── 決して致命傷ではなかった。主要な動脈を一寸以下の精密さで外していた。疑いようのない意図が介在していた】
【それさえも大した事ではないように女は刀を引き抜いて、血を払って鞘に納めようとするのだろう。無論ながら少女が抗わなければの話ではあるが、然して】


「アタシつまんねえ事キライなんですよ!」「 ─── わざわざ立派な魂(たま)ァ持ってんのに死ぬンですよ!?」
「パァッと派手に散るよか他ねえでしょ!」「だってのにもうウジウジし腐って、斬る側の気持ちとか考えねえですか!?」


【双眸こそ笑むように細めたままであったが、有無を言わせずに少女を怒鳴りつけるのは理不尽な剣幕である。兎角、彼女はなにか怒っていた。】
【「このまま陰気な真似するッてんなら面白おかしく死んでもらいますからねェ!? 良いでしょうねェ!!」 ─── 語る言葉の節々に、やはり感性は狂気的だったが】
【それでも少なくとも、なにか女は詮索しようとしているようだった。深く刻んだ傷は何らかの独善的な懲罰であるに違いなかった。はしたなくも胡座を書いて、居直るなら】


866 : 名無しさん :2018/11/16(金) 01:34:48 UmWcKmfc0
>>864

【――――――――はあ、と、少女は小さくため息を吐いた。そうしてごく小さく首を揺らした。頭の悪い生徒にいい加減うんざりした家庭教師のようでありながら】
【果たして頭の悪い生徒が何方であるのかは、――。ぱく、と、彼女は二つ目のケーキをごく早いペースで食べきった。飾りを捥ぐのを除けば、三口ほどだったかも、しれない】
【そうしてまだ温かいココアを、冬山の景色のように両手に包んで、ちまりと飲む。冷水はもう飲み干してしまっていた。二人の会話の間に満たすには心もとなくても】

――でも、ただの人間のままより、説得力があるでしょ?

【すぐに両手が真っ赤になるから、机に戻してしまう。ごく伏してから相手へ向けた目はきっと冥い色をしていた。世界を人質に取るには、彼女は何か物足りないから】
【悲し気に眉を下げて笑うんだろうか。貴女も分かってくれない。嘘だって分かるって言ってくれたなら、せめて、なにか、紛れたかもしれないのに。だから、責める目もしていた】
【どこまでも矮小な動機にて彼女は神様として振る舞うって決めたのかもしれなかった。或いは病的に固執するのかもしれなかった。病魔の手を借りずとも、呑んだ毒の作用にて】
【――だから拗ねたように指先が、冷水のコップが机に遺した水滴の輪を広げる。描くのは少なくとも遺言ではないようだった。至極意味ない文様を描いたなら】

――――――――――。

【さようなら、の声にも、彼女はやはり悲し気な/それでいてどこまでも責める/狩る側が見せるものと狩られる側が見せる表情を練り上げた眼差し、手向け】
【水滴をただ悪戯に机の上に引きずっていた――その指先が、きらと瞬くのは、須臾より短い瞬間のこと。そうして桜色が煌めくのなら、次の瞬間には、ごわりと膨れ上がる】
【ばぎりと絶望的な音。生え出るのは桜の木。瞬きより早く天井を貫いて、そうしてまた窓辺を塞ぎ込み。ならば銃弾は彼女まで届かない、それ以上に、彼女を伺うことすら】

可哀想だよ。壊す必要だなんてないのに。

【――ならば、ごく歪に"育った"桜の向こうかわ覗き込む彼女の顔はアリアだけが観測する。店内はすでに阿鼻叫喚だろうか、二人の会話を聞くものなど、どこにもなく】
【我先に逃げ出そうとするなら、どこかで、能力者だ――なんて声も聞こえてくるのだろうか。そうしてまたおそらく自分の方が"壊し"ている事実にしらんぷりを決め込んで】
【ざあと咲き誇る桜の温度だけが無情に異常だった。ちりちりと散る花弁は然し全うでないのは容易く知らせる。すべてがかすかに光を纏っていた。魔力で出来ていた。から】

――――狡いよ。わたしはひとりっぽちなのに。ひとりっぽちでここに居るのに。わたしは貴女のこと、一回だって殺そうとしなかったのに。ねえ――、

【いくらか泣きそうな面を彼女は幹の裏に隠しこむ。真っ赤な瞳だけがアリアを見ていた。鈴の音がただただ眼前にて選ばれた選択肢を怨んでいた、――本当に?】
【転瞬――びしりと割れ砕ける音は、足元から。そうして相手が魔力を感じることに長けているなら、床の下、何かが這いずっているのに気づけたはずだった。だって、】
【根のない木がどこにあろうか。そうして床を貫いて生え出る根は、けれど桜色/蛇のかたちをしている。尾の先を床下に潜ませたまま、数は両手以上もあって】
【しかしやはりそれは根であるのだろう。蛇の一匹一匹がこの大樹に相応しい太さをしていて。ぐわと牙剥くなら、そのすべてがアリアの全身を隈なく狙い】

【――蛇を根に生える桜の木。死体も当然埋まっているんだと思わせた。それくらいに異質な木であった。いつか人に生まれ落ちた少女の果てとするにはあんまりに鮮やかに】
【そうして牙剥く蛇はどれも魔力で形作られた桜色をしていたが、山楝蛇であった。――即ち、半身たる少女の左腕に棲まうものと同じ。だって彼女は少女と縁深い神であるなら】
【間違いなく口の奥に潜ませた毒牙をその白磁に突き立てようとしていた。ならば抱く毒の強さは蝮なんかより強いのだから。そのくせ、長く無毒であると信じられたのだから】

【だけれども、よほど不意を突かれぬ限り、見切れぬ速度ではなかった。ましてや魔力視されていたなら、容易く予知できる攻撃であった】


867 : 名無しさん :2018/11/16(金) 02:17:17 UmWcKmfc0
【風の国――UT、店舗内】
【冷たい風がひるりと吹き抜けたなら、地面に転がる埃の一つでも舞い上げるのだろうか。ぴゅうと吹き飛んだなら、やがて、一つ店の前に吹き溜まり】
【"酒場"としては、開店も閉店も示していなかった。そのうえで、"組織"としては、いくらかのやる気があるのかもしれなかった】
【少なくとも確かであるのは、店内にはぼんやりと微かな明かり。それから、扉に手をかけるのなら、鍵はかかっていなくて、店内はいくらも暖かい】

おいし…………、……くない。

【――ほつほつと何かが優しくに立つ音がしていた。店内にふわり充満するのはまごうことなき調理の温度と香りであり、ならば、カウンターの中、誰かいる】
【カウンターの内側に背中を委ねるのなら店内に思い切り背中を向けて。手元に揺らすのは小瓶一つ。口元に寄せるならいくらかの躊躇いの気配、口に含むのだけれど】
【むうと表情をわずかに潜めて呟くのなら、瓶を見えぬ場所でどこか置いたのか、ごとん、と、小さな音がして――】

【――――真っ黒い髪は高めのポニーテールにしてなお肩甲骨より毛先が低く、真っ白な顔は暖色系の明かりに照らされて、ぼうと赤らむように見せるのは気のせいで】
【あどけない顔の特に目立つのは色違いの瞳、左が黒く右が赤い色合い。長い髪をかき上げて結わえたなら、右の耳にだけ付けた桜を模したピアス、よく目立ち】
【振り返って何か手元探す仕草をするのなら、装いはごくシンプルな黒のパーカーであり。時々覗き見えるに、足元はふわふわ膨らんだスカートに黒のストッキング】
【また足音を聞くに、ずいぶんと底の厚い重たい靴を履いているらしかった。――そのせいか、あどけない顔の割、"少女"の頭は高い位置にあり、おそらくは、百七十近く】

……どうしよっ、かなあ、全部飲むの、やだなあ――、――コップにすればよかった。ううん……。

【何か探す仕草は継続中。その内やがて邪魔であったのかカウンターの上に"ごん"と載せるのは、ビールの小瓶であり】
【口を開けて/付けてしまったやつをどうするか悩んでいるらしいのだけれど、思い浮かばなかったし何か妙案も見つからなかったらしいなら、】
【――また物理的にも味覚的にも苦い顔をして、口を付けるんだった。――それにしても、ずいぶんと未成年じみた顔をした少女であったから、絵面で言えば、完全に、未成年飲酒】
【――――それでも悪びれないあたり、よほどの"悪い子"であるのか。それとも。まさか。これで成人しているなんてことは。そんなまさか。――事実そうなのだけれど】

/お引越し&予約のやつです!


868 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/16(金) 02:17:33 BRNVt/Aw0
>>865

【静かに閉じられた瞳。完全に相手に生殺与奪を任せます、といわんばかりの様子で】
【終焉の時は静寂と共に────】



【かと思いきや、不意に響き渡った声】
【斬られた少女の肩口からは血が溢れて】

【振り払われ、鞘に納められた刀。その小さな音がしたと同時に少女は「え、何?」と呟きながら振り向いて】
【本来、というか普通の十代の女の子であったならば恐らく痛みで話すどころではないのだろう】
【けれども少女はまるで痛さなんて微塵も感じていない様子でぽか、と口を開けて呆気にとられてしまって】

【辛気臭い、ウジウジするな、と怒鳴り付ける女】
【少女はその剣幕に一瞬怯む、が】

…………っけんな……

ざッけんな!
何なの最近出くわす大人出くわす大人そーゆーのばっかり!
何なのホント最近キレる大人でも流行ってんの!?
構うなっつったのに話してきて話したらブチキレて打ってくるし!大体助けたの向こうだし勝手に助けられて気付いたら彼処いたんだし!
辛気臭いも何も私始めッから懺悔って言ったじゃん!言わなかった!?
だぁぁもうッ!大人のエゴに巻き込まれてる此方の身にもなれっての!
人の話ちゃんと聞けよ子供だからって適当に流すんじゃねぇぇぇぇっ!
【一気に叫ぶとハァァ……と大きく息を吐き出して】
【ぺた、とその場にあひる座りで座り込んで】
【座り込んだ相手をちらりと一瞥すれば】

……面白おかしくってどんな殺り方なんですか……
【変な所に興味を持ったのか気の抜けたような声で尋ね】


869 : ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/16(金) 02:38:38 WMHqDivw0
>>867
【風の国には元々滅多に足を運ぶことはなかった】
【虚神のインシデント――だけではなく、昨今の事件はほとんどが水の国に集約していたからだ】
【そして、"UNITED TRIGGER"と言う組織は、最近羽振りの良い、いくらかの組織達に比べ、如何にも動きが鈍っているようにも見えて】
【だから、男がそこに足を運んだのは――……或いはこの娘がいる、とどこからか知ったからなのか】

【――単に当て推量で来た可能性も否定は出来ない】


【素知らぬ振りでズカズカと店内に土足で入り込んで――元より土足で入る場所なのだが、取り分け、UTに対して想い出を持つ者に取っては気に入らぬ部外者の足跡であるには違いなく】
【黒コートに白髪の男は、"正義の組織"には余りにも場違いに見えた】

【ぎょろりとした小さな瞳が――店内を見回すと、カウンターで酒を飲んでいる少女――見た目は――へと向けられる】


長生きしても酒の味はわからねェか?
クヒヒヒッ、俺も下戸だから気持ちは分かるがねェ……


【白神鈴音――虚神に纏わるインシデントの導入において中心にいた名前】
【ロールシャッハが主導権を握るようになってからは一時期フォーカスが外れていたが。ここに来て再び姿を顕した】
【実物を見るのは実に初めてのことなのだ】


――よォ、カミサマ?
一人で自棄酒かァ?何かカナシイことでも有りましたかね?


【腹の内など読むまでもなく、悪意しかない男だった】
【ただ、それは恐らく白神鈴音に対して向けられた悪意ではなく――多分、まぁ誰にでもこうなのだろう】
【それでも少なくとも、殺気めいたものは感じなかった】


ここにゃ店員はいねェのか?ウーロン茶が欲しいんだがよ。


870 : 名無しさん :2018/11/16(金) 10:59:08 UmWcKmfc0
>>869

【からん、と、古びたベルが鳴いて、誰かの訪れるのを知らせるなら。少女ははたりと瞬いてから、振り返るのだろう】
【「――あれ、こんばんは」。向ける色合いは、客に対してというにはいくらかフランク過ぎたとしても、彼女が関係者であるのは間違いなく】
【でなければ他人様の店で何か料理などしているはずもなかったのだから。だからずかずかとした足取りに、わずかに目を細めたのも、道理であるのかもしれず】

――長生き、ってほどは、生きてないの。お酒の味は、……あんまり、好きじゃないけど。飲むのはね、飲めるよ。
甘いのが好きなの。――だけど、あんまり飲むのは好きじゃなくて。笊なの、ちっとも酔わないから、ジュースと変わらなくて――――。

――――――――――。

【あるいは彼が深刻な幼児性愛者であったなら、二十五さえ十分に長生きだろうけれど。かといってやはりお酒の味は、数百年経っても、おいしく思えない気がして】
【だけれど味という問題さえどうにかしてしまえば、相当飲める性質であるらしかった。「ご飯の時はお茶か水って教わったから」ごくありふれた躾をいまだに守るいい子の顔】
【カミサマ、なんて言われたら、その顔も変わるのだろうか。――どこか驚くように眼を見開いて、――だけれどきっとどこか嬉しそうに眦を下げたなら】

【(あんまりに当たり前にそう呼ばわるものだから。お前は神様じゃないとか、神様だったんだとか、そういう、問答、しなくて、よくて――)】

店員は、居ないの。――ウーロン茶くらいなら、すぐ出せるの。あと、……良かったら、食べる?
お肉のビール煮。もう、食べられるから。お金は、――いいよ。作ってみただけの、試作品だから。不味くは、ないけど――――。

――――それに、やっぱり、わたしも、お茶が飲みたい。駄目だね、みんなおいしそうに飲んでるけど、――わたしには、まだ、早すぎるみたいで。

【――眼を瞠って、そうして緩めた少女は、最終的にごく物悲しい目をしていた。店員ではないしお店ではない。そうやって言うのなら、やがて視線は手元へ落ち】
【物々しく見た目以上に重たくて仕方ない資料の束。食中毒の文字。――だからやはり正しく自棄酒であったのかもしれない、だけど、もう、お酒は要らない】
【おいしくないもので慰められる気はしなかった。おいしくないからこそ慰められる気もした。どちらにせよ、彼が望むなら、お茶はもとより、料理だって食べてよくて】
【問題は。――先月の"たんぽぽ"にて、ごく理由不明の食中毒が発生したと言う施設の設備にて作られた料理を果たして健やかに穏やかな気持ちで楽しめるのか、だったろうか】


871 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/16(金) 12:28:02 M45HlEiE0
>>870
不死のカミサマだって言うから何百年と生きてると思ってたが、そうでもなかったかい?そいつァ失礼。

【どっかりと適当な椅子に腰を掛ける。
或いは何百年生きたとしても自意識は切り替わっているのかも知れないが……その辺りの事情は男は知らない。
組織から聞いたかも知れないが忘れてしまった。そういう男だ】
【差し出されたビール煮とやらを受け取る。酒は飲まない主義だが料理に使うことまで禁じるほど忌避している訳でもなく】

世界を滅ぼすなんざ息巻いてるとか聞いたからもっと殺意でギトギトなのかと思ってたが、昔の塒で酒飲んで飯作ってニュース読んで溜息かよ。
やる気あんのかァ?
ちゃんと言われた通りに世界滅ぼせマスカー?

【有り体に言えば少女が望むような意味で"神様"だと言った訳ではないのだろう】
【男は神を信じていない。だから目の前の少女が"神"と言う良くわからない別の生き物だったとして、それはどうでもいい】
【皮肉なことに白神鈴音が人間でも神でもどちらでもいいと心底思ってるのがこの部外者であった】

【だが、今少女が物憂げにしているのはかつての居場所に一人佇んでいることへの郷愁では無さそうだ】

ヒッヒヒヒ、その様子じゃあその一件、愛しの"イルチャン"とやらの仕掛けじゃ無さそうだなア。
やり口がらしくねェとは思ってたが。

だがどうせ人間を一切合切まっ平らにするつもりなんだろうが、今更食中毒ごときで嘆く必要があんのかよ。

【ウーロン茶を勝手に取り出すと瓶ごと飲みながら男は肩を竦める】
【ラスボスにしては毒気が無さ過ぎて拍子抜けしたのだ】
【だからと言ってこの場で撃ち殺しても無意味な事は知っていたから】

こりゃああのメンタルこんにゃくがコレジャナイって喚くワケだ。


872 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/16(金) 14:46:51 6.kk0qdE0
ーー秋深し隣は何をする人ぞーー


【水国繁華街、路地裏BAR『Cherry Blossom』】

「ううぅ、寒寒ッ!」
「場所は、此処であってますよねスマホさん?」
「当然!まっちがいないわよライガ」

【この晩秋のこの日、寒風吹き荒ぶ水国繁華街の路地裏にオートバイが一台止まる】
【グレーのスーツに、この日は流石に堪えるのか、防寒用のライダースウェアを上に着込み】
【冬用グローブと共にシステムヘルメットを外しシートの上に置いたならば、その今は営業していない地下のBARへの入り口を睨む】

「魔導海軍の厳島、あいつとの約束の場所は此処ですが……」

【ライガ・カシワギ、彼の属する外務八課に会談要請の暗号文を送った魔導海軍陸戦隊諜報部】
【だが、彼らとの約束が果たされる事は無かった】
【あの日のニュース速報での演説、そこには、海軍司令長官から直々に陸戦隊諜報部の件の面々の捕縛が報じられた】
【外務八課の本部のテレビで其れを目の当たりにしたライガは、その日の昼食のラーメンをその場に思わずひっくり返す程であったが】
【兎にも角にもこの日、この約束を知る八課の人間と共にこの場に訪れたのだった】

「何か情報が得られれば良し、ですがね」
「まあ、魔導海軍もここは調べてるだろうから、あんまり意味ないかもだけどねー!」

【かの、海軍大将のスピーチを怪しんでの行動であるが、幾分か強張るライガに比べ、彼の相棒の携帯端末は呑気な返答だ】

「さて、行きますよ」

【ここで、彼と共に来た仲間を振り返り、こう言って、閉ざされたシャッターをこじ開け地下店内へと向かう】


//予約です、よろしくお願いします


873 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/16(金) 18:11:34 mZrsxKa60
>>858

【荷物に関して問われれば、「その辺り、邪魔にならないところに置いておいてください」と】
【それから自分の持つ袋もまた、適当なところに降ろしてしまって】

〝正しい信仰〟、ですか……。異教のことに口を差し挟むのはあまり好きではありませんが……
事と次第によっては、そうも言っていられないのかもしれませんね。

―――あ、よければお一つどうぞ。手伝っていただいたお礼と言っては何ですが、数は多めに用意してありますので。

【手の平で指し示す袋の中、覗いて見れば紅茶や珈琲、炭酸飲料とだいたいのジャンルが揃っていた】
【男は花緑青の瞳を細めながら、進捗を確かめるように周囲の様子を見渡して。一つ伸びをしてから口を開いた】

〝聖都〟……スラウロット、でしたか。その中にあるとなれば、かなりの規模のものなのでしょう。
そんなものを破壊するとは……その方は何故、そのようなことをしたのでしょう。
仮にも〝教会〟に身を置いていたというのに――――。

して、〝緋の〟と冠するくらいですから、何かそういった特徴があるのでしょうか。
ああいえ、水の国にその方がいるなら、どこかでお会いするかもしれませんから。

【〝聖都〟。宗教都市として、時に巨悪の進行先として、世間の注目を集める街】
【そのような場所にある〝教会〟の施設ならば、その被害の大きさはどれほど大きく見積っても足りないくらいだろう】

【男は続けて、カーマインなる人物のことを問いかけた】


874 : 名無しさん :2018/11/16(金) 22:55:20 0vRHIe0I0
>>871

二十五歳だよ。

【どかと座り込む彼に、少女はわずかに目を細めて吐息を漏らしたのだろう。或いはここにきていくらか遅れて相手の甚大さに気づいたようであった、なら】
【"前世"はあっても、記憶はごく虫食いになりつつあった。さっきまで覚えていたことも、今覚えているかの自信がなかった。それは記憶力の問題ではなくって】
【全く同じ魂にそれぞれ全く違った人生が混じりこむのを本能が嫌うみたいに。同一人物同士が、互いへの過干渉をしないと取り決めたように、思い出は朧になりゆく】

【――そうして相手が食事する気もあるようなら、こぎれいな皿――ひとまず店であるなら百円ショップで買ったような雑なお皿はなくて――にでも、盛って出すのだろう】
【ごくシンプルでニュートラルなもの。ごろりと大きめの一口大に切った牛肉と、ようく炒めた玉ねぎ。味付けはコンソメと、やっぱりビールと】
【わりに長い時間火にかけていたらしかった。炭酸で煮たのもあって大きめのお肉だって箸で簡単にほぐせて。――彼が箸を使うのかは知らないけど、箸も出していた】
【それでもまだいろんなものを足りたり足したり引いたりちょっと足したり首を傾げてみたりという工程を挟んでいないなら、どうにもやっぱりごくシンプルな仕上がりであり、】

――――――――――――――管理を、お願いしていたから。様子を見に来たの。

【かたん、と、小さな音で彼の前に置くなら。その距離にて向けるまなざしはいくらか冷たいのだろうか。やはり遅れて相手の性質に気づいたよう】
【然るに踵を返してカウンターの中へ。それから自分の分――味見というにはいくらか食事の量――と、飲みさしの、もはや飲むしかないビールの小瓶を、カウンターの上へ】
【立ち食い店でもなんでもないのにそこで食べて/飲んでしまうことに決めたらしかった。――さてどうでもいいんだけれど、彼女は、パーカーの下、ごく可愛らしい服を着ていた】
【クラシカルロリータの恰好の上からパーカーを羽織っているらしかった。おそらくは料理するために。――だなんて至極どこまでもどうでもいい事実なのだけど】

――大人(わたしたち)を信じて来てくれたのに、そんな目に遭ったら、もう二度と信じてくれないかもしれない。……。
資料、置いてあったのを見たけど、……よく分かんないってことしか、分かんなかった。でも、――、そんな風にしたらいけなかった。絶対に。
謝りに行くのだって出来ないかもしれない。謝ったって、……聞いてくれないかもしれない。大人と大人が喧嘩するのと違うの。子供と子供が喧嘩するのとも違うの。

【その癖に、――やっぱり、食事のお供がお口に合わないビールでは気が進まないにも程があるらしかった。いくらか遅れて、お茶のペットボトルを取り出すなら】
【ごく自分用の麦茶。お行儀悪くカウンターに乗り出す仕草でお肉をひと切れ突くなら、これもまた自分用の一口大にして、頬張って。ため息は、味に対してか、現実に対してか】
【とかく違和感があるとするなら、――やはりその発言の内容なのだろうか。世界を滅ぼすと言ったにしては、それこそ、先のことばかり気にして】

――――――、こんにゃくの知り合いだなんて、わたしには、居ないの。

【――――ふわとため息。向けるまなざしは、いくらかじとりと】


875 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/16(金) 23:30:34 E1nVzEpQ0
>>866


【乱れ散る桜花に白銀の綾織が重なるならば、酷く錯誤的でありながら物果敢ない感傷に冒される光景であったのだろう。互いに笑いかけるような温度は全てを諦めていた】
【《フェンリル1。状況N終了。終了措置に移行。狙撃班はアエロー02にて追撃せよ》 ─── 射撃の介在を勘案するならば、恐らく少女を追おうとするのは女一人でない】
【この場に留まり交戦を続ければ包囲されるのも遠からぬ話であろう。捕らえた少女を彼らは殺すのだろう。殺せるのならば閉じ込めるのだろう。プロペラの騒音とサーチライトが、暗い店内へ躊躇いなく射し込んで】



   「御免なさいね。」「壊してしまうより、遣り方を知らないの。」



【迫る無数の蛇頭の悉くを、女 ─── アリアは淡々と撃ち墜とそうとする。両の手にそれぞれ握った、馬鹿げて長大な拳銃を、凄まじかろう反動など噯気にも出さず】
【右手より強装弾。左手より対人散弾。帳の落ちた店内において、幾度となく銃口から放たれる大仰な程のマズルフラッシュばかりが、冷たく彼女らの顔を照らす。】
【辛うじて市井の人々を傷付ける事はしていなかった。矢鱈に手際のいい平服の若男が、出入口から客の全てを避難させようとしていた。恙無くそれも済むならば】



   「泣き言を繰りたいならば」「 ─── 貴女を愛してくれる"ひと"を、呼びなさい」



【ソファを蹴り飛ばして後方へと退く。黒いロングコートの裡側より擲たれる投刃。硝子に象られ深紅を満たされた4振り。とうに照明は消え落ちて、夜陰に煌めく乱れない光条】
【 ─── 張り巡らされた根の擁壁に、突き刺さりながら砕け散ろうとするのだろう。大気に晒された血の薫りが、充たされた硝煙と共に立ち込めるならば】
【紅色の中から昏い輝きが生じる。拡がった血痕より出ずるのは、空対地ロケット弾/ハイドラ70。真面に発射されたのならば喫茶店の敷地など更地に変えてしまえるであろう十数発分の焼夷炸裂弾頭が】
【根の表層にて"自爆"しようとする。 ──── ならば全てを焼き払う所存に相違なかった。少女を護るものも、少女を護らぬものも、少女自身も。 ─── 爆煙を断ち割り、銃声に重ねて、数発の弾丸は少女へと】


876 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/16(金) 23:44:29 E1nVzEpQ0
>>868



「はアァ!?」「勘違いしてんじゃねえですよ!」「アタシが楽しむ為にアンタをブッ殺すっつってんだ!」
「言っとくが慈善事業じゃあねえですよ!?」「お互い楽しむ努力ってのが必要なんだ分からねえですかガキンチョが!!」


【切り返されるは甲論乙駁。 ─── 論の成っているか否かはこの際さしたる問題ではないのだろう。】
【聞くに少女を殺そうとしたのは、単に女の嗜好を満たす為であるらしい。もう幾ばくか明るく悔いていれば喜んで殺したのだのだろうか。ともあれ】
【 ──── 凡そ、悉く、全くもって、大人気がなかった。子供呼ばわりをする割には余程に女は子供であった。見れば体躯は少女とさして変わる訳でもない】
【張り尽くした息を深々と吐き出すのも殆ど同じ時分であった。 ─── 組んだ両脚は胡座なのかも座禅なのかも判然としない。ただ剣客のそれと見るには、余りにも華奢で】


「 ……… とりあえず、出っ張る所なんか削いどけば面白くなるモンですよォ。」
「手とか、足とか、耳とか、鼻とか。」「まぁアタシは"そういう"の、そんなに得意じゃないですし」
「後は晒し首なんて滑稽で良いと思いますよォ?」「バラす様子をビデオで撮って誰かに送りつけるのも、まァまァ、乙です。」


【問われたのならば、思い出すように淡々と語った。釣り上げた外道の味と調味について語るような口ぶりであった。】
【「イヤでしょ、んなの。正味アタシもまあ、面白いっちゃ面白いですけど、そんなに面白い訳でもないですしィ。」ぶう垂れる割に少女の手傷を心配する様子はなかった】
【それでいて立ち去るという選択は時間の空費と嫌うようだった。「 ……… 面白いアンタの話が聞けんなら、チャラにしてやりますけどォ。」さもなけば死ねと言っているのだから、徹頭徹尾に非道である】


877 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/16(金) 23:46:01 WMHqDivw0
>>874
【至極奇妙な光景で有っただろう】
【男とて、別に本気で食事しに来た訳でもないのだが、少女――言を信じるなら少女と言う年齢でもないのだろうが――は特に意に介さず、皿を用意する】
【妙に手慣れていて勝手知ったるもの――記憶を手繰れば思い出せるが、確か白神鈴音は、UTで給仕をやっていたのだったか】

【――何もかも捨てたようなことを言っても、かつての自分に未練が有るのか】
【先程から感じる、煮え切らなさは、確かに神としては相応しくないとも見えるだろう】
【彼女の友人が、まだ手遅れではないと、感じてしまう程に】


【もっとも――男に取ってはそれらは何ら関係もない話で】
【当然、少女の語る、食中毒騒動を起こしたどこだかも、男に取っては何ら縁のないこと】

【それでも口に出さずにはいられないと言うのは――男と会話していると言うよりも自分に言い聞かせてるようでも有ったか】


――ケッ、じゃあ、何だ?
この話にケリがつくまで虚神活動は保留にしますってか?

待ってくれる訳がねェだろうが。
流されるのは得意だろ?川のカミサマだってのならよォ?


んで、そいつはツッコミ待ちなのか?
ガキなんぞ、この先、どこぞの赤い工場みたくのべつまくなし挽肉の缶詰にされる運命だろうが。
そいつらから、"何でこの人は人間を裏切ったんだ"って責められるのがオマエの役じゃあねェのか?


【先に裏切ったのは人間の方だと、彼女は語るかも知れない】
【だが、それは大人の理屈で。子供ならば、自らを苦しめるモノをただ純粋に、疑問と恐怖で見詰めるのみだろう】


それともあの人間嫌いのメスガキが、手前ェが"お願い"すれば子供だけは見逃してくれるとでも?


【ようやく、少しばかり訝しんだ視線を向けられた】
【男は片目を閉じて、片方だけの瞳で、少女に視線を返す】
【どうにもこうにも理解できないと――そんな表情だった】


クックック……そりゃあザンネン。――ジャ=ロにぶっ殺されそうだったのを必死に護ってたってのに、認知もされてねェとは。


まぁ、良い。んで、結局手前ェは何がしたいんだ?

昔はお仲間のために"良い子"のフリして、今度は今の女のために"悪い子"のフリして。
ベクトル違うだけでやってること同じだろうが。
ガマンが趣味だってのなら止めやしねェがよ。


878 : 名無しさん :2018/11/17(土) 00:02:59 0vRHIe0I0
>>875

【そうして銃口に魅入られるなら、蛇の根は容易く頭を打ち砕かれるのだろう。或いはありふれた銃弾程度なら耐えたのかもしれないけれど、】
【天井を桜の木が突き抜けたとはいえ、もともとそう広くない店内に銃声が響くのならば、少女は凡そ初めて不愉快を露わにした。ならば思い出すのかもしれなかった】
【あの日あの場所で夕月が言っていた言葉。――少女は銃に殺された経験があった。だからこそ祟り神になってしまった。銃声にどうしても心がざわめいてしまうなら】

――――――――――。

【潜めた眉根が批難がましくアリアを見つめていた。残った蛇が、割れ砕けた床板を掻き分けて、ぞぞ、と、少女もとへたどり着き】
【変わらず牙を剥くのもあれば、姉に甘える妹みたいに少女へすり寄るものもあった。ならその甘えん坊の頭を彼女は撫でてやる、そのまま腕の中にすら抱き留めてやり】
【ならばその蛇たちにすら意識があるのかもしれなかった。――そうとしか思えぬ仕草をするものだから。数度の慰めのあとに解き放つなら、その個体までもが敵意を露わに見せつけ】

…………――っ、あ、

【指先に指し示すなら、蛇たちは再びアリアへ向かうのだろう。数は半分よりも減っていて、それでも、いくらかの無能力者を嚙み殺すに不足ない牙と毒を湛え】
【けれどその幾匹かに硝子の刃が突き立つ。赤くしとどに濡れるのに蛇が惑ってみせるなら、少女は入れ違いに気づいたらしい。硝煙の香り、やはり眉根を寄せるなら】
【――オッドアイの眼が見開かれる瞬間に、ぞばりと桜の幹が張り裂ける。ちょうどそばに佇んでいた少女を捕食するような仕草にて抱きしめるのだろうか、恐ろしいものから護るよう】
【ならば親が愛しい子を恐ろしい暴力から護るのに似て、――純魔力の防壁がそれでもごく至近距離にて犯される。爆炎が晴れる間があるのなら、けれど、そこには、やはり、】

――可哀想なお姉さん。壊さない方法も、――誰かに教わった方が、いいんじゃない? いっつもこんな風にしていたら、後片付けが大変すぎるよ。
…………、行こう、へびさま、これ以上はへびさまの鱗が焦げて拉げちゃう。――鯛の松笠焼きじゃないんだから。

【銃弾までもを受け止めて、――桜の木、であったものは、ぞると崩れ落ちるのだろう。ならばほつほつと揺らぐ魔力の残滓の中に浮かぶのは、大蛇のシルエット】
【真っ白な蛇が爆炎の名残に揺蕩って、伸ばした少女の指先に頬を寄せるのなら、次の刹那には消えている。他の蛇も焼き尽くされてしまったのか、伺えぬのなら】
【――行こう、なんて。どこへ行こうと言うのか。きっと逃げ道なんてなかった。それでも彼女はどこぞへ行くつもりであった。――きらと瞬く魔力の色合いは、やはり、鮮やかな桜花色】


879 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/17(土) 00:15:28 BRNVt/Aw0
>>876

ああもうっ!それは最初っからなんか察してたけど!
殺し殺されでなんか持ちつ持たれつにはならないんですか!?
っていうかもうお互い楽しむとか訳分かんないし!そんなんお互い殺し合う的なのしか浮かばないし!そもそも私そこまで戦闘狂でもないし!
【相手の言葉にぎゃいぎゃいと返す少女。何と言おうか、本当に子供の言い合いのようになって】
【確かに傷は負っている、筈なのだが全く痛がる様子がなくて。ならば少女は元より幾分か狂っているらしく】

【同時に吐き出した息。面白おかしくとは、という問いに答える相手の言葉に少女の眉間に皺が寄っていって】

……あー、やめてそういうの……
思い出しちゃいけない事思い出すから……
【若干相手の言葉に被せるようにして言葉を遮ろうとして】
【手足を削ぐ、解体す様子を動画にする、そんな言葉を聞いてしまえば自然と思い出すのは友人の悲惨な姿で】

【叫び声】【機械音】【泣き叫ぶ顔】【がしゃん。】【「もう帰りな」】【血塗れの拳】【やっと見つけた手がかり】【他人に奪われた】

【──わたしは、やくたたずだ】

【(回想から浮上する)】

【そうして、面白いお前の話が聞けるんなら、という言葉に少女は「えぇ……」と困惑した表情を浮かべて】

面白いって……どういう範疇の話ですか……
一般的に考えて悲惨なやつだと私の役立たずな話だけになるんですけど……?
【嫌でしょそんな明らかに暗いの、と少女はため息を吐いて】


880 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/17(土) 00:30:32 E1nVzEpQ0
>>872


【ひどく雑踏の余所余所しい夜だった。晩秋の寒さすら翳りを見せて、来たる初冬は雪を降らせるだけの慈悲を忘れている】
【冷たく乾いた風音が、錆び付いた路地裏を浸食していく。鼻につく鉄の匂いが人血でない保証は何処にもなかった】
【烟草と硝煙を幾ばくか香らせたとして、誰に分かるというのだろう。こういう夜は銃声で始末を付けるのに向いていた】

【 ─── 路地裏に乗り付けた数世代前の黒いセダンから、2人の女が降りてくる。】
【ひどく背の高い銀髪の女と、それなりに背の高い黒髪の女。どちらも艶のある黒いスーツと上等なトレンチコートに身を包んでいた。ネクタイの色まで紅く揃えていた。】
【ライガを見るなり、黒髪の女は上品に手を振るのだろう。絹地のグローブを嵌めていた。幽かに幼気な茜さす白い頬が、まったく無垢に笑っていた。】
【対して銀髪の女は、男の彼さえも見下ろす程に高い背丈であった。顔の半面は前髪に隠れていた。儚げながらも冷淡な、青い隻眼の一瞥。然して長い肢体の膚を晒さずとも、耽美な肉感が強調されていた】
【彼の隣に立つのならば、仄かに甘い薫りさえした。それぞれ、薔薇と柑橘。 ─── シャンプーの匂いだけ違いながらも、やはり2人は女としての礼節を深く重んじていた。だというのに、その懐には】


「会合を持ちかけて来たのは向こうからでしょう。」「加えて今の彼は追われる身か、既に哀れな虜囚。」
「どういう事情なのかは判じかねるとしても、 ─── 既に伏兵を放たれていると考えるのが妥当かしらね。」


【黒光りする銃口。低倍率スコープとダットサイト、突入用のライトモジュールとフォアグリップ ─── 極め付けには60連発のドラムマガジンで武装した、軽機関銃。】
【アリアの儚げな白い横顔が憂うような声音で語るのは宣戦布告であった。ボルトを引いて薬室に弾を込めれば臨戦態勢に等しい】
【「そういうことだから、油断のないようにね。ライガ君」かく言うミレーユも懐からポリマーフレームの二挺拳銃を取り出す。LAMと銃剣とフリップサイトの完全装備】
【ことごとく彼女らは剣呑であった。 ─── いずれにせよシャッターの開かれるならば、2人は店内の暗闇を突入用のフラッシュライトで照らし上げるのだろう。怠りないクリアリングは、如何なる接敵にも備えられて】


881 : 名無しさん :2018/11/17(土) 00:47:28 0vRHIe0I0
>>877

【なら、――彼女はどこかの狼が言ったように、神様だなんて向いてないのかもしれなかった。だって、そもそも、それこそ本当に世界だって滅ぼせたに違いない時、】
【彼女が何かしただろうか。人間に紛れていたのを誤差に等しい回数発見されただけではなかったか。或いは自分でそうしていたと白状しただけでなかったか】
【そうして舞い戻った世界でも、きっと彼女は神様らしいことなんて何もしていなかった。友達の作ってくれた朝ごはんを食べて。ケーキを食べて。ココアを飲んで。――】

……川の神様が流れて行っちゃったら、意味がないじゃない。

【――――それに彼女は何の神なのだろう。川の神であったのは先祖だった。それすらも、もはや川の神としての神格は手放していたなら】
【けれど在り様として色濃く影響は残していた。だから彼女も未だ川の神の子孫だった。しかし強いて言うのならば彼女は蛇の神であり、でも、だけど、そう、】
【きっとまだ何を司るって決められてすら、いないんだった。人間を祟り魂を穢してここまで来たのに。自分がどんな神様になりたいのか、すら、きっと】

【(あるとき誰かに言ったみたいに、――怖くない神様になれたなら、もう誰にも虐められない、非道いことをされないで、生きていけるのか、なんて、)】

――――人間が、わたしに、非道いことをしたの。だけど、それは、あの子たちじゃないから。

【ならばやはり下らぬ理論なのだろう。それでいて、彼女の中ではそれしか見えぬ理屈であるのだろう】
【虐げられて痛みと苦しみと疑問の中で見上げた大人の顔を覚えている。醜悪に歪みながら釣りあがった唇から覗くヤニに黄ばんだ歯と酒臭い息。殴る前に嘲るよう眉根を寄せる癖】
【恐ろしいものをずっと見上げて生きてきた。そうして大人になってしまった。ならば大人になってしまった部分と大人になれない部分、ちぐはぐに交じり合うようでいながら、】
【――あるいは、ふとしたきっかけとほんの少しの勢いで、台所の包丁を教室に持ち出して来てしまった子供なのかもしれなかった。力を得たと、復讐するのだと、誓うような】

【つまり、挨拶をすれば挨拶を返してくれた子や、自分が配る給食を受け取ってくれた子や、落としたのを拾って渡した消しゴムをそのままごみ箱に捨てずに筆箱に戻してくれた子や】
【"彼女"にとって"敵"でない存在は死ぬ必要がないとどこまでも信じているのかもしれなかった。死ぬ必要があるのは、滅ぶ必要があるのは、そうでない、敵だけだって】

【(だからやっぱり彼女は病気なのかもしれなかった。けど)】

――やめてくれる。イルちゃんのこと、そんな風に呼びつけるの。

【睨みつける眼差しはきっとどこまでも真摯に。恩人であり愛しいひと、――、ならばそんな風に呼ばわることは不愉快だと。隠しもせずに、鈴の音の声に棘を含ませて】
【そうしてまた"こんにゃく"の話に移ろうなら、――いくらも遅れて、「ああ、」なんていうから、認知はしていたらしかった。ただ、こんにゃくとは思っていなかったらしい】
【果てなく常識的な思考回路の末に、こんにゃく=蜜姫かえで、と、紐づけるなら。ふらと頭を揺らす、――向ける眼差しはやはり最初より鋭く、】

………………感謝、してるの。助けてくれたこと。だけど、そう、――あの子は、わたしのこと、一度だって呼んでくれなかったから。
そこのところは、――。……。………………。なんのこと? わたしは、もう、我慢しないの。イイコなんて、やめちゃうの。――――やめちゃったの。
嫌なことに嫌って言うし、嫌いなものに嫌いって言う。非道いことされたら我慢しないし、――――非道いことをした奴を絶対赦さない。

だから、嫌い。わたしを傷つけた全部。

【件のこんにゃくちゃんは神様の目と耳を以てしても、一度たりとも白神鈴音には祈らなかったのだと言う。呆れるように細める眼は、】
【あるいは自分に祈ってくれたなら"どうか"してあげたのになんて傲慢なのかもしれなかった。そのくせ、蛇であるはずの彼女は、狼にずっと先手を取られて、もう遅い】
【――――何がしたい、と聞かれて。彼の言葉が続いて。怪訝そうに向ける眼差しは、それこそ、相手の言葉。どうにもこうにも理解できぬと表明するように】

【イイコなんてやめてしまった。我慢なんてもうしない。嫌を呑み込まない。歯を食いしばって何かを耐えることもしない。然るに自分は大層悪い子であり、】
【だから仕返しをするのだと。傷つけられた全部に復讐するのだと。だから世界なんて滅んでしまえと。(だけど愛しく/大切に/護りたいと/思う全部は、同じだけ幸せになってほしくて)】


882 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/17(土) 01:04:28 OGHUSc960
>>878

【立ち昇る黒煙の晴れる先で幾らか女は驚嘆していた。 ─── 軽攻撃機の最大効果火力に近しい爆撃であった。】
【であるというのに対手には傷一ツ残っていなかった。落魄れたとしても神は神に他ならぬのだと理解したのか】
【然らば銃を凶器として扱う事に更なる優位性を置くのも当然であった。ただ今の女に求められるのは、世界に仇為す神を有形無形に殺す事であるから】
【それでも、 ─── 睨み返す青い隻眼は、どこか悲しげだった。どうして解ってくれないの。どうして選んでくれないの。吐き出せる感情を幾らでも宿す瞳だった。それでも、ようやっと言葉の形を成すのは】


   「 ─── 憐れまれるべきは、貴女でしょうに。」


【 ─── 硝煙と砲音に曝され、乾いて尚も艶めきを喪わぬ、淡い唇が言葉を紡いだ。慈悲の涙さえ零せるのだろうか。これだけ非道の眼をしているというのに】
【去り行く少女を追い詰める方策など持ち合わせてはいなかった。 ─── 花吹雪の散り行く様に擬えて、ただ見送るばかりが人の常であるのだから】
【せめて銃口だけは向けたままに留めるのだろう。消えゆく最後の一刹那まで殺意を消す事はなかった。殺して貪る事しか己れは知らない。貴女の刻まれた心を癒せるのは、決して私ではないのだから】


  「 ………… アリア。」「アリア・ケーニギン=デァナハト。」
   「お前を殺す、人間のひとり。」「覚えておくがいいわ。そして私を憎むならば、貴女も私を殺せ」


【最後に女は、名を告げた。 ──── もはや全て明白な敵対であった。分かり合えぬ物寂しさに語れる言葉は残されていなかった】
【ひとり廃墟に遺されたまま、千切れた配線の短絡する音だけが、どこまでも迂遠に響いていた。いつしか女は俯いていた。白銀色の儚い髪先が、独り夜へと溶けていく】


/このあたりで〆でしょうか!おつかれさまでした!


883 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/17(土) 01:14:10 WMHqDivw0
>>881
【牛肉と玉ねぎ――有り合わせで作ったにしては良い出来なのだろう。それをフォークで摘まみながら、噛んでいる間だけは話を聞いている。そんな様子であったか】
【訥々と語る少女の動機――その心理にも眉一つ動かしはしなかった】
【どちらかと言えば、そういう酷いことをする側の人間なのだから、同情も理解もするような筋ではないのだろう】

流れてったら洪水にでも何じゃねーの。それで世界を押し流すとかどうよ。
何度かそういうので滅んでんだろ、人類。


【だから返す言葉も至って雑で有った。"雑談"なんて。正しくそのレベルの話。出された料理に美味いとも不味いとも言わないが、少なくとも止められない限りは皿を全部平らげるつもりでいるようだ】


あんだよ、世界にでも言い訳してんのかい?
酷い目に遭ったんだからやり返したって"悪いこと"じゃねェってか。

ちなみに俺は別に可哀想な過去とか何もねェが、気に入らねェのをいくらぶっ殺しても今日も元気です。
力があんだったら復讐でも八つ当たりでも好きにやりゃ良いだろうが。別に誰も止めねェよ。


【肉を噛み潰す。くるくるとフォークを回しながら】
【仮に、"そういう話"だったのなら、彼女の友人達は応援すらしたかも知れない】
【彼等の中で過ごすことに何の問題もなかっただろう】
【だが、結局必要以上に振り切れた悪に仕立て上げられた結果、誰もが敵に回ってしまった】


【その元凶たる人物をこうも心酔しているのだから、成程、狂気の沙汰と言われるのも納得だ】
【そして――】


イヤだね。アレの方が100倍口の悪い事言ってるぜェ?
酷い事されたなら仕返ししたって良いんだろう?オマエん中の理屈ならよ。
それならあいつに仕返ししたい奴だって当然いるだろうがよ。当たり前だ。


【結局、彼女は質問に答えていない。イル=ナイトウィッシュの持つ大きな矛盾――】
【互いに互いを見ていると言う点以外は、何もかも見ているモノが違うのだと】
【だが、"気付いていないはずはない"】
【彼女を悪く言うな、と。即物的な怒りだけが、その単純な事実を誤魔化してくれると言うのなら、それは安い買い物だ】



さっきも言ったが別に良いんじゃねェの。
酷いことされて、仕返しすんのはフツーだろ。出来るかどうかだけが問題でよ。

じゃあ、オマエはアレか?"オマエを傷つけた奴"とやらをリストアップしてそいつらを全員生贄に差し出せば満足してUTに戻って来てまた給仕するって話かい?
イイネ。誰も不幸にならないハッピーエンドじゃねェの。


884 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/17(土) 01:15:30 OGHUSc960
>>879

【ふむん、と矢張り女は唸った。 ─── 今更己れの言葉が少女を傷付けたかに興味はないのだとしても】
【何故そこまで言葉の節々に慙愧を宿すのかは多少なり気にしているらしい。淑とした白膚の顔貌を、やや陰らせて】
【訝しむように首傾げ、直黒の横結びが躍るように揺れた。 ─── 上等な香油の匂いは、安らかな楡の香り】


「色々あるでしょォ。」「なんで死にたがってたか、聞くだけでも多少は面白いですよォ。」
「自尊心ゼロのガキンチョが、どんだけ下らない理由で気を落としてんのか ─── そこそこ、気になりますしィ?」

「それに話したら、ちっとはアンタも楽しくなるでしょォ。」「楽しくならねえんならアタシが思いっきり笑い飛ばしてやりますから ─── どうぞ、よしなに。」


【それでも、 ─── けたけたと女は笑うのだから些か品がなかった。黙って笑顔を浮かべていれば、凛とした気品を纏うものの】
【片膝を立てて腕枕にし始めるのだから愈々もって粗忽であろう。恐らくは、少女が何を語っても、この女は笑うのだから】


885 : 名無しさん :2018/11/17(土) 01:26:23 0vRHIe0I0
>>882

【――――――――ならば、彼女は、自分のことを憐れんでくれるものたちのそばを止まり木と選んだのかもしれなかった】
【そしてそれらが悉くヒトでないものの元にあったのかもしれなかった。或いは一つ川を統べる真白の蛇であり、或いは不条理たる病魔であり】
【羽が擦り切れて折れる日まで羽搏いたなら折れるしかなくとも。めいっぱい振り返らないようにしていたはずの現実がいつしか致死性の劇物に果てていたとしても、】

――――――――、じゃあ、今すぐ、こんなに可哀想なわたしを抱きしめてよ。

【幾重にも蛇に護られて立つ少女もまた、どこかで悲しい目をしていた。わたしはずっと人間のこと、だいすきだったよ。(*********)】
【火薬の臭い。どこかで木が燃えている。燃やしてはいけないものが焦げている。ばきばきと崩れそうな建物の悲鳴。その中に響く鈴の音は、全部を無視できる特異な声質】
【大嫌いな臭いにくるまれて眉を潜めきった顔は儚さの欠片も残していなかったから、一緒に燃え尽きてしまったに違いなかった。――――――だのに、】
【紡いだ声はどこまでも断末魔に似て聞こえた、もしも相手にそれを叶えてくれるだけの優しさがあったとして、その前に彼女は間違いなく背中を向けてしまうから】

【失望していると言い訳にして裏切られたくないだけ、――なのかもしれない。期待して伸ばした腕をすり抜けて頬を打たれたことがあったのに違いなかった、】

白神鈴音。

【――ならば二人、名前を名乗り合ってすらいなかった。赤い瞳だけで振り返って、たった一つ、自分の名前だけを置き去りにしていく】
【返事をしていかないのなら、相手の言葉を拾い上げたのかも分からなかった。ましてや、抱き留めているのかもわからなかった。その形に指先を這わせて理解したのかも】
【向けた背中はひどく華奢なもの。めいっぱいに布地で飾っても、その内側のやせぎすまでは隠しとおせないから。それでも必死に隠そうとしていたから。だから、】

【きらと瞬き立ち上るのは桜色の残滓。転移魔術。――少女の姿は、瞬き一つ先の未来にはもうどこかへ消えているのだろう。割れ砕けたココアのカップの破片すら見つけ出すこと、許さないで】


886 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/17(土) 01:47:09 BRNVt/Aw0
>>884

【少し唸って訝しむように首を傾げる女。少女もつられたように首を傾げて】
【少し傷が広がったが然程気にする様子もなくて】

えぇ、それで良いんですか……じゃあかいつまんで話しますけど……面白くなかったら即断で……
【何で死にたがっていたのかで良いのだと言われれば少女は自信なさげに眉を下げて】

えーと……まず、友達が行方知れずになって……助けに行けなくて……
でもってその後別の所でその友達がどんな目に遭ったのか知ってしまって……助けに行けなかったのと友達が隠したかった事を知ってしまったのとで顔が見られなくなって……
それでふとした事から私がそれを見た事が友達本人にバレてしまって……
うわぁ私本当に駄目な奴だなマジ役立たずだわ"世界"に要らんわって思ったらそもそも故郷にいた頃からだったわって思い出して……
で、要らない奴はこの世にいたら駄目だなって結論に至って現在と……
【……別の人に言ったらめっちゃくちゃ怒られたんですけど要らない子供が棄てられるのって普通ですよね?と少女はまた首を傾げながら笑って】


887 : 名無しさん :2018/11/17(土) 11:06:31 0vRHIe0I0
>>883

【「わたし、泳げないから」――よく煮えた玉ねぎをお箸に引きずり上げて、頬張るまでの一瞬に、彼女はそんな風に返すのだろう】
【川の神様の子孫が、……泳げないどころか、本当は、深さのある水だって怖くて指先を浸すことだって出来ないのに。そんなのはなんだか気恥ずかしくて言えないから】

一回しか知らない。

【――箱舟のお話。そもそもあれは滅ぼしたかどうかで言えばきっと失敗なんだろう。けれど悪くなかったひとだけ生き残るのなら、或いは彼女は発言に合致して】
【滅ぼしてしまいたい、消し去ってしまいたいものと、そうではない、むしろ慈しみ護ってやりたいものがありすぎて。だけど彼女の中では何か上手に重なり合っている様子なら】
【それともあるいは何か特殊な考え方をしているに違いなかった、――それこそヒトは大なり小なり自分の世界を統べる神様である、なんて、そんなの】

――言い訳、じゃない。理由を言っているだけなの。………………ふーん、そう、――。
なのに、こんなところ、来たの? ……セリーナじゃなくたって、"だれか"居たら、捕まっちゃうかもしれないのに。

【伏した眼差しがもはや放置しつつあるビールの小瓶を捉えた。残すのは嫌なのかもしれなくて、ただ、炭酸まで抜け始めたなら、もう飲む気なんてしないみたいに】
【言い訳と理由の差なんて微々たるもので、そうして定義するというなら、彼女がしているのはおそらく言い訳だった。――あるいは、誰か脅すような言葉に似て】
【世界を人質に取っているのに間違いなかった。自分の言葉を叶えろって言っているようなものだった。神様の癖に。彼が人殺しであっても咎めない、きっとやる気もない】
【力があるんだったら、――、そうじゃなかった。だからやっぱり我儘だった。ごくくだらないものを求めていた。から、】

イルちゃんの方が、――百倍かわいいもの。それに、イルちゃんが非道いことをして、回ったの? ――――そうだとしても、
イルちゃんは、わたしのこと、助けてくれたの。抱きしめてくれたの、――。――人間でも、男でもないもの。――――――――――――だから駄目。

【赤ちゃんと老人、どちらかのおむつを替えなきゃならないとして、どっちがいい?】
【そんな質問では決してないけれど。目の前の相手の方が百倍かわいくないからなんて理由は理由たりえるのだろうか、長いこと世界に物理的に存在しなかった彼女は、】
【あるいはいろんな細やかなことを知らないのかもしれなかった。知っていたとしても、やはりその場にはどうしたって居合わせないのだから、何か理解が足らず】
【助けてくれた。抱きしめてくれた。ならばきっと食事だって作ってもらったのだし、愛してるって囁いてもらっていた。人間の男はもう好きにならないって決めてしまっていたなら】
【――自分の好きなひとにはしちゃ駄目、なんて、やっぱりごく我儘だった。わがままするって、わがままになるって、いつか宣言していた。上手、と呼ぶには、拙すぎても】

――して"あげて"もいいよ。わたしの嫌いなひと、ぜーんぶ、殺してくれて……。子供に非道いことをする奴も。女のひとに非道いことをする奴も。みんな……。

【ぱちりと瞬き一つして、――少女の返答は、あるいは、その通りだって全肯定にも似ていた。かすかに瞠るような眼が、どこか、微かな笑みを隠して】
【嫌いなものがなくなった世界なら、滅ぼす理由だってないってきっと信じている。そうしてまた誰かに"そう"してもらうことで、きっと彼女は、喜ぶ神様だから】
【然るに反動だった。ずうっと我慢してきた。我慢していた。報われたっていいと思っていた。報われるべきだと信じた。怒って世界を滅ぼしてしまうかもしれない神様に、】
【世界を滅ぼされない"ために"。なんて。ごく矮小な自尊心を慰めるために。怒った神様の取り扱い方はお祀りとお祭りだって信じていた。――だからくだらないのだけれど】

【ごくありふれて拗らせたストレス性の心象風景を、奇妙な運命にて成ってしまった神様の力を振りかざして癒そうとしているなんて。だけどきっとそうでしかないなら、】
【だからやっぱり彼女は今までのいのちに納得していないだけなのかもしれなかった。単なる人間なら必死に刃物を振り回して終わる出来事だった。のかも、しれなくて】


888 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/17(土) 12:03:47 WMHqDivw0
>>887
そいつは中々に傑作。
オマエを倒す時は水の中に突っ込めば良いって事だなァ。

【恐らくは冗談なのだろうが。目の前の男は冗談で人が殺せる類の人間では有って】
【こういえば相手は不愉快かも知れないなんて、そんな思考がまるっと抜けている】
【彼女の目的が、"非道な人間"を処分することなのだとしたら、間違いなくリストの候補には上がることだろう】

【もっとも――話を聞いている限り、自分の介在しない遠くの誰かまで同様に皆殺しにするつもりなのかは怪しいところだが】


UTがもうあんまり機能してないって噂は普通に聞いてんのさ。
そのセリーナってのも長らく姿を見てねェし。
大体、俺だって正義の味方デスヨ?世界を滅ぼす神と戦うなんざコレ以上の慈善事業が有るかァ?


【少女は訂正を求めたが、理由も言い訳も実際のところは大差はない】
【かつてディーが出会った、白神鈴音の縁者――彼女の言い分だ。"悪しき神に世界は滅ぼせない"、"必ず失敗し、能力者達に討伐される"と】
【似たような認識を、今まで長くこの新世界を眺めてきた少女が抱いても不思議ではないから】
【だから、抒情酌量を求める――自らを"悪い子"だと言いながらも、そうなったには理由が有るのだから、少女自身は本質的な悪ではないのだと】


へぇ……可愛いから、良いってか。
言うことが何だかカミサマらしくなってきたんじゃねェの?


【――ここに来て、男は笑みを深めた】
【その程度の相互理解も出来てないのに結婚とはお笑いだ、なんて――口に出したくもなるが】
【それで面白くなる訳でもないだろうから】


【それに構図がようやく見えて来た。明日には忘れてしまうかも知れないが、それは良い】
【白神鈴音は世界を滅ぼす虚神としてインシデントの中心にいるようでいて――結句のところは、イルと能力者達の代理戦争なのだと】

【白神鈴音の希望は言ってしまえば"悪い"願いではない】
【不遇な目に遭った人間なら誰しもが願うような慎ましい欲望だ。或いは"かつての白神鈴音"を知っていたのなら違う感想も出るのかも知れないが】
【能力者の中には思想を受け入れられない者もいるかも知れないが――それでも受け入れる者もいただろう】


【――だが、イルは異なる。彼女の言い分を借りるなら、イルは子供にも女にも非道を働き、ゴミのように殺すだろう】
【そのイルの味方をしている時点で、無辜の人間の殺戮に消極的肯定をしている、と能力者達に受け止められている訳だ】


或いはそうなるように仕組んでるってか……シンプルだが良く出来た仕組みだ。感心するぜ。
まぁ、そういうことなら余計に仕方あるまい。
あいつが可愛くないと思ってる連中に取っちゃ、サーチ&デストロイの対象だ。
そのドンパチに巻き込まれるのも、美的感覚の違い故ってヤツかねェ?



オーケイ、分かった。
イル=ナイトウィッシュはオマエの味方で、優しくしてくれる、善意の人物なワケだ。了解了解。
じゃあ、話は簡単だろ?

オマエが心配する子供達が、何か良からぬことに巻き込まれているって、"イルちゃん"に相談してみろよ。
助けてくれるだろう?子供達が昔のオマエみたいな理不尽を味わうことがないように。
だって、オマエの味方なんだから。
資料見て溜息吐いてるより遥かに建設的じゃあないかね?


【少なくとも、もし彼女がUTの白神鈴音であったのなら】
【この件に相談できる相手も、実際に助けに動く人間も何人もいたのだろうから】
【でも今は、"少女の味方"は一人しかいないのだから、そうすべきだと】


889 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/17(土) 15:51:14 5p38.LtA0
>>880

「向こうさんがどういう状況かは、解りませんが」
「故に、調べないと、ですよねそれが仇成す物ならば……」

【寒々しいという言葉は、まさにこの状況にうってつけなのかもしれない】
【物々しくも、漆黒の姿形は幻想性を帯びたコントラストで】
【遠い街の喧騒すらも、それを彩る一因となりて】
【かくして、一台のオートバイとそして並んで駐車されたクラシカルなセダンから二人の女性が降りてきた】
【凛として怪しく、魔性すら感じる姿】

「ミレーユさんアリアさん、気を付けて下さいね、くれぐれも……」

【ふうわりと冷たい夜の秋風に甘やかな二つの香りが溶けて届き】
【女性を感じるには十分過ぎるほどに】
【そして、ライガは言い掛けた言葉を飲み込んで】
【この二人には、そんな言葉は今更不要なのだろうから】
【その身に、多彩な銃器で武装し、今まさに警戒を張り巡らし、シャッターを開けて】

「……――」

【二人のライトで照らされた階段とその先にあるであろう店内】
【突入役であるライガが先行し、その後に続く形になるのだろうか】
【兎にも角にも、慎重に慎重を重ね、警戒に神経を使い】
【一段一段階段を下りてゆく……】

「――ッ!?」
「アリアさん!ミレーユさん!伏せて!!」

【とたんライガが階段の最後、床を踏み出したその瞬間】
【恐らく数は二挺】
【店舗部分のカウンター奥より夫々機銃の発砲が、三人を襲う】
【櫻国魔道海軍、100式短機関銃】
【狙いは甘いが、数は多く、加えて幾分か弾丸に少量の魔力を帯びて威力を向上させている、先手を打った発砲だ】

「問答無用って……暗くて見えない、何処に!?」

【階段の下、乱雑に転がるテーブルや椅子をバリケードに】
【階段の壁部分を背にして身を隠しながら、ライガは二人にこう告げて】


890 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/17(土) 16:01:18 smh2z7gk0
>>873

【言われたとおりに、アンゼリカはモナリカが袋を置いた場所の近くに持っていた袋を下ろす。】


ああ、正直ある程度の〝異端〟ならそこまで介入はしないがこの水の国で蔓延していたのもは
些か以上に程度が過ぎる―――。

む………では遠慮なく頂くとしようか。


【そう言うとアンゼリカは袋の中ならミルクティーを取り出して、軽くモナリカへ礼をしてから口にする】
【進捗を眺めるモナリカと同じ方向に視線を向けながら「あとどれくらいで完成できそうなんだ?」とポツリと問いかける。】
【そして再度彼女が追いかける〝緋のカーマイン〟についての話に戻れば視線が鋭くなる。】


さあな、異常者の思考回路など分かりはしないがまるで天からの啓示があったような振舞いだった。

―――いや、それが〝分からない〟んだ。あの日に何があったのか朧気で
そして〝奴〟がどんな姿をしていたのかも、それなりに長い付き合いであったのも関わらず〝分からない〟

ただ―――奴は〝赤い悪魔〟だ。もしそんな者と出会う事があっても絶対に接触するな。


【どうやらアンゼリカは何らかの〝記憶障害〟を起こしているようだった。】
【それは事件のショックでか、それとも意図的に何らかの処理をされたものなのだろうか―――】
【アンゼリカは強い語気で釘を刺した。】


891 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/17(土) 20:48:10 E1nVzEpQ0
>>886

【語られる遍歴を女は幾らか神妙な顔をして傾聴していた。 ─── やはり眦は薄ら笑いのように細められていたとしても】
【結んだ唇の奥から小さく唸る声がした。やや頤まで下げるならば何かしら「黙考しているのだろう。然して、】
【 ─── 不意にまた、頬を緩めて女は笑った。ずるりと這い寄る毒蛇の所作に似て、少女の眼前に顔を寄せて、鼻先の重なる程に卑近な距離を生ずるならば、囁き】



「イヤそれ自責に託けて逃げ出す理由作ってるだけじゃあないですかァ。」「 ─── その、何でしたっけ?」
「お友達、とやら ─── 実際問題その人からは、何も言われてないんでしょォ?」「だったらアンタの悩んでるのは自分勝手な妄想ですよォ全部。」

「しょーもない切欠で会うのが怖くなっちゃったから、義理だ人情だって尤もらしい理由で手前ェに言い訳をして」
「そんで序でに自虐もしとけば、友誼に殉じた自分に酔って気持ちよく死ねるって寸法だ。いやあ予想以上に反吐が出ますねェ」



【「ますます殺したくなくなりましたよォ。 ─── アンタの死ぬ理由に使われたくはないンですよね」 ─── 好き放題を言うだけ言って、女はまた身体を退かせた。】
【そうしてまた、けたけたと笑っていた。ごく迂遠な物言いだったが、少なくとも少女を嘲笑うニュアンスだけは伝えていた。恬然として楽しげに、藍染の肩を震わせる】
【結ばれた唇より垣間見える白磁の歯先はいっそ清らでさえあった。やおらに突き出された右手の人差し指が、こつりと少女の額を叩くだろうか】


892 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/17(土) 22:05:17 E1nVzEpQ0
>>889

【ライガが叫んだ瞬間、 ─── 既に2人は動いていた。マズルフラッシュの瞬く黒洞々たる室内へ、躯体が跳ぶように転がり込む】
【天井さえ揺さぶるような発砲音は然して小銃射撃のそれではなかった。連射速度から推測するに、恐らくサブマシンガンの類】
【加えて対手の装備を推測するに暗視装置は無い筈だった。 ─── 須臾なる戦術思考の後、ならば左右に散開。アリアとミレーユは、それぞれ別のソファの背後へ。】


   「 ──── ッッ、」「 ……… こんな事、だろうと!」
    「セオリーに忠実な制圧射撃ね。まあ、いいわ ─── 私が殺る。3カウントで援護、フラッシュバン」


【ヒリついたニューロンから紡がれる無音の骨伝導通信を聞くに、既にアリアは照準を定めているようだった。セレクタの切り替わる音と、セーフティピンの抜かれる音】
【三拍の後、 ─── 両者ともに動く。カウンターから見て右側、眩いほどのフラッシュライトと共に、指切りの二点バーストが正確にタンゴの頭部を狙う。】
【5.56mmの高速徹甲弾、連続射撃が二回分計四発。真面に食らえば防弾仕様のフルフェイスでも弾け飛ぶ代物だった。同時に左側から投擲されるのは】
【 ─── 信管の抜かれたスタングレネード。全てが首尾よく進むなら、目を焼く閃光と高周波の轟音に乗じて、2人はカウンターの奥へと乗り込もうとするだろうか】


893 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/17(土) 22:48:29 BRNVt/Aw0
>>891

【薄ら笑いを浮かべる女。何だっけ、こういうの、お伽噺にいた気がするな。猫みたいな生き物で描かれていたような、などと少女は一瞬とりとめのない事を考えて】

【ずい、と顔を近付けられれば少女は自然と顔をすーっと遠ざけようとして】

【お前は逃げているだけだ、自分勝手な妄想だ、と紡がれた言葉】
【反吐が出る、とまで嘲笑されて】

【少女はそれを聞くとハッ、と鼻で笑う】

……どうとでも言えば良いじゃないですか
そんなん言われたって決意が揺らぐでも無し
役立たずが棄てられるのは自然の摂理だからそれに従っているだけですし

……そもそも、見つかったから去ろうとした私を呼び止めたのは貴女ですし、そちらが先に殺そうかと持ち掛けて来たんです
呼び止めなきゃ私はさっさと他の場所に向かってましたよ……まだ考え付いてないですけど

……ま、楽しんで貰えたんなら幸いですがね……
【こつん、と小突かれた額。それに痛がる素振りをする事もなく少女はそれだけ答え、立ち上がる】


894 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/17(土) 23:02:33 E1nVzEpQ0
>>893


「嘯く割にはアンタ全然死なないじゃあないですかァ。」「 ─── その傷なら動脈ちょっと弄れば死ねますよォ?」
「現代っ子も良いトコなガキンチョが淘汰のロジックなんて援用してるのもクソほど鼻につきますし、」
「何よりこうも開き直られると、 ─── いやァ流石にムカつきますね。」「 ……… まあ、いいや。」

「なれば云い方を変えましょォ。」「 ─── どうせ自棄っ鉢なら、そォですね」


【糸繰りの人形めいて、揶揄うような身のこなしであった。 ─── 逃げられるならば詰め寄って、否応なく顔を突き合わせ】
【やはり女は笑っていた。共に膝を伸ばし、少女の行先を塞ぐように立つならば、夜闇に舞い躍る黒髪は嘲笑的に】
【然して影にも溶けるような藍染の浴衣がひらめいていた。 ─── 芝居じみてさしのべられる、右掌の意味合いは】



         「どうせなら、 ─── 一ツ、派手に死んでみませんかァ?」「"アタシたち"と一緒に。」



        【寒々しい三日月が、天高く煌めいていた。 ─── 吹き荒ぶ晩秋の夜風が、なにかの終わりを告げる】


895 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/17(土) 23:36:28 BRNVt/Aw0
>>894

いや、全然死なないってそもそも私誰にも見つからないような場所で死のうとしてたんですから……そーゆー場所見つけるまで死ねないのは当たり前じゃないですか…………うん?死ぬ為に死ねない?何か矛盾してるなこれ?
後、私櫻の北のド田舎生まれなんで多分現代的な感覚がおかしいんじゃないですかね?此方の人って15其処らで結婚しないじゃないですか、多分ですけど

【……っていうかムカつくなら斬っても良いんですよ?なんて少女は深くため息を吐いて】

【ぐりん、と道を塞がれれば彼女は再びぎくりと立ち止まる。そういえばこの人ちょっと怖い人だったっけ、急に言い合いになったりしてて忘れてた、と思い出し、冷や汗が垂れる】

【その前に差し出された右手。恐らくは、勧誘】
【自分達と派手に死なないか、なんて】

【少女は相手をじっと見詰める】
【吹き荒ぶ夜風が月白色を揺らして】




…………馬鹿馬鹿しい、派手に、だなんてそんな"てろりずむ"だか何だか起こすみたいな
そういうのだったら貴女方だけでやってくださいよ
私は今まで関わってきた人達に忘れられてどっかの片隅で朽ちたいんです
【少女は呆れたような眼差しを女へと向ける】

【向ける、のだが】


貴女達についていけば、私は役割を得られるんですか?
もう役立たずじゃなくなるの?

──"世界"から捨てられる心配をしなくて良くなるの?
【ぽつ、と小さく呟いて】


896 : 名無しさん :2018/11/18(日) 00:06:10 dJ0W4qMs0
>>888

【――――じと、と、ごく不愉快そうな目が彼へ向けられていた。だからつまり現時点の彼女が思うにそれは嫌がらせとして優秀なのだと判断させて】
【だからぷいっと目を逸らすことを彼女は返答とする。至極個人的な嫌いを表明して、ただ、銃と水は彼女が嫌いだと表明し続けてきたものであった、なら】

………………あっ、そ。セリーナは、――捕まっているの。――そう、お兄さん、正義の味方なの? ――……じゃあ、セリーナのこと、助けてきてくれる。
そしたら、わたしの気だって、変わるかもしれないの。そうでしょ? だってわたしがそうやって言うんだから、――。

【悪いものは退治される。そんなの分かっていた。小さなころにお話の頃から、世界ってそうやってできていた。悪い魔女も悪い魔王も何もかも、退治されて、ハッピーエンド】
【そうしてこの世界においてもそうだった。いろんな悪が現れて、それから、退治されていった。正義を名乗るひとたちによって。――そうしていつか彼女もその近くに居たのに】
【だからセリーナが正義の味方なんてやめてしまうって言った時に恐れたんだった。この世界の正義はそれを絶対赦しやしないから。知っているから。分かっているから。でも、】

【――自分の中のもはやとどめておけない感情を飲み干して、やはり理想的なだれかを演じて笑うのはもう嫌だった。理由なんてそれぽちだった。きっかけなんて、その力を得たから】

おじさんより、いいでしょ?

【おじさんだなんて当たり前に呼ばわって。――あるいは十六ほどの見た目で言われるなら、人によっては鋭い棘のようなもの、見出すのかも、しれないけれど】
【彼女の場合中身は二十五歳だった。九年分を表に見せずとも、積み重ねて来たもの、ため込んできたもの、腐らせ続けたもの、――、――神様に成り果てるほどの感情の、】
【そのほとんどに全く関係ないように、きゃらきゃら、ありふれた少女みたいな笑みを浮かべるのだろう。おじさんよりよほどましだなんて言ってみせた、邪気ない仕草にて】

【何の話、と、尋ねた。彼が何か納得したことを、彼女は察してやりはしなかったらしい。何について納得したのかも分からぬままであるなら、怪訝な目つき、お茶を一口】
【それからお肉を一口頬張るのなら、頭の中ではぼんやりとこれをどうしたらもっとおいしくなるかを考えている。あれを入れたらどうかしら、これをしたらどうかしら、って、】
【――――だからやっぱり現状を理解していないのかもしれなかった。それとも神様としての自分と、今まで暮らしていた自分が綺麗に二つ剥離しているみたいに、】

そうだよ、――イルちゃんはわたしのこと大好きでいてくれるの。わたしのこと、虐めないの、わたしのこと――――――駄目って、言わない。
――イルちゃんが言ったみたいに、最初から、全部、人間なんて嫌いでいればよかった、――嫌いになってしまえたら、よかった、

【「――何にも、憧れないで、期待だって、しなくて。……」】

――――――――わたしたちの話なんて誰も聞いてくれない。聞いてくれようともしない。なのに、わたしたちは、聞いてやらなきゃいけないんだ、ヒトの事情を、――。

【小さく声を漏らすなら。――あるいはそうしてほしいって意思表示なのかもしれなかった。だけれど、その機会を得る前に、彼女は一つ決めてしまったんだった】
【それとも今から求めたなら叶うんだろうか。――求めることが出来るのかという彼女の気持ちの話を無視するなら、そう、悪くない賭けかも、しれなくても】
【世界を人質にしてしまった後なら。そうして誰もが正しい神様への作法を無視するなら。彼女を殺すやり方を捏ねている最中にすり寄っていく気になんてならないから】

………………イルちゃんは、ニンゲン、嫌いだから。

【――ゆると首を揺らす。イルは人間が嫌いだって知っていた。自分だって人間が嫌いだった。――――だけれど自分はそこに未練を残してしまっているって分かっている、なら】


897 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/18(日) 00:07:55 E1nVzEpQ0
>>895


【どこまでも女は貼り付いたような笑顔を崩さなかった。 ─── 然らば少女の煩悶など、何一ツ興味はないのだろう】
【ただ虚しいままに散り行くのは幾らか寝覚めが悪いというのも、彼女にとっては事実だった。故に、溢れた声が逃される事はなく】



  「さァどうでしょう。見出す使命は、結局アンタの選ぶ事ですからねェ。 ─── だが」
   「死出の旅路に望む者が、ただ戦列に加わること。それだけが、アタシたちの求める全てだ」


【共に闘い共に散る事だけを、曰く彼女たちは望んでいた。 ──── 決然たる大義もなく、打倒すべき目標もなく、ただ混沌の中に死に場所を探す亡霊たち】
【そこに身を投ずる事の意味合いを、いざないながらも改めて女は問うていた。確かに甘言でありながら、また諫言であった。だとしても】
【差し伸べた掌の指先を、 ─── 軽く引き寄せるように折り曲げてみせるのだろう。人殺しにしては余りにも汚れない、薄桃色の爪】



  「必ず笑顔で死ねる事を約束しますよォ。 ──── どします?」



【初めて女は歯を見せて笑うのだろう。 ─── やはり清らな白磁であった。確かに彼女は狂人でありながら、可憐な撫子であったのだから】


898 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/18(日) 00:58:07 WMHqDivw0
>>896
【男の獲物が銃だと知れば、更に嫌悪を示すかも知れない】
【セリーナの話を聞けば、男は多少、愉快そうに喉を鳴らして嗤う】
【とてもではないが、正義の味方とやらには見えないだろう】


そんなもん知る訳がねェだろうが。
大体、俺達がこっちに来てから半年間一度も見てねェよ。
そんだけ長く攫われてるってんなら、もうくたばったか廃業したかどっちかだろうよ。


っつーか、俺にはオマエを止めるつもりなんざねェよ。
アリの巣に水流してスッキリすんなら、やりゃあ良いさ。
オマエがそうやって泣き寝入りせずに済む力が有るってェのは、よっぽどの幸運か――"神"からのプレゼントなんだからなァ?


【その時だけ、語る"神"は、先程までの少女に向けていたものとは少しばかりニュアンスが違うのだろう】
【だからと言って、男が神を普通に信じているのかと言えば、それは全く無神論者なのだが】

その結果INFオブジェクトに成り果てんのなら、俺もオマエを消しに行くんだろうが――

【顎を撫でる。先程までの挑発的な貌が引っ込み、眉根を寄せていた】
【勿論"おじさん"だと言われたからではない――それを否定するような年齢はとっくに過ぎていることだし――外見年齢で言えば親子ほども離れている】
【間違っても親子には見えないが】


何か違うんだよなあ。
虚神であってもINFオブジェクトじゃねェっつーか。
そんなの定義するのは俺じゃねェけどよ。


【肩を竦める。考えるのに飽きたようで。土台本人相手に言うような話でもない】
【イルへの感想については、全く以って絵に描いたような共依存に見えるのだが――】


"大好きでいてくれる"ねェ…?
じゃあ、そうじゃなかったら要らなくなる訳だ。
イイね。そういう基準は実に分かり易い。

健やかなる時も病める時も――なんて文句をオマエらが誓ったのか知らんが、この場合、むしろ健やかになっちまったら用済みだろう?


しかし――クックッククク……なるほどなるほど。
そこを助けてくれると思うほどお花畑じゃなくて安心したぜ。
愛だとか恋だとか、この歳になると真面目に語るのもアホらしくなるがなァ。
似たような言葉なら、おじさんの世代にも良く有る話なんだ。


【例えば――"自分の方を振り向いて欲しい"】
【"時分以外の誰も見て欲しくない"】
【"自分と同じ世界を見て欲しい"】
【"自分と同じ存在になって欲しい"】
【"自分と同じところまで堕ちて来て欲しい"】
【"そのためになら何でもするし、世界だって滅ぼせる"】


――それは"固執"って呼ぶんだ。
奴さん、スナークを良いように使ってるつもりで自分が固執に支配されてるってんじゃ、これはもう……クヒヒヒッ!


【男は、遂に我慢できないとばかりに腹を抱えて嗤う】
【今まで、"会話"を継続するために多少なりとも自制していたのだろうが】
【そろそろ潮時と言うことなのだろう】


その結末はちょいとばかり気になっちまったよ。
奴から"スナーク"が抜け落ちた時に――百年の恋から醒めるのかどうか。


899 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/18(日) 00:59:20 WMHqDivw0
ウン。モンモンから聞いてるから知ってるよお、……モンモンはモンモンだよ。
なんだっけ本名、ミラ? そっちから聞いてっしダイジョブダイジョブ。
そんでおれがどーするのかって? どーもしねーよ、もう無理じゃん。
だいたいおまえだってわかってるはずっしょ、もうこうなったら――わっうるせ、いきなり叫ぶなバカ!

【――――路地裏にて。スマホを耳にくっつけて喋っている男がいて、】
【電話でもしているようだった。けれどその相手に何かしら怒鳴られたらしく】
【ぎんと響くスピーカーを疎ましげに耳から離しながら、面倒臭そうに表情を歪めていた】

――――――うるっせーなあもう。切るよ。

【そう言って画面の下部をぽちっとタップして、通話終了。スマホをポケットに仕舞えば】
【心底怠そうに歪んだ唇から重たい息を吐き出した。そうして、――けれどスマホを再度取り出して】
【ニュースサイトを見る。たんぽぽの文字が踊るトップページ、見て、また息を吐いて――】

……どーすっかなあ。あいつ、あんな調子じゃたんぽぽにまで気が回んねーだろうし、
つがるんも最近来ないし……だからあの時帰れっつったのに。はあーあ、めんどくせ、めんどくせ……

………………あの注射、おれがやれば全部解決すっかなあ。

【表通りへ向かって歩き出す。高い位置にある銀髪が死にかけのくらげめいて揺れて】
【追従する肌の色は夜闇に融ける、褐色。そこから浮き上がるみたいにして目の黄色だけが鮮やかに】
【しかしそれも、ひどい疲弊の色をするなら――ひとりごちる内容も極めてネガティブなものになる】
【結局のところこいつももう、色んなことに嫌気がさしているみたいだった。けれど自殺は選ばない】
【その程度の、深刻さがある悩みではないようだった。……あるいはまだ、何かやることがあるみたいで】


//御予約そのいちです!


900 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/18(日) 01:14:35 BRNVt/Aw0
>>897

……そっか、明確に役割が与えられるって訳じゃないんだ……
放り出されてその中で役割を見出だせっていうのは苦手なんだけどな……

笑って死ねる事を……か……
笑って死ぬ為に戦って、そうして傾いて死に華を咲かせる……それが貴女達の目的、なんですか?

わたし、は────
【少女はギュッと服の裾を掴む】

【居場所が欲しかった】
【捨てられる不安のない"世界"が、優しくされていたのにふとした事で掌を返されるなんて事がない"世界"が欲しかった】
【きっと本当はそれだけを求めていた。だからこそ何かが出来る自分を、自分にしか出来ない役割が必要だった】
【何にも出来なきゃ"世界"から捨てられる、そう思っていたから】
【居場所が欲しい、繋がりが欲しい、捨てられない"世界"が欲しい】
【そうして、笑って生きてやりたい】
【自分を不幸な目に遭わせて涙を流させて、そうして笑っているような"彼奴ら"を見返してやりたい】
【(きっとその"彼奴ら"には母を殺した輩だけでなく自分達がひとでなしだと知ったら冷たい目で見るだけで助けてくれなかった里の人間達も無意識に含んでいたのだろうけど)】
【そんな事を思っていたから、本当はデッドエンドなんて望んでいなくて】

【だから、きっと、『あなた』がよびもどしてくれるならば】
【役に立たなくたって"世界"にいて良いんだよって】
【わらってくれたのならば────】



……一つだけ、聞いても良いですか?
貴女方は笑って死ぬ為ならば、私の友達だった人達も手にかけますか?
【だから、こんなにも未練だらけで】
【弱々しく尋ねて】


901 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/18(日) 01:15:20 WMHqDivw0
【――水の国。ほとんど自宅みたいに使っている彼の部屋、少女はそこで荒れ放題やっていた】
【終わりの始まりを見届けて、傷を癒して帰るなり――彼女はまともに、食事と睡眠ができなくなった】
【食欲がわかない。それでも心配かけたくなくて無理矢理詰め込んだら、ちょっとしてからすぐ吐くし】
【宥めすかしてもらいながらベッドに入っても、夜な夜なこっそり抜け出してソファーで丸くなり、起きてる】
【そんな感じで日常を過ごすから、当然衰弱するわけだけど。追い打ちをかけるように、いくつか、事象が重なる】

【まずは兄との喧嘩。白神鈴音をどうするかの話になって、彼が「どうしようもないだろう」と言えば】
【自分でもそれをわかってはいるくせに、いざ他人の口からそれを聞かされれば――耐えきれなくなって】
【ほとんど奇声めいた金切り声を上げながら通話中のスマホを投げた。そしたら液晶がバキバキに割れた】

【続いて、幸せを願っていた人が死んだことを知らされる。満遍なく罅の入った液晶からそれを読み取れば】
【声を上げて泣いて、返信すら返さないまままたスマホを投げ捨てて、吐きたくても吐くものがないからずっとえづいて】

【それから――逃避を求めてつけたテレビにて、自身が守りたかったものがあっさり壊れてしまったことを知る】
【たんぽぽ。鈴音がいない間、絶対に守ろうって思っていた場所――ここ最近疲労と心労が溜まって行ってなかったから】
【その間に「その」事件は起きた。ならばこの少女が「あたしのせいだ」って言い出して、泣き出すのも当然のことであり】

………………………………、………………かえる。

【――――そうして何もかもつらくなってしまって、けれど、誰にも甘えることができなくて、だから】
【そんなことを言い始める。だってここにいるのはあまりにもつらい。一番甘えたい彼も、どこか余所余所しいから】
【それだけ呟いて、なんとか壁伝いに歩きながら――玄関を目指す。スマホひとつ握り締めて】
【どこへ帰ろうと言うのだろう。まるでここが我が家ではないとでもいうような言い方して、――実際そうなんだけど】
【とにかく、少女は、外に出ようとしていた。もうここに居たくないと身体が悲鳴を上げていた】
【鮮やかな赤色の髪も眼も、心なしか幾らかの彩度を落としているようだった。そんな中、】
【唯一、赤い靴だけが鮮やかさを保ってはいたけれど。今の少女の覚束ない足取りで、こんな厚底靴、履けるんだろうか】


//御予約そのにです!


902 : 名無しさん :2018/11/18(日) 01:18:51 dJ0W4qMs0
>>898


――――――――――――ッ、セリーナは死んでない! 


【何度目だろうか。お茶の瓶を口元に運ぶ仕草の途中だった。木と硝子がめいっぱいにぶつかり合う音、添える鈴の音は張り裂けたように、聞き苦しいもので】
【見やるのなら、少女は今宵一番に感情を見せつけるのだろうか。真っ白の肌を一瞬のみで興奮に真っ赤に染め上げて、ひどく怒った顔をしていた、なら】
【辛うじて割れずに済んだ瓶を乱暴に投げ出すように――ぐら、ぐら、と、数度揺らいで、何とか倒れずに済んだ――彼女はカウンターより出るのだろう、そうして、相手の、】

二度とそんなこと言わないで! セリーナは死んでないし、――、ここのことだってやめてない!
――ッ、もし、もしっ、セリーナが、死んでたら、そしたら、わたしは、こんな場所、こんな世界! 滅ぼしてやる!
――――みんなのために頑張ったセリーナを当たり前に殺しちゃってなんとも思わない世界ならッ、――、

【あるいは頬を打とうとしたのかもしれなかった。それとも胸倉をつかもうとしたのかもしれなかった。だけどどちらもしない/できない彼女は、】
【――それでもどうしようもない衝動を表すのに、机を平手に打つのだろうか。じんとした痛みが脳髄を逆さまに撫ぜる、然るに余計に声を荒げるのなら】
【――――ごく消極的に滅んでしまえと口に出したのは本意ですらなかったのかもしれない。なんて。そんなはずないけど。そう思われてしまいそうなくらいに、鮮やかなら】

【それでも。数秒後にはひどく自己嫌悪に塗れたように唇を噛み締めている、そうしたなら色違いの眼に雫すら実らせて――】

――――――――――――――――そんなこと言ってない。だけど、わたしは、イルちゃんが言うほど、優しい子じゃない。

【だからまたぷいと目を逸らす。背中を向けていた。さっき瓶をこれ以上ないほどに叩きつけてしまったカウンターを確かめるふりをしていた】
【ふわふわのスカートから伸びる足はうんと細いのにきちんと自分で立てているのが不思議だった。誰も抱き上げてくれないから立ち上がってみせた赤子より拙い気すらして】
【なんとか割れなかった瓶の中身を煽って空っぽにする。それから自棄みたいにビールの瓶も煽る。――――――お茶を後にすればよかった。後悔ばっかりで嫌になる】

――――――……。

【――――――――――ならば、振り返り睨みつける眼差しは明確に睨みつけていた。ビールの苦いのすらお前のせいだとでも言いたげに。やはり不愉快だと表明する、なら】
【追い出しはしないけれど、それだけ待ってもお替わりは出てきそうに無かった。食後のお茶のサービスだって無いと思わせた。なにせ、客に向けるはずない目をしていて】
【だからやっぱり今宵の彼女はここの給仕ではなかった。勝手に設備を使っている悪い誰かだった。こんなのバレたら怒られるに違いなかった。誰に。セリーナは今居ないのに】


903 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/18(日) 01:30:32 fTBMFwF20
>>900

【少女の内心を解することは女にはできなかった。 ──── 少なくとも、それは女の役割ではなかった。】
【確かに子供じみた振る舞いの女ではあったがそれでも確かに諒解はしていた。他人の生には踏み込めない領域があるのだと】
【嘲笑うような言い回しもまた彼女なりの作法であったのかもしれない。 ─── 一つの事実として、彼女は手を差し伸べていた】
【だが決して急き立てることはしなかった。ただ問われた言葉に対しては、一ツ呼吸を置いた後に、淀みなく答える】



        「 ──── 無論。」
        「誰だって殺しますよ。人も、化物も、神様だって。」



【やはり女は笑っていた。張り付いたような笑顔であった。本心はちっとも楽しくないのだろう。それが彼女のニュートラルだった】
【嘘を吐くことも飾り立てることもしなかった。 ─── だが、止しておけと要らぬ忠言を寄越すことも、また無かった】
【それは少女の決めるべき命題であった。あれこれと女の容喙すべき事ではなかった。そうしてまた、少女の答えを既に、女は知っていた】


904 : 名無しさん :2018/11/18(日) 01:32:48 dJ0W4qMs0
>>899

【あるいは幻聴のように聞こえるのかもしれなかった。ちりんと涼/鈴やかな声が、誰かの名前を呼んでいた。貴方の名前を呼んでいた】
【少しだけ揶揄うような声で。寝坊の朝に家の前で待っている幼馴染みたいな声で。少しだけずるっこの方法で教えてもらった名前を、呼ぶなら、】
【――後ろから、だった。表通りへ向かう背中を引き留めるように。ならばいつしか彼の後ろに誰か居た。ヤサカさん。そうやって貴方を呼んだ、――、】

来ちゃった。

【白神鈴音/ウヌクアルハイ】
【振り返るなら、少女はやはりあどけなさを遺す顔を綻ばすのだろうか。幼いまま死んだ子の仏壇に飾られた遺影のように、いつまでだって、あどけない顔、見上げるなら】
【待っていてと言われていた。待っているべきかと思った。それでもきっと未練を残した気になっていたのだろう。ならばこれは限りなく偶然/どこまでも何かの寓意で】
【長い毛先を揺らすなら首を傾げた、「――――夕月ちゃん?」と、細めた目に、何か意味を見いだすのだろうか。けれどそれは星々を並べて星座を作るのに、今はよく似て】

【腰まで届く長い髪はあるいは路地裏の闇より黒色をしていた。だから真っ白な肌は表通りの青空に浮かぶ雲より白いに違いなく】
【左右で色の違う眼差しが綻ぶ、黒色と赤色。百六十センチに靴の高さを足した身長差。それでもやっぱり彼女は相手を見上げて、そしてその仕草にきっと慣れていて】
【生成りのシャツに結わえるのは深い赤色のリボン。赤いハイウェストの全円スカートにはたっぷりのパニエを詰め込んで、くしゃくしゃ、生成りのフリルがはみ出している】
【黒のストッキングに踵の高いストラップシューズ。だからやはり彼女だった。十六歳ほどの少女に見える、神様】

今日ね、流星群なんだって。知ってた? だから、――お星さま、見に行こうと思って。

【「いっしょにいく?」】

【――――なんてことない日常に自分たちは居るんだよ、って、言い聞かすような声をしていた。そんなの嘘だった。だけど、はにかんで、空を見上げるなら】
【まるで神様が贈り物をしてくれたみたいに、きら、と、流れ星が光るのだろう。もし相手が彼女の仕草に追随してくれるなら、彼も、おんなじ流れ星、見るのだろうか】


905 : パグローム ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/18(日) 01:52:42 WMHqDivw0
>>902
――じゃあオマエが助けに行けよ。
そんなにセリーナとやらが大事なら。
世界を滅ぼす力が有るんだろう?


【気炎を吐き出す少女に、男は短く冷えた言葉を返す】
【少女がUTの給仕をやっていることは情報として知っていたが】
【そのトップのセリーナに、そこまで執心だと分かったのはある意味収穫だったか】

【そうだとしても――】


世界を滅ぼす前に気になることが幾つあんだよオマエ。
マジで大丈夫なのか、その決意は。

悪人だけ消します、みたいな器用な滅ぼし方止めてくれよ。
新世界の神かよ。……あァ、神だっけか?

――そんなんだから、まだオマエを人間に引き戻そうとするヤツが後を絶たねぇんだろうがよ。


【即座に攻撃されるくらいのことは想定していたのだが】
【この期に及んで我慢が染みついているとは、いくら止めようと決意してもやっぱり本質は"良い子"らしい】


【――どうでも良いけど"新世界の神"ってそのままのネーミングだな、と思った】


――だがご存じない?
グラン・ギニョールってのは、孤独な二人が手を取り合って世界を滅ぼしました――なんて、綺麗なものを取り扱う劇場じゃねェんだ。

「自分の居場所を、仲間を、友人を――全て敵に回してでもたった一人を愛した少女が。
その一人にすら裏切られてこの世のどこにも居場所が無くなりました――」

そんな頭の悪い台本の方がよっぽど――"らしい"、終わり方だ。



【きっとその時こそ、彼女は世界を滅ぼす神にだってなれるだろう】


ワガママに生きるとか言ってる割にそれすら生き辛そうだよ、オマエは。


【何にせよ、彼女はもうこれ以上口を利く気はないだろう】
【出会った時の気だるげな様子が嘘のように、苛立った感情を発露させている】

【刺すような雰囲気から逃げたのだろうか。そんな半端な一言だけを最後に、男の姿は、その場に溶けるみたいに消え去ってしまった】
【まるで少女の飯を不味くさせることだけが目的だったのではないかと言うくらいに、あっさりと】
【力作の台本を読んで粗を探す天邪鬼みたいに】


【それでも、一応――食事の相場よりはだいぶ多目の紙幣が残されていた】
【無銭飲食とか良くないことだから】


906 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/18(日) 01:54:57 BRNVt/Aw0
>>903

【問い掛けた言葉。一呼吸】
【返ってきたのは、是】

【吹き荒ぶ冷たい夜風、いやに煩く感じて】

人間も……化け物も……神様でも……
【ただ、それだけ呟いて】
【少女の顔からは色がすうっと消えていく】
【踏鞴を踏んで、押し止まって】

──そ、ですか

だったら私は貴女達の戦列には加われません

私自身は役立たずだった事で嫌われたって憎まれたって構わない
でも、幸せを願う事はしたいから
私一人笑う為に大切だった人達の幸せを壊すのは絶対に嫌だから

だから、一緒には行けません
そんな事するくらいだったら当初の目的を果たした方が良い……!
【ぐ、と拳を握り締め、少女は女を睨み付ける】


907 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/18(日) 01:57:02 WMHqDivw0
>>904

【――「起きた」ということは知っていたから。声をかけられてもさほど驚きはしなかった】
【ゆっくり振り向くなら、浮かべる表情はどこか苦々しげに、でも、微笑みの形をして】

迎えに行けなくてごめんネ。……もたもたしてたら、「終わっちゃった」。

【其方から来させたことを謝るんだった。約束を――明確に破ったわけではないといえ】
【うやむやにして先延ばしにして、結果タイムアップになったんなら、それはもう破ったと同義】
【だから、最初の言葉は謝罪だった。もっと早く、できなくて、ごめんなさい。あらゆることに対して】

…………そ、夕月。なーんかぐちゃぐちゃ言ってっけど、大丈夫だよ。
あいつは別に甘やかしてくれる人がいるから――おれが構って機嫌なおしてやんなくても、いい。

そんでねえ――――流星群? あー、そーいうのやってんだあ。
いーヨ、もっときれいなトコに観に行くでもいいし――鈴音ちゃんがしたいなら、おれ何でも付き合うよ。
流星群じゃなくっても、もっと別のことでもいい、カラオケとか、ボーリングとか、ダーツとか。

【「やりたいことやろうよ。終わっちゃうんでしょ?」 ――言うなら、彼はもう既に知っていた】
【鈴音が何を選択したかを。わかっているからさっき謝ったんだった、そして、そうであるなら】
【せっかくだし悔いの残らないよう、好きなことを好きなだけやろうよって。誘い返す】
【流れ星は――見ていなかった。そんなものより目の前の彼女をずっと、目に焼き付けたいと言うように】
【(ならばこいつも「お別れ」するほうを選んだのだとも思わせる。それくらいにはもう、あっさりした挙動をしていた)】


908 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/18(日) 02:04:37 fTBMFwF20
>>901


        【壁に縋る痩せ細った手首を、冷たい指先が掴み取る。フローリングを軋ませる足音。】


【左手だった。白い膚だった。死人よりも余程に冷たい膚だった。それでいて死人よりも余程に怨むような膂力だった。】
【振り向くなら ─── 幽かに俯きながら、彼は立ち尽くしていた。窓から射し込む憎らしいくらいの陽光が悉くを翳らせていた】


    「 ────……………… 。」


【なにかしら息の根を止めるような速度で、 ─── 彼は、音もなくかぶりを振った。何時もよりも枝毛の目立つ濡羽色は、まともな陰翳さえも失っていた】
【それでいて吐瀉物よりも淀んだ青い双瞳は決して少女と視線を合わせようとしないのだから卑怯だった。 ─── オーバーサイズの真白いトップスに書かれた英字の下らなさ】

【暫く前。一つの決着を付けて、何よりも果たすべき復讐を終えた筈の、エーノ・ユーティライネンは憂いに満ちていた。今更その理由を屡述する必要もないだろう】
【酒を飲む回数が増えた。初めは誰かからのプレゼントと思しきバーボンを浴びるように、それが尽きれば夜中にコンビニから仕入れた度数ばかり高いチューハイを】
【やめた煙草を吸うようになった。いつか愛しい人にも言っただろうか-「キミの体に悪いから、もう卒業したよ」或いはデパスとコンサータをカクテルで煽り】
【ソファに移った少女が漸く寝静まった後、彼もまた徐に起きて、ドレッサーに隠した何かの注射を打つ事もあった。そういう朝には決まって血の付いたオレペンが床やベッドやテーブルに転がっていた】
【爪を切っていなかった。シャワールームに入らない日もあった。 ─── 手脚のヘアケアだけは辛うじて怠っていなかったが、それも何時まで続くか分からなかった。自分でご飯を作れなくなった】
【目覚める時間が不定期になった。昼をずっと過ぎてもベッドから出てこない事もあれば、日も登らぬうちからスプリングを軋ませて膝を抱えている事もあった。】
【そうして早く起きた日に限っては、 ─── ひどく思い詰めたような顔をして、武器の手入れをするのが専らであった。オーバーホールした銃のパーツは、見せつけるように何時もセンターテーブルに広げられていた。】

【リスカ癖がないことに感謝した。どこで自分を撃っていたか分からない。一番得意な卵料理も食べて貰えなくなってしまえばどうしようもなかった。】
【忘れるように/忘れさせるように何度も膚を重ねようとした。上手く行ったかは覚えていない。 ─── 紅い瞳を覗き込むのが怖かった。どうしようもなくなっている気がして】
【それを補うようにスキンシップは寧ろ増えた。けれどもキミからはにべもなくあしらわれた(気がした)。壊れていくキミを前に馬鹿馬鹿しいくらいボクは無力で】
【だからこうして引き留めるのは本当に最後の縁だった。辛い。悲しい。(█████。) ─── 世界の全てにウソをつく。Irony:あんなにだらしなかったのに、今更ケジメをつけたがるの?】


909 : 名無しさん :2018/11/18(日) 02:19:43 dJ0W4qMs0
>>905

――――っ、っっ、

【――きゅう、と、吐息を詰まらすような声。漏らすなら、彼女はめいっぱいに涙を堪えるのだろうか、ぎゅうっとスカートの布地を握りしめて】
【だって"そう"じゃないんだって顔をしていた。そうじゃない。そうじゃないの。そうじゃ、――ごく曖昧な言葉が頭の中でごちゃごちゃになる、だからやっぱり言い訳であり】
【あのときあの場所にセリーナが居てほしかった。そうして世界を滅ぼすなんて馬鹿なことを言う"妹"を止めてほしかった。なんて、そんな、綺麗な言葉じゃない】
【抱く感情を説明するための言葉を持たないから泣くしかない赤子みたいな顔をしていた。わがままするって決めたのに、そのわがまますら、上手に出てこないなら】

うるさい、――うるさい、なあッ! わたしのことなんか何にも知らないくせに、――っ、わたしが、どれだけっ、
どれだけっ、――、――、――――――――っ……、

【机に強かに打ち付けられ真っ赤になった掌で前髪をかき上げる、――ぎりと歯噛みするなら、はみ出してしまった感情は簡単に戻せないらしかった、】
【蛙の胃袋みたいに出して戻して要らないものはすぐに吐き出せてしまえたら良かったのに。何もかも丸呑みしてしまう蛇の子に産まれてしまったから】
【そしてそのくせ要らなくなった殻を吐き出すのはうんと下手だったから。だから彼女は蛇だとしても喉を詰まらせてしまう運命に違いなかった、けど】

【――――かぶりを振って涙を呑み込む。言われた言葉に必死に歯向かって、だのに、伝えられるありふれた結末に、その勢いすら喪うなら】

――――――――――――――――――――――――――――………………、

【ひとりぼっちの酒場に置き去りにされる。薄暗い店内に生温い暖房が満ちてさっきまで誰かが居た気配と、料理の残り香、うつむいた少女の表情は誰も見ていなくて】
【とかく確かであるのは、その後彼女は彼の食べた食器類を片付ける。それからお茶の瓶を回収用の箱へ。全部を綺麗に洗って、それから、彼の置いていったお金は、店内へ】
【いくらか埃の積もったセリーナのデスクに。今宵の彼女は給仕ではなかった。然るに店もまた酒場ではなかった。お金をもらう必要なんてなかった、だって彼女の趣味だから】
【それでももらってしまったなら。――――どうしたらいいのか分からなかったみたいだった。とにかく自分がもらってはいけないと思ったらしかった。だから。だから、】

【――それでも一つだけもらっていく。件の事件の資料。だから結局彼女は悪い子だった。きっと、おそらく、たぶん、そう、(だってそうするって決めたから)】

/おつかれさまでした!


910 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/18(日) 02:28:56 fTBMFwF20
>>906

【ことごとく女は笑っていた。 ─── 決然たる少女の訣別にも、特段の動揺を見せることはなかった。】
【幾らか大仰な身振り手振りで、呆れたように首を振った。態とらしく漏らした嘆息の行く先など何処にもありはしなくとも】


     「 ──── そォですかい。」

「そいつァ残念だ。」「 ─── だったらせめて、アンタを待ってる人らの元に帰るといいですよォ。」
「そうじゃなきゃ道理が通んねえってモンでしょうが。」「 ─── 此の期に及んでまだ躊躇うってんなら、次こそ、殺します。」


【 ─── 今一度、少女の眼前に、大太刀の鋒が突き付けられる。神速の抜刀術。鯉口の斬られる刹那だけ、誰も笑っていなかったのかもしれない】
【だが緩やかな納刀の所作と共に女は最後まで笑っていた。 ─── 軽く両の脚を曲げるならば、彼女は"月"を仰いで】


    「一二三。」「百千万億 一二三(つもい ひふみ)。」
      「ふみちゃん、 ─── とかで、いいですよォ。くふ。」


【 ──── 一寸もなく、然して確かに開かれた黒い流し目が、一ツ少女を睥睨し】
【そうして次の雲耀には、仄かな上向きの残像だけを残したかと思えば、 ─── 影も形もなく消えているのだろう。皮肉めいた笑い声と血腥さばかり、五感へ握り込まれて】

/このあたりで〆でいかがでしょう!おつかれさまでした!


911 : 名無しさん :2018/11/18(日) 02:43:05 dJ0W4qMs0
>>907

【ならば彼女もきっと笑っていた。だけどどこかで仄暗い目をしていた。心の底からは、――楽しそうでは、きっと、なかった】
【時々ふっと溢れる年頃めいた笑みも、次の刹那には無表情に戻ってしまうような予感があった。――そうだとしても、やっぱり、彼女は今、笑ってみせているから】

ううん、いいの、わたし、遠いところに居たから。……。でも、居てほしかった。

【ふらと首を揺らして、少女は彼を許した。赦していないのかもしれなかった。それまで遠い場所に居たから。迎えに来るのも、きっと、大変だったでしょう?】
【だけれど、お出迎えくらいはしてほしかったって。――もうどうしようもないことを求めていた、だって、わがままするって決めたから。そんな気持ちだって口に出しちゃう】
【――曖昧なはにかみに本音を隠してしまうことをしなかった。だからってどうしようもなかった。時間は逆さまに廻らないのに。待っていたのに。責める声/責めてないけど】

【「女の子の恰好した、男のひと……でしょ?」】
【ならばごく曖昧な言葉にて彼女は答える。良くは知らないらしかった。当然だった。だって彼女は長らくこの世界に存在していなかったのに】
【ちらと見た程度の認識に、さらに、ちらと聞いた程度の理解だった。それでも誰かがしあわせでいるのは快かった。――――――わたしには叶えられなかった未来】

うん。今日が極大なんだって。冬はお星さまが綺麗に見えるから、――、――だけどね、詳しくないの。まえに、教えてもらったくらい。
…………わたしと行っても、あんまり、きっと、楽しくないよ。曲だって知らないの。ボーリングだって、ほとんどやったことないし、ダーツも――、

【なら。ついでだから見ておこうかなくらいの認識なのかもしれなかった。そうだとしても流れ星をたくさん見られたら何かお得な気持ちになるものだって信じてた】
【だからぱちりを瞬く、――であれば、よほど流れ星を数えることに執心していたわけでは、ないらしい。だから別の場所でも良いのだと言って、けど、】
【ごく困ったような表情で彼女は笑うんだろうか。カラオケに行っても最近の歌は分からない。ボーリングだってボールが重くてそれどこじゃない。ダーツなんて意味もよく分からない】
【――そんな風な"遊び"を彼女はほとんどしてこなかったんだろうと思わせた。ならば何をしていたんだろうと聞いても、多分、彼女は、何も答えられないんだと、予感させ】

――――――――あ、あっ、わたし、――、わたし、あのね、おっきいハンバーガー、あの、――串とか、刺さってる、やつ? 
三十センチくらいのやつ、食べてみたい、一人だと、行ってみるの、怖くって……、へびさまと行っても、へびさま、きっと、全然食べないから……。

――、こんな時間にそんなの食べちゃ、駄目かな、……おなか、すいてない?

【だけれど、彼女なりに熟考する間がいくらかあった。カラオケはダメ。ボーリングもダメ。ダーツもダメ。夜更かしのお遊びって何があるんだろう、よく知らないから】
【――めいっぱい考えた結果に出て来るのは、そんなもの。一瞬ぱあっと明るくなった顔は、けれど秒速に色あせていく。最後には、――こんな時間じゃ駄目かな、なんて、】
【そもそもお店だってもうやっていないに違いなかった。やっていたとしても、こんな時間に食べていいカロリーじゃないだろう。から。きっと、】

ヤサカさん、わたしと、何したい? 

【ごく曖昧な表情をしてから、彼女は結局何にも思いつかないって言うみたいに、相手へ尋ねるのだろう。――きっと相手が選んでしまったこと、悟りながら】


912 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/18(日) 02:54:39 BRNVt/Aw0
>>910

【睨み付けた瞳の先、女はまだ笑っていて】
【芝居がかった仕草で振られた首。少女はまた身じろぎし】

【ならば帰れ、と告げる言葉】
【少女は薄く笑って】

やっぱり……そう……なりますか……

【怖いんですが、と動かそうとした口。突きつけられた大太刀の峰にええ、と困惑して】

……はあ、百千万億一二三さん……流石に愛称は……
次に会うのなら敵、ですし……
【まあお互いに生きてたら、ですが、と少女は呟いて】

私は、えぇと……
【何事か考えながら名乗ろうとした刹那、相手の姿はかき消えて】

……どうしようか、これから……
【見つからずに死ななきゃ癪な気もするし、帰らなきゃいけない気もするし、と呟きながら少女はふらりと歩き出した】
【その行き先は、まだ分からない】




/絡みお疲れさまでした!


913 : ◆orIWYhRSY6 :2018/11/18(日) 03:27:22 N9SvnVDw0
>>890

【「順調に進めば、来週中には。」と、視線を戻してからそう答えるのだろう】
【その目はまた、彼女の表情の変化を映す。それから、語られる言葉に眉を顰めて】

天啓……、ですか。何か大きな事件の始まり、などでなければよいのですが……。

―――忠告、痛み入ります。赤いモノには気をつけるとしましょう。
とはいえ、それほどの相手だと言うなら、貴女こそ気をつけてくださいね。

【と、そこまで口にしたところに、作業をしていた人間が一人やってきて。男へと何事かを告げる】
【それに対して「すぐに行きます」と返した男はアンゼリカへと向き直り】

――――すみません、少ししなくてはならないことができましたので、この辺りで。
ここが完成したら、是非またいらしてくださいね。

今日はありがとうございました。では、失礼します―――――

【一度頭を下げた後、二つの袋を持ち上げて男は聖堂の中へと歩いていく】
【途中で転びそうになったのを何とか堪え、振り返り小さく笑って、そのまま男はどこかの部屋へと消えていった】



/お疲れ様でしたー


914 : ◆q0a1oKbey. :2018/11/18(日) 04:39:23 h7nAXcQg0
>>853
そっかー。そのセリーナさんは真面目な店主さんなんだねえ
なんだか色々騒がしいって聞いてるから、それで誰も来られないのかな?

手伝う? 良いよ。すぐに出来るよ。我々なら、あっという間に出来るよ
怒られるかな? でも誰もいないなら、手助け頼むのは悪いことじゃないでしょ?

【影は彼女の失望の色など、まるで気付かないまま話し続ける】
【セリーナ。彼女の存在が、眼前の神様にとって、そしてこの世界にとって、どれほど大きな存在だったかなんて】
【何も知らないし、わからない。そもそもこの影は、自我があまり強くはないのだ】

セリーナ・ザ・"キッド"。ごめんね、わからないんだ。我々、何にも知らない。このお店にも、行くように頼まれたから来たんだ
貴女に、我々を渡してこいって頼まれたんだ

何がいいかな。我々、何か飲むのきっと初めてだから。流石にお酢になってしまっているのは、やめた方がいいかな。新しいのにするよ
ウイスキー。どんな味するのかな。歳? 我々、掘り出されたばかりで、0歳だよ。じゃあお酒ダメなのかな。お水かな

【酒好きだった店主秘蔵の品が、妹分の神様に暴きたてられていく】
【念のためにと投げかけられた確認の言葉には、何とも要領を得ない解答。というより、不自然極まりない】
【神と言えど、きっと鈴の音の少女はこの世の全てを知る全知の神ではないのなら。ヒトガタの影の言葉を理解できるのは、こいつを遣わした男の方だろう】

そっかー。いいならいいかな。でも、気になってるなら、気が向いたら言ってよ
思い出した、事に出来るよ

そうだなあ、何か食べるのも初めてだから。どうしようかな。あれ、でもあまり無いの? そっかー
頑張ってくれるの? でも、我々食べ物をあったことにも出来るよ

ほら、掃除だって終わったことになったよ。今、貴女が見てなかったから。見てない間なら、大丈夫に出来るよ

【期待はするな、と言いたげな彼女の視線が、店内に向けられたなら。ヒトガタの影の言う通り】
【店の中は、塵一つなく綺麗になっているだろう。まるでUTのメンバーたちが今しがたみんなで駆けつけて、大掃除でもしていったかのように】

出来るよ。出来るよ。我々、我々、出来る出来る出来る箱、箱っ、箱っ、詰め込んで詰め込むために、じょっぷにじょっぷに、んじょっぷにいいいいいぃぃぃ!!!

【ヒトガタが、突然ガクガクと揺れ始め、仰け反りながら叫んだ】
【その後ろから、太い腕がぬっと突き出されて、ヒトガタの首を後ろから掴んだ。ヒトガタは止まった】
【すると、ヒトガタは一瞬にしてその形を変え、三日月型の白抜きの口が表面に浮き出た、黒い小さな箱になって、後ろの男の手の中に収まった】

「……やはり、ダメだ。安定しない」

【重苦しいその声は、きっと彼女にとっては聞き覚えた声】
【テーブルの上に、箱になったヒトガタを置くと】

「何せ、この〝ブラック・ボックス〟は、過去どれほどいたかもわからないボックス一族の、言わば集合体なのでな」
「それでも……。私が直接、面を突き合わせる気まずさに比べたらマシかと思ったが。やはり横着は良くない」

【作業着。エプロン。ゴム長靴。いつもの一張羅に、3つの目玉。まだ薄く影がかかった顔は、どう言葉をかけたものか、掴みかねているようで】
【それでも、その三つ目で真っ直ぐに彼女を見た】

「……久しぶり、と言うべきなのかもわからないな。鈴音。お前も腹が減っているなら……。その冷蔵庫の中身で、何か作ろうか?」

【何とも場違いで間の抜けた質問を、カニバディールは彼女に投げた】


915 : ◆q0a1oKbey. :2018/11/18(日) 05:09:38 h7nAXcQg0
>>855
社内でもご存知なのは、その秘書さんただお一人ですか……
その方も、口外しないように念押しされているのかもしれませんな

そこまで行くと、確かに失礼ながら恐ろしさも感じてしまいます
まあヨシビ商会さんは、唯一無二と言っていい事業を展開しておられますからな。社長様のみならず、そう言った一種の神秘には事欠かないことでしょう

【口では調子よく並べ立てるが、カニバディールもまた内心では眼前の水鶏にも不気味さを感じていた】
【この世界で、未知ほど恐ろしいものはないと考える臆病な肉屋からすれば、誰も彼も不気味に思えるのかもしれないが】


不可思議ですな。趣味の飾りとしても、剥製にするなり処置が必要でしょうし、それこそ専門家たるヨシビ商会さんに
剥製にするまでを依頼しても良さそうなもの……死人に口なしではありますが

ほほう、化け猫の中でも希少なタイプと……
それほどのサイズで、変身に氷の力……! これはますます興味を惹かれますよ

【あまり覚えていない様子の、水鶏への追求はそこそこに。眼前で商売の相談を始める彼らには、むしろ感心しつつ】
【肝がない、という言葉には少し引っかかった。売りそびれてそのまま置いてあるなら、その肝を誰が何に使ったのだろう?】


半妖。さらに唆る要素が飛び出しましたな
【そんな疑問も、水鶏の言葉の影に隠れる】

親子揃って「仕入れ」に成功なさったわけですか。商機を逃さないその腕前、感服するばかりです
妖怪と人が子をなす……確かに、聞かない話ではありませんね

その生まれた子は、人から遠ざけられて妖怪と暮らす、というところまででセットと言ったところでしょうか


半妖という触れ込みがあれば、良い値が付きそうなものですが……なるほど、内面の叛意と逃げ足までは、折られていなかったと
是非ともお目にかかりたいものです……

【さすがに、カニバディールもあのビルでほんのひと時、行動を共にした少女がまさにそうだ、とは】
【すぐには気が付かない。月白色の髪の少女は頭の片隅に浮かぶものの、即座に結びつけるほどには至らないだろう】


……ええ、正義の味方です。「正義」とは少々違うと思いますが
最近のきな臭い事態の周りには、その公安の影がどうにもチラつくことが多いようでしてね

【カニバディールも同じような笑みを浮かべた】


916 : 1/3 ◆3inMmyYQUs :2018/11/18(日) 05:38:16 nHxGsN220
>>727


―――― じぇ……


【――まったく想像していなかったものに辿り着いて、わたしは肝を抜かれた】

【陸の上に巨大な船があることまではまだよかったけれど、】
【その中に名前の付いたコミュニティが広がっていることに】
【誰かに『ようこそ』なんて言える人間がまだ世界に残っていたことに】

【呆然と立ち尽くすわたしに、見張りの男はもう一度気さくな声をかけて、】
【――押しかけ女房とか何とか言っていたのは覚えている――それでようやく我に返ったわたしは、】
【背後に広がる暗闇を一度振り返って、もう引き返せる道は無いことを悟ってから――恐る恐る、その穴蔵へと潜り込んだ】


【――わたしをここまで導いてきたその男は『ロッソ』という名前で呼ばれていること】
【そして彼とその仲間たちが『真実』を追っているということを、そこで初めて知った】


【けれど、彼らの知りたがっていることと、】
【わたしの忘れたがっていることが同じだったということは、そのときにはまだ何にも知らなかった】



【――――――――――――――――――】



【『ジェットシティ』――】
【そこは〈ガーデン〉とは何もかもが違った】

【あの嘘だらけの箱庭で、要らないものとして捨てられた全てが、】
【この船へ流れ着いているように思えた。それぐらい、わたしが見たことのないもので溢れていた】

【人も、物も、音も、空気も――】
【粗く、錆びて、ざらつき、全てが雑然としているのに、そこかしこへ血が通っているように感じた】

【ロッソの後ろに付いて狭い廊下を進んでいく中で、すれ違った人はみな、彼と陽気な軽口を交わしていった】
【奥へ向かうにつれて大きくなる何かの音楽も、まるで外の世界なんて知らないみたいに、軽いテンポを刻んでいて】

【海に浮かんでいるときとは違って、船底からも出入りできるようになった関係なのか、】
【本当なら貨物室として使われるはずだった場所が、壁を抜かれて通路として機能していて、】
【そうした少し開けた場所に出たときに、前からやってきた赤ら顔の三人組が、ロッソに声を掛けた】


「――なんだあ、ロッソ?
 今度はずいぶんな“幼妻”引っかけてきたな」

「気の毒に、止めといた方がいいぜえ、お嬢ちゃん。こいつの遺産なんて、
 せいぜい“ワカバ”のカートンか、カピカピんなった“プレイボーイ”ぐらいのもんだろうからよ」

「座布団にもなりゃしねえ!」


【下卑た笑い声が上がった】
【なんだかこの男達に視線を向けられるのも悍ましい心地だったので、】
【わたしは彼らを視界から外して、ロッソの後ろに身を隠した――ちょうどそのときだった】


「――ほお、そんだけ言うやつぁ、
 女の尻に敷かれる以上のことが出来るんだろうね」


/↓


917 : 2/3 ◆3inMmyYQUs :2018/11/18(日) 05:39:23 nHxGsN220
>>727


「げ……タコ女……!」


【まるで水を払い飛ばすような、凜々しい声がした】
【ロッソの後ろからそっと顔だけを覗かせて見てみると、】
【男達は何か二足立ちのカエルが急にびっくりしたような変な体勢で、背後を振り向いていた】

【彼らの視線の先には、不敵に腕組みして立つ、すらりとした女性の姿があった】
【燃えるような真紅の色をした長髪に、きっと昔は質の良かったんだろう、今はぼろぼろのコートを着て】
【海と山の両方で賊の長を掛け持ちしていますと言われてもまったく嘘とは思えないような、まなじりの鋭い人だった】

【男達は彼女を見ると、なんだかよく聞き取れない、】
【多分捨て台詞だと思う低い鳴き声で唸りながら、】
【ぞろぞろと締まらない足取りで、ロッソの横をすれ違っていった】


「ったく、さっさと働けフーテン共がぁ……!
 ようロッソ、帰ってたのか。――お前、そろそろ髪切った方がいいぞ。落ち武者みてえだ」


【ぎゃは、と言って笑ったその女性は、】
【彼の後ろに半分身を隠したわたしに気付くと、】
【面白いほどみるみるうちに目を丸め、眉を顰めた】


「……おいおい、ロッソ、マジか、お前、驚いたな。
 ――よお、そこの。新入りかい? あんた名前は」


 …………………………――――


【わたしは口を開きかけて、けれど何か声を出す気にはなれず、】
【目線を下に逸らして、そのまま黙りこくった】
【怒られるかもしれないと思ったけれど、別にそうしたければ勝手にそうすればいいと思った】

【けれど返ってきたのは、またもわたしの想像とは全然違った】


「――あー、人に名前を聞くときゃ自分からってな。
 悪い悪い、その通りだ。あたしはミランダだよ。ま、覚えなくてもいいけどさ。
 むさい野郎が多くて心細いだろ、あたしもなんだよ。よかったら仲良くしておくれ」


【そう言いながら近寄ってきたミランダは、その広い手でくしゃくしゃとわたしの髪を撫でた】
【それからまたロッソと一言二言交わすと、「そいじゃあな」と粗野に笑って、どこかへ歩き去って行った】

【――わたしはなんだか怒られるより余計に気恥ずかしくなって、やり場なく視線を泳がせた】
【そこでたまたまこちらを向いていたロッソと目が合ってしまい、】
【その表情がまた妙に意味深なものに見えて、わたしはまた俯いた】


【――――――――――――】

【―――――――】

【――】

/↓


918 : 3/3 ◆3inMmyYQUs :2018/11/18(日) 05:40:09 nHxGsN220
>>727

【それから正確な日付は数えていなかったけれど】
【わたしの顔が住民のほとんどに知られて、】
【わたしも住民の顔のほとんどを覚えるようになった頃】

【それでもまだわたしはまともに口を利かなかった】
【かろうじて名前ぐらいは言えたけれど、それさえ自分の口で言ったのは本当に数えるぐらいで】
【あとはほとんど、他人の口を介して広まっていった。とりあえず名前はシヲリというらしい、と】

【そんな、自分でも本当に呆れてしまうような態度の子供を、】
【『ジェットシティ』の彼らは大して邪険にするでもなくて、】
【当たり前のようにわたしの居場所を認めてくれた】


【船内ではいつも、どこかしらから何かしらの音楽が漂っていた】
【“ガリ”だらけのスピーカーから、すれ違う誰かの口から】
【そしてそれらは大抵、『ロックンロール』とかいう種類の音楽だった】

【建造当時は航海計画を話し合うためのミーティングルームとして設計されて、】
【今では特に人生に展望もないような者が集まる無目的室となった、デッキの片隅の船室では、】
【その日も誰かが持ち込んだロックンロールのレコードが、緩やかに回っていた】

【浴室や食堂以外には特に行くべきところを持たないわたしは、】
【いつもその部屋の一番隅っこに席を占めて、何をするでもなくじっと膝を抱えていた】

【別にロックンロールを聴きたくてそこにいる訳じゃなかった】
【流れてくる種々のサウンドは、わたしにとって、何かのモーターが回るときに仕方なく出てしまう振動音と何ら変わりなかったし、】
【だから部屋の真ん中で次に掛けるべきレコードを巡って、各々の音楽性の違いを戦わせる彼らは、完全にわたしとは違う耳の人種なんだと思っていた】

【百歩譲ってそれが音楽という文化だとは認めても、】
【それの何が良いのか、何が優れているのか、わたしには何も分からなかった】
【こんな、太陽も月も見えない空の下のいったいどこを見てきたら、そんな軽薄な音を作る気になれるのだろう、と】

【それでもロッソと彼らはお構いなしに、いつもこの『ロックンロール』ばかりしていた】
【ロッソは大抵一人で何かの蘊蓄を垂れていて、周りの彼らはそれを特に聞いている様子もなく、】
【今日もただ刻まれるビートに合わせて、頭や身体を揺すり、悩ましげな顔で歌詞を口ずさんでいる】

【――まるで酔っ払いだ】

【男たちはいつも変なものにばかり酔いしれている】
【息を臭くする飲み物、喉を痛くしてくる煙の草、脈絡なく裸になっている女の写真】

【そのくせ、床に散らばったジャケットに映る人物と、】
【聞こえてくる歌声は、たいてい全部男によるものだった】


【――A面の演奏が終わって、B面へ切り替わる、その切れ目のノイズの間に、】
【わたしはたまたま頭に浮かんだことを、なんとなく口にした】


 ――――……女は『ロック』をやらないの?


【――酔いどれたちが一斉にこちらを振り向いた】
【そのどれもが、ぽかん、と口を半開きにして】

【普段喋らないのが急に変なことを言い出したものだから、きっと無理もないことだった】
【彼らは互いに視線を押しつけ合った。たった今まであれだけ賑やかに喋っていたのに、まるで急に口が利けなくなったみたいに】

【そのまま次の曲のイントロが始まった】
【わたしも別に答えを期待した訳じゃなかったから、このまま居眠りでもしようかと思ったとき、】
【わたしとは反対の部屋の隅、短くなった煙草を灰皿で揉み消しながら、ロッソが言った】


919 : ◆3inMmyYQUs :2018/11/18(日) 05:42:45 nHxGsN220
>>727
/もう九割SSで笑うんですね。
/そして毎度遅くなってしまいまして大変申し訳ないでした!!
/この後がかなりどったんばったんしそうなので、一旦ここでお返しします。

/一応次で話がだいたい繋がって、進行都合上の区切りが付くことになるとは思います。
/なのでもしあれならジェットシティ(!)についてはここで一切遠慮なくたっぷり出しといていただけたらいいかなと思います。


920 : ◆q0a1oKbey. :2018/11/18(日) 05:53:10 h7nAXcQg0
>>796
【財持つ者しか住むことを許されない高級住宅街。まして、外交に関わる施設も存在するエリア】
【当然、警備は敷かれていたことだろう。ゆえに、スパイスは外からの騒ぎ】
【申請したところで入れるどころか通報ものであろう、「余程のこと」に該当する者たちが、押し入ろうと起こした事態であった】

【迎賓館の扉が、乱暴に開け放たれる。ゾロゾロと無遠慮に入り込んできたのは】
【3つの目玉を持つ大男を先頭にした一団であった】

【大男は薄汚れた灰色の作業着の上に黒いラバー地のエプロンを着用し、黒いゴム長靴を履いて】
【短めの黒髪に角ばった顔、黒い瞳の両目と額に埋まった第三の目で、広間を睥睨した】
【その掌の中では、白い三日月のような模様の入った、小さな黒い箱を弄んでいる】

【あるいは、中年に囲まれて辟易する少女を含めて、この場にいる人々はこの異形の顔をニュースや手配書で見ているかもしれない】


【すでに警備についていた警察と一戦交えて来たのだろう。元から汚れていたらしい服は、何箇所かが破れ】
【顔や手の所々に傷を負っている。大男に続いて入ってきた、手下と思しき者たちも同様に】

【しかし不思議なことに、返り血を浴びているような者は一人もいなかった。戦いはしたが誰も殺していない、ということか】


【手下たちは、数十人はいようか。人種も性別も年齢もバラバラの不届き者たちは、即座に広間に展開し、出入り口を塞ごうとするだろう】
【大男は、広間全体に響き渡る大声を張り上げた】

どうも、交流イベント参加者の皆さん。我々は盗賊団スクラップズです
本日は、皆さんを誘拐しにきました

皆さんには、私の用意した「箱舟」に乗っていただきます

【ただ一方的に。邪悪な盗賊は、そう宣言しながら右手の黒い箱を掲げ】
【最初の獲物と言わんばかりに、オブライエン書記官を含む、要人たちが集まる一角に3つの視線を向けた】

/もしまだ可能でしたら……


921 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/18(日) 09:34:58 6.kk0qdE0
>>892
【まさにそれは、鮮やかなる、熟練潜入兵の手腕だった】
【迷う事もひるむ事も無く、室内へと雪崩れ込み、そして即座に左右に展開】
【発砲音、その他から情報を得て冷静に分析、狙いを定めていく、それは鉄火場に立ち続け、生き続けた者のみが会得しうる感覚、突入兵の戦いだった】

「ーー……ッ!?」
「ーー!!」

【2バースト射撃を計2回、弾丸は其々短機関銃を手にしていた兵士の頭部を文字通り弾き飛ばす】
【暗闇の中でも解る、2人の兵士の頭部が四散し、脳髄や血液、あるいは頭蓋や歯の欠片が周囲に散る】
【ガシャンッガシャンと連続で鳴る音は、撃たれた兵士の身体や身体の一部、流れ弾がボトル棚に縫い付けられ、次々に酒のボトルが落下したからだろう】
【証拠に、直後より濃密な酒気が辺りに満ちて】

「ーー」
「……」

【しかし、その発砲は同時にアリア、ミレーユの位置を相手に知らしめる事にもなる】
【彼女達の位置に、音もなく、素早い身のこなしで1人ずつ計2人の兵士が迫る】
【暗闇での位置判断、身のこなし、此れらからは熟練の特殊任務兵である事が伺えるかも知れない】
【近くに来ると解るが、全身を黒い戦闘服とマスクで覆った姿、通常の陸戦隊員とは異なる趣きの、夜間潜入戦闘用だろうか?】
【2人の兵士は素早く2人に近づくと、その両手手の甲に仕込んだ、此れもまた黒いグローブから、長い三本の鉤爪を出現させ、2人に突き立てんと攻撃を開始】
【ミレーユにはその顔に向け】
【アリアには、その胸に向け】
【臭いで気がつくだろうか、その爪からは速効性の神経毒の臭いが僅かに感じられるかも知れない】


922 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/18(日) 09:36:49 6.kk0qdE0
>>921
//後部見落としの為書き直しします、申し訳ありません


923 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/18(日) 09:48:52 6.kk0qdE0
>>892
//>>921修正版です、此方にお返事下さい
お手数おかけしましてすみません

【まさにそれは、鮮やかなる、熟練潜入兵の手腕だった】
【迷う事もひるむ事も無く、室内へと雪崩れ込み、そして即座に左右に展開】
【発砲音、その他から情報を得て冷静に分析、狙いを定めていく、それは鉄火場に立ち続け、生き続けた者のみが会得しうる感覚、突入兵の戦いだった】

「ーー……ッ!?」
「ーー!!」

【2バースト射撃を計2回、弾丸は其々短機関銃を手にしていた兵士の頭部を文字通り弾き飛ばす】
【暗闇の中でも解る、2人の兵士の頭部が四散し、脳髄や血液、あるいは頭蓋や歯の欠片が周囲に散る】
【ガシャンッガシャンと連続で鳴る音は、撃たれた兵士の身体や身体の一部、流れ弾がボトル棚に縫い付けられ、次々に酒のボトルが落下したからだろう】
【証拠に、直後より濃密な酒気が辺りに満ちて】

「ーーッ!?」
「……ッ」

【更には、ここにおいても、2人は抜かりが無かった】
【続けてのスタングレネードの一撃は、残りの相手を怯ませ、行動を後手に回すには十分過ぎた手だった】
【突如炸裂する閃光と轟音は、カウンター内の残り2人の兵士の目と耳を同時に潰し】
【その身のこなしを持って、2人がカウンター内に入り込むのに、障害は無いだろう】

「!?!?ーー!!」
「!!ッ!!」

【だが、決して無抵抗と言うわけには行かない、全身を黒い陸戦隊戦闘服とマスクで覆った、通常の陸戦隊員とは異なる趣きの兵士2人】
【恐らくは夜間戦闘用の特殊任務兵だろうか?】
【迫る2人に、その両手手の甲に仕込んだ、此れもまた黒いグローブから、長い三本の鉤爪を出現させ、2人に突き立てんと攻撃を開始】
【しかし、スタングレネードの効果故か、攻撃には正確性を欠き、文字通り闇雲に、まるで暴れる様に両手の鉤爪を振るうだけだが】
【ミレーユにはその顔に向け】
【アリアには、その胸に向け】
【鉤爪の攻撃が迫るだろう】
【そして、臭いで気がつくだろうか、その爪からは速効性の神経毒の臭いが僅かに感じられるかも知れない】


924 : アンゼリカ ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/18(日) 11:45:21 smh2z7gk0
>>913

【「来週か、それではまた近いうちに様子を見に来させてもらおう」と頷きながら答える】


―――そうなる前に止めに来たのだ。しかし先程も言ったが水の国は特に事件が多い
赤いものに限らず色々と用心すべきだろうな。何かあれば私も駆けつける、気軽に言ってくれ。


ああ、こちらこそ良いものを見せてもらった。ありがとう。


【頂いたミルクティーを振りながら相手を見送り、しばし建設中の大聖堂を眺めてからアンゼリカは立ち去った。】


//お疲れ様でした!


925 : コニー ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/18(日) 12:05:25 smh2z7gk0
>>920


【ついには腰に手を回され始め、「そろそろ限界だぜ!」とオブライエンのボルテージが最高潮に達しようと】
【した時―――それは乱暴に現われた。】
【迎賓館は一瞬時が止まったように静寂に包まれ、テレビで目にした事ある大男に恐怖し叫び声があがる】
【水の国の議員様方も「あ、ああ」だとか「う、うう」だとかの声を上げて腰を抜かしてへたり込んでしまう】

【オブライエンと名乗る少女は「ハァー」と大きなため息を吐き出してから、前へと進み出てくる。】
【アイスブルーの冷たい瞳が3つ目の大男を見つめる、口元には相変わらず猫を被った微笑みを浮かべてはいるが】


あらあら、サーカス団を呼んだ覚えはないのですが………入る館を間違えておられるのではなくて?
音に聞く〝盗賊団スクラップズ〟さん、ようこそいらっしゃいました。

もしこのまま立ち去るのならシャンパンの一本とパンをお一人様一つぐらいはサービスしますわ。


【くすくすと挑発的な笑みを浮かべながら首領である大男へと語りかける、だが内心は―――】


(や、やべぇ………あの〝スクラップズ〟だと?私は何でこんなに運がないのかな?)
(今まで数多の自警組織を退かせてきたらしいが、成程確かにバケモンみたいな連中だ色んな意味で)


「箱舟」で誘拐ですか―――ははは、今から大洪水でも起きるのですか?水の国だけに


【適当な相槌を打ちながら、コニーは連れていた黒服に目配せをして客や議員を自身の後方に一纏めに集めようとする】

//大丈夫ですよ!是非ぜひ!


926 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/18(日) 14:32:21 BRNVt/Aw0
>>915

そーなんですよー……あのコもそんな口が固い訳じゃない筈なんですけどねー、そこは徹底してるのかなー……
まあ妖怪と隣り合わせの仕事ですからね……此方もそれなりに秘匿されたモノがないとやってられないんでしょうねー
【ま、金や飯に不自由はしませんし妖怪ともなると"噛み応え"のあるのもけっこーいるんで会社に不満はないんですけどねー、と青年は緩く笑って】

……うーん……殺す手間すら惜しかった……とか……あー、でもそれだと何で死体を使うのかの理由付けにはならないか……食べる?

はい……あ!後ですね、伝承とかだと人凍らせて魂喰うそうですよ!
【興味を惹かれた様子のカニバディール。水鶏は同僚の言葉に特性を思い出してきたのか何やら付け加えて】

ええ、半妖です
まあ、最初に見付けたのは母親だけで娘の方は後からその場に来たらしいんで多分子供の方は偶然だったんじゃないかなー……子供の方は母親にすがり付くだけだったんで難なく捕まえられたそうですよ?

内面の叛意、ねー……此方の良心がちょっと痛くなるくらいピーピー泣いちゃってたのに……

……ああ、でも少しは強かでもあるのかな?
その子、運ぶ時母親の死体と同じ場所に入れて戸口で見張ってたんですけどね……搬入した時は銃創程度だった母親の死体がですね……水の国の港に着いた時には腹が割かれてまして……


──肝が、無くなってたんですよぉ

【水鶏は怪談でも語るかのように低い声を出す】

隠した形跡もなければ小窓も海に投げ捨てられるような所にはない
ならばその肝は恐らくその娘が

──食べてしまった

【ま、他に考えが浮かばないんであくまで俺含む当時いた奴等の推測なんですけどね、と青年はそこで明るい声に戻ってしめる】

……成程、そーゆー事ですか
【笑みを崩さず頷く水鶏。その脳裏にはいつか出くわした白い少女の姿がちらついて】
【公安、それを叩けばもしかしたらまた彼女に会えるかもしれない】
【そしたら今度は"本気で遊べる"だろうか?などと画策して】

……と、長々と話し過ぎてしまいましたね
それでは俺達はこれで失礼します

「カニバディール様、今後も我がヨシビ商会を是非御贔屓に」

【そうして何事もなければ彼らは挨拶をし今回の商談を終えるのだろう】


927 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/18(日) 16:00:27 WMHqDivw0
>>908

【触れ合うのも重ね合うのも拒みはしなかった。もともと心地いいことはなんだって好きだし】
【それに人の頼みは断れない性質だったし、相手が貴方であるなら猶更。だからいつでも応じたけれど】
【ただ、いつだって、天井の染みを数えてやり過ごすような目付きをしているのは明らかだった】
【湿った泣き声を上げて肌を上気させることはできても、それだけはもうどうしようもないことみたいに】

【だから、振り返ってぼうと其方を見やる視線だって、似たような温度感】

……………………なに?

【最初に出てきた言葉がいやに冷たかったのに、自分でもびっくりしたらしい。ん、と小さく咳払いをして】
【次に無理矢理取り繕った表情は、気の抜けた炭酸飲料みたいな笑顔だった。それが精一杯だったけど】
【それを見てもくれないんだったら、きっともうどうしようもないんだろう。俯いてしまって、】

……、……だいじょうぶだよ、戻ってくるよ。ミアんとこ行って、ちょっと調子戻してもらって……
元気になったらまたここに来るから、……エーノさんだってイヤでしょ?
いま、あたしと一緒にいるの。だからちょっと、ちょっとだけ別々ンとこに居ようよ、ねえ……

【「ごめんね」。誰も何も悪くないのにそういうこと言ってなんとなく、解決したっぽく見せかける】
【それは彼女の悪い癖だった。そうして相手に罪悪感ばっかり募らせるのも、卑怯な女の手口であり】
【そしてそれを全部無意識でやってるんだから救いようがなかった。ヒステリックに泣き叫ぶ女のほうが余程可愛らしい】

………………わかってるから。あたしだってそこまでバカじゃないよ、
鈴音のこと。もうどうしようもないって、わかってるからさ、だから、……ちょっと時間おいたら。
冷静に受け止められるようになるって、きっと、そうだから…………

【「かえらせてよ」。続く言葉も致命的に最悪だった、しかるにここは自分の居場所じゃないって、暗に言っていた】


928 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/18(日) 16:16:09 WMHqDivw0
>>911

……。ごめんねえ、夕月、まーた怒鳴ったんでしょ?
学習しないよネ、あいつも。そんで…………おれも、そこに居れなくて、ごめんね。

【責められたら謝る。それ以外の方法を知らなかった。少なくとも反論のタネを持っていないなら】
【肩を竦めて眉尻を下げて、さびしそうに笑うのが精一杯。それでももう、何もかもがタイムアップだし】
【この問答にもさほどの意味はないんだろうなって思っていた。思っていたけど――謝りたかったのは事実であり】
【心当たりがあるような問いかけをされるなら、そうそう、と答えて。それ以上は訊かれない限り教えない、みたいだった】

おれも星は詳しくねーなあ。冬の星座ったら……オリオンがわかるくらい。
そ? じゃー別に、そーいう遊びじゃなくてもいいけど……お買い物とか。
全部滅ぼしちゃう前に好きなモン好きなだけぱーっと買っとくとか、いいんじゃない?

【わからないと言われるなら、せめてこのくらいならしたことあるだろうという推測を立てつつ】
【口にして――けれどそこに、「どうせなら」を付けてしまうなら。彼ももうわかってしまっているのだろう】
【和解できなかった。だから、喧嘩別れする前にぱーっと楽しくやってほしくて、それだけ】

ハンバーガーかあ、それはもうやってないかもナー。夜だしネ。
んーや、おれはわりと夜中になんでも喰っちゃう派だよ。胃袋だってそれなりにおっきいし。
そだねえ、…………ハンバーガー屋は開いてなくっても、何だっけ、夜スイーツ?
そーいうの流行りらしいよ、なんか、飲み会の後に食べに行けるスイーツショップ……パフェとか。
食べれる場所ならいくらか開いてるっぽいけどお、……、……おれ? おれはねえ、

…………何したいって言われたら困っちゃうナ。鈴音ちゃんが楽しいと思うことしたいって言ったら、こまる?

【それだけだから。提案もごく楽しげなものだけに留めて、自分が楽しいかどうかは二の次にしているらしく】
【けれど、言い終わった直後に「あ」って言って、何か思いついたような顔をする。しかしそれを訊くなら、】
【「遊んだあとにちょっとやりたいことならあるかも」。言って、今の時点では何も言おうとしないのだ】


929 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/18(日) 19:26:01 E1nVzEpQ0
>>923

【4発分の薬莢が床に転がる。 ─── 明かりを付ければ酷い光景が広がっているに違いはなかった。然して、】
【フラッシュライトが幾らか悍ましいものを照らし上げたとして両者は怯まなかった。ごく狭いカウンターの中でのCQCに至り】
【やはりツーマンセルで襲撃を仕掛けるほど散兵ではない。 ─── 小隊規模で待ち構えられている可能性もあった。ならば】


  「 ───………… 。」


【少なくとも鉤爪の薄刃が正中に肉を裂くことはなかった。横に構えた軽機関銃のバレルで、弾くように振るわれた着剣拳銃の鋒で】
【それぞれ2人は攻撃を受け流し、格闘戦においては決定的な隙を作ろうとするだろう。そうして、それが叶うのであれば】
【ミレーユは対手の黒い喉元に銃剣を突き刺しつつ-1発、2発。9mm強装弾のホローポイントを零距離よりダブルタップで撃ち込み】
【アリアはM27のストックにて正確に敵の顎部をかち上げ、 ─── 蹌踉めいた所に、戦闘用義体の最大出力をもって土手っ腹に放たれるハイキック】
【真面に喰らうのであれば前者は無論のこと致死を招くだろうし、後者も即死こそしないものの脳震盪と内臓破裂は避けられなかった。凡そ容赦のない殺し方】


    「ライガ。 ─── まだ生きてたら、周辺のクリアリングを。」
     「一応、この部屋の中にありそうなら、照明も探してくれるかな。くれぐれも奇襲には気を付けて」


【恙無く殺しが終わるならば、そうしてアリアは命じるのだろうか。指揮官としてはこの上なく正しくも、人間としては幾らか朴訥に過ぎる彼女の言葉へ、ミレーユが付け加え】
【敢えて即死はさせなかった1人をカウンターから引き摺り出し、適当な椅子に座らせて縛り付けようともするのだろう。 ─── 暗器やIEDの類を隠していないか確かめつつ】
【この分では電気配線も破壊されていて当然ではあるのだろう。軍事的な実戦経験の少ない一名をこの状況で単独行動させるのは幾らか無用心でもあった、が】


930 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/18(日) 19:56:09 E1nVzEpQ0
>>927


【11月の冷え込んだ室温に少女の声は実によく響いた。怯んだように小さく彼の肩が震えた。ここ数日で随分と輪郭の萎びた、円い双眸が見開かれた。】
【だが、 ─── どうしてか、彼もまた笑っていた。引き攣る類の声量と表情で、俯く頤を上げながら、荒れた唇の端は幾らか皮肉めいて吊り上がる。】
【握る手指の力ばかり強まっていた。好きなだけ伸びた爪先が、青白い手首に少しずつ食い込む。だというのに畢竟、視線は合わせられないのだから】
【 ─── 互いの薬指に嵌ったままの銀色は、此の期に及んで何も変わらなかった。憎らしいくらいに眩しいそれから、彼は目を背けたかっただけなのかもしれない】


       「それ、ボクじゃあ不足?」


【ならば返される言葉だってこれ以上の悪手など有りはしなかった。 ─── はいそうですなんて言えないと、自覚のあるなしを問わずとも、相違なく彼は分かっていた。】
【言外に示す拒絶を態と相手の口から言わせようとしていた。ひどく卑劣な遣り方だった。そうしてまた、「そうじゃない"けど"」などと言い澱むならば】
【暗黙知の機微など無視しながら問い詰めようとする態度だった。 ─── 悪い意味で男らしかった。詰まる所、少女に許されるのは悔いるような沈黙だけであり】


「そォだよね。キミはそういう人だ。ボクだって良く解ってる」
「自分だけ辛い思いをすれば、そういう気分になれば、ぜーんぶケリが付くって顔だ。 ─── 相談なんてさせようとしないし」
「キミにずっと幸せでいてほしい誰かの気持ちも知らんぷり。 ……… まあ、いいんだけどさ。いいよ、別に。それでも。」


【 ───── 芝居掛かる諦観に満ちた口ぶりで、つらつらと彼は言葉を紡いだ。ようやく彼は少女と視線を合わせた。愛してくれた青い双眸は、もう指輪の色に見合わない】
【構わないと嘯く割に、決して彼は手を離そうとしなかった。ならば自己満足の産物でしかなかった。そんなつもりじゃないって言うに違いないけれど】
【去ろうとする愛しい人の心を、ただ衝動的な苛立ちに責め立てて、踏み躙ろうとしていた。次にきっと彼はキミのためだって言うんだから碌でもなかった】
【やはり憎らしいくらいに太陽の日差しは眩しいのだから救いようがなかった。 ─── これがせめて夜であったなら、汚いものは皆んな夜に溶かせてしまえたのに】


931 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/18(日) 20:21:13 6.kk0qdE0
>>929

【アリアとミレーユ、2人が持つライトの明かりは、時にカウンター内の粉々に砕けた酒瓶、そして同様に粉々に砕かれた頭部の兵士を照らし出す】
【最もそれを気にしていられる状況でも無く、また気にする2人でも無いのだろう】

「ッッッ!!」

【即ち、鍛錬に鍛錬を経験に経験を重ねた兵士の技には、神技と紙一重と言える】
【先ずはミレーユサイド、バヨネットは正確に、何より迅速に黒い鉤爪の兵士の喉元に突き刺さり、内臓や人体内部を傷付ける事に特化したホローポイント弾が止めとばかりに、ゼロ距離からの発砲、無論2発共に命中、その場に崩れ落ちる様に息絶えて】
【ホローポイント弾命中に伴い、多量に吐血した為、或いはミレーユの顔や衣類にも、その薄汚い血液が掛かったかも知れないが】
【続いてはアリアだ】

「ーーッ!!!!」

【アリアには、ガコンッと言う衝撃が床尾部越しに伝わるだろう】
【顎の骨を砕かれ、脳震盪でも起こしたか、その場に思うように動けず、逆にアリアの思う壺に、その無防備を晒したのが運の尽きだ】

「ーーッッッッ!!??」

【綺麗なほどに、見事に決まる蹴りの一撃は肉を通じて内臓を傷付けた確かな衝撃を、義体に伝えただろうか】
【ひくひくと身体を無様に痙攣させながら、その場に崩れ落ちる兵士】

「はい、生きてますよ、何とか……」
「わ、わかりました!スマホさん!索敵です、僕は電気を探します……」

【最早無抵抗な兵士をその場に縛り付けるアリア、暗器やその他特殊な機器の類は無いようだ】
【だが一方で……】

「何だお前達!?」
「チッ、海軍の手の者か、杉原!」
「了解です軍曹」

【ミレーユの言葉に答え、配電盤かスイッチを探していたライガが、緊迫した言葉を発して、直後だった】

「ぐああああッ!!」

【変身が間に合わなかったか、何者かに投げ飛ばされ、ライガの身体は椅子やテーブルの残骸にぶつかりながら、2人の足元へ転がる】

「変な臭いがする、血と火薬と、後これは、酒か?」
「戦闘があったものと思われます、軍曹」
「まあそれはいい、1人じゃ無いな、お前達何者だ?海軍の者か?」

【ライガが飛ばされて来た方向より、男女の声が聞こえる、照明やライトで照らさない限り室内は依然暗闇だが、今しがた階段から降りて来た人間のようだ】
【ここまで一言も発し無い海軍陸戦隊兵士とは、少々異なる印象を感じるかも知れない】


932 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/18(日) 20:53:15 sK4YEmy60
>>931

【刺突式の銃剣に残った血を軽く振って落としながら、ミレーユは身を退ける。返り血ばかりが白い頬を穢していた。】
【剥ぎ取った衣服にて両手を後ろ手に縛り上げ、下衣を降ろして十全な逃走を叶わなくしてから、アリアは"捕虜"を椅子に座らせるのだろう。明らかな拷問の準備。然るに、】
【 ─── ライガの悲鳴に応じて、瞬時に彼女らは再び銃を構えた。だが何かしらの体術を喰らったか、五体満足に投げ飛ばされてくる彼を確かめるならば】


   「 ───……… ボクが付き添うべきだったかな。」  


【脚元に転がってきたライガへと、ミレーユはを手貸してやるのだろう。「ホラ、起きて。」鉄火場に似合わぬ、乙女の纏う薫風】
【シルクのグローブ越しにさえ幼気で柔らかな指先が秘められていた。 ─── 立ち上がれなさそうならば、一応はカウンターの奥に隠す形で、放って置かれるだろうが】



 「その質問には答えられない。けれど少なくとも、貴方たちと同郷の軍隊ではないわ」
 「貴方たちは水国の陸軍かしら。 ─── それとも、他の諜報機関?」



【持ち上げた軽機関銃の銃口をアリアが声の主へと向けるならば、バレル横のフラッシュライトが彼らの顔を照らすだろう。】
【「応答によっては攻撃も辞さないから、そのつもりで。」 ─── それでも女は、トリガーに指をかけてはいなかった】
【明白な殺意があれば、既にライガはより暴力的な手段で攻撃されて然るべきであろう。即ち対話の余地を向こうは勘案している】
【事実として彼らは何かしらの詰問を試みようとしていた。 ─── 厳島なる軍人はそも櫻国の海軍に属しているとも聞いていた】
【幾つかのシナリオを思考のうちに構築しながら、アリアは拘束した兵士の爪先を踏み潰すのだろう。何れにしても、彼への尋問は確実かつ有用な方策であった】


933 : 霧崎 ◆KP.vGoiAyM :2018/11/18(日) 21:30:00 Ty26k7V20
>>820

つまりは――――

【広げに広げたファイルの束を霧崎は机の上に放り出すと】
【やおら胸ポケットから両切ピースの紙箱を取り出し、一本くわえた】
【たとえ、灰皿がなくとも、高級ないい音のするオイルライターで火をつけるだろう】
【そして適当な場所に座り、煙とともに一呼吸吐き出した】


我々が新楼市に火を放ちますから、貴方方に鎮火してほしいわけです。
人種、国境、文化、異能排斥…たった一発の銃弾であの街の緊張は爆発するでしょう。


数々の忖度が絡み合った法律には歪な抜け穴がいくらでもあります。ただ、それは針の穴ほど小さい。
だから、我々がそれをこじ開けようと言うんです。新楼市の暴動という手段で。

もし、その時に事態の収拾を行える機関が貴方方しか居なかった場合、あの街の指揮権は一時的に
あなた達が得ることができるのです。探してみたら戒厳令みたいなものを発令できる法令がありました。
まあ、まさが外務省が使うとは法律を書いた人間も思ってもみないでしょうけどね。多分想定は、今後省庁に
国家情報局みたいなものができた時を想定しているんでしょうけど。

法的には貴方方、国家機関の治安維持を行うる機関と同等の組織と武力を保持している場合、その権利を有するとあるわけですから。
上手いこと軍隊や、警察が暴動の鎮圧でごたついている間にのらりくらり、適当な理由でもつけて研究施設を占領していただきたい。

オーウェル社は合法非合法問わず歯向かうでしょう。そんなものは蹴散らしてもらうのもお願いしたいのです。
多分何をしようとしているかはわかっているはずですから、敵は。

【淡々と霧崎は話を続ける。研究所を手に入れるために戦争をしようと言うのだ。】
【やくざは手段を選ばないとも聞いた。武闘派とも聞いた。だが、街一個暴動を起こしますなんて正直、イカれている】


ギャング共を抗争状態にし、タカ派の政治運動家を煽ります。ジャーナリストを担ぎ上げて、アンダーグラウンドに武器を配りましょう。
もちろん、多くの血が流れるでしょう。収拾がどうつくのかは正直、私にもわかりません。

ただ、私たちにはこのやり方しか無いんですよ。おわかりいただけますか?
たっぷり溜め込んだ、ジャックポット。残りの金も無く、手札がブタで、首の皮一枚。やれることはブラフ。
テーブルに付いた全員が降りてもらうまでブラフをかますしか無いんですよ。


934 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/18(日) 21:36:48 WMHqDivw0
>>930

【あんまりに容易く予想通りに彼女は沈黙してしまうんだから、いっそ笑えてきちゃう、かもしれない】
【ぎちぎちに強張らせた顔、見開いた眼に涙をいっぱい溜めて、けれどそれを零すことさえできず】
【ぐうと唇を噛み締めて、握り締められる手首が痛いとすら訴えず。ただ小刻みに震えて、立ち尽くし】

【ごとん、と音がした。握り締めていたスマホが手から滑り落ちて、床に叩き付けられる音】
【さらに細かい罅の入ったそれは床を滑って、彼の足元まで行ってしまうだろうか。――拾い上げるなら】
【今時誰でも使っているトークアプリ。喋っている相手は彼の知らない誰かの名前、三文字で】
【その人に向かって、彼女は文章でこう訴えていた。「むかえにきて」。なればその相手が誰であるか】


【     (空気を読まないインターホンの音)     】


【――容易にわかってしまうんだろう。そして今、何の事情も知らず、外の世界から彼らに呼び掛けたヤツも】
【同一人物である。それははっきり、間違いなく、事実としてそこにあるから――少女は急に暴れ出す】
【握り締められた手首を無理矢理に振りほどこうとして。覚束ない足取り、けれど全力疾走にて】
【インターホンの応答口へ向かおうとするのだろう。そして、一目散にエントランスの開錠ボタンを押そうとする】
【全部、彼が赦すなら、の話になるけど。(ならば当然そんなの赦されないとわかっていても)】


――――――――――――――イズルっ!! いず、イズル、助けてっ!!!


【断末魔めいて少女は泣き叫ぶのだろう。外から迎えに来てくれた誰かの名を呼んで、(それは貴方の名前ではないから)】


935 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/18(日) 21:49:28 Fqhq2sDE0
>>932

「すみ、ません……ミレーユさん、油断してそれで突然……」

【まるで、先程の鬼神羅刹が如き、手練れの戦闘の様子など置き去りにしたかの様に】
【乙女然としたミレーユの、その細く柔らかく、しっとりとグローブ越しに伝わるその手を取り立ち上がる】
【外傷は無く、立ち上がるのにも障害は無い】

「……軍曹」
「解っている杉原、海軍では無さそうだ」
「突然の非礼を済まない、あの状況だったからな、勘弁して欲しい」
「陸軍と言うのは当たりだが、水国のでは無い」

【アリアに答える声は、まだかなり若い少女の声】
【アリアに照らされる姿は、大柄な若い男性とかなり小さな少女のシルエット】
【ライガを投げ飛ばしたのは、恐らくは男性の方】


「櫻の国の陸軍、正確には国防陸軍の者だ」

【少女はアリアのライトを眩しいとでも言うように、不快そうな表情を浮かべ】
【男性はライトの射線から視線を逸らしながら】


「ーーッ!!」

【意識を失っている所に、アリアから指を潰され、絶え難い苦痛と共に意識を取り戻す兵士】
【その様子を眺めていた2人が】

「なるほど、そう言う訳か」
「君達は、あー、まあこの際聞かないが、何処かの機関の人間で、何らかの理由があって魔導海軍陸戦隊の部隊とここで交戦した、って所だな、杉原どう思う?」
「はい、私も軍曹と同じ見解で」
「……じゃあ質問を変えよう、君達は何でここに来た?ここ厳島中尉旗下の『魔導海軍諜報拠点』に」

【恐らく部屋の照明スイッチを探しているであろう男性と、少しばかり得意げにアリアに質問を重ねる少女だった】


936 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/18(日) 22:32:37 E1nVzEpQ0
>>933

【少なくとも後藤は喫煙者であった。 ─── テーブルの上には硝子製の灰皿も配されていた。ならば彼もまた徐にスーツの裡側より】
【安物のターボライターとメビウス・ライトを取り出して、ごく緩やかに一服した。霧崎の語り口を黙して聴きながら】
【 ─── その要旨が終わる頃には、フィルターの手前まで吸殻は燃え落ちてしまうのだろう。所詮は安いシガレットであるから】
【やはりこの男の貸衣装にはどうしようもなく似合わずに、この男の容貌には悲しいほど似合っていた。皿上に灰を落として、火を消して、静かに笑う。】


       「 ──── そいつァ実に、分かり易くて良い話だ。」


【 ──── 成る程、彼らもまた狂気であった。なんとなれば、権謀術数の渦巻く政府省庁に身を置きながら】
【剰えこの混迷の時代に"正義"を標榜する攻性の極秘部隊を組織するのであるから、正気であれば成し得る筈もない】
【ならば正義とは本来、狂気の側に属する観念なのだろう。 ─── 銀髪の女も、黒髪の女も、声もなく微笑んでいた。】



「いいでしょう。貴女の船に乗るのも悪くない。ならばラストカードは盤外戦、シュート・アウトと洒落込みましょうや。」
「席に座ってる全員の鼻っ面に二挺拳銃(アキンボ)のデリンジャーをブチかましてご覧に入れましょう。─── 四発あれば足りますよ」



【気取った台詞の内実まで暴力的であるのだから手の打ちようもないだろう。彼らにもこの遣り方しかなかった。銃口と圧力で全てを解決するThe Only Neat Thing To Do】
【 ─── 万が一に相手の口車の悉くが大嘘ならば、捕物が変わるだけでもあった。それは対手も十分に理解しているだろうと、後藤も推察していたが故】
【脛に傷/背中に刺青のある身で斯様な組織に協力を申し出てきたのが、後藤の即断と快諾の理由でもあった。 ─── ともあれ】
【「今のうちに我々の"公組織"としての身分も作っておかないとねえ。国際救助隊あたりが尤もらしいだろうが」一ツ後藤は呟いて、ならば事態は既に戦術の俎上にあった】


937 : 名無しさん :2018/11/18(日) 22:35:51 dJ0W4qMs0
>>914

――駄目だよ。ここはセリーナのお店で。セリーナは、そんな風に、お客様にお掃除なんてやらせちゃ駄目って、きっと言うから。
だから、あとで、わたしがお片付けしておくの。誰かが来た時に、――こんな風になっていたら、寂しいでしょ。それに……セリーナが帰ってくるかもしれない。

【ごく曖昧な悲し気な笑みを浮かべるのなら、真っ白なほっぺはやっぱりあどけなかった。そうして眼を閉ざして小さく首を揺らす。やっぱりここはあのひとの場所だから】
【わたしはあくまでいくらかを任せてもらっていただけだから。それに何より今のわたしは給仕としてここに居ないから。だから――だから、やっぱり、】
【それでも大事に思うひとのためにお掃除くらいはしていこうって思っているらしい、――、だなんて、やっぱり、どうでもいい余談なのだろうけど】

――――お使いで、来たの? どうしよっかな。持って帰れるものなんて、売ってないけど。…………、それは、誰に言われたの?
あなたを、……わたしに、渡して来いって? ――ふうん、そう、……。うん。やめた方がいいよ。初めての飲み物が、……そんなのは、あんまりだから。
そうだね、だから、――零歳さんにあげるミルクはないから、ジュースにしようか。誰のジュースか分からないけど、――、あるから。

"お客さん"のためだから、仕方ないよね。

【ぱちと瞬き一つ。ヒトガタの言葉を彼女はお使いに来たのだと判断したらしい。そのくせどこかで冗談めかすような色合いだった。――ならば続く言葉は訝し気に】
【だけれどやはり要領を得ないなら、気にしながらも、気にしない。――初めての飲み物に劣化したワインも水道水も適さないと考えた、らしいなら】
【がばと冷蔵庫を開ける。――誰かの入れていたらしいジュースを発見して、日付を確認して。それから適当なコップでも出すのだろう】
【お酒と氷を入れたなら綺麗に光が迷子になってきらきらして見えるコップ。それに氷と、それから、ジュースを注ぐ。それで、ヒトガタへ出すのなら、】

【(――ふと過ぎった記憶。そういえば。ずうっと前にお仕事の後に飲もうと思って買ったペットボトルのりんごジュースを入れていた気がした)】
【(ならば出されたのはやはりペットボトルのりんごジュースだった。誰にも謝らなくていいかもしれない。――微苦笑添えて)】

――そっか。器用なんだね。だけど、ほんとにいいの。思い出すのもわたしがやるし、お料理だって、あるもので作るのが上手ってことだから。
――――――――――――――――、――……もう、ありがとう。だけどね、本当に大丈夫だよ。

【それを器用と言ってしまっていいのか、よく分からなかったけど。だけれどとにかく彼女はもろもろを拒んだ、しなくていいと。ただ座っていればいいと、言って】
【察するに不審人物であるヒトガタをうろつかせたくない、――ではなく、なんだか幼い振る舞いにも見えるその仕草に、すっかりと気を抜かれて、だから、ほんとに、お客様扱い】
【――けれど、次に見渡す店内が綺麗になっていると言うのなら。少女は色違いの眼を瞠る、――それから少し困ったように笑って、食べものでも見繕いに、背中を向ける】

【そのときに、ヒトガタの様子が変わるなら、振り返るのだろう。ならば、当然"彼"を見つけるのだろう。――――――さっきよりも丸く見開かれた目が、また、困ったように】

/長くなってしまったので分割します……!


938 : 名無しさん :2018/11/18(日) 22:36:09 dJ0W4qMs0
>>914>>937

ごきげんよう。……お久しぶり、かな、"このあいだ"、ちらっと見たけど。……。そだね、久しぶり。
いろんなこと、謝るのが先かな。それとも、いろんなこと、聞きたい? ――わたしが聞きたいのは、"その子"が何か、くらいだけど。

【「今は、」】

――あなたがわたしに聞きたいことは、きっと、うんと、あるのでしょ? ――だから、――そう、だね、うん、じゃあ、
なにか、――食べたいな。ふふ。なんでもいいよ。食べられないくらい嫌いなものは、あんまり、ないから。……。

――――――――じゃあわたしがお客さんね。注文はね、お任せで……、……珍しいものが食べたいな。わたし、水の国で産まれたの。だからね、――。
カニバディールは実家(おうち)、どこだっけ。……その近くのお料理とか、食べてみたいな。何かなくて作れなかったら、なんでもいいよ。

【ぱちりと瞬いた瞳が、わずかに笑みの色を帯びたなら。どこか緊張した様子の顔、――きっと、少女然とした綻びに委ねるのだろうか】
【いろんなことを分かっているつもりの顔をしていて。彼が望むのなら、限りなくそれに応えたい様子だった。――だけどそれより前に彼が尋ねてくれるなら】
【食べたい。作ってほしい。――ころりと冗談めかして笑って、彼女はお客さんを演じるのだろう。ことこと足音鳴らして、たった一つのテーブルと椅子に、座ろうとして】

【なんでもいいって言っていた。――だけどふっと思いついたように強請るのは、彼の故郷の食事。ただし材料が足らないようなら、無理にとは言わない】
【――きっとそもそも誰かが作ってくれるってだけで、彼女は嬉しいに違いなかった。だから、よほど気負う必要はなくて。だって、なんせ、冷蔵庫の中身は、少し寂しげで】
【地下にある冷蔵庫ならもっといろいろあるかもしれないけど。とは、やっぱり言わなかった。そこまで招き入れてしまうわけにはいかないから。――くすくす、笑い声、楽し気に】

【今宵のお客様は、少女のかたちをした神様ひとり。ご注文は丸投げに等しくて。だけど満足させなきゃ世界を滅ぼすなんてはずはなくて。もしもそうだったとして、】
【上機嫌そうに笑って彼の動き出すのを眺めて待っている彼女を見るなら、――――もしもそうだったとしても、この世界はきっと明日の朝を迎えられるから】


939 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/18(日) 22:58:15 E1nVzEpQ0
>>934



【        ぱんッ。        】【音のない風切り。】【乾いた音。】【広がる鋭い痛み。】【これは、どういう表情なんだろう。】



【暴れる少女の頬を、なにか柔らかく小さな物が、ひどく強かに打ち付けた。空拳であった彼の右指が、平手の形に揃えられたまま、所在ない残心を取っていた】
【きっと、彼はひどい顔をしていた。笑いとも悲しみとも取れぬ、ただ目の下の落ち窪むような隈ばかり、凄惨に見開かれた双眸を強調して、滲み出す涙が頬を伝う。】
【 ─── 斯様な面持ちを、未だ嘗て彼は見せたことがなかった。少なくとも少女には見せたことがなかった。見せるべきではないと解っていた(筈なのに)】
【ならば、もう少しだけ気温が冷たくて膚が乾いていたなら、直ぐに彼は正気に戻ったのだろう。けれど握り潰すような左手は隠せない熱と震えを宿していたから】
【病的に青白い喉が、しゃくり上げるのを堪えて言葉を紡ごうとしていた。もう何の役割も果たせないと互いに解っていたけれど、掠れた声は滂沱の音階を孕んでいた】



            「どうして、」「解ってくれないの?」



【答えなど誰にも求められていなかった。 ──── ただ、ここから少女を離してはいけないと、ボクの胸許からキミを逃してはいけないと、それだけは彼の中で真実だった】
【少女の身体を引き倒しながら彼は玄関へと急速に歩み行くのだろう。遣り切れない感情に八つ当たりするような足音。袖口から何かを引き出した。ごく小さな拳銃。】
【デートの時にもキミを守る為に持ち歩いていた、銀色の装飾がとても綺麗なコンシールド。やはりボクはこれをキミを守る為に使う事になった。なら何も間違ってない】
【 ─── インターフォンの向こう側に向けて、一発二発三発四発五発六発(45口径でも部屋の中で撃つなら馬鹿みたいに煩くって/キミみたいなのが扱う銃とは違うんだ-だからボクが守らなきゃいけない)】
【たかだか数ミリの鋼板でしかないドアなんて何の防弾にもなりはしない。 ─── これだけの数の鉛弾をブチ込まれて真面な人間が生きてる筈もない。ならば介在するのは明白な殺意に他ならないから、】


940 : 名無しさん :2018/11/18(日) 23:00:10 dJ0W4qMs0
>>928

【ふらふらと少女は首を揺らすのだろう。怒鳴り声が怖かったのはどうしようもなく本当で、だけど、だけど、――、】

――、あんな目で見てくれたの、夕月ちゃん、だけだったから。……あと、カニバディール。

【ならばやはり互いに見知っていて親しく思う人物を、――彼女はよく見ていたのかもしれなかった。だって知らない人の中、よく知る顔は、すぐに分かるもの】
【それはきっと彼女が真っ赤な髪と目をしていなくても。彼がうんと大きな背丈で三つの眼をしていなくても。――紫色の生物兵器の子は、もはや致命的に違えてしまったから】
【――彼女がよく認識していたのは、やはり、いくらか好意的である友人たちであったなら、ああそこにやっぱり貴方が居てくれたなら、なんて、とんでもない、わがまま】

お星さまは、前に教えてもらったの。いっぱい忘れちゃったけど――、教えてもらったこと、覚えてるから。
――――――、こんな時間に、お店なんて、やってないよ。コンビニとかだもん。お菓子とか、いーっぱい買うのもいいけど……。

ヤサカさんは、わたしに全部、滅ぼしてほしい?

【教えてもらったけど忘れちゃった。内緒話を打ち明けるトーンで彼女は漏らす、そして実際本人にはあまり言わないだろう言の葉で】
【それでも教えてもらったことは覚えてるって添えるなら、なんだかいい感じの話に聞こえてくるから不思議だった。――お買い物に行くには、もう、遅いんじゃない、なんて、】
【お菓子をたくさん買ったってどうしたらいいのかはよく分からなかった。そして続く問いかけはあんまりに急だったから】

…………そっかあ、――そうだよね、そしたら……じゃあ、えっと――、……。えっと……。……。
パフェ! パフェ、パフェ――、イチゴもバナナも、食べていい? ブドウ、――は、もう、遅いかなあ、そしたら――。

【――お店は、たぶん、やってない。どこか予感してたことを彼の言葉にて説明されるなら、彼女はあんまりに素直に聞き入れるんだろう。かといって、】
【なら何がしたいかっていうのは、分からないらしかった。一番の娯楽は猫とお昼寝だって信じているんだろう。――だけど今は眠たくなくて、なら、どうしよう】
【彼が夜スイーツなるジャンルを口に出すまで、彼女はごくしょぼくれたような顔で悩んで――ぱっと輝かす、パフェもいいかもしれないって、思った、らしいなら?】

わたしの、楽しいこと? ……、……、――、お料理?

【――――――やっぱり困ってしまったらしかった。鸚鵡返しの疑問形が瞬いて、彼の「あ」に尋ね返しても、疑問を解決する答えをもらえないなら】
【黙考に熟考を重ねて明日になってしまいそう。――やがておずと提出する答えはごく自信のない声にて。そもそも料理なんてどこでするんだって話、何を作るのかも、】

二人で作ったら、ハンバーガーも、パフェも、食べられるかな――。

【――はにかむような笑みで少女が呟いた。それならいろんなものがいっぺんに叶う気がして、なんだかとってもいい案に思えて、だけど、やっぱり自信はないから】
【そうっと見上げて窺うのだろうか。或いはここから歩いて行ける範囲に二十四時間営業のスーパーもあった。台所の確保は、少し頭をひねる必要があるかもしれないけれど】
【彼女に聞けばUTの台所を勝手に使っちゃおうとか、家の台所を使ってもいいとか、言うかもしれなかった。――あるいは彼に心当たりがあるのなら、それでもきっと、よくて、】

【もちろんそういう話にならなくってもいいのだけど、――その場合、彼女の案は弾切れしてしまうから、やっぱり、お星さまでも見に行くことに、なりそうで】


941 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/18(日) 23:18:58 WMHqDivw0
>>939

【打ち抜かれた頬がじんじん熱くなってくる。一瞬だけでは何をされたか理解できなくて】
【ぶたれたんだって。ようやく理解できた時にはもう引き倒されて、引きずられて、そしたら】
【彼が銃を抜くのを見た瞬間にまた泣き叫んだ。凶器を握る手に縋りつくよう、必死に動いて】

やめて、やめて、やめてやめてやめてやめてッ!
ごめんなさい、もう逃げないっ、言うこと聞きます、逆らいませんッ、だから、だからあっ、
――――――――――――――イズル!! イズル、逃げて、おねがいっ――――

「………………はあ? 何なの超うるさいんですけど、喧嘩してんの?
 じゃー何? 僕、単なる痴話喧嘩に巻き込まれただけ!? あっほくさ! 付き合ってらんな、あ゛ッ」

【ドアの向こう側からは女の声がした。アルト。彼だって聞いたことがある声色だった】
【“冒涜者”。少女がイズルと呼んでいるのはこいつのことだった。それが本名であるらしく】
【そいつは心底苛立っているような返答をして、すぐさま立ち去ろうとしたようだった。けど、】
【その背中に銃弾を受けたらしい。呻くような声が上がって、それから倒れ伏す音が聞こえて】

……………………………………あ、あああぁ、いや、イズル、イズル、
え、の、……さん、エーノさん、ごめんなさい、本当に、もうこれから絶対、
…………あなたの言うことぜんぶ聞きます、なんでもするから、逆らわないから、

だからお願い、イズルを助けて…………殺さないで、死んじゃう、おねがい…………

【(――――だったらここはシェルターなのかもしれなかった。今ドアの外で倒れてる女がいつか、)】
【(銀の女に語ったたとえ話。世界はもう、イル=ナイトウィッシュと白神鈴音に滅ぼされていて)】
【(この部屋だけが、何もかもが安全なシェルターだった。ふたりぼっち、それ以外に誰も入ることができなくて)】


【(であるなら。やっぱり少女は泣いて、縋って、お願いをする。自分なんかどうでもいいから、外の世界を助けて、って)】


942 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/18(日) 23:24:25 E1nVzEpQ0
>>935

【男の所属を聞くに、アリアは頷いた。そうして銃口を降ろした。奇襲奇策にしては手が込みすぎている】
【「否定も肯定も避けさせて頂くわ。 ──── ご想像の通りに、ね。」ならば返す言葉は、事実上の肯定であるのだろう。】
【同じ国の兵士に手を上げて尚も平然としているのであれば余程に深い対立なのだろう。少なくとも予算の奪い合いに留まる領域ではなさそうだった】
【 ─── 幾らかキナ臭そうな面構えで、ミレーユは嘆息する。銃を下ろしたとして、ホルスターには仕舞っていなかった】



「他ならぬ厳島中尉からの招聘よ。」「"我々"との会合を求めてきたようだけれど、メディアの放送は見ているでしょう?」
「 ……… 結句、彼は為崩(しくじ)ったようね。御大層な歓迎を受けて、今に至るわ ─── 私としても、話が読めてきた」

「大方、彼は魔導海軍の何らかの機密を手にし ─── いかなる動機にせよ、それを他国の信頼できる組織に依託しようとした」
「貴方たちはその情報を追ってここに至った。 指揮系統の違う兵隊までも取り沙汰するのだから、余程の代物なのでしょう?」



【「仔細は彼にも尋ねたほうが早いかしらね。」 ─── 椅子に縛り付けた捕虜の覆面を剥ぎ取って、口を利けるようにするなら】
【視線を向ける所作が果たして男と少女に伝わるかは判然としなかったが、それで良いだろうと了承を取っていた。コートの裡側から、シースに仕舞ったコンバットナイフを抜いて】


943 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/18(日) 23:41:53 WMHqDivw0
>>940

カニバって名前聞くの二回目だあ、やっぱ仲良しなんだねえ……、……え?
………………なに、びっくりした、めっちゃ話題飛ぶじゃん。どゆこと?
うーん、……そうね、全部じゃなくても滅ぼしてほしいモンはそれなりにあるよ。

【「闇市って知ってる? いろいろ、人とか売ったりするやべーとこ。あーいうとこ行くヤツは死んでいい」】
【きっと模範的な回答をした。あまりに急な話題の転換にも、けれど彼は、答えてしまうなら】
【――それはすなわち、彼自身も殺して構わないと言っているようなものだった。付き添いとはいえ】
【そこに行って人が売り買いされるのを見て見ぬふりし続けていた。ならば、彼だって、悪い人だから】

うんいーよ、パフェ食べよ。寒くなってきたしたぶんイチゴ美味しくなってきたよ――ぶどうは、どうだろ。
……そっかあ、料理か。そーいや上手だったネ、朝ごはん。あれ美味しかったよ。
ンじゃあそれで決まりでいんじゃないかナ、どでかいハンバーガーとフルーツ全乗せパフェ作って。
喰っちまおう、夜中に食べるそーいうのは罪の味がするって言うぜ? 悪いコトしちゃおうよ。

【「だって、イイコじゃなくなったんでしょ?」 けらけら笑ってあっさりと決めてしまうんだから】
【きっと彼は今夜、本当になんだってできるつもりでいるらしかった。いいコトだって悪いコトだって】
【何にだって付き合う気でいた。だってもう――終わりがすぐそこまで迫ってる。だから、】
【どこで作るかって話になったらUTのを借りちゃお、って言い出す。悪いコト、いくらでも提案して】

【それが決まれば早速買い出しにでも出かけるんだろう。けれど、スーパーへ向かう道すがら】
【辛うじて開いていた雑貨屋を見つけると、彼は「先に行ってて」とだけ伝えて、そっちへ向かってしまう】
【プレゼントでも買うんだろうか。これで終わりだから。よくはわからないけど――とにかく彼は、何かしら、食材じゃないものを買う】


944 : ◆KP.vGoiAyM :2018/11/18(日) 23:43:53 Ty26k7V20
>>916


【どんなに急激な滅びが訪れたとしても、人間ってのは意外としぶとい】
【捨てられたタンカーや、廃墟になったショッピングモールや、地下壕に住むプレッパーなんかが】
【世界のあちこちで小さいコミュニティで暮らしている。ある場所は国を名乗り、ある場所はファミリーを名乗り】
【そしてここは、シティを名乗った。】

【ジェットシティはいろいろ形を変えていた。前はここから250キロ離れたところのコンビナートにあったらしい】
【その時からのメンバーは今の半分も居ない。みんな勝手に参加して、勝手に居なくなる。】
【リーダーは居ない。ルールもない。しいて言うなら】

【 KEEP ON ROLLING/錆びつくな それだけだ。】

【正確な人口ははっきりしていない。吹き抜けのようなフロアで歌うやつもいれば、船室でバーを開くやつもいる】
【バイクや武器のチューンが得意なやつは整備をやるし、能力者は上手いことそれを生かして商売じみたことをする】
【だから、シティなんだ。好きなことをして生きていく場所。誰かのために、自分のために生きる。それがリアルに感じられる】

【シノギは主に強盗だ。<ファクトリー>や<ファーマー>から<ガーデン>に運ばれるトラックや列車を襲う】
【バイクに跨って、ショットガンでドローンを撃ち落とす。トラックに飛び乗って、自動運転をハックする。それが】
【2Q36年のワイルドバンチだ】

【ロッソはそのバイカーズにやり方を仕込んだ。かつては銀行やカジノを襲って、世界中の資産家を笑ってやった。】
【計画の方法、待ち伏せのポイント、襲撃するときのチームの編成。最適な武装など経験に基づいた知恵だ】

【そのバイカーズは襲撃の際に黒いドクロの旗をたはめかせた。海賊のような笑い声を上げて、銃を打ち鳴らした】
【いつしか、彼らは『リボルバージャンキーズ』と呼ばれた】


――――うるせぇ。テメェらの全財産よりマシだ。


【こんなことはいつものことだから今更気にしちゃいない。此処にいるやつはみんな粗野でデリカシーがなくて不器用で】
【だけど人一倍繊細で、優しいから厄介なのだ。ドハーティは目の前で妻と息子が死んだ、エディは最前線で戦ったのにPTSDで除隊処分】
【キャブは良いやつだが未だに本名も明かさないんだからきっとわけがあるんだろう。追求はしないのが俺らなりの優しさだ】

【みんなそういう理由があって此処にいる。泥酔して気を失わないと1時間も眠れないような奴らばかりだ】
【こんな軽口は彼らなりの挨拶で、それに軽口で返すのが礼儀だ】


945 : ◆KP.vGoiAyM :2018/11/18(日) 23:44:06 Ty26k7V20
>>917

80年台のハードロッカーよりマシだろ。オレはイギー・ポップ目指してんだよ

【足早に逃げ帰る三人組を尻目に、煙草に火をつけた。この女は今の時代数少ない】
【古くからの知り合いだから余計なことが言いづらい。だからタバコの煙が無言の反抗の証だ】


―――いんだろ、野郎ばっかでもねえって。仲良しの<コールドフィンガー>はどこ行ったんだ?
あと…なんだっけ最近来た、奴らとか。あと、男か女かわかんねえよなのとかよ。


【そこでの話はそれぐらいで、後は付いてきた少女を<ワンダーランド>というバーをやっているアリスという名の】
【元消防士、現オカマに挨拶に行って、面倒を頼んだ。どこかの船室を自由に使っていいと言われたことだろう】
【娘が欲しかったと常々言っっていたからきっと可愛がることだろう。このシティで一番デカイ手で頭をなでたりな】

【この時代に孤児院をやっている知人に預けるという手もあったが、そうしなかった。道中が危険だということもあるが】
【オレにはどうしてもやらなきゃいけないこともあった。あとは―――偶然だ。そう、偶然。】


【口の利かないやつは珍しいが見たこと無いわけでもなかったから誰も一々気にしなかった。むしろ、シヲリがいるせいで】
【少し街の民度というやつが少し良くなった。アリスや、ミラなど女性陣の目が光っていたから。】


『――――――なんだって?』

【その時鳴っていたのは確かイギー・ポップ&ストゥージズ。下手くそな歌、下手くそ演奏の初期パンク。】
【そりゃ文句の一つも言いたくなるのはわかる。だけど――今まで口を閉ざしていた少女の純粋な言葉に】
【オレは目を丸くした(サングラスをしているわけだから見えないだろうが)】
【その場に居た奴らも同じように口をぽかんとさせたあとに、いつもの喧々諤々を始めるだろう】

『おいおい、お前がいっつも古くせぇのばっかりかけてるからだろ』

「それはお前もだろ?ニルヴァーナなんて辛気臭いの持ってくるからだよ」

じゃあ、ジャニス・ジョプリンでもかけるか?

『いいや、そこはジョーン・ジェットだろ』

「アヴリルなんていいだろ。」

『いいや、だったらマイブラかけよう』


【そして、オレはそれを尻目に、レコードが雑に積み上がった中から一枚取り出し、軽く、シャツの袖で拭いて】
【イギー・ポップのガナリ声を途中でとめ、薄明かりの中溝を目を細めて読み(若いやつはレコードの頭出しは手動だって知らないだろ?)】
【そして、あとは経験で得た勘で針を落とす。】


946 : ◆KP.vGoiAyM :2018/11/18(日) 23:44:28 Ty26k7V20
>>918

I only want to say
  That if there is a way
      I want my baby back with me.....

【ゆったりとしたベースラインから入る。切なげな歌声。それまでがなり続けていた】
【ロックとは違う。途中で鳴るノイズすら曲なんではないかと思うぐらいの調和、神聖さすら感じる】


このアルバム凄いんだよ。全部、教会で録ってるんだって。だからほら、このリヴァーブ。本物なんだよ。
一曲目が凄いんだよ。Mining For Gold。なんか緊張感も入ってる。これは Blue Moon Revisitedって曲で
プレスリーのブルームーンあるじゃん?あれのリスペクトなんだって。……ん?えっ、良くない?


【オレは周りを見渡して、周りの奴らが頭を抱えてため息を付いているのが見えた】


「ロッソぉ。お前さぁ、幾つだよ?そこはなんかバシッと、決めるとこだろ」

『そうそう、ロックに性別は関係ねえとかさあ。そういうヤツじゃね?今、言うべきだったのって』

あれ。女性シンガーのオススメじゃねえの?

「当たり前だろ、バカ。女心ってのがわかってねえやつだなあ」

【口々に文句を言われて(多分この場でオレが一番年上だ)挙げ句に、じゃあどうぞと言わんばかりに】
【オレの言葉を待ってやがった。いつもは金儲けの話しか聴かねえくせに。】

えーっと、じゃあ…んだろ。ロックが必要なのは弱虫の女々しいヤツなんだよ。だらしなくて、負けてばっかりで
しょうもねえ癖に、プライドがあって、虚勢張って、立ち向かわなきゃならねえやつが鋲だらけの革ジャン着て
ブーツを履いて、頭ん中でビートを鳴らしてようやく立ち向かえるんだよ。こう…デカイなんかに。
女の人は強いからね。虚勢張ってなりたい自分を演じる必要なんて無いから。やる必要ないんじゃない?

ロックは弱いヤツの為の武器だ。だから、歌う。仮初めもいつか本物になる為に
臭い言い方だけど、勇気をくれるんだよ。ロックは。変わったり、立ち向かったり、逆に守り続けたりするための
なんならダメなままで良いって。カッコよけりゃいいじゃんって

【なんだか今更の話をしているようで逆に要領を得ない気がしたが、これでいいんだろうか。】
【俺はまた煙草を取り出して、後何本か数えるまでもないほど少ないそれの一本に火をつけた】


947 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/19(月) 00:08:27 E1nVzEpQ0
>>941



   【縋る指先。】【泣いているキミ。】【誰かの悲鳴。】【取落す銃把。】【ようやく我に帰るなら、】【全てがスモーキング・ガンだった。】



【錆び付いたブリキの人形みたいに彼は横を向いた。睫毛も瞼も何もかも、ひどく瞠していた。濡羽色は死んだように揺らめいた】
【ひどく呼吸が荒かった。情事のときよりも壊れていく呼吸。銃を握っていた手が末梢から冷たくなって、おかしくなって】
【 ─── ついには膝をついて、糸が切れるよりも儚く腕を落とした。淀んだ青い瞳に生々しい輝きが宿るなら、それは生きている明石に過ぎなかった】



    「ごめん」「ごめんなさい」「 ─── ごめんなさい」



【 ──── その顔を硝煙反応を孕んだ両掌で覆いながら、彼は自身の行為が定義する所をやっと理解した。声が出なかった】
【少女に手を上げた事も、少女の親しい人を手にかけようとしている事も、重大ではあるが愚行の本質でなかった。彼は愛しい人に如何なる台詞を言わせた?】
【それを何よりも憎んだから彼は非道い復讐まで成したというのに。 ─── ならば今となって、彼の価値は彼の弄んで殺した人々と、果たして何の違いがあるというのか】
【(言うことなんて聞かなくていいのに)】【(怖い事なんて何もなかった筈なのに)】【(ただキミが幸せでいてくれればそれでいいのに)】【(けれどキミを幸せに出来るのはボクだけだから/本当に?)】

【割れたスマートフォンの緊急ダイアルから、彼は何処へともなく電話をかけた。 ─── 電話口、冷たい声の女。要領を得ない単語の羅列】
【「シグレが」「イズルが」「ミアが」「ボクが悪いんだ」「ごめんなさい」「もうしない」「許して」「許してよ」通話は直ぐに切れてしまって】



       『 …………… あなた、』『 ─── 何をしたの』


【然して数分の後、ひとりの少女が彼の自宅に着いているのだろう。玄関先に倒れる見知った姿と、血溜まりと、穴だらけのドアと、震える2人】
【人形のような少女だった。深緑色のクラシカルロリータに身を包み、微かに栗色をした黒髪をショートボブに揃えた、年端も行かぬ幼子は】
【 ─── 抉じ開けた錠前の奥を見るに、平生ならば凡そ無感情に違いない白皙を、酷く信じ難く歪ませていた。いずれにせよ、その声音は冷たくて、それでも】


【酷く慣れた手つきで、人形は処置を施すのだろう。短銃身ゆえの低威力と、ドアを貫通した事による弾速の減衰は、不幸中の幸い】
【それでも何発を喰らったか/どこに喰らったかが結局は肝要だった。胴体に複数の拳銃弾を喰らえば、"並大抵の"成人であれば先ず助かる事はないし】
【たった一発の銃創であっても主要な臓器や動脈を傷付けているのなら即死に至って何ら不思議ではなかった。 ─── 少なくとも、アリアの処置は懸命だった】
【切開と、摘出と、縫合と、止血と、輸血と。時折に鎮痛剤を打ちながら、焦りも淀みもなく全ては淡々と進む。幸い、医療キットは彼の家に備え付けてあった。フローリングが紅く濡れる事も構わずに】
【 ────── そうしてエーノは全てが終わるまで、ずっと部屋の隅で膝を抱えていた。「ごめんなさい」「ごめん」「ごめん」絶えず慙愧の言葉を呪詛のように呟いて】
【然して畢竟、彼は寄り添いもせず、助けもせず、何の力になる事もなく、ただ誰かの許す言葉を待つようでさえあった。そんなものは来ないと知っているのに】


948 : 名無しさん :2018/11/19(月) 00:24:59 dJ0W4qMs0
>>943

…………だって、わたしが、そうするって、言うから――――。

【言ってはいなかった。だけれど彼女は彼の表情や雰囲気からそれを察していたらしかった。ぱちと瞬き、視線は持ち上がらないまま】

――わたし、も、わたしの嫌いなもの。要らないもの。――要らないの。

【ぽつとした呟き。彼女が言うのも、――あるいは彼の言葉と似ているのかもしれなかった。嫌いなものや要らないものは滅ぼしてしまいたいし、滅びてしまえばいい】
【けれどそれ以外の好ましいものや大事に思うものはそのまま普通のありふれた日常を続けて行ったらいいって心底思っている目をしていた、どこか遠くを見るような目】
【それだけなんだよ。――言わない言葉を宿して色違いの眼差しが彼を見上げた、なら、"彼女"の願いは存外、身近であるのかもしれない、――なんて、?】

――――――――、売ってる果物全部買う! それでね、全部載せるの、うん、そうする――。いろんなお菓子も乗っけるの、それで――、
――ハンバーガーだって、うんとおっきいの作る。付け合わせは冷凍の揚げるポテトと、それから……。ヤサカさん、何がいい?

ねえ、ね、パフェの入れ物、ビールのジョッキじゃ、変かな? UTの戸棚ね、お酒のコップばっかりだから――。

【果たしてそういうことになるのなら。彼女はごく上機嫌にいろんなことを考えているらしかった、あどけない顔をふわって笑わせて、悪戯をたくらむ子供みたいに】
【果物だけじゃなくってお菓子も載せちゃおう。生クリームだってめいっぱい絞ってしまうの。――だってせっかく二人なんだから、一人じゃ出来ないこと、してみたい】
【「フライパンくらいのやつ」なんて笑った口元が、直後に、「あ、でも、そしたら、パンがないかな」なんて、綻ぶ。つまるところとても楽しげであるのなら、】
【白神鈴音なんて存在は、――思ったより色鮮やかな感情をたくさん持っている子なのかもしれなかった。努めて大人し気ににこにこ笑っているのは、】

【――UTの台所を借りてしまうことになれば、二人共犯みたいに笑うんだろうか。少なくとも、こんな表情を彼に見せるのは初めてだったから】

【はたと少女は瞬く。先に行っていてと言われたら、まんまるい眼のまま、「うん」って答えて】
【その背中を見送る。けれどほんの少しの間、そこに留まるんだった。ぱちぱちと瞬きをする、ぱちぱち、ぱちぱち、重ねてから】
【ようやくスーパーの方へ歩き出すんだろう。――――彼が合流するなら、少女のよいしょって押すカートの中身、いろんな食べ物が、すでに放り込まれて】

【お肉はもちろんパンも。ピクルスにマスタード。ケチャップ。バーベキューソース。ベーコンにチーズ。玉ねぎ。レタス。牛乳。お酒】
【生クリームにほんとに宣言通りの目についたままっぽい大量の果物。コーンクレーク。フルーツソース。ウェハース。チョコの棒状のお菓子。コーンフレーク(チョコ)】
【とにかくなんでもかんでも。少しでも関連性があればカゴに入れているみたいだった。あるいはちょっと食べたくなったお菓子も。カゴの中はたっぷり満員、だけど、】
【まだカートの下の段にカゴを置く余地があった。だからまだいっぱい買い物が出来た。お金だって使ってしまうの、悪い大人はくだらないことにお金を使うため生きてるんだから】
【――つまり、彼が欲しいものだってどんどん入れてしまっていいんだった。余ったらそれはそのとき考えればいいから。だからって業務用の一キロのポテトを入れるのはどうだろう】

【なんでもかんでも新品の新しいのを買うのが楽しいみたいだった。あれはあったっけ。どれくらいあったっけ。考えないで、ぜーんぶ、新品ぴかぴか、大人買い】
【傍から見ればヤクか何か。少なくとも酒はキメていると思われているはずだった。こんな買い物の仕方、シラフでは、それこそ、世界が終わる前じゃないと、できないから】
【そして誰も世界が滅びるだなんてことは信じたくないから。神様ですらカートの限界量を突破してみたくなったみたいに目をきらきらさせているから、だから、――だから、】


949 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/19(月) 13:37:18 6.kk0qdE0
>>942

「なるほど、否定はしない、と」
「軍曹、照明着けます」

【アリアの意図を読みつつ、答える少女に、男性の方は照明のスイッチを見つけた様子で】
【次にはあまり広く無いBARの店内と、その場全員分の姿がその場に露わになる】

「うぉっ!?随分派手にやったなー、カウンター内ボロボロじゃん!」

【先程の戦闘跡、頭部が潰された死体やグシャグシャの割れた瓶、胸が悪くなるような色々と入り混ざった臭い】
【対して、少女と男性は至って普通の、それこそ何処にでも居そうな格好で少女は藍色のキャスケットに黒いモッズコート、デニム地のショートパンツ、黒のニーハイソックス】
【男性は、ブラウンのレザーハンチング帽、グレーのハーフコートに黒のパンツ】

「厳島中尉から、招かれて……いや待て、待てよ、まさかお前達……杉原!」
「はい、これに……」

【タブレット端末を杉原と呼ばれた男性が、少女に手渡す】
【暫くその画面を、タップしたりスワイプしたりして眺めて、そして】

「い号文書に記載がある……まさか、外務八課か?」

【少女と男性の視線がアリアに集まり】
【やがて……】

「その読みは、八割位当たりと言った所だな」
「何処から話せば良いものか、あー、メンドイ、全部話そう!」
「そこそこ長い話になるな……あー杉原!私、レモンティー!後は人数分センスで!」
「了解です、軍曹殿」

【長財布を杉原と呼ばれた男性が受け取り、外に出る、大方すぐ横の自販機だろうか】
【戻った男性は、人数分の紅茶やらスポーツドリンクやら抱えているだろう】

「あー、改めて言うと、櫻国国防陸軍、情報部所属の風野百合子軍曹、こっちは同所属、杉原重義兵長だ」
「どうも、先程はすみません……」
「さて、これから色々話さねばならないが、先ずそこの敗残兵だが、多分そいつ、まともに話せないぞ」

【百合子が指差したのは、先程アリアがコイツにも聞くべきかと聞いた、捕虜となっている兵士】

「多分、実験手術を受けてる、言葉を発する部分が丸々欠損してるな」
「陸戦隊兵士は、今となっては半数位か、施術されててな……まあその話も今からしなければならないが」

【覆面を外せば、先程の戦闘で負った傷以外、さして言う所の無い顔、だが確かに戦闘中からずっと言葉を発しては居ない】
【言語野の欠損か】
【アリアやミレーユ、ライガ達が適当な位置に落ち着けば、話は始まるだろう】


950 : 名無しさん :2018/11/19(月) 14:03:52 dJ0W4qMs0
【街中――児童公園】
【暖かな日差しの日だった、子供たちは未だ学校のお時間、時折に見かける人影も、だいたいが散歩の老人であり】
【ごく静かな昼間の光景、けれどやがてひゃあんと混じりこむのは、猫の声だったか】

……。……――、なんですか。もお。私、なんにも、持ってないのに……。……。

【――ベンチのところ。見るなら、人影が一つあった。今年の冬を乗り切れるかもわからないようなぼろっちい木のベンチに、お行儀悪い体育座りの恰好で】
【膝を抱えていたところに、どうやら野良猫の一匹が絡んでいるらしい。しばらくニャアニャアするのを放置していた彼女は、けれど、そのうち根をあげて】
【顔をあげる、足を地面まで下ろしたなら、薄汚いテ・オレの毛並みを擦りつけるように媚びる野良猫を見ていたのだけど。――やがて、抱き上げるなら】

もぉ。ばかですね。もおっと、人生楽しそうな人に媚びた方が、楽しいですよお。――。私、ほんとに、何にも、ないから……。
肉球あっためるくらいには、なれますかね、私……。……あんまり冷たくないじゃないですか。ていうか、どっかで、日向ぼっこ、してましたね――?
――お腹空いてるだけですね。でもダメです。私に好き勝手いじくりまわされて、ぽさぽさの毛並みで、なんか、スズメとか獲ってください。

【――――どうにも寂しい人なのかもしれなかった。猫相手に語り掛ける声はくたびれてしまったみたいに微かで、けれど、きっと確かに優し気で】
【曖昧に笑ったなら、膝にのせてやった猫を緩く抱きしめていた。ごろごろって聞こえてくる猫の音階に表情はまたいくらか綻ぶのなら】

【すらっと真白な毛先は腰まで伸びていた。透き通るように白い肌の顔はいくらもあどけなさを残して、重たげに瞬く瞳は、空と海の境目の色をして】
【ニットのワンピースに厚手のストッキング。羽織ったコートはいくらも薄手のもの。おろした足元の靴は踵の高いショートブーツ、身動ぎに小さな石ころを踏みつけて】
【両手には執事のするような手袋をはめていた。それで毛の付くのも構わずに猫をいじくり倒していた。――少女だった、大人と子供の隙間にはまり込んだ、一瞬の装い】

【――ごく平穏な時間でもあった。だけれど何かどこまでも物悲しくて。近くを通るのなら、猫の鳴き声と、その猫の話しかける少女の声、きっと、聞こえるけど】
【あるいは猫に気づかなければ少女の独り言にも聞こえるのかもしれない。あるいは猫の声に惹かれるなら、退廃的な目をした少女に驚くのかもしれない】
【どちらにせよ、――空は意外と晴れていて、お日様の光も暖かい。日向ぼっこをするには適した、ちょうどいい日であった】


951 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/19(月) 19:31:11 WMHqDivw0
>>947

【「死ななきゃ安い」とは、冒涜者を名乗る女の口癖だった。即死しないならどうとでもなるという】
【そういう考えに基づいていつも生きているから――だから今回だって、即死しなかったから、どうにかなった】
【以前「取引」した相手からもらっていた試供品を身体に仕込んでいた。肉体の治癒力を格段に向上させる薬剤】
【奥歯に仕込んだそれを、撃たれた瞬間噛み締めて飲み干した。だからきっと、こいつは、生き延びるだろうけど】

【――――問題はこいつのほうじゃなかった。肉体の傷なんて時間をかければ治るけど、】
【心のそれはそうじゃない。なんて、腐るほど使われ続けてきた台詞。今更言い直さなくたって、誰でも知ってる】
【少女はずっと、治療を施される女のかたわらで泣いていた。赤く腫れあがった左頬を覆い隠す掌】
【薬指にて輝く輪も、今となっては枷のように忌々しく彼女を締め付けるのであれば。――、】
【治療が終わるか終わらないかの頃合い。少女は急に咳き込み始める。細菌を外に出すためのものではなく】
【嘔吐したくて、でもできないときの空咳。胃袋を蠕動させる勢いで何度も何度も、大きく、背を丸めて零すなら】


                        死にたい、


【――――。それだけ言って。事切れるみたいにぐらりと身体を傾がせて、赫の散らばる床に倒れ込む】
【何もかもが限界なのかもしれなかった。かもしれないじゃなくて、実際そう。肉体的にも精神的にも】
【正常を保つための機能が何もかも失われた。そうして意識を失うなら、二度と目覚めないような雰囲気すら漂わせ】

【ふたりの女が倒れ伏す床の上で、残された二人は何を話すだろう。話さなくてもいいけど。どっちにしたって】
【時間が止まることなどないのだから。ならば、やがて――数十分、あるいは数時間経ったころに治ったほうが目を覚ます】
【――――――――当然の如く、撃たれて死にかけたほうの女が起きた。彼女はぼうっと視線を彷徨わせ、】


「…………………………生きててよかった。こんっっっなクソみたいな死に方で死にたくねえわマジで。
 で、何、これ…………シグ? 死んでんの? ……生きてるじゃん。……、……ふーん」


【「遅かれ早かれこんなことになるだろうとは思ってたけどさあ。まっさか巻き込まれるとまでは思わなかったよね」】
【百パーセント濃縮還元のぼやき。呟いて、隣に寝転ぶ少女を見やり、続いて部屋の端にいる彼を見る】
【その目は死ぬほど白けていたけど、……意外にも怨みの色は籠められていなかった。むしろ、同情の色合いさえ垣間見え】


952 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/19(月) 19:56:07 WMHqDivw0
>>948

………………そーだねえ、要らないモノは持っとく必要ないよネ。

【(じゃあそれをうまく篩い分けることができるの?) ……とまでは訊くことができず】
【ただ肯定だけを返してやった。であるなら、答えなど聞くまでもないと判断しているのだろう】
【全部いっしょくたにする気であると。そうしてその中に己も込められている。わかっているけど】
【今ここでそれを責める気にはならなかった。だって、終わりになるから。今日くらいはせめて、】

ウンウン、全部乗せして――ソースも全使いして、虹色にしよーぜ。
赤いのは苺、オレンジ、黄色いマンゴー、緑の……キウイ? ……やべ、青いソース思いつかね。
ブルーベリーとか? でもあんまきれいな青にはなんないだろうなあ……

ジョッキ、いんじゃない? 見栄えはアレかもしんないけど、いっぱい入ってお得だし――

【楽しい話だけしていたってばちは当たらないと思った。そもそもばちを当てる神様が目の前に居るんだし】
【彼女のお気に召すならなんだってやる気だった。バーガーもパフェも、本当に手当たり次第】
【思い付いた具材ばかり口にするなら、最初のほうに何言ったか忘れてしまって。思い出そうとして思い出せず】
【腹を抱えてげらげら笑った。「お店で目に入ったら思い出すっしょ!」言って、無計画に飛び出すなら】

【――――――途中で寄った雑貨屋から出てくるとき、彼は小さな袋を持っていた】
【けれど少女にそれを差し出さない。本当に何に使うのかよくわからないし、もしかしなくても多分】
【本当にふと思いついた生活必需品でも買ったような軽々しさで、袋を揺らして、歩くから】

【カートはこいつが押すから重量なんてまったく気にしなくてよかった。それを袋詰めしたあとだって】
【全部こいつがけろっとした顔して持っていくんだから、本当、何にも気にしなくていい。……のであれば】
【何故か売ってるバカでかいクマのぬいぐるみとか、あるいは買ってしまってもいいのかもしれない】
【ただそれだけは「おれが持つ絵面がキッツいからヤ!」とか言って、そればっかりは少女に持たせるのだろうけど】

【「車持ってくるネ、さすがにこれは買いすぎた」 ――店から出たらそんなこと言って、少女に荷物番を任せ】
【数分後にちゃんと戻ってくる。いかにも安っぽそうな軽自動車、……かつての日、旧市街にて】
【少女を乗せて暴れ回ったときのやつではなかった。さすがにあれはもう、修理不可能だったのかもしれず】
【しかしそれもどうでもいいこと。荷物は後部座席に全乗せして、少女を助手席に乗せたら――今日はきちんと安全運転】


953 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/19(月) 20:03:24 E1nVzEpQ0
>>949


「そう。 ─── 我々の事を知っているの。なら、話も拗れずに済みそうね。」
「私はアリア。此方がミレーユ。彼がライガ。呼捨ててくれて構わないわ。」


【照明が彼女らの顔を照らし出す。 ─── 幾らかの返り血を顔に浴びた、高すぎる背をした銀髪の女/やや背の高い黒髪の女。揃いのビジネススーツに、携える軽火器】
【何処までが真相とも知れぬ自己紹介を軽く視線で示していた。ミレーユと呼ばれた女が、ごく愛嬌のある笑顔を彼らに向けた。そうして、ライガと共に手頃な椅子に座り】
【「あら、 ─── 道理で。」何らかの施術が済まされていると聞けば、幾らかアリアは嘆息を零す。自決用の小道具を持ち合わせていない訳である】
【どの道内臓は潰しているのだから先は長くなかった。慈悲深さ故に殺さなかった訳ではないのだから、生かしておく理由もなければ、このまま逃す生易しさもない】
【せめて幾らかの哀れみを手向けとして、女はコートの裏から拳銃を取り出した。眩いほどに長大な銀色のスライド。口径も銃身も凡そ馬鹿げたサイジングの得物】
【銃口を捕虜の額に押し当てて、 ─── 銃爪を引くならば、 狙撃銃もかくやという轟音じみた銃声と、焼け焦げた血煙ばかりが残るのだろう。懐に拳銃を仕舞えば、改めてアリアも適当な椅子に座り】



「別に、一から十まで話して貰う必要はないわ。 ─── 我々としては、厳島中尉の追っているモノが何であるか」
「或いは、どのような助勢を期待して我々にコンタクトを取ってきたのか。 ……… 尤もこれは、貴方たちにも同じ事が言えるけれど」
「その辺りを理解するのに必要な情報さえ与えて頂けるなら、後の行動は必要に応じて我々が判断する。お互い、仲良し小良しなんて気質じゃないでしょう?」



【「だから悪いけれど、飲み物も結構よ。」ごく事務的で他人行儀な対応であった。触れなば溶けんような白皙と銀髪、玲瓏な青い隻眼。どこまでも冷たい女だった】
【「愛想のないヤツ。それじゃあボクは、マッカランでも頂こうかな。」対してミレーユはカウンターに乗り込み、品定めしたウイスキーのボトルを勝手に拝借し】
【「 ……… 貴方、毒味は? それに勤務中 ─── 。」「匂いとか開栓の具合とかで解るでしょ。なんかあったら分解錠飲めばいいし」全くもって呆れたような視線を、アリアは横目に送りつつ】
【「うわァグレイグースだ! メーカーズ・マークに、プレジデントも ─── ね、ね、ライガ君も飲む?」両腕に溢れんばかりの酒瓶。清々しい程の火事場泥棒を誰も咎めなければ、改めて対話は始まるのだろう。】


954 : 名無しさん :2018/11/19(月) 20:20:05 NxIzmDyQ0
>>952

【――――――彼女は熊のぬいぐるみをお迎えすることはなかった。なぜかツリーみたいに積み上げられた謎の陳列を見上げてはいた、けれど】
【それよりその下の方に並べられていたブーツの形をしたお菓子の詰め合わせの方が気になったらしくって。だからそれは一つ買っていた、中はありふれた駄菓子ばかりで】
【もうほんのちょっとくらい気の利いたお菓子を詰めたらいいのにってラインナップ。だけれどきっとそれ以上に楽しさとか期待とか希望とか詰まってるって、思えたから】

【だからやっぱり荷物は彼に任せてしまうのだろう。眉を下げてしきりに自分も持つとアピールしていたのだけど、多分、そうされていたとして彼女には持てない重さ】
【普段から買い出しなんてしていたからわりに力はある方なんだけれど、――そうだとしても、新品ばっちり百パーセントの重さのものばかり集めたら、どうしようもないから】
【お荷物と一緒に待っていることになる。たくさんの食べ物の袋に囲まれた彼女はスーパーの国のお姫様みたいで、――――なんてことは多分なくって、】
【ごく好意的に見たところで買い物中に躁転したか、拒食症の人間が全部吐くために買っているか。まして彼女はひどく細かったから、――だなんて、まあ、余談なのだけど】
【彼が迎えに来るのなら、せめて車に乗せるのくらいは手伝うだろうか。そうしたら助手席に座るのだろうか。「――窓、開けてもいい?」「車は酔っちゃうの」】

――――――――――――――わたしね、夕月ちゃんにね、怒られちゃったの。だからね、我慢するの、やめたの。

【駄目だと言われるのなら、すぐに諦めた。だけれど開けてもらえるのなら、彼女は長い髪がくしゃくしゃになっても気にせず、外を眺めて】
【楽しそうに笑っていたから、乗り物酔いの憂鬱はびゅうびゅう言う夜風に吹き飛ばされてしまうらしかった。――しかして、とある信号待ちの瞬間に】
【よいしょってきちんと椅子に座り直しながら、――ふと彼女はそんな風に漏らすのだろうか。友人のアドバイスを受け入れたのだと言う、だけれど"今"がその結果なら】
【ずうっと我慢していれば良かったのかもしれない。そしたら世界だって滅ぶ危機に面することはなかったのかもしれない。ただ一人、誰かがイイコのフリして笑っていたら良くて】

やっぱりね、綺麗じゃないわたしはね、みんな、要らないって。

【――赤信号がぱっと青に変わる。車を動かすのなら、彼女はまた夜風に髪先を委ねて遊ぶから、表情は伺えなくて、だけど、きっと、やっぱり笑っている気配がした】
【気がするだけなのかもしれなかった。――楽しげにも悲しげにも怒っているようにも見えた。彼がそうしようと思えば、どんな感情も、きっとそこから見いだせて】

【――――尋ね返しても、もうはぐらかすのだろう。それよりおっきなハンバーガーとパフェを作る方を楽しみたいらしい、ぱたぱた足を揺らして】
【「なにはさもっか」「なんでもできるよ」「いっぱい買ったから」――――めいっぱいにあどけない表情、浮かべ】


955 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/19(月) 20:24:58 E1nVzEpQ0
>>951

【ずっと彼は膝を抱えて泣きながら何か呟いていた。きっと彼にしか意味を成さない言葉の配列でしかなかった。故にそれは何処までも手前勝手な願望でしかなく】
【 ─── ただ、咳き込む少女の零した、暗い言葉には敏感だった。蘇った死人の方が余程まともそうな足取りで、泣き腫らした頬に薄汚く長い黒髪をへばり付かせて】
【倒れ込んだ少女の側で膝をついて、 ─── その背中に縋り付くのだろう。左手と左手を重ねるのはもう執念でしかなかった。息絶えるように色褪せた紅色の髪に鼻先を埋めて】
【だから結局ひどくひどく彼は卑怯だった。抗えないと知っていてこんな真似をするのであれば強姦魔と何の違いがあろう。それでも彼は、悲しいほど愛しい耳元に口付けながら、幽けくひそめくのだから】





        「一緒に死のうよ」





【(首の根っこを引っ掴むような音)(なにか膚を引っ叩くような音)(怒気を込めて呑まれる呼吸)(歯軋り)(溢れる涙の温度)(怒鳴りつけなかったのは慈悲でしかなく)】




【────────………………………………________………………………………────────】



【イズルと呼ばれた女が目を覚ました時、少なくとも外は暗くなっていた。彼の住み家はすぐ駅前だったから、スクランブル交差点の喧騒と底抜けに明るい信号機が、遠くて】
【 ─── 見慣れぬクラシカルロリータの少女が、床置きのテーブルに色々と広げていた。ありふれた陶器の碗に収まった、インスタントのコーンスープ、1人分】


『傷の手当をしてやった人間への感謝は無しかしら、イズルさん? まあ、私たちの不始末でもあるから、手打ちにしておくけれど』
『世話を掛けたわね。 ───……… はあ。如何してこう、全く、遣り方が下手なのかしら ──── 。 ……… 呆れて物が言えないわ』


【吐き出す肺臓さえ無いのにまったく深く人形は肩を竦めた。 ─── ならば女の聞き覚えある声であろう。銀色の女。瞳まで同じ色合い。便利な身体であるらしい】
【少なくともエーノと呼ばれた男は、シグレと呼ばれた少女の背中に、ずっと縋り付いていた。手足を絡めて、鼓動の止まらぬ事を確かめていた。】
【ただその頬だけが少女と同じように赤く腫れていた。『 ─── 全く、本当に。どうしたものかしらね。』肩口に切り揃えられた人工のキューティクルが、揺れて】


956 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/19(月) 21:04:22 WMHqDivw0
>>954

【車内。寒くとも、窓は好きにさせていた。なんでも好きにさせると決めた、今夜ばかり】
【ゆるやかに少しずつペダルを踏む足はひたすら静かだった。ハンドルに添えた手ばかりが軽薄で】
【時折頬杖をつくこともあった。そうして横目でちらと少女を見ていた、信号が赤くある限り】

……………………………………そっか。

【妹の言葉が切欠でそれを決意したということに対しても。みんなに拒絶されたということに対しても】
【彼はそれきり返して言葉を止めた。「おれだったらこうしたのになあ」、なんて、言いやしないで】
【ただ、手だけが少し迷っていた。カーステレオをつけるべきか否か。それっぽい音楽聴いて、】
【鈴ノ音を掻き消したいとでも思ったか。この期に及んで。……結局そんなこと、出来やしなかったけど】

【だから――ドライブ中はひどく静かになるんだろう。甘やかに弾ける声。釣られて笑うへらっとした声】
【彼から何か話題を始めるということはしなかった。ただ、少女の話を聞いて、つまんない返事ばっかりするから】
【機嫌を損ねてしまっても仕方なかった。けど、彼からしたら上手くやっているつもりだった、だって、】

【(今夜は楽しくやりたいし、)     ( ――――――――――、)】

【――――何事もなく車はUTに着くのだろう。そしたらまた彼が全部荷物を降ろす役をやるから】
【先に降りて鍵を開けて中に入る。少しだけ埃の積もった店内。……………………、】
【少女が中に入ってくる前に彼は、テーブルの上に乗っていた何かをさっとひったくって、ポケットに隠す】
【そしたら次の瞬間には何もなかったみたいな顔して笑って、「買ったもの広げよっか!」 って】


957 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/19(月) 21:20:34 WMHqDivw0
>>955

【イズルは起き上がるなり顔を顰めた。「痛い」、当たり前の主張をして、けれどそれ以上は言わず】
【テーブルの上に乗っているものを見て、それだけ。食欲はないらしい、あるいは猫舌】
【それから視線は絡まり合うふたりを見やって、……目を細めて。そこに乗る感情を覆い隠すように】

「それもそうだね、ありがとう…………ごめんね、殺したい女の手当てなんかさせちゃって。
 いや、世話かけたっていうか……お互い様っていうか。ていうかこっちの方が悪いと思うんだよね、
 7対3くらいの割合でこっちのが悪い気がする……いや8体2かも。……9対1か? ……んやあ、
 ここまで来たなら10割全部こっち持ちでいいよ。だってあんな捨て台詞吐く? 最悪じゃん」

【そのままじいっと彼らを見ていた。伺うなら、ひどく哀れむような顔をしていた。何様だと言うんだろう】
【けれどそれを向けるのは限りなくエーノに対して、らしかった。シグレに関してはもう、同情の余地なしと言うように】
【だからといってそれを教育して叱ってやるような素振りも見せなかった。……指先でテーブルを叩いて】

「拗れてんのもどうせ白神鈴音絡みでしょ? だったら尚更シグが悪い。現実見てないほうが悪い。
 だってあんなの殺すしかないじゃん? シグだけじゃなくてさ、他にも何人か、居たはずでしょ。
 白神鈴音に帰ってきてほしいって思ってた連中。居たのに、居たってこと多分知ってたはずなのに、
 ……………………その目の前で全員滅べとか言っちゃうヤツ、どうかしてるじゃん」

【そういう話題になるなり、急に不機嫌そうな雰囲気を散らしだす。叩く指先がいつしか引っ掻く動作に変わる】
【どうやらこいつは個人的に白神鈴音が嫌いなようであり、また、いくらか身内びいきであるようだった】
【今まで白神鈴音のために頑張ってきた、シグレのすべてを毀される瞬間を目撃したなら。そうなってしまったようで】

「あんなこと言われてまだどうにかしようと思ってるほうがおかしいんだよ。さっさと殺しちゃえばいいのに、あんなの」

【――――吐き捨てるように呟いてから。それからふと思い出したように言う、「なんで僕の本名バレてんの? 最悪」】


958 : 名無しさん :2018/11/19(月) 21:38:54 NxIzmDyQ0
>>956

【幸いにも。――幸いだろうか。彼女はあまり車内へ振り返ってこなかった。やはりどうしても空気の動かぬ車内だと、酔ってしまうみたいに】
【そうやって二人違うものを見るのなら、やがて会話も減っていくのだろうし、そのうちやがてなくなるのだろう。気づけば見せつける背中の楽しささえも目減りして】
【窓枠に手を添えて、ただぼうっと外を見ている。「――――あ、」「流れ星」――だから、空を見ていたらしいのだと知れて。お願い事をした気配は、ない】

――――――――……。

【数日前に"箱"のヒトガタに掃除をしてもらった店内は、またいくらか寂れた埃の臭いを纏いだしていた。毎日掃除をして、毎日お客さんが来て、そうじゃないと、寂しいみたいに】
【だから泣いた涙が埃であるみたいに。通りすがりに椅子を上げたままの机を指先で拭って確かめるなら、小姑みたいだった。ぱらと指と指擦り合わせて埃を落とすなら、】

今の何?

【――――――、彼の笑顔を無下にする彼女は、やっぱり、ひどく、悪い子になってしまったらしかった。彼がひったくった"何か"、その内訳を教えろって】
【距離を詰めるなら、やはり足音はこつこつ軽い。そのくせに靴も含めて百七十近い彼女は思ったより大きくって、それで、見上げるまなざしが、じとりと湿っぽい】
【触れたなら指先がぺたつくような眼をしているのだろう。――訝し気。そうしてまたいくらか何かの機嫌を損ねたのを示していた、だって、なんだか、腫物扱いじゃないか、など】
【まさにその通りでしかないと分かりながら/それでも、なにか、期待したのかもしれない。何を。分からない。分からないのに、分からないから、分からないけれども】

――誘って、ごめんね、って、言えばいい? どうしたら、――"そんな風"じゃなくしてくれるの?
**する? ***する? ――――わたしのこと、好きなんでしょう、だったらね、いいよ、――、ヤサカさんのこと"すき"だから。

【拒まれないのなら、彼女はごく至近距離まで近づくのだろう。それこそ恋人同士の距離感に、そうじゃないって知ってるのに、踏み込むから】
【そうして見上げる眼差しは非道いものだった。告げる言葉も非道かった。せっかく笑ってくれている、一緒に遊ぼうとしてくれている彼に向ける言葉にしてはいけなかった】
【――のに、迂遠な温度感に我慢できなくなったらしい。責めるような詰めるような声はけっして誘いには不釣り合いで、ならばどこか自棄っぱちの色を孕む(何も孕めやしないのに)】

それが嫌なら、"ちゃんと"やって。

【(何を?)】

【――それが"何"かなんて、彼女も分かってないのかもしれなかった/だのにきっとどこまでも分かっていた、だってずっと訴えてきたつもりだったのに】
【神様でもいいよって言って、受け入れてほしかった。みんなに。だけど嫌だったことを放ったままじゃ生きていけないって思ったんだった。だから、我慢なんてやめたのに】
【受け入れられることと嫌なことを諦めることが同じ場所にあるって言うのなら、――――やっぱりこんな世界は嫌いだって、彼女は言ってしまうのかも、しれないけど】

【だから袋の中身はまだ出さない。せっかくこの袋の中にはいろんな"楽しい"を詰めて来たのに。今開けたなら、きっと、いろんなもの、混じりこんでしまうから】


959 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/11/19(月) 21:50:53 ZCHlt7mo0
【水の国 路地裏】

――――っ、ぐ…………ッ!
っ、くそ……余計な、傷を……ッ

【傍目にもまともに手入れをしていない事が分かるぼさぼさの赤髪が、険があるものの端正な顔立ちを小汚く彩り】
【デニム生地のベストと枯れ草色のミリタリーパンツ、安全靴と思しき重厚な靴で全身を固めている】
【何らかの異常を起こしている事が見て取れる、赤黒く濁った眼をした、左腕の欠落した身長170cm前後の青年が】

【荒れた息を、無理やりかみ殺すようにして、暗がりの物影に身を潜めている】
【全身は、どこかで転びでもしたように薄汚れており、顔や足など、所々から出血も認められた】

……なんだ――――――――あいつら、一体なんなんだ……?

【放置されていた、コンテナ状の木箱からそっと外を窺い、青年は敵意と焦燥を瞳に映しながら、ようやく一息つく】
【傷を負った身体は、相応の苦痛を訴えているようで、しなだれかかる様に体重を預けながら、苦しげに顔を顰めていた】

――――アコード…………無事か…………?

【隻腕の右腕で、ポケットから通信端末を取りだし、青年はどこかへと連絡を入れ始める】
【液晶から漏れ出る光が、微かにそのもの陰を照らし出した――――】

/23日一杯辺りまで待ちます


960 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/11/19(月) 21:51:08 ZCHlt7mo0
【水の国 ダイニングバー『Crystal Labyrinth』】

――――考えなければならない事は多い……さて、どうしたものか…………

【短いバイオレットの毛皮で全身を覆い、その上からフード付きのマントと半ズボンを着用している】
【左目へとめり込む様な、人相を歪ませている大きな傷跡、更に頬にも大きな傷跡の目立つ】
【ずんぐりむっくりとした体格の、尾の先が不自然に二つ裂きになっている、右目の眼光の鋭い、身長150cm前後の猫の特徴を宿した獣人が】

【店内の喧騒を一望できる、隅のカウンター席に腰掛けながら、物憂げにパイプの煙を吐き出している】
【店内は、今日も今日とてそれなりの賑わいを見せており、多種多様な客たちが、それぞれに酒や料理を楽しんでいた】

(櫻の国海軍の策謀、『みらい』、ここ最近、本格的に再び沈黙期に入りつつある機関、そして『虚神』……
 ――――あぁ、あいつらの精神的ダメージを、どうするかも考えなければならない……足りなくなった人手も同じか……
 『神』を殺す『奴』の腹案は……もう、任せてしまって良いか……?)

【普段なら、店内、或いは周辺界隈の面倒事を片付けるのが、彼の大きな仕事なのだが】
【今はそれよりも、手が掛かる事案を獣人は抱えていた様で、宙を睨み、煙が掻き消えていく様を見送りながら、ひたすらに物思いに耽っていた】
【――――小康状態の裏で、不気味に渦巻く世相。その一端を抱え込んで、心の休まる時は久しくなっていた】

……考えてみれば、こうしてお守りにいるのも、久しぶりか…………
――――いかんな、足元をすくわれる事にもなりかねない……

【ふと、客の喧騒へと視線を戻し、獣人は苦笑しながらパイプの葉を、灰皿へと叩き落す】
【今日は久しぶりに。彼はただの用心棒へと戻っていた――――】

/23日一杯辺りまで待ちます


961 : ?????? ◆auPC5auEAk :2018/11/19(月) 21:51:24 ZCHlt7mo0
【水の国 とある雑居ビルの屋上】

――――そうそう、そういう事よ。あなたたちだって、いつまでも今のままじゃ、いられないじゃないですか?
もう、足固めも済んだんでしょ? だったら、手下さんたちの為に、あなたもそろそろ動く頃合いなんじゃないかしら?
――――もう『Justice』なんて過去の遺物ですし、『UNITED TRIGGER』だって、機能不全になって久しいじゃないですか。これが機じゃなくて何なんです?

【切れ長で涼しさを感じさせる瞳が、艶のある短い黒髪の中で映える顔立ちの】
【医療従事者用と思しき白衣を着こみ、ポケットからはステンレス製の細長い箱が覗いている】
【頭に、白いつば広の帽子を被っている、身長160㎝前後の女性が】

【誰もいない屋上にて、眼下に街の明かりを見下ろしながら、携帯端末で何者かと通信を交わしている】
【空には、重い暗雲が立ち込め、嵐が近い事を予感させていた――――】

――――ま、慎重になるのも分からなくはないですけどねぇ? 前に言ったじゃないですか、あの話……
……そう、出遅れたらあなたたち、もうチャンスはないようなもんですよ? この国を牛耳るのは、あなたたちだって結末、今なら拾えちゃうんですから
まぁ、ともあれ……多少の斥候ぐらいなら、私が言えば回してくれるんですよね? せめてそれくらいはしてくれなきゃ……

【人目を気にする必要もない場所柄、という事だろうか。女性の声は遠慮なく、そしてその内容も然り】
【なにやら後ろ暗いその会話を、聞き咎める者は、誰もいない――――】

……はぁ――――はいはい、分かりましたよ
それじゃ、今度久しぶりにそっちに伺いますから……えぇ、楽しみに待ってる事ですね…………そう、ベッドで出迎えて頂戴な……じゃ、失礼

【一仕切りの通話を済ませると、女性は端末をポケットへとしまい込む】
【その涼しげな美貌には、悪意のある笑みが浮かんでいた】

……やれやれ、鵺ちゃんには逃げられちゃいましたし、やっぱりここは、率先してカードを切っていくしかないんでしょうねぇ……
――――ん、なにかしら……?

【空を睨みながら、女性は自嘲気味に笑みを浮かべて肩をすくめる】
【そのまま、室内へと戻ろうとして――――眼下の通行に、乱れが生じている事に気づいた。思わず下の光景を見下ろして――――】

/23日一杯辺りまで待ちます


962 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/19(月) 21:59:40 E1nVzEpQ0
>>957

【ご丁寧にバジルまで散らされて、隠し味にバターの淡い油脂まで浮かぶカップも、誰も飲まぬならば仕方がない。】
【「貴女の為にやった訳じゃないわ。腐れ縁が哀れだった ─── それだけよ。」凡そ素っ気なくアリアは答えた。さらば本心であるらしい。それでも敵意は示さずに】
【誰が口を付けてもいいように、カップは机上にて湯気を立てていた。 どこか遠くから、救急車のサイレン。机の側に膝を立てて座るならば、少女の義体には余りに不似合いで】
【換言すれば、イズルの愚痴を聞いてやるには似合いであった。人形に苦笑を漏らす息はなくとも、兎角そういう表情をしながら、苛立つような温度感にも首肯する】



「私も彼女とは話したけれど、 ─── あれは、駄目ね。随分と酷い目に遭ってきたのは、分かるけれど」
「"お友達"くらいの仲じゃあ、もう、どうにも出来ないでしょうに。 ……… まして、夕月ちゃんみたいな性分なら、尚更。」



【世界の全てに同情するような声音で言葉を綴った。いつの間にやら机上に乗っていたのは、一瓶で愛も買えてしまうようなブランデーのボトル。】
【「殺せばいい」 ─── そう聞くに、痙攣のように、エーノの身体が震えた(ように見えるかもしれない。)砕いた氷の備えられたショットグラスに、とぷり・とぷり】
【飴色の酒精が注がれて、クルミを恋焦がした薫り高さが、慰めのように部屋を満たしていく。『奢りよ。』誰にともなく呟いて】



「誰かの心を変え得るのは、所詮エゴとイズムの押し付けでしかない。」「それで何か変わる方が珍しいし、変わったとしても幸せになれる保証なんてない」
「そういう意味で、正義の味方ってのも難儀な稼業よ。まだ貴女みたいに堂々と悪党を名乗った方が遣り易い。 ─── 全くもって、皮肉なものね。」


【「 ──── ねえ。聞いてるでしょ?」ならばそれはエーノにも語りかけた言葉らしかった。彼は余りにも生ぬるかった】
【曲がりなりにも情熱家なら少女の懊悩をも塗り潰すような愛の言葉/呪詛を囁くことも出来た筈だった。アリアはそうする事を選んだし、そうするのが最優の方策でもあった】
【然して彼は躊躇ってしまった。ドアの向こうを抉じ開けて、慈悲の一射に撃ち殺さなければならなかった。中途半端に残ったのは、平手打ちの痛みだけ】


963 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/19(月) 22:27:58 WMHqDivw0
>>958

【店内にて――――責められる目付きで見上げられるなら少しはたじろぐが】
【続く言葉には眉をひくりと戦慄かせた。ふうん、そーいうこと言っちゃう。そう言いたげに、】
【彼もいくらか腹を立てたようだった。そして――反省もしているようだった、だって】
【「ちゃんと」やってないのは本当だったから。だから、】

夕月にも言われたのにまだそれ直してないの?
そーいう風に自分のこと大切にしない鈴音ちゃんのことは、おれも嫌いだよ。

【近付かれること自体は拒まない。だけどそれ以上の距離、ひとつになることだけは明確に拒否して】
【宣言するのは、和解とはほど遠い言葉だった。……ポケットの中に手を突っ込む。中身を握って】
【ぱっと掌を開いて転がすんなら、……注射器が転がった。例のアイツらが子供と引き換えに残していったもの】
【赤い靴の子も、白い猫の子も来なくなったんなら。こいつしか残っていないんだった、たんぽぽには】
【だからこいつの責任だった、あんなこと、起きたのは。そのけじめでも付けようとしていたんだろうか】

いや、ね…………おれもおれなりに考えたんだわ。
おれが出来ることってなんだろーなって。世界でたったひとり、
鈴音ちゃんの全部を知ってるおれにだけ出来ること。考えたんだけどネ、

【注射器はもうどうでもいいみたいに手の甲で払ってどっかへやってしまった。すれば次に取り出すのは】
【立ち寄った雑貨屋の紙袋だった。そう大きくもないそれを開いて、中身を、取り出すんなら】
【――――キャンドルがよっつ。淡い桜色のものが、とんとんとんとん、って、置かれる】

………………これくらいしか思い浮かばなかったや。これ、なんだと思う?
これは「如月桜花ちゃん」の分、こっちは1回目の「桜花鈴音ちゃん」。
んでこっちが2回目の「桜花鈴音ちゃん」で……これが「白神鈴音ちゃん」の。

…………、……みんなちゃんと弔われたこと、あったっけ。

【「ちゃんとやってたらごめんだけど」 ――、しかるにこれは、離別のための儀式、お葬式をしようってことであり】
【つまるところ、人によって殺され続けてきた少女の魂に、きちんとさようならがしたいって】
【あるいはハッピーバースデーの儀式でもあった。蝋燭を吹き消して、神様の誕生をお祝いするための】


964 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/19(月) 22:41:47 WMHqDivw0
>>962

【注がれる酒をじいっと見つめるなら――意地悪するみたいにそちらに手を付けようとはせず】
【代わりにほどよく冷え始めたスープに手をつける。曰く、「お酒弱いからイヤ」】
【そうして容器を傾けて、唇になまぬるい液体を浸して――ふ、と息を吐く。白い湯気が逃げる】

「シグもねえ、自分ではわかってるわかってるとか言い張ってんだけど絶対わかってねえんだよな。
 まだどっかで何かバカみたいな奇跡が起きて――みんな仲良しハッピーエンド、なんて妄想してんだよ。
 そんなバカにつける薬はなーし。だから気にしなくていいよミレーユ、あなた、被害者なんだし」

【エーノが震えるのなら、それに釣られて眠り続ける少女も少しだけ身動ぎした。くすん、と鼻を鳴らして】
【「さむいよお」。小さな小さな声で泣いて、「おかあさん」。……子供のころの夢でも見ているらしい】
【冬の日、毛布一枚ももらえなくて、せめてベッドに入れてほしくて。でも入れてもらえなくて泣いていた】
【きっと少女の17年間はこんなことばっかりだった。だから自分の価値が正しく認識できなくなった、】
【……と言えば聞こえはよかった。だけど彼に愛してもらえた事実がある限り、それを改めることは、できたはずだったのに】

「……バカなんだよねどいつもこいつも。みんな誰かを傷付けるのが怖いなんて生ぬるいこと言ってんの。
 そうでもしなきゃ叶えられないこと、いくらでも、あるのに――ねえ。ミレーユ、これはひとつ忠告なんだけどさ、
 そこのバカ女、シグはね――あなたを傷付けるナイフを持ってる、だけど掌に握り締めて隠してる。
 隠し通せてるって思いこんでるだけなんだけど――とにかくね、そーいうの、持ってるから」

【「いつ刺されてもいいように気を付けなよ」。言い終えたらスープを啜って――きっと飲み干したら、こいつは帰る】


965 : 名無しさん :2018/11/19(月) 23:05:20 NxIzmDyQ0
>>963

【詰めた距離で色違いが卵色を見上げる、そうして視線を重ねるのなら、いくらか喧嘩腰の温度になるんだろうか。――少なくとも少女の方はいくらかの"それ"を帯びて】
【返ってきた言葉に一瞬まなこをまあるくしてから、口角は下がるのに眉の端っこは上がるんだった。なら、頬っぺたのところ、わずかにかあっと赤くするなら】

――――ッ、直してないって、何。わたしのせいなの? ――わたしが、悪いの? ねえっ――、自分を大事にする、って、なに?
なにをしたら、なにをしてたら、自分を大事にしてるの? だれも、……誰も教えてくれなかったのに、っ、――どうしてわたしのせいなの!?

【真っ白な肌を赤く染めた感情は羞恥でもなんでもなかった。吐息を引きつらすような数秒の沈黙に、唾を呑み込むような一瞬、重ねたのなら】
【ごく平静を装った低い声はそれでも何か潜めてかすかに震えていた。こんな時の吐息の遣り方知らないみたいに、一つ、一つ、懐から出すように言葉を並べるけれど】
【やがて堪えられなくなってしまうんだろうか、――幼いころに死んでしまった両親も、孤児院の大人も、助けてくれた幼馴染も、だれも、だれも、そんなの、教えてくれなかった】
【あるいは教えてもらっていたのだろう。それでも彼女はそれを自分を大切にするための方法だと思うだけの認識も持たなかったのだろう。だっていっぱい愛し*も*****な**】

【――――――――――望まず終わったすべての関係がちぎれるたびに、もらった愛情はぜんぶその場所に置いてきたのかもしれない】

【そうして転がされる注射器に、彼女は顔をひどく険しくするんだろう。それなに。どういう意味。いろんな言葉が、――だけど、出てこなくて、惑うなら】
【それより先に彼がキャンドルを並べる方が早いだろうか、とん、とん、とん、とん、――訝し気な目をした。よく分からないって顔をしていた、注射器も、蝋燭も、意味が分からなくて】
【説明を求めるような目を向けるのと、彼の言葉は同時であって。ならば見つめた瞬間に、説明される、――――――――わたしたちのお葬式】

………………、ない、

【――――きょとん、とした目をしているんだろう。はたと瞬き一つ、二つ、重ねる。ならばひどくぼうっとした顔、するんだろうか】
【一人目の女の子は溺れて死んだあと、黒いごみ袋に詰め込まれた。二人目の女の子は、路地裏で独り死んだ。三人目の女の子は病院ではあったが、誰も、居なかった】
【(だけど少しだけ嘘があった。どのときにだって彼女には神様が居合わせていた。月白色の神様も、紫色の神様も、いつも彼女のそばにいた。だけど。この子は人に憧れるから)】

【(お誕生日おめでとうだってほとんどやったことがないのに。泣きじゃくって死にゆく女の子に手を合わせてくれた人だなんて、だれも、だれひとりも、)】

でも、――これじゃ、足りないの。わたしはもっと、たくさん死んだもの。

【ふらりと首を揺らす、――ひとまとめにして"わたし"と数えるのなら、それでもいいのかも、知れないけれど】
【「それに、ここに居るから」――、――いつかの女の子たちではない"わたし"。自分の葬列に参加するだなんていうのは、あんまりに、奇妙すぎるもの】


966 : ◆zO7JlnSovk :2018/11/19(月) 23:07:15 arusqhls0
>>857

【睫毛の隙間に映る景色、瞬きよりも短い泡沫、その刹那にしか生きられない美しさを、私達は儚いと形容するのであれば】
【彼女はまた、永劫に引き延ばされた儚さを演じていた、線香花火落ちる一時、睦まじく語り合う絶頂の一片、満開になる寸前の蕾】
【甍に降り立つ天使の横顔、神様が作り上げた戯れの帰結、──── そこに潜むのは、確かな意図】


──── 質の悪い呪いの様なものですわ、一度世界に産み落とされてしまったルールは、否が応でも認識されてしまいます
だからこそ、虚神達を司るその "ルール" もまた、認識されてしまったのです、それ故に、それを消し去る事は非常に困難でいて
ふふ、神様はどれだけ意地の悪い事でしょう、──── 最初からきっと、不公平な催しですもの


【続く問いには微かに考え込む素振りを見せた、少女の様に擽ったく瞬いて】


……少なくとも私が "ロールシャッハ" の記憶を辿った限り、"無垢の祈り" にてその役割は終わっていた筈ですわ
私も直接インシデントを確認した訳ではありませんが、この時点でウヌクアルハイが現存している事、それそのものが
ロールシャッハにとっては、ある種の ──── ええ、ある種の誤算であるとも言えるのでしょう

だからこそ後者の意見に私は賛成ですわ、ウヌクアルハイそのものに、今現状世界を滅ぼしうる力はありません

それ故にスナークこと、イル=ナイトウィッシュが何かしらの謀りをしているのでしょうが


──── 何か気になる点でもありまして?


967 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/19(月) 23:12:51 BRNVt/Aw0

【路地裏】

【そう、暗くない場所だった。入ってすぐの表通りの光がまだ届く辺り】

【壁に背を預けて座り込んで、両膝は胴の前。縮こまるようにして。そんな小さな影が一つ】

【明らかに異様で、その上異形の少女、だった】

【月白色の肩まで伸びた髪にデニムのワンピース、素足に履いた紺色の底の低いストラップパンプス】
【頭からは髪と同じ色の猫の耳が生えていて】

【ワンピースの右の肩口から腕にかけて走る破れ。布地に血が滲んでいるのと破れた所からのぞく肌が治りかけの傷色をしている事からどうも斬られたようで】

【ぎゅう、と両手に抱えられた頭。前髪の隙間から見える瞳は濁った金色で】
【その下にはうっすらと隈が出来ていて】

どうしようわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだどうしようどうしようどうしようわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだ
【ぶつぶつとそればかり呟かれる口】
【がたがたと体を震わせて】

【ふと止んだ声。少女は片手でバッと口を押さえると】

ぅ……ぇぇ……

【壁の方を向いて嘔吐く】

【けれどもその指の隙間から溢れていくのは液体だけで】
【ならば暫く何も口にすらしていないのだろうけれども】

【そうして荒い呼吸をし頭の方に置いた手でぐちゃりと髪を握り締めて】

【口を押さえていた手を落とすように地面につけて相も変わらずがたがたと震えて】


968 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/19(月) 23:16:37 E1nVzEpQ0
>>964

【「 ─── 私が誰かに奢ってやるなんて、滅多にない事なのだけれど。」やや青い双眸を潜めて、訝るような声音。】
【それでもグラスに注がれてしまったものは仕方がなかった。人形は人形であったから、飲み食いなど出来はしなかった。】
【然して45度の蒸留酒でしか禊げない情念もまたあるのだと、アリアは理解していた。遺したのは、かつて愛した友のため】
【齢20を超えて己れの性分を如何にかしようというのがそもそも誤った発想だった。 ─── ならばやはり、なにかを殺してしまうしか、選択肢はない】

【沈思に浸るような横顔でアリアは憂いていた。 ─── 譫言に等しい、紅い少女の言葉を聞いていた。口許だけを笑わせた】
【成る程こんな懇願を聞かされて彼が憐れまぬ筈もないし傷付けられる筈もなかった。誰かに差し伸べる甘さは、昔から変わらない】
【それでいて何処かで自分の生半な遣り方に誰かを変えられると信じているのだから救いようがなかった。彼と彼女が別れてしまった理由も、詰まる所はそこにあった】
【 ──── だから既にもう彼は目覚めていて、泣いてしまいそうな少女の声音を、儚く抱き留めていた。掻きしゃなぐるように、その背中に爪を立てたくて、だから】




       「待てよ」

             「聞かなきゃ、死ねない」



【 ─── まったく胡乱げに上体を起こした彼は、その忠告から逃げる事をしなかった。赤黒く泣き腫らした目尻の上で、深海より淀んだ双瞳が、然して確かに輝いていた】
【少なくない不愉快さをアリアは横眼に示した。斯様な言葉を吐くなと平手を寄越したつもりだった。それを彼は意に介することもなかった。】
【されど歯切れの悪い物言いであったのが最後まで卑怯だった。これ以上は傷付きたくないのだろう(本当に?) ─── どんな真実を語って聞かせるかは、女に委ねられていた】


969 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/19(月) 23:26:38 WMHqDivw0
>>965

でも夕月は教えたんでしょ? ……自分で自分にウソ、つかないでよ。
好きでもないヒトのこと好きとか言うのは、ダメ。……おれもだいぶ傷付くんだぜ、それ。

【怒られても苦笑を交えて返すばかりだった。だってそういうことされたら傷付くし】
【自分も相手もよくないことばっかでしょう、って、言うなら。「じゃあ今覚えて帰って」、】
【「本当に自分に正直でいて。それがきっと、自分を大事にすることだから」 ――だと言うなら】
【この男の方がよっぽど自分のこと、大事にしていないようにも見えるのに。……ずるい大人の顔して笑うから】

そ? じゃあもっといっぱい買えばよかったな。……おれがしたいんだよ。
ねえ、死んじゃった子はね、お見送りしてあげないといけないんだよ。じゃないと、

【「未練が残るでしょ?」 それはきっと、死に逝く子が現世に未練を残すから、という意味ではなくて】
【ここに残る人がいつまで経っても、向こうへ行く子に未練を残してしまうから。そういう意味の】
【残された側が勝手にやるだけのひどい自己満足の儀式であった。だから、逝ってしまう子は無理に参列しなくてよいし】
【そんなことされても困るって言ったってよかった。けど、こいつはそうしたいって言って】

…………だっておれは見ちゃったんだもの。鈴音ちゃんが何度も死んでいくの。
だったら一言だけでも、ひとりひとりに、頑張ったねって言ってあげてーの。
かわいそうだねって、言うのは、あんまりちょっと傲慢かもしれないけど――それでもさ、
報われないじゃん。死んじゃった、「人間」の鈴音ちゃんが。……おれの中では鈴音ちゃんは、人間だったから。

【結局のところ、彼は、その認識を最後まで殺すことができなかったから。だからここでお別れがしたい、それだけだった】


970 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/19(月) 23:42:34 WMHqDivw0
>>968

「………………撃っちゃってごめんなさい、は無いワケ? まーいいけど。
 本当に僕が話しちゃっていいの? その子が起きてから、何隠してんだって詰めたほうがいい気もするけど」

【最初の言葉はたぶん、目覚めてすぐにアリアに言われたことを根に持っての発言だった】
【至極どうでもいいけど。……そして、未だ床に転がったままの赤い子を指差すなら】
【その子の口から割らせたほうがよく「効く」と思うんだけど。……そういうことを言外に言っていて】

【けれど。――早く帰りたいから、さっさと話すことに決めたらしい】

「その子ね。そのうち――と言っても数年の猶予はあるだろうけど、それくらいの時間が経ったら、
 あなたの前から消えようとするだろうね。知ってる? 死期を悟ったネコがどういう行動に出るか」

「それと同じだよ。その子は長く生きられないから。もってあと10年、したら――死ぬから」

「永らえさせる方法もなくはない。けれどきっとその子は、今のまんまじゃそれを選ばない。
 だからひっそり姿を消して、どっかに逃げて、ひとりで死のうだなんて思ってるんだろうね」

【そこから先の話は紡がない。あとは本人に訊け、僕はもう巻き込まれるのはうんざりだ】
【――とでも言わんばかりに立ち上がろうとすれば、まだ傷が痛むみたいで、よろめいて】

「まあ、一緒に死にたいんなら、そのくらいの時が経ったときに『すればいい』よ。
 それとももっと早く死にたいなら――その子の正式な『殺し方』、ちゃんと聞き出せばいい」

【しかし確かな足取りでこの部屋から出て行こうとするんだろう。「アリア、傷が痛いから送ってってよ」】
【なんて言いながら――その通りに、この部屋に本来居るべき二人が取り残されるなら、その時ようやく】
【少女はぐずるみたいな声を上げながら、瞼を重ったるく持ち上げようとするんだろう。その向こうに昏い瞳をたたえたまま】


971 : 名無しさん :2018/11/20(火) 00:01:30 NxIzmDyQ0
>>969

【ぱちと瞬きをした。小学生に超ひも理論の話をしたらこんな顔をするだろうか。それとも原始人にコンピューターの理屈を説明したらこんな顔になるだろうか】
【おかしなことに、――あるいは彼女の認識の中で限りなく正常に、彼女は"それ"が、"そのため"のものだと理解していないらしかった。或いは、だから、こうなったのか】
【我慢しないとか嫌なことを嫌って言うとか、――そういうのを額面通りに受け取った結果がこれなのかもしれなかった。瞬きが一つ二つ重なって】

"すき"だよ――?

【やがて漏れ出る言葉は果たして如何様な意味であるのか。嘘ではないようだった。ご飯を一緒に食べた。お話した。助けてくれた。会いに来てくれた。迎えに来てくれる、って、】
【途端に泣きそうな顔をするのはどうしてなのか、――少なくとも嫌いであるつもりはなかった。だけどどれくらい好きかって聞かれたらきっと困ってしまうんだった】
【――だからまるで仕返しみたいに小さく呟く、「嘘吐いてるくせに」。なのに何が嘘なのかは言わないから、単なる、あてずっぽうの嫌がらせなのかも、しれなくて――】

【――――――そっと少女は指先を伸ばすのだろう。そうして蝋燭を一つ手に取る、桜色に指先を這わせたなら、すべすべする手触り、わずかに爪を立ててみる】
【爪の中に混入したごく小さな蝋の欠片を床に落とす。――さっき彼が「白神鈴音」の分だと言った、蝋燭だった。それを彼女は両手に包み込む、手慰みに】

――どうして、今ここに居るわたしには、「頑張ったね」も「かわいそうだね」も、ないの?

わたしだって、がんばったのに、――頑張ってるのに、かわいそう、なのに、ねえ、――、――死んでないから、駄目? ここに居たら、だめなの?
なんで、みんな……、わたし、がんばったのに、いっぱい、がんばった、のに、っ! ――じゃあ、今すぐわたしを、かわいそうな子に、してよ、
みんなが護ってくれて当然なくらい、――誰も虐めようって思わないくらい、非道いこと、もう二度と、されないくらい、かわいそうにして!

――――――そのためなら、手だって、足だって、ねえ、いらないの、要らないから。ねえ、わたしを、

【狡いって言葉が漏れたなら、だめだった。気づけば蝋燭にぎりぎり爪を立てて、0.2の硬さを抉り取る。俯くなら少しだけ長い前髪が目元を隠して、でも、】
【ぎゅうって噛んだ口元は隠せずに。ましてや隠された中から零れ落ちる水滴の色合いを隠してくれるはずもない、――ずるい、狡い、ずるい、ずるい、呟きが連なるなら】
【そもそも白神鈴音という神様は自分にすら嫉妬する神様だった。いつかありふれた幸せを持っていた幼い頃の自分にも、いつか人間だった自分にも、ひどく嫉妬する神様だった】
【だから楽しい思い出の全部を消し去ってしまったくらいで、――去年の暮れ程に取り戻すまで、彼女の中に楽しい思い出はなかった、だなんて、】

――――――――――――――――――、怖いものから護ってよ、

【――爪と肉の間に蝋がみしみしと割り込んでいくなら、泣きたくなるほど痛かった。だけれどどうでもよかった、今まで何度も痛くて苦しくて死んできたのなら】
【それになにより痛くて苦しそうになったら"かわいそう"って言ってもらえるかもしれないから。憐れまれてよかった。憐れまれたかった。そうしたら護ってもらえるのならば】


972 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/20(火) 00:21:44 E1nVzEpQ0
>>970


【グラスに盛られた氷が溶けて、からりと澄んで打ち鳴るまでの、沈黙。】


【口を噤んだまま彼は言葉を聞いていた。一握の間を置いて、揺らぐように頷いた。流す涙も溢れる涙も、もう無くていい】
【ただ小さく彼はなにか呟いた。 ─── 誰とも視線を合わせる事はなかった。己れの内心に宿るものに結末を付けるための言葉。】



        「 ──── そっか。」「ありがとう。」



【背中に投げかける一言か二言は震えも怯えも与り知らぬものだった。また一ツ、ずっと守っていたものを壊したのだろう。今はそれで良かった】
【「仕方ないわね。」すればアリアは肩の一つでも貸してやる。人形の背丈は女のそれと殆ど等しく、だというのに膂力は真っ当な人間のそれではなく】
【下の裏通りに停めてあったセダンまで導けば、適当な座席に乗せておくのだろう。 ─── 慣れた仕草で発進するなら、もう、関わりのないこと。】


【そして閉じ込められた2人の世界が、再び優しい音響を失うなら ──── 現実味もなく聞こえてくるのは】
【宵闇のネオンに暈けた雑踏の騒めきと、閉じた蛇口からシンクに溢れる水と、寂しげに唸る蛍光灯と、ブランデーに溶けて軋む氷と、2つの鼓動に重なる呼吸と】





      「ねえ、シグレ」

        「ボクは、 ─── 許さないよ。」「絶対に、許さないから。」





【目覚める少女に躊躇いなく向ける虹彩が、映り込み合う中で紅く蒼く入り混じるならば、洞々たる黒さに変わるばかりだった。】
【押し倒すように体重をかけて、そっと少女の喉筋に左手を添える。 ─── 少しずつ力を込めていく。青白い肌に指を食い込ませていく。それが致命的な窒息に至る寸前に、】
【 ─── 漸く彼は指を離して、すれば何もかも嘘だったかのように、少女の胸許へ抱き縋って甘えようとするのだろう。(なにを許さぬのかは言わずとも、分かってくれると信じていた。だから、やはり彼は卑怯で)】


973 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/20(火) 01:13:47 WMHqDivw0
>>966
【ふむ。――何と言うかそろそろ誉め言葉が思いつかぬぞ。文壇は私の得意とするところではない】
【作者の意図を二十文字で述べなさいとか言う類の問題に枠数が足りた試しがない】
【余りに多彩なもので何かの伏線かと疑ってしまう程だ】

【しかし、この黒陽。その艶姿に魅了されることはない】
【――何故なら、その積み重ねられた非人間的な美貌の描写こそが、結句、彼女への疑念を深めることになりからだ】

傾国の美女――等と言う言葉があるが、良い意味で使われた試しがないな。
シャーデンフロイデが変じているようなモノばかりなのでな。



さて――

虚神達の組み上げた、グランギニョルのルール。
これを"消し去る"必要はないのだ。
幸いと言うべきか、ロールシャッハの用意した施策によって、そのルール自体を相殺するためのロジックは組み上がっている。

――むしろ私は最初から"そういう話"だったとさえ思っているがな。
集合的無意識やミームと言う単語が飛び交って久しいが、グランギニョルに限って言うので有れば、その認識は決して手広く行うべきものではない。


仕上げの時は近い。
私は、"ティーポット"を用いて彼等をもてなすとしよう。



イル=ナイトウィッシュは、虚勢で事を構える人間ではない。
手管は何かしら用意されているだろうさ。
今までと同じようにな。


【言葉の綾であろうか。黒陽は、彼の病魔を"人間"だと語った】
【それは、サクリレイジもボスも持ち得ない視点では有ったが】
【黒陽は、スナークとイルを混ぜ込んで評していない】


スナークもまた、虚神として、世界を滅ぼすほどの器は持っていない。
イル=ナイトウィッシュは強力な力を持った能力者ではあるが――それでも、無敵ではあるまい。
力押しならば、戦闘に長けた能力者に囲まれれば勝ち目はないだろう。


だが――同時に"負けもしない"
スナークを、現状の能力者達が滅ぼすことは不可能に近い。
彼奴を滅ぼすならば、対抗神話を始め、何らかの打開策を探さねばならんだろうな。
殺意を滾らせている者は多々いれど、心意気だけでは踊らされるだけだ。


974 : キャロライン ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/20(火) 02:12:19 6IlD6zzI0
>>967

――――あら、こんな夜遅くに一人で出歩くなんて感心しないわ。
ねえ、そこのアナタ。何かに酷く怯えているみたいだけどこんな所で震えるのは宜しくないわ。
不逞な輩や不敬な輩に襲われかねないもの。―――あぁ、私はそんな輩じゃないから大丈夫よ。


【路地裏に足を踏み入れたのは一人の女性】

【白の強い、月毛色に近い長髪と常に微笑みを湛えたグレーの瞳が特徴的で】
【物腰が穏かそうに見えて、かつ近づく人々に警戒心を与えにくい雰囲気を漂わせる女性だった】
【白のワイシャツにコートを羽織り、黒色のスラックス姿のその人物の名はキャロラインと言った】

【別名『記憶屋』と呼ばれる都市伝説。誰もその正体を知らぬ都市伝説が少女の背後に立っていた】


――――取りあえず、こんな場所から離れましょうか。
暗がりに逃げて、暗がりに紛れ込んだって、その白色は月のように浮かび上がるから。
見たところ怪我もしてるみたいだし、なおの事放っておけないわ。


975 : ◆zlCN2ONzFo :2018/11/20(火) 09:21:09 6.kk0qdE0
>>953

「アリア、ミレーユ、ライガ、か、うん!覚えたぞ!」

【果たしてそれが信用行くものか否かはさて置き、互いの自己紹介を果たしたらば、幾分か解れた表情を百合子は3人に向けて】

「容赦無いな〜、まあそれが普通か……」

【アリアはその身の丈に、非常に良くあっている拳銃を取り出し引き金を引く、バランスの良さか、妙に絵になっており】
【つい今しがた、身体を弾けさせ、息の根を止められた、哀れな兵士に一瞥をくれ】

「うーん、まあ掻い摘んで話すなら先ず君達に会談を申し込んだ時点では本件に対しての助力と言うより虚神への対抗戦線の締結が主な目的だった様だな、そして其方への黒幕に関する情報提供もだ」
「ただし、厳島中尉達にとって計画が狂い出したのは、君達に会談要請を送った直後位からだな、兼ねてより体調を崩されていた魔導海軍司令長官、土御門晴峰元帥の容態が悪化された」
「これに不信を抱いた、海軍土御門派の将校達が調査を行った結果、本件は現海軍司令長官蘆屋道賢大将の、特殊な呪詛であると判明した」
「更に探って行くと、土御門派が秘密裏に研究、そして凍結していた、人工生命を鍵とした新鋭魔導イージス艦の建造計画、技術、設備を盗まれている事が判明した」
「魔導海軍は、我々国防陸軍とは違い技術では無く、異能や魔術、魔力に重きを置いた軍隊組織、それ故に、装備は魔力や神性との親和性を加味し前時代の物を使っている、ここで世界との軍事的なバランスが取れていた訳だな」
「だが、この新鋭艦の計画は、そう、察しの通り、蘆屋道賢大将の陰謀は……この世界の制海権の掌握、軍事バランスの崩壊だ」
「それに気がついた土御門派の将校は、厳島中尉に連絡を取った、そして、凍結された筈の魔導イージス艦の鍵となる人工生命『みらい』を水の国へ逃した」
「土御門晴峰元帥は、身柄を旧知の間柄を慕い我々陸軍が保護しているが、みらいは逃亡がバレてな……先手を打たれた」
「そして水国における、邪魔者排除の意味合いもあったのだろう、厳島中尉以下海軍陸戦隊諜報部は全員捕縛だ」



「更に悪い事に……黒幕とも手を組もうとしている様だな海軍は、加えてこれは、まあ、あくまで予測だが、まだ何か企んでいる気がする、それもバックにとてつもない大物を引き入れて、な」



【かなり掻い摘んだ形のようだが、百合子はこう一息に流れを説明した】
【少なくとも、その筋道から嘘は言っていないだろう】
【やがて飲み物が突き返されれば】

「ん?そうか?勿体無い、じゃあ私が貰うぞ」

【更にもう一本紅茶を飲みつつ】

「そうなる直前、厳島中尉から我々はある文書を受け取っている」
「いつ、何処の誰とどう関わり、どんな事に立ち会って来たのか、厳島中尉の詳細な記録、これが『い号文書』無論、蘆屋道賢一派には漏れていないし、さっきもこれで君達の所属がわかった訳だ」
「そして我々の任務は、この文書に記載された人間達、こと協力者達の保護と情報収集だ」

【ぷはっとアイスのストレートティーのペットボトルから口を離して、こう付け加えて話す】
【一方で……】

「ミレーユさん、僕はこの後バイクの運転がありますから……」
「ミレーユ氏には、では私が注ぎましょう、ここの責任者は賀茂少尉ですが、まあ彼なら何も言いますまい」

【綺麗なグラスを用意してミレーユの前に置く杉原兵長と、その横で少々呆れ顔のライガ】
【この状況だ、マッカランでもバランタインでもシーバスでも、好きに飲んで持ち帰ったとて、誰にも咎められる事は無いだろう】

「あー、まあ、あれだ、かなり駆け足で話してしまったが質問に答える内容は以上だ、他に何か聞きたいことはあるか?」

【ちょっとした咳払いを挟みつつ、アリアからはかなり見下げる身長差の、百合子が3人に聞いた】


976 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/11/20(火) 11:25:38 arusqhls0
>>973

【絵画然り文筆然り音楽然り、──── 芸術は皆、本質的に善なるものを求めるが故に、各々の手法に於いて普遍的な善が含まれている】
【それ故に我々はあらゆる手段を用いて、その美を追究する、と ──── 古人が風情に示すが如く】

【描写の上で描かれる世界は、時に絵画によって示される視覚的な喜びを凌駕すると考えている、それ故に】
【打たれる文字列が示す、百万遍の美の形、──── それを追究する試みにこそ、虚ならざる本心が示されているとも、】

【──── それ故か、何故か、彼女は微笑む、その一言だけでも十全に世界の美しさを描けるのだろうけど】


……意外ですわ、お話を聞く限り "サクリレイジ" という組織はそのルールの抹消を目標にしているものと思っていたのですが
手広く行うべきではない、という点に関しては同意ですの、あまりにも荒唐無稽なお話は、その下地が無ければパラノイアの妄想に過ぎません
今こうやって認識されていること自体が奇跡のようなものですから、──── 十年前など、お話にもなりませんもの



──── その懸念は私もしていた所ですわ、イル=ナイトウィッシュが幾ら強力であったとしても、徒党を組んだ能力者のそれには及びませんわ
そして同時に、それらの脚本は、今まで何度も描かれてきた結末と一緒ですの、力を持った能力者を、力を合わせた能力者が打ち破る

唯の一つの例外も無く、この世界に於いてはその勧善懲悪が一つの流れとしてできあがっているのです、そして、この演目も例に漏れず




結局はイルの試みも、鈴音の謀りも、スナークの思惑も、全てが全て湖面に描かれた月の如く、儚い空想に過ぎません




ただ、スナークを滅ぼすとなると厄介ですわ、そもそも、今までの虚神達は、多大な力の行使をする為に、殺せる領域にまで降りてきた節がございます
それ故に、スナークがその主導権をイル=ナイトウィッシュに握らせている以上、スナークを滅ぼす手法は考えなければなりませんわ


977 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/20(火) 12:25:05 BRNVt/Aw0
>>974

【不意に背後から聞こえた声。ゆらり、と緩慢な動作で振り向けばそこには一人の女性がいて】

ぁ、ぅ……
【月白色の糸はばらりと少女の顔に掛かり、その隙間から見える濁った金色は大きく見開かれて】

……不逞で不敬な奴の方が良い……
こんなのの事なんか酷い目に遭わせて殺してくれるんだもん……
【女の言葉に少女はぽつ、と呟いて】

怪我……ぇ……怪我……?
……うん、だいじょぶ、です……これは……痛くないし……

あの……本当に、大丈夫だから……その……

【ほっといてくれません?と少女はおずおずと女を見上げ】

……そ、だ……
あの……私に構うんなら……

殺してくれますか?私の事!

……なーんて!冗談ですけど!あははははっ…………はは……は…………
【そうかと思えば不意に明るい声になって笑うのだが最後にはその声も萎んでしまって】


978 : プロフェッサー黒陽 ◆KWGiwP6EW2 :2018/11/20(火) 15:48:42 myIKbKbM0
>>976
【芸術とは科学と相反すると思われがちだが、そうではあるまい】
【突き詰めれば美を愛でる心にさえ何らかの理屈は通っている】
【しかしてそれはどちらかと言えばロールシャッハの得意とするところで在ろうが】

貴様も言うように、一度根付いたミームを完全に排除することは難しい。
寝付けぬ者が早く寝なくてはと焦り、余計に眠れなくなるようなものだ。

つまるところ変えねばならんのはミームに侵食された能力者達の意識ではなく……それを受け入れた世界への認識の方だ。

……ふむ?十年前とは?

【そこだけ、今まで出たことない時間軸に思えた】
【少し訝しんだ様子で男は視線を細める】

それもまた新世界における一つのルールよな。
世界を滅ぼす試みは成功しない。
無理に敢行すれば逆に滅ぼされるのみだ。

【グランギニョルのルールもまた、その土台の上に組上がっている以上、そこに例外はない】
【ロールシャッハはその土台を根底から覆そうとしたが、上手く行かなかった】
【当然だろう。あの極論を能力者全員が承認することなど有り得ないのだから】
【だが、それでも尚、彼女達は事を成そうとしている。……ならば何らかの勝算を見い出しているのだろうが】

元々、最初に接触したスナーク狩りの一幕、そしてインシデント"無垢なる祈り"。
その双方で、倒されたと思ったスナークはどちらもブージャムだった。

特に先のインシデントでは、鵺なる少女の姿と人格をイルのものに組み替えていた。

アレがもし制限なく実行出来るならば、スナークを倒す際には常にそれが偽者であることを否定出来なくなる。

そして不条理なことにこの条件には後出しが可能だ。
何度スナークを倒したと思ってもそれを"ブージャムだった"と定義できる。

スナークの能力は固執だそうだが、スナーク狩りの末尾を見る限り、奴の存在の本質は"捕まえられない"と言う点に尽きる。

故に奴は何度失敗しても逃げ仰せ、また同じ試みを繰り返せることになる。


……皮肉なことにイル=ナイトウィッシュと言う存在自体が一種の狼少年……いや狼少女か?……になってしまっているのだがな。


979 : イスラフィール ◆zO7JlnSovk :2018/11/20(火) 19:08:11 S/DUh6T.0
>>978

【十年前という言葉に対する反応に、イスラフィールは曖昧に笑う、一昔前というニュアンスで使うにしては些か具体的に過ぎた】
【彼女の一挙手一投足全てに意味を持たすには、その存在はあまりにも可憐であるが故に、時として彼女は偶発的を是とする】
【結局の所、辻褄合わせに過ぎないのだ、神の子がその行動すべてに意味を持たせるには、どこまでも歪な帰結になるのだから】


……種が明かされている分厄介ですわ、これまでのインシデントでは "種が分からない" からこそ混乱したのですが
今回はその逆でしょう、イルの能力も、スナークの能力も "種が割れている" だからこそ、質が悪いのですわ
貴方様が仰る通り、ブージャムという一種の抜け道が無限に用意されているのですから

ここまで能力と性質が乖離しているとなると面倒ですわ、スナークという隠れ蓑を固執させ、種が明かされれば逃げ失せる
ふふ、破壊力ではなく生存力という意味で厄介な "虚神" ……これまでとはまた、違ったタイプの存在である事は間違いないですわ

逆説的に言えば、ここまで種が明かされているのなら、貴方様達には突破口がすでに見えているのではなくて?
狼少女という言も気になりますわ、宜しければ私にご鞭撻くださいまし

脳髄にまで強く打たれる行いを、調教と形容するのでしたら、私は然と調教されなければいけないのですわ
振り下ろされた言葉の鞭が無知を戒め、表層に広がる蚯蚓腫れと共に、じくじくと、心の奥底にまで疼いていく

なんて嘯くのも冥利に尽きて、―――― あら、ただの冗句ですわ、特に他意もありませんの


【指先が肩口をなぞる、肌を透かす材質のカーディガン、薄く塗りたくった黒は、夜露の様にその下の花びらを映す】
【服飾に押し留めた官能が、ふとした拍子に漏れ出す様に、豊満に実った果実が、尖った爪で表皮を割かれる様に】
【零した吐息は桃色細工、垂らした甘露を煮詰めても、その甘い色合いには遠く及ばず、遥かに薄く希釈された愛を尊ぶのだから】

【親指が布地に触れて、戯れの様に少しだけ上着を捲って、垣間見るのは柔肌の名残、閉じた両手の隙間から見える秘所に似て】
【そうして彼女は鬼灯色の口元を軽く上げた、微笑みと呼ぶにはあまりにも微かで、無表情と呼ぶには媚に満ちていた】
【頬に描くのは柞の色合い、徹頭徹尾、彼女はその存在を遍くだけだから】


980 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/20(火) 20:14:12 WMHqDivw0
>>971

【「……イルちゃんへの好きと、おれへの好きとは、違うでしょ」。これで伝わらないならもう仕方ないけど、】
【とにかく彼は何かしらに傷付いてはいるようだった。傷付いてますってアピールする表情をしていた】
【嘘つきって言われても素知らぬ顔で笑うんだから、そうして、目を細めて】

………………「かわいそう」であり続けたいんだったら、悪い子になんてならなきゃよかったんだ。
どれだけかわいそうな子でもね、悪いことした瞬間にかわいそう、「だけど」って言われるようになるの。
「かわいそうだけど、悪いことしたからダメ」って言われるの。そーいう世界だから、滅ぼしたいんでしょう?

【結局のところ揺れ惑っているだけなんだと解釈する。だったら、……どうするでもないけれど】
【蝋を削り取る手をそっと取ろうとして、そのまま、取り上げようとする。「そーいう使い方じゃないよ」って言って】
【困った子を見下ろすみたいに、嫌らしくも大人の顔。そのまま口にするならどこまでも卑怯めいて】
【けれど、手も足もいらないって言い始めるなら少しだけ表情が険しくなる。そうして死んだ女の子を知っていて】
【その子が妹であるのなら。そんな言い方してほしくなかった、そんな死に方望まなかった子が、いるのに】

かわいそうな子になりたいの? 悪い子になりたいの?
自分でもわかってないなら、そーいうの、言わないほうがいいよ――どっちにもなれなくなるから。

【少女が前髪で視界を隠すなら、その向こうでかち、かちって音が鳴り始める。ライターの着火音】
【きっとこのまま火をつけ始めてしまいそうだった。そうして、人間だった鈴音をみんなお見送りしてしまう気だった】
【そんなことしてほしくなくて、ずっとここに居たいなら――それを止めるべきだろうけど】

そーいう台詞はさ。たぶん、イルに言うべきなんじゃないかナって思うけど。
おれでいいの? おれ、嘘つくし、悪いコトする大人なのに。そんな人に護られたって嬉しくなくない?

【そしてやっぱり続く言葉はあまりに卑怯だったから。あなたがいいって言ってくれないなら、してあげない】
【そういうニュアンスの言葉だった。であるなら――これできっぱり否定してほしかった、じゃなきゃ】
【やっぱり未練がきちんと燃やせないから。きちんとお別れしたい。それが彼の我儘だった】


981 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/20(火) 20:27:38 WMHqDivw0
>>972

【あまりにもあっさり二人の空間が戻ってくる、瞼を開いてそれを認識した瞬間の少女の顔は】
【絶望にまみれていた。なんでこの世界でまた目覚めてしまったんだろう。一生起きたくなかった】
【こんなことになるんなら、冷たい土の中で眠っていたほうがよっぽどマシだと思った。だから、】
【無責任に去って行く、傷付いた“創造主”の背中にまた視線を向けようとした。怨みを籠めて、けれど】

――――――? ――――、……っ、〜〜〜〜〜〜!!
ッ、ッ、……………………! ………………、………………、

【のどを握り締められて覗き込まれるのであれば、そちらに引きずり込まれる。そうして、】
【絶えず涙だけを流し続ける瞳が、発せない言葉なんかよりずっとずっと雄弁に物語っていた。「どうして」】
【「どうして?」「なんで」「どうして何も上手くいかないの」「苦しい」「もういや」「全部あたしのせいだ」】
【「全部全部あたしがいたせいでこうなった」「みんなは」「なんにも」「悪くないのに」「もうやだ」】
【「死にたい」「死にたい」「死にたい」「死にたい」「死にたい」「死にたい」「死にたい」「死にたい」】

【――――――――――――――――――しかしそれも叶えてもらえないのであれば、】

…………………………げほっ、けほ、……ひゅうぅ、っ、…………けほっ、
やだ、………………やだ、もう、助けて……助けて、助けて、助けて、助けて、
助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、助けて、ぇ、…………

【「両目を瞑って」助けを呼ぶなら、彼女は今度こそ本当に、あなたのことしか認識しておらず】
【けれどそれもおかしな話だった。今しがた自分の首を絞めた男に助けを求めて。きっとおかしくなっていた】
【なんにせよ、彼女は、さしたる抵抗もせず、かといって縋りついてくるのを受け止めようともせず】
【ずっと待ってるだけだった。今更。ムシの良すぎる話だった、けれどもう、それ以外のことを考えられないから】


982 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/20(火) 22:20:51 cZLVDWqg0
>>977

あらあら随分と後ろ向きな気持ちを口にするのね。
折角の美しい髪も可愛らしい”耳”も台無しじゃない。

【開口一番死にたいと口走る少女にかける言葉は説得とも説教とも付かない】
【まるで冗談を口にする少女を宥める様な雰囲気を持った言葉だった】
【顔を軽く横に傾け、薄い微笑みを向けたまま――少女の拒絶を無視して語りかける】


強がりは良くないわ。心が叫んでいるのにアナタの今の振る舞いは正しくない。
ゆがんで、ひずんで、ねじれきって。終いには跡形も無く壊れてしまうわね。
――――そうなったら実に”勿体ない”。だからアナタの要望通り”殺して”あげても良い。

けれど、そうねぇ……どう死にたい?
刺殺、絞殺、撲殺、斬殺、圧殺、完殺、全殺、惨殺、狂殺……殺し方は様々だけれど。
どれが良いかしら?好きなものをどれでも選ぶと良い。そしてどれかを選びなさい。

【”―――どれも嫌だというのならそこは要相談。お姉さんとお話しましょ?”】
【口にする言葉は物騒。それに反比例して物腰穏やかに、口調は優しく語りかけるままに】
【いずれにせよ少女の願いを聞き入れるかのような物言いは酷くミスマッチに映るだろうか】


983 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/20(火) 23:25:36 BRNVt/Aw0
>>982

台無しな訳ないじゃないですか……こんな化け物なんか……
【宥めすかすような物言いの女に少女は自虐的な笑みを浮かべ、壁に汚れた片手を擦り付けるようにして立ち上がる】
【ぐら、と身体は揺れるがなんとか持ち直して】

……強がってなんかない
私は本当に大丈夫なんです
だから──
【言い掛けた瞬間、聞こえてきた言葉。要望通り殺してあげようか、なんて】
【少女はその言葉に薄く笑って、その方法に耳を傾けて】

……そう、ですね……出来るだけ惨めな殺り方が好ましいんですけど──
【そう言い掛けた刹那続いた相手の言葉】
【お姉さんとお話しましょう?という言葉が耳に入れば】
【少女は女を睨み付け、チッと舌を鳴らす】

なーにが「お話ししましょう」なんだか
そう言って私が心情だ経緯だを吐いた所で私の話なんか真面目に取り合ってくんない癖に
どうせ貴女にとってはくっっっっっだらない話だから聞くだけ無駄です
……お引き取りください
【恐らく彼女の言葉の何処かが少女の何かに触れてしまったのだろう】
【苛ついた低い声で少女は拒絶の言葉を発し】
【尻尾の毛もどことなく逆立っているようで】

……ホントそーゆー偽善者振り止めて欲しいんだけど何でこんな大人ばっか寄ってくんのどうせ要らないって自覚してんだからほっときゃ良いのに何なのもう……
【据わった目でぶつぶつと呟き始め】


984 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/20(火) 23:47:38 d02J94p60
>>983

はぁ、何があったかは知らないけれど―――斜に構えすぎてて癇に障るのよ、それ。

【"いいかしら?これはお願いじゃなくて、命令。ワタシの身勝手を押し通されてアナタは話さざるをえないの"】
【"アナタにとっては下らないかもしれないが、それを決めるのもワタシなのだから四の五言わないで貰えるかしら"】

【言うが早くキャロラインは少女の頭を掴もうとする。もし掴んだのなら、床だったり壁だったりに押し付けられる】
【静から動に切り替わる刹那、穏やかな瞳から虚無的な瞳へと移ろいて、殺すという言葉が嘘ではないと物語るようだった】
【お話の土俵に上がらないなら、力で屈服させて強引に引き上げるまでだから――躊躇う理由なんてなかった】
【声色も底冷えするような寒色を示して、殺すという言葉の重みに相応しい言動を振る舞う。女性の力で殺せるはずはないのに】
【キャロラインの佇まいは幾人もの人間を何らかの手段で殺したかのような名状しがたい説得力を持っていた】


985 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/21(水) 00:10:04 BRNVt/Aw0
>>984

……はあ?何なの?癪に障るんならさっさとぶっ殺せばい────

【ぎろ、と少女が何処か泣きそうな顔で睨み言い掛ける、が、その言葉は最後まで続く事はなかった】
【女が少女の頭を掴み、壁に叩き付けたから】

【ガンッと響いた音。少女の額からは血が流れ】

……ああもう、打ち所が悪いんだから……
【このまま頭を打って死ねたら良かったのに、とでも言うように少女は呟いて】

……分かりました
じゃあ話しますけど……

本当に私からしたら真剣な話ですけど貴女からしたらくだらない話ですからね?
私はちゃんと言いましたからね?
聞いた後で「くだらない」って怒らないでくださいね?
【半分捨て鉢になったかのように少女は念を押す】
【けれども、本当は期待などしていないのだ。幾ら真剣な話でもそう取ってくれる訳ないんだって】
【だって、大人はそんなものなんだってすっかり思ってしまっているから】


986 : 名無しさん :2018/11/21(水) 00:15:31 B4lEV3uA0
>>980

【――なら、きっと、彼女だって傷ついた顔をしていた。どちらがより一層傷ついているのかを比べるのに意味はないけど、それでも、それだって】
【そう表明して憚らなかった。悪い子だから? ――たぶんきっとそうなのだろう。素知らぬ顔で笑えるだけ彼の方がよほど大人であるらしい。彼女は、それも出来ず】

――じゃあっ、ずっと我慢してたら、よかったの、もういっぱい我慢したよ、いっぱい――我慢、したのに、
何十年も、何百年も、何千年も、世界が滅ぶまで、世界が滅んでも、ちょっとだって大人になれないのに、わたしのせいじゃないのに、
それでもわたしが我慢するの? わたしだけが我慢して、わたしが、――っ、わたしが、我慢して、にこにこして、イイコでいたら、そしたら、
そしたらみんなが"いつもどおり"を出来るなら、――わたしには、ないのに、大人にだってなれないのに、変われないのに、なにも、なのに、"みんな"は出来るのに、
わたしが我慢したらみんなが出来るから、わたしが我慢しないとみんなができなくって、だめなら、みんなのためにわたしだけ我慢しなきゃならないなら、

【だからきっと彼女の世界はとっくに滅んでしまっていた。何かも羨ましくて憎くて妬ましくて嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いでどうしようもない神様に食い荒らされて】
【不平等を感じてしまったなら。不条理を感じてしまったなら。そしてなにより目の前の彼が自分の何一つも受け入れてくれないのが耐えがたい苦痛であるかのような顔をしたなら、】

――――――――じゃあ、わたしが、まえみたいに、したら、いい? にこにこって笑って、ヤなこと、全部、がまんして……。
まいにち鏡を見るだけで消えてしまいたいのに、"こんなの"ぜんぶ、嫌い、なのに……、わたしだって大人になれたはずなのに……。
だったらわたし、なんのために生まれたの、こんなふうにされて、こんなのになって、ぜんぶぜんぶ、我慢してなきゃ、いけないなら、
こんな風になるって分かってたら、うまれて、こなかったのに、あのときお母さんたちと一緒に死にたかったのに。あのとき……。なんで……。

【ぎゅうっと握りしめた蝋燭を取り上げられそうになるのなら、――少女はひどく拒絶するのだろう。ただそれは、蝋燭が大事だから、という素振りではなく、】
【誰かに何かをされるのがそもそもすでに嫌になってしまったようにも見えた、まるで子供みたいにいやいやして蹲るなら、本当に"困った子"、でも、】

【(それならわたしだってこんな生き方望んでなかった)】

【――思い浮かべていたのはどこまでもありふれたもの。それが自分には前提さえも叶えられないって気づいてしまったから、怨んでるのに】
【ライターなんて壊れてしまえばよかった。壊れてしまえって願った。今この瞬間に星が流れているのなら、叶うのかしら、空なんて見えないのに】

やっぱりカニバディールに殺してもらえばよかった。そしたらあの子たちだって、ひどい目に遭わなくて、すんだ、のに……。
どうして殺してくれなかったの……。殺してって言ったのに。……。

【ちいさく漏れ出る言葉の意味はきっと彼女と"彼"にしか分からなかった。たんぽぽの子供たちについて脅されたときに、】
【自分が死ねば何もかもが解決するのだから殺してくれと彼女は頼んでいた。だけれどそうならなかった。そこから地続きの未来の彼女は、今、床に蹲って、】
【到底神様なんて思えぬ言葉ばかりを並べていた。こんなの神様だなんて信じたくなかった。――薄藤の女の子じゃなくてもこんな神様嫌いで当然だった。だって、】

みんなでわたしを護ってよ……。

【――そうでもないと今までの全部を納得なんてできないって言って、世界まで人質にして、喚いているだけの子供に過ぎないのだから】
【そして事実"鈴音"って少女はまだ十三の子供だった。あの日生ごみとして捨てられかけた女の子から芽吹いた人格は、本来は、何の変質もない地続きだったはずだのに】
【なにもかもが変質したあの日に別の名前をもらってから、まったく別の存在になってしまった。だからまだ彼女は十三でしかなかった。初めて死んだのは四歳の時だった】
【十二年生きた記憶を持つ十三歳。――だけどそんなの言い訳に出来ないくらいに彼女は世界だって滅んでしまえって願ってしまったのだから、もう報われないんだよ、なんて、】

【だからやっぱり彼女の理屈はひどく拙い子供のものだった。何もかも全部に肯定されなくちゃ嫌なんだって我儘をしていた、二歳児よりも無理難題を叶えて見せてって、言うから】


987 : ◆KP.vGoiAyM :2018/11/21(水) 20:25:08 Ty26k7V20
>>936


テロリストに肩入れするんですから、貴方方もそれなりのリスクは背負ってもらうことになります。
銃殺刑ならまだ名誉なものかもしれませんよ。失敗は許されません。


【霧崎は重すぎる両切煙草を軽やかに、それでいてその立ち上る煙にすら意味を持つと錯覚するほどの】
【威厳を持って、その席についていた。スーツから時計に至るまでどれもが高級品。だがそれに嫌味さはなく】
【むしろ本来持っている威圧的な何かを抑える拘束具のようなものだ。霧崎にしてみればこの慣れたスーツを着た自分は】
【表向きの演じている自分にしか過ぎない。本来の自分は、その背中一面に彫られた入れ墨だと思っていた】


では―――詳細な話は、これから詰めるとして…初瀬女史?なにかご質問ありますか?8課の皆さんも。
初瀬女史もご多忙ですから会議は此処らで切り上げて、あとは私が…というところで如何でしょう。


【霧崎は口ではできる限り角の立たない、清涼な薄荷のような透き通る声で話した】
【だが、目は後藤に向け、訴えかけていた。「後はオフレコで」と】

「ええ、私は…。宜しくおねがいします。とだけ。」


【麻季音は年相応の少女のような笑顔を浮かべていた。一礼し、何もなければ通信が切れる。ノーシグナルと画面に映し出される】


行政が混乱している時期を狙おうかと思います。選挙の時期ならちょうどいいんですけど、そうも都合はうまくいきませんから。
適当に、汚職か何かでっち上げて、失脚してもらって選挙としましょうか。

後は…取り分ですが。…貴方方にとってメリットはなんです?何を望みますか?ゴタゴタに巻き込ませて、適当な官僚でもトバしますか?

私は金で動かない人間は、極少数を除いて、信用ならないんです。お互い、腹は割っておきたい。


988 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/21(水) 21:22:27 E1nVzEpQ0
>>975

【少女の口述について、 ─── 静かにアリアは肯いながら、最後まで口を挟むことはなかった。】
【そうして些少ながらも、前髪に顔の右半を隠した、隻眼たるその眦を細めるようでもあった。漏れる嘆息の温度は、憂いに満ちて艶めかしく】
【ごく長く、黒いスーツに隠れた両脚を組んでいた。その太腿に重ねた己れの両手を置き、思索に耽る所作として、白い指先を緩やかに繰り返し叩く。ならば、徐に】


「 ……… ふうん。」「随分と卦体な、蕭牆の患えね。貴方たちの言い分を信じるならば、の話ではあるけれど」
「 ──── 櫻絡みのキナ臭い動きなら、こちらでも掴んでいる。」「ヨシビ商会と言ったかしらね。奴らが本件に関わっているかどうかは、解らないけれど」


【潤いある唇の紡ぐのは、一先ずの全面的諒解と、一先ずの協力的態度であった。初冬の室温よりも余程に澄んだ、囁くような声音】
【 ─── 無感情であった顔貌が、やや苦々しげな色合いに陰るのは、何らかの因縁の暗喩だろうか。いずれにせよ】
【更なる質問を求められるならば、気怠く脚先を組み直す。擡げられた青い視線が、射貫く玲瓏さをもって対手を見つめる】


「ならば ─── 事態の真相に誰よりも近しくあった厳島中尉その人に助力すれば、最も手早い解決を見ることが出来るかしらね。」
「彼らが縲絏に甘んじている場所も、御誂え向きに示されているでしょう? ……… 貴方たちの手に余るようならば、手を貸してやるに吝かではないわ。」


【存外に彼女は理解を示すようだった。 ─── 「えーッ潰れたら送ってってあげるのに ……… あッいいよいいよ、ボク自分で勝手に飲むから、 ……… ?」】
【蝋封の施されたバーボンを意気揚々と開けていたミレーユが、幾らか訝しむような視線を向けていた。 ─── 「ま、いいけどさ。」彼女もまた了承を呟くに、】
【 ─── 然るべき場所に然るべき武力を送り込む必要があれば、躊躇も瑕疵もなく達成してみせるのだろう。無論ながら、何かしらの対価を求めるとしても】


989 : ◆1miRGmvwjU :2018/11/21(水) 21:22:55 E1nVzEpQ0
>>981

【虚脱と呼ぶには余りにも澱みきった少女の瞳から、しかして彼は目を背けなかった。ただ凄惨なまでに炯々と見開かれた碧眼は】
【 ─── 憎悪と、悲哀と、愛情と、兎角どうしようもない情念が溺れてしまうように入り混じって血の涙にさえならないから】
【なにを伝えようとしているのかすら判然としなかった。隈取のように赤黒い睫毛の下が只管に痛々しくても、 ─── それでも】

【ふ、 ─── 乱暴に唇を塞ごうとするのだろう。「瞼、開いて」瞑られた少女の瞼に、直ぐさっきまで気道を締め上げていた指先が優しく添えられて】
【それでも拒むというのなら無理矢理に抉じ開けてしまうのだろう。ならば口先だって同じ事だった。ざらついた舌先を捻じ込んで、微かに血の味がする唾液を流し込んで、】
【呼吸さえ支配してやりたいに違いなかった。少女の全てを支配したいと願っていた。そうすれば嫌な事も怖い事も何もない。きっとボクだけ見ていてって彼は望んでいる】
【 ─── 狂おしく呼気と熱量を交換して尚も、息ができなくなるくらいに重ねていた。不意に口先を離すなら、垂れる唾液なんて構わずに、耳打つのは絶望的な音階ばかり】


「言われなくったって、助けるよ」「言ったじゃないかキミはボクが幸せにするんだ」「 ─── 幸せになってよ」
「ボクが要らないなら何時だって消えるさ」「 ─── ボクが死んでキミが幸せになるなら今すぐに死んでやる。」「けど、ね」


【背中に指を這わせようとする。 ─── 静かに、伸びた爪を立てる。肉を抉って血を滲ませたって構わないのだろう】
【絡み付く四肢の抱き締める力ばかり強くなっていた。二度と許(はな)さないのだと悟らせる。そうするしか遣り方がないのなら】
【 ─── 一方的にはらわたを食い漁るような行為の数々も道理だった。詰まる所やはり彼と彼女は同類であるのだろう。誰かを守る為なら、自分なんてどうなってもいい】


「だから許さない」「 ──── 許さない。」「ボクはキミを許さない。」
「勝手に不幸になろうとするキミを許さない」「ぜんぶ自分が悪いって言い出すキミを許さない」「ボクを置いて死のうとするキミを許さない」
「ボクはキミを悲しませる奴を許さない。」「 ─── シグレがシグレを傷付けるなら、ボクは、キミを許さない。」「 ……… ねえ、解ってるんでしょ?」


【「ねえ。」 ─── そうして最後には問い詰めるように、背中を深く掻き抉るのだろう。(そういう行いが彼女の心を傷付けるのだという事実からは目を背けて)(だってそんな価値観は無意味で)(だからボクが教える)】
【荒く湿った呼吸に乗せて辛うじて絞り出したような囁きの数々は呪詛と等価だった。 ─── けれど彼は矢張りどこまでも生易しくて、傷付くキミの顔なんて本当はもう一秒だって見ていられるか分からなくて】
【抱き拉ぐは縋り付くのと同義だった。自分が間違ってるのがどうしたって怖くて仕方ないなら、せめて己れの言葉に鼓舞する。濡羽色に薫る甘い煙草とかシャンプーとかヘアオイルとかの香りと同じくらい、儚い意志】


990 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/21(水) 21:30:00 WMHqDivw0
>>986

【無条件にやさしくすることならたぶん出来た。これで最後だと思っていたから、でも】
【その次がある気がしてしまったらもうダメだった。ここで彼女の望む通りに、優しくしてやるなら】
【きっと今までと同じことを繰り返す、と、直感的に思ったのだ。それこそ尾を噛んでぐるぐる回る蛇みたいに】

【だって彼は知っていた。赤木怜司だって、セシル・シュトラウスだって、最初は「そう」だった】
【ぼろぼろになった少女に近付いて。優しくして。愛してるって、結婚しようって囁いて、そうして】
【最後には致命的なお別れが来る。だとするなら――イル=ナイトウィッシュだって同じだと、思う】
【前者ふたりとイルの違いなんてそれこそ「まだそうなってない」ってことくらい、あとは、人間の男じゃないってくらい】
【きっとそれを繰り返してしまうのだと、理解した、理解してしまったから。――こいつは少女のお願いを、叶えてやれない】

【だから、】

そっか。みんなにそーしてほしいんだネ、じゃあ、

【かち。かち。火打石の音ばかり鳴らして、けれど着火はしない。かち。かち。時計の針が刻む音に似て】
【きっとこの場にかち。満ちているのは少女の泣きかち。声と、その音ばかりだった。かち。彼は音もかち。立てず】
【かち。ただ、へらへら笑かち。っていた。いかち。つか朝ごはんを一緒に食べたかち。ときに浮かべていたものと相違なく】

みんなにちゃんとそう伝えてあげなきゃ。きっとみんな、わかってないだけだよ。

【――――――。――そんなこと今更言ったって何もかもが遅すぎるとわかっていて、こいつはそう宣った】
【今更そんなこと言ったって誰も許しちゃくれないだろう。彼女が滅べと願った人々だって、彼女が唯一愛する病魔だって】
【そんなこと、今更言ったって、許さない。きっとみんな言うに違いなかった。こいつとてそれはわかっていた、だけど】

【ただ、こいつだけは「いーよ」って言って今と同じ笑い方をしている、予感さえ感じさせた。だってこいつは、】
【いつだって軽薄で軽率で深いことを考えなくってデリカシーがなくて地雷原で踊り狂うのが趣味の、悪い男だから。】


                                                                          【かち。】


991 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/21(水) 21:44:59 WMHqDivw0
>>989

【見開かされたまなこがかぴかぴになって痛い。潤すために涙がどんどん溢れてきて】
【視界がぼやけるのがただただ怖かった。そんな中でも青色だけがやたらとはっきりしているのが怖かった】
【口の中、少女の舌は逃げ惑って縮こまる。けれどすぐ捕まえられる。絡め捕られたら、それで終わり】

……………………い、た、いたいよ、いたい、……エーノさん、
ちがうよ、本当のことなんだもん、どうしてわかってくれないの、どうして……
違うの。何もかも間違ってるんだよ、……あたしがここにいること自体、間違ってる。
本当のあたしは8年前に手足もがれて死んで、ぽいって捨てられて、どっかに埋められてるはずなの。
それが正しいあたしなんだよ、間違ったことしたから、……バチがあたってるんだ、
神様が怒ってるんだ! あたしが決まりを守らないから! だから、だから、

【きっと少女の言ってることは全部本当だった。死者は静かに眠っているべきという掟を破って】
【神様を怒らせたのも本当だった。神様を神様だと受け入れられなくて、怒らせてしまって】
【そのバチが自分にだけ当たってくれればそれでいいのに。どうして誰もわかってくれないんだろう】
【悲しくて悲しくて仕方ない。そして怖くて仕方ない。自分が幸せになれないことなんかよりずっと、】

…………わかんないよ、だって、そんな風に思えないんだもん、ぜんぜん……

【――――――きっと、これ以上の幸せを望んでしまうようになることのほうがずっとずっとずっと怖かった】
【そんな資格はないとわかっていながら。教会で結婚式。子供を産んで。年を取って、そして正しく死ぬ】
【そんなのを望んでしまいそうになる自分が怖くて、悍ましくて、だからひとりで死にたかったのに】

【(どうして許/離してくれないの)】


992 : 名無しさん :2018/11/21(水) 22:36:55 UtoYB.sY0
>>990

【かちかち言う音にしゃくりあげる声が混じりこむ。だからきっと何もかもが手遅れの様相、極大を過ぎた夜に流れ星をじいっと待っているような、】
【そうなれるタイミングは今までに何度だってあったはずなのに。逃し続けて。ちっとも流れ星なんて流れなくなってしまった頃に、ようやく、外で待っている】
【しなかった言い訳はたくさんあるのかもしれなかった。お外に出ていける恰好をしていないから。夜は寒いから。明日の朝が早いから。夜に外に出るのは危ないかもしれない】
【――――だけどそれで結局何もかも逃してしまったなら笑えてしまう、なにもかも手遅れになってからようやくしようとして、自分の分がない、なんて、】

【(彼女は今までずっとそうやって生きて来た子だったから。自分の分だってあるはずなのにただ見ているばっかりで、無くなってから、欲しかったって、やっと、口に出す)】
【(その時にはもう手遅れだから結局自分の分だってないのに。それをずうっと覚えている。――――見ていたら誰かがくれるんじゃないかって、そんな甘ったれた期待ばっかり)】
【(あるいはごく平和な恵まれた環境であれば許される生き方なのかもしれなかった。或いはどこかでそれは良くないって教えてもらえたのかもしれなかった、だけど、)】

――――――だって、わたし、かみさまなの、かみさまなのに、――なのにっ、だって、なんで……。

【ぎゅうっと蹲っていた床にぺたんと座るのなら、それこそ駄々をこねる子供みたいに。だけれど本当に駄々をこねる子供なんて床に転がるのだから、彼女は、】
【その程度くらいには大人なのかもしれなかった。――だのにやっぱり子供みたいに駄々をこねているのなら、どうにも育てなかった子供の自分と喧嘩する、みたいに】

神様なのに。

【(だからみんなわたしの言うことだって聞いてくれるし、そんなwあたしのご機嫌を取ってくれるって、ずうっと信じていたらしかった。今までの辛いの全部これで終わるって)】
【(世界中を滅ぼす力のある神様を誰も非道い言葉で方法で虐めたり暴力で従わせたり悲しませたり苦しませたりしないって。――だけどそうじゃないって気づいちゃって、)】

【(神様だって人間に捨てられてしまうものなんだって今更気づいた/だけどずっと前から知っていた)(人間に捨てられてしまった神様の子孫だった。わたしは、)】

――――――――――――――――――――――――――――――それやめてよ! ――やめて、よお、やめて……。

【だから悲しくって?苦しくって?辛くって?よく分からないけどとにかくどきどき心臓が痛い気がした。嘘っぱちの鼓動のはずなのに、そのたびに張り裂けてしまいそうで】
【頭の奥がざわざわしたし息が喉に絡まるみたいにぜえぜえした、どきどきとざわざわとぜえぜえが入り混じったなら音も遠くなる気がして、だから、思ったより大きな声】
【やっぱり蝋燭を抱きしめたまま、頭すら下げるのなら。長い髪の毛が蛇のようにぞろと床に垂れる、さながら赦しを乞う罪人みたいにするなら、なんだって、出来る気がした】

【――それこそ頭を踏みつけたって髪の毛だけで身体全部を持ち上げたってどちらも同時にやったって、サッカーボールみたいに蹴り飛ばしたって、】
【あるいはそのライターでふわふわのお洋服に火をつけてしまったっていいかもしれなかった。長い髪の毛をじりじり踏み躙ってキューティクルを駄目にしたって、】
【彼が放った注射器を彼女にしたっていいのかもしれなかった。それとも何か命じてみてもいいかもしれなかった。だって彼女は"お願い"をしているんだから、神様なのに、】

【だからやっぱり神様だなんて向いてない。彼女を願った蛇の神様にすら、きっと神様は向いてない。報われたいも好きな人にもう一度逢いたいも、身の丈に合わないことだった】
【好きな人に逢いたいと願った神様の前で願われて生まれた少女は破滅していったんだから、】


993 : ◆S6ROLCWdjI :2018/11/21(水) 23:02:22 WMHqDivw0
>>992

【かちん。………………ことん、ころころころ。どっかの店でもらってきた安物のライター、】
【わけわかんないロゴが入ってる。たぶんもうその店潰れてる。だからそんなものどう扱ったってよかった】
【あまりにもあっけなく投げ捨てて転がした。そもそもこんなちんけな火種で、これまた安っぽい蝋燭に火を灯して】
【そうして弔われるタマシイなんてきっと綺麗にお見送りできるはずなかったのだ。だから、もうやめ】
【生きてもいない死んでもいない、本当に雑な具材を人間の形で包み込んだ形容しがたきバケモノが】
【跪く神様のもとに、立ったままずかずかと近づくなんて。これ以上ない冒涜に違いなかった】

ン。はいはい、やめちゃった、…………せっかくカクゴ決めて買ったのにナー、これ。
やっぱりダメだねえ、未練が残って――こびりついて消えないや。ね、

【そうしてしゃがみ込む。床に零れて汚れてしまう髪の毛、できる限りの優しい手つきですくい上げるなら】
【せめてぐしゃぐしゃになってほしくなくて、ゆっくり、三つ編みにし始める。手慰みみたいに】
【けれどその手つきはいやに慣れていた。おそらく年下の女の子にそうしてやるのは、慣れている】
【だってこいつは「おにいちゃん」の役を与えられて生きていた、そういう呪いをかけられたヤツだった】

きっとこの世界、ロクでもないヤツしかいないんだよ。信じないし、逆らうし、
殺しちゃうヤツだっている。そんなひどいヤツらばっかなんだよ、だからネ、
人間だって神様だってそんな垣根なんか最初っからなかったのかもしんないよ。

【「だからもう一度、さいしょっから、お友達になるとこから始めてくんない?」】

【―――やっぱりそんなの今更すぎる。けれどこいつは悪いヤツだから、そんな事情、考えてはくれないのだ】


994 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/21(水) 23:11:30 6IlD6zzI0
>>985

【希死念慮に駆られる生き物はかくも死に焦がれるのだろうか】
【少女の頭を壁に叩きつけたときにふと思う――自殺幇助の真似事みたいだって】
【だから少し可笑しくて、乾いた笑いを零した。ひどく不謹慎なのに、どうでも良さげに】


あら、そう。良かった。なら話してもらえるかしら―――ああ、執拗に予防線を張らなくても結構。
ワタシはアナタの話を聞くだけ。合間合間に相槌を打って、気の済むままに聞き続けるだけだから。

もしその言葉が信じられないなら―――"ヤクソク"しましょうか。

ワタシは、キャロライン=ファルシアはアナタの話を下らないと断じない。
代わりにアナタは先に挙げた死に方、若しくはそれ以外の死に方を選ぶ事。

これで良いかしら?死にたがりの子ネコちゃん。
もしワタシがヤクソクを破ったならその時は好きにすれば良いわ。
そっぽを向いて立ち去ろうが隠し持った牙を向いて殺そうが、ね。


【少女の頭から手を放して紡ぐ言葉は諭す様な言葉に物騒な言葉】
【乱高下する言葉を、出会った時のグレーの瞳を携えた薄い笑みと共に投げかける】
【乱暴な振る舞いをしたと思えない口調にはやはり何処か乱暴な言葉が含まれて】


995 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/21(水) 23:31:01 BRNVt/Aw0
>>994

……ああもう!何でそこで笑うんですか!?
本当にもう!
【乾いた笑いを溢す女に少女は泣きそうな声をあげて】
【ほら、やっぱり世界なんてそんなものじゃないか、優しい人なんかやっぱりいないんじゃないか、と心の中で誰かへと怨み節を吐いて】

だって、本当に聞いてくれないんですもん……事前に構うなっつったのに無理っぽく話聞き出して怒鳴るし……事前に懺悔だっつったのに懺悔めいた言葉吐いてんじゃねー、とか文句つけるし……予防線張りたくもなるっつーの……
【そんな執拗に予防線張るなという言葉にはそう返して口を尖らして】
【続く言葉には、絶対ですからね?と念を押すように返して】

……それで、具体的には何を話せば良いんですか?
死にたい理由、ですか?
【尋ねるのは何を話すかという事。話をしよう、とは聞いたが具体的な話題については聞いていなかった気がする、と感じて】


996 : ◆rZ1XhuyZ7I :2018/11/21(水) 23:52:54 smh2z7gk0
>>961

【眼下へと視線を落とせば、まるで川の流れを分断する大岩のように人の波が分けられている。】
【その理由は明白だった。ベルトコンベアーに流れる製品のような人の通行の中で立ち止まっている人物がいる。】

【―――しかもその人物は〝貴方〟を見ている。顔には十年来の友人に向けるような親し気な笑みを浮かべて。】


【光沢のある高級そうなグレーのスーツで全身を包み込んで、髪は緩いパーマのかかった金髪】
【そして〝金色の三角形が敷き詰められた異形の瞳〟を持つモデル体型の青年。】


【もし眼があえば青年は女性に軽く手を振ってそれから歩き出す、向かう先は女性のいる雑居ビル。】
【そして雑居ビルに入ればそのまま女性のいる屋上まで登ってくるだろう。とりあえずとんでもない奴である。】


997 : ◆zqsKQfmTy2 :2018/11/22(木) 00:08:55 6IlD6zzI0
>>995

あらあら、それは難儀な事ね。実に不敬な大人たちだこと。
身勝手に振り回され続ければそうなるのも無理のない話――同情しちゃうわね。


【少女の語る状況に身を置けば、きっと自分も同じことを言うだろう】
【形を変えても結末が一緒ならばささくれ立った態度も感情にも文句は言えないから】
【少女の問いに――何を語らせるか――思案することなく淀みなく答えるのだった】


そうねえ、話してもらいたいことはふたつ。
ひとつ、アナタが希死念慮に駆られるに至る経緯。死にたい理由と言った方がいいかしら。

ふたつ、―――ああこれが一番大事。"本当に"死にたいのかについて。
ああ、別に死ぬことを咎めてる訳でもないし死ぬことを止める訳でもないの。
ただ単純に死にたい理由が取り除かれたなら、同じことを口にするのかと言う疑問なだけ。


【"こんなところかしらね。さぁ、話す気になったなら話して御覧なさい"】
【"全てを聞くまでは笑いもしないし軽んじたりもしないから"】


【キャロラインと言う女は真摯に聞くと言った――それは記憶屋としてか、それとも彼女個人の感情か】
【とにかく彼女は少女の語りを待つ。その姿、上映前の席に腰かける観客のように、静と動が入り混じる】


998 : 名無しさん :2018/11/22(木) 00:20:22 UtoYB.sY0
>>993

【なら、やっぱり彼女は本当には世界だなんて無くなってほしいって思ってないのかもしれなかった。だってそうなら、世界なんてとっくにないはずだし】
【それだけの力がよしんばなかったとして、――放られた哀れなライターが着地の瞬間に爆発するくらいは、出来るはずだった。きっと。未練ばっかりのこんな店焼いてしまって】
【そしたらきっとだいすきなお姉ちゃんが大事にしてた銃もお酒もいろんなものも全部全部全部燃えてしまって。――そんなはずないのに。だってここは正義のための場所、で】
【だから多分世界が終わってしまう瞬間にも最後まで残っているはずだった。ここは彼女の居場所だったし、正義ってきっと多分そういうもので、そういうものに違いないなら】

【黙り込んで無防備な背中を晒してしゃくりあげているのなら、二十五歳でも十六歳でも十三歳でも十二歳でもなかった。本当に小さな女の子みたい、なら、】
【病院でお母さんもお父さんも死んじゃった時をやり直しているのかもしれなかった。ぞろ、と、長い髪の毛を掬い上げられたなら、一つしゃくりあげて、わずかに頭を上げる】
【なにか言葉を考える間があって、――だけど結局は黙りこんで、もう一度顔を伏せるんだろう。さらさらの髪の毛はうんとよく手入れされているから】
【ふと油断してしまえばするり指先から逃げてしまうに違いなかった。或いは彼の目の前で泣きじゃくっている少女だってそうなのかもしれないなら】

――――――だって、わたし、わるい、かみさまだよ、

【――――ひぐ。と、息を呑む沈黙。神様は信じるものだって信じていた。逆らったり殺したりしたらいけないって信じていた。だって彼女は神様の子供で、ずっと一緒だったから】
【神様は大事にするもので敬うものだって信じてた。だってそうじゃないと悪いことが起こってしまうんだって信じてた。人間が信仰をぼやかしてしまった時代なのに】
【いろんな神様は科学に置き換えられてしまった時代なのに。もう信仰されることない神様を信じ続けて、どうやって自分だって神様になってしまった、から、】

【(わたしが神様だって知ってほしくて。一緒にお話したくて。そうしてそのうえで、神様として受け入れてほしくって)】

お友達になっても、いいこと、ないよ――――。

【だから彼の言葉はすごくすごく嬉しいのに。だのに遠巻きにちらちらって眺めるみたいにするなら、】

それに、わたし、やっぱり――――、非道いこと全部、わたしが、我慢したら、終わりだから、我慢しろなんて、

【「納得できない」】

【だからまだ蹲っている。それでもいいよって言って欲しかった。我慢が報われる方法を教えて欲しかった。納得する方法を探そうって言って欲しかった。なら、】
【まだ彼女は我儘をやめようとしない。自分だけ我慢してにこにこ笑って終わりだなんて赦せなかった。それを認めたら、今までのこと、ぜんぶぜんぶ、馬鹿げてしまう】
【ほかのひとから見たらきっとごくつまらないことに執着していた。だけどそれをくだらないって言い捨てられることは今まで頑張った自分のために認めない】

【――だけれど頑なさはきっと何かにまだ期待している裏返しなんだった。本当に期待してないなら、あんなふうに言う必要なくって、だって、そうでしょう? 多分だけれど】
【神様の情念を神様の奇跡でくるんで神様の望んだ形に仕上げた結果の彼女だって単なる化け物に過ぎなかった。――ただ、少し、"神様"って言葉に、期待しすぎただけ?】
【そうやって信じた/期待したのは、やっぱり彼女が神様の子孫だからなのかもしれない。自分が生まれた理由たる神様へ小さな恩返しを積み重ねる、みたいに】


999 : ◆XLNm0nfgzs :2018/11/22(木) 00:52:24 BRNVt/Aw0
>>997

……怒るくらいならどうしたら良いかとか……もっと……こう……兎に角理不尽っていうか……間違ってるんだったら何処がどう間違ってるんだって諭すとか……私もどうして欲しかったのか分かんないけど……もっと……なんか……
【何言いたいか分かんなくなってきた、と少女は口を尖らせてぼやいて】
【話す事は二つ、死にたい理由と本当に死にたいのか、という事だと聞けば、話す内容を整理するかのように少し考え込む】

……じゃあ話します
結構長くなってしまうんですが……

まず、キャロラインさんは『たんぽぽ』というボランティア活動はご存じですか?
今、ニュースで話題になっているあれ、なんですけど……

……そこは元々私の友人がやっていて……その子がある理由から出来なくなって……それで……

私と、別の友人の二人で代わりにやる事になったんです……

けれどもある日そのもう一人の友人が姿を消してしまって……その子はちゃんと帰ってきたんですけど……誘拐されてて酷い目に遭ったんだって、聞かされて……
私、そんな事知りもしないで助けにも行かなくて……罪悪感を覚えて……その時は謝ったんですけど……まだ少し消えなくて……

それで……別の機会に私はあの子が具体的にどんな目に遭わされたのかっていうのを実際目の当たりにしてしまって……
その子、具体的な事は明言してなくて……こんなの絶対隠しておきたかったってすぐ分かりました……
だから……そんなもの知ってしまった自分もあんな目に遭わされてたって知らなかった自分も嫌で……あの子に申し訳なくて……忘れたふりして普通に振る舞おうって思っても顔を見る事すら出来なくなって……
そうしてるうちに私がそれを知っちゃったってその子にバレてしまって……
私は何て役立たずなんだって思ったらもう色んな事が一気に蘇ってきて……それで……気付いてしまって……
故郷にいた時から私なんてずっと役立たずだった、必要ない子だったって……
故郷じゃ役に立たない子は要らない子だから"棄て"られるんです……だから役立たずの私は要らない子で棄てられなきゃいけないなって……

勿論、その友達の事だけじゃなくて……私なんか役立たずだって思う事はその後もまだ起きて……
【少女はここで言葉を一旦切る】


1000 : ◆ZJHYHqfRdU :2018/11/22(木) 03:36:44 h7nAXcQg0
>>925
【三つの目玉が油断なく迎賓館内を見回す。参加者は多種多様】
【水と氷、二つの国の人間でほぼ占められてはいるようだが、戦える人間となると限られているだろう】

【一般人や、へたり込む議員たちなら、何の問題もなく制圧できる。ならば、警備らしき黒服たちと】
【たった今、長嘆息して見せた、あの少女】

サーカス団とはご挨拶だな。こんなサーカスがいたら、街に入る前に差し止められると思うがね
入る館はここで間違いない。入念に確認したからな

先にパーティーに潜り込ませた手下に聞き耳を立てさせていたが、確かオブライエン書記官殿、で良かったかね?
なかなか魅力的な提案じゃあないか。肝が据わっているだけでなく、相応の実力もあるようだな
食料と酒は常に必要とするところだが……生憎、今回はお前たちの身柄の方がもっと必要だ

【彼女の挑発的な笑顔に、にたりと醜悪な笑顔で返す。彼女の内面の愚痴の嵐には流石に気がつかないが】
【正義組織を退けて来たのは、結局のところ数としぶとさ。総合的な実力はきっと彼女の方が上だろう】
【臆病な肉屋は油断はしない。まさに、今から洪水が起きようとしているのだから】


そう、まさに誇張なくその通りだオブライエン書記官。水国のみならず、世界中が暗い水底に沈もうとしている
「虚神」と「黒幕」、今この世界に王手をかけている二つの勢力の手によってな
優秀な氷国なら、昨今の不穏な情勢の裏に何かあることぐらいは掴んでいるだろう?

【値踏みするような無遠慮な視線。彼女の背後に集められていく人々にも視線を投げる】
【異形の手下どもは、邪魔はしない。一か所に集まるならむしろ好都合ということか】

私としては、世界が丸ごとなくなっては困る。食い扶持もなくなってしまうからな
ゆえに、片っ端からかき集めている。生物・無生物、人間・動植物、山や森や街や村、一切の区別なく箱舟に放り込んでいる
実際の箱舟ほど高尚ではないが、数と容量だけは可能な限り用意した

【オブライエン書記官なら知っているだろうか。ここ最近、各国で発生している謎の現象】
【小さな村や集落が、家々もろとも忽然と消える。小山があったはずの場所が、一夜にして更地になっている】
【ある街区の生物が丸ごとどこかへ消えた。そんな信じがたい記録】

【僅かな生存者は、人が石に変わったとか、脚の生えた生首が歩き回って煙を吐いていたとか】
【にわかには受け入れられない証言をしたという。行方不明者も増加傾向だ。これについては、この異形どもによるものだけではないだろうが】

ここに集まったお歴々にも、滅亡の危機が回避されるまではこの中に籠っていてもらいたい
とはいえ、私のような悪党がそのまま言って、はいそうですかと従うやつなどいないだろうからな
こうして、強引に引っ張らせてもらっているわけだ

【右手に握った黒い箱をひらひらと振って見せながら、カニバディールは一歩踏み出した】
【オブライエンが何かアクションを起こせば、すぐに対応出来るよう、じっと彼女を睨みつつ、ゆっくりと】


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