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('A`)あらしの鳥、あらしの夢のようです
12
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 20:49:54 ID:zNoWFx/M0
12.
枯れた薔薇の絡んだ、古いパーゴラ(*住宅の軒先や庭に設ける、つる性の植物を絡ませる木材などで組んだ棚)の残骸を
解体しようとしている形跡があり、ノコギリと枝切りバサミが放り出されている。
奥に小さな畑と家畜小屋があり、ブタとニワトリがいくらかいた。
('A`)「ずっとここにひとりでいるのかな……?」
住居である小屋は頑丈な作りで、何度も補強された形跡がある。
電波塔を建設するときに、作業員が物置か何かとして使っていたものだろうか。
ドアが開いて彼女が現れ、ふくらんだ紙包を渡された。
川 ゚ -゚)「このくらいでいいですか」
('∀`)「は、はい! ありがとうございました!!」
くるりと回れ右し、ドクオは一度も振り返らずに走り出した。
***
13
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 20:52:29 ID:zNoWFx/M0
13.
翌朝の夕方。
退屈な日々が戻り、入り江に入ってきた迷い鳥を二、三羽撃ち落としただけで日が暮れた。
連中はもちろん鳥目なので、夜のあいだは襲ってこない。
( ^ω^)「へえ、いい人じゃないかお」
('A`)「うん、てっきり世捨て人のあぶねえ奴だと思ってたのに」
彼女の小屋のほうに目をやると、ちょうど明かりが灯ったところだった。
('A`)「ところでさ、あの人なんで羽根を集めてるのかな」
( ^ω^)「そら羽毛布団でも作って売ってんでしょうお」
(;'A`)「あの島で誰に売るんだよ、俺らか?」
(*^ω^)「フヒヒ、それより今夜は宴会だお!」
一週間に一度、船の整備と物資の補給、軍部へ報告するために本州に帰港することになっている。
その前夜に食糧の残りと酒をすべて消費すべく、ふたりっきりの宴会を開くのが定例だった。
14
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 20:54:12 ID:zNoWFx/M0
14.
船倉からダンボール箱を抱えたブーンが上がってくると、ドクオはまた小屋のほうに目をやった。
煙突から煙が上がっている。
彼は操舵室に向かうと、エンジンに火を入れ、舵を切って船を桟橋にやった。
( ^ω^)「ん? どこへ?」
('A`)「彼女も誘おうぜ」
(;^ω^)「え? 何で?」
('A`)「こないだの塩の礼だよ」
(;^ω^)(ぼくの取り分が減っちまうじゃねーかお)
***
意外なことに、彼女は誘われたことを喜んでいた。
家の中は狭いと言うので、三人は庭の木のテーブルにつき、焚き火で保存食をあたためて食べた。
ランプの明かりが一同を照らす。
15
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 20:56:17 ID:zNoWFx/M0
15.
(*^ω^)「たとえ世界の終わりが来ても、食うのだけはやめられませんなぁ〜」
川 ゚ー゚)「よろしかったらお野菜と卵もどうぞ。うちで取れたんですよ」
(*^ω^)「なんちゅうええ人や……」
質素なメニューだったが、缶詰ばかりの生活に飽き飽きしていたふたりには大したご馳走だった。
彼女はクーと名乗り、常にささやくように静かに話した。
( ^ω^)「ところでクーさん、何でこんなとこにひとりで?」
川 ゚ -゚)「それは……」
('A`)「待った! 久しぶりにアレやろうぜアレ」
ドクオは腕時計を外してテーブルに置いた。
川 ゚ -゚)「?」
('∀`)「海軍の伝統なんだ。新入りに順番で自己紹介させんの」
( ^ω^)「制限時間は?」
16
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 20:57:58 ID:zNoWFx/M0
16.
('A`)「10分にすっか」
フォークをテーブルに立てて指を離すと、先端はドクオ自身を向いて倒れた。
('A`)「俺から時計回りだな! じゃあ行くぞ」
∩( ^ω^)∩「ィェァー」
川;゚ -゚)「い、いえーい」
ブリキのカップの酒をぐいっと飲み干すと、口元を拭って彼は話し始めた。
('A`)「俺らは孤児でさ、ちっさいころに田舎の農家に引き取られたんだ。
俺が10才のときだったかな……ああ、もう10年も経つのか」
( ^ω^)「農場主のジジイがいい人で、戦災孤児をいっぱい引き取ってたんですお」
('A`)「覚えてるかい、鳥の大攻勢が始まった年」
川 ゚ -゚)「……ええ」
17
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 20:59:21 ID:zNoWFx/M0
17.
('A`)「大騒ぎになったよな。
もちろん、それよりずっと前から……先祖代々、鳥どもは俺らの敵だったさ。
でも攻撃が本格的になったのはあれからだった。
俺の誕生日の前日だったかな……覚えてるか、ブーン」
( ^ω^)「ロンモチだお。ぼくはブタの丸焼きの用意を手伝っていたんだお」
('A`)「……あの日の昼、空が真っ黒になるくらいの鳥がやってきた」
ドクオは目を細めた。
('A`)「俺たちは納屋の地下室に逃げ込んだけれど、数が多すぎた。
鳥どもは納屋を壊して、くちばしで地面を掘り返しはじめたんだ。
俺とブーン以外はみんなさらわれた。
空中でジジイと兄弟たちがにバラバラに食いちぎられるのを、俺らは木箱に隠れて見ていたよ」
( ^ω^)「……」
18
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 21:02:21 ID:zNoWFx/M0
18.
('A`)「すべてが過ぎ去ったあと、ブーンを連れてニチャンシティー目指して歩いた。
ほとんど飲まず食わずで三日くらいかかったか。
町もめちゃくちゃだったけど、幸いなことに復興の仕事がいくらでもあった。
12才まで路上で寝泊りして働いて、それから軍の幼年部の試験を受けた」
( ^ω^)「軍人の補充がおっつかないから、ぼくらみたいな浮浪児でも潜り込めたんですお」
川 ゚ -゚)「おふたりとも、苦労なさったんですね」
(*^ω^)「いやあ……」
(;'A`)「お前は成績が悪くてずっと厨房係だっただろ」
ちらりと時計を見た。
('A`)「ちと早いけど、俺の話はおしまい。次はブーンだぞ」
( ^ω^)「えぇ……もうほとんど兄貴が言っちゃったお。
えーと、足をケガしたぼくをおんぶして三日三晩歩き続けた兄貴はすごくかっこいいと思いました。おわり」
川;゚ -゚)(十秒しか経ってない)
19
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 21:04:23 ID:MXECkuBw0
自己紹介雑すぎワロタ
20
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 21:05:42 ID:zNoWFx/M0
19.
( ^ω^)「あ、あと、ぼくは金を貯めていつかレストランのオーナーになるんだお!
この黄金の舌が認めたメニューだけを出す店にするお!
うまいと思ったものは何でも出すお、ただしチキンだけはなし!!」
('∀`)「おお、よく行った!! トリ肉なんざ豚に食わせちまえ!」
(*^ω^)「その通り、トリは豚のエサだお!!」
ふたりは酒を注いだカップをぶつけあい、一気に飲み干した。
('A`)「さて、お待ちかねのあんたの番だ」
川 ゚ -゚)「はい。そうですね、それじゃ……」
彼女は口元をハンカチでぬぐいながら、しばらく思案した。
川 ゚ -゚)「わたし、ちょっと前に離婚したんです。2年だけの結婚生活だったけれど」
( ^ω^)(いきなりヘビーな話だお)
川 ゚ -゚)「あ、ごめんなさい。こんな話……」
21
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 21:08:55 ID:zNoWFx/M0
20.
('A`)「いや、時間内に何を話すかは自由だぜ」
川 ゚ -゚)「しばらく実家でぼんやり過ごしていたんです。
今でも忘れません、あの日の彼との出会い。
天気のいい晴れた日でした。ニチャンシティーの裏手の草原を歩いていたときのことです」
彼女は記憶のかなたを見つめながら、わずかにほほえんだ。
川 ゚ー゚)「男の人が空から落ちてきたんです」
('A`)「……?」
(;^ω^)「あの……我々はあんまり、そういう文学的表現は得意じゃないもんで」
川 ゚ー゚)「いいえ。彼は落ちてきたの、空から」
ドクオとブーンは不思議そうに顔を見合わせた。
(;^ω^)(やっぱこの人、どっかおかしいんじゃ……)
22
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 21:10:41 ID:zNoWFx/M0
21.
川 ゚ -゚)「彼はケガをしていました。
わたしは彼をかくまって、傷が癒えるまでの一ヶ月間、お世話をしたのです。
彼は町を出たことのないわたしに、不思議な話をしてくれました。
自分たちが力を失いつつあるせいで、この世界に災いが起きているのだと」
('A`)「力? 災い……?」
それには答えず、彼女は話を続けた。
川*゚ -゚)「そしてわたしは彼と契りを交わしたのです」
( ^ω^)「ん? どういう意味?」
(;'A`)「察しなさいよ」
川 ゚ -゚)「空に帰る日、その人は言いました。わたしの妻よ、この体ではきみを連れていくことはできない。
だがきみが〝卵〟を産む日が来たとき、ぼくは同胞たちと必ずきみを迎えに来るだろう、と。
卵から孵った我々の子は、ばらばらになってしまった天と地を繋ぐ救世主となるだろうとも」
(;^ω^)(全然わからん。どういうこったお)
23
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 21:14:38 ID:zNoWFx/M0
22.
('A`)「なかなかステキなラブストーリーだけど、なんだってこの島へ?」
川 ゚ー゚)「彼が教えてくれたんです。ここで待っていてくれ、と」
( ^ω^)「その人とは、そのあと……?」
彼女はほほえんで自分の腹部に両手で触れた。
川 ゚ー゚)「そう遠くないうちに会える気がしています」
***
( ^ω^)「絶対おかしいお、あの人」
('A`)「まあアレだ。人様のこたあ放っといてやろうや」
翌朝、ふたりを乗せた警備船は出航した。
湾内を出て本州に向かう途中、ドクオはふと島を振り返った。
川 ゚ -゚)
24
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 21:16:21 ID:zNoWFx/M0
23.
鉄塔の一番上の足場に彼女がおぼろに見えた。
何か、囲いのようなものを作っている。
('A`)「何やってんだ、あれ?」
( ^ω^)「人様のこたあ放っとくんじゃなかったのかお」
('A`)「ま、そうだな。どうせぶっ壊れてる施設だし」
頭はイカれてるようだが、悪人でもなさそうだ。
鳥の羽根だの不法侵入だのは大目に見るとしよう。
それよりもツンのことを考えると、自然に笑みがこぼれた。
(*'∀`)「さあて、俺の金髪ちゃんはどうしてるかな〜? フヒ、フヒヒ、フヒヒヒヒ!!」
( ^ω^)(きめえ)
つづく……
25
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 21:18:11 ID:zNoWFx/M0
続きは明日か明後日かもっと先か、とにかくいずれ。
26
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 21:38:23 ID:MXECkuBw0
おつっつ
27
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 22:51:44 ID:RZ5f4E2g0
おつおつ
不思議でアンニュイな気分になる話やね
28
:
名も無きAAのようです
:2015/11/11(水) 23:39:43 ID:YmAC2co.0
いいな期待
29
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 00:08:33 ID:9V958uBU0
期待
30
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:05:35 ID:d0Me9C6E0
中篇はっじまるよー
31
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:07:30 ID:d0Me9C6E0
1.
ヌルポ島から半日ほど海上を行くと彼らが本州と呼ぶ陸があり、軍港をかねた町がニチャンシティーだ。
十年前の大攻勢の日から軍部が政権を掌握し、それ以来、町全体が要塞と化している。
鳥の攻撃から守るため、ブロックごとに巨大な檻の中に閉ざされている。
さらに地上にある部分はごく一部で、地下にはより広大な主要施設が広がっているのだ。
('A`)(……いつ見ても皮肉だよな、この光景は)
ここは鳥を恐れるあまり、鳥籠に立てこもった人間たちの巣だ。
('A`)あらしの鳥、あらしの夢のようです 中編
原作 J・G・バラード『あらしの鳥、あらしの夢』(短編集『溺れた巨人』収録)
32
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:09:21 ID:d0Me9C6E0
2.
('A`)「新しいフライパン買っといてくれよ」
( ^ω^)「わかってるお」
船をドックに入れて整備員に引き渡すと、ドクオはブーンと別れ、軍の司令部へ向かった。
建物にかかった垂れ幕には階級章と同じく「鳥を殺す武器」の象徴、弓矢のしるしが入っている。
会議室に入ると、すでに兵長クラスの兵士たちが集まっていた。
( ´∀`)「では、VIP海域における定例会議を始めるモナ」
各員がそれぞれの状況を報告しあった後、下士官の指揮で各自に軍部が出した指令を通達する。
毎回同じで、〝現状を維持せよ〟――それだけだ。
「決戦は近い」「我が軍は必ずや躍進を果たすだろう」などというむなしい激励を添え、解散となった。
部屋を出ながら、同僚と少し話した。
(#'A`)「チクショ〜、いつまであんな島の警備させんだよ!! 俺は戦艦に乗りたいのに」
_
( ゚∀゚)「要するにさ、これ以上は作戦の立てようがないんだよ。鳥のことが何にもわからねえから」
33
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:12:03 ID:d0Me9C6E0
3.
('A`)「連中の生態系か」
_
( ゚∀゚)「そうだ。あいつらがどこから来てるのか? 繁殖地は? 何にもわかっちゃいねえ」
('A`)「エサはわかってるぞ。俺たちだ」
_
( ゚∀゚)「ハハハ、その通り」
物資の補給に出かけたブーンと落ち合うため、バスで町へ出かけた。
通りの脇にはあちこちに高射砲や対空機関砲が設置されている。
軍の広報部が掲げた看板には、鳥に立ち向かうスローガンが書かれている。
商業地区の籠に入り、バス停で停まった。
(*'∀`)「ま、ブーンのやつは待たせておくとしてだ、ツンちゃんとちゅっちゅしに行くとしよう!」
籠に閉じ込められた人々は終わりのない戦乱に疲れ果て、希望を捨てた家畜のように見える。
波打ったバラックと錆びた鉄板ばかりの町並みを吹き抜ける風には、錆の臭いがふくまれていた。
ドクオは無排気のトロリーバスに乗り換えた。
スローラムを下って下層に入り、その一番奥に行くと、飲み屋やいかがわしいホテルが並ぶ地区に入る。
34
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:14:30 ID:d0Me9C6E0
4.
('∀`)「こんちゃーす」
〝レディーたちが紳士にマッサージを施すべく待機中!〟
という看板の出ている売春宿に入った。
バーのカウンターに腰かけて新聞を読んでいる、顔なじみの店主が顔を上げた。
(´・ω・`)「来ると思ってたよ、ドクオさん」
('∀`)「グラビア見たぜ。いやあ、みんなカワイく撮れてたじゃないの」
(´・ω・`)「ふん、カメラマンの腕が良かっただけさ」
('∀`)「ところで、彼女はどうしてるかな? 一番カワイく撮れてた金髪ちゃんは」
(´・ω・`)「ああ……ツンのことで、あんたに伝えなきゃならんことがある」
彼は新聞をめくって、眼鏡を押し上げた。
(´・ω・`)「あの娘な、死んだよ」
('A`)「え?」
35
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:16:07 ID:d0Me9C6E0
5.
(´・ω・`)「先週、あんたが来た翌日だよ。
里帰りしたいから、三日ばかり休暇が欲しいって言うんでね……
そしたら、途中でバスが鳥に襲われたらしくてね」
('A`)
(´・ω・`)「檻とか地下道がちゃんと整備されていない田舎だったからね。残念だよ、いい子だったのに」
('A`)「そっか……」
(´・ω・`)「他の子も見ていったらどうだい?」
('A`)「あ、いや。今日はいいや」
ふらりと店を出た。
薄汚れた通りを歩く。地面にまったく現実感がなく、羽毛の上を歩いているようだった。
ξ゚ー゚)ξ〝あした出征なんだ? わかったわ、うんとサービスしちゃう! 思い出の夜にしてあげる〟
ξ゚ー゚)ξ〝わたし、仕事を引退したらドクオくんみたいな人と一緒になりたいな!〟
ξ゚ー゚)ξ〝ねえねえ、わたしね、グラビアに載ることになったんだよ!〟
36
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:23:56 ID:d0Me9C6E0
NGワードに引っかかったクソが ちょっと待ってくれ
37
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:30:49 ID:fxl6HIY60
がんばれ
38
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:31:07 ID:d0Me9C6E0
テスト
('A`)(そりゃ……あの娘はさ、俺以外の客にだってそう言ってたに決まってるよ)
('A`)「ツンちゃん……」
(;A;)「あ、ああああ……!! ツンちゃん! 俺……俺は……!!
き、君にとっては、ただの仕事だったかも知れないけどさあ……!!」
ゴミに顔を突っ込んだまま、ドクオは悲鳴のような泣き声を上げた。
指でゴミ袋を引きちぎりながら。
(;A;)「チクショウ、鳥ども!!」
不意に路地の奥から、女の悲鳴らしきものがした。
39
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:33:37 ID:d0Me9C6E0
6.
('A`)(そりゃ……あの娘はさ、俺以外の客にだってそう言ってたに決まってるよ)
ぐらりと世界が傾いた。
足がもつれ、よろめいて路地に入り込むと、ゴミの山の中に倒れた。
('A`)「ツンちゃん……」
(;A;)「あ、ああああ……!! ツンちゃん! 俺……俺は……!!
き、君にとっては、ただの仕事だったかも知れないけどさあ……!!」
ゴミに顔を突っ込んだまま、ドクオは悲鳴のような泣き声を上げた。
指でゴミ袋を引きちぎりながら。
(;A;)「チクショウ、鳥ども!!」
不意に路地の奥から、女の悲鳴らしきものがした。
男の怒号がそれに続く。誰かが生意気な娼婦でも殴っているのだろう。
今日は関わる気になれず、立ち去ろうとしたとき、暗がりにちらりと灰色のローブ姿が見えた。
40
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:35:45 ID:d0Me9C6E0
7.
('A`)(あの服……?)
ζ(;ー;*ζ「やめて! やめてください!」
<ヽ`∀´>「オラオラ売女が気取ってんじゃないニダ」
( `ハ´)「手間取らせるんじゃねえアル」
ドクオはそちらに歩いていくと、リボルバーを頭上に向けてぶっ放した。
ぎょっとして振り返った男たちの眉間に狙いをつける。
<ヽ`∀´>「!?」
('A`)「急所を外せるほど腕に自信ねえぞ」
(;`ハ´)「うぐ……」
ζ(゚ー゚*ζ
('A`)「姉さん、こっちに来な」
ζ(゚ー゚*ζ「あっ、後ろ……!!」
('A`)「!!」
41
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:39:01 ID:d0Me9C6E0
8.
振り返った瞬間、別の大男に掴まった。
銃を持つ手を掴まれ、壁に押し付けられる。
(,,゚Д゚)「背後に注意だぜ、軍人さん」
(;'A`)(くそ、もうひとりいやがったのか!!)
<ヽ`∀´>「そいつの見てる前でやっちまうニダ」
( `ハ´)「そいつはいい趣向アル」
ζ(;ー;*ζ「いやー!!」
ドクオはあらん限りの力で暴れたが、いかんせん体格が違いすぎる。
腕をひねり上げられ、銃を落としてしまった。
(,,゚Д゚)「ギコハハハ、ほら、よーく見とけ」
(#'A`)「てめえら! ぶっ殺……」
42
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:43:16 ID:d0Me9C6E0
9.
スカン!!
小気味のいい金属音がして、相手がいきなりうめき声を上げてひざまずいた。
( ^ω^)「背後に注意だお、このクソチンピラ」
(;゚Д゚)「ぐ……!!」
大男がベルトから拳銃を抜こうとした瞬間、ブーンはその脳天にフライパンをフルスイングした。
頭蓋骨がきしむギシッという音がし、男は大の字に倒れた。
(,,゚Д゚)「ゴヘッ!!」
(;`ハ´)「野郎!!」
<;`∀´>「くそ……あ、いでっ!?」
ひとりはズボンを下ろしていたためすぐ対応できず、無様に転んだ。
もうひとりがヒップホルスターの銃に手をかけた。
('A`)「やめとけって!!」
43
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:45:25 ID:d0Me9C6E0
10.
警告を無視して抜いたので、ドクオはためらわず撃った。
本来は熊撃ち用の44マグナム・ホローポイント弾は男の右肩に炸裂し、ごっそり肉をえぐり取った。
( ゚パ)「ああああ!!」
銃口を向けたまま、ドクオはほとんど腕が千切れかけている男ににじり寄った。
相手の銃を拾い上げ、排水溝に投げ捨てる。
次に足にズボンが引っかかったままもがいている男の股間を、水兵靴のかかとで思い切り踏みにじった。
<ヽ;∀;>「サムギョプサルゥウウウ――?!」
('A`)「思い知ったか、この野郎! ブーン、助かったぜ」
( ^ω^)「まったく、いつまで待っても来ないと思ったら。やっぱりここかお」
('A`)「ああ、ちょっとな。姉さん、大丈夫かい」
ζ(゚ー゚*ζ「え、ええ……」
あわててはだけた肌を隠し、立ち上がろうとしたが、苦痛に顔を歪めた。
44
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:47:09 ID:d0Me9C6E0
11.
ζ(゚ー゚;ζ「う……」
( ^ω^)「ああ、こりゃ足をくじいてるお」
('A`)「送るよ。家は?」
ζ(゚ー゚*ζ「助けていただいたことは感謝しますけれど、これ以上はもう……」
( ^ω^)「無茶言いなさんな、その足でどうやって帰るんだお」
ブーンはドクオの脇をひじでつついてニヤリとした。
(*^ω^)「ウヒヒ、彼女を抱っこする役はぼくが貰うお」
彼女に肩を貸して立たせるが、ブーンも古傷で足が悪いため、ちぐはぐでうまく行かない。
見かねたドクオが反対側から彼女の肩を抱いた。
(#^ω^)「あんたはツンちゃんがいるでしょ」
('A`)「いや、あの子はもういないんだ」
何かを察し、ブーンはそれ以上何も言わなかった。
45
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:49:13 ID:d0Me9C6E0
12.
***
彼女は地区のさらに奥に案内した。
淀んだ空気の吹き溜まりには、腐臭と排泄物のにおいが立ち込めている。
街灯の下にひとり、街娼が立っていた。
川д川
ζ(゚ー゚*ζ「貞子さん」
川д川「デレ。どうしたの? そいつらは?」
年が行って客がつかなくなり、売春宿にいられなくなった類の娼婦だ。
しかし、そういう女特有の疲れ果てた絶望感が薄いことにドクオは気づいた。
目が死んでいないのだ。
ζ(゚ー゚*ζ「このひとたち、わたしを助けてくれたんです」
川д川「あれ? あんた……」
46
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:51:19 ID:d0Me9C6E0
13.
('A`)「ん?」
川д川「ツンのお得意さんでしょ。あたし、ちょっと前まであの店にいたの」
ドクオのほうは彼女の顔に覚えはなかった。
四人は廃屋に入り、地下室のドアから地下道に入った。
( ^ω^)「どこに行くんですかお」
川д川「黙ってついてきな」
ζ(゚ー゚*ζ「本当なら、無関係な人にはこの場所は教えられないのですが……」
川д川「あんたらは特別ね。デレを助けてくれたから」
地下道を抜けると、大きな空洞に出た。
街の一区画がまるごと入っている。
('A`)「こりゃ、旧市街か……?」
川д川「そう。軍部がニチャンシティーを要塞化したとき放棄されたとこ」
47
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:53:42 ID:d0Me9C6E0
14.
(;^ω^)「くさいなあ……なんでこんなとこに住んでるんですかお」
案内されたのは、元は倉庫だったらしい場所だった。
違法に引いてきた電源コードから電気を取り、ライトアップされている。
中は集会所になっており、老若男女を問わずさまざまな人々がいた。
奥に据えられた翼を持つ女性の像を拝んでいる。
( ^ω^)「兄貴、この人らはもしかして……」
('A`)「〝光の翼〟か」
鳥の神を信仰する人々で、元は土着の宗教だったものがニチャンシティーに入って広まった。
軍拡や徴兵制を批判したため、軍政が敷かれてからは反政府組織として扱われている。
また、一部の者たちは彼らが鳥を操って大攻勢を引き起こしたのだと信じていた。
川д川「わたしたちの指導者に会っていって」
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっと、貞子さん!」
48
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:56:01 ID:d0Me9C6E0
15.
川д川「いいから。ちょっと誰か! デレを診てあげて。
あたしはペニサスさまにおうかがいしてくる」
貞子は信者をブーンに引き渡すと、奥に向かった。
待つあいだ、ブーンはドクオにささやいた。
(;^ω^)「兄貴、ヤバイお。こんなとこにいるのが軍にバレたら、ぼくら……」
(;'A`)「お、おう。そうだな」
そそくさとお暇しようとすると、戻ってきた貞子がすばやくふたりの行く先に回り込んだ。
頑として動かないという態度でドクオの目を見つめる。
川д川「お会いになられるそうよ」
(;'A`)「あの、俺らホントにもう、このへんで」
川д川「ううん、会って欲しいんだ。ドクオさん、特にあなたにはどうしても」
(;'A`)「?」
49
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 20:58:43 ID:d0Me9C6E0
16.
川д川「ついてきて。あ、そっちのひとはデレの足に包帯巻くの手伝ってあげて」
(*^ω^)「ほほう、あの美脚に。兄貴、もうちょっとお邪魔することにするお」
(;'A`)(あの野郎!)
ブーンと別れ、仕方なく貞子についてゆく。
建物の奥に行き、突き当たりのドアまで来ると、彼女は振り返って言い聞かせた。
川д川「あのね、面食らわないでね。ペニサスさまは……まあ、とにかく会えばわかるわ」
('A`)「?」
ノックすると、奥で女性の返事がした。
貞子を先頭に部屋に入る。
壁に大きな翼を持つ星の絵が描かれ、その翼に抱かれるようにしてベッドが置かれている。
女性がそこで身を起こし、本を広げていた。
('、`*川
50
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:00:19 ID:d0Me9C6E0
17.
30才くらいだろうか。少しやつれているが、顔立ちや物腰に気品がある美女だ。
近くまで歩み寄って、彼女の顔を覗き込んだとき、ドクオはぎょっとして息を飲んだ。
両目とも縫い合わされている。
('、`*川「ドクオさんですね」
(;'A`)「あんた、目が……! 誰がそんなことを?」
彼女は点字本を閉じた。
('、`*川「ここにいるひとたちではありません。これをやったのはわたしの同胞です」
('A`)「同胞?」
('、`*川「この方とふたりにしていただけますか」
ペニサスは貞子のほうを向いて言った。
川д川「わかりました」
51
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:03:19 ID:d0Me9C6E0
18.
彼女が出て行くと、ドクオに向き直った。
まるでふたりの姿や周囲の状況が、はっきりと見えているかのようだった。
('、`*川「使徒を助けていただいたことを感謝いたします」
('A`)「いや、ただの成り行きだ」
('、`*川「いいえ。あなたは今日、わたしと会う運命だったのです」
安っぽい占い師みたいな言葉に、ドクオは思わず吹き出した。
('A`)「決まっていたって、なぜわかるんだ?」
('、`*川「あなたが空と地を繋ぐ子を守るために生まれてきた戦士だから」
どうにも話に本気になれず、冗談に付き合ってるような気分だった。
半笑いで続ける。
('A`)「俺が特別だってのか? 兵長止まりの男が」
('、`*川「光の翼の経典は読まれましたか?」
52
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:06:11 ID:d0Me9C6E0
19.
('A`)「幼年学校で少し。まだ弾圧が始まってなかったころな」
('、`*川「かつて天に栄えた王国では、すべての人々が背に翼を持っていました。
しかし権力への欲望に取り付かれた一部の者たちがクーデターを起こし、内戦になったのです。
戦いは長く続きましたが、国王派は多大な犠牲を払ってとうとう反乱軍を撃退しました。
反乱軍の残党は罰として翼を奪われ、地上に落とされた……というところまでですか?」
('A`)「ま、そんなとこだね。
俺らはその裏切り者たちの子孫で、あんたらは天に残った人々……〝神鳥人〟とかいうのを信仰してるんだろ」
('、`*川「……その神鳥人のあいだで、ふたたびいさかいが起きたのです。
地上に落ちた人々は、予想以上に発展してしまった。
その力はいずれ天に届くほどになるえしょう。
そうなれば再び故郷を奪おうと攻め込んでくる、その前に攻撃するべきだと、一部の者が言い始めた」
('A`)「ちゃんと読んでないから知らないけど……」
('、`*川「これは経典が書かれたあとに起きたことなのです。
ふたたび内戦が起き、今度は開戦を支持する分離派が支配力を奪い取った。
そしてあの大攻勢が起きたのです」
53
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:08:42 ID:d0Me9C6E0
20.
ドクオはとうとう笑い出してしまった。
('∀`)「まるで見てきたみたいに話すね、あんた」
('、`*川「信じられませんか」
('A`)「まーね」
彼女は寝巻きの上着に手をかけ、脱いだ。
(;'A`)「お、おいおい?!」
体の前に上着を当てて隠しながら、背を彼に向けた。
そこには大きな逆ハの字型の古傷の跡があった。乱雑な手術で傷口を縫い合わせてある。
まるで、もぎとられた翼の跡のような……
(゚A゚)
('、`*川「分離派に従わなかった者たちはみな目を潰され、翼を奪われて天から突き落とされたのです」
54
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:10:04 ID:d0Me9C6E0
20.
ドクオはとうとう笑い出してしまった。
('∀`)「まるで見てきたみたいに話すね、あんた」
('、`*川「信じられませんか」
('A`)「まーね」
彼女は寝巻きの上着に手をかけ、脱いだ。
(;'A`)「お、おいおい?!」
体の前に上着を当てて隠しながら、背を彼に向けた。
そこには大きな逆ハの字型の古傷の跡があった。乱雑な手術で傷口を縫い合わせてある。
まるで、もぎとられた翼の跡のような……
(゚A゚)
('、`*川「分離派に従わなかった者たちはみな目を潰され、翼を奪われて天から突き落とされたのです」
55
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:13:29 ID:d0Me9C6E0
21.
彼女は上着を着なおした。
('、`*川「わたしと、弟もそうでした。
ただ、わたしたちはある地上人の女性に救われたのです。
そして弟と彼女は恋に落ち、その人の子は身ごもった。
弟は運良く生き残った同志たちに見つかり、隠れ家へと旅立ちました――彼女と、ある場所での再会を約束して」
当然のごとく、ドクオの頭にひとりの女性の顔が思い浮かんだ。
(;゚A゚)「クーか!!」
('、`*川「そうです」
('A`)「俺が彼女と会ったこと、知ってたのか?!」
('、`*川「お告げがあったのです」
ドクオはめまぐるしく考えをめぐらせた。
この女は俺をハメようとしているのか? 何のために?
56
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:17:30 ID:d0Me9C6E0
22.
全部嘘に決まってる……いや、だけどそれじゃ説明のつかないことが……
('、`*川「彼女の生んだ子が、天と地をふたたび繋ぐ救世主となるでしょう。
ドクオさん、あなたはその子を守るためにこの世につかわされたのです」
(#'A`)「デタラメ言うんじゃねえ!! 鳥どもは俺の家族のカタキだ!!
そんな奴らの作った子なんざ、ミンチにして豚に食わせてやる!!」
背を向けて部屋を出ようとしたとき、静かだが力強い声で彼女が言った。
('、`*川「わたしが地上に残ったのは、ひとつは人々を導くため。
もうひとつは、あなたに会うためです」
('A`)
('、`*川「早晩、ふたたび分離派は鳥たちを使って攻勢をかけるでしょう。
どうかあの人を守ってください……クーさんを、そして弟の子を守ってあげて」
***
57
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:20:30 ID:d0Me9C6E0
23.
集会所に戻ると、ブーンが添え木をつけたデレが杖を突いて歩くのを手伝っていた。
( ^ω^)「おっ、上手ですお。気をつけて」
ζ(゚ー゚*ζ「ありがとう。ブーンさんってすっごく優しいのね」
(*^ω^)「いやあ、足が悪いのは慣れてるから」
(;'A`)「いい気なもんだぜ、まったくよ」
( ^ω^)「あ、兄貴!」
ブーンはデレをそっとベンチに座らせた。
( ^ω^)「お話ってのは何だったんだお」
('A`)「ワケわかんねえヨタ話を聞かされたよ。とんだ時間のムダだったぜ」
川д川「終わった?」
('A`)「あの女がおたくらの希望ってわけ? まったく、イカレてんぞ」
ふたりを外に送る道すがら、貞子は言った。
58
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:22:44 ID:d0Me9C6E0
24.
川д川「クーさんの話をしたんでしょう。あの人ね、ちょっと前までここにいたんだよ」
('A`)「何だって?」
川д川「ダンナがひどい男でね……酒飲んでは女房を殴るような奴でさ。
クーさんね、ある日、殺されそうになってそいつを灰皿で殴り殺しちゃったの。
軍警察に追われてるとこを、うちらが匿ったってわけ」
( ^ω^)「ふつうに正当防衛って言えばよかったのに」
川д川「相手は軍部の高官だよ。この町じゃ誰も軍には逆らえないんだから」
('A`)「何かもあのペニサスってやつのお告げって言いたいんだろ」
彼女は立ち止まってドクオをにらんだ。
川д川「あの人の悪口は許さないわよ」
(#'A`)「鳥と人間がヤったなんて話をするイカレ女じゃねーか!!」
川#д川「ブッ殺すわよあんた!」
(;´ω`)「よしなさいって、ふたりとも」
59
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:24:41 ID:d0Me9C6E0
25.
ブーンは無理やりドクオを引っ張っていった。
( ^ω^)「じゃあこれで。デレさんによろしくですお」
川д川「ドクオさん」
('A`)「あんだよ!」
川д川「ツンちゃんね、いつもあんたのこと話してたよ。
あの人は何かを秘めてる人だって、ほんとにキラキラした目で話すの。
だからあたし、あんたをペニサスさまに会わせる気になったんだ」
('A`)
川д川「そんだけ」
言うだけ言うと、彼女はさっさと引き返していった。
***
ふたりは翌日の朝方にドックに行き、ほかの軍人たちとともに整列して海軍大佐の訓示を受けた。
60
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:27:16 ID:d0Me9C6E0
26.
その後、報告書などの雑事は昼までに済んだので、船の引渡しまで射撃場で時間を潰した。
しかし何をしていても、ドクオは頭からペニサスの話が離れてくれなかった。
鳥の絵が描かれた的紙にリボルバーをブッ放す。
('A`)「う〜ん……」
( ^ω^)「調子悪いお、どうしたんだお」
('A`)「いや、別に」
( ^ω^)「それはそうと見てお、これ。昨日の夜、ポーカーで漁師の奴から巻き上げたんだお」
小型のクジラ類を撃つモリ撃ち銃だ。
引き金を引くとワイヤーを引きながらモリが発射され 的紙を粉々に吹っ飛ばした。
(;'A`)「一発しか撃てねえじゃんか、どうすんだそれ」
( ^ω^)「ぼくのレストランで、こいつで獲った大物を料理して出すんだお」
('∀`)「ほほう、そんでもってあのデレちゃんを奥さんにするってわけかい?」
(*^ω^)「フヒヒ! 言わせんなよ!」
61
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:29:37 ID:d0Me9C6E0
27.
('A`)
( ^ω^)
(;'A`)(;^ω^)(あっ、やべ! これ死亡フラグじゃね?!)
夕方になり、船を引き取って出航した。
一通りはきれいになっていたが、もともとが大攻勢以降に貨物船を徴収して改造した粗製濫造の船のため、
ポンコツであることにあまり変わりはない。
苦しげなエンジン音を上げて船はヌルポ島へ向かった。
何時間かして操舵をブーンと交代したあと、自室に戻ったドクオは、ゴミ箱をひっくり返した。
('A`)
雑誌を拾い上げてツンのグラビアを広げ、ナイフで丁寧に切り取った。
肩の階級章を少し剥がすと、きれいに折りたたんだグラビアのページをそこに入れ、また縫い合わせた。
62
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:32:48 ID:d0Me9C6E0
28.
('A`)「戦士がどうたらなんて話は知ったこっちゃない。
けどさ、俺がどんなことになっても……ツンちゃん、君は俺を守ってくれるよな?」
つづく……
63
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:34:37 ID:d0Me9C6E0
続きは明日か明後日あたり。
あと「コ.ン.ク.リ.ー.ト」がNGワードなのは何でだよ。
昨今ではソレを使ったプレイとかが人気なのか
64
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:50:25 ID:ZzLA.K/s0
乙!面白かった
後編も楽しみにしてる
65
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:54:05 ID:B/j2PW2o0
乙
66
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 21:57:31 ID:bz5NxpZk0
原作買うわ
67
:
名も無きAAのようです
:2015/11/12(木) 22:14:22 ID:BCAS2ujM0
おつ
68
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:23:57 ID:GLhq0rIQ0
最終話の投下はっじまるよー
69
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:25:11 ID:GLhq0rIQ0
1.
翌朝。
ヌルポ島につくと、ドクオは船を桟橋につけた。
クーと話す口実を考え、荷物から缶詰を三つばかりみつくろった。
('A`)「ちょいと彼女に差し入れしてくらあ」
( ^ω^)「コンビーフ缶はダメだお!」
('A`)「わかってるって、オイルサーディンだよ」
それらを抱えて島に降り、彼女の小屋に向かった。
('A`)あらしの鳥、あらしの夢のようです 後編
原作 J・G・バラード『あらしの鳥、あらしの夢』(短編集『溺れた巨人』収録)
70
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:27:26 ID:GLhq0rIQ0
2.
ドアをノックするが返事がない。
鉄塔のほうに行ってみると、階段の下に彼女がうずくまっていた。
川;> -<)「ゼエ、ゼエ」
(;'A`)「クーさん! どうしたんだ」
川;゚ -゚)「ドクオさん。ちょっと気分が……」
彼女を抱き起こしたとき、妙な違和感に気づいた。
これまでは気づかなかったが、体型が……太っているとはまた違うような……?
膨らんだ腹を抱えるようする彼女に手を貸し、小屋までつれていってベッドに寝かせた。
川 ゚ -゚)「ありがとうございます」
('A`)「構わんよ。ちょっと待ってろ、薬を持ってきてやる」
川;゚ -゚)「薬ならその棚の箱を……そう、そのボール紙の箱です」
質素そのものの家だった。
71
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:29:24 ID:GLhq0rIQ0
3.
椅子がひとつだけの小さなテーブルがあり、空き缶に花が活けてある。
奥に大きなはた織り機があった。
この孤独な生活で、はたを織るのが彼女にとって唯一の慰めなのだろうか。
箱を渡すとクーは中から錠剤を取り出し、ドクオが差し出した水差しの水で飲み下した。
川 ゚ -゚)「少し休めば大丈夫。ありがとう、おかげで助かりました」
('A`)「そうか、何かあったら言ってくれよ。これニチャンシティーのお土産」
クーは苦しげな顔に笑みを作り、礼に代えた。
しばらくすると呼吸が落ち着き、青ざめた顔に赤みが差した。
('A`)「町で光の翼の連中に会ったよ」
川 ゚ -゚)「ペニサスさまにも?」
('A`)「ああ」
川 ゚ -゚)「そうですか」
72
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:32:12 ID:GLhq0rIQ0
4.
彼女は目を閉じた。
川 ゚ -゚)「あなたは運命に選ばれた戦士だと言われたでしょう。
だけどそんなもの、あなた流に言うなら〝豚に食わせろ〟というところです」
('A`)
川 ゚ -゚)「運命はあなた自身が選択するのです。
夫の頭を真っ二つになるまで灰皿で殴ったとき、わたしは……」
('A`)「おい、よしてくれよ」
川 ゚ -゚)「自分はなんてひどい運命のもとに生まれたのだと思いました。
けれど、違った。それは確かにわたしが自ら選んだ道だったのです。
別の選択肢を取る勇気がなかったから……あんなことに……」
クーの目元には光るものがあった。
川 ゚ -゚)「嵐が近づいています」
('A`)「いい天気に見えるが」
73
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:34:24 ID:GLhq0rIQ0
5.
川 ゚ -゚)「あなたは選択を迫られるでしょう。以前のわたしと同じように」
('A`)「……」
***
船に戻ったドクオは、甲板の寝椅子に仰向けになった。
煙草に火をつけ、雲ひとつない空を見上げる。
ブーンは例によって釣りに励んでいた。
('A`)「ブーン、お前、運命とか信じてるか?」
(;^ω^)「光の翼の連中に洗脳されたかお」
釣り糸を垂れながら、ブーンはちょっと考えてから答えた。
( ^ω^)「うーん。この世には食えるもんと食えないもんしかないお。
運命は食えないお。よってぼくには大して価値のあるもんでもないお」
('A`)「デレちゃんとの出会いは?」
74
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:36:40 ID:GLhq0rIQ0
6.
( ^ω^)「兄貴、適当に入ったレストランが、偶然にも超うまい飯を出す隠れた名店だったとするお。
これは運命かお?」
('A`)「まあ……そう言ってもいいんじゃないの?」
( ^ω^)「違うお。それはぼくのうめえもんを食いたいという思いが、うめえ料理を作るコックとめぐり合わせたんだお」
(;'A`)「どうもよくわからんが……」
( ^ω^)「ぼくは運命なんて信じちゃいないけど、人には人を引き寄せる力みたいなもんがあると思うお」
('A`)「人間そのものが運命、ってなことを言いたいわけ?」
( ^ω^)「そういうこと……お、イサキが釣れたお」
それじゃデレちゃんはお前の片思いだったらどう説明するんだと思ったが、酷な質問なのでやめておいた。
煙草に火をつけ、ごろりと横になる。
('A`)「俺は鳥をぶっ殺すだけが仕事さ。救世主がどうとか、そんなの知ったことじゃねえ」
***
75
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:38:50 ID:GLhq0rIQ0
7.
翌朝。
迷い鳥の一匹も姿を見せず、そろそろ銃声が恋しくなってきた。
甲板でブーンの釣った魚を食べていると、鉄塔の足場にクーの姿が見えた。
(;'A`)「あぶねえなあ、もう。何やってんだいつも……」
後でまた様子を見に行くかなと思っていると、地平線に暗雲が立ち込めているのが見えた。
( ^ω^)「あー、こりゃ嵐になりますお」
('A`)「マジかよ〜……雨漏り、直ってっかな?」
船を湾内に停泊させ、甲板の余計なものを船内に運び込む。
準備に追われているうちにも、暗雲はみるみる広がってゆく。
しかし、何かがおかしい。
甲高い喚き声が聞こえる。
('A`)「……?」
76
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:41:23 ID:GLhq0rIQ0
8.
双眼鏡を覗いてみると、そこにあるのは嵐ではなく、鳥の大群だった。
空を真っ黒になるほど埋め尽くし、鳴き声が濁った雷鳴のようにとどろいている。
これまで島に襲いかかってきた数の比ではない。以前の大攻勢に匹敵する。
(;゚A゚)「マジかよ……?! あれ、全部鳥だぞ!!」
(;゚ω゚)「ええええええ?!」
無線機の呼び出し音が鳴っている。
ブーンに双眼鏡を押し付け、ドクオは船内に飛び込んだ。
スピーカーから緊急回線で一斉放送が入っている。
***「全海域の兵に告ぐ、鳥の大軍隊がニチャンシティーに接近している。
ただちに寄港し防衛に参加せよ。これは最優先任務である!
繰り返す、全海域の兵に告ぐ……」
(;'A`)「うお、あっちもか!」
( ^ω^)「兄貴……」
77
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:43:11 ID:GLhq0rIQ0
9.
('A`)「準備しろ、ブーン! ズラかるぞ!」
(;^ω^)「わ、わかったお!」
('A`)「俺はクーさんを連れて来る」
船を桟橋につけ、鉄塔に走った。
ちょうど彼女は地面に降りてきたところだった。
川;゚ -゚)「ハァ、ハァ、とうとう嵐が……」
('A`)「ヨタ話に付き合ってる暇はねえんだ、逃げるぞ! ついてこい」
彼女は静かに首を振った。
川 ゚ -゚)「わたしはここを動きません」
(;'A`)「何だって?!」
川 ゚ -゚)「来るべきときが来たのです」
(#'A`)「いい加減にしろよ!! ワケのわかんねえ話はもううんざりだ!」
78
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:46:51 ID:GLhq0rIQ0
10.
そのとき、甲高い口笛の音がした。
船のほうを見ると、ブーンが甲板で海軍式の手旗信号を送っている。
( ^ω^)(斥候が来ている)
すでに島の上空には先遣隊が到着し、例の耳障りな鳴き声をあげて旋回を始めていた。
肩の階級章を手で掴みながら、ドクオはあたりをうろうろした。
(;'A`)(ツンちゃん……俺、どうすればいい? 俺は……)
川 ゚ -゚)
意思を固めた。
彼女の手を引いて鉄塔の通信施設へ連れていくと、鍵束の鍵でスチールのドアを開いた。
('A`)「ここは鳥対策ででかなり頑丈に作ってある。いいって言うまで出るなよ」
川 ゚ -゚)「あなたは?」
(#'A`)「こうなったらやるしかねえだろうがよ!」
79
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:47:59 ID:nECS2Syg0
支援
今日で終わるのが残念だ
80
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:48:28 ID:GLhq0rIQ0
11.
川 ゚ -゚)「それでいいのですね?」
('A`)「勘違いすんなよ、俺は生き延びられる可能性が高いほうを選んだだけだ!」
ドアを叩きつけるように閉め、船に走った。
桟橋を駆け抜けてタラップをよじのぼる。
( ^ω^)「兄貴! 急がないと」
('A`)「いや、とどまって戦う」
(;^ω^)「何言ってんだお!? あれだけの数、どうやって相手にすんだお!!」
('A`)「よく聞け、ブーン。今からニチャンシティーに向かっても、必ず途中で追いつかれちまう。
何もない海の上で360度鳥に囲まれて、生き延びられると思うか?!
島を盾にして戦ったほうがまだ望みはある!」
( ^ω^)「だって、弾が足りるかどうか……」
('A`)「夜が来るまで持ちこたえるんだ!」
(;゚ω゚)「まだ昼にもなってないお!?」
81
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:50:00 ID:GLhq0rIQ0
11.
川 ゚ -゚)「それでいいのですね?」
('A`)「勘違いすんなよ、俺は生き延びられる可能性が高いほうを選んだだけだ!」
ドアを叩きつけるように閉め、船に走った。
桟橋を駆け抜けてタラップをよじのぼる。
( ^ω^)「兄貴! 急がないと」
('A`)「いや、とどまって戦う」
(;^ω^)「何言ってんだお!? あれだけの数、どうやって相手にすんだお!!」
('A`)「よく聞け、ブーン。今からニチャンシティーに向かっても、必ず途中で追いつかれちまう。
何もない海の上で360度鳥に囲まれて、生き延びられると思うか?!
島を盾にして戦ったほうがまだ望みはある!」
( ^ω^)「だって、弾が足りるかどうか……」
('A`)「夜が来るまで持ちこたえるんだ!」
(;゚ω゚)「まだ昼にもなってないお!?」
82
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:52:54 ID:GLhq0rIQ0
12.
('A`)「ブーン、お前は通信施設んとこに隠れてろよ。あの日に助けられた命、今日返してやる」
彼は頭をかきむしった。
(;´ω`)「あああああ、もう!! いいお、ぼくも残るお」
('A`)「すまねえ、ブーン」
( ^ω^)「いいってことよ。兄貴はぼくがいないとダメだし」
船を岬の近くに移動させ、断崖絶壁を背にする形で陣取った。
これで少なくとも全方向から攻撃されることはない。
機銃の周囲にはすでにブーンがありったけの弾薬箱を積み上げていた。
ドクオは肩章を掴んで目をぎゅっと閉じた。
(-A-)(ツンちゃん、俺は君が思ってるような男じゃないんだ。
君なしじゃ何にもできない、ただのチンケな弱虫なんだよ)
( ^ω^)「兄貴、来るお!!」
83
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:55:11 ID:GLhq0rIQ0
13.
耳をつんざくすさまじい鳴き声とともに、暗雲と化した鳥たちが島に到来した。
日が翳り、夜のようにあたりが真っ暗になる。
第一陣が降下を始めた。
(;A;)(だから俺を守ってくれ! 君がいなくちゃ何もできないんだ!)
(#゚A゚)「うおおおお、来やがれ鳥ども!! 地獄の炎でローストチキンにしてやるぜェェ!!」
(#^ω^)「鳥は豚に食わせろおおおおおおおお!!!!」
(#゚A゚)「おうよ! 鳥は豚のエサだああああああああ!!!!」
機銃の咆哮が鳥の鳴き声をかき消した。
豪雨のように降り注ぐ弾丸を浴びた鳥たちが悲鳴をあげ、ばたばたと湾内に落ちてゆく。
(#゚A゚)「テメエらは自分からオーブンに飛び込んだチキンどもだオラアアアアアア!!」
ものの数分もしないうちに湾内は真っ赤に染まった。
ブーンに「リロード!」と叫んでから、弾薬箱から弾帯を取り出して機銃にセットし直す。
84
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:57:40 ID:GLhq0rIQ0
14.
再び銃口が火を噴き始める。
すぐに鳥の死骸が湾内を埋め尽くしたが、それでも数が減ったようには見えない。
相変わらず空は鳥で真っ黒のままだ。
(;'A`)「多すぎるぜ、チクショウ!!」
続いてブーンがリロードの合図をすると、ドクオはいっとき引き金を引くのをやめて叫んだ。
('A`)「ブーン、こいつぁやっぱし弾薬が持たねえ! ある程度数を減らしたら施設に立てこもろう!」
( ^ω^)「わかったお!!」
(;'A`)(とは言え、どこまで減らせるもんか……ん!?)
上空の鳥の動きが変わった。
無秩序に飛び回っていたのが一ヶ所に固まっている。
ひときわ大きな鳥が甲高い鳴き声を上げて飛びまわり、その動きを指示しているかのようだった。
('A`)「ありゃ何だ……?」
85
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 20:59:31 ID:GLhq0rIQ0
15.
イワシのように巨大な球状の群れと化している。まるで輪郭のあやふやな黒い月だ。
そこから一本の激流と化した鳥たちが飛び出した。
ムカデのように身をくねらせながらこちらに迫ってくる。
(゚A゚)「やべえ!! ブーン、なんかにつかまれ!!」
(;゚ω゚)「ひいいい?!」
さっきのひときわ大きな鳥を先頭に、猛烈な勢いで船にぶつかって来る。
瞬時にふたりは嵐の中に飲み込まれた。
鳥たちはまるでパイプから吐き出された濁流のように、ぶつかっては周囲に飛び散ってゆく。
船体がきしみ、装甲板に激突する音が頭を割らんばかりに響いた。
( ;ω;)「うわああああああ兄貴ぃいいい!!!」
(;゚A゚)(船が砕けちまう!)
途方もなく長い時間に感じられたが、実際は一分もなかっただろう。
86
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:02:51 ID:GLhq0rIQ0
16.
嵐が晴れたとき、ボコボコに凹んだ船と、壁の一部をもぎ取られた船橋があった。
散り散りになった鳥たちは再びリーダーの指示のもと集まり、球体へと変貌しつつある。
(;゚A゚)「やべえ、次食らったら沈むぞ!!」
( ^ω^)「動き回っていたほうが良くないかお」
('A`)「いや、壁を背にしてたほうがいい」
機銃を見ると銃身が曲がり、ロータリーが破壊されていた。
(;'A`)「くそ!! ブーン、そっちの銃は?」
( ^ω^)「ダメだお、やられちまったお」
向こうはもっとひどく、ロータリーから引っ剥がされて甲板に倒れていた。
(;'A`)「施設に立てこもるしかねえな」
( ^ω^)「兄貴、来るお!!」
87
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:04:48 ID:GLhq0rIQ0
17.
再び突撃が始まった。
リーダー格が率いる群れが砲弾の連射のようにぶつかってくる。
ブーンは船室に逃げ込んだが、ドクオは間に合わず、鳥のくちばしを背中に浴びた。
全身が痺れるような苦痛が走り、衝撃に息が詰まった。
かろうじて入り口のふちに捕まり、木の葉のように揺れる船から振り落とされるのをこらえる。
(;^ω^)「兄貴いいいい!!」
(;'A`)「うわああああああああ!!」
メキメキと音を立て、突風にあおられた掘っ立て小屋のように船橋の屋根や壁板が吹っ飛んでいく。
永遠とも思えるほど長い時間が過ぎた。
('A`)「ああ……くそ……」
耳の奥で激しく耳鳴りがした。
鳥の嵐が通り過ぎ、浸水警報が鳴る中、ドクオは船に影が差したのを感じた
88
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:07:21 ID:GLhq0rIQ0
18.
( ゚∋゚)
翼の音を立て、リーダーの巨鳥が覆いかぶさるようにして現れた。
ドクオはとっさにホルスターに手をやった。
(;'A`)(銃……あれ、ない?!)
揺られている間に落としてしまったらしい。
( ゚∋゚)ギャアアアアアアア
(;゚A゚)「うわあああああああああ!!」
鳥がくちばしを打ち下ろそうとしたとき、ブーンがモリ撃ち銃をぶっ放した。
杭の先端が胸に突き刺さると、鳥は耳をつんざくすさまじい悲鳴を上げた。
( ゚∋゚)ギィヤァアアアアアアアア
( ゚ω゚)「くたばれやこのチキン野郎があああ!!」
89
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:09:12 ID:GLhq0rIQ0
19.
銃のワイヤのもう一端は、奥のドアのバルブに縛り付けられていた。
血を噴き出しながらも鳥は上昇し、湾内で船をイカリごと引きずり回した。
( ^ω^)「兄貴!」
('∀`)「へへ、まったくこの世にお前より頼るになる奴ぁいねえよ」
彼を抱き起こそうとブーンがこちらに歩き出そうとしたとき、別の鳥がさっとドクオの目の前をよぎった。
その後にはもう、ブーンの姿はなかった。
(゚A゚)
一瞬、何が起きたかわからなかった。
ふと向こうの空を見上げると、鳥が我先にと集まり、人の形をするものを食いちぎっている。
('A`)「ブーン……」
(;A;)「うっ、うっ……うわああああああああ!!」
90
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:12:17 ID:GLhq0rIQ0
20.
立ち上がったドクオは絶叫しながら船室に入った。
背中が焼け付くように痛み、あふれ出す血がシャツをぐちゃぐちゃに濡らしている。
(;A;)「ブーン! ちっくしょう、ブーン……!!」
倉庫からプラスチック爆弾を山のように持ってくると、機関室に入った。
燃料タンク付近に残らずそれを設置し、信管を差す。
ふと、バカな考えが浮かんだ。
この船がなくなったら……何年もともに過ごした海上の故郷がなくなったら、ブーンが本当にもう戻って来ないような……
(;A;)「くそっ! ツンちゃん、助けてくれ、ツンちゃん……!」
その考えを振り払い、ゼンマイ式タイマーを一分後に合わせ、甲板へと飛び出した。
意を決し、浮き輪を掴んで海へと身を投じる。
( ゚∋゚)ギャアギャア
(゚A゚)「ローストチキンになれやああああああ」
91
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:13:37 ID:BK0IiZ5g0
嘘だろ…ブーン…
92
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:14:25 ID:GLhq0rIQ0
21.
海中に没すると同時に、頭上の海面で爆炎が炸裂した。
燃料に引火して二次爆発を起こし、裂けた船体から赤々とした炎が噴き出すのが海中からでも見えた。
背中の苦痛に邪魔されながらも、浮き輪にしがみついて浮かび上がる。
('A`)
炎上した船が、海中へ引きずり込まれるようにして沈んでゆく。
リーダーを失った鳥たちは混乱を来たし、突然、仲間割れを始めた。
鳥同士が空中でぶつかりあい、おたがいの肉をくちばしでついばみ合っている。
波間に漂いながら、ドクオはその光景を唖然として眺めていた。
('A`)「何だ……? 何が起きてる?」
いや、よく見ると違う。
見たことのない、白鳥のように真っ白な鳥の群れが島を訪れ、戦いを挑んでいる。
数は白い鳥のほうが圧倒的に少なかったが、青黒い鳥たちは統率を失っており、すぐさまばらばらに逃げ散った。
93
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:16:25 ID:GLhq0rIQ0
22.
('A`)
相手を追い払った白い鳥たちはゆっくりと、大きく円を描いて島の周囲を旋回している。
よく見るとそれは島ではなく、鉄塔を中心にしているのだとドクオは気づいた。
やがて、波打ち際に流れ着いた。
鉛のように重い体を引きずって鉄塔へ向かう。
階段とはしごを上がって一番高い場所の足場に行くと、クーがそこにいた。
手すり越しに鳥たちを見つめ、こちらに背を向けている。
川 ゚ -゚)
('A`)
ドクオはそこにあるものに気づいた。
大きな鳥の巣だ。
壊したパーゴラや木の枝などに、白い羽根が織り込んである。
94
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:19:20 ID:GLhq0rIQ0
23.
川 ゚ -゚)「あなたは本当の戦士です」
膨らんだ腹を手で抱えながら、ひどく苦しげに彼女は言った。
(゚A゚)「ふざけんじゃねえ!! てめえらの……てめえらが……とにかく、ブーンは死んだんだぞ!!」
クーは振り返ることなく、ローブを脱ぎ捨てた。
その下にあるのは、鳥の羽を編み込んで作った純白のドレスだった。
両手を大きく広げ、風にすそをはためかせたその姿は、彼女自身が鳥であるかのようだった。
川 ゚ -゚)「ブーンさんのことは残念です……ごらんなさい」
('A`)「?」
水平線に、また別の白い鳥の一団が現れた。
それが近づいて来るにつれ、鳥たちが囲むようにして守っているものに気づいた。
背に白い翼を持つ人々だった。
音もなく優雅に足場に降り立つ。
95
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:21:07 ID:GLhq0rIQ0
24.
全部で五人、全員羽衣のような背が開けた服を着ていた。
だがそのうちのひとりの男は目を縫い合わされ、背に翼をもぎとられた古傷がある。
( -∀-)
その男とクーは抱き合った。ふたりとも涙を流していた。
彼らが何をささやきあったのかはわからない。
( ;∀;)
川 ; -;)
やがて別の女性ふたりがクーを鳥の巣に運び、寝かせた。
ひとりがひざまずいてクーを背中から抱き、もうひとりが開かせた股の前にかがみこむ。
川 - )「ウッ……ウウッ」
長いあいだ、彼らが励ましと何かの指示をささやきあうのを、ドクオは呆然と見ていた。
96
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:24:09 ID:GLhq0rIQ0
25.
川; - )「ウッ、アアッ……!!」
クーが産み落としたものを、産婦の女性がすぐに毛布で包み込む。
驚いたことに、それはふたつあった。双子だったのだ。
ふたりの女性は消耗し切ったクーを手厚く毛布で包み、抱き上げた。
彼女がふたりに何か言うと、布に包まれたものの片方が彼女の夫に渡された。
別の女性が盲目の彼に手を貸し、ドクオの前へと導いた。
( -∀-)
彼は大切そうに抱きしめていたそれを、名残惜しげにドクオに渡した。
彼は思わず受け取ってしまった。
('A`)「お、おい……これ、どうしろってんだ?」
彼は何も答えず、微笑んだだけだった。
数人が手を貸し、クーとその夫を抱き上げ、音もなく浮かび上がった。
97
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:26:36 ID:GLhq0rIQ0
26.
(;'A`)「待ってくれ!! 世界は……変わるのか!? 戦争が終わるときが来るのか?!」
川 ゚ー゚)
クーはうなずき、微笑んだ。
彼らは白い鳥を引き連れ、水平線へと去ってゆく。
まったくの静けさの中、ドクオはそれを長いこと見送っていた。
彼らの姿が消えたあとも、ずっと。
……腕に抱いた毛布の中で、大きな卵がびくんと胎動するのを感じた。
98
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:28:49 ID:GLhq0rIQ0
1.
エピローグ
新しくあてがわれた船はやっぱりボロで、次こそ戦艦に乗れるというドクオの望みはふたたびついえた。
彼は相変わらず、壊れた鉄塔しかないヌルポ島を守っている
その日も、一日の始まりは砂糖のどっさり入ったコーヒー、煙草、そして……
('∀`)「フフフ、軍隊暮らしも長くなると技を覚えるってなもんよ」
保存食を調理した料理を庭先のテーブルに並べた。
元はクーの家だった小屋は、今では彼が使っている。
('A`)「おーい、朝メシだぞ〜」
鉄塔に向かって声を張り上げると、てっぺん近くにいた少女が中空に身を踊らせた。
十分な勢いがついてから、背の翼を広げて滑空する。
少女は庭に滑り込むと、ホバリングしながらゆっくり降下して席についた。
ノパ⊿゚)「……今日のはちゃんと食べられるよね、父さん」
99
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:30:39 ID:GLhq0rIQ0
2.
(;'A`)「うむ、こないだのは我ながらヒドかった。今回は改良したぞ」
ノパ⊿゚)「うん、見た目はまあ……いただきます」
('A`)「おう、いただきます」
あれから一年、彼女はすでに12才の少女とほぼ同じくらい成長している。
ドクオが自ら仕立て直した軍服姿で、背中に開けた穴から折りたたんだ翼が覗いていた。
('A`)「そうそう、ニチャンシティーで手紙を受け取ってきたぜ」
ノパ⊿゚)「誰から?」
(;'A`)「口をふけよ、もう。みっともないな」
口の周りにソースをいっぱいつけている娘に、布巾を投げてやった。
手紙の束を広げて封筒を見つけ出し、中身を取り出して広げる。
100
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:32:11 ID:GLhq0rIQ0
3.
('∀`)「ブーンからだよ。傷痍軍人手当が少ないって愚痴ってるけど、何とかレストランを開けたとさ」
ノパ⊿゚)「ホント?! 行きたい!」
彼女は身を乗り出して手紙を取った。
左足を義足、左腕を義手にしたブーンが、妻のデレと一緒に自分の店の前で笑っている写真が一緒に入っていた。
あの日、波打ち際を漂っているのを見つけたときは、絶対に死んでいると思ったものだが。
('A`)「うーん、翼をどうにかして隠す方法を考えなきゃな」
ノパ⊿゚)「ん。町の復興、どうだった?」
('A`)「どうだかな、軍部は軍の強化のほうに力入れてるし。ん、今日のは割りと食えるだろ」
いつか光の翼と彼女を引き合わせなければならないだろう。
娘に本当に世界を変える力があるのか、本当の親そして兄弟あるいは姉妹と再会できるのか。
ドクオとしては、その日が来るのが複雑な気分だった。
101
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:35:00 ID:GLhq0rIQ0
3.
('A`)(俺を父さんって呼んでくれなくなっちゃうのかなあ……)
ノパ⊿゚)「父さん!」
(*'∀`)「何だね、娘よ」
ノパ⊿゚)「まずい!」
(;'A`)「……そうか」
おしまい
102
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:37:25 ID:GLhq0rIQ0
おわりに
原作から借りたのはほぼ設定のみとなってます。
巨鳥と戦い続ける人類、岬を守る貨物船を改造した警備船、湾内を埋め尽くす鳥の死体、羽で巣を作る女など。
主人公は鳥のコスプレしてたらクーに当たる女に撃ち殺されて終わります。
な……何を言ってるかわからねーと思うが(ry
この結末はぜひ自分で本を読んで確かめてくれ!
103
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:45:24 ID:BK0IiZ5g0
おつ
104
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 21:47:23 ID:CDGO.Duc0
おつおつ!
ブーン生きてて良かった
105
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 22:03:02 ID:WaZA8ojs0
乙。原作ポチったぜ
106
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 22:03:44 ID:VI3KCd3E0
乙!面白かった
107
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 22:15:05 ID:oTDhqsW60
カンザイ生きとったんかワレ!
108
:
名も無きAAのようです
:2015/11/14(土) 23:14:57 ID:i2WD7b2U0
乙
>>8
の箱ごとブンに、と
>>10
のためと、、と
>>17
の兄弟たちがに、と
>>55
のその人の子は身ごもった、
>>58
の何かも、は
それぞれ「箱ごとブーンに」、「ためと、」、「兄弟たちが」、「その人は子を身ごもった」、「何もかも」でいいんかな
109
:
完全犯罪(カンザイ)
:2015/11/15(日) 00:06:11 ID:i3XR3GRw0
>>108
誤字脱字多すぎワラタ
「人の子」は「人間の子」って意味のアレよ
まあどっちにしろわかりにくくてすまんな
110
:
名も無きAAのようです
:2015/11/15(日) 01:07:08 ID:cG5upipo0
ブーン生きてて良かった。乙
111
:
名も無きAAのようです
:2015/11/15(日) 01:44:08 ID:N1fSHtKw0
なんかこの雰囲気、既視感あると思ったらカンザイさんだったのか。乙でした
そして久々に赤ペン先生を見た
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