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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下がある。
-
先頭を走るブーンとツン。
後ろから見て右にいるブーンは左手に片手剣を持ち、
左にいるツンは右手に細剣を持つ。
エリア内に敵を見つけるや否や、
走るスピードを上げたブーンが敵の横を走り抜けながら一閃。
本来ならば敵の目標を自分に向けつつ敵に背中を見せる愚行だが、
続くツンが『自分を見ていない敵』に対して落ち着いて攻撃を与えるための布石だった。
そしてそのことに気付いており、
忌々しく思いつつもそこに強力な一撃を与えることが
最良であることを分かっているツンは、
容赦なく鋭い一撃を敵に与える。
通常はそのまま敵を前後から攻撃して退治する二人だが、
後方に敵がいる場合ブーンはそのまま次の敵に向かう。
そしてその後ろを追うツン。
もちろん一体目はまだ退治できていないが、
すでにそこにはクーが槍による攻撃を加えていた。
(´・ω・`)「デミタスさん!」
川 ゚ -゚)「デミタス!」
(´・_ゝ・`)「お、おう!」
最初こそショボンやクーの声で戦いに加わったデミタスだったが、
隊列での自分の位置と役割を理解した彼は、
三度目以降はクーと先を争うように戦いに参加した。
(´・ω・`)「うしろ!
来ます!」
突然後ろを向いて叫ぶショボン。
『うしろ!』で振り返って武器を構えたシャキンとドクオに対し、
ミルナは『来ます!』で慌てて振り返った。
.
-
最初の一匹が倒されると後方から出現する敵。
それは先日通った際にも起こった事象だが、
さすがにどのエリアで起こるかをミルナは覚えていなかった。
それはおそらく八人中二人を除く全員が同じであり、
覚えていないことを責められることではない。
もちろん覚えていないことによって死ぬ確率が高くなるのであれば
覚えておかなければいけないこと、
知らなければいけないことなのだが、
幸いなことにこのエリアで後方から出現する敵は即座に攻撃を仕掛けてくることはないため、
パーティーを組んでいる彼らにとってそれほど重要度が高くなかったのである。
(`・ω・´)「右手の動きに注意しろよ!」
戦闘態勢を整える前の熊に攻撃をするシャキン。
熊が攻撃の手を上げた時には四度切り裂き、
バックステップで距離をとった。
( ゚д゚ )「おう!」
『(`・ω・´)「真上に振り上げた手はそのまま下に向かって振り下ろされるが、
斜めに上げた手は袈裟懸けの時と、くの字型に曲げるときがある。
袈裟懸けだと思って懐に潜り込んだら攻撃されることがあるってことだな」』
先日の熊との戦いでシャキンが告げた注意事項。
その後に一見同じような動きの中の違いを説明されたミルナとデミタスは、
素直に驚き、改めてシャキンの凄さを感じていた。
そして今日のショボンの指示。
もともと感じてはいたことだが、
シャキンとショボンに知り合った自分達の運に二人とも感謝した。
更に惜しげもなくその恩恵を自分達に与える二人に対し、
自分も力になりたいと素直に思っていた。
.
-
一つ目の目的地である安全エリアに辿り着いたのは、
出発から一時間半経過した頃だった。
前回は二時間以上かかっていたことを考えると、
かなり順調に辿り着いたことになる。
(´・ω・`)「まずは一息つこう」
ウインドウを出したショボン。
ドクオとルートの確認をする。
そんな二人を囲むように休憩をする六人。
しかしシャキンが二人に、
ショボンに近付いた。
(`・ω・´)「ショボン、どうする?」
(´・ω・`)「そうだね……。
一回、話を聞こうか」
(`・ω・´)「了解」
('A`)?
(´・ω・`)「ドクオごめん、ちょっと待ってて」
にっこりとほほ笑んだショボンに対し、
不思議そうに頷くドクオ。
そして二人は何事かを話しながら輪から外れ、
今自分達がやってきた道に向かって歩いていく。
まるでそれは仲間たちに聞かれたくない内緒話をしているように見えた。
( ^ω^)「二人はどうしたんだお?」
.
-
('A`)「わからん」
ブーンとドクオの声がぎりぎり届く位置で、
突然二人は武器を構えた。
その先には木々しかなく、
敵は見えない。
川 ゚ -゚)!
ξ゚⊿゚)ξ!
( ゚д゚ )!
(´・_ゝ・`)!
驚きを見せる四人。
ブーンとドクオは既に走り出していた。
( ^ω^)「ショボン!シャキンさん!」
('A`)「おい!」
(´・ω・`)「何の御用ですか?
ずっと着いてきていましたけど」
(`・ω・´)「おれに一目ぼれしたか?」
仲間達の動きを気にせずに気に向かって語り掛ける二人。
まるでそれは擬人化した木に対して行っているように見るが、
二人の行動に信頼をしている六人は同じように武器を構えた。
(´・ω・`)「このまま戦いますか?」
「それはやめておくヨ」
.
-
ショボンの問いかけに返答する一つの声。
そして一本の大きな木の裏側から、
ゆっくりと人が現れた。
(女)「よく気付いたナ。
『看破』のスキルなんてのはまだないはずだけド」
それは鼠色のフードを被った小柄な女性だった。
両手を上にあげて手のひらを見せ、
武器を手にしていない、
敵意がないと意思表示していた。
(´・ω・`)「この世界、どうやって攻撃をされるかわかりませんよ。
武器以外の裏ワザがあったとしても驚きません」
(女)「……疑り深い男は嫌われるヨ」
口調はきつめだが、
表情は笑顔で答える女。
その頬に特徴的なペイントをしているが、
可愛らしい顔立ちをしていた。
('A`)「お、おまえ。もしかして」
その顔を見て、
ドクオは武器を下ろして数歩進んだ。
( ^ω^)!
ξ゚⊿゚)ξ!
(´・ω・`)!
ドクオが自ら進んで女性に近付いたことに驚く三人。
しかしその後のドクオの言葉に、
全員の頭に『?』が浮かぶ。
('A`)「もしかして、『鼠』か?」
.
-
(女)
特徴的なペイントとは、
髭のような三本の線。
確かに鼠色のフードとそのペイントから『鼠』という言葉を思い浮かべることはできるが、
とりあえず見た目は可愛らしい女性に向かって『鼠』と呼ぶのは如何なものだろうか。
そんなことをほぼ全員が考えた中、
女性の顔が少し曇ったのを感じた。
『そりゃそうだよね』
またしても七人の頭に同じような感想が浮かんだが、
言われた女性の返答は少しだけ斜め上だった。
(女)「私を知っているのかナ」
('A`)「おれは『アルルッカバー』だ」
βテスト時代の名前を告げるドクオ。
βテスターであったことを出来るだけ隠す予定だったことを知っている仲間たちは思わず息をのむ。
そして何故かフードの女性も驚いていた。
(女)「え!?」
('A`)「久しぶりだな。鼠」
(女)「え!?アルルなのカ!?」
('A`)「『アルル』って呼ぶな。
あと、今の名前は『ドクオ』だから」
ドクオの返答に笑い出す女。
(女)「その返答!
まだ最後に会ってからそれほど経ってないのに懐かしいヨ!
久し振りだナ!『アルル』!」
.
-
('A`)「『アルル』って呼ぶな!」
(女)「分かってるヨ。
アルルッカバーくん」
('A`)「笑いながら言われてもな。
あと、今の俺の名前は」
(女)「『ドクオ』だネ。
よし、覚えタ」
('A`)「まったく……。
……久し振りだな。ね」
(アルゴ)「アルゴだヨ」
('A`)「久しぶりだな。アルゴ」
(アルゴ)「……来てたんだネ」
('A`)「……お前もな」
あっけにとられた表情で二人を見守る七人。
アルゴがその視線に気付く。
(アルゴ)「ドクオ、彼らは……」
('A`)「おれのリアル友達だ。
全員βはやってないけど、
おれがそうだってことは知っている」
あからさまに顔をしかめるアルゴ。
('A`)「大丈夫だ。
こいつらはおれ達がβテスターだと知っても」
(アルゴ)「いや、アルルくんにリアル友達がいたことが衝撃なだけだヨ」
.
-
('A`)「そこかよ!
っていうかおれは」
(アルゴ)「アルルッカバー君で、
今はドクオなんだよナ」
笑顔を見せるアルゴに対し、
こんどはドクオが顔をしかめた。
(アルゴ)「確かにβテスターだって知られるのは避けたかったけど、
君らの方が下手なテスターより色々すごそうだ。
特にそこの二人がネ」
面白そうに、
けれど鋭い視線でシャキンとショボンを見るアルゴ。
(´・ω・`)「ドクオ、この方は?」
('A`)「ん、ああ。
名前は今聞いた通り『アルゴ』。
β時代の知り合いだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとあんたこっちの世界では社交的だったのね」
('A`)「うるさい」
(アルゴ)「なんだ、リアルでの評価は一緒なんだネ」
川 ゚ -゚)「うむ。友達は多い方ではないな」
('A`)「なんとなくクーに言われるとへこむ」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんとの事なのに」
('A`)「ツンに言われてもへこまない」
ξ゚⊿゚)ξ「よし、後で」
(´・ω・`)「三人共?」
.
-
('A`)「あ、うん」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、話を進めなさい」
川 ゚ -゚)「脱線しているぞ」
(;`・ω・´)
(; ゚д゚ )
(;´・_ゝ・`)
( ^ω^)「いつもの事ですお」
(´・ω・`)「それで、なぜあなたは僕達をつけていていたんですか?」
(アルゴ)「!
いや、たまたま先にここに来ていたところに君たちが……」
シャキンが剣を握りなおしたのを横目で見て、
大きくため息をつくアルゴ。
(アルゴ)「と言っても信じてもらえないネ。
……この先に出る角熊の攻撃に関して調べていることがあってネ。
昨日もここに来ていたんだけど、
ホルンカに一度戻って、
色々買い込んでまた向かおうとしたときに、
広場で騒いでいる君たちを見つけたってことサ」
(´・ω・`)「……僕達は急いでいます。
ですので今の内容でとりあえず納得しますが、
正直信じてはいません」
(アルゴ)「当然だと思うヨ。
でもこれが真実だから、
信じてもらえると嬉しいナ」
(´・ω・`)「角熊の攻撃とは?
今から僕達はそのエリアに向かう予定ですので、
β時代とは違う点があるようであれば教えていただけますか?」
.
-
(アルゴ)「ふむ……。
情報には対価が必要だと思うんだけどネ」
槍を構えるショボン。
その動きを見たシャキンがアルゴの背後に回って剣を構える。
(´・ω・`)「命と引き換えでは如何ですか?」
('A`;)「お、おいショボン!」
慌ててアルゴの前に立とうとするドクオを止めるブーン。
('A`)「ブーン!?」
アルゴに見えないように、ドクオに向かって微笑むブーン。
見ればミルナとデミタスは驚いているが、
ツンとクーも平然と見守っていた。
(アルゴ)「……本気かい?」
(´・ω・`)「僕達は今急いでいます。
あなたの情報が正しく、
これからの僕達の行動に有益であるならば、
出来る限りで返します。
ですが、嘘の情報で僕達が危険な目になったり、
最悪な結果になった場合は、
必ずあなたを殺します。
それを念頭において、
取引をしていただけますか」
クーとツンが武器を構える。
それを見て慌てて武器を構えるミルナとデミタス。
ブーンは少しだけ悲しげな顔でショボンを見た後に、
ドクオを止めるのとは逆の手で武器を構えた。
('A`)「ショボン……。
みんな……」
.
-
(アルゴ)「分かった。嘘はつかないヨ」
(´・ω・`)「それでは」
(アルゴ)「ただ、情報の前に一つ教えてほしい。
どこに向かっているんだ?
角熊のいるエリアに向かっているという事しかわかっていないんでネ」
(´・ω・`)「それは……」
アルゴをじっと見るショボン。
その視線を受け止め、さらにショボンを見るアルゴ。
(´・ω・`)「……人を、迎えに行くところです」
(アルゴ)「!もしかして、男女一人ずつの二人組……?」
(´・ω・`)「!……いえ、…………男二人、女一人の三人パーティーです」
(アルゴ)「……そう……だネ」
二人の会話を聞き、
表情をこわばらせる七人。
いつの間にか全員が武器を下ろしている。
(アルゴ)「目的地は、奥の安全エリア。
この層ギリギリの丘。だネ?」
(´・ω・`)「……はい」
(アルゴ)「案内するヨ。
実は私もそこに行くつもりだったんだヨ」
(´・ω・`)「!なぜですか?」
(アルゴ)「話すと長くなるし、
おそらくは聞きたくないことも含まれるけどいいかイ?」
(´・ω・`)「それは……」
.
-
(アルゴ)「先導する。
この人数じゃあ戦闘は避けられないから参加してもらうけど、
いいネ?」
ツンとクーを見るショボン。
その視線を受けて、黙って武器を構える二人。
ほかの皆も武器を構える。
(´・ω・`)「……はい。よろしくお願いします」
(アルゴ)「それじゃあ行こうカ」
歩き始めたアルゴの後ろを、
ここに来るまでと同じ隊列になって八人は続いた。
角熊との戦い方と注意点を途中でアルゴから聞き、
ブーンとツンとドクオの三人が先制攻撃、
クーとデミタスがそのフォロー、
シャキン、ミルナ、ショボンが後方と横を担当する形で戦闘をこなした。
そして二時間後。
奥の安全エリアにアルゴを含む九人はたどり着いた。
('A`)「ミセリ……」
安全エリアは、マップ上では第一層の端にある。
柵やオブジェクトがあるわけではなく、
崖に沿った長辺30メートル以上、
短辺20メートルほどの少し湾曲した正方形に近い長方形をしていた。
四方のうち一辺は崖。
崖の先には、青い空。
何もない空間。
上空には、第二層の端が見え、
今自分達がいる場所が、
『空に浮いている』という現実を突き付けられる。
.
-
その他の三辺は角熊の出るフィールドダンジョンに続く道と、
エリアを分ける森があった。
さらにエリアは中央が少し高くなっており、
一番高くなった場所には、
一本の太い樹が立っている。
('A`)「ミセリ……」
ドクオが名前を呼びながら、
その木の根元にうずくまるミセリに近付く。
他のメンバーは、
黙ってそれを見守っている。
('A`)「ミセリ……」
ただ名前を呼ぶことしかできないドクオ。
そして大樹の反対側、
ミセリの座る場所と正反対の場所にうずくまるビコーズを視界に入れた。
('A`)「ビコーズ……」
体を震わせるビコーズ。
そしてゆっくりと、
恐る恐るといった動きで顔だけ振り返る。
( ∵)「ドクオ……」
名前を呼んでも微動だにしないミセリはそのままに、
ビコーズに向かって足を進めるドクオ。
('A`)「ビコーズ、大丈夫か?」
( ∵)「おれは、悪くない。
おれは、悪くない。
おれは、悪くない。
おれは、…………」
.
-
ドクオを見ながら、
少し焦点のずれた瞳で、
呟き続けるビコーズ。
('A`;)「ビコーズ?」
( ∵)「おれは、悪くない」
('A`)「お、おい、どうした」
ビコーズに触れる距離に辿り着く前に立ち止まるドクオ。
縋りつくように自分を見る瞳、
けれど拒絶するようにうずくまるビコーズの姿に、
恐怖に似た感情を覚えてしまったからだった。
(アルゴ)「『赤角熊は、
一番最初に角に攻撃を与えれば、
一発で倒すことが出来る。
しかも、ランダムでレアアイテムや武器が手に入る』
ホルンカの裏通りで流れている噂話だヨ」
アルゴの声に、大きく体を震わせるビコーズ。
いつの間にか隣に立つアルゴに驚きつつも、
それ以上に語った内容に困惑するドクオ。
('A`)「なんだよ、それ」
(アルゴ)「だから、噂だヨ、『噂』」
('A`)「なんだよ……それ……」
口調は軽いが、無表情なアルゴ。
ドクオは言葉をなくし、その感情の読み取れない顔を見ながら立ち尽くした。
.
-
(´・ω・`)「本当は、先ほど教えていただいたように……」
(アルゴ)
('A`)
丘を登りながらショボンが声をかけると、
二人が振り向いた。
(´・ω・`)「赤角熊は最初の一撃を角に当てられると、
その一撃で倒される代わりに、仲間を呼ぶ。
しかも呼ばれた角熊の攻撃力は通常よりもアップしている」
(アルゴ)「代わりに防御力は弱くなっているけどネ」
ドクオとアルゴの間に立つショボン。
(´・ω・`)「その噂は、だれが流しているんですか?」
(アルゴ)「……」
(´・ω・`)「『βテスター』。ですか?」
(アルゴ)「……そう、噂されているヨ」
('A`)「なっ!
べ、β時代には赤角熊なんていなかったぞ!」
(アルゴ)「ああ。
情報を集めた限り、
βテスターだと思われるプレイヤーで『赤角熊』を知っていたやつはいなイ。
正式サービスで追加された敵だと思うけど、
もしかするとβ時代は出現条件が厳しくて誰も会わなかったか、
或いは知っているプレイヤーに会えていないだけなのカ」
(´・ω・`)「おそらく、正式サービスによる追加でしょう」
(アルゴ)「何故?
アンタはβテスターじゃないよナ?」
.
-
(´・ω・`)「ホルンカの街のそばで、似たようなトラップを持ったモンスターが出ますよね?」
(アルゴ)「『実付き』だネ」
(´・ω・`)「はい。
リトルネペントの『実付き』です。
βテストが基本システムや、
プレイヤーが実際に動いた時の
プログラムをテストするためのものであるのならば、
こんな近くに似たようなトラップを仕掛ける意味がありません」
(アルゴ)「……一理あるネ」
('A`)
(アルゴ)「だけど」
(´・ω・`)「また、リトルペネントの『実』も
赤角熊の『角』も頭の上にあるものですが、
基本の背の高さが違うため、
普通に戦っていても『実』には武器が届きますが、
赤角熊の『角』を攻撃するためには、
身長の高い人が柄の長い武器で意識的に狙わないと無理でしょう」
(アルゴ)「?」
(´・ω・`)「すべて推測ですが、
この先にクエストでこの赤角熊と戦わないといけない時が
来るのではないでしょうか」
(アルゴ)「!」
('A`)「!」
(´・ω・`)「新たに何体か湧いて出る
『攻撃力は強いけど防御力が弱くなっている敵』も、
この先に進んで『攻撃力と防御力が増しているプレイヤー』ならば、
倒すことが出来る適正範囲の敵なのかもしれません」
.
-
無表情に淡々と自分の推理を口にするショボン。
ドクオはその一つ一つを『可能性』として素直に受け止めて頭の中で昇華しているが、
アルゴは目を見開いて驚いていた。
(´・ω・`)「どうしました?」
自分の顔を凝視するアルゴに対し、
不思議そうに問いかけるショボン。
(アルゴ)「君はいったい……」
(´・ω・`)「すべて『推測』です。
可能性の一つでしかありません」
(アルゴ)「それはそうだ、いや、でモ」
ξ゚⊿゚)ξ「ねえ」
いつの間にか、下にいた六人も丘の上に登ってきていた。
(´・ω・`)「ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「その噂ってまだ流れてるのよね?」
ドクオとショボンの間に立ったツンがアルゴに問いかける。
クーはミセリのそばにしゃがんで声をかけており、
ブーンはビコーズに話しかけていた。
(アルゴ)「ああ。さっきも喋っている奴がいたヨ」
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ、それを信じてここに来たのって他にもいるの?」
(´・ω・`)!
('A`)!
(アルゴ)「私が知っているだけでも四組。
その中の二組は角への攻撃を出来ずに諦めていたが、
残りの二組はその後見ていない」
.
-
(´・ω・`)!
('A`)!
ξ゚⊿゚)ξ!
川 ゚ -゚)「今回は助けるのが間に合ったんだな」
三人が衝撃を受けると、クーがツンの後ろにやってきていた。
ξ゚⊿゚)ξ「クー。あの子は?」
川 ゚ -゚)「だめだ。全く反応してくれない」
ξ゚⊿゚)ξ「そう……」
('A`)「そうだな。アルゴ、お前そんなに強いのか?」
(アルゴ)「え?あ。いや、その、まあ、ネ」
('A`)?
川 ゚ -゚)?
ξ゚⊿゚)ξ?
(´・ω・`)「どなたか助っ人がいたのではないですか?」
(アルゴ)「あー。うん。まあ、ナ」
(´・ω・`)「β時代からのお友達ですね。
よろしくお伝えください」
(アルゴ)「あ、ああ。うん。伝えておくヨ。
でも、この世界で危ない状態を見たら手助けするのはよくあることだから、
あんまり気にしなくていいサ」
(´・ω・`)「ですが、僕達をここに連れてきてくれたり、
動けなくなった二人を見守っていてくれるなんてことは、
なかなか出来る事ではないと思いまして」
.
-
(アルゴ)!
ショボンの言葉に再度驚きを見せるアルゴ。
ショボンは彼女のその表情を見て自分の推測が正しかったことを知り、
丘を囲む林の一角を見つめた。
すでにそこは先ほどからシャキンが視線を向けており、
アルゴはそのことにも気付いて驚きを強くした。
(アルゴ)「あ、いや、その、ナ」
そんなアルゴを気にすることなく、
木々に向かって深く一礼するショボン。
シャキンもショボンほどではないが頭を下げていた。
(アルゴ)
二人を交互に見るアルゴ。
(´・ω・`)「ありがとうございます。
よろしくお伝えください」
ショボンとシャキンが頭を上げるとほぼ同時に、
林の中で影が動いた。
(アルゴ)「君たちは……いったい?」
(´・ω・`)「ほんの少し、人からの視線に敏感なだけですよ。
後僕は、ほんの少しだけ人より目が良いので」
にっこりとほほ笑んだショボンを、
いぶかしげに見つめるアルゴ。
そんな二人を、というより戸惑っているアルゴを、
少しだけかわいそうに思って何人かは見つめていた。
.
-
( ゚д゚ )(この二人はいろいろと規格外だからな)
(´・_ゝ・`)(この数日でだいぶ慣れたけど)
川 ゚ -゚)「しかしそうなると、早いところ噂を消さないと更に……」
微妙な空気を破り、ボソッと呟いたクー。
('A`)「そう……だな」
ξ゚⊿゚)ξ「でも、どうやって?」
(´・ω・`)「一度広まった噂を消すのは難しいよ」
川 ゚ -゚)「それはその通りだ。
しかも今回は、一撃で倒せるとかレアアイテムとか、
心をくすぐるキーワードも多い」
ξ゚⊿゚)ξ「ほんと、攻略本が欲しいわよ」
('A`)「壁新聞とか?」
ξ゚⊿゚)ξ「そういえばあんた昔やってたわよね。
自分で調べたゲームの裏ワザとかハウツーを新聞にして、
クラスの壁に貼ってたりするの」
('A`)「忘れてくれ」
川 ゚ -゚)「だが、ハウツー本や指南本があればいいな。
敵ごとの戦いにおける注意点をまとめてくれたような」
ξ゚⊿゚)ξ「地形とか、最短ルートとかも地図があるといいわね。
今回連れてきてくれたみたいな出来るだけ敵と会わないルートとかも」
('A`)「そういうのも自分で探すのが楽しみだけどな」
ξ゚⊿゚)ξ「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
('A`)「そうだけどよ」
.
-
(アルゴ)「ハウツー本、攻略本……」
会話を黙って聞いていたアルゴがぶつぶつと呟く。
ショボンはそれを横目で見ながらビコーズに近付いた。
(´・ω・`)「ブーン」
(;^ω^)「ショボン」
(´・ω・`)「どう?」
(;^ω^)「だめだお」
ブーンの反対側、
ビコーズを間にしてしゃがむショボン。
(´・ω・`)「ビコーズさん」
( ∵)「おれは悪くない……。おれは悪くない……」
身体を細かく震わせながら呟き続けるビコーズ。
(´・ω・`)「ビコーズさん……」
(;^ω^)「さっきからいろいろ話しかけてるけど、
ずっとこんなかんじだお」
(´・ω・`)「……ブーンでもダメか」
( ^ω^)「お?」
(´・ω・`)「ううん。なんでもない」
立ち上がるショボン。
ブーンは最初その動きに合わせて頭を上げただけだったが、
ショボンに視線で促され、二人でミセリのそばに移動した。
(´・ω・`)「ミセリさん」
.
-
二人はミセリの両側にしゃがんだ。
(´・ω・`)「ミセリさん」
二回名前を呼ぶと、伏せていた顔を上げてゆっくりとショボンを見た。
(´・ω・`)「ここは安全エリアですが休めません。
まずはホルンカまで戻りましょう」
ミセ*゚ー゚)リ
( ^ω^)「ミセリ……」
ブーンの優し気な声に釣られるように向きを変えるミセリ。
( ^ω^)「おっおっ。
一緒にホルンカへ戻るお」
柔和な笑みを浮かべたブーン。
その顔を見たミセリの目から、涙がこぼれ落ちた。
ミセ*;ー;)リ「ゼアフォーが、姫じゃなくて、ミセリって……呼んだの」
( ^ω^)「そうなのかお」
ミセ*;ー;)リ「それで、私の事が好きだって」
( ^ω^)「ゼアフォーはミセリの事がすきなんだお」
ミセ*;ー;)リ「私……全然知らなくて……。
姫って呼ばれるのも、ただのキャラ設定で……。
とりあえず女の子とゲームをするのが楽しいだけなんだろうって……。
思ってて……」
( ^ω^)「そうだったのかお……」
ミセ*;ー;)リ「こんな、ゲームの世界で、好きとか、言われても、
アバターだし、現実とは性格だって違うし。
こんなに、わたし、しゃべることなんて……」
.
-
( ^ω^)「ゼアフォーは、
そんなのも全部ひっくるめて、
ミセリの事が好きなんだお」
ミセ*;ー;)リ「私なんか……」
( ^ω^)「ゼアフォーが好きな人の事を、
『なんか』なんて言っちゃだめだお」
ミセ* ー )リ!
( ^ω^)「ゼアフォーはかっこいいお。
好きな人を守ってるんだお。
だから、そんなかっこいいゼアフォーが好きになった人の事を、
『なんか』なんて言っちゃだめだお」
ミセ* ー )リ「ブーン……くん……」
( ^ω^)「ホルンカにかえるお」
ミセ* ー )リ「もう……少しだけ……。
今は星は見えないけど、ゼアフォーが、
ここで見る星が、好きだったから……」
( ^ω^)「そうだったのかお……」
再び俯いたミセリ。
ブーンがショボンの顔を見ると、ショボンは一度頷いた。
( ^ω^)「分かったお。
もう少しだけ、ここにいると良いお」
ミセ* ー )リ「ありがとう……」
ミセリが涙を流したまま顔を伏せる。
二人のした会話は決して大きな声ではなかったが、
そこにいる全員の耳に届いていた。
そう。彼にも。
.
-
( ∵)「ふざけるな!」
ふらりと立ち上がったビコーズ。
そして両足で大地を踏みしめ、
こぶしを握って叫んだ。
( ∵)「ふざけるな!!」
その声は強く激しく、
けれど震えていた。
( ^ω^)「ビコーズ!?」
ビコーズがミセリの前に立った。
(´・ω・`)「ビコーズさん?」
( ∵)「ふざけるな!
あいつはずっとお前のことが好きだったんだ!」
ミセ*゚ー゚)リ!
顔を上げるミセリ。
その目の前には、怒りによって顔を赤くしたビコーズ。
( ∵)「ずっと、ずっと、ずっと!
βで会った時からずっと!
おれと二人で!お前が好きだったんだ!」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」
( ∵)「おれたち二人はゲーム初心者で、
名前のモチーフが似てて、
知り合ってから名前の事で盛り上がって!
はじまりの街から出ることが出来なかったけど!
話しているだけで楽しかった!
でもお前と会って、ゲームの進め方や戦い方を教えてもらって、
お前の事を二人で姫って言いだして!
守るって決めて!」
.
-
苦しそうに言葉をつづけるビコーズ。
その激しさと悲しみと怒りで、
誰も近寄れない。
( ∵)「だから、だから、だから!
お前に誘われたから!
だから正式サービス後も始めたんだ!
誘われなかったらやらなかった……。
おれ達は……」
(´・ω・`)!
( ^ω^)!
('A`)!
ξ゚⊿゚)ξ!
川 ゚ -゚)!
(`・ω・´)!
ミセ*゚ー゚)リ「え、で、でも、二人とも、またここで会おうって……」
( ∵)「おまえにゲームの中でリアルの事を聞くのはマナー違反だって言われた!
おれ達がお前にまた会おうには、ここに来るしかなかった!
三人共βで止めるのならば他で会おうってことになったかもしれない。
でも、おれ達よりもゲームを楽しめるお前がこの世界に残るなら、
会うなら、おれ達はここに来るしかなかったんだ!」
肩を震わせ、涙でぐしゃぐしゃの顔で叫んだビコーズ。
その告白は、だれもが固唾を飲んで見つめる事しかできなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……くん……」
( ∵)「……おれ達が、この世界に来たのは、お前のためだ」
ミセ*゚ー゚)リ!
.
-
( ∵)「おれ達が、この世界に囚われたのは、お前のせいだ」
ミセ* ー )リ!
( ∵)「あいつがこんなことになったのはおまえのせい」
川 - )「ふざけるな!」
駆けだしていたクーが、
ビコーズが言い終わる前にその胸ぐらを掴む。
(´・ω・`)「クー!」
ξ゚⊿゚)ξ「クー!」
(;^ω^)「クー!?」
川 - )「ここに来ると決めたのは好きな人のせいじゃ無い!
自分で決めたからだ!」
ξ゚⊿゚)ξ「クー」
川 - )「自分で決めたことを誰かのせいにするな!
経緯はどうであれ自分で決めた自分でナーヴギアをかぶったんだ!
自分の行いの責任は自分で取れ!
人のせいにするな!
しかも惚れた相手のせいにするなんて言語道断だ!」
ビコーズの胸元を掴んだまま激しく揺するクー。
その剣幕に誰も動けない中、
一人ツンは彼女に近付き、
その背中に優しく抱きついた。
ξ゚⊿゚)ξ「クー」
川 - )「ツン……」
強く抱きつき、その背中に頬を当てて彼女の名を呼んだ。
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「クー。落ち着いて」
川 ゚ -゚)「ツン……」
クーが動きを止める。
胸倉は掴んだままだが、
ビコーズも力をなくし立ち尽くしている。
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫みたいね」
手の力を緩めるツン。
ξ゚⊿゚)ξ「クーもその手、早く離した方が良いわよ。
クズに触ってると手が腐るから」
川 ゚ -゚)「そうだな……」
(;^ω^)(おー)
('A`;)(安定のツンだな)
(;゚д゚ )(ん?いまさらっとひどいことを)
(;´・_ゝ・`)(うわぁ……)
そっと身体を離したツンにあわせるように、
クーも手を離し、振り返った。
川 ゚ -゚)「ありがとう、ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「パフパフ一回分貸しね」
川 ゚ -゚)「私は良いが、ツンが悲しくならないか?」
ξ゚⊿゚)ξ「うるさい」
軽口をたたきつつ、クーと位置を入れ替えるツン。
そして振り上げた右手を振りぬいた。
.
-
(;^ω^)(お!)
('A`;)(うわっ)
(´・ω・`)(あっ)
(;`・ω・´)「おっ」
(;゚д゚ )(え?)
(;´・_ゝ・`)(いたい……)
(アルゴ)(あれくらいなら攻撃判定に入らない……と)
左頬を平手打ちされたビコーズがよろめいて座り込む。
そんな彼を、軽蔑した目で見降ろすツン。
ξ゚⊿゚)ξ「あんた、最低よ」
そして踵を返すと、クーの手を取ってミセリの前に立った。
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ、こんなのとのパーティーはさっさと解消して、
私達のパーティーに入りなさい」
ミセ*゚ー゚)リ「……え?」
ξ゚⊿゚)ξ「『え』じゃなくって、
パーティーは基本六人までいけるんでしょ」
ミセ*゚―゚)リ「あ、うん。そのはずだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「ならいいじゃない」
ミセ*゚ー゚)リ「で、でも……」
ξ゚⊿゚)ξ「でももくそもないわよ」
ミセ*゚ー゚)リ「くそって……」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「こんなのとパーティー組んでても良いことないわよ」
川 ゚ -゚)「それは私も同意見だ」
ミセ*゚ー゚)リ「で、でも……」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたは私たち。
あいつはシャキンのところにでも入れて鍛えなおしてもらえばいいでしょ」
(`・ω・´)「え?そこでおれ登場?」
ξ゚⊿゚)ξ「良いわよね?」
(`・ω・´)「え、でも」
ξ゚⊿゚)ξ「い、い、わ、よ、ね?」
(`・ω・´)「はい」
( ゚д゚ )
(´・_ゝ・`)
ξ゚⊿゚)ξ「これでよし」
満足げに周囲を見回すツン。
ほぼ全員が呆気にとられているのを確認しつつも、
得意げに笑うだけだ。
ξ゚⊿゚)ξ「さ、とりあえず戻るわよ。
鼠さん」
アルゴを見て、彼女に向かって数歩近付くツン。
突然のことに戸惑うアルゴ。
ξ゚⊿゚)ξ「?鼠さん?」
(アルゴ)「えっと……わたしのことかナ?」
ξ゚⊿゚)ξ「他に誰がいるのよ」
(アルゴ)「……『アルゴ』って名前があるんだけどネ」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあアルゴ、帰り道の先導もよろしく」
(アルゴ)「……あいヨ」
('A`;)(ツンすげー)
ツンが話を進める中、
クーがミセリの前にしゃがんだ。
川 ゚ -゚)「ミセリ、立てるか?」
ミセ*゚ー゚)リ「……うん」
戸惑いながらも頷いたミセリに笑いかけ、
クーが立ち上がる。
そして差し出される右手。
ミセ*゚ー゚)リ!
川 ゚ -゚)
にっこりとほほ笑んだクーを見ながら、
ミセリがその手を取り、
ゆっくりと立ち上がった。
ショボンが、うずくまったままのビコーズに近付く。
(´・ω・`)「ビコーズさん……」
( ∵)「おれは悪くない……
おれは悪くない……
おれは悪くない……」
(´・ω・`)「ビコーズさん」
( ∵)「おれは悪くない……
おれは悪くない……
……悪いのは……」
ゆっくりと立ち上がるビコーズ。
その目は虚ろで『何も見ていない』ようで、
けれど視線の先はミセリに向いていた。
.
-
そしてフラフラと歩きだす。
( ∵)「みせり……」
近寄るビコーズの前に立ちふさがるツンとクー。
だがミセリは二人をゆっくりと押して間を開け、
間に立った。
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ……」
川 ゚ -゚)「ミセリ」
ミセ*゚ー゚)リ「ふたりとも、ありがとう」
小さな声で二人感謝を告げてから、
一歩前に出るミセリ。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」
( ∵)「悪いのはおれじゃない……。
あの噂だ……。
あんな噂があったから……」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたっ!」
前に出ようとしたツンの前に手を出すミセリ。
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ」
ミセ*゚ー゚)リ「ごめんね。
ずっと二人の思いに気付かなくて……。
私が誘ったから、こんな目に合わせてしまって……」
川 ゚ -゚)「ミセリ!」
ミセ*゚ー゚)リ「私が誘ったのは事実だよ。
また、この世界で会いたいって。
強要はしてなくても、誘ったのは事実」
川 ゚ -゚)「……ミセリ」
.
-
ミセ*゚ー゚)リ「だから、ビコーズがもう戦いたくないなら、
私が戦って、ビコーズを守るから。
ビコーズははじまりの街で、助けが来るのを待っていてくれれば、
それまで私が支えるから」
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ!何言ってんのよ!」
川 ゚ -゚)「ミセリ!それは違う!」
ミセ*゚ー゚)リ
小さく首を振るミセリ。
ビコーズを見るその表情を見て、
二人は二の句をつなげることが出来なかった。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ」
( )「姫……」
俯いたまま、
ビコーズがミセリの前に立つ。
( )「姫は、ゼアフォーの事が、好きですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「……うん。好き。
恋じゃないかもしれないけど、大事な人」
( )「……『ビコーズ』、の、ことは?」
ミセ*゚ー゚)リ「好きだよ。
大事な、友達だよ。
だから……え?」
ビコーズが、握手をするように手を差し出した。
( )「ぼくも、二人が好きだ。
やっとできた友達。
ずっと、一緒に居たいと思ってる」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」
.
-
差し出された手を、両手で握るミセリ。
ミセ*゚ー゚)リ「うん……」
( )「だから……」
ミセリの手が、強く握られた。
( ∵)「一緒に行こう」
ミセ*゚ー゚)リ!
上げたビコーズの顔は笑顔だった。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ?」
ミセリが困惑しながら名前を呼び終わる前に、
腕を引っ張られて思わず足を動かす。
( ∵)「いこう!」
ビコーズの勢いに釣られてそのまま歩くミセリ。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ?どこに……!」
ビコーズの視線の先には、何もない空間。
ただ『空』があるだけ。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!」
( ∵)「行こう姫!
ゼアフォーのところへ!」
ミセ*゚ー゚)リ「!」
空に向かって、
崖の先に向かって走り出そうとするビコーズ。
ミセリは必死にその場にとどまろうとし、
かつビコーズの手を強く握った。
( ∵)「姫!」
ミセ*゚ー゚)リ「だめ!ビコーズだめ!」
.
-
(;^ω^)「だめだお!」
('A`)「ビコーズ!」
慌てて駆け寄ったブーンとドクオがビコーズの身体を押さえる。
しかしその動きを完全には止められない。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ!
やめて!」
(;^ω^)「おちつけお!」
('A`;)「おい!やめろ!」
(;´・ω・`)「みんな!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン!」
川;゚ -゚)「おい!気を付けろ!」
ショボンをはじめとする全員が動き出そうとしたその時。
(`・ω・´)「とや!」
いつの間に背後に回ったシャキンが膝の後ろを蹴り、
ビコーズのバランスを崩した。
(;^ω^)「おっ」
('A`;)「うわっ」
ブーンとドクオも一緒にバランスを崩し身体を重ねるように倒れ、
結果的にビコーズを止めることに成功した。
.
-
(;´・ω・`)「シャキン……危ないよ」
(`・ω・´)「ん?大丈夫大丈夫」
シャキンは口元に笑みを浮かべながら崖に向かう道を見ると、
ミルナとデミタスが姿勢を低くして、
万が一誰かが転がってきても止めることが出来るように準備していた。
( ゚д゚ )
(´・_ゝ・`)
(`・ω・´)
(´・ω・`)「どや顔されても」
立ち上がりながらやってくる二人とシャキンに向かって悪態をつきつつも、
ホッとした笑顔を見せたショボン。
( ∵)「なんでだ!」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ……」
四つん這いになり、
下を向いたまま地面を叩くビコーズ。
ドクオとブーンはビコーズのそばに立ち、
ツンとクーはミセリのそばに寄っている。
ショボン達四人は、少し離れた場所に立っていた。
( )「なんでだ!」
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ?」
( )「なぜおれが生きていて!
ゼアフォーが死んだんだ!」
ミセ* ー )リ!
.
-
それは、だれもが分かっていて口にすることが出来なかったこと。
ゼアフォーの死。
( )「何でおれが生きていて、
ゼアフォーが死んだんだ……。
死ぬのは、おれの方だろ……。
あんな噂を信じた、おれの方だろ…………」
涙声で叫びながら地面をたたくビコーズ。
( )「なんであんな噂を信じまったんだ!
おれはバカだ!バカだ!バカなんだ!
だから死ぬのはおれなんだ!
なんで!なんで!なんで!」
ミセ* ー )リ「ビコーズ……」
( )「だからせめて、
ゼアフォーが寂しくないように、
ミセリを連れて、
おれの顔なんか見たくないだろうけど、
でも、謝りたくて……」
ξ#゚⊿゚)ξ「あんた!」
川#゚ -゚)「貴様!」
ミセ*゚ー゚)リ「ふたりとも」
ミセリを支えるように寄り添っていたツンとクーがビコーズに怒声を浴びせようとするが、
ミセリに止められた。
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ、あんた」
川 ゚ -゚)「ここはしっかりと!」
ミセ*゚ー゚)リ「二人ともありがとう」
.
-
きてるー!
楽しみにしてるよ!
-
にっこりとほほ笑んだミセリ。
その微笑みをみて、二人は何も言えなくなった。
ミセ*゚ー゚)リ「ビコーズ」
四つん這いのビコーズの前にしゃがむミセリ。
ミセ*゚ー゚)リ「私は、死ねない」
( ∵)!
顔を上げるビコーズ。
ミセ*゚ー゚)リ「ゼアフォーは、私を守ってくれた。
……命を懸けて、守ってくれた」
苦しそうに、けれど微笑んでビコーズに話すミセリ。
ミセ*゚ー゚)リ「だから、ね。
ゼアフォーが守ってくれた、
この命を、ね。
自分の手で、捨てる事なんか、できないの」
ξ゚⊿゚)ξ「ミセリ……」
川 ゚ -゚)「ミセリ……」
ミセ*;ー;)リ「ごめんね、ビコーズ。
でもね、きっとね、ゼアフォーはね、
ビコーズが……死ぬことも、望んでなんかね、ないと思うんだ」
ミセリの両眼からポロポロと涙がこぼれる。
ミセ*;ー;)リ「ごめんね。ビコーズ。
こんなところに連れてきちゃって。
わたし、……わたし……。
がんばるから。
がんばって、生きて、いつか帰れる日まで、がんばるから。
だから、ビコーズも、頑張って、生きて……ね……ビコーズ……」
.
-
苦しそうに、泣きながら、けれど精一杯の微笑みを見せて、
右手をビコーズに差し出すミセリ。
( ∵)「ミセリ……」
だがビコーズは名を呼んだだけでその手は取らず、
ゆっくりと立ち上がった。
ミセ*;ー;)リ「ビコー……ズ」
( ∵)
立ち上がったビコーズと、
しゃがんだままのミセリ。
泣き続けるミセリと、
涙を流し果てたようなビコーズ。
ミセ*;ー;)リ「ビコー……ズ?」
ビコーズは、笑った。
表情としては、『笑み』
だがそこには嬉しさも喜びも楽しさも無く、
かといって怒りや苦しみを隠すための笑みでもない。
無感情な、
ただ、顔の筋肉を動かしただけのような、
虚ろな、
『笑い顔』
ミセ*;ー;)リ「ビコー……ズ?」
ミセリがビコーズの名を再度呼ぶと、
彼が口を開いた。
( ∵)「独りで、やってくれ。
おれは無理だ」
.
-
早口で呟いた後、
踵を返して走りだしたビコーズ。
そばにいたドクオとブーンに対応が出来ないほどの素早い動き。
もしもショボンとシャキンがそばに居れば、
その表情の怖さをリアルの世界で知っている二人がそばにいたのなら、
もしかしたら止められたかもしれない。
けれどそれはすべて可能性。
現実は、
笑いながら崖から空に向かって飛んだビコーズと、
その背中を見守ることしかできなかった十人。
も何も言えず、
ガラスの砕けるような音が、
ポリゴンが砕け散る音が、
耳に届くまで、
誰も、
動けなかった。
その音がする直前まで聞こえたビコーズの声を、
笑い声とするのか、
叫び声とするのか、
泣き声とするのかは、
十人それぞれの心の中だった。
.
-
以上、『9.境界線』でした。
支援、ありがとうございます!
まだもう少し続く二十話、
よろしくお願いします!
それでは次回、またよろしくお願います。
ではではまたー。
.
-
乙乙
-
続き楽しみ
-
乙でした
続きを楽しみにしてます
-
こりゃツンとクーはマジでお花畑やなぁ・・・
-
こりゃツンとクーはマジでお花畑やなぁ・・
-
分かりきってる正論言って、殴って、余計な暴言吐いて
ビコーズを自殺させて満足かよ
-
どんなに追い詰められようが、どんなに辛かろうが、男として、人として絶対に口にしちゃいけない言葉ってのがあるからな。
甘さとか未熟さとかで許されるレベルの発言じゃない。
ツンクーが切れてなかったらシャキンあたりが殴ってたんじゃないか
-
クーのパフパフは一回いくらですか
-
クーはビコーズを自分と重ねたからの態度でしょ
ツンは擁護できないくらい空気読めてないけど
-
まあどうせ他人のせいにするやつなんて遅かれ早かれ死ぬしなww
心に傷を残せてある意味最高に死でいいんじゃね!?www
-
おつおつ
-
おつ
今までといい今回のビコーズ、ツンやクー含めて、キャラクターに人物としての考え方の違いがそれぞれ出ているのが凄い。
それによるキャラの好き嫌いは人それぞれだけど、その人物の性格や考え方がしっかりみせてくれるの本当良いね
-
どちらかといえばビコやミセリの状態のほうがよっぽど普通に思える
ショボンたちのほうが怖いわ
-
精神崩壊寸前の奴にクズ呼ばわり、暴力ですか。
まあ学生だから仕方ない所もあるけどこれは流石に・・・
-
今までの話だとギコしぃがいたからってのもあるけど未熟なところも悪いところもちゃんとあるのな。
クーはドクオの事だとしてツンは良くも悪くもそういう性格だって事かな、仲間以外にはキレると容赦がないというか
-
あとあれか、まだSAOに来たばかりの頃の話だっけか
-
ミセリって普段本編に出てきてるっけ?ごめんねあたし忘れちゃったよ…
-
ミセリに言い始めたから殴ったんだろ、黙らせなかったらミセリのほうが壊れてたんじゃないの…
言い方はもっとあっただろうけどさ、勝手に惚れられて依存されてそして責任を全部押し付けられたらミセリのほうが壊れるだろ
-
>ミセ*゚ー゚)リ「また来ますね!いこ!フィレフィレ!」
>(‘_L’)「ミセミセ。今日も食べすぎだぞ」
>ミセ*゚3゚)リ「ぶーー。たっておいしいんだぽん」
こんな役で出てるぞ 精神崩壊してるやんけ
-
>>855
女性陣はミセリ視点だった訳だな
女性からみたら女性の肩を持つのは当然だし男性が悪いように見えるよな
男女で視点が違う事をよく忘れる
男性視点で読むからツンが酷く思えるだけか
でもビンタはやりすぎ
-
http://is.gd/bM4zjX
-
「この世界に来たのはお前のせい」なんていう
この世界、特に5人におけるタブーを言ってしまったんだから殴るしかねぇ
-
5人におけるタブーを5人に対して言ってないのに殴られたらたまんねーよ
-
嘘か本当か判断できない噂におどらされて仲間死なせて、しまいにゃその責任を惚れた女に負わせようってんだからたまんねぇよな
まだ混乱期の話だからツンも若気のいたりって感じか。これを匂わすようなエピソードがあったかどうか
-
噂に踊らされたのはゼアフォーだけだけどな
-
いやビコーズであってるぞ
-
ショボン組は全員それぞれ生まれながらに非凡な才能を持っていたり特殊な環境で生活したりしてる「強い人間」「いわゆる“勝ち組”」なわけで、世の中にはそこまで強い力や心を持っている人間ばかりじゃないということを理解していないんだろうな
そもそも正義の味方を目指してるわけでもないので弱者の気持ちを解ろうとしているわけでもないしする必要はない
一番の目的は「自分と友人達が無事に帰れること」なんだから
中途半端な正義感が先走って他人を平気で傷つけるようなことも時には言ったりしたりするわな
って書いて今まで自分がショボン達5人に感じていた不気味さというか気持ち悪さはこれだったことに気付いた
天上人じみてるというか、他人との接し方に上級市民と平民みたいな態度を所々で感じる
-
まぁ全員高校生なのに既に、職場にこんな人材が一人は欲しいと思える位の思考力、判断力、行動力だからな。ドクオ位じゃないか?普通に高校生らしいの。
こんな集団が実際いたら不気味に感じるわなぁ。
-
http://is.gd/4twCxM
-
ツンクーのビコーズに対しての言動が理解できない奴の頭御花畑でワロエナイ
命のやり取りの重みが解らない学生にはまだ難しいのかな
-
>>864が俺の思ってたこと整理してくれた感じ。
それがつまらんとかではなくむしろこの作品好きでずっと見てるけど
今回のエピソードは上手くいえないが、誰が悪いとかじゃなくタイミングの悪さとか不運とか全部重なったって感じで、キャラの誰にとってもつらい話だなあと思う
こんなことがあっちゃミセリがショボン達とギルド一緒にやってくのはきつそうだ
-
>>867
ただゲームをやりにきただけなのにいきなり死んだらリアルでも死にますみたいな状況になって
短期間できっちり受け入れきってる時点で正直常人離れだとおもうぞ
受け入れてると思ってる人間もいざ目の前で本当に死んでしまったら取り乱すだろうに
-
http://is.gd/4twCxM
-
もっとも一番怖いというか不気味なのはシャキンだけどな
ショボン達のような浮世離れした臭いを感じさせないのに本気の能力はショボン以上(恐らく)というね
こういう愚者の皮を被れる賢者は一番敵に回したくない
-
ツンもクーもこの時期まだ冷静じゃないってのが良くわかるよね。
実際に酷い言葉を吐いてしまったとはいえ結局ビコーズのことは考えてやらずにそれをギャーギャー攻めてるだけだし。
ツンはまあ駄目そうだけど少なくとも物語後半のクーならもっと考えをめぐらせて冷静に諌めることも出来ただろうからな
-
全て自分でとった行動の責任は自分にあるものだよ。
ゲーム始めるのも自殺するのも全て自分の管理下で、他の環境のせいではない。
どう考えたってビコーズが自分で選んで人のせいにして自分で死んだだけ。
被害者意識高すぎて共感してる奴大杉。
-
>>873
そんな事読んでるやつ皆分かってるだろうしその上でツンやクーの対応について語ってんだろ
自分の気にそぐわない意見もあるだろうけど考え方は人それぞれなんだからいちいち人を下に見たような言い方すんな
語りたいなら語るだけにしろよ、無駄に荒らすな
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>>856
おお!ありがとう!
確かにこんなバカップルいたわwww
-
クーが叩かれてんのはよく分からんな
あの場面で誰かがきっちり言っとかないと今度はミセリが極限まで追い込まれる
ツンはうん、まぁ……間違いなく無用な追撃だったね
-
ツンは当時はそういう性格だったって事だよな、ミセリの味方なのもあるけどクーが発言したからってのもありそう。ブーンやドクオはツンのそういうところについて分かってるようだし。
読者が思うようなところはミルナとデミタスが代弁しているように思える。
そんなツンが読者から責められるのは仕方ないとして、当時のクーに関してはもうあの言葉が仲間の誰よりもトラウマになっているだけじゃないか?もう聞きたくないし言わせたくないみたいな。
-
ミセリぶっ壊れっぽくなってるけど、15話最後に居たのもミセリじゃないのかな
何となくだし、こういう話していいのか分からんけど
-
>>878
アルルッカバー=ドクオが判明した時点で今まで読んできた人なら普通に思いつくことだろ
-
過去編長くて本編どんな状況だったか忘れたわ
読み直す時間ないから誰か本編を産業で
-
>>880
P
K
K
-
優秀でも精神的にまだまだ未熟なお子様に、発狂寸前で自己防衛のために形振り構わず責任転嫁してるような奴の心情を汲み取って対応することなんか出来ないだろ…jk
-
どっちもどっち
-
http://jump.cx/I7R2D
-
次まだかな?
-
面白いのう
-
10.謀略と攻略
.
-
ホルンカに辿り着いた10人。
気を失ったミセリを連れて帰ることが出来たのは、
ひとえにアルゴの知識だった。
(アルゴ)「これに彼女を入れれば、
引きずって連れ帰ることができると思う」
そう言いながら彼女がショボンに送ったのは、
アイテム名『寝袋』が2つだった。
どうやら次の町で手に入るアイテムらしく、
ドクオは一人納得していた。
その『寝袋』にミセリを入れ、
筋力パラメーターを比較的高くしていた
シャキン、ミルナ、デミタス、ドクオが三人ずつ交代で引き摺ってホルンカに戻ってきた。
辿り着いたのは本当にギリギリで、
ホルンカの門を通り過ぎて少し引き摺った時に、
耐久値が無くなった寝袋がポリゴンとなって砕け散った。
その砕け散る音が『あの時』の『あの音』に似ていて、
その音が響いた瞬間全員が横たわるミセリを確認し、
存在していることを視認したのちに胸をなでおろした。
2つ目の寝袋を使って農場の間借りしている部屋に辿り着いたときは、
全員が疲れ切っていた。
('A`)「あ……アルゴ……」
いつの間にか届いていたフレンド申請のメッセージを見つつ、
ドクオが部屋を見回す。
いつものリビングにいるのは男が五人だけだった。
(´・ω・`)「村の入り口で分かれたよ。
アルゴさんにはお礼をしないとだよね」
.
-
既に彼女のフレンド登録を済ませたショボンが何事もなく告げる。
('A`)「気付いていたなら言えよ」
(´・ω・`)「アルゴさん、
声をかけられたくなさそうだったから」
(`・ω・´)「お、おれにもフレンド申請が来てる」
( ゚д゚ )「とりあえずは昔の知り合いと、
特殊な奴を押さえたってところか?」
(´・_ゝ・`)「だろうな」
(´・ω・`)「特殊って」
(`・ω・´)「はっはっは。
おれはともかくお前は当たってるな」
(´・ω・`)
( ゚д゚ )
(´・_ゝ・`)
('A`)
四人の視線を受け止めつつも、
何もわからないふりをして小首をかしげるシャキン。
(´・ω・`)「かわいくないよ」
(´・_ゝ・`)「それが似合うのは二次の少年だけだ」
('A`)「せめて三次の少女も入れてください」
( ゚д゚ )「どちらにせよ変態だがな」
(´・_ゝ・`)「お前に言われたくない」
.
-
今まで通りのような会話をつなげていく五人。
しかしその笑顔は、完璧に笑顔を見せているシャキン以外、
すこし強張っていた。
会話を続けていると、寝室のドアが開く。
('A`)「……どうだ?」
( ^ω^)「目を覚ます様子はないお」
('A`)「そっか……」
(´・_ゝ・`)「あの時からずっと気を失ったままか」
( ゚д゚ )「仲間が二人とも……だからな。
しかも、ビコーズは……」
口を閉ざし、それぞれにあの瞬間を思い出す。
(`・ω・´)「ツンとクーは?」
( ^ω^)「……元気、だお」
(`・ω・´)「無理矢理?」
( ^ω^)「……うん。
だから、僕が居たら休めないかと思って、
出てきたんだお」
(`・ω・´)「おつかれさん」
小さな声でねぎらいの言葉をかけるシャキンに、
黙って少しだけ首を横に振るブーン。
ドクオに促されてソファーに座ると、
ショボンが目の前にカップを置いた。
(´・ω・`)「まずは少し落ち着こう」
.
-
( ^ω^)「……お」
見ればいつの間にか全員に行き渡っており、
ショボン自身もトレイを置いた後一つカップを持っていた。
(´・_ゝ・`)「おれ達がミセリを運ぶ要員だったから
後ろから戦闘を見てるだけなことが多かったけど、
彼女たち二人、少し危険だったな」
( ゚д゚ )「ショボンが槍を投げたり短剣や石を投げつけたのは驚いたけど、
あんなふうにモンスターの意識を自分に向けさせることが出来たんだな」
('A`)「ショボンがひきつけないと、
危険な場面がいくつかあった」
(`・ω・´)「……二人とも、
猪突猛進に突っ込んでいっていたからな。
空回りしていた」
( ^ω^)「ツンも、クーも、
ビコーズが死んだのは自分のせいだって思ってるんだお」
('A`)「はあ?」
(´・_ゝ・`)「あー。そっか」
( ゚д゚ )「少しきついことは言ってしまっていたから、
気にしているか……。
間違ったことは言っていなかったんだけどな」
('A`)「い、いや、でも」
(´・_ゝ・`)「ああ。ビコーズが死を選んだのは二人のせいじゃないってことは分かってる。
でもそれは、見ているおれ達が分かっているだけで、
二人は自分があんなことを言ったからって思ってるんじゃないか?」
( ^ω^)「……そうだと思うお」
('A`)「だ、だってあれくらいあいつらなら普通だし」
.
-
( ゚д゚ )「クーが激昂した理由は分からないが、
言っていたことは間違っていない。
ツンが言ったことは多少行き過ぎだったが、
お前たち仲間内なら許容範囲だったんだろ。
ただ、今は通常の状態じゃない。
ビコーズは特に、あの時は、な。
そして、あいつはおれ達の事を『仲間』とは思っていなかったのかもしれない」
('A`)「そんな……」
(´・_ゝ・`)「殴ったのは少しいただけないが、
もし彼女がなにもせず、
あいつがあのままあんなことを言い続けていたら……。
おれが殴ってたかもしれん」
( ゚д゚ )「おれもだ。
というか、本来ならばおれ達が同性として、
おそらくは年上の男として、
あいつを正してやらなきゃいけなかったんだ」
(`・ω・´)「うむ。そうだな。
おれ達がやらなきゃいけなかった。
そばにいたんだから、ちゃんと諫めなければいけなかったんだ。
……二人には、嫌な役目をさせてしまった」
(;^ω^)「そ、そんなことはないお!」
(´・ω・`)「責任は、僕にある」
シャキン達三人が首を垂れるなか、
ずっと黙っていたショボンがぼそりと呟いた。
(`・ω・´)「おい?」
(´・ω・`)「僕がちゃんと話をして、説明して、
別行動をとらなければ。
一緒にはじまりの街に戻れば、
こんなことにはならなかった」
.
-
( ゚д゚ )「おいおい」
(´・_ゝ・`)「そこまで遡らなくても」
('A`)「それにはそうするだけの理由があっただろ」
( ^ω^)「そうだお!
だからそんなこと!」
(´・ω・`)「理由は確かにあったよ。
でもそれは、どうしてもじゃない。
彼らのプライドなんて気にせず、
優位な情報を渡せばよかったんだ」
('A`)「ショボン……」
( ^ω^)「ショボン……」
(`・ω・´)「いい加減にしろ!」
立ち上がったシャキンが、
ショボンの頭に拳骨を落とす。
(´・ω・`)「に、兄さん!?」
(`・ω・´)「お前は何様のつもりだ!」
(´・ω・`)「え?」
シャキンの一喝。
それは拳骨と相まって雷と呼ぶにふさわしい衝撃となり、
ショボンは呆然とした。
そして呆然としたのはショボンだけではなく、
それを見ていた四人も目を丸くして見守っていた。
(`・ω・´)「確かにゼアフォーとビコーズの事は残念だし、
後悔もある。
特にビコーズの事は他にやり方もあったかもしれない。
けれど、それを自分のせいだなんていうのはおこがましい!
人の命を何だと思っているんだ!」
.
-
(´・ω・`)「で、でも……」
(`・ω・´)「でももくそもあるか!
何でも自分のせいにして収めようとするな!
物事はそんなに簡単じゃない!
しかも命にかかわることなんだからな!」
(´・ω・`)「それは……」
(`・ω・´)「だいたいな、お前の今持っている情報、
はじまりの街でのことは、今は混乱しか招かない!」
(´・ω・`)!
(`・ω・´)「おれ達はいい。
ミルナもデミタスもある程度の恩恵を受けることが出来たし、
おれ達はお前たちと一緒に行動することを選べるからな。
だがミセリ達、そしてその後に続くプレイヤーが、
同じレベルの恩恵を受け取れるかどうか分からないだろうが!」
(´・ω・`)「そ、それは……」
(`・ω・´)「今お前が持っている情報はそういった部類の情報だ。
お前だってそれが分かっているから、
まずはおれ達で試したんだろう?」
(´・ω・`)「……うん」
(`・ω・´)「これ以上情報を広めることは禁止だ。
お前の命が狙われる。」
(´・ω・`)「でも!
手帳はともかくそれ以外のアイテムとスロットは!」
(`・ω・´)「使いこなせないアイテムは身を亡ぼす。
不平等なアイテムは、それをめぐって争いが起きる」
(´・ω・`)「でも……」
.
-
(`・ω・´)「情報を広めたいのなら、もっともっと考えろ」
(´・ω・`)!
(`・ω・´)「より良い方法を、均等な方法を、暴動が起きない方法を、
そして、自分と仲間たちが危機にさらされない方法を」
(´・ω・`)「それは……」
(`・ω・´)「それが出来ないのならば、諦めろ」
(´・ω・`)「兄さん……」
二人を見守る四人。
そのうちの二人、特にブーンとドクオは驚いていた。
ショボンとシャキン、二人をよく知っているつもりだったが、
こんな二人を見るのは初めてだったからだ
(´・_ゝ・`)「お前は思いつかないのか?」
(`・ω・´)「ん?」
不思議そうにシャキンに問いかけるデミタス。
(´・_ゝ・`)「いや、『ん?』じゃなくて、
シャキン、お前がその情報をうまく使いこなす、
広める方法は思いつかないのか?」
(`・ω・´)「そういうのはおれよりこいつの方がうまい」
(´・_ゝ・`)「は?」
( ゚д゚ )「はあ?」
デミタスと同じことを考えていたミルナも思わず声を漏らした。
(`・ω・´)「そういったことを考えるのは、
おれよりショボンの方が上手いし早いし確実だ。
ただこいつは自分が泥をかぶる方法を考えがちだから、
それは矯正してやらんといけないけどな」
.
-
(;´・_ゝ・`)「へー」
(; ゚д゚ )「ほー」
言葉の外で『おれは考えない』と断言したシャキン。
唖然とするデミタスとミルナ。
( ^ω^)「おっおっお」
('A`)「あー。うん」
そしてブーンとドクオは、
自分たちの知っているシャキンを見て少し落ち着いた。
(´・ω・`)「……誰も傷つけない、
情報の広めかた……」
そんな五人を意識しないでぼそぼそと呟いていたショボンだったが、
一階天井を見てから俯くと、大きくため息をついて正面をみた。
(´・ω・`)「思いつかないや」
(`・ω・´)「なら、考えるんだな」
(´・ω・`)「……うん」
辛そうに、けれど決意を込めた引き締めた表情で頷くショボン。
それを見た五人は、五人それぞれに思いを含んだ笑顔を見せた。
('A`)「……これから、どうする?」
ほんの少しだけゆったりとした空気が流れたが、
ドクオの問いかけに全員の表情が引き締まった。
(`・ω・´)「彼女が目を覚ますまでは、
ここを拠点にするのが一番だろう」
(´・ω・`)「うん」
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