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( ^ω^)達はアインクラッドを生きるようです。
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立ったら投下がある。
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作戦会議の主導権は、2大ギルドの血盟騎士団と聖竜連合のどちらかが握ることが多い。
その中でも血盟騎士団の副団長『アスナ』は、
使用武器【細剣】の速度、正確さから『閃光のアスナ』などと呼ばれ、
強さは勿論のことその美貌からもファンが多く、
ギルドの垣根を超えてリーダーシップを取ることの出来る稀有な存在だった。
(アスナ)「今回の作戦はあなたの立案と言っても過言ではありません。
肉付けは私達もしましたが、骨子はあなたの立てた作戦です」
(´・ω・`)「僕は攻略組の皆さん、先遣隊の皆さんが集めた情報と、
アルゴさん達情報屋さんが集めた情報を纏めただけですよ」
(アスナ)「こんな何でもない層のボス戦に、
十層以上下の層からいくつか布石がされていたなんて、誰も気付けていませんでした。
膠着した状態で、あのまま突撃したら…死者が出たかもしれません」
(´・ω・`)「僕を推してくれた二人の顔に泥を塗る訳にはいきませんし、
引き受けた以上は最善を尽くします」
そんな攻略組と一部情報屋のみが入れるような作戦会議室に、ショボンはいた。
しかも部屋に集まった者を全て見渡せる奥の場所、その机の前に座っている。
机の上には何枚かの書類。
それぞれの書類には、層の地形図やクエストのチャート図が描かれていた。
今この部屋にいるのはショボンと背の高い肌の浅黒いスキンヘッドの男『エギル』と、
そして白地に赤のラインの入った戦闘服を身に纏った『閃光のアスナ』だけだった。
(´・ω・`)「ですが、アスナさん。
あなたがあの状態でボス戦に挑むような無謀な方だとは思えませんよ」
座ったまま。
集まってくる情報をまとめ、書き写し、推理し、指示を送りながら、
目の前に立ったアスナと会話するショボン。
アスナは口調こそ硬質的で事務的だったが、
手を休めないショボンを見るその表情は穏やかだった。
(アスナ)「…『七つの鍵』収集作戦、よろしくお願いします。
あと、各ギルドの代表と作戦メンバー全員の賛成を得られたあの手腕、見事でした。
理と情の振り分け、凄かったです。私も見習わないと」
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(´・ω・`)「もともとうちのギルドの店を利用してくださっている方が多くいらっしゃったので、
そこで信用していただけただけですよ。
それに僕は鍵集めの作戦立案指揮だけで、
そのあとのボス攻略戦の指揮はアスナさん達がメインで行われるわけですし」
(アスナ)「……レストランの方にも、よくお邪魔しているみたいですね」
(´・ω・`)「ええ。血盟の方もよくいらっしゃってくれますよ。
迷宮に潜る前にお弁当を買いに来て下さる方も多いです」
(アスナ)「………やっぱり胃袋は掴むべきか」
(´・ω・`)「はい?」
(アスナ)「い、いえ、なんでもありません。
それでは私は戦闘の準備に向かいます。
鍵が集まったら、よろしくお願いします。
エギルさん、集まった時間によってはそのまま攻略に入る可能性もあります。
その際はそのまま宜しくお願いします」
(エギル)「あ、ああ。分かった」
笑顔を二人に向けてから、踵を返して部屋の出口に向かうアスナ。
そして出口の前で振り返り、この数分で一番の笑顔を見せた。
(アスナ)「ショボンさん、二人じゃありませんよ」
(´・ω・`)「え?」
(アスナ)「うちのギルドの者からも、推薦されました。
ついでに血盟に取り込むよう説得してくれともね」
(´・ω・`)「……はぁ」
(アスナ)「今回の作戦が順調に終わった時には、一度お話しさせて下さい。
何度か血盟騎士団副団長名義で、団よりメッセージはさせていただいていますが、
しっかりと、ちゃんとお話しをできてはいませんでしたから」
(´・ω・`)「…はい」
(アスナ)「では、失礼します」
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部屋を出るアスナ。
横で大きく息を吐いたエギル。
ショボンは座ったまま苦笑した。
(エギル)「悪いな、ショボン」
(´・ω・`)「?何がですか?」
(エギル)「いや、こんなところまに引っ張り出しちまってよ」
(´・ω・`)「問題ないです。
攻略に協力するのは当然の事ですから。
それに、僕等にも得るものは多いです」
(エギル)「そう言ってもらえるとありがたいが…」
座ったまま自分を見上げるショボンの視線から逃れるように横を向くエギル。
気まずそうに片手で頭を掻いている。
(´・ω・`)「どうしました?」
(エギル)「いや、多分このボス戦が無事に済めば、
VIPに対する勧誘は激しくなる。
特に血盟……、いや、聖竜もだな。この二つからの勧誘がな。
だから…」
(´・ω・`)「ああ、そんな事ですか。
それこそ杞憂ですよ。
対応は簡単ですから、気にしないでください」
(エギル)「え?」
(´・ω・`)「僕が断れば済む話です。
中小ギルドより大ギルドの方がプライドがある分暴挙にも出ませんし。
ギルドホームに来いとか言われても、行かなければ良いだけですしね。
この世界ではシステムで設定されたこと以外で強制されることなど一つもないのですから」
ニッコリと微笑んだショボン。
それに対し、困惑したような笑いを返すエギル。
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(´・ω・`)「それに…。血盟騎士団と聖竜連合。
今まで水面下で接触を求めてきていたこの二大ギルドが表から来てくれれば、
多少は牽制されて他のギルドからの勧誘が少なくなったらいいなと思います。
なんといっても攻略組を形成する二大ギルドなわけですし。
今この二大ギルドに『攻略の為』と言われて真っ向から対抗できるギルドは少ないと思いますよ」
(エギル)「…というか、対抗できるギルドがあるのか?」
(´・ω・`)「アインクラッド解放軍。あそこは気にしないでしょう。
規模的には二大ギルド以上ですしね。
それに、今は攻略より低層階での利権に走っている分、
もしかしたら勧誘が激化するかもしれません」
(エギル)「あー。まあ、あそこは……な」
(´・ω・`)「軍が攻略から退いた理由を、僕は数値データと結果からしか知りません。
今の軍の情勢も、実際に勧誘に来られた方と、一般的な情報程度です。
そこからの推測ですが、あそこには攻略組にコンプレックスを持っている派閥が
存在しているようですね」
(エギル)「そんなことまで知っているのか」
(´・ω・`)「ちゃんと情報を集めて整理すれば、導き出される答えですよ。
ね、アルゴさん」
(エギル)「え?」
唐突にショボンがアインクラッド一の情報屋の名を呼ぶ。
壁を見るショボンの視線の先を追うエギルだったが、
そこには何もない。
「なんだ、ばれてたカ」
しかし声が聞こえると、すぐに壁に寄りかかっているアルゴが二人の視界に現れた。
(アルゴ)「いつから分かってたんだイ?」
(´・ω・`)「先ほどアスナさんが部屋を出る時、
妙にドアとの間に空間を開けていたので気になってたんですよ。
なので注意して観察したら、壁のポリゴンが少し揺れたような気がしまして。
アスナさんが手引きして、ここまで隠れることが出来るような方は、
アルゴさん以外考えられませんから」
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(エギル)「…なんつー」
(アルゴ)「こいつはこういう男なんだヨ。
迂闊に何か話すと何でも知られちまうゾ」
笑いながら二人に近寄るアルゴ。
(´・ω・`)「アルゴさん、それは自分の事でしょう」
(アルゴ)「アタシは売れる情報くらいしか集めてないけどネ」
背中を向け、ショボンの前の机に腰掛けるアルゴ。
小柄だが魅惑的な肢体を見せつけるように足を組み、
身体のラインをねじる様にしながら振り返った。
(アルゴ)「軍の話とか、どうやって調べたのかナ?」
(´・ω・`)「情報屋はアルゴさんだけじゃありませんよ?」
(;エギル)
上目遣いにアルゴを見るショボン。
二人の視線がぶつかるが、二人ともそらそうとはしない。
そんな二人を見るエギルは額に汗を浮かべていた。
(アルゴ)
(´・ω・`)
(;エギル)
(アルゴ)「つれない男だネ」
(´・ω・`)「いつから色仕掛けの真似事までするようになったんですか?」
(アルゴ)「おや、色仕掛けってことは気付いてたんだネ」
(´・ω・`)「あ、本当にそうだったんですか。
冗談だったんですが、当たってよかった」
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机から降り、振り返ってショボンの前に仁王立ちするアルゴ。
(#アルゴ)「……特殊性癖のショボン殿に気付いてもらえたのなら、
アタシの色仕掛けもたいしたものだってことかナ」
(#´・ω・`)「僕は気を使い過ぎてもしかしたらって思うことが出来ましたけど、
僕以外の人だと確かに特殊性癖の方でないと気付けないかもしれませんね」
(#アルゴ)「……それは、どういう意味かナ?」
(#´・ω・`)「人の事を特殊性癖って、人聞きの悪い」
(#アルゴ)「最初に喧嘩を売ったのは君だよネ」
(#´・ω・`)「冗談だったのに当たったからびっくりしたんですよ」
(#アルゴ)「ホントに失礼な男だネ」
(#´・ω・`)「それはこっちのセリフです」
(エギル)「二人は仲良いな」
(#アルゴ)「誰が!」
(#´・ω・`)「誰がですか!」
(;エギル)「いや、息もあってるし」
(#アルゴ)「エギル、君の目は節穴だったのかイ」
(#´・ω・`)「残念です、エギルさん。
まともな方だと思っていたのに」
(#アルゴ)「いやショボン、どうしてこうして、こいつはなかなかの変態なんだヨ」
(#´・ω・`)「おや、そうだったんですか。幻滅しました」
(エギル)「え?お、おい、アルゴ?」
(#アルゴ)「だいたい道具屋をやりながら攻略組とか、
何を考えているのかネ。
店もあんなところで女の影も無く、
たまに若い低レベルの少年なんかが来るとおまけしてやって」
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(エギル)「それはおれの店に女の客がほとんど来ないだけであって!」
(#´・ω・`)「そういえば、バックアップしている中層クラスのプレイヤーも、
男性…というよりは少年が多いようですね」
(;エギル)「お、おいショボン!
それもただ単にそれくらいの年齢のプレイヤーが多いってだけであって!」
(アルゴ)「ハー。なるほどね。
エギルはそちらの趣味の人だったのカ」
(´・ω・`)「どうやらそのようです」
(アルゴ)「そういえば昔は肌を露出した防具を好んで着ていたナ」
(´・ω・`)「今も体のラインを強調する服が多いですよね。
筋肉質で、見せびらかしたいんでしょうか。」
途中で入るエギルの「それは防御力が!」や「キリトに貰ったレア防具が!」や
「動きやすい服を選ぶと!」といった叫びを気にすることなく話を進めていくアルゴとショボン。
(アルゴ)「ま、エギルの様な見た目の人はモテるらしいしナ」
(´・ω・`)「らしいですね。それに趣味嗜好性癖は自由ですし」
(アルゴ)「エギル、私達は偏見の目で見たりしないから安心してくれ」
(´・ω・`)「共感は出来ませんが、節度さえ守っていただければ自由だと思います」
(#エギル)「バカやろう!俺にはちゃんと現実世界に嫁が!」
(アルゴ)「え?」
(´・ω・`)「嫁?」
.
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(;エギル)「……あ……」
(アルゴ)
(´・ω・`)
(;エギル)
(アルゴ)
(´・ω・`)
(;エギル)「えっと……その……」
思わず口走ってしまった内容に引っかかって自分を見る二人の視線。
エギルは何とかごまかそうと思ったが、口からは何も出なかった。
(アルゴ)「なるほどナ。
調べても女の影が出てこないからそう報告しようかと思ったが、そういう事カ」
(´・ω・`)「もう、だから言ったじゃないですか。
素直に聞けばいいって」
(アルゴ)「んー。
それも考えたけど、やはり情報屋としては本人の意見ではなく実際の所を知りたいからナ」
(´・ω・`)「まったく。手伝いをさせられたこちらの身にもなってくださいよ」
(エギル)「え?アルゴ?おれのことを報告?
女関係を?え?誰に?え?手伝う?」
(アルゴ)「すまなかったな、ショボン。
これは手伝ってくれたお礼だヨ」
キョロキョロと二人を見るエギルに構うことなく会話をする二人。
ショボンの前にトレードウインドウが現れた。
(´・ω・`)「!これは」
.
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渡されたデータのタイトルを見て表情を引き締めるショボン。
アルゴはそれを見て目を細め、興味深そうに口元に笑みを見せた。
(アルゴ)「頼まれていた物だ。
報酬は、今手伝ってくれたことと、それを見て意見がまとまったら、教えてくれれば良いヨ」
(´・ω・`)「それで良いんですか?」
(アルゴ)「その結果から、キミがどんな結果を導き出すか興味深いんでネ」
(´・ω・`)「分かりました。この作戦が終わり次第すぐに精査します」
(アルゴ)「楽しみにしてるヨ」
(エギル)「お、おい、アルゴ」
(アルゴ)「ああエギル、悪かったナ。
依頼主には決まった相手がいるって報告しておくから」
(エギル)「え?あ、いや、」
(アルゴ)「リアルの話は基本ご法度だから、今聞いたことは他言しない。
信じてくれ。」
(エギル)「あ、いや、うん、そう、だな」
(アルゴ)「それじゃ、またナ。二人とも。
エギル、ボス戦、キバってくれヨ」
(´・ω・`)「ありがとうございました。また連絡します」
(エギル)「お、おお」
部屋を出るアルゴを確認した後、すぐさまデータを深く読み始めるショボン。
その横ではエギルが落ち着きなく身体を揺らせている。
(エギル)「……なあ、ショボン」
(´・ω・`)「はい?」
ウインドウから目を離さずに返事をする。
行儀は悪いが、二人とも気にはしない。
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(エギル)「あー。なんだ、その、な」
(´・ω・`)「……あ、大丈夫です。僕もリアルの事を他言したりはしませんから。
安心してください。」
(エギル)「あ、いや、それは、ああ、そうだな。
うん。頼む」
(´・ω・`)「もちろんです。
こちらこそすみません。
アルゴさんと一緒に聞き出すようなまねをしてしまって」
ウインドウを消してから立ち上がり、エギルに向かって姿勢を正し、腰を折って頭を下げるショボン。
それに対して慌てたように自分の頭を触るエギル。
(エギル)「あ、いや、まあそれはいい。
ショボンはアルゴには色々と世話になってるだろうしな。
おれが頼んでいる中層クラスのプレイヤーの教育にも、
手を貸してもらっているんだろ?」
(´・ω・`)「そうですね。
色々と力を貸してもらっています。
……もちろんそれなりの対価は支払っていますけど」
顔を上げたショボンが苦笑いをしながら言葉を選ぶと、
アルゴとの取引について想像が出来たエギルが同じような表情になった。
そして互いの顔を見て、二人が噴出した。
(´・ω・`)「でも、お世話になっているのは本当です」
(エギル)「ああ、それは分かってる」
笑う二人。
しかしすぐにショボンの顔から笑みが消えた。
(エギル)?
(´・ω・`)「すみません。連絡がきました」
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ウインドウを出すショボン。
メッセージを読むと、表情が柔らかくなる。
(´・ω・`)「うちの二班から報告が着ました。
鍵を手に入れたそうです」
(エギル)「そうか。あとは…」
(´・ω・`)「手に入れているのは、うちの三班と二班。
そして先にソロの方が手に入れていた一本で、計三本。
残りは、うちの一班と、血盟、聖竜、風林火山が一つずつ。
残り四本ですね。
先の二班と違い、四班ともこの層に近い高層での作戦ですから、
予定通り進んでくれれば問題ないです」
(エギル)「そうだな」
席に座り直し、机の上に広げられた書類に書き込みを始めるショボン。
(エギル)「(すごいな。同時に六件のクエスト情報をそれぞれにまとめ上げ、指示を出す…か)」
その迷いの無い動きに目を見張るエギル。
右手で自らの顎をさすりながら、じっと見つめていた。
(´・ω・`)「エギルさん」
(エギル)「お、おう」
(´・ω・`)「今回の作戦とは別件ですが、これを見ていただけますか?」
(エギル)「ん?」
ショボンがウインドウを出し、可視モードにする。
(´・ω・`)「これです」
座るショボンの後ろに立ち、腰をかがめてウインドウを覗き込むエギル。
(エギル)「……これは」
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(´・ω・`)「ここ五カ月の、プレイヤーの死亡数です」
(エギル)「!…こんなにいるのか……しかも」
(´・ω・`)「はい。PK……プレイヤーによる殺害が増えています。
ここ二ヶ月の平均は、その前の三ヵ月平均値の、倍近い数字です」
(エギル)「…ラフィンコフィンか?」
(´・ω・`)「かもしれません。ですが、違うかもしれません」
(エギル)「だがここまでの増加ってことは、
数名のPKプレイヤーやオレンジギルドの仕業と考えるより、
規模の大きいPKギルドが関わっていると考えた方が良いんじゃないか?」
(´・ω・`)「その意見には賛成です。
ですが、見てください」
ウインドウを操作するショボン。
エギルの目の前で、幾つかの数字が新たに生まれる。
(エギル)「これは?」
(´・ω・`)「死亡時の層の分布です。
高層、中層も増えていますが、圧倒的に低層階が増えている」
(エギル)「そうだな。この量は…」
(´・ω・`)「そして、日はまちまちです」
(エギル)「そのようだが…」
(´・ω・`)「これは推測ですが、ラフコフはPKを楽しんでいるように思えます」
(エギル)「楽しんでいる?」
(´・ω・`)「はい。
高レベルのプレイヤーを殺すことや、一度に多量の人数を殺すことなど、
PKという行為を楽しんでいるように思えます」
(エギル)「そうだな……。なんとなく、わかる」
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(´・ω・`)「それが正しいと仮定すると、この低層階でのPKには、違和感があります。
亡くなっている方は、それほどレベルは高くなく、有名ギルドのメンバーでも無いようです。
そして噂になる様な大量PKと言うわけでもなく、ただただ人数が多い」
(エギル)「ラフコフ以外のPK」
(´・ω・`)「もちろんラフコフの仕業である可能性も高いです」
言葉を止めるショボン。
エギルが怪訝に思い視線をウインドウからショボンに移すと、
悲しそうな笑顔を見せるショボンがいた。
(´・ω・`)「と言うより、PKを楽しむギルドが、ラフコフ以外にあることなど考えたくないですけどね」
(エギル)「……ああ、そうだな」
(´・ω・`)「ですが、それに囚われていると、
もしラフコフではない他のギルドだった時に反応が遅れます。
今は、新たなラフコフが生まれるその芽を潰す最後のタイミングかもしれません」
(エギル)「ショボン…」
(´・ω・`)「もう少しデータを調べてみます。
アルゴさんにもしっかりと報告して、協力してもらうつもりです」
(エギル)「ああ、頼む」
(´・ω・`)「攻略組の方の手を煩わせるようなことはしたくないのですが、
僕達中層エリアを生きる者の手に余る時は、お願いするかもしれません」
(エギル)「もちろんだ」
(´・ω・`)「お願いします」
(エギル)「…攻略に参加する者も、固定化されてきた。
攻略組、トッププレイヤー、二大ギルドなんて言われても、
実際のボス戦で満足に動ける者は限られている。
もっと、中層からの底上げが必要だ」
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(´・ω・`)「ええ。この先のボスが特化型になる可能性もありますしね」
(エギル)「そうだな。
ボスに合わせて攻撃方法と共に参加できる者も変える必要が出てくるかもしれん。
同じレベルでも、スキルを特化させた者が勝てるボスが出てこないとも限らない」
(´・ω・`)「はい。その通りだと思います」
真剣な面持ちで互いの考えを照らし合わせた二人。
互いの考えが、思想が似ていることを感じ、信頼を込めた笑みを浮かべた。
(´・ω・`)「さて、そろそろうちの班は鍵をゲットできる頃だと思います。
エギルさんはボス戦の準備はしなくてもよろしいですか?
ここはもう僕一人でも大丈夫ですし、何かあったら連絡入れますけど」
(エギル)「ああ、おれの準備は大丈夫だ」
胸のプロテクターを自分の拳で軽く叩くエギル。
澄んだ音が部屋を響く。
(´・ω・`)「では、このまま続けますね」
その姿に笑顔を見せたショボンだが、
机の上の書類に視線を移した時にはその表情は険しくなっていた。
(エギル)「どうした?」
(´・ω・`)「いえ、あまりにも順調なので、少し順調すぎだなと思いまして」
(エギル)「そうか。まあ、クエストは手順をちゃんと踏めば問題なく進めるはずだから、
大丈夫じゃないか?」
(´・ω・`)「……そうですね」
(エギル)「で、だな、ショボン」
(´・ω・`)「はい?」
(エギル)「さっきの話だが」
(´・ω・`)「さっきの?」
(エギル)「アルゴが、その、おれの事を報告するっていう」
(´・ω・`)「はあ」
.
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(エギル)「誰に報告するのかなーなんてことが気になるんだが」
(´・ω・`)
(エギル)
(´・ω・`)
(;エギル)
(´・ω・`)
(;エギル)「あ、いや。忘れてくれ」
(´・ω・`)「アルゴさんならその情報も売ってくれるとは思いますが、
エギルさんもけっこう……」
(;エギル)「いや、違うんだ!純粋に気になっただけでだな」
(´・ω・`)「浮気者…」
(;エギル)「いや、ちがうぞ、ショボン!
相手を知ったからと言ってどうこうするつもりはない!」
(´・ω・`)「……(しらんがな)」
エギルの弁解は、ショボンに鍵取得のメッセージが届くまで続いた。
.
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4.
同日。中層。
気候と広さから中層エリアを主に活動するプレイヤーにとって、
この街は人気があった。
アインクラッドに置いて定住する場所を決める行為、
俗に言う『ホームを買う』と呼ばれる行為は現実世界の土地付き一戸建てを買うようなものであり、
現実世界と同じく値段も高い。
しかしこの街にはマンションのような建物が数多く存在し、
一部屋一部屋を月単位で借りることは勿論、買うことが出来た。
買うのはそれ相応の金額はするのだが、それでも通常の一戸建てを買うよりも手頃であるため、
とりあえず定住する場所を持ちたいと思ったプレイヤーが数多く住んでいた。
街の中には公園や広場がいくつかあり、アインクラッドに住むことに慣れたプレイヤーは、
モンスターに襲われないその穏やかな場所で、のんびりと過ごす者も多かった。
( ><)「またこんな所にいるんです!」
(*゚ー゚)「あ、こんにちはー」
(*‘ω‘ *)「こんにちはだっぽ」
*(‘‘)*「こんにちはなのです」
(,,゚Д゚)「またお前らかゴルァ」
( <●><●>)「ここで会ったのはたまたまなのはワカっています」
緑色のふかふかのシートの上で、お弁当を広げていたしぃ、ギコ、ヘリカル。
呑気なその姿に寄ってきたのは、チーム『ビロワカッポ』の三人だった。
(#><)「せっかく入れてもらったVIPを辞めて、
こんなところで呑気にご飯とはいい度胸なんです!」
(*‘ω‘ *)「おいしそうっぽね」
(*゚ー゚)「ぽっぽちゃん、食べて食べて。
この卵焼きは新作なんだよ」
.
-
(*‘ω‘ *)「卵焼き!新作!」
*(‘‘)*「ぽっぽは卵焼きが好きですね」
( <●><●>)「見ただけで美味しいのはワカッテマス」
(,,゚Д゚)「おう、座れ座れ。ほれ、茶も飲め」
( <●><●>)「遠慮なくご相伴にあずかります」
(#><)「それ相応の実力者なのに努力を止めるのは間違っています!」
(*‘ω‘ *)「おいしいっぽ!この緑の葉っぱはなにっぽ?」
(*゚ー゚)「アルハインの実だよ」
( <●><●>)「通常アルハインの実は麻痺系の解除薬に使うのは分かっています」
(*゚ー゚)「お、ワカッテマス君は流石だね」
*(‘‘)*「ギコは分かって無かったですよ」
(,,゚Д゚)「ばらすなゴルァ」
(*‘ω‘ *)「二人は今日は狩りには行かないっぽ?」
(,,゚Д゚)「今日は休みの日だぞゴルァ」
(*゚ー゚)「ぽっぽちゃんも今日はお休みにしたら?
フロアボス攻略できたら、開通と同時に新しい街に一緒に行けるし」
( <●><●>)「今頃攻略組の皆さんが必死に戦っているのはワカッテマス」
(,,゚Д゚)「それもいいな。ワカッテマス、一緒に行かないか?ゴルァ
前に新しい防具が欲しいって言っていただろ」
*(‘‘)*「わたしとしぃねぇは、新しい服と食材を見に行くつもりなんですよ」
(*‘ω‘ *)「それもいいっぽね」
( <●><●>)「名案なのはワカッテマス」
(#><)「二人とも馴染みすぎなんです!」
.
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すでにシートの上に座り、カップを片手にお弁当箱の中を物色しているぽっぽとワカッテマス。
独りビロードはシートの真横に立ち、片手剣を右手にぶるぶると震えている。
(,,゚Д゚)「何をそんなに怒っているんだゴルァ」
(#><)「それは何度も説明したんです!」
(,,゚Д゚)「!?まだ怒っているのか?!」
(#><)「当たり前なんです!」
(*‘ω‘ *)「もうそのことは何度も聞いたっぽ」
( <●><●>)「当事者じゃないと分からないことがあるのはワカッテマス」
( ><)「でも、でも」
(*‘ω‘ *)「でももかしこもないっぽ」
( ><)「ううううううう」
(*゚ー゚)「ごめんね、ビロード君」
( ><)「……なんで、折角VIPに入れたのに辞めたんですか」
片手剣を地に突き立てたビロードが、呟く。
泣きそうなその声に、ビロード以外が喋るのを止めた。
( ><)「僕は、VIPに入りたいんです。
最初は攻略組になりたくて、この世界を解放する力になりたくて、
でもどうやったら強くなれるか分からなくて、
それで、戦闘訓練をしてくれるVIPに情報屋さん経由で特訓を申し込んだんです」
下を向いたまま呟き続けるビロード。
.
-
( ><)「特訓で、自分には全然無理だってことが分かって、
でも諦める事も出来なくて、辛かったんです。
でも、VIPの人達は言ってくれたんです。
先ずは生き残るために頑張ろうって。
レベルの差は、経験を積めば埋められる。
埋まった時に、どうすればいいか決めれば良いんじゃないかって。
ぼくはずっと前を見てたんです。
前しか見てなかったんです。
でも、実は前も見えてなかったんです。
夢ばかり見て、理想ばかり追って、逃げていただけだったんです」
消え入りそうな声。
けれどその声は、五人の心にしっかりと届いていた。
( ><)「VIPの活動を知って、みんなが生き残るための手伝いをしていることを知って。
僕も、その手助けが出来たらって思ったんです。
まだ弱いけど、ぽっぽちゃんと、ワカッテマス君と一緒なら出来るかもって思えたんです。
だから…。だから…」
(*゚ー゚)「ビロード君」
(,,゚Д゚)「ゴルァ」
(*‘ω‘ *)「ビロード…」
( <●><●>)「もう、言わなくていいんです。ぽっぽちゃんと私はビロードの事をワカッテマス」
( ><)「だから…だから…」
(*゚ー゚)「そうだよね。ビロード君から見たら、あのギルドを抜けた私達を、理解できないよね。
しかも、ギルドの名前が有名になってから入った私達が抜けるなんて」
( ><)「そうなんです!二人が入ったのを知って、羨ましかったんです!」
(*゚ー゚)「ごめんなさい。
でも、わたしは…ゆるせなかったから…」
(,,゚Д゚)「しぃ!」
(*゚ー゚)「!い、色々あったの。だから…」
.
-
*(‘‘)*「しぃ姉にも、ギコにも、きっと色々あったんですよ。
もう、良いじゃないですか。
わたしは、二人がいたから今一人じゃないんです。
二人がギルドを辞めていてくれたから、一緒にいられるんです」
(*゚ー゚)「ヘリカルちゃん」
(,,゚Д゚)「ゴルァ」
ギコとしぃの間に流れた不自然な空気に怪訝な顔をしたワカッテマスとぽっぽ。
しかしそのすぐ後に悲しげな笑顔を見せながら呟いたヘリカルによって、
その場はヘリカル一色となった。
(*‘ω‘ *)「うちのビロードがバカでごめんだっぽ!」
( <●><●>)「ビロードがバカなのはワカっていて止められなくてすみません!」
(;><)「え?え?」
ヘリカルに向かって頭を下げるぽっぽとワカッテマス。
(*゚ー゚)「そうだよ!ビロード君が何と言っても、私達は一緒にいるから!」
(;><)「え?!?」
(,,゚Д゚)「ビロードの言う事なんか気にすることないぞゴルァ」
(;><)「ぼくが何を?」
ヘリカルの両隣に座っていたしぃとギコはヘリカルの顔を覗き込みながら、
その小さな肩を抱いた。
(*‘ω‘ *)「そうだっぽ!ビロードの言う事なんて気にすることないっぽ!」
(;><)「ぽっぽちゃんまで!?」
( <●><●>)「ビロードの言葉になど一ミリも価値が無いのはワカッテマス」
(;><)「ワカッテマス君はひどすぎませんか!?」
.
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頭を上げ、座ったまま三人ににじり寄るぽっぽ。
ワカッテマスはちらっとビロードを見る。
(*゚ー゚)「そうだよ!たわごとに耳を傾けちゃダメ!」
(;><)「優しい顔して酷いことを言われたんです!」
(,,゚Д゚)「ま、そういうことだから気にするな」
(;><)「なんかまとめられたんです!」
*(‘‘)*「えへへへ」
ビロードを除く四人にかわりがわり声を掛けられ、笑顔を見せたヘリカル。
その屈託のない表情にホッとした顔をする四人。
そして一人困惑しているビロードを睨む二人。
(*‘ω‘ *)「ビロードは早く謝るっぽ」
( <●><●>)「まだちゃんと謝っていないのはワカっています」
(;><)「ぼ、ぼくがですか?」
(*‘ω‘ *)「ヘリカルちゃんにあんな悲しそうな顔をさせて、
良心が痛まなかったっぽ?」
(;><)「そ、それは」
( <●><●>)「ビロードがそんな男だとは私も分かっていませんでした」
(;><)「痛んだんです!」
(*‘ω‘ *)「なら謝るっぽ」
( <●><●>)「ちゃんと謝れる男が男らしいのはワカッテマス」
( ><)「ごめんなさいなんです!」
芝生の上に両膝をつき、手のひらを地につけて頭を下げるビロード。
.
-
( <●><●>)「ビロードも土下座をして謝っているので、許してあげてもらえませんか」
(*‘ω‘ *)「こんな奴だけど大事な仲間だっぽ」
*(‘‘)*「……」
ヘリカルが立ち上がり、ビロードの前に移動してしゃがむ。
そしてビロードの右手をそっと触った。
*(‘‘)*「顔を上げてください。
一緒にお弁当を食べると良いんですよ」
( ><)!
顔を上げたビロードに、可愛らしく微笑むヘリカル。
*(‘‘)*「さ、一緒に食べるんですよ」
(*><)「は、はい!」
手を握ったまま立ち上がったヘリカル。
それに惹かれるように立ちあがったビロード。
そのまま手をひかれ、シートの上に移動し、ぽっぽとワカッテマスの間に座った。
*(‘‘)*「召し上がると良いですよ」
(*><)「は、ハイなんです!」
ヘリカルに微笑まれ、嬉しそうに頬を赤らめながらお弁当に手を出すビロード。
(,,゚Д゚)「(……ろりこん?)」
(*゚ー゚)「(私がヘリカルちゃんを守らないと)」
(*‘ω‘ *)「(……これはまずいかもだっぽ)」
( <●><●>)「(ビロードを見るみんなの視線が厳しくなったのはワカッテマス)」
*(‘‘)*「(場を納めるのも楽じゃないんですよ)」
色々な思惑が交差する中、ランチは和気藹々と続いた。
.
-
*(‘‘)*ニッコリ
(*><)エヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ
(*><)(でもぼく、ヘリカルちゃんを傷付けるようなことを言ってしまったんでしょうか?)
(*><)(ま、許してもらえたし、ヘリカルちゃんは可愛いから良しとするんです)
(*><)(ヘリカルちゃん…あんなにかわいくぼくに微笑んでくれるなんて…)
(*><)(ああでもぼくにはぽっぽちゃんが……)
(*><)(ああ……僕は罪な男なんです)
( <●><●>)
.
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第十七話、書いたページ数的に半分投下が終わりました。
残りは明日、投下予定です。
ではではまた。
支援、ありがとうございます!!
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乙 ぃょぅ……
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乙おやすみ
初リアルタイム遭遇でドキドキした
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乙!久々でも楽しめるアインクラッド最高だぜ!
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大分原作キャラとの絡みも増えてきましたね
キリトも名前は出てないだけで結構活躍してそう
今夜も楽しみに待ってます!
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キテル━━━━(゚∀゚)━━━━!!
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こんばんは。
乙や感想、ありがとうございます。
今夜もよろしくお願いします。
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5.
ギルドVIP、及びN-Sが関わったフロアボス攻略戦は、一人の犠牲者を出すことなく終了した。
死者を出さずに攻略戦を終えることは少なくないが、
今回は予想よりも順調に戦いを終わらせることが出来た。
その『結果』をVIPの参加があったからではないかと口にする者も少なくは無く、
VIP、そしてN-Sへの攻略組への参加や大手ギルドへの加入要請は増える一方だった。
ξ#゚⊿゚)ξ「とりゃああああああ!!!!!!」
ツンの高速の三連突きが馬頭怪人『メズーリ』の身体を突き刺し、ポリゴンへと変える。
(#^ω^)「おっおっお。流石だお!」
その横ではブーンがそれを見ながら笑っているが、
その後ろではドクオ達四人が呆れた顔でその様を見ていた。
(;^Д^)「えっと…何か嫌なことでもあったのか?」
(;´ー`)「ツンもだけど、ブーンも鬼気迫るものがあるだーよ」
|; ^o^ |「正直今日はほとんど働いてないです」
('A`)「あー。悪いな。あいつら鬱憤がたまってるから」
迷宮の中を進む六人。
低層と中層の境目ほどに位置するこのフロアは、和風な敵が数多く出現した。
特に迷宮区には仏教画で見ることがある様な敵が数多く出現した。
ξ#゚⊿゚)ξ「甘い!」
(#^ω^)「ほっ!ほっ!」
先頭を歩くブーンとツンが出てくる敵を交互にほぼ一人で倒すため、
その後ろを歩く四人は、特にプギャー、シラネーヨ、ブームの三人は所在なさげに呟いた。
('A`)「ま、今日は歩いているだけで経験値と金が入ってくるってことで、楽してくれ」
( ^Д^)「お前達がそれで良いなら良いけどよ」
.
-
( ´ー`)「ドクオはそれで良いのかよ?」
('A`)「おれ?」
|; ^o^|「あ…」
ブーンとツンがそれぞれに牛頭怪人『ゴズーリ』と馬頭怪人『メズーリ』と戦っていると、
その横に人面怪炎『ウィスピリメン』が三つ浮かぶ。
流石に前の二人の援護をしなければと三人が武器を構えると、
いつの間にかドクオが移動しており、三匹を纏めてポリゴンへと変えていた。
(;´ー`)「…とてつもないだーよ」
(;^Д^)「いくらそんなに強くはないっつってもよ」
|; ^o^ |「我々も強くなったとは思うのですが」
('A`)「悪い悪い、で、なんの話だっけ」
( ^Д^)「あー。いや、なんかあったのか?」
('A`)「ああ、前回のフロアボス戦以来、二大ギルドと軍からの勧誘が酷くてよ、
八割以上はショボンが引き受けて流してるけど、
商売やってるあの二人の所には直接来るやつがいるらしくてな」
( ´ー`)「それで鬱憤が溜まってるってことかーよ」
('A`)「ま、そんなこった」
| ^o^ |「ドクオさんは大丈夫なんですか?」
('A`)「おれか?おれは…」
再び浮かぶ二匹の『ウィスピリメン』を、三人が武器を構える間もなく瞬殺するドクオ。
そして呆然とそれを見た三人の下に歩いて戻る。
('A`)「まあほら、おれは店やってないからあいつらほどじゃないし」
黒光りする片手剣をギュッと握ったドクオを見て、
三人は心の中でため息をついた。
.
-
目的のエリアに辿り着いた六人は、
フロアの中ボスに相当する敵を難無く倒し、目当てのアイテムを手に入れた。
( ^ω^)「おっお。これを村長に渡せば終了だお」
ξ゚⊿゚)ξ「で、村長からもらうアイテムを依頼人に渡せば依頼終了って事ね」
('A`)「そういうこった」
ブーンがアイテムを確認している間、彼を囲む様に立って周囲を警戒する五人。
倒した敵はクエスト専用のモンスターであり、このエリアもクエスト専用である。
その場合、目的の敵を倒したエリア内では追加の敵は現れない仕様となっているはずなのだが、
以前クエストにおいて『今までと違うルート』が発生したことを知っている六人は、
フォーメーションを崩さずにいた。
( ^Д^)「どうする?すぐ出るか?」
( ´ー`)「HPの回復は終わってるだーよ」
('A`)「いや、おれ達の本題はここからだ」
| ^o^ |「どういう事ですか?」
('A`)「ブーン、ツン、頼む」
( ^ω^)「了解だお」
ξ゚⊿゚)ξ「ほら、中入って」
アイテムをストレージに入れたブーンがツンと反対の位置に立ち、
二人で180度を見張る様に武器を構えた。
促された三人は、ブーンと入れ替わる様に中心に入ったドクオの前に立つ。
.
-
('A`)「今ここはイベント用のボス戦専用エリアだ。
しかもワンパーティー六人しか入れない仕様だから、
このエリアには絶対におれ達しかいない。
そして『イベント専用ボスエリア』だから、通常の空間からは切り取られている」
( ^Д^)「ああ、そういうことか」
( ´ー`)「?どういうことだーよ」
| ^o^ |「通常このエリアはただの行き止まりで、モンスターが出るだけです。
ですが、クエストを受けてすべてのフラグを立てた後入ればクエストボス戦用エリアになります。
とはいってもクエストと関係ないプレイヤーがこのエリアに入れなくなるのは効率が悪いです」
( ´ー`)「そんなことは知ってるだーよ。
エリアへの入り口は一緒で、中に入った見た目も一緒でも、通常プレイヤーは通常迷宮のエリアに、
クエスト受託者は専用エリアに入っているってことだーよ」
( ^Д^)「ああ、おれ達が戦っていた間、
ただの採取目的でこのエリアに入ってきたやつもいるだろうし、
同時進行で同じクエストを進めていたやつらが、
同じ時間に一見同じな全く別の場所で同じクエストボスと戦うことが可能ってことだ」
( ^ω^)「クエストの受託を一度に1グループしかできなかったら効率悪いからだおね」
ξ゚⊿゚)ξ「前にドクオとクーで2チームに分かれて、
同じクエストをどちらが先にクリアするか競争したりしたわよね」
( ´ー`)「だから、それがどうしただーよ」
('A`)「完璧に分離した閉ざされた空間。
聞き耳・覗き目スキルを持っている奴も外から覗けない空間。
6人以上は入れないから、この6人以外はここには存在しない空間。つまり、」
( ´ー`)「!内緒話し放題!」
('A`)「そういうこった。
メッセージでもいいんだけどよ。
メッセージを読んでる時に覗き見できないとは言い難いからな。
まだ情報公開されていないエクストラスキルがあるかもしれねーし」
( ^Д^)「で、どんな内緒話がしたいんだ?」
('A`)「もちろんショボンからの伝言だ」
.
-
3人にとって、ドクオの言葉は予想できた言葉だった。
しかし改めて聞くことにより、自然と背筋を伸び表情が引き締まる。
('A`)「おそらく、まもなく攻略組によるラフコフの討伐作戦が実行される」
( ^Д^)!
( ´―`)!
| ^o^ |!
('A`)「結構驚かないんだな」
( ^Д^)「もともとその可能性はショボンから話を聞いていたからな」
| ^o^ |「とうとうその時が…とは思います」
('A`)「ああ。そうだな。
正直遅いと思うが、攻略組がやっと重い腰を上げてくれたってところだ」
( ^Д^)「……VIPは参加するのか?」
('A`)「ショボンがおれ達にそんな危ない真似をやらせるわけないだろ」
( ´ー`)「だーよ」
('A`)「ショボンは、ラフコフ側、攻略組側、お互いに死者は出るだろうって言っていた。
特に攻略組側は、よほどの覚悟をもったメンバーでないときついかもしれないとも」
| ^o^ |「覚悟?ですか?」
('A`)「…少なくとも俺には無い。人を殺す覚悟なんか」
( ^Д^)!
( ´―`)!
| ^o^ |!
.
-
('A`)「戦うことは出来る。刃を向けることも、切り裂く事も出来る。
その為の対人戦闘訓練だからな。いざという時に出来るだけ躊躇しない為の。
お前らだって、ショボンから指示されてるだろ?」
( ´ー`)「時々牧場の方でさせてもらってるだーよ」
| ^o^ |「モナーさん、クックルさん、モララーさんには相手をしていただいています」
('A`)「でも、それは威嚇のためだ。
あれは、相手を殺さないで、相手の戦意を喪失させる為の練習だ。
自分の力と相手の力を出来るだけ正確に分析して戦う為の練習だ。
……人を殺す練習じゃない」
( ^Д^)「ああ」
('A`)「だが、ラフコフの奴らは違う。
殺すことに躊躇が無い。
相手のヒットポイントをゼロにすることに躊躇が無い。
たとえレベル差があっても、その覚悟、躊躇の無さは如実に戦闘にあらわれるだろう」
ドクオの言葉に、言葉を無くす3人。
ブーンとツンはただじっと、中の4人を守る様に武器を構えている。
( ^Д^)「おれ達3人とあいつは、ショボンから、ラフコフ討伐戦の可能性と、
その時の行動に関して少し話を聞いている」
('A`)「ああ、そういうことだ。
周囲の見張りと、ラフコフメンバーが逃げ出した時の連絡をお願いしたい。
追跡や戦闘はしなくていい。
ほんの少しでも危険を感じたら、隠蔽のままクリスタルで逃げてくれ。
三人のスキルに例のフードが合わされば、それが出来るはずだ。
追跡や戦闘は、おれ達がやる」
( ´ー`)「作戦には参加しないって言ってただーよ」
('A`)「討伐戦には参加しない。
だが、逃げた奴を捕まえる奴も、必要だろ」
|; ^o^ |「正直、皆さんがそこまでしなくても良いと思いますが」
.
-
('A`)「……ちっとばかし因縁があるんだよ。ラフコフとは。
それに、ショボンが一人で戦いに向かうのを黙って見ているわけにはいかねえからな。
といっても、ショボンには内緒で隠れてだし、参加するのは俺と兄者と弟者の3人だけだ」
(;^ω^)「!僕も参加するお!」
ξ#゚⊿゚)ξ「ドクオ!あんたまだそんなことを!」
('A`#)「お前らはダメだ!VIPに残れ!」
(#^ω^)「いやだお!」
('A`#)「残ってVIPを守ってくれ!」
( ^ω^)!
ξ゚⊿゚)ξ!
('A`)「討伐戦によって無事にラフコフの主要メンバーを捕まえることが出来れば、
そのあとの尋問によってVIPは窮地に立たされるかもしれない。
おれと兄弟の二人は、その時のために、命を懸ける。
ギルドのメンバーが命を懸けたという事実は、その後に影響を与えることが出来ると思う。
だから、お前らとクーは、その後のために、他のメンバーのために残ってくれ。
残ったメンバーの為に、おれたち全員がいなくなってしまう可能性は捨てなければならないんだ。
お前達の方が辛い役目になるが…頼む…。
ギルドをギルドとして、味方を作って生き残る。それは、おれみたいなコミュ障な奴じゃだめなんだ」
( ^ω^)「ドクオ…」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ…あんた…」
ドクオの悲痛な叫びと、絞り出すような声と言葉に、何も言えなくなる二人。
沈黙が包んだエリアに、プギャーの明るい声が響き渡る。
( ^Д^)「あの時命を救われたのは、ギコだけじゃない。おれ達もだ」
.
-
ξ゚⊿゚)ξ「………」
| ^o^ |…?
ξ゚⊿゚)ξ「………」
|; ^o^ |?
ξ゚⊿゚)ξ「……名前なんだっけ」
|; ^o^ |「さっきまで普通に名前呼んでくれてましたよね!ツンさん!」
ξ゚⊿゚)ξ「いや、なんか突然シリアスな雰囲気に耐え切れなくなって。
それにブーンとドクオがプギャーとシラネーヨを呼んだから、
あたしはこれやんないとまずいのかなって思って」
|; ^o^ |「いや、そこはシリアスなままでよくありませんか!?
ドクオさんとブーンさんも言ってやってください!」
('A`)
(^ω^ )
|; ^o^ |「二人ともこっちを向いてください!
プギャー!ネーヨ!二人も何か言ってやってください!」
(^Д^ )
(´―` )
|; ^o^ |「二人まで!?」
ξ゚⊿゚)ξ「ま、所詮オチ要員ってことよね」
|; ^o^ |「やめてください!!」
('A`)「さて、じゃあそろそろ出るか。話も済んだし」
(^ω^ )「だおね」
.
-
6.
数日後。
青みを帯びた暗い灰色の空。
青銀色の樹木を模したオブジェクトが、くすんだ白い道の両側に、
アンバランスに配置されている。
(アルゴ)「はぁ…ハァ…」
その長く続く一本道を走るアルゴ。
ラフィンコフィンのアジトを探っていた彼女は、構成メンバーに追われていた。
彼女は、βテスターだった。
ソードアートオンライの正式運用前のテストプレイヤー、βテスターであった彼女は、
正式サービス直後から、デスゲームとなったその日から、
情報屋としてこの世界を生きてきた。
βテスターとしての経験と知識があったとはいえ、
情報屋として攻略組を支えながら共に駆け抜けてきた彼女は、
それ相応のレベルとスキルを持っている。
(;アルゴ)「これが絶体絶命ってやつなのかナ」
それほどの力を持った彼女が、複数のプレイヤーに追い立てられていた。
(;アルゴ)「アタシは『鼠』で、『狐』じゃないんだけどネ」
狩人が遊びで獲物を狩るように、
アルゴを追うプレイヤーは一定の距離を置いたと思えば、
すぐそばまで追いついて攻撃を加え、笑いながら駆け抜けるアルゴを見送っている。
振り返ることなく走るアルゴだったが、自分を追いかける者の人数と立ち位置は把握できていた。
(アルゴ)「(四人…いや、六人。
攻撃をしてくる四人と、その後ろで見張る二人)」
.
-
鍛え上げたスキルによる現状の分析。
曲がり角や反射のあるオブジェクトを使い、振り返ることなく後方を確認。
追いつめられ、攻撃され、HPを減らされつつも、
システムのアシストと経験を駆使し、自分を追う者を冷静に分析する。
それは彼女がこの世界で積み重ねた力。
生きてきた強さが、生き残ろうとする思いが、生きる為の行動に繋がっていた。
(アルゴ)「(チャンスは一度。二つ先のエリア。
エリア移動した直後の右、隠れワープポイントに繋がる『穴』
あの穴自体は知られていても、瞬間的に逃げることは出来る。
その瞬間にクリスタルで跳ぶ)」
自分のHPを確認し、半分以上削られていることを改めて確認する。
それと同時に、右腰のポーチの中にある転移結晶も確認した。
(アルゴ)「(スピードだけで切り抜けるのは不可能。
これだけの目に見張られている状態で、隠れるのも無理。
……これが最初で最後のチャンス……ってやつだナ。
キー坊…アーちゃん……また会えるよナ!)」
決意新たに、エリア移動した瞬間に走る速度を上げたアルゴ。
(#アルゴ)!
ただ次のエリアだけを目指して駆け抜ける。
追っている者達も速度を上げる。
振り切れはしないが、少しだけ距離を開けることができた。
(#アルゴ)!!
そしてエリア移動。
出来るだけ小さい弧を描きつつ、穴に向かう。
横目で自分の後ろを確認。
まだ誰も移動してこない。
(アルゴ)「(ヨシ!)」
.
-
その瞬間。
穴に飛び込もうとした瞬間、自分の左胸を、後ろから針が貫き、前に抜けて行ったことに気付く。
(アルゴ)「……エッ」
「穴に逃げ込んだ!」
思わず漏れた吐息とともに、後ろで誰かが叫んだのが聞こえた。
そして気付いた。
自分を追っていた者は六人だったが、それとは別に並走していた者がいたであろうことに。
攻撃されることに、追われることに、そして追われる原因となった掴んだ情報に気を取られ、
その可能性が自分の頭から抜け落ちていたことに。
後ろにだけ気を取られ、横や前に対しての注意が欠けていたことに。
走っていた勢いのまま穴に飛び込む。
視界の隅に浮かぶ、自らのHPバー。
赤くなっていること以上に、その横に浮かぶ状態異常マークに戦慄する。
(アルゴ)「(麻痺…)」
黄色い雷のような印。
おそらくは、先ほどの針に麻痺毒が仕込まれていたのであろう。
スキルは勿論アクセサリーでも対麻痺・対毒処理はしてあるが、
条件が重なると完全に防ぐことが出来なくなる。
おそらくは余程強い麻痺毒が仕込まれていたはずだ。
エリアを移動した。
視線の先、まっすぐに伸びた一本道の、100メートルほど先にあるワープポイント。
あれに飛び込めば、ランダムではあるが、どこかの街の転移門広場に飛ぶことが出来る。
圏内に、非戦闘エリアに行くことが出来る。
けれど、麻痺をした体ではそこまで移動する事が出来ない。
(アルゴ)「ここで終わりかナ……」
もつれる足、動きを止める身体。
地面しか見えなくなる。
.
-
「コリドー!オープン!!!」
.
-
死を覚悟した瞬間に、耳に届く声。
それは、回廊結晶を使う時のキーワード。
(アルゴ)「え?」
( )「こっちだよ !」
崩れ落ちそうになった身体を、突然現れたフードの男が右の二の腕を掴んで支えた。
(アルゴ)「……だれ?」
そのまま右手を引っ張られ、動かない身体を引き寄せられ、
もつれ、なだれ込むように、回廊結晶によって現れた転移ポイントに飛び込んだ。
転移した先は、どこかの街の、どこかの公園だった。
見覚えはあるが頭が働かず、けれども圏内に移動できたことに安堵する。
フードの男はアルゴを引っ張り、公園の樹の後ろ、ベンチの陰に彼女を横たえさせた。
(アルゴ)「あんたはいったい…」
フードの男はフードの中も黒尽くめであり、顔も瞳以外はマスクで隠されている。
黒装束と呼ばれる防具アイテムに似ているそれと、
腰につけた短刀と鉤爪から『忍者』を想像させた。
(アルゴ)「(あの場所での隠蔽スキル…。
麻痺に体の動きを阻害されている私を動かしたパワー…。
そして身に着けた衣服のレベル…)」
混乱しつつも出来るだけ冷静になろうとするアルゴ。
装備が高レベルであることを見抜いたのは、流石と言うべきであろう。
(アルゴ)「あんたは…誰なんだ?」
.
-
( )「追っては来ないようだよ 」
彼女の横にうずくまって周囲を伺っていた男が立ち上がった。
背はそれほど大きくは無い。
声も高くは無いが低くは無い。
男だと思うが、少年…女性かも知れない…。
ぼんやりと自分を助けた忍者を観察するアルゴ。
すると忍者は腰のポーチからシートを取り出し、彼女にかぶせた。
( )「被っていれば身を隠せるから、助けが来るまで隠れていると良いよ 」
(アルゴ)「まってくれ!」
圏内に入ったからといって、麻痺は消えない。
動けない彼女をシートで覆うと、忍者はその場を後にした。
(アルゴ)「待って…」
まだ警戒を解いてはいけない。
そうは思っていても、緊張が途切れた彼女は、その意識を手放した。
目を開けたアルゴは、どこにでもある天井を見た。
建物のテクスチャーも数多く用意されているが、
今見ている天井は基本設定の一つだ。
(アルゴ)「ここは…」
ベッドに寝かされている自分。
自分がどこにいるのか。なぜ自分がここにいるのか。
全てが分からないが、その寝心地から、かなりの品だということだけは分かった。
.
-
まだ顔は出さないか… 支援
-
左の壁側の窓から外を見て、安堵の吐息をつく。
(アルゴ)「まだ夜…。間に合ったようだナ」
起き上がろうとして、止める。
そして目を閉じた。
すると、部屋の扉が開いた。
随時発動させているスキルのおかげか、
普段からの警戒心か、
扉の前に何かが来たのを感じ、アルゴは寝たふりをしていた。
扉のしまる音。
ベッドに備え付けられたサイドテーブルに何かが置かれた音がした。
何者かが、自分を覗き込む気配を感じる。
そして離れたのを感じ、ほんの少しだけまぶたを開いた。
(アルゴ)「フサギコ?!」
ミ;,,゚Д゚彡「ハイだから!」
何度か見たことのある横顔を見て、思わず叫んで上半身を起こしたアルゴ。
いきなり名前を叫ばれ、背筋を伸ばして返事をするフサギコ。
(アルゴ)「あんたが助けてくれたのカ!」
ミ,,゚Д゚彡「元気になってよかったから」
(アルゴ)「いや、でも、あの黒尽くめはあんたじゃなかったようナ…」
自分を助けてくれた記憶の中の忍者と、
目の前で完全武装した姿でにこにこと笑っているフサギコを重ねるアルゴ。
しかしすぐにウインドウを開いた。
(アルゴ)「!すまない。礼は後でゆっくりとする。
すぐにキー坊とアーちゃん達に連絡をしないと」
.
-
とりあえず見知った顔で安心したのか、早口で呟きながらウインドウを操作し始める。
(アルゴ)「……メッセージが、届かない?」
ミ,,゚Д゚彡「アルゴさん。アルゴさんは、ほぼ一日寝てたから」
フサギコの言葉に一瞬動きを止めるアルゴ。
そして画面上のカレンダーを確認し、青ざめる。
(アルゴ)「…そん……な……」
ミ,,゚Д゚彡「もう、ラフコフ討伐は、始まってるから。
参加している攻略組の人には、届かないから」
(アルゴ)「そんな…だって……。この作戦は、洩れてるんダ……。
どこからか、リークされてて、ラフコフは、迎える準備をしていタ…」
ラフィンコフィン討伐戦。
アジトの場所や、構成メンバーの全体数などは、アルゴを中心に調べ上げたと言っても良い。
そして討伐戦前日の昨日、彼女はその作戦が漏れていることを知り、
慌てて戻ろうとした時にミスをしてしまい、ラフィンコフィンのメンバーに追われていたのだった。
(アルゴ)「で、でも、最後にアタシからの連絡も無く作戦をするなんて…。
!!!
も、もし、あの中に、攻略組の中に、裏切り者がいたら……」
ミ,,゚Д゚彡「…討伐戦は、行われているから。
少なくとも、アジトのある迷宮に、入っていったって聞いたから」
(アルゴ)「何故あんたが知っている!!?
討伐戦の日程は、討伐に参加するメンバーしか知らない!」
ミ,,゚Д゚彡「……うちのギルマスは、ショボンだから」
答えになっていない答えに、思わず口を開けて固まるアルゴ。
しかしすぐに我を取り戻し、自嘲気味に笑った。
.
-
(アルゴ)「答えになってないのになぜか納得してしまうのは、
アタシもあいつの術中に嵌っているってことだネ。
だいたい、情報屋はアタシだけじゃなイ。
あの男に子飼いの情報屋の一人や二人いても、おかしくは無い…カ」
ミ,,゚Д゚彡
アルゴの言葉に、困ったように笑うフサギコ。
(アルゴ)!
ミ,,゚Д゚彡!
ほぼ同時に、二人がウインドウを開く。
視界の端で光ったメッセージ到着のシグナルを見ての行動だった。
送ってきた相手を見て、まずは安堵の吐息を吐くアルゴ。
そしてメッセージを読み、一度ほっとした顔をした後、すぐに引き締めた。
(アルゴ)「アーちゃん。いや、血盟騎士団副団長から連絡が来た。
ラフィンコフィン討伐戦、終了したそうだ。
犠牲者は両陣営に出たけれど、それ以外は一人を除いて牢獄送りにできたようダ」
ミ,,゚Д゚彡「……『PoH』」
(アルゴ)「……ああ、あいつだけは…捕まえられなかったようだナ」
ウインドウを閉じるフサギコ。
そのままドアへと向かおうとする
アスナへの返事を打とうとしたアルゴは、フサギコを見て動きを止めた。
.
-
(アルゴ)「フサギコ?」
ミ,,゚Д゚彡「出掛けるから。ゆっくりしていてくれていいから」
(アルゴ)「…どこに行くんだ?」
その強張った表情を見て、アルゴは眉間に皺を寄せて問いかける。
フサギコは動きを止め、少しだけ考えた後、振り返った。
ミ,,゚Д゚彡「………決着を、見届けに。
良ければ、一緒に来ると良いから。
……できれば、アルゴさんにはショボンの事を知っていて欲しいから」
(アルゴ)「!」
アルゴは何も聞かず、まずすぐさまベッドから降りた。
.
-
ん? 終わり?
-
以上、残りは明日投下します。
よろしくお願いします。
-
そかそか、乙!
すごい気になる展開過ぎて続きが待ち遠しい!
-
乙 どうなるどうなる
-
3日連続で投下とかあつすぎる!乙!
-
こんばんは。
昨日は寝落ち失礼しました。
続きの投下をしたいと思います。
乙と感想、本当にありがとうございます!
とても励みになります!!
それでは、始めます。
よろしくお願いします。
.
-
7.
フィールドダンジョン『常夜の森』
横に広く葉を生い茂る木々は、空を隠す程に高くそびえ立ち、
鬱蒼と茂る草花は、人の背の高さを超え、視界を邪魔している。
昼の時間さえ闇が支配するその森。
夜ともなれば、暗闇の世界となる。
彼と彼は、中央の少しだけ広い、ほんの少しだけ空から光が差し込むエリアで、
向かい合って立っていた。
(PoH)「……」
一人は、ラフィンコフィンのリーダー。
『PoH』
体全体を覆い尽くすようなフード付きのマント。
右手に持った愛用の武器、『友切包丁』だけが鈍い鉄の光を放って揺らめいている。
(´・ω・`)「……やあ」
(PoH)「俺と共に来る気になったか?」
(´・ω・`)「そんなわけ、無いでしょ」
一人は、VIPのギルドマスター。
ショボン。
装備は、刺繍の施された黒いインパネスコート。
左の腰には細い片手剣、右側には円盤型の投擲武器を三つぶら下げられている。
線の細い銀縁の眼鏡が、光を反射させた。
(´・ω・`)「今日で、君との関係もお終いだ」
.
-
(PoH)「俺との関係?」
(´・ω・`)「君のフレンドリストから、僕の名前を消してくれ。
僕も君の名を消す。それで、君のことを見逃す。それで、終わりだ」
一瞬ののち、面白そうに笑いだすPoH。
心の底から楽しそうに、
けれどどこか軽蔑しながら、
そして怒りを含め、
喉の奥を鳴らすように笑っている。
(´・ω・`)「……何がおかしい…。
もう、ラフィンコフィンは終わりだ。
お前一人なら、今ここで僕が攻略組を呼べば、倒すことが出来る」
(PoH)「ああ、確かに『Laughing Coffin』は無くなった。
だが、俺がいる限り、『Laughing Coffin』は終わらない。
そしてお前が来れば、もっと楽しい夢が見られるだろう。
こちらにこい、ショボン」
(´・ω・`)「僕は、行かない」
(PoH)「気付いているはずだ。自分の事に」
(´・ω・`)「確かにぼくは目的のために手段なんか選ばない。
守りたい人を守るために、見ず知らずの誰かを犠牲することなど厭わない。
その自信も、自覚もある。
その本質は、おそらく、君と同じだ」
(PoH)「楽しめばいい。この世界を」
(´・ω・`)「でも僕は、知っている。
僕の守りたい人達は、その犠牲にした『誰か』の為に悲しむ人だということを。
そして、僕を憎まず、自分を憎んで、自分を戒める人だということを。
だから、僕は、出来るだけ誰も傷付けない道を選ぶ。見付けてみせる!」
(PoH)「世迷言だ」
.
-
(´・ω・`)「かもね。僕もそんな気はするよ。
でも、理想だ。それが、理想なんだ。
理想は、追い求める為にある。
現実にするために、頑張るためにある。
だから僕は、頑張る。頑張れるんだ」
(PoH)「ならば、その理想、砕いてやろう。そして、現実を知れ」
(´・ω・`)「それでも、誰かを犠牲にしなければならないなら。
その『誰か』には、僕がなる」
それは、静かな決意だった。
そして、再びPoHが笑う。
人を嘲るような、笑い声。
(PoH)「戯言も、お前が言うなら面白い」
ショボンを見ながら、武器を構えるPoH。
愛用のレア装備。『友切包丁』が鈍く光を反射させている。
(PoH)「だが、もうそれも終わりだ。
選べ。共に来るか、仲間の死か」
(´・ω・`)「僕が選ぶのは、君との決別だけだよ」
右手を片手剣の柄に添え、左手をケープに差し込むショボン。
.
-
(PoH)
(´・ω・`)
.
-
PoHが身体を揺らめかせる。
ショボンの左手が針を放ち、それをPoHの友切包丁が弾くと、彼の身体はショボンへと肉薄した。
振り上げられた友切包丁を弾くショボンの片手剣。
しかし弾いた勢いで体勢を崩す。
崩れた体勢を立て直そうとはせず、そのまま横に流れるショボン。
PoHの友切包丁は弧を描いて逃げた体を追うが、
その攻撃範囲から既に距離を取っていた。
立ち上がり、再び構えるショボン。
PoHは両手をだらりと前に倒しながら、身体をまるで音楽に乗せるように揺らめかせている。
(PoH)
(´・ω・`)
(PoH)「ほんの少しでも傷を追えば、麻痺毒が俺の自由を奪う」
(´・ω・`)「一発当てれば奪えると思えるほど、君を甘く見ているつもりはない。
僕にしてみれば、直接攻撃は勿論武器で受けてもHPを減らすそっちの装備の方が脅威だよ」
放たれるショボンの針。
顔を狙ったそれを友切包丁で防ぐ。
追って放たれた二枚のチャクラムが死角からPoHを襲う。
しかし一枚は避けられ、一枚は弾かれた。
チャクラムが弾かれた金属音。
その瞬間にショボンに迫る友切包丁。
左上から振り下ろされたそれを、片手剣で受ける。
ハンマーで殴られたような衝撃を受けた直後、自分の腹を狙って包丁が迫る。
片手剣を放し、盾の様に見える円盤型武器で防御する。
直撃は避けることが出来たが吹き飛ばされるショボン。
しかし想定の内なのか、円盤を放棄しつつ投げた三本の針がPoHを襲う。
.
-
弾かれる二本の針。
一本は左肩を貫いた。
(PoH)
(´・ω・`)
PoHのHPが、一目盛だけ点滅を始めた。
しかし、既にショボンのHPは二目盛減らされている。
頭の上のカーソルをオレンジに変えたPoHが、
口の端をにやりと上げた。
(PoH)「やはりお前は、こちら側だ」
(´・ω・`)
ショボンは荒れた呼吸を整えながら、インパネスコートのケープ部分に両手を入れて構える。
(PoH)「この世界を、楽しめ」
(´・ω・`)「……ふざけるな」
ショボンの両手が鞭のようにしなり、交互に針を放つ。
通常の投擲と鍛え上げた単発の剣技を混ぜ、隙間の無い連続投擲。
しかし通常投擲と剣技の投擲は武器の飛び方に差が生むことが出来、不規則にPoHを襲った。
(PoH)
しかしPoHは危なげなく針を弾き、躱し、徐々にショボンとの距離を詰める。
(´・ω・`)
PoHとの距離をキープしつつ、ゆっくりと移動するショボン。
エリアの外側を、弧を描くように動く。
位置を変えることによる投擲はPoHへの攻撃時の角度をランダムに変え、
何本かを当てることに成功する。
しかし狙いである麻痺を起させることは出来ず、
針の持つ攻撃力では、いくら射手であるショボンのレベルが高くても、
更に高レベルであるPoHのHPを大きく減らすことは出来なかった。
.
-
悔しげに下唇をかむショボン。
それを見たPoHは口元に笑みを浮かべ、三度一気に距離を詰めた。
(´・ω・`)!
身体を投げ出し、地面に転がっていた自分の片手剣を掴むショボン。
しゃがんだままPoHに向かって片手剣を振り上げ、
一瞬動きが止まったのを見つつ後方に飛び、正眼の構えを取る。
しかしPoHは既に目の前にいた。
(´・ω・`)!
真上から振り下ろされる友切包丁。
刃に対して直角に、片手剣左から右に振る。
(;´・ω・`)!!
片手剣の刀身が砕け散る。
衝撃により包丁の軌道を反らすことは出来たが、
友切包丁はショボンの右腕を、二の腕から切り取った。
(;´・ω・`)!
視界の隅で自分の腕が地に落ちてポリゴンに変わるのを見ながら、
PoHの横を走り抜けて背後に回り、左手でナイフを放つ。
振り向いたPoHが無造作にナイフを弾いた。
(;´・ω・`)「ハァ…ハァ…」
痛みが無いと言えば嘘になる。
しかしそれ以上に、目の前の死神に、恐怖を覚える。
(PoH)「最後だ。俺と共に来い」
ショボンは、フードに隠れたPoHの目が、自分の心を貫き、弱い気持ちを捕えたのを感じた。
赤く変わったHPバーが身体を強張らせ、心を凍らせる。
判断を、鈍らせる。
.
-
しかし彼は、最後の勇気を振り絞った。
(;´・ω・`)「……冗談でしょ」
ショボンが言い終わらないうちに、PoHは、何も言わずに動いていた。
ショボンの視界の中、数メートル先でゆらゆらと動いていたはずのPoHが、
右手に持った友切包丁を振り上げて目の前にいる。
チャクラムでの防御も間に合わない。
(´ ω `)「(ごめん みんな)」
ショボンが死を覚悟した。
.
-
その時、陽炎が揺らめいた。
.
-
刀が、振り上げたPoHの右手首を、切り裂く。
そしてその斬撃を追うように、透明な刃が二枚続いた。
PoHは右腕を振り下ろしたが、切り落とされた右手が武器を掴んだまま空を舞う。
(PoH)!
ポリゴンに変わるPoHの右手。
落下する包丁を左手で掴み、自分の手を切り落とした男の背中を攻撃しようとするが、
自分に向かって飛ぶ二本の武器に気付き、バックステップで避けた。
二本の武器、『苦無』と呼ばれる両刃のナイフを避け、
飛んできた先を見ると更に二本が投げられており、
やむなく更に後方に移動して避ける。
フード付きコートを纏った黒装束の忍者が、自分に向かって更に武器を構えている。
ミ,,゚Д゚彡「ショボンを、殺させはしないから」
そして、剣技後の長い硬直を終わらせたフサギコが、
ショボンの前に立ち、PoHに向かって居合の構えを取る。
先程の剣技も、居合系スキルだった。
体術スキルも上げている者だけが覚えることの出来る『空歩』からの、
居合系スキル『陽炎』に続けた連続技。
システムに設定された連続技の場合、剣技後の硬直時間は使った技の分だけ加算される。
よってどんなに強力な技でも、使い方を誤ればその先には死が待っている。
今回フサギコはショボンを守るためにその技を使い、
自分の身の守りはもう一人に任せたのだった。
.
-
ミ,,゚Д゚彡「ギルドV.I.P.のフサギコ。
このまま戦うというのなら、フサギコが相手になるから」
.
-
(;´・ω・`)「ふさ!?どうしてここに!?」
ミ,,゚Д゚彡「言いたいことは色々あるから。
でも今は、生き残ることが大事だから」
フサギコはまだ剣技を発動していない。
PoHの戦い方を見た結果、自分から向かうよりも襲い掛かられた時に、
神速の居合抜きを放った方が勝率が上がると判断したからだった。
更に今は、仲間がいる。
(PoH)「……」
フサギコに気を取られ、先ほどの忍者から目を離したPoH。
その隙に闇に溶け込まれ、位置を確認できなくなっていた。
目の前には、高レベルの刀使い。
その後ろには、高レベルの投擲武器使い。
更に自分を狙う、投擲武器使い。
そして、自分を見張るものはまだいる。
そう判断したPoHは、構えを解いた。
(PoH)「このまま戦うほど愚かではない。
ショボン、また会おう」
踵を返し、一度周囲を一瞥してから隣のエリアへの移動ポイントに向かうPoH。
(;´・ω・`)「!」
思わず追おうとしてしまい一歩踏み出そうとしたショボンだったが、
いつの間にか横に立った忍者が自分を見上げているのに気付き、動くのを止めた。
(´・ω・`)「…助けてくれて、ありがとう」
目を細め、照れたように首を横に振る忍者。
その間にPoHは立ち去り、エリアには平穏がおとずれた。
.
-
(´・ω・`)「ふさ…」
自分に背中を向けて立つフサギコに、声をかけるショボン。
(´・ω・`)「助けてくれて、ありがとう。
ふさが来てくれなかった、僕は死ん」
ショボンの左頬が、平手打ちされた。
衝撃に、思わず固まるショボン。
目の前には、目に涙をためたフサギコ。
ミ,,゚Д゚彡「これは、皆の怒りだから。
皆、ショボンの事が大事だから。
それを分かっていないショボンに、怒ってるから」
(´・ω・`)「ごめん……」
ミ,,゚Д゚彡「死んでほしくないから。
ずっと一緒に居たいから。
みんな、誰が欠けても嫌だから。
だから、大変な時は、皆で乗り越えるから。
みんなで頑張って乗り越えれば良いから!
ショボンは、分かってないから…だから…だから…」
(´・ω・`)「フサギコ」
ミ,,;Д;彡「生きてて…良かった…」
涙を流しながら、ショボンに抱きつくフサギコ。
ミ,,;Д;彡「良かった!良かった!良かった!」
(´ ω `)「…ありがとう、フサギコ」
フサギコを、抱きしめるショボン。
そしてすぐに横にいた忍者も、片手で引き寄せ、抱きしめる。
(´ ω `)「二人とも、本当に、ありがとう」
.
-
そんな三人を陰から見る、三人の視線。
.
-
木に寄りかかっているドクオ。
その足元にしゃがんでいる弟者。
その後ろに立つ兄者。
それぞれに完全武装で、武器を手に持っている。
('A`)「ま、これでとりあえずは一件落着ってところか」
(´<_` )「けど、PoHのやつ、また来るんじゃないか?」
( ´_ゝ`)「来るだろうな。ショボンを片腕にしたいみたいだから」
('A`)「ショボンがPoHの片腕……」
黙り込み、色々と想像する三人。
(´<_` )「終わるな」
( ´_ゝ`)「終わりだな」
('A`)「否定できんのが嫌だ」
三人は、同じタイミングで身震いをした。
( ´_ゝ`)「……追わなくて、良かったのか?」
('A`)「これ以上危険なことをしたら、今度はおれ達がふさに怒られるぞ」
( ´_ゝ`)「それは嫌だな」
(´<_` )「ショボンだから平手打ちで済んだけど、
おれ達だったら強制的に決闘モードで細切れにされそうだ」
('A`)「さすがにそれは」
( ´_ゝ`)「御免こうむりたい」
(アルゴ)「フサギコってのは、そんなキャラなのかイ?」
('A`)「あいつには言うなよ」
.
-
(;´_ゝ`)「うわっ!」
(´<_`;)「うをっ!」
ドクオの隣、木のそばにあらわれるアルゴ。
兄者と弟者が大袈裟に驚く。
('A`)「驚きすぎ。お前らだって居たのは気付いてただろ?」
慌てて首を横に振る二人。
('A`;)「マジか」
(´<_`;)「おれらはそっち系のスキルは鍛えてないからな」
(アルゴ)「で、フサギコはあんた達を細切れにできるほど強いのかイ?」
('A`)「うちのギルドは大人しそうに見える奴の方が怖いんだよ。
ギルマスを見ればわかるだろ?」
(アルゴ)「…なるほどナ」
(´<_`;)「(うわぁ。納得したぞおい)」
( ´_ゝ`)「(仕方ないといえば、仕方ない。ショボだし。あいつらだし)」
(アルゴ)「VIPは変人ばかりのギルドだからナ」
('A`)「おれを入れるなよ」
( ´_ゝ`)「いや、それは無理だろう」
(´<_` )「兄者も他人事のような顔してるが、兄者が変人筆頭だぞ」
( ´_ゝ`)「え?おれが?どこが?」
(´<_` )「全部だ」
.
-
('A`)「弟者もだぞ」
(´<_` )「え?おれが?どこが?」
('A`)「そういうところが」
(アルゴ)「(ホントに仲が良いな。この子たちハ)」
小声でがやがやと騒ぐ四人。
(アルゴ)「まあ、この世界でそれなりに力を示している奴らは、
多かれ少なかれみんな変人だけどナ」
( ´_ゝ`)「なんとなくわかる。強い武器を買える奴は癖が強いやつが多い」
(´<_` )「そういえばそうだな。強いやつには、癖の強いやつが多い」
('A`)「おれみたいな平凡……ごめんなさい」
自分を見る三人の視線に気付き、途中で謝るドクオ。
頷く三人。
(アルゴ)「そういえば、あの忍者も仲間なのかイ?」
('A`)
( ´_ゝ`)
(´<_` )
(アルゴ)
('A`)「情報屋なんだから、自分で調べたらどうだ?
金になるかどうかは、分からないけどよ」
(アルゴ)「流れで口を滑らすかと思ったが、しょうがない、調べてみるヨ。
助けてくれた、お礼もちゃんとしたいしネ」
.
-
( ´_ゝ`)「お礼なら、今言っていけばいいだろ」
(アルゴ)「今あの三人の空間に割り込むほど、空気の読めないことはしたくないんでネ」
いまだに三人抱き合って泣いているエリアの中央を見て、
おどけた様に肩をすくめてから、手を振りつつ木々の中に消えるアルゴ。
その後ろ姿を見送る三人。
そして消えたのを確認すると、兄者と弟者がドクオの顔を見る。
周囲を観察していたドクオが、二人に向かって頷く。
三人の顔から、笑顔が消えた。
( ´_ゝ`)「ラフコフはこれで終わりとして、ショボンは次も見据えているんだろ?」
('A`)「ああ。俺も全容は聞いていないけど、色々と手は打っているようだ」
(´<_` )「NSだけじゃない、今までに培ってきた全部を使うんだろ?」
('A`)「多分。出し惜しみをしている場合じゃないだろうから」
( ´_ゝ`)「あとは、ショボンが一人で危険なことをしないっていう約束を取り付けることだが…」
兄者の言葉に、エリア内にいる三人を見る三人。
( ´_ゝ`)「大丈夫か」
(´<_` )「だな」
('A`)「フサギコ様様だ」
それぞれに柔らかい笑顔を見せ、抱き合う三人を見守る。
淡い光が、六人をやさしい気持ちにさせていた。
第十七話
終
.
-
乙でした。みんな無事で良かった(;つД`)ハラハラしました。無粋ですが、忍者はいょう?
-
3日連続投下乙乙
死なずにすんで良かったな、ほんに良かった
-
( ´_ゝ`)「ところで、そろそろ帰らないか?」
('A`)「帰りたいな」
(´<_` )「あいつらどうする?」
('A`)「置いていくのもどうかと思うが…」
(´<_` )「おれは嫌だぞ。声かけるの」
('A`)「おれも」
( ´_ゝ`)「おれも無理だからな」
(´<_` )「兄者のくせに何で空気よんでるんだよ」
( ´_ゝ`)「実の弟に今ひどいことを言われた」
('A`)「任せた」
( ´_ゝ`)「いーやーだー」
押し付け合いは、たっぷり20分続いた。
.
-
以上、17話でした。
ありがとうございました。
とりあえずラフコフを決着?できて安心しています。
予定しているエピソードは残り三つくらいなので、
あと数話で終わる予定です。
20は超えると思いますが、25まではいかないと思います。
いつも乙と感想、本当にありがとうございます。
それを励みにして、完結まで行けるよう頑張ります。
ありがとうございました!
ではではまた。
-
>>106
忍者は…誰でしょうww
色々と考えているキャラではあるので、楽しんでもらえたら嬉しいです。
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乙
現行であんたが一番楽しみだよ
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激しくニンジャとクックルの待遇の差はなぜ生まれたのか・・・
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乙
ぃようがPKされたようには見えるがミスリード誘ってるようにしか思えんのよなぁ
結局ギコが抜けた真意もまだ明かされないか
-
ブギャネーヨほんと好き
こういう決して無能なわけではないのに個性が弱いのとメインキャラが出鱈目に強く濃いので霞んでしまうザ・一軍半的なキャラが愛おしくてたまらない
-
おおお来てるやんけ検索したりずっと待ってた
今から読む乙
-
いま1番これがおもしろい 頑張ってね
-
むしろ>>75-76で「よ」の後に意味ありげにスペース入れてるのがミスリード
>男だと思うが、少年…女性かも知れない…。
男、女、少年は出てるのに
あえて少女という表現を避けてる事から結論を導くと…
後は明かされてない伏線は15話の最後でショボンと会話してた女か
この辺もどう物語に関わってくるか楽しみ
-
忍者に関しては最新話前半と後半の時系列が解らなくなってるからぃょぅでも不思議ではないし別人でもいい
12話ラストで「死んだように見せかけたトリック」と出ているのも「死んだと思わせる方法がある」という伏線っちゃあ伏線といえる
ぃょぅは全部小文字なのにeだけ小文字で碑に刻まれてるというのが引っ掛かるし
にしてもこれ風呂敷畳めるのか?
伏線結構残ってるけど
ブーンが激しく動くと体調を崩す謎
アングラーとワカビロっぽ(と疑える人物)の裏の顔
またんきの消息
ギルドに入ってないショボン達の知人と思われる人物
ギコしぃがギルドを抜けた真相
デレの正体
ざっと思い出したのでもこれだけあるが
まぁいくつかは回収しなくてもいい伏線もあるし俺は原作読んだこともアニメ見たこともないから解らないだけのものもあるかもしれないがな
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>>118
ブーンのはただ単に強力な技の反動じゃね?
-
>119
ブーン以外の皆が使ってないだけで硬直以上の「反動」というシステムあるいはバグ的な現象が全プレイヤーもしくは一部のプレイヤーに存在するのか、ブーン個人が見た目に反して虚弱だからそうなるのかが原作知らずこれしか読んでない身にはわからんのよ
-
そういうシステムなんじゃね
ブーンのあれはRPGでたまにあるコストがMPではなく、HP〇割消費+自キャラステ異常しちゃう特大威力技みたいなもんだと思ってる
-
>>118
12話ラストのは原作のエピソードで解決されてる
ブーンは脳の処理能力の限界を超えた動きをしちゃうから負荷がかかるみたいな話じゃないかな?
それに近い表現も原作にあったはず
そういえば>>69-70の間のレス飛んでないか?
前後の繋がりが不自然に見える
-
こういうの良いな
正史で語られない程度にほんの少しだけ影響を与えた者達の物語って
ザ・外伝って感じで
原作のターニングポイントとなる大きな作戦の立案に一役かっていたとか物資の生産・流通という形で結果的に原作主要人物の支援を行っていたとか
-
盆休みも終わったことだしそろそろくるか?
-
どーも作者です。
乙と様々な感想や考察、本当にありがとうございます。
言葉知らずなため感謝の言葉もいつも同じになってしまっておりますが、
本当に、本当に、ありがとうございます。
読みながら、
おっ!と、おもったり、
にやにやしたり、
ここはもっとわかりやすくしなければ…。と、思ったりしています。
次の話に活かせるように頑張ります。
といいつつも>>124様に見透かされているように盆休みを使って18話と19話の終わり頃までは書き上げてしまっているので、
何とか最終回までには反映させることができればいいななどと、
甘いことを考えたりもしております。
そして>>122様のご指摘通り、抜けてます。
orz
ということで、まずは投下前に補完です。
>>69-70の間に、以下を挟んで読んでいただけると嬉しいです。
.
-
その明るい声は、次の声を呼ぶ。
( ´ー`)「あの時みんなが来てくれなきゃ、死んでただーよ」
プギャーのけだるい、けれど決意の籠った声を。
| ^o^ |「あの時のクエストボス戦が今回のボス戦とは別パターンで良かっただーよ」
ブームの真面目な、けれど出来るだけ軽々しくした声を。
( ^Д^)「ほんとにそうだな」
そして、元気な、心の底から楽しそうに、けれど真剣な声。
( ´ー`)「だから、おれ達を甘く見るのはやめるだーよ」
('A`)「お前ら」
| ^o^ |「皆さんとラフコフとの因縁だとか、窮地に立つとか、我々には詳しいことはわかりません。
ですが、今までに受けた色々なことは、返したいのです」
( ´ー`)「貰いっぱなしは性に合わないだーよ」
( ^Д^)「そういうこった」
('A`)「お、おい」
( ^Д^)「きっと、おれ達よりもつらい道を選んだあいつも、同じ気持ちだろうよ」
| ^o^ |「どれだけ力になれるかは分かりませんが、やれることはやらせてもらいます」
( ´ー`)「もちろん死にたくないだーよ。
だから死なないギリギリまでやってやるだーよ」
| ^o^ |「だからこちらは、私達に任せてください」
( ^Д^)「こいつらが殺されそうになったら、ちゃんとおれらが逃がすからよ」
( ^ω^)「プギャー…」
( ^Д^)「ま、適材適所ってことだ」
('A`)「シラネーヨ」
( ´ー`)「だてにショボンのプログラムで鍛えてきたわけじゃないだーよ」
ξ゚⊿゚)ξ「………」
| ^o^ |
.
-
三人の決意とか、思い的な大事なシーンだったのに、痛恨のミスでした。
プギャー、ネーヨ、ブーム、ごめん。
それでは、18話の投下を始めます。
今回もなかなかの長さなので、何日かに分けて投下になると思います。
ではでは、よろしくお願いします。
.
-
第十八話
はじまりの日 〜NerveGear〜
.
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0.彼と彼女
.
-
その日は、朝から灰色の雲が空を埋め尽くしていた。
朝の情報番組で、可愛いだけかと思いきや、
気象予報士の資格をちゃんと持っているお天気お姉さんが、
降水確率を100パーセントと言っていた。
『あの人局アナじゃないんだよ』
親友が、特に必要じゃない知識を披露してくれたのを、彼は覚えていた。
昼前には雨が降り出して、帰宅する頃には本格的な雨だった。
傘をさしていてもほんのりと濡れてしまう雨。
通っている高校には徒歩でも自転車でも通える距離に住んでいる彼と彼女は、
帰り道の道路をならんで歩いていた。
「ドクオと本城は?」
「ドクオは本屋、ショボンは生徒会だお。
そっちこそ、今日は来島さんは一緒じゃないのかお?」
「久美子も生徒会。書記も大変みたいね。
あんた、今日部活は?」
「体育館も武道館も渡り廊下も使われてて、お休みだお」
「そっか。吹奏楽部が使ってたわね」
「そういうことだお。
ショボン達もその関係だおね。多分」
「まだ部活に入ってない生徒向けの、文化部発表会か。文化部は大変よね」
「運動部系は今から入る一年生はまれだけど、文化部系はそれなりにいるみたいだお。
あれ?茶道部は出ないのかお?発表会」
.
-
「出るわよ。でもうちがやれることなんてたたかが知れているし、
私も久美子の付き合いで入っているだけだから、そこまでね。
だいたい発表会で人を増やせる部活なんて、合唱部とかそこらへんくらいよ。
あ、でもそうそう、あさ美、知ってるわよね」
「大垣さんだおね?」
「そうそう。大垣あさ美。
あの子華道部なんだけど、華道部は派手なパフォーマンス計画してるらしいわよ。
音楽にのせて花を活けるとかなんとか」
「そういえばドクオが音楽の事で話しかけられたって言ってたお」
「え?まさかアニソン使うつもり?」
「なんかロックバンドが主題歌やってたアニメがあるらしくて、
それならロック好きにもアニメ好きにも知られてるから良いんじゃないかとかなんとか」
「ドクオ、ちゃんと喋れてた?」
「……それはノーコメントだお」
「あさ美、見た目はギャルだからねー」
雨音が大きいため、傘を寄せ、肩が触れ合うような距離で会話をする二人。
男と呼ぶにはまだ笑顔が幼い少年は、
隣の少女が濡れないように傘を逆側に傾けている。
女と呼ばれるのを嫌がっている少女は
身長差から傘によって彼の顔が見えなくなってしまうのを嫌がって、
傘を逆側に傾けていた。
お互いがお互いを思っているのは周りから見れば一目瞭然なのだが、
何故か本人達は、気付かないでいた。
.
-
「……あんた、ここ右でしょ」
「青になるまでいるお」
「良いわよ別に」
「雨酷いし、送っていくかお?」
「えっ!?……い、いいわよ。別にそんなことしなくて。
もう家まですぐだし。まだ明るいし」
「でも…」
四つ角の横断歩道の前で立ち止まる二人。
彼女は前に進むため信号が青に変わるのを待ち、
彼は彼女が渡るのを待つ。
「明日は晴れるって言ってたし、風邪ひかない様に早く帰りなさい。
昔から雨の日に外で遊んで風邪ひいてたアホなんだから」
「……高校に入ってからは無いお」
「中三の時に入試の前に熱出してたじゃない」
「そ、それは雨とは関係ないお」
「38度越えたっておばさんに聞いて、みんな心配してたんだから」
「……ごめんなさいだお」
「体力はあるのに、昔から風邪は良くひいてたわよね。
だから、寄り道せずにさっさと帰りなさい」
「……わかったお。あ、青だお」
「やっと変わった。じゃあね。バイバイ」
「また明日だおー」
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