('A`)原始欲求のようです - 1414280730

237：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:24:52 ID:UNxa1Ejg0: 分厚い壁に穿たれた細いトンネルこそが校門である。
徐々に低くなる天井は、校内に入る正に直前に20cmほどの低いアーチで締めくくられる。
匍匐でこれを抜けなければ入校できない。

いやだなぁ、後ろには恩着せがましい先輩がいるではないか。
スカートのなかを覗き見、なおかつ入校を手伝いまた私になにか要求する気であろう。

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238：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:25:57 ID:UNxa1Ejg0: 私はアーチを上手く抜けられない。

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239：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:26:59 ID:UNxa1Ejg0: お礼はたこ焼きでいいよ。
お金がなきゃ君のママンからにでも借りなよ。
あ、勉強わからないとこない？
数学とか。
教えてあげるから放課後教室へおいで。
僕の分のランチも忘れないでね。
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240：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:28:06 ID:UNxa1Ejg0: いよいよ次の授業に遅れそうだ。
緩く傾斜した廊下を駆ける。
大きく開け放たれた教室のドアに飛び込む。

次は特別授業。
教材は映画。
教室内はすでに映画館のように椅子が配置されている。
席は7割ほど埋まっている。
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241：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:29:48 ID:UNxa1Ejg0: 前は首が疲れる。
後ろは前に背の高い人がいて見えない。
真ん中は仏教僧侶の一団が占拠している。
席の外では括られた幼児が喚いている。

「赤ちゃんだったら死んじゃうよ！　赤ちゃんだったら死んじゃうよ！」

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242：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:30:51 ID:UNxa1Ejg0: 中程の端の方、僧侶達の切れ間の1つの空席に向かって私は直上に飛び上がり、飛び込む。
隣の人が迷惑そうに身じろぎするくらい平気だ。

キーンコーンカーンコーン……

映画が始まる。
普通の女の、少し早口な語りからの始まりは、私から真剣に鑑賞する気を奪った。
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243：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:31:53 ID:UNxa1Ejg0: 　'ー'

子供が生まれた私は、安全帯をまだ持っていなかった。
おぶい紐もだ。
仕方ないからそれを作る間、私の子供の両脇の下にタコ糸を通し結び安全帯とした。
糸のはしは天井の滑車を通して作業する自分の腕に結えた。
作業を終え、無事に安全帯とおぶい紐が完成した。

それらを掲げ持ったとき、私は腕に糸のはしが結えられていないことに気付いた。

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244：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:32:56 ID:UNxa1Ejg0: 猫を飼っていた。
母子のかわいい鯖虎猫。
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245：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:34:07 ID:UNxa1Ejg0: 糸のはしにジャレ付いたのだろう
子猫は絡まり、締まり、捩れ

首は床よりはるか2mの位置にあった。
246：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:50:00 ID:UNxa1Ejg0: 糸の絡んだ胴体は首より2m下、床に転がっている。
母猫が必死にキズグチを舐めている。
あぁ違う。
咀嚼する、音が。
彼女にとって最早それは、新鮮な蛋白源でしかないのであった。

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247：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:51:57 ID:UNxa1Ejg0: 母猫が後脚で関節人形を蹴飛ばした。
外れた首が勢いよく足下に滑り込んでくる。
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248：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:53:01 ID:UNxa1Ejg0: 私の子供はベッドの中で叉焼の様相を呈していた。
主にその首が。

ぐったりとした私の子供を蘇生すべく水を張った洗面器に何度も顔をつける。
私の子供は奇跡的に息を吹き返した。
強い力で抱きすくめ、みっともなく泣き喚いた。

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249：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:54:34 ID:UNxa1Ejg0: しばらくは周りになんと詰られようと、子供とベッタリな日々を送った。
しかしそうしてもいられない。
私は仕事を始めた。
自宅から程近い、新規オープンのコンビニだ。
始めて3日で客から激しいクレームをうけた。
おでんのツユの入れ方が気に入らなかったそうだ。
平身低頭で謝り倒す私に散々罵声を浴びせた（チビハゲデブ脂まみれ）男性客は
「ま、頑張りなさいよ。毎日来て監督してあげるから」
と恐ろしい宣告をし、帰っていった。

後ろで傍観していた同僚達は、男性客が帰ると一斉に私を非難しだした。
曰く、あんな理不尽なクレームに非を認め謝るなどクレーマーをつけあがらせる行為である。愚の骨頂だ。と。
250：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:55:37 ID:UNxa1Ejg0: それから毎日クレーマーに罵倒され同僚から虐められた。
主な虐めの内容は今まさに着ている制服をシュレッダーにかけられるコピー機にかけられる横を通ると悲鳴を上げる棚を倒される窃盗の濡れ衣を着せられる金を巻き上げられるえとせとらえとせとら
251：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:56:39 ID:UNxa1Ejg0: 毎日といっても3日で辞めた。
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252：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:57:44 ID:UNxa1Ejg0: 辞めて帰宅すると私の子供の安らかな寝顔に迎えられた。
穏やかな寝息。
繊細に上下する胸。
癒された私は携帯のカメラを向ける。
先日まで飼っていた子猫を合成して撮影した。

2、3枚の撮影を終えたとき。
寝息は止み、胸は微動だにしていなかった。

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253：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:58:46 ID:UNxa1Ejg0: 私の子供は撮影中に死んだのだ。
私は死体を撮影したのだ。

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254：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 00:59:49 ID:UNxa1Ejg0: それから私は文字通り、私の子供を胸に抱き、決して、片時も忘れぬよう生きてきたのだーー
255：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 01:00:55 ID:UNxa1Ejg0: 教室中に読経の声が響いている
沢山の仏教僧侶が一斉に読経しているのだ。

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256：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 01:02:16 ID:UNxa1Ejg0: 从　从

私はしゃくりあげながらやっと絞り出した細い大声を上げる。

ダメ、それはダメ。
そんなことをしては子供が天国に行けない。

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257：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 01:03:15 ID:UNxa1Ejg0: 　'ー'

ダメなの？

憔悴しきって脱け殻ほど価値のない笑顔をこちらに向けて問う。

ここに私の子供が居たことを忘れないようにするだけよ。

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258：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 01:04:10 ID:UNxa1Ejg0: 从　从

ダメだよ。

喉が詰まり声が上手く出せない。

親の魂が執着し過ぎれば、子が天国に行くことは叶わないよ。

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259：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 01:05:09 ID:UNxa1Ejg0: 　'ー'

天国。

.
260：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 01:06:00 ID:UNxa1Ejg0: 从　从

そう、天国。

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261：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 01:07:00 ID:UNxa1Ejg0: 躊躇いながらも私は手を伸ばす。
あの時は辛くて出来なかったこと。

私は私を強く抱いた。

私はスクリーンを通してあの時の私に再会したのだ。
子供に執着し過ぎるあまり、一度は終えていた人生の歩みを今こそ再開するときだ。

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262：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 01:07:44 ID:UNxa1Ejg0: 終業のチャイムが鳴った。

从'ー'从

　　　　　　　　　　　　　了
263：名も無きAAのようです：2015/10/27(火) 14:43:04 ID:XId0Sxe60: だんだんわかりやすくなってきている気がするようなやっぱり分からないおつ！
264：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:30:55 ID:b.XJhJOM0: ｲ从ﾟｰﾟﾉi､　

　5限目は現代文の授業だったが教室に入室したのは数学の教師だった。
机の3列目以降を円形に配置していたのが気に障ったのか、はたまた教室の電灯を入室と同時に切ったのが悪かったのか、教師は教卓に突っ伏し授業を放棄した。

.
265：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:31:51 ID:b.XJhJOM0: 机を蛞蝓のごとき速さで元に戻しながら
「センセー、授業はどうしたんですか」
と問う。

教師のいうことには、何やら体調が悪いそうだ。

（　　）

「誰か冷湿布を買って来てくれ」

.
266：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:32:55 ID:b.XJhJOM0: 私はこのクラスの唯一の自転車通学だったので真っ先に手を挙げる。
教師は私に財布の小銭──943円を握らせ、これで買えるだけ買って来いと絶え々に言った。

　件の教師はテニス部の顧問だが、私が彼のために外出すると聞きつけ吹奏楽部の連中がやってきた。

（　　）

「ついでにギターの弦を買ってきて」

1弦、3弦、4弦、5弦、6弦。
2弦不要と言えども、そもそも揃いで販売しているのではないか。
.
267：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:33:51 ID:b.XJhJOM0: 「あとこれもお願い」

トロンボーン、トランペット、マリンバの弦。

いよいよもっておかしい。
弦などない楽器ではないのか。

.
268：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:34:34 ID:b.XJhJOM0: 　このメモ書きをくれないかと言ったら、他の部分の落書きが恥ずかしいからと切り取ってくれた。
番号と楽器の名前は切り取られた。

の弦の弦の弦の弦の弦の弦の弦の弦

.
269：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:35:54 ID:b.XJhJOM0: 　まずは私がポイントカードを所持しているドラッグストアに向かう。
現在解体中の旧校舎を飛び越えて行けば近いのではと思い、私は土鳩のように軽やかに飛翔する。

モルタルの長方形が重機で削り取られている。
旧調理室に差し掛かったとき、激しい寒さに見舞われた。
巨大な冷凍庫が未だ稼働中だったのだ。
もはやプリザードと呼んでも差し支えないほどの強風と冷気に当てられ、それ以上高くに飛翔することは適わなかった。
結局校舎を抜けるしかないようだ。
270：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:37:06 ID:b.XJhJOM0: 　渡り廊下をごく低くうさぎ跳びしていると、後輩が声をかけてくる。

*(　)*

「こんにちは、先輩、今日はご機嫌ですね」

ご機嫌ですね、と言われてご機嫌になった私のご機嫌を踏みにじる吹奏楽部連中。

「もう買ってきた？」

そもそもどこで贖えばいいのかも聞いていない。

「家電リサイクル店。当然でしょ。なければ楽器店」

私はドラッグストアも家電リサイクル店も楽器店も何処にあるのか知らない。

　数学教師は44℃の高熱で脳が煮凝って死んだ。

.
271：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:38:11 ID:b.XJhJOM0: .

　 _
(　ﾟ∀ﾟ)

　新しい自慰の仕方を試していた。
横向きに寝、身体を丸め膝を曲げる。
曲げた膝の間に両手を挟む。
両手（厳密に言えば手首）に陰茎を挟む。
後は膝と背を曲げ伸ばしすれば、ほら！　なんと全く新しい！

　快感など案の定ない。

.
272：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:39:05 ID:b.XJhJOM0: <(' _'<人ﾉ

　帰宅すると旦那がダンゴムシの様に丸まってみっともなく自慰に耽っていた。
妙に癪に触ったので私も自慰をすることにした。
電動張り型のような強い刺激に慣れるのは本意ではない。
ペットボトル底面の凹凸を擦り付けるのはどうだろう。

　うん、やめよう馬鹿らしい。
273：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:39:53 ID:b.XJhJOM0: 　旦那は甲斐性も商才もなかった。
せっかく譲ってもらった、父親の商売のひとつである鮮魚店を満足に切り盛りすることもできない。
畳むまで後わずかもない。居るのは旦那と閑古鳥。

父親の代、といってもほんの2年前までは繁盛店と呼べるほどだったにも関わらず、甲斐性無しは偉そうに鮮魚だけでは集客出来ないなんていう。
じゃあどうするのかと問えば、鮮魚に合う米を作るなんて言い出した。
父親もまた甘いもんだから、月極駐車場を3反の田圃にしてやった。

.
274：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:41:01 ID:b.XJhJOM0: （= 　）

　「あの親父さんはおかしくなったんだ。俺が電器屋畳まざるを得なぐなったとき、真っ先にモーテルにしろって言うほど商売っ気のある人だった」

モーテルというより潰れかけの銭湯といった風情の連れ込み宿の店主が嘆いた。

襤褸宿の後ろにはなるほど、6階建ての自動車工場と言われても納得するほど巨大なモーテルが建っている。
これも父親のもつ事業のひとつに過ぎないのだ。
275：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:41:44 ID:b.XJhJOM0: 　その後、失敗するかに思われた新携帯事業「鮮魚米穀店」は物珍しさからメディアに取り上げられ一大ブームを巻き起こした。
ブームは竜巻のように急成長し、そして過ぎ去った。
もちろん竜巻なので、地上にある財は全て巻き上げていった。

そこからなし崩し的に全ての事業は失速した。

.
276：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:42:27 ID:b.XJhJOM0: .

　私は旦那とその父親を使って明日天気になりますようにと願をかけた。
しばらくすると懐が春の陽だまりよりも暖かくなったので、身の回りを整理して旅に出た。

.
277：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:43:22 ID:b.XJhJOM0: <(　<人ﾉ

　なんとなくそうしたかったので人を殺した。

ホームセンターで買った立派な釘とビスを針金で蓑虫状にひとまとめにした。
残った釘とビスは念入りに曲げておいた。

蓑虫で全身を乱打した。
弱ったら頭に釘とビスを刺し込んだ。
飛び出た部分をクルクル回したら、あっという間に死んだ。

やれやれ、重犯罪を犯すのはこれで3度目だ。
どうやらもう癖になっているようだ。
278：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 18:44:05 ID:b.XJhJOM0: .
　人間から猫に変質し、官憲の目を逃れた。

しかし亡霊となった犠牲者の目を欺くことは出来ず、私は同じ仕打ちを以って死ぬこととなった。

蓑虫で最初に抉られたのは、右手小指の下側だった。

　　　　　　　　　　　　　──了
279：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 19:16:20 ID:ne2Hco7I0: おつ！
プリザード？
280：名も無きAAのようです：2015/11/21(土) 22:07:50 ID:aX8.AWpI0: おつ！夢の中みたいで楽しい
281：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:29:35 ID:5ay71tNg0: 　ならんだ並んだ。

いちご
生クリーム
ミルクチョコレート
ブラックペッパー
配電盤

.
282：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:30:16 ID:5ay71tNg0: 　　　li ｲﾟ -ﾟﾉl|

そして私はダークチョコレートの精霊。

　恋人はAIドール。
ミントカラーの素敵な貴方。

　　　［ Д`］

.
283：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:31:24 ID:5ay71tNg0: 胸に、肩に。私は凭れる。
その体温に全幅の信頼を寄せる。
誰になんと言われても構わない。

愛しい私の哲学ゾンビ。

　マザーと同期、バッテリーチャージ。
都度輝く、貴方の瞳が好きで、
仮令それが瞼と同じ素材だとしても。
.
284：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:32:34 ID:5ay71tNg0: 　私はバーカウンタのジュークボックスから流れる音楽に身を揺らしている。
不意に変わるテンポ。
見上げれば、彼の少し見開かれた目を見つける。
アイコンタクト。
ほら、私と同じ。音楽を楽しんでいるの。

　　　li ｲ* ﾟ -ﾟﾉl|　［ Д`］

.
285：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:34:20 ID:5ay71tNg0: 　（　　）「おい、今投げた条件５つに該当する件、回答は？」

沈黙。
彼に投げ掛けられた問いだが、彼は答えられない。

.
286：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:35:51 ID:5ay71tNg0: 　（　　）「その件ならC-25ファイルだ。
　　──お前、もうCPUからしてダメなんだよ。処理に時間がかかり過ぎる、時代遅れ品だ」

［ Д`］

彼は拗ねた、多分に傷付いた顔をして部屋の隅に行ってしまいました。
こんな時は骨董品よろしく、これ見よがしに有線でマザーに同期するのです。

.
287：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:36:53 ID:5ay71tNg0: なんていじらしい。
その姿は私の庇護欲を刺激します。
頬擦りしたいけど、それはダメ。
油脂が付いてしまうから。

　　　li ｲﾟ -ﾟﾉl|

.
288：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:37:55 ID:5ay71tNg0: 　バツンと大きな音がして照明が落ちた。
コンピュータだけが煌々と辺りを照らす。

全てのディスプレイパネルには、３匹のモンスターが表示されている。

ゲームだ。

ここはゲームをするところでも、作るところでもない。
.
289：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:39:10 ID:5ay71tNg0: 　所長が焦りながらパネルを操作する。
だがゲームが進行しただけだ。

所員の私物タブレット（アダルトゲームをプレイ中だった）を所内ネットワークに繋ぐと、たちまちのうちに画面は３匹のモンスターに侵略された。
これによりアダルトゲーム内で脱がされていた衣服が後進国に寄附された。

.
290：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:40:22 ID:5ay71tNg0: 　大きな、いかにも悪役然としたモンスターには「me」の表記が。
小さな、弱々しい２匹にはそれぞれ「mother」、「BU」の表記が。
大きなモンスターによる一方的な攻撃が続いている。

.
291：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:41:41 ID:5ay71tNg0: li ｲﾟ -ﾟﾉl|　　［ Д　］
私は a)彼に駆け寄った b)パネルに向き合った。

小さなモンスター達が倒されれば、ハッキングどころかクラックされてしまうのは誰の目にも明らかだ。

私は a)彼の同期を中断し b)ゲームで勝利を納めようとする。

どうすれば良いのかわからない。
そも、彼に文句をつける前にここのセキュリティはどうなっているんだ。

.
292：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:43:08 ID:5ay71tNg0: 油脂で a)彼 b)パネルがベタベタになった頃、所内は静寂に包まれた。

　　　li ｲﾟ /
　私は見事乖離を超越し世界線ごと分裂を果たした。

　　　　　　　　/ -ﾟﾉl|
.
293：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:44:05 ID:5ay71tNg0: 　b)暗闇には分電盤を、甘い精霊どもは捕まえよく混ぜた。
もちろん「私」ことダークチョコレートも。
ブラックペッパーは用途が思いつかなかったから東インド会社に売った。

　「カステラ、メロンパン、ラスクの専門店です！
　　ただいま、期間限定にていちごフェアを開催しております！」

今日も「仮付絵眠兎」は大盛況だ。

　　　
.
294：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 16:45:13 ID:5ay71tNg0: 　　　
　　　li ｲ:::::::ﾉl|

　a)暗闇の中、私は待っています。

抱き締め、頬擦りすると、彼が油脂に塗れになるその時を。

今の彼と視線を交わすことも、音楽を楽しむことも出来ません。

私は、私も、ただ待つことしか出来ません。

体が、白く染まってゆきます。

　　　　　　　　　　　　　──了
295：名も無きAAのようです：2016/02/13(土) 18:32:03 ID:xMwnkGeI0: こういうの書けるのって凄いと思うわ
296：名も無きAAのようです：2016/02/14(日) 01:21:35 ID:SssiG5CA0: 乙
どんな気持ちでこれ書いてんの
297：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 11:49:01 ID:F4GP.HTY0: 　巨大サボテンを四駆で登る

トリコケレウス多聞柱！

最大傾斜角は38度

頂点では降りられない、針座があるからね

緩むサイドブレーキ
狂気のバックの幕開けだった
298：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 11:51:07 ID:F4GP.HTY0: 地下8階、地上3階の最新ツボ型ショッピングモール
巨大な吹き抜け
地下1階のカフェは吹き抜けに沿ったガラスフェンスから地下庭園を見下ろす造り
高所恐怖症の俺には耐えられない眺め

('A`)
299：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 11:53:14 ID:F4GP.HTY0: 　風呂場の掃除をしようとしたら、壁に蝉がとまっていた
突然点いた明かりに驚いたのか、俺に驚いたのか、蝉は隅へ行って背を丸めた

　早鳴きの蝉というのがあるのだろうか
それにしても窓を開け放していた記憶も無いし、どこから侵入してきたのだろうか

まさか、換気扇から……？
300：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 11:53:57 ID:F4GP.HTY0: 　蝉を掴み出そうと手を伸ばしたところで気が付いた
背に、一匹だがセミキセイチュウが付いている

蝉は良いがセミキセイチュウは触りたくない

面倒になってスプレー洗剤を撒き始める
すると何に反応したのか知らないが、セミキセイチュウが蝉の背から降りて床に逃げようとしている

　狙い澄ましてスプレー
301：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 11:54:55 ID:F4GP.HTY0: 　見事命中セミキセイチュウは死んだ

後は洗剤を撒き終えたら蝉を掴んで逃がしてやろう

スプレー

手元が狂って見事命中

　蝉は死んだ

('A`)
302：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 11:57:47 ID:F4GP.HTY0: 　

　片方だけファンのコンビに出会った時、私は握手をスマートに求められるだろうか

.
303：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 11:59:08 ID:F4GP.HTY0: 　ところで、最近飼い始めた犬の眼の調子がどうも悪いようだ
.
304：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 12:00:13 ID:F4GP.HTY0: 首筋に指をぐいと突きたて、肉と皮の間に上手く引っ掛けるそのままやや上向きに力を掛けながら皮を剥いだ瞼まで剥けたら上顎、つまりは頭蓋骨をずらす普通なら全て皮を剥ぎ頭骨を外し上下で分解するところだが、何分面倒だこの状態の犬を横から見ると、

汚いティッシュを亀頭にこびりつかせた陰茎である

それもカリ高の

.
305：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 12:02:05 ID:F4GP.HTY0: 　実に滑稽である

眼球をなおざりに取り外す
結局頭骨は丸ごと取り外した

　はて、替えの眼球は一体どこに仕舞ったろうと見回す

色素の薄い、雫型に筋を延ばした眼球は俺を見上げている
306：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 12:02:45 ID:F4GP.HTY0: 　ふと気付くと犬がのそのそと歩いていた

左後ろ脚をグズグズと引きずった無様な歩き方だ

頭骨を外した時（もちろん脳髄と舌は頸につけたまま）にどこか運動神経でも傷付けたかと思って近付くと何かが落ちている

.
307：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 12:05:09 ID:F4GP.HTY0: 地べたに落ちていたのは肉球だった
付け根からそっくりそのまま

黒い皮膚の内側の、赤い血液や白い組織がよく見える
おすわりした犬の脚元には赤い水たまりが出来た

.
308：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 12:06:46 ID:F4GP.HTY0: 早いところ犬を組み立て直さなければ

傷付けてしまっていた眼球からは液体が流れ出ている

萎れた眼球が俺を見ている
.
309：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 12:07:29 ID:F4GP.HTY0: 犬を、犬を組み立てるとは一体何だ

何故犬がバラバラに、こんな惨い、悍ましい姿になっているのだ

誰が俺の犬を！　こんな目に！

誰か！　知らないか犯人を！
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310：名も無きAAのようです：2017/03/05(日) 12:08:14 ID:F4GP.HTY0: 色素の、薄い、萎れた、眼球が、

俺を、見上げている

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311：名も無きAAのようです：2017/03/07(火) 04:23:56 ID:CnTup0g60: 乙
久しぶりだな嬉しい
312：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:30:40 ID:oNG9809U0: 　　

大文化体育祭の閉会式。
夜空に映える白い校舎、篝火、万国旗。
私たちは校庭に整列して最後の演目の大ピラミッドを観た。

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313：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:31:29 ID:oNG9809U0: あぁ、大文体なんて嫌いだったのに。
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314：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:34:17 ID:oNG9809U0: この大祭が高校生活と共に終演を迎えることを思うと、つい感じいってしまった。
昂りを一刻も早く140字に綴って放ちたかった。
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315：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:35:15 ID:oNG9809U0: 閉会の儀が終わったとき、クラスのマドンナが高らかに挙手した。
「先生、シーン君とトイレに行ってきていいですか」
質問に見せかけた宣言を叩きつけて、彼女はまっすぐにこちらに来、私の手を取り校舎へと向かった。
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316：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:35:55 ID:oNG9809U0: さして容姿に優れた点のない自分を名指してくれたことに疑問を抱かず私は引かれるままについていった。
囃し立てる連中の声を賛辞と捉え、浮き浮きとした足取りですらあった。
317：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:36:40 ID:oNG9809U0: 2号館3階のトイレに着くと彼女は僕を鏡の前へ押しやって言った。
「鏡越しにいちばん奥の個室を見て」
318：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:37:26 ID:oNG9809U0: 　　化け物が出るから。
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319：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:38:32 ID:oNG9809U0: 毎年大文体の直後にトイレから化け物が現れて生徒を1人殺す。
姿の見えないその化け物を斃すには、3年D組の出席番号が最後の者を化け物に晒すこと。
そうすると化け物は見たものの姿を借りてしまうのだそうだ。
つまり私は化け物の目に入る最初の人物になるべく、のこのことやってきたのである。
320：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:39:22 ID:oNG9809U0: 　　
「見て」

彼女の声に気がつけば、トイレのドアが鏡の中に開くのが見えた。
ゆっくりと開ききったドアの向こう、様子を伺うように私がいた。
321：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:40:10 ID:oNG9809U0: 　　
鏡の中に2人の私。（・－・）//（・－・）
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322：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:44:23 ID:oNG9809U0: 身構える前にドアは内から閉められてしまった。
見ているとまた、ゆっくりとドアが開く。
トイレの中は無人だった。
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323：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:45:37 ID:oNG9809U0: 鏡の中に私1人。（・－・）//
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324：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:46:18 ID:oNG9809U0: 「どういうこと」

またも閉じられるドア。

「こんなこと聞いてない」

隣からは狼狽しきった彼女の声がする。

「もう逃げたい。いい、ドアから目を離さないで、後ろ向きで逃げる。不意打ちなんてされたくない」
325：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:47:07 ID:oNG9809U0: 直接ドアを睨みながら後ろ向きでゆっくりと進む。
今、私たちから見えない鏡には一体何が映っているのか。
そういえば彼女が1回も鏡に映らなかったのは、事実として正しいのだろうか。
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326：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:48:52 ID:oNG9809U0: 「こんなこと聞いてない」
ぶつぶつ呟く声がする。

さらさらの黒髪を頂いた愛らしい脳天。
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327：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:49:46 ID:oNG9809U0: 「でも大丈夫、何も変じゃない。ちゃんと逃げられる」

自己暗示をかけているらしいが私は無駄だと思った。
なぜなら先ほどから彼女が足元を確認するために視線をドアから外す度、取っ手の位置や蝶番の位置、ドア板の色なんかがチャンネルを切り替えるようにガチャガチャと切り替わっている。

実に不気味な変化が目の前で起こっている。
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328：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:50:46 ID:oNG9809U0: あと一歩でトイレの敷居を踏み越える時、個室のドアが開いた。
中から墨色の紙縒りで作ったような人形の化け物が飛び出してきた。
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329：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:53:56 ID:oNG9809U0: 彼女は悲鳴をあげて走り出した。
才色兼備のマドンナは流石走りも速いのだ。
330：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:55:24 ID:oNG9809U0: 　　
私は職員室に飛び込んだ。
大文体に来ていた市の職員が目当てだった。
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331：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:56:08 ID:oNG9809U0: 車椅子に乗った萎びた顔色のOB。
挨拶代わりの手淫もそこそこに問い詰めた。

「あの化け物を退ける方法を教えてください」
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332：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:57:42 ID:oNG9809U0: 廊下ではパニックになった生徒達が右に左に逃げ惑っている。
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333：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:58:36 ID:oNG9809U0: 化け物が職員室に踊り込んできた。
彼女は喰い殺されたのだろうか。惜しいことをした。
出来れば私が喰い殺したかった。
334：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 08:59:36 ID:oNG9809U0: 私は責任を感じて職員を抱きあげ、手近な窓から飛び上がった。
横抱きにした職員のまろび出したままの陰茎にげんなりした。手淫が済んだらしまっておくべきだ。
あまりの醜さに嫌気がさした。そもそもなぜ私が化け物に責任を感じなければならないのだと憤り、職員を放り出して今夜をもって高校を卒業することとした。
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335：名も無きAAのようです：2017/05/27(土) 09:00:30 ID:oNG9809U0: 4つある校舎の屋根を飛び越えた時、夜が明けてきた。

　　　　　　　　　　　　　──了
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