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+】(メ ´_ゞ`) Channelers
1
:
名も無きAAのようです
:2014/08/13(水) 22:45:14 ID:aqE7LG6E0
.
【 Channelers (ちゃねらーず) 】
オリジナル ・ 長編 ・ ブーン系小説
超能力 ・ 現代厨二もの ・ TS要素あり
オリジナル分90% (残り一割:AA及び2ちゃんねる、ニュー速VIPネタetc.を含む)
まとめサイト
http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
ブーン芸VIP様
http://localboon.web.fc2.com/100/top.html
内藤エスカルゴ様(21話〜)
http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
くるくる川 ゚ -゚)様 (1〜20話)
http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html
フェスティバロス様 (1〜10話)
前スレ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/13029/1344858830/
.
67
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:03:42 ID:D9mWpQHU0
.
【 ドクオサイド: 第三倉庫内 】
短い悲鳴をともなって、兄者の長身がびくりと跳ね上がった。
::::(l|l _ゝ )::: 「ぐ……おお……っ!」
本日二度目の感電。
幸いスタンピースほどの威力はなかったようで、
兄者は倒れそうになりながらもその場に踏みとどまった。
(; _ゝ ) 「うっは……ビリっと、き、たわ」
(;'A`) 「大丈夫か?」
(; ´_ゝ`) 「なん、の、これしきっ」
そう言って、おもむろに床を蹴る。
追撃の札をすれすれで避け、疾駆する。
.
68
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:05:44 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「どっこい、それは読んでた」
その前方、ひらり舞う花かるた。
声を上げる間もなく、閃光が周囲を包む。
兄者の足が止まった。
真正面からの“ グリントキネシス ” 発動。
サディスティックに広がる白い闇。
兄者は顔を覆う。
当然、俺もだ。
徐々に光は薄れゆくが、そのうち異変に気づく。
.
69
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:08:28 ID:D9mWpQHU0
.
(;'A`) 「なっ」
まっさらなキャンバスの中央に、黒い影がゆらめいた。
はじめはぼんやりと。 しかしみるみる大きくなり。
直後、兄者の頭上から。
(; ´_ゝ`) 「ぐあ!?」
巨大な物体が降った。
/ ゚、。 / 「鹿は “ テレポート ” 」
簡易テーブル。 アルミ製の軽いものとはいえ、落下エネルギーは充分。
延髄あたりをしたたかに打ち、兄者は大きくバランスを崩す。
が、あいつもタダで起きるようなタマじゃない。
(#´_ゝ`) 「────っらぁ!」
既にサイコキネシスの射程距離内だった。
地面に片手をついたまま、兄者は反対の腕を掻き出すように払う。
.
70
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:11:18 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「!」
波動のアンダースロー。
ダイオードはサイドステップしつつ、上体を大きく傾けた。
(; ゚_ゝ゚) 「なっ」
その時だ。
想定外の現象に、俺たちは目を見開いた。
まるで、放たれた念動力でスイッチを押下されたように。
後方の柱が、ギン、と甲高く鳴いた瞬間、
常識とは思えないスピードで、ダイオードがこちらに突進してきたのだ。
('A`;)ノノ そ 「うおっ!?」
大砲の弾のように、俺たちの横を駆け抜け。
反対側まで吹っ飛び、くるり、器用に体を反転させる。
そのまま壁を蹴って静止すると、ダイオードは優雅に着地してみせた。
.
71
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:14:36 ID:D9mWpQHU0
.
(; ´_ゝ`) 「! ───痛っ」
赤い置きみやげを残して。
兄者の腕から血の糸が垂れ落ちた。
/ ゚、。 / 「……」
ダイオードは顔の前に肘を曲げ、
「あんた、背中が煤けてるぜ」のポーズでこちらを見ている。
伸ばした指先に一枚の札。
通過する際、兄者の腕を引っかいていたのだ。
(; ´_ゝ`) 「なんだ、今のは……!?」
/ ゚、。 / 「教えてやるケド」
解説したがりのエレキネシストは、得意げに鼻先をこすった。
/ ゚、。 / 「スズキの履いてるブーツ、
実はここにもちょーのーりょくを封じ込めてあるケド」
.
72
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:17:08 ID:D9mWpQHU0
.
(; ´_ゝ`) 「……花札(オモチャ)だけじゃなかったのか?」 イテテ
返答代わりの軽い跳躍。
/ ゚、。 / 「 “ リアクトン ” タムラの、チカラ。
── “ 反作用を操る能力 ”」
(;'A`) 「!」
〜 〜 〜
.
73
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:20:04 ID:D9mWpQHU0
.
【 クーサイド: 県境方面 広域農道路上 】
12月初旬の夜空は澄みわたり、さえぎる雲もない、星の大海だった。
VIP市沿岸に位置するこの支線道路は、路面もきちんと整備されており、
一般的な農道のイメージとは異なる、アスファルトの幅広い道だ。
「あ」
ただ両サイドが畑というだけ。
十数分ほど進めば、国道△△号線、バイパスの降り口付近へ復帰する。
「お」
星の輝きがよく見える。
夜が深まり、寒さはいっそう増したように思われた。
.
74
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:22:50 ID:D9mWpQHU0
.
川 ゚ -゚) 「 え ? 」
クーは飛んでいた。
川 ゚ -゚) 「………………はい?」
比喩ではなく、バイクごと宙を舞っていた。
トラックから投げ放たれた、一枚のタオル。
そいつを踏んだ瞬間、その “ 現象 ” は起きた。
軽い衝撃とともに、
車体が、勢いよく宙へ跳ね上がったのだ。
ファンタジー映画のワンシーンのように、空を舞う一台のバイク。
『 オーノ〜! 』
ハンドルを握るクーの脳裏に、
コミカルなキャラが登場する、家庭用レースゲームの一場面が浮かんだ。
しぃ達若い者は知らないであろう、古めの機種のゲームだ。
.
75
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:25:20 ID:D9mWpQHU0
.
川 ゚ -゚) 「Oh.....」
そのゲームでは、ジャンプ台のトラップを踏むと、キャラクターが勢いよく飛び上がる。
彼女の状況は、まさにそれだった。
川 ゚ -゚) 「の……」
落ちるとスピンし、アイテムが没収される。
川 ゚ -゚)
て
川;゚ -゚) そ 「のおおおおおおおおおおおおおぉぉぉう!?」
が、残念ながらこれはゲームではない。
紛れもない現実だ。
地面に叩き落とされた場合、スピンしながら舌を出すだけでは済まされない。
.
76
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:37:50 ID:D9mWpQHU0
※vipさるってしまったので小休止
77
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:43:40 ID:D9mWpQHU0
.
浮遊の最高到達点から、ベクトルは下へ。
クーは無意識のうちに腰からペットボトルを抜いた。
ファイトで一発しちゃうドリンクCMのように、
キャップを親指でひねり飛ばす。
川;゚ -゚) 「このっ……!」
落ちる。 回る。
クーは無我夢中で腕を振った。
ボトルから水のロープが射出される。
ボトル内の水は “ 特別製 ” だ。
触れずとも制御でき、その強度も高い。
間一髪、ロープは近くの木の枝に絡みついた。
ぐい、と引き寄せ、ターザンのような振り子運動を二、三回。
クーの体は、しなる枝と水のロープの下、ぶらりと垂れ下がった。
川 ゚ -゚) 「……ぐぅ。 あっっぶな……」
助かった、と胸をなで下ろすクーだったが、
.
78
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:46:00 ID:D9mWpQHU0
.
川 ゚ -゚) 「 あ 」
その目の前、己の分身であるバイクが、
川;゚ -゚)ノ 「や、ちょっ」
スローモーションで、道路下の畑に落下してゆく姿を、
川;゚ -゚) 「Nooooooooooooooooooooooooo!!!!」
目撃させられた。
同時に、聞きたくない轟音が──鮮明に彼女の耳へ届いた。
.
79
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:47:55 ID:D9mWpQHU0
.
川 ; -;) 「きゃしぃいぃいぃぃぃぃぃいぃぃぃぃいいぁあぁ!!」
その後、水の力で引き起こしたマイバイクは、
傷だらけで、見るも無惨な姿に変わっていた。
『 頼む、動いてくれっ 』
『 動けよおぉぉぉおぉお 』
泥を払い落とし、シートにまたがる。
素直でもクールでもない雄叫びをあげ、
必死にキーをひねる。
川 ; -;) 「おおお……お?」
彼女の祈りが通じたのか、数回のトライで奇跡的にエンジンがかかった。
..
80
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:49:47 ID:D9mWpQHU0
.
ちょっとだけ泣きそうになっていたクーだったが、
気を持ち直し、ギアを入れアクセルをひねる。
川;゚ -゚) 「うぉぉおぉぉぉあぁぁあぁ」
バイクはよたよたと発進した。
なるべく前を──前だけを見ながら走った。
凄惨たる相棒の姿を、できる限り目に入れたくなかった。
幸いなことに、あれだけの衝撃を受けたにも関わらず、バイクは走行できていた。
ハンドルが湾曲し、多少フラつくためスピードは出せないが、
タイヤ・クラッチ・その他走行に関わる機構にはさほど問題なかったようだ。
.
81
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 20:52:15 ID:D9mWpQHU0
.
川 ゚ -゚) 「あっ」
……が。
走っているうち、左ウィンカーがはがれ、落ちた。
川 ゚ -゚) 「げっ」
カーブを曲がった瞬間、タイヤのフロントフェンダーが弾けた。
川;゚ -゚) 「ぽよぉ──────ッ!?」
左ミラーが折れた。
ビキニカウルが垂れ下がった。
ガソリンタンクの外装が飛んでいった。
.
82
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:07:45 ID:D9mWpQHU0
.
川 ; -;) 「うごおおおおおおぉぉぉぉぉおぉぉおん」
都市伝説みたいなボロボロの姿で、クーのバイク(元)は夜道をひた走った。
『 リタイアしますか? 』
レトロレーシングゲームのリトライ表示が脳裏によぎる。
クーは歯噛みしながら駆けた。 ほんのちょっとだけ泣いた。
選択肢などない。
ゲームならいつ中断してもいいが、現実は終わらない。 死ぬまで地続きだ。
纏わりつく妄想を、その都度振り払いながら、あぜ道を駆けた。
途中から山のほうへ逸れる。 大型車には通行できない近道だ。
バイク(らしき何か)で暗い坂を登り、駆け下りる。
林を抜けると、郊外のニュータウンへ続く広い道路へ出た。
川 ゚ -゚) 「!」
交差点にて制止し、右を向く。
百メートルも離れているだろうか。
遠くから、ヘッドライトが揺らめきながらこちらへ向かってくる。
.
83
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:11:42 ID:D9mWpQHU0
.
まさにそれは、さきほどまで彼女が追っていたトラックだ。
追いついた。
クーは小さくガッツポーズする。
ハンドルがブレる。
慌てて車体を支えなおす。
普段の彼女であれば、
自らのライディング ・ テクと経路選択が正解だった事実に
しばし酔いしれるのであろうが、今はそれどころではない。
トラックにはしぃが乗り移っている。
事前に打ち合わせたわけではない。
あっと言う間の出来事で、止める暇などなかった。
川 ゚ -゚) 「ここで遭ったが……百年目っ!」
クーはひらりとバイクを降り、スタンドを立てた。
衝撃でどこかのネジが2、3本落ちた。
ところどころ傷つき、外装のひしゃげたバイクを見る。
彼女の視線に応えるように、ジェネレーターカバーがぱかっと開いた。
クーは思わず目をそらす。 もうむり。 正視に堪えない。
.
84
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:13:28 ID:D9mWpQHU0
.
川 - ) 「キャサリンの恨み……ここで、晴らす」
怒りを燃やすクーだったが、すぐに違和を感じ取る。
迫りくるトラックは、傍目に見ても異常事態であることがわかった。
きゅりきゅりと、スリップ音を撒き散らしながら、蛇行している。
川 ゚ -゚) 「ん」
しぃが何か仕掛けたであろうことは明白だった。
だが、それならなぜ、トラックは止まろうとしないのだ。
川 ゚ -゚) 「!!」
そして、クーは見た。
彼女の貸したジャケットをはためかせる、白い制服姿。
当のしぃが、蛇行するトラックの天井部分にあらわれた。
四角い、銀色の何かを傍らに携えている。
目を凝らすまでもなかった。
あんな巨大な物体を “ 小脇に抱えられる ” のは、彼女しかいない。
.
85
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:14:15 ID:D9mWpQHU0
.
川 ゚ -゚) 「お、おい……!」
ライトの眩さと夜道の暗さで、正確には確認できない。
が、少女は運転席へ何かを告げるかのように、体を曲げたあと──。
川 ゚ ゚)
クーは仰天し、息を飲んだ。
て
川;゚ -゚) そ 「ま、さ、か!?」
バイクから、ヘッドライトのカバーがころりと落ちた。
メーターのバネがびよんと飛び出た。
──まさか、の事態は、おおむね現実になる。
それが物語の鉄則だ。
〜 〜 〜
.
86
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:15:11 ID:D9mWpQHU0
.
【 タムラサイド: 市道××号線路上 】
時は少しさかのぼる。
クーがバイクの空中ダイブを目撃し、悲鳴をあげているころ。
ここ、どりあん運送所有小型トラックの運転席内でも、
男たちの野太い絶叫が、不協和音を奏でている最中だった。
て
爪l|l゚皿゚) そ 「ひいぃっ! お前ッ、嘘!?」
(*。A。)+
ガラスの上部から、さかさまの少女が現れた。
タムラ達はシートにのけぞる。
先ほどまでバイクのタンデムシートにいたはずの、小柄な女子高生。
猫塚しぃが、トラックの天井から、ガラスにへばり着いていた。
しぃは、いや、しぃの “ 別人格(アナザー)” だろう。
既にメットを外した少女は、運転席の二人を交互に眺め、蛇のように舌なめずりする。
.
87
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:15:54 ID:D9mWpQHU0
.
直後、拳をぐっと握りしめ。
(*。A。) 「あっひゃぁぁあぁ!」
ためらいなく、フロントガラスへ振り下ろした。
て
爪;゚〜゚) そ 「なっ、なぁっ!?」
「こいつ、何を……うわっ!?」
乱打。
(*。A。) 「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひ
ゃひゃひゃヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
縦読みでも 『 あひゃ 』 になるほどの狂笑。
第三話のコピペだが、それはまあいい。
タムラは驚愕におののく。
.
88
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:16:44 ID:D9mWpQHU0
.
『 あひゃぁッ! ふひっ、ひひぇッ 』
ポセイドンが封じたかった──もしくは利用したかった──狂気が、目の前にあった。
逆立つショートカットの奥に、満面の笑顔が張り付いている。
『 くひっ、ふふ……へへ、あ、ひゃひゃっ 』
少女は心底楽しそうに、片手で、ときおり両手をハンマーのように組んで、
めちゃくちゃにガラスを叩き続けている。
タムラが身を震わせたのは、恐怖のためだけではなかった。
『 ひゃ───ッひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃぁ───ッ! 』
こいつはヤベェ。 その気になれば、殺ることのできる人種だ。
ジキルとハイドなんて皮肉ってはみたが、実際にここまで変わるとは思わなかった。
爪; 〜 ) (こいつ──何か、手に!?)
拳での打音に混じって、ガシガシと、引っかくような異音。
金属製の小さな何かを逆手に持っている。
あれはなんだ、爪切りか。
フロントガラスは傷がつくばかりで、
割れはしないものの、視界は確実に狭まってゆく。
.
89
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:17:54 ID:D9mWpQHU0
.
ボディチェックの際、彼女が何本もの刃物を隠していたことを、タムラは思い出す。
巷を震わせる連続殺人鬼 “ アリス ・ キラー ” のニュースが、フラッシュバックした。
「う、うぉおおおおおぉ!」
トラックは減速することなく、車体を揺らしながら前進する。
振り落としてやろうという滝沢の足掻きが、結果的に功を奏した。
しぃはバランスを崩し、前のめりにずるりと滑り落ちた。
辛うじてフロントガラスにへばり着くと、開脚した姿がガラスへ大写しになる。
ひゅー、セクシー、なんて軽口を叩く余裕はなかった。
タムラはすでに相手を女子高生だとは思っていない。
異能をたずさえた、モンスター。
このトラックは、少女型殺戮マシンに襲撃を受けている。
そして何より、
爪;゚〜゚) 「おまっ、ちょっ……どけっ!」
前が見えない。
ワイパーに足をかけ、アナザー ・ しぃは器用に体勢を戻した。
それからふたたび、さかさまに上半身を出す。
.
90
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:19:11 ID:D9mWpQHU0
.
タムラは、猫塚しぃがまたガラスを攻撃するのかと考えたが、
そうはならなかった。
少女は舌を出してウィンクすると、コメディ映画のように、ぴょこんと頭を引っ込める。
爪;゚〜゚) 「もういい、車を止めろ! 外でケリをつける!」
どん、どん。
怪物の足音が天井を移動する。
音を追う滝沢の眼が、青く光っている。
“ 透過式遠隔視(イントロスコピー) ” 。 発動しているのか。
いったいそれに何の意味がある。
.
91
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:19:53 ID:D9mWpQHU0
.
「あ……嘘、だろ」
その上、小さくぼそぼそと呟いている。
いいから前を見て運転しねぇか。
タムラが告げようとした瞬間のことだった。
「「 !!!!!!! 」」
リアウインドウをぶち破り。
l|l 爪l|l 皿゚) l|l
マグロが、出現した。
〜 〜 〜
.
92
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:20:53 ID:D9mWpQHU0
.
【 ドクオサイド: 第三倉庫内 】
( ´_ゝ`) 「……概念的な話になると難しいな」
/ ゚、。 / 「操るといっても、方向は制御できないケド。
あくまで反作用は反作用。 及ぼす力の反対側に発生するチカラ。
できるのは “ 強化 ” “ 軽減 ” の二種類のみだケド」
リ ア ク ト ン
“ 反作用を操る能力 ” 。
鈴木タムラ……あいつにそんな超能力があったとは。
/ ゚、。 / 「右足に “ 反作用強化 ” ───跳躍。
左足で “ 反作用軽減 ” ───着地」
さっきこいつが見せた、
理屈に合わない猛スピードの正体はそれか。
.
93
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:22:04 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「ま、安心していーケド。
最初に教えたとおり、スズキのアイテムに封じたちょーのーりょくは、使い捨て。
ブーツに封じた “ リアクトン ” 、今の高速移動によって品切れだケド」
安心などできようはずがない。
視線を移せば、肩で息をする兄者の様子が、嫌でも目に飛び込んでくる。
形成不利は明らかだった。
/ ゚、。 / 「よかったよかった」
(;'A`) (こいつ……)
ダイオードはことごとく先手を打ってくる。
頼みの綱であるヒーロー男は 札を防ぐのに精一杯。
というより、サイコキネシスの有効範囲に入れてもらえない。
俺に至っては、無様に逃げ回ることしかできず。
お荷物以外の何者でもない。
/ ゚、。 / 「ところで」
翻弄されている。
それが肌で感じられたからこそ、続く言葉は俺たちの緊張をMAXまで引き上げた。
.
94
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:24:56 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「あんたに “ マグネティクス ” を発動したケド。
───これで、あんたは磁力の中心」
_,
( ´_ゝ`) 「!?」
ダイオードは指先の札をぴんと弾いた。
庫内に、赤い “ 蝶 ” が舞う。
兄者は反射的に腕へ視線を落とし、細い目をさらに細める。
破れめくれた袖の下、伝うは一筋の赤色。
先ほどの攻撃──札による一撃は、タダの引っかきじゃない。
(;'A`) (まさか、これ)
/ ゚、。 / 「“ リフレクス ” ─── “ 反射する能力 ”」
萩に猪。
/ ゚、。 / 「“ テレポート ” ─── “ 瞬間移動 ”」
紅葉に鹿。
.
95
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:27:59 ID:D9mWpQHU0
.
/ ゚、。 / 「“ マグネティクス ” ─── “ 磁場を操る能力 ”」
牡丹に蝶 ───これは。
リ レ イ ト
/ ゚、。 / 「“ 関連付け ”」
エレキネシストが告げた途端。
掲げられた三枚の札は、怪しい輝きを帯び。
/ ゚、。 / 「 “ 猪 ・ 鹿 ・ 蝶 ” 」
順次、飛翔した。
(; ´_ゝ`) 「くぅっ!?」
戦慄が走った。
投げる。投げる。投げる。
その三枚にとどまらない。
休む間もなく、札は次々に、ダイオードの手元から放たれる。
.
96
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:29:51 ID:D9mWpQHU0
.
俺は飛び上がりそうになった。
が、逃げまどう必要はないとすぐに気づかされる。
回転する札の数々は、ただ一つの標的目指して飛んでいたからだ。
( ´_ゝ`) 「────はッ。 そうかいそうかい」
ターゲットのサイコキネシストは、迎撃の構えをとった。
掌の中心、空間が奇妙に歪み、渦を巻く。
念動能力の予備動作。
( ´_ゝ`) 「むしろっ、好都合だっ……」
(;'A`) 「!」
(# ´_ゝ`) 「っっっらぁっ! っとぉぅ!」
腕を振るう。
粗野で原始的なモーションだが、パフォーマンスは確かだ。
一枚の札が弾け飛び。
返す手で別の一枚も叩き落とされる。
.
97
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:30:56 ID:D9mWpQHU0
.
(# ´_ゝ`) 「ぃよいしょおおおぉぉっ!」
薙ぎ払う。 幾度となく。
一枚の札が勢いを失い、落ち葉のようにひらひら地面へ。
もう一枚は明後日の方向へ進路を変えた。
( ゚A゚) (す、げ)
冷静に、投擲される全ての札に対処している。
て
(l|l;゚_ゝ`)そ 「どっこい……うぐ!?」
───ように見えたのは、一時のことだった。
ふいに兄者は小さく声を漏らし、前屈みによろめいた。
その肩に一枚の札が突き刺さっていた。
脳内を違和が駆ける。
あり得ない方向からの被弾。
.
98
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:33:23 ID:D9mWpQHU0
て
(;'A`) そ 「横っ!!」
俺の叫びに反応し、兄者はがむしゃらに腕を振りかざした。
飛来していた別の札が、くるくる回ってその場に落下する。
───ところが。
て
(l|l; ゚_ゝ゚) そ 「がはっ!?」
その瞬間。
兄者の体がくの字に折れた。
サイコリフレクション
/ ゚、。 / 「……“ 念 動 力 反 射 ” 。
どう? 自分ののーりょく、味わった感想は」
目を凝らして、何が起こっているかようやくわかった。
無秩序に撒かれる札に混ざって。
実に不可解な “ 現象 ” が、兄者に牙を剥いていたのだ。
/ ゚、。 / 「今のアンタは磁場の中心。
そいつは勝手に引き寄せられるケド」
.
99
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:38:05 ID:D9mWpQHU0
.
『 そいつ 』 とは当然、超能力をパッケージングした札のこと。
“ リフレクス ” “ テレポート ” そして “ マグネティクス ” 。
名称だけ聞けばとても攻撃用とは思えない、
そんなPSI3つの “ 関連付け(リレイト) ” 。
だがしかし、この合成技は、兄者に対して効果覿面だった。
投擲されるいくつもの札のうち、ふいに数点の札が “ 空中で姿を消す ” 。
(; ´_ゝ`) 「くっ!?」
その直後、見失った札は周辺の空間からランダムに出現。
“ マグネティクス ” に関連付け(リレイト)された札は空中にて軌道修正され、
磁石が引き合うように、彼の肉体めがけて直行する。
て
(; _ゝ )そ 「ぐあ!?」
ホーミング性能に加え、死角からの急襲だ。
対応が間に合わない。
掠めれば無邪気に皮膚を裂き。
.
100
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:40:22 ID:D9mWpQHU0
.
(; ´_ゝ`) 「くっそ、この……!」 バチン
て
(゚く_(# )そ 「うぶ!?」
サイコキネシスで叩き落とそうにも、
“ リフレクス ” により、不可視の波動は兄者のほうに返る。
ひるんだところへ、魔弾は容赦なく食らいつく。
消える札以外のそれらは、 “ カス札 ” だ。
特殊効果なし。 だが数が多すぎる。
当たれば皮膚は裂け、場合によっちゃ肉を抉る。
て
(l|l;゚_ゝ`) そ 「がっ……はっ……!」
リフレクション
五度目の “ 反射現象 ” を腹部に受けたところで。
兄者はとうとうその場に膝をついた。
リ レ イ ト
/ ゚、。 / 「あっけない幕切れだケド。 ──“ 関連付け ”」
札の輪郭がほの白く輝いた。
掲げた三枚を青い糸が紡ぐ。
.
101
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:43:41 ID:D9mWpQHU0
.
ダイオードの動きに、躊躇はない。
無慈悲に、無表情に抛られる、とどめの “ 猪鹿蝶 ” 。
≡(;'皿`) 「く、くっそぉぉおぉぉ!」
意を決し、俺はその場を駆け出した。
兄者の前へ仁王立ちになる。
て
(l|l; _ゝ ) そ 「……!」
/ ゚、。 / 「お」
(l|l'A`) (やっちまっ……!)
勢いって恐ろしい。
体中を抉られるビジョンに、思わず目を閉じる。
(;l|l>A<) (くそッ! なるようになれぇ!)
大丈夫だ。 チャンスだ、ほら今だ。
頼む兄者!
俺が盾になったこの隙に、脇をすり抜けて前へ出ろ。
.
102
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:46:24 ID:D9mWpQHU0
.
以前暴漢をのした時のように、サイキック全力パンチをお見舞いしてくれ。
目の前のスーツ野郎に。
そして俺を救ってくれ。 いや、割とマジで。
『 ………… 』
あの、だから。
今のうちに、早く行って、やっちゃって。
ねえちょっ、ちょ、ちょっと! ほら何やってねえちょっと待っおい早
l|(l|l゚A゚)|l 「やっぱ怖えぇぇえぇええぇ!!」
結局耐え切れず。
俺は目を開け、渦巻く感情を絞り出した。
l|(l|l゚皿゚)|l 「あんぎゃぁあぁ!!」
三枚の凶器が、俺のすぐ眼前にあった。
〜 〜 〜
.
103
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:48:39 ID:D9mWpQHU0
.
【 タムラサイド: 市道××号線路上 】
叫喚が車内を揺るがす。
(*゚:::::::)
破れた幌のシートと、粉々になったリアウインドウの隙間から。
ショートカットの悪魔が覗いていた。
爪l|l 皿 )
(*゚∀゚) 「おいっす」
喉が嗄れそうだ。
少なくとも、悲鳴に使うリソースなど残っていない。
タムラはそう思った。
.
104
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:51:09 ID:D9mWpQHU0
.
冷たい無表情から一転、ドヤっと頬をほころばせる怪物チャネラー。
やはりマグロごとトラックに乗り移ってきていた。
ウィンドウの隙間から、後方の様子が垣間見えた。
幌の上部がずたずたに裂かれている。
ここから天井へ移動したのだろう。 つまり、刃物を持っている。
狭い車内において、荷台にいる怪物の攻撃を避け続けるのは不可能だ。
ましてや相手は凶器を所持している。
タムラはマグロの頭越しに、運転席へ指示する。
爪l|l゚〜゚) 「止めろっつってんだろうが! おい! 何やってやが……」
「聞け」
が、滝沢の強い口調が先んじた。
.
105
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:52:54 ID:D9mWpQHU0
.
爪;゚〜゚) 「あぁん!?」
「……わ、悪いニュースが二つある」
何を言い出すのだ、こいつは。
現在進行形で最悪の事態だ。
(*゚∀゚) 「あっひゃ〜〜ン? にゅーすゥ?
オレサマ警報発令中ゥ〜〜☆?」
爪;゚〜゚) 「話は後だ! まずは車を……」
「……ひとつ。 俺の意識は、そろそろ、限界だ」
滝沢はかまわず話し続ける。
様子がおかしい。
明後日の方向を見つめ、声を出さない間も、口をぱくぱく動かしている。
まるで魚ですギョ。
横のマグロがそう語りかけてくる。
.
106
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:54:47 ID:D9mWpQHU0
.
「普通、こんなことは、起こり得ない。
……が、よくあるシチュエーションには、違いない」
亡霊でも見たような表情で、ぶつぶつ呟く。
体全体を小刻みに震わせつつ、滝沢は続けた。
爪;゚〜゚) 「何意味わかんねぇコト言ってやがんだ! いったい何が……」
「悪いニュース、残りの、ひとつ」
顔全体を青く染め、声を上ずらせて。
「ブレーキが、利かない」
そこまで告げると、青い目玉がぐるりと反転した。
.
107
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:55:47 ID:D9mWpQHU0
.
爪 ゚〜゚) 「えっ」
(*゚∀゚) 「えっ」
そのままずるずると、ハンドルに沈み込んでいく。
見れば背中にガラスが突き刺さっている。
──黒いスーツに、血の染みが、少しづつ広がっていく。
滝沢はクラクションに上半身を横たえた。
ホーンの音が田舎の夜を引き裂く。
そのうち車体が左右に揺れはじめた。
て
爪;゚〜゚) そ 「ちょっ、なっ、危ねえええ!!」
タムラはすぐさま、ハンドルの下から右足を突っ込み、
滝沢の靴ごとブレーキペダルを踏みつける。
爪 〜 ) 「 」
だが。
伝わるのは、スカスカとした感触だけ。
.
108
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 21:59:23 ID:D9mWpQHU0
.
『 ……嘘、だろ 』
坂に差し掛かる。
流れる景色の速度が、早まる。
街路灯が光の点から、線に変わる。
何度目だろうか、心臓が大きく跳ね上がる。
車体のきしむ音、クラクション、
ブレーキともスリップともつかない、甲高きタイヤの摩擦音。
て
爪l|l 〜 ) そ 「うぎゃああぁぁぁあぁあ!?」
(;*゚∀゚) 「マ──ジかよ───!?」
─── さまざまな音を立てながら。
─── 事態は、加速する。
(続く)
.
109
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:17:49 ID:UI4P.A/g0
おつおつ
110
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:30:54 ID:5zl9h5IA0
おっつおっつ
111
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:30:54 ID:5zl9h5IA0
おっつおっつ
112
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:31:38 ID:K8oP714s0
連投しちまった!
こんどこそおつ
113
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:49:42 ID:.mtOHUZo0
乙だぜ
タムラつえー
114
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 22:50:25 ID:.mtOHUZo0
タムラじゃなくてダイオードだ
115
:
名も無きAAのようです
:2014/08/14(木) 23:33:56 ID:TOSCJl5M0
乙乙
ちゃねらーは化け物揃いだな
116
:
名も無きAAのようです
:2014/08/15(金) 01:15:44 ID:1Eh6P8GA0
両方で投下おつ
VIPでの構成の方が好みだ
117
:
名も無きAAのようです
:2014/08/16(土) 04:01:19 ID:yllSeYVEO
乙、滝沢の最後が渋い
118
:
名も無きAAのようです
:2014/08/16(土) 22:47:07 ID:rn8TsSl60
つまらん
119
:
名も無きAAのようです
:2014/08/17(日) 20:35:52 ID:7e3Go1Tw0
おつんつん
vip見逃したからありがたい!
120
:
名も無きAAのようです
:2014/08/18(月) 07:05:25 ID:I4L5i9Xw0
おつ!
いやー毎回さすがのクオリティ
121
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:08:02 ID:nI5rleiY0
※2〜3日に分けて投下。
122
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:08:45 ID:nI5rleiY0
..
【 しぃサイド: トラック天井部 】
爪;゚〜゚) 「お前、なんで」
震え声に、猫塚しぃは運転席を覗きこんだ。
声の主───誘拐犯は、丸い目でこちらを見上げている。
フロントガラス越しに、さかさまの視線が交差した。
(*゚−゚) 「お願いしますね」
ふたたびよじ登った、トラック運転席(キャブ)・天井部。
車体が上下に揺れ動く。
そのたび、彼女はバランスを崩しそうになる。
人格(チャネル)は交代済み。
今現在、小柄な体躯を支配している主人格───、
しぃには、副人格(つー)ほどの運動能力はない。
トラックは、タムラのハンドル操作によって、どうにか走行状態を保っている。
しぃは潰れたカエルのように、全身で天井にへばりついた。
.
123
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:09:34 ID:nI5rleiY0
.
爪;゚〜゚) 「な、何がだよ、お願いって……」
(゚−゚*) 「ハンドル」
爪;゚〜゚) 「いや、おい」
サイドミラーのパイプにつかまりながら、
しぃはこわごわと、バンパーへ足をおろしてゆく。
反対側の肩から、銀色の直方体がぶらんと下がった。
ごつんと音を立てた後、反動でもう一度、キャブ前部を打つ。
爪l|l゚〜゚) 「何をやろうとしてんだ! なあ!」
タムラが叫んだ。
純粋な疑問ではないだろう。
本当にやるつもりか、というニュアンスが、端々から感じられる。
わかっているなら聞かないで。
唇をぎゅっと結び、しぃはその言葉を、
ためらう気持ちごと喉に押し込んだ。
.
124
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:10:41 ID:nI5rleiY0
.
暴走トラック、キャブフロント。
冷気の鋭さは、タンデムに跨っていた時以上だ。
バンパーに足をかけ、コメツキムシのようにくっついた女子高生は、
その片手に、巨大な物体を抱えていた。
爪l|l゙゚〜゚) 「おいって!」
荷台。
その荷台は荷台にあった荷台だ。
つまり───トラックの荷台に積んであった、運搬用の手押し荷台。
泣いたツインテール少女を乗せて走る、例のアレとは異なる。
車輪が大きく、数も4つではなく2つ。
持ち手部分の根本から、三角形に曲がった金属製のパイプが生えている。
車輪を休めるための足部分だろう。
前後逆のリヤカーと呼ぶべき形状だった。
.
125
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:11:39 ID:nI5rleiY0
.
爪l|l 〜 ) 「無茶だ!」
(-゚* ) 「できます。 ───きっと」
運転席の声が煩わしい。
これ以上の問答は不要だった。
しぃはすでに腹を決めている。
決心がどうとかではなく、ぐずぐずしていると本当に振り落とされる。
しぃはトラックの鼻先に片手を添えた。
そしてもう片方の手から、荷台を降ろし、離し。
て
爪l|l゚〜゚) そ 「うわああああああ!!」
飛び降りた。
荷台ごと。
着地した。
荷台の中心へ。
接地部がアスファルトに弾かれ、荷台は大きく跳ね上がった。
しぃはフロントグリルを掴んで堪える。
それから、全身をつっかえ棒のように伸ばした。
.
126
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:12:43 ID:nI5rleiY0
.
ボロ布を噛まされた車輪が、激しく悲鳴をあげる。
直進するトラック。
その前方、両手でトラックを押し返す、制服の女子学生。
いつ跳ね飛ばされても、轢き潰されてもおかしくない。
人力ブレーキ on 荷台。
(;*>ー゚) 「くぅっ……!」
しぃの矮躯を、体験したことのない負荷が襲う。
肉薄する鉄の圧が、風が、音が。振動が。
巨大な黒い塊となって、全身を包み、数多の牙を突き立てる。
荷台の車軸から火花がほとばしった。
右、そして左。
車輪が次々に弾け飛んだ。
天板が跳ねる。 アスファルトが鳴く。
足場が落ち窪んだことで、しぃはふたたびバランスを失いそうになる。
吹き飛ばされる寸前のところで、どうにか踏みとどまる。
.
127
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:13:47 ID:nI5rleiY0
.
パイプとボードだけになった、元 ・ 荷台。
しぃは必死の形相でそこに立ち、
キャブフロントへ、細い腕を突っ張った。
止める。
ぜったいに、止まる。
止めてみせる。
しぃは叫び続けた。
音の嵐と、全身をシェイクする衝撃の中で。
.
128
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:14:31 ID:nI5rleiY0
.
http://boonsoldier.web.fc2.com/channel.htm
http://localboon.web.fc2.com/100/top.html
纏
http://kurukurucool.blog85.fc2.com/blog-entry-497.html
http://boonfestival.web.fc2.com/channelers/list.html
.
129
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:16:43 ID:nI5rleiY0
.
〜 〜 〜
【 ドクオサイド: 第三倉庫内 】
不思議と札が止まって見える。
目を開けた直後だからだろう。 クロノスタシスってやつか。
ていうか、この位置はアカン。
弧を描いた札は、仮にどのような軌道をたどろうとも、
ただ一点へ収束することがすでにわかっている。
唯一無二のターゲット、兄者は俺のすぐ真後ろにいる。
彼と札を繋ぐ直線。
高さからいって、顔面直撃コース。
ビンゴ。
この札、このまま行けば俺の目玉にぶっ刺さる。
『 ───メぃラコぉ 』
ダメだ、マズ、助け
.
130
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:17:34 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「!」
(;l|l゚A゚) 「 く、 ひっ」
いや。
なにか、おかしい。
『 ───Boy、ずいぶん思い切ったことをしでかしたものだッ 』
顔を覆う腕の隙間から、覗く。
───動かない。
今にも俺の額に突き刺さりそうな三枚の凶器は。
さっき見たときと同じく、依然、宙に静止したままだ。
『 しかぁ───ッし! 』
轟くは、どこかで聞いた、誰かの声。
.
131
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:18:17 ID:nI5rleiY0
.
『 そのエクセレン覚悟ッ、ワタシは確かに見届けたぞッ 』
ああ、これは。
この “ 現象 ” は。
( ゚"_ゞ゚) 「はっ ハッ ハァ──────!」
次の瞬間。
耳障りな高笑いが木霊する。
そして。
ダンボールの影から黒い物体が飛び出した。
あっと思ったときには、黒い長方形が次々に、空中の札を弾き飛ばした。
/ ゚、。 / 「……!」
て
(;゚A゚) そ 「うひっ、こ、れっ!?」
いつもより小さめのPC? タブレット?
黒塗りに妙な文様とクロスをあしらった “ ミニ棺桶 ” は、
くるくる回転しながら、俺の耳元をすり抜けてゆく。
.
132
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:19:14 ID:nI5rleiY0
.
思わず振り向いた。
そこには、自称ダークヒーローの無職男性が、腰に手を当てふんぞり返っていた。
( ゚"_ゞ゚)
【+ と彡 ☆
彼が手をかざすと、棺桶はぴたりのタイミングで眼前に制止する。
まるでブーメランを受け止めるかのごとく、ヤツはそれをキャッチし、
小楯のように構えた。
【+ 】ゞ゚) 「案ずるなかれッ! ダミィだよ!
そちらのエレキネシストくんにビリビリやられちゃぁかなわんからなッ!!」
この口調、“ 棺桶死(シュナイダー) ” とみて間違いない。
PCの心配なんて俺は最初からしてないのだが。
(;'A`) 「う、おおおおおおおッ!!」
俺は鬨の声を上げながら、一直線に───
“ 棺桶死 ” の後ろへ逃げ込んだ。
.
133
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:20:12 ID:nI5rleiY0
.
シフト
/ ゚、。 / 「ふーん。 “ 交代 ” したんだ。
……ま、別にいいケド」
兄者のサイコキネシスは、空間を高速伝播するエネルギーの “ 圧 ”
──要は、なんだかよくわからん波動を飛ばしたり、
発生したエネルギー体を制御する能力だ。
対して棺桶死のサイコキネシスは “ 遠隔操作タイプ ”。
対象物をリモート ・ コントロールする超能力である。
原理はさっぱりわからんが、なるほど、
これだと “ 反射現象(リフレクション) ” は発生しないらしい。
【+ 】ゞ゚) 「チッチッ! すでェにッ!」
続けざまに出現した “ 猪鹿蝶 ” 三枚が、
宙で制止したままであることが、その証拠だ。
【+ 】ゞ゚) 「このワザは! 見切っているのだよッ!」
ミニ棺桶PC(仕様のボード)がふわりと舞い、
浮遊する花札をハエ叩きのようにはたき落としていく。
.
134
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:21:56 ID:nI5rleiY0
.
【+ 】ゞ゚)σ 「ドゥーユーアンダスタン?」
暑苦しい。 口調が。
音もなく放たれた二の矢 ・ 三の矢も、ものともしない。
棺桶シールドを空中で巧みに操って、防ぎ、
じりじり間合いを詰めていく。
【+ 】ゞ゚) 「ハッ ハッ ハァ────!」
/ ゚、。 / 「へぇ。 でもでも」
間もなく射程圏内 ──ヤツの喉元に、手が届く。
そう確信した瞬間、それは起きた。
/ ゚、。 / 「甘い」
棺桶死めがけて飛んでいた花札が、突如、軌道を変え。
不自然に浮き上がると、
さらにその表面から、プロパンバーナーのそれを思わせる、細長い炎が噴き出した。
【+ 】ゞ゚) 「むっ……!」
.
135
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:22:48 ID:nI5rleiY0
.
予測だにしない “ 現象 ” にタイミングを狂わされた棺桶死は、
大仰に横っ飛びし、回避。
/ ゚、。 / 「で、こっちも」
( ゚"_ゞ゚) 「ワッツ!?」
が。
避けた先には、くるくる回転する次のエモノが待ち構えており。
淡い発光。 直後、札から対地放電が起こった。
幾筋もの光の糸が、斜め下方に放出される。
間一髪、棺桶バックラーが電撃を防いだ。
どうやら本当にイミテーション(変な表現だが)らしい。
タブレットPCどころか、そもそも金属製ですらないようだ。
なおもスパークするボードを放り投げ、棺桶死は床を蹴る。
.
136
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:23:47 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「ゴールイン」
───そして。
“ それ ” が放たれる瞬間は。
俺の位置 ・ 角度からだからこそ確認できたのだ。
明後日の方向──両サイドへ向けて投げられた、二枚の札は。
それぞれに跳ね返り、俺の前方へ滑り落ちる。
(;゚A`) 「!」
描かれしは “ 鹿 ” の図柄。
───すなわち “ 磁力操作 ”。
(;'A`) 「───“ マグネティクス ”!
危ない! 右だ!」
俺は力の限り叫んだ。
瞬間的に、起こるであろう “ 現象 ” に思い至ったためだ。
.
137
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:24:32 ID:nI5rleiY0
.
ほどなく、右方のスチールラックが床を滑り出した。
左方で横倒しになっていたもう一つのラックも、ぐらぐら動きはじめる。
棺桶死は誘導されていたのだ。
二つのパレット ・ ラックを結ぶ直線上、その中点へと。
( :::"_ゞ::) 「───SHIT!」
飛び退る。
間一髪避けた彼の真後ろで、けたたましい金属音が弾ける。
二つの収納装置が、熱いハグをかわした。
無理な体勢でジャンプしたため、
棺桶死は受身を取りそこね、グリーンの床へ投げ出される。
/ ゚、。 / 「んー、惜しい」
なおも起き上がれずにいる棺桶死に向かって、
ダイオードはトドメとばかりに札を構え、指を引く。
.
138
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:26:10 ID:nI5rleiY0
.
(;'A`) 「やめろおおおっ! この……っ!」
俺の叫びに反応し、ダイオードはわずかにこちらへ向いた。
棺桶死が戦っている間、俺だってただ手をこまねいていたわけじゃない。
細心の注意を払いつつ、“ それ ” の近くへ移動していたのだ。
飛びついた。
サイコキネシスの直撃によって、ダイオードが床に落とした札の数々。
超能力のパッケージングされた、カード型ウェポンめがけて。
/ ゚、。 / 「!」
(;>A<) 「くらえッ!!」
俺はその一枚を掴み上げると、
手裏剣を飛ばすモーションで、めいっぱい腕を引いた。
.
139
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:27:04 ID:nI5rleiY0
.
(メ;´_ゝ`) 「ばか! やめろっ!」
途端。
( ゛゚A ) (───えっ)
視界が反転した。
世界はコーヒーミルクのように、回り、混ざり。
制止の声が耳に届くと、ようやく、
自分の体が回転しながら宙を舞っていることを知り、
て
(l|l A ) そ 「がッ!?」
右半身への衝撃とともに。
床に打ち付けられた事実と、それがダイオードの所業であることを、理解した。
/ ゚、。 / 「 ──── “ ツイスター ” 。 回転させる能力」
声が出ない。
息が、苦しい。
.
140
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:27:45 ID:nI5rleiY0
.
(メ;´_ゝ`) 「大丈夫か?」
口調からして、兄者に戻ったのだろう。
差し出された肩へ、俺はよろよろと腕を伸ばした。
首へ絡ませると、傷口に触れたのか、兄者は小さく苦痛の声を漏らす。
(;'A`) 「……くそっ。 なん、で」
(メ;´_ゝ`) 「っ痛ぅ……ありゃ不発弾だ。 利用しようなんて思わないほうがいい」
(;'A`) 「あ……」
痛がる兄者から腕を解こうとしたが、抱き起こされるほうが早かった。
ダイオードはすでに俺たちと距離を取っている。
が、追撃はなく、ただ両手で札を弄ぶのみだ。
.
141
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:28:50 ID:nI5rleiY0
.
(メ;´_ゝ`) 「……しないのか。 攻撃」
/ ゚、。 / 「しないんじゃない、できないんだケド。
“ 点火 ” しすぎた。 ちょっち休憩」
(メ ´_ゝ`) 「いーのかよ、そんな弱点っぽいことバラして」
/ ゚、。 / 「んー。 別に。 余裕しゃくしゃくーだから」
(メ;´_ゝ`) 「……あっそ」
兄者のほうにもその隙を突けるほどの体力はなかった。
しばしにらみ合いが続く。
荒い息が、戦況の悪さを物語っていた。
.
142
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:29:33 ID:nI5rleiY0
.
●第三九話 『 信条と、信念と ── VS. タムラ&ダイオード② 』
ふいに訪れた小休止。
痛む体を壁にもたれさせ、俺は悔いる。
(;# A ) (……くそっ)
パイロキネシスが──そしてエレキネシスによる電撃が。
宙に浮いた状態の花札から “ 発動 ” したこと。
これらの “ 現象 ” を目の当たりにしてきたんだ。
少し考えればわかったはず、なのに。
/ ゚、。 / 「発動タイミングはある程度操作できるケド」
一片の可能性に賭けた、俺の目論見は失敗に終わった。
.
143
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:30:47 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「“ 着弾 ” しないと発動できないと思った? ざんねん」
超能力の発動に、“ 札が刺さる ” 過程は必要なかった。
ヤツはいつでも、
札に閉じ込めた超能力のスイッチを入れることができたのだ。
今さらながら、ダイオードの能力は底が深い。
同じ “ 超能力の発動 ” にも、いくつものバリエーションがあることに気づかされる。
札そのものに超能力の効力が現れるタイプ。
着弾した標的物に “ 現象 ” の効果を及ぼすタイプ。
/ ゚、。 / 「どっちにしろ、扱えるのはスズキだけ」
それらを自在に操作できるのだとしたら、
同じコピー能力でも、ドクミの扱うそれとは、利便性に雲泥の差がある。
(メ ´_ゝ`) 「……さっきの不可解な動きも、なんらかの能力か?」
傷だらけの体をもたげ、兄者が聞いた。
.
144
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:32:04 ID:nI5rleiY0
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/ ゚、。 / 「ストック少ないからなー。 あんまコレ、使いたくなかったケド」
エレキネシストは遠回しに肯定した。
兄者が聞いているのは、さっき投げられた札の挙動についてだろう。
俺もその点は疑問に感じていた。
これまで投擲される札は、全てが全て直線軌道ではなかったとはいえ、
ある程度物理法則に沿ったものだった。
が、さきほど発動した一枚のパイロキネシスは、実に不可解な挙動を見せた。
光の屈折のように、宙でかくんと折れ曲がったのだ。
まるでインベーダーのような動き。
/ ゚、。 / 「“ シンクロノス ” ── “ 同調させる能力 ”。
パイロキネシスと関連付けたのだ」
マウスを操作するように、空中で手を動かしてみせる。
ダイオードもまた、札をリモート ・ コントロールできたわけか。
札の遠隔操作も、超能力の発動タイミングも思うがまま。
いよいよ手がつけられない。
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145
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:32:49 ID:nI5rleiY0
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/ ゚、。 / 「言っただろ? スズキの信条は、せーせーどーどー」
一瞬何だかよくわからなかったが、
『 能力を明かしても勝てる 』 そう言いたいのだと解釈する。
(メ;´_ゞ`) 「ったく……んじゃ、おれも教えとこっか?」
/ ゚、。 / 「ん?」
(メ ´_ゝ`) 「おれの別人格は……」
/ ゚、。 / 「言わなくていいケド」
サムライは、ヒーローの言葉を一閃した。
/ ゚、。 / 「もう、だいたいわかった」
(メ;´_ゝ`) 「……はあ?」
今までの戦いで、兄者の能力を全て見極めたとでもいうのか。
(;'A`) (マジかよ)
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146
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:34:51 ID:nI5rleiY0
.
流石オサムというチャネラーに関して、俺の知る情報はごくわずかなものだ。
彼が扱うのは、性質の違う二種類のサイコキネシス。
“ 棺桶死(シュナイダー) ” が、離れた物体に直接働きかけられるのに対し、
“ 兄者 ” を自称する本人格は、波動を飛ばす能力らしい。
空間を高速移動する、ゆらぎの “ 圧 ” 。
透明に近いエネルギー体だが、正確には不可視ではない。
目を凝らせばわかるが、透過した景色に歪みが生じる。
/ ゚、。 / 「悪いケド」
もっとも。
/ ゚、。 / 「あんたののーりょく、射程距離はせいぜい、半径3メートル少々」
(メ ´_ゝ`) 「!」
波動の軌跡を肉眼で捉えるのと、
その動きに反応できるのとでは、別次元の話だが。
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147
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:36:15 ID:nI5rleiY0
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/ ゚、。 / 「スズキはあんたに近づかない」
(メ ´_ゝ`) 「ふーん。 意気地ねぇんだな」
サ イ コ キ ネ シ ス ト フィールド
/ ゚、。 / 「 “ 超念動能力者 ” の射程圏内で戦うほど、
スズキはくるくるぱーじゃないケド」
ヤツはコピー能力者だ。
ある意味超能力のエキスパートとも言える。
にわかに肌が粟立つ。
(メ ´_ゝ`) 「そう邪険にすんなってー。 僕ちゃんお近づきになりたいなー(棒」
/ ゚、。 / 「近づかないケド。 サムライに二言はないケド」
(メ _ゝ ) 「……はっ。 サムライぃ?」
────ニンジャの間違いだろ!
言い捨てて、兄者は地を蹴る。
助走たっぷりの跳躍が、第二ラウンドの開始を告げていた。
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148
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:38:01 ID:nI5rleiY0
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/ ゚、。 / 「リレイト。
──“ リプロデュース ” “ マグネティクス ” 」
ダイオードは札を素早くかざす。
もはや見慣れた感もある、攻撃予備動作。
紫電を合図に、ふたつの飛び道具はさらに強力な超能力兵器と化す。
/ ゚、。 / 「 “ トッピン ” 」
札は飛ばなかった。
代わりに、同心円状の振動波が、ダイオードを中心として放射された。
抗うすべはない。
ジャケットがはためく。 ダンボールが転がる。 倒れた椅子が床を擦り動き出す。
瞬間、衝撃ともいうべき風圧が俺たちを襲った。
両腕で庇をつくり、足を踏ん張って耐える。
が、能力の真価はその後の “ 現象 ” にあった。
<(メ;゚_ゝ゚)> 「うおおおぉぉおぉお!?」
<(l|l゚A゚)> 「ぎゃあぁぁあぁああぁ!?」
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149
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:38:59 ID:nI5rleiY0
.
反射的に耳を押さえる。
爆音。
他に表現しようのない、強烈な音圧が嵐となって吹き荒れた。
暴力的なディストーションが、空間を暴れまわる。
重厚にして凶悪な、振動の地獄。
荒れ狂い、ぶち当たり、擦り削る。
倉庫全体が、揺れている。
音は段階的に収束した。
両手を離す。 だが、未だ耳鳴りは収まらない。
/ 、 / 「音と磁力の関連付け(リレイト)
──── “ ダイナミック ・ スピーカー ”」
ダイオードもまた、塞いでいた耳から手を離す。
ていうか、本人もダメージを受けてないか。
痺れる身体へ渇を入れるように、兄者は両膝を叩く。
そうして駆け出そうと構えた瞬間。
『 危ない! 右だ! 』
(メ;´_ゝ`) 「!」
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150
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 04:39:52 ID:nI5rleiY0
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声に反応し、兄者は横っ飛びに体をかわす。
響いたのは俺の声だ。
(;'A`) 「……え?」
だが、違う。
(メ; ゚_:::::) 「!!」
俺は、言ってない。
着地と同時、兄者は顔を覆う影に振り向く。
そして立ちすくんだ。
「「 あ 」」
一段背の高いスチールラックが、彼のほうへ大きく傾いていた。
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151
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 09:42:30 ID:UoKkf34g0
しえん?
152
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:25:34 ID:nI5rleiY0
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『 ぐああああああ!! 』
て
(;゚A゚) そ 「わああああ! 兄者ッ!?」
ラックが倒れ。
積まれていたダンボールが、兄者めがけて崩落した。
/ ゚、。 / 「リプロデュース。
音を “ 再生 ” するのーりょく」
“ 関連付け ” しない、単品での連続攻撃。
いつの間にか録音した俺の声を、札から 『 再生し 』、
“ 吹き飛ばす能力 ” をぶつけたラックの、倒れる先へ誘導しやがった。
すぐに兄者のもとへ駆け寄る。
段ボールの山に埋もれ、隙間から覗く顔は苦痛にゆがんでいる。
(;'A`) 「大丈夫か!? おいっ」
俺は覆い被さる段ボールを払いのけた。
箱の大きさは均一、しかし重さはさまざまだ。
ときおり関節が悲鳴をあげる。
.
153
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:26:16 ID:nI5rleiY0
.
数個目の箱を投げようとしたところで、俺は気づいた。
すぐ脇の壁際に、しぃちゃんのバッグが落ちている。
そういえば、ここははじめ、簡易テーブルが設置してあった地点だ。
ポセイドンが踏ん反り返っていた場所。
とすると。
( ゚A゚) 「!」
バッグの隣、ひっくり返ったパイプ椅子を蹴飛ばす。
(;'A`) (あった!)
床にプラスチック製のケースが転がっていた。
拾い上げ、勢い任せにふたを外す。
細長いケースの底。 銀色の刃が数本、鋭い光をはなっていた。
ボディチェックの際に、つーの服から転がり落ちたアレだ。
回収後、黒服たちが荷物とともに保管していたのだ。
弾かれるように、兄者のほうへ向き直る。
棺桶死の能力なら、この医療用メスを飛ばして攻撃できる───。
.
154
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:26:57 ID:nI5rleiY0
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(;゚A`) 「!」
ぱちん。
突如、何かが跳ねるような感覚を、左手に覚えた。
思わず蓋を取り落とす。
同時に、ひらひらと。
(l|l'A`) 「……嘘、だろ」
見覚えのある長方形が、床に舞い落ちた。
“ 鹿 ”─── “ マグネティクス ”。
なぜ、いや、すでに。
蓋の、裏側に、仕込まれていた……!?
続く違和感は、右手側。
掴み上げた箱の中、刃物がぐらぐらと動きはじめており。
『 !! 』
あっと思った瞬間、メスはミサイルのように飛び出してきた。
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155
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:27:57 ID:nI5rleiY0
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て
(;>A゚')> そ 「いづっ、あっ……ぐあああぁ!?」
銀の散弾。
さっきとは違う。
止まらない。
とっさに両腕でガードしたものの、
肘の中心に鮮烈な痛みを覚えた。
最初の一箇所を皮切りとして、
腕のあらゆる部位から、シャープな痛みがほとばしる。
半狂乱になりながら、腕のメスを払い落とす。
そして、見た。
メスのハンドル部……一本一本に、細い糸が結びつけてあった。
(l|l;゚'A゚) 「!?」
ぶらり、ぶらり。
一斉に垂れ下がる糸の先。
──その全てに結えられた、月、月、月。
.
156
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:29:12 ID:nI5rleiY0
.
て
l|l (l|l:::A::) l|l そ「があああああああああッ!!!」
/ ゚、。 / 「開けてびっくり、な?」
───エレキネシス。
ショックが体中を駆けた。
視界が白黒に点滅する。
思考が寸断される。
身をバラバラに裂かれるような、激痛。
( A ) 「───あっ。 がっ……」
一瞬だったのか、数秒だったのか。
永劫続くかと思われた電撃から解放され、俺はその場にくずおれる。
かろうじて意識の糸は紡がれている。
だが、力が入らない。
刃物と札の散らばる中、orzの姿勢で震えているのがやっとだ。
.
157
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:30:12 ID:nI5rleiY0
.
頭上で硬質な音が響いた。
残された体力をふりしぼり、頭を上げた。
幾重にもゆがむ世界の中で、どうにか像を結んだのは、人影。
ボロボロの兄者が、俺の前に立っていた。
棺桶ボードを巧みに操り、追撃の札を弾き飛ばしてくれていた。
(メ ´_ゝ`) 「ドクオ! 助けてくれたことにゃ、礼を言うぜ」
(; A ) 「あに……じゃ……」
(メ ´_ゝ`) 「だが、もういい」
兄者は、立ち上がろうとしている俺に、ぴしりと手のひらを向けた。
(メ ´_ゝ`) 「中は……おれ一人で大丈夫だ。
お前は行け! 早く!」
(;'A`) 「うぐ……ぐっ」
かけられた言葉に、しばし頭をひねる。
そして。
──バカな俺にも、ようやく理解できた。
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158
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:31:02 ID:nI5rleiY0
.
兄者はずっと、俺の身を守りながら戦っていたんだ。
俺たちの行動パターンを把握し、
抜け目なく罠を忍ばせる、多才なコピー能力者。
自称サムライ ・ 鈴木ダイオードの繰り出す、多様な攻撃から。
状況は苛烈を極めている。
それこそ、兄者が額から流れる血を止める余裕すらないほどに。
攻撃手段に乏しい俺の、立ち入る隙などなかった。
これまで狙い撃ちにされなかっただけ幸せだったのだ。
戦力外。
( A ) 「──わかった。 あとは……頼む──」
これ以上俺がここに居ても、足手まといになるだけだ。
悔しさに胸が震えた。
しかし、変えられない現実がそこにあった。
.
159
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:31:53 ID:nI5rleiY0
.
俺は下唇を噛むと、よろよろ立ち上がり、きびすを返す。
(l|l A ) (!……はは。 そうだよな……)
後ろからはチャネラー達の戦い──おそらくは防戦一方だが──の様子が、
音と気配で、依然伝わっていた。
眉根を寄せ、倉庫の入り口から外に出る。
冷たい夜の空気が、潮のにおいを乗せて、傷だらけの体を刺した。
俺の無様をあざ笑っているかのように。
背中を丸め、痛む足を引きずるように進む。
超念動能力者、流石オサム。
あいつの意志は、はっきりと感じ取った。
〜 〜 〜
.
160
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:32:36 ID:nI5rleiY0
.
右手の一振りで、数枚をなぎ払った。
吹き飛ぶ札から超常現象は発現しない。
全て、カス札。
ハズレだ。
心の中で舌打ちする。
あとどれくらい。
どれくらいなんだ。
後方からの気配が消えると、札をばら撒くダイオードの手が止まった。
/ ゚、。 / 「枷は外れた。 これで思い切り戦えるな、サイコキネシスト」
そう告げて。
腰のベルトから、さらに数枚の札を抜き出す目の前の敵に対し、
(メ ´_ゝ`) 「……あいつは、枷なんかじゃない」
流石オサム──兄者は、ぼそりと呟いた。
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161
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:45:09 ID:nI5rleiY0
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【 兄者サイド: 第三倉庫内 入り口側パレットラック脇 】
ぬるい液体の伝うまぶたを、無造作に右腕でぬぐった。
袖に赤い染みが広がる。
一張羅が台無しだ。 兄者は敵を睨めつけた。
/ ゚、。 / 「あっそ」
相当量をやっつけたはずだ。
いったいヤツには、あとどれだけのストックがあるというのか。
聞いたところで答えてはもらえないだろう。
なんにせよ、やるべき事は限られている。
ダイオードが攻撃のモーションに入った。
兄者は迎撃の構えをとる。
/ ゚、。 / 「よっと」
涼しげな声とは裏腹に、苛烈だった。
先ほどまでの比ではない。
舞うような動きで、ダイオードは数多の札を繰り出す。
散弾銃さながらに放たれる、茶色い紙片。
.
162
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:45:53 ID:nI5rleiY0
.
(メ ´_ゝ`) 「くっ……」
兄者は棺桶死へ交代(シフト)しようと考えたものの、すぐに思いとどまった。
数が多すぎる。
棺桶死の対物サイコキネシスでは、同時に止められる札は数枚が限界なのだ。
札の連弾は、さながら暴風雨──明らかに、制御限界を超えている。
(メ;´_ゝ`) 「ちィッ!?」
身を低くし、札同士の隙間へ肩から突っ込む。
床についた左腕を軸に、回転し、我武者羅に足を振る。
駄々っ子のような動きだが、
発生する念動エネルギーは、数枚の札の軌道を変化させた。
体勢を戻す際、ダイオードの投擲モーションが目の端に映った。
まだ休ませてくれそうにはない。
両サイドからの札を、一枚は棺桶で処理し、もう片方は上着で払った。
(メ;´_ゝ`) (いつだ、いつ来る……?)
もっとも警戒しなければならないカード。
それが、能力の封じられた札であることは、もはや考えるまでもない。
.
163
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:46:50 ID:nI5rleiY0
.
医療用メスに使われる鋼材は、一般的に磁性体ではない。
だが、メスは飛んだ。
ヤツの操る超能力は、ステンレスを瞬時に磁化させることも可能なのだろう。
常識でははかれない──まさに、超常現象。
能力同士を掛け合わせ、バリエーションは飛躍的に広がる。
(メ ´_ゝ`) (今さっき……)
リ レ イ ト
“ 関連付け ” の声が聞こえたのは、一度。
迫る札のうち、超能力を携えた “ バクダン ” は、多くて二つ。
どのタイミングで、どれが、どんな超能力なのか。
吟味する余裕などない。
兄者にできることは、ひたすらに腕を振るい、飛来する札を退けることだけだ。
(メ;´_ゝ`) 「!!」
そうこうしているうちに、弾き損ねた。
わずかに軌道を逸らしたものの、的をはずすには至らず。
一枚の札が跳ね上がり、ほか二枚が兄者のわき腹を掠める。
ひるんだ兄者の頭上へ、札はふわりと舞い降り。
.
164
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:47:33 ID:nI5rleiY0
.
/ ゚、。 / 「ほい。 これで終わりっ」
悪いことに。
その一枚こそ、超常現象という名の発火装置を備えた、魔のカードだった。
(メ _ゝ ) 「!!」
兄者を待ちかまえていたかのように。
札は正面で静止し、くるくると回転をはじめる。
発光の瞬間、兄者は考える。
終わりだって? この攻撃で?
言ってくれるじゃないか。
ま、そうかも知れないな。
.
165
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:48:31 ID:nI5rleiY0
.
(メ:::::_ゝ::)
(メ ´_ゝ`) 「───お前がな」
両目を見開いた。
溢れる光のまばゆさなど、意に介すことなく。
白い闇が、周囲の全てを飲み込み。
渇いた音が弾けた。
〜 〜 〜
.
166
:
名も無きAAのようです
:2014/10/12(日) 15:50:39 ID:dCMBIV4w0
ドクオまじお荷物だったな
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