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+】(メ ´_ゞ`) Channelers
202
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:06:42 ID:8ijslF5w0
.
【 ドクオサイド: 第三倉庫 ・ 外窓付近 】
(#'A`) 「俺が触れている限り、お前はその力を行使できない!」
“ 点火 ” の瞬間は、封じることが可能。
:::/ ゚、。;/::: 「オ、マエ……!!」
俺は窓枠から乗り出した体勢で、
ダイオードの首に巻きつけた腕を、さらにねじり上げた。
.
203
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:08:13 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「ドクオ」
:::( 'A`)::: 「あん?」
(メ ´_ゝ`)b 「GJ」
(;'A`) 「……いいから、早くこいつを何とかしてくれっ」
暴れこそしないものの、俺の腕を剥がそうとするダイオードの握力は強まる一方だ。
くそ……やっぱいてえ。 マジいてえ。
ジャケットのおかげで傷は浅かったが、
メスの刺さりまくった袖には点々と血がにじんでいる。
右腕が疼き、熱が強まる。 この姿勢は長く持ちそうにはない。
:::/ ゚、。;/::: 「……逃げたんじゃ……なかった……のか」 ギリギリ
間もなく、床に散った “ 雨四光 ” は全て、
入り口シャッターの外へ弾き飛ばされた。
.
204
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:10:43 ID:8ijslF5w0
.
:::(;'皿`)::: 「ピンと……きた、からなっ」 イテテ
さっきの兄者の言葉を思い返す。
全てはあの一言から始まっていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(メ ´_ゝ`) 「中は……おれ一人で大丈夫だ。
お前は行け! 早く!」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
“ ここは ” ではなく “ 中は ” 。
違和感のある言い回しだ。
倉庫の入り口へ、きびすを返した瞬間、俺は気づいたのだ。
('A`) 「外から回り込め、って事だろうとな」
あの後俺は、足音を殺し、倉庫の外周を移動した。
そして、窓から慎重に中の様子を伺いつつ、機を待った。
.
205
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:12:41 ID:8ijslF5w0
.
サイコキネシス対策として、ダイオードは常に、兄者と一定の距離をとっていた。
必然的に、壁際へ位置取る回数は多くなる。
壁に沿って移動するダイオードを、
兄者はスリング ・ ショットによって、巧みに誘導していた。
入り口シャッター以外に存在する、もう一つの進入口。
棺桶死が登場時に破壊し、枠まで吹っ飛ばしていた、
がらんどうの──この、開いた窓のほうへ。
/ ゚、。;/ 「うぐ……くっ」
というより、最後はダイオード自ら、こちらへ移動している節もあった。
“ 雨四光 ” とやらがどういった能力か知らないが、
こいつの話しぶりからして、相当威力のあるワザだったに違いない。
とすると、こいつは巻き添えを恐れ、脱出を考えていたのかも知れない。
……俺が軒下へ待ち構えているとも知らずに。
罠ってやつは、抜け道に張ることで、最大限の効用を生むもんだ。
.
206
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:16:07 ID:8ijslF5w0
.
(;'A`) 「!」
などと考えているうちに。
ダイオードは肩を震わせながら、右手に摘んだ札の切っ先をこちらに向けた。
俺は驚いて腕を放す。
て
/ 、 / そ 「がっ!?」
だが、ダイオードの身が解放されることはなかった。
俺の腕から逃れたヤツの体は、瞬間的に後方へ吹っ飛び、壁に磔にされたからだ。
苦渋に顔を顰めるダイオード。 とうとうその鉄面皮が剥がれた。
兄者が右手をかざしたまま、一歩ずつ近づいてくる。
両腕を念動力で押さえつけているらしい。
サイキック壁ドンとでもいったらいいのか。
(メ ´,_ゝ`) 「よっ。 捕まえたぜ」
もがくサムライの眼前に立つと、
ぼさぼさ頭のダークヒーローは、にぃっと微笑んでみせた。
.
207
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:17:44 ID:8ijslF5w0
.
/ ゚、。;/ 「くおっ……オマエ、一対一(タイマン)を望んでたんじゃ」
(メ ´_ゝ`) 「卑怯だと思ったかい? 悪いな、期待に副えなくて。
そもそも俺とアンタじゃ “ 正々堂々 ” の解釈が違うみたいだ」
人差し指の銃口を、ダイオードのこめかみに当て。
『 BANG 』 とささやいてみせる。
いちいち面倒くさいヤツだが、今はこのオッサンヒーローこそが頼みの綱だ。
(メ ´_ゝ`) 「俺にとって正々堂々ってのは、弾丸(タマ)の投げ合い、ぶつけ合いじゃねえ。
肉体同士の殴り合い以外にねえんだよ。
アンタがお望みなら、最初から付き合ってやってたぜ」
左手で、ぐっと拳を握って示す。
無駄なアクションのたびに拘束が解かれるのではとヒヤヒヤするが、
伸ばした右手一本で、相手の両肩を押さえつけ続けることが可能らしい。
.
208
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:19:46 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「ちなみに、おれがねらーになってからの十数年間──。
喧嘩(ガチンコ)での戦績は、29戦29敗だ」
/ 、 ;/ 「!!」
(メ ´_ゝ`) 「うち姉者5回、母者7回」 ボソ
聞かなかったことにする。
(メ ´_ゞ`) 「そう、おれは────」
『 “ 正々堂々 ” 闘って、勝ったことは一度もない 』
(;'A`)
とびっきり何の自慢にもならない事実を吐いて。
孤高のサイコキネシストは、深く腰を落とした。
.
209
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:20:44 ID:8ijslF5w0
.
(:::::::_ゞ`) 「──はなから、ガチンコで挑んでたら」
/ 、 ;/ 「ぐぅ……っ! 離っ……」
俺は窓枠の特等席から、その様子をしっかり目に焼きつけていた。
/ 、 ;/ 「くああああああああああああああッ!!」
『 いくらでも、勝てただろうにな 』
見えない拳が、サムライヤロウの長身を、打ち上げる瞬間を。
〜 〜 〜
.
210
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:22:19 ID:8ijslF5w0
.
【 タムラサイド: 広域農道 路上 】
爪;゚〜゚)
トラックから降りた鈴木タムラは、きしむ関節をだましだまし歩いた。
めまいがする。
膝を折りそうになりつつ、必死にこらえる。
リ ア ク ト ン
“ 反作用を操る能力 ” を発動した。
トラック前部──キャブ部分にかかる “ 反作用を、増大した ” 。
“ サイアミーズ ” のモンスター ・ パワーだけじゃない。
トラックは、俺が止めた。
爪;゚〜゚) (おめでてえヤツめ!
オレがチカラを使ってなきゃあ、今頃は……!)
(;*゚ο゚) ゙
トラックを襲った小さな怪物を、
タムラは噛み付きそうな表情で睨みつける。
.
211
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:23:23 ID:8ijslF5w0
.
が、以外なことに。
(;*゚ー゚) 「……やりました」
当の怪物は、くしゃっと表情を崩した。
爪 ゚〜゚) 「え」
タムラはぽかんとその様子を眺める。
空気が弛緩した。
(;*^ー^) 「えへへ……」
怪物ははにかみながら、胸の前で控えめなピースサインをつくった。
.
212
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:25:56 ID:8ijslF5w0
.
爪;゚〜゚) 「は、あは、え……?」
なんだこりゃ。
どーいう状況だよ。
意味わかんねェ。
タムラはこの時、いつの間にか自分が頬を緩めていることに気づいた。
朗らかな少女の笑顔に、おずおずと、親指を立てて応える。
(*^ー^)
それを見た怪物は、これまた照れくさそうに、
ちょんちょん、とピースの刃先をあわせる。
爪 ゚〜゚)
.
213
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:26:48 ID:8ijslF5w0
.
『 ぷっ 』
自然に笑い声が漏れた。
タムラの笑いにつられるように、少女も破顔し、肩をすくめる。
(*^ー^) 「えへへへ……ふふっ」
爪*゚〜゚) 「へ……へへっ」
どちらともなく近づき、こつん、と拳を合わせた。
『 あはははははは! 』
誘拐犯と、被害者の妹。
相対する関係の二人は、夜空に笑いあう。
共同作業で、大事故を回避した。
達成感すら覚えている。
タムラは前髪を掻き上げ、ひときわ大きく笑った。
.
214
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:28:05 ID:8ijslF5w0
.
意味わかんねェ。
なーんで絆されてんだ、オレ。
でも、愉快だ。
久しぶりに心から笑った気がする。
(*^ワ^)
不思議だ。
さっきまであんなに恐ろしい相手だったのに。
目の前で、こんな表情されちゃあな。
爪* 〜 )
あーあ、俺の負けだわ。
なーんか、ぜんぶ、どうでもよくなったー。
報酬のことは気がかりだが……もう、これで終わりでもいっか。
タムラはそう考え始めていた。
.
215
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:29:31 ID:8ijslF5w0
.
(*^ー^) 「あはは……さて、それじゃっ」
が。
(#*゚∀゚) 「戦闘かいしだぁぁあぁあぁ!!」
て
爪l|l゚〜 ) そ 「えぇ─────!?」
相手も同じ考えでいてくれるかは、また別の話だ。
〜 〜 〜
.
216
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:30:49 ID:8ijslF5w0
※もうちっとだけ続く。 20時くらいに戻ってきます。
217
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 18:39:11 ID:P3PHNX9E0
支援
218
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 19:58:26 ID:UAfNONEA0
期待
219
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:13:47 ID:8ijslF5w0
.
【 ドクオサイド: VIP港 倉庫街路上 】
どこか信じがたい光景だった。
ノーヘルでバイクに跨るスーツの男は、
一瞬だけこちらを振り返ると、無言のまま走り去った。
俺たちは肩で息をしつつ、小さくなるヤツの姿を見送る。
(;'A`) -3 「だぁぁああぁもう! 何やってんだよっ!」
(メ;´_ゝ`) 「いやーまさかなー。 まだあんなに動けるたぁなー」
(;'A`) 「この……ポンコツヒーロー……!」
敗走する原付サムライ……鈴木ダイオード。
兄者が能力を解除した途端、それは起こった。
まさに一瞬の出来事だったのだ。
追い詰めたのはこちらだが、
いきなり逃げ出すようなキャラだなんて、思ってもみなかった。
.
220
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:14:33 ID:8ijslF5w0
.
(;'皿`) 「で、どーすんだよこれから!」
(メ ´_ゝ`) 「追う! 当然じゃ!」
(;'A`) 「あ!? ……ああ、ですよねー」
(メ ´,_ゝ`) 「追跡なら任せな!
こーゆーこともあろうかと、
さっきあいつが倒れた時、胸ポケットに小型のGPS発信機入れてやったぜ」
(;'A`) (マジかこのオッサン)
なんと準備のいい。
ピンチ時には美味い豚汁を作ってくれそうだ。
兄者に促されるまま、よろよろ駆け出す。
第三倉庫から少し離れた場所に、一台の車が駐車してあった。
ボロボロの軽。 恐らくは彼のものだろう。
兄者に続き、俺も隣に乗り込む。
勢いに合わせてシートが軋む。
まったくもって、満身創痍の俺たちにぴったりの乗り物だ。
.
221
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:16:24 ID:8ijslF5w0
.
( 'A`) 「んで」
(メ ´_ゝ`) 「んー?」
(;'A`) 「……なんで俺が運転席側なんだ?」
導かれるまま飛び込んだのは、右側。
目の前にはハンドルが、これまたボロいカバーに包まれている。
(メ ´_ゝ`) 「おれがナビゲートしなきゃ始まらんだろーよっ。
できるんだろ? 運転」
('A`)
(メ ´_ゝ`)
('A`) 「まあ……………………
…………………………
……うん………………
……………一応は……」
(メ*´_ゝ`)⊃ 「れっつらごー!」
.
222
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:17:06 ID:8ijslF5w0
.
嬉しそうにそう叫んだあと、兄者は棺桶モバイルを後部座席から取り出し、
くるんと片手に構えた。
こちらはイミテーションではなく本物のほうだろう。
……横から覗きこむと、パネルには確かに、
VIP港を中心とした路線図と、道に沿って動くマーカーが表示されている。
マジか。
マジかよこのオッサン。
なんなんだよ、今日のこの、目まぐるしい出来事の数々は!
(;'A`) (ええいもう、乗りかかった船だ!)
実際は船じゃなく、オンボロの軽だが。
ポセイドンや黒服はとっくの昔に消えていた。
しぃちゃん達は他の誘拐犯を追っている。
しかるに、俺だけ港でのほほんと待っているわけにもいくまい。
あまりに色々なことがありすぎて、頭はすでに、正常な思考を放棄している。
長い夜になりそうだ。
実に三年近く連載しているような印象だ。
エンジンと数回格闘したのち、俺はアクセルを踏み、倉庫街をあとにした。
−−−
.
223
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:18:47 ID:8ijslF5w0
.
(l|l ゚_ゝ゚)
( ゚A゚)
数十分後。
俺たち二人は、ひしゃげたガードレールの横で固まっていた。
(l|l ゚_ゝ゚)
( ゚A゚)
(l|l ゚_ゝ゚)
( ゚A゚)
(l|l ゚_ゝ゚) 「ペーパードライバーなら……先に……言え……」
( ゚A゚)
.
224
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:21:54 ID:8ijslF5w0
.
(l|l _ゝ ) 「……そして、何故、止まらんの……?」
( ゚A゚)
(l|l _ゝ ) 「なんで加速するの……? なんで逆走するの……? バカなの……?」
( ゚A゚)
( ゚A゚) キコエ……ナクテ……
(l|l;゚_ゝ゚) 「何百回止まれって叫んだと思ってんだ!」
( ゚A゚) アセッテ…… ブレーキ ドッチカ ワカラナクナッテ……
.
225
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:24:04 ID:8ijslF5w0
.
ひとしきり叫んだり、暴れたり、頭をかきむしったりしたあと。
兄者はため息をつきながら、右手を俺に差し出した。
(メ;´_ゝ`)つ 「……まあいいや。 ほれ」
( ゚A゚) ……ハイ
(メ;´_ゝ`) 「ひとまず目的地には着いたんだ、ガムでも食って落ち着こうぜ……」
一応弁解しておくが、俺が停車させた路肩のガードレールは元々ひしゃげており、
事故ったわけではない。
まあ……いつそうなってもおかしくなかったというか、
下手な絶叫マシン顔負けの数十分だったけど。
( ゚A゚) ……アリガトウゴザイマス
依然前を向いたまま、やけに薄いガムを受け取る。
開きっぱなしの口に運ぶと、甘酸っぱいいちごフレーバーが広がった。
(*'A`) (あ、おいちー)
いやに口どけのいいガムだ。
舌の上でとろりと柔らかくなったそれを、噛むことなく飲み込んだ。
(メ;´_ゝ`) 「なんじゃこりゃ? ソッコー溶けたぞ。 味もち悪ぅ〜〜」
('∀`) 「……」
('A`) 「ん!?」
.
226
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:25:31 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「なんだかんだ言いつつ、もう一枚もらうんですけどね」 パク
('A`)
……そして気づく。
俺はこれを、何度も口にしたことがあるという、その事実に。
('A`;) 「……アンタ、これ、どこから……」
(メ ´_ゝ`) 「ん? ガム? おまえの上着のポケットだけど?」
('A`)
……。
……。
それはガムじゃねええっ。
そう言ったつもりの声は、言葉として成立していなかった。
呂律が回っていないことに気づき、口元を抑える。
��(゚A゚l|l) 「う、ぐっ!?」
次の瞬間。
内側から揺さぶられるような感覚をおぼえ、俺はシートに前かがみになる。
.
227
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:27:51 ID:l.kjh7q.0
久々のドクミか……支援
228
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:28:13 ID:8ijslF5w0
.
ああ、これは。
目の前がスパークし、世界はぐにゃぐにゃと歪んでゆく。
全身を襲う、寒気と、熱と、痛みと、快感と。
体をバラバラにされ、再構築されるような、なんとも言えない感覚に襲われる。
『 う、ぐ、あああっ 』
( メ´_ゝ`)?
『 ああっ、うあ……ああああっ 』
て
( メ ゚_ゝ゚) そ !?
『 やめ……見るなっ、……あああぁぁ! 』
;(;;;゚_ゝ゚);
===
==
=
.
229
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:29:22 ID:8ijslF5w0
.
─── ようやく眩暈が収まったところで。
伸びた髪をかき上げ、僕は兄者に食ってかかった。
从 □ ;リル 「勝手に! 何っ! ……食わせてんだぁっ!」
(メ _ゝ ) 「生命の神秘を見た……」
襟を掴まれ揺さぶられる兄者は、
呆けた表情で僕のほうを見ている。
从 △ ;リル 「……はぁ、はぁ……ああもぅっ」
手を離した。
両腕を交差させ、ふた周りほど小さくなった身体を抱えこむ。
先ほどまでなかった弾力が、窮屈そうに、二の腕を押し返してくる。
背もたれに身を投げ出した。
衣の擦れる不快感に身を捩る。
こんなタイミングで……なんて、聞いてない。
.
230
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:32:24 ID:8ijslF5w0
,_
从゚、゚;リル 「動きにくい身体にしてくれて。 責任とれっ」
(メ ´_ゝ`) 「責任て……まっこと意味がわからないんだが……」
从'、`;リル 「服装とかサイズとか……こう、色々あるんだよ、このカッコは」
(メ ´_ゝ`) 「あ、思い出した」
兄者はぽんと両手を打つ。
(メ ´_ゝ`)つ¬ 「実はだな!
こんな時のためにって、服なら預かってたんだった」
从゚△゚;リル 「はぁ────!?」
なんだそりゃ。
わからん。
本気で意味がわからない。
兄者は、後部座席から一枚の手紙と紙袋を掴み上げた。
首を傾げつつそれを受け取ると、僕は手紙を開いた。
.
231
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:34:50 ID:8ijslF5w0
.
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
( ‘ω‘)
ニーチャンへ
突然アレがソレになっちゃった時のために、服は用意しておきましたお
いざとなったら使ってくださいね ぶーん
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
从'。`;リル 「……マジか。 気が利くっつうかなんというか」
聞けば、僕が気絶していた間(28話)、ブーンが内緒で兄者に預けておいたらしい。
兄者が車で来ることがわかっていたとはいえ、用意周到すぎやしないか。
从'、`;リル 「まーいーや。 じゃあちょっと着替えて……」
ぶつぶつ言いながら紙袋の口を開き、固まった。
从・x ・リル
……服。 確かに入っている。
でも、なぜ。
普段着じゃ、ない。
.
232
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:36:46 ID:8ijslF5w0
.
綺麗に折りたたまれた状態で、紙袋に収められていたもの。
それは、メイド服。
先日までバイトしていた、クーの知り合いの店の……
フレンチ仕様の、例の、あれだ。
(((メ;´_ゝ`) 「どうした? ……げっ、コレ……」
从 皿 ;リル (あのヤロ───────!)
……二度と身に着けることなどないと思っていたのに。
ご丁寧なことに、靴と下着まで入っている。
わざわざタンスから掘り出してくれたのだろうか。
ありがとう弟……後で教育的指導。
同じメイド服でも、ブーンの所持する例のアレじゃないあたりが確信的だ。
あっちのほうが布面積も広いのに。 暖かいのに。
たぶん汚されるのが嫌なんだろう。
.
233
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:38:32 ID:8ijslF5w0
.
从-、-;リル 「……もういい。 着る。 今の服よりは動きやすいだろ……」
(メ ´_ゝ`) 「おう、早くしてくれよな」
从-。-;リル 「はぁ……」 グイ
从゚、゚;リル ハッ
(メ ´_ゝ`) ?
从゚皿゚;リル 「出てけっ!」
兄者を車から押し出し、紙袋に手を突っ込む。
ε-(´く_`; ) 「なんだってんだ一体……」
,_
从゚、゚;リル ガチャッ
(メ;´_ゝ`)彡゙ 「うお!? な、なに!?」
从///リル 「ごめん、ちょっと、その……」
……途中で一度ドアを開け、背中だけ止めてもらった。
〜 〜 〜
.
234
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:39:26 ID:8ijslF5w0
.
【 ドクミサイド: VIP市臨海部 ・ 旧工業地帯 (ソーサク1丁目) 】
背負った星空の清澄さとは対照的に、
目的の廃ビルは、禍々しい佇まいを見せていた。
荒涼とした隣の空き地から見上げる。
奥側には、似たような廃ビル、廃屋が数軒連なっている。
むろん、周囲に人気はまったくない。
四階だろうか。
一箇所だけ明かりのついた窓がある。
ヒーローおやじのぼさぼさ頭越しに、そちらへ目を凝らす。
,_
从゚、゚;リル 「……」
窓付近に人影は見えない。
メイド衣装にジャケットを引っ掛けた姿で、僕は身を震わせた。
この寒い中、なんでこうも場違いな格好してるんだろう。
公開処刑も甚だしい。
.
235
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:40:23 ID:8ijslF5w0
.
(メ ´_ゝ`) 「どうする?」
从゚、゚リル 「何が?」
(メ ´_ゝ`) 「入るのか、入らないのか」
从'。`リル 「あ、ああ……」
GPSの移動反応はこのビルで止まり、その後途絶えていた。
キーホルダーは、ここで発見 ・ 破棄されたと考えていいだろう。
それだけでは、ダイオードがビル内に留まっているかはわからない。
だが、建物の脇で例の原付を発見し、疑念は確信に変わった。
間違いない。
ヤツは今、この中にいる。
クー達からの連絡はない。
正確には着信履歴が残っていたが、何度かけ直しても出なかった。
留守録に場所を吹き込んでおいたものの、連絡があるまで待つべきだろうか。
.
236
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:42:04 ID:8ijslF5w0
※
>>235
訂正
×キーホルダー ○発信機
237
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:42:48 ID:8ijslF5w0
.
从 、 ;リル 「……行こう」
(メ ´_ゝ`) 「だよなっ」
口から出た言葉に、自分で驚いた。
以前であれば、わざわざこんな、危険に飛び込むような決断はしなかったと思う。
無謀は重々承知の上で、湧き上がる好奇心を止められなかった。
ポセイドン一味が、しぃちゃんの両親を手にかけた犯人だとは思えない。
だが、チャネラーや超能力について、僕たち以上の情報を握っていることは間違いない。
だから、ヤツを追う。
しぃちゃん達のためにも、
……いや。
从 、 リル 「……」
僕だってそうだ。
結局のところ、手がかりを求めているのは、誰のためでもない。
少年少女の手助けを──巻き込まれた風を装いながら。
その実、僕は僕自身のために、糸口を欲している。
知りたい。
あのクスリは何なのか。
僕のこの状態は─────僕は、誰なのか。
.
238
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:43:35 ID:8ijslF5w0
.
从'、`;リル 「……オジャマシマス」
(メ;´_ゝ`) 「いーから早く入れよ」
枠だけの入り口ドアを開け、僕たちは中に踏み込んだ。
階段の電灯は点いたが、エレベータは使用できないようだ。
唾を飲み込み、こわごわ階段をのぼっていく。
結局、明かりが生きていたのは二階までで、三階以降は暗闇だった。
兄者にくっついて進む。
从 □ ;リル 「わひっ!?」
(メ;´_ゝ`) 「ちょっ!? ……どんだけポンコツなんだ」
たまに暗がりでコケそうになりつつ。
窓が明るかったからといって、ヤツが四階にいるとは限らない。
踊り場を含め、途中の暗闇に潜んでいる可能性だって充分ある。
旧校舎を探索したときの記憶がよみがえり、足がすくむ。
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239
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:44:34 ID:8ijslF5w0
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目的の階層へはすぐに着いた。
廊下は左右に伸びている。
壁際にスイッチを発見したが、電灯の点く気配はない。
携帯のライト機能を頼りに進むほかない。
(メ;´_ゝ`) 「!!」 ガタン>
从゚皿゚l|lリル 「ひょわ!?」
その時、左方向から音が聞こえた。
仰天した兄者が立ちすくみ、僕はその背中にひたいをぶつけた。
从゚□゚';リル 「ちょっと! 脅かすなよっ!」
(メ; ゚_ゝ゚) 「んなこと言っても! おれだって怖いもん!」
从 △ ;リル 「もんとか言うなよオッサン……」
明かりのついていた部屋は、確か右側だ。
どうする。
どちらへ向かう。
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240
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:46:36 ID:8ijslF5w0
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あーだこーだ言い合ったのち、兄者先導のもと、左へ進むことにした。
手分けして……とも考えたが、今ここで離れるのは得策ではない。
僕は彼の後ろを、少し距離を空けて着いてゆく。
きょろきょろと、後ろ側を何度も振り返りつつ歩を進める。
いくら音がしようと、明かりのあった部屋は後ろ方向に間違いないのだ。
背後からいきなり襲われてはたまらない。
从 、 ;リル (それにしても)
この建物は何なのだろう。
雑居ビルにしてはいささか大きい。
露出した鉄筋と薄汚れた壁は廃墟としての雰囲気ばっちりだが、
そもそもの用途がわからない。
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241
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:47:19 ID:8ijslF5w0
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廊下にはいちおう採光用の窓がある。
ドアの形状はオフィスビルを思わせる。
だが、その並びはアパートのようでもあり、ホテルのようでもある。
(メ;´_ゝ`) 「まだ奥があるのか……」 ボソ
考えている間に、兄者との距離が開いてしまっていた。
兄者は今にも廊下の角を折れようとしている。
半身が暗闇に吸い込まれ、それに合わせて明かりも乏しくなる。
从'。`;リル 「あ、待って……」
その時だった。
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242
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:48:05 ID:8ijslF5w0
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/ ゚、。 / カチャッ
从゚、゚リル 「 」
あまりにも、唐突に。
て
从゚□゚|lリル そ 「─────!!」 バタン
横のドアが開いたかと思うと。
(メ ´_ゝ`)彡 「え? ……あれ?」
悲鳴を上げる間もなく、僕はそいつに、部屋へと引きずりこまれたのだった。
(続く)
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243
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 20:49:23 ID:8ijslF5w0
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※ 読んでくれてありがとう。
※ 「引き」が23話と被ってる。 この話はあとで修正するかも。
※ ポセイドン編はあと2話で終わりです。 長かったなぁ。
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244
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 21:01:48 ID:l.kjh7q.0
乙
245
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 21:10:40 ID:UAfNONEA0
乙
246
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 21:16:46 ID:ZN5GKNgY0
おつんこ
247
:
名も無きAAのようです
:2014/10/13(月) 23:56:25 ID:.r1.tOSY0
おつギコ達の動向が気になるね
248
:
名も無きAAのようです
:2014/10/14(火) 12:58:42 ID:T426ZR4k0
また萌え豚路線なのか…?
249
:
名も無きAAのようです
:2014/10/15(水) 14:10:23 ID:J6z9m/lA0
ドクミ久し振りだな
というか何年ぶりだ
250
:
名も無きAAのようです
:2014/10/18(土) 10:00:15 ID:cLu3SmwI0
クーの『特別製の水』ってまさか、おし…な訳ないか
251
:
名も無きAAのようです
:2015/01/11(日) 11:30:42 ID:fSQ04ccU0
あけおめ
252
:
名も無きAAのようです
:2015/03/27(金) 14:06:26 ID:U5wrDBt.0
勃起age
253
:
名も無きAAのようです
:2015/07/16(木) 18:25:21 ID:hG9himQE0
今度は一年後と予想
254
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名も無きAAのようです
:2015/09/01(火) 21:27:05 ID:UN0Ntxk20
待ってる
255
:
名も無きAAのようです
:2015/09/14(月) 15:22:57 ID:flo5j5I20
余裕で待ってる
256
:
名も無きAAのようです
:2015/11/19(木) 21:22:33 ID:Cs35qH4U0
来るまで待ってる
257
:
名も無きAAのようです
:2015/11/21(土) 03:57:12 ID:OL53TzCk0
私は、あなたが「もう投稿しません。ここで終わりです」というまで、ずっと、ずうっと待ちます。
たとえそれが何年後だろうとも、何十年後だろうとも。
いつかこのお話の終わりがくるまで、そして終わりがきても私はあなたとこの作品のファンです。
どうぞ、のんびりと自分のペースで筆をお進めください。
……とはいえたまに生存確認なぞをしてくださると、少なくとも私は喜びます。
258
:
名も無きAAのようです
:2016/05/24(火) 02:07:46 ID:5gSg1vYE0
ぶひぃ!
259
:
名も無きAAのようです
:2016/11/20(日) 17:42:01 ID:oCDKsRH20
何をどう彷徨って辿り着いたかは忘れてしまったけど
今更全部読んでとても楽しませて貰いました
続き、お待ちしておりまう
260
:
名も無きAAのようです
:2016/11/20(日) 20:04:48 ID:Zt4HvyGQ0
ぶひひぃ!
261
:
名も無きAAのようです
:2017/02/19(日) 01:50:35 ID:T.94dJvw0
待ってる
262
:
名も無きAAのようです
:2017/02/19(日) 23:27:09 ID:6uUJM94U0
なっつwww
これも逃亡してたもんなー面白いのが続々逃亡で悲しくなるね
263
:
名も無きAAのようです
:2017/08/26(土) 15:51:18 ID:O0h13Jv60
連載開始から読んでたよ
今でも待ってるぞ
264
:
名も無きAAのようです
:2018/09/23(日) 22:43:02 ID:xsK9sR5M0
戻って〜〜
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